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特表2024-547164リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241219BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241219BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241219BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539615
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-27
(86)【国際出願番号】 CN2022108807
(87)【国際公開番号】W WO2023124051
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111653919.7
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524245037
【氏名又は名称】格林▲美▼(无▲錫▼)能源材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼ ▲開▼▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲徳▼▲寵▼
(72)【発明者】
【氏名】▲謝▼ ▲軍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲廖▼ ▲寧▼靖
(72)【発明者】
【氏名】施 ▲楊▼
(72)【発明者】
【氏名】周 ▲曉▼燕
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 玉君
(72)【発明者】
【氏名】徐 世国
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB01
4G048AB04
4G048AB06
4G048AC06
4G048AD07
4G048AE05
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050EA12
5H050FA18
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料及びその製造方法を開示する。該製造方法は、ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物をリチウム源、ジルコニア、酸化タングステン、炭酸ナトリウムと混合してボールミリングした後、通常の焼結温度よりも50~150℃高い温度で一次焼結を行い、粉砕してリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体を得るステップと、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体を被覆剤と均一に混合した後、二次焼結を行い、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料を得るステップと、を含む。本発明では、一次焼結過程で酸化タングステン及び炭酸ナトリウムを導入することにより、材料の導電性を向上させることができるだけでなく、粒子の形態を変化させて、一次粒子を微細化することもでき、酸化タングステン及び炭酸ナトリウムを組み合わせるという特性を利用し、さらにジルコニアのドーピングと組み合わせることで、高い一次焼結温度で高容量、高分散性、優れたサイクル特性を備えた高ニッケル単結晶正極材料を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法であって、
ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物をリチウム源、ジルコニア、酸化タングステン、炭酸ナトリウムと混合してボールミリングした後、通常の焼結温度よりも50~150℃高い温度で一次焼結を行い、粉砕してリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体を得るステップと、
前記リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体を被覆剤と均一に混合した後、二次焼結を行い、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料を得るステップと、を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記通常の焼結温度は、ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物とリチウム源を用いた一次焼結DOE試験により得られたニッケル・コバルト・マンガン単結晶正極材料の一次焼結体に対して電気化学的テストを行った結果、放電比容量が最も大きく、単結晶分散性が最も良好な焼結温度であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法。
【請求項3】
前記一次焼結温度は通常の焼結温度よりも70~80℃高いことを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法。
【請求項4】
前記ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物の化学組成は、NixCoyMn1-x-y(OH)2(0.7≦x≦0.95、0.02≦y≦0.25)であり、前記リチウム源は、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、及び塩化リチウムのうちの少なくとも1種であり、前記ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物とリチウム源中のリチウムとのモル比は1:(1.01~1.1)であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法。
【請求項5】
前記ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物、ジルコニア、酸化タングステン、及び炭酸ナトリウムのモル比は1:(0.001~0.005):(0.001~0.005):(0.001~0.005)であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法。
【請求項6】
前記ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物、ジルコニア、酸化タングステン、及び炭酸ナトリウムのモル比は1:0.002:0.0016:0.002であることを特徴とする請求項5に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法。
【請求項7】
前記一次焼結の時間は10~20hであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法。
【請求項8】
前記被覆剤は、B、Al、Mg、V、Ti、P、Si、及びYの酸化物又は水酸化物のうちの少なくとも1種であり、被覆剤の添加量は、前記リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体の全量の0.05wt%~5wt%であり、前記二次焼結の温度は200~600℃であり、前記二次焼結の時間は6~24hであることを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法。
【請求項9】
一次焼結過程及び二次焼結過程は、いずれも酸素ガスが存在する条件で行われることを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法によって得られることを特徴とするリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池の技術分野に関し、特にリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LiNixCoyMn1-x-y2三元正極材料は、比容量とエネルギー密度が高く、コストが低く、環境に優しいという特徴があるため、リチウムイオン二次電池に広く使用されており、特に現在の背景では、自動車用パワーバッテリーの市場において発展の将来性が期待できる。航続距離の向上に伴い、現在の正極材料は、徐々に、高ニッケル化、及び高電圧のものへと進化している。単結晶正極材料は、極板の圧縮率が比較的高く、ガス発生量が少ないという優位性があるため、多くの注目を集めている。しかし、高ニッケル単結晶材料の焼結過程では次の2つの問題がある。第一には、焼結温度が若干低いと、放電比容量が高いものの、単結晶が凝集して、分散性が劣り、その結果、サイクル特性が低下したり、ガス発生量が増加したりする。第二には、焼結温度が高すぎると、単結晶サイズが大きく、分散性が良好であるが、放電比容量が著しく低下する。
【0003】
したがって、高容量、大きなサイズ及び高分散性を備える高ニッケル単結晶正極材料をどのように製造するかが依然として大きな課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記の技術の欠陥を解消して、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料及びその製造方法を提案し、高ニッケル単結晶正極材料が高容量、大きなサイズ及び高分散性を兼ね備えることができないという従来技術の技術的課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様は、
ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物をリチウム源、ジルコニア、酸化タングステン、炭酸ナトリウムと混合してボールミリングした後、通常の焼結温度よりも50~150℃高い温度で一次焼結を行い、粉砕してリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体を得るステップと、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体を被覆剤と均一に混合した後、二次焼結を行い、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料を得るステップと、を含むリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法を提供する。
【0006】
本発明の第2態様は、本発明の第1態様によるリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法によって得られるリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料を提供する。
【発明の効果】
【0007】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は以下を含む。
【0008】
本発明では、一次焼結プロセス過程で酸化タングステン及び炭酸ナトリウムを導入し、高ニッケル材料の内部には酸素空孔が存在し、一部のナトリウムイオンがリチウムサイトを占有しているため、W-O八面体は傾きや回転などのさまざまな方式で歪み、材料の単位セルと電子構造にさまざまな程度の影響を与え、それにより、材料の導電性を向上させることができるだけでなく、粒子の形態を変化させて、一次粒子を微細化することもでき、酸化タングステン及び炭酸ナトリウムを組み合わせるという特性を利用し、さらにジルコニアのドーピングと組み合わせることで、高い一次焼結温度で高容量、高分散性、優れたサイクル特性を備えた高ニッケル単結晶正極材料を得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1によるリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料のSEM像である。
図2】本発明の比較例1によるリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料のSEM像である。
図3】本発明の比較例2によるリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料のSEM像である。
図4】本発明の比較例3によるリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料のSEM像である。
図5】本発明の比較例4によるリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料のSEM像である。
図6】本発明の比較例5によるリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料のSEM像である。
図7】本発明の比較例6によるリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の目的、技術的解決手段及び利点をより明確に理解するために、以下、図面及び実施例を参照して、本発明をさらに詳細に説明する。本明細書に記載される具体的な実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するために使用されないことが理解されるべきである。
【0011】
本発明の第1態様は、
ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物をリチウム源、ジルコニア、酸化タングステン、炭酸ナトリウムと混合してボールミリングした後、通常の焼結温度よりも50~150℃高い温度で一次焼結を行い、粉砕してリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体を得るステップS1と、
リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体を被覆剤と均一に混合した後、二次焼結を行い、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料を得るステップS2と、を含む、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法を提供する。
【0012】
本発明では、一次焼結過程で酸化タングステン及び炭酸ナトリウムをドーパントとして導入し、高ニッケル材料の内部には酸素空孔が存在し、一部のナトリウムイオンがリチウムサイトを占有しているため、W-O八面体は傾きや回転などのさまざまな方式で歪み、材料の単位セルと電子構造にさまざまな程度の影響を与え、それにより、材料の導電性を向上させることができるだけでなく、粒子の形態を変化させて、一次粒子を微細化することもでき、酸化タングステン及び炭酸ナトリウムを組み合わせるという特性を利用し、さらにジルコニアのドーピングと組み合わせることで、高い一次焼結温度で高容量、高分散性、優れたサイクル特性を備えた高ニッケル単結晶正極材料を得る。ただし、焼結温度が高すぎてはならず、焼結温度が高すぎると、単結晶の過度の成長、リチウムイオンの輸送経路の延長、イオン伝導率の低下につながり、その結果、容量とレート特性が低下する。
【0013】
本発明では、ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物の化学組成は、NixCoyMn1-x-y(OH)2(0.7≦x≦0.95、0.02≦y≦0.25)である。本発明のいくつかの特定の実施形態では、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料前駆体の化学組成は、Ni0.80Co0.10Mn0.10(OH)2である。
【0014】
本発明では、リチウム源は、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、及び塩化リチウムのうちの少なくとも1種であり、ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物とリチウム源中のリチウムとのモル比は1:(1.01~1.1)である。
【0015】
本発明では、ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物、ジルコニア、酸化タングステン、及び炭酸ナトリウムのモル比は、1:(0.001~0.005):(0.001~0.005):(0.001~0.005)、さらに1:0.002:0.0016:0.002である。酸化タングステン、炭酸ナトリウム、及びジルコニアを系にドーピングにより導入することにより、分散性が良好で、放電比容量及びサイクル特性に優れる単結晶材料が得られる。ただし、導入された炭酸ナトリウムの含有量が高くてはならず、この添加量が多すぎると、系の残留アルカリ量が増加し、電池の性能の向上に不利である。
【0016】
本発明では、一次焼結温度はT1であり、通常の焼結温度はT2であり、かつ、△T=T1-T2=50~150℃、さらに60~100℃、一層さらに70~80℃である。なお、通常の焼結温度T2は、ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物とリチウム源を用いた一次焼結DOE試験により得られたニッケル・コバルト・マンガン単結晶正極材料の一次焼結体に対して電気化学的テストを行った結果、放電比容量が最も大きく、単結晶分散性が最も良好な焼結温度(すなわち、最適焼結温度)である。最適焼結温度は、ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物の遷移金属元素のモル比及びリチウムの配合比に関係しており、異なるニッケル・コバルト・マンガン水酸化物及び異なるリチウムの配合比は、いずれも異なる最適焼結温度に対応する。例えば、Ni0.8Co0.1Mn0.1(OH)2及び水酸化リチウムのリチウムの配合比が1.05である場合、最適焼結温度は870℃である。
【0017】
本発明では、一次焼結の時間は10~20hである。
【0018】
本発明では、被覆剤の種類は限定されるものではなく、当業者が実際のニーズに応じて選択することができる。例えば、被覆剤は、B、Al、Mg、V、Ti、P、Si、及びYの酸化物又は水酸化物であってもよい。被覆剤の添加量は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体の全量の0.05wt%~5wt%である。この過程では、二次焼結の温度は200~600℃であり、二次焼結の時間は6~24hである。本発明では、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体の表面に被覆層が形成されることにより、単結晶と電解液との副反応を減少させ、電池の耐用年数をさらに延ばすことができる。
【0019】
本発明では、一次焼結過程及び二次焼結過程は、いずれも酸素ガス条件下で行われる。
【0020】
本発明の第2態様は、本発明の第1態様によるリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法によって得られるリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料を提供する。
【実施例
【0021】
実施例1
(1)Ni0.80Co0.10Mn0.10(OH)2粉末2.0kg、LiOH・H2O 0.93kg、ナノZrO2 5.78g、WO3 8.10g、及び炭酸ナトリウム4.95gを秤量し、ボールミルで均一に混合した後、混合材料を酸素雰囲気炉に入れて、か焼温度950℃、焼結時間15hでか焼し、反応終了後、冷却、粉砕、及び篩分けをして、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体を得た。
(2)Y23 4.65gをリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体と均一に混合した後、高酸素雰囲気、500℃で10h熱処理し、イットリウムが被覆されたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料を得た。
【0022】
実施例2
(1)Ni0.80Co0.10Mn0.10(OH)2粉末2.0kg、LiOH・H2O 0.93kg、ナノZrO2 5.78g、WO3 8.10g、及び炭酸ナトリウム4.95gを秤量し、ボールミルで均一に混合した後、混合材料を酸素雰囲気炉に入れて、か焼温度930℃、焼結時間20hでか焼し、反応終了後、冷却、粉砕、及び篩分けをして、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体を得た。
(2)Y23 4.65gをリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体と均一に混合した後、高酸素雰囲気、500℃で10h熱処理し、イットリウムが被覆されたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料を得た。
【0023】
実施例3
(1)Ni0.80Co0.10Mn0.10(OH)2粉末2.0kg、LiOH・H2O 0.93kg、ナノZrO2 5.78g、WO3 8.10g、及び炭酸ナトリウム4.95gを秤量し、ボールミルで均一に混合した後、混合材料を酸素雰囲気炉に入れて、か焼温度970℃、焼結時間10hでか焼し、反応終了後、冷却、粉砕、及び篩分けをして、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体を得た。
(2)Y23 4.65gをリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体と均一に混合した後、高酸素雰囲気、500℃で10h熱処理し、イットリウムが被覆されたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料を得た。
【0024】
比較例1
実施例1と比較して、ドーパントがジルコニアのみである点のみは相違する。
【0025】
比較例2
実施例1と比較して、ドーパントにはWO3が添加されていない点のみは相違する。
【0026】
比較例3
実施例1と比較して、ドーパントには炭酸ナトリウムが添加されていない点のみは相違する。
【0027】
比較例4
実施例1と比較して、ドーパントにはジルコニアが添加されていない点のみは相違する。
【0028】
比較例5
実施例1と比較して、一次焼結の温度が870℃である点のみは相違する。
【0029】
比較例6
実施例1と比較して、一次焼結の温度が1050℃である点のみは相違する。
【0030】
試験群
本発明の実施例1及び比較例1~6で製造された正極材料に対してSEMテストを行った結果を図1~7及び表1に示す。
【0031】
本発明の実施例1及び比較例1~6で製造された正極材料を、導電剤のアセチレンカーボンブラック及び結着剤のPVDFのそれぞれと92:4:4の質量比で均一に混合し、適量の1-メチル-2ピロリドンを加え、1時間ボールミリングしてスラリーを形成し、アルミニウムシート上に均一に塗布し、乾燥させ、プレスして正極板を製造した。金属リチウムシートを負極として2032ボタン電池を組み立て、LANDテストシステムを使用して電気的特性テストを行い、充放電電圧を3.0~4.3Vとし、最初のサイクルでは0.2C/0.2Cで充放電し、その後1C/1Cで200サイクル行い、結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1から分かるように、比較例1~6と比較して、本発明の実施例1で製造されたリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料は、単結晶サイズが大きく、分散性が良好で、放電比容量が高く、また、良好なサイクリング安定性を備えることが分かった。
【0034】
実施例1と比較して、比較例1で得られた高ニッケル単結晶正極材料は、平均粒径が大きいものの、放電比容量及びサイクル特性が依然として劣った。その原因としては、比較例1では、ジルコニアのみが添加されており、酸化タングステン及び炭酸ナトリウムによる作用がないため、その焼結温度が高すぎ、電気化学的特性が依然として劣ることにある。
【0035】
実施例1と比較して、比較例2で得られた高ニッケル単結晶正極材料は、平均粒径が大きいものの、放電比容量及びサイクル特性も依然として劣った。その原因としては、比較例2では、酸化タングステンが添加されておらず、系において導電性を向上させ、一次粒子を微細化する酸化タングステンの作用を奏し得ず、その結果、比較例2で得られた高ニッケル単結晶正極材料の電気化学的特性が劣ることにある。
【0036】
実施例1と比較して、比較例3で得られた高ニッケル単結晶正極材料は、平均粒径が顕著に低下し、また放電比容量及びサイクル特性が劣った。その原因としては、比較例3では、炭酸ナトリウムが添加されておらず、酸化タングステンと組み合わせて機能して単結晶サイズを増加させ、分散性を向上させることができず、その結果、比較例3で得られた高ニッケル単結晶正極材料の電気化学的特性が劣ることにある。
【0037】
実施例1と比較して、比較例4で得られた高ニッケル単結晶正極材料は、単結晶サイズが大きく、分散性が良好で、放電比容量が高いが、サイクル特性が劣った。その原因としては、比較例4では、ジルコニアがドーピングされていないため、結晶の構造安定性が実施例1よりも低下することにある。
【0038】
実施例1と比較して、比較例5で得られた高ニッケル単結晶正極材料は、平均粒径及びサイクル特性のいずれも顕著に低下した。その原因としては、比較例5では、高焼結温度を上げていないため、得られた正極材料は、単結晶サイズが小さく、分散性が劣り、サイクル特性が顕著に低下することにある。
【0039】
実施例1と比較して、比較例6で得られた高ニッケル単結晶正極材料は、平均粒径が顕著に増大したが、放電比容量及びサイクル特性のいずれも顕著に低下した。その原因としては、比較例6では、焼結温度が高すぎるため、単結晶が過度に成長し、リチウムイオンの輸送経路が長くなり、イオン伝導率が低下し、その結果、容量及びレート特性が低下することにある。
【0040】
上記の本発明の具体的な実施形態は、本発明の保護範囲に対する限定とはならない。本発明の技術的発想に基づいてなされた他の様々な対応する変更及び変形は、すべて本発明の特許請求の範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-06-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法であって、
ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物をリチウム源、ジルコニア、酸化タングステン、炭酸ナトリウムと混合してボールミリングした後、通常の焼結温度よりも60100℃高い温度で一次焼結を行い、粉砕してリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体を得、前記ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物、ジルコニア、酸化タングステン、及び炭酸ナトリウムのモル比は1:(0.001~0.005):(0.001~0.005):(0.001~0.005)であり、前記通常の焼結温度は、ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物とリチウム源を用いた一次焼結DOE試験により得られたニッケル・コバルト・マンガン単結晶正極材料の一次焼結体に対して電気化学的テストを行った結果、放電比容量が最も大きく、単結晶分散性が最も良好な焼結温度であり、前記一次焼結の時間は10~20hであるステップと、
前記リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体を被覆剤と均一に混合した後、二次焼結を行い、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料を得、前記被覆剤は、B、Al、Mg、V、Ti、P、Si、及びYの酸化物又は水酸化物のうちの少なくとも1種であり、被覆剤の添加量は、前記リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料中間体の全量の0.05wt%~5wt%であり、前記二次焼結の温度は200~600℃であり、前記二次焼結の時間は6~24hであるステップと、を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記一次焼結温度は通常の焼結温度よりも70~80℃高いことを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法。
【請求項3】
前記ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物の化学組成は、NixCoyMn1-x-y(OH)2(0.7≦x≦0.95、0.02≦y≦0.25)であり、前記リチウム源は、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、及び塩化リチウムのうちの少なくとも1種であり、前記ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物とリチウム源中のリチウムとのモル比は1:(1.01~1.1)であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法。
【請求項4】
前記ニッケル・コバルト・マンガン水酸化物、ジルコニア、酸化タングステン、及び炭酸ナトリウムのモル比は1:0.002:0.0016:0.002であることを特徴とする請求項に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法。
【請求項5】
一次焼結過程及び二次焼結過程は、いずれも酸素ガスが存在する条件で行われることを特徴とする請求項1に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載のリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料の製造方法によって得られることを特徴とするリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の高ニッケル単結晶正極材料。
【国際調査報告】