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特表2025-500294多孔性イオン荷電粒子を用いた核酸抽出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】多孔性イオン荷電粒子を用いた核酸抽出方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20241226BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20241226BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20241226BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALI20241226BHJP
【FI】
C12N15/10 110Z
C12M1/00 A
C12Q1/686 Z
C12Q1/6841 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536424
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 KR2022001489
(87)【国際公開番号】W WO2023120807
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0185773
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524229392
【氏名又は名称】鈕可西徳有限公司
【氏名又は名称原語表記】NEUCLACID INC.
【住所又は居所原語表記】702-ho, 226 Gasan digital 1-ro, Geumcheon-gu, Seoul 08502 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】洪 承汎
(72)【発明者】
【氏名】鄭 順任
(72)【発明者】
【氏名】河 明基
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029BB20
4B029CC02
4B029CC10
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QS15
4B063QS25
4B063QS34
(57)【要約】
【要約】
本発明は、核酸分離用多孔性イオン荷電粒子及びそれを用いた核酸抽出方法に関する。より具体的には、本発明の多孔性イオン荷電粒子は陰イオン性特性を有するため、負電荷を帯びた核酸を電気的に分離し、陽イオン性副産物を粒子に吸着させ、同時に溶媒である水を吸収することができる。すなわち、生物学的試料の入った反応チューブに多孔性イオン荷電粒子を浸漬するだけで、核酸の分離及び濃縮が自動的に行われるため、有害な有機溶媒、磁石ビーズ、遠心分離機等の複雑な装置を使用することなく、核酸を簡単かつ迅速に分離し濃縮できる核酸分離方法を提供する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分離用多孔性イオン荷電粒子。
【請求項2】
前記 多孔性イオン荷電粒子は、陰イオン性高分子電解質(polyelectrolyte)である、請求項1に記載の核酸分離用多孔性イオン荷電粒子。
【請求項3】
前記多孔性イオン荷電粒子は、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリアクリル酸ナトリウム(sodium polyacrylate)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、アルジネート(alginate)、エチレン無水マレイン酸(ethylene maleic anhydride)、メチルセルロース(Methyl cellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(Hydroxy ethyl cellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropyl methyl cellulose)、セルロースアセテート(Cellulose acetate)、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose)、及びポリメタクリレート(Polymethacrylate、PMA)からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の核酸分離用多孔性イオン荷電粒子。
【請求項4】
前記多孔性イオン荷電粒子の材料は、ポリアクリル酸ナトリウムである、請求項3に記載の粒子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の核酸分離用多孔性イオン荷電粒子を含む、核酸抽出チューブ。
【請求項6】
核酸を含む試料を直接溶解緩衝液(Direct lysis buffer)とともに核酸抽出チューブに投入して混合する段階と、
前記混合物に多孔性イオン荷電粒子(Ion charge particle)を投入し、5分~30分間反応させる段階と、
前記反応を完了したイオン荷電粒子を除去し、核酸が濃縮された緩衝液を得る段階と、
を含む、核酸抽出方法。
【請求項7】
前記多孔性イオン荷電粒子は、陰イオン性高分子電解質である、請求項6に記載の核酸抽出方法。
【請求項8】
前記多孔性イオン荷電粒子は、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリアクリル酸ナトリウム(sodium polyacrylate)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、アルジネート(alginate)、エチレン無水マレイン酸(ethylene maleic anhydride)、メチルセルロース(Methyl cellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(Hydroxy ethyl cellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropyl methyl cellulose)、セルロースアセテート(Cellulose acetate)、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose)、及びポリメタクリレート(Polymethacrylate、PMA)からなる群から選択される1種以上である、請求項7に記載の核酸抽出方法。
【請求項9】
前記多孔性イオン荷電粒子の材料は、ポリアクリル酸ナトリウムである、請求項8に記載の核酸抽出方法。
【請求項10】
前記多孔性イオン荷電粒子は、陽イオン性副産物を吸着し、溶媒を吸収する、請求項6に記載の核酸抽出方法。
【請求項11】
前記反応は、常温で行われる、請求項6に記載の核酸抽出方法。
【請求項12】
前記反応は、追加の洗浄段階を含まない、請求項6に記載の核酸抽出方法。
【請求項13】
核酸を含む試料を直接溶解緩衝液(Direct lysis buffer)とともに核酸抽出チューブに投入して混合する段階と、
前記混合物に多孔性イオン荷電粒子(Ion charge particle)を投入し、5分~30分間反応させる段階と、
前記反応を完了したイオン荷電粒子を除去し、核酸が濃縮された緩衝液を得る段階と、
前記核酸が濃縮された緩衝液にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合剤を投入し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う段階と、
前記PCR中またはPCR終了後に試料をインサイチュ(in-situ)で検出する段階と、
を含む、核酸検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性イオン荷電粒子及びそれを用いた核酸抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、分子生物学分野における基礎研究、疾病の診断、治療、または予防のために、細胞、細菌、またはウイルス等の生物学的試料から核酸を抽出する技術が、核酸増幅反応技術と連携して広く活用されている。また、この他にも、生物学的試料から核酸を抽出する技術は、オーダーメイド型新薬開発、法医学、環境ホルモン検出等の様々な分野で必要とされている。
【0003】
従来の核酸抽出技術の一例としては、細胞を含む試料をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)やプロテイナーゼ(proteinase)Kで処理して可溶化した後、フェノール/クロロホルム(phenol/chloroform)またはフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(phenol/chloroform/isoamylalcohol)を用いてタンパク質を変性、分解し、エタノール沈殿により副産物を除去することにより核酸を精製する方法がある。しかし、フェノール抽出法は、処理段階が多いため時間がかかるだけでなく、核酸抽出の効率が研究者の経験や熟練度に大きく左右されるため、信頼性が著しく低いという問題がある。また、従来の核酸抽出方法では、細胞溶解段階に不可欠な細胞破砕工程において、ヒストン蛋白質等が副産物として残存し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR:Polymerase Chain Reaction)を阻害する阻害剤(inhibitor)として作用するという問題がある。
【0004】
近年、このような問題を解消するために、核酸と特異的に結合するシリカやガラス繊維を用いたキットが使用されることもある。前記シリカやガラス繊維は、タンパク質や細胞の代謝産物との結合率が低いため、比較的高濃度の核酸を得ることができる。この方法はフェノール法に比べて簡便であるという利点があるが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の酵素反応を強く阻害するカオトロピック試薬やエタノールを用いるため、これらの物質を完全に除去しなければならず、そのために操作が非常に煩雑で時間がかかるという欠点がある。
【0005】
最近、フィルターを用いて核酸を直接精製する方法が国際公開特許第2000/21973号に開示されており、この方法は、試料をフィルターに通し、細胞をフィルターに吸着させ、フィルターに吸着した細胞を溶解し、フィルターでろ過した後、フィルターに吸着した核酸を洗浄及び溶出する方法である。
【0006】
例えば、韓国登録特許第10-0454869号には、細胞溶解緩衝液(細胞溶解バッファー)を用いたDNA抽出方法が開示されており、このような従来の核酸抽出方法は、1)細胞に細胞溶解緩衝液を添加して細胞を溶解する段階と;2)段階1の溶解した細胞をフィルターに移して核酸を固定する段階と;3)段階2のフィルターを洗浄する段階と;4)フィルターから核酸を回収する段階と;で構成されるため、少ない段階と短時間で再現性よく核酸を抽出できるという利点がある。しかし、溶解した細胞をフィルターに移す際、フィルターを洗浄する際、またはフィルターから核酸を回収する際にそれぞれ遠心分離機の使用が必須であるため、携帯性及び移動性が低下し、現場での核酸抽出過程が複雑になるという問題がある。
【0007】
その他、磁気ビーズ(Magnetic bead)を用いた核酸抽出方法、シリンジとフィルターを用いた核酸抽出方法、Trizolを用いた核酸抽出方法等もある。しかし、磁気ビーズを用いた核酸抽出方法では、核酸をチューブの壁面に固定するための磁石が必要であり、溶液の除去にはポンプやバルブ(自動装置)または複数のチップ(tip)とピペット(pipette)(手動装置)を使用する必要がある。また、核酸の洗浄及び溶出の過程で、一部の核酸が失われる可能性があるという問題がある。さらに、シリンジとフィルターを用いた核酸抽出方法では、シリンジを用いて核酸が移送する過程で一定強度以上の力が加わるとフィルターが破損し、核酸の抽出が困難になるという問題がある。また、Trizolを用いた核酸抽出方法では、フェノールやクロロホルム等の有害な有機溶媒を使用するという問題がある。
【0008】
そこで、従来の核酸抽出方法の問題点を解消し、簡便かつ効率的に高濃度の核酸を分離できる核酸抽出方法の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するためのものであり、本発明の主な目的は、ピペット及びチップの使用を最小限に抑えることにより、使用者の利便性を改善し、現場で反応を迅速に行うことができる核酸抽出用多孔性イオン荷電粒子及びそれを用いた核酸抽出方法を提供することである。
【0010】
また、本発明の他の目的は、核酸の電気的特性を利用できる多孔性イオン荷電粒子を用いるため、有害な有機溶媒、磁性体、または複雑な機器や装置を使用する必要がなく、携帯性と移動性に優れ、現場での使用に便利な核酸抽出用多孔性イオン荷電粒子及びそれを用いた核酸抽出方法を提供することである。
【0011】
さらに、本発明のさらに他の目的は、多孔性イオン荷電粒子を用いて陽イオン性副産物を粒子に吸着させ、水を吸収して純粋な核酸のみを分離して濃縮することができる核酸抽出用多孔性イオン荷電粒子及びそれを用いた核酸抽出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的を達成するための手段として、本発明は核酸分離用多孔性イオン荷電粒子を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記核酸分離用多孔性イオン荷電粒子を含む核酸抽出チューブを提供する。
【0014】
さらに、本発明は、核酸を含む試料を直接溶解緩衝液(Direct lysis buffer、DLB)とともに核酸抽出チューブに投入して混合する段階と;前記混合物に多孔性イオン荷電粒子(ion charge particle)を投入し、5分~30分間反応させる段階と;前記反応を完了したイオン荷電粒子を除去し、核酸が濃縮された緩衝液を得る段階と;を含む、核酸抽出方法を提供する。
【0015】
さらにまた、本発明は、核酸を含む試料を直接溶解緩衝液(Direct lysis buffer)とともに核酸抽出チューブに投入して混合する段階と;前記混合物に多孔性イオン荷電粒子(Ion charge particle)を投入し、5分~30分間反応させる段階と;前記反応を完了したイオン荷電粒子を除去し、核酸が濃縮された緩衝液を得る段階と;前記核酸が濃縮された緩衝液にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合剤を投入し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う段階と;前記PCR中またはPCR終了後に試料をインサイチュ(in-situ)で検出する段階と;を含む、核酸検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による核酸分離用多孔性イオン荷電粒子及びそれを用いた核酸抽出方法によれば、生物学的試料を入れた反応チューブに多孔性イオン荷電粒子を浸漬するだけで核酸の分離及び濃縮が自動的に行われるので、有害な有機溶媒、磁石ビーズ、遠心分離機等の複雑な装置を用いることなく、簡単かつ迅速に核酸を分離及び濃縮することができるという効果がある。
【0017】
また、本発明は、微量の生物学的試料から前処理過程なしにすぐに溶解、精製及び濃縮が行われるため、低濃度の生体材料(病原体等)を含む試料にも有効に適用することができ、したがって、従来、低濃度であるために分析が制限されていた各種基礎研究、試料量が極端に制限される診断検査、臨床診断、環境モニタリング、薬理遺伝学的解析等の様々な分野で、今後、広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のイオン荷電粒子の多孔性構造を示す拡大図である。
図2】本発明の核酸抽出方法の過程を簡単に示す模式図である。この図は、生物学的試料が直接溶解緩衝液によって溶解され、核酸と副産物が分離され、イオン荷電粒子がカチオン性副産物を付着させると同時に、水を吸収しながら核酸が濃縮された緩衝液を得る過程を示すものである。
図3】及び
図4】口腔咽頭試料(口腔咽頭がん試料)に、本発明の核酸抽出方法(Test2)及び直接溶解緩衝液(DLB)のみを用いた抽出方法(Test1)のそれぞれを適用した後、標的遺伝子(グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、GAPDH)のリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(Real-time PCR)増幅効率を比較した結果を示すものである。
図5】及び
図6】鼻咽頭試料(鼻咽頭がん試料)に、本発明の核酸抽出方法(Test2)及びDLBのみを用いた抽出方法(Test1)のそれぞれを適用した後、標的遺伝子(GAPDH)のリアルタイムPCR増幅効率を比較した結果を示すものである。
図7】及び
図8】口腔咽頭試料(口腔咽頭がん試料)に、下記比較例1の陽イオン荷電粒子を用いた抽出方法(Test2)及びDLBのみを用いた抽出方法(Test1)のそれぞれを適用した後、標的遺伝子(GAPDH)のリアルタイムPCR増幅効率を比較した結果を示すものである。
図9】及び
図10】鼻咽頭試料(鼻咽頭がん試料)に、下記比較例2の陽イオン荷電粒子を用いた抽出方法(Test2)及びDLBのみを用いた抽出方法(Test1)のそれぞれを適用した後、標的遺伝子(GAPDH)のリアルタイムPCR増幅効率を比較した結果を示すものである。
図11】及び
図12】吸水前後の多孔性イオン荷電粒子の大きさを比較した写真である。
図13】及び
図14】及び
図15】イオン荷電粒子を含むカプセルの外観を示すコンセプトイメージである。
図16】種々の形態の高分子吸収体を用いて核酸を分離及び濃縮した後、PCR検出試験により各方法の核酸分離能を確認した結果を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、添付の図面と共に詳細に後述する実施形態を通じて説明され、明らかになるであろう。本発明を説明する際に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されるものではなく、発明者は発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されるものである。
【0020】
また、本発明を説明するために記載された実施形態及び図面に示された構成は、本発明の最も好ましい実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想の全てを包含するものではないので、本出願時点においてこれらに代わる均等な変形例があり得る。
【0021】
また、本発明を説明するにあたり、関連する公知の構成や機能に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にすると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0022】
本明細書で使われる用語は、次のように定義される。
【0023】
「多孔性イオン荷電粒子」とは、固体の表面及び内部に多数の小孔(細孔)が形成されており、電荷を帯びている粒子を意味する。
【0024】
「試料」は、検出すべき生体材料(バイオマテリアル)を含む限り、特定の種類や形態に限定されるものではない。例示的には、試料は、生物学的試料、例えば、生物学的流体(fluid)または生物学的組織であり得る。生物学的流体の例としては、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、糞便、痰、脳脊髄液、涙、粘液、羊水等が挙げられる。生物学的組織とは、細胞の凝集体であり、一般的には、ヒト、動物、植物、細菌、真菌またはウイルス構造の構造材料の1つを形成する細胞内物質の凝集体であり、特定の種類の凝集体としての、結合組織、上皮組織、筋肉組織及び神経組織等であり得る。さらに、生物学的組織の例には、臓器、腫瘍、リンパ節、動脈、及び個々の細胞も含まれ得る。さらに、試料には、低濃度の生体材料を含む環境試料(environmental sample)が含まれ得、例えば、飲料水、食品等の様々な形態及び種類が含まれ得る。
【0025】
「核酸」とは、有機塩基(シトシン、チミジンまたはウラシルのような置換されたピリミジン、あるいは、アデンまたはグアニンのような置換されたプリン)に結合した糖からなる複数のヌクレオチドを指すこともある。すなわち、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、メチルホスホネート核酸、S-オリゴ、c-DNA、cRNA、miRNA、siRNA、アプタマー(aptamer)等が挙げられ、天然に存在するもの、人工的に合成されたものを包含する概念であってもよい。しかし、より典型的には、DNA、RNA等であってもよい。
【0026】
「直接溶解緩衝液(Direct lysis buffer、DLB)」とは、細胞を破壊する際に使用される緩衝液であり、溶解物の酸性度及び浸透圧を調節するための塩及び/又は界面活性剤を含む組成物である。例えば、25℃で約5.8~約9のpKaで、例えば6~9(具体的には約7.5~9、より具体的には約7.8~8.5)のpH値を効果的に維持できる組成物を意味し得る。
【0027】
「細胞溶解または溶解(lysis)」とは、細胞等の分解により細胞膜が破裂すると同時に細胞内容物が露出する現象を意味し、通常、PCR等の増幅過程の前段階において、DNAまたはRNAを分離するために用いられることが多い。
【0028】
「PCR」とは、サイクルプロセス(加熱と冷却を交互に行う)により、一つの最初の鋳型から多量の同一のDNAストランド(鎖)が形成される反応を指す。一般に、PCR混合物は、(i)増幅されるべき塩基配列を有する鋳型である二重らせん状のDNA分子と、(ii)プライマー(鋳型DNA中の相補的DNA塩基配列に結合できる単鎖(一本鎖)DNA分子)と、(iii)dATP、dTTP、dGTP、及びdCTPの混合物(PCR増幅過程で新しいDNA分子を形成するように結合するヌクレオチドサブユニット)であるdNTPと、(iv)Taq DNAポリメラーゼ(dNTP)を用いて新しいDNA分子を合成する酵素と、を含み得る。
【0029】
本発明は、核酸分離用の多孔性イオン荷電粒子を提供する。
【0030】
本発明の一例によれば、前記イオン荷電粒子は、負電荷を示す官能基または部位(moiety)を有する陰イオン性粒子であってもよく、負電荷を有する粒子であれば、その種類を限定することなく使用することができる。
【0031】
核酸は、その構造上、負電荷特性を有するため、本発明の陰イオン性荷電粒子と電気的に反発し、イオン荷電粒子と結合することができないが、正電荷特性を有する溶解副産物はイオン荷電粒子と結合する。
【0032】
また、本発明の他の一例によれば、前記イオン荷電粒子は、超多孔質構造を有し、溶媒、特に水(HO)を吸収し得る。
【0033】
また、イオン荷電粒子内部の空隙は互いに連結した構造を有することができ、毛細管現象により非常に高い速度で水が吸収されるようになり、本発明の多孔性イオン荷電粒子の吸水膨潤速度は、一般的な多孔性粒子の吸水膨潤速度の数百倍の速い速度を持つことができる。
【0034】
本発明の一具体例によれば、「多孔性イオン荷電粒子」の成分は、多孔性で負電荷を有する材料であれば、その種類を限定することなく使用することができ、合成樹脂であっても天然樹脂であってもよい。
【0035】
本発明の「多孔性イオン荷電粒子」は、陰イオン性高分子であってもよく、具体的には、高分子鎖中に解離基を有し、水と接触すると解離して高分子イオンを形成する高分子電解質(polyelectrolyte)であってもよい。
【0036】
本発明の一例によれば、「多孔性イオン荷電粒子」の成分は、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリアクリル酸ナトリウム(sodium polyacrylate)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、ポリビニルアルコール(polyvinylalcohol)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、アルジネート(alginate)、エチレン無水マレイン酸(ethylene maleic anhydride)、メチルセルロース(Methyl cellulose)、ヒドロキシエチルセルロース(Hydroxy ethyl cellulose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropyl methyl cellulose)、セルロースアセテート(Cellulose acetate)、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose)、ポリメタクリレート(Polymethacrylate、PMA)等からなる群から選択されるいずれか1種以上であってもよく、好ましくはポリアクリル酸ナトリウム(sodium polyacrylate)であってもよい。もちろん、これに限定されるものではない。
【0037】
より具体的には、本発明の多孔性イオン粒子は、高分子電解質(Polyelectrolyte)材料同士が互いに架橋(Cross-link、交差結合)した三次元網目構造を有する。このような高分子電解質により生じる浸透圧と三次元網目構造により、溶液の吸収と貯蔵が可能になる。
【0038】
本発明の一具体例によれば、多孔性イオン粒子は、アクリル酸(Acrylic acid)からなる高分子であってもよく、ゲル重合法(Gel polymerization)により大きな塊を形成し、所望の粒度に合わせて切断することにより製造することができる。そのため、粒子の形状は不規則な非定型であり、その後の加工により、所望の粒子形状、粒子径に分類、作製することができる。また、多孔性イオン粒子の吸収力は、接触する電解質のイオン特性によって変化し、陰イオン(SO 2-、OH等)がポア水(pore water、孔隙水)に溶解してアルカリ性環境が形成されると、陰イオン性高分子物質が生成される。
【0039】
本発明で使用されるアクリル酸系高分子は、陰イオン性電解質環境下でカルボキシル基(-COO-)等のアニオン性官能基(Anionic functional group、陰イオン性官能基)を含んでいてもよい。
【0040】
前記多孔性イオン荷電粒子は、無定形、球形、楕円形、多角形等の様々な形状であってもよい。本発明の一具体例によれば、前記多孔性イオン荷電粒子は、溶媒吸収前に約0.05~1.5cm、好ましくは0.1~1.0cm、0.2~0.8cm、最も好ましくは0.3~0.5cmの平均直径を有することができる。
【0041】
本発明の他の具体例によれば、前記多孔性イオン荷電粒子の体積は、溶媒吸収前と比較して、溶液吸収後に1,000~50,000%(10~500倍)、好ましくは20,000~30,000%(200~300倍)増加し得る。
【0042】
本発明の一例として、多孔性イオン荷電粒子のポアサイズ(直径)は、例えば、約0.1~10nm、具体的には約1~5nm、より具体的には約3~5nmの範囲とすることができる。ポアサイズが大きすぎる場合には、水を吸収する能力(吸水能力)が低下する可能性があり、ポアサイズが小さい場合には、副産物を吸収する能力が低下する可能性があるため、これを考慮して、適切なポアサイズを有する多孔性イオン荷電粒子を使用することが望ましい場合がある。
【0043】
また、本発明は、前記核酸分離用多孔性イオン荷電粒子を含む核酸抽出チューブを提供することができる。
【0044】
前記核酸抽出チューブは、核酸を含む試料中の核酸を測定するための構造物であり、試料を収容するためのボディ部と、一定のボディ部の開口部を開閉するキャップと、ボディ部とキャップとの間の連結部とを含み得るが、これに限定されるものではなく、連結部を含まず、ボディ部とキャップとが連結部によって連結されず、それぞれが別個に存在する形態も含み得る。
【0045】
前記核酸抽出チューブを構成する材料は、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエステル(polyester)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリウレタン(polyurethane、PU)、シリコン、ガラス、セラミック、及びテフロン(登録商標)のうちの少なくとも1つの材料で構成され得るが、これに限定されるものではない。
【0046】
このとき、プラスチックによる湿気吸収(吸湿)が問題にならない場合、好ましい構成のプラスチック類は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(acrylonitrile butadiene styrene、ABS)、アセタール(acetal)、アクリル繊維(acrylic)、アクリロニトリル(acrylonitrile)、セルロースアセテート(cellulose acetate)、エチルセルロース(ethyl cellulose)、アルキルビニルアルコール(alkylvinylalcohol)、ポリアリルエーテルエトン(polyaryletherketone)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルケトン(polyetherketone)、メラミンホルムアルデヒド(melamine formaldehyde)、フェノールホルムアルデヒド(phenolic formaldehyde)、ポリアミド(polyamide、例えば:ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12)、ポリアミドイミド(polyamide-imide)、ポリジシクロペンタジエン(polydicyclopentadiene)、ポリエーテルイミド(polyether-imide)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリイミド(polyimide)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフタルアミド(polyphthalamide)、メチルメタクリレート(methylmethacrylate)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリスルホン(polysulfone)、及びビニルホルマール(vinyl formal)を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0047】
また、湿気吸収(吸湿)が問題となる場合、好ましい構成のプラスチック類は、ポリスチレン(polystyrene)、ポリプロピレン(polypropylene)、
ポリブタジエン(polybutadiene)、ポリブチレン(polybutylene)、エポキシ(epoxy)、テフロン(Teflon)(登録商標)、ペルオキシアセチルニトレート(peroxyacetylnitrate、PAN)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)、クロロフルオロエチレン(chloro-fluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、液晶ポリマー(liquid crystal polymer)、ポリエステル(polyester)、低密度ポリエチレン(low-density polyethylene、LDPE)、高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)、ポリメチルペンテン(polymethylpentene)、ポリフェニレンサルファイド(polyphenylene sulfide)、ポリオレフィン(polyolefin)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)及び塩素化PVCを含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0048】
核酸抽出チューブが収容できる試料の容積は、1~50,000μlの範囲であってもよいが、これに限定されるものではなく、使用者の目的に応じて様々な大きさに形成され得るので、より多様な範囲を有し得る。
【0049】
核酸抽出チューブのボディ部は、種々の形状に形成することができる。使用者の目的に応じて、下部の形状を円弧状や四角形等の様々な形状に形成することができる。
【0050】
したがって、本発明の一実施形態による核酸抽出チューブは、様々な形態、容積及び形状を有するボディ部を含むことができ、それにより、使用者の目的に適したチューブを提供することができる。
【0051】
また、本発明は、核酸を含む試料を、直接溶解緩衝液(Direct lysis buffer)とともに核酸抽出チューブに投入して混合する段階と、
前記混合物に多孔性イオン荷電粒子(Ion charge particle)を投入し、5分~30分間反応させる段階と、
前記反応を完了したイオン荷電粒子を除去し、核酸が濃縮された緩衝液を得る段階と、を含む、核酸抽出方法を提供することができる。
【0052】
本発明の一具体例によれば、前記多孔性イオン荷電粒子は陰イオン性であり、陰イオン性イオン荷電粒子は陽イオン性副産物を吸着することができる。また、本発明の多孔性イオン荷電粒子は、溶媒、特に水を吸収することを特徴とする。
【0053】
前記多孔性イオン荷電粒子として使用可能な物質及び粒子の物理的、化学的特性は、上述したものと同様である。
【0054】
本発明の一例によれば、前記直接溶解緩衝液(Direct lysis buffer、DLB)は、細胞膜と核膜を除去し、核酸を溶出する緩衝液であれば、その種類を特に限定することなく使用することができ、必要に応じて使用する塩の種類と界面活性剤の種類、濃度、pH等を調整することができる。
【0055】
前記混合物に投入する多孔質イオン粒子の投入量は、試料の種類や量に応じて適宜調整することができる。本発明の一例によれば、10~500mg、好ましくは10~400mg、50~350mg、または100~300mgを投入することができる。
【0056】
本発明の一具体例によれば、前記反応は5分~20分間、例えば5分~15分間、5分~10分間、または10分間~15分間行うことができ、例えば約10分前後で行うことができる。
【0057】
本発明の一例によれば、前記核酸抽出反応は常温で行うことができ、追加の洗浄段階がないことを特徴とする、核酸抽出方法であってもよい。
【0058】
また、本発明は、前記核酸抽出方法において、イオン荷電粒子を除去し、核酸が濃縮された緩衝液を得た後、緩衝液から核酸を分離する段階をさらに含み得る。
【0059】
本発明の他の一例によれば、核酸を含む試料を直接溶解緩衝液(Direct lysis buffer)とともに核酸抽出チューブに投入して混合する段階と、
前記混合物に多孔性イオン荷電粒子(Ion charge particle)を投入し、5分~30分間反応させる段階と、
前記反応を完了したイオン荷電粒子を除去し、核酸が濃縮された緩衝液を得る段階と、
前記核酸が濃縮された緩衝液にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合剤を投入し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行う段階と、
前記PCR中またはPCR終了後に試料をインサイチュ(in-situ)で検出する段階と、を含む、核酸検出方法を提供することができる。
【0060】
実施例
製造例1:多孔性イオン荷電粒子の製造
本発明の実施例では、陰イオン性高分子体としてポリアクリル酸ナトリウム(sodium polyacrylate/LG生活健康社製)を用い、比較例では、陽イオン性高分子体としてスチレン-ジビニルベンゼン共重合体(styrene-divinylbenzene copolymers /DOW社製)を用いた。
【0061】
実施例1:口腔咽頭試料(ターゲット:GAPDH)における核酸検出効果の検証
口腔咽頭試料(口腔咽頭がん試料)に、本発明の一実施形態によるイオン荷電粒子を用いた核酸抽出方法(TEST2;陰イオン)を適用した後、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR:Real-time PCR)を行った結果(TEST2)と、同量の同試料に直接溶解緩衝液(DLB:Direct Lysis Buffer)のみを適用した後、RT-PCRを行った結果(対照群、TEST1)とを蛍光増幅曲線(fluoreascent amplification curves)で比較し、その結果を図3及び図4に示した。
【0062】
図3のグラフに示すように、TEST1の場合、26サイクルで蛍光発現が始まり、終点(end point)の相対蛍光単位(RFU:relative fluorescence units)は約2000の範囲内のレベルであることがわかり、TEST2(陰イオン)の場合、23サイクルで蛍光発現が始まり、終点のRFUは約2200の範囲内のレベルであることがわかった。図4のグラフに示すように、TEST1の場合、29サイクルで蛍光発現が始まり、終点のRFUは約1300の範囲内のレベルであることがわかり、TEST2(陰イオン)の場合、24サイクルで蛍光発現が始まり、終点のRFUは約1900の範囲内のレベルであることがわかった。
【0063】
実施例2:鼻咽頭試料(ターゲット:GAPDH)における核酸検出効果の検証
鼻咽頭試料(鼻咽頭がん試料)に、本発明の一実施形態によるイオン荷電粒子を用いた核酸抽出方法(TEST2;陰イオン)を適用した後、RT-PCRを行った結果(TEST2)と、同量の同試料に直接溶解緩衝液(DLB:Direct Lysis Buffer)のみを適用した後、RT-PCRを行った結果(対照群、TEST1)とを蛍光増幅曲線で比較し、その結果を図5及び図6に示した。
【0064】
図5のグラフに示すように、TEST1の場合、39サイクルで蛍光発現が始まり、終点のRFUは約600範囲内のレベルであることがわかった。一方、TEST2(陰イオン)の場合、27サイクルで蛍光発現が始まり、終点のRFUは約2300の範囲内のレベルであることがわかった。図6のグラフに示すように、TEST1の場合、蛍光発現を示さず、Test2(陰イオン)の場合、30サイクルで蛍光発現が始まり、終点のRFUは約2100の範囲内のレベルであることがわかった。
【0065】
上記実施例1及び2の結果から、本発明の多孔性イオン荷電粒子を用いた核酸抽出方法は、DLBのみを用いた核酸抽出方法よりも優れた核酸抽出及び検出効果を有することがわかった。
【0066】
比較例1:陽イオン荷電粒子を用いた口腔咽頭試料(ターゲット:GAPDH)における核酸検出効果の比較
口腔咽頭試料(口腔咽頭がん試料)に、DLB及び陽イオン荷電粒子を適用した核酸抽出方法(TEST2;陽イオン)を適用した後、RT-PCRを行った結果(TEST2)と、同量の同試料に直接溶解緩衝液(DLB)のみを適用した後、RT-PCRを行った結果(対照群、TEST1)とを蛍光増幅曲線(fluoreascent amplification curves)で比較し、その結果を図7及び図8に示した。
【0067】
図7のグラフに示すように、TEST1の場合、27サイクルで蛍光発現が始まり、終点(end point)の相対蛍光単位(RFU:relative fluorescence units)は約2300の範囲内のレベルであることがわかり、TEST2(陽イオン)の場合、蛍光発現を示さなかった。図8のグラフに示すように、TEST1の場合、29サイクルで蛍光発現が始まり、終点のRFUは約1300範囲内のレベルであることがわかり、TEST2(陽イオン)の場合、蛍光発現を示さなかった。
【0068】
比較例2:陽イオン荷電粒子を用いた鼻咽頭試料(ターゲット:GAPDH)における核酸検出効果の比較
鼻咽頭試料(鼻咽頭がん試料)に、DLBと陽イオン荷電粒子を用いた核酸抽出方法(TEST2;陰イオン)を適用した後、RT-PCRを行った結果(TEST2)と、同量の同試料にDLBのみを適用した後、RT-PCRを行った結果(対照群、TEST1)とを蛍光増幅曲線で比較し、その結果を図9及び図10に示した。
【0069】
図9のグラフに示すように、TEST1及びTEST2(陽イオン)のいずれにおいても蛍光発現を示さなかった。また、図10のグラフに示すように、TEST1及びTEST2(陽イオン)のいずれにおいても蛍光発現を示さなかった。
【0070】
上記比較例1及び2の結果から、本発明とは異なり、陽イオン性多孔性イオン荷電粒子を用いた場合には、核酸が全く抽出及び検出されないことが確認できた。
【0071】
実験例1.様々な形態の高分子吸収体を用いた核酸の分離及び検出試験
様々な形態の高分子吸収体を用いて核酸の分離及び検出試験を行い、その結果を図16に示した。
【0072】
具体的には、本発明の核酸抽出方法において、多孔性陰イオン荷電粒子の代わりに、DLBのみを使用/陽イオン粒子を適用/陰性(negative)繊維フィルターを適用/陰(negative)イオン粒子ビーズタイプを適用した後、それぞれの分離方法により濃縮された溶液を用いてPCR検出試験を行った(図16、1.DLBのみを使用/2.陽イオン粒子(0.1g、0.2g、0.3g)/3.本発明の多孔性陰イオン荷電粒子(0.1g、0.2g、0.3g)/4.陰性繊維フィルター(1個、2個、3個)/5.陰イオン粒子ビーズタイプ(3個、6個、9個)).
【0073】
図16に示すように、PCRの結果、本発明の多孔性陰イオン粒子を用いた場合、陰性繊維フィルター、陰イオン粒子ビーズタイプを用いた場合に比べて、核酸の分離及び検出効果が著しく優れていることが確認できた。
図1
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【国際調査報告】