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特表2025-500170充電式電池を再生利用する方法及び充電式電池処理設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】充電式電池を再生利用する方法及び充電式電池処理設備
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20241226BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01M10/54
C22B7/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024534496
(86)(22)【出願日】2022-04-27
(85)【翻訳文提出日】2024-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2022061280
(87)【国際公開番号】W WO2023110167
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21214491.9
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519138494
【氏名又は名称】デュッセンフェルト・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブスマン、ティル
【テーマコード(参考)】
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4K001AA34
4K001BA22
4K001CA01
4K001CA02
5H031BB02
5H031BB09
5H031HH01
5H031HH06
5H031RR02
5H031RR07
(57)【要約】
本発明は、充電式電池、特に、それぞれが極を2つずつ有する少なくとも1つのガルバニ素子からなり、導電性塩溶媒に溶解された導電性塩を含有するリチウム充電式電池及び/又はナトリウム充電式電池を再生利用する方法であって、
(a)ガルバニ素子の少なくとも75%が最大で0.3ボルト、特に最大0.2でボルトの回生セル電圧を有するまで充電式電池を短絡させる工程と、(b)次に、充電式電池を粉砕して粉砕材料を得る工程と、を包含する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電式電池、特に、それぞれが極を2つずつ有する少なくとも1つのガルバニ素子からなり、導電性塩溶媒に溶解された導電性塩を含有するリチウム充電式電池及び/又はナトリウム充電式電池を再生利用する方法であって、
(a)前記ガルバニ素子の少なくとも75%が最大で0.3ボルト、特に最大0.2ボルトの回生セル電圧を有するまで前記充電式電池を短絡させる工程と、
(b)次に、前記充電式電池を粉砕して粉砕材料を得る工程と、
を包含する方法。
【請求項2】
前記短絡は、
(a)金属導体を用いて行われ、及び/又は
(b)前記短絡時に、前記充電式電池の負極と前記充電式電池の正極との間の電気抵抗が最大で1Ω、特に最大で0.3Ωになるように行われる
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(a)最大で80°の温度、及び最大で300hPaの圧力で前記粉砕材料を乾燥させて乾燥済み粉砕材料を得る工程と、
(b)次に、洗浄溶媒を用いて前記乾燥済み粉砕材料から前記導電性塩を洗い流して洗浄済み粉砕材料を得る工程と、
を特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
(a)前記導電性塩を洗い流す前、特に乾燥後にブラックマスを選別する工程と、
(b)前記ブラックマスから前記導電性塩を洗い流す工程と、
を特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記粉砕時に前記充電式電池を短絡させる
ことを特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
充電式電池、特に、導電性塩溶媒に溶解された導電性塩を含有するリチウム充電式電池及び/又はナトリウム充電式電池を再生利用する方法であって、
(a)前記充電式電池を粉砕して粉砕材料を得る工程と、
(b)洗浄溶媒を用いて前記粉砕材料から前記導電性塩を洗い流して洗浄済み粉砕材料を得る工程と、を包含する方法。
【請求項7】
(a)前記導電性塩がフッ素化合物である、及び/又は
(b)リチウム化合物である
ことを特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(a)洗浄溶媒を用いて前記粉砕材料から前記導電性塩を洗い流すことによって生じた洗浄液から、特に蒸留によって前記洗浄溶媒を分離して再生された洗浄溶媒を得る工程と、
(b)導電性塩を洗い流すために前記再生された洗浄溶媒を再利用する工程と、
を特徴とする先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
特に蒸留によって、前記洗浄溶媒から前記導電性塩を分離する工程
を特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記洗浄済み粉砕材料から少なくとも1つの金属成分を湿式化学抽出する工程
を特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
(a)前記導電性塩溶媒が最大沸点を有し、前記最大沸点は、1013hPaでこの温度のとき、1時間後に1リットルの導電性塩溶媒の少なくとも99重量パーセントが蒸発する温度であり、
(b)前記洗浄溶媒は、前記導電性溶媒の前記最大沸点未満である最大沸点を有する
ことを特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記洗浄溶媒がPVDF用溶媒であることを特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
(a)前記洗浄済み粉砕材料を乾燥させる工程と、次に、
(b)前記洗浄済み粉砕材料から箔、特に金属箔を分離する工程と、
を特徴とする、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(a)前記充電式電池を粉砕した後に、前記粉砕材料を乾燥させて乾燥済み粉砕材料を得る工程と、
(b)任意的に、前記乾燥済み粉砕材料から
重量物質及び/又は
箔、特にプラスチック箔を分離してブラックマスを得る工程と、
(c)前記洗浄溶媒を用いて、特に前記ブラックマスの形態の前記乾燥済み粉砕材料から導電性塩を洗い流す工程と、
(d)前記ブラックマスを乾燥させる工程と、
を特徴とする先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(a)充電式電池を粉砕して粉砕材料を得る充電式電池粉砕設備を備える
充電式電池処理設備において、
(b)洗浄溶媒を用いて前記粉砕材料を洗浄して洗浄液を得るための洗浄装置を特徴とする、
充電式電池処理設備。
【請求項16】
前記洗浄液から洗浄溶媒を分離し、前記洗浄溶媒を前記洗浄装置に戻す洗浄溶媒再生設備を特徴とする、請求項15に記載の充電式電池処理設備。
【請求項17】
前記洗浄溶媒再生設備が蒸留装置を含むことを特徴とする、請求項16に記載の充電式電池処理設備。
【請求項18】
材料流れ方向において前記洗浄装置の下流及び/又は上流に配置された少なくとも1つの乾燥機であって、前記乾燥済み粉砕材料を乾燥させるように設計されている、乾燥機
を特徴とする、請求項15~17のいずれか一項に記載の充電式電池処理設備。
【請求項19】
前記粉砕物の重量物質並びに/或いは箔、特に金属箔及び/又はプラスチック箔を分離してブラックマスを得るための分離装置を特徴とする、請求項15~18のいずれか一項に記載の充電式電池処理設備。
【請求項20】
前記洗浄済みブラックマスから少なくとも1つの金属成分を湿式化学抽出する湿式化学処理設備
を特徴とする、請求項15~19のいずれか一項に記載の充電式電池処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電式電池(Akkumulator)、特に、導電性塩溶媒に溶解された導電性塩を含有するリチウム充電式電池又はナトリウム充電式電池を再生利用する(wiederverwerten)方法に関し、充電式電池は、殊に、それぞれが極を2つずつ有する少なくとも1つのガルバニ素子(galvanisches Element)からなる。
【0002】
第2の態様によれば、本発明は、(a)充電式電池を粉砕して粉砕材料を得る充電式電池粉砕設備と、(b)洗浄溶媒を用いて粉砕材料を洗浄して洗浄液を得る洗浄装置と、を備えた、充電式電池処理設備、特にリチウム充電式電池処理設備に関する。
【背景技術】
【0003】
使用できなくなった充電式電池は、再生利用される必要がある。再生利用する場合、充電式電池内に存在する物質又は化学元素は、充電式電池を再び製造するため、又は他の目的に使用できるように別々にされる。
【0004】
リサイクルとも呼ばれる再生利用では、不都合な副産物の発生を可能な限り少なくすることが望ましい。特に、再生利用では、温室効果ガスの発生が可能な限り少ないことが望ましいが、それは、エネルギー供給において発生する温室効果ガスの量を減らしたいという要望が充電式電池の使用が増加した理由の1つだからである。
【0005】
充電式電池、特にリチウム充電式電池を再生利用する多数の方法が知られているが、それらは比較的大きなCO2フットプリントを有する。
【0006】
とりわけ、充電式電池の可能な限り多くの構成要素を、充電式電池を再び製造するために使用できるように再生利用することが望ましい。これは困難であることが判明した。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、充電式電池、特にリチウム充電式電池の再生利用を改善するという課題に基づいている。
【0008】
本発明は、充電式電池、特に、それぞれが極を2つずつ有する少なくとも1つのガルバニ素子からなり、導電性塩溶媒に溶解された導電性塩を含有するリチウム充電式電池及び/又はナトリウム充電式電池を再生利用する方法であって、(a)ガルバニ素子の少なくとも75%が最大0.4ボルト、特に最大0.3ボルト、好ましくは最大0.2ボルト、特に最大0.15ボルトの回生セル電圧(Regenerations-Zellspannung)を有するまで充電式電池を短絡させる工程と、(b)次に、充電式電池を粉砕して粉砕材料を得る工程と、を包含する方法によってこの問題を解決する。好ましくは、この方法は、(a)充電式電池を粉砕して粉砕材料を得る工程と、(b)洗浄溶媒を用いて粉砕材料から導電性塩を洗い流して洗浄済み粉砕材料を得る工程と、を包含する。
【0009】
本発明は、更に、充電式電池、特に、導電性塩溶媒に溶解された導電性塩を含有するリチウム充電式電池を再生利用する方法であって、(a)充電式電池を粉砕して粉砕材料を得る工程と、(b)洗浄溶媒を用いて粉砕材料から導電性塩を洗い流して洗浄済み粉砕材料を得る工程と、を包含する方法によってこの問題を解決する。好ましくは、この方法は、(a)ガルバニ素子の少なくとも75%が最大0.2ボルト、特に最大0.15ボルトの回生セル電圧を有するまで充電式電池を短絡させる工程と、(b)次に、充電式電池を粉砕して粉砕材料を得る工程と、を包含する。
【0010】
以下に説明する有利な実施形態は、両方の発明に関連する。
【0011】
第2の態様によれば、本発明は、洗浄溶媒を用いて粉砕材料を洗浄して洗浄液を得るための洗浄装置を有する、属性的に対応する充電式電池処理設備によってこの問題を解決する。
【0012】
充電式電池の短絡は、特に高い純度の導電性塩を回収できることにつながる。短絡が回収される導電性塩の純度を高めるのはなぜなのかは完全には解明されていない。おそらく、0Vを大幅に超える回生セル電圧により、粉砕時に局所的に発熱が生じ、これが導電性塩の分解及び/又はフッ化水素の生成を促すことができるということである。
【0013】
深放電だけでは最大0.2Vの回生セル電圧にならないということに言及しておく。深放電とは、容量がほぼ完全に使い果たされるまで、特に最終放電電圧を下回るまで、電流が充電式電池から取り出されることと理解される。深放電後、一方でセル電圧が大幅に低下し、他方で達成可能な放電電流が非常に小さいため、充電式電池のエネルギー量は非常に小さくなる。したがって、従来技術による方法では、深放電のみが行われる。
【0014】
しかしながら、深放電後でも、エネルギー含量は、フッ化水素を生成できるのに十分な高さであることがわかった。深放電しているが短絡していない充電式電池を粉砕する場合に生成されるフッ化水素の量は比較的少量ではあるが、分解生成物による導電性塩のわずかな汚染でも、新しい充電式電池を製造するための導電性塩及び/又は電解質の適性が損なわれる可能性があることがわかっている。
【0015】
回生セル電圧(Regenerations-Zellspannung)とは、充電式電池の極が電気的に接続されていない所定の回生時間(Regenerationszeit)の後にそれぞれのガルバニ素子に存在するセル電圧と理解される。充電式電池の極が電気的に接続されていないという特徴は、極が互いに絶縁されていること、つまり、特に2つの極の間に少なくとも 1メガオームの抵抗があることと理解される。言い換えれば、回生時間中、ガルバニ素子から電気エネルギーは取り出されない。特に、回生時間中、充電式電池のガルバニ素子の極は電気的に接続されていない。
【0016】
回生時間中、セル電圧は増加する。例えば、0.2V未満のセル電圧まで充電式電池を放電しても、放電が十分に長い時間行われない場合には回生セル電圧が 0.2Vを超える。
【0017】
製造時期が2022年2月のSamsungの充電式電池INR18650-25Rは、1時間の短絡後にセル電圧が0Vであることが確認された。回生セル電圧は1Vであった。3時間の短絡後、セル電圧は0Vであり、回生セル電圧は0.8Vであった。5時間の短絡後、セル電圧は0Vであり、回生セル電圧は0.6Vであった。24時間の短絡後、セル電圧は0Vであり、回生セル電圧は0.2Vであった。
【0018】
回生セル電圧が最大0.4V、特に最大0.3V、特に最大0.2Vとなるような長時間の充電式電池の短絡を回生防止短絡(regenerationssicheres Kurzschliessen)と呼ぶこともできる。すなわち、充電式電池の回生防止短絡後に初めて充電式電池の粉砕が実行される場合が有利である。
【0019】
回生防止短絡が行われたかどうかは、外部電気負荷なし、特に短絡なしで、対応する充電式電池を回生時間中に1013hPa及び23℃で保管することによって確認できる。言い換えれば、回生時間の終了前に充電式電池が粉砕されるか、その他の方法で処理される場合にも、ガルバニ素子の少なくとも 75%が指定された最大回生セル電圧になるまで充電式電池の短絡が生じる可能性がある。唯一の決定要因は、これらが回生時間の終了後に指定された回生セル電圧を超えないように短絡されたかどうかである。
【0020】
回生時間は12時間である。これは、充電式電池がどれくらいの時間短絡されるのかを示すものではないことに言及しておく。特に、充電式電池の12時間の短絡によって、回生セル電圧が依然として0.2ボルトを超える可能性がある。
【0021】
好ましくは、充電式電池は、少なくとも8時間、特に少なくとも10時間、好ましくは少なくとも12時間、特に少なくとも15時間、特に少なくとも18時間の短絡時間にわたって短絡される。少なくとも20時間、例えば24時間の短絡時間が特に好ましい。短絡時間は120時間未満であることが好ましい。このようにすることで、好ましい実施形態により企図されるように、充電式電池の導電性塩の少なくとも90重量パーセント、特に少なくとも95重量パーセントが粉砕時に分解しないことを達成できる。
【0022】
短絡が金属導体を用いて行われる場合が有利である。金属導体は充電式電池の極、すなわち負極と正極を無負荷で接続する。これは、金属導体が充電式電池の極を電気抵抗又は他の電力消費機器に接続しないことを意味する。負極と正極の接続が液体、特に塩溶液を用いずに行われる場合が特に有利である。
【0023】
好ましくは、短絡時、充電式電池の正極と充電式電池の負極との間の電気抵抗は、最大10オーム、特に最大1オーム、好ましくは最大0.3umである。
【0024】
回生防止短絡後に充電式電池を、特に少なくとも1km、特に少なくとも5kmの距離にわたって輸送することが可能であるが必須ではない。回生防止短絡によって、充電式電池による火災のリスク、ひいては環境への危険な影響が特に小さくなる。回生防止短絡の後、充電式電池を1kmを超える距離にわたって輸送しないことが好ましい。そのような輸送は安全上のリスクを引き起こす可能性がある。
【0025】
好ましくは、この方法は、最大で80℃、特に最大で70℃、特に好ましくは最大で60℃、例えば最大で50℃の温度、及び最大で300hPa、特に最大で50hPaの圧力で粉砕材料を乾燥させて乾燥済み粉砕材料を得る工程を包含する。
【0026】
好ましくは、乾燥によって、電解質の溶媒の少なくとも40重量%、特に少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも70重量%が除去される。好ましくは、電解質の溶媒の最大で95重量%、特に最大で90重量%、特に好ましくは最大で85重量%が除去される。洗浄溶媒を用いて導電性塩を洗い流すことは、方法の比較的高いCO2フットプリントにつながるため、乾燥に良好に除去できない電解質の溶媒部分のみを除去することが有利である。
【0027】
このようにして得られた乾燥済み粉砕材料から洗浄溶媒を用いて導電性塩が洗い流される場合が有利である。
【0028】
好ましくは、導電性塩を洗い流す前に、ブラックマスが選別され(separieren)、導電性塩がブラックマスから洗い流される。好ましくは、ブラックマスの選別は乾燥後に行われる。
【0029】
選別とは、ブラックマスを粉砕材料の他の成分から分離するプロセスと理解される。重量物質及び/又は箔を、特に乾燥済み粉砕物から分離することは、ブラックマスを選別するということである。
【0030】
粉砕時に充電式電池が短絡される場合が有利であり得る。これにより、導電性塩の損失が特に少なくなる。
【0031】
本発明の利点は、充電式電池がフッ素を含有する場合に、導電性塩を洗い流すことによって粉砕材料から大部分のフッ素を除去できることである。フッ素は反応してフッ化水素及び/又は有機フッ素物質を形成する可能性があり、これらは非常に有毒であり、及び/又は充電式電池処理設備に重大な磨耗を引き起こす可能性がある。
【0032】
導電性塩及び/又は導電性塩溶媒を複雑な洗浄なしに充電式電池の製造に再び使用できるようにするためには、これが高純度でなければならない。これは、充電式電池を短絡させるだけ、洗浄溶媒を用いて導電性塩を洗い流すだけ、及び/又は真空下で最大で80℃ で乾燥させるだけでは達成が困難であることがわかっている。しかしながら、2つの方法を組み合わせることによって、特に純粋な導電性塩及び/又は導電性塩溶媒を得ることができる。
【0033】
少なくともリチウム充電式電池も処理される場合、導電性塩を洗い流すことによって比較的簡単にリチウムの大部分を除去することができる。これにより、場合によって後続する湿式化学抽出が容易になる。
【0034】
導電性塩溶媒が、本発明の好ましい一実施形態である洗浄溶媒の沸点よりも沸点が高い成分を含む場合、通常、導電性塩を洗い流すことによってこの成分の大部分も除去することができる。好ましい一実施形態により企図される後続の乾燥工程では、この成分を除去する必要がなくなるか、又はわずかであり、そのことが乾燥を容易にする。
【0035】
本明細書の範囲内において、リチウム充電式電池とは、リチウムとの電気化学反応によって有用な電気エネルギーが提供される充電式電池と理解される。リチウム充電式電池は、導電性塩溶媒である電解質を含む。
【0036】
粉砕物とは、充電式電池の粉砕の生成物と理解される。更なる機械的分離工程によって粉砕物を変化させたり、様々な留分に分割したりすることができる。粉砕物は、化学的変換、つまり化学反応、例えばpH値を調整するためにだけ行われるのではない燃焼や酸との混合後には存在しなくなる。
【0037】
洗い流すとは、特に、粉砕材料に洗浄溶媒を加えて取り除くことと理解され、それにより導電性塩が洗浄溶媒中に移行する。洗い流すことは、洗浄溶媒を連続的に加えて取り除くことを含むことができ、その場合、これは連続的に洗い流すということである。洗い流すことは、更に、洗浄溶媒を一回限り加えること、及び一回限り放出することであり得、その場合、これは断続的に洗い流すということである。洗い流すことは、更に、洗浄溶媒を数回にわたり、非連続的に加えること、及び放出することを含むことができ、その場合、これは半連続的に洗い流すということである。したがって、以下において「洗い流す」又は「洗浄する」という場合、常に洗浄溶媒を加える及び取り除くことを意味する。
【0038】
洗浄溶媒は、好ましくは有機溶媒である。好ましくは、洗浄溶媒は純物質であり、すなわち混合物ではない。洗浄溶媒が純物質であるという特徴は、特に、洗浄溶媒の少なくとも85重量パーセント、特に少なくとも90重量パーセントが純物質からなることと理解される。しかしながら、いくつかの純物質の混合物も使用することができる。混合物は、好ましくは最大で3つの成分を含む。
【0039】
例えば、洗浄溶媒は、アセトン、アセト酢酸エステル、酢酸エチル、メチルエチルケトン及び/又はテトラヒドロフランである。好ましくは、洗浄溶媒はN-メチル-2-ピロリドンを含有しない。
【0040】
洗浄溶媒はまた、超臨界流体、例えば超臨界二酸化炭素であってもよいし、1013hPa及び30℃でガス状の流体、例えば液体二酸化炭素であってもよい。これにより、回収された導電性塩及び/又は電解質の回収された溶媒の純度が特に高くなる。
【0041】
ブラックマスとは、粉砕材料から、ハウジング部品及び金属部品、例えば接続電極と、箔、例えば部品のセパレータ箔又は導体箔を分離することによって生成される、粉砕材料のグラファイト含有留分と理解される。
【0042】
箔とは、特にセパレータ箔及び導体箔の部品と理解される。
【0043】
好ましい一実施形態によれば、導電性塩はフッ素化合物であり、及び/又は少なくとも5重量パーセントのフッ素化合物を含む。このフッ素化合物は、LiPF6又はNaPF6であることが好ましい。この場合、導電性塩の量(重量として測定)が少なくとも80%、特に少なくとも90%減少するまで洗い流しが実行される場合が有利である。
【0044】
好ましくは、導電性塩は、リチウム化合物であるか、又は少なくとも50重量パーセントのリチウム化合物を含有する。その場合、導電性塩を除去することによって、粉砕材料中の全リチウムの大部分、特に少なくとも半分を除去することが好ましい。導電性塩、ひいてはリチウムは、粉砕材料からよりも洗浄溶媒からのほうがより容易に除去できる。
【0045】
好ましくは、導電性塩は、塩素化合物であるか、又は少なくとも50重量%の塩素化合物を含む。好ましくは、導電性塩は、ホウ素化合物、例えば四ホウ酸ナトリウムであるか、又は少なくとも50重量%のホウ素化合物を含む。このような導電性塩は、充電式電池が十分に長い時間短絡されない場合に発生する可能性のある局所的な加熱に対して特に敏感である。
【0046】
好ましくは、洗い流しは、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及び/又はジエチルカーボネート(DEC)の少なくとも80%が除去されるまで行われる。代替的又は追加的に、洗い流しは、好ましくはフルオロベンゼン、メタノール;エタノール、プロピレンカーボネート、フェニルシクロヘキサン(シクロヘキシルベンゼン)及び/又はトリメチル(トリフルオロメチル)シランが少なくとも80%除去されるまで行われる。
【0047】
好ましくは、この方法は、粉砕材料から洗浄溶媒を除去する工程を包含する。洗浄溶媒の除去は、例えば、吸い取る、濾別する、排出する、又は流出させることによって行うことができる。
【0048】
好ましくは、この方法は、洗浄溶媒を用いて粉砕材料から導電性塩を洗い流すことによって生じた洗浄液から洗浄溶媒を分離する工程を包含する。
【0049】
これによって、再生された(regeneriert)洗浄溶媒が生じる。このようにして、好ましい実施形態により企図されるように、洗浄溶媒を再利用する(wiederverwenden)ことができ、すなわち、粉砕材料に再び加えることができる。洗浄溶媒を循環させる、すなわち繰り返し使用することが好ましい。
【0050】
洗浄液からの洗浄溶媒の分離は、例えば蒸留、特に連続蒸留によって行われる。代替的又は追加的に、分離は、重力分離及び/又は遠心分離及び/又は濾過が含まれてもよい。
【0051】
この方法が、粉砕材料から少なくとも1つの金属成分を湿式化学抽出する工程を包含する場合が有利である。湿式化学抽出は、好ましくは鉱酸、特に硫酸又は塩酸を添加する工程を含むことが好ましい。
【0052】
湿式化学抽出は、好ましくは、濃硫酸を添加し、それにより残りのフッ素の少なくとも80%、特に少なくとも90%が除去される工程を包含する。導電性塩を事前に洗い流すことによって、フッ素を除去するために使用される硫酸の量が少なくなるはずである。これは、廃棄物を削減すること、及び資源消費量を低減することにつながる。
【0053】
導電性塩溶媒は最大沸点を有する。これは、1013hpaでこの温度のとき、1時間後に1リットルの導電性塩溶媒の少なくとも99重量パーセントが蒸発する温度である。好ましい一実施形態により企図されるように、導電性塩溶媒が純物質からなる場合、最大沸点は導電性塩溶媒の沸点に相当する。代替実施形態により企図されるように、導電性塩溶媒が、それぞれが沸点を有する純物質の混合物である場合、最大沸点は、最も高い沸点の成分の沸点である。
【0054】
好ましくは、洗浄溶媒の最大沸点は、導電性塩溶媒の最大沸点よりも低い。好ましくは、洗浄溶媒の最大沸点は、導電性塩溶媒の最大沸点より少なくとも10ケルビン、好ましくは少なくとも20ケルビン、特に好ましくは少なくとも30ケルビン低い。
【0055】
洗浄溶媒の最大沸点が最大で90℃、好ましくは最大で80℃、特に好ましくは最大で70℃、特に最大で60℃、極めて好ましくは最大で50℃である場合が有利である。これにより、存在することが好ましい後からの乾燥工程において洗浄溶媒を除去することが容易になる。更に、このような低温での乾燥の場合、危険なフッ素化合物、特にフッ化水素の発生が低減又は防止される。
【0056】
洗浄溶媒中の導電性塩は、洗浄溶媒が導電性塩で最大飽和したときの洗浄溶媒1リットル当たりの導電性塩のグラム数で示される溶解度を有する。好ましい一実施形態によれば、洗浄溶媒中の導電性塩の溶解度は、電解質中の導電性塩の溶解度の少なくとも半分である。洗浄溶媒中の導電性塩の溶解度が、導電性塩溶媒中の溶解度よりも大きい場合が特に有利である。
【0057】
好ましくは、導電性塩の洗い流しは、防爆機械を用いて、及び/又は防爆雰囲気中で行われる。
【0058】
好ましくは、洗浄溶媒はPVDF(ポリフッ化ビニリデン)用の溶媒である。PVDFは、リチウムバッテリで使用されることが多いバインダであり、フッ素を含有する。相応の洗浄溶媒によって、バインダを溶解除去することもでき、そのことが洗浄された粉砕材料中のフッ素濃度を更に低下させる。
【0059】
好ましくは、導電性塩を洗い流すことは、更に、バインダを溶解することである。好ましい一実施形態によれば、洗浄溶媒を用いて洗浄することは、バインダの少なくとも70重量パーセント、好ましくは少なくとも80重量パーセント、特に少なくとも90重量パーセントが除去されるまで行われる。
【0060】
好ましくは、この方法は、(a)洗浄済み粉砕材料を乾燥させる工程と、好ましくは(b)その後、洗浄済み粉砕材料から箔、特に金属箔及び/又は重量物質を分離して、ブラックマスを得る工程と、を包含する。
【0061】
代替的に、この方法は、(a)洗浄済み粉砕材料から箔、特に金属箔及び/又は重量物質を分離する工程と、(b)その後、洗浄済み粉砕材料を乾燥させる工程と、を包含することができる。
【0062】
乾燥は負圧下で行われることが好ましい。例えば、乾燥時、圧力は最大で700hPa、特に最大で600hPa、好ましくは最大で500hPaである。特に、圧力は少なくとも100hPa、好ましくは少なくとも200hPa、特に少なくとも300hPaである。乾燥時、温度は、好ましくは最大で90℃、好ましくは最大で80℃、特に好ましくは最大で70℃、特に最大で60℃、極めて好ましくは最大で50℃である。
【0063】
好ましい一実施形態によれば、乾燥済み材料で半分満たされた50リットルの樽内で23℃及び1013hPaで可燃性雰囲気が形成できないほど多量の洗浄溶媒が除去された場合に乾燥は終了する。
【0064】
金属箔が分離される場合、好ましい一実施形態によれば、金属箔も洗浄後に乾燥され、及び/又は金属箔に付着したブラックマスが、例えばエアジェットシーブによって選別される。
【0065】
好ましくは、この方法は、粉砕後、特に事前の洗浄を行わずに粉砕材料を乾燥させる工程を包含する。乾燥は、好ましくは最大で80℃、特に最大で70℃、好ましくは最大で60℃、特に好ましくは最大で50℃で行われる。このようにして、乾燥済みの粉砕材料が得られる。好ましくは、乾燥は負圧で行われ、圧力は好ましくは最大で600hPa、特に最大で300hPaである。
【0066】
乾燥は、好ましくは、蒸気圧が50℃で10hPa未満、特に5hPa未満である高沸点成分が最大で30重量パーセント、特に最大で20重量パーセント除去されるように行われる。これらの成分を更に除去するには、多くの時間とエネルギーが必要である。粉砕物を後から洗浄することによって、高沸点成分が洗い流されて除去される。
【0067】
代替的又は追加的に、乾燥は、導電性塩溶媒が95重量パーセントを超えて、特に90重量パーセントを超えて除去される前に終了する。粉砕材料中に電解質成分が残るが、これらを除去することは特に困難である。その後、洗浄溶媒を用いて導電性塩を洗い流す好ましい実施形態により企図される工程において、これらの成分を粉砕材料から簡単に洗い流すことができる。
【0068】
乾燥済みの粉砕材料では、好ましい一実施形態により企図される工程において、重量物、特にハウジングの粉砕された部品、及び/又は箔、特に金属箔が分離(される)。このようにして、ブラックマスの形態の粉砕材料が得られる。
【0069】
特にプラスチック製のハウジングの部品からなる重量物質を分離することによって、場合によって後から行われる洗浄時にこれらの物体が洗浄溶媒によって溶解されることが防がれる。これは、洗浄溶剤の汚染につながり得る。
【0070】
好ましい一実施形態によれば、この方法は、場合によっては乾燥した粉砕材料からの箔をプラスチック箔と金属箔とに分離する工程を包含する。金属箔は、ブラックマスでコーティングされていることが多い。ブラックマスは、多くの場合、金属箔から完全には剥がれない。これに対して、プラスチック箔は通常、ブラックマスでコーティングされていないが、洗浄溶媒によって溶解又は膨潤される可能性があり、これはたいていの場合望ましくない。例えば機械的に行われる、箔をプラスチック箔と金属箔とに分離することによって、2つのタイプの箔を別々に処理することができる。
【0071】
好ましくは、金属箔は、プラスチック箔から分離した後、洗浄溶媒で洗浄される。これは、分離されたブラックマスと一緒に、又はそれとは別に行うことができる。好ましい実施形態により企図されるように、金属箔は、プラスチック箔から分離される前に(他の箔と一緒にも)洗い流されない場合、金属箔は、好ましくは金属に付着していないブラックマスと一緒に洗い流される。代替的又は追加的に、金属箔は別個に洗浄される。後者には、ほとんどのタイプのリチウムバッテリで、洗い流す場合に特にコバルト含有ブラックマスが得られるという利点がある。
【0072】
このブラックマスは、粉砕材料の形態である。好ましい一実施形態によれば、導電性塩は洗浄溶媒を用いてこの粉砕材料から洗い流される。
【0073】
好ましくは、このようにして得られた洗浄済みブラックマスは次に乾燥される。乾燥は、好ましくは最大で70℃、好ましくは最大で60℃、特に好ましくは最大で50℃で行われる。このようにして、乾燥済みの粉砕材料が得られる。好ましくは、乾燥は負圧で行われ、圧力は好ましくは最大で600hPa、特に最大で300hPaである。
【0074】
しかし、乾燥を80°を超える温度で行うことも可能である。その場合、例えばフッ化水素などのフッ素化合物が生成される可能性がある。しかし、事前に導電性塩を洗い流すことによって、生成されるフッ化水素の量が低減される。
【0075】
本発明による充電式電池処理設備は、好ましくは、洗浄液から洗浄溶媒を分離して洗浄溶媒を洗浄装置に戻す洗浄溶媒再生設備(Waschloesungsmittel-Regenerationsanlage)を有することが好ましい。洗浄溶媒再生システムは、例えば蒸留装置を含む。
【0076】
好ましくは、充電式電池処理設備は、材料流れ方向において洗浄装置の下流又は上流に配置されている、乾燥済み粉砕材料を乾燥させるように設計された乾燥機を有する。特に、乾燥機は、洗浄装置の直後又は直前に配置されており、これは、乾燥機が洗浄装置に直接接続されていることを意味する。この接続は、好ましくは防塵、特に気密である。
【0077】
好ましい実施形態によれば、充電式電池処理設備は、粉砕される材料の重量物質並びに/或いは箔、特にプラスチック箔及び/又は金属箔を分離するための分離装置を有する。この分離装置は、材料流れ方向において洗浄装置の上流又は下流に配置することができる。充電式電池処理設備が2つの分離装置を有することも可能であり、その場合、1つは材料流れ方向において洗浄装置の上流に配置され、もう1つは洗浄装置の下流に配置される。
【0078】
分離装置が洗浄装置の一部を形成するか、又はハウジングを洗浄装置と共有することが可能であるが、必須ではない。しかし、分離装置は洗浄装置とは別個に配置されることが好ましい。
【0079】
好ましくは、充電式電池処理設備は、洗浄済みブラックマスから少なくとも1つの金属成分を湿式化学抽出する湿式化学処理設備を有することが好ましい。湿式化学処理設備は、好ましくは、洗浄済みブラックマスを鉱酸、特に濃硫酸と混合するように設計された少なくとも1つの反応器を有する。このために、反応器は硫酸の供給ラインと、好ましくは硫酸で満たされた硫酸容器とを有する。
【0080】
処理設備は、洗浄済みブラックマスを濃硫酸と混合した場合に発生する排ガスを浄化するための排ガス浄化設備を有することが好ましい。排ガス浄化設備は、例えば、フッ化水素を沈殿させるフッ化水素沈殿装置を有する。そのために、例えば、カルシウムイオンを含有する液体を使用することができる。
【0081】
充電式電池処理設備は、防爆に設計されることが好ましい。好ましい一実施形態により企図されるように、250℃未満の引火点を有する溶媒が使用される場合、保護措置なしには爆発の危険がある可能性がある。したがって、特に、洗浄装置22から延出するラインは防爆に設計されることが好ましい。特に好ましくは、充電式電池粉砕設備と乾燥機との間の材料流路におけるすべてのラインが防爆に設計される。
【0082】
以下、添付の図面をもとにして本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0083】
その中で
図1】第1の実施形態による、本発明による方法を実行するための本発明による充電式電池処理設備の概略図を示す。
【0084】
図2】第2の実施形態による、本発明による方法を実行するための本発明による充電式電池処理設備の概略図を示す。
【0085】
図3】第3の実施形態による、本発明による方法を実行するための本発明による充電式電池処理設備の概略図を示す。
【0086】
図4】第4の実施形態による、本発明による方法を実行するための本発明による充電式電池処理設備の概略図を示す。
【0087】
図5】第5の実施形態による、本発明による方法を実行するための本発明による充電式電池処理設備の概略図を示す。
【0088】
図6】第6の実施形態による、本発明による方法を実行するための本発明による充電式電池処理設備の概略図を示す。
【0089】
図7】第7の実施形態による、本発明による方法を実行するための本発明による充電式電池処理設備の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
図1は、充電式電池10.1、10.2、…を処理するための充電式電池処理設備8を示す。充電式電池は、例えば、それぞれが多数のガルバニ電池と充電コントローラを含むバッテリシステムの形態で存在することができる。
【0091】
充電式電池は、まず放電ステーション12において深放電される。その場合、充電式電池の電極間の電圧は、例えば、0.1V未満となる。
【0092】
深放電後、充電式電池10.1、10.2、…は、金属線、好ましくは銅線を用いて短絡される。銅線の抵抗は、例えば1オームである。充電式電池10.1、10.2、…が短絡される短絡時間Tは、この事例ではT=20時間である。その結果、回生セル電圧Uregは、Ureg=0.2Vとなる。
【0093】
放電後、任意的な解体ステーション14においてバッテリシステムから個々のバッテリセルが取り外される。
【0094】
充電式電池処理設備8は、充電式電池10.1、10.2、…を粉砕して粉砕材料18を得る充電式電池粉砕設備16を有する。充電式電池粉砕設備16は、例えば、充電式電池10.1、10.2、…を細断する、破砕する、又はすり潰すように設計されている。
【0095】
材料流れ方向において充電式電池粉砕設備16の下流に、任意的な(したがって、すべての任意的なコンポーネントと同様に破線で示されている)分離装置20を配置することができる。分離装置20を用いて、粉砕材料18はブラックマス58と残留留分とに分離される。残留留分は、ハウジング部品、通常は粉砕されたプラスチック部品と、金属部品、例えば接続電極と、箔、例えば部品のセパレータ箔又は導電性箔を含む。リチウム充電式電池の場合、ブラックマス58は、グラファイト、例えば金属塩などの、グラファイトに含まれる物質、導電性塩溶媒、及び導電性塩を含む。分離装置20が存在する場合、これは、好ましくは防塵、特に気密のラインを介して充電式電池粉砕設備16に接続されている。
【0096】
材料流れ方向において充電式電池粉砕設備16の下流、及び存在する場合には分離装置20の下流に洗浄装置22が配置される。洗浄装置22をウォッシャと呼ぶこともできる。洗浄装置22において、粉砕材料が洗浄溶媒24と混合される。洗浄装置22がミキサ、例えば撹拌機、又は回転可能に支持されたドラムを有することは有利であるが、必須ではない。
【0097】
洗浄溶媒24は、粉砕材料18との接触により洗浄液26となる。洗浄液26は導電性塩を含有し、任意的に存在する洗浄溶媒再生設備28によって再生され、再び洗浄装置22に供給される。
【0098】
分離装置20が存在する場合もまた任意的に箔分離器31が存在することができ、この箔分離器を用いて残留留分から金属箔61が分離される。このようにして得られた金属箔61も洗浄装置22に供給することができる。
【0099】
材料流れ方向において洗浄装置22の下流には、洗浄された粉砕物、特に洗浄済みブラックマス58を乾燥させるための乾燥機30が配置されている。乾燥機30は、ゲート(Schleuse)32.1によって洗浄装置22から分離されている。箔分離器31によって分離されなかった成分は、乾燥機30又は別の乾燥機で乾燥される。箔分離器31によって分離されなかった成分が乾燥機30で乾燥される場合、これをブラックマス58とは時間的にずらして行うことが好ましい。
【0100】
充電式電池粉砕設備16と洗浄装置22との間にゲート32.2を配置することもできる。分離装置20が存在する場合、分離装置20と洗浄装置22との間にもゲート32.3を配置することができる。
【0101】
乾燥機30は、任意的に、例えばバーミキサであり得るミキサ34を有する。ミキサ34、特にミキサの撹拌要素が冷却又は加熱されることが可能である。
【0102】
乾燥機30内の圧力p30は、好ましくはp30≦700hPa、特にp30≦600hPaである。乾燥機内の温度T30は、殊に最大で70℃、特に最大で50℃である。
【0103】
分離装置20が存在しない場合、材料流れ方向において乾燥機30の下流に配置された任意の分離装置36において、乾燥済み粉砕材料をブラックマスと残留留分とに分離することができる。残留留分は、例えば重量物質と金属箔からなる。通常、充電式電池処理設備8は、1つの分離装置20、36のみを有する。
【0104】
分離装置が存在し、金属箔が洗浄装置22に供給される場合、乾燥済み粉砕材料を、任意的な分離装置36においてブラックマスと洗浄済み金属箔とに分離することができる。
【0105】
乾燥された粉砕材料、特に乾燥済みブラックマス58は、輸送容器38に充填されるか、又は湿式化学処理設備40に供給される。処理設備40において、ブラックマス58の金属成分(金属塩の形態)が溶液に入れられる。このために、ブラックマスは、例えば鉱酸、特に濃硫酸と混合され、特に水で浸出される。その場合に発生する排ガス42は、排ガス浄化設備44に供給される。ここで、例えばフッ化水素を除去し、例えば沈殿させる。
【0106】
洗浄溶媒再生設備28は、例えば蒸留塔を含む。まず、洗浄液26がガス状状態に変換され、このことは、例えば加熱装置46によって、又は真空ポンプ48を用いて負圧を印加することによって行われる。それによって生じたガス状成分は分別凝縮される。
【0107】
沸騰温度が洗浄溶媒24の沸騰温度に相当する留分は、洗浄装置22に戻される。
【0108】
高沸点成分50及び低沸点成分52は更に処理され、例えば再び蒸留される。これによって、充電式電池10の電解質の成分を再利用できる。主に空気である非凝縮成分54は、排ガス浄化装置56で浄化され、その後、環境中に放出される。高沸点成分50は、その沸点が洗浄溶媒の最大沸点よりも高い成分である。
【0109】
しかしながら、洗浄溶媒再生設備28は必ずしも必要というわけではない。代替的に、洗浄溶媒24を貯蔵容器から洗浄装置22に供給し、洗浄液26を貯蔵容器に導くことも可能である。次いで、場合によって行われる洗浄液26の処理を、離れた場所の洗浄溶媒再生設備で行うことができる。
【0110】
図2は、本発明による充電式電池処理設備8の代替実施形態を示す。洗浄装置22は、材料流れ方向において充電式電池粉砕設備16の直後に配置されている。これは、材料流れ方向において充電式電池粉砕設備16の下流及び洗浄装置22の上流で、粉砕材料18の関連する処理が行われないことと理解される。粉砕材料18は、防塵、特に気密及び/又は防爆のラインを用いて、及び任意的なゲート32.2を介して洗浄装置22に送られる。
【0111】
粉砕材料18の洗浄後、分離装置20において洗浄済み粉砕材料からブラックマス58が分離され、同じく防塵、特に気密及び/又は防爆のラインを介して乾燥機30に到達する。ブラックマス58の他に、重量物質と箔が得られる。重量物質と箔は別の乾燥機、又は乾燥機30が断続的に運転される場合は乾燥機30で乾燥させることができる。
【0112】
任意的な箔分離器31において重量材料及び箔から金属箔61が分離される場合が有利である。金属箔61は、乾燥機30又は別の乾燥機で乾燥させることができる。金属箔61を乾燥機30で乾燥させる場合、これをブラックマス58と一緒に、又は時間的にずらして行うことができる。
【0113】
図に関連して別途説明される特徴に関係なく好ましい特徴である、材料流れ方向において洗浄装置22の下流に位置する乾燥機30内の圧力p30は、好ましくは60℃、特に50℃で洗浄溶媒24の蒸気圧を下回る。乾燥済みブラックマス58は輸送容器38に充填するか、又は湿式化学処理設備40に直接供給することができる。
【0114】
図3は、本発明による充電式電池処理設備8の第3の実施形態を示す。洗浄装置22は、再び充電式電池粉砕設備16の直後に配置される。洗浄済み粉砕材料は乾燥機30に到達する。乾燥機30の直後に配置されている任意的な分離装置36において、乾燥済み粉砕材料からブラックマス58が分離される。ブラックマス58から分離された留分は、図2について上述したように処理される。
【0115】
図4は、充電式電池粉砕設備16からの粉砕材料18が乾燥機30に直接導かれる本発明による充電式電池処理設備8の第4の実施形態を示す。
【0116】
乾燥後、ブラックマス58は分離装置36で分離され、洗浄装置22で洗浄される。洗浄済みブラックマスは、第2の乾燥機60で乾燥される。
【0117】
金属箔61が分離装置36で分別され(abgesondert)、更に洗浄装置22に導入される場合が有利である。金属箔61及びブラックマス58を一緒に、又は時間的に相前後して洗浄することができる。更に代替的に、金属箔61を別個の洗浄装置で洗浄することもできる。金属箔61とブラックマス58が一緒に洗浄される場合、その後に、これらを互いに分離することが好ましい。
【0118】
金属箔61がブラックマスとは別に洗浄される場合、充電式電池処理設備8は、金属箔61に付着したブラックマス58’を剥がすセパレータを有することが好ましい。
【0119】
金属箔61とブラックマス58を一緒に洗浄し、乾燥機60で乾燥させる場合、充電式電池処理設備8は、金属箔61とブラックマス58を分離するための分離装置と金属箔61に付着したブラックマス58’を剥がすセパレータとを有することが好ましい。
【0120】
好ましい実施形態によれば、重量物質及び/又はプラスチック箔を洗浄装置22又は別の洗浄装置で洗浄することが可能である。重量物質及び/又は箔は、乾燥機60及び/又は別個の乾燥機で乾燥することができる。
【0121】
乾燥機30内の最終圧力p30,end、すなわち乾燥プロセスの終了時の圧力は、好ましくはp30≦300hPa、特にp30≦50hPaである。乾燥機内の温度T30は、好ましくは最大で60℃、特に最大で50℃である。
【0122】
図5は、分離装置20が材料流れ方向において洗浄装置22の直後に配置されている本発明による充電式電池処理設備8の第5の実施形態を示す。分離された重量物質及び箔は、乾燥機60内のブラックマス58とは時間的にずらして乾燥される。代替的に、分離装置20を材料流れ方向において第2の乾燥機60の下流に配置することもできる。
【0123】
図6は、洗浄装置22の下流において、分離装置20がブラックマス58と、重量物質及び箔を含む残留留分とを互いに分離する本発明による充電式電池処理設備8の更なる実施形態を示す。材料流れ方向において分離装置20の下流において、金属箔を取り出して別の乾燥機62に送る箔分離器31が配置されている。金属箔に付着したブラックマス58は、付着していないブラックマス58よりも多くのコバルトを含むことが多い。別の乾燥機62に代えて、金属箔を乾燥機60で乾燥させることもできる。材料流れ方向において乾燥機60の下流において、乾燥済み金属箔からブラックマスを分離するためのセパレータ64、例えばエアジェットシーブが配置されている。
【0124】
図7は、本発明による充電式電池処理設備8の更なる実施形態を概略的に示し、この場合、洗浄溶媒24として超臨界二酸化炭素が使用される。これは、液体と気体の両方と解することができる。洗浄溶媒は圧力ライン66を介して取り除かれ、蒸発器68で蒸発される。ガス状の二酸化炭素は、高圧ポンプ70により超臨界状態とされ、再び洗浄装置22に到達する。
【符号の説明】
【0125】
8 充電式電池処理設備
10 充電式電池
12 放電ステーション
14 解体ステーション
16 充電式電池粉砕設備
18 粉砕材料
20 分離装置
22 洗浄装置
24 洗浄溶媒
26 洗浄液
28 洗浄溶媒再生設備
30 乾燥機
31 箔分離器
32 ゲート
34 ミキサ
36 分離装置
38 輸送容器
40 湿式化学処理設備
42 排ガス
44 排ガス浄化設備
46 加熱装置
48 真空ポンプ
50 高沸点成分
52 低沸点成分
54 非凝縮成分
56 排ガス浄化
58 ブラックマス
60 乾燥機
62 乾燥機
64 セパレータ
66 圧力ライン
68 蒸発器
70 高圧ポンプ
短絡時間
reg 回生セル電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】