(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】Li、Mg、P、S及びハロゲン元素を含有する固体材料
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0562 20100101AFI20241226BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20241226BHJP
H01B 1/10 20060101ALI20241226BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20241226BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241226BHJP
C01B 25/14 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01M10/0562
H01B1/06 A
H01B1/10
H01M4/13
H01M4/62 Z
C01B25/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024535859
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2022085960
(87)【国際公開番号】W WO2023111083
(87)【国際公開日】2023-06-22
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523287012
【氏名又は名称】スペシャルティ オペレーションズ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エメリー, アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブライダ, マルク-ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ル メルシェ, ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】マルザリ, ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】ムイ, ソクセイハ
(72)【発明者】
【氏名】エルコレ, ロリス
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CA05
5G301CA08
5G301CA16
5G301CA19
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE02
5H029AJ06
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029CJ06
5H029CJ08
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ14
5H029HJ20
5H050AA12
5H050BA15
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA01
5H050EA23
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA08
5H050GA10
5H050HA05
5H050HA14
5H050HA17
(57)【要約】
本発明は、以下の一般式(I):
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは1.3≦y≦1.6等の数である)
に係る固体材料、及び当該固体材料の製造方法に関する。本開示はまた、特に電池等の電気化学デバイス用の固体電解質としてのこの固体材料の使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I):
Li
7-2x-yMg
xPS
6-yX
y (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは1.3≦y≦1.6等の数である)
の固体材料。
【請求項2】
Xは、Clである、請求項1に記載の固体材料。
【請求項3】
・0.01≦x≦0.25であり、
・1.3≦y≦1.5である、
請求項1又は2記載の固体材料。
【請求項4】
下記式:Li
5.375Mg
0.125PS
4.625Cl
1.375;Li
5,375Mg
0,0625PS
4.5Cl
1.5
のいずれか1つに係る、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体材料。
【請求項5】
インピーダンス分光法によって加圧(500MPa)ペレットで測定したイオン伝導率が少なくとも3.3mS/cmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体材料。
【請求項6】
p-キシレン中でレーザー回折法により測定した粒径分布として、
・50μm未満のd50値、
・0.05μm超のd10値、及び/又は
・100μm未満のd90値
を示す粒径分布を有する粉末状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の固体材料。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の固体材料の製造プロセスであって、
a)原料を、任意選択的に1種以上の溶媒中で、混和することにより組成物を得るステップと、
b)任意選択的に、前記ステップa)で得られた組成物に機械的処理を施すステップと、
c)任意選択的に、前記ステップb)で得られた組成物から1種以上の溶媒の少なくとも一部を除去して固体残渣を得るステップと、
d)任意選択的に、前記ステップc)からの前記固体残渣をプレスしてペレットにするステップと、
e)前記ステップc)で得られた前記残渣を、例えばペレットの形態で、不活性雰囲気下、350℃~580℃の範囲の温度において、1時間~12時間の範囲の時間加熱し、それによって前記固体材料を形成するステップと、
f)任意選択的に、前記ステップe)で得られた前記固体材料を所望の粒度分布に処理することと、
を含むプロセス。
【請求項8】
前記ステップb)において、前記機械的処理が、湿式ミーリング又は乾式ミーリングによって行われる、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の固体材料の製造プロセスであって、
a’)1種類以上の溶媒に原料を混和して溶液を得るステップと、
b’)前記ステップa’)で得られる前記組成物から前記1種以上の溶媒の少なくとも一部を除去することにより、固体残渣を得るステップと、
c’)任意選択的に、前記ステップb’)からの固体残渣をプレスしてペレットにするステップと、
d’)任意選択的に、前記ステップb’)で得られた前記残渣を、例えばペレットの形態で、不活性雰囲気下、350℃~580℃の範囲の温度において、1時間~12時間の範囲の時間加熱し、それによって固体材料を形成するステップと、
e’)任意選択的に、前記ステップd’)で得られた前記固体材料を所望の粒度分布に処理するステップと、
を含むプロセス。
【請求項10】
原料が、少なくとも硫化リチウム(Li
2S)、硫化リン(P
2S
5)、塩化リチウム(LiCl)、並びに硫化マグネシウム(MgS)、塩化マグネシウム(MgCl
2)及びそれらの混合物から選択されるマグネシウム化合物である、請求項7~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載のプロセスによって得ることが可能な固体材料。
【請求項12】
固体電解質としての請求項1~6のいずれか一項に記載の前記固体材料の使用。
【請求項13】
少なくとも請求項1~6のいずれか一項に記載の前記固体材料を含む固体電解質。
【請求項14】
少なくとも
・金属基材と、
・前記金属基材に直接接着された少なくとも1つの層であって、
(i)請求項1~6に記載の固体材料、
(ii)少なくとも1つの電気活性化合物(EAC)、
(iii)任意選択的に、本発明の固体材料以外の少なくとも1つのリチウムイオン伝導性材料(LiCM)、
(iv)任意選択的に、少なくとも1つの導電性材料(ECM)、
(v)任意選択的に、リチウム塩(LIS)、及び
(vi)任意選択的に、少なくとも1つのポリマー結合材料(P)を含む組成物から作製される少なくとも1つの層と、
を含む電極。
【請求項15】
少なくとも
・請求項1~6に記載の固体材料と、
・任意選択的に少なくとも1つのポリマー系結合材料(P)と、
・任意選択的に少なくとも1つの金属塩、とりわけリチウム塩と、
・任意選択的に少なくとも1つの可塑剤と、
を含むセパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月17日出願の欧州特許出願第21306820.8号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、以下の一般式(I)に係る固体材料及び当該固体材料の製造方法に関する。
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは1.3≦y≦1.6等の数である)
【0003】
本開示はまた、特に電池等の電気化学デバイス用の固体電解質としてのこの固体材料の使用にも言及する。
【背景技術】
【0004】
リチウム電池は、それらの高いエネルギー及び電力密度のため、携帯用電子機器及び電気自動車に電力を供給するために使用されている。従来のリチウム電池は、有機溶媒中に溶解したリチウム塩から構成される液体電解質を利用している。上述のシステムは、有機溶媒が可燃性であるので安全上の問題がある。リチウムデンドライトが生じ、液体電解質媒体を通過すると、短絡を引き起こし、熱を生成する可能性があり、最終的に重傷につながる事故をもたらし得る。電解質溶液は、引火性液体であるため、電池に使用される場合に漏洩、発火等の発生の懸念がある。そのような懸念を考慮して、次世代リチウム電池のための電解質としてより安全性の高い固体電解質の開発が期待される。
【0005】
不燃性の無機固体電解質は、安全上の問題に対する解決策を提示する。さらに、それらの機械的安定性は、リチウムデンドライト形成を抑制し、自己放電及び加熱の問題を予防し、且つ電池の寿命を延ばすのに役立つ。
【0006】
固体硫化物電解質は、それらの高いイオン伝導性及び機械的特性のため、リチウム電池用途にとって有利である。これらの電解質は、ペレット化し、コールドプレスによって電極材料に取り付けることができ、それにより高温組み立て工程の必要性が排除される。高温焼結工程をなくすことで、リチウム電池においてリチウム金属アノードを使用することに対する課題の1つが取り除かれる。全固体リチウム電池を広く普及させて使用するために、リチウムイオンに対して高い伝導率を有する固体状態電解質に対する増大する需要がある。そのような固体電解質の重要なクラスは、アルジロダイト構造を有する組成Li6PS5X(X=Cl、Br)の材料である。アルジロダイト結晶構造を有するLi6PS5X(X=Cl、Br、I)等の硫化物系固体電解質は、高い電気化学的安定性とイオン伝導性を有する超イオン伝導体である。これらの興味深い特性のため、このような材料は多くの研究の対象となっており、その中にはドーパントの使用を伴うものもある。米国特許出願公開第2021/047195号明細書には、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Hg、及びMo等の親チオ性金属を、アルジロダイトの構造を改質し、H2Sの形成を防ぐために使用し、それにより材料を安定化させることが記載されている。
【0007】
米国特許出願公開第2020/0194827号明細書には、イオン伝導性を向上させるためにアルカリ土類金属をドープした硫化物系固体電解質とその製造方法が記載されている。式Li6-2xMexPS5Ha(式中、Meはアルカリ希土類元素であり、Haはハロゲン元素であり、0<x≦0.5である)で表される硫化物系固体電解質は、式Li6PS5Clの、ドープされていないアルジロダイトよりも高いイオン伝導率を示す。しかしながら、イオン伝導率の増加はかなり限定的である。
【0008】
国際公開第2021117869号パンフレットには、そのイオン伝導性を維持しながら、耐湿性を向上させ、H2Sの発生を低減するために複数の金属をドープした硫化物系固体電解質とその製造方法が記載されている。硫化物系固体電解質は、式LiaMbPScXdで表され、式中、3.0≦a≦6.5、0<b≦2.0、3.5≦c≦5.5、及び0.5≦d≦3.0であり、Xはハロゲンであり、MはMgであってもよい。しかしながら、測定されたイオン伝導率も、例示されたMg含有硫化物ではかなり限定的である。
【0009】
しかしながら、化学的及び機械的安定性のような他の重要な特性を損なうことなく、より高いイオン伝導性及びより低い活性化エネルギー等の最適化された性能を有する新しい固体硫化物電解質が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
驚くべきことに、以下に詳述するように、組成が明確に定義された新しい固体硫化物電解質LiMgPSXは、i)通常のLi6PS5Cl材料及びii)従来技術で開示されているLiMgPSX固体材料と比較して、高いイオン伝導性と低い活性化エネルギーを有することが見出された。本発明のLiMgPSX固体材料は、それらの従来のリチウムアルジロダイトと同様の化学的及び機械的安定性、並びに加工性も少なくとも示す。本発明の固体材料は、改善された生産性で製造することもでき、また得られる生成物の形態の制御も可能にする。
【0011】
本発明は、以下の一般式(I)に係る固体材料に関する。
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは、1.3≦y≦1.6等の数である)
【0012】
本発明はまた、以下の一般式(I):
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは、1.3≦y≦1.6等の数である)
に係る固体材料の製造プロセスにも関し、上記製造プロセスは、
a)原料を、任意選択的に1種以上の溶媒中で、混和することにより組成物を得るステップと、
b)任意選択的に、上記ステップa)で得られた組成物に機械的処理を施すステップと、
c)任意選択的に、上記ステップb)で得られた組成物から1種以上の溶媒の少なくとも一部を除去して固体残渣を得るステップと、
d)任意選択的に、上記ステップc)からの上記固体残渣をプレスしてペレットにするステップと、
e)上記ステップc)で得られた上記残渣を、例えばペレットの形態で、350℃~580℃の範囲の温度において、1時間~12時間の範囲の時間加熱し、それによって上記固体材料を形成するステップと、
f)任意選択的に、上記ステップe)で得られた上記固体材料を所望の粒度分布に処理するステップと、
を含む。
【0013】
本発明はまた、以下の一般式(I):
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは、1.3≦y≦1.6等の数である)
に係る固体材料の製造プロセスにも関し、上記製造プロセスは
a’)1種類以上の溶媒に原料を混和して溶液を得るステップと、
b’)上記ステップa’)で得られる上記組成物から上記1種以上の溶媒の少なくとも一部を除去することにより、固体残渣を得るステップと、
c’)任意選択的に、上記ステップb’)からの固体残渣をプレスしてペレットにするステップと、
d’)任意選択的に、上記ステップb’)で得られた上記残渣を、例えばペレットの形態で、不活性雰囲気下、350℃~580℃の範囲の温度に、1時間~12時間の範囲の時間加熱し、それによって上記固体材料を形成するステップと、
e’)任意選択的に、ステップd’)で得られた固体材料を所望の粒度分布に処理するステップと、
を含む。
【0014】
本発明はさらに、そのプロセスによって得ることが可能な固体材料に関する。
【0015】
本発明は、以下の式(I):
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは;1.3≦y≦1.6等の数である)
の固体材料の、固体電解質としての使用にも関する。
【0016】
本発明は、以下の式(I):
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは1.3≦y≦1.6等の数である)
の固体材料の少なくとも1種を含む固体電解質にも関する。
【0017】
本発明は、以下の式(I):
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは1.3≦y≦1.6等の数である)
の固体材料の少なくとも1種を含む少なくとも1種の固体電解質を含む電気化学デバイスにも関する。
【0018】
本発明は、以下の式(I):
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは1.3≦y≦1.6等の数である)
の固体材料の少なくとも1種を含む少なくとも1種の固体電解質を含む固体電池にも関する。
【0019】
本発明は、以下の式(I):
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは1.3≦y≦1.6等の数である)
の固体材料の少なくとも1つを含む少なくとも1つの固体電解質を含む少なくとも1種の固体電池を含む乗り物にも関する。
【0020】
本発明はまた、
・金属基材と、
・上記金属基材に直接接着された少なくとも1つの層であって、
(i)以下の式(I):
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは;1.3≦y≦1.6等の数である)
の固体材料、
(ii)少なくとも1つの電気活性化合物(EAC)、
(iii)任意選択的に、本発明の固体材料以外の少なくとも1つのリチウムイオン伝導性材料(LiCM)、
(iv)任意選択的に、少なくとも1つの導電性材料(ECM)、
(v)任意選択的に、リチウム塩(LIS)、及び
(vi)任意選択的に、少なくとも1つのポリマー結合材料(P)を含む組成物から作製される少なくとも1つの層と、
を少なくとも含む電極にも関する。
【0021】
本発明は、
・以下の式(I):
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは;1.3≦y≦1.6等の数である)
の固体材料と、
・任意選択的に、少なくとも1つのポリマー系結合材料(P)と、
・任意選択的に、少なくとも1つの金属塩、とりわけリチウム塩と、
・任意選択的に、少なくとも1つの可塑剤と、
を少なくとも含むセパレータにも関する。
【0022】
定義
本明細書の全体にわたり、文脈上他の意味に解すべき場合を除いて、用語「含む(comprise)」若しくは「包含する(include)」又は「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「包含する(includes)」、「包含している(including)」等の変形は、述べられた要素若しくは方法工程又は要素若しくは方法工程の群の包含を意味するが、任意の他の要素若しくは方法工程又は要素若しくは方法工程の群の排除を意味しないと理解されるであろう。好ましい実施形態によれば、用語「含む」及び「包含する」並びにそれらの変形は、「のみからなる」を意味する。本明細書において用いる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がそうでないと明確に示さない限り、複数態様を包含する。用語「及び/又は」は、意味「及び」、「又は」及びまたこの用語と関係した要素の他の可能な組み合わせを全て包含する。
【0023】
用語「~」は、上下限を含むと理解されるべきである。比、濃度、量及び他の数値データは、本明細書では、範囲形式で示され得る。そのような範囲形式は、単に便宜上及び簡潔さのために用いられること並びに範囲の上下限として明示的に列挙された数値を包含するのみならず、各数値及び部分範囲が明示的に列挙されるかのように、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲を全て包含すると柔軟に解釈されるべきであることが理解されるべきである。例えば、約120℃~約150℃の温度範囲は、約120℃~約150℃の明示的に列挙された上下限のみならず、125℃~145℃、130℃~150℃等の部分範囲並びに例えば122.2℃、140.6℃及び141.3℃等の特定された範囲内の小数点数等の個々の量も包含すると解釈されるべきである。
【0024】
用語「電解質」は、特に、それを通してイオン、例えばLi+を移動させるが、それを通して電子を伝導させない材料を指す。電解質は、その電解質を通してイオン、例えばLi+を伝導させる一方、電池のカソードとアノードとを電気的に絶縁するのに有用である。本発明に係る「固体電解質」は、特に、材料が固体状態にある間にイオン、例えばLi+がその中で動き回ることができる任意の種類の材料を意味する。
【0025】
本明細書で用いる場合、用語「アルジロダイト」又は「アルジロダイト結晶」は、結晶構造又は結晶結合配置を指す。この結晶構造又は結合配置は、化学式Ag8GeS6で特徴付けられる銀ゲルマニウム硫化物鉱物である天然鉱物、アルジロダイトについての結晶構造に基づく。この結晶構造の例としては、同形のアルジロダイト鉱物、Ag8SnS6も挙げられる。
【0026】
本明細書で用いる場合、用語「結晶相」は、結晶特性、例えばX線回折(XRD)によって測定されるような明確に定められたx線回折ピークを示す材料の分画の材料を指す。
【0027】
本明細書で用いる場合、用語「ピーク」は、バックグラウンドよりも実質的に大きいピーク強度を有する、強度v、度(2Θ)のXRD粉末パターンのx軸上の(2Θ)位置を指す。一連のXRD粉末パターンピークにおいて、主ピークは、分析中の化合物又は相に関係している最高強度のピークである。第2の主ピークは、第2の最高強度のピークである。第3の主ピークは、第3の最高強度のピークである。
【0028】
用語「電気化学デバイス」は、特に、例えば電気化学的及び/又は静電的プロセスによって電気エネルギーを発生させ、且つ/又は貯蔵するデバイスを指す。電気化学デバイスには、電池、とりわけ固体電池等の電気化学セルが含まれ得る。電池は、一次(すなわち単一又は「使い捨て」使用のための)電池又は二次(すなわち再充電可能な)電池であってもよい。
【0029】
本明細書で用いる場合、用語「カソード」及び「アノード」は、電池の電極を指す。Li二次電池における充電サイクル中、Liイオンは、カソードから離れ、電解質を通してアノードに移動する。充電サイクル中、電子は、カソードから離れ、外部回路を通してアノードに移動する。Li二次電池における放電サイクル中、Liイオンは、電解質を通して及びアノードからカソードの方に移動する。放電サイクル中、電子は、アノードから離れ、外部回路を通してカソードに移動する。
【0030】
用語「乗り物」若しくは「乗り物の」又は他の同様の用語は、本明細書で用いる場合、一般に、スポーツユーティリティビークル(SUV)を含む乗用車、バス、トラック、様々な商用車、様々なボート及び船を含むウォータークラフト、航空機等のモータービークルを含み、ハイブリッド車、電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、水素自動車及び他の代替燃料車(例えば、石油以外の資源に由来する燃料)を含むことが理解される。本明細書で言及されるように、ハイブリッド車は、2つ以上の異なる動力源を有する車両、例えばガソリン動力及び電気動力で駆動する車である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
まず本発明は、一般式(I)
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは1.3≦y≦1.6等の数である)
の固体材料に関する。
【0032】
本発明の固体材料は、電荷的に中性である。式(I)は、元素分析によって決定される実験式(グロス式)であることが理解される。したがって、式(I)は、固体材料中に存在する全ての相にわたって平均化された組成を規定する。Xは好ましくはClである。
【0033】
一般的に0.01≦x≦0.35であり、好ましくは0.01≦x≦0.25であり、特に0.01≦x≦0.2である。一般的に1.3≦y≦1.6、特に1.3≦y≦1.5である。実施形態の一部においては、0.01≦x≦0.25及び1.3≦y≦1.5である。実施形態の他の一部においては、0.01≦x≦0.2及び1.3≦y≦1.5である。
【0034】
本発明の固体材料は、非晶質の(ガラス)、及び/又は結晶化された(ガラスセラミック)固体材料であってもよい。固体材料の一部のみが結晶化していてもよい。固体材料の結晶化部分は、唯一の結晶構造のみを含んでいてもよく、又は複数の結晶構造を含んでいてもよい。固体材料の結晶化度(イオン伝導率が非晶体のイオン伝導率よりも高い結晶構造の結晶化度)は、好ましくは、80%~100%に含まれる。本発明の固体材料は、好ましくは、結晶相からなる分画を含み、上記結晶相の1つは、アルジロダイト構造を有する。好ましくは、アルジロダイト相を有する上記結晶相は、結晶相からなる分画の総重量の90~100%を構成する。そのような分画は、全ディフラクトグラムのリートベルト改良を用いるX線回折によって測定され得る。この改良は、多段階改良オプションを用いることによってFullProfソフトウェアで行うことができる。
【0035】
本発明の固体材料は、構造単位PS4
3-及び構造単位PO4
3-を含んでもよく、好ましくは、構造単位PS4
3-の量と構造単位PO4
3-の量との間の比は、1000:1~9:1の範囲である。
【0036】
本発明の固体材料は、25℃でCuKα線を用いるX線回折によって分析されるとき、少なくとも15.65°±0.5°、25.53°±0.5°、30.16°±0.5°及び31.52°±0.5°(2θ)の位置にピークを含み得る。本発明の固体材料の結晶学的空間群は、空間群226(F43m)であることが好ましい。この空間群において、本発明の固体材料の格子パラメータは、25℃でCuKα線を用いるX線回折によって測定され、更にリートベルト法やLe Bail法等による改良等の改良法を用いて、Fullprofソフトウェア等の専用のソフトウェアで計算されるように、9,680Å~9,860Åの範囲であってもよい。
【0037】
実施形態の一部においては、本発明に係る式(I)の固体材料は、以下のようなものであってもよい。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
式(I)の化合物の組成は、とりわけ、例えばX線回折(XRD)及び誘導結合プラズマ-質量分析法(IPC-MS)等、当業者に周知の技法を用いる化学分析によって決定され得る。本発明の固体材料は粉末状であってもよい。粉末は、そのサイズ又は粒度分布(PSD)によって特徴付けられることができる。粉末の粒径は、p-キシレン中でのレーザー回折によって測定した場合に、
・50μm未満、例えば、40μm未満、30μm未満、又は20μm未満のd50値、
・0.05μm超のd10値、及び/又は
・100μm未満、例えば90μm未満、80μm未満、又は70μm未満のd90値、
を示すものであってもよい。
【0042】
粉末は、凝集している粒子から構成されてもよい。
【0043】
粒度分布(PSD)、例えば、d50値、d10値、及びd90値は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、多数の粒子(少なくとも150個)について測定してもよい。或いは、p-キシレン中でのレーザー回折によって測定が行われてもよい。d50値は、粒度分布の分野で用いられる通常の意味を有する。dn値は、粒子のn%がdn未満の直径を持つ粒子の直径に対応する。d50(中央値)は、50%での累積分布に対応するサイズ値として定義される。これらのパラメータは、通常、機器組み込みソフトウェアによってあらかじめ定められた標準的な手順を用いて、レーザー回折計で得られる、溶液中の固体材料の粒子の分散系の直径の容積での分布から決定される。レーザー回折計は、レーザー回折の技法を用いて、分散した微粒子サンプル内をレーザー光線が通過する際に散乱される光の強度を測定することにより、粒径を測定する。レーザー回折計は、例えば、Malvernによって製造されるMastersizer 3000であってもよい。
【0044】
D50は、とりわけ、超音波下での処理後に測定されてもよい。超音波下での処理は、溶液中の固体材料の分散系中に超音波プローブを挿入することと、分散系を超音波処理にかけることとを含んでもよい。
【0045】
粉末の粒子は、球状の形状であってもよい。
【0046】
粉末の粒子は、0.8~1.0、より具体的には0.85~1.0、更により具体的には0.90~1.0の球形度SRを示し得る。SRは、好ましくは0.90~1.0又は0.95~1.0であってもよい。粒子の球形度は、測定された外周P及び粒子の投影面積Aの測定値から次式を用いて算出される。
SR=4πA/P2。
【0047】
理想的な球の場合、SRは1.0であり、球状粒子の場合、SRは1.0未満である。SRは、動的画像分析(DIA)によって決定されてもよい。DIAを実施するために使用することができる装置の例は、RetschのCAMSIZER(登録商標)P4又はSympatecのQicPic(登録商標)である。球形度は、より具体的には、ISO 13322-2(2006)に従って測定することができる。DIAは、統計学的に意味のある多数の粒子(例えば少なくとも500又は更に少なくとも1000)の分析を一般的に必要とする。
【0048】
本発明の粉末はまた、所定の条件下でH2Sの放出が少ないことによって特徴付けられる。この特徴は、粉末を湿った雰囲気に曝露し、粉末がその雰囲気と接触している最初の50分間に放出されるH2Sの量を測定することにより測定できる。
【0049】
固体材料は、有利には、インピーダンス分光法によって加圧(500MPa)ペレットについて測定した場合、少なくとも3.3mS/cm、例えば少なくとも3.4mS/cm、例えば3.5~15.0mS/cm、又は3.8~10.0mS/cmのイオン伝導率を示し得る。
【0050】
イオン伝導率の測定は、加圧ペレットに対して行われる。典型的には、加圧ペレットは、一軸圧力又は平衡圧を用いて製造する。一軸圧力を適用してペレットを形成する場合、100MPa超、有利には300MPa超の圧力を、少なくとも30秒の継続時間の間加える。測定は、典型的には2MPa~200MPaの一軸圧力下で行う。
【0051】
本発明は、一般式(I)に従った固体材料を製造する方法であって、少なくとも硫化リチウム、硫化リン、ハロゲン化合物及びマグネシウム化合物を任意選択的に1種以上の溶媒中に持ち込むステップを少なくとも含む方法にも言及する。1種以上の硫化リチウム、硫化リン、ハロゲン化合物及びマグネシウム化合物が使用されてもよい。
【0052】
とりわけ、本発明は、一般式(I)に係る固体材料を製造する方法であって、少なくとも硫化リチウム、硫化リン、ハロゲン化合物及びマグネシウム化合物を、任意選択的に1種以上の溶媒中で、反応させるステップを少なくとも含む方法にも関する。1種以上の硫化リチウム、硫化リン、ハロゲン化合物及びマグネシウム化合物が使用されてもよい。
【0053】
本発明の固体材料は、例えば、溶融押出法、完全溶液法、機械ミーリング法又は(任意選択的に原材料が1種以上の溶媒中で)原料が反応されるスラリー法等、硫化物ベースのガラス固体電解質を製造するために公知の先行技術で用いられた任意の方法によって製造されてもよい。
【0054】
また、本発明は、一般式(I)に係る固体材料の製造プロセスであって、
a)原料を、任意選択的に1種以上の溶媒中で、混和することにより組成物を得るステップと、
b)任意選択的に、ステップa)で得られた組成物に機械的処理を施すステップと、
c)任意選択的に、ステップb)で得られた組成物から1種以上の溶媒の少なくとも一部を除去して固体残渣を得るステップと、
d)任意選択的に、上記ステップc)からの上記固体残渣をプレスしてペレットにするステップと、
e)上記ステップc)で得られた上記残渣を、例えばペレットの形態で、不活性雰囲気下、350℃~580℃の範囲の温度に、1時間~12時間の範囲の時間加熱し、それによって上記固体材料を形成するステップと、
f)任意選択的に、上記ステップe)で得られた上記固体材料を所望の粒度分布に処理するステップと、
を含むプロセスである。
【0055】
実施形態の一部においては、ステップa)は不活性雰囲気下で行われる。ステップa)において使用される不活性雰囲気とは、不活性ガス、すなわち反応の条件下で悪影響を及ぼす化学反応を受けないガスの使用をいう。不活性ガスは、一般に、空気中の酸素及び水分との酸化反応及び加水分解反応等、望ましくない化学反応が起こることを回避するために使用される。そのため、不活性ガスとは、特定の化学反応において、存在する他の試薬と化学反応しないガスを意味する。本開示に関連して、用語「不活性ガス」は、固体材料前駆体と反応しないガスを意味する。「不活性ガス」の例としては、1000ppm未満の液体及び浮遊形態の水(凝縮されたものを含む)を伴う、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、ネオン、キセノン、H2S、O2が挙げられるが、それらに限定されない。ガスは、加圧することもできる。
【0056】
原材料が窒素又はアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で互いに接触されるときに撹拌が行われることが好ましい。不活性ガスの露点は、好ましくは、-20℃以下、特に好ましくは-40℃以下である。圧力は、0.0001Pa~100MPa、好ましくは0.001Pa~20MPa、好ましくは0.01Pa~0.5MPaであってもよい。
【0057】
好ましくはステップa)において、不活性雰囲気は、H2S、乾燥N2、乾燥アルゴン又は乾燥空気等の不活性ガスを含む(乾燥は、凝縮されたものを含めて、800ppm未満の液体及び浮遊形態の水を有するガスを指すことがある)。
各元素の組成比は、固体材料が製造されるときに原材料化合物の量を調整することによって制御することができる。原料及びそれらのモル比は、目標化学量論に従って選択される。標的化学量論は、副反応及び他の損失なしの完全転化の条件下で前駆体の適用量から得られる、元素Li、Mg、P、S及びX間の比を定める。
【0058】
硫化リチウムとは、1つ以上の硫黄原子及び1つ以上のリチウム原子又は代わりに1つ以上の硫黄含有イオン基及び1つ以上のリチウム含有イオン基を含む化合物をいう。特定の好ましい態様において、硫化リチウムは、硫黄原子とリチウム原子とから構成されてもよい。好ましくは、硫化リチウムは、Li2Sである。
【0059】
硫化リンとは、1つ以上の硫黄原子及び1つ以上のリン原子、或いは1つ以上の硫黄含有イオン基及び1つ以上のリン含有イオン基を含む化合物をいう。特定の好ましい態様において、硫化リンは、硫黄原子とリン原子とから構成されてもよい。非限定的な例示の硫化リンとしては、P2S5、P4S3、P4S10、P4S4、P4S5、P4S6、P4S7、P4S8及びP4S9が挙げられるが、それらに限定されない。
【0060】
ハロゲン化合物とは、化合物を構成する他の原子への化学結合(例えば、イオン結合又は共有結合)を介してF、Cl、Br又はI等の1つ以上のハロゲン原子を含む化合物をいう。特定の好ましい態様において、ハロゲン化合物には、F、Cl、Br、Iの1つ以上又はそれらの組合せと、1つ以上の金属原子とを含まれる。別の好ましい態様において、ハロゲン化合物には、F、Cl、Br、Iの1つ以上又はそれらの組合せと、1つ以上の非金属原子とを含まれる。非限定的な例としては、好適には、LiF、LiBr、LiCl、LiI、NaF、NaBr、NaCl、NaI、KaF、KBr、KCl、KI等の金属ハロゲン化物が挙げられる。特定の好ましい態様において、全固体Liイオン電池の固体電解質での使用に好適なハロゲン化合物は、1つ以上のハロゲン原子とLiとを含んでもよい。好ましくは、ハロゲン化合物は、臭化リチウム(LiBr)、塩化リチウム(LiCl)、ヨウ化リチウム(LiI)及びそれらの組合せからなる群から選択されてもよい。
【0061】
マグネシウム化合物とは、化合物を構成する他の原子と化学結合(例えば、イオン結合又は共有結合)を介して、Mg原子を1つ以上含む化合物をいう。別の態様では、マグネシウム化合物は、金属マグネシウムであってもよい。特定の好ましい態様において、マグネシウム化合物は、1つ以上のMg原子と、1つ以上の非金属原子、例えばS、Cl又はBrを含んでもよい。マグネシウム化合物は、好ましくは、MgS、MgCl2及びその混合物から選択される。本発明のマグネシウム化合物はまた、金属マグネシウム及び元素硫黄のブレンドであってもよい。
【0062】
実施形態の一部において、硫化リチウムはLi2Sであり、硫化リンはP2S5であり、ハロゲン化合物はLiClであり、マグネシウム化合物はMgS、MgCl2及びそれらの混合物から選択される。
【0063】
好ましくは、本発明の固体材料は、少なくとも以下のような原料を用いて作成される。Li2S、P2S5、LiCl、並びにMgS、MgCl2、及びそれらの混合物から選択されるマグネシウム化合物。実施形態の一部においては、本発明の固体材料は、以下のような原料を用いて作成される。Li2S、P2S5、LiCl及びMgS。実施形態の一部においては、本発明の固体材料は、以下のような原料を用いて作成される。Li2S、P2S5、LiCl及びMgCl2。
【0064】
好ましくは、硫化リチウム、硫化リン、ハロゲン化合物及びマグネシウム化合物は、0.5μm~400μmの平均粒径を有する粉末の形態である。粒径は、SEM画像解析又はレーザー回折解析で評価することができる。
【0065】
溶媒は、好適には、硫化リチウム、硫化リン、ハロゲン化合物及びマグネシウム化合物から選択される少なくとも1つの化合物を実質的に溶解し得る極性又は非極性溶媒の1つ以上から選択され得る。上記溶媒は、上記の成分、例えば硫化リチウム、硫化リン、ハロゲン化合物及びマグネシウム化合物を実質的に懸濁、溶解又はさもなければ混和するものであってもよい。
【0066】
次に、本発明の溶媒は、ステップa)において、上記成分の1つ以上の分散系で連続相を構成する。
成分及び溶媒に応じて、上記成分のうち一部は、むしろ溶解しているか、部分的に溶解しているか又はスラリーの形態下にある(すなわち、成分は、溶解しておらず、その結果、溶媒と共にスラリーを形成している)。
【0067】
特定の好ましい態様において、溶媒は、好適には、極性溶媒である。溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノール等の、特に1~6個の炭素原子を有するアルカノール類、炭酸ジメチル等の炭酸塩類、酢酸エチル等の酢酸塩類、ジメチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル等の有機ニトリル類、ヘキサン、ペンタン、2-エチルヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、並びにテトラヒドロフラン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素、からなる群において選択される極性溶媒である。
本明細書において「溶媒」に言及した場合には、1つ以上の混合溶媒を含むことが理解される。
【0068】
粉末混合物と溶媒の総重量を基準として約1重量%~80重量%の量の粉末混合物と、約20重量%~99重量%の量の溶媒とが混合されてもよい。好ましくは、粉末混合物と溶媒の総重量を基準として約25重量%~75重量%の量の粉末混合物と、25重量%~75重量%の量の溶媒とが混合されてもよい。特に、粉末混合物と溶媒との総重量を基準として約40重量%~60重量%の量の粉末混合物と、約40重量%~60重量%の量の溶媒とが混合されてもよい。
【0069】
溶媒の存在下でのステップa)の温度は、好ましくは、溶媒と混和された化合物との間の望ましくない反応性が見出されない温度において、選択された溶媒の溶融温度と、選択された溶媒の沸騰温度との間である。好ましくは、ステップa)は、-20℃~40℃、より好ましくは15℃~40℃で行われる。溶媒の不在下では、ステップa)は、-20℃~200℃、好ましくは15℃~40℃の温度で行われる。
【0070】
ステップa)の継続時間は、好ましくは、1分~1時間である。
【0071】
ステップb)における組成物への機械的処理は、湿式又は乾式ミーリングによって行ってもよく、とりわけ粉末混合物を溶媒に添加し、次いで約100rpm~1000rpmで、とりわけ10分~80時間、より好ましくは約4時間~40時間の継続時間にわたり、ミーリングすることによって行ってもよい。
【0072】
上記ミーリングは、リチウムアルジロダイトの従来の合成では反応性ミーリングとしても知られている。
【0073】
機械的ミーリング法は、ガラス混合物の生成と同時に粉砕が起こるという利点も有する。機械的ミーリング法では、回転ボールミル、タンブリングボールミル、振動ボールミル及び遊星ボールミル等の様々な方法を用いることができる。機械的ミーリングは、ZrO2等のボールを用いて又は用いずに行うことができる。
【0074】
そのような条件において、硫化リチウム、硫化リン、ハロゲン化合物及びマグネシウム化合物は、所定の期間(任意選択的には溶媒中で)反応される。
【0075】
溶媒の存在下でのステップb)の温度は、溶媒と化合物との間の望ましくない反応性が見出されない温度において、選択された溶媒の溶融温度と、選択された溶媒の沸騰温度との間である。好ましくは、ステップb)は、-20℃~80℃、より好ましくは15℃~40℃の温度で行われる。溶媒の不在下では、ステップa)は、-20℃~200℃、好ましくは15℃~40℃で行われる。
【0076】
ステップb)における組成物への機械的処理は、撹拌することにより、とりわけ標準的な粉体ミキサー又はスラリーミキサーを用いることによる等、当技術分野において周知の技法を用いることによっても行うことができる。
【0077】
通常、ペースト、又はペーストと液体溶媒とのブレンドをステップb)の終わりに得ることができる。
【0078】
ステップc)において、溶媒の少なくとも一部は、とりわけ、使用された溶媒の総重量の少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%若しくは100%又はこれらの値の間に含まれる任意の範囲を除去するための手段で除去される。溶媒除去は、デカンテーション、濾過、遠心分離、乾燥又はそれらの組合せ等、当技術分野において用いられる公知の方法によって実施され得る。
【0079】
ステップc)における温度は、溶媒の除去を可能にするために選択される。好ましくは、乾燥が溶媒除去の方法として選択される場合、温度は、選択された溶媒の沸騰温度未満で且つ選択された溶媒の蒸気分圧の関数として選択される。
【0080】
ステップc)の継続時間は、1秒~100時間、好ましくは1時間~20時間である。そのような短い継続時間は、例えば、噴霧乾燥による等、フラッシュ蒸発を用いることによって得ることができる。
【0081】
ステップc)は、窒素又はアルゴン等の不活性ガスの雰囲気下で行われることが好ましい。不活性ガスの露点は、好ましくは、-20℃以下、特に好ましくは-40℃以下である。圧力は、0.0001Pa~100MPa、好ましくは0.001Pa~20MPa、好ましくは0.01Pa~20MPaであってもよい。とりわけ、圧力は、とりわけ超真空技術を用いることによって0.0001Pa~0.001Paの範囲であってもよい。とりわけ、圧力は、プライマリー真空技術を用いることによって0.01Pa~0.1MPaの範囲であってもよい。
【0082】
ステップd)では、ステップc)からの固形残渣をプレスしてペレットにすることができる。例えば、上記固形残渣を金型でプレスしてペレットを形成してもよい。成形は、当業者に公知の装置で行なうことができる。例として、一軸プレス又は単式打錠機を用いて成形することができる。
【0083】
ステップe)において、ステップc)で得られた残渣(例えばペレットの形態)の加熱又は熱処理により、とりわけ、上で得られた非晶化粉末混合物(ガラス)が結晶質の固体材料又はガラスと結晶質との混合物(ガラスセラミックス)に転化され得る。
【0084】
熱処理は、350℃~580℃、例えば370℃~550℃、又は390℃~530℃の範囲の温度で、とりわけ1分~12時間、好ましくは2時間~10時間又は3時間~7時間の持続時間にわたって行われる。熱処理は、直ちに高温で開始することもでき、また1℃/分~20℃/分に含まれる速度での昇温によるものであってもよい。熱処理は、空気急冷、又は加熱温度からの自然冷却、又は1℃/分~20℃/分に含まれる速度での制御された降温によって完了させてもよい。
【0085】
好ましくはステップe)において、不活性雰囲気は、乾燥N2又は乾燥アルゴン等の不活性ガスを含む(「乾燥」は、凝縮されたものを含めて、800ppm未満の液体及び浮遊形態の水を含むガスを指すことがある)。好ましくは、ステップe)において、不活性雰囲気は、酸素及び水分の接近を最小限にする、好ましくは排除するために使用される保護ガス雰囲気である。
【0086】
加熱時の圧力は、標準圧又は減圧下であってもよい。雰囲気は、窒素及びアルゴン等の不活性ガスであってもよい。不活性ガスの露点は、好ましくは、-20℃以下であり、-40℃以下が特に好ましい。圧力は、0.0001Pa~100MPa、好ましくは0.001Pa~20MPa、好ましくは0.01Pa~20MPaであってもよい。とりわけ、圧力は、とりわけ超真空技術を用いることによって0.0001Pa~0.001Paの範囲であってもよい。とりわけ、圧力は、プライマリー真空技術を用いることによって0.01Pa~0.1MPaの範囲であってもよい。
【0087】
ステップf)において、固体材料を所望の粒度分布まで処理することが可能である。必要に応じて、上記のように本発明に係るプロセスによって得られた固体材料は、粉末にすり潰される(例えば、ミーリングされる)。好ましくは、上記粉末は、動的光散乱又は画像解析によって測定されるような、50μm未満、より好ましくは10μm未満、さらにより好ましくは5μm未満の粒度分布のD50値を有する。
【0088】
好ましくは、上記粉末は、動的光散乱又は画像解析によって測定されるような、100μm未満、より好ましくは10μm未満、さらにより好ましくは5μm未満の粒度分布のD90値を有する。とりわけ、上記粉末は、1μm~100に含まれる粒度分布のD90値を有する。
【0089】
次に、本発明は一般式(I)に係る固体材料の製造プロセスであって、
a’)不活性雰囲気下、1種類以上の溶媒に原料を混和して溶液を得るステップと、
b’)ステップa’)で得られるような上記組成物から上記1種以上の溶媒の少なくとも一部を除去することにより、固体残渣を得るステップと、
c’)任意選択的に、ステップb’)からの固体残渣をプレスしてペレットにするステップと、
d’)任意選択的に、ステップb’)で得られる固体残渣を、不活性雰囲気下、350℃~580℃の範囲の温度で加熱し、それによって固体材料を形成するステップと、
e’)任意選択的に、ステップd’)で得られた固体材料を所望の粒度分布に処理するステップと、
を含むプロセスでもある。
【0090】
ステップa’)の様々な特徴は、基本的には、例えば前駆体及び溶媒に関して等、ステップa)のものと同様である。好ましくは、ステップa’)における温度は、-200℃~100℃、好ましくは-200℃~10℃の範囲である。
【0091】
ステップb’)において述べられるような溶媒の除去における特徴は、ステップc)において示されたようなものと同様のものであってもよい。好ましくはステップb’)において、温度は、不活性雰囲気下及び好ましくは0.0001Pa~100MPaの圧力下で30℃~200℃の範囲である。
【0092】
ステップc’)では、ステップb’)からの固形残渣を、ステップd)で表されるようにプレスしてペレットにすることができる。
【0093】
ステップd’)の加熱は、ステップe)において示されたような特徴を有して実施することができる。好ましくは、不活性雰囲気下及び好ましくは0.0001Pa~100MPaの圧力下で350℃~580℃の範囲の温度において加熱が行われる。
【0094】
ステップe’)において述べられるような固体材料の処理の特徴は、ステップf)において示されたようなものと同様のものであってもよい。
【0095】
本発明は、固体電解質としての式(I)の固体材料、及び式(I)の固体材料を少なくとも含む固体電解質にも言及する。
【0096】
このとき、上記固体電解質は、少なくとも式(I)の固体材料と、任意選択的に、本発明の固体材料以外の少なくとも1種のリチウムイオン伝導性物質(LiCM)、例えばリチウムアルジロダイト、ガラス又はガラスセラミックス等のリチウムチオホスフェート、Li3PS4、Li7PS11及びリチウム充填ガーネットLi7La3Zr2O12(LLZO)等のリチウム伝導性酸化物(LLZO)を含む。
【0097】
上記固体電解質は、任意選択的に、スチレンブタジエンゴム等のポリマー、SiO2等の有機若しくは無機安定剤又は分散剤も含んでもよい。
【0098】
本発明は、式(I)の固体材料を少なくとも含む固体電解質を含む電気化学デバイスにも関する。
【0099】
好ましくは、電気化学デバイス、特に再充電可能な電気化学デバイスにおいて、固体電解質は、カソード、アノード及びセパレータからなる群から選択される電気化学デバイスのための固体構造の構成要素である。
【0100】
本発明のさらなる態様は、電池、より好ましくはアルカリ金属電池に関し、特に本発明の電気化学デバイスを少なくとも1つ、例えば2つ以上含むリチウム電池に言及する。電気化学デバイスは、本発明のアルカリ金属電池において互いに、例えば直列接続又は並列接続で組み合わせることができる。
【0101】
本発明は、式(I)の固体材料を少なくとも含む固体電解質を含む固体電池にも関する。
【0102】
典型的には、リチウム固体電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、正極活物質層と負極活物質層との間に形成された固体電解質層とを含む。正極活物質層、負極活物質層、及び固体電解質層の少なくとも1つは、上で定義されたような固体電解質を含む。
【0103】
全固体電気化学デバイスのカソードは、通常、カソード活物質に加えて更なる構成要素として固体電解質を含む。また、全固体電気化学デバイスのアノードは、通常、アノード活物質に加えて更なる構成要素として固体電解質を含む。
【0104】
電気化学デバイスのための、特に全固体リチウム電池のための固体構造の形態は、特に、製造される電気化学デバイスそれ自体の形態に依存する。本発明は、電気化学デバイスのための固体構造であって、カソード、アノード及びセパレータからなる群から選択される固体構造をさらに提供し、ここで、電気化学デバイスのための固体構造は、本発明に係る固体材料を含む。
【0105】
複数の電気化学セルは、固体電極及び固体電解質を共に有する、全固体電池に組み合わせることができる。
【0106】
上で開示された固体材料は、電極の製造に使用することができる。電極は、正極又は負極であってもよい。
【0107】
電極は典型的には、
・金属基材と、
・上記金属基材に直接接着された少なくとも1つの層であって、
(i)以下の式(I):
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは、1.3≦y≦1.6等の数である)
の固体材料、
(ii)少なくとも1つの電気活性化合物(EAC)、
(iii)任意選択的に、本発明の固体材料以外の少なくとも1つのリチウムイオン伝導性材料(LiCM)、
(iv)任意選択的に、少なくとも1つの導電性材料(ECM)、
(v)任意選択的に、リチウム塩(LIS)、及び
(vi)任意選択的に、少なくとも1つのポリマー結合材料(P)を含む組成物から作製される少なくとも1つの層と、
を含む。
【0108】
数値xとyは上述の範囲に属し得る。
【0109】
電気活性化合物(EAC)は、電気化学デバイスの充電段階及び放電段階中にリチウムイオンをその構造中に組み入れるか又は挿入すること及び放出することができる化合物を意味する。EACは、リチウムイオンをその構造中にインターカレート及びデインターカレートすることができる化合物であってもよい。正極(カソード)について、EACは、式LiMeQ2(式中:
・Meは、Co、Ni、Fe、Mn、Cr、Al及びVからなる群において選択される少なくとも1つの金属であり;
・Qは、O又はS等のカルコゲンである)
の複合金属カルコゲナイドであってもよい。
【0110】
EACは、より特に、式LiMeO2のものであってもよい。EACの好ましい例としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNixCo1-xO2(0<x<1)、LiNixCoyMnzO2(0<x、y、z<1及びx+y+z=1)、例えばLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2、LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2、LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2、Li(NixCoyAlz)O2(x+y+z=1)並びにスピネル構造化LiMn2O4及びLi(Ni0.5Mn1.5)O4が挙げられる。
EACは、式M1M2(JO4)fE1-f(式中、
・M1は、M1の20%未満を表す別のアルカリ金属によって部分的に置換されてもよいリチウムであり、
・M2は、+1~+5の酸化レベルでの、且つ0を含めて、M2金属の35%未満を表す1つ以上の追加の金属によって部分的に置換されてもよい、Fe、Co、Mn、Ni又はそれらの混合物から選択される+2の酸化レベルでの遷移金属であり、
・JO4は、JがP、S、V、Si、Nb、Mo又はそれらの組合せのいずれかである任意のオキシアニオンであり、
・Eは、フッ化物アニオン、水酸化物アニオン又は塩化物アニオンであり、
・fは、一般に、0.75~1に含まれるJO4オキシアニオンのモル分率である)
のリチウム化又は部分リチウム化遷移金属オキシアニオン系電気活物質であってもよい。
【0111】
上で定義されたようなM1M2(JO4)fE1-f電気活物質は、好ましくは、ホスフェート系である。それは、規則的構造又は変性カンラン石構造を示す場合がある。
【0112】
正極について、EACはまた、硫黄又はLi2Sであってもよい。
【0113】
正極について、EACは、FeS2、又はFeF2、又はFeF3等の変換型材料であってもよい。
【0114】
負極について、EACは、リチウムをインターカレートできる黒鉛炭素からなる群において選択されてもよい。このタイプのEACに関するさらなる詳細は、Carbon 2000,38,1031-1041に見い出すことができる。このタイプのEACは、典型的には、粉末、フレーク、繊維又は球体(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)の形態で存在する。
【0115】
EACはまた、リチウム金属;リチウム合金組成物(例えば、米国特許第6,203,944号明細書及び国際公開第00/03444号パンフレットに記載されているもの);一般に、式Li4Ti5O12で表されるチタン酸リチウム(これらの化合物は、一般に、可動イオン、すなわちLi+を取り込むと低レベルで物理的に膨張する「ゼロ歪み」挿入材料と見なされる);高いLi/Si比のケイ化リチウムとして一般に知られるリチウム-ケイ素合金、特に式Li4.4Siのケイ化リチウム;及び式Li4.4Geの結晶相を含むリチウム-ゲルマニウム合金でもあってもよい。EACはまた、ケイ素及び/又は酸化ケイ素入り炭素質材料、とりわけ黒鉛炭素/ケイ素及び黒鉛/酸化ケイ素に基づく複合材料であってもよく、ここで、黒鉛炭素は、リチウムをインターカレートできる1つ又は幾つかの炭素から構成される。
【0116】
ECMは、典型的には、導電性炭素質材料及び金属粉末又は繊維からなる群において選択される。導電性炭素質材料は、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛、グラフェン及び黒鉛繊維並びにそれらの組合せからなる群において選択され得る。カーボンブラックの例としては、ケッチェンブラック及びアセチレンブラックが挙げられる。金属粉末又は繊維には、ニッケル及びアルミニウム粉末又は繊維が含まれる。
【0117】
リチウム塩(LIS)は、LiPF6、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、LiB(C2O4)2、LiAsF6、LiClO4、LiBF4、LiAlO4、LiNO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiC(SO2CF3)3、LiN(SO3CF3)2、LiC4F9SO3、LiCF3SO3、LiAlCl4、LiSbF6、LiF、LiBr、LiCl、LiOH及びリチウム2-トリフルオロメチル-4,5-ジシアノイミダゾールからなる群において選択されてもよい。
【0118】
ポリマー系結合材料(P)の機能は、組成物の成分を結び付けることである。ポリマー系結合材料は、通常、不活性である。それは、好ましくは、また化学的に安定であり、且つ電子的及びイオン的輸送を容易にする。ポリマー系結合材料は、当技術分野において周知である。ポリマー材料(P)の非限定的な例としては、とりわけ:(1)とりわけコポリマー、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーの形態のVDF又はTFE系ポリマー;(2)ポリイソブチレン(PIB)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、(水素化)アクリロニトリルブタジエンゴム((h)NBR)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)等のとりわけブロックコポリマー及びグラフトポリマーの形態の水素化又は非水素化ジエン系ゴム重合体;(3)ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリブチルアクリレート(BA)、スチレン-ブチルアクリレート(ST-BA)、スチレンメチルアクリレート(ST-MA)、ブチルアクリレート-アクリロニトリル(BA-CN)等のとりわけコポリマー、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマーの形態の少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートを含むポリマー;(4)カルボキシメチルセルロース(CMC)、グアーガム等の多糖系ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマー;(5)ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、アクリロニトリル-メチルアクリレート(PAN-MA)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)等のとりわけコポリマーブロックコポリマー及びグラフトポリマーの形態のアクリロニトリルをベースとしたポリマー;(6)ポリアミドイミド(PAI)ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー及びグラフトポリマーが挙げられる。
【0119】
ポリマー材料(P)は、フッ化ビニリデン(VDF)系(コ)ポリマーからなるリストの中で選択することができる。ポリマー材料(P)はより詳しくは、VDF及びヘキサフロオロプロピレン(HFP)の単位を含むか又はVDF及びヘキサフロオロプロピレン(HFP)の単位からなるコポリマーであってもよい。
【0120】
ポリマー材料(P)は、スチレンをベースとした、任意選択的に水素化された熱可塑性エラストマーからなるリストの中で選択することができる。ポリマー材料(P)はより詳しくは、ブタジエンスチレンゴム(SBR)又はスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(SEBS)であってもよい。
【0121】
ポリマー材料(P)は、アクリロニトリルの単位を含むポリマーからなるリストの中で選択することができる。ポリマー材料(P)はより詳しくは、アクリロニトリル、ブタジエン及び/又はブチルアクリレートのコポリマーであってもよい。
【0122】
組成物中の本発明の固体材料の割合は、組成物の総重量を基準として0.1重量%~80重量%であってもよい。特に、この割合は、1.0重量%~60重量%、より特に5重量%~30重量%であってもよい。電極の厚さは、特に制限されず、用途において必要とされるエネルギー及び電力に関して調整されるべきである。例えば、電極の厚さは、0.01mm~1.000mmであってもよい。
【0123】
本発明の固体材料もセパレータの製造に使用することができる。セパレータは、電池のアノードとカソードとの間に配置されるイオン透過性の膜である。その機能は、電子を遮断し、且つ電極間の物理的分離を確実にしながら、リチウムイオンを透過させることである。
【0124】
本発明のセパレータは、典型的には、少なくとも
・以下の式(I):
Li7-2x-yMgxPS6-yXy (I)
(式中、
・Xは、F、Cl、I、及びBr、又はその組み合わせからなる群から選択されるハロゲンであり、
・xは0.01≦x≦0.35等の数であり、
・yは、1.3≦y≦1.6等の数である)
の固体材料と、
・任意選択的に、少なくとも1つのポリマー系結合材料(P)と、
・任意選択的に、少なくとも1つの金属塩、とりわけリチウム塩と、
・任意選択的に、少なくとも1つの可塑剤と、
を含む。
【0125】
数値xとyは上述の範囲に属し得る。
【0126】
電極及びセパレータは、当業者に周知の方法を用いて製造することができる。これは、通常、適切な溶媒中で成分を混合し、溶媒を除去することを含む。例えば、電極は、
・組成物の成分と少なくとも1つの溶媒とを含むスラリーを金属基材上に塗布するステップと、
・溶媒が除去されるステップと、
を含むプロセスによって製造することができる。
【0127】
当業者に公知の通常の技術は、以下のもの:コーティング及びカレンダー加工、乾式及び湿式押出、3D印刷、多孔質フォームの焼結、引き続く含浸である。電極の、及びセパレータの通常の製造技術は、Journal of Power Sources,2018 382,160-175に提供されている。他の技術、例えば押出、ペースト押出、(電気)吹付け、混練、その後にカレンダリングを用いてもよい。
【0128】
電気化学デバイス、とりわけ本明細書で記載される固体電池等の電池は、自動車、コンピュータ,携帯端末、携帯電話、時計、カムコーダー、デジタルカメラ、温度計、計算機、ラップトップBIOS、通信設備又はリモートカーロック、及びパワープラントのためのエネルギー貯蔵デバイス等の定置型応用品を製造する又は運転するために使用することができる。
【0129】
電気化学デバイス、とりわけ本明細書で記載される固体電池等の電池は、とりわけ、動力車、電動機によって運転される二輪車、ロボット、航空機(例えば、ドローン等の無人航空機)、船又は定置型エネルギー貯蔵所に使用することができる。乗り物、例えば自動車、自転車、航空機、又はボート若しくは船等の水上車両等のモバイルデバイスが好ましい。モバイルデバイスの他の例は、携帯可能であるもの、例えばコンピュータ、特にラップトップ、電話機又は、例えば建設部門からの電動工具、特にドリル、電池駆動スクリュードライバー若しくは電池駆動鋲打ち機である。
【0130】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0131】
X線回折
試料のX線回折は、Malvern Panalytical社のAeris Research回折計(Cu、600W、40kV、15mA、Sollerスリット0.02°)で収集した。回折は、10°~90°の範囲で2時間にわたって収集した。格子パラメータは、Full-Prof Suiteを使用する回折プロファイルのフィッティングによって判定した。プロファイルフィッティングは、アルジロダイトのF-43M空間群を用いて行った。
【0132】
導電率及び電気化学インピーダンス分光法(EIS)
インピーダンススペクトロスコピーを行うため、粉末を乾燥前の2枚のカーボン紙電極(Papyex soft graphite、厚さ0.2mm、Mersen社製)で挟み、6mmの金型に500MPaで冷間プレスした(一軸手動プレスMS15-MDD、Eurolabo社製)。次に、得られたペレットを気密測定セル(MTI製EQ-PSC)に装填した。測定は全て40MPaの圧力下で行われた。
【0133】
交流インピーダンススペクトルはBiologic VMP3を用いて収集し、試料の温度はバインダー恒温槽で制御した。セルをガルバノスタット-ポテンショスタットに接続し、1MHz~10kHzのOCV付近で20mVの正弦波摂動を加え、PEISスペクトルを記録する。このとき、10ディケード(decade)あたり25点が記録され、各点は50回の測定から平均化される。モデル回路を使って曲線をフィットさせ、イオン抵抗を抽出した。温度試験は各温度で2時間のステップで行われ、最後にスペクトルが記録される。温度は-20℃~60℃に設定され、30℃に戻る。
【0134】
電子伝導率は、2ボルトでの直流測定により測定され、漸近法により1時間後に決定される。
【0135】
EIS測定は、先行技術に係るLiPSMgX材料の伝導度及び活性化エネルギーと比較して、本発明に係るLiPSMgX固体材料が改善されたイオン伝導性及びより低い活性化エネルギーを有することを示している。
【0136】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、ある用語を不明確にし得る程度にまで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0137】
例
比較例1:Li6PS5Clの合成
Ar充満グローブボックス中で、Li2S(Lorad Chemical)、LiCl(Sigma-Aldrich)及びP2S5(Sigma-Aldrich)を秤量し、化学量論的割合で混合して4gの所望の組成のLi6Na5PS5Clを得た。次いで、混合物を、5mmジルコニア(YSZ)ボールで充填されている45mLのZrO2ジャーへ移した。ボール対粉末比を16.5に固定した。ジャーを密封し、グローブボックスから取り出し、Fritsch Planetary Micro Mill Pulverisette 7中に入れた。混合物を、30分のミーリング毎に15分の中断をしながら500RPMの回転速度で2時間ボールミルにかけた。粉末をAr充満グローブボックス(<1ppm H2O、<1ppm O2)中で回収した。得られた粉末を密閉したSiC坩堝に移した。坩堝を、N2雰囲気下のチューブ炉中で5℃/分の加熱速度で500℃まで加熱し、この温度で12時間保った。その後、サンプルを室温まで冷却した。それを、Ar充満グローブボックス中で回収し、すり鉢中で解砕した。アルジロダイト相が同定され、格子パラメータは9.8519Åで純粋相であった。30℃でのイオン伝導率は、3.2mS/cmであり、0.38eVの活性化エネルギーと関連していた。30℃での導電率は4×10-9S/cmであった。
【0138】
比較例2:Li5.25Mg0.25PS4.75Cl1.25の合成
Ar充満グローブボックス中で、Li2S(Lorad Chemical)、LiCl(Sigma-Aldrich)、MgCl2(Sigma-Aldrich)及びP2S5(Sigma-Aldrich)を秤量し、化学量論的割合で混合して4gの所望の組成のLi5.25Mg0.25PS4.75Cl1.25を得た。次いで、混合物を、5mmジルコニア(YSZ)ボールで充填されている45mLのZrO2ジャーへ移した。ボール対粉末比を16.5に固定した。ジャーを密封し、グローブボックスから取り出し、Fritsch Planetary Micro Mill Pulverisette 7中に入れた。混合物を、30分のミーリング毎に15分の中断をしながら500RPMの回転速度で2時間ボールミルにかけた。粉末をAr充満グローブボックス(<1ppm H2O、<1ppm O2)中で回収した。得られた粉末を密閉したSiC坩堝に移した。
【0139】
坩堝を、N2雰囲気下のチューブ炉中で5℃/分の加熱速度で500℃まで加熱し、この温度で12時間保った。その後、サンプルを室温まで冷却した。それを、Ar充満グローブボックス中で回収し、すり鉢中で解砕した。アルジロダイト相が同定され、準純粋相であった。MgSの痕跡も一部観察された。アルジロダイトの格子パラメータは9.8188Åであった。30℃でのイオン伝導率は、2.6mS/cmであり、0.38eVの活性化エネルギーと関連していた。30℃での導電率は2×10-9S/cmであった。
【0140】
比較例3:Li5,8Mg0.1PS5Clの合成
比較例3は、比較例2と同様に、適合する割合で実施することにより、4gの所望の組成のLi5,8Mg0.1PS5Clを得た。アルジロダイト相が同定され、格子パラメータは9.8457Åで純粋相であった。30℃でのイオン伝導率は、1.6mS/cmであり、0.38eVの活性化エネルギーと関連していた。30℃での導電率は3.10-9S/cmであった。
【0141】
実施例1:Li5.375Mg0.125PS4.625Cl1.375の合成
実施例1を比較例2と同様に、適合する割合で実施することにより、4gの所望の組成のLi5.375Mg0.125PS4.625Cl1.375を得た。アルジロダイト相が同定され、格子パラメータは9.8131Åで純粋相であった。30℃でのイオン伝導率は、5.4mS/cmであり、0.38eVの活性化エネルギーと関連していた。30℃での導電率は1×10-8S/cmであった。
【0142】
実施例2:Li5,375Mg0,0625PS4.5Cl1.5の合成
実施例2を比較例2と同様に、適合する割合で実施することにより、4gの所望の組成のLi5,375Mg0.0625PS4.5Cl1.5を得た。アルジロダイト相が同定され、格子パラメータは9.8067Åで純粋相であった。30℃でのイオン伝導率は、5.8mS/cmであり、0.36eVの活性化エネルギーと関連していた。30℃での導電率は4.10-9S/cmであった。
【0143】
実施例から明らかなように、本発明に係る組成範囲、すなわち0.01≦x≦0.35及び1.3≦y≦1.6で定義される範囲内の一般式Li7-2x-yMgxPS6-yXy(I)に係る固体材料は、非常に高いイオン伝導性及び低い活性化エネルギー、並びに低い電子伝導度を有する。
【0144】
比較例は、純粋なアルジロダイト相が本発明に係る組成範囲外で得られるという事実にもかかわらず、得られた固体材料はイオン伝導性がはるかに低いことを示している。
【国際調査報告】