(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20241226BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20241226BHJP
C23C 22/00 20060101ALI20241226BHJP
C21D 8/12 20060101ALI20241226BHJP
H01F 1/16 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/04
C23C22/00 A
C21D8/12 A
H01F1/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536315
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 KR2022020650
(87)【国際公開番号】W WO2023113562
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0181911
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ボンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョンウ
(72)【発明者】
【氏名】ノ,テヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドンギュ
【テーマコード(参考)】
4J040
4K026
4K033
5E041
【Fターム(参考)】
4J040EF051
4J040EF281
4J040HA136
4J040HA196
4J040HA256
4J040HA356
4J040NA19
4K026AA03
4K026AA22
4K026BA01
4K026BB05
4K026CA16
4K026CA39
4K026DA02
4K033AA01
4K033QA01
4K033QA02
4K033RA03
4K033SA04
4K033TA03
5E041BD09
5E041CA04
5E041HB14
(57)【要約】
【課題】溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を用いず、電磁鋼板を接着(締結)できる融着層を形成した電磁鋼板積層体を提供する。
【解決手段】本発明の電磁鋼板接着コーティング組成物は、ポリウレタン樹脂および無機顔料を含み、ポリウレタン樹脂100重量部を基準に、無機顔料は、20ないし150重量部を含み、ポリウレタン樹脂は、下記の化学式1で表される芳香族ジイソシアネートモノマーおよびポリオールが反応して形成されるものであることを特徴とする。
前記の化学式1で、R
1ないしR
5のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、R
6ないしR
10のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、R
3およびR
8が同時にイソシアネート基の場合は除外される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂および無機顔料を含み、
前記ポリウレタン樹脂100重量部を基準に、前記無機顔料は、20ないし150重量部を含み、
前記ポリウレタン樹脂は、下記の化学式1で表される芳香族ジイソシアネートモノマーおよびポリオールが反応して形成されるものであることを特徴とする電磁鋼板接着コーティング組成物。
前記の化学式1で、
R
1ないしR
10は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換または非置換されたC1ないしC10アルキル基、置換または非置換されたC6ないしC20アリール基、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、
R
1ないしR
5のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、
R
6ないしR
10のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、
R
3およびR
8が同時にイソシアネート基の場合は除外され、
Lは、置換または非置換されたC1ないしC10アルキレン基、置換または非置換されたC2ないしC10アルキニレン基、置換または非置換されたC6ないしC20アリレン基、または、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリレン基であり、
nは、1ないし10のうちのいずれか一つの整数である。
【請求項2】
前記の化学式1で、R
1ないしR
5のうちのいずれか一つはイソシアネートであり、R
6ないしR
10のうちのいずれか一つはイソシアネートであり、
R
3およびR
8が同時にイソシアネートである場合は除外され、
R
1およびR
10が同時にイソシアネートである場合がさらに除外されることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
【請求項3】
前記の化学式1で、
R
1ないしR
5のうちのいずれか一つはイソシアネートであり、R
6ないしR
10のうちのいずれか一つはイソシアネートであり、
R
1ないしR
5のうちのいずれか一つおよびR
6ないしR
10のうちのいずれか一つがLを中心に対称であり、同時にイソシアネートである場合がさらに除外されることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
【請求項4】
前記の化学式1で表される芳香族ジイソシアネートモノマーは、下記の化学式2で表されるものであることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
前記の化学式2で、
Lは、置換または非置換されたC1ないしC10アルキレン基、置換または非置換されたC2ないしC10アルキニレン基、置換または非置換されたC6ないしC20アリレン基、または、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリレン基である。
【請求項5】
前記ポリオールは、下記の化学式3で表示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
前記の化学式3で、
R’は、置換または非置換されたC1ないしC10アルキル基、置換または非置換されたC6ないしC20アリール基、または、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリール基である。
【請求項6】
前記ポリウレタン樹脂は、前記芳香族ジイソシアネートモノマーを30ないし50重量%および前記ポリオールを50ないし70重量%含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
【請求項7】
前記無機顔料は、硫酸バリウム(Ba
2SO
4)、二酸化チタン(TiO
2)、Clay(Al
2Si
2O
5(OH)
4)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、シリカ(SiO
2)、タルク(3MgO・4SiO
2・H
2O)からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
【請求項8】
カップリング剤、湿潤剤、硬化剤および硬化触媒からなる群より選択される1種以上をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
【請求項9】
前記カップリング剤は、前記混合樹脂100重量部を基準に、0.2重量部ないし3重量部を含むことを特徴とする請求項8に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
【請求項10】
前記硬化剤は、前記混合樹脂100重量部を基準に、0.5重量部ないし2重量部を含むことを特徴とする請求項8に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
【請求項11】
前記硬化触媒は、前記混合樹脂100重量部を基準に、0.1重量部ないし1重量部を含むことを特徴とする請求項8に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
【請求項12】
前記湿潤剤は、前記混合樹脂100重量部を基準に、0.05重量部ないし0.5重量部を含むことを特徴とする請求項8に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
【請求項13】
複数の電磁鋼板と、
前記複数の電磁鋼板の間に位置する融着層と、を含み、
前記融着層は、ポリウレタン樹脂および無機顔料を含み、
前記ポリウレタン樹脂100重量部を基準に、前記無機顔料は、20ないし150重量部を含み、
前記ポリウレタン樹脂は、下記の化学式1で表される芳香族ジイソシアネートモノマーおよびポリオールが反応して形成されるものであることを特徴とする電磁鋼板積層体。
前記の化学式1で、
R
1ないしR
10は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換または非置換されたC1ないしC10アルキル基、置換または非置換されたC6ないしC20アリール基、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、
R
1ないしR
5のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、
R
6ないしR
10のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、
R
3およびR
8が同時にイソシアネート基の場合は除外され、
Lは、置換または非置換されたC1ないしC10アルキレン基、置換または非置換されたC2ないしC10アルキニレン基、置換または非置換されたC6ないしC20アリレン基、または、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリレン基であり、
nは、1ないし10のうちのいずれか一つの整数である。
【請求項14】
電磁鋼板の一面または両面に接着コーティング組成物を塗布した後、硬化して接着コーティング層を形成するステップと、
前記接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して融着層を形成するステップと、を含み、
前記接着コーティング組成物は、ポリウレタン樹脂および無機顔料を含み、
前記ポリウレタン樹脂100重量部を基準に、前記無機顔料は、20ないし150重量部を含み、
前記ポリウレタン樹脂は、下記の化学式1で表される芳香族ジイソシアネートモノマーおよびポリオールが反応して形成されるものであることを特徴とする電磁鋼板積層体の製造方法。
前記の化学式1で、
R
1ないしR
10は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換または非置換されたC1ないしC10アルキル基、置換または非置換されたC6ないしC20アリール基、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、
R
1ないしR
5のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、
R
6ないしR
10のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、
R
3およびR
8が同時にイソシアネート基の場合は除外され、
Lは、置換または非置換されたC1ないしC10アルキレン基、置換または非置換されたC2ないしC10アルキニレン基、置換または非置換されたC6ないしC20アリレン基、または、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリレン基であり、
nは、1ないし10のうちのいずれか一つの整数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法に係り、より詳しくは、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を用いず、電磁鋼板を接着(締結)できる融着層を形成した電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法に関するものであり、具体的に、本発明の一実施例は、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板積層体の接着力および騒音抑制の特性を向上させた電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は、圧延板上のあらゆる方向に磁気的特性が均一な鋼板であって、モータ、発電機の鉄芯、電動機、小型変圧機などに幅広く使用されている。
電磁鋼板は、打ち抜き加工後、磁気的特性の向上のために応力除去焼鈍(SRA)を実施しなければならないものと、応力除去焼鈍による磁気的特性効果より熱処理による経費損失が大きい場合、応力除去焼鈍を省略するものの2種類の形態に区分することができる。
【0003】
絶縁被膜は、モータ、発電機の鉄芯、電動機、小型変圧機など積層体の仕上げ製造工程でコーティングにより形成される被膜であって、通常渦電流の発生を抑制する電気的特性が要求される。その他にも、連続打ち抜き加工性、耐粘着性および表面密着性などが要求される。連続打ち抜き加工性とは、所定の形状に打ち抜き加工後、複数を積層して鉄芯を作るとき、金型の摩耗を抑制する能力を意味する。耐粘着性とは、鋼板の加工応力を除去して磁気的特性を回復させる応力除去焼鈍過程後、鉄芯鋼板間で密着しない能力を意味する。
【0004】
このような基本的な特性の他に、コーティング溶液の優れた塗布作業性と、配合後に長時間使用可能な溶液安定性なども要求される。このような絶縁被膜は、溶接、クランピング、インターロッキングなど別途の締結方法を用いてこそ電磁鋼板積層体に製造することが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的とするところは、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を用いず、電磁鋼板を接着(締結)できる融着層を形成した電磁鋼板積層体を提供することにある。具体的に、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板間の接着力を向上させた電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電磁鋼板接着コーティング組成物は、ポリウレタン樹脂および無機顔料を含み、ポリウレタン樹脂100重量部を基準に、無機顔料は、20ないし150重量部を含み、ポリウレタン樹脂は、下記の化学式1で表される芳香族ジイソシアネートモノマーおよびポリオールが反応して形成されるものであることを特徴とする。
前記の化学式1で、
R
1ないしR
10は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換または非置換されたC1ないしC10アルキル基、置換または非置換されたC6ないしC20アリール基、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、
R
1ないしR
5のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、R
6ないしR
10のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、R
3およびR
8が同時にイソシアネート基の場合は除外され、Lは、置換または非置換されたC1ないしC10アルキレン基、置換または非置換されたC2ないしC10アルキニレン基、置換または非置換されたC6ないしC20アリレン基、または、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリレン基であり、
nは、1ないし10のうちのいずれか一つの整数である。
【0007】
化学式1で、R1ないしR5のうちのいずれか一つはイソシアネートであり、R6ないしR10のうちのいずれか一つはイソシアネートであり、R3およびR8が同時にイソシアネートである場合は除外され、R1およびR10が同時にイソシアネートである場合がさらに除外されることがよい。
化学式1で、R1ないしR5のうちのいずれか一つはイソシアネートであり、R6ないしR10のうちのいずれか一つはイソシアネートであり、R1ないしR5のうちのいずれか一つおよびR6ないしR10のうちのいずれか一つがLを中心に対称であり、同時にイソシアネートである場合がさらに除外されることがよい。
【0008】
化学式1で表される芳香族ジイソシアネートモノマーは、下記の化学式2で表されるものであることがよい。
前記の化学式2で、
Lは、置換または非置換されたC1ないしC10アルキレン基、置換または非置換されたC2ないしC10アルキニレン基、置換または非置換されたC6ないしC20アリレン基、または、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリレン基である。
ポリオールは、下記の化学式3で表示される化合物であってもよい。
前記の化学式3で、
R’は、置換または非置換されたC1ないしC10アルキル基、置換または非置換されたC6ないしC20アリール基、または、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリール基である。
【0009】
ポリウレタン樹脂は、芳香族ジイソシアネートモノマーを30ないし50重量%およびポリオールを50ないし70重量%含むことがよい。
無機顔料は、硫酸バリウム(Ba2SO4)、二酸化チタン(TiO2)、Clay(Al2Si2O5(OH)4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、シリカ(SiO2)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)からなる群より選択される1種以上であることがよい。
【0010】
本発明の電磁鋼板接着コーティング組成物は、カップリング剤、湿潤剤、硬化剤および硬化触媒からなる群より選択される1種以上をさらに含むことがよい。
カップリング剤は、混合樹脂100重量部を基準に、0.2重量部ないし3重量部を含むことができる。
【0011】
硬化剤は、混合樹脂100重量部を基準に、0.5重量部ないし2重量部を含むことができる。
硬化触媒は、混合樹脂100重量部を基準に、0.1重量部ないし1重量部を含むことがよい。
湿潤剤は、混合樹脂100重量部を基準に、0.05重量部ないし0.5重量部を含むことがよい。
【0012】
本発明の電磁鋼板積層体は、複数の電磁鋼板と、複数の電磁鋼板の間に位置する融着層と、を含み、融着層は、ポリウレタン樹脂および無機顔料を含み、ポリウレタン樹脂100重量部を基準に、無機顔料は、20ないし150重量部を含み、ポリウレタン樹脂は、下記の化学式1で表される芳香族ジイソシアネートモノマーおよびポリオールが反応して形成されるものであることを特徴とする。
前記の化学式1で、
R
1ないしR
10は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換または非置換されたC1ないしC10アルキル基、置換または非置換されたC6ないしC20アリール基、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、R
1ないしR
5のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、R
6ないしR
10のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、R
3およびR
8が同時にイソシアネート基の場合は除外され、Lは、置換または非置換されたC1ないしC10アルキレン基、置換または非置換されたC2ないしC10アルキニレン基、置換または非置換されたC6ないしC20アリレン基、または、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリレン基であり、nは、1ないし10のうちのいずれか一つの整数である。
【0013】
本発明の電磁鋼板積層体の製造方法は、電磁鋼板の一面または両面に接着コーティング組成物を塗布した後、硬化して接着コーティング層を形成するステップと、接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して融着層を形成するステップと、を含み、接着コーティング組成物は、ポリウレタン樹脂および無機顔料を含み、ポリウレタン樹脂100重量部を基準に、無機顔料は、20ないし150重量部を含み、ポリウレタン樹脂は、下記の化学式1で表される芳香族ジイソシアネートモノマーおよびポリオールが反応して形成されるものであることを特徴とする。
前記の化学式1で、
R
1ないしR
10は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換または非置換されたC1ないしC10アルキル基、置換または非置換されたC6ないしC20アリール基、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、R
1ないしR
5のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、R
6ないしR
10のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、R
3およびR
8が同時にイソシアネート基の場合は除外され、Lは、置換または非置換されたC1ないしC10アルキレン基、置換または非置換されたC2ないしC10アルキニレン基、置換または非置換されたC6ないしC20アリレン基、または、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリレン基であり、nは、1ないし10のうちのいずれか一つの整数である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、本発明の電磁鋼板接着コーティング組成物は、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板間の接着力を向上させることができる。
本発明によると、本発明の電磁鋼板接着コーティング組成物は、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を用いず、電磁鋼板を接着することができ、電磁鋼板積層体の騒音および振動抑制の効果により優れる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の一実施例に係る電磁鋼板積層体の断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1、第2および第3等の用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにだけ使用される。したがって、以下で記述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲から外れない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションとして言及することができる。
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、ステップ、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
ある部分が他の部分の「の上に」または「上に」あると言及する場合、これはすぐに他の部分の上にまたは上にあるか、その間に他の部分が存在することがある。対照的にある部分が他の部分の「真上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介在されない。
【0017】
特に定義してはいないが、ここで使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一な意味を有する。通常使用される辞典に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に合致する意味を有するものと追加解釈され、定義されない限り理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
本明細書で、「置換」とは、別途の定義がない限り、化合物のうちの少なくとも一つの水素がC1ないしC30アルキル基、C1ないしC10アルコキシ基、シラン基、アルキルシラン基、アルコキシシラン基、エチレンオキシル基で置換されたものを意味する。
本明細書で、「ヘテロ」とは、別途の定義がない限り、N、O、SおよびPからなる群より選択される原子を意味する。
前記アルキル基は、C1ないしC20のアルキル基であってもよく、具体的に、C1ないしC6の低級アルキル基、C7ないしC10の中級アルキル基、C11ないしC20の高級アルキル基であってもよい。
例えば、C1ないしC4アルキル基は、アルキル鎖に1ないし4個の炭素原子が存在することを意味し、これは、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルからなる群より選択されるものを示す。
【0018】
典型的なアルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施例について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は、色々な異なる形態に具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0019】
本発明の電磁鋼板接着コーティング組成物は、ポリウレタン樹脂および無機顔料を含み、前記ポリウレタン樹脂100重量部を基準に、前記無機顔料は、20ないし150重量部を含み、前記ポリウレタン樹脂は、下記の化学式1で表される芳香族ジイソシアネートモノマーおよびポリオールが反応して形成されるものであることがよい。
化学式1で、
R
1ないしR
10は、それぞれ独立して、水素、重水素、置換または非置換されたC1ないしC10アルキル基、置換または非置換されたC6ないしC20アリール基、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリール基、またはイソシアネート基であり、R
1ないしR
5のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、R
6ないしR
10のうちのいずれか一つはイソシアネート基であり、R
3およびR
8が同時にイソシアネート基の場合は除外され、Lは、置換または非置換されたC1ないしC10アルキレン基、置換または非置換されたC2ないしC10アルキニレン基、置換または非置換されたC6ないしC20アリレン基、または、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリレン基であり、nは、1ないし10のうちのいずれか一つの整数である。
【0020】
本発明の一実施例で、ポリウレタン樹脂100重量部を基準に、前記無機顔料は、20ないし150重量部を含むことがよい。無機顔料が過度に多く含まれる場合、融着層のハード(hard)な特性の増加により、剥離接着力が劣る可能性があり、ポリウレタン樹脂が過度に少なく含まれる場合、融着層のソフト(soft)な特性の増加により、層間絶縁の特性が劣る可能性がある。
化学式1で、R1ないしR5のうちのいずれか一つはイソシアネートであり、R6ないしR10のうちのいずれか一つはイソシアネートであり、R3およびR8が同時にイソシアネートである場合は除外され、R1およびR10が同時にイソシアネートである場合がさらに除外されることがよい。
【0021】
化学式1で、R
1ないしR
5のうちのいずれか一つはイソシアネートであり、R
6ないしR
10のうちのいずれか一つはイソシアネートであり、R
1ないしR
5のうちのいずれか一つおよびR
6ないしR
10のうちのいずれか一つがLを中心に対称であり、同時にイソシアネートである場合がさらに除外されることがよい。
化学式1で、Lを中心に対称の位置にイソシアネートが結合されている場合には、製造された電磁鋼板積層体の塗膜密着性、剥離接着力または耐ATF特性が劣り、セルフボンディング用に用いることができないという問題がある。
前記の化学式1で表される芳香族ジイソシアネートモノマーは、下記の化学式2で表されるものである。
化学式2で、
Lは、置換または非置換されたC1ないしC10アルキレン基、置換または非置換されたC2ないしC10アルキニレン基、置換または非置換されたC6ないしC20アリレン基、または、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリレン基である。
【0022】
ポリオールは、下記の化学式3で表示される化合物であることができる。
化学式3で、R’は、置換または非置換されたC1ないしC10アルキル基、置換または非置換されたC6ないしC20アリール基、または、置換または非置換されたC5ないしC20ヘテロアリール基である。具体的に、ポリオールは、ポリプロピレングリコールであることがよい。
ポリオールは、数平均分子量が400ないし1000g/molであることがよい。
【0023】
ポリウレタン樹脂は、芳香族ジイソシアネートモノマーを30ないし50重量%含み、ポリオールを50ないし70重量%含むことができる。芳香族ジイソシアネートモノマーの比率が過度に小さい場合には、ポリウレタン樹脂の高温締結力が低下する問題が発生する可能性があり、過度に大きい場合には、熱融着性が低下する問題が発生する可能性がある。ポリオールの比率が過度に小さい場合には、熱融着特性の低下が発生する虞があり、ポリオールの比率が過度に大きい場合には、tackyな特性により、コイル状態で長期保管時にsticky性欠陥の問題が発生する虞がある。
【0024】
無機顔料は、硫酸バリウム(Ba2SO4)、二酸化チタン(TiO2)、Clay(Al2Si2O5(OH)4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、シリカ(SiO2)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)からなる群より選択される1種以上であってもよい。具体的に、硫酸バリウム(Ba2SO4)であってもよい。
【0025】
本発明の電磁鋼板接着コーティング組成物は、カップリング剤、湿潤剤、硬化剤および硬化触媒からなる群より選択される1種以上をさらに含むことができる。
電磁鋼板接着コーティング組成物は、電磁鋼板10と融着層20との界面接着力強化のためにカップリング剤をさらに含むことがよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤が含まれることがよく、より具体的に、ビニル系シランカップリング剤およびメタクリルオキシ系シランカップリング剤のうち1種以上が含まれることがよい。
ビニル系シランカップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン(Vinyl trimethoxy silane)、ビニルトリエトキシシラン(Vinyl triethoxy silane)等が挙げられる。
メタクリルオキシ系シランカップリング剤としては、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン(3-Methacryloxypropyl methyldimethoxysilane)、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(3-Methacryloxpropyl trimethoxy silane)、3-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン(3-Methacyloxypropyl methyldiethoxysilane)、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(3-Methacryloxpropyl triethoxysilane)が挙げられる。
【0026】
本発明の電磁鋼板接着コーティング組成物は、電磁鋼板10と融着層20との界面接着力強化のために接着コーティング組成物にシリコン系湿潤剤をさらに含むことがよい。シリコン系湿潤(Wetting)添加剤の例としては、ポリエーテル改質されたポリジメチルシロキサン(Polyether-modified polydimethylsiloxane)が挙げられる。湿潤剤は、電磁鋼板と融着層との界面接着力を強化させるために電磁鋼板用ボンディング組成物に添加されることがよい。
【0027】
本発明の電磁鋼板接着コーティング組成物は、接着コーティング層表面の反応性を調節するために硬化剤をさらに含むことができる。硬化剤としては、脂肪族アミン系、芳香族アミン系、アミノアミン系、またはイミダゾール系を含むことができる。より具体的に、ジシアンジアミド系硬化剤が含まれることがよい。
本発明の電磁鋼板接着コーティング組成物は、コイルコーティング時に急速硬化反応を通じて生じる未硬化によるsticky性欠陥の改善のために硬化触媒をさらに含むことがよい。硬化触媒としては、イミダゾール系硬化触媒を含むことがよい。
【0028】
電磁鋼板接着コーティング組成物のカップリング剤は、混合樹脂100重量部を基準に、0.2重量部ないし3重量部を含むことがよい。具体的に、0.2重量部ないし1重量部を含むことできる。カップリング剤を過度に少なく含む場合には、電磁鋼板と融着層との界面接着力強化効果が十分に得られないことがある。カップリング剤を過度に多く含む場合には、カップリング剤間反応によって接着コーティング組成物内に沈殿物が発生する虞がある。
電磁鋼板接着コーティング組成物の硬化剤は、混合樹脂100重量部を基準に、0.5重量部ないし2重量部を含むことがよい。具体的に、0.8重量部ないし1.2重量部を含むことができる。硬化剤は、接着コーティング層表面の反応性を調節する役割を果たす。硬化剤が過度に少なく含まれる場合には、融着層の硬化反応が低下し、融着層表面の粘着性(sticky)が劣る問題が発生する虞がある。反対に硬化剤が過度に多く添加される場合には、低温融着後の締結力が劣る虞がある。
【0029】
電磁鋼板接着コーティング組成物の硬化触媒は、前記混合樹脂100重量部を基準に、0.1重量部ないし1重量部を含むことがよい。具体的に、0.3重量部ないし0.8重量部を含むことができる。硬化触媒の含有量が過度に多いと、過硬化反応により、融着後の締結力が劣る問題が発生する虞があり、硬化触媒の含有量が過度に少ないと、未硬化により融着層表面のスティッキー性が生じる問題が発生する虞がある。
電磁鋼板接着コーティング組成物の湿潤剤は、前記混合樹脂100重量部を基準に、0.05重量部ないし0.5重量部を含むことがよい。具体的に、0.05重量部ないし0.15重量部を含むことができる。湿潤剤の含有量が過度に多いと、コーティング液に過度な起泡の発生によるコーティング層欠陥の問題が発生する虞があり、湿潤剤の含有量が過度に少ないと、コーティング層の濡れ性の低下によってコーティング表面に欠陥が生じる問題が発生する虞がある。
【0030】
前述した成分の他に接着コーティング組成物は、塗布を容易にし、成分を均一に分散させるために溶媒を含むことができる。溶媒としては、水、アルコールなどを含むことができる。溶媒は、混合樹脂100重量部に対して1ないし20重量部含むことがよい。
【0031】
本発明の一実施例では、電磁鋼板積層体を提供する。
本発明の電磁鋼板積層体は、複数の電磁鋼板と、前記複数の電磁鋼板の間に位置する融着層と、を含む。
図1は、本発明の電磁鋼板積層体の模式図を示す。
図1に示すように、複数の電磁鋼板が積層される形態である。
【0032】
図2は、本発明の電磁鋼板積層体の断面の概略図を示す。
図2に示すように、本発明の電磁鋼板積層体100は、複数の電磁鋼板10と、複数の電磁鋼板の間に位置する融着層20と、を含む。
本発明の電磁鋼板積層体は、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の方法を用いず、単純に前述した接着コーティング組成物を用いて融着層を形成することによって、互いに異なる電磁鋼板を熱融着させた積層体であることがよい。
このとき、電磁鋼板積層体は、熱融着後にも高温接着性および高温耐油性に優れる特性がある。
以下では、各構成別に詳細に説明する。
【0033】
電磁鋼板10は、一般的な無方向性または方向性電磁鋼板を制限なしに用いることができる。
本発明の一実施例では、複数の電磁鋼板10の間に融着層20を形成し、電磁鋼板積層体100を製造することが主要構成であるので、電磁鋼板10に対する具体的な説明は省略する。
融着層20は、複数の電磁鋼板10の間に形成され、複数の電磁鋼板10を溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を用いず、接着できるほど接着力が強い。
【0034】
融着層20は、接着コーティング組成物を表面にコーティングし、硬化して接着コーティング層を形成し、これを積層し、熱融着して融着層20を形成する。接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板10を積層し、熱融着すると、接着コーティング層内の樹脂成分が熱融着し、融着層を形成することになる。
【0035】
本発明の融着層20はポリウレタン樹脂および無機顔料を含む。ポリウレタン樹脂および無機顔料については、接着コーティング組成物に関して詳しく前述したので、重複する説明は省略する。融着層形成過程で、ポリウレタン樹脂および無機顔料はそのまま残存する。また、カップリング剤、硬化剤、硬化触媒および湿潤添加剤も残存し、その含有量範囲も接着コーティング組成物と同一であることがよい。カップリング剤、硬化剤、硬化触媒および湿潤添加剤については、接着コーティング組成物に関して詳しく前述したので、重複する説明は省略する。
したがって、融着層は、混合樹脂100重量部、シランカップリング剤0.5重量部、シリコン系湿潤剤(wetting agent)0.1重量部、ジシアンジアミド系硬化剤1重量部およびイミダゾール系硬化触媒0.5重量部を含むことがよい。
【0036】
融着層20の厚さは、5μmないし20μmであることがよい。融着層の厚さが過度に薄いと、接着力が急激に低下する可能性があり、過度に厚いと、コーティングし巻取りした後にStikcy性による欠陥が問題になる。より具体的に、融着層20の厚さは、7μmないし15μmであることがよい。
【0037】
本発明の一実施例に係る電磁鋼板積層体の製造方法は、電磁鋼板の一面または両面に接着コーティング組成物を塗布した後、硬化して接着コーティング層を形成するステップと、接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して融着層を形成するステップと、を含む。
以下では、各ステップ別に具体的に説明する。
【0038】
まず、接着コーティング組成物を準備する。接着コーティング組成物については前述したので、重複する説明は省略する。
次に、接着コーティング組成物を電磁鋼板の表面にコーティングした後、硬化して接着コーティング層を形成する。このステップは、接着コーティング組成物の硬化のために150ないし250℃の温度範囲で行われることができる。
接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して融着層20を形成する。熱融着するステップを通じて接着コーティング層内の高分子成分が熱融着し、融着層を形成することになる。
【0039】
熱融着するステップは、150ないし250℃の温度、0.05ないし5.0MPaの圧力および0.1ないし120分の加圧条件で熱融着することができる。前記条件は、それぞれ独立して満足することができ、2以上の条件を同時に満足することもできる。このように熱融着するステップでの温度、圧力、時間条件を調節することによって、電磁鋼板の間に、ギャップや有機物相なしに、稠密に熱融着することができる。
熱融着するステップは、昇温ステップおよび融着ステップを含み、昇温ステップの昇温速度は、10℃/分ないし1000℃/分であることがよい。
以下、本発明の実施例に対して本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかし、本発明は、色々な異なる形態に具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0040】
実験例1
無方向性電磁鋼板(80×250mm、0.35mmt)を空試片として準備した
接着コーティング溶液をバーコーター(Bar Coater)およびロールコーター(Roll Coater)用いて各準備された空試片に、上部と下部に一定の厚さに塗布して板温基準200℃で20秒間硬化した後、空気中でゆっくり冷却させ、接着コーティング層を形成した。
接着コーティング溶液として、ポリウレタン樹脂100重量部、色々な含有量の硫酸バリウム(Ba2SO4)、シランカップリング剤0.5重量部、シリコン系湿潤剤(wetting agent)0.1重量部、ジシアンジアミド系硬化剤1重量部およびイミダゾール系硬化触媒0.5重量部を含むものを用いた。ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂の総重量を基準に、2,4-メチレンジフェニルジイソシアネートモノマー40重量%と水分子量425g/molのポリプロピレングリコール60重量%反応させて製造した後に用いた。用いたポリウレタン樹脂および硫酸バリウム(Ba2SO4)の含有量比、そして用いたイソシアネートモノマーとポリオールの種類および含有量比は、下記の表1の通りである。ポリウレタン樹脂の他にも、ポリウレタン樹脂100重量部を基準に、シランカップリング剤0.5重量部、シリコン系湿潤剤(wetting agent)0.1重量部、ジシアンジアミド系硬化剤1重量部およびイミダゾール系硬化触媒0.5重量部を含む。
【0041】
表1のMDIは、メチレンジフェニルジイソシアネートを意味し、TDIは、トルエンジイソシアネートを意味し、PPGは、ポリプロピレングリコール(水分子量425g/mol)を意味する。
接着コーティング層がコーティングされた電磁鋼板を高さ20mmに積層した後、1.0MPaの力で加圧して160℃、10分間熱融着して電磁鋼板積層剤を製造した。熱融着後の融着層の厚さは約10μmであった。熱融着された積層体をコーティング組成物内のポリウレタン樹脂と硫酸バリウムの含有量比および用いられた芳香族ジイソシアネートモノマーの種類別に評価した。具体的に、塗膜密着性、剥離接着力(T-peel、N/mm)、耐ATF特性および層間絶縁性を評価して、下記の表1に示した。
【0042】
各特性の測定方法は、次の通りである。
塗膜密着性の測定方法:塗膜密着性の測定のための試片規格は、ISO 1519に基づいて製作した。コーティングされた試片を30×300mmのサンプルに製作し、直径10mmの鉄シリンダーに180°に合わせて曲げた後、その部位にTapeを接着した後、コーティング層の剥離有無を目視で観察する。剥離発生すると、NGと評価し、剥離が発生しないと、OKと判断した。
剥離接着力(T-peel、N/mm):剥離法(T-Peel off)の測定のための試片規格は、ISO 11339に基づいて製作した。25×200mmの試片2枚を25×150mm2の面積で接着した後、未接着部位を90°に曲げてT形態の引張試片を製作した。剥離法(T-Peel off)で製作された試片を上/下部ジグ(JIG)に一定の力で固定させた後、一定の速度で引っ張りながら積層されたサンプルの引張力を測定する装置を用いて測定した。このとき、せん断法の場合、測定された値は積層されたサンプルの界面中で最小接着力を有する界面が脱落する地点を測定した。加熱装置を通じて試片の温度を60℃に維持した後、接着力を測定した。
【0043】
耐ATF特性の評価法:駆動モータを自動車に用いる場合、高速で長時間回転時に多くの熱が発生し、これを冷却するためにATF(Automotive Transmission Fluid、自動車ミッションオイル)を用いることになる。そこで、長期使用時に接着信頼度を確保するために高温のATFに含浸された状態で積層コイルの接着力が維持されることが重要である。これにより、耐ATF特性を評価した。前記製造された積層コイルを温度が150℃のATFに500時間含浸した後、せん断接着力をテストした。前記耐ATF特性を測定するためのせん断接着力は、せん断法(Shear Strength)で測定した。せん断法の測定のための試片規格は、ISO 4587に基づいて製作した。25×100mmの試片2枚を12.5×25mm2の面積で接着し、前記条件で熱融着してせん断法試片を製作した。せん断法で製作された試片を上/下部ジグ(JIG)に一定の力で固定させた後、一定の速度で引っ張りながら積層されたサンプルの引張力を測定する装置を用いて測定した。このとき、せん断法の場合、測定された値は積層されたサンプルの界面中で最小接着力を有する界面が脱落する地点を測定した。
【0044】
層間絶縁性の評価:絶縁性は、Franklin Insulation Testerによって測定され、この測定器は、単板試験法装置で一定の圧力と一定の電圧下で電磁鋼板の表面絶縁抵抗を測定する装置である。電流の範囲は、0~1,000Ampであり、絶縁測定方法は、測定試験片1枚を全電極の接触子が接触するようにプレートの上に置いた後、加圧装置によって300psi(20.4atm)になるように圧力を加える。試験圧力になったとき、すべり抵抗器を調整して電圧0.5V下で電流計の目盛りを読み、これを層間絶縁性値として評価した。それぞれの試験溶液に対して5枚を評価した。
【0045】
【0046】
表1に示した実施例1ないし3のように、ポリウレタン樹脂と無機顔料の硫酸バリウム(Ba2SO4)を適切な含有量比に調節して混合して用い、芳香族ジイソシアネートモノマーとして、2,4’-MDI(2,4-メチレンジフェニルジイソシアネート)を用いた場合には、塗膜密着性、耐ATF特性、剥離接着力および層間絶縁性がいずれも優れた特性を示した。
【0047】
比較例1は、硫酸バリウム(Ba2SO4)を混合せず、ポリウレタン樹脂だけ用いた場合であって、塗膜密着性および剥離接着力は優れているか、層間絶縁特性は、50Ω・cm2/lam.未満の値を示して、発電機および産業用モータに求められる高絶縁品質に比べて劣り、耐ATF特性も実施例に比べて劣ることを確認できる。
比較例2は、過度に少ない量の硫酸バリウム(Ba2SO4)を用いた場合であって、塗膜密着性および剥離接着力は優れているか、層間絶縁特性は、50Ω・cm2/lam.未満の値を示して劣っており、耐ATF特性も実施例に比べて劣ることを確認できる。
【0048】
比較例3は、過度に多い量の硫酸バリウム(Ba2SO4)を用いた場合であって、塗膜密着性および層間絶縁特性は優れているか、剥離接着力が2N/mm未満の値を示して、発電機および産業用モータに求められる剥離接着力に比べて劣っており、耐ATF特性も実施例に比べて劣ることを確認できる。
比較例4ないし12は、実施例1ないし3で芳香族ジイソシアネートモノマーを2,4’-MDI(2,4-メチレンジフェニルジイソシアネート)以外の化合物に変更して接着コーティング層を製造したものである。
【0049】
比較例4ないし12はいずれも、剥離接着力が2N/mm未満の値を示して劣る特性を示すことを確認でき、特に、芳香族ジイソシアネートとして、4,4’-MDI(4,4-メチレンジフェニルジイソシアネート)を用いた比較例6、9および12の場合、耐ATF特性が実施例に比べて劣ることを確認できる。また、硫酸バリウム(Ba2SO4)を過量含有している比較例10ないし12は、塗膜密着性の測定でも剥離が発生して塗膜密着性特性も劣ることを確認できる。
【0050】
本発明は、実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に実施できることを理解するはずである。したがって、以上で記述した実施例はあらゆる面で例示的なものであって限定的ではないものと理解されるべきである。
【国際調査報告】