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特表2024-547223増大した電気化学的安定性ウィンドウを有するLiイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】増大した電気化学的安定性ウィンドウを有するLiイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/36 20100101AFI20241219BHJP
【FI】
H01M10/36 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024559107
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-03
(86)【国際出願番号】 US2022053268
(87)【国際公開番号】W WO2023239405
(87)【国際公開日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】63/265,767
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520159592
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ メリーランド, カレッジ パーク
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【弁理士】
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チュンシェン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ジジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジー,シャオ
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ01
5H029AK04
5H029AL03
5H029AM02
5H029AM07
5H029BJ03
5H029BJ04
5H029HJ10
5H029HJ18
(57)【要約】
本開示は、塩中水型電解質と比較して塩濃度が低く、電気化学的安定性ウィンドウが広い水性電解質を提供する。本開示の水性電解質組成物は、H2O活性及びLiイオン溶媒和シース中のH2Oの量を低減する貧溶媒を含む。本開示の特定の一実施形態においては、リチウムイオン電池用の不燃性水性電解質組成物が提供され、水性電解質組成物は、リチウム塩を含む電解質塩と、水と、水と混和性の有機成分とを含む。幾つかの実施形態において、水性電解質組成物の電気化学的安定性ウィンドウは、3.0 Vを超え、上記水性電解質組成物中の電解質塩のモル濃度は、約5 m以下である。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩を含む電解質塩と、
水と、
水と混和性の有機化合物と、
を含む、リチウムイオン電池用の不燃性水性電解質組成物。
【請求項2】
前記有機化合物がアミドである、請求項1に記載の水性電解質組成物。
【請求項3】
前記有機化合物が式:
R1-C(=O)-NR2R3
(式中、
R1はC1~C4アルキル、C3~C6シクロアルキル又は式-Xの部分であり、
Xは-ORa、-NRbRc又は-SRaであり、
Raは各々、H又はC1~C4アルキルであり、
Rb、Rc、R2及びR3は各々、独立してH又はC1~C4アルキルである)のものである、請求項1又は2に記載の水性電解質組成物。
【請求項4】
前記リチウム塩がLiCl、LiPF6、Li2SO4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CH3)2、LiN(SO2C4H9)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2C4F9)2、LiN(SO2F3)(SO2C4F9)、LiN(SO2C2F5)(SO2C4F9)、LiN(SO2C2F4SO2)、LiN(SO2F)2、LiN(SO2F)(SO2CF3)、LiNO3、LiBF4、LiCF3SO3又はそれらの組合せを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性電解質組成物。
【請求項5】
前記リチウム塩がLiN(SO2CF3)2を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性電解質組成物。
【請求項6】
前記リチウム塩がLiPF6、LiSO3CF3又はそれらの組合せを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性電解質組成物。
【請求項7】
前記電解質塩がマグネシウム塩を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性電解質組成物。
【請求項8】
前記電解質塩のモル濃度が約6 m以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性電解質組成物。
【請求項9】
前記電解質塩のモル濃度が約5.5 m以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の水性電解質組成物。
【請求項10】
前記電解質塩のモル濃度が約5 m未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載の水性電解質組成物。
【請求項11】
前記有機化合物が尿素、N-メチルアセトアミド、アセトアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、テトラメチル尿素、N,N'-ジメチル尿素、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,1-ジエチル尿素又はそれらの組合せを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の水性電解質組成物。
【請求項12】
カソードと、
アノードと、
電解質塩、水、及び貧溶媒としての水と混和性の別の化合物を含む電解質組成物と、
を含む充電式リチウムイオン電池。
【請求項13】
前記電解質組成物の電気化学的安定性ウィンドウが3.0 Vを超える、請求項12に記載の充電式リチウムイオン電池。
【請求項14】
前記水性電解質組成物が水酸化物を更に含む、請求項12又は13に記載の充電式リチウムイオン電池。
【請求項15】
前記水酸化物がKOH、NaOH、LiOH又はそれらの混合物を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の充電式リチウムイオン電池。
【請求項16】
前記電解質組成物中の前記電解質塩のモル濃度が5 m未満である、請求項12~15のいずれか一項に記載の充電式リチウムイオン電池。
【請求項17】
パウチセルリチウムイオン電池又はコインセルリチウムイオン電池である、請求項12~16のいずれか一項に記載の充電式リチウムイオン電池。
【請求項18】
前記充電式リチウムイオン電池のクーロン効率が5サイクル後に99%以上である、請求項12~17のいずれか一項に記載の充電式リチウムイオン電池。
【請求項19】
500サイクル後の前記充電式リチウムイオン電池の容量維持率が少なくとも90%である、請求項12~18のいずれか一項に記載の充電式リチウムイオン電池。
【請求項20】
カソードと、アノードと、水性電解質組成物であって、3.0 Vを超える電気化学的安定性ウィンドウを有し、該水性電解質組成物中の電解質塩のモル濃度が5 m未満である、水性電解質組成物とを含む充電式リチウムイオン電池。
【請求項21】
前記水性電解質組成物がリチウム電解質塩と、水と、水と混和性の貧溶媒とを含む、請求項20に記載の充電式リチウムイオン電池。
【請求項22】
前記貧溶媒がカソード限界電位を少なくとも約0.1 V低下させる、請求項20又は21に記載の充電式リチウムイオン電池。
【請求項23】
前記貧溶媒がアミド化合物を含む、請求項21又は22に記載の充電式リチウムイオン電池。
【請求項24】
前記アミド化合物が尿素、N-メチルアセトアミド、アセトアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、テトラメチル尿素、N,N'-ジメチル尿素、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,1-ジエチル尿素又はそれらの組合せを含む、請求項23に記載の充電式リチウムイオン電池。
【請求項25】
前記水性電解質組成物が水酸化物を更に含む、請求項20~24のいずれか一項に記載の充電式リチウムイオン電池。
【請求項26】
水性リチウム電解質溶液を含むリチウムイオン電池において電気化学的安定性ウィンドウを増大させる方法であって、前記水性リチウム電解質溶液に水と混和性の貧溶媒を添加することを含む、方法。
【請求項27】
前記貧溶媒がアミド化合物を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記貧溶媒が尿素、N-メチルアセトアミド、アセトアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、テトラメチル尿素、N,N'-ジメチル尿素、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,1-ジエチル尿素又はそれらの組合せを含む、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記貧溶媒が式:
R1-C(=O)-NR2R3
(式中、
R1はC1~C4アルキル、C3~C6シクロアルキル又は式-Xの部分であり、
Xは-ORa、-NRbRc又は-SRaであり、
Raは各々、H又はC1~C4アルキルであり、
Rb、Rc、R2及びR3は各々、独立してH又はC1~C4アルキルである)のものである、請求項26~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記電気化学的安定性ウィンドウの量が少なくとも約0.2 V増大する、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
水性リチウム電解質溶液を含むリチウム電池においてカソード限界電位を低下させる方法であって、前記水性リチウム電解質溶液に水と混和性の貧溶媒を添加することを含む、方法。
【請求項32】
前記貧溶媒がアミド化合物を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記貧溶媒が尿素、N-メチルアセトアミド、アセトアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、テトラメチル尿素、N,N'-ジメチル尿素、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,1-ジエチル尿素又はそれらの組合せを含む、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記貧溶媒が式:
R1-C(=O)-NR2R3
(式中、
R1はC1~C4アルキル、C3~C6シクロアルキル又は式-Xの部分であり、
Xは-ORa、-NRbRc又は-SRaであり、
Raは各々、H又はC1~C4アルキルであり、
Rb、Rc、R2及びR3は各々、独立してH又はC1~C4アルキルである)のものである、請求項31~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
カソード限界電位の量が少なくとも0.1 V減少する、請求項31~34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は2021年12月20日に出願された米国仮出願第63/265,767号(その全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に対する優先権を主張する。
【0002】
[連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載]
本発明は、エネルギー省(DOE ARPA-E)により授与された助成番号DEAR0000389の下で政府の支援を受けて為されたものである。政府は本発明に或る一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、電池の電気化学的安定性を増大させるための組成物及び方法に関する。幾つかの実施の形態において、本開示の組成物及び方法は、3.0 Vを超える電気化学的安定性ウィンドウを有するリチウムイオン電池を提供する。
【背景技術】
【0004】
最近の「塩中溶媒型」電解質、すなわち水系電池用の「塩中水型電解質(WISE)」及び非水系電池用の「超濃厚電解質」は、水系及び非水系の両方にとって画期的なブレイクスルーである。「塩中溶媒型」電解質中の多数の塩凝集体(AGG)は、溶媒に対して選択的に塩を分解して、電極上に強固な界面層を形成することを可能にし、電気化学的ウィンドウを大幅に拡大する。残念なことに、高い塩濃度自体が、必然的に電解質の粘度及びコストも上昇させる。
【0005】
塩の使用量を減少させるために、電解質組成物に貧溶媒を添加することも行われている。典型的には、貧溶媒は、溶媒を溶解する(例えば、溶媒と混和性である)が、塩を溶解しないように選択される。いかなる理論にも束縛されないが、貧溶媒を超濃厚非水電解質に添加すると、「局所高濃度電解質」が形成されると考えられる。これらの局所高濃度電解質は、貧溶媒がLiイオン溶媒和シース中の溶媒の少ない量及び高塩AGGを維持するため、低粘度かつ低コストの超濃厚電解質のメリットをほぼ全て受け継いでいる。しかしながら、リチウムイオンを溶解しない貧溶媒の添加はまた、リチウムイオン伝導度を低下させる。
【0006】
電気化学的安定性ウィンドウを拡大するために、塩中水型電解質についても広範な研究が行われている。水性リチウム電解質の電気化学的安定性ウィンドウを増大させる試みにおいて様々な方法、例えば、(i)水和物溶融電解質中の塩濃度を27.7 mまで高めることにより、Liイオン溶媒和シース中のH2O分子を減少させること、(ii)添加剤を添加することにより、28 mの「二塩中水型」電解質を生成すること、(iii)混合カチオン電解質を用いて40 mの電解質を生成すること、(iv)55.5 mのリチウム塩一水和物を利用すること、及び(v)イオン液体をWISEに添加して、63 mの電解質を生成することが利用されている。
【0007】
63 mの電解質を電池に使用することは、これらの電解質にイオン液体及び多量の電解質塩を添加する必要があるためコストがかかる。さらに、63 mの塩濃度を有する電解質を使用する場合であっても、WISEのカソード電位は、1.75 Vにしか拡大又は低下せず、全体的な電気化学的安定性ウィンドウは3.25 Vである。WISE中の水の量を減少させる代替的な方法は、塩及び溶媒の両方を大量に溶解することが可能な有機溶媒又はゲルポリマーを添加することである。残念なことに、これらの有機溶媒及びゲルポリマーは、可燃性でもあり、水性電解質のメリットを損なう。「局所高濃度電解質」用の非水電解質に使用される貧溶媒(例えばHFE、TTE、TFEO)は、WISEとは完全に(すなわち、90%超又は代替的には92.5%超、典型的には95%超又は代替的には97.5%超、多くの場合、99%超又は代替的には99.25%超、最も多くの場合、99.5%超)非混和性であるため、水性電解質には使用することができない。このため、電気化学的安定性ウィンドウを増大させる従来の方法は、(i)高価であり、(ii)可燃性組成物を生じ、及び/又は(iii)水と非混和性の有機溶媒を使用する。
【0008】
したがって、水性リチウムイオン電解質組成物の不燃性特性を維持しながら、水性電解質組成物中のリチウムイオン溶媒和シース内の水分子の量を減少させる、水性電解質組成物の電気化学的安定性ウィンドウを増大させる方法が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
これまで、水性リチウムイオン電解質組成物の不燃性特性を維持しながら、超濃縮戦略によりLiイオン溶媒和シース内の水分子を更に枯渇させることは、少なくとも一部には、リチウム塩の沈殿/溶解平衡の限界により達成されていない。
【0010】
本発明者らは、特定のクラスの貧溶媒を添加することにより、より広い電気化学的安定性ウィンドウ及びより低いコストを有するが、依然として不燃性を維持する、WISEを超越した希薄水性電解質を容易に生成し得ることを発見した。概して、本開示の組成物及び方法は、従来の方法と比較して以下の利点の1つ以上をもたらす:(i)本明細書に開示される貧溶媒を添加することで、水の活性を低下させ、及び/又はLiイオン溶媒和シースから水を除去する、H2O分子との強い結合を含む塩様特性を有する本開示の水性電解質が得られること、(ii)本明細書に開示される貧溶媒を添加することで、強固なSEIを形成する能力が増大し、それによりカソード限界電位が約1.5 V以下に低下すること(例えば、Li4Ti5O12アノードの場合)、及び/又は(iii)貧溶媒が少量のリチウム塩を溶解することが可能であり、このようにして、WISEと完全に混和性となるが、全体的な塩濃度を低下させることができ、電解質が10-3S/cmを超える高いイオン伝導率及び低い粘度を有することを可能にすること。さらに、通例、本開示において使用される貧溶媒又は希釈剤は、安価で不燃性であるため、電解質の不燃性が維持される。
【0011】
本明細書において使用される場合、「少量のリチウム塩を溶解することが可能な」という用語は、リチウムイオンの本開示の貧溶媒への溶解度が約1.0 g/L以下、又は代替的には約0.9 g/L以下、又は代替的には約0.8 g/L以下、又は代替的には約0.7 g/L以下、又は代替的には約0.6 g/L以下、典型的には約0.5 g/L以下、又は代替的には約0.4 g/L以下、又は代替的には約0.3 g/L以下、多くの場合0.25 g/L以下、又は代替的には約0.2 g/L以下、又は代替的には約0.15 g/L以下、多くの場合0.1 g/L以下であることを意味する。「貧溶媒」という用語は、水と混和性であるが、リチウム塩又はリチウムイオンを溶解しない、すなわち、リチウム塩又はリチウムイオンの溶解度が約0.5 g/L以下、又は代替的には約0.4 g/L以下、又は代替的には約0.3 g/L以下、典型的には約0.25 g/L以下、又は代替的には約0.2 g/L以下、又は代替的には約0.15 g/L以下、多くの場合0.1 g/L以下、又は代替的には約0.075 g/L以下、又は代替的には約0.05 g/L以下、又は代替的には約0.025 g/L以下、又は代替的には約0.015 g/L以下、多くの場合0.01 g/L以下である、リチウムイオン電解質の水溶液に添加される添加剤を説明するために使用される。「混和性」という用語は、貧溶媒の水への溶解度が少なくとも約1 g/L、典型的には少なくとも約10 g/L、多くの場合、少なくとも約100 g/L、最も多くの場合、少なくとも約500 g/Lであることを意味する。
【0012】
本開示の特定の一態様は、リチウム塩を含む電解質塩と、水と、貧溶媒としての水と混和性の有機化合物とを含む、リチウムイオン電池用の水性電解質組成物を提供する。
【0013】
幾つかの実施の形態において、有機化合物はプロトン性化合物である。他の実施の形態において、有機化合物は、アミドである。更に他の実施の形態において、有機化合物は、式:
R1-C(=O)-NR2R3 I
(式中、
R1はC1~C4アルキル、C3~C6シクロアルキル又は式-Xの部分であり、
Xは-ORa、-NRbRc又は-SRaであり、
Raは各々、H又はC1~C4アルキルであり、
Rb、Rc、R2及びR3は各々、独立してH又はC1~C4アルキルである)のものである。
【0014】
更に他の実施の形態において、上記リチウム塩は、LiCl、LiPF6、Li2SO4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CH3)2、LiN(SO2C4H9)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2C4F9)2、LiN(SO2F3)(SO2C4F9)、LiN(SO2C2F5)(SO2C4F9)、LiN(SO2C2F4SO2)、LiN(SO2F)2、LiN(SO2F)(SO2CF3)、LiNO3、LiBF4、LiCF3SO3又はそれらの組合せを含む。特定の一実施の形態において、上記リチウム塩は、LiN(SO2CF3)2を含む。更に別の特定の実施の形態において、上記リチウム塩は、LiPF6、LiSO3CF3又はそれらの組合せを含む。
【0015】
他の実施の形態において、上記電解質塩は、マグネシウム塩を更に含む。本開示の電解質として使用され得る例示的なマグネシウム塩としては、MgSO4、MgCl2、Mg(NO3)2、当業者に既知の他のマグネシウム塩及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
更に他の実施の形態において、上記電解質塩のモル濃度は、約6 m~約5.75 m、若しくは代替的には約5.75 m~約5.5 m、若しくは代替的には約5.5 m~約5.25 m、若しくは代替的には約5.25 m~約5.0 m、若しくは代替的には約5.0 m~約4.75 m、若しくは代替的には約4.75 m~約4.5 m、若しくは代替的には約4.5 m~約4.25 m、若しくは代替的には約4.25 m~約4.0 mの範囲、又は代替的には約4.0 m以下である。特定の一実施の形態において、上記電解質塩のモル濃度は約4.5 mである。
【0017】
また他の実施の形態において、上記水性電解質組成物は不燃性である。
【0018】
本開示の他の態様は、カソードと、アノードと、本明細書に開示される電解質組成物、例えば電解質塩、水及び貧溶媒としての水と混和性の別の化合物を含む電解質とを含む、充電式リチウムイオン電池を提供する。本明細書において使用される場合、「本明細書に開示される」、「本明細書に定義される」及び「本明細書に記載される」という用語は、変数、組成物又は方法に言及する場合、本明細書において区別なく使用され、広い定義だけでなく、もしあれば、より狭い定義(複数の場合もある)も参照により組み込む。このため、例えば、「本明細書に開示される」電解質塩を含む電池は、(i)電解質としてリチウム塩を含む電池、(ii)LiCl、LiPF6、Li2SO4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CH3)2、LiN(SO2C4H9)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2C4F9)2、LiN(SO2F3)(SO2C4F9)、LiN(SO2C2F5)(SO2C4F9)、LiN(SO2C2F4SO2)、LiN(SO2F)2、LiN(SO2F)(SO2CF3)、LiNO3、LiBF4、LiCF3SO3又はそれらの組合せを含む電池、(iii)LiN(SO2CF3)2を含む電池、及び(iv)LiPF6、LiSO3CF3又はそれらの組合せを含む電池を意味する。
【0019】
幾つかの実施の形態において、本開示の水性電解質組成物中に存在する貧溶媒の量は、水の量に対して5:1~5.5:1、又は代替的には5.5:1~6:1、又は代替的には6:1~6.5:1、又は代替的には6.5:1~7:1、又は代替的には7:1~7.5:1、又は代替的には7.5:1~8:1、又は代替的には8:1~8.5:1、又は8.5:1~9:1、又は少なくとも約9:1 v/vの範囲である。
【0020】
幾つかの実施の形態において、リチウムイオン電池の上記電解質組成物の電気化学的安定性ウィンドウは、少なくとも約3.0 V、又は代替的には約3.0 V~約3.1 V、又は代替的には約3.1 V~約3.2 V、又は代替的には約3.2 V~約3.3 V、又は代替的には約3.3 V~約3.4 V、又は代替的には約3.3 Vを超える。数値に言及する場合、「約」及び「およそ」という用語は、本明細書において区別なく使用され、当業者によって決定される特定の値について許容可能な誤差範囲内にあることを指す。かかる値の決定は、少なくとも一部には、値が測定又は決定される方法、例えば測定システムの限界、すなわち、特定の目的に必要とされる精度の程度に依存する。例えば、「約」という用語は、当該技術分野における慣行に従って、1標準偏差内又は1標準偏差超を意味し得る。代替的には、「約」という用語は、数値に言及する場合、数値の±20%、典型的には±10%、多くの場合±5%、より多くの場合±1%を意味し得る。しかしながら、概して、本願及び特許請求の範囲において特定の値が記載される場合、特に明記しない限り、「約」という用語は、特定の値について許容可能な誤差範囲内、典型的には1標準偏差内を意味する。
【0021】
更に他の実施の形態において、上記水性電解質組成物は、水酸化物を更に含む。本開示の水性電解質組成物に使用され得る例示的な水酸化物としては、KOH、NaOH、LiOH、並びに当業者に既知の任意の他のアルカリ水酸化物、アルカリ土類水酸化物及び遷移金属水酸化物、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
また他の実施の形態において、上記電解質組成物中の上記電解質塩のモル濃度は、本明細書に定義されるものである。特定の一実施の形態において、上記電解質組成物中の上記電解質塩のモル濃度は、約5 m未満である。
【0023】
他の実施の形態において、上記充電式リチウムイオン電池は、パウチセルリチウムイオン電池又はコインセルリチウムイオン電池である。
【0024】
更なる実施の形態において、上記充電式リチウムイオン電池のクーロン効率は、5サイクル後に少なくとも約85%、典型的には少なくとも約90%、多くの場合、少なくとも約95%、より多くの場合、少なくとも約99%、最も多くの場合、99%超、又は代替的には約99.90%~約99.92%、又は代替的には約99.92%~約99.94%、又は代替的には約99.94%~約99.96%、又は代替的には約99.96%~約99.98%、又は約99.98%超である。
【0025】
更にまた他の実施の形態において、500サイクル後の上記充電式リチウムイオン電池の容量維持率は、約60%~65%、又は代替的には約65%~70%、又は代替的には約70%~75%、又は代替的には約75%~80%、又は代替的には約80%~85%、又は代替的には約85%~90%、又は代替的には約90%~95%、又は代替的には少なくとも約95%である。特定の一実施の形態において、500サイクル後の上記充電式リチウムイオン電池の容量維持率は、少なくとも約90%である。
【0026】
本開示のまた他の態様は、カソードと、アノードと、水性電解質組成物であって、本明細書に記載される電気化学的安定性ウィンドウ(例えば、3.0 V超)及び本明細書に記載される上記水性電解質組成物中の電解質塩のモル濃度(例えば、5 m未満)を有する、水性電解質組成物とを含む充電式リチウムイオン電池を提供する。
【0027】
幾つかの実施の形態において、水性電解質組成物は、リチウム電解質塩と、水と、水と混和性の貧溶媒とを含む。場合によっては、貧溶媒は有機化合物であり、さらに、電解質組成物は不燃性である。
【0028】
更に他の実施の形態において、上記貧溶媒は、カソード限界電位を約0.01 V~約0.05 V、又は代替的には約0.05 V~約0.10 V、又は代替的には約0.10 V~約0.15 V、又は代替的には約0.15 V~約0.20 V、又は代替的には少なくとも約0.2 V低下させる。
【0029】
また他の実施の形態において、上記貧溶媒はアミド化合物を含む。貧溶媒として使用され得る例示的なアミド化合物としては、尿素、N-メチルアセトアミド、アセトアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、テトラメチル尿素、N,N'-ジメチル尿素、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,1-ジエチル尿素、並びにそれらの他の誘導体及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
更なる実施の形態において、上記水性電解質組成物は、水酸化物を更に含む。本開示の水性電解質組成物に使用され得る例示的な水酸化物は、上に記載される。
【0031】
本開示の更なる態様は、水性リチウム電解質溶液を含むリチウムイオン電池の電気化学的安定性ウィンドウを増大させる方法を提供する。方法は、水と混和性の貧溶媒を添加することを含む。幾つかの実施の形態において、貧溶媒はアミド化合物を含む。特定の一実施の形態において、上記アミド化合物は、本明細書に記載されるもの、例えば尿素、N-メチルアセトアミド、アセトアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、テトラメチル尿素、N,N'-ジメチル尿素、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,1-ジエチル尿素又はそれらの組合せを含む。
【0032】
また他の実施の形態において、上記アミド化合物は、式Iの化合物である。
【0033】
更に他の実施の形態において、上記電気化学的安定性ウィンドウの量は、約0.01 V~約0.05 V、又は代替的には約0.05 V~約0.10 V、又は代替的には約0.10 V~約0.15 V、又は代替的には約0.15 V~約0.20 V、又は代替的には約0.20 V~約0.25 V、又は代替的には約0.25 V~約0.30 V、又は代替的には約0.30 V~約0.35 V、又は代替的には約0.35 V~約0.40 V、又は代替的には約0.40 V~約0.45 V、又は代替的には約0.45 V~約0.50 V、又は代替的には少なくとも約0.5 V増大する。
【0034】
本開示の他の態様は、水性リチウム電解質溶液を含むリチウム電池におけるカソード限界電位を低下させる方法であって、水と混和性の貧溶媒を添加することを含む、方法を提供する。幾つかの実施の形態において、上記貧溶媒はアミド化合物を含む。更に他の実施の形態において、添加される水の量に対する添加される貧溶媒の化学量論量は、約1.5~約1.25、又は代替的には約1.25~約1.1、又は代替的には約1.1~約1.0、又は代替的には約1以下である。また他の実施の形態において、上記アミド化合物は、本明細書に記載されるもの、例えば尿素、N-メチルアセトアミド、アセトアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、テトラメチル尿素、N,N'-ジメチル尿素、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,1-ジエチル尿素又はそれらの組合せを含む。
【0035】
更なる実施の形態において、上記アミド化合物は、式Iの化合物である。
【0036】
更に他の実施の形態において、カソード限界電位の量は、少なくとも約0.1 V減少する。
【0037】
本開示全体を通して、本明細書に記載される、異なる又は代替的な実施形態の組合せが他の実施形態を形成することを理解すべきである。例えば、電気化学的安定性を増大させる本開示の特定の一方法は、電気化学的安定性ウィンドウの増大量が約0.05 V~約0.10 Vの範囲であり、添加される貧溶媒の化学量論量が水の量に対して約1.25~約1.1の範囲であるとして本明細書に記載される。このため、これら2つの異なる代替的な実施の形態の組合せによって、水の量に対して約1.25~約1.1の範囲の量の貧溶媒を添加することにより、電気化学的安定性ウィンドウを約0.05 V~約0.10 Vの範囲で増大させる方法が提供される。このようにして、組成物及び方法の多種多様の異なる実施形態が本開示において具現化される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】室温での尿素、LiTFSI及びH2Oの三成分相図における液体領域を示す図である。
図2】4.1 m、4.5 m、5.1 mの電解質について、21 mのWISEと比較した、Li+の周囲(3.0 Å以内)のCO(NH2)2、TFSI及びH2Oの配位数を示すグラフである。
図3】A 4.1 m CO(NH2)2-LiTFSI-H2O-0.1m KOH電解質溶液の二体分布関数(g(r))及び配位数(n(r))を示すグラフである。B 4.5 m CO(NH2)2-LiTFSI-H2O-0.1m KOH電解質溶液の二体分布関数(g(r))及び配位数(n(r))を示すグラフである。
図3-1】C 5.1 m CO(NH2)2-LiTFSI-H2O-0.1m KOH電解質溶液の二体分布関数(g(r))及び配位数(n(r))を示すグラフである。
図4】(i)量子化学計算による予測還元電位(Li/Li+に対するV)、並びに(ii)集電体上のCVと重ね合わせた、異なるLiTFSI濃度及び電極の酸化還元を有する電解質の全体的な電気化学的安定性ウィンドウを示すグラフ、並びにカソード極限及びアノード極限付近の領域の拡大図である。
図5】A LSVにより0.2 mV/sの走査速度で測定した異なる水性電解質のカソード限界を示すグラフである。B LSVにより0.2 mV/sの走査速度で測定した異なる水性電解質のアノード限界を示すグラフである。
図6】対電極としてPt、参照電極としてAg/AgClを用いた、4.5 mの電解質中のアルミニウム作用電極のサイクリックボルタモグラム(走査速度=1mV/s)である。
図7】無機/有機混合SEIの形成について考え得る機構の1つの概略図である。
図8】A 異なるリチウム塩濃度での2.5 V LiMn2O4||Li4Ti5O12及び2.6 V LiVPO4F||Li4Ti5O12フルセルのサイクルの関数としての容量を示す図である。B 異なるリチウム塩濃度での2.5 V LiMn2O4||Li4Ti5O12及び2.6 V LiVPO4F||Li4Ti5O12フルセルのサイクルの関数としてのクーロン効率を示す図である。
図8-1】C 4.5 mの電解質中、0.5 Cの高電流でのLiMn2O4||Li4Ti5O12フルセルの長期サイクリング安定性を示す図である。D 4.5 mの電解質中、0.5 CでのLiMn2O4||Li4Ti5O12フルセルの長期電圧プロファイルを示す図である。
図9】A 4.5 m LiTFSI/NMA/H2O中、0.5 Cでの1.5 mAh/cm2 LMO/LTOフルセルの長期サイクリング性能プロファイルを示す図である。B 4.5 m LiTFSI/NMA/H2O中、0.5 Cでの1.5 mAh/cm2 LMO/LTOフルセルの長期電圧プロファイルを示す図である。
図10】1.5 mAh/cm2の面積容量で4.5 mの電解質中、0.2 CでのLiVPO4F||Li4Ti5O12フルセルのサイクル性能を示す図である。
図11】A 4.5 mの電解質中、0.5 CでのLiVPO4F||Li4Ti5O12フルセルの長期サイクリング性能プロファイルを示す図である。B 4.5 mの電解質中、0.5 CでのLiVPO4F||Li4Ti5O12フルセルの長期電圧プロファイルを示す図である。
図12】異なる塩濃度を有する様々な水性電解質(従来の水性電解質、21 m、28 m及び63 m)と比較した本開示の電解質の電解質安定性ウィンドウを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本開示の幾つかの態様は、不燃性貧溶媒を含む水性電解質組成物に関する。特に、本開示の貧溶媒(希釈剤又は添加剤と称されることもある)の添加は、(i)水の活性を低下させ、及び/又はLiイオン溶媒和シースから水を除去する、H2O分子との強い結合を含む塩様特性を有する水性電解質をもたらし、(ii)強固なSEIを形成する能力を増大させ、それによりカソード限界電位を(例えば約1.7 V以下、幾つかの実施形態においては約1.6 V以下、他の実施形態においては約1.5 V以下に)低下させ、及び/又は(iii)電解質が10-3 S/cm超の高いイオン伝導率及び低い粘度を有することを可能にする。さらに、本開示において使用される典型的な貧溶媒は、安価で不燃性であるため、コストは比較的同じままであり、電解質は不燃性を維持する。幾つかの特定の実施形態において、貧溶媒は塩様である。本明細書において使用される場合、「塩様」という用語は、室温で固体であるが、溶解するか又は水と混和性の貧溶媒を指す。
【0040】
本開示の様々な特徴及び利点を、特定の電解質組成物の幾つかを用いて説明する。しかしながら、本開示の範囲がこれらの特定の電解質組成物に限定されないことを理解すべきである。実際に、本明細書において明示的に開示するように、多種多様な電解質組成物が本開示の範囲内で具現化される。様々な結果、特徴及び利点に関する以下の論考は、単に実例としてのみ提供され、その範囲を限定するものではない。
【0041】
本開示の幾つかの態様は、水性電解質組成物への貧溶媒、特に貧溶媒としての有機化合物の添加が、顕著に増大又は拡大した電気化学的安定性ウィンドウを有する電解質組成物をもたらしたという本発明者らによる発見に基づく。幾つかの実施形態において、本開示の電解質組成物を含むリチウムイオン電池の電気化学的安定性ウィンドウは、少なくとも約3.0 V、又は代替的には約3.0 V~約3.1 V、又は代替的には約3.1 V~約3.2 V、又は代替的には約3.2 V~約3.3 V、又は代替的には約3.3 V~約3.4 V、又は代替的には約3.3 V超である。
【0042】
本開示の貧溶媒を添加することの効果を決定するために、4.5 m LiTFSI-0.1 m KOH-CO(NH2)2-H2Oを含む水性電解質組成物を調製し、試験した。貧溶媒として有機化合物を添加すると、3.3 Vの拡大した電気化学的安定性ウィンドウを有する電解質組成物が得られた。代替的には、本開示の貧溶媒を添加すると、本開示の貧溶媒の非存在下での同じ電解質組成物と比較して、電気化学的安定性ウィンドウが少なくとも約0.2 V、他の実施形態においては少なくとも約0.3 V、更に他の実施形態においては少なくとも約0.4 V、また他の実施形態においては少なくとも約0.5 V増大した。
【0043】
また他の実施形態において、本開示の貧溶媒の添加は、カソード限界電位を約1.7 V~約1.6 V、又は代替的には約1.6 V~1.5 V、又は代替的には約1.5V以下に低下させた。代替的には、本開示の貧溶媒の添加は、本開示の貧溶媒の非存在下での同じ電解質組成物と比べて、カソード限界電位を約0.01 V~約0.05 V、又は代替的には約0.05 V~約0.10 V、又は代替的には約0.10 V~約0.15 V、又は代替的には約0.15 V~約0.20 V、又は代替的には約0.20 V~約0.25 V、又は代替的には約0.25 V~約0.30 V、又は代替的には約0.30 V~約0.35 V、又は代替的には約0.35 V~約0.40 V、又は代替的には約0.40 V~約0.45 V、又は代替的には約0.45 V~約0.50 V、又は代替的には少なくとも約0.5 V低下させた。
【0044】
更に他の実施形態において、詳細な研究により、貧溶媒の添加がLi+溶媒和シェル中のH2Oの数をWISE中の2.6から約2.0以下、典型的には約1.5以下、多くの場合、約1.0以下、最も多くの場合、約0.7以下に減少させることが示された。代替的には、本開示の貧溶媒の添加により、Li+溶媒和シェル中の水分子の数が約10%~約15%、又は代替的には約15%~20%、又は代替的には約20%~25%、又は代替的には約25%~30%、又は代替的には約30%~35%、又は代替的には約35%~40%、又は代替的には約40%~45%、又は代替的には約45%~50%、又は代替的には約50%~55%、又は代替的には約55%~60%、又は代替的には約60%~65%、又は代替的には約65%~70%、又は代替的には約70%~75%、又は代替的には少なくとも約75%減少した。
【0045】
本開示全体を通して、WISE及び本開示の電解質組成物の特性を比較する場合、以下の濃度の電解質塩が使用されることを理解すべきである。典型的には、WISE中の電解質塩の濃度(すなわち、モル濃度)は、約15.7 m~約16 m、又は代替的には約16 m~約17m、又は代替的には約17 m~約18 m、又は代替的には約18 m~約19 m、又は代替的には約19m~約20 m、又は代替的には約20 m~約22 m、又は代替的には約12 m~約25m、又は少なくとも約25 mである。対照的に、本開示の電解質組成物中の電解質塩の濃度は、約6 m~約5.5 m、又は代替的には約5.5m~5.0 m、又は代替的には約5.0 m~4.5 m、又は代替的には約4.5 m以下である。
【0046】
また、4.5 m LiTFSI-0.1 m KOH-CO(NH2)2-H2Oを含む本開示の水性電解質組成物は、水を安定化させ、LiTFSI及びCO(NH2)2の両方の還元から強固なLiF/ポリマー二重層固体-電解質界面(「SEI」)を形成し、一方でKOHがLiTFSI還元を触媒した。さらに、2.5 Vの水系LiMn2O4||Li4Ti5O12フルセルは、いかなる前処理もなしで高いクーロン効率(99.9%)及び優れた安定性(1000サイクルで87%超)を示した。
【0047】
4.5 m LiTFSI-0.1 m KOH-CO(NH2)2-H2O電解質の溶媒和構造:尿素及びN-メチルアセトアミドを含む塩様希釈剤は、粘度を顕著に上昇させることなく、水と強く結合することができる。アミドは、H2Oと強い水素結合を形成することで、水の活性を低下させることもできる。アミドと水との間の水素結合がH2O分子間の水素結合よりも更に強いことが報告されている。さらに、アミドは水性電解質中で強固なSEI層の形成を促進し、電解質の粘度を低下させることもできる。
【0048】
多くのアミドはグリーンケミカルであり、低コストで不燃性である。さらに、尿素等のアミドは、固体のLiTFSI塩及び液体のH2O溶媒の両方と共融系を形成する。貧溶媒を添加することの効果を研究するために、不燃性の貧溶媒又は希釈剤の代表として尿素を選択した。特に、尿素をWISEに添加し、より広い電気化学的安定性ウィンドウを有する希薄水性電解質を形成した。貧溶媒を添加する場合に必要とされる電解質塩の量が顕著により少ないことから、得られる電解質組成物のコストが、WISEと比較して顕著に低いことを理解すべきである。
【0049】
三成分CO(NH2)2-LiTFSI-H2O系の相図は未知であるため、CO(NH2)2-LiTFSI-H2Oの三成分相図における液体領域を初めに決定した。図1(網掛け部分)。CO(NH2)2-LiTFSI-H2Oの組成が網掛け領域にある場合、均質でクリアな溶液を得ることができる。例えば、固体尿素及び固体LiTFSIを少量の液体H2Oと室温で混合すると、4.5 m LiTFSI-0.1 m KOH-CO(NH2)2-H2Oのクリアで均質な透明の水性電解質溶液が生じ、強い分子間相互作用が示唆された。水性電解質のイオン伝導率に基づき、三成分座標系における4.1 mの電解質を初めに選択したが、水性電解質の電気化学的安定性ウィンドウを更に研究するために、LiTFSIの含有量を4.5 m及び5.1mに増加させた。下記表1に、4.1 m、4.5 m、5.1 mの異なるLiTFSI塩モル濃度を有する選択されたCO(NH2)2-LiTFSI-H2O-0.1m KOH電解質(それぞれ4.1 m、4.5 m、5.1 mと表示)の組成をまとめる。KOHはLiF SEIを形成するLiTFSIの還元を促進し得るため、これら3つの電解質に0.1 m KOHを添加した。個々のCO(NH2)2及びH2O、CO(NH2)2-H2O(0.4:1)共融電解質、並びに21 mWISEを参照として使用した。
【0050】
表1. 25℃での種々の電解質の組成
【表1】
【0051】
LiTFSI、CO(NH2)2及びH2Oの間の分子間相互作用を振動分析によって調査した。4.1 m、4.5 m、5.1 m及び共融CO(NH2)2-H2O水性電解質のラマンスペクトルを、個々のCO(NH2)2及びH2Oのラマンスペクトルとともに得た。純粋なCO(NH2)2のラマンスペクトルを参照スペクトルとして用い、これは文献中のデータと一致する。CO(NH2)2における1010 cm-1での強いラマンバンドは、対称CN伸縮振動に対応し、3つのCO(NH2)2-LiTFSI-H2O-0.1mKOH水性電解質(4.1 m、4.5 m及び5.1 m)において1006 cm-1のより低い波数にシフトし、共融CO(NH2)2/H2O溶液においては1004 cm-1と更に低い周波数にシフトした。分子内水素結合が弱くなるため、CN結合がより長くなり、対応する振動がより低い波数にシフトする。H2OとCO(NH2)2との間の強い相互作用は、C=Oモード及びNH2モードのシフトによっても反映された。以前の報告によると、1647cm-1でのバンドは、主にNH2変形を反映するが、より低い周波数(1540 cm-1)のバンドは、より強いC=O特性を有する。共融CO(NH2)2-H2O溶液中では、NH2変形及びC=O縦揺れ振動の両方が、CO(NH2)2-H2O分子間相互作用による水素結合強度の増大により、より高い周波数にシフトすると考えられる。LiTFSIを添加すると、LiTFSIとH2Oとの強い相互作用により、3つの電解質において更に大きなシフトが起こる。したがって、LiTFSI及びCO(NH2)2の両方が、H2O活性を低下させ、H2Oを安定化させることができる。
【0052】
4.1 m、4.5 m及び5.1 mの電解質における強いCO(NH2)2-H2O相互作用を、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いても確認し、3348 cm-1及び3445 cm-1にCO(NH2)2の2つの強いバンドが示された。これら2つのバンドは、NH2伸縮振動に対応し、4.1 m、4.5 m及び5.1 mの水性電解質においては、より強い水素結合のためにより高い周波数にシフトする。さらに、3つの水性電解質(4.1 m、4.5 m及び5.1 m)においては、約3600 cm-1に可視バンドが出現したが、H2Oは2900 cm-1~3700 cm-1に特徴的なブロードバンドしか有しない。この新たなバンドは、共融CO(NH2)2/H2Oにもより高強度で見られ、孤立したH2OがCO(NH2)2と相互作用することが示唆された。
【0053】
また、17O核磁気共鳴(NMR)スペクトルを、CO(NH2)2とH2Oとの間の強い結合を特徴付けるために使用した。簡潔に述べると、バルクH2Oの-1.31 ppmでの17Oシグナルは、共融溶液を形成するH2Oに50%のCO(NH2)2を添加すると、-0.13 ppm~-1.44 ppm負にシフトし、H2OとCO(NH2)2との間の広範な相互作用が示唆された。電解質塩として4.1 m、4.5 m及び5.1 m のLiTFSIを添加した場合、17Oシグナルは、更にそれぞれ-0.48、-0.5及び-0.53シフトし、H2OがLi+よりも強くCO(NH2)2と相互作用することが示された。しかしながら、塩濃度の増加に伴う17Oシグナルのシフトは、LiTFSI解離の平衡のために小さく、これは、塩濃度が増加する際のTFSI-(744.5 cm-1)の特徴的なラマンバンドのごく僅かなシフトによって確認される。この結果は、CO(NH2)2がLiTFSI塩よりも強くH2Oを安定化させ得ることを示す。したがって、CO(NH2)2は、LiTFSIに代わってH2Oを安定化させ、それにより水中のLiTFSI塩の量を効果的に減少させることができる。
【0054】
電解質の溶媒和構造を、後述の実施例のセクションに記載されているように分子動力学(MD)を用いてシミュレーションした。MD計算又はシミュレーションにより、CO(NH2)2をLiTFSI-H2O電解質溶液に導入すると、一次Li+溶媒和シースの構造が変化することが示された。図2に4.1 m、4.5 m及び5.1 mの電解質の配位数をまとめた。4.1 m、4.5 m及び5.1 mの電解質についての詳細な二体分布関数及び配位数を研究した。例えば、それぞれ図3A図3Cを参照されたい。4.1 mの電解質においては、各Li+は、平均して3.1分子のCO(NH2)2、0.3分子のTFSI及び僅か0.6分子のH2Oに囲まれている。対照的に、21 mのWISEにおいては、各Li+一次溶媒和シースに平均2.5分子のH2Oが存在する。CO(NH2)2を添加すると、リチウムイオンの一次溶媒和シェルにおけるLi+イオン配位子(coordinator)として、水分子の一部がCO(NH2)2に置換される。これは、例えばラマンスペクトル及びFTIRスペクトルにより、分光学的に観察することができる。TFSIの平均配位数は、LiTFSI濃度が上昇するにつれて増加する。例えば、4.5 mの電解質溶液について、TFSIの平均配位数は0.81であり、5.1mの電解質溶液については、TFSIの平均配位数は0.85である。このため、4.5 LiTFSIの水性電解質溶液は、[Li(CO(NH2)2)2.5(H2O)0.7(TFSI)0.8]溶媒和構造に相当する。異なるLiTFSI濃度にも関わらず、4.5 m及び5.1 mは、ほぼ同じLi+一次溶媒和構造を共通して有する。加えて、水素結合は、MDシミュレーションにおいて容易に観察することができる。CO(NH2)2とH2Oとの間の水素結合は、アノードの表面での界面H2Oの存在を最小限にすることにより、H2O活性を低下させることができる。これは、水-水水素結合と比較して尿素-水の水素結合が強いためと考えられる。加えて、尿素と水との間の強い水素結合は、水-水の水素結合と比較して緊密な尿素と水との間の配位により、H2O活性を抑制する。この水活性の低下は、ひいては電気化学的安定性ウィンドウの拡大につながると考えられる。
【0055】
幾つかの実施形態において、CO(NH2)2の導入は、凝集体(AGG)の量も減少させる。したがって、幾つかの実施形態において、少量のKOHをCO(NH2)2と同時に添加し、TFSI-の還元を触媒して、LiF固体-電解質界面(SEI)を形成した。
【0056】
4.5 m LiTFSI-0.1 m KOH-CO(NH2)2-H2O電解質の電気化学的特性:4.1 m、4.5 m及び5.1 mの水性電解質の電気化学的安定性ウィンドウを、リニアスイープボルタンメトリー(LSV)によって0.2 mV/sの走査速度で試験した(図4A)。図4Aに示されるように、電解質の安定性ウィンドウは、WISEの3.0 Vから3.3 Vへと顕著に拡大し、カソード電位は1.9 Vから1.5 Vへと0.4 V負にシフトした。図4Bから、全ての濃度での還元が、約2.5 V(pH 10での水のプールベ図によると、2.4 Vのカソード限界の前)で開始し、約2.2 Vでプラトーに達することが示される。フッ化リチウム塩(LiTFSI)がLiFリッチSEIの形成において重要な役割を果たすことは、よく認められている。また、DFT計算(図4D)により、LiTFSIの還元電位がCO(NH2)2の還元電位よりもはるかに高いことが示され、CO(NH2)2よりもLiTFSIが選択的に還元されることが示唆される。KOHは、LiTFSIの還元動態を更に加速する。KOH添加剤の重要な役割は、図5A及び図5Bに明らかに示される。LiTFSIの還元に対応する小さなプラトーは、KOHの存在とともに現れ、KOHがLiTFSIの還元動態を加速し、LiFリッチSEIを生成し得ることが実証される。上記の[Li(CO(NH2)2)2.5(H2O)0.7(TFSI)0.8]溶媒和構造に示されるように、CO(NH2)2の大きな可溶化能力により、H2Oではなく、CO(NH2)2が支配的な相間化学が生じる。ここでは、LiTFSI、CO(NH2)2、KOHの相乗効果が、カソード限界を1.5 Vまで首尾よく押し上げる強固なSEI層に寄与する。4.5 m及び5.1mの電解質のCV曲線は、ほぼ重なるが、比較的希薄な4.1 mの電解質が、4.5 m又は5.1 mの電解質の0.18mA/cm2と比較して、0.26 mA/cm2と僅かに大きなプラトー電流を示すことが分かる。同様に、4.1 mの電解質もアノードスキャンで僅かに高い電流を示す(図4C)。4.5 mの水性電解質は、CO(NH2)2酸化反応により、WISE(4.9 V)よりも僅かに低いアノード限界(4.8 V)を示す。アルミニウムの電解質腐食の可能性を探るために、作用電極としてAl箔を用いたCV(図6)及びCV(5.0 Vで3.0時間保持)後のAl箔のSEM像を試験した。LiTFSIによるアルミニウムの腐食が殆ど抑制されることが観察された。加えて、驚くべきこと、また予期せぬことに、4.5 m LiTFSI-0.1 m KOH-CO(NH2)2-H2O水性電解質は、3.3 Vの拡大した電気化学的ウィンドウをもたらした。
【0057】
4.5 mの電解質中の活性電極(Li4Ti5O12、LiMn2O4及びLiVPO4F)のサイクリックボルタモグラム(CV)は、全てネルンストシフトのために約0.2 V上方にシフトした、特徴的な酸化還元ピークを示し、4.5 mの電解質中でのリチウムイオン活性が、21 mのWISE中と同程度に低いことが示唆された。注目に値するのは、Li4Ti5O12アノードが、速い反応動態及び長いサイクリング安定性を有するため、長く追い求められてきた水系リチウムイオン電池用のアノードであることである。しかしながら、これまで、このアノードは、「カソードの課題」(例えば、Liに対して1.7 V~1.9 Vの範囲の還元電位を有する)のために水性電解質中では使用されていない。極めて高い濃度の使用(例えばゲル不動態化で63 m、又はLi4Ti5O12上のLi1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3コーティングとともに水性電解質にPEGを添加する)等の以前の戦略では、依然として、水系Liイオン電池におけるLi4Ti5O12アノードの実用化に所望される高いクーロン効率(99.9%超)を達成することはできない。これまで、高いクーロン効率(例えば99.9%超)を有する水性電解質中のアノードとしてLi4Ti5O12を使用することが可能な水性電解質はなかった。表2は、活物質の実用的な負荷(1.5 mAh/cm2以上)及び低いカソード過剰(例えば20%未満)で顕著に改善されたクーロン効率を有する、本開示の水性電解質を含むLiMn2O4||Li4Ti5O12フルセルを示す。
【0058】
表2. 4.5 mの電解質とLi4Ti5O12ベースの水系Liイオン電池について報告された他の電解質との比較
【表2】
【0059】
4.5 mの水性電解質中でサイクリングした後のLi4Ti5O12電極上のSEI層の組成を、X線光電子分光法(XPS)及び飛行時間二次イオン質量分析(ToF-SIMS)を用いて特性評価した。サイクリングしたLi4Ti5O12電極を、XPS分析の前にジメチルカーボネート(DMC)で洗浄し、残留電解質を除去した。284.2 eVに位置する特徴的なC 1sピークは、導電性炭素に由来するとともに、293.0 eVのCF3ピークは、アノード複合材料中のPVDFバインダーに由来する。C 1sにおいて検出された286.1 eVのシグナル、N 1sにおける400.0 eVのシグナル及びO 1sにおける232.6 eVのシグナルは、CO(NH2)2に由来する有機C-O-N種に属する。SEI成分としての微量のLi2CO3の存在は、C 1sにおける290.5 eV及びO 1sスペクトルにおける530.5 eVによってそれぞれ裏付けられる。Li2CO3の形成は、アルカリ性条件下での求核攻撃によるCO(NH2)2の分解によって形成されたCNO-、次いでCO3 2-に起因する。無機LiFを、LiTFSIの還元に起因する685.5 eVの付加的なF 1sシグナルによって試験する。688.5 eVでの残留F 1sシグナルは、PVDFバインダーに割り当てることができる。サイクリング前のLi4Ti5O12電極のXPSパターンも比較のために測定した。明白なLi2CO3又はLiFのシグナルは検出されなかった。
【0060】
ToF-SIMSスペクトルは、5 m/z~60 m/zの範囲の負極性で収集した。例えば、Li4Ti5O12活物質からm/z=16(O-)、LiTFSIの還元から19(F-)、CO(NH2)2の分解(CO(NH2)2→CNO-→CN-、C2 -)から24(C2 -)及び26(CN-)の多数のフラグメントが観察された。これはXPSの結果と一致する。観察可能なLi2CO3由来の第2のイオン種は検出されず、Li2CO3の量が少ないことが示唆された。Li4Ti5O12表面上でのSEIにおける種の空間分布を、ToF-SIMSの深さプロファイルによって分析し、Ga+イオンによってスパッタリングされた深さ1.3 μmのクレーターの端面が示された。濃度深さプロファイルによると、CN-及びF-の濃度は、エッチングによって急速に減少した。対照的に、Li4Ti5O12活物質由来のO-濃度の上昇が観察された。より詳細に調べることで、LiF関連種(F-)の濃度が、電極の表面からバルクにかけて、有機種(CN)よりも低い濃度勾配で減少することが示され、有機種が主に最表面に位置し、LiF種が表層においてより深くに位置することが示された。KOH添加剤を含まない4.5 mの水性電解質におけるF-シグナル強度は、KOH添加剤を含む4.5 mの水性電解質中のSEIからのシグナル強度と比較して低く、KOH添加剤によって、より多くのLiFが生成されることが示された。加えて、ToF-SIMS結果からも、LiMn2O4カソード側のFリッチCEI層の形成が示唆される。
【0061】
また、サイクリングしたLi4Ti5O12電極の構造を高分解能透過電子顕微鏡法(HRTEM)によって分析し、LiF/ポリマー二重層SEIを更に検証した。4.5 mの電解質中でサイクリングしたLi4Ti5O12表面上のポリマー/LiF二重層SEIは、WISE中でMo6S8上に形成された結晶性LiF SEIとは異なる。XPSにおいて検出されたC-O-N種及びToF-SIMSの結果において検出されたCN-種とともに、アモルファス特性は、ポリ尿素に起因するものであった。このため、4.5 mの電解質中でのサイクリング中にLi4Ti5O12アノード表面上に形成されたSEI界面相は、主にLiFを構成する有機種と無機種との混合物である。
【0062】
SEI組成分析から、SEI形成について考え得る機構の1つを図7にまとめる。最初に、TFSIがOH-の存在下で求核攻撃によりF-アニオンを生成する。アルカリ性条件下では、F-アニオンがLi+カチオンと沈殿し、高電位では内側LiF層が形成され、低電位では、尿素がLiFの外表面で電気化学的にポリ尿素へと重合する。LiFリッチ内層と有機外層とを有する、かかる強固な二重層SEIは、安定した性能にとって有益である。
【0063】
4.5 mの電解質中での2.5V LiMn2O4||Li4Ti5O12及び2.6V LiVPO4F||Li4Ti5O12フルセルの電気化学的性能:図4に示されるように、SEI層の構造分析及び化学分析によると、LiVPO4Fカソード及びLiMn2O4カソード、並びにLi4Ti5O12アノードの全ての酸化還元ピークは、3つの水性電解質(4.1 m、4.5 m及び5.1 m)の電気化学的安定性ウィンドウ内に位置し、充放電サイクル中に強固なSEIがLi4Ti5O12アノード表面に形成された。本開示の水性電解質を更に研究するために、Li4Ti5O12アノードをLiMn2O4カソード又はLiVPO4Fカソードのいずれかと組み合わせ、1.14と低いP/N容量比を有するフルセルを形成した。SEI形成中の不可逆的なリチウム枯渇を打ち消すために、僅かに過剰なカソード電極容量を用いた。
【0064】
LiMn2O4||Li4Ti5O12フルセルの電気化学的性能を、異なるLiTFSI濃度、すなわち5.1 m、4.5m及び4.1 mの水性電解質中で評価した。図8A及び図8Bを参照されたい。0.2 Cの低レートでのクーロン効率を、実際の電池環境においても用いられる任意の副反応をモニタリングするために、全てのセルに適用した。図8Aに示されるように、5.1 m及び4.5mの電解質中のLiMn2O4||Li4Ti5O12フルセルは、0.2 C及び低P/N値であってもサイクリング時に比較的安定しており、4.5でのセル安定性は、4.1 mの電解質中よりもはるかに良好である。4.5 mの電解質中よりも僅かに低い5.1 mの電解質中でのフルセルの容量は、塩濃度の上昇による粘度の増加に起因する。フルセルにおいてはリチウム供給源が限られているため、クーロン効率は、サイクリング安定性にとって重要である。図8Bに示されるように、4.1 m、4.5m及び5.1 mの電解質中でのLiMn2O4||Li4Ti5O12フルセルのクーロン効率は、最初のサイクルにおいて、それぞれ82.6%、90.7%及び92.8%である。このクーロン効率は、その後のサイクルにおいて徐々に増大し、最終的に99.0%(4.1 m)、99.7%(4.5 m)及び99.8%(5.1 m)で安定する。
【0065】
3つの電解質の中でも、4.5 mの電解質が最も良好な全体的特性、すなわち、比較的高いイオン伝導率(1.0 mS/cm)、低い粘度(0.32 Pa s)及び広い電気化学的ウィンドウ(3.3 V)を有する。4.5 mの電解質の熱分析によると、これは液体状態のままであり、広い温度範囲にわたって安定している。これら全ての物理化学的特性及びコスト要因を考慮して、4.5 mの電解質をより詳細な研究に選択した。
【0066】
図8Cは、0.5 Cの高電流での4.5 mの電解質中のLiMn2O4||Li4Ti5O12フルセルの長期サイクリング性能を示す。フルセルは、154.6 mAh/gのアノード容量及び101.6 mAh/gのカソード容量に相当する61.3 mAh/gの放電容量を示す。初期クーロン効率は、高度に絶縁されたLiFリッチSEIの形成のために91.9%と高い。水素発生は、ごく僅かであるか、又は初期サイクル中にのみ起こり、急速に減少した。最初のサイクル後に、4.5 mの水性電解質中でサイクリングしたセルから抽出したガスのGC-MSにより、最初のサイクルにおける水素発生反応に対応するH2の発生が実証された。観察されたN2ガス及びCO2ガスは、尿素の分解に起因する。また、Arが装置のキャリアガスである。20サイクル後に、パウチセルを完全に脱ガスし、続いて更に20サイクルサイクリングした。GC-MSの結果から、その後のサイクルにおいてH2ガスが検出されなかったことが示される。クーロン効率は、5サイクル以内に99%まで上昇し、最終的には26サイクル後に99.96%の平均CEが達成される。予想通り、1000回を超える長いサイクル寿命が達成される。印象的なことに、LiMn2O4||Li4Ti5O12セルは、分極が僅かに増加する1000サイクル後でも87%超の容量を保持する(図8D)。対照的に、KOH添加剤を含まない4.5mの電解質中のLiMn2O4||Li4Ti5O12セルは、サイクリング時に段階的な容量減衰を示す。
【0067】
本明細書に開示される電解質設計戦略は、類似の分子構造を有する他のアミド(例えば尿素、N-メチルアセトアミド、アセトアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、テトラメチル尿素、N,N'-ジメチル尿素、1,1-ジメチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,1-ジエチル尿素及びそれらの組合せ(複数の場合もある))に適用することができる。例えば、尿素をN-メチルアセトアミドに置き換えることにより、図9A及び図9Bに示されるように、LiMn2O4||Li4Ti5O12フルセルも高い容量維持率(450サイクルで90%)で優れた安定性を示す。
【0068】
LiVPO4Fは、596 Wh/kgのエネルギー密度に相当し、LiMn2O4よりも32%高い142 mAh/gを4.2 Vで供給することができる。0.2 Cの低レートでのLiVPO4F||Li4Ti5O12フルセルのクーロン効率は、最初のサイクルで82.1%であり、その後のサイクルで徐々に上昇し、最終的に99.2%前後で安定した(図10)。P/N=1.14での2.6VLiVPO4F||Li4Ti5O12フルセルの電池性能も4.5 mの水性電解質中にて0.5 Cのレートでサイクリングした(図11A及び図11B)。最初の充放電容量は、それぞれ64.1 mAh/g及び58.1 mAh/g(LiVPO4F+Li4Ti5O12の全質量)であり、90.6%の初期クーロン効率に相当する。容量維持率は、500サイクル後に80%超である。LiVPO4F||Li4Ti5O12フルセルは、2.5 V LiMn2O4||Li4Ti5O12フルセルと比較して高い2.6 Vの平均電圧を供給することができる。かかる2.6 V(LiVPO4F/Li4Ti5O12)フルセルは、150.8 Wh/kg(全電極質量)のエネルギー密度をもたらす。
【0069】
LiMn2O4||Li4Ti5O12セルを更に評価するために、LiMn2O4||Li4Ti5O12パウチセルを1.5 mAh/cm2の高面積容量及び1.14のP/N容量比で評価した。パウチセルは、99.97%の平均クーロン効率を示し、1 Cで1000サイクル後に88%の容量を保持した。これは、これまで報告されている全ての水性電解質よりもはるかに良好である(表2)。面積容量は、2.5 mAh/cm2まで更に増加した。これは明らかに市販セルレベルである。面積容量が1.5 mAh/cm2及び2.5 mAh/cm2のLiMn2O4||Li4Ti5O12パウチセルの1 Cでの典型的な定電流充放電曲線を比較した。この比較から、より高い面積容量では分極が比較的小さいことが示された。2.0 Vで12時間、最適化された外圧(0.5Mpa)で電気浸透ウェッティングした後、2.5 mAh/cm2 LiMn2O4||Li4Ti5O12パウチセルは、500サイクル後に72%と高い容量維持率を示した。1 Cでの最初のサイクルにおけるクーロン効率は、非常に高く(93.6%)、50サイクルで99.9%まで急速に上昇し、最初の数サイクルにおいて形成されたSEIが水の分解を効果的に抑制することが示された。10サイクルから500サイクルまでの平均CEは99.87%であり、これは有機電解質LiMn2O4||Li4Ti5O12セルに匹敵する。初期容量減衰は、SEIの形成によるLiMn2O4中のLiの消費に起因し得る。この容量減衰は、Li1.5Mn2O4の使用によって低減することができる。低い自己放電率から、4.5 mの水性電解質が安定したSEIの形成を可能にし、副反応(特にH2O分解)を首尾よく抑制することが実証される。
【0070】
1 C、2 C、3 Cの電流密度でのLiMn2O4||Li4Ti5O12パウチセルのレート能力は、それぞれ58.6 mAh/g(92%)、46.9mAh/g(74%)及び34.8 mAh/g(55%)の可逆容量を示した。個々の電極における電圧及びサイクリング挙動を区別する上で、3電極パウチセルを使用した。Li4Ti5O12アノード、LiMn2O4カソード、参照としてのリチウム化LiFePO4、メンブレン及び4.5 mの水性電解質から構成されるセルを試験のために1 Cでサイクリングした。容量減衰は主に、SEIの形成によるLiMn2O4カソードの活性リチウムの喪失に起因する。サイクリング性能を改善する方法の1つは、リチウムリッチLi1.5Mn2O4をカソードとして使用することである。
【0071】
典型的な水性電解質の電解質安定性ウィンドウ及び塩濃度の視覚的比較を図12に示す。驚くべきこと、また予期せぬことに、本開示の電解質は、超濃厚塩を使用することなく、3.3 Vと拡大した電気化学的安定性ウィンドウを達成する。本開示の電解質組成物を使用すると、18650型セルのレベルで103 Wh/kgのエネルギー密度が容易に得られた。このエネルギー密度は、Ni-MH技術(100 Wh/kg)よりも僅かに高い。電圧、レート能力、環境適合性、全コスト及びサイクル寿命を含む他の要因を考慮すると、本開示の電解質が鉛酸電池、Ni-Cd電池及びNi-MH電池を含む現在市販されている水系技術よりも性能が優れていると予想することは妥当である。
【0072】
本開示は、3.0 Vの電気化学的安定性ウィンドウを有する21 mのWISEを超えて、顕著により低い電解質塩濃度(例えば、4.5 mLiTFSI-KOH-CO(NH2)2-H2Oの水性電解質)で3.3 Vと拡大された電気化学的安定性ウィンドウを有する貧溶媒を含む水性電解質を提供する。アミド等の不燃性有機貧溶媒を添加することにより、本開示の水性電解質は、LiTFSIの一部を置き換え、Li+溶媒和シェル中のH2Oの数をWISE中の2.6から0.7に減少させる。LiTFSI塩と同様に、尿素等のアミド貧溶媒は、水との強い水素結合相互作用によりH2Oの活性を抑制し、Li+一次溶媒和シェル中のH2O部位を僅かに置換し、有機外層とLiFリッチ内層とを含む強固なSEIの形成に寄与し得ると考えられる。さらに、4.5 m LiTFSI-KOH-CO(NH2)2-H2O等の本開示の水性電解質は、Li4Ti5O12アノードが1.14と低いP/N比でLiMn2O4カソード及びLiVPO4Fカソードの両方とカップリングし、高いクーロン効率(99.9%以上)及び長いサイクリング安定性(最大1000サイクル)を達成することを可能にする。さらに、高い面積容量(2.5 mAh/cm2)、及び1.14と低いP/N容量比、及び72%の容量維持率で500サイクル超の優れた可逆性を有するパウチセルを、本開示の水性電解質を用いて製造することができる。したがって、本開示の水性電解質は、電気化学的安定性を拡大し、安全性及び低コストの両方が極めて重要である実際の適用における水系リチウムイオン電池の使用を可能にする有望な方法を提供する。
【0073】
本開示の更なる目的、利点及び新規の特徴は、本開示の以下の実施例の検討により当業者に明らかとなるが、これらは限定を意図するものでない。実施例において、推定実施される手順は現在時制で記載し、実験室で行なった手順は過去時制で述べる。
【実施例
【0074】
分子動力学シミュレーション:分子動力学(MD)シミュレーションは全て、Large-scale Atomic/MolecularMassively Parallel Simulator(LAMMPS、lammps.sandia.gov)を用いて行った。4.1 m、4.5 m及び5.1 mの電解質をシミュレーションするために、LiTFSI、尿素及び水分子を濃度に応じて50×50×50 Å3ボックスに添加した。尿素の特性は、OPLS-AAパラメーター及びRESP電荷を用いて評定した。Li+及びTFSI-の既知の力場パラメーターを用いた。例えば、Wang et al., Nat. Commun., 7, pp. 1-9 (2016)を参照されたい。システムは、PACKMOL及びMoltemplate(moltemplate.org)を用いて初期設定した。シミュレーションは、500 Kで2 nsのNPTで開始し、電解質を完全溶解させるために330 Kで3 nsのNPTを続けた。次いで、システムをNPTアンサンブルにおいて298 °K及び1 atmで5 nsにわたり、1.0fsの時間ステップで平衡化した。NPTで計算された密度(298°K)は、それぞれ室温で実験的に測定された密度と十分に一致する。最後に、NVTアンサンブルにおけるMDランを平衡のために10 nsにわたって行い、続いて10 nsのNVTシミュレーションを用いてデータを得た。スナップショットの可視化及び結果の分析にはVMDソフトウェアを用いた。
【0075】
量子化学計算:量子化学(QC)計算は、還元電位を得るためにGaussian 09ソフトウェアパッケージを用いて行った。B3LYP密度汎関数及び6-31+G**基底関数系をLi+錯体構造の最適化に用いた。アセトンパラメーター(ε=20.49)を用いるSMD陰溶媒和モデルを、Li+錯体の計算に用いた。溶媒和エネルギーの計算には、元のSMD研究において水性溶媒和エネルギーの平均的な性能を有するものとして最良であると研究されたことから、M052X/6-31G*を用いた。例えば、Xu et al.,J. Phys. Chem. A, 123, 7430-7438 (2019)を参照されたい。還元電位は、Borodinet al., in Nanotechnology, 26, p. 354003 (2015)に開示されている同じ方法を用いて計算した。構造の可視化は、VESTAソフトウェアを用いて行った。
【0076】
電極の作製及び電気化学測定:Li4Ti5O12アノード、LiMn2O4カソード及びLiVPO4Fカソード電極は、Saft Corporationから提供された。LTOアノード及びLMOアノードは、集電体としてアルミニウム箔上に高負荷でコーティングした:LTOは1.5 mAh/cm2、LMOは1.7 mAh/cm2。比較のためにLiVPO4F(1.7 mAh/cm2)、LTO(2.5 mAh/cm2)及びLMO(2.8 mAh/cm2)をコーティングした。カレンダリング後に、LMOカソード及びLTOアノードは、それぞれ40%及び30%の空孔率を有していた。LMOの厚さは、負荷の増大とともに90 μmから135 μmに増加した。同様に、LTOの厚さは、1.5 mAh/cm2では80 μm、2.5 mAh/cm2では95 μmであった。これらの電極を1.2cm2のシートに切断し、80℃で24時間真空乾燥してから組み立てた。2032型コインセルを用いて電気化学測定を行った。Whatmanガラス繊維をセパレータとして使用した。パウチセルについては、アルミニウム及びニッケルのストリップを、それぞれカソード側及びアノード側に電極タブとして取り付けた。各パウチセルの電解質添加量は、0.02 mL/mAhであった。電解質をパッケージに注入した後、真空下で電池をシールした。リニアスイープボルタモグラム(LSV)試験は、Pt作用電極、Pt対電極、及び参照電極としてのAg/AgClを有する3電極セルを用いて測定した。LSV測定には、CHI660B電気化学ワークステーションを走査速度0.2 mV s-1で使用した。組み立てたセルの定電流サイクリングは、Land CT2001Aテスター(中国武漢)を用いて行った。
【0077】
水性電解質のイオン伝導率測定:イオン伝導率は、Gamryワークステーション(Gamry 1000E、Gamry Instruments、米国)を用いて5 mVの摂動で電気化学インピーダンス分光法(EIS)により測定し、周波数は室温で0.01 Hz~100000 Hzの範囲である。伝導率セル定数は、0.01 M KCl標準水溶液を用いて室温で予め決定した。
【0078】
サンプルの特性評価:ラマンスペクトルは、全てのサンプルを試験用ガラス管に封入し、1200 cm-1~100 cm-1の532 nmダイオード励起固体レーザーを用いてHoriba Jobin YvonのLabram Aramisで収集した。フーリエ変換赤外分光法(FTIR)は、NEXUS 670 FT-IR装置によって記録した。17O NMRスペクトルは、純水中の17O核の化学シフトを0 ppm参照として用い、67.81 MHzの17O周波数にてBrukerのDRX 500分光計で取得した。全てのNMR測定を296.2 Kで行った。X線光電子分光法(XPS)実験は、単色Al Ka放射線を用いて高分解能Kratos AXIS 165 X線光電子分光計で行った。全てのサンプルを、電気化学サイクリング後の2032型コインセル構成の完全水系Liイオン電池(ALIB)セルから回収した。サンプルをDMEで3回洗浄した後、XPS測定前に真空下で2時間乾燥させた。サンプルの形態は、日本電子株式会社のJEM 2100F透過型電子顕微鏡(TEM)(100 kV)及び株式会社日立ハイテクのSU-70電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)(5 kV)で観察した。
【0079】
本開示の上述の考察は、例示及び説明の目的で提示されている。上記は、本明細書に開示されている単数又は複数の形態に本開示を限定する意図はない。本開示の記載は、1つ以上の実施形態並びに幾つかの変形形態及び変更形態の記載を含むが、他の変形形態及び変更形態も本開示の範囲内にある、例えば、本開示を理解した後に当業者の技能及び知識内にある場合がある。許容される範囲まで代替的な実施形態を含む権利を得ることが意図され、これには、特許請求されるものに対して代替の、互換可能な、及び/又は均等の構造、機能、範囲、又は工程が、そのような代替の、互換可能な、及び/又は均等の構造、機能、範囲、又は工程が本明細書に開示されているかにかかわらず、またいずれの特許請求可能な主題にも公然と供する意図はなく含まれる。本明細書に引用される全ての参考文献は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
【0080】
図面訳
図1
Liquid 液体
Urea 尿素

図2
Coordinationnumber 配位数
TFSI molality TFSIモル濃度

図3A
all 全
urea 尿素

図3B
all 全
urea 尿素

図3C
all 全
urea 尿素

図4
Current density 電流密度
Voltage (V vs.Li/Li+) 電圧(Li/Li+に対するV)
Current 電流
Li2TFSIcomplex Li2TFSI錯体
LiCO(NH2)2complex LiCO(NH2)2錯体

図5A
Current density 電流密度
Voltage (V vs. Li/Li+) 電圧(Li/Li+に対するV)
without KOH KOHを含まない
with KOH KOHを含む

図5B
Current density 電流密度
Voltage (V vs.Li/Li+) 電圧(Li/Li+に対するV)
with KOH KOHを含む
without KOH KOHを含まない

図6
Current density 電流密度
Voltage (V vs.Li/Li+) 電圧(Li/Li+に対するV)
1st 1回目
2nd 2回目
3rd 3回目

図7
nucleophilicattack 求核攻撃
Polymerization 重合
Organic species 有機種

図8A
Capacity 容量
Cycle Number サイクル数
Low rate 低レート

図8B
Efficiency 効率
Cycle Number サイクル数

図8C
Capacity 容量
Cycle Number サイクル数
Efficiency 効率
average CE 平均CE

図8D
Voltage 電圧
Capacity 容量
1000th 1000回目
100th 100回目
1st 1回目

図9A
Capacity 容量
Cycle Number サイクル数
Efficiency 効率
average CE 平均CE
Charge 充電
Discharge 放電

図9B
Voltage 電圧
Capacity 容量
450th 450回目
100th 100回目
1st 1回目

図10
Capacity 容量
Cycle Number サイクル数
Efficiency 効率
Low rate 低レート

図11A
Capacity 容量
Cycle Number サイクル数
Efficiency 効率
average CE 平均CE

図11B
Voltage 電圧
Capacity 容量
500th 500回目
100th 100回目
1st 1回目

図12
Potential (V)vs Li/Li+ Li/Li+に対する電位(V)
Traditionalaqueous electrolyte 従来の水性電解質
super-concentrated 超濃厚
図1
図2
図3
図3-1】
図4
図5
図6
図7
図8
図8-1】
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】