IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヨットエル ゴスラー ゲー・エム・ベー・ハーの特許一覧

特表2024-547220危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器
<>
  • 特表-危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器 図1
  • 特表-危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器 図2
  • 特表-危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器 図3
  • 特表-危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器 図4
  • 特表-危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器 図5
  • 特表-危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器 図6
  • 特表-危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器 図7
  • 特表-危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器 図8
  • 特表-危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器 図9
  • 特表-危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器 図10
  • 特表-危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器 図11
  • 特表-危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器 図12
  • 特表-危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】危険有害性の媒体、特に臭素を貯蔵および輸送するための容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/10 20060101AFI20241219BHJP
【FI】
B65D90/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024558330
(86)(22)【出願日】2022-12-13
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2022085603
(87)【国際公開番号】W WO2023117583
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021133841.7
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524232691
【氏名又は名称】ヨットエル ゴスラー ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】JL Goslar GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 108, 38640 Goslar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ブラッハ
【テーマコード(参考)】
3E170
【Fターム(参考)】
3E170AA24
3E170AB09
3E170BA10
3E170DA01
3E170DA07
3E170GB08
3E170GB13
3E170GB15
3E170KC01
3E170KC06
3E170MA01
(57)【要約】
本発明は、マンホール管片(2)と、このマンホール管片(2)を閉鎖するためのドームカバー(1)とを備えたタンク容器であって、このタンク容器は、危険有害性の充填物、例えば臭素を輸送するために鉛でライニングされており、ドームカバー(1)とマンホール管片(2)とは、特に肉盛溶接によって形成されたニッケル製の封止面(22,23,24)を有する、タンク容器と、本発明により後付けが行われた従来の容器と、このための方法とに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドームカバー(1)を用いて閉鎖可能であるマンホール管片(2)を備えた容器であって、
少なくとも前記容器の内壁と前記マンホール管片(2)の内壁とが、鉛コーティング(9)を備えており、
前記マンホール管片(2)の上側の開口を取り囲んで、固定フランジ(25)が設けられており、
前記固定フランジ(25)の上面に、前記マンホール管片(2)に通じる開口を取り囲んで、ドームカバー(1)に対する封止部としてのニッケル製の封止面(24)が被着されており、
前記ニッケル製の封止面(24)は、前記マンホール管片(2)に通じる前記開口に整合しており、前記鉛コーティング(9)は前記ニッケル製の封止面(24)の上縁部にまで延在している、
容器。
【請求項2】
前記固定フランジ(25)に補填フランジ(28)が被着されており、
前記ニッケル製の封止面(24)は前記補填フランジ(28)の上面に位置している、
請求項1記載の容器。
【請求項3】
請求項1または2記載の容器用のドームカバー(1)であって、
前記ドームカバー(1)の下面にニッケル製の封止面(23)が設けられており、該ニッケル製の封止面(23)は、マンホール管片(2)の前記ニッケル製の封止面(24)に割り当てられており、
前記ニッケル製の封止面(23)は、前記ドームカバー(1)の前記下面に周面領域で設けられており、運転中、前記ドームカバー(1)は、前記周面領域でマンホール管片(2)の前記ニッケル製の封止面(24)に位置することになり、前記ドームカバー(1)の前記下面の、前記封止面(23)により取り囲まれた面が、鉛層(8)によって面状にコーティングされている、
ドームカバー(1)。
【請求項4】
前記ドームカバー(1)は、機器を接続するための1つ以上の貫通孔(17)を有しており、
前記ドームカバー(1)の前記下面に設けられた前記鉛層(8)は、前記貫通孔(17)の内壁に沿って延在し、該内壁を覆っている、
請求項3記載のドームカバー。
【請求項5】
機器に対して密封を行うために、前記ドームカバー(1)の上面に、前記貫通孔(17)の開口を取り囲んで、ニッケル製の封止面(22)が設けられており、
前記ニッケル製の封止面(22)は前記貫通孔(17)に整合しており、前記鉛層(8)は前記ニッケル製の封止面(22)の上縁部にまで延在している、
請求項4記載のドームカバー(1)。
【請求項6】
前記機器は、前記容器(4)への詰込みおよび前記容器(4)からの取出しを行うための弁と、前記容器を空気抜きするための弁(6)と、前記容器内にガス導入するための弁(5)と、安全弁(7)とから選択されている、請求項5記載のドームカバー(1)。
【請求項7】
前記ドームカバー(1)の上面に肉盛溶接によってニッケル封止面(22)が形成されており、前記ドームカバー(1)の前記下面に肉盛溶接によってニッケル封止面(23)が形成されている、請求項3から6までのいずれか1項記載のドームカバー。
【請求項8】
肉盛溶接によってニッケル封止面(24)が形成されている、請求項1または2記載の容器。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の、容器とドームカバーとを製造するための方法であって、
ニッケル封止面(22,23,24)を材料表面に肉盛溶接によって形成する、方法。
【請求項10】
請求項2記載の容器を製造するための方法であって、
前記マンホール管片(2)の前記固定フランジ(25)に、該固定フランジ(25)に適合する補填フランジ(28)を被着し、該補填フランジ(28)に前記ニッケル製の封止面(24)を被着する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、危険有害性の充填物、特に臭素の輸送のほか、貯蔵のためにも使用される容器と、この容器を閉鎖するためのドームカバーとに関する。
【背景技術】
【0002】
臭素は、極めて毒性があると共に高い腐食性を有しているため、その輸送および貯蔵に特別な予防措置が必要となる危険物に属している。
【0003】
臭素は、数多くの材料に対して高い腐食作用を有しており、これらの材料を分解してしまう恐れがあるため、特殊な容器内でしか輸送および貯蔵することができない。
【0004】
例えば、臭素をガラス瓶または釉掛けされた容器内に保管することが知られている。しかしながら、ガラスは壊れやすく、したがって、少量での貯蔵および輸送にしか適していない。さらに、ガラス瓶は輸送のために破損に対して特殊に保護されなければならない。これによって、輸送が手間を要し、高価になってしまう。
【0005】
今日、臭素の輸送のためには、鋼から成る容器が使用される。この容器は、必要に応じて、それぞれ異なる容積を有していてよい。この容器の内壁は、カバーを含めて鉛でライニングされている。なぜならば、さもないと、臭素が容器被覆体に作用してしまう恐れがあるからである。鉛は、不動態化によって化学的に極めて抵抗性があり、臭素を含む数多くの腐食性の物質に対して耐性を有している。
【0006】
中国実用新案第202017827号明細書は、電熱式に濃縮するためのタンクに関する。同明細書では、腐食性の硫酸塩含有の電解質用の管路の内部をセラミックス、例えば磁器で付加的にライニングすることが提案されている。
【0007】
中国特許出願公開第106809538号明細書では、一般的にポリテトラフルオロエチレンから製造されている従来の臭素容器の内側の導管を、内壁が鉛でライニングされた鋼管に置き換えることが提案されている。
【0008】
独国特許発明第102012109015号明細書は、鉛でライニングされた従来の臭素容器用の支持構造体に関する。同明細書では、特に、容器の円筒形の区分が可能な限り応力なしに支承され、これによって、本来の腐食バリアを形成する鉛コーティングの脆性の不動態層が損傷してしまうことを阻止することができる。
【0009】
容器、例えば輸送に使用される容器は、通常、いわゆるマンホールを有している。このマンホールによって、人が保守およびメンテナンスのために内部にアクセスすることが可能となる。マンホールは、本明細書では単に「管片」とも呼ばれるマンホール管片に接続されている。このマンホール管片は、煙突に類似して、容器を越えて張り出している。管片ひいては容器はドームカバーを用いて閉鎖可能である。
【0010】
ドームカバーは、通常、容器への充填、容器からの排出および容器の監視のために用いられる機器用の支持体としても準備されている。
【0011】
このために、ドームカバーには、通常、このドームカバーに被着された機器を容器内部に接続するための別の開口が設けられている。例えば、ドームカバーには、複数の弁が設けられていてよい。これらの弁によって、臭素を注入することができ、また、取り出すことができる。ある弁には、臭素が別の弁を介して容器から取出しのために逃げられるように、圧力が供給されてよい。さらに、臨界値を上回る容器内部における望ましくない増圧時に開放し、これによって、容器の爆発を阻止する安全弁が設けられていてよい。
【0012】
容器自体は極めて長寿命であるが、ドームカバーとマンホール管片との間の封止部ならびにドームカバーと、このドームカバーに位置する開口と、弁との間の封止部は、特に危険をはらむ領域を成している。
【0013】
通常、密封のためには、封止面およびフランジの領域でも鉛コーティングが継続される。この場合、容器は、ドームカバーの内面と、封止面、例えば、管片へのドームカバーの載置面と、ドームカバーに設けられた弁とを含む内面全体にわたって鉛で被覆されている。
【0014】
運転中、封止面は、その機能を満たすことができるように、著しい押付け圧に曝されている。
【0015】
これによって、互いに封止し合う面の間の鉛コーティングに強い力が作用する。鉛は小さな硬さしか有しておらず、機械的な負荷で容易に変形可能であるので、封止面同士の間の鉛コーティングは経時的にクリープし始める。鉛は、封止領域から両方向に進出し、そこに隆起部を形成する。この隆起部自体は支障とはならないが、封止領域における鉛コーティング層がより肉薄になるため、封止作用がもはや保証されていない。これによって、最終的には、それ自体まだ使用可能な容器が、封止面の鉛コーティングの不十分な封止性という理由で不合格になるか、または手間をかけて後加工されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、ドームカバーを含めて鉛でライニングされた従来の容器に対するクリープひいては封止性の不足を、簡単に、さらには経済的に解決することができる解決手段を提供することであった。
【0017】
特に、この解決手段が、既存の容器、例えば封止領域における封止性の不足に基づき不合格にされた容器への後付けにも適していることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、前述した問題は、容器およびドームカバーの封止面の鉛コーティングが、ニッケル製の封止面に置き換えられることによって解決される。
【0019】
本発明による原理は、例えば弁における小さな封止面にも、例えばマンホールまたはマンホール管片における大きな封止面にも同様に機能する。
【0020】
ドームカバーおよびマンホール管片に設けられた封止面は、通常、環状ディスク形状を有しており、相応の開口の入口を取り囲んでいる。
【0021】
ニッケルは、生じる加圧負荷に耐えることができるように十分に固いだけでなく、さらに、臭素に対して耐性も有している。
【0022】
しかしながら、ニッケルは鉛よりも著しく高価であるため、ニッケルへの鉛コーティングの完全な置き換えは、コストの理由から好ましくない。
【0023】
したがって、本発明によれば、鉛コーティングを部分的にのみ、特に危険をはらむ封止領域でのみ、ニッケル製の封止面(本明細書では「ニッケル封止面」とも呼ぶ)に置き換えることが特定されている。
【0024】
このことは、ドームカバーの場合、上面では、弁または設けられている限り別の構造体に対する封止面に当てはまり、下面では、管片または管片の固定フランジへのドームカバーの載置面に当てはまり、管片の場合、ドームカバーがその封止面で載置される相応の対応面に当てはまる。
【0025】
必要となるニッケル封止面を通常所望される環状ディスク形状で提供する可能性は、環状ディスク形状をニッケルシートから所望のサイズで切り出すことである。しかしながら、これによって、ニッケルシートにおける裁断損失が大きくなり、ひいては、コストが相応に高くなってしまう。
【0026】
本発明者らは、ニッケルを肉盛溶接によって該当する領域に十分な量および所望の形状で被着することができ、その際、市販のニッケルワイヤを使用することができることを突き止めた。
【0027】
この方法によれば、ニッケル製の封止面を、このために設けられた領域にほぼ材料損失なしに、いわばカスタマイズして被着することができる。
【0028】
更なる利点は、ニッケル製の封止面を肉盛溶接によって形成すると、被着材料としてのニッケルと、その下に位置する表面の材料、例えばドームカバーまたはマンホール管片の鋼との間に、全面にわたる冶金的な結合部が得られることである。これと異なり、予め製造されたニッケルリングの表面への結合は、結合すべき構成部材同士の突合せ縁部に沿った線状の溶接シームを介した溶接によって行われる。
【0029】
ドームカバーおよび管片に設けられた封止面は、通常、環状ディスク状に形成されており、添付の図面の例にも示してある。
【0030】
しかし、当然ながら、本発明は環状ディスク形状に限定されるものではなく、必要に応じて、また、用途に応じて、別の形状を有していてよい。
【0031】
本発明による解決手段は、新構造のほかに、既存の容器への後付けにも使用することができる。こうして、容器を引き続き使用することができる。この場合には、カバーが、本発明により形成されたドームカバーに置き換えられさえすればよい。
【0032】
このために、管片または管片の上側の端部に設けられた固定フランジに、ニッケル封止面を備えた適切に寸法設定された付加的なフランジが被着される。
【0033】
付加的なフランジへのニッケル封止面の被着は、有利には同じく肉盛溶接によって行われる。
【0034】
本発明による解決手段によって、運転中の容器の安全性を劇的に改善することができる。鉛のクリープによる非封止性を排除することができる。さらに、修復手間を大幅に減じることができ、ひいては、容器の可用性を極端に高めることができる。
【0035】
以下に、本発明を、添付の図面に示した実施形態に基づき例示的に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】マンホール管片に載置されたドームカバーと、このドームカバーに設けられた弁構造体と、ドームカバーフードとの先行技術による縦断面図である。
図2図1に示したドームカバーと、このドームカバーに設けられた弁構造体との平面図である。
図3】対応するドームカバー区分を含めた図2に示した安全弁の縦断面図である。
図4】コーティングおよび構造体なしのドームカバーの縦断面図である。
図5】先行技術による鉛製の封止面を含む鉛コーティングを備えた図4の縦断面図である。
図6】本発明によるニッケル封止面と、鉛コーティングとを備えた図4の縦断面図である。
図7】ニッケル封止面を備えた、図6に示したドームカバーの前段階を示す図である。
図8】本発明により形成されたマンホール管片の縦断面図である。
図9図8に示したマンホール管片の平面図である。
図10】ニッケル封止面の加工された表面の縦断面図である。
図11】本発明に係るドームカバーを用いて閉鎖された、本発明に係る容器用のマンホール管片の縦断面図である。
図12】被着されたニッケル封止面を備えた補填フランジが本発明により後付けされたマンホール管片の縦断面図である。
図13】従来の容器に後付けを行うためのニッケル封止面を備えた補填フランジを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図面は、例えば、一般的に充填物、特に危険有害性の充填物を貯蔵および輸送するために知られているようなタンク容器に該当する。
【0038】
図面に寸法表示が記載してある限り、この寸法表示は単に例示的なものを意味しているにすぎず、必要に応じて、また、使用目的に応じて変更されてよい。
【0039】
図面では、それぞれタンク本体が省いてある。このタンク本体には、マンホールを介してマンホール管片の下側の開口が接続されていて、1つのユニットを形成している。
【0040】
図1には、先行技術に係るドームカバー1が示してある。
【0041】
ドームカバー1は、弁構造体4,5,6を備えて、閉鎖状態でマンホール管片2に載置されて示してある。ドームカバー1は、弁構造体4,5,6とともに、この弁構造体4,5,6を保護するために用いられるドームカバーフード3によって覆われている。
【0042】
図1に示した縦断面図には、3つの弁4,5,6を認めることができる。これら3つの弁4,5,6は、ドームカバー1の直径に沿って一列に配置されている。図1に示したアセンブリでは、中間の弁4は、容器への詰込みおよび容器からの取出しを行うために用いられ、左側の弁5は、取出しを可能にするために、ガス、通常では乾燥空気または窒素を導入するために用いられ、右側の弁6は、詰込み時に空気抜きするために用いられる。
【0043】
ドームカバー1の下面には、面状の鉛層8が位置している。この鉛層8の縁領域は封止面を形成している。この封止面は対応面として、マンホール管片2に設けられた封止面10に割り当てられている。
【0044】
マンホール管片2に設けられた封止面10は、マンホール管片の鉛コーティング9の一部である。この鉛コーティング9は、マンホール管片2の内面に沿って上側の縁部を越えて、図1には略示したにすぎない固定フランジ25の上面に延在して、鉛製の封止面10を形成している。
【0045】
ドームカバー1の下面に設けられた封止面と、マンホール管片に設けられた封止面10との間には、通常、臭素に対して耐性を有するプラスチック、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から製造されたシール11が設けられている。
【0046】
ドームカバー1の外周面に環状に沿って、ドームカバー1をマンホール管片2に固定する固定手段、例えばねじ山付きピンまたはこれに類するもの用の一連の貫通孔12が設けられている。固定手段は、密な閉鎖を得るために固く締め付けられる。これによって、ドームカバー1の下面に設けられた鉛製の封止面と、その対応面、つまり、マンホール管片2の上側に設けられた鉛製の封止面10とに高い押付け圧が加えられる。
【0047】
図2には、図1に示したドームカバー1の平面図が示してある。図2には、ドームカバーの下面に設けられた構造が、マンホール管片2の上側の開口13を含めて同時に示してある。
【0048】
ドームカバー1の上面には、弁4,5,6と、安全弁である別の弁7と、ドームカバー1の周面領域に沿って互いに離間して配置された複数の固定手段を備えた貫通孔12とが位置している。
【0049】
個々の円は、内側から外側に向かって見て、マンホール管片2の開口13、ドームカバー1の下面に設けられた面状の鉛コーティング8の外周面14、ドームカバー1の外周面15ならびにマンホール管片2に設けられた固定フランジ25の外周面16を示している。
【0050】
図3には、ドームカバー1ひいては容器への弁4,5,6,7の接続が、安全弁7の例で示してある。接続のために、ドームカバー1には、このために設けられた位置に貫通孔17が設けられている。
【0051】
ドームカバー1の下面に設けられた鉛層8は、貫通孔17の内壁に接して貫通孔17の上縁部を越えて延在し、貫通孔17を取り囲んで、弁7が載置された鉛製の封止面18を形成している。
【0052】
加えて、弁7と、環状ディスク状の鉛製の封止面18との間には、臭素に対して耐性を有するプラスチック、例えばPTFEから成るシール19が位置している。
【0053】
弁を固定するために、貫通孔17と鉛製の封止面18とを取り囲んで、ドームカバー1の上面に止まり穴20が設けられていてよい。この止まり穴20内には、例えば図3に示したように、適切な固定手段21、一般的な植込みボルトが係合していてよい。
【0054】
図1図3に示したドームカバー1は先行技術に相当し、鋼から製造されている。ドームカバー1は、下面に面状の鉛製のコーティング8を備えている。このコーティング8は、弁接続用の貫通孔17の内壁も覆っており、貫通孔17の上縁部を越えて延在し、貫通孔17を取り囲んで、それぞれ1つの環状ディスク状の鉛製の封止面18を形成している。この環状ディスク状の鉛製の封止面18には、弁が載置されている。
【0055】
ドームカバー1への弁の固定およびマンホール管片2へのドームカバー1の固定のために、各々の封止面は互いに確実に押し合わされ、これによって、所要の封止作用を保証することができる。この場合、これらの領域には、大きな力も作用する。
【0056】
図4図8には、先行技術および本発明に係るドームカバー1の準備の個々の段階が概略的に示してある。
【0057】
図4には、弁4,5,6を接続するための3つの貫通孔17を有する、直径に沿った未コーティングのドームカバー1の縦断面図が示してある。さらに、弁4,5,6を接続するための貫通孔17の周辺には、弁4,5,6を固定するための止まり穴20と、ドームカバー1の周面領域に沿って、ドームカバー1をマンホール管片2に固定するための固定手段用の貫通孔12とが位置している。
【0058】
参照符号15は、ドームカバー1の外周面を表している。
【0059】
図5には、図4に示したドームカバー1が、先行技術による鉛コーティングを備えて示してある。この場合、ドームカバーの下面と、貫通孔17の内壁と、貫通孔17を取り囲む封止面18とが、鉛8から成る連続層によってコーティングされている。
【0060】
ドームカバー1の下面に設けられた面状の鉛層8は、図5に鉛層8の外周面14によって認められるように、貫通孔12にまで達している。
【0061】
図6には、図5と比べて、本発明により形成されたドームカバー1を認めることができる。図6では、鉛コーティング8が、ドームカバー1の、特別な加圧負荷に曝されている領域において、ニッケル封止面22;23に置き換えられている。
【0062】
当該領域は、特に、ドームカバー1の上面では、弁用の対応面を成す、弁用の貫通孔17を環状に取り囲む領域であり、ドームカバー1の下面では、ドームカバー1がマンホール管片2に載置される周面領域である。これらの領域では、本発明によれば、鉛コーティングがニッケル封止面22;23に置き換えられている。
【0063】
ニッケル封止面22,23は、図示の構成では、それぞれ1つの環状ディスク状の構成を有している。
【0064】
したがって、図6に示したように、弁を接続するための貫通孔17の周に沿ってドームカバー1の上面に設けられた鉛コーティングが、環状ディスク状のニッケル封止面22に置き換えられている。
【0065】
図6および図7に認めることができるように、ニッケル封止面22は、貫通孔17と止まり穴20との間の領域に位置しており、止まり穴20は、ドームカバー1の上面から下向きにドームカバー1内に延在している。
【0066】
同じく、ドームカバー1の下面では、マンホール管片2へのドームカバー1の載置面の領域が、相応の環状ディスク状のニッケル封止面23に置き換えられている。このニッケル封止面23は、ドームカバー1をマンホール管片2に固定するための固定手段用の貫通孔12の内側の周線に沿ってドームカバー1の下面に延在しており、これによって、ニッケル封止面23は、鉛コーティング層8と貫通孔12との間に位置することになる。
【0067】
本明細書に示した例では、ニッケル封止面22の厚さは6~10mmであってよく、ニッケル封止面23,24の厚さは10mmであってよい。ニッケル封止面の厚さは、容器の用途の要求に左右される。通常、ニッケル封止面の厚さは4mm~20mmであってよい。ニッケル封止面22に対する厚さは、ドームカバーの下面に設けられたニッケル封止面23に対する厚さおよびマンホール管片に設けられたニッケル封止面24の厚さよりも小さく選択されてよい。
【0068】
ドームカバー1を製造するために、まず、ドームカバー用の寸法の鋼ブランクにおいて、弁用の貫通孔に対して特定された位置に、ニッケル被覆体が、ニッケル封止面22用の所望の寸法および厚さで肉盛溶接によって被着される。
【0069】
さらに、ドームカバーの下面にニッケル製の封止面23が肉盛溶接によって被着される。
【0070】
肉盛溶接法の使用によって、所望のニッケル封止面22,23を簡単にほぼ材料損失なしに得ることができる。ニッケル封止面とドームカバーとの間には、全面にわたる冶金的な結合部が形成される。
【0071】
ニッケル封止面22,23用のニッケルの被着後、弁用の貫通孔17および止まり穴20などを製作するために、ドームカバー1の機械的な加工が行われる。結果として、弁用の貫通孔17と、この貫通孔17の上側の周に沿ったニッケル封止面22と、ドームカバー1がマンホール管片2に載置される載置領域に沿ってドームカバーの下面に設けられたニッケル封止面23と、ドームカバー1をマンホール管片2に固定するための固定手段用の貫通孔12と、弁をドームカバーに固定するための固定手段用の止まり穴20とを有する、図7に示したような前段階のドームカバーが得られる。
【0072】
これに続いて、鉛コーティング8が既知の技法で被着される。この鉛コーティング8は、図6に示したように、ニッケル封止面23によって取り囲まれた領域でドームカバーの下面に面状に被着され、貫通孔17の内面に沿ってニッケル封止面22の上縁部にまで案内される。
【0073】
結果として、本発明によれば、運転中に高い押付け圧に曝されている特に臨界的な領域が選択的にニッケル封止面22,23を備えているドームカバー1が得られる。
【0074】
鉛と異なり、ニッケルはその高い硬さに基づき、高い加圧負荷がかかる際にも塑性変形、例えばクリープを示さない。ニッケル封止面22,23は、高い圧力が加わり続けても、その形状ひいては封止性を維持する。
【0075】
ドームカバー1に類似して、本発明によれば、マンホール管片2でも、このマンホール管片2の縦断面図を示す図8に示したように、鉛製の封止面10がニッケル製の封止面24に置き換えられている。
【0076】
マンホール管片2の上側の開口に沿って、固定フランジ25が設けられている。この固定フランジ25は、マンホール管片2の周を取り囲んで延在し、マンホール管片2の全周にわたって張り出している。固定フランジ25のこの突出した周面領域は、複数の貫通孔26を備えている。これらの貫通孔26は、全周を取り囲んで互いに離間して分配されて配置されており、ドームカバー1をマンホール管片2に固定するために用いられる。
【0077】
鉛コーティング9は、ニッケル封止面24の上縁部からマンホール管片2の内壁を下って、容器本体(図示せず)の内壁に沿って延在している。
【0078】
図9には、図8に示した固定フランジ25を備えたマンホール管片2の平面図が示してある。この平面図には、同心的に配置された3つの環状の領域を認めることができる。
【0079】
外側の環状の領域16は、貫通孔26を有する固定フランジ25の突出した周面領域であり、中間の環状の領域は、環状ディスク状のニッケル封止面24であり、内側の環状の領域は、鉛コーティング9である。
【0080】
本発明に係るドームカバー1が本発明によるマンホール管片2に載置されると、ドームカバー1の下面に設けられたニッケル封止面23が、マンホール管片2の固定フランジ25に設けられたニッケル封止面24に位置することになる。その後、結果として、押付け圧によって負荷がかけられるこの領域において、ニッケル封止面23,24が互いに重なり合っている。これらのニッケル封止面23,24は、従来の鉛コーティングと異なり、それぞれ接触する別の構成部材によって加えられる圧力に耐えることができる。
【0081】
運転中、両方のニッケル封止面23,24の間には、付加的に、例えばPTFEから成るプラスチックシール11が設けられている。原則として、臭素が作用しない限り、あらゆるシールが使用されてよい。
【0082】
一構成(図10)では、ニッケル封止面22,23,24の上面に、同心的に延在する溝27が設けられていてよい。これらの溝27には、プラスチックシール11,19が位置することになり、これによって、このプラスチックシール11,19が押付け圧によって溝27に押し込まれ、こうして、シール11,19の座りと封止性とが改善される。
【0083】
製造のために原理的に言及しておくと、特に封止面22,23,24を形成するための鋼へのニッケル被着は、肉盛溶接によって行われ、別の金属面同士の結合は、例えば、2つの鋼面の間、例えば固定フランジ25とマンホール管片2との間の溶接によって行われる。これに対して、鉛とニッケルとの間または鉛と鋼との間の結合は、好ましくはろう接によって行われる。
【0084】
個々の構成部材の間の溶接結合部(溶接シーム)は、図面には通常、一般的に三角形の黒い面x、例えば図8ではマンホール管片と固定フランジ25との間の黒い面xによって認められる。
【0085】
図11には、本発明に係るドームカバー1を用いて閉鎖されたマンホール管片2の状況が縦断面図で示してある。
【0086】
断面は、図11では、ドームカバー1の直径に沿って配置された3つの弁4,5,6用の貫通孔17に沿って再び案内されている。ドームカバー1の下面に設けられた環状ディスク状のニッケル封止面23が、マンホール管片2の固定フランジ25に設けられた環状ディスク状のニッケル封止面24に載置されていることを明確に認めることができる。両方の環状ディスク状のニッケル封止面23,24の間には、プラスチックシール11が設けられている。
【0087】
別のニッケル封止面22は、ドームカバーの上面に、弁接続用の貫通孔17の周を取り囲んで配置されている。残りの鉛コーティング8は、図示の構成では、ニッケル封止面22の上縁部から弁構造体用の貫通孔17の内壁に沿ってドームカバーの下面にまで延在しており、このドームカバーの下面でニッケル封止面23にまで延在している。
【0088】
封止面22,23,24の厚さは、この例では、それぞれ10mmである。
【0089】
類似して、マンホール管片内の鉛コーティング9は、ニッケル封止面24の上縁部から固定フランジ25の内側の周面に沿ってマンホール管片2内を下り、そこから、対応する容器(図11には示さず)の内壁に延在している。
【0090】
ドームカバー1および固定フランジ25の、ニッケル封止面22,23の外側に位置する周面領域には、固定手段用の貫通孔12,26(図示せず)が設けられている。
【0091】
本発明の主要思想は、鉛コーティングの、押付け圧によって負荷がかけられる領域を相応のニッケルインサートまたはニッケル封止面に置き換えることにある。
【0092】
有利には、このニッケル封止面は肉盛溶接によって相応の支持体に被着される。
【0093】
当然ながら、本発明は、図面において説明のために前述した実施形態に制限されるものではなく、弁接続用の貫通孔を全く有しないドームカバーまたはより多くの貫通孔もしくはより少ない貫通孔を有するドームカバーにも適している。
【0094】
また、図面に例示した環状ディスク状のニッケル封止面の代わりに、必要に応じて、別の形状に成形されたニッケル封止面が使用されてもよい。
【0095】
ニッケル封止面の寸法、例えば厚さまたは幅も、容器のその都度の用途の要求に適合されてよい。
【0096】
本発明の別の大きな利点は、既存の容器にも本発明により難なく後付けを行うことができることである。これは、封止面での鉛コーティングの摩耗と、これに伴って不足する封止性とに基づき不合格にされた容器も、再び使用のために適合させることができることを意味している。
【0097】
図12および図13を参照しながら、後付けを例示的に説明する。
【0098】
図12には、本発明により後付けが行われたマンホール管片2の縦断面図が示してある。後付けのためには、既存の固定フランジ25に、ニッケル封止面24を備えた補填フランジ28が被着されている。
【0099】
ニッケル封止面24と固定手段用の貫通孔29とを有する補填フランジ28の寸法設定および構成は、既存の固定フランジ25に適合されている。
【0100】
鉛製の封止面を備えた従来の容器への後付けを行うために、まず、古い鉛製の封止面10と、マンホール管片2の内部にまで達している鉛コーティング9とが除去される。
【0101】
その後、既存の固定フランジ25に、同一の材料から成る補填フランジ28が被着される。この補填フランジ28は、封止面の領域に、例えば図5に示したような従来の鉛封止面10の代わりに、図13に示したような環状ディスク状のニッケル封止面24を有している。
【0102】
次いで、鉛コーティング9が、ニッケル封止面24の上縁部の間でマンホール管片2内の下方にまで更新される。
【0103】
この事例でも、ニッケル封止面24を付加的な固定フランジ28の表面に設けることが、有利には肉盛溶接によって行われ、付加的な固定フランジ28を既存の固定フランジ25に結合することが、溶接によって行われる。
【0104】
マンホール管片2と固定フランジ25との間の溶接シームは、一般的に通常のように、黒色の面xによって認められる。
【0105】
こうして本発明により改造されたマンホール管片2を備えた容器が、その後、再び使用のために、本発明に係るドームカバー1と共に使用可能となる。
【0106】
本発明は、容器、例えば、マンホール管片2と、このマンホール管片2を閉鎖するためのドームカバー1とを備えたタンク容器であって、この容器は、危険有害性の充填物、例えば臭素を輸送するために鉛でライニングされており、ドームカバー1とマンホール管片2とは、特に肉盛溶接によって形成されたニッケル製の封止面22,23,24を有する、容器と、本発明により後付けが行われた従来の容器と、このための方法とに関する。
【符号の説明】
【0107】
1 ドームカバー
2 マンホール管片
3 ドームカバーフード
4 中間の弁
5 左側の弁
6 右側の弁
7 安全弁
8 面状の鉛層
9 (マンホール管片の)鉛コーティング
10 (マンホール管片の)鉛封止面
11 (ドームカバーとマンホール管片との間の)シール
12 ドームカバーを管片に固定するための貫通孔
13 (マンホール管片の)開口
14 面状の鉛層8の外周面
15 ドームカバーの外周面
16 フランジリング25の外周面
17 (弁固定のための)貫通孔
18 (弁の)鉛封止面
19 (弁接続の)シール
20 (弁固定のための)止まり穴
21 (弁用の)固定手段
22 (弁の)ニッケル封止面
23 (ドームカバー下面の)ニッケル封止面
24 (マンホール管片の)ニッケル封止面
25 (外周面16を備えた)固定フランジ
26 (固定フランジ25の)貫通孔
27 同心の溝
28 補填フランジ
29 (補填フランジ28の)貫通孔
x 溶接シーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【国際調査報告】