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特表2024-547214ノイズ除去装置、ノイズ除去方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ノイズ除去装置、ノイズ除去方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
G08G1/01 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024541699
(86)(22)【出願日】2022-01-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2022003243
(87)【国際公開番号】W WO2023144984
(87)【国際公開日】2023-08-03
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】プラサド ヘマント シバサガー
(72)【発明者】
【氏名】ペトラードワラー ムルトゥザ
(72)【発明者】
【氏名】生藤 大典
(72)【発明者】
【氏名】樋野 智之
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB02
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC01
5H181CC18
5H181DD01
5H181FF10
(57)【要約】
ウォーターフォールデータに含まれるノイズの影響を低減することができるノイズ除去装置、ノイズ除去方法、およびコンピュータ可読媒体を提供する。ノイズ除去装置は、ウォーターフォールデータから抽出された複数の軌跡の各々の端部座標を決定する決定部であって、前記ウォーターフォールデータは、道路に沿って配置された複数のセンシング部からの信号を測定することにより取得される、決定部(241)と、前記端部座標を用いて、各軌跡の継続時間が基準継続時間になるように、各軌跡を延長する延長部(242)と、延長した各軌跡の特徴を算出する特徴算出部(243)と、前記特徴に基づいて、前記複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を検出する検出部(244)と、前記複数の軌跡から前記アウトライヤ軌跡を除去する除去部(245)と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォーターフォールデータから抽出された複数の軌跡の各々の端部座標を決定する決定手段であって、前記ウォーターフォールデータは、道路に沿って配置された複数のセンシング部の各々からの信号を測定することにより取得される、決定手段と、
前記端部座標を用いて、各軌跡の継続時間が基準継続時間になるように、各軌跡を延長する延長手段と、
延長した各軌跡の特徴を算出する特徴算出手段と、
前記特徴に基づいて、前記複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を検出する検出手段と、
前記複数の軌跡から前記アウトライヤ軌跡を除去する除去手段と、
を備えるノイズ除去装置。
【請求項2】
各軌跡の傾きに基づいて前記道路を走行する1台の車両の速度を算出し、前記道路を走行する車両の平均速度を算出する交通監視手段、
を備える請求項1に記載のノイズ除去装置。
【請求項3】
前記ノイズ除去装置は、前記ウォーターフォールデータを複数のパッチに分離する分離手段を備え、
前記決定手段は、各パッチに含まれる各軌跡の前記端部座標を決定し、
前記交通監視手段は、パッチごとに前記平均速度を算出する、
請求項2に記載のノイズ除去装置。
【請求項4】
前記特徴は、延長した各軌跡の長さである、
請求項2に記載のノイズ除去装置。
【請求項5】
前記交通監視手段は、延長後の各軌跡の長さのうち、前記ウォーターフォールデータから抽出されたいずれかの軌跡と重なる部分の長さを測り、前記部分の前記長さに応じた重み付け係数を導出し、前記重み付け係数に基づいて前記平均速度を算出する、
請求項2から4のいずれか1項に記載のノイズ除去装置。
【請求項6】
ウォーターフォールデータから抽出された複数の軌跡の各々の端部座標を決定することであって、前記ウォーターフォールデータは、道路に沿って配置された複数のセンシング部の各々からの信号を測定することにより取得される、ことと、
前記端部座標を用いて、各軌跡の継続時間が基準継続時間になるように、各軌跡を延長することと、
延長した各軌跡の特徴を算出することと、
前記特徴に基づいて、前記複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を検出することと、
前記複数の軌跡から前記アウトライヤ軌跡を除去することと、
を含むノイズ除去方法。
【請求項7】
ウォーターフォールデータから抽出された複数の軌跡の各々の端部座標を決定することであって、前記ウォーターフォールデータは、道路に沿って配置された複数のセンシング部の各々からの信号を測定することにより取得される、ことと、
前記端部座標を用いて、各軌跡の継続時間が基準継続時間になるように、各軌跡を延長することと、
延長した各軌跡の特徴を算出することと、
前記特徴に基づいて、前記複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を検出することと、
前記複数の軌跡から前記アウトライヤ軌跡を除去することと、
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ノイズ除去装置、ノイズ除去方法、およびコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
道路(例:ハイウェイ)に光ファイバが敷設される場合がある。光ファイバは、道路に沿った複数のセンシング部を備えている。光ファイバに取り付けられた分散型音響センサ(DAS:Distributed Acoustic Sensing)は、各センシング部が配置された場所の振動を検出できる。
【0003】
分散型音響センサは、ウォーターフォールデータと呼ばれるデータを取得する。ウォーターフォールデータは、振動が検出された時間および位置に関する情報を含んでいる。ウォーターフォールデータに基づいて、道路等を走行する車両の速度を算出することができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021―121917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウォーターフォールデータにノイズが含まれている場合、車両の平均速度の算出精度が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑み、ウォーターフォールデータに含まれるノイズの影響を低減するノイズ除去装置、ノイズ除去方法、及びコンピュータ可読媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
ウォーターフォールデータから抽出された複数の軌跡の各々の端部座標を決定する決定手段であって、前記ウォーターフォールデータは、道路に沿って配置された複数のセンシング部の各々からの信号を測定することにより取得される、決定手段と、
前記端部座標を用いて、各軌跡の継続時間が基準継続時間になるように、各軌跡を延長する延長手段と、
延長した各軌跡の特徴を算出する特徴算出手段と、
前記特徴に基づいて、前記複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を検出する検出手段と、
前記複数の軌跡から前記アウトライヤ軌跡を除去する除去手段と、
を備えるノイズ除去装置を提供する。
【0008】
本開示は、
ウォーターフォールデータから抽出された複数の軌跡の各々の端部座標を決定することであって、前記ウォーターフォールデータは、道路に沿って配置された複数のセンシング部の各々からの信号を測定することにより取得される、ことと、
前記端部座標を用いて、各軌跡の継続時間が基準継続時間になるように、各軌跡を延長することと、
延長した各軌跡の特徴を算出することと、
前記特徴に基づいて、前記複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を検出する検出部と、
前記複数の軌跡から前記アウトライヤ軌跡を除去することと、
を含むノイズ除去方法を提供する。
【0009】
本開示は、
ウォーターフォールデータから抽出された複数の軌跡の各々の端部座標を決定することであって、前記ウォーターフォールデータは、道路に沿って配置された複数のセンシング部の各々からの信号を測定することにより取得される、ことと、
前記端部座標を用いて、各軌跡の継続時間が基準継続時間になるように、各軌跡を延長することと、
延長した各軌跡の特徴を算出することと、
前記特徴に基づいて、前記複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を検出することと、
前記複数の軌跡から前記アウトライヤ軌跡を除去することと、
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読媒体を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係るノイズ除去装置、ノイズ除去方法、及びコンピュータ可読媒体は、ウォーターフォールデータに含まれるノイズの影響を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1に係る交通監視システムを示す模式図。
図2】関連技術に係る交通監視方法の流れを示すフローチャート。
図3】パッチを示す模式図。
図4】パッチに含まれるノイズを示す模式図。
図5】関連技術を用いて算出された平均速度を示す表。
図6】パッチに含まれる軌跡を例示する模式図。
図7】実施形態1にかかる交通監視装置を示すブロック図。
図8】軌跡を延長する方法を説明するための図。
図9】軌跡を延長する理由を説明するための図。
図10】軌跡を延長する理由を説明するための図。
図11】軌跡を延長する理由を説明するための図。
図12】延長した軌跡に対応する点をプロットした散布図。
図13】道路のトラフィックの状態が変化したときの散布図。
図14】道路のトラフィックの状態が変化したときの散布図。
図15】実施形態1に係るノイズ除去方法の流れを示すフローチャート。
図16】実施形態1に係るノイズ除去方法の流れの一例を示すフローチャート。
図17】実施形態1の効果を説明するための図。
図18】実施形態1の効果を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0013】
(実施形態1)
図1は、道路10に沿った分散型音響センサ(DAS)システム1000の模式図である。DASシステム1000は、DAS100と通信する交通監視装置200を含む。交通監視装置200は、ノイズ除去装置とも称される。DASシステム1000は、DAS100に接続された光ファイバ300をさらに含む。光ファイバ300は、道路10に沿っている。
【0014】
道路10は、ハイウェイであってもよい。道路10は、複数の車線を含んでもよい。複数の車両20が道路10上を走行する。
【0015】
光ファイバ300は、道路10に沿った複数のセンシング部を含む。センシング部は、複数の等距離点に配置されてもよい。車両20が道路10を通過するとき、車両20は振動を発生させる。これらの振動は、光ファイバ300に沿った光の伝搬に影響する。DAS100は、光ファイバ300に接続され、光ファイバ300に光信号を送り、光ファイバ300から返された光を検出する。結果として得られたデータはウォーターフォールデータと呼ばれる。ウォーターフォールデータは、時間-距離グラフである。車両の軌跡は、例えばTrafficNETアルゴリズムによりウォーターフォールデータから抽出される。ウォーターフォールデータは、道路10上の車両20の数、車両の平均速度、および車線占有率のようなパラメータを提供する。
【0016】
次に、図2から図6を参照して、関連技術の問題点について説明する。図2は、関連技術にかかる交通監視方法の流れを示すフローチャートである。関連技術では、まず、DAS100からウォーターフォールデータを取得する(ステップS101)。画像11は、前処理を行ったウォーターフォールデータを示している。取得したRAWウォーターフォールデータは、前処理される。縦軸は時間を表し、横軸は光ファイバ300に沿った位置を表している。ウォーターフォールデータには、車両20の軌跡が含まれている。車両の軌跡とは、道路10を横断する車両20によって発生する振動を示す識別可能な線である。
【0017】
次に、ウォーターフォールデータから、車両20の軌跡を抽出する(ステップS102)。画像12は、画像11に示すウォーターフォールデータから、車両20の軌跡を抽出した結果を示している。画像12では、抽出された車両20の軌跡が強調表示されている。車両20の軌跡の抽出は、例えば、DNN(Deep Neural Network)(例えば、U-Net)を用いて行われる。
【0018】
次に、車両20の平均速度(km/hr)を算出する(ステップS103)。各車両の速度は、対応する軌跡の傾きに基づいて算出される。最後に、平均車両速度に基づいて、交通監視が行われる(ステップS104)。具体的には、渋滞、混雑、またはキューの検出が行われてもよい。交通フローを表す推定された平均車両速度は、交通フローの監視のベースとなる。
【0019】
次に、図3を参照して、関連技術において車両20の平均速度を算出する方法について説明する。図3は、ウォーターフォールデータの概略図である。ウォーターフォールデータは、複数のパッチに分離されることができる。符号13はウォーターフォールデータ全体を表しており、符号14はパッチを表している。パッチ14の範囲は、ウォーターフォールデータ13において点線で示されている。ウォーターフォールデータ13を複数のパッチ14に分離することで、精度よく交通監視を行うことができる。パッチは、必要とされる流れの分解能(時間、距離)に応じて考慮される。パッチ14内のすべての軌跡を平均速度のために考慮することができる。
【0020】
縦軸は時間を示しており、横軸は光ファイバ300に沿った位置、つまり車両20の移動距離を示している。ウォーターフォールデータ13には、複数の軌跡15が含まれている。パッチ14には、軌跡15nが含まれている。Δdnは軌跡15nの距離方向の長さを示しており、Δtnは軌跡15nの時間方向の長さを示している。Δdnは車両20の走行距離を表しており、Δtnは車両20の経過時間を表している。経過時間は継続時間とも言われる。パッチ14の平均車両速度は、下式で算出される。
【0021】
平均速度=(車両の走行距離の和)/(継続時間の和)
【0022】
図4は、パッチ14に含まれる軌跡を例示している。点線に囲まれているパッチ14は、ウォーターフォールデータに含まれている。ウォーターフォールデータは、軌跡15a1および15a2を含んでいる。軌跡15a1は、車両20の走行に由来する実際の軌跡である。軌跡15a2は、抽出されたノイズに由来する軌跡である。ノイズ軌跡は、監視対象となるハイウェイ/道路上に橋、トンネル、またはその他の構造物が存在することに由来する可能性がある。
【0023】
図5は、パッチ14から平均車両速度を算出した結果を含む表を示している。図5は、測定日時21、ウォーターフォールデータから算出された平均車両速度22(単位はkm/hr)、およびトラフィックカウンタから算出された、参照/グランドトゥルースデータである平均車両速度23(単位はkm/hr)を含んでいる。トラフィックカウンタは、ループコイル式であってもよい。
【0024】
測定日時21がD4のT4であるとき、平均車両速度22は150.6km/hrであり、平均車両速度23は95km/hrである。平均車両速度22と平均車両速度23は異なっている。ノイズが速度に影響している。
【0025】
パッチ14に含まれる軌跡の傾きが小さいほど、平均車両速度は大きく算出される。図4を参照すると、傾きが小さいノイズ軌跡15a2がパッチ14に含まれているため、平均車両速度22が実際よりも大きく算出されていると考えられる。ノイズの多い軌跡が平均車速の算出に寄与し、誤った速度をもたらす。このような誤った速度は、不十分な交通フローの監視や信頼性の低下につながる可能性がある。
【0026】
図6は、パッチ14に含まれる軌跡の例を示している。図6は、軌跡15b1、15b2、15b3、15b4、および15b5を含んでいる。軌跡15b1は、車両20の振動に由来する実際の軌跡である。軌跡15b1は十分に長いため、実際の軌跡であると判断できる。
【0027】
軌跡15b2はパッチ14の左上側に含まれており、軌跡15b3はパッチ14の右下側に含まれている。軌跡15b2および15b3の長さが短いため、軌跡15b2および15b3は、ノイズである、または実際の軌跡から切り取られている可能性がある。
【0028】
軌跡15b4および軌跡15b5は構造ノイズであり、長さが十分短いため、軌跡15b4および軌跡15b5はノイズ軌跡であると判断できる。このようなノイズは、ハイウェイに沿う橋やトンネルなどの構造により発生し得る。軌跡15b4は、垂直方向に延びており、平均車両速度が低く算出されるおそれがある。軌跡15b5は水平方向に延びており平均車両速度が高く算出されるおそれがある。
【0029】
関連技術によると、パッチ14がノイズを含むことで、平均車両速度の算出精度が低下してしまうという問題がある。パッチ14内の短い軌跡(例えば、軌跡15b2および15b3)は実際の軌跡の一部である場合があるため、軌跡の長さに応じてノイズを除去することは困難である。ノイズ軌跡と実際の軌跡を、軌跡の長さだけで区別するのは難しい。
【0030】
次に、図7を参照して、交通監視装置200の構成について説明する。交通監視装置200は、取得部210、抽出部220、分離部230、ノイズ除去部240、および交通監視部250を備えている。交通監視装置は、プロセッサおよびメモリを備える。交通監視装置200の各機能は、プログラム(図示せず)をRAM等のメモリに読み込んでプロセッサが実行することにより実現することができる。
【0031】
取得部210は、DAS100からウォーターフォールデータを取得する。抽出部220は、ウォーターフォールデータから複数の軌跡を抽出する。分離部230は、ウォーターフォールデータを複数のパッチに分離する。
【0032】
ノイズ除去部240は、各パッチに含まれる軌跡からノイズを除去する。ノイズ除去部240は、決定部241、延長部242、特徴算出部243、検出部244、および除去部245を備えている。
【0033】
決定部241は、ウォーターフォールデータから抽出された複数の軌跡の各々の端部座標を決定する。上述の通り、ウォーターフォールデータは、道路10に沿って配置された複数のセンシング部からの信号を測定することにより取得される。決定部241は、決定した端部座標を延長部242に出力する。
【0034】
延長部242は、端部座標を用いて、各軌跡の継続時間が基準継続時間になるように、複数の軌跡の各々を延長する。基準継続時間は一定の時間であってもよい。
【0035】
次に、図8を参照して、延長部242が行う延長処理について具体的に説明する。図8の左側は、延長処理を行う前のパッチ14を示している。パッチ14は、複数の軌跡を含んでいる。パッチ14には、長さが短い軌跡(例えば、軌跡15c1)を含んでいる。軌跡15c1は端点E1およびE2を含んでいる。
【0036】
図8の右側は、延長処理を行った後のパッチ14を示している。延長部242は、各軌跡の継続時間が基準継続時間Tとなるように、各軌跡を延長している。パッチ14内の全軌跡が延長されることができる。基準継続時間Tは、パッチ14の時間幅と一致している。なお、基準継続時間とパッチ14の時間幅は異なっていてもよい。見やすくするために、延長した各軌跡の、パッチ14の内側に含まれる部分を実線で示している。延長した各軌跡の、パッチ14の外側に含まれる部分は点線で示されている。軌跡15c2は、軌跡15c1を延長した軌跡を示している。
【0037】
上述の通り、長さに基づいて、各軌跡を実際の軌跡とノイズに分類することは困難である。なぜならば、実際の軌跡とノイズ軌跡が同等の長さを有する場合があるからである。交通監視装置200は、全ての軌跡を共通のフレームに入れるために、軌跡を基準継続時間Tまで延長している。これにより、基準継続時間Tを持つ各軌跡の長さを決定することができる。長さは、ラインの長さであってもよく、距離方向の長さであってもよい。各軌跡の長さは、実際の軌跡とノイズ軌跡とで異なっている。これにより、後述する除去部245は、アウトライヤ軌跡(ノイズ軌跡)を除去できる。
【0038】
次に、図9から図11を参照して、延長部242が軌跡の延長を行う理由について詳細に説明する。図9に示すパッチ14は、軌跡15d1、15d2、15d3、15d4、および15d5を含んでいる。軌跡15d1、15d2、15d3、および15d4は、ノイズ軌跡である。軌跡15d5は、車両の振動に由来する真の軌跡である。ノイズ軌跡はそれぞれ異なる基準時間にあるため、すべての軌跡を共通の基準に合わせるために、延長が行われる。軌跡15d5は他のノイズ軌跡15d1、15d2、15d3、15d4より長いので、長い軌跡は真の車両軌跡である可能性が高いと言える。したがって、真の車両軌道は、より高い伸長比/重みを持つことになる。
【0039】
図10は、パッチ14に含まれる各軌跡の時間方向の長さを示している。Δt1は軌跡15d2の継続時間を示し、Δt2は軌跡15d3の継続時間を示し、Δt3は軌跡15d4の継続時間を示し、Δt4は軌跡15d5の継続時間を示している。継続時間は、時間方向の軌跡の長さである。Δt1、Δt2、Δt3、およびΔt4は互いに異なっている。軌跡15d2、15d3、15d4、および15d5の長さによって、ノイズ軌跡(アウトライヤ軌跡)を判別することはできない。そこで、交通監視装置200は、各軌跡の継続時間が参照継続時間Tになるように、各軌跡を延長している。
【0040】
図11は、パッチ14を含むウォーターフォールデータ13の全体を示すデータである。横軸は距離(0-15km)を表し、縦軸は時間を表している。延長した軌跡と、ウォーターフォールデータ13とを比較することで、軌跡の信頼度を算出することができる。例えば、軌跡15d5を延長した軌跡は、ウォーターフォールデータ13内の軌跡と重なることが考えられる。このような場合、軌跡15d5は、実際の車両の振動に由来する可能性が高い。軌跡15d5は不連続な車両軌跡であり、より大きな軌跡の一部である。したがって、軌跡を延長する必要がある。小さなパッチではコンテキストが失われ、外れ値検出にはより大きなパッチが必要となる。
【0041】
図7に戻って説明を続ける。特徴算出部243は、延長した各軌跡の特徴を算出する。特徴は、例えば、延長した各軌跡の長さである。延長した各軌跡の長さは、一定時間(基準継続時間)のラインの長さであってもよい。所定の距離範囲および時間範囲に含まれる車両の速度は、一定の範囲に含まれていると考えられる。したがって、車両の速度に関連するパラメータを、各軌跡から算出することで、ノイズを除去できる。延長した軌跡の距離方向の長さは、速度と参照継続時間Tを乗算したものであるため、速度に関連している。また、これから説明するように、延長した軌跡の長さも、速度に関連している。
【0042】
次に、図12を参照して、延長した軌跡の長さを特徴として用いることができることについて説明する。図12は、縦軸を延長した軌跡の長さとし、横軸を軌跡に対応する速度とし、延長した軌跡に対応する点をプロットした散布図である。点は、パッチ内の全ての軌跡に対応している。速度は軌跡の傾きに基づいて算出される。速度と軌跡の延長後の長さとの間には相関があり、軌跡が長いほど速度が大きい。したがって、延長した軌跡の長さは、特徴として使用され得る。
【0043】
散布図は、領域31、領域32、および領域33を含んでいる。領域31は、低速側のアウトライヤ軌跡を含んでいる。領域31は、例えば、左側に示す延長した軌跡15e1を含んでいる。延長した軌跡15e1の長さは、後述する延長した軌跡15e2の長さよりも小さい。
【0044】
領域32は、実際の車両の軌跡に対応する点を含んでいる。領域32では、実際の車両の軌跡に対応する点の密度が高い。領域32は、平均的な長さの延長した軌跡を含んでいる。領域32は、例えば、左側に示す延長した軌跡15e2を含んでいる。延長した軌跡15e2の長さは、延長した軌跡15e1の長さよりも大きく、後述する延長した軌跡15e3の長さよりも小さい。
【0045】
領域33は、高速側のアウトライヤ軌跡を含んでいる。領域33は、例えば、左側に示す延長した軌跡15e3を含んでいる。延長した軌跡15e3の長さは、延長した軌跡15e2の長さよりも大きい。
【0046】
図12は、通常のトラフィックでの延長した軌跡の長さの分布を示している。トラフィックが変化すると、延長した軌跡の長さの分布は変化する。図13は、車両(スピード超過の車両)が高速で移動しているときの延長した軌跡の長さの分布を示しており、領域32が右上にシフトしている。図14は交通渋滞が発生しているときの延長した軌跡の長さの分布を示しており、領域32が左下にシフトしている。
【0047】
図7に戻り説明を続ける。検出部244は、特徴に基づいて、複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を検出する。除去部245は、複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を除去する。
【0048】
交通監視部250は、各パッチの平均車両速度を算出する。交通監視部250は、各軌跡の勾配に基づいて道路を走行する車両の速度を算出し、平均速度を算出する。交通監視部250は、各軌跡の信頼度を加味して、平均車両速度を算出してもよい。図11を用いて説明した通り、延長軌跡と、ウォーターフォールデータとを比較することで、各軌跡の信頼度を算出できる。交通監視部250は、具体的には、延長した各軌跡と、ウォーターフォールデータから抽出されたいずれかの軌跡とが重なる部分の長さを測る。そして、交通監視部250は、長さ(軌跡の長さ)に応じた重み付け係数を導出し、重み付け係数に基づいて平均速度を算出する。重み付け係数は、伸長率とも言われる。伸長率は、下式で計算される。
【0049】
伸長率=(軌跡の長さ)/(延長された軌跡の長さ)
【0050】
伸長率は、各軌跡の重みを決定する。平均速度の計算では、連続した長い軌跡ほど高い重みを持つ。
【0051】
次に、図15を参照して、実施形態1にかかる交通監視方法について説明する。関連技術にかかる交通監視方法を示す図2と、図15とを比較すると、ノイズを除去するステップS200が追加されている。ステップS101~ステップS104は図2と同様であるため、説明を省略する。ステップS200では、ステップS102で抽出された複数の軌跡から、ノイズを示すノイズ軌跡を除去する処理を行う。
【0052】
次に、図16を参照して、実施形態1にかかる交通監視方法の一例を説明する。まず、ウォーターフォールデータから抽出された複数の軌跡を含むデータD1が入力される。
【0053】
次に、交通監視装置200の延長部242は、各軌跡の継続期間が基準継続期間になるように、各軌跡を延長する(ステップS201)。なお、ステップS201の前に、交通監視装置200の決定部241が、各軌跡の端部座標を決定していてもよい。次に、交通監視装置200は、各軌跡に対応する速度を算出し、各軌跡の長さを算出し、各軌跡の伸長率を算出する(ステップS202)。
【0054】
次に、交通監視装置200は、算出された速度の最大値が閾値を超えていること、または算出された速度の最小値が閾値未満であることが満たされているかをチェックする(ステップS203)。偽である場合(ステップS203のNo)、ステップS104の処理に移行して交通フローを監視する。真である場合(ステップS203のYes)、ステップS204に移行してノイズを除去する処理を行う。交通監視装置200の検出部244が、ステップS202で算出した軌跡の長さに基づいて、複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を検出する。交通監視装置200の除去部245が、複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を除去する。このような場合、アウトライヤ軌跡を除去した軌跡データD2を用いて、交通監視を行う(ステップS104)。交通監視装置200の交通監視部250が、データD2に基づいて平均速度を算出し、交通フローの監視を行ってもよい。
【0055】
次に、図17および図18を参照して、交通監視装置200が奏する効果について説明する。図18は、DAS100が取得するウォーターフォールデータ13a1を含んでいる。ウォーターフォールデータ13a1には交通フローの急激な変化(例えば、軌跡15f1)が含まれている。例えば、軌跡15f1の傾きが大きい部分は、交通渋滞に対応している。しかし、ウォーターフォールデータ13a1にはアウトライヤ軌跡(例えば、軌跡15f2)が含まれており、パッチごとに平均車両速度を測定した場合には交通渋滞を検出できない可能性がある。交通監視装置200は、ウォーターフォールデータ13a1からノイズを除去するためのアルゴリズムA1を実行する。
【0056】
ウォーターフォールデータ13a2は、ノイズを除去した後のデータを示している。ウォーターフォールデータ13a2に基づいて、交通監視を行うためのアルゴリズムA2を実行することにより、交通フローの急激な変化(例えば、交通渋滞)を検出できる。
【0057】
図18は、関連技術を用いた場合の平均車両速度の算出結果と、実施形態1を用いた場合の平均車両速度の算出結果を示している。図18の上側は関連技術を用いた場合の処理の流れを含み、下側は実施形態1を用いた場合の処理の流れを含んでいる。
【0058】
パッチ14a1は、ノイズを除去する前のパッチを示している。パッチ14a1には、複数のノイズ軌跡が含まれている。関連技術では、ノイズ軌跡を含む軌跡全体から平均車両速度V(例えば、150.6km/hr)を算出する。このような場合、交通フローの急激な変化を検出するアルゴリズムA2を適用すると、誤った警報が出力されるという問題があった。表T1は、関連技術を用いて平均速度を算出した結果を示している。
【0059】
一方、交通監視装置200は、ノイズ除去アルゴリズムA2をパッチ14a1に適用する。パッチ14a2は、パッチ14a1からノイズを除去した後のパッチを示している。交通監視装置200は、ノイズ軌跡を含まない軌跡から平均速度V(例えば、95km/hr)を算出する。このような場合、交通フローの急激な変化を検出するアルゴリズムA2を適用すると、誤った警報が出力されない。表T2は、交通監視装置200が平均速度を算出した結果を示している。
【0060】
実施形態1によれば、平均速度の推定精度が向上する。また、事故や渋滞等のイベントを高効率で検出でき、誤った警報を低減することができる。
【0061】
プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0062】
以上、本開示の実施形態を詳細に説明したが、本開示は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に対して変更や修正を加えたものも、本開示に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1000:交通監視システム
100:DAS
200:交通監視装置
210:取得部
220:抽出部
230:分離部
240:ノイズ除去部
241:決定部
242:延長部
243:特徴算出部
244:検出部
245:除去部
250:交通監視部
300:光ファイバ
10:道路
20:車両
11、12:画像
13、13a1、13a2:ウォーターフォールデータ
14:パッチ
15、15n、15a1、15a2、15b1、15b2、15b3、15b4、15b5、15c1、15c2、15d1、15d2、15d3、15d4、15d5、15e1、15e2、15e3、15f1、15f2:軌跡
21:測定日時
22:平均車両速度
23:平均車両速度
31、32、33:領域
A1、A2:アルゴリズム
E1、E2:端点座標
T:参照継続時間
T1、T2:表
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォーターフォールデータから抽出された複数の軌跡の各々の端部座標を決定する決定手段であって、前記ウォーターフォールデータは、道路に沿って配置された複数のセンシング部の各々からの信号を測定することにより取得される、決定手段と、
前記端部座標を用いて、各軌跡の継続時間が基準継続時間になるように、各軌跡を延長する延長手段と、
延長した各軌跡の特徴を算出する特徴算出手段と、
前記特徴に基づいて、前記複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を検出する検出手段と、
前記複数の軌跡から前記アウトライヤ軌跡を除去する除去手段と、
を備えるノイズ除去装置。
【請求項2】
各軌跡の傾きに基づいて前記道路を走行する1台の車両の速度を算出し、前記道路を走行する車両の平均速度を算出する交通監視手段、
を備える請求項1に記載のノイズ除去装置。
【請求項3】
前記ノイズ除去装置は、前記ウォーターフォールデータを複数のパッチに分離する分離手段を備え、
前記決定手段は、各パッチに含まれる各軌跡の前記端部座標を決定し、
前記交通監視手段は、パッチごとに前記平均速度を算出する、
請求項2に記載のノイズ除去装置。
【請求項4】
前記特徴は、延長した各軌跡の長さである、
請求項2または3のいずれか1項に記載のノイズ除去装置。
【請求項5】
前記交通監視手段は、延長後の各軌跡の長さのうち、前記ウォーターフォールデータから抽出されたいずれかの軌跡と重なる部分の長さを測り、前記部分の前記長さに応じた重み付け係数を導出し、前記重み付け係数に基づいて前記平均速度を算出する、
請求項2から4のいずれか1項に記載のノイズ除去装置。
【請求項6】
ウォーターフォールデータから抽出された複数の軌跡の各々の端部座標を決定することであって、前記ウォーターフォールデータは、道路に沿って配置された複数のセンシング部の各々からの信号を測定することにより取得される、ことと、
前記端部座標を用いて、各軌跡の継続時間が基準継続時間になるように、各軌跡を延長することと、
延長した各軌跡の特徴を算出することと、
前記特徴に基づいて、前記複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を検出することと、
前記複数の軌跡から前記アウトライヤ軌跡を除去することと、
を含むノイズ除去方法。
【請求項7】
ウォーターフォールデータから抽出された複数の軌跡の各々の端部座標を決定することであって、前記ウォーターフォールデータは、道路に沿って配置された複数のセンシング部の各々の信号を測定することにより取得される、ことと、
前記端部座標を用いて、各軌跡の継続時間が基準継続時間になるように、各軌跡を延長することと、
延長した各軌跡の特徴を算出することと、
前記特徴に基づいて、前記複数の軌跡からアウトライヤ軌跡を検出することと、
前記複数の軌跡から前記アウトライヤ軌跡を除去することと、
を含む処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【国際調査報告】