(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-08
(54)【発明の名称】スペーサを含む熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28D 9/00 20060101AFI20241225BHJP
F28F 9/007 20060101ALI20241225BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
F28D9/00
F28F9/007
F28F3/08 311
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540016
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2022087109
(87)【国際公開番号】W WO2023126260
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524247020
【氏名又は名称】フィヴ クリオ
【氏名又は名称原語表記】FIVES CRYO
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】アヴル,ダヴィ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルト,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】レニエ,ティボー
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA01
3L103DD52
(57)【要約】
熱交換器(1)であって:-2つの端部区画(7)を含む複数の区画(4)が設けられた本体(3)であって、各区画(4)が、内部容積を画定し、その内部容積の中を流体が流れることができ、各区画(4)が、当該内部容積に出入りするために流体が通過する少なくとも1つの開口部(5)を備える、本体(3)と、-2つの隣接する区画(4)の間に配置され、内部容積を互いに分離する分離壁(6)と、-2つの端部区画(7)のそれぞれに配置され、当該端部区画(7)の内部端部容積を閉鎖するように意図された閉鎖壁(9)と、を備え、熱交換器(1)が、区画(4)の内部にかつ開口部(5)に沿って配置された複数のスペーサ(12)を備え、当該スペーサ(12)は、2つの隣接する分離壁(6)の間の距離(d)を維持することができ、及び/又は当該スペーサ(12)は、閉鎖壁(9)と当該閉鎖壁(9)に隣接する分離壁(6)との間の距離(d)を維持することができる、熱交換器(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(1)であって、
-2つの端部区画(7)を含む複数の区画(4)が設けられた本体(3)であって、各区画(4)は、流体が内部を流れることができる内部容積を画定し、各区画(4)は、前記内部容積に出入りするために流体が通過する少なくとも1つの開口部(5)を備える、本体(3)と、
-2つの隣接する区画(4)の間に配置され、前記内部容積を互いに分離する分離壁(6)と、
-前記少なくとも2つの端部区画(7)のそれぞれに配置され、前記少なくとも2つの端部区画(7)の内部端部容積を閉鎖するように意図された閉鎖壁(9)と、を備え、前記熱交換器(1)が、前記区画(4)の内側で前記開口部(5)に沿って配置された複数のスペーサ(12)を備え、前記スペーサ(12)が、2つの隣接する分離壁(6)間の距離(d)を維持することができ、及び/又は前記スペーサ(12)が、前記閉鎖壁(9)と前記閉鎖壁(9)に隣接する前記分離壁(6)との間の距離(d)を維持することができる、熱交換器(1)。
【請求項2】
前記熱交換器(1)が、前記流体を前記区画(4)に分配するための少なくとも1つのヘッド(10)を備え、前記スペーサ(12)が、前記分配ヘッド(10)の近傍に位置する、請求項1に記載の熱交換器(1)。
【請求項3】
前記スペーサ(12)が、実質的に前記本体(3)の一方の長手方向端部(13)に配置され、前記長手方向端部(13)が、前記分配ヘッド(10)と前記本体(3)との間の境界に位置する、請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記スペーサ(12)には、流体及び/又は粉末が前記スペーサ(12)を通過することを可能にする少なくとも1つの穿孔(14)が設けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項5】
前記スペーサ(12)が、分離壁(6)と接触するように意図された第1の面(15)と、別の分離壁(6)又は閉鎖壁(9)と接触するように意図された、前記第1の面(15)の反対側の第2の面(16)とを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項6】
単一の区画(4)において、前記スペーサ(12)は、並んで配置され、5~30センチメートルの距離(k)だけ離間される、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項7】
前記スペーサ(12)が、互いに隣接する少なくとも2つの区画(4)内に配置され、前記スペーサ(12)が、一方が他方の下に実質的に位置合わせされる、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項8】
前記スペーサ(12)が、前記熱交換器(1)の下端部及び上端部(8)に位置する前記少なくとも2つの端部区画(7)のそれぞれに配置され、前記スペーサ(12)が、前記端部区画(7)のそれぞれに隣接する区画(17)内に配置される、請求項7に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記スペーサ(12)が平行六面体の形状である、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項10】
前記スペーサが円筒形である、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項11】
前記スペーサが楕円形である、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【請求項12】
前記スペーサが、0.5~5、好ましくは0.8~2の長さ/幅比を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱交換器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の技術分野に属する。本発明は、より具体的には、物理/化学反応を開始するように設計された粉末が充填された板熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
ろう付け板熱交換器は、伝統的に、ガス分離及び液化のための極低温産業において、エネルギー及び石油化学部門において使用されている。
【0003】
主要なCO2排出量削減目標を伴うエネルギー移行の一環として、多くの国が新しいエネルギー源に対する関心の高まりを示している。これに関連して、ろう付け板熱交換器は、新しい工業規模のプロセスに適合されている。これは、水素移動度の発達に関連する水素液化プロセスの場合である。
【0004】
例えば、水素は、オルト水素状態よりもパラ水素状態において低温でより安定である。低温、特に液化温度では、オルト水素は自発的にパラ水素に変換する傾向があり、望ましくない熱を放出する。
【0005】
水素をその液体状態に保つために、2つの選択肢がある。第1の選択肢は、オルト水素のパラ水素への変換によって放出される熱を連続的に抽出することである。実際には、この技術は特にエネルギー集約的であり、工業規模では不経済であることが判明している。
【0006】
第2の選択肢は、オルト水素をパラ水素に変換することによってオルト水素を除去することである。冷却と組み合わされた発熱触媒反応は、大部分のオルト水素をパラ水素に変換する。次いで、オルト水素からパラ水素への自発的変換が低減される。
【0007】
この第2の選択肢は、本発明を適用することができる領域の1つである。
【0008】
ろう付け作業後に熱交換器に挿入される、しばしば粉末形態の触媒を使用するために、断面が当該熱交換器の断面と実質的に等しい大きな開口部を有する水素分配ヘッドを使用する必要がある。これは、交換器区画における均一な粉末分布を確実にする。
【0009】
これは、分配ヘッドが特に大きく、熱交換器に影響を及ぼすことを意味する。
【0010】
従来の熱交換器は、典型的には、密封分離壁によって互いに分離された区画を画定する長手方向バー及び端部バーを備える。
【0011】
断面が熱交換器の断面とほぼ等しい分配ヘッドの場合には、触媒収容区画内に端部バーが存在しないが、それは、端部バーが粉末形態の触媒の挿入を妨げるからである。しかしながら、端部バーが熱交換器の機械的強度及び溶接応力の分散に寄与するので、熱交換器の全体構造は弱められる。
【0012】
組立作業中、分配ヘッドは当該熱交換器に溶接される。溶接冷却、材料膨張、及び材料収縮は、熱交換器の主構造を変形させ得る機械的応力を引き起こし、その効率を低下させる。更なる欠点は、これらの変形が、熱交換器を粉末触媒で充填することをより困難にし、ユニットの性能に有害である触媒の不均一分布をもたらすことである。
【0013】
本発明は、これらの欠点に対処することを目的とする。
【発明の概要】
【0014】
この目的のために、熱交換器であって、
-2つの端部区画を含む複数の区画が設けられた本体であって、各区画は、流体が内部を流れることができる内部容積を画定し、各区画は、当該内部容積に出入りするために流体が通過する少なくとも1つの開口部を備える、本体と、
-2つの隣接する区画の間に配置され、内部容積を互いに分離する分離壁と、
-2つの端部区画のそれぞれに配置され、当該端部区画の内部端部容積を閉鎖するように意図された閉鎖壁と、を含み、
熱交換器は、区画の内側で開口部に沿って配置された複数のスペーサを備え、当該スペーサは、2つの隣接する分離壁の間の距離を維持することができ、及び/又は当該スペーサは、閉鎖壁と当該閉鎖壁に隣接する分離壁との間の距離を維持することができる。
【0015】
このような熱交換器は、交換器構造が溶接部の冷却に固有の機械的応力を吸収することを可能にする。これにより、粉末を充填することがより容易になる。
【0016】
様々な追加の特徴を単独で又は組み合わせて提供することができる。
【0017】
-熱交換器は、流体を区画に分配するための少なくとも1つのヘッドを備え、スペーサは、当該分配ヘッドの近傍に配置され、
-スペーサは、実質的に本体の一方の長手方向端部に配置され、当該長手方向端部は、分配器ヘッドと本体との間の境界に位置し、
-スペーサには、流体及び/又は粉末が通過することを可能にする少なくとも1つの穿孔が設けられ、
-スペーサは、分離壁と接触するように設計された第1の面と、別の分離壁又は閉鎖壁と接触するように設計された、第1の面の反対側の第2の面とを備え、
-同じ区画内で、スペーサが並んで配置され、5~30センチメートルの間の距離だけ離間され、
-スペーサが、互いに隣接する少なくとも2つの区画内に配置され、当該スペーサは、一方が他方の下に実質的に位置合わせされ、
-スペーサは、当該熱交換器の下端部及び上端部に位置する当該少なくとも2つの端部区画のそれぞれに配置され、スペーサは、当該端部区画のそれぞれに隣接する区画に配置され、
-スペーサは、0.5~5、好ましくは0.8~2の長さ/幅比を有し、
-スペーサは平行六面体形状であり、
-スペーサは円筒形であり、
-スペーサは楕円形である。
【0018】
本出願において、スペーサの長さは、区画内の流体流の方向で画定され、幅は、区画内の流体流の方向に垂直に画定される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照して理解できる以下の詳細な説明から、明らかになるであろう。
【
図1】本発明による熱交換器の一部の概略斜視図である。
【
図2】本発明に係るスペーサを備える熱交換器の断面の概略図である。
【
図3】[
図2]からのスペーサの第1の概略図である。
【
図4】[
図2]からのスペーサの第2の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[
図1]は、本発明による熱交換器1を示す。まず、熱交換器1の最大寸法に対応する熱交換器1の長さに沿って延びる長手方向軸Xが画定される。第2に、長手方向軸Xに実質的に垂直であり、熱交換器1の幅に沿って延びる第1の横方向軸Yが画定される。X軸及びY軸は平面XYを形成する。最後に、X軸及びY軸に実質的に垂直であり、熱交換器1の高さに沿って延びる第3の横軸Zが画定される。Z軸はX軸と共に平面ZXを形成し、Y軸と共に平面ZYを形成する。
【0021】
熱交換器1は、流体が循環することができる内部容積を画定する区画4が設けられた本体3を共に画定するいくつかの長手方向バー2を備える。各区画4は、長手方向バー2によってY軸に沿って横方向に境界付けられている。区画4は互いに隣接している。換言すれば、区画4は、Z軸に沿って上下に並置されている。
【0022】
各区画は、流体が内部容積に出入りすることができる開口部5を有する。
【0023】
熱交換器1は分離壁6を有する。各区画4の間には分離壁6が位置している。分離壁6は、区画4、したがって対応する内部容積を、Z軸に沿って互いに分離する。
【0024】
Z軸に沿った熱交換器1の両側において、熱交換器は、下端部7及び上端部7に位置する端部区画6を備える。閉鎖壁9は、各端部区画7に配置され、したがって、内部端部容積を閉鎖し、そうすることで、熱交換器1を閉鎖する。
【0025】
[
図1]に示すように、熱交換器1は、熱交換器1の入口11に位置する流体分配ヘッド10を備える。分配ヘッド10は、ZY平面において、熱交換器1の本体3の断面と実質的に等しい断面を有する。
【0026】
このように分配ヘッド10によって分配された流体は、Z軸に沿って配置されたアクセス可能な区画4に分配される。
【0027】
熱交換器1は、分配ヘッド10に対向して配置された収集ヘッド(図示せず)を更に備える。収集ヘッドは、熱交換器1から出る流体を収集する。
【0028】
分配ヘッド10は、溶接によって本体3に取り付けられる。溶接が完了すると、溶接金属の冷却により、本体3上に機械的応力が生じる。これらの機械的応力は、一般に「材料収縮」と呼ばれる。
【0029】
有利には、熱交換器1は、複数のスペーサ12を備える。[
図2]に見られるように、スペーサ12は区画4の内側に配置される。スペーサ12は、開口部5に沿って配置される。スペーサ12は、当該スペーサ12が2つの分離壁6の間に配置されるとき、2つの隣接する分離壁6の間の距離dを維持する。スペーサ12が分離壁6と閉鎖壁9との間に配置されるとき、当該スペーサ12は、当該分離壁6と当該閉鎖壁9との間の距離dを維持する。
【0030】
このように配置されたスペーサ12は、分配ヘッド10又は収集ヘッド10に対する溶接作業による材料収縮の結果としての区画4の変形を防止する。開口5が変形しないので、区画4に触媒粉末を充填する作業が可能であり、容易である。更に、スペーサ12は、流体が容易に通過することができない区画4の形成を防止する。これは、変形した区画は、流体がアクセスすることがより困難であるからである。これは、流体のための優先的な通路を形成し、熱交換器1における流体分布の均一性を破壊する。
【0031】
有利には、スペーサ12は、分配ヘッド10及び収集ヘッド(図示せず)の近傍に配置される。区画4を変形させそうな機械的応力が存在するのは、分配ヘッド10及び収集ヘッドの近傍である。そこに配置されたスペーサ12は、区画4の変形を有利に防止する。
【0032】
有利には、スペーサ12は、本体3のX軸に沿った長手方向端部13に配置される。長手方向端部13は、一方の分配ヘッド10又は収集ヘッド10と他方の本体3との間の境界に位置する。変形の危険性が最も大きいのは、本体の長手方向端部13である。このように配置されたスペーサ12は、有利には、粉末形態の触媒が挿入される本体3の長手方向端部13の変形を防止する。これは充填を容易にする。
【0033】
有利には、スペーサ12には穿孔14が設けられる。スペーサ12は、流体及び/又は触媒粉末の通過に対する障害物となる。穿孔14は、流体及び/又は触媒粉末が通過することを可能にするようなサイズである。これは、流体の流れ及び/又は触媒粉末の充填に対するスペーサ12の影響を低減する。
【0034】
有利には、スペーサ12は、0.5~5、好ましくは0.8~2の長さL/幅1の比を有する。特に、比が高いほど、通路内の流れに対するスペーサの影響がより制限される。また、各スペーサは、X軸に沿って画定される長さ、Y軸に沿って画定される幅、及びZ軸に沿って画定される高さによって画定されることに留意されたい([
図4]参照)。
【0035】
[
図2]に示す一実施形態によれば、スペーサ12は、直方体形状を有する。このようにして、各スペーサ12は、第1の分離壁6と接触する第1の面15と、第1の分離壁6に隣接する第2の分離壁6又は閉鎖壁9と接触する第2の面16とを有する。したがって、スペーサ12は、2つの分離壁6の間、又は分離壁6と閉鎖壁9との間でZ軸に沿って測定された距離dに実質的に等しい、Z軸に沿って測定された高さhを有する。このようにサイズ決めされたスペーサ12は、溶接作業の終わりに距離dを維持することを可能にする。
【0036】
所与の区画において、スペーサ12は、並んで配置され、Y軸に沿って測定される5~30センチメートルの間の距離kだけ離間される。
【0037】
図2を参照すると、スペーサ12は、閉鎖壁9の下に位置する端部区画7内に配置される。端部区画7は、Z軸に沿って、下端部8及び上端部8に位置する。スペーサ12は、端部区画7に隣接する区画17内に配置される。本出願人は、本体3が変形するのを防止するために、少なくとも2つの隣接する区画にスペーサ12を配置することが効果的であると判断した。スペーサを端部区画7及び隣接区画17に配置することによって、これらの区画が溶接部に近接しているために最も高い機械的応力を集中させるので、変形が回避される。
【0038】
有利には、スペーサ12は、一方が他方の下に配置され、すなわち[
図2]に示すようにZ軸に沿って位置合わせされる。このようにスペーサ12を重ね合わせることによって、分離壁6を挟むことが回避され、それによって分離壁6が波打つことになる。スペーサ12の互い違いの配置は、分離壁6の挟み込み、したがって望ましくない波形をもたらす。
【0039】
図示されていない実施形態では、スペーサは円筒形である。スペーサの各平坦面は閉鎖壁又は分離壁と接触し、円形面は流体又は触媒粉末と接触する。この形状のスペーサは、粉末又は流体の流れを容易にするので、有利である。
【0040】
図示されない別の実施形態では、スペーサは楕円形である。スペーサの各平坦面は、閉鎖壁又は分離壁と接触しており、楕円面は、流体又は触媒粉末と接触している。この航空機翼形状のスペーサは、粉末又は流体の流れを容易にするので有利である。
【国際調査報告】