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特表2025-500123ギャップ結合モジュレーターおよび加齢黄斑変性の処置のためのその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ギャップ結合モジュレーターおよび加齢黄斑変性の処置のためのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/401 20060101AFI20241226BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61K31/401
A61P27/02
A61P9/12
A61P3/10
A61P3/06
A61P9/10
A61P27/06
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529338
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2022087342
(87)【国際公開番号】W WO2023118366
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/292,783
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523216344
【氏名又は名称】ブルイエ・セラピューティクス・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【弁理士】
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】モウリツェン,ウルリク
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ブラッドフォード
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA63
4C086MA66
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA42
4C086ZB21
4C086ZC33
4C086ZC35
(57)【要約】
加齢黄斑変性(AMD)の処置または予防におけるギャップ結合依存性細胞モジュレーターの使用、より具体的には、乾性AMD(d-AMD)の処置または予防のため、および湿性もしくは血管新生もしくは進行した血管形成AMDまたは地図状萎縮(GA)への進行を予防するためのこれらの使用が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象における加齢黄斑変性(AMD)を処置または予防するための方法における使用のための、式(I):
【化1】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物であって、前記方法が、前記対象に治療有効量の前記化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物を投与するステップを含む、化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物。
【請求項2】
前記化合物が、(2S,4R)-1-(2-アミノアセチル)-4-ベンゾイルアミノ-ピロリジン-2-カルボン酸、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物である、請求項1に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項3】
前記化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物が、眼に局所投与される、請求項1または2に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項4】
前記化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物が、眼において硝子体内注射を介して局所投与される、請求項3に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項5】
前記化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物が、全身投与される、請求項1または2に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項6】
前記化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物が、経口、皮下、経皮、または静脈内投与を介して全身投与される、請求項5に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項7】
前記化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物が、経口投与を介して全身投与される、請求項6に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項8】
前記方法が、ヒト対象におけるAMDの予防のためである、請求項1~7のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項9】
前記方法が、ヒト対象におけるAMDの進行の予防のためである、請求項1~8のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項10】
前記方法が、ヒト対象における乾性AMDから湿性AMDへの進行の予防のためである、請求項1~9のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項11】
前記方法が、ヒト対象における中程度の乾性AMDから乾性AMDの進行した形態への進行の予防のためである、請求項1~10のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項12】
前記AMDが、早期の乾性AMDとして特徴付けられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項13】
前記AMDが、中間期の乾性AMDとして特徴付けられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項14】
前記AMDが、進行期の乾性AMDとして特徴付けられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項15】
前記進行期の乾性AMDが、地図状萎縮である、請求項14に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項16】
前記AMDが、湿性、血管新生、または進行した血管形成AMDとして特徴付けられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項17】
前記方法が、ヒト対象における脈絡膜血管新生の発症の予防のためである、請求項1~16のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項18】
患者が、血糖コントロールに至る患者を含めて、慢性的に高い血液グルコースレベルを有する、請求項1~17のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項19】
患者がまた、1型糖尿病または2型糖尿病を有する、請求項1~18のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項20】
患者がまた、通常の血圧コントロールに至る患者を含めて、高血圧症または慢性的に高い血圧を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項21】
患者が、抗高血圧処置、血糖コントロール、またはコレステロールの低下による通常の血圧コントロールに至る、請求項20に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項22】
患者が高コレステロールを有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項23】
患者がまた、糖尿病性網膜症または糖尿病性黄斑浮腫を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項24】
患者が、網膜静脈閉塞(RVO)眼疾患を有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項25】
患者がまた、病的眼圧を伴うかまたは伴わない緑内障疾患を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項26】
患者が、ブドウ膜炎または炎症性眼疾患の他の形態を有する、請求項1~25のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項27】
患者が、眼においてドルーゼン沈着物またはタンパク質滲出物を有するか、または有していた、請求項1~26のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項28】
前記化合物が、RPE(網膜色素上皮)または外部血液網膜関門(oBRB)の機能障害を阻害する、請求項1~27のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項29】
前記化合物が、RPE細胞間の関門の完全性の喪失およびRPE細胞の喪失を阻害する、請求項28に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項30】
前記化合物が、眼において網膜または脈絡膜層のストレス誘発性機能障害を阻害する、請求項1~29のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項31】
前記化合物が、眼の光受容体の喪失を阻害する、請求項1~30のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項32】
前記化合物が、網膜の光受容体の喪失を阻害する、請求項31に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項33】
前記化合物が、網膜の血管漏出を阻害する、請求項1~32のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項34】
前記化合物が、黄斑浮腫をもたらす血管漏出を阻害する、請求項33に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項35】
前記化合物が、前記網膜色素上皮を介する網膜組織からの流体抽出を改善する、請求項1~34のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項36】
前記化合物が、網膜内皮細胞、脈絡膜内皮細胞、周皮細胞または上皮細胞の死滅または喪失を阻害する、請求項1~35のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項37】
前記化合物が、病的ヘミチャネル開口を阻害する、請求項1~36のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項38】
前記化合物が、病的ヘミチャネルATP放出を阻害する、請求項1~37のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項39】
前記病的ヘミチャネル開口および/またはATP放出が、コネキシン43媒介性開口および/またはATP放出である、請求項38に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項40】
投与される化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物もしくは製剤、例えば、経口、全身、および持続放出化合物の製剤、の濃度が、眼の微小環境において約50nM~約150nMに達する、請求項1~39のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項41】
前記投与される化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物もしくは製剤、例えば、経口、全身、および持続放出化合物の製剤、の濃度が、眼の微小環境において約100nMに達成する、請求項40に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項42】
1日1回または2回患者に投与される、請求項1~41のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項43】
前記化合物が、1日4回患者に投与される、請求項1~41のいずれか一項に記載の処置または予防の方法における使用のための化合物。
【請求項44】
ヒト対象における加齢黄斑変性(AMD)の処置または予防のための医薬の調製のための、式(I):
【化2】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物の使用であって、方法が、前記対象に治療有効量の前記化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物を投与するステップを含む、使用。
【請求項45】
ヒト対象における加齢黄斑変性(AMD)を処置または予防するための方法であって、前記方法が、前記ヒト対象に治療有効量の前記化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物を投与するステップを含み;
前記化合物が、式(I):
【化3】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギャップ結合依存性細胞モジュレーターおよび加齢黄斑変性(AMD)の処置または予防のその使用に関する。本発明はさらに、眼へのギャップ結合依存性細胞モジュレーターの送達に適合させた医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢黄斑変性(AMD)は、高齢者で視力喪失の最も重要な原因の1つである。AMDは、損傷した黄斑を伴う患者において視力の喪失および失明をもたらす網膜中心の進行性および変性の障害である。年齢がAMDの主要なリスク因子である場合、この疾患の有病率および重症度は、例えば先進国においてヒトの余命が延びているので上昇する可能性がある(Bandelloら、2017年)。
【0003】
AMDは、多因子性病因病理を伴う網膜中心の障害であり、n-AMDの顕著な特徴で非血管新生乾性AMDと区別する特徴である脈絡膜血管新生(CNV)の存在に依存して、乾性AMD(d-AMD;非血管新生AMDとしても公知)または血管新生AMD(n-AMD;湿性AMDとしても公知)として分類することができる。臨床的に、AMDは、一般に、2つの形態:非滲出性「乾性」形態(すなわちd-AMD)および滲出性血管新生「湿性」(すなわち湿性AMD)形態で表す。80%超のAMD患者は、萎縮性AMDとも称されるd-AMDを示し、網膜の黄斑の希薄化(thinning)、ドルーゼン沈着物、および早期漏出で特徴付けられる。乾性AMDの進行した形態は、地図状萎縮(GA)と称されるが、網膜色素上皮(RPE)および光受容体の広範囲な喪失を示し、この重篤な段階の疾患は、最大20%の患者において不可逆的な失明をもたらし得る。現在、d-AMDに対する効果的な処置は存在しない。RPEまたは光受容体が実質的な損傷または死滅(died-off)すると、とりわけ疾患が進行した段階では、それらを回復することが非常に困難であるからである(Bandelloら、2017年)。
【0004】
d-AMD患者の下位集団(10~20%)は、一般に網膜での異常な血管の成長のために疾患過程の後期において湿性AMDを発症する。湿性AMDに対する主要な眼注射処置は、糖尿病性黄斑浮腫(DME)を伴う糖尿病性網膜症(DR)患者を処置するのに使用されるものと同じ市販の療法(例えばEylea(登録商標)およびLucentis(登録商標))である。増殖性DRおよび湿性AMDの両方を特徴付けることができる異常な血管新生は、衰弱した視力喪失をもたらす網膜および黄斑を損傷する血管漏出および浮腫の劇的な増大に関連する。増殖性DRおよびDMEの患者では、主要な抗VEGF注射処置であるEylea(登録商標)およびLucentis(登録商標)は、この病的血管形成を効果的に低減し、およそ40%の患者のみで観察される最適な処置応答を伴って視力を改善することが示される。加えて、これらの処置は、応答の限られた耐久性を伴う数年間の負担の大きい注射を要する。したがって、疾患の進行および永続的で衰弱した視力喪失が起こる前の初期段階および重症度がより低い病期で、これらの疾患を効果的に処置することができる湿性および乾性AMDの両方を有する患者のより効果的な処置に対する対処されていない必要性は大きい。
【0005】
明白な機能的または視力喪失を伴わない臨床状態、例えば初期および/または中間期のAMDは、ドルーゼンの堆積および/もしくは網膜色素上皮(RPE)機能障害または黄斑領域での変性で特徴付けられる。後期では、疾患は、地図状萎縮(GA)または血管新生AMD(n-AMD)のいずれかに進行することができる。RPEが、眼での光受容体の実質的な喪失により、棹状体および錐状体の光受容(PR)細胞死ならびに最終的な中心視力喪失および失明をもたらす黄斑の領域で変性し始める場合、d-AMDに続発した地図状萎縮(GA)は起こる(Naylorら、2020年)。
【0006】
病因
AMDの背後の正確な病態生理学的機構は、いまだに決定されていない。しかし、AMDが多因子性病理であることが明らかであり、遺伝的環境リスク因子は重大な役割を担う(Bandelloら、2017年)。
【0007】
いくつかの経路は、酸化ストレス、リポフスチンの沈着、慢性炎症、および脈絡膜血流不全を含む、d-AMDの病因において重要な役割を担うと思われることが確認されている。これらの経路は、新しい療法のための可能な標的を示す(Bandelloら、2017年)。
【0008】
例えば、血液網膜関門(BRB)は、最適な網膜機能に好適な環境を確立し、維持するために必須である(Naylorら、2020年)。BRBは、内部血液網膜関門(iBRB)および外部血液網膜関門(oBRB)からなる。iBRBは、内皮細胞と周皮細胞との間の特殊なタンパク質複合体を介して高度に調節された細胞-細胞共役を形成して、バリア機能を維持する網膜内皮細胞および周皮細胞からなる。oBRBは、RPE間の特殊なタンパク質複合体を介して高度に調節された細胞-細胞共役を形成して、バリア機能を維持する網膜色素上皮(RPE)細胞からなる。網膜内皮、周皮細胞および上皮細胞の原形質膜に局在化したこれらの特殊なタンパク質複合体は、ギャップ結合、密着結合(TJ)および接着結合を含む。
【0009】
RPEは、oBRBの重要なホメオスタシス構成要素であり、脈絡膜のブルッフ膜および神経網膜の光受容層を隔てる。RPE単層を形成する上皮細胞は着色され、光受容体に面するその先端面およびブルッフ膜に付着した基底面を伴う高度に偏光させた上皮細胞である。これらの上皮細胞は、アクチン依存性細胞-細胞結合、特にTJを用いてコンパクトに構成される。oBRBは、脈絡膜から網膜下腔への溶質および栄養分の分子移動を調節および濾過するように作用し、網膜ホメオスタシスを維持するのに重要である。oBRBを形成するRPE細胞の緻密でコンパクトな単層は、成長因子の分泌を含み、血流から網膜への大きい毒性分子の侵入を制限し、網膜を出入りする栄養分および流体の輸送を調節し、光受容体のバイオジェネリックな健康を維持する網膜の発生および維持において重要な役割を担う。RPEの完全性の喪失およびoBRBの機能障害は、AMD、DRおよびDMEを含むいくつかの眼疾患に関連している。これらの関門のいずれかの障害は、網膜内の流体、血液由来タンパク質、および他の潜在的毒性溶質の蓄積をもたらし得る(Naylorら、2020年)。
【0010】
RPEは、先端および基底外側に分けることができる。先端面は光受容体外節(POS)に直接接触しており、基底外側は、脈絡膜の高透過性で高度に灌流された脈絡膜毛細血管層とのその相互作用における関門として作用する(Naylorら、2020年)。RPEは、3種類の細胞間の結合:TJ、接着結合およびギャップ結合を呈する。TJは、RPEにおいて溶質および栄養分の傍細胞の拡散を調節するゲートまたは関門を形成する。接着結合は、隣接するRPE細胞間の強力で機械的な付着を提供する。ギャップ結合は、細胞間コミュニケーションを可能にし、TJと会合することによりRPE細胞間およびRPE単層内の細胞-細胞共役を支持する(Obertら、2017年)。
【0011】
隣接するRPE細胞が結合するTJは、網膜への血漿構成要素および毒性分子の移動を遮断し、ならびに脈絡膜血管系から外部網膜に浸透圧勾配にわたって流体および溶質の制御した流れを可能にする。網膜は、身体のあらゆる組織の重量当たり最大の酸素消費量を有し、BRB(外部および内部の両方)は、栄養分の調節した異なる源を提供して、この高い代謝速度を容易にするのに必須である。iBRBおよびoBRBの両方でのTJは、複雑な動的構造であり、これらの関門の文脈では、これらのTJの完全性は確認することが重要である。
【0012】
具体的に、oBRBは、栄養分の濾過および輸送、並びに光受容体外節(POS)の貪食を含む必須の機能を支持することにより光受容体(PR)の生存を可能にする。RPEの他の重要な機能は、焦点外および散乱光の吸収、網膜癒着、ならびにビタミンAの輸送および処理、ならびにオール-trans-レチナールの11-cis-レチナールへの再異性体化を含み、視覚サイクルに重要である(Naylorら、2020年)。したがって、RPEは、視覚機能に必須であり、これらの機能のいずれか1つの障害は、網膜の変性、視覚機能の喪失、および最終的に失明をもたらし得る。
【0013】
ギャップ結合および接着結合と連携したTJは、iBRBおよびoBRBの両方における傍細胞のバリア機能での選択性の高い度合いを可能にする。TJは、膜貫通タンパク質および末梢細胞質タンパク質の独特のアセンブリである。膜貫通タンパク質は、クローディン、オクルディン、MARVEL(小胞輸送および膜連結のためのMalおよび関連タンパク質)ファミリーならびに結合接着分子(JAM)を含み、原形質膜に広がる。末梢細胞質タンパク質、例えば閉鎖帯-1(ZO-1)、-2(ZO-2)および-3(ZO-3)は、ギャップ結合および接着結合と共に、細胞骨格にこれらの膜貫通タンパク質を固定し、TJの初期形成および異なる組織で重大である(Naylorら、2020年)。
【0014】
ギャップ結合のコネキシンサブユニットは、細胞間コミュニケーションに重要であり、細胞-細胞共役に寄与するが、テトラスパン膜貫通タンパク質である。21個のコネキシンアイソフォームは、ヒトゲノムで同定されており、各々は異なる空間的および時間的発現パターンを有する(Obertら、2017年)。6個のコネキシンは1個のコネクソン(ヘミチャネル)に集まり、隣接細胞からの2個のコネクソンは結合して、ギャップ結合チャネルを形成するが、ギャップ結合それ自体は、このようなチャネルの凝集である。異なるコネキシンタンパク質の様々なヘテロメリックな構造は、コネクソンヘミチャネルに集まることができ、特有のコミュニケーション特性を伴うギャップ結合をもたらす。例えば、TJは、少なくとも40個のタンパク質を含有し、その一部は、膜貫通であり、細胞間接着を媒介し;その他は、結合構成要素を細胞骨格に連結する細胞内の足場タンパク質である。接着結合は、同種親和性相互作用を通して隣接する細胞膜間のギャップを架橋するカドヘリン受容体である接着要素を有し、機械的結合を細胞骨格につなぐ主要な足場タンパク質としてカテニンを含む(Obertら、2017年)。
【0015】
ZO-1は、3個全ての結合型に共通の足場タンパク質であり、結合巨大分子複合体を細胞質アクチンに固定する。ZO-1は、膜関連グアニル酸キナーゼ様タンパク質(MAGUK)のファミリーに属し、C末端に3つのPDZドメイン:SH3ドメイン、GUKドメインおよびプロリン-リッチドメインを組み込む(Obertら、2017年)。ZO-1のコネキシン43(Cx43)のPDZ2ドメインへの結合は、ギャップ結合チャネル凝集のサイズおよび安定性を調節する。ZO-1は、Cx43の細胞分布を決定し、ギャップ結合チャネル凝集の周縁での特殊な膜ドメインであるペリネクサス(perinexus)でのギャップ結合コミュニケーションと非結合(ヘミチャネル)コミュニケーションとの間の動的な切り替えに対する制御点を提供する。機能的な上皮単層でのZO-1の破壊は、バリア機能の喪失ならびに先端アクチンおよびミオシンの再組織をもたらす(Obertら、2017年)。
【0016】
Cx43は、網膜内皮、周皮細胞および上皮細胞でのギャップ結合の形成に関与する主要なコネキシンであり、ホメオスタシスプロセス、例えば成長、修復および生存のために小分子の通過を許容することにより細胞間のコミュニケーションを媒介する。6個のコネキシンモノマーは、通常状態が閉鎖しながらドッキングされていないヘミチャネル(HC)を形成するが、隣接細胞からの2つのHCのドッキングは、細胞内容物の交換を可能にする生理学的状態の間に開口するギャップ結合の形成をもたらす(Coutinhoら、2020年)。しかし、病状が出ている間、通常は閉鎖され、ドッキングされていないHCが刺激され、細胞外環境に開口し、最終的に細胞死をもたらす。突然の組織再灌流は、開口型Cx43 HC状態の間、細胞が急速なイオン流入に対処することができないので、細胞死および組織損傷を劇的に上昇させる。
【0017】
低酸素症は、多くの場合、炎症誘発性サイトカインの産生、ならびにタンパク質、例えば血管内皮成長因子(VEGF)、コネキシン43(Cx43)およびシンデカン-4の過剰発現に関連する(Coutinhoら、2020年)。RPEは、最も豊富に発現されたコネキシンとしてCx43を発現する(Obertら、2017年)。さらに、VEGFは、ZO-1組織を破壊することが知られており、密着結合の分解および単層透明性の上昇をもたらす。加えて、内皮細胞を使用するin vitro試験は、ギャップ結合コミュニケーションのVEGF媒介性破壊が、Cx43リン酸化での変化に相関することを示す(Coutinhoら、2020年)。
【0018】
例えば、血管新生AMD(n-AMD)では、脈絡膜血管新生(CNV)として知られている形成が不良である血管の制御していない成長は、組織虚血をもたらす網膜内の出血をもたらす(Coutinhoら、2020年)。血液/酸素供給中での破壊を補償するために、VEGFは、網膜色素上皮(RPE)により過剰発現され、血管脈絡膜と神経網膜との間の血液網膜関門(BRB)に寄与する(Coutinhoら、2020年)。このVEGF過剰発現は、漏出性血管の形成を永続させ、環境に対するより多くの炎症因子を誘発し、低酸素症によりRPE関門の機能障害および細胞死を引き起こし、網膜中に血管の成長を最終的に許容し、視力喪失をもたらす。
【0019】
加齢した眼では、細胞外材料は、ブルッフ膜に沈着し、その結果として、ブルッフ膜の厚さが上昇し、透過性が低下する(Naylorら、2020年)。加齢は、酸化的傷害の蓄積および保護機構での付随的な減少をもたらす。RPE中でのリポフスチンの蓄積は、出発点として作用することを示唆している(Naylorら、2020年)。酸化的損傷は、AMDのような加齢性変性疾患に対する初期の引き金であると考えられる(Naylorら、2020年)。AMDの患者でのストレスに対するRPEの適応応答は、調節不全となり、保護および毒性因子の不均衡の増大が、黄斑の損傷および網膜病変の発症に寄与する(Naylorら、2020年)。光エネルギーを吸収するRPEの能力は低下し、AMDをもたらす事象のカスケードにおける重要な因子であると考えられる(Naylorら、2020年)。
【0020】
外部血液網膜関門(oBRB)の完全性は、脈絡膜血管が網膜に浸潤し、d-AMDが湿静AMDに変化しないようにする。このRPE-RPEの付着の喪失は、VEGF過剰発現を誘発することができる(Naylorら、2020年)。年齢に関連するRPE変性、涙、ドルーゼン形成、またはアポトーシスはまた、RPE-RPEの付着の喪失を引き起こし得る。
【0021】
診断および処置
診断ツールのために、d-AMD患者の網膜、RPEおよび脈絡膜での形態学的変化をモニタリングする診療所で利用可能な多くの検査が存在する。例えば、眼底自発蛍光および光干渉断層撮影(OCT)は、萎縮領域の進行のモニタリングを含む、d-AMD変性の診断およびフォローアップに最も有用なツールと考えられる。別の例は、d-AMDで影響を受けた患者においてさらなる情報を加えることができる新規な撮像ツールである、OCT血管造影である。OCTはまた、湿性AMDで観察される黄斑浮腫を診断し、モニタリングするのに使用することができる(Bandelloら、2017年)。
【0022】
最近、抗血管内皮成長因子(抗VEGF)薬の硝子体内注射のための診療所は紹介され、新しい療法は血管成熟を標的として開発され、リモデリングは疾患の経過を根底から覆す。VEGFを遮断するこれらの硝子体内薬剤は、湿性AMDの患者のケアを根底から覆し、成長およびCNV病変からの漏出を軽減し、中程度および重度の視力喪失を予防する(Naylorら、2020年)。
【0023】
しかし、現在、網膜色素上皮(RPE)または光受容体の損傷を回復することができる処置が存在しないので、d-AMDの後期である地図状萎縮(GA)のための承認された療法は存在しない。この理由のために、d-AMDにおける現在の処置アプローチは、既存の萎縮の進行を予防および/または遅延する可能性があるのみである(Bandelloら、2017年)。
【0024】
Cx43ヘミチャネル(HC)ブロッカーは、多くの動物モデルにおいて、血管の漏出を予防し、漏出性血管の修復を支持し、組織修復を促進することを示す(Coutinhoら、2020年)。慢性的な低酸素性または炎症性状態では、Cx43 HCは、炎症性サイトカインの産生をもたらし、こうして炎症環境を永続させるnod様受容体ファミリーピリンドメイン含有3(NLRP3)インフラマソーム複合体を介する炎症性カスケードの活性化に関与するので、「病的な細孔」とも呼ばれる(Coutinhoら、2020年)。Cx43模倣ペプチド、例えばGap27およびPepide5を使用して傷害の間に開口型Cx43 HCを遮断することは、心臓、脊髄傷害および眼のモデルにおいて細胞生存および組織修復を促進することを示す。しかし、これらのペプチドの1つの問題は、高濃度および/または長い曝露期間で使用される場合、細胞生存に必要であるギャップ結合機能に潜在的に影響を及ぼすCx43の細胞外モチーフでのその作用である(Coutinhoら、2020年)。
【0025】
Gap19は、Cx43の第2の細胞質ループに由来するHCブロッカーであり、ギャップ結合機能には干渉しない。しかし、Cx43の細胞質の尾部の対応する配列に結合するために細胞に侵入する必要がある(Coutinhoら、2020年)。その細胞の浸透不良により、高濃度は、以前使用されているが、限定的な有効性になる。したがって、細胞透過性ペプチド(CPP)は、細胞膜を通過するカーゴ分子の輸送を改善するために探求されている。例えば、B型肝炎ウイルスのX-タンパク質に由来するCPPであるXentryは、細胞表面で発現されるシンデカン-4に結合することによるエンドサイトーシス機構を介して一連の分子の細胞への輸送を改善することを示している(Coutinhoら、2020年)。シンデカン-4が循環する単球および赤血球で発現されないので、循環による隔離は、全身送達する場合に予防され、シンデカン-4を過剰発現する細胞への取込みは増加する。Coutinhoらは、XentryのGap19への接合(XG19)が、Gap19の細胞の取込みを増大して、低いペプチド濃度で低酸素性細胞でのCx43 HCを媒介した傷害を遮断することができることを見出した(Coutinhoら、2020年)。
【0026】
Obertら(2017)は、標的とするZO-1シグナル伝達が、ギャップ結合および/またはTJを安定化することにより、BRBの完全性を維持し、RPE病態生理を軽減すると仮定した。Obertらは、アルファコネキシンカルボキシ末端1(αCT1)であるコネキシン43ベースのペプチド模倣物を開発して、ZO-1のPDZ2ドメインでの相互作用を競合的に遮断し、それによりこのドメインに選択的に結合するリガンドを阻害する。αCT1は、Cx43 COOH末端PDZ結合ドメインを模倣し、Cx43チャネル活性の軽減を引き起こすと考えられるか、またはCx43微小管結合ドメインを標的にし、ヘミチャネル活性を軽減するいくつかの他のCx43模倣物と異なる。αCT1は、ギャップ結合および/またはTJを安定化することにより、BRBの完全性を維持し、RPE病態生理を軽減すると考えられた。実験では、RPE細胞関門の機能障害は、脈絡膜血管新生(CNV)を引き起こすレーザ光凝固、または形態学的損傷をもたらす明光曝露を使用してマウスで生じさせた。αCT1処置は、光干渉断層撮影により決定されるCNV発症および流体漏出を軽減し、損傷は、周りのRPE細胞の細胞完全性の破壊に相関した。点眼剤を介するαCT1での前処置は光損傷を予防したが、通常、RPE細胞形態学を有意に破壊する。RPEおよびMadin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)単層を使用するin vitro実験は、αCT1が、Cx43でのその効果に関係なく、密着結合を安定化することを示した。総合すると、αCT1による細胞間結合の安定化が、AMD様病理のモデルでRPE機能障害を改善するのに効果的であった。Obertらは、密着結合のαCT1を媒介した安定化が湿性およびd-AMDの両方に対する新しい処置として機能し得ると結論付けた。
【0027】
Kingら(2021)はまた、異なるCx43標的分子の概説を提供し、ダネガプチドを記載する。しかし、本明細書に開示される他のペプチドは、ヘミチャネルを効果的に遮断できず、同時にAMDにおけるストレス条件下でギャップ結合を介して細胞-細胞共役を安定化させない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
したがって、特に進行した地図状萎縮(GA)または湿性AMDまたは血管新生AMD(n-AMD)に進行する前に、加齢黄斑変性(AMD)、とりわけ乾性AMD(d-AMD)のためのさらなる処置に対して当該技術分野における必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
概して、本発明は、典型的にヒト患者における加齢黄斑変性(AMD)の処置または予防の方法における使用のための、ギャップ結合依存性細胞モジュレーター、例えばギャップ結合細胞間コミュニケーション(GJIC)モジュレーター、および細胞-細胞共役モジュレーターである化合物に関する。AMDは、乾性AMD(d-AMD)、進行したGA、湿性AMD、または血管新生AMD(n-AMD)であり得る。一部の好ましい側面では、本発明は、特に状態が、患者が湿性AMDまたは進行したGAを発症する点まで悪化する直前、乾性AMD(d-AMD)の処置または予防に特に関連する。
【0030】
ギャップ結合細胞間コミュニケーション(GJIC)の役割が様々な組織で広く研究されているが、本発明は、AMD患者におけるRPEの関門の完全性を含む、外部BRBの細胞-細胞共役および機能障害の構造完全性でのその関与に関連する。ギャップ結合チャネルは、隣接細胞の間のイオン、栄養分、および他のシグナル伝達分子(最大1kDa)の通過を可能にする。重要なことに、コネキシン43(Cx43)媒介性GJICは、網膜において細胞成長、血管緊張、関門の完全性、および細胞死を調節する重要な役割を担い、ゆえに網膜代謝および血管ホメオスタシスを維持する不可欠な因子である。Cx43は、網膜で豊富に発現され、ギャップ結合依存性共役、とりわけiBRBおよびoBRBの両方の構造の実質的な量を示唆する。しかし、酸化ストレス、虚血性ストレス、低酸素症、高グルコースおよび糖尿病の状態の下、Cx43依存性細胞-細胞共役は、下方制御され、機能的に障害されることにより、RPEおよび網膜血管細胞においてギャップ結合活性に障害を生じさせる。さらに、酸化ストレス、虚血性ストレス、低酸素症、高グルコースおよび糖尿病誘発性Cx43下方制御、ならびにGJIC活性の低下は、無細胞性の毛細管および周皮細胞の喪失の数の有意な増加を呈する糖尿病のマウス、ラット、およびヒトの網膜におけるRPEの増加および血管細胞の死滅で重要な役割を担う。
【0031】
さらに、眼に存在するものを含む血管が、2つの相互作用する細胞型からなることは知られている(Songら、2005年)。ゆえに、内皮細胞は血管壁の内層を形成し、周皮細胞は血管の表面を囲み、血管構造および関門の完全性を支持し、維持し、血管からの漏出を阻害する助けとなる。したがって、周皮細胞は、血管が周皮細胞を喪失する場合、出血し非常に拡張するので、機能的に有意であり、流体漏出がRPEの流体吸収能力を超えて増大し、視力の喪失および最終的な失明をもたらす血管漏出および浮腫のような状態をもたらす。網膜内皮細胞およびRPEのギャップ結合モジュレーターの効果に加えて、本出願は、RPEの関門の完全性が、ラットにおいて酸化性および高グルコースストレス、ならびに外部網膜の厚さの腫脹から保護され得、糖尿病性網膜症モデルが、ギャップ結合モジュレーターの投与により有意に改善され得ることを示す。
【0032】
さらに、構造的な細胞-細胞共役の維持およびヘミチャネルの閉鎖の組合せは、ヘミチャネル(例えばペプチド5およびトナベルサット)の閉鎖を主に標的とする分子の先に開示された治療的利点にわたって、本明細書に記載される化合物、例えばダネガプチドの固有の改善された利点を提供する。
【0033】
理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、本明細書に記載される化合物、例えばダネガプチドの効果に対するMoA(作用様式)が、高グルコース、活性酸素種(RoS)および代謝性/生体エネルギー(bioenergenic)(すなわち酸化的リン酸化(OxPos)、トリカルボン酸サイクル(TCA)および解糖系)ならびに他の細胞ストレッサーの存在において、ギャップ結合(TJと連携)依存性細胞-細胞共役の化合物の処置/保護効果により主に生じることが示唆されることを、AMDおよびDMEのBRBモデルで観察した。本明細書に記載される化合物はまた、細胞喪失および細胞-細胞脱共役を引き起こすことができるAMDにおいてギャップ結合ヘミチャネルの病的開口を予防することができる。このMoAが、ある特定の組織での細胞間協調が極めて重要である場合(例えば心臓の心筋細胞)、小イオン(例えばCa2+)および他の小分子を伴う古典的なギャップ結合細胞間コミュニケーション(GJIC)シグナル伝達の役割を超えて、BRB完全性を維持するための追加的で重要な構造的な役割を有すると考えられる。このMoAは、主要な抗VEGF療法の上流であり、DR、DME、およびAMDでのコアの病理で作用する。したがって、本明細書に記載される化合物、例えばダネガプチドは、このような疾患の発症の予防に有用であり、一旦発症するとこのような疾患の処置に有用であり得る。
【0034】
本明細書に記載される化合物は、ギャップ結合モジュレーターである。本明細書に記載されるダネガプチドは、化合物(2S,4R)-1-(2-アミノアセチル)-4-ベンゾイルアミノ-ピロリジン-2-カルボン酸である(Buteraら、2009年)。
【0035】
したがって、第1の側面では、本発明は、ヒト対象における加齢黄斑変性(AMD)の処置または予防のための方法における使用のための、式(I):
【0036】
【化1】
【0037】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物であって、方法が、対象に治療有効量の化合物;または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む、化合物を提供する。
【0038】
好ましくは、化合物は、(2S,4R)-1-(2-アミノアセチル)-4-ベンゾイルアミノ-ピロリジン-2-カルボン酸;または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物である。
【0039】
一部の態様では、化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物は、眼に局所投与される。一部の態様では、化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物は、眼において硝子体内注射を介して局所投与される。
【0040】
一部の態様では、化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物は、全身投与される。一部の態様では、化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物は、経口、皮下、経皮、または静脈内投与を介して全身投与される。好ましくは、化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物は、経口投与を介して全身投与される。
【0041】
一部の態様では、方法は、ヒト対象におけるAMDの予防のためである。一部の態様では、方法は、ヒト対象におけるAMDの進行の予防のためである。
好ましくは、化合物は、ヒト対象における乾性AMDから湿性AMDへの進行の予防の方法における使用のためである。好ましくは、方法は、ヒト対象における中程度の乾性AMDから乾性AMDの進行した形態への進行の予防のためである。好ましくは、AMDは、早期の乾性AMDとして特徴付けられる。好ましくは、AMDは、中間期の乾性AMDとして特徴付けられる。好ましくは、AMDは、進行期の乾性AMDとして特徴付けられる。好ましくは、進行期の乾性AMDは、地図状萎縮(GA)である。これらの態様は、乾性AMDに対して公知の処置が存在しないので有利である。
【0042】
一部の態様では、AMDは、湿性、血管新生、または進行した血管形成AMDとして特徴付けられる。一部の態様では、方法は、ヒト対象における脈絡膜血管新生の発症の予防のためである。
【0043】
一部の態様では、患者は共存症を有する。例えば、一部の態様では、患者は、血糖コントロールに至る患者を含めて、慢性的に高い血液グルコースレベルを有する。一部の態様では、患者はまた、1型糖尿病または2型糖尿病を有する。
【0044】
一部の態様では、患者はまた、通常の血圧コントロールに至る患者を含めて、高血圧症または慢性的に高い血圧を有する。一部の態様では、患者は、高血圧処置、血糖コントロール、またはコレステロールの低下による通常の血圧コントロールに至る。一部の態様では、患者は高コレステロールを有する。
【0045】
一部の態様では、患者はまた、糖尿病性網膜症または糖尿病性黄斑浮腫を有する。一部の態様では、患者は、網膜静脈閉塞(RVO)眼疾患を有する。一部の態様では、患者は、病的眼圧を伴うかまたは伴わない緑内障疾患を有する。一部の態様では、患者は、ブドウ膜炎または炎症性眼疾患の他の形態を有する。
【0046】
一部の態様では、患者は、眼においてドルーゼン沈着物またはタンパク質滲出物を有するか、または有していた。
一部の態様では、化合物は、RPE(網膜色素上皮)細胞間の関門の完全性の喪失およびRPE細胞の喪失を含む、RPEまたは外部血液網膜関門(oBRB)の機能障害を阻害する。一部の態様では、化合物は、眼において網膜または脈絡膜層のストレス誘発性機能障害を阻害する。一部の態様では、化合物は、網膜のような眼の光受容体の喪失を阻害する。一部の態様では、化合物は、黄斑浮腫をもたらす血管漏出を含む、網膜の血管漏出を阻害する。一部の態様では、化合物は、網膜色素上皮を介する網膜組織からの流体抽出を改善する。一部の態様では、化合物は、網膜内皮細胞、脈絡膜内皮細胞、周皮細胞または上皮細胞の死滅または喪失を阻害する。
【0047】
一部の態様では、化合物は、病的ヘミチャネル開口および/またはATP放出、例えばコネキシン43媒介性開口および/またはATP放出を阻害する。ヘミチャネル開口およびATP放出(または他のこのような小さい、1kDa未満のシグナル伝達分子)の病的効果は、オートクリンおよびパラクリンの両方であり得る。
【0048】
一部の態様では、約50nM~約150nM、例えば約100nMの、投与される化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物もしくは製剤、例えば経口、全身、および、持続放出化合物の製剤、の濃度は、眼の微小環境において達成される。
【0049】
一部の態様では、化合物は、1日1回または2回患者に投与される。一部の態様では、化合物は、1日最大4回患者に投与される。
さらなる側面では、本発明は、眼への化合物の送達に適合させた医薬組成物を提供する。
【0050】
本明細書に記載される化合物は、細胞が加齢黄斑変性(AMD)の間に細胞自体を保護することを可能にし得る。何ら特定の理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、化合物が、細胞での安定化効果、漏出性となるミトコンドリアの傾向の低減および/もしくは漏出性細胞外膜を生じる細胞の傾向の低減、ならびに/または細胞の細胞間および/もしくは構造的共役の改善を有し得ることを推測する。化合物は、細胞間のより良好な共役をもたらすことができ、細胞が利用可能なエネルギー(ATP)を共有することを可能にし、カルシウムシグナル伝達を含む細胞間シグナル伝達を可能にする。化合物はまた、炎症をもたらす細胞外区画への病的ストレス誘発性ATP漏出の軽減をもたらし得る。化合物はまた、iBRBおよびoBRBの関門の完全性を機能的に改善する、ならびに/またはRPEの流体吸収能力を改善することもできる。
【0051】
さらなる側面では、本発明は、ヒト対象における加齢黄斑変性(AMD)の処置または予防のための医薬の調製のための、式(I):
【0052】
【化2】
【0053】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物の使用であって、方法が、対象に治療有効量の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物を投与するステップを含む、使用を提供する。
【0054】
さらなる側面では、本発明は、ヒト対象における加齢黄斑変性(AMD)を処置または予防する方法であって、ヒト対象に治療有効量の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物を投与するステップを含み、
化合物が、式(I):
【0055】
【化3】
【0056】
の化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物である、方法を提供する。
さらなる側面では、本発明は、本明細書に記載される方法における使用のための本明細書に記載される化合物を含む医薬組成物であって、前記化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。好ましくは、化合物は、全身投与、経口投与、皮下投与、経皮投与、鼻内噴霧、点眼液、もしくは点眼液製剤中のコンタクトレンズを介する、コンタクトレンズを介する、鼻内噴霧を介する、または注射、例えば硝子体内注射を介する投与のためである。
【0057】
本発明の態様は、ここで、添付図面を参照して限定ではなく例として説明される。しかし、本発明の様々なさらなる側面および態様は、本開示の観点から当業者には明らかであろう。
【0058】
「および/または」は、本明細書で使用される場合、他を含むかまたは含まない2つの具体的な特徴または構成要素の各々の具体的な開示とすべきである。例えば「Aおよび/またはB」は、あたかも各々が本明細書で個別に示されるかのように、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)AおよびBの各々の具体的な開示とすべきである。
【0059】
別段文脈に示されない限り、上記に概説する特徴の説明および定義は、本発明のいかなる特定の側面または態様にも限定されず、記載される全ての側面および態様に等しく適用する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】ダネガプチドは、ストレスをかけたヒト網膜色素上皮細胞単層での透過性の低下として媒介される偽性DRおよびAMD(DR and AMD-mimicking)の傷害を保護する。ヒトRPE(網膜色素上皮)細胞株、ARPE-19は、コンフルエントの細胞単層に成長させるが、2つの異なる透過性マーカー(6-CFおよびRhoB)を使用するダネガプチド処置により予防された高グルコース条件において亜致死性のtBHP(tert-ブチルヒドロペルオキシド)を伴う酸化的損傷に続く48時間での透過性の上昇を示した。データは、別個の実験条件を表す各データ点と共に平均±S.E.Mとして表され、ホルム-シダック多重比較検定を伴う一元ANOVAを使用して分析された;Papp(見かけの透過係数)、6-CF(6-カルボキシフルオレセイン;上段のグラフA)、RhoB(ローダミンB;下段のグラフB)、p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、n=6~8。
図2】ダネガプチドは、ストレスをかけた単層においてヒト網膜色素上皮細胞間の改善した密着結合組織率(TiJOR)および改善した細胞-細胞共役を介して媒介される偽性DRおよびAMDの傷害を保護する。高グルコースでの亜致死性のtBHP(tert-ブチルヒドロペルオキシド)を伴う酸化的損傷に続く48時間での抗閉鎖帯-1(ZO-1)免疫染色を使用する免疫細胞化学により測定される細胞-細胞脱共役および密着結合(TJ)組織崩壊での上昇(下段の画像B;左=対照;中段=高グルコースおよび200μM tBHP;右=高グルコース、200μM tBHP、および100nMダネガプチド)、ならびに密着結合組織指標(TiJOR;上段の棒グラフA)を示したコンフルエントの細胞単層に成長させるARPE-19であるヒトRPE(網膜色素上皮)細胞株は、細胞ストレス下で低下し、ダネガプチド処置により予防することができた。データは、別個のTiJOR分析を表すデータ点と共に平均±S.E.Mとして表され、ホルム-シダック多重比較検定を伴う一元ANOVAを使用して分析する;TiJOR(密着結合組織指標);HG(高血糖);tBHP(tert-ブチルヒドロペルオキシド);DGP(ダネガプチド)、***p<0.001、n=13~16。
図3】in vivo試験中のA.血液グルコースレベル(mmol/l)およびB.血液糖化ヘモグロビン(HbA1c)レベル(mmol/mol)。データは、1群当たり15~18匹のラットからの平均±SDとして表される。データは、二元ANOVA(血中グルコース、p<0.001;および血液HbA1c、p<0.001)と、続く未処置群に対するテューキーの事後検定で分析された。***p<0.001。
図4】in vivo試験中の白内障スコア。白内障は、0(正常な水晶体)から3(75%超の水晶体を網羅する重度の混濁)まででスコア化させた。データは、1群当たり15~18匹のラットからの平均±S.E.M.として表される。データは、二元ANOVA(p<0.001)と、続く未処置群に対するテューキーの事後検定で分析された。***p<0.001。
図5A】ダネガプチドは、ストレプトゾトシン(STZ)誘発後、DRのラットにおいて外部網膜肥厚を保護する。ダネガプチドは、外部血液網膜関門において肥厚を予防し、スペクトラルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)撮像を使用して外部叢状および顆粒層、内節および外節ならびにRPE/脈絡膜層を測定した。SD-OCT網膜スキャンはセグメント化され、外部網膜層の厚さは、畳み込みニューラルネットワーク(a convolutional neural network)アルゴリズムにより分析された。A.Brown NorwayラットでのSTZ誘発は、未処置(n=16;t検定p<0.01)と比較した場合、誘発の9週間後、STZ+ビヒクル(n=21)網膜における外部網膜の厚さでの統計的に有意な増加をもたらした。B.3週間、毎週100nMを標的とする眼注射を局所化したことによるダネガプチド処置は、外部網膜の厚さのこの増加を予防したが(p<0.05)、抗VEGFおよび抗VEGF+ダネガプチドIVT注射処置は効果がなかった。データは、平均±S.E.Mとして表される。p<0.05;**p<0.01。C.STZ誘発の9週間後、左右の眼から外部網膜の厚さの代表的なSD-OCTスキャン。
図5B】ダネガプチドは、ストレプトゾトシン(STZ)誘発後、DRのラットにおいて外部網膜肥厚を保護する。ダネガプチドは、外部血液網膜関門において肥厚を予防し、スペクトラルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)撮像を使用して外部叢状および顆粒層、内節および外節ならびにRPE/脈絡膜層を測定した。SD-OCT網膜スキャンはセグメント化され、外部網膜層の厚さは、畳み込みニューラルネットワークアルゴリズムにより分析された。A.Brown NorwayラットでのSTZ誘発は、未処置(n=16;t検定p<0.01)と比較した場合、誘発の9週間後、STZ+ビヒクル(n=21)網膜における外部網膜の厚さでの統計的に有意な増加をもたらした。B.3週間、毎週100nMを標的とする眼注射を局所化したことによるダネガプチド処置は、外部網膜の厚さのこの増加を予防したが(p<0.05)、抗VEGFおよび抗VEGF+ダネガプチドIVT注射処置は効果がなかった。データは、平均±S.E.Mとして表される。p<0.05;**p<0.01。C.STZ誘発の9週間後、左右の眼から外部網膜の厚さの代表的なSD-OCTスキャン。
図5C】ダネガプチドは、ストレプトゾトシン(STZ)誘発後、DRのラットにおいて外部網膜肥厚を保護する。ダネガプチドは、外部血液網膜関門において肥厚を予防し、スペクトラルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)撮像を使用して外部叢状および顆粒層、内節および外節ならびにRPE/脈絡膜層を測定した。SD-OCT網膜スキャンはセグメント化され、外部網膜層の厚さは、畳み込みニューラルネットワークアルゴリズムにより分析された。A.Brown NorwayラットでのSTZ誘発は、未処置(n=16;t検定p<0.01)と比較した場合、誘発の9週間後、STZ+ビヒクル(n=21)網膜における外部網膜の厚さでの統計的に有意な増加をもたらした。B.3週間、毎週100nMを標的とする眼注射を局所化したことによるダネガプチド処置は、外部網膜の厚さのこの増加を予防したが(p<0.05)、抗VEGFおよび抗VEGF+ダネガプチドIVT注射処置は効果がなかった。データは、平均±S.E.Mとして表される。p<0.05;**p<0.01。C.STZ誘発の9週間後、左右の眼から外部網膜の厚さの代表的なSD-OCTスキャン。
図6】網膜厚さの領域分析に使用した領域を示す模式図。ST:上側頭;SN、上鼻;IT、下側頭;IN、下鼻。
図7A】ダネガプチドは、網膜全体で外部網膜肥厚を保護する。A~D.外部網膜厚さは、全ての領域、上側頭(A)、上鼻(B)、下側頭(C)、および下鼻(D)において未処置ラットと比較してSTZ+ビヒクル処置したラットで統計的に有意に増加した。データは、対応のないt検定により分析された。E~H.ダネガプチドは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリス(p<0.01)と、続くテューキーまたはダン多重比較検定により決定される、全ての領域、上側頭(E)、上鼻(F)、下側頭(G)、および下鼻(H)において外部網膜の肥厚を予防した。データは、1群当たりn=12~18匹のラットからの平均±S.E.M.として表される。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
図7B】ダネガプチドは、網膜全体で外部網膜肥厚を保護する。A~D.外部網膜厚さは、全ての領域、上側頭(A)、上鼻(B)、下側頭(C)、および下鼻(D)において未処置ラットと比較してSTZ+ビヒクル処置したラットで統計的に有意に増加した。データは、対応のないt検定により分析された。E~H.ダネガプチドは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリス(p<0.01)と、続くテューキーまたはダン多重比較検定により決定される、全ての領域、上側頭(E)、上鼻(F)、下側頭(G)、および下鼻(H)において外部網膜の肥厚を予防した。データは、1群当たりn=12~18匹のラットからの平均±S.E.M.として表される。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
図7C】ダネガプチドは、網膜全体で外部網膜肥厚を保護する。A~D.外部網膜厚さは、全ての領域、上側頭(A)、上鼻(B)、下側頭(C)、および下鼻(D)において未処置ラットと比較してSTZ+ビヒクル処置したラットで統計的に有意に増加した。データは、対応のないt検定により分析された。E~H.ダネガプチドは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリス(p<0.01)と、続くテューキーまたはダン多重比較検定により決定される、全ての領域、上側頭(E)、上鼻(F)、下側頭(G)、および下鼻(H)において外部網膜の肥厚を予防した。データは、1群当たりn=12~18匹のラットからの平均±S.E.M.として表される。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
図7D】ダネガプチドは、網膜全体で外部網膜肥厚を保護する。A~D.外部網膜厚さは、全ての領域、上側頭(A)、上鼻(B)、下側頭(C)、および下鼻(D)において未処置ラットと比較してSTZ+ビヒクル処置したラットで統計的に有意に増加した。データは、対応のないt検定により分析された。E~H.ダネガプチドは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリス(p<0.01)と、続くテューキーまたはダン多重比較検定により決定される、全ての領域、上側頭(E)、上鼻(F)、下側頭(G)、および下鼻(H)において外部網膜の肥厚を予防した。データは、1群当たりn=12~18匹のラットからの平均±S.E.M.として表される。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
図7E】ダネガプチドは、網膜全体で外部網膜肥厚を保護する。A~D.外部網膜厚さは、全ての領域、上側頭(A)、上鼻(B)、下側頭(C)、および下鼻(D)において未処置ラットと比較してSTZ+ビヒクル処置したラットで統計的に有意に増加した。データは、対応のないt検定により分析された。E~H.ダネガプチドは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリス(p<0.01)と、続くテューキーまたはダン多重比較検定により決定される、全ての領域、上側頭(E)、上鼻(F)、下側頭(G)、および下鼻(H)において外部網膜の肥厚を予防した。データは、1群当たりn=12~18匹のラットからの平均±S.E.M.として表される。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
図7F】ダネガプチドは、網膜全体で外部網膜肥厚を保護する。A~D.外部網膜厚さは、全ての領域、上側頭(A)、上鼻(B)、下側頭(C)、および下鼻(D)において未処置ラットと比較してSTZ+ビヒクル処置したラットで統計的に有意に増加した。データは、対応のないt検定により分析された。E~H.ダネガプチドは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリス(p<0.01)と、続くテューキーまたはダン多重比較検定により決定される、全ての領域、上側頭(E)、上鼻(F)、下側頭(G)、および下鼻(H)において外部網膜の肥厚を予防した。データは、1群当たりn=12~18匹のラットからの平均±S.E.M.として表される。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
図7G】ダネガプチドは、網膜全体で外部網膜肥厚を保護する。A~D.外部網膜厚さは、全ての領域、上側頭(A)、上鼻(B)、下側頭(C)、および下鼻(D)において未処置ラットと比較してSTZ+ビヒクル処置したラットで統計的に有意に増加した。データは、対応のないt検定により分析された。E~H.ダネガプチドは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリス(p<0.01)と、続くテューキーまたはダン多重比較検定により決定される、全ての領域、上側頭(E)、上鼻(F)、下側頭(G)、および下鼻(H)において外部網膜の肥厚を予防した。データは、1群当たりn=12~18匹のラットからの平均±S.E.M.として表される。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
図7H】ダネガプチドは、網膜全体で外部網膜肥厚を保護する。A~D.外部網膜厚さは、全ての領域、上側頭(A)、上鼻(B)、下側頭(C)、および下鼻(D)において未処置ラットと比較してSTZ+ビヒクル処置したラットで統計的に有意に増加した。データは、対応のないt検定により分析された。E~H.ダネガプチドは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリス(p<0.01)と、続くテューキーまたはダン多重比較検定により決定される、全ての領域、上側頭(E)、上鼻(F)、下側頭(G)、および下鼻(H)において外部網膜の肥厚を予防した。データは、1群当たりn=12~18匹のラットからの平均±S.E.M.として表される。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。
図8A】内部網膜の厚さの領域分析。STZ誘発した動物が、未処置動物と比較してより薄い網膜を表したが(A~D)、統計的な有意差は、処置群間で同定されなかった(E~H)。上側頭(AおよびE)、上鼻(BおよびF)、下側頭(CおよびG)、ならびに下鼻(DおよびH)。データは、1群当たり12~18匹のラットからの平均±SDとして表される。未処置およびSTZ+ビヒクルのデータは、対応のないt検定により分析された。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。STZ処置群データは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリスANOVAにより分析され、p値は、全ての領域において0.05より高かった。
図8B】内部網膜の厚さの領域分析。STZ誘発した動物が、未処置動物と比較してより薄い網膜を表したが(A~D)、統計的な有意差は、処置群間で同定されなかった(E~H)。上側頭(AおよびE)、上鼻(BおよびF)、下側頭(CおよびG)、ならびに下鼻(DおよびH)。データは、1群当たり12~18匹のラットからの平均±SDとして表される。未処置およびSTZ+ビヒクルのデータは、対応のないt検定により分析された。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。STZ処置群データは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリスANOVAにより分析され、p値は、全ての領域において0.05より高かった。
図8C】内部網膜の厚さの領域分析。STZ誘発した動物が、未処置動物と比較してより薄い網膜を表したが(A~D)、統計的な有意差は、処置群間で同定されなかった(E~H)。上側頭(AおよびE)、上鼻(BおよびF)、下側頭(CおよびG)、ならびに下鼻(DおよびH)。データは、1群当たり12~18匹のラットからの平均±SDとして表される。未処置およびSTZ+ビヒクルのデータは、対応のないt検定により分析された。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。STZ処置群データは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリスANOVAにより分析され、p値は、全ての領域において0.05より高かった。
図8D】内部網膜の厚さの領域分析。STZ誘発した動物が、未処置動物と比較してより薄い網膜を表したが(A~D)、統計的な有意差は、処置群間で同定されなかった(E~H)。上側頭(AおよびE)、上鼻(BおよびF)、下側頭(CおよびG)、ならびに下鼻(DおよびH)。データは、1群当たり12~18匹のラットからの平均±SDとして表される。未処置およびSTZ+ビヒクルのデータは、対応のないt検定により分析された。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。STZ処置群データは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリスANOVAにより分析され、p値は、全ての領域において0.05より高かった。
図8E】内部網膜の厚さの領域分析。STZ誘発した動物が、未処置動物と比較してより薄い網膜を表したが(A~D)、統計的な有意差は、処置群間で同定されなかった(E~H)。上側頭(AおよびE)、上鼻(BおよびF)、下側頭(CおよびG)、ならびに下鼻(DおよびH)。データは、1群当たり12~18匹のラットからの平均±SDとして表される。未処置およびSTZ+ビヒクルのデータは、対応のないt検定により分析された。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。STZ処置群データは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリスANOVAにより分析され、p値は、全ての領域において0.05より高かった。
図8F】内部網膜の厚さの領域分析。STZ誘発した動物が、未処置動物と比較してより薄い網膜を表したが(A~D)、統計的な有意差は、処置群間で同定されなかった(E~H)。上側頭(AおよびE)、上鼻(BおよびF)、下側頭(CおよびG)、ならびに下鼻(DおよびH)。データは、1群当たり12~18匹のラットからの平均±SDとして表される。未処置およびSTZ+ビヒクルのデータは、対応のないt検定により分析された。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。STZ処置群データは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリスANOVAにより分析され、p値は、全ての領域において0.05より高かった。
図8G】内部網膜の厚さの領域分析。STZ誘発した動物が、未処置動物と比較してより薄い網膜を表したが(A~D)、統計的な有意差は、処置群間で同定されなかった(E~H)。上側頭(AおよびE)、上鼻(BおよびF)、下側頭(CおよびG)、ならびに下鼻(DおよびH)。データは、1群当たり12~18匹のラットからの平均±SDとして表される。未処置およびSTZ+ビヒクルのデータは、対応のないt検定により分析された。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。STZ処置群データは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリスANOVAにより分析され、p値は、全ての領域において0.05より高かった。
図8H】内部網膜の厚さの領域分析。STZ誘発した動物が、未処置動物と比較してより薄い網膜を表したが(A~D)、統計的な有意差は、処置群間で同定されなかった(E~H)。上側頭(AおよびE)、上鼻(BおよびF)、下側頭(CおよびG)、ならびに下鼻(DおよびH)。データは、1群当たり12~18匹のラットからの平均±SDとして表される。未処置およびSTZ+ビヒクルのデータは、対応のないt検定により分析された。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001。STZ処置群データは、一元ANOVAまたはクラスカルウォリスANOVAにより分析され、p値は、全ての領域において0.05より高かった。
図9】ダネガプチドおよび抗VEGF処置は、糖尿病性網膜においてエバンスブルー(EB)溢出を軽減する。A.STZによる高血糖症の誘発は、誘発の9週間後、EB溢出での6.28倍の有意な増加をもたらした(未処置での100±13.5%対STZ+ビヒクルでの628±212.5%、n=10~11、t検定p<0.01)。B.抗VEGF(p<0.01)、ダネガプチド(p<0.05)および併用処置(p<0.05)は、それぞれ、82.3%、68.9%および65.6%のEB溢出の統計的に有意な低下をもたらした。STZ誘発した群からのデータは、ダゴスティーノおよびピアソン検定を使用して正規性に合格し、一元ANOVA(p<0.01)と、続くホルム-シダック多重比較検定により分析された。データは、平均±S.E.Mとして示される。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図10】ダネガプチドは、STZの誘発の9週間後、周皮細胞の喪失を予防する。A.STZによるDRの誘発は、9週間後、周皮細胞ゴーストでの統計的に有意な増加をもたらした(t検定、p<0.05、n=45~67)。B.STZ群での周皮細胞ゴーストの数は、一元ANOVA(p<0.001)と、続くダネット多重比較検定を使用して比較した。AF564(p<0.01、n=45)およびダネガプチド(p<0.001、n=58)の両方とも、周皮細胞ゴーストの統計的に有意な減少をもたらした。AF564およびダネガプチドの併用処置は、周皮細胞ゴーストの存在に効果がなかった(p=0.11;n=61)。データは、平均±S.E.Mとして表される。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図11-1】ダネガプチドによる周皮細胞の喪失からの保護を示すトリプシン消化からの代表的な画像。PAS染色は、無細胞性の毛細管(矢印)および周皮細胞ゴースト(矢先)を含む、血管異常を評価するのに使用した。周皮細胞は示していない。スケールバー=100μm。
図11-2】ダネガプチドによる周皮細胞の喪失からの保護を示すトリプシン消化からの代表的な画像。PAS染色は、無細胞性の毛細管(矢印)および周皮細胞ゴースト(矢先)を含む、血管異常を評価するのに使用した。周皮細胞は示していない。スケールバー=100μm。
図11-3】ダネガプチドによる周皮細胞の喪失からの保護を示すトリプシン消化からの代表的な画像。PAS染色は、無細胞性の毛細管(矢印)および周皮細胞ゴースト(矢先)を含む、血管異常を評価するのに使用した。周皮細胞は示していない。スケールバー=100μm。
【発明を実施するための形態】
【0061】
定義
別段指定しない限り、以下の定義は、具体的な用語に対して提供される。
本明細書および特許請求の範囲では、天然アミノ酸に対する標準的な3文字および1文字の略号が使用される。本明細書の用語「ペプチド」は、ペプチド結合により連結される2つ以上のアミノ酸部分(アミノ酸残基)の鎖を示す。一般に、ペプチドは、1つもしくは複数の天然に存在するアミノ酸および/または1つもしくは複数の天然に存在しないアミノ酸を含有し得る。
【0062】
本文脈では、用語「天然に存在するアミノ酸」とは、以下の20個のアミノ酸の1つを指す:Ala(A)、Cys(C)、Ser(S)、Thr(T)、Asp(D)、Glu(E)、Asn(N)、Gln(Q)、His(H)、Arg(R)、Lys(K)、Ile(I)、Leu(L)、Met(M)、Val(V)、Phe(F)、Tyr(Y)、Trp(W)、Gly(G)、およびPro(P)。天然に存在するペプチド分子では、これらのアミノ酸(キラル中心を欠失するGlyを除く)は、一般に、L-アミノ酸残基の形態で起こるが、本発明での使用に好適な化合物は、D-アミノ酸残基を含むペプチドを含む。
【0063】
アミノ酸の3文字略号は当該技術分野で使用される通りである。Hypは4-ヒドロキシプロリンを指す。
本発明における使用のための化合物は、2つ以上の不斉原子(キラル中心とも呼ばれる)を含有し得、ジアステレオマーの出現の可能性を生じる。本発明での使用に適した化合物は、このようなジアステレオマーを含む。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「血管細胞」は、網膜内皮細胞および網膜脈絡膜内皮細胞を含む、内皮細胞および周皮細胞を含む。
加齢黄斑変性(AMD)
AMDは、網膜中心の変性障害である(中心視力は、黄斑として公知の領域で処理される)。黄斑は、読書、顔の認識、および運転で使用される真直な前方視力に重要である。AMDは、乾性AMD(d-AMD;非血管新生AMDもしくは非滲出性AMDとしても公知)または血管新生AMD(n-AMD;湿性AMDもしくは滲出性AMDとしても公知)として分類することができる。
【0065】
典型的には、湿性AMDは、通常、乾性型のAMDとして開始する。AMDの典型的な段階は以下の通りである:
1.早期の乾性AMD。色素変化または異常を含まないが、培地ドルーゼン(63~125ミクロンまたはμm)により特徴付けられる(Ferrisら、2013年)。この段階はまた、初期AMDとも称する。
【0066】
2.中間期の乾性AMD。少なくとも培地ドルーゼンを含む大きいドルーゼン(125ミクロンもしくはμmより大きい)または色素変化/異常のいずれかにより特徴付けられる。この段階はまた、中程度のAMDとも称する。
【0067】
3.進行期の乾性AMD。黄斑内または黄斑近くで組織萎縮および/または萎縮性領域の進行の発症に関連する病変により特徴付けられる。この段階のd-AMDは、外部網膜組織、網膜色素上皮、光受容体および/または脈絡膜毛細血管層の萎縮により特徴付けられる地図状萎縮(GA)を含む。この段階はまた、後期AMDとも称する。地図状萎縮(GA)は、後期加齢黄斑変性(AMD)の一部として黄斑の慢性進行性変性である。疾患は、外部網膜組織、網膜色素上皮および脈絡膜毛細血管層の局在化した境界の明瞭な萎縮により特徴付けられる。
【0068】
4.湿性または血管新生または進行した血管形成AMD。脈絡膜血管新生(CNV)により特徴付けられる。血管新生は、新しい血管の成長または血管形成である。これらの新しい血管は、未熟で、脆弱であり、容易に流体および血液を漏出される。これらはまた、瘢痕組織を創出することができ、結果として、視力を低下させるか、または網膜剥離を引き起こす。湿性AMDとは、漏出性血管の構成要素を指すが、過剰な血管漏出が網膜浮腫の形成をもたらし得る。新しい血管形成は、実質的な浮腫を伴ってまたは伴わずに生じ得、浮腫は、実質的な血管新生または血管形成を伴わずに生じ得る。これらの病期はまた、滲出性AMDおよび後期AMDとも呼ばれる。
【0069】
本発明がギャップ結合の役割(role)を標的とするので、好ましい側面では、本発明は、AMD、すなわち上記の1~4期、より好ましくは上記の1~3期(すなわち乾性AMD)の患者の処置、またはより進行したもしくは後期の病期へとAMDのさらなる悪化を予防することができる療法に関連する。本発明はまた、他の血管ストレス因子、例えばAMDを発症するリスクがある糖尿病を有する患者用の防止的療法に関連する。
【0070】
AMDを発症するリスクがある糖尿病の患者は、糖尿病の全ての型(1型、2型、および妊娠性)を有するものを含む。AMDを発症するリスクは、人々が糖尿病を有する長期的なリスクを増大する。したがって、本発明は、これらの患者型の全ての処置に使用することができる。糖尿病とAMDとの間の病態生理学連結が完全に理解されていないので、ストレスを受けた糖尿病で観察される高グルコースのストレスを受け、より漏出性な血管は、増大したドルーゼン堆積、ROSおよび低酸素状態をもたらし得、VEGFは、両疾患において共通の重要な病的成長因子である。
【0071】
加えて、本発明の医学用途および方法は、血糖コントロールに至る患者での防止的使用のために利用することができる。このような処置では、慢性的に高い血液グルコースレベルの患者が血糖コントロールに至る場合、眼組織は、高いグルコース利用率に使用され、正常なグルコースレベルが達成されるようにストレスをかけることができる。これらの患者は、AMDの悪化を経験するリスクがあり、血中グルコースが制御されるので保護され得る。したがって、本発明は、患者が血糖コントロールに至るので保護処置として使用され得る。
【0072】
糖尿病性網膜症(DR)は、出血または流体の漏出、視力の歪みを引き起こし得る網膜血管への変化を含む。糖尿病性網膜症は、糖尿病の人々の中で最も一般的な視力喪失の原因であり、生産年齢の成人に失明の原因をもたらす。糖尿病性黄斑浮腫は、網膜の黄斑領域における腫脹を引き起こす糖尿病性網膜症の結果である。
【0073】
糖尿病性黄斑浮腫(DME)は、黄斑における流体の蓄積(浮腫)である。DMEは、糖尿病性網膜症の人々の中で最も一般的な視力喪失の原因である。糖尿病性網膜症の全ての人々のおよそ半数が、その生涯のある時点でDMEを発症する。糖尿病性網膜症の悪化として生じる可能性がより高くなるので、DMEは、疾患のあらゆる段階で起こり得る。
【0074】
糖尿病性網膜症および/または糖尿病性黄斑浮腫の患者はまた、AMDを発症するリスクがある。上述する通り、糖尿病患者は、AMDを発症するリスクが高く、このリスクは、患者がまた糖尿病性網膜症または糖尿病性黄斑浮腫を発症する場合にさらに高くなる。両方の状態では、内部および外部血液網膜関門は、病的ストレス条件により攻撃され、漏出性となる。したがって、本発明は、糖尿病性網膜症または糖尿病性黄斑浮腫も有する患者において処置または予防に使用することができる。
【0075】
網膜静脈閉塞(RVO)は、動脈または静脈(閉塞または発作と呼ばれる)での遮断が、網膜に出入りする血流を制御する動脈または静脈で起こることである。これは、典型的には、血塊が網膜静脈を遮断する場合に起こる。網膜静脈閉塞(RVO)の患者はまた、AMDを発症するリスクがある。RVOから生じる虚血性状態は、病的に高いVEGFレベルを駆動することが知られており、眼の高いVEGFレベルは、血管新生AMDまたは湿性AMDを含むAMDの発症を刺激または悪化し得る。RVOの患者の眼で観察される非常に高いVEGFレベルは、有意な血管漏出および浮腫の形成を引き起こすことが知られており、血管漏出を減衰させ、ギャップ結合調節剤を使用して本明細書に開示されるiBRBおよびoBRBの両方を強化することが有益である。したがって、本発明は、網膜静脈閉塞(RVO)眼疾患も有する患者において処置または予防として使用することができる。
【0076】
緑内障は、眼を脳に接続する視神経が障害されている共通の眼の状態である。眼の前部に蓄積する流体により通常引き起こされ、眼内の圧力を高める。しかし、緑内障は、眼圧の増加を伴わずに起こり得る。緑内障は、診断されず、早期に処置されない場合、視力の喪失をもたらし得る。緑内障の患者は、病的眼圧を伴うかまたは伴わないかのその両方で、AMDを発症するリスクがある。網膜色素上皮(RPE)は、網膜および一般的には眼からの流体を取り除く重要な役割を担う。眼の前部からの流体の排出が低下する場合、緑内障で観察されることが多いが、RPEを介する後眼房空の流体の除去は、眼圧の上昇を避けるのにますます重要である。ゆえに、RPE細胞の共役を安定化し、その機能を改善することができる、眼からの流体除去を含む治療的介入、例えばダネガプチドを含む本明細書に記載される化合物は、緑内障の患者およびAMDを発症するリスクがある緑内障の患者に有益である。加えて、神経組織および視神経は、緑内障の患者および経時的に発症する神経組織の萎縮のリスクがある患者においてストレスを受けていることが観察される。また、ここで、RPEおよび外部血液網膜関門(oBRB)を保護することができる治療的介入、例えばダネガプチドを含む本明細書に記載される化合物は、RPEが光受容体、棹状体および錐状体を含む神経組織に送達する機能的支持および代謝支持を助ける。したがって、本発明は、病的眼圧を伴うか伴わない緑内障疾患も有する患者において処置または予防として使用することができる。
【0077】
炎症性眼疾患、例えばブドウ膜炎(uvetis)は、眼、眼瞼、または周囲組織に対して炎症、アレルギー、自己免疫疾患、刺激、傷害、または外傷に応じて生じる。ブドウ膜炎は、炎症が眼の壁面(ブドウ膜)における組織の中間層に生じるものである。ブドウ膜炎または他の形態の炎症性眼疾患の患者は、AMDを発症するリスクがある。ブドウ膜炎で観察される炎症状態は、VEGFを含む、病的に上昇したレベルのいくつかのサイトカインおよび成長因子を刺激することが知られている。これらのシグナル伝達分子は、さらにRPEにストレスを加え、関門の完全性、ならびにRPE、およびそれゆえの外部網膜層の機能を低減することができる。加えて、RPEへの病的ストレスが、Cx43ベースのヘミチャネル開口および細胞外マトリクスへの過剰なATP漏出をもたらし得、ATPが、プリン作動性受容体の刺激に関与し、炎症および血管形成に主要な役割を再び担うことが知られている(Clappら、2019年)。ゆえに、RPE細胞の細胞間共役を安定化し、Cx43ベースのヘミチャネルの病的開口を予防することができる治療的介入、例えばダネガプチドを含む本明細書に記載される化合物は、ブドウ膜炎の患者およびAMDを発症するリスクがあるブドウ膜炎の患者に有益である。したがって、本発明は、ブドウ膜炎または炎症性眼疾患の他の形態も有する患者において処置または予防に使用することができる。
【0078】
ドルーゼンは、黄斑変性の特徴である。ドルーゼンは、眼のブルッフ膜と網膜色素上皮(RPE)との間に蓄積する細胞外材料のとても小さい黄色または白色の蓄積である。ドルーゼンは、タンパク質および脂質(脂肪を含む天然に生じる分子)を含有する。眼にドルーゼン沈着物または他のタンパク質滲出物を伴う患者は、AMDを発症するリスクがある。ドルーゼンの堆積は、RPEと網膜脈絡膜叢との間の酸素、栄養分および老廃物の交換の効力を低減する。網膜および光受容体が非常に高いエネルギー消費を有し、効果的な酸素化が必要である場合、光受容体および神経組織を支持するRPEの能力のあらゆる低下は、網膜組織のストレスをもたらし、AMDを発症するリスクが高まり得る。ゆえに、RPEを安定化し、代謝機能ならびにRPEと網膜脈絡膜叢との間の酸素、栄養分および老廃物の交換を改善することができる治療的介入、例えばダネガプチドを含む本明細書に記載される化合物は、ドルーゼンの患者またはAMDで観察されるドルーゼン堆積のようなドルーゼン堆積が増大するリスクがある患者に有益である。したがって、本発明は、眼においてドルーゼン沈着物もしくはタンパク質滲出物も有する患者またはドルーゼン堆積が増大するリスクがある患者において処置または予防に使用することができる。
【0079】
投与の様々な経路は、眼内注射、全身投与、経口投与、皮下投与、経皮投与、鼻内噴霧、点眼液、またはコンタクトレンズを含むが、限定されない、本発明の方法に関連して利用することができる。一部の態様では、化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物は、その治療的使用のための、眼に局所投与(例えば硝子体内注射)または全身投与(例えば経口、皮下、経皮もしくは静脈内投与)される薬物製剤である。好ましくは、化合物または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物は、経口投与を介して全身投与される。
【0080】
これに関して、50nM~5μMの範囲で対象の血漿に投与される化合物(または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物)の濃度の達成が望ましい場合がある。本明細書で提供されるin vitro試験は、RPE細胞に対して、最適な効果が、100nMの標的濃度のギャップ結合モジュレーターの化合物がRPE細胞培養の微小環境で達成された場合に観察されたことを示した。加えて、糖尿病のラットで実施したin vivo試験は、網膜組織で100nMを達成するように選択された用量でのダネガプチドのIVT注射がまた、RPEを含む外部網膜層の保護効果を付与することを支持する。例として、これらの治療効果および保護効果は、50~150nMの血漿濃度が、浸透ポンプにより、または硝子体でのより高い濃度を標的とする眼への局所注射により標的化された場合に達成され得、網膜血管に対する濃度勾配を可能にする。これらのデータは、RPEを含む網膜組織の微小環境における50~150nMを達成するように投与される有効用量を教示する。
【0081】
本発明による使用に適した化合物
本発明による使用に特に適した化合物の例は、1-(2-アミノアセチル)-4-ベンゾイルアミノ-ピロリジン-2-カルボン酸、例えばその(2S,4R)ジアステレオマー[すなわち(2S,4R)-1-(2-アミノアセチル)-4-ベンゾイルアミノ-ピロリジン-2-カルボン酸]、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物である。この化合物の代替名の例は、(2S,4R)-1-(2-アミノアセチル)-4-ベンズアミドピロリジン-2-カルボン酸である。
【0082】
後者の化合物の他のジアステレオマー(すなわち2S4S、2R4R、2S4Rまたは2R4Sジアステレオマー)もまた、本発明の文脈での使用に対して価値があり得る。
この化合物の特定の形態はまた、ダネガプチドとも呼ばれ得る。
【0083】
ダネガプチドの薬学的に許容される塩はダネガプチド塩酸塩を含む。
本明細書に記載される化合物は、ギャップ結合依存性細胞モジュレーターである。一部の態様では、化合物は、RPE(網膜色素上皮)細胞間の関門の完全性の喪失およびRPE細胞の喪失を含む、RPE関門の機能障害を阻害し得る。一部の態様では、化合物は、眼において網膜または脈絡膜層の機能障害を阻害し得る。一部の態様では、化合物は、網膜において光受容体の喪失を阻害し得る。一部の態様では、化合物は、黄斑浮腫をもたらす血管漏出を含む、網膜の血管漏出を阻害し得る。一部の態様では、化合物は、関門の完全性およびRPEの機能を改善することにより網膜組織からの流体再吸収を改善することができ、それにより黄斑浮腫を処置および軽減する助けとなる。一部の態様では、化合物は、RPE細胞を含む、網膜内皮細胞、脈絡膜内皮細胞、周皮細胞または上皮細胞の死滅または喪失を阻害し得る。一部の態様では、化合物は、病的ヘミチャネル開口および/またはATP放出、例えばコネキシン43媒介性ヘミチャネル開口および/またはATP放出を阻害し得る。ヘミチャネル開口および/もしくはATP放出(または他のこのような小さいシグナル伝達分子)の病的効果は、オートクリンおよびパラクリンの両方であり得る。
【0084】
例えば、Squiresら、2021年は、ダネガプチドが腎臓上皮細胞からのATP漏出を軽減することができることを示している。Mugishoら、2019年は、炎症性疾患、例えばAMDおよびDRを処置するのに有用であり得るペプチド5、コネキシン43ヘミチャネルブロッカー、低下した炎症性サイトカインおよびATP放出を示した。Gonzalez-Casanovaら、2021年は、ギャップ結合細胞間コミュニケーション(GJIC)を向上させるコネキシンヘミチャネルブロッカーまたは薬物がDRを処置するのに有用であり得ることを示唆した。Subauste、2019年は、CD40-ATP-P2X受容体経路を研究し、炎症性応答および内皮細胞死の誘発を関連付けた。Clappら、2019年は、DRおよび/またはAMDでのP2X受容体の遮断の保護的役割が、炎症性サイトカイン放出の阻害およびVEGF放出の阻害によるものであり得ることを示唆した。
【0085】
Kingら(2021)による概説が、異なるCx43標的分子を開示したが、これらの分子は、ヘミチャネルを遮断せず、同時にAMDにおけるストレス条件下でギャップ結合を安定化させなかった。対照的に、ダネガプチドを含む本明細書に開示される化合物は、ヘミチャネルを遮断するだけでなく、AMDにおけるストレス条件下でギャップ結合依存性細胞間共役を効果的に安定化させることの競争上の利点を有する。
【0086】
上記に記載される化合物に加えて、本発明の文脈での使用に好適であり得るさらなる化合物は、WO02/077017、WO2007/078990、またはWO2018/202865に開示される通り、ある特定の他のギャップ結合調節化合物、例えば抗不整脈ペプチドAAP(Aonumaら、1980年)、AAP10(Dheinら、1994年;Mullerら、1997年)、HP5(米国特許第4,775,743号に開示)および他の抗不整脈ペプチドを含む。
【0087】
本明細書に記載される化合物が組み合わせて使用することができることが理解されよう。例えば、2つ以上のギャップ結合モジュレーターの化合物は、同時にまたは逐次的のいずれかで本明細書に記載される方法で投与することができる。
【0088】
薬学的に許容される塩
酸性部分を有する本発明に従った使用に適した化合物の薬学的に許容される塩は、有機または無機塩基を使用して形成することができる。塩基で形成した好適な塩は、金属塩、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えばナトリウム、カリウム、またはマグネシウム塩;アンモニア塩および有機アミン塩、例えばモルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ、ジもしくはトリ低級アルキルアミン(例えば、エチル-tert-ブチル-、ジエチル、ジイソプロピル、トリエチル、トリブチルもしくはジメチルプロピルアミン)、またはモノ、ジもしくはトリヒドロキシ低級アルキルアミン(例えば、モノ、ジもしくはトリエタノールアミン)で形成されるものを含む。内部塩もまた形成され得る。本発明による使用に適した化合物が塩基性部分(例えば、1-(2-アミノアセチル)-4-ベンゾイルアミノ-ピロリジン-2-カルボン酸および記載したそのジアステレオマーの場合と同様)を含有する場合、塩は、有機または無機酸を使用して形成することができる。例えば、塩は、以下の酸から形成することができる:酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、フタル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、またはカンファースルホン酸。他の公知の薬学的に許容される酸もまた利用することができる。既に記載した通り(上記参照)、1-(2-アミノアセチル)-4-ベンゾイルアミノ-ピロリジン-2-カルボン酸の(2S,4R)ジアステレオマーの好ましい塩形態は、塩酸塩一水和物である。
【0089】
本教示はまた、本発明による使用に適した本明細書に開示される化合物のプロドラッグの使用に拡張することもできる。本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」とは、哺乳動物対象、特にヒト対象に投与される場合、開示される型の1種の化合物を産生、生成または放出する部分を指す。プロドラッグは、修飾体が親化合物から日常的な操作またはin vivoのいずれかにより切断される方法で化合物に存在する官能基を改変することにより調製することができる。プロドラッグの例は、化合物のヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリルまたはカルボキシ基に付着(結合)した1つまたは複数の分子部分を含有し、処置される対象に投与する場合、in vivoで切断されて、それぞれ遊離ヒドロキシ、アミノ、スルフヒドリルまたはカルボキシ基を形成する本明細書に開示される化合物を含む。プロドラッグの例は、限定されないが、本発明による使用のための本明細書に開示される化合物においてアルコールおよびアミン官能基のアセテート、ホルメートおよびベンゾエート誘導体を含む。好ましいプロドラッグの例は、オキサゾリジノンまたはイミダゾリジノンプロドラッグを含む。エステルプロドラッグは、低級アルコール、例えばC1~6アルコールと形成され得る。プロドラッグの調製および使用は、T.HiguchiおよびV.Stella、「Pro-drugs as Novel Delivery Systems」、A.C.S.Symposium Seriesの第14巻、ならびにBioreversible Carriers in Drug Design、Edward B.Roche編、American Pharmaceutical AssociationおよびPergamon Press、1987年に議論される。
【0090】
医薬組成物
化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物は、本発明によって利用されるが、適切な医薬組成物の形態で投与され得、単独または組合せのいずれかで当該技術分野に公知の任意の許容される方法を介して投与され得る。本文脈に関連する医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、ビヒクル、または賦形剤と組み合わせて本発明による使用のための本明細書に開示される化合物を含み得る。一般に、本発明によって使用される医薬組成物は、点眼液、コンタクトレンズ、鼻内噴霧、硝子体内または全身での化合物の投与に適合させ得る。
【0091】
有用な製剤は、本教示の化合物の持続放出を提供する製剤を含み得る。これらは、続く投与(第1の投与後)に特に有用であり得る。組成物は、好ましくは、液体製剤の形態であり、これらの調製のための方法は、一般に、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、PA、U.S.A.、1985年に記載される。このような組成物は、一般に、選択された投与経路に適合である形態で投与量を提供するために、好適な担体と共に、有効量の1つまたは複数の本教示の活性化合物を含有する。好ましくは、担体は、ビヒクル、希釈剤、緩衝化剤、張性調節剤、保存剤、阻害剤、および/または安定剤の形態である。担体を構成する賦形剤は、医薬品有効成分に適合であるべきであり、好ましくは、処置すべき対象に有害ではない化合物を安定化することが可能である。
【0092】
リポジトリーまたは持続放出の製剤の形態は、治療有効量の調製物が、例えば経皮注射または堆積により化合物または組成物の投与に続いて、長時間または何日間にもわたって血流に送達されるように使用することができる。持続放出に好適な製剤は、生分解性ポリマー、例えばL-乳酸、D-乳酸、DL-乳酸、グリコリド、グリコール酸、およびその異性体を含み得る。同様に、担体または希釈剤は、単独またはワックスと混合して、当該技術分野に公知の任意の持続放出材料、例えばモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを含み得る。
【0093】
他の持続放出製剤は、リポソーム、ミクロスフェア、エマルジョンまたはミセルおよび液体安定剤と組み合わせた本明細書に開示される化合物の少なくとも1つを含む製剤を含み得るが、限定されない。
【0094】
本発明による化合物(または薬学的なその塩もしくは水和物)の投与は、単回単位剤形(例えばボーラスの形態)で、または経時的な多回用量の形態での連続的な療法として行うことができる。代替的に、連続的な注入システムまたは緩効性デポ製剤は利用することができる。本発明による使用のための2つ以上の化合物(またはその医薬組成物)は、同時に、または任意の順番で逐次的に共投与することができる。加えて、化合物および組成物は、例えば、糖尿病の患者またはドルーゼン沈着物の患者が発症するAMDまたはAMDの悪化またはAMDに関連する黄斑浮腫のリスクであると考えられる場合、予防の目的と類似する方法で投与することができる。最終的に、最良の投薬レジメンは、各患者に個別に主治医により決定される。
【0095】
治療的使用
本明細書に指定される化合物を使用して本発明によって処置または予防することができる状態は、とりわけヒト対象における加齢黄斑変性(AMD)を含む。
【0096】
本発明によると、化合物、または薬学的に許容されるその塩もしくは水和物の1つまたは複数は(例えば適切な医薬組成物の形態で)、治療有効量でそれを必要とする個体に投与され得る。
【0097】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」とは、眼における所与の神経血管状態または病理の症状を軽減することが可能である量を指し、好ましくは、状態または病理を伴う対象において生理学的応答を部分的または全体的に正規化することが可能である。症状の軽減または生理学的応答の正規化は、当該技術分野に公知の方法を使用して決定することができ、所与の状態または病理で異なり得る。有効量は、薬物の有効性、患者の年齢および体質、体重、薬物の薬物動態プロファイルのような因子を考慮に入れて、当業者により決定され、一般に、薬物は、各患者または患者の群に処方される。
【0098】
化合物の有効量は、少なくとも約10μg/体重1kg/日、例えば少なくとも約100μg/体重1kg/日、少なくとも約300μg/体重/日、および少なくとも約1000μg/体重1kg/日であり得る。一方、化合物または二量体の有効量は、多くても約100mg/体重1kg/日、例えば多くても約50mg/体重1kg/日および多くても約10mg/体重1kg/日であり得る。化合物の有効量は、約100μg/体重1kg/日、約300μg/体重1kg/日または約1000μg/体重1kgであると予想される。
【0099】
本明細書に記載されるin vitroシステムにおいてin vitroシステム(細胞共役アッセイ/SLDT)で実施される用量の所見を提供される実験は、50~150nMの濃度が、微小環境で最適であることを示し、in vivo予備試験は、1000nM注射が、眼の微小環境において100nMを標的とする場合、200nM注射より良好であることを示した。
【0100】
一部の態様では、化合物は、それぞれQD(quaque die(1日1回))またはBID(bis in die(1日2回))とときどき呼ばれる、1日1回または2回患者に投与される。化合物が患者に1日2回(BID)投与される一部の態様では、投与量は、1回の投与当たり約75mg/kgである。一部の態様では、化合物は、QID(quater in die(1日4回))とときどき呼ばれる、1日4回患者に投与される。化合物が患者に1日4回(QID)投与される一部の態様では、投与量は、1回の投与当たり約75mg/kg~約125mg/kgである。
【0101】
実験例
ギャップ結合およびヘミチャネルモジュレーターの化合物
本発明による使用のための化合物(ペプチド)は、固相または溶液相の合成により好適に合成され得る。この文脈では、例えばFieldsら、「Principles and practice of solid-phase peptide synthesis」、Synthetic peptides(2002年、第2版)を参照することができる。
【0102】
1-(2-アミノアセチル)-4-ベンゾイルアミノ-ピロリジン-2-カルボン酸、例えばその(2S,4R)ジアステレオマーの調製に関して、その合成および精製の好適な方法は、WO2007/078990に記載され、(2S,4R)異性体は、「化合物2」と示される(WO2007/078990は、その全体を参照により組み込まれる)。
【0103】
(2S,4R)ジアステレオマーの有用な塩形態の例は、塩酸塩一水和物であり、その調製はWO2008/079266に記載され、化合物Xとも本明細書で呼ばれる(WO2008/079266は、その全体を参照により組み込まれる)。
【0104】
in vitro試験-図1および2
細胞株および細胞培養
ヒト網膜色素上皮細胞(ARPE-19、CRL-2302(商標)、American Tissue Type Collection、ATTC、Manassas、VA)を使用した。細胞を、供給者の使用説明書により継代し、維持した。簡潔には、細胞を、1.2g/Lの炭酸水素ナトリウム、2.5mM L-グルタミン、15mM HEPESおよび0.5mMピルビン酸ナトリウムならびにウシ胎児血清を最終濃度10%で含有する、ダルベッコ改変イーグル培地およびハムF12培地の1:1の混合物中で、37℃で5%CO/95%湿度の雰囲気で培養した。細胞培養液に、ペニシリン/ストレプトマイシンを100U/mlの最終濃度で添加した。
【0105】
細胞を、T25およびT75組織培養フラスコ(TPP Techno Plastic Products AG、Trasadingen、Switzerland)で維持した。実験用に、細胞をトランズウェルインサート(150,000~260,000個の細胞/ウェル;孔径0.4μmのポリエステル膜インサート、Corning、Corning、NYを含む12mmトランスウェル(登録商標))またはマルチチャンバースライド(1ウェル当たり100,000個の細胞;Nunc(登録商標)Lab-Tek IT 8ウェルチャンバースライド、Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)に播種した。
【0106】
透過性試験
透過性実験のために、ARPE-19細胞を48~72時間、トランズウェルインサート中、コンフルエンシーまで成長させた。次いで、細胞を24時間、ダネガプチド(DGP;100nM;生理食塩水に溶解)またはビヒクル対照で前処理した。その後、細胞を48時間、100nM DGPまたはビヒクルの継続的な存在下、亜致死性の酸化ストレス(250uM tert-ブチルヒドロペルオキシド;Millipore Sigma、St.Louis、MO)および高血糖(30mMグルコース;Millipore Sigma、St.Louis、MO)の組合せにチャレンジさせた。
【0107】
低透過性および高透過性染料の先端から基底外側への動きである透過性を評価するために、6-カルボキシフルオレセイン(6-CF;Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)およびローダミンB(RhoB;Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)をそれぞれ定量化した。この目的のために、ハンクス平衡塩溶液(HBSS、Corning、Corning、NY)で希釈した染料を、細胞の先端区画(上部インサート、ドナーチャンバー;6-CF:100μM、RhoB:50μM)に添加した。規則的な間隔で(10、20、30、45、60、90および120分)、基底外側区画(下部ウェル、レシーバチャンバー)からのサンプル(100μl)を収集した。サンプリングされた容量を新鮮な緩衝液と取り替えた。
【0108】
6-CFおよびRhoBの累積濃度を、マイクロプレートリーダー(Cytation5、Agilent、Santa Clara、CA)を使用して確立した標準曲線(0~10μM)を使用して算出したが、最終算出では培地で除去し、取り換えた容量を考慮に入れた。6-CFを励起490nm/発光520nmを使用して定量化し、RhoBを励起533nm/発光627nmを使用して定量化した。図1を参照のこと。
【0109】
密着結合組織の定量化
免疫細胞化学のために、ARPE-19細胞を72時間、チャンバースライド中でコンフルエンシーまで成長させた。次いで、細胞を24時間、ダネガプチド(DGP;100nM)またはビヒクル対照で前処理した。その後、細胞を48時間、100nM DGPまたはビヒクルの継続的な存在下、亜致死性の酸化ストレス(250μM tert-ブチルヒドロペルオキシド;Millipore Sigma、St.Louis、MO)および高血糖(30mMグルコース;Millipore Sigma、St.Louis、MO)の組合せでチャレンジさせた。
【0110】
細胞を、4%のパラホルムアルデヒドで15分間固定し、その後、ブロック溶液(0.1Mリン酸緩衝液中の10%の正常ヤギ血清、1%のウシ血清アルブミン、0.5%のトリトンX-100、pH7.4)で遮断し、透過処理した。細胞を、室温で2時間、抗体溶液(0.1Mリン酸緩衝液中の3%の正常ヤギ血清、1%のウシ血清アルブミン、0.5%のトリトンX-100、0.05%アジ化ナトリウム、pH7.4)において抗ZO-1抗体(マウス抗ヒト70-1、1pg/ml、カタログ番号339100、Invitrogen、Thermo Fisher Scientific、Carlsbad、CA)で標識化した。リン酸緩衝食塩水で3回洗浄した後、細胞を、室温で1時間、蛍光接合型ヤギ抗マウスIgG(H+L)交差吸着した二次抗体(AlexaFluor(登録商標)488、1:2,000の希釈)で標識化した。核を、0.1pg/mlの4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドールジヒドロクロリド(DAPI、Sigma-Aldrich)で共標識染色し、リン酸緩衝食塩水で洗浄した。チャンバースライドを、Aqua/Poly-Mount(Polysciences,Inc.、Warrington、PA)を使用してカバーグラスで覆った。画像を、Leica SPE共焦点顕微鏡(Leica Microsystems、Buffalo Grove、IL)を使用して得た。図2を参照のこと。
【0111】
データ分析
見かけの透過係数(Papp、cm/s)を、以下の方程式によって算出した(Ziniauskaiteら、2019年):
【0112】
【数1】
【0113】
(式中:
ΔQr/Δt=時間プロットに対するレシーバチャンバー中での試験化合物の累積量の線形領域の傾き
=試験化合物の初期ドナー濃度
A=表面積)。
【0114】
図1を参照のこと。
密着結合組織率(TiJOR)を、前述した通り、共焦点画像から算出した(Terrynら、2013年)。図2を参照のこと。
【0115】
データを、Prism 9(GraphPad,Inc.、La Jolla、CA)でプロットし、分析した。データは、別個の実験条件を表す各データ点と共に平均±S.E.Mとして表される。データを、ホルム-シダック多重比較検定と共に、一元ANOVA、群分析を使用して分析した。
【0116】
in vivo試験-図3~11
動物
全ての動物は、眼科および視力研究における動物の使用に関するARVO声明である、科学的目的で使用され、フィンランドの動物実験委員会により承認され、モニタリングされるプロトコルを使用する動物保護に対する欧州議会および政府機関のEC指令2010/63/EUによって処置した(動物ライセンス番号ESAVI-9520-2020)。
【0117】
これらの動物試験に対して、誘発時に9~10週齢のBrown Norwayラット(系統:BN/Crlラット;Charles River Laboratories、Germany)を、富栄養化としてポプラの床敷き、巣用材料(ポプラ(Populus tremula)、Tapvei(登録商標)、Estonia OU)およびポリカーボネート製の赤色管(Datesand群)を伴い、一定温度(22±1℃)、相対湿度(50±10%)で、ほの暗い制御された環境(午前7時から午後7時まで明るい)において、食餌(ラット/マウスメンテナンスV1534-000、ssniff Spezialdiaten GmbH)および水道水を自由に利用できる、個々に換気したケージに収容した。実験は、飼育施設での1週間の隔離および順化の後に開始した。
【0118】
全ての動物の体重を、ベースライン、および試験期間にわたって週に2回モニタリングした。
動物の福祉のチェックは毎日行った。動物が福祉の問題で確認された場合、医学ケアを、試験責任者と協働して管理獣医師のガイダンスの下で提供した。
【0119】
誘発後に過剰な体重減少を予防するために、ラットは、湿潤食餌(水道水で水和した通常の食餌)および支持的食餌(Solid Drink-Diet Bio Cup.Triple A Trading)を毎日与えられた。15パーセント超の体重減少を伴う動物は、毎日皮下(s.c.)注射(Ringer-Lactat Animalcare.Ecuphar NV)での追加の水和を受けた。嵌頓包茎および尿閉は、塩酸リドカイン一水和物(2%、Xylocain、AstraZeneca)で処置した。小さい皮膚感染症が起こり、フシジン酸(1%、Isathal(登録商標)、Dechra)で処置した。
【0120】
他の医学的処置は試験中、動物に使用しなかった。
全部で111匹のラットを本試験に使用した。これらから、28匹のラットを、STZ処置した糖尿病のBrown Norwayラットで通常観察されるように、様々な福祉の問題により、主に重度の体重減少(ベースラインから25%超)により、エンドポイントより前に殺処分した。動物をグルコースレベルおよび眼の健康に基づいて処置群に無作為化した。試験の終了時(9週目)に、全部で83匹のラットを試験に含め、5つの処置群に分散された:
群1:組織サンプリングのための未処置(n=18);
群2:STZ+ビヒクル(n=15);
群3:STZ+AF564(または抗VEGF)(n=17);
群4:STZ+ダネガプチド(n=17);
群5:STZ+AF564(または抗VEGF)+ダネガプチド(n=16)。
【0121】
麻酔および反転(reversal)
全ての手順に対して、ラットを、ケタミン(30mg/kg;Ketaminol vet 50mg/ml、Intervet)およびメデトミジン塩酸塩(0.2mg/kg;Cepetor vet 1mg/ml;CP-Pharma Handelsgesellschaft mbH)を含有する混合物の皮下注射により麻酔した。麻酔は、メデトミジン、アチパメゾール(1.0mg/kg;Revertor(商標)、5mg/mL;CP-Pharma Handelsgesellschaft mbH)に対するα-アンタゴニストにより逆転させた。全ての麻酔試薬は、投薬が可能な生理食塩水溶液中の作業ストックに希釈した。乳酸リンゲル液を、脱水を予防するために麻酔中に投与した。
【0122】
糖尿病性網膜症誘発および血中グルコース測定
誘発前、動物を秤量し、血中グルコースをラピッドメーター(AlphaTRAK 2;Zoetis)で測定した。ラットを誘発前の4時間絶食させた。
【0123】
糖尿病を、10mMクエン酸ナトリウム緩衝液、pH4.5において単回用量のストレプトゾトシン(STZ;65mg/kg、Sigma)によりBrown Norwayラット(9~10週齢)に誘発した。STZ注射の後、ラットを48時間、自由な食餌および水道水中の10%(w/v)スクロース溶液を含むこれらのケージに置いた。次の朝、5%のグルコース(1ml)を全ての誘発したラットに腹腔内または皮下で注射した。第1のSTZ注射の4日後、誘発の成功を、伏在静脈からの血液グルコースレベルを測定することによりモニタリングした。糖尿病の誘発は、ラピッドメーターにより測定した血中グルコース値が16mmol/l(288mg/dl)以上であった場合、成功と考えられた。この基準に基づいて糖尿病でなかった動物は、第1のSTZ注射の96時間後、第2のSTZ注射を受けた。
【0124】
選択したラットを、6週間、血液グルコースレベルおよび動物の健康に対してモニタリングし、その後、1匹の動物当たり眼毎に全部で3×IVT眼注射を3週間、週に1回ビヒクルまたは試験化合物の硝子体内(IVT)注射で処置した。
【0125】
血液グルコースレベルを、フォローアップ期間全体で週1回モニタリングした。血中グルコース測定がラピッドメーター(41.7mmol/l超)の範囲に収まる場合、血漿サンプルを収集し、比色アッセイ(ラットグルコースアッセイキット、Crystal Chem)を使用して分析した。図3Aを参照のこと。
【0126】
糖化ヘモグロビン(HbA1c)測定に対する血漿サンプルを、DRの誘発の5週間後および9週間後に収集した。HbA1cを、市販の比濁イムノアッセイ(Konelab Prime 60i;Thermo Scientific)を使用して測定した。図3Bを参照のこと。
【0127】
試液の調製
ビヒクル溶液
D-マンニトールおよびクエン酸三ナトリウム二水和物を含有するビヒクル溶液は、以下の通り調製した:
【0128】
【表1】
【0129】
滅菌溶液を15mlのファルコン管でアリコートし、0.5mlのさらに2つのサンプルを保持サンプルとして標準的な琥珀色の管で貯蔵した。全てのアリコートを+4℃で遮光して貯蔵した。
【0130】
ダネガプチド溶液
0.3mg/mlのダネガプチドの原液を、以下の通り投薬の第1の日から毎週調製した:
【0131】
【表2】
【0132】
0.5mlの2つのアリコートを、保持サンプルとして標準的な琥珀色の管で貯蔵した。溶液の残りを使用して、その週に投薬溶液を調製した(2日以内に投与するため)。原液およびアリコートを+4℃で遮光して貯蔵した。
【0133】
0.3mg/mlのダネガプチド原液は、以下の通り9μg/mlに希釈する:
【0134】
【表3】
【0135】
0.5mlの2つのアリコートを、保持サンプルとして標準的な琥珀色の管で貯蔵した。アリコートを+4℃で遮光して貯蔵した。9μg/mlのダネガプチド溶液をさらに使用して、以下の通り0.3μg/mlの作業溶液を調製し、残りを廃棄した。
【0136】
【表4】
【0137】
0.5mlの2つのアリコートを、保持サンプルとして標準的な琥珀色の管で貯蔵した。アリコートを+4℃で遮光して貯蔵した。作業溶液からの残りは毎日廃棄した。
9μg/mlのダネガプチド溶液をさらに使用して、群「STZ+AF564+ダネガプチド」(例えば、図3B、4、5C、9B、および10Bを参照)、「STZ+抗VEGF+ダネガプチド」(例えば、図5Bを参照)、または「STZ+AF564+Dgp」(例えば、図7E~H、および8E~Hを参照)に対する処置を準備するのに使用した0.6μg/mlの溶液を調製した。
【0138】
【表5】
【0139】
0.5mlの2つのアリコートを、保持サンプルとして標準的な琥珀色の管で貯蔵した。アリコートを+4℃で遮光して貯蔵した。作業溶液からの残りは毎日廃棄した。
ラットVEGF抗体(AF564)溶液
抗VEGF処置の投与に対して(図3B、4、5C、7E~H、8E~H、9B、および10Bでの「STZ+AF564」、または図5Bでの「STZ+抗VEGF」)、ラット抗VEGF抗体(AF564;R&D Systems)を、ビヒクル溶液に0.675mg/mlの濃度で溶解した。1バイアルの100μgの抗体を150μlのビヒクル溶液に溶解して、投薬溶液を調製した。
【0140】
ダネガプチドおよび抗VEGF抗体の共投与に対して(図3B、4、5C、9B、および10Bでの「STZ+AF564+ダネガプチド」;図5Bでの「STZ+抗VEGF+ダネガプチド」;または図7E~Hおよび8E~Hでの「STZ+AF564+Dgp」)、1バイアルの抗体(100μg)を75μlのビヒクルに溶解して、2×AF564原液を作製した後、投薬溶液において0.675mg/mlのAF564抗体および0.3μg/mlのダネガプチドの最終濃度になるように等量の2×作業ストックのダネガプチド(0.6μg/ml)と組み合わせた。
【0141】
5マイクロリットルの投薬溶液を、ラットの眼に硝子体内注射により送達した。ラットの眼は、およそ20~25μlの硝子体液を含有する。ゆえに、5μlの被験物質の送達は、Filekら、2019年によって、0.125mg/mlのヒトの臨床用量に類似する、0.135~0.1125mg/mlの眼における抗VEGF抗体の最終濃度への希釈をもたらす。
【0142】
硝子体内(IVT)処置
IVT処置投与のために、動物は麻酔した動物であり、立体鏡(Leica Microsystems)の下に置き、ヨウ素の液滴は、角膜上に適用し、均一に広がることを可能にした(Minimsポビドンヨード5%、Bausch&Lomb)。硝子体チャンバーに曝露する脈絡膜の小さい切開を、縁近くの30Gニードルを使用して実施した。付着した33Gニードル(Hamilton Bonaduz AG、Bonaduz)を伴う微量注射器を使用して、硝子体内腔に化合物を注射した。試液を10秒間、硝子体内腔に注射し、ニードルを取り除くまでさらに30秒間そのままにして、化合物の逆流を防いだ。クロラムフェニコール軟膏を注射の後に適用した(Oftan Chlora、Santen Oy)。異なる処置を、STZ誘発後の6週目、7週目、および8週目に、5μlの体積の両硝子体内の投与により3回投与した。
【0143】
in vivo撮像
糖尿病性網膜症および関連する血管漏出の発症の後、DR誘発の後の9週目に、スペクトラルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)を行った。in vivo撮像分析は、試験動物のサブセット(処置群当たり9~14匹)に対して実施した。in vivo撮像に加えて、全ての動物に対する糖尿病性白内障の発症を、誘発後の6週目、7週目、8週目および9週目に評価した。
【0144】
スペクトラルドメイン光干渉断層撮影(SD-OCT)
麻酔したラットを、図5Cに示す9週目のSD-OCT(Envisu R2200.Bioptigen Inc./Leica Microsystems)網膜スキャンで撮像した。スキャンした領域は、視神経周囲に中心がある網膜の2.4×2.4mmを網羅する。各スキャンは100Bスキャンからなり、その各々は1000Aスキャンからなる。SD-OCTを、殺処分およびサンプリングの前に、DR誘発後の9週目に両目で実施した。
【0145】
9週目の網膜の厚さを、転移学習アプローチを使用するU-Net構築に基づいて畳み込みニューラルネットワークにより分析した。得られるセグメンテーションマスクを使用して、各画素幅のカラム、すなわちa-スキャンで層の厚さを測定し、1つのb-スキャン当たり各層の1000個の測定点を得た。自動品質管理基準セットに合格した測定点のみ算出に使用した。厚さの結果は、神経節細胞層、内部叢状および内部顆粒層を含む内部網膜;ならびに外部叢状層、外部顆粒層、内節および外節、ならびにRPE/脈絡膜を含む外部網膜のSD-OCT測定として表された。網膜の厚さの測定、例えば網膜の厚さの測定での変化は、スキャン当たりの全ての測定値の平均を算出することにより、または上側頭、上鼻、下側頭および下鼻の領域の詳しい分析により得られた(眼のこれらの領域を示す模式図の図6を参照のこと)。SD-OCTの結果については図5、7および8を参照のこと。
【0146】
動物殺処分および組織収集
試験エンドポイントの前の死亡または殺処分を見出した動物からサンプルは収集しなかった。
【0147】
網膜血管系分析のためのサンプル
エンドポイントで、処置群当たり6匹のラットを、過剰な麻酔により殺処分し、0.9%のNaCl溶液で心臓経由で灌流した(10ml/分で3分間、120S/DV Manual Control Variable Speed Pump、Watson-Marlow Pumps)。眼(n=12)を除核し、方向に印を付け、網膜平面標本の作成の前に4%のPFSに置いた。
【0148】
エバンスブルー網膜漏出測定
殺処分の前、処置群当たり5匹のラットは、4%のエバンスブルー溶液(100μl/100g)で尾静脈に静脈内注射した。2時間後、血漿サンプルを収集し、動物を、10ml/分の流速で30分間、生理食塩水溶液で心臓経由で灌流した(120S/DV Manual Control Variable Speed Pump)。眼(n=10)を除核し、網膜を切除し、急速に凍結させ、エバンスブルー溢出の分析まで-80℃で貯蔵した。結果については図9を参照のこと。
【0149】
組織処理
PAS組織学的染色ならびに無細胞性の毛細管および周皮細胞分析
網膜平面標本をトリプシン消化して、網膜血管系を単離し、過ヨウ素酸シッフ(PAS)を使用して染色した。簡潔には、網膜平面標本を終夜、蒸留水中に置き、+37℃で1.5時間、0.1Mトリス-HCl緩衝液中の4%のトリプシン(pH7.8)でインキュベートした。サンプルを蒸留水で注意深く洗浄して、血管系から網膜細胞層を脱離させた。血管平面標本を顕微鏡スライドガラスで乾燥させ、PAS染色用に処理した。サンプルを酸化し、dHOですすぎ、シッフの試薬に入れ、洗浄し、ヘマトキシリンで対比染色し、酸アルコールで分化させ、脱水し、Depexで封入した。
【0150】
中心領域から、および網膜血管系の末梢領域から得られる4~6個の個別の画像を、Leica Thunder 3D組織撮影装置(Leica Microsystems)を使用して得た。無細胞性の毛細管の数、周皮細胞の数および周皮細胞ゴーストの数を、実験群の割当てについて盲検とした研究員により手動で計数した。
【0151】
群当たりのデータ点の数は以下の通りであった:未処置(n=67)、STZ+ビヒクル(n=59)、STZ+AF564(n=45)、STZ+ダネガプチド(n=58)、STZ+AF564+ダネガプチド(n=61)。
【0152】
代表的なPAS画像については図11、および結果については図10を参照のこと。
エバンスブルー網膜溢出測定
網膜を、1:10比(w/v)でホルムアミドでホモジナイズし、+70°で終夜インキュベートした。ホモジェネートを45分間、20,800×gで遠心分離し、上清を正常な管に移した。30μlの上清を384ウェルプレートに3回ピペットで入れた。サンプルの吸光度(λ=620nm)を、プレートリーダー(Cytation3、BioTek Instruments Inc.、Winooski、VT)を使用して測定し、各サンプルでのエバンスブルーの濃度を、エバンスブルーの標準曲線に対して算出し、組織重量に正規化した。結果については図9を参照のこと。
【0153】
データ分析
定量的データをグラフ化し、分析し、示されるように、平均±標準偏差(SD)または標準誤差(SEM)として表した。正規性を評価し、データを対数変換して、必要ならば、ガウス分布を達成した。外れ値を、1%のQ係数を伴うROUT法を使用して同定した。差をp<0.05レベルで統計的に有意であると考えられた。データを、示されるように、適切な統計検定を使用したGraphPad Prismソフトウェア(v9.1.2. GraphPad Inc.、La Jolla、CA)を使用して分析した。
【0154】
結果
実験試験の結果は、図1~11に示す。
図1:ダネガプチドは、ストレスをかけたヒト網膜色素上皮細胞単層での透過性の低下として媒介される偽性DRおよびAMDの傷害を保護する。
【0155】
トランズウェルプレート中のヒト網膜上皮細胞(ARPE-19)のコンフルエントの単層を24時間、ビヒクル(完全培地)またはダネガプチド(DGP、100nM)のいずれかで処置した。その後、培地を、(i)ビヒクル(完全培地;図1Aおよび1B、左カラム「-,-」);(ii)30mM高グルコース(高血糖ストレス)および200μMの亜致死性の濃度のtert-ブチルヒドロペルオキシド(tBHP)(酸化ストレス)を補充した培地(図1Aおよび1B、中段カラム、「+,-」);または(iii)30mMグルコース、亜致死性の濃度のtert-ブチルヒドロペルオキシド(tBHP、200μM)、および100nMダネガプチドを補充した培地(図1Aおよび1B、右カラム、「+,+」)で置き換え、48時間インキュベートした。
【0156】
30mM高グルコース(高血糖ストレス)および酸化ストレスの組合せは、RPE関門の機能障害を引き起こし、2つの蛍光透過性マーカー、6-カルボキシフルオレセイン(6-CF;図1A)またはローダミンB(RhoB;図1B)を使用して示されるRPE単層にわたる透過性で増加する。高血糖性および酸化ストレスの状態によるRPE単層透過性の増大、ならびにダネガプチドによる保護を、トランズウェルチャンバーインサートおよびRPE単層の先端側への透過性マーカーを添加した10、20、30、45、60、90および120分後にサンプルを採取し、トランズウェルプレートの下部チャンバーおよびRPE単層の基底外側に存在する透過性マーカーへの流出またはその量を測定することにより測定した。
【0157】
下部チャンバーに存在する6-CFおよびRhoBの累積濃度を、マイクロプレートリーダー(Cytation5、Agilent、Santa Clara、CA)を使用して確立した標準曲線に基づいて蛍光シグナルの量を測定することにより算出した。傍細胞の透過性の量を見かけの透過係数(Papp)として定量し、定常状態流速を決定するにより算出した。高血糖および酸化ストレスの偽性DRおよびAMDの傷害は、RPE単層にわたって6-CFおよびRhoB(n=6~8)の両方の透過性を有意に増大させ(図1Aおよび1B、中段カラム、「+,-」;左カラム、「-,-」と比較した)、100mMダネガプチドでの処置は、これらのRPE関門ストレッサーにより引き起こされる透過性(n=6~8)でのこの増加を完全に保護した(図1Aおよび1B、右カラム、「+,+」)。
【0158】
図2:ダネガプチドは、ストレスをかけた単層においてヒト網膜色素上皮細胞間の改善した密着結合組織率(TiJOR)および改善した細胞-細胞共役を介して媒介される偽性DRおよびAMDの傷害を保護する。
【0159】
ヒト網膜上皮細胞(ARPE-19)を播種し、顕微鏡チャンバースライドで培養し、コンフルエンシーまで成長させて、24時間ビヒクル(完全培地)またはダネガプチド(DGP、100nM)のいずれかの処置状態においてRPE細胞-細胞共役で可視化した密着単層を形成した。その後、培地を、(i)ビヒクル(完全培地;図2A、左カラム「-,-」;図2B、左画像);(ii)30mMグルコース(高血糖ストレス)および亜致死性の濃度のtert-ブチルヒドロペルオキシド(tBHP、200μM)(酸化ストレス)を補充した培地(図2A、中段カラム「+,-」;図2B、中段画像);または(iii)30mMグルコース、亜致死性の濃度のtert-ブチルヒドロペルオキシド(tBHP、200μM)、および100nMダネガプチドを補充した培地(図2A、右カラム「+,+」;図2B、右画像)で置き換え、48時間インキュベートした。結果は、図2の上段のグラフに示す(図2A)。
【0160】
密着結合組織を、ギャップ結合膜貫通タンパク質、Cx43、およびTJ膜貫通タンパク質、オクルディンおよびクローディンの両方の細胞質ドメインに結合する密着結合の主要な構成要素である、抗閉鎖帯1(ZO-1)免疫染色(図2の下段の画像;すなわち、図2B)を使用して免疫細胞化学で評価した。密着結合組織指標(TiJOR)を、Terrynら、2013年によって算出し、TJ依存性細胞-細胞共役の度合いを測定する。高血糖および酸化ストレスの偽性DRおよびAMDの傷害は、TiJORを有意に低下した(n=13~16)。100nMのダネガプチドでの処置は、密着結合組織のこの喪失(n=13~16)およびRPE細胞-細胞脱共役を完全に保護したが、これらの高血糖性および酸化性の細胞ストレッサーの組合せで引き起こされたRPE関門の機能障害および病的RPE傍細胞の透過性を保護するダネガプチドの能力に相関する。
【0161】
高グルコースおよび酸化ストレス(すなわち、細胞ストレス)は、密着結合組織崩壊(すなわち、TiJORの低下)および細胞-細胞共役での崩壊をもたらす。これらの結果は、ダネガプチドがストレス条件下で細胞のこの脱共役から保護することができることを示す。すなわち、ダネガプチドはTiJORを改善し、ストレスに曝されたRPE細胞間の細胞-細胞共役を維持することができる。
【0162】
図3:in vivo試験中の血液グルコースレベル(mmol/l)および血液糖化ヘモグロビン(HbA1C)レベル(mmol/mol)。
血液グルコースレベルを、全ての動物におけるSTZでのDR誘発後、隔週でラピッドメーターにより測定した。ラピッドメーターでの読取りが範囲外であったような場合、さらなる血漿サンプルを収集し、蛍光光度分析法を使用して測定した。血液グルコースレベルは、未処置群(二元ANOVA、p<0.001)と比較して、誘発後の4日目に有意に増加した(図3A)。
【0163】
糖化ヘモグロビン(HbA1c)のレベルは、試験35日目に有意に増加し、試験の終了時(60日目)に類似のレベルを維持した(二元ANOVA、p<0.001)(図3B)。
【0164】
図4:in vivo試験中の白内障スコア。
高血糖誘発性白内障の出現は、STZモデルの一般的な表現型であり、被験物質投与の日および試験期間の終了時にスコア化させた。白内障の出現は、正常な水晶体である0から、75%超の水晶体を網羅する混濁の場合の3まででスコア化させた。未処置動物は、試験中のいずれの時点でもいかなる白内障または混濁も有さなかった。様々なSTZ誘発性群は、IVT投与後の試験期間、類似する白内障スコアを示したが、42日目に出現した軽度の白内障は、60日目に中程度の重症度に達成するより重度となった(図4)。しかし、STZ処置群間で白内障で有意な差が存在しなかった。
【0165】
図5:ダネガプチドは、STZ誘発後、DRのラットにおいて外部網膜肥厚を保護する。
外部網膜の厚さの増大は、典型的には、Brown Norwayラットにおける初期のSTZ誘発性DRの間に観察された。小さい絶対的な増大にかかわらず、典型的に3~5%の範囲であるが、SD-OCTを使用する最先端のin vivo撮像は、障害した外部血液網膜関門の指標となる浮腫または細胞腫脹の指標であるこれらの生物学的に関連する差を明らかにすることができる。
【0166】
SD-OCTスキャンをサンプリング前の9週目に行った。網膜スキャンはセグメント化され、厚さは畳み込みニューラルネットワークアルゴリズムにより分析された。
外部網膜の厚さを、24か所からのSD-OCT画像から定量化して、外部網膜の厚さの平均厚さを生成した。外れ値を、GROUT法(Q=1%)を使用して除去し、全部で5個の外れ値の除去をもたらした(未処置:0、STZ+ビヒクル:1;STZ+AF564:1;STZ+ダネガプチド:1;STZ+AF564+ダネガプチド:2)。正規性に対して試験する場合、SD-OCTデータは正規分布を示した。
【0167】
Brown Norwayラットでのストレプトゾトシン(STZ)誘発は、SD-OCT撮像、ならびに神経回路網アルゴリズムでの外部叢状、外部顆粒層、内節および外節ならびにRPE/脈絡膜層での変化の定量法により測定される通り、STZ誘発を受けず、DRを有していなかった未処置動物(119.8±0.5μm;n=16;t検定p<0.01)と比較した場合、誘発の9週間後、高血糖、DR、およびSTZ+ビヒクル(123.8±0.9μm;n=21;t検定p<0.01)網膜での外部網膜の厚さの統計的に有意な増大をもたらした(図5A)。
【0168】
3週間の処置で毎週、眼において100nMのダネガプチドを標的とする硝子体内(IVT)眼注射を局所化したことによるダネガプチド処置は、SD-OCT撮像により測定する外部網膜の厚さのこの増加を予防したが(119.7±0.8μm;n=27;p<0.05)、抗VEGF化合物(AF564;122.7±1.2μm;n=25;p=0.60)および抗VEGF+ダネガプチド注射処置(122.3±1.1μm;n=17;p=0.60)での処置は、保護効果がなかった(図5B)。oBRBの病的肥厚は、RPE関門の機能障害により引き起こされ、これはDMEおよびAMDの顕著な特徴である。DRを伴うこれらの糖尿病のラットにおいて外部網膜層のこの肥厚を予防するダネガプチドの能力は、ダネガプチドがAMDならびにDRおよびDMEに対する効果的な療法であり得ることを示す(先に示す)。
【0169】
STZ誘発の9週間後、左右の眼から外部網膜の厚さの代表的なSD-OCTスキャンは、図5Cに示す。
理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、STZ誘発により引き起こされた外部網膜の厚さの増大が細胞ストレスの結果として細胞腫脹を示すと考える。これはCx43ヘミチャネル開口によると考えられ、水が細胞に浸透することを可能にする。ダネガプチドは、Cx43ヘミチャネルを閉鎖する可能性があるので、細胞腫脹およびそれによる外部網膜層肥厚から対象を保護する。
【0170】
図7:ダネガプチドは、網膜全体で外部網膜肥厚を保護する。
外部網膜の厚さは、各測定に寄与する8か所(図7および表1)を含む、網膜の異なる領域、具体的には上鼻(SN)、上側頭(ST)、下鼻(IN)、および下側頭(IT)で分析した(位置については図6を参照のこと)。
【0171】
【表6】
【0172】
外部網膜の厚さは、全ての領域において未処置ラットと比較したSTZ+ビヒクル処置したラットで統計的な有意に増加した(図7A~D;表1、「未処置」と比較した「STZ+ビヒクル」も参照のこと)。ダネガプチドは、全ての領域において外部網膜の肥厚を予防した(図7E~H;表1、「STZ+ビヒクル」と比較した「STZ+ダネガプチド」も参照のこと)。
【0173】
図8.内部網膜の厚さ(および網膜全体の厚さ)の領域分析。
SD-OCTスキャンをサンプリング前の9週目に行った。網膜スキャンはセグメント化され、厚さは畳み込みニューラルネットワークアルゴリズムにより分析された。内部網膜の厚さを領域により分析した(図8)。分析した領域は、上鼻(SN)、上側頭(ST)、下鼻(IN)、および下側頭(IT)であった(位置については図6を参照のこと)。
【0174】
網膜は、未処置動物と比較してSTZ誘発した眼で有意に薄かった(図8A~D)。しかし、統計的に有意な差は、処置群間で同定されなかった(図8E~H)。
STZ動物での網膜の全体の厚さの分析は、内部網膜の厚さの低減および外部網膜の厚さの付随的な増大により困惑させられるので、典型的には、処置の薬理学的効果を分析するのに十分な粒度性を提供しない。網膜の全体の厚さの測定は、表2に概説する。
【0175】
【表7】
【0176】
図9:ダネガプチドおよび抗VEGF処置は、糖尿病性網膜においてエバンスブルー(EB)溢出を軽減する。
エバンスブルーの溢出は、多数の臓器系の血管漏出を定量化する非常に認識されている測定である。網膜の場合、エバンスブルーの溢出は、内部または外部網膜血液関門のいずれか(またはその両方)が障害される場合、組織溶解物で検出可能である。
【0177】
ダネガプチドの、単独または抗VEGF抗体と組み合わせた効果を決定するために、エバンスブルーを静脈内注射し、2時間灌流させた。この期間の後、血液サンプルを収集して、血漿中のエバンスブルーの量を決定し、網膜におけるエバンスブルー溢出の定量化に対する正規化因子として機能した。提示される値は、血漿中のエバンスブルーの濃度で除算した組織重量1ミリグラム当たりのエバンスブルーの濃度(ng/ml)として導き出される、エバンスブルーの正規化した量である。
【0178】
データセット全体からの1つのデータ点(「STZ+ダネガプチド」群における)を、1%のQ値を伴うGROUT法を使用する外れ値分析に基づいて排除した。単一の外れ値は、同じサンプルの2つの追加の技術的な複製物の測定から30倍超だけ偏向されたこの単一の値としての技術的な人工物と考えられた。その後、データをコルモゴロフ-スミルノフ検定を使用して正規性に対して分析した。実験群の大部分は、正規分布に従わなかったので(表3)、データを対数変換した。
【0179】
【表8】
【0180】
EB溢出の変異性が与えられると、Brown NorwayラットでのSTZモデルで典型的であるが、様々な処置群の効果の大きさを分析した。最初に、STZに続くEB溢出の増加倍数を決定するために、データを未処置群に正規化した(図9A)。STZの誘発は、誘発の9週間後、EB溢出での5倍超の増加をもたらした(未処置での100±13.5%対STZ+ビヒクルでの628±212.5%、n=10~11、t検定p<0.01)。
【0181】
その後、データをSTZ+ビヒクル群に正規化して、IVT処置の介入の相対的に効果的な大きさを決定した。データを、相対的データセットに対してダゴスティーノおよびピアソン検定を使用して正規性を評価し、全てのSTZ群が正規性に合格した。
【0182】
AF564での抗VEGF処置は、82.3%の低下(図9B、「STZ+ビヒクル」と比較した「STZ+AF564」)に対応する、EB溢出の統計的に有意な低下をもたらした(17.8±4.3%のSTZ+ビヒクル、n=10、一元ANOVA、p<0.01、ホルム-シダック多重比較検定、p<0.01)。
【0183】
同様に、ダネガプチドは、68.9%の低下(図9B、「STZ+ビヒクル」と比較した「STZ+ダネガプチド」)に対応する、EB溢出の統計的に有意な低下を示した(31.1±5.3%のSTZ+ビヒクル、n=9、一元ANOVA、p<0.01、ホルム-シダック多重比較検定、p<0.05)。
【0184】
抗VEGFおよびダネガプチドの併用処置の効果は、65.6%の低下(図9B、「STZ+ビヒクル」と比較した「STZ+AF564+ダネガプチド」)と等価である、ダネガプチド単独(34.4±10.3%、n=10、p<0.05)と類似する効果を示した。
【0185】
図10および11:ダネガプチドは、STZの誘発の9週間後、周皮細胞の喪失を予防する。
血管異常およびSTZ誘発によるDRの誘発の効果もまた、トリプシン消化した網膜ホールマウントでの無細胞性の毛細管、周皮細胞および周皮細胞ゴーストの定量化により評価した。定量化のために、4~15個の個別の画像を、各動物に対して定量化し、各画像からのデータを分析に含めた。
【0186】
Brown NorwayラットにおいてSTZ誘発性DRモデルで実施した本発明者らの事前の試験に基づいて、血管異常を決定する最も信頼性が高い読出しは、周皮細胞ゴーストの定量化であり、周皮細胞ゴーストは、疾患の初期に出現し、網膜周皮細胞の喪失に相当するが、無細胞性の毛細管は、典型的には、後期の時点で観察される。具体的に、予備試験では、STZによるDRの誘発が12週間後、周皮細胞ゴーストの統計的に有意な増加をもたらすことを決定する。したがって、9週目に正常な周皮細胞の計数で、周皮細胞ゴーストの存在を検出することを予想した。
【0187】
これらの観察を、周皮細胞の総数(生存可能な周皮細胞および周皮細胞ゴーストの合計)または無細胞性の毛細管での差がSTZ誘発性動物で観察されなかったので、本試験で確認した(表4;「未処置」と比較した「STZ+ビヒクル」)。さらに、様々な処置群間の有意な差は同定されなかった(表4)。
【0188】
【表9】
【0189】
周皮細胞および周皮細胞ゴーストの数の合計として定量化された、周皮細胞の総数に統計的に有意な差は存在しなかった(一元ANOVA、p=0.51)。同様に、ビヒクル処置した(STZ+ビヒクル)眼と比較した、抗VEGF処置した群(STZ+AF564;p=0.06)での無細胞性の毛細管の減少に対する統計的な傾向を除いて、無細胞性の毛細管の数での統計的に有意な差は存在しなかった(一元ANOVA、p<0.001と、続くホルム-シダック多重比較検定)。
【0190】
その後、周皮細胞ゴーストの数を定量化した。外れ値を、GROUT法(Q=1%)を使用してデータセットから除去し、収集した全部で324個のデータ点のうち19個の除去をもたらした。
【0191】
周皮細胞ゴーストの存在に基づいてモデルを検証するために、未処置群の網膜における周皮細胞ゴーストの数を、最初にビヒクル処置したSTZ誘発した動物の網膜における数と比較した。STZ誘発は、未処置ラットと比較して、網膜における周皮細胞ゴーストの数の統計的に有意な増加をもたらした(図10A)。
【0192】
その後、STZ群を、一元ANOVA(p<0.05)と、続くダネット多重比較検定により比較した(図10B)。抗VEGF抗体(AF564;p<0.01)およびダネガプチド(p<0.001)の両方での処置は、周皮細胞ゴーストの統計的に有意な低下をもたらしたが、併用処置は、統計的な効果を示さなかった(p=0.11)。
【0193】
トリプシン消化し、PAS染色した網膜ホールマウントの代表例は図11に示し、無細胞性の毛細管(矢印)、周皮細胞(指示せず)および周皮細胞ゴースト(矢先)を示す。
結論
ARPE-19細胞(48時間)の亜致死性の酸化ストレスおよび高血糖への曝露は、Pappでの統計的に有意な増加(図1Aおよび1B、中段カラム、「+,-」;対照の左カラム、「-,-」と比較した)、およびTiJORでの付随的な減少(図2A、中段カラム、「+,-」;対照の左カラム、「-,-」と比較した)をもたらした。ダネガプチド(100nM)での前処置は、透過性でのこの増加を完全に保護した(図1Aおよび1B、右カラム、「+,+」;対照の左カラム、「-,-」および中段カラム、「+,-」と比較した)。同様に、ダネガプチドは、TiJORの定量化により評価されるように密着結合組織崩壊および細胞-細胞共役での崩壊に対する部分的な保護を示した(図2A、右カラム、「+,+」;対照の左カラム、「-,-」および中段カラム、「+,-」と比較した)。
【0194】
STZは、試験を通して持続的に上昇するグルコース(図3A)およびヘモグロビンA1cレベル(図3B)により定量化されるように、高血糖の信頼できる誘発をもたらした。STZ誘発性白内障は、このモデルで共通であり、試験の終了により中程度を発症した(図4)。全ての被験物質は良好な耐用性が高く、眼毒性の徴候は、肉眼での眼科検査で同定されなかった。被験物質は、白内障の発症で異なる効果を発揮しなかった(図4)。
【0195】
STZによるDRの誘発は、ダネガプチド(p<0.05)(図5B;「STZ+ダネガプチド」)により完全に逆転させた外部網膜の厚さでの統計的に有意な増加をもたらした(図5B;「未処置」と比較した「STZ+ビヒクル」)。対照的に、AF564(p=0.60)(図5B;「STZ+AF564」)および併用処置(p=0.60)(図5B;「STZ+AF564+ダネガプチド」)は効果がなかった。ダネガプチドによる外部網膜の厚さのこの低下は、網膜全体で示した(図7)。
【0196】
陽性対照、抗VEGF抗体AF564は、EB溢出の統計的に有意な82.3%の低下をもたらした(p<0.01)(図9B;「STZ+ビヒクル」と比較した「STZ+AF564」)。同様に、ダネガプチドは、EB溢出の68.9%の低下をもたらした(p<0.05)(図9B;「STZ+ビヒクル」と比較した「STZ+ダネガプチド」)。AF564およびダネガプチドの併用処置は、ダネガプチド単独としてEB溢出での同様の効果を示した(65.6%の低下、p<0.05)(図9B;「STZ+ビヒクル」および「STZ+ダネガプチド」と比較した「STZ+AF564+ダネガプチド」)。
【0197】
周皮細胞ゴーストの数は、STZラットで有意に増加した(p<0.05)(図10A;「未処置」と比較した「STZ+ビヒクル」)。AF564(p<0.01)(図10B;「STZ+AF564」)およびダネガプチド(p<0.001)(図10B;「STZ+ダネガプチド」)の両方とも周皮細胞ゴーストの統計的に有意な低減を誘発したが、併用処置は効果がなかった(p=0.11)(図10B;「STZ+AF564+ダネガプチド」)。
【0198】
ダネガプチドの生物学的に関連する効果は、内部網膜の厚さで同定されなかった。
ダネガプチドが、TJに関連する方法での高血糖性および酸化ストレスによるRPE単層透過性での増大を予防するダネガプチドの能力ならびにDRのラットでの外部網膜層の肥厚を予防するその能力により示されるようなRPE関門の機能障害から保護することができるというこれらの合わせた所見(図1~11)は、ダネガプチドがd-AMD、湿性AMDまたは血管新生AMDの患者に対して効果的な処置であり得ることを示す。
【0199】
ダネガプチドは、以下によるギャップ結合でのコネキシン43(Cx43)を部分的に介して、血液網膜関門(BRB)の完全性の喪失から保護する:
・内部BRB:DRで観察されるだけでなく、AMDの患者でも最近認識されている周皮細胞および内皮細胞の喪失ならびに血管漏出からの保護(例えば、Hudsonら、2020年およびHadziahmetovicら、2021年を参照のこと);ならびに
・外部BRB:湿性AMDを引き起こす網膜下腔からの活性な水の移動および血管漏出を含む、RPE細胞層の関門の完全性および関連する機能の低下をもたらす網膜色素上皮細胞の共役関門の完全性の喪失からの保護。
【0200】
したがって、ダネガプチドは、密着結合および細胞-細胞共役の崩壊に関連する糖尿病性網膜症(DR)および加齢黄斑変性(AMD)の公知の病理を模倣する実験条件に対する強力な保護を発揮する。加えて、病的Cx43に基づくヘミチャネル開口から保護することによるダネガプチドは、細胞腫脹、外部網膜細胞層の肥厚および細胞外区画へのATPの病的漏出から保護することができ、ATPは炎症を起こすことが知られている。ダネガプチドは、ラットに良好な耐用性がさらに高く、ストレスおよびDR関連の周皮細胞の喪失、網膜血管漏出ならびに血液網膜関門の崩壊(内部および外部BRBの両方)に対する有意な保護をもたらす。血管漏出および周皮細胞の喪失でダネガプチドにより誘発した保護のレベルは、抗VEGF処置で観察されたものと類似した。加えて、ダネガプチドは、外部網膜の厚さでのストレスおよびDRで誘発した増加を保護したが、抗VEGF処置では示さなかった。
【0201】
参考文献
全ての公報、本明細書に記載されるか、または本出願で提出される特許および特許出願は、情報開示陳述書の一部として提出される参考文献を含むが、その全体を参照により組み込まれる。
【0202】
【表10】
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
【国際調査報告】