(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】末端アルキルホスホネート基を含むオリゴヌクレオチドの骨格脱保護のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07H 21/00 20060101AFI20241226BHJP
C07H 21/02 20060101ALI20241226BHJP
A61K 31/7125 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
C07H21/00
C07H21/02
A61K31/7125
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536327
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 US2022082239
(87)【国際公開番号】W WO2023122728
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521359667
【氏名又は名称】ディセルナ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DICERNA PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コミサルスキー, マレク スタニスラフ
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】オルブリッヒ, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ロマーノ, ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】シュースター, アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA18
4C057BB02
4C057DD03
4C057MM01
4C057MM02
4C057MM09
4C086AA04
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA20
4C086ZC80
(57)【要約】
本発明は、式I(式中、R
1はC
1-4アルキル基であり、R
2はフルオロ、ヒドロキシル、またはC
1-4アルコキシであり、Xは硫黄または酸素であり、核酸塩基という用語は任意選択で修飾されたアデニン、シトシン、グアニン、またはウラシルを表し、オリゴ鎖という用語は残りのP結合オリゴヌクレオチド鎖を表し、ここで、当該オリゴ鎖が少なくとも1つのウラシル核酸塩基を含む)の5’末端にアルキルホスホネート基を有する直鎖状P結合オリゴヌクレオチドを生成するためのプロセスを含む。本プロセスは、式Iの直鎖状P結合オリゴヌクレオチド中のアルキル移動不純物のレベルおよびシアノエチル(CNET)不純物のレベルが実質的に低減された条件下で行われる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の5’末端にアルキルホスホネート基を有する直鎖状P結合オリゴヌクレオチドを生成するためのプロセスであって、
【化1】
(式中、R
1はC
1-4アルキル基であり、R
2はフルオロ、ヒドロキシル、またはC
1-4アルコキシであり、Xは硫黄または酸素であり、核酸塩基という用語は任意選択で修飾されたアデニン、シトシン、グアニン、またはウラシルを表し、オリゴ鎖という用語は残りのP結合オリゴヌクレオチド鎖を表し、ここで、前記オリゴ鎖が少なくとも1つのウラシル核酸塩基を含む)
式II
【化2】
(式中、R
1、R
2、X、核酸塩基という用語、およびオリゴ鎖という用語は上記のとおりである)のオリゴヌクレオチド化合物から、有機溶媒の存在下で求核有機塩基を用いて、シアノエチル基および1つのC
1-4アルキル基を除去することを含む、プロセス。
【請求項2】
R
1がメチルである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
R
2がフルオロまたはメトキシである、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記核酸塩基が、アデニン、シトシン、グアニン、またはウラシルである、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記求核有機塩基が、15超、好ましくは15~30、より好ましくは16~25の求核性を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記求核有機塩基が、10.5未満、好ましくは6~10.5、より好ましくは8~10.5のプロトン化有機塩基のpKaを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記求核有機塩基が、モルホリン、N,N-ジメチルエチルアミン、N-メチル-ピロリジン、または1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンから選択される三級アミンである、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記求核有機塩基が、(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)(DABCO)である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記有機溶媒が、アセトニトリル、ピリジン、およびトルエン、またはそれらの混合物から選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記有機溶媒がアセトニトリルである、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記有機溶媒中の前記求核有機塩基の濃度が、5重量%~100重量%、好ましくは10重量%~50重量%、より好ましくは15重量%~25重量%の範囲で選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記求核有機塩基の量が1.5CV~30.0CVの範囲で適用され、流量が、0.1CV/分~2.0CV/分、好ましくは0.1CV/分~0.5CV/分の範囲で選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記プロセスが、式Iの前記直鎖状P結合オリゴヌクレオチド中の「N+アルキル不純物の合計」として表されるアルキル移動不純物のレベルが4.0%未満、3.0%未満、2.0%未満、1.0%未満、または0.5%未満である条件下で行われる、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記プロセスが、式Iの前記直鎖状P結合オリゴヌクレオチド中の「シアノエチル(CNET)不純物の合計」として表されるCNET不純物のレベルが2.0%未満、1.0%未満、または0.5%未満である条件下で行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月22日に出願された欧州特許出願第21216879.3号の利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、式I
【化1】
(式中、R1はC1-4アルキル基であり、R2はフルオロ、ヒドロキシル、またはC1-4アルコキシであり、Xは硫黄または酸素であり、核酸塩基という用語は任意選択で修飾されたアデニン、シトシン、グアニン、またはウラシルを表し、オリゴ鎖という用語は残りのP結合オリゴヌクレオチド鎖を表し、ここで、当該オリゴ鎖が少なくとも1つのウラシル核酸塩基を含む)の5’末端にアルキルホスホネート基を有する直鎖状P結合オリゴヌクレオチドを生成するための新規プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
式Iの5’末端にアルキルホスホネート基を有するP結合オリゴヌクレオチドは、例えば、アンチセンス鎖として、様々なmRNAを標的とし、それにより、対応する遺伝子の発現を遮断することができる、治療的に価値のある化合物である。一例として、式Iの5’末端にアルキルホスホネート基を有するP結合オリゴヌクレオチドは、HBsAg遺伝子発現のノックダウンをもたらす、HBV表面抗原(HBsAg)を翻訳するHBsAg mRNAを標的とするアンチセンス鎖とすることができ、それ故に、HBV感染の治療に有用であり得る(特許文献1)。
【0004】
本プロセスは、式II
【化2】
(式中、R1、R2、X、核酸塩基という用語、およびオリゴ鎖という用語は上記のとおりである)のオリゴヌクレオチド化合物から、有機溶媒の存在下で求核有機塩基を用いて、シアノエチル基および1つのC1-4アルキル基を除去することを含む。
【0005】
オリゴヌクレオチド合成は、原理的には、所望の配列が組み立てられるまでの成長鎖の5’末端へのヌクレオシド残基の段階的付加である。
【0006】
原則として、各々の付加は、合成サイクルと呼ばれ、原理的には、
a1)固体支持体上の5’保護ヒドロキシル基を脱ブロッキングする、
a2)活性化ホスホラミダイトとしての第1のヌクレオシドを固体支持体上の遊離ヒドロキシル基とカップリングする、
a3)それぞれのP結合ヌクレオシドを酸化または硫化して、それぞれのホスホジエステル(P=O)またはそれぞれのホスホロチオエート(P=S)を形成する、
a4)任意選択で、固体支持体上のあらゆる未反応のヒドロキシル基をキャッピングする、
a5)固体支持体に結合した第1のヌクレオシドの5’ヒドロキシル基を脱ブロッキングする、
a6)活性化ホスホラミダイトとしての第2のヌクレオシドをカップリングして、それぞれのP-O結合二量体を形成する、
a7)それぞれのP-O結合ジヌクレオシドを酸化または硫化して、それぞれのホスホジエステル(P=O)またはそれぞれのホスホロチオエート(P=S)を形成する、
a8)任意選択で、あらゆる未反応の5’ヒドロキシル基をキャッピングする、
a9)所望の配列が組み立てられるまで、先の工程a5~a8を繰り返す、という化学反応から成る。
【0007】
反応配列は、代替として、固体支持体上にプレロードされたヌクレオシドの5’保護ヒドロキシル基の脱ブロッキングから始まってもよい。その後の工程は、上で概説した順序に従う。
【0008】
最後に、組み立てられたオリゴヌクレオチドが可溶性有機塩基で処理されてシアノエチル保護基が除去され、水性塩基で処理されて包括的塩基脱保護および固体支持体からの切断(一般に切断および脱保護と呼ばれる)がもたらされ、最終的にその後の下流処理および精製法に供されて、所望の純粋なオリゴヌクレオチドが提供される。
【0009】
骨格脱保護、すなわち、ホスホジエステル結合またはホスホロチオエート結合からのシアノエチル基の除去は、原理的には標準であり、当該技術分野で周知である。
【0010】
特許文献2は、標準手順を説明しており、アセトニトリル溶液中のジエチルアミンなどのアミンを用いたシアノエチル基の除去を開示している。
【0011】
式IIのオリゴヌクレオチド化合物からの1つのアルキル基の除去は、特許文献3において、55℃で濃縮アンモニアを用いて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第WO2019/079781号
【特許文献2】米国特許第6,887,990号
【特許文献3】PCT国際公開第WO2018/045317号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このプロセスの過程で、アルキル基が、アルキルホスホネートヌクレオチドに近接したウラシル核酸塩基をアルキル化し、これにより、その後の下流処理工程で著しく激減させることのできないいわゆるアルキル移動不純物がもたらされる傾向があることが観察されている。メチル化ウラシル核酸塩基を有するオリゴ構造が式IIIに示される。R2は、上で概説した意味を有する。
【化3】
【0014】
したがって、本発明の目的は、骨格脱保護のためのプロセス、すなわち、式IIのオリゴヌクレオチド化合物からシアノエチル基および1つのC1-4アルキル基を除去するためのプロセスをさらに改善することであった。具体的には、アルキル移動不純物の形成およびシアノエチル(CNET)不純物の形成などの望ましくない副反応を抑制するか、または少なくとも減少させる反応条件を見出すことが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
式Iの5’末端にアルキルホスホネート基を有する直鎖状P結合オリゴヌクレオチドを生成するためのプロセスであって、
【化4】
(式中、R1はC1-4アルキル基であり、R2はフルオロ、ヒドロキシル、またはC1-4アルコキシであり、Xは硫黄または酸素であり、核酸塩基という用語は任意選択で修飾されたアデニン、シトシン、グアニン、またはウラシルを表し、オリゴ鎖という用語は残りのP結合オリゴヌクレオチド鎖を表し、ここで、当該オリゴ鎖が少なくとも1つのウラシル核酸塩基を含む)
式II
【化5】
(式中、R
1、R
2、X、核酸塩基という用語、およびオリゴ鎖という用語は上記のとおりである)のオリゴヌクレオチド化合物から、有機溶媒の存在下で求核有機塩基を用いて、シアノエチル基および1つのC1-4アルキル基を除去することを含む、プロセスを用いて、この目的を達成することができたことが見出された。
【0016】
以下の定義は、本発明を説明するために本明細書で使用される様々な用語の意味および範囲を説明および定義するために記載される。
【0017】
核酸塩基という用語は、任意選択で修飾されたアデニン、シトシン、グアニン、またはウラシルを表す。いくつかの実施形態では、核酸塩基は、ウラシルである。
【0018】
C1-4アルキルという用語は、1~4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を表す。代表的なものは、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、またはt-ブチルである。本発明の目的に好ましいC1-4アルキル基は、メチルおよびエチルであり、より好ましくはメチルである。
【0019】
C1-4アルコキシという用語は、酸素原子に共有結合した1~4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を表す。代表的なものは、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、またはt-ブトキシである。本発明の目的に好ましいC1-4アルコキシ基は、メトキシおよびエトキシであり、より好ましくはメトキシである。
【0020】
本明細書で使用されるオリゴヌクレオチドという用語は、2つ以上の共有結合ヌクレオチドを含む分子として当業者によって一般的に理解されているものとして定義される。治療的に価値のあるオリゴヌクレオチドとして使用するために、オリゴヌクレオチドは、典型的には、10~40ヌクレオチド長、好ましくは10~25ヌクレオチド長として合成される。
【0021】
オリゴヌクレオチドは、任意選択で修飾されたDNA、RNA、もしくはLNAヌクレオシドモノマー、またはそれらの組み合わせから成り得る。
【0022】
LNAヌクレオシドモノマーは、ヌクレオチドのリボース糖環のC2’とC4’との間のリンカー基または架橋を含む修飾ヌクレオシドである。これらのヌクレオシドは、本文献では架橋核酸または二環式核酸(BNA)とも呼ばれる。
【0023】
本明細書で使用される任意選択で修飾されたとは、糖部分または核酸塩基部分の1つ以上の修飾の導入により同等のDNA、RNA、またはLNAヌクレオシドと比較して修飾されたヌクレオシドを指す。好ましい実施形態では、修飾ヌクレオシドは、修飾糖部分を含み、例えば、1つ以上の2’置換ヌクレオシドおよび/または1つ以上のLNAヌクレオシドを含み得る。修飾ヌクレオシドという用語はまた、本明細書では「ヌクレオシド類似体」という用語または修飾「単位」もしくは修飾「モノマー」という用語と互換的に使用される場合がある。
【0024】
DNA、RNA、またはLNAヌクレオシドは、原則として、2つのヌクレオシドを一緒に共有結合するホスホジエステル(P=O)および/またはホスホロチオエート(P=S)ヌクレオシド間結合によって結合されている。
【0025】
したがって、いくつかのオリゴヌクレオチドでは、すべてのヌクレオシド間結合がホスホジエステル(P=O)から成ってもよく、他のオリゴヌクレオチドでは、すべてのヌクレオシド間結合がホスホロチオエート(P=S)から成ってもよく、またはさらに他のオリゴヌクレオチドでは、ヌクレオシド間結合の配列が変化し、ホスホジエステル(P=O)ヌクレオシド間結合およびホスホロチオエート(P=S)ヌクレオシド間結合の両方を含む。
【0026】
オリゴヌクレオチド構成は、各々のヌクレオチドが3文字で記載される3文字コードを使用して、5’末端(左)から3’末端(右)に示されていてもよく、ここで、
-1番目の文字は、糖部分(f=2’-フルオロ-2’-デオキシリボヌクレオチド、g=2’-修飾GalNAcリボヌクレオチド、m=2’-O-メチルリボヌクレオチド、p=4’-O-(メチルホスホネート-2’-O-メチルリボヌクレオチドアイソスター)を定義し、
-2番目の文字は、核酸塩基(A=アデニン、C=シトシン、G=グアニン、U=ウラシル)を定義し、
-3番目の文字は、ホスホロ骨格(o=ホスホジエステル、s=ホスホロチオエート)を定義する。
【0027】
修飾核酸塩基という用語には、保護基を有する核酸塩基が含まれるが、これらに限定されず、tert.ブチルフェノキシアセチル、フェノキシアセチル、ベンゾイル、アセチル、イソブチリル、またはジメチルホルムアミジノから選択することができる(Wikipedia、Phosphoramidit-Synthese、https://de.wikipedia.org/wiki/Phosphoramidit-Synthese(2016年3月24日)を参照されたい)。
【0028】
オリゴヌクレオチド合成の原理は、当該技術分野で周知である(例えば、Oligonucleotide synthesis、Wikipedia(無料の百科事典)、https://en.wikipedia.org/wiki/Oligonucleotide synthesis(2016年3月15日)を参照されたい)。
【0029】
最近では、大規模オリゴヌクレオチド合成は、コンピュータ制御合成装置を使用して自動的に行われる。
【0030】
原則として、オリゴヌクレオチド合成は、組み立てられるオリゴヌクレオチドがその3’末端ヒドロキシ基を介して固体支持材に共有結合しており、かつ鎖組み立ての全過程にわたってそれに結合したままである、固相合成方法である。好適な支持体は、Cytiva製のPrimer support 5GおよびKinovate製のNittoPhase(登録商標)HL supportなどの市販のマクロ多孔質ポリスチレン支持体、またはLGCにより提供された核酸塩基をプレロードしたCPG支持体などの制御細孔ガラス支持体である。
【0031】
上で概説したように、オリゴヌクレオチド合成は、原理的には、上で概説したように所望の配列が組み立てられるまでの成長鎖の5’末端へのヌクレオシド残基の段階的付加である。
【0032】
骨格脱保護は、以下に概説されるように、本発明のプロセスに従って行うことができる。その後の樹脂からの切断は、濃縮水性アンモニアを用いて行うことができる。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明は、式Ia
【化6】
(式中、R1はC1-4アルキル基であり、R2はフルオロ、ヒドロキシル、またはC1-4アルコキシであり、Xは硫黄または酸素であり、オリゴ鎖は残りのP結合オリゴヌクレオチド鎖を表す)の5’末端にアルキルホスホネート基を有する直鎖状P結合オリゴヌクレオチドを生成するためのプロセスを含む。
【0034】
本発明のプロセスの出発化合物である式IIのオリゴヌクレオチド化合物は、PCT国際公開第WO2018/045317号の開示に従って調製することができる。
【0035】
好ましい実施形態では、式IIのオリゴヌクレオチド化合物は、式IIaを有する。
【化7】
【0036】
上で概説したように、R1はC1-4アルキル基であり、R2はフルオロ、ヒドロキシル、またはC1-4アルコキシである。好ましい実施形態では、R1はメチルであり、R2はフルオロ、ヒドロキシル、またはメトキシである。より好ましい実施形態では、R1はメチルであり、R2はフルオロまたはメトキシである。
【0037】
求核有機塩基は、典型的には、Mayr nucleophilicity scale: J.Phys. Org. Chem.2008, 21, 584-595)に従うその求核性、およびWikipedia、Acid dissociation constant、https://en.wikipedia.org/wiki/Acid_dissociation_constant(2021年10月24日)に従うそのpKaを特徴とすることができる有機アミンである。
【0038】
通常、求核有機塩基は、15超、好ましくは15~30、より好ましくは16~25の求核性を有する。
【0039】
好適な求核有機塩基(プロトン化有機塩基)のpKa値は、10.5未満、好ましくは6~10.5、より好ましくは8~10.5である。
【0040】
好ましい求核有機塩基は、モルホリン、N,N-ジメチルエチルアミン、N-メチル-ピロリジン、または(1,4-ジアザ-ビシクロ[2.2.2]オクタンから選択することができる三級アミンである。
【0041】
好ましい求核有機塩基は、(1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)(DABCO)である。
【0042】
本プロセスは、アセトニトリル、ピリジン、およびトルエン、またはそれらの混合物から選択することができる有機溶媒の存在を必要とする。好ましい有機溶媒は、アセトニトリルである。
【0043】
有機溶媒中の求核有機塩基の濃度は、原則として、5重量%~100重量%、好ましくは10重量%~50重量%、より好ましくは15重量%~25重量%の範囲で選択される。
【0044】
求核有機塩基の量は、典型的には、1.5CV~30.0CVの範囲で適用される。
【0045】
有機溶媒中の求核有機塩基の溶液は、通常、10分~6時間、好ましくは20分~4時間の時間範囲で送達される。
【0046】
0.1CV/分~2.0CV/分、好ましくは0.1CV/分~0.5CV/分の範囲の流量が実行可能であることが見出された。
【0047】
完全に送達された後、有機溶媒中の求核有機塩基の溶液を、60分~4時間、好ましくは90分~120分間にわたって合成カラム上で再循環させることができる。これは、必要に応じて、新鮮な有機塩基を添加する必要なく反応時間を延長することができるため、さらに好ましい実施形態である。
【0048】
典型的な例として、アセトニトリル中の3.75CVの求核有機塩基を、30分かけてカラムに充填し、続いて、0.125CV/分で90分間にわたってカラム上で再循環させる。
【0049】
上述のように、本意図の目的は、メチル化ウラシル核酸塩基を有する以下の式IIIのオリゴ構造に説明されるように、アルキル基(R1)がアルキルホスホネートヌクレオチドに近接したウラシル核酸塩基をアルキル化し、これにより、いわゆるアルキル移動不純物がもたらされる傾向があるため、アルキル移動不純物およびシアノエチル(CNET)不純物の望ましくない形成を抑制するか、または少なくとも減少させることであった。
【化8】
【0050】
これらの不純物を、その後の下流処理工程で著しく激減させることはできない。
【0051】
アルキル移動不純物、または好ましくはメチル移動不純物が、式IIまたは式IIaのオリゴヌクレオチド化合物中、および式Iまたは式Iaの結果として生じた直鎖状P結合オリゴヌクレオチド中のオリゴ鎖のウラシル核酸塩基に影響を及ぼし得るため、このオリゴヌクレオチドは、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのウラシル核酸塩基を含む。
【0052】
ウラシル核酸塩基をアルキル化し、オリゴ鎖上に位置するウラシル核酸塩基が5’末端に近いほどアルキル移動不純物が増加するという傾向のため、近接という用語は、ウラシル核酸塩基が、典型的には、5’末端から数えて、オリゴ鎖の2位~20位内、好ましくは2位~10位内、より好ましくは2位~6位内にあることを意味する。
【0053】
したがって、さらなる実施形態としての本発明のプロセスは、式Iの直鎖状P結合オリゴヌクレオチド中の「N+アルキル不純物の合計」として表されるアルキル移動不純物のレベルが4.0%未満、3.0%未満、2.0%未満、1.0%未満、または最も好ましくは0.5%未満である条件下で本プロセスを行うことを含む。%値は、N+アルキル不純物基のMS強度によって補正される、UVピークの面積%から決定される「面積%」である。
【0054】
好ましい実施形態では、N+アルキル不純物は、N+メチル不純物である。
【0055】
さらなる実施形態としての本発明のプロセスは、式Iの直鎖状P結合オリゴヌクレオチド中の「シアノエチル(CNET)不純物の合計」として表されるCNET不純物のレベルが2.0%未満、1.0%未満、または0.5%未満である条件下で本プロセスを行うことも含む。%値は、CNET不純物基のMS強度によって補正される、UVピークの面積%から決定される「面積%」である。
【0056】
これらの値は、粗オリゴヌクレオチド段階で達成および測定することができる、すなわち、このオリゴヌクレオチドの場合、切断および脱保護後に、かつ精製または限外濾過などの任意の下流処理が適用される前に得ることができる。
【0057】
実例として、オリゴヌクレオチドは、以下から選択することができ、
pUs.fUs.fAs.mUo.fUo.mGo.fUo.fGo.mAo.fGo.mGo.fAo.mUo.fUo.mUo.fUo.mUo.mGo.fUo.mCs.mGs.mG
ここで、オリゴヌクレオチド構成は、各々のヌクレオチドが3文字で記載される3文字コードを使用して、5’末端(左)から3’末端(右)に示されており、ここで、
-1番目の文字は、糖部分(f=2’-フルオロ-2’-デオキシリボヌクレオチド、g=2’-修飾GalNAcリボヌクレオチド、m=2’-O-メチルリボヌクレオチド、p=メチルホスホネート-2’-O-メチルリボヌクレオチドアイソスター)を定義し、
-2番目の文字は、核酸塩基(A=アデニン、C=シトシン、G=グアニン、U=ウラシル)を定義し、
-3番目の文字は、ホスホロ骨格(o=ホスホジエステル、s=ホスホロチオエート)を定義する。
【0058】
本明細書に開示される化合物は、以下の核酸塩基配列を有する。
配列番号1 UUAUUGUGAGGAUUUUUGUCGG
【実施例】
【0059】
略語:
Ac2O=無水酢酸
ETT=5-エチルチオテトラゾール
Bz=ベンゾイル
CNET=シアノエチリル
DABCO=1,4-ジアゾビシクロ[2.2.2]オクタン
DCA=ジクロロ酢酸
DEA=ジエチルアミン
DNA=2’-デオキシリボヌレチド
DMEA=N’Nジメチルエチルアミン
DMT=4,4’-ジメトキシトリチル
CV=カラム体積
MeCN=アセトニトリル
NA=該当なし
NMI=N-メチルイミダゾール
NMP=N-メチル-ピロリジン
PhMe=トルエン
TBA=tert-ブチルアミン
PhMe=トルエン
【0060】
実施例1.
pUs.fUs.fAs.mUo.fUo.mGo.fUo.fGo.mAo.fGo.mGo.fAo.mUo.fUo.mUo.fUo.mUo.mGo.fUo.mCs.mGs.mGの合成
ここで、オリゴヌクレオチド構成は、各々のヌクレオチドが3文字で記載される3文字コードを使用して、5’末端(左)から3’末端(右)に示されており、ここで、
-1番目の文字は、糖部分(f=2’-フルオロ-2’-デオキシリボヌクレオチド、g=2’-修飾GalNAcリボヌクレオチド、m=2’-O-メチルリボヌクレオチド、p=4’-O-(メチルホスホネート-2’-O-メチルリボヌクレオチドアイソスター)を定義し、
-2番目の文字は、核酸塩基(A=アデニン、C=シトシン、G=グアニン、U=ウラシル)を定義し、
-3番目の文字は、ホスホロ骨格(o=ホスホジエステル、s=ホスホロチオエート)を定義する。
【0061】
表題化合物を、AKTA Oligopilot 100およびプレロードポリスチレン固体支持体(NittoPhase HL preloaded 358)を使用して、2.62mmolの規模で固相上での標準ホスホラミダイト化学により生成した。
【0062】
以下のホスホラミダイトを各々のサイクルに使用した。
【表1】
【0063】
概して、2.0当量のホスホラミダイトを用いた。すべての試薬を商用供給源から受け取ったまま使用し、試薬溶液を適切な濃度で調製した(以下の詳細を参照されたい)。切断および脱保護を、水酸化アンモニウムを使用して達成して、粗オリゴヌクレオチドを得た。
【表2】
【0064】
切断および脱保護工程由来の粗溶液を真空中で濃縮して、過剰なアンモニアを除去した。濃縮溶液を凍結乾燥させて、固体として粗オリゴヌクレオチドを得た。淡黄色の固体をサンプリングし、LC-UV-MS分析に供した。不純物を、それらの割り当てられた構造に従って群分けした。すべてのN+メチル不純物の合計およびすべてのCNET不純物の合計を、プロセスパラメータの分析に使用した。
【0065】
実施例2
骨格脱保護実施例
使用した有機アミンは、以下の表に列記したpKaおよび求核性値を有する。求核性値をMayr’s Database of Reactivity Parameters(https://www.cup.lmu.de/oc/mayr/reaktionsdatenbank/fe/showclass/40)で見つけることができ、pKa値をCorrelation of the Base Strengths of Amines,J.Am. Chem. Soc.1957, 79, 20, 5441-5444>>で見つけることができる。DABCOのpKaについては、Basicity of 1,s-bis(dimethy1amino)-naphthalene and 1,4-diazabicyclo[2.2.2]octane in water and dimethylsulfoxide,Can. J.Chem.1987, 65, 996を参照する。
【表3】
【0066】
骨格脱保護を、以下の表に概説するように、様々な有機アミンのトルエン、ピリジン、またはアセトニトリル溶液を使用して行った。
【表4】
【0067】
プロセスパラメータを以下の別個の表に列記する。
【表5】
【0068】
実施例2e、2j、2k、2l、および2mが好ましいとみなされる。実施例2kが最も好ましい。
【国際調査報告】