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特表2025-500266食中毒を減らすための種子及び植物の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】食中毒を減らすための種子及び植物の処理方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/16 20060101AFI20241226BHJP
   A01P 21/00 20060101ALI20241226BHJP
   A01C 1/08 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A01N43/16 Z
A01P21/00
A01C1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536123
(86)(22)【出願日】2022-12-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 US2022081895
(87)【国際公開番号】W WO2023115054
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】63/291,334
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/306,827
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524226656
【氏名又は名称】アスクライブ バイオサイエンス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マコリーニ, カーク
【テーマコード(参考)】
2B051
4H011
【Fターム(参考)】
2B051AA01
2B051AB01
2B051BA20
2B051BB01
4H011AB03
4H011BB08
(57)【要約】
本出願は、植物中、または植物表面上のヒト病原菌の増殖を、植物の種子を1種以上のアスカロシドを含む水溶液で処理することによって抑制する方法に関する。本出願はまた、植物中、または植物表面上のヒト病原菌の増殖を、植物に1種以上のアスカロシドを含む水溶液を噴霧することによって抑制する方法も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物中のヒト腸管病原体の増殖を抑制する方法であって、前記植物の種子を、1種以上のアスカロシドを含む組成物で処理することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記1種以上のアスカロシドが、構造(I):
【化1】
を有し、式中、Zは、所望により置換されたC3-40脂肪族基であり、R及びRのそれぞれは、独立して、-H、あるいは、C1-20脂肪族、C1-20アシル、C1-20ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ保護基、リン架橋型官能基、硫黄架橋型官能基、ケイ素架橋型官能基、C2-20炭酸エステル(例えば、-C(O)OR部分)、C2-20カルバミン酸エステル(例えば、-C(O)N(R部分)、C2-20チオエステル(例えば、-C(S)R部分)、C2-20チオ炭酸エステル(例えば、-C(S)OR部分)、C2-20ジチオ炭酸エステル(例えば、-C(S)SR部分)、C1-20チオカルバミド酸エステル(例えば、-C(S)N(R部分)、糖部分、ペプチド、ポリマー鎖、または別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結からなる群から選択される、所望により置換された部分であり、Rは、独立して、各出現時に、-H、所望により置換されたC1-12脂肪族、所望により置換されたC1-12ヘテロ脂肪族、所望により置換されたアリール、所望により置換されたヘテロアリール、ポリマー鎖、または別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結から選択され、R及びRは一緒になって、1個以上のヘテロ原子を所望により含有し、1個以上の不飽和部位を所望により含有する、所望により置換された環を形成してよい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Zが、
i.-CH(CH)-Rであり、式中、Rは、所望により置換されたC1-40脂肪族基である;
ii.-CH(CH)-(CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;
iii.-CH(CH)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;
iv.-CH(CH)-(CH-CH(OH)-CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;
v.-CH(CH)-(CH-C(O)-CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;
vi.-(CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;
vii.-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;
viii.-(CH-CH(OH)-CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;及び
ix.f-(CH-C(O)-CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである、からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
及びRが、それぞれ-Hである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
Zが、-CH(CH)-(CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記1種以上のアスカロシドの少なくとも1種が、ascr#18である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Zが、-CH(CH)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである、請求項2~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記1種以上のアスカロシドの少なくとも1種が、ascr#7である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記植物の種子を処理することが、1種以上のアスカロシドを含む水溶液中に前記種子を浸漬することを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記種子が、前記水溶液中に、約1分~約6時間浸漬される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記水溶液中の前記1種以上のアスカロシドの濃度が、約0.001mM~約1.0mMである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記植物の前記種子が、食用スプラウトを生産するために使用できる植物の種子である、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記植物の前記種子が、食用豆類スプラウトを生産できる種子である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記植物の前記種子が、食用穀物類スプラウトを生産できる種子である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記植物の前記種子が、食用油料種子類スプラウトを生産できる種子である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記植物の前記種子が、食用キャベツ類スプラウトを生産できる種子である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記植物の前記種子が、食用パセリ類スプラウトを生産できる種子である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記植物の前記種子が、食用タマネギ類スプラウトを生産できる種子である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記植物の前記種子が、食用の野菜またはハーブのスプラウトを生産できる種子である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記植物の前記種子が、作物を生産できる種子である、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記種子が、それらの乾燥重量の約2重量%~約20重量%を得るために十分な時間、前記水溶液中に浸漬される、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
前記種子が、前記種子を静止状態から脱するのに十分な時間、前記水溶液中に浸漬される、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
植物中、または植物表面上のヒト腸管病原体の増殖を抑制する方法であって、前記植物に、1種以上のアスカロシドを含む組成物を噴霧することを含む、前記方法。
【請求項24】
前記1種以上のアスカロシドが、構造(I):
【化2】
を有し、式中、
Zは、所望により置換されたC3-40脂肪族基であり、R及びRのそれぞれは、独立して、-H、あるいは、C1-20脂肪族、C1-20アシル、C1-20ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ保護基、リン架橋型官能基、硫黄架橋型官能基、ケイ素架橋型官能基、C2-20炭酸エステル(例えば、-C(O)OR部分)、C2-20カルバミン酸エステル(例えば、-C(O)N(R部分)、C2-20チオエステル(例えば、-C(S)R部分)、C2-20チオ炭酸エステル(例えば、-C(S)OR部分)、C2-20ジチオ炭酸エステル(例えば、-C(S)SR部分)、C1-20チオカルバミド酸エステル(例えば、-C(S)N(R部分)、糖部分、ペプチド、ポリマー鎖、または別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結からなる群から選択される、所望により置換された部分であり、Rは、独立して、各出現時に、-H、所望により置換されたC1-12脂肪族、所望により置換されたC1-12ヘテロ脂肪族、所望により置換されたアリール、所望により置換されたヘテロアリール、ポリマー鎖、または別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結から選択され、R及びRは一緒になって、1個以上のヘテロ原子を所望により含有し、1個以上の不飽和部位を所望により含有する、所望により置換された環を形成してよい、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
及びRが、両方とも-Hである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
Zが、
i.-CH(CH)-Rであり、式中、Rは、所望により置換されたC1-40脂肪族基である;
ii.-CH(CH)-(CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;
iii.-CH(CH)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;
iv.-CH(CH)-(CH-CH(OH)-CH-CO32であり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;
v.-CH(CH)-(CH-C(O)-CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;
vi.-(CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;
vii.-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;
viii.-(CH-CH(OH)-CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;及び
ix.-(CH-C(O)-CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである、からなる群から選択される、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
Zが、-CH(CH)-(CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである、請求項24または25に記載の方法。
【請求項28】
前記1種以上のアスカロシドの少なくとも1種が、ascr#18である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
Zが、-CH(CH)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである、請求項24または25に記載の方法。
【請求項30】
前記1種以上のアスカロシドの少なくとも1種が、ascr#7である、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記組成物中の前記1種以上のアスカロシドの濃度が、約1ppb~約50ppmである、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記植物が食用スプラウト植物である、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記食用スプラウト植物が、食用豆類スプラウト植物である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記食用スプラウト植物が、食用穀物類スプラウト植物である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記食用スプラウト植物が、食用油料種子類スプラウト植物である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記食用スプラウト植物が、食用キャベツ類スプラウト植物である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記食用スプラウト植物が、食用パセリ類スプラウト植物である、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記食用スプラウト植物が、食用タマネギ類スプラウト植物である、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記食用スプラウト植物が、食用の野菜またはハーブのスプラウト植物である、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記植物が作物である、請求項23に記載の方法。
【請求項41】
食用スプラウトの生産方法であって、
食用スプラウトを生産するために使用できる植物からの種子を、1種以上のアスカロシドを含む水溶液中に、前記種子を浸漬することによって処理することと、
処理した前記種子からスプラウトが形成できる好適な容器に、処理した前記種子を入れることと、
前記スプラウトが所望のサイズに達した後に前記スプラウトを収穫することと、を含む、前記生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2021年12月17日出願の、米国特許仮出願第63/291,334号、題名「Methods of Seed and Plant Treatment to Reduce Foodborne Illness」、及び2022年2月4日出願の、米国特許仮出願第63/306,827号、題名「Methods of Seed and Plant Treatment to Reduce Foodborne Illness」の優先権を主張するものであり、これらの両方の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦支援の研究または開発
本発明は、国立衛生研究所(NIH)により付与されたSTTR Grant 1R41AI152915-01の下、政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明においてある特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本出願は、概して、食中毒を減らす方法に関する。より具体的には、本発明は、種子または植物の処理方法であって、このような種子または植物に由来する食用製品の病原体汚染を予防するための処理方法を提供する。
【0004】
食用スプラウトは、年間を通しての生産及び入手のしやすさ、短い栽培期間、ならびに高レベルのビタミン及びミネラルを含む栄養的な利益のために、人気が高まっている食用作物である。しかし、スプラウトは病原体汚染の頻度に関して高リスクな食品でもあり、スプラウト消費の増加には、それに応じてスプラウトに関連した食中毒発生の増加が付随している。US Centers for Disease Control (CDC) National Outbreak Reporting Systemによると、1996~2017年に、米国は、58件のスプラウトに関連した食中毒の発生(31件は複数の州にわたった)を経験し、少なくとも1,953件の発症例、212件の入院例及び5件の死亡例が含まれた。
【0005】
種子は、スプラウト汚染の主要な発生源である。種子の生産、処理、加工及び/または配送など、複数段階の潜在的な病原体への暴露を伴い、その間、病原体は種子のひび割れ、裂け目または細胞間隙を介して種子中に入ることができ、その場所で病原体は数週間から数年間残存することができる。そのため、潅漑用水への抗菌性化合物の適用など、病原体汚染を最小限に抑えるための一般的手法が無効となっている。スプラウト生産には、あらゆる汚染性細菌病原体の増殖をさらに増幅する働きをする、温かく、湿気のある条件が必要である。したがって、種子中の細菌レベルが低い場合さえも、スプラウト生産工程の終わりまでには、高い微生物負荷という結果になり得る。ほとんどの場合、スプラウトが病原体で汚染されたという目に見える症状はない。さらに、スプラウトの外部または内部で、非病原性及び病原性の細菌によるバイオフィルムが形成される場合があり、それにより病原菌がコロニーを作り、繁殖できる保護された環境がもたらされる。このように、スプラウトの病原菌汚染は、容易に対処されるものではない。そのうえ、抗菌性処理はスプラウトの発芽率及び収穫量に悪影響を与える可能性があるため、栽培者及びスプラウト業界にとっては魅力的ではない。これらの問題は、汚染された種子から栽培される植物に影響を及ぼす可能性もある。
【0006】
FDAは、食用スプラウトに関連する食品安全性問題を軽減するために多くの出資を行ってきた。2019年、FDAは、食品安全性問題を減らすために役立つ特定の推奨事項を備えるガイダンスの草案、「Reducing Microbial Food Safety Hazards in the Production of Seed for Sprouting」を発行した。それによると、発芽のための種子は「食品」であり、可能な限りそのように取り扱わなければならないと記載されている。残念ながら、種子栽培者は、生産している種子がスプラウトの生産に使用されるかどうかを必ずしも知っているわけではない。したがって、種子は、生産中にふん尿肥料またはその他の汚染源(齧歯動物、鳥)に暴露される可能性があり、これは、この種子から栽培される熟畑の作物への影響はほとんどない、または影響ない一方で、衛生的なスプラウト生産への深刻な脅威を呈する。
【0007】
FDAによると、単一の処理では、種子またはスプラウト上のヒト病原菌を排除することが示されておらず、スプラウト汚染を著しく低減することができるそれらの処理は、発芽及び生育量に悪影響を及ぼす。したがって、高レベルの細菌汚染を防ぐために、種子からスプラウト生産に関わる全てのステップを含め、あらゆる予防手段を行うべきである。FDAは、食用の発芽に使用される種子には、Salmonella及びE. coli O157のレベルを少なくとも5log低減させるための1種以上の処理を施すべきであると推奨している。このレベルの低減を達成することは、極めて大変な作業である。種子表面上の保護されたくぼみ、または種皮の下に微生物が存在することができるため、スプラウト種子の消毒において、大規模な洗浄及び塩素処理は効果がないと判明している。研究者は、電気分解水、有機酸、次亜塩素酸カルシウム、または次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)による処理など、スプラウトの微生物安全性を改善するための各種の手法を試みてきたが、これらの処理はいずれも、スプラウトからヒト病原菌を取り除くのに十分に有効ではない。さらに、次亜塩素酸カルシウム及び次亜塩素酸ナトリウムには、経口摂取及び皮膚との接触による毒性があり、またこれらの溶液は毒性の気体を放出する可能性があり、潜在的に作業者を危険にさらすこととなる。さらに悪いことに、これらの化学物質は、強力な酸化剤及びハロゲン化剤であり、スプラウトの栄養価を低下させたり、処理中に形成される残留塩素化有機分子によってスプラウトが汚染される場合がある。食料源としてのスプラウトの安全性を確保するための、より安全かつより有効な方法を提供することは、有益であるだろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
種子、植物または植物部分内の病原体増殖を抑制するための組成物及び方法が提供される。組成物は、少なくとも1種のアスカロシドを含む。いくつかの実施形態では、上記組成物は、2種以上のアスカロシド、及び病原体抑制を増強するための追加の成分を含む。一実施形態では、追加の成分は、サリチル酸を含む。本発明の方法は、植物の種子及び/またはスプラウトを、生長している植物内部での病原体増殖を防ぐ、または抑制するために、浸漬すること、噴霧すること、コーティングすること、接触させることを含む。
【0009】
一実施形態では、1種以上のアスカロシドは、式A:
【化1】
に従い、式中、Zは、
(i)-CH(CH)-Rであり、式中、Rは、所望により置換されたC1-40脂肪族基である;
(ii)-CH(CH)-(CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドもしくはヌクレオチドである;
(iii)-CH(CH)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドもしくはヌクレオチドである;
(iv)-CH(CH)-(CH-CH(OH)-CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドもしくはヌクレオチドである;
(v)-(CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドもしくはヌクレオチドである;
(vi)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドもしくはヌクレオチドである;または
(vii)-(CH-CH(OH)-CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドもしくはヌクレオチドである。
【0010】
特定の実施形態では、式Aのアスカロシドとして、Zは、-CH(CH)-(CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである。この種のアスカロシドの具体例は、以下に示すascr#18である。
【化2】
【0011】
特定の実施形態では、1種以上のアスカロシドは、式(A)を有し、式中、Zは-CH(CH)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである。この種のアスカロシドの具体例は、以下に示すascr#7である。
【化3】
【0012】
一実施形態では、植物の種子を、1種以上のアスカロシドを含む水溶液で処理するステップは、水溶液中に種子を浸漬することを含む。一実施形態では、種子は、約1分~約6時間、水溶液中に浸漬される。水溶液中の1種以上のアスカロシドの濃度は、約0.001mM~約10.0mMであってよい。一実施形態では、種子は、種子を静止状態から脱するのに十分な時間、水溶液中に浸漬される。
【0013】
さらなる態様では、植物の生長を増強する方法が提供される。特定の実施形態では、本方法は、植物の種子を1種以上のアスカロシドを含む水溶液で処理することを含み、処理した種子から栽培される植物は、未処理の種子から栽培される植物と比較して生長が加速する。1種以上のアスカロシドは、先に提供される他の実施形態に記載されるような構造を有することができる。
【0014】
さらなる態様では、食用スプラウトの生産方法が提供される。特定の実施形態では、本方法は、食用スプラウトを生産するために使用できる植物からの種子を供給することと、1種以上のアスカロシドを含む水溶液中に、それらの種子を浸漬することによって種子を処理することと、処理した種子からスプラウトが形成するのに好適な容器に種子を入れることと、スプラウトが所望のサイズに達した後にスプラウトを収穫することと、を含む。ここでも、1種以上のアスカロシドは、本明細書の先に記載される、その他の実施形態に記載されるような構造を有することができる。
【0015】
本発明は、以下の実施形態を含むが、これらに限定されない。
【0016】
実施形態1:植物中のヒト腸管病原体の増殖を抑制する方法であって、前記植物の種子を、1種以上のアスカロシドを含む組成物で処理することを含む、前記方法。
【0017】
実施形態2:前記1種以上のアスカロシドが、構造(I):
【化4】
を有し、式中、Zは、所望により置換されたC3-40脂肪族基であり、R及びRのそれぞれは、独立して、-H、または、C1-20脂肪族、C1-20アシル、C1-20ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ保護基、リン架橋型官能基、硫黄架橋型官能基、ケイ素架橋型官能基、C2-20炭酸エステル(例えば、-C(O)OR部分)、C2-20カルバミン酸エステル(例えば、-C(O)N(R部分)、C2-20チオエステル(例えば、-C(S)R部分)、C2-20チオ炭酸エステル(例えば、-C(S)OR部分)、C2-20ジチオ炭酸エステル(例えば、-C(S)SR部分)、C1-20チオカルバミド酸エステル(例えば、-C(S)N(R部分)、糖部分、ペプチド、ポリマー鎖、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結からなる群から選択される、所望により置換された部分であり、Rは、独立して、各出現時に、-H、所望により置換されたC1-12脂肪族、所望により置換されたC1-12ヘテロ脂肪族、所望により置換されたアリール、所望により置換されたヘテロアリール、ポリマー鎖、または別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結から選択され、R及びRは一緒になって、1個以上のヘテロ原子を所望により含有し、1個以上の不飽和部位を所望により含有する、所望により置換された環を形成してよい、実施形態1に記載の方法。
【0018】
実施形態3:Zが、-CH(CH)-Rであり、式中、Rは、所望により置換されたC1-40脂肪族基である;-CH(CH)-(CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;-CH(CH)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;-CH(CH)-(CH-CH(OH)-CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;-CH(CH)-(CH-C(O)-CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;-(CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;-(CH2)-CH(OH)-CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;及び-(CH-C(O)-CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;からなる群から選択される、実施形態2に記載の方法。
【0019】
実施形態4:R及びRが、それぞれ-Hである、実施形態2または3に記載の方法。
【0020】
実施形態5:Zが、-CH(CH-(CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである、実施形態2~4のいずれかに記載の方法。
【0021】
実施形態6:前記1種以上のアスカロシドの少なくとも1種が、ascr#18である、実施形態1に記載の方法。
【0022】
実施形態7:Zが、-CH(CH)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである、実施形態2~4のいずれかに記載の方法。
【0023】
実施形態8:前記1種以上のアスカロシドの少なくとも1種が、ascr#7である、実施形態1に記載の方法。
【0024】
実施形態9:前記植物の種子を処理することが、1種以上のアスカロシドを含む水溶液中に前記種子を浸漬することを含む、実施形態1~8のいずれかに記載の方法。
【0025】
実施形態10:前記種子が、前記水溶液中に、約1分~約6時間浸漬される、実施形態9に記載の方法。
【0026】
実施形態11:前記水溶液中の前記1種以上のアスカロシドの濃度が、約0.001mM~約1.0mMである、実施形態9に記載の方法。
【0027】
実施形態12:前記植物の前記種子が、食用スプラウトを生産するために使用できる植物の種子である、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【0028】
実施形態13:前記植物の前記種子が、食用豆類スプラウトを生産するために使用できる種子である、実施形態12に記載の方法。
【0029】
実施形態14:前記植物の前記種子が、食用穀物類スプラウトを生産するために使用できる種子である、実施形態12に記載の方法。
【0030】
実施形態15:前記植物の前記種子が、食用油料種子類スプラウトを生産するために使用できる種子である、実施形態12に記載の方法。
【0031】
実施形態16:前記植物の前記種子が、食用キャベツ類スプラウトを生産するために使用できる種子である、実施形態12に記載の方法。
【0032】
実施形態17:前記植物の前記種子が、食用パセリ類スプラウトを生産するために使用できる種子である、実施形態12に記載の方法。
【0033】
実施形態18:前記植物の前記種子が、食用タマネギ類スプラウトを生産するために使用できる種子である、実施形態12に記載の方法。
【0034】
実施形態19:前記植物の前記種子が、食用野菜またはハーブのスプラウトを生産するために使用できる種子である、実施形態12に記載の方法。
【0035】
実施形態20:前記植物の前記種子が、作物を生産する種子である、実施形態12に記載の方法。
【0036】
実施形態21:前記種子が、それらの乾燥重量の約2重量%~約20重量%を得るのに十分な時間、前記水溶液中に浸漬される、実施形態9~20のいずれかに記載の方法。
【0037】
実施形態22:前記種子が、前記種子を静止状態から脱するのに十分な時間、前記水溶液中に浸漬される、実施形態9~21のいずれかに記載の方法。
【0038】
実施形態23:植物中、または植物表面上のヒト腸管病原体の増殖を抑制する方法であって、前記植物に、1種以上のアスカロシドを含む組成物を噴霧することを含む、前記方法。
【0039】
実施形態24:前記1種以上のアスカロシドが、構造(I):
【化5】
を有し、式中、Zは、所望により置換されたC3-40脂肪族基であり、R及びRのそれぞれは、独立して、-H、または、C1-20脂肪族、C1-20アシル、C1-20ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ保護基、リン架橋型官能基、硫黄架橋型官能基、ケイ素架橋型官能基、C2-20炭酸エステル(例えば、-C(O)OR部分)、C2-20カルバミン酸エステル(例えば、-C(O)N(R部分)、C2-20チオエステル(例えば、-C(S)R部分)、C2-20チオ炭酸エステル(例えば、-C(S)OR部分)、C2-20ジチオ炭酸エステル(例えば、-C(S)SR部分)、C1-20チオカルバミド酸エステル(例えば、-C(S)N(R部分)、糖部分、ペプチド、ポリマー鎖、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結からなる群から選択される、所望により置換された部分であり、Rは、独立して、各出現時に、-H、所望により置換されたC1-12脂肪族、所望により置換されたC1-12ヘテロ脂肪族、所望により置換されたアリール、所望により置換されたヘテロアリール、ポリマー鎖、または別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結から選択され、R及びRは一緒になって、1個以上のヘテロ原子を所望により含有し、1個以上の不飽和部位を所望により含有する、所望により置換された環を形成してよい、実施形態23に記載の方法。
【0040】
実施形態25:R及びRが、両方とも-Hである、実施形態24に記載の方法。
【0041】
実施形態26:Zが、-CH(CH)-Rであり、式中、Rは、所望により置換されたC1-40脂肪族基である;-CH(CH)-(CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;-CH(CH)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;-CH(CH)-(CH-CH(OH)-CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;-CH(CH)-(CH-C(O)-CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;-(CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;-(CH-CH(OH)-CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;及び-(CH-C(O)-CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである;からなる群から選択される、実施形態24または25に記載の方法。
【0042】
実施形態27:Zが、-CH(CH)-(CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである、実施形態24または25に記載の方法。
【0043】
実施形態28:前記1種以上のアスカロシドの少なくとも1種が、ascr#18である、実施形態23に記載の方法。
【0044】
実施形態29:Zが、-CH(CH)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである、実施形態24または25に記載の方法。
【0045】
実施形態30:前記1種以上のアスカロシドの少なくとも1種が、ascr#7である、実施形態23に記載の方法。
【0046】
実施形態31:前記組成物中の前記1種以上のアスカロシドの濃度が、約1ppb~約50ppmである、実施形態23~30のいずれかに記載の方法。
【0047】
実施形態32:前記植物が、食用スプラウト植物である、実施形態23~31のいずれかに記載の方法。
【0048】
実施形態33:前記食用スプラウト植物が、食用豆類スプラウト植物である、実施形態32に記載の方法。
【0049】
実施形態34:前記食用スプラウト植物が、食用穀物類スプラウト植物である、実施形態32に記載の方法。
【0050】
実施形態35:前記食用スプラウト植物が、食用油料種子類スプラウト植物である、実施形態32に記載の方法。
【0051】
実施形態36:前記食用スプラウト植物が、食用キャベツ類スプラウト植物である、実施形態32に記載の方法。
【0052】
実施形態37:前記食用スプラウト植物が、食用パセリ類スプラウト植物である、実施形態32に記載の方法。
【0053】
実施形態38:前記食用スプラウト植物が、食用タマネギ類スプラウト植物である、実施形態32に記載の方法。
【0054】
実施形態39:前記食用スプラウト植物が、食用野菜またはハーブのスプラウト植物である、実施形態32に記載の方法。
【0055】
実施形態40:前記植物が作物である、実施形態23~31のいずれかに記載の方法。
【0056】
実施形態41:食用スプラウトの生産方法であって、食用スプラウトを生産するために使用できる植物からの種子を、1種以上のアスカロシドを含む水溶液中に、前記種子を浸漬することによって処理することと、前記処理した種子からスプラウトが形成できる好適な容器に、前記処理した種子を入れることと、前記スプラウトが所望のサイズに達した後に前記スプラウトを収穫することと、を含む、前記生産方法。
【0057】
本開示のこれらの及び他の特徴、態様及び利点は、以下に簡潔に記載される、添付の図面とともに後続の詳細な説明を読むことによって明らかとなるであろう。本発明は、上記の実施形態の2つ、3つ、4つ以上の任意の組み合わせと同様に、本開示に記載される任意の2つ、3つ、4つ以上の特徴または要素の組み合わせを、このような特徴または要素が、本明細書の特定の実施形態では、明示的に組み合わせられるかどうかにかかわらず、含む。本開示は、開示される発明の任意の分離可能な特徴または要素が、文脈から明らかにそうではないと示されない限り、その各種の態様及び実施形態のいずれかにおいて、組み合わせることができることを意図すると見なされるべきであるように、全体的に読み取ることが意図される。本開示の他の態様及び利点は、下記から明らかになるであろう。
【0058】
定義
本開示が、より容易に理解されるために、特定の用語を、最初に以下に定義する。以下の用語及び他の用語のさらなる定義は、本明細書全体に記載される。
【0059】
本出願において、文脈から明らかである場合を除き、用語「a」は、「少なくとも1つ」を意味すると理解され得る。本出願にて使用する場合、用語「または」は、「及び/または」を意味すると理解され得る。本出願において、用語「含む(comprising)」及び「含有する(including)」は、項目別に列挙した構成成分またはステップを、それら自身のみで、または1つ以上の追加の構成成分もしくはステップと一緒に示されるかどうかに関わらず、包含すると理解され得る。本出願にて使用する場合、用語「含む(comprise)」、ならびに「含む(comprising)」及び「含む(comprises)」などの、この用語の変化形は、その他の添加剤、構成成分、整数またはステップを除外することを意図しない。
【0060】
本明細書で使用する場合、用語「約」及び「およそ」は、等価物として使用される。別途記載のない限り、用語「約」及び「およそ」は、当業者によって理解されるであろう、標準的な変動を容認すると理解され得る。本明細書において範囲が提供される場合、その終点は含まれる。本出願において、約/およそとともに、またはそれ無しで使用される任意の数字は、関連する技術の当業者に理解される、いかなる典型的な変動をも包含することを意味する。いくつかの実施形態において、用語「およそ」または「約」は、別途記載のない限りまたは別途内容から明らかでない限り(かかる数が可能な値の100%を超え得る場合を除く)、述べられた基準値のいずれかの方向(上回るまたは下回る)において、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下に含まれる値の範囲を指す。
【0061】
特定の官能基及び化学用語の定義について、以下により詳細に記載する。本発明の目的のために、化学元素は、the Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75thEd.の見返しに従って特定され、特定の官能基は、そこに記載されるように通常定義される。さらに、有機化学の一般的原理、ならびに特定の官能性部分及び反応性は、Organic Chemistry,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito,1999、Smith and March March’s Advanced Organic Chemistry,5th Edition,John Wiley & Sons,Inc.,New York,2001、Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers,Inc.,New York,1989、Carruthers,Some Modern Methods of Organic Synthesis,3rd Edition,Cambridge University Press,Cambridge,1987に記載され、それぞれの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
本明細書に提供される特定の化合物は、1つ以上の不斉中心を含むことができ、したがって、各種の立体異性体形態、例えばエナンチオマー及び/またはジアステレオマーで存在することができる。したがって、本発明の化合物及びそれらの組成物は、個別のエナンチオマー、ジアステレオマーもしくは幾何異性体の形態であってよく、または立体異性体の混合物の形態であってもよい。特定の実施形態では、本発明の化合物は、エナンチオピュアな化合物である。特定の他の実施形態では、エナンチオマーまたはジアステレオマーの混合物が提供される。
【0063】
そのうえ、本明細書に記載される特定の化合物は、別途指示がない限り、Z異性体またはE異性体として存在することができる1つ以上の二重結合を有してよい。本発明の化合物は、実質的に他の異性体が含まれていない個別の異性体として、あるいは各種の異性体の混合物、例えばエナンチオマーのラセミ混合物として提供できる。
【0064】
本明細書で使用する場合、用語「異性体」は、あらゆる幾何異性体及び立体異性体を含む。例えば、「異性体」は、シス及びトランス異性体、E及びZ異性体、R及びSエナンチオマー、ジアステレオマー、(D)異性体、(L)異性体、それらのラセミ混合物、ならびにそれらの他の混合物を、本発明の範囲内のものとして含む。例えば、いくつかの実施形態では、化合物は、1つ以上の対応する立体異性体を実質的に含まずに提供されてもよく、「立体化学的に濃縮した」と称されてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、特定のエナンチオマーが好ましい場合、そのエナンチオマーは、反対のエナンチオマーを実質的に含まずに提供されてよく、「光学的に濃縮した」と称されてもよい。本明細書で使用する場合、「光学的に濃縮した」は、本発明の化合物が、1種のエナンチオマーの有意により高い割合によって構成されることを意味する。特定の実施形態では、上記化合物は、少なくとも約90重量%の1種のエナンチオマーで構成される。いくつかの実施形態では、上記化合物は、少なくとも約95重量%、97重量%、98重量%、99重量%、99.5重量%、99.7重量%、99.8重量%または99.9重量%の1種のエナンチオマーで構成される。いくつかの実施形態では、提供される化合物のエナンチオマー過剰率は、少なくとも約90%、95%、97%、98%、99%、99.5%、99.7%、99.8%または99.9%である。いくつかの実施形態では、エナンチオマーは、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)ならびにキラル塩の形成及び結晶化などの任意の周知の方法によってラセミ混合物から分離されてよく、または不斉合成によって調製されてもよい。例えば、Jacques,et al.,Enantiomers,Racemates and Resolutions(Wiley Interscience,New York,1981)、Wilen,S.H.,et al.,Tetrahedron 33:2725(1977)、Eliel,E.L.Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill,NY,1962)、Wilen,S.H.Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)参照。
【0066】
用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、本明細書で使用する場合、フッ素(フルオロ、-F)、塩素(クロロ、-Cl)、臭素(ブロモ、-Br)及びヨウ素(ヨード、-I)から選択される原子を指す。
【0067】
用語「脂肪族」または「脂肪族基」は、本明細書で使用する場合、直鎖(すなわち非分岐鎖)、分枝状、または環状(縮合した、橋掛けした及びスピロ縮合した多環状など)であってよく、完全に飽和しているか、または1つ以上の不飽和の単位を含有してもよいが、芳香族でない炭化水素部分を示す。別途指定されない限り、脂肪族基は、1~30個の炭素原子を含有する。特定の実施形態では、脂肪族基は、1~12個の炭素原子を含有する。特定の実施形態では、脂肪族基は、1~8個の炭素原子を含有する。特定の実施形態では、脂肪族基は、1~6個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、脂肪族基は1~5個の炭素原子を含有し、いくつかの実施形態では、脂肪族基は1~4個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態では、脂肪族基は1~3個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態では、脂肪族基は1~2個の炭素原子を含有する。好適な脂肪族基には、直鎖状または分枝状のアルキル、アルケニル、及びアルキニル、ならびに(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニルなど、それらのハイブリッドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
用語「ヘテロ脂肪族」または「ヘテロ脂肪族基」は、本明細書で使用する場合、1個以上の炭素原子または水素原子が、へテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、リン、ホウ素など)に置き換えられている脂肪族基を示す。
【0069】
用語「不飽和」は、本明細書で使用する場合、ある部分が、1つ以上の二重結合または三重結合を有することを意味する。
【0070】
用語「アルキル」は、本明細書で使用する場合、1~6個の炭素原子を含有する脂肪族部分から、1個の水素原子を除去することによって得られる飽和、直鎖または分岐鎖炭化水素基を指す。別途指定されない限り、アルキル基は、1~12個の炭素原子を含有する。特定の実施形態では、アルキル基は、1~8個の炭素原子を含有する。特定の実施形態では、アルキル基は、1~6個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は1~5個の炭素原子を含有し、いくつかの実施形態では、アルキル基は1~4個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態では、アルキル基は1~3個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態では、アルキル基は1~2個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、sec-ペンチル、イソペンチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ウンデシル、ドデシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
用語「アルケニル」は、本明細書で使用する場合、少なくとも1つの炭素炭素二重結合を有する、直鎖または分岐鎖脂肪族部分から、1個の水素原子を除去することによって得られる一価の基を意味する。別途指定されない限り、アルケニル基は、2~12個の炭素原子を含有する。特定の実施形態では、アルケニル基は、2~8個の炭素原子を含有する。特定の実施形態では、アルケニル基は、2~6個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~5個の炭素原子を含有し、いくつかの実施形態では、アルケニル基は2~4個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態では、アルケニル基は2~3個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態では、アルケニル基は2個の炭素原子を含有する。アルケニル基としては、例えばエテニル、プロペニル、ブテニル、1-メチル-2-ブテン-1-イルなどが挙げられる。
【0072】
単独で使用される、または「アラルキル」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」におけるような、より大きな部分の一部として使用される用語「アリール」は、合計5~20環員を有する、単環式及び多環式環系を指し、この系の少なくとも1つの環は芳香族であり、この系の各環は3~12環員を含有する。用語「アリール」は、「アリール環」という用語と互換的に使用され得る。本発明のある特定の実施形態では、「アリール」とは、1つ以上の置換基をもち得る、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシルなどを含むがこれらに限定されない芳香環系を指す。また、ベンゾフラニル、インダニル、フタルイミジル、ナフトイミジル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロナフチルなどの、芳香環が1つ以上のさらなる環に縮合している基も、本明細書で使用されるところの用語「アリール」の範囲内に含まれる。
【0073】
本明細書に記載されるとき、本発明の化合物は、「所望により置換された」部分を含有してもよい。一般に、「置換された」という用語は、「所望により」という用語が前に付くか否かにかかわらず、指定部分の1個以上の水素が好適な置換基と置き換えられることを意味する。別途指定されない限り、「所望により置換された」基は、当該基の置換可能な各位置に好適な置換基を有してもよく、任意の所与の構造において1つよりも多くの位置が、明記される群から選択される1つよりも多くの置換基で置換され得る場合、その置換基は、各々全ての位置で同じであっても、または異なってもよい。想定される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定なまたは化学的に可能な化合物の形成をもたらすものである。本明細書で使用する場合「安定な」という用語は、生産、検出、ならびに、ある特定の実施形態では、本明細書に開示される目的のうちの1つ以上に向けた回収、精製、及び使用を可能にする条件に供した際に、実質的に変化しない化合物を指す。
【0074】
「所望により置換された」基の置換可能な炭素原子上の好適な一価置換基は、独立して、ハロゲン;-(CH0-4;-(CH0-4OR;-O-(CH0-4C(O)OR;-(CH0-4CH(OR;-(CH0-4SR;-(CH0-4Ph、これはRで置換されてもよい;Rで置換されてもよい-(CH0-4O(CH0-1Ph;-CH=CHPh、これはRで置換されてもよい;-NO;-CN;-N;-(CH0-4N(R;-(CH0-4N(R)C(O)R;-N(R)C(S)R;-(CH0-4N(R)C(O)NR ;-N(R)C(S)NR ;-(CH0-4N(R)C(O)OR;-N(R)N(R°)C(O)R;-N(R°)N(R°)C(O)NR ;-N(R)N(R)C(O)OR;-(CH0-4C(O)R°;-C(S)R°;-(CH0-4C(O)OR;-(CH0-4C(O)N(R;-(CH0-4C(O)SR;-(CH0-4C(O)OSiR ;-(CH0-4OC(O)R;-OC(O)(CH0-4SR-SC(S)SR;-(CH0-4SC(O)R;-(CH0-4C(O)NR ;-C(S)NR ;-C(S)SR;-SC(S)SR、-(CH0-4OC(O)NR ;-C(O)N(OR)R;-C(O)C(O)R;-C(O)CHC(O)R;-C(NOR)R;-(CH0-4SSR;-(CH0-4S(O);-(CH0-4S(O)OR;-(CH0-4OS(O);-S(O)NR ;-(CH0-4S(O)R;-N(R)S(O)NR ;-N(R)S(O);-N(OR)R;-C(NH)NR ;-P(O);-P(O)R ;-OP(O)R ;-OP(O)(OR;SiR ;-(C1-4直鎖状もしくは分岐アルキレン)O-N(R;または-(C1-4直鎖状もしくは分岐アルキレン)C(O)O-N(Rであり、各Rは、以下で定義されるように置換されてもよく、独立して、水素、C1-8脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、もしくは5~6員の飽和環、部分的に不飽和環、もしくは窒素、酸素または硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有するアリール環であり、または上記の定義にも関わらず、独立して出現した2つのRは、それらの介在する原子(複数可)と一緒になって、3~12員の飽和環、部分的に不飽和環、もしくは窒素、酸素または硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有するアリール単環式もしくは多環式環を形成し、これは以下で定義されるように置換されてもよい。
【0075】
(または2つの独立して出現したRが、それらの介在する原子と一緒になって形成した環)上の好適な一価の置換基は、独立して、ハロゲン、-(CH0-2、-(ハロR)、-(CH0-2OH、-(CH0-2OR、-(CH0-2CH(OR;-O(ハロR)、-CN、-N、-(CH0-2C(O)R、-(CH0-2C(O)OH、-(CH0-2C(O)OR、-(CH0-4C(O)N(R;-(CH0-2SR、-(CH0-2SH、-(CH0-2NH、-(CH0-2NHR、-(CH0-2NR 、-NO、-SiR 、-OSiR 、-C(O)SR、-(C1-4直鎖状または分岐アルキレン)C(O)ORまたは-SSRであり、各Rは、非置換である、または「ハロ」の後に続く場合、1個以上のハロゲンによってのみ置換され、C1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、もしくは5-6員の飽和環、部分的に不飽和環、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有するアリール環から独立して選択される。Rの飽和した炭素原子上の好適な二価の置換基としては、=O及び=Sが挙げられる。
【0076】
「所望により置換された」基の飽和した炭素原子上の好適な二価の置換基には、以下:、=O、=S、=NNR 、=NNHC(O)R、=NNHC(O)OR、=NNHS(O)、=NR、=NOR、-O(C(R ))2-3O-または-S(C(R ))2-3S-が挙げられ、独立して出現する各Rは、水素、以下で定義されるように置換されてもよいC1-6脂肪族、もしくは非置換5~6員の飽和環、部分的に不飽和環、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有するアリール環から選択される。「所望により置換された」基の、ビシナルな置換可能炭素に結合する好適な二価の置換基は、-O(CR 2-3O-が挙げられ、それぞれ独立して出現するRは、水素、以下で定義されるように置換されてよいC1-6脂肪族、もしくは非置換5~6員の飽和環、部分的に不飽和環、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有するアリール環から選択される。
【0077】
の脂肪族基上の好適な置換基としては、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR または-NOが挙げられ、各Rは、非置換である、または「ハロ」の後に続く場合、1個以上のハロゲンによってのみ置換され、独立してC1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、もしくは5~6員の飽和環、部分的に不飽和環、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有するアリール環である。
【0078】
「所望により置換された」基の置換可能な窒素上の好適な置換基としては、-R†、-NR†、-C(O)R†、-C(O)OR†、-C(O)C(O)R†、-C(O)CHC(O)R†、-S(O)R†、-S(O)NR†、-C(S)NR†、-C(NH)NR†または-N(R†)S(O)R†が挙げられ、式中、各R†は、独立して水素、以下で定義されるように置換されてよいC1-6脂肪族、非置換-OPh、もしくは非置換5~6員の飽和環、部分的に不飽和環、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有するアリール環である、または上記の定義に関わらず、2つの独立して出現するR†は、それらの介在する原子(複数可)と一緒になって、非置換3~12員の飽和環、部分的に不飽和環、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有するアリール単環式環もしくは二環式環を形成する。
【0079】
R†の脂肪族基上の好適な置換基は、独立して、ハロゲン、-R、-(ハロR)、-OH、-OR、-O(ハロR)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR、-NH、-NHR、-NR または-NOであり、各Rは、非置換である、または「ハロ」の後に続く場合、1個以上のハロゲンによってのみ置換され、独立してC1-4脂肪族、-CHPh、-O(CH0-1Ph、もしくは5~6員の飽和環、部分的に不飽和環、もしくは窒素、酸素もしくは硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有するアリール環である。
【0080】
本明細書で使用する場合、用語「実質的に」は、関心対象の特徴または特性の、提示されている全体またはほぼ全体の程度または度合いの質的な状態を示す。
【0081】
用語「スプラウト」は、本明細書で使用する場合、種子の発芽後ではあるが、植物原料での葉の形成より先に種子から生産される植物原料である。「食用スプラウト」は、ヒトにとって無毒と考えられるスプラウトである。
【0082】
いくつかの接頭辞字、その後にポンド記号(#)及び数が続くアスカロシドの命名法が、ときに使用される場合がある(例えばascr#18)。この慣習は科学文献にて使用され、当業者は、このような各名称が既知の組成物の特定の化学構造と関連すると理解し、この命名法を使用して示される分子の構造を直ちに理解するであろう。特に指定のない限り、本明細書で使用される、この形態の全ての化合物識別子は、http://www.smid-db.org.にて維持される、C.elegans Small Molecule Identifier Database(SMID-DB)に記載される定義に従う。
【0083】
図面において、特徴は必ずしも一定の縮尺で表されるわけではなく、むしろ通常、開示される組成物及び方法の原理を示すことに重点が置かれており、また限定することを意図するものではない。明確にするために、あらゆる構成成分が図面でラベル付けされているとは限らない。以下の記載において、各種の実施形態が以下の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】アスカロシド溶液によって処理済みのアルファルファ種子から生産されるスプラウトにおける、Salmonella数への処理の効果を比較する棒グラフを示す。
【0085】
図2】アスカロシド溶液による種子の処理の、対照試料と比較した、植物防御遺伝子の上方制御への効果を比較する棒グラフを示す。
【0086】
図3A】米の種子へのアスカロシド溶液噴霧の、イネの出芽への効果を比較する棒グラフを示す。
【0087】
図3B】米の種子へのアスカロシド溶液噴霧の、イネの高さへの効果を比較する棒グラフを示す。
【0088】
図4A】卵菌類病原体によって引き起こされた病変サイズへの、トマト植物(cv.Sweet hybrid 100)種子へのascr#18処理の効果を示す。
【0089】
図4B】卵菌類病原体によって引き起こされた病変サイズへの、トマト植物(cv.M82)種子へのascr#18処理の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0090】
種子、植物または植物部分内の病原体増殖を抑制するための組成物及び方法が提供される。組成物は、少なくとも1種のアスカロシドを含む。追加の成分としては、病原体抑制を増強するための農業上許容できる担体及び構成成分、またはスプラウトの形成もしくは生長を高めるための構成成分が挙げられる。本発明の方法は、種子及び/または植物のスプラウトを、アスカロシドに浸漬すること、アスカロシドを噴霧すること、アスカロシドでコーティングすること、アスカロシドと接触させること、または植物の増殖培地中にアスカロシドを提供して、生長している植物内部の病原体増殖を防ぐもしくは抑制すること、を含む。
【0091】
本発明の組成物及び方法は、病原体、特に食品媒介性ヒト病原体を制御する。病原体としては、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫及び/または卵菌類などのヒト病原体が挙げられる。代表的な食品病原体としては、Salmonella、Clostridium perfringens、Campylobacter、Staphylococcus aureus(Staph)、Escherichia coli、Listeriaなどの、疾患を引き起こす病原菌が挙げられる。
【0092】
特定の実施形態では、アスカロシドで処理する種子は、食用スプラウト及び/または葉物野菜を生産することができる植物の種子である。市場用の食用スプラウトを生産できる種子としては、食用豆類作物の種子、食用穀物の種子、食用油料種子作物の種子、食用キャベツ類作物の種子、食用野草の種子、食用パセリ作物の種子、食用タマネギ類作物の種子、食用野菜の種子及び食用ハーブの種子が挙げられるが、これらに限定されない。葉物野菜としては、ケール、マイクログリーン、コラードグリーン、ホウレンソウ、キャベツ、ビーツの葉、マスタードグリーン、クレソン、レタス、フダンソウ、キバナスズシロ、エンダイブ、パクチョイ、カブの葉、ブロッコリー、コリアンダーなどが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、1種以上のアスカロシドで処理する植物の種子は、作物の種子である。
【0093】
一態様では、本発明は、植物中のまたは植物表面上のヒト病原菌の増殖を抑制する方法であって、植物の種子を1種以上のアスカロシドで処理することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、このような種子から栽培される植物は、同一の条件下で、未処理の種子から栽培される植物と比較して、それらの組織の表面上または組織内部において、ヒト病原菌の増殖に、より抵抗力があることを特徴とする。
【0094】
別の態様では、本発明は、植物中のまたは植物表面上のヒト病原菌の増殖を抑制する方法であって、1種以上のアスカロシドで強化した増殖培地中に、植物の種子を発芽させることを含む方法を提供する。特定の実施形態では、このような培地中で栽培される植物は、同一の条件下で、強化していない培地を用いて栽培される植物と比較して、それらの組織の表面上または組織内部において、ヒト病原菌の増殖に、より抵抗力があることを特徴とする。
【0095】
別の態様では、本発明は、植物中のまたは植物表面上のヒト病原菌の増殖を抑制する方法であって、1種以上のアスカロシドで植物の種子を処理することと、1種以上のアスカロシドで強化された増殖培地中で、それらの種子を発芽させることと、を含む方法を提供する。特定の実施形態では、このような条件で栽培される植物は、強化していない培地を用いて、未処理の種子から栽培される植物と比較して、それらの組織の表面上または組織内部において、ヒト病原菌の増殖に、より抵抗力があることを特徴とする。
【0096】
アスカロシドは、線虫により産生される二次代謝産物である。多数の、構造的に多様なアスカロシド構造体が、自然界において確認されており、これらの分子は、線虫が自身の成長の多くの側面を制御するために使用する、進化的に保存された化学的言語として機能すると考えられている。アスカロシドは、他の生物によっても知覚され、細菌、真菌、植物及びヒトを含む哺乳動物など多数の生物に、様々な効果を有すると示されている。本開示において、植物の種子へのアスカロシドの適用は、植物の防御力を活性化及びプライミングして、ヒト病原菌を含む非植物病原体による、コロニー形成及び/または増殖に対して保護を与えると示されている。このような保護は、栽培植物の組織内部の病原体の増殖を防ぐことを含む。植物の生来の防御システムを刺激する本発明の方法は、種子または内部植物組織に侵入し現法を使用して根絶するのが難しい病原体と戦うための独自のツールである。本発明の組成物によって刺激されると、種子を処理した植物の防御反応により、発芽後数週間、病原体から保護される。これは、通常3~7日で完了する市販用のスプラウト生産のために必要とされる期間よりも長い。
【0097】
アスカロシドは、糖アスカリロースの誘導体であり、その3位及び6位でヒドロキシル基を欠くジデオキシ糖である。アスカロシドは、式I:
【化6】
に示す一般構造を有し、式中、Zは、所望により置換されたC2-40脂肪族基であり、R及びRのそれぞれは、独立して、-H、または、C1-20脂肪族、C1-20アシル、C1-20ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、ヒドロキシ保護基、リン架橋型官能基、硫黄架橋型官能基、ケイ素架橋型官能基、C2-20炭酸エステル(例えば、-C(O)OR部分)、C2-20カルバミン酸エステル(例えば、-C(O)N(R部分)、C2-20チオエステル(例えば、-C(S)R部分)、C2-20チオ炭酸エステル(例えば、-C(S)OR部分)、C2-20ジチオ炭酸エステル(例えば、-C(S)SR部分)、C1-20チオカルバミド酸エステル(例えば、-C(S)N(R部分)、糖部分、ペプチド、ポリマー鎖、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結からなる群から選択される、所望により置換された部分であり、Rは、独立して、各出現時に、-H、所望により置換されたC1-12脂肪族、所望により置換されたC1-12ヘテロ脂肪族、所望により置換されたアリール、所望により置換されたヘテロアリール、ポリマー鎖、または別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結から選択され、R及びRは一緒になって、1個以上のヘテロ原子を所望により含有し、1個以上の不飽和部位を所望により含有する、所望により置換された環を形成してよい。
【0098】
特定の実施形態では、Zは、
(i)-CH(CH)-Rであり、式中、Rは、所望により置換されたC1-40脂肪族基である;
(ii)-CH(CH)-(CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、グリコシド、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;
(iii)-CH(CH)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、グリコシド、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;
(iv)-CH(CH)-(CH-CH(OH)-CH-CO32であり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、グリコシド、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;
(v)-CH(CH)-(CH-C(O)-CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、グリコシド、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;
(vi)-(CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、グリコシド、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;
(vii)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、グリコシド、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;
(viii)-(CH-CH(OH)-CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、グリコシド、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;または
(ix)-(CH-C(O)-CH-COであり、式中、nは1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、グリコシド、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である。
特定の実施形態では、Zは、
(x)-CH(CH)-(CH-CON(Rであり、式中、nは1~40の整数であり、各Rは、独立して、-H、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、ポリマー鎖、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;
(xi)-CH(CH)-(CH-CH=CH-CON(Rであり、式中、nは1~40の整数であり、各Rは、独立して、-H、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、ポリマー鎖、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;
(xii)-CH(CH)-(CH-CH(OH)-CH-CON(Rであり、式中、nは1~40の整数であり、各Rは、独立して、-H、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、ポリマー鎖、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;
(xiii)-CH(CH)-(CH)-C(O)-CH-CON(Rであり、式中、nは1~40の整数であり、各Rは、独立して、-H、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、ポリマー鎖、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;
(xiv)-(CH-CON(Rであり、式中、nは1~40の整数であり、各Rは、独立して、-H、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、ポリマー鎖、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;
(xv)-(CH-CH=CH-CON(Rであり、式中、nは1~40の整数であり、各Rは、独立して、-H、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、ポリマー鎖、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;
(xvi)-(CH-CH(OH)-CH-CON(Rであり、式中、nは1~40の整数であり、各Rは、独立して、-H、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、ポリマー鎖、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である;または
(xvii)-(CH-C(O)-CH-CON(Rであり、式中、nは1~40の整数であり、各Rは、独立して、-H、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換されたC1-20ヘテロ脂肪族基、所望により置換された芳香族基、所望により置換されたヘテロアリール基、ポリマー鎖、アミノ酸、ペプチド、ヌクレオチド、もしくは別のアスカロシド分子への、結合もしくは炭素含有リンカー部分を介した連結である。
特定の実施形態では、Rは、-Hである。
【0099】
特定の実施形態では、Rは、-Hである。特定の実施形態では、Rは、-Hである。特定の実施形態では、R及びRは、同一である。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hである。
【0100】
特定の実施形態では、R及びRは、異なる。特定の実施形態では、Rは-Hであり、Rは-H以外である。特定の実施形態では、Rは-H以外であり、Rは-Hである。特定の実施形態では、Rは-Hであり、Rは、パラオキシ安息香酸エステルである。特定の実施形態では、Rは-Hであり、Rはインドール-3-カルボン酸エステルである。特定の実施形態では、Rは-Hであり、Rは(E)-2-メチル-2-ブテン酸エステルである。特定の実施形態では、Rは-Hであり、Rはピコリン酸エステルである。特定の実施形態では、Rは-Hであり、Rはニコチン酸エステルである。特定の実施形態では、Rは-Hであり、Rは(R)-2-ヒドロキシ-2-(4-ヒドロキシフェニル)エチル)アミノ)-4-オキソブタン酸エステルである。特定の実施形態では、Rは-Hであり、Rは4-((4-ヒドロキシフェネチル)アミノ)-4-オキソブタン酸エステルである。
【0101】
特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記(i)~(ix)で定義される式から選択される。特定の実施形態では、Ra及びRbは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(i)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(ii)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(iii)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(iv)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(v)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(vi)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(vii)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(viii)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(ix)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(x)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(xi)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(xii)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(xiii)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(xiv)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(xv)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(xvi)に従う。特定の実施形態では、R及びRは、両方とも-Hであり、Zは、上記の式(xvii)に従う。
【0102】
特定の実施形態では、Rは-Hである。特定の実施形態では、Rは、金属カチオンである。特定の実施形態では、Rは、有機カチオン(例えば、窒素またはリンを中心としたカチオン性基)である。特定の実施形態では、Rは、所望により置換されたC1-20脂肪族基である。特定の実施形態では、Rは、所望により置換されたC1-12脂肪族基である。特定の実施形態では、Rは、所望により置換されたC1-8脂肪族基である。特定の実施形態では、Rは、所望により置換されたC1-6脂肪族基である。特定の実施形態では、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル及びt-ブチルから選択される。特定の実施形態では、Rは、所望により置換された芳香族基である。特定の実施形態では、Rは、グリコシドである。特定の実施形態では、Rは、アミノ酸を含む。特定の実施形態では、Rは、ペプチドを含む。特定の実施形態では、Rは、ヌクレオチドを含む。
【0103】
特定の実施形態では、少なくとも1つのRは-Hである。特定の実施形態では、両方のR基は-Hである。特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、所望により置換されたC1-20脂肪族基である。特定の実施形態では、両方のR基は、同一でも異なっていてもよい、所望により置換されたC1-20脂肪族基である。特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、所望により置換されたC1-12脂肪族基である。特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、所望により置換されたC1-8脂肪族基である。特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、所望により置換されたC1-6脂肪族基である。特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル及びt-ブチルから選択される。特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、-CHCHOHである。特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、-CHCHORであり、式中、Rは、本明細書で定義されるような属及び亜属である。特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、所望により置換された芳香族基である。特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、グリコシドを含む。特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、アミノ酸を含む。特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、ペプチドを含む。特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、ペプチドを含む。特定の実施形態では、少なくとも1つのRは、ヌクレオチドを含む。
【0104】
特定の実施形態では、アスカロシドは、
【化7】
からなる群から選択され、式中、xは1~22の整数であり、R、R及びRのそれぞれは、上に定義され、本明細書の属及び亜属のものである。
【0105】
特定の実施形態では、アスカロシドは、
【化8】
からなる群から選択され、式中、x、R及びRのそれぞれは、上に定義され、本明細書の属及び亜属のものである。
【0106】
特定の実施形態では、アスカロシドは、
【化9】
からなる群から選択され、式中、yは1~20の整数であり、R、R及びRのそれぞれは、上に定義され、本明細書の属及び亜属のものである。
【0107】
特定の実施形態では、アスカロシドは、
【化10】
からなる群から選択され、式中、y、R及びRのそれぞれは、上に定義され、本明細書の属及び亜属のものである。
【0108】
特定の実施形態では、アスカロシドは、
【化11】
からなる群から選択され、式中、xは1~22の整数であり、Rは、上に定義され、本明細書の属及び亜属のものである。
【0109】
特定の実施形態では、アスカロシドは、
【化12】
からなる群から選択され、式中、xは、上に定義され、本明細書の属及び亜属のものである。
【0110】
特定の実施形態では、アスカロシドは、
【化13】
からなる群から選択され、式中、yは1~20の整数であり、Rは、上に定義され、本明細書の属及び亜属のものである。
【0111】
特定の実施形態では、アスカロシドは、
【化14】
からなる群から選択され、式中、yは、上に定義され、本明細書の属及び亜属のものである。
【0112】
特定の実施形態では、アスカロシドは、
【化15】
からなる群から選択され、式中、xは1~22の整数であり、R、R及びRのそれぞれは、上に定義され、本明細書の属及び亜属のものである。
【0113】
特定の実施形態では、アスカロシドは、
【化16】
からなる群から選択され、式中、x及びRのそれぞれは、上に定義され、本明細書の属及び亜属のものである。
【0114】
特定の実施形態では、アスカロシドは、
【化17】
からなる群から選択され、式中、yは1~20の整数であり、R、R及びRのそれぞれは、上に定義され、本明細書の属及び亜属のものである。
【0115】
特定の実施形態では、アスカロシドは、
【化18】
からなる群から選択され、式中、y及びRのそれぞれは、上に定義され、本明細書の属及び亜属のものである。
【0116】
一実施形態では、本開示の文脈において有用なアスカロシドは、一般構造(I)を有し、式中、Zは、-CH(CH)-(CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドであり、植物中、または植物表面上のヒト病原菌の増殖を抑制するのに使用可能である。
【0117】
一実施形態では、本開示の文脈において有用なアスカロシドは、一般構造(I)を有し、式中、Zは、-CH(CH)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである。
【0118】
一実施形態では、本発明にとって有用なアスカロシドは、一般構造(I)を有し、式中、Zは、-CH(CH)-(CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドであり、植物中、または植物表面上のヒト病原菌の増殖を抑制するのに使用可能である。
【0119】
一実施形態では、本発明にとって有用なアスカロシドは、一般構造(I)を有し、式中、Zは、-CH(CH)-(CH-CH=CH-COであり、式中、nは、1~40の整数であり、Rは、-H、金属カチオン、所望により置換されたC1-20脂肪族基、所望により置換された芳香族基、グリコシド、アミノ酸、ペプチドまたはヌクレオチドである。
【0120】
本発明に有用な特定のアスカロシドとしては、ascr#7及びascr#18が挙げられるが、これらに限定されない。
【化19】
【0121】
特定の実施形態では、提供する方法において使用するアスカロシドは、ascr#9、ascr#12、ascr#14、ascr#1、ascr#10、ascr#16、ascr#18、ascr#20、ascr#22、ascr#24、ascr#26、ascr#28、ascr#30、ascr#32、ascr#34及びascr#36からなる群から選択される。特定の実施形態では、提供する方法において使用するアスカロシドは、ascr#10、ascr#16、ascr#18、ascr#20、ascr#22及びascr#24からなる群から選択される。特定の実施形態では、提供する方法において使用するアスカロシドは、ascr#9、ascr#14、ascr#10及びascr#18からなる群から選択される。
【0122】
特定の実施形態では、提供する方法において使用するアスカロシドは、ascr#5、oscr#9、oscr#12、oscr#1、oscr#14、oscr#10、oscr#16、oscr#18、oscr#20、oscr#22、oscr#24、oscr#26、oscr#28、oscr#30、oscr#32、oscr#34及びoscr#36からなる群から選択される。特定の実施形態では、提供する方法において使用するアスカロシドは、oscr#10、oscr#16、oscr#18、oscr#20及びoscr#22からなる群から選択される。特定の実施形態では、提供する方法において使用するアスカロシドは、bhas#5、oscr#9、oscr#12、oscr#1、oscr#14、oscr#10、oscr#16、oscr#18、oscr#20、oscr#22、oscr#24、oscr#26、oscr#28、oscr#30、oscr#32、oscr#34及びoscr#36からなる群から選択される。特定の実施形態では、提供する方法において使用するアスカロシドは、oscr#10、oscr#16、oscr#18、oscr#20及びoscr#22からなる群から選択される。
【0123】
特定の実施形態では、提供する方法において使用するアスカロシドは、bhas#9、bhas#10、bhas#16、bhas#18、bhas#22、bhas#24、bhas#26、bhas#28、bhas#30、bhas#32、bhas#34、bhas#36、bhas#38、bhas#40及びbhas#42からなる群から選択される。
【0124】
特定の実施形態では、提供する方法において使用するアスカロシドは、bhos#10、bhos#16、bhos#18、bhos#22、bhos#24、bhos#26、bhos#28、bhos#30、bhos#32、bhos#34、bhos#36、bhos#38、bhos#40及びbhos#42からなる群から選択される。
【0125】
特定の実施形態では、提供する方法において使用するアスカロシドは、ascr#18、oscr#16、oscr#17、oscr#15、bhas#18、bhos#16、glas#18、dhas#18、ibha#18、ibho#16、icas#18、icos#15、icos#16、及びこれらの2つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0126】
アスカロシドは、天然の供給源(例えば、線虫)から得ることができ、または合成的に調製されてもよい。アスカロシドは、例えば1-O-置換ラムノースを1-O-置換アスカリロースに変換することによって合成的に調製できる。アスカロシドを調製する例示的方法には、原材料として1-O-置換ラムノースを供給することと、原材料の3-OH基でモノ-スルホン酸エステルを形成することと、モノ-スルホン酸エステルを水素化物源で処理して、1-O-置換アスカリロースを形成することと、が含まれる。特定の実施形態では、モノ-スルホン酸エステルの形成は、基質上で、ヒドロキシル基保護基を用いずに、ラムノース原材料の2位または4位にて実施される。特定の実施形態では、このような方法は、ルイス酸の存在下で、原材料をスルホン化剤(すなわち、スルホニルハライド、スルホン酸無水物または類似の試薬)に接触させることを含む。1-O-置換アスカリロースの合成に関する特定の詳細については、2022年3月2日に出願された、PCT出願第PCT/IB2021/056981号(WO2022/024067として公開)に見いだすことができ、同明細書は参照により本明細書に組み込まれる。
【0127】
アスカロシド合成のために、いくつかの実施形態においては、目的のアスカロシドの所望の置換基と同一である、1-OH位上の置換基を有するラムノース原材料、または所望の置換基への便利な合成前駆体であるラムノース原材料を利用することが望ましく、効率的であり得る。1-O-置換ラムノースを前駆体として使用する場合、アスカロシドを作製する方法は、1-O-置換ラムノースの直接的な反応で開始することができる、またはラムノースを1-O-置換ラムノースに変換する第1の工程を含むことができる。OHをO-Zに変換する方法は、1-O-置換ラムノースがZ置換基に依存することが条件で、通常、当該技術分野において既知である。
【0128】
使用前に、本発明の組成物内で使用するアスカロシドを水に溶解させて、アスカロシドの水溶液を形成してもよい。ただし、アスカロシドの種類によっては、水への溶解性に限界がある。したがって、最初に、水混和性であり、ヒトが消費することを意図した植物原料にて使用するのに許容できる共溶媒中にアスカロシドを溶解することが必要となり得る。各種の水混和性溶媒が知られており、この目的のために使用可能である。好ましい共溶媒は、エタノールである。別の好ましい共溶媒は、プロピレングリコールである。水混和性溶媒は、食品グレード溶媒であってよい。一実施形態では、エタノールまたはプロピレングリコールに溶解させたアスカロシドの原液を調製できる。この原液を好適な量の水に添加して、アスカロシドの水溶液を調製する。本明細書で使用する場合、「水溶液」としては、溶媒としての水を主に含み、1種以上の共溶媒を、最大約45容量%、最大約40容量%、最大約35容量%、最大約30容量%、最大約25容量%、最大約20容量%、最大約15容量%、最大約10容量%、最大約5容量%、最大約1容量%または最大約0.1容量%の量で所望により含有する溶液が挙げられる。
【0129】
一実施形態では、植物の種子を、アスカロシド溶液(例えば、1種以上のアスカロシドの水溶液)で、アスカロシド溶液中に種子を浸漬することによって処理してもよい。種子は、アスカロシドが種子中に入ることを可能にするのに十分な時間、アスカロシド溶液中に浸漬される。典型的には、種子は、約1分間~約12時間(例えば、約5分~約6時間、または約30分~約3時間、または約6時間~約12時間)浸漬されるが、このような時間は限定することを意図するものではなく、より長いまたは短い時間の範囲が、いくつかの実施形態において、用いられることができる。特定の実施形態では、種子は、1種以上のアスカロシドを含有する溶液中に、約1分間、約5分間、約10分間、約20分間、約30分間、約45分間、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間または約12時間浸漬される。
【0130】
種子の重量の変化を用いて、アスカロシドが種子中に入ることを可能にするのに十分な時間、種子がアスカロシド溶液中に浸漬されているかどうかを決定することができる。アスカロシド溶液中に種子を浸漬する前に、種子を計量して、種子の「乾燥重量」を決定する。続いて、種子をアスカロシド溶液中に、所定の時間(例えば、上記時間)浸漬する。種子をアスカロシド溶液から取り出し、乾燥させて、種子表面上の水分の全てまたは一部を除去する。乾燥させた種子を計量して、アスカロシド溶液中に浸漬した間に種子に吸収された水量を決定する。種子の重量の実質的な正の変化は、種子によって吸収されたアスカロシド溶液を示唆する。2%を超える、3%を超える、4%を超える、5%を超える、6%を超える、8%を超える、10%を超える、12%を超える、15%を超える、または20%を超える重量の変化は、十分な量のアスカロシド溶液が吸収されたことを示唆する。
【0131】
アスカロシド溶液は、0.001mM~約1.0mMの範囲(例えば、約0.01mM~約0.5mM、約0.1mM~約0.5mM、または約0.5~約1mM)のアスカロシド濃度を有する。アスカロシド溶液が2種以上のアスカロシドを含有する場合、用語「アスカロシド濃度」は、溶液中の全てのアスカロシドの総濃度を示す。種子を処理するのに使用されるアスカロシド溶液中の、例示的なアスカロシド濃度としては、0.001mM、0.005mM、0.01mM、0.05mM、0.1mM、0.5mM及び1.0mMが挙げられる。
【0132】
一実施形態では、植物の種子は、アスカロシド種子コーティング配合物(例えば、1種以上のアスカロシドを含有する液体または粉末組成物)で処理されてよい。種子コーティングは、種子上に組成物を噴霧する、または組成物とともに種子を撹拌するなど、任意の既知の手段によって達成されてよい。浸漬と対照的に、これらの方法は通常、最小限の量の液体を使用する。適用後に、通常、種子を乾燥させて、保管及び輸送時に安定である、発芽可能な処理済みまたはコーティング済みの種子が提供される。特定の実施形態では、このような種子処理は、約0.01ppm~約100ppmのアスカロシド含有重量を有する処理済みの種子を提供する割合で適用される。特定の実施形態では、このような種子は、約0.1~約10ppmのアスカロシドを含む。特定の実施形態では、このような種子は、約0.2~約5ppmのアスカロシドを含む。特定の実施形態では、このような種子は、約1~約10ppmのアスカロシドを含む。特定の実施形態では、このような種子は、約2~約5ppmのアスカロシドを含む。特定の実施形態では、このような種子は、約0.1~約1ppmのアスカロシドを含む。特定の実施形態では、このような種子は、約0.5~約2.5ppmのアスカロシドを含む。特定の実施形態では、上記方法は、種子を処理することと、処理済みの種子を乾燥させることと、種子を保管することと、処理済みの種子からスプラウトを生産する前に、所望により生産施設へ種子を運搬することと、を含む。
【0133】
スプラウト栽培の典型的な工程において、種子の含水量を高め、種子を静止状態から抜け出させるために、種子を水中に浸漬する。したがって、スプラウト生産のこの浸漬工程中に、種子をアスカロシド組成物で処理することが簡便であり得る。続いて、種子を容器から取り出すことなく、定期的に水ですすぐことを可能にする容器中に、種子を入れる。種子の種別に応じて、種子を通常、1日につき2~4回すすぐ。これにより、種子が発芽し、生長するのに十分な水分が供給される。特定の実施形態では、これらのすすぎの1回以上にアスカロシドが含まれてよい。種子と関連する植物の種別に応じて、スプラウトは、約5~8センチメートルに生長した後に栽培される。前述したように、消費用のスプラウトを生産するこのプロセスは、細菌の増殖を引き起こす可能性がある。
【0134】
栽培され、消費されるスプラウトには、多くの異なる種類がある。食用スプラウトの一般的クラスの例としては、豆類スプラウト、穀物類スプラウト、油料種子類スプラウト、キャベツ類スプラウト、パセリ類スプラウト、タマネギ類スプラウト、野菜のスプラウト及びハーブのスプラウトが挙げられるが、これらに限定されない。豆類スプラウトの例としては、緑豆スプラウト、大豆スプラウト、アルファルファスプラウト、クローバースプラウト、コロハ種子スプラウト、レンズマメスプラウト、エンドウスプラウト及びヒヨコマメスプラウトが挙げられるが、これらに限定されない。穀物類スプラウトの例としては、オート麦スプラウト、トウモロコシスプラウト、米スプラウト、大麦スプラウト及びライ麦スプラウトが挙げられるが、これらに限定されない。油料種子類スプラウトの例としては、ゴマスプラウト、ヒマワリスプラウト、アーモンドスプラウト、ヘーゼルナッツスプラウト、麻スプラウト、亜麻仁スプラウト及びピーナッツスプラウトが挙げられるが、これらに限定されない。キャベツ類スプラウトの例としては、ブロッコリースプラウト、キャベツスプラウト、クレソンスプラウト、マスタードスプラウト、水菜スプラウト、ラディッシュスプラウト、大根スプラウト、キバナスズシロスプラウト、タアサイスプラウト及びカブスプラウトが挙げられるが、これらに限定されない。パセリ類スプラウトの例としては、ニンジンスプラウト、セロリスプラウト、ウイキョウスプラウト及びパセリスプラウトが挙げられるが、これらに限定されない。タマネギ類スプラウトの例としては、タマネギスプラウト、ニラスプラウト、エシャロットスプラウトが挙げられるが、これらに限定されない。野菜及びハーブのスプラウトの例としては、ホウレンソウスプラウト、レタススプラウト、マリアアザミスプラウト及びレモングラススプラウトが挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
本発明の一実施形態では、食用スプラウトの形成に使用できる植物からの種子を、アスカロシド溶液中に浸漬することで、スプラウトの生長及び栽培の間、スプラウト中、及びスプラウト表面上の病原菌の形成を抑制することができることが見いだされている。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むわけではないが、アスカロシドによる処理の保護効果は、アスカロシドの存在下での植物防御遺伝子の上方制御に起因すると考えられている。
【0136】
バイオフィルム形成は、敵対的な環境条件に対して、細菌が用いる主要な防御戦略の1つである。細菌によるスプラウトの外部または内部でのバイオフィルム形成によって、病原菌がコロニーを作り、繁殖することができる保護された環境が提供され得る。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むわけではないが、アスカロシドは、細菌のバイオフィルム形成能力に影響を及ぼすことができると考えられている。アスカロシドは、バイオフィルム形成を阻害することによって、細菌の主要な防御機構の1つを取り除くことができる。
【0137】
アスカロシド溶液を用いた種子または植物の処理によって、各種のヒト病原菌を制御することができる。制御され得る細菌の例としては、Salmonella enterica、Salmonella serovar Muenchen、Salmonella Saintpaul、Escherichia coli O157:H7、Escherichia coli O157:NM、Escherichia coli O121、Escherichia coli O104:H4及びListeria monocytogenesが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
アスカロシド溶液への浸漬後の、種子の重量変化に基づき、アスカロシド溶液への浸漬後、種子による約0.01~約100ppmのアスカロシド吸収が起こっていると理論づける。種子中のアスカロシドの吸収量は、アスカロシド溶液中のアスカロシド濃度と、浸漬の継続時間との関数である。したがって、処理済みの種子中に存在するアスカロシドの量を、これらのパラメータを調整することによって変化させることができる。典型的には、周囲温度及び周囲圧力にて、種子をアスカロシド溶液中に浸漬する。いくつかの実施形態では、周囲温度及び/または周囲圧力よりも高い温度及び/または圧力にて、種子をアスカロシド溶液中に浸漬してもよい。周囲温度及び/または周囲圧力よりも高い温度及び/または圧力での種子の処理は、種子中及び/または種子表面上に存在し得る一部のまたは全てのヒト病原菌を死滅させる可能性がある。
【0139】
アスカロシド溶液で種子を処理する方法は、スプラウト生産に使用されることとなる種子の処理に特に有用であると同時に、作物種子の処理にもまた使用することができる。アスカロシド溶液で処理できる種子を有する作物としては、トウモロコシ、小麦、米、大豆、トマト、レタス、ジャガイモ、大麦、及び豆類が挙げられるが、これらに限定されない。作物の種子を処理する方法は、スプラウト種子の種子を処理する方法と同様である。作物の種子は、アスカロシドが種子中に入ることを可能にするのに十分な時間、アスカロシド溶液中に浸漬される。浸漬の時間と組成物及びアスカロシド溶液の濃度とは、上記の内容と同様、または同一である。アスカロシド溶液による処理後、特定の作物に典型的な方法で、種子を地面に植え付けてよい。アスカロシド溶液で処理した種子から栽培される作物は、ヒト病原菌、ならびに植物の健康または生長に影響を及ぼし得る細菌及び真菌への、より良好な抵抗力を示すことができる。
【0140】
スプラウト生産の代替的方法では、食用スプラウトの生産に使用される植物からの種子を、種子を静止状態から抜け出させる(すなわち、種子が発芽し始める)のに十分な時間、種子をアスカロシド溶液中に浸漬することによって処理する。この方法では、アスカロシド溶液に最初に浸漬することにより、種子中へのアスカロシドの浸透と、スプラウト形成プロセスの最初の工程との両方が達成される。種子が確実に発芽状態になるために十分な時間、浸漬した後、種子を、スプラウト形成のために適切な容器中に入れる。続いて、スプラウトが適当な長さに達するまで、種子を定期的にすすぐ。スプラウト生産に関する代替的方法では、アスカロシドは、スプラウトを定期的にすすぐために使用する水中に含まれる。アスカロシドは、各すすぎ中に、1回のみのすすぎ中に、または何回かのすすぎ中(すなわち、アスカロシドを用いる1回以上の処理と、アスカロシドを用いない1回以上の処理とを交互に行う)に存在してよい。
【0141】
アスカロシド溶液による種子の処理は、予想外にも、種子の発芽率を上昇させ、植物の生長及び成熟を加速させると見いだされた。別の実施形態では、スプラウト生産または作物生産のために使用される植物の種子を、発芽率を上昇させ、得られる植物の生長を加速させるために、アスカロシド溶液によって処理する。他の実施形態と同様に、作物の種子は、1種以上のアスカロシドが種子中に入ることを可能にするのに十分な時間、アスカロシド溶液中に浸漬される。アスカロシド溶液による処理後、必要に応じて、スプラウト生産または作物生産のために種子を使用する。種子の発芽率の上昇、ならびに得られる植物の生長及び成熟の加速は、変動し得る。いくつかの実施形態では、発芽率の有意な上昇が観察される。いくつかの実施形態では、発芽する所与の試料内での、発芽種子のパーセンテージ(発芽していない種子と対比して)の有意な上昇が観察される。いくつかの実施形態では、植物の生長及び/または成熟の速度の有意な上昇が観察される。
【0142】
別の実施形態では、アスカロシド溶液を植物上に噴霧する場合、アスカロシド溶液は、ヒト病原菌増殖及び/または植物の健康もしくは生長に影響を及ぼし得る細菌及び真菌の抑制に有効であることが分かっている。植物を処理するために使用するアスカロシド溶液は、一旦植物が生長し始めている場合は、種子を処理するために使用するアスカロシド溶液の濃度よりも、実質的に低い濃度を有してよい。典型的な作物またはスプラウトでは、これらの植物の噴霧処理に使用するアスカロシド溶液は、約1ppb~約50ppmの範囲である。例えば、植物の噴霧処理に使用するアスカロシドの濃度は、1ppb、10ppb、50ppb、100ppb、250ppb、500ppb、1ppm、2ppm、3ppm、5ppm、10ppm、15ppm、20ppm、25ppm、30ppm、40ppmまたは50ppmであってよい。
【0143】
アスカロシド溶液による種子の処理は、驚くべきことに、少なくとも6週間、細菌及び真菌の汚染に対する保護を提供する。これは、作物を得るのに1ヵ月以上必要となる作物に、特に有用である。アスカロシド溶液のこの性質は、作物にとって、極めて有効な予防策となり得る。多量の種子へのアスカロシド溶液の適用は、作物の畑全体に噴霧するよりも、はるかに実施しやすい。いくつかの実施形態では、アスカロシド溶液を用いた種子の処理は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、または少なくとも6週間、細菌及び真菌の汚染に対する強化された保護を提供することができる。
【0144】
葉物野菜の中でも、ベビーリーフ類は人気が高まっている。定義は異なるが、これらの作物は、本葉の発生後ではあるが、8葉期の前に収穫される野菜として最もよく定義される。米国において、ベビーリーフサラダミックス用に、レタス、ホウレンソウ、マスタードの葉、タイサイ(パクチョイとしても知られる)、ケール、キバナスズシロ及びビートの葉を含む、多様な葉物野菜サラダ作物が栽培されている。ベビーリーフの葉は、手で、外側の最も成熟した葉を切る、または摘まむことによって通常収穫される。収穫の間に葉に引き起こされた損傷は、病原体が植物の内部組織を汚染するのに侵入しやすいポイントになり、このポイントで、これらの病原体は、収穫後の殺菌用洗浄からさえも保護されたままとなる場合がある。葉物野菜を生産するのに使用される植物の種子を、アスカロシド溶液によって処理し、植物の収穫後に病原体汚染から保護することができる。植物の種子の処理によってもたらされる保護は、その植物の葉の収穫中の日和見病原体汚染を最小限に抑え得る。このような保護はまた、植物の生長後に、葉上にアスカロシド溶液を噴霧することによって植物に付与されてもよい(種子をアスカロシド溶液で処理することに加えて任意で行うことができる、または未処理の種子から生長した植物に実施することができる)。
【0145】
マイクログリーンは、植え付けの7~14日後に、最初の本葉が生え始めるときに収穫される食用植物の幼植物であり、したがって食物媒介性病原菌を運搬する可能性など、スプラウトと葉物野菜との両方の特性を共有する。葉物野菜と同様に、マイクログリーンもまた、手で土壌との境界線のすぐ上を切って収穫され、同じように病原体汚染を受けやすい。一実施形態では、マイクログリーンを生産するのに使用される植物の種子を、アスカロシド溶液によって処理し、植物を収穫後に病原体汚染から保護することができる。このような保護は、マイクログリーンを収穫する間の、日和見病原体汚染を最小限に抑えることができる。このような保護はまた、マイクログリーン生産に使用される植物に、植物の生長後に、葉上にアスカロシド溶液を噴霧することによって付与されてもよい。ここでも、このような葉への適用は、アスカロシド溶液を用いた種子の処理に加えて任意で行うことができ、または未処理の種子から生長した植物に実施することができる。
【0146】
本明細書で提供される種子の処理及び葉の処理は、植物の初期のライフサイクル全体にわたって病原体汚染を低減させる、または予防すると示されている。さらに、植物自体は、収穫及び虫による外傷が生じた場合、病原体汚染から保護されていると示されている。上記のように、アスカロシドによる種子及び植物の処理は、植物の防御遺伝子を上方制御し、植物が病原体汚染から自衛することを可能にすると思われる。この種の長期的な保護は、スプラウトの形態または葉の形態にかかわらず、植物の食用製品が確実に保護される助けとなる。
【0147】
加えて、本明細書で提供される種子の処理及び葉の処理は、付加的な種類の処理を必要とせずに、病原体汚染を低減させる、または予防すると示されている。本明細書で提供される種子の処理及び葉の処理は、実施される唯一の病原体低減処理であり得る一方で、他の実施形態においては、これらの処理は、病原体を低減させる、または排除するための1種以上の既知の方法、例えば酸性電気分解水、オゾン処理水、二酸化塩素、リン酸三ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム(サラシ粉)及び次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)による処理が挙げられるが、これらに限定されない方法と同時に使用可能である。
【実施例
【0148】
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を例示し、限定することを意図するものではない。
【0149】
Salmonella enterica汚染を防ぐための、ascr#18によるアルファルファ種子の処理
この試験では、Salmonella entericaの増殖を防ぐことにおける、ascr#18による種子処理の有効性を評価する。この実験は、ヒトにおけるスプラウト関連食中毒の原因であると知られる、Salmonella entericaの菌株を、アスカロシド処理済みの発芽可能種子及び未処理の発芽可能種子に、人工的に植菌することによって生じる汚染レベルを比較することによって行う。
【0150】
Salmonella enterica血清型Stanley、これはヒト消化管感染のアルファルファスプラウトに関連する発生から、以前に分離されたものであった。種子を、Appl.Environ.Microbiol.2017;83(7):e03170-16 doi:10.1128/AEM.03170-16及びJ.Food Prot.(2020)83(7):1218-1226(doi:10.4315/JFP-20-021)に記載されているように植菌し、評価し、繁殖させた。これらの各文献の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。最初に、アルファルファ種子(Medicago sativa)を消毒してバックグラウンド微生物相を不活性化し、続いて各種濃度のascr#18(例えば、0.1~1000uM)を含有する溶液中、またはascr#18が欠如している模擬溶液中に浸漬する。続いて、滅菌した砂土と種子を混合し、J.Food Prot.(2020)83(7):1218-1226に記載されるように、10CFUの、冷凍乾燥させたナリジクス酸耐性(NA)Salmonella細胞を植菌した。続いて、植菌したアルファルファ種子及び植菌していない対照種子(それぞれ1g)を、0.0mM(模擬溶液)、0.001mMまたは1.0mMのascr#18を含む溶液中に浸漬し、室温で20分間インキュベートした。ascr#18原液は、エタノール中にacr#18を溶解することによって調製し、蒸留水中に濃縮原液を適切な比率で希釈して提供し、種子浸漬実験用の濃度を提供した。エタノールによって引き起こされる何らかの作用を考慮するために、2つの模擬処理体は、2つのascr#18処理体のエタノールと等しい量のエタノールを含有した。滅菌蒸留水で処理した種子を、追加の対照として含めた。浸漬した種子の分析により、アルファルファ種子は、20分間の処理中に、それらの乾燥重量の約8~10重量%を得ており、これはそれぞれ0.001mM及び1.0mM溶液で処理した種子中に、約0.03及び30ppmのascr#18が吸収されたことを意味すると示された。
【0151】
異なる処理からの、Salmonellaを植菌したアルファルファ種子をプレートに置き、7日間生長するままとした。試料を、微生物分析のために1日おきに採取した。各試料につき5点の幼植物を収穫して破砕し、処理した試料からの10倍段階希釈液を、Bismuth Sulfite Agar(BSA)またはNA改質Tryptic Soy Agar(NA-TSA)培地上に置き、Salmonellaの個体数を定量化した。Salmonella細胞の数が検出限界未満であった場合は、エンリッチメント分析を行った。2回の独立した試験を実施し、Fisherの最小有意差試験(95%の信頼区間)を使用して分析し、スプラウトから回収したSalmonella個体数(スプラウト組織のlog CFU/g)の差を決定した。植菌した種子及び植菌していない対照種子を、J.Food Prot.(2020)83(7):1218-1226に記載されているように、発芽させ、生長させ、試料採取し、Salmonellaの存在について分析した。
【0152】
結果を図1に提示する。2種の模擬溶液を対照として使用した。模擬溶液1は、0.001mMのascr#18溶液に存在するエタノール濃度に相当するエタノールの水溶液である。模擬溶液2は、1.0mMのascr#18溶液に存在するエタノール濃度に相当するエタノールの水溶液である。1.0mM溶液(30ppmのascr#18吸収量と関連)で処理したアルファルファ種子からのスプラウト上のSalmonella数は、NA-TSA上に置いたとき、対応する溶媒対照(模擬溶液2)または水のみで処理した種子のスプラウト上の菌数よりも、5.91~7.21log CFU/g低かった。NA-TSAプレートと同様に、BSAプレート上の、1.0mMのascr#18溶液での種子処理からのSalmonella数は、対照よりも5.61~7.27log CFU/g低いことが判明した(結果は図示せず)。両培地において、1.0mMのascr#18溶液で処理した試料のSalmonella数は、濃縮後さえも検出限界より低く、これはSalmonella細胞が検出可能でないことを意味した。0.001mMのascr#18溶液を用いた種子の処理は、1.0mMのascr#18溶液よりも効果が弱かったが、対応する溶媒対照(模擬溶液1)と比較した場合、依然として、NA-TSA上の0.11~2.34log CFU/g及びBSA上の0.03~2.01log CFU/gの範囲のSalmonellaレベルの多少の低減を示した。独立した実験において、ascr#18溶液を用いた処理は、別の発生関連菌株、Salmonella enterica血清型Cubanaを植菌したアルファルファスプラウト上に、同様のレベルの汚染抑制をもたらした(結果は図示せず)。
【0153】
ascr#18を用いた種子の処理は、栽培されたスプラウトにおいて、未処理の対照と比較して、Salmonella汚染を防ぐのに有効であると判明した。
【0154】
種子の処理に使用されるアスカロシドはまた、適用後、植物中での短い半減期を有し、それらの持続的な作用は、防御プライミングの活性化の結果であり、有効成分が絶えず存在することによるものではないと判明した。生産されるスプラウトのascr#18含有量は、種子処理レベルよりも1000倍低いため、これらの結果は有望である。市販用スプラウト生産に必要な最小の有効な適用割合は、これらの試験に使用される割合よりも低いと思われるため、市販用の設定における残留ascr#18レベルは、さらにいっそう低いであろうと予想される。
【0155】
植物中の防御反応を活性化するその他の製品とは異なり、アスカロシドによる処理は、植物生育量に負の影響を与えない。反対に、アスカロシドは、発芽を増強し、一部の作物の生長及び成熟を加速させることが分かっている。
【0156】
アルファルファ中の防御遺伝子発現を活性化するAscr#18
ascr#18に基づく種子処理の保護効果が、植物防御遺伝子の上方制御に起因するかどうかを評価するために、アルファルファ種子を、上記のようにascr#18で処理し、7日間生長させた。スプラウト組織を、qRT-PCRによって、サイクリン依存性プロテインキナーゼ阻害剤(遺伝子A)、RPM1(遺伝子B)、NACドメイン含有タンパク質72(遺伝子C)、サリチル酸カルボキシルメチルトランスフェラーゼ3(遺伝子D)、RPV1様(遺伝子E)、PR-1様(遺伝子F)、及びジンクフィンガー転写因子(遺伝子G)などの植物防御マーカー遺伝子の発現について分析した。試験結果を図2に提示する。Ascr#18処理は7遺伝子全ての発現を増強し、そのうち3遺伝子は、統計的に有意なレベルの増強であった。これらの結果は、ascr#18に基づく処理による、アルファルファ中の防御反応の長期的な活性化を示している。これらの遺伝子の発現は、RNA分析のために収穫する24時間前に、1μMのascr#18を噴霧した7日齢アルファルファ植物においても上方制御された(結果は図示せず)。
【0157】
処理済み種子に由来するスプラウト上の残留Ascr#18の決定
上記のように、1.0mMのascr#18溶液によって処理した種子から栽培される、7日齢スプラウト中に存在するascr#18残留レベルを評価するために、予備試験を実施した。収穫したスプラウトを、冷凍乾燥させ、破砕し、80:20のメタノール:水によって抽出し、その後、質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィー(LC-MS)によって分析した。これらのスプラウト中で、微量のascr#18(約30ppb)のみが検出され得た。これは、アスカロシドが、適用後、植物中での短い半減期を有し、それらの持続的な作用は、防御プライミングの活性化の結果であり、有効成分が絶えず存在することによるものではないと示した先の試験と一貫している。生産されるスプラウトのascr#18含有量は、種子処理レベルよりも1000倍低いため、これらの結果は有望である。市販用スプラウト生産に必要な最小の有効な適用割合が、これらの試験に使用される割合よりも低いと思われるため、市販用の設定における残留ascr#18レベルは、この実験で見いだされるレベルよりも、さらにいっそう低いであろうと予想される。
【0158】
発芽を促進し、幼植物生育量を高めるアスカロシドascr#18
植物中の防御反応を活性化するその他の製品とは異なり、ascr#18による処理は、植物生育量に負の影響を与えない。反対に、ascr#18は、発芽を増強し、一部の作物の生長及び成熟を加速させることが分かっている。米の種子を、模擬溶液または1μMのascr#18溶液に浸漬することにより処理した。植え付け後4日目、5日目、6日目及び7日目に、出芽を測定した(図3A)。植え付け後10日目に、植物の高さを測定した(図3B)。(データは、平均±SEMである(n≧21)。***P≦0.0004;両側t検定)。図3に示すように、ppbレベルのascr#18による米種子の処理により、発芽及び植物生長の増強がもたらされた。トマト及びArabidopsisからも、同様の結果が得られた(結果は図示せず)。予備分析は、ascr#18処理が、アルファルファの発芽、生長及び生育量に負の影響を及ぼさないことを示唆している(結果は図示せず)。
【0159】
処理済み種子からの植物上で、出芽後少なくとも6週間続くascr#18の保護効果
ascr#18に基づく種子処理によって引き出される防御反応が持続するかどうかを決定するために、植え付け前にascr#18で処理した種子から生長した6週齢のトマト植物において、卵菌類病原体Phytophthora infestansに対する耐性への影響を測定した。試験結果を図4に提示する。図4Aは、トマト植物(cv.Sweet hybrid 100)種子へのascr#18処理の、卵菌類病原体によって引き起こされた病変サイズへの効果を示す。種子を0μM、0.01μM、0.1μM及び1μMのascr#18で処理した。図4Bは、0、0.1及び0.01μMのascr#18で処理したトマト植物(cv.M82)種子から生産される植物上の、病変サイズへの影響を示す。両試験からの6週齢の植物に、P.infestansを植菌した。病変サイズを、5dpiで測定した。**p<0.005;***p<0.0005;****p<0.00005;両側t検定。増強された保護は、芽胞嚢病変サイズの縮小によって示されるように、感染の24時間前に、ascr#18を噴霧した/に浸した、6週齢の植物において達成された保護と同様であった。同様の試験において、ascr#18溶液による大豆種子の処理は、大豆植物において、少なくとも3~4週間、Pseudomonas syringae、Phytophthora sojae及びSoybean Mosaic Virusに対する保護をもたらした(結果は図示せず)。
【0160】
本出願の組成物、システム、デバイス、方法、及びプロセスは、本開示に記載される実施形態からの情報を使用して開発された、変形及び適合を包含すると考慮される。本明細書に記載される方法及びプロセスの適合または変更は、関連技術の当業者によって行われ得る。
【0161】
本開示における見出しの使用は、読者の便宜のために提供されると理解されよう。見出しの存在及び/または配置は、本明細書に記載される主題の範囲を限定することを意図するものではない。別段の指定がない限り、本出願の1つのセクションに位置する実施形態は、本出願の全体を通じて、単独及び組み合わせの両方で、他の実施形態に適用される。
【0162】
本明細書全体を通して、組成物、化合物もしくは生成物が、特定の構成成分を有する、含有する(including)、もしくは含む(comprising)と説明される場合、またはプロセス及び方法が特定のステップを有する、含有する(including)、もしくは含む(comprising)と説明される場合、付加的に、列挙された構成成分から本質的になる、またはそれらからなる本出願の物品、デバイス、及びシステムが存在すること、及び列挙された処理ステップから本質的になる、またはそれらからなる本出願によるプロセス及び方法が存在することが企図される。
【0163】
ステップの順序またはある特定の動作を行うための順序は、記載の方法が動作可能である限りは、重要でないことを理解されたい。さらに、2つ以上のステップまたは動作を、同時に実行してもよい。
【0164】
本明細書で言及する全ての刊行物及び特許出願は、本発明が属する分野の当業者のレベルを示す。全ての刊行物及び特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が、参照により具体的かつ個別に組み込まれることが示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0165】
前述の発明は、理解を明確にする目的で実例及び例としてある程度詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲内である特定の変更及び修正を実施してもよいことは明白であろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
【国際調査報告】