(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】微生物発酵産物中の残留DNAの低減
(51)【国際特許分類】
C12N 1/08 20060101AFI20241226BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241226BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241226BHJP
C12N 9/22 20060101ALI20241226BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20241226BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241226BHJP
C12N 9/00 20060101ALI20241226BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C12N1/08
C12N1/21 ZNA
C12P21/02 C
C12N9/22
C07K14/00
C12N1/15
C12N9/00
C12N1/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535261
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2022087724
(87)【国際公開番号】W WO2023118565
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500586299
【氏名又は名称】ノボザイムス アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】カーステン チョート
(72)【発明者】
【氏名】リスト カカレフスキ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン スビント
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ ランド クリステンセン
(72)【発明者】
【氏名】カーステン ブラント ヤコブセン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA19
4B064CA21
4B064CC24
4B064CD20
4B064CE06
4B064DA20
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB28
4B065BC01
4B065BD18
4B065BD44
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA27
4B065CA44
4B065CA60
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA60
4H045FA74
4H045GA10
(57)【要約】
本発明は、回収プロセス中に、得られる微生物発酵産物にアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)に由来する真菌DNaseを添加することによって、微生物発酵産物中のDNAの量を低減する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)微生物宿主細胞と、前記微生物宿主細胞由来の組換えDNAと、前記微生物宿主細胞によって産生される目的のタンパク質とを含む発酵ブロスを用意するステップと、
(b)前記発酵ブロスを凝集又は沈殿ステップに供して、発酵ブロス上清を用意するステップと、
(c)前記発酵ブロス上清を、膜が100kDa未満又は1μm未満のサイズ排除限度を有する膜濾過ステップに供して、発酵産物を用意するステップと
を含む、微生物発酵産物中のDNAの量を低減する方法であって、
真菌DNase又はそのバリアントが、発酵の前若しくは発酵中に発酵培地に、ステップ(a)において若しくは後で前記発酵ブロスに、ステップ(b)の後で前記発酵ブロス上清に、又はステップ(c)の後で前記発酵産物に添加される、方法。
【請求項2】
前記目的のタンパク質が、前記微生物宿主細胞と異種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)の前記発酵ブロスが、前記目的のタンパク質を少なくとも0.1%w/w、好ましくは少なくとも0.5%w/w、より好ましくは少なくとも1%w/wの量で含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記目的のタンパク質が、酵素、ヘムを含有するタンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質又はリガンド結合タンパク質、好ましくは酵素である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)の前記膜濾過が、精密濾過ステップを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)の前記膜濾過が、限外濾過ステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)の前記微生物宿主細胞の一部又は全部が、機械的に又は酵素的に破壊/ホモジナイズされている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記真菌DNase又はそのバリアントが、配列番号2に対して、少なくとも60%の、70%を超える、80%を超える、90%を超える、95%を超える、96%を超える、97%を超える、98%を超える、99%を超える、又は100%のアミノ酸配列同一性を有し、前記バリアントがDNase活性を示す、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記真菌DNase又はそのバリアントが、DNase_NucA_NucBドメインを含み、モチーフ[LV][PTA][FY][DE][VAGPH]D[CFY][WY][AT][IM]L[CYQ]及び/又はモチーフGPYCK(配列番号3)若しくはWF[QE]IT(配列番号4)のいずれかをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記微生物宿主細胞が、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、アクレモニウム属(Acremonium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、フザリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、ニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、チエラビア属(Thielavia)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、及びトリコデルマ属(Trichoderma)からなる群から選択される株である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記微生物宿主細胞が、細菌宿主細胞、好ましくは、バチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、エシュリキア属(Escherichia)、ブティアウクセラ属(Buttiauxella)及びシュードモナス属(Pseudomonas)からなる群から選択される株、より好ましくはバチルス属(Bacillus)株である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記微生物発酵産物が、10ng/g未満の組換えDNA、好ましくは5ng/g未満、1ng/g未満、0.5ng/g未満、0.1ng/g未満、0.05ng/g未満、又は0.01ng/g未満の組換えDNAを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
10ng/g未満の組換えDNA、好ましくは5ng/g未満、1ng/g未満、0.5ng/g未満、0.1ng/g未満、0.05ng/g未満、又は0.01ng/g未満の組換えDNAを含む、微生物発酵産物。
【請求項14】
真菌DNase又はそのバリアント、好ましくはNUC3ヌクレアーゼをさらに含む、請求項13に記載の微生物発酵産物。
【請求項15】
目的のタンパク質、好ましくは少なくとも0.1%w/wの目的のタンパク質、より好ましくは少なくとも0.5%w/wの目的のタンパク質、より一層好ましくは少なくとも1%w/wの目的のタンパク質をさらに含む、請求項13又は14に記載の微生物発酵産物。
【請求項16】
前記目的のタンパク質が、目的の組換えタンパク質、好ましくは酵素である、請求項15に記載の微生物発酵産物。
【請求項17】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法によって産生される、請求項13~16のいずれか一項に記載の微生物発酵産物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表の参照
本出願は、コンピュータ可読形式の配列表を含有する。このコンピュータ可読形式は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、真菌DNaseを使用する、微生物発酵産物中の残留組換えDNAの低減に関する。
【背景技術】
【0003】
発酵によるタンパク質産物の産生は、周知のプロセスであり、多くの相異なる目的のタンパク質の工業規模での製造に使用される。発酵中、目的のタンパク質産物を産生する宿主細胞の中には崩壊するものがあり、DNAを含むその細胞の内容物は、発酵ブロスに放出される。さらに、目的のタンパク質が細胞内産物として産生される発酵もある。このことが意味するのは、細胞が、発酵後の回収及び精製プロセスの前に、例えばホモジナイゼーションによって破壊/溶解することは避けられず、これによって必然的にかなりの量のDNAが発酵ブロス中に放出され、続いてそれが最終タンパク質産物中に残留DNAとして存在し得る結果になるということである。
【0004】
例えば、環境又は健康に関する懸念のため、目的のタンパク質を産生する宿主細胞から残留DNAを回避することが望まれ得る。これは、組換えDNAにおいて特に懸念される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、発酵産物中の残留DNAを低減する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1の態様において、
(a)微生物宿主細胞と、微生物宿主細胞由来の組換えDNAと、微生物宿主細胞によって産生される目的のタンパク質とを含む発酵ブロスを用意するステップと、
(b)その発酵ブロスを凝集又は沈殿ステップに供して、発酵ブロス上清を用意するステップと、
(c)その発酵ブロス上清を、膜が100kDa未満又は1μm未満のサイズ排除限度を有する膜濾過ステップに供して、発酵産物を用意するステップと
を含む、微生物発酵産物中のDNAの量を低減する方法であって、
真菌DNase又はそのバリアントが、ステップ(a)の前、最中、若しくは後でその発酵ブロスに、ステップ(b)の後でその発酵ブロス上清に、又はステップ(c)の後でその発酵産物に添加される、方法を提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、10ng/g未満、5ng/g未満、1ng/g未満、又は0.1ng/g未満の組換えDNAを含む微生物発酵産物を提供する。
【0008】
本発明の他の態様及び実施形態は、説明及び実施例から明らかにされる。
【0009】
特に明記しない限り、又は文脈から他の何かを意味することが明らかな場合、全てのパーセンテージは重量パーセンテージ(%w/w)である。
【0010】
特に定義されない限り、本明細書で使用する全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに当然のことながら、一般的に使用される辞書に定義されているものなどの用語は、本明細書の文脈及び関連技術におけるその意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書において明示的に理想的な又は過度に形式的な意味に定義されない限り、そのように解釈されてはならない。簡潔に及び/又は明確にするために、周知の機能又は構造は、詳細に記載されない場合がある。
【0011】
本明細書で使用する場合、単数形(「a」、「an」及び「the」)は、文脈上特に明示されていない限り、複数形も含むものとする。
【0012】
定義
配列同一性:2つのアミノ酸配列間又は2つのヌクレオチド配列間の関連性は、「配列同一性」というパラメーターにより説明される。
【0013】
本発明においては、2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、好ましくはバージョン6.6.0以降の、EMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277)のNeedleプログラムにおいて実装されている、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443-453)を使用して、「最長の同一性」のアウトプットとして求められる。使用されるパラメーターは、ギャップ開始ペナルティが10、ギャップ伸長ペナルティが0.5、及びEBLOSUM62(EMBOSSバージョン:BLOSUM62)置換マトリックスである。Needleプログラムが最長の同一性を報告するために、-nobriefオプションをコマンドラインに指定しなければならない。「最長の同一性」と標識されるNeedleのアウトプットは、以下のように算出される:
(同一残基×100)/(アラインメントの長さ-アラインメント中のギャップの合計数)。
【0014】
細胞片:「細胞片」という用語は、細胞壁/膜の破壊後、例えば微生物細胞の破壊/溶解/ホモジナイゼーション後に放出される細胞壁及び他の不溶性の細胞成分を指す。細胞壁/膜を意図的に破壊しなくとも、一部の微生物細胞は発酵プロセス中に崩壊し、細胞片を放出することがある。
【0015】
配列
配列番号1:バチルス・シビ(Bacillus cibi)由来のDNaseのアミノ酸配列。
配列番号2:アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来のDNaseのアミノ酸配列。
配列番号3:NUC3 DNaseモチーフのアミノ酸配列。
配列番号4:NUC3 DNaseモチーフのアミノ酸配列。
配列番号5~15:dPCRに使用されたプライマー及びプローブのヌクレオチド配列(実施例1)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、真菌DNase、特にNUC3ヌクレアーゼが、発酵産物中の残留DNAを低減又は除去する効率が高いことを発見した。
【0017】
本発明は、目的のタンパク質を発現し、それを発酵ブロス中に分泌するか、又は細胞内産物として蓄積する微生物宿主細胞(特に組換え宿主細胞)の発酵によって産生される、目的のタンパク質を含む産物中の残留DNAの量を低減する方法を提供する。目的のタンパク質が細胞内産物として産生される場合、微生物宿主細胞は、回収及び精製の前にホモジナイズされる場合がある。
【0018】
発酵及び任意選択のホモジナイゼーションの後、発酵ブロスを凝集又は沈殿ステップに供して、発酵ブロス上清を用意する。これは、事実上、(不溶性の)宿主細胞及び細胞片の大部分を除去し、目的のタンパク質の水性溶液及び一部の可溶性の宿主細胞成分、例えば残留する宿主細胞DNAを保持する固液分離である。
【0019】
最後に、発酵ブロス上清を膜濾過プロセスで濾過して目的のタンパク質の純度を高め、液体発酵産物を用意する。膜濾過は、膜及び濾過プロセスのタイプに依存して、より高分子量の成分及び/又はより低分子量の成分を除去し得る。濾液を保持する膜濾過プロセス(精密濾過)もあれば、保持液/透過液を保持する膜濾過プロセス(限外濾過)もある。
【0020】
本発明の方法は、真菌DNase又はそのバリアントを、発酵の前若しくは発酵中に発酵培地に、凝集/沈殿の前に発酵ブロスに、膜濾過の前に発酵ブロス上清に、又は膜濾過の後に発酵産物に、添加するステップを含む。
【0021】
本発明者らは、水及び他の低分子化合物の量を低減して(限外濾過)、それにより、目的のタンパク質及び残留する宿主細胞DNAの濃度を高める膜濾過の後に、真菌DNaseが発酵産物に適用されるのが有利であり得ることを発見した。
【0022】
本発明に従って、真菌DNase又はそのバリアントが「添加される」、又は「適用される」場合、これは、発酵ブロス中の微生物宿主細胞によるDNaseの(内在性の)産生/発現を除外する。真菌DNaseは、外部源から添加されるか又は適用される、単離された又は回収された酵素である。外部源由来のDNaseを適用することは有利である。なぜなら、そうすれば、微生物宿主細胞の産生能力が、専ら(商業的)目的のタンパク質を産生するために使用されるからである。
【0023】
DNAは、単一ヌクレオチド、又は例えばデジタルPCRによって測定される150bp未満のオリゴヌクレオチドまで分解された場合、除去されたと考えられる。
【0024】
微生物宿主細胞
微生物宿主細胞は、任意の属のものとすることができる。所望の目的のタンパク質は、その目的のタンパク質を産生する能力のある宿主細胞と同種でも異種でもよい。
【0025】
「相同タンパク質」又は「未変性タンパク質」という用語は、それが産生される宿主細胞に由来する遺伝子によってコードされるタンパク質を意味する。
【0026】
「異種タンパク質」という用語は、それが産生される宿主細胞には外来性である遺伝子によってコードされるタンパク質を意味する。
【0027】
「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書で使用する場合、所望のタンパク質をコードする遺伝子を内部にもち、前記遺伝子を発現して、所望のタンパク質を産生する能力のある宿主細胞を意味する。所望のタンパク質をコードする遺伝子は、当技術分野において周知の技術を使用して、組換え宿主細胞に、形質転換、形質移入、又は形質導入などをされてもよい。
【0028】
所望のタンパク質が異種タンパク質である場合、所望のタンパク質を産生する能力のある組換え宿主細胞は、好ましくは真菌起源又は細菌起源のものである。組換え宿主細胞の選択は、所望のタンパク質をコードする遺伝子及び前記タンパク質の供給源に大幅に依存することになる。
【0029】
「野生型宿主細胞」という用語は、本明細書で使用する場合、所望のタンパク質をコードする遺伝子を、元来内部にもち、前記遺伝子を発現する能力のある宿主細胞を指す。
【0030】
その変異体は、例えば、所望のタンパク質の調製を強化するために、1つ又は複数の遺伝子が欠失された野生型宿主細胞であり得る。
【0031】
好ましい実施形態では、組換え又は野生型の微生物宿主細胞は、細菌又は真菌である。
【0032】
微生物宿主細胞は、酵母細胞、例えば、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、又はヤロウイア属(Yarrowia)の株であり得る。別の態様において、株は、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ジアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロマイセス・ドウグラシイ(Saccharomyces douglasii)、サッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロマイセス・ノルベンシス(Saccharomyces norbensis)、又はサッカロマイセス・オビフォルミス(Saccharomyces oviformis)の株である。
【0033】
微生物宿主細胞は、アクレモニウム属(Acremonium)、アガリクス属(Agaricus)、アルテルナリア属(Alternaria)、アスペルギルス属(Aspergillus)、アウレオバシジウム属(Aureobasidium)、ボトリオスパエリア属(Botryospaeria)、セリポリオプシス属(Ceriporiopsis)、ケトミジウム属(Chaetomidium)、クリソスポリウム属(Chrysosporium)、クラビセプス属(Claviceps)、コクリオボルス属(Cochliobolus)、コプリノプシス属(Coprinopsis)、コプトテルメス属(Coptotermes)、コリナスクス属(Corynascus)、クリフォネクトリア属(Cryphonectria)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、ジプロディア属(Diplodia)、エクシディア属(Exidia)、フィリバシディウム属(Filibasidium)、フザリウム属(Fusarium)、ジベレラ属(Gibberella)、ホロマスチゴトイデス属(Holomastigotoides)、フミコラ属(Humicola)、イルペックス属(Irpex)、レンチヌラ属(Lentinula)、レプトスパエリア属(Leptospaeria)、マグナポルテ属(Magnaporthe)、メラノカルプス属(Melanocarpus)、メリピルス属(Meripilus)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、ネオカリマスティクス属(Neocallimastix)、ニューロスポラ属(Neurospora)、ペシロマイセス属(Paecilomyces)、ペニシリウム属(Penicillium)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、ピロマイセス属(Piromyces)、ポイトラシア属(Poitrasia)、シュードプレクタニア属(Pseudoplectania)、シュードトリコニンファ属(Pseudotrichonympha)、リゾムコール属(Rhizomucor)、シゾフィラム属(Schizophyllum)、スキタリジウム属(Scytalidium)、タラロマイセス属(Talaromyces)、サーモアスカス属(Thermoascus)、チエラビア属(Thielavia)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)、トリコデルマ属(Trichoderma)、トリコファエア属(Trichophaea)、バーティシリウム属(Verticillium)、ボルバリエラ属(Volvariella)又はキシラリア属(Xylaria)の各株などの糸状真菌株であり得る。
【0034】
別の態様において、株は、アクレモニウム・セルロリティカス(Acremonium cellulolyticus)、アスペルギルス・アクレアタス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フェチダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、クリソスポリウム・イノプス(Chrysosporium inops)、クリソスポリウム・ケラチノフィラム(Chrysosporium keratinophilum)、クリソスポリウム・ラックノウェンセ(Chrysosporium lucknowense)、クリソスポリウム・メルダリウム(Chrysosporium merdarium)、クリソスポリウム・パンニコラ(Chrysosporium pannicola)、クリソスポリウム・クィーンズランディカム(Chrysosporium queenslandicum)、クリソスポリウム・トロピカム(Chrysosporium tropicum)、クリソスポリウム・ゾナタム(Chrysosporium zonatum)、フザリウム・バクトリディオイデス(Fusarium bactridioides)、フザリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フザリウム・クルックウェレンセ(Fusarium crookwellense)、フザリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フザリウム・グラミネアラム(Fusarium graminearum)、フザリウム・グラミナム(Fusarium graminum)、フザリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)、フザリウム・ネグンディ(Fusarium negundi)、フザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)、フザリウム・レチクラタム(Fusarium reticulatum)、フザリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フザリウム・サンブキナム(Fusarium sambucinum)、フザリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フザリウム・スポロトリキオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フザリウム・スルフレウム(Fusarium sulphureum)、フザリウム・トルロサム(Fusarium torulosum)、フザリウム・トリコテキオイデス(Fusarium trichothecioides)、フザリウム・ベネナタム(Fusarium venenatum)、フミコラ・グリセア(Humicola grisea)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、イルペックス・ラクテウス(Irpex lacteus)、ムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、ペニシリウム・フニクロサム(Penicillium funiculosum)、ペニシリウム・プルプロゲナム(Penicillium purpurogenum、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete Chrysosporium)、チエラビア・アクロマチカ(Thielavia achromatica)、チエラビア・アルボマイセス(Thielavia albomyces)、チエラビア・アルボピロサ(Thielavia albopilosa)、チエラビア・アウストラレインシス(Thielavia australeinsis)、チエラビア・フィメティ(Thielavia fimeti)、チエラビア・ミクロスポラ(Thielavia microspora)、チエラビア・オビスポラ(Thielavia ovispora)、チエラビア・ペルビアナ(Thielavia peruviana)、チエラビア・セトサ(Thielavia setosa)、チエラビア・スペデドニウム(Thielavia spededonium)、チエラビア・サブサーモフィラ(Thielavia subthermophila)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、又はトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)の株である。
【0035】
一態様において、真菌宿主細胞は、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、アクレモニウム属(Acremonium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、フザリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、ニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、チエラビア属(Thielavia)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)及びトリコデルマ属(Trichoderma)からなる群から選択される株である。
【0036】
より好ましい実施形態では、糸状真菌宿主細胞は、トリコデルマ属(Trichoderma)及びアスペルギルス属(Aspergillus)の宿主細胞、特に、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギイ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)、トリコデルマ・ビリデル(Trichoderma viridel)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・フェチダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニカス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)又はアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)の株からなる群から選択され、特に、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)の株である。
【0037】
別の好ましい実施形態では、組換え又は野生型の微生物宿主細胞は、細菌である。
【0038】
組換え宿主細胞は、本発明のポリヌクレオチドの単一のコピー又は少なくとも2つのコピー、例えば、3つ、4つ、5つ若しくはそれより多くのコピーを含んでもよい。
【0039】
宿主細胞は、任意のグラム陽性菌又はグラム陰性菌とすることができる。グラム陽性菌としては、以下に限定されないが、バチルス属(Bacillus)、クロストリジウム属(Clostridium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ゲオバチルス属(Geobacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、オセアノバチルス属(Oceanobacillus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)及びストレプトマイセス属(Streptomyces)が挙げられる。グラム陰性菌としては、以下に限定されないが、カンピロバクター属(Campylobacter)、大腸菌(E.coli)、フラボバクテリウム属(Flavobacterium)、フソバクテリウム属(Fusobacterium)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、イリオバクター属(Ilyobacter)、ナイセリア属(Neisseria)、シュードモナス属(Pseudomonas)、サルモネラ属(Salmonella)及びウレアプラズマ属(Ureaplasma)が挙げられる。
【0040】
宿主細胞は、以下に限定されないが、バチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ラウタス(Bacillus lautus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)及びバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)の各細胞を含む任意のバチルス属(Bacillus)細胞とすることができる。一実施形態では、バチルス属(Bacillus)細胞は、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)又はバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)の各細胞である。
【0041】
一実施形態では、バチルス属(Bacillus)細胞は、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)細胞である。
【0042】
別の実施形態では、バチルス属(Bacillus)細胞は、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)細胞である。
【0043】
本発明においては、バチルス(Bacillus)綱/属/種は、Patel and Gupta,2020,Int.J.Syst.Evol.Microbiol.70:406-438に記載されているとおりに定義されるものとする。
【0044】
細菌宿主細胞は、以下に限定されないが、ストレプトコッカス・エクイシミリス(Streptococcus equisimilis)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ウベリス(Streptococcus uberis)及びストレプトコッカス・エクイ亜種ズーデミカス(Streptococcus equi subsp.Zooepidemicus)の各細胞を含む任意のストレプトコッカス属(Streptococcus)細胞とすることもできる。
【0045】
細菌宿主細胞は、以下に限定されないが、ストレプトマイセス・アクロモゲネス(Streptomyces achromogenes)、ストレプトマイセス・アベルミティリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)及びストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)の各細胞を含む任意のストレプトマイセス属(Streptomyces)細胞とすることもできる。
【0046】
DNAを原核生物宿主細胞の中に導入する方法は、当技術分野において周知であり、以下に限定されないが、プロトプラスト形質転換、コンピテント細胞形質転換、エレクトロポレーション、コンジュゲーション、形質導入を含む任意の適切な方法を使用することができ、DNAは、線状ポリヌクレオチドとして又は環状ポリヌクレオチドとして導入される。当業者は、DNAを、例えば属に依存して所与の原核生物細胞の中に導入するのに適切な方法を容易に特定することができるであろう。DNAを原核生物宿主細胞の中に導入する方法は、例えば、Heinze et al.,2018,BMC Microbiology 18:56,Burke et al.,2001,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:6289-6294,Choi et al.,2006,J.Microbiol.Methods 64:391-397、及びDonald et al.,2013,J.Bacteriol.195(11):2612-2620に記載されている。
【0047】
真菌DNase
本発明において使用される真菌DNaseは、真菌微生物に由来するデオキシリボヌクレアーゼ又はそのバリアントである。DNaseは、DNA骨格中のホスホジエステル結合の加水切断を触媒し、これによりDNAを分解する任意の酵素である。活性の遺伝子座に基づいて2つの主要な分類がある。エキソヌクレアーゼは、末端から核酸を消化する。エンドヌクレアーゼは、DNA分子の中央の領域に作用する。
【0048】
真菌DNaseの例は、例えば、特許出願国際公開第2017/059802号パンフレット及び国際公開第2017/059801号パンフレット(参照により組み込まれる)に見出すことができ、これらは、真菌DNaseをコードするアミノ酸配列を開示している。真菌DNaseは、真菌株に起源をもつ野生型DNaseである。特に好ましい真菌DNaseは、配列番号2として示されるアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)DNaseである。
【0049】
真菌DNaseのバリアントは、真菌の野生型DNaseに対して、60%を超える、70%を超える、80%を超える、又は90%を超えるアミノ酸配列同一性を有し得る。
【0050】
特定の実施形態では、真菌DNase又はそのバリアントは、配列番号2に対して、60%を超える、70%を超える、80%を超える、90%を超える、95%を超える、96%を超える、97%を超える、98%を超える、又は99%を超えるアミノ酸配列同一性を有する。或いは、真菌DNase又はそのバリアントは、配列番号2と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸置換、欠失又は挿入、好ましくは1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの保存的アミノ酸置換を有する。
【0051】
好ましい実施形態では、真菌DNase又はそのバリアントは、NUC3ヌクレアーゼである。
【0052】
DNase_NucA_NucB(Pfamドメインid PF14040、Pfamバージョン31.0 Finn(2016)。Nucleic Acids Research,Database Issue 44:D279-D285)のサブグループは、NUC3と名付けられている。NUC3ヌクレアーゼは、DNase_NucA_NucBドメインを含有し、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)DNaseの24~35位のアミノ酸に相当するモチーフ[LV][PTA][FY][DE][VAGPH]D[CFY][WY][AT][IM]L[CYQ]、及び/又は配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)DNaseの157~161位のアミノ酸に相当するGPYCK(配列番号3)モチーフ(複数)のうちいずれか、又は配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)DNaseの146~150位のアミノ酸に相当するWF[QE]IT(配列番号4)を含む。
【0053】
したがって、配列番号2として示されるアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)DNaseは、NUC3 DNaseである。
【0054】
DNaseバリアントにおけるアミノ酸変化は、上記のように、典型的には1~30アミノ酸の小規模な欠失;アミノ末端メチオニン残基などの小型のアミノ末端又はカルボキシル末端延長;最大20~25残基の小型のリンカーペプチド;又は正味電荷若しくはポリヒスチジントラクト、抗原エピトープ若しくは結合モジュールなどの別の機能を変化させることによって精製を容易にする小規模な延長などの、タンパク質の折り畳み及び/又は活性に有意な影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換又は挿入である、軽微な性質のものであり得る。
【0055】
ポリペプチド(タンパク質、酵素)中の必須アミノ酸は、部位特異的変異誘発又はアラニンスキャニング変異誘発などの当技術分野において公知の手順に従って同定することができる(Cunningham and Wells,1989,Science 244:1081-1085)。後者の技術では、分子中の全ての残基に単一のアラニン変異を導入し、得られた分子をDNase活性について試験して、分子の活性に不可欠なアミノ酸残基を同定する。Hilton et al.,1996,J.Biol.Chem.271:4699-4708も参照されたい。酵素の活性部位又は他の生物学的相互作用は、推定される接触部位アミノ酸の変異と組み合わせて、核磁気共嗚、結晶構造解析、電子回折又は光親和性標識などの技術で測定される構造の物理的分析によって判定することもできる。例えば、de Vos et al.,1992,Science 255:306-312、Smith et al.,1992,J.Mol.Biol.224:899-904、Wlodaver et al.,1992,FEBS Lett.309:59-64を参照されたい。必須アミノ酸の同定は、関連ポリペプチドとのアラインメントから推測することもでき、及び/又は関連ポリペプチドとの、又はポリペプチド若しくはタンパク質ファミリー内で、共通祖先に由来するポリペプチド/タンパク質(典型的には類似の3次元構造、機能及び有意な配列類似性を有する)との、配列相同性及び保存触媒機構から推測することもできる。追加として又は代替として、タンパク質構造の予測ツールをタンパク質構造のモデル化のために使用して、ポリペプチドの必須アミノ酸及び/又は活性部位を同定することができる。例えば、Jumper et al.,2021,“Highly accurate protein structure prediction with AlphaFold”,Nature 596:583-589を参照されたい。
【0056】
単一又は複数のアミノ酸の置換、欠失及び/又は挿入は、変異誘発、組換え及び/又はシャッフリングの既知の方法、続いて関連するスクリーニング手順(例えば、Reidhaar-Olson and Sauer,1988,Science 241:53-57、Bowie and Sauer,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:2152-2156、国際公開第95/17413号パンフレット、又は国際公開第95/22625号パンフレットに開示されているものなど)を使用して、実行し、試験することができる。使用することができる他の方法としては、エラープローンPCR、CRISPR遺伝子編集、ファージディスプレイ(例えば、Lowman et al.,1991,Biochemistry 30:10832-10837、米国特許第5,223,409号明細書、国際公開第92/06204号パンフレット)、及び部位特異的変異誘発(Derbyshire et al.,1986,Gene 46:145、Ner et al.,1988,DNA 7:127)が挙げられる。
【0057】
目的のタンパク質
目的のタンパク質は、微生物宿主細胞によって産生される。そのようなタンパク質は、生存生物内で広範囲の機能(反応の触媒、DNA複製、刺激への応答、細胞及び生物への構造の提供、及びある位置から別の位置への分子の輸送を含む)を実行する小さな(ペプチド;<50アミノ酸)又は大きな(ポリペプチド;>50アミノ酸)生体分子であり得る。タンパク質は重合アミノ酸の鎖から構成され、その鎖は極めて特殊な3次元構造に折り畳まれている。3次元構造は、タンパク質の機能を維持するために不可欠である。一部の化学物質は、折り畳みを変更することができるか、又は3次元構造をほどく(変性させる)ことさえでき、その結果、機能の損失、例えば酵素活性の損失が生じる。
【0058】
一実施形態では、タンパク質は、ポリペプチド、好ましくは球状タンパク質/ポリペプチドである。別の実施形態では、タンパク質は、生理学的条件で可溶性である。
【0059】
タンパク質は、少なくとも4つの明確な群、即ち、酵素、細胞シグナル伝達タンパク質、リガンド結合タンパク質及び構造タンパク質に分類される。
【0060】
別の実施形態では、少なくとも1つの目的のポリペプチドは、抗体、抗体断片、抗体系薬物、Fc融合タンパク質、抗凝固剤、血液因子、骨形成タンパク質、改変タンパク質足場、成長因子、血液凝固因子、ホルモン、インターフェロン(インターフェロンアルファ-2bなど)、インターロイキン、ラクトフェリン、アルファ-ラクトアルブミン、ベータ-ラクトアルブミン、オボムコイド、オボスタチン、サイトカイン、オベスタチン、ヒトガラクトシダーゼ(ヒトアルファ-ガラクトシダーゼAなど)、ワクチン、タンパク質ワクチン及び血栓溶解剤からなる群から選択される治療用ポリペプチドを含む。
【0061】
酵素は、以下に記載される。
【0062】
細胞シグナル伝達タンパク質及びリガンド結合タンパク質としては、例えば、受容体、膜タンパク質、イオンチャネル、抗体(例えば単一ドメイン抗体)、ホルモン、ヘモグロビン及びヘモグロビン様分子などのタンパク質が挙げられる。ヘムを含有する酵素、例えばペルオキシゲナーゼ及びペルオキシダーゼは、酵素活性を含み得るか、又はヘムを含有する酵素の不活性化バリアントであり得る。
【0063】
構造タンパク質は、剛性及び硬性を付与されなければ流動性である生物学的成分に、それらを付与する。
【0064】
好ましくは、タンパク質は、酵素、細胞シグナル伝達タンパク質又はリガンド結合タンパク質であり、より好ましくは、タンパク質は酵素である。
【0065】
酵素
目的のタンパク質は、酵素(触媒タンパク質)であり得る。タンパク質が酵素である場合、タンパク質の量は、活性酵素タンパク質である。
【0066】
「活性酵素タンパク質」という用語は、本明細書において、触媒タンパク質の量と定義され、これは酵素活性を表す。これは、活性ベースの分析用酵素アッセイを使用して求めることができる。そのようなアッセイにおいて、酵素は通常、有色化合物を生成する反応を触媒する。有色化合物の量は、測定することができ、活性酵素タンパク質の濃度に相関し得る。この技術は、当技術分野において周知である。
【0067】
酵素は、例えば、ヒドロラーゼ、リアーゼ、トランスフェラーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、グルコアミラーゼ、ペクチナーゼ、ペクチン酸リアーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、アラビナーゼ、アルビノフラノシダーゼ(arbinofuranosidase)、マンナナーゼ、カラジーナナーゼ、キサンタナーゼ、エンドグルカナーゼ、キチナーゼ、アスパラギナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、クチナーゼ、リゾチーム、フィターゼ、デアミダーゼ、トランスグルタミナーゼ、オキシドレダクターゼ(糖オキシダーゼ、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼ、カタラーゼなど)、ラクターゼ、グルコースイソメラーゼ、キシロースイソメラーゼ及びエステラーゼからなる群から選択される1つ又は複数の酵素とすることができる。
【0068】
酵素は、細菌又は真菌起源の天然の酵素とすることができ、又は酵素は、遺伝子シャッフリングによる、及び/若しくは1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失若しくは挿入による、1つ又は複数の天然の酵素に由来するバリアントとすることができる。化学修飾された又はタンパク質が改変された変異体が含まれる。
【0069】
発酵ブロス
本発明は、工業規模の任意の発酵、例えば、少なくとも50リットル、好ましくは少なくとも500リットル、より好ましくは少なくとも5,000リットル、より一層好ましくは少なくとも50,000リットルの培養培地を有する任意の発酵に有用であり得る。
【0070】
目的のタンパク質を産生する微生物は、当技術分野において公知の任意の方法で発酵させることができる。発酵培地は、例えば国際公開第98/37179号パンフレットに記載されているような最小培地としてもよく、又は発酵培地は、複合窒素源及び炭素源を含む複合培地としてもよく、複合窒素源は、国際公開第2004/003216号パンフレットに記載されているように、部分的に加水分解されていてもよい。
【0071】
発酵は、バッチ、反復バッチ、フェドバッチ、反復フェドバッチ又は連続発酵プロセスとして実行されてもよい。
【0072】
フェドバッチプロセスでは、発酵の開始前に、1つ又は複数の栄養素を含む化合物は、培地に添加されないか、又はその化合物の一部が培地に添加され、発酵プロセスの間、1つ又は複数の栄養素を含む化合物の全部又は残部がそれぞれフィードされる。フィードするために選択された化合物は、発酵プロセスに、一緒に又は別々にフィードすることができる。
【0073】
反復フェドバッチ又は連続発酵プロセスでは、発酵中に、完全開始培地がさらにフィードされる。開始培地は、構造要素のフィードと一緒に又はそれとは別にフィードすることができる。反復フェドバッチプロセスでは、バイオマスを含む発酵ブロスの一部が一定時間間隔で除去されるが、連続プロセスでは、発酵ブロスの一部の除去が連続的に発生する。これにより、発酵プロセスは、取り除かれた発酵ブロスの量に相当する新鮮培地の一部を補充される。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、フェドバッチ発酵プロセスからの発酵ブロスが好ましい。
【0075】
一実施形態では、発酵ブロスは、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間又は少なくとも120時間の培養時間後に供給される。
【0076】
特定の実施形態では、発酵ブロスは、少なくとも120時間の培養時間後に供給される。
【0077】
本発明によれば、発酵ブロスは、水で2000%(w/w)まで希釈されてもよく、好ましくは、発酵ブロスは、水で10~2000%(w/w)希釈されてもよく、より好ましくは、発酵ブロスは、水で100~1500%(w/w)希釈されてもよく、より好ましくは、発酵ブロスは、水で100~1000%(w/w)希釈されてもよく、より好ましくは、発酵ブロスは、水で200~800%(w/w)希釈されてもよい。
【0078】
水での希釈とは、本発明によれば、希釈媒体は、水でもよく、又は目的のタンパク質の産生物からの限外濾過の透過液でもよく、又は目的のタンパクの質の産生物からの水のリサイクル物でもよく、又は加熱器からの縮合物でもよく、又は上記の任意の組み合わせ、例えば水と限外濾過の透過液との混合物でもよいことを意味する。
【0079】
発酵ブロスは、宿主細胞(目的のポリペプチドを産生するために使用される、目的のポリペプチドをコードする遺伝子を含有する宿主細胞を含む)、細胞片、バイオマス、細菌宿主細胞由来の組換えDNA、発酵培地及び/又は発酵産物を含む。一部の実施形態では、組成物は、有機酸、死滅細胞及び/又は細胞片並びに培養培地を含有する、細胞が死滅した全ブロスである。
【0080】
例えば、発酵ブロスは、培養微生物を飽和まで成長させ、炭素制限条件下でインキュベートして、タンパク質合成(例えば、宿主細胞による酵素の発現)及び細胞培養培地への分泌を可能にすると、生成される。発酵ブロスは、発酵の終了時に得られる発酵材料の未分画内容物又は分画内容物を含有し得る。典型的には、発酵ブロスは、未分画であり、例えば遠心分離によって微生物細胞(例えばバチルス属(Bacillus)細胞)が除去された後に存在する、使用済み培養培地及び細胞片を含む。一部の実施形態では、発酵ブロスは、使用済み細胞培養培地、細胞外酵素、並びに生存及び/又は非生存微生物細胞を含有する。
【0081】
細胞が死滅した全ブロス又は細胞組成物は、発酵の終了時に得られる発酵材料の未分画内容物を含有し得る。典型的には、細胞が死滅した全ブロス又は細胞組成物は、微生物細胞(例えばバチルス属(Bacillus)細胞)を飽和まで成長させ、炭素制限条件下でインキュベートして、タンパク質合成を可能にした後に存在する、使用済み培養培地及び細胞片を含有する。一部の実施形態では、細胞が死滅した全ブロス又は細胞組成物は、使用済み細胞培養培地、微生物宿主細胞由来の組換えDNA、細胞外酵素及び死滅微生物細胞を含有する。一部の実施形態では、細胞が死滅した全ブロス又は組成物の中に存在する微生物細胞は、当技術分野において公知の方法を使用して、透過処理及び/又は溶解することができる。
【0082】
本明細書に記載される全ブロス又は細胞組成物は、典型的には液体であるが、不溶性成分、例えば、死滅細胞、微生物宿主細胞由来の組換えDNA、細胞片、培養培地成分、及び/又は不溶性酵素などを含有し得る。一部の実施形態では、不溶性成分を除去して、清澄化した液体組成物を得ることができる。
【0083】
本発明の全ブロス製剤及び細胞組成物は、国際公開第90/15861号パンフレット又は国際公開第2010/096673号パンフレットに記載されている方法によって生成することができる。
【0084】
凝集/沈殿
発酵ブロスを凝集させるため、二価の塩、特にカルシウム塩及び/又はマグネシウム塩、例えば塩化カルシウム又は塩化マグネシウムを発酵ブロスに添加してもよい。好ましい実施形態は、カルシウム塩、特に塩化カルシウムである。
【0085】
塩は、発酵ブロスに、0.01~10%(w/w)/kg発酵ブロス(無希釈)、好ましくは0.5~10%(w/w)/kg発酵ブロス(無希釈)、より好ましくは1~9%(w/w)/kg発酵ブロス(無希釈)、特に2~8%(w/w)/kg発酵ブロス(無希釈)の濃度で添加することができる。
【0086】
ポリアルミニウム化合物
DNAの発酵ブロスからの除去をさらに改善するため、ポリアルミニウム化合物を発酵ブロスに添加してもよい。多くのアルミニウム化合物、例えば、Al2(SO4)3、NaAlO2、K2Al2O4、AlCl3、Al(NO3)3、酢酸Al及びギ酸Alは、凝集を改善することが知られている。
【0087】
特に有用なポリ塩化アルミニウムは、CAS番号:1327-41-9の、式Aln(OH)mCl(3n-m)及びポリ塩化アルミニウム及びクロロヒドロキシアルミニウムの化合物を含む。
【0088】
有用なポリ塩化アルミニウムの例は、クロロヒドロキシアルミニウム、Gulbrandsenから入手可能なGC850(商標)(Al2(OH)5Cl)又は実験式(brutto formula)Al(OH)1,2Cl1,8を有するアルミニウム錯体であるNordPac18(Nordisk Aluminat A/S、デンマークから入手可能)を含む。式Al(OH)1,2Cl1,8を有する有用なポリ塩化アルミニウムの別の例は、PAX-XL100(Kemiraから入手可能)である。有用なポリ塩化アルミニウムの別の2つの例は、PAC(Shanghai Haotian Water Treatment Equipment Co.,Ltdから入手可能、固体形態で供給される)又はPAC(Tianjin Kairuite technology Ltd.から入手可能、液体形態で供給される)である。式Al(OH)1,2Cl1,8を有する有用なポリ塩化アルミニウムの別の例は、PAX18(Kemira Water Solutionsから入手可能)である。
【0089】
ポリ塩化アルミニウムの濃度は、通常、kg発酵ブロス(無希釈)当たりで算出された0.1~10%(w/w)の範囲、好ましくはkg発酵ブロス(無希釈)当たりで算出された0.5~5%(w/w)の範囲にある。
【0090】
ポリ塩化アルミニウムの添加後、pHを調整することができる。pHは、pH2~pH11の範囲内のpHに調整することができる。pHは、当技術分野において知られているように任意の酸又は塩基で調整することができる。
【0091】
ポリ塩化アルミニウムは、微生物が発酵ブロスから分離された後に添加することもできる。
【0092】
ポリ塩化アルミニウムは、2つ以上のステップで、例えば、微生物が発酵ブロスから除去される前に、及び次いで微生物が除去された後に再度、その後の下流の処理液中などに添加することもできる。
【0093】
ポリマー
ポリマーは、粒子凝集のために使用することができる。アニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーが好ましい。有用なカチオン性ポリマーはポリアミンであり得、有用なアニオン性ポリマーはポリアクリルアミドであり得る。有用なポリマーの濃度は、通常、kg発酵ブロス(無希釈)当たりで算出された0.5~20%(w/w)の範囲、好ましくはkg発酵ブロス(無希釈)当たりで算出された1~10%(w/w)の範囲にある。
【0094】
有用なアニオン性ポリマーの例は、Superfloc(商標)A130(Kemira)である。有用なカチオン性ポリマーの例は、Polycat(商標)(Kemira)、C521(Kemira)及びC591(Kemira)である。
【0095】
濾過及び他の下流の操作
凝集した細胞片は、当技術分野において公知の方法、例えば、以下に限定されないが、濾過、例えば、ドラム濾過、膜濾過、フィルタープレス全量濾過、クロスフロー濾過又は遠心分離などにより、除去することができる。
【0096】
次いで、得られた発酵上清は、当技術分野において公知の方法でさらに処理又は精製することができる。例えば、タンパク質は、以下に限定されないが、限外濾過及び透析濾過などのさらなる濾過、抽出、噴霧乾燥、蒸発、沈殿又は結晶化を含む従来の手順で回収することができる。
【0097】
「回収する」又は「回収」という用語は、細胞、核酸又は他の特定の材料のリストから選択される少なくとも1つの発酵ブロス成分からのポリペプチドの取り出し、例えば、全発酵ブロスからの、又は細胞を含まない発酵ブロスからのポリペプチドの回収を意味し、それは、ポリペプチド結晶収集によって、濾過、例えば深層濾過(濾過助剤若しくは充填濾過材、チャンバーフィルター内布濾過、回転式ドラム濾過、ドラム濾過、回転式真空ドラムフィルター、キャンドルフィルター、水平葉状フィルター又は類似のものを、枠組式又はモジュラー式の設定中でシード(sheed)又はパッド濾過を用いて使用することによる)若しくは膜濾過(クロスフロー、動的クロスフロー又は全量操作のいずれかにおいてシート濾過、モジュール濾過、キャンドル濾過、精密濾過、限外濾過を使用する)によって、又は遠心分離(デカンター型遠心分離機、分離板型遠心分離機、液体サイクロン又は類似のものを使用する)によって、又はポリペプチドを沈殿させ、適切な固液分離方法を使用して、粒径による分類分離の使用により、ポリペプチドをブロス培地から収集することによって行われる。回収は、ポリペプチドの単離及び/又は精製を包含する。
【0098】
次に、単離されたタンパク質は、以下に限定されないが、クロマトグラフィー、例えばイオン交換、親和性、疎水性、クロマトフォーカシング及びサイズ排除、並びに/又は電気泳動的手順、例えば分取等電点電気泳動、並びに/又は吸収率較差溶解度、例えば硫酸アンモニウム沈殿、並びに/又は抽出を含む、当技術分野において公知の様々な手順により、さらに精製及び/又は改変されてもよい。
【0099】
精密濾過は、1000kDaより大きい、500kDaより大きい、100kDaより大きい、若しくは50kDaより大きい、及び/又は5μmより大きい、1μmより大きい、0.5μmより大きい、0.4μmより大きい、0.3μmより大きい、0.2μmより大きい、若しくは0.1μmより大きいサイズ排除限度を有する膜、或いは等価な分子量排除特性を有する他のフィルターを必要とし得るものであり、発酵産物は、精密濾過の濾液である。
【0100】
精密濾過の後で、又は組み合わされたプロセスにおいて、発酵産物は、100kDaより大きい、80kDaより大きい、60kDaより大きい、50kDaより大きい、40kDaより大きい、30kDaより大きい、20kDaより大きい、15kDaより大きい、10kDaより大きい、5kDaより大きい、若しくは1kDaより大きいサイズ排除限度を有する膜、又は等価な分子量排除特性を有する別のフィルターを必要とする限外濾過ステップに供され得る。
【0101】
微生物発酵産物は、液体製剤又は固体製剤とすることができ、又はそのような製剤を調製するために使用することができる。
【0102】
液体製剤はポリオール(多価アルコール)を、例えば、少なくとも10%w/w、少なくとも25%w/w、又は少なくとも50%w/wの量で含み得る。ポリオールは、2つ以上のヒドロキシル基を有するアルコールである。有用なポリオールは、典型的には500g/molより低い分子量を有する。
【0103】
ポリオールは、非糖ポリオール、例えば、グリセロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(PEG)など、並びに糖アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、ズルシトール、イノシトール、キシリトール及びアドニトールなどを含む。ポリオールは、糖ポリオールも、例えば単糖類及び二糖類、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、スクロース、ラクトース、マルトース及びトレハロースも含む。
【0104】
固体製剤は、例えば、高剪断造粒若しくは流動層造粒又は組み合わせによって調製される粒状体とすることができる。塩又はポリマーでのコーティングも適用され得る。
【0105】
残留する宿主細胞DNAの検出
残留する宿主細胞DNAという用語は、産生株、及び目的のタンパク質をコードするDNAの断片に由来するゲノムDNAを含んでいる。
【0106】
残留する微量の宿主細胞DNAの検出及び定量化は、当技術分野において公知の種々の方法によって実現することができる。特定の単一の標的配列を測定するために多くの方法が開発されている。方法の例は以下のとおりである。
(a)ドットブロット、及び宿主細胞の全ゲノムを網羅する代表的なプローブを生成するためにランダム六量体を使用する、放射性同位体標識されたDNAプローブのハイブリダイゼーションを用いる、定義された起源の特定のDNAを検出するハイブリダイゼーションベースの方法、
(b)精製し、種の一致したゲノムDNAを使用する増幅及び較正のための、特定の遺伝子配列を標的とする、定義された起源の特定のDNAを検出する定量的なPCRベースの方法、及び
(c)精製し、種の一致したゲノムDNAを使用する増幅及び較正のための、特定の遺伝子配列を標的とする、定義された起源の特定のDNAを検出する定性的なPCR方法。閾値は、この方法を使用して検出することができるゲノムDNAの最低量に基づいて決定される。
【0107】
本発明に従い、微量のDNAの精製を、FastDNA(商標)Spin Kit(MP Biomedicals)を使用して実現した。次いで、溶離した試料を、宿主細胞の染色体の遺伝子座に特定のプライマーを使用して、PCR反応に供した。陽性対照は、既知量の宿主DNAがPCR反応に異なる濃度で添加される場合に含まれる。PCR反応後、試料をゲル電気泳動に供し、DNAバンドの強度を比較して、元試料中の宿主DNAの濃度を推定する。PCRの詳細なプロトコルは、lnnis et aL(1990)PCR Protocols,A Guide to methods and applications,Academic Press inc.,N.Yに記載されている。
【0108】
本方法を使用して、発酵ブロス又は他のタンパク質調製物を処理すると、発酵ブロス中に存在するDNAの量の有意な低減が生じ、好ましくは、DNA含量は、検出不能レベルまで低減される。レベルは、一倍体ゲノム中の単一コピーの中に存在するゲノムDNAの任意のセグメントをPCR増幅し、次いで臭化エチジウム染色しても可視バンドが現れない場合に検出不能と考えられる。
【0109】
好ましくは、発酵ブロス中のDNAレベルは、1μg/ml未満、好ましくは500ng/ml未満、好ましくは200ng/ml未満、好ましくは100ng/ml未満、好ましくは50ng/ml未満、好ましくは20ng/ml未満、好ましくは10ng/ml未満、好ましくは5ng/ml未満、好ましくは2ng/ml未満、好ましくは1ng/ml未満のレベルまで、最も好ましくは500pg/ml未満のレベルまで低減される。
【0110】
一実施形態では、微生物発酵産物は、10ng/g未満、5ng/g未満、1ng/g未満、0.5ng/g未満、0.1ng/g未満、0.05ng/g未満、又は0.01ng/g未満の組換えDNAを含む。
【0111】
典型的な規制環境の例において、検出限界が、例えば1、5、10又は20ng/mLの酵素調製物であるPCRベースのアッセイを使用すると、検出可能なDNAがないことを確認することができる。
【0112】
加えて、発酵ブロス又は他のタンパク質調製物からDNAを取り出す従来の方法と組み合わせる即製の方法の使用も企図される。
【0113】
本発明の一部のさらなる実施形態は、以下を含む。
【0114】
実施形態1.
(a)微生物宿主細胞と、微生物宿主細胞由来の組換えDNAと、微生物宿主細胞によって産生される目的のタンパク質とを含む発酵ブロスを用意するステップと、
(b)その発酵ブロスを凝集又は沈殿ステップに供して、発酵ブロス上清を用意するステップと、
(c)その発酵ブロス上清を、膜が100kDa未満又は1μm未満のサイズ排除限度を有する膜濾過ステップに供して、発酵産物を用意するステップと
を含む、微生物発酵産物中のDNAの量を低減する方法であって、
真菌DNase又はそのバリアントが、発酵の前若しくは発酵中に発酵培地に、ステップ(a)において若しくは後でその発酵ブロスに、ステップ(b)の後でその発酵ブロス上清に、又はステップ(c)の後でその発酵産物に添加される、方法。
【0115】
実施形態2.真菌DNase又はそのバリアントが、発酵の前又は発酵中にその発酵培地に添加される、実施形態1に記載の方法。
【0116】
実施形態3.真菌DNase又はそのバリアントが、ステップ(a)においてその発酵ブロスに添加される、実施形態1に記載の方法。
【0117】
実施形態4.真菌DNase又はそのバリアントが、ステップ(a)の後でその発酵ブロスに添加される、実施形態1に記載の方法。
【0118】
実施形態5.真菌DNase又はそのバリアントが、ステップ(b)の後でその発酵ブロスに添加される、実施形態1に記載の方法。
【0119】
実施形態6.真菌DNase又はそのバリアントが、ステップ(c)の後でその発酵ブロスに添加される、実施形態1に記載の方法。
【0120】
実施形態7.目的のタンパク質が、微生物宿主細胞と異種である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
実施形態8.目的のタンパク質が、微生物宿主細胞によって発酵ブロス中に分泌される、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
実施形態9.目的のタンパク質が、微生物宿主細胞によって発酵ブロス中に分泌されない、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0123】
実施形態10.ステップ(a)の発酵ブロスが、目的のタンパク質を少なくとも0.1%w/wの量で含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0124】
実施形態11.ステップ(a)の発酵ブロスが、目的のタンパク質を少なくとも0.5%w/wの量で含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0125】
実施形態12.ステップ(a)の発酵ブロスが、目的のタンパク質を少なくとも1%w/wの量で含む、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0126】
実施形態13.目的のタンパク質が、酵素、ヘムを含有するタンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質又はリガンド結合タンパク質である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
実施形態14.目的のタンパク質が、酵素である、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
実施形態15.ステップ(c)の膜濾過が、精密濾過ステップを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
実施形態16.精密濾過膜が、0.1μm~10μmのサイズ排除限度を有する、実施形態15に記載の方法。
【0130】
実施形態17.精密濾過膜が、0.5μm~5μmのサイズ排除限度を有する、実施形態16に記載の方法。
【0131】
実施形態18.ステップ(c)の膜濾過が、限外濾過ステップを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
実施形態19.限外濾過膜が、100kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態18に記載の方法。
【0133】
実施形態20.限外濾過膜が、50kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態19に記載の方法。
【0134】
実施形態21.限外濾過膜が、40kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態20に記載の方法。
【0135】
実施形態22.限外濾過膜が、30kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態21に記載の方法。
【0136】
実施形態23.限外濾過膜が、20kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態22に記載の方法。
【0137】
実施形態24.限外濾過膜が、10kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態23に記載の方法。
【0138】
実施形態25.ステップ(a)の微生物宿主細胞の一部又は全部が、機械的に又は酵素的に破壊/ホモジナイズされている、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
実施形態26.真菌DNase又はそのバリアントが、野生型真菌DNase、又は野生型真菌DNaseと少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有するそのバリアントであり、そのバリアントがDNase活性を示す、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0140】
実施形態27.そのバリアントが、野生型真菌DNaseと少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態25に記載の方法。
【0141】
実施形態28.そのバリアントが、野生型真菌DNaseと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態25に記載の方法。
【0142】
実施形態29.そのバリアントが、野生型真菌DNaseと少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する実施形態25に記載の方法。
【0143】
実施形態30.そのバリアントが、野生型真菌DNaseと少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態25に記載の方法。
【0144】
実施形態31.そのバリアントが、野生型真菌DNaseと少なくとも96%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態25に記載の方法。
【0145】
実施形態32.そのバリアントが、野生型真菌DNaseと少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態25に記載の方法。
【0146】
実施形態33.そのバリアントが、野生型真菌DNaseと少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態25に記載の方法。
【0147】
実施形態34.そのバリアントが、野生型真菌DNaseと少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態25に記載の方法。
【0148】
実施形態35.真菌DNase又はそのバリアントが、野生型真菌DNase、又は1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの置換、欠失又は挿入、好ましくは1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの保存的置換を有するそのバリアントである、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
実施形態36.真菌DNase又はそのバリアントが、野生型真菌DNase、又は1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの保存的置換を有するそのバリアントである、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法。
【0150】
実施形態37.野生型真菌DNaseが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態25~35のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
実施形態38.真菌DNase又はそのバリアントがNUC3ヌクレアーゼである、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
実施形態39.真菌DNase又はそのバリアントが、DNase_NucA_NucBドメインを含み、モチーフ[LV][PTA][FY][DE][VAGPH]D[CFY][WY][AT][IM]L[CYQ]及び/又はモチーフGPYCK(配列番号3)若しくはWF[QE]IT(配列番号4)のいずれかをさらに含む、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
【0153】
実施形態40.真菌DNase又はそのバリアントが、配列番号2のアミノ酸配列を含むか、又はそれからなる、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
【0154】
実施形態41.微生物宿主細胞が、細菌宿主細胞、真菌宿主細胞又は酵母宿主細胞であり、好ましくは、微生物宿主細胞が、細菌宿主細胞である、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法。
【0155】
実施形態42.微生物宿主細胞が、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、アクレモニウム属(Acremonium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、フザリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、ニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、チエラビア属(Thielavia)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)及びトリコデルマ属(Trichoderma)からなる群から選択される株である、実施形態1~41のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
実施形態43.微生物宿主細胞が、ピキア属(Pichia)の株である、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
実施形態44.微生物宿主細胞が、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)の株である、実施形態1~43のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
実施形態45.微生物宿主細胞が、バチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、エシュリキア属(Escherichia)、ブティアウクセラ属(Buttiauxella)及びシュードモナス属(Pseudomonas)からなる群から選択される株である、実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
実施形態46.微生物宿主細胞が、バチルス属(Bacillus)又はエシュリキア属(Escherichia)の株である、実施形態1~45のいずれか1つに記載の方法。
【0160】
実施形態47.微生物宿主細胞が、バチルス属(Bacillus)宿主細胞、好ましくは、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)又はバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)宿主細胞である、実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法。
【0161】
実施形態48.微生物発酵産物が、10ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~47のいずれか1つに記載の方法。
【0162】
実施形態49.微生物発酵産物が、5ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~48のいずれか1つに記載の方法。
【0163】
実施形態50.微生物発酵産物が、1ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~49のいずれか1つに記載の方法。
【0164】
実施形態51.微生物発酵産物が、0.5ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~50のいずれか1つに記載の方法。
【0165】
実施形態52.微生物発酵産物が、0.1ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~51のいずれか1つに記載の方法。
【0166】
実施形態53.微生物発酵産物が、0.05ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~52のいずれか1つに記載の方法。
【0167】
実施形態54.微生物発酵産物が、0.01ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法。
【0168】
実施形態55.微生物発酵産物が、真菌DNase又はそのバリアントを含む、実施形態1~54のいずれか1つに記載の方法。
【0169】
実施形態56.
(a)微生物宿主細胞と、微生物宿主細胞由来の組換えDNAと、微生物宿主細胞によって産生される目的のタンパク質とを含む発酵ブロスを用意するステップと、
(b)その発酵ブロスを凝集又は沈殿ステップに供して、発酵ブロス上清を用意するステップと、
(c)その発酵ブロス上清を、膜が100kDa未満又は1μm未満のサイズ排除限度を有する膜濾過ステップに供して、発酵産物を用意するステップと
を含む、微生物発酵産物中のDNAの量を低減する方法であって、
DNaseが、発酵の前若しくは発酵中に発酵培地に、ステップ(a)において若しくは後でその発酵ブロスに、ステップ(b)の後でその発酵ブロス上清に、又はステップ(c)の後でその発酵産物に添加され、
DNaseが、配列番号2と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、且つ
微生物発酵産物が、10ng/g未満の組換えDNAを含む、方法。
【0170】
実施形態57.DNaseが、発酵の前又は発酵中にその発酵培地に添加される、実施形態56に記載の方法。
【0171】
実施形態58.DNaseが、ステップ(a)においてその発酵ブロスに添加される、実施形態56に記載の方法。
【0172】
実施形態59.DNaseが、ステップ(a)の後でその発酵ブロスに添加される、実施形態56に記載の方法。
【0173】
実施形態60.DNaseが、ステップ(b)の後でその発酵ブロスに添加される、実施形態56に記載の方法。
【0174】
実施形態61.DNaseが、ステップ(c)の後でその発酵ブロスに添加される、実施形態56に記載の方法。
【0175】
実施形態62.目的のタンパク質が、微生物宿主細胞と異種である、実施形態1~61のいずれか1つに記載の方法。
【0176】
実施形態63.目的のタンパク質が、微生物宿主細胞によって発酵ブロス中に分泌される、実施形態1~62のいずれか1つに記載の方法。
【0177】
実施形態64.目的のタンパク質が、微生物宿主細胞によって発酵ブロス中に分泌されない、実施形態1~63のいずれか1つに記載の方法。
【0178】
実施形態65.ステップ(a)の発酵ブロスが、目的のタンパク質を少なくとも0.1%w/wの量で含む、実施形態1~64のいずれか1つに記載の方法。
【0179】
実施形態66.ステップ(a)の発酵ブロスが、目的のタンパク質を少なくとも0.5%w/wの量で含む、実施形態1~65のいずれか1つに記載の方法。
【0180】
実施形態67.ステップ(a)の発酵ブロスが、目的のタンパク質を少なくとも1%w/wの量で含む、実施形態1~66のいずれか1つに記載の方法。
【0181】
実施形態68.目的のタンパク質が、酵素、ヘムを含有するタンパク質、細胞シグナル伝達タンパク質又はリガンド結合タンパク質である、実施形態1~67のいずれか1つに記載の方法。
【0182】
実施形態69.目的のタンパク質が、酵素である、実施形態1~68のいずれか1つに記載の方法。
【0183】
実施形態70.膜が、50kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態69に記載の方法。
【0184】
実施形態71.膜が、40kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態70に記載の方法。
【0185】
実施形態72.膜が、30kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態71に記載の方法。
【0186】
実施形態73.膜が、20kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態72に記載の方法。
【0187】
実施形態74.膜が、10kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態73に記載の方法。
【0188】
実施形態75.ステップ(a)の微生物宿主細胞の一部又は全部が、機械的に又は酵素的に破壊/ホモジナイズされている、実施形態1~74のいずれか1つに記載の方法。
【0189】
実施形態76.DNaseが、配列番号2と少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~75のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
実施形態77.DNaseが、配列番号2と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~76のいずれか1つに記載の方法。
【0191】
実施形態78.DNaseが、配列番号2と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~77のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
実施形態79.DNaseが、配列番号2と少なくとも96%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~78のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
実施形態80.DNaseが、配列番号2と少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~79のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
実施形態81.DNaseが、配列番号2と少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~80のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
実施形態82.DNaseが、配列番号2と少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~81のいずれか1つに記載の方法。
【0196】
実施形態83.DNaseが、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの置換、欠失又は挿入、好ましくは1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの保存的置換を有する、実施形態1~82のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
実施形態84.DNaseが、NUC3ヌクレアーゼである、実施形態1~83のいずれか1つに記載の方法。
【0198】
実施形態85.DNaseが、DNase_NucA_NucBドメインを含み、モチーフ[LV][PTA][FY][DE][VAGPH]D[CFY][WY][AT][IM]L[CYQ]及び/又はモチーフGPYCK(配列番号3)若しくはWF[QE]IT(配列番号4)のいずれかをさらに含む、実施形態1~84のいずれか1つに記載の方法。
【0199】
実施形態86.DNaseが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態1~85のいずれか1つに記載の方法。
【0200】
実施形態87.微生物宿主細胞が、細菌宿主細胞、真菌宿主細胞又は酵母宿主細胞である、実施形態1~86のいずれか1つに記載の方法。
【0201】
実施形態88.微生物宿主細胞が、カンジダ属(Candida)、ハンゼヌラ属(Hansenula)、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)、サッカロマイセス属(Saccharomyces)、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)、ヤロウイア属(Yarrowia)、アクレモニウム属(Acremonium)、アスペルギルス属(Aspergillus)、フザリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、ムコール属(Mucor)、ミセリオフトラ属(Myceliophthora)、ニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、チエラビア属(Thielavia)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)及びトリコデルマ属(Trichoderma)からなる群から選択される株である、実施形態1~87のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
実施形態89.微生物宿主細胞が、ピキア属(Pichia)の株である、実施形態1~88のいずれか1つに記載の方法。
【0203】
実施形態90.微生物宿主細胞が、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)の株である、実施形態1~89のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
実施形態91.微生物宿主細胞が、細菌宿主細胞である、実施形態1~90のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
実施形態92.微生物宿主細胞が、バチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、エシュリキア属(Escherichia)、ブティアウクセラ属(Buttiauxella)及びシュードモナス属(Pseudomonas)からなる群から選択される株である、実施形態1~91のいずれか1つに記載の方法。
【0206】
実施形態93.微生物宿主細胞が、バチルス属(Bacillus)又はエシュリキア属(Escherichia)の株である、実施形態1~92のいずれか1つに記載の方法。
【0207】
実施形態94.微生物宿主細胞が、バチルス属(Bacillus)宿主細胞、好ましくは、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)又はバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)宿主細胞である、実施形態1~93のいずれか1つに記載の方法。
【0208】
実施形態95.微生物発酵産物が、5ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~94のいずれか1つに記載の方法。
【0209】
実施形態96.微生物発酵産物が、1ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~95のいずれか1つに記載の方法。
【0210】
実施形態97.微生物発酵産物が、0.5ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~96のいずれか1つに記載の方法。
【0211】
実施形態98.微生物発酵産物が、0.1ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~97のいずれか1つに記載の方法。
【0212】
実施形態99.微生物発酵産物が、0.05ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~98のいずれか1つに記載の方法。
【0213】
実施形態100.微生物発酵産物が、0.01ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~99のいずれか1つに記載の方法。
【0214】
実施形態101.微生物発酵産物が、DNaseを含む、実施形態1~100のいずれか1つに記載の方法。
【0215】
実施形態102.
(a)バチルス属(Bacillus)宿主細胞、バチルス属(Bacillus)宿主細胞由来の組換えDNA、及びバチルス属(Bacillus)宿主細胞によって産生される酵素を含む発酵ブロスを用意するステップと、
(b)その発酵ブロスを凝集又は沈殿ステップに供して、発酵ブロス上清を用意するステップと、
(c)その発酵ブロス上清を、膜が100kDa未満又は1μm未満のサイズ排除限度を有する膜濾過ステップに供して、発酵産物を用意するステップと
を含む、微生物発酵産物中のDNAの量を低減する方法であって、
DNaseが、発酵の前若しくは発酵中に発酵培地に、ステップ(a)において若しくは後でその発酵ブロスに、ステップ(b)の後でその発酵ブロス上清に、又はステップ(c)の後でその発酵産物に添加され、
DNaseが、配列番号2と少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を有し、且つ
微生物発酵産物が、10ng/g未満の組換えDNAを含む、方法。
【0216】
実施形態103.DNaseが、発酵の前又は発酵中にその発酵培地に添加される、実施形態102に記載の方法。
【0217】
実施形態104.DNaseが、ステップ(a)においてその発酵ブロスに添加される、実施形態102に記載の方法。
【0218】
実施形態105.DNaseが、ステップ(a)の後でその発酵ブロスに添加される、実施形態102に記載の方法。
【0219】
実施形態106.DNaseが、ステップ(b)の後でその発酵ブロスに添加される、実施形態102に記載の方法。
【0220】
実施形態107.DNaseが、ステップ(c)の後でその発酵ブロスに添加される、実施形態102に記載の方法。
【0221】
実施形態108.酵素が、バチルス属(Bacillus)宿主細胞と異種である、実施形態1~107のいずれか1つに記載の方法。
【0222】
実施形態109.酵素が、バチルス属(Bacillus)宿主細胞によって発酵ブロス中に分泌される、実施形態1~108のいずれか1つに記載の方法。
【0223】
実施形態110.ステップ(a)の発酵ブロスが、酵素を少なくとも0.1%w/wの量で含む、実施形態1~109のいずれか1つに記載の方法。
【0224】
実施形態111.ステップ(a)の発酵ブロスが、酵素を少なくとも0.5%w/wの量で含む、実施形態1~110のいずれか1つに記載の方法。
【0225】
実施形態112.ステップ(a)の発酵ブロスが、酵素を少なくとも1%w/wの量で含む、実施形態1~111のいずれか1つに記載の方法。
【0226】
実施形態113.膜が、50kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態112に記載の方法。
【0227】
実施形態114.膜が、40kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態113に記載の方法。
【0228】
実施形態115.膜が、30kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態114に記載の方法。
【0229】
実施形態116.膜が、20kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態115に記載の方法。
【0230】
実施形態117.膜が、10kDa未満のサイズ排除限度を有する、実施形態116に記載の方法。
【0231】
実施形態118.DNaseが、配列番号2と少なくとも85%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~117のいずれか1つに記載の方法。
【0232】
実施形態119.DNaseが、配列番号2と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~118のいずれか1つに記載の方法。
【0233】
実施形態120.DNaseが、配列番号2と少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~119のいずれか1つに記載の方法。
【0234】
実施形態121.DNaseが、配列番号2と少なくとも96%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~120のいずれか1つに記載の方法。
【0235】
実施形態122.DNaseが、配列番号2と少なくとも97%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~121のいずれか1つに記載の方法。
【0236】
実施形態123.DNaseが、配列番号2と少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~122のいずれか1つに記載の方法。
【0237】
実施形態124.DNaseが、配列番号2と少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する、実施形態1~123のいずれか1つに記載の方法。
【0238】
実施形態125.DNaseが、配列番号2に示されるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの置換、欠失又は挿入、好ましくは1つ、2つ、3つ、4つ又は5つの保存的置換を有する、実施形態1~124のいずれか1つに記載の方法。
【0239】
実施形態126.DNaseが、NUC3ヌクレアーゼである、実施形態1~125のいずれか1つに記載の方法。
【0240】
実施形態127.DNaseが、DNase_NucA_NucBドメインを含み、モチーフ[LV][PTA][FY][DE][VAGPH]D[CFY][WY][AT][IM]L[CYQ]及び/又はモチーフGPYCK(配列番号3)若しくはWF[QE]IT(配列番号4)のいずれかをさらに含む、実施形態1~126のいずれか1つに記載の方法。
【0241】
実施形態128.DNaseが、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態1~127のいずれか1つに記載の方法。
【0242】
実施形態129.バチルス属(Bacillus)宿主細胞が、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)又はバチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)宿主細胞である、実施形態1~128のいずれか1つに記載の方法。
【0243】
実施形態130.微生物発酵産物が、5ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~129のいずれか1つに記載の方法。
【0244】
実施形態131.微生物発酵産物が、1ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~130のいずれか1つに記載の方法。
【0245】
実施形態132.微生物発酵産物が、0.5ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~131のいずれか1つに記載の方法。
【0246】
実施形態133.微生物発酵産物が、0.1ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~132のいずれか1つに記載の方法。
【0247】
実施形態134.微生物発酵産物が、0.05ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~133のいずれか1つに記載の方法。
【0248】
実施形態135.微生物発酵産物が、0.01ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~134のいずれか1つに記載の方法。
【0249】
実施形態136.微生物発酵産物が、DNaseを含む、実施形態1~135のいずれか1つに記載の方法。
【0250】
実施形態137.10ng/g未満の組換えDNAを含む微生物発酵産物。
【0251】
実施形態138.5ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態137に記載の微生物発酵産物。
【0252】
実施形態139.1ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~138のいずれか1つに記載の微生物発酵産物。
【0253】
実施形態140.0.5ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~139のいずれか1つに記載の微生物発酵産物。
【0254】
実施形態141.0.1ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~140のいずれか1つに記載の微生物発酵産物。
【0255】
実施形態142.0.05ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~141のいずれか1つに記載の微生物発酵産物。
【0256】
実施形態143.0.01ng/g未満の組換えDNAを含む、実施形態1~142のいずれか1つに記載の微生物発酵産物。
【0257】
実施形態144.真菌DNase又はそのバリアントをさらに含む、実施形態1~143のいずれか1つに記載の微生物発酵産物。
【0258】
実施形態145.真菌DNase又はそのバリアントが、NUC3ヌクレアーゼである、実施形態144に記載の微生物発酵産物。
【0259】
実施形態146.目的のタンパク質を含む、実施形態1~145のいずれか1つに記載の微生物発酵産物。
【0260】
実施形態147.目的のタンパク質が、目的の組換えタンパク質である、実施形態146に記載の微生物発酵産物。
【0261】
実施形態148.少なくとも0.1%w/wの目的のタンパク質を含む、実施形態1~147のいずれか1つに記載の微生物発酵産物。
【0262】
実施形態149.少なくとも0.5%w/wの目的のタンパク質を含む、実施形態1~148のいずれか1つに記載の微生物発酵産物。
【0263】
実施形態150.少なくとも1%w/wの目的のタンパク質を含む、実施形態1~149のいずれか1つに記載の微生物発酵産物。
【0264】
実施形態151.目的のタンパク質が、酵素である、実施形態150に記載の微生物発酵産物。
【0265】
実施形態152.実施形態1~151のいずれか1つに記載の方法によって産生される、実施形態1~151のいずれか1つに記載の微生物発酵産物。
【0266】
化学薬品は、少なくとも試薬グレードの商品とした。
【0267】
DNase
「細菌のヌクレアーゼ」は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するバチルス・シビ(Bacillus cibi)DNaseである。
【0268】
「真菌のヌクレアーゼ」は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)DNaseである。
【0269】
他のDNaseも、比較のために使用した。ドナー株は、相当する実施例において示される。
【0270】
gDNA及びresDNAの検出は、実施例1に記載のPCR及びデジタルPCR(dPCR)分析によって行った。使用した特定の分析は、個々の実施例において述べることにする。
【実施例】
【0271】
実施例1
残留組換えDNAの検出
各試料中の残留組換えDNAの非存在を実証するために使用した方法は、2つのステップに分割することができる。即ち、ステップi)溶解ステップを含む、試料からのDNAの抽出、並びにステップii)ゲル電気泳動が後続する従来のPCR技術、又はデジタルPCR技術のいずれかを使用するPCR増幅による組換えDNA(標的)の検出である。
【0272】
溶解ステップを含むDNAの抽出
DNA抽出方法は、市販キット(Maxwell RSC PureFood GMO & Authentication kit、Promega)に基づくものである。標準的なプロテイナーゼKを用いる処理を変更して、タンパク質の効率的な除去を可能にし、それにより、試料マトリックスによるPCR阻害の可能性を低減した。
【0273】
最初に、CTAB緩衝液中プロテイナーゼK(QIAgenカタログ番号19133)を最終濃度12.5mgプロテイナーゼK/ml試料で用いて、200μlの試料を処理した。次いで、この混合物を40℃で1時間インキュベートして、確実にタンパク質の効率的な除去をした。次に、Maxwell RSC instrumentを、その市販キットに記載されている手順に従って使用してDNAを抽出したが、DNAは、DNaseを含まない水55μlの中に溶出した。
【0274】
PCR増幅を使用する残留組換えDNAの検出
PCR増幅は、極めて少量の標的DNAの検出のために使用される一般的な方法である。これらの実験において、従来のPCR技術及びデジタルPCR技術の両方を使用した。この2つのPCR法の違いは、以下のとおりである。即ち、従来のPCR技術は、増幅されたPCR標的がアガロースゲル電気泳動によって検出される定性的方法である。他方、デジタルPCR技術は、増幅されたPCR標的の量を定量化することができるTaqMan技術を基礎とした定量的方法である。
【0275】
両方の技術に使用されるプライムは、当該の組換えDNAに対して特有であり(表1)、150bp未満のサイズの標的断片を増幅する。デジタルPCR技術については、TaqMan技術を基礎としており、蛍光色素分子及びクエンチャー部分を結合させた配列特異的なオリゴヌクレオチド(プローブ)も必要である(表1)。プライマー、プローブ及びアンプリコンのデザインは、Rodriguezらにより、Design of primers and Probes for Quantitative Real-time PCR methods in Methods in Molecular Biology 1275,Springer Protocols(編集者C.Basu)の第3章に記載されているように、ウェブツールを使用して、基本的要件に基づくものとした。
【0276】
【0277】
【0278】
【0279】
【0280】
【0281】
【0282】
従来のPCR法
所与の標的に適切なプライマーセットを、各プライマーにつき400nMの濃度で使用して、10μLの抽出されたDNAに対してPCR増幅を実行した。反応毎に、GF Healthcare製Illustra PureFood PCRビーズシステム(カタログ番号27-9557-02)を1チューブ使用した。PCR反応は、以下のサーモサイクラー条件下で実行した。
【0283】
【0284】
PCR増幅後、PCR反応を、2.2%アガロースゲル(Lonza製FlashGelシステム、カタログ番号57031)で可視化した。FlashGel DNAマーカー100bp-4kb(Lonzaカタログ番号50473)を、バンドサイズ推定のために使用した。
【0285】
デジタルPCR法
デジタルPCR(dPCR)は、エンドポイントPCRの手順を使用するが、PCR反応を多くの単一区画に分割し、その中でテンプレートが全ての利用可能な区画にランダムに分配される。PCR後、増幅は、全陽性区画中の蛍光を測定することによって検出される。ポアソン統計を使用して、試料毎の標的DNAの平均量を算出することができる。満たされた区画の数は、反応混合物中に存在する参照蛍光染料によって特定される。次に、各試料中の標的DNAの量の絶対的定量を算出することができる。
【0286】
これらの実験について、QIAGEN製デジタルシステムQIAcuity ONEを、QIAcuity Probe PCRキット(カタログ番号250101)と一緒に使用した。キットは、各試料を26,000区画に分配するQIAcuity nanoplate(カタログ番号25001)と一緒に使用するのに最適化された、4×濃縮した使用準備済みのMaster mixを含有する。供給業者により説明されている手順を、プライマー及びプローブ濃度に関して、及びPCRサイクル条件について最適化した。これらの実験について、各々800nMのプライマー濃度及び400nMのプローブ濃度を使用した。
【0287】
QIAcuity Nanoplate全体にテンプレートを確実に均一に分配するため、区分化する前に、抽出されたDNAを制限消化によって断片化するべきである。これらの実験について、制限酵素EcoRIを、0.25U/40μl反応液の濃度で選択した。この制限酵素を選択した理由は、標的断片内では切断をしないからである。各dPCR反応について、DNaseを含まない水を使用して得られた5μlのテンプレートDNAを、40μlの全反応体積中で使用した。
【0288】
次いで、混合物をナノプレートに移し、密封し、制限酵素が働くように、室温で最低10分間インキュベートした。
【0289】
その後直ちに、ナノプレートを、以下のサーマルサイクル条件で稼動させた。
【0290】
【0291】
dPCR分析の結果は、標的PCR断片のコピー数/全反応体積のμlとして付与される。この値を基に、以下の前提に基づいて、ng組換えDNAの量/g出発材料中の試料を算出することができる。
・100%有効なDNA精製が得られる。
・バチルス属(Bacillus)ゲノムの平均重量は、4.2×106塩基対であると推定される(参照、J.T.Trevors,1996,Genome size in bacteria.Antonie van Leeuwenhocek 69(4):293-303)。
・塩基対の分子量は、650ダルトンである。
・1ダルトンは、1.6605×10-15ngに相当する。
・バチルス属(Bacillus)ゲノムの重量は、4.5×10-6ngであると推定される。
【0292】
次に、元試料中の残留組換えDNAの含量を、以下の式を使用して算出することができる。
ngDNA/ml試料=0.04×Df×D
-式中、Dfは、dPCR分析前のDNA調製物の希釈係数であり、Dは、40μlの全反応体積中のコピー数/μlとして表されるdPCR分析の結果である。
【0293】
実施例2
バチルス・シビ(Bacillus cibi)由来の細菌のヌクレアーゼ及びアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来の真菌のヌクレアーゼを用いる蒸留水中でのゲノムDNAの分解
実験手順
単純で「クリーンな」マトリックス中での精製したゲノムのバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)DNA(gDNA)のヌクレアーゼ分解を理解するために、実施例2の全試料を蒸留水(DW)中に調製した。gDNA分解を評価するため、2つの陽性対照試料をDW中に300μL/試料の全体積で調製した。対照試料に1000ng/gのgDNAをpH9で添加した。全量5mMのMgCl2を2つの対照試料のうち1つに添加した。別の陽性対照試料をDW中に調製し、10ng/gのgDNAを添加した。細菌のヌクレアーゼを使用するgDNA分解を用量反応で調査し、係数10の濃度増加で0.0005g/L~0.5g/Lの範囲の最終濃度にした。さらに、最終濃度0.005g/Lの予備の試料に、MgCl2(補助因子)を最終濃度5mMまで添加した。最終濃度0.5g/Lを、真菌のヌクレアーゼについて使用した。全反応体積をpH9で300μLとし、試料を、37℃で24時間、穏やかに撹拌しながらインキュベートした。インキュベーション時間の後、試料を凍結することによってヌクレアーゼ反応を停止させた。ヌクレアーゼがgDNAを分解する能力を、従来のPCR分析により、表4に示されたプライマーを使用して評価した。
【0294】
結果
細菌のヌクレアーゼ及び真菌のヌクレアーゼは両方とも、試験したいずれの濃度においても、DW中のgDNAを<10ng/gまで分解することができ、追加のMgCl2を添加したか否かには関係なかった(表7)。
【0295】
【0296】
実施例3
細菌のヌクレアーゼ及び真菌のヌクレアーゼを用いる酵素濃縮物中でのDNAの分解
実験手順
実施例3の全試料を、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)発酵ブロス(FB)から回収した酵素濃縮物を使用して調製した。酵素濃縮物は、>>10ng/gの残留DNA(resDNA)濃度を有していた。残留DNAは、B・リケニフォルミス(B.licheniformis)宿主細胞に由来する組換えDNAの量である。細菌のヌクレアーゼを使用するresDNA分解を用量反応で調査し、係数10の濃度増加で0.0005g/L~0.5g/Lの範囲の最終濃度にした。さらに、最終濃度0.005g/Lの予備の試料に、MgCl2(補助因子)を最終濃度5mMまで添加した。最終濃度0.5g/Lを、真菌のヌクレアーゼについて使用した。全反応体積をpH6.5で400μLとし、試料を、37℃で24時間、穏やかに撹拌しながらインキュベートした。インキュベーション時間の後、試料を凍結することによってヌクレアーゼ反応を停止させた。2つの陽性対照試料、即ち、酵素濃縮物と、10ng/gのgDNAを添加したDWとを使用した。resDNA分解を、従来のPCR分析により、表3に示されたプライマーを使用して評価した。
【0297】
結果
真菌のヌクレアーゼは、酵素濃縮物中の細菌宿主細胞resDNAを<<10ng/gまで分解することができた。細菌のヌクレアーゼは、試験したいずれの濃度においても、細菌宿主細胞resDNAを有意なレベルで分解することができず、追加のMgCl2を添加したか否かには関係なかった(表8)。
【0298】
【0299】
実施例4
細菌のヌクレアーゼ及び真菌のヌクレアーゼを様々なpHで用いる酵素濃縮物中のDNAの分解
実験手順
実施例3において、真菌のヌクレアーゼが、resDNAの分解に有効な唯一のヌクレアーゼであったため、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)FBから回収した酵素濃縮物中で、様々なpHで試験を反復した。酵素濃縮物は、>10ng/gのresDNA濃度を有していた。最終濃度0.5g/Lを、両方のヌクレアーゼについて使用した。全反応体積を、真菌のヌクレアーゼではpH4、5、6、7及び8で、並びに細菌のヌクレアーゼではpH4、6及び8で400μLとし、試料を、37℃で24時間、穏やかに撹拌しながらインキュベートした。インキュベーション時間の後、試料を凍結することによってヌクレアーゼ反応を停止させた。ヌクレアーゼを一切添加しない酵素濃縮物を、陽性対照試料として使用した。resDNA分解を、従来のPCR分析により、表1に示されたプライマーを使用して評価した。
【0300】
結果
真菌のヌクレアーゼは、酵素濃縮物中の細菌宿主細胞resDNAを、調査した全てのpHで<<10ng/gまで分解することができたが、pH4で最も効率的であった(<<<10ng/g)。細菌のヌクレアーゼは、試験したpHのいずれにおいても、酵素濃縮物中の細菌宿主細胞resDNAを有意なレベルで分解することができなかったが、pH4でわずかな効果が観察された(表9)。
【0301】
【0302】
実施例5
真菌のヌクレアーゼを様々なpHで用いる発酵ブロス及び凝集した発酵ブロス中のDNAの分解
実験の項
実施例5の全試料を、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)に由来するFB又は凝集した発酵ブロス(fFB)を使用して調製した。
【0303】
発酵ブロス試料の調製
真菌のヌクレアーゼをFBにpH7.5+/-0.5で直接添加して、最終ヌクレアーゼ濃度0.5g/Lを実現した。真菌のヌクレアーゼを一切添加しないFBを、陽性対照試料として使用した。試料を、37℃で24時間、穏やかに撹拌しながらインキュベートした。インキュベーション時間の後、試料を凍結することによってヌクレアーゼ反応を停止させた。resDNA分解を、dPCR分析により、表2に示されたプライマー/プローブを使用して評価した。
【0304】
fFB試料の調製
fFBを生成するために、FBを以下のとおりに処理した。
1.水で希釈
2.二価の塩を添加
3.ポリ塩化アルミニウム(PAC)を添加
4.pHを4、6又は8に調整
5.真菌のヌクレアーゼを添加して、最終濃度0.5g/Lを実現
6.37℃で24時間、穏やかに撹拌しながらインキュベーション
【0305】
陽性対照試料を、ステップ5を除いて同様に生成した。インキュベーション時間の後、試料を凍結することによってヌクレアーゼ反応を停止させた。resDNA分解を、dPCR分析により、表2に示されたプライマー/プローブを使用して評価した。
【0306】
結果
真菌のヌクレアーゼは、それがFBに添加されたか、又はfFBに添加されたかに関係なく、対照試料と比較して、細菌宿主細胞resDNAを有意に分解した。さらに、ヌクレアーゼの効率は、試験した全てのpHにおいて類似していた(表10)。
【0307】
【0308】
実施例6
発酵ブロスからの酵素の回収中のDNAの分解
実験の項
実施例6の全試料は、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)FBからの酵素の回収中の相異なるストリームに由来する。
【0309】
FBの調製
発酵を開始する前に、真菌のヌクレアーゼをタンクに添加して、最終ヌクレアーゼ濃度0.5g/L+/-0.1を実現した。発酵中及び回収中のpHは、7.5+/-0.5であった。真菌のヌクレアーゼを一切添加しないFBを、陽性対照バッチとして使用した。FBを収集し、回収を開始する前に、5℃で22~24時間インキュベートした。インキュベーション時間の後、試料を凍結することによってヌクレアーゼ反応を停止させた。resDNA分解を、dPCR分析により、表2に示されたプライマー/プローブを使用して評価した。
【0310】
回収プロセス
fFBを生成するために、FBを以下のとおりに処理した。
1.水で希釈
2.二価の塩を添加
3.ポリ塩化アルミニウム(PAC)を添加
4.pHを7.5+/-0.5に調整
5.カチオン性ポリマーを添加
6.アニオン性ポリマーを添加
7.fFBを遠心分離して、バイオマスから液相(上清)を分離した
8.カットオフサイズ5.0~0.3μmのフィルターで上清を濾過して、濾液を生成した
9.カットオフサイズ10kDaの膜を用いる限外濾過(UF)を使用して濾液を濃縮し、UF-濃縮物を生成した
【0311】
結果
真菌のヌクレアーゼは、対照FBと比較して、FB中、fFBの上清中及びUF-濃縮物中の細菌宿主細胞resDNAを有意に分解した(表11)。
【0312】
【0313】
実施例7
様々な生物に由来するDNaseを用いる酵素濃縮物中のDNAの分解
実験手順
実施例7の全試料を、B・リケニフォルミス(B.licheniformis)FBから回収した、>>10ng/gのresDNA濃度を有する酵素濃縮物を使用して調製した。様々な生物に由来するヌクレアーゼを使用するresDNA分解を、最終ヌクレアーゼ濃度0.5g/Lで調査した。酵素濃縮物はpH5.9を有し、試料を、25℃で1時間、穏やかに撹拌しながらインキュベートした。インキュベーション時間の後、試料を凍結することによってヌクレアーゼ反応を停止させた。酵素濃縮物を陽性対照試料として使用した。resDNA分解を、dPCR分析により、表5に示されたプライマー/プローブを使用して評価した。
【0314】
結果
真菌のヌクレアーゼ(A・オリゼー(A.oryzae)由来)は、酵素濃縮物中の細菌宿主細胞resDNAを<<1ng/gに分解したが、試験した様々な生物に由来する他のヌクレアーゼはいずれも、resDNAを<10ng/gに分解することができなかった(表12)。
【0315】
【0316】
実施例8
様々な生物に由来するDNaseを用いる酵素濃縮物中のDNAの分解
実験手順
実施例8の全試料を、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)FBから回収した、>10ng/gのresDNA濃度を有する酵素濃縮物を使用して調製した。様々な生物に由来するヌクレアーゼを使用するresDNA分解を、最終ヌクレアーゼ濃度0.5g/Lで調査した。酵素濃縮物はpH5.0を有し、試料を、25℃で1時間、穏やかに撹拌しながらインキュベートした。インキュベーション時間の後、試料を凍結することによってヌクレアーゼ反応を停止させた。酵素濃縮物を陽性対照試料として使用した。resDNA分解を、dPCR分析により、表2に示されたプライマー/プローブを使用して評価した。
【0317】
結果
真菌のヌクレアーゼ(A・オリゼー(A.oryzae)由来)は、酵素濃縮物中の細菌宿主細胞resDNAを<<<1ng/gに分解した。細菌のヌクレアーゼ並びにネオサルトリヤ・マッサ(Neosartorya massa)、アルスログラフィス属(Arthrographis sp.)07MA20、リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)及びモルケラ・コスタタ(Morchella costata)に由来するヌクレアーゼは、resDNAを<10ng/gに分解した。ピレノカエトプシス属(Pyrenochaetopsis sp.)、アルスリニウム・アルンディニス(Arthrinium arundinis)、クラドスポリウム・クラドスポリオイデス(Cladosporium cladosporioides)、ペニシリウム・ケルセトルム(Penicillium quercetorum)、フィアロフォラ・ゲニクレート(Phialophora geniculate)及びアクレモニウム・クリソゲナム(Acremonium chrysogenum)に由来するヌクレアーゼは、resDNAを<10ng/gに分解することができなかった(表13)。
【0318】
【0319】
実施例9
様々な生物に由来するDNaseを用いる酵素濃縮物中のDNAの分解
実験手順
実施例9の全試料を、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)FBから回収した、>>>10ng/gのresDNA濃度を有する酵素濃縮物を使用して調製した。様々な生物に由来するヌクレアーゼを使用するresDNA分解を、最終ヌクレアーゼ濃度0.5g/Lで調査した。酵素濃縮物はpH6.2を有し、試料を、25℃で1時間、穏やかに撹拌しながらインキュベートした。インキュベーション時間の後、試料を凍結することによってヌクレアーゼ反応を停止させた。酵素濃縮物を陽性対照試料として使用した。resDNA分解を、dPCR分析により、表6に示されたプライマー/プローブを使用して評価した。
【0320】
結果
真菌のヌクレアーゼ(A・オリゼー(A.oryzae)由来)は、酵素濃縮物中の細菌宿主細胞resDNAを<<1ng/gに分解した。細菌のヌクレアーゼ並びにネオサルトリヤ・マッサ(Neosartorya massa)、ピレノカエトプシス属(Pyrenochaetopsis sp.)、アルスリニウム・アルンディニス(Arthrinium arundinis)及びフィアロフォラ・ゲニクラタ(Phialophora geniculata)に由来するヌクレアーゼは、resDNAを<10ng/gに分解することができなかった(表14)。
【0321】
【配列表】
【国際調査報告】