(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法
(51)【国際特許分類】
C21B 5/00 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
C21B5/00 323
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541073
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 CN2022078015
(87)【国際公開番号】W WO2023142213
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210100899.9
(32)【優先日】2022-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522116856
【氏名又は名称】江蘇省沙鋼鋼鉄研究院有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】523485526
【氏名又は名称】江蘇沙鋼鋼鉄有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ ファタオ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ ピン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン シャオブォ
(72)【発明者】
【氏名】ヂュ ファ
(72)【発明者】
【氏名】ヂュ デェァグゥイ
(57)【要約】
本発明は、データベースを構築するステップと、次の運転段階に対する高炉運転パラメータの設定命令を生成するために、第1所定条件を満たす高炉運転パラメータをデータベースから選択するステップと、を含み、第1所定条件は、PD<所定値PD0であることを含み、且つ該条件を満たしつつ、PUの最小値に対応する高炉運転パラメータが選択されることである、周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集された生産履歴における下部ガス流平均超数PD、上部ガス流平均超数PU、高炉原料パラメータ、分配システムパラメータ、送風システムパラメータ、冷却システムパラメータを含む高炉運転パラメータのデータベースを構築するステップと、
次の運転段階に対する高炉運転パラメータの設定命令を生成するために、第1所定条件を満たす高炉運転パラメータを前記データベースから選択するステップと、を含み、
前記第1所定条件は、下部ガス流平均超数PD<所定値PD0であることを含み、且つPD<PD0の条件を満たしつつ、上部ガス流平均超数PUの最小値に対応する高炉運転パラメータが選択されることであり、
前記下部ガス流平均超数PD、上部ガス流平均超数PUをカウントするにおいて、
k=5、6、…、12について、第k段の冷却壁の温度標準偏差ΔT
kと高炉の熱負荷標準偏差ΔTLとの間の相関係数R
kをそれぞれ算出し、
第5段から第9段までの冷却壁のうち、相関係数R
kが最も大きい段の冷却壁に対応するガス流平均超数をカウントし、それを下部ガス流平均超数PDとし、
第10段から第12段までの冷却壁のうち、相関係数R
kが最も大きい段の冷却壁に対応するガス流平均超数をカウントし、それを上部ガス流平均超数PUとする、ことを特徴とする周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項2】
「高炉運転パラメータのデータベースを構築する」前記ステップは、カウントされた前記下部ガス流平均超数PDを大きさ順にランク付けし、異なる区間範囲の下部ガス流平均超数PDを得て、同じランクに属する各高炉運転パラメータに対して平均値を求めるステップを含み、
前記第1所定条件は、下部ガス流平均超数PDの属するランクの区間範囲内の最大値<所定値PD0であることを含み、且つ該条件を満たしつつ、上部ガス流平均超数PUの最小値に対応する高炉運転パラメータの平均値が選択されることである、ことを特徴とする請求項1に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項3】
第k段の冷却壁の温度標準偏差ΔT
kと高炉の熱負荷標準偏差ΔTLとの間の相関係数
【数1】
であり、
式中、
【数2】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔT
kとΔTLの標本共分散であり、
【数3】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔT
kの分散であり、
【数4】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔTLの分散である、ことを特徴とする請求項1に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項4】
前記第k段の冷却壁の温度標準偏差
【数5】
であり、
式中、mが、第k段の冷却壁における温度収集点の数であり、j=1、…、mであり、T
iが、第k段の冷却壁におけるある温度収集点のi番目の温度データであり、nが、単位時間内の温度サンプル数であり、i=1、…、nであり、
【数6】
が、単位時間内の平均温度である、ことを特徴とする請求項3に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項5】
前記冷却壁の温度を前記冷却壁に配置された熱電対により収集し、サンプルデータセットに対して異常値を除去し、不安定な運転状態でのデータを除去し、処理された最終的なサンプルデータセットを得る、ことを特徴とする請求項4に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項6】
前記冷却壁の熱負荷標準偏差
【数7】
であり、
式中、TL
iが、i番目の温度データを収集する時の高炉の熱負荷であり、nが、単位時間内の熱負荷サンプル数であり、i=1、…、nであり、
【数8】
が、単位時間内の平均熱負荷である、ことを特徴とする請求項3に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項7】
前記高炉の熱負荷
【数9】
であり、
式中、cが、水の比熱容量であり、Fが、冷却壁における冷却水の流量であり、T
outが、冷却壁の出水温度であり、T
inが、冷却壁の取水温度である、ことを特徴とする請求項6に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項8】
前記ガス流平均超数をカウントするプロセスが、
冷却壁における複数の温度データを収集し、前記複数の温度データを収集時間に従って順序付けるステップと、
前記複数の温度データのうちの外乱温度データを除去し、複数の分析温度データを決定するステップと、
前記複数の分析温度データの決定順序に応じて、各分析温度データに対して順に移動平均処理を行うステップと、
移動平均処理された各分析温度データT
pを基にしてガス流平均超数をカウントし、第2所定条件及び第3所定条件を同時に満たす温度データを一回のガス流平均超えとして定義し、各段の冷却壁のガス流平均超数を、所定時間内の該段の冷却壁における複数の温度収集点のガス流平均超数の合計とするステップと、を含み、
前記第2所定条件は、T
p>T
p-1且つT
p<T
p+1であり、ただし、T
p-1、T
p、T
p+1が、それぞれp-1番目、p番目、p+1番目の分析温度データであり、
前記第3所定条件は、第5段から第9段までの冷却壁の分析温度データが
【数10】
を満たし、又は、第10段から第12段までの冷却壁の分析温度データが
【数11】
を満たすことであり、
【数12】
が、単位時間内の平均温度である、ことを特徴とする請求項1に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項9】
前記移動平均処理は、
予め設定されたステップサイズのスライディングウィンドウを構築し、前記複数の分析温度データのうちの最初の温度データから、最後の温度データがスライディングウィンドウ内に入るまで、前記スライディングウィンドウで設定ステップサイズに応じて収集時間順に前方にスライドするステップと、
複数回スライドした後に複数の分析温度データを得るために、スライドした後ごとに、前記スライディングウィンドウ内の温度データの平均値を前記スライディングウィンドウ内の中間収集点の分析温度データとするステップと、を含む、ことを特徴とする請求項8に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項10】
前記外乱温度データは、連続する複数の一定不変の温度データ、所定範囲(T
min,T
max)外の温度データ、及び逆流休風弁の開弁前2時間、開弁中、及び閉弁後2時間の温度データを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項11】
前記高炉原料パラメータは、高炉原料中のZn含有量、アルカリ金属含有量、及び焼結粉末鉱石の割合を含み、
前記分配システムパラメータは、最大の傾動角度、装入物の高さ、及び周縁負荷O/Cを含み、Oが、最も外側の2層(2周)の鉱石層数/(鉱石総層数×鉱石バッチ)であり、Cが、最も外側の2層のコークス層数/(コークス総層数×コークスバッチ)であり、
前記送風システムパラメータは、羽口面積、羽口長さ、風量及び酸素含有量を含み、
前記冷却システムパラメータは、冷却壁の取水温度及び冷却水の流量を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製錬高炉制御の技術分野に属し、周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却壁は、現在高炉に広く使用されている冷却器の形態であり、高炉の炉殻の内側に設けられ、冷却水を冷却壁に注入して冷却壁中を流すことで、高炉内と熱交換を生じさせ、さらに高炉を降温させ、高温の熱流が直接炉殻に達するのを避けるものである。高炉内部の融着帯は、主に炉腹、炉腰及び炉胸下部等の領域に分布しており、これらの領域の冷却壁は、高炉内部の高温熱負荷の衝撃を受けており、激しい温度変化、高温液体鉄スラグの侵食、装入材と石炭ガスの浸食と磨耗、及びアルカリ金属とCOの侵食等は、いずれも冷却壁に破壊を与える。高炉の冷却壁は、炉床から炉口まで一般に十数層あり、炉腹、炉腰及び炉胸下部等の領域の冷却壁の耐用年数を延ばすために、一般的には第1段から第9段まで熱伝導性及び抗衝撃性の両方にも優れた銅冷却壁を使用し、第10段から第12段まで耐摩耗性に優れた鋳鉄冷却壁を使用している。
【0003】
しかしながら、高炉の運転中、高炉内付着又は高炉内管状ガス流発生のような異常炉況がしばしば出じる。高炉内付着とは、塊状又は粒状の装入材が冷却壁に付着して、この部分の冷却壁の冷却効果に影響を与えることにより、高炉内の高温が直ちに排出できないことを指し、高炉内パイプ発生とは、高炉の装入物に空洞が発生して管(パイプ)状のガス流が形成され、それにより高炉の局部温度が大幅に上昇することを指す。これらの異常な状況は高炉の周縁部で発生する。その現れの1つとしては、高炉の周縁ガス流の大きな変動が挙げられ、これは高炉の順調な運転に深刻な影響を及ぼし、高炉の順調な運転を保証するためにこれらの異常炉況を制御して調整する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、高炉の周縁ガス流の変動が大きく、高炉の順調な運転に影響を及ぼすという従来技術における課題を解決するために、周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法を提供することにある。
【0005】
上記目的を実現するために、本発明の一実施形態は、
収集された生産履歴における下部ガス流平均超数PD、上部ガス流平均超数PU、高炉原料パラメータ、分配システムパラメータ、送風システムパラメータ、冷却システムパラメータを含む高炉運転パラメータのデータベースを構築するステップと、
次の運転段階に対する高炉運転パラメータの設定命令を生成するために、第1所定条件を満たす高炉運転パラメータを前記データベースから選択するステップと、を含み、
前記第1所定条件は、下部ガス流平均超数PD<所定値PD0であることを含み、且つPD<PD0の条件を満たしつつ、上部ガス流平均超数PUの最小値に対応する高炉運転パラメータが選択されることでありされ、
前記下部ガス流平均超数PD、上部ガス流平均超数PUをカウントするにおいて、
k=5、6、…、12について、第k段の冷却壁の温度標準偏差ΔTkと高炉の熱負荷標準偏差ΔTLとの間の相関係数Rkをそれぞれ算出し、
第5段から第9段までの冷却壁のうち、相関係数Rkが最も大きい段の冷却壁に対応するガス流平均超数をカウントし、それを下部ガス流平均超数PDとし、
第10段から第12段までの冷却壁のうち、相関係数Rkが最も大きい段の冷却壁に対応するガス流平均超数をカウントし、それを上部ガス流平均超数PUとする、高炉の周縁ガス流安定的な制御方法を提供する。
【0006】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、「高炉運転パラメータのデータベースを構築する」前記ステップは、カウントされた前記下部ガス流平均超数PDを大きさ順にランク付けし、異なる区間範囲の下部ガス流平均超数PDを得て、同じランクに属する各高炉運転パラメータに対して平均値を求めるステップを含み、
前記第1所定条件は、下部ガス流平均超数PDの属するランクの区間範囲内の最大値<所定値PD0であることを含み、且つ該条件を満たしつつ、上部ガス流平均超数PUの最小値に対応する高炉運転パラメータの平均値が選択されることである。
【0007】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、第k段の冷却壁の温度標準偏差ΔT
kと高炉の熱負荷標準偏差ΔTLとの間の相関係数
【数1】
であり、
式中、
【数2】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔT
kとΔTLの標本共分散であり、
【数3】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔT
kの分散であり、
【数4】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔTLの分散である。
【0008】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記第k段の冷却壁の温度標準偏差
【数5】
であり、
式中、mが、第k段の冷却壁における温度収集点の数であり、j=1、…、mであり、T
iが、第k段の冷却壁におけるある温度収集点のi番目の温度データであり、nが、単位時間内の温度サンプル数であり、i=1、…、nであり、
【数6】
が、単位時間内の平均温度である。
【0009】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記冷却壁の温度を前記冷却壁に配置された熱電対により収集し、サンプルデータセットに対して異常値を除去し、不安定な運転状態でのデータを除去し、処理された最終的なサンプルデータセットを得る。
【0010】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記冷却壁の熱負荷標準偏差
【数7】
であり、
式中、TL
iが、i番目の温度データを収集する時の高炉の熱負荷であり、nが、単位時間内の熱負荷サンプル数であり、i=1、…、nであり、
【数8】
が、単位時間内の平均熱負荷である。
【0011】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記高炉の熱負荷
【数9】
であり、
式中、cが、水の比熱容量であり、Fが、冷却壁における冷却水の流量であり、T
outが、冷却壁の出水温度であり、T
inが、冷却壁の取水温度である。
【0012】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記ガス流平均超数をカウントするにおいて、
冷却壁における複数の温度データを収集し、前記複数の温度データを収集時間に従って順序付けるステップと、
前記複数の温度データのうちの外乱温度データを除去し、複数の分析温度データを決定するステップと、
前記複数の分析温度データの決定順序に応じて、各分析温度データに対して順に移動平均処理を行うステップと、
移動平均処理された各分析温度データT
pを基にしてガス流平均超数をカウントし、第2所定条件及び第3所定条件を同時に満たす温度データを一回(一つ)のガス流平均超えとして定義し、各段の冷却壁のガス流平均超数を、所定時間内の該段の冷却壁における複数の温度収集点のガス流平均超数の合計とするステップと、を含み、
前記第2所定条件は、T
p>T
p-1且つT
p<T
p+1であり、ただし、T
p-1、T
p、T
p+1が、それぞれp-1番目、p番目、p+1番目の分析温度データであり、
前記第3所定条件は、第5段から第9段までの冷却壁の分析温度データが
【数10】
を満たし、又は、第10段から第12段までの冷却壁の分析温度データが
【数11】
を満たすことであり、
【数12】
が、単位時間内の平均温度である。
【0013】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記移動平均処理は、
予め設定されたステップサイズのスライディングウィンドウを構築し、前記複数の分析温度データのうちの最初の温度データから、最後の温度データがスライディングウィンドウ内に入るまで、前記スライディングウィンドウで設定ステップサイズに応じて収集時間順に前方にスライドするステップと、
複数回スライドした後に複数の分析温度データを得るために、スライドした後ごとに、前記スライディングウィンドウ内の温度データの平均値を前記スライディングウィンドウ内の中間収集点の分析温度データとするステップと、を含む。
【0014】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記外乱温度データは、連続する複数の一定不変の温度データ、所定範囲(Tmin,Tmax)外の温度データ、及び逆流休風弁の開弁前2時間、開弁中、及び閉弁後2時間の温度データを含む。
【0015】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記高炉原料パラメータは、高炉原料中のZn含有量、アルカリ金属含有量、及び焼結粉末鉱石の割合を含み、
前記分配システムパラメータは、最大の傾動角度、装入物の高さ、及び周縁負荷O/Cを含み、ただし、Oが、最も外側の2層の鉱石層数/(鉱石総層数×鉱石バッチ)であり、Cが、最も外側の2層のコークス層数/(コークス総層数×コークスバッチ)であり、
前記送風システムパラメータは、羽口面積、羽口長さ、風量及び酸素含有量を含み、
前記冷却システムパラメータは、冷却壁の取水温度及び冷却水の流量を含む。
【0016】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は、各段の冷却壁の温度標準偏差ΔTkと高炉の熱負荷標準偏差ΔTLとの間の相関係数Rkを算出しカウントすることで、高炉内の温度変化により最も大きく影響される段の上部冷却壁及び下部冷却壁をそれぞれ特定することができ、そして該段の冷却壁のガス流平均超数で対応する高炉内の周縁ガス流の変動状況を示し、さらに履歴データ内の下部ガス流平均超数PD及び上部ガス流平均超数PUに基づいて、最適化された高炉運転パラメータ組合せを選択して次の段階の高炉運転に使用し、それにより高炉運転パラメータのうち、高炉内の周縁ガス流に影響を及ぼすパラメータを標的として調整し制御し、高炉の順調な運転を導くという目的を達成できる。そのため、作業者の経験に頼って高炉運転パラメータを盲目的に設定して高炉の異常炉況が発生するのを回避することである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施例の高炉炉頂設備の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下において、図面に示す具体的な実施形態により本発明を詳細に説明する。しかし、これらの実施形態は、本発明を制限するためのものではなく、当業者がこれらの実施形態に基づいて行った構造、方法又は機能上の変換はいずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【0019】
本発明の一実施形態は、高炉の順調な運転を実現し、高炉内付着及び装入物における管状ガス流発生等の異常炉況を回避するために、周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法を提供する。
【0020】
図1の高炉炉頂設備を参照し、炉本体100は、炉口1、炉胸2、炉腰3、炉腹4及び炉床5を上から順に含む。高炉の冷却壁6は、炉本体100を覆い、且つ冷却壁6は、下から合計12段に分けられ、12段の冷却壁が下から順に番号付けられている。そのうち、第1段から第3段までの冷却壁は炉床5を覆い、第4段から第5段までの冷却壁は炉腹4を覆い、第6段の冷却壁は炉腰3を覆い、第7段から第12段までの冷却壁は炉胸2を覆っている。第1段から第9段までの冷却壁には熱伝導性及び抗衝撃性の両方に優れた銅冷却壁が使用され、第10段から第12段までの冷却壁には耐摩耗性に優れた鋳鉄冷却壁が使用されている。
【0021】
以下において、
図1に示す高炉炉頂設備を参照しながら前記制御方法の各ステップを説明する。
【0022】
(高炉運転パラメータのデータベースを構築するステップ)
前記データベースは、収集された生産履歴における下部ガス流平均超数PD、上部ガス流平均超数PU、高炉原料パラメータ、分配システムパラメータ、送風システムパラメータ、冷却システムパラメータを含む。
【0023】
具体的には、前記高炉原料パラメータは、高炉原料中のZn含有量、アルカリ金属含有量、及び焼結粉末鉱石の割合を含む。これらのパラメータを調整し制御することで、高炉の炉壁への付着を回避することができる。
【0024】
前記分配システムパラメータは、最大の傾動角度、装入物の高さ、及び周縁負荷O/Cを含む。ただし、Oは、最も外側の2層の鉱石層数/(鉱石総層数×鉱石バッチ)であり、Cは、最も外側の2層のコークス層数/(コークス総層数×コークスバッチ)であり、周縁負荷O/Cは、高炉の周縁部の鉱石厚さとコークス厚さとの比を特徴付ける。これらのパラメータにより、高炉の周縁部の材料層の厚さ及び装入物の形状を調整し制御し、さらに装入材の転動状況に影響を与え、管状のガス流の発生を回避することができる。
【0025】
前記送風システムパラメータは、羽口面積、羽口長さ、風量及び酸素含有量を含む。これらのパラメータにより、高炉に入ったガス流の流量及び風の運動エネルギーを調整し制御し、それにより高炉の各箇所のガス流分布状況に直接影響を与えることができる。
【0026】
前記冷却システムパラメータは、冷却壁6の取水温度及び冷却水の流量を含む。これらのパラメータを調整し制御することで、冷却壁6における冷却水の冷却能力を調整し制御し、さらに高炉内との熱交換に影響を与えることができる。
【0027】
(次の運転段階に対する高炉運転パラメータの設定命令を生成するために、第1所定条件を満たす高炉運転パラメータを前記データベースから選択するステップ)
前記第1所定条件は、下部ガス流平均超数PD<所定値PD0であることを含み、且つPD<PD0の条件を満たしつつ、上部ガス流平均超数PUの最小値に対応する高炉運転パラメータが選択されることである。
【0028】
ここで、前記下部ガス流平均超数PD、上部ガス流平均超数PUをカウントするにおいて、
k=5、6、…、12について、第k段の冷却壁の温度標準偏差ΔTkと高炉の熱負荷標準偏差ΔTLとの間の相関係数Rkをそれぞれ算出し、
第5段から第9段までの冷却壁のうち、相関係数Rkが最も大きい段の冷却壁に対応するガス流平均超数をカウントし、それを下部ガス流平均超数PDとし、
第10段から第12段までの冷却壁のうち、相関係数Rkが最も大きい段の冷却壁に対応するガス流平均超数をカウントし、それを上部ガス流平均超数PUとする。
【0029】
高炉内部の融着帯は主に炉腹4、炉腰3及び炉胸2下部等の領域に分布する。つまり、第5段から第9段までの冷却壁の領域に対応し、高炉の周縁部の融着帯の分布状況が該冷却壁の領域に反映され、スラグスキンの形成と脱落が主に該領域に集中している。該領域は、熱負荷が高く、冷却性能がよい銅冷却壁を使用することにより、優れた冷却効果を有し、一方、高炉の炉胸2上部領域、即ち第10段から第12段までの冷却壁に対応する領域は、高炉の乾燥領域に属し、該領域の炉壁は主に装入材降下及び装入材の熱膨張による物理的摩擦に耐え、また、融着帯を経た高炉内部のガス流分布状況も該冷却壁領域に反映され、該領域は、摩擦抵抗に優れた鋳鉄冷却壁を使用し、高炉の耐用年数を延ばすことができ、各段の冷却壁の温度標準偏差ΔTkと高炉の熱負荷標準偏差ΔTLとの間の相関係数Rkを算出しカウントすることで、高炉内の温度変化により最も大きく影響される段の上部冷却壁及び下部冷却壁をそれぞれ特定することができ、そして該段の冷却壁のガス流平均超数で対応する高炉内の周縁ガス流の変動状況を示し、さらに履歴データ内の下部ガス流平均超数PD及び上部ガス流平均超数PUに基づいて、最適化された高炉運転パラメータ組合せを選択して次の段階の高炉運転に使用し、それにより高炉運転パラメータのうち、高炉内の周縁ガス流に影響を及ぼすパラメータを標的として調整し制御し、高炉の順調な運転を導くという目的を達成できる。そのため、作業者の経験に頼って高炉運転パラメータを盲目的に設定して高炉の異常炉況が発生するのを回避することができる。
【0030】
具体的には、本実施形態において、「高炉運転パラメータのデータベースを構築する」前記ステップは、カウントされた前記下部ガス流平均超数PDを大きさ順にランク付けし、異なる区間範囲の下部ガス流平均超数PDを得て、同じランクに属する各高炉運転パラメータに対して平均値を求めるステップを含み、
前記第1所定条件は、下部ガス流平均超数PDの属するランクの区間範囲内の最大値<所定値PD0であることを含み、且つ該条件を満たしつつ、上部ガス流平均超数PUの最小値に対応する高炉運転パラメータの平均値が選択されることである。
【0031】
具体的には、第k段の冷却壁の温度標準偏差ΔT
kと高炉の熱負荷標準偏差ΔTLとの間の相関係数
【数13】
である。
式中、
【数14】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔT
kとΔTLの標本共分散であり、
【数15】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔT
kの分散であり、
【数16】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔTLの分散である。
【0032】
さらに、前記第k段の冷却壁の温度標準偏差
【数17】
である。
式中、mが、第k段の冷却壁における温度収集点の数であり、j=1、…、mであり、T
iが、第k段の冷却壁におけるある温度収集点のi番目の温度データであり、nが、単位時間内の温度サンプル数であり、i=1、…、nであり、
【数18】
が、単位時間内の平均温度である。
【0033】
具体的には、前記冷却壁6の温度は、前記冷却壁6に配置された熱電対により収集される。本実施例において、各段の冷却壁にm個の熱電対が設けられている。つまり、各段の冷却壁にm個の温度収集点がある。
【0034】
温度収集過程において、サンプルデータセットに対して異常値を除去し、不安定な運転状態でのデータ等の外乱温度データを除去し、処理された最終的なサンプルデータセットを得ることにより、最終検出結果を乱す異常データを除去し、高炉運転を正確に調整し制御する。
【0035】
本実施形態において、前記異常値は、連続する複数の一定不変の温度データ、及び所定範囲(Tmin,Tmax)外の温度データを含み、前記不安定な運転状態でのデータは、逆流休風弁の開弁前2時間、開弁中、及び閉弁後2時間の温度データを含む。
【0036】
さらに、前記冷却壁6の熱負荷標準偏差
【数19】
であり、
式中、TL
iが、i番目の温度データを収集する時の高炉の熱負荷であり、nが、単位時間内の熱負荷サンプル数であり、i=1、…、nであり、
【数20】
が、単位時間内の平均熱負荷である。
【0037】
前記高炉の熱負荷TL
iの計算式は、
【数21】
である。
式中、cが、水の比熱容量であり、Fが、冷却壁6における冷却水の流量であり、T
outが、冷却壁6の出水温度であり、T
inが、冷却壁6の取水温度である。
【0038】
各段の冷却壁の温度標準偏差ΔTkと高炉の熱負荷標準偏差ΔTLとの間の相関係数Rkにより、各段の冷却壁の温度変動状況と高炉の炉本体100全体の冷却壁6の熱交換量との間の相関性を特徴付ける。
【0039】
さらに、前記の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法における前記ガス流平均超数をカウントするプロセスは、
冷却壁6における複数の温度データを収集し、前記複数の温度データを収集時間に従って順序付けるステップと、
前記複数の温度データのうちの外乱温度データを除去し、複数の分析温度データを決定するステップと、
前記複数の分析温度データの決定順序に応じて、各分析温度データに対して順に移動平均処理を行うステップと、
移動平均処理された各分析温度データTpを基にしてガス流平均超数をカウントし、第2所定条件及び第3所定条件を同時に満たす温度データを一回のガス流平均超えとして定義し、各段の冷却壁のガス流平均超数を、所定時間内の該段の冷却壁における複数の温度収集点のガス流平均超数の合計とするステップと、を含む。
【0040】
前記第2所定条件は、T
p>T
p-1且つT
p<T
p+1であり、ただし、T
p-1、T
p、T
p+1が、それぞれp-1番目、p番目、p+1番目の分析温度データであり、
前記第3所定条件は、第5段から第9段までの冷却壁の分析温度データが
【数22】
を満たし、又は、第10段から第12段までの冷却壁の分析温度データが
【数23】
を満たすことであり、ただし、
【数24】
が、単位時間内の平均温度である。
【0041】
前記下部ガス流平均超数PDは、上記方式によって第5段から第9段までの冷却壁のうち、相関係数R
kが最も大きい段の冷却壁の温度データを処理して得られたものであり、且つ前記第3所定条件は、第5段から第9段までの冷却壁の分析温度データが
【数25】
を満たすことを満たす必要がある。つまり、ガス流平均超えとは、該分析温度データが少なくとも単位時間内の平均値よりも大きく、且つ前後の隣接する分析温度データよりも大きいことを指す。
【0042】
前記上部ガス流平均超数PUは、上記方式によって第10段から第12段までの冷却壁のうち、相関係数R
kが最も大きい段の冷却壁の温度データを処理して得られたものであり、且つ前記第3所定条件は、第10段から第12段までの冷却壁の分析温度データが
【数26】
を満たすことを満たす必要がある。つまり、ガス流平均超えとは、該分析温度データが単位時間内の平均値よりも大きく、且つ前後の隣接する分析温度データよりも大きいことを指す。
【0043】
このように、ガス流平均超数は、所定時間内の冷却壁6の温度変動状況を示し、高炉内の温度変化により最も大きく影響される段の上部冷却壁及び下部冷却壁のガス流平均超数をカウントし、履歴データを基にして適切な下部ガス流平均超数PD及び上部ガス流平均超数PUの範囲を選択することによって、高炉運転パラメータを調整し制御して導くことができる。
【0044】
さらに、前記移動平均処理は、
予め設定されたステップサイズのスライディングウィンドウを構築し、前記複数の分析温度データのうちの最初の温度データから、最後の温度データがスライディングウィンドウ内に入るまで、前記スライディングウィンドウで設定ステップサイズに応じて収集時間順に前方にスライドするステップと、
複数回スライドした後に複数の分析温度データを得るために、スライドした後ごとに、前記スライディングウィンドウ内の温度データの平均値を前記スライディングウィンドウ内の中間収集点の分析温度データとするステップと、を含む。
【0045】
移動平均処理により、滑らかで規則的な温度変化曲線を得て、バリを除去することができ、それにより温度の変動状況、即ちガス流平均超え状況を計数して定量化し、さらに冷却壁6の温度と高炉の周縁ガス流状況との間の定量的関係を確立する。
【0046】
さらに前記外乱温度データは、連続する複数の一定不変の温度データ、所定範囲(Tmin,Tmax)外の温度データ、及び逆流休風弁の開弁前2時間、開弁中、及び閉弁後2時間の温度データを含む。温度データに対して異常値を除去し、不安定な運転状態でのデータ等の外乱温度データを除去することにより、最終検出結果を乱す異常データを除去し、高炉運転を正確に調整し制御する。
【0047】
以下において、具体的な実施例により本発明の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法についてさらに説明する。具体的には、次のとおりである。
【0048】
第5段から第12段までの冷却壁における複数の温度データを収集するように、冷却壁6の温度を各段の冷却壁に配置されたm個の熱電対により2分ごとに収集し、前記複数の温度データを収集時間に従って順序付ける。
【0049】
前記複数の温度データのうちの外乱温度データを除去し、複数の分析温度データを決定し、ここで、前記外乱温度データは、連続する複数の一定不変の温度データ、所定範囲(Tmin,Tmax)外の温度データ、及び逆流休風弁の開弁前2時間、開弁中、及び閉弁後2時間の温度データを含む。
【0050】
前記複数の分析温度データの決定順序に応じて、各分析温度データに対して順に移動平均処理を行う。具体的には、予め設定されたステップサイズが2分であるスライディングウィンドウを構築し、スライディングウィンドウのスライド区間を22分とし、即ち、スライディングウィンドウが11個の温度データを含み、前記複数の分析温度データのうちの最初の温度データから、最後の温度データがスライディングウィンドウ内に入るまで、前記スライディングウィンドウで設定ステップサイズに応じて収集時間順に前方にスライドし、スライドした後ごとに、前記スライディングウィンドウ内の温度データの平均値を前記スライディングウィンドウ内の6番目の温度収集点の分析温度データとし、5回スライドした後に、複数の分析温度データTpが得られた。
【0051】
移動平均処理された各分析温度データT
pを基にしてガス流平均超数をカウントし、第5段から第9段までの冷却壁において、T
p>T
p-1、T
p<T
p+1、及び
【数27】
を満たす温度データを一回のガス流平均超えとし、第10段から第12段までの冷却壁において、T
p>T
p-1、T
p<T
p+1、及び
【数28】
を満たす温度データを一回のガス流平均超えとする。ここで、T
p-1、T
p、T
p+1が、それぞれp-1番目、p番目、p+1番目の分析温度データであり、
【数29】
が、単位時間内の平均温度である。ここでの単位時間は、1時間であり、各段の冷却壁のガス流平均超数は、該段の冷却壁におけるm個の熱電対で1日にわたってカウントされたガス流平均超数の合計である。
【0052】
各段の冷却壁の温度を各段の冷却壁に配置されたm個の熱電対により2分ごとに収集し、且つ温度収集過程において、サンプルデータセットに対して異常値を除去し、不安定な運転状態でのデータ等の外乱温度データを除去して、処理された最終的なサンプルデータセットを得る。前記異常値は、連続する複数の一定不変の温度データ、及び所定範囲(Tmin,Tmax)外の温度データを含み、前記不安定な運転状態でのデータは、逆流休風弁の開弁前2時間、開弁中、及び閉弁後2時間の温度データを含む。
【0053】
前記第k段の冷却壁の温度標準偏差ΔT
kを以下の式から算出する。
【数30】
式中、mが、第k段の冷却壁における温度収集点の数であり、j=1、…、mであり、T
iが、第k段の冷却壁におけるある温度収集点のi番目の温度データであり、nが、単位時間内の温度サンプル数であり、i=1、…、nであり、
【数31】
が、単位時間内の平均温度である。ここで、単位時間が1hである。
【0054】
計算式
【数32】
に従って前記高炉の熱負荷TL
iを算出する。
式中、cが、水の比熱容量であり、Fが、冷却壁6における冷却水の流量であり、T
outが、冷却壁6の出水温度であり、T
inが、冷却壁6の取水温度である。
【0055】
前記冷却壁6の熱負荷標準偏差ΔTLを以下の式から算出する。
【数33】
式中、TL
iが、i番目の温度データを収集する時の高炉の熱負荷であり、nが、単位時間内の熱負荷サンプル数であり、i=1、…、nであり、
【数34】
が、1h内の平均熱負荷である。
【0056】
第k段の冷却壁の温度標準偏差ΔT
kと高炉の熱負荷標準偏差ΔTLとの間の相関係数R
kを以下の式から算出する。
【数35】
式中、
【数36】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔT
kとΔTLの標本共分散であり、
【数37】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔT
kの分散であり、
【数38】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔTLの分散である。ここでの所定時間が24時間であり、単位時間が1時間である。
【0057】
第5段から第12段までの冷却壁の相関係数Rkをそれぞれカウントし、前記下部ガス流平均超数PDは、第5段から第9段までの冷却壁のうち相関係数Rkが最も大きい段の冷却壁のガス流平均超数であり、前記上部ガス流平均超数PUは、第10段から第12段までの冷却壁のうち相関係数Rkが最も大きい段の冷却壁のガス流平均超数である。
【0058】
収集された生産履歴における下部ガス流平均超数PD、上部ガス流平均超数PU、高炉原料、分配システムパラメータ、送風システムパラメータ、冷却システムパラメータを含む高炉運転パラメータのデータベースを構築する。
【0059】
具体的には、前記高炉原料パラメータは、高炉原料中のZn含有量、アルカリ金属含有量、及び焼結粉末鉱石の割合を含む。前記分配システムパラメータは、最大の傾動角度、装入物の高さ、及び周縁負荷O/Cを含む。前記送風システムパラメータは、羽口面積、羽口長さ、風量、及び酸素含有量を含む。前記冷却システムパラメータは、冷却壁6の取水温度及び冷却水の流量を含む。
【0060】
カウントされた前記下部ガス流平均超数PDを大きさ順にランク付けし、5つの異なる区間範囲の下部ガス流平均超数PDを得て、同じランクに属する各高炉運転パラメータに対して平均値を求め、表1に示す高炉運転パラメータのデータベースを得る。
【表1】
【0061】
本実施例において、PD0が5.7である場合、ランク1、2、3のPD値が第1所定条件を満たし、さらにランク1、2、3からPU値が最も小さい方を選択し、そのため、次の運転段階に対する高炉運転パラメータの設定命令を生成するために、ランク3に対応する各高炉運転パラメータを選択し、それにより高炉の周縁ガス流の安定性を効果的に維持し、高炉の安定的で順調な運転を実現することができる。
【0062】
要約すると、従来技術に比べて、本発明の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御は、各段の冷却壁の温度標準偏差ΔTkと高炉の熱負荷標準偏差ΔTLとの間の相関係数Rkを算出しカウントすることで、高炉内の温度変化により最も大きく影響される段の上部冷却壁及び下部冷却壁をそれぞれ特定することができ、そして該段の冷却壁のガス流平均超数で対応する高炉内の周縁ガス流の変動状況を示し、さらに履歴データ内の下部ガス流平均超数PD及び上部ガス流平均超数PUに基づいて、最適化された高炉運転パラメータ組合せを選択して次の段階の高炉運転に使用し、それにより高炉運転パラメータのうち、高炉内の周縁ガス流に影響を及ぼすパラメータを標的として調整し制御し、高炉の順調な運転を導くという目的を達成できる。そのため、作業者の経験に頼って高炉運転パラメータを盲目的に設定して高炉の異常炉況が発生するのを回避することができるという有益な効果を有する。
【0063】
本明細書は実施形態に従って説明されているが、各実施形態は1つの独立した技術的解決手段のみを含むわけではなく、明細書のような記述方式は明確化のためのものに過ぎず、当業者であれば、この明細書を1つの全体とすべきであり、各実施形態における技術的解決手段も適切に組み合わせることで当業者が理解可能な他の実施形態を形成できる。
【0064】
以上に列挙された一連の詳細な説明は、本発明の実施可能な実施形態に対する具体的な説明に過ぎず、本発明の保護範囲を制限するためのものではなく、本発明の技術的精神から逸脱することなくなされた等価な実施形態又は変更は、いずれも本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集された生産履歴における下部ガス流平均超数PD、上部ガス流平均超数PU、高炉原料パラメータ、分配システムパラメータ、送風システムパラメータ、冷却システムパラメータを含む高炉運転パラメータのデータベースを構築するステップと、
次の運転段階に対する高炉運転パラメータの設定命令を生成するために、第1所定条件を満たす高炉運転パラメータを前記データベースから選択するステップと、を含み、
前記第1所定条件は、下部ガス流平均超数PD<所定値PD0であることを含み、且つPD<PD0の条件を満たしつつ、上部ガス流平均超数PUの最小値に対応する高炉運転パラメータが選択されることであり、
前記下部ガス流平均超数PD、上部ガス流平均超数PUをカウントするにおいて、
k=5、6、…、12について、第k段の冷却壁の温度標準偏差ΔT
kと高炉の熱負荷標準偏差ΔTLとの間の相関係数R
kをそれぞれ算出し、
第5段から第9段までの冷却壁のうち、相関係数R
kが最も大きい段の冷却壁に対応するガス流平均超数をカウントし、それを下部ガス流平均超数PDとし、
第10段から第12段までの冷却壁のうち、相関係数R
kが最も大きい段の冷却壁に対応するガス流平均超数をカウントし、それを上部ガス流平均超数PUとする、ことを特徴とする周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項2】
「高炉運転パラメータのデータベースを構築する」前記ステップは、カウントされた前記下部ガス流平均超数PDを大きさ順にランク付けし、異なる区間範囲の下部ガス流平均超数PDを得て、同じランクに属する各高炉運転パラメータに対して平均値を求めるステップを含み、
前記第1所定条件は、下部ガス流平均超数PDの属するランクの区間範囲内の最大値<所定値PD0であることを含み、且つ該条件を満たしつつ、上部ガス流平均超数PUの最小値に対応する高炉運転パラメータの平均値が選択されることである、ことを特徴とする請求項1に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項3】
第k段の冷却壁の温度標準偏差ΔT
kと高炉の熱負荷標準偏差ΔTLとの間の相関係数
【数1】
であり、
式中、
【数2】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔT
kとΔTLの標本共分散であり、
【数3】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔT
kの分散であり、
【数4】
が、所定時間内の複数の単位時間におけるΔTLの分散である、ことを特徴とする請求項1に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項4】
前記第k段の冷却壁の温度標準偏差
【数5】
であり、
式中、mが、第k段の冷却壁における温度収集点の数であり、j=1、…、mであり、T
iが、第k段の冷却壁におけるある温度収集点のi番目の温度データであり、nが、単位時間内の温度サンプル数であり、i=1、…、nであり、
【数6】
が、単位時間内の平均温度である、ことを特徴とする請求項3に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項5】
前記冷却壁の温度を前記冷却壁に配置された熱電対により収集し、サンプルデータセットに対して異常値を除去し、不安定な運転状態でのデータを除去し、処理された最終的なサンプルデータセットを得る、ことを特徴とする請求項4に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項6】
前記冷却壁の熱負荷標準偏差
【数7】
であり、
式中、TL
iが、i番目の温度データを収集する時の高炉の熱負荷であり、nが、単位時間内の熱負荷サンプル数であり、i=1、…、nであり、
【数8】
が、単位時間内の平均熱負荷である、ことを特徴とする請求項3に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項7】
前記高炉の熱負荷
【数9】
であり、
式中、cが、水の比熱容量であり、Fが、冷却壁における冷却水の流量であり、T
outが、冷却壁の出水温度であり、T
inが、冷却壁の取水温度である、ことを特徴とする請求項6に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項8】
前記ガス流平均超数をカウントするプロセスが、
冷却壁における複数の温度データを収集し、前記複数の温度データを収集時間に従って順序付けるステップと、
前記複数の温度データのうちの外乱温度データを除去し、複数の分析温度データを決定するステップと、
前記複数の分析温度データの決定順序に応じて、各分析温度データに対して順に移動平均処理を行うステップと、
移動平均処理された各分析温度データT
pを基にしてガス流平均超数をカウントし、第2所定条件及び第3所定条件を同時に満たす温度データを一回のガス流平均超えとして定義し、各段の冷却壁のガス流平均超数を、所定時間内の該段の冷却壁における複数の温度収集点のガス流平均超数の合計とするステップと、を含み、
前記第2所定条件は、T
p>T
p-1且つ
T
p
>T
p+1
であり、ただし、T
p-1、T
p、T
p+1が、それぞれp-1番目、p番目、p+1番目の分析温度データであり、
前記第3所定条件は、第5段から第9段までの冷却壁の分析温度データが
【数10】
を満たし、又は、第10段から第12段までの冷却壁の分析温度データが
【数11】
を満たすことであり、
【数12】
が、単位時間内の平均温度である、ことを特徴とする請求項1に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項9】
前記移動平均処理は、
予め設定されたステップサイズのスライディングウィンドウを構築し、前記複数の分析温度データのうちの最初の温度データから、最後の温度データがスライディングウィンドウ内に入るまで、前記スライディングウィンドウで設定ステップサイズに応じて収集時間順に前方にスライドするステップと、
複数回スライドした後に複数の分析温度データを得るために、スライドした後ごとに、前記スライディングウィンドウ内の温度データの平均値を前記スライディングウィンドウ内の中間収集点の分析温度データとするステップと、を含む、ことを特徴とする請求項8に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項10】
前記外乱温度データは、連続する複数の一定不変の温度データ、所定範囲(T
min,T
max)外の温度データ、及び逆流休風弁の開弁前2時間、開弁中、及び閉弁後2時間の温度データを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【請求項11】
前記高炉原料パラメータは、高炉原料中のZn含有量、アルカリ金属含有量、及び焼結粉末鉱石の割合を含み、
前記分配システムパラメータは、最大の傾動角度、装入物の高さ、及び周縁負荷O/Cを含み、Oが、最も外側の2層(2周)の鉱石層数/(鉱石総層数×鉱石バッチ)であり、Cが、最も外側の2層のコークス層数/(コークス総層数×コークスバッチ)であり、
前記送風システムパラメータは、羽口面積、羽口長さ、風量及び酸素含有量を含み、
前記冷却システムパラメータは、冷却壁の取水温度及び冷却水の流量を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の周縁ガス流を安定化させる高炉の制御方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明の一実施形態のさらなる改良として、前記ガス流平均超数をカウントするにおいて、
冷却壁における複数の温度データを収集し、前記複数の温度データを収集時間に従って順序付けるステップと、
前記複数の温度データのうちの外乱温度データを除去し、複数の分析温度データを決定するステップと、
前記複数の分析温度データの決定順序に応じて、各分析温度データに対して順に移動平均処理を行うステップと、
移動平均処理された各分析温度データT
pを基にしてガス流平均超数をカウントし、第2所定条件及び第3所定条件を同時に満たす温度データを一回(一つ)のガス流平均超えとして定義し、各段の冷却壁のガス流平均超数を、所定時間内の該段の冷却壁における複数の温度収集点のガス流平均超数の合計とするステップと、を含み、
前記第2所定条件は、T
p>T
p-1且つ
T
p
>T
p+1
であり、ただし、T
p-1、T
p、T
p+1が、それぞれp-1番目、p番目、p+1番目の分析温度データであり、
前記第3所定条件は、第5段から第9段までの冷却壁の分析温度データが
【数13】
を満たし、又は、第10段から第12段までの冷却壁の分析温度データが
【数14】
を満たすことであり、
【数15】
が、単位時間内の平均温度である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
前記第2所定条件は、T
p>T
p-1且つ
T
p
>T
p+1
であり、ただし、T
p-1、T
p、T
p+1が、それぞれp-1番目、p番目、p+1番目の分析温度データであり、
前記第3所定条件は、第5段から第9段までの冷却壁の分析温度データが
【数16】
を満たし、又は、第10段から第12段までの冷却壁の分析温度データが
【数17】
を満たすことであり、ただし、
【数18】
が、単位時間内の平均温度である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
移動平均処理された各分析温度データT
pを基にしてガス流平均超数をカウントし、第5段から第9段までの冷却壁において、T
p>T
p-1、
T
p
>T
p+1
、及び
【数19】
を満たす温度データを一回のガス流平均超えとし、第10段から第12段までの冷却壁において、T
p>T
p-1、
T
p
>T
p+1
、及び
【数20】
を満たす温度データを一回のガス流平均超えとする。ここで、T
p-1、T
p、T
p+1が、それぞれp-1番目、p番目、p+1番目の分析温度データであり、
【数21】
が、単位時間内の平均温度である。ここでの単位時間は、1時間であり、各段の冷却壁のガス流平均超数は、該段の冷却壁におけるm個の熱電対で1日にわたってカウントされたガス流平均超数の合計である。
【国際調査報告】