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特表2025-500114炭酸カルシウムの生成を阻害するおよび/または除去する二酸化炭素投入を有する腹膜透析システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】炭酸カルシウムの生成を阻害するおよび/または除去する二酸化炭素投入を有する腹膜透析システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/28 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A61M1/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525048
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 US2022081526
(87)【国際公開番号】W WO2023122456
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/293,383
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(71)【出願人】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スティルビョルン ファルマン, オスカル エリク フローデ
(72)【発明者】
【氏名】ペッテルソン, ミケル
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA06
4C077BB01
4C077DD16
4C077EE03
4C077GG04
4C077HH02
4C077HH05
4C077HH13
4C077HH14
4C077HH17
4C077JJ09
4C077KK30
(57)【要約】
腹膜透析(「PD」)システムは、PD流体ポンプと、PD流体ポンプを備える殺菌ループであって、殺菌ループは殺菌ループを殺菌することのために使用されるPD流体を備える、殺菌ループと、殺菌シーケンスの間に炭酸カルシウム(CaCO)の生成を阻害および/または除去するために、殺菌ループにCOを供給するように位置付けられて配列された二酸化炭素(CO)、ソースとを備える。PDシステムは、COが供給されることを可能にするためにバルブを開けるように構成された制御ユニットを備え、そこでは制御ユニットは、望ましい圧力または圧力上昇を決定するためにルックアップテーブルまたはアルゴリズムを使用し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹膜透析(「PD」)システムであって、
PD流体ポンプと、
前記PD流体ポンプを備える殺菌ループであって、前記殺菌ループは、前記殺菌ループを殺菌することのために使用されるPD流体を備える、殺菌ループと、
二酸化炭素(CO)、ソースであって、殺菌シーケンスの間に炭酸カルシウム(CaCO)の生成を阻害および/または除去するために、前記殺菌ループにCOを供給するように位置付けられて配列されている、二酸化炭素(CO)、ソースと
を含む、
PDシステム。
【請求項2】
前記殺菌ループと前記COソースとの間に位置するCOバルブを備える、請求項1に記載のPDシステムであって、前記COバルブは、前記殺菌ループに前記COが供給されることを可能にするために開かれる、PDシステム。
【請求項3】
殺菌シーケンスの間に前記炭酸カルシウムの生成を阻害および/または除去するために、COが前記PD流体を望ましい圧力または圧力上昇に加圧することを可能にするために前記COバルブを開かせるように構成された制御ユニットを備える、請求項2に記載のPDシステム。
【請求項4】
前記制御ユニットに出力する少なくとも一つの圧力センサを備える、請求項3に記載のPDシステムであって、前記制御ユニットは、前記望ましい圧力または圧力上昇を検出するために、前記少なくとも一つの圧力センサの出力を監視するように構成されている、PDシステム。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記望ましい圧力または圧力増加を決定するためにルックアップテーブルを使用するように構成されている、請求項3に記載のPDシステム。
【請求項6】
前記制御ユニットは、殺菌温度を格納し、前記PD流体は、前記殺菌シーケンスのために前記殺菌温度に加熱され、かつ前記ルックアップテーブルの中の前記望ましい圧力または圧力上昇は、前記殺菌温度に対応する、請求項5に記載のPDシステム。
【請求項7】
前記制御ユニットに出力する少なくとも一つの温度センサを備える、請求項6に記載のPDシステムであって、前記制御ユニットは、前記殺菌温度を検出するために前記少なくとも一つの温度センサ出力を監視するように構成されている、PDシステム。
【請求項8】
前記ルックアップテーブルは、殺菌のために使用されるPD流体のタイプに特有である、請求項5に記載のPDシステム。
【請求項9】
前記制御ユニットは、殺菌のために使用される前記PD流体の重炭酸塩レベルを検知して、かつ前記ルックアップテーブルの中の前記望ましい圧力または圧力上昇は、前記重炭酸塩レベルに対応する、請求項5に記載のPDシステム。
【請求項10】
前記制御ユニットは、前記殺菌ループにCOを供給することの前に初期圧力および温度読み取り値を得るように構成され、前記制御ユニットはさらに、前記ルックアップテーブルと前記初期圧力および温度読み取り値とを使用して、前記殺菌ループの中に含有されたCOの初期量を決定するように構成されている、請求項5に記載のPDシステム。
【請求項11】
前記制御ユニットは、前記望ましい圧力または圧力上昇を決定するためにアルゴリズムを使用するように構成されている、請求項3に記載のPDシステム。
【請求項12】
前記制御ユニットは、前記殺菌シーケンスの間に前記PD流体ポンプに運転させる前に、前記COが前記PD流体を前記望ましい圧力または圧力上昇に加圧することを可能にするために、前記COバルブを開かせるように構成されている、請求項3に記載のPDシステム。
【請求項13】
前記制御ユニットは、前記殺菌シーケンスの間に前記PD流体ポンプに運転させることと同時に、前記COが前記PD流体を前記望ましい圧力または圧力上昇に加圧することを可能にするために、前記COバルブを開かせるように構成されている、請求項3に記載のPDシステム。
【請求項14】
PD流体ヒータを備える、請求項3に記載のPDシステムであって、前記制御ユニットは、前記殺菌シーケンスの間に前記PD流体ヒータに前記PD流体を加熱させる前に、前記COが前記PD流体を前記望ましい圧力または圧力上昇に加圧することを可能にするために、前記COバルブを開かせるように構成されている、PDシステム。
【請求項15】
PD流体ヒータを備える、請求項3に記載のPDシステムであって、前記制御ユニットは、前記殺菌シーケンスの間に前記PD流体ヒータに前記PD流体を加熱させることと同時に、前記COが前記PD流体を前記望ましい圧力または圧力上昇に加圧することを可能にするために、前記COバルブを開かせるように構成されている、PDシステム。
【請求項16】
前記制御ユニットは、前記制御ユニットによって圧力の損失が検出されたとき、冷却期間の間に前記COが前記PD流体を加圧することを可能にするために、前記COバルブを開かせるように構成されている、請求項3に記載のPDシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、「PERITONEAL DIALYSIS SYSTEM HAVING CARBON DIOXIDE INJECTION TO INHIBIT/REMOVE CALCIUM CARBONATE」と題された2021年12月23日に出願された米国仮特許出願第63/293,383号に対する優先権およびその利益を主張し、その全体の内容は、参照によってここに組み入れられて、依拠される。
【0002】
背景
本開示は、概して、医療の流体処置に関連し、かつ、特に透析の流体処置に関連する。
【背景技術】
【0003】
様々な原因で、人の腎臓系は不全になる可能性がある。腎不全は、いくつかの生理学上の狂いを生じさせる。水およびミネラルの平衡を保つことまたは毎日の代謝負荷を排泄することは、もはや不可能である。代謝の有毒な最終生成物(例えば、尿、クレアチニン、尿酸およびその他のもの)は、患者の血液および組織の中で蓄積し得る。
【0004】
低減した腎機能と、何よりも、腎不全とは、透析で処置される。透析は、正常な機能する腎臓がさもなければ除去するであろう排泄物、毒素、および余剰の水を体から除去する。腎機能の代替のための透析処置は、処置が救命であるため、多くの人々に極めて重要である。
【0005】
腎不全治療の一つのタイプは、患者の血液から老廃物を除去するために、一般的に拡散を使用する血液透析(「HD」)である。拡散勾配は、拡散を引き起こすために、血液と透析液または透析流体と呼ばれる電解質溶液との間の半透性透析器を横切って発生する。
【0006】
血液ろ過(「HF」)は、患者の血液からの毒素の対流輸送に依拠する、代わりの腎臓代替治療である。HFは、処置の間に体外の回路へ代用または代替流体を加えることによって達成される。代用流体と処置の合間に患者によって蓄積される流体とは、HF処置の経過に渡って限外ろ過され、中、高分子を除去する際に特に有益な対流輸送メカニズムを提供する。
【0007】
血液透析ろ過(「HDF」)は、対流および拡散のクリアランスを組み合わせる処置様式である。HDFは、標準的な血液透析と似て、拡散クリアランスを提供するために、透析器を通って流れる透析流体を使用する。加えて、代用溶液は、体外回路へ直接的に提供され、対流クリアランスを提供する。
【0008】
大抵のHD、HF、およびHDF処置は、センターで発生する。この頃、在宅血液透析(「HHD」)への傾向があり、それは、一つには、HHDは、毎日行われる可能性があり、典型的に週に二~三回発生するセンター内血液透析処置に対する治療の利益を提案するからである。研究は、より頻繁な処置は、より多くの毒素および老廃物を除去して、より少ない頻度だがおそらくより長い処置を受ける患者よりも、より少ない透析間液を過負荷にすることを示している。より頻繁な処置を受ける患者は、二~三日に値する溜まった毒素を処置の前に有するセンター内患者が経験するほどの悪循環(流体および毒素の揺れ)を経験しない。ある地域では、最も近い透析センターが、患者の家から何マイルも離れている可能性があり、ドアツードアの処置時間が一日の大部分を費やす原因となる。患者の家に近いセンターでの処置もまた、患者の一日の大部分を費やし得る。HHDは、患者がくつろぎ、働き、またはその他の方法で生産的である一晩中または日中の間に行われる可能性がある。
【0009】
腎不全治療のもう一つのタイプは、カテーテルを経由して患者の腹膜チャンバーへと透析溶液(透析流体とも呼ばれる)を注入する腹膜透析(「PD])である。透析流体は、患者の腹膜チャンバーの中の腹膜と接触する。排泄物、毒素、および余剰の水は、患者の血流から出て、腹膜の中の毛細管を通って、拡散および浸透のによって透析流体へと入り、すなわち浸透勾配が膜を横切って発生する。PD透析流体の中の浸透物質は、浸透勾配を提供する。使用済の、または使用された透析流体は、患者から流し出されて、排泄物、毒素および余剰の水を患者から除去する。このサイクルは、例えば複数回繰り返される。
【0010】
連続携行式腹膜透析治療(「CAPD」)、自動腹膜透析(「APD」)、タイダルフロー透析、および連続フロー腹膜透析(「CFPD」)を備える様々なタイプの腹膜透析治療がある。CAPDは、手作業の透析処置である。ここで、患者は、使用または消費された透析流体が腹膜チャンバーから流れ出ることを可能にするために、埋め込まれたカテーテルをドレンに手作業で接続する。その後、患者は、未使用透析流体をカテーテルを通して患者へと注入するために、患者のカテーテルが未使用透析流体のバッグと連通するように流体連通を切り替える。患者は、未使用透析流体バッグからカテーテルを切断して、透析流体が腹膜チャンバー内に留まることを可能にし、そこでは排泄物、毒素、および余剰の水の移動が起こる。ドウェル期間の後に、患者は、手作業の透析手順を例えば一日に四回繰り返す。手作業の腹膜透析は、患者から重大な量の時間および労力を要求し、改善の大きな可能性を残す。
【0011】
自動化された腹膜透析(「APD」)は、透析処置が、ドレン、フィル、およびドウェルサイクルを備えるということにおいて、CAPDに類似している。しかし、APDマシンは、典型的に患者が寝る間に自動的にサイクルを行う。APDマシンは、処置サイクルを手作業で行わなければならないこと、および日中の間に供給を輸送しなければならないことから患者を解放する。APDマシンは、埋め込まれたカテーテル、未使用透析流体のソースまたはバッグ、および流体ドレンに流体的に接続する。APDマシンは、透析流体ソースからカテーテルを通して患者の腹膜チャンバーへと未使用透析流体を送り込む。APDマシンは、透析流体がチャンバー内に留まること、ならびに排泄物、毒素、および余剰の水の移動が起こることも可能にする。ソースは、いくつかの溶液バッグを備える数リットルの透析流体を備え得る。
【0012】
APDマシンは、使用または消費された透析液を、患者の腹膜腔からカテーテルを通してドレンに送り込む。手作業のプロセスと同様に、いくつかのドウェル、フィルおよびドレンサイクルは透析の間に発生する。「最後のフィル」は、APD処置の最後に発生し得る。最後のフィル流体は、次の処置の開始まで患者の腹膜チャンバーの中に残り得るか、または日中の何らかの時点で手作業により空にされ得る。
【0013】
自動化されたマシンを使用する上述の様式のいずれかにおいて、自動化されたマシンは、典型的に一回の使用の後に廃棄される使い捨てセットと共に動作する。使い捨てセットの複雑さに依存して、一日に一セットを使用することのコストは、重大になり得る。また、毎日の廃棄は、格納のためのスペースを要求し、スペースは、住宅所有者およびビジネスにとっての迷惑になる可能性がある。さらに、毎日の使い捨て代替は、自宅またはクリニックでの患者または介護人による毎日のセットアップ時間および労力を要求する。
【0014】
上述の各理由について、使い捨てのごみを減らすAPDマシンを提供することが望ましい。その際に、炭酸カルシウムの沈殿物が殺菌によって作られる範囲で、そのような沈殿物は、時間と共に増大し得る問題を提示する。それに応じて、炭酸カルシウムの生成を阻害する方法および/または同じものが生成された場合にそれを除去する方法を有するPDシステムの必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
要旨
既知の自動化された腹膜透析(「PD」)システムは、硬い部分と圧送およびバルブ操作を行うことのための変形可能な柔らかい部分とを有する圧送カセットを受け入れて作動させるマシンまたはサイクラを典型的に備える。硬い部分は、様々なバッグに延びるチューブに取り付けられる。使い捨てカセットならびに関連するチューブおよびバッグは、在宅の患者が処置のために装着するには扱いにくい可能性がある。使い捨て製品の全体の量は、患者からの入力を要求する複数のセットアップ手順にもつながり得、このことは、エラーの可能性を露呈する可能性がある。
【0016】
他方で、本開示のAPDシステムおよび関連する方法論は、そのPDシステムの流体運搬部分の多くを、処置の後に殺菌される再使用可能構成要素へと変換する。マシンまたはサイクラ内の流体ラインは、再使用される。残る使い捨て製品は、ドレンバッグまたはハウスドレンにつながるドレンラインと(例えば異なるデキストロースまたはグルコースレベルPD流体コンテナおよび(イコデキストリンなどを含有する)最後のバッグコンテナなどの)一つ以上のPD流体コンテナまたはバッグとを備え得る。実施形態において、使い捨てフィルタは、患者への送達の前のPD流体ろ過の最終段階を提供するために、患者ラインの遠位端に置かれる。
【0017】
本開示のAPDシステムは、ハウジングを有するAPDサイクラを備える。少なくとも一つおよび場合によっては三つ以上の再使用可能PD流体ラインは、ハウジングから延びる。PD流体コンテナまたはバッグに接続されていないとき、再使用可能PD流体ラインは、ハウジングによって支持されて提供される殺菌コネクタに接続されることができる。再使用可能PD流体ラインは、例えば、ハウジングの前から延びて、PD流体ラインにアクセスしやすいように同様にハウジングの前で提供される殺菌コネクタに接続し得る。再使用可能PD流体ラインは、PD流体コンテナまたはバッグの、色付けされた、または鍵状にされたコネクタと合致するように、色分けされ得、かつ/または鍵状にされ得る。コンテナまたはバッグは、異なるデキストロースまたはグルコースレベルPD流体(例えば、1.36%グルコースPD流体、2.27%グルコースPD流体、3.86%グルコースPD流体、および/またはイコデキストリンなどの異なる配合のPD流体の最後のバッグ)を保持し得る。PD流体は、重炭酸塩成分を含有し得る。
【0018】
ハウジングの内側では、再使用可能チューブ類が、各再使用可能PD流体ラインから、各PD流体ラインのためのPD流体供給バルブを通り、PD流体インラインヒータへと走る。実施形態において、APDサイクラの各バルブは、PD流体が本体を通って流れることを(例えば非電力供給時に)防ぎ、かつ(例えば電力供給時に)可能にする再使用可能バルブ本体を有する電気的に作動されるバルブである。PD流体インラインヒータも、一つの実施形態において電気的に作動され、かつ例えば加熱することのためにPD流体を受け入れる再使用可能ヒータ本体を有する抵抗加熱器などである。実施形態におけるインラインヒータは、少なくとも200ミリリットル(ml)/分の流量で室温から体温(例えば37℃)までPD流体を加熱できる。温度センサは、温度制御のためのフィードバックを提供するために、(例えばヒータの下流など)ヒータに隣接して位置する。
【0019】
再使用可能チューブ類は、一つの実施形態において、PD流体インラインヒータの出口からエアトラップに走る。サイクラのハウジングの内側のチューブ類のいずれかは、金属(例えばステンレス鋼)またはプラスチック(例えば塩化ビニル(「PVC」)、もしくは例えばポリエチレン(「PE」)、ポリウレタン(「PU」)、ポリカーボネート(「PC」)などの非PVC材料など)であり得る。実施形態において、望ましいレベルまたは望ましい範囲のレベルのPD流体がエアトラップの中で維持されるように、一つ以上のレベルセンサは、エアトラップに隣接して位置する。流体ラインバルブは、実施形態において、エアトラップの下流の再使用可能流体ラインに沿って位置する。少なくとも一つの気体ラインに沿って位置する少なくとも一つの気体ラインバルブも、提供され得る。エアトラップは、レベルセンサの出力によって指示されたとき、エアトラップから廃液するためにPD流体供給バルブによって上流を閉じられ得る。
【0020】
再使用可能なPD流体ポンプは、サイクラハウジング内に位置し、かつ圧送することのためのPD流体を受け入れる再使用可能なポンプ本体を備える。つまり、ポンプは、PD流体が例えばチューブまたはカセットなどの使い捨て製品内を流れることを要求しない。PD流体ポンプは、例えばフローメータ、バランスチャンバ、または理想気体の法則を使用する装置などの別個のPD流体体積測定装置が必要でないほど本質的に正確な、電気的に作動されるピストンポンプであり得る。PD流体ポンプは代わりに、別個のPD流体体積測定装置と共に動作し得る電気的に作動されたギアポンプまたは遠心ポンプであり得る。
【0021】
PD流体ポンプは、PD流体ポンプの電流のレベルを制御することによって、圧力限界のまたはそれを下回る患者に、およびその患者から圧送することを制御可能である。正の患者圧力限界は、例えば1~5psig(例えば2psig(14kPa))であり得る。負の患者圧力限界は、例えば-1.0psig~-3.0psig(例えば、-1.3psig(-9kPa))であり得る。PD流体ポンプは、一つの実施形態において、一つのポンプが提供され得るように、双方向でかつ連続的である。
【0022】
本開示のAPDシステムのAPDサイクラは、一つ以上のプロセッサおよび一つ以上のメモリを有する制御ユニットを備え、制御ユニットは、圧力センサ、温度センサ、および場合により伝導度センサからの信号または出力を受け取って、信号または出力をフィードバックとして処理する。制御ユニットは、処置の間の安全な患者圧力限界および殺菌の間の安全なシステム限界で運転するようにPD流体ポンプを制御するために、圧力フィードバックを使用する。制御ユニットは、未使用PD流体を例えば体温などに加熱するようにPD流体ヒータを制御するために、温度フィードバックを使用する。
【0023】
制御ユニットはまた、プライミングシーケンス、患者フィルシーケンス、患者ドレンシーケンス、およびPD処置後の殺菌シーケンスを実行するために、PD流体ポンプおよびヒータと組み合わせてPD流体バルブを開閉し、そこでは各少なくとも一つの再使用可能PD流体供給ラインは、少なくとも一つの殺菌コネクタの一つに接続され、かつそこでは再使用可能患者ラインは、再使用可能患者ラインコネクタに接続される。殺菌シーケンスは、APDサイクラを次の処置のために準備する。実施形態において、未使用のPD流体は、最後のドレンの後に加熱されて、殺菌のために使用される。
【0024】
重炭酸塩を含有する未使用のPD流体の殺菌流体としての使用は、(殺菌ループを構成する)PDマシンまたはサイクラの殺菌された流路およびフロー構成要素の中での炭酸カルシウムの形成につながる可能性がある。それに応じて、本システムは、炭酸カルシウムの形成を妨げるおよび/または除去するために殺菌の間に投入されるソース二酸化炭素(CO)を備える。COソースは、一つの実施形態において、COバルブによって制御されるCOラインによる流体連通の中に置かれる。
【0025】
制御ユニットは、一つの実施形態において、制御ユニットの一つ以上のメモリに格納されたテーブルに依拠するシーケンスを実行するようにプログラムされる。一つの実装におけるテーブルは、CO投入による圧力上昇またはCO投入によって達成されるべき全体の圧力を、溶液重炭酸塩組成および/または殺菌温度設定の少なくとも一つの関数として設定する。概して、より多くの重炭酸塩がPD流体の中にあると、導入されるCO気体によってより高い圧力が必要とされる。さらに概して、殺菌PD流体温度がより高いと、導入されるCO気体によってより高い圧力が必要とされる。COソースが、多くの殺菌シーケンス分のCOを提供してもなお手頃なサイズであり得るように、COを無駄にしないように効率的にCO気体を使用しながら炭酸カルシウム沈殿の形成を効果的にブロックするためにはどれほどのCO気体圧力が必要かを決定するために、実験および/または計算は、様々な殺菌温度に対して重炭酸塩レベルを変化させながら行われる。
【0026】
別の実施形態におけるテーブルは、例えばPD流体、PD流体の温度、およびPD流体の圧力などの殺菌流体のタイプに依存するCOのモル分率を表し得、そこではモル分率値は、与えられた温度および圧力に対応する空間にある。COの望ましい量は、殺菌するPD流体に含有された水へのCOの付加が炭酸を作る化学反応式から決定され、炭酸は、炭酸カルシウムと組み合わさったとき、炭酸カルシウムをPD流体の中で懸濁されてドレンに運ばれるカルシウムおよび重炭酸イオンへと分ける化学反応を引き起こす。ここで、制御ユニットは、(例えばmmolでの)COの望ましい量を達成するために、COの投入によって殺菌流体圧力がどれほど上昇させられる必要があるかを決定するために、テーブルを使用する。実施形態において、別個のモル分率テーブルは、例えば第一に1.36%グルコースPD流体、第二に2.27%グルコースPD流体、第三に3.86%グルコースPD流体、およびその他などの考えられる各殺菌流体またはPD流体のために、制御ユニットによって格納されてアクセス可能である。
【0027】
COを殺菌ループへと導入することのための第一のステップは、処置が完了して、制御ユニットが殺菌を行う時間であるときに発生する。殺菌シーケンスを開始することの前に、COバルブが閉じられて、かつPD流体ポンプが作動されず、かつヒータが電力供給されない中での一つの実施形態における制御ユニットは、殺菌のために使用されるPD流体の中の重炭酸塩レベルおよび/または殺菌流体温度の関数としての達成すべき圧力(または圧力上昇)を設定するルックアップテーブル(または対応するアルゴリズム)にアクセスする。別の実施形態ににおける制御ユニットは、使用された特定の殺菌する流体のための格納されたテーブルから初期COモル分率値を取得するために、初期圧力および温度測定を行う。代わりにまたは加えて、COモル分率を決定するために随意のpHセンサまたはCOセンサが提供されて使用され得るが、特定の殺菌流体のためのルックアップテーブルは、余分のセンサの必要性を満たして除去するだろう。いずれの実施形態においても、CO気体投入によって達成すべき圧力または圧力上昇は、取得されて使用される。
【0028】
COを導入することのための第二のステップは、PD流体ポンプが作動されず、かつヒータが電力供給されない中で発生する。制御ユニットは、COバルブを開かせて、COが殺菌ループ内のPD流体へと投入されることを可能にする。制御ユニットは、COがパルスされ、または連続的に投入されることをもたらす。いずれの場合にも、制御ユニットは、圧力センサの出力を監視して、圧力が本明細書で述べられたルックアップテーブルのいずれかから決定された必要な圧力上昇または全体の圧力を達成したとき、COを投入することを停止する。
【0029】
COを導入することのための第三のステップは、本明細書で述べられた代わりの様式のいずれかで、かつ高められたCO圧力で、加熱された殺菌流体(PD流体)に殺菌ループを循環させるように、PD流体ヒータが電力供給されず、かつPD流体ポンプが作動されさないことを制御ユニットがもたらす中で発生する。被加熱殺菌流体循環は、指定された期間に行われる。この期間の間に、高められた圧力での指定された量のCOの存在は、本明細書で述べられた化学反応に従って炭酸カルシウム(CaCO)を妨げ、または除去する。
【0030】
COを導入することのための第四の、場合により随意のステップは、制御ユニットが、PD流体ヒータが電力供給されないことをもたらすが、流体ポンプが冷却されたPD流体を循環させることを可能にし続ける中で発生する。冷却期間の間に、制御ユニットは、出力が加熱の前の圧力レベルに戻るかどうかを見るために、圧力センサの出力を監視する。もしCOの何らかのリークが発生して、圧力がCO投入後圧力を下回る場合、制御ユニットは、例えば初期の始動圧力を上回る望ましい圧力上昇に再到達するために、追加のCO2が投入されることを可能にするようにCOバルブを開かせ得る。もし提供されれば、アンモニアおよび/またはCOセンサは、追加のCOを殺菌ループへと計量することに役立つために、追加でまたは代わりにここで使用され得る。
【0031】
本明細書で説明された開示を考慮し、かつ開示をいかなる方法によっても限定することなしに、あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第一の側面において、腹膜透析(「PD」)システムは、PD流体ポンプと、PD流体ポンプを備える殺菌ループであって、殺菌ループは殺菌ループを殺菌することのために使用されるPD流体を備える、殺菌ループと、殺菌シーケンスの間に炭酸カルシウム(CaCO)の生成を阻害および/または除去するために、殺菌ループにCOを供給するように位置付けられて配列された二酸化炭素(CO)、ソースとを備える。
【0032】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第二の側面において、PDシステムは、殺菌ループとCOソースとの間に位置するCOバルブを備え、COバルブは、COが殺菌ループに供給されることを可能にするために開けられる。
【0033】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第三の側面において、PDシステムは、殺菌シーケンスの間に炭酸カルシウムの生成を阻害および/または除去するために望ましい圧力または圧力上昇にCOがPD流体を加圧することを可能にするためにCOバルブを開かせるように構成された制御ユニットを備える。
【0034】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第四の側面において、PDシステムは、制御ユニットに出力する少なくとも一つの圧力センサを備え、制御ユニットは、望ましい圧力または圧力上昇を検出するために、少なくとも一つの圧力センサ出力を監視するように構成される。
【0035】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第五の側面において、制御ユニットは、望ましい圧力または圧力上昇を決定するために、ルックアップテーブルを使用するように構成される。
【0036】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第六の側面において、制御ユニットは、PD流体が殺菌シーケンスのために加熱される殺菌温度を格納し、かつルックアップテーブルの中の望ましい圧力または圧力上昇は、殺菌温度に対応する。
【0037】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第七の側面において、PDシステムは、制御ユニットに出力する少なくとも一つの温度センサを備え、制御ユニットは、殺菌温度を検出するために、少なくとも一つの温度センサ出力を監視するように構成される。
【0038】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第八の側面において、ルックアップテーブルは、殺菌に使用されるPD流体のタイプに特有である。
【0039】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第九の側面において、制御ユニットは、殺菌のために使用されたPD流体の重炭酸塩レベルを検知し、かつルックアップテーブルの中の望ましい圧力または圧力上昇は、重炭酸塩レベルに対応する。
【0040】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第十の側面において、制御ユニットは、殺菌ループにCOを供給することの前に初期圧力および温度読み取り値を得るように構成され、制御ユニットは、ルックアップテーブルと初期圧力および温度読み取り値とを使用して殺菌ループの中に含有されたCOの初期量を決定するようにさらに構成される。
【0041】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第十一の側面において、制御ユニットは、望ましい圧力または圧力上昇を決定するためにアルゴリズムを使用するように構成される。
【0042】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第十二の側面において、制御ユニットは、殺菌シーケンスの間にPD流体ポンプに運転させることの前に、COがPD流体を望ましい圧力または圧力上昇に加圧することを可能にするために、COバルブを開かせるように構成される。
【0043】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第十三の側面において、制御ユニットは、殺菌シーケンスの間にPD流体ポンプに運転させることの間に、COがPD流体を望ましい圧力または圧力上昇に加圧することを可能にするために、COバルブを開かせるように構成される。
【0044】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第十四の側面において、PDシステムは、PD流体ヒータを備え、そこでは制御ユニットは、殺菌シーケンスの間にPD流体ヒータにPD流体を加熱させることの前に、COがPD流体を望ましい圧力または圧力上昇に加圧することを可能にするために、COバルブを開かせるように構成される。
【0045】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第十五の側面において、PDシステムは、PD流体ヒータを備え、そこでは制御ユニットは、殺菌シーケンスの間にPD流体ヒータにPD流体を加熱させることの間に、COがPD流体を望ましい圧力または圧力上昇に加圧することを可能にするために、COバルブを開かせるように構成される。
【0046】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第十六の側面において、制御ユニットは、圧力の損失が制御ユニットによって検出されたとき、COが冷却期間の間にPD流体を加圧することを可能にするために、COバルブを開かせるように構成される。
【0047】
あらゆる他の側面またはその部分と組み合わせられ得る本開示の第十七の側面において、図1~7のいずれか一つ以上と関連して記述された特徴、機能、および代替のいずれかは、図1~7の他のいずれかと関連して記述された特徴、機能、および代替のいずれかと組み合わせられ得る。
【0048】
よって、殺菌の間に、炭酸カルシウム生成が阻害される、または炭酸カルシウムが掃除されて除去されることを確かにすることに役立つ自動化された腹膜透析(「APD」)サイクラのためのシステムを提供することは、本開示の利点である。
【0049】
炭酸カルシウムの発達を妨げる、または除去するために、殺菌の間に二酸化炭素(CO)を効率的に使用するAPDサイクラのためのシステムを提供することは、本開示のもう一つの利点である。
【0050】
殺菌の間の沈殿のビルドアップを妨げることに役立つAPDサイクラのためのシステムを提供することは、本開示のさらなる利点である。
【0051】
追加の特徴および利点は、次の詳細な説明および図に記載され、かつ次の詳細な説明および図から明白だろう。本明細書に記載された特徴および利点は、包括的でなく、特に、多くの追加の特徴および利点は、当業者にとって図および記載を考慮して明白だろう。同様に、あらゆる特定の実施形態は、本明細書に列記された利点の全てを有する必要がなく、かつ個々の有利な実施形態を別個に主張することが明らかに考えられる。さらに、注意されるべきことは、明細書の中で使用された言語は、主に可読性および教育目的のために、かつ発明内容の範囲を限定しないように選択されている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、本開示の自動化された腹膜透析(「APD」)マシンまたはサイクラおよび関連するシステムの一つの実施形態の概略図である。
【0053】
図2図2は、処置の後かつ殺菌の前の本開示の自動化された腹膜透析(「APD」)マシンまたはサイクラの一つの実施形態の簡略化された概略図である。
【0054】
図3図3は、COを殺菌ループに送達する本開示の自動化された腹膜透析(「APD」)マシンまたはサイクラの一つの実施形態の簡略化された概略図である。
【0055】
図4図4は、送達されたCOを含有する加熱されたPD殺菌流体を殺菌の間に圧送する本開示の自動化された腹膜透析(「APD」)マシンまたはサイクラの一つの実施形態の簡略化された概略図である。
【0056】
図5図5は、冷却期間の間にCOを殺菌ループに随意に送達する本開示の自動化された腹膜透析(「APD」)マシンまたはサイクラの一つの実施形態の簡略化された概略図である。
【0057】
図6図6は、本開示の自動化された腹膜透析(「APD」)マシンまたはサイクラの制御ユニットに格納されたルックアップテーブル例であり、ルックアップテーブルは、CO投入によって達成すべき圧力または圧力上昇を提供し、そこでは圧力は、PD殺菌流体の中の重炭酸塩の量および/または殺菌流体温度の少なくとも一つに基づく。
【0058】
図7図7は、本開示の自動化された腹膜透析(「APD」)マシンまたはサイクラの制御ユニットに格納された代わりのルックアップテーブル例であり、ルックアップテーブルは、CO投入によって達成すべき圧力または圧力上昇を提供し、そこでは圧力は、COのモル分率に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0059】
詳細な説明
概略システム
今、図面、特に図1を参照して、本開示の自動化された腹膜透析(「APD」)システム10および関連する方法論は、APDマシンまたはサイクラ20を備える。システム10およびサイクラ20は、可能な限り多くの使い捨て製品を除外して、代わりに、流体を運ぶ部分の大多数を処置の後に殺菌される再使用可能な構成要素として提供しようと試みる。マシンまたはサイクラ内の流体ラインは、再使用される。特に、図1は、サイクラ20がハウジング22を備えることを図示し、ハウジング22から再使用可能PD流体供給ライン24a~24dが延びる。図1は、マシンまたはサイクラ20のハウジング22から再使用可能患者ライン26も延びることをさらに図示する。再使用可能PD流体供給ライン24a~24dより典型的に長い再使用可能患者ライン26は、再使用可能患者ライン26が処置のために患者に接続されていないとき、糸巻きまたはホース巻き28によってハウジング内でコイル状にされ、または巻き上げられ得る。
【0060】
PD流体コンテナまたはバッグに接続されていないとき、再使用可能PD流体供給ライン24a~24dおよび患者ライン26は、ハウジング22によって支持されて提供された専用コネクタに接続されることができる。再使用可能PD流体供給ラインおよび患者ラインは、例えばハウジング22の前から延びて、PD流体および患者ラインにアクセスできるように同様にハウジングの前に提供されたコネクタに接続し得る。図示された実施形態において、PD流体供給ライン24a~24dの遠位端24eは、それぞれ、ハウジング22で提供された殺菌コネクタ30a~30dに流体密封様式で解除可能に付着する。再使用可能患者ライン26の遠位端26dは、ハウジング22に提供された患者ラインコネクタ32に流体密封様式で解除可能に付着する。殺菌コネクタ30a~30dは、再使用可能PD流体供給ライン24a~24dが除去されたときまたはコネクタに接続されていないとき、自動的に閉まるまたは閉じるように一つの実施形態において構成され、かつ患者ラインコネクタ32は、再使用可能患者ライン26が除去されたときまたはコネクタに接続されていないとき、自動的に閉まるまたは閉じるように一つの実施形態において構成される。
【0061】
図1は、ハウジング22が、可動(例えば回転可能またはスライド可能)カバー34cによって解除可能に覆われ得るドレンラインコネクタ34を提供することも図示する。ドレンラインコネクタ34は、ドレンコネクタもしくはバッグに、またはハウスドレンに走り得る処置用の使い捨てドレンライン36を受け取る。使い捨てドレンライン36は、殺菌の間はドレンラインコネクタ34から切断される。
【0062】
使い捨てPD流体または溶液のコンテナまたはバッグ(システム10はコンテナまたはバッグが除去された殺菌構成にあるため、図示されていない)は、それぞれ再使用可能PD流体供給ライン24a~24dに接続される。再使用可能PD流体供給ライン24a~24dの遠位端24eは、専用PD流体コンテナまたはバッグの色分けまたは鍵状にされたコネクタと合致するように、色分けまたは鍵状にされ得る。コンテナまたはバッグは、例えば1.36%グルコースPD流体、2.27%グルコースPD流体、3.86%グルコースPD流体、および/または異なる配合のPD流体(例えばイコデキストリンなど)の最後のバッグなどの同じまたは異なるデキストロースまたはグルコースレベルPD流体を保持し得る。
【0063】
一つの再使用可能PD流体ラインおよびPD流体コンテナまたは一つより多い再使用可能PD流体ラインおよびPD流体コンテナを備える任意の数の再使用可能PD流体供給ライン24a~24dおよびPD流体コンテナまたはバッグが、提供され得るということは理解されるべきである。さらなる代わりの実施形態において、PD流体コンテナまたはバッグは、一つの再使用可能PD流体供給ラインに接続して流体的に連通するオンラインPD流体生成ソースに置換される。
【0064】
使い捨てドレンライン36と、(もし使用されていれば、関連するコンテナと、)使い捨てPD流体コンテナまたはバッグとに加えて、システム10の唯一の他の使い捨ての構成要素は、患者への送達の前のPD流体ろ過の最終段階を提供するための、再使用可能患者ライン26の遠位端26dで患者によって解除可能に接続される(図示されていない)使い捨てフィルタセットであると一つの実施形態のおいて考えられる。実施形態において、使い捨てフィルタセットは、再使用可能患者ライン26の遠位端26dと患者へ挿入される内在PDカテーテルにつながる患者のトランスファーセットとの間で接合される。
【0065】
再使用可能PD流体供給ライン24a~24d、再使用可能患者ライン26、殺菌コネクタ30a~30d、患者ラインコネクタ32、ドレンラインコネクタ34、ドレンライン36、PD流体コンテナまたはバッグ、および患者ラインフィルタセットのいずれか一つ、複数、またはすべては、例えば塩化ビニル(「PVC」)または非PVC材料(例えばポリエチレン(「PE])、ポリウレタン(「PU])、ポリプロピレン(「PP」)、もしくはポリカーボネート(「PC])など)のいずれか一つ以上のプラスチックで作られると考えられる。
【0066】
図1は、再使用可能供給チューブ52aが、再使用可能各PD流体供給ライン24a~24dからそれぞれPD流体供給バルブ54a~54dを経由しPD流体インラインヒータ56へ走るということをさらに図示する。ある実施形態において、PD流体供給バルブ54a~54dを備えるAPDサイクラ20の各バルブは、PD流体が本体を通って流れることを(例えばフェイルセーフ操作のための非電源供給時に)防ぎ、または(例えば電源供給時に)可能にする再使用可能バルブ本体を有する電気的に作動されるバルブである。図示された実施形態において、バルブ54dは、再使用可能PD流体供給ライン24bまたは24cからのPD流体を受け取ることのために通常は開いたポートと再使用可能PD流体供給ライン24dからのPD流体を受け取ることのために通常は閉じだポートとを有する3方向バルブである。PD流体インラインヒータ56も、一つの実施形態において電気的に作動され、かつ例えば処置のためおよび殺菌加熱のためにPD流体を受け入れる再使用可能ヒータ本体を有する抵抗加熱器である。実施形態の中のインラインヒータ56は、少なくとも200ミリリットル(「ml」)/分までの流量で、室温またはより冷たい温度(例えばPD流体が冷たい環境で貯蔵されたとき)から体温(例えば37℃)までPD流体を加熱することができる。
【0067】
第一の温度センサ58aは、温度制御のためのフィードバックを提供するために、インラインヒータ56に隣接して(例えば、ヒータの下流に)位置する。必要に応じて第二の温度センサ(図示されていない)は、未使用PD流体の入来温度が加熱アルゴリズムに考慮されることを可能にするために、PD流体ヒータ56の上流に提供され得る。第二の温度センサ58bは、PD流体ポンプ70のすぐ下流に図示され、例えばPD流体ポンプ70を出る未使用PD流体が処置のために望ましい温度(例えば体温または37℃)であることの第二のチェックとして提供される。
【0068】
図示された実施形態において、フロースイッチ68は、PD流体インラインヒータ56のすぐ上流に位置する。フロースイッチ68からの出力は、インラインヒータ56を通るPD流体フローがあることを確認するために使用される。フロースイッチ68からの出力(またはその不足)がPD流体フローを全く示さないまたはほとんどPD流体フローを示さないとき(電力が供給されたときにインラインヒータ56に害を与える可能性がある)、(i)フローが無いまたは少ない状況に対する改善を見つけることを試みることまたは(ii)ユーザーインターフェース108で聴覚、視覚、または視聴覚のアラームまたはアラートを引き起こすことの間に、必要に応じて、システム10がインラインヒータ56への電力供給を停止して、処置または殺菌を止める原因となる。ヒータに電力を供給するためにインラインヒータ56へのフローを確保することのための代わりの方法は、代わりに使用され得る。
【0069】
再使用可能チューブ52bは、PD流体インラインヒータ56の出口から図1の図示された実施形態の中のエアトラップ60に走る。再使用可能チューブ52aおよび52bを備えるサイクラ20のハウジングの内側の再使用可能チューブ類のいずれかは、例えばステンレス鋼などの金属または例えば塩化ビニル(「PVC」)もしくは非PVC材料(例えばポリエチレン(「PE])、ポリウレタン(「PU])、ポリプロピレン(「PP」)、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、またはポリカーボネート(「PC])など)などのプラスチックで作られ得る。実施形態において、一つ以上のレベルセンサ62aおよび62bは、PD流体の望ましいレベルまたはレベルの範囲がエアトラップの中で維持されるように、エアトラップ60に隣接して位置する。流体ラインバルブ54eは、図示された実施形態の中のエアトラップ60の下流に位置して、エアトラップからの新鮮で加熱されたPD流体を受け取る。気体ラインバルブ54gは、エアトラップ60の上端から延びる気体ライン52gに沿って位置する。エアトラップ60は、レベルセンサ62aまたは62bの出力によって指示されたときエアトラップから排液するために、PD流体供給バルブ54a~54dによって上流を閉められ得る。
【0070】
再使用可能流体ライン52cは、流体ラインバルブ54eとサイクラ20のハウジング22内に位置するPD流体ポンプ70との間を走り、気体ライン52gは、気体ラインバルブ54gとサイクラ20のハウジング22内に位置するPD流体ポンプ70との間を走る。PD流体ポンプ70は、圧送のためにPD流体を受け入れる再使用可能ポンプ本体を備える。つまり、ポンプ70は、PD流体がチューブまたはカセットなどの使い捨て製品内を流れることを要求しない。ポンプ70の再使用可能ポンプ本体は、それ自身がPD流体を受け入れる。PD流体ポンプ70は、バランスチャンバーまたはフローメータなどの別個のPD流体体積測定機器が必要でないほど本質的に正確な、例えばピストンポンプのタイプであり得る。PD流体ポンプ70は代わりに、PD流体体積測定機器と作動する、より正確でないギアまたは遠心ポンプであり得る。PD流体ポンプ70は、PD流体ポンプへの電流のレベルを制御することによって、圧力限界のまたはそれを下回る患者に、およびその患者から圧送することを制御可能である。正の患者圧力限界は、例えば1~5psig(例えば2psig(14kPa))である。負の患者の圧力限界は、例えば-1.0psig~-3.0psig(例えば-1.3psig(-9kPa))であり得る。PD流体ポンプ70は、必要に応じて(例えば小さな子供または赤ちゃんのために)より低い圧力を供給することも可能であり得る。PD流体ポンプ70は、一つの実施形態において、一つのポンプが提供され得るように双方向でかつ連続的である。
【0071】
図1は、未使用PD流体患者ラインバルブ54fが、一つの実施形態において、下流温度センサ58bと糸巻きまたはホース巻き28との間の再使用可能新鮮PD流体患者チューブまたはライン52fに沿って位置するということをさらに図示する。未使用PD流体患者チューブまたはライン52fは、一つの実施形態において、デュアルルーメン再使用可能患者ライン26の未使用PD流体ルーメンと流体的に連通する。使用済PD流体患者ラインバルブ54uは、実施形態において、PD流体ポンプ70と糸巻きまたはホース巻き28との(交差64aを経由する)間の再使用可能使用済PD流体患者チューブまたはライン52uに沿って位置する。使用済PD流体患者チューブまたはライン52uは、一つの実施形態において、デュアルルーメン再使用可能患者ライン26の使用済PD流体ルーメンと流体的に連通する。ドレンラインバルブ54hは、T字部66からドレンラインコネクタ34まで延びる再使用可能ドレンチューブまたはライン52hに沿って位置する。
【0072】
第一の患者圧力センサ72aは、正の患者PD流体圧力を測定するために、PD流体ポンプ70と糸巻きまたはホース巻き28との間の未使用PD流体患者チューブまたはライン52fに沿って位置する。第二の患者圧力センサ72bは、患者ドレンの間に負の患者PD流体圧力を測定するために、気体ライン52gに沿って位置する(気体は、交差64aでの流体連通を経由する使用済PD流体と同じ負の圧力である)。第三および第四の圧力センサ72cおよび72dは、再使用可能殺菌チューブまたはライン52dに沿って位置する。
【0073】
上述のように、患者ラインコネクタ32は、APDサイクラハウジング22に位置して、殺菌の間および概して患者が処置を受けていない間にデュアルルーメン再使用可能患者ライン26を受け入れる。一つの実施形態における患者ラインコネクタ32は、例えば加熱されたPD流体などの殺菌流体がデュアルルーメン患者ラインの一方のルーメンからデュアルルーメン患者ラインのもう一方のルーメンへと流れることを可能にする密閉された流体のUターンまたは180°ターンを備える。従って、デュアルルーメン再使用可能患者ライン26は、殺菌ループの中に含まれる。
【0074】
さらに上述のように、ドレンライン36は、一つの実施形態において柔軟かつ使い捨てであり、かつ処置の間にAPDサイクラ20のハウジング22から延びるドレンラインコネクタ34に接続する。処置の後に、ドレンライン36は、殺菌シーケンスの間に除去され得る。ドレンラインコネクタ34は、患者ドレンの間に使用済PD流体をドレンライン36に送達することのために、内部の、再使用可能ドレンチューブまたはライン52hを受け取る。ドレンラインコネクタ34は、処置の間にドレンライン36に空気または二酸化炭素(CO)などの気体を送達することのために、ベントチューブまたはライン52vも受け取る。ベントバルブ54vは、ベントチューブまたはライン52vに沿って位置する。
【0075】
図1に図示されるように、再使用可能殺菌チューブまたはライン52dは、ベントチューブまたはライン52vおよび使用済PD流体患者チューブまたはライン52uと共に、第二の交差64bに延びる。再使用可能殺菌チューブまたはライン52dは、殺菌バルブ54sを備える。処置の間、殺菌チューブまたはライン52dは、例えば未使用の加熱されたPD流体などの殺菌流体を扱い、ベントチューブまたはライン52vは、例えば空気などのベント気体を扱う一方で、使用済PD流体患者チューブまたはライン52uは、使用済PD流体を扱う。
【0076】
図1に図示されるバイパスライン52yは、殺菌の間の使用のために、殺菌コネクタ30cと30dとの間に位置する。類似するバイパスライン52zは、殺菌コネクタ30aと30bとの間に提供される。殺菌の間に、PD流体などの加熱された殺菌流体は、バイパスライン52yおよび52zを通って十分に殺菌された殺菌コネクタ30a~30dへ指向される。
【0077】
図1は、システム10が二酸化炭素(CO)ソース80を備えるということも図示し、二酸化炭素(CO)ソースは、例えばCOライン52oを経由して、例えばPD流体ポンプ70と圧力センサ72aとの間の殺菌ループに流体的に接続され得る。COバルブ54oは、COライン52oに沿って位置する。詳細に後述するように、システム10は、PD流体が加熱されるにつれての炭酸カルシウム(CaCO)のあらゆるビルドアップを妨げるおよび/または除去するために、殺菌の直前に、望ましくかつ効果的な量のCO気体をCOソース80からPD流体などの殺菌流体へと計量されさせる。COソース80は、例えばここで述べられる与圧スキームに従って複数の殺菌シーケンスに渡って十二分の圧力を提供するために、最初に70kPa(10psig)に加圧され得る。
【0078】
図1は、気体またはCO圧力レギュレータ74およびCO圧力センサ76が、COライン52oに沿ってCOバルブ54oの上流に随意に位置し得ることをさらに示す。CO圧力レギュレータ74は、COソース80がより高いレベルに与圧されることを可能にし、その結果COソース80はより長く持続する。その後、レギュレータ74は、COソース80からの高い入来圧力を、なだらかに出力される望ましい出力圧力に下方調整する。望ましい動作圧力は、例えば図6および図7にそれぞれ関連して後述されるようにテーブル110またはテーブル120から取得される達成されるべき圧力(または圧力上昇)をわずかに上回り得る。CO圧力センサ76は、COソース80内に残るCO圧力に対応する圧力を読み取って出力する。一方向またはチェックバルブ78は、未使用または使用済PD流体がCOライン52oに入ることを妨げるために提供されて配向され得る。
【0079】
図1は、本開示のシステム10のAPDサイクル20が、一つ以上のプロセッサ102および一つ以上のメモリ104を有する制御ユニット100を備えるということをなおもさらに図示し、一つ以上のプロセッサ102および一つ以上のメモリ104は、圧力センサ72a~72dと、もし提供されていればCO圧力センサ76と、温度センサ58aおよび58bと、フロースイッチ68と、場合により(図示されていない)伝導度センサとからの信号または出力を受け取って、格納して、処理する。制御ユニット100は、未使用および使用済PDを安全な患者およびシステム圧力限界で圧送するようにPD流体ポンプ70を制御するために、圧力センサ72aおよび72bからの圧力フィードバックを使用する。制御ユニット100は、未使用PD流体を例えば処置のための体温または37℃に、および殺菌のための85℃に加熱するようにインラインPD流体ヒータ56を制御するために、温度センサ58aからの温度フィードバックを使用する。制御ユニット100は、PD流体インラインヒータ56に電力を供給するか否かを決定するために、フロースイッチ68からのフロースイッチフィードバックを使用する。制御ユニット100は、本明細書で述べられるように、どれほどのCOがCOライン52oを経由して殺菌ループに送達されたかを決定するために、圧力センサ72a(および場合により圧力センサ72b)からのフィードバックをさらに使用する。
【0080】
図1に図示される制御ユニット100は、タッチスクリーンおよび/または例えばメンブレンスイッチなどの一つ以上の電気化学的ボタンと共に作動するディスプレイスクリーンを備え得るユーザインタフェース108と連動するビデオコントローラ106も備える。ユーザインタフェース108は、アラーム、アラート、および/または音声ガイダンスコマンドを出力することのための一つ以上のスピーカも備え得る。ユーザインタフェース108は、図1に図示されるように、サイクラ20と共に提供され得、かつ/または制御ユニット100と共に作動するリモートユーザインタフェースであり得る。制御ユニット100は、医師または臨床医のコンピュータと連動する医師または臨床医のサーバへ処置データを送ることと、処方命令を医師または臨床医のサーバから受け取ることとのために、(図示されていない)送受信器および例えばインターネットなどのネットワークへの有線または無線の接続も備え得る。
【0081】
制御ユニット100は、プライミングシーケンス、複数患者フィルシーケンス、複数患者ドレンシーケンス、およびPD処置の後の殺菌シーケンスを実行するためにPD流体ポンプ70およびインラインヒータ56の操作と組み合わせてPD流体バルブ54a~54h、54o、54s、54u、および54vを開閉する。殺菌シーケンスは、次の処置のためにAPDサイクラ20を準備する。実施形態において、残った未使用PD流体は、最後の患者ドレンの後に加熱されて、殺菌のための殺菌流体として使用される。
【0082】
殺菌シーケンスのための殺菌ループ90を形成するために、各再使用可能PD流体供給ライン24a~24dは、各々の殺菌コネクタ30a~30dに接続され、かつ再使用可能患者ライン26は、再使用可能患者ラインコネクタ32に接続され、かつ一つの実施形態においてドレンライン36は、ドレンラインコネクタ34が閉鎖し得るように除去される。図1に図示されるように、殺菌ループ90は、(Uターンまたは180°ターンを備える)患者ラインコネクタ32と、再使用可能デュアルルーメン患者ライン26の両ルーメンと、使用済PD流体患者チューブまたはライン52uと、再使用可能殺菌チューブまたはライン52dと、再使用可能ドレンチューブまたはライン52hと、ベントチューブまたはライン52vと、ドレンラインコネクタ34と、再使用可能PD流体供給ライン24a~24dと、バイパスライン52y、52zと、再使用可能チューブまたはライン52a~52cおよび52fとを備える。殺菌ループ90は、上に列記されたラインに沿って位置するすべてのフロー構成要素および流体接触センサの内部も備える。
【0083】
制御ユニット100は、殺菌の間に、殺菌ループ90に沿ったバルブのいくつかを順序付け得る。例えば、PD流体供給バルブ54aは、殺菌流体が供給バルブ54aを通って流れることまたはまたは再使用可能PD流体供給ライン24aを完全に通ることを強制されることを可能にするために、殺菌の間に開および閉を順序付けられ得る。制御ユニット100は、殺菌流体が殺菌ループ90を通って時計回りおよび反時計回りに流れ得るように、殺菌の間に順状態および逆状態で連続してPD流体ポンプ70に運転させ得る。制御ユニット100は、例えば未使用PD流体などの殺菌流体を例えば70℃~95℃などの望ましい殺菌温度にインラインヒータ56に加熱もさせる。
【0084】
重炭酸塩を含有するPD流体の殺菌流体としての使用は、PDマシンまたはサイクラ20の殺菌ループ90の殺菌された流路またはフロー構成要素の中の炭酸カルシウム(CaCO)の形成につながりやすい。それに応じて、ソース80からの二酸化炭素(CO)は、炭酸カルシウムの形成を妨げるためおよび/または除去するために、殺菌のすぐ前に提供される。図2~5は、ソース80からのCO投入の重要な構成要素を示す、殺菌ループ90の簡略化されたバージョンを図示し、ソース80からのCO投入の重要な構成要素は、PD流体インラインヒータ56、第一の温度センサ58a、PD流体ポンプ70、未使用PD流体患者圧力センサ72a、COソース80、COライン52o、COバルブ54o、および制御ユニット100を備える。しかし、図2図5に関連して記述されたシーケンスが図1のシステム10のPDマシンまたはサイクラ20の完全な殺菌ループ90へ等しく応用可能であることは、理解されるべきである。
【0085】
重炭酸塩レベルおよび/または殺菌温度に基づくルックアップテーブル
今、図6を参照して、実施形態における図2図5のシーケンスは、制御ユニット100の一つ以上のメモリ104に格納されるテーブル110(または対応するアルゴリズム)に依拠し、テーブル110は、PD殺菌流体の中の重炭酸塩レベルまたは殺菌流体温度の少なくとも一つに基づくCOの投入に起因して達成すべき圧力、または圧力上昇を設定する。図6に図示されるように、テーブル100は、CO投入に起因する圧力上昇またはCO投入によって達成されるべき全体の圧力(P11~P46)を、溶液重炭酸塩組成(b1~b4)および殺菌流体温度設定(T1~T6)の少なくとも一つの関数として設定する。それに応じて図6は、達成すべき圧力(または圧力上昇)を二次元配列の中の重炭酸塩レベルと殺菌流体温度設定との両方の関数として図示する。しかし、代わりに図6は、重炭酸塩レベルまたは殺菌流体温度の一つのみの関数としての達成すべき圧力(または圧力上昇)を基準に用いることができる。
【0086】
概して、未使用PD流体の中にある重炭酸塩が多いほど、投入されたCO気体投入に起因するテーブル110の中のより高い圧力が必要とされる。さらに、概して、殺菌PD流体温度が高いほど、投入されたCO気体に起因するテーブル110の中のより高い圧力が必要とされる。テーブル110に加えて、COソース80が、多くの殺菌シーケンス分のCOを提供してもなお手頃なサイズであり得るように、COを無駄にしないように効率的にCO気体を使用しながら炭酸カルシウム沈殿の形成を効果的にブロックするためにはどれほどのCO気体圧力が必要かを決定するために、実験および/または計算は、様々な殺菌温度に対して重炭酸塩レベルを変化させながら行われる。
【0087】
各殺菌シーケンスの最初の制御ユニット100は、終わったばかりの処置のために使用された所定のPD流体から重炭酸塩レベルを検知する。制御ユニット100は、様々な殺菌シーケンスで同じまたは異なり得る殺菌流体温度も検知して設定する。制御ユニット100は、テーブル110(または対応するアルゴリズム)にアクセスして、既知の重炭酸塩レベルおよび既知の殺菌流体温度に基づいて、達成すべき作動圧力(または圧力上昇)を見つける。テーブル110は、殺菌流体温度を重炭酸塩レベルと比較することと基本的に同様に、殺菌流体温度を使用されたPD流体の重炭酸塩基準のタイプと代わりに比較することができるということは理解されるべきである。重炭酸塩を含有しないPD流体は、ここで述べられる沈殿問題を有しないことも理解されるべきである。よって、重炭酸塩を含有しないPD流体を殺菌のために使用するとき、制御ユニット100は、テーブル110にアクセスせず、かつCOソース80からCO気体を投入しない。
【0088】
モル分率に基づくルックアップテーブル
今、図7を参照すると、代わりの実施形態における図2~5のシーケンスは、制御ユニット100の一つ以上のメモリ104に格納されたテーブル120(または対応するアルゴリズム)に依拠し、テーブル120は、COのモル分率を使用する。図7のテーブル120は、例えばPD流体のタイプ、PD流体温度(左の列、℃)、およびPD流体圧力(上の行、kPA)などの殺菌流体のタイプに依存するCOのモル分率を表し、テーブル120ではモル分率値は、与えられた温度および圧力に対応する領域にある。実施形態において、(テーブル120のような)別個のテーブルは、例えば第一に1.36%グルコースPD流体のため、第二に2.27%グルコースPD流体のため、および第三に3.86%グルコースPD流体のためなど、考えられる殺菌流体またはPD流体のそれぞれのために制御ユニット100によって格納されてアクセス可能である。
【0089】
図7のテーブル120を使用することの一例において、次の情報は、既知であるとして扱われて、制御ユニット100の中に格納され得、または制御ユニット100の中の制御ユニット100の部分であり得る。
・殺菌ループ90体積は、200mlである。
・COソース80は、18gのCOを保持する。
・COモル質量は、44.01g/molである。
・CaCOモル質量は、100.0869g/molである。
・殺菌流体モル質量は、(HOのモル質量と仮定して)18.02g/molである。
・殺菌流体HO密度は、(HOのHO密度と仮定して)0.96859g/mlである。
・殺菌流体のカルシウム(Ca)2+含有量は、1.25mmol/L)である。
【0090】
一殺菌シーケンスごとに、炭酸カルシウムを除去することのために次の化学反応を使用し、ここでHCOは炭酸であり、かつHCOは重炭酸塩であり、かつHOは、殺菌のために使用されるPD流体から取得される。
【化1】
【0091】
CO2投入の目標は、溶解したCOが被加熱殺菌シーケンスの間に0.5mmolと上で算出された予め定義された量に維持されるように、圧力センサ72aによって測定される圧力を増大させることである。COの初期分圧がおよそ0.04kPa(環境のCO2分圧)であると仮定され得るように、殺菌に使用されるPD流体のソース(例えばそのような流体のバッグなど)は、温度および圧力に関して周囲環境と平衡にあるという仮定が行われる。図7のテーブル120を使用すると、5kPaおよび25℃における0.031モル分率バルブからの外挿は、通常の環境条件におけるCOの約0.00031モル分率をもたらす((0.04kPa/5kPa)は、およそ0.031の1/10であり、0.031の1/10は、0.00031モル分率に等しい)。
【0092】
例において、殺菌ループ90の中で循環させられる殺菌流体またはPD流体の体積は、200ミリリットル(「ml」)であるということも仮定される(および商業的な実装において既知であろう)。PD殺菌流体の密度を検知すると(例において水の密度を使用すると)、200mlのPD流体は、193.72グラムまたは10.75モルの殺菌ループ90の中の流体に等しい。通常の環境条件(5kPaおよび25℃)において、10.75モルx0.00031モル分率は、0.0033mmolのCOをもたらし、典型的な殺菌温度である85℃における0.04kPaについて図7のテーブル120から推定されるように、0.0033mmolのCOは、85℃において0.0012mmolCOに低下する(0.00011モル分率x10.75モル)。低下は、0.5012(0.0012+0.5)mmolのCOが加熱されたPD流体へと投入される必要があるということを決定づける。次に、0.5012(0.0012+0.5)mmolのCOは、必要とされるモル分率0.5012/10.75=0.0466をもたらし、次に、モル分率0.0466は、図7のテーブル120に従って、85℃における約21kPa(3psig)の分圧上昇をもたらす。
【0093】
制御ユニット100にプログラムされた、図7のテーブル120と確かな仮定に基づく上の既知数とを使用することによって、制御ユニット100は、殺菌流体として使用されるために与えられたPD流体に対して、かつ与えられた殺菌温度に対して(それらのそれぞれは処置の時に制御ユニット100にプログラムされ得、または患者の処方から知られ得)、圧力を計算することができ、その圧力は、殺菌PD流体がソース80からのCO圧力によって上昇させられる必要がある圧力であり、一つの実施形態において、圧力はCO圧力レギュレータ74によって設定される。
【0094】
CO投入ステップ
図2は、PD処置が完了して、制御ユニット100が殺菌を行う時間である第一のステップを図示する。殺菌シーケンスを開始することの前に、一つの実施形態における制御ユニット100は、COバルブ54oが閉じられ(黒塗りされず)、かつPD流体ポンプ70が作動されず、かつインラインヒータ56がエネルギ供給を受けない中で、既知の重炭酸塩レベルおよび/または殺菌温度に基づいて、図6のテーブル110から達成されるべき圧力(または圧力上昇)を見つける。代わりの実施形態における制御ユニット100は、COバルブ54oが閉じられ、かつPD流体ポンプ70が作動されず、かつインラインヒータ56にエネルギ供給を受けない中で、図7のテーブル120から初期COモル分率値を取得するために、圧力センサ72aによって初期圧力測定を行い、かつ温度センサ58aによって初期温度測定を行う。(図示されていない)随意のPHセンサまたはCOセンサは、初期COモル分率を決定するために、代わりにまたは加えて提供および使用され得るが、殺菌流体のための図7のテーブル120は、余分のセンサの必要性を満たして排除するだろう。
【0095】
図3は、第二のステップを図示し、第二のステップでは、PD流体ポンプ70が作動されず、かつインラインヒータ56がエネルギ供給を受けない中で、制御ユニット100は、COバルブ54oに開かせ(黒塗りされたバルブ)、COが殺菌ループ90内のPD流体に投入されることを可能にする。制御ユニット100は、COをパルスするまたはCOを連続して投入し得るが、いずれの場合にも制御ユニット100は、圧力センサ72aの出力を監視して、圧力が図6のテーブル110または図7のテーブル120から必要とされる圧力(または圧力上昇(例えば85℃で約21kPa(3psig)))を達成するとき、COを投入することを停止する。
【0096】
図4は、第三のステップを図示し、第三のステップでは、制御ユニット100は、インラインヒータ56がエネルギ供給を受けることと、PD流体ポンプ70が加熱された殺菌流体(PD流体)に、図3の中で取得されて高められた圧力で、前述された代わりの様式のいずれかの中の殺菌ループ90を循環させることとをもたらす。加熱された殺菌流体循環は、指定された期間に行われる。この期間の間に、高められた圧力における指定された量のCOの存在は、上に示された化学反応に従って炭酸カルシウム(CaCO)を妨げる、または除去する。図4において、COバルブ54oは、(黒塗りされず)閉じられたものとして示される一方で、代わりの実施形態において、制御ユニット10は、熱殺菌の部分または全ての間に殺菌ループ90へとCO気体が投入されることを可能にするために、COバルブ54oが開けられることをもたらし得るということは理解されるべきである。
【0097】
図5は、第四の、かつ場合により随意のステップを図示し、第四のステップでは、制御ユニット100は、インラインヒータ56にエネルギ供給を停止させるが、流体ポンプ70に冷却されたPD流体を循環させることを可能にし続ける。冷却期間の間、制御ユニット100は、圧力センサ72aの出力を監視することにより、出力が図4における加熱の前の圧力レベルに戻るかどうかを見る。もし、何らかのCOのリークが発生して、圧力が図3の最後におけるCO注入後圧力を下回る場合、制御ユニット100は、例えば初期の始動圧力を上回る必要な圧力上昇(例えば約21kPa(3psig))に再到達するために、追加のCOが注入されることを可能にするように、COバルブ54oに開かせ得る(黒塗りされたバルブ)。アンモニアおよび/またはCOセンサは、もし提供されていれば、ここで加えてまたは代わりに使用され得る。留意すべきは、冷却されたPD流体は、より高いモル分率のCOを有し、その結果CO圧力は、前のレベル(例えば21kPaなど)に上昇させられる必要がないということである。
【0098】
一つの実施形態における制御ユニット100は、PD流体患者チューブまたはライン52fがCOソース80内に残る任意の圧力にCO気体で加圧されるように、バルブ54e、54f、54g、54h、および54uを閉じさせて、COバルブ54oを開かせる。ここで、第一の患者圧力センサ72aは、COセンサ80内に残る圧力を読み取って、対応する信号を制御ユニット100に送る。図1に図示される代わりの実施形態において、CO圧力センサ76は、COソース80内に残る圧力を読み取ることおよび対応する信号を制御ユニット100に送ることができるように、圧力レギュレータ74の上流に提供される。いずれの状況においても、実施形態における制御ユニット100は、新しいCOソース80が注文されて患者に送達され得るように、COソース80内の圧力レベルが低くなりつつあるということを決定したとき、中心の場所にメッセージを送るように構成されている。ユーザインタフェース108は、COソース80が低くなりつつあるが新しい供給が到着するという聴覚、視覚、または視聴覚のメッセージを患者に同様に提供し得る。患者が新しいCOソース80を受け取るとき、ユーザインタフェース108は、既存のCOソース80を新しいCOソース80に置換する方法についての聴覚、視覚、または視聴覚の命令を患者に同様に提供し得る。
【0099】
本明細書に記載された現在好ましい実施形態の様々な変更および修正は、当業者にとって容易だろうということは、理解されるべきである。よって、そのような変更および修正が別記の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。例えば、図2~5は、一つの圧力センサおよび温度センサから得られる読み取りを図示する一方で、制御ユニット100は、殺菌ループ90に沿って異なる場所に位置する複数の圧力および温度センサからの圧力および温度出力を代わりに解析し得る。本明細書で言及されたように、図6および図7のテーブル110および120に列記された圧力はそれぞれ、絶対圧力値または圧力上昇または圧力デルタ値であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】