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特表2025-500208湿度安定性ポリスチレン-ジビニルベンゼンアミン官能基化高分子吸着体を用いたCO2吸着システム及びCO2吸着方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】湿度安定性ポリスチレン-ジビニルベンゼンアミン官能基化高分子吸着体を用いたCO2吸着システム及びCO2吸着方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/22 20060101AFI20241226BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241226BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20241226BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241226BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20241226BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20241226BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20241226BHJP
【FI】
B01J20/22 A ZAB
B01J20/28 Z
B01J20/34 F
B01D53/62
B01D53/82
B01D53/96
C01B32/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535610
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-08-06
(86)【国際出願番号】 EP2022084528
(87)【国際公開番号】W WO2023110520
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】21215249.0
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517006692
【氏名又は名称】クライムワークス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルガス,アンジェロ
(72)【発明者】
【氏名】アルバーニ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,リヴィア
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア,ルーツ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥベ,オリヴィエ
【テーマコード(参考)】
4D002
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA03
4D002CA07
4D002DA31
4D002EA07
4D002EA08
4D002GA01
4D002GA02
4D002GA03
4D002GB01
4D002GB02
4D002GB03
4D002GB12
4D002GB20
4G066AA16C
4G066AA20C
4G066AA22C
4G066AA25C
4G066AA63C
4G066AB11B
4G066AB13B
4G066AC14C
4G066BA03
4G066BA07
4G066BA09
4G066BA16
4G066BA20
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA01
4G066DA02
4G066FA37
4G066GA01
4G066GA06
4G066GA14
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC08
4G146JC28
4G146JD03
4G146JD10
(57)【要約】
ガス状二酸化炭素を空気、特に環境大気(1)から、吸着材(3)を用いたサイクル吸脱着によって分離する方法であって、前記吸着材(3)は、二酸化炭素を可逆的に結合することができる、アミノ官能基で表面が官能基化された固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料であり、好ましくは窒素吸着法によって測定された10~25m/gの範囲のBET比表面積を有し、且つ50~350nmの範囲における累積細孔容積が0.3~1.5cm/gの範囲となるような細孔容積分布を有する、方法。
【選択図】 図1


























【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状二酸化炭素を、前記ガス状二酸化炭素とガス状二酸化炭素以外のさらなるガスとを含むガス混合物、好ましくは、環境大気(1)、排ガス及びバイオガスのうちの少なくとも1つから、ユニット(8)内の前記ガス状二酸化炭素を吸着する吸着材(3)を用いたサイクル吸脱着によって分離する方法であって、
前記方法は、少なくとも以下の逐次的で且つこの順序で繰り返す工程(a)~(e):
(a)前記ガス混合物を前記吸着材(3)と接触させて、吸着工程で、ガス混合物が環境大気である場合には環境大気圧条件及び環境大気温度条件下で、他の場合には供給ガス混合物の温度及び圧力条件下で前記ユニット(8)の貫流によって前記吸着材(3)に少なくとも前記ガス状二酸化炭素を吸着させる工程;
(b)前記ユニット(8)内の二酸化炭素を吸着した前記吸着材(3)を、前記吸着体の温度を維持しながら前記貫流から分離する工程;
(c)飽和又は過熱蒸気流(4)を前記ユニット(8)の貫流により注入し、それによって60~110℃の温度への前記吸着材(3)の温度の上昇を誘導して、COの脱着を開始する工程;
(d)少なくとも、脱着された前記ガス状二酸化炭素を前記ユニット(8)から取り出し、前記ユニット(8)の下流で凝縮によってガス状二酸化炭素を蒸気から分離する工程;
(e)前記吸着材(3)を、ガス混合物が環境大気である場合には環境大気温度条件にし、他の場合には前記供給ガス混合物の温度及び圧力条件にする工程
を含み、
前記吸着材(3)は、二酸化炭素を可逆的に結合することができる、アミノ官能基で表面が官能基化された固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料であり、10~25m/gの範囲のBET比表面積を有し、且つ50~350nmの範囲における累積細孔容積が0.28~1.5cm/gの範囲となるような細孔容積分布を有する、方法。
【請求項2】
前記吸着材(3)が、好ましくは窒素吸着法によって測定された、10~20m/gの範囲、好ましくは12~20m/gの範囲のBET比表面積を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記吸着材(3)が、細孔容積の90%、好ましくは95%が、50~400nmの範囲、好ましくは80~350nmの範囲となるような、水銀圧入法によって測定された細孔径分布を有し、
及び/又は、前記吸着材(3)が、最大細孔容積が80~150nmの範囲の細孔径、好ましくは100~150nmの範囲の細孔径にあるような、水銀圧入法によって測定された細孔容積分布を有し、前記分布の全細孔容積の好ましくは90%、より好ましくは95%が、前記細孔容積分布の前記最大値の直径-50nm~+150nm、好ましくは-40nm~+100nmの範囲であり、
及び/又は、前記吸着材(3)が、水銀圧入法によって測定された0.3~1cm/gの範囲、好ましくは0.35~0.8cm/gの範囲、最も好ましくは0.4~0.7cm/gの範囲の全細孔容積を有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記吸着材(3)が、それぞれ乾燥吸着材について、5~50重量%の範囲、好ましくは8~15重量%又は10~12重量%の範囲の窒素含有量を有する、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ガス混合物が環境大気である、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記吸着材の前記固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料が、
有機又は無機高分子担体、好ましくは有機高分子担体、特にポリスチレン系材料、好ましくはスチレンジビニルベンゼン共重合体であり、これにより好ましくは、第一級アミン、好ましくはメチルアミン、最も好ましくはベンジルアミン部分で表面官能基化された吸着材が形成され、ここで、前記固体高分子担体材料は、好ましくは懸濁重合プロセス及び/又は乳化重合プロセスで得られ、
又は無機非高分子担体であって、好ましくは、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、マグネシア(MgO)、クレー及びそれらの混合形態、例えば、シリカ-アルミナ(SiO-Al)、又はそれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
アミノ官能基で表面が官能基化された前記吸着材の前記固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料が、モノリス、層又はシート、中空若しくは中実の繊維、好ましくは織布若しくは不織布構造体における中空若しくは中実の繊維、中空若しくは中実の粒子、又は押出物のうちの少なくとも1つの形態であり、好ましくは、前記担体材料が、0.002~4mm又は0.01~1.5mmの範囲、好ましくは0.30~1.25mmの範囲の粒子径(D50)を有する、好ましくは実質的に球形のビーズの形態をとり、
又はアミノ官能基で表面が官能基化された前記固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料の前記吸着材(3)が、好ましくは、多孔質/空気透過性若しくは非多孔質マトリックス又は支持体構造体に埋め込まれた又はそれに付加された中実の粒子及び/又は繊維の形態であり、好ましくは、前記吸着材(3)は、吸着材の層の形態、好ましくは、粒子状及び/又は繊維状の吸着材の層の形態をとり、前記層は、多孔質/空気透過性支持体材料、好ましくは多孔質/空気透過性高分子支持体材料の少なくとも1つのさらなる層に付加されており、好ましくは、多孔質/空気透過性支持体材料層の2つの層の間に埋め込まれて積層体を形成しており、前記積層体自体を好ましくはさらに構造化して、パネル又はモジュールを形成することができる、請求項1~6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記吸着材(3)が、50~350nmの範囲における累積細孔容積が0.3~1.2cm/g、好ましくは0.35~0.7cm/gの範囲となるような細孔容積分布を有する、請求項1~7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記吸着材(3)が、3~60重量%の範囲、好ましくは3~30重量%又は5~30重量%の範囲の保水率を有し、及び/又は、750~400kg/m、好ましくは450~650kg/mの範囲の嵩密度(EN ISO 60(DIN 53468))を有し、
及び/又は、前記方法を、工程(a)において前記吸着材を通過する前記ガス混合物又は前記環境大気が、1日、1ヶ月及び/又は1年間におけるサイクルの少なくとも5%又は10%又は50%の間に20~80%RHの範囲で変化する相対湿度を有するという条件下で実施する、請求項1~8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程(d)を、前記吸着材(3)を蒸気と接触させたまま、前記ユニットに飽和又は過熱蒸気を注入し及び/又は循環させて、蒸気及びCOの双方を前記ユニットからフラッシュ及びパージすることにより実施し、これを、先行する前記工程(c)の終了時の前記吸着体の温度が実質的に維持され、及び/又は、先行する前記工程(c)の終了時の前記吸着体の圧力が実質的に維持されるように前記取出し及び/又は蒸気供給を調節しながら行う、請求項1~9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記吸着材(3)を収容したユニットを使用し、前記ユニット及び前記吸着材は、少なくとも前記ガス状二酸化炭素の脱着のために少なくとも60℃の温度を維持することができ、前記ユニットは、前記ガス混合物、好ましくは前記環境大気の貫流、及び前記吸着工程での前記ガス混合物、好ましくは前記環境大気と前記吸着材との接触のために開放可能であり、
好ましくは、前記ユニットは、個々の吸着体要素のアレイを備え、各吸着体要素は、少なくとも1つの担体層と、少なくとも1つの吸着材を含むか又はそれからなる少なくとも1つの吸着体層とを備え、前記吸着材は、水分又は水蒸気の存在下でCOの選択的吸着を提供し、前記アレイの前記吸着体要素は、ガス混合物、好ましくは環境大気及び/又は蒸気の貫流のための平行な流体通路が形成されるように、実質的に互いに平行に、且つ互いに間隔をあけて配置されている、請求項1~10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記ユニットは、400mbar(abs)以下の真空圧まで排気可能であり、工程(b)は、前記吸着体の温度を維持しながら、前記ユニット内の二酸化炭素を吸着した前記吸着体を前記貫流から分離し、次いで前記ユニットを20~400mbar(abs)の範囲の圧力まで排気することを含み、工程(c)において、飽和又は過熱蒸気流の注入はまた、反応器ユニットの内部圧力の上昇を誘導し、工程(e)は、前記吸着材を環境大気圧条件及び環境大気温度条件にすることを含み、
好ましくは、工程(d)の後で且つ工程(e)の前に、以下の工程:
(d1)蒸気の注入と、使用する場合には循環とを停止し、前記ユニットを、前記ユニット内の圧力値が20~500mbar(abs)、好ましくは50~250mbar(abs)の範囲となるまで排気し、それによって前記吸着体から水を蒸発させ、前記吸着体を乾燥及び冷却させる工程
を実施する、請求項1~11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
工程(e)を、専ら、前記環境大気を環境大気圧条件及び環境大気温度条件下で前記吸着材と接触させて、前記ユニット内の水を蒸発させて除去し、前記吸着材を環境大気温度条件にすることによって実施する、請求項1~12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
吸着材(3)の使用であって、ガス状二酸化炭素を、ガス混合物、好ましくは、環境大気(1)、排ガス及びバイオガスのうちの少なくとも1つから分離するための、好ましくは、特に温度、真空又は温度/真空スイングプロセスを用いた、貫流による飽和又は過熱蒸気流(4)の注入を利用して60~110℃の温度への前記吸着材(3)の温度の上昇を誘導して、COの脱着を開始するというプロセスを用いた直接空気回収への、吸着材(3)の前記使用において、前記吸着材(3)は、二酸化炭素を可逆的に結合することができる、アミノ官能基で表面が官能基化された固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料を有し、好ましくは窒素吸着法によって測定された10~25m/gの範囲のBET比表面積を有し、且つ50~350nmの範囲における累積細孔容積が0.28~1.5cm/g又は0.3~1.5cm/gの範囲となるような細孔容積分布を有し、前記吸着材(3)は、そのままで使用されるか、又は好ましくは、多孔質及び/又は非多孔質マトリックス及び/又は支持体構造に付加された又は埋め込まれた状態で使用される、使用。
【請求項15】
ユニットであって、ガス状二酸化炭素を、ガス混合物、好ましくは、環境大気(1)、排ガス及びバイオガスのうちの少なくとも1つから分離するための前記ユニット、好ましくは直接空気回収ユニットにおいて、前記ユニットは、前記ガス混合物(1)の貫流に適する及び適合させた吸着材(3)を収容した少なくとも1つの反応器ユニット(8)を備え、
前記反応器ユニットは、吸着中の前記ガス混合物、好ましくは環境大気(1)用の入口と、前記ガス混合物、好ましくは環境大気用の出口(2)とを備え、
前記反応器ユニットは、少なくとも前記ガス状二酸化炭素の脱着のために少なくとも60℃の温度に加熱可能であり、前記反応器ユニットは、前記ガス混合物、好ましくは環境大気の貫流及び吸着工程での前記ガス混合物、好ましくは環境大気と前記吸着材との接触のために開放可能であり、好ましくは、前記反応器ユニットは、さらに400mbar(abs)以下の真空圧まで排気可能であり、
前記吸着材(3)は、好ましくは、個々の吸着体要素のアレイを備えた吸着体構造体の少なくとも一部の形態をとり、各吸着体要素は、好ましくは、少なくとも1つのモノリス又は担体層又はシートと、少なくとも1つの吸着材(3)を含むか又はそれからなる少なくとも1つの吸着材層又は吸着材モノリスとを備え、前記吸着材は、二酸化炭素を可逆的に結合することができる、アミノ官能基で表面が官能基化された固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料を含み、前記担体材料は、好ましくは窒素吸着法によって測定された10~25m/gの範囲のBET比表面積を有し、且つ50~350nmの範囲における累積細孔容積が0.28~1.5cm/g又は0.3~1.5cm/gの範囲となるような細孔容積分布を有し、好ましくは、前記アレイの前記吸着体要素は、前記ガス混合物、好ましくは環境大気及び/又は蒸気の貫流のための平行な流体通路が形成されるように、実質的に互いに平行に、且つ互いに間隔をあけて配置されており、
前記ユニットは、二酸化炭素を水から分離するための少なくとも1つの装置、好ましくは冷却器を備え、
好ましくは、二酸化炭素を水から分離するための前記装置、好ましくは前記冷却器のガス出口側に、脱着プロセスを制御するための二酸化炭素濃度センサ及びガス流量センサの少なくとも一方、好ましくは双方が設けられている、ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス混合物からガス状二酸化炭素を分離するための、特に直接空気回収(DAC)用の吸着材料の使用、及び対応する方法であって、特に大気から二酸化炭素を直接捕捉するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パリ協定によって、気候変動の脅威と、世界の気温上昇を産業革命以前の水準に比べて2℃より十分低く保つための世界的対応の必要性とについてのコンセンサスが得られた。この目標を達成するために、新たな森林の植林から技術的手段に至るまで様々な可能性が提示されている。植林については世論が広く共鳴しているが、そうしたプロジェクトの範囲や実現可能性については議論があり、考えられているほど単純なアプローチではないものと思われる。
【0003】
技術的アプローチのうち最も進んだ技術には、排ガス回収のような点源からのCO隔離と、直接空気回収(DAC)と呼ばれる空気からのCOの直接回収とがある。どちらの技術戦略も、気候変動を緩和する可能性を秘めている。
【0004】
大気からのCO回収には、排ガス回収に対して以下のような具体的利点がある:DACは、(i)分散した発生源(例えば、自動車、飛行機)からの排出に対応可能であり、(ii)発生源に取り付ける必要がなく、それとは独立した場所に設置可能であり、(iii)過去からの排出に対応可能であるため、COを安全且つ恒久的に貯留する方法(例えば、地下鉱物化)と組み合わせれば、ネガティブエミッションが可能となる。DACはまた、例えば特許文献1に記載されているように、再生可能な材料や燃料を合成するための主要な反応物質を提供するいくつかの手段の1つとして使用されている。
【0005】
適切な回収材料に関しては、いくつかのDAC技術が文献に記載されており、例えば特許文献2に記載されているように、例えば水中のアルカリ土類酸化物を利用した炭酸カルシウムの形成が記載されている。異なるアプローチとしては、固体のCO吸着体(以下、吸着体と称する)の利用があり、この吸着体は、充填層を使用して気固界面でCOを回収することを特徴とする。このような吸着体は、特許文献3に報告されているような固定化アミノシラン系吸着体や、特許文献4に開示されているようなアミン官能基化セルロースなど、各タイプのアミン官能基化及びポリマーを含むことができる。
【0006】
特許文献5には、工業用途から二酸化炭素を除去するための、アミノアルキル化ビーズポリマーを含むイオン交換材料の利用が記載されている。
【0007】
特許文献6には、ガス混合物からCOを可逆的に吸着するための吸着体が記載されており、該吸着体は、高分子吸着体から構成されており、該高分子吸着体は、第一級アミノ官能基を有し、且つ25~75m/gの高い比表面積(Brunauer-Emmet-Teller法で計算)及び特定の平均細孔径を有する。材料は、回収後に圧力又は湿度スイング法の適用により再生される。
【0008】
特許文献7には、固体担体に固定化された第一級アミン単位を有する高分子吸着体を用いた二酸化炭素除去法が記載されている。この場合、吸着体の再生は、通気下に55~75℃の温度範囲で吸着体を加熱することによって行われる。
【0009】
特許文献8及び特許文献9には、125~130℃の温度で溶融するポリマーバインダーに粉砕イオン交換樹脂を導入し、異種混合物を浄水用途の最大厚さ0.125mmのシート状に成形する方法が記載されている。
【0010】
特許文献10には、ガス混合物からCOを回収するための可逆的吸脱着サイクルが可能なアミン基を有する吸着体を含む構造体が開示されており、前記構造体は、繊維フィラメントから構成されており、繊維材料は、炭素及び/又はポリアクリロニトリルである。
【0011】
特許文献11には、ガス混合物からCOを回収するための可逆的吸脱着サイクルが可能であり、表面改質セルロースナノファイバーのウェブによって形成された担体マトリックスを含む多孔質吸着体構造体が開示されている。担体マトリックスは、少なくとも20%のポロシティを有する。表面改質セルロースナノファイバーは、直径約4nm~約1000nm、長さ100nm~1mmのセルロースナノファイバーからなり、その表面に共有結合したカップリング剤で覆われている。カップリング剤は、少なくとも1つのモノアルキルジアルコキシアミノシランを含む。
【0012】
特許文献12には、ポリアミンとポリアルデヒドリンデンドリマー(P-デンドリマー)化合物との反応によって合成された新規の固体吸着体が提供されている。この吸着体は安定であり、二酸化炭素との迅速な反応キネティクスを示すため、炭素捕捉に適用可能であり、さらなる使用に向けて容易に再生可能である。この材料は、水性媒体及び有機媒体に加え、強酸及び強塩基に対しても安定である。この吸着体は、長期間の使用でも完全な容量を維持する。この材料は、純粋なCO流、混合ガス流、模擬排ガス及び環境大気からのCO捕捉に使用することができる。さらに、バルク粒子を用いたプロセス以外の可逆的なCOの捕捉用途では、この材料を表面に付着させることができる。
【0013】
特許文献13には、吸着材を有する吸着体構造体を含むユニットを用いて、サイクル吸脱着によって混合物からガス状二酸化炭素を分離する方法が開示されており、この方法は、以下:(a)前記混合物を吸着材と接触させて、前記ガス状二酸化炭素を環境条件下で吸着させる工程;(b)前記ユニットを20~400mbarabsの範囲の圧力まで排気し、内部熱交換器を用いて前記吸着材を80~130℃の範囲の温度まで加熱する工程;及び(c)ユニットを環境大気圧条件まで再加圧し、吸着材を環境温度以上の温度まで能動的に冷却する工程;を含み、工程(b)において、ユニットに蒸気を注入して、飽和蒸気条件下で吸着材を貫流させて接触させ、その際、注入される蒸気と放出されるガス状二酸化炭素とのモル比は、20:1未満である。
【0014】
Iraniら(非特許文献1)は、CO捕捉技術用途の効果的な吸着体(polyHIPE/PEI)を提案している。この目的で、2-エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)及びジビニルベンゼン(DVB)を用いた高内部相エマルション(HIPE)により多孔質ポリマーが製造された。この製造された多孔質ポリマー(polyHIPE)がその後、ポリエチレンイミン(PEI)の湿式含浸の新たな担体として使用され、これによりpolyHIPE/PEI吸着体が得られた。製造された吸着体の特性決定が行われた。polyHIPEにPEIを最適に60重量%担持させた際のCO吸着容量は、70℃で10体積%のCO及び3体積%のHOをN中で用いた場合に、4mmol CO/g吸着体に達した。速度論的及び熱力学的吸着研究によると、polyHIPE/PEIのCO吸脱着の活性化エネルギーは、それぞれ13.74kJ/mol及び36.12kJ/molであった。
【0015】
Jungらは、非特許文献2において、アミンとしてポリ(エチレンイミン)(PEI)、担体としてメソポーラスポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)ビーズを用いて、高いCO吸着容量を有する適切な粒子径を有する固体アミン吸着体を製造したと報告している。PEIを含浸させ、PMMAを担体とする吸着体は、純粋なCOガス流中で75℃にて最大4.26mmol/gのPMMA-55のCO吸着容量を示した。PMMA-55の吸着容量に対する温度の影響を調べたところ、50℃でCO曝露時間180分にて最大吸着容量が得られ、これは、シリカを担体とする多くの吸着体の傾向とは異なっていた。PMMAを担体とする吸着体の吸着性能に対する界面活性剤添加の影響は、シリカを担体とする吸着体の場合と異なっていたが、これは、PMMAとシリカとの表面特性が異なるためである。また、潜在的用途へのこのアミン吸着体の適性について検討するため、吸脱着サイクルが行われた。
【0016】
Hammacheらは、Energy & fuelsにおいて、ポリエチレンイミンをシリカに含浸させて製造されたアミン吸着体を蒸気安定性について試験したことを報告している。この吸着体の安定性が、105℃で90体積%HO/Heの蒸気サイクルを複数回使用する固定層反応器で調査され、ガス流出が質量分析計でモニターされた。蒸気への曝露を繰り返すにつれて、吸着体のCO取込み量が減少することが判明した。N物理吸着、SEM、熱重量分析(TGA)を用いた使用済み吸着体の特性評価から、CO負荷量の減少は、シリカの細孔内でのアミンの再凝集に起因する可能性があることが判明した。この研究では、担体の効果は認められなかった。使用された市販のSiOであるCariact G10は、使用された条件下で安定であることが判明した。この吸着体を数回の蒸気サイクルに供するとCO取込み量が減少することが判明したが、この吸着体を蒸気に連続的に曝露しても性能に大きな影響はなかった。SiO担体にPEIとアミノプロピルトリエトキシシランとの混合物を担持させたものからなるシランベースの吸着体についても、蒸気に対する安定性が調査された。シランをベースとしない吸着体と同様に、この吸着体のCO負荷量は蒸気曝露時に減少したが、この変化の機序は前提条件とされていない。
【0017】
特許文献14は、麻酔中の呼気ガスからCOを除去するための再生吸収装置に関する。この装置は、前記呼気ガス用の入口と、そこから実質的に除去されたCOを含む排出ガス用の出口とを有する容器を備える。この装置は、前記容器内に配置された、CO吸収容量を有するイオン交換体を備え、ガスはこのイオン交換体を通って前記入口から前記出口まで流れる。新規の麻酔方法は、CO吸収装置の使用を含む。
【0018】
Liuらは、非特許文献3において、多孔質ポリスチレン樹脂(XAD-4)をフリーデル・クラフツアシル化反応により塩化クロロアセチルで修飾し、次いでテトラエチレンペンタミン(TEPA)でアミノ化することによる固体アミン吸着体の製造方法を報告している。固体アミン吸着体への模擬排ガスからのCOの吸着挙動が評価された。アミン種、吸着温度、水分など、吸着体のCO吸着性能を決定し得る因子が調査された。実験の結果、TEPAで修飾された、より長鎖の固体アミン吸着体(XAD-4-TEPA)は、より短鎖の他の2つのアミン種よりも優れたアミン効率を示すことが判明した。COとアミン基との反応は発熱反応であるため、CO吸着容量は温度の上昇とともに明らかに減少し、その吸着量は、乾燥状態にて10℃で1.7mmol/gに達した。水の存在は、吸着体のCO吸着量を著しく増加させる可能性があり、それによりXAD-4-TEPAへのCOの化学吸着が促進される。この吸着体は、10サイクルの吸脱着後にほぼ同じ吸着量を維持した。これらの結果から、アミン官能基化XAP-4樹脂は有望なCO吸着体であることが判明した。
【0019】
特許文献13には、吸着材を有する吸着体構造体を含むユニットを用いて、サイクル吸脱着によって混合物からガス状二酸化炭素を分離する方法が開示されており、この方法は、以下:(a)前記混合物を吸着材と接触させて、前記ガス状二酸化炭素を環境条件下で吸着させる工程;(b)前記ユニットを20~400mbarの範囲の圧力まで排気し、前記吸着材を80~130℃の範囲の温度まで加熱する工程;及び(c)ユニットを環境大気圧条件まで再加圧し、吸着材を環境温度以上の温度まで能動的に冷却する工程;を含み、工程(b)において、ユニットに蒸気を注入して、飽和蒸気条件下で吸着材を貫流させて接触させ、その際、注入される蒸気と放出されるガス状二酸化炭素とのモル比は、20:1未満である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2016/161998号
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/034724号明細書
【特許文献3】米国特許第8,834,822号明細書
【特許文献4】国際公開第2012/168346号
【特許文献5】国際公開第2011/049759号
【特許文献6】国際公開第2016/037668号
【特許文献7】国際公開第2016/038339号
【特許文献8】米国特許第6,716,888号明細書
【特許文献9】米国特許第6,503,957号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2012/076711号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2018/043303号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2019/224647号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2017/203249号明細書
【特許文献14】米国特許第6,279,576号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】“Facilely synthesized porous polymer as support of poly (ethyleneimine) for effective CO2 capture”, Energy (157), p. 1-9 (2018)
【非特許文献2】Energy Fuels 2014, 28, 3994-4001
【非特許文献3】J. APPL. POLYM. SCI. 2017, 134, 45046
【発明の概要】
【0022】
本発明は、特定の吸着材を使用してガス混合物、好ましくは環境大気、排ガス及びバイオガスのうちの少なくとも1つからガス状二酸化炭素を分離する方法、特にDAC法、並びにガス分離目的、特にDACでのかかる特定の吸着材の使用に関する。
【0023】
本明細書には、以下のものが示される:先行技術では特に、第一級アミノアルキル官能基で置換され、高い比表面積を特徴とする架橋ポリスチレン吸着体や、高い比表面積を有する無機又は有機の非高分子又は高分子材料をベースとする他の吸着体が、DAC用途に特に有用であるとの主張がなされている。驚くべきことに、今般、その認識に反して、無機又は有機の非高分子又は高分子材料、特に(排他的ではないが)架橋ポリスチレン吸着体、例えばジビニルベンゼン(DVB)をベースとする架橋ポリスチレン吸着体、例えばアミノ基で官能基化されたポリ(スチレン-co-ジビニルベンゼン)であって、非常に特定のメジアン範囲の比表面積と、特定の範囲にある細孔容積分布(すなわち、50~350nmの範囲の累積細孔容積が0.28~1.5cm/gの範囲になければならない)とを併せ持つ無機又は有機の非高分子又は高分子材料が、蒸気脱着プロセスにおいて、湿度条件に実質的に依存しない予想外に安定した二酸化炭素吸着挙動を示すことが見出された。このことは、様々な気象条件や投入ガス組成条件、すなわち相対湿度が変化する条件下でのプロセスの安定性にとって、極めて重要である(RHは、例えば、空気中に存在する水蒸気量を、同じ温度で飽和に必要な量の百分率で表したものとして定義され、ここで、この温度は、通常は対応する吸着体を備えたDAC装置の入口気流における蒸気脱着を使用した実験では15℃としており;本明細書で与えられる相対湿度は、乾燥流(RH0%)と飽和流とを、目標とするRHに応じて異なる比率で混合する加湿器システムを使用して生成した。飽和流は、水柱を通して乾燥ガスをバブリングして生成した。相対湿度は、Vaisala Humidity and Temperature Probe HMP110型装置を使用して測定した)。エアパージサーマルスイング脱着後に行った例示的な吸着試験では、反応器の温度を30℃に保ち、RHの制御を、30℃で目標のRH値に達するように、入口ガスを供給するバブラーの温度を変えることによって行った。
【0024】
具体的には、本発明によれば、吸着材は、二酸化炭素を可逆的に結合することができる、アミノ官能基で表面が官能基化された固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料であって、BET比表面積が10~25m/gの範囲であり、50~350nmの細孔径の範囲における累積細孔容積が0.28~1.5cm/g又は0.3~1.5cm/gの範囲となるような細孔容積分布を有するものである。
【0025】
実際に、本研究の予想外の発見の1つは、蒸気脱着の場合、高相対湿度(60%超のRH%)に適した吸着材と、低相対湿度(0~60%の範囲のRH%)に適した吸着材とが存在することであった。前者は10m/gまでの比表面積を有することを特徴とし、後者は25m/g超の比表面積を有することを特徴とする。
【0026】
驚くべきことに、これに対して、かかる吸着材、すなわち無機又は有機の非高分子又は高分子材料をベースとする吸着材のBET比表面積が、特許請求の範囲に記載の10~25m/gの範囲にあり、且つかかる吸着材が以下に詳述する50~350nmの範囲の累積ポロシティを有する場合に、対応する吸着材が、全体的な容量低下の機能不全を生じることなく0~100%の全相対湿度範囲にわたって二酸化炭素吸着挙動の点で実質的に安定であることが見出された。
【0027】
この挙動は、蒸気脱着の状況に特有のものである。実際に、蒸気を使用しない脱着、特に加熱脱着プロセスが使用される場合には、下記で詳細に実証されるように、このタイプのポロシティについての選択的なこうした相対湿度に依存しない捕捉容量の驚くほど安定した挙動は見られない。
【0028】
変動する相対湿度に対する安定した二酸化炭素捕捉容量によって、相対湿度条件に依存しない高効率の相応して安定した制御可能なプロセスと、無機又は有機の非高分子又は高分子材料をベースとする吸着材に対応する最適化されたプロセス制御とが可能となる。
【0029】
興味深いことに、比表面積の値とは無関係に、蒸気脱着プロセスで異なる挙動を示すこれらの吸着材はすべて、エアパージサーマルスイングで使用した場合、すなわち蒸気の導入ではなく加熱だけで脱着が行われた場合には、実質的に同じ二酸化炭素捕捉挙動を示す。これらの吸着材では、この条件下での二酸化炭素吸着量は、全範囲にわたって相対湿度が上昇するにつれてわずかに増加する。この挙動は、文献によく記載されているように、RHが高くなるとアミン効率が上昇するためと考えられる。このようなプロセスでは、各サイクルにおいて、吸着材層を加熱(抵抗加熱)し、この層に空気及び/又はNを通すことによって吸着材の脱着が行われる。
【0030】
これとは異なり、吸着材層を誘導加熱する代わりに蒸気を凝縮させて再生させると、予想外に異なる挙動が得られる。具体的には、RH%に対する依存性が全く異なることが観察される。低表面積の吸着材は、高RH%では最高の挙動を示すが、低RH%では良好な挙動を示さない。それに対して高表面積の吸着材は、低RH%では良好な挙動を示すが、高RH%では容量を失う。
【0031】
それに対して、特許請求の範囲に記載の特徴を有する吸着材は、当該RH%範囲全体にわたって、はるかにより一定の挙動を示す。
【0032】
これは、特許請求の範囲に記載の吸着材の特定の表面及びポロシティの特性によるものであり、特に、より大きな細孔の範囲においてより大きな累積細孔容積が存在することによるものである。
【0033】
したがって、本発明は、サイクルCO捕捉容量の過度の変動なしに広範囲のRH%にわたって機能するのに適したモルフォロジー(表面積、好ましくは全細孔容積及び細孔径分布)をも有し、したがって、1日の様々な時間帯(例えば、湿度の高い夜間や、乾燥した日中)や季節の変化(高温多湿の夏期や、乾燥した寒い冬期)を通して、連続的且つ相対的に一定のプラント運転を可能にする吸着材に関する。
【0034】
かかる吸着材の具体的な特徴は、表面積が10~25又は10~20m/gであり、且つ大きな細孔の細孔容積が大きい(特に細孔径>100nmであり、50~350nmの範囲での細孔容積が0.28~1.5cm/g又は0.3~1.5cm/gである)ことである。
【0035】
こうした吸着材は、高分子をそのベースとすることも、非高分子をそのベースとすることも可能である。また、吸着材は有機物であっても無機物であってもよく、ハイブリッド型も可能である。これらの吸着材の主な特徴は、多孔質構造体の化学的性質よりも物理的性質にある。
【0036】
特に、吸着材の官能基化された固体担体が、特許請求の範囲に記載の範囲のポロシティを有し、マクロポア(直径が50nmを超える細孔)の高い割合及び容積を有し、さらに好ましくはまた、メソポア、すなわち直径が2~50nmの細孔の低い割合を有するか若しくはメソポアを実質的に含まず、及び/又は、好ましくはまた、ミクロポア、すなわち直径が2nmを超えないか若しくは下回る細孔の低い割合を有するか若しくはミクロポアを実質的に含まず、これにより、ポロシティ内での凝縮水の蓄積が減少し、水及び/又は蒸気の存在下での二酸化炭素捕捉プロセスに向けて、サイクル運転での容量がはるかに高くなる。
【0037】
本開示の文脈において、「環境大気圧」及び「環境大気温度」という表現は、屋外で運転されるプラントが曝される圧力及び温度条件を意味し、すなわち、典型的には、環境大気圧とは、0.8~1.1barabsの範囲の圧力を意味し、典型的には、環境大気温度とは、-40~60℃、より典型的には-30~45℃の範囲の温度を意味する。プロセスの投入物として使用されるガス混合物は、好ましくは環境大気、すなわち環境大気圧及び環境大気温度の空気であり、これは、通常は0.03~0.06体積%の範囲のCO濃度を有する。しかし、CO濃度がより低い又はより高い空気、例えば濃度が0.1~0.5体積%である空気も、プロセスの投入物として使用することができるため、一般的に言えば好ましくは、投入ガス混合物の投入CO濃度は、0.01~0.5体積%の範囲である。しかし、排ガスを供給源とすることも可能であり、この場合、投入ガス混合物の投入CO濃度は、典型的には最大20体積%又は最大12体積%の範囲であり、好ましくは1~20体積%又は1~12体積%の範囲である。
【0038】
本明細書で詳述する二酸化炭素捕捉方法工程シーケンス(a)~(e)において、工程(a)及び(e)では環境大気圧条件及び環境大気温度条件が参照される。これは、供給されるガス混合物がこれらの条件下で提供される場合、例えば、ガス混合物の供給源が大気である直接空気回収の場合にのみ適用される。しかし、ガス混合物の供給源が別の供給源である場合には、供給条件が環境大気圧条件でないこと及び/又は環境大気温度条件でないことは十分にあり得る。特に排ガスの場合には、ガス混合物が高温、例えば室温より高い温度である場合があり、またそうであることが多く、50℃より高い温度である場合すらある。温度は70℃まで上がることもあり、その場合通常、工程(c)で吸着材から二酸化炭素を脱着させる温度が供給ガスの温度より少なくとも10℃、好ましくは少なくとも20℃高くなるようにセットアップが調整される。したがって、工程(a)及び工程(e)におけるこれらの非大気温度条件及び非大気圧条件下では、通常、圧力及び温度条件が異なっており、具体的には、工程(a)における接触は、供給ガス混合物の温度及び圧力条件下で行われ、工程(e)では、吸着材は、供給ガス混合物の温度及び圧力条件にもたらされる。
【0039】
吸着材が曝される環境大気の温度及び湿度の範囲に関する特性は、アミン系吸着材の性能に強く影響を及ぼす。例えば、乾燥条件(すなわち、相対湿度RH=0%)では、アミンが示す、アミノ基とCOとの反応の化学量論的係数として定義される効率が2:1であるのに対し、多湿状態ではこの効率は1:1である。二酸化炭素を含むガス流の相対湿度が高いと、吸着工程で、吸着体1キログラム当たりに捕捉されるCOのモル数として定義される吸着容量の点で有利である。先行技術には、COを含むガス流の高相対湿度が、蒸気を用いて吸着材の脱着が行われる場合のサイクル吸脱着性能に及ぼす影響については、開示されていない。
【0040】
より一般的に言えば、本発明は、ガス状二酸化炭素を、前記ガス状二酸化炭素とガス状二酸化炭素以外のさらなるガスとを含むガス混合物、好ましくは環境大気から、ユニット内の前記ガス状二酸化炭素を吸着する吸着材を用いたサイクル吸脱着によって分離する方法を提案する。以下で環境大気について言及する場合、これには排ガスやバイオガスのような他のガス混合物も含まれる。
【0041】
本方法は、少なくとも以下の逐次的で且つこの順序で繰り返す工程(a)~(e):
(a)前記ガス混合物、好ましくは環境大気を吸着材と接触させて、吸着工程で、好ましくは環境大気圧条件(環境大気が、ベンチレーターなどを使用して装置から押し出される場合には、たとえベンチレーターによって反応器から押し出される空気が周囲の環境大気圧よりわずかに高い圧力を有する場合であっても、これも本出願に合致した環境大気圧条件であるとみなされ、その圧力は、「環境大気圧」の定義において上記で詳述した範囲内にある)及び環境大気温度条件下で前記ユニットの貫流によって吸着材に少なくとも前記ガス状二酸化炭素を吸着させる工程;
(b)前記ユニット内の二酸化炭素を吸着した前記吸着材を、好ましくは吸着材の温度を実質的に維持しながら前記貫流から分離する工程;
(c)飽和又は過熱蒸気流を前記ユニットの貫流により注入し、それによって60~110℃の温度への吸着材の温度の上昇を誘導して、COの脱着を開始する工程;
(d)少なくとも、脱着されたガス状二酸化炭素をユニットから取り出し、ユニットの下流で凝縮によってガス状二酸化炭素を蒸気から分離する工程;
(e)吸着材を、環境大気温度条件(吸着材が、本工程において厳密には周囲の環境大気温度条件まで冷却されない場合であっても、これも本工程によるものとみなされ、好ましくは、本工程(e)で確立される環境大気温度は、周囲の環境大気温度+25℃、好ましくは+10℃又は+5℃の範囲内にある)にする工程
を含む。
【0042】
上記で指摘したように、本発明によれば、前記吸着材は、二酸化炭素を可逆的に結合することができる、アミノ官能基で表面が官能基化された固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料であり、これは、ISO 9277に記載のBET法を適用して、好ましくは窒素吸着法での測定に基づいて決定された10~25m/gの範囲のBET比表面積を有する。ISO 9277に記載の方法を適用してBET比表面積を決定するためにBET(Brunauer, Emmett und Teller)表面積分析が使用され、細孔容積分布は、50~350nmの範囲における累積細孔容積が0.28~1.5cm/g又は0.3~1.5cm/gの範囲となるようなものである。
【0043】
第1の好ましい実施形態によれば、前記吸着材は、好ましくは窒素吸着法によって測定された、10~20m/gの範囲、好ましくは12~20m/gの範囲のBET比表面積を有する。
【0044】
さらに好ましくは、前記吸着材は、細孔容積の90%、好ましくは95%が、50~400nmの範囲、好ましくは80~350nmの範囲となるような、水銀圧入法によって測定された細孔径分布を有する。水銀圧入法での測定に使用されるパラメータについては、本明細書の後述の詳細が参照される。
【0045】
代替的又は付加的に、前記吸着材は、好ましくは、最大細孔容積が80~150nmの範囲の細孔径、好ましくは100~150nmの範囲の細孔径にあるような、水銀圧入法によって測定された細孔容積分布を有する。この分布は、分布の全細孔容積の好ましくは90%、より好ましくは95%が、細孔容積分布の前記最大値の直径-50nm~+150nm、好ましくは-40nm~+100nmの範囲となるような分布である。
【0046】
さらに別の好ましい実施形態によれば、前記吸着材は、水銀圧入法によって測定された0.3~1cm/gの範囲、好ましくは0.35~0.80cm/gの範囲、最も好ましくは0.4~0.7cm/gの範囲の全細孔容積を有する。
【0047】
吸着材は、その窒素含有量によっても特徴付けることができる。したがって、別の好ましい実施形態によれば、前記吸着材は、それぞれ乾燥吸着材について、5~50重量%の範囲、好ましくは6~15重量%又は8~15重量%又は10~12重量%の範囲の窒素含有量を有する。この測定での乾燥とは、2L/分のN流下で6gの吸着材を90℃で90分間処理することと定義される。
【0048】
上記で指摘したように、特定の吸着材を用いた本方法は、基本的には実用的な任意の相対湿度(RH%)で実施可能であるが、相対湿度が変動する条件、すなわちRH%が20~80%の範囲にある条件に特に適しており、安定しているという利点を有する。
【0049】
吸着材の固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料は、有機又は無機、好ましくは有機高分子担体、例えば熱可塑性又は熱硬化性材料をベースとすることができる。また、熱可塑性材料も可能であり、これは合成の後工程で架橋される。固体高分子担体材料は、ポリスチレン材料やポリビニル材料のような架橋高分子材料とすることができ、これらは、ジビニル芳香族化合物、好ましくはスチレン-ジビニルベンゼン共重合体(ポリ(スチレン-co-ジビニルベンゼン)、PS-DVB)を用いて架橋することができる。固体担体材料は、ビーズの形態とすることができ、これは単分散性であってもヘテロ分散性であってもよい。
【0050】
例えばアミノメチル官能基をPS-DVB骨格に導入するには、以下の反応経路を実施することができる:
【0051】
【化1】
【0052】
第1の段階で、クロロメチルメチルエーテル及びAlClなどの触媒を用いてPS-DVBをクロロメチル化して(a)、PS-DVBの骨格に結合したクロロメチル基を形成することができる。その後、ヘキサメチレンテトラミンとの反応によってアミノ基を導入することができる(b)。工程cの構造からわかるように、この結果、COと共有結合できない第四級アンモニウム塩が形成される。COとの結合が可能な第一級アミンを得るためには、工程cの中間体をHClで加水分解すればよく、これにより、第一級アミンが得られるだけでなく、酸塩基反応によりアミンの反応が生じ、塩化アンモニウムが形成される。アミンを捕捉用の遊離塩基としての最終状態にするために、NaOHとの最終反応を行うことができる。後述の実験的証明に示されているDACプロセスで使用されるアミノメチルPS-DVB吸着体の最終構造は、工程dに示されている。
【0053】
吸着材の固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料はまた、好ましくは、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、マグネシア(MgO)、クレー及びそれらの混合形態、例えば、シリカ-アルミナ(SiO-Al)、又はそれらの混合物からなる群から選択される無機非高分子担体とすることができる。
【0054】
吸着体の固体担体材料は、中空若しくは中実の粒子、ビーズ、マイクロスフェア、モノリス構造体、シート、中空若しくは中実の繊維、好ましくは織布若しくは不織布構造体における中空若しくは中実の繊維、又は押出物の形態とすることができる。
【0055】
吸着材の固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料は、かかる担体材料の粒子(例えば0.002~4.0mmの平均サイズ(D50)を有する粉末又は顆粒)の形態をとることもでき、該粒子は、複合材の形態で固体マトリックスに埋め込むことができる。
【0056】
吸着材は、アミノ官能基で表面が官能基化された担体材料によって与えられ、該吸着材は、特許請求の範囲に記載の比表面積及び特許請求の範囲に記載の細孔容積分布を示す。かかる吸着材は、前述したように様々な三次元形態をとることができ、モノリス、層、シート、中空若しくは中実の繊維の形態又は粒子の形態をとることができる。これらの構造体はまた、好ましくは、例えば繊維が織布若しくは不織布構造体の形態をとる場合、又は粒子が吸着材粒子製のモノリス構造体に成形される場合には、さらなる要素なしで高次構造体を形成するか又は高次構造体に埋め込むことができる。しかし、高次構造体は、さらなる構造要素を含むこともできる。例えば高次構造体は、それ自体は吸着材ではない多孔質材料、例えば高分子織布又は不織布材料の層を含む積層構造を有することができ、このような層の片面又は両面に、粉末又は粒子状構造体のいずれかの形態の吸着材の層を1つ以上付加することができる。あるいは、吸着材の1つの層が多孔質材料の2つの外層に埋め込まれている。後者の好ましい事例では、吸着材が、空気透過性/多孔質材料、好ましくは半透膜を有する層の形態をとることもできる高分子空気透過性/多孔質材料の2つ以上の外層の間に挟まれており、軟質であっても硬質であってもよいこれらの積層体を、次いで、例えばジグザグ又は波状のパターンに配置された吸着体を有するこのような積層体の形態の、例えば空気チャネルを有するパネルなどのさらなる高次構造体が形成されるように構造化することができる。このようなパネルは、硬質フレームと外面を覆うメッシュとを備えたモジュールのような、より高度な高次構造体を形成することもでき、それにより、取扱いや交換を容易に行える構造体が提供される。
【0057】
ポロシティ特性、すなわち比表面積及び細孔容積分布、さらには全細孔容積、及び吸着材自体に関連して本明細書で詳述する他の特性パラメータは、かかる高次構造体の全体に対して異なる可能性があり、また非常に多くの場合異なることに留意すべきである。したがって、特定の吸着材を含むかかる高次構造体は全体として、追加の層などにより、特許請求の範囲に記載の範囲とは異なるポロシティ特性を有する場合があり、また、そのようなポロシティ特性を有することが非常に多い。しかし、実際の二酸化炭素捕捉特性にとって重要であるのは、埋め込まれた吸着材の比表面積及び細孔容積分布であり、かかる高次構造体において、上述の比表面積及び細孔容積分布特性(及び好ましくは本明細書で詳述するさらなる特性)を満たさなければならない。具体的には、例えば、外側の非吸着性多孔質層と、本発明による吸着材の中央層とを有する積層体が存在する場合、完全な構造体の非吸着性層の寄与による累積細孔容積は、埋め込まれた吸着材単独の場合よりも著しく大きくなり得る。
【0058】
本発明の本態様の文脈において、複合材としての固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料を形成する固体マトリックスについて述べる場合、これは、吸着材自体の固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料を形成する実際の三次元構造体を最終的に提供するのは、固体マトリックスであることを意味する(ただしこれは、吸着材が、二酸化炭素の捕捉に寄与しないさらなる構造要素に埋め込まれるか又は付加されることを除外するものではない)。本態様には、別個の構造体が実際の支持体を提供し、これがその後バインダーで被覆、含浸又は浸漬されることで吸着材粒子との複合固体マトリックスが形成され、その後、別の様式で乾燥、架橋又は固化されるという状況や、バインダーが、実際の支持体への吸着材粒子の付着及び/又は吸着材粒子と一緒でのその支持体上でのコーティングの形成を提供するという状況が含まれ得る。
【0059】
好ましくは、固体マトリックス及び吸着材粒子のみによって形成されるこのような複合材は、シート又は箔の形態をとることができるが、顆粒又はモノリス構造も可能である。固体の無機又は有機の非高分子又は高分子複合材を提供するこれらの要素は、対応する支持体構造体、例えば、実際の二酸化炭素捕捉プロセスのためのある種のフレームなどの中に、又はその上に取り付けることができる。
【0060】
特に、吸着材の固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料を含むこのような複合材料の箔又はシートは、押出成形によって得ることができ、例えば、表面が官能基化された吸着材の前記粒子は、例えば熱可塑性マトリックス材料にその溶融後で且つ熱成形の前に添加される。これは、溶融混合又は溶液キャストによって可能であるが、固体マトリックスの熱可塑性材料の液体層又は少なくとも表面軟化層に吸着材粒子をスパッタリングし、必要であれば次いでロール間で積層プロセスを行うことによっても可能である。
【0061】
あるいは、固体マトリックスの前駆材料を使用し、その前駆材料に吸着材粒子を添加し、これを混合した後、例えば架橋、焼結又は乾燥プロセスでこの材料を固化させて、例えば熱硬化性構造体を得ることも可能である。
【0062】
好ましくは、加熱を伴うこのようなプロセスでは、粒子の表面及び/若しくはポロシティ特性並びに/又は官能基化の劣化を回避するために、溶融材料又は前駆材料中での吸着材粒子の滞留時間が十分に短いことが保証される。
【0063】
さらに、吸着材粒子から出発して焼結プロセスにおいて、例えば吸着材粒子を対応する所望の三次元形状に(例えば、実質的に得られる箔の所望の厚さの層の形態に)することによって実際の吸着体構造を生成し、次いで、対応する構造体を焼結プロセスと同様に加熱及び/又は照射及び/又は化学処理して、コヒーレントな巨視的吸着体構造を生成することが可能である。これは、有機熱可塑性高分子材料をベースとする吸着材に特に適している。しかし、このような焼結プロセスを可能にする対応するバインダーを表面に備えた材料であれば、他の材料でも可能である。このような焼結は、例えば積層プロセスにおけるわずかな加圧によって補助することができる。
【0064】
固体マトリックスはまた、それ自体が上記で定義された表面及びポロシティ特性を有する、アミノ官能基で表面が官能基化された同一の又は異なる固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料とすることもできる。しかし、固体マトリックスはまた、粒子のいずれかとは異なり、二酸化炭素捕捉特性を有しておらず、及び/又は、そのマトリックスが上記で定義された表面積及びポロシティ特性を有しない材料とすることもできる。好ましくは、この場合の固体マトリックスは、吸着材粒子とは異なる材料であり、この材料は、表面官能基化を有しないが、好ましくは多孔質であり、吸着材粒子が二酸化炭素捕捉部位として作用できるように官能基化された表面で、表面に露出している。
【0065】
また、固体マトリックスに埋め込まれた吸着材粒子を有するこのような複合形態材料は、中空若しくは中実の粒子、ビーズ、マイクロスフェア、モノリス構造体、シート、中空若しくは中実の繊維、好ましくは織布若しくは不織布構造体における中空若しくは中実の繊維、メッシュ、又は押出物の形態とすることもできる。
【0066】
マトリックスに埋め込む対応する粉末は、すでに表面官能基化された粒子状樹脂材料を粉砕又は摩砕することによって得ることができる。
【0067】
このようなシート又は箔は、必要とされる機械的特性を提供するために、想定されるDAC用途では、好ましくは0.01~5mm又は0.05~3mmの範囲、好ましくは0.1~1mmの範囲の厚さを有する。
【0068】
典型的なDACプロセスの条件に耐えるためには、複合構造体を形成する埋め込まれた吸着材粒子を有する固体マトリックス材料及び/又は固体の無機若しくは有機の非高分子若しくは高分子担体材料全般が、典型的なDAC処理条件において、DACプロセスにおける性能を損なう程度までその機械的特性を失わないか、又は少なくとも著しく失わないことがさらに好ましい。
【0069】
したがって、典型的には、固体マトリックス又は担体材料全般の非晶質熱可塑性高分子材料の場合、ガラス転移温度は100℃より高くあるべきであり、融点を有する熱可塑性系の場合、融点は100℃より高くあるべきである。一方で、特に、マトリックスと組み合わせたときにすでに官能基化されている粒子、とりわけ、表面が官能基化された例えばポリスチレンをベースとする高分子粒子を考慮すると、マトリックス材料は、過度に高い処理温度を有するべきではない。なぜならば、そうしないと、溶融混合プロセスで高分子粒子も溶融し、及び/又は、粒子の表面官能基化が破壊されるためである。このことを考慮すると、吸着材のマトリックス材料及び/又は担体材料全般は、好ましくは、非晶質熱可塑性高分子材料の場合、180℃未満のガラス転移温度を有するべきである。したがって、非晶質熱可塑性高分子材料の場合、好ましくはガラス転移温度は、120~160℃の範囲、より好ましくは130~150℃の範囲である。融点を有するマトリックス系及び/又は担体材料全般(例えば微結晶性又は部分結晶性の高分子系)の場合、融点又は軟化点は同じ温度の範囲であるべきであるため、100℃より高く、及び/又は、180℃より低く、好ましくは120~160℃の範囲、より好ましくは130~150℃の範囲であるべきである。本文脈におけるガラス転移温度及び溶融温度は、DIN EN ISO 11357(2012)に準拠して測定されたものとみなすべきである。本発明の趣意における非晶質とは、系が有するISO 11357(2012)に準拠して決定される融解エンタルピーが3J/g以下であることを意味する。
【0070】
上述の表面積特性及びポロシティ特性は、二酸化炭素捕捉プロセスに関連する限りにおいて考慮されるべきであることに留意し、再度強調されるべきである。したがって、例えばマトリックス材料が二酸化炭素に対して透過性である場合、複合材は、特許請求の範囲及び上記で与えられた範囲内ではないポロシティ及び/又は表面構造を有する可能性がある。しかし、このような材料に埋め込まれた吸着材粒子は、確かに上記で定義されたポロシティ及び/又は表面構造を有し、これらの特性は、マトリックス材料が二酸化炭素に対して透過性であり、且つ拡散によって捕捉活性粒子へのアクセスを可能にするという事実によって、二酸化炭素捕捉プロセスへの利用が可能である。
【0071】
そのため、このような複合構造体は、例えば、吸着材粒子を固体マトリックス材料又はその前駆体とブレンドし、その後に固化及び/又は押出成形することによって製造することができる。そのため、固体マトリックス材料は、例えば、熱可塑性材料か、又は混合後の処理、例えば架橋若しくは乾燥若しくは焼結プロセスにおいてのみ固化する材料とすることができる。
【0072】
この場合、二酸化炭素捕捉のための表面官能基化は、ブレンドして対応する複合材を形成する前に実施することも、後に実施することもできる。例えば、官能基化されていない粒子とマトリックス材料とを混合して、所望のポロシティ特性を有する対応する多孔質複合構造体を生成し、その後、固体複合構造体において、埋め込まれた粒子の表面でのアミノ官能基による官能基化を実施するプロセスも可能である。これには、官能基化が不可能なマトリックス材料を官能基化が可能な粒子と複合材中で組み合わせることができ、複合材を最初に生成しておき、この複合材を、その後ようやく、そして粒子の対応する利用可能な表面上でのみ、上記で定義されたアミノ官能基で官能基化させるという利点がある。複合材中に埋め込まれた粒子は、上記の意味で吸着材とみなすべきである。
【0073】
このような固体担体は、好ましくは吸着材を形成するために表面官能基化され、好ましくは、この表面官能基化によって、可逆的な二酸化炭素捕捉に利用可能なアミン基が得られ、この表面官能基化は、含浸によって、若しくは固体担体の表面種とのグラフト化によって、又はそれらの組み合わせによって達成することができる。表面官能基化は、好ましくは、ベンジルアミン部分のようなアミノメチル部分で提供され、固体高分子担体材料は、好ましくは、懸濁重合プロセスで得られる。反応物及び反応条件を適合させることにより特許請求の範囲に記載の範囲のポロシティを確立するために、乳化重合を効率的に使用することができ、好ましくは、懸濁重合は、ジメチルジオクタデカイルアンモニウムクロリドのような界面活性剤を使用するか又は使用せずに、好ましくは、イソオクタン、トルエン、ワックス又はそれらの混合物であり得る細孔形成剤の存在下で、水中で実施される。しかし、他の方法や試薬も可能である。官能基化は、例えばフタルイミド付加又はクロロメチル化によって達成することができる。好ましくは、第一級アミン部分は、末端アミノメチルの形態をとり、例えば上述のベンジルアミン部分の形態をとる。二酸化炭素捕捉のために、第一級アミンは、本知見によればカルバミン酸化合物に転化され、この化合物は、二酸化炭素を放出するために高い温度及び/又は湿度で解離する。
【0074】
固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料は、(典型的には、ガス混合物/環境大気の貫流のためのスポンジ状構造を有する)モノリス、1つ以上の層、シートの形態、中空又は中実の繊維、例えば織布又は不織布(層)構造体における中空又は中実の繊維の形態のうちの少なくとも1つの形態の高分子担体材料とすることができるが、中空又は中実の粒子(ビーズ)の形態をとることもできる。好ましくは、固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料は、0.002~4mm、0.005~2mm、又は0.01~1.5mmの範囲、好ましくは0.30~1.25mmの範囲の粒子径(D50)を有する、好ましくは実質的に球形のビーズの形態をとる。0.002~1.5mm、0.005~1.6mmの範囲の粒子径(D50)を有する粒子も可能である。
【0075】
吸着材が0.002~4mmの範囲のビーズ又は粉末の形態をとる場合、ユニット内では、膜や金属グリッドなどの形態の空気透過性側壁を有する層状構造物/容器内に吸着材を収容することができ、この膜や金属グリッドなどが有するメッシュ幅は、通常は、対応する構造物全体での圧力降下を低くするのに十分な大きさであるが、しかし吸着材の粒子が対応する容器内に保持されることを確実にするのに十分な小ささである。
【0076】
吸着材は、3~60重量%の範囲、好ましくは3~30重量%又は5~30重量%の範囲の保水率を有することができる。この場合の保水率は、検出される重量変化が0.002g/15秒を超えなくなるまで吸着材を110℃に加熱する水分分析器を用いて決定される。
【0077】
さらに、吸着材は、750~400kg/m、好ましくは450~650kg/mの範囲の嵩密度(EN ISO 60(DIN 53468))を有することができる。
【0078】
取出しの工程(d)は、好ましくは、吸着材を蒸気と接触させたまま、前記ユニットに飽和又は過熱蒸気を注入し及び/又は循環させて、蒸気及びCOの双方をユニットからフラッシュ及びパージすることにより実施され、これは好ましくは、先行する工程(c)の終了時の吸着体の温度が実質的に維持され、及び/又は、先行する工程(c)の終了時の吸着体の圧力が実質的に維持されるように取出し及び/又は蒸気供給を調節しながら行われる。「先行する工程の終了時の吸着体の圧力を実質的に維持する」とは、実際には、圧力が、工程(c)の終了時の圧力から±100mbarを超えて、好ましくは±50mbarを超えて、より好ましくは±20mbarを超えて逸脱することが許容されないことを意味する。実際には、この範囲を超える非常に短時間の逸脱が、プロセスを実施するための装置の正確な実現に依存して、圧力均一化のプロセスのために工程c)からd)への移行後に生じることがある。しかし、それらは工程d)の持続時間の15%未満のオーダーの短い持続時間である。
【0079】
本方法を実施するために、好ましくは、前記吸着材を収容したユニットが使用され、このユニット及び吸着材は、少なくとも前記ガス状二酸化炭素の脱着のために少なくとも60℃の温度を維持することができ、このユニットは、ガス混合物/環境大気の貫流及び吸着工程でのガス混合物/環境大気と吸着材との接触のために開放可能である。
【0080】
使用されるユニットは、個々の吸着体要素のアレイを備えることができ、各吸着体要素は、少なくとも1つの担体層と、少なくとも1つの吸着材を含むか又はそれからなる少なくとも1つの吸着体層とを備え、前記吸着材は、水分又は水蒸気の存在下でCOの選択的吸着を提供し、アレイの吸着体要素は、ガス混合物/環境大気及び/又は蒸気の貫流のための平行な流体通路が形成されるように、実質的に互いに平行に、且つ互いに間隔をあけて配置することができる。この文脈における実質的に平行にとは、吸着体要素の全長にわたって見たときの吸着体要素の平面間の角度が10°の値を超えないこと、好ましくは5°の値を超えないこと、好ましくは2°より小さいことを意味する。この文脈における個々の吸着体要素とは、吸着体要素がモノリシック構造体ではなく、互いに独立して配置することができ、それによりアレイの実質的に平行なチャンネルが形成され、各層が、対応する連結構造体によって、例えばラックによって互いに連結され、このラックに層が挿入されるか、又はこのラックで層が固定されるか、又はこのラック上で担体層に所望の間隔で繰り返しプリーツ加工を施すことができることを意味する。
【0081】
前記ユニットは、好ましくは400mbar(abs)以下の真空圧まで排気可能であり、工程(b)は、吸着体の温度を維持しながら、前記ユニット内の二酸化炭素を吸着した前記吸着体を前記貫流から分離し、次いで前記ユニットを20~400mbar(abs)の範囲の圧力まで排気することを含むことができ、工程(c)において、飽和又は過熱蒸気流の注入はまた、反応器ユニットの内部圧力の上昇を誘導し、工程(e)は、吸着材を環境大気圧条件及び環境大気温度条件にすることを含む。
【0082】
好ましくは、工程(d)の後で且つ工程(e)の前に、以下の工程が実施される:
(d1)蒸気の注入と、使用する場合には循環とを停止し、ユニットを、ユニット内の圧力値が20~500mbar(abs)、好ましくは50~250mbar(abs)の範囲となるまで排気し、それによって吸着体から水を蒸発させ、吸着体を乾燥及び冷却させる工程。
【0083】
工程(e)は、好ましくは専ら、前記環境大気を環境大気圧条件及び環境大気温度条件下で吸着材と接触させて、ユニット内の水を蒸発させて除去し、吸着材を環境大気温度条件にすることによって実施される。
【0084】
工程(b)の後で且つ工程(c)の前に、以下の工程を実施することができる:
(b1)工程(b)の圧力を実質的に保持しながら、好ましくは工程(b)の圧力を±50mbarの範囲内に、好ましくは±20mbarの範囲内に保持しながら、及び/又は温度を75℃未満若しくは70℃未満若しくは60℃未満、好ましくは50℃未満に保持しながら、非凝縮性蒸気流によって非凝縮性ガスのユニットをフラッシュする工程。
【0085】
工程b1のさらなる実施形態では、吸着体構造体の温度は、工程(a)の条件から80~110℃、好ましくは95~105℃の範囲に上昇する。
【0086】
工程(b1)では、好ましくは、工程(b1)の圧力を維持しながら、吸着体構造体の体積1リットル当たり1kg/h~10kg/hの蒸気の割合で、飽和蒸気又はせいぜい20℃過熱した蒸気でユニットをフラッシュすることにより反応器をパージして、残存するガス混合物/環境大気を除去することができる。この環境大気の一部を除去する目的は、捕捉されたCOの純度を向上させることである。
【0087】
工程(c)において、蒸気を、前記ユニットの対応する入口を経由して導入される蒸気の形態で注入することができ、蒸気を、前記ユニットの出口から前記入口まで、好ましくは、再循環蒸気の再加熱を伴って、又は別の反応器からの蒸気の再利用によって(部分的又は完全に)再循環させることができる。
【0088】
工程(c)でのこのプロセスによる脱着のための加熱は、この蒸気注入によってのみ行われ、例えば熱流体を伴う管系による追加的な外部加熱や内部加熱は行われないことに留意すべきである。
【0089】
工程(c)においてさらに好ましくは、吸着材を、80~110℃又は80~100℃の範囲の温度、好ましくは85~98℃の範囲の温度に加熱することができる。
【0090】
さらに別の好ましい実施形態によれば、工程(c)において、ユニット内の圧力は、700~950mbar(abs)の範囲、好ましくは750~900mbar(abs)の範囲である。
【0091】
さらに、本発明は、二酸化炭素を可逆的に結合することができる、アミノ官能基で表面が官能基化された固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料を有する吸着材の使用であって、好ましくは窒素吸着法によって測定された10~25m/gの範囲のBET比表面積を有し、且つ50~350nmの範囲における累積細孔容積が0.28~1.5cm/gの範囲となるような、好ましくはHg圧入によって測定された細孔容積分布を有する吸着材の、特に温度、真空又は温度/真空スイングプロセスを用いた直接空気回収への使用に関する。
【0092】
これは、貫流による飽和又は過熱蒸気流の注入を利用して60~110℃の温度への吸着材の温度の上昇を誘導して、COの脱着を開始するというプロセスを使用するものである。
【0093】
好ましくは、この使用のための吸着材は、細孔径、細孔容積及び/又は窒素含有量などの点で、上記で詳述した特徴を有する。
【0094】
最後に、本発明は、ガス混合物、好ましくは環境大気の貫流に適する及び適合させた吸着材を収容した少なくとも1つの反応器ユニットを備えた直接空気回収ユニットであって、
反応器ユニットは、吸着中のガス混合物/環境大気用の入口とガス混合物/環境大気用の出口とを備え、
反応器ユニットは、少なくとも前記ガス状二酸化炭素の脱着のために少なくとも60℃の温度に加熱可能であり、反応器ユニットは、ガス混合物/環境大気の貫流及び吸着工程でのガス混合物/環境大気と吸着材との接触のために開放可能であり、好ましくは、反応器ユニットは、さらに400mbar(abs)以下の真空圧まで排気可能であり、
吸着材は、好ましくは、個々の吸着体要素のアレイを備えた吸着体構造体の形態をとり、各吸着体要素は、好ましくは、少なくとも1つの担体層と、少なくとも1つの吸着材を含むか又はそれからなる少なくとも1つの吸着材層とを備え、前記吸着材は、二酸化炭素を可逆的に結合することができる、アミノ官能基で表面が官能基化された固体の無機又は有機の非高分子又は高分子担体材料を含み、この担体材料は、好ましくは窒素吸着法によって測定された10~25m/gの範囲のBET比表面積を有し、且つ50~350nmの範囲における累積細孔容積が0.28~1.5cm/gの範囲となるような、好ましくはHg圧入によって測定された細孔容積分布を有し、前記吸着材は、水分又は水蒸気の存在下でCOの選択的吸着を提供し、好ましくは、アレイの吸着体要素は、ガス混合物/環境大気及び/又は蒸気の貫流のための平行な流体通路が形成されるように、実質的に互いに平行に、且つ互いに間隔をあけて配置されており、
ユニットは、二酸化炭素を水から分離するための少なくとも1つの装置、好ましくは冷却器を備え、
好ましくは、二酸化炭素を水から分離するための前記装置、好ましくは前記冷却器のガス出口側に、脱着プロセスを制御するための二酸化炭素濃度センサ及びガス流量センサの少なくとも一方、好ましくは双方が設けられている、
直接空気回収ユニットに関する。
【0095】
本出願はまた、特に表面官能基化のための表面含浸又はグラフト化を含む、これらのプロセスに適する及び適合させた表面官能基化固体担体材料の製造方法に関する。
【0096】
本発明のさらなる実施形態は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0097】
本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照して以下に説明するが、図面は、本発明の好ましい本実施形態の説明を目的としており、その限定を目的としたものではない。
図1】直接空気回収ユニットの概略図である。
図2】Hgポロシメトリーで測定された細孔径分布を示す図である。
図3】Hg圧入によって測定された細孔サイズに応じた細孔容積を示す図である。
図4】94℃でのエアパージサーマルスイング脱着後の、空気流量2L/分、60%RHで30℃における吸着体の平衡吸着容量を示す図である。
図5】蒸気脱着後の、15℃で吸着体の各RHでの450ppmのCOを含む体積流量11L/分のガス流を用いたサイクル吸着容量を示す図である。
図6】94℃でのエアパージサーマルスイング脱着後の、各RHでの2L/分の空気流量を用いた30℃での吸着体のサイクル吸着容量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
提示された吸着材は、以下のプロセスで製造することができる:
PS-DVB骨格にアミノメチル官能基を導入する一般的な反応スキームについては、本開示の上述のスキームが参照される。
【0099】
PS-DVBビーズのモルフォロジーは、モノマー相中のDVB量、並びにポロゲンの量及び種類によって制御できる。一般的に言えば、ポロゲンの種類及び量が一定であれば、DVBの量が多いほど比表面積が大きくなる。一方、ポロゲンの量が多いと、細孔径が大きくなり、比表面積が小さくなる。特定のモルフォロジー(例えば、表面積、細孔容積及び細孔径)を得るためには、DVBの量と、ポロゲンの量と、ポロゲンの種類との最適条件を調整する必要がある。
【0100】
以下に示す実施例IER_AからIER_Dまでにおける各ポロシティは、これらのガイドラインを用いて設定されたものである。
【0101】
合成手順IER_A:
1Lの反応器内で、ゼラチン1%(質量比)及び塩化ナトリウム2%(質量比)を、水350mLに45℃で1時間かけて溶解させる。別のフラスコ内で、過酸化ベンゾイル1gを、スチレン55.4gとジビニルベンゼン(含量80%)8.2gとC11~C13イソパラフィン52.6gとの混合物に溶解させる。得られた混合物を、次いで反応器に加える。その後、この反応混合物を撹拌し、70℃まで加熱し、温度を2時間維持した後、温度を80℃まで上昇させて3時間維持し、その後、6時間かけて90℃まで上昇させる。この反応混合物を室温まで冷却し、漏斗ガラスフィルター及び真空吸引を使用してビーズを濾別する。これらのビーズをトルエンで洗浄し、ロタベーパー(rotavapor)で乾燥させる。
【0102】
これらのポリスチレン-ジビニルベンゼンビーズを、クロロメチル化反応で官能基化させる。そのようにして得られたビーズ5gを、クロロメチルメチルエーテル50mLの入った三ツ口フラスコに加える。この混合物を1時間撹拌し、塩化亜鉛2gを加え、40℃に加熱して24時間保持する。その後、これらのビーズを濾別し、25%HCl及び水で洗浄して、クロロメチル化ビーズを得る。ベンジルアミン単位を得るために、これらのクロロメチル化ビーズを以下の手順でアミノ化する。これらのクロロメチル化ビーズを、メチラール27gと一緒に三ツ口フラスコに加え、この混合物を1時間撹拌する。この混合物に、ヘキサメチレンテトラミン16g及び水13gを加え、緩やかな還流下に24時間保持する。これらのビーズを濾別し、水で洗浄する。第一級アミンを得るには、加水分解工程に加え、その後の塩基での処理が必要である。これらのビーズを、塩酸(30%)-エタノール(95%)溶液140mL(体積比1:3)の入った三ツ口フラスコに入れ、この反応混合物を80℃に加熱し、この温度で20時間保持する。その後、これらのビーズを濾別し、水で洗浄する。この段階でアミンがプロトン化され、塩基を遊離させるために、これらのビーズを2MのNaOH溶液50mLで処理し、80℃で1時間撹拌する。アミノ化されたこれらのビーズを濾別し、中性pHとなるまで脱塩水で洗浄する。
【0103】
合成手順IER_B:
1Lの反応器内で、ゼラチン1%(質量比)及び塩化ナトリウム2%(質量比)を、水340mLに45℃で1時間かけて溶解させる。別のフラスコ内で、過酸化ベンゾイル1gを、スチレン59.7gとジビニルベンゼン(含量80%)3.9gとC11~C13イソパラフィン65.3gとの混合物に溶解させる。得られた混合物を、次いで反応器に加える。その後、この反応混合物を撹拌し、70℃まで加熱し、温度を2時間維持した後、温度を80℃まで上昇させて3時間維持し、その後、6時間かけて90℃まで上昇させる。この反応混合物を室温まで冷却し、漏斗ガラスフィルター及び真空吸引を使用してビーズを濾別する。これらのビーズをトルエンで洗浄し、ロタベーパー(rotavapor)で乾燥させる。
【0104】
これらのポリスチレン-ジビニルベンゼンビーズを、クロロメチル化反応で官能基化させる。そのようにして得られたビーズ5gを、クロロメチルメチルエーテル50mLの入った三ツ口フラスコに加える。この混合物を1時間撹拌し、塩化亜鉛2gを加え、40℃に加熱して24時間保持する。その後、これらのビーズを濾別し、25%HCl及び水で洗浄して、クロロメチル化ビーズを得る。ベンジルアミン単位を得るために、これらのクロロメチル化ビーズを以下の手順でアミノ化する。これらのクロロメチル化ビーズを、メチラール27gと一緒に三ツ口フラスコに加え、この混合物を1時間撹拌する。この混合物に、ヘキサメチレンテトラミン16g及び水13gを加え、緩やかな還流下に24時間保持する。これらのビーズを濾別し、水で洗浄する。第一級アミンを得るには、加水分解工程に加え、その後の塩基での処理が必要である。これらのビーズを、塩酸(30%)-エタノール(95%)溶液140mL(体積比1:3)の入った三ツ口フラスコに入れ、この反応混合物を80℃に加熱し、この温度で20時間保持する。その後、これらのビーズを濾別し、水で洗浄する。この段階でアミンがプロトン化され、塩基を遊離させるために、これらのビーズを2MのNaOH溶液50mLで処理し、80℃で1時間撹拌する。アミノ化されたこれらのビーズを濾別し、中性pHとなるまで脱塩水で洗浄する。
【0105】
合成手順IER_C:
1Lの反応器内で、ゼラチン1%(質量比)及び塩化ナトリウム2%(質量比)を、水340mLに45℃で1時間かけて溶解させる。別のフラスコ内で、過酸化ベンゾイル1gを、スチレン58.8gとジビニルベンゼン(含量80%)4.9gとC11~C13イソパラフィン63.2gとの混合物に溶解させる。得られた混合物を、次いで反応器に加える。その後、この反応混合物を撹拌し、70℃まで加熱し、温度を2時間維持した後、温度を80℃まで上昇させて3時間維持し、その後、6時間かけて90℃まで上昇させる。この反応混合物を室温まで冷却し、漏斗ガラスフィルター及び真空吸引を使用してビーズを濾別する。これらのビーズをトルエンで洗浄し、ロタベーパー(rotavapor)で乾燥させる。
【0106】
これらのポリスチレン-ジビニルベンゼンビーズを、クロロメチル化反応で官能基化させる。そのようにして得られたビーズ5gを、クロロメチルメチルエーテル50mLの入った三ツ口フラスコに加える。この混合物を1時間撹拌し、塩化亜鉛2gを加え、40℃に加熱して24時間保持する。その後、これらのビーズを濾別し、25%HCl及び水で洗浄して、クロロメチル化ビーズを得る。ベンジルアミン単位を得るために、これらのクロロメチル化ビーズを以下の手順でアミノ化する。これらのクロロメチル化ビーズを、メチラール27gと一緒に三ツ口フラスコに加え、この混合物を1時間撹拌する。この混合物に、ヘキサメチレンテトラミン16g及び水13gを加え、緩やかな還流下に24時間保持する。これらのビーズを濾別し、水で洗浄する。第一級アミンを得るには、加水分解工程に加え、その後の塩基での処理が必要である。これらのビーズを、塩酸(30%)-エタノール(95%)溶液140mL(体積比1:3)の入った三ツ口フラスコに入れ、この反応混合物を80℃に加熱し、この温度で20時間保持する。その後、これらのビーズを濾別し、水で洗浄する。この段階でアミンがプロトン化され、塩基を遊離させるために、これらのビーズを2MのNaOH溶液50mLで処理し、80℃で1時間撹拌する。アミノ化されたこれらのビーズを濾別し、中性pHとなるまで脱塩水で洗浄する。
【0107】
合成手順IER_D:
1Lの反応器内で、ゼラチン1%(質量比)及び塩化ナトリウム2%(質量比)を、水340mLに45℃で1時間かけて溶解させる。別のフラスコ内で、過酸化ベンゾイル1gを、スチレン57.8gとジビニルベンゼン(含量80%)5.86gとC11~C13イソパラフィン63.84gとの混合物に溶解させる。得られた混合物を、次いで反応器に加える。その後、この反応混合物を撹拌し、70℃まで加熱し、温度を2時間維持した後、温度を80℃まで上昇させて3時間維持し、その後、6時間かけて90℃まで上昇させる。この反応混合物を室温まで冷却し、漏斗ガラスフィルター及び真空吸引を使用してビーズを濾別する。これらのビーズをトルエンで洗浄し、ロタベーパー(rotavapor)で乾燥させる。
【0108】
これらのポリスチレン-ジビニルベンゼンビーズを、クロロメチル化反応で官能基化させる。そのようにして得られたビーズ5gを、クロロメチルメチルエーテル50mLの入った三ツ口フラスコに加える。この混合物を1時間撹拌し、塩化亜鉛2gを加え、40℃に加熱して24時間保持する。その後、これらのビーズを濾別し、25%HCl及び水で洗浄して、クロロメチル化ビーズを得る。ベンジルアミン単位を得るために、これらのクロロメチル化ビーズを以下の手順でアミノ化する。これらのクロロメチル化ビーズを、メチラール27gと一緒に三ツ口フラスコに加え、この混合物を1時間撹拌する。この混合物に、ヘキサメチレンテトラミン16g及び水13gを加え、緩やかな還流下に24時間保持する。これらのビーズを濾別し、水で洗浄する。第一級アミンを得るには、加水分解工程に加え、その後の塩基での処理が必要である。これらのビーズを、塩酸(30%)-エタノール(95%)溶液140mL(体積比1:3)の入った三ツ口フラスコに入れ、この反応混合物を80℃に加熱し、この温度で20時間保持する。その後、これらのビーズを濾別し、水で洗浄する。この段階でアミンがプロトン化され、塩基を遊離させるために、これらのビーズを2MのNaOH溶液50mLで処理し、80℃で1時間撹拌する。アミノ化されたこれらのビーズを濾別し、中性pHとなるまで脱塩水で洗浄する。
【0109】
実施例によるビーズを、該ビーズを充填層反応器内又は空気透過層内に収容した実験装置で試験した。実験装置を図1に概略的に示す。環境大気流入構造体1が存在し、実際の反応器ユニット8は、容器又は壁7を備え、その中に吸着材3の層が配置されている。脱着に例えば蒸気が使用される場合には、脱着用の流入構造体4が存在し、取出し用の反応器出口5が存在する。さらに、反応器排気用の真空ユニット6が存在する。
【0110】
吸着体の脱着に乾燥ガスを使用した吸着測定では、乾燥試料6gを内径40mm、高さ40mmのシリンダーに充填し、CO吸脱着装置に入れ、そこでこれを、450ppmvのCOを含む相対湿度20、40、60及び80%の30℃の空気流2.0NL/分に600分間曝した。吸着に先立ち、2.0NL/分の空気流で吸着体を94℃に加熱することにより、吸着層の脱着を行った。吸着体に吸着されたCOの量を、シリンダーから出る空気流のCO含有量を測定する赤外線センサのシグナルの積分によって決定した。
【0111】
吸着体の脱着に蒸気を使用した吸着測定では、乾燥試料15gを内径60mm、高さ60mmの角形反応器に充填し、CO吸脱着装置に入れ、そこでこれを、450ppmvのCOを含む相対湿度20、40、60及び80%の15℃の空気流11NL/分に600分間曝した。吸着に先立ち、吸着体層を200mbarabsにし、その後、蒸気3mL/分を反応器に注入して吸着体層の温度を約95℃にし、この吸着体をこの温度で6分間保持した。その後、反応器を閉鎖して圧力を200mbarabsに設定し、目標圧力に達したら反応器を大気圧まで再加圧した。吸着体に吸着されたCOの量を、反応器から出る空気流のCO含有量を測定する赤外線センサのシグナルの積分によって決定した。
【0112】
具体例:
本実施例セクションでは4つの試料を分析して比較した:1つはBET比表面積が>25m/gの高表面積の試料であり、本明細書では以下でこれを高表面積ポリマー(IER_A)と称し、そしてもう1つはBET比表面積が<25m/gの低表面積の試料であり、本明細書では以下でこれを低表面積ポリマー(IER_B)と称する。
【0113】
さらに、基本構造は同一であるが、表面積及びポロシティ分布が最適である2つの試料、すなわちIER_C及びIER_Dを分析する。
【0114】
吸着体の細孔径、細孔容積及び比表面積:
比表面積の測定方法:
窒素吸着法での測定を、Quantachrome ASiQを用いて77Kで行った。使用した試料の質量は、0.2~1.0gであった。試料は著量の水を含むため、その固有のポロシティ及び細孔構造を変化させない処理を用いることが重要である。そのため、脱気処理に先立ち、溶出列法を用いて試料を処理した。この方法は、水の除去、及び以下の順番での低沸点の有機溶媒による水の置換を含む:メタノール、アセトン及びn-ヘプタン。試料2gをフリット付きクロマトグラフィーカラムに入れ、極性の高い順に各溶媒20cmを流し込んだ。その後、試料をペトリ皿に広げ、40℃の真空オーブンに24時間入れた。その後、測定前に試料を真空下に70℃で12時間脱気した。
【0115】
ISO 9277の方法を適用したBET(Brunauer, Emmett und Teller)表面積分析を用いた。
【0116】
比表面積の測定結果を、以下の表1に示す:
【0117】
【表1】
【0118】
水銀ポロシメトリー測定:
の吸着測定では得られない細孔径及び細孔容積を分析するために、水銀ポロシメトリー測定を実施した。水銀ポロシメトリー測定を行うために、以下のパラメータを使用した:
・水銀表面張力:0.48N/m
・水銀接触角:150°
・最大圧力:400MPa
・加速:6~19MPa/分。
【0119】
Hgポロシメトリーに先立ち、試料を真空下に70℃で12時間脱気した。
【0120】
Hgポロシメトリー分析の結果を図2及び図3に示し、以下の表2にまとめた:
【0121】
【表2】
【0122】
元素分析:
LECO CHN-900燃焼炉を用いて材料の元素分析を行った。測定に先立ち、試料を乳鉢で粉砕し、N流(2L/分)下に90℃で2時間処理した。
【0123】
材料の分析結果を表3~表6にまとめた。
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
【表5】
【0127】
【表6】
【0128】
吸着測定:
乾燥試料6gを内径40mm、高さ40mmのシリンダーに充填し、CO吸脱着装置に入れ、そこでこれを、450ppmvのCOを含む、30℃の温度に対応する相対湿度60%の30℃の空気流2.0NL/分に600分間曝した。吸着に先立ち、2.0NL/分の空気流下で吸着体を94℃に加熱することにより、吸着層の脱着を行った。吸着体に吸着されたCOの量を、反応器から出る空気流のCO含有量を測定する赤外線センサのシグナルの積分によって決定した。30℃、60%RHでのCO平衡容量を図4に示す。他の吸着体が1.1~1.3mmol/gの平衡容量を示すのに対して、IER_B吸着体は最大の累積CO容量(1.7mmol/g)を示すことがわかる。平衡容量の差は、吸着体の窒素含有量の相違から明らかであるように、試料中のアミン負荷量の相違によるものである(表3~表6参照)。流入ガスのRHを20~80%の間で変化させると、図6に示すように、すべての吸着体がサイクルCO容量の線形的増加を示す。この挙動は、アミン系吸着体のRH依存性について知られていることと一致している。
【0129】
CO吸着測定の結果を表7にまとめた。
【0130】

【表7】
【0131】
サイクル吸脱着測定:
20~80%の範囲の環境大気の相対湿度で連続運転し、サイクル吸脱着容量を測定した。温流体を用いて脱着プロセスを行うことで、吸着体の温度を上昇させた。本具体例では、飽和水蒸気を使用した。吸着体層を、まず環境大気を用いて200分間吸着させた。吸着が完了したら、系の圧力を200mbarabsまで下げた。この圧力に達すると同時に、約95℃の温度に達するまで飽和蒸気を吸着体層に供給した。その後、60℃の温度に達するまで吸着体を200mbarabsにした。このサイクルを複数回繰り返し、結果を図5に示す。
【0132】
図6は同様の実験結果を示しているが、この場合、2.0NL/分の空気流で吸着体を94℃に加熱することによって脱着プロセスを行った。このサイクルを複数回繰り返した。
【0133】
吸着体の脱着に蒸気を適用し、RHが20~80%の範囲の空気を使用することにより、IER_Aの脱着容量は、サイクル吸脱着容量において一定の減少を示すが、IER_Bは、80%付近のRHで一定になるまで、サイクル吸脱着容量において一定の増加を示す。IER_C及びIER_Dのみが、測定されたRH範囲において実質的に一定の挙動を示す。
【0134】
吸着材は、総じて、二酸化炭素を可逆的に結合することができる、アミノ官能基で表面が官能基化された固体無機非高分子担体材料であって、10~25m/gの範囲のBET比表面積を有し、且つ50~350nmの範囲における累積細孔容積が0.3~1.5cm/gの範囲となるような細孔容積分布を有するものとすることもできる。
【0135】
シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、シリカ-アルミナ(SiO-Al)、チタニア(TiO)、マグネシア(MgO)、クレー、上記の混合物が可能である。
【0136】
有機高分子材料に関して、好ましくは、これらの有機又は有機非高分子担体材料に関して、水銀圧入法によって測定された全細孔容積は、0.3~0~7cm/gの範囲にあり、及び/又は、水銀圧入法によって測定された細孔径分布は、細孔容積の90%、好ましくは95%が50~300nmの範囲となるようなものである。
【0137】
このようなポロシティ特性を有するシリカマイクロスフェアの場合、これらは以下のスキームで製造することができる:
単分散コロイダルSiOを、シード成長法により調製した。アンモニア(2mol/L)と脱イオン水(6mol/L)とエタノールとの混合物に市販のLudox AS-40シリカゾル粒子のシードを添加して、懸濁液を形成した。この混合物に、反応混合物を25℃に保ちながら制御された速度で撹拌下にテトラエチルオルトシリケート(TEOS、2.2mol/L)を添加した。シードの成長によって、単分散SiO粒子が得られた。直径500nmの単分散SiOマイクロスフェアを得た後、これを700℃で2時間か焼し、次いで220℃で5時間水熱処理を行い、か焼中に失われた表面シラノール基を回復させた。
【0138】
得られたシリカ材料は、10m/gの比表面積、95nmのメジアン細孔径、Hg圧入ポロシメトリーによって決定された0.3cm/gの全細孔容積、及び500μmの平均粒子径を有する。
【0139】
このようなポロシティ特性を有するアルミナマイクロスフェアの場合、これらは、例えばSaint Gobain Nor Proから市販されている触媒担体である。表面ヒドロキシル基を持たないα-アルミナは、含浸による改質に使用可能である。
【0140】
このようなポロシティ特性を有するチタニアマイクロスフェアの場合、これらは、Saint Gobain Nor Proから市販されている触媒担体である。表面ヒドロキシル基を持たないルチル型チタニアは、含浸による改質に使用可能である。
【符号の説明】
【0141】
1 環境大気、環境大気流入構造体
2 吸着貫流モードにおける吸着ユニット後方への環境大気排出
3 吸着材
4 蒸気、脱着用の蒸気流入構造体
5 取出し用の反応器出口
6 真空ユニット/セパレータ
7 壁
8 反応器ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】