(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20241226BHJP
A61N 1/32 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61B18/14
A61N1/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512066
(86)(22)【出願日】2023-12-11
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 US2023083408
(87)【国際公開番号】W WO2024124245
(87)【国際公開日】2024-06-13
(32)【優先日】2023-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524066638
【氏名又は名称】フィールド・メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FIELD MEDICAL, INC.
【住所又は居所原語表記】838 Walker Rd., Suite 21-2 Dover, Delaware, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】ミケルセン・スティーブン
【テーマコード(参考)】
4C053
4C160
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ03
4C053JJ04
4C053JJ13
4C053JJ23
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK38
4C160MM38
(57)【要約】
組織アブレーション用のカテーテルであって、1つ以上の電極が、管腔に面するカテーテル本体の内面に取り付けられ、1つ以上の電極が外面に取り付けられている。電極は、カテーテルの遠位端からオフセットしている。内側電極と外側電極との間の材料は、絶縁体であり、例えば、高誘電率の誘電体であり得る。このカテーテル構成は、カテーテルの先端回りに屈曲する電界を発生させる。カテーテル先端付近の電界強度は、比較的対称形であり、これによって、カテーテルの向きが、比較的、組織除去する深さに影響しない。実施形態において、複数の内側電極又は外側電極を設けてもよく、電界の方向を経時的に変動させて除去の一定性(consistency)を向上させるために、電極間の電圧構成を切り替えてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルであって、
管状要素であって、
遠位端と、
前記遠位端とは反対側の近位端と、
長手方向軸と、
管腔を囲む内面と、
外面と、
前記内面と前記外面との間の電気絶縁体と、を有する管状要素と、
前記内面に結合された1つ以上の内側電極であって、各々が前記遠位端から遠ざかるように、前記近位端に向かう近位方向にオフセットされた、1つ以上の内側電極と、
前記外面に結合された1つ以上の外側電極であって、各々が前記遠位端から前記近位端に向かう前記近位方向にオフセットされ、前記電気絶縁体によって前記1つ以上の内側電極から分離されている、1つ以上の外側電極と、
前記1つ以上の内側電極と前記1つ以上の外側電極とに結合されたコントローラと、を有し、
前記遠位端は、除去される組織の近位に配置されるように構成され、
前記コントローラは、エレクトロポレーションにより除去される前記組織のアブレーションを誘導する電界を、前記管状要素の外側に発生させるように、前記1つ以上の内側電極の電圧と前記1つ以上の外側電極の電圧とを設定するように構成されている、
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載の内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルにおいて、
前記1つ以上の内側電極の1つである内側電極から、前記1つ以上の外側電極の1つである外側電極に向かって流れる電流の最短経路は、前記内側電極と前記外側電極との間の距離よりも長い、
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル。
【請求項3】
請求項1に記載の内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルにおいて、
前記電気絶縁体は、誘電体を有する、
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル。
【請求項4】
請求項3に記載の内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルにおいて、
前記誘電体は、窒化アルミニウムセラミックを有する、
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル。
【請求項5】
請求項1に記載の内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルにおいて、
前記電気絶縁体の導電率は、0.1マイクロジーメンス/センチメートル未満である、
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル。
【請求項6】
請求項1に記載の内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルにおいて、
前記遠位端と前記1つ以上の内側電極の各々との間の距離は、0.01ミリメートル以上1メートル以下である、
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル。
【請求項7】
請求項5に記載の内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルにおいて、
前記遠位端と前記1つ以上の外側電極の各々との間の距離は、0.01ミリメートル以上1メートル以下である、
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル。
【請求項8】
請求項1に記載の内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルにおいて、
前記コントローラは、さらに、前記1つ以上の内側電極の少なくとも1つと、前記1つ以上の外側電極の少なくとも1つとの間の電位差を、5000ボルトよりも大きく設定するように構成されている、
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル。
【請求項9】
請求項1に記載の内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルにおいて、
前記コントローラは、さらに、除去される前記組織の膜回復時間の2倍未満であるパルス時間内に、前記1つ以上の内側電極及び前記1つ以上の外側電極の前記電圧を変更するように構成されている、
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル。
【請求項10】
請求項1に記載の内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルにおいて、
前記コントローラは、さらに、10ミリ秒以下の期間内に、前記1つ以上の内側電極及び前記1つ以上の外側電極の前記電圧を変更するように構成されている、
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル。
【請求項11】
請求項1に記載の内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルにおいて、
前記コントローラは、さらに、前記1つ以上の内側電極及び前記1つ以上の外側電極の電圧を経時的に変更して、前記管状要素の外側の前記電界の方向を経時的に変更するように構成されている、
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル。
【請求項12】
請求項9に記載の内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルにおいて、
前記コントローラは、さらに、
除去される前記組織の領域に第1の平均電界ベクトルを生成するように、第1の時間において、前記1つ以上の内側電極及び前記1つ以上の外側電極の第1の電圧を設定し、
除去される前記組織の第2の領域に第2の平均電界ベクトルを生成するように、第2の時間において、前記1つ以上の内側電極及び前記1つ以上の外側電極の第2の電圧を設定するように構成されており、
前記第1の平均電界ベクトルと、前記第2の平均電界ベクトルとの間の角度差は、少なくとも1度である、
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル。
【請求項13】
請求項1に記載の内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルにおいて、
前記1つ以上の内側電極の各々は、前記遠位端から遠ざかるように、前記近位端に向かう前記近位方向にオフセットされ、前記1つ以上の内側電極の最も遠い遠位点は、前記管腔内に収まっている、
内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の1つ以上の実施形態は、組織アブレーションに使用される医療用カテーテルの分野に関する。より詳細には、限定されないが、本発明の1つ以上の実施形態は、内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルを実現する。
【背景技術】
【0002】
電極が取り付けられたカテーテルは、さまざまな医療問題に対処するための組織アブレーションに広く使用されている。例えば、心臓への応用では、左心房内の肺静脈口にエレクトロポレーションを行うための特殊な多電極カテーテルが発明されている。これらの機器の多くは、心房細動と呼ばれる一般的な不整脈を治療するために、肺静脈の解剖学的アブレーションを行うように設計されている。
【0003】
既存のアブレーションカテーテルにはさまざまな電極構成があるが、いずれもカテーテルの外面に電極を複数配置し、カテーテルの先端に電極を1つ配置するのが一般的である。これらの構成は、カテーテルによって発生する電界の形状を制限する。特に電界の輪郭は、カテーテルの長手方向軸に沿って配置された双極子によって生成されるため、一般的に細長い。除去(ablation)の深さは、除去する組織に対するカテーテルの向きに依存するため、このような細長いフィールド形状は組織アブレーションには最適ではない。
【0004】
少なくとも上述した制限のために、内側電極と外側電極との間に絶縁体を備えた組織アブレーションカテーテルが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載されている1つ以上の実施形態は、内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルに関する。本発明の実施形態は、アブレーションの一定性(consistency)を向上させる新規な電界形状を生成することができる。
【0006】
本発明の1つ以上の実施形態は、長手方向軸と、遠位端と、管腔と、管腔を囲む内面と、外面とを有する管状要素を備えるカテーテルを含み得る。内面と外面との間に電気絶縁体が設けられていてもよい。カテーテルは、内面に結合された1つ以上の内側電極と、外面に結合された1つ以上の外側電極とを有し得る。内側電極と外側電極とは、それぞれカテーテルの遠位端からオフセットされていてもよい。電気絶縁体は、外側電極から内側電極を分離し得る。カテーテルの遠位端は、除去する組織の近傍に位置し得る。コントローラは、管状要素の外側に、エレクトロポレーションによる組織の除去を誘導する電界を発生させるように、内側電極及び外側電極の電圧を設定し得る。
【0007】
本発明の1つ以上の実施形態では、内側電極から外側電極に向かって流れる電流の最短経路は、内側電極と外側電極の間の距離よりも長くてもよい。
【0008】
本発明の1つ以上の実施形態では、電気絶縁体は、例えば、窒化アルミニウムセラミックのような誘電体であり得る。1つ以上の実施形態において、電気絶縁体の導電率は、0.1マイクロジーメンス/センチメートル未満であり得る。
【0009】
1つ以上の実施形態において、カテーテルの管状要素の遠位端と内側電極の各々との間の距離は、0.01ミリメートル以上1メートル以下であり得る。1つ以上の実施形態において、カテーテルの管状要素の遠位端と外側電極の各々との間の距離は、0.01ミリメートル以上1メートル以下であり得る。
【0010】
本発明の1つ以上の実施形態において、コントローラは、少なくとも1つの内側電極と少なくとも1つの外側電極との間の電位差を5000ボルトよりも大きく設定し得る。
【0011】
本発明の1つ以上の実施形態において、コントローラは、除去される組織の膜回復時間の2倍未満であるパルス時間内に、内側電極及び外側電極の電圧を変更し得る。
【0012】
1つ以上の実施形態において、コントローラは、10ミリ秒以下の期間内に内側電極及び外側電極の電圧を変更し得る。
【0013】
1つ以上の実施形態において、コントローラは、管状要素の外側の電界の方向を経時的に変化させるために、内側電極及び外側電極の電圧を変更し得る。例えば、コントローラは、除去される組織の一領域に、第1の平均電界ベクトルを発生させるために、ある時間に電極電圧を設定し得、除去される組織の一領域に第2の平均電界ベクトルを発生させるために、別の時間に電極電圧を設定し得、ここで、第1の平均電界ベクトルと第2の平均電界ベクトルとの間の角度差は、少なくとも1度である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の上記及びその他の態様、特徴及び利点は、以下の図面と併せて提示される、以下のより具体的な説明からより明らかになるであろう。
【
図1】(A)従来技術における、カテーテルの外面に電極が設けられた典型的なアブレーションカテーテルを示し、(B)
図1(A)のカテーテルの断面図を示す。
【
図2】(A)外側電極と内側電極とを備えるアブレーションカテーテルである本発明の例示的な実施形態を示し、(B)
図2(A)のカテーテルの断面図を示し、(C)
図2(A)のカテーテルの遠位端を拡大した断面図を示す。
【
図3】
図2(A)のカテーテルの内側電極と外側電極との間の例示的な最短電流経路を示し、電極が絶縁体で隔てられているため、電流経路は、電極間の直線距離よりも長くなることを示す。
【
図4】
図2(A)のカテーテルの遠位端付近の領域における例示的な電界ベクトルを示し、電界は、内側電極と外側電極との間の遠位端で絶縁体回りに屈曲する様子を示す。
【
図5】(A)
図1(A)のカテーテルの遠位端周辺の例示的な電界強度の輪郭を示し、(B)
図2(A)のカテーテルの遠位端周辺の例示的な電界強度の輪郭を示し、本発明のカテーテルは、従来技術のカテーテルよりも対称的な電界輪郭を有することを示す。
【
図6】
図5(B)に示す対称的な電界輪郭の利点を示し、組織のアブレーションの深さは、除去される組織に対するカテーテルの向きにほとんど依存しないことを示す。
【
図7】複数の内側電極と複数の外側電極とを備える、
図2(A)のカテーテルのバリエーションを示す。
【
図8】
図7のカテーテルの電極の電圧を変更することにより、除去される組織の細胞に作用する電界の方向がどのように変更可能かを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、内側電極と外側電極との間に絶縁体を備える組織アブレーションカテーテルについて説明する。以下の例示的な説明では、本発明の実施形態のより詳細な理解を提供するために、多数の具体的な詳細を記載する。しかしながら、本発明は、本明細書に記載された特定の詳細のすべての態様を組み込むことなく実施することができることは、当業者には明らかであろう。他の例では、当業者によく知られている特定の特徴、量、または測定値は、本発明を不明瞭にしないように詳細には記載していない。読者は、本明細書には本発明の実施例が記載されているが、特許請求の範囲及びあらゆる均等物の全範囲が、本発明の範囲を規定するものであることに留意すべきである。
【0016】
血管内カテーテルは、医療において、パルス電界アブレーション、エレクトロポレーション、直流アブレーション、高周波治療(flugulation)としても知られる高電圧短時間パルス電気を、軟組織アブレーションの目的で体内の組織ターゲットに供給するために使用される。
図1(A)及び
図1(B)は、これらの用途に現在使用されている典型的なアブレーションカテーテル100の模式図である。
図1(A)はアブレーションカテーテルの側面図、
図1(B)はカテーテルの長手軸102を通る平面に沿った断面図である。カテーテル100は典型的なバイポーラアブレーションカテーテルであり、管状要素内に中心管腔103を有し、管の外面121上に2つの電極を有し、電極111は、カテーテルの遠位端101の先端またはその近傍にあり、電極112は、先端電極から離れたカテーテルのチューブ上に位置する。電極は、内面122には取り付けられていない。2つの電極間に電圧差を加えると、双極子を形成する。組織は、高周波(RF)熱エネルギーにより、又は電界が直接細胞損傷を引き起こすエレクトロポレーションにより、除去され得る。電界を介した細胞傷害は、熱的除去よりも利点があり、さまざまな病状でこのアプローチを用いる技術への関心が高まっている。エレクトロポレーションに対する組織の反応は、3つの重要な点で熱損傷とは異なる。第一に、電界を介した損傷に対する組織の感受性は、桁が異なるので、心臓のようないくつかの臓器では選択的アブレーションの利点がある。組織選択性は、肺静脈隔離を行う際の共通の懸念である、呼吸神経、食道、血管などの側副構造への意図せぬ損傷のリスクを軽減する。第二に、アブレーション損傷容積は、電界輪郭に密接に沿うため、損傷のサイズと形状とが熱的アプローチよりも予測可能で及び/又は正確である。そして第三に、エレクトロポレーションは、RFアブレーションよりもはるかに速く、各施術にかかる時間は数マイクロ秒から数秒であることにより、全処置時間に関するリスクとリソース要求とを低減させる。
【0017】
いくつかのアブレーションカテーテルは、カテーテル100の外面121に2つより多い電極を有する。例えば、心臓への適用では、左心房内の肺静脈口にエレクトロポレーションを施すための特殊な多電極カテーテルが発明されている。これらの装置の多くは、心房細動と呼ばれる一般的な不整脈を治療するために、肺静脈の解剖学的アブレーションを行うように設計されている。
【0018】
図2(A)、
図2(B)、及び
図2(C)は、本発明の例示的な実施形態の異なる図を示しており、この実施形態は、カテーテル100のような従来のアブレーションカテーテルと比較して利点を提供する新規な幾何学的および電気的特性を備えるアブレーションカテーテル200である。
図2(A)は、カテーテル200の側面図を示し、
図2(B)は、カテーテルの長手方向軸202を通る平面に沿った断面図を示し、
図2(C)は、カテーテル200の遠位端の拡大断面図を示す。カテーテル200は、管状カテーテル本体の外面221に取り付けられた外側電極211と、管状カテーテル本体の内面222(管腔203に面する)に取り付けられた内側電極212とを有する。両電極211、212は、カテーテルの遠位端201から長手方向軸202に沿ってオフセットしており、カテーテルの先端には電極は設けられていない。外側電極211と遠位端201との間の距離241は、本発明の1つ以上の実施形態において、少なくとも0.01ミリメートルであり得、最大で1メートルであり得る。内側電極212と遠位端201との間の距離242は、同様に、本発明の1つ以上の実施形態において、少なくとも0.01ミリメートルであり得、最大で1メートルであり得る。距離241及び242は等しくてもよいし、等しくなくてもよい。用途によって、カテーテル200の遠位端は、除去される組織の位置又はその近傍に配置され得る。外側電極211は、組織と接触し得る。内側電極212は、除去される組織に直接接触しない。電極は、管状カテーテル本体の外側に電界を発生させ、エレクトロポレーションによって近傍組織のアブレーションを誘導し得る。カテーテルの管腔203は、組織に注入される灌流液を運び得、この液は、導電性であり得る。例示的な液としては、例えば、9%の生理食塩水であり得る。
【0019】
内側電極212と内側電極211とは、電気絶縁材料250を含み得るカテーテル本体の遠位部分によって隔てられている。1つ以上の実施形態において、この絶縁材料250の導電率は、例えば、1センチメートル当たり0.1マイクロジーメンス未満であり得る。1つ以上の実施形態において、この材料250は、誘電体であり得、高い誘電率を有し得る。1以上の実施形態で使用され得る例示的な材料は、例えば窒化アルミニウムセラミックである(カテーテル本体の電極より下の部分(遠位端から離れた部分)は、本体の電極間の部分と同じ材料で作られていても、そうでなくてもよい)。カテーテル本体の全部又は一部は、可撓性であり得る。管状のカテーテル本体は、任意の所望の長さであり得る。
【0020】
電極211及び212は、
図2(B)に示すように、各電極の電圧を設定するコントローラ230に結合され得る(コントローラと電極とを接続するワイヤは、説明の便宜上、カテーテル本体から離された状態で模式的に示されているが、例えば、用途によっては、これらのワイヤはカテーテル本体と一体に設けられていてもよいし、カテーテル本体に取り付けられていてもよい)。コントローラ230は、電極211及び212に電圧パルスを供給し得る。パルスは、例えば、10ns~10msの間の持続時間、50%未満のデューティサイクル、1kV~10kVの間の振幅、1~10000パルス/秒の間のパルス繰り返し(両端含む)の単相パルスである。特に、本発明の1つ以上の実施形態において、少なくとも1つの内側電極と少なくとも1つの外側電極との間に印加される電圧は、5000ボルトより大きくてもよい。しかし、この電極構成では、多重持続時間の矩形パルス、二相性の矩形波又は台形波、バイポーラ正弦波、オフセット正弦波、非対称矩形波、非対称矩形直線波、及び/又は任意の波形もしくはパルスパターンの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない任意の電位パターンを使用し得る。
【0021】
本発明の1つ以上の実施形態は、複数の内側電極又は複数の外側電極を有し得る。
図7は、複数の内側電極と複数の外側電極とを有する例示的な実施形態を示す。実施形態は、任意の数の内側電極と任意の数の外側電極とを有し得る。内側電極と外側電極とは、誘電率の高い材料等の絶縁体によって分離され得る。内側電極及び外側電極はすべて、カテーテルの遠位端からオフセットし得る。
【0022】
図3は、カテーテル200の形状が電極間の電流の流れに及ぼす影響を示す。(説明のために)内側電極を外側電極に対して正の電圧に設定すると、電流301は、内側電極212から管腔に沿ってカテーテル先端の遠位端まで流れ、屈曲して外側電極211まで流れ落ちる。したがって、電極間の最短電流経路301の長さは、電極間の直線距離302よりも長い。この特徴は、電極間が絶縁体によって分離されていないために電極間の最短電流経路の長さが電極間の直線距離に等しくなる
図1(A)のカテーテル100のような、従来のカテーテルの形状とは対照的である。
【0023】
図4は、電極間に電圧差を印加したときに発生する電界の形状に対する同様の屈曲効果を示す。電界線400は、カテーテルの遠位端回りに屈曲している。カテーテル本体の誘電体は、電界強度が先端回りで屈曲する際に、電界強度を増幅させる。
【0024】
図5(A)及び
図5(B)は、従来のアブレーションカテーテルによる電界形状と比較して、
図4に示した、屈曲した電界線形状の潜在的な利点を示す。
図5(A)は、従来のカテーテル100における電界強度の輪郭501を示し、
図5(B)は、カテーテル200における電界強度の輪郭511を示す。輪郭線501及び511は、電界強度が閾値を超える輪郭線内の領域と、電界強度がこの閾値を下回る輪郭線外の領域とを分離する。エレクトロポレーションによる組織アブレーションは、電界強度と高い相関があるため、電界強度の輪郭の形状によって、組織が除去される領域が決まる。カテーテル100の電極は、従来の双極子構成で動作するため、輪郭501は細長いが、これに対し、電界が屈曲する現象のために、輪郭511は、カテーテル200の先端回りにおいて、比較的対称的である。この対称的な形状により、除去する組織に対するカテーテルの向きにかかわらず、組織に対するアブレーションの深さが一定になる。この利点を、
図6(A)及び
図6(B)に示す。カテーテル近傍の組織の一部を除去することを目的として、カテーテル200を組織600に対して配置する。しかし、組織に対するカテーテルの正確な向きを制御することは必ずしも可能ではない。例えば、
図6(A)では、カテーテル200の長手方向軸は、組織境界に対し略垂直であるが、
図6(B)では、この軸は、組織境界に対し略平行である。電界強度の輪郭511は、実質的に対称であるため、カテーテルが垂直であるときに閾値よりも大きい電界強度を経験する組織の部分601は、カテーテルが平行であるときにこの電界強度を経験する組織の部分602と略同じである。したがって、カテーテルの向きにかかわらず、除去される組織の深さは略同じになる。カテーテル200のこの特徴は、電界強度の輪郭が非常に非対称であって、アブレーションの深さが、必ずしも制御できないカテーテルの向きに大きく依存し得る従来のカテーテルに比べ、実質的な進歩を意味する。
【0025】
カテーテル200は、単一の内側電極と単一の外側電極とを有する。本発明の1つ以上の実施形態は、複数の内側電極又は複数の外側電極(又はその両方)を有し得る。
図7は、2つの内側電極212及び714と、3つの外側電極211、712、及び713とを備える例示的なカテーテル700を示す。すべての電極は、カテーテルの遠位端からオフセットされており、内側電極及び外側電極は、絶縁性のカテーテル本体によって分離されている。すべての電極は、コントローラ230に結合されている。コントローラは、電極のうちのいずれかの電圧を設定し得、電界ベクトルの方向と強度とを変更するように、電極の電圧を経時的に変化させ得る。電極電圧を変化させることで、標的組織は、単一のカテーテル位置からの複数の電界ベクトルに曝され得る。
【0026】
図8(A)、
図8(B)、及び
図8(C)は、電界ベクトルの方向を経時的に変化させるために電極電圧を変更する実施形態を示す。組織アブレーションに対する電界の作用は、電界強度と細胞膜に対する電界ベクトルの向きとの両方に依存する。一般に、細胞に最も大きなストレスがかかるのは、電界ベクトルが細胞膜に垂直な場所である。しかし、細胞膜は、組織全体で不均質に配向しているため、単一の電界方向がすべての細胞に対し同時に最大応力を発生させるわけではない。組織に対し、経時的に複数の電界方向を与えることで、各細胞が、細胞膜に高いストレスを与えやすい電界ベクトルを経験するため、組織内の細胞のアブレーションはより均一になる。
図8(A)から
図8(C)は、カテーテル700の電極に対し、異なる時間に印加される異なる電圧パターンと、その結果生じる、標的組織内の例示的な細胞800近傍の平均電界方向801aから801cを示す。コントローラは、例えば、これら3つの電圧パターンを繰り返し反復させることができる。電圧を変更すると、細胞は異なる時間に異なる電界方向に曝されることになる。例えば、標的組織内の容積試料は、1°~90°の間(両端含む)の計算されたベクトル角度の差によって異なる2つ以上の平均電界ベクトルに、異なる時間において曝され得る。1つ以上の実施形態において、異なる電圧構成間の切り替え時間は、処置容積内の標的細胞又は物質の膜回復時間の2倍以下であり得る。例えば、構成間の切り替え時間は10ナノ秒~1秒の間である。
【0027】
本発明の1つ以上の実施形態は、電界方向が変化する組織アブレーションカテーテルを含み、組織アブレーションカテーテルは、管状要素であって、除去される組織の近位に配置されるように構成された遠位端と、遠位端とは反対側の近位端と、管腔を囲む内面と、外面と、内面と外面との間の電気絶縁体とを有する管状要素と、内面に結合され、各々が遠位端から遠ざかるように、近位端に向かう近位方向にオフセットされた1つ以上の内側電極と、外面に結合された1つ以上の外側電極と、コントローラであって、1つ以上の内側電極及び1つ以上の外側電極に結合され、エレクトロポレーションにより除去される組織のアブレーションを誘導する電界を管状要素の外側に発生させるように、1つ以上の内側電極の電圧及び1つ以上の外側電極の電圧を設定するように構成されたコントローラとを有し、管状要素の外側の電界の方向を経時的に変更するように、1つ以上の内側電極及び1つ以上の外側電極の電圧を経時的に変更する。
【0028】
1つ以上の実施形態において、コントローラは、さらに、除去される組織の領域に第1の平均電界ベクトルを生成するように、第1の時間において、1つ以上の内側電極及び1つ以上の外側電極の第1の電圧を設定し、除去される組織の第2の領域に第2の平均電界ベクトルを生成するように、第2の時間において、1つ以上の内側電極及び1つ以上の外側電極の第2の電圧を設定するように構成され、ここで、第1の平均電界ベクトルと第2の平均電界ベクトルとの間の角度差は、少なくとも1度である。
【0029】
1つ以上の実施形態において、1つ以上の内側電極のうちの1つである内側電極から、1つ以上の外側電極のうちの1つである外側電極に流れる電流の最短経路は、内側電極と外側電極との間の距離よりも長い。
【0030】
1つ以上の実施形態において、電気絶縁体は、誘電体を有する。
【0031】
1つ以上の実施形態において、誘電体は、窒化アルミニウムセラミックを含む。
【0032】
1つ以上の実施形態において、電気絶縁体の導電率は、0.1マイクロジーメンス/センチメートル未満である。
【0033】
1つ以上の実施形態において、コントローラは、さらに、1つ以上の内側電極の少なくとも1つと、1つ以上の外側電極の少なくとも1つとの間の電位差を5000ボルトよりも大きく設定するように構成される。
【0034】
1つ以上の実施形態において、コントローラは、さらに、除去される組織の膜回復時間の2倍未満であるパルス時間内に、1つ以上の内側電極及び1つ以上の外側電極の電圧を変更するように構成される。
【0035】
1つ以上の実施形態において、コントローラは、さらに、10ミリ秒以下の期間内に、1つ以上の内側電極及び1つ以上の外側電極の電圧を変更するように構成される。
【0036】
1つ以上の実施形態において、1つ以上の内側電極の各々は、遠位端から遠ざかるように近位端に向かう近位方向にオフセットされ、1つ以上の内側電極の最も遠い遠位点が管腔内に収まっている。
【0037】
1つ以上の実施形態は、管状要素であって、除去される組織の近位に配置されるように構成された遠位端と、遠位端とは反対側の近位端と、管腔を囲む内面と、外面と、内面と外面との間の電気絶縁体とを有する管状要素と、内面に結合され、各々が遠位端から遠ざかるように、近位端に向かう近位方向にオフセットされた1つ以上の内側電極と、外面に結合された1つ以上の外側電極と、コントローラであって、1つ以上の内側電極及び1つ以上の外側電極に結合され、エレクトロポレーションにより除去される組織のアブレーションを誘導する電界を発生させるように、1つ以上の内側電極の電圧及び1つ以上の外側電極の電圧を設定するように構成されたコントローラとを有し、該電界は、1つ以上の内側電極のうちの1つに接続された第1の電界線(field line)部分と、第1の電界線部分に接続された第2の電界線(field line)部分であって、管状要素の遠位端回りに屈曲する第2の電界線部分と、第2の電界線部分に接続され、且つ1つ以上の外側電極の1つに接続された第3の電界線(field line)部分とを含む、1つ以上の電界線を備える。
【0038】
1つ以上の実施形態において、1つ以上の内側電極のうちの1つである内側電極から、1つ以上の外側電極のうちの1つである外側電極に流れる電流の最短経路は、内側電極と外側電極との間の距離よりも長い。
【0039】
1つ以上の実施形態において、電気絶縁体は、誘電体を有する。
【0040】
1つ以上の実施形態において、誘電体は、窒化アルミニウムセラミックを有する。
【0041】
1つ以上の実施形態において、電気絶縁体の導電率は、0.1マイクロジーメンス/センチメートル未満である。
【0042】
1つ以上の実施形態において、コントローラは、さらに、1つ以上の内側電極の少なくとも1つと、1つ以上の外側電極の少なくとも1つとの間の電位差を5000ボルトよりも大きく設定するように構成される。
【0043】
1つ以上の実施形態において、コントローラは、さらに、除去される組織の膜回復時間の2倍未満であるパルス時間内に、1つ以上の内側電極及び1つ以上の外側電極の電圧を変更するように構成される。
【0044】
1つ以上の実施形態において、コントローラは、さらに、10ミリ秒以下の期間内に、1つ以上の内側電極及び1つ以上の外側電極の電圧を変更するように構成される。
【0045】
1つ以上の実施形態において、1つ以上の内側電極は、1つ以上の内側電極の最も遠い遠位点が管腔内に収まった状態で、それぞれ、遠位端から近位端に向かう近位方向にオフセットしている。
【0046】
本明細書に開示された発明は、その具体的な実施形態及び応用例によって説明されてきたが、特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって多数の修正及び変形がなされ得る。
【国際調査報告】