(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】風力推進ユニット及びこのようなユニットを備える船舶
(51)【国際特許分類】
B63H 9/061 20200101AFI20241226BHJP
B63H 9/067 20200101ALI20241226BHJP
B63H 9/10 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B63H9/061
B63H9/06 A
B63H9/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536368
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 IB2022062734
(87)【国際公開番号】W WO2023119243
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519162983
【氏名又は名称】オーシャンウイングズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スデズ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール,ルドヴィック
(57)【要約】
本発明は、状況に応じて一般に垂直軸線を中心として角度制御される構造体に取り付けられた二重帆を備える、風力推進ユニットであって、二重帆は、前方フラップ(100)と、後方フラップ(200)と、前方フラップ及び後方フラップが一般に平行で互いに離間した2つの軸線を中心として枢動することを可能にする、支持構造体(300)と、を備え、ユニットが、推進中の風の入射方向に従って後方フラップの向きを制御するための装置もまた備える、風力推進ユニットに関する。本発明によれば、後方フラップの向きを制御するための装置は、後方フラップ(200)を、風力推進ユニットが非作動位置にある場合に、その断面範囲の実質的な部分が前方フラップ(100)の断面範囲の実質的な部分に沿って配置される折り畳み向きにするようにもまた、構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重帆推進ユニットであって、前記二重帆推進ユニットが、状況に応じて一般に垂直軸線の周りに角度制御される構造体に取り付けられた二重帆を備え、前記二重帆が、前方フラップ(100)と、後方フラップ(200)と、前記前方フラップ及び前記後方フラップが一般に平行で互いに離間した2つの軸線の周りに枢動することを可能にする支持構造体(300)と、を備え、前記ユニットが、推進中の風の入射方向に従って前記後方フラップの向きを制御するための装置もまた備え、前記後方フラップの前記向きを制御するための前記装置は、前記帆推進ユニットが非作動位置にある場合に、前記後方フラップ(200)を、その断面範囲の実質的な部分が前記前方フラップ(100)の断面範囲の実質的な部分に沿って配置される折り畳み向きにするようにもまた、構成される、二重帆推進ユニット。
【請求項2】
前記前方フラップが、方向制御装置を有しておらず、使用時に、ある角度範囲内で自由に動くことができ、前記後方フラップは、前記前方フラップがその折り畳まれた位置に近づくにつれて、前記前方フラップ(100)を付勢して角度的にシフトさせて、前記フラップの設置面積をそれらの厚さ方向に最小にすることができることを特徴とする、請求項1に記載のユニット。
【請求項3】
前記後方フラップの前記向きを制御するための装置であって、前記後方フラップ(200)の折り畳まれた位置において、前記前方フラップ(100)を角度的にシフトさせることが可能であり、それによって、前記フラップの設置面積をそれらの厚さの方向において最小化する、装置を備えることを特徴とする、請求項1に記載のユニット。
【請求項4】
前記前方フラップの前記角度オフセットは、それらの断面輪郭の軸線(AV1、AV2)が前記折り畳み位置において一般に平行であるようなものであることを特徴とする、請求項2又は3に記載のユニット。
【請求項5】
前記フラップ(100、200)の断面の前記輪郭の前記軸線が、前記折り畳まれた位置において、両方のマストの軸線を含む平面から、約2~20°だけ角度的にオフセットされることを特徴とする、請求項3又は4に記載のユニット。
【請求項6】
前記折り畳み位置において、前記後方フラップの後縁部が、前記前方フラップの前縁部に近接して配置されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のユニット。
【請求項7】
前記支持構造体が、少なくとも1つのブーム要素及び/又はガフ要素を備え、前記折り畳み位置及び前記断面において、前記前方フラップ及び前記後方フラップが、前記ブーム要素及び/又は前記ガフ要素の輪郭に、完全に内接することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のユニット。
【請求項8】
前記後方フラップをその折り畳まれた位置にロックするための手段を更に備えることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のユニット。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の少なくとも1つの風力推進ユニットを備えることを特徴とする、少なくとも部分的に風力推進される船舶。
【請求項10】
前記又は各風力推進ユニットを作動位置から非作動位置に移動させる機構を備え、折り畳み制御装置が、前記機構の制御に関連して制御されることを特徴とする、請求項9に記載の船舶。
【請求項11】
前記非作動位置が、収容位置又は格納位置であることを特徴とする、請求項10に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、風力推進に関し、より詳細には、クルーザ及び作業船のための新しいタイプの推進帆に関する。
【背景技術】
【0002】
特に、PCT国際公開特許第2018087649(A1)号及び同第2020115717(A1)号には、状況に応じて一般に垂直軸線を中心に角度制御される構造体に取り付けられた二重帆を備える、風力推進装置が記載されており、二重帆は、前方フラップ及び後方フラップと、ブームを形成する要素及びガフを形成する要素によって接続された前方マスト及び後方マストと、を備え、前方フラップは、前方マストによって横断され、前方マストによって画定される軸線を中心に回転し、後方フラップは、後方マストによって横断され、後方マストによって画定される軸線を中心に回転する。当該構造体は、前方マスト上に配置された回転軸線上で、回転することができる。
【0003】
米国特許出願公開第2018162502(A1)号もまた、潜水移動中の抗力を制限するために傾けられ得る二重帆を有する潜水艇を記載している。帆はまた、後方フラップを横方向に移動させて、前方フラップに沿って位置決めするための、複雑な機構を組み込んでいる。
【0004】
最後に、英国特許第2590082(A)号は、後方フラップがその他の2つのフラップの向きと反対の向きをとり得る3フラップ型帆を記載している。しかしながら、この位置では、帆は、依然としてかなりの設置面積を有する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、使用されていない場合に、可変の向きを有する2つのフラップを備える装置のサイズを、選択的に制限するための、特に単純で効果的な解決策を提供することである。
【0006】
この目的のために、二重帆推進ユニットが提案されているが、本二重帆推進ユニットは、状況に応じて一般に垂直軸線の周りに角度制御される構造体に取り付けられた二重帆を備え、二重帆は、前方フラップと、後方フラップと、前方フラップ及び後方フラップが一般に平行で互いに離間した2つの軸線の周りに枢動することを可能にする支持構造体と、を備え、推進中の風の入射方向に従って後方フラップの向きを制御するための装置もまた備えるが、後方フラップの向きを制御するための装置は、帆推進ユニットが非作動位置にある場合に、後方フラップを、その断面範囲の大部分が前方フラップの断面範囲の大部分に沿って配置される折り畳み向きにするようにもまた、構成される。
【0007】
風力推進ユニットは、所望により、以下の追加の特徴を、個々に、又は当業者が互いに技術的に互換性があると理解する任意の組み合わせで、備える。
*前方フラップは、方向制御装置を有しておらず、使用時に、ある角度範囲内で自由に動くことができ、後方フラップは、前方フラップがその折り畳まれた位置に近づくにつれて、前方フラップを付勢し、角度的にシフトさせて、フラップの設置面積をそれらの厚さの方向に最小化することができる。
*前方フラップの角度オフセットは、それらの断面輪郭の軸線が折り畳まれた位置で一般に平行であるようなものである。
*断面におけるフラップ輪郭の軸線は、折り畳まれた位置において、両方のマストの軸線を含む平面から、約2~20°だけ、角度的にオフセットされる。
*折り畳まれた位置において、後方フラップの後縁部は、前方フラップの前縁部に近い。
*支持構造体は、少なくとも1つのブーム要素及び/又はガフ要素を備え、折り畳まれた位置及び断面において、前方フラップ及び後方フラップは、ブーム要素及び/又はガフ要素の輪郭に、完全に内接する。
*ユニットは、後方フラップをその折り畳まれた位置にロックするための手段もまた、備える。
【0008】
上述した少なくとも1つの風力推進ユニットを備えることを特徴とする船舶もまた、提案されている。
【0009】
特定の実施形態では、船舶は、風力推進ユニット又は各風力推進ユニットを動作位置から非動作位置に移動させる機構を備え、折り畳み制御装置は、当該機構の制御に関連して制御される。
【0010】
当該非作動位置は、特に、収納位置又は格納位置であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明のその他の態様、目的、及び利点は、非限定的な例として所与され、添付の図面を参照してなされる、その好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読むことによって、より明らかになるであろう。
【
図1】動作位置にある、本発明の一実施形態による風力推進システムの、全体斜視図である。
【
図2】
図1と同じ位置における、
図1に示される装置の概略水平断面図である。
【
図3】非作動位置にある、
図1及び
図2に示されている装置の、全体斜視図である。
【
図4】
図3と同じ位置における、
図1~
図3に示されている装置の概略水平断面図である。
【
図5】本発明による風力推進システムの特定の実施形態の、斜視図である。
【
図6】下げられた状態の、
図5の装置を示す斜視図である。
【
図7】折り畳まれた状態の、
図6の装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照すると、本発明による風力推進システムは、2つの空気力学的翼形部を備える帆の形態をとり、その両方は、入射角及び相対ピッチ角に関して、調整可能である。以下では、それらを第1のフラップ又は前方フラップ、及び第2のフラップ又は後方フラップと称する。それらは、それぞれ、参照番号100及び200で示されている。それらは、以下に見られるように、この場合は円筒形である2つのそれぞれのマスト310、320によって画定される軸線上で、枢動する。
【0013】
これらの翼形部の少なくとも1つは、前後方向に非対称の(前縁部及び後縁部を有する)空気力学的断面を有する。これらは、例えば、対称な帆セクションであってもよく、より好ましくは、NACA 00xx標準断面などであってもよい。
【0014】
第1のフラップに対する第2のフラップの相対角度は、第2のフラップが捻じれることを可能にするために、場合によっては、高さに応じて異なって調節可能である。
【0015】
このような装置の動作及び風挙動の詳細は、PCT国際公開特許第2020115717(A1)号に、見出され得る。
【0016】
装置は、ここでは、外径が一定である2つの円筒形マスト310、320によって、及びそれぞれ、ブーム要素及びガフ要素を形成する、それぞれ下部及び上部の、一般に水平構造要素330、340によって、形成された、剛性フレーム300を更に備える。この構造フレームは、前方マスト310によって形成される垂直軸線A1の周りを、自由に回転する。この構造フレームの要素は、例えば、関係する応力に対して好適に寸法決めされた金属又は複合部品から、構成されている。
【0017】
この例では、後方フラップ200の厚さが前方フラップ100の厚さよりも小さいので、後方マスト320は、前方マスト310の直径よりも小さい直径を有してもよい。それは、後方フラップ200が構造体300に対して旋回する軸線A2を示す。
【0018】
構造体300は、全体として、船のデッキ上に取り付けられたピボット500によって担持されることによって、適切な制御を使用して船に対して旋回させ得るが、構造体の旋回軸線は、全体として、前方マスト310によって画定される軸線A1と、有利に一致する。
【0019】
前方フラップ及び後方フラップのそれぞれのマストの周りの向きを制御する手段は、PCT国際公開特許第2020115717(A1)に記載されているタイプのものであってもよく、その他の手段も当然可能である。
【0020】
本発明の一態様によれば、装置は、
図1及び
図2に示されるような動作位置をとり得るが、フラップの自由度は、PCT国際公開特許第2020115717(A1)号に記載されているように、回転における、及び適用可能である場合には捻じれにおける、自由度であり、
図1及び
図2に示される位置は、2つのフラップが中央位置にある位置であることに、留意されたい。
【0021】
スペース又は設置面積が低減される場合、装置は、後方フラップ200が、その旋回軸線A2の周りで、180°程度の角度にわたって前方に折り畳まれることを可能にするように設計され、それによって、それは前方フラップに並んで位置する。
【0022】
この配置は、装置の前後の設置面積を減少させるが、例えば、それによって、
-暴風雨の場合に風に晒されることを制限し、
-船舶を傾けることによって、船舶の主軸線(長手方向、横方向、及び垂直方向)のうちの1つに沿って並進させることによって、又は動きの任意の組み合わせによって、船舶を格納する必要がある場合に、船舶の収容を容易にし、
-例えば、装置が商業用船舶に搭載されている場合の積み込み及び積み下ろし操作中に、
-又は装置の製造、輸送、若しくは取り扱い段階中に、その形状係数を制限する。
【0023】
後方フラップの折り畳み動作は、有利には、
図4に明確に見られるように、その長手方向軸線AAによって
図4に示されるように、支持構造体300の平面に対する、その軸線A1を中心とした回転による角度α1だけの、前方フラップ100のわずかな角変位を伴う。これにより、後方フラップ200は、前方フラップの後縁110がこの移動を妨げることなく折り畳まれることが、可能になる。有利には、前方フラップの角度オフセットは、断面における前方フラップ輪郭及び後方フラップ輪郭の軸線AV1、AV2が一般に平行であるようなものである。
【0024】
第1の場合には、前方フラップは受動的である、すなわち、特定のアクチュエータを有さず、動作時に、風が吹いている場合にある角度範囲内で、自由に移動する。この場合、後方フラップは、それが折り畳まれた場合に、前方フラップにわずかに応力を加え、それを角度的にシフトさせ、したがって、2つのフラップ輪郭の軸線AV1及びAV2を、平行又はわずかに傾斜した関係にする。この場合、
図4に示される2つのフラップ間の間隙は、存在しない。負荷は、例えば、フラップ表面全体、又は内部フラップ形状要素、又は専用の局所的支持要素に直接印加され得る。
【0025】
第2の場合には、前方フラップは、前方フラップ輪郭の軸線AV1を、後方フラップ輪郭の軸線AV2に対して、平行又はわずかに傾斜した位置に移動させるように、操作される、配向変更装置を備える。
【0026】
同様に、有利には、折り畳みの終わりに、前方フラップ及び後方フラップの断面は、ブーム要素の輪郭に完全に内接し、好ましくは、ガフ要素の輪郭にもまた内接する。
【0027】
より正確には、従来の帆輪郭では、この位置において、構造体300の長手方向軸線AAに対して、前方フラップの軸線AV1によって形成される、角度α1は、有利には約2~20°であり、一方、当該長手方向軸線AAに対して後方フラップの軸線AV2によって形成される角度α2は、有利には約160~178°であり、これらの値は、フラップのそれぞれの輪郭のタイプ(特に長さ/厚さの比)に、本質的に依存する。
【0028】
後方フラップは、手動又はモータのいずれかによって、折り畳まれる(前方フラップが自由でない場合、前方フラップは角度を付けられる)。モータ制御の場合、ストローク終了制御構成は、任意のタイプのサーボ駆動、特に、機械式、光学式、電気式、若しくは電磁式のサーボ駆動に基づいて、又は折り畳みの終わりにおける角度位置の微調整のためのステッパモータを用いて、提供され得る。特に、PCT国際公開特許第2020115717(A1)号に記載されている配向制御機構が使用され得るが、当業者は、必要な適合を行うことができる。
【0029】
折り畳まれた位置にある2つのフラップを、互いに対して又はフレーム300に対して、機械的にロックすることもまた、可能である。ロック手段は、例えば、ブーム要素330又はガフ要素340の上又は中に設けられ、電磁石などによって機械的に作動される関連する構成と協働するロックフィンガを備えてもよい。
【0030】
ここで
図5~
図7を参照すると、例えばPCT国際公開特許第2020115717(A1)号に記載されているように、前方フラップ及びフラップを下げることができる防風装置が、示されている。
【0031】
2つのフラップは、ここでは、一連の前方形状要素120及び一連の(好ましくは同じ数の)後方形状要素220によってそれぞれ画定されるが、これらは、それぞれのエンベロプ110、210と協働して、第1のフラップ100及び第2のフラップ200を形成するように意図された、対称な空気力学的輪郭のエンベロプを共に記載する。
【0032】
これらの形状要素は、それぞれのマスト310、320上で自由に回転し、並進移動することができ、並進移動により、2つのフラップを上げ下げすることができ、必要であれば、リーフィング(畳込み)することができる。
【0033】
図5では、推進システムはその動作状況にあり、前方フラップ及び後方フラップの傾斜は、航行状況に従って制御される。
【0034】
図6では、両方のフラップが下げられており、ブーム要素330に沿って限られた空間を占めている。
【0035】
最後に、
図7において、後方フラップは、上述のように、前方フラップに対して折り畳まれている。
【0036】
特に、これは、航行中の装置の重心を下げる。
【0037】
当然のことながら、本発明は、上述され、図面に示された実施形態に、決して限定されるものではない。むしろ、当業者は、多数の変形又は修正を行う方法を周知であろう。
【国際調査報告】