(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】マーカーを有するマルチコアファイバを製造するための方法及び中間製品
(51)【国際特許分類】
C03B 37/012 20060101AFI20241219BHJP
C03B 8/04 20060101ALI20241219BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
C03B37/012 A
C03B8/04 C
G02B6/02 466
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539590
(86)(22)【出願日】2023-01-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2023051174
(87)【国際公開番号】W WO2023151913
(87)【国際公開日】2023-08-17
(32)【優先日】2022-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Heraeusstr.12-14, 63450 Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】タイエス,トバイアス
(72)【発明者】
【氏名】シュースター,ケイ
(72)【発明者】
【氏名】フュナーマン,ミハエル
【テーマコード(参考)】
2H250
4G014
4G021
【Fターム(参考)】
2H250AA53
2H250AB04
2H250AB05
2H250AC64
2H250AC84
2H250AC94
2H250AC95
4G014AH11
4G021BA01
(57)【要約】
【解決手段】 マーカーゾーンを有するマルチコアファイバ又はこのタイプのマルチコアファイバ用のプリフォームを製造する既知の方法は、コアガラスで作られた複数のガラスコア領域が埋め込まれたクラッドガラスで形成されたガラスクラッド領域を含み少なくとも1つのマーカー要素を有する半製品を形成することと、その半製品を延伸してマルチコアファイバ又はそのプリフォームを形成することと、を含む。ガラスクラッド領域の形成は、ターゲットロッドの外面にクラッド材料層を堆積させる外部堆積法を使用して行うことができる。本発明によれば、外部堆積方法のコスト上の利点を利用しながら、外部堆積方法で中心穴を形成する場合に生じる欠点を回避するために、ターゲットロッドは、ターゲットロッドの長手方向軸に沿って延びる第1のガラス領域と、ターゲットロッドの長手方向軸に沿って延び第1のガラス領域に隣接するマーカー領域と、を含み、マーカー領域は、マーカー要素を含み、又はマーカー要素を形成するか、若しくはマーカー要素を受け入れるように設計された中空チャネルを提供し、半製品は、クラッド材料層及びターゲットロッドを含む。
【選択図】8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーカーゾーンを有するマルチコアファイバ又はそのようなマルチコアファイバ用のプリフォームを製造する方法であって、コアガラスで作られた複数のコアガラス領域が埋め込まれたクラッドガラスで作られたガラスクラッド領域と、少なくとも1つのマーカー要素と、を含む半製品を形成することを含み、前記マルチコアファイバ又は前記プリフォームが前記半製品を延伸することによって得られ、前記ガラスクラッド領域の製造が、外部堆積法を使用して、ターゲットロッドの長手方向軸を有するターゲットロッドの外面上にクラッド材料層を堆積させる方法ステップを含み、前記ターゲットロッドが、前記ターゲットロッドの長手方向軸に沿って延びる第1のガラス領域と、前記ターゲットロッドの長手方向軸に沿って延び前記第1のガラス領域に隣接するマーカー領域と、を含み、前記マーカー領域が、前記マーカー要素を含み、又は前記マーカー要素を形成するか、若しくは前記マーカー要素を受け入れるように設計された中空チャネルを提供すること、並びに前記半製品が前記クラッド材料層及び前記ターゲットロッドを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記マーカー領域が、前記第1のガラス領域と前記ガラスクラッド領域との間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マーカー要素が、前記ターゲットロッドに接続された少なくとも1つの円筒形構成要素又は層若しくは塊を形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ターゲットロッドが、前記ターゲットロッドの長手方向軸に沿って延びる凹部を含み、前記凹部が前記マーカー要素を形成し、又は前記凹部内に前記マーカー要素が配置されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記凹部が、前記ターゲットロッドの前記外面に長手方向溝を含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記外部堆積法を実施する前に、前記マーカー要素を前記ターゲットロッドに取り付けることを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記外部堆積法を使用して製造された前記クラッド材料層が、SiO
2をベースとするすす層として形成されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項以上に記載の方法。
【請求項8】
前記すす層が、ガラス化温度まで加熱することによってガラス化されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ガラス化の前に、前記すす層が、少なくとも1つのドーパントを含む雰囲気中でのドーピング処理、及び/又はハロゲン含有雰囲気中若しくは真空下での脱水処理を受けることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
コアガラスロッドを受け入れるためのコアロッドボアが、前記すす層のガラス化後に製造されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項11】
前記マーカー要素が中空チャネルとして設計され、又は、屈折率、色、蛍光、及び/又はガラス比密度から選択される少なくとも1つの物理的及び/又は化学的特性において前記隣接するクラッドガラス及び/又は前記ターゲットロッドの前記隣接する第1のガラス領域とは異なるマーカー材料を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項以上に記載の方法。
【請求項12】
前記半製品の製造が、以下の方法ステップ、
(a)前記マーカー領域を含む前記ターゲットロッドを提供するステップと、
(b)コアガラスを含む複数のコアロッドを提供するステップと、
(c)前記外部堆積法を使用して、前記ターゲットロッドの前記外面上に前記クラッド材料層を堆積させるステップと、
(d)少なくとも前記クラッド材料層及び任意選択で前記ターゲットロッドの前記第1のガラス領域にコアロッドボアを形成するステップと、
(e)前記コアロッドを前記コアロッドボアに挿入するステップと、を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項以上に記載の方法。
【請求項13】
前記マーカー領域が中空チャネルとして設計されること、及び前記コアロッドの挿入前又は挿入後に円筒形マーカー要素が前記中空チャネルに挿入されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
マルチコアファイバ又はそのプリフォームを製造するための中間製品であって、ガラス製のターゲットロッドと、前記ターゲットロッド上又は前記ターゲットロッド内に形成されたマーカー要素と、SiO
2すすを含むクラッド材料層と、を含み、前記層が、前記ターゲットロッド及び前記マーカー要素を取り囲み、摩擦係合、形状適合及び/又は一体結合方式で前記ターゲットロッドに接続されている、中間製品。
【請求項15】
前記ターゲットロッドが、前記マーカー要素が隣接する第1のガラス領域を含み、前記マーカー要素が、好ましくは前記第1のガラス領域と前記クラッド材料層との間に配置され、非常に好ましくは、前記ターゲットロッドの外面の凹部を少なくとも部分的に充填することを特徴とする、請求項14に記載の中間製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーカーゾーンを有するマルチコアファイバ又はそのようなマルチコアファイバ用のプリフォームを製造する方法であって、コアガラスで作られた複数のコアガラス領域が埋め込まれたクラッドガラスで作られたガラスクラッド領域と、少なくとも1つのマーカー要素と、を含む半製品を形成することを含み、マルチコアファイバ又はプリフォームが、半製品を延伸することによって得られ、ガラスクラッド領域の製造が、外部堆積法を使用して、ターゲットロッドの長手方向軸を有するターゲットロッドの外面上にクラッド材料層を堆積させる方法ステップを含む、方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、マルチコアファイバ又はそのプリフォームを製造するための中間製品に関する。
【0003】
マルチコアファイバでは、複数の光波伝導性光コア領域(以下「信号コア」とも呼ぶ)が共通のファイバに統合されている。信号コアはファイバの長手方向軸に沿って延びる。それらは、より低い屈折率を有するクラッド材料によって取り囲まれており、実質的に独立した光誘導を可能にする。このファイバ設計は、単一の光ファイバ内に結合された異なる信号を空間的に分離された信号コアの各々において同時に伝送できるので、高い信号伝送容量を保証する。この信号伝送方法は「空間多重化」とも呼ばれ、特に光通信におけるデータ伝送容量を増大させることができる。マルチコアファイバは、測定及び医療技術における光ファイバセンサの構成要素ともみなされており、顕微鏡又は内視鏡装置の照明及びイメージングの目的で検討されている。
【背景技術】
【0004】
マルチコアファイバは、中実のプリフォーム又は構成要素のグループを延伸することによって製造される。これらは多くの場合、合成的に製造された石英ガラス(SiO2)からなり、ドープされていてもドープされていなくてもよい。合成石英ガラスの製造は、例えば、OVD、VAD、MCVD、PCVD又はFCVD法という名称で知られているプラズマ又はCVD堆積法を含む。液体又は気体のケイ素含有出発物質に化学反応(加水分解、熱分解、又は酸化)を行い、反応生成物である粒子状SiO2を気相から固体として堆積表面に堆積させる。出発物質は、例えば、四塩化ケイ素(SiCl4)、又はポリアルキルシロキサンなどの無塩素ケイ素化合物である。反応ゾーンは、例えば、炉、バーナー火炎、又はアーク(プラズマ)である。
【0005】
いわゆる「スタックアンドドロー」法では、異なる直径のコアロッド及びガラスシリンダが積み重ねられ、それによってそれらは、比較的高い充填密度を生み出し、ある一定の程度の対称性を有する。円筒形構成要素は、シースチューブに挿入され、その中に空間的に固定される。このグループを線引きしてマルチコアファイバを形成し、又は事前に更に加工してプリフォームを形成し、そこからマルチコアファイバを線引きする。この方法は、例えば、米国特許第6,154,594(A)号に記載されている。
【0006】
「スタックアンドドロー」法では、高レベルの調整労力が必要とされ、寸法安定性に誤差が生じやすく、自由な構成要素表面の大きな割合に起因する不純物の混入が生じやすい。更に、半径方向の充填密度の違いにより、延伸されたプリフォームは方位角方向の半径値が異なることが多く、これは円筒研削によって補償する必要がある。
【0007】
米国特許出願公開第2015/0307387(A1)号から知られる方法では、マルチコアファイバ用のプリフォームは、ガラス製のロッド状基体に貫通穴を穴あけし、続いてその貫通穴にコアガラスロッドを挿入することによって製造される。OVD法に従って製造されたSiO2をベースとするすす体の形態の中空ガラスクラッドシリンダが基体(SiO2すす体)として使用される。OVD法では、堆積表面は概して、長手方向軸の周りを回転するロッド状又は管状の堆積マンドレルの外面である。略円筒形のすす体は、反応ゾーンの前後運動を逆にすることによって堆積される。堆積プロセスの完了後、堆積マンドレルが除去され、その結果、中央の中間ボアが円筒形すす体の中心軸に残る。コアガラスロッドを受け入れるための長手方向ボアが、中空ガラスクラッドシリンダ内に導入される。更に、マーカーロッドの形態のマーカー要素を受け入れるための更なる長手方向ボアが、縁に近い中空ガラスクラッドシリンダの領域に機械的穴あけによって形成される。
【0008】
マルチコアファイバが線引きされると、マーカーロッドが延伸されてマーカーゾーンを形成する。マーカーゾーンは特に、対称ファイバ設計の場合に、マルチコアファイバの信号コアを識別し、それらを、互いに対する位置に関して及びファイバ中心軸に関して明確に割り当てることができるようにするために、対称性を破るために役立つ。信号コアの識別及び割り当ては、例えば、低減衰であり信号コアが正しく割り当てられる従来のスプライシング方法によって、2つのマルチコアファイバが端面を介して一緒に接合できるようにするために必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特にOVD法に基づく外部堆積法を使用した中空ガラスクラッドシリンダの製造は、他の製造方法と比較して、特にVAD(気相軸付け)法と比較して費用対効果が高い。しかしながら、これには、堆積マンドレルの除去後に中央ボアが残り、それが崩壊中に機械的応力及び非対称変形につながるという欠点があり、また、ファイバ設計を破壊する可能性がある。更に、この崩壊により、ガラスクラッド部分の断面積が減少する。これらの欠点は、中央ボアを閉じる充填ロッドを挿入することによって少なくとも部分的に解消することができる。充填ロッドは、中空ガラスクラッドシリンダと実質的に同じ屈折率及び熱膨張係数を有するガラスからなることができる。しかしながら、この措置による場合であっても、崩壊中に充填ロッドに機械的応力が生じ、中空ガラスクラッドシリンダと充填ロッドとで形成された複合体のその後の焼き戻しが必要になる場合がある。
【0010】
ファイバ設計に追加的に挿入されるマーカーゾーンは、信号伝送への影響、ファイバ内に誘発される応力、又はいわゆるファイバカールなどの望まない影響を打ち消すために、可能な限り小さい断面を持つ必要がある。ファイバのある一定の長さにわたる湾曲の程度は、「ファイバカール」として定義される。湾曲は、ファイバ製造中に発生する熱応力によって生じる。「ファイバカール」が大きいと、マイクロベンドによる光損失が発生し、マルチコアファイバの低減衰スプライシングがより困難になる。
【0011】
これらの欠点を最小限に抑えるために、薄いマーカーゾーンが求められ、そのためには、中空ガラスクラッドシリンダの平面内でマーカー要素を受け入れるためのチャネルの直径を可能な限り小さくする必要がある。典型的には、中空ガラスクラッドシリンダ内のチャネル直径は15mm未満であり、65を超える高いアスペクト比を伴う(中空シリンダの長さは約1mである)。
【0012】
中空ガラスクラッドシリンダ内でこのような薄いチャネルを寸法的に正確に製造し、正確に位置合わせすることは、高精度の穴あけ機を使用する場合であっても困難である。更に、特に薄いチャネルの穴あけ中に、チャネル壁に亀裂がますます発生することが示されている。合成石英ガラスから中空ガラスクラッドシリンダを製造するためのコストは高く、何よりもマーカー要素を受け入れるための小さなボアにより、そうでなければ完成していた中空ガラスクラッドシリンダが不合格になる場合、その損失は特に痛手となる。
【0013】
更に、マルチコアファイバの切断及びスプライシングは、使用目的の特定の要件に従って、任意の所望の位置で行うことができることから、措置に依存しないように、ファイバ全長に沿った一貫した形状を熟知する必要がある。これは、マーカー要素及び中空ガラスクラッドシリンダの長手方向軸が、中空ガラスクラッドシリンダの平面内で可能な限り平行に延びる必要があることを意味する。
【0014】
したがって、本発明の目的は、マーカーゾーンを有するマルチコアファイバを製造するための方法を特定することであり、これは、外部堆積法のコスト上の利点を利用しながらも、充填ロッド及びマーカー要素に関連する欠点及び困難を低減し、また、不合格のリスクも低減する。
【0015】
更に、本発明の目的は、特に低いファイバカールを特徴とする、マーカー要素を有するマルチコアファイバをコスト効率よく製造するのに適した中間製品を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この方法に関して、この目的は、冒頭で述べた方法から始まる本発明に従って達成され、ターゲットロッドは、ターゲットロッドの長手方向軸に沿って延びる第1のガラス領域と、ターゲットロッドの長手方向軸に沿って延び第1のガラス領域に隣接するマーカー領域と、を有し、マーカー領域は、マーカー要素を含み、又はマーカー要素を形成するか、若しくはマーカー要素を受け入れるように設計された中空チャネルを提供し、半製品は、クラッド材料層及びターゲットロッドを含む。
【0017】
マルチコアファイバは、プリフォーム又は半製品を延伸することによって得られる。半製品は、例えば、マルチコアファイバ用の一次プリフォームであり、又は直接線引きされてマルチコアファイバを形成する、若しくは更に加工されてマルチコアファイバ用のプリフォームを形成する、構成要素のグループである。
【0018】
半製品のガラスクラッド領域の製造は、外部堆積法を使用してクラッド材料層を製造する方法ステップを含む。外部堆積法は、例えば、溶射法又は気相堆積法である。
【0019】
溶射では、流動可能なSiO2粉末、ゾル、分散液又はスラリーなどの流体塊の形態の酸化性又はわずかに酸化可能なケイ素含有又は二酸化ケイ素含有の出発粉末をエネルギー源に供給し、その中で溶融させ、長手方向軸の周りを回転する堆積マンドレルの外面上に高速でスピンさせる。エネルギー源は、例えば、可燃性ガス-酸素炎、プラズマジェット、アーク、又はレーザービームである。この場合、溶融した出発粉末粒子のスピンコーティング中に比較的高いエネルギー入力及び高速度を可能にするプラズマ溶射法が特に好ましい。
【0020】
気相堆積法では、SiO2粒子は、ケイ素含有前駆体のその場での加水分解、熱分解、又は酸化によって製造され、これらは、長手方向軸の周りを回転する堆積マンドレルの外面上にSiO2含有層として堆積される。この例としては、OVD法(外部気相堆積)及びPOD法(プラズマ外部堆積)が挙げられる。堆積マンドレル表面の領域の十分に高い温度で、SiO2粒子は直接ガラス化され、これは「直接ガラス化」としても知られている。対照的に、「すす法」として知られている方法では、SiO2粒子の堆積中の温度が低いので、多孔質SiO2すす層が得られる。
【0021】
すす法でクラッド材料層として得られた多孔質SiO2すす層を、別個の方法ステップでガラス化して、透明な石英ガラスで作られたガラスクラッド領域を形成する。ダイレクトグレージングを用いた外部堆積法及び溶射法の場合、ガラス層がクラッド材料層として直接得られ、半製品のガラスクラッド領域又はその少なくとも一部を形成する。
【0022】
外部堆積法を使用した半製品のガラスクラッド領域の製造は、他の製造方法と比較して費用対効果が高い。
【0023】
本発明による方法では、外側堆積法の堆積マンドレルとしてターゲットロッドが使用される。外側堆積法の完了後、ターゲットロッドは、堆積されたクラッド材料層内に残り、それによって、マルチコアファイバを製造するための半製品の一部を形成する。ターゲットロッドは、マルチコアファイバの一部であるガラス質材料からなる。これは、外部堆積法の完了後に堆積マンドレルを除去することによってクラッド材料層に中央の貫通開口部を残す、他の外部堆積法との違いである。したがって、その後の充填ロッドによる貫通開口部の充填は不要であり、したがって、真直度、寸法安定性、及び応力からの最大限の解放を確保するための、充填に伴う困難も解消され、故障のリスク並びに調整、時間、及び材料の費用も軽減される。
【0024】
ターゲットロッドは、少なくとも1つの第1のガラス領域と、それに隣接するマーカー領域と、を有する。マーカー領域は、ターゲットロッド内又はターゲットロッド上に形成される。したがって、ターゲットロッドは、ターゲットロッド材料に加えて、半製品にマーカー要素を挿入するために使用される。第1のガラス領域に加えて、ターゲットロッドは、第1のガラス領域とは化学組成の点で異なる更なるガラス領域又は複数のガラス領域を有することができる。
【0025】
ターゲットロッドにおいて、マーカー要素は、例えば、空気、円筒形構成要素若しくは複数の円筒形構成要素又は粉末床で充填することができる中空チャネルを形成し、又は、マーカー要素は、ターゲットロッドの外壁に配置され、ここで、(少なくとも1つの)円筒形構成要素として、又は外壁に付着するコーティング若しくは塊として設計される。外部堆積法の完了後、中空チャネルはマーカー材料で充填することもできる。
【0026】
マーカー要素はターゲットロッド内又はターゲットロッド上に配置されるので、例えば機械加工によって、特にクラッド材料層にマーカー要素を受け入れるためのボアを形成することによって、クラッド材料層を、マーカー要素を挿入する目的で適合させる必要がない。したがって、クラッド材料層のそのような適合に伴う労力と損傷のリスクとが排除される。
【0027】
ターゲットロッドの寸法安定性及び真直度は、必要に応じて、機械的丸研削によって、及び/又は延伸プロセス(出発シリンダに延伸プロセスを施してそこからシリンダストランドを延伸し、シリンダストランドからターゲットロッドを形成し、又はシリンダストランドから複数のターゲットロッドを所定の長さに切断する)によって比較的確保しやすい。シリンダストランド表面への損傷を避けるために、延伸プロセスは、好ましくは、引き出されたシリンダストランドに作用する成形ツールを使用せずに行われる。
【0028】
マーカー要素の軸方向に平行な位置合わせは、マーカー要素がターゲットロッド又はその第1のガラス領域に隣接することから容易になる。その真直度は、達成するのが比較的簡単であり、マーカー要素の軸平行位置合わせも容易にする。これは、特に、マーカー領域を第1のガラス領域とガラスクラッド領域との間に配置する特に好ましい手順に当てはまる。
【0029】
したがって、構成要素グループは、上記で説明したリスク及び困難に関連する別個のボアをガラスクラッド領域に形成する必要なしに、マーカー要素を備える。同時に、高いアスペクト比にも関わらず、高い精度を確保することができ、これは、例えば半製品では、マーカー要素の軸平行度の偏差が0.3mm/m未満であることから明らかになる。
【0030】
ターゲットロッドは、単一のガラスシリンダからなることができ、又は、互いに接続された複数のガラスシリンダから構成することができる。複数のガラスシリンダは、同じ組成を有してもよく、互いに組成が異なっていてもよい。ターゲットロッドは、完全に又は部分的に、クラッドガラス及び/若しくはコアガラス、又は別のガラス及び/若しくは他のガラスからなることができる。
【0031】
第1のガラス領域及び隣接するマーカー領域の化学組成は互いに異なる。マルチコアファイバにおいて、マーカー領域は、マーカー材料又は空気で作られた連続した線状のマーカーゾーンを形成する。マーカーゾーンは、例えば、スプライシング中に対称性を破るのに、また、信号コアとそれらの互いに対する位置及びファイバ中心軸に対する位置を明確に識別するのに役立つことができる。
【0032】
クラッド材料層では、各々コアロッドを受け入れるための複数のコアロッドボアが通常の方法で形成される。コアロッドを受け入れるための少なくとも1つのコアロッドボアをターゲットロッド内に導入することもできる。
【0033】
このようにして製造され、複数のコアガラス領域を備えた半製品を再成形し、直接線引きしてマルチコアファイバを形成するか、又は統合してマルチコアファイバ用のプリフォームを形成し、統合プロセスは同時延伸を伴い得る。このようにして製造された「統合プリフォーム」を、任意選択で線引きしてマルチコアファイバを形成し、又は更に加工して「二次プリフォーム」を形成する。「二次プリフォーム」を形成するための更なる加工には、例えば、ガラスクラッド領域に更なるボアを形成し、コアガラス若しくは他のガラスでそのボアをコーティングすること、又は、追加のクラッド材料の崩壊、崩壊、延伸、崩壊、及び同時延伸という熱間成形プロセスのうちの1つ以上を1回又は繰り返し行うことが含まれる。マルチコアファイバは、更なる加工によって製造された二次プリフォームから線引きされる。
【0034】
マーカー要素は、好ましくは、マーカー材料製の円筒形構成要素の形態で、又はターゲットロッドに接続された層、若しくはマーカー材料製の塊の形態で提供される。
【0035】
少なくとも1つの円筒形構成要素を含むマーカー要素の場合、この構成要素はターゲットロッドと平行に延び、少なくとも局所的に、好ましくは構成要素の全長にわたってターゲットロッドに接続される。少なくとも1つの円筒形マーカー要素構成要素は、例えばチューブであり、好ましくはロッドである。チューブの形態のマーカー要素の場合、チューブ壁はクラッドガラスよりも粘度の高い材料を含むことができ、その結果、ファイバ線引きプロセス中にボアが完全に崩壊せず、完成したマルチコアファイバ内にキャビティ(「エアライン」)として維持される。
【0036】
ターゲットロッドに接続された層又は塊の形態のマーカー要素の場合、層又は塊は、例えば、ターゲットロッドの中空チャネル内に配置され、好ましくは、ターゲットロッドの外面の領域に取り付けられる。
【0037】
ターゲットロッドを取り付けることにより、マーカー要素はとりわけ特にその真直度及び位置合わせから恩恵を受け、これらの特性は、マーカー要素にある程度移行される。この取り付けは、例えば、ターゲットロッドとマーカー要素との間の摩擦係合、一体結合、及び/又は形状適合に基づいている。
【0038】
ターゲットロッドの断面形状は、概ね円形である。また、卵形、楕円形、又は多角形など、円形から逸脱した形状を有することもできる。断面輪郭を包む包囲円は、例えば、36mm~76mmの範囲の直径を有する。
【0039】
ターゲットロッドは、例えば、いわゆるVAD法若しくはOVD法に従って気相から軸方向に堆積させ、その後、中央の貫通開口部を崩壊させることによって製造され、又はプレス法によって製造される。プレス法では、SiO2粒子の床を成形型キャビティに導入し、床に圧力を加えて、圧縮ブランクを形成し、その後、圧縮ブランクをガラス化してガラスロッドを形成する。
【0040】
好ましい手順では、ターゲットロッドは、ターゲットロッドの長手方向軸に沿って延びる凹部を有し、凹部はマーカー要素を形成し、又はその凹部内にマーカー要素が配置される。
【0041】
凹部は、例えば、ターゲットロッドを貫通するボアとして、好ましくはターゲットロッドの外面上の長手方向溝(長手方向チャネル)として設計される。溝状の凹部は、例えば、マーカー材料製の円筒形構成要素又は粒子状マーカー材料で充填される。粒子状マーカー材料は、熱圧縮又は結合剤の添加により、ある一定の寸法安定性を有することができる。それにより、凹部は、マーカー要素とターゲットロッドとの間の形状適合を確保する。マーカー要素及びターゲットロッドは、例えば焼結又は融合による一体結合によって事前に(すなわち、クラッド材料層の堆積前に)互いに接続することもでき、これは、本明細書では「統合」とも呼ばれる。いかなるエッジ及び突起も、統合中に丸めることができる。統合後、マーカー材料は、凹部を可能な限り完全に充填することが好ましい。
【0042】
これに関連して、ターゲットロッドに長手方向溝を設ける手順が特に好ましい。これは、一方では、長手方向溝が、例えば機械フライス盤によるフライス加工又はレーザーアブレーションによって、ボアと比較して、ターゲットロッドの外面に幾何学的に正確に製造することが特に容易であるためである。他方では、このように製造された長手方向溝は、ターゲットロッド自体とちょうど同じ程度に正確で真直である。更に、長手方向溝の深さ又は開口幅は、実質的に所望のとおり小さく、例えば、両方とも15mm未満、好ましくは10mm未満、特に好ましくは5mm未満にすることができる。外部堆積法中に、長手方向溝をマーカー材料で充填することができる。したがって、小体積で幾何学的に正確なマーカー要素を簡単な方法で製造することができ、そのマーカー要素は、半製品における軸方向の偏差が0.3mm/m未満であり、したがってそれに応じてマルチコアファイバ内に小さく高精度のマーカーゾーンを形成する。長手方向溝は、例えば、マーカー材料製の円筒形構成要素(ロッド又はチューブ)を挿入することによって、又はマーカー材料粒子の床を導入することによって、又は長手方向溝の内部をマーカー材料でコーティングすることによって、マーカー材料で充填される。円筒形構成要素、内部コーティング、又はマーカー材料で形成された床は、更に、融合によって長手方向溝に固定することができる。
【0043】
好ましい手順では、ターゲットロッドとマーカー要素との融合複合体は、予備製品を延伸することによって製造される。予備製品は、例えばターゲットロッドとマーカー要素との複合体として存在し、又は、互いに接続されていないか若しくは互いに局所的にのみ接続されているターゲットロッド及びマーカー要素出発体のグループを形成する。予備製品は、ターゲットロッドとマーカー要素とからなる製造される融合複合体よりも大きな横方向寸法を有する。予備製品の延伸により、一方ではあらゆる幾何学的誤差及び寸法偏差を縮小し、他方では、この延伸は融合複合体の真直化に寄与する。ターゲットロッド及びマーカー要素から形成された所望の融合複合体は、マルチコアファイバの製造に使用するために、延伸された融合複合ストランドから所定の長さに切断される。このようにして、特に大きなアスペクト比であっても、横方向寸法が小さいマーカー要素を高い寸法安定性で製造することができる。
【0044】
特に好ましい方法の変形例では、外部堆積法を使用して製造されるクラッド材料層は、SiO2をベースとするすす層として形成される。
【0045】
SiO2すす層は、酸素含有反応ゾーン内でのケイ素含有出発化合物の加水分解、熱分解、又は酸化と、このプロセス中に形成されたSiO2粒子を回転するターゲットロッドの外面上に堆積させることと、によって得られる。ここで、ターゲットロッドの外面の領域の温度が低く保たれるので、堆積されたクラッド材料層は緻密にガラス化されたままではなく、むしろ多孔質となる。この温度は例えば800℃~1250℃の範囲であり、比密度は、典型的には、約0.6g/cm3~1.8g/cm3の範囲である。
【0046】
SiO2クラッド材料層の多孔性により、その後、乾燥雰囲気中での処理及びガス状ドーパント、例えばフッ素のドーピングによって、その中に含まれるOH基を除去することができる。
【0047】
すす層は、好ましくは、ガラス化温度まで加熱することによってガラス化される。
【0048】
ガラス化は、例えば、真空下及び/又はヘリウム雰囲気中で、焼結炉内で1400℃を超える温度に加熱することによって行われる。このようにして、透明な石英ガラスから形成されるクラッド材料層が得られる。
【0049】
1つの手順では、ガラス化の前に、すす層は、ドーパントを含む雰囲気中でのドーピング処理、及び/又はハロゲン含有雰囲気中若しくは真空下での脱水処理を受ける。
【0050】
ドーピング又は脱水処理は、ガラス化プロセスの直前に行うことができ、また、同じ炉内で行うことができる。脱水処理は、例えば、ヘリウムパージとそれに続く約900℃の温度での高温塩素化プロセスと、を含む。真空下での代替乾燥では、SiO2すす層を、真空炉内で0.1mbar以下の圧力下、少なくとも1150℃の温度で処理する。これにより、ヒドロキシル基濃度が1重量ppm未満に低減される。
【0051】
ドーピング処理は、例えば、SiO2すす層にフッ素を担持させることを含むものであり、この処理では、ターゲットロッドをクラッド材料層とともにドーピング炉に導入し、980℃を超える温度の雰囲気にさらし、この雰囲気は、例えば四塩化ケイ素などのフッ素含有物質を含む。このようにして、SiO2すす層にフッ素を担持させることにより、例えば、統合後に少なくとも1500重量ppmの平均フッ素含有量が可能になる。
【0052】
好ましい方法の変形例では、クラッド材料層内にコアガラスロッドを受け入れるためのコアロッドボアは、すす層のガラス化後に形成される。
【0053】
高密度石英ガラスと比較して、SiO2すすから形成されたクラッド材料層の密度が低いことにより、コアガラスロッドを受け入れるためのボアの形成が容易になる。クラッド材料層には、2つ以上、例えば4~7個の長手方向ボア(コアロッドボア)が従来の方法で作られ、それらの長手方向軸はターゲットロッドの長手方向軸と平行に延びる。コアロッドボアは貫通ボア又は止まりボアであり、各々の場合にコアガラス製の少なくとも1つのコアロッドを受け入れるのに役立つ。
【0054】
コアガラスの組成は、径方向に見ると一様に均一であり、又は徐々に若しくは段階的に変化している。これは、コアガラス領域での光誘導が確保されるよう、クラッドガラスのものとは異なる。最も単純な場合では、全てのコアロッドは同じ寸法を有し、同じコアガラスからなる。しかしながら、コアロッドは、それらの寸法及び/又は対応するコアガラスの組成に関してもまた異なっていてもよい。
【0055】
コアロッドへの損傷のリスクを最小限に抑えるために、コアロッドは、好ましくは多孔質クラッド材料層のガラス化及び透明な石英ガラスからのガラスクラッド領域の形成後にコアロッドボアに挿入される。
【0056】
マーカー要素は、空気で満たされた細長い中空チャネルを形成し、又は、好ましくは少なくとも1つの物理的及び/若しくは化学的特性が隣接するクラッドガラス及び/若しくはターゲットロッドの隣接する第1のガラス領域とは異なるマーカー材料を含み、その特性は、好ましくは屈折率、色、蛍光、及び/若しくはガラス比密度から選択される。
【0057】
構成要素グループのガラスからマーカー要素を区別する特性(又は複数の特性)は、特にマーカー要素の視覚的外観に影響を与え、好ましくは光センサによって検出可能である。例えば、ガラス充填材料と同様に、マーカーガラスのガラス組成も石英ガラスをベースとすることができる。石英ガラスの屈折率はドーピングによって変えることができる。例えば、マーカー石英ガラスにフッ素をドープすると、ドープされていない石英ガラスと比較して屈折率が低下する。マーカー石英ガラスに炭素が混入すると、黒色になることがある。酸化状態に応じて、マーカー石英ガラスにチタンをドープすると、灰青色になる。マーカー石英ガラスに希土類金属又は酸化ゲルマニウムをドープすると、ドーパントに特異的な波長で蛍光が現れる。マーカー要素のガラス比密度は細孔によって変えることができ、気泡のないガラスと比較して光透過性の低下として現れる。
【0058】
好ましい手順では、構成要素グループの製造は、以下の方法ステップ、
(a)マーカー領域を含むターゲットロッドを提供するステップと、
(b)コアガラスを含む複数のコアロッドを提供するステップと、
(c)外部堆積法を使用して、ターゲットロッドの外面上にクラッド材料層を堆積させるステップと、
(d)少なくともクラッド材料層及び任意選択でターゲットロッドの第1のガラス領域にコアロッドボアを形成するステップと、
(e)コアロッドをコアロッドボアに挿入するステップと、を含む。
【0059】
このようにして製造された半製品は、ターゲットロッド(少なくとも1つのマーカー要素及びその上に形成されたクラッド材料層を有する)と、コアロッドと、を含む。リスト番号(a)~(d)は、方法ステップの順序を示したものではない。半製品のコアロッドは、対応するコアロッドボア内で既に融合されている場合、ここではコアロッドとも呼ばれる。
【0060】
好ましい方法の変形例では、マーカー領域は中空チャネルとして形成され、コアロッドがコアロッドボアに挿入される前又は後に、円筒形マーカー要素が中空チャネルに挿入される。
【0061】
マルチコアファイバ又はそのプリフォームを製造するための中間製品に関して、上記の技術的課題は、本発明によって解決され、上記中間製品は、ガラス製のターゲットロッドと、ターゲットロッド上又はターゲットロッド内に形成されたマーカー要素と、SiO2すすを含むクラッド材料層と、を含み、上記クラッド材料は、ターゲットロッド及びマーカー要素を取り囲み、摩擦係合、形状適合及び/又は一体結合方式でターゲットロッドに接続される。
【0062】
本発明による中間製品は、本発明による方法に基づいて、マルチコアファイバの製造又はマルチコアファイバ用のプリフォームの製造に関連してそのように現れることができる。この用途では、これは特に好ましい中間製品である。
【0063】
中間製品は、ガラス製のターゲットロッドによって覆われ少なくとも1つのマーカー要素上又は内に形成された中央領域を有するクラッド材料層を含む円筒形接合複合体である。クラッド材料層は、SiO2をベースとする多孔質すす層として存在する。これは、外部堆積法(OVD法)により製造され、最終的なマルチコアファイバにクラッドガラスで作られたガラスクラッド領域を形成する。
【0064】
ターゲットロッドはシリンダの長手方向軸に沿って延び、シリンダの中央体積領域を形成する。中央体積領域はまた、ターゲットロッドの第1のガラス領域に隣接する少なくとも1つのマーカー要素を含む。
【0065】
ターゲットロッドの第1のガラス領域の化学組成がマルチコアファイバのクラッドガラスの化学組成に対応する実施形態では、マルチコアファイバ内の対応する体積領域は光クラッドの一部を形成する。ターゲットロッドの第1のガラス領域の化学組成とマルチコアファイバのクラッドガラスの化学組成とが互いに異なる実施形態では、マルチコアファイバ内のターゲットロッドに追加の機能を追加することができ、例えば、ターゲットロッドは、ファイバ内の半径方向に作用する圧縮応力又は引張応力を生成及び/又は補償する「応力ゾーン」として機能することができる。
【0066】
ターゲットロッドは一体型であってもよいし、平行に延びる複数のシリンダからなっていてもよい。第1のガラス領域に加えて、ターゲットロッドは、第1のガラス領域とは化学組成の点で異なる更なるガラス領域又は複数のガラス領域を有することができる。特に、ターゲットロッドは、少なくとも1つのコアガラス領域を含むことができ、コアガラス領域は、最終的なマルチコアファイバ内の信号コアを形成する。
【0067】
ターゲットロッドは、第1のガラス領域に加えて、マーカーガラス製のマーカー要素を提供するために使用される。マーカー要素は、例えば、細長いキャビティとして、又はマーカー材料製の統合若しくは非統合構成要素として、又はマーカー材料によるそのような構成要素のコーティングとして中間製品中に存在し、マルチコアファイバ中に、マーカー材料で形成された連続した線状のマーカーゾーン又は空気で満たされた中空チャネルを形成する。
【0068】
マーカー要素はターゲットロッド内又はターゲットロッド上に配置される。それは、例えば、シリンダの長手方向軸に平行に延びる中空チャネル内に配置され、又はターゲットロッドの外面に取り付けられる。マーカー要素はターゲットロッド内又はターゲットロッド上に配置されるが、外部堆積法によって製造されたクラッド材料層内に完全には配置されていないため、例えば機械加工によって、特にクラッド材料層にマーカー要素を受け入れるための別個のボアを形成することによって、このクラッド材料層を、マーカー要素を挿入する目的で適合させる必要がない。したがって、クラッド材料層のそのような適合に伴う損傷のリスクが排除される。
【0069】
ターゲットロッドの寸法安定性及び真直度は、簡単な措置で確保することができる。この措置としては、例えば、ターゲットロッドの機械加工及び/又は延伸プロセスが挙げられる。機械加工は、任意選択で外部機械加工法であってもよく、これは、概して、内部機械加工法よりも大幅に複雑さが軽減される。
【0070】
マーカー要素がターゲットロッドに隣接することで、マーカー要素の軸方向に平行な位置合わせが容易になる。ターゲットロッドの真直度は、達成するのが比較的簡単であり、マーカー要素の軸平行位置合わせも容易にする。これは、特に、マーカー要素をターゲットロッドの第1のガラス領域とガラスクラッド領域との間に配置する特に好ましい実施形態に当てはまる。
【0071】
したがって、中間製品はマーカー要素を備え、そのために、上記で説明したリスク及び困難に関連するクラッド材料層の別個のボア領域を形成する必要がない。同時に、高いアスペクト比にも関わらず、高い精度を確保することができ、例えば中間製品では、マーカー要素の軸平行度の偏差が0.3mm/m未満であることから明らかになる。
【0072】
ターゲットロッドは、単一のガラスシリンダからなることができ、又は、互いに接続された複数のガラスシリンダから構成することができる。複数のガラスシリンダは、同じ組成を有してもよく、互いに組成が異なっていてもよい。ターゲットロッドは、完全に又は部分的に、クラッドガラス又はコアガラス又は別のガラスからなることができる。ターゲットロッドは、例えば、コアガラス製の中央コアを有することができ、その中央コアは、クラッドガラスで作られたクラッド領域によって取り囲まれている。
【0073】
マーカー要素は、例えば、ターゲットロッドと平行に延びるロッドとして存在する。
【0074】
更なる実施形態では、マーカー要素は、ターゲットロッドの中空チャネル内又はターゲットロッドの外面の領域内に取り付けられたマーカー材料の層として存在する。ここでも、マーカー要素層及びターゲットロッドは、任意選択で、統合された、すなわち互いに融合された形態で存在することもできる。
【0075】
マーカー要素は、ターゲットロッドの長手方向軸に沿って、好ましくはその全長にわたって延び、また、局所的に、しかし好ましくは連続的にターゲットロッドに取り付けることができる。
【0076】
ターゲットロッドに取り付けることにより、マーカー要素はその真直度及び位置合わせから恩恵を受け、これらの特性は、マーカー要素にある程度移行される。この取り付けは、例えば、ターゲットロッドとマーカー要素との間の摩擦係合、一体結合、及び/又は形状適合に基づいている。
【0077】
マーカー要素は、好ましくは、マーカー材料製の円筒形構成要素の形態で、又はターゲットロッドに接続された層、若しくはマーカー材料製の塊の形態で設計される。少なくとも1つの円筒形マーカー要素構成要素は、例えばチューブであり、好ましくはロッドである。チューブの形態のマーカー要素の場合、チューブ壁はクラッドガラスよりも粘度の高い材料を含むことができ、その結果、ファイバ線引きプロセス中にボアが完全に崩壊せず、完成したマルチコアファイバ内にキャビティ(「エアライン」)として維持される。
【0078】
ターゲットロッドの断面形状は、概ね円形である。また、卵形、楕円形、又は多角形など、円形から逸脱した形状を有することもできる。断面輪郭を包む包囲円は、例えば、36mm~76mmの範囲の直径を有する。
【0079】
好ましい実施形態では、ターゲットロッドは、ターゲットロッドの長手方向軸に沿って延びる凹部を有し、凹部はマーカー要素を形成し、又はその凹部内にマーカー要素が配置される。
【0080】
凹部は、好ましくは、ターゲットロッドを貫通するボアとして、又はターゲットロッドの外面上の長手方向溝(長手方向チャネル)として設計される。これは、空気で満たされた中空チャネルを形成し、又は、例えば、マーカー材料製の円筒形構成要素若しくは粒子状マーカー材料で充填される。粒子状マーカー材料は、部分圧縮又は結合剤の添加により、ある一定の程度の寸法安定性を有することができる。マーカー材料は、凹部を可能な限り完全に充填する。それにより、凹部は、マーカー要素とターゲットロッドとの間の形状適合を確保する。マーカー要素とターゲットロッドとはまた、例えば一緒に焼結すること又は融合することによる一体結合によって事前に(すなわち、クラッド材料層の製造前に)互いに接続することもできる。
【0081】
これに関連して、ターゲットロッドに長手方向溝を設ける実施形態が特に好ましい。これは、一方では、長手方向溝が、例えば機械フライス盤によるフライス加工又はレーザーアブレーションによって、ボアと比較して、ターゲットロッドの外面に製造することが特に容易であるためである。他方では、このように製造された長手方向溝は、ターゲットロッド自体とちょうど同じ程度に正確で真直である。更に、長手方向溝の深さ又は開口幅は、実質的に所望のとおり小さく、例えば、例えば両方とも15mm未満、好ましくは10mm未満、特に好ましくは5mm未満にすることができる。これにより、小体積で幾何学的に正確なマーカー要素を簡単な方法で製造することができ、そのマーカー要素は、中間製品における軸方向の偏差が0.3mm/m未満であり、したがってそれに応じてマルチコアファイバ内に小さく高精度のマーカーゾーンが形成される。
【0082】
長手方向溝は、例えば、マーカー材料製の円筒形構成要素(ロッド又はチューブ)を挿入することによって、又はマーカー材料粒子の床を導入することによって、又は長手方向溝の内部をマーカー材料でコーティングすることによって、マーカー材料で充填される。円筒形構成要素、内部コーティング、又はマーカー材料で形成された床は、更に、融合によって長手方向溝に固定することができる。
【0083】
マーカー要素は、空気で満たされた細長い中空空間(チャネル)若しくはチャネルを形成し、又は、好ましくは少なくとも1つの物理的及び/若しくは化学的特性がターゲットロッドの隣接する第1のガラス領域及び/若しくは中間製品のクラッド材料層のガラス化によって得られるクラッドガラスとは異なるマーカー材料を含み、その特性は、屈折率、色、蛍光、及び/又はガラス比密度から選択される。
【0084】
本発明による方法に基づいて、又は本発明による中間体を使用して、複数の信号コアを有し、少なくとも1つの連続した線状マーカーゾーンが横切る、マルチコアファイバが得られる。マーカーゾーンは、対称性を破るのに、また信号コアとそれらの互いに対する位置及びファイバ中心軸に対する位置を明確に識別するのに役立つ。
【0085】
定義及び測定方法
上記の説明における個々の用語を以下で更に定義する。定義は、本発明の説明の一部である。本明細書で具体的に定義されていない用語及び測定方法については、国際電気通信連合(International Telecommunication Union、ITU)による解釈が該当する。以下の定義の1つと本明細書の残りの部分との間に不一致がある場合、本明細書の他の箇所でなされた記述が優先される。
【0086】
クラッドガラス/ガラスクラッド領域
ガラスクラッド領域はクラッドガラスを含む。ガラスクラッド領域の少なくとも一部は、外部堆積法によって製造される。信号伝送用に設計されたコアガラス領域は、ガラスクラッド領域内に形成される。クラッドガラスは、例えば、ドープされていない石英ガラスからなり、又は石英ガラスの屈折率を低下させる少なくとも1つのドーパントを含む。フッ素及びホウ素は、石英ガラスの屈折率を低下させることができるドーパントである。
【0087】
コアロッド/コアガラス領域
コアロッドは、半径方向に均一又は不均一な屈折率プロファイルを有するコアガラスを含む。各コアロッドのコアガラスはコアガラス領域を形成する。コアロッドは、比較的高い屈折率を有するコアガラスで作られた領域と、比較的低い屈折率を有する別のガラス、例えばフッ素及び/又は塩素がドープされた石英ガラスで作られた少なくとも1つの更なる領域と、を含むことができる。最も高い屈折率を有するガラスは、概して、コアロッドの中心軸に位置する。それは、例えば、屈折率を増加させるために少なくとも1つのドーパントが添加された石英ガラスからなる。マルチコアファイバでは、コアロッドは、少なくとも1つの信号コアを形成し、送信すべき信号は主にその少なくとも1つの信号コア内で伝送される。信号コアは、同じくコアロッドによって提供されたより小さい屈折率を有する他のガラス領域に隣接することができる。
【0088】
ターゲットロッド
ターゲットロッドは、少なくとも1つの第1のガラス領域と、少なくとも1つの第1のガラス領域に隣接しターゲットロッド内又はターゲットロッド上に形成されたマーカー領域と、を有する。第1のガラス領域に加えて、ターゲットロッドは、第1のガラス領域とは化学組成の点で異なる更なるガラス領域又は複数のガラス領域を有することができる。ターゲットロッドは、マルチコアファイバの一部であるガラスからなる。特に、ターゲットロッドは、最終的なマルチコアファイバ内の信号コアとして機能するガラス領域を有することができる。マルチコアファイバに追加の特性を与えるために、第1のガラス領域の組成は、クラッドガラスの組成に対応することも、クラッドガラスの組成から逸脱することもできる。
【0089】
ターゲットロッドは、ターゲットロッドからクラッド材料層を製造する外部堆積法を実施するための堆積マンドレルとして機能する。クラッド材料層は石英ガラスからなり、又は完全に若しくは部分的にSiO2すす層として存在する。したがって、ターゲットロッドは、ターゲットロッド材料に加えて、軸に近いクラッド材料層の領域にマーカー要素を挿入するのに役立つ。
【0090】
マーカー要素/マーカー材料/マーカーガラス
マーカー要素は、空気及び/又はマーカー材料、特に少なくとも1つのマーカーガラスを含む。マーカー材料の化学組成は、それが隣接する第1のターゲットロッドガラス領域の化学組成とは異なり、並びに/又は、マーカー材料の密度は、クラッドガラス及び第1のターゲットロッドガラス領域の密度とは異なる。マーカー要素は、構成要素として、又は構成要素上の層若しくは塊として半製品中に存在し、マルチコアファイバ内に光学的に検出可能なマーカーゾーンを形成する。
【0091】
構成要素グループ/統合プリフォーム/二次プリフォーム/半製品/中間製品
「構成要素グループ」は、少なくとも1つのマーカー要素を有するターゲットロッドと、コアロッドボアを有する、ターゲットロッド上に堆積されたクラッド材料層と、を含み、各々の場合にコアロッドボアには1つのコアロッドが挿入される。コアロッドをコアロッドボアに固定することによって、例えば、中空のガラスクラッドシリンダ端部を狭めることによって、又は崩壊させて融合させることによって、本明細書では「統合プリフォーム」とも呼ばれる「プリフォーム」が得られる。構成要素グループ又は(統合)プリフォームを延伸して「二次プリフォーム」を形成し、又はマルチコアファイバを直接形成する。ここで「半製品」という用語は、構成要素グループ、統合プリフォーム及び二次プリフォームを包含する。円筒形接合複合体は中間製品と呼ばれ、これは、ガラス製のターゲットロッド、マーカー要素、及びターゲットロッドとマーカー要素とを取り囲むSiO2すす含有クラッド材料層である。
【0092】
石英ガラス
ここで、石英ガラスは、SiO2含有量が少なくとも80モル%、好ましくは少なくとも90モル%の高ケイ質ガラスである。石英ガラスはドープされておらず、又は1つ以上のドーパントを含む。石英ガラスは、例えば、天然に存在するSiO2原料からの溶融生成物であるか(天然石英ガラス)、又は合成的に製造されるか(合成石英ガラス)、又はこれらの石英ガラスタイプの混合物からなる。合成透明石英ガラスは、例えば、合成的に製造されたケイ素化合物の火炎加水分解若しくは酸化によって、いわゆるゾル-ゲル法による有機ケイ素化合物の重縮合によって、又は液体中での無機ケイ素化合物の加水分解及び沈殿によって得られる。
【0093】
統合/融合/ガラス化/崩壊
ガラスの構成要素又はSiO2塊に言及する場合、融合とは、構成要素又はSiO2塊が接触表面上で互いに熔けることを意味すると理解される。融合は、炉、バーナー、又はレーザーなどの熱源を用いて、少なくとも接触表面の領域で構成要素又はSiO2塊を加熱することによって行われる。崩壊中、構成要素間のギャップが閉じる。ガラス化は、多孔質のすす材料を緻密なガラスに変えるための熱間プロセスを指す。統合は、融合、ガラス化、及び崩壊プロセスを含むことができる。その結果、融合によってしっかりと接合されたプリフォームや構成要素グループなど、熱的に圧縮された扱いやすい半製品が得られる。
【0094】
位置表示:上部/下部
これらの表示は、延伸プロセス中及び/又はファイバ線引きプロセス中の位置に関する。「下部」は、線引きプロセスの方向の位置を示し、「上部」は、線引きプロセスの方向と反対の位置を示す。
【0095】
断面
断面は、長手方向/長手方向軸に垂直に取った。
【0096】
長手方向切片
切片は、長手方向/長手方向軸に平行に取った。
【0097】
ボア
「ボア」、「中央ボア」、「内部ボア」又は「長手方向ボア」という用語は、円筒形又は他の任意の内部幾何形状を有する穴を意味する。これらは、例えば、穴あけプロセスによって製造され、又は、堆積プロセス若しくはプレスプロセスによってマンドレルの外面に材料層を堆積させ、次いでマンドレルを除去することによって製造される。
【0098】
軸平行位置合わせ/軸平行度
基準軸は、いずれの場合も、半製品、プリフォームの長手方向軸、又はマルチコアファイバの中心軸である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
例示的な実施形態
以下、例示的な実施形態及び図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。詳細には、概略図において、
【
図1】
図1は、先行技術による、中空ガラスクラッドシリンダ、コアロッド、及びマーカー要素を有するマルチコアファイバを製造するための半製品の断面図を示す。
【
図2】
図2は、外部堆積法における堆積マンドレルとして使用するためのマーカー要素を有するターゲットロッドを製造するための第1の方法の変形例における加工ステップ(a)~(d)を示す。
【
図3】
図3は、外部堆積法における堆積マンドレルとして使用するためのマーカー要素を有するターゲットロッドを製造するための第2の方法の変形例における加工ステップ(a)~(b)を示す。
【
図4】
図4は、
図1のマーカー要素を含むターゲットロッド上のすす層の堆積を示す。
【
図5】
図5は、マーカー要素とガラス化すす層とを含むターゲットロッド上の構成要素複合体を示す。
【
図6】
図6は、長手方向ボアを形成した後の
図5の構成要素複合体の断面を示す。
【
図7】
図7は、コアロッドが長手方向ボアに挿入及び融合された、
図6の構成要素複合体の統合プリフォームを示す。
【
図8】
図8は、統合プリフォームの更なる実施形態を断面で示す。
【0100】
図1は、マルチコアファイバの製造のための基体として機能する、先行技術によるクラッドガラス製の中空シリンダ1の断面を概略的に示す。中空シリンダ10は、OVD法を用いて公知の方法で製造される。この方法では、SiO
2すす粒子を気相から長手方向軸の周りを回転する円筒形堆積マンドレルの外面上に堆積させ、その結果、SiO
2すす体が堆積マンドレルの外面上に形成される。堆積プロセスの完了後、堆積マンドレルを除去することによって内部ボア20を残す。その後、SiO
2すす体をガラス化して中空シリンダ10を形成する。コアロッド30を各々受け入れるための4つの長手方向ボア40、及びマーカーロッド70を受け入れるための更に小さな長手方向ボア60を、中空シリンダ10の壁に導入する。この構成要素グループの統合中に、充填ロッド80を中央ボア20に挿入し、この充填ロッドは、例えば中空シリンダクラッドガラスと同じ材料製である。
【0101】
中空シリンダクラッドガラス内の複数の長手方向ボア(40、60)は、多大な労力と故障のリスクを伴う。特にマーカーロッド70を受け入れるためのより小さな長手方向ボア60を製造する場合、軸平行度からの許容できない偏差が生じやすく、ボアの内壁に亀裂が生じる可能性があり、これは、複雑な方法で製造された中空シリンダ1の破損につながる可能性がある。中央ボア20の充填及び崩壊、並びに充填ロッド80の特注製造もまた、労力と故障のリスクを伴い、容易に寸法偏差を引き起こす可能性がある。これらの欠点は、以下に
図2~
図8を参照して説明する本発明の方法では回避される。
【0102】
図2及び
図3は、マーカー要素5又は5aを有するターゲットロッド1を製造するための方法ステップを概略的に示す。
【0103】
図2aに概略的に示すターゲットロッド1は、F300という名称で市販されている、合成的に製造された非ドープ石英ガラスからなる。この目的には、例えば、VAD法(気相軸付け法)、OVD法(外部蒸着)、MCVD法(改良型化学気相堆積)、又は粉末プレス法などの既知の技術が適している。これは、
図4を参照して以下で更に説明するOVD外部堆積法における堆積マンドレルとして機能する。ターゲットロッド1は、長さが約1800mmであり、外径が丸研削により約42mmに設定されている。円形研削により、外面2の起こり得る乱れ及び屈曲が解消される。代替的に又は追加的に、直径の適合及び表面の改善は、工具を使用しない延伸プロセスでの延伸によって達成される。
【0104】
図2bは、長手方向溝3がターゲットロッド1の外面にフライス加工されたことを示す。長手方向溝3は、ターゲットロッド1の全長にわたって延びている。これはU字形を有し、丸い下部と真直な側壁とを有する。それらの開口幅及び深さはいずれの場合も6mmである。後続の方法ステップでは、長手方向溝3から本発明の意味の範囲内のマーカー要素を形成する中空チャネルを製造することができる。
【0105】
図2cは、長手方向溝3にマーカーロッド4が挿入されている状態を示す。マーカーロッド4の直径は5mmである。これは、フッ素がドープされた合成的に製造された石英ガラスからなり、F320という名称で商業的に入手可能である。マーカーロッド4のフッ素ドープ石英ガラスの粘度及び屈折率は両方とも、ターゲットロッド1を構成する非ドープ石英ガラスの粘度及び屈折率よりも小さい。マーカーロッド4は、F320石英ガラス製の出発シリンダを、工具を使用しない方法で延伸することによって得られる。これは、溶融塊内に形成された平滑な表面を有し、高い寸法安定性及び真直度を特徴とし、したがって狭い長手方向溝3に困難なく正確に適合して挿入することができる。
【0106】
長手方向溝3に挿入されたマーカーロッド4をバーナーによってその全長にわたって加熱し、その結果、フッ素ドープ石英ガラスは粘度が比較的低いので軟化し変形する。
図2dは、軟化、変形、及びターゲットロッド1との融合後のマーカーガラス塊5を示す。元のマーカーロッド4のガラス体積は、長手方向溝3の内部体積に合致しており、その結果、マーカーガラス塊5は長手方向溝3をちょうど完全に充填する。
【0107】
図3に示す代替の手順では、一方では長手方向溝の製造が省略され、他方ではターゲットロッド1とマーカー要素5aとの複合体が上流の延伸プロセスに基づいて製造される。
図3aに示すように、延伸プロセス用の出発又は予備製品は、一方では、直径63mm、長さ800mmを有する非ドープ石英ガラス(F300)製のターゲットロッド出発シリンダ1aと、外面の周縁部が断面で平ら又はわずかに凹んだ(内側に曲がった)非円形出発マーカーロッド4aと、である。出発マーカーロッド4aは、フッ素がドープされた石英ガラス(F320)からなり、直径は8mmである。出発マーカーロッド4aは、平行軸位置合わせで出発ターゲットロッド1aに融合されており、上述の周縁部は、上記ターゲットロッドの外面2a上に載っている。延伸中、出発ターゲットロッド1aとマーカーロッド4aとの複合体は、1800mmの長さまで線引きされる。この場合、出発シリンダ(1a、4a)は互いに更に融合し、マーカーロッド4aの低粘度石英ガラスは、ターゲットロッド側面2上にわずかに流出し、冷却後、ターゲットロッド1の外面2に固定して接続された平らなガラスビーズ5aを形成する。これを
図3bに概略的に示す。延伸プロセスにより、一方では、出発シリンダ(1a、4a)のいかなる幾何学的誤差及び寸法偏差も縮小され、他方では、最終的な溶融複合体(1、5a)が真直に前方に向けられる。
【0108】
図4は、このようにして調製され、マーカーガラス塊5で充填されたターゲットロッド1を、OVD外部堆積法における堆積マンドレルとして使用することを概略的に示す。ここで高純度のSiO
2出発材料、例えば四塩化ケイ素は、堆積バーナー9及びバーナー火炎8に供給され、固体のSiO
2粒子11に変換される。これらのSiO
2粒子11を気相から、長手方向軸1b(方向矢印R)の周りを回転するターゲットロッド1の外面2上に堆積させ、堆積バーナー9は、ターゲットロッドの長手方向軸1b(これは、
図4の断面図ではシート平面に対して垂直に延びる)に沿って逆の前後移動を実行する。SiO
2すす層17がターゲットロッド1の外面2上に形成される。OVD外側堆積法の完了後に得られる中間製品18は、ターゲットロッド1、マーカーガラス塊5、並びにターゲットロッド1及びマーカーガラス塊5を取り囲むSiO
2すす層17から形成される円筒形接合複合体を含む。
【0109】
中間製品17を塩素含有雰囲気中、850℃の温度で脱水処理し、その直後に、SiO2すす層17を真空下、1450℃の温度でガラス化する。
【0110】
図5は、その後に得られ、ターゲットロッド1から形成された複合体15を示し、これは、マーカーガラス塊5と、ドープされていない合成石英ガラスから形成され、SiO
2すす層の統合後に得られたガラスクラッド領域12と、を含む。破線の円形線12cは、ターゲットロッド1の円周を表す。複合体15の外径は外部丸研削により200mmの値に設定されている。ガラスクラッド領域12は、ターゲットロッド1の外面2に沿って延び、丸いエンドキャップを除いた使用可能長さは約1500mmである。
【0111】
図6は、ガラスクラッド領域12内にターゲットロッドの長手方向軸1bの方向に機械的穴あけによって4つのボア13が所定の(ここでは四角形)構成で形成された後に、ガラスクラッド層12及び調製されたターゲットロッド1から形成された複合体15を示す。ボア13は、コアロッド14(
図7)を受け入れるのに役立ち、30mmの直径を有する。ボア13は、ガラスクラッド領域12の使用可能長さ全体にわたって延びている(貫通ボア)。代替の実施形態では、ボアは止まりボアとして設計される。
【0112】
更に、長さ約1500mm、外径約28mmのGeドープ石英ガラス製の4つのコアロッド14を製造する。既知の技術、例えばMCVD法(改良型化学気相堆積)もこの目的に適している。
【0113】
コアロッド14をボア12に挿入する。次に、複合体15及びコアロッド14から形成された構成要素グループを加熱し、その結果、コアロッド14の周囲の環状ギャップが閉じられ、グループの全ての構成要素が互いに融合される。
図7は、このように統合されたプリフォーム16を概略的に示しており、このプリフォーム16は、ターゲットロッド1、マーカーガラス塊5、ガラスクラッド領域12、及びまたコアロッド14の複合体15で構成されている。
【0114】
続いて、統合プリフォーム16を延伸して二次プリフォームを形成する。この場合、プリフォーム16は、ターゲットロッドの長手方向軸1bが垂直に位置合わせされた状態で、ホルダによって延伸装置内に保持される。このようにして製造された二次プリフォームを、最終的に線引き装置において従来の方法で線引きしてマルチコアファイバを形成する。
【0115】
この例示的な実施形態では、マーカー要素は、長手方向溝3内で元のマーカーロッド4を再成形することによって製造されたマーカーガラス塊5として存在する。代替の手順では、外側堆積法中にキャピラリを長手方向溝3に挿入する。その後の統合プロセス中に、キャピラリ内に過圧を発生させて維持することにより、キャピラリの完全な崩壊を防止する。このようにして、長手方向軸1bに沿って延び、空気で充填された中空チャネルとしてマルチコアファイバ内に存在するキャビティが形成される。空気の屈折率がクラッドガラスの屈折率とは大きく異なるため、中空チャネルはマーカーゾーンとして機能することができる。
【0116】
半径寸法がより小さいことを除き、マルチコアファイバの断面は、統合プリフォーム16の断面に実質的に対応する。元のコアロッドのコアガラス領域(14)は、ファイバの長手方向軸に沿って延びる信号コアを形成し、元のターゲットロッド(1)は、ガラスクラッド領域の一部を形成し、元のマーカー要素(5)は視覚的に容易に検出可能なマーカーゾーンを形成する。マーカーゾーン(5)は、サイズが小さいことが特徴であり、したがって、ファイバ線引きプロセス中にマルチコアファイバにかかる応力が小さく、その結果、ファイバカールが低くなる。
【0117】
図7とは対照的に、
図8に示すマルチコアファイバ用の統合プリフォーム26の実施形態では、ターゲットロッド1の中心はコアロッド14aによって占められている。コアロッド14aを受け入れるためのボアは、ターゲットロッドの長手方向軸1b内及びそれに沿って、すす層のガラス化後に他のコアロッドボア13(
図6)とともに1つの操作で形成される。全てのコアロッド14、14aの直径は同じである。したがって、元のターゲットロッド1は、コアガラス領域を有し、このコアガラス領域は、マーカーゾーン5に隣接するガラスクラッド領域によって取り囲まれている。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーカーゾーンを有するマルチコアファイバ又はそのようなマルチコアファイバ用のプリフォームを製造する方法であって、コアガラスで作られた複数のコアガラス領域が埋め込まれたクラッドガラスで作られたガラスクラッド領域と、少なくとも1つのマーカー要素と、を含む半製品を形成することを含み、前記マルチコアファイバ又は前記プリフォームが前記半製品を延伸することによって得られ、前記ガラスクラッド領域の製造が、外部堆積法を使用して、ターゲットロッドの長手方向軸を有するターゲットロッドの外面上にクラッド材料層を堆積させる方法ステップを含み、前記ターゲットロッドが、前記ターゲットロッドの長手方向軸に沿って延びる第1のガラス領域と、前記ターゲットロッドの長手方向軸に沿って延び前記第1のガラス領域に隣接するマーカー領域と、を含み、前記マーカー領域が、前記マーカー要素を含み、又は前記マーカー要素を形成するか、若しくは前記マーカー要素を受け入れるように設計された中空チャネルを提供すること、並びに前記半製品が前記クラッド材料層及び前記ターゲットロッドを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記マーカー領域が、前記第1のガラス領域と前記ガラスクラッド領域との間に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マーカー要素が、前記ターゲットロッドに接続された少なくとも1つの円筒形構成要素又は層若しくは塊を形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ターゲットロッドが、前記ターゲットロッドの長手方向軸に沿って延びる凹部を含み、前記凹部が前記マーカー要素を形成し、又は前記凹部内に前記マーカー要素が配置されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記凹部が、前記ターゲットロッドの前記外面に長手方向溝を含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記外部堆積法を実施する前に、前記マーカー要素を前記ターゲットロッドに取り付けることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記外部堆積法を使用して製造された前記クラッド材料層が、SiO
2をベースとするすす層として形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記すす層が、ガラス化温度まで加熱することによってガラス化されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ガラス化の前に、前記すす層が、少なくとも1つのドーパントを含む雰囲気中でのドーピング処理、及び/又はハロゲン含有雰囲気中若しくは真空下での脱水処理を受けることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
コアガラスロッドを受け入れるためのコアロッドボアが、前記すす層のガラス化後に製造されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記マーカー要素が中空チャネルとして設計され、又は、屈折率、色、蛍光、及び/又はガラス比密度から選択される少なくとも1つの物理的及び/又は化学的特性において前記隣接するクラッドガラス及び/又は前記ターゲットロッドの前記隣接する第1のガラス領域とは異なるマーカー材料を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記半製品の製造が、以下の方法ステップ、
(a)前記マーカー領域を含む前記ターゲットロッドを提供するステップと、
(b)コアガラスを含む複数のコアロッドを提供するステップと、
(c)前記外部堆積法を使用して、前記ターゲットロッドの前記外面上に前記クラッド材料層を堆積させるステップと、
(d)少なくとも前記クラッド材料層及び任意選択で前記ターゲットロッドの前記第1のガラス領域にコアロッドボアを形成するステップと、
(e)前記コアロッドを前記コアロッドボアに挿入するステップと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記マーカー領域が中空チャネルとして設計されること、及び前記コアロッドの挿入前又は挿入後に円筒形マーカー要素が前記中空チャネルに挿入されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
マルチコアファイバ又はそのプリフォームを製造するための中間製品であって、ガラス製のターゲットロッドと、前記ターゲットロッド上又は前記ターゲットロッド内に形成されたマーカー要素と、SiO
2すすを含むクラッド材料層と、を含み、前記層が、前記ターゲットロッド及び前記マーカー要素を取り囲み、摩擦係合、形状適合及び/又は一体結合方式で前記ターゲットロッドに接続されている、中間製品。
【請求項15】
前記ターゲットロッドが、前記マーカー要素が隣接する第1のガラス領域を含み、前記マーカー要素が、好ましくは前記第1のガラス領域と前記クラッド材料層との間に配置され、非常に好ましくは、前記ターゲットロッドの外面の凹部を少なくとも部分的に充填することを特徴とする、請求項14に記載の中間製品。
【国際調査報告】