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特表2025-500109最適化された細胞培養培地と組み合わせてキャリアベースの生産プロセスを使用する腫瘍溶解性H-1プロトパルボウイルス(H-1PV)の大規模生産をさらにスケールアップする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】最適化された細胞培養培地と組み合わせてキャリアベースの生産プロセスを使用する腫瘍溶解性H-1プロトパルボウイルス(H-1PV)の大規模生産をさらにスケールアップする方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/00 20060101AFI20241226BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20241226BHJP
   C12M 3/00 20060101ALN20241226BHJP
   C12N 9/16 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
C12N7/00
C12N5/071
C12M3/00 A
C12N9/16 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518997
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2022076992
(87)【国際公開番号】W WO2023052429
(87)【国際公開日】2023-04-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512113803
【氏名又は名称】ドイチェス クレブスフォルシュンクスツェントルム
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】リュークス, バーバラ
(72)【発明者】
【氏名】フレフトマン, ヴェロニカ
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲル, マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルファース, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ファン, リン ミン フック
(72)【発明者】
【氏名】ブルネッカー, エイドリアン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029BB11
4B029BB13
4B065AA95X
4B065BB32
4B065BD18
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、大規模パルボウイルス産生、好ましくは腫瘍溶解性プロトパルボウイルスH-1(H-1PV)の上流最適化のための方法を提供する。本方法は、マイクロキャリアまたはマクロキャリアおよび懸濁液または固定床におけるそれぞれの使用、最適化された細胞培養培地ならびに培地交換戦略に基づいている。要約すると、最適化された細胞培養培地および新規の培地交換戦略を用いて、本発明者らは、播種された細胞密度および動物血清の減少を確立し、動物血清不含有回収物をもたらした。試験したキャリアは高H-1PV収率、細胞増殖およびビーズ間移動能力に最も適しており、本発明者らは、24ウェルプレートからエルレンマイヤーフラスコ、スピナーフラスコおよびiCellis ナノにプロセスをさらにスケールアップした。結論として、本発明は、高ウイルス収量で腫瘍溶解性プロトパルボウイルスH-1を産生しながら、同時に産生コストを低下させ、動物起源の望ましくない生成物を回避する大規模方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルボウイルスH-1(H-1PV)を産生する方法であって、
(a)産生細胞株NB-324Kを用意する工程と、
(b)前記NB-324K細胞を適切な条件下で増殖させることによって、シードトレインを産生する工程と、
(c)播種時点で、2%動物血清を補足した動物成分不含有細胞培養培地、およびマイクロキャリアまたはマクロキャリアを含む培養容器を用意する工程と、
(d)工程(b)の前記NB-324K細胞を工程(c)の培養容器に播種する工程と、
(e)前記NB-324K細胞を細胞増殖する工程と、
(f)感染時点で、マイクロキャリアまたはマクロキャリアを含む動物成分不含有細胞培養培地で100%培地交換する工程であって、前記動物成分不含有細胞培養培地に1%動物血清が補足されているか、または動物血清が補足されていない、工程と、
(g)感染3~8日後、0.1~1%Tween(登録商標)80を含むか、または含まない、1~100mM Tris、1~10mM MgCl、2.5~10% TrypLE(商標)、pH9~10を含む溶解緩衝液を用いて前記NB-324K細胞を回収し、溶解緩衝液を撹拌し、続いて1~100mM Tris、1~10mM MgCl、pH9~10を含む洗浄緩衝液で洗浄する工程であって、前記溶解緩衝液および洗浄緩衝液が一緒にプールされる工程と、
(h)濾過によって前記パルボウイルス回収物の不純物を除く工程と、
(i)カプセル化されていないウイルスDNAおよび混入した宿主細胞DNAをDNase処理によって除去する工程と、
(j)緩衝液交換および濃縮のためにタンジェンシャルフロー濾過を行う工程と、
(k)空の粒子および大部分の不純物を除去するために陰イオン交換クロマトグラフィーを行う工程と、
(l)0~3%ビジパークおよび97~100%リンゲル液への緩衝液交換および濃縮のためにタンジェンシャルフロー濾過を行う工程と、
(m)48%ビジパーク/リンゲル液の最終生成物にする工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程(g)において、前記溶解緩衝液が、25mM Tris、5mM MgCl、5%TrypLE(商標)、pH10を含み、COを含まず、40℃で1時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(g)において、前記洗浄工程が25mM Tris、5mM MgCl、pH10を含む緩衝液で行われ、工程(g)が、25mM Tris、5mM MgCl、2.5%TrypLE(商標)を含み、0.25%Tween(登録商標)80を含むか、または含まない緩衝液をもたらす、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロキャリアが、Cytodex(登録商標)1または付着増強CellBIND(登録商標)(EA)などの、マトリックス全体にわたって分布した正に荷電したDEAE(N,N-ジエチルアミノエチル)基を有する架橋デキストランマトリックスである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記マクロキャリアが、ポリプロピレンおよびポリエステル不織繊維(Fibra-Cel(登録商標))または不織の親水化ポリエチレンテレフタレート(PET)マクロキャリア(iCELLis(登録商標))である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記NB-324K細胞が、工程(d)で播種および感染が起こる場合には、2.0×10~5.0×10細胞/cmの播種細胞密度で播種されるか、または工程(e)の細胞増殖2~6日後に感染が起こる場合には、5.0×10~8.0×10細胞/cmの播種細胞密度で播種される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記動物血清が、熱失活したウシ胎仔血清(FBS)である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
動物血清を補足していない第2の100%培地交換が工程(f)の後に行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(f)における100%培地交換の培地が、1%FBSが添加されているか、またはFBSが添加されておらず、前記第2の100%培地交換の培地が、FBSが添加されていない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の100%培地交換が、感染1~3日後に行われる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記動物成分不含有細胞培養培地が、16~22mMグルコース、3~5mMグルタミン、0.1~0.6mMグルタミン酸、0.5~1.0mM乳酸、0.3mM未満のアンモニウムおよび3~10μg/μlタンパク質を含むウイルス産生無血清培地(VP-SFM(商標))である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記動物成分不含有細胞培養培地が、VP-SFM(商標)であり、4mM L-グルタミンが添加されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、前記シードトレイン中5%FBSで開始される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞溶解が、Tween(登録商標)80を含むか、または含まない、Tris、MgClおよび組換え細胞解離酵素TrypLE(商標)、pH10を含む緩衝液で行われる、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、懸濁培養または固定層バイオリアクターのために使用される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大規模パルボウイルス生産、好ましくは腫瘍溶解性プロトパルボウイルスH-1(H-1PV)の上流最適化方法を提供する。本方法は、マイクロキャリアまたはマクロキャリアおよび懸濁液または固定床におけるそれぞれの使用、最適化された細胞培養培地ならびに新規の培地交換戦略に基づいている。要約すると、最適化された細胞培養培地および新規の培地交換戦略を用いて、本発明者らは、播種された細胞密度および動物血清の減少を確立し、動物血清不含有回収物をもたらした。試験したキャリアは高H-1PV収率、細胞増殖およびビーズ間移動能力に最も適しており、本発明者らは、エルレンマイヤーフラスコ、スピナーフラスコおよびiCellis ナノ中の産生物をさらに試験した。結論として、本発明は、高ウイルス収量で腫瘍溶解性プロトパルボウイルスH-1を産生しながら、同時に産生コストを低下させ、動物起源の望ましくない生成物を回避する大規模方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(WHO)によると、癌は、2018年には世界中で2番目に多い死因であり、推定960万人が死亡した。癌に関連する経済損失は顕著であって増大しており、2010年だけで合計約1兆1600億ドルになる(Stewart 2014)。ウイルス(OV)療法は、この疾患を治療するための有望なアプローチである。OVは、健康な組織を害することなく癌細胞を選択的に破壊する、遺伝子改変されたまたは天然起源のウイルスである(Fukuhara 2016)。2015年には、最初のOV治療薬(T-VECまたはImlygic(商標))がFDAによって承認され、続いてしばらくしてからEMAによって承認された。異なるウイルスプラットフォームに基づく他のOV治療薬(https://webs.iiitd.edu.in/raghava/ovirustdb/clinical.php)も開発パイプラインにある。
【0003】
OV薬剤「ParvOryx(登録商標)」は、パルボウイルス科パルボウイルス亜科のプロトパルボウイルス属に属する野生型パルボウイルスH-1PVを利用している(Cotmore 2014)。このウイルスは、様々な培養細胞株、動物実験(Rommelaere 2010;Nuesch 2012)およびいくつかのヒト腫瘍種に対する異種移植片モデル(Geletneky 2010;Faisst 1998;Angelova 2009b;Dupressoir 1989;Angelova 2009a)における、臨床前のプルーフ・オブ・コンセプト試験中に腫瘍溶解特性および腫瘍抑制特性を示した。H-1PVはまた、第I/IIa相臨床試験(Geletneky 2012;Geletneky 2017)および第II相試験(Hajda 2021)で安全性および免疫原性活性を示した。
【0004】
したがって、腫瘍溶解性プロトパルボウイルスH-1PVによる患者の治療は、いくつかの種類の癌に対する臨床試験で有望な結果を示している(Hajda 2021;Geletneky 2017)。しかしながら、将来のH-1PVの市場放出に備え、培養培地と産生プロセスを堅牢かつ制御された大規模なものに適合させ、最適化する必要があり、すなわち、撹拌速度、通気、播種細胞密度、感染時期、感染の多重度、回収時期、回収戦略などのシステムパラメータに応じたものである。
【0005】
したがって、例えば、産生細胞株NB-324Kを使用してパルボウイルス粒子を産生する方法に関する欧州特許第3313987号を参照し、この方法では、大規模ウイルス産生のために動物成分を含む細胞培養培地を使用する。動物由来成分などの不要な汚染物質を除去するために、改良された感染性粒子の精製が導入され、この精製は、1回目はPBS中、2回目はリンゲル中で、2回続くイオジキサノール密度勾配超遠心工程に基づいている。さらに、欧州特許出願EP17771376.5には、主に動物成分不含有細胞培養培地VP-SFM(商標)に基づくパルボウイルス産生のためのさらに最適化されたプロセスにより、NB-324K細胞により産生されたパルボウイルスの産生および精製がより容易かつ費用効果的に行えることが記載されている。
【0006】
しかしながら、いずれのアプローチも、高ウイルス収量で腫瘍溶解性プロトパルボウイルスH-1を産生しながら、同時に産生コストを低下させ、動物起源の望ましくない生成物を回避する大規模方法を提供するものではなかった。
【0007】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、パルボウイルスの大規模産生をさらに最適化することである。
【0008】
この解決策は、特許請求の範囲に記載された実施形態を提供することによって達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
腫瘍溶解性プロトパルボウイルスH-1PVによる患者の治療は、いくつかの種類の癌に対する臨床試験で有望な結果を示している(Hajda 2021;Geletneky 2017)。これらのデータは、大規模バイオリアクターシステムでH-1PVを産生した最初の結果を示している。しかしながら、このプロセスは、撹拌速度、通気、播種細胞密度、感染時期、感染の多重度、回収時間などのシステムパラメータに応じて適合させ、最適化する必要がある。
【0010】
最初に、先に述べた細胞培養培地は、細胞増殖、代謝、および増殖を刺激するために不可欠であるとして、動物血清の補足を必要とする。したがって、細胞培養におけるウシ胎児血清(FBS)などの動物血清の添加は依然として一般的であるが、品質、ロット間の再現性、動物福祉、供給、コスト(vanderValk2018)、将来的な規制上の制限の可能性などの点で問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の方法は、FBS不含有パルボウイルス産生に適した最適化培養培地VP-SFM(商標)(Liu 2017;Rourou 2007;Martinez 2020)、および同等のウイルス収量でFBS不含有回収のために必要なFBS量を最大80%減少させるための少なくとも2段階の培地交換戦略を使用する。培地交換を追加し、例えばFBSを2%から1%へ、および0%へと3段階に減少させることで、2%から0%へのFBS減少およびその後の2回目の0%へのFBS減少と比較して、約0.3logの産生量増加が達成され、必要なFBSを最大40%減少させることができた。本発明をもたらす実験において少なくとも2段階の培地交換戦略を適用することにより、好ましくは3段階の培地交換戦略を適用することにより、FBS不含有回収物で高いウイルス産生収量および下流プロセスのためのより少ない不純物が達成することができた。
【0012】
さらに、本発明による方法、より具体的には非同時の播種および感染プロセスを使用して、播種密度を7.9E3細胞/cmから5.0E3細胞/cmに低減することができ、一方でVP-SFM(商標)に適応させた後の同様のウイルス収量が維持された。このようにして、増殖時間を短縮することができ、シードトレインに必要な資源がより少なくなるため、細胞産生コストを低下させることができた。
【0013】
さらに、従来技術では、産生細胞株NB-324Kなどの付着細胞を用いた大規模H-1PV産生のために、懸濁培養のためのマイクロキャリアまたは固定床バイオリアクターのためのマクロキャリアを使用することが一般的である。大規模産生方法では、過去に用いられた凍結融解サイクルの実施は困難であり、そのため、本発明の方法は、トリプシン処理工程および凍結融解サイクルを必要とせずに実施される。代わりに、本発明者らは、以前に、Triton(登録商標)X-100(重要な成分:2-[4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノール)ベースの化学的細胞溶解を導入した。Triton(登録商標)X-100による溶解では、様々なマイクロキャリアおよびマクロキャリアで満足のいく産生収量が達成されている。しかしながら、現在、界面活性剤Triton(登録商標)X-100は、規制当局(https://echa.europa.eu/authorisation-list)によって環境毒性であると考えられている。したがって、本発明の一実施形態では、Tris、MgClおよび組換え細胞解離酵素TrypLE(商標)をTween(登録商標)80と共に含有する溶解緩衝液を代替溶解緩衝液として試験し、なぜなら、この緩衝液はTriton(登録商標)X-100緩衝液よりも環境に優しく、また、ウイルス収量に悪影響を及ぼすことなく溶解緩衝液のレシピからTween(登録商標)80を省略することができるからである。
【0014】
本発明をもたらす実験において、いくつかのマイクロキャリアおよびマクロキャリアを試験した。最初に、本発明の一実施形態では、マトリックス全体にわたって分布した正に荷電したDEAE(N,N-ジエチルアミノエチル)基を有する架橋デキストランマトリックスである固体マイクロキャリアCytodex(登録商標)1は、大規模産生または付着増強CellBIND(登録商標)(EA)マイクロキャリアによく適していることが見出されている。付着増強CellBIND(登録商標)(EA)マイクロキャリアは、ポリスチレン表面に組み込まれた酸素含有官能基のために負の表面電荷を有する。これらのマイクロキャリアは、細胞増殖およびウイルス産生の間に有望なビーズ間細胞移動能力を示した。現在まで、Cytodex(登録商標)1は、アデノウイルスおよびレトロウイルス(Wu 2002)、ワクシニアウイルス(Liu 2017)、ならびにインフルエンザウイルスA(Tree 2001)について報告されている。
【0015】
本発明の方法の代替的な実施形態は、ポリプロピレンおよびポリエステル不織繊維(Fibra-Cel(登録商標))または不織の親水化ポリエチレンテレフタレート(PET)マクロキャリア(iCELLis(登録商標))によって表され、なぜなら、それらを使用することによって懸濁培養において良好な産生収量がもたらされ、これらのマクロキャリアはまた、より高い収率が達成され得る固定床バイオリアクターのために設計されるからである。
【0016】
要約すると、本発明をもたらす実験において、本発明者らは、細胞培養培地を最適化し、新しい培地交換戦略を適用した。最後に、本発明者らは、播種細胞密度および動物血清の補足の減少を確立し、動物成分不含有回収物をもたらした。したがって、増殖時間および不純物の量を減少させることができ、シードトレインに必要な資源がより少なくなったため、細胞産生コストを低下させることができた。さらに、本発明者らは、高いH-1PV収量、細胞増殖、およびビーズ間移動能力に最も適したマイクロキャリアおよびマクロキャリアを試験し、24ウェルプレートからエルレンマイヤーフラスコおよびスピナーフラスコへとプロセスを首尾よくスケールアップし、マイクロキャリアを含む大型の撹拌タンクバイオリアクターまたは固定床バイオリアクター、例えば、iCELLis(登録商標)500mにおける産生が有望であると考えられる。
【0017】
要約すると、本発明は、パルボウイルスH-1を産生する方法であって、
(a)産生細胞株NB-324Kを用意する工程と、
(b)NB-324K細胞を適切な条件下で増殖させることによって、シードトレインを産生する工程と、
(c)播種時点で、2%動物血清を補足した動物成分不含有細胞培養培地、およびマイクロキャリアまたはマクロキャリアを含む培養容器を用意する工程と
(d)工程(b)のNB-324K細胞を工程(c)の培養容器に播種する工程と、
(e)NB-324K細胞を細胞増殖する工程と、
(f)感染時点で、マイクロキャリアまたはマクロキャリアを含む動物成分不含有細胞培養培地で100%培地交換する工程であって、動物成分不含有細胞培養培地に1%動物血清が補足されているか、または動物血清が補足されていない、工程と、
(g)感染3~8日後、0.1~1%Tween(登録商標)80を含むか、または含まない、1~100mM Tris、1~10mM MgCl、2.5~10%TrypLE(商標)、pH9~10を含む溶解緩衝液を用いてNB-324K細胞を回収し、溶解緩衝液を撹拌し、続いて1~100mM Tris、1~10mM MgCl、pH9~10を含む洗浄緩衝液で洗浄する工程であって、溶解緩衝液および洗浄緩衝液が一緒にプールされる工程と、
(h)濾過によってパルボウイルス回収物の不純物を除く工程と、
(i)カプセル化されていないウイルスDNAおよび混入した宿主細胞DNAをDNase処理によって除去する工程と、
(j)緩衝液交換および濃縮のためにタンジェンシャルフロー濾過を行う工程と、
(k)空の粒子および大部分の不純物を除去するために陰イオン交換クロマトグラフィーを行う工程と、
(l)0~3%ビジパークおよび97~100%リンゲル液への緩衝液交換および濃縮のためにタンジェンシャルフロー濾過を行う工程と、
(m)48%ビジパーク/リンゲル液の最終生成物にする工程と
を含む方法。
【0018】
好ましい一実施形態では、工程(g)において、溶解緩衝液は、25mM Tris、5mM MgCl、5%TrypLE(商標)、pH10を含む。
【0019】
別の好ましい実施形態では、工程(g)において、洗浄工程は、25mM Tris、5mM MgCl、pH10を含む緩衝液で行われ、工程(g)は、25mM Tris、5mM MgCl、2.5%TrypLE(商標)を含み、0.1~1%Tween(登録商標)80、好ましくは0.25%未満のTween(登録商標)80を含むか、または含まない緩衝液をもたらす。
【0020】
別の好ましい実施形態では、工程(g)において、溶解緩衝液での処理は、70rpmで振盪されるか、またはバイオリアクター内で循環されるCOを伴わずに(w/o)、40℃で1時間実施され、洗浄緩衝液での処理は、70rpmで振盪されるか、またはバイオリアクター内で循環されるCOを伴わずに1分間実施される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】VP-SFM(商標)培地を使用したプロセスタイムラインおよびFBS含有量の概要を示す図である。
図2】5%FBSまたは2段階FBS減少スキームを用いた同様のH-1PV特異的ウイルス収量を示す図である。ここで、3.6E4 NB-324K細胞/cmを、5%または2%FBSを添加したVP-SFM(商標)培地に播種した。3日間の細胞増殖後、0.05のMOIでの感染、および5%または0%FBSでの100%培地交換を行った。感染4日後に細胞を回収し、溶解した。
図3】VP-SFM(商標)を使用した3段階FBS減少によるH-1PV特異的ウイルス収量のブーストを示す図である。ここで、5E3 NB-324K細胞/cmを2%FBSに播種した。3日間の細胞増殖後、1%または0%FBSのいずれかへの第1の100%培地交換を行い、0.01のMOIでの感染を、3~5日目の産生期Iに対して行った。感染2日後、第2の100%培地交換を、5日目~7日目の産生期IIに対してFBSなしで実施した。感染4日後の7日目に細胞を回収し、溶解した。
図4】Triton(登録商標)X-100プロセス、ウイルスTris(VT)緩衝液中での凍結融解プロセス、および0.25%Tween80を含むか、または含まず、2.5%TrypLE pH10を含むか、または含まない、および25mM Tris、5mM MgClを用いた回収物の比較を示す図である。NB-324K細胞を175cmのフラスコに5E3細胞/cm、2%FBSを含むVP-SFM(商標)で3日間播種し、次いで0%FBSを含むVP-SFM(商標)に100%培地交換し、0.05のMOIで感染させた。感染4日後、細胞を溶解の前に1×PBSで洗浄し、異なる溶解方法で回収した。
図5】コンフルエントになったマイクロキャリアと添加したばかりのマイクロキャリア間の細胞ブリッジの顕微鏡観察を示す図である。a:付着増強(10×);b:Cytodex(登録商標)1(10×);スケールバー=200μm
図6a】様々なキャリアを用いたH-1PV特異的ウイルス収量スクリーニングを示す図である。ここで、4E4 NB-324K細胞/cmを24ウェルプレートに各キャリアの増殖面積10cm/ml(iCは11.2cm/ml)で播種し、100rpmで振盪した。感染4日後に細胞を回収し、溶解した。
図6b】様々なキャリアを用いたビーズ間移動後のH-1PV特異的ウイルス収量スクリーニングを示す図である。2E4[黒塗り]または4E4[斜線]NB-324K細胞/cmを24ウェルプレートに各マイクロキャリアの増殖面積5cm/mlで播種し、100rpmでオービタル振盪した。3日間の細胞増殖後、細胞を0.01のMOIで感染させ、新しい培地に新しいマイクロキャリアを加えることで増殖表面と培地量を2倍にし、その後1:2に分割して培地量およびマイクロキャリア密度の開始条件に戻した。感染後4日目に細胞を回収し、溶解した。感染4日後に細胞を回収し、溶解した。
図7】最も優れたマイクロキャリアおよびマクロキャリアのスケールアップ後のH-1PV特異的ウイルス収量を示す図である。ここで、2E4 NB-324K細胞/cmを10cm/mlの増殖面積(a:マイクロキャリアEAまたはCD1;b:マクロキャリアiCまたはFC)に125mlエルレンマイヤーフラスコ[黒塗り]あたり40mlまたはスピナーフラスコ[斜線]あたり100mlのVP-SFM(商標)で播種した。播種は、40rpmで1分、続いて0rpmで30分のサイクルを4回繰り返し、合計播種時間は2時間とした。次いで、撹拌は、エルレンマイヤーフラスコでは30~100rpm、またはスピナーフラスコでは40rpmに設定した。3日間の細胞増殖後、細胞を0.01のMOIで感染させ、培地の50%を新しい培地で交換した。感染4日後に細胞を回収し、溶解した。
図8】異なる固定床およびそれぞれのTflaskランコントロールを用いたiCELLis(登録商標)ナノにおけるH-1PV特異的ウイルス収量を示す図である。別々のバイオリアクター運転において、iCELLis(登録商標)ナノ固定床[黒塗り]およびTflaskランコントロール[斜線]に5E3細胞/cm(0.53m)または9E3細胞/cm(4m)を播種した。VP-SFM(商標)細胞増殖培地による3日の細胞増殖後、1回目の100%培地交換をVP-SFM(商標)感染培地に行い、0.01のMOIでの感染を3日目から5日目までの産生期Iに対して行った。感染2日後、2回目の100%培地交換を、FBS不含有VP-SFM(商標)培地で5日目から7日目の産生期IIに対して行った。感染4日後の7日目に細胞を回収し、溶解した。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の根底にある技術的問題は、腫瘍溶解性プロトパルボウイルス産生、好ましくはH-1PVの大規模産生をさらに最適化することであり、なぜなら、現在利用可能などのアプローチも、高ウイルス収量でH-1PVを産生しながら、同時に産生コストを低下させ、動物起源の望ましくない生成物を回避する大規模方法を提供していないからである。
【0023】
ウイルス収量を増加させながら、産生コストを低下させ、動物起源の望ましくない生成物を回避するために、本発明をもたらす実験において、播種および感染の間に5%FBSを添加した動物成分不含有細胞培養培地VP-SFM(商標)を、播種の間に2%FBS添加し、感染の間に0%FBSを添加したVP-SFM(商標)と比較した。
【0024】
この点において、「細胞培養」という用語は、人口のインビトロ環境での細胞の維持を意味する。本発明の培地を使用して、付着性哺乳動物細胞、すなわち、培養容器に付着する細胞、好ましくは上皮細胞、例えばサルウイルス40で形質転換されたヒト新生児腎臓細胞(NB-324K)(Tattersall 1983)を培養することができ、「産生細胞株」を表す。
【0025】
「培養」または「増殖」という用語は、細胞の活性状態または静止状態での増殖、分化または継続的な生存に有利な条件下でのインビトロでの細胞の維持を意味する。
【0026】
「細胞培養培地」という用語は、細胞を培養するための栄養溶液を指す。
【0027】
「成分」という用語は、化学的起源であれ生物学的起源であれ、細胞増殖の成長を維持または促進するために細胞培養培地中で使用され得る任意の化合物を指す。「構成成分」、「栄養素」および「成分」という用語は、交換可能に使用することができ、全てこのような化合物を指すことを意味する。細胞培養培地に使用される典型的な成分としては、グルコース、グルタミン、グルタミン酸、増殖因子、インスリンおよびタンパク質が挙げられる。
【0028】
「動物成分不含有」または「無血清」培地という用語は、動物血清不含有培地である。無血清培地は、いずれも血清を含む低血清培地および本質的に無血清の培地と区別される。より具体的には、「血清」むしろ「動物血清」という用語は、例えば熱失活したウシ胎仔血清(FBS;Biowest、フランス)を指す。
【0029】
本発明のプロセスは、グルコース、グルタミン、グルタミン酸、タンパク質(例えば増殖因子、インスリンなど)の成分を含む「動物成分不含有細胞培養培地」を使用し、この培地は、H-1PVの産生のために、インビトロで上皮細胞、好ましくはNB-324K細胞の培養を支持することができる。
【0030】
本発明の培地は、ヒト上皮細胞、好ましくはNB-324K細胞を高密度に増殖させるため、および/またはパルボウイルス産生を増加させるために使用することができる。好ましい一実施形態では、本発明のプロセスは、16~22mMグルコース、3~5mMグルタミン、0.1~0.6mMグルタミン酸、0.5~1.0mM乳酸、0.3mM未満のアンモニウムおよび3~10mg/mlのタンパク質を含み、動物成分不含有細胞培養培地を使用し、この培地は、H-1PVの産生のためにNB-324K細胞の培養を支持することができる。
【0031】
好ましくは、動物成分不含有細胞培養培地は、17~20mMグルコース、約4mMグルタミン、約0.15~0.5mMグルタミン酸、約0.7mM乳酸、0.2mM未満のアンモニウムおよび4~8mg/mlのタンパク質、例えば補充物、上皮増殖因子およびインスリンを含む。
【0032】
特定の好ましい一実施形態では、動物成分不含有細胞培養培地は、19.14mMグルコース、4.25mMグルタミン、0.174mMグルタミン酸、0.669mM乳酸、0.05mM未満のアンモニウムおよび約5mg/mlのタンパク質を含む。これらのタンパク質としては、EGF、インスリンおよびタンパク質性補充物が挙げられる。この培地は、VP-SFM(商標)(Thermofisher、米国)と呼ばれる。
【0033】
したがって、本発明によれば、NB-324K細胞をVP-SFM(商標)培地で培養する。より具体的な実施形態では、NB-324K細胞を5%CO雰囲気中、37℃で培養する。
【0034】
更なる一実施形態では、細胞培養培地には、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および3~5mM L-グルタミンを添加する(Thermofisher、米国)。最後に、4mMグルタミンを添加したVP-SFM(商標)培地は、より高い濃度がウイルス収量の増加をもたらさず、したがって、産生コストを低下させるので、好ましい(表1を参照されたい)。
【0035】
【表1】
【0036】
本発明をもたらす実験では、NB-324K細胞は、0%、1%、2%、または5%FBSを含むVP-SFM(商標)培地で培養されたが(表1を参照されたい)、産生のために5%または2%FBSを添加して播種した。同様のウイルス収量が、播種のために2%FBSを添加し、産生のために0%FBSを添加したVP-SFM(商標)と比較して、播種および産生のために5%FBSを添加したVP-SFM(商標)で示された(図2を参照されたい)。したがって、本発明によれば、2%FBSを添加したVP-SFM(商標)培地が好ましく、本発明の方法は、好ましくは、シードトレイン中の5%FBSで開始する。上記ですでに述べたように、播種時に2%FBSを添加し、感染時に0%FBSを添加したVP-SFM(商標)培地は、5%FBS添加と比較して好ましく、なぜなら同様のウイルス収量をもたらし、FBSの量を80%まで減少させるからである(図2を参照されたい)。したがって、高ウイルス収量でH-1PVを産生するための本明細書に記載の方法を適用することにより、産生コストを低下させることができ、同時に動物起源の望ましくない生成物を回避する。
【0037】
本発明の方法におけるウイルス感染に関して、野生型H-1PVのウイルスストックを使用して、好ましくは、NB-324K細胞を感染させ、より好ましくは、細胞あたり0.5~5×10プラーク形成単位(PFU)、むしろ細胞あたり0.01または0.05PFU(PFU/細胞)MOIで感染させる。本発明によれば、NB-324K細胞は播種時にH-1PVに感染させる(「同時の」播種・感染)か、あるいはNB-324K細胞の細胞増殖を開始してから2~6日後、好ましくは3~6日目にH-1PVに感染させる(「非同時の」播種・感染)。
【0038】
本発明の特定の一実施形態では、NB-324K細胞を2.0×10~5.0×10細胞/cmの細胞密度でパルボウイルスに感染させ、感染時期(TOI)は、播種時(「同時の」播種および感染)または2~6日間の細胞増殖後、好ましくはNB-324K細胞の細胞増殖が開始してから3~6日後(「非同時の」播種および感染)のいずれかである。
【0039】
同時の播種および感染のために、本発明のNB-324K細胞を、2%動物血清を補足した動物成分不含有細胞培養培地(動物成分不含有細胞培養培地はVP-SFM(商標)培地である)が予め敷かれた培養容器に播種する。本発明の特定の一実施形態では、NB-324K細胞を2.0×10~5.0×10細胞/cm、好ましくは4.0×10細胞/cmの細胞密度で感染させる。さらに特定の実施形態では、感染3~5日後、好ましくは感染4日後に細胞を回収する。
【0040】
非同時の播種および感染のために、本発明のNB-324K細胞を、2%動物血清を補足した動物成分不含有細胞培養培地(動物成分不含有細胞培養培地はVP-SFM(商標)培地である)が予め敷かれた培養容器に播種する。具体的な実施形態では、本発明者らは、次いで、2~6日間、好ましくは3~6日間、細胞を増殖させた(「細胞増殖」)。2~6日間の細胞増殖後、好ましくは3~6日後、2%動物血清を補足した動物成分不含有細胞培養培地を、0%、1%または2%FBS、好ましくは0%または1%FBSを添加した新しい動物成分不含有細胞培養培地(新しい動物成分不含有細胞培養培地はVP-SFM(商標)培地である)(「2-0-0%FBS」および「2-1-0%FBS」戦略)と完全に交換する(「100%培地交換」)。同時に、NB-324K細胞を野生型H-1PVのウイルスストックで感染させる。好ましい一実施形態では、0.5×10~5×10PFU/細胞、むしろ0.01または0.05PFU/細胞のMOIでパルボウイルスに細胞を感染させる。本発明の特定の一実施形態では、5.0×10~8.0×10細胞/cm、好ましくは5.0×10または8.0×10細胞/cm、より好ましくは5.0×10細胞/cmの細胞密度でNB-324K細胞を播種する。好ましい一実施形態では、野生型H-1PVのウイルスストックは、100%培地交換の新しい動物成分不含有細胞培養培地に含まれる。したがって、非同時の播種および感染のために、TOIは、2~6日間の細胞増殖後、好ましくはNB-324K細胞の細胞増殖が開始された後3~6日目である。具体的な実施形態では、感染後2日目に0%FBSへの別の培地交換を行い、感染3~5日後、好ましくは感染4日後に細胞を回収する(図1を参照されたい)。
【0041】
同時および非同時の播種および感染プロセスを比較すると、播種密度が2.0×10~5.0×10細胞/cmから5.0×10~8.0×10細胞/cmに減少するので、本発明によれば非同時の播種および感染プロセスが好ましい。非同時の播種および感染プロセスでVP-SFM(商標)培地を適合することによって、播種密度を8.0×10から5.0×10細胞/cmに再び減少させることができたので、非同時の感染が好ましい。このようにして、細胞増殖が抑えられ、シードトレインに必要な資源が少なくなり、産生コストが下がる。
【0042】
動物起源の望ましくない生成物を回避するために、本発明者らは、1つまたは2つの100%培地交換を使用する2段階FBS低減戦略と3段階FBS低減戦略を比較して、図1は、全ての培地交換戦略である「5-5%FBS」、「2-0%FBS」、「2-1-0%FBS」および「2-0-0%FBS」戦略の概要を示している。
【0043】
本発明によれば、全ての戦略は、好ましくはNB-324K細胞の培養または増殖のための方法から開始し、これは、シードトレイン中で5%FBSを用いて増殖させ、次いで、2%動物血清を補足した動物成分不含有細胞培養培地が予め敷かれた培養容器に移し、2~6日間、好ましくは3~6日間増殖させる。2~6日間、好ましくは3~6日間の細胞増殖後、100%培地交換を1回行う。すでに上述したように、感染時期(TOI)は、播種時か、または2~6日間、好ましくは3~6日間の細胞増殖後、すなわち100%培地交換と同時でない時期である。100%培地交換を0%、1%または2%FBS、好ましくは0%または1%FBSを添加した新しい動物成分不含有細胞培養培地(新しい動物成分不含有細胞培養培地はVP-SFM(商標)培地である)で行う(図3の「2-0-0%FBS」または「2-1-0%FBS」戦略を参照されたい)。2段階プロセスを適用して、例えば0%FBS(2-0%FBS)で感染させた場合、本発明者らは、全プロセスにわたって5%FBS添加(5-5%FBS)と同程度のウイルス収量が得られることを検出した(図2を参照されたい)。したがって、本発明によれば、本方法は、0%FBSを添加した新しい動物成分不含有細胞培養培地との少なくとも1回の100%培地交換で行われる。
【0044】
3段階戦略では、播種後2~6日目、好ましくは3~6日目、あるいはむしろ細胞増殖を開始してから、0%または1%FBSを添加した新しい動物成分不含有細胞培養培地による1回の100%培地交換に続いて、感染後1~3日目、好ましくは2日目に、FBSを添加していない新しい動物成分不含有細胞培養培地による別の100%培地交換を行った(「2-1-0%FBS」または「2-0-0%FBS」)。3段階戦略の2-1-0%FBSを適用すると、2-0-0%FBS戦略と比較して、約0.3log PFU/cmの増加が示され(図3参照)、したがって、本発明では2-1-0%FBS戦略が好ましい。要約すると、2-1-0%FBS戦略を適用することにより最も高いウイルス収量が達成され、本明細書で特許請求されているような方法でのFBSの枯渇は実現可能である。
【0045】
したがって、本発明の方法は、好ましくは、FBS不含有産生に適した最適化培養培地VP-SFM(商標)、および同等のウイルス収量でFBS不含有回収のために必要なFBS量を最大80%減少させるための少なくとも2段階の培地交換戦略を使用する。感染後2日目に培地交換を追加し、FBSを2%から1%へ、および0%へと3段階に減少させることで、約0.3logの産生量増加が達成され、必要なFBSを最大40%減少させることができた。本発明をもたらす実験においてこの戦略を適用することにより、FBS不含有回収物で高いウイルス産生収量および下流プロセスのためのより少ない不純物を達成することができた。
【0046】
足場依存性産生細胞株NB-324Kなどの付着細胞を用いた大規模なH-1PV産生を単純化するために、本発明者らはキャリアを用いた。好ましい一実施形態では、マイクロキャリアは懸濁培養のために用意され、マクロキャリアは固定床バイオリアクターのために意図される。したがって、本発明における「キャリア」という用語は、両方のシステムが議論される場合に使用される。本発明によるマイクロキャリアおよびマクロキャリアの特徴付けを、それぞれ表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
本発明による同時の播種および感染のために、本発明者らは、マイクロキャリアまたはマクロキャリアを、好ましくは2%動物血清を補足した動物成分不含有細胞培養培地中に予め敷いた培養容器を用意した。その後、本発明の方法は、前述のように実行される。したがって、ごく簡単に言えば、シードトレインに5%FBSを添加して増殖させたNB-324K細胞を、2%動物血清を補足した動物成分不含有細胞培養培地とマイクロキャリアまたはマクロキャリアを予め敷いた培養容器に添加し、野生型H-1PVのウイルスストックを使用して、NB-324K細胞に、好ましくは0.5×10~5×10PFU/細胞、むしろ0.01または0.05PFU/細胞のMOIで感染させる。本発明によれば、NB-324K細胞を播種し、2.0×10~5.0×10細胞/cm、好ましくは4.0×10細胞/cmの細胞密度でパルボウイルスに感染させ、感染後3~5日目に、好ましくは感染後4日目に細胞を回収する。
【0049】
同時の播種および感染のために、本発明者らは、ウェルあたりに添加される、約8~12cm、好ましくは約9.5~11.5cm、より好ましくは10cmまたは11.3cmのキャリアの添加を提案する。
【0050】
非同時の播種および感染のために、本発明者らは、マイクロキャリアまたはマクロキャリアを、2%動物血清を補足した、好ましくは動物成分不含有細胞培養培地中に予め敷いた培養容器を用意した。その後、本発明の方法は、前述のように実行される。したがって、ごく簡単に言えば、シードトレインにおいて5%FBSで増殖させたNB-324K細胞を、2%動物血清を補足した動物成分不含有細胞培養培地とマイクロキャリアまたはマクロキャリアを予め敷いた培養容器に添加する。本発明によれば、本発明者らは、次いで、2~6日間、好ましくは3~6日間、細胞を増殖させる(「細胞増殖」)。2~6日間の細胞増殖後、好ましくは3~6日後、2%動物血清を補足した動物成分不含有細胞培養培地を、1%FBSおよび新鮮なマイクロキャリアを添加した新しい動物成分不含有細胞培養培地と、好ましくは総増殖面積が2倍になるように、完全に交換する(「100%培地交換」)。別の好ましい実施形態では、野生型H-1PVのウイルスストックはまた、100%培地交換の新しい動物成分不含有細胞培養培地に含まれる。したがって、非同時の播種および感染のために、感染時期(TOI)は、2~6日間の細胞増殖後、好ましくはNB-324K細胞の細胞増殖が開始された後3~6日目である。0%FBSへの培地交換は、細胞感染後1~3日目、好ましくは細胞感染後2日目に行う。具体的な実施形態では、TOI3~5日後、すなわち感染後、好ましくは感染4日後に細胞を回収する(図1を参照されたい)。
【0051】
非同時の播種および感染のために、本発明者らは、ウェルあたり約4~6cm、好ましくは5cmのキャリアを添加することを提案する。
【0052】
上記ですでに述べたように、本発明によるマイクロキャリアおよびマクロキャリアの特徴付けを、それぞれ表2に示す。多孔性Cytopore(商標)1およびCytopore(商標)2を除いて、全てのマイクロキャリアが満足のいく細胞増殖を示した。さらに、全てのマイクロキャリアは、細胞増殖およびウイルス産生の間に有望なビーズからビーズ間移動能力を示し、新鮮なマイクロキャリアを添加することにより、トリプシン処理工程をスキップする更なる細胞増殖を可能にする。
【0053】
したがって、本発明によれば、トリプシン処理を伴わないビーズ間移動の能力は、スケールアップされたシードトレインにおける良好な細胞増殖能力を示唆するので、多孔性でないマイクロキャリアが使用されることが好ましい。
【0054】
好ましいキャリアを見出すために、播種およびプロセス撹拌、キャリア密度、細胞播種密度、MOI、TOI、ビーズ間移動の有無、容器あたりの細胞培養容量、ならびに培地交換計画などの広範囲のパラメータを試験した(表3および4)。好ましいキャリア選択のためのキャリア上のウイルス産生の結果を図6aおよびbに要約する。
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
したがって、本発明の好ましい一実施形態では、マイクロキャリアは、マトリックス全体にわたって分布した正に荷電したDEAE(N,N-ジエチルアミノエチル)基を有する架橋デキストランマトリックス(Cytodex(登録商標)1;CD1)である。本発明の別の好ましい実施形態では、マイクロキャリアは、「付着増強CellBIND(登録商標)」(EA、付着が増強された表面処理は、マイクロキャリアの表面に酸素を注入する)を表す。代替的な好ましい一実施形態では、マクロキャリアは、ポリプロピレンおよびポリエステル不織繊維(Fibra-Cel(登録商標);FC)またはiCELLis(登録商標)(iC;またはiC-500m)からの不織の親水化ポリエチレンテレフタレート(PET)マクロキャリアである。
【0058】
同時および非同時の播種および感染のために、マイクロキャリアCD1およびマクロキャリアiCは、本発明の一実施形態では好ましいキャリアを表す。さらに、マクロキャリアFCおよびiCは、懸濁培養および固定床バイオリアクターにおいて良好な産生収量を示し、固定床バイオリアクターにおいてより高い産生収量が達成されるので、本発明の代替的な好ましい実施形態を表す。
【0059】
本発明の方法を適用することにより、感染性ウイルス粒子の大部分は、回収時に細胞に結合している。H-1PVを回収するために、Tris-EDTA緩衝液(VTE)(Leuchs 2016)またはTris-HCl緩衝液(VT)(Leuchs 2017)中での凍結融解細胞溶解が、静置培養物について以前に報告された。しかしながら、凍結融解法は、キャリア上の付着細胞を用いた大規模産生に限定され、そのため、大規模化可能な細胞溶解が必要とされる。したがって、本発明をもたらす実験において、代替的な細胞溶解方法を開発した。一実施形態では、本発明は、Tris、MgClおよび組換え細胞解離酵素TrypLE(商標)をTween(登録商標)80と共に含有する溶解緩衝液を用いた細胞溶解に言及し、この緩衝液は、Triton(登録商標)X-100よりも環境に優しく、同様のまたはより高い産生収量を達成する。しかしながら、Tween(登録商標)80は、ウイルス収率に悪影響を及ぼすことなく、溶解緩衝液レシピから省略され得る。
【0060】
本発明によれば、工程(g)におけるNB-324K細胞の溶解は、感染3~5日後に、0.1~1%Tween(登録商標)80を含むか、または含まない、1~100mM Tris、1~10mM MgCl、2.5~10%TrypLE(商標)、pH9~10を含有する「溶解緩衝液」を用いて、好ましくは、25mM Tris、5mM MgCl、5%TrypLE(商標)pH10を含有する溶解緩衝液を用いて、COを含まずに40℃で1時間行われる。
【0061】
本発明によれば、工程(g)における溶解緩衝液での溶解の後に、1~100mM Tris、1~10mM MgCl、pH9~10を含有する「洗浄緩衝液」、好ましくは25mM Tris、5mM MgCl、pH10を含有する洗浄緩衝液での洗浄が続き、溶解緩衝液および洗浄緩衝液は一緒にプールされ、溶解工程および洗浄工程、すなわち、本発明の工程(g)は、0.1~1%Tween(登録商標)80、好ましくは0.25%未満のTween(登録商標)80を含むか、または含まない、1~100mM Tris、好ましくは25mM Tris;1~10mM MgCl、好ましくは5mM MgCl;2.5~10%TrypLE(商標)、好ましくは2.5%TrypLE(商標)、pH10を含有する緩衝液を生じる。
【0062】
「TrypLE(商標)」は、ブタトリプシン(GIBCO、米国)に代わる高度に精製された組換え細胞解離酵素を有する試薬である。
【0063】
まとめると、培地最適化および3段階培地交換戦略、ならびにTween(登録商標)80を含むか、または含まない、好ましくはTween(登録商標)80を含まない、Tris、MgClおよび組換え細胞解離酵素TrypLE(商標)を含有する溶解緩衝液を用いた回収は、産生をスケールアップするための確かな基礎となる。
【0064】
要約すると、最適化された細胞培養培地VP-SFM(商標)および新しい培地交換戦略を用いて、本発明者らは、播種された細胞密度およびFBSの低減を確立し、FBS不含有回収物をもたらし、試験されたキャリアは、高いH-1PV収量、細胞増殖、およびビーズ間移動能力に最も適している。本発明者らはまた、実行可能なキャリアベースの産生を実証し、24ウェルプレートからエルレンマイヤーフラスコ、スピナーフラスコおよびiCellisナノへとプロセスを首尾よくスケールアップした。
【0065】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図し、本発明を限定することを意図しない。このような実施例は、使用され得るものの典型であるが、当業者に公知の他の方法が代替的に利用され得る。
【実施例1】
【0066】
材料および方法
細胞株および細胞培養培地
サルウイルス40で形質転換したNB-324Kヒト新生児腎細胞(Tattersall 1983)を、5%FBSを含むVP-SFM(商標)培地(Thermofisher、米国)中、37℃、5%CO雰囲気下で培養した。細胞培養培地には、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および4mM L-グルタミンを添加する(表1を参照されたい)。
【0067】
ウイルスストック、感染時期
自家で産生され、精製された野生型H-1PVのウイルスストックを使用して、細胞あたり0.01または0.05プラーク形成単位(PFU)のMOIで細胞を感染させた。感染時期(TOI)は、Countess細胞数に基づく播種時(同時の感染および播種)または3~6日目(非同時感染)のいずれかであった。
【0068】
静置培養における細胞培養およびウイルス産生
同時の播種および感染:3.6E4細胞/cmを、VP-SFM(商標)完全用、FBS不含有VP-SFM(商標)(表1を参照されたい)を含むT175フラスコに播種し、同時に感染させた。感染4日後(dpi)に細胞を回収した。
【0069】
非同時の播種および感染:7.9E3細胞/cmを、VP-SFM(商標)完全用、またはVP-SFM(商標)細胞増殖培地(表1を参照されたい)を含むT175フラスコに播種した。3日間の細胞増殖後、FBS不含有VP-SFM(商標)またはVP-SFM(商標)感染培地と培地を完全に交換した。同時に、参照T175フラスコのCountess細胞数に従って0.01または0.05のMOIで細胞を感染させた。感染後2日目に、3日目からVP-SFM(商標)感染培地中にあった細胞について、FBS不含有VP-SFM(商標)による別の100%培地交換を実施した。感染後4日目に、凍結融解によって細胞を回収した。
【0070】
キャリアの調製
マイクロキャリアおよびマクロキャリア(両方のシステムを論じる場合には「キャリア」と呼ぶ)の特徴付けを表2に示す。製造業者の指示に従ってSigmacote(Sigma-Aldrich、ドイツ)でシリコーン処理したボトル中でマイクロキャリアを取り扱い保存した。非カチオン性マイクロキャリアをaqua ad. injectable(B.Braun、ドイツ)中で水和およびオートクレーブし、カチオン性マイクロキャリアを、Ca2+およびMg2+を含まない1×PBS中で、製造業者の指示に従って水和およびオートクレーブした。マクロキャリアは供給時に無菌であり、使用前に37℃で30分間細胞培養液で水和した。
【0071】
キャリアについての細胞培養および産生システム
24ウェルプレートでのスクリーニング:キャリアのスクリーニング実験は、24ウェルの超低接着プレート(Corning、ドイツ)において、ウェルあたり1mlのVP-SFM(商標)完全用を用いて、37℃、5%CO、および100rpmのオービタル撹拌で、Max Q 2000 CO Plus(ThermoFisher Scientific、米国)を用いて行った。静置対照は、キャリア試料と同様に処理したが、6ウェルプレート(9.6cmの増殖面積)に、ウェルあたり2mlの細胞培養培地を用いて、撹拌せずに播種した。
【0072】
同時の播種および感染のために、10cmまたは11.3cm(iCELLis(登録商標)からのマクロキャリアを半分に切断した)のキャリアを、3つのウェルにウェルごとに添加した。次いで、4E4細胞/cmの播種密度に相当する、NB-324K細胞を含む1mlのVP-SFM(商標)完全用を各ウェルに添加し、0.01のMOIで感染させた。Triton(登録商標)X-100を用いて感染4日後に細胞を回収した。
【0073】
非同時の播種および感染のために、2ウェル中に1ウェルあたり5cmの増殖面積を加えた。次いで、2E4または4E4細胞/cmの播種密度に相当する、NB-324K細胞を含む1mlのVP-SFM(商標)完全用を各ウェルに添加した。3日目に、キャリアあたり両方のウェルをプールし、試料由来の核を計数した。ウイルスおよび新鮮なキャリアを含む新鮮な細胞培養培地VP-SFM(商標)完全用を添加し、各プールについて総増殖面積を10cmから20cmに、細胞培養容量を2mlから4mlに倍増させることによって、細胞を感染させた(0.01のMOI)。次いで、使用済みおよび新鮮なキャリアのプールを、ウェルあたり5cmの増殖面積および1mlの細胞培養培地を有する3つのウェルに分けた。Triton(登録商標)X-100を用いて感染4日後である7日目に細胞を回収した。
【0074】
エルレンマイヤーフラスコ中のマイクロキャリア:スクリーニング後、付着増強(EA)およびCytodex(登録商標)1(CD1)マイクロキャリアを、Max Q 2000 CO Plus(ThermoFisher Scientific、米国)を用いて、37℃、5%CO、および60~70rpmのオービタル撹拌で、40mlのVP-SFM(商標)完全用を含み10cm/mlの増殖面積を有する125mlエルレンマイヤーフラスコ中でのアップスケーリング実験のために選択した。ここで、2E4細胞/cmを播種し、撹拌を0rpmで30分間、または30rpmで3時間に減少させて、細胞付着を促進した。3日目に、試料を採取して、ウイルス感染(0.01のMOI)について核数を用いて細胞密度を決定し、ウイルスを、新しいVP-SFM(商標)完全用との同じ日の50%培地交換の間に添加した。
【0075】
マクロキャリアを用いたエルレンマイヤーフラスコ中でのウイルス産生
Fibra-Cel(登録商標)およびiCELLis(登録商標)からのマクロキャリアも、マイクロキャリアについて記載されたものと同様のパラメータを用いて125mlエルレンマイヤーフラスコ中で試験した。しかしながら、オービタル撹拌は30~100rpmであり、播種中の撹拌は100rpm、または40rpmで1分間、次いで0rpmで30分間のサイクルのいずれかであり、これを4回繰り返して、合計播種時間を2時間とした。
【0076】
キャリアを用いたスピナーフラスコ中でのウイルス産生
EAおよびCD1マイクロキャリアを、250mlのスピナーフラスコ(Integra Biosciences、スイス)中で、Fibra-Cel(登録商標)およびiCELLis(登録商標)からのマクロキャリアを、500mlのスピナーフラスコ(Integra Biosciences、スイス)中で、100mlのVP-SFM(商標)完全用および10cm/mlの増殖面積で、37℃、5%CO、および15~30rpmの撹拌でさらにスケールアップした。次いで、2E4細胞/cmを播種し、撹拌を0rpmで30分間、または40rpmで1分間、次いで0rpmで30分間のサイクルに減少させ、これを4回繰り返して、合計播種時間を2時間とした。3日目に、試料を採取して、ウイルス感染(0.01または0.05のMOI)について核数を用いて細胞密度を決定し、そしてウイルスを、VP-SFM(商標)完全用との同日の50%培地交換の間に添加した。感染4日後に細胞を回収した。
【0077】
iCELLis(登録商標)ナノでのウイルス産生
iCELLis(登録商標)ナノシステムを、0.53mおよび4mの固定床サイズで試験した。製造業者の指示に従って固定床を調製した後、バイオリアクターに、2%FBSを添加した850mlのVP-SFM(商標)細胞増殖培地を充填した。4mの固定床に対して、追加の3150mlのVP-SFM(商標)細胞増殖培地を供給する再循環ループを接続した。次いで、5E3細胞/cmを0.53m固定床に、または9E3細胞/cmを4m固定床に播種し、37℃、pH7.3、30~40%溶存酸素超で維持した。3~6日の細胞増殖後、いくつかのマクロキャリアを固定床の上部から取り出し、細胞を計数し、続いて、1%FBSを添加したVP-SFM(商標)感染培地への100%培地交換中に0.01のMOIで感染させた。感染2日後、FBS培地不含有VP-SFM(商標)への追加の100%培地交換を実施した。感染4日後に細胞を回収した。
【0078】
回収
ウェル、エルレンマイヤーフラスコまたはスピナーフラスコに播種したキャリア培養物について、感染4日後に細胞培養培地を除去し、次いで、細胞溶解のために0.02ml/cmの1%Triton(登録商標)X-100、0.1M Tris、pH9.5で37℃にて30分間処理した。
【0079】
iCELLis(登録商標)ナノ培養物については、感染4日後に細胞培養培地を除去した。次いで、固定床中の細胞をPBSですすぎ、0.5%Tween(登録商標)80を含むか、または含まない0.094ml/cm(0.53m)または0.014ml/cm(4m)の溶解緩衝液25mM Tris、5mM MgCl、5%TrypLE(商標)pH10で、COを伴わずに40℃で1時間溶解し、洗浄緩衝液25mM Tris、5mM MgCl、pH10ですすぐことができる。溶解および洗浄を一緒にプールし、0.25%Tween(登録商標)80を含むか、または含まない、好ましくはTween(登録商標)80を含まない、25mM Tris、5mM MgCl、2.5%TrypLE(商標)pH10を得る。
【0080】
静置培養のために、凍結/融解プロセスを介した細胞溶解を行った。培地を除去し、感染細胞を1×PBSで洗浄した。培地上清および剥離した細胞を5000×gで5分間遠心分離した。ペレットをPBSで洗浄し、0.02ml/cmの0.05M Tris-HCl、pH8.7(VT)で37℃、30分間再懸濁し、3回の凍結(液体窒素)および解凍(37℃)サイクルに供した。加えて、培地最適化およびFBS減少の間に以下の工程を行った。5000×gで5分間の遠心分離後、細胞片を廃棄した。次いで、細胞溶解物を、Sonorex Super 10P超音波ホモジナイザー(Bandelin、ドイツ)を用いて48Wで1分間超音波処理し、5mM MgClを添加した後、DNAse(50U/ml、Sigma、ドイツ)で37℃、30分間処理して、非カプシド化ウイルスDNAおよび混入した宿主細胞DNAを除去した。
【0081】
ウイルス収量の定量
感染性粒子についてプラーク形成アッセイを行うことによってウイルスを定量した(方法の説明についてはLeuchs(2016)を参照されたい)。
【実施例2】
【0082】
100%培地交換を使用する2段階FBS減少戦略と3段階FBS減少戦略との比較
その後、本発明者らは、100%培地交換を使用する2段階FBS減少戦略と3段階FBS減少戦略とを比較した。VP-SFM(商標)培地を用いた全ての培地交換戦略の概要については、図1を参照されたい。全ての戦略は、シードトレインにおいて5%FBSで開始し、続いて5%または2%FBS中で3日間細胞増殖させ、播種後3日目に100%培地交換と同時感染を行った。2段階プロセスにおいて、0%FBS(2-0%)で感染させた場合、1.0E7PFU/cmの得られたウイルス収量は、全プロセスにわたって5%FBS添加(5-5%)と同程度であった(図2を参照されたい)。3段階戦略では、2%FBSで播種した3日後の100%培地交換に、1%FBS(2-1-0%)を含むか、またはFBS不含有(2-0-0%)のいずれかを添加し、続いて、両方について5日目にFBSを含まない第2の100%培地交換を行った。3つの独立した実験により、2-1-0%FBS戦略は、2-0-0%FBS戦略と比較して、収量が7.7E7PFU/cmまで約0.3log PFU/cm増加することが実証された(図3)。要約すると、結果は、プロセスにわたるFBSの枯渇が、2-1-0%FBS戦略を適用することにより達成される最も高いウイルス収量で実現可能であることを示す。しかしながら、FBSにはVP-SFM(商標)だけでは供給できない、高ウイルス収量に必要な成分が含まれている。
【実施例3】
【0083】
大規模H-1PV回収に必要な化学的細胞溶解
本発明の方法において、感染性ウイルス粒子の大部分は、回収時に細胞に結合している。H-1PVを回収するために、Tris-EDTA緩衝液(VTE)(Leuchs 2016)またはTris-HCl緩衝液(VT)(Leuchs 2017)中での凍結融解細胞溶解が、静置培養物について以前に報告された。キャリア上の付着細胞を用いた大規模産生には、大規模化可能な細胞溶解が必要である。したがって、Tween(登録商標)80を含むか、または含まない、Tris、MgClおよび組換え細胞解離酵素TrypLE(商標)を含有する溶解緩衝液を用いて、>2.0E7PFU/cmである満足のいくウイルス収量をもたらす代替的な細胞溶解方法を開発した(図4を参照されたい)。
【0084】
まとめると、培地最適化、ならびにTriton(登録商標)X-100溶解またはTween(登録商標)80を含むか、または含まないTris、MgClおよび組換え細胞解離酵素を含有する溶解緩衝液を用いた3段階培地交換戦略は、産生をスケールアップするための確かな基礎となる。
【実施例4】
【0085】
24ウェルスケールでのマイクロキャリアおよびマクロキャリア上での細胞増殖のスクリーニングは、ビーズ間の細胞移動が可能である
付着細胞を用いた大規模産生のために、懸濁培養のためのマイクロキャリア、または固定床バイオリアクターのためのマクロキャリアを使用することができる。本発明者らは、11種類のキャリアについて、細胞増殖、ビーズ間移動能力、およびウイルス収量をスクリーニングした。キャリアでの直接細胞計数は困難だった。したがって、増殖の指標としてグルコースの消費量を測定した。
【0086】
いくつかの細胞株は、連続した細胞増殖のために、コンフルエントなマイクロキャリアから新しいマイクロキャリアへの個々の細胞ブリッジを構築することができる。このビーズ間移動は、新しいマイクロキャリアを添加するだけでよいので、トリプシン処理を伴わずにシードトレイン細胞増殖を容易にすることができる。ビーズ間移動能力を試験するために、細胞をマイクロキャリア上に播種し、4日目および7日目に1:2に分割することによって、更なるマイクロキャリアを新鮮な細胞培養培地と共に添加した。トリプシン処理後のマイクロキャリアのトリパンブルー細胞計数を、1:2分割前の4日目、および10日目に行った。図5では、細胞ブリッジを用いたビーズ間移動が、マイクロキャリアEAおよびCD1を用いて示されている。トリプシン処理を伴わないビーズ間移動能力は、NB-324K細胞を用いたスケールアップされたシードトレインにおける良好な細胞増殖能力を示唆している。
【実施例5】
【0087】
Cytodex(登録商標)1およびiCELLis(登録商標)からのマクロキャリアは、最も高いH-1PV収率を示す
キャリア上での細胞増殖を特徴付けた後、本発明者らは、H-1PVの高いウイルス産生に最も適した条件を同定するために、異なる産生戦略(ビーズ間移動を伴うまたは伴わない、同時の感染/非同時の播種および感染)を適用した。
【0088】
24ウェルの超低付着プレートにおけるキャリアの同時の感染および播種では、ほとんどのマイクロキャリア(HII、SP、P、PP、EA、SII、CP1、CP2)について同様のウイルス収量がもたらされた。最も高い収率は、マイクロキャリアCD1およびマクロキャリアiCで達成され、それぞれ3.4E7PFU/cmおよび2.0E7PFU/cmであった(図6aを参照されたい)。マクロキャリアFCは、4.2E6PFU/cmの最も低い収量であった。
【0089】
非同時の播種および感染のために、4E4細胞/cm密度に加えて、50%減少した2E4細胞/cmの播種密度を、より高い収率について試験した。播種の3日後、細胞を感染させ、ビーズ間移動のために、1:2分割、新しい細胞培養培地およびマイクロキャリアを添加して容量およびマイクロキャリア密度を維持することを行った。ウイルス収量は、4E4細胞/cmの播種密度で最も高く、これは、固体HIIならびに多孔性CP1およびCP2キャリアを除いて、ビーズ間移動を伴わない同時の播種および感染と比較して、ほとんどのマイクロキャリアについて同様であった(図6bを参照されたい)。まとめると、高いウイルス産生は、全ての試験した戦略で可能であるようであるが、4E4細胞/cmの播種密度を必要とする。加えて、HIIならびに多孔性マイクロキャリアCP1およびCP2は、ビーズ間移動を伴わない同時の感染および播種でのみ高い収率を示した。
【0090】
選択した2つのマイクロキャリアおよび2つのマクロキャリアを用いて、24ウェルプレート形式から最大100mlのエルレンマイヤーフラスコおよびスピナーフラスコでスケールアップを検討した。マイクロキャリアCD1は最も高い収量を示したが、マイクロキャリアEAの表面は10層CellSTACK(登録商標)チャンバーの収量と同等であった。24ウェルプレートの小規模試験には限界があるため、固定床バイオリアクター用の両マクロキャリアをスケールアップ実験にも選択した。播種およびプロセス撹拌、キャリア密度、細胞播種密度、MOI、TOI、ビーズ間移動の有無、容器あたりの細胞培養容量、ならびに培地交換計画などの広範囲のパラメータを試験した(表3および4を参照されたい)。しかしながら、エルレンマイヤーフラスコで40mlおよびスピナーフラスコで100mlの細胞培養液を用いた場合の、最も有望なパラメータのみを示す(図7aおよびbを参照されたい)。
【0091】
マイクロキャリアCD1は、エルレンマイヤーフラスコでは4.3E7PFU/cmの収量レベルに達したが、スピナーフラスコでスケールアップすると1log少なくなった。マイクロキャリアEAは全てのシステムでCD1よりウイルス収量が低かった。
【0092】
エルレンマイヤーフラスコ中のマクロキャリアiCおよびFC、マクロキャリア密度10cm/ml、総細胞表面400cmで、3.0E7PFU/cmのウイルス収量を達成した。しかしながら、スピナーフラスコにスケールアップした場合、収量は、ビーズ間移動がなく、10cm/ml、細胞表面1000cmで1.0E6PFU/cm以下であった。エルレンマイヤーフラスコにおけるCD1および両マクロキャリアの結果から、懸濁液中で高いウイルス収量が可能であることが確認され、これらのキャリアは更なるスケールアップの最有力候補である。
【実施例6】
【0093】
iCELLis(登録商標)ナノでの第1の産生
エルレンマイヤーフラスコで生成した3.0E7PFU/cmの収量を仮定すると、iCELLis(登録商標)500mの固定床では、1.5E14PFUのバッチ収量が期待できる(15,000回投与に相当し、1回あたり1E10PFU)。したがって、スケールダウンしたiCELLis(登録商標)ナノシステムでウイルス産生を試験した。
【0094】
iCELLis(登録商標)ナノベンチトップ・バイオリアクターでの産生には、新たに開発した培地交換戦略2-1-0%FBSを使用した。ここでは、0.53mおよび4mの固定床サイズを試験し、それぞれ3.7E6PFU/cmおよび5.7E6PFU/cmの結果を得た(図8を参照されたい)。両固定床とも収量は同等であったが、エルレンマイヤーフラスコおよび定常ランコントロールにおけるiCELLis(登録商標)からのマクロキャリアよりも約1対数ステップ低かった。
【0095】
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図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルボウイルスH-1(H-1PV)を産生する方法であって、
(a)産生細胞株NB-324Kを用意する工程と、
(b)前記NB-324K細胞を適切な条件下で増殖させることによって、シードトレインを産生する工程と、
(c)播種時点で、2%動物血清を補足した動物成分不含有細胞培養培地、およびマイクロキャリアまたはマクロキャリアを含む培養容器を用意する工程と、
(d)工程(b)の前記NB-324K細胞を工程(c)の培養容器に播種する工程と、
(e)前記NB-324K細胞を細胞増殖する工程と、
(f)感染時点で、マイクロキャリアまたはマクロキャリアを含む動物成分不含有細胞培養培地で100%培地交換する工程であって、前記動物成分不含有細胞培養培地に1%動物血清が補足されているか、または動物血清が補足されていない、工程と、
(g)感染3~8日後、0.1~1%Tween(登録商標)80を含むか、または含まない、1~100mM Tris、1~10mM MgCl、2.5~10% TrypLE(商標)、pH9~10を含む溶解緩衝液を用いて前記NB-324K細胞を回収し、溶解緩衝液を撹拌し、続いて1~100mM Tris、1~10mM MgCl、pH9~10を含む洗浄緩衝液で洗浄する工程であって、前記溶解緩衝液および洗浄緩衝液が一緒にプールされる工程と、
(h)濾過によって前記パルボウイルス回収物の不純物を除く工程と、
(i)カプセル化されていないウイルスDNAおよび混入した宿主細胞DNAをDNase処理によって除去する工程と、
(j)緩衝液交換および濃縮のためにタンジェンシャルフロー濾過を行う工程と、
(k)空の粒子および大部分の不純物を除去するために陰イオン交換クロマトグラフィーを行う工程と、
(l)0~3%ビジパークおよび97~100%リンゲル液への緩衝液交換および濃縮のためにタンジェンシャルフロー濾過を行う工程と、
(m)48%ビジパーク/リンゲル液の最終生成物にする工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程(g)において、前記溶解緩衝液が、25mM Tris、5mM MgCl、5%TrypLE(商標)、pH10を含み、COを含まず、40℃で1時間である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(g)において、前記洗浄工程が25mM Tris、5mM MgCl、pH10を含む緩衝液で行われ、工程(g)が、25mM Tris、5mM MgCl、2.5%TrypLE(商標)を含み、0.25%Tween(登録商標)80を含むか、または含まない緩衝液をもたらす、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロキャリアが、Cytodex(登録商標)1または付着増強CellBIND(登録商標)(EA)などの、マトリックス全体にわたって分布した正に荷電したDEAE(N,N-ジエチルアミノエチル)基を有する架橋デキストランマトリックスである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記マクロキャリアが、ポリプロピレンおよびポリエステル不織繊維(Fibra-Cel(登録商標))または不織の親水化ポリエチレンテレフタレート(PET)マクロキャリア(iCELLis(登録商標))である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記NB-324K細胞が、工程(d)で播種および感染が起こる場合には、2.0×10~5.0×10細胞/cmの播種細胞密度で播種されるか、または工程(e)の細胞増殖2~6日後に感染が起こる場合には、5.0×10~8.0×10細胞/cmの播種細胞密度で播種される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記動物血清が、熱失活したウシ胎仔血清(FBS)である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
動物血清を補足していない第2の100%培地交換が工程(f)の後に行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
工程(f)における100%培地交換の培地が、1%FBSが添加されているか、またはFBSが添加されておらず、前記第2の100%培地交換の培地が、FBSが添加されていない、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の100%培地交換が、感染1~3日後に行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記動物成分不含有細胞培養培地が、16~22mMグルコース、3~5mMグルタミン、0.1~0.6mMグルタミン酸、0.5~1.0mM乳酸、0.3mM未満のアンモニウムおよび3~10μg/μlタンパク質を含むウイルス産生無血清培地(VP-SFM(商標))である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
前記動物成分不含有細胞培養培地が、VP-SFM(商標)であり、4mM L-グルタミンが添加されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、前記シードトレイン中5%FBSで開始される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項14】
前記細胞溶解が、Tween(登録商標)80を含むか、または含まない、Tris、MgClおよび組換え細胞解離酵素TrypLE(商標)、pH10を含む緩衝液で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、懸濁培養または固定層バイオリアクターのために使用される、請求項1または2に記載の方法。
【国際調査報告】