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特表2024-547200アクティブノイズリダクションによる車両ロードノイズ制御方法及びシステム、電子機器並びに記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】アクティブノイズリダクションによる車両ロードノイズ制御方法及びシステム、電子機器並びに記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20241219BHJP
   B60R 11/02 20060101ALN20241219BHJP
【FI】
G10K11/178 140
B60R11/02 S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540549
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2022132881
(87)【国際公開番号】W WO2023124630
(87)【国際公開日】2023-07-06
(31)【優先権主張番号】202111683326.5
(32)【優先日】2021-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524248072
【氏名又は名称】蘇州茹声電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】沐永生
(72)【発明者】
【氏名】馬登永
(72)【発明者】
【氏名】叶超
(72)【発明者】
【氏名】蔡野鋒
【テーマコード(参考)】
3D020
5D061
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BC04
3D020BC06
3D020BC11
5D061FF02
(57)【要約】
【課題】アクティブノイズリダクションによる車両ロードノイズ制御方法及びシステム、電子機器、記憶媒体を提供する。
【解決手段】車両ロードノイズ制御方法としては、車両ロードノイズのマルチチャンネル参照信号を収集するステップと、現在時刻のフィルタ係数、及びマルチチャンネル参照信号に基づいて制御信号を生成し、車両の音声再生装置にフィードするステップと、車両コンパートメント内の複数のサンプリング位置の音声信号を収集し、誤差信号のベクトルを取得するステップと、参照信号をフィルタリングして、フィルタリングされた参照信号を得るステップと、フィルタリングされた参照信号を行列形式として記載するステップと、フィルタリングされた参照信号の行列形式及び誤差信号のベクトルに基づいてフィルタ係数を更新するステップと、を含む。車両タイヤと路面との摩擦によるロードノイズに対してアクティブノイズリダクションを行い、車内ノイズ汚染を低減させることができ、速い収束速度、及び優れた精度を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ロードノイズのマルチチャンネル参照信号を収集するステップS1であって、x(n)と記し、k=1,2,…,Kであり、Kが参照信号のチャンネル数であり、nがサンプリング時刻を表すステップS1と、
現在時刻のフィルタ係数、及び前記マルチチャンネル参照信号に基づいて制御信号を生成し、車両の音声再生装置にフィードするステップS2と、を含むアクティブノイズリダクションによる車両ロードノイズ制御方法であって、
前記車両ロードノイズ制御方法は、さらに、
車両コンパートメント内の複数のサンプリング位置の音声信号を収集し、誤差信号のベクトルe(n)を取得するステップS3と、
前記参照信号をフィルタリングして、フィルタリングされた参照信号
【数1】
を得るステップS4であって、下式に示すように、
【数2】
Nがフィルタ長、Lが音声再生ユニットのチャンネル数、Mがサンプリング位置の数、sl,mがl番目のスピーカーからm番目のサンプリング位置までの間の伝達関数を表し、sl,m(i)がこのフィルタのi番目の係数、x(n-i)が最初i個のサンプリング時刻のk番目の参照信号を表すステップS4と、
フィルタリングされた参照信号を下式に示す行列形式として記載するステップS5であって、
【数3】
【数4】
【数5】
がK・L行、M列というサイズの行列を表し、行列の要素が現在サンプリング時刻のフィルタリングされた参照信号
【数6】
から構成され、
【数7】
がK・L・N行、M列というサイズの行列を表し、行列の要素が現在サンプリング時刻及び履歴サンプリング時刻のフィルタリングされた参照信号から構成され、
【数8】
がK・L行、M列というサイズの行列を表し、行列の要素が先のN-1番時刻のフィルタリングされた参照信号
【数9】
から構成され、∈RK・L×MがK・L行、M列である行列を表し、∈RK・L・N×MがK・L・N行、M列である行列を表すステップS5と、
ステップS2における前記フィルタ係数を下式に従って更新するステップS6であって、
【数10】
w(n+1)が更新されたフィルタ係数を表し、次のサンプリング時刻n+1にフィルタリングして出力される制御信号を生成するためのものであり、w(n)が現在時刻のフィルタ係数を表し、μが収束因子、δが正則化因子、Iが単位行列であるステップS6と、を含む
ことを特徴とする車両ロードノイズ制御方法。
【請求項2】
フィルタ係数w(n)の行列形式は、
w(n)=[[w1,1(0),…,wJ,K(0)]…[w1,1(N-1),…,wJ,K(N-1)]]∈RK・L・N×1であり、
∈RK・L・N×1は、K・L・N行、1列である行列を表し、
ステップS2で、前記制御信号は下式に示すように、
【数11】
k,l(i)は、w(n)行列における要素で、具体的には、入力がk番目の参照信号、出力がl番目の音声再生装置であるフィルタのi次係数を表し、このようなフィルタは全部でK・L個あり、次数がNであり、K・L個のフィルタの各次iを配列の形式[w1,1(i),…,wJ,K(i)]として組み合わせ、すべての次係数が一緒にw(n)を構成する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両ロードノイズ制御方法。
【請求項3】
ステップS1で、振動センサにより、ホイールと路面との摩擦によって発生する振動信号を前記参照信号として収集する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両ロードノイズ制御方法。
【請求項4】
前記振動センサは、車両の底板に設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の車両ロードノイズ制御方法。
【請求項5】
ステップS1で、第1マイクにより、ホイールと路面との摩擦によって発生するノイズ信号を前記参照信号として収集する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両ロードノイズ制御方法。
【請求項6】
前記第1マイクは、車両の付近のホイールの箇所に設けられる
ことを特徴とする請求項5に記載の車両ロードノイズ制御方法。
【請求項7】
ステップS2で、前記音声再生装置は、車両のコンパートメント内に設けられるカースピーカーを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の車両ロードノイズ制御方法。
【請求項8】
ステップS3で、複数の第2マイクにより、車両コンパートメント内の音声信号を収集し、前記複数の第2マイクは、車両コンパートメント内の複数のサンプリング位置に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の車両ロードノイズ制御方法。
【請求項9】
アクティブノイズリダクションによる車両ロードノイズ制御システムであって、
ホイールと路面との摩擦によるノイズ又は振動信号を収集するためのロードノイズ収集装置と、
前記ロードノイズ収集装置によって収集されたノイズ又は振動信号に基づいてマルチチャンネル参照信号を生成し、また現在時刻のフィルタ係数及び前記マルチチャンネル参照信号に基づいて制御信号を生成するための制御装置と、
前記制御装置から送信された制御信号に基づいて、コンパートメント内にノイズを相殺するための二次音波を形成するための音声再生装置と、
コンパートメントの複数の位置の音声信号を収集して誤差信号のベクトルe(n)を取得するための誤差信号収集装置と、を含み、
前記制御装置は、前記参照信号をフィルタリングし、行列形式として記し、フィルタリングされた参照信号の行列形式及び誤差信号のベクトルに基づいて、下式によりフィルタ係数を更新するためのものでもあり、
【数12】
w(n+1)が更新されたフィルタ係数を表し、w(n)が現在時刻のフィルタ係数を表し、μが収束因子、
【数13】
がフィルタリングされた参照信号の行列形式、δが正則化因子、Iが単位行列である
ことを特徴とするアクティブノイズリダクションによる車両ロードノイズ制御システム。
【請求項10】
前記ロードノイズ収集装置は、車両の底板に設けられる振動センサ、又は車両の付近ホイールの箇所に設けられる第1マイクを含み、前記誤差信号収集装置は、車両コンパートメント内の複数のサンプリング位置に設けられる第2マイクを含む
ことを特徴とする請求項9に記載の車両ロードノイズ制御システム。
【請求項11】
前記音声再生装置は、車両のコンパートメント内に設けられるカースピーカーを含む
ことを特徴とする請求項9に記載の車両ロードノイズ制御システム。
【請求項12】
前記コントローラは、
前記参照信号をフィルタリングして、フィルタリングされた参照信号
【数14】
を得るためのものであり、下式に示すように、
【数15】
Nがフィルタ長、Lが音声再生ユニットのチャンネル数、Mがサンプリング位置の数、sl,mがl番目のスピーカーからm番目のサンプリング位置までの間の伝達関数を表し、sl,m(i)がこのフィルタのi番目の係数、x(n-i)が最初i個のサンプリング時刻のk番目の参照信号を表し、
フィルタリングされた参照信号を下式に示す行列形式として記載するためのものでもあり、
【数16】
【数17】
【数18】
がK・L行、M列というサイズの行列を表し、行列の要素が現在サンプリング時刻のフィルタリングされた参照信号
【数19】
から構成され、
【数20】
がK・L・N行、M列というサイズの行列を表し、行列の要素が現在サンプリング時刻及び履歴サンプリング時刻のフィルタリングされた参照信号から構成され、
【数21】
がK・L行、M列というサイズの行列を表し、行列の要素が先のN-1番時刻のフィルタリングされた参照信号
【数22】
から構成され、∈RK・L×MがK・L行、M列である行列を表し、∈RK・L・N×MがK・L・N行、M列である行列を表す
ことを特徴とする請求項9に記載の車両ロードノイズ制御システム。
【請求項13】
前記制御信号は下式に示すように、
【数23】
k,l(i)は、w(n)行列における要素で、具体的には、入力がk番目の参照信号、出力がl番目の音声再生装置であるフィルタのi次係数を表す。このようなフィルタは全部でK・L個あり、次数がNであり、K・L個のフィルタの各次iを配列の形式[w1,1(i),…,wJ,K(i)]として組み合わせ、すべての次係数が一緒にw(n)を構成する
ことを特徴とする請求項9に記載の車両ロードノイズ制御システム。
【請求項14】
メモリ、プロセッサ、及びメモリに記憶されプロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを含む電子機器であって、
前記プロセッサは、前記プログラムを実行する時に、請求項1から8のいずれか一項に記載の車両ロードノイズ制御方法を実現する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項15】
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
コンピュータプログラムが記憶され、このプログラムはプロセッサによって実行される時に、請求項1から8のいずれか一項に記載の車両ロードノイズ制御方法を実現する
ことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月31日に提出された、出願番号CN2021116833265の中国専利出願の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、車両ノイズ制御分野に属し、アクティブノイズリダクションによる車両ロードノイズ制御方法及びシステム、電子機器並びに記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
現代産業の発展に伴い、ノイズ公害の問題はますます多くの人々の注目を集めていき、高強度のノイズ信号も聴取者の快適さに影響を与えている。サウンドマスキング効果により、より高い信号対雑音比及びよりクリアなリスニング効果を得るには、音量を上げる必要がある。これによって引き起こされる長時間にわたる高い音圧は、聴覚に回復不可能な損傷を与えてしまう。車両のインテリジェント化が進むにつれて、運転手及び同乗者は、車内の音響環境に対する要求をますます厳しくしている。車内のノイズは、運転手及び同乗者の快適性を低下させ、車内の同乗者のイライラや疲労を引き起こし、また、交流通話の明瞭さに影響を与え、さらには車外の信号音に対する運転手の知覚にも影響を及ぼし、交通リストを増加させる。自動車のNVH(Noise,Vibration,Harshness)は、自動車メーカーが懸念している重要な問題である。構造設計を変更したり、制振材を追加したり、ショックアブソーバースプリングなどの装置を使用したりして、ノイズを低減する方法は、パッシブノイズ制御と総称され、中高周波のノイズに対して比較的によいノイズリダクション効果が得られる。しかし、この方法は低周波、特に路面とタイヤとの衝突や摩擦によって発生するロードノイズに対して、効果が弱く、これらのノイズは低周波に集中することが多い。さらに、パッシブノイズ制御には長い調整時間が必要であり、コストの管理も困難である。アクティブ ノイズリダクションの方案は、カーオーディオシステムを使用してノイズ信号の逆信号を構築し、二次音波を形成してターゲットエリアのノイズを相殺し、ノイズ汚染を低減し、主観的なリスニングの快適さを向上させると同時に、車に追加重量をほとんど加えず、排気ガスの削減に貢献し、環境に優しい省エネ解決方案である。
【0004】
FxLMS(Filtered-x Least Mean Square)アルゴリズムは、アクティブノイズ制御でよく使用されるものであり、リソースを算出する消費が少なく、アルゴリズムの堅牢性がよいため、広く使用されている。ただし、FxLMSアルゴリズムには収束が遅いという問題があり、多くの場合に単一チャネル(SISO,Single Input Single Output)のアルゴリズムである。ロードノイズの制御にはマルチチャネルアルゴリズム(MIMO,Multiple Inputs Multiple Outputs)が必要であるが、「A Diffusion Strategy for the Multichannel Active Noise Control System in Distributed Network」,Ju-man Song,2016、及び「Multichannel Feedforward Active Noise Control System with Optimal Reference Microphone Selector Based on Time Difference of Arrival」,Kenta Iwai,2018等の記事で紹介されるマルチチャンネルのNFxLMSアルゴリズムにおいて、いずれもチャンネル間が直交するものであることが考えられ、結合項の影響が無視されるため、ある程度の誤差が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、車両タイヤと路面との摩擦によるロードノイズに対してアクティブノイズリダクションを行い、車内ノイズ汚染を低減させることができ、且つ速い収束速度及び高い正確率を有するアクティブノイズリダクションによる車両ロードノイズ制御方法及びシステムを提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、上記車両ロードノイズ制御方法を実行することができる電子機器を提供することを他の目的とする。
【0007】
本発明は、上記車両ロードノイズ制御方法を実現することができるプログラムが記憶されるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体をさらに提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、
車両ロードノイズのマルチチャンネル参照信号を収集するステップS1であって、
(n)と記し、k=1,2,…,Kであり、Kが参照信号のチャンネル数であり、nがサンプリング時刻を表すステップS1と、
現在時刻のフィルタ係数、及び前記マルチチャンネル参照信号に基づいて制御信号を生成し、車両の音声再生装置にフィードするステップS2と、
車両コンパートメント内の複数のサンプリング位置の音声信号を収集し、誤差信号のベクトルe(n)を取得するステップS3と、
前記参照信号をフィルタリングして、フィルタリングされた参照信号
【数1】
を得るステップS4であって、下式に示すように、
【数2】
Nがフィルタ長、Lが音声再生ユニットのチャンネル数、Mがサンプリング位置の数、sl,mがl番目のスピーカーからm番目のサンプリング位置までの間の伝達関数を表し、次数Nの有限長のフィルタであり、sl,m(i)がこのフィルタのi番目の係数、
(n-i)が最初i個のサンプリング時刻のk番目の参照信号を表すステップS4と、
フィルタリングされた参照信号を下式に示す行列形式として記載するステップS5であって、
【数3】
【数4】
【数5】
がK・L行、M列というサイズの行列を表し、行列の要素が現在サンプリング時刻のフィルタリングされた参照信号
【数6】
から構成され、
【数7】
がK・L・N行、M列というサイズの行列を表し、行列の要素が現在サンプリング時刻及び履歴サンプリング時刻のフィルタリングされた参照信号から構成され、
【数8】
がK・L行、M列というサイズの行列を表し、行列の要素が先のN-1番時刻のフィルタリングされた参照信号
【数9】
から構成され、∈RK・L×MがK・L行、M列である行列を表し、∈RK・L・N×MがK・L・N行、M列である行列を表すステップS5と、
ステップS2における前記フィルタ係数を下式に従って更新するステップS6であって、
【数10】
w(n+1)が更新されたフィルタ係数を表し、w(n)が現在時刻のフィルタ係数を表し、μが収束因子、δが正則化因子、Iが単位行列であるステップS6と、を含むアクティブノイズリダクションによる車両ロードノイズ制御方法が提供される。
【0009】
本明細書で、参照信号は、実際物理上、ホイールと路面との摩擦によるサスペンション及びボディエンドの振動信号又はノイズ信号を指し、制御信号は、パワーアンプデバイスによって増幅された後、音声再生装置(例えばスピーカーのボイスコイル)に送信され、電気音響変換が行われ、ノイズを相殺するための二次音波が形成され、e(n)は、信号処理の意味での誤差信号を表し、実際物理上、コンパートメント内においてノイズリダクション領域での集音装置(例えばマイク)によって収集された信号である。
【0010】
「フィルタの長さ」とはフィルタの次数を指し、ここでフィルタのゼロの数を指し、次数が高いほど、フィルタの周波数分解能が高く、精度が高く、効果も高くなる。
【0011】
一実施例において、フィルタ係数w(n)の行列形式は、
w(n)=[[w1,1(0),…,wJ,K(0)]…[w1,1(N-1),…,wJ,K(N-1)]]∈RK・L・N×1であり、
∈RK・L・N×1は、K・L・N行、1列である行列を表し、
ステップS2で、前記制御信号は下式に示すように、
【数11】
k,l(i)は、w(n)行列における要素で、具体的には、入力がk番目の参照信号、出力がl番目の音声再生装置であるフィルタのi次係数を表す。このようなフィルタは全部でK・L個あり、次数がNであり、K・L個のフィルタの各次iを配列の形式[w1,1(i),…,wJ,K(i)]として組み合わせ、すべての次係数が一緒にw(n)を構成する。
【0012】
一実施例において、ステップS1で、振動センサにより、ホイールと路面との摩擦によって発生する振動信号を前記参照信号として収集する。
【0013】
一実施例において、前記振動センサは、車両の底板に設けられる。
【0014】
一実施例において、ステップS1で、第1マイクにより、ホイールと路面との摩擦によって発生するノイズ信号を前記参照信号として収集する。
【0015】
一実施例において、前記第1マイクは、車両の付近のホイールの箇所に設けられる。
【0016】
一実施例において、ステップS2で、前記音声再生装置は、車両のコンパートメント内に設けられるカースピーカーを含む。このカースピーカーは、車両のコンパートメント内に配置され、或いは少なくとも車両のコンパートメントへ音声を放射し、ヘッドレストスピーカー、天井スピーカー、ドアパネルスピーカーなどを含むが、これらに限定されない。
【0017】
一実施例において、ステップS3で、複数の第2マイクにより、車両コンパートメント内の音声信号を収集し、前記複数の第2マイクは、車両コンパートメント内の複数のサンプリング位置に配置される。
【0018】
本発明の第2態様は、
ホイールと路面との摩擦によるノイズ又は振動信号を収集するためのロードノイズ収集装置と、
前記ロードノイズ収集装置によって収集されたノイズ又は振動信号に基づいてマルチチャンネル参照信号を生成し、また現在時刻のフィルタ係数及び前記マルチチャンネル参照信号に基づいて制御信号を生成するための制御装置と、
前記制御装置から送信された制御信号に基づいて、コンパートメント内にノイズを相殺するための二次音波を形成するための音声再生装置と、
コンパートメントの複数の位置の音声信号を収集して誤差信号のベクトルe(n)を取得するための誤差信号収集装置と、を含み、
前記制御装置は、前記参照信号をフィルタリングし、行列形式として記し、フィルタリングされた参照信号の行列形式及び誤差信号のベクトルに基づいて、下式によりフィルタ係数を更新するためのものでもあり、
【数12】
w(n+1)が更新されたフィルタ係数を表し、w(n)が現在時刻のフィルタ係数を表し、μが収束因子、
【数13】
がフィルタリングされた参照信号の行列形式、δが正則化因子、Iが単位行列であるアクティブノイズリダクションによる車両ロードノイズ制御システムが提供される。
【0019】
一実施例において、前記参照信号をフィルタリングして、フィルタリングされた参照信号
【数14】
を取得し、下式に示すように、
【数15】
Nがフィルタ長、Lが音声再生ユニットのチャンネル数、Mがサンプリング位置の数、sl,mがl番目のスピーカーからm番目のサンプリング位置までの間の伝達関数を表し、次数Nの有限長のフィルタであり、sl,m(i)がこのフィルタのi番目の係数、x(n-i)が最初i個のサンプリング時刻のk番目の参照信号を表し、
E、フィルタリングされた参照信号を下式に示す行列形式として記載し、
【数16】
【数17】
【数18】
がK・L行、M列というサイズの行列を表し、行列の要素が現在サンプリング時刻のフィルタリングされた参照信号
【数19】
から構成され、
【数20】
がK・L・N行、M列というサイズの行列を表し、行列の要素が現在サンプリング時刻及び履歴サンプリング時刻のフィルタリングされた参照信号から構成され、
【数21】
がK・L行、M列というサイズの行列を表し、行列の要素が先のN-1番時刻のフィルタリングされた参照信号
【数22】
から構成され、∈RK・L×MがK・L行、M列である行列を表し、∈RK・L・N×MがK・L・N行、M列である行列を表す。
【0020】
一実施例において、フィルタ係数w(n)の行列形式は、
w(n)=[[w1,1(0),…,wJ,K(0)]…[w1,1(N-1),…,wJ,K(N-1)]]∈RK・L・N×1であり、
∈RK・K・N×1は、K・L・N行、1列である行列を表し、
ステップS2で、前記制御信号は下式に示すように、
【数23】
k,l(i)は、w(n)行列における要素で、具体的には、入力がk番目の参照信号、出力がl番目の音声再生装置であるフィルタのi次係数を表す。このようなフィルタは全部でK・L個あり、次数がNであり、K・L個のフィルタの各次iを配列の形式[w1,1(i),…,wJ,K(i)]として組み合わせ、すべての次係数が一緒にw(n)を構成する。
【0021】
一実施例において、前記ロードノイズ収集装置は、車両の底板に設けられる振動センサ、又は車両の付近ホイールの箇所に設けられる第1マイクを含む。
【0022】
一実施例において、前記誤差信号収集装置は、車両コンパートメント内の複数のサンプリング位置に設けられる第2マイクを含む。
【0023】
一実施例において、前記音声再生装置はカースピーカーを含む。このカースピーカーは、車両のコンパートメント内に配置され、或いは少なくとも車両のコンパートメントへ音声を放射し、ヘッドレストスピーカー、天井スピーカー、ドアパネルスピーカーなどを含むが、これらに限定されない。
【0024】
本発明の第3態様は、メモリ、プロセッサ、及びメモリに記憶されプロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを含む電子機器であって、前記プロセッサが前記プログラムを実行する時に、上記した車両ロードノイズ制御方法を実現する電子機器が提供される。
【0025】
一実施例において、前記電子機器はカーオーディオシステムである。
【0026】
本発明の第4態様は、コンピュータプログラムが記憶され、このプログラムがプロセッサによって実行される時に、上記した車両ロードノイズ制御方法を実現するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明は上記解決策を用いると、従来技術に比べて下記の利点を有する。
【0028】
本発明の車両ロードノイズ制御方法及びシステムは、タイヤと路面との摩擦によるロードノイズに対して、改良されたマルチチャンネルの正規化FxLMSアルゴリズムを用い、収束因子を正規化し、従来のFxLMSアルゴリズムよりも収束が速く、正規化算出には、チャンネル間の結合が考慮され、従来のマルチチャンネルNFxLMSアルゴリズムよりも算出がより正確であり、収束速度が速い。
【0029】
本発明の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に使用する必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下に説明する図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的作業の必要がない前提で、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施例に係るMIMO MNFxLMSアルゴリズムのフローチャートである。
図2】本発明の実施例に係るMIMO MNFxLMSアルゴリズムのブロック図である。
図3】本発明の実施例に係る車両ロードノイズ制御システムのブロック図である。
図4】MIMO FxLMS、MIMO NFxLMS及びMIMO MNFxLMSという3つのアルゴリズムの位置1での収束性能比較図である。
図5】MIMO FxLMS、MIMO NFxLMS及びMIMO MNFxLMSという3つのアルゴリズムの位置2での収束性能比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の利点及び特徴が当業者によって理解されやすくするように、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施例を詳しく説明する。なお、これらの実施形態についての説明は、本発明の理解に寄与するが、本発明に対する限定を構成しない。
【0032】
本実施例は、車両タイヤと路面との摩擦によるロードノイズに対して改良されたマルチチャンネルの正規化FxLMS(MIMOMNFxLMS,Multiple Inputs Multiple Outputs Modified Normalized Filtered-x Least Mean Squareと記する)アルゴリズムを用いて、アクティブノイズリダクションを行うアクティブノイズリダクションによる車両ロードノイズ制御方法が提供される。図1及び図2に示すように、この方法については下記のように具体的に説明する。
【0033】
(1)参照信号の収集
それぞれのサンプリング時刻nに、センサから参照信号を収集し、例えば振動センサ(典型的には、車両の底板に設けられる)から振動信号を収集し、或いはマイク(典型的には、車両の付近ホイールの箇所に設けられる)から音声信号等を収集する。全部でKチャンネル参照信号があり、x(n),k=1,2,…,Kと記する。
【0034】
(2)制御信号の発生
現在時刻のパラメータwk,l(n)及び先のステップで得られた参照信号に基づいて、制御信号y(n)を生成し、音声再生装置にフィードし、具体的には、本実施例において、音声再生装置はカースピーカーを含む。
【数24】
スピーカーチャンネル数はLであり、アダプティブフィルタの次数はNである。wk,l(i)は、このフィルタは入力がk番目の参照信号であり、出力がl番目の制御音源、つまりここでのスピーカーである。
【0035】
(3)フィルタリングされた参照信号の発生
FxLMSアルゴリズムで最も重要なステップは、参照信号をフィルタリングすることである。一般的に、セカンダリチャネルチャンネルの伝達関数は、デジタル制御信号y(n)が、DACモジュール、アナログフィルタ、パワーアンプモジュール、スピーカー、空間における音波の伝播、マイク、アナログフィルタ、ADCモジュールという伝送経路を経由することを含む。セカンダリチャンネルの伝達関数Sは、オンライン及びオフラインのシステム識別方法によって得られ、S′として記載される。長さがNであるデジタルフィルタであり、sl,m,l=1,2,…,L;m=1,2…Mとして表現され、l番目のスピーカーからm番目のマイクまでの間の伝達関数を表す。Mはマイクの数である。算出して得られたサンプリングされた参照信号は、
【数25】
である。
【0036】
(4)サンプリングされた参照信号を行列の形式として記載する。
【数26】
【数27】
∈RK・L×MはK・L行、M列である行列を表し、∈RK・L・N×Mは、K・L・N行、M列である行列を表す。
【0037】
(5)それぞれのマイクが収集して得られた誤差信号e(n)により、
全部でM個のマイク信号があり、誤差信号のベクトルを取得し、
e(n)=[e(n),…,e(n)]∈RM×1として表される。
【0038】
(6)フィルタを制御するパラメータw(n)を更新し、
【数28】
として表される。
δは正則化因子であり、一般的に経験によって小数を取る。Iは単位行列である。μは収束因子であり、一般的に経験によって1つの数を選択し、その値範囲は、一般的に0~2にある。w(n)の行列形式は、
w(n)=[[w1,1(0),…,wJ,K(0)]…[w1,1(N-1),…,wJ,K(N-1)]]∈RK・L・N×1であり、
k,l(i)の定義は、ステップ(2)で説明された。
【0039】
図3に示すように、本実施例の車両ロードノイズ制御システムは、
ホイールと路面との摩擦によるノイズ又は振動信号を収集するためのロードノイズ収集装置101と、
前記ロードノイズ収集装置101によって収集されたノイズ又は振動信号に基づいてマルチチャンネル参照信号を生成し、また現在時刻のフィルタ係数及び前記マルチチャンネル参照信号に基づいて制御信号を生成するための制御装置102と、
前記制御装置102から送信された制御信号に基づいて、コンパートメント200内にノイズを相殺するための二次音波を形成するための音声再生装置103と、
コンパートメント200の複数の位置の音声信号を収集して誤差信号のベクトルe(n)を取得するための誤差信号収集装置104と、を含み、
前記制御装置102は、前記参照信号をフィルタリングし、行列形式として記し、フィルタリングされた参照信号の行列形式及び誤差信号のベクトルに基づいて、下式によりフィルタ係数を更新するためのものでもあり、
【数29】
w(n+1)が更新されたフィルタ係数を表し、w(n)が現在時刻のフィルタ係数を表し、μが収束因子、
【数30】
がフィルタリングされた参照信号の行列形式、δが正則化因子、Iが単位行列である。
【0040】
ロードノイズ収集装置101は、制御装置102の入力端に電気的に接続され、具体的に車両の底板に設けられる振動センサ、或いは車両の付近ホイールの箇所に設けられる第1マイクを含む。誤差信号収集装置104は、制御装置102の入力端に電気的に接続され、具体的に、車両コンパートメント200内の複数のサンプリング位置に設けられる第2マイクを含む。声重放装置103は制御装置102の出力端に電気的に接続され、カースピーカーを含み、このカースピーカーは、車両のコンパートメント200内に配置され、或いは少なくとも車両のコンパートメントへ音声を放射し、ヘッドレストスピーカー、天井スピーカー、ドアパネルスピーカーなどを含むが、これらに限定されない。
【0041】
シミュレーション例
アルゴリズムの収束性能をシミュレートする。シミュレーション実験では、ターゲットノイズは、ロードノイズの典型的な周波数帯域分布である80Hz~320Hzをカバーする周波数帯域の広帯域信号である。ノイズ信号は、ホワイトノイズ信号がバンドパスフィルタを通じて生成されたものである。参照信号のチャンネル数K=2とし、スピーカーの数L=5とし、誤差信号を収集するマイクの数M=5とする。スピーカーとマイクとの間の伝達関数は、上記したセカンダリチャンネルの伝達関数であり、実車から収集されて得られたものである。シミュレーション実験では、アクティブノイズ制御の前後のノイズエネルギーの反復回数(時間にも対応する)による変化関係をそれぞれ比較し、さらに重要なのは、従来のマルチチャネルFxLMSアルゴリズム(MIMO FxLMS)、従来のマルチチャンネルの正規化FxlMSアルゴリズム(MIMO NFxLMS)、及び本発明で提出される改良された正規化FxLMSアルゴリズム(MIMO MNFxLMS)を比較することである。図4は、1番目の位置での残留ノイズ信号振幅の反復による変化関係を示し、図4からわかるように、従来のFxLMSアルゴリズムは、一定のノイズリダクション効果があり、正規化が採用された後、アルゴリズムはより速く収束する一方、本発明の改良された正規化アルゴリズムを使用すると、より速い収束効果が達成される。図5は、5番目の位置での残留ノイズ信号振幅の反復による変化関係を示し、図5からわかるように、従来のFxLMSアルゴリズムは、ノイズ低減効果がほとんどなく、正規化が採用され処理した後、明らかなノイズリダクション効果を奏し、本発明の改良された正規化アルゴリズムが採用され、チャネル間の結合効果が考慮されると、より速い収束速度及びより大きなノイズリダクション量を達成することができる。
【0042】
当業者は、特に明記しない限り、ここで使用される単数形「一」、「1つ」、「前記」、及び「この」には複数形も含まれてもよいと理解する。さらに、本出願の明細書で使用される「含む」という用語は、特徴、整数、ステップ、操作、素子、及び/又はコンポーネントの存在を指すが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、素子、コンポーネント、及び/又はそれらのグループの存在または追加を排除するものではないことを理解すべきである。
【0043】
さらに、本開示における「複数」は2つ以上を指し、他の数量詞もそれに類似することが理解される。「及び/又は」は関連対象の関連関係を説明するものであり、三種類の関係が存在することができると表され、例えば「A及び/又はB」は、単独でAが存在すること、同時にAとBが存在すること、単独でBが存在することという三種類の状況を表すことができる。文字「/」は、一般的に前後関連オブジェクトが「又は」という関係であることを示す。単数形の「1つ」、「前記」、「この」には、文脈で明確に別の意味がない限り、複数形も含まれる。
【0044】
さらに、「第1」、「第2」などの用語は、様々な情報を説明するためのものであるが、これらの情報はこれらの用語に限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は、同じタイプの情報を互いに区別するためのものに過ぎず、特定の順序や重要度合を意味するものではない。実際に、「第1」、「第2」などの表現は互換的に使用されることができる。例えば、本開示の範囲を逸脱しない限り、第1情報を第2情報とも呼ぶことができ、同様に、第2情報を第1情報とも呼ぶことができる。
【0045】
上記実施例は、本発明の技術的思想及び特徴を説明するためのものに過ぎず、好ましい実施例であり、その目的として、この技術を知っている人が本発明の内容を了解してこれによって実施することができるが、これにより本発明の保護範囲を制限することができない。本発明の思想によれば実質的に行われた同等変更又は修飾はいずれも本発明の保護範囲に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】