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特表2025-500129コンタクトレンズからのオレイン酸の持続放出
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  • 特表-コンタクトレンズからのオレイン酸の持続放出 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】コンタクトレンズからのオレイン酸の持続放出
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20241226BHJP
   A61L 27/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20241226BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G02C7/04
A61L27/00
A61L27/18
A61L27/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530521
(86)(22)【出願日】2023-09-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-04
(86)【国際出願番号】 GB2023052477
(87)【国際公開番号】W WO2024069147
(87)【国際公開日】2024-04-04
(31)【優先権主張番号】63/410,240
(32)【優先日】2022-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ニ ジン
(72)【発明者】
【氏名】リウ ロンファ
【テーマコード(参考)】
2H006
4C081
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB03
2H006BB05
2H006BB07
4C081AB23
4C081CA061
4C081CA081
4C081CA101
4C081CA271
4C081CE05
4C081CE11
(57)【要約】
オレイン酸放出コンタクトレンズ、及びそれを製造する方法が記載される。オレイン酸放出コンタクトレンズは、sn-2位置にオレオイル基を含むグリセロリン脂質を含み、ヒト涙液中に存在するsPLA2酵素の存在下でオレイン酸の放出を持続する。オレイン酸放出コンタクトレンズは、快適な装用の継続時間を増加させ、及び/又は症状のあるコンタクトレンズ装用者のレンズ知覚事象を減少させうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装中に密封された未装用のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、少なくとも1種の2-オレオイルリン脂質が充填されたポリマーレンズ体を含み、50ppmのヒトsPLA2を含む人工涙漿液(ATF)と37℃で4時間にわたって接触した場合、ヒトsPLA2を含まないATFと接触した場合よりも少なくとも2倍多いオレイン酸を放出する、未装用のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項2】
2-オレオイルリン脂質が、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、又はホスファチジルグリセロールである、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項3】
2-オレオイルリン脂質が、DOPG、DOPS、及びDOPEから選択される、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項4】
ポリマーレンズ体が、25質量%~55質量%のシロキサンモノマー、30質量%~55質量%の、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-N-メチルアセトアミド又はそれらの組合せから選択されるビニルモノマー、及び任意に約1質量%~約20質量%の、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、又はそれらのあらゆる組合せから選択される親水性モノマー、及び任意に約1質量%~約20質量%の、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルメタクリレート(IBM)若しくは2-ヒドロキシブチルメタクリレート(HOB)、又はそれらのあらゆる組合せから選択される疎水性モノマーを含む重合性組成物の反応生成物である、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項5】
ポリマーレンズ体が、式(II)
【化1】
式(II)
によって表される構造を有する第1のシロキサン、
及び式(III)
【化2】
式(III).
によって表される構造を有する第2のシロキサン
を含む重合性組成物の反応生成物である、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項6】
10μg~1000μg、好ましくは25μg~250μgの2-オレオイルリン脂質が充填された、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項7】
50ppmのsPLA2を含有する人工涙溶液を含む放出媒体に35℃で浸漬された場合、コンタクトレンズが、少なくとも0.1μg/時のオレイン酸の放出を、少なくとも4時間、例えば、少なくとも8時間、任意に少なくとも10時間にわたって持続する、請求項1に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項8】
包装中に密封された未装用のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、少なくとも10μgの2-オレオイルリン脂質が充填されたポリマーレンズ体を含み、2-オレオイルリン脂質が、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、又はホスファチジルグリセロールである、未装用のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項9】
2-オレオイルリン脂質が、DOPG、DOPS、及びDOPEから選択される、請求項8に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項10】
ポリマーレンズ体が、25質量%~55質量%のシロキサンモノマー、30質量%~55質量%の、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-N-メチルアセトアミド又はそれらの組合せから選択されるビニルモノマー、及び任意に約1質量%~約20質量%の、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、又はそれらのあらゆる組合せから選択される親水性モノマー、及び任意に約1質量%~約20質量%の、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルメタクリレート(IBM)若しくは2-ヒドロキシブチルメタクリレート(HOB)、又はそれらのあらゆる組合せから選択される疎水性モノマーを含む重合性組成物の反応生成物である、請求項8に記載のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
【請求項11】
ポリマーレンズ体が、式(II)
【化3】
式(II)
によって表される構造を有する第1のシロキサン、
及び式(II)
【化4】
式(III).
によって表される構造を有する第2のシロキサン
を含む重合性組成物の反応生成物である、請求項8に記載のコンタクトレンズ。
【請求項12】
10μg~1000μg、好ましくは25μg~250μgの2-オレオイルリン脂質が充填された、請求項8に記載のコンタクトレンズ。
【請求項13】
50ppmのsPLA2を含有する人工涙溶液を含む放出媒体に35℃で浸漬された場合、コンタクトレンズが、少なくとも0.1μg/時のオレイン酸の放出を、少なくとも4時間、例えば、少なくとも8時間、任意に少なくとも10時間にわたって持続する、請求項8に記載のコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、コンタクトレンズ、特にコンタクトレンズ装用者にとってより快適なコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
全コンタクトレンズ装用者のうち推定で50%が、自身のレンズ装用中に不快感を経験し、これらのコンタクトレンズ装用者のおよそ25%が、レンズの装用を永久に中止する。コンタクトレンズ装用者におけるコンタクトレンズへの不満の主な理由は、レンズ知覚の感覚である。コンタクトレンズ材料の進歩にもかかわらず、現在市販されているコンタクトレンズの装用中にレンズ知覚の感覚を経験するコンタクトレンズ装用者が快適に装用できる改善されたコンタクトレンズの必要性が存在する。
脂肪酸は、眼に投与した場合に潤滑をもたらしし、不快感を軽減することができるコンフォート剤(comfort agent)として作用することが公知である。コンフォート剤として作用する脂肪酸は、装用中に眼の感覚を和らげ、したがって不快感を減少させるのに十分な量でコンタクトレンズから放出されうる(米国特許出願公開第20220187620号)。しかしながら、一部のコンタクトレンズ材料は、脂肪酸放出を終日持続することができない。
コンタクトレンズからの脂肪酸の持続放出速度を得、それによって、コンタクトレンズ装用者におけるコンタクトレンズ装用の快適さを強化し、コンタクトレンズ装用者がコンタクトレンズを快適に装用することができる継続時間を増加させることが望ましい。代替的に又は加えて、コンタクトレンズ装用者が装用することができる改善されたコンタクトレンズを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本発明の特徴は、レンズ装用中にオレイン酸及びその塩を放出することができるヒドロゲルコンタクトレンズを提供することである。「オレイン酸」という用語は、本明細書において、遊離酸の形態のオレイン酸、及び塩としてのオレイン酸の両方を指すために使用される。
本発明のさらなる特徴は、コンタクトレンズ装用者が快適に装用することができるコンタクトレンズを提供することである。
本発明のさらなる特徴は、快適なレンズ装用の継続時間を増加させ、及び/又はコンタクトレンズ装用者のレンズ知覚事象を減少させることである。
本発明の追加の特徴及び利点は、一部は以下の記載に示され、一部は記載から明らかであるか、又は本発明を実施することによって知ることができる。本発明の目的及び他の利点は、本記載及び添付の特許請求の範囲において特に指し示される要素及び組合せによって実現及び到達される。
【0004】
これら及び他の利点を実現するために、本発明の目的に従って、本明細書で実施され、幅広く記載される通り、本発明は、一部には、2-オレオイルリン脂質が充填されたポリマーレンズ体を含むヒドロゲルコンタクトレンズに関する。2-オレオイルリン脂質は、有利には、ヒト涙液中に見出される分泌型ホスホリパーゼ2-アシルヒドロラーゼ(sPLA2)酵素、とりわけIIA群分泌型ホスホリパーゼ2-アシルヒドロラーゼ(sPLA2-IIA)による消化を受けやすい。コンタクトレンズ体中に存在する2-オレオイルリン脂質は、有利には、2-オレオイルリン脂質がシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのポリマーレンズ体、例えばstenfilcon Aコンタクトレンズ中に存在する場合、ヒト涙液中に見出されるsPLA2酵素、とりわけsPLA2-IIAによる消化を受けやすい。2-オレオイルリン脂質は、前記2-オレオイルリン脂質を各々充填した同一のstenfilcon Aコンタクトレンズを各放出媒体に35℃で4時間浸漬した後、sPLA2酵素を含有する放出媒体に最少200μgの2-オレオイルリン脂質が充填されたstenfilcon Aレンズから放出されるオレイン酸の量が、ホスホリパーゼA2酵素を欠く、それ以外は同一の対照放出媒体に放出されるオレイン酸の量の少なくとも2倍、例えば、少なくとも3倍である場合、sPLA2酵素による消化を受けやすいと考えられうる。sPLA2酵素を含有する放出媒体は、50ppm組換えヒトsPLA2-IIAをさらに含有する下記表1に定義されるものなどの人工涙液(ATF)であってもよく、ホスホリパーゼA2酵素を欠く対照放出媒体は、ホスホリパーゼA2酵素を欠くそれ以外は同一のATF放出媒体であってもよい。代替的に、sPLA2酵素を含有する放出媒体は、反射涙溶液であってもよく、対照放出媒体は、ATFであってもよい。疑義を避けるために、2-オレオイルリン脂質がsPLA2酵素による消化を受けやすいかの決定は、2-オレオイルリン脂質をstenfilcon Aレンズに充填することによって実施されうる一方、sPLA2酵素による消化を受けやすいと決定された2-オレオイルリン脂質を含むコンタクトレンズを含む、本発明のコンタクトレンズは、stenfilcon Aレンズである必要はなく、あらゆる配合物のシリコーンヒドロゲルレンズであってもよい。本発明のすべての態様において、sPLA2酵素による消化を受けやすい2-オレオイルリン脂質が充填されたコンタクトレンズは、本明細書に記載されるあらゆるコンタクトレンズであってもよい。比較のために、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ体中に存在する場合、ヒト涙液中に見出されるsPLA2酵素による消化を受けやすくないことが見出されたリン脂質の一例は、ジミリストイルホスファチジルコリン、すなわち、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)である。リン脂質は、アニオン性グリセロリン脂質又は双性イオン性グリセロリン脂質であってもよい。アニオン性グリセロリン脂質は、リン脂質頭基に(すなわち、下記式(I)のR3位置で)結合したアニオン性(負荷電)基質基を含む。2-オレオイルリン脂質は、式(I):
【0005】
【化1】
式(I)
[式中、Xは、-O-又は-O(CO)-のいずれかであり、R1は、C11-25アルキルであり、R2は、CH3(CH27CH=CH(CH27-であり、R3は、水素、C1-10ポリオール(例えば、グリセロール又はイノシトール)、エタノールアミン(-CH2CH2NH2)及びセリン(-CH2CH(NH2)COOH)から選択される]のもの、及び式(I)のリン脂質の塩(例えば、式中、R3は負電荷、又は脱プロトン化アニオン性基、例えば-CH2CH(NH2)COO-である)でありうる。本発明のヒドロゲルコンタクトレンズは、オレイン酸の放出を持続し、それによって、レンズ装用者におけるコンタクトレンズの快適性を強化し、及び/又はコンタクトレンズ装用者における快適なコンタクトレンズ装用の継続時間を増加させることが見出された。
【0006】
一例では、ヒドロゲルコンタクトレンズは、35℃でリン酸緩衝食塩水(PBS)中50ppmのsPLA2-IIA酵素溶液を含有するATFを含むin vitro放出媒体への浸漬の1時間後、0.05μg~50μg、0.1μg~25μg、0.5μg~10μg、とりわけ1~5μgのオレイン酸を放出することが可能である。
【0007】
さらに、本発明は、本発明のヒドロゲルコンタクトレンズを作製する方法に関する。方法は、a)重合性組成物(本明細書に記載の通り)をコンタクトレンズ型において重合して、ポリマーレンズ体を得るステップと、b)ポリマーレンズ体をコンタクトレンズ型から取り外すステップと、c)ポリマーレンズ体を2-オレオイルリン脂質を含む有機溶媒に抽出するステップと、d)ポリマーレンズ体を水和液中で水和させて、ヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップと、e)前記ヒドロゲルコンタクトレンズを包装溶液と共に包装中に密封するステップと、f)前記包装をオートクレーブするステップとを含む。水和ステップd)は、2-オレオイルリン脂質がポリマーレンズ体に充填される抽出ステップc)の前に行ってもよい。水和ステップd)を、2-オレオイルリン脂質がポリマーレンズ体に充填される抽出ステップc)の前に行う場合、さらなる水和ステップを、ステップc)の後に実施してもよい。
さらに、本発明は、症状のある(symptomatic)コンタクトレンズ装用者に、2-オレオイルリン脂質が充填されたポリマーレンズ体を含むオレイン酸放出ヒドロゲルコンタクトレンズを提供することによって、症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正する方法に関する。有利には、オレイン酸放出ヒドロゲルコンタクトレンズは、2-オレオイルリン脂質を含有しない対照レンズと比較して、快適なコンタクトレンズ装用の継続時間を増加させ、及び/又は症状のあるコンタクトレンズ装用者におけるレンズ知覚事象を減少させる。2-オレオイルリン脂質、例えば、式(I)の2-オレオイルリン脂質は、有利には、ポリマーレンズ体中に存在する場合、ヒト涙液中に見出されるsPLA2酵素、とりわけsPLA2-IIAによる消化を受けやすい。
【0008】
さらに、本発明は、2-オレオイルリン脂質を含有しない対照レンズと比較して、快適なコンタクトレンズ装用の継続時間を増加させ、及び/又はレンズ知覚事象を減少させるための、コンタクトレンズ装用者による、2-オレオイルリン脂質を含有するオレイン酸放出ヒドロゲルコンタクトレンズの使用に関する。
さらに、本発明は、コンタクトレンズの快適性を強化する量の2-オレオイルリン脂質の使用であって、リン脂質がコンタクトレンズのポリマーレンズ体と会合している、使用に関する。
さらに、本発明は、コンタクトレンズ装用者におけるレンズ知覚の感覚を減少させ、それによって、コンタクトレンズ装用者におけるコンタクトレンズの快適性を強化し、及び/又はコンタクトレンズ装用者における快適なコンタクトレンズ装用の継続時間を増加させるのに使用するためのヒドロゲル組成物であって、(b)ある量の2-オレオイルリン脂質が充填された(a)重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含む、ヒドロゲル組成物に関する。
【0009】
本発明のすべての態様において、2-オレオイルリン脂質は、有利には、2-オレオイルリン脂質がシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのポリマーレンズ体中に存在する場合、ヒト涙液中に見出されるsPLA2酵素、特にIIA群sPLA2による消化を受けやすい。本発明のすべての態様において、2-オレオイルリン脂質が充填されたポリマーレンズ体を含むコンタクトレンズは、(a)コンタクトレンズがヒト反射涙液に35℃で4時間にわたって2回、例えば3回、浸漬された場合、オレイン酸の量は、レンズがホスホリパーゼA2酵素を欠く放出媒体に35℃で4時間にわたって浸漬された場合よりも、反射涙液において検出されること、及び/又は(b)コンタクトレンズが50ppmの組換えヒトIIa群の分泌型ホスホリパーゼA2を含有する人工涙液(ATF)に35℃で4時間にわたって2回、例えば3回、浸漬された場合、レンズが、ホスホリパーゼA2酵素を欠く同等のATF放出媒体に35℃で4時間にわたって浸漬された場合よりも多い量のオレイン酸がATFにおいて検出されることを特徴としうる。
【0010】
本発明のさらなる態様は、以下の番号付きの項に提供される。
1. 包装中に密封された未装用のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであって、ある量の2-オレオイルリン脂質が充填されたポリマーレンズ体を含む、未装用のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
2. 2-オレオイルリン脂質が、ポリマーレンズ体中に存在する場合、ヒト涙液中に見出される分泌型ホスホリパーゼA2(sPLA2)酵素による消化を受けやすい、項1のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
3. ヒドロゲルコンタクトレンズが、sPLA2-IIAを含む溶液と接触した場合、オレイン酸を放出する、項1又は項2のコンタクトレンズ。
4. 50ppmのヒトsPLA2を含む人工涙漿液(ATF)と37℃で4時間にわたって接触した場合、ヒトsPLA2を含まないATFと接触した場合よりも少なくとも2倍多いオレイン酸を放出する、いずれかの先行する項のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
5. 2-オレオイルリン脂質が、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、又はホスファチジルグリセロールである、いずれかの先行する項のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
6. 2-オレオイルリン脂質が、1,2-ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、1,2-ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、及び1,2-ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から選択される、いずれかの先行する項のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
7. ポリマーレンズ体が、ビニル基を含む少なくとも1種の親水性モノマーを含む重合性組成物の反応生成物である、いずれかの先行する項のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
8. ポリマーレンズ体が、25質量%~55質量%のシロキサンモノマー、30質量%~55質量%の、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-N-メチルアセトアミド又はそれらの組合せから選択されるビニルモノマー、及び任意に約1質量%~約20質量%の、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、又はそれらのあらゆる組合せから選択される親水性モノマー、及び任意に約1質量%~約20質量%の、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルメタクリレート(IBM)若しくは2-ヒドロキシブチルメタクリレート(HOB)、又はそれらのあらゆる組合せから選択される疎水性モノマーを含む重合性組成物の反応生成物である、いずれかの先行する項のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ。
9. ポリマーレンズ体が、式(II)
【0011】
【化2】
式(II)
によって表される構造を有する第1のシロキサン、
及び式(III)
【0012】
【化3】
式(III).
によって表される構造を有する第2のシロキサン
を含む重合性組成物の反応生成物である、いずれかの先行する項のコンタクトレンズ。
10. ポリマーレンズ体が、少なくとも10μgの2-オレオイルリン脂質、とりわけ少なくとも10μgの2-オレオイルホスファチジルセリン、2-オレオイルホスファチジルエタノールアミン、又は2-オレオイルホスファチジルグリセロール、例えば、少なくとも10μgの1,2-ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、1,2-ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、又は1,2-ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)が充填されている、いずれかの先行する項のコンタクトレンズ。
11. 2-オレオイルリン脂質の量が、10μg~1000μg、好ましくは25μg~250μgである、項10のコンタクトレンズ。
12. 50ppmのsPLA2を含有する人工涙溶液を含む放出媒体に35℃で浸漬された場合、コンタクトレンズが、少なくとも0.1μg/時のオレイン酸の放出を、少なくとも4時間、例えば、少なくとも8時間、任意に少なくとも10時間にわたって持続する、いずれかの先行する項のコンタクトレンズ。
13. 包装が、
(a)包装溶液を保持する空洞及び空洞を取り囲むフランジを有するベース部材と、
(b)ベース部材のフランジとの液密封止を形成するカバーと
を含む、いずれかの先行する項のコンタクトレンズ。
14. いずれかの先行する項のヒドロゲルコンタクトレンズを作製する方法であって、a)重合性組成物をコンタクトレンズ型において重合して、ポリマーレンズ体を得るステップと、b)ポリマーレンズ体をコンタクトレンズ型から取り外すステップと、c)ポリマーレンズ体を2-オレオイルリン脂質を含む有機溶媒に抽出するステップと、d)ポリマーレンズ体を水和液中で水和させて、ヒドロゲルコンタクトレンズを得るステップと、e)ヒドロゲルコンタクトレンズを包装溶液と共に包装中に密封するステップと、任意に、f)包装をオートクレーブするステップとを含む、方法。
15. 症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正するための方法であって、症状のあるコンタクトレンズ装用者が、項1~13のいずれかのヒドロゲルコンタクトレンズを装用するステップを含む、方法。
16. 症状のあるコンタクトレンズ装用者が、対照レンズと比較して増加した快適なコンタクトレンズ装用の継続時間を有する、項15の方法。
17. 症状のあるコンタクトレンズ装用者が、1日のうちで対照レンズと比較して減少したレンズ知覚、及び/又はより少ない「レンズ知覚事象」を有する、項15又は項16の方法。
18. コンタクトレンズの快適性を強化する量の2-オレオイルリン脂質の使用であって、リン脂質がコンタクトレンズのポリマーレンズ体と会合している、使用。
19. コンタクトレンズが、項1~13のいずれかのヒドロゲルコンタクトレンズである、項18の使用。
20. レンズ知覚の感覚が、症状のあるコンタクトレンズ装用者において減少し、及び/又は快適なコンタクトレンズ装用の継続時間が増加する、項18又は項19の使用。
21. コンタクトレンズ装用者におけるレンズ知覚の感覚を減少させ、それによって、コンタクトレンズ装用者におけるコンタクトレンズの快適性を強化する、及び/又はコンタクトレンズ装用者における快適なコンタクトレンズ装用の継続時間を増加させるのに使用するためのヒドロゲル組成物であって、(b)ある量の2-オレオイルリン脂質が充填された(a)重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含む、ヒドロゲル組成物。
22. 項1~13のいずれかのコンタクトレンズの形態である、項21の使用のための組成物。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】sn-2エステル結合におけるジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)が、sPLA2により酵素分解して、オレイン酸及びリゾホスファチジルグリセロール(LOPG)が生じることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
装用中にオレイン酸の放出を持続するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ、及びそれらの製造方法が本明細書に記載される。コンタクトレンズは、本明細書において、オレイン酸放出コンタクトレンズと呼ぶことができる。オレイン酸は、装用中に、コンタクトレンズ装用者においてコンタクトレンズ装用の快適さを強化し、コンタクトレンズ装用者がコンタクトレンズを快適に装用できる継続時間を増加させうる量で、レンズから放出される。特に、本発明のオレイン酸放出レンズは、症状のある患者におけるレンズ装用の1日の終わりの快適さを増加させうる。
本発明のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、有利には、レンズ装用中、オレイン酸の持続放出を提供する。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、オレオイル基(すなわち、*OC(O)C714CH=CHC817)をsn-2位置に含むグリセロリン脂質が充填されたポリマーレンズ体を含み、このグリセロリン脂質は、本明細書の以下で「2-オレオイルリン脂質」と呼ばれる。涙液中に存在するヒト分泌型ホスホリパーゼA2(ヒトsPLA2)による消化を受けやすい2-オレオイルリン脂質は、本発明のコンタクトレンズに使用することができる。涙液中に存在するヒトsPLA2による分解に対するリン脂質の感受性は、下記の実施例1に記載されるように、市販の組換えヒトPLA2G2Aを使用して決定されうる。
【0015】
2-オレオイルリン脂質は、例えば、ホスファチジン酸(phosphatatidic acid)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルリノシトール、又はホスファチジルグリセロールであってもよい。好ましくは、2-オレオイルリン脂質は、ホスファチジルコリン以外である。ホスファチジルコリンは、下記実施例1で実証される通り、ヒト涙液中に見出されるIIA群分泌型ホスホリパーゼA2(sPLA2-IIA)酵素による分解に対して、他のグリセロリン脂質よりも感受性が低いことが見出されている。有利には、2-オレオイルリン脂質は、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルリノシトール、及びホスファチジルグリセロール、とりわけホスファチジルエタノールアミン、又はホスファチジルグリセロールから選択される。
「消化を受けやすい」とは、ヒト涙液中に存在するsPLA2は、2-オレオイルリン脂質のsn2位置でアシル基を加水分解して、遊離脂肪酸及びリゾリン脂質を生じる。
2-オレオイルリン脂質は、ヒト涙液によって消化可能である。2-オレオイルリン脂質は、ヒト涙液中に存在するsPLA2から少なくとも消化可能である。
2-オレオイルリン脂質は、sn-1位置に別のオレオイル基を含んでもよく、すなわち、それは、ジオレオイルリン脂質、例えば、1,2-ジオレオイルホスファチジルグリセロールであってもよい。代替的に、2-オレオイルリン脂質は、sn-1位置に異なる脂肪酸基を含んでもよい。sn-1位置の脂肪酸は、C12-26脂肪酸、例えば、C14-22脂肪酸であってもよい。
【0016】
好ましいジオレオイルリン脂質としては、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)が挙げられる。他の例示的な2-オレオイルリン脂質としては、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルエタノールアミン、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール、1-パルミトイル-2-オレオイルホスファチジルセリン、1-ミリストイル-2-オレオイルホスファチジルエタノールアミン、1-ミリストイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール、1-ミリストイル-2-オレオイルホスファチジルセリン、1-ペンタデカノイル-2-オレオイルホスファチジルエタノールアミン、1-ペンタデカノイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール、1-ペンタデカノイル-2-オレオイルホスファチジルセリン、1-ジドコサヘキサエノイル-2-オレオイルホスファチジルエタノールアミン、1-ジドコサヘキサエノイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール、1-ジドコサヘキサエノイル-2-オレオイルホスファチジルセリン、1-ステアロイル-2-オレオイルホスファチジルエタノールアミン、1-ステアロイル-2-オレオイルホスファチジルグリセロール、及び1-ステアロイル-2-オレオイルホスファチジルセリンが挙げられる。
【0017】
選択肢として、本明細書に記載される通りの1種又は複数の2-オレオイルリン脂質が、本発明のオレイン酸放出コンタクトレンズ中に存在しうる(例えば、本明細書に記載される通り、2種の異なる、3種の異なる、又はそれよりも多い2-オレオイルリン脂質)。
sn-2位置のオレイン酸は、有利には、レンズから放出及び溶出され、一方、残りのリン脂質(すなわち、リゾリン脂質)は、レンズ内に保持される。オレイン酸の放出速度は、コンタクトレンズを通したオレイン酸自体の拡散速度に加えて、2-オレオイルリン脂質の酵素反応の動力学に依存しうる。
【0018】
ヒドロゲルコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルであってもよい。一例として、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、少なくとも1種のシロキサンモノマー又はマクロマー、並びに少なくとも1種の親水性モノマー及び/又は少なくとも1種の疎水性ポリマーを含む重合性組成物の反応生成物であるポリマーレンズ体を含む。好都合には、下記により詳細に記載される通り、シリコーンヒドロゲルの硬化ポリマーレンズ体は、2-オレオイルリン脂質を含有するエタノールなどの抽出溶媒で抽出されうる。したがって、抽出ステップは、硬化ポリマーレンズ体から未反応モノマー及び他の材料を抽出するため、並びに2-オレオイルリン脂質をポリマーレンズ体に充填するための両方に役立ちうる。抽出溶媒に2-オレオイルリン脂質を含む代わりに、又はそれに加えて、2-オレオイルリン脂質が重合性組成物に含まれてもよい。いずれの場合も、2-オレオイルリン脂質は、静電及び/若しくは疎水性相互作用によってポリマーレンズ体と会合してもよく、並びに/又はポリマーレンズ体のポリマーネットワークによって物理的に封入されてもよい。したがって、「会合した」という用語は、2-オレオイルリン脂質及びポリマーレンズ体の間の非共有結合相互作用を指し、「接着した」及び「充填された」という用語と交換可能に使用される。
【0019】
ポリマーレンズ体に充填された2-オレオイルリン脂質の量は、下記の実施例2に記載される通りのイソプロピルアルコール(IPA)抽出方法によってコンタクトレンズから抽出されうるリン脂質の総量を指す。有利には、ポリマーレンズ体と会合した2-オレオイルリン脂質は、レンズが脱イオン水又は標準コンタクトレンズ包装溶液、例えば、リン酸又はホウ酸緩衝食塩水に浸漬された場合、除去されない。一例では、2-オレオイルリン脂質は、エタノールなどのアルコールを含む充填溶液を使用してポリマーレンズ体に充填され、2-オレオイルリン脂質は、約0.01mg/mL~約10mg/mL、又は約0.05mg/mL~約5mg/mL、又は約0.1mg/mL~約2.5mg/mLの範囲の濃度である。充填溶液は、例えば、2-オレオイルリン脂質を可溶化し、レンズ材料を膨張させうるエタノール(EtOH)及び水のあらゆる混合物、例えば、水中約10%~95%EtOHを含む。レンズは、ポリマーレンズ体中の2-オレオイルリン脂質の所望の充填レベルを達成するのに必要な時間にわたって充填溶液に浸漬され、これは、以下の実施例2の方法によるなどの通常の実験によって決定することができる。いくつかの例では、ポリマーレンズ体と会合した2-オレオイルリン脂質の量は、少なくとも約1μg、10μg、25μg、50μg、又は100μg~最大約250μg、400μg、500μg、600μg、700μg、800μg、900μg、又は1000μgでありうる。一例では、ポリマーレンズ体と会合した2-オレオイルリン脂質の量は、約25μg/レンズ~約250μg/レンズである。
【0020】
本明細書で使用される場合、文脈が逆のことを記述していない限り、特定の継続時間にわたって2-オレオイルリン脂質含有コンタクトレンズから放出されたオレイン酸の量、又はオレイン酸の「放出プロファイル」は、in vitro放出媒体(50ppm sPLA2を含有する下記の表2に記載される通りのATF)及び下記の実施例3に記載される方法を使用して測定して、レンズから放出されたオレイン酸の量を指す。コンタクトレンズは、35℃で放出媒体への最初の浸漬後、レンズから約0.05μg/時~50μg/時のオレイン酸、例えば、0.1μg/時~25μg/時、又は0.5μg/時~10μg/時、又は1μg/時~5μg/時のin vitroオレイン酸放出プロファイルを有しうる。有利には、コンタクトレンズは、少なくとも4時間、例えば、少なくとも8時間、任意に少なくとも10時間又は少なくとも12時間にわたってオレイン酸の放出を持続する。有利には、コンタクトレンズは、実施例3の方法によって決定して、35℃で放出媒体への浸漬後、毎時0.05μg~25μgのオレイン酸、例えば、0.1μg~10μg、又は0.1μg~5μgのオレイン酸の放出を少なくとも最初の10時間にわたって持続する。0.05μg/時の低さのオレイン酸放出速度は、一部の装用者にとって有益でありうる。50μg/時超の放出速度は、一部の装用者に刺激をもたらすことがあり、一部の装用者は、オレイン酸放出速度が25μg/時超に増加しても、追加の有益な効果を経験しないことがある。
選択肢として、本発明のコンタクトレンズは、本明細書に記載される通りの2-オレオイルリン脂質の存在を除いて、どのようなコンフォート剤も含有しない。
選択肢として、本発明のコンタクトレンズは、本明細書に記載される通りの2-オレオイルリン脂質とは異なる1種又は複数のコンフォート剤を含有しうる。あらゆる他のコンフォート剤の量は、存在する2-オレオイルリン脂質の量未満でありうる。あらゆる他のコンフォート剤の量は、300μg未満、100μg未満、50μg未満、10μg未満、又は1μg未満でありうる。
選択肢として、本明細書に記載される通りの包装溶液は、どのようなコンフォート剤も含有しない。
【0021】
選択肢として、本明細書に記載される通りの包装溶液は、コンタクトレンズ中に元々存在する2-オレオイルリン脂質から生じた2-オレオイルリン脂質及び/又はオレイン酸の存在の可能性を除いて、どのようなコンフォート剤も含有しない。
選択肢として、コンタクトレンズ中に存在するか、又はコンタクトレズと会合した唯一のリン脂質は、2-オレオイルリン脂質である。
選択肢として、放出されるか、又はコンタクトレズと共に存在する脂肪酸の唯一の供給源は、存在する2-オレオイルリン脂質由来である。
本発明は、コンタクトレンズと会合した遊離オレイン酸(2-オレオイルリン脂質に由来しない)と比較して改善されたオレイン酸の制御放出を提供する能力を有する。例えば、放出は、コンタクトレンズに使用/それと会合のみしている遊離脂肪酸と比較して、より線形でありうる。
【0022】
2-オレオイルリン脂質の消化からの脂肪酸の放出は、脂肪酸の涙液制御放出と考えることができる。
【0023】
コンタクトレンズのシリコーンヒドロゲル材料は、典型的には、少なくとも1種のシロキサンモノマー若しくはマクロマー、及び少なくとも1種の親水性モノマー若しくは少なくとも1種の疎水性ポリマー、又はそれらの混合物を含む重合性組成物(すなわち、モノマー混合物)を硬化することによって形成される。本明細書で使用される場合、「シロキサンモノマー」という用語は、少なくとも1つのSi-O基及び少なくとも1つの重合性官能基を含有する分子を指す。「シロキサンマクロマー」は、少なくとも1つの重合性官能基を有するケイ素含有分子を指し、これは、モノマーとして使用されるが、ポリマーと考えるのに十分高い分子量及び十分な内部モノマーユニットを有する。典型的には、シロキサンマクロマーは、少なくとも5つのシロキサン(-Si-O-)ユニットを有するシロキサン鎖を含有し、及び/又は少なくとも500ダルトンの分子量を有する。
【0024】
コンタクトレンズ組成物に使用されるシロキサンモノマー及びマクロマーは、当技術分野において周知である(例えば、米国特許第8,658,747号及び米国特許第6,867,245号を参照されたい)。(ここで挙げた及び全体を通して挙げるすべての特許及び刊行物は、その全体が参照により組み込まれる。)いくつかの例では、重合性組成物は、少なくとも10質量%、20質量%、又は30質量%~最大約40質量%、50質量%、60質量%、又は70質量%の総量のシロキサンモノマー又はマクロマーを含む。別途指定されない限り、本明細書で使用される場合、重合性組成物の成分の所与の質量パーセンテージ(質量%)は、重合性組成物中のすべての重合性成分及びIPNポリマー(下記にさらに記載される通り)の総質量に対するものである。最終コンタクトレンズ製品に組み込まれない希釈剤などの成分が寄与する重合性組成物の質量は、質量%計算に含まれない。
【0025】
特定の例では、重合性組成物は、親水性ビニルモノマーを含む。本明細書で使用される場合、「親水性ビニルモノマー」は、アクリル基の一部ではないその分子構造中に存在する重合性炭素-炭素二重結合(すなわち、ビニル基)を有するあらゆるシロキサン不含(すなわち、Si-O基を含有しない)親水性モノマーであり、ビニル基の炭素-炭素二重結合は、フリーラジカル重合下で重合性メタクリレート基中に存在する炭素-炭素二重結合よりも反応性が低い。本明細書で使用される場合、「アシル基」という用語は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミドなどに存在する重合性基を指す。したがって、炭素-炭素二重結合は、アクリレート及びメタクリレート基中に存在し、本明細書で使用される場合、そのような重合性基はビニル基ではないと考えられる。さらに、本明細書で使用される場合、標準振とうフラスコ法を使用して目視で決定して、少なくとも50グラムのモノマーが20℃で1リットルの水に完全に可溶である(すなわち、水に約5%可溶である)場合、モノマーは「親水性」である。様々な例では、親水性ビニルモノマーは、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、若しくはN-ビニルピロリドン(NVP)、若しくは1,4-ブタンジオールビニルエーテル(BVE)、若しくはエチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、若しくはジエチレングリコールビニルエーテル(DEGVE)、又はそれらの任意の組合せである。一例では、重合性組成物は、少なくとも10質量%、15質量%、20質量%、又は25質量%~最大約45質量%、60質量%、又は75質量%の親水性ビニルモノマーを含む。本明細書で使用される場合、重合性組成物中の特定のクラスの成分(例えば、親水性ビニルモノマー又はシロキサンモノマーなど)の所与の質量パーセンテージは、組成物中、そのクラスに入る各成分の質量%の合計に等しい。したがって、例えば、5質量%BVE及び25質量%NVPを含み、他の親水性ビニルモノマーを含まない重合性組成物は、30質量%の親水性ビニルモノマーを含むと言われる。一例では、親水性ビニルモノマーは、ビニルアミドモノマーである。例示的な親水性ビニルアミドモノマーは、VMA及びNVPである。具体例では、重合性組成物は少なくとも25質量%のビニルアミドモノマーを含む。さらなる具体例では、重合性組成物は、約25質量%~最大約75質量%のVMA若しくはNVP、又はそれらの組合せを含む。重合性組成物に含まれうるさらなる親水性モノマーは、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、及びそれらの組合せである。
【0026】
親水性モノマーに加えて、又はその代替として重合性組成物は、非重合性親水性ポリマーを含んでもよく、これは、非重合性親水性ポリマーがシリコーンヒドロゲルポリマーマトリックスに相互貫入した相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)を含むポリマーレンズ体をもたらす。この例では、非重合性親水性ポリマーはIPNポリマーと呼ばれ、これは、コンタクトレンズにおいて内部湿潤剤として作用する。これとは対照的に、重合性組成物中に存在するモノマーの重合によって形成するシリコーンヒドロゲルネットワーク内のポリマー鎖は、IPNポリマーであるとは考えない。IPNポリマーは、例えば、約50,000~約500,000ダルトンの高分子量親水性ポリマーであってもよい。具体例では、IPNポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。他の例では、重合性組成物は、ポリビニルピロリドン又は他のIPNポリマーを実質的に含まない。
【0027】
選択肢として、1種又は複数の非ケイ素含有疎水性モノマーが、重合性組成物の一部として存在しうる。疎水性モノマーは、標準振とうフラスコ法を使用して、50グラムのモノマーが20℃で1リットルの水に目視で完全には可溶でないあらゆるモノマーであると理解されうる。好適な疎水性モノマーの例としては、メチルアクリレート、若しくはエチルアクリレート、若しくはプロピルアクリレート、若しくはイソプロピルアクリレート、若しくはシクロヘキシルアクリレート、若しくは2-エチルヘキシルアクリレート、若しくはメチルメタクリレート(MMA)、若しくはエチルメタクリレート、若しくはプロピルメタクリレート、若しくはブチルメタクリレート、若しくは2-ヒドロキシブチルメタクリレート、若しくは酢酸ビニル、若しくはプロピオン酸ビニル、若しくは酪酸ブチル、若しくは吉草酸ビニル、スチレン、若しくは、クロロプレン、若しくは塩化ビニル、若しくは塩化ビニリデン、若しくはアクリロニトリル、若しくは1-ブテン、若しくはブタジエン、若しくはメタクリロニトリル、若しくはビニルトルエン、若しくはビニルエチルエーテル、若しくはパーフルオロヘキシルエチルチオカルボニルアミノエチルメタクリレート、若しくはイソボルニルメタクリレート(IBM)、若しくはトリフルオロエチルメタクリレート、若しくはヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、若しくはテトラフルオロプロピルメタクリレート、若しくはヘキサフルオロブチルメタクリレート、又はそれらのあらゆる組合せが挙げられる。
【0028】
疎水性モノマーは、使用される場合、重合性組成物の総質量に対して、1質量%~約30質量%、例えば、1質量%~25質量%、1質量%~20質量%、1質量%~15質量%、2質量%~20質量%、3質量%~20質量%、5質量%~20質量%、5質量%~15質量%、1質量%~10質量%の量で重合性組成物の反応生成物中に存在しうる。
重合性組成物は、少なくとも1種の架橋剤をさらに含んでもよい。本明細書で使用される場合、「架橋剤」は、少なくとも2つの重合性基を有する分子を指す。したがって、架橋剤は、2つ以上のポリマー鎖の官能基と反応して1つのポリマーと別のポリマーを架橋することができる。架橋剤は、アクリル基若しくはビニル基、又はアクリル基及びビニル基の両方を含んでもよい。ある特定の例では、架橋剤はシロキサン部分を含まない、つまり、架橋剤は非シロキサン架橋剤である。シリコーンヒドロゲル重合性組成物における使用に適した様々な架橋剤が当分野で公知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,231,218号を参照されたい)。好適な架橋剤の例には、限定なしに、低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えば、トリエチレングリコールジーメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリ(低級アルキレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、及び低級アルキレンジ(メタ)アクリレート;ジビニルエーテル、例えば、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル;ジビニルスルホン;ジ及びトリビニルベンゼン;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;メチレンビス(メタ)アクリルアミド;トリアリルフタレート;1,3-ビス(3-メタクリルオキシプロピル)テトラメチルジシロキサン;ジアリルフタレート;並びにそれらの組合せが挙げられる。
【0029】
当業者であれば理解するように、重合性組成物は、コンタクトレンズ配合物において従来使用されるさらなる重合性又は非重合性成分、例えば、重合開始剤、UV吸収剤、着色剤、酸素捕捉剤、又は連鎖移動剤などのうちの1種又は複数を含んでもよい。いくつかの例では、重合性組成物は、重合性組成物の親水性成分及び疎水性成分の間の相分離を防止又は最小化する量の有機希釈剤を含んでもよく、それにより光学的に透明なレンズが得られる。コンタクトレンズ配合物に一般に使用される希釈剤としては、ヘキサノール、エタノール、及び/又は他の第1級、2級若しくは3級アルコールが挙げられる。他の例では、重合性組成物は、有機希釈剤を含まないか、又は実質的に含まない(例えば、500ppm未満)。そのような例では、ポリエチレンオキシド基、ペンダントヒドロキシル基、又は他の親水性基などの親水性部分を含有するシロキサンモノマーの使用により、重合性組成物に希釈剤を含む必要がなくなりうる。重合性組成物に含まれうるこれらの成分及びさらなる成分の非限定例は、米国特許第8,231,218号に提供されている。
【0030】
使用されうるシリコーンヒドロゲルの非限定例としては、comfilcon A、fanfilcon A、stenfilcon A、senofilcon A、senofilcon C、somofilcon A、narafilcon A、delefilcon A、narafilcon A、lotrafilcon A、lotrafilcon B、balafilcon A、samfilcon A、galyfilcon A、及びasmofilcon Aが挙げられる。
本発明のヒドロゲルコンタクトレンズの具体例は、25質量%~55質量%のシロキサンモノマー又はマクロマー、30質量%~55質量%の、NVP、VMA、又はそれらの組合せから選択されるビニルモノマー、及び任意に、約1質量%~約20質量%の、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)若しくはエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、又はそれらのあらゆる組合せから選択される親水性モノマー、及び任意に、約1質量%~約20質量%の、メチルメタクリレート(MMA)、イソボルニルメタクリレート(IBM)若しくは2-ヒドロキシブチルメタクリレート(HOB)、又はそれらのあらゆる組合せから選択される疎水性モノマーを含む重合性組成物に基づくものである。重合性組成物のこの特定の実施形態から作製されたシリコーンヒドロゲル材料としては、stenfilcon A、comfilcon A、somofilcon A、fanfilcon A、及びenfilcon Aが挙げられる。さらなる例では、上記の重合性組成物は、stenfilcon Aのシロキサン、具体的には、式(II)
【0031】
【化4】
式(II)
によって表される構造を有する第1のシロキサン、
及び式(III)
【化5】
式(III).
によって表される構造を有する第2のシロキサン
を含む。
【0032】
従来の方法を、本発明のコンタクトレンズを製造するために使用することができる。例として、ヒドロゲル組成物のための重合性組成物は、コンタクトレンズの前面を定義する凹面を有する雌型部材に分注される。コンタクトレンズの背面、すなわち角膜接触面、を定義する凸面を有する雄型が、雌型部材と組み合わせられて、コンタクトレンズ型アセンブリが形成され、これは、硬化条件、例えば、UV又は熱硬化条件に供され、この条件下で硬化性組成物がポリマーレンズ体に形成される。雌及び雄型部材は、非極性型であっても極性型であってもよい。型アセンブリは分解(すなわち、脱型)され、ポリマーレンズ体が型から取り出され、溶媒、例えば、エタノールなどの有機溶媒と接触して、レンズ体から未反応成分が抽出される。抽出後、レンズ体は、水又は水溶液などの1種又は複数の水和液中で水和され、包装される。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する例示的な方法は、米国特許第8,865,789号に記載されている。
【0033】
2-オレオイルリン脂質は、典型的には、抽出ステップ中にポリマーレンズに充填される。一般に、硬化後、ポリマーレンズ体は、2-オレオイルリン脂質を含有するエタノール及び水の混合物などの抽出溶媒中で膨張する。抽出されたポリマーレンズ体が、続いて脱イオン(DI)水などの水和溶液に入れられると、抽出溶媒は除去され、2-オレオイルリン脂質はポリマーレンズ体と会合したままとなる。
抽出及び水和プロセスで使用される抽出溶媒及び水和液の例は、変性エタノール、変性エタノール及び脱イオン水の混合物、並びに脱イオン水からなりうる。例として、抽出及び水和プロセスは、変性エタノール(EtOH)中での少なくとも1回の抽出ステップに続いて、EtOH及び水の混合物、例えば水中約10%~95%EtOH、例えば水中約30%~80%EtOHを含む1回の抽出ステップ、続いて、脱イオン水中、少なくとも1回の水和ステップを含むことができ、各抽出及び水和ステップは、約20℃~約30℃の温度で約15分~約3時間続きうる。抽出溶媒は、2-オレオイルリン脂質のポリマーレンズ体への充填を達成するために2-オレオイルリン脂質を含有しうる。
【0034】
2-オレオイルリン脂質の充填溶液として使用されるいずれの抽出溶媒も、約0.01μg/ml~10mg/mL、例えば0.1μg/ml~5mg/mLの濃度の2-オレオイルリン脂質を含有しうる。ポリマーレンズ体に充填される2-オレオイルリン脂質の量は、10μg~1000μg、例えば、約25μg~500μg、又は50μg~250μgでありうる。
本発明の一部として、コンタクトレンズは、コンタクトレンズ包装中に密封されうる。コンタクトレンズ包装内に密封された包装溶液は、あらゆる従来のコンタクトレンズ適合溶液であってもよい。一例では、包装溶液は、緩衝液及び/又は等張化剤の水溶液を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。別の例では、包装溶液は、さらなる薬剤、例えば、1種又は複数のさらなる抗菌剤、及び/又はコンフォート剤、及び/又は親水性ポリマー、及び/又は界面活性剤、及び/又は他の有益な薬剤を含有する。いくつかの例では、包装溶液は、多糖(例えば、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)、又は他の高分子量ポリマー、例えばポリビニルピロリドンを含んでもよく、これらは、一般に、点眼液及びコンタクトレンズ包装溶液中のコンフォートポリマー又は増粘剤として使用される。他の例では、包装溶液は、眼科薬を含んでもよい。包装溶液は、約6.8又は7.0~最大約7.8又は8.0の範囲のpHを有しうる。一例では、包装溶液は、リン酸緩衝液又はホウ酸緩衝液を含む。別の例では、包装溶液は、約200~400mOsm/kg、典型的には、約270mOsm/kg~最大約310mOsm/kgの範囲の浸透圧を維持する量の、塩化ナトリウム又はソルビトールから選択される等張化剤を含む。
【0035】
コンタクトレンズ包装に関して、包装は、コンタクトレンズ及び包装溶液を保持するように構成された空洞と、空洞の周りに外向きに拡がるフランジ領域を含むプラスチックベース部材とを含む(include)か又は含み(comprise)うる。取外し可能な箔がフランジ領域に取り付けられて、密封コンタクトレンズ包装が提供される。そのようなコンタクトレンズ包装は、一般に「ブリスターパック」と呼ばれ、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第7,426,993号を参照されたい)。
密封コンタクトレンズ包装を製造するために従来の製造方法を使用できることが認識される。コンタクトレンズ包装を製造する方法において、方法は、未装用のコンタクトレンズ及びコンタクトレンズ包装溶液をレセプタクルに入れるステップと、レセプタクルにカバーを置くステップと、レセプタクル上のカバーを密封するステップとを含む。一般に、レセプタクルは、単一コンタクトレンズ、及びコンタクトレンズを完全に被覆するのに十分な量、典型的には約0.5~1.5mlの包装溶液を受け取るように構成されている。レセプタクルは、ガラス又はプラスチックなどのいずれの好適な材料から作製されていてもよい。一例では、レセプタクルは、コンタクトレンズ及び包装溶液を保持するように構成された空洞、並びに空洞の周りに外向きに拡がるフランジ領域を含むプラスチックベース部材を含み、カバーは、密封コンタクトレンズ包装を提供するようにフランジ領域に取り付けられた取外し可能な箔を含む。取外し可能な箔は、いずれの従来の方法、例えば加熱封止又は糊付けによって密封されてもよい。別の例では、レセプタクルは、複数のスレッドを含むプラスチックベース部材の形態であり、カバーは、ベース部材のスレッドとの嵌合のためのスレッドの適合セットを含むプラスチックキャップ部材を含み、それによって再密封可能なカバーが提供される。他の種類の包装も、再密封可能な包装を提供するために使用できることが認識される。例えば、コンタクトレンズ包装は、レセプタクルの適合する特徴と嵌合して締まり嵌めを形成する特徴を含むプラスチックカバーを含んでもよい。密封コンタクトレンズ包装を製造する方法は、密封コンタクトレンズ包装をオートクレーブすることによって未装用のコンタクトレンズを滅菌するステップをさらに含んでもよい。オートクレーブは一般に、密封コンタクトレンズ包装を少なくとも20分間、少なくとも121℃の温度に供するステップを含む。
【0036】
コンタクトレンズは、包装溶液に含浸され、包装中に密封された未装用(すなわち、患者によって以前に使用されたことがない新しいコンタクトレンズ)で提供されうる。包装は、ブリスター包装、ガラスバイアル、又は他の適切な容器であってもよい。包装は、包装溶液を保持する空洞を有するベース部材と、ベース部材との液密封止を形成するカバーと、未装用のコンタクトレンズとを含みうる。密封包装は、熱又は蒸気を含む滅菌量の照射によって、例えば、オートクレーブによって、又はガンマ線照射、eビーム照射、紫外線照射などによって、滅菌されうる。
【0037】
具体例では、包装コンタクトレンズは、オートクレーブによって滅菌される。
最終製品は、眼科的に許容される表面の濡れ性を有する滅菌包装コンタクトレンズ(例えば、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ)でありうる。
本明細書に記載されるオレイン酸放出ヒドロゲルコンタクトレンズは、症状のあるコンタクトレンズ装用者の視力を矯正するために使用することができる。例えば、本発明のオレイン酸放出ヒドロゲルコンタクトレンズは、症状のあるコンタクトレンズ装用者において快適なコンタクトレンズ装用の継続時間を増加させうる。本明細書における「症状のあるコンタクトレンズ装用者」又は「症状のある対象」への言及は、Chalmersら(Chalmers et al., Contact Lens Dry Eye Questionnaire-8 (CLDEQ-8) and opinion of contact lens performance. Optom Vis Sci 2012; 89(10):1435-1442を参照されたい)によって記載される通り、CLDEQ-8を使用して症状があると分類されるレンズ装用者を指す。
【0038】
本明細書に記載されるオレイン酸放出ヒドロゲルコンタクトレンズは、対照レンズ又はコンタクトレンズ装用者が常用しているレンズと比較して、1日のうちのレンズ知覚を減少させ、及び/又はより少ない「レンズ知覚事象」をもたらすために、コンタクトレンズ装用者によって装用されうる。本明細書における「対照レンズ」への言及は、リン脂質又はオレイン酸を含有しないが、それ以外は、それが比較されるオレイン酸放出レンズと同一であるコンタクトレンズを指す。コンタクトレンズ装用中のレンズ知覚及び/又はレンズ知覚事象の減少は、Readら(Read et al., Monitoring ocular discomfort using a wrist-mounted electronic logger. Contact Lens and Anterior Eye Vol. 43 (2020) 476-483を参照されたい)によって記載される通りの「レンズ知覚ロガー」を使用して決定することができる。
以下の実施例は、本発明のある特定の態様及び利点を例示し、これらは、それによって限定するものではないことが理解されるべきである。
【実施例
【0039】
(実施例1)異なる2-オレオイルリン脂質が充填されたstenfilcon Aレンズからのオレイン酸放出。
表1に示されるリン脂質を、Avanti Polar Lipidsから得た。表1に示されるリン脂質の充填溶液3mg/mlを、エタノール2.4mLをリン脂質9mgに添加し、超音波処理(最大15分間)し、次いで、DI水0.6mLを添加し、再度超音波処理(最大15分間)して、リン脂質を溶解させることによって調製した。
【0040】
【表1】

stenfilcon Aから作製された水和コンタクトレンズを3mLの精製水中で、3回、各回30分間洗浄した。各洗浄レンズを3mLのリン脂質充填溶液に入れ、75rpmで穏やかに振とうしながら室温で3時間インキュベートした。次いで、充填レンズをすすぎ、DI水を数回交換して水和させた。レンズを緩衝食塩水コンタクトレンズ包装溶液中に包装し、オートクレーブした。
人工涙液(ATF)を、表2に列挙する成分の最初の3種を清浄なガラスバイアルに添加し、次いで、4つ目の成分30mLを添加することによって調製した。
【0041】
【表2】

オートクレーブ後、各レンズをその包装から取り出し、5mLのATFを含有する6mLガラスバイアルに室温で入れ、125rpmで振とう器に終夜置いて、レンズ中に存在しうる遊離オレイン酸を溶出した。
各レンズを、5mLのATFの新しいアリコートを含有する6mlガラスバイアル中で30分間すすいだ後、消化アッセイを実行した。
ATF中50ppmのsPLA2溶液を、ATF 200μlを組換えヒトPLA2G2A(Creative BioMart、カタログ番号PLA2G2A-669H)10μgを含有するチューブに添加することによって調製した。この溶液をATF+sPLA2と呼ぶ。各レンズから2つの4mm片を切り出した。各レンズ1片を100μLのATFを有するチューブに入れ、もう1片を100μLのATF+sPLA2を含有するチューブに入れた。チューブを35±2℃で4時間、振とうせずにインキュベートした。
【0042】
T=4時間の時点で各レンズから放出媒体50μlをHPLCバイアルに移し、イソプロパノール(IPA)500μlを添加し、十分混合した。T=0時間のHPLCバイアルも調製した(ATF 50μl+IPA 500μl)。すべてのバイアルを15分間超音波処理し、遠心分離した。LCMS注入のために上清を取り出した。
上清を、ACQUITY UPLC BEH C18 1.7μg、2.1mm×15cmカラムを備え、0.35mL/分の流速で移動相勾配65%A~90%Bで実行するLCMS装置に注入し、ここで、A=10mM酢酸アンモニウム及び0.2%(v/v)水酸化アンモニウムを含む水中40%アセトニトリル、B=10mM酢酸アンモニウム及び0.2%(v/v)水酸化アンモニウムを含むIPA中10%アセトニトリルであった。質量スペクトル検出器はネガティブエレクトロスプレーモードで実行する。上清中のオレイン酸(OA)のピークを測定した(m/zトレース=281.24)。sPLA2あり及びなしでのATF中OAピーク面積の比を計算した。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】

結果は、2-オレオイルホスファチジルコリンを充填したコンタクトレンズが、sPLA2媒介分解及び脂肪酸放出を受けにくい一方、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、及びホスファチジルセリンを充填したコンタクトレンズは、sPLA2媒介脂肪酸放出を受けやすいことを示唆している。
【0044】
(実施例2)DOPG充填Stenfilcon Aコンタクトレンズ。
Sigma-Aldrich製の1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセロール)ナトリウム塩(DOPG)を50体積%のエタノール(EtOH)、50体積%の脱イオン水に溶解させ、DOPGが完全に溶解するまで超音波処理して、1mg/ml~10mg/mlの濃度の範囲のDOPG充填溶液を得た。
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを、ポリプロピレンコンタクトレンズ型においてstenfilcon Aの配合物を硬化することによって調製した。硬化stenfilcon Aを型から取り外し、各レンズをEtOHで抽出して、未反応のモノマーを除去した。次いで、レンズをDOPG充填溶液に約90分間入れ、次いで、DI水を数回交換して水和させた。レンズを、リン酸緩衝食塩水(PBS)を含む包装溶液約1.2mlと共にプラスチックブリスター中に包装し、オートクレーブした。
【0045】
各レンズのDOPGの量を、レンズをイソプロパノール(IPA)で抽出し、LCMSによって抽出物中のDOPGを測定することによって決定した。簡潔には、各レンズをそのブリスターパックから取り出し、軽くブロッティングして過剰の包装溶液を除去し、10mLの100%IPAを含有する20mLガラスバイアルに入れた。バイアルを、室温で終夜(約16時間)、300rpmでベンチトップ振とう器に置いた。stenfilcon Aの場合、レンズから実質的にすべてのDOPGを抽出するのに、単回2時間の抽出ステップで十分である。より疎水性のシリコーンヒドロゲルレンズ材料は、すべてのDOPGを抽出するためには2回目の終夜抽出が必要な場合があり、この場合、1回目の抽出ステップからのIPAは除去し、3mLの新しいIPAに交換し、室温、300rpmで終夜振とうする。各レンズからのIPA抽出物中のDOPGの量を、DOPG標準溶液と比較して、LCMSによって決定した。各レンズのDOPG充填濃度及び平均DOPGを表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
(実施例3)オレイン酸放出プロファイルの決定
2-オレオイルリン脂質を充填したシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズのオレイン酸放出プロファイルを決定するために、レンズをその包装から取り出し、5mLのATF(実施例1に記載)を含有する6mLガラスバイアルに室温で入れ、125rpmで振とう器に終夜置いて、レンズ中に存在しうる遊離オレイン酸を溶出した。
【0048】
次いで、各レンズを35℃で50ppm組換えヒトPLA2G2Aを含むATFを含むin vitro放出媒体3mLを含有する6mLガラスバイアルに移した。代替として、組換えヒトPLA2G2Aの代わりにミツバチ毒由来のホスホリパーゼA2(CAS番号9001-84-7)を同じ濃度(50ppm)で使用してもよい。バイアルを50rpmで35℃インキュベーターに置き、2時間幅(例えば、2時間、4時間、6時間、8時間及び10時間)でin vitro放出媒体2.5mlを各バイアルから取り出し、分析に送った。放出媒体がその指定時点で直ぐに分析されない場合、試料を取り、IPA(1:10v/v比)と混合して、酵素活性を停止させた。これに続いて、50ppm組換えヒトPLA2G2Aを含むATFを含む新しいin vitro放出媒体2.5mlを、各バイアルに添加し戻し、レンズをインキュベートし続けた。放出実験の終了時、各時点での放出媒体のOAの量を、実施例1に記載される方法を使用して、LCMSによって分析する。
【0049】
本明細書の開示は、ある特定の例示される例を指し、これらの例は、例として提示され、限定としては提示されないことを理解されたい。前述の詳細な記載の意図は、例示的な例について論じているものの、追加の特許請求の範囲よって定義される通りの本発明の趣旨及び範囲内に入りうるものとして、その例のすべての変形例、代替例、及び等価物を包含すると解釈されたい。
本明細書における「例」又は「具体例」又は「態様」又は「実施形態」又は同様の語句への言及は、(文脈に応じて)本発明のオレイン酸放出ヒドロゲルコンタクトレンズ若しくはその成分、密封コンタクトレンズ包装若しくはその成分、又は本発明のオレイン酸放出ヒドロゲルコンタクトレンズを製造する方法の特徴(単数又は複数)を導入することを意図し、これは、特徴の特定の組合せが互いに排他的でない限り、又は文脈がそうでないことを示していない限り、先に記載した又は続いて記載される例、態様、実施形態(すなわち、特徴)のあらゆる組合せで組み合わせることができる。さらに、本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がそうでないことを明らかに記述していない限り、複数の参照(例えば、少なくとも1又は複数)を含む。したがって、例えば、「コンタクトレンズ」への言及は、単一のレンズ及び同じ又は異なるレンズの2つ以上を含む。
【0050】
本開示で引用したすべての参考文献の全内容は、それらが本開示と矛盾しない範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、文及び/又は段落で示される通り、上記の番号付きの項を含む上記及び/又は下記の特許請求の範囲に記載される様々な特徴又は実施形態のあらゆる組合せを含みうる。本明細書に開示される特徴のあらゆる組合せは、本発明の一部であると考えられ、組合せ可能な特徴に関するどのような限定も意図されない。
本発明の他の実施形態は、本明細書の検討、及び本明細書に開示される本発明の実施から当業者には明らかとなろう。本明細書及び例は例示としてのみ考えられ、本発明の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲及びその等価物によって示されることが意図される。
図1
【国際調査報告】