(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-06
(54)【発明の名称】配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法、装置、媒体及び機器
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20241223BHJP
H02J 3/12 20060101ALI20241223BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241223BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/12
H02J3/38 130
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558708
(86)(22)【出願日】2023-08-23
(85)【翻訳文提出日】2023-09-22
(86)【国際出願番号】 CN2023114494
(87)【国際公開番号】W WO2024109216
(87)【国際公開日】2024-05-30
(31)【優先権主張番号】202211468915.6
(32)【優先日】2022-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523362744
【氏名又は名称】国网山東省電力公司電力科学研究院
(71)【出願人】
【識別番号】519325072
【氏名又は名称】国家▲電▼网有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李立生
(72)【発明者】
【氏名】劉洋
(72)【発明者】
【氏名】于海東
(72)【発明者】
【氏名】張世棟
(72)【発明者】
【氏名】黄敏
(72)【発明者】
【氏名】由新紅
(72)【発明者】
【氏名】劉文彬
(72)【発明者】
【氏名】張鵬平
(72)【発明者】
【氏名】孫勇
(72)【発明者】
【氏名】李景華
(72)【発明者】
【氏名】王浩
(72)【発明者】
【氏名】李勇
(72)【発明者】
【氏名】李帥
(72)【発明者】
【氏名】文祥宇
(72)【発明者】
【氏名】黄鋭
(72)【発明者】
【氏名】劉明林
(72)【発明者】
【氏名】李建修
(72)【発明者】
【氏名】房牧
(72)【発明者】
【氏名】秦佳峰
(72)【発明者】
【氏名】張林利
(72)【発明者】
【氏名】劉合金
(72)【発明者】
【氏名】王峰
(72)【発明者】
【氏名】蘇国強
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AE04
5G066AE09
5G066DA08
5G066HA15
5G066HB03
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】
配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法、装置、媒体及び機器であって、そのうち、配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法は、配電網運行パラメータに応じて配電網に対してクラスタ区画を行うステップ(S110)と、エネルギー貯蔵設備により各クラスタ区画の電圧を調節し、エネルギー貯蔵設備がクラスタ区画の電圧を調節する最適化区画モデルを構築し、各エネルギー貯蔵設備が電圧調節して担当するノード範囲を得るステップ(S120)とを含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電網運行パラメータに応じて配電網に対してクラスタ区画を行うことと、
エネルギー貯蔵設備により各クラスタ区画の電圧を調節し、エネルギー貯蔵設備がクラスタ区画の電圧を調節する最適化区画モデルを構築し、各エネルギー貯蔵設備が電圧調節して担当するノード範囲を得ることと、を含む、
配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法。
【請求項2】
前記配電網運行パラメータは、トポロジ構造、線路パラメータ、負荷パラメータ及び分散型電源パラメータのうちの少なくとも1種類を含み、前記分散型電源は、太陽光発電装置を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記した、配電網のパラメータに応じて配電網に対してクラスタ区画を行うことは、
潮流計算により配電網における各ノードのノード電圧を含む潮流データを取得することと、
前記ノード電圧によりノード間の電圧感度を計算することと、
前記ノード間の電圧感度に応じて配電網におけるノードの間の電気的距離を計算することと、
得られた前記ノードの間の電気的距離に応じて配電網に対してクラスタ区画を行うことと、を含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記負荷パラメータは、負荷の1日の曲線を形成し、前記分散型電源パラメータは、太陽光発電出力の1日の曲線を形成し、前記潮流計算は、負荷の1日の曲線及び太陽光発電出力の1日の曲線を選出する、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ノード間の電圧感度は、2つのノードのうちの1つのノードの有効電力の注入量の変化量ともう1つのノードのノード電圧の変化量との間の関係であり、計算数式は、以下の通りであり、
そのうち、E
iは、ノードiの電圧であり、P
jは、ノードjの電力であり、∂E
i/∂P
jは、ノードjの単位電力の変化によるノードiの電圧の変化量を表し、U
Nは、配電網のノード定格電圧値であり、R
iは、ノードiとノードi-1との間の等価抵抗値であり、min(i、j)は、最小値関数であり、ノード間の電圧感度を計算する時に、累加する下限は、i=1に設定され、上限は、i、jのうちの最小値である、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記配電網におけるノードの間の電気的距離は、ユークリッド距離法を使用して計算され、計算数式は、以下の通りであり、
そのうち、d
ijは、ノードiとノードjとの間の電気的距離であり、S
ijは、感度行列における第i行第j列の要素であり、max
jS
ijは、感度行列における第j列の要素のうちの最大値であり、Nは、配電網におけるノード数である、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記した、配電網に対してクラスタ区画を行うことは、前記電気的距離の重みを基にしたモジュール性定義方法に応じて、前記配電網の各ノードの電気的結合度を記述し、前記配電網の全体モジュール性を指標にして配電網に対してクラスタ区画を行う、ことを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記した、配電網に対してクラスタ区画を行う計算数式は、以下の通りであり、
そのうち、ρは、システムのモジュール性であり、mは、ネットワークの辺重みの和であり、k
i及びk
jは、それぞれノードi及びノードjに繋がる辺の辺重みの和であり、δ(i、j)は、定義された弁別パラメータであり、ノードi及びノードjが1つの電圧区画内に位置すれば、δ(i、j)=1であり、他の場合、δ(i、j)=0である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記した、最適化区画モデルを構築する時に、全てのエネルギー貯蔵設備の電力利用量を最も低くするものを目標関数とし、目標関数は、以下の通りであり、
そのうち、N
essは、全てのエネルギー貯蔵設備の数であり、P
jは、ノードjに位置するエネルギー貯蔵設備の出力電力である、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記最適化区画モデルの制約は、01制約、ノード電圧制約及びエネルギー貯蔵設備出力電力制約のうちの少なくとも1種類を含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記01制約は、ノードが、エネルギー貯蔵設備が担当している区画に属するか否かを判断するものであり、表現式は、以下の通りであり、
そのうち、μ
i、jは、ノードiが、エネルギー貯蔵設備jが電圧調節を担当している区画に属するか否かを表し、μ
i、jの取り値は、0又は1であり、μ
i、jが1に等しい場合、ノードiが、エネルギー貯蔵設備jが担当している区画に属することを表し、μ
i、jが0に等しい場合、ノードiが、エネルギー貯蔵設備jが担当している区画に属しないことを表す、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ノード電圧制約の、各ノードの電圧がエネルギー貯蔵設備の調節により電圧の最小許容値よりも大きくなるべきであることを満たすための表現式は、以下の通りであり、
そのうち、U
iは、エネルギー貯蔵設備が電圧調節に参与する前のノードiの電圧であり、S
i、jは、ノードjに位置するエネルギー貯蔵設備の電力調節の、ノードiに対する電圧感度係数を表し、U
minは、許容される電圧最小値であり、
前記ノード電圧制約の、各ノードの電圧がエネルギー貯蔵設備の調節により電圧の最大許容値よりも小さくなるべきであることを満たすための表現式は、以下の通りであり、
数式では、U
maxは、許容される電圧最大値である、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記エネルギー貯蔵設備出力電力制約の方式は、エネルギー貯蔵設備の電圧調節に参与する時の出力電力が電力の最大許容値よりも小さいことを満たすべきものであり、表現式は、以下の通りであり、
そのうち、P
j、maxは、ノードjに位置するエネルギー貯蔵設備の出力電力の電力最大値である、
請求項10又は12に記載の方法。
【請求項14】
配電網における各ノードのノード電圧を取得し、電圧感度行列を構成し、配電網のクラスタ区画を得るように構成される計算ユニットと、
エネルギー貯蔵設備の充放電電力制約に応じて、エネルギー貯蔵設備の総充放電電力が最小となることを目標とし、エネルギー貯蔵設備がクラスタ区画の電圧を制御する最適化区画モデルを構築し、混合整数線形計画を採用して求解を行って各エネルギー貯蔵設備が電圧調節して担当するノード範囲を得るように構成されるモデル構築ユニットと、を備える、
配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化装置。
【請求項15】
プロセッサにより実行されると、請求項1~13のいずれか1項に記載の配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法におけるステップを実現するプログラムが記憶された、
コンピュータ記憶媒体。
【請求項16】
メモリ、プロセッサ及びメモリに記憶され且つプロセッサで運行可能なプログラムを備え、前記プロセッサが前記プログラムを実行すると、請求項1~13のいずれか1項に記載の配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法におけるステップを実現する、
コンピュータ機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2022年11月22日に中国専利局に提出された、出願番号が202211468915.6である中国特許出願の優先権を主張し、以上の出願の全ての内容は引用により本願に組み込まれている。
【0002】
本願は、電力システムの技術分野に関し、例えば配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法、装置、媒体及び機器に関する。
【背景技術】
【0003】
太陽光発電装置等の分散型電源が大規模に配電網にアクセスされるに伴い、配電網の電力のランダム性が増強し続け、配電網のノード電圧が限界を超えるリスクが増大している。
【0004】
太陽光発電装置等の大量の分散型電源が配電網にアクセスされる電圧が限界を超えるという問題を解決するために、配電網の枠組み構造を変えない前提で、解決する措置は主に、単一の太陽光発電装置がアクセスされる場合、アクセスポイントでのリアクトルの補償、太陽光発電系統連系用インバータの電圧制御の使用及びエネルギー貯蔵設備装置の取り付けが可能であり、複数の太陽光発電装置がアクセスされる場合、末端で補償するリアクトルの補償方式、マスタコントローラ及びインバータの結合の無効電力制御方式の使用及びエネルギー貯蔵設備装置の取り付けが可能である。負荷時電圧調節変圧器のタップを調節し、有効電力を制限し、無効電力調節装置、例えばキャパシタバンク及びリアクトルを取り付ける等の方式も、大量の太陽光発電装置がアクセスされる場合、配電網の電圧が限界を超えるという問題を解決することができる。そのうち、分散型エネルギー貯蔵設備システムは、柔軟で制御可能という特徴を有し、太陽光発電装置等の分散型電源の出力のランダムな変化による電圧が限界を超えるという問題を効果的に解決することができる。関連技術におけるエネルギー貯蔵設備の電圧調節方法は、電圧制御の素早さを上げるために、通常、電圧区画を行い、各エネルギー貯蔵設備が電圧制御を担当する領域を決定する必要がある。
【0005】
上記した、エネルギー貯蔵設備の電圧調節に対する電圧区画方法は、主に電気的距離に応じて複数の発電装置に対して区画を行っており、区画が合理的ではなく、配電網のノード電圧が限界を超えるリスクが依然として存在するため、配電網の運行に安全上のリスクが存在する。
【発明の概要】
【0006】
本願の実施例は、関連技術における区画が合理的ではなく、配電網の運行に安全上のリスクが依然として存在するという問題を解決する配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法を提供する。
【0007】
本願は、
配電網運行パラメータに応じて配電網に対してクラスタ区画を行うことと、
エネルギー貯蔵設備により各クラスタ区画の電圧を調節し、エネルギー貯蔵設備がクラスタ区画の電圧を調節する最適化区画モデルを構築し、各エネルギー貯蔵設備が電圧調節して担当するノード範囲を得ることと、を含む配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法を提供する。
【0008】
好ましくは、前記配電網運行パラメータは、トポロジ構造、線路パラメータ、負荷パラメータ及び分散型電源パラメータのうちの少なくとも1種類を含み、前記分散型電源は、太陽光発電装置を含む。
【0009】
好ましくは、前記した、配電網のパラメータに応じて配電網に対してクラスタ区画を行うことは、
潮流計算により配電網における各ノードのノード電圧を含む潮流データを取得することと、
前記ノード電圧によりノード間の電圧感度を計算することと、
前記ノード間の電圧感度に応じて配電網におけるノードの間の電気的距離を計算することと、
得られた前記ノードの間の電気的距離に応じて配電網に対してクラスタ区画を行うことと、を含む。
【0010】
好ましくは、前記負荷パラメータは、負荷の1日の曲線を形成し、分散型電源パラメータは、太陽光発電出力の1日の曲線を形成し、前記潮流計算は、負荷の1日の曲線及び太陽光発電出力の1日の曲線を選出する。
【0011】
好ましくは、前記ノード間の電圧感度は、2つのノードのうちの1つのノードの有効電力の注入量の変化量ともう1つのノードのノード電圧の変化量との間の関係であり、その計算数式は、以下の通りであり、
そのうち、E
iは、ノードiの電圧であり、P
jは、ノードjの電力であり、∂E
i/∂P
jは、ノードjの単位電力の変化によるノードiの電圧の変化量を表し、U
Nは、配電網のノード定格電圧値であり、R
iは、ノードiとノードi-1との間の等価抵抗値であり、min(i、j)は、最小値関数であり、ノード間の電圧感度を計算する時に、累加する下限は、i=1に設定され、上限は、i、jのうちの最小値である。
【0012】
好ましくは、前記配電網におけるノードの間の電気的距離は、ユークリッド距離法を使用して計算され、計算数式は、以下の通りであり、
そのうち、d
ijは、ノードiとノードjとの間の電気的距離であり、S
ijは、感度行列における第i行第j列の要素であり、max
jS
ijは、感度行列における第j列の要素のうちの最大値であり、Nは、配電網におけるノード数である。
【0013】
好ましくは、前記した、配電網に対してクラスタ区画を行うことは、前記電気的距離の重みを基にしたモジュール性定義方法に応じて、前記配電網の各ノードの電気的結合度を記述し、前記配電網の全体モジュール性を指標にして配電網に対してクラスタ区画を行う、ことを含む。
【0014】
好ましくは、前記した、配電網に対してクラスタ区画を行う計算数式は、以下の通りであり、
そのうち、ρは、システムのモジュール性であり、mは、ネットワークの辺重みの和であり、k
i及びk
jは、それぞれノードi及びノードjに繋がる辺の辺重みの和であり、δ(i、j)は、定義された弁別パラメータであり、ノードi及びノードjが1つの電圧区画内に位置すれば、δ(i、j)=1であり、他の場合、δ(i、j)=0である。
【0015】
好ましくは、前記した、最適化区画モデルを構築する時に、全てのエネルギー貯蔵設備の電力利用量を最も低くするものを目標関数とし、目標関数の表現式は、以下の通りであり、
そのうち、N
essは、全てのエネルギー貯蔵設備の数であり、P
jは、ノードjに位置するエネルギー貯蔵設備の出力電力である。
【0016】
好ましくは、前記最適化区画モデルの制約は、01制約、ノード電圧制約及びエネルギー貯蔵設備出力電力制約のうちの少なくとも1種類を含む。
【0017】
好ましくは、前記01制約は、ノードが、エネルギー貯蔵設備が担当している区画に属するか否かを判断するものであり、表現式は、以下の通りであり、
そのうち、μ
i、jは、ノードiが、エネルギー貯蔵設備jが電圧調節を担当している区画に属するか否かを表し、μ
i、jの取り値は、0又は1であり、μ
i、jが1に等しい場合、ノードiが、エネルギー貯蔵設備jが担当している区画に属することを表し、μ
i、jが0に等しい場合、ノードiが、エネルギー貯蔵設備jが担当している区画に属しないことを表す。
【0018】
好ましくは、前記ノード電圧制約は、各ノードの電圧がエネルギー貯蔵設備の調節により電圧の最小許容値よりも大きくなり且つ電圧の最大許容値よりも小さくなるべきであることを満たすものである。
【0019】
好ましくは、前記各ノードの電圧がエネルギー貯蔵設備の調節により電圧の最小許容値よりも大きくなるべき表現式は、以下の通りであり、
そのうち、U
iは、エネルギー貯蔵設備が電圧調節に参与する前のノードiの電圧であり、S
i、jは、ノードjに位置するエネルギー貯蔵設備の電力調節の、ノードiに対する電圧感度係数を表し、U
minは、許容される電圧最小値である。
【0020】
好ましくは、前記各ノードの電圧がエネルギー貯蔵設備の調節により電圧の最大許容値よりも小さくなるべき表現式は、以下の通りであり、
数式では、U
maxは、許容される電圧最大値である。
【0021】
好ましくは、前記エネルギー貯蔵設備出力電力制約の方式は、エネルギー貯蔵設備の電圧調節に参与する時の出力電力が電力の最大許容値よりも小さいことを満たすべきものであり、表現式は、以下の通りであり、
そのうち、P
j、maxは、ノードjに位置するエネルギー貯蔵設備の出力電力の電力最大値である。
【0022】
本願は、
配電網における各ノードのノード電圧を取得し、電圧感度行列を構成し、配電網のクラスタ区画を得るように構成される計算ユニットと、
エネルギー貯蔵設備の充放電電力制約に応じて、エネルギー貯蔵設備の総充放電電力が最小となることを目標とし、エネルギー貯蔵設備がクラスタ区画の電圧を制御する最適化区画モデルを構築し、混合整数線形計画を採用して求解を行って各エネルギー貯蔵設備が電圧調節して担当するノード範囲を得るように構成されるモデル構築ユニットと、を備える配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化装置を提供する。
【0023】
本願は、プロセッサにより実行されると、配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法におけるステップを実現するプログラムが記憶されたコンピュータ記憶媒体を提供する。
【0024】
本願は、メモリ、プロセッサ及びメモリに記憶され且つプロセッサで運行可能なプログラムを備えるコンピュータ機器を提供し、前記プロセッサが前記プログラムを実行すると、配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法におけるステップを実現する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】一例示的な実施例に係る配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法のフローの模式図である。
【
図1B】一実施例に係る配電網のトポロジ図である。
【
図2】一例示的な実施例に係る配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法の具体的なフローの模式図である。
【
図3】一例示的な実施例に係る配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化装置の構造模式図である。
【
図4】一例示的な実施例に係るコンピュータ機器の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の説明及び図面は、本稿の具体的な実施案を当業者がそれらを実践できるように示している。本稿において、用語「第1」、「第2」等は、1つの要素を他の要素から区別するためのものに過ぎず、これらの要素の間の何かの実際の関係や順序の存在を要求又は暗示するものではない。実際的に、第1要素は第2要素と呼ばれてもよく、逆も同様である。さらに、用語「含む」、「包含」又はそれらの何かの他の変形は、非排他的包含をカバーすることを意図し、これにより、一連の要素を含む構造、装置又は機器は、それらの要素を含むだけでなく、明確に挙げられていない他の要素も含み、若しくはこのような構造、装置又は機器に固有される要素も含む。さらなる制限がない場合、語句「1つの…を含むこと」で限定される要素は、前記要素を含む構造、装置又は機器にさらに他の同じ要素が存在することを排除するものではない。本稿における実施例は、漸進する方式を採用して説明し、各実施例において重点的に説明されるものは、いずれも他の実施例との相違点であり、実施例の間の同じ、類似する部分は互いに参照すればよい。
【0027】
本稿における用語「縦方向」、「横方向」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」「内」、「外」等によって指示される方位又は位置関係は、図面に示す方位又は位置関係に基づくものであり、本稿の説明を容易にして説明を簡略化するためのものに過ぎず、かかる装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成されて操作されなければならないことを指示又は暗示するものではないため、本願を制限するものとしては理解できない。本稿の説明において、別途規定及び限定がない限り、用語「取り付ける」、「繋がる」、「接続」は、広義に理解されるべきであり、例えば、機械的接続又は電気的接続であってもよいし、2つの素子の内部の連通であってもよく、直接繋がってもよいし、中間媒体を介して間接的に繋がってもよく、当業者であれば、上記用語の具体的な意味は、具体的な状況に応じて理解できる。
【0028】
本稿において、別途説明がない限り、用語「複数」は、2つ又は2つ以上を表す。
【0029】
本稿において、記号「/」は、前後の対象が「又は」という関係であることを表す。例えば、A/Bは、A又はBを表す。
【0030】
本稿において、用語「及び/又は」は、対象の関連を説明する関係であり、3つの関係が存在可能であることを表す。例えば、A及び/又はBは、A又はB、若しくは、A及びBを表す。
【0031】
矛盾しない場合、本願における実施例及び実施例における特徴は、互いに組み合わせてもよい。
【0032】
本願は、エネルギー貯蔵設備の容量及び最大充放電電力の影響を考慮し、エネルギー貯蔵設備の電圧調節における電圧区画の有効性及びシステムの安全な運行を実現した。
【0033】
図1Aを参照し、本実施例は、以下のステップを含む配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法を提供する。
【0034】
S110において、配電網運行パラメータに応じて配電網に対してクラスタ区画を行う。
【0035】
S120において、エネルギー貯蔵設備により各クラスタ区画の電圧を調節し、エネルギー貯蔵設備がクラスタ区画の電圧を調節する最適化区画モデルを構築し、各エネルギー貯蔵設備が電圧調節して担当するノード範囲を得る。
【0036】
図1Bを参照し、
図1Bは、配電網のトポロジ図を示しており、該配電網は、3つのクラスタ区画に分けられ、エネルギー貯蔵システム(Energy Storage System、ESS)、並びに黒色の塗りつぶし円で代表される配電網にアクセスされる電気使用設備及び太陽光発電所等の電気設備を含む。
【0037】
図2に関連して、1つの実施例において、配電網運行パラメータは、トポロジ構造、線路パラメータ、負荷パラメータ及び分散型電源パラメータのうちの1種類又は何種類を含み、分散型電源は、太陽光発電装置を含む。
【0038】
本実施例において、トポロジ構造は、配電網のトポロジ構造であり、線路パラメータとは、配電網における導線のパラメータ、例えば材質、横断面積、長さ及び標準温度での抵抗等のパラメータであり、負荷パラメータとは、配電網にアクセスされる電気使用設備のパラメータであり、有効電力及び無効電力を含み、分散型電源パラメータは、広い電圧入力範囲(電圧範囲、周波数範囲)、出力電圧及び出力電力を含む。
【0039】
1つの実施例において、配電網のパラメータに応じて配電網に対してクラスタ区画を行うことは、潮流計算により配電網における各ノードのノード電圧を含む潮流データを取得することと、ノード電圧によりノード間の電圧感度を計算することと、ノード間の電圧感度に応じて配電網におけるノードの間の電気的距離を計算することと、得られたノードの間の電気的距離に応じて配電網に対してクラスタ区画を行うことと、を含む。
【0040】
本実施例において、ノードとは、配電網にアクセスされる電気使用設備及び太陽光発電所等の電気設備である。
【0041】
1つの実施例において、負荷パラメータは、負荷の1日の曲線を形成し、分散型電源パラメータは、太陽光発電出力の1日の曲線を形成し、潮流計算は、負荷の1日の曲線及び太陽光発電出力の1日の曲線を選出する。
【0042】
1つの実施例において、ノード間の電圧感度は、2つのノードの間の有効電力の注入量の変化量とノード電圧の変化量との間の関係であり、計算数式は、以下の通りであり、
(1)
そのうち、E
iは、ノードiの電圧であり、P
jは、ノードjの電力であり、∂E
i/∂P
jは、ノードjの単位電力の変化によるノードiの電圧の変化量を表し、U
Nは、配電網のノード定格電圧値であり、R
iは、ノードiとノードi-1との間の等価抵抗値であり、min(i、j)は、最小値関数であり、ノード間の電圧感度を計算する時に、累加する下限は、i=1に設定され、上限は、i、jのうちの最小値である。
【0043】
2つのノードの間の有効電力の注入量の変化量とノード電圧の変化量との間の関係は、2つのノードのうちの1つのノードの有効電力の注入量の変化量ともう1つのノードのノード電圧の変化量との間の関係として理解できる。
【0044】
1つの実施例において、配電網におけるノードの間の電気的距離は、ユークリッド距離法を使用して計算され、計算数式は、以下の通りであり、
(2)
(3)
そのうち、d
ijは、ノードiとノードjとの間の電気的距離であり、S
ijは、感度行列における第i行第j列の要素であり、max
jS
ijは、感度行列における第j列の要素のうちの最大値であり、Nは、配電網におけるノード数であり、又は上記数式(2)、数式(3)は、以下のように変形することができ、
(23)
数式では、S
ikは、感度行列における第i行第k列の要素であり、S
jkは、感度行列における第j行第k列の要素であり、上記数式(2)、数式(3)におけるX
ik、X
jk、X
ijは、数式を簡素化するための符号であり、特別な物理的意味を持たない。
【0045】
1つの実施例において、配電網に対してクラスタ区画を行うことは、電気的距離の重みを基にしたモジュール性定義方法に応じて、配電網の各ノードの電気的結合度を記述し、配電網の全体モジュール性を指標にして配電網に対してクラスタ区画を行う、ことを含む。
【0046】
1つの実施例において、配電網に対してクラスタ区画を行う計算数式は、以下の通りであり、
(4)
(5)
そのうち、ρは、システムのモジュール性であり、mは、ネットワークの辺重みの和であり、k
i及びk
jは、それぞれノードi及びノードjに繋がる辺の辺重みの和であり、δ(i、j)は、定義された弁別パラメータであり、ノードi及びノードjが1つの電圧区画内に位置すれば、δ(i、j)=1であり、他の場合、δ(i、j)=0である。
【0047】
1つの実施例において、最適化区画モデルを構築する時に、全てのエネルギー貯蔵設備の電力利用量を最も低くするものを目標関数とし、目標関数の表現式は、以下の通りであり、
(6)
そのうち、N
essは、全てのエネルギー貯蔵設備の数であり、P
jは、ノードjに位置するエネルギー貯蔵設備の出力電力である。
【0048】
1つの実施例において、最適化区画モデルの制約は、01制約、ノード電圧制約及びエネルギー貯蔵設備出力電力制約のうちの1種類又は何種類を含む。
【0049】
1つの実施例において、01制約は、ノードが、エネルギー貯蔵設備が担当している区画に属するか否かを判断するものであり、表現式は、以下の通りであり、
(7)
そのうち、μ
i、jは、ノードiが、エネルギー貯蔵設備jが電圧調節を担当している区画に属するか否かを表し、μ
i、jの取り値は、0又は1であり、μ
i、jが1に等しい場合、ノードiが、エネルギー貯蔵設備jが担当している区画に属することを表し、μ
i、jが0に等しい場合、ノードiが、エネルギー貯蔵設備jが担当している区画に属しないことを表す。
【0050】
1つの実施例において、ノード電圧制約は、各ノードの電圧がエネルギー貯蔵設備の調節により電圧の最小許容値よりも大きくなり且つ電圧の最大許容値よりも小さくなるべきであることを満たすものである。
【0051】
1つの実施例において、各ノードの電圧がエネルギー貯蔵設備の調節により電圧の最小許容値よりも大きくなるべき表現式は、以下の通りであり、
(8)
そのうち、U
iは、エネルギー貯蔵設備が電圧調節に参与する前のノードiの電圧であり、S
i、jは、ノードjに位置するエネルギー貯蔵設備の電力調節の、ノードiに対する電圧感度係数を表し、U
minは、許容される電圧最小値である。
【0052】
1つの実施例において、各ノードの電圧がエネルギー貯蔵設備の調節により電圧の最大許容値よりも小さくなるべき表現式は、以下の通りであり、
(9)
数式では、U
maxは、許容される電圧最大値である。
【0053】
1つの実施例において、エネルギー貯蔵設備出力電力制約の方式は、エネルギー貯蔵設備の電圧調節に参与する時の出力電力が電力の最大許容値よりも小さいことを満たすべきものであり、表現式は、以下の通りであり、
(10)
そのうち、P
j、maxは、ノードjに位置するエネルギー貯蔵設備の出力電力の電力最大値である。
【0054】
本願の方法は、配電網のトポロジ構造、線路パラメータ、履歴負荷パラメータ及び分散型電源パラメータを読み込み、負荷の1日の曲線及び太陽光発電出力の1日の曲線を選出し、潮流計算を行い、ノード電圧等の潮流データを取得し、電圧感度行列を構成し、配電網に対してクラスタ区画を行い、ノード間の電圧感度に基づいてノード間の電気的距離を計算し、ノード間の電気的距離に応じてクラスタ区分を行い、エネルギー貯蔵設備により各区画の電圧を調節し、配電網のエネルギー貯蔵設備が各区画に対して電圧調節を行う時に、各エネルギー貯蔵設備の充放電電力制約を考慮し、エネルギー貯蔵設備の総充放電電力が最小となることを目標とし、エネルギー貯蔵設備の電圧区画制御の最適化区画モデルを構築し、混合整数線形計画(Mixed Integer Linear Programming、MILP)を採用して求解を行い、各エネルギー貯蔵設備が電圧調節して担当するノード範囲を得る、ことを含む。本願は、エネルギー貯蔵設備が区画で電圧調節する時に、エネルギー貯蔵設備の容量及び最大充放電電力を考慮し、エネルギー貯蔵設備の総充放電電力が最小となることを目標とし、エネルギー貯蔵設備の電圧区画制御の最適化区画モデルを構築し、混合整数線形計画を採用して求解を行い、各エネルギー貯蔵設備が電圧調節して担当するノード範囲を得ることを提案しており、エネルギー貯蔵設備の電圧調節における電圧区画の有効性を高め、システムの安全な運行を保証する。提案されたエネルギー貯蔵設備の電圧区画最適化方法は、各エネルギー貯蔵設備の充放電電力制約を考慮し、エネルギー貯蔵設備のトータルの充放電電力を減少し、システムの電圧レベルが合理的であることを保証すると同時に、エネルギー貯蔵設備の電圧調節のコストを低減させることができる。
【0055】
1つの実施例において、計算ユニット1及びモデル構築ユニット2を備える配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化装置を提供し、そのうち、計算ユニット1は、配電網における各ノードのノード電圧を取得し、電圧感度行列を構成し、配電網のクラスタ区画を得るように構成され、前記モデル構築ユニット2は、エネルギー貯蔵設備の充放電電力制約に応じて、エネルギー貯蔵設備の総充放電電力が最小となることを目標とし、エネルギー貯蔵設備がクラスタ区画の電圧を制御する最適化区画モデルを構築し、混合整数線形計画を採用して求解を行って各エネルギー貯蔵設備が電圧調節して担当するノード範囲を得るように構成される。
【0056】
図3に関連して、1つの実施例において、上記いずれかの実施例に開示された配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法におけるステップにより、配電網のエネルギー貯蔵設備の電圧調節区画の最適化制御を実現する配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化装置を提供する。
【0057】
1つの実施例において、プロセッサにより実行されると、上記いずれか1項の配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法の実施例におけるステップを実現するプログラムが記憶されたコンピュータ記憶媒体を提供する。
【0058】
1つの実施例において、メモリ、プロセッサ及びメモリに記憶され且つプロセッサで運行可能なプログラムを備えるコンピュータ機器を提供し、前記プロセッサが前記プログラムを実行すると、配電網エネルギー貯蔵電圧調節区画最適化方法におけるステップを実現する。
【0059】
1つの実施例において、コンピュータ機器を提供し、該コンピュータ機器は、サーバであってもよく、その内部の構造図は
図4に示すものであってもよい。該コンピュータ機器は、システムバスにより接続されるプロセッサ、メモリ及びネットワークインターフェースを備える。そのうち、該コンピュータ機器のプロセッサは、計算及び制御能力を提供するために用いられる。該コンピュータ機器のメモリは、不揮発性記憶媒体、内部メモリを含む。該不揮発性記憶媒体には、オペレーティングシステム、コンピュータプログラム及びデータベースが記憶されている。該内部メモリは、不揮発性記憶媒体におけるオペレーティングシステム及びコンピュータプログラムの運行のために環境を提供する。該コンピュータ機器のデータベースは、静的情報及び動的情報のデータを記憶するために用いられる。該コンピュータ機器のネットワークインターフェースは、外部の端末とネットワーク接続により通信するために用いられる。該コンピュータプログラムがプロセッサにより実行されると、上記方法の実施例におけるステップを実現する。
【0060】
1つの実施例において、コンピュータプログラムが記憶されたメモリ及びプロセッサを備えるコンピュータ機器をさらに提供し、該プロセッサがコンピュータプログラムを実行すると、上記方法の実施例におけるステップを実現する。
【0061】
1つの実施例において、プロセッサにより実行されると、上記方法の実施例におけるステップを実現するコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0062】
当業者であれば、上記実施例の方法における全部又は一部のフローの実現は、コンピュータプログラム命令に関連するハードウェアにより完成可能であり、コンピュータプログラムは、不揮発性コンピュータ読取り可能な記憶媒体に記憶可能であり、該コンピュータプログラムが実行されると、例えば上記方法を含む実施例のフローを実現可能である、ことを理解できる。本願に係る実施例に使用される、メモリ、記憶、データベース又は他の媒体に対する任意の引用はいずれも、不揮発性及び揮発性メモリのうちの少なくとも1種類を含んでもよい。不揮発性メモリは、リードオンリーメモリ(Read-Only Memory、ROM)、磁気テープ、フロッピーディスク、フラッシュメモリ又は光メモリ等を含んでもよい。揮発性メモリは、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory、RAM)又は外部キャッシュメモリを含んでもよい。規制ではなく説明として、RAMは、例えばスタティックランダムアクセスメモリ(Static Random Access Memory、SRAM)又はダイナミックランダムアクセスメモリ(Dynamic Random Access Memory、DRAM)等の様々な形式であってもよい。
【0063】
また、特定の順序を採用して複数の操作を説明したが、これは、これらの操作が示された特定の順序又は順位の順序で実行されることを要求しているものとして理解されるべきではない。一定の環境において、マルチタスク及び並行処理が有利である可能性がある。同様に、以上の論述には複数の具体的な実現詳細が含まれているが、これらは本願の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。単独の実施例の文脈で説明されるいくつかの特徴は、組み合わせて単一の実施例において実現されてもよい。単一の実施例の文脈で説明される複数の特徴は、単独又は任意の適切なサブ組合せの方式で複数の実施例において実現されてもよい。
【国際調査報告】