IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロレアルの特許一覧

特表2025-500302金属酸化物及び亜酸化物の被覆着色粒子、並びにフレーム溶射熱分解によるそれらの調製
<>
  • 特表-金属酸化物及び亜酸化物の被覆着色粒子、並びにフレーム溶射熱分解によるそれらの調製 図1
  • 特表-金属酸化物及び亜酸化物の被覆着色粒子、並びにフレーム溶射熱分解によるそれらの調製 図2
  • 特表-金属酸化物及び亜酸化物の被覆着色粒子、並びにフレーム溶射熱分解によるそれらの調製 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】金属酸化物及び亜酸化物の被覆着色粒子、並びにフレーム溶射熱分解によるそれらの調製
(51)【国際特許分類】
   C01G 45/02 20250101AFI20241226BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20241226BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/23 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20241226BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C01G45/02
C09C1/00
C09C3/06
A61K8/26
A61K8/27
A61K8/25
A61K8/23
A61K8/19
A61Q1/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024536492
(86)(22)【出願日】2022-12-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2022087125
(87)【国際公開番号】W WO2023118233
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2114166
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・ジャンヌ-ローズ
(72)【発明者】
【氏名】アンリ・サマン
(72)【発明者】
【氏名】ヤニス・デリギアナキス
(72)【発明者】
【氏名】マリア・ルルディ
【テーマコード(参考)】
4C083
4G048
4J037
【Fターム(参考)】
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB221
4C083AB231
4C083BB23
4C083CC01
4C083FF01
4G048AA03
4G048AB02
4G048AB04
4G048AC05
4G048AD03
4G048AE05
4J037AA08
4J037CA08
4J037EE03
(57)【要約】
本発明は、ケラチン材料を染色及び/又は構成するための元素Mの酸化物及び亜酸化物の被覆粒子の使用、フレーム溶射熱分解技術によるそのような被覆粒子の調製方法、そのような方法から得られる元素Mの酸化物及び亜酸化物の粒子、元素Mの亜酸化物の被覆粒子、並びにまたそのような粒子を含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン材料を染色及び/又は構成するための、
(i)式(I):
n-x (I)
の元素Mの少なくとも1つの酸化物で構成されたコア(1)であって、
式中、
- Mは、元素周期表の1列目のアルカリ金属、2列目のアルカリ土類金属及び3~14列目の元素、ビスマス、セレン、テルル及びアスタチンから選択される元素を表し、
- mは、1以上の整数を表し、
- nは、1以上の整数を表し、
- xは、0に等しいか、又は0よりも大きく且つ厳密にnよりも小さい非整数を表す、コア(1)と、
(ii)前記コア(1)の表面を覆い、少なくとも1つの式(II):
M’ (II)
の化合物で構成された上部被覆層(2)であって、
式中、
- M’は、セレン並びに元素周期表の4列目、13列目及び14列目の元素から選択される、M以外の元素であり、
- pは、1以上の整数を表し、
- qは、0以上の整数を表す、上部被覆層(2)と
を含む、少なくとも1つの粒子の使用。
【請求項2】
前記元素Mが、鉄、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、セレン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから、好ましくは鉄、亜鉛及びアルミニウムから、より優先的には鉄及び亜鉛から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
一緒に又は別々に、
- mは、1~10、好ましくは1~5の範囲の整数を表し、且つ/又は
- nは、1~20、好ましくは2~10の範囲の整数を表し、且つ/又は
-pは、1~4の範囲の整数を表し、好ましくは1又は2に等しく、より優先的には1に等しく、且つ/又は
- qは、0~4の範囲の整数を表す、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
式(I)の元素Mの前記酸化物は、FeO、Fe、Fe、xが厳密に0~1の非整数である式FeO1-xの化合物、xが厳密に0~4の非整数である式Fe4-xの化合物、xが厳密に0~3の非整数である式Fe3-xの化合物、及びxが厳密に0~1の非整数である式ZnO1-xの化合物から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記元素M’が、セレン、チタン、アルミニウム、及び元素周期表の14列目の元素から、好ましくは、セレン、チタン、アルミニウム、炭素及びケイ素から、より優先的には炭素及びケイ素から選択されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
式(II)の前記化合物が、炭素、SiO、SnO、及びAlから、好ましくは炭素及びSiOから選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記粒子が、
(i)式(I)の元素Mの酸化物で構成されたコア(1)であって、FeO、Fe、Fe、xが厳密に0~1の非整数である式FeO1-xの化合物、xが厳密に0~4の非整数である式Fe4-xの化合物、xが厳密に0~3の非整数である式Fe3-xの化合物、及びxが厳密に0~1の非整数である式ZnO1-xの化合物から選択される、コア(1)と、
(ii)炭素、SiO、SnO及びAlから選択される式(II)の化合物で構成された、前記コア(1)の表面を覆う上部被覆層(2)と
を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記粒子の(M/M’)モル原子比が、厳密に0.3よりも大きく、好ましくは1以上であり、より優先的には3以上であり、より優先的には3~10にわたる範囲内に含まれることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
透過型電子顕微鏡法(TEM)によって測定される、前記上部被覆層(2)の数平均厚さdが、1~20nm、好ましくは1~10nm、より優先的には2~6nmの範囲内に含まれることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
透過型電子顕微鏡法(TEM)によって決定される、前記粒子の数平均直径が、4~5000nm、好ましくは10~3000nm、より優先的には30~1000nmの範囲内に含まれることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記粒子の前記上部被覆層(2)が、前記コア(1)の表面の少なくとも90%を覆い、好ましくは前記コア(1)の表面全体を覆うことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
粒子であって、
(i)式(I’):
n-x (I’)
の元素Mの少なくとも1つの亜酸化物で構成されたコア(1)であって、
式中、
- Mは、元素周期表の1列目のアルカリ金属、2列目のアルカリ土類金属及び3列目~14列目の元素、ビスマス、セレン、テルル及びアスタチンから選択される元素を表し、好ましくは、Mは、鉄、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、セレン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから、より優先的には、鉄、亜鉛及びアルミニウムから、さらにより優先的には、鉄及び亜鉛から選択され、
- mは、1以上の整数を表し、
- nは、1以上の整数を表し、
- xは、0よりも大きく且つ厳密にnよりも小さい非整数を表す、コア(1)と、
(ii)前記コア(1)の表面を覆い、少なくとも1つの式(II):
M’ (II)
の化合物で構成された上部被覆層(2)であって、
式中、
- M’は、セレン並びに元素周期表の4列目、13列目及び14列目の元素から選択される、M以外の元素であり、好ましくは、M’は、セレン、チタン、アルミニウム及び元素周期表の14列目の元素から、より優先的には、セレン、チタン、アルミニウム、炭素及びケイ素から、さらにより優先的には、炭素及びケイ素から選択され、
- pは、1以上の整数を表し、
- qは、0以上の整数を表す、上部被覆層(2)と
を含む、粒子。
【請求項13】
式(I’)の元素Mの前記亜酸化物が、xが厳密に0~1の非整数である式FeO1-xの化合物、xが厳密に0~4の非整数である式Fe4-xの化合物、xが厳密に0~3の非整数である式Fe3-xの化合物、及びxが厳密に0~1の非整数である式ZnO1-xの化合物から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の粒子。
【請求項14】
前記粒子の(M/M’)モル原子比が、厳密に0.3よりも大きく、好ましくは1以上であり、より優先的には3以上であり、より優先的には3~10にわたる範囲内に含まれることを特徴とする、請求項12又は13に記載の粒子。
【請求項15】
前記粒子の前記上部被覆層(2)が、前記コア(1)の表面の少なくとも90%を覆い、好ましくは前記コア(1)の表面全体を覆うことを特徴とする、請求項12~14のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項16】
請求項12~15のいずれか一項において定義される1つ以上の粒子を含む組成物、好ましくは化粧品。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項において定義される1つ以上の粒子の調製方法であって、少なくとも以下の段階:
a.元素Mの1つ以上の前駆体を可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合物に添加することによって、組成物(A)を調製し、次いで、
b.フレーム溶射熱分解装置(10)において、元素Mの酸化物の凝集物が得られるまで前記組成物(A)及び酸素含有ガス(G)を噴射することによってフレームを形成し、次いで
c.元素Mの酸化物の前記凝集体の表面で、元素M’又は元素M’の酸化物で構成された上部被覆層(2)が得られるまで、元素M’の1つ以上の前駆体を含む組成物(B)を噴射する段階を含み、
前記元素Mは、元素周期表の1列目のアルカリ金属、2列目のアルカリ土類金属及び3列目~14列目の元素、ビスマス、セレン、テルル及びアスタチンから選択され、好ましくは、Mは、鉄、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、セレン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから、より優先的には、鉄、亜鉛及びアルミニウムから、さらにより優先的には、鉄及び亜鉛から選択され、
前記元素M’は、M以外であり、セレン並びに元素周期表の4列目、13列目及び14列目の元素から選択され、好ましくは、M’は、セレン、チタン、アルミニウム及び元素周期表の14列目の元素から、より優先的には、セレン、チタン、アルミニウム、炭素及びケイ素から、さらにより優先的には、炭素及びケイ素から選択され、
前記フレーム溶射熱分解装置(10)は、前記装置内に存在する酸素の量が制御されるように、外気から隔離されている、方法。
【請求項18】
一緒に又は別々に、
- (M/M’)噴射モル原子比が0.25以上であり、好ましくは0.25~120、より優先的には0.25~99、さらにより優先的には1~80、より良好には3~20にわたる範囲内に含まれ、且つ/又は
- 段階b.が、フレーム溶射熱分解装置(10)の第1のチャンバ(20)で行われ、段階c.が、前記第1のチャンバ(20)と流体連通する前記装置(10)の第2のチャンバ(30)で行われ、且つ/又は
- 前記組成物(B)が、1種以上の溶媒を含有し、好ましくは、前記溶媒が、水以外の極性プロトン性溶媒から、より優先的には(C~C)アルカノールから選択され、より良好には、前記溶媒がエタノールであり、且つ/又は
- 段階b.の間に噴射される酸素含有ガス(G)のモル量が、厳密には、前記組成物(A)を化学量論比で前記酸素と反応させるのに必要な酸素含有ガスのモル量未満である、ことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フレーム溶射熱分解装置(10)が、好ましくは、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素及びアンモニアから、より優先的には窒素、メタン、水素及びアルゴンから、さらにより優先的には、窒素及びアルゴンから選択される不活性ガス(G2)によって、より良好には窒素によって加圧されることを特徴とする、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
請求項17~19のいずれか一項において定義される方法によって得られることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項21】
フレーム溶射熱分解装置(10)であって、第1のチャンバ(20)と、前記第1のチャンバに流体接続された第2のチャンバ(30)と、前記第1のチャンバ(20)に現れ、第1の組成物(A)及び第1の酸素含有ガス(G)を送達することができる第1のフィード(42)と、前記第1のチャンバ(20)に現れ、酸素及び1つ以上の可燃性ガスを含む混合物(P)を送達することができる第2のフィード(44)とを含む噴射システム(40)とを備え、前記第1及び第2のフィード(42,44)は互いに分離しており、前記装置(10)は、元素M’の1つ以上の前駆体を含む第2の組成物(B)を前記第2のチャンバ(30)に送達することができる第3のフィード(38)を備え、前記装置(10)の前記第1及び第2のチャンバ(20,30)は、前記第1及び第2のチャンバ(20,30)内に存在する酸素の量が制御されるように、外気から隔離されている、フレーム溶射熱分解装置(10)。
【請求項22】
前記第1及び第2のフィード(42,44)が同軸であり、前記第2のフィード(44)は前記第1のフィード(42)を少なくとも部分的に取り囲む、請求項21に記載の装置(10)。
【請求項23】
前記第1のチャンバ(20)が、2つの別個の区画(22,24)を含み、前記第1の区画(22)が、前記噴射システム(40)が現れる第1の開口部(22a)と、前記第1の開口部(22a)の反対側の第2の開口部(22b)とを含み、前記第2の区画(24)が、前記第1の区画(22)を取り囲み、前記外気から隔離され、前記第2の区画(24)が、第1の隔壁(26)によって前記第1の区画(22)から分離される、請求項21又は22に記載の装置(10)。
【請求項24】
第2のガス(G2)を前記第1のチャンバ(20)の前記第2の区画(24)に噴射するように構成された噴射器(28)を備え、前記第1の隔壁(26)は前記第2のガス(G2)に対して透過性である、請求項23に記載の装置(10)。
【請求項25】
前記第2のチャンバ(30)が2つの別個の区画(32,34)を含み、前記第1の区画(32)が、前記第1のチャンバ(20)の前記第2の開口部(22b)と流体連通する第1の開口部(32a)と、前記第1の開口部(32a)の反対側の第2の開口部(32b)とを含み、前記第2の区画(34)は、前記第1の区画(32)を取り囲み、前記外気から隔離され、前記第2の区画(34)は、第2の隔壁(36)によって前記第1の区画(32)から分離され、前記第2の組成物(B)を前記第2のチャンバ(30)に供給するためのフィード(38)を有する、請求項23又は24に記載の装置(10)。
【請求項26】
第3のガス(G3)を前記第2のチャンバ(30)の前記第2の区画(34)に噴射するように構成された追加のフィード(38)を備え、前記第2の隔壁(36)が前記第3のガス(G3)に対して透過性である、請求項25に記載の装置(10)。
【請求項27】
前記第2のチャンバ(30)の上方に位置決めされ、ガス透過性の捕集システム(50)をさらに備える、請求項21~26のいずれか一項に記載の装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン材料を染色及び/又は構成するための元素Mの酸化物及び亜酸化物の被覆粒子の使用、フレーム溶射熱分解技術によるそのような被覆粒子の調製方法、そのような方法から得られる元素Mの酸化物及び亜酸化物の粒子、元素Mの亜酸化物の被覆粒子、並びにそのような粒子を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物は、特にそれらの着色特性のために、多くの用途(化粧品、塗料、ステイン、電子機器、ゴムなど)で使用されている。
【0003】
現在、配合物、例えば化粧品配合物の色は、一般に、いくつかの着色金属酸化物の混合によって得られる。
【0004】
しかしながら、いくつかの酸化物は、経時的に特に不安定であるという欠点を示し、これは、それらの着色力の低下、より具体的には、得られる色の強度及び/又は色度の低下をもたらす。
【0005】
したがって、配合物の色が経時的に変化し、あまり濃くなく、くすんでおり、且つ/又はユーザにとって望ましくない色をもたらすことが起こり得る。混合される異なる金属酸化物の安定性の差が着色混合物の均一性を破壊し、例えば、配合物の表面又は底部への酸化物の移動をもたらすことさえあり得る。この望ましくない効果を「分離効果」と呼ぶ。
【0006】
金属酸化物の安定性を改善するために、特に「ゾル-ゲル」法によって金属酸化物をシリカで被覆すること、又はフッ素化化合物を金属酸化物にグラフトすることも想定されている。しかしながら、これらの解決策は、完全に満足のいくものではない。ゾル-ゲル法によってシリカで被覆された金属酸化物は、一般的に、非被覆粒子よりも不十分な着色特性を示す。グラフト化技術に関して、フッ素化化合物の使用は、環境に有害であり、ユーザにとって危険であり得る。
【0007】
金属酸化物粒子を調製するためにフレーム溶射熱分解技術又はFSP法を使用することも知られている。
【0008】
フレーム溶射熱分解又はFSPは、制御された形態を有する各種の金属の単一若しくは混合酸化物(例えば、SiO、Al、B、ZrO、GeO、WO、Nb、SnO、MgO、ZnO)の超微細粉末を合成し、且つ/又はそれらを各種の基材に堆積するために本質的に開発された今日周知の方法であり、これは一般的には有機又は無機の好ましくは引火性の噴霧可能な液体の形態で、多様な金属前駆体から出発して行われ、フレーム中に噴霧された液体は、消費されると、特に、これらの各種の基材にフレーム自体によって噴出された金属酸化物のナノ粒子を放出する。この方法の原理は、例えば、Johnson Mattheyによる「Flame Spray Pyrolysis: a Unique Facility for the Production of Nanopowders」,Platinum Metals Rev.,2011,55,(2),149-151という表題の最近(2011)の刊行物において想起されている。FSP方法及び反応器の多くの代替形態も、例として、特許又は特許出願の国際公開第2007/028267号パンフレット又は米国特許第8182573号明細書、欧州特許出願第1760043号明細書、米国特許第5958361号明細書、米国特許第2268337号明細書、国際公開第01/36332号パンフレット又は米国特許第6887566号明細書、国際公開第2004/005184号パンフレット又は米国特許第7211236号明細書、国際公開第2004/056927号パンフレット、国際公開第2005/103900号パンフレット、国際公開第2008/049954号パンフレット又は米国特許第8231369号明細書、国際公開第2008/019905号パンフレット、米国特許出願公開第2009/0123357号明細書、米国特許出願公開第2009/0126604号明細書、米国特許出願公開第2010/0055340号明細書、国際公開第2011/020204号パンフレットに記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、公知のフレーム溶射熱分解法により調製された粒子は、安定性の点で必ずしも満足できるものではない。より詳細には、これらの調製方法では、中間の酸化数を有する金属の酸化物又は金属亜酸化物を容易に且つ大量に得ることはできない。さらに、これらの既知の方法に従って調製された中間の酸化数を有する金属の酸化物及び金属亜酸化物は、経時的に安定ではなく、酸化して周囲空気と接触すると非常に迅速に最大酸化数を与える。
【0010】
加えて、フレーム溶射熱分解によって調製された粒子は、特に、提供される色の強度及び色度に関して、依然として改善することができる。
【0011】
したがって、非常に濃く有彩色のケラチン材料を提供することができる、金属酸化物粒子から出発するケラチン材料を染色及び構成するための方法を開発することが実際に必要とされている。
【0012】
加えて、特に、付与された色の強度及び色度に関して、経時的に良好な安定性及び良好な着色特性を示す広範囲のこれらの金属酸化物粒子を開発することが望ましい。この広範囲の粒子は、色の豊富なパレットを得ることを可能にし、ひいてはユーザの希望により忠実なより多様でより微細な色合いの着色を得ることを可能にするはずである。
【0013】
したがって、そのような粒子を調製すること、より具体的には、経時的に良好な安定性、並びにケラチン材料の染色及び構成のための良好な特性を示す中間の酸化数を有する金属の酸化物の粒子及び金属亜酸化物を調製することを可能にする方法を開発することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、本発明を用いて達成され、その主題は、ケラチン材料、特に、ヒトケラチン線維及び皮膚の染色及び/又は構成のための、元素Mの酸化物の少なくとも1つの粒子、特にコア/シェル構造のM-M’の酸化物のタイプの粒子の使用であって、コア/シェル構造は、
(i)式(I):
n-x (I)
の元素Mの少なくとも1つの酸化物で構成されたコア(1)
[式中、
- Mは、元素周期表の1列目のアルカリ金属、2列目のアルカリ土類金属及び3~14列目の元素、ビスマス、セレン、テルル及びアスタチンから選択される元素を表し、
- mは、1以上の整数を表し、
- nは、1以上の整数を表し、
- xは、0に等しいか、又は0よりも大きく且つ厳密にnよりも小さい非整数を表す]と、
(ii)前述のコア(1)の表面を覆い、少なくとも1つの式(II):
M’ (II)
の化合物で構成された上部被覆層(2)
[式中、
- M’は、セレン並びに元素周期表の4列目、13列目及び14列目の元素から選択される、M以外の元素であり、
- pは、1以上の整数を表し、
- qは、0以上の整数を表す]と
を含む。
【0015】
本発明による粒子は、特に非常に濃く有彩色のケラチン材料の着色を得ることを可能にすることが見出された。
【0016】
さらに、多数の異なる不定型の色(例えば、蛍光色)を有する本発明による多数の粒子を調製することが可能であった。
【0017】
したがって、本発明による粒子は、より多くの着色、ひいてはユーザの希望により近い着色を可能にする豊富な色のパレットを得ることを可能にした。これはまた、所望の色を得るために混合される金属酸化物の数を減らすことを可能にする。
【0018】
加えて、本発明による元素Mの酸化物の被覆着色粒子は、経時的にほとんど劣化しないことが注目されており、これは、特に水性組成物に配合されている場合であっても当てはまる。
【0019】
特に、本発明による粒子では、「分離効果」はほとんど観察されていない。
【0020】
本発明による元素Mの酸化物の被覆着色粒子を含む化粧品メークアップ組成物はまた、良好なマスキング力(例えば、皮膚の欠陥)を示し、特に被覆性である着色(例えば、マスカラ用)を得ることも可能にすることが観察された。
【0021】
加えて、本発明による元素Mの酸化物の被覆粒子は疎水性被覆を必要としないため、広い配合スペクトルにわたって(例えば、完全に水性の配合物及び/又は界面活性剤を含まない配合物において)使用可能である。こうして得られた配合物が最終的に水(洗面台排水、湖水又は海水)に入れられたとき、(洗面台の縁、パイプの壁又は岩石上への)不適切な堆積物のリスクがさらに低減される。
【0022】
本発明はまた、元素Mの亜酸化物の粒子であって、
(i)式(I’):
n-x (I’)
の元素Mの少なくとも1つの酸化物で構成されたコア(1)
[式中、
- Mは、元素周期表の1列目のアルカリ金属、2列目のアルカリ土類金属及び3~14列目の元素、ビスマス、セレン、テルル及びアスタチンから選択される元素を表し、
- mは、1以上の整数を表し、
- nは、1以上の整数を表し、
- xは、0よりも大きく且つ厳密にnよりも小さい非整数を表す]と、
(ii)前述のコア(1)の表面を覆い、少なくとも1つの式(II):
M’ (II)
の化合物で構成された上部被覆層(2)
[式中、
- M’は、セレン並びに元素周期表の4列目、13列目及び14列目の元素から選択される、M以外の元素であり、
- pは、1以上の整数を表し、
- qは、0以上の整数を表す]と
を含む、粒子に関する。
【0023】
本発明による元素Mの亜酸化物の粒子は、経時的に特に安定であり(すなわち、粒子は、それらの亜酸化状態のままである)、有意に非常に濃い、有彩色及び不定型の着色を得ることを可能にすることが観察されている。
【0024】
本発明の別の主題は、元素M’の酸化物、特にコア/シェル構造のM-M’の酸化物のタイプの酸化物で被覆された元素Mの酸化物及び亜酸化物のそのような粒子の調製方法であって、少なくとも以下の段階を含む方法に関する:
a.元素Mの1つ以上の前駆体を可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合物に添加することによって、組成物(A)を調製し、次いで、
b.フレーム溶射熱分解装置において、元素Mの酸化物の凝集物が得られるまで組成物(A)及び酸素含有ガス(G)を噴射することによってフレームを形成し、次いで
c.元素Mの酸化物の前述の凝集体の表面で、元素M’又は元素M’の酸化物で構成された上部被覆層(2)が得られるまで、元素M’の1つ以上の前駆体を含む組成物(B)を噴射し、
前述の元素Mは、元素周期表の1列目のアルカリ金属、2列目のアルカリ土類金属及び3~14列目の元素、ビスマス、セレン、テルル及びアスタチンから選択される元素を表し、
前述の元素M’は、セレン並びに元素周期表の4列目、13列目及び14列目の元素から選択される、M以外の元素であり、
前述のフレーム溶射熱分解装置は、前述の装置内に存在する酸素の量が制御されるように、外気から隔離されている。
【0025】
本発明による方法は、経時的に特に安定であり、且つ良好な耐水性を示す、元素M’に基づく無機材料の層で被覆された元素Mの酸化物及び亜酸化物の粒子を得ることを可能にすることが観測された。
【0026】
さらに、従来の被覆方法とは異なり、本発明による方法は、上部被覆層の存在にもかかわらず、コアの良好な固有の性能品質を保持するという利点を有する。これは、上部被覆層の特定の性質のために、所与の粒子質量に対して、元素Mの酸化物又は亜酸化物の割合を減少させることが可能であり、それにもかかわらず、元素Mの前述の酸化物又は亜酸化物の性質を低減し、且つ/又はそれに悪影響を及ぼすことがないためである。
【0027】
したがって、本発明の方法は、元素Mの酸化物又は亜酸化物の良好な着色特性を維持するために従来から必要とされてきた粒子の量の増加による不都合を回避しつつ、元素Mの酸化物又は亜酸化物の安定な酸化亜鉛粒子を製造することを可能にする。
【0028】
別の態様によれば、本発明はまた、本発明の調製方法を実施するための特定のフレーム溶射熱分解装置であって、第1のチャンバと、第1のチャンバと連通するか又は流体的に接続された第2のチャンバと、第1のチャンバ内に現れ且つ第1の組成物(A)及び第1の酸素含有ガス(G)を送達することができる第1のフィード、例えば第1の管と、第1のチャンバ内に現れ且つ酸素及び1つ以上の可燃性ガスを含む混合物(P)を送達することができる第2のフィード、例えば第2の管とを含む噴射システムであって、第1及び第2のフィードが互いに分離している、噴射システムとを備える、フレーム溶射熱分解装置に関する。
【0029】
装置は、元素(M’)の1つ以上の前駆体を含む第2の組成物(B)を第2のチャンバに送達することができる第3のフィードをさらに含む。
【0030】
前述の装置の第1及び第2のチャンバは、前述の装置内に存在する酸素の量が制御されるように、より優先的には、前述の第1及び第2のチャンバ内に存在する酸素が前述の第1のガス(G)のみに由来し、任意選択的に前述の混合物(P)に由来するように、外気から隔離される。
【0031】
例えば、全く限定するものではないが、第2のチャンバは、第1のチャンバと同軸であり、例えば、前述の第1のチャンバの延長線上に位置決めされる。
【0032】
有利には、第1及び第2のフィードは同軸であり、第2のフィードは第1のフィードを少なくとも部分的に取り囲む。
【0033】
一実施形態によれば、第1のチャンバは、2つの別個の区画を含み、第1の区画は、噴射システムが現れる第1の開口部と、第1の開口部の反対側の第2の開口部とを含み、第2の区画は、第1の区画を少なくとも部分的に取り囲み、外気から隔離され、前述の第2の区画は、第1の隔壁によって第1の区画から分離される。
【0034】
例えば、第1の隔壁は、第1の区画へのガスの通過を可能にするために多孔質である。第2の区画は、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素及びアンモニアから選択されるガスによって、又は加熱によって加圧される。
【0035】
例えば、装置は、第1のチャンバの第2の区画に第2のガスを噴射し、ひいては前述の第2の区画を加圧するように構成された噴射器を備える。
【0036】
一実施形態によれば、第2のチャンバは2つの別個の区画を含み、第1の区画は、第1のチャンバの第2の開口部と流体連通するか又は接続する第1の開口部と、第1の開口部の反対側の第2の開口部とを含み、第2の区画は、第1の区画を少なくとも部分的に取り囲み、外気から隔離され、前述の第2の区画は、第2の隔壁によって第1の区画から分離され、第2の組成物(B)を第2のチャンバに供給するためのフィードを有する。
【0037】
例えば、装置は、第2のチャンバの第2の区画に第3のガスを噴射し、ひいては前述の第2の区画を加圧するように構成された追加のフィードを備える。
【0038】
例えば、第2の隔壁は、第2の組成物(B)が第2のチャンバの第1の区画に通過することを可能にするために多孔質であるか又は穿孔されている。第2の区画は、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素及びアンモニアから選択される第3のガス(G3)によって、又は加熱によって加圧される。
【0039】
例えば、装置は、第2のチャンバの上方に位置決めされ、ガスを通過させながら粒子を停止させるように構成された、例えば2つのチャンバと同軸の捕集システムをさらに備える。換言すれば、捕集システムはガス透過性である。例えば、捕集システムは、前述の捕集システムの内側に取り付けられた濾過システムと、捕集システムの内側に負圧を生成するように構成された減圧システムとを含む。
【0040】
噴射システム、第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び捕集システムは、装置の完全な漏れ防止を保証すべく、前述の装置の内部への外気のアクセスを防止することを可能にするように、例えば、ねじ止め又は溶接によって組み立てられる。
【0041】
全く限定するものではないが、噴射システム、第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び捕集システムは、装置の完全な漏れ防止を保証すべく、エンクロージャ内に位置決めされ、前述のエンクロージャの内側への外気のアクセスを防止することを可能にする。エンクロージャの内部は、減圧システムによって負圧に置かれる。
【0042】
本発明はまた、本発明による元素Mの酸化物の1つ以上の粒子を含む組成物、特に化粧用組成物に関する。
【0043】
本発明のより良い理解は、実施形態の詳細な説明を検討することで得られ、実施形態は、全く限定されるものではなく、必ずしも縮尺どおりではない添付の図面によって例示される例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の一実施形態による式(II)の化合物で被覆された式(I)の元素Mの酸化物の粒子の横断面図を表す。
図2】本発明の一実施形態によるフレーム溶射熱分解装置の概略図である。
図3】本発明の別の実施形態によるフレーム溶射熱分解装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の他の特性、態様及び利点は、以下の説明及び実施例を読むことで、さらにより明確になるであろう。
【0046】
本明細書では、特に指示がない限り、
-「少なくとも1つ」という表現は、「1つ以上」という表現と均等であり、それと置き換えることが可能であり、
-「~」という表現は、「~の範囲」という表現と均等であり、それと置き換えることが可能であり、且つ限界点が含まれることを示唆し;
-「厳密に~」という表現は、「厳密に~の範囲」という表現と均等であり、それと置き換えることが可能であり、且つ限界点が含まれないことを示唆し、
-「厳密に~未満」という表現は、限界点が含まないことを意味し、
-「ケラチン材料」という表現は、特に皮膚、毛髪などのヒトケラチン線維を表し、
-上部被覆層2は、「外層」、「ケーシング」、「被覆」又は「シェル」とも呼ばれ、
-「元素周期表の3列目の元素」という用語は、本発明の意味の範囲内で、スカンジウム及びイットリウムを意味すると理解される。換言すれば、ランタニド族及びアクチニド族の元素は、本発明の意味の範囲内で元素周期表の3列目の元素に属さない。
-「アルキル」という用語は、「アルキル基」、すなわち直鎖又は分枝鎖のC~C10、特にC~C、より具体的にはC~C、優先的にはC~C炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルを意味するものと理解され、
-「アリール」基は、6~22個の炭素原子を含む単環式又は縮合若しくは非縮合多環式の炭素に基づく基であって、その少なくとも1つの環が芳香族である基を意味すると理解され、優先的には、アリール基は、フェニル、ビフェニル、ナフチル、インデニル、アントラセニル又はテトラヒドロナフチル、好ましくはフェニルであり、
-「アリレート(arylate)」基という用語は、1つ以上のカルボキシレート-C(O)O基を含むアリール基、例えばナフタレート又はナフテネートを意味するものと理解され、
-「錯体化金属」という用語は、金属原子が「金属錯体」又は「配位化合物」を形成し、中心原子に対応する金属イオン、すなわちMが1つ以上の電子供与体(配位子)に化学的に結合していることを意味すると理解され、
-「配位子」という用語は、配位する有機化学基又は化合物を意味すると理解され、すなわち、これは少なくとも1個の炭素原子を含み、金属Mに配位することができ、一旦配位又は錯体化すると、所定の数の電子を持つ配位球の原理に対応する金属化合物(固有の錯体又はキレート)になる-Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,「Metal-Complex Dyes」,2005,pp.1-42を参照のこと。より具体的には、配位子は、誘起及び/若しくはメソメリー効果を介して電子供与性の少なくとも1つの基を含む有機基、より具体的には少なくとも1つのアミノ、ホスフィノ、ヒドロキシ若しくはチオール電子供与性基を担持する有機基であるか、又は配位子は、持続性カルベン、特に「アルジェンゴ」型(イミダゾール-2-イリデン)であるか若しくは少なくとも1つのカルボニル基を含む。特に、配位子として以下に示すものを挙げることができる:i)少なくとも1つのリン原子-P<を含有するもの(すなわちホスフィン、例えばトリフェニルホスフィン)、ii)式R-C(X)-CR’R’’-C(X)-R’’’の二座配位子(式中、R及びR’’’は、同一であるか又は異なり、直鎖若しくは分枝鎖の(C~C)アルキル基を表し、且つR’及びR’’は、同一であるか又は異なり、水素原子又は直鎖若しくは分枝鎖の(C~C)アルキル基を表し、優先的には、R’及びR’’は水素原子を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子又はN(R)基(ここで、Rは、水素原子又は直鎖若しくは分枝鎖の(C~C)アルキル基を表す)を表す)、例えばアセチルアセトン又はβ-ジケトン、iii)式[HO-C(O)]-A-C(O)-OH及びそれらの脱プロトン化形態(式中、Aは、nが値ゼロを有するときに1価基を、又はnが1以上であるときに多価基を表し、それは、1つ以上のヘテロ原子が任意選択的に介在し、且つ/又はとりわけ1つ以上のヒドロキシル基で任意選択的に置換されている、1~20個の炭素原子を含む炭化水素に基づいた、飽和又は不飽和の環式又は非環式の芳香族又は非芳香族であり、好ましくは、Aは、1つ以上のヒドロキシル基で任意選択的に置換されている1価(C~C)アルキル基又は多価(C~C)アルキレン基を表し、且つnは、0~10(両端値を含む)の整数を表し、好ましくは、nは、0~5、例えば0、1又は2である)の(ポリ)ヒドロキシカルボン酸配位子、例えば乳酸、グリコール酸、酒石酸、クエン酸、マレイン酸及びアリレート基、例えばナフタレート;及びiv)2~5つのヒドロキシル基を含むC~C10ポリオール配位子、とりわけエチレングリコール、グリセロール、さらにより具体的には、配位子は、カルボキシ基、カルボキシレート基又はアミノ基を有し、特に、配位子は、アセテート基、(C~C)アルコキシレート基、(ジ)(C~C)アルキルアミノ基、及びアリレート基基、例えばナフタレート基又はナフテネート基から選択される。
-「可燃性」という用語は、酸素及びエネルギーと共に、発熱化学反応:燃焼で消費される液体化合物又は気体を意味すると理解される。特に、可燃性液体は、プロトン性溶媒、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール又はn-ブタノールなどのアルコール、メチルエステル及びアセテートから得られるもの(2-エチルヘキシルアセテートなど)などのエステル、酸(2-エチルヘキサン酸(EHA)など)、非環状エーテル(エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチルtert-アミルエーテル(MTAE)、メチルtert-ヘキシルエーテル(MTHE)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)又はエーテルtert-アミルエーテル(ETAE)、ジイソプロピルエーテル(DIPE)など)、環状エーテル(テトラヒドロフラン(THF)など)、芳香族炭化水素又はアレーン(キシレンなど)、非芳香族炭化水素から特に選択される非プロトン性溶媒並びにそれらの混合物から選択される。可燃物は、アセチレン、メタン、プロパン又はブタンなどの液化炭化水素及びそれらの混合物から任意選択的に選択され得る。
【0047】
元素Mの酸化物の被覆粒子
元素Mの酸化物の粒子、特に、コア/シェル構造のM-M’の酸化物のタイプの粒子は、
(i)式(I):
n-x (I)
の元素Mの少なくとも1つの酸化物で構成されたコア(1)
[式中、
- Mは、元素周期表の1列目のアルカリ金属、2列目のアルカリ土類金属及び3~14列目の元素、ビスマス、セレン、テルル及びアスタチンから選択される元素を表し、
- mは、1以上の整数を表し、
- nは、1以上の整数を表し、
- xは、0に等しいか、又は0よりも大きく且つ厳密にnよりも小さい非整数を表す]と、
(ii)前述のコア1の表面を覆い、少なくとも1つの式(II):
M’ (II)
の化合物で構成された上部被覆層2
[式中、
- M’は、セレン並びに元素周期表の4列目、13列目及び14列目の元素から選択される、M以外の元素であり、
- pは、1以上の整数を表し、
- qは、0以上の整数を表す]と
を含む。
【0048】
好ましくは、元素Mは、元素周期表の1列目のアルカリ金属、2列目のアルカリ土類金属及び4~14列目の元素、ビスマス、セレン、テルル及びアスタチンから選択される元素を表す。
【0049】
有利には、元素Mは、金、銀、イリジウム、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム及び炭素以外である。
【0050】
より優先的には、元素Mは、鉄、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、セレン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから選択される。
【0051】
さらにより優先的には、元素Mは、鉄、亜鉛及びアルミニウムから選択される。
【0052】
非常に特に好ましくは、元素Mは、鉄及び亜鉛から選択される。
【0053】
好ましくは、整数mは、1~10、より優先的には1~5の範囲である。
【0054】
好ましくは、整数nは、1~20、より優先的には2~10の範囲である。
【0055】
特に、xは0に等しいか、又は厳密にn未満且つ0~20の非整数を表す。
【0056】
本発明の好ましい実施形態によれば、xは0に等しい。
【0057】
本発明の別の実施形態によれば、xは、0超且つ厳密にnよりも小さい非整数を表し、好ましくは、厳密にn未満且つ0~20であり、より優先的には、厳密にn未満且つ0~10である。
【0058】
好ましくは、式(I)の元素Mの酸化物は、FeO、Fe、Fe、xが厳密に0~1の非整数である式FeO1-xの化合物、xが厳密に0~4の非整数である式Fe4-xの化合物、xが厳密に0~3の非整数である式Fe3-xの化合物、及びxが厳密に0~1の非整数である式ZnO1-xの化合物から選択される。
【0059】
より優先的には、式(I)の元素Mの酸化物は、FeO、Fe、xが厳密に0~1の非整数である式FeO1-xの化合物、xが厳密に0~4の非整数である式Fe4-xの化合物、xが厳密に0~3の非整数である式Fe3-xの化合物、及びxが厳密に0~1の非整数である式ZnO1-xの化合物から選択される。
【0060】
本発明によれば、粒子中の元素Mは、この同じ粒子中の元素M’とは異なる。
【0061】
好ましくは、コアは結晶状態にある。
【0062】
コア1の結晶状態及びその組成は、例えば従来のX線回折法によって決定することができる。
【0063】
有利には、本発明による粒子のコア1は、元素Mの酸化物の結晶性一次粒子の1つ以上の凝集体で構成される。換言すれば、コア1は、元素Mの酸化物のいくつかの微結晶で構成される。
【0064】
図1による元素Mの酸化物の被覆粒子は、式(I)の元素Mの酸化物で構成された平均直径Dのコア1を含む。
【0065】
図1による元素M酸化物の被覆粒子は、式(II)の化合物で構成され、コア1の表面を完全に覆い、平均厚さdである上部被覆層2も含む。
【0066】
コア1の数平均直径Dは、例えば、透過型電子顕微鏡法(TEMと略記される)によって決定され得る。好ましくは、本発明による粒子のコア1の数平均直径Dは、3~5000nm、より優先的には10~3000nm、さらにより優先的には30~1000nmにわたる範囲内である。
【0067】
本発明による元素Mの酸化物の被覆粒子は、式(II)の化合物で構成された、コア1の表面を被覆する上部被覆層2を含む。
【0068】
有利には、上部被覆層2は、コア1の表面の少なくとも90%を覆う。より優先的には、上部被覆層2は、コア1の表面全体を覆う。
【0069】
上部被覆層によるコアの被覆の度合いは、例えば、STEM-EDX分析に結合されたTEM-BF又はSTEM-HAADFタイプの視覚的分析を利用して決定され得る。
【0070】
分析の各々は、統計的粒子数、特に少なくとも20個の粒子で行われる。粒子は、コア又は上部被覆層のいずれにあるかにかかわらず、粒子の一部を形成する任意の金属以外の金属から作られた金属グリッド上に堆積される。例えば、グリッドは、銅で作製される(ただし、粒子の製造で銅を使用することが望まれる場合を除く)。
【0071】
TEM-BF及びSTEM-HAADF画像の視覚分析により、コントラストに基づいて、被覆が粒子のコアを完全に取り囲んでいるか否かを推測することが可能である。20個(以上)の画像の各々を分析することによって、それらからコアの被覆の度合いを推測し、次いで平均を取ることにより、被覆の平均の度合いを決定することが可能である。
【0072】
STEM-EDX分析により、被覆が実際に元素M’を主に又は排他的に含有することを確認することができる。そのために、粒子の端部で(少なくとも20個の粒子について)ポインティングを行う必要がある。これらのポインティングにより、元素M’が明らかになる。
【0073】
STEM-EDX分析では、コアが元素Mを実際に含有していることを確認することもできる。そのために、粒子の中心で(少なくとも20個の粒子について)ポインティングを行う必要がある。これらのポインティングから、元素M及び元素M’が明らかになる。
【0074】
本発明によれば、元素M’は元素M以外であり、セレン並びに元素周期表の4列目、13列目及び14列目の元素から選択される。
【0075】
好ましくは、元素M’は、セレン、チタン、アルミニウム、及び元素周期表の14列目の元素から選択される。
【0076】
より優先的には、元素M’は、セレン、チタン、アルミニウム、炭素及びケイ素から選択される。
【0077】
非常に特に好ましくは、元素M’は炭素及びケイ素から選択される。
【0078】
好ましい実施形態によれば、元素M’はケイ素である。
【0079】
本発明の別の実施形態によれば、元素M’は炭素である。
【0080】
好ましくは、整数pは1~4の範囲である。より優先的には、整数pは1又は2に等しく、さらに良好には、pは1に等しい。
【0081】
好ましくは、整数qは0~4の範囲である。より優先的には、整数qは厳密に0よりも大きい。さらにより優先的には、整数qは1~4の範囲である。
【0082】
好ましくは、式(II)の化合物は、炭素、SiO、SnO及びAlから選択される。
【0083】
より優先的には、式(II)の化合物は、炭素及びSiOから選択される。
【0084】
有利には、元素Mは、化学量論的又は非化学量論的な中間の酸化数を示す。
【0085】
本発明の意味の範囲内で、「中間の酸化数」という用語は、0(含まれない)と元素Mの最大酸化数(含まれない)との間の酸化数を意味すると理解される。
【0086】
酸化数が整数である場合、「化学量論的な中間の酸化数」という表現が使用される。例えば、化学量論的な中間の酸化数を示す元素Mが鉄である場合、式(I)の元素Mの酸化物は、FeO及びFeから選択することができる。別の例では、化学量論的な中間の酸化数を示す元素Mが銅である場合、式(I)の元素Mの酸化物はCuOであり得る。
【0087】
酸化数が非整数である場合、「非化学量論的な中間の酸化数」という表現が使用される。元素Mが非化学量論的な中間の酸化数を示す場合、「元素Mの亜酸化物」という表現が使用される。例えば、非化学量論的な中間の酸化数を示す元素Mが鉄である場合、式(I)の元素Mの亜酸化物は、式FeO1-xの化合物、式Fe4-xの化合物及び式Fe3-xの化合物から選択することができる。別の例では、非化学量論的な中間の酸化数を示す元素Mが銅である場合、式(I)の元素Mの亜酸化物は、式CuO1-xの化合物及び式Cu1-xの化合物から選択することができる。
【0088】
特に、元素Mが中間の酸化数を示す粒子は、よりいっそう濃く、よりいっそう有彩色であるケラチン材料の着色を得ることを可能にすることが観察されている。加えて、これらの粒子は、新規な着色を得ることを可能にする。
【0089】
好ましくは、式(I)の元素Mの酸化物は、式(I’):
n-x (I’)
[式中、
- Mは、元素周期表の1列目のアルカリ金属、2列目のアルカリ土類金属及び3~14列目の元素、ビスマス、セレン、テルル及びアスタチンから選択される元素を表し、
- mは、1以上の整数を表し、
- nは、1以上の整数を表し、
- xは、0よりも大きく且つ厳密にnよりも小さい非整数を表す]の元素Mの亜酸化物から選択される。
【0090】
上述の式(I)の元素M並びに数m及びnの選好及び特性は、式(I’)の元素M並びに数m及びnにも適用される。
【0091】
好ましくは、xは、厳密にn未満且つ0~20の非整数を表し、より優先的には厳密にn未満且つ0~10の非整数を表す。
【0092】
好ましくは、式(I’)の元素Mの亜酸化物は、xが厳密に0~1の非整数である式FeO1-xの化合物、xが厳密に0~4の非整数である式Fe4-xの化合物、xが厳密に0~3の非整数である式Fe3-xの化合物、及びxが厳密に0~1の非整数である式ZnO1-xの化合物から選択される。
【0093】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、粒子は、
- FeO、Fe、Fe、xが厳密に0~1の非整数である式FeO1-xの化合物、xが厳密に0~4の非整数である式Fe4-xの化合物、xが厳密に0~3の非整数である式Fe3-xの化合物、及びxが厳密に0~1の非整数である式ZnO1-xの化合物から選択される、式(I)又は(I’)の元素Mの酸化物で構成されたコア1と、
- 炭素、SiO、SnO及びAlから選択される式(II)の化合物で構成された、前述のコア1の表面を覆う上部被覆層2と
を含む。
【0094】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、粒子は、
- FeO、Fe、Fe、xが厳密に0~1の非整数である式FeO1-xの化合物、xが厳密に0~4の非整数である式Fe4-xの化合物、xが厳密に0~3の非整数である式Fe3-xの化合物、及びxが厳密に0~1の非整数である式ZnO1-xの化合物から選択される、式(I)又は(I’)の元素Mの酸化物で構成されたコア1と、
- 炭素及びSiOから選択される式(II)の化合物で構成された、前述のコア1の表面を覆う上部被覆層2と
を含む。
【0095】
上部被覆層の数平均厚さdも透過型電子顕微鏡法によって決定することができる。
【0096】
好ましくは、数平均厚さdは、1~20nm、より優先的には1~10nm、さらにより優先的には2~6nmにわたる範囲内である。
【0097】
有利には、上部被覆層2は、アモルファスである。
【0098】
有利には、上部被覆層2は、透明である。
【0099】
有利には、本発明による粒子は、特定の(M/M’)モル原子比による元素M及び元素M’を含む。
【0100】
この比は、一方では本発明による粒子中に存在する元素Mのモル単位の量と、他方では本発明による粒子中に存在する元素M’のモル単位の量との比に対応する。
【0101】
この比は、下記の2つ方法の1つに従って分光測定によって決定することができる。第1の方法によれば、粉末が広げられ、X線分光計を用いてX線蛍光定量研究が行われ、そこから金属比が推測される。別の方法によれば、本発明の粒子は、予め酸に溶解される。次いで、得られた材料でICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)によって元素分析が行われ、そこから金属比が推測される。
【0102】
好ましくは、本発明による粒子の(M/M’)モル原子比は、厳密に0.3よりも大きく、より優先的には1以上、さらにより優先的には3以上、さらに良好には3~100にわたる範囲内、さらにより良好には3~10にわたる範囲内である。
【0103】
本発明による粒子の数平均直径も透過型電子顕微鏡法によって決定され得る。好ましくは、本発明による粒子の数平均直径は、4~5000nm、より優先的には10~3000nm、さらにより優先的には30~1000nmにわたる範囲内である。
【0104】
好ましくは、本発明による粒子のBET比表面積は、1m/g~200m/g、より優先的には30~100m/gである。
【0105】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明による被覆粒子は、上部被覆層2を覆い且つ少なくとも1種の疎水性有機化合物を含む追加の被覆層を任意選択的にさらに含み得る。
【0106】
追加の被覆層中に含まれる疎水性有機化合物は、より優先的には、シリコーン、特に少なくとも1つの脂肪鎖を含むシリコーン、少なくとも6個の炭素原子を含む、炭素ベースの誘導体、特に脂肪酸エステル及びそれらの混合物から選択される。
【0107】
追加の被覆層は、液体経路又は固体経路によって製造することができる。液体経路により、ヒドロキシル官能基は、被覆を形成する化合物の反応性官能基(典型的には、シリコーンのシラノール官能基又は炭素ベースの脂肪物質の酸官能基)と反応する。固体経路により、粒子と、疎水性物質を含む液状若しくはペースト状化合物とを接触させる。
【0108】
好ましくは、本発明による被覆粒子は、以下に記載される本発明の調製方法によって得られる。
【0109】
被覆粒子の調製方法
本発明の別の主題は、式(II)の化合物で被覆された式(I)の元素Mの酸化物の粒子、特にコア/シェル構造のM-M’の酸化物のタイプの粒子の調製方法であって、組成物(A)を調製する段階a.、次いでフレームを形成する段階b.及び組成物(B)を噴射する段階c.の少なくとも1つの段階を含む方法に関する。
【0110】
本発明による方法の段階aは、元素Mの1つ以上の前駆体を可燃性溶媒又は可燃性溶媒の混合物に添加することによる組成物(A)の調製からなる。
【0111】
本発明によれば、元素Mは、元素周期表の1列目のアルカリ金属、2列目のアルカリ土類金属及び3~14列目の元素、ビスマス、セレン、テルル及びアスタチンから選択される元素を表す。
【0112】
好ましくは、元素Mは、元素周期表の1列目のアルカリ金属、2列目のアルカリ土類金属及び4~14列目の元素、ビスマス、セレン、テルル及びアスタチンから選択される元素を表す。
【0113】
有利には、元素Mは、金、銀、イリジウム、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム及び炭素以外である。
【0114】
より優先的には、元素Mは、鉄、亜鉛、アルミニウム、ケイ素、セレン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムから選択される。
【0115】
さらにより優先的には、元素Mは、鉄、亜鉛及びアルミニウムから選択される。
【0116】
非常に特に好ましくは、元素Mは、鉄及び亜鉛から選択される。
【0117】
本発明によれば、元素Mは元素M’以外である。
【0118】
本発明により使用することができる元素Mの前駆体及び可燃性溶媒は、フレーム溶射熱分解で従来使用されている元素Mの前駆体及び可燃性溶媒から選択することができる。
【0119】
好ましくは、組成物(A)に含まれる元素Mの前駆体は、
- 元素Mの硝酸塩、例えば硝酸鉄、
- 元素Mの硫酸塩、例えば硫酸鉄、
- 少なくとも1個の炭素原子を含む1つ以上の配位子、例えば、炭酸塩、酢酸塩及びクエン酸塩と錯体形成されているか又は錯体形成されていない1つ以上の元素Mを含む化合物、
-並びにそれらの混合物
から選択される。
【0120】
より優先的には、前述の配位子は、アセテート、(C~C)アルコキシレート、(C~C10)アルキルカルボキシレート、(ジ)(C~C)アルキルアミノ、及びアリレート、例えばナフタレート又はナフテネートの基から選択される。
【0121】
より優先的には、組成物(A)に含まれる元素Mの前駆体は、元素Mの硝酸塩から選択される。
【0122】
好ましくは、可燃性溶媒は、プロトン性可燃性溶媒、非プロトン性可燃性溶媒、及びそれらの混合物から選択され、より優先的には、アルコール、エステル、酸、非環状エーテル、環状エーテル、芳香族炭化水素又はアレーン、非芳香族炭化水素、例えば液化炭化水素、例えば、アセチレン、メタン、プロパン又はブタン、及びそれらの混合物から選択され、より良好には、2-エチルヘキシルアセテート、2-エチルヘキサン酸(EHA)、エチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチルtert-アミルエーテル(MTAE)、メチルtert-ヘキシルエーテル(MTHE)、エチルtert-ブチルエーテル(ETBE)、エーテルtert-アミルエーテル(ETAE)、ジイソプロピルエーテル(DIPE)、テトラヒドロフラン(THF)、キシレン、及びそれらの混合物から選択される。
【0123】
特に好ましくは、可燃性溶媒は、少なくとも3個の炭素原子を含む非プロトン性可燃性溶媒及びその混合物から、より良好には、キシレン、テトラヒドロフラン、2-エチルヘキシルアセテート、2-エチルヘキサン酸(EHA)、及びそれらの混合物から選択される。
【0124】
本発明の特定の実施形態によれば、組成物(A)は、可燃性溶媒の混合物を含み、好ましくは以下の可燃性溶媒のうちの少なくとも2つを含む:2-エチルヘキサン酸(EHA)、トルエン、無水エタノール及びジエチレングリコールモノブチルエーテル。
【0125】
さらに良好には、組成物(A)は、2-エチルヘキサン酸(EHA)、トルエン、無水エタノール及びジエチレングリコールモノブチルエーテルで構成された可燃性溶媒の混合物を含む。
【0126】
さらに良好には、組成物(A)は、可燃性溶媒の混合物の総体積に対して、少なくとも5体積%の2-エチルヘキサン酸(EHA)、少なくとも5体積%のトルエン、少なくとも5体積%の無水エタノール及び少なくとも5体積%のジエチレングリコールモノブチルエーテルで構成された可燃性溶媒の混合物を含む。
【0127】
有利には、組成物(A)中の元素Mの前駆体の含有率は、組成物(A)の総質量に対して1質量%~60質量%、好ましくは15質量%~30質量%である。
【0128】
本発明による調製方法は、組成物(A)と酸素含有ガスとをフレーム溶射熱分解(FSP)装置10へ噴射してフレームを形成する段階b.をさらに含む。
【0129】
フレーム溶射熱分解装置10について、図2及び3を参照して以下により具体的に説明する。
【0130】
この段階b.の間に、組成物(A)及び酸素含有ガス(G)は、有利にはフレーム溶射熱分解装置10に噴射される。
【0131】
好ましくは、段階b.の間に形成されたフレームは、フレームの少なくとも一部で2000℃以上の温度である。
【0132】
段階b.は、任意選択的に、酸素と1種以上の可燃性ガスとを含む「プレミックス」混合物(P)の追加の噴射をさらに含み得る。この「プレミックス」混合物(「支援フレーム酸素」とも呼ばれる)は、組成物A及び酸素含有ガス(すなわち「分散酸素」)から得られるフレームを点火及び維持することを目的とした支援フレームの生成を可能にする。一方では、組成物(A)とガス(G)との混合物、他方では、プレミックス(P)は別々に噴射され、すなわち、組成物(A)と酸素含有ガス(G)との混合物は1つの管によって噴射され、プレミックス(P)は別の管によって噴射される。
【0133】
好ましくは、段階b.の間に、組成物(A)、酸素含有ガス、及び任意選択的な「プレミックス」混合物(存在する場合)が、反応管(「封入管」とも呼ばれる)の中に噴射される。好ましくは、この反応管は、金属又は石英でできている。有利には、反応管は、30cm以上、好ましくは40cm以上、より優先的には50cm以上の高さを示す。優先的には、前述の反応管の長さは、30cm~300cm、特には40cm~200cm、より具体的には45cm~100cmであり、例えば50cmである。
【0134】
一方では、組成物(A)中に存在する溶媒の質量と、他方では、酸素含有ガス(G)の質量との質量比は、以下のように定義される:
【0135】
まず、酸素含有ガス(酸化剤化合物とも呼ばれる)の量は、組成物(A)によって形成される集合体、すなわち一方では、可燃性溶媒及び元素Mの前駆体と、他方では、酸素含有ガスとを化学量論比において燃焼反応で一緒に反応させることができるように計算される(したがって酸化剤化合物の過不足が生じない)。
【0136】
(「計算された酸化剤」とも呼ばれる)この計算された酸素含有ガスの量から開始して、(「噴射される酸化剤」とも呼ばれる)噴射される酸素含有ガスの量をこれから導くために、新しい計算が以下の式に従って実行される:
噴射される酸化剤=計算された酸化剤/φ
式中、φは、好ましくは1~2.5、より優先的には1.2~2、さらにより優先的には1.3~1.8、より良好には1.4~1.6の補正係数である。
【0137】
この方法は、特に、An Introduction to Combustion:Concepts and Applications,3rd ed.;McGraw-Hill:New York,2012においてTurns,S.R.によって定義されている。
【0138】
好ましくは、段階b.の間に噴射される酸素含有ガス(G)のモル量は、厳密には、組成物(A)を化学量論比で酸素と反応させるのに必要な酸素含有ガスのモル量未満である。
【0139】
本発明による調製方法で使用することができるフレーム溶射熱分解装置10は、1つ以上のチャンバを備えることができる。好ましくは、本発明による調製方法で使用することができるフレーム溶射熱分解装置10は、いくつかのチャンバ、より優先的には2つのチャンバを備える。
【0140】
好ましくは、前述のフレーム溶射熱分解装置10は、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素及びアンモニアから、より優先的には窒素、メタン、水素及びアルゴンから、さらにより優先的には、窒素及びアルゴンから選択される不活性ガス(G2)によって、より良好には窒素によって加圧される。
【0141】
本発明の好ましい実施形態によれば、フレーム溶射熱分解装置10が単一のチャンバのみを備える場合、前述のフレーム溶射熱分解装置10のチャンバは、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素及びアンモニアから、好ましくは窒素、メタン、水素及びアルゴンから、より優先的には窒素及びアルゴンから選択される不活性ガス(G2)によって、より良好には窒素によって加圧される。
【0142】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、フレーム溶射熱分解装置10がいくつかのチャンバを備える場合、前述のフレーム溶射熱分解装置10の第1のチャンバ20は、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素及びアンモニアから、好ましくは窒素、メタン、水素及びアルゴンから、より優先的には窒素及びアルゴンから選択される不活性ガス(G2)によって、さらに良好には窒素によって加圧される。
【0143】
好ましくは、フレーム溶射熱分解装置10に噴射される不活性ガス(G2)の流量は、5l/分~70l/分、より優先的には10l/分~50l/分の範囲である。
【0144】
より優先的には、フレーム溶射熱分解装置10に噴射される窒素(G2)の流量は、5l/分~70l/分、より優先的には10l/分~50l/分の範囲である。
【0145】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、補正係数φは、1~2.5、より優先的には1.2~2、さらにより優先的には1.3~1.8、より良好には1.4~1.6であり、フレーム溶射熱分解装置10に噴射される不活性ガス(G2)、より具体的には窒素の流量は、5l/分~70l/分、より優先的には10l/分~50l/分の範囲である。
【0146】
本発明による調製方法は、元素Mの酸化物の前述の凝集体の表面で、元素M’又は元素M’の酸化物で構成された上部被覆層2が得られるまで、元素M’の1つ以上の前駆体を含む組成物(B)を噴射することを含む段階c.をさらに含む。
【0147】
上記のように、本発明によれば、元素M’は元素M以外であり、セレン並びに元素周期表の4列目、13列目及び14列目の元素から選択される。
【0148】
好ましくは、元素M’は、セレン、チタン、アルミニウム、及び元素周期表の14列目の元素から選択される。
【0149】
より優先的には、元素M’は、セレン、チタン、アルミニウム、炭素及びケイ素から選択される。
【0150】
非常に特に好ましくは、元素M’は炭素及びケイ素から選択される。
【0151】
好ましい実施形態によれば、元素M’はケイ素である。
【0152】
本発明の別の実施形態によれば、元素M’は炭素である。
【0153】
好ましくは、元素M’の前駆体は、少なくとも2個のM’原子と、いくつかのM’-炭素共有結合とを含む。より優先的には、元素M’の前駆体は、少なくとも3個のM原子と、いくつかのM-炭素共有結合とを含む。
【0154】
より優先的には、元素M’の前駆体は、ヘキサ(ジ)(C~Cアルキルジシロキサン、例えばヘキサジメチルジシロキサン、(ジ)(トリ)(テトラ)(C~C)アルコキシシラン、例えばテトラエトキシシラン、ビス[(ジ)(トリ)アルコキシシリル](C~C)アルカン、例えば1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン又は1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、(C~C)アルコキシ(ジ)(トリ)(C~C)アルキルシラン、例えばメトキシトリメチルシラン、炭化水素ガス、例えばアセチレン、アルミニウム(ジ)(C~C)アルコキシレート、アルミニウム(ジ)(C~C)アルキルカルボキシレート、例えば水酸化二酢酸アルミニウム、(ポリ)(C~C)アルコキシレートスタンネート、(ポリ)(C~C)アルキルカルボキシレートスタンネート、例えばテトラアセテートスタンネート、及びそれらの混合物から選択される。
【0155】
さらにより優先的には、元素M’の前駆体は、ヘキサジメチルジシロキサン、テトラエトキシシラン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、メトキシトリメチルシラン及びそれらの混合物から選択される。
【0156】
本発明の特定の実施形態によれば、組成物(B)に、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素及びアンモニアから、好ましくは窒素、メタン、水素及びアルゴンから、より優先的には窒素及びアルゴンから選択される不活性ガス(G3)を噴射することができる。
【0157】
例えば、段階cの間に噴射する前に、窒素を組成物(B)にバブリングすることができる。組成物(B)の噴射流量は、その後、当業者による既知の圧力の決定、例えば、Scott,D.W.;Messerly,J.F.;Todd,S.S.;Guthrie,G.B.;Hossenlopp,I.A.;Moore,R.T.;Osborn,A.G.;Berg,W.T.;McCullough,J.P.,Hexamethyldisiloxane: Chemical Thermodynamic Properties and Internal Rotation about the Siloxane Linkage,J.Phys.Chem.,1961,65,1320-6によって規定されている方法によって制御することができる。
【0158】
好ましくは、本発明による方法の段階c.の間に噴射される組成物(B)中の元素M’の前駆体の含有率は、組成物(B)の総体積に対して1体積%~60体積%、より優先的には5体積%~30体積%である。
【0159】
有利には、組成物(B)は1種以上の溶媒をさらに含み得る。好ましくは、組成物(B)中に存在する溶媒は、水以外の極性プロトン性溶媒、より優先的には(C~C)アルカノールから選択される。さらにより優先的には、組成物(B)は、エタノールを含む。
【0160】
好ましくは、組成物(B)中に存在する溶媒は、段階c.のフレーム温度で可燃性であり、好ましくは200℃~600℃、より優先的には300℃~400℃の温度で可燃性である溶媒から選択される。より良好には、組成物(B)中に存在する溶媒は、室温(25℃)以上、より優先的には50℃~120℃の沸点を有する。
【0161】
本発明による方法の間に、(M/M’)噴射モル原子比を計算することができる。この比は、一方では、段階b.の間に噴射される元素Mのモル単位の量と、他方では、段階c.の間に噴射される元素M’のモル単位の量との比に対応する。
【0162】
好ましくは、(M/M’)噴射モル原子比は、0.25以上、より優先的には0.25~120の範囲内、さらにより優先的には0.25~99にわたる範囲内、より良好には1~80にわたる範囲内、さらにより良好には3~20にわたる範囲内である。
【0163】
本発明によれば、フレーム溶射熱分解装置10は、前述の装置10に存在する酸素の量が制御されるように、より優先的には、前述の装置10に存在する酸素が前述のガス(G)のみに由来し、任意選択的に混合物(P)に由来するように、外気から隔離される。換言すれば、空気の酸素は、燃焼チャンバに入って組成物(A)及び溶媒と反応することができない。
【0164】
好ましくは、段階b.は、フレーム溶射熱分解装置10の第1のチャンバで行われ、段階c.は、前述の装置10の第2のチャンバで行われる。
【0165】
図2及び3に示すように、前述の第2のチャンバ30は、第1のチャンバ20と連続しており、前述の第1のチャンバを延在している。代替的な形態では、2つのチャンバがパイプによって接続されるようになっていてもよい。
【0166】
本発明はまた、上記の本発明による調製方法に従って得られる式(I)又は(I’)の元素Mの酸化物の被覆粒子に関する。
【0167】
フレーム溶射熱分解装置
フレーム溶射熱分解装置10の一例を図2に示す。
【0168】
フレーム溶射熱分解装置10は、組成物(A)及び酸素含有ガス(G)を用いる第1のチャンバ20と、元素M’の1つ以上の前駆体を含む組成物(B)を用いる第2のチャンバ30とを備える。
【0169】
フレーム溶射熱分解装置10は、第1のチャンバ20内に現れ、組成物(A)及び酸素含有ガス(G)を送達する第1の管42と、第1のチャンバ20内に現れ、酸素及び1つ以上の可燃性ガス、例えばメタンを含む「プレミックス」混合物(P)を送達する第2の管44とを含む噴射システム40をさらに備える。第2の管44は、第1の管42から生じる化合物の点火に必要なフレームを保証することを可能にする。
【0170】
第1及び第2の管42,44は互いに分離している。
【0171】
図示されているように、第1及び第2の管42,44は同軸であり、第2の管44は第1の管42を少なくとも部分的に取り囲む。
【0172】
全く限定するものではないが、装置10の噴射システム40は、例えば窒素などの不活性ガスの追加のフィード46を第1のチャンバ20にさらに備える。追加のフィード46は、2~20バール(すなわち、2×10~20×10Pa)の圧力下で不活性ガスが現れることができる多孔質部分の形態で提供することができる。
【0173】
噴射システム40から得られる組成物(A)、酸素含有ガス(G)及び可燃物(P)は、第1のチャンバ20で焼却される。
【0174】
図示されているように、第1のチャンバ20は、2つの別個の区画22,24を含む。第1の区画22は、噴射システム40が現れる第1の下部開口部22aと、第1の開口部22aの反対側の第2の上部開口部22bとを含む。
【0175】
第2の区画24は、第1の区画22を取り囲んでおり、外気から隔離されている。第2の区画24は、ガス透過性の隔壁26によって第1の区画22と分離されている。
【0176】
第2の区画24は、外気から隔離された閉鎖ハウジングを形成する上壁、下壁及び側壁(参照せず)を含む。
【0177】
第2の区画24は、例えば、窒素、メタン、アルゴン、水素、硫化水素及びアンモニアから選択されるガス(G2)によって加圧される。ガス(G2)は、噴射器28を介して第2の区画24に噴射される。例えば、噴射器28は、第2の区画24に現れる単一の管を含む。代替的な形態では、噴射器28は、第2の区画24に現れる2つ以上の管を含むことができる。管は、第2の区画24の周囲にわたって均等に離間されていても離間されていなくてもよい。
【0178】
2つの区画22,24を分離するための隔壁26は、第1の区画22へのガス(G2)の通過を可能にするために構成される。例えば、隔壁26は、多孔質材料でできている。隔壁26の多孔度は、例えば、10μm~100μmである。
【0179】
第1のチャンバ20は、例えば10cm~1mの高さH1を示す。
【0180】
第2のチャンバ30は、元素M’の1つ以上の前駆体を含む組成物(B)を用いるように構成されている。
【0181】
図示されているように、第2のチャンバ30は、2つの別個の区画32,34を含む。第1の区画32は、第1のチャンバ20の第2の開口部22bと一致する第1の下方開口部32aと、第1の開口部32aの反対側の第2の上方開口部32bとを含む。
【0182】
代替的な形態では、第1の下方開口部32aは、第1のチャンバ20の第2の開口部22bから横方向にオフセットされていてもよい。第1のチャンバ20がパイプによって第2のチャンバ30に接続されるようになっていてもよい。
【0183】
第2の区画34は、第1の区画32を取り囲んでおり、外気から隔離されている。第2の区画34は、ガス透過性の隔壁36によって第1の区画32と分離されている。
【0184】
第2の区画34は、外気から隔離された閉鎖ハウジングを形成する上壁、下壁及び側壁(参照せず)を備える。
【0185】
第2の区画34は、組成物(B)を第2のチャンバ30に供給するためのフィード38を有する。
【0186】
フィード38は、例えば、窒素、メタン、アルゴン又は水素から選択されるガス(G3)によって、又は組成物(B)の加熱によって加圧される。例えば、フィード38は、第2の区画34に現れる単一の管を含む。代替的な形態では、フィード38は、第2の区画34に現れる2つ以上の管を含む。管は、第2の区画34の周囲にわたって均等に離間されていても離間されていなくてもよい。
【0187】
2つの区画32,34を分離するための隔壁36は、第2の区画34から第1の区画32への組成物(B)の通過を可能にするように構成される。例えば、隔壁36は、分離隔壁36の1cm当たり1~10個の穿孔の数で、約0.1mm~0.5mmの複数の穿孔(図示せず)を含む。
【0188】
第2のチャンバ30は、例えば10cm~1mの高さH2を示す。
【0189】
好ましくは、第1のチャンバ20の高さH1は、第2のチャンバ30の高さH2のプラスマイナス10%に等しい。好ましくは、第1のチャンバ20の寸法は、第2のチャンバ30の寸法に等しい。
【0190】
フレーム溶射熱分解装置10は、ガスを通過させながら粒子を停止させるように構成された捕集システム50をさらに備える。
【0191】
この場合、捕集システム50は、2つのチャンバ20,30と同軸であり、第2のチャンバ30の上方に位置決めされる。代替的な形態では、捕集システム50がチャンバ20,30から横方向にオフセットされるようになっていてもよい。
【0192】
捕集システム50は、1つ以上の側部隔壁52によって半径方向に画定され、第2のチャンバ30に現れる開口部54aを含む下壁54と、下壁54の反対側の上壁55とによって軸方向に画定される。
【0193】
捕集システム50は、側壁52の間の前述の捕集システムの内側に取り付けられた濾過システム56と、前述のシステム50の上壁55に取り付けられた、例えばポンプなどの減圧システム58とをさらに含む。
【0194】
ポンプ58は、チャンバ20,30を外気から隔離するために捕集システム50内部に負圧を生成するように構成される。有利には、捕集システム50内部の負圧は、0.5~0.8バール(すなわち、5×10~8×10Pa)のオーダーである。
【0195】
全く限定するものではないが、捕集システム50は、スペーサ60によって第2のチャンバ30から軸方向に離間されている。
【0196】
図2に示されるように、噴射システム40、第1のチャンバ20、第2のチャンバ30及び捕集システム50、実際には存在する場合にはスペーサ60さえも、装置10、特にチャンバ20,30の完全な漏れ防止を保証するように、例えばねじ止め又は溶接によって組み立てられ、前述の装置10の内部への外気のアクセスを防止することを可能にする。
【0197】
同じ要素が同じ参照符号を有する図3に示される実施形態は、噴射システム40、第1のチャンバ20、第2のチャンバ30及び捕集システム50、実際には存在する場合にはスペーサ60さえもが、装置10、特にチャンバ20,30の完全な漏れ防止を保証するようにエンクロージャ70に位置決めされ、前述のエンクロージャ70の内部への外部空気のアクセスを防止することを可能にするという点においてのみ、図2に示される実施形態と異なる。エンクロージャ70の内部は、ポンプ58によって負圧下に置かれる。
【0198】
装置の好ましい実施形態によれば、前述の装置は、噴射システム40の中心/中央及び捕集システム50の中心/中央を通過する対称軸Δを示す。より優先的には、装置は対称であり、特に円筒形であり、前述の対称軸Δを通過する。
【0199】
組成物
本発明の別の主題は、上記の式(I)又は(I’)の元素Mの酸化物の1つ以上の被覆粒子を含み、且つ/又は好ましくは本発明による調製方法によって得られる組成物、好ましくは化粧用組成物に関する。
【0200】
本発明による組成物は、ケラチン材料を染色及び/又は構成するために、ケラチン材料、好ましくは皮膚(特に顔)及び/又は毛髪に適用されることが意図されている。ケラチン材料を乾燥させる任意選択的な段階を行うことができる。
【0201】
本発明による組成物は、様々な提示形態とすることができる。したがって、本発明による組成物は、粉末(粉状)組成物、若しくは液体組成物の形態、又はミルク、クリーム、ペースト、若しくはエアロゾル組成物の形態であり得る。
【0202】
本発明による組成物は、特に化粧用組成物であり、すなわち、本発明の材料は化粧品として許容され得る担体中にある。「化粧品として許容され得る担体」という用語は、ケラチン材料、特に皮膚などのヒトケラチン材料への適用に関して適切である媒体を意味し、前述の化粧品として許容され得る担体は、一般に水で構成される、又は水と、1つ以上の有機溶媒との混合物、又は有機溶媒の混合物で構成される。
【0203】
本発明による組成物は、有利には、水性組成物である。
【0204】
好ましくは、組成物は、特に組成物の総質量に対して5%~95%(両端値を含む)の含有量で水を含む。
【0205】
本発明の意味の範囲内で、「有機溶媒」という用語は、別の物質を、それを化学的に修飾せずに溶解することができる有機物質を意味することを意図する。
【0206】
有機溶媒として、例えば、低級C~Cアルカノール、例えばエタノール及びイソプロパノール;ポリオール及びポリオールエーテル、例えば2-ブトキシエタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びジエチレングリコールモノエチルエーテル及びジエチレングリコールモノメチルエーテルに加えて、芳香族アルコール、例えばベンジルアルコール又はフェノキシエタノール並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0207】
好ましくは、有機溶媒は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対して約0.1質量%~40質量%(両端値を含む)、より優先的には約1質量%~30質量%、さらにより具体的には組成物の総質量に対して5質量%~25質量%(両端値を含む)の含有量で存在する。
【0208】
本発明の組成物は、脂肪相を含み得、且つ直接又は逆エマルジョンの形態であり得る。
【0209】
本発明による組成物は、クリーム、乳状又はクリーム状のゲルなどの単純又は複合的なエマルジョン(水中油型又はO/Wと略記されるもの、油中水型又はW/O、油中水中油型又はO/W/O、又は水中油中水型又はW/O/W)の形態で、当業者に周知の技術に従って調製することができる。
【0210】
本発明の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、無水組成物の形態、例えば油の形態でも提供され得る。「無水組成物」という用語は、組成物の総質量に対して2質量%未満の水、好ましくは1質量%未満の水、さらにより優先的には0.5質量%未満の水を含有する組成物、及びさらに実際には水を含まない組成物を意味することが理解される。このタイプの組成物では、存在する可能性のある水は、組成物の調製時に添加されず、混合成分によってもたらされる残留水に対応する。
【0211】
本発明による粒子は、乾燥形態(粉末、フレーク、プレート)、分散液として、又は液体懸濁液として、又はエアロゾルとしてであってもよい。本発明による粒子は、そのまま使用することも、他の成分と混合して使用することもできる。
【0212】
好ましくは、本発明の組成物は、組成物の総質量に対して0.1質量%~40質量%、より優先的には0.5質量%~20質量%、さらに優先的には1質量%~10質量%、さらには1.5質量%~5質量%の本発明による粒子を含む。
【0213】
本発明の組成物は、単回適用又は複数回適用で使用され得る。本発明の組成物が複数回適用を意図する場合、本発明の粒子の含有量は、単回適用を意図する組成物におけるものよりも通常低い。
【0214】
本発明の意味の範囲内で、「単回適用」という用語は、組成物のちょうど1回の適用と理解され、この適用は、場合により1日に数回繰り返され、各適用は、必要に応じて、次の適用から1時間以上離れているか、又は1日に1回の適用である。
【0215】
本発明の意味の範囲内で、「複数回適用」という用語は、複数回、通常2~5回繰り返される組成物の適用と理解され、各適用は、次の適用から数秒間~数分間離される。各々の複数回適用は、必要に応じて、次の適用から1時間以上離して1日に複数回又は1日に1回繰り返すことができる。
【0216】
以下の実施例は本発明を説明するものであって、限定するものではない。
【実施例
【0217】
実施例1:
1.1 第1のステップでは、可燃性溶媒:アセトニトリル及びヘキサン酸エチルの混合物中の硝酸マンガン(200mm)から組成物(A)を調製した。
【0218】
続いて、予め調製された組成物(A)(本発明外)を用いて従来のFSP調製方法Prep 1を使用して非被覆酸化マンガンMnO粒子P1を調製した。
【0219】
Prep 1方法のパラメータは、以下のとおりである:
- 比(組成物(A)/O)=5ml/分の組成物(A)及び5l/分の気体(O)、
- 1l/分のメタン及び2l/分の酸素のフレームを提供するためのガス混合物、
- 10l/分の窒素の不活性ガス流(G2)をFSP装置に噴射する。
【0220】
1.2 続いて、二酸化ケイ素P2で被覆された酸化マンガンMnOの粒子を、本発明による調製方法Prep 2を使用して、Mn/Si粒子のモル原子比が0.49になるような割合で、可燃性溶媒(アセトニトリル+エチルヘキサノエート)の混合物中に硝酸マンガン(200mm)を含む組成物(A)と、ヘキサジメチルジシロキサン及び窒素を含むガス組成物(B)とを有する二重チャンバFSP装置で調製した。
【0221】
Prep 2方法のパラメータは、以下のとおりである:
- 組成物(A)及び酸素含有ガス(G)を、(組成物(A)/O)比=5ml/分の組成物(A)及び5l/分のガス(O)に従って、FSP装置の第1のチャンバに噴射した。
- 1l/分のメタン及び2l/分の酸素のフレームを提供するためのガス混合物、
- 10l/分の窒素の不活性ガス(G2)の流れを二重チャンバFSP装置の第1のチャンバに噴射し、
- 組成物(B)は、5l/分の窒素流によってFSP装置の第2のチャンバに噴射する。
【0222】
酸素流量を調整するための係数φは、調製方法Prep 1と調製方法Prep 2とで同一である。
【0223】
1.3 得られた酸化マンガン粒子は結晶性であることが観察された。
また、非被覆酸化マンガン粒子P1(本発明の範囲外)は、緑色-灰色を有することが観察された。方法Prep 1による粒子P1は、50nmに等しい数平均直径を有する。
【0224】
さらに、本発明による方法Prep 2に従って得られた粒子P2は、濃い緑色を有し、約20nmの厚さを有する二酸化ケイ素の上層で被覆され、0.49の(Mn/Si)粒子原子比を示す。
【0225】
方法Prep 2による粒子P2は、70nmに等しい数平均直径を有する。
【0226】
1.4 次いで、粒子P1及びP2の比色分析データを、Data Color SF600X分光光度計(光源 D65、角度 10°、及び鏡面反射成分を含む)を備えるCIELabシステムで測定する。このL*a*b*系において、L*は、明度を表し、a*は、緑色/赤色軸を示し、b*は、青色/黄色軸を示す。Lの値が高いほど、明るくなるか又は色の強度が低くなる。逆に、L*の値が小さいほど、暗くなるか又は色の強度が高くなる。a*の値が高いほど色調がより赤くなり、b*の値が高いほど色調がより黄色くなる。
【0227】
結果は、以下の表1で照合される:
【0228】
【表1】
【0229】
方法Prep 2(本発明)による被覆酸化マンガン粒子P2の緑色は、方法Prep 1(本発明の範囲外)による非被覆酸化マンガン粒子P1の緑色-灰色よりも強いことが観察された。
【0230】
外気中及び周囲温度及び周囲外光で3ヶ月間貯蔵した後、方法Prep 2(本発明)による被覆酸化マンガン粒子P2の色は、経時的に暗灰色に変化する方法Prep 1(本発明の範囲外)による非被覆酸化マンガン粒子P1の色とは異なり、経時的に変化しないことも観察された。
【0231】
実施例2:
上記方法Prep 2により、0.45gの二酸化ケイ素で被覆された酸化マンガン粒子P2及び9mlのイソドデカンを含む組成物C1(本発明)を調製した。
【0232】
0.45gの市販顔料PG-7(銅フタロシアニンに基づく)、0.25gの市販顔料PY-42及び9mlのイソドデカンを含む組成物C2(本発明外)を調製した。組成物C1の色は、組成物C2の色と同様である。
【0233】
続いて、以下のプロトコルを組成物C1及びC2の各々について10回繰り返す:
- 15秒間の組成物の撹拌、次いで
- 皮膚と同等の表面への0.4gの組成物の適用、次いで
- 外気中での乾燥。
【0234】
続いて、組成物ごとにこのようにして調製された10個の被覆の各々を視覚的に比較した。
【0235】
緑色は、本発明による組成物C1で得られた10個の被覆の各々について同一であることが観察された。
【0236】
対照的に、比較組成物C2で得られた10個の被覆について、色が青味がかった緑色から灰色に変化することが観察された。
【0237】
したがって、本発明による組成物C1を用いて得られる被覆の色の再現性は、比較組成物C2を用いて得られる被覆の色の再現性よりもはるかに良好である。
図1
図2
図3
【国際調査報告】