(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】複合体用の(メタ)アクリル系組成物、その調製方法及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/10 20060101AFI20241226BHJP
B29C 70/52 20060101ALI20241226BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C08F220/10
B29C70/52
C08F290/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536321
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2022087306
(87)【国際公開番号】W WO2023118344
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ゾラー, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール, ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ル フィション, オドレイ
(72)【発明者】
【氏名】マウス, エステール
【テーマコード(参考)】
4F205
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4F205AA21
4F205AC05
4F205AD16
4F205AG14
4F205AH47
4F205HA05
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4J100JA67
4J127AA03
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4J127CC032
4J127CC153
4J127DA46
4J127EA05
(57)【要約】
本発明は、(メタ)アクリル系ポリマー組成物及び(メタ)アクリルポリマー複合体に適した(メタ)アクリル系組成物、その調製方法、その使用、並びに得られた(メタ)アクリル系ポリマー組成物及び(メタ)アクリル系ポリマー複合体に関する。特に、本発明は、重合されると架橋され、(メタ)アクリル系複合体、より具体的には補強要素又は繊維強化ポリマー(FRP)鉄筋に適した(メタ)アクリル系組成物に関する。より詳細には、本発明は、補強要素又はFRP鉄筋を製造するのに適した(メタ)アクリル系組成物、そのような(メタ)アクリル系組成物を調製すること、重合後にそれを含む複合補強要素又は鉄筋、及びそのような複合補強要素又はFRP鉄筋を調製する方法に関する。本発明はまた、そのような(メタ)アクリル系組成物の使用、及びコンクリート用の補強要素又はFRP鉄筋の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、並びに
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)任意で、(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(Ini)
を含む、(メタ)アクリル系組成物MC1。
【請求項2】
化合物(C1)の2つの重合性基(PG1)及び(PG2)が炭素二重結合であることを特徴とする、請求項1に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1。
【請求項3】
化合物(C1)の2つの重合性基(PG1)及び(PG2)がα,β-不飽和カルボニル基であることを特徴とする、請求項1に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1。
【請求項4】
化合物(C1)の2つの重合性基(PG1)及び(PG2)が、アクリレート基、メタクリレート基、又はマレイン酸若しくはイタコン酸若しくはフマル酸を含む縮合生成物から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1。
【請求項5】
化合物(C1)が、ビニルエステル又は不飽和ポリエステルであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1。
【請求項6】
化合物(C1)が、ビニルエステルであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1。
【請求項7】
(メタ)アクリル系モノマー(M1)が、アルキルアクリル系モノマー又はアルキルメタクリル系モノマー及びそれらの混合物から選択され、アルキル基は、1個から22個までの直鎖、分岐又は環状の炭素を含み;アルキル基は、好ましくは1個から12個までの直鎖、分岐又は環状の炭素を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1。
【請求項8】
(メタ)アクリル系モノマー(M1)が、重量で少なくとも50%、好ましくは重量で少なくとも60%のメチルメタクリレートであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1。
【請求項9】
(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(Ini)を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1。
【請求項10】
開始剤(Ini)が、ペルオキシ基含有化合物から選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1。
【請求項11】
ペルオキシ基含有化合物が、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシアセタール、ヒドロペルオキシド又はペルオキシケタールから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1。
【請求項12】
液体(メタ)アクリル系シロップ剤が、
a1)10重量%と30重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む70重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、
を含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1を調製するための方法であって、
i)以下の成分:
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)任意で、(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(INI)
を提供する工程と、
ii)成分a)~b又はa)~c)を混合する工程と、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1を調製するための方法であって、
i)以下の成分:
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(INI)
を提供する工程と、
ii)成分a)~c)を混合する工程と、
を含む、方法。
【請求項15】
成分a)が、以下の比:
a1)10重量%と30重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)70重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマーと、
を有することを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
成分(LC1)が、(メタ)アクリル系組成物MC1の1と20phrとの間で存在することを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
(メタ)アクリル系ポリマー組成物を調製するための、又は(メタ)アクリル系ポリマー複合体PC1を調製するための方法であって、
i)請求項1から12のいずれか一項に記載の、又は請求項13から16のいずれか一項に記載の方法によって調製された(メタ)アクリル系組成物MC1を提供する工程と、
ii)(メタ)アクリル系組成物MC1を重合する工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
ポリマー複合体PC1を調製するための方法であって、
i)請求項1から12のいずれか一項に記載の、又は請求項13若しくは16に記載の方法によって調製された(メタ)アクリル系組成物MC1を、繊維又は繊維性基質に含浸させる工程と、
ii)繊維又は繊維性基質に含浸した(メタ)アクリル系組成物MC1を重合する工程と、
を含む、方法。
【請求項19】
重合工程が、40℃と140℃との間の温度で行われることを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
重合工程が、80℃と140℃との間の温度で行われることを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項21】
重合工程が、60℃と125℃との間の温度で行われることを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項22】
重合工程が、100℃と130℃との間の温度で行われることを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項23】
ポリマー複合体PC1又はポリマー複合体部品だけでなく、機械的又は構造化された部品又は製品を変形させるための方法であって、
i)請求項1から12のいずれか一項に記載の(メタ)アクリル系組成物MC1を重合することによって作製された、又は請求項13から17のいずれか一項に記載の方法によって調製された、又は請求項18から22のいずれか一項に記載の方法によって調製されたポリマー複合体PC1又は部品を提供する工程と、
ii)ポリマー複合体PC1又は部品を加熱する工程と、
iii)ポリマー複合体PC1又は部品を変形させる工程と、
を含む、方法。
【請求項24】
加熱工程の温度が、少なくとも120℃、好ましくは少なくとも140℃であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
変形が、ねじり、屈曲、湾曲又は折り畳みであることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
ポリマー複合体PC1がFRP鉄筋の形態であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
請求項23に記載の方法であって、
i)FRP鉄筋の形態のポリマー複合体PC1を提供する工程、
ii)FRP鉄筋を加熱する工程、
iii)FRP鉄筋を曲げる工程、
を含む、方法。
【請求項28】
FRP鉄筋を調製するための方法であって、
i)請求項1から12のいずれか一項に記載の、又は請求項13若しくは14のいずれか一項に記載の方法によって調製された(メタ)アクリル系組成物MC1を提供する工程と、
ii)(メタ)アクリル系組成物MC1を繊維又は繊維性基質に含浸させる工程と、
iii)繊維又は繊維性基質に含浸した(メタ)アクリル系組成物MC1を重合する工程と、
を含む、方法。
【請求項29】
引抜によって行われることを特徴とする、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
繊維又は繊維性基質に含浸させるための、請求項1から12のいずれか一項に記載の、又は請求項13から17のいずれか一項に記載の方法によって調製された(メタ)アクリル系組成物MC1の使用。
【請求項31】
FRP鉄筋を調製するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の、又は請求項13から17のいずれか一項に記載の方法によって調製された(メタ)アクリル系組成物MC1の使用。
【請求項32】
請求項28から29のいずれか一項に記載の方法によって作製されたFRP鉄筋のコンクリートにおける使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル系ポリマー組成物及び(メタ)アクリルポリマー複合体に適した(メタ)アクリル系組成物、その調製方法、その使用、並びに得られた(メタ)アクリル系ポリマー組成物及び(メタ)アクリル系ポリマー複合体に関する。
【0002】
特に、本発明は、重合されると架橋され、(メタ)アクリル系複合体、より具体的には補強要素又は繊維強化ポリマー(FRP)鉄筋に適した(メタ)アクリル系組成物に関する。
【0003】
より詳細には、本発明は、補強要素又はFRP鉄筋を製造するのに適した(メタ)アクリル系組成物、そのような(メタ)アクリル系組成物を調製すること、重合後にそれを含む複合補強要素又は鉄筋、及びそのような複合補強要素又はFRP鉄筋を調製する方法に関する。
【0004】
本発明はまた、そのような(メタ)アクリル系組成物の使用、及びコンクリート用の補強要素又はFRP鉄筋の使用に関する。
【背景技術】
【0005】
文献WO2013/056845は、熱可塑性(メタ)アクリル系樹脂のその場重合による複合材料を開示している。熱可塑性(メタ)アクリル系樹脂と、長繊維を含有する繊維性材料とのその場重合によって得られるポリマー複合材料及びその使用、そのような複合材料を製造するための方法、並びにこのポリマー複合材料を含む製造された機械的又は構造化された部品又は物品。重合は、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシアセタール又はアゾ化合物から選択されるラジカル開始剤を使用する。この文献は、ポリマーの重合後の架橋、得られたポリマー複合組成物、及び特に高温でのその耐熱性について何も開示していない。
【0006】
文献WO2014/013028は、繊維性基質のための含浸プロセス、含浸プロセスのための液体(メタ)アクリル系シロップ剤、その重合方法、及びそれから得られる構造化された物品を開示している。液体(メタ)アクリル系シロップ剤は、(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリル系モノマー、及び(メタ)アクリル系モノマーの重合を開始するための少なくとも1つの開始剤又は開始系を含む。熱によって活性化される開始剤又は開始系。この文献は、ポリマーの重合後の架橋、得られたポリマー複合組成物、及び特に高温でのその耐熱性について何も開示していない。
【0007】
文献CA2839915は、熱可塑性材料を含む屈曲可能なFRP鉄筋を開示している。熱可塑性材料は、PE、PS、PMMA、POM、PC、PSLU、PAI、PET、PEEK、PEK、PEI、PES PA6及びPA12を含むことができる。鉄筋は、可撓性ポリエステルからなる。
【0008】
文献WO2020/079015は、複合体用の(メタ)アクリル系組成物を開示している。当該組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー及び(メタ)アクリル系モノマーを含む液体(メタ)アクリル系シロップ剤と、少なくとも2つの(メタ)アクリル系官能基を含む(メタ)アクリル系コモノマー(M2)とを含む。重合されると、得られたポリマー組成物はより良好な耐熱性を示すが、十分な耐薬品性、特に耐アルカリ性はない。
【0009】
全ての先行技術文献は、改善された耐熱性及び耐薬品性を有するポリマー組成物又は複合体の調製に適した(メタ)アクリル系組成物を開示していない。
【発明の概要】
【0010】
複合材料は、2つ以上の非混和性材料の巨視的な組み合わせである。複合材料は、構造体の凝集のための連続相を形成するマトリックス材料と、機械的特徴のための様々な構造を有する補強材料とから少なくとも構成される。
【0011】
複合材料を使用する目的は、単独で使用される場合にはその別個の構成要素からは利用できない複合材料からの性能を達成することである。
【0012】
その結果、複合材料は、特に均質材料及びその低密度と比較してより良好な機械的性能(より高い引張強度、より高い引張弾性率、より高い破壊靱性)のために、例えば建築、自動車、航空宇宙、輸送、レジャー、エレクトロニクス、及びスポーツなどのいくつかの産業分野で広く使用されている。
【0013】
熱硬化性ポリマーは、架橋された三次元構造からなる。架橋は、いわゆるプレポリマー内部の反応性基を硬化させることによって得られる。硬化は、例えば、材料を永久的に架橋及び硬化させるためにポリマー鎖を加熱することによって得ることができる。
【0014】
ポリマー複合材料を調製するために、プレポリマーを他の成分(例えば、粒子複合体ではガラスビーズ、又は繊維性複合体では短繊維)と混合するか、又は他の成分を湿潤又は含浸させ(例えば、織られたネット)、その後硬化させる。
【0015】
熱硬化性ポリマーマトリックスの欠点は、その非常に高い架橋である。マトリックスは、他の形態で成形することができない。ポリマーが硬化されると、形態は固定される。
【0016】
熱可塑性ポリマーは、折衷した直鎖又は分岐のポリマー鎖からなる。熱可塑性ポリマーは、複合材料の製造に必要な2つの成分を混合するために加熱され、硬化のために冷却される。複合材料の製造のために熱可塑性ポリマーを使用する際の限界は、溶融状態でのそれらの高い粘度である。熱可塑性樹脂が十分に流動性である場合にのみ、熱可塑性ポリマーによる繊維の湿潤又は正確な含浸を達成することができる。熱可塑性ポリマーの低粘度又は十分な流動性を有するために、鎖長(分子質量)を低減させることができる。しかしながら、低すぎる分子量は、複合材料の性能、特に機械的特徴に悪影響を及ぼす。一方、粘度を低減させるために、重要な方法で熱可塑性ポリマーの温度を上昇させることができた。その結果、連続作業温度は比較的高く、200℃を超え、高いエネルギーコストの影響により、複合材料の経済性(コスト)に直接影響を及ぼす。さらに、熱可塑性ポリマーは、温度が非常に高い場合に分解する傾向があり、これは特に、例えばポリアミド(例えばPA6.6)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又はポリフェニレンスルフィド(PPS)のような高融点を有する半結晶性熱可塑性ポリマーに当てはまる。この熱が誘導する分解は、複合材料の凝集に重要なポリマーマトリックスの分子量の減少をもたらす。
【0017】
繊維性基質に含浸させる別の方法は、熱可塑性ポリマーを有機溶媒に溶解させることである。しかしながら、この方法は、エバポレートさせなければならない多くの溶媒を必要とする。エネルギー及び汚染の観点から大量の溶媒を使用することには環境問題がある。
【0018】
熱可塑性ポリマーに基づくポリマー複合材料を調製するために、一般に「シロップ剤」として知られる熱可塑性ポリマー樹脂を使用して、補強材料、例えば充填剤又は繊維性基質とブレンド又は含浸させる。重合されると、熱可塑性ポリマーシロップ剤は複合材料のマトリックスを構成する。含浸時に、ポリマー複合体を調製する場合、含浸シロップ剤の粘度は、繊維性基質の各繊維を正確に含浸させるために、過度に流動性又は過度に粘性にならないように制御及び適合されなければならない。湿潤が部分的である場合、シロップ剤が過度に流動性であるか又は過度に粘性であるかに応じて、「裸」ゾーン、すなわち非含浸ゾーン、及び気泡の生成の原因であるポリマーの液滴が繊維上に形成するゾーンがそれぞれ現れる。これらの「裸」ゾーン及びこれらの気泡は、最終複合材料に欠陥の外観を生じさせ、これは特に、最終複合材料の機械的強度の損失の原因となる。しかしながら、含浸に有用な粘度範囲は、そのような材料をストックするためには低い。
【0019】
熱成形及びリサイクルを可能にするために、複合材料にも熱可塑性ポリマーを使用することが好ましい。
【0020】
しかしながら、特に繊維性強化材を有する熱可塑性複合体の1つの欠点は、熱安定性である。熱可塑性複合体がより高い温度でより長い時間熱成形又は暴露されると、いくつかの重要な特性は、曲げ強度保持の減少及び繊維接触面でのポリマーにおける層間剥離として好ましくない様式で変化する。
【0021】
特定の熱可塑性複合体の別の欠点は、化学環境に対する耐性、特に耐アルカリ性が限られていることである。
【0022】
熱成形することができ、高い耐熱性を提供する複合体用組成物が必要とされている。
【0023】
十分な耐薬品性、特に耐アルカリ性も有する複合体用組成物が必要とされている。
【0024】
熱成形することができ、高い耐熱性及び耐アルカリ性を提供する複合体用組成物が必要とされている。
【0025】
本発明の目的は、高温での高い耐熱性及び耐薬品性を有する熱可塑性(メタ)アクリル系組成物を調製するための組成物を有することである。
【0026】
本発明の目的はまた、高温での高い耐熱性及び耐薬品性を有する熱成形され得る熱可塑性複合組成物を調製するための組成物を有することである。
【0027】
本発明における耐薬品性とは、特に耐アルカリ性を意味する。これは、高pH、好ましくは10より大きい、より好ましくは11より大きい、さらにより好ましくは12より大きい、有利には最大13を意味する。この耐性は、60℃で3ヶ月間達成されるべきである。
【0028】
本発明のさらなる目的は、高い耐熱性及び耐薬品性を有する熱成形性ポリマー複合体を調製するための組成物を有することである。本発明における高い耐熱性はまた、複合体における層間剥離が少なくとも強く低減されることを意味する。
【0029】
本発明の別の目的は、(メタ)アクリル系ポリマー組成物用の(メタ)アクリル系組成物を調製するための、又は高い耐熱性及び耐薬品性を有する(メタ)アクリル系複合組成物を調製するための方法を提供することである。
【0030】
本発明のさらに別の目的は、高い耐熱性及び耐薬品性を有する(メタ)アクリル系複合組成物を調製する方法を有することである。
【0031】
驚くべきことに、
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、並びに
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)任意で、(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(INI)、
を含む、(メタ)アクリル系組成物MC1は、
成分b)を含まない組成物と比較して、改善された耐熱性及び耐薬品性を有する(メタ)アクリル系ポリマー又は複合体を調製するための組成物を提供することを可能にすることが見いだされた。
【0032】
驚くべきことに、
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、並びに
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)任意で、(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(INI)、
を含む、(メタ)アクリル系組成物MC1は、
成分b)を含まない組成物と比較して、その組成物MC1から作製されたポリマー又はポリマー複合体の耐熱性及び耐薬品性を増加させるために使用することができることも発見された。
【0033】
驚くべきことに、(メタ)アクリル系ポリマー組成物MCP1を調製するための方法又は(メタ)アクリル系ポリマー複合組成物PC1を調製するための方法であって、
i)(メタ)アクリル系組成物MC1を提供する工程であって、
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、並びに
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)任意で、(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(INI)、
を含む、(メタ)アクリル系組成物MC1を提供する工程と、
ii)当該(メタ)アクリル系組成物MC1を重合する工程と、
を含む、方法は、
成分b)を含まない組成物と比較して、より良好な耐熱性及び耐薬品性を有する(メタ)アクリルポリマー又は複合体の組成物を与えることも発見された。
【0034】
驚くべきことに、
i)重合された(メタ)アクリル系組成物MC1で作製されたポリマー複合体PC1又は部品を提供する工程、
ii)ポリマー複合体PC1又は部品を加熱する工程、
iii)ポリマー複合体PC1又は部品を変形させる工程、
を含む方法は、
ポリマー複合体PC1又はポリマー複合体部品だけでなく、機械的又は構造化された部品又は製品を変形させるための方法をもたらし、当該方法は、一旦曲げられるとその機械的特徴を重要な様式で変化させないことも発見された。
【0035】
驚くべきことに、(メタ)アクリル系組成物MC1からポリマー複合体PC1を調製する方法であって、
i)繊維又は繊維性基質に、
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、並びに
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)任意で、(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(INI)、を含む、(メタ)アクリル系組成物MC1を含浸する工程と、
ii)(メタ)アクリル系組成物MC1を重合する工程と、
を含む、方法は、
成分b)を含まない組成物から作製されたポリマー複合体と比較して、より良好な耐熱性及び耐薬品性を有するポリマー複合体PC1をもたらすことも発見された。
【発明を実施するための形態】
【0036】
第1の態様によれば、本発明は、(メタ)アクリル系組成物MC1に関し、当該組成物は、
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、並びに
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)任意で、(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(INI)
を含む。
【0037】
第2の態様によれば、本発明は、(メタ)アクリル系組成物(MC1)に関し、
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、並びに
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)任意で、(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(INI)
を含む。
【0038】
第3の態様によれば、本発明は、(メタ)アクリル系組成物MC1を調製するための方法であって、
i)以下の成分:
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)任意で、(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(INI)
を提供する工程と、
ii)成分a)~b又はa)~c)を混合する工程と、
を含む、方法に関する。
【0039】
第4の態様によれば、本発明は、繊維又は繊維性基質を含浸させるための(メタ)アクリル系組成物MC1の使用に関し、当該(メタ)アクリル系組成物MC1は、
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、並びに
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(INI)
を含む。
【0040】
第5の態様によれば、本発明は、(メタ)アクリル系組成物MC1からポリマー複合体PC1を調製するための方法に関し、当該方法は、
i)(メタ)アクリル系組成物MC1を提供する工程であって、
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、並びに
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(INI)
を含む、(メタ)アクリル系組成物MC1を提供する工程と、
ii)任意で含浸された繊維又は繊維性基質を有する(メタ)アクリル系組成物MC1を重合する工程と、
を含む。
【0041】
第6の態様によれば、本発明は、(メタ)アクリル系組成物MC1から(メタ)アクリル系ポリマー複合組成物PC1を調製するための方法であって、
i)繊維又は繊維性基質に、
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、並びに
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(Ini)、を含む、(メタ)アクリル系組成物MC1を含浸する工程と、
ii)繊維又は繊維性基質に含浸した(メタ)アクリル系組成物MC1を重合する工程と、
を含む、方法に関する。
【0042】
第7の態様によれば、本発明は、(メタ)アクリル系ポリマー複合組成物PC1又はポリマー複合体部品だけでなく、機械的又は構造化された部品又は製品を変形させるための方法に関し、当該方法は、
i)含浸前の繊維又は繊維性基質を有する(メタ)アクリル系組成物MC1を重合することによって作製された、(メタ)アクリル系ポリマー複合組成物PC1又は部品を提供する工程であって、当該組成物MC1が、
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、並びに
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(INI)を含む、
(メタ)アクリル系ポリマー複合組成物PC1又は部品を提供する工程と、
ii)(メタ)アクリル系ポリマー複合組成物PC1又は部分を加熱する工程と、
iii)(メタ)アクリル系ポリマー複合組成物PC1又は部品を変形させる工程と、
を含む。
【0043】
使用される「(メタ)アクリル系」という用語は、任意の種類のアクリル系及びメタクリル系のモノマー又はポリマーを指す。
【0044】
使用される「PMMA」という用語は、メチルメタクリレート(MMA)のホモ重合体及び共重合体を指し、MMAの共重合体の場合、PMMA内部のMMAの重量比は少なくとも70重量%である。
【0045】
使用される「モノマー」という用語は、重合を受けることができる分子を指す。
【0046】
使用される「重合」という用語は、モノマー又はモノマーの混合物をポリマーに変換する方法を指す。
【0047】
使用される「熱可塑性ポリマー」という用語は、加熱されると液体に変わるか、より液体になるか、又は粘性が低くなり、熱及び圧力の印加によって新しい形状をとることができるポリマーを指す。これは、軟化温度を超えて加熱されたときに熱成形され得る架橋熱可塑性ポリマーにも当てはまる。
【0048】
使用される「熱硬化性ポリマー」という用語は、硬化によって不可逆的に不融性の不溶性ポリマーネットワークに変化する軟質、固体又は粘性状態のプレポリマーを指す。
【0049】
使用される「ポリマー複合体」という用語は、少なくとも1種類の相ドメインが連続相であり、少なくとも1つの成分がポリマーである複数の異なる相ドメインを含む多成分材料を指す。
【0050】
使用される「鉄筋」という用語は、張力下でコンクリートを強化及び補助するために、強化コンクリート及び強化された石積み構造物の引張装置として使用される補強筋を指す。鉄筋は、コンクリート又は構造の引張強度を著しく増加させる。
【0051】
使用される「開始剤」という用語は、多数の他のモノマーと連続的に連結してポリマー化合物にすることができる、モノマーの重合を開始する化合物又は中間体化合物を形成する化学種を指す。
【0052】
略語「phr」とは、組成物100部あたりの重量部を意味する。例えば、組成物中の開始剤1phrは、組成物100kgに開始剤1kgを添加することを意味する。
【0053】
略語「ppm」とは、組成物の100万重量部あたりの重量部を意味する。例えば、組成物中の化合物1000ppmは、組成物100kg中に化合物0.1kgが存在することを意味する。
【0054】
本発明において、xからyまでの範囲と言うことは、この範囲の上限及び下限が含まれ、少なくともxから最大yに相当することを意味する。
【0055】
本発明において、範囲がxとyとの間であると言うことは、この範囲の上限及び下限が除外されることを意味し、xより大きくyより小さいことに相当する。
【0056】
本発明による(メタ)アクリル系組成物MC1の(メタ)アクリル系シロップ剤a)は、(メタ)アクリル系ポリマー(P1)及び(メタ)アクリル系モノマー(M1)を含む。
【0057】
本発明による(メタ)アクリル系組成物MC1の液体(メタ)アクリル系シロップ剤a)は、10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)、及び50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)を含む。好ましくは、液体(メタ)アクリル系シロップ剤a)は、10重量%と40重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)及び60重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1);より好ましくは、10重量%と30重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)及び70重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)を含む。
【0058】
液体(メタ)アクリル系シロップ剤a)の動粘度は、10mPa*sから10000mPa*sまで、好ましくは20mPa*sから7000mPa*sまで、有利には20mPa*sから5000mPa*sまで、より有利には20mPa*sから2000mPa*sまで、さらにより有利には20mPa*sと1000mPa*sとの間の範囲である。シロップ剤の粘度は、レオメーター又は粘度計で容易に測定することができる。動粘度は25℃で測定される。液体(メタ)アクリル系シロップ剤がニュートン挙動を有する場合、すなわち剪断減粘がない場合、動粘度は、レオメーターでの剪断又は粘度計での移動体の速度とは無関係である。液体組成物LC1が非ニュートン挙動、すなわち剪断減粘を有する場合、動粘度は25℃で1s-1の剪断速度で測定される。
【0059】
本発明の(メタ)アクリル系組成物MC1に関して、(メタ)アクリル系モノマー(M1)及び(メタ)アクリル系ポリマー(P1)を含む。重合されると、(メタ)アクリル系モノマー(M1)は、(メタ)アクリル系モノマー(M1)及び他の可能なモノマーのモノマー単位を含む(メタ)アクリル系ポリマー(P2)に変形される。
【0060】
好ましくは、(メタ)アクリル系組成物MC1の動粘度はまた、10mPa*sから20000mPa*sまで、好ましくは20mPa*sから15000mPa*sまで、有利には20mPa*sから10000mPa*sまで、より有利には20mPa*sから5000mPa*sまで、さらにより有利には20mPa*sと2000mPa*sとの間の範囲である。動粘度は同様に測定される。
【0061】
(メタ)アクリル系ポリマー(P1)としては、ポリアルキルメタクリレート又はポリアルキルアクリレートが挙げられる。ポリアルキルメタクリレート又はポリアルキルアクリレートとは、アクリル酸のアルキルエステル又はメタクリル酸のアルキルエステルから選択される少なくとも50重量%のモノマーを含むポリマーを意味する。好ましい実施形態によれば、(メタ)アクリル系ポリマー(P1)は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)である。
【0062】
「PMMA」という用語は、メチルメタクリレート(MMA)ホモ重合体若しくは共重合体又はそれらの混合物を指す。
【0063】
一実施形態によれば、メチルメタクリレート(MMA)ホモ重合体又は共重合体は、重量で少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、有利には少なくとも90%、より有利には少なくとも95%のメチルメタクリレートを含む。
【0064】
別の実施形態によれば、(メタ)アクリル系ポリマー(P1)は、MMAの少なくとも1つのホモ重合体と少なくとも1つの共重合体との混合物、又は異なる平均分子量を有するMMAの少なくとも2つのホモ重合体若しくは2つの共重合体の混合物、又は異なるモノマー組成物を有するMMAの少なくとも2つの共重合体の混合物である。
【0065】
メチルメタクリレートの共重合体(MMA)は、重量で70%から99.9%までのメチルメタクリレートと、重量で0.1%から30%までの、メチルメタクリレートと共重合体化することができる少なくとも1つのエチレン性不飽和を含有する少なくとも1つのモノマーとを含む。
【0066】
これらのモノマーは周知であり、特に、アルキル基が1個から12個までの炭素原子を含有するアクリル酸及びメタクリル酸並びにアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。例として、メチルアクリレート及びエチル、ブチル又は2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートを挙げることができる。好ましくは、コモノマーは、アルキル基が1個から4個までの炭素原子を含有するアルキルアクリレートである。
【0067】
第1の好ましい実施形態によれば、メチルメタクリレート(MMA)の共重合体は、重量で80%から99.9%まで、有利には85%から99.9%まで、より有利には90%から99.9%までのメチルメタクリレートと、重量で0.1%から20%まで、有利には0.1%から15%まで、より有利には0.1%から10%までの、メチルメタクリレートと共重合体化することができる少なくとも1つのエチレン性不飽和を含有する少なくとも1つのモノマーとを含む。好ましくは、コモノマーは、メチルアクリレート及びエチルアクリレート、並びにそれらの混合物から選択される。
【0068】
(メタ)アクリル系ポリマー(P1)の重量平均分子質量は高くなければならず、これは50000g/mol超、好ましくは70000g/mol超、より好ましくは90000g/mol超、最も好ましくは100000g/mol超を意味する。
【0069】
重量平均分子質量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により測定することができる。
【0070】
(メタ)アクリル系ポリマー(P1)は、(メタ)アクリル系モノマー(M1)又は(メタ)アクリル系モノマーの混合物に完全に可溶型である。これにより、(メタ)アクリル系モノマー(M1)又は(メタ)アクリル系モノマーの混合物の粘度を増加させることができる。得られる溶液は、一般に「シロップ剤」又は「プレポリマー」と呼ばれる液状の組成物である。前述のように、液体(メタ)アクリル系シロップ剤a)の動粘度値は、10mPa.sと10000mPa.sとの間である。シロップ剤の粘度は、レオメーター又は粘度計で容易に測定することができる。動粘度は25℃で測定される。
【0071】
有利には、液体(メタ)アクリル系組成物又はシロップ剤は、追加の自発的に添加された溶媒を含有しない。
【0072】
(メタ)アクリル系モノマー(M1)に関して、モノマーは、アルキルアクリル系モノマー、アルキルメタクリル系モノマー、ヒドロキシアルキルアクリル系モノマー及びヒドロキシアルキルメタクリル系モノマー、並びにそれらの混合物から選択される。アルキルアクリル系モノマー、アルキルメタクリル系モノマーとは、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルを意味する。
【0073】
好ましくは、(メタ)アクリル系モノマー(M1)は、ヒドロキシアルキルアクリル系モノマー、ヒドロキシアルキルメタクリル系モノマー、アルキルアクリル系モノマー、アルキルメタクリル系モノマー及びこれらの混合物から選択され、アルキル基は、1個から22個までの直鎖、分岐又は環状の炭素を含み;アルキル基は、好ましくは1個から12個までの直鎖、分岐又は環状の炭素を含む。
【0074】
より好ましくは、(メタ)アクリル系モノマー(M1)は、アルキルアクリル系モノマー又はアルキルメタクリル系モノマー及びこれらの混合物から選択され、アルキル基は、1個から22個までの直鎖、分岐又は環状の炭素を含み;アルキル基は、好ましくは1個から12個までの直鎖、分岐又は環状の炭素を含む。
【0075】
有利には、(メタ)アクリル系モノマー(M1)は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレート、並びにそれらの混合物から選択される。
【0076】
より有利には、(メタ)アクリル系モノマー(M1)は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、及びそれらの混合物から選択される。
【0077】
好ましい実施形態によれば、重量で少なくとも50%、好ましくは重量で少なくとも60%の(メタ)アクリル系モノマー(M1)がメチルメタクリレートである。
【0078】
第1のより好ましい実施形態によれば、の重量で少なくとも50%、好ましくは重量で少なくとも60%、より好ましくは重量で少なくとも70%、有利には重量で少なくとも80%、さらにより有利には重量で90%のモノマー(M1)が、メチルメタクリレート及び任意で少なくとも1つの他のモノマーの混合物である。
【0079】
第2のより好ましい実施形態によれば、重量で少なくとも95%、より好ましくは重量で少なくとも98%のモノマー(M1)がメチルメタクリレートである。
【0080】
第3のより好ましい実施形態によれば、重量で100%のモノマー(M1)がメチルメタクリレートである。
【0081】
組成物(PC1)の成分(LC1)に関しては、液体であることが好ましい。液体とは、成分(LC1)が-20℃と40℃との間、好ましくは0℃と40℃との間、より好ましくは10℃と40℃との温度間隔で液体であることを意味する。これは、これらの限界外で依然として液体であり得るが、少なくともこれらの限界の間では液体である。
【0082】
成分(LC1)の粘度は、25℃で0.5mPa*sと30Pa*sとの間である。好ましくは、粘度は、1mPa*sと25Pa*sとの間、より好ましくは10mPa*sと20Pa*sとの間、さらにより好ましくは50mPa*sと18Pa*sとの間、有利には100mPa*sと18Pa*sとの間である。成分(LC1)の粘度は、動粘度である。剪断減粘がある場合、動粘度の値は、1 1/sの剪断速度で取得される。粘度はレオメーターで測定される。
【0083】
成分(LC1)は、(メタ)アクリル系組成物MC1中に、重量で0.01と30phrとの間で存在し、好ましくは液体(メタ)アクリル系シロップ剤の100部に対して0.1と25phrとの間で存在し、より好ましくは0.5と20phrとの間で存在し、さらにより好ましくは1と20phrとの間で存在し、有利には1と18phrの間で存在する。
【0084】
第1のより有利な実施形態では、化合物(C1)は、(メタ)アクリル系組成物MC1中に、重量で1phrと20phrとの間で存在し、より有利には重量で2phrと20phrとの間で存在する。
【0085】
第2のより有利な実施形態では、化合物(C1)は、(メタ)アクリル系組成物MC1中に、重量で1と15phrとの間で存在し、より有利には重量で2phrと15phrとの間で存在する。
【0086】
第3のより有利な実施形態では、化合物(C1)は、(メタ)アクリル系組成物MC1中に、重量で1phrと11phrとの間で存在し、より有利には重量で2phrと11phrとの間で存在する。
【0087】
少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)は、成分(LC1)の少なくとも30重量%、より好ましくは成分(LC1)の少なくとも40重量%を示す。
【0088】
一実施形態では、少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)は、成分(LC1)の100重量%を示す。
【0089】
別の実施形態では、成分(LC1)はまた、いくつかの化合物の混合物であることもでき、それらの1つは、少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)である。
【0090】
成分(LC1)又は液体成分(LC1)は、モノマー(M2)又はモノマーの混合物(M2x)をさらに含むことができる。モノマー(M2)又はモノマーの混合物(M2x)のそれぞれのモノマーは、少なくとも1つの炭素二重結合を含む。モノマー(M2)又はモノマーの混合物(M2x)は、モノマー(M1)とは異なる。
【0091】
モノマー(M2)は、(Mx)のための(メタ)アクリル系モノマー、アリルモノマー若しくはスチレン系モノマー又はそれらの混合物から選択することができる。
【0092】
バリエーションにおいて、モノマー(M2)は、(Mx)のための(メタ)アクリル系モノマー、アリルモノマー又はそれらの混合物から選択することができる。
【0093】
好ましくは、モノマー(M2)は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、1~10個の炭素原子を含有するアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、並びにブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及びグリコール構造を有するジ(メタ)アクリレートなどの二官能性(メタ)アクリレート、並びにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートから選択される。
【0094】
第1のより好ましい実施形態では、モノマー(M2)は、1~10個の炭素原子を含有するアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、並びにブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、及びグリコール構造を有するジ(メタ)アクリレートなどの二官能性(メタ)アクリレート、並びにトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートから選択される。
【0095】
第2のより好ましい実施形態では、(Mx)のためのモノマー(M2)又はその混合物は、スチレンを含まない。
【0096】
第3のより好ましい実施形態では、(Mx)のためのモノマー(M2)又はその混合物は、スチレン系モノマーを含まない。
【0097】
第5のより好ましい実施形態では、(Mx)のためのモノマー(M2)またその混合物は、スチレン系モノマーを含む。
【0098】
第5のより好ましい実施形態では、モノマー(M2)は、少なくとも2つの(メタ)アクリル系官能基を含む化合物から選択される。(メタ)アクリル系モノマー(M2)は、それぞれ少なくとも2つの(メタ)アクリル系官能基を含む少なくとも2つの化合物(M2a)及び(M2b)の混合物から選択することもできる。
【0099】
少なくとも2つの(メタ)アクリル系官能基を含む化合物から選択される(メタ)アクリル系モノマー(M2)は、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート;1,4-ブタンジオールジメタクリレート;1,6ヘキサンジオールジアクリレート;1,6ヘキサンジオールジメタクリレート;ジエチレングリコールジメタクリレート;ジプロピレングリコールジアクリレート;エトキシル化(10)ビスフェノールaジアクリレート;エトキシル化(2)ビスフェノールaジメタクリレート;エトキシル化(3)ビスフェノールaジアクリレート;エトキシル化(3)ビスフェノールaジメタクリレート;エトキシル化(4)ビスフェノールaジアクリレート;エトキシル化(4)ビスフェノールaジメタクリレート;エトキシル化ビスフェノールaジメタクリレート;エトキシル化(10)ビスフェノールジメタクリレート;エチレングリコールジメタクリレート;ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート;ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート;ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート;ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート;ポリエチレングリコール400ジアクリレート;プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジアクリレート;テトラエチレングリコールジメタクリレート;トリシクロデカンジメタノールジアクリレート;トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート;トリエチレングリコールジメタクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;エトキシル化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート;エトキシル化5ペンタエリスリトールトリアクリレート;エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;プロポキシ化(5.5)グリセリルトリアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート;プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;エトキシル化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;1,10デカンジオールジアクリレート;1,3-ブチレングリコールジアクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート;1,9-ノナンジオールジアクリレート;2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート;2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジオールジアクリレート;2-メチル-1,3-プロパンジイルエトキシアクリレート;3メチル1,5-ペンタンジオールジアクリレート;アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート;シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;エトキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレート;ジオキサングリコールジアクリレート;エトキシル化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;エトキシル化グリセロールトリアクリレート;エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート;ヒドロキシピバリルヒドロキシピバリン酸ジアクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;ポリ(テトラメチレングリコール)ジアクリレート;ポリプロピレングリコール400ジアクリレート;ポリプロピレングリコール700ジアクリレート;プロポキシ化(6)エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート;プロポキシ化エチレングリコールジアクリレート;プロポキシ化(5)ペンタエリスリトールテトラアクリレート;及びプロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートから選択することができる。
【0100】
好ましくは、(メタ)アクリル系モノマー(M2)は、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングルコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート及びトリエチレングリコールジアクリレート又はそれらの混合物から選択される。
【0101】
モノマー(M2)は、(メタ)アクリル系組成物MC1中に、重量で0.01と15phrとの間で存在することができ、好ましくは液体(メタ)アクリル系シロップ剤の100部に対して0.1と10phrとの間で存在し、より好ましくは0.1と9phrとの間で存在し、さらにより好ましくは0.1と8.5phrとの間で存在し、有利には0.1と8phrの間で存在する。
【0102】
化合物(C1)の少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)は、好ましくは、炭素二重結合である。
【0103】
化合物(C1)の少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)は、より好ましくは、α,β-不飽和カルボニル基である。
【0104】
化合物(C1)の少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)は、アクリレート基、メタクリレート基、又はマレイン酸若しくはイタコン酸若しくはフマル酸を含む縮合生成物から選択することができる。
【0105】
好ましくは、化合物(C1)は、ビニルエステル又は不飽和ポリエステルである。
【0106】
第1のより好ましい実施形態では、化合物(C1)はビニルエステルである。ビニルエステルは、典型的には、ポリエポキシド(エポキシ樹脂など)と、例えば(メタ)アクリル酸としてのエチレン性不飽和二重結合含有モノカルボン酸とを反応させることにより得ることのできる反応生成物であり、主鎖にポリエポキシドと同一骨格を有し、分子内に不飽和二重結合が存在することにより硬化可能である。骨格は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールF、脂肪族エステル、脂肪族エーテル、及び芳香族エステルタイプの骨格からなる群から選択される1つ又は複数のタイプの骨格であり得る。
【0107】
第2のより好ましい実施形態では、化合物(C1)は不飽和ポリエステルである。不飽和ポリエステルは、少なくとも1つの二塩基性有機酸又はその無水物と、少なくとも1つの多価アルコールとの反応生成物である。
【0108】
第1のより好ましい実施形態の一実施形態では、化合物(C1)は、以下の構造(1)を含む:
【0109】
第1のより好ましい実施形態の別の実施形態では、化合物(C1)は、以下の構造(2)を含む:
【0110】
第1のより好ましい実施形態のさらに別の実施形態では、化合物(C1)は、以下の構造(3)を含み:
式中、R
1はH又はCH
3である。
【0111】
第1のより好ましい実施形態のさらに別の実施形態では、化合物(C1)は、以下の構造(4)を含み:
式中、R
1はH又はCH
3である。
【0112】
構造(1)~(4)は、化合物(C1)中に2回以上存在することもできる。
【0113】
より好ましくは、化合物(C1)は、構造(1)~(4)のいずれかを少なくとも2回含む。
【0114】
(メタ)アクリル系モノマー(M1)及び任意で(M2)の重合を開始するための開始剤(INI)に関して、それはラジカル開始剤から選択される。
【0115】
好ましくは、開始剤(INI)は熱によって活性化される。
【0116】
ラジカル開始剤(INI)は、ペルオキシ基含有化合物又はアゾ基含有化合物から、好ましくはペルオキシ基含有化合物から選択することができる。
【0117】
好ましくは、ペルオキシ基含有化合物は、2個から30個までの炭素原子を含む。
【0118】
好ましくは、ペルオキシ基含有化合物は、ジアシルペルオキシド、ペルオキシエステル、ペルオキシジカーボネート、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシアセタール、ヒドロペルオキシド又はペルオキシケタールから選択される。
【0119】
開始剤(INI)は、ジイソブチリルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ(3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオヘプタノエート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-(2-エチルヘキシル)-ペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジ-n-ブチルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-(2-tert-ブチル-ペルオキシイソプロピル)-ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ-tert-ブチルペルオキシド、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン、2,2’-アゾビス-イソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾジ-(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスイソ-ブチルアミド、2,2’-アゾ-ビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾジ(ヘキサヒドロベンゾニトリル)、又は4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)から選択される。
【0120】
好ましくは、開始剤(Ini)は、ジイソブチリルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、ジ(3-メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオヘプタノエート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、、ジ-sec-ブチルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ-(2-エチルヘキシル)-ペルオキシジカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、ジ-n-ブチルペルオキシジカーボネート、ジセチルペルオキシジカーボネート、ジミリスチルペルオキシジカーボネート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシネオヘプタノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、ジ-(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)-ペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-ヘキサン、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルペルオキシジエチルアセテート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(tert-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-シクロヘキサン、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、、tert-アミルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシアセテート、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-アミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-(2-tert-ブチル-ペルオキシイソプロピル)-ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)-ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、ジ-tert-ブチルペルオキシド、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン、及びそれらの混合物から選択される。
【0121】
繊維性基質に関しては、ストリップ、ラップ、編組、ロック又はピースの形態であり得るいくつかの繊維、一方向ロービング又は連続フィラメントマット、布地、フェルト又は不織布を挙げることができる。繊維性材料は、一次元、二次元又は三次元のいずれかの様々な形態及び寸法を有し得る。繊維性基質は、1つ又は複数の繊維の集合体を含む。繊維が連続的である場合、それらの集合体は布地を形成する。
【0122】
一次元形態は、線状の長繊維に対応する。繊維は不連続であっても連続的であってもよい。繊維は、連続フィラメントの形態で、互いにランダム又は平行に配置されてもよい。繊維は、繊維の長さと直径との間の比であるそのアスペクト比によって定義される。本発明で使用される繊維は、長繊維又は連続繊維である。繊維は、少なくとも1000、好ましくは少なくとも1500、より好ましくは少なくとも2000、有利には少なくとも3000、より有利には少なくとも5000、さらにより有利には少なくとも6000、より有利にはさらには少なくとも7500、最も有利には少なくとも10000のアスペクト比を有する。
【0123】
二次元形態は、不織布又は織布の繊維性マット又は強化材又は繊維束に対応し、これらは編組されていてもよい。二次元形態が特定の厚さを有し、その結果、原則として三次元を有する場合であっても、本発明によれば二次元であると考えられる。
【0124】
三次元形態は、例えば、不織布の繊維性マット若しくは強化材、又は繊維の積み重ねられた若しくは折り畳まれた束若しくはそれらの混合物、三次元における二次元形態の集合体に対応する。
【0125】
繊維性材料の起源は、天然又は合成であり得る。天然材料としては、植物繊維、木質繊維、動物繊維又は鉱物繊維を挙げることができる。
【0126】
天然繊維は、例えば、サイザル麻、ジュート、麻、亜麻、綿、ココナッツ繊維、及びバナナ繊維である。動物繊維は、例えば、羊毛又は毛髪である。
【0127】
合成材料としては、熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリマー又はそれらの混合物の繊維から選択されるポリマー繊維を挙げることができる。
【0128】
ポリマー繊維は、ポリアミド(脂肪族又は芳香族)、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂及びビニルエステルからなり得る。
【0129】
鉱物繊維はまた、ガラス繊維、特にE、R又はS2タイプのガラス繊維、玄武岩繊維、ホウ素繊維又はシリカ繊維から選択されてもよい。
【0130】
本発明の繊維性基質は、植物繊維、木質繊維、動物繊維、鉱物繊維、合成ポリマー繊維、ガラス繊維及び炭素繊維、並びにそれらの混合物から選択される。
【0131】
好ましくは、繊維性基質は鉱物繊維から選択される。より好ましくは、繊維性基質は、ガラス繊維又は炭素繊維から選択される。
【0132】
繊維性基質の繊維は、0.005μmと100μmとの間、好ましくは1μmと50μmとの間、より好ましくは5μmと30μmとの間、有利には10μmと25μmとの間の直径を有する。
【0133】
好ましくは、本発明の繊維性基質の繊維は、繊維性基質の一次元形態については連続繊維から(アスペクト比が必ずしも長繊維に関して適用されないことを意味する)、又は二次元若しくは三次元形態については長繊維若しくは連続繊維から選択される。
【0134】
本発明は、第3の態様によれば、(メタ)アクリル系組成物MC1の調製方法に関する。本方法は、成分a)及びb)を提供する工程を含む。
【0135】
方法のバリエーションにおいて、成分c)の化合物(C1)は、反応して化合物(C1)を生成する特定の化合物を提供することによって、その場で生成することもできる。一例として、ジエポキシ化合物を(メタ)アクリル酸とブレンドする。
【0136】
本発明はさらに、(メタ)アクリル系組成物MC1からポリマー複合体PC1を調製する方法であって、
i)繊維又は繊維性基質に、
a)100部の液体(メタ)アクリル系シロップ剤であって、
a1)10重量%と50重量%との間の(メタ)アクリル系ポリマー(P1)と、
a2)ただ1つの(メタ)アクリル系官能基を含む、50重量%と90重量%との間の(メタ)アクリル系モノマー(M1)と、を含む、液体(メタ)アクリル系シロップ剤、並びに
b)少なくとも2つの重合性基(PG1)及び(PG2)並びに少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物(C1)を含む、重量で0.01と30phrとの間の成分(LC1)、
c)(メタ)アクリル系モノマー(M1)と重合性基(PG1)及び(PG2)との重合を開始するための0.1phrと5phrとの間の開始剤(INI)、を含む、(メタ)アクリル系組成物MC1を含浸する工程と、
ii)繊維又は繊維性基質に含浸した(メタ)アクリル系組成物MC1を重合する工程と、
を含む、方法に関する。
【0137】
ポリマー複合体を調製する方法における成分a)~c)は、先に定義したもの及びそれらのそれぞれの重量比と同じである。各化合物の好ましい範囲及び好ましい特性は、任意の組み合わせで変えることができる。
【0138】
(メタ)アクリル系組成物MC1に対する繊維又は繊維性基質の重量比は、1:10と10:1との間であり得る。好ましくは、この比は1:10と9:1との間である。
【0139】
重合工程は、典型的には160℃未満、好ましくは150℃未満、さらにより好ましくは140℃未満の温度で行われる。
【0140】
好ましくは、重合工程は、40℃と160℃の間、好ましくは80℃と140℃との間、さらにより好ましくは100℃と130℃との間の温度で行われる。
【0141】
別の好ましい実施形態によれば、重合工程は、60℃と125℃の間、好ましくは80℃と125℃との間、さらにより好ましくは100℃と125℃との間の温度で行われる。
【0142】
ポリマー複合体PC1は、好ましくは(メタ)アクリル系ポリマー複合体であり、複合体のポリマーマトリックスの少なくとも50重量%が(メタ)アクリル系ポリマーであることを意味する。
【0143】
より好ましくは、複合体のポリマーマトリックスの少なくとも75重量%が、(メタ)アクリル系ポリマー又は(メタ)アクリル系ポリマーの混合物である。
【0144】
複合体のポリマーマトリックスの(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル系モノマーに由来する当該(メタ)アクリル系ポリマー中のモノマー単位を少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60%重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも75重量%含むポリマーである。
【0145】
ポリマー複合体PC1は、好ましくは繊維強化ポリマー複合体である。
【0146】
本発明はさらに、(メタ)アクリル系組成物MC1からポリマー複合体部品だけでなく、機械的又は構造化された部品又は製品を製造するための方法に関する。ポリマー複合体部品を製造するための方法は、(メタ)アクリル系組成物MC1からポリマー複合体PC1を調製するための方法を含む。
【0147】
ポリマー複合体部品だけでなく、機械的若しくは構造化された部品若しくは製品を製造するための方法、又は(メタ)アクリル系組成物MC1からポリマー複合体PC1を調製するための方法に関して;これらの部品を準備するために様々な方法を使用することができる。真空アシスト樹脂注入(VARI)、引抜、真空バッグ成形、加圧バッグ成形、オートクレーブ成形、樹脂トランスファー成形(RTM)及びこれらのバリエーション、(HP-RTM、C-RTM、I-RTM)として、反応射出成形(RIM)、強化反応射出成形(R-RIM)及びこれらのバリアント、プレス成形、圧縮成形、液体圧縮成形(LCM)又はシート成形毛号物(SMC)又はバルク成形化合物(BMC)を挙げることができる。あまり詳細に述べないが、これらの方法はすべて、複合体を調製する分野の者に知られている。
【0148】
複合体部品を製造するための第1の好ましい製造方法又は(メタ)アクリル系組成物MC1からポリマー複合体PC1を調製するための方法は、繊維性基質を金型に含浸させることにより、液体組成物を繊維性基質に転写する方法である。金型を必要とする方法は上に列挙されており、成形という表現を含む。
【0149】
複合体部品を製造するための第2の好ましい製造方法又は(メタ)アクリル系組成物MC1からポリマー複合体PC1を調製するための方法は、液体組成物が引抜方法で使用される方法である。繊維は、本発明による組成物を含む樹脂バッチを通して導かれる。繊維性基質としての繊維は、例えば、一方向ロービング又は連続フィラメントマットの形態である。樹脂浴中に含浸させた後、濡れた繊維は、重合が行われる加熱されたダイを通して引っ張られる。
【0150】
第3の好ましい製造方法又は(メタ)アクリル系組成物MC1からポリマー複合体PC1を調製するための方法は、真空アシスト樹脂注入(VARI)である。
【0151】
複合体部品だけでなく、機械的若しくは構造化された部品若しくは製品を製造するための方法、又は(メタ)アクリル系組成物MC1から(メタ)アクリル系ポリマー複合体PC1を調製するための方法は、後形成又は変形の工程をさらに含むことができる。後成形は、複合体部品の形態を変化させるように曲げることを含む。
【0152】
複合体部品を製造するための方法だけでなく、機械的又は構造化された部品又は製品もまた、溶接又は接着又は積層の工程をさらに含むことができる。
【0153】
本発明によるプロセス又は方法から得られた熱可塑性複合体部品は、本発明の液体組成物の重合後に後成形することができる。成形は、複合体の形態を変化させるように曲げることを含む。
【0154】
本発明の(メタ)アクリル系組成物MC1の重合後及び/又は本発明による方法から得られた熱可塑性部品又は製造された複合体部品は、溶接、接着又は積層することができる。
【0155】
本発明はさらに、ポリマー複合体PC1又はポリマー複合体部品だけでなく、機械的又は構造化された部品又は製品を変形させるための方法に関し、当該方法は、
i)ポリマー複合体PC1又は部品を提供する工程と、
ii)ポリマー複合体PC1又は部品を加熱する工程と、
iii)ポリマー複合体PC1又は部品を変形する工程と、
を含む。
【0156】
変形中、ポリマー複合体PC1は、変形工程中にその形態を変化させることが理解される。変形工程の後、ポリマー複合体PC1の形態は、加熱工程の前に提供されたポリマー複合体PC1とは異なる。
【0157】
変形は、例えば、ねじり、屈曲、湾曲又は折り畳みであり得る。
【0158】
加熱工程の温度は、少なくとも120℃、好ましくは140℃、より好ましくは少なくとも160℃である。
【0159】
加熱工程の温度は、230℃以下、好ましくは200℃以下である。
【0160】
好ましくは、加熱工程の温度は、160℃と200℃との間、有利には160℃と180℃との間である。
【0161】
ポリマー複合体PC1又はポリマー複合体部品だけでなく、機械的又は構造化された部品又は製品を変形させるための方法の例示的な実施形態では、当該方法は、
i)FRP鉄筋の形態のポリマー複合体PC1を提供する工程と、
ii)FRP鉄筋を加熱する工程と、
iii)FRP鉄筋を曲げる工程と、
を含む。
【0162】
工程ii)と工程iii)との間に、ねじる工程を含めることもできる。
【0163】
屈曲は、例えば、WO2021/008896に開示されている方法及び装置によって行うことができる。
【0164】
このように製造された複合材料で作製された機械的部品の使用に関しては、自動車用途、バス又はトラックなどの輸送用途、航海用途、鉄道用途、スポーツ、航空宇宙用途、光起電力用途、コンピュータ関連用途、建設及び建築用途、電気通信用途及び風力エネルギー用途を挙げることができる。
【0165】
複合材料で作製された機械的部品は、特に、自動車部品、ボート部品、バス部品、列車部品、スポーツ用品、飛行機又はヘリコプター部品、宇宙船又はロケット部品、光起電力モジュール部品、建設又は建築用の材料、例えば複合鉄筋、土木工学及び高層建築用のダボ及びスターラップ、風力タービン部品、例えば風力タービンブレードのガーダのスパーキャップ、家具部品、建設又は建築部品、電話又は携帯電話部品、コンピュータ又はテレビ部品、又はプリンタ又は複写機部品である。
【0166】
第1の好ましい実施形態では、複合材料で作製された機械的部品は、特に建設又は建築用の材料、例えば土木工学及び高層建設用の複合鉄筋、ダボ及びスターラップである。
【0167】
第2の好ましい実施形態では、複合材料で作製された機械的部品は、特に風力タービン部品、例えば風力タービンブレードのガーダのスパーキャップである。
【0168】
特定の一実施形態では、製造された複合体部品は、曲げ可能なFRP鉄筋である。FRP鉄筋はコンクリートに使用される。
【0169】
本発明はさらに、(メタ)アクリル系ポリマー複合組成物PC1の調製方法に従って作製された複合バーを補強要素として含む強化コンクリートに関し、当該複合バーは、ポリマーマトリックスとして重合された(メタ)アクリル系組成物MC1を含む。
【0170】
[方法]
耐アルカリ性は、コンクリート建設で使用される繊維強化ポリマー(FRP)マトリックス複合バーの耐アルカリ性のASTM D7705/D7705M-12(再承認2019)標準試験方法に従って評価される。
【0171】
WO2021/008896に開示されている方法及び装置に従って、繊維強化ポリマー(FRP)マトリックス複合バーを最大170℃に加熱し、次いで曲げる。
【実施例】
【0172】
25重量部のPMMA(BS520、コモノマーとしてエチルアクリレートを含むMMAの共重合体)を、MEHQ(ヒドロキノンモノメチルエーテル)で安定化された75重量部のメチルメタクリレートに溶解することによって、液体(メタ)アクリル系シロップ剤S0を調製する。シロップ剤S0は、追加の化合物を添加することによって本発明の実施例の組成物を調製するために使用される。シロップ剤S0は、25℃で475mPa*sの動粘度を有する。
【0173】
比較例1:100重量部のシロップ剤S0に2重量部のエチレングリコールジメタクリレートを添加することによって、シロップ剤S0からシロップ剤S2を調製する。
【0174】
実施例1.100重量部のシロップ剤S0に、ビスフェノールAエポキシジメタクリレート(SARTOMER製CN159)10部、スチレン7.44部及びメタクリル酸0.23部を添加することにより、シロップ剤S0からシロップ剤S1を調製する。
【0175】
それぞれのシロップ剤S1及びS2の各々は、シロップ剤の部に対して1phrの開始剤ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(P16-Akzo Nobel社製Perkadox(登録商標)16)、1phrのLuperox LP及び1phrのTrigonox 21S(AKZO製)とブレンドされ、これらは重合開始剤として添加される。均質な組成物を得るために、それぞれの組成物を混合する。それぞれの組成物を減圧下で置かれ、21℃で脱気される。
【0176】
シロップ剤を引抜方法で使用して、直径13mmのストレートFRP鉄筋を調製する。重合は100℃と130℃との間の温度で行われ、引抜ダイの長さは1mである。
【0177】
比較例2:Schock社のビニルエステルに基づくFRP鉄筋を使用:12mmのコア直径を有する真っ直ぐなSchockCombar(登録商標)
【0178】
得られたFRP鉄筋の耐アルカリ性及び屈曲可能性を試験する。
【0179】
【0180】
本発明による鉄筋試料ははるかに良好であり、耐アルカリ性を示し、曲げることができる。
【国際調査報告】