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特表2024-547156太陽電池及びそれを形成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】太陽電池及びそれを形成するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0747 20120101AFI20241219BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20241219BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01L31/06 455
H01L31/04 420
H01L21/205
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539457
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2022085147
(87)【国際公開番号】W WO2023126146
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】2119060.8
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523246639
【氏名又は名称】レック ソーラー プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハシュケ,ヤン
【テーマコード(参考)】
5F045
5F251
【Fターム(参考)】
5F045AA03
5F045AA08
5F045AB01
5F045AB04
5F045AB06
5F045AB33
5F045AC01
5F045AC19
5F045AE21
5F045BB16
5F045CA13
5F045DA52
5F045EE12
5F045HA03
5F251AA02
5F251AA05
5F251CA09
5F251CA14
5F251CA34
5F251FA02
5F251FA04
5F251FA19
5F251FA22
(57)【要約】
太陽電池を製造するための方法が提供され、方法は、基板を提供することと、基板の表面上に不動態化領域を配置することと、不動態化領域の表面上にコレクタ層を配置することと、を含み、不動態化領域を配置するステップは、第1のガスを使用して、基板の表面上に第1の不動態化層を堆積させることと、第2のガスを使用して、第1の不動態化層の表面上に第2の不動態化層を堆積させることと、を含み、第1及び第2のガスは、各々、水素ガス及びシリコン系ガスを含み、第2のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比が、第1のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比の最大で2.5倍、かつ少なくとも0.4倍である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池を製造するための方法であって、前記方法が、基板を提供するステップと、前記基板の表面上に不動態化領域を配置するステップと、前記不動態化領域の表面上にコレクタ層を配置するステップと、を含み、前記不動態化領域を配置する前記ステップが、
第1のガスを使用して、前記基板の前記表面上に第1の不動態化層を堆積させるステップ、
第2のガスを使用して、前記第1の不動態化層の前記表面上に第2の不動態化層を堆積させるステップ、
を含み、
前記第1及び第2のガスが、各々、水素ガス及びシリコン系ガスを含み、前記第2のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比が、前記第1のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比の最大で2.5倍、かつ少なくとも0.4倍である、方法。
【請求項2】
前記不動態化領域を配置するステップが、前記第1及び/又は第2の不動態化層の表面を水素プラズマでエッチングすることを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、シリコン系ガスに対する水素ガスの比が、最大で50かつ少なくとも20、任意選択的に最大で35かつ少なくとも25であるように、前記第2のガスを構成することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、シリコン系ガスに対する水素ガスの比が、最大で50かつ少なくとも20、任意選的に最大で35かつ少なくとも25であるように、前記第1のガスを構成することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、シリコン系ガスに対する水素ガスの比が、前記第2のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比と実質的に同じであるように、前記第1のガスを構成することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記第1の不動態化層をノンドープであるように構成するステップと、前記第2の不動態化層をドーパント原子の含有によって決定される導電型を有するように構成するステップと、を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、前記コレクタ層を前記第2の不動態化層と同じ導電型を有するように構成するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、前記第2の不動態化層及び前記コレクタ層のうちの少なくとも1つをドーパントガスでドープするステップを含み、前記方法は、前記第2の不動態化層のドーパント濃度を前記コレクタ層の前記ドーパント濃度よりも小さくなるように構成するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、前記コレクタ層及び前記第2の不動態化層を正の導電型を有するように構成するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、前記第1の不動態化層、前記第2の不動態化層、及び前記コレクタ層のうちの少なくとも1つを、それらが実質的に非晶質シリコンからなるように構成するステップを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記太陽電池が使用されているときに放射源を向かないように構成されている前記基板の裏表面上に前記不動態化領域を堆積させるステップを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、前記第1の不動態化層を最大で10nmかつ少なくとも3nm、任意選択的に5nmの深さを有するように構成するステップを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、前記第2の不動態化層を最大で10nmかつ少なくとも3nm、任意選択的に6nmの深さを有するように構成するステップを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の不動態化層の少なくとも1つの堆積パラメータが、前記第2の不動態化層の少なくとも1つの堆積パラメータと実質的に同一であり、前記少なくとも1つのパラメータが、ガス流量、ガス圧力、堆積チャンバの温度、及びプラズマ強化堆積プロセスの電力密度のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記不動態化領域が、前記第1の不動態化層と前記基板との間に介在する第3の不動態化層を備え、前記方法が、水素ガス及びシリコン系ガスを含む第3のガスを使用して、前記基板の前記表面に前記第3の不動態化層を堆積させるステップを含み、前記第3のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比が、前記第1及び第2のガスのうちの少なくとも1つのシリコン系ガスに対する水素ガスの比の最大で0.1倍である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は、シリコン系ガスに対する水素ガスの比が最大で1、任意選的に実質的に0になるように、前記第3のガスを構成するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記不動態化領域の前記表面上に前記コレクタ層を配置するステップは、水素ガス及びシリコン系ガスを含む第4のガスを使用して、前記コレクタガスを堆積させるステップを含み、前記第4のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比が、前記第1及び第2のガスのうちの少なくとも1つのシリコン系ガスに対する水素ガスの比と実質的に異なる、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、ヘテロ接合型(HJT)太陽電池を形成するステップを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載の方法に従って製造された太陽電池。
【請求項20】
前記太陽電池が、ヘテロ接合型(HJT)太陽電池を画定するように構成されている、請求項19に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、太陽電池及びそれを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光から電気エネルギーを提供するための太陽モジュールは、太陽電池/光起電力電池のアレイを備え、各々が、1つ以上の前電極と裏電極との間に配置された多層半導体構造を備える。
【0003】
基板は、典型的には、少数電荷キャリアコレクタ層とのpn接合部を形成し(すなわち、基板及び少数電荷キャリアコレクタ層のうちの一方がn型材料であり、他方がp型材料である)、これは、太陽電池に入射する光に応答して電流を生成することを容易にする。
【0004】
太陽電池はまた、基板の少数電荷キャリアコレクタ層とは反対側の部分に配置され、基板から電荷キャリアを抽出するように構成される多数電荷キャリアコレクタ層を含むことができる。前電極は、少数電荷キャリアコレクタ層(例えば、電子コレクタ層)に電気的に接続され、裏電極は、多数電荷キャリアコレクタ層(例えば、正孔コレクタ層)に電気的に接続される。
【0005】
少数電荷キャリア及び多数電荷キャリアコレクタ層は、典型的には、非晶質シリコン(a-Si)から形成され、一方、基板は、結晶性シリコン(c-Si)から形成されて、ヘテロ接合技術(HJT)太陽電池を形成する。
【0006】
そのような太陽電池の効率を最大化するために、多層構造の異なる層間の界面に形成され得る表面欠陥の数を最小化することが重要である。表面欠陥は、典型的には、半導体層内に形成される、ひずみのある、又は終端されていない結合(ダングリングボンドとも称される)からなる。電荷キャリアは、電極によって収集される代わりに、表面欠陥で再結合する可能性があり、これは、太陽電池の光起電力変換効率の低下をもたらす。
【0007】
したがって、そのような太陽電池内の電荷キャリア再結合の発生率を低減する一方で、シリコン基板と少数電荷キャリア及び多数電荷キャリアコレクタ層との間の界面における電荷キャリア輸送特性を改善するための必要性がある。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様によれば、太陽電池を製造するための方法が提供され、方法は、基板を提供するステップと、基板の表面上に不動態化領域を配置するステップと、不動態化領域の表面上にコレクタ層を配置するステップと、を含み、不動態化領域を配置するステップは、第1のガスを使用して、基板の表面上に第1の不動態化層を堆積させるステップ;第2のガスを使用して、第1の不動態化層の表面上に第2の不動態化層を堆積させるステップ;を含み、第1及び第2のガスは、各々、水素ガス及びシリコン系ガスを含み、第2のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比が、第1のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比の最大で2.5倍、かつ少なくとも0.4倍である。
【0009】
源ガス(例えば、第1及び第2のガス)のシリコン系ガスに対する水素ガスの比は、本明細書で言及されるように、源ガスの「水素ガス比」を定義し得ることが理解されるであろう。このようにして、第2のガスの水素ガス比は、第1のガスの水素ガス比の少なくとも0.4倍(すなわち、少なくとも40%)~最大で2.5倍(すなわち、最大で250%)であり得る。別の言い方をすれば、第2のガスの水素ガス比と第1のガスの水素ガス比との間の比は、最大で2.5、及び/又は少なくとも0.4であり得る。第2のガスの水素ガス比が第1のガスの水素ガス比の0.4倍である例示的な状況では、第2のガスの水素ガスの濃度(シリコン系ガスに対する)は、第1のガスの水素ガスの濃度(シリコン系ガスに対する)の0.4倍であることが理解されるであろう。
【0010】
本発明による源ガスの水素ガス比は、有利には、それぞれの第1及び第2の不動態化層の緻密化を引き起こすように構成され、それによって、不動態化領域のフィルム品質を改善し、太陽電池の変換効率の増加をもたらす。
【0011】
第1及び第2の不動態化層は、別個の不動態化層を画定し、これらは、別個の堆積ステップ(例えば、それぞれ、第1の堆積ステップ及び第2の堆積ステップ)において堆積されることが理解されるであろう。例えば、第1の不動態化層は、第1の堆積チャンバ内に堆積されでもよく、第2の不動態化層は、第1の堆積チャンバとは異なる第2の堆積チャンバ内に堆積されてもよい。
【0012】
半導体層内及びその間の界面における電荷キャリア再結合の悪影響は、形成された欠陥を不動態化することによって低減され得ることが知られている。典型的には、これは、基板とコレクタ層(例えば、電子コレクタ層又は正孔コレクタ層)との間に真性(すなわち、ノンドープ)半導体材料の「不動態化層」を提供することによって達成され得る。
【0013】
そのような既知の不動態化層は、ダングリング表面結合を化学的に中和する誘電体コーティング、すなわち「化学不動態化」をシリコン基板上に形成し得る。このタイプの化学不動態化は、不動態化層の堆積中に水素などの追加の不動態化種を真性材料に導入することによって強化することができる。
【0014】
単一の不動態化層の存在は、有益であるが、例えば、不動態化層とその上にあるコレクタ層との間の、太陽電池内の追加の界面の形成をもたらす場合があり、これは、欠陥部位の数を増加させる可能性がある。この問題は、不動態化層が薄すぎると悪化し、太陽電池内の電荷キャリアの再結合が増加する可能性がある。逆に、不動態化層が厚すぎる場合、太陽電池構造内のその存在は、電極への電荷キャリアの輸送を阻害する可能性がある。
【0015】
太陽電池の層のバルク内の欠陥、及び太陽電池の他の層とのその界面における欠陥を低減するために、太陽電池の不動態化層を水素プラズマ処理に曝露することが知られている。既知の水素プラズマ処理プロセス中に形成される荷電水素イオンは、処理された半導体層内に短い距離だけ貫通することができ、したがって、下にあるバルク材料の限られた不動態化のみを提供することができる。
【0016】
場合によっては、水素プラズマエッチング(又は処理)は、処理された半導体層の表面にわたって不均一な不動態化を引き起こす可能性がある。これは、複数のシリコン基板が堆積チャンバ内に配置される場合の特定の問題であり得る。時間の経過とともに、水素プラズマエッチングの効果は、シリコン基板がチャンバ内のどこに位置決めされているかに応じて、シリコン基板上で異なるレベルのエッチングが実行されることをもたらす可能性がある。エッチング性能のこの変化は、最終的な太陽電池の変換特性、特に開回路電圧(Voc)の著しい変化を引き起こし得る。
【0017】
源ガス(例えば、第1及び第2のガス)の水素ガス比を制御することによって、次いで、第1及び第2の不動態化層の密度を増加させて、太陽電池内の界面の増加した不動態化を提供することができ、これにより水素プラズマエッチングを回避できることが、本発明の発明者によって発見されている。
【0018】
特に、第2の不動態化層の水素ガス比を第1の不動態化層の水素ガス比の実質的に0.4倍~2.5倍の範囲内にあるように構成することによって、本発明者らは、結果として生じる二層状の不動態化領域がより高い密度で形成される(例えば、より少ない多孔質構造を備える)ことを発見した。不動態化領域のバルク材料の不動態性は、フィルムの長さ、幅、及び深さにわたって、より均一な不動態化を提供する。結果として生じる二層状不動態化領域(すなわち、第1及び第2の不動態化層を含む)の全体的な効果は、増加した充填係数を示す太陽電池である。
【0019】
本発明の方法の結果は、著しく低い水素濃度(例えば、第1のガスの濃度よりも少なくとも一桁低い水素濃度)を有するガスを使用して堆積される同等の不動態化層と比較して、第2の不動態化層の堆積速度のわずかな低下をもたらし得ることである。このような低水素濃度ガスを使用することは、堆積速度を増加させることができるが、結果として生じる層の不動態化特性を強化するために水素プラズマ処理が必要とされる状況(例えば、不動態化層を堆積させる前にプラズマ処理を実行することによる)をもたらす可能性もある。対照的に、本発明による方法は、有利には、第2のガスの水素ガス比が、水素プラズマ処理を必要としない、高度に不動態化する第2の不動態化層を生成するように構成される。したがって、第2の層の不動態化の増加は、堆積速度のどのような低減であっても相殺して余りある。
【0020】
層、フィルム、領域、又は基板などの素子が、素子に対して「上に」、「隣接して」、又は「反対側に」存在すると称されるとき、それは、その更なる素子に対して「直接上に」、「直接隣接して」、又は「直接反対側に」存在してもよく、代替的に、1つ以上の間に挟まる素子が存在してもよいことが理解されるであろう。対照的に、素子が別の素子の「直接上に」、「直接隣接して」、又は「直接反対側に」存在するものとして言及される場合、間に挟まる素子は存在しない。
【0021】
次に任意選択の機能について述べる。これらは、単独で、又は任意の態様との任意の組み合わせで適用可能である。
【0022】
エッチングは、エッチングされている表面からの材料の除去を伴う、少なくとも部分的に減算的な製造プロセスを定義することが理解されるであろう。水素プラズマエッチングは、水素原子が、例えば、不動態化層の表面上に存在するダングリングボンドを不動態化することによって、処理されている層上及びその中に堆積されるので、少なくとも部分的に減算的であるとともに少なくとも部分的に加算的であるプロセスを定義し得る。エッチングによって除去される材料の量は、エッチングによって追加された材料の量よりも多くてもよい。このようにして、水素プラズマエッチングは、表面不動態化処理として定義され得る。
【0023】
不動態化領域を配置する方法は、第1及び第2の不動態化層のうちの少なくとも1つを水素プラズマでエッチングしないことを含み得る。このようにして、第1の不動態化層も第2の不動態化層も、方法中に水素プラズマで処理又はエッチングされない。
【0024】
実施形態では、方法は、第1及び/又は第2の不動態化層をいかなる形態のプラズマでもエッチングしないことを含み得る。方法は、第1及び/又は第2の不動態化層を水素プラズマで処理しないことを更に含み得る。更に、方法は、第1及び/又は第2の不動態化層をいかなる形態の表面不動態化処理でも処理しないことを含み得る。
【0025】
第2のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比は、第1のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比の0.75~1.5倍であり得る。実施形態では、方法は、第1及び第2のガスを、水素ガス及びシリコン系ガスのそれぞれの比が実質的に同じであるように構成することを含み得る。このようにして、第1のガスは、第1の不動態化層の堆積中に堆積チャンバ内に導入される水素ガスのレベルが、第2の不動態化層の堆積中に存在する水素ガスのレベルと実質的に同じであるように構成される。したがって、結果として生じる第1の不動態化層及び第2の不動態化層は、実質的に同じ水素ガス比(例えば、水素のパーセンテージ又は割合)を有するように構成されてもよく、これは、不動態化領域の密度を増加させ、それによって、不動態化領域(例えば、第1の不動態化層及び第2の不動態化層)と、その上に堆積されるコレクタ層との間の界面の不動態化を強化する。
【0026】
方法は、シリコン系ガスに対する水素ガスの比が最大で50及び/又は少なくとも20であるように、第1のガスを構成することを含み得る。このようにして、第1のガスは、第1の不動態化層の堆積中に堆積チャンバ内に存在するシリコン系ガスの量よりも最大で50倍及び/又は少なくとも20倍の量の水素ガスが存在するように構成され得る。
【0027】
実施形態では、第1のガスは、シリコン系ガスに対する水素ガスの比が35及び/又は少なくとも25上がるように構成され得る。方法は、シリコン系ガスに対する水素ガスの比が最大で50及び/又は少なくとも20であるように、第2のガスを構成することを含み得る。実施形態では、第2のガスは、シリコン系ガスに対する水素ガスの比が35及び/又は少なくとも25上がるように構成され得る。第1及び第2のガスのうちの少なくとも1つ又は各々は、シリコン系ガスに対する水素ガスの比がおよそ32であるように構成され得る。
【0028】
実施形態では、第2の不動態化層は、第1の不動態化層上に直接堆積され、それらの間に配置される介在層又は素子がないようにし得る。これは、不動態化層が水素プラズマで処理される状況とは対照的であり、水素プラズマは、不動態化層の露出表面上で水素原子の形成又は蓄積を引き起こし得る。したがって、プラズマ処理された表面上に堆積される任意の後続の層は、不動態化層上に「直接」堆積されるのではなく、代わりに、水素プラズマ処理によって不動態化層上に形成される水素原子の蓄積上に堆積されることが理解されるであろう。
【0029】
実施形態では、不動態化領域は、第1の不動態化層と基板との間に介在する第3の不動態化層を含み得る。太陽電池を製造する方法は、水素ガス及びシリコン系ガスを含む第3のガスを使用して、基板の表面上に第3の不動態化層を堆積させることを含み得る。方法は、第1及び第2の不動態化層を堆積させる前に、第3の不動態化層を堆積させることを含み得る。
【0030】
第3のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比は、第1及び第2のガスのうちの少なくとも1つのシリコン系ガスに対する水素ガスの比の最大で0.1倍であり得る。実施形態では、第3のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比は、第1及び第2のガスのうちの少なくとも1つのシリコン系ガスに対する水素ガスの比の最大で0.01倍であり得る。方法は、シリコン系ガスに対する水素ガスの比が最大で1であるように、第3のガスを構成することを含み得る。実施形態では、第3のガスは、シリコン系ガスに対する水素ガスの比がおよそ0(例えば、0)、すなわち、実質的に純粋なシリコン系ガスであるように構成され得る。別の言い方をすれば、第3のガスは、微量の水素ガスのみを含み得る。
【0031】
コレクタ層は、太陽電池の電荷キャリアコレクタ層を画定することが理解されるであろう。したがって、コレクタ層は、太陽電池が使用されているときに、入射光の吸収によって生成される電荷キャリア(例えば、電子及び正孔)を収集するように構成され得る。太陽電池の構成要素がどのように構成されるか(例えば、コレクタ層及び基板の導電型)に応じて、電子及び正孔は、太陽電池が動作しているときに、少数又は多数電荷キャリアを画定し得る。
【0032】
不動態化領域及びコレクタ層は、一緒になって、基板の表面上に配置される層状構造の少なくとも一部を画定し得る。例えば、層状構造は、太陽電池が使用されているときに放射源(例えば、太陽)を向かないように構成されている、基板の裏表面(すなわち、裏層状構造)の反対側に配置され得る。代替的に、層状構造は、通常の使用中に放射源からの光が入射する基板の前表面(すなわち、前層状構造)上に配置され得る。層状構造が、本発明の範囲から逸脱することなく、1つ以上のコレクタ層を備え得ることが理解されるであろう。
【0033】
層状構造は、裏層状構造である場合、裏コレクタ層と、裏の第1及び第2の不動態化層を備える裏不動態化領域と、を備え得る。同様に、層状構造は、前層状構造である場合、前コレクタ層と、前の第1及び第2の不動態化層を備える前不動態化領域と、を含み得る。
【0034】
太陽電池を製造する方法は、堆積チャンバ内に基板を配置し、次いで、基板の表面上に堆積される化学種を形成するように1つ以上のガスが堆積チャンバ内に導入される蒸着プロセスを使用して、太陽電池の領域及び層の少なくとも1つ又は各々を基板上に堆積させることを含み得る。堆積プロセスは、当業者によって理解されるように、化学蒸着プロセス(CVD)、例えば、プラズマ強化化学蒸着プロセス(PECVD)であり得る。不動態化領域の層の各々及び/又はコレクタ層は、単一の連続プロセスの一部として同じ堆積方法を使用して堆積され得る。それらは同様の堆積方法を使用して堆積されるが、不動態化層(及び/又はコレクタ層)のうちの少なくとも1つ(又は各々)は、異なる堆積ステップにおいて、及び/又は異なる堆積チャンバにおいて堆積され得ることが理解されるであろう。
【0035】
不動態化領域を堆積させる方法は、最初に、第1の不動態化層を基板の表面上に堆積させ、次いで、第2の不動態化層を第1の不動態化層の露出表面上に堆積させることを含み得る。このようにして、第1及び第2の不動態化層は、不動態化領域を形成するために順次堆積され得る。
【0036】
コレクタ層を配置する方法は、不動態化領域が基板上に形成されると、不動態化領域が基板とコレクタ層との間に介在するように、不動態化領域の露出表面(例えば、第2の不動態化層)上にコレクタ層を堆積させることを含み得る。コレクタ層を堆積させる方法は、第4のガスを使用して、不動態化領域の表面上にコレクタ層を堆積させることを含み得る。第4のガスは、第1、第2、及び第3のガスのうちの少なくとも1つ又は各々とは異なり得る。
【0037】
太陽電池の層を堆積させるために使用されるガスのうちの少なくとも1つ又は各々は、複数のガス種、又は構成ガス(例えば、異なる化学組成を有するガス)からなり得る。例えば、第1のガスは、水素ガス及びシリコン系ガスを含む第1のガス混合物を定義し得る。例えば、第2のガスは、水素ガス及びシリコン系ガスを含む第2のガス混合物を定義し得る。
【0038】
ガス混合物の各々は、それらが堆積チャンバ内に導入される前に、複数の構成ガスを混合することによって形成され得る。代替的に、構成ガスは、堆積チャンバ内で混合され得る。第1、第2、及び第3のガス、すなわち源ガスのうちの少なくとも1つ又は各々は、SiH又はSiなどのシリコン含有ガスを含み得る。源ガスのうちの少なくとも1つ又は各々はまた、水素ガス(H)を含み得る。
【0039】
方法は、不動態化領域の層のうちの少なくとも1つ及び/又はコレクタ層の構造的及び/又は化学的組成を決定するために、堆積プロセスの少なくとも1つのパラメータを制御することを含み得る。
【0040】
少なくとも1つのパラメータは、ガス流量、ガス圧力、堆積チャンバの温度、堆積チャンバの温度、及びプラズマ強化堆積プロセスの電力密度のうちの少なくとも1つを含み得る。特に、最少の1つの堆積パラメータは、第1及び第2の不動態化ガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比を決定し得る。例えば、水素ガスとシリコン系ガスとの間の比は、堆積チャンバ内に導入されるそれぞれのガスの相対体積分率によって決定され得る。
【0041】
堆積プロセスがプラズマ強化蒸着プロセスを含む状況では、堆積プロセスのパラメータは、太陽電池層の堆積中に誘導されるプラズマの電力密度を定義し得る。代替的に、このパラメータは、堆積チャンバ内でプラズマを形成するために使用される無線周波数(RF)電力として定義され得る。
【0042】
例示的な方法によれば、第1の不動態化層に関連付けられた少なくとも1つ(又は各々)の堆積パラメータは、第2の不動態化層の対応する少なくとも1つ(又は各々)の堆積パラメータと実質的に同じであり得る。
【0043】
方法は、第1及び第2の不動態化層を、実質的に同じガス圧力及び電力密度堆積パラメータで堆積させることを含み得る。実施形態では、ガス圧力は、およそ1.9mbarであってもよく、電力密度は、およそ21mW/cmであってもよい。第3のガスの水素比は、実質的にゼロであり得る。別の言い方をすれば、第3のガスは、水素ガスを含まないことがあり、代わりに、シリコン系ガスのみからなり得る。第3の不動態化層のガス圧力及び電力密度堆積パラメータは、第1及び第2の不動態化層のものと実質的に異なり得る。実施形態において、ガス圧力は、およそ1.2mbarであってもよく、電力密度は、およそ60mW/cmであってもよい。
【0044】
層の各々は、幅、長さ、及び深さを有するように構成され得る。各層の幅及び長さは、それらが配置されている基板の表面と整列した垂直方向に測定され得る。各層について、その幅及び長さは、基板表面に垂直である方向に測定され得る、その深さよりも実質的に大きくてもよい。
【0045】
方法は、25nmよりも小さい、任意選択的に少なくとも5nmの深さを有する不動態化領域を構成することを含み得る。方法は、8nmよりも小さい、かつ少なくとも2nmの深さを有する第1の不動態化層を構成することを含み得る。方法は、第2の不動態化層を9nmよりも小さい、かつ少なくとも3nmの深さを有するように構成することを含み得る。例示的な配置によれば、第1の不動態化層は、深さがおよそ5nmであってもよく、第2の不動態化層は、深さがおよそ6nmであってもよい。方法は、5nmよりも小さい、かつ少なくとも2nm、任意選択的に少なくとも3nmの深さを有する第3の不動態化層を構成することを含み得る。方法は、30nmよりも小さい、かつ少なくとも5nmの深さを有するコレクタ層を構成することを含み得る。
【0046】
堆積プロセスの少なくとも1つのパラメータは、不動態化領域層及び/又はコレクタ層の他の態様を決定するように構成され得る。例えば、層の各々の堆積速度は、堆積パラメータのうちの1つを制御することによって決定され得る。堆積速度は、時間の経過(例えば、秒で測定される)とともに滑らかな表面上に堆積される層の深さ(例えば、ナノメートルで測定される)として定義され得る。第1の不動態化層の堆積速度は、第2の不動態化層の堆積速度と実質的に同じであり得る。第1及び第2の不動態化層の堆積速度は、少なくとも0.03nm/秒であり得る。
【0047】
上述したように、方法は、不動態化領域の層のうちの少なくとも1つ、及び/又はコレクタ層の化学組成を決定するために、堆積プロセスの少なくとも1つのパラメータを制御することを含み得る。
【0048】
方法は、不動態化層及びコレクタ層のうちの少なくとも1つ又は各々を、それらが実質的に半導体材料から形成されるように構成することを含み得る。層のうちの少なくとも1つ又は各々は、非晶質シリコンから形成され得る。「非晶質シリコン」という用語は、本明細書において、シリコン系非晶質半導体材料を指すように使用されることが理解されるであろう。シリコン系材料の例としては、シリコンに加えて、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及びシリコンゲルマニウムなどのシリコン合金が挙げられる。したがって、層の各々は、シリコンと組み合わせた追加の素子からなり得る。これは、実質的に結晶性のシリコン材料、例えば、単結晶性又は多結晶性のシリコンから形成され得る基板とは対照的である。
【0049】
方法は、不動態化層及びコレクタ層のうちの少なくとも1つの導電型を決定するために、堆積プロセスの少なくとも1つのパラメータを制御することを含み得る。導電型は、ドーパント原子の含有によって決定され得る。ドーパント原子のイオン化状態は、ドープされた半導体材料の導電型を決定し得ることが理解されるであろう。例えば、半導体材料は、それぞれ、正の導電型(p型)又は負の導電性(n型)を示すように正又は負にドープされ得る。方法は、層のうちの少なくとも1つの導電型を、p型又はn型に構成することを含み得る。方法は、層のうちの少なくとも1つを、それが実質的にノンドープ(すなわち、真性)であるように構成することを含んでもよく、これは、ドーパント原子の脱落によって決定されてもよい。
【0050】
方法は、第1及び/又は第3の不動態化層をノンドープであるように構成することと、第2の不動態化層を、ドーパント原子の含有によって決定される導電型で構成することと、を含み得る。有利には、第2の不動態化層は、不動態化領域のコレクタ層とのその界面における伝導性を増加させるためにドープされ得る。
【0051】
方法は、それが堆積される第2の不動態化層と同じ導電型を有するコレクタ層を構成することを含み得る。同じ導電型の第2の不動態化層及びコレクタ層をドープすることは、不動態化領域とコレクタ層との間の電荷キャリアの流れを改善する。
【0052】
方法は、コレクタ層及び正の導電型(すなわち、p型)を有する第2の不動態化層を構成することを含み得る。代替的に、方法は、コレクタ層及び負の導電型(すなわち、n型)を有する第2の不動態化層を構成することを含み得る。
【0053】
方法は、第2の不動態化層及び/又はコレクタ層のドーパント濃度を決定するために、堆積プロセスの少なくとも1つのパラメータを制御することを含み得る。方法は、第2の不動態化層のドーパント濃度がコレクタ層のドーパント濃度より小さくなるように構成することを含み得る。別の言い方をすれば、第2の不動態化層ドーパント濃度は、コレクタ層ドーパント濃度よりも小さくてもよい。このようにして、第2の不動態化層は、ノンドープの第1の不動態化層とより高度にドープされたコレクタ層との間を橋渡しすることができる中間ドープ層を提供する。第2の不動態化層のドーパント濃度は、マイクロドープ不動態化層として定義され得るように構成され得る。方法は、第2の不動態化層及びコレクタ層のうちの少なくとも1つをドーパントガスで成長させる(例えば、ドーパントガスの存在下で層を成長させることによって)ことを含み得る。第2の不動態化層及びコレクタ層の相対的なドーパント濃度は、堆積チャンバ内のドーパントガスの濃度を制御することによって、例えば、チャンバ内に導入されるシリコン系ガスに対するドーパントガスの比を制御することによって構成され得る。
【0054】
第2の不動態化及び/又はコレクタ層がp型であるように構成される例では、それぞれの源ガスは、B2H6、TMB、又はBFなどの正のドーパントガスを含み得る。第2の不動態化及び/又はコレクタ層がn型であるように構成される場合、それぞれの源ガスは、PHなどの負のドーパントガスを含み得る。
【0055】
任意の層は、決定された導電型(例えば、p型又はn型)を有するように構成され得る。場合によっては、半導体材料はドープされていなくてもよい(例えば、真性の第1の不動態化層によりなど)。
【0056】
基板は、第1の導電型(例えば、n型)を有するように構成されてもよく、層状構造は、コレクタ層を備えてもよく、コレクタ層は、第1の導電型の反対側にある第2の導電型(例えば、p型)を有するように構成され、したがって基板とともにpn接合部を形成する。そのような配置によれば、コレクタ層は、太陽電池の少数電荷キャリアコレクタ層(例えば、正孔コレクタ層)を画定し得る。
【0057】
方法は、第1及び第2の不動態化層を、別個の堆積チャンバ(別名、処理ユニット)に堆積させることを含み得る。第1の不動態化層は、第1のチャンバ内に堆積されてもよく、第2の不動態化層は、第2のチャンバ内に堆積されてもよい。このようにして、方法は、第1の不動態化層の堆積を汚染する可能性のある導電性ドーパント原子の第1のチャンバへの不必要な導入を防止することができる。したがって、第3の不動態化層は、第1の堆積チャンバ内に堆積され得る。また、コレクタ層は、第2の堆積チャンバ内に堆積され得る。代替的に、コレクタ層は、第3の堆積チャンバ内に堆積され得る。
【0058】
太陽電池の動作中、複数の電子-正孔対は、基板上に入射する光によって生成される。基板がn型であり、少数電荷キャリアコレクタ層がp型(例えば、正孔コレクタ層)である場合、分離された正孔及び電子は、それぞれ、p型正孔コレクタ層及びn型基板に移動する。したがって、正孔は、p型正孔コレクタ層内の多数電荷キャリアとして動作し、電子は、n型基板内の多数電荷キャリアとして動作する。
【0059】
代替的な配置によれば、基板は、p型であってもよく、少数電荷キャリアコレクタ層は、n型(例えば、電子コレクタ層)であってもよく、したがって、基板とのpn接合部を形成する。この例では、分離された電子及び正孔は、それぞれ、n型電子コレクタ層及びp型基板に移動する。
【0060】
例示的な配置によれば、基板は、n型単結晶シリコンウェハから形成され得る。層状構造の層(例えば、コレクタ層)のうちの少なくとも1つは、p型であるように少なくとも部分的にドープされている非晶質材料を含み得る。
【0061】
このような配置は、ヘテロ接合技術(HJT)型の太陽電池の形成に寄与し得るが、これは、2つの異なる材料を組み合わせてpn接合部を分離する電荷を生成するので、そのように定義される。したがって、方法は、ヘテロ接合型(HJT)太陽電池を形成することを含み得る。代替的に、方法は、多接合部(例えば、タンデム)太陽電池を形成することを含んでもよく、これは、2つ以上の電荷分離接合部及び2つ以上の電荷生成光子吸収層を含むので、そのように定義される。
【0062】
第1の不動態化層は、コレクタ層と基板との間に真性層(例えば、ノンドープ)を形成するように、導電型を有しないように構成され得る。
【0063】
半導体材料がn型である場合、それは、蛍光体(P)、ヒ素(As)、及びアンチモン(Sb)などのV族元素の不純物を含むように構成され得る。半導体材料がp型である場合、それは、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、及びインジウム(In)などのIII族元素の不純物を含有し得る。
【0064】
コレクタ層は、基板のものと同じである第1の導電型(例えば、n型)を有するように構成された多数電荷キャリアコレクタ層を画定し得る。例えば、基板及び多数電荷キャリアコレクタ層の両方は、n型であってもよく、これにより多数電荷キャリアコレクタ層は、電子コレクタ層を画定する。このように、多数電荷キャリアコレクタ層は、基板から電荷キャリアを選択的に選別又は抽出するように構成され得る。したがって、太陽電池が使用されているとき、基板に入射する光によって生成された電子は、電子コレクタ層に集められてもよく、それらは、多数電荷キャリアとして動作する。
【0065】
例示的な実施形態によれば、方法は、基板の裏表面上に不動態化領域を堆積させることを含み得る。したがって、コレクタ層は、不動態化領域の裏表面上に堆積され得る。
【0066】
実施形態では、方法は、基板の表面をテクスチャ加工して、不均一な表面に対応する、又は不均一な特性を有するテクスチャ加工された表面を形成することを含み得る。この場合、基板のテクスチャ加工された表面のために、基板に入射する光の量が増加し、したがって、太陽電池の効率が改善され得る。
【0067】
太陽電池は、コレクタ層の表面上に配置され得る反射防止層、又はコーティング、及び/又は透明な導電性酸化物層を更に備え得る。方法は、コレクタ層の露出表面上に反射防止層及び/又は透明導電性酸化物層を配置することを含み得る。反射防止コーティング及び/又は透明導電性酸化物コーティングを堆積させる方法は、マグネトロンスパッタリング、又は任意の他の好適な堆積方法を含み得る。
【0068】
太陽電池は、層状構造の表面上に配置され得る電極を更に含み得る。方法は、層状構造上に電極を配置することを更に含み得る。層状構造は、裏表面(例えば、最裏表面)及び裏表面の反対側にある前表面(例えば、最前表面)を備え得る。したがって、層状構造が基板の裏表面上に配置される場合、方法は、裏電極を画定するために、電極を層状構造の裏表面上に配置することを含み得る。層状構造が基板の前表面上に配置される場合、方法は、前電極を画定するために、電極を層状構造の前表面上に配置することを含み得る。代替の例示的な配置では、太陽電池は、交互嵌合された裏接触太陽電池を含み得る。したがって、方法は、当業者によって理解されるように、太陽電池の裏表面上に電極を配置することを含み得る。
【0069】
電極又は各々の電極は、複数のフィンガー電極を含んでもよく、したがって、方法は、複数のフィンガー電極を層状構造上に堆積させることを含んでもよい。方法は、層状構造の前表面又は裏表面上に導電性材料を堆積させることを含み得る。導電性材料は、蒸発、めっき、印刷などを含む様々な方法によって堆積され得る。例えば、導電性材料は、印刷された材料を含み得る。導電性材料を堆積させる方法は、印刷された材料の印刷可能な前駆体を層状構造の表面上に印刷することを含み得る。方法は、焼成プロセスに従って印刷可能な前駆体を硬化させて、フィンガー電極を形成することを更に含み得る。
【0070】
太陽電池は、それぞれ、基板の前表面及び裏表面上に配置された前層状構造と、裏層状構造と、を備えてもよく、太陽電池は、前層状構造の前表面上に配置された前電極と、裏層状構造の裏表面上に配置された裏電極と、備えてもよい。各電極は、前及び裏層状構造のそれぞれの表面とオーム接触を形成するように構成され得る。
【0071】
太陽電池を製造するための例示的な方法によれば、方法は、基板を提供することと、表面の前表面上に前層状構造を配置することと、基板の裏表面上に裏層状構造を配置することと、を含み得る。基板は、n型であるようにドープされ得る。前及び裏層状構造は各々、不動態化領域及びコレクタ層を備え得る。
【0072】
前不動態化領域は、第1の不動態化層と、第2の不動態化層と、を備えてもよく、第1の不動態化層は、第2の不動態化層と基板との間に介在する。前不動態化領域は、第3の不動態化層を含まないように構成され得る。第1の前不動態化層は、ノンドープであり得る。第2の前不動態化層及び前コレクタ層は、n型であるようにドープされ得る。したがって、第1の前不動態化層は、前不動態化領域のノンドープ部分を画定してもよく、第2の前不動態化層は、前不動態化領域のマイクロドープ部分を画定してもよい。
【0073】
裏不動態化領域は、第1の裏不動態化層と、第1の裏不動態化層と裏コレクタ層との間に介在する第2の裏不動態化層と、を備え得る。裏不動態化領域は、第1の裏不動態化層と基板との間に介在する第3の裏不動態化層を更に備え得る。第1及び第3の裏表面不動態化層は、ノンドープであってもよく、第2の裏不動態化及び裏コレクタ層は、p型であるようにドープされてもよい。したがって、第1及び第3の裏不動態化層は、一緒になって、裏不動態化領域のノンドープ部分を画定してもよく、第2の裏不動態化層は、裏不動態化領域のマイクロドープ部分を画定してもよい。
【0074】
裏表面不動態化領域を堆積させる方法は、それぞれ、第1、第2、及び第3のガスを使用して第1、第2、及び第3の裏不動態化層を堆積させることを含み得る。第2のガスの水素比は、第1のガスの水素比の最大で2.5倍、かつ少なくとも0.4倍であり得る。第3のガスの水素比は、第1のガス及び第2のガスのうちの少なくとも1つ又は各々の水素比の最大で0.1倍であり得る。
【0075】
前不動態化領域を堆積させる方法は、互いに異なる、及び/又は裏不動態化領域を堆積させるために使用される第1、第2、及び第3のガスとは異なる源ガスを使用して、第1及び第2の前不動態化層を堆積させることを含み得る。
【0076】
第2の態様によれば、先行する段落のいずれか1つの方法に従って製造された太陽電池が提供される。
【0077】
太陽電池は、基板と、基板の表面上に配置された不動態化領域と、不動態化領域の表面上に配置されたコレクタ層と、を備え得る。このようにして、不動態化領域は、基板とコレクタ層との間に介在し得る。不動態化領域は、基板の表面上に配置された第1の不動態化層と、第1の不動態化層の表面上に配置された第2の不動態化層と、を備え得る。第1の不動態化領域は、第1のガスを使用して、堆積されてもよく、例えば、堆積可能であってもよい。第2の不動態化領域は、第1の不動態化層の表面を水素プラズマで処理することなく、第2のガスを使用して、堆積されてもよく、例えば、堆積可能であってもよい。第1及び第2のガスは、各々、水素及びシリコン系ガスを含み得る。第2のガス中のシリコン系ガスに対する水素ガスの比(例えば、水素ガスのパーセンテージ又は割合)は、第1のガス中のシリコン系ガスに対する水素ガスの比(例えば、水素ガスのパーセンテージ又は割合)の最大で2.5倍、かつ少なくとも0.4倍であり得る。
【0078】
不動態化領域は、第1の不動態化層とコレクタ層との間に介在する第3の不動態化層を備え得る。第3の不動態化層は、第1のガス及び第2のガスとは異なる第3のガスによって、堆積されてもよく、例えば、堆積可能であってもよい。第3のガスは、水素ガス及びシリコン系ガスを含み得る。第3のガスのシリコン系ガスに対する水素ガスの比は、第1及び第2のガスのうちの少なくとも1つのシリコン系ガスに対する水素ガスの比の最大で0.1倍であり得る。
【0079】
コレクタ層は、例えば、第1、第2、及び第3のガスとは異なる第4のガスによって堆積されてもよく、例えば、堆積可能であってもよい。第4のガスは、水素及びシリコン系ガスを含み得る。
【0080】
第1の不動態化層は、導電型で構成されなくてもよく、すなわち、ノンドープ、又は真性であり得る。第2の不動態化層及びコレクタ層のうちの少なくとも1つ又は各々は、導電性ドーパント原子の含有に基づいて、導電型(例えば、n型又はp型)を有するように構成され得る。第2の不動態化層の導電性ドーパント原子の濃度は、コレクタ層の導電性ドーパント濃度よりも小さくてもよい。第2の不動態化層は、その導電率を増加させるために、ドーパント原子でマイクロドープされ得る。
【0081】
実施形態では、太陽電池は、ヘテロ接合型(HJT)太陽電池を画定するように構成され得る。代替的に、太陽電池は、多接合太陽電池を画定するように構成され得る。
【0082】
太陽電池は、コレクタ層の反対側に配置された反射防止層又はコーティングを更に備え得る(例えば、コレクタ層が反射防止層と基板との間に介在するように)。反射防止層は、当業者によって理解されるように、単一の層を備え得るか、又はそれは複数の層から形成され得る。
【0083】
反射防止層は、インジウムスズ酸化物(ITO)などの透明導電性酸化物(TCO)材料から形成され得る。基板の表面(例えば、基板の前表面及び/又は裏表面)は、テクスチャ加工され得る。層状構造内の層の各々は、反射防止層が太陽電池のテクスチャ加工された外面(例えば、太陽電池の前表面及び/又は裏表面)を画定するように、基板のテクスチャ加工された表面と実質的に適合し得る。反射防止層は、有利には、太陽電池に入射する光の反射率を低下させ、所定の波長帯域の選択性を高め、それによって太陽電池の効率を増加させる。
【0084】
太陽電池は、層状構造の反対側に配置され、太陽電池から光生成された電荷キャリアを抽出するように構成された電極を備え得る。電極は、層状構造が電極と基板との間に介在するように配置され得る。TCO層(例えば、反射防止層)は、コレクタ層に電気的に接続され得る。TCO層は、層状構造のそれぞれの表面上に配置された電極への側方キャリア輸送を増加させるように構成され得る。この構成では、TCO層(例えば、反射防止層)は、電極とコレクタ層との間に介在し得る。
【0085】
層状構造が基板の裏表面(例えば、最裏表面)上に配置される場合、電極は、太陽電池の裏電極を画定するために、層状構造の裏表面上に配置され得る。
【0086】
層状構造が基板の前表面(例えば、最前表面)上に配置される場合、電極は、太陽電池の前電極を画定するために、層状構造の前表面上に配置され得る。
【0087】
太陽電池が、それぞれ、基板の前表面及び裏表面上に配置された前層状構造及び裏層状構造を備える場合、太陽電池は、前層状構造の前表面上に配置された前電極及び裏層状構造の裏表面上に配置された裏電極を備え得る。各電極は、前及び裏層状構造のそれぞれの表面とオーム接触を形成するように構成され得る。
【0088】
前電極及び裏電極は、各々、不動態化領域のそれぞれの表面上に配置される複数のフィンガー電極を備え得る。各フィンガー電極は、その幅よりも実質的に大きい軸方向の長さを有するように構成され得る。フィンガー電極の幅及び軸方向長さの両方は、不動態化領域のそれぞれの表面の平面内で垂直方向に測定され得る。フィンガー電極は、不動態化領域の幅方向と平行な横方向に延在し得る。
【0089】
複数の前フィンガー電極及び/又は裏フィンガー電極の各々内のフィンガー電極は、それぞれの表面にわたって離隔されて、フィンガー電極間の横方向に延在する空間を画定し得る。フィンガー電極は、不動態化領域の長さ方向と実質的に平行である長手方向に離隔され得る。各複数のフィンガー電極は、互いに実質的に平行であり得る。したがって、複数の裏フィンガー電極は、平行な長手方向に離隔された(例えば、等間隔に離隔された)フィンガー電極のアレイを形成し得る。
【0090】
本明細書で使用される「導電性」及び「絶縁する」という用語は、それぞれ、導電性及び電気的な絶縁を意味することが明示的に意図されることが理解されるであろう。これらの用語の意味は、本開示の技術的文脈、すなわち光起電力太陽電池デバイスの文脈を考慮すると、特に明らかであろう。「オーム接触」という用語は、非整流電気接合部(すなわち、実質的に線形の電流電圧(I-V)特性を示す2つの導体間の接合部)を意味することが意図されることも理解されるであろう。
【0091】
例示的な配置によれば、太陽電池は、基板と、基板の前表面上に配置された前層状構造と、基板の裏表面上に配置された裏層状構造と、を備え得る。裏層状構造は、pn接合部を形成するためにn型基板の反対側に位置付けられる太陽電池のp型正孔コレクタ(又は正孔コレクタ層)を画定し得る。正孔コレクタは、裏電極に電気的に接続され、正孔コレクタが裏電極と基板との間に配置されるように配置され得る。前層状構造は、基板の前表面に向かって、すなわち、基板と前電極との間に位置付けられているn型電子コレクタ(又は電子コレクタ層)を画定し得る。電子コレクタは、基板から電荷キャリアを抽出し、それらを太陽電池の動作中に前電極に移動させるように構成され得る。
【0092】
第3の態様によれば、第2の態様による複数の太陽電池を備える太陽モジュールが提供される。複数の太陽電池は、一緒に電気的に結合され得る。
【0093】
当業者は、相互に排他的な場合を除き、上記の態様のいずれか1つに関連して記載された特徴又はパラメータが任意の他の態様に適用され得ることを理解するであろう。更に、相互に排他的である場合を除き、本明細書に記載される任意の特徴又はパラメータは、任意の態様に適用されてもよく、かつ/又は本明細書に記載される任意の他の特徴又はパラメータと組み合わされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
次に、図面を参照しながら、実施形態を例としてのみ説明する。
【0095】
図1】太陽電池の層を示す概略図である。
図2図1の太陽電池の前不動態化領域の拡大図である。
図3図1の太陽電池の裏不動態化領域の拡大図である。
図4図1の太陽電池を形成する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0096】
次に、本開示の態様及び実施形態を、添付図面を参照して考察する。更なる態様及び実施形態は、当業者には明らかであろう。
【0097】
図1は、他の層の中でも、放射源(例えば、太陽)からの光が通常の使用中に入射する第1の表面(すなわち、前表面)14と、前表面14の反対側にある第2の表面(すなわち、裏表面)16と、を備える半導体基板12を備える太陽電池10を概略的に示す。すなわち、前表面14は、太陽の方を向くように使用中に構成されてもよく、一方、裏表面16は、太陽から離れる方を向くように使用中に構成されてもよい。
【0098】
基板12は、太陽電池10を、基板12の前方(すなわち、前)の前部分18と、基板12の後方の裏部分20とに分割する。太陽電池10に入射する光は、前部分18、基板12、次いで裏部分20を通過する。代替的に、光はまた、光が最初に裏部分20を通過し、次いで基板12を通過し、次いで前部分18を通過するように、後方方向から太陽電池10に入射し得る。このようにして、太陽電池10は、両面型太陽電池として構成され得る。
【0099】
前部分18及び裏部分20の各々は、別個の層状構造を画定するように配置される複数の層を備える。前部分18(本明細書では前層状構造18とも称される)は、基板12の前表面14の反対側に配置され、裏部分20(本明細書では裏層状構造20とも称される)は、基板12の裏表面16の反対側に配置される。前層状構造体18及び裏層状構造体20の構成層は、基板12のそれぞれの前表面14及び裏表面16上に順次堆積される(又は、例えば、拡散されるか又は注入される)。
【0100】
前部分18及び裏部分20の層の各々は、幅、長さ、及び深さを有して構成される。各層の幅及び長さは、基板12の前表面14及び裏表面16と整列される垂直方向に測定される。各層について、その幅及び長さの各々は、基板12の前表面14及び裏表面16に垂直である方向で測定される、その深さよりも実質的に大きい。
【0101】
太陽電池10は、裏接合太陽電池(特に、裏接合ヘテロ接合太陽電池10)である。したがって、太陽電池10は、基板12のいずれかの側に配置された正孔コレクタ50及び電子コレクタ52(すなわち、電子/正孔コレクタ層)を備えている。したがって、正孔コレクタ50は、裏部分20の一部を形成し、電子コレクタ52は、前部分18の一部を形成する。
【0102】
図示された実施形態によれば、基板12は、p型正孔コレクタ50とpn接合部を形成するn型単結晶シリコンウェハである。電子コレクタ52は、基板12から電子を抽出するように構成されるように、n型にドープされる。正孔50及び電子コレクタ52は、各々、当業者によって理解されるように、所定の導電型を達成するために、対応する素子とドープされる、水素化非晶質シリコン(a-Si:H)材料から形成される。
【0103】
前部分18は、基板12の前表面14と電子コレクタ52との間に介在する前不動態化層28(本明細書では前不動態化領域28とも称される)を備える。裏部分20の裏不動態化層30(本明細書では裏不動態化領域30とも称される)は、正孔コレクタ50と基板12の裏表面16との間に介在する。電子コレクタ52は、図1に示すように、前不動態化領域28の前表面26上に配置され、正孔コレクタ50は、裏不動態化領域30の裏表面36上に配置される。
【0104】
不動態化領域28、30の各々は、概して、非晶質シリコン材料で形成される。しかしながら、前不動態化領域28及び裏不動態化領域30の各々の組成は、以下でより詳細に説明するように、その深さにわたって変化する。
【0105】
電子コレクタ52及び正孔コレクタ50は、各々、5~30nmの深さを有し、不動態化領域28、30は、各々、5~25nmの深さを有する(図1に示す垂直方向で測定されるように)。
【0106】
太陽電池10は、電子コレクタ52の前表面54に配置される透明導電性酸化物(TCO)層46を更に備えている。更なるTCO層48は、正孔コレクタ50の裏表面44に配置される。当業者によって理解されるように、基板12の前表面及び裏表面は、テクスチャ加工される。後続の正孔50及び電子コレクタ52、並びにTCO層46、48は、各々、基板表面のテクスチャ加工されたプロファイルに従う。したがって、テクスチャ加工されたTCO層46、48は、図1図3に示すように、太陽電池10の反射防止表面を提供する。
【0107】
前電極40は、前TCO層46の前テクスチャ加工表面56において提供され、裏電極42は、裏TCO層48の裏テクスチャ加工表面58において提供される。前電極40及び裏電極42は、銀から形成される。前TCO層46及び裏TCO層48は、各々、最大で100nm、かつ少なくとも10nm、任意選択的に最大で70nm、かつ少なくとも60nm(図1に示される垂直方向に測定されるように)の厚さを有し、それらは、各々、インジウムスズ酸化物(ITO)などの透明導電性酸化物から形成される。裏TCO層48の厚さは、前TCO層46の厚さよりも小さくてもよい。
【0108】
次に、前不動態化領域28及び裏不動態化領域30を、それぞれ、図2及び図3を参照してより詳細に説明する。
【0109】
前不動態化領域28は、第1の前不動態化層22及び第2の前不動態化層24を備え、各々、異なる組成を有する。第2の前不動態化層24は、電子コレクタ52と第1の前不動態化層22との間に介在する。第1の前不動態化層22は、図2に示すように、第2の前不動態化層24と基板12との間に介在する。
【0110】
第1の前不動態化層22及び第2の前不動態化層24の各々は、同じ又は異なる水素濃度を有するように構成される。水素濃度は、対応する層の非晶質シリコン材料に導入された、又はドープされた水素原子の量を指す。
【0111】
第1の前不動態化層22は、ノンドープ、すなわち、真性であり、第2の前不動態化層24は、それが電子コレクタ52と同じ導電型を有するように、ドープn型である。しかしながら、第2の前不動態化層24のドーパント濃度は、電子コレクタ52のドーパント濃度よりも実質的に低い。したがって、第1の前不動態化層22は、前不動態化領域28のノンドープ部分を画定し、第2の前不動態化層24は、前不動態化領域28のマイクロドープ部分を画定する。
【0112】
前不動態化領域28とは対照的に、裏不動態化領域30は、図3に示すように、3つの裏層32a、32b、34aのスタックを備える。第1の裏不動態化層32aは、第2の裏不動態化層34aと基板12との間に介在する。図3に示すように、第3の裏表面不動態化層32bは、第1の裏表面不動態化層32aと基板12との間に介在する。
【0113】
前層と同様に、第1の裏層32a、第2の裏層34a、及び第3の裏層32bの各々は、非晶質シリコン材料から形成される。また、3つの裏不動態化層32a、32b、34aは、各々、異なる材料から形成される。例えば、第1の裏不動態化層32a及び第2の裏不動態化層34aの水素濃度レベルが実質的に同じである一方で、第3の裏不動態化層32bの水素濃度レベルは、第1の層32a及び第2の層34aの水素濃度レベルよりも実質的に低い。
【0114】
第1の裏不動態化層32a及び第3の裏不動態化層32aは、ノンドープ、すなわち、真性であり、第2の裏不動態化層34aは、正孔コレクタ50と同じ導電型を有するように、ドープp型である。第2の裏不動態化層34aのドーパント濃度は、正孔コレクタ50のドーパント濃度よりも実質的に低い。したがって、第2の裏不動態化層34aは、裏不動態化領域30のマイクロドープ部分(すなわち、マイクロドープされた裏不動態化部分34)を画定する。対照的に、第1の裏不動態化層32a及び第3の裏不動態化層32bは一緒になって、裏不動態化領域30のノンドープ部分(すなわち、ノンドープ裏不動態化部分32)を画定する。
【0115】
第1の裏不動態化層32a、第2の裏不動態化層33a、及び第3の裏不動態化層32bは、それぞれの深さがおよそ5nm、6nm、及び3nmであるように構成される(図2及び図3に示される垂直方向で測定されるように)。
【0116】
上述したように、層22、24、32a、32a、34aの各々は、非晶質シリコン材料から形成される。これらの非晶質シリコン材料の構造的、化学的、及びドーパント濃度は、以下でより詳細に説明するように、対応する堆積プロセスのパラメータを調整することによって、対応する層の製作中に構成される。
【0117】
図4は、上述したものなどの太陽電池を形成する方法100を描画する。方法は、太陽電池10の基板12を画定するために結晶性シリコンウェハを提供する第1のステップ102を含む。基板12は、当業者によって理解されるように、蒸着チャンバ内に配置され、真空下で保持される。
【0118】
第2の方法ステップ104では、方法は、ノンドープ裏不動態化部分32(すなわち、第1の裏不動態化層32a及び第3の裏不動態化層32b)の基板12の裏表面16上への堆積で続行する。方法ステップ104は、第3の裏不動態化層32bを基板12の裏表面16上に堆積させることから始まる。次いで、第3の裏不動態化層32bが堆積されると、方法は、第3の裏不動態化32bの裏表面上に第1の裏不動態化層32aを堆積させることに進む。
【0119】
第3の方法ステップ106は、第1の裏不動態化層32aの裏表面上にマイクロドープされた裏不動態化部分34(すなわち、第2の裏不動態化層34a)を堆積させることを含む。
【0120】
第4のステップ104は、裏不動態化領域30の裏表面上に正孔コレクタ50を堆積させることを含む。したがって、正孔コレクタ50は、太陽電池10の裏コレクタ層を画定する。
【0121】
第2の方法ステップ104、第3の方法ステップ106、及び第4の方法ステップ108は、シリコンウェハ基板12の後面16上に半導体材料の層を配置する(又は形成する)ことを伴う。これは、堆積、拡散、ドープ、及び/又は埋め込みステップを含み得る。言及されている層は、上述したように、太陽電池10の後部分20の少なくとも一部を形成する層(例えば、第1の裏不動態化層32a、第2の裏不動態化層34a、及び第3の裏不動態化層32b、及び正孔コレクタ50)である。これらのステップの各々は、蒸着プロセス(例えば、PECVD)を使用して対応する半導体材料を堆積させることを伴う。
【0122】
概して、蒸着プロセスのパラメータは、各層の組成(例えば、構造的及び/又は化学的)及びドーパント濃度を決定するように構成される。方法ステップ104、106、及び108中に形成された層の各々の堆積中に、プラズマが堆積チャンバ内に形成され得ることに留意されたい。しかしながら、これらの堆積プロセスステップ中のいかなる時点においても、層のいずれかに対して実行される別個の水素プラズマエッチング処理は存在しない。
【0123】
本発明の例示的な配置によれば、太陽電池10の前部分18の層(例えば、第1の前不動態化層22及び第2の前不動態化層24、及び電子コレクタ52)の各々は、裏部分20の対応する層に関して上述したような同様の方法を使用して堆積され得る。例えば、方法ステップ102~110は、太陽電池10の前側で対応するステップ102~110を実行する前に、太陽電池10の裏側で順次実行され得る。代替的に、当業者によって理解されるように、前層は、裏層を堆積させる前に堆積され得る。
【0124】
更なる代替の方法によれば、前太陽電池部分18及び裏太陽電池部分20の層の各々は、任意の好適な順序又はシーケンスに従って堆積され得る。例えば、方法は、方法ステップ104に従って、第1の裏不動態化層32a及び第3の裏不動態化層32bを堆積させることを含み得る。次いで、方法は、それぞれ、方法ステップ104及び106に従って、前部分18の第1の前不動態化層22及び第2の前不動態化層24を堆積させることによって進み得る。方法は、方法ステップ106に従って、第2の裏不動態化層34aの堆積で続行し得る。
【0125】
層の各々はまた、別個の堆積チャンバ内に堆積され得ることが理解されるであろう。例示的な方法によれば、裏ノンドープ不動態化部分(すなわち、第1の裏不動態化層32a及び第3の裏不動態化層32b)は、第1の堆積チャンバ内に堆積されてもよく、第1の前不動態化層22及び第2の前不動態化層24は、第2の堆積チャンバ内に堆積されてもよく、裏マイクロドープ不動態化部分(すなわち、第2の裏不動態化層34a)は、第3の堆積チャンバ内に堆積されてもよい。
【0126】
太陽電池10の裏部分20を特に参照すると、第1の裏不動態化層32a、第2の裏不動態化層34a、及び第3の裏不動態化層及び32bを堆積させる方法は、それぞれ、第1、第2、及び第3のガスを使用することを伴う。裏コレクタ層50(例えば、正孔コレクタ50)を堆積させる方法は、第4のガスを含む。
【0127】
層32a、32b、34a、及び50を堆積させるために使用されるガスの各々は、複数のガス種、又は構成ガスからなり得る。各ガスの構成ガスは、堆積チャンバ内に導入される前に混合される。第1、第2、第3、及び第4のガスは、各々、SiHなどのシリコン系ガスを含む。ガスのうちの少なくとも1つはまた、水素(例えば、H)を含む。
【0128】
第1のガスの水素濃度は、第2のガスの水素濃度に実質的に等しい。第3のガスの水素濃度は、およそ0(すなわち、実質的に純粋なSiH)である。特に、方法ステップ104は、SiHに対するHの比が1上がるように第3のガスを構成することを含み、一方、第1及び第2のガスは、各々、SiHに対するHの比が35及び/又は少なくとも25上がるように構成される。例示的な方法では、第1及び第2のガスのSiHに対するHの比は、およそ32(例えば、32)であり、第3のガスのSiHに対するHの比は、およそ0(例えば、0)である。
【0129】
このようにして、第1及び第2のガスは、第1の裏不動態化層32a及び第2の裏不動態化層34aの堆積中に堆積チャンバ内に導入される水素ガスのレベルが、第3の裏不動態化層32bの堆積中に存在するレベルよりも少なくとも一桁大きいように構成される。更に、第1の裏不動態化層32aと第2の裏不動態化層34aの両方の堆積中に導入される水素ガスのレベルは、実質的に同じである。これは、裏コレクタ層50との界面に向かって(すなわち、その上に堆積される)裏不動態化領域30の緻密化をもたらす。第1の裏不動態化層32a及び第2の裏不動態化層34aの緻密化は、それによって、裏不動態化領域30における欠陥状態の数を減少させ、それによって、太陽電池10の充填係数を増加させる。
【0130】
第1及び第3のガスは、それらが任意のドーパントガスを含まないように構成され、それによって、第1の裏不動態化層32a及び第3の裏不動態化層32bがノンドープであることを確実にする。対照的に、第2及び第4のガスは両方とも、Bなどの正のドーパントガスを含み、これは、第2の裏不動態化層34a及び正孔コレクタ50が正にドープされることをもたらす。
【0131】
方法ステップ104、106の各々の間、チャンバ内に導入されるドーパントガスの流量は、第2の裏不動態化層34a及び正孔コレクタ50のそれぞれのドーパント濃度を決定するために制御される。このように、方法ステップ106は、第2のガス中のSiHに対するBの比が0.01~0.1%になるように、第2のガスを構成することを伴い、方法ステップ108は、SiHに対するB2Hの比が1~4%になるように、第4のガスを構成することを含む。
【0132】
第2の前不動態化層24及び電子コレクタ52は両方とも、それぞれ、第2の裏不動態化層34a及び正孔コレクタ50に関連して上述したものと同様の様式で堆積され得ることが理解されるであろう。主な違いは、第2の前不動態化層24及び電子コレクタ層52を堆積させるために使用されるガスが、PHなどの負のドーパントガスを含み、これにより、層が負のドープ状態になることである。第1の前不動態化層22は、第1の裏不動態化層32a及び第3の裏不動態化層32bと同様に、ドーパントガスを含まないガスを使用して堆積され得る。
【0133】
第5の方法ステップ110では、方法は、それぞれ、電子コレクタ52及び正孔コレクタ50上に前TC領域46及び裏TC領域48を堆積させることを含む。この方法ステップは、DCマグネトロンスパッタリングプロセスを使用して、太陽電池10の前表面及び裏表面上に前及び裏TC領域を堆積させることを伴う。概して、スパッタリングプロセスのパラメータは、組成(例えば、構造的及び/又は化学的)及び各層の電気的及び光学的特性を決定するように構成される。
【0134】
最後に、第6の方法ステップ112は、太陽電池10の前部分18及び裏部分20の最外面上に前電極40及び裏電極42を配置することを含む。
【0135】
本発明は、上述した実施形態には限定されず、様々な修正及び改良が、本明細書に記載された概念から逸脱することなく行うことができることが理解されるであろう。相互に排他的な場合を除いて、いかなる特徴も、任意の他の特徴とは別個に、又はそれらと組み合わせて用いることができ、本開示は、本明細書に記載された1つ以上の特徴の全ての組み合わせ、及び部分組み合わせに拡張され、これらを包含する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】