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特表2024-547199車両のアクティブノイズリダクション方法及び機器、記憶媒体
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  • 特表-車両のアクティブノイズリダクション方法及び機器、記憶媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】車両のアクティブノイズリダクション方法及び機器、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20241219BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
G10K11/178 100
B60R11/02 S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540059
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2022132878
(87)【国際公開番号】W WO2023124629
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111683122.1
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524248072
【氏名又は名称】蘇州茹声電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】沐永生
(72)【発明者】
【氏名】馬登永
(72)【発明者】
【氏名】叶超
(72)【発明者】
【氏名】蔡野鋒
【テーマコード(参考)】
3D020
5D061
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BC04
3D020BC06
3D020BC11
5D061FF02
(57)【要約】
【課題】本発明は、車両のアクティブノイズリダクション方法及び機器を開示する。
【解決手段】このアクティブノイズリダクション方法は、ノイズリダクションすべき対象ノイズに基づいて参考信号を生成し、音響再生装置にフィードバックする制御信号を生成するステップと、参考信号をフィルタリングし、エラー信号に基づいてノイズ信号を推定し、補助制御パラメータを更新するステップと、フィルタリング後の参考信号、ノイズ信号、及び補助制御パラメータに基づいてエラー信号を更新するステップと、更新されたエラー信号及び補助制御パラメータに基づいて制御パラメータを更新するステップと、を含む。本発明は、車内のノイズ汚染を低減させることができ、速い収束速度を持つ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズリダクションすべき対象ノイズの角周波数ωに基づいて2つの参考信号x(n)及びx(n)を生成するステップS1であって、nが時刻を表すステップS1と、
下記の式(1)により制御信号y(n)を生成し、音響再生装置にフィードバックするステップS2であって、
【数1】
(n)が現在時刻の制御フィルタ係数を表すステップS2と、
ステップS1で得られた参考信号をフィルタリングし、下記の式(2)に示すフィルタリングした参考信号
【数2】
を得るステップS3であって、
【数3】
k=0、1、...N-1、Nがフィルタの長さを表し、sがセカンダリチャネルの伝達関数モデルフィルタの係数を表し、セカンダリチャネルの伝達関数が、音響再生装置から音響信号収集装置までの伝達経路の数学的モデルであり、x(n-k)がi番目の参考信号の後からk番目のサンプリング時刻的数値を表すステップS3と、
下記の式(3)によりノイズ信号
【数4】
を推定するステップS4であって、
【数5】
e(n)が信号処理におけるエラー信号を表し、y(n-k)がスピーカーにフィードバックする制御信号の最初k個のサンプリング時刻の数値を表すステップS4と、を含む車両のアクティブノイズリダクション方法であって、
前記アクティブノイズリダクション方法は、
下記の式(4)により補助制御パラメータ
【数6】
を更新するステップS5であって、
【数7】
λが制約因子を表し、w(n-1)が、後から1番目のサンプリング時刻の制御フィルタ係数を表すステップS5と、
下記の式(5)により新しい補助制御パラメータによるエラー信号
【数8】
を算出するステップS6と、
【数9】
下記の式(6)により制御パラメータを更新するステップS7であって、
【数10】
μが収束因子を表し、w(n+1)が今後の1番目のサンプリング時刻の制御フィルタ係数を表すステップS7と、をさらに含む
ことを特徴とする車両のアクティブノイズリダクション方法。
【請求項2】
ステップS1では、2つの参考信号x(n)及びx(n)をそれぞれ下記の式に示す、
(n)=sin(ωn)
(n)=cos(ωn)
ことを特徴とする請求項1に記載のアクティブノイズリダクション方法。
【請求項3】
ステップS2では、前記音響再生装置はカースピーカーである
ことを特徴とする請求項1に記載のアクティブノイズリダクション方法。
【請求項4】
前記カースピーカーは、ヘッドレストスピーカー、天井スピーカー、ドアパネルスピーカーの少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項3に記載のアクティブノイズリダクション方法。
【請求項5】
ステップS4では、前記エラー信号e(n)は、マイクによって収集され取得される
ことを特徴とする請求項1に記載のアクティブノイズリダクション方法。
【請求項6】
ノイズリダクションすべき対象ノイズは、車両エンジンによるノイズである
ことを特徴とする請求項1に記載のアクティブノイズリダクション方法。
【請求項7】
メモリ、プロセッサ、及びメモリに記憶されプロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを含む車両のアクティブノイズリダクション機器であって、
前記プロセッサは、前記プログラムを実行する時に、請求項1から6のいずれか一項に記載のアクティブノイズリダクション方法を実現する
ことを特徴とする車両のアクティブノイズリダクション機器。
【請求項8】
前記アクティブノイズリダクション機器は、前記制御信号y(n)に基づいて電気音響変換を実行するための音響再生装置をさらに含む
ことを特徴とする請求項7に記載のアクティブノイズリダクション機器。
【請求項9】
前記音響再生装置は、車両のコンパートメント内に配置されるカースピーカーを含む
ことを特徴とする請求項8に記載のアクティブノイズリダクション方法。
【請求項10】
前記カースピーカーは、ヘッドレストスピーカー、天井スピーカー、ドアパネルスピーカーの少なくとも一つを含む
ことを特徴とする請求項9に記載のアクティブノイズリダクション方法。
【請求項11】
前記アクティブノイズリダクション機器は、車両のコンパートメント内に配置され、前記エラー信号を収集するためのマイクをさらに含む
ことを特徴とする請求項7に記載のアクティブ ノイズリダクション機器。
【請求項12】
コンピュータプログラムが記憶され、このプログラムはプロセッサによって実行される時に、請求項1から6のいずれか一項に記載のアクティブノイズリダクション方法を実現する
ことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年12月31日に提出された、出願番号CNCN2021116831221の中国専利出願の優先権を請求する。
【0002】
本発明は、自動車ノイズ制御分野に属し、車両のアクティブノイズリダクション方法及び機器、記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
現代産業の発展に伴い、ノイズ公害の問題はますます多くの人々の注目を集めていき、高強度のノイズ信号も聴取者の快適さに影響を与えている。サウンドマスキング効果により、より高い信号対雑音比及びよりクリアなリスニング効果を得るには、音量を上げる必要がある。これによって引き起こされる長時間にわたる高い音圧は、聴覚に回復不可能な損傷を与えてしまう。車両のインテリジェント化が進むにつれて、運転手及び同乗者は、車内の音響環境に対する要求をますます厳しくしている。車内のノイズは、運転手及び同乗者の快適性を低下させ、車内の同乗者のイライラや疲労を引き起こし、また、交流通話の明瞭さに影響を与え、さらには車外の信号音に対する運転手の知覚にも影響を及ぼし、交通リストを増加させる。自動車のNVH(Noise,Vibration,Harshness)は、自動車メーカーが懸念している重要な問題である。構造設計を変更したり、制振材を追加したり、ショックアブソーバースプリングなどの装置を使用したりして、ノイズを低減する方法は、パッシブノイズ制御と総称され、中高周波のノイズに対して比較的によいノイズリダクション効果が得られる。しかしながら、このような方法は、低周波への効果が比較的悪く、特に車室内のエンジンノイズが低周波において集中することが多いである。さらに、パッシブノイズ制御には長い調整時間が必要であり、コストの管理も困難である。アクティブノイズリダクションの方案は、カーオーディオシステムを使用してノイズ信号の逆信号を構築し、二次音波を形成してターゲットエリアのノイズを相殺し、ノイズ汚染を低減し、主観的なリスニングの快適さを向上させるが、車に追加重量をほとんど加えず、排気ガスの削減に貢献し、環境に優しい省エネ解決方案である。
【0004】
LMSアルゴリズムは、従来のカーアクティブノイズリダクションカ解決策であるが、その収束速度が遅い。その後、従来のLMSアルゴリズムに重み係数の増加によるモーメント項目が追加された、モーメント(momentum)に基づくFxLMS(Filtered-x,Least Mean Square)アルゴリズムが提出される。モーメントに基づくFxLMSアルゴリズムは、従来のLMSアルゴリズムの収束速度を改良するが、この方法の収束速度は依然として遅い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、車両エンジンのノイズに対してアクティブノイズリダクションを行い、車内ノイズ汚染を低減させることができ、速い収束速度を有する車両のアクティブノイズリダクション方法を提供することを一目的とする。
【0006】
本発明は、上記アクティブノイズリダクション方法を用いる車両アクティブノイズリダクション機器を提供することを他の一目的とする。
【0007】
本発明は、上記アクティブノイズリダクション方法を実現できるプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供することを第3目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、
ノイズリダクションすべき対象ノイズの角周波数ωに基づいて2つの参考信号x(n)及びx(n)を生成するステップS1であって、nが時刻を表すステップS1と、
下記の式(1)により制御信号y(n)を生成し、音響再生装置にフィードバックするステップS2であって、
【数1】
(n)が現在時刻(時刻n)の制御フィルタ係数を表し、この係数が適応的に更新されるものであり、ステップS5で詳細に説明されるステップS2と、
ステップS1で得られた参考信号をフィルタリングし、下記の式(2)に示すフィルタリングした参考信号
【数2】
を得るステップS3であって、
【数3】
k=0、1、...N-1、Nがフィルタの長さを表し、sがセカンダリチャネルの伝達関数モデルフィルタの係数を表し、セカンダリチャネルの伝達関数が、音響再生装置(スピーカー)から音響信号収集装置(マイク)までの伝達経路の数学的モデルであり、x(n-k)がi番目の参考信号の後からk番目のサンプリング時刻的数値を表すステップS3と、
下記の式(3)によりノイズ信号
【数4】
を推定するステップS4であって、
【数5】
e(n)が信号処理におけるエラー信号を表し、実際、物理的にマイクで収集された信号であり、y(n-k)がスピーカーにフィードバックする制御信号の最初k個のサンプリング時刻の数値を表すステップS4と、を含む車両のアクティブノイズリダクション方法であって、
前記アクティブノイズリダクション方法は、
下記の式(4)により補助制御パラメータ
【数6】
を更新するステップS5であって、
【数7】
λが制約因子を表し、小さい定数であり、 (n-1)が、後から1番目のサンプリング時刻の制御フィルタ係数を表すステップS5と、
下記の式(5)により新しい補助制御パラメータによるエラー信号
【数8】
を算出するステップS6と、
【数9】
下記の式(6)により制御パラメータを更新するステップS7であって、
【数10】
μが収束因子を表し、w(n+1)が今後の1番目のサンプリング時刻の制御フィルタ係数を表すステップS7と、を含む車両のアクティブノイズリダクション方法が提供される。
【0009】
本明細書で、参照信号は、実際物理上、車両エンジンの回転速度に基づいてノイズリダクションすべき対象ノイズの角周波数ωを算出し、これによって生成した高調波信号を指し、制御信号は、パワーアンプデバイスによって増幅された後、音響再生装置(例えばスピーカーのボイスコイル)に送信され、電気音響変換が行われ、ノイズを相殺するための二次音波が形成され、e(n)は、信号処理の意味での誤差信号を表し、実際物理上、コンパートメント内においてノイズリダクション領域での集音装置(例えばマイク)によって収集された信号である。
【0010】
「フィルタの長さ」とは、フィルタリングの回数を指し、ここでフィルタのゼロポイント番号であり、フィルタリングの回数が高いほど、周波数分解能が高くなり、精度が高くなり、効果が良くなる。
【0011】
一実施例において、ステップS1では、関数メソッドに従って2つの参考信号x(n)及びx(n)を生成し、それぞれ下記の式に示す。
(n)=sin(ωn)
(n)=cos(ωn)
【0012】
一実施例において、ステップS2では、前記音響再生装置は、カースピーカーである。
【0013】
一実施例において、ステップS4では、前記エラー信号e(n)は、マイクによって収集され取得される。
【0014】
本明細書では、ノイズリダクションすべき対象ノイズは、車両エンジンによるノイズである。上記したカースピーカーは、車両のコンパートメント内に配置され、或いは少なくとも車両のコンパートメントへ音声を放射し、ヘッドレストスピーカー、天井スピーカー、ドアパネルスピーカーなどを含むが、これらに限定されなく、上記したマイクは、車両のコンパートメント内に配置され、或いは少なくとも車両のコンパートメント内の音声信号を収集することができる。
【0015】
本発明の第2態様は、メモリ、プロセッサ、及びメモリに記憶されプロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを含み、前記プロセッサが前記プログラムを実行する時に、上記したアクティブノイズリダクション方法を実現するアクティブノイズリダクション機器が提供される。
【0016】
一実施例において、前記アクティブ ノイズリダクション機器は、前記制御信号y(n)に基づいて電気音響変換を実行するための音響再生装置をさらに含む。
【0017】
一実施例において、前記音響再生装置はカースピーカーを含む。カースピーカーは、車両のコンパートメント内に配置され、或いは少なくとも車両のコンパートメントへ音声を放射し、ヘッドレストスピーカー、天井スピーカー、ドアパネルスピーカーなどを含むが、これらに限定されない。
【0018】
一実施例において、前記アクティブノイズリダクション機器は、前記エラー信号を収集するためのマイクをさらに含む。マイクは、車両のコンパートメント内に配置され、或いは少なくとも車両のコンパートメント内の音声信号を収集することができる。
【0019】
本発明の第3態様は、コンピュータプログラムが記憶され、このプログラムがプロセッサによって実行される時に、上記したアクティブノイズリダクション方法を実現するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明は上記解決策を用いると、従来技術に比べて下記の利点を有する。
本発明の車両エンジンノイズに対する車両アクティブノイズリダクション方法では、制御パラメータの更新において、補助の制御パラメータ
【数11】
を反復のベースとして用い、且つエラー信号の選択したものは、補助の制御パラメータに基づいて得られたエラー信号
【数12】
であり、モーメント(momentum)は早めに制御パラメータを改良し、アルゴリズムは、速いで収束することができると同時に、カーオーディオシステムを利用して、ノイズ信号のカウンタ信号を構築し、二次音波を形成し、対象領域内のノイズを相殺し、ノイズ汚染を軽減し、主観的なリスニングの快適さを向上させる。
【0021】
本発明の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に使用する必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明する図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的作業の必要がない前提で、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例に係るアクティブノイズリダクション方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例に係るアクティブノイズリダクション方法のアルゴリズムブロック図である。
図3】本発明の実施例に係るアクティブノイズリダクション機器のブロック図である。
図4】反復回数に応じて変化するノイズエネルギーの比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の利点及び特徴が当業者によって理解されやすくするように、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。なお、これらの実施形態についての説明は、本発明の理解に寄与するが、本発明に対する限定を構成しない。
【0024】
パッシブノイズ制御とは異なって、従来のLMSアルゴリズムは、カーオーディオシステムを使用してノイズ信号の逆信号を構築し、二次音波を形成してターゲットエリアのノイズを相殺し、ノイズ汚染を低減し、主観的なリスニングの快適さを向上させると同時に、車に追加重量をほとんど加えず、排気ガスの削減に貢献し、環境に優しい省エネ解決方案である。しかしながら、従来のLMSアルゴリズムの収束速度が遅く、ノイズ低減の目標量を達成するには、1か月あたり4000回以上の反復が必要である。これにより、momentumに基づくFxLMSアルゴリズムがさらに提供され、従来のLMSアルゴリズムに重み係数の増加によるモーメント項目が追加され、このモーメント項目の式が与えられる。
w(n+1)=w(n)-2uf(n)x(n)+α[w(n)-w(n-1)]
【0025】
この式の最後項目は、モーメント(momentum)項目である。しかしながら、このようなmomentumに基づくFxLMSアルゴリズムの収束速度は依然として遅い。
本実施例では、アルゴリズムの収束速度をさらに向上させ、従来のFxLMSアルゴリズムよりも収束が速く、momentumに基づくFxLMSアルゴリズムよりも収束が速くする改良されたモーメント項目に基づくカーアクティブノイズリダクション方法が提供される。図1はこの方法のフローチャートを示し、図2は、改良されたmomentumに基づくFxLMSアルゴリズムのブロック図を示す。図1及び図2を参照し、以下、このアクティブノイズリダクション方法を具体的に説明する。
【0026】
(1)参考信号の生成:各サンプリング時刻に、ノイズリダクションすべき対象ノイズの角周波数ωに基づいて、参考信号、即ち正弦波信号及び余弦波信号を生成する。ノイズリダクションすべき対象ノイズは、車両エンジンによるコンパートメント内のノイズである。
本実施例では、関数メソッドにより参考信号
(n)=sin(ωn)
(n)=cos(ωn)
を生成する。
【0027】
(2)制御信号の生成:現在時刻のパラメータw(n)及び先のステップで得られた参考信号に基づいて、制御信号y(n)を生成し、カーオーディオシステムのスピーカー等の音響再生ユニットにフィードバックし、このスピーカーは、車両のコンパートメント内に配置されるカースピーカーであり、エンジンによるコンパートメント内のノイズを相殺するように、コンパートメント内へ二次音波を再生するためのものである。
【数13】
【0028】
(4)フィルタリング後の参考信号の生成:FxLMSアルゴリズムにおいて最も重要なステップは、参考信号をフィルタリングすることである。一般的に、セカンダリチャネルチャンネルの伝達関数は、デジタル制御信号y(n)が、DACモジュール、アナログフィルタ、パワーアンプモジュール、スピーカー、空間における音波の伝播、マイク、アナログフィルタ、ADCモジュールという伝送経路を経由することを含む。セカンダリチャネルの伝達関数Sは、オンラインまたはオフラインのシステム識別方法によって取得され、S′として表現され、長さNのデジタルフィルタであり、S′=[s,s,…sN-1]として表される。算出して得られたサンプリングされた参照信号は、下記である。
【数14】
【0029】
(5)ノイズ信号を推定する。マイクによって収集されたエラー信号e(n)に基づいて、セカンダリチャネル伝達関数の推定を合わせると、実際のノイズフィールド信号
【数15】
を算出することができる。マイクは、具体的にコンパートメント内に配置されるマイクであり、それが現在時刻のコンパートメント内の音声信号を収集し、さらに現在実際のノイズフィールド信号を推定する。
ここで、MFxLMSアルゴリズムの構造を適用し、新たにノイズ信号を推定する必要があり、具体的には、
【数16】
である。
【0030】
(6)補助制御パラメータ
【数17】
を更新する。これは、前時刻のパラメータw(n)及びmomentum項目を合わせた係数である。
【数18】
【0031】
(7)新しい補助制御パラメータ
【数19】
によるエラー信号を算出する。推定したノイズ信号、フィルタリング後の参考信号及び補助の制御パラメータが適用された。セカンダリチャネルの伝達関数の推定が正確であれば、それが、真実の物理チャンネルの伝達関数と一致すると認められると、推定したノイズ信号及びフィルタリング後の参考信号は真実の状況とは相違がないと認められる。この場合に、エラー信号
【数20】
と、マイクで収取されたエラー信号e(n)との間の相違は、制御パラメータ
【数21】
とw(n)との相違である。一方、両者の相違は、momentum項目である。つまり、改良したmomentum項目が、従来のmomentumに基づくFxLMSアルゴリズムとは異なる部分である。Momentum項目による制御パラメータへの改良はさらに早くなるので、アルゴリズムの収束速度がより速くなる。具体的な計算式は、下記である。
【数22】
【0032】
(8)制御パラメータw(n)を更新する。この式は、従来のFxLMSアルゴリズムの制御パラメータの更新計算式と類似する。相違としては、ここで補助の制御パラメータ
【数23】
を反復のベースとして使用し、また、エラー信号が選択したものは、補助の制御パラメータに基づいて得られたエラー信号
【数24】
であることであるが、そのまま、マイクから収集したエラー信号e(n)ではない。具体的な式は、下記である。
【数25】
【0033】
図3に示すように、本実施例の車両のアクティブノイズリダクション機器によれば、メモリ102、プロセッサ101、及びメモリに記憶されプロセッサ101で実行可能なコンピュータプログラムを含み、前記プロセッサ101が前記プログラムを実行する時に、上記したアクティブノイズリダクション方法を実現する。このメモリ102、プロセッサ101は、カーオーディオシステムの構成部分であり、即ちこのアクティブノイズリダクション機器は、カーオーディオシステムを利用してアクティブノイズ制御を行う。このアクティブノイズリダクション機器は、制御信号y(n)に基づいて電気音響変換を実行するための音響再生装置103をさらに含み、具体的に、カーオーディオシステムのカースピーカーは、ヘッドレストスピーカー、天井スピーカー、ドアパネルスピーカーなどを含むが、これらに限定されない。このアクティブ ノイズリダクション機器は、コンパートメントのノイズリダクションすべき領域に配置され、エラー信号を収集するためのマイク104をさらに含む。
シミュレーション例
【0034】
アルゴリズムの収束性能をシミュレートする。シミュレーション試験で、対象ノイズは、単一周波数信号で、周波数が167Hzであり、これは、アクティブノイズ制御であり、特にカーアクティブノイズ制御において出る一般的な制御帯域内の周波数である。実際的なノイズ環境を考えると、環境ノイズをホワイトノイズに設定する。全体のノイズ信号の信号対雑音比は、10dBである。従来のFxLMS(Filtered-x Least Mean Square)アルゴリズム、momentumに基づくFxLMSアルゴリズムと、本実施例の改良したMFxLMSアルゴリズムとをそれぞれ用いてアクティブノイズ制御のシミュレーションを行う。図4は、残りのノイズのエネルギーが適応制御アルゴリズムの反復回数に応じて変化する関係を示す。図4から分かるように、従来のFxLMSアルゴリズムは、ノイズを効果的に低減させることができるが、アルゴリズムの収束が比較的に遅く、7dBのノイズリダクションを達成するには4000回の反復が必要である一方、momentumに基づくFxLMSアルゴリズムは、従来のFxLMSアルゴリズムと相当するノイズリダクションを実現できるが、収束速度がより速く、2500回の反復後に収束を達成するが、本実施例で提出される、改良されたmomentumに基づくMFxLMSアルゴリズムの収束速度がさらに速く、1800回の反復だけで収束を達成する。
【0035】
当業者は、特に明記しない限り、ここで使用される単数形「一」、「一つ」、「前記」、及び「この」には複数形も含まれてもよいと理解する。さらに、本出願の明細書で使用される「含む」という用語は、特徴、整数、ステップ、操作、素子、及び/又はコンポーネントの存在を指すが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、素子、コンポーネント、及び/又はそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことを理解すべきである。
【0036】
上記実施例は、本発明の技術的思想及び特徴を説明するためのものに過ぎず、好ましい実施例であり、その目的として、この技術を知っている人が本発明の内容を了解してこれによって実施することができるが、これにより本発明の保護範囲を制限することができない。本発明の思想によれば実質的に行われた同等変更又は修飾はいずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】