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  • 特表-自動二輪車用タイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20241226BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20241226BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20241226BHJP
   B60C 11/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C11/00 C
B60C9/08 B
B60C9/00 A
B60C11/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529464
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 IB2022062350
(87)【国際公開番号】W WO2023111970
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】102021000031685
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598164186
【氏名又は名称】ピレリ・タイヤ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ボナッコルシ,ジュリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】トルチアーナ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】マリアーニ,マリオ
(72)【発明者】
【氏名】フレッザ,フェデリカ
(72)【発明者】
【氏名】ナポリターノ,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】ペズロ,ジュゼッペ
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA34
3D131AA44
3D131BA02
3D131BA04
3D131BA05
3D131BB06
3D131BC12
3D131BC13
3D131BC19
3D131DA07
3D131EA04V
3D131EB07U
(57)【要約】
ラジアルカーカス構造(2)およびラジアルカーカス構造(2)に対して半径方向外側位置に適用されたトレッドバンド(8)を備える自動二輪車用タイヤであって、ラジアルカーカス構造(2)が、第1の複数のテキスタイル補強コード(30)と第2の複数のテキスタイル補強コード(32)とをそれぞれ含む第1のカーカスプライ(3a)および第2のカーカスプライ(3b)を備え、第1のテキスタイル補強コード(31)が互いに平行であり、第2のテキスタイル補強コード(33)が互いに平行であり、第1のテキスタイル補強コード(31)および第2のテキスタイル補強コード(33)が、トレッドバンド(8)のクラウン部分(8c)においてタイヤの赤道面(X-X)に対して第1および第2の傾斜をそれぞれ有し、第2の傾斜が、第1の傾斜の反対向きである、自動二輪車用タイヤ。第1の複数のテキスタイル補強コード(31)および第2の複数のテキスタイル補強コード(33)は、2%伸びで0.35cN/Tex~1.2cN/Texに含まれかつ5%伸びで0.5cN/Tex~3cN/Texに含まれる引張強度を有する。赤道面(X-X)にまたがって配置されたトレッドバンド(8)の少なくとも1つの中央環状セクター(8a)は、9.0~14.0に含まれる70℃で測定した静的弾性係数Ca3、0.120~0.160に含まれ70℃および10Hzで測定したタンデルタ、ならびに3.7~4.1に含まれる70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’を有する加硫エラストマー材料で作られている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアルカーカス構造(2)およびラジアルカーカス構造(2)に対して半径方向外側位置に適用されたトレッドバンド(8)を備える自動二輪車用タイヤ(1)であって、
前記ラジアルカーカス構造(2)が、第1の複数のテキスタイル補強コード(30)を含む第1のカーカスプライ(3a)および第2の複数のテキスタイル補強コード(32)を含む第2のカーカスプライ(3b)を備え、
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)のテキスタイル補強コード(31)が、互いに実質的に平行であり、前記トレッドバンド(8)のクラウン部分(8c)において、タイヤの赤道面(X-X)に対して予め定められた傾斜角度(A1)の第1の傾斜を有し、第2の複数のテキスタイル補強コード(32)のテキスタイル補強コード(33)が、互いに実質的に平行であり、前記トレッドバンド(8)の前記クラウン部分(8c)において、タイヤの赤道面(X-X)に対して前記予め定められた傾斜角度(A1)の第2の傾斜を有し、前記第2の傾斜が、前記第1の傾斜と反対向きであり、
前記第2のカーカスプライ(3b)が、第1のカーカスプライ(3a)上に半径方向に並置されており、
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)および前記第2の複数のテキスタイル補強コード(32)の前記テキスタイル補強コード(31、33)が、2%伸びで0.35cN/Tex~1.2cN/Texに含まれかつ5%伸びで0.5cN/Tex~3cN/Texに含まれる引張強度を有し、
前記赤道面(X-X)にまたがって配置された前記トレッドバンド(8)の少なくとも1つの中央環状セクター(8a)が、9.0~14.0、好ましくは10.0~13.0に含まれる70℃で測定した静的弾性係数Ca3、0.120~0.160に含まれ、好ましくは0.135~0.155に含まれる70℃および10Hzで測定したタンデルタ、ならびに3.7~4.1に含まれる70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’を有する加硫エラストマー材料で作られている、
自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項2】
前記トレッドバンド(8)の前記中央環状セクター(8a)が、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が0.03~0.04に含まれる加硫エラストマー材料で作られている、請求項1に記載のタイヤ(1)。
【請求項3】
前記トレッドバンド(8)が、タイヤの赤道面(X-X)に対して両側に配置されかつ前記中央環状セクター(8a)に隣接して配置された2つの側方環状セクター(8b)を備え;前記中央環状セクター(8a)が、前記2つの側方環状セクター(8b)の前記加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定したタンデルタよりも小さい、70℃および10Hzで測定したタンデルタを有する加硫エラストマー材料で作られている、請求項1または2に記載のタイヤ(1)。
【請求項4】
前記中央環状セクター(8a)が、前記2つの側方環状セクター(8b)の加硫エラストマー材料の70℃で測定した静的弾性係数Ca3よりも大きい、70℃で測定した静的弾性係数Ca3を有する加硫エラストマー材料で作られている、請求項3に記載のタイヤ(1)。
【請求項5】
前記中央環状セクター(8a)が、前記2つの側方環状セクター(8b)の加硫エラストマー材料の、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比よりも大きい、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比を有する加硫エラストマー材料で作られている、請求項3または4に記載のタイヤ(1)。
【請求項6】
前記中央環状セクター(8a)が、前記トレッドバンド(8)の幅の15%よりも大きくかつ前記トレッドバンド(8)の幅の30%より小さい幅の軸方向延長部を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項7】
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)および前記第2の複数のテキスタイル補強コード(32)の前記テキスタイル補強コード(31、33)が、ナイロンで作られている、請求項1から6のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項8】
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)および前記第2の複数のテキスタイル補強コード(32)の前記テキスタイル補強コード(31、33)が、2000~4600dTexに含まれる線密度を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項9】
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)および前記第2の複数のテキスタイル補強コード(32)の前記テキスタイル補強コード(31、33)が、1100×2dTex~1840×2dTexに含まれる線密度を有し、「×2」という用語が、各補強コードにおいて一緒により合わされたヤーンの端部の数を表す、請求項8に記載のタイヤ(1)。
【請求項10】
前記第1の複数のテキスタイル補強コードおよび是kに第2の複数のテキスタイル補強コードの前記テキスタイル補強コードが、80コード/dm~130コード/dmに含まれるスレッドカウントを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項11】
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)および前記第2の複数のテキスタイル補強コード(32)の前記テキスタイル補強コード(31、33)は、1デシメートル当たり30~65回より合わされた前記テキスタイル補強コードを形成する、各端部および端部の全体それぞれに付与されたねじれを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項12】
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)および前記第2の複数のテキスタイル補強コード(32)の前記テキスタイル補強コード(31、33)の前記予め定められた傾斜角度(A1)が、65°~90°に含まれる、請求項1から11のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項13】
前記ラジアルカーカス構造(2)に対して半径方向外側位置かつ前記トレッドバンド(8)に対して半径方向内側位置にベルト構造(6)を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【請求項14】
前記ベルト構造(6)が、実質的にタイヤの周方向に従った向きの複数の巻きを形成する少なくとも1つの補強コード(6b)を備えるベルト層(6a)を備える、請求項13に記載のタイヤ(1)。
【請求項15】
前記トレッドバンド(8)が、0.4~0.65に含まれる空隙/固体比を有し、タイヤの赤道面(X-X)に対して対称なトレッドパターンを有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のタイヤ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用タイヤに関する。
【0002】
本発明のタイヤは、「ビッグエンデューロ」(または「ビッグアドベンツーリング」または「デュアルパーパス」)自動二輪車の前輪および/または後輪に取り付けられることを意図している。これらの自動二輪車は、知られているように、タールマック道路およびオフロードの両方を走行するように設計された、高排気量、高出力、および高質量を有する自動二輪車である。このような自動二輪車は一般に、1000cm以上のピストン排気量、100cv以上の出力、100Nm以上の最大トルク、および180Kg以上の質量を有する。
【0003】
「ビッグエンデューロ」自動二輪車の例としては、BMW(登録商標) R 1250 GS、KTM 1290 Super Adventure R、およびHonda(登録商標) CRF1100L Africa Twinがある。
【0004】
このタイプの自動二輪車は、スーパースポーツにも進むスポーツツーリングに匹敵する、主に一般道路での使用から、単純な舗装道路よりもさらにより極端なオフロードでの使用、例えば、全地形サーキット、いわゆるダートトラック、または、河床、軟らかい地面、泥、砂、ならびに様々な種類および困難さのある不整地を含むトラックでの走行のような使用まで、非常に広い使用範囲を有している。
【0005】
すべてのこれらのタイプの使用を満足させるために、市場では、明確に定められたタイプの使用、例えば、一般道路でのスポーツ走行、一般道路でのツーリング走行、未舗装路と組み合わさった一般道路での走行、容易なオフロードと組み合わさった一般道路での走行、一般道路と組み合わさった極端なオフロード走行、にそれぞれ焦点を当てた異なるタイヤ製品が提供されている。
【0006】
典型的には、未舗装路と組み合わさった一般道路での走行が主に意図された「ビッグエンデューロ」自動二輪車用タイヤは、最高速度少なくとも210km/h(ETRTO速度記号:H)まで認められている。このようなタイヤは一般に、90~170(例えば、フロントタイヤでは90~120、リアタイヤでは130~170)に含まれる半径方向断面最大幅を有し、典型的には、約17インチ~約21インチ(例えば、フロントタイヤでは19~21インチ、リアタイヤでは17~18インチ)に含まれる取付径を有するホイールリムに取り付けられる。
【0007】
本発明のタイヤは、一般道路での使用に認められたタイプのものであり、主に未舗装路と組み合わさった一般道路での走行での使用が意図されており、典型的には、主に、異なる荷重条件(運転者のみ、運転者および荷物、運転者および1名の同乗者、運転者、1名の同乗者および荷物)、および異なる気象条件での一般道路での使用、および最小限であるが、未舗装路での使用に向けたものである。
【背景技術】
【0008】
「ビッグエンデューロ」自動二輪車用タイヤは、典型的には、複数のトレッドブロックまたはトレッドの各部分を少なくとも部分的に分離する周方向および横断方向の溝によって画定されたトレッドパターンを有するトレッドバンドを備える、このようなタイヤは典型的には、約0.1~約0.65に含まれる空隙/固体比を有する。
【発明の概要】
【0009】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、量、パラメーター、百分率などを示すすべての数値は、特に示されない限り、すべての場合に「約」という用語が先行するとみなされる。さらに、数の大きさのすべての範囲は、最大数値と最小数値のすべての可能な組み合わせ、すべての可能な中間の範囲、ならびに以下に特に示されるものを含む。
【0010】
特に示されない限り、数量のすべての範囲は、最大数値および最小数値も含む。
【0011】
以下、次の定義が適用される。
【0012】
「phr」(ゴム100部当たりの部数(parts per hundred parts of rubber)の頭字語)という用語は、可塑性延展油の正味量を考慮したエラストマー性ポリマーの100重量部当たりの所与のエラストマー化合物成分の重量部を示す。
【0013】
「エラストマー材料」、「ゴム」、「エラストマー性ポリマー」、または「エラストマー」という用語は、加硫可能な天然ポリマーまたは合成ポリマーと補強充填材とを含む材料を示すことが意味され、室温においてこのような材料は、加硫された後、力によって変形させることができ、変形させる力を除去した後、迅速かつ力強く実質的に元の形状および大きさに戻ることができる(規格ASTM D1566-11 ゴムに関する標準用語の定義による)。
【0014】
「ジエンポリマー」という用語は、そのうちの少なくとも1つが共役ジエン(共役ジオレフィン)である1つまたは複数の異なるモノマーの重合に由来するポリマーまたはコポリマーを示すことが意味される。
【0015】
「エラストマー化合物」という用語は、少なくとも1つのエラストマー性ポリマーをタイヤ化合物の調製に一般に使用される少なくとも1つの添加剤と混合、および場合により加熱することによって得ることができる混合物を示すことが意味される。
【0016】
「加硫可能なエラストマー化合物」という用語は、加硫添加剤を含むすべての添加剤をエラストマー化合物に組み込むことによって得ることができる加硫準備済みのエラストマー混合物を示すことが意味される。
【0017】
「加硫エラストマー化合物」という用語は、加硫可能なエラストマー化合物の加硫によって得ることができる材料を示すことが意味される。
【0018】
「加硫」という用語は、典型的には硫黄系の架橋剤によって誘導された天然ゴムまたは合成ゴムにおける架橋反応を示すことが意味される。
【0019】
「加硫剤」という用語は、分子間結合および分子内結合の3次元ネットワークの形成により、天然ゴムまたは合成ゴムを弾性で強い材料に変換することができる化合物を示すことが意味される。典型的な加硫剤としては、元素硫黄、高分子硫黄、硫黄供与剤、例えば、ビス[(トリアルコキシシリル)プロピル]ポリスルフィド、チウラム、ジチオジモルホリンおよびカプロラクタム-ジスルフィドなどの硫黄系化合物がある。
【0020】
「加硫促進剤」という用語は、例えば、TBBS、一般にスルフェンアミド、チアゾール、ジチオフォスフェート、ジチオカルバメート、グアニジンのような加硫工程の継続時間および/または操作温度を低減することができる化合物、ならびにチウラムなどの硫黄供与体を示すことが意味される。
【0021】
「加硫活性剤」という用語は、加硫をより短時間で、場合によってはより低温で引き起こすことによって、加硫をさらに促進することができる化合物を示すことが意味される。活性剤の例としては、ステアリン酸-酸化亜鉛系がある。
【0022】
「加硫抑制剤」という用語は、加硫反応の開始を遅らせ、および/または望ましくない二次反応を抑制することができる化合物、例えば、N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド(CTP)を示すことが意味される。
【0023】
「加硫パッケージ」という用語は、加硫剤ならびに、加硫活性剤、促進剤および抑制剤から選択される1つまたは複数の加硫添加剤を示すことが意味される。
【0024】
「補強充填材」という用語は、好ましくは、カーボンブラック、強酸で析出させた砂由来のシリカなどの従来のシリカ、好ましくは非晶質の、珪藻土、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、アルミナ、アルミノシリケート、カオリン、シリケート繊維およびそれらの混合物から選択される、タイヤの機械特性を改善するために当産業において典型的に使用される補強材料を示すことが意味される。
【0025】
「白色充填材」という用語は、場合によっては酸処理および/または誘導体化によって修飾された、シリカおよび従来のシリケート、例えば、セピオライト、アタパルジャイトとしても知られているパリゴルスカイト(paligorskite)、モンモリロナイト、ハロサイトなどから選択される、当産業において使用される従来の補強材料を示すことが意味される。典型的には、白色充填材は、表面ヒドロキシル基を有する。
【0026】
「補強コード」という表現、またはより単純に「コード」は、場合によっては、エラストマー材料のマトリックスでコーティングされた、またはエラストマー材料のマトリックスに組み込まれた、1つまたは複数の細長い要素(「ヤーン」とも呼ばれる)からなる細長い要素を示すことが意味される。
【0027】
以下、「ヤーン」という表現は、複数のテキスタイルフィラメントの集合体からなる細長い要素を指すために使用される。
【0028】
各フィラメントは、「繊維」とも呼ぶことができる。
【0029】
コードまたはヤーンまたは複数のフィラメントの「線密度」または「カウント」という用語は、単位長さ当たりのコードまたはヤーンまたは複数のフィラメントの重量を示すことが意味される。線密度は、dtex(長さ10km当たりのグラム)で測定可能である。
【0030】
ヤーンは1つまたは複数の「端部」を有することができ、「端部」という用語は一緒により合わされたフィラメントの束を示すことが意味される。例えば、一緒により合わされた単一の端部または少なくとも2つの端部が存在しうる。
【0031】
ヤーンは、テキスタイル材料を表す記号、使用される繊維のカウント、およびヤーンを形成する端部の数で特定することができる。例えば、NY 1400×2として特定されるNY(ナイロン)で作られた端部を有するヤーンは、一緒により合わされた2つの端部から形成された1400dtexカウントのNYで作られた繊維を含むヤーンを示す。
【0032】
層またはプライまたは布地の「スレッドカウント」という用語は、このような層/プライ/布地中に存在する単位長さ当たりの補強コードの数を示すことが意味される。スレッドカウントは、デシメートル当たりのコードまたはTPI(1インチ当たりのスレッド)で測定することができる。
【0033】
補強コードまたはヤーンの「破断荷重」および「破断伸び」という用語は、以下に示される定義に従って試験した材料に関して、BISFA規格に従って評価した、補強コードまたはヤーンが破断するときのそれぞれ荷重およびパーセンテージ伸びを示すことが意味される。
【0034】
「弾性率」という用語は、以下に示される定義に従って試験した材料に関して、BISFA規格に従って荷重-伸び曲線の任意の点で測定した荷重(または力)と伸びの比を示すことが意味される。このような曲線は、Texで表した線密度に対して正規化した、前述の曲線を定義する荷重-伸び関数の一次導関数を計算することによって描かれる。したがって、弾性率はcN/TexまたはMpaで表される。荷重-伸びグラフにおいて、弾性率は、X軸に対する前述の曲線の勾配によって特定される。
【0035】
補強コードまたはヤーンの「引張強度(tenacity)」という用語は弾性率と線密度の間で計算された比を示すことが意味される。引張強度は、以下に示される定義に従って試験した材料に関して、BISFA規格に従って測定した。引張強度は、cN/TexまたはcN/dTexで表すことができる。
【0036】
本発明の目的で、線密度の測定のため、および引張特性、特に引張強度の決定のために、BISFA(Bureau International pour la Standardisation des Fibres Artificielles)規格によって規定された試験に従って、テスト段階でより合わせられていない平坦なスレッドについて言及する。特に、
- ナイロン(NY)については、BISFA-ポリアミドヤーンの試験方法-2004年版:
・ 線密度の決定-第6章-手順A;
・ 引張特性の決定-第7章-手順A;
・ 研究試供品の調製:リラクセーション状態での試供品の調製-第7.4.1.1段落=>折り畳み式リールでの試供品の調製;
・ 研究室試供品の調製および試験性能:手動試験-第7.5.2.1段落=>c);
・ 開始手順=>e)手順開始時のプレテンション;
・ Zwick-Roell Z010動力計で実施した引張り
を参照する。
- セルロース材料のコードまたは補強ワイヤ、例えば、レーヨン(Ry)またはリヨセル(LY)については、BISFA-ビスコース、キュプラ、アセテート、トリアセテートおよびリヨセル繊維ヤーンの試験方法-2007年版
・ 引張特性の決定:第7章-引張試験条件:オーブン乾燥試験-表7.1-試験手順-第7.5節-オーブンリラクセーション状態での試供品に対する試験-第7.5.2.4小節
を参照する。
【0037】
「自動二輪車用タイヤ」という用語は、大きな曲率比(典型的には、0.20より大きい)を有し、コーナリング時に大きなキャンバー角を達成することができるタイヤを示すことが意味される。
【0038】
「曲率比」という用語は、タイヤの断面において、トレッドバンドの半径方向最高点とタイヤの半径方向断面最大幅との間に含まれる距離(このような距離は「矢印」としても示されている)と、タイヤの上述の最大幅との比を示すことが意味される。
【0039】
トレッドバンドまたはその一部分の「軸方向延長部」という用語は、タイヤの回転軸線を含む平面を通るようにとったタイヤの断面におけるトレッドバンドまたはその一部分の半径方向最も外側のプロファイルの延長部(extension)を示すことが意味される。
【0040】
タイヤの「赤道面」という用語は、タイヤの旋回軸線に垂直で、タイヤを対称的に2等分する平面を示すことが意味される。
【0041】
「幅」という用語は、赤道面に垂直な方向に沿って測定された寸法を示すことが意味される。
【0042】
「環状セクター」という用語は、トレッドバンド全体の周方向に延びる、予め定められた軸方向長さのトレッドバンドの一部分を示すことが意味される。
【0043】
「トレッドパターン」という用語は、タイヤの赤道面に垂直で、タイヤの最大直径に接する平面におけるトレッドバンドのすべての箇所(溝を含む)を表すことが意味される。トレッドパターンは、溝によって分離された、場合によっては凹部を含む複数のブロックによって画定される。
【0044】
「空隙/固体比」という用語は、タイヤのトレッドパターンの特定の環状部分(場合によってはトレッドバンド全体またはトレッドパターン全体)の溝の全表面と、トレッドパターンの特定の部分(場合によってはトレッドバンド全体またはトレッドパターン全体)の表面との比を示すことが意味される。
【0045】
タイヤの「フットプリント」という用語は、タイヤがホイールリムに取り付けられ、予め定められた鉛直方向荷重がタイヤに作用したときに、地面または路面と接触するタイヤの部分を示すことが意味される。
【0046】
「半径方向」および「軸方向」という用語、ならびに「半径方向内側/外側」および「軸方向内側/外側」という表現は、それぞれ、タイヤの赤道面に実質的に平行な方向、およびタイヤの赤道面に実質的に垂直な方向、すなわち、それぞれ、タイヤの旋回軸線に実質的に垂直な方向、およびタイヤの旋回軸線に実質的に平行な方向を指して使用される。
【0047】
「周方向の」および「周方向に」という用語は、タイヤの周方向に延びる方向、すなわちタイヤの転がり方向を指して使用され、タイヤの赤道面と一致する平面上または実質的に平行な平面上の方向に相当する。
【0048】
タイヤ、またはトレッドバンドもしくはその一部分の「周方向延長部」という用語は、タイヤ、またはトレッドバンドもしくはその一部の、半径方向最も外側の表面の、タイヤに接する平面上における平面延長部(extension in plan)を示すために使用される。
【0049】
「軸方向内側」および「軸方向外側」という表現は、参照要素に対して赤道面に近い位置および赤道面から遠い位置をそれぞれ示す。
【0050】
「ラジアルカーカス構造」という用語は、タイヤのクラウン部分において実質的に軸方向に沿った向きの複数の補強コードをそれぞれが備えるカーカス構造を示すことが意味される。このような補強コードは、単一のカーカスプライ、または互いに半径方向に並置された複数のカーカスプライ(好ましくは2つ)に組み込むことができる。
【0051】
「実質的に軸方向」という用語は、タイヤの赤道面に対して、60°~90°に含まれる角度で傾斜した方向を示すことが意味される。
【0052】
「実質的に周方向」という用語は、タイヤの赤道面に対して、0°~20°に含まれる角度を向く方向を示すために使用される。
【0053】
トレッド化合物の「静的機械特性」という用語は、170℃で10分間加硫した化合物の試供品で予め定められた温度で測定した、UNI 6065:2001規格による加硫された熱可塑性ゴムの引張応力-歪み特性を示すことが意味される。例えば、70℃における静的弾性係数CA3は、70℃で測定した300%伸び時の荷重を示す。
【0054】
トレッド化合物の「動的機械特性」という用語は、ここで記載する通りInstron Model 1341ダイナミックデバイスを張力圧縮モードで使用して測定した機械特性を示すことが意味される。円筒形状(長さ=25mm;直径=18mm)を有する架橋材料の試験片(170℃で15分間)を使用し、初期長さに関して長手方向変形25%までの圧縮下で予備荷重を加え、予め定められた温度(例えば、23℃、70℃、および100℃)で試験時間全体にわたって維持した。予備荷重下で長さに対して7.5%変形の振幅で、10Hzで125サイクルの機械による予備調整に続いて2分間の待機時間後、試験片に10Hzの周波数で予備荷重下、長さに対して±3.5%の振幅を有する動的正弦応力にかけた。動的機械特性は、動的弾性係数(E’)およびタンデルタ(損失係数)の値に関して表される。タンデルタ値は、粘性動的弾性率(E’’)と動的弾性係数(E’)との比として計算した。
【0055】
本出願人は、「ビッグエンデューロ」自動二輪車は、その全使用範囲を最適な態様でカバーするためには、何キロメートルもの走行が可能であるとともに、一般道路(主に高速での安定性、乾いた状態および濡れた状態でのロードホールディング、ハンドリング)およびオフロード(主にトラクション、制御性、および方向維持性)の両方で高い性能を可能にするのに適したタイヤを装着しなければならないことに気付いている。
【0056】
しかしながら、本出願人は、一方では一般道路での極端な性能を得ようとし、他方ではオフロードでの極端な性能を得ようとする、現在の、およびさらに一般的になっている傾向によると、前述の性能特性は、少なくとも部分的に互いに対照的であることを見出した。
【0057】
本出願人は、一般道路で高い性能を可能にするタイヤは、通常、オフロードでの性能には厳しい制限を受け、その逆もまた同様であることに実際気付いた。
【0058】
本出願人はまた、一般道路とオフロードでの使用を良好な妥協策でバランスをとるタイヤは、2つの環境(一般道路とオフロード)のいずれか一方において満足のいく極端な性能を得ることができないことに気付いた。
【0059】
本出願人は、最近、市場が、「ビッグエンデューロ」自動二輪車用の多くのセグメントのタイヤを予見し、このようなセグメントのそれぞれが、自動二輪車の特定の用途に焦点を当てることによって、顧客の要求と一致したより専門的な解決策に移行していることに気付いた。
【0060】
したがって、本出願人は、主に一般道路での使用、すなわち、異なる荷重条件(運転者のみ、運転者および荷物、運転者および1名の同乗者、運転者、1名の同乗者および荷物)、および異なる気象条件での主に一般道路での使用、ならびに最小限であるが未舗装路での使用を提供する、未舗装道路と組み合わさった一般道路での走行での使用、を意図された「ビッグエンデューロ」自動二輪車用タイヤを提案している。
【0061】
主に一般道路で使用するためのタイヤは、タールマック路面での、異なる荷重条件での高速での安定性、乾いた状態および濡れた状態でのロードホールディング、ハンドリング、燃費、濡れた状態でのトラクションおよび制動に関する性能を最大化するように作られている。
【0062】
本出願人は、主にオンロードでの使用のために設計された「ビッグエンデューロ」自動二輪車用の前述のセグメントタイプのタイヤに注目しており、これは様々な荷重条件での一般道路での走行における性能を求め、オフロードでの使用には多くを要求しないと予想される使用者によって選ばれる。
【0063】
本出願人は、タールマック路面での、異なる荷重条件(運転者のみ、運転者および荷物、運転者および1名の同乗者、運転者、1名の同乗者および荷物)高速での安定性に関する性能を改善する、主に一般道路での使用のための「ビッグエンデューロ」自動二輪車用タイヤを作ることを考えた。
【0064】
自動二輪車用タイヤは、典型的には、両側のビード構造と、場合によってカーカス構造に対して半径方向外側位置に配置されたゼロ度補強層からなるか、またはそれらを備える、カーカス構造に対して半径方向外側位置に配置されたベルト構造との間に延びる半径方向のカーカス構造、ならびにベルト構造に対して半径方向外側位置に配置されたトレッドバンドを備える。
【0065】
カーカス構造は、タイヤに完全性および構造強度の所望の特性を付与することが意図され、完全性および構造強度の前述の特性を得るのに寄与するベルト構造は、路面と接触した後走行時にタイヤにかかる側方および長手方向応力をカーカス構造に伝えることが意図される。存在する場合、ゼロ度補強層は、ベルト構造の半径方向変形を制限することが意図される。
【0066】
ドライバーが感じる自動二輪車の操縦性、したがって、実現できる高速安定性、乾いた状態および濡れた状態でのハンドリングに関する性能は、すべての乗車条件下で自動二輪車のグリップに依存し、したがって、フットプリント面積に関連する。フットプリント面積の安定性、すなわち、可能な限り一定のままであるその能力は、タイヤの剛性によって付与される。特定の制限内で、タイヤが剛であるほど、タイヤは変形しにくく、タイヤは応力時の変形からより高速で戻る。
【0067】
したがって、本出願人は、主に一般道路用の「ビッグエンデューロ」自動二輪車用のタイヤの剛性の増加を、異なる荷重条件下で高速安定性に関するその性能を改善するために使用することを考えた。
【0068】
タイヤの剛性を増加させるために、本出願人は、カーカス構造の剛性を増加させることを考えた。
【0069】
複数の補強コードは、通常、カーカス構造に構造強度および剛性の特性を付与するためにカーカス構造中に設けられる。
【0070】
典型的には、低弾性率テキスタイルヤーンから作られた補強コードは、安定性、方向維持性、および制御性に関する性能を犠牲にして乗車快適性を強化するために使用される。
【0071】
一方、高弾性率テキスタイルヤーンから作られた補強コードは、乗車快適性を犠牲にして、急な方向転換および/または速度変化による乗車安定性、制御性、方向維持性、およびロードホールディングに関する絶対性能を強化するために使用される。
【0072】
本出願人は、実際に、高弾性率テキスタイルヤーンのカーカス構造を作ることによって、「ビッグエンデューロ」自動二輪車用のタイヤの剛性が増加し、異なる積荷条件下での高速安定性に関する性能が改善されることを見出した。
【0073】
しかしながら、本出願人は、異なる荷重条件下での高速での安定性のこの改善が、乾いた表面および濡れた表面の両方でのハンドリングの悪化を伴うことに気付いた。
【0074】
乾いた表面および濡れた表面でのハンドリングを取り戻すために、本出願人は、その不規則プロファイルを転写してトレッドバンドを作ることによって路面の粗さにより良好に適合する、いわゆる軟質化合物を使用することを考えた。これらの化合物は、典型的には、低静的機械特性および高ヒステリシス特性(圧縮下での動的機械特性に関し、特に、タンデルタに関する)を特徴とする。
【0075】
本出願人は、トレッドバンドに軟質化合物を使用することは、実際に、乾いた表面および濡れた表面の両方でのハンドリングを増加させることに気付いた。
【0076】
しかしながら、本出願人は、トレッドバンドに軟質化合物を使用することにより、とりわけ高荷重で高速で、すなわち、運転者に加えて乗客および/または荷物がある場合、直線走行における高速での安定性が減少することに気付いている。
【0077】
本出願人は、驚くべきことに、低弾性率テキスタイルヤーンから作られた補強コードを備えた2つの並置されたカーカスプライを備えるラジアルカーカス構造を配置し、赤道面にまたがって配置された少なくとも1つの環状セクターが高静的機械特性および低ヒステリシスを有する化合物で作られたトレッドバンドを配置することによって、乾いた状態および濡れた状態でのハンドリングに関する性能を、悪化させることなく、実際には驚くべきことに改善して、様々な荷重条件下での高速安定性に関する性能が改善された、主に一般道路での使用のための「ビッグエンデューロ」自動二輪車用のタイヤを作ることが可能であることを見出した。
【0078】
低弾性率テキスタイルヤーンで作られた補強コード、ならびに高静的機械特性および低ヒステリシスの化合物から作られた、赤道面にまたがって配置された少なくとも1つの環状セクターを有するトレッドバンドを備えたラジアルカーカス構造は、異なる荷重条件下での高速安定性、ならびに乾いた状態および濡れた状態でのハンドリングを同時にもたらすのに適していないと思われるため、タイヤの高速安定性、ならびに乾いた状態および濡れた状態でのハンドリング性能の改善は驚くべきことである。
【0079】
本発明は、ラジアルカーカス構造、およびラジアルカーカス構造に対して半径方向外側位置に適用されたトレッドバンドを備える自動二輪車用タイヤに関する。
【0080】
好ましくは、ラジアルカーカス構造は、第1の複数のテキスタイル補強コードを含む第1のカーカスプライを備える。
【0081】
好ましくは、カーカス構造は、第2の複数のテキスタイル補強コードを含む第2のカーカスプライを備える。
【0082】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、トレッドバンドのクラウン部分で、互いに実質的に平行であり、タイヤの赤道面に対して予め定められた傾斜角度の第1の傾斜を有する。
【0083】
好ましくは、第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、トレッドバンドのクラウン部分で、互いに実質的に平行であり、タイヤの赤道面に対して予め定められた傾斜角度の第2の傾斜を有する。
【0084】
好ましくは、第2の傾斜は、第1の傾斜と反対向きである。
【0085】
好ましくは、第2のカーカスプライは、第1のカーカスプライ上に半径方向に並置されている。
【0086】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2%伸びで0.35cN/Texよりも大きい引張強度を有する。
【0087】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2%伸びで1.2cN/Tex未満の引張強度を有する。
【0088】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで0.5cN/Texよりも大きい引張強度を有する。
【0089】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで3.0cN/Tex未満の引張強度を有する。
【0090】
好ましくは、赤道面にまたがって配置されたトレッドバンドの少なくとも1つの中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が9.0よりも大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0091】
好ましくは、赤道面にまたがって配置されたトレッドバンドの少なくとも1つの中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が14.0よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0092】
より好ましくは、中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が10.0よりも大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0093】
より好ましくは、中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が13.0よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0094】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが0.120よりも大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0095】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが0.160よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0096】
より好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが0.135よりも大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0097】
より好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが0.155よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0098】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’が3.7よりも大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0099】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’が4.1よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0100】
本出願人は、前述の特性を有するクロスプライカーカス構造およびトレッドバンドを使用することによって、驚くべきことに、主にオンロードでの使用のためのものであって、オフロードでの使用には多くを要求しない「ビッグエンデューロ」タイプの自動二輪車用タイヤの、乾いた状態および濡れた状態でのハンドリング性能を悪化させることなく、実際には改善して、異なる荷重条件下で高速安定性能を改善することが可能であることを実験により見出した。
【0101】
どのような解釈上の理論に縛られることもなく、本出願人は、高速安定性ならびに乾いた状態および濡れた状態でのハンドリングにおける予想外の改善は、2つの半径方向に並置されたプライを有するラジアルカーカスプライ構造を作ることによって、および赤道面にまたがって配置されたトレッドバンドの中央環状セクターの70℃における静的弾性係数Ca3を前述の値以内に制御することによって、タイヤの剛性、およびしたがって、異なる荷重条件下での高速安定性の改善が得られること、ならびにカーカスプライのテキスタイル補強コードの引張強度を前述の値以内に制御し、70℃でのタンデルタおよび70℃での動的弾性係数E’を前述の値以内に制御することによって、そのような構造において乾いた状態および濡れた状態でのハンドリングが得られることに少なくとも部分的に帰することができると考える。
【0102】
驚くべきことに、この有益な技術的効果はまた、カーカスプライにおいて、タイヤをより剛にするためには使用されないことが知られている比較的「低い」引張強度のテキスタイル補強コード、ならびに乾いた状態および濡れた状態でのハンドリングを改善するには有益ではないことが知られている70℃での比較的「低い」タンデルタ値(したがって、限定的なヒステリシス)を使用することによって観察された。
【0103】
本発明は、以下に説明する好ましい特性の少なくとも1つを提示することができる。
【0104】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2%伸びで0.4cNよりも大きい引張強度を有する。
【0105】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2%伸びで0.45cN/Texよりも大きい引張強度を有する。
【0106】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2%伸びで0.5cN/Texよりも大きい引張強度を有する。
【0107】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2%伸びで0.55cN/Texよりも大きい引張強度を有する。
【0108】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2%伸びで1.0cN/Texよりも小さい引張強度を有する。
【0109】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2%伸びで0.85cN/Texよりも小さい引張強度を有する。
【0110】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2%伸びで0.7cN/Texよりも小さい引張強度を有する。
【0111】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2%伸びで0.6cN/Texよりも小さい引張強度を有する。
【0112】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2%伸びで0.57cN/Texよりも小さい引張強度を有する。
【0113】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで0.6cN/Texよりも大きい引張強度を有する。
【0114】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで0.7cN/Texよりも大きい引張強度を有する。
【0115】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで0.8cN/Texよりも大きい引張強度を有する。
【0116】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで0.85cN/Texよりも大きい引張強度を有する。
【0117】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで0.9cN/Texよりも大きい引張強度を有する。
【0118】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで0.95cN/Texよりも大きい引張強度を有する。
【0119】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで2.5cN/Texよりも小さい引張強度を有する。
【0120】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで2cN/Texよりも小さい引張強度を有する。
【0121】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで1.5cN/Texよりも小さい引張強度を有する。
【0122】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで1.2cN/Texよりも小さい引張強度を有する。
【0123】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで1.1cN/Texよりも小さい引張強度を有する。
【0124】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、5%伸びで1cN/Texよりも小さい引張強度を有する。
【0125】
好ましくは、トレッドバンドの中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が10.8よりも大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0126】
好ましくは、トレッドバンドの中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が11よりも大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0127】
好ましくは、トレッドバンドの中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が11.3よりも大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0128】
好ましくは、トレッドバンドの中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が12.5よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0129】
好ましくは、トレッドバンドの中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が12よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0130】
好ましくは、トレッドバンドの中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が11.8よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0131】
好ましくは、トレッドバンドの中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が11.7よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0132】
好ましくは、トレッドバンドの中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が11.5の加硫エラストマー材料で作られている。
【0133】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが0.140よりも大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0134】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが0.142よりも大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0135】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが0.150よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0136】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが0.148よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0137】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが0.145の加硫エラストマー材料で作られている。
【0138】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’が3.8よりも大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0139】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’が4よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0140】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’が3.9の加硫エラストマー材料で作られている。
【0141】
好ましくは、トレッドバンドの中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が0.03より大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0142】
好ましくは、トレッドバンドの中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が0.035より大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0143】
好ましくは、トレッドバンドの中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が0.04よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0144】
好ましくは、トレッドバンドの中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が0.038よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0145】
好ましくは、トレッドバンドの中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が0.037の加硫エラストマー材料で作られている。
【0146】
好ましくは、トレッドバンドは、タイヤの赤道面に対して両側に配置され、中央環状セクターに隣接して配置された2つの側方環状セクターを備える。
【0147】
好ましくは、中央環状セクターは、2つの側方環状セクターが作られたエラストマー材料とは異なるエラストマー材料で作られている。
【0148】
好ましくは、中央環状セクターは、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定したタンデルタよりも小さい、70℃および10Hzで測定したタンデルタを有する加硫エラストマー材料で作られている。
【0149】
これにより、クラウンの化合物に対して、すなわち中央環状セクターに対して、ショルダー、すなわち2つの側方環状セクターでヒステリシスがより高い化合物を有することが可能になり、タイヤがコーナリング時にその不規則プロファイルを転写することによって路面の粗さに、より良好に適合することが可能になる。
【0150】
本出願人は、中央セクターに比べて2つの側方環状セクターでのより高いヒステリシスは、異なる荷重条件下での高速安定性に影響しないことに気付いている。
【0151】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが閾値よりも大きい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、70℃および10Hzで測定した側方環状セクターの加硫エラストマー材料のタンデルタの75%に等しい値である。
【0152】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが閾値よりも大きい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、70℃および10Hzで測定した側方環状セクターの加硫エラストマー材料のタンデルタの80%に等しい値である。
【0153】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが閾値よりも大きい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、70℃および10Hzで測定した側方環状セクターの加硫エラストマー材料のタンデルタの85%に等しい値である。
【0154】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが閾値よりも大きい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、70℃および10Hzで測定した側方環状セクターの加硫エラストマー材料のタンデルタの90%に等しい値である。
【0155】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが閾値よりも小さい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、70℃および10Hzで測定した側方環状セクターの加硫エラストマー材料のタンデルタの98%に等しい。
【0156】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが閾値よりも小さい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、70℃および10Hzで測定した側方環状セクターの加硫エラストマー材料のタンデルタの95%に等しい。
【0157】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタが70℃および10Hzで測定した側方環状セクターの加硫エラストマー材料のタンデルタの92%に等しい加硫エラストマー材料で作られている。
【0158】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’が2つの側方環状セクター加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’よりも大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0159】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’が閾値よりも小さい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’の115%に等しい。
【0160】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’が閾値よりも小さい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’の112%に等しい。
【0161】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’が閾値よりも小さい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’の109%に等しい。
【0162】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’が閾値よりも大きい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’の101%に等しい。
【0163】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’が閾値よりも大きい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’の103%に等しい。
【0164】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’が2つの側方環状セクター加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’の106%に等しい加硫エラストマー材料で作られている。
【0165】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が、2つの側方環状セクター加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比よりも小さい加硫エラストマー材料で作られている。
【0166】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が閾値よりも大きい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクター加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比の75%に等しい。
【0167】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が閾値よりも大きい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクター加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比の80%に等しい。
【0168】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が閾値よりも大きい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクター加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比の85%に等しい。
【0169】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が閾値よりも小さい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクター加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比の98%に等しい。
【0170】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が閾値よりも小さい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクター加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比の95%に等しい。
【0171】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が閾値よりも小さい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクター加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比の90%に等しい。
【0172】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が、2つの側方環状セクター加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比の87%に等しい加硫エラストマー材料で作られている。
【0173】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃で測定した静的弾性係数Ca3よりも大きい加硫エラストマー材料で作られている。
【0174】
これにより、中央環状セクターの化合物に比べて側方環状セクターにおいて静的機械性能がより低い化合物を有することが可能になり、タイヤがコーナリング時にその不規則プロファイルを転写することによって路面の粗さに、より良好に適合することに寄与する。
【0175】
本出願人は、側方環状セクターにおける70℃で測定した静的弾性率、特にCa3が、中央環状セクターの静的弾性率の値に等しくなく、中央環状セクターにおける化合物の静的弾性率の増加のみにより、異なる荷重条件下で高速安定性を得ることが可能になることに気付いている。
【0176】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が閾値よりも小さい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃で測定した静的弾性係数Ca3の150%に等しい。
【0177】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が閾値よりも小さい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃で測定した静的弾性係数Ca3の140%に等しい。
【0178】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が閾値よりも小さい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃で測定した静的弾性係数Ca3の135%に等しい。
【0179】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が閾値より大きい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃で測定した静的弾性係数Ca3の101%に等しい。
【0180】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が閾値より大きい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃で測定した静的弾性係数Ca3の110%に等しい。
【0181】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が閾値より大きい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃で測定した静的弾性係数Ca3の120%に等しい。
【0182】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が閾値より大きい加硫エラストマー材料で作られ、閾値は、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃で測定した静的弾性係数Ca3の125%に等しい。
【0183】
好ましくは、中央環状セクターは、70℃で測定した静的弾性係数Ca3が、2つの側方環状セクターの加硫エラストマー材料の70℃で測定した静的弾性係数Ca3の130%に等しい加硫エラストマー材料で作られている。
【0184】
好ましくは、中央環状セクターは、トレッドバンドの幅の15%よりも大きい幅の軸方向延長部を有する。
【0185】
好ましくは、中央環状セクターは、トレッドバンドの幅の18%よりも大きい幅の軸方向延長部を有する。
【0186】
好ましくは、中央環状セクターは、トレッドバンドの幅の30%よりも小さい幅の軸方向延長部を有する。
【0187】
好ましくは、中央環状セクターは、トレッドバンドの幅の28%よりも小さい幅の軸方向延長部を有する。
【0188】
好ましくは、中央環状セクターは、トレッドバンドの幅の22%に等しい幅の軸方向延長部を有する。
【0189】
好ましくは、2つの側方環状セクターは、それぞれ等しい幅の軸方向延長部を有する。
【0190】
好ましくは、2つの側方環状セクターの軸方向延長部および中央環状セクターの軸方向延長部の幅の合計は、トレッドバンドの軸方向延長部の幅と一致する。
【0191】
好ましくは、トレッドバンドは、0.4~0.65に含まれる空隙/固体比を有する。
【0192】
好ましくは、トレッドバンドは、タイヤの赤道面に対して対称なトレッドパターンを有する。
【0193】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、同じ材料で作られている。
【0194】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、脂肪族ポリアミド繊維(例えば、ナイロン6、ナイロン6.6、ナイロン4.6、ナイロン4.10、ナイロン10.10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6.10、ナイロン6.12)、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、レーヨン繊維を含む群から選択される繊維で作られている。
【0195】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、ナイロンで作られている。
【0196】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、ナイロン6.6で作られている。
【0197】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、等しい線密度を有する。
【0198】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2000よりも大きい線密度を有する。
【0199】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2200よりも大きい線密度を有する。
【0200】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2400よりも大きい線密度を有する。
【0201】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2600よりも大きい線密度を有する。
【0202】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、4600よりも小さい線密度を有する。
【0203】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、4200よりも小さい線密度を有する。
【0204】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、3800よりも小さい線密度を有する。
【0205】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、3200よりも小さい線密度を有する。
【0206】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、3000よりも小さい線密度を有する。
【0207】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、2800dTexの線密度を有する。
【0208】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、1100×2dTexよりも大きい線密度を有し、×2という用語は、各補強コードにおいて一緒により合わされたヤーンの端部の数を表す。
【0209】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、1200×2dTexよりも大きい線密度を有し、×2という用語は、各補強コードにおいて一緒により合わされたヤーンの端部の数を表す。
【0210】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、1840×2dTexよりも小さい線密度を有し、×2という用語は、各補強コードにおいて一緒により合わされたヤーンの端部の数を表す。
【0211】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、1600×2dTexよりも小さい線密度を有し、×2という用語は、各補強コードにおいて一緒により合わされたヤーンの端部の数を表す。
【0212】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、1400×2dTexよりも小さい線密度を有し、×2という用語は、各補強コードにおいて一緒により合わされたヤーンの端部の数を表す。
【0213】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、等しいスレッドカウントを有する。
【0214】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、80コード/dmよりも大きいスレッドカウントを有する。
【0215】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、90コード/dmよりも大きいスレッドカウントを有する。
【0216】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、100コード/dmよりも大きいスレッドカウントを有する。
【0217】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、130コード/dmよりも小さいスレッドカウントを有する。
【0218】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、125コード/dmよりも小さいスレッドカウントを有する。
【0219】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、120コード/dmよりも小さいスレッドカウントを有する。
【0220】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、112コード/dmのスレッドカウントを有する。
【0221】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、テキスタイル補強コードを形成する各端部および端部の全体の両方それぞれに付与された等しいねじれを有する。
【0222】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、1デシメートル当たり30回のねじれを超える、テキスタイル補強コードを形成する各端部および端部の全体それぞれに付与されたねじれを有する。
【0223】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、1デシメートル当たり35回のねじれを超える、テキスタイル補強コードを形成する各端部および端部の全体それぞれに付与されたねじれを有する。
【0224】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、1デシメートル当たり38回のねじれを超える、テキスタイル補強コードを形成する各端部および端部の全体それぞれに付与されたねじれを有する。
【0225】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、1デシメートル当たり65回のねじれより少ない、テキスタイル補強コードを形成する各端部および端部の全体それぞれに付与されたねじれを有する。
【0226】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、1デシメートル当たり55回のねじれより少ない、テキスタイル補強コードを形成する各端部および端部の全体それぞれに付与されたねじれを有する。
【0227】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、1デシメートル当たり45回のねじれより少ない、テキスタイル補強コードを形成する各端部および端部の全体それぞれに付与されたねじれを有する。
【0228】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードは、1デシメートル当たり40回のねじれを形成する、テキスタイル補強コードを形成する各端部および端部の全体それぞれに付与されたねじれを有する。
【0229】
好ましくは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードのテキスタイル補強コードの予め定められた傾斜角は、トレッドバンドのクラウン部分では65°~90°に含まれ、より好ましくは、65°~75°に含まれ、例えば、70°である。
【0230】
好ましくは、第1のカーカスプライおよび第2のカーカスプライは、第1の複数のテキスタイル補強コードおよび第2の複数のテキスタイル補強コードをそれぞれ組み込むエラストマー材料のそれぞれのシートからなる。
【0231】
好ましくは、ベルト構造は、ラジアルカーカス構造に対して半径方向外側位置かつトレッドバンドに対して半径方向内側位置に設けられている。
【0232】
好ましくは、ベルト構造は、実質的にタイヤの周方向に従った向きの複数の巻きを形成する少なくとも1つの補強コードを備えるベルト層を備える。
【0233】
好ましくは、ベルト層は、実質的にタイヤの周方向に従った向きの複数の巻きを形成する軸方向に並んだ複数の補強コードを含むゴム引きされた布地の補強リボン様要素を備える。
【0234】
好ましくは、複数の巻きは、タイヤの赤道面に対して0°~5°に含まれる角度傾斜している。
【0235】
好ましくは、少なくとも1つの補強コードは、金属材料で作られている。
【0236】
好ましくは、少なくとも1つの補強コードは、高炭素含有量の鋼で作られており、炭素含有量は少なくとも0.6重量%である。
【0237】
好ましくは、カーカス補強構造は、ラジアルカーカス構造とベルト構造との間に半径方向に配置されたエラストマー材料で作られている。
【0238】
好ましくは、エラストマー材料で作られたカーカス補強構造は、ベルト構造の延長部の表面に実質的に相当する表面にわたって軸方向に延びている。
【0239】
本発明のタイヤのさらなる特性および利点は、添付の図面を参照してなされるその好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0240】
図1】本発明による自動二輪車用タイヤの半径方向断面の概略透視図であり、図示を簡単にするために、トレッドバンドの溝およびブロックは示されていない。
図1A】本発明による自動二輪車用タイヤのさらなる半径方向断面の概略透視図であり、図示を簡単にするために、トレッドバンドの溝およびブロックは示されていない。
図2】本発明による自動二輪車用タイヤの半径方向断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0241】
図1および図2を参照すると、参照数字1は、本発明による自動二輪車用タイヤを示している。
【0242】
示されるタイヤ1はリアタイヤであるが、以下の説明は、リアタイヤについて特に言及するときを除いて、フロントタイヤにも同じく適用される。
【0243】
タイヤ1は、高排気量(例えば1000cmに等しい)、および高出力(例えば100cvに等しい)の、乗車形態で例えば200Kg以上の自動二輪車の質量を有する、「ビッグエンデューロ」と規定された自動二輪車用タイヤである。
【0244】
タイヤ1は、一般に、90~170(例えば、フロントタイヤの場合には90~120、リアタイヤの場合には130~170)に含まれる半径方向断面最大幅を有し、約17インチ~約21インチ(例えば、フロントタイヤの場合には19~21インチ、リアタイヤの場合には17~18インチ)に含まれる取付径を有するホイールリムに取り付けられるように意図されている。
【0245】
赤道面「X-X」および回転軸線R(図示せず)がタイヤ1に定められる。タイヤ1の回転方向に従って配置され、したがって赤道面X-Xに平行な周方向、ならびに赤道面「X-X」に垂直な、および/または回転軸線に平行な軸方向も定められる。
【0246】
タイヤ1は、第1のカーカスプライ3aおよび第2のカーカスプライ3bから形成されたラジアルカーカス構造2を備える。
【0247】
第1のカーカスプライ3aは、第1の複数のテキスタイル補強コード30を組み込むエラストマー材料のシートからなる。
【0248】
第2のカーカスプライ3bは、第2の複数のテキスタイル補強コード32を組み込むエラストマー材料のシートからなる。
【0249】
第1のカーカスプライ3aのエラストマー材料のシートを作っているエラストマー材料は、第2のカーカスプライ3aのエラストマー材料のシートを作っているエラストマー材料と同じである。
【0250】
ある実施形態では、第1のプライ3aは、第1の複数のテキスタイル補強コード30で補強されたエラストマー材料の複数のストリップを結合させることによって作られる。
【0251】
ある実施形態では、カーカス3bの第2のプライは、第2の複数のテキスタイル補強コード32で補強されたエラストマー材料の複数のストリップを結合させることによって作られる。
【0252】
第1の複数のテキスタイル補強コード30のテキスタイル補強コード31は、互いに実質的に平行に配置され、実質的に軸方向に沿った向きである。第1の複数のテキスタイル補強コード30のテキスタイル補強コード31は、トレッドバンドのクラウン部分8Cでタイヤの赤道面X-Xに対して予め定められた傾斜角度A1の第1の傾斜を有する。第1の複数のテキスタイル補強コード30の各テキスタイル補強コード31は、タイヤ1のそれぞれの半径方向平面に属している。
【0253】
同様に、第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード33は、互いに実質的に平行に配置され、実質的に軸方向に沿った向きである。第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード33は、タイヤの赤道面X-Xに対して、第1の複数のテキスタイル補強コード30のテキスタイル補強コード31と同じ予め定められた傾斜角度A1の第2の傾斜を有する。第2の複数のテキスタイル補強コード32の各テキスタイル補強コード33は、タイヤ1のそれぞれの半径方向平面に属している。
【0254】
このような予め定められた傾斜角度A1は、周方向に対して65°~90°の絶対値に含まれる。第1の傾斜は、周方向に対して第2の傾斜と反対向きである。言い換えると、第1の傾斜の予め定められた傾斜角度A1は、周方向に対して、第1の角度方向に沿って測定され、第2の傾斜の予め定められた傾斜角度A1は、周方向に対して、第2の角度方向に沿って測定され、第1の角度方向および第2の角度方向は反対向きである。
【0255】
本発明の好ましい実施形態では、予め定められた傾斜角度A1は、約70°の絶対値である。
【0256】
図1に最良に示される通り、第1のカーカスプライ3aおよび第2のカーカスプライ3bは、半径方向に並置され、好ましくは、半径方向に隣接している。第2のカーカスプライ3bは、第1のカーカスプライ3aに対して半径方向に外側にある。
【0257】
第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、互いに同一である。
【0258】
ラジアルカーカス構造2は、典型的には、その内壁を、膨らまされたときにタイヤ1自体の気密封止を確実にするように構成された、エラストマー材料の気密層から本質的になるシール層100、いわゆる「ライナー」によって被覆されている。
【0259】
第1のカーカスプライ3aおよび第2のカーカスプライ3bは、図1に最良に示されるように、実質的にトロイダル形態に従って形が一致し、そのそれぞれの軸方向両側の側縁3c、3dを有し、側縁3c、3dは、それぞれの環状補強構造4で折り返されている。環状補強構造4は、タイヤ1を、対応する取付けリム(図示せず)に保持することが意図される。環状補強構造4は、典型的には、「ビードコア」と呼ばれる。
【0260】
ビードコア4の外周縁に、テーパ状のエラストマー充填材5が適用され、第1のカーカスプライ3と、第1のカーカスプライ3aの折り返された側縁3cとの間に画定された空間を占める。
【0261】
代替の実施形態では、図示していないが、第1のカーカスプライ3aおよび第2のカーカスプライ3bは、両側の側縁3c、3dを有してもよく、それらは折り返すことなく、2つの金属環状インサートを備えた特定の環状補強構造と関連付けられている。
【0262】
ビードコア4およびエラストマー充填材5を備えるタイヤ1の領域は、いわゆるビード9を形成し、ビード9は、図示していないリムにタイヤ1を固定するように意図されている。
【0263】
タイヤ1は、ラジアルカーカス構造2の両側に横方向に適用された一対のサイドウォール7を備える。
【0264】
可能な好ましい実施形態では、タイヤ1のサイドウォール7の剛性は、一般に「フリッパー」として知られている補強層12(図2に示され、図1には示されない)または追加のストリップ形状のインサートをビード9に設けることによって、改善することができる。
【0265】
フリッパー12は、それぞれのビードワイヤ4およびエラストマー充填材5の周りに、それらの周りを少なくとも部分的に包むように巻きつけられた補強層である。このような補強層は、ラジアルカーカス構造2とビード9の間に配置されている。
【0266】
好ましくは、フリッパー12は、第1のカーカスプライ3aおよびビード9と接触している。
【0267】
可能な好ましい実施形態では、ビード9は、「チェーファー」または保護ストリップとして一般に知られているさらなる保護層13(図2に示され、図1には示されない)を備えることができ、これは、ビード9の剛性および完全性を増加させる機能を有する。
【0268】
好ましい実施形態では、カーカス補強構造11は、ラジアルカーカス構造2に対して半径方向外側位置に設けられる。このようなカーカス補強構造11は、第2のカーカスプライ3bに対して半径方向外側位置にかつ第2のカーカスプライ3bの少なくとも1つのクラウン部分に配置されたクラウンプライ11aを備える。
【0269】
クラウンプライ11aは、互いに平行に配置された補強要素を備える。クラウンプライ11aは、クラウンプライ11aの補強要素が赤道面を基準として第2のカーカスプライ3bの補強要素とは反対の角度を有するように、第2のカーカスプライ3b上に配置される。任意選択で、カーカス補強構造11はまた、クラウンプライ11aに対して両側に配置され、それぞれのビードとは関連しない2つのプライ(図示せず)を備える。
【0270】
ベルト構造6(図2に示される)は、ラジアルカーカス構造2に対して半径方向外側位置に周方向に適用される。
【0271】
ベルト構造6は、複数の巻きを形成する少なくとも1つの補強コード6bを備えるベルト層6aを備える。
【0272】
好ましくは、ベルト構造6はゼロ度タイプであり、すなわち、ベルト層6aは、複数の巻きを形成するように実質的に平行に並んで配置された補強コード6bによって作られる。このような巻きの向きは実質的に周方向(典型的には0°~5°の間の角度)であり、このような方向は、通常、タイヤ1の周方向に対してどのような配置かを基準として「ゼロ度」と呼ばれる。
【0273】
好ましくは、ベルト層6aは、実質的にタイヤ1の周方向に従った向きの複数の巻きを形成する、軸方向に並んだ複数の補強コード6bを備えるゴム引きされた布地のリボン様補強要素の軸方向に並んだ巻線(winding)を備える。
【0274】
リボン様補強要素が使用される場合、それは、最大7つの補強コード6b、より好ましくは3つの補強コード6bを備えてもよい。
【0275】
好ましくは、巻きによって画定された巻線は、半径方向のカーカス構造2のクラウン部分全体にわたって軸方向に延び、巻線のピッチは好ましくは軸方向に一定である。
【0276】
ベルト層6aの補強コード6bは、高炭素含有量を有する鋼線、すなわち少なくとも0.6~0.7重量%の炭素含有量を有する鋼線によって作られた金属製である。好ましくは、このような金属コードは高い伸び(HE:high elongation)を有する。
【0277】
ベルト構造6は、その上に周方向に並置されたトレッドバンド8を有し、トレッドバンド8には、タイヤ1の加硫ステップと同時に行われる成形作業の後、典型的には、複数のブロックの境界を定めるように配置された周方向および横断方向の溝10が形成される。
【0278】
図1を参照すると、タイヤ1は、赤道面「X-X」において、トレッドバンド8の頂部と、タイヤ1のビード9を通る基準線「r」によって特定される取付径との間で測定される断面高さ「H」を有する。
【0279】
タイヤ1はまた、トレッドバンド8の横方向の両端部「E」間の距離によって定義される半径方向断面最大幅「C」と、タイヤ1の赤道面「X-X」において測定される、横方向の両端部「E」を通る線からトレッドバンド8の頂部までの距離によって定義される矢印「f」とを有する。トレッドバンド8の横方向の両端部「E」は、エッジを有するように形成することができる。
【0280】
タイヤ1は、矢印「f」と前述の半径方向断面最大幅「C」との比によって定義される「曲率比」(f/C)を有する。
【0281】
タイヤ1は、矢印「f」と断面高さ「H」との比で与えられる「全高に対する矢印」の比(f/H)を有する。
【0282】
示された参照符号(「H」、「X-X」、「r」、「C」、「f」、「E」)は、フロントタイヤおよびリアタイヤの両方に対して同一である。
【0283】
好ましくは、タイヤ1の矢印「f」は約40mm~約60mmに含まれる。
【0284】
タイヤ1は、約0.25~約0.35に含まれる曲率比「f/C」、例えば約0.26に等しい曲率比「f/C」を有する。
【0285】
タイヤ1は、約0.40~約0.60に含まれる全高に対する矢印の比「f/H」、例えば約0.43に等しい「f/H」を有する。
【0286】
フロントタイヤの場合、矢印「f」は約35mm~約60mmに含まれ、曲率比「f/C」は約0.30~約0.40に含まれ、例えば0.38に等しい。
【0287】
またフロントタイヤの場合、全高に対する矢印の比「f/H」は約0.40~約0.60に含まれ、例えば約0.53に等しい。
【0288】
本発明の好ましい実施形態では、第1のカーカスプライ3aおよび第2のカーカスプライ3bにそれぞれ組み込まれた第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、2%伸びで0.52cN/Texよりも大きい引張強度を有する。
【0289】
本発明の好ましい実施形態では、第1のカーカスプライ3aおよび第2のカーカスプライ3bにそれぞれ組み込まれた第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、2%伸びで0.65cN/Tex未満の引張強度を有する。
【0290】
例えば、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33の引張強度は、2%伸びで0.57cN/Texである。
【0291】
本発明の好ましい実施形態では、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、5%伸びで0.87cN/Texよりも大きい引張強度を有する。
【0292】
本発明の好ましい実施形態では、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、5%伸びで1.2cN/Tex未満の引張強度を有する。
【0293】
例えば、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33の引張強度は、5%伸びで1cN/Texである。
【0294】
第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33を作るための好ましい材料は、ナイロン6.6である。
【0295】
本発明の好ましい実施形態では、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、2600dTexよりも大きい線密度を有する。
【0296】
本発明の好ましい実施形態では、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、3000dTexより小さい線密度を有する。
【0297】
例えば、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、2800dTexの線密度を有する。
【0298】
本発明の好ましい実施形態では、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、1300×2dTexよりも高い線密度を有し、×2という用語は、各補強コードにおいて一緒により合わされたヤーンの端部の数を表す。
【0299】
本発明の好ましい実施形態では、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、1500×2dTex未満の線密度を有し、×2という用語は、各補強コードにおいて一緒により合わされたヤーンの端部の数を表す。
【0300】
例えば、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、1400×2dTexの線密度を有し、×2という用語は、各補強コードにおいて一緒により合わされたヤーンの端部の数を表す。
【0301】
本発明の好ましい実施形態では、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、105コード/dmよりも大きいスレッドカウントを有する。
【0302】
本発明の好ましい実施形態では、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、120コード/dm未満のスレッドカウントを有する。
【0303】
例えば、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、112コード/dmのスレッドカウントを有する。
【0304】
本発明の好ましい実施形態では、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、1デシメートル当たり38回超で42回のねじれを形成する、テキスタイル補強コードを形成する各端部および端部の全体それぞれに付与されたねじれを有する。
【0305】
本発明の好ましい実施形態では、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、1デシメートル当たり42回のねじれより少ない、テキスタイル補強コードを形成する各端部および端部の全体それぞれに付与されたねじれを有する。
【0306】
例えば、第1の複数のテキスタイル補強コード30および第2の複数のテキスタイル補強コード32のテキスタイル補強コード31、33は、1デシメートル当たり40回のねじれより少ない、テキスタイル補強コードを形成する各端部および端部の全体それぞれに付与されたねじれを有する。
【0307】
トレッドバンド8は、エラストマー材料で作られた、赤道面X-Xにまたがって配置された少なくとも1つの中央環状セクター8a(図2に図示される)を備える。
【0308】
本発明の好ましい実施形態によると、トレッドバンド8は、いわゆる「キャップ&ベース」タイプのものまたは2つの異なるエラストマー材料で作られたものでありうる。
【0309】
本発明の好ましい実施形態では、トレッドバンド8は、中央環状セクター8aに加えて、タイヤの赤道面X-Xに対して両側に対称的に配置され、中央環状セクターに隣接して配置された2つの側方環状セクター8bを有する。
【0310】
2つの側方環状セクター8bは、中央環状セクター8aが作られたエラストマー材料とは異なるエラストマー材料で作られている。
【0311】
中央環状セクター8aは、トレッドバンド8の幅の18%よりも大きい幅の軸方向延長部を有する。
【0312】
中央環状セクター8aは、トレッドバンド8の幅の26%未満の幅の軸方向延長部を有する。
【0313】
本発明の好ましい実施形態では、中央環状セクター8aは、トレッドバンドの幅の20パーセントよりも大きい幅の軸方向延長部を有する。
【0314】
本発明の好ましい実施形態では、中央環状セクター8aは、24%未満の幅の軸方向延長部を有する。
【0315】
例えば、中央環状セクター8aは、トレッドバンド8の幅の22%に等しい幅の軸方向延長部を有する。
【0316】
2つの側方環状セクター8bは、軸方向延長部に沿ったそれぞれの距離で、トレッドバンド8の軸方向延長部の9%よりも大きい、好ましくは、トレッドバンド8の軸方向延長部の11%よりも大きい赤道面X-Xに対して配置される。
【0317】
2つの側方環状セクターの軸方向延長部は、等しい幅を有する。
【0318】
2つの側方環状セクター8bの軸方向延長部および中央環状セクター8aの軸方向延長部の幅の合計は、トレッドバンド8の軸方向延長部の幅と一致する。
【0319】
典型的には、本発明によるタイヤ化合物について、以下に列挙した成分およびタイヤ産業において典型的に使用される他の成分を使用することができる。
【0320】
特に、側方環状セクター8bおよび中央環状セクター8aのトレッド化合物について、例えば、硫黄架橋性エラストマー組成物(加硫)において一般に使用されるジエンエラストマー性ポリマーや、過酸化物もしくは当業者に公知のタイヤ製造に特に好適な他の系や、通常20℃未満、好ましくは0℃~-110℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する不飽和鎖を有するエラストマー性ポリマーもしくはコポリマーから選択される少なくとも1つのジエンエラストマー性ポリマーを含むエラストマー組成物を使用することが可能である。
【0321】
好ましくは、側方環状セクター8bおよび中央環状セクター8aのトレッド化合物は、溶液スチレン-ブタジエンゴム(S-SBR)、エマルションスチレン-ブタジエンゴム(E-SBR)またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つのスチレン-ブタジエンゴム(乾燥ポリマー)を50~90phrに含まれる量で含む、100phrの少なくとも1つのジエンエラストマー性ポリマーを含む。
【0322】
本発明において有用なSBRポリマーの市販の例としては、Ashai-Kasei(Japan)製TufdeneポリマーE581およびE680、Trinseo(Germany)製SPRINTAN SLR4602、SLR3402およびSLR4630、JSR Corporation(Japan)製HPR621、Arlanxeo(Germany)製BUNA SL-4518、BUNA SE 1502およびBUNA CB 22、Versalis(Italy)製Europrene 5543T、Europrene 1739およびIntol 1789、Japan Synthetic Rubber Co.(Japan)製HP 755、ならびにZeon Co.(Japan)社のNIPOL NS 522がある。
【0323】
好ましくは、側方環状セクター8bおよび中央環状セクター8aのトレッド化合物は、10~50phrの少なくとも1つのブタジエンポリマー(BR)、好ましくは低cisで官能化されたBRを含む。
【0324】
好ましくは、側方環状セクター8bおよび中央環状セクター8aのトレッド化合物は、1~20phrのアルキレン系液体ポリマーおよびコポリマー、好ましくは、ブタジエン系(BR)、イソプレン(IR)、イソプレン/ブタジエン(IBR)、スチレン/ブタジエン(SBR)、場合によっては官能化されたヒドロキシおよびエポキシから、または天然脱重合液体ポリマー(NR)から選択される1つまたは複数の液体ポリマーを含む。
【0325】
好ましくは、1つまたは複数の液体ポリマーは、ブタジエン系液体ポリマー(BR)から選択される。
【0326】
好ましくは、側方環状セクター8bおよび中央環状セクター8aのトレッド化合物は、少なくとも1つの樹脂を含む。
【0327】
好ましくは、樹脂は、アルファ-ピネン、ベータ-ピネン、リモネン、ならびにビニル芳香族モノマー(スチレン)および/または芳香族モノマー(フェノール)のホモまたはコポリマーから選択されるポリテルペン(polyherpene)樹脂である。
【0328】
市販のテルペン系天然樹脂の例としては、PINOVAによって製造されたPiccolyte F90およびPiccolyte F105樹脂2495;DRTによって製造されたDercolyte A 115およびDercolyte M 115がある。
【0329】
少なくとも1つの樹脂は、炭化水素でありうる。
【0330】
好ましくは、炭化水素樹脂は、クマロン-インデン、スチレン-インデン、スチレン-アルキルスチレン、および脂肪族樹脂に由来する樹脂から選択される。
【0331】
市販の炭化水素樹脂の具体例としては、RUTGERS CHEMICAL GmbHによって製造されたNOVARES C樹脂(合成インデン-クマロン樹脂)があり、NOVARES C10、C30およびC90が特に好ましい。
【0332】
市販のスチレン-インデン炭化水素樹脂の例は、Braskemによって製造されたUNILENE A 100、およびRuetgersによって製造されたNovares TT 90である。
【0333】
好ましくは、少なくとも1つの樹脂は、5~50phr、より好ましくは10~40phrの量で存在する。
【0334】
好ましくは、本発明による側方環状セクター8bおよび中央環状セクター8aのトレッド化合物は、少なくとも1つの可塑化油を含む。
【0335】
「可塑化油」という用語は、石油もしくは鉱油由来のプロセス油、または植物起源もしくは合成起源の油、またはそれらの組み合わせを示すことが意味される。
【0336】
可塑化油は、パラフィン(飽和炭化水素)、ナフテン、芳香族多環式物質、およびそれらの混合物から選択される石油由来のプロセス油でありうる。
【0337】
好適な石油由来のプロセス油の例としては、芳香族、パラフィン、ナフテン油、例えば、当産業で公知のMES(マイルド抽出溶媒和物(Mild Extract Solvated))、DAE(蒸留芳香族抽出物)、TDAE(処理蒸留芳香族抽出物)、TRAE(処理残留芳香族抽出物)、およびRAE(残留芳香族抽出物)がある。
【0338】
可塑化油は、グリセリンのトリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリドまたはそれらの混合物を含む、脂肪酸によるグリセロールのエステル化に由来する天然起源または合成起源の油でありうる。
【0339】
好適な植物油の例としては、ヒマワリ油、ダイズ油、亜麻仁油、ナタネ油、ヒマシ油、および綿実油がある。
【0340】
化合物において使用される油の例としては、トリ-(2-エチルヘキシル)-ホスフェート(TOF)、Lanxessがある。
【0341】
可塑化油は、フタル酸またはリン酸のアルキルまたはアリールエステルから選択される合成油でありうる。
【0342】
好ましくは、天然(例えば、植物)起源または合成起源の油は、-70℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する(ISO 28343:2010による)。
【0343】
好適な市販の可塑化油の例としては、石油系油:Nynasによって販売されているNYTEX 4700、Repsolによって販売されているEXTENSOIL 1471、H&Rによって販売されているVIVATEC 500;ならびに植物油:Oleonによって販売されているRADIA 6132RADIA、Cargillによって販売されているAgripure AP 18およびAgripure AP 75がある。
【0344】
好ましくは、エラストマー性ポリマーの希釈剤として添加された油および既に存在するあらゆる油の両方を含む油の総量は、10~70phr、より好ましくは20~60phrである。
【0345】
本発明によるタイヤ用のエラストマー組成物は、少なくとも20phr、好ましくは少なくとも30phr、より好ましくは少なくとも40phr、さらにより好ましくは少なくとも50phrの少なくとも1つの補強充填材を含むことができる。
【0346】
本組成物は、10phr~150phr、30phr~120phrの少なくとも1つの補強充填材を含むことができる。
【0347】
好ましくは、補強充填材は、カーボンブラック、白色充填材、シリケート繊維、およびそれらの混合物から選択される。
【0348】
ある実施形態では、補強充填材は、水酸化物、酸化物および水和酸化物、金属の塩および水和塩、シリケート繊維、またはそれらの混合物から選択される白色充填材である。好ましくは、白色充填材はシリカである。
【0349】
好ましくは、シリカは、10phr~130phr、より好ましくは40phr~110phr、さらにより好ましくは70~100phrの量でエラストマー組成物中に存在する。
【0350】
好適な従来のシリカの市販の例としては、Solvay製のZeosil 1165 MP、およびEvonik製のUltrasil 7000 GRがある。
【0351】
ある実施形態では、補強充填材はカーボンブラックである。
【0352】
好ましくは、カーボンブラックは、1phr~100phr、より好ましくは5phr~70phrに含まれる量でエラストマー組成物中に存在する。
【0353】
好ましくは、カーボンブラックは、20m2/g以上、好ましくは50m2/gよりも大きい表面積(STSA-ISO 18852:2005に従う統計的厚さ比表面積によって決定)を有するものから選択される。
【0354】
カーボンブラックは、例えば、Birla Group(India)によって販売されているN234、N326、N330、N375もしくはN550、N660、またはCabot Corporation製CRX 1391でありうる。
【0355】
好ましくは、補強充填材は、カーボンブラックおよびシリカ、特に、好ましくは2~15phrのカーボンブラックおよび40~110phrのシリカ、より好ましくは5~10phrのカーボンブラックおよび70~100phrのシリカを含む。
【0356】
タイヤ化合物用のエラストマー組成物は、好ましくは少なくとも0.7phr、より好ましくは少なくとも1phrの少なくとも1つの加硫剤を含む。
【0357】
タイヤ化合物用のエラストマー組成物は、好ましくは0.5~7phr、より好ましくは1~5phrの加硫剤を含む。
【0358】
少なくとも1つの加硫剤は、好ましくは、硫黄、または代わりに硫黄含有分子(硫黄供与体)、例えばビス[(トリアルコキシシリル)プロピル]ポリスルフィド、およびそれらの混合物から選択される。
【0359】
好ましくは、加硫剤は硫黄であり、好ましくは、可溶性硫黄(結晶硫黄)、不溶性硫黄(高分子硫黄)および油分散性硫黄、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0360】
本発明のエラストマー組成物における使用に好適な加硫剤の市販の例としては、RheinChemie製のRhenocure(登録商標)IS90PまたはInternational Sulphur Inc製のRedball Superfine硫黄である。
【0361】
本エラストマー化合物において、加硫剤は、当業者に公知の加硫活性剤、促進剤および/または抑制剤などのアジュバントと一緒に使用することができる。
【0362】
エラストマー化合物は、場合によっては、少なくとも1つの加硫活性剤を含んでもよい。
【0363】
本エラストマー化合物における使用に好適な加硫活性剤は、亜鉛化合物、特にZnO、ZnCO3、8~18個の炭素原子を含有する飽和または不飽和脂肪酸の亜鉛塩であり、これは、好ましくは、ZnOおよび脂肪酸またはそれらの混合物による反応によってエラストマー化合物においてin situで形成される。例えば、好ましくは、ZnOおよび脂肪酸からエラストマー化合物においてin situで形成されるステアリン酸亜鉛、もしくはMgOから形成されるステアリン酸マグネシウム、またはそれらの混合物が使用される。
【0364】
加硫活性剤は、好ましくは0.2phr~15phr、より好ましくは1phr~5phrの量で本発明のエラストマー化合物中に存在してもよい。
【0365】
好ましい活性剤は、酸化亜鉛およびステアリン酸の反応に由来する。
【0366】
活性剤の例としては、Aktiplast ST Rheinchemieおよび亜鉛ビス-ネオデカノエートVALIKAT Zn 1910 Umicoreがある。
【0367】
エラストマー化合物は、少なくとも1つの加硫促進剤をさらに含んでもよい。
【0368】
一次および二次加硫促進剤は、一般に、例えば、ジチオカルバメート、グアニジン、チオウレア、チアゾール、スルフェンアミド、スルフェンイミド、チウラム、アミン、キサンテート、またはそれらの混合物から選択することができる。
【0369】
好ましくは、促進剤は、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド(TBBS)ジベンゾチアゾールジスルフィド(MBTS)、およびそれらの混合物から選択される。
【0370】
本エラストマー化合物において使用するのに好適な促進剤の市販の例としては、Lanxessによって販売されているVulkacit(登録商標)N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBSまたはCZ)、およびN-テルブチル2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、Vulkacit(登録商標)NZ/EGC、テトラベンジルチウラムジスルフィド(Perkacit(登録商標)TBzTD)、ジベンゾチアゾールジスルフィドRhenogran MBTS 80、Huatai Chemicals TBBS製のN-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドがある。
【0371】
加硫促進剤は、本エラストマー化合物において、好ましくは、0.05phr~10phr、好ましくは0.1phr~7phr、より好ましくは0.5phr~5phrの量で使用することができる。
【0372】
エラストマー化合物は、場合によっては、少なくとも1つの加硫抑制剤を含んでもよい。
【0373】
エラストマー化合物における使用に好適な加硫抑制剤は、好ましくは、尿素、無水フタル酸、N-ニトロソジフェニルアミンN-シクロヘキシルチオフタルイミド(CTPまたはPVI)、およびそれらの混合物から選択される。
【0374】
好適な抑制剤の市販の例としては、Lanxess製のN-シクロヘキシルチオフタルイミドVULKALENT Gがある。
【0375】
加硫抑制剤は、好ましくは0.05phr~2phrの量で、エラストマー化合物中に存在してもよい。
【0376】
このエラストマー化合物は、混合物において上記で定められた1つまたは複数の加硫抑制剤を含んでもよい。
【0377】
エラストマー化合物は、少なくとも0.05phr、好ましくは少なくとも0.1phrまたは0.5phr、より好ましくは少なくとも1phrまたは2phrの少なくとも1つのシランカップリング剤をさらに含んでもよい。
【0378】
好ましくは、エラストマー化合物は、0.5phr~10.0phr、より好ましくは1.0phr~8.0phr、さらにより好ましくは5~8phrの少なくとも1つのシランカップリング剤を含む。
【0379】
好ましくは、カップリング剤は、少なくとも1つの加水分解性シラン基を有するものから選択されるシランカップリング剤であり、これは、例えば、以下の一般式(III):
(R’)3Si-CnH2n-X (III)
(式中、R’基は、同一であっても異なっていてもよく、アルキル、アルコキシもしくはアリールオキシ基、またはハロゲン原子のうちから選択され、ただし、R’基のうちの少なくとも1つは、アルコキシまたはアリールオキシ基であり;nは、1~6の整数であり;Xは、ニトロソ、メルカプト、アミノ、エポキシド、ビニル、イミド、塩素、-(S)mCnH2n-Si-(R’)3および-S-COR’から選択される基であり、mおよびnは、1~6の整数であり、R’基は、上記の通り定義される)
によって特定することができる。
【0380】
特に好ましいシランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリル-プロピル)テトラスルフィドおよびビス(3-トリエトキシシリル-プロピル)ジスルフィドである。カップリング剤は、そのまま、または不活性充填材(例えば、カーボンブラック)との混合物に添加して、エラストマー化合物へのその組込みを促進することができる。
【0381】
シランカップリング剤の例としては、Evonikによって販売されているTESPT:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドSi69がある。
【0382】
エラストマー化合物は、当産業で一般に使用される1つまたは複数の追加の成分、例えば、酸化防止剤および/またはオゾン化防止剤(劣化防止剤)、ワックス、接着剤などをさらに含んでもよい。
【0383】
エラストマー化合物は、場合によっては、少なくとも1つのワックスを含んでもよい。
【0384】
例えば、ワックスは、石油ワックスまたはパラフィンの混合物でありうる。
【0385】
好適なワックスの市販の例としては、Repsol製のN-パラフィンおよびRhein Chemie製のAntilux(登録商標)654結晶セルロースワックスがある。
【0386】
ワックスは、一般に、0.1phr~20phr、好ましくは0.5phr~10phr、より好ましくは1phr~5phrの全量で、エラストマー化合物中に存在してもよい。
【0387】
エラストマー化合物は、場合によっては、少なくとも1つの酸化防止剤を含んでもよい。
【0388】
酸化防止剤は、好ましくは、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、N-(1,3-ジメチル-ブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ビス-(1,4-ジメチル-ペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)、N,N’-ビス-(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(DOPD)、N,N’-ビス-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N,N’-ジ-ベータ-ナフチル-p-フェニレンジアミン(DNPD)、N,N’-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン(44PD)、N-フェニル-N’-シクロヘキシル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N’-1-メチルヘプチル-p-フェニレンジアミンおよび同様のもの、ならびにそれらの混合物から選択され、好ましくは、それは、N-1,3-ジメチルブチル-N-フェニル-p-フェニレンジアミン(6-PPD)である。
【0389】
好適な酸化防止剤の市販の例としては、Solutia/Eastman製の6PPDがある。
【0390】
酸化防止剤は、好ましくは0.1phr~20phr、好ましくは0.5phr~10phrの全量で、エラストマー組成物中に存在してもよい。
【0391】
本発明によるタイヤに使用されるすべてのエラストマー組成物は、前述の成分および各組成物が意図される特定の用途に基づいて一般に選択される他の添加剤を含んでもよい。
【0392】
本発明の好ましい実施形態では、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、70℃で測定して9.0~14.0に含まれる静的弾性係数Ca3、70℃および10Hzで測定して0.120~0.160に含まれるタンデルタ8a、70℃および10Hzで測定して3.7~4.1に含まれる動的弾性係数E’を有するように選択される。
【0393】
好ましくは、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、70℃で測定して10.8よりも大きい静的弾性係数Ca3を有するように選択される。
【0394】
好ましくは、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、70℃で測定して11.9より小さい静的弾性係数Ca3を有するように選択される。
【0395】
例えば、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、70℃で測定して11.5の静的弾性係数Ca3を有するように選択される。
【0396】
好ましくは、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、70℃および10Hzで測定して0.138よりも大きいタンデルタを有するように選択される。
【0397】
好ましくは、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、70℃および10Hzで測定して0.152より小さいタンデルタを有するように選択される。
【0398】
例えば、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、70℃および10Hzで測定して0.145のタンデルタを有するように選択される。
【0399】
本発明の好ましい実施形態では、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、70℃および10Hzで測定して3.8よりも大きい動的弾性係数E’を有するように選択される。
【0400】
本発明の好ましい実施形態では、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、70℃および10Hzで測定して4.0より小さい動的弾性係数E’を有するように選択される。
【0401】
例えば、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、70℃および10Hzで測定して3.9の動的弾性係数E’を有するように選択される。
【0402】
本発明の好ましい実施形態では、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料の、70℃および10Hzで測定したタンデルタと、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比は、0.034よりも大きい。
【0403】
本発明の好ましい実施形態では、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料の、70℃および10Hzで測定したタンデルタと、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比は、0.039よりも小さい。
【0404】
例えば、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料の、70℃および10Hzで測定したタンデルタと、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比は、0.037である。
【0405】
好ましくは、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、2つの側方環状セクター8bの加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定したタンデルタより小さい、70℃および10Hzで測定したタンデルタを有するように選択される。
【0406】
トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、2つの側方環状セクター8bの加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’よりも大きい、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’を有するように選択される。
【0407】
トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、2つの側方環状セクター8bの加硫エラストマー材料の70℃で測定した静的弾性係数Ca3よりも大きい、70℃で測定した静的弾性係数Ca3を有するように選択される。
【0408】
例えば、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、2つの側方環状セクター8bの加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定したタンデルタの92%に等しい、70℃および10Hzで測定したタンデルタを有するように選択される。
【0409】
例えば、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、2つの側方環状セクター8bの加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’の106%に等しい、70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’を有するように選択される。
【0410】
例えば、トレッドバンド8の中央環状セクター8aのエラストマー材料は、最終(加硫)タイヤが、中央環状セクター8aにおいて、側方環状セクター8bの加硫エラストマー材料の70℃で測定した静的弾性係数Ca3の130%に等しい、70℃で測定した静的弾性係数Ca3を有するように選択される。
【0411】
比較試験
本出願人は、本発明の実施形態によるリアタイヤ1の試供品を作った。以下、このようなタイヤをINVで示す。
【0412】
タイヤINVは、主に一般道路での使用のためであってオフロードでの使用は限定的な、現在市販されている自動二輪車用の本出願人のリアタイヤの寸法と同一の寸法を有した。以下、このようなタイヤをRefで示す。
【0413】
タイヤINVおよびRefの構造は、ベルトおよびビード構造の点で同一であり、いずれも、キャップ&ベースタイプのトレッドバンドを有した。特に、いずれのタイヤも、中央環状セクターおよび同一の軸方向寸法の2つの側方環状セクターを有した。
【0414】
2つのタイヤは、カーカス構造に関して表1に示される特性を有した。
【0415】
【表1】
【0416】
上記表1から分かる通り、本発明によるカーカスプライに使用される補強コードは、比較タイヤの補強コードの剛性に対してより低剛性の機械特性を有する。
【0417】
2つのタイヤの側方環状部分の加硫エラストマー材料を作るのに使用されるエラストマー組成物は同一であり、表2で「側方部分」と示された列に示されている。
【0418】
2つのタイヤの中央環状セクターの加硫エラストマー材料を作るのに使用されるエラストマー組成物を、表2に示す。
【0419】
【表2】

S-SBR:溶液重合スチレン-ブタジエンゴム、乾燥ポリマー100部につき37.5部のTDAE油で延展(110phrの延展ポリマーは、80phrの乾燥ポリマーに相当し、96.2phrの延展ポリマーは、70phrの乾燥ポリマーに相当し、100.4phrの延展ポリマーは、73phrの乾燥ポリマーに相当する)、Tufdene E680、Asahi Kasei。
官能化BR:低cis官能化ポリブタジエンYB03、Asahi Kasei
BR:溶液からの高cisポリブタジエンEUROPRENE NEOCIS BR 60、Versalis
CB1:カーボンブラックCRX 1391、Cabot
CB2:カーボンブラックN234、Cabot
シリカ1:ZEOSIL 1165 MP、Solvay
シリカ2:ULTRASIL 7000、Evonik
TDAE油処理蒸留(Distilate)芳香族抽出物、Vivatec(登録商標)500(可塑剤)、Hansen & Rosenthal、Germany
液体ブタジエン1:RICON 100、Cray Valley
液体ブタジエン2:POLYVEST 130、Evonik
TOF可塑剤:トリ-(2-エチルヘキシル)-ホスフェート(TOF)、Lanxess
テルペン樹脂:樹脂2495、Pinova
スチレンインデン樹脂:Novares TT90;Reutgers Germany GmbH
亜鉛塩1:ビス-ネオデカン酸亜鉛VALIKAT Zn 1910 Umicore
亜鉛塩2:ステアリン酸亜鉛Aktiplast ST(Rheinchemie)
亜鉛塩3:75%オクタン酸亜鉛、Purus
シラン:Si 69(登録商標)-Bis[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ポリスルフィド、Evonik
ワックス:N-パラフィンおよびイソパラフィン混合物BMO1、Repsol
6PPD:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、Solutia Eastman;
硫黄:Rhenocure(登録商標)IS 90 P(RheinChemie)
TBBS:Huatai Chemicals製N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(benzothiazilsulfenamide)
MBTS 80:Rhenogran MBTS 80ジベンゾチアゾールジスルフィド、Rhein Chemie
TBzTD:テトラベンジルチウラムジスルフィド(Perkacit(登録商標)TBZTD)
DPG 80:N,N’-ジフェニルグアニジン促進剤Rhenogran(登録商標)RheinChemie
Brenntag Spa、Milan、Italyによって製造されたPVI N-シクロヘキシルチオフタルイミド。
【0420】
以下の表3は、上記の表2に示されるエラストマー組成物を加硫することによって得られた、本発明によるタイヤおよび比較タイヤの中央環状セクターにおいて使用される加硫エラストマー材料の試供品に対して実施した静的機械分析および動的機械分析の結果を示している。
【0421】
エラストマー材料は、上記の表2に示されるエラストマー組成物を170℃で15分間加硫することによって得た。
【0422】
【表3】
【0423】
上記の表3から分かる通り、本発明によるタイヤの中央環状セクターにおいて使用されるエラストマー材料は、比較タイヤの中央環状セクターにおいて使用されるエラストマー材料の対応する静的剛性よりも300%高い、変形下での静的剛性を有する:本出願人によると、この特性は、高い走行安定性の予測因子でありうる。本発明によるタイヤの中央環状セクターにおいて使用されるエラストマー材料は、比較タイヤの70℃での動的弾性係数よりもわずかに高い、70℃での動的弾性係数、および著しく低いタンデルタを有し、結果として、タイヤのグリップのパラメーター指標に相関しうるタンデルタ/E’比が、比較タイヤの中央環状セクターにおいて使用されるエラストマー材料のタンデルタ/E’比に対して低い。本発明によるタイヤのトレッドバンドのクラウン部分のこのようなタンデルタ/E’比の低い値は、タイヤのグリップ性能の悪化の予測因子であるはずである。驚くべきことに、実施した走行試験(以下に記載する通り)では、代わりに、予測したものとは反対の結果が生まれた。
【0424】
オンロードでの優れた挙動と、オフロードでの許容可能以上の挙動により顧客から評価されているタイヤRefを用いて屋外比較試験を実施した。
【0425】
試験は、同一の環境条件下、特に、乾いたアスファルトでの試験については10℃~40℃の温度、および濡れたアスファルトでの試験については10℃~20℃の温度で、両方のタイヤ(2.9barの同じタイヤ圧に加圧した)をBMW R1250 GS自動二輪車の後輪に取り付け、前輪には、同一のタイヤを取り付けて実施した。
【0426】
2つのタイヤINVおよびRefの挙動が、(乾いたおよび濡れた)道路と、極端ではないオフロードとの両方で、ドライバーの判断により評価された。特に、以下の表4に列挙した項目が評価され、ドライバーが述べた意見も記載した。
【0427】
道路での試験は、乾いた道路と濡れた道路との両方で、直線およびカーブの行程を走行することによって実施した。
【0428】
表4において、「=」は、Ref.タイヤに関して得られた正の評価を示し、「+」は、Ref.タイヤに対する改善を示し、「++」は、Ref.タイヤに対するさらに大きな改善を示す。
【0429】
【表4】
【0430】
表4は、INVタイヤが、Refタイヤの性能と比較して、特に、安定性ならびに乾いた状態および濡れた状態でのハンドリングに関して路面での改善された性能を提供することを示す。
【0431】
試験はまた、INVタイヤがまた、乾いた路面との接触に対する快適性、乾いた状態での走行安全性に対する快適性、および濡れた状態での制動に関して、Refタイヤよりも良好に実施されたことを示した。
【0432】
本出願人は、したがって、本発明のタイヤにおいて適合された特性を有するクロスプライカーカス構造およびトレッドバンドを使用することによって、実際に、乾いた状態および濡れた状態でのハンドリングを損なうことなく、実際には驚くべきことに改善して、路面に対する高速での安定性の非常に望ましい改善を実現することができたことを確認している。
【0433】
もちろん、当業者であれば、特定および臨時の適用要件を満たすために、上記のタイヤ1にさらなる修正および変形を加えることができ、これらの変形および修正は、いかなる場合にも、以下の特許請求の範囲によって規定されるような保護範囲に包含される。
図1
図1A
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-07-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアルカーカス構造(2)およびラジアルカーカス構造(2)に対して半径方向外側位置に適用されたトレッドバンド(8)を備える自動二輪車用タイヤ(1)であって、
前記ラジアルカーカス構造(2)が、第1の複数のテキスタイル補強コード(30)を含む第1のカーカスプライ(3a)および第2の複数のテキスタイル補強コード(32)を含む第2のカーカスプライ(3b)を備え、
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)のテキスタイル補強コード(31)が、互いに実質的に平行であり、前記トレッドバンド(8)のクラウン部分(8c)において、タイヤの赤道面(X-X)に対して予め定められた傾斜角度(A1)の第1の傾斜を有し、第2の複数のテキスタイル補強コード(32)のテキスタイル補強コード(33)が、互いに実質的に平行であり、前記トレッドバンド(8)の前記クラウン部分(8c)において、タイヤの赤道面(X-X)に対して前記予め定められた傾斜角度(A1)の第2の傾斜を有し、前記第2の傾斜が、前記第1の傾斜と反対向きであり、
前記第2のカーカスプライ(3b)が、第1のカーカスプライ(3a)上に半径方向に並置されており、
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)および前記第2の複数のテキスタイル補強コード(32)の前記テキスタイル補強コード(31、33)が、2%伸びで0.35cN/Tex~1.2cN/Texに含まれかつ5%伸びで0.5cN/Tex~3cN/Texに含まれる引張強度を有し、
前記赤道面(X-X)にまたがって配置された前記トレッドバンド(8)の少なくとも1つの中央環状セクター(8a)が、9.0~14.0、好ましくは10.0~13.0に含まれる70℃で測定した静的弾性係数Ca3、0.120~0.160に含まれ、好ましくは0.135~0.155に含まれる70℃および10Hzで測定したタンデルタ、ならびに3.7~4.1に含まれる70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’を有する加硫エラストマー材料で作られている、
自動二輪車用タイヤ(1)。
【請求項2】
前記トレッドバンド(8)の前記中央環状セクター(8a)が、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比が0.03~0.04に含まれる加硫エラストマー材料で作られている、請求項1に記載のタイヤ(1)。
【請求項3】
前記トレッドバンド(8)が、タイヤの赤道面(X-X)に対して両側に配置されかつ前記中央環状セクター(8a)に隣接して配置された2つの側方環状セクター(8b)を備え;前記中央環状セクター(8a)が、前記2つの側方環状セクター(8b)の前記加硫エラストマー材料の70℃および10Hzで測定したタンデルタよりも小さい、70℃および10Hzで測定したタンデルタを有する加硫エラストマー材料で作られている、請求項1に記載のタイヤ(1)。
【請求項4】
前記中央環状セクター(8a)が、前記2つの側方環状セクター(8b)の加硫エラストマー材料の70℃で測定した静的弾性係数Ca3よりも大きい、70℃で測定した静的弾性係数Ca3を有する加硫エラストマー材料で作られている、請求項3に記載のタイヤ(1)。
【請求項5】
前記中央環状セクター(8a)が、前記2つの側方環状セクター(8b)の加硫エラストマー材料の、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比よりも大きい、70℃および10Hzで測定したタンデルタと70℃および10Hzで測定した動的弾性係数E’との比を有する加硫エラストマー材料で作られている、請求項3または4に記載のタイヤ(1)。
【請求項6】
前記中央環状セクター(8a)が、前記トレッドバンド(8)の幅の15%よりも大きくかつ前記トレッドバンド(8)の幅の30%より小さい幅の軸方向延長部を有する、請求項1に記載のタイヤ(1)。
【請求項7】
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)および前記第2の複数のテキスタイル補強コード(32)の前記テキスタイル補強コード(31、33)が、ナイロンで作られている、請求項1に記載のタイヤ(1)。
【請求項8】
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)および前記第2の複数のテキスタイル補強コード(32)の前記テキスタイル補強コード(31、33)が、2000~4600dTexに含まれる線密度を有する、請求項1に記載のタイヤ(1)。
【請求項9】
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)および前記第2の複数のテキスタイル補強コード(32)の前記テキスタイル補強コード(31、33)が、1100×2dTex~1840×2dTexに含まれる線密度を有し、「×2」という用語が、各補強コードにおいて一緒により合わされたヤーンの端部の数を表す、請求項8に記載のタイヤ(1)。
【請求項10】
前記第1の複数のテキスタイル補強コードおよび是kに第2の複数のテキスタイル補強コードの前記テキスタイル補強コードが、80コード/dm~130コード/dmに含まれるスレッドカウントを有する、請求項1に記載のタイヤ(1)。
【請求項11】
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)および前記第2の複数のテキスタイル補強コード(32)の前記テキスタイル補強コード(31、33)は、1デシメートル当たり30~65回より合わされた前記テキスタイル補強コードを形成する、各端部および端部の全体それぞれに付与されたねじれを有する、請求項1に記載のタイヤ(1)。
【請求項12】
前記第1の複数のテキスタイル補強コード(30)および前記第2の複数のテキスタイル補強コード(32)の前記テキスタイル補強コード(31、33)の前記予め定められた傾斜角度(A1)が、65°~90°に含まれる、請求項1に記載のタイヤ(1)。
【請求項13】
前記ラジアルカーカス構造(2)に対して半径方向外側位置かつ前記トレッドバンド(8)に対して半径方向内側位置にベルト構造(6)を備える、請求項1に記載のタイヤ(1)。
【請求項14】
前記ベルト構造(6)が、実質的にタイヤの周方向に従った向きの複数の巻きを形成する少なくとも1つの補強コード(6b)を備えるベルト層(6a)を備える、請求項13に記載のタイヤ(1)。
【請求項15】
前記トレッドバンド(8)が、0.4~0.65に含まれる空隙/固体比を有し、タイヤの赤道面(X-X)に対して対称なトレッドパターンを有する、請求項1に記載のタイヤ(1)。

【国際調査報告】