(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】ポリイミドエアロゲルの使用及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
C08G73/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024556818
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2022085397
(87)【国際公開番号】W WO2023110751
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522232695
【氏名又は名称】エーエムペーアー・アイドゲネッシッシェ・マテリアルプリュフングス-ウント・フォルシュンサンシュタルト
(71)【出願人】
【識別番号】524223415
【氏名又は名称】アイビーアイエイチ・アドバンスド・マテリアル・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ティンティン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア・イップ
(72)【発明者】
【氏名】シャンユ・ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィム・マルフェ
(72)【発明者】
【氏名】チン・リ
(72)【発明者】
【氏名】ユンホン・ワン
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043PA05
4J043PA06
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(57)【要約】
本発明は、絶縁材料、収着材料又はフィルター材料としての、直径250nm~20μmを有するポリイミド球を含むポリイミドエアロゲルの使用に、並びにそれの製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドエアロゲルの使用であって、前記ポリイミドエアロゲルが、必要に応じて高温における、絶縁材料、収着材料若しくはフィルター材料としての又は電子機器用の低誘電率材料としての、直径250nm~20μm、必要に応じて1μm~10μmを有するポリイミド球を含む、ポリイミドエアロゲルの使用。
【請求項2】
ポリイミド球が、多孔質であり、必要に応じて1nm~100nmの間の直径を有する細孔を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ポリイミド球間の細孔が、0.2μmから500μmまで、必要に応じて1μmから200μmまでの範囲である、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
ポリイミドエアロゲルが、熱絶縁材料若しくは電気絶縁材料として、必要に応じて電子デバイス、ロボット工学、航空機産業、宇宙工学、冷凍、産業設備、及びパイプラインにおいて、又は必要に応じてアンテナ用の、低誘電率材料において、使用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
ポリイミドエアロゲルがハロゲンフリーである、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
a.ポリイミドエアロゲルが、25℃及び相対湿度50%で測定した熱伝導率約40mW/(m*K)未満、必要に応じて約35mW/(m*K)未満を有し、及び/又は
b.ポリイミドエアロゲルが疎水性であり、必要に応じてポリイミドエアロゲル上の水接触角が90°から140°の間、必要に応じて100°から130°の間である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
ポリイミドエアロゲルが、
a.密度0.06~0.2g/cm
3、必要に応じて0.10~0.17g/cm
3、
b.多孔度80~98%、必要に応じて85~94、
c.ブルナウアー-エメット-テラー比表面積1~350m
2/g、必要に応じて10~100m
2/g、及び/又は
d.ヤング率0.2~5MPa、必要に応じて0.5~2.0MPa
を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
ポリイミドエアロゲルが、架橋されており且つ必要に応じて架橋度1~100%、必要に応じて50~100%を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
ポリイミドエアロゲルが、
(a)4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(ODA);2,2'-ジメチルベンジジン(DMBZ);9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAPF);2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP);p-フェニレンジアミン(PPDA);及び4,4'-ジアミノジフェニルメタン(MDA)並びにそれらの組合せからなる群から選択されるジアミンモノマー、
(b)3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA);4,4'-ジフェニルエーテル二無水物(ODPA);ピロメリット酸二無水物(PMDA);3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA);及びそれらの組合せからなる群から選択される二無水物モノマー;必要に応じてBPDA及びPMDA、並びに/又は
(c)1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド(BTC);トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN);1,3,5-トリス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TAB);ポリマレイン酸無水物(PMA);トリス(4-アミノフェニルアミン)(TAPA);及びトリイソシアネートからなる群から選択される架橋剤;必要に応じてBTC及びTREN、
を含み、
ここで、必要に応じて、ポリイミド内のジアミンモノマーの二無水物モノマーに対するモル比はn:(n+1)又は(n+1):nであり、ここで、nが5以上の整数、必要に応じて5~40である、
請求項1から8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に規定のポリイミドエアロゲルの製造方法であって、以下の工程:
(i)ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、それらの混合物並びにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とDMAc、DMF及び/又はDMSOのうちの少なくとも1種との混合物からなる群から選択される溶媒を含む非プロトン性溶媒中で、ジアミンモノマーと二無水物モノマーとを必要に応じて混合することによって、ポリアミド酸を提供する工程と、
(ii)必要に応じて室温で、(i)のポリアミド酸に無水酢酸及びトリエチルアミンを添加して、ポリイミドゾルを形成する及び非プロトン性溶媒からのポリイミドの相分離を誘導する工程と、
(iii)必要に応じて、ポリイミドゾルのゲル化前に架橋剤、必要に応じてBTC又はTRENを添加して架橋ポリイミドゾルを形成する工程と、
(iv)必要に応じて、工程(ii)及び/又は工程(iii)のゲル化ポリイミドゾルを熟成させる工程と、
(v)工程(iv)の混合物を乾燥する工程と
を含み、
工程(iii)が、必要に応じて工程(ii)の前に実施される、
製造方法。
【請求項11】
工程(v)において、乾燥工程が、超臨界CO
2下で又は大気圧下で、10から200℃の間の温度で、必要に応じて20から100℃の間の温度で実施される、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
工程(i)及び工程(ii)における非プロトン性溶媒が、ジメチルアセトアミド(DMAc)、又はDMAcと更なる非プロトン性溶媒との、必要に応じてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される溶媒との混合物である、請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
a.工程(i)及び/又は工程(ii)におけるポリアミド酸の濃度が、約3~15wt.%、必要に応じて約6~10wt.%であり、及び/又は
b.工程(ii)では、混合物が約1~10分間、必要に応じて約1~5分間かき混ぜられる、
請求項10から12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
工程(iv)の後及び工程(v)の前に、溶媒が、請求項14に規定の極性非プロトン性溶媒のうちの1種若しくはそれらの混合物を含む混合物と、又はヘプタン、ヘキサン若しくは1種以上のアルコール性溶媒、必要に応じてエタノール、メタノール及び/若しくはイソプロピルアルコールとの組み合わされたアセトンと交換される、請求項10から13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項10から14のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる又は得ることが可能である、請求項1から9のいずれか一項に必要に応じて規定されるポリイミドエアロゲル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁材料、収着材料又はフィルター材料としての、直径250nm~20μmを有するポリイミド球を含むポリイミドエアロゲルの使用に、並びにそれの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、高温又は過酷な化学環境に曝露された場合、良好な力学的特性、低誘電率及び卓越した化学的安定性に関する固有の特性を有する高性能の工学ポリマーである。ポリイミドエアロゲルは、ポリイミド材料の内在性の化学組成と特性を有する多孔質材料であり、一般にはゾルゲル法、これに続く超臨界CO2乾燥により製造される。しかし、そのユニークなメソポーラス「エアロゲル」構造に起因して、得られたポリイミドエアロゲルの最終的な物理的特性、例えば多孔度、密度、熱伝導率、誘電率、並びに乾燥及び適用過程での収縮は、最初のモノマーの選択及び架橋剤の使用に強く左右される。化学架橋及びモノマーの選択によって、ある程度まで、合成、ゲル化及び乾燥過程でのポリイミドエアロゲルの収縮を低減させることはできるが、ポリイミドエアロゲルにはなおも共通の問題がある:高温に曝露される場合に体積収縮が大きく(例えば、150℃で24時間でおよそ26%の線収縮、200℃で24時間で40%の線収縮)、この結果、高温適用向けにはほとんど利用不可であることになる。通常、ポリイミドエアロゲルの収縮については、ポリイミドの架橋によって、適切な充填剤を添加することによって又は特定のモノマーを導入することによって対処してきた。例えば、より強固なネットワークを形成するために、シリカ/シランを、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTES)、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン(BTMSPA)及びオクタ(アミノフェニル)シルセスキオキサン(OAPS)を導入してきた。更に、無機シリカ又はシリカエアロゲル充填剤は、PIエアロゲルを安定化させることが報告されてきた(M.A.B. Meadorら、Polymer Preprints 51 (2010) 265頁; S. Wuら、RSC Adv. 6 (2016) 58268~58278頁)。シリカ又はシリカエアロゲル充填剤を添加した後、合成過程での収縮を改善することができたが、ポリアミド酸溶液の粘度が高いことに起因して、シリカ粒子との混合には長時間にわたって激しく撹拌することが必要であった。このプロセスによって、第一にシリカエアロゲル粒子が過剰崩壊し、エアロゲルの特性がダウングレードするが、第二にシリカエアロゲルの細孔へとオリゴマー/ポリマーの浸透が促進され、このことが、最終的に複合体の緻密化をもたらす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】M.A.B. Meadorら、Polymer Preprints 51 (2010) 265頁
【非特許文献2】S. Wuら、RSC Adv. 6 (2016) 58268~58278頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、改良されたポリイミド材料並びにポリイミド材料の新規な使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、絶縁材料、収着材料若しくはフィルター材料としての又は電子機器用の低誘電率材料としての、必要に応じて高温にての、直径250nm~20μm、必要に応じて1μm~10μmを有するポリイミド球を含むか又は必要に応じてそれらからなるポリイミドエアロゲルの使用を対象とする。
【0006】
驚くべきことに、本明細書に記載のポリイミドエアロゲルは、従来技術の材料と比較して、熱処理過程での変形に耐えることにより強力であることが見いだされた。更に、本明細書に記載の材料は、ポリイミドゲルの乾燥の可能性を、超臨界乾燥からオーブン乾燥(大気圧乾燥)まで拡張する。更に驚くべきことに、本明細書に記載のポリイミドエアロゲルは、絶縁材料、収着材料若しくはフィルター材料としての又は電子機器用の低誘電材料としての、必要に応じて高温にての、卓越した有用性を有することが見いだされた。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で使用されるような「ポリイミド球」という用語は、本質的に球状のポリイミドナノファイバー構造を指す。上記球は、必ずしも完全に円形である必要はなく、「出芽状」の形態であってもよい、すなわち、2つの球が接続しあっていてもよく、当該2つの球は本発明の文脈内ではやはり球とみなされる。
【0008】
本明細書に記載のポリイミド球の材料は、ポリイミドナノファイバーストランドからできている。ナノファイバーストランドはネットワークで組織化されており、このことにより球が形成される。こういったネットワークは密である場合があり、疎である場合もある、すなわち、ネットワーク自体は多孔質(疎)である場合があり、本質的に細孔を含まない(密)場合もある。本明細書に記載のポリイミドエアロゲル自体は、本質的に球間の間隙である細孔を含むが、一方、球自体は同様に多孔質である場合もありそうではない場合もあり、ここで、球の細孔は、球を構成するナノファイバーネットワークによって形成されるものである。
【0009】
「細孔」又は「多孔質」という用語は、本明細書で使用される場合、例えば、走査型電子顕微鏡等の標準光学法によって検出可である限りにおいて、細孔が存在することを意味する。
【0010】
範囲が2つの数値の間であると規定される場合は常に、この範囲は指示された数値を含む。
【0011】
「低誘電率材料」という用語は、当技術分野で普通に理解されている。例えば、低誘電率材料とは、誘電率約3.9未満のものである。電子機器用の低誘電率材料の例としては、例えば、シリコンベースの誘電体(SiO2)、ポリイミドフィルム及びポリイミドエアロゲルが挙げられる。
【0012】
一実施形態では、本明細書に記載のポリイミドエアロゲルは、シリコンフリーであり、及び/又は無機メソポーラス材料を含まず、必要に応じてシリカエアロゲルを含まない。
【0013】
一実施形態では、本発明の使用とは、ポリイミド球が多孔質であり、必要に応じて、1nm~100nmの間の、必要に応じて2nm~100nmの間の直径を有する細孔を有する、使用である。
【0014】
一実施形態では、本発明の使用とは、ポリイミド球間の細孔が、0.2μmから500μmまで、必要に応じて1μmから200μmまでの範囲である、使用である。
【0015】
上述のように、本明細書に記載のポリイミドエアロゲル自体は細孔を含み、これらの細孔はポリイミド球間の細孔/間隙である。
【0016】
全ての細孔及び間隙は、例えばSEMによって測定することができ、数値範囲とは細孔の直径を指す。細孔が円形でない場合、数値範囲はポリイミド球間又はナノファイバーストランド間の最大距離を指す。
【0017】
一実施形態では、本発明の使用とは、ポリイミドエアロゲルが、必要に応じて電子デバイス、ロボット工学、航空機産業、宇宙工学、冷凍、産業設備、及びパイプラインにおいて熱絶縁材料若しくは電気絶縁材料として、又は、必要に応じてアンテナ用の低誘電率材料において使用される、使用である。
【0018】
一実施形態では、本発明の使用とは、ポリイミドエアロゲルがハロゲンフリーであり、必要に応じてフッ素フリーであり、必要に応じて、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)又は9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAPF)を含まないか、又はそれらからできてはいない、使用である。
【0019】
一実施形態では、本発明の使用とは、ポリイミドエアロゲルが、25℃及び相対湿度50%で測定した熱伝導率約40mW/(m*K)未満、必要に応じて約35mW/(m*K)未満を有する、使用である。
【0020】
本発明のポリイミドエアロゲルの熱伝導率は、本質的に同じ結果をもたらす既知の方法によって測定することができる。こういった方法には、例えば、保護熱板、過渡熱線、熱流量計、又はレーザーフラッシュ拡散率が含まれ、この場合、保護熱板が好ましい方法である。
【0021】
本明細書に記載され、本明細書で使用のためのポリイミドエアロゲルは、必要に応じて、350℃まで1時間維持されていても、0~20%、必要に応じて5から12%までの低体積収縮を有する。その後、収縮したポリイミドエアロゲルの25℃及び相対湿度50%で測定した熱伝導率は、40mW/(m*K)未満、好ましくは36mW/(m*K)未満である。また、ポリイミドエアロゲルの球状構造は、350℃まで分解に耐えることができる。理論に縛られることを望むものではないが、こういった特性は、例えば、ポリイミドエアロゲルが直径250nm~20μmを有するポリイミド球を含むという、本明細書に記載の材料組成の結果であると想定される。
【0022】
一実施形態では、本発明の使用とは、ポリイミドエアロゲルが疎水性であり、必要に応じてポリイミドエアロゲル上の水接触角は90°から140°の間、必要に応じて100°から130°の間である、使用である。必要に応じて、ポリイミドエアロゲルは、水による低湿潤性表面を有する。
【0023】
理論に縛られることを望むものではないが、ポリイミドエアロゲルの疎水性は球状構造に帰するものと考えられる。
【0024】
一実施形態では、本発明の使用とは、ポリイミドエアロゲルが、
a.密度0.06~0.2g/cm3、必要に応じて0.10~0.17g/cm3、
b.多孔度80~98%、必要に応じて85~94、
c.ブルナウアー-エメット-テラー比表面積1~350m2/g、必要に応じて10~100m2/g、及び/又は
d.ヤング率0.2~5MPa、必要に応じて0.5~2.0MPa
を有する、
使用である。
【0025】
以下の標準法を使用して、(a)密度:式(質量/体積)から算出;(b)多孔度:式(1-(嵩密度/真密度))から算出;(c)ブルナウアー-エメット-テラー比表面積:BET窒素吸脱着試験;及び(d)ヤング率:圧縮試験からのひずみ-応力曲線の初期線形部分の傾き、を決定することができる。
【0026】
一実施形態では、本発明の使用とは、ポリイミドエアロゲルが、架橋されており且つ必要に応じて架橋度1~100%、必要に応じて50~100%を有する、使用である。
【0027】
一実施形態では、本明細書に記載のポリイミドエアロゲルは架橋されておらず、必要に応じて架橋度0%を有する。
【0028】
本明細書で使用されるような且つ本明細書記載の使用のためのポリイミドとは、化学的に安定である任意のポリイミドを指す。例えば、市販の任意のポリアミン及びジアミン、並びにポリ無水物及び二無水物を使用して、本明細書に記載のポリイミドを形成することができる。例えば、芳香族のジアミン及び/又はポリアミン及び二無水物を使用することができる。代替的に、脂肪族のジアミン及び二無水物も使用することができる。使用する場合、架橋剤は芳香族足場をベースとするものであっても、脂肪族足場をベースとするものであってもよい。
【0029】
一実施形態では、本発明の使用とは、ポリイミドエアロゲルが、
(a)4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(ODA);2,2'-ジメチルベンジジン(DMBZ);9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAPF);2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP);p-フェニレンジアミン(PPDA);及び4,4'-ジアミノジフェニルメタン(MDA)並びにそれらの組合せからなる群から選択されるジアミンモノマー、
(b)3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA);4,4'-ジフェニルエーテル二無水物(ODPA);ピロメリット酸二無水物(PMDA);3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA);及びそれらの組合せからなる群から選択される二無水物モノマー;必要に応じてBPDA及びPMDA、並びに/又は
(c)1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド(BTC);トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN);1,3,5-トリス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TAB);ポリマレイン酸無水物(PMA);トリス(4-アミノフェニルアミン)(TAPA);及びトリイソシアネートからなる群から選択される架橋剤;必要に応じてBTC及びTREN、
を含み、
ここで、必要に応じて、ポリイミド内のジアミンモノマーの二無水物モノマーに対するモル比はn:(n+1)又は(n+1):nであり、ここで、nは5以上の整数、必要に応じて5~40である。
【0030】
必要に応じて、ポリイミドエアロゲルは、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAPF)を含まない。
【0031】
必要に応じて、ポリイミド内のジアミンモノマーの二無水物モノマーに対するモル比はn:(n+1)又は(n+1):nであり、ここで、nは5以上の整数、必要に応じて5~40である。例えば、6:5の場合、ジアミンの二無水物に対する比6:5は、平均で6つのジアミン単位と5つの二無水物単位を有するポリアミド酸に相当する。ジアミンの二無水物に対する比1:1は、無限のポリアミド酸鎖に相当する。
【0032】
必要に応じて、本明細書に記載の架橋前のポリアミド酸の平均長さは、2,500から50,000(モル質量g/mol)までである。
【0033】
本明細書で開示される全てのジアミンモノマー及び二無水物モノマーとは、ポリマー中に存在する、すなわちポリマーをもたらす上記モノマーを指す。換言すれば、上記が説明するところは、ポリイミドポリマーが、その後のそれらのポリマー形態中に上に列挙のモノマーを1種以上を含む、ということである。
【0034】
ポリイミドエアロゲルの使用に関連して本明細書に記載のあらゆる定義、説明及び特徴は、ポリイミドエアロゲルそれ自体にも、及びポリイミドエアロゲルの製造方法にも、例えば本明細書に開示される方法にも適用される。
【0035】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のポリイミドエアロゲルの製造方法であって、以下の工程:
(i)ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、それらの混合物並びにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とDMAc、DMF及び/又はDMSOのうちの少なくとも1種との混合物からなる群から選択される溶媒を含むか又はそれらからなる非プロトン性溶媒中で、ジアミンモノマーと二無水物モノマーとを必要に応じて混合することによってポリアミド酸を提供する工程と、
(ii)必要に応じて室温で、(i)のポリアミド酸に無水酢酸及びトリエチルアミンを添加してポリイミドゾルを形成する工程並びに非プロトン性溶媒からのポリイミドの相分離を誘導する工程と、
(iii)必要に応じて、ポリイミドゾルのゲル化前に架橋剤、必要に応じてBTC又はTRENを添加して架橋ポリイミドゾルを形成する工程と、
(iv)必要に応じて、工程(ii)及び/又は工程(iii)のゲル化ポリイミドゾルを熟成させる工程と、
(v)工程(iv)の混合物を乾燥する工程と
を含む、方法を対象とする。
【0036】
本明細書に記載の方法の工程(i)では、ジアミンモノマーと二無水物モノマーは、ポリイミドエアロゲル及びその使用の文脈において上記のように、ジアミンモノマーの二無水物モノマーに対するモル比n:(n+1)又は(n+1):n、n≧5で必要に応じて混合される。例えば、ジアミンの二無水物に対する比6:5は、平均6つのジアミン単位と5つの二無水物単位を有するポリアミド酸に相当する。ジアミンの二無水物に対する比1:1は、無限のポリアミド酸鎖に理論的に相当する。ポリアミド酸の濃度は、例えば、約3~30又は約5~15wt.%に設定することができ、混合時間(例えば、かき混ぜ又は撹拌で)は、約1~60分、必要に応じて約5~60分又は15~40分又は約30分に、必要に応じて室温下で、設定することができる。ジアミン及び二無水物について提供された定義及び説明、並びに本発明のポリイミドエアロゲル及びその使用の文脈において提供されるその他の特徴は、本発明の方法にも適用される。高分子化学の分野の当業者であれば、本発明の方法の工程(i)~工程(iii)における試薬の組合せが、物理的混合を、例えば混合物をかき混ぜる、振とうする、又は撹拌することを伴うか否かを、ルーチンで選択することができる。工程(i)においてジアミンモノマーと二無水物モノマーを混合し、工程(ii)における無水酢酸とトリエチルアミンの添加及び/又は工程(iii)における架橋剤の添加を、例えばかき混ぜ下で行っても、撹拌下で行ってもよい。
【0037】
工程(i)及び工程(ii)では、非プロトン性溶媒が使用される。当業者であれば、工程(ii)でトリメチルアミンを添加すると相分離が、必要に応じて、例えば3~20分以内に迅速な相分離が誘導されるように、非プロトン性の溶媒又は混合物を選択する。ここでも、当業者であれば、本明細書に開示された溶媒のリストから、迅速な相分離が起こることを可能にする、適切な非プロトン性溶媒をルーチンで選択することができる。更に、使用される濃度及び2種以上の非プロトン性溶媒間の必要に応じた比は、例えばジアミンモノマーと二無水物モノマーのタイプ及び量に応じて、化学及び高分子化学の分野の当業者であれば、ルーチンで選択することができる。
【0038】
本明細書に記載の方法の工程(ii)では、無水酢酸の添加を使用して水分を除去し、トリメチルアミン(TEA)を使用してイミド化を触媒するとともに最も重要なことに溶媒からのポリイミドの相分離を誘導する。TEA及び無水酢酸は、一緒に添加しても任意の順序で別々に添加してもよい。理論に縛られることを望むものではないが、TEAを用いて相分離を誘導することによって、本明細書に記載のポリイミド球の形成がもたらされると考えられる。加えて、迅速なイミド化反応がポリイミド球の形成を同様に促進すると考えられる。この文脈において、迅速なイミド化とは、イミド化が1~5分以内に完了することを意味する。必要に応じて、本明細書に記載の方法では、工程(ii)及び必要に応じて工程(iii)の混合時間はイミド化時間よりも小さく、例えば、その結果、混合時間は所定のイミド化度で停止され且つ混合物は熟成されるか又は容器、例えばモールドに移され、その後に更なるイミド化が起こる(例えば、このことが沈殿をもたらすと思われる)。イミド化のための工程(ii)での例示的な混合時間(例えば、撹拌又はかき混ぜでの)は、1から10分まで、必要に応じて1~5分の範囲とすることができる。重合反応の進行は、既知の手段によって、例えば、IR分光法、NMR又はレオロジー測定によって点検することができる。
【0039】
無水酢酸は、例えば、化学量論的に使用することができる。無水酢酸の例示的且つ非限定的な量としては、無水酢酸と二無水物との間のモル比8:1~2:1、必要に応じて8:1~4:1が挙げられる。
【0040】
トリエチルアミンは、例えば、化学量論的に使用することができる。トリエチルアミンの例示的且つ非限定的な量としては、トリエチルアミンと無水酢酸との間のモル比1:1~1:8、必要に応じて1:1~1:4が挙げられる。
【0041】
ゲル化は、工程(ii)の後に起こっても、存在する場合は必要に応じた工程(iii)の後に起こっても、いずれでもよい。しかし、ゲル化は、工程(iv)が終了するまで完了してはいけない。
【0042】
架橋工程(工程(iii))を、工程(ii)でTEA及び無水酢酸を添加する前に実施してもよく、当業者であれば、例えば、使用される架橋剤のタイプに応じて、適切なプロトコルをルーチンで選択することができる。例えば、TABを使用する場合、TABの添加の後にTEA及び無水酢酸を添加することができ、BTC及びTREN等の架橋剤の場合はその逆とすることができる。
【0043】
一実施形態では、本発明の方法は、工程(iii)が工程(ii)の前に実施される、方法である。
【0044】
架橋のための例示的な混合時間(例えば、撹拌又はかき混ぜでの)は、1から15分まで又は1から10分まで、必要に応じて1から5分までの範囲である。
【0045】
必要に応じて、架橋剤は、非プロトン性溶媒、必要に応じて工程(i)の非プロトン性溶媒に、必要に応じてDMAcに溶解させることができる。
【0046】
一実施形態では、本発明の方法は、工程(v)において、乾燥工程が超臨界CO2下(例えば、45~70℃で、例えば、5~10時間、例えば、約120バールで)、又は大気圧下で、10から200℃の間の温度で、必要に応じて20から100℃の間の温度で実施される、方法である。
【0047】
驚くべきことに、本明細書に記載され且つ本明細書に記載の方法に従って作製されたポリイミドエアロゲルは、比較的高い温度で乾燥した場合(すなわち、超臨界CO2乾燥工程とは対照的に)、低体積収縮を提示する。例えば、エアロゲルを、それぞれ、200、300及び350℃でそれぞれ1時間乾燥させても、10、8及び12%の低体積収縮が観察された。比較すると、本明細書に記載のポリイミド球を含まない従来技術のポリイミドエアロゲルは、それぞれ、200、300及び350℃下でそれぞれ1時間維持した場合、95、94及び92%の体積収縮を提示した。このことが意味するところは、本発明の方法により、著しい体積収縮なしで大気圧下で容易で経済的な乾燥工程が可能となること、である。
【0048】
一実施形態では、本発明の方法は、工程(i)及び工程(ii)における非プロトン性溶媒が、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、それらの混合物、並びに、DMAc、DMF及び/又はDMSOのうちの少なくとも1種との、30v%以下、25v%以下、20v%以下、15v%以下又は10v%以下のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の混合物(v%は体積%を意味する)からなる群から選択される溶媒である、方法である。
【0049】
本明細書で使用される場合、「30v%以下、25v%以下、20v%以下、15v%以下、又は10v%以下」という用語には、それぞれ、30v%、30v%未満、1~30v%; 25v%、25v%未満、1~25v%、20v%、20v%未満、1~20v%、15v%、15v%未満、1~15v%、10v%、10v%未満及び1~10v%が含まれる。
【0050】
一実施形態では、本発明の方法は、工程(i)及び工程(ii)における非プロトン性溶媒が、DMAc、DMF、DMSO、又はDMF及び/若しくはDMSOとのDMAcの混合物である、方法である。
【0051】
一実施形態では、本発明の方法は、工程(i)及び工程(ii)における非プロトン性溶媒がDMAcであるか、又はDMF及び/若しくはDMSOとのDMAcの混合物である、方法である。
【0052】
一実施形態では、本発明の方法は、工程(i)及び工程(ii)における非プロトン性溶媒が、ジメチルアセトアミド(DMAc)、又は、更なる非プロトン性溶媒との、必要に応じてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される溶媒とのDMAcの混合物であり、必要に応じてここで、NMPについては、この更なる溶媒は混合物中、30v%以下、25v%以下、20v%以下、15v%以下、又は10v%以下となる。
【0053】
必要に応じて、工程(i)及び工程(ii)における非プロトン性溶媒は、少なくとも1種の更なる非プロトン性、必要に応じて極性非プロトン性溶媒とのDMAcの混合物であり、必要に応じてNMP、DMF及びDMSOからなる群から選択される溶媒とのDMAcの混合物であり、必要に応じて、当該更なる溶媒は少なくとも1~99v%又は少なくとも1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95若しくは99v%の条件、及び、必要に応じて、当該更なる溶媒がNMPである場合には当該更なる溶媒は30v%以下、25v%以下、20v%以下、15v%以下又は10v%以下の条件である。
【0054】
例示的な溶媒混合物としては、以下が挙げられる:
1~99v%のX/99~1v%のDMAc、必要に応じて90~10v%のX/10~90v%のDMAc、40~60v%のX/60~40v%のDMAc、50v%のX/50v%のDMAc、又は90v%のX/10v%のDMAc、ここで、XはNMP、DMSO及びDMFから選択され、ここで、NMPについては、溶媒混合物中の最大量は必要に応じて30v%以下、25v%以下、20v%以下、15v%以下、又は10v%以下である;
1~30v%のNMP/99~70v%のDMAc、必要に応じて1~25v%のNMP/99~75v%のDMAc、1~20v%のNMP/99~80v%のDMAc、1~15v%のNMP/99~85v%のDMAc、又は1~10v%のNMP/99~90v%のDMAc;並びに
1~30v%のNMP/99~70v%のDMF、50v%のDMAc/50v%のDMF、50v%のDMAc/50v%のDMSO、50v%のDMF/50v%のDMSO(v%は体積%を意味する)。
【0055】
一実施形態では、本発明の方法は、工程(i)及び/又は工程(ii)におけるポリアミド酸の濃度が約3~15wt.%、必要に応じて5~15wt.%、必要に応じて約6~10wt.%である、方法である。
【0056】
一実施形態では、本発明の方法は、工程(ii)では、混合物が約1~10分間、必要に応じて約1~5分間かき混ぜられる(例えば、撹拌下又はかき混ぜ下で)、方法である。
【0057】
一実施形態では、本発明の方法は、工程(iv)の後及び工程(v)の前に、溶媒は、工程(i)及び工程(ii)の文脈で本明細書に開示される極性非プロトン性溶媒のうちの1種若しくはそれらの混合物を含む混合物と、又はヘプタン、ヘキサン若しくは1種以上のアルコール性溶媒、必要に応じてエタノール、メタノール及び/若しくはイソプロパノールとの組み合わされたアセトンと、交換される、方法である。
【0058】
更なる態様では、本発明は、ポリイミドエアロゲル、必要に応じて本明細書で規定のエアロゲル又はその使用を対象とし、ポリイミドエアロゲルは本明細書で開示される方法によって得られる又は得ることが可能である。
【0059】
本発明の方法を実施するための例示的な非限定的なプロトコルを以下に提供する。
【0060】
ビフェニル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物(BPDA)と、4,4'-オキシジアニリン(ODA)と2,2'-ジメチルベンジジン(DMBZ)(これら2つのジアミンの間のモル比は、例えば10:0から0:10までの範囲とすることができる)とを、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)中で、二無水物とジアミンの間の例示的モル比がn:(n+1)又は(n+1):nという状態で混合するが、ここで、nは例えば5~40の範囲とすることができ、溶液中のアミノ末端又は無水物末端ポリアミド酸の濃度は例えば約5~15wt.%とすることができる。例えば室温下にての、例えば約30分の重合の後、無水酢酸(AA)とトリメチルアミン(TEA)の混合物をポリアミド酸溶液に緩徐に添加し、混合物全体を1~5分間撹拌する。TEA及びAAの必要に応じた量には、例えば、無水酢酸と二無水物の間のモル比8:1~2:1、トリエチルアミンと無水酢酸の間のモル比1:1~1:8が含まれる。必要に応じて、例えばDMACに溶解させた架橋剤BTC又はTREN又はTABを系に添加することができ、例えば更に3分間撹拌することができる。ここで、架橋剤の添加は必要に応じたものであり、このことは架橋剤をスキップすることができることを意味する。加えて、化学イミド化剤と架橋剤の添加順序は、使用する架橋剤に応じて切り替えることができる。TABの場合、TABを添加の後に化学イミド化剤を添加し、BTC及びTREN等の架橋剤の場合はその逆である。混合物を(例えばシリコン又はポリプロピレンの)モールドへと移し、繰り返し単位の数、溶媒及びイミド化プロセスに応じて、例えば5~30分以内にゲル化が起こる。ゲルは、完全なゲル化まで、例えば室温で例えば24時間、熟成させ、溶媒は24時間間隔で例えば75/25、25/75及び0/100のDMAc/エタノールと交換される。ゲルは最終的に、真空を使用して又は真空を使用せずに通常のオーブン(例えば10~200℃で)内で、又は超臨界CO2乾燥工程によって乾燥される。最終的に、マイクロスフェアの集合体を有する多孔質ポリイミドエアロゲルが得られたが、この場合、マイクロスフェアは疎である又は密であるポリイミドナノファイバーネットワークからなる。
【0061】
以下の図及び実施例は本発明を例示するものであり、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1A】本明細書に記載のポリイミドエアロゲルのSEM画像を示す図である。Aは大気圧乾燥工程からのものである。乾燥工程前ではエタノールベースのゲルである。
【
図1B】本明細書に記載のポリイミドエアロゲルのSEM画像を示す図である。Bは大気圧乾燥工程からのものである。乾燥工程前ではエタノールベースのゲルである。
【
図1C】本明細書に記載のポリイミドエアロゲルのSEM画像を示す図である。Cは超臨界CO
2乾燥工程からのものである。乾燥工程前ではエタノールベースのゲルである。
【
図1D】本明細書に記載のポリイミドエアロゲルのSEM画像を示す図である。Dは超臨界CO
2乾燥工程からのものである。乾燥工程前ではエタノールベースのゲルである。
【
図2】熱熟成処理(350℃及び1時間)後の、大気圧乾燥工程(
図1のA(左)及びB(右)に相当する)からのポリイミドエアロゲルのSEM画像を示す図である。
【0063】
(実施例1)
超臨界CO2乾燥工程を介するポリイミドマトリクス内に球状構造を有するポリイミドエアロゲルの製造
ビフェニル-3,3',4,4'-テトラカルボン酸二無水物(BPDA)2.0214gと、2,2'-ジメチルベンジジン(DMBZ)0.7536gと、4,4'-オキシジアニリン(ODA)0.7108g(DMBZとODAの間のモル比は5:5である)とを、ジメチルアセトアミド(DMAc)溶媒40ml中で、二無水物とジアミンの間のモル比がそれぞれ30:31という状態で混合し、室温(STP)下での30分の重合の後、溶液中のポリマーの濃度は約7wt.%であった(工程1)。無水酢酸5.20mLとトリメチルアミン(TEA)7.66mLのプレミックス混合物を溶液に緩徐に添加し、これに続いて2分間撹拌した(工程2)。それと同時に、BTC0.0405gをDMAc10mlに溶解させ、BTC溶液をポリマー溶液に添加し、更に2分間撹拌した(工程3)。ゾルをシリコンモールドへと移し、ゲル化が10分以内に起こった。試料を室温(STP)で24時間熟成させ、溶媒を12時間間隔で75/25、25/75及び0/100のDMAc/エタノールと交換した(工程4)。湿潤ゲルを、最終的に、50℃及び120barで7時間、超臨界CO2下で(工程5)乾燥させた。
【0064】
材料特性:嵩密度0.14g/cm3、BET比表面積47.6m2/g、熱伝導率33.0mW/(m*K)、それぞれ200℃及び300℃にての24時間の体積収縮7%及び20%、圧縮ヤング率は0.75MPaである。
【0065】
(実施例2)
大気圧乾燥工程を介するポリイミドマトリクス中に球状構造を有するポリイミドエアロゲルの代替製造
実施例1の手順と同一の手順を使用したが、ただし、工程5の過程では、湿潤ゲルからエタノールを除去して乾燥するために、超臨界CO2乾燥工程に取って代わって大気圧乾燥工程が選択され、これを大気圧、75℃で5時間実施したこと、を除く。
【0066】
材料特性:嵩密度0.16g/cm3、BET比表面積1.6m2/g、熱伝導率35.0mW/(m*K)、それぞれ200℃及び300℃にての24時間の体積収縮8%及び18%、圧縮ヤング率は0.78MPaである。
【0067】
(実施例3)
超臨界CO2乾燥工程を介するポリイミドマトリクス中に球状構造を有するポリイミドエアロゲルの代替製造
実施例1の手順と同一の手順を使用したが、ただし、工程1の過程では、純粋なDMAc溶媒の代わりに、20v%のNMP/80v%のDMAcの混合物をポリマーの合成用に使用したしたこと、を除く。
【0068】
材料特性:嵩密度0.11g/cm3、BET比表面積107.0m2/g、熱伝導率32.1mW/(m*K)、圧縮ヤング率は0.40MPaである、200℃及び300℃にての24時間の体積収縮30%及び35%。
【0069】
(実施例4)
超臨界CO2乾燥工程を介するポリイミドマトリクス中に球状構造を有するポリイミドエアロゲルの代替製造
実施例1の手順と同一の手順を使用したが、ただし、工程1の過程では、BPDA-ODA/DMBZの共重合の代わりに、1種類のジアミンDMBZのみをBPDA-DMBZポリマーの合成用に使用したこと、を除く。
【0070】
材料特性:嵩密度0.15g/cm3、BET比表面積367.4m2/g、熱伝導率33.3mW/(m*K)、200℃及び300℃にての24時間の体積収縮15%及び25%。
【0071】
(実施例5)
大気圧乾燥工程を介するポリイミドマトリクス中に球状構造を有するポリイミドエアロゲルの代替製造
実施例2の手順と同一の手順を使用したが、ただし、工程4の過程では、溶媒交換用のエタノールの代わりに、溶媒ヘキサンを溶媒交換に使用したが、それは12時間間隔で75/25、25/75及び0/100のDMAc/ヘキサンと交換される溶媒であり(工程4)、その後に大気圧乾燥工程を行ったこと、を除く。
【0072】
材料特性:嵩密度0.16g/cm3、BET比表面積12.9m2/g、熱伝導率34.4mW/(m*K)、200℃及び300℃にての24時間の体積収縮10%及び20%。
【0073】
(実施例6)
大気圧乾燥工程を介するポリイミドマトリクス中に球状構造を有するポリイミドエアロゲルの代替製造
実施例2の手順と同一の手順を使用したが、ただし、工程1の過程では、合成用にDMAc 50mLを使用する代わりに、DMAc 800mLを使用して、より大きなゲル(200mm×200mm×14mm)を作製したが、この場合、使用する全ての化学物質の量がそれぞれスケールアップされていること、を除く。
【0074】
材料特性:嵩密度0.16g/cm3、BET比表面積2.5m2/g、熱伝導率35.0mW/(m*K)、200℃及び300℃にての24時間の体積収縮8%及び18%。
【0075】
(実施例7)
大気圧乾燥工程を介するポリイミドマトリクス中に球状構造を有するポリイミドエアロゲルの代替製造
実施例2の手順と同一の手順を使用したが、ただし、工程4の過程では、溶媒交換用のエタノールの代わりに、溶媒ヘプタンを溶媒交換に使用したが、それは12時間間隔で75/25、25/75及び0/100のDMAc/ヘプタンと交換される溶媒であり(工程4)、その後に大気圧乾燥工程を行ったこと、を除く。
【0076】
材料特性:嵩密度0.17g/cm3、BET比表面積8.0m2/g、熱伝導率38.0mW/(m*K)、200℃及び300℃にての24時間の体積収縮10%及び18%。
【0077】
(実施例8)
超臨界CO2乾燥工程を介するポリイミドマトリクス中に球状構造を有するポリイミドエアロゲルの代替製造
実施例1の手順と同一の手順を使用したが、ただし、工程3の過程では、BTCの架橋剤の代わりに架橋剤TRENを使用してゲルを作製したこと、を除く。
【0078】
材料特性:嵩密度0.15g/cm3、BET比表面積3.0m2/g、熱伝導率34.3mW/(m*K)、200℃及び300℃にての24時間の体積収縮7%及び19%。
【0079】
(実施例9)
超臨界CO2乾燥工程を介するポリイミドマトリクス中に球状構造を有するポリイミドエアロゲルの代替製造
実施例1の手順と同一の手順を使用したが、ただし、工程1の過程では、純粋なDMAc溶媒の代わりに、30v%のNMP/70v%のDMAcの混合物をポリマーの合成用に使用したこと、を除く。
【0080】
材料特性:嵩密度0.15g/cm3、BET比表面積168.1m2/g、熱伝導率33.4mW/(m*K)、圧縮ヤング率は0.71MPaである、200℃及び300℃にての24時間の体積収縮30%及び40%。
【0081】
(実施例10)
超臨界CO2乾燥工程を介するポリイミドマトリクス中に球状構造を有するポリイミドエアロゲルの代替製造
実施例1の手順と同一の手順を使用したが、ただし、工程1の過程では、純粋なDMAc溶媒の代わりに、10v%のNMP/90v%のDMAcの混合物をポリマーの合成用に使用したこと、を除く。
【0082】
材料特性:嵩密度0.16g/cm3、BET比表面積53.6m2/g、熱伝導率30.2mW/(m*K)、圧縮ヤング率は0.54MPaである、200℃及び300℃にての24時間の体積収縮25%及び36%。
【0083】
(実施例11)
超臨界CO2乾燥工程を介するポリイミドマトリクス中に球状構造を有するポリイミドエアロゲルの代替製造
実施例1の手順と同一の手順を使用したが、ただし、工程1の過程では、純粋なDMAc溶媒の代わりに、純粋なDMFをポリマーの合成用に使用したこと、を除く。
【0084】
材料特性:嵩密度0.12g/cm3、BET比表面積3.5m2/g、熱伝導率34.2mW/(m*K)、圧縮ヤング率は1.05MPaである、200℃及び300℃にての24時間の体積収縮9%及び18%。
【0085】
(実施例12)
超臨界CO2乾燥工程を介するポリイミドマトリクス中に球状構造を有するポリイミドエアロゲルの代替製造
実施例1の手順と同一の手順を使用したが、ただし、工程1の過程では、純粋なDMAc溶媒の代わりに、50v%のDMAc/50v%のDMSOの混合物をポリマーの合成用に使用したこと、を除く。
【0086】
材料特性:嵩密度0.13g/cm3、BET比表面積30.5m2/g、熱伝導率32.2mW/(m*K)、圧縮ヤング率は0.65MPaである、200℃及び300℃にての24時間の体積収縮15%及び22%。
【0087】
(比較例13)
超臨界CO2乾燥工程を介するポリイミドマトリクス中に従来のメソポーラス構造を有するポリイミドエアロゲルの代替製造
実施例1の手順と同一の手順を使用したが、ただし、工程1の過程では、純粋なDMAc溶媒の代わりに、純粋なNMPをポリマーの合成用に使用したこと、を除く。
【0088】
材料特性:嵩密度0.07g/cm3、BET比表面積433.9m2/g、熱伝導率24.7mW/(m*K)、圧縮ヤング率は7.00MPaである、200℃及び300℃にての24時間の体積収縮95%及び95%。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドエアロゲルの使用であって、前記ポリイミドエアロゲルが、必要に応じて高温における、絶縁材料、収着材料若しくはフィルター材料としての又は電子機器用の低誘電率材料としての、直径250nm~20μmを有するポリイミド球を含む、ポリイミドエアロゲルの使用。
【請求項2】
ポリイミド球が直径1μm~10μmを有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ポリイミド球が多孔質である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
ポリイミド球が、1nm~100nmの間の直径を有する細孔を有する、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
ポリイミド球間の細孔が0.2μmから500μmまでの範囲である、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
ポリイミドエアロゲルが、熱絶縁材料又は電気絶縁材料として使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
ポリイミドエアロゲルが、熱絶縁材料若しくは電気絶縁材料として、電子デバイス、ロボット工学、航空機産業、宇宙工学、冷凍、産業設備、及びパイプラインにおいて、又は低誘電率材料において、使用される、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
ポリイミドエアロゲルがハロゲンフリーである、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
a.ポリイミドエアロゲルが、25℃及び相対湿度50%で測定した熱伝導率約40mW/(m*K)未満を有する、
b.ポリイミドエアロゲルが疎水性である、
c.ポリイミドエアロゲル上の水接触角が90°から140°の間である、又は
d.それらの組合せ
のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
ポリイミドエアロゲルが、
a.密度0.06~0.2g/cm
3
、
b.多孔度80~98%、
c.ブルナウアー-エメット-テラー比表面積1~350m
2
/g、
d.ヤング率0.2~5MPa、又は
e.それらの組合せ
のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
ポリイミドエアロゲルが架橋されている、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
ポリイミドエアロゲルが架橋度1~100%を有する、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
ポリイミドエアロゲルが、
(a)4,4'-ジアミノジフェニルエーテル(ODA);2,2'-ジメチルベンジジン(DMBZ);9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(BAPF);2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP);p-フェニレンジアミン(PPDA);及び4,4'-ジアミノジフェニルメタン(MDA)並びにそれらの組合せからなる群から選択されるジアミンモノマー、
(b)3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA);4,4'-ジフェニルエーテル二無水物(ODPA);ピロメリット酸二無水物(PMDA);3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA);及びそれらの組合せからなる群から選択される二無水物モノマー;
(c)1,3,5-ベンゼントリカルボニルトリクロリド(BTC);トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN);1,3,5-トリス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TAB);ポリマレイン酸無水物(PMA);トリス(4-アミノフェニルアミン)(TAPA);及びトリイソシアネートからなる群から選択される架橋剤、又は
(
d)それらの組合せ
を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項14】
ポリイミド内のジアミンモノマーの二無水物モノマーに対するモル比がn:(n+1)又は(n+1):nであり、ここで、nは5以上の整数である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1に規定のポリイミドエアロゲルの製造方法であって、以下の工程:
(i)ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、それらの混合物並びにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とDMAc、DMF及び/又はDMSOのうちの少なくとも1種との混合物からなる群から選択される溶媒を含む非プロトン性溶媒中で、ポリアミド酸を提供する工程と、
(ii)(i)のポリアミド酸に無水酢酸及びトリエチルアミンを添加して、ポリイミドゾルを形成する及び非プロトン性溶媒からのポリイミドの相分離を誘導する工程と、
(iii)
(iv)
(v)工程(iv)の混合物を乾燥する工程と
を含む、製造方法。
【請求項16】
工程(ii)の前又は後に及び工程(v)の前に、
(iii)ポリイミドゾルのゲル化前に架橋剤、必要に応じてBTC又はTRENを添加して架橋ポリイミドゾルを形成する工程を含む、
工程(iii)の後に及び工程(v)の前に、
(iv)工程(ii)及び/又は工程(iii)のゲル化ポリイミドゾルを熟成させる工程を含む、
又は双方、
のうちの少なくとも1つである、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
工程(v)において、乾燥工程が、超臨界CO
2下で又は大気圧下で、10から200℃の間の温度で実施される、請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
工程(i)及び工程(ii)における非プロトン性溶媒が、ジメチルアセトアミド(DMAc)、又はDMAcと更なる非プロトン性溶媒との混合物である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項19】
更なる非プロトン性溶媒が、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
a.工程(i)及び/又は工程(ii)におけるポリアミド酸の濃度が、約3~15wt.%である、
b.工程(ii)では、混合物は約1~10分間アジテーションされる、又は
c.双方
のうちの少なくとも1つである、請求項15に記載の製造方法。
【請求項21】
工程(iv)の後及び工程(v)の前に、溶媒が、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)のうちの1種若しくはそれらの混合物を含む混合物と、又は、ヘプタン、ヘキサン若しくは1種以上のアルコール性溶媒との組み合わされたアセトンと、交換される、請求項16に記載の製造方法。
【請求項22】
請求項15に記載の製造方法によって得られる又は得ることが可能である、ポリイミドエアロゲル。
【国際調査報告】