(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-08
(54)【発明の名称】燃料電池分離板用ステンレス鋼及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/021 20160101AFI20241225BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20241225BHJP
C22C 38/20 20060101ALI20241225BHJP
C22C 38/58 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
H01M8/021
C22C38/00 302Z
C22C38/20
C22C38/58
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536328
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 KR2022020356
(87)【国際公開番号】W WO2023121132
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0183089
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,クァンミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドンフン
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ボソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンヒ
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA12
5H126DD05
5H126GG08
5H126JJ03
5H126JJ05
(57)【要約】
【課題】燃料電池分離板素材として表面の微細な突起を形成して接触抵抗の低いステンレス鋼を提供する。
【解決手段】本発明は、燃料電池内のGDLと接触する金属材料の表面が10~100nmの間の微細突起の数が5個以上であり、透過電子顕微鏡で観察した断面を基準として、実際の表面長さ(real surface length)/突起のない見かけの表面長さ(apparent surface length)の比が1.15以上である燃料電池分離板用金属材料であって、表面の微細な突起を形成して接触抵抗が10mΩ・cm
2以下であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池内のGDLと接触する金属材料の表面が10~100nmの間の微細突起の数が5個以上であり、透過電子顕微鏡(TEM)で観察した断面を基準として、実際の表面長さ(real surface length)/突起のない見かけの表面長さ(apparent surface length)の比が1.15以上であることを特徴とする燃料電池分離板用金属材料。
【請求項2】
前記金属材料が重量%で、Cr:15~35%、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Si:0.4%以下、S:0.003%以下、Mn:0.2%以下、Cu:2%以下、残部のFe及びその他の不可避的な不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池分離板用金属材料。
【請求項3】
前記フェライト系ステンレス鋼が、Ti、Nb、及びVからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を合計で1.0%以下でさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池分離板用金属材料。
【請求項4】
前記金属材料が重量%で、Cr:15~30%、Ni:7~15%、C:0.09%以下、Si:2.5%以下、S:0.003%以下、Mn:3%以下、Mo:3%以下、N:0.3%以下、残部のFe及びその他の不可避的な不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池分離板用金属材料。
【請求項5】
前記オーステナイト系ステンレス鋼がTi、Nb、及びVからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を合計で1.0%以下でさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池分離板用金属材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池分離板用ステンレス鋼及びその製造方法に係り、より詳しくは、分離板の表面の形状を制御してGDL(Gas Diffusion Layer)との接触面積を増やして低い接触抵抗の確保が可能な燃料電池分離板用ステンレス鋼に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池スタック(Stack)は、電解質、電極とGDLを含むMEA(Membrane Electrode Assembly)と分離板からなるセルが積層されている形態である。したがって、分離板はGDLと接触しており、分離板/GDL界面で引き起こされる抵抗である接触抵抗によりセル及び燃料電池の性能を減少させる。
【0003】
このような分離板の接触抵抗は主に2つの影響を受ける。第一に、金属分離板の表面にある酸化物層である不動態皮膜である。不動態皮膜は高い耐食性を確保できる方法であるが、接触抵抗の側面からは非伝導性の酸化物層であるため、できるだけ薄い厚さを有することが好ましい。第二に、接触抵抗に影響を与えるのは、分離板とGDLの接触面積である。分離板とGDLはそれぞれ異なる表面粗さを有する物体であるため、接触している2つの物体間の実際の接触面積が接触抵抗に大きな影響を与える。分離板とGDLとの間の接触面積が大きいと接触抵抗が低く、接触面積が小さいと接触抵抗は高い傾向を示すため、分離板の表面形状がどのように変更されるかによって接触抵抗の減少効果が異なる。
【0004】
一般に、燃料電池スタック(Stack)は、電解質、電極とGDLを含むMEA(Membrane Electrode Assembly)と分離板からなるセルが積層される形態である。分離板はGDLと接触しており、分離板/GDL界面で引き起こされる抵抗は接触抵抗であり、セル及び燃料電池の性能を左右する。
【0005】
このような分離板の接触抵抗は主に2つの影響を受ける。第一は、金属分離板の表面に形成される酸化物層である不動態皮膜である。不動態皮膜は高い耐食性を確保できる方法であるが、接触抵抗の側面では非伝導性の酸化物層であるため、できるだけ薄い厚さを有することが好ましい。第二は、接触抵抗に影響を与えるのは、分離板とGDLの接触面積である。分離板とGDLはそれぞれ異なる表面粗さを有する物体であるため、接触している2つの物体間の実際の接触面積が接触抵抗に大きな影響を与える。分離板とGDLとの間の接触面積が大きいと接触抵抗が低くなり、接触面積が小さいと接触抵抗は高くなるため、分離板の表面形状がどのように形成されるかによって接触抵抗の減少効果が異なる。
【0006】
分離板素材の厚さは、数十~数百μm程度の極薄素材を使用しており、極薄素材は製造工程上、光輝焼鈍(Bright Annealing)を行うことになる。これにより、表面の凹凸がほとんどない光輝焼鈍された表面を有するようになり、このような素材をそのまま分離板として使用すると、GDLとの接触面積が小さく、接触抵抗が高くなるという問題がある。したがって、接触抵抗の減少のためには、分離板表面の形状を凹凸にしてGDLとの接触面積を広げる必要があり、このとき、表面形状は数十nm高さの微細な突起を有することが有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的とするところは、従来技術の限界と問題点に鑑み、燃料電池分離板素材として表面の微細な突起を形成して接触抵抗の低いステンレス鋼を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の燃料電池分離板用金属材料は、燃料電池内のGDLと接触する金属材料の表面が10~100nmの間の微細突起の数が5個以上であり、透過電子顕微鏡(TEM)で観察した断面を基準として、実際の表面長さ(real surface length)/突起のない見かけの表面長さ(apparent surface length)の比が1.15以上であることを特徴とする。
【0009】
本発明の燃料電池分離板用金属材料は、前記金属材料が重量%で、Cr:15~35%、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Si:0.4%以下、S:0.003%以下、Mn:0.2%以下、Cu:2%以下、残部のFe及びその他の不可避的な不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であることがよい。
【0010】
本発明のさらに他の燃料電池分離板用金属材料は、前記金属材料が重量%で、Cr:15~30%、Ni:7~15%、C:0.09%以下、Si:2.5%以下、S:0.003%以下、Mn:3%以下、Mo:3%以下、N:0.3%以下、残部のFe及びその他の不可避的な不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼であることがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、本発明の分離板製造方法によれば、燃料電池環境において高価なコーティング工程なしに低い接触抵抗を有する分離板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による、高さ10~100nm以下の微細な突起が5個以上であり、突起のない見かけの表面長さに対して実際の表面長さが15%以上長くなった燃料電池分離板の断面を透過電子顕微鏡で観察した図である。
【
図2】突起のない燃料電池分離板の断面を透過電子顕微鏡で観察した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施例による燃料電池分離板用金属材料は、燃料電池内のGDLと接触する金属材料の表面が10~100nmの間の微細突起の数が5個以上であり、透過電子顕微鏡(TEM)で観察した断面を基準として、実際の表面長さ(real surface length)/突起のない見かけの表面長さ(apparent surface length)の比が1.15以上であることがよい。
【0014】
光輝焼鈍されたステンレス鋼板の表面は、冷間圧延時にローリング方向に発生するマクロな圧延マークが発生する。このような圧延マークは、分離板素材とGDLとの接触面積を増加させるための表面形状としては、スケールが大きすぎる形状の粗さであるため、接触抵抗に大きな影響を及ぼすことができない。また、表面に均一に分布できないため、表面全体の接触面積にも大きな影響を及ぼすことができない。
【0015】
したがって、ステンレス鋼の表面に100nm以下の微細な突起を均一に分布させ、見かけの表面積に比べて実際の表面積が増えるようにして、GDLとの接触面積を増やして接触抵抗を減少させることができる。突起の高さが10nm未満と低すぎると、突起による表面積の増加に及ぼす影響が少なく、突起の高さが100nm超過と高すぎると、単位面積当たりの突起の個数が少なくなるため、表面積の増加に及ぼす影響が少なくなる。高さが10~100nmの間の微細な突起が表面に均一に生成されると、突起のない見かけの表面長さに比べて15%以上増加した実際の表面長さが形成されることができ、これはGDLとの接触面積の増加が可能になる。表面の一方向に15%以上実際の表面長さが長くなると、実際の接触面積は30%以上増加し、接触抵抗の減少が現れることがある。本発明において高さが10~100nmの間の微細な突起という意味は、GDLとの接触面積の増加に有効な突起が単位面積当たり多い個数で存在することを意味する。したがって、本発明の実施例による分離板は、接触抵抗値が10mΩ・cm2以下であることを特徴とする。
【0016】
以下、特に言及しない限り、単位は、重量%である。また、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0017】
〔フェライト系ステンレス鋼〕
本発明の一実施例による燃料電池分離板用金属材料は、前記金属材料が重量%で、Cr:15~35%、C:0.02%以下、N:0.02%以下、Si:0.4%以下、S:0.003%以下、Mn:0.2%以下、Cu:2%以下、残部のFe及びその他の不可避的な不純物からなるフェライト系ステンレス鋼であることがよい。
また、本発明の他の実施例によれば、燃料電池分離板用金属材料は、前記フェライト系ステンレス鋼がTi、Nb、及びVからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を合計で1.0%以下でさらに含むことがよい。
【0018】
C:0.02%以下
オーステナイト形成元素で、添加時に高温強度を向上させるが、過剰添加時にCrと反応してクロム炭化物を生成して耐食性を低下させるとともに、フェライト系鋼において延伸率と溶接性を低下させるので、できるだけ低い含量である0.02%以下であることが好ましい。
【0019】
N:0.02%以下
オーステナイト相を安定化させる元素で、Ni元素を代替する元素として強度と耐孔食性を向上させる利点はあるが、延伸率などの加工性が低下するという短所があるので、本発明では0.02%以下に制限する。
【0020】
Si:0.4%以下
高温耐酸化性を向上させ、ステンレス鋼において不動態皮膜を強化して耐食性を向上させる利点はあるが、過剰添加時に延伸率を低下させるので、0.4%以下に制限する。
【0021】
S:0.003%以下
微量の不純物元素で、結晶粒界に偏析して熱間圧延時に加工クラックを起こす主な元素であるため、できるだけ低い含量である0.003%以下に制限する。
【0022】
Mn:0.2%以下
窒素と同様にオーステナイト相安定化元素で、Niを代替する元素としてオーステナイト相を準安定化させてフェライト鋼で添加される場合、強度が増加して加工性が低下するので、0.2%以下に制限する。
【0023】
Cu:2%以下
オーステナイト相を安定化させる元素で、耐食性向上のために役立つが、過剰添加時に熱間加工性が低下することがあり、2%以下に制限する。
【0024】
Cr:15~35%
ステンレス鋼の酸化物の形成を促進する元素で、耐食性のためには15%以上のCr添加が必要であり、過剰に添加する場合、熱延時に緻密な酸化スケールの生成によりSticking欠陥が増加するという問題があり、Crの含量は35%を上限とする。
【0025】
Ti、Nb、V:合計で1.0%以下
鋼中のC及びNを炭窒化物で形成するのに有効な元素であるが、靭性を低下させるので、それぞれの組成の和を1.0%以下に制限する。
【0026】
〔オーステナイト系ステンレス鋼〕
本発明の一実施例による燃料電池分離板用金属材料は、前記金属材料が重量%で、Cr:15~30%、Ni:7~15%、C:0.09%以下、Si:2.5%以下、S:0.003%以下、Mn:3%以下、Mo:3%以下、N:0.3%以下、残部のFe及びその他の不可避的な不純物からなるオーステナイト系ステンレス鋼であることがよい。
また、本発明の他の実施例によれば、燃料電池分離板用金属材料は、前記オーステナイト系ステンレス鋼がTi、Nb、及びVからなる群から選ばれる少なくとも1種以上を合計で1.0%以下でさらに含むことがよい。
【0027】
C:0.09%以下
オーステナイト相を安定化させる元素で、オーステナイト系ステンレス鋼では必要な元素であり、添加時に高温強度を向上させるが、過剰添加時にCrと反応してクロム炭化物を生成して耐食性を低下させるとともに、フェライト系鋼で延伸率と溶接性を低下させるので、できるだけ低い含量である0.09%以下ン制御することが好ましい。
【0028】
N:0.3%以下
オーステナイト相を安定化させる元素で、Ni元素を代替する元素として強度と耐孔食性を向上させる利点はあるが、延伸率などの加工性を低下させるという短所があるので、本発明では0.3%以下に制限する。
【0029】
Si:2.5%以下
ステンレス鋼の耐食性を向上させる元素で、2.5%以上過剰含有した場合、延伸率の低下とSiO2酸化性介在物の形成で耐食性を低下させるので、2.5%以下に制限する。
【0030】
S:0.003%以下
微量の不純物元素で、結晶粒界に偏析して熱間圧延時に加工クラックを起こす主要元素であるため、できるだけ低い含量である0.003%以下に制限する。
【0031】
Mn:3%以下
窒素と同様にオーステナイト相安定化元素で、Niを代替する元素であるが、過剰添加時に耐食性が低下するので、3.0%以下に制限する。
【0032】
Mo:3%以下
ステンレス鋼の耐食性向上のために有効な元素であるが、過剰添加される場合、シグマ相の生成で耐食性及び脆性が発生することがあり、高価な元素であるため、3%以下に制限する。
【0033】
Cr:15~30%
ステンレス鋼の酸化物の形成を促進して耐食性を向上させる元素で、燃料電池環境での耐食性確保のためには15%以上でなければならず、過剰添加した場合、オーステナイト相の安定性のために高価なNi、耐食性を低下させるMn、加工性を低下させるNをさらに添加しなければならないので、15%~30%に制限する。
【0034】
Ni:7~15%
オーステナイト相安定化元素で、高価な元素のため、経済性を考慮して7~15%に制限する。
【0035】
Ti、Nb、V:合計で1.0%以下
鋼中のC及びNを炭窒化物で形成するのに有効な元素であるが、靭性を低下させるので、それぞれの組成の和を1.0%以下に制限する。
【0036】
(製造工程)
ステンレス鋼の表面形状を調節する方法は、下記工程を通じて製造されることがよい。
ステンレス鋼は、化学的方法または機械的方法で表面形状を調節することがよい。
化学的方法を用いると、ステンレス鋼を酸溶液に浸漬することによって表面形状を調節しうる。ステンレス鋼を浸漬する酸溶液は、塩酸または硫酸または硝酸またはフッ酸であることがよく、前記酸溶液のうち2つ以上の酸溶液を混合して使用してもよく、2つ以上の酸溶液に順次浸漬してもよい。
また、電解処理を行うことによってステンレス鋼の表面形状を調節してもよく、酸溶液の浸漬前・後に電解処理を行うことを含んでもよい。
【0037】
前記化学的方法を活用する場合、酸溶液の種類、温度、濃度などと浸漬時間と電解処理の印加電流によって表面形状が異なることがある。
例えば、酸溶液で40~60℃の5%~20%の硫酸を使用して、0.1~0.5A/cm2の電流密度で電解処理するか、または30秒~300秒間浸漬し、40℃~60℃の混酸(硝酸とフッ酸)に浸漬することによって接触抵抗に優れた表面形状を得ることができる。
【0038】
また、例えば、酸溶液として5~20%の塩酸または5%~20%のフッ酸を使用して、30秒~300秒間浸漬して接触抵抗に優れた表面形状を得ることができる。
また、前記化学的方法ではなく機械的な研磨によってもステンレス鋼の表面形状を調節してもよく、研磨時の研磨材の種類、太さ、形状、分布によって表面形状が異なってくる。
ただし、本明細書による表面形状は、上述した化学的ないし機械的な方法に限定されず、様々な条件及び方法によって導き出すことができる。
【0039】
以下、本発明を実施例を通じてより具体的に説明する。
下記実施例は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に本発明の思想を十分に伝達するために提示するものであり、本発明はここに提示した実施例のみに限定されるものではなく、他の形態として具現化されてもよい。
【0040】
(実施例)
表1は、フェライト系とオーステナイト系ステンレス鋼である比較例と発明例を含む全実施例の合金成分を示した。本発明に使用されたステンレス鋼は、冷間圧延段階で前記組成を有するステンレス鋼をZ-mill冷間圧延機を用いて冷延薄板を製造した後、熱処理段階で冷延薄板に光輝焼鈍熱処理を行った。
【0041】
【0042】
A鋼は、本発明によるフェライト系ステンレス鋼であり、B鋼は、本発明によるオーステナイト系ステンレス鋼に関する。本発明の比較例及び実施例では、フェライト系とオーステナイト系ステンレス鋼の表面形状を調節して接触抵抗と表面形状指標との関係を調査し、これを下記表2に記載した。
【0043】
【0044】
具体的に、表2は製造された冷延鋼板の表面分析結果と接触抵抗測定値を示した表であり、突起の平均高さ、10~100nmの間の突起数と実際の表面長さ/見かけの表面長さの鋼板断面を透過電子顕微鏡(TEM)を活用して測定した。接触抵抗に有効な表面突起は、数十nmの高さを有する微細な突起であるため、低い倍率の走査電子顕微鏡(SEM)で観察しにくく、100,000倍以上の高倍率の透過電子顕微鏡を使用して表2の値を測定し、各試片当たり10箇所を観察して、その平均値を示した。表2の界面接触抵抗の評価は、製造された素材を2枚準備した後、その間にガス拡散層として使用されるカーボンペーパー(SGL-10BA)を間に配置して接触圧力100N/cm2での界面接触抵抗を5回ずつ評価した後、平均値を導出した。
【0045】
表2を参照すると、本発明が限定する表面の微細突起を有する実施例1~7は、接触抵抗が10mΩ・cm2以下で優れていた。突起の平均高さは、接触抵抗と大きな相関関係を持たないが、10~100nmの間の微細突起の数が多くなるほど、接触抵抗が低くなる傾向を示した。また、表面に10~100nmの間の微細突起の数が多くなるほど、見かけの表面長さに比べて実際の表面長さが大きくなる傾向も見られた。これにより、分離板としてGDLとの実際の接触面積が増加して接触抵抗が減少したと考えられる。
【0046】
しかし、比較例1~9は、本発明が限定する10~100nmの間の微細突起の数がないか、または非常に少ない数を有する表面で、接触抵抗が10mΩ・cm2を超えた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明による分離板の製造方法によれば、燃料電池環境において高価なコーティング工程なしに低い接触抵抗を有する分離板を製造できるところ、産業上の利用可能性が認められる。
【国際調査報告】