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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】滅菌剤及び滅菌剤を用いた滅菌方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 37/16 20060101AFI20241219BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20241219BHJP
   C11D 3/48 20060101ALI20241219BHJP
   C11D 7/18 20060101ALI20241219BHJP
   C11D 7/38 20060101ALI20241219BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20241219BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20241219BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A01N37/16
A61L2/18 102
C11D3/48
C11D7/18
C11D7/38
A01P3/00
A01N59/00 A
A61L27/36 410
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540039
(86)(22)【出願日】2022-12-27
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 CN2022142313
(87)【国際公開番号】W WO2023125531
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111662290.2
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524247514
【氏名又は名称】蘇州昊本生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUZHOU HAOBEN BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 313-1, Building 2, No. 8, Changting Road, High-tech Zone, Suzhou, Jiangsu 215151, China.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】舩本誠一
(72)【発明者】
【氏名】張永巍
【テーマコード(参考)】
4C058
4C081
4H003
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA17
4C058BB07
4C058DD04
4C058DD07
4C058JJ08
4C081AB01
4C081AB11
4C081BA12
4C081CD34
4C081EA01
4H003DA02
4H003EA20
4H003EB10
4H011AA02
4H011BA06
4H011BB06
4H011BB18
4H011BC18
4H011DA13
4H011DF04
(57)【要約】
本願は、脱細胞組織処理の分野に関し、具体的に、滅菌剤及び滅菌剤を用いた滅菌方法を公開し、前記滅菌剤は、過酢酸と過酸化水素を含み、前記過酢酸及び過酸化水素の体積用量比が1:(0.26~84.5)であり、前記滅菌剤は、脱細胞中の生体組織の滅菌に用いられる。前記滅菌方法は、生体組織を取る工程と、生体組織を滅菌剤に入れて滅菌する工程であって、滅菌温度が3~38℃である工程と、を含む。本願は、脱細胞処理前に、生体組織を良好に滅菌することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌剤であって、
過酢酸と過酸化水素を含み、前記過酢酸及び過酸化水素の体積用量比が1:(0.26~84.5)であり、前記滅菌剤は、脱細胞中の生体組織の滅菌に用いられる
ことを特徴とする滅菌剤。
【請求項2】
過酢酸、過酸化水素及び溶剤を含み、前記滅菌剤のうち、前記過酢酸の濃度は0.098~1.844ml/Lであり、前記過酸化水素の濃度は0.484~8.281ml/Lである
ことを特徴とする請求項1に記載の滅菌剤。
【請求項3】
前記滅菌剤のうち、前記過酢酸の濃度は0.195~0.922ml/Lである
ことを特徴とする請求項2に記載の滅菌剤。
【請求項4】
前記滅菌剤のうち、前記過酸化水素の濃度は0.977~4.141ml/Lである
ことを特徴とする請求項3に記載の滅菌剤。
【請求項5】
前記溶剤は、生理食塩水、MEM緩衝液、DMEM緩衝液、PBS緩衝液のうちの少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項2に記載の滅菌剤。
【請求項6】
滅菌方法であって、
生体組織を取る工程と、
生体組織を滅菌剤に入れて滅菌する工程であって、滅菌温度が3~38℃である工程と、を含む
ことを特徴とする滅菌方法。
【請求項7】
前記滅菌温度は4℃であり、前記滅菌剤のうち、前記過酢酸の濃度は0.391~0.922ml/Lである
ことを特徴とする請求項6に記載の滅菌方法。
【請求項8】
前記滅菌剤のうち、前記過酸化水素の濃度は1.953~4.141ml/Lである
ことを特徴とする請求項7に記載の滅菌方法。
【請求項9】
前記滅菌温度は37℃であり、前記滅菌剤のうち、前記過酢酸の濃度は0.195~0.461ml/Lである
ことを特徴とする請求項6に記載の滅菌方法。
【請求項10】
前記滅菌剤のうち、前記過酸化水素の濃度は0.977~2.07ml/Lである
ことを特徴とする請求項9に記載の滅菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、脱細胞組織処理の分野に関し、より具体的には、滅菌剤及び滅菌剤を用いた滅菌方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脱細胞組織は生体由来の材料であり、ヒト又はヒト組織と同様の構造を持つ動物由来組織を処理し、組織中の免疫原性成分を取り除いた後に得られるものである。脱細胞化素材は、再生医療の足場材料及び創傷修復を促進する材料などの分野で頻繁に使用されており、その効率性から注目を集めている。
【0003】
研究または臨床に用いられる脱細胞化組織の作製時に、清潔環境で原材料としての動物組織を採取し、その後、動物由来組織に対して種々の脱細胞処理を行う。しかし、清潔な環境で取られた動物組織であっても、それ自体に細菌及びウイルスが付着している可能性もあるため、脱細胞組織の研究及び臨床使用の場合において、最終的に脱細胞処理の終了後に、滅菌処理が行われ、脱細胞組織の移植後における患者が発熱や細菌感染などの症状を引き起こすことを防止している。
【0004】
発明者は、残存組織の除去などの脱細胞化処理前の工程において、既存の細菌の繁殖の誘起および外部操作による細菌汚染により、いずれも場合においても処理時における生体組織の細菌を増加を抑制できず、よって後の操作に影響を与えることを発見した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脱細胞処理前に、生体組織を良好に滅菌するために、本願は、滅菌剤及び滅菌剤を用いた滅菌方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様では、本願は、滅菌剤を提供し、下記の技術案を用いる。
【0007】
滅菌剤であって、過酢酸と過酸化水素を含み、前記過酢酸及び過酸化水素の体積用量比が1:(0.26~84.5)であり、前記滅菌剤は、脱細胞中の生体組織の滅菌に用いられる。
【0008】
好ましくは、滅菌剤であって、過酢酸、過酸化水素及び溶剤を含み、前記過酢酸の濃度は0.098~1.844ml/Lであり、前記過酸化水素の濃度は0.484~8.281ml/Lである。
【0009】
好ましくは、前記過酢酸の濃度は0.195~0.922ml/Lである。
【0010】
好ましくは、前記過酸化水素の濃度は0.977~4.141ml/Lである。
【0011】
好ましくは、前記溶剤は、生理食塩水、MEM緩衝液、DMEM緩衝液、PBS緩衝液のうちの少なくとも一つを含む。
【0012】
第2態様では、本願は、滅菌方法を提供し、下記の技術案を用いる。
【0013】
滅菌方法であって、
生体組織を取る工程と、
生体組織を滅菌剤に入れて滅菌する工程であって、滅菌温度が3~38℃である工程と、を含む。
【0014】
好ましくは、前記滅菌温度は4℃であり、前記過酢酸の濃度は0.391~0.922ml/Lである。
【0015】
好ましくは、前記過酸化水素の濃度は1.953~4.141ml/Lである。
【0016】
好ましくは、前記滅菌温度は37℃であり、前記過酢酸の濃度は0.195~0.461ml/Lである。
【0017】
好ましくは、前記過酸化水素の濃度は0.977~2.07ml/Lである。
【0018】
好ましくは、前記滅菌時間は3~24時間である。
【発明の効果】
【0019】
要するに、本願は下記の有益効果を有する。
【0020】
1、本願では、過酢酸及び過酸化水素を所定の用量比に応じて滅菌剤として配合し、その後、滅菌剤を剥離細胞処理過程中の生体組織の滅菌に適用し、良好な滅菌効果を取得する。
【0021】
2、本願では、過酢酸及び過酸化水素の用量比を制御し、よって過酸化水素が過酢酸の滅菌効果に対して優れた補助役割を果たすことができるようになり、同時に、本願では、滅菌の温度等の条件を制御し、よって滅菌剤がよりよい滅菌効果を持つようになる。
【0022】
3、本願では、過酸化水素及び生理食塩水を用いて過酢酸を希釈し、よって滅菌剤が良好な滅菌効果を持つようになると同時に、滅菌剤による生体組織のコラーゲン構造の破壊を低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は滅菌処理が行われていない生体組織コラーゲン構造図である。
図2図2は本願の実施例1の生体組織コラーゲン構造図である。
図3図3は本願の実施例14の生体組織コラーゲン構造図である。
図4図4は本願の実施例15の生体組織コラーゲン構造図である。
図5図5は本願の実施例23の生体組織コラーゲン構造図である。
図6図6は本願の比較例1の生体組織コラーゲン構造図である。
図7図7は本願の比較例2の生体組織コラーゲン構造図である。
図8図8は本願の比較例5の生体組織コラーゲン構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1~8及び実施例を参照しながら、本願をさらに詳しく説明する。
【0025】
脱細胞化材料は、再生医療の足場材料及び創傷修復を促進する材料などの分野で使用され、その意義が非常に重要であるため、常に注目されている。脱細胞の製造プロセスは、通常に、不潔な組織の除去、組織の洗浄、脱細胞化処理などの工程を含む。そして、脱細胞組織の破損による患者の感染などの症状を低減させるために、一般的に、脱細胞処理の終了後、脱細胞組織に対して滅菌処理を行う。
【0026】
しかしながら、発明者は、脱細胞処理の前に、環境影響、操作テクニック及び生体組織の自体によっては、いずれも細菌の増殖及び増加を引き起こし、さらに後の操作に影響してしまうことを発見した。従って、発明者は、脱細胞処理前に、生体組織に対して滅菌することも重要であると認定している。
【0027】
体内移植医療材料の臨床使用時の滅菌基準要求について、滅菌された物品における微生物の生存確率は100万分の1未満でなければならない。この基準を満たすことができる滅菌方法としては、通常に、加熱法、照射法、ガス滅菌法、濾過法、滅菌剤処理法などがある。脱細胞組織の生体組織特性及び様々な滅菌法の特徴を考慮すると、発明者は、滅菌剤を用いて脱細胞化加工前の組織滅菌処理を行う。発明者は、研究において、過酢酸がペンチレングリコール、次亜塩素酸ナトリウム、エタノール等のような他の滅菌剤よりも、生体組織の滅菌にさらに適合する。
【0028】
しかし、発明者は、研究において、単独で過酢酸溶液を用いる場合に、過酢酸の濃度をうまく制御しないと、最終的な滅菌効果に影響しやすくなるが、過酢酸の濃度増加に伴って、生体組織のコラーゲン構造も破壊されてしまう。従って、発明者は、過酸化水素を選択して生理食塩水又は緩衝液に配合して過酢酸を希釈し、生体組織のコラーゲン構造に対する破壊度合をよく制御することができる。
【0029】
滅菌剤の効果をさらに向上させるために、発明者は、滅菌温度及び時間を研究してみたが、発明者は、滅菌温度を制御した結果、過酢酸の濃度と滅菌温度との間に規則的なパターンがないことを発見した。発明者は、いろいろ研究した結果、滅菌温度が4℃、過酢酸の濃度が0.391~0.922ml/L、且つ過酸化水素の濃度が1.953~4.141ml/Lである場合に、滅菌剤による生体組織の滅菌効果が優れ、且つ生体組織のコラーゲン構造が比較的に完全することを発見した。滅菌温度が37℃、過酢酸の濃度が0.195~0.461ml/L、且つ過酸化水素の濃度が0.977~2.07ml/Lである場合に、滅菌剤による生体組織の滅菌効果が優れ、且つ生体組織のコラーゲン構造が比較的に完全する。
実施例
実施例1
【0030】
実施例1は滅菌剤を提供し、滅菌剤は過酢酸、過酸化水素及び溶剤を含み、滅菌剤において、過酢酸の濃度は1.563ml/Lであり、過酸化水素の濃度は7.813ml/Lであり、溶剤は生理食塩水である。
【0031】
滅菌剤の調製方法:
過酢酸及び過酸化水素の水溶液を原液として取り、過酢酸の濃度が50ml/Lであり、過酸化水素の濃度が250ml/Lである。生理食塩水を利用して原液を段階的に希釈し、本実施例の希釈回数は5回であり、希釈倍数は32倍である。
【0032】
一次希釈:25mlの原液と25mlの生理食塩水を取って混合させ、一次混合液を取得する。
【0033】
二次希釈:25mlの一次混合液と25mlの生理食塩水を取って混合させ、二次混合液を取得する。
【0034】
三次希釈:25mlの二次混合液と25mlの生理食塩水を取って混合させ、三次混合液を取得する。
【0035】
四次希釈:25mlの三次混合液と25mlの生理食塩水を取って混合させ、四次混合液を取得する。
【0036】
五次希釈:25mlの四次混合液と25mlの生理食塩水を取って混合させ、滅菌剤を取得する。なお、さらに希釈する必要がある場合に、上記工程を繰り返すればいい。
【0037】
実施例1は、下記の工程を含む滅菌方法をさらに提供する。
【0038】
生体組織を取り、本実施例における生体組織の原材料が市販の鶏ハツであり、生体組織が1立方センチメートルの四角い小片である。
【0039】
生体組織を滅菌剤に置いて、4℃の環境で、3時間処理し、滅菌を完成する。
実施例2~6
【0040】
実施例2~6と実施例1との相違点としては、滅菌過程での温度及び時間の相違であり、具体的に、表1を参照する。
【0041】
表1 実施例1~6の滅菌条件パラメータデーブル
実施例7
【0042】
実施例7における滅菌剤は、実施例1における滅菌剤との相違点として、原液を6回希釈し、希釈倍数が64倍であり、滅菌剤を取得し、滅菌剤のうち、過酢酸の濃度が0.781ml/L、過酸化水素の濃度が3.906ml/Lであることにある。
実施例8~12
【0043】
実施例8~12と実施例7との相違点としては、滅菌過程での温度及び時間の相違であり、具体的に、表2を参照する。
【0044】
表2 実施例7~12の滅菌条件パラメータデーブル
実施例13
【0045】
実施例13は、実施例1との相違点として、原液を7回希釈し、希釈倍数が128倍であり、滅菌剤を取得し、滅菌剤のうち、過酢酸の濃度が0.391ml/L、過酸化水素の濃度が1.953ml/Lであることにある。
実施例14~18
【0046】
実施例14~18と実施例13との相違点としては、滅菌過程での温度及び時間の相違であり、具体的に、表3を参照する。
【0047】
表3 実施例13~18の滅菌条件パラメータデーブル
実施例19
【0048】
実施例19は、実施例1との相違点として、原液を8回希釈し、希釈倍数が256倍であり、滅菌剤を取得し、滅菌剤のうち、過酢酸の濃度が0.195ml/L、過酸化水素の濃度が0.977ml/Lであることにある。
実施例20
【0049】
実施例20~24と実施例19との相違点としては、滅菌過程での温度及び時間の相違であり、具体的に、表4を参照する。
【0050】
表4 実施例19~24の滅菌条件パラメータデーブル
実施例25
【0051】
実施例25は、実施例1との相違点として、原液を9回希釈し、希釈倍数が512倍であり、滅菌剤を取得し、滅菌剤のうち、過酢酸の濃度が0.098ml/L、過酸化水素の濃度が0.484ml/Lであることにある。
実施例26
【0052】
実施例26~30と実施例25との相違点としては、滅菌過程での温度及び時間の相違であり、具体的に、表5を参照する。
【0053】
表5 実施例25~30の滅菌条件パラメータデーブル
実施例31~36
【0054】
実施例31~36と実施例1との相違点としては、過酢酸及び過酸化水素の濃度の相違、滅菌条件の相違にある。同時に、滅菌剤を調製する過程で、過酢酸及び過酸化水素の水溶液が原液とし、過酢酸の濃度が59ml/L、過酸化水素の濃度が265ml/Lである。具体的に表6を参照する。
【0055】
表6 実施例31~36の滅菌剤の成分濃度表
実施例37
【0056】
実施例37は、実施例13との相違点として、溶剤がMEM緩衝液であることにある。
実施例38
【0057】
実施例38は実施例13との相違点として、溶剤がDMEM緩衝液であることにある。
実施例39
【0058】
実施例39は、実施例13との相違点として、溶剤がPBS緩衝液であることにある。
実施例40
【0059】
実施例40は、実施例13との相違点として、滅菌剤であって、過酢酸、過酸化水素及び溶剤を含み、過酢酸の濃度が0.391ml/L、過酸化水素の濃度が3.125ml/L、溶剤が生理食塩水であることにある。
実施例41
【0060】
実施例41は、実施例13との相違点として、滅菌剤であって、過酢酸、過酸化水素及び溶剤を含み、過酢酸の濃度が0.596ml/L、過酸化水素の濃度が1.953ml/L、溶剤が生理食塩水であることにある。
実施例42
【0061】
実施例42は、実施例13との相違点として、滅菌剤であって、過酢酸、過酸化水素及び溶剤を含み、過酢酸の濃度が0.098ml/L、過酸化水素の濃度が8.281ml/L、溶剤が生理食塩水であることにある。
実施例43
【0062】
実施例43は、実施例13との相違点として、滅菌剤であって、過酢酸、過酸化水素及び溶剤を含み、過酢酸の濃度が1.844ml/L、過酸化水素の濃度が0.484ml/L、溶剤が生理食塩水であることにある。
比較例
比較例1
【0063】
比較例1は、実施例1との相違点として、滅菌剤であって、過酢酸、過酸化水素及び溶剤を含み、過酢酸の濃度が50ml/L、過酸化水素の濃度が250ml/L、溶剤が生理食塩水であることにある。
【0064】
比較例1の滅菌方法は、下記の工程を含む。
【0065】
生体組織を取り、本実施例における生体組織の原材料が市販の鶏ハツであり、生体組織が1立方センチメートルの四角い小片である。
【0066】
生体組織を滅菌剤に置いて、4℃の環境で、3時間処理し、滅菌を完成する。
比較例2
【0067】
比較例2は、比較例1との相違点として、生体組織を滅菌剤に置いて、4℃の環境で、12時間処理し、滅菌を完成する。
比較例3
【0068】
比較例3は、実施例1との相違点として、滅菌剤であって、過酢酸、過酸化水素及び溶剤を含み、過酢酸の濃度が3.125ml/L、過酸化水素の濃度が15.625ml/L、溶剤が生理食塩水であることにある。
【0069】
比較例3の滅菌方法は、下記の工程を含む。
【0070】
生体組織を取り、本実施例における生体組織の原材料が市販の鶏ハツであり、生体組織が1立方センチメートルの四角い小片である。
【0071】
生体組織を滅菌剤に置いて、4℃の環境で、3時間処理し、滅菌を完成する。
比較例4
【0072】
比較例4は、実施例1との相違点として、滅菌剤であって、過酢酸、過酸化水素及び溶剤を含み、過酢酸の濃度が50ml/L、過酸化水素の濃度が250ml/L、溶剤が生理食塩水であることにある。
【0073】
比較例4の滅菌方法は、下記の工程を含む。
【0074】
生体組織を取り、本実施例における生体組織の原材料が市販の鶏ハツであり、生体組織が1立方センチメートルの四角い小片である。
【0075】
生体組織を滅菌剤に置いて、37℃の環境で、3時間処理し、滅菌を完成する。
比較例5
【0076】
比較例5は、比較例4との相違点として、生体組織を滅菌剤に置いて、37℃の環境で、12時間処理し、滅菌を完成する。
比較例6
【0077】
比較例6は、実施例1との相違点として、滅菌剤であって、過酢酸、過酸化水素及び溶剤を含み、過酢酸の濃度が3.125ml/L、過酸化水素の濃度が15.625ml/L、溶剤が生理食塩水であることにある。
【0078】
比較例6の滅菌方法は、下記の工程を含む。
【0079】
生体組織を取り、本実施例における生体組織の原材料が市販の鶏ハツであり、生体組織が1立方センチメートルの四角い小片である。
【0080】
生体組織を滅菌剤に置いて、37℃の環境で、3時間処理し、滅菌を完成する。
比較例7
【0081】
比較例7は、実施例13との相違点として、滅菌剤であって、過酢酸及び溶剤を含み、過酢酸の濃度が0.391ml/L、溶剤が生理食塩水であることにある。
比較例8
【0082】
比較例8は、実施例13との相違点として、滅菌剤であって、過酸化水素及び溶剤を含み、過酸化水素の濃度が1.953ml/Lであることにある。
性能検出試験
【0083】
一、滅菌効果評価:
実施例1~43和及び比較例1~8の滅菌後の生体組織に対して滅菌効果を検出し、具体的な操作は下記である。
1.滅菌後の生体組織を洗浄し、滅菌剤を除去し、
2.その後、生体組織を滅菌生理食塩水に加入して24時間洗浄し、洗浄後に生理食塩水を除去し、
3.生体組織を10wt%ウシ胎児血清(FBS)含有の4mlのE-MEM培養液に加入し、24時間培養し、
4.溶解した寒天培地を10cmの細胞培養皿に注入し、冷却後に、培養後のE-MEM培養液で100万倍希釈し、100μlの希釈後培養液を寒天培地に注入して、37℃の環境で48時間培養し、
5.培養後、寒天ゲル上の菌株をカウントして評価する。
【0084】
検出結果は、表7に示す。
表7:過酢酸処理後の細菌数量表


【0085】
二、滅菌後の組織構造評価。
実施例1~43及び比較例1~8の滅菌後の生体組織に対してコラーゲン組織の検出を行い、具体的な操作は下記である。
1.滅菌後の生体組織を洗浄し、滅菌剤を除去し、
2.その後、生体組織を滅菌生理食塩水に加入して24時間洗浄し、洗浄後に生理食塩水を除去し、
3.処理後の生体組織を4wt%のパラホルムアルデヒドに入れて12時間組織固定し、
4.下記の流れに応じてアルコールを用いて組織に対して段階的な脱水置換を行い、70wt%のアルコールで5時間処理し、80wt%のアルコールで5時間処理し、90wt%のアルコールで5時間処理し、100wt%のアルコールで5時間処理し、キシレンで5時間処理する。
5.パラフィンを用いて組織を埋め込み、その後、組織を7μmのパラフィンセクションにカットし、
6.パラフィンセクションについてHE(ヘマトキシリンエオジン)染色し、染色後、封入剤を用いてシールし、最後に顕微鏡でセクションを観察することによって組織コラーゲン構造変化を評価する。
【0086】
ここで、実施例1、実施例14、実施例15、実施例23、比較例2、比較例3、比較例6及び未滅菌の生体組織コラーゲン構造を図1~8に示す。
データ分析
【0087】
実施例1~6の検出結果から分かるように、滅菌剤の滅菌効果は良好である。同時に、実施例7~9の検出結果を比較した結果、過酢酸の濃度が0.781ml/L、過酸化水素の濃度が3.906ml/Lである場合に、実施例7の滅菌後の生体組織に依然として細菌があることを発見し、且つ実施例13~15、実施例19~21、実施例25~27の検出結果を参照して分かるように、過酢酸及び過酸化水素の濃度が低下すると、滅菌効果が悪くなる。
【0088】
実施例7~9及び実施例10~12の滅菌効果、実施例13及び実施例16の滅菌効果、実施例19~20及び実施例22~23の検出結果を比較して分かるように、37℃の滅菌効果は4℃の滅菌効果よりもよく、温度の向上が滅菌に寄与することが表される。しかし、実施例16~18の検出結果を比較し、実施例22~24の検出結果を比較し、実施例28~30の検出結果を比較した結果、滅菌時間の増加に伴って、細菌は逆に多くなり、滅菌効果と時間に関係がないことが表される。
【0089】
比較例実施例1の生体組織のコラーゲン構造発明で、この濃度の滅菌剤は、生体組織のコラーゲン構造に一定の破壊を与えると同時に、比較例1及び比較例2の生体組織のコラーゲン構造を比較した結果、比較例1及び比較例2の生体組織のコラーゲン構造の破壊がもっと深刻になることが発見され、高い濃度の滅菌剤について滅菌効果が比較的によいが、生体組織のコラーゲン構造を影響することが表され、また、実施例14及び実施例15の生体組織のコラーゲン構造が破壊されないことが発見され、実施例14及び実施例15の滅菌剤濃度がもっと適当であることが表される。そして、比較例5及び比較例4の生体組織的コラーゲン構造の比較から分かるように、温度が高くなる場合に、生体組織のコラーゲン構造をより大きく破壊する。
【0090】
しかしながら、実施例10、実施例7、実施例16及び実施例13の滅菌効果を比較した結果、濃度及び温度が単独で低下する場合よりも、濃度及び温度がいずれも低下する場合に、滅菌効果がより多く低下することが発見され、実施例8、実施例14及び実施例17の検出結果の比較から分かるように、濃度及び温度が単独で低下する場合よりも、温度及び濃度がいずれも低下する場合に、滅菌効果が変わらない。実施例9、実施例18及び実施例15の滅菌効果を比較した結果、濃度が単独で低下する場合よりも、温度及び濃度がいずれも低下する場合に、滅菌効果が悪くなる。温度及び濃度が同時に滅菌剤の滅菌効果に複合の影響を発生することが表される。そして、発明者は、滅菌温度が4℃、過酢酸の濃度が0.391~0.922ml/L、且つ過酸化水素の濃度が1.953~4.141ml/Lである場合に、滅菌剤による生体組織の滅菌効果が優れ、且つ生体組織のコラーゲン構造が比較的に完全することを発見した。滅菌温度が37℃、過酢酸の濃度が0.195~0.461ml/L、且つ過酸化水素の濃度が0.977~2.07ml/Lである場合に、滅菌剤による生体組織の滅菌効果が優れ、且つ生体組織のコラーゲン構造が比較的に完全する。
【0091】
実施例37~38の検出結果から分かるように、緩衝液の選択は滅菌効果にあまり影響がなく、緩衝液は主に細胞組織の膨潤を減らすために用いられる。また、実施例40及び実施例41の検出結果から分かるように、過酢酸及び過酸化水素の用量比は滅菌効果に影響するが、実施例42、実施例43及び比較例7、比較例8の検出結果から分かるように、主に殺菌作用を果たすものは過酢酸であり、過酸化水素は主に過酢酸を補助する役割を果たす。
【0092】
本具体的な実施例は本願の説明にすぎず、本願を制限するものではなく、当業者は本明細書を読んだ後、必要に応じて本実施例に対して創造的な貢献を伴わない補正を行うことができるが、本願の特許請求の範囲内であれば、すべて専利法によって保護される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】