(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】銅の分布パターンを利用してペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)による汚染物質の分解経路を変化させる方法、及び複合触媒の調製方法と応用
(51)【国際特許分類】
B01J 23/72 20060101AFI20241226BHJP
C02F 1/72 20230101ALI20241226BHJP
【FI】
B01J23/72 M
C02F1/72 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023566583
(86)(22)【出願日】2023-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 CN2023077532
(87)【国際公開番号】W WO2024103556
(87)【国際公開日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】202211441664.2
(32)【優先日】2022-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523095211
【氏名又は名称】天津大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】李寧
(72)【発明者】
【氏名】陳冠益
(72)【発明者】
【氏名】代浩汐
(72)【発明者】
【氏名】何夢▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】顔▲ベイ▼▲ベイ▼
(72)【発明者】
【氏名】程占軍
【テーマコード(参考)】
4D050
4G169
【Fターム(参考)】
4D050AA02
4D050AA06
4D050AA12
4D050AB17
4D050AB18
4D050BB13
4D050BC04
4G169AA03
4G169AA08
4G169BB15A
4G169BB15B
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BD04A
4G169BD04B
4G169CA05
4G169CA10
4G169DA05
4G169EA01Y
4G169FA02
4G169FB03
(57)【要約】
本発明は、銅の分布パターンを利用してペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)による汚染物質の分解経路を変化させる方法、及び複合触媒の調製方法とその応用を提供するものであり、多機能水処理浄化材料の技術分野に属する。 本発明では、Ti
3C
2-MXeneを成膜担体として用い、窒素をキャリアガスとして用い、ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino―2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体とジエチル亜鉛前駆体を交互に成膜担体にパルス照射し、異なる成膜サイクル下で異なる銅分布モードを有するCu-MXene複合触媒を得る。本発明では、調製プロセスのパラメーターを同時に調節し、銅の分布パターンを変え、触媒の活性サイトを調節し、ペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)活性化経路と生成する活性種の種類を変えることにより、スルファニルアミド(Sulfanilamide)分解経路と中間生成物の毒性をコントロールする。原子層堆積技術による金属担持は、均一な堆積を達成し、触媒組成と分散を正確に制御し、触媒の触媒活性を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅の分布パターンを用いてペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)による汚染物質の分解経路を変化させる方法で、
銅の分布パターンが単一原子分布である場合、生成される活性物質は
1O
2とSO
4
・-であり、
銅の分布パターンがクラスター分布である場合、生成される活性物質は
1O
2とSO
4
・-であり、
銅の分布パターンが銅膜分布である場合、生成される活性物質は
1O
2である
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法に基づき、
銅の分布パターンが単一原子分布である場合、
1O
2の定常濃度は0.39×10
-9~0.42×10
-9M
-1・s
-1、SO
4
・-の定常濃度は0.02×10
-9~0.04×10
-9M
-1・s
-1であり、
銅の分布パターンがクラスター分布である場合、
1O
2の定常濃度は1.5×10
-9~1.6×10
-9M
-1・s
-1、SO
4
・-の定常濃度は0.21×10
-9~0.23×10
-9M
-1・s
-1であり、
銅の分布パターンが銅膜分布である場合、
1O
2の定常濃度は0.10×10
-9~0.12×10
-9M
-1・s
-1である
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
異なる銅分布パターンを有するCu-MXene複合触媒を調製するための方法であり、
成膜担体としてTi
3C
2-MXeneを用い、キャリアガスとして窒素を用い、ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino-2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体とジエチル亜鉛前駆体を交互に成膜担体にパルス照射し、異なる成膜サイクルで異なる銅分布パターンを有するCu-MXene複合触媒を得る工程を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法に基づき、窒素の流量が40~60sccmであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法に基づき、交互パルスが110~140℃で実施されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法に基づき、ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino―2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体が90~110℃の温度で予熱され、ジエチル亜鉛前駆体が20~30℃の温度で予熱されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項3または4または6のいずれか1項に記載の方法に基づき、ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino―2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体が50~200回パルス化され、ジエチル亜鉛前駆体が50~200回パルス化されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法に基づき、堆積のサイクルが1~150回であり、1回の堆積サイクルが、ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino―2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体の2秒パルス、5秒反応および20秒ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino-2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体の洗浄から構成し、
次いでジエチル亜鉛前駆体の0.5秒パルス、5秒反応および20秒ジエチル亜鉛の前駆体の洗浄から構成される方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法により得られる異なる銅の分布パターンのCu-MXene複合触媒であり、
前記銅の分布パターンの異なるCu-MXene複合触媒が、単一原子分布パターンのCu-MXene複合触媒、クラスター分布パターンのCu-MXene複合触媒、及び金属膜分布パターンのCu-MXene複合触媒
から構成することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載された異なる銅分布パターンのCu-MXene複合触媒がペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)の活性化による水中の抗生物質汚染物質を分解することに応用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多機能水処理・浄化材料の技術分野に係り、特に銅の分布パターンを利用してペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)による汚染物質の分解経路を変化させる方法、及び複合触媒の調製方法と応用に関する。
【背景技術】
【0002】
抗生物質が幅広く使用されているため、医薬品廃水、廃水処理施設からの流入と流出水、並びに自然水から頻繁に検出されている。スルファニルアミドは、アミノ基、フェニル基、スルホン酸アミド橋、R置換基を持つ有機残留性汚染物質の新しい分類である。スルファニルアミド残基は、細菌、藻類、植物に対して潜在的な毒性を持つだけでなく、抗生物質耐性遺伝子や細菌の発生と拡散にも寄与する。大量の微量汚染物質除去技術の中でも、ペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)酸化法は、グリーン、効率的、環境に優しく、二次汚染の心配がないという利点があり、大きな注目を集めている。
【0003】
高い活性と特異性を持つペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)触媒の開発は、特に重要である。現在、金属酸化物や金属担持炭素材料(活性炭、カーボンナノチューブ、バイオ炭、酸化グラフェンなど)などの非均質触媒が盛んに研究されている。しかし、非均質触媒反応は通常、原子の利用率が低い触媒表面で起こる。何百もの金属原子が必然的に触媒に蓄積するため、触媒活性を示す金属はごく一部である。さらに、金属や金属酸化物の使用量が多すぎると、金属が流出してしまう。したがって、活性種の迅速な放出と有効利用を可能にするより効率的で安定した触媒の開発が急務である。金属の分布パターン(単一原子、クラスター、ナノ粒子)は、触媒の活性サイトに影響を与え、汚染物質分解時の活性種の生成や酸化選択性に影響を与える可能性がある。しかし、金属分布パターンがペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)活性に及ぼす影響についてはあまり注目されておらず、金属触媒の実用的な水処理への応用を妨げている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、抗生物質系汚染物質の触媒分解において既存の金属触媒の活性が低いという技術的問題を解決するために、銅の分布パターンを利用してペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)による汚染物質分解の経路を変化させる方法、および複合触媒の調製と応用方法を提供することである。
【0005】
本発明の上記目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は銅の分布パターンを用いてペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)による汚染物質の分解経路を変化させる方法で、銅の分布パターンが単一原子分布である場合、生成される活性物質は1O2とSO4
・-であり、銅の分布パターンがクラスター分布である場合、生成される活性物質は1O2とSO4
・-であり、銅の分布パターンが銅膜分布である場合、生成される活性物質は1O2であることを特徴とする。
【0007】
続いて、銅の分布パターンが単一原子分布である場合、1O2の定常濃度は0.39×10-9~0.42×10-9M-1・s-1、SO4
・-の定常濃度は0.02×10-9~0.04×10-9M-1・s-1。銅の分布パターンがクラスター分布である場合、1O2の定常濃度は1.5×10-9~1.6×10-9M-1・s-1、SO4
・-の定常濃度は0.21×10-9~0.23×10-9M-1・s-1。銅の分布パターンが銅膜分布である場合、1O2の定常濃度は0.10×10-9~0.12×10-9M-1・s-1である。
【0008】
本発明は、異なる銅分布パターンを有するCu-MXene複合触媒を調製する方法を提供し、手順は以下の通りである。
【0009】
成膜担体としてTi3C2-MXeneを用い、キャリアガスとして窒素を用い、ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino-2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体とジエチル亜鉛前駆体を交互に成膜担体にパルス照射し、異なる成膜サイクルで異なる銅分布パターンを有するCu-MXene複合触媒を得る。
【0010】
次に、前記窒素の流量は40~60sccmである。
【0011】
次に、前記交互パルスは110~140℃で行われる。
【0012】
次に、ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino-2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体は90~110℃の温度で予熱され、ジエチル亜鉛前駆体は20~30℃の温度で予熱される。
【0013】
さらに、前記ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino-2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体を50~200回パルスし、ジエチル亜鉛前駆体を50~200回パルスする。
【0014】
最後、析出サイクルは1~150回であり、一回の析出サイクルは、ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino-2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体の2秒パルス、5秒反応および20秒のビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino-2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)洗浄、次いでジエチル亜鉛前駆体の0.5秒パルス、5秒反応および20秒ジエチル亜鉛前駆体の洗浄から構成される。
【0015】
本発明は、異なる銅分布パターンを有するCu-MXene複合触媒を提供し、前記異なる銅分布パターンを有するCu-MXene複合触媒は、単一原子分布パターンを有するCu-MXene複合触媒、クラスター分布パターンを有するCu-MXene複合触媒、および金属膜分布パターンを有するCu-MXene複合触媒から構成される。
【0016】
本発明は、異なる銅分布パターンを有するCu-MXene複合触媒はペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)の活性化による水中の抗生物質汚染物質を分解することに応用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、様々な銅分布パターン(単一原子、銅クラスター、銅薄膜)を有するCu-MXene複合触媒が得られる。
【0018】
本発明で調製したCu-MXene複合触媒は、いずれもペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)活性化に有利であり、活性酸化物種(例えば、1O2,・OH和SO4
・-)を生成し、金属分布パターンは、活性酸化物種および濃度の変動を誘導することが可能である。
【0019】
(3)本発明により調製されたCu-MXene複合触媒は、ペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)を活性化し、抗生物質汚染物質の除去率は60分で95%以上に達した。連続触媒分解実験により、本発明の複合触媒は高い安定性を持っている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例1および2で得られた複合触媒の球面収差電子顕微鏡写真である。
【
図2】CuO、Cu
2OとCu箔を参照としたCuのK吸収端XANESスペクトルである。
【
図3】Cu箔、Cu
2O、CuO、および実施例2の複合触媒のk
3重量のフーリエ変換拡張X線吸収微細構造(FT-EXAFS)スペクトログラムを示す。
【
図4】実施例2の複合触媒のEXAFSフィッティング曲線を示す。
【
図5】異なる銅分布パターンを有する複合触媒によって活性化されたPMS体系におけるスルファニルアミドの分解率のプロファイルを示す。
【
図6】異なる銅の分布パターンが複合触媒によるPMSの利用率のグラフである。
【
図7】実施例2で得られた複合触媒を用いた活性化PMSによるスルファニルアミドのサイクル分解率のグラフである。
【
図8】MXene表面の銅分布パターンが、生成する活性種の種類および定常状態濃度に及ぼす影響のグラフである。
【
図9】異なる銅の分布パターンが複合触媒における活性種の定常状態濃度の比較を示すグラフである。
【
図10】異なる銅の分布パターンがスルファニルアミドの触媒活性化によるPMS分解の経路を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、銅の分布パターンを用いてペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)による汚染物質の分解経路を変化させる方法で、銅の分布パターンが単一原子分布である場合、生成される活性物質は1O2とSO4
・-であり、銅の分布パターンがクラスター分布である場合、生成される活性物質は1O2とSO4
・-であり、銅の分布パターンが銅膜分布である場合、生成される活性物質は1O2であることを特徴とする。
【0022】
本発明では、銅の分布パターンが単一原子分布である場合、1O2の定常濃度は0.39×10-9~0.42×10-9M-1・s-1、SO4
・-の定常濃度は0.02×10-9~0.04×10-9M-1・s-1。銅の分布パターンがクラスター分布である場合、1O2の定常濃度は1.5×10-9~1.6×10-9M-1・s-1、SO4
・-の定常濃度は0.21×10-9~0.23×10-9M-1・s-1。銅の分布パターンが銅膜分布である場合、1O2の定常濃度はは0.10×10-9~0.12×10-9M-1・s-1である。
【0023】
本発明では、優先順位により、銅の分布パターンが単一原子分布である場合、1O2の定常濃度は0.40×10-9M-1・s-1、SO4
・-の定常濃度は0.03×10-9M-1・s-1。銅の分布パターンがクラスター分布である場合、1O2の定常濃度は1.55×10-9M-1・s-1、SO4
・-の定常濃度は0.22×10-9M-1・s-1。銅の分布パターンが銅膜分布である場合、1O2の定常濃度は0.11×10-9M-1・s-1である。
【0024】
本発明は、異なる銅分布パターンを有するCu-MXene複合触媒を調製する方法を提供し、手順は以下の通りである。
【0025】
成膜担体としてTi3C2-MXeneを用い、キャリアガスとして窒素を用い、ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino-2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体とジエチル亜鉛前駆体を交互に成膜担体にパルス照射し、異なる成膜サイクルで異なる銅分布パターンを有するCu-MXene複合触媒を得る。
【0026】
本発明において、前記窒素の流量は40~60sccm、50sccmを優先する。
【0027】
本発明において、前記交替パルスは110~140℃で行われ、115~130℃を優先し、さらに120℃を優先する。
【0028】
本発明において、前記ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino-2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体は90~110℃の温度で予熱され、100℃を優先し、ジエチル亜鉛前駆体は20~30℃の温度で予熱され、25℃を優先する。
【0029】
本発明において、前記ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino-2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体は、50~200回パルスされ、60~180回を優先し、さらに70~150回を優先し、ジエチル亜鉛前駆体は、50~200回パルスされ、60~180回を優先し、さらに70~150回を優先する。
【0030】
本発明において、析出サイクルは1~150回、50~100回を優先し、さらに80回を優先する;本発明において、一回の析出サイクルは、ビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino―2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体の2秒パルス、5秒反応、およびビス(ジメチルアミノ-2-プロポキシ)銅(II),98%以上Cu(dmap)2(Bis(dimethylamino―2-propoxy)copper(II),min.98%Cu(dmap)2)前駆体の20秒洗浄の後に、ジエチル亜鉛前駆体の0.5秒パルス、5秒反応及びジエチル亜鉛前駆体の20秒洗浄から構成される。
【0031】
本発明は、異なる銅分布パターンを有するCu-MXene複合触媒を提供し、前記異なる銅分布パターンを有するCu-MXene複合触媒は、単一原子分布パターンを有するCu-MXene複合触媒、クラスター分布パターンを有するCu-MXene複合触媒、及び金属膜分布パターンを有するCu-MXene複合触媒から構成され、クラスター分布パターンを有するCu-MXene複合触媒を優先する。
【0032】
本発明は、異なる銅分布パターンを有するCu-MXene複合触媒はペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)の活性化による水中の抗生物質汚染物質を分解することに応用する。
【0033】
本発明において、水中の抗生物質汚染物質を分解するための触媒的ペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)活性化は以下のように操作する:異なる銅分布パターンを有する0.01~0.15gのCu-MXene複合触媒を100~300mLのスルファニルアミド含有ホウ砂緩衝剤(Borax buffer)と混合し、次いで0.05~1.5mMのペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)を添加すると、完了である。
【0034】
本発明において、優先順位として、0.012~0.14gの異なる銅分布パターン有するCu-MXene複合触媒を、150~250mLのスルファニルアミド含有ホウ砂緩衝剤(Borax buffer)と混合し、その後、0.1~1.2mMのペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)を添加すれば十分である;さらに優先すると、0.013g異なる銅分布パターンを有するCu-MXene複合触媒を、200mLのスルファニルアミド含有ホウ砂緩衝剤(Borax buffer)と混合し、そして、0.5~1.0mMのペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)を添加すると、完了である。
【0035】
本発明において、スルファニルアミド含有ホウ砂緩衝剤(Borax buffer)中のスルファニルアミドの濃度は5~15mg/L、8~12mg/Lを優先し、さらに10mg/Lを優先する。
【0036】
本発明において、スルファニルアミド含有ホウ砂緩衝剤(Borax buffer)のpHは、7.0を優先に選択する。
【0037】
以下、本発明により提供される技術的解決策を実施例について詳細に説明するが、これらは本発明の保護範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【0038】
実施例1
0.1500gのTi3C2-MXeneをALDチャンバーに添加し、析出は、キャリアガスとして高純度N2を50sccmの流量でALDチャンバーに導入し、120℃で行う。Cuは、Et2ZnとCu(damp)2をそれぞれ100℃と25℃に維持したまま加熱マントルを用いて、Cu(damp)2とEt2Znを反応させて得る。2つの前駆体を交替にALDチャンバーにパルス照射してMXene粉末に吸着させ、N2で残留前駆体とサブ生成物を十分に除去する。1回の析出サイクルで十分な吸着を確保するため、連続200回のCu(damp)2パルスと連続200回のEt2Znパルスを実施する。1回のALD析出サイクルは、2秒のCu(damp)2パルス、5秒の反応、20秒のCu(damp)2洗浄、その後、0.5秒のEt2Znパルス、5秒の反応、及び20秒のEt2Zn洗浄で構成される。1回析出サイクルの後、単一原子分布パターンを有するSA-Cu-MXene触媒が得られる。
【0039】
実施例2
0.1500gのTi3C2-MXeneをALDチャンバーに添加し、析出は、キャリアガスとして高純度N2を50sccmの流量でALDチャンバーに導入し、120℃で行う。Cuは、Et2ZnとCu(damp)2をそれぞれ100℃と25℃に維持したまま加熱マントルを用いて、Cu(damp)2とEt2Znを反応させて得る。2つの前駆体を交替にALDチャンバーにパルス照射してMXene粉末に吸着させ、N2で残留前駆体とサブ生成物を十分に除去する。1回の析出サイクルで十分な吸着を確保するため、連続150回のCu(damp)2パルスと連続180回のEt2Znパルスを実施する。1回のALD析出サイクルは、2秒のCu(damp)2パルス、5秒の反応、20秒のCu(damp)2洗浄、その後、0.5秒のEt2Znパルス、5秒の反応、及び20秒のEt2Zn洗浄で構成される。3回の析出サイクルを経って、クラスター分布パターンを有するC-Cu-MXene触媒が得られる。
【0040】
実施例3
0.1500gのTi3C2-MXeneをALDチャンバーに添加し、析出は、キャリアガスとして高純度N2を50sccmの流量でALDチャンバーに導入し、120℃で行う。Cuは、Et2ZnとCu(damp)2をそれぞれ100℃と25℃に維持したまま加熱マントルを用いて、Cu(damp)2とEt2Znを反応させて得る。2つの前駆体を交替にALDチャンバーにパルス照射してMXene粉末に吸着させ、N2で残留前駆体とサブ生成物を十分に除去する。1回の析出サイクルで十分な吸着を確保するため、連続100回のCu(damp)2パルスと連続50回のEt2Znパルスを実施する。1回のALD析出サイクルは、2秒のCu(damp)2パルス、5秒の反応、20秒のCu(damp)2洗浄、その後、0.5秒のEt2Znパルス、5秒の反応、及び20秒のEt2Zn洗浄で構成される。150回の析出サイクルを経って、金属薄膜の分布パターンを有するF-Cu-MXene触媒が得られる。
【0041】
図1は、本発明の実施例1および実施例2で得られた複合触媒の球面収差電子顕微鏡写真であり、この写真から、MXeneの表面に単一原子(
図1aおよびb)およびクラスター(
図1cおよびd)の明るいポイント(白いリンク)が存在していることがわかる。銅が単一原子とクラスターの分布パターンで存在していることは明らかである。
【0042】
図2は、CuO、Cu
2OとCu箔を基準として、本発明の実施例2で得られた複合触媒の銅K吸収端XANESスペクトルを示しており、試料の吸収端はCu
2OとCu箔に最も近い。だから、C-Cu-MXeneのCu価数は、金属Cu
0よりも高いが、Cu
1+より低いように見える。
【0043】
図3に見られるように、クラスター状に分布した複合触媒(C-Cu-MXene)は、Cu-Cu 配位に相当する2.2Åに主要なピークを示し、これはC-Cu-MXene表面に銅クラスターが成功に担持されていることを示している。EXAFSのR空間フィッティングによると、銅-銅配位数は約5.2であった。
【0044】
図4は、C-Cu-MXene試料のEXAFSフィッティング曲線である。 EXAFSパラメータR空間フィッティングによると、Cu第二殻層の配位数は約5.2であり、Cuの平均結合長は2.52Åであり、上述により、Cu5が主な種である。
【0045】
実施例1
実施例1~3で得られた触媒は、水中の抗生物質汚染物質を分解するためのペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)の活性化を触媒した:
【0046】
25±1℃の温度では、0.075gの触媒粉末を150mLのスルファニルアミド含有ホウ砂緩衝剤(Borax buffer)(pH=7)に加えて、スルファニルアミドの濃度は15mg/Lである。全体の反応プロセスにおいて、溶液のpHは安定したままである。その後、0.2mMのペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)を混合溶液に加える。混合溶液から0.9mLを注射器で採取し、0.22μmの膜でろ過する。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた試料中の汚染物質濃度を測定する。
【0047】
図5に、異なる銅の分布パターンが複合触媒で活性化したPMS体系でのスルファニルアミドの分解率プロファイルを示す。単一原子分布の複合触媒(SA-Cu-MXene)で活性化したPMS体系でのスルファニルアミドの分解率は60分で約65.4%であり、純粋なMXeneで活性化したPMS体系よりも42.4%高かった。特に、C-Cu-MXeneの添加は、純粋なMXene活性化PMS体系と比較して、60分以内にスルファニルアミドの分解率を73.9%増加させた。一方、銅薄膜の分布パターンを有する複合触媒(F-Cu/MXene)を添加した場合、スルファニルアミドの分解率は16.2%しか増加しなかった。以上の結果により、銅担持パターンの異なる複合触媒は、PMSの活性化と汚染物質の分解を促進できることが示された。また、異なる銅担持パターンで得られた複合触媒は、汚染物質の分解を促進する効果が違うことが分かった。
【0048】
図6は、異なる銅の分布パターンが複合触媒によるPMSの利用率を示している。
図6に示すように、単一原子分布、クラスター分布、銅薄膜分布の複合触媒のPMS利用率は、それぞれ58.0%、76.8%、37.9%であり、金属分布パターンがPMS利用率に影響を与えることを示している。
【0049】
図7は、PMSを活性化したクラスター担持MXene複合触媒によるスルファニルアミドのサイクル分解率を示している。3回のサイクル分解実験後、スルファニルアミドの除去率は95%以上であり、高い安定性を示している。
【0050】
図8は、MXene表面上の銅の分布パターンが活性種の種類と定常濃度に影響を与えることを示している。銅が単一原子またはクラスターとして分布した複合触媒は主に
1O
2とSO
4
・-を生成したが、クラスターとして分布した複合触媒はより高い定常濃度の
1O
2とSO
4
・-を生成し、銅膜として分布した複合触媒は
1O
2しか生成できない。
【0051】
図9は、銅の分布パターンが汚染物質の分解経路に影響を与えることを示している。
図9に示すように、C-Cu-MXene/PMS体系でスルファニルアミドを分解した場合、ソルト・ブリッジ(Salt Bridge)の電流は分解時間とともに増加する傾向があり、20分で電流が1.0mAに安定したことから、スルファニルアミド分解における電子伝達経路の寄与が徐々に大きくなっていることが示された。しかし、スルファニルアミド分解のためにPMSによる活性化されたSA-Cu-MXeneおよびF-Cu-MXene体系の電流は分解時間の増加とともに著しく減少し、SA-Cu-MXene/PMSの電流は50分で2.0mAから1.2mAに減少し、F-Cu-MXene体系の電流は20分で2.0mAから11.1mAにさらに減少した。以上の結果から、3種類の銅修飾MXene活性化PMSのいずれにおいても、電子伝達経路がスルファニルアミドの分解に関与しているが、C-Cu-MXene活性化PMS体系におけるスルファニルアミド分解への電子伝達経路の寄与は、SA-Cu-MXeneおよびF-Cu-MXene活性化PMS体系よりも、小さいことが示された。
【0052】
MXene表面上の銅の分布パターンは、汚染物質の分解経路に影響を与える。
図10に示すように、PMSを3種類のCu-MXene複合触媒で活性化し、スルファニルアミドを酸化分解する過程で、P1、P2、P3、P5、P8、P9、P10、P11、P12、P13、P14、P15とP16などの主要生成物が検出された。C-Cu-MXene/PMS体系では、P4、P6、P7、P8などの中間体(
図9に五芒星で示したもの)がより多く生成したことが注目される。
【0053】
上記の実施例から分かるように、本発明は、銅の分布パターンを用いてペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)の汚染物質分解経路を変更する方法、および複合触媒の調製方法と応用を提供する。本発明は、調製工程のパラメーターを調整し、銅の分布パターンを変更させ、触媒の活性部位を調節し、ペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)の活性化経路および生成する活性種の種類を変更することにより、スルファニルアミド分解経路および中間生成物の毒性を同時に制御する。原子層堆積技術による金属担持は、均一な堆積、触媒組成と分散の精密な制御を達成することができ、得られた複合触媒のペルオキシモノ硫酸塩、PMS(peroxymonosulfate, PMS)の活性化による抗生物質汚染物質の分解効率は著しく向上した。
【0054】
前述の内容は、本発明の優先的な実施方法に過ぎず、当業者であれば、本発明の原理から逸脱することなく、多くの改良および最適化を行うことができることに留意すべきである。これらの改良および最適化も、本発明の保護範囲とみなされるものとする。
【国際調査報告】