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特表2025-500115生体インピーダンスの複素測定を行うための生理的センサーパッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】生体インピーダンスの複素測定を行うための生理的センサーパッチ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0537 20210101AFI20241226BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20241226BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61B5/0537 210
A61B5/11
A61B10/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024525050
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 US2022053867
(87)【国際公開番号】W WO2023122302
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/293,338
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591013229
【氏名又は名称】バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
(71)【出願人】
【識別番号】501453189
【氏名又は名称】バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Baxter Healthcare S.A.
【住所又は居所原語表記】Thurgauerstr.130 CH-8152 Glattpark (Opfikon) Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マッキャナ, ジェイムズ パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ディロン, マーシャル シン
(72)【発明者】
【氏名】バッキンガム, ジャスティン グラント
(72)【発明者】
【氏名】バネット, マシュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】タング, エリック エドウィン
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB22
4C038VC20
4C127AA06
4C127BB05
4C127FF03
4C127GG16
(57)【要約】
本発明は、患者を特徴づけるためのシステムであり、基板、第一の電極、第二の電極および電気システムを含む。その電気システムは、基板と接続され、全体が患者の身体上に装着される。その電気システムは、第一の電極および第二の電極の両方と電気接触しており、第一の電極を通して、組織の領域中へ交流電流を注入するように構成されている。その電気システムは、第二の電極を通して、組織の領域からの第一の電気信号を測定するように構成されている。その電気システムは、組織の領域からの第二の電気信号を測定するように構成されている。その第一の信号、またはそれから決定される信号は、組織の抵抗を指し示し、第二の信号、またはそれから決定される信号は、組織の領域のリアクタンスを指し示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者を特徴づけるためのシステムであって、前記システムは、
前記患者の組織の領域上に装着されるよう構成された基板と、
第一の電極および第二の電極であって、両方が、前記基板に接続され、前記組織の領域の上方で前記患者に取り付けられる、第一の電極および第二の電極と
前記基板に接続され、前記患者の身体上に全体が装着される電気システムであって、前記電気システムは、前記第一の電極および前記第二の電極の両方と電気接触しており、
(1)前記第一の電極を通して、前記組織の領域中へ交流電流を注入することと、
(2)前記第二の電極を通して、前記組織の領域からの第一の電気信号を測定することと、
(3)前記第一の電極および前記第二の電極を使って、前記組織の領域から第二の電気信号を測定することであって、前記第一の電気信号またはそれから決定される信号が、前記組織の領域の抵抗を指し示し、前記第二の電気信号またはそれから決定される信号が、前記組織の領域のリアクタンスを指し示す、ことと
を行うように構成されている電気システムと
を備える、システム。
【請求項2】
前記組織の領域が、前記患者の胸部である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記抵抗および前記リアクタンスが、生体インピーダンス測定値を決定するために使われる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記生体インピーダンス測定値が、実数成分および虚数成分を含む複素生体インピーダンス測定値である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記実数成分が、前記抵抗と関連付けられ、前記虚数成分が、前記リアクタンスと関連付けられる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
複数の歪みゲージをさらに備え、前記複数の歪みゲージは、前記組織の領域上の腫れを測定するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記複数の歪みゲージが、4つの歪みゲージを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記4つの歪みゲージが、前記患者の前記組織の領域の中央点の周りに同心状に配置されている、請求項7に記載のシステム
【請求項9】
光学システムをさらに備え、前記光学システムは、前記組織の領域上の腫れを測定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
患者を特徴づけるためのシステムであって、前記システムは、
前記患者の組織の領域上に装着されるように構成された基板と、
第一の電極および第二の電極であって、両方が、前記基板に接続され、前記組織の領域の上方で前記患者に取り付けられる、第一の電極および第二の電極と、
前記基板に接続され、前記患者の身体上に全体が装着される電気システムであって、前記電気システムは、前記第一の電極および前記第二の電極の両方と電気接触しており、
(1)複数の異なる周波数で、前記第一の電極を通して、前記組織の領域中へ、交流電流を注入することと、
(2)前記第二の電極を通して、前記組織の領域からの電気信号のセットを測定することであって、前記セットにおけるそれぞれの電気信号が、固有の周波数で、前記組織の領域中へ、交流電流を注入した後に測定されることと
を行うように構成されている電気システムと、
前記組織の領域に対応する性質を決定するために、前記電気信号のセットを受け取り、それらまたはそれらから決定される信号を処理するように構成され、前記電気システムと通信しているプロセッサと
を備えるシステム。
【請求項11】
前記組織の領域が、前記患者の胸部である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記性質が、生体インピーダンス測定値である、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
抵抗およびリアクタンスが、前記生体インピーダンス測定値を決定するために使われる、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記生体インピーダンス測定値が、実数成分および虚数成分を含む複素インピーダンス測定値である、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記実数成分が、前記抵抗に関連付けられ、前記虚数成分が、前記リアクタンスに関連付けられる、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
複数の歪みゲージをさらに備え、前記複数の歪みゲージは、前記組織の領域を測定するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記複数の歪みゲージが、4つの歪みゲージを含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記4つの歪みゲージが、前記患者の前記組織の領域の中央点の周りに同心状に配置されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
光学システムをさらに備え、前記光学システムは、前記組織の領域上の腫れを測定するように構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項20】
前記光学システムによってキャプチャされた時間依存の可視情報を介して、腫れが測定される、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する優先権主張および相互参照)
本出願は、2021年12月23日に提出された米国仮特許出願第63/293,338号(発明の名称、PHYSIOLOGICAL SENSOR PATCH FOR MAKING COMPLEX MEASUREMENTS OF BIOIMPEDANCE)の優先権と、その利益とを主張し、その全体の内容は、本明細書では、その全体において参照によって組み込まれ、依拠されている。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に記載される発明は、病院環境および家庭環境の両方において、患者をモニタリングするためのシステムに関連する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
様々な患者の生理的パラメータの測定は、例えば病院の環境で極めて重要である。現行のシステムは、通常、心電図(ECG)、パルスオキシメーター(SPO)、生体インピーダンスおよび同様のものを含んでいる様々なパラメータを測定する。しばしば、これらのパラメータは、全体の健康傾向を含んでいる患者の状態の全体像を表現しない。それに応じて、患者のモニタリングのために向上したシステムおよびデバイスが、それ故必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
上記を踏まえて、一側面において、本発明は、患者をモニタリングするためのシステムを提供し、それは、下層組織のキャパシタンスおよび近赤外線分光法(NIRS)測定値を決定するために、生体インピーダンスおよび/または生体リアクタンスを含んでいる(が、これらに限定されない)数々の進歩した生理的測定を要する。
【0005】
本開示の第一の側面において、患者を特徴づけるためのシステムは、基板、第一の電極、第二の電極および電気システムを含む。基板は、患者の組織の領域上に装着されるように構成されている。第一の電極および第二の電極は、両方、基板に接続され、組織の領域の上方で患者に取り付けられる。電気システムは、基板に接続され、全体が患者の身体上に装着される。その電気システムは、第一の電極および第二の電極の両方と電気接触している。その電気システムは、(1)交流電流を、第一の電極を通して、組織の領域中へ注入し、(2)組織の領域からの第一の電気信号を、第二の電極を通して測定し、(3)第一の電極および第二の電極の両方を使って、組織の領域からの第二の電気信号を測定するように構成されている。第一の電気信号またはそれから決定される信号は、組織の領域の抵抗を指し示し、第二の電気信号またはそれから決定される信号は、組織の領域のリアクタンスを指し示す。
【0006】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第二の側面において、組織の領域は患者の胸部である。
【0007】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第三の側面において、抵抗およびリアクタンスは、生体インピーダンス測定値を決定するために使われる。
【0008】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第四の側面において、生体インピーダンス測定値は、実数成分および虚数成分を含む複素生体インピーダンス測定値である。
【0009】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第五の側面において、実数成分は抵抗と関連付けられ、虚数成分は、リアクタンスと関連付けられる。
【0010】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第六の側面において、システムは、複数の歪みゲージをさらに含み、複数の歪みゲージは、組織の領域上の腫れを測定するように構成されている。
【0011】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第七の側面において、複数の歪みゲージは、4つの歪みゲージを含む。
【0012】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第八の側面において、4つの歪みゲージは、患者の組織の領域の中央点の周りに同心状に配置される。
【0013】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第九の側面において、システムは、光学システムをさらに含み、光学システムは、組織の領域上の腫れを測定するように構成されている。
【0014】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第十の側面において、患者を特徴づけるためのシステムは、基板、第一の電極、第二の電極および電気システムを含む。基板は、患者の組織の領域上に装着されるよう構成されている。第一の電極および第二の電極は、両方が基板に接続され、組織の領域の上方で、患者に取り付けられる。電気システムは、基板に接続され、全体が患者の身体上に装着される。その電気システムは、第一の電極および第二の電極の両方と電気接触している。その電気システムは、(1)交流電流を、複数の異なる周波数で、第一の電極を通して、組織の領域中へ注入し、(2)第二の電極を通して、組織の領域からの電気信号のセットを測定するように構成され、そのセットにおけるそれぞれの電気信号が、固有の周波数で、組織の領域中へ交流電流を注入した後に測定される。システムは、組織の領域に対応している性質を決定するために、電気信号のセットを受け取り、それら、またはそこから決定された信号を処理するように構成された電気システムと通信しているプロセッサをさらに含む。
【0015】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第十一の側面において、組織の領域は、患者の胸部である。
【0016】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第十二の側面において、性質は、生体インピーダンス測定値である。
【0017】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第十三の側面において、抵抗およびリアクタンスは、生体インピーダンス測定値を決定するために使われる。
【0018】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第十四の側面において、生体インピーダンス測定値は、実数成分および虚数成分を含む複素生体インピーダンス測定値である。
【0019】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、本開示の第十五の側面において、実数成分は、抵抗と関連付けられ、虚数成分は、リアクタンスと関連付けられる。
【0020】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、第十六の側面において、システムは、複数の歪みゲージを含み、複数の歪みゲージは、組織の領域上の腫れを測定するように構成されている。
【0021】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、第十七の側面において、複数の歪みゲージは、4つの歪みゲージを含む。
【0022】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、第十八の側面において、4つの歪みゲージは、患者の組織の領域の中央点の周りで同心状に配置されている。
【0023】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、第十九の側面において、システムは、光学システムを含み、光学システムは、組織の領域上の腫れを測定するよう構成されている。
【0024】
別段の定めがない限り、本明細書で列挙された任意の他の側面と組み合わされ得る、第二十の側面において、腫れは、光学システムによってキャプチャされる、時間依存の可視情報を介して測定される。
【0025】
開示されるデバイス、システムおよび方法の追加の特徴および利点は、後述の詳細な説明および図に記載され、明確になるだろう。本明細書に記載されている特徴および利点は、全てを包括しているわけではなく、特に、沢山の追加の特徴および利点が、図および記載と考慮して、当業者に明確になるだろう。また、任意の特定の実施形態は、本明細書に列挙されている利点の全てを有する必要はない。さらには、明細書で使われる言語は、主に、可読性および指導目的のために選択され、発明の保護対象の範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、患者に取り付けられ、モバイルデバイスを通してクラウドベースシステムへ情報を送るセンサーを特徴とする、本発明によるシステムの概略図である。
【0027】
図2図2Aは、インピーダンスセンサーによって測定されている、患者の部位の側面を示している概略図であり、図2Bは、光学センサーによって測定されている、患者の部位の側面を示している概略図である。
【0028】
図3図3Aは、図2Aに示されるものと同様に、インピーダンスセンサーを使って、流体体積の関数として測定されたインピーダンスの変化を示しているグラフである。図3Bは、絶縁流体を含んでいるサンプルから、図2Aに示されるものと同様に、インピーダンスセンサーを使って測定された、インピーダンスの変化を示しているグラフであり、図3Cは、導電性流体を含んでいるサンプルから、図2Aに示されているものと同様に、インピーダンスセンサーを使って測定された、インピーダンスの変化を示しているグラフである。
【0029】
図4図4Aは、絶縁流体を含んでいるサンプルから、図2Aに示されるものと同様に、インピーダンスセンサーを使って、注入電流の異なる周波数で、流体体積の関数として測定されたインピーダンスの変化を示しているグラフであり、図4Bは、導電性流体を含んでいるサンプルから、図2Aに示されるものと同様に、インピーダンスセンサーを使って、注入電流の異なる周波数で、流体体積の関数として測定されたインピーダンスの変化を示しているグラフである。図4Cは、インピーダンスの測定の間に注入された、人間の組織中の細胞を通り抜ける比較的高周波の電流、および人間の組織中の細胞の周りを通る比較的低周波の電流の概略図である。
【0030】
図5図5Aは、本発明の実施形態において使われる電極パッチの概略図である。図5Bは、患者の測定中に、図8Aに示される電極パッチに接続するデバイスにおいて使われる回路基板の底面の概略図である。図5Cは、図5Bの回路基板を取り囲む囲いの概略図である。
【0031】
図6図6Aは、実験的テストにおいて測定されたキャパシタンスに関連付けられるインピーダンスの変化を示しているグラフであり、図6Bは、実験的テストにおいて測定されたキャパシタンスに関連付けられる共振周波数の変化を示しているグラフである。
【0032】
図7図7Aは、図1のシステム内のECGセンサーを使って、患者の胸部から測定される心拍誘発パルスを特徴としている時間依存波形のグラフであり、図7Bは、図1のシステム内のインピーダンスセンサーを使って、患者の胸部から測定される心拍誘発パルスを特徴としている時間依存波形のグラフである。
【0033】
図8図8Aから図8Eは、図1のシステムを使って、患者の胸部から測定される様々な生理的パラメータの時間依存波形のグラフである。
【0034】
図9図9Aから図9Fは、心拍誘発パルスの波形および振幅から決定される時間依存基準、ならびにこれらの基準およびパルスがどのくらい血圧に関連するかを図示しているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(詳細な説明)
以下の文章では、数々の異なる実施形態の詳細な説明を表記するが、本明細書に記載される本発明の法的範囲は、この特許の最後に表記される特許請求の範囲の文言によって定義されている。詳細な説明は、あらゆる可能な実施形態を記述するわけではない。なぜなら、それは、不可能でなくとも、現実的ではないはずだからである。当業者は、特許請求の範囲内に依然収まる数々の代替的な実施形態を実装することができる。
【0036】
(システムの概要)
図1を参照すると、患者の胸部5において患者をモニタリングするために、本発明は、関心のある領域と接着し、胸部装着式の構成要素9と接続する1対の身体装着式の電極パッチ7a、7bを特徴とするシステム6を提供する。
【0037】
胸部装着式の構成要素9は、インピーダンスおよび歪みを測定するための回路を特徴とするプリント回路基板を取り囲む。インピーダンス測定のために、それぞれの身体装着式の電極パッチ7a、7bは、電流注入電極および感知電極を含む。両方の電極は、通常、患者に張り付き、電流注入電極からの電流を患者および患者からの生体電気信号へ伝導するヒドロゲルパッドを特徴とする。測定の間、電流注入電極は、通常、患者の部位へ高周波(例えば100kHz)、低アンペア数(4mAの平均振幅)の電流を注入し、その電流および下層の流体の総量が、感知電流によって感知される生体電気信号に影響を与える。身体装着式の電極パッチ7a、7bは、通常、患者の上で2、3cm分離されている。胸部装着式の構成要素9は、歪みゲージのような、電気伝導体を含み得る。通常、その電気伝導体は、伸ばされると増大する電気抵抗を持つコイル状の金属ワイヤーを特徴とする。代替的に、その伝導体は、両側で絶縁物質を挟み込む二つの特有の伝導体に分離され得、それ故効率的に可変キャパシタを形成し得る。ここで、ケーブルが伸びるとき、反対表面上の内部伝導体は、互いにより近くに引き寄せられ、それ故システムの固有のキャパシタンスは減少する。関連する実施形態では、ケーブルは、伸ばされる総量と共に変わる電圧を生成する圧電物質も含むことができる。これらの場合、ケーブルの電気的性質(抵抗、キャパシタンスまたは電圧のいずれか)における変化は、プリント回路基板内の回路を使って容易に検出されることができる。通常、これは、ケーブル内の可変抵抗器と一致する既知の抵抗の抵抗器、またはケーブル内の可変キャパシタと一致する既知のキャパシタンスのキャパシタを含み、そして異なる回路素子を横切る電圧降下をモニタリングすることによって、なされる。内部のアナログ-デジタル変換器は、電圧降下をデジタル化する。それは、デジタルDC信号に変換され、そして下記に記載のアルゴリズムによって処理されることができる。同様に、アナログ-デジタル変換器は、圧電物質によって生成された電圧を測定することができ、それは、伸びの程度を指し示す。これらの信号を処理するアルゴリズムは、胸部装着式の構成要素9内のプリント回路基板上のマイクロプロセッサ上で符号化され、通常一連の処理ステップを特徴とする。
【0038】
胸部装着式の構成要素9内の無線送受信機、例えばBluetooth(登録商標)またはWi-fi送信機は、矢印12によって指し示されるように、整合された送受信機へのデジタル版のパラメータを、患者のモバイルフォン13または臨床医のデバイスに送る。そのモバイルフォン13は、次いで、矢印14によって指し示されるように、デジタル版のパラメータをクラウドベースシステム15に転送する。通常、クラウドベースシステム15は、患者と臨床医との両方に対してパラメータを与え、またはそのパラメータを(例えばウェブサービスインターフェイスを通じて)モバイルアプリケーションのような第3者のソフトウェアアプリケーションへ転送する。
【0039】
図2A-Bは、図1に示されるシステムに組み込まれたセンサー16、センサー26が、どのように下層組織の時間依存測定を特徴づける信号を測定するかを指し示す。図2Aを参照すると、インピーダンスセンサー16は、蓄積流体20の領域を含む組織部位19を覆っている皮膚18の層へ接続する電極17a-dを特徴とする。その電極17a-dは、インピーダンス回路(図に示されていない)と接続し、処理されるとそれらの下にある組織の電気インピーダンスを決定する信号を感知する。より具体的には、インピーダンス測定のために、「駆動電極」と呼ばれる外側電極17a、17dは、高周波(通常20kHzから100kHzの間)、低アンペア数(平均振幅が通常10μAから4000μAの間)の電流を、皮膚18を通しておよび組織部位19中へ、注入する。囲んでいる組織(蓄積流体によって侵されている)の抵抗は、電流フローに影響を与える。それは、一対の「感知電極」と呼ばれる内側電極17b、17cによって測定される電圧降下によって現わされる。この電圧降下は、時間依存インピーダンス波形を生じさせるために、インピーダンスシステム中のアナログ-デジタル変換器によってデジタル化される。この波形の変化の分析は、抵抗変化および最終的に組織部位19における蓄積流体20の程度を指し示すことができる。
【0040】
同様に、図2Bに示されるように、システムは、光学システム26を含むこともでき、カメラ(例えばCCDカメラ)または組み合わせ光源(例えば発光ダイオード(本明細書では「LED」)またはレーザー)のような光学要素27、および上記に記載されているように腫れを検出するための光検出器(例えばフォトダイオード)を特徴とする。例えば、腫れは、皮膚18の着色における変化として現れ得る。カメラは、この状態を検出するために肌の画像をキャプチャすることができる。関連する実施形態では、組み合わせ光源および光検出器は、腫れの程度を推定するために、皮膚の光学吸光および/または反射を測定し、これらのパラメータを使うことができる。
【0041】
(臨床結果)
図3A-3Cを参照すると、腫れおよび電気インピーダンスの腫れを測定する能力は、ベンチトップリグでシミュレーションされることができる。ここで、「ファントム」システムは、(人間組織と同様の密度を提供するための)アガーの混合物および(過剰な流体を吸収するための)スポンジで充填されている三次元プリントボックスを使って開発された。これらの構成要素は、(Syndaver Inc;www.syndaver.comから購入された)人間の皮膚と整合された電気的かつ機械的性質を有している合成皮膚の層で覆われていた。次いで、二つの感知電極および二つの駆動電極を特徴とし、図2Aに示されるものと同様のインピーダンスセンサーは、合成皮膚に取り付けられた。結果として得られるシステムは、約37オームのベースラインインピーダンスを有した。それが完全に製作され、インピーダンスセンサーがその表面に取り付けられると、較正された注射器が、絶縁溶液(脱イオン水)と導電性溶液(生理食塩水)との両方をファントムへ組織的に注入するために使われた。次いで、そのインピーダンスセンサーは、結果として得られるDCインピーダンス信号を測定した。
【0042】
図3Aに示されるように、絶縁脱イオン水がファントム中へ注入されると、インピーダンスセンサーによって測定されるようなその全体のインピーダンスは、組織的に減少する。同じく、導電する生理食塩水をファントム中へ注入することは、インピーダンスを徐々に増加させる。図3Bは、インピーダンスセンサーによって測定されるような、インピーダンス信号における時間依存増加を、および図3Cは、インピーダンスセンサーによって測定されるような、インピーダンス信号における時間依存減少をそれぞれ示す。各図における破線は、少量の流体のボーラス(2ml)が、いつファントム中へ注入されるかを指し示す。DC信号レベルにおける急速な変化によって指し示されるように、注入された流体に対するセンサーの応答時間は、およそ2、3分である。これは、通常数か月にわたって現れるリンパ浮腫のような状態に関連付けられるタイムスケールより大幅に速い。
【0043】
図4A-Cを参照すると、図3A-Cに対するデータを生成するために使われていたのと同じファントムシステムおよびインピーダンスシステムが、注入電流の周波数が信号の大きさに与える影響を推定するために使われた。ここで、上記に記載されているのと同じ手法を使うと、注入電流の周波数は、絶縁脱イオン水(図4A)と導電性生理食塩水(図4B)との両方に対して、10kHzから100kHzの間で切り替えられた。これらの図から明らかであるように、注入される流体の体積によるインピーダンスの変化は、高周波(100kHz)より比較的低周波(例えば10kHz)で測定されたときの方が、より顕著である。図4Cは、流体媒体29に浸された一連の細胞28a-fを含むこの現象の図形的表示を示す。図3A-Cおよび図4A-Cにおいて指し示されているように、細胞28a-fと流体媒体29との両方が、インピーダンスセンサーによってなされるインピーダンス測定に影響を与える。しかし、破線30а-cによって指し示されているように、比較的低周波の注入電流は、細胞28a-fの周りを通る。ここで、細胞膜キャパシタンスは、電流がそれらを通り抜けることを妨げる。これは、比較的低周波の注入電流は、細胞外の流体をサンプリングする可能性が高い(それ故より高感度である)ことを指し示す。これらは、(例えばリンパ浮腫の間に)腫れを誘発する流体である可能性が高い。対照的に、低周波測定は、細胞内流体により高感度でないはずであり、なぜならこの電流は、細胞28a-fを通り抜けないからである。逆に、比較的高周波の注入電流31а-bは、細胞28a-fと流体媒体29との両方を通り抜けるように、通常の細胞膜の固有キャパシタンスを打破することができる。これらの構成要素の両方がインピーダンス信号に寄与するが、細胞外の流体のみが腫れによって増加されるので、比較的高周波の電流は、腫れによって誘発された信号の変化に対しては、より高感度でない。
【0044】
(機械的かつ電気的構成要素)
図5A-Cは、4つの違った電極(感知電極48a、48bおよび駆動電極49a、49b)を含む単一の電極パッチ47を特徴とする、本発明の他の実施形態を示す。その電極パッチ47は、その中央に開口50を持つアニュラーリングのように成形されている。その開口50を通して、(例えば、1またはそれより多い光源、1またはそれより多い光検知器、および/またはカメラのようなより精巧な画像化システム(図に示されていない)を含むことができる)光学システム62は、下記により詳しく記載されるように、患者の皮膚51を画像化することができる。アニュラーリングの底面は、開口50を囲んでいる感知電極48a,48bと駆動電極49a、49bとの両方を支える。ある実施形態において、電極パッチ47は、アライメント機能を特徴とし、それは、図5Aに示されるように、アニュラーリングに切り込まれたノッチ52である。例えば、ノッチ52は、患者にあるマーキングの部分(例えば患者の皮膚51上の解剖学的特徴)に対応しているアライメント機能に適合し得る。ここで、患者にあるマーキングへのアライメントは、下記により詳しく記載されているように、毎回同じ位置でのパッチ47の繰り返し可能な位置決めを可能にする。
【0045】
図5Aに示されるように、および本明細書に記載されている実施形態と同様に、電極パッチ47は、この場合アニュラーリングの幅を横切って曲がりくねった状態でパターン化されたメタルトレースである歪みゲージ55a-dを特徴とする。メタルトレースの抵抗は、それらが歪ませられると、変化する。各歪みゲージ(効果的に可変抵抗を形成する)は、歪みゲージの可変抵抗によって影響を受けた、測定可能な電圧を生成する、Wheatstone Bridgeのような従来の回路に接続する。歪みを調整するために、電極パッチ47は、通常、例えば3M(https://www.3m.com/3M/en_US/p/c/b/tegaderm/i/health-care/medical/)によって製造されたTegaderm(登録商標)と同様に、伸縮物質で構成されている。歪みゲージ55a-dにおけるメタルトレースは、一対の電気接点56a-dを伴う片端上で、終了する。これらは、デバイス65の主要な構成要素を形成する円形でバッテリー駆動式の回路基板の底面59上でパターン化された整合電気接点58a-dと接合する(つまり電気接点をもたらす)ように方向付けられる。それらが接触するとき、電気接点58a-d、56a-dは、歪みゲージ55a-d(つまり可変抵抗器)を回路基板内の個々のWheatstone Bridge回路へ接続する。加えて、回路基板は、感知電極48a、bに対する電気接点60a、60bの第一のセット、および駆動電極49a、49bに対する電気接点61a、61bの第二のセットを特徴とする。電気接点60a、60b、61a、61bは、通常、使用中、ヒドロゲル電極48a、48b、49a、49b中へ挿入される導電性リベット(図に示されていない)へと電気的に接続する金属薄膜である。測定中、接点60a、60bが、回路基板上のECGおよびインピーダンス回路に対応している生理的信号を運ぶ一方、接点61a、61bは、交流電流(本明細書では「AC」)を患者の皮膚中へ駆動電極49a、49bを通して送信する。
【0046】
実施形態では、電極パッチ47は、「複雑な」生体インピーダンス測定を行うことができ、それは、通常、実数成分と虚数成分との両方を特徴としている数学的方程式によってモデル化されている。このような数学的方程式は、最終的に、測定領域で時間依存抵抗およびキャパシタンスを決定する。これらのパラメータのさらなる分析は、追加の生理的パラメータを指し示す。
【0047】
インピーダンス測定において、対応している回路は、通常、交流ACを皮膚中へ注入し、そこでは、電流周波数は、通常、約5kHzから500kHzまで様々である。いくつかの実施形態では、回路は、これらの範囲の間で急速にAC周波数を「スイープする」。技術的に、その回路で測定されたインピーダンスは、複雑な項であり、そこでは、電流が受ける電気抵抗は、インピーダンスの実数成分を表し、電流が受けるリアクタンスは、インピーダンスの虚数成分を表す。この特定のパラメータ測定に対してより具体的には、インピーダンス(信号の実数成分)は、通常、流体の体積によって影響を受ける一方で、リアクタンス(信号の虚数成分)は、通常、流体によって引き起こされる電荷の静電蓄積(つまりキャパシタンス)によって影響を受ける。
【0048】
すなわち、図5A-Cを参照すると、実施形態では、測定中、駆動電極49a、49bは、高周波、低アンペア数の電流を管中へ注入する。実施形態では、一つの駆動電極49aから注入された電流は、通常、反対の駆動電極49bから注入された電流と位相がずれており、例えば90°位相がずれている。実施形態では、電子ユニット内の回路基板は、抵抗(生体インピーダンスの「実数」成分)およびリアクタンス(生体インピーダンスの「虚数」成分)の測定を連続的に行うインピーダンス回路を備える。
【0049】
実施形態では、インピーダンス回路は、演算増幅器、抵抗器およびキャパシタのような離散的電気構成要素の集合を備える。さらなる実施形態では、インピーダンス回路は、Maxim Semiconductor(Sunnyvale,CA)によって製造されたMAX30009のような単一の小規模の半導体アナログフロントエンドまたは「チップ」中へと組み入れられている。バッテリーは、通常、回路基板に給電し、例えばリチウムイオン蓄電池がある。
【0050】
下記で式1に示されるように、システムのインピーダンスは、通常、その大きさ特性と位相特性との両方を含んでいるZの極形式をもって、複素数「Z」として表される。
(1) Z=|Z|eiarg(Z)
ここで、大きさ|Z|は電圧振幅の電流振幅に対する比率を表し、偏角arg(Z)は、電圧と電流との間の位相差である。式1は、デカルト形式において
(2) Z=R+iX
と表されることができ、ここで、インピーダンスの実数部分は抵抗Rであり、虚数部分はリアクタンスXである。
【0051】
実施形態では、測定がなされた後、パッチは、さらなる分析のために外側のゲートウェイへ情報を(通常Bluetooth(登録商標)を介して)無線で送信する。
【0052】
重要なことに、MAX30009は、通常5kHzから500kHに及ぶ注入電流の複数の周波数で、Zを容易に測定することができる。RおよびXの複数周波測定のこの組み合わせは、下層組織から多くの電気的性質の決定を可能にする。通常、これらは、時間ドメイン波形の形式で測定される。ビートピッキングおよび機械学習アルゴリズムを伴うこれらの波形の分析は、複数の生理的パラメータ、例えば一回拍出量、心拍出量、細胞内/外流体および同様のものを生じさせる。加えて、パッチは、心拍数、呼吸数、SpO、NIRSを介した組織灌流のような従来のバイタルサインを決定するために、小規模の電気測定システムおよび光学測定システムを含むことができる。
【0053】
身体装着式パッチ47は、小規模、低コスト、装着可能なパッケージの完全に内で、血行動態パラメータおよびバイタルサインのロバストな測定をする精巧な生理的モニターである。そのようなシステムは、病院内で使われることができ、患者が自宅へ移行するときは、患者に同行することができる。病院内では、パッチは、輸液ポンプ、腹膜および血液透析装置、病院用ベッド、バイタルサインモニターならびに同様のもののような他の装置に容易に組み入れることができる。
【0054】
図6Aは、実験的テストにおいて、組織的に変化させられる酵母細胞の濃度を含有しているサンプルから、身体装着式パッチ47を用いて測定された抵抗の変化を示しているグラフであり、図6Bは、実験的テストにおいて、組織的に変化させられる酵母細胞の濃度を含有しているサンプルから、身体装着式パッチ47を用いて測定された共振周波数の変化をそれぞれ示しているグラフである。酵母細胞は、生きている細胞であり、それ故人間の組織のある程度代わりになるため、そしてそれらの濃度はテスト中に容易に変化させられることもできるため、酵母細胞は、このテストのために使われた。ここで、図6Aに示される濃度依存抵抗は、上記に記載されるように、インピーダンス測定値の実数成分から決定された。濃度依存共振周波数は、酵母細胞によって形成されたキャパシタの一連のインダクタンスが、そのキャパシタンスと等しいが、反対方向であるときの周波数である。組織領域を用いた実際の測定では、その中の共振周波数は、血流および下層流体(例えばリンパ浮腫の間にたまったもの)の存在を含んでいるこれらの組織の構成に強く依存するだろう。それ故、共振周波数を検出することは、複数周波測定中、通常、従来のビートピッキングアルゴリズムを使ってなされ、これらのパラメータを指し示し得る。
【0055】
図7Aは、身体装着式のパッチ47内にあるECGセンサーを使って、患者の胸部から測定される心拍誘発パルスを特徴としている時間依存波形のグラフであり、図7Bは、身体装着式のパッチ47内にあるインピーダンスセンサーを使って、患者の胸部から測定される心拍誘発パルスを特徴としている時間依存波形のグラフである。そのような波形は、例えば、心拍数、心拍変動、呼吸数、一回拍出量および心拍出量のようなパラメータを決定するためにアルゴリズムを用いて分析されることができる。そのようなアルゴリズムの例は、後述の発行済みの特許において提供され、その内容は、本明細書では参照によって組み込まれる。米国特許第11,141,072号(発明の名称Necklace-shaped Physiological Sensor)、米国特許第11,129,537号(発明の名称Body-worn Sensor for Characterizing Patent with Heart Failure)、米国特許第11,123,020号(発明の名称Neck-worn Physiological Monitor)、および米国特許第11,116,410号(発明の名称Patch-based Physiological Sensor)。
【0056】
パッチセンサー47によって測定されるECG波形は、図8Aに示される。それは、各心周期の始まりを略式にマークする心拍誘発QRS群を含む。図8Dは、心音図(PCG)波形を示し、それは身体装着式のパッチ中に組み込まれることができる聴覚モジュールを用いて測定され、S1心音およびS2心音を特徴とする。図8Bは、光電容積脈波(PPG)波形を示し、それは、光学センサーによって測定され、心拍誘発血流によって引き起こされる下層毛細血管の容積変化を指し示す。インピーダンス(IPG)波形は、DC(Z)成分とAC(dZ(t))成分との両方を含む。Zは、上記に記載されるように、下層複素電気インピーダンスを測定することによって、組織中の流体の量を指し示し、IPG波形のベースラインを表す。dZ(t)は、図8Cに示されており、下層血管系における血流を追跡し、IPG波形の拍動成分を表す。dZ(t)の時間依存導関数(dZ(t)/dt)は、胸部血管系における血流の最大速度を指し示す、明確に定義されたピークである。加速度計によって測定される運動波形(ACC)は、図8Eに示される。
【0057】
ECG波形(図8A)での各パルスは、単一の心拍を描くQRS群を特徴とする。パッチセンサー上のファームウェア中で演算する特徴検出アルゴリズム(例えばビートピッキングアルゴリズム)は、QRS群と他の波形の各上の基準マーカーとの間の時間間隔を計算する。例えば、PPG波形(図8B)におけるパルスの「足」とQRS群とを分離する時間は、パルス到着時間(PAT)と称される。PATは、血圧(BP)および全末梢血管抵抗に関連する。測定中、パッチセンサーは、ECG以外の波形中の基準マーカー(例えばPCG波形(図8D)におけるパルス中のS1点またはS2点およびPPG波形(図8B)の足)間の時間差である血管輸送時間(VTT)およびPATを計算する。または、dZ(t)/dt波形におけるパルスのピークおよびPPG波形(図8B)の足。一般的に、ECG以外の波形から決定される時間依存基準の任意のセットは、VTTを決定するために使われることができる。PAT、VTT、および四つの生理的波形におけるパルスから抽出された他の時間依存パラメータは、まとめて、本明細書では、「INT」値と称される。加えて、パッチセンサーにおけるファームウェアは、波形のうちいくつかにおける心拍誘発パルス振幅についての情報を計算する。これらは、本明細書では、「AMP」値と称される。例えば、IPG波形のAC成分の導関数におけるパルス振幅((dZ(t)/dt)max)は、胸部動脈の容積膨張および前方への血流を指し示し、収縮期血圧(SYS)および心収縮に関連する。
【0058】
SYS、拡張期血圧(DIA)および平均血圧(MAP)を計算するための一般的なモデルは、パッチセンサーによって測定される四つの生理的波形からINT値およびAMP値の集合を抽出し、次いで血圧を決定するこれらの値を処理するために、機械学習および人工知能に基づくアルゴリズムを使うことを要する。図9A-Fは、例えば、BPに対し相関があり得る異なるINT値およびAMP値を示す。INT値は、RとPCG波形におけるパルスからのS2とを分離する時間(図9Aに示されるRS2)、RとIPG波形のAC成分からパルスの導関数のベース(点Bと称される)とを分離する時間(RB、図9B)、RとIPG波形のAC成分からのパルスの足とを分離する時間(PAT、図9D)、およびRとIPG波形のAC成分からのパルスの導関数の最大(点Cと称される)とを分離する時間(RC、図9E)を含む。AMP値は、IPG波形のAC成分からのパルスの導関数の最大値((dZ(t)/dt)max、図9C)、およびIPG波形のDC成分の最大値(Z0、図9F)を含む。これらのパラメータのうちいずれかは、血圧を決定するために下記に画定された較正との組み合わせによって、使われ得る。これらの基準値の全ては、機械学習および人工知能に基づいた血圧モデル中への入力として働くことができる。
【0059】
本発明によりBPを決定する方法は、まず短い初期期間の間にBP測定を較正し、次いで、後の測定のために、結果として得られる較正を使うことを要する。その較正プロセスは、通常、約5日間続く。それは、図9A-Fに示されるもの同様のINT値およびAMP値を同時に収集する間に、患者を複数(2-4)回、オシロメトリーを採用しているカフベースBPモニターを用いて測定することを要する。各カフベース測定は、SYS、DIAおよびMAPの別々の値を結果として得る。実施形態では、カフベースBP測定のうち一つは、患者のBPを変える「チャレンジイベント」(例えばハンドグリップを握ること、姿勢を変化させること、自分の脚を上げること)と同時に行う。そのチャレンジイベントは、通常、較正測定の変動を与える。これは、BPの振れを追跡する較正能力を向上させるのを助けることができる。通常、パッチセンサーおよびカフベースBPモニターは、互いに無線で通信している。これは、完全に自動化された較正プロセスを可能にし、例えば、二つのシステムの間の情報が、任意のユーザの入力なしで自動的に共有されることができる。INT値およびAMP値を処理することは、(例えば、図9に示され、下記により詳しく記載される方法を使って)「BP較正」を結果として得る。これは、カフレスで患者の血液を決定するために、選択されたINT値およびAMP値との組み合わせにおいて使われる患者特有のモデルとともに、通常、カフベースBPモニターを用いてなされる複数の測定から平均をとったSYS、AMPの初期値を含む。その較正期間(約5日間)は、従来の入院と合致する。この後、パッチセンサーは、通常、正確なBP測定を保証するために新しい較正を必要とする。
【0060】
より現実的なレベルでは、上記記載の回路は、アナログ時間依存ECG、生体インピーダンス波形および生体リアクタンス波形をそれぞれ生成するために、生体電気信号を処理する(例えば、それらをフィルターにかけ、増幅させる)。次いで、これらは、後続の処理に適しているデジタル波形を生じさせるために、アナログ-デジタル変換器を用いてデジタル化される。回路基板上で演算するマイクロプロセッサは、これらの種類の波形を処理し、任意の基準特徴(例えば、インピーダンス波形およびリアクタンス波形の信号レベル、ECG波形からのQRS群)を抽出するためのアルゴリズムを使うコンピュータコードを実行し、次いで、他の病状(例えば不整脈)を指し示すかもしれない患者における様々な生理的状況(例えば、QRS群から抽出された可変のRR間隔)を推定するために、これらを処理する。
【0061】
図5A-Cを再び参照すると、他の実施形態では、回路基板は、光源63および光検出器64を順に特徴とする光学センサー62を含むことができ、患者の皮膚51の光学的性質(例えば着色、質感)を決定するために、反射モード形状において動作する。使用中、光源63は、患者の皮膚51の領域を照射する。領域に反射している放射線は、皮膚51の赤みおよび斑紋のような状態によって影響を受けるだろう。光検出器64は、反射された放射を感知し、信号を生成し、次いで、それは、回路基板上の対応する回路によって、フィルターにかけられ、増幅される。次いで、アルゴリズムは、例えば、リンパ浮腫の進行を指し示し得る皮膚着色の変化を推定するために、光学信号を分析する。実施形態では、光源63は、光源(通常、発光ダイオードまたはレーザーダイオード)の集合または配列であり得、それぞれが、異なる波長で放射を発している。代替的に、その光源63は、可視スペクトル、赤外スペクトルおよび紫外スペクトルの全体にわたる波長の集合を発する「白」光源(例えば、複数波長LEDまたはタングステンランプ)であり得る。光検出器64は、通常、単一の光ダイオードまたは光ダイオードの配列である。代替的に、それは、下層皮膚の空間画像を収集するために構成された画像化システム(例えば、CCDカメラ)であることができる。
【0062】
使用中、電極パッチ47は、開口50、アニュラーリングおよびパッチのアライメント特徴52は、患者上のアライメント特徴と整列するように、患者の皮膚51に適用される。腫れが存在する場合、感知している位置が完全に見えるように、パッチ47を伸ばすことが必要であり得る。この伸びは、上記に記載されるように、歪みゲージ55a-dにおける歪みを誘発するだろう。上記記載のセンサーを特徴としているデバイス65は、次いで、電極パッチ47にはまり込むと、内部インピーダンス回路と電気接触している電気接点60a、60bおよび61a、61bは、感知電極48a、48bおよび駆動電極49a、49bの異なるセットに適合し、電気接点58a-dは、歪みゲージに関連付けられる接点56a-dに適合する。全ての電気接点は、パッチ47の任意の伸びを調整するのに十分に大きくないといけないことに留意されたい。このプロセスを用いて、電極パッチ47は、一貫して同じ位置に置かれ、上記に記載されるように、回路基板内の様々な回路を使って、繰り返し可能な測定がなされることを可能にする。
【0063】
通常、電極パッチは、その底面上に接着層を持つフォーム基板で構成されている。感知電極48a、48bおよび駆動電極49a、49bは、通常、ヒドロゲル物質から作られ、ヒドロゲル物質は、通常、接着性であり、電気的に導電性である、患者の皮膚に整合された電気インピーダンスを特徴とする。電気トレースおよび電気接点は、通常、金属薄膜または導電性インクのような導電性物質から構成されている。電極は、金属(例えば、錫、銀、焼結したAg/AgCl、金、プラチナおよびステンレス鋼)またはポリマー(例えば、添加剤入りのEDPMゴム)から作られたドライ電極でもあり得る。
【0064】
関連する実施形態では、位置決めされた位置は、リンパ浮腫誘発の腫れの程度を指し示すために、(例えば、従来のモバイルフォンを用いてその写真を撮ることによって)画像化されることができる。例えば、皮膚の物理的変形(例えば、伸び)は、腫れの程度を指し示し得る。使用中、患者は、電極パッチが適用される前に、皮膚の写真を撮るために、自分のモバイルフォンおよびカスタマイズされたソフトウェアアプリケーションを使い得る。そのソフトウェアアプリケーションは、写真をクラウドベースシステムに送信し、そこでは、画像処理アルゴリズム(例えば、人工知能または機械学習を使ったもの)が、それを評価することで、肌における特徴の違いを推定し、これから腫れの程度を推定する。画像処理アルゴリズムおよびセンサー生成波形を処理するアルゴリズムからの結果は、リンパ浮腫の決定を強化するために、組み合わせられ得る。他の実施形態では、電極パッチは、正方形、長方形、楕円形および同様のもののような他の形を有することができる。
【0065】
関連する実施形態では、上記記載のセンサーにおいて使われる回路は、導電性インクまたは電気伝導性塗料を使って、患者の身体上に、一時的に印刷されることができる。そのような回路は、生体インピーダンスを使って肢の流体内容を測るための電極および肢の膨張を決定するために、基板に搭載されている超小型電子チップと相互作用し得、歪みゲージのようなセンサーを用いて構成され得る。
【0066】
本発明のこれらおよび他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内であるとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5A-5C】
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】