(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-26
(54)【発明の名称】組織成長産物の調節及び促進における乳酸の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/19 20060101AFI20241219BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20241219BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241219BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241219BHJP
A61K 31/765 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K31/19
A61P17/00
A61P17/02
A61P19/00
A61P21/00
A61P25/00
A61K31/765
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024562216
(86)(22)【出願日】2022-07-26
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 CN2022108025
(87)【国際公開番号】W WO2023134146
(87)【国際公開日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202210028046.9
(32)【優先日】2022-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524261495
【氏名又は名称】長春聖博瑪生物材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】王晋岳
(72)【発明者】
【氏名】鄭茜
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA02
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA66
4C086MA67
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA07
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA86
4C206MA87
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA89
4C206ZA94
4C206ZA96
(57)【要約】
本発明は、生体組織の成長、再生、治癒を調節及び促進する乳酸またはポリ乳酸に関し、組織の損傷を予防・治療する新しい方法を提供するものであり、組織の損傷の修復に使用でき、組織または器官の欠陥の治療及び修復などの態様に広い応用の見通しを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の成長、再生または治癒を調節および/または促進するための製品の製造における乳酸およびその類似体の使用であって、前記組織がコラーゲンに富んだ組織から選択され、前記乳酸およびその類似体の用量は0.5mmol/L~80mmol/Lであることを特徴とする乳酸およびその類似体の使用。
【請求項2】
前記組織は、筋肉組織、結合組織、腱、筋膜、骨、軟骨、神経組織の少なくとも1つから選択され、
好ましくは、前記組織は、腱、軟骨、筋肉組織、結合組織、骨、神経組織の1つ以上から選択され、
前記乳酸およびその類似体は、L-乳酸分解性ポリマー、乳酸およびその関連乳酸塩、乳酸類化合物、および上記物質と他の化合物との複合物の1種以上から選択され、
好ましくは、前記製品は、医療用薬剤、キット、ヘルスケア製品、医療機器の1つ以上から選択され、
好ましくは、前記乳酸およびその類似体の用量は25mmol/L~75mmol/Lであることを特徴する請求項1に記載の使用。
【請求項3】
組織損傷の予防および/または治療のための医療用薬剤および/または医療機器の製造における乳酸およびその類似体の使用であって、前記組織損傷がコラーゲンに富んだ組織の損傷から選択され、
好ましくは、前記組織損傷は、筋肉組織、結合組織、腱、筋膜、骨、軟骨、神経組織の1つ以上の組織の損傷から選択され、
最も好ましくは、前記組織損傷は、腱、軟骨、筋肉組織、結合組織、骨、神経組織の1つ以上の組織の損傷から選択されることを特徴する乳酸およびその類似体の使用。
【請求項4】
前記乳酸およびその類似体は、L-乳酸分解性ポリマー、乳酸およびその関連乳酸塩、乳酸類化合物、および上記物質と他の化合物との複合物の1種以上から選択されることを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記医療用薬剤が、薬学的に許容される担体をさらに含むことを特徴とする請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
前記乳酸およびその類似体が有効成分とすることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記乳酸およびその類似体が唯一の有効成分とすることを特徴とする請求項3~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記乳酸およびその類似体が注射剤であることを特徴とする請求項3~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
乳酸およびその類似体の用量は25mmol/L~75mmol/Lであることを特徴とする請求項3~8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
組織および/または神経組織の成長、再生および/または治癒を調節および/または促進するための製品であって、前記製品は、乳酸およびその類似体ならびに許容可能な担体から製造され、前記組織は、請求項2に記載の意味を有し、好ましくは、前記乳酸およびその類似体は、L-乳酸分解性ポリマー、乳酸およびその関連乳酸塩、乳酸類化合物、および上記物質と他の化合物との複合物の1種以上から選択され、前記製品は、薬剤、キット、ヘルスケア製品、医療機器の1つ以上から選択されることを特徴とする製品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2022年1月11日に中華人民共和国国家知識産権局に出願された先行出願である特許出願番号CN202210028046.9(名称「組織成長産物の調節および促進における乳酸の使用」)の優先権を主張するものである。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、医療技術の分野に関し、特に、組織の成長、再生および治癒を調節および/または促進するための製品における乳酸の使用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
ポリ-L-乳酸(Poly-L-lactic acid,PLLA)は、1990年代から急速に開発された生分解性ポリマー材料で、乳酸をモノマーとして触媒重合によって生成される。PLLAは医療分野でより広く使用されており、単純なフィラー(ヒアルロン酸、カルシウムハイドロキシアパタイトなど)とは異なり、皮下コラーゲンの成長を刺激する合成真皮フィラーである。従来の常識では、PLLAは異物巨細胞反応を引き起こし、その結果コラーゲンが徐々に産生されると考えられている。そして、我々の研究では、PLLAの分解過程で、PLLAの分子構造が徐々に破壊され、ゆっくりと加水分解されて乳酸になり、これがヒト線維芽細胞を誘導してコラーゲン産生を増加させ、真皮内のコラーゲン線維を増加させ、フィラー修復効果を奏することを発見した。時間の経過とともに真皮が厚くなる。充填部位のPLLAは最終的に二酸化炭素と水に分解され、新生コラーゲンに置き換わり、長期的な美容効果をもたらす。
【0004】
しかしながら、PLLA、乳酸およびその関連乳酸塩化合物が軟骨、結合組織、腱、筋膜などの組織の修復に使用されることはまだ発見されていない。
【0005】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、乳酸およびその類似体の新たな用途を提供することである。本発明は、乳酸およびその類似体が、組織の再生、成長、治癒を調節及び促進し、組織を損傷する疾患の予防・治療に有効であることを見出した。
【0006】
本発明の目的の1つ目は、組織の成長を調節および/または促進する製品の製造における、乳酸およびその類似体の使用を提供することである。
【0007】
本発明の目的の2つ目は、組織の再生を調節および/または促進する製品の製造における、乳酸およびその類似体の使用を提供することである。
【0008】
本発明の目的の3つ目は、組織の治癒を促進する製品の製造における、乳酸およびその類似体の使用を提供することである。
【0009】
本発明の目的の4つ目は、組織の再生および/または治癒を調節および/または促進する製品の製造における、乳酸およびその類似体の使用を提供することである。
【0010】
本発明の好ましい技術的実施形態によれば、前記組織はコラーゲンに富む組織から選択され、より好ましくは、前記組織は筋肉組織、結合組織、腱、筋膜、骨、軟骨、神経組織の1つ以上から選択され、最も好ましくは、前記組織は筋線維組織、腱、軟骨、筋肉組織、結合組織、骨、神経組織の1つ以上から選択される。
【0011】
本発明によれば、前記乳酸およびその類似体は、L-乳酸分解性ポリマー、乳酸およびその関連乳酸塩、乳酸類化合物、および上記物質と他の化合物との複合物の1種以上から選択され、好ましくは乳酸である。
【0012】
本発明によれば、前記乳酸塩は乳酸の化学誘導体であり、乳酸が水素イオンを放出した後、正電荷を帯びた物質と結合して形成される塩を指し、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸リチウム、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸第一鉄、乳酸亜鉛、乳酸アルミニウム、キトサン乳酸塩、ハロフジノン乳酸塩、トリメトプリム乳酸塩、1-エチル-3-メチルイミダゾールL-(+)-乳酸塩、2-ヒドロキシエチル-トリメチルアンモニウムL-(+)-乳酸塩、L-乳酸テトラブチルアンモニウム塩などの1種以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
本発明によれば、前記製品は、薬剤、キット、ヘルスケア製品、医療機器の1つ以上から選択される。
【0014】
本発明の目的の5つ目は、組織損傷の予防および/または治療のための薬剤および/または医療機器の製造における乳酸およびその類似体の使用を提供することである。
【0015】
本発明の好ましい技術案によれば、前記組織損傷は、コラーゲンに富む組織の損傷から選択される。より好ましくは、前記組織損傷は、骨、軟骨、結合組織、腱、筋膜、神経組織の1つ以上の組織の損傷から選択され、最も好ましくは、前記組織損傷は、筋肉組織、腱、軟骨、神経組織の1つ以上の組織の損傷から選択される。
【0016】
本発明によれば、前記乳酸およびその類似体は、L-乳酸分解性ポリマー、乳酸およびその関連乳酸塩、乳酸類化合物、および上記物質と他の化合物との複合物の1種以上から選択され、好ましくは乳酸である。
【0017】
本願の好ましい実施例では、乳酸およびその類似体が有効成分として使用され、好ましくは、乳酸およびその関連類似体が唯一の有効成分として使用される。
【0018】
本発明によれば、前記乳酸およびその類似体は、細胞のコラーゲン分泌を促進し、細胞の活動にエネルギーを供給することができる。
【0019】
本発明の好ましい実施例において、前記乳酸およびその類似体は注射剤である。ここで、乳酸およびその類似体の用量は25mmol/L~75mmol/Lである。
【0020】
本発明の目的の6つ目は、組織および/または神経組織の成長、再生および/または治癒を調節および/または促進するための製品を提供することであり、前記製品は、乳酸およびその類似体ならびに許容可能な担体から製造され、前記組織は、上記の意味を有する。
【0021】
本発明によれば、前記乳酸およびその類似体は、L-乳酸分解性ポリマー、乳酸およびその関連乳酸塩、乳酸類化合物、および上記物質と他の化合物との複合物の1種以上から選択され、より好ましくは、乳酸である。
【0022】
本発明によれば、前記製品は、薬剤、キット、ヘルスケア製品、医療機器の1つ以上から選択される。
【0023】
〔発明の効果〕
本発明は、動物実験により、乳酸およびその類似体が、特にコラーゲンに富んだ組織の組織の成長、再生および治癒を有意に調節および促進することができ、組織損傷を予防および/または治療するための製品の製造に使用できることを見出し、幅広い薬効を有する。
【0024】
〔図面の簡単な説明〕
図1は25mmol/Lの乳酸溶液を動物に注射した際のその筋肉組織の再生能力への影響を示している。実験用マウスの右側が実験側(濃度が異なる乳酸溶液を注射)、左側が対照側(0.9%塩化ナトリウム注射液を注射)である。
【0025】
図2は、50mmol/L乳酸液を動物に注射した際の、その筋肉組織の再生能力への影響を示している。
【0026】
図3は、25mmol/L乳酸溶液を動物に注射した際の、その腱の成長への影響を示している。
【0027】
図4は、50mmol/L乳酸溶液を動物に注射した際の、その腱の成長への影響を示している。
【0028】
図5は、75mmol/L乳酸溶液を動物に注射した際の、その腱の成長への影響を示している。
【0029】
図6は、50mmol/L乳酸溶液を動物に注射した際の、その耳の軟骨の成長への影響を示している。
【0030】
【0031】
〔発明を実施するための形態〕
以下、具体的な実施例を参照しながら、本発明の技術案をさらに詳細に説明する。以下の実施例は、例示としてのみ本発明を説明するためのものであり、本発明の保護範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。本発明の上記記載に基づいて実施される技術はすべて、保護が意図される本発明の範囲に含まれる。
【0032】
1.実験プラン:
実験動物:体重23±4gの雄の実験用マウスを選び、10匹ずつの群に分けた。
【0033】
実験部位:マウスのさまざまな組織部位を選んで実験を行った。具体的には、筋肉が大腿直筋、腱がアキレス腱、軟骨が耳の軟骨組織である。
【0034】
実験群:(1)25mmol/L乳酸水溶液 (2)50mmol/L乳酸水溶液
(3)75mmol/L乳酸水溶液 (4)0.9%塩化ナトリウム注射液
実験操作:実験用マウスの右側が実験側(濃度が異なる乳酸溶液を注射)、左側が対照側(0.9%塩化ナトリウム注射液を注射)である。
【0035】
実験は、実験開始から1~7日目まで毎日、対応する実験液を実験側に0.1mlずつ単回注射し、各群3匹ずつを術後3日目、7日目、14日目に死亡させ、各マウスの実験側と対照側を選んで固定し、病理組織学的検査を行った。
【0036】
2.検出法:
1)観察のために組織を切り取り、組織を固定した後、シリウスレッドで染色し、注射液が各部位の組織に及ぼす影響を観察した。
【0037】
(2)実験側と対照側を無作為に選択して切片を作成し、各組織の直径を100倍の光学顕微鏡で測定し、実験側と対照側の平均値を以下の式で算出した。
【0038】
平均値=((1)番号動物3つ測定値+(2)番号動物3つ測定値+(3)番号動物3つ測定値)/9
両側の直径を比較し、乳酸溶液が各組織部位に及ぼす影響をSSPS21の算出結果で分析した。
【0039】
実施例1 乳酸が動物筋肉組織の再生能力に及ぼす影響
1.実験結果:
(1)25mmol/L乳酸溶液を動物に注射した際のその筋肉組織への影響
【0040】
【0041】
図1に示すように、25mmol/Lの乳酸水溶液を注射した群では、移植14日後に実験側の筋組織が著しく肥厚し、筋組織がしっかりと配列していることが確認されたことから、乳酸は組織の再生を促進する効果があることが示唆された。筋肉組織の値を100倍の光学顕微鏡下で測定し、その結果は表1に示す通りであった。すなわち、14日目において、実験検査データは実験側と対照側で有意差に達した(P<0.05)。
【0042】
(2)50mmol/L乳酸溶液を動物に注射した際のその筋肉組織への影響
【0043】
【0044】
図2に示すように、移植7日目に50mmol/L乳酸水溶液を注入した群では、実験側の筋組織の有意な肥厚が認められた。筋肉組織の値を100倍の光学顕微鏡下で測定し、その結果は表2に示す通りであった。実験側と対照側の実験データの差は、7日目で非常に有意であり(P<0.01)、14日目で有意差を示した(P<0.05)。
【0045】
2.結論
以上の実験結果から、乳酸溶液は動物の筋肉組織の再生に対して顕著な、あるいは非常に顕著な促進効果を有し、25mmol/Lの乳酸水溶液を注射した群の動物の筋肉組織の再生は有意なレベルに達する促進効果、50mmol/Lの乳酸水溶液を注射した群の動物の筋肉組織の再生は非常に有意なレベル(P<0.01)にさえ達する促進効果があることがわかった。
【0046】
実施例2 乳酸が動物の腱成長に及ぼす影響
1.実験結果:
(1)25mmol/L乳酸溶液を動物に注射した際のその腱組織への影響
【0047】
【0048】
図3に示すように、25mmol/L乳酸水溶液群では、注射3日後に実験側のアキレス腱が明らかに太くなり、アキレス腱の直径が増大したことが認められた。7日目の検査中に複数のアキレス腱の断裂が見つかり、測定ができなくなった。腱の値を100倍の光学顕微鏡下で測定し、その結果は表3に示されている。すなわち、アキレス腱は実験群では初期に急速に成長し、対照群と比較すると有意差に達した(P<0.05)。
【0049】
(2)50mmol/L乳酸溶液を動物に注射した際の腱組織への影響
【0050】
【0051】
図4に示すように、50mmol/L乳酸水溶液群では、注射14日後に実験側のアキレス腱が明らかに太くなり、アキレス腱の直径が増大したことが認められた。腱の値を100倍の光学顕微鏡下で測定し、その結果は表4に示されている。すなわち、注射14日後の実験群では、対照群と比較すると有意差に達した(P<0.05)。
【0052】
(3)75mmol/L乳酸溶液を動物に注射した際の腱組織への影響
【0053】
【0054】
図5に示すように、75mmol/L乳酸水溶液群では、3日目、7日目、21日目において、いずれも実験側の有意な肥厚とアキレス腱の直径の増大が認められた。腱の値を100倍の光学顕微鏡下で測定し、その結果は表5に示されている。すなわち、実験群、対照群ともに、3日目、7日目、21日目に有意差に達した(P<0.05)。
【0055】
2.結論
以上の結果から、乳酸溶液は腱の成長に顕著な促進作用があることがわかった。また、乳酸溶液の濃度が高くなるにつれて、腱の成長を促進する持続時間も延び、その効果も顕著である。
【0056】
実施例3 乳酸が動物の耳の軟骨組織に及ぼす影響
1.実験結果:
50mmol/Lの乳酸溶液を動物に注射した際のその耳の軟骨組織に及ぼす影響
【0057】
【0058】
図6に示すように、移植21日目に50mmol/L乳酸水溶液を注射した群では、実験側の耳軟骨断面の著しい肥厚が認められた。耳の軟骨の値を100倍の光学顕微鏡で測定し、結果を表6に示した。21日目の実験側の試験データと対照側の試験データの差は有意であった(P<0.05)。
【0059】
2.結論
以上の結果から、乳酸溶液は動物の耳の軟骨組織の成長も著しく促進することがわかった。
【0060】
実施例4 乳酸が動物の神経組織に及ぼす影響
1.実験プラン:
実験動物:体重23~4gの雄の実験用マウスを選び、10匹ずつ3群に分けた。
【0061】
実験部位:マウスの坐骨神経を選択した。
【0062】
実験群:(1)モデル群(坐骨神経のクランプ損傷)、(2)治療群(坐骨神経のクランプ損傷後、腹腔内注射で毎回0.1mLの50mmol/L乳酸水溶液を投与)(3)偽手術群(坐骨神経を単に解放するのみ)。
【0063】
実験操作:治療群は14日間連続投与し、モデル群と偽手術群には同量の0.9%塩化ナトリウム注射液を投与した。
【0064】
2.検出法:
(1)傷害後のマウスの坐骨神経機能の機能回復を追跡し、術後7日目と14日目にそれぞれ坐骨神経機能指数(SFI)で評価した。具体的には、マウスの両側後足にインクをつけ、チャンネル内に足跡を残し、実験マウスの足跡を左損傷側(E)、右正常側(N)で測定し、足跡の長さ(PL)、第1趾から第5趾までの距離(TS)、第2趾から第4趾までの距離(IT)を記録し、式に代入して算出し、正常値の場合をO、神経損傷後の場合をマイナス、完全機能喪失の場合を-100とした。式は以下の通りである。
【0065】
SFI=109.5(ETS-NTS)/NTS-38.3(EPL-NPL)/NPL+13.3(EIT-NIT)/NIT-8.8
(2) 術後3日目、7日目、14日目にそれぞれ損傷側の足趾の広がりの程度を記録し、広がりがない場合を0、完全に広がっている場合を3として、0~3のレベルで評価した。
【0066】
3.実験結果:
図7は坐骨神経機能指数の実験結果である。その結果、術後7日目のSFIスコアは、モデル群と治療群で偽手術群より有意に低かった。術後14日目では、治療群のSFIスコアが著しく高くなり、その差は統計学的に有意であった(P<0.01)。これは、乳酸溶液投与後の坐骨神経の機能回復がより良好であることを示している。表7の足趾拡大実験の結果から、治療群のスコアはモデル群よりも有意に高い傾向を示し、乳酸による治療がマウスの足趾拡大機能の改善に有効であることが示された。
【0067】
【0068】
2.結論
以上の結果から、乳酸溶液も動物の動物の坐骨神経の成長を著しく促進することがわかった。
【0069】
要約すると、本発明は動物実験により、乳酸溶液が動物の軟組織、骨組織、神経組織、特に筋肉、腱、軟骨組織、坐骨神経組織の成長と治癒を著しく促進し、組織損傷疾患を効果的に予防、治療、修復できることを実証した。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。本発明の主旨及び原則の範囲内でなされる任意の修正、等価置換、改良等は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1】
図1は25mmol/Lの乳酸溶液を動物に注射した際のその筋肉組織の再生能力への影響を示している。実験用マウスの右側が実験側(濃度が異なる乳酸溶液を注射)、左側が対照側(0.9%塩化ナトリウム注射液を注射)である。
【
図2】
図2は、50mmol/L乳酸液を動物に注射した際の、その筋肉組織の再生能力への影響を示している。
【
図3】
図3は、25mmol/L乳酸溶液を動物に注射した際の、その腱の成長への影響を示している。
【
図4】
図4は、50mmol/L乳酸溶液を動物に注射した際の、その腱の成長への影響を示している。
【
図5】
図5は、75mmol/L乳酸溶液を動物に注射した際の、その腱の成長への影響を示している。
【
図6】
図6は、50mmol/L乳酸溶液を動物に注射した際の、その耳の軟骨の成長への影響を示している。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織の成長、再生または治癒を調節および/または促進するための製品の製造における乳酸およびその類似体の使用であって、前記組織がコラーゲンに富んだ組織から選択され、前記乳酸およびその類似体の用量は0.5mmol/L~80mmol/Lであることを特徴とする乳酸およびその類似体の使用。
【請求項2】
前記組織は、筋肉組織、結合組織、腱、筋膜、骨、軟骨、神経組織の少なくとも1つから選択され、
好ましくは、前記組織は、腱、軟骨、筋肉組織、結合組織、骨、神経組織の1つ以上から選択され、
前記乳酸およびその類似体は、L-乳酸分解性ポリマー、乳酸およびその関連乳酸塩、乳酸類化合物、および上記物質と他の化合物との複合物の1種以上から選択され、
好ましくは、前記製品は、医療用薬剤、キット、ヘルスケア製品、医療機器の1つ以上から選択され、
好ましくは、前記乳酸およびその類似体の用量は25mmol/L~75mmol/Lであることを特徴する請求項1に記載の使用。
【請求項3】
組織損傷の予防および/または治療のための医療用薬剤および/または医療機器の製造における乳酸およびその類似体の使用であって、前記組織損傷がコラーゲンに富んだ組織の損傷から選択され、
好ましくは、前記組織損傷は、筋肉組織、結合組織、腱、筋膜、骨、軟骨、神経組織の1つ以上の組織の損傷から選択され、
最も好ましくは、前記組織損傷は、腱、軟骨、筋肉組織、結合組織、骨、神経組織の1つ以上の組織の損傷から選択されることを特徴する乳酸およびその類似体の使用。
【請求項4】
前記乳酸およびその類似体は、L-乳酸分解性ポリマー、乳酸およびその関連乳酸塩、乳酸類化合物、および上記物質と他の化合物との複合物の1種以上から選択されることを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記医療用薬剤が、薬学的に許容される担体をさらに含むことを特徴とする請求項3または4に記載の使用。
【請求項6】
前記乳酸およびその類似体が有効成分とすることを特徴とする請求項3
または4に記載の使用。
【請求項7】
前記乳酸およびその類似体が唯一の有効成分とすることを特徴とする請求項3
または4に記載の使用。
【請求項8】
前記乳酸およびその類似体が注射剤であることを特徴とする請求項3
または4に記載の使用。
【請求項9】
乳酸およびその類似体の用量は25mmol/L~75mmol/Lであることを特徴とする請求項3
または4に記載の使用。
【請求項10】
組織および/または神経組織の成長、再生および/または治癒を調節および/または促進するための製品であって、前記製品は、乳酸およびその類似体ならびに許容可能な担体から製造され、前記組織は、請求項2に記載の意味を有し、好ましくは、前記乳酸およびその類似体は、L-乳酸分解性ポリマー、乳酸およびその関連乳酸塩、乳酸類化合物、および上記物質と他の化合物との複合物の1種以上から選択され、前記製品は、薬剤、キット、ヘルスケア製品、医療機器の1つ以上から選択されることを特徴とする製品。
【国際調査報告】