(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-27
(54)【発明の名称】トウモロコシ茎葉を用いた高純度キシロース液及びセルロースの抽出方法
(51)【国際特許分類】
C13K 13/00 20060101AFI20241220BHJP
C07H 3/02 20060101ALI20241220BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20241220BHJP
D21C 3/02 20060101ALI20241220BHJP
D21C 3/04 20060101ALI20241220BHJP
D21B 1/06 20060101ALI20241220BHJP
【FI】
C13K13/00 101
C07H3/02
A23L5/00 N
D21C3/02
D21C3/04
D21B1/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024539678
(86)(22)【出願日】2023-05-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2023096365
(87)【国際公開番号】W WO2024119732
(87)【国際公開日】2024-06-13
(31)【優先権主張番号】202211575495.1
(32)【優先日】2022-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520401745
【氏名又は名称】浙江▲華▼康葯▲業▼股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG HUAKANG PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 勉
(72)【発明者】
【氏名】胡 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】厳 良聡
(72)【発明者】
【氏名】羅 家星
(72)【発明者】
【氏名】楊 武龍
(72)【発明者】
【氏名】徐 偉冬
(72)【発明者】
【氏名】呉 強
【テーマコード(参考)】
4B035
4C057
4L055
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LG01
4B035LG19
4B035LG26
4B035LG34
4B035LP01
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4L055AA05
4L055AB04
4L055AB07
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4L055BB02
4L055CA02
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4L055CB02
4L055EA13
4L055EA16
4L055EA20
4L055EA24
4L055EA25
4L055EA32
4L055FA22
(57)【要約】
本発明は、原料選別、原料前処理、アルカリ処理、酸加水分解、段階的なアルカリ処理のステップを含むトウモロコシ茎葉を用いた高純度キシロース液及びセルロースの抽出方法に関する。本発明は、勾配選択的精製法によってトウモロコシ茎葉から高純度のキシロース液及びセルロースを抽出するものであり、できる限り低いコストのプロセス処理により、トウモロコシ茎葉からのキシロースの抽出を最大限にする一方、茎葉残渣から高純度のセルロース生成物を分離して抽出する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウモロコシ茎葉を用いた高純度キシロース液及びセルロースの抽出方法であって、
原料選別:水分含有量が7%~13%のトウモロコシ茎葉原料を選択して使用するステップ1と、
原料前処理:まず、トウモロコシ茎葉を粉砕機で粒子の粒子径が60メッシュ~300メッシュの粉末状にし、次に、送風乾燥箱に入れて、45℃で22h~26h乾燥して、絶対乾燥粉末状トウモロコシ茎葉を得るステップ2と、
アルカリ処理:ステップ2で得られた絶対乾燥粉末状トウモロコシ茎葉をプロセス水と混合した後、30%濃アルカリ溶液で系中のNaOH濃度を0.1%~0.4%に調整し、85℃~125℃の温度で、アルカリ処理を1.2h~2.0h行い、その後、遠心分離して茎葉残渣及び遠心清液を得、茎葉残渣をキシロース抽出工程に供するステップ3と、
酸加水分解:ステップ3で得られた茎葉残渣と1.0%~2.5%の希H
2SO
4とを所定の割合で混合し、100℃~160℃で30min~120min酸分解し、その後、遠心分離して酸加水分解液及び酸加水分解茎葉渣を得、酸加水分解液を高純度キシロース液とし、酸加水分解茎葉渣をセルロース抽出工程に供するステップ4と、
段階的なアルカリ処理:ステップ4で得られた酸加水分解茎葉渣をプロセス水と混合した後、30%濃アルカリ溶液で系中のNaOH濃度を調整し、初期濃度を0.2%~1%、初期温度を60℃~90℃にして、その後、1hおきにアルカリ濃度を0.1%~0.5%、温度を10℃~20℃上昇して、4.0h~7.0h持続して前処理し、処理済みの材料を遠心分離し、固体の部分を水洗して、セルロース含有量の高い製品を得るステップ5と、を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップ1では、前記トウモロコシ茎葉原料の組成は、セルロース36%~41%、ヘミセルロース19%~24%、リグニンなど35%~45%を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシ茎葉を用いた高純度キシロース液及びセルロースの抽出方法。
【請求項3】
ステップ3では、絶対乾燥トウモロコシ茎葉100gをアルカリ処理して、セルロース36.98g、ヘミセルロース18.78g、リグニンなど27.64gを含む茎葉残渣83.40gを得る、ことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシ茎葉を用いた高純度キシロース液及びセルロースの抽出方法。
【請求項4】
ステップ4では、絶対乾燥トウモロコシ茎葉100gを酸加水分解して、酸加水分解茎葉渣53.11g及びキシロース加水分解液1.53Lを得、
酸加水分解茎葉渣にはセルロース34.32g、リグニンなど18.79gが含有され、キシロース加水分解液中のキシロースの濃度は11.84g/Lである、ことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシ茎葉を用いた高純度キシロース液及びセルロースの抽出方法。
【請求項5】
ステップ5では、絶対乾燥トウモロコシ茎葉100gに段階的なアルカリ処理を施して、高純度セルロース27.37gを得る、ことを特徴とする請求項1に記載のトウモロコシ茎葉を用いた高純度キシロース液及びセルロースの抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース製造の技術分野に属し、特にトウモロコシ茎葉を用いた高純度キシロース液及びセルロースの抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リグノセルロース原料は、農業残渣、林作物、産業残渣などを含むさまざまな供給源から得られる。トウモロコシ茎葉は、農業残渣の1種で、豊富で安価、安全かつ再生可能であるなどの特徴を有し、化石エネルギーの代替品として使用できる。茎葉バイオマス原料中のセルロース、ヘミセルロース、及びリグニンの3つの主な組成は、さまざまな形の高価値の化学物質に変換でき、環境問題を軽減し、経済的及び社会的発展を促進することができる。しかし、トウモロコシ茎葉に含まれるさまざまな組成は密接に繋がっており、さらに高価値化するための分離及び精製が困難であるため、現在、茎葉バイオマスのほとんどは直接焼却又は廃棄されている。原料の利用率を効果的に向上させるためには、適切な処理方法を設計することが非常に急務である。
【0003】
現在、茎葉の3つの組成の分離は、主に、農業廃棄物を酸性溶液又はキシラナーゼで直接処理し、ヘミセルロース組成を加水分解又は酵素加水分解してキシロースを得、次に残渣をセルラーゼで処理し、セルロースの酵素加水分解によるグルコース溶液を得、最後に、得られたグルコース溶液を発酵してエタノール製品にすることである。しかし、まだ解決されていない技術的課題も数多くある。
【0004】
課題1:トウモロコシ茎葉を酸加水分解して加水分解液を得る場合、加水分解液の組成が比較的複雑でキシロースの純度が低いため、その後のキシロースの精製に影響を及ぼす。
【0005】
課題2:トウモロコシ茎葉をキシラナーゼとセルラーゼで酵素加水分解してキシロースとグルコースを生産する場合、酵素のコストが高く、酵素加水分解プロセス中にトウモロコシ茎葉に含まれるリグニン成分が酵素タンパク質を吸着して、酵素加水分解プロセスを妨げる。
【0006】
課題3:酸加水分解により得られる廃棄物残渣はセルロース含有量が低く、価値が低い。
【0007】
現在酵素加水分解・発酵に使用されているセルロースを含む農業廃棄物残渣中のセルロース含有量はそれほど高くなく、例えば、特許公開第CN101696427A号では、アルカリ液を使用してトウモロコシ穂軸原料を前処理し、その後、ヘミセルラーゼで処理して、45%以上のヘミセルロースをキシロース溶液に変換し、同時にセルロースの含有量がわずか76.03%のセルロース残渣を得、セルロース残渣を市販のセルラーゼとアルコール活性乾燥酵母で発酵させて燃料用エタノールを生産するが、セルロース1g当たり得られるエタノールは0.522gであり、生産コストが高い。例えば、特許公開第CN103045677A号では、原料としてトウモロコシ穂軸を使用し、まず、アルカリで前処理し、次にアルカリ前処理残渣の酸加水分解を行ってペントースを抽出し、最後に、酸加水分解残渣を酵素加水分解してグルコース溶液を製造し、それを発酵させてエタノールを生産し、この特許で使用される酸加水分解残渣のセルロース含有量は、CN101696427A特許で使用されるセルロース残渣のセルロース含有量よりもさらに低く、すなわち、セルロース含有量は76.03%以下である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題は、勾配選択的精製法によってトウモロコシ茎葉から高純度のキシロース液及びセルロースを抽出するものであり、できる限り低いコストのプロセス処理の条件で、トウモロコシ茎葉から高純度のキシロースの抽出を最大限にする一方、茎葉残渣から高純度のセルロース生成物を分離して抽出する、トウモロコシ茎葉を用いた高純度キシロース液及びセルロースの抽出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下のように達成される。
【0010】
原料選別:水分含有量が7%~13%のトウモロコシ茎葉原料を選択して使用するステップ1と、
原料前処理:まず、トウモロコシ茎葉を粉砕機で粒子の粒子径が60メッシュ~300メッシュの粉末状にし、次に、送風乾燥箱に入れて、45℃で22h~26h乾燥して、絶対乾燥粉末状トウモロコシ茎葉を得るステップ2と、
アルカリ処理:ステップ2で得られた絶対乾燥粉末状トウモロコシ茎葉をプロセス水と混合した後、30%濃アルカリ溶液で系中のNaOH濃度を0.1%~0.4%に調整し、85℃~125℃の温度で、アルカリ処理を1.2h~2.0h行い、その後、遠心分離して茎葉残渣及び遠心清液を得、茎葉残渣をキシロース抽出工程に供給するステップ3と、
酸加水分解:ステップ3で得られた茎葉残渣と1.0%~2.5%の希H2SO4とを所定の割合で混合し、100℃~160℃で30min~120min酸分解し、その後、遠心分離して酸加水分解液及び酸加水分解茎葉渣を得、酸加水分解液を高純度キシロース液とし、酸加水分解茎葉渣をセルロース抽出工程に供するステップ4と、
段階的なアルカリ処理:ステップ4で得られた酸加水分解茎葉渣をプロセス水と混合した後、30%濃アルカリ溶液で系中のNaOH濃度を調整し、初期濃度を0.2%~1%、初期温度を60℃~90℃にして、その後、1hおきにアルカリ濃度を0.1%~0.5%、温度を10℃~20℃上昇して温度下、4.0h~7.0h持続して前処理し、処理済みの材料を遠心分離し、固体の部分を水洗し、セルロース含有量の高い製品を得るステップ5と、を含む、トウモロコシ茎葉を用いた高純度キシロース液及びセルロースの抽出方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
従来技術と比べて、本発明のトウモロコシ茎葉を用いた高純度キシロース液及びセルロースの抽出方法は、プロセスが簡単で、コストを削減させることに加えて、以下の特徴がある。
【0012】
1.トウモロコシ茎葉を0.1~0.4%の希アルカリで前処理し、トウモロコシ茎葉のヘミセルロース中のキシロース単位成分をほぼ保留しながら、トウモロコシ茎葉中の加水分解しやすいリグニン及び植物細胞壁中のコロイドなどの不純物を除去する。
【0013】
2.希アルカリ処理後のトウモロコシ茎葉を希酸加水分解に供し、トウモロコシ茎葉のヘミセルロース中のヘミセルロースを加水分解してキシロースにし(転化率77.4%)、また、清澄で不純物の少なくキシロースの分離が容易な加水分解液を得る。希アルカリによる処理も希酸による処理も1回しか行わず、多段処理を必要としないため、工程が簡素化され、使用される希アルカリの濃度はわずか0.1%(質量パーセント)であり、希硫酸の濃度は2.49%(質量パーセント)である。
【0014】
3.酸加水分解茎葉渣(セルロース含有量63.39%、ヘミセルロース含有量0%、リグニンなど36.61%)をさらにアルカリ処理し、アルカリの濃度及び温度(アルカリ)を段階的に増加し、酸加水分解茎葉渣中のリグニンなどの成分を除去し、茎葉渣中のセルロースの含有量を高め、最終的にアルカリ処理をして、セルロースの含有量が97.96%の高純度セルロース製品を得る。アルカリの濃度及び前処理温度を段階的に向上させる方法によって、比較的純粋なセルロース製品が得られる。本発明の方法は、以下の課題を解決する。
【0015】
1.現在、産業廃棄物からキシロースを抽出した後の残渣は、まだ燃料として直接燃焼されており、豊富なセルロース成分が有効に抽出・利用されず、資源の無駄となっている。
【0016】
2.トウモロコシ茎葉を酸加水分解してキシロースを抽出することにより得られるキシロース加水分解液は、純度が高くなく、不純物が多すぎるため、後で精製によりキシロース生成物を抽出することが困難である。
【0017】
3.現在、産業廃棄物からキシロースを抽出した後の残渣にはリグニンやその他の成分が含まれており、セルロース含有量は76.03%未満とそれほど高くない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明が解決しようとする技術的課題、技術的解決手段及び有利な効果をより明確にするために、以下、実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。ここで説明される特定の実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0019】
本発明のトウモロコシ茎葉を用いた高純度キシロース液及びセルロースの抽出方法の好ましい実施例は、以下のステップを含む。
【0020】
ステップ1
原料選別:水分含有量が7%~13%のトウモロコシ茎葉原料を選択して使用する。
【0021】
ステップ2
原料前処理:まず、トウモロコシ茎葉を粉砕機で粒子の粒子径が60メッシュ~300メッシュの粉末状にし、次に、送風乾燥箱に入れて、45℃で22h~26h乾燥して、絶対乾燥粉末状トウモロコシ茎葉を得る。
【0022】
ステップ3
アルカリ処理:ステップ2で得た絶対乾燥粉末状トウモロコシ茎葉とプロセス水とを所定の割合で混合した後、30%濃アルカリ溶液で系中のNaOH濃度を0.1%~0.4%に調整し、85℃~125℃の温度で、アルカリ処理を1.2h~2.0h行い、その後、遠心分離して茎葉残渣及び遠心清液を得、茎葉残渣をキシロース抽出工程に供給する。トウモロコシ茎葉100gが処理されると、残留固体が80.75g得られ、キシロースの損失率は5%以下であり、セルロースの損失率は4%以下である。
【0023】
ステップ4
酸加水分解:ステップ3で得られた茎葉残渣と1.0%~2.5%の希H2SO4とを所定の割合で混合し、100℃~160℃で30min~120min酸分解し、その後、遠心分離して酸加水分解液及び酸加水分解茎葉渣を得、酸加水分解液をキシロース抽出工程に供して、キシロースを製造する。酸加水分解液を高純度キシロース液とし、酸加水分解茎葉渣をセルロース抽出工程に供する。原料茎葉100gをステップ2、ステップ3、ステップ4に供した後、酸加水分解茎葉渣53.11g及びキシロース加水分解液1.53Lを得る。酸加水分解茎葉渣にはセルロース34.32g、リグニンなど18.79gが含有され、キシロース加水分解液中のキシロースは、濃度11.84g/L、純度74.14%である。
【0024】
ステップ5
段階的なアルカリ処理:ステップ4で得た酸加水分解茎葉渣とプロセス水とを所定の割合で混合した後、30%濃アルカリ溶液で系中のNaOH濃度を調整し、初期濃度を0.2%~1%、初期温度を60℃~90℃にして、その後、1hおきにアルカリ濃度を0.1%~0.5%、温度を10℃~20℃上昇して、4.0h~7.0h持続して前処理し、処理後の材料を遠心分離し、固体の部分を水洗して、セルロース含有量の高い製品を得る。絶対乾燥トウモロコシ茎葉100gあたり、高純度セルロース27.37g(97.49%)が得られる。
【0025】
具体的には、ステップ1では、前記トウモロコシ茎葉原料の組成は、セルロース36%~41%、ヘミセルロース19%~24%、リグニンなど35%~45%を含む。
【0026】
具体的には、ステップ3では、絶対乾燥トウモロコシ茎葉100gをアルカリ処理して、セルロース36.98g、ヘミセルロース18.78g、リグニンなど27.64gを含む茎葉残渣83.40gを得る。
【0027】
具体的には、ステップ4では、絶対乾燥トウモロコシ茎葉100gを酸加水分解して、酸加水分解茎葉渣53.11g及びキシロース加水分解液1.53Lを得る。酸加水分解茎葉渣にはセルロース34.32g、リグニンなど18.79gが含有され、キシロース加水分解液中のキシロースは、濃度11.84g/L、純度74.14%である。
【0028】
具体的には、ステップ5では、絶対乾燥トウモロコシ茎葉100gに段階的なアルカリ処理を施して、高純度セルロース27.37g(97.49%)を得ることができる。
【0029】
以下、具体的な実施例によって、本発明のトウモロコシ茎葉を用いた高純度キシロース液及びセルロースの抽出方法についてさらに説明する。
実施例1:アルカリ処理
【0030】
本実施例では、4因子3水準の応答曲面モデル最適化実験を設計し、合計29群の実験を行い、応答曲面モデルによる最適化により、3バッチ回の検証を行った結果、最適な実験群では、セルロース保持率は95.53%、ヘミセルロース保持率は91.57%、リグニンなどの除去率は32.22%である。アルカリ処理の最適な条件は、0.1%濃度NaOH溶液、1:6固液比、125℃で1.2h保温である。アルカリ処理の最適な条件での茎葉残渣の組成比は表1に示される。この最適な条件では、理論的に絶対乾燥トウモロコシ茎葉(セルロース約38.71g、ヘミセルロース約20.51g、リグニンなど約40.78g)100gをアルカリ処理すると、セルロース約36.98g、ヘミセルロース約18.78g、リグニンなど約27.64gを含む茎葉残渣83.40gが得られる。
【0031】
【0032】
実施例2:酸加水分解
本実施例では、合計29群の実験を行い、具体的な実験案及び実験結果を表3に示し、応答曲面モデルの最適化により、3バッチの検証を行った結果、最適実験群では、キシロース収率は84.51%、セルロース保持率は92.80%、ヘミセルロース保持率は0%、リグニンなどの除去率は32.01%である。酸加水分解の最適な条件は、2.49%濃度H2SO4溶液、1:12固液比、124.8℃で1.58h保温である。酸加水分解の最適な条件での酸加水分解茎葉渣の組成比は表2に示される。この最適な条件では、理論的に絶対乾燥トウモロコシ茎葉(セルロース約38.71g、ヘミセルロース約20.51g、リグニンなど約40.78g)100gに1回目の希アルカリ処理を施し、次に、希酸で加水分解して、セルロース約34.32g、リグニンなど約18.79gを含む酸加水分解茎葉渣53.11gを得る。
【0033】
【0034】
【0035】
実施例3:トウモロコシ茎葉を直接酸処理して得られたキシロース加水分解液とトウモロコシ茎葉にアルカリ処理-酸加水分解を施して得られたキシロース加水分解液との比較
実施例1~2で最適化された最適処理条件で加水分解して得られたキシロース加水分解液1と、直接酸処理により得られたキシロース加水分解液2とについて、キシロース純度の液相試験を行った結果、アルカリ処理-酸加水分解により得られたキシロース加水分解液1のキシロース純度は74.14%であり、一方、直接酸処理によるキシロース加水分解液2のキシロース純度はわずか62.16%である。
【0036】
実施例4:アルカリ-酸処理により得られた茎葉渣の更なる段階的なアルカリ処理による高純度セルロースの抽出
本実施例では、酸加水分解茎葉渣(セルロース含有量64.62%、ヘミセルロース含有量0%、リグニンなど35.38%)をさらにアルカリ処理し、酸加水分解茎葉渣中のリグニンなどの成分を除去し、茎葉渣中のセルロースの含有量を向上させる。
【0037】
(1)初期アルカリ使用量が酸加水分解茎葉渣中のセルロース含有量の向上に与える影響
前処理条件:酸加水分解茎葉渣と精製水との割合を1:8、初期反応温度を90℃として、1時間あたり温度を20℃上昇し、アルカリを0.5%加えて、反応時間を4hとし、アルカリNaOHの初期使用量が酸加水分解茎葉渣中のセルロースの含有量の向上に与える影響を調べた結果、初期アルカリ濃度の比率は(1)0.2%、(2)0.3%、(3)0.4%、(4)0.5%である。対応する結果を表4に示す。
【0038】
表4から分かるように、初期アルカリ濃度の比率が0.2%から0.4%に増加すると、残りの残渣中のセルロースの含有量はほぼ最大の89.97%に達し、このとき、セルロースの保持率は70.97%である。
【0039】
【0040】
(2)初期反応温度が酸加水分解茎葉渣中のセルロースの含有量の向上に与える影響
前処理条件:酸加水分解茎葉渣と水との割合を1:9、初期アルカリ濃度を0.4%として、1時間あたり温度を20℃上昇し、アルカリを0.5%加えて、反応時間を4hとし、初期温度が酸加水分解茎葉渣中のセルロースの含有量の向上に与える影響を調べ、反応温度は、それぞれ(1)60℃、(2)70℃、(3)80℃、(4)90℃である。対応する結果を表5に示す。
【0041】
表5から分かるように、反応温度が60℃から90℃に上昇すると、セルロースの含有量はほぼ上昇する傾向がある。初期反応温度が90℃である場合、残りの残渣中のセルロースの含有量は最大91.10%であり、このとき、セルロース保持率は66.83%である。
【0042】
【0043】
(3)反応時間が酸加水分解茎葉渣中のセルロースの含有量に与える影響
前処理条件:酸加水分解茎葉渣と精製水との割合を1:12、初期アルカリ濃度を0.4%、初期温度を90℃とし、1時間あたり温度を20℃上昇し、アルカリを0.5%加えて、反応時間が酸加水分解茎葉中のセルロースの含有量の向上に与える影響を調べ、反応時間は、それぞれ(1)4h、(2)5h、(3)6h、(4)7hである。対応する結果を表6に示す。
【0044】
表6から分かるように、反応時間が4hから6hに増加すると、セルロースの含有量はほぼ上昇する傾向がある。反応時間が6hである場合、酸加水分解茎葉渣中のセルロースの含有量は最大97.63%であり、このとき、セルロース保持率は66.23%である。
【0045】
【0046】
実施例5 トウモロコシ茎葉を原料とした高純度キシロース加水分解液及びセルロース製品の抽出(小規模)は、以下のステップを含む。
【0047】
ステップ11
原料選別:水分含有量が7%のトウモロコシ茎葉原料を選択して使用する。
【0048】
ステップ12
原料前処理:トウモロコシ茎葉を粉砕機で粉砕し、粒子の粒子径が60~300メッシュの部分をスクリーンで選別し、送風乾燥箱に入れて、45℃で22h乾燥し、水分を測定したところ、水分は0.5%以下である(絶対乾燥材料)。
【0049】
ステップ13
アルカリ処理:粉砕・乾燥されたトウモロコシ茎葉100gを計量し、プロセス水600gと混合し、30%濃NaOH溶液を加えて、系のNaOH濃度を0.1%に調整し、密閉ブルーキャップボトルに詰め、滅菌鍋に入れて、125℃に加熱して2h保温し、加熱終了後に冷却し、材料から固液相を遠心分離し、固体部分を清水1Lで洗浄して、さらに固液相を遠心分離し、2回洗浄し、固体部分について測定した結果、湿重量は333.6gである(乾量基準82.27g)。その乾量基準組成を測定した結果、セルロース約35.98g、ヘミセルロース約18.98g、リグニンなど約27.31gが含まれる。
【0050】
ステップ14
酸加水分解:ステップ3で得られた全部の固体に濃度2.5%のH2SO4溶液736gを加え、密閉ブルーキャップボトルに詰め、滅菌鍋に入れて、100℃に加熱して30min保温し、保温終了後に降温し、材料から固液相を遠心分離し、液体部分910gを得、液相試験を行ったところ、キシロースは、濃度12.56g/L、純度75.23%である。固体部分を清水1Lで洗浄して、さらに固液相を遠心分離し、2回洗浄し、湿重量183.78g(乾量基準52.01g)の固体部分を得た。組成を測定した結果、セルロースは34.77g、リグニンなどは17.24gである。
【0051】
ステップ15
段階的なアルカリ処理:ステップ4で得られた固体部分にプロセス水225gを加え、30%濃アルカリ溶液で系中のNaOH濃度を調整し、初期濃度を0.2%とし、密閉ブルーキャップボトルに詰め、砂浴鍋に入れて保温して加熱し、初期温度を60℃に設定して、1h加熱して保温し、ブルーキャップボトルに30%アルカリ液を加えて、系のアルカリ濃度を0.5%向上させ、10℃昇温し、このように、1hおきに、系のアルカリ濃度を0.5%向上させ、10℃に昇温し、合計4h反応させ、冷却して、サンプルから固液相を遠心分離し、固体部分を水1Lで3回洗浄し、次に、固体部分を65℃のオーブンで20hベークし、乾燥品27.19gを得、それについて試験した結果、セルロースの純度は96.93%である。
【0052】
実施例6 トウモロコシ茎葉を原料とした高純度キシロース加水分解液及びセルロース製品の抽出は、以下のステップを含む。
【0053】
ステップ21
原料選別:水分含有量が13%のトウモロコシ茎葉原料を選択して使用する。
【0054】
ステップ22
原料前処理:トウモロコシ茎葉を粉砕機で粉砕し、粒子の粒子径が60~300メッシュの部分をスクリーンで選別し、送風乾燥箱に入れて、45℃で26h乾燥し、水分を測定したところ、水分は0.5%以下である(絶対乾燥材料)。
【0055】
ステップ23
アルカリ処理:粉砕・乾燥されたトウモロコシ茎葉10kgを計量し、プロセス水60kgと混合し、30%濃NaOH溶液を加えて、系のNaOH濃度を0.4%に調整して、均一に混合し、圧力反応器(酸アルカリ耐性)に入れ、85℃に加熱して1.2h保温し、加熱終了後に冷却し、材料から固液相を遠心分離し、固体部分を清水50Lで洗浄し、さらに固液相を遠心分離し、2回洗浄し、湿重量33.5kg(乾量基準8.3kg)の固体部分を得、その乾量基準組成を測定した結果、セルロース約3.6kg、ヘミセルロース約1.9kg、リグニンなど約2.8kgが含まれる。
【0056】
ステップ24
酸加水分解:ステップ3で得られた全部の固体に濃度1.0%のH2SO4溶液74.5kgを加えて均一に混合し、圧力反応器(酸アルカリ耐性)に入れ、160℃に加熱して120min保温し、保温終了後に降温し、材料から固液相を遠心分離し、液体部分90.7kgを得、液相試験を行ったところ、キシロースは、濃度11.96g/L、純度73.23%である。固体部分を清水30Lで洗浄し、さらに固液相を遠心分離し、2回洗浄し、湿重量18.9kg(乾量基準5.6kg)の固体部分を得た。組成を測定した結果、セルロースは3.7kg、リグニンなどは1.8kgである。
【0057】
ステップ25
段階的なアルカリ処理:ステップ4で得られた固体部分にプロセス水23.1kgを加え、30%濃アルカリ溶液で系中のNaOH濃度を調整し、初期濃度を1%とし、均一に混合し、圧力反応器中(酸アルカリ耐性)に入れ、反応器をポンプ付き管路及び補充ボルトに連結して、30%のアルカリ液を補充する。初期温度を90℃に設定して、加熱して1h保温し、30%アルカリ液を加えて、系のアルカリ濃度を0.1%向上させ、20℃昇温し、このように、1hおきに、系のアルカリ濃度を0.1%向上させ、20℃昇温し、合計7h反応させ、冷却して、生成物から固液相を遠心分離し、固体部分を水30Lで3回洗浄し、次に、固体部分を65℃で20hベークし、乾燥品2.82kgを得、それについて試験した結果、セルロースの純度は95.73%である。
【0058】
実施例7 トウモロコシ茎葉を原料とした高純度キシロース加水分解液及びセルロース製品の抽出は、以下のステップを含む。
【0059】
ステップ31
原料選別:水分含有量が10%のトウモロコシ茎葉原料を選択して使用する。
【0060】
ステップ32
原料前処理:トウモロコシ茎葉を粉砕機で粉砕し、粒子の粒子径が60~300メッシュの部分をスクリーンで選別し、送風乾燥箱に入れて、45℃で25h乾燥し、水分を測定したところ、水分は0.5%以下である(絶対乾燥材料)。
【0061】
ステップ33
アルカリ処理:粉砕・乾燥されたトウモロコシ茎葉10kgを計量し、プロセス水70kgと混合し、30%濃NaOH溶液を加えて、系のNaOH濃度を0.4%に調整して、均一に混合し、圧力反応器(酸アルカリ耐性)に入れ、122℃に加熱して90min保温し、加熱終了後に冷却し、材料から固液相を遠心分離し、固体部分を清水50Lで洗浄し、さらに固液相を遠心分離し、2回洗浄し、湿重量31.5kg(乾量基準8.1kg)の固体部分を得、その乾量基準組成を測定した結果、セルロース約3.7kg、ヘミセルロース約1.9kg、リグニンなど約2.5gが含まれる。
【0062】
ステップ34
酸加水分解:ステップ3で得られた全部の固体に濃度1.6%のH2SO4溶液72.5kgを加えて、均一に混合し、圧力反応器(酸アルカリ耐性)に入れ、110℃に加熱して120min保温し、保温終了後に降温し、材料から固液相を遠心分離し、液体部分88.7kgを得、液相試験を行ったところ、キシロースは、濃度11.86g/L、純度74.28%である。固体部分を清水30Lで洗浄し、さらに固液相を遠心分離し、2回洗浄し、湿重量20.9kg(乾量基準6.4kg)の固体部分を得た。組成を測定した結果、セルロース3.8kg、ヘミセルロース0.3kg、リグニンなど2.3kgである。
【0063】
ステップ35
段階的なアルカリ処理:ステップ4で得られた固体部分にプロセス水28kgを加え、30%濃アルカリ溶液で系中のNaOH濃度を調整し、初期濃度を0.5%とし、均一に混合し、圧力反応器(酸アルカリ耐性)に入れ、反応器をポンプ付き管路及び補充ボルトに連結して、30%のアルカリ液を補充する。初期温度を80℃に設定して、加熱して1h保温し、30%アルカリ液を加えて、系のアルカリ濃度を0.3%向上させ、15℃昇温し、このように、1hおきに、系のアルカリ濃度を0.3%向上させ、15℃昇温し、合計6h反応させ、冷却して、生成物から固液相を遠心分離し、固体部分を水30Lで3回洗浄し、次に、固体部分を65℃で20hベークし、乾燥品2.42kgを得、それについて試験した結果、セルロースの純度は98.79%である。
【0064】
上記は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び原理の範囲内で行われたあらゆる修正、同等の置換、及び改良等は、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】