(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】リン系難燃剤を含む耐湿性ポリマー配合物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241226BHJP
C08K 5/3492 20060101ALI20241226BHJP
C08L 23/08 20250101ALI20241226BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241226BHJP
C08K 3/016 20180101ALI20241226BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241226BHJP
C07D 251/54 20060101ALI20241226BHJP
C07D 487/16 20060101ALI20241226BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/3492
C08L23/08
C08L63/00 C
C08K3/016
C08K3/22
C07D251/54
C07D487/16
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529280
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-26
(86)【国際出願番号】 US2022082359
(87)【国際公開番号】W WO2023129894
(87)【国際公開日】2023-07-06
(32)【優先日】2021-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501449816
【氏名又は名称】ジェイ・エム・フーバー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ イサロフ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ドゥエイン テンプルズ
(72)【発明者】
【氏名】ユー リウ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター チャールズ ホール
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002AC101
4J002AC111
4J002BB031
4J002BB041
4J002BB051
4J002BB151
4J002BB181
4J002BB201
4J002BD121
4J002CD021
4J002CD031
4J002CD041
4J002CD051
4J002CD061
4J002CD071
4J002CD111
4J002CD131
4J002CD181
4J002CK021
4J002DE077
4J002DE147
4J002EU186
4J002FD018
4J002FD038
4J002FD078
4J002FD098
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD148
4J002FD178
4J002FD208
4J002FD338
4J002GQ01
(57)【要約】
適切なポリマー及びトリアジン金属リン酸塩化合物を含むポリマー組成物を開示し、またトリアジン金属リン酸塩化合物は、0.1~45μmのd50粒径及び0.5~30m2/gのBET表面積を有することができる。このポリマー組成物は、トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含むポリマー組成物と比較して、改善された耐湿性及び改善された湿潤絶縁特性を有する。このポリマー組成物は、ワイヤ及びケーブル用途などの様々な最終用途に利用できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
(a)ポリマーと、及び
(b)下式(I)を有するトリアジン金属リン酸塩化合物、すなわち、
(A-H)
a
(+)[M
b
m+(H
2PO
4)
x1
(-)(HPO
4)
x2
2(-)]
(a-)
*pH
2O (I)
と、
を備え、
各(A-H)(+)は、独立して、下式(II-1)、(II-2)又は(II-3)を有するトリアジン誘導体、すなわち、
【化1】
であり、Mは独立して、Cu、Mg、Ca、Zn、Mn、Fe、Co、Ni、B、Si、Al、Sb、La、Ti、Zr、Ce、V、又はSnであり、
aは1~6であり、
bは1~14であり、
mは1~6であり、
x
1は1~12であり、x
2は0~12であり、そしてpは0~5であり、
a+mb=x
1+2x
2であり、
(1)前記ポリマー組成物は、水中90℃、14日間のASTM D570による吸水率が6wt%以下である、又は
(2)前記ポリマー組成物は、ASTM D150(100MHz)に準拠して、水中で90℃、14日間エージングした後のDkに対する初期Dkからの変化率であるΔDkにおいて、9%以下のΔDkを有する、又は、
(3)前記ポリマー組成物は、ASTM D150(100MHz)に準拠して、水中で90℃、14日間エージングした後のDfに対する初期Dfからの変化率であるΔDfにおいて、500%以下のΔDfを有する、又は、
(4)前記トリアジン金属リン酸塩化合物は、d50粒径が0.1~45μmの範囲にあることを特徴とする、又は、
(5)これらの任意の組み合わせ、
である、ポリマー組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマー組成物において、前記吸収率は6wt%以下、5wt%以下、4wt%以下、又は3wt%以下である、ポリマー組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリマー組成物において、前記ΔDkは9%以下、7%以下、4%以下、又は2%以下である、ポリマー組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、前記ΔDfは500%以下、400%以下、300%以下、又は200%以下である、ポリマー組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、前記d50粒子径は、0.1~45μm、0.5~20μm、0.5~10μm、1~6μm、又は1~5μmの範囲内である、ポリマー組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、各Mは独立して、Ca、Mg、Zn、Al、又はSnである、ポリマー組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、各MはZnである、ポリマー組成物。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、前記トリアジン金属リン酸塩化合物は、以下の式、すなわち、
(A-H)
(+)[Zn
2(+)(H
2PO
4)
(-)(HPO
4)
2(-)]
*pH
2O
(A-H)
(+)[Zn
2(+)(H
2PO
4)
3
(-)]
*pH
2O
(A-H)
2
(+)[Zn
2(+)(H
2PO
4)
2
(-)(HPO
4)
2(-)]
*pH
2O
(A-H)
2
(+)[Zn
2(+)(H
2PO
4)
4
(-)]
*pH
2O
(A-H)
2
(+)[Zn
2(+)(HPO
4)
2
2(-)]
*pH
2O
(A-H)
(+)[Zn
2
2(+)(H
2PO
4)
(-)(HPO
4)
2
2(-)]
*pH
2O
(A-H)
(+)[Zn
2
2(+)(H
2PO
4)
3
(-)(HPO
4)
2(-)]
*pH
2O
(A-H)
(+)[Zn
2
2(+)(H
2PO
4)
5
(-)]
*pH
2O
(A-H)
2
(+)[Zn
2
2(+)(H
2PO
4)
2
(-)(HPO
4)
2
2(-)]
*pH
2O
(A-H)
2
(+)[Zn
2
2(+)(H
2PO
4)
4
(-)(HPO
4)
2(-)]
*pH
2O
(A-H)
2
(+)[Zn
2
2(+)(HPO
4)
3
2(-)]
*pH
2O
(A-H)
2
(+)[Zn
2
2(+)(H
2PO
4)
6
(-)]
*pH
2O、
の少なくとも1つを有するトリアジンリン酸亜鉛化合物であり、pは0~5である、ポリマー組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、前記トリアジン金属リン酸塩化合物は、0.5~30m
2/g、0.5~10m
2/g、1~15m
2/g、1~10m
2/g、2~8m
2/g、又は2~5m
2/gの範囲のBET表面積を特徴とする、ポリマー組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、前記ポリマーはポリオレフィンを含む、ポリマー組成物。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、前記ポリマーはエチレン/α-オレフィンコポリマー、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、又はそれらの組み合わせを含む、ポリマー組成物。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、前記ポリマーはエラストマーを含む、ポリマー組成物。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、前記ポリマーはエポキシ樹脂を含む、ポリマー組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、前記ポリマー組成物中の前記トリアジン金属リン酸塩化合物の量は、1~80wt%、1~65wt%、1~40wt%、3~40wt%、10~40wt%、又は3~25wt%の範囲内である、ポリマー組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、さらに、追加難燃性化合物を含む、ポリマー組成物。
【請求項16】
請求項15に記載のポリマー組成物において、前記追加難燃剤化合物は、三水和アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムを含む、ポリマー組成物。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のポリマー組成物において、前記ポリマー組成物中の前記追加難燃化合物の量は、10~80wt%、20~70wt%、30~65wt%、又は40~60wt%の範囲内である、ポリマー組成物。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、前記ポリマー組成物中の前記トリアジン金属リン酸塩化合物の量は、1~40wt%、1~25wt%、1~15wt%、2~20wt%、又は5~15wt%の範囲内である、ポリマー組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、さらに添加剤を含み、前記添加剤は、安定剤又は酸化防止剤、滑剤又はプロセス助剤、相溶化剤又はカップリング剤、充填剤、着色剤、レオロジー調整剤、硬化剤、あるいはそれらの任意の組み合わせを含む、ポリマー組成物。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、前記トリアジン金属リン酸塩化合物を含有する前記ポリマー組成物は、
ASTM D570による水中90℃、14日間における吸水率は、前記トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含む他の同一の配合物の吸水率よりも小さい、及び/又は、
ASTM D570による水中75℃、7日間における吸水率は、前記トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含む他の同一の配合物の吸水率も小さい、
ポリマー組成物。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、前記トリアジン金属リン酸塩化合物を含む前記ポリマー組成物は、
前記トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含む他の同一の配合物のΔDkよりも小さいΔDk(ここで、ΔDkは、100MHzにおけるASTM D150に準拠し、水中で90℃、14日間のエージング後の、初期DkからDkへの変化率である)、及び/又は、
前記トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含む他の同一の配合物のΔDfよりも小さいΔDf(ここで、ΔDfは、100MHzにおけるASTM D150に準拠し、水中で90℃、14日間のエージング後の、初期DfからDfへの変化率である)、
を有する、ポリマー組成物。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、前記トリアジン金属リン酸塩化合物を含む前記ポリマー組成物は、
前記トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含む他の同一の配合物のΔDkよりも小さいΔDk(ここで、ΔDkは、100MHzにおけるASTM D150に準拠し、水中で75℃、7日間のエージング後の、初期DkからDkへの変化率である)、及び/又は、
前記トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含む他の同一の配合物のΔDfよりも小さいΔDf(ここで、ΔDfは、100MHzにおけるASTM D150に準拠し、水中で75℃、7日間のエージング後の、初期DfからDfへの変化率である)、
を有する、ポリマー組成物。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載のポリマー組成物において、250%以下、225%以下、200%以下、又は150%以下のΔDfを有し、ここでΔDfは、100MHzでASTM D150に準拠し、水中で75℃、7日間のエージング後の、初期DfからDfへの変化率である、ポリマー組成物。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含む、製造品。
【請求項25】
請求項24に記載の製造品において、ワイヤ又はケーブルを含む、製造品。
【請求項26】
請求項24に記載の製造品において、プリント回路基板を含む、製造品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への参照]
本出願は、PCT国際特許出願として2022年12月23日に出願され、2021年12月29日に出願された米国仮特許出願第63/294,438号の利益及び優先権を主張するものであり、その開示内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、一般に、難燃添加剤を含むポリマー組成物に関し、より具体的には、改善された耐湿性を付与するトリアジン金属リン酸塩難燃剤を含むポリマー組成物に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8754154号明細書
【特許文献2】米国特許第10351776号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chemical and Engineering News, 63(5), 27, 1985
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., 60, 309 (1938)
【発明の概要】
【0005】
本要約は、詳細な説明においてさらに後述する概念の一部を簡略化して紹介するために提供される。本要約は、特許請求の範囲に記載される対象の必須又は重要な特徴を特定することを意図したものではない。また、本要約は、特許請求の範囲に記載される対象の範囲を限定するために使用されることも意図していない。
【0006】
本明細書では、トリアジン金属リン酸塩化合物を含むポリマー組成物又は配合物を開示し、説明する。代表的な組成物は、適切なポリマーと、及び式(I):(A-H)
a
(+)[M
b
m+(H
2PO
4)
x1
(-)(HPO
4)
x2
2(-)]
(a-)
*pH
2Oを有するトリアジン金属リン酸塩化合物と、を含み得る。式(I)において、各Mは、独立して、Cu、Mg、Ca、Zn、Mn、Fe、Co、Ni、B、Si、Al、Sb、La、Ti、Zr、Ce、V、又はSnであり得る、aは1~6の範囲にわたり得る、bは1~14の範囲にわたり得る、mは、1~6の範囲にわたり得る、x
1は1~12の範囲にわたり得る、x
2は0~12の範囲にわたり得る、pは0~5の範囲にわたり、a+mb=x
1+2x
2であり得る、また各(A-H)(+)は、独立して、下式(II-1)、(II-2)又は(II-3)を有するトリアジン誘導体であり得る。
【化1】
【0007】
このポリマー組成物は難燃性をもたらし、ワイヤ、ケーブル及びその他の最終使用の難燃性ポリマー用途に使用できる。
【0008】
前述の要約も以下の詳細な説明も、例を示すものであり、説明的なものに過ぎない。したがって、前述の要約及び以下の詳細な説明は、制限的なものとみなされるべきではない。さらに、特徴又は変形は、本明細書で説明されるものに加えて提供され得る。例えば、特定の態様は、詳細な説明に記載された様々な特徴の組合せ及びサブ組合せとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1~4のポリマー組成物の、90℃、14日間における吸水率を示す棒グラフある。
【
図2】実施例1~2及び4~5のポリマー組成物の、75℃、7日間における吸水率を示す棒グラフである。
【
図3】実施例1~4のポリマー組成物について、水中で90℃、14日間のエージング前後の100MHzにおける誘電率(Dk)の棒グラフである。
【
図4】実施例1~4のポリマー組成物について、
図3において、水中で90℃、14日間のエージング前後の100MHzにおけるDkに基づくΔDkの棒グラフである。
【
図5】実施例1~4のポリマー組成物について、水中で90℃、14日間のエージング前後の100MHzにおける散逸係数(Df)を示す棒グラフである。
【
図6】実施例1~4のポリマー組成物について、
図5において、水中で90℃、14日間のエージング前後の100MHzにおけるDfに基づくΔDfの棒グラフである。
【
図7】実施例1~2及び4~6のポリマー組成物について、水中で75℃、7日間のエージング前後の100MHzにおける誘電率(Dk)の棒グラフである。
【
図8】実施例1~2及び4~6のポリマー組成物について、
図7において、水中で75℃、7日間のエージング前後の100MHzにおけるDkに基づくΔDkの棒グラフである。
【
図9】実施例1~2及び4~6のポリマー組成物について、水中で75℃、7日間のエージング前後の100MHzにおける散逸係数(Df)を示す棒グラフである。
【
図10】実施例1~2及び4~6のポリマー組成物について、
図9において、水中で75℃、7日間のエージング前後の100MHzにおけるDfに基づくΔDfの棒グラフである。
【
図11】実施例1~2及び4のポリマー組成物の熱放出率(HRR)曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用される用語をより明確に定義するために、以下の定義を提供する。特に断らない限り、以下の定義は本開示に適用される。用語が本開示で使用されているが、本明細書で具体的に定義されていない場合、その定義が本明細書で適用される他の開示又は定義に抵触しない限り、若しくはその定義が適用される特許請求の範囲におけるいかなる請求項をも不明確又は非有効にしない限り、IUPAC化学用語大要、第2版(1997)の定義を適用することができる。参照により本明細書に組み込まれた文書によって規定された定義又は用法が、本明細書に規定された定義又は用法と矛盾する範囲においては、本明細書に規定された定義又は用法が優先する。
【0011】
本明細書において、主題の特徴は、特定の態様内において、異なる特徴の組み合わせが想定され得るように記載される。本明細書において開示される各態様及び各特徴について、本明細書において説明される設計、組成物、プロセス、又は方法に有害な影響を与えないすべての組み合わせが想定され、特定の組み合わせの明示的な説明の有無にかかわらず、交換可能である。したがって、明示的に別段の記載がない限り、本明細書に開示された任意の態様又は特徴は、本開示に合致する発明的設計、組成物、プロセス、又は方法を組み合わせて説明することができる。
【0012】
本明細書において、組成物及び方法は、種々の成分又はステップを「~備える/含む(“comprising”)」という用語で記載されるが、組成物及び方法はまた、特に断らない限り、種々の成分又はステップ「実質的に/ほぼ~から成る(“consist essentially of”)」又は「~から成る(“consist of”)」ことができる。用語「“a”」、「“an”」、及び「“the”」は、特に断らない限り、複数の代替物、例えば、少なくとも1つ、を含むことを意図している。
【0013】
一般的に、元素のグループは、非特許文献1(Chemical and Engineering News, 63(5), 27, 1985)に掲載された元素周期表のバージョンで示された番号付けスキームを使用して示される。例えば、第1族元素はアルカリ金属、第2族元素はアルカリ土類金属などのように、場合によっては、元素のグループは、そのグループに割り当てられた共通名を用いて示すことができる。
【0014】
本明細書において、「接触させる(“contacting”)」という用語は、ブレンド、混合、スラリー化、溶解、反応、処理、配合、又は他の方法もしくは任意の適切な方法で接触もしくは組み合わせることができる材料又は成分を指すために使用される。材料又は成分は、特に指定のない限り、任意の順序、任意の方法、及び任意の時間、共に接触させることができる。
【0015】
本明細書に記載されたものと類似又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施又は試験に使用することができるが、代表的な方法及び材料を本明細書に記載する。
【0016】
本明細書に記載されているすべての刊行物及び特許は、例えば、現在記載されている発明に関連して使用される可能性のある、刊行物及び特許に記載されている構築物及び方法論を説明及び開示する目的で、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0017】
本発明では、いくつかの範囲のタイプを開示する。任意のタイプの範囲が開示又は請求される場合、その意図は、範囲の端点、並びに、そこに包含される任意のサブ範囲及びサブ範囲の組み合わせを含め、そのような範囲が合理的に包含し得る各可能な数を個々に開示又は請求することである。代表的な例として、ポリマー組成物又は配合物中のトリアジン金属リン酸塩化合物の量は、本発明の様々な態様において特定の範囲とすることができる。ポリマー組成物又は配合物中のトリアジン金属リン酸塩化合物の量は、1~80wt%の範囲内にあり得るという開示により、その意図するところは、トリアジン金属リン酸塩化合物の量は、その範囲内の任意の量とすることができ、例えば、1~80wt%の範囲における任意の範囲又は組み合わせ、例えば、1~65wt%、1~40wt%、1~25wt%、1~15wt%、2~20wt%、又は2~15wt%などとすることができることを記載することである。同様に、本明細書に開示された他のすべての範囲は、この例と同様の方法で解釈されるべきである。
【0018】
一般的に、量、大きさ、配合、パラメータ、範囲、又はその他の量もしくは特性は、明示的にそのように記載されているか否かにかかわらず、「約(“about”)」又は「おおよその(“approximate”)」である。「約(“about”)」又は「おおよそ(“approximately”)」という用語によって修飾されているか否かにかかわらず、特許請求の範囲には、その量または特性に対する等価物が含まれる。
【0019】
(発明の詳細な説明)
本明細書で開示するのは、トリアジン金属リン酸塩化合物を含む難燃性ポリマー配合物であり、またこのようなポリマー配合物は、ワイヤ/ケーブル用途で使用するために耐湿性が改善されている。
【0020】
登録商標Safire 200、登録商標Safire 400、登録商標Safire 600はそれぞれメラミン樹脂(リン酸アルミニウム)、メラミン樹脂(リン酸亜鉛)、メラミン樹脂(リン酸マグネシウム)の難燃剤である。当業者であれば容易に認識できるように、このようなリン系難燃剤は、水分を吸収又はピックアップするため、水又は湿気が存在する可能性のある特定の最終用途では一般的に利用されない。したがって、本発明の1つの目的は、これらのメラミン樹脂(金属リン酸塩)を含む配合物と同等のASTM E1354難燃性能を有するが、耐湿性が改善されたポリマー配合物を精製することである。
【0021】
耐湿性を必要とする難燃性ポリマー配合物の特定の最終用途は、ワイヤ/ケーブル用途である。ワイヤ/ケーブル用途では、難燃性ポリマー配合物は多層ワイヤ/ケーブル構造の絶縁層として使用されることが多い。したがって、難燃性ポリマー配合物は絶縁体として作用する。絶縁抵抗は、絶縁材料又は層によって絶縁された2つの導体又は2系統の導体間の交流電流抵抗と定義することができる。ポリマー配合のケーブル絶縁抵抗は、温度、材料純度、及び湿度(存在する水分量)などの要因に依存し得る。湿度が高くなったり、ケーブルが液体の水と接触したりすると、ケーブルが水を吸収し、それに応じて抵抗値が変化するため、電気ケーブルが使用される環境の湿度は、ケーブルの絶縁性能に大きな影響を与える。したがって、本発明のもう1つの目的は、湿度(水分)の影響を受けにくいポリマー配合物を精製し、ワイヤ/ケーブル構造におけるポリマー層の絶縁性能を向上させることである。
【0022】
[トリアジン金属リン酸化合物]
本発明の態様と一致して、本明細書で開示されるポリマー組成物は、式(I)を有するトリアジン金属リン酸塩化合物を含む。
(A-H)a
(+)[Mb
m+(H2PO4)x1
(-)(HPO4)x2
2(-)](a-)
*pH2O (I)
【0023】
式(I)中、(A-H)、M、a、b、m、x1、x2、及びpは、トリアジン金属リン酸化合物の独立した要素であり、a、b、m、x1、及びx2は整数であり、pは分数となり得る。したがって、式(I)を有するトリアジン金属リン酸塩化合物は、化合物の全体的な電荷バランスを条件として、本明細書に開示されている(A-H)、M、a、b、m、x1、x2、及びpの任意の組み合わせを使用して記載することができる。特に断らない限り、上記式(I)、本明細書に開示される他の構造式、及び本明細書に開示される任意のトリアジン金属リン酸塩化合物は、異なる部分の立体化学又は異性体の位置付けを示すようには設計されていない(例えば、これらの式は、シス又はトランス異性体、あるいはR又はSのジアステレオ異性体を示すようには意図されていない)が、このような化合物は、これらの式及び/又は構造によって企図され、包含される。
【0024】
本発明の1つの態様に従って、式(I)の各金属、Mは、独立して、Cu、Mg、Ca、Zn、Mn、Fe、Co、Ni、B、Si、Al、Sb、La、Ti、Zr、Ce、V、又はSnである。別の態様では、各Mは独立して、Ca、Mg、Zn、Al、又はSnであり、さらに別の態様では、各MはCaであり、あるいは各MはMgであり、あるいは各MはZnであり、あるいは各MはAlであり、もしくは各MはSnである。式(I)において、mは金属Mの酸化状態であり、金属及びそれぞれの酸化状態に応じて、mは1~6までの範囲にわたり得る。ある態様では、mは1~5又は1~4であり、他の態様では、mは2~6、2~4、又は2~3の範囲にわたる。式(I)において、bはトリアジン金属リン酸塩化合物中の金属Mの数であり、bは1~14の範囲にわたり得る。これは、トリアジン金属リン酸塩化合物中に1つの金属イオン又は原子のみが存在する場合、若しくは2つ以上の金属イオン又は原子が存在する場合を包含する。多くの場合、bは1~10、1~8、1~5、1~3、2~10、又は2~5の範囲にわたるが、これに限定されない。式(I)中に金属が1つしか存在しない場合でも、リン酸部分とトリアジン部分との電荷を適切にバランスさせるために、bは1より大きくなり得る(例えば、2、3、4など)。
【0025】
式(I)中のH2PO4部分の数はx1であり、式(I)中のHPO4部分の数はx2であり、x1は1~12の範囲にわたり、x2は0~12の範囲にわたる。例えば、x1は、1~8、1~6、1~5、1~4、1~3、又は1~2の範囲にわたり得る一方で、x2は、0~8、0~6、0~4、又は0~2の範囲にわたり得る(x2は、0、1、又は2に等しい)。本明細書で意図される特定の態様において、x1は1~6(又は1~5、又は1~4、又は1~3)の範囲をとり、またx2は0又は1に等しい。
【0026】
式(I)中のpの存在は、トリアジン金属リン酸塩化合物の水和物バージョンを包含し、pは0~5の範囲にわたり得る、例えばpは0~3又は0~2の範囲にわたるとき、pは0に等しい場合、pは1に等しい場合、pが2に等しい場合などがある。
【0027】
式(I)において、各(A-H)は独立して、下式(II-1)、(II-2)又は(II-3)を有するトリアジン誘導体である。
【化2】
【0028】
本発明に合致する式(I)のトリアジン金属リン酸塩化合物は重合していないが、トリアジン金属リン酸塩化合物が配合される条件(例えば、乾燥ステップを含む)によっては、メラミン、メラム、及び/又はメレムの2種以上を存在させることが可能である。式(I)において、aはトリアジン金属リン酸塩化合物中のトリアジン誘導体の数であり、aは1~6の範囲にわたり得る。これは、1つのトリアジン誘導体のみが存在するか、又は2つ以上のトリアジン誘導体がトリアジン金属リン酸塩化合物中に存在する状況を包含する。多くの場合、aは1~5、1~4、1~3、又は1~2の範囲にわたるが、これらに限定されない。式(I)中にトリアジン誘導体が1つのみ存在する場合でも、金属(単数又は複数)及びリン酸部分の電荷を適切にバランスさせるために、aは1より大きく(例えば、2以上)なり得る。トリアジン金属リン酸塩化合物の全体的な電荷バランスとして、式(I)ではa+mb=x1+2x2である。
【0029】
本発明の一態様において、金属Mは亜鉛であり、したがってトリアジン金属リン酸塩化合物はトリアジンリン酸亜鉛化合物である。これに限定されるものではないが、トリアジンリン酸亜鉛化合物は以下の式、すなわち、
(A-H)(+)[Zn2(+)(H2PO4)(-)(HPO4)2(-)]*pH2O
(A-H)(+)[Zn2(+)(H2PO4)3
(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2(+)(H2PO4)2
(-)(HPO4)2(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2(+)(H2PO4)4
(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2(+)(HPO4)2
2(-)]*pH2O
(A-H)(+)[Zn2
2(+)(H2PO4)(-)(HPO4)2
2(-)]*pH2O
(A-H)(+)[Zn2
2(+)(H2PO4)3
(-)(HPO4)2(-)]*pH2O
(A-H)(+)[Zn2
2(+)(H2PO4)5
(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2
2(+)(H2PO4)2
(-)(HPO4)2
2(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2
2(+)(H2PO4)4
(-)(HPO4)2(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2
2(+)(HPO4)3
2(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2
2(+)(H2PO4)6
(-)]*pH2O、
の少なくとも1つを有し得る。
【0030】
したがって、トリアジンリン酸亜鉛化合物は、これらの式のいずれか1つを有する化合物であり得るし、又は、トリアジンリン酸亜鉛化合物は、これらの式のいずれか2つ以上を有する化合物の混合物であり得る。トリアジンリン酸亜鉛化合物を説明するために使用されるこれらの式におけるpの存在は、式(I)におけるのと同じ意味を有し、したがって、トリアジンリン酸亜鉛化合物の水和物バージョンを包含する。したがって、pは0~5、例えば0~3又は0~2の範囲にわたるものとすることができ、またpは0、1、2等々に等しいものであり得る。
【0031】
トリアジン金属リン酸塩化合物は、式(I)に関連して上述したようなトリアジン金属リン酸塩化合物のみに限定されるものではない。式(I)に包含される他の好適なトリアジン金属リン酸塩化合物は、例えば、特許文献1及び2(U.S. Patent Nos. 8,754,154 and 10,351,776.)に開示されている。トリアジン金属リン酸塩化合物の一般的な製造方法もまた、これらの特許に記載されている。
【0032】
本明細書に記載のポリマー組成物に使用されるトリアジン金属リン酸塩化合物の粒子径は特に限定されないが、トリアジン金属リン酸塩化合物は、多くの場合、0.1~45μmの範囲内におけるメジアン粒径(d50)を有し得る。トリアジン金属リン酸塩化合物は、より小さいd50粒子を有する方が有利となり得、したがって、トリアジン金属リン酸塩化合物のd50粒径の好適な範囲としては、0.5~20μm、0.5~10μm、1~6μm、又は1~5μmなどが挙げられる。理論に束縛されることは望まないが、トリアジン金属リン酸塩化合物の粒子径が粗すぎると、例えばワイヤ/ケーブル用途の難燃性ポリマー配合物中に存在する場合、その粒子が機械的故障及び電気的故障(例えばスパーク)の両方の故障点として作用する可能性があると考えられている。
【0033】
同様に、トリアジン金属リン酸塩化合物のBET表面積は特に限定されないが、一般に0.5~30m2/gの範囲に落ち着く。BET表面積の代表的かつ非限定的な範囲としては、0.5~10m2/g、1~15m2/g、1~10m2/g、2~8m2/g、又は2~5m2/gなどが挙げられる。トリアジン金属リン酸塩化合物の他の適切な粒子サイズ及び表面積は、本開示から容易に明らかである。
【0034】
[ポリマー組成物]
本発明は、トリアジン金属リン酸塩化合物(および表面積、粒径などのそれぞれの特性又は特徴)のいずれかを含む組成物、配合物、複合体、及び に関し、これらを包含する。本発明の特定の態様において、ポリマー組成物が開示され、この態様においてポリマー組成物は、任意の適切なポリマー(1種又は2種以上)と、及び本明細書に開示される式(I)を有するいずれかのトリアジン金属リン酸塩化合物と、を含むことができる。ある態様では、例えば、ポリマー組成物中のポリマーはエラストマーを含むことができ、別の態様では、ポリマーは熱可塑性ポリマーを含むことができ、さらに別の態様では、ポリマーは熱硬化性ポリマーを含むことができる。
【0035】
トリアジン金属リン酸塩化合物を有するポリマー組成物に使用されるポリマーは、単独で、又は任意の組み合わせで、任意の適切なゴム又はエラストマーを含むことができ、非限定的な例としては、天然ゴム(NR:natural rubber)、エポキシ化天然ゴム(ENR:epoxidized natural rubber)、合成シスポリイソプレン(IR:polyisoprene)、エマルジョンスチレンブタジエンゴム(ESBR:emulsion styrene butadiene rubber)、溶液スチレンブタジエンゴム(SSBR:solution styrene butadiene rubber)、ポリブタジエンゴム(BR:polybutadiene rubber)、ブチルゴム(IIR/CIIR/BIR;butyl rubber)、クロロプレンゴム(CR:chloroprene rubber)、 ニトリルゴム(NBR:nitrile elastomer)、水素化ニトリルゴム(HNBR:hydrogenated nitrile elastomer)、カルボキシル化ニトリルゴム(XNBR:carboxylated nitrile elastomer)、エチレンプロピレンゴム(EPM/EPD:ethylene propylene rubber)、フッ素ゴム(FPM/FKM:fluoroelastomer)、ポリウレタンゴム(AU/EU/PU:polyurethane rubber)などを挙げることができる。
【0036】
一態様において、ポリマー組成物中のポリマーは、ポリオレフィンを含むことができる。別の態様において、ポリマーは、単独で又は任意の組み合わせで、ポリエチレン(例えば、エチレンホモポリマーまたはエチレンベースのコポリマー、例えば、しばしばLLDPEと呼ばれ得るエチレン/α-オレフィンコポリマーなど)、ポリプロピレン(例えば、プロピレンホモポリマー又はプロピレンベースのコポリマーなど)、及び/又はエチレン/酢酸ビニル(EVA:ethylene/vinyl acetate)コポリマーを含むことができる。
【0037】
随意的に、これらのポリマーのいずれかを架橋することができる。例えば、ポリマーは架橋ポリエチレンを含むことができ、架橋のための技術は、過酸化物開始架橋のような任意の適切な方法論を含むことができる。
【0038】
一態様において、ポリマーはエポキシ樹脂を含むことができる。例えば、ポリマーは、単独で又は任意の組み合わせで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールF型ノボラック型エポキシ樹脂、ジフェニルエチレン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂(例えば、エポキシ樹脂及びビスマレイミド-トリアジン樹脂の混合物であるビスマレイミドトリアジン-エポキシ)、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及び/又は脂環式エポキシ樹脂を含むことができる。一般的に、銅張積層板又は関連する用途に使用するのに適したエポキシ樹脂であれば、本明細書に包含されるポリマー組成物のベースポリマーとして使用することができる。
【0039】
これに限定されるものではないが、ポリマー組成物中のトリアジン金属リン酸塩化合物の量は、多くの場合、1~80wt%の範囲にわたり得る。したがって、ポリマー組成物中のトリアジン金属リン酸塩化合物の例示的かつ非限定的な量としては、以下の範囲、すなわち、1~65wt%、1~40wt%、3~40wt%、10~40wt%、または3~25wt%、を挙げることができる。ポリマー組成物中のトリアジン金属リン酸塩化合物の量に関する他の適切な範囲は、本開示から容易に明らかである。
【0040】
多くの場合、ポリマー組成物はさらに、(トリアジン金属リン酸塩化合物以外の)追加の難燃性化合物を含む。したがって、ポリマー組成物は、ポリマー、トリアジン金属リン酸塩化合物、及び追加の難燃化合物を含むことができる。任意の適切な難燃剤化合物を使用することができ、その例は、三水和アルミニウム(ATH)、水酸化マグネシウム(MDH)等のような金属水酸化物である。金属水酸化物及び追加の難燃性化合物の組合せをポリマー組成物に利用することができる。
【0041】
存在する場合、ポリマー組成物中の追加難燃性化合物の量は、ある態様では10~80wt%、別の態様では20~70wt%、さらに別の態様では30~65wt%、さらに別の態様では40~60wt%の範囲にわたり得る。ポリマー組成物中に追加の難燃剤化合物が存在する場合、通常、ポリマー組成物中のトリアジン金属リン酸塩化合物の量は、上記に開示した量よりも少なく、ポリマー組成物中のトリアジン金属リン酸塩化合物の量(ATH及び/又はMDHのような追加の難燃剤が存在する場合)の典型的な範囲は、1~40wt%、あるいは1~25wt%、あるいは1~15wt%、あるいは2~20wt%、又は5~15wt%である。
【0042】
随意的に、ポリマー組成物はさらに、任意の適切な添加剤を含むことができ、その非限定的な例としては、安定剤又は酸化防止剤、滑剤又はプロセス助剤、相溶化剤又はカップリング剤、充填剤、着色剤、レオロジー調整剤、もしくは硬化剤など、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0043】
式(I)を有するトリアジン金属リン酸塩化合物のいずれかを含む、本明細書に開示されるポリマー組成物はまた、難燃性組成物の有益な特徴又は特性によって特徴付けられ得る。この例としては、水中で90℃、14日間、ASTM D570に準拠して定量化された低い吸水率が挙げられる。このような試験条件下では、式(I)を有するトリアジン金属リン酸塩化合物を含むポリマー組成物は、しばしば6wt%以下、いくつかの態様では5wt%以下、4wt%以下、または3wt%以下の吸水率を有する。
【0044】
この低い吸水率は、トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物(polymerized version)の吸水率がはるかに高いことを考えると、予想外のことである。驚くべきことに、式(I)を有するトリアジン金属リン酸塩化合物を含むポリマー組成物は、水中で90℃及び14日間におけるASTM D570による吸水率が、トリアジン金属リン酸エステル化合物の重合異形物を含む他の同一の製剤の吸水率よりも低い。前駆体であるトリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物は、特許文献1及び特許文献2に一般的に記載されているように配合することができる。この重合ステップは、前駆体と比較して重合化合物の熱安定性を向上させ、重合化合物をより高温の用途に利用できると考えられている。ここで、重合異形物とは、(前駆体)トリアジン金属リン酸塩化合物を310℃の温度で45分間重合させたものである。
【0045】
加えて又は代わりに、トリアジン金属リン酸塩化合物を含有するポリマー組成物はまた、ASTM D570による吸水率を有することができるが、水中で75℃及び7日間で、トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含有する他の同一の配合物の吸水率よりも低い。
【0046】
開示されたポリマー組成物の別の予想外の利点は、優れた湿潤絶縁特性である。この利点を定量化するために使用できるパラメータの1つは誘電率Dkであり、これはポリマー組成物内の水分が増加すると増加する。ASTM D150(100MHz)を使用して、式(I)を有するトリアジン金属リン酸塩化合物を含むポリマー組成物は、9%以下、より多くの場合には、7%以下、4%以下、又は2%以下のΔDkによって特徴付けることができる。ΔDkは、ASTM D150に記載されているように、初期Dk(エージングなし)から90℃、14日間の水中エージング後のDkまでの変化率である。
【0047】
同様に、有益な湿潤絶縁特性を定量化するために使用できる別のパラメータは、散逸係数Dfである。散逸係数とは、材料がエネルギーを保持する能力、又は絶縁材料として挙動する能力に関するものである。散逸係数が低いほど、材料は絶縁体としてより効率的である。ほとんどのプラスチックは、室温で比較的低い散逸係数を有する。また、散逸係数は、ケーブル、終端部、接合部などの用途において、含水率、劣化などの絶縁材料の特性又は品質を評価するために使用することもできる。したがって、長期間湿気にさらされても、絶材材料のDfが最小限の増加しかしないことが有益である。
【0048】
ASTM D150(100MHz)を用いると、式(I)を有するトリアジン金属リン酸塩化合物を含むポリマー組成物は、ΔDfが500%以下、より多くの場合には、ΔDfが400%以下、300%以下、又は200%以下であることを特徴とすることができる。ΔDfは、ASTM D150に記載されているように、90℃、14日間の水中エージング後のDfに対する初期Df(エージングなし)からの変化率である。
【0049】
これらの特性は、重合したトリアジン金属リン酸塩化合物に対する有意な改善である。特に、式(I)を有するトリアジン金属リン酸塩化合物を含むポリマー組成物は、トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含む他の同一の配合物よりも小さいΔDk(又はΔDf、又はその両方)を有し得る。これらは同じ条件、すなわち、ASTM D150に準拠し、100MHzで90℃、14日間の水中エージング条件で比較されている。
【0050】
式(I)を有するトリアジン金属リン酸塩化合物を含むポリマー組成物の利点はまた、より低い温度及びより少ないエージング時間を使用して定量化することができる。例えば、ポリマー組成物は、ΔDfが250%以下、より多くの場合には、ΔDfが225%以下、200%以下、又は150%以下であることを特徴とすることができる。このΔDfは、(100MHzにおいて)ASTM D150に記載されているように、75℃、7日間の水中エージング後のDfに対する初期Df(エージングなし)からの変化率である。
【0051】
より低い温度及びより少ないエージング時間を使用しても、重合トリアジン金属リン酸塩化合物に対する改善は容易に明らかである。したがって、式(I)を有するトリアジン金属リン酸塩化合物を含むポリマー組成物は、トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含有する他の同一の配合物よりも小さいΔDk(又はΔDf、又はその両方)を有し得る。この比較では、ASTM D150に準拠し、100MHzで75℃、7日間の水中エージングという同一の試験条件を用いている。
【0052】
上述したポリマー組成物の耐湿性および湿潤絶縁特性(例えば、吸水率、誘電率、散逸係数)は、(難燃剤及びその他の非ポリマー添加剤の量と比較して)組成物中に任意の相対量のポリマーを含むポリマー組成物に適用可能である。しかしながら、耐湿性及び湿潤断熱特性は、おおよそ30~40wt%のポリマーを含有するポリマー組成物、例えば、30~38wt%のポリマー、32~40wt%のポリマー、32~38wt%のポリマーなどを含有するポリマー組成物に対して特に有益である。したがって、本明細書に開示される任意の吸水特性(ASTM D570による)、及び本明細書に開示される任意のΔDk特性(ASTM D150による)、及び本明細書に開示される任意のΔDf特性(ASTM D150による)、を有するポリマー組成物は、30~40wt%のポリマー、30~38wt%のポリマー、32~40wt%のポリマー、32~38wt%のポリマーなどを含むポリマー組成物であり得る。上記のような任意の適切なポリマーが、ポリマー組成物のポリマー成分となり得るが、エチレンホモポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレンベースのコポリマー、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマーのようなポリオレフィンは単独で、もしくは任意の混合物又は組み合わせで、後続の製造品及び最終用途に応じて、ポリマー組成物中でしばしば利用される。
【0053】
製造品は、本明細書に記載のポリマー組成物のいずれかから形成することができ、及び/又はこれらを含むことができる。一態様において、製造品は、ワイヤ又はケーブルを含むことができ、別の態様において、物品は、プリント回路基板を含むことができる。他の適切な製造品及び最終用途は、本開示から容易に明らかである。
【0054】
必要であれば、例えば、単一粒子径分布の代わりに、トリアジン金属リン酸塩化合物のより大きな粒子とトリアジン金属リン酸塩化合物のより小さな粒子の組み合わせ(例えば、双峰性粒度分布)など、閉鎖充填技術をトリアジン金属リン酸塩化合物に適用することができる。これにより、非常に高い負荷レベル(最大80wt%以上)で化合物の粘度を向上させることができる。
【実施例】
【0055】
本発明はさらに以下の実施例によって説明されるが、これらは本発明の範囲に制限を課すものとして解釈されるものではない。他の様々な態様、変更、及び等価物は、本明細書の説明を読んだ後、本発明の精神又は添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、当業者に示唆され得る。
【0056】
d50粒子径又は中央値粒子径は、試料の50重量%の粒子径が小さく、50重量%の粒子径が大きい粒子径を意味する。粒子径測定は、Beckman Coulter LS 13 320単波長レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、ISO 13320に準拠してレーザー回折法で測定した。
【0057】
BET表面積は、Micromeritics TriStar II表面積・空孔率アナライザを使用して、Brunauer氏らの非特許文献2のBET窒素吸着法を用いて測定した。
【0058】
(実施例1~6)
表I(表1)は実施例1~6のEVA/LLDPE配合物を要約したもので、実施例1~3及び実施例5~6では10wt%のFR相乗剤を使用した。実施例1はFR相乗剤としてトリアジンリン酸亜鉛化合物(後述のように配合)を使用し、実施例2はFR相乗剤として登録商標Safire 400を使用し、実施例3はFR相乗剤としてシラン表面処理した登録商標Safire 400を使用し、実施例5はFR相乗剤としてポリリン酸メラミンを使用し、実施例6はFR相乗剤としてポリリン酸アンモニウムを使用した。実施例4では、FR相乗剤なしでATH(d50~2μm、BET~4m2/g)を使用し、この実施例では、ATHの量を49.82~59.82wt%に増やした。
【0059】
実施例1でFR相乗剤として使用したトリアジンリン酸亜鉛化合物は、以下のように配合した。主反応容器に水及びメラミンを化合し、80~85℃で攪拌し、固形分10~15wt%のスラリーとした。第2反応容器に水と酸化亜鉛を入れ、80~85℃で攪拌し、固形分10~15wt%のスラリーとした。リン酸(75%)を酸化亜鉛スラリー(リン酸と酸化亜鉛のおおよそのモル比は2:1)に攪拌しながらゆっくりと添加し、必要に応じて添加速度を下げて発熱反応を制御し、リン酸二水素亜鉛を生成させた。リン酸の添加が完了した後、第2反応容器の内容物を95~99℃で少なくとも30分間、リン酸二水素亜鉛溶液が透明でpHが~1.7未満になるまでかき混ぜた。続いて、第2反応容器内のリン酸二水素亜鉛溶液を約85~88℃以下に冷却した。次に、第2反応容器内のリン酸二水素亜鉛溶液を主反応容器(メラミンスラリーを含み、亜鉛とメラミンのおおよそのモル比は1:2であった)に移し、主反応容器の内容物を約4~6時間かき混ぜた。固体のトリアジンリン酸亜鉛化合物を形成するために反応生成物を温度120℃で24時間乾燥させ、これをd50粒子径2.5μm、BET表面積3.5m2/gに粉砕した後、実施例1の難燃性ポリマー配合物に使用した。
【0060】
実施例2のポリマー組成物に使用した登録商標Safire 400相乗剤は、特許文献1及び特許文献2に一般的に記載されているように、実施例1の前駆体トリアジンリン酸亜鉛化合物を310℃、45分の条件下で重合させることにより配合した。
【0061】
実施例3のポリマー組成物に使用した、表面処理をした登録商標Safire 400相乗剤は、3ポンドの登録商標Safire 400(実施例2のもの)を10Lの高速ヘンシェルミキサーに投入し、混合温度を85~88℃に設定して配合した。疎水性の表面処理を行うため、1分間、混合速度を1000rpmに設定し、1wt%のダイナシラン9116(ヘキサデシルトリメトキシシラン)が1000rpmで1分以上ヘンシェルミキサーに添加された。その後、ヘンシェルミキサーを3000rpmに上げて10分間混合し、シラン処理した登録商標Safire 400を室温まで冷却した。
【0062】
実施例1~6のポリマー配合物を、吸水性能(ASTM D570による)及び湿潤絶縁特性(ASTM D150による)について評価した。
図1は90℃、14日間水中でエージングした後の実施例1~4のポリマー組成物の吸水特性を比較し、
図2は75℃、7日間水中でエージングした後の実施例1~2及び実施例4~5のポリマー組成物の吸水特性を比較している。当業者であれば容易に認識できるように、リン系難燃剤は、水分を吸収又はピックアップするため、水又は水分が存在する可能性のある最終用途では通常利用されない。予想通り、
図1の実施例2は性能が悪く(吸湿率6wt%以上)、実施例4(ATHのみ)が最も性能が良かった。吸湿率を下げるために、実施例3もまた評価したが、これは疎水性表面処理を用いた。驚くべきことに、吸湿性は表面処理の影響を受けなかった。トリアジンリン酸亜鉛化合物をFR相乗剤として含有する実施例1は、予想外に吸水率が低く、実施例2~3の吸水率より65~70%良好(低い)であった。類似の結果を
図2に示すが、エージング時間を7日に短縮し、温度を75℃に下げた。トリアジンリン酸亜鉛化合物をFR相乗剤として含有する実施例1は、実施例2の吸水率よりも42%良好(低い)であり、実施例5(ポリリン酸メラミンをFRシナジストとして含有)の吸水率よりも14%良好(低い)であり、予想外に低い吸水率を示した。
【0063】
ここで、ASTM D150試験及びA/C損失特性(湿絶縁性能)を参照すると、
図3は、実施例1~4のポリマー組成物について、90℃、14日間の水中エージング前後の100MHzにおける誘電率(Dk)を比較し、
図4は、実施例1~4のポリマー組成物について、
図3の90℃、14日間の水中エージング前後の100MHzにおけるDkに基づくΔDkを比較する。これらの図は、各ポリマー組成物の初期Dkは非常に類似していたが、エージング後、実施例1は驚くべきことにATHのみの実施例4と同等で、ΔDkはわずか1%であったのに対し、実施例2~3のΔDk値は10~15%であったことを示す。
【0064】
図7~8は、実施例1~2及び実施例4~6のポリマー組成物について、エージングを水中で75℃、7日間行った以外は、
図3~4と同様である。
図7~8は、各ポリマー組成物の初期Dkが非常に類似していたことを示すが、エージング後、実施例1は実施例2より優れており、実施例5~6(ポリリン酸メラミン及びポリリン酸アンモニウム)よりはるかに優れており、実施例4以外では、実施例1が最も低いΔDkを示した。
【0065】
次に、実施例1~4のポリマー組成物について、90℃、14日間の水中エージング前後の100MHzにおける散逸係数(Df)を比較した
図5と、実施例1~4のポリマー組成物について、
図5の90℃、14日間の水中エージング前後の100MHzにおけるDfを基準としたΔDfを比較した
図6とを参照する。これらの図は、初期Dfは各ポリマー組成物で非常に類似していたが、エージング後、実施例1は驚くことにATHのみの実施例4と同等であり、エージング後のDfは実施例2~3より70%低かったことを示す。
【0066】
図9~10は、実施例1~2及び実施例4~6のポリマー組成物について、エージングを水中で75℃、7日間行った以外は、
図5~6と同様である。
図9~10は、初期Dfは各ポリマー組成物について非常に類似していたが、エージング後、実施例1が実施例2及び実施例5より優れており、実施例6(ポリリン酸アンモニウム)よりはるかに優れていたことを示している。
【0067】
コーンカロリーメータ(DEATAK CC-2)を用いて、ASTM E1354に記載された手順に従って、ポリマー試料の難燃性試験を行った。100mm×100mm×0.635mmの試験片を水平方向に照射した。実験には50kW/m
2の外部熱流束を使用した。測定されたパラメータは、点火持続時間、ピーク熱放出率(PHRR:Peak Rate Release Rate)、300秒間の平均熱放出率(RHR:Rate of Heat release)、総放出熱量(THR:Total Heat Released)、平均有効燃焼熱量、平均質量損失率(10%~90%)、及び平均SEAを含む。報告されたデータは3回の実験の平均である。数値結果は、実施例1~2及び実施例4のポリマー組成物について表II(表2)に要約され、
図11は、実施例1~2及び実施例4のポリマー組成物についての熱放出率(HRR)曲線を提供する。実施例1~2のポリマー組成物にFR相乗剤を使用すると、実施例4のATHのみのポリマー組成物と比較して、難燃性能が大幅に向上した。重要なことは、上述の吸水性及び湿潤断熱性の利点に加えて、実施例1は実施例2と同じ難燃性能の利点を有していたことである。
【0068】
【0069】
【0070】
以上、本発明を多数の態様及び実施例を参照して説明した。上記の詳細な説明に照らして、多くの変形例が当業者に示唆されるであろう。このような明白な変形はすべて、添付の特許請求の範囲の意図する全範囲内にある。本発明の他の態様としては、以下のものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない(態様は、「~を備える/含む(”comprising”)」と記載されているが、これに代えて、「実質的に/ほぼ~から成る(”consist essentially of”)」又は「~から成る(”consist of”)」と記載することもできる)。
【0071】
[態様1]ポリマー組成物(又は配合物)であって、
(a)ポリマーと、及び
(b)下式(I)を有するトリアジン金属リン酸塩化合物、すなわち、
(A-H)
a
(+)[M
b
m+(H
2PO
4)
x1
(-)(HPO
4)
x2
2(-)]
(a-)
*pH
2O (I)
と
を備え、
各(A-H)(+)は、独立して、式(II-1)、(II-2)又は(II-3)を有するトリアジン誘導体、すなわち、
【化3】
であり、Mは独立して、Cu、Mg、Ca、Zn、Mn、Fe、Co、Ni、B、Si、Al、Sb、La、Ti、Zr、Ce、V、又はSnであり、
aは1~6であり、
bは1~14であり、
mは1~6であり、
x
1は1~12であり、x
2は0~12であり、そしてpは0~5であり、
a+mb=x
1+2x
2である、
ポリマー組成物。
【0072】
[態様2]態様1で定義されたポリマー組成物において、該ポリマー組成物中のトリアジン金属リン酸塩化合物の量は、任意の適切な量、又は本明細書に開示される任意の範囲内における量、例えば1~80wt%、1~65wt%、又は1~40wt%である、ポリマー組成物。
【0073】
[態様3]態様1又は2で定義されたポリマー組成物において、さらに、該ポリマー組成物は追加の難燃性化合物を含む、ポリマー組成物。
【0074】
[態様4]態様3で定義されたポリマー組成物において、該追加の難燃性化合物は金属水酸化物を含む、ポリマー組成物。
【0075】
[態様5]態様3で定義されたポリマー組成物において、該追加の難燃剤化合物は、三水和アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムを含む、ポリマー組成物。
【0076】
[態様6]態様3~5のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマー組成物中の追加の難燃性化合物の量は、任意の適切な量、又は本明細書に開示される任意の範囲内における量、例えば、10~80wt%、20~70wt%、又は30~65wt%である、ポリマー組成物。
【0077】
[態様7]態様1~6のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマー組成物中のトリアジン金属リン酸塩化合物の量は、任意の適切な量、又は本明細書に開示される任意の範囲内における量、例えば、1~40wt%、1~25wt%、又は1~15wt%である、ポリマー組成物。
【0078】
[態様8]態様1~7のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマー組成物はさらに添加剤を含み、該添加剤は、安定剤又は酸化防止剤、滑剤又はプロセス助剤、相溶化剤又はカップリング剤、充填剤、着色剤、レオロジー調整剤、又は硬化剤、並びにこれらの任意の組合せを含む、ポリマー組成物。
【0079】
[態様9]態様1~8のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマーは、任意の適切なポリマー、又は本明細書に開示されている任意のポリマー、例えば、エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又はそれらの組み合わせを含む、ポリマー組成物。
【0080】
[態様10]態様1~9のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマーはポリオレフィンを含む、ポリマー組成物。
【0081】
[態様11]態様1~10のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマーは、エチレン系ポリマー、プロピレン系ポリマー、又はそれらの組み合わせを含む、ポリマー組成物。
【0082】
[態様12]態様1~11のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマーは、ポリエチレン(例えば、エチレンホモポリマー又はエチレン/α-オレフィンコポリマーなどのエチレン系コポリマー)を含む、ポリマー組成物。
【0083】
[態様13]態様1~11のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマーは、ポリプロピレン(例えば、プロピレンホモポリマーまたはプロピレンベースのコポリマー)を含む、ポリマー組成物。
【0084】
[態様14]態様1~11のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマーは、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマーを含む、ポリマー組成物。
【0085】
[態様15]態様1~9のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマーは、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、合成シス-ポリイソプレン(IR)、エマルジョンスチレンブタジエンゴム(ESBR)、溶液スチレンブタジエンゴム(SSBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR・CIIR/BIR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルエラストマー(NBR)、水添ニトリルエラストマー(HNBR)、カルボキシル化ニトリルエラストマー(XN)からなる、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルエラストマー(NBR)、水素化ニトリルエラストマー(HNBR)、カルボキシル化ニトリルエラストマー(XNBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM/EPDM)、フルオロエラストマー(FPM/FKM)、ポリウレタンゴム(AU/EU/PU)、又はこれらの組み合わせを含む、ポリマー組成物。
【0086】
[態様16]態様1~15のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマーは架橋されている、ポリマー組成物。
【0087】
[態様17]態様1~9のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマーはエポキシ樹脂を含む、ポリマー組成物。
【0088】
[態様18]態様1~9のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマーは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型ノボラック型エポキシ樹脂、ジフェニルエチレン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格を有するエポキシ樹脂、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、又はそれらの組み合わせを含む、ポリマー組成物。
【0089】
[態様19]態様1~18のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマー組成物は、任意の適切な範囲内、又は本明細書に開示された任意の範囲内、例えば、ASTM D570での水中における90℃、14日間の吸水率が6wt%以下、5wt%以下、4wt%以下、又は3wt%以下である、ポリマー組成物。
【0090】
[態様20]態様1~19のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマー組成物は、トリアジン金属リン酸塩化合物を含み、ASTM D570での水中における90℃、14日間の吸水率は、トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含む他の同一配合物よりも低い吸水率を有する、ポリマー組成物。
【0091】
[態様21]態様1~20のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマー組成物は、トリアジン金属リン酸塩化合物を含み、ASTM D570での水中における75℃、7日間の吸水率は、トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含む他の同一配合物よりも低い吸水率を有する、ポリマー組成物。
【0092】
[態様22]態様1~21のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマー組成物は、任意の適切な範囲内、又は本明細書に開示される任意の範囲内、例えば、9%以下、7%以下、4%以下、又は2%以下のΔDkを有し、ここでΔDkは、ASTM D150(100MHz)に従って、水中で90℃、14日間エージングした後のDkに対する初期Dkからの変化率である。
【0093】
[態様23]態様1~22のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマー組成物は、任意の適切な範囲内、又は本明細書に開示される任意の範囲内、例えば、500%以下、400%以下、300%以下、又は200%以下のΔDfを有し、ここでΔDfは、ASTM D150(100MHz)に従って、水中で90℃、14日間エージングした後のDfに対する初期Dfからの変化率である。
【0094】
[態様24]態様1~23のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマー組成物は、トリアジン金属リン酸塩化合物を含み、トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含有する他の同一の配合物(ASTM D150(100MHz)に従って、水中で90℃、14日間エージング)よりも小さいΔDk(又はΔDf、又はその両方)を有する、ポリマー組成物。
【0095】
[態様25]態様1~24のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマー組成物は、任意の適切な範囲内、又は本明細書に開示される任意の範囲内、例えば、500%以下、400%以下、300%以下、又は200%以下のΔDfを有し、ここでΔDfは、ASTM D150(100MHz)に従って、水中で75℃、7日間エージングした後のDfに対する初期Dfからの変化率である。
【0096】
[態様26]態様1~24のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該ポリマー組成物は、トリアジン金属リン酸塩化合物を含み、トリアジン金属リン酸塩化合物の重合異形物を含有する他の同一の配合物(ASTM D150(100MHz)に従って、水中で75℃、7日間エージング)よりも小さいΔDk(又はΔDf、又はその両方)を有する、ポリマー組成物。
【0097】
[態様27]態様1~26のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、各Mは独立して、Ca、Mg、Zn、Al、又はSnである、ポリマー組成物。
【0098】
[態様28]態様1~26のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、各MはZnである、ポリマー組成物。
【0099】
[態様29]態様1~26のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、トリアジン金属リン酸塩化合物は、以下の式の少なくとも1つを有するトリアジンリン酸亜鉛化合物であり、すなわち、
(A-H)(+)[Zn2(+)(H2PO4)(-)(HPO4)2(-)]*pH2O
(A-H)(+)[Zn2(+)(H2PO4)3
(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2(+)(H2PO4)2
(-)(HPO4)2(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2(+)(H2PO4)4
(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2(+)(HPO4)2
2(-)]*pH2O
(A-H)(+)[Zn2
2(+)(H2PO4)(-)(HPO4)2
2(-)]*pH2O
(A-H)(+)[Zn2
2(+)(H2PO4)3
(-)(HPO4)2(-)]*pH2O
(A-H)(+)[Zn2
2(+)(H2PO4)5
(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2
2(+)(H2PO4)2
(-)(HPO4)2
2(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2
2(+)(H2PO4)4
(-)(HPO4)2(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2
2(+)(HPO4)3
2(-)]*pH2O
(A-H)2
(+)[Zn2
2(+)(H2PO4)6
(-)]*pH2O;
であり、pは0~5である、ポリマー組成物。
【0100】
[態様30]態様1~29のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該トリアジン金属リン酸塩化合物は、任意の適切なd50粒径、又は本明細書に開示される任意の範囲のd50粒径、例えば0.1~45μm、0.5~20μm、0.5~10μm、1~6μm、又は1~5μmによって特徴付けられる、ポリマー組成物。
【0101】
[態様31]態様1~30のいずれか1つで定義されたポリマー組成物において、該トリアジン金属リン酸塩化合物は、任意の適切なBET表面積、又は本明細書に開示される任意の範囲のBET表面積、例えば、0.5~30m2/g、0.5~10m2/g、1~15m2/g、2~8m2/g、又は2~5m2/gによって特徴付けられる。
【0102】
[態様32]製造品であって、態様1~31のいずれか1つで定義されたポリマー組成物を備える、製造品。
【0103】
[態様33]態様32で定義された物品において、該物品は、ワイヤ又はケーブルを含む、物品。
【0104】
[態様34]態様32で定義された物品において、該物品は、プリント回路基板を含む、物品。
【国際調査報告】