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  • 特表-剥離コーティング組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】剥離コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/04 20060101AFI20241226BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241226BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20241226BHJP
   C09D 7/42 20180101ALI20241226BHJP
   C09J 7/40 20180101ALI20241226BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/42
C09J7/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535698
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 CN2021140123
(87)【国際公開番号】W WO2023115340
(87)【国際公開日】2023-06-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(72)【発明者】
【氏名】ファン、フーミン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ウェンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シェンラン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ジホア
【テーマコード(参考)】
4J004
4J038
【Fターム(参考)】
4J004DA04
4J004DB02
4J038DL031
4J038DL042
4J038DL101
4J038GA01
4J038GA02
4J038HA446
4J038JA02
4J038KA04
4J038KA08
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA10
4J038PA19
4J038PB06
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
硬化性剥離コーティング組成物は、(A)1分子当たり2個以上のアルケニル基を有する脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、(B)硬化性剥離コーティング組成物中のケイ素結合水素原子とアルケニル基とのモル比が0.8:1~5:1となるのに十分な量の、1分子当たり2個以上のケイ素結合水素原子を有する架橋剤と、(C)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、(D)溶媒(存在する場合)を除く硬化性剥離コーティング組成物の重量に基づいて、0.01重量%~5重量%の、0.5~30マイクロメートルの平均粒径を有する、シリカ処理されたコーティングを場合により有する硬化オルガノシロキサン組成物の粒子と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性剥離コーティング組成物であって、
(A)1分子当たり2個以上のアルケニル基を有する脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、
(B)前記硬化性剥離コーティング組成物中のケイ素結合水素原子とアルケニル基とのモル比が0.8:1~5:1となるのに十分な量の、1分子当たり2個以上のケイ素結合水素原子を有する架橋剤と、
(C)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、
(D)溶媒(存在する場合)を除く硬化性剥離コーティング組成物の重量に基づいて、0.01重量%~5重量%の、0.5~30マイクロメートルの平均粒径を有する、シリカ処理されたコーティングを場合により有する硬化オルガノシロキサン組成物の粒子と、
を含む、硬化性剥離コーティング組成物。
【請求項2】
ヒドロシリル化反応抑制剤、定着添加剤、溶媒、又はこれらの混合物を更に含む、請求項1に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項3】
前記硬化オルガノシロキサン組成物の粒子が、(a)1分子当たり2個以上のアルケニル基を含有する脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、(b)1分子当たり2個以上のケイ素結合水素原子を有する架橋剤と、の反応生成物を含み、(a)が、ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、ジメチルビニルシロキシ末端メチルシルセスキオキサン、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、又はそれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項4】
存在する場合、溶媒を除く硬化性剥離コーティング組成物の重量に基づいて、0.1重量%~2重量%の前記硬化オルガノシロキサン組成物の粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項5】
前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンが、Q分岐状ポリオルガノシロキサン、シルセスキオキサン、直鎖状ポリオルガノシロキサン、又はこれらの組合せから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項6】
前記Q-分岐状ポリオルガノシロキサンが、単位式(A-I):
(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2c’(SiO4/2 (A-I)
を有し、式中、各Rは、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各Rは独立して、アルケニル基であり、下付き文字a≧0、下付き文字b>0、995≧c+c’≧15、及び下付き文字d>0であり、
前記シルセスキオキサンは、単位式(A-II):
(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2 (A-II)
を有し、式中、各Rは、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各Rは独立して、アルケニル基であり、下付き文字e≧0、下付き文字f>0、下付き文字gは15~995、下付き文字h>0であり、
前記直鎖状ポリジオルガノシロキサンが、(A-III-1)、(A-III-2)、又はこれらの組合せ:
(R SiO1/2(R SiO)(RSiO) (A-III-1)
(R SiO1/2(R SiO)(RSiO) (A-III-2)
から選択される単位式を有し、式中、各Rは、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各Rは、独立して、アルケニル基であり、下付き文字nは、5~10,000であり、下付き文字oは、単位式(A-III-1)の前記ポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて、0.01重量%~5.0重量%のアルケニル含有量を提供するのに十分な値を有し、下付き文字pは5~10,000であり、下付き文字qは、単位式(A-III-2)のポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて、0.01重量%~5.0重量%のアルケニル含有量を提供するのに十分である、
請求項5に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項7】
前記架橋剤が、単位式(B-I):
(R SiO1/2(R SiO2/2(RHSiO2/2 (B-I)
を有し、式中、各Rは、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、下付き文字k≧0、下付き文字m>0、及び量(m+k)は8~400である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項8】
前記ヒドロシリル化反応触媒が、溶媒(存在する場合)を除く前記硬化性剥離コーティング組成物の重量に基づいて、1重量ppm~1000重量ppmの白金族金属を提供するのに十分な量で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項9】
前記シリカ処理されたコーティングを有する前記硬化オルガノシロキサン組成物の前記粒子が、前記硬化オルガノシロキサン組成物の粒子の表面に固定化された非晶質シリカ微粒子を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項10】
基材の少なくとも1つの表面上に剥離コーティングを含む剥離ライナーを調製する方法であって、
場合により、前記基材の少なくとも1つの表面を処理することと、
1)前記基材の前記表面に、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化性剥離コーティング組成物を適用することと、
場合により、2)存在する場合に溶媒を除去することと、
3)前記組成物を硬化させて、前記基材の前記表面上に剥離コーティングを形成することと、
を含む、方法。
【請求項11】
基材と、前記基材の少なくとも1つの表面上に存在する剥離コーティングとを含む剥離ライナーであって、前記剥離コーティングが、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化性剥離コーティング組成物を硬化させることによって形成される、剥離ライナー。
【請求項12】
ASTM D1003に従って測定して、3.5未満のヘイズ値を有する、請求項11に記載の剥離ライナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性剥離コーティング組成物、及び剥離コーティング組成物をプラスチックフィルム又は紙などの基材に適用し、熱付加によって剥離コーティング組成物を硬化させることによって調製される剥離ライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
(序論)
シリコーン剥離コーティングは、比較的非接着性の表面が必要とされる用途において有用である。感圧接着ラベルの裏紙又はフィルムなどの片面ライナーは、通常、ラベルの接着性に影響を及ぼさずにラベルを一時的に保持するように適合される。両面テープ及び転写テープ用の合紙又はフィルムなどの両面ライナーは、粘着テープを保護するために使用される。これらのライナーは、一般に、長いシート状に製造され、次いで、輸送及び保管を容易にするために巻き上げられる。従来のシリコーン剥離コーティング組成物は、典型的には1平方メートル当たり>1.0グラムのコート重量で接着剤に対して超低剥離力(例えば、1インチ当たり<5.0グラム)を達成することができるが、保管中に隣接する層が連続ライナーロール間で一緒に粘着することが多いブロッキング問題に悩まされる。シリコーン剥離コーティング組成物へのシリカ粒子の組み込みは、基材上にコーティングする際のブロッキングを防止することができるが、得られる剥離コーティングを濁って見えるようにすることが多く、これは、テープ剥離、ラベル剥離、及び接着剤転写フィルムのためのシリコーン剥離コーティングの使用を制限する。特に、多くの電子デバイス用途は、透明な剥離コーティングを必要とする。剥離コーティングは、生産効率を増加させ、大きなロールに巻き上げられる得られた剥離ライナーの保管、包装及び/又は輸送中に互いに接触して積層又は配置される2つのコーティングされた表面を分離する際の潜在的なコーティング損傷を回避するために、アンチブロッキング特性を有することが望ましい。
【0003】
その後の接着強度を含む他の特性を維持しながら、透明な外観及びアンチブロッキング特性を有する上記の低剥離力を有する剥離コーティングを提供することができる剥離コーティング組成物を特定する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、透明な外観及びアンチブロッキング特性を有する接着剤に対して低い剥離力を有する硬化剥離コーティングに硬化することができる硬化性剥離コーティング組成物を提供する。本発明の剥離コーティング組成物は、脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン、架橋剤、及びヒドロシリル化反応触媒と、特定量の硬化オルガノシロキサン組成物の粒子と、場合によりシリカ処理されたコーティングとの新規な組合せを含む。剥離コーティング組成物を基材の少なくとも1つの表面上にコーティングし、ヒドロシリル化反応により硬化させて、剥離ライナーを調製することができる。
【0005】
第1の態様では、本発明は、硬化性剥離コーティング組成物であって、
(A)1分子当たり2個以上のアルケニル基を有する脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、
(B)硬化性剥離コーティング組成物中のケイ素結合水素原子とアルケニル基とのモル比が0.8:1~5:1となるのに十分な量の、1分子当たり2個以上のケイ素結合水素原子を有する架橋剤と、
(C)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、
(D)溶媒(存在する場合)を除く硬化性剥離コーティング組成物の重量に基づいて、0.01重量%~5重量%の、0.5~30マイクロメートルの平均粒径を有する、シリカ処理されたコーティングを場合により有する硬化オルガノシロキサン組成物の粒子と、
を含む、硬化性剥離コーティング組成物である。
【0006】
第2の態様では、本発明は、基材の少なくとも1つの表面上に剥離コーティングを含む剥離ライナーを調製する方法であって、
場合により、基材の少なくとも1つの表面を処理することと、
1)第1の態様の硬化性剥離コーティング組成物を基材の表面に適用することと、場合により、2)存在する場合、溶媒を除去することと、
3)組成物を硬化させて、基材の表面上に剥離コーティングを形成することと、
を含む、方法である。
【0007】
第3の態様において、本発明は、基材と、基材の少なくとも1つの表面上に存在する剥離コーティングとを含む剥離ライナーであって、剥離コーティングが、第1の態様の硬化性剥離コーティング組成物を硬化させることによって形成される、剥離ライナーである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】剥離ライナー100の部分断面図を示す。剥離ライナーは、フィルム基材103の第1の表面102上に本発明の硬化性剥離組成物を硬化させることによって調製された剥離コーティング101を含む。剥離ライナー100は、フィルム基材103の反対側の表面105に設けられた支持体104を更に含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
試験方法は、日付が試験方法の番号と共に示されていない場合、本文書の優先日に直近の試験方法を指す。試験方法への言及は、試験の協会及び試験方法番号への参照の両方を含む。本明細書では、以下の試験方法の略語及び識別子を適用する。ASTMは、ASTMインターナショナル試験法(ASTM International methods)を指す。
【0010】
商品名で識別される製品は、本文書の優先日においてそれらの商品名で入手可能な組成物を指す。
【0011】
「及び/又は」とは、「及び、又は代替として」を意味する。全ての範囲は、特に指示がない限り、終点を含む。
【0012】
ポリシロキサンの「粘度」は、スピンドルLV1を備えたBrookfield DV2T粘度計によって25セルシウス温度(℃)で測定される。
【0013】
標準H、13C、及び29Si核磁気共鳴(nuclear magnetic resonance、NMR)分析により、ポリシロキサンの化学構造を決定する。
【0014】
本明細書において「アルキル」とは、環状、分岐又は非分岐の飽和一価炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソプロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、6個以上の炭素原子の分岐アルキル基、並びにシクロペンチル及びシクロヘキシルなどの環状アルキル基が挙げられる。
【0015】
本明細書において「アリール」とは、環状の完全に不飽和の炭化水素基を意味する。アリールとしては、シクロペンタジエニル、フェニル、アントラセニル、及びナフチルによって例示されるが、これらに限定されない。単環式アリール基は、5~9個の炭素原子、6~7個の炭素原子、又は5~6個の炭素原子を有してもよい。多環式アリール基は、10~17個の炭素原子、10~14個の炭素原子、又は12~14個の炭素原子を有してもよい。
【0016】
本明細書において「アラルキル」とは、ペンダント及び/又は末端アリール基を有するアルキル基、又はペンダントアルキル基を有するアリール基を意味する。例示的なアラルキル基としては、トリル、キシリル、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル及びフェニルブチルが挙げられる。
【0017】
本明細書において「アルケニル」とは、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する分岐又は非分岐の一価炭化水素基を意味する。
【0018】
本発明の硬化性剥離コーティング組成物は、(A)1分子当たり2個以上のアルケニル基を有する1つ以上の脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンを含む。脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン(A)は、(A-1)Q-分岐状ポリオルガノシロキサン、(A-2)シルセスキオキサン、(A-3)直鎖状ポリオルガノシロキサン、又は(A-1)、(A-2)、及び(A-3)のうちの2つ以上の組合せから選択することができる。
【0019】
本発明で有用なQ分岐状ポリオルガノシロキサン(A-1)は、単位式(A-I):
(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2c’(SiO4/2 (A-I)、
を有し得、式中、各Rは、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各Rは独立して、アルケニル基であり、下付き文字a≧0、下付き文字b>0、995≧c+c’≧15、及び下付き文字d>0である。
【0020】
の一価炭化水素基は、1~6個の炭素原子のアルキル基、6~10個の炭素原子のアリール基、1~6個の炭素原子のハロゲン化アルキル基、又は6~10個の炭素原子のハロゲン化アリール基によって例示される。Rに適したアルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソ-プロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、並びに6個の炭素原子の分岐飽和炭化水素基を含み得る。Rに好適なアリール基の例は、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ベンジル、及びジメチルフェニルによって例示される。Rに好適なハロゲン化アルキル基は、1つ以上の水素原子がF又はClなどのハロゲン原子で置換された上述のアルキル基によって例示されるが、これらに限定されない。例えば、フルオロメチル、2-フルオロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4-トリフルオロブチル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブチル、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロヘキシル、及び8,8,8,7,7-ペンタフルオロオクチル、2,2-ジフルオロシクロプロピル、2,3-ジフルオロシクロブチル、3,4-ジフルオロシクロヘキシル、及び3,4-ジフルオロ-5-メチルシクロヘプチル、クロロメチル、クロロプロピル、2-ジクロロシクロプロピル、及び2,3-ジクロロシクロペンチルは、好適なハロゲン化アルキル基の例である。Rに好適なハロゲン化アリール基は、1個以上の水素原子がF又はClなどのハロゲン原子で置換された上述のアリール基によって例示されるが、これらに限定されない。例えば、クロロベンジル及びフルオロベンジルは、好適なハロゲン化アリール基である。各Rは、同じであっても異なっていてもよい。各Rはアルキル基であり得る。望ましくは、各Rは独立してメチル、エチル、又はプロピルであり、より望ましくは各Rはメチルである。
【0021】
のアルケニル基はヒドロシリル化反応することができる。Rで表されるアルケニル基は、典型的には、2~8個の炭素原子、2~6個の炭素原子、又は2~4個の炭素原子を有する。Rに適したアルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル、及びヘキセニルなどによって例示される。各Rは、同じであっても異なっていてもよい。望ましくは、各Rはビニル又はヘキセニルから選択される。各Rはビニル基であり得る。
【0022】
単位式(A-I)において、下付き文字aは、0以上(≧0)であり得、一般に22以下であり、20以下、15以下、10以下、又は更には5以下であり得る。下付き文字bは、0より大きく(>0)、>1、又は2以上、3以上、又は更には4以上であり得、同時に、一般的に22以下であり、20以下、15以下、又は更には10以下であり得る。下付き文字cは、15~995の範囲であり得、15以上、50以上、又は更には100以上であり得、同時に、一般に995以下であり、800以下、又は更には400以下であり得る。下付き文字c’は、0以上であり得、1以上、5以上、又は更には10以上であり得、同時に、一般に995以下であり、800以下、又は更には400以下であり得る。下付き文字dは、0より大きく(>0)、1以上であり得、同時に、一般的に10以下、5以下、又は更には1以下である。望ましくは、下付き文字dは1又は2である。下付き文字d=1である場合、下付き文字aは0であり得、下付き文字bは4であり得る。
【0023】
上記の単位式(A-I)中の下付き文字は、0.1%以上のQ分岐状ポリオルガノシロキサン(A-1)のビニル含有量を提供するのに十分な値を有し得、0.15%以上、又は更には0.2%以上であり得、同時に、Q分岐状ポリオルガノシロキサン(A-1)の重量に基づいて、重量で、一般に5.0%以下、2.0%以下、1.5%以下、1.0%以下、又は更には0.8%以下である。
【0024】
Q分岐状ポリオルガノシロキサン(A-1)は、少なくとも2本の式(R SiO2/2のポリジオルガノシロキサン鎖を含み、ここで式中の各下付き文字yは独立して2~100である。あるいは、分岐状シロキサンは、4本の式(R SiO2/2のポリジオルガノシロキサン鎖に結合した式(SiO4/2)の単位を少なくとも1つ含んでもよく、ここで式中の各下付き文字zは独立して1~100である。
【0025】
Q分岐状ポリオルガノシロキサン(A-1)は、分子量、構造、シロキサン単位及び配列から選択される1つ以上の特性が異なり得る、1つのQ分岐状ポリオルガノシロキサン又は単位式(A-I)の2つ以上のQ分岐状ポリオルガノシロキサンの組合せであり得る。適切なQ分岐状ポリオルガノシロキサンとしては、米国特許第6,806,339号に開示されているものが挙げられ得る。
【0026】
本発明で有用なシルセスキオキサン(A-2)は、単位式(A-II):
(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2 (A-II)、
を有し得、式中、R及びRは単位式(A-I)において上述した通りであり、下付き文字e≧0、下付き文字f>0、下付き文字gは15から995であり、下付き文字h>0である。望ましくは、各Rはメチルである。望ましくは、Rはビニルである。
【0027】
下付き文字eは、0以上であり得、1以上、2以上、又は更には3以上であり得、同時に、一般に12以下であり、10以下、7以下、5以下、又は更には3以下であり得る。下付き文字fは、0より大きくてもよく(>0)、1以上、又は1より大きくてもよく、同時に、一般に12以下であり、10以下、7以下、5以下、3以下、又は2以下であり得る。下付き文字gは、15以上であり得、20以上、50以上、又は更には100以上であり得、同時に、一般に995以下であり、800以下、400以下、又は更には200以下であり得る。下付き文字hは、0より大きくてもよく(>0)、1以上、又は更には2以上であり得、同時に、一般に10以下、8以下、5以下、2以下、又は更には1以下である。下付き文字h=1の場合、下付き文字fは3であり得、下付き文字eは0であり得る。
【0028】
下付き文字fの値は、アルケニル含有量が0.1%以上の単位式(A-II)のシルセスキオキサンを提供するのに十分であり得、シルセスキオキサン(A-2)の重量に基づいて、重量で、0.15%以上、0.2%以上、又は更には0.24%以上であり得、同時に、一般に1%以下であり、0.8%以下、又は更には0.6%以下であり得る。
【0029】
シルセスキオキサンは、分子量、構造、シロキサン単位及び配列から選択される1つ以上の特性が異なっていてもよい、1つのシルセスキオキサン又は単位式(A-II)の2つ以上のシルセスキオキサンの組合せであってもよい。適切なシルセスキオキサン(A-2)としては、米国特許第4,374,967号に開示されているものが挙げられ得る。
【0030】
本発明で有用な直鎖状ポリジオルガノシロキサン(A-3)は、末端位置、ペンダント位置、又は末端位置とペンダント位置の両方に位置し得るアルケニル基を有し得る。望ましくは、ポリジオルガノシロキサンは、1分子当たり平均1個以上の末端アルケニル基を有する。ポリジオルガノシロキサン(A-3)は、(A-III-1)、(A-III-2)、又はそれらの組合せ:
(R SiO1/2(R SiO)(RSiO) (A-III-1)、
(R SiO1/2(R SiO)(RSiO) (A-III-2)、
から選択される単位式を有する1つ以上のポリシロキサンを含み得、式中、R及びRは、単位式(A-I)において上述されており、下付き文字nは、5~10,000であり、下付き文字oは、単位式(A-III-1)のポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて、重量で、0.01%~5.0%、0.05%~2.0%、0.10%~1.5%、0.2%~1.0%のアルケニル含有量を提供するのに十分な値を有する。下付き文字pは5~10,000であり、下付き文字qは、単位式(A-III-2)のポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて、重量で、0.01%~5.0%のアルケニル含有量を提供するのに十分であり、0.01%以上、0.05%以上、0.10%以上、又は更には0.2%以上であり得、同時に、一般的に5.0%以下であり、2.0%以下、1.5%以下、又は更には1.0%以下であり得る。
【0031】
ポリジオルガノシロキサン(A-3)は、分子量、構造、シロキサン単位及び配列から選択される1つ以上の特性が異なり得る1つのポリジオルガノシロキサン又は2つ以上のポリジオルガノシロキサンの組合せを含み得る。ポリジオルガノシロキサン(A-3)は、以下のポリジオルガノシロキサンのいずれか1つ又は2つ以上の任意の組合せを含んでもよい。
i)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
ii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
iii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
iv)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
v)トリメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、
vi)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、
vii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、
viii)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、
ix)フェニル,メチル,ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
x)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、
xi)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xii)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン、
xiii)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、
xiv)トリメチルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン、
xv)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、及び
xvi)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)。
【0032】
本発明の硬化性剥離コーティング組成物はまた、(B)1分子当たり2個以上、又は更には3個以上のケイ素結合水素(SiH)原子を有する1つ以上の架橋剤(「SiH架橋剤」とも呼ばれる)を含む。SiH架橋剤は、SiHとしての水素原子(H)の濃度(すなわち、ケイ素結合水素原子の濃度)が0.1%以上であってもよく、SiH架橋剤の重量に基づいて、重量で、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、又は更には0.9%以上であってもよく、同時に一般に1.0%以下であり、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、又は更には0.3%以下であってもよい。ケイ素結合水素原子の含有量は、NMR分析によって決定され得る。
【0033】
SiH架橋剤は、単位式(B-I):
(R SiO1/2(R SiO2/2(RHSiO2/2 (B-I)、
のポリオルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤であり得、式中、Rは、単位式(A-I)において上述した通りであり、下付き文字k≧0であり、下付き文字m>0であり、量(m+k)は8~400である。下付き文字m及びkは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤が、25℃で5~1,000ミリパスカル秒(mPa・s)、25℃で10~350mPa・s、又は25℃で20~100mPa・sの粘度を有するように選択される値を有し得る。好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤としては、例えば、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、又はこれらの混合物を挙げることができる。架橋剤は、1つのポリオルガノハイドロジェンシロキサン架橋剤であり得、又は分子量、構造、シロキサン単位及び配列から選択される1つ以上の特性が異なり得る2つ以上の架橋剤の組合せであってもよい。好適な市販のSiH架橋剤としては、全てGelestから入手可能なHMS-071、HMS-301及びDMS-H11の名称で入手可能なものが挙げられる。
【0034】
脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン(A)及びSiH架橋剤の相対濃度は、硬化性剥離コーティング組成物中の架橋剤からのケイ素結合水素原子とアルケニル基(例えば、脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン(A)中のアルケニル基)とのモル比(SiH/Vi比)が0.8:1~5:1の範囲であり、0.8:1以上、0.9:1以上、1.0:1以上、1.1:1以上、1.2:1以上、1.3:1以上、1.4:1以上、1.5:1以上、又は更には1.6:1以上であり得、同時に、一般的に5:1であり、4:1以下、3:1以下、2:1以下、1.9:1以下、1.8:1以下、1.7:1以下、又は更には1.6:1以下であり得るような濃度である。
【0035】
典型的には、SiH架橋剤は、硬化性剥離コーティング組成物中のアルケニル基を含有する成分の総重量に基づいて、重量で、0.1%以上の濃度で存在し、1%以上、1.5%以上、1.8%以上、又は更には2%以上であり得、同時に、一般に5%以下であり、4%以下、3%以下、又は更には2.5%以下であり得る。
【0036】
本発明の硬化性剥離コーティング組成物は、(C)1つ以上のヒドロシリル化反応触媒を含む。ヒドロシリル化反応触媒としては、白金族金属触媒を挙げることができる。このようなヒドロシリル化反応触媒は、(C1)白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウム、好ましくは白金から選択される金属、(C2)例えば、クロリドトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)(ウィルキンソン触媒)、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム又は[1,2-ビス(ジエチルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウムなどのロジウムジホスフィンキレート、塩化白金酸(Speier触媒)、塩化白金酸六水和物又は白金二塩化物を含むこのような金属の化合物、(C3)金属化合物(C2)とオルガノポリシロキサンとの錯体、例えば白金(Karstedt触媒)との1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体を含み得る。ヒドロシリル化触媒は、カプセル化(典型的には、フェニル樹脂中で)又は非カプセル化であり得る。例示的なヒドロシリル化反応触媒は、米国特許第3,159,601号及び同第3,220,972号に記載されている。
【0037】
ヒドロシリル化反応触媒の量は、触媒量で、すなわち、硬化性剥離コーティング組成物中のケイ素結合水素原子及びアルケニル基のヒドロシリル化反応を触媒するのに十分な量で使用される。典型的には、ヒドロシリル化反応触媒の濃度は、溶媒(存在する場合)を除く硬化性剥離コーティング組成物の重量(例えば、上記の成分(A)、(B)及び(C)、並びに下記の(D)、並びに(存在する場合)下記の任意選択の成分(E)、(F)、及び(H)の総重量)に基づいて、重量で、1百万分率(ppm)以上、5ppm以上、10ppm以上、20ppm以上、又は更には30ppm以上であり、同時に、一般に1,000ppm以下、500ppm以下、300ppm以下、130ppm以下、又は更には100ppm以下を提供するのに十分である白金族金属である。
【0038】
本発明の硬化性剥離コーティング組成物は、(D)硬化オルガノシロキサン組成物の粒子(「硬化オルガノシロキサン粒子」とも呼ばれる)を、場合によりシリカ処理されたコーティングと共に含む。硬化オルガノシロキサン組成物の粒子の形状は、球状、平坦又は非晶質であってもよい。球形状が好ましい。硬化オルガノシロキサン組成物の粒子は、Malvern Mastersizer Hydro 2000SMを使用して測定して、0.5マイクロメートル(μm)以上の平均粒径を有してもよく、1μm以上、2μm以上、又は更には3μm以上であり得、同時に、一般に30μm以下であり、25μm以下、20μm以下、15μm以下、14μm以下、13μm以下、12μm以下、10μm以下、9μm以下、8μm以下、又は更には6μm以下であり得る(更なる詳細は、以下の硬化オルガノシロキサン組成物の粒径の下に提供される)。
【0039】
硬化オルガノシロキサン組成物の粒子は、シリカ処理されたコーティングを有していてもよく、又は有していなくてもよい。「シリカ処理されたコーティング」を有するか又はそれによる粒子は、シリカ微粒子が硬化オルガノシロキサン組成物の粒子の表面に存在し、典型的には固定されるように、これらの粒子がシリカで処理又はコーティングされていることを意味する。望ましくは、シリカ処理されたコーティングを有する硬化オルガノシロキサン組成物の粒子は、硬化オルガノシロキサン組成物の粒子の表面に固定化された非晶質シリカ微粒子を含む。非晶質シリカ微粒子は、Malvern Mastersizer Hydro 2000SM(非晶質シリカ微粒子の粒径の下で更なる詳細が提供される)によって決定されるように、1μm以下の平均粒径を有してもよく、0.5μm以下、0.1μm以下、0.05μm以下、0.02μm以下、又は更には0.01μm以下であってもよい。非晶質シリカ微粒子は、2.0基/平方ナノメートル(nm)以上の表面シラノール基密度を示してもよく、2.2基/nm以上、2.5基/nm以上、3.0基/nm以上、3.5基/nm以上、4.0基/nm以上、又は更には4.2基/nm以上であってもよい。シリカ処理されたコーティングのシリカ表面のシラノール群密度はBET比表面積から算出し、シラノール基含有量は、シリカ処理されたコーティングを120℃で3時間、少なくとも2キロパスカル(15mmHg)の真空下で乾燥し、水素化リチウムアルミニウムと反応させた後に発生した水素量から算出する。非晶質シリカ微粒子は、ASTM D1993に従ってMicromeritics Accelerated Surface Area&Porosimetry instrument(ASAP2420)を使用して、50平方メートル/グラム(m/g)以上のBET比表面積を有し得、80m/g以上、100m/g以上、150m/g以上、又は更には200m/g以上であり得る。シリカ処理されたコーティングの濃度は、硬化オルガノシロキサン組成物の粒子及び存在する場合にはシリカ処理されたコーティングの総重量に基づいて、重量で、0以上であり得、0.05%以上、0.1%以上、0.5%以上、又は更には1.0%以上であり得、同時に、一般に5%以下であり、4%以下、3%以下、又は更には1%以下であり得る。
【0040】
(D)硬化オルガノシロキサン組成物の粒子の調製プロセスは当技術分野で公知であり、典型的には、(i)硬化性オルガノシロキサン組成物の水系分散液を調製することと、(ii)硬化オルガノシロキサン粒子の水系分散液を製造するために組成物を硬化させることと、(iii-1)最終的に、望ましくは加熱によって水系分散液から水を除去することと、を含む。シリカ処理されたコーティングを有する硬化オルガノシロキサン粒子の調製において、プロセスは、上記の工程(i)及び(ii)、次いで(iii-2)工程(ii)から得られた硬化オルガノシロキサン粒子の水系分散液を非晶質シリカ微粒子又は非晶質シリカ微粒子の水系分散液と混合し、それにより硬化オルガノシロキサン粒子と非晶質シリカ微粒子との水系混合物を形成する工程と、(iv)工程(iii-2)から得られた混合物をラビング統合に供する工程と、又は工程(iii-2)から得られた混合物を加熱し、その後、水を除去する工程と、を含み得る。水性分散液又は混合物の加熱は、40~95℃又は60~90℃の温度範囲で行うことができ、これは、存在する場合、工程(iv)において、シリカの表面上のシラノール基と、硬化オルガノシロキサン粒子の表面上に位置するシラノール、ケイ素結合水素、及びケイ素結合アルコキシなどの官能基との水中での相互作用によって、シリカの粒子を硬化オルガノシロキサン粒子の表面上に固定化させることができる。(D)として好適な硬化オルガノシロキサン物質の例及びそれらの調製方法は、例えば、欧州特許第0685508(B1)号及び欧州特許第0647672(B1)号に開示されている。
【0041】
上記の工程(i)における硬化性オルガノシロキサン組成物の水性分散液を調製するための1つの一般的な方法は、硬化性オルガノシロキサン組成物を水又は界面活性剤水溶液に分散させ、次いで、ホモジナイザー又はコロイドミル、又は超音波振動子などの混合装置などの適切な装置の作用によってそこから均一な分散液を生成することを含む。硬化オルガノシロキサン粒子の調製に好適な硬化性オルガノシロキサン組成物としては、付加反応硬化性オルガノシロキサン組成物、縮合反応硬化性オルガノシロキサン組成物、オルガノペルオキシド硬化性オルガノシロキサン組成物、及び紫外線(UV)硬化性オルガノシロキサン組成物が挙げられる。
【0042】
付加反応硬化性オルガノシロキサン組成物の材料としては、(a)上記硬化性剥離コーティング組成物の(A)に記載のものを含む、1分子当たり2個以上のアルケニル基を含有する脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン、(b)上記硬化性剥離コーティング組成物の(B)に記載のものを含む、1分子当たり2個以上のケイ素結合水素原子を有する架橋剤、及び(c)上記硬化性剥離コーティング組成物の(C)に記載のものを含む、ヒドロシリル化反応触媒、望ましくは白金触媒を挙げることができる。得られた硬化オルガノシロキサン粒子は、(a)と(b)との反応生成物を含む。望ましくは、硬化性オルガノシロキサン組成物中の材料(a)は、1つ以上の直鎖状ポリジオルガノシロキサン(A-3)を含む。(a)材料の例としては、ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、ジメチルビニルシロキシ末端メチルシルセスキオキサン、ビニル末端ポリジメチルシロキサン又はこれらの混合物が挙げられる。望ましくは、硬化性オルガノシロキサン組成物中の材料(b)は、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、水素末端ポリジメチルシロキサン、水素末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、水素末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、又はこれらの混合物から選択される。より望ましくは、硬化オルガノシロキサン粒子は、ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)とジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)との反応生成物、ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)とジメチルビニルシロキシ末端メチルシルセスキオキサン及びビニル末端ジメチルシロキサンとの反応生成物、ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)とジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)との反応生成物、又はこれらの混合物を含む。
【0043】
本発明の硬化性剥離コーティング組成物は、(D)場合によりシリカ処理されたコーティングを有する硬化オルガノシロキサン組成物の粒子を、存在する場合には溶媒を除く硬化性剥離コーティング組成物の重量に基づいて、重量で、0.1%以上の濃度で含み得、0.15%以上、0.2%以上、0.25%以上、0.3%以上、0.35%以上、0.4%以上、0.45%以上、又は更には0.5%以上であり得、同時に一般に5%以下であり、4.5%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下、2.5%以下、2%以下、1.8%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1%以下、0.8%以下、又は更には0.5%以下であり得る。
【0044】
本発明の硬化性剥離コーティング組成物は、(E)1つ以上のヒドロシリル化反応抑制剤(「抑制剤」とも呼ばれる)を含むか、又は含まなくてもよく、これは、同じ組成物であるが抑制剤を省いた場合の反応速度と比較して、組成物中のケイ素結合水素原子及びアルケニル基の反応速度を変化させるのに有用である。好適な抑制剤の例としては、アセチレンアルコール、例えば、2-メチル-3-ブチン-2-オール、ジメチルヘキシノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH);シクロアルケニルシロキサン、例えば、メチルビニルシクロシロキサン、例えば、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、及び1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン:3-メチル-3-ペンテン-1-イン、及び3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-インなどのエンイン化合物;ベンゾトリアゾールなどのトリアゾール;ホスフィン;メルカプタン;ヒドラジン;アミン、例えば、テトラメチルエチレンジアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロピン、n-メチルプロパルギルアミン、プロパルギルアミン、及び1-エチニルシクロヘキシルアミン;フマル酸ジエチルなどのフマル酸ジアルキル、フマル酸ジアリルなどのフマル酸ジアルケニル、フマル酸ジアルコキシアルキルを含むフマラート;マレアート、例えば、マレイン酸ジアリル及びマレイン酸ジエチル;ニトリル;エーテル;又はこれらの混合物であり得る。
【0045】
本発明において有用な抑制剤は、存在する場合には溶媒を除く剥離コーティング組成物の重量に基づいて、重量で、0以上の濃度で存在し得、0.001%以上、0.0025%以上、又は更には0.01%以上であり得、同時に、一般に5%以下であり、1%以下、0.5%以下、又は更には0.25%以下であり得る。
【0046】
本発明の硬化性剥離コーティング組成物は、(F)1つ以上の定着添加剤を含んでもよく、又は含まなくてもよい。適切な定着添加剤としては、例えば、ビニルアルコキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;ビニルアセトキシシランとエポキシ官能性アルコキシシランとの反応生成物;1分子当たり少なくとも1つの脂肪族不飽和炭化水素基及び少なくとも1つの加水分解性基を有するポリオルガノシロキサンと、エポキシ官能性アルコキシシランとのブレンド及び/又は反応生成物(例えば、ヒドロキシ末端ビニル官能性ポリジメチルシロキサンとグリシドキシプロピルトリメトキシシランとのブレンド又は反応生成物)が挙げられ得る。好適なエポキシ官能性アルコキシシランの例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン、又はそれらの混合物が挙げられる。好適な定着添加剤及びそれらの調製方法は、例えば、米国特許出願公開第2003/0088042号、同第2004/0254274号、及び同第2005/0038188号、並びに欧州特許第0556023号に開示されている。好適な市販の定着添加剤としては、例えば、全てDow Silicones Corporation(Midland、Michigan、USA)から入手可能なSYL-OFF(商標)297、SYL-OFF(商標)397、及びSYL-OFF(商標)SL9250を挙げることができる(SYL-OFFはDow Silicones Corporationの商標である)。
【0047】
本発明で有用な定着添加剤は、存在する場合、溶媒を除く硬化性剥離コーティング組成物の重量に基づいて、重量で、0以上の濃度で存在し得、0.01%以上、0.05%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、又は更には0.5%以上であり得、同時に、一般に5%以下であり、4%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、又は更には1%以下であり得る。
【0048】
本発明の硬化性剥離コーティング組成物は、(G)1つ以上の溶媒を含んでもよく、又は含まなくてもよい。適切な溶媒には、例えば、ポリアルキルシロキサン、アルコール、ケトン、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、グリコールエーテル、テトラヒドロフラン、ミネラルスピリット、ナフサ、テトラヒドロフラン、ミネラルスピリット、ナフサ、又はそれらの混合物が含まれ得る。溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、又はn-プロパノールなどのアルコールを含む1つ以上の有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンなどのケトン、ベンゼン、トルエン、又はキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘプタン、ヘキサン若しくはオクタンなどの脂肪族炭化水素、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、又はエチレングリコールn-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のグリコールエーテル;ミネラルスピリット、ナフサ、又はこれらの組合せを含み得る。望ましくは、溶媒はヘプタンである。
【0049】
溶媒は、硬化性剥離コーティング組成物の重量に基づいて、重量で、0以上、2%以上、20%以上、又は更には50%以上濃度で存在し得、同時に、一般に99%以下であり、50%以下、20%以下、又は更には2%以下であり得る。溶媒は、例えば、上記の剥離コーティング組成物中の1つ以上の成分の混合及び送達を助けるために、剥離コーティング組成物の調製中に添加され得る。例えば、ヒドロシリル化触媒は、溶媒中で送達され得る。溶媒の全て又は一部分は、場合により、剥離コーティング組成物の調製後に除去することができる。
【0050】
本発明の硬化性剥離コーティング組成物は、ASTM D4464-15に従ってMalvern Mastersizer Hydro 2000SMを使用して測定した場合、3μm~15μmの平均粒径を有する(H)有機修飾官能性シリカ粒子を含むか、又は含まなくてもよい。有機修飾シリカ粒子は、90%を超える多孔度を有する高多孔度シリカ粒子であり得る。官能性シリカ粒子は、その表面に、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルビニルシリル及びジメチルフェニルシリルなどの1つ以上の有機官能基を有する。成分(H)の製造方法は限定されず、例えば、米国特許第7,470,725号には、a)シリル化剤によってシリカエアロゲルの表面を改質する工程と、b)工程a)で得られた表面改質ゲルを乾燥させる工程と、を含む方法が記載されている。このような有機修飾機能性シリカ粒子は、The Dow Chemical CompanyからDOWSIL(商標)VM-2270 Aerogel Fine Particlesとして市販されている(DOWSILはThe Dow Chemical Companyの登録商標である)。有機修飾官能性シリカ粒子は、溶媒(存在する場合)を除く硬化性剥離コーティング組成物の重量で、5%以下、0.5%以下、0.1%以下、又は更には0%の濃度で存在してもよい。剥離コーティングの透明度を更に改善するために、硬化性剥離コーティング組成物は、有機修飾官能性シリカ粒子が実質的に存在しないことが望ましい。「有機修飾官能性シリカ粒子が実質的に存在しない」とは、存在する場合には溶媒を除く硬化性剥離コーティング組成物の重量に基づいて、重量で、0.1%未満、0.05%未満、0.01%未満、0.005%未満、又は更には0%を指す。
【0051】
本発明の硬化性剥離コーティング組成物は、脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサン(A)、架橋剤(B)、ヒドロシリル化反応触媒(C)及び硬化オルガノシロキサン組成物(D)の粒子、及び場合により、ヒドロシリル化反応抑制剤(E)、定着添加剤(F)及び/又は溶媒(G)を混合することによって調製し得る。硬化性剥離コーティング組成物は、1つの部分の組成物として、又は複数の部分の組成物として調製することができ、架橋剤及び触媒は、使用時に(例えば、基材への適用の直前に)それらの部分が組み合わされるまで別々の部分で貯蔵される。
【0052】
本発明の硬化性剥離コーティング組成物は、硬化性剥離コーティング組成物の硬化生成物を含む剥離コーティング、すなわち硬化性剥離コーティング組成物を硬化して形成される剥離コーティングの形成に用いるのに適している。優れた透明外観及びアンチブロッキング性、並びに望ましい低剥離力及び高い持続接着強度を有する剥離コーティングは、それらを、特に透明度が所望される場合、電子デバイス用途、例えば、テープ剥離用のタッチパネル、ラベル剥離及び/又は接着転写フィルムなどの電子デバイス用途に使用されるシリコーン感圧接着剤用の剥離ライナーでの使用に適したものにする。本発明はまた、基材と、基材の少なくとも1つの表面上に存在する剥離コーティング組成物を硬化させることによって(例えば、ヒドロシリル化反応を介して)形成される剥離コーティングと、を含む剥離ラインに関する。
【0053】
本発明はまた、剥離ライナーを調製する方法であって、フィルムなどの基材の少なくとも1つの表面に硬化性剥離コーティング組成物を適用すること、及び硬化性剥離コーティング組成物を硬化させて基材の表面に剥離コーティング(「硬化剥離コーティング」とも呼ばれる)を形成し、それによって剥離ライナーを形成することを含む方法に関する。剥離ライナーは、基材と、基材の少なくとも1つの表面上の剥離コーティングとを含む。硬化性剥離コーティング組成物は、基材の両面に適用することができる。硬化性剥離コーティング組成物は、噴霧、ドクターブレード、浸漬、スクリーン印刷などの任意の好都合な手段によって、又はロールコーター、例えばオフセットウェブコーター、キスコーター、エッチドシリンダーコーター若しくはマルチロールコーターによって基材に適用することができる。硬化性剥離コーティング組成物は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリスチレンフィルムなどのポリエステルを含むポリマーフィルムを含む任意の基板、典型的にはシート状基材;ポリエチレン、グラシン、スーパーカレンダー紙、又は粘土コーティングクラフトでコーティングされた紙などのプラスチックコーティング紙を含む紙基材;アルミニウム箔等の金属箔に適用することができる。望ましくは、基材はPETフィルムであり得る。望ましくは、硬化性剥離コーティング組成物は、マルチプルロールコーターを用いてシート状基材の少なくとも1つの表面に適用される。
【0054】
剥離ライナーを調製する方法は、場合により、硬化性剥離コーティング組成物を適用する前に基材の表面を処理することを更に含んでもよい。基材の処理は、硬化性剥離コーティング組成物をコーティングする前に、プライマーを適用すること、又は基材にコロナ放電処理、エッチング若しくはプラズマ処理を施すことなどの任意の好都合な手段によって実施され得る。
【0055】
剥離ライナーを調製する方法は、場合により、硬化性剥離コーティング組成物の硬化前又は硬化中に、存在する場合には溶媒を除去することを更に含み得、これは、溶媒の全部又は一部を除去するのに十分な時間、50℃~100℃で加熱するなどの任意の従来の手段によって行われ得る。剥離ライナーを調製する方法は、硬化性剥離コーティング組成物を硬化させて、基材の表面に剥離コーティングを形成することを更に含み得る。硬化は、使用されるコーティングラインに応じた温度、典型的には100~240℃、110~160℃、又は120~150℃の範囲の温度で、剥離コーティング組成物を硬化させるのに十分な時間加熱するなどの任意の従来の手段によって実施され得る。例えば、硬化は、オーブン内でのオフラインコーティングのために120~160℃で、又はオーブン内でのインラインコーティングのために200~240℃で行うことができる。硬化時間は、1秒~10秒、2秒~20秒、又は5秒~30秒であり得る。上記の加熱工程及び硬化工程は、オーブン、例えば空気循環オーブン又はトンネル炉内で、又は加熱されたシリンダーの周りにコーティングされたフィルムを通過させることによって行うことができる。
【0056】
剥離コーティングのコート重量は、0.05グラム/平方メートル(g/m)~2.0g/mであり得る。本発明の硬化性剥離コーティング組成物は、それから製造された剥離ライナー(すなわち、基材及び基材の少なくとも1つの表面上の剥離コーティングを含む剥離ライナー)に、以下の特性:透明な外観(ヘイズ値<3.5)、アンチブロッキング特性、低コート重量(例えば、1.3g/m以下)での低剥離力(RF-RT<5.0グラム/インチ(g/in))、高いその後の接着強度(SAS>85%)のうちの1つ以上を提供することができる。これらの特性は、実施例の項で以下に記載する試験方法に従って決定される。
【0057】
上記のように調製した剥離ライナーを使用して感圧接着剤を保護することができる。使用者は、剥離ライナー上に直接、液体感圧接着剤組成物をコーティングし、熱によって、あるいはUV硬化によって溶媒又は水を除去し、次いで基材と積層してロールに巻き戻すことができる。あるいは、使用者は、テープ、ラベル、又はダイカッティング用途のために、乾燥した感圧性接着剤又は粘着性フィルムで剥離ライナーを積層してもよい。本発明はまた、電子デバイス用途におけるシリコーン感圧接着剤物品用の剥離ライナーの使用に関する。
【実施例
【0058】
ここで、本発明のいくつかの実施形態を以下の実施例に記載し、特に明記しない限り、重量パーセント(重量%)値は組成物の重量に対するものである。表1は、本明細書において下に記載されるサンプルの剥離コーティング組成物において使用するための物質を列挙する。注:「Vi」はビニルを表し、「Me」はメチルを表す。
【0059】
【表1】

Epowderの粒径は、Malvern Mastersizer Hydro 2000 SMを使用して決定した(更なる詳細は、以下の硬化オルガノシロキサン組成物の粒径の下に提供される)。
【0060】
IE1~10及びCE A~Hサンプル
剥離コーティング組成物サンプルのための配合物は表2にあり、特に指示しない限り、各成分の量はグラム(g)で報告される。
【0061】
FlackTek Inc.(South Carolina,USA)からのSpeedMixer(商標)DAC 400 FVZミキサーを使用して構成成分を一緒に混合することによって、試料を調製した。SpeedMixerのカップに、Viポリマー、Epowder又はシリカ粒子、定着添加剤、SiH架橋剤及び抑制剤を添加する。3,000回転/分(RPM)で30秒間、均質になるまで数回混合する。表2に示す目標コート重量(CW)に達するように、必要に応じて適切な量のヘプタン溶媒を添加した。触媒を添加し、得られた混合物を10分間混合して、剥離コーティング組成物を形成した。
【0062】
次いで、剥離コーティング組成物を、コーターを使用してPETフィルム基材(厚み:50μm)上にコーティングし、140℃のオーブン中で30秒間の熱付加硬化によって硬化させ、それによって基材上に硬化した剥離コーティングを含む剥離ライナーを形成した。下記の試験方法に従って、各剥離コーティング組成物のサンプルを3つ調製し、評価し、その結果を平均した。
【0063】
コート重量(CW)
Oxford Instruments PLC(Oxon、United Kingdom)によって製造されたOxford lab-x 3500機器を用いて、PETフィルム基材上の硬化剥離コーティングのコート重量を検出するためにX線を使用して、コート重量(g/m)を評価した。コーティングされていないPETを対照サンプル(ブランク)として使用した。試験方法は、FINAT試験方法No.7(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)であった。
【0064】
剥離力-室温(「RF-RT」)
g/in(0.386センチニュートン/センチメートル)単位のRF-RTを、剥離ライナーからの剥離力を測定するための180度剥離試験を使用して評価した。Tesa 7475標準テープを硬化剥離コーティング上に積層し、20g/cmのローディングを得られた積層したサンプル上に置き、室温(25℃の室温)下に20時間放置した。20時間後、ローディング重量を除去し、サンプルを30分間置いた。次いで、FINAT試験方法No.10(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)を使用して、ChemInstrumentsのAR-1500によって剥離力(「RF-RT」)を試験した。
【0065】
剥離力-エージング(「RF-70℃エージング」)
RF-70℃エージングを、180度剥離試験を用いて剥離ライナーからの剥離力を測定して評価した。硬化剥離コーティング上にTesa 7475標準テープを積層し、得られた積層サンプルに20g/cmのローディング重量を載せ、70℃で20時間放置した。20時間後、ローディング重量を除去し、サンプルを30分間置いた。次いで、剥離力(「RF-70℃エージング」)を、FINAT試験方法No.10(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)を使用してChemInstruments AR-1500によって試験した。
【0066】
SAS(後続の接着強度、移動の指標)
%でのSASを以下のように評価した。試験テープを硬化剥離コーティング上にNitto Denko 31Bテープにより20g/cmのローディング重量で積層し、70℃で20時間放置した。20時間後、ローディング重量を除去し、サンプルを室温で30分間置いた。その後、31BテープをPET基材上に移し、更に1時間待つ。剥離力(「RF(剥離)」)は、FINAT試験方法No.11(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)を用いてChemInstruments AR-1500によって試験した。このSAS試験では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)基材上の積層体31Bテープを試験し、次いで、PTFEサンプルを上記の硬化剥離コーティングサンプルと同じ方法で処理及び評価し、剥離力(「RF(PTFE)」)を記録した。SAS値は、RF(剥離)/RF(PTFE)×100%として記録した。
【0067】
アンチブロッキング試験
25ミリメートル(mm)×150mmのコーティングされていないPETフィルムを、剥離ライナーとPETフィルムの表面との密接な接触を得るために、標準的なFINAT試験ローラーを用いて毎秒約10mmの速度で各方向に2回圧延することによって、上記で調製した同じサイズの剥離ライナーと積層した。目視検査によって観察し、PETフィルムと剥離ライナーの界面に目に見える「濡れ」があるかどうかを判断する。サンプルは、目に見える濡れがない場合に通過し、「P」として報告される。そうでなければ、サンプルは、目に見える濡れがある場合に不合格となり、「F」として報告される。
【0068】
ヘイズ
上で調製した剥離ライナーのヘイズを、ASTM D1003に従ってBYK Gardner Haze Gard Plusによって試験した。
【0069】
透明度
上で調製した剥離ライナーの透明度を目視検査によって評価し、「透明」及び「濁っている」として報告した。
【0070】
硬化オルガノシロキサン組成物の粒子の粒径
1グラムの硬化オルガノシロキサン組成物の粒子及び100ミリリットル(mL)のエタノールを300mLのプラスチックカップに充填し、分散機によって30秒間混合した。得られた混合物を超音波で3分間混合し、Malvern Mastersizer Hydro 2000SMを用いて水中で粒径を測定した。
【0071】
非晶質シリカ微粒子の粒径
非晶質シリカ微粒子1g及びエタノール100mLを300mLプラスチックカップに入れ、分散機で30秒間混合した。得られた混合物を超音波で3分間混合し、Malvern Mastersizer Hydro 2000SMを用いて水中で粒径を測定した。
【0072】
剥離コーティング組成物サンプルの特性評価結果を表2に示す。
【0073】
表2に示すように、サンプルIE1~10は、サンプルCE A~Hと比較して、同じ条件下で試験した同等のSAS及びRF-70℃エージング特性を維持しながら、透明な外観(例えば、3.5未満のヘイズ値)及びフィルムの裏面に対するアンチブロッキング特性を有する低い剥離力(RF-RT<5.0g/in)を達成した。対照的に、表2に示すサンプルCE A~Hは、透明度及びアンチブロッキング要件の少なくとも1つを達成することができなかった。
【0074】
【表2】

注:「SiH/Vi比」は、架橋剤からのSiH官能性とビニル官能性とのモル比を指す。
各サンプルに使用される溶媒(ヘプタン)を、表2に示される標的コート重量(CW)に達するのに好適な量で添加した。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性剥離コーティング組成物であって、
(A)1分子当たり2個以上のアルケニル基を有する脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、
(B)前記硬化性剥離コーティング組成物中のケイ素結合水素原子とアルケニル基とのモル比が0.8:1~5:1となるのに十分な量の、1分子当たり2個以上のケイ素結合水素原子を有する架橋剤と、
(C)触媒量のヒドロシリル化反応触媒と、
(D)溶媒(存在する場合)を除く硬化性剥離コーティング組成物の重量に基づいて、0.01重量%~5重量%の、0.5~30マイクロメートルの平均粒径を有する、シリカ処理されたコーティングを場合により有する硬化オルガノシロキサン組成物の粒子と、
を含む、硬化性剥離コーティング組成物。
【請求項2】
ヒドロシリル化反応抑制剤、定着添加剤、溶媒、又はこれらの混合物を更に含む、請求項1に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項3】
前記硬化オルガノシロキサン組成物の粒子が、(a)1分子当たり2個以上のアルケニル基を含有する脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンと、(b)1分子当たり2個以上のケイ素結合水素原子を有する架橋剤と、の反応生成物を含み、(a)が、ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、ジメチルビニルシロキシ末端メチルシルセスキオキサン、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、又はそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項4】
存在する場合、溶媒を除く硬化性剥離コーティング組成物の重量に基づいて、0.1重量%~2重量%の前記硬化オルガノシロキサン組成物の粒子を含む、請求項1に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項5】
前記脂肪族不飽和ポリオルガノシロキサンが、Q分岐状ポリオルガノシロキサン、シルセスキオキサン、直鎖状ポリオルガノシロキサン、又はこれらの組合せから選択される、請求項1に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項6】
前記Q-分岐状ポリオルガノシロキサンが、単位式(A-I):
(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2c’(SiO4/2 (A-I)
を有し、式中、各Rは、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各Rは独立して、アルケニル基であり、下付き文字a≧0、下付き文字b>0、995≧c+c’≧15、及び下付き文字d>0であり、
前記シルセスキオキサンは、単位式(A-II):
(R SiO1/2(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2 (A-II)
を有し、式中、各Rは、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各Rは独立して、アルケニル基であり、下付き文字e≧0、下付き文字f>0、下付き文字gは15~995、下付き文字h>0であり、
前記直鎖状ポリジオルガノシロキサンが、(A-III-1)、(A-III-2)、又はこれらの組合せ:
(R SiO1/2(R SiO)(RSiO) (A-III-1)
(R SiO1/2(R SiO)(RSiO) (A-III-2)
から選択される単位式を有し、式中、各Rは、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、各Rは、独立して、アルケニル基であり、下付き文字nは、5~10,000であり、下付き文字oは、単位式(A-III-1)の前記ポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて、0.01重量%~5.0重量%のアルケニル含有量を提供するのに十分な値を有し、下付き文字pは5~10,000であり、下付き文字qは、単位式(A-III-2)のポリジオルガノシロキサンの重量に基づいて、0.01重量%~5.0重量%のアルケニル含有量を提供するのに十分である、
請求項5に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項7】
前記架橋剤が、単位式(B-I):
(R SiO1/2(R SiO2/2(RHSiO2/2 (B-I)
を有し、式中、各Rは、独立して、脂肪族不飽和を含まない一価炭化水素基又は脂肪族不飽和を含まない一価ハロゲン化炭化水素基であり、下付き文字k≧0、下付き文字m>0、及び量(m+k)は8~400である、
請求項1に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項8】
前記ヒドロシリル化反応触媒が、溶媒(存在する場合)を除く前記硬化性剥離コーティング組成物の重量に基づいて、1重量ppm~1000重量ppmの白金族金属を提供するのに十分な量で存在する、請求項1に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項9】
前記シリカ処理されたコーティングを有する前記硬化オルガノシロキサン組成物の前記粒子が、前記硬化オルガノシロキサン組成物の粒子の表面に固定化された非晶質シリカ微粒子を含む、請求項1に記載の剥離コーティング組成物。
【請求項10】
基材の少なくとも1つの表面上に剥離コーティングを含む剥離ライナーを調製する方法であって、
場合により、前記基材の少なくとも1つの表面を処理することと、
前記基材の前記表面に、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化性剥離コーティング組成物を適用することと、
場合により、2)存在する場合に溶媒を除去することと、
3)前記組成物を硬化させて、前記基材の前記表面上に剥離コーティングを形成することと、
を含む、方法。
【請求項11】
基材と、前記基材の少なくとも1つの表面上に存在する剥離コーティングとを含む剥離ライナーであって、前記剥離コーティングが、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬化性剥離コーティング組成物を硬化させることによって形成される、剥離ライナー。
【請求項12】
ASTM D1003に従って測定して、3.5未満のヘイズ値を有する、請求項11に記載の剥離ライナー。
【国際調査報告】