IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テンサー インターナショナル コーポレイションの特許一覧

特表2025-500326拡張多層一体型ジオグリッドならびにその製造方法および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】拡張多層一体型ジオグリッドならびにその製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/24 20060101AFI20241226BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20241226BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241226BHJP
   B32B 3/24 20060101ALI20241226BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20241226BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20241226BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B29C44/24
B32B5/18
B32B27/32 Z
B32B3/24 Z
E02D17/18 A
E02D17/20 103A
B29C44/00 E
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024537174
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-14
(86)【国際出願番号】 US2022081913
(87)【国際公開番号】W WO2023122524
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/291,624
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522301474
【氏名又は名称】テンサー インターナショナル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー、カーソン
(72)【発明者】
【氏名】トム-ロス、ジェンキンス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー、エドワード、ウォーラー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、ジョン、ギャラガー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、マーク、ベイカー
(72)【発明者】
【氏名】マノイ、クマール、ティアギ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ、カバノフ
【テーマコード(参考)】
2D044
4F100
4F214
【Fターム(参考)】
2D044CA04
2D044DB00
4F100AA03B
4F100AA08B
4F100AA08H
4F100AA19B
4F100AA20B
4F100AA21B
4F100AC05B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK07B
4F100BA03
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA15
4F100CA01B
4F100CA23B
4F100DC11A
4F100DC11B
4F100DC11C
4F100DE01B
4F100DE01H
4F100DJ01B
4F100EH202
4F100EJ333
4F100EJ37
4F100EJ38
4F100GB07
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
4F214AA11
4F214AA50
4F214AB02
4F214AB16
4F214AB25
4F214AG01
4F214AG20
4F214UA11
4F214UB02
4F214UB22
4F214UC02
4F214UC30
4F214UF01
4F214UG02
4F214UG22
4F214UW02
4F214UW41
4F214UW50
(57)【要約】
拡張多層一体型ジオグリッドは、共押出または積層多層ポリマー出発シートから製造される、部分的に配向した接合部によって相互に接続され、それらの間に一連の開口部を有する複数の配向性ストランドを含む。該一体型ジオグリッドは多層構造を有し、その少なくとも1つの内層は、多層の少なくとも1つの他の層に対して拡張した構造を有する。拡張した内層構造により、該拡張多層一体型ジオグリッドは荷重下での層圧縮性が向上し、その結果、材料特性が向上し、拡張多層一体型ジオグリッドを土壌ジオシンセティック補強に使用する際の性能上の利点、および拡張内層構造を持たない同種の一体型ジオグリッドと比較して経済的な利点をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材と連結し補強するための拡張多層一体型ジオグリッドであって、
部分的に配向した接合部によって相互に接続され、それらの間に一連の開口部を有する複数の配向性ストランドを含み、
前記一体型ジオグリッドが、それぞれポリマー材料の複数の層を有し、
前記複数の層の少なくとも1つの内層が、前記骨材と前記一体型ジオグリッドとの間の初期適合性を改善して、前記骨材およびジオグリッド圧縮後の骨材密度を最大化する空隙の分布を含む拡張構造を有する、拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項2】
前記拡張構造を有する少なくとも1つの内層が、5%~60%の空隙容積を有する、請求項1に記載の拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項3】
前記拡張構造を有する少なくとも1つの内層が、5%~75%の圧縮率を有する、請求項1に記載の拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項4】
前記拡張構造を有する少なくとも1つの内層が、発泡体を含む、請求項1に記載の拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項5】
前記発泡体が、ポリプロピレンおよび発泡添加剤を含む、請求項4に記載の拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項6】
前記拡張構造を有する少なくとも1つの内層が、粒子状充填剤を含む、請求項1に記載の拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項7】
前記粒子状充填剤が、炭酸カルシウム、含水マグネシウムケイ酸塩、硫酸カルシウム、珪藻土、二酸化チタン、ナノフィラー、多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、天然繊維、合成繊維、ドロマイト、シリカ、マイカ、およびアルミニウム水和物からなる群から選択される、請求項6に記載の拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項8】
前記拡張多層一体型ジオグリッドが、共押出された多層ポリマーシートから製造される、請求項1に記載の拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項9】
前記拡張多層一体型ジオグリッドが、積層された多層ポリマーシートから製造される、請求項1に記載の拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項10】
前記配向性ストランドが一軸または二軸延伸されている、請求項1に記載の拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項11】
前記多層ポリマーシートが、第1の層、拡張内層、および第3の層を含み、前記第1の層と前記第3の層とが、拡張内層の対向する平面上に配置される、請求項8に記載の拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項12】
前記多層ポリマーシートが、約2mm~約12mmの厚さを有する、請求項8に記載の拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項13】
前記多層ポリマーシート第1の層が約0.5mm~約4.5mmの厚さを有し、前記拡張内層が約1mm~約9mmの厚さを有し、かつ前記第3の層が約0.5mm~約4.5mmの厚さを有する、請求項11に記載の拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項14】
各層がポリマー材料の複数の層を有する拡張多層一体型ジオグリッドを製造するための出発材料であって、
前記複数の層のうちの少なくとも1つの内層が、その中に空隙の分布を含む拡張構造を形成することができ、前記出発材料が、多層ポリマーシートが二軸延伸されたときに開口部を提供する穴または窪みをその中に有する該シートを含む、出発材料。
【請求項15】
前記多層ポリマーシートが、共押出される、請求項14に記載の出発材料。
【請求項16】
前記多層ポリマーシートが、積層されている、請求項14に記載の出発材料。
【請求項17】
前記多層ポリマーシートが、第1の層、拡張内層および第3の層を含み、前記第1の層と前記第3の層とが、前記拡張内層の対向する平面上に配置される、請求項14に記載の出発材料。
【請求項18】
前記多層ポリマーシートが、少なくとも2mmの初期厚さを有する、請求項14に記載の出発材料。
【請求項19】
土壌構造物であって、
請求項1に記載の拡張多層一体型ジオグリッドをその中に埋め込むことによって強化された粒子状材料の塊を含む、土壌構造物。
【請求項20】
粒子状材料の塊を強化する方法であって、
請求項1に記載の拡張多層一体型ジオグリッドを粒子状材料の塊に埋め込むことを含む、粒子状材料の塊を強化する方法。
【請求項21】
拡張多層一体型ジオグリッドの製造方法であって、
各層がポリマー材料の複数の層を有する多層ポリマーシートを提供する工程であって、前記複数の層のうちの少なくとも一つの内層が、その中に空隙の分布を含む拡張構造を形成することができる工程と、
前記多層ポリマーシートにパターン化された複数の穴または窪みを設ける工程と、
前記パターン化された複数の穴または窪みを有する多層ポリマーシートを配向して、部分的に配向した接合部によって相互に接続された複数の配向性ストランドを提供し、前記穴または窪みをグリッド開口部として構成する工程と、
を含み、
前記拡張構造を有する少なくとも1つの内層が、前記多層一体型ジオグリッド内の空隙の分布を含む、製造方法。
【請求項22】
前記拡張構造を有する少なくとも1つの内層が、発泡体を含む、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記拡張構造を有する少なくとも1つの内層が、粒子状充填剤を含む、請求項21に記載の製造方法。
【請求項24】
前記多層ポリマーシートを提供する工程が、共押出である、請求項21に記載の製造方法。
【請求項25】
前記多層ポリマーシートを提供する工程が、積層である、請求項21に記載の製造方法。
【請求項26】
前記パターン化された複数の穴または窪みをその中に有する多層ポリマーシートが、一軸または二軸延伸によって配向される、請求項21に記載の製造方法。
【請求項27】
前記多層ポリマーシートが、第1の層、拡張内層、および第3の層を含み、前記第1の層と前記第3の層とが、前記拡張内層の対向する平面上に配置される、請求項21に記載の製造方法。
【請求項28】
前記多層ポリマーシートが、少なくとも2mmの初期厚さを有する、請求項21に記載の製造方法。
【請求項29】
前記多層ポリマーシート第1の層が、約0.5mm~約4.5mmの厚さを有し、前記拡張内層が約1mm~約9mmの厚さを有し、かつ前記第3の層が約0.5mm~4.5mmの厚さを有する、請求項27に記載の製造方法。
【請求項30】
前記第1の層が、高分子量ポリオレフィンの構造材料を有し、前記拡張内層が広範な仕様のポリマーの構造材料を有し、かつ前記第3の層が高分子量ポリオレフィンの構造材料を有する、請求項21に記載の製造方法。
【請求項31】
拡張多層一体型ジオグリッド構造物の製造方法であって、
その中にパターン化された複数の穴または窪みを有する多層ポリマーシートである出発材料を一軸または二軸延伸して、部分的に配向した接合部によって相互に接続された複数の配向性ストランド、および複数のグリッド開口部を有する多層一体型ジオグリッドを提供する工程と、
前記一体型ジオグリッドを粒子状材料の塊に埋め込む工程と、
を含む、製造方法。
【請求項32】
前記一体型ジオグリッドが、三軸一体型ジオグリッドまたは長方形一体型ジオグリッドである、請求項1に記載の拡張多層一体型ジオグリッド。
【請求項33】
前記拡張多層一体型ジオグリッドが、三軸一体型ジオグリッドまたは長方形一体型ジオグリッドである、請求項21に記載の製造方法。
【請求項34】
内部に一連の開口部を有する外部の六角形の繰り返しパターンを形成する、相互に接続された複数の配向性ストランドおよび部分的に配向した複数の接合部を含む拡張多層一体型ジオグリッドであって、
前記外部の六角形のそれぞれが、配向性ストランドを有する小さな内部の六角形を支持し取り囲み、
前記外部の六角形の前記配向性ストランドおよび前記部分的に配向した接合部が、前記拡張多層一体型ジオグリッドの全体にわたり連続的に延びる複数の線形ストランドを形成し、
前記一体型ジオグリッドが、それぞれ該ジオグリッドの全体にわたって延びるポリマー材料の複数の層を有し、かつ
前記複数の層の少なくとも一つの内層が、その中に空隙の分布を含む拡張構造を有する、
拡張多層一体型ジオグリッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年12月20日に出願された米国特許仮出願第63/291,624号に関連し、その優先権の利益を主張するものである。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、一般に、構造物または建築物の補強および安定化、ならびにその他の地盤工学的目的に使用される一体型ジオグリッドおよびその他の配向性グリッドに関する。より具体的には、本発明は、一体型ジオグリッドの圧縮性を高める拡張多層構造を有する一体型ジオグリッドに関する。本発明はまた、強化された剛性特性、およびより多様で幅広い品質の骨材と結合(engage)し安定化させる能力、ならびに本明細書に開示される他の望ましい特性を有する、そのような一体型ジオグリッドに関する。
【0003】
本発明はまた、このような拡張多層一体ジオグリッドの製造方法にも関する。最後に、本発明は、土壌および粒子の補強および安定化のためのこのような拡張多層一体ジオグリッドの使用、ならびにこのような補強および安定化の方法に関する。
【0004】
本発明の目的上、「一体型ジオグリッド」という用語は、一体型ジオグリッド、および必要な厚さを有し、内部に穴または窪みが作製または形成されているシートまたはシート様の形状のポリマー出発材料を配向(すなわち、延伸)することにより作製される他の一体型ジオグリッド構造を含むことを意図する。
【背景技術】
【0005】
2.関連技術の説明
一体型ジオグリッド等の、実質的に平行な配向性ストランドおよびそれらの間の接合部の様々な幾何学的パターンにより画定されるメッシュ開口部を有するポリマー一体型グリッド構造は、35年以上にわたり製造および販売されている。このようなグリッドは、特定の穴または窪みのパターンを有する一体型鋳造出発シートを押し出して成形し、その後、制御された一軸延伸または二軸延伸およびシート、および穴または窪みにより形成されたメッシュ開口部を画定する部分的に配向した接合部を高度に配向したストランドに配向させることによって製造される。このようにシートを一軸方向または二軸方向に延伸および配向させると、対応する延伸方向のストランドの引張強度および弾性率が変化する。これらの一体型配向ポリマーグリッド構造は、土壌、土、砂、粘土、砂利等の任意の適切な形状の粒子状材料を、道路または他の切土や盛土の脇、路面の下、滑走路の路面等の任意の適切な場所に保持または安定化するために用いることができる。
【0006】
より高いレベルの強度対重量比を達成したり、製造プロセスにおいてより速い加工速度を達成したりするために、様々な穴部の形状やパターンが実験されてきた。配向は、制御された温度および歪み速度の下で行われる。このプロセスの変数には、延伸比、分子量、分子量分布およびポリマーの分岐または架橋の程度等が含まれる。
【0007】
このような一体型ジオグリッドおよび他の一体型グリッド構造の製造および使用は、周知の技術によって達成することができる。Mercerの米国特許第4,374,798号、Mercerの同第4,590,029号、MercerおよびMartinの同第4,743,486号、同第4,756,946号およびMercerの同第5,419,659号に詳細に記載されているように、出発ポリマーシート材料が最初に押し出され、次いでパンチされて、必要な画定された穴または窪みのパターンが形成される。次いで、パンチされたシート材料を必要に応じて延伸し、配向させることにより、一体型ジオグリッドが形成される。
【0008】
このような一体型ジオグリッド、すなわち一軸一体型ジオグリッドおよび二軸一体型ジオグリッド(総称して「一体型ジオグリッド」、または個別に「一軸一体型ジオグリッド」または「二軸一体型ジオグリッド」)は、いずれも1970年代後半に、上述したMercerによって発明され、過去35年間にわたって多大な商業的成功を収め、土壌、道路の下部舗装、および粒子状または微粒子状の材料で作られたその他の土木工学的な構造物を強化する技術の全体にわたり革命をもたらした。
【0009】
Mercerは、好ましくは厚さ1.5mm(0.059055インチ)~4.0mm(0.15748インチ)程度であって、概念上の実質的な正方形グリッドまたは長方形グリッドの行および列に中心を有する穴または窪みのパターンを有する、比較的厚い実質的に単一平面のポリマー出発シートから出発し、該出発シートを一軸または二軸で延伸して、ストランドの配向を接合部まで拡張することによって、完全に新しい実質的に単一平面の一体型ジオグリッドを形成し得ることを発見した。Mercerによって説明されているように、「単一平面」とは、シート状材料のすべての区画が該シート状材料の正中面に関して対称であることを意味する。
【0010】
Hureauの米国特許第3,252,181号、Hureauの同第3,317,951号、Hureauの同第3,496,965号、Berettaの同第4,470,942号、Berettaの同第4,808,358号、およびBerettaの同第5,053,264号では、穴または窪みの必要なパターンを有する出発材料が、円筒状ポリマー押出しと組み合わせて形成され、かつ実質的な単一平面が、拡張するマンドレル上に押出物を通過させることにより達成される。次いで、拡張された円筒を長手方向に切り、平らな実質的に単一平面の出発シートを作製する。
【0011】
別の一体型ジオグリッドは、本特許出願の譲受人であるジョージア州アトランタのTensar International Corporation, Inc.(以下、「Tensar」)の関連会社であるTensar International Limitedに譲渡された、Walshの米国特許第7,001,112号(以下「Walsh’112号特許」)に記載されている。Walsh’112号特許は、二軸延伸一体型ジオグリッドを含む配向ポリマー一体型ジオグリッドを開示しており、この一体型ジオグリッドにおいては、配向性ストランドが、各角において部分的に配向した接合部を備える三角形のメッシュ開口部を形成し、各接合部において6本の高度に配向したストランドが会合している(以下、本明細書において「三軸一体型ジオグリッド」と称する場合がある)。Walsh’112号特許の三軸一体型ジオグリッドは、Tensarによって商品化されて大きな成功を収めた。
【0012】
さらに別の一体型ジオグリッドは、Walshの米国特許第9,556,580号、Walshの同第10,024,002号、およびWalshの同第10,501,896号に開示されており、これらはすべて、本特許出願の譲受人の別の関連会社であるTensar Technologies Limitedに譲渡されている。上述したWalshの米国特許第9,556,580号、同第10,024,002号および同第10,501,896号には、高いアスペクト比として当業者に知られている、すなわちストランド断面の幅に対するストランド断面の厚さまたは高さの比が1.0超である一体型ジオグリッドが開示されている。多軸一体型ジオグリッドの性能は、アスペクト比が1.0超であるリブを有するジオグリッド構造を用いることにより向上させ得ることが示されているが、アスペクト比の増大には必要なポリマーの総量が増大するため、ジオグリッドの重量およびコストが増大する。
【0013】
従来、一体型ジオグリッドの製造に用いられるポリマー材料は、高分子量のホモポリマーまたはコポリマーのポリプロピレン、および高密度、高分子量のポリエチレンであった。最終製品および/または製造効率において望ましい効果を達成するために、紫外線阻害剤、カーボンブラック、加工助剤等の様々な添加剤がこれらのポリマーに添加される。
【0014】
また、同じく伝統的に、そのような一体型ジオグリッドの製造のための出発材料は、典型的には、単層構造、すなわち均質なポリマー材料の単層を有する実質的に単一平面のシートであった。
【0015】
上述した従来の出発材料から製造される一体型ジオグリッドは一般に十分な特性を示すが、ジオシンセティック強化等の使用の要求に適した比較的高い程度の剛性を有するか、または特定のジオシンセティック用途に望ましい他の特性を備える一体型ジオグリッドを製造することは、構造的にも経済的にも有利である。
【0016】
したがって、一体型ジオグリッドの製造に関連するプロセスの制約に適しているだけでなく、一体型ジオグリッドが製造され、使用される場合において、従来のジオグリッド出発材料に関連するものよりも高度な剛性を提供するか、または従来の単層一体型ジオグリッドでは得ることができない他の特性を提供する出発材料に対するニーズが存在する。
【0017】
さらに、上述した従来の出発材料から従来の構成で製造される一体型ジオグリッドは、一般に十分な特性を示し得るが、ジオシンセティック強化等の使用の要求に適したより広い種類および範囲の品質の骨材と結合し、かつ安定化する性能を有する構造および幾何学的形状を備えるか、または特定のジオシンセティック用途に望ましい他の特性を備える一体型ジオグリッドを製造することは、構造的にも経済的にも有利である。
【0018】
本発明は、シート形成を開始する方法や、出発材料を一体型ジオグリッドまたはグリッド構造へ配向する方法に関係なく、すべての一体型グリッドに適用され得ることが意図される。上述した米国特許第3,252,181号、同第3,317,951号、同第3,496,965号、同第4,470,942号、同第4,808,358号、同第5,053,264号、同第7,001,112号、同第9,556,580号、同第10,024,002号および同第10,501,896号の主題は、その開示内容全体が本明細書に記載されているかのように、参照により本出願に明示的に組み込まれる。これらの特許は例示として引用され、包括的に考慮されたり、または一体型ポリマーグリッド材料の製造に関する当該技術分野で知られる他の技術を除外するように考慮されたりするものではない。
【0019】
現在の単層一体型ジオグリッドで利用可能な機能的特性にもかかわらず、従来技術の一体型ジオグリッドを超える性能の改善は未だに達成されていない。このような機能強化の1つは、同じくTensar International Limitedに譲渡された米国特許出願第15/766,960号(以下「’960号出願」;米国特許出願公開第2018/0298582A1号として公開)に開示されている。この’960号出願には、一体型ジオグリッドの製造のための出発材料として、共押出多層ポリマーシートの様々な実施形態が開示されている。共押出多層出発材料構造のおかげで、共押出多層シートの構成要素は、押出しおよび配向後に、土壌ジオシンセティック強化において性能上の利点を提供する強化された材料特性を有する一体型ジオグリッドを製造する。
【0020】
’960号出願に開示される一つの実施形態は、配向一体型ジオグリッドの中間層が拡張または「発泡」した構造を有する共押出三層出発シートから製造される三層一体型ジオグリッドである。’960号出願によると、拡張または発泡した多層構造の唯一の利点は、原材料コストの削減およびジオグリッド重量の削減であり、「発泡層自体の望ましい物理的および化学的特性を含み得る」。他の利点は開示されていない。’960号出願の主題は、その開示内容全体が本明細書に記載されているかのように、参照により本出願に明示的に組み込まれる。
【0021】
現在までのところ、現在の生産/加工技術で製造される現在の一体型ジオグリッド製品は、望ましい特性および特徴を備えた多軸ジオグリッド製品を生成することができるが;しかしながら、現在の加工/生産技術では、ジオグリッド全体の断面内で材料の種類を変更することができない。その結果、性能を向上させる望ましい物理的、機械的および幾何学的特性を強化するには、ポリマーの量を大幅に増大する必要がある。
【0022】
さらに、現在の加工/生産技術では、パフォーマンスを向上させる特定のパラメータが増大または強化される一方で、変更するとパフォーマンスが低下する他のパラメータを同時に制御するか、または変更しないという能力が制限される。
【0023】
さらに、現在の加工/生産技術では、性能を最大化する手段としてジオグリッド構造の異なる部分に異なるポリマー材料を用いることは行われていない。
【0024】
したがって、骨材とジオグリッドとの間の「初期適合性」を良好なものとし、圧縮完了後の骨材密度を最大化し、それにより圧縮後および「使用中」の荷重時の初期段階において通常発生し得る残存骨材の移動や再配置を最小限に抑制された一体型ジオグリッドの必要性が存在する。さらに具体的には、荷重時における層の圧縮性を向上させることにより、上述した特性を有する一体型ジオグリッドの必要性が存在する。「初期適合性」という用語は、本明細書において、圧縮完了後の骨材密度の最大化を意味し、これにより、圧縮後および「使用中」の荷重時の初期段階において通常発生し得る骨材の潜在的な移動または位置調整を最小限に抑制することを意味する。
【発明の概要】
【0025】
したがって、本発明の目的は、機能的性能を改善する多軸一体型ジオグリッド構造の特定の物理的、機械的および幾何学的特性を強化することによって、例えば、他の新しい物理的、機械的および幾何学的特性を改変および/または組み込むことによって、多軸一体型ジオグリッドから改善された機能的性能を提供することである。一体型ジオグリッド構造の特定の位置において望ましい機械的および物理的特性を有する様々なポリマー材料の量を、慎重に、物理的に配置および操作することによって、またジオグリッド構造の他のすべての物理パラメータを最適化することによって、大幅な性能の向上を達成することができる。
【0026】
より具体的には、’960号出願の出願後、驚くべきことに、本明細書に記載されるように、発泡層又は拡張層について特定のパラメータがジオグリッドに含まれる場合、骨材と拡張多層一体型ジオグリッドとの間の初期適合性の著しい改善が達成され得ることが見出だされた。これらのパラメータとしては以下のものが挙げられる。
1.多層一体型ジオグリッドのストランド(またはリブ)の、ストランドの最も薄い高さ(おそらくストランドの中点)における高さまたは垂直方向の厚さの合計が、発泡中間層の場合、1mmから4mm、拡張中間層の場合、1mmから5mm、好ましくは、発泡中間層の場合、1.874mmから3.095mm、拡張中間層の場合、1.97mmから3.36mmである。
2.発泡中間層または拡張中間層の空隙が、発泡層または拡張層の5体積%から60体積%、好ましくは20%から40%を有する。
3.発泡中間層または拡張中間層が、圧縮完了後の最小圧縮率または「破砕性」または5%から最大75%の高さ減少を有し、好ましい圧縮率は20%から60%の範囲であり、より好ましい圧縮率は30%から50%の範囲である。
4.発泡中間層または拡張中間層が、その高さ、すなわち垂直方向の厚さが、最も薄い外層の高さまたは垂直方向の厚さに対して1.0:1~3.5:1であり、好ましくは、発泡中間層の場合は1.0:1~1.16:1であり、拡張中間層の場合は1.7:1~2.46:1であるようなアスペクト比を有する。および、
5.発泡中間層または拡張中間層が、最終的な一体型ジオグリッドの全高の少なくとも40%、好ましくは少なくとも70%である、高さまたは垂直方向の厚さを有する。
【0027】
本発明による拡張多層一体型ジオグリッドに上述した物理的特性を含めることにより、圧縮完了後の骨材とジオグリッドの間の初期適合性が最大化される。そして、初期適合性を最大化することにより、「使用中」荷重時の初期段階における圧縮後に通常発生し得る残存骨材の移動または再配置が最小化される。したがって、道路その他の輸送路面は、将来の交通のために、よりよく安定され、補強される。
【0028】
本発明の別の目的は、拡張多層構造を有する一体型ジオグリッドの使用に経済的利点を提供することである。より高いアスペクト比を有するストランドを有する一体型ジオグリッドが所望される場合、本発明による拡張層は、拡張層を有さずに同様に構成された一体型ジオグリッドと同じ全体的なポリマー含有量(すなわち、ポリマーの「量」)を使用しながら、その高いアスペクト比を提供することができる。あるいは、同様に構成された一体型ジオグリッドと同じアスペクト比を有するストランドを有する一体型ジオグリッドが所望される場合、本発明による拡張層は、全体的なポリマー含有量(すなわち、ポリマーの「量」)を少なくしながら、それと同じアスペクト比を提供することができる。したがって、本発明による拡張多層一体型ジオグリッドは、それに伴う構造および性能の向上に加えて、大きな経済的利益、すなわち、同じコストでより高いアスペクト比を達成すること、またはより低いコストで同じアスペクト比を達成することを提供することができる。
【0029】
従って、上述した目的を達成するために、本発明は、多層構造を有する一体型ジオグリッドを対象とし、その少なくとも1つの層は、多層のうちの少なくとも1つの他の層に対して拡張された構造を有する。これらの多層ジオグリッドは、本明細書において、多層のうちの少なくとも1つの他の層に対して拡張された構造を有する少なくとも1つの層を有する一体型ジオグリッド、またはより単純に「拡張多層一体型ジオグリッド」もしくは「拡張多層一体型ジオグリッド」と呼ばれる。拡張した層構造により、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドは、荷重下での層の圧縮性の向上、および他の望ましい特性を提供する。
【0030】
より具体的には、拡張構造を有する層は、その中に空隙の分布を含む。空隙は、層の発泡構造と関連付けられてもよく、層の拡張を生じさせるために層全体に分布する粒子状充填剤と関連付けられてもよい。
【0031】
さらに、拡張多層一体型ジオグリッドの多層構造には、共押出された層、または積層された層が含まれていてもよい。拡張層の拡張は、押出/積層中、または延伸/配向中、あるいはその両方において起こり得る。
【0032】
そして、部分的に配向した多層接合部によって相互に接続された複数の配向性多層ストランドを有し、かつそれらの間に一連の開口部を有する、結果として得られる拡張多層一体ジオグリッドは、本明細書に記載されているような、様々な繰り返し幾何学パターンのいずれかで構成され得る。
【0033】
本発明によれば、拡張多層一体型ジオグリッドを製造するための出発材料は、出発材料が二軸延伸されたときに形成される一連の開口部を提供する穴または窪みをその中に有する多層ポリマー出発シートを含む。多層ポリマー出発シートは、発泡構造を有する拡張可能な内層、または層の拡張を生じさせるためにその中に分散された粒子状充填剤を有する拡張可能な内層を含む。好ましい実施形態によれば、多層ポリマー出発シートの層は、共押出されてもよく、互いに積層されてもよい。
【0034】
本発明の特定の実施形態によれば、拡張多層一体型ジオグリッドは、部分的に配向した多層配向接合部によって相互に接続され、2つの非拡張層の間に介在する少なくとも1つの拡張層を有し、それらの間に一連の開口部を有する複数の配向多層ストランドを含む。一つの実施形態によれば、拡張多層一体型ジオグリッドは、長方形開口部を画定する配向性ストランドを相互に接続する部分的に配向した接合部の繰り返し幾何学パターンを有する長方形ジオグリッドである。別の実施形態によれば、拡張多層一体型ジオグリッドは、三角形の開口部を画定する配向性ストランドを相互に接続する部分的に配向した接合部の繰り返し六角形幾何学パターンを有する三軸ジオグリッドである。また、さらに別の実施形態によれば、拡張多層一体型ジオグリッドは、外部の六角形を形成する配向性ストランドを相互に接続する部分的に配向した接合部の繰り返し幾何学パターンを有するジオグリッドであり、外部の六角形はそれぞれ、内側の六角形の形状に形成され、本明細書において「六角形パターン内の繰り返し流動六角形」と呼ばれるより小さい六角形の開口部を画定する内部の相互に接続された6つの配向性ストランドを取り囲み、支持する。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態によれば、土壌構造物は、繰り返し幾何学パターンを有し、かつ拡張内層を有する拡張多層一体型ジオグリッドを埋め込むことによって強化および安定化された粒子状材料の塊を含む。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態によれば、拡張多層一体型ジオグリッドの出発材料を作製する方法は、拡張可能な内層を有する多層ポリマー出発シートを提供する工程、および配向性ストランドを相互に接続し、出発材料が二軸延伸されるときに開口部を画定する、部分的に配向した接合部の繰り返し幾何学的パターンを提供する穴または窪みを提供する工程を含む。
【0037】
本発明の別の実施形態によれば、拡張多層一体型ジオグリッドを作製する方法は、拡張可能な内層を有する多層ポリマー出発シートを提供する工程、内部に穴または窪みを設ける工程、および内部に穴または窪みを有する拡張可能な層の多層ポリマーシートを二軸延伸して、配向性ストランドを相互に接続する部分的に配向した接合部の繰り返し幾何学的パターンを提供して、その内部に開口部を画定する工程を含む。
【0038】
また、本発明のさらに別の実施形態によれば、粒子状材料の塊を強化する方法は、開口部を画定する配向性ストランドを相互に接続する部分的に配向した接合部の繰り返し幾何学的パターンを有し、かつ拡張内層を有する拡張多層一体型ジオグリッドを粒子状材料の塊に埋め込むことを含む。
【0039】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1つの内層が、多層のうちの少なくとも1つの他の層に対して拡張された構造を有する多層一体型ジオグリッドを提供し、荷重時の層の圧縮率が増大した一体型ジオグリッドを提供することである。
【0040】
したがって、本発明の別の目的は、拡張多層一体型ジオグリッドを作製するための出発材料を提供することである。この出発材料は、拡張可能な内層と、出発材料が二軸延伸されたときに形成される一連の開口部を提供する穴または窪みを有する多層ポリマー出発シートを含む。多層ポリマー出発シートの拡張可能な層は、発泡構造を有するか、または内層の拡張を生じさせるためにその中に分散された粒子状充填剤を有することを含み、多層ポリマー出発シートの層は共押出しされてもよく、または互いに積層されてもよい。
【0041】
本発明の別の目的は、部分的に配向した多層接合部によって相互に接続された複数の配向性多層ストランドを有し、それらの間に、拡張可能な内層を有する多層ポリマー出発シートから製造される一連の開口部を有する拡張多層一体型ジオグリッドを提供することである。拡張多層一体型ジオグリッドは、長方形の開口部を画定する配向性ストランドを相互に接続する部分的に配向した接合部の繰り返し幾何学パターンを有する長方形ジオグリッド、三角形の開口部を画定する配向性ストランドを相互に接続する部分的に配向した接合部の繰り返し幾何学的パターンを有する三軸ジオグリッド、または外部の六角形を画定する配向性ストランドを相互に接続する部分的に配向した接合部の繰り返し幾何学的パターンを有するジオグリッドであり得、そのそれぞれが内部の配向した六角形、すなわち「六角形パターン内の繰り返し流動六角形」を取り囲み、支持する。
【0042】
本発明の関連する目的は、従来のジオグリッド構造に関連する形状よりも、より広い種類および範囲の品質の骨材と結合し、安定化させることができる形状を提供すると同時に、強化された圧縮性および他の望ましい特性を提供することである。
【0043】
本発明のさらに別の目的は、繰り返し幾何学的パターンおよび拡張内層を有する拡張多層一体型ジオグリッドを埋め込むことによって強化され、安定化された粒子状材料の塊を含む土壌構造物を提供することである。
【0044】
本発明のさらに別の目的は、拡張多層一体型ジオグリッドのための出発材料を製造する方法であって、拡張可能な内層を有する多層ポリマー出発シートを提供する工程、および出発材料が二軸延伸されるときに開口部を提供し、配向性ストランドを相互に接続する部分的に配向した接合部の繰り返し幾何学的パターンを提供する穴または窪みを提供する工程を含む方法を提供することである。拡張可能な内層は、発泡構造を提供することによって、またはその中に粒子状充填剤を分散させることによって製造され得る。多層ポリマー出発シートは、複数の層を共押出することによって、または複数の層を互いに積層することによって製造され得る。
【0045】
本発明の別の目的は、拡張多層一体型ジオグリッドを作製する方法であって、拡張可能な内層を有する多層ポリマー出発シートを提供する工程、内部に穴または窪みを設ける工程、および多層ポリマー出発シートを二軸延伸して、配向性ストランドを相互に接続する部分的に配向した接合部の繰り返し幾何学的パターンおよび開口部を提供する工程を含む方法を提供することである。上述した長方形開口部または三角形開口部一体型ジオグリッドを作製する方法は、上述した米国特許第4,374,798号、同第4,590,029号、同第4,743,486号、同第5,419,659号、同第7,001,112号、同第9,556,580号、同第10,024,002号および同第10,501,896号、ならびに他の特許に記載されているような、公知のジオグリッド製造方法を用いることができる。配向性ストランドを相互に接続する部分的に配向した接合部の繰り返し幾何学的パターンを有し、そのそれぞれが内側の配向した六角形を取り囲んで支持する外側六角形を画定する、上述した一体型ジオグリッドを作製する方法は、以下に説明するような製造方法を用いることができる。
【0046】
より具体的には、本発明の目的は、拡張多層一体型ジオグリッドを製造する方法であって、まず多層ポリマー出発シートの層中に発泡体構造を提供し、次いで、多層ポリマー出発シートを二軸配向して発泡材料を延伸し、発泡体の空隙の分布を形成することにより、拡張内層が形成される方法を提供することである。
【0047】
同様に、本発明の別の目的は、拡張多層一体型ジオグリッドを製造する方法であって、まず多層ポリマー出発シートの層中に粒子状充填剤を分散させ、次いで、多層ポリマー出発シートを二軸配向して粒子状充填剤の分布を拡大させ、粒子状充填剤がポリマー層材料から部分的に分離するときに空隙の分布を形成することにより、拡張内層が形成される方法を提供することである。
【0048】
また、本発明のさらに別の目的は、粒子状材料の塊を強化する方法であって、配向性ストランドを相互に接続する部分的に配向した多層接合部の繰り返し幾何学的パターンおよび開口部を有し、かつ拡張内層を有する拡張多層一体型ジオグリッドを、粒子状材料の塊に埋め込むことを含む方法を提供することである。
【0049】
そして、本発明のさらに別の目的は、それに関連する構造および性能の向上に加えて、本発明による多層一体型ジオグリッドを使用することにより、すなわち、同じコストでより高いアスペクト比を達成することにより、またはより低いコストで同じアスペクト比を達成することにより、著しい経済的利益を提供することである。本発明による拡張多層一体型ジオグリッドに関連する多くの利点は、本質的に様々である。
【0050】
本発明の拡張多層一体型ジオグリッドが多層構造を有するだけでなく、その中の空隙の分布の結果としてその少なくとも1つの内層が多層のうちの少なくとも1つの他の層に対して拡張された構造を有することにより、ジオグリッドは荷重時の層の圧縮率を高めることができる。
【0051】
また、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドの多層の性質により、従来の単層一体型ジオグリッドと比較して、この一体型ジオグリッドに全体的により大きな剛性がもたらされる。さらに、拡張内層のおかげで、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドは、より良好な圧縮およびより高い密度をもたらす適合性、すなわち初期の弾力性または柔軟性によって特徴付けられ、なおかつ初期の弾力性の結果として、最終的な水平方向の骨材ジオグリッド複合体の大きな剛性を有する。
【0052】
さらに、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドは、従来の一体型ジオグリッドと比較して、すべてのストランドにおいてより高いアスペクト比を提供する。本発明の一体型ジオグリッドの高いアスペクト比により骨材の連結性(interlock)が増大するため、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドは、骨材の様々なアスペクト比によりよく適応することができる。
【0053】
さらに具体的には、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドで達成可能な高いアスペクト比に関して、高いアスペクト比は少なくとも以下の明確かつ重要な利点をもたらす。第一に、より高いアスペクト比を有するストランドを有する一体型ジオグリッドが所望される場合、本発明による拡張層は、拡張層を有さずに同様に構成された一体型ジオグリッドと同じ全体的なポリマー含有量(すなわち、ポリマーの「量」)を使用しながら、その高いアスペクト比を提供することができる。第二に、同様に構成された一体型ジオグリッドと同じアスペクト比のストランドを有する一体型ジオグリッドが所望される場合、本発明による拡張層は、全体的なポリマー含有量(すなわち、ポリマーの「量」)を少なくしながら、それと同じアスペクト比を提供することができる。したがって、本発明による拡張多層一体型ジオグリッドは、それに伴う構造および性能の向上に加えて、大きな経済的利益、すなわち、同じコストでより高いアスペクト比を達成すること、またはより低いコストで同じアスペクト比を達成することを提供することができる。
【0054】
要約すると、空隙を含む拡張内層により、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドは、荷重下での層の圧縮性の増大と骨材補強材としての強度の増大の両方を提供し、同時に、使用されるポリマーの量のみに基づく使用に対する経済的な利点も提供する。
【0055】
これらは、後で明らかになる他の目的および利点とともに、以下にさらに詳細に説明する構造および動作の詳細に含まれており、本明細書の一部を形成する添付図面を参照し、全体を通して同様の参照番号は同様の部分を指す。添付図面は本発明を説明することを目的としているが、必ずしも縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1図1は、本発明の一つの実施形態による三軸拡張多層一体型ジオグリッドの断面の斜視図である。
図2図2は、穴または窪みが形成される前の、図1に示す三軸拡張多層一体型ジオグリッド用の単一平面多層ポリマー出発シートを示す。
図3図3は、三軸拡張多層一体型ジオグリッドを形成するための穴が設けられた、図2に示す出発シートの上面透視平面図である。
図4図4は、図3に示す出発シートの一部分の斜視断面図である。
図5図5は、本発明の別の実施形態による、三軸拡張多層一体型ジオグリッド用の単一平面多層ポリマー出発シートの、穴または窪みが形成される前の状態を示す。
図6図6は、図5に示す出発シートに関連付けられる、三軸多層一体型ジオグリッドの一部の斜視断面図である。
図7図7は、本発明のさらに別の実施形態による長方形の拡張多層一体型ジオグリッドの平面図である。
図8図8は、図7に示す長方形の拡張多層一体型ジオグリッドの斜視図である。
図9図9は、図7に示す長方形の拡張多層一体型ジオグリッドを形成するための穴または窪みが形成された出発シートの上面透視平面図である。
図10図10は、本発明のさらに別の実施形態による六角形の拡張多層一体型ジオグリッドの平面図である。
図11図11は、図10に示す六角形の拡張多層一体型ジオグリッドの斜視図である。
図12図12は、図10に示す六角形の拡張多層一体型ジオグリッドを形成するための穴または窪みが形成された出発シートの上面斜視図である。
図13図13は、図12の出発シートに示す穴の可能なサイズおよび間隔の平面図である。
図14図14A~14Eは、荷重時における拡張内層内の空隙に関連付けられる三層拡張多層一体型ジオグリッドの圧縮メカニズムの仮説を示す。
図15図15A~15Cは、拡張内層内の空隙にも関連付けられる三層拡張多層一体型ジオグリッドの拡張内層の柔軟性リブ機構の仮説を示し、荷重時における一体型ジオグリッドの垂直方向および水平方向の両方の柔軟性を示す。
図16図16は、従来の一体型ジオグリッドの出発シートにおける非弾性リブの挙動と、拡張内層を有する本発明の拡張多層一体型ジオグリッドの出発シートの弾性リブの挙動との比較を示すグラフである。
図17図17は、拡張層を有さない単層ジオグリッドに対する、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドの利点を比較した表を示す。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0057】
本発明の好ましい実施形態のみを詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下の説明または図面に示す構成要素の構造および配置の詳細に限定されないことを理解されたい。以下に説明するように、本発明は他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施または実行することができる。
【0058】
また、好ましい実施形態を説明する際には、明確化を目的として専門用語が用いられる。各用語は、当業者によって理解される最も広い意味を意図しており、同様の目的を達成するために同様の方法で動作するすべての技術的等価物を含むことを意図している。
【0059】
また、本明細書において用いられる「共押出された」、「共押出しする」および「共押出」という用語は、一般に受け入れられている定義に従って用いられ、すなわち、同時に押出され単一のダイとして成形されて多層シートを形成する2つ以上のポリマー材料から始まる一工程のプロセスに関する。
【0060】
また、本明細書において用いられる「積層された」、「積層する」および「積層」という用語は、一般に受け入れられている定義に従って用いられ、すなわち、個別に製造され互いに貼合することにより3つ以上の層の多層シートを形成する2つ以上のポリマー材料シートから始まるプロセスに関する。
【0061】
本発明は、多層構造を有する一体型ジオグリッドを対象とし、好ましくは3層以上の多層構造を有し、その少なくとも1つの内層が多層のうちの少なくとも1つの他の層に対して拡張された構造を有する、すなわち「拡張多層一体型ジオグリッド」または「拡張多層一体型ジオグリッド」である。拡張内層構造により、拡張多層一体型ジオグリッドは、荷重下での層の圧縮性の増大、およびその他の望ましい特性を提供する。
【0062】
より具体的には、拡張多層一体型ジオグリッドは、部分的に配向した多層接合部によって相互に接続され、それらの間に一連の開口部を有する複数の配向性多層ストランドを含み、それぞれの配向性多層ストランドおよびそれぞれの部分的に配向した多層接合部は、複数の層の少なくとも1つの他の層に対して拡張された構造を有する内層を含む複数の層を有し、かつ複数の層は、それぞれの配向性多層ストランドおよびそれぞれの部分的に配向した多層接合部に沿って接触している。
【0063】
さらにより具体的には、拡張構造を有する内層は、その中に空隙の分布を含む。この空隙は、層の発泡構造と関連付けることができ、または層の拡張を発生させるために層全体に分布する粒子状充填剤と関連付けることもできる。
【0064】
また、本明細書において用いられるように、上述した内層を説明するために用いられる「拡張可能な」という用語は、拡張多層一体型ジオグリッドの形成中に内層が拡張する能力を指す。上述した内層を説明するために用いられる「拡張された」という用語は、ジオグリッドを配向させるための延伸による拡張多層一体型ジオグリッドの形成後の、拡張可能な内層に存在する空隙の関連する拡大を含む内層の構造を意味する。
【0065】
さらに、多層構造は、共押出された層、または積層された層を含んでもよい。拡張内層の拡張は、押出/積層中、延伸/配向中、またはそれらの両方において発生する可能性がある。また、得られる拡張多層一体型ジオグリッドは、部分的に配向した多層接合部によって相互に接続された複数の配向性多層ストランドを有し、かつそれらの間に一連の開口部を有し、本明細書に記載されている様々な繰り返し幾何学的パターンのいずれかで構成することができる。
【0066】
図1に示すように、本発明の一つの実施形態による拡張多層一体型ジオグリッド200(ここでは三軸一体型ジオグリッド)は、第1の外層210と第2の外層230との間に配置された第3の層、すなわち拡張内層220を含む。
【0067】
上記で示したように、拡張内層220は、その中に空隙250の分布を含む。空隙250は、拡張内層220の発泡構造に関連付けられていてもよく、内層の拡張を発生させるための拡張内層220内に分布する粒子状充填剤と関連付けられていてもよい。
【0068】
拡張内層220の発泡実施形態によれば、本発明は、発泡剤を用いて、拡張可能な内層220、すなわち空隙を含む構造を有するものを提供することを含みえる。すなわち、共押出(後述する)によって一体型ジオグリッドの層を製造する本発明の一つの実施形態によれば、1つの可能なプロセスは、化学発泡剤と、拡張可能な内層220を形成するために押出されるポリマーとを混合することである。ポリマーを溶融するために発生する熱により化学発泡剤が分解され、その結果、ガスが放出される。次いで、ガスはポリマー溶融物中に分布し、ダイから出る際に拡張する。その結果、拡張可能な内層220が発泡する。化学発泡と同様に、1つ以上の拡張可能な内層内のガスの注入も、本発明のこの実施形態による発泡プロセスとみなされる。
【0069】
より具体的には、発泡添加剤、すなわち発泡剤は、好ましくは、拡張層の0.5質量%から2質量%を構成し、より好ましくは、拡張層の0.75質量%から1.25質量%を構成する。一般に、上述したように、発泡添加剤は、揮発性ガスを発生させることによって押出工程中に空隙を発生させる。空隙の体積は、発泡添加剤の割合、溶融温度、およびポリマー押出経路に沿った圧力の制御によって制御される。さらに、高溶融強度のポリマーを使用することで、押出工程における空隙の形状と空隙の大きさを適切に制御することができる。
【0070】
拡張内層220の粒子状充填剤の実施形態によれば、本発明は、粒子状充填剤の分散液を用いて、拡張可能な内層220、すなわち空隙を含む構造を有するものを提供する。拡張可能な内層220にそのような粒子状充填剤を含めることにより、より厚い、すなわちより嵩高なプロファイルを有する製品が作製され、特定の使用用途において一体型ジオグリッドの性能の向上につながり得る。拡張多層一体型ジオグリッドが用いられる使用用途に応じて、このような粒子状充填剤としては、例えば、CaCO(炭酸カルシウム)、含水ケイ酸マグネシウム(例えば、タルク)、CaSiO(珪灰石)、硫酸カルシウム(例えば、石膏)、珪藻土、二酸化チタン、ナノフィラー、多層カーボンナノチューブ(「MWCNT」)、単層カーボンナノチューブ(「SWCNT」)、天然繊維および合成繊維(例えば、金属繊維、ガラス繊維)、ドロマイト、シリカ、マイカおよびアルミニウム水和物が挙げられる。
【0071】
より具体的には、粒子状充填剤は、好ましくは、拡張層の10質量%から40質量%を構成し、より好ましくは、拡張層の15質量%から25質量%を構成する。本発明の粒子状充填剤の実施形態は、それ自体が押出工程中に空隙を形成するのではなく、むしろ一体型ジオグリッドをもたらす出発シートの配向(延伸)中に空隙を形成する。すなわち、延伸工程は、粒子状充填剤の個々の粒子のキャビテーションを介して、すなわちせん断力がポリマーマトリックスに作用する際に、空隙を形成する。
【0072】
発泡実施形態および粒子状充填剤実施形態の両方によれば、第1の外層(ここでは、210)の構成材料および第2の外層(ここでは、230)の構成材料は、互いに同じであってもよく、または互いに異なっていてもよいが、同じ材料であることが好ましい。一般に、拡張内層220の構成材料は、第1の外層210の構成材料および第2の外層230の構成材料のいずれとも異なる。
【0073】
本発明の企図される実施形態には、1つ以上の発泡層が、粒子状充填剤を含む1つ以上の層と組み合わせて用いられるものが含まれる。
【0074】
図2は、穴または窪みが形成される前の、図1に示す拡張多層一体型ジオグリッド200用の単一平面多層ポリマー出発シート100を示す。
【0075】
図2に示すように、多層ポリマー出発シート100は、本発明の三層シートの実施形態である。すなわち、好ましくは、シート100は、第1の外層110、第2の外層130、および空隙を含む拡張可能な層150である内層120を含む。第1の外層110および第2の外層130は、内層120の対向する平面上に、好ましくは単一平面または実質的に単一平面の構成で配置される。さらに、シート100の三層構成が説明の目的で示されているが、本発明は、様々な構成で配置された複数の層、様々な厚さの組み合わせを有する複数の層、および様々な構成材料を有する複数の層を有するシートの使用を企図しており、いずれも一体型ジオグリッドが用いられる特定の用途によって決定される。例えば、シート100の三層構成が説明の目的で示されているが、本発明は三層よりも多く有するシートの使用も企図している。一般に、層の構成、層の厚さ、および層の構成材料は、一体型ジオグリッドの製造を容易にするだけでなく、所望の程度の圧縮率、剛性およびその他の性能特性を有する一体型ジオグリッドを提供するように選択される。
【0076】
上述したように、本発明による拡張多層一体型ジオグリッドの出発材料として用いられる多層ポリマー出発シート100は、好ましくは貫通打ち抜き加工されるが、その代わりに形成された窪みを用いることもできる。シートに窪みが形成される実施形態によれば、窪みはシート100の両面、すなわちシートの表裏の両方に設けられる。さらに、窪みは多層シートの各層にまで延びている。
【0077】
本発明の好ましい実施形態によれば、多層ポリマー出発シート100の全体の厚さは約2mm~約12mmであり、本発明のより好ましい実施形態によれば、シート100の全体の厚さは約2mm~約6mmである。
【0078】
シート層の個々の厚さに関して、本発明の好ましい実施形態によれば、第1の外層110の厚さは約0.5mm~約4.5mmであり、拡張可能な内層120の厚さは約1mm~約9mmであり、第2の外層130の厚さは約0.5mm~約4.5mmであり、出発シート100の全体の厚さは約2mm~約12mmであることに留意されたい。また、本発明のより好ましい実施形態によれば、第1の外層110の厚さは約0.5mm~約2mmであり、拡張可能な内層120の厚さは約2mm~約5mmであり、第2の外層130の厚さは約0.5mm~約2mmである。
【0079】
一般に、第1の外層110、拡張可能な内層120および第2の外層130の構成材料は、互いに同じであってもよく、または互いに異なっていてもよい。好ましくは、第1の外層110の構成材料と第2の外層130の構成材料とは、互いに同じである。より好ましくは、拡張可能な内層120の構成材料は、第1の外層110の構成材料および第2の外層130の構成材料のいずれとも異なる。
【0080】
一般に、出発シートの層は本質的にポリマーである。例えば、構成材料には、高分子量ポリオレフィン、および広範な仕様のポリマー(broad specification polymer)が含まれ得る。さらに、ポリマー材料は、バージンストック(virgin stock)であってもよく、または、例えば、産業廃棄物または消費者使用後のリサイクルポリマー材料等のリサイクル材料であってもよい。また、上述した高分子量ポリオレフィンおよび広範な仕様のポリマーよりも低コストの1つ以上のポリマー層の使用も企図される。
【0081】
本発明の好ましい実施形態によれば、第1の外層110および第2の外層130の構成材料は、例えばポリプロピレン(「PP」)等の高分子量ポリオレフィンである。また、本発明の同様の好ましい実施形態によれば、拡張可能な内層120の構成材料は、例えばバージンPPまたはリサイクルPP等、例えば産業廃棄物PPまたは他のリサイクルPP等の広範な仕様のポリマーである。しかしながら、一体型ジオグリッドの特定の用途に応じて、ポリプロピレン以外の構成材料を有するポリマー構成要素が多層ポリマー出発シート100に含まれてもよい。
【0082】
本発明によれば、多層ポリマー出発シート100は、上述した’960号出願に開示されているような層の共押出によって、または別々に製造された層の積層によって製造することができる。
【0083】
図3は、図1に示す三軸拡張多層一体型ジオグリッド200を形成するために設けられた穴140を有する、図2に示す多層ポリマー出発シート100の上面透視平面図である。図4は、図3に示す多層ポリマー出発シート100の一部分の斜視断面図である。
【0084】
穴140のサイズおよび間隔は、Walshの’112号特許に開示されているとおりである。同じくWalshの’112号特許に開示されているように、拡張多層一体型ジオグリッド200は、高度に配向したストランド205および部分的に配向した接合部235を含む。多層ポリマー出発シート100の第2の外層または上部層130は、ストランド205および接合部235の上部層230へと延伸され、配向されている。同様に、多層ポリマー出発シート100の第1の外層または下部層110は、ストランド205および接合部235の下部層(lower layer)または下部層(underneath layer)210へと延伸され、配向されている。第2の層130および第1の層110が延伸および配向されると、第2の内層または拡張内層120も、ストランド205および接合部235の両方の中間層220へと延伸され、配向される。
【0085】
上記で示したように、多層ポリマー出発シート100の三層構造は説明の目的で示されているが、本発明はまた、三層よりも多い出発シート100の使用も企図している。
【0086】
例えば、出発シートは、図5に示す多層ポリマー出発シート400のような五層構成であり得る。シート400は、中間層420、第1の拡張内層410、第2の拡張内層430、第1の外層440、および第2の外層450を含む。第1の拡張内層410および第2の拡張内層430は、中間層420の対向する平面上に、好ましくは単一平面または実質的に単一平面上に配置される。第1の外層440および第2の外層450はそれぞれ、第1の拡張内層410および第2の拡張内層430の対向する平面上に、好ましくは単一平面または実質的に単一平面上に配置される。
【0087】
図5に示す本発明の特定の実施形態において、多層ポリマー出発シート400は、中間層420を形成する第1の材料、第1の拡張内層410を形成する第2の材料、第2の拡張内層430を形成する第3の材料、第1の外層440を形成する第4の材料、および第2の外層450を形成する第5の材料を共押出または積層することによって作製される。
【0088】
一般に、中間層420、第1の拡張内層410、第2の拡張内層430、第1の外層440、および第2の外層450の構成材料は、互いに同じであってもよく、または互いに異なっていてもよい。例えば、中間層420は第1の構成材料を有してもよく、第1の拡張内層410および第2の拡張内層430は第2の構成材料を有してもよく、第1の外層440および第2の外層450は第3の構成材料を有してもよい。要約すると、シート400から作製された拡張多層一体型ジオグリッドが用いられる特定の使用用途に応じて、上述した五層の構成材料の様々な組み合わせを採用することができる。
【0089】
図6は、図5に示す多層ポリマー出発シート400と関連する三軸拡張多層一体型ジオグリッド500の断面の斜視図である。三軸拡張多層一体型ジオグリッド500は、高度に配向したストランド505および部分的に配向した接合部535を含む。シート400に穴が設けられた後、シート400の第1の外層440および第2の外層450は、それぞれ延伸され、ストランド505および接合部535の第1の外層540および第2の外層550に配向される。同様に、シート400の第1の拡張内層410および第2の拡張内層430は、それぞれ延伸され、ストランド505および接合部535の第1の拡張内層510および第2の拡張内層530に配向される。また、第1の外層440および第2の外層450、ならびに第1の拡張内層410および第2の拡張内層430は延伸および配向されているため、中間層420も延伸され、ストランド505および接合部535の両方の中間層520に配向される。
【0090】
また、多層ポリマー出発シート100(すなわち、三層の実施形態)と同様に、五層を有する多層ポリマー出発シート400は、発泡された、または粒子状充填剤を有する拡張層を有していてもよく、共押出または積層によって形成されてもよい。
【0091】
ここで、拡張多層一体型ジオグリッドの幾何学的形状に目を向けると、本発明は、三角形(「三軸」等)、長方形および六角形の少なくとも3種の一般的なカテゴリを企図する。
【0092】
三軸拡張多層一体型ジオグリッド200の幾何学的形状は、図1および図6に示すとおりである。
【0093】
長方形の拡張多層一体型ジオグリッド700の幾何学的形状を図7に示す。長方形の拡張多層一体型ジオグリッド700は、高度に配向したストランド705および部分的に配向した接合部735を含む。図8に示すように、長方形の拡張多層一体型ジオグリッド700は、第1の外層710および第2の外層730との間に配置された第3の層、すなわち拡張内層720を含む。本明細書に記載の三角形の幾何学的形状のように、拡張内層720は、その内部に空隙750の分布を含む。空隙750は、拡張内層720の発泡構造と関連付けられてもよく、または内層の拡張を発生させるための拡張内層720に分布した粒子状充填剤と関連付けられてもよい。
【0094】
多層ポリマー出発シート600(後述する)の第2の外層または上部層730は、ストランド705および接合部735の上部層730へと延伸および配向されている。同様に、多層ポリマー出発シート600の第1の外層または下部層710は、ストランド705および接合部735の下部層(lower layer)または下部層(underneath layer)710へと延伸および配向されている。第2の層730および第1の層710が延伸および配向されるため、第2の層または拡張内層720もストランド705および接合部735の両方の中間層720へ延伸および配向される。
【0095】
図9は、図7および図8に示す長方形の拡張多層一体型ジオグリッド700を形成するために設けられた穴640を有する多層ポリマー出発シート600の上面透視平面図である。多層ポリマー出発シート600は、第1の外層610と第2の外層630との間に設けられた第3の層、すなわち拡張可能な内層620を含む。本明細書に記載の三角形幾何学的形状のように、拡張可能な内層620は、空隙650の分布を含む。
【0096】
また、拡張多層一体型ジオグリッドの三角形実施形態のように、拡張多層一体型ジオグリッドの長方形実施形態は、発泡された拡張層、または粒子状充填剤を含む拡張層を有する。また、拡張多層一体型ジオグリッドの長方形実施形態の出発シートは、三角形実施形態について本明細書で上述したものと同じであり、共押出構成または積層構成を有し得る。
【0097】
また、最後に、六角形拡張多層一体型ジオグリッドの幾何学的形状は、図10および図11に示すとおりである。六角形拡張多層一体型ジオグリッドの開発のきっかけは、それがジオシンセティック強化等の使用の要求に適した広い種類および範囲の品質の骨材と結合し、かつ安定化する性能を有する構造および幾何学的形状を備えるか、または特定のジオシンセティック用途に望ましい他の特性を備える一体型ジオグリッドを製造するために、構造的および経済的に有利であるという点にある。
【0098】
従来のジオグリッド構造物に関連する形状よりも広い種類および範囲の品質の骨材と結合し、かつ安定化する上述した性能を達成すると同時に、様々な程度の局所的な面外剛性および面内剛性を提供するために、本発明の六角形の拡張多層一体型ジオグリッドは、相互に接続された配向性ストランドの繰り返しパターン、および外層六角形の繰り返しパターンを形成する部分的に配向した接合部を有し、それぞれが配向した内側六角形を支持し取り囲んで、単層多軸一体型ジオグリッドの3つの異なる形状の開口部を画定する。さらなる強度と安定性を提供するために、外側六角形の幾何学的形状は、多軸一体型ジオグリッド全体にわたって3つの異なる方向に連続的に伸びる直線状のストランドを形成する。
【0099】
このように形成されると、内側の六角形は6つの配向性ストランドを含み、外側六角形の部分的に配向した接合部から内側六角形のそれぞれの角まで延伸する6つの配向性接続ストランドによって支持されて、配向した三重ノードを形成する。三重ノードは、接合部よりもはるかに高いレベルの配向性を有しており、完全に配向する傾向がある。この構成は、外側の六角形構造に対して浮いている、すなわち浮遊している内側の六角形を作り出す。この構造により、骨材の配置および圧縮中に、内側の六角形が上または下に移動して、ジオグリッドの主平面に対して「浮遊する」または曲がる(変形する)ことが可能になり、ジオグリッドが骨材に結合および安定化する機能が強化される。上述のジオグリッド構造は、本明細書では、「六角形パターン内の繰り返し浮遊六角形」と呼ばれる。
【0100】
ここで図10および図11を参照すると、六角形の拡張多層一体型ジオグリッド1100は、内部に一連の開口部を有する複数の相互に接続された配向性ストランド、相互に接続された配向性ストランドの六角形パターン内の繰り返し浮遊六角形、および開口部を含み、多軸一体型ジオグリッドの全体にわたって連続的に延びる直線状ストランドを含む。より具体的には、六角形の拡張多層一体型ジオグリッド1100は、各外側六角形1110内に浮遊内側六角形1130の繰り返しパターンを含む。外側六角形1110は、部分的に配向した接合部1115により相互に接続された複数の外側配向性ストランドまたはリブ1120を含む。内側六角形1130は、三重ノード1135により相互に接続された複数の配向性接続ストランド1145および1150を含み、六角形の中央開口部1170を画定する。外側六角形1110は、複数の支持ストランド1140および1160により、より小さい内側六角形1130に接続され、複数の台形開口部1180を画定する。3つの隣接する外側六角形1110のパターンのそれぞれの中心には、三角形開口部1190がある。示すように、接合部1115は、三重ノード1135よりもはるかに大きい。
【0101】
図10から明らかなように、本発明の六角形拡張多層一体型ジオグリッド1100の別の特徴は、繰り返し外側六角形パターンの外側ストランド1120の直線的に連続する性質である。すなわち、配向性ストランド1120は、図10および図11の矢印120A、120Bおよび120Cで示す互いに約120°離れた3つの異なる方向に多軸一体型ジオグリッドの全体にわたって連続的に延びるため、部分的に配向した接合部1115を介して直線的に連続している。当業者であれば、穴部が設けられた出発シートの幾何学的形状の適切な対応する回転が行われる場合には、延伸後に同じ基本幾何学的形状の異なる配向が可能であることを理解するであろう。ストランド1120の直線的に連続する性質は、本発明の六角形拡張多層一体型ジオグリッドに、強化された強度および面内剛性の両方を提供する。
【0102】
好ましくは、その最も厚い寸法(接合部1115において)で六角形の拡張多層一体型ジオグリッド1100の厚さは、約2~約9mmであり、より好ましくは、そのような多軸拡張多層一体型ジオグリッド1100の厚さは約4~約7mmである。
【0103】
図12は、図10および図11に示す六角形の拡張多層一体型ジオグリッドを形成するための穴または窪みが形成された多層ポリマー出発シート1300の上面斜視図である。多層ポリマー出発シート1300は、第1の外層1310と第2の外層1330との間に配置された第3の層、すなわち拡張可能な内層1320を含む。
本明細書で開示した三角形および長方形の幾何学的形状のように、拡張可能な内層1320は、その中に空隙1350の分布を含む。
【0104】
本発明による六角形の拡張多層一体型ジオグリッドの出発材料として用いられる多層ポリマー出発シート1300は、好ましくは貫通した穴が設けられるが、代わりにその中に形成された窪みを用いることも可能である。シートに窪みが形成されている出発材料の実施形態によれば、窪みはシートの両側、すなわちシートの表面および裏面の両方に設けられる。
【0105】
図13に示すように、図12の多層ポリマー出発シート1300は、配向されるときに、図10および11に示す六角形拡張多層一体型ジオグリッドの六角形パターン内に浮遊六角形を提供する穴1420および間隔1430の繰り返しパターン1410を含む。本発明の一つの可能な実施形態によれば、穴1420の直径は3.68mmであり、穴1420の間隔は図13に示す寸法通りである。
【0106】
好ましくは、多層ポリマー出発シート1300の全体の厚さは約3mm~約10mmであり、より好ましくは、多層ポリマー出発シート1300の全体の厚さは約5mm~約8mmである。
【0107】
また、一般に、多層ポリマー出発シート1300は本質的にポリマー製である。例えば、構成材料には、高分子量ポリオレフィン、および広範な仕様のポリマーが含まれ得る。さらに、ポリマー材料は、バージンストックであってもよく、または、例えば、産業廃棄物または消費者使用後のリサイクルポリマー材料等のリサイクル材料であってもよい。また、上述した高分子量ポリオレフィンおよび広範な仕様のポリマーよりも低コストの1つ以上のポリマー層の使用も企図される。本発明の好ましい実施形態によれば、高分子量ポリオレフィンはポリプロピレンである。
【0108】
本発明の好ましい実施形態によれば、六角形拡張多層一体型ジオグリッド1100のストランド1120、1140、1145、1150および1160は、高いアスペクト比として当業者に知られているもの、すなわち、上述したWalshの特許である米国特許第9,556,580号、同第10,024,002号および同第10,501,896号による、ストランド断面の幅に対する多層ストランド断面の厚さまたは高さの比が1.0超であるものである。本発明にとって必須というわけではないが、ストランドまたはリブのアスペクト比は高いことが好ましい。したがって、本発明の多軸一体型ジオグリッドは、ジオグリッドと骨材との間の適合性を高め、その結果、骨材の連結性、横方向の拘束、および閉じ込めが改善される。
【0109】
拡張多層一体型ジオグリッドの長方形および三軸実施形態のように、拡張多層一体型ジオグリッドの多軸「六角形パターン内の繰り返し流動六角形」実施形態は、発泡された拡張層または粒子状充填剤を含む拡張層を有する。また、拡張多層一体型ジオグリッドの多軸「六角形パターン内の繰り返し流動六角形」実施形態の出発シートは、三角形および長方形の実施形態について本明細書で先に開示したものと同じであり、共押出構成または積層構造を有し得る。
【0110】
本発明はまた、拡張多層一体型ジオグリッドの上述した様々な実施形態を製造する方法にも関する。例えば、上述した三軸拡張多層一体型ジオグリッド200を作製する方法は:多層ポリマー出発シート100を提供する工程;例えばWalshの112号特許の開示に従って、選択されたパターンで多層ポリマー出発シート100に複数の穴または窪みを形成する工程;およびパターン化された複数の穴または窪みを内部に有する多層ポリマー出発シートを二軸延伸および配向させて、部分的に配向した接合部間に相互に接続された複数の配向性ストランドを有する拡張多層一体型ジオグリッドを形成し、グリッド開口部としての穴または窪みを作製する工程を含む。
【0111】
一般に、多層ポリマー出発シート100が穴または窪みを備えて作製されると、三軸拡張多層一体型ジオグリッド200を、上記で特定した特許に記載の方法および当業者に公知の方法に従ってシート100から製造することができる。
【0112】
また、拡張多層一体型ジオグリッドの多軸「六角形パターン内の繰り返し浮遊六角形」実施形態を作製する方法に関して、この方法は、ポリマーシート1300を提供する工程;パターン化された複数の穴または窪み1310をポリマーシート1300に設ける工程;およびパターン化された複数の穴または窪み1310を内部に有するポリマーシート1300を配向させて、内部に一連の開口部1170、1180および1190、相互に接続された配向性ストランドの外側六角形1110パターン内の繰り返し浮遊六角形1130、および開口部を有し、多軸拡張多層一体型ジオグリッド1100の全体にわたって連続的に延びる3つの直線状ストランドを含む、複数の相互に接続された配向性ストランド1120、1140、1145、1150および1160を提供する工程を含む。
【0113】
一般に、出発シート1300が穴または窪みを備えて作製されると、多軸拡張多層一体型ジオグリッド1100を、上記で特定した特許に記載の方法および当業者に公知の方法に従って出発シート1300から製造することができる。
【0114】
上記で示したように、外側六角形1110およびより小さい内側六角形1130の六角形幾何学的形状は、本発明の浮遊幾何学的構成を提供するための好ましい実施形態である。しかしながら、本発明の範囲内で他の幾何学的形状も可能である。例えば、幾何学的形状は、外側の長方形または正方形の各内側の角を、より小さい内側の長方形または正方形の対応する外側の角に接続する4つの支持または接続ストランドを備えた長方形または正方形であってもよい。あるいは、幾何学的形状は、外側の三角形の隣接する内側の角と、より小さい内側の三角形の外側の角との間に3本の支持または接続ストランドのみを備えた三角形とすることもできる。
【0115】
前の段落で説明した本発明の長方形または正方形の実施形態では、外側のそれぞれの長方形または正方形に対してジオグリッド全体にわたって連続的に延びる2本の直線状ストランドが存在することが好ましく、そのような連続的ストランドは互いから約90°の角度で延びる。三角形の実施形態では、本明細書において詳細に説明する好ましい六角形の実施形態の直線状ストランド1120と同様に、それぞれの外側三角形について互いから約120°延びる3つの直線状ストランドが存在する可能性がある。
【0116】
また、本発明から逸脱することなく、異なる幾何学的形状も可能である。例えば、内側の幾何学的形状は、本明細書に開示される好ましい実施形態と同様の6本の支持ストランドを備えた好ましい外側の六角形内で支持された円形リングであってもよい。したがって、外側の繰り返し構造および内側または内部の浮遊構造の幾何学的形状は、同一の幾何学的形状に限定されないことが意図されている。
【0117】
図14A~14Eは、荷重時の拡張内層内の空隙に関連する、三層拡張多層一体型ジオグリッドの圧縮メカニズムの仮説を示す。図14Aに示すように、荷重が加えられる前は、空隙およびその周囲のポリマーは乱れていない。荷重が始まると(図14B)、空隙の周囲のポリマーが圧縮し始める。荷重が続くと(図14C)、空隙の周囲のポリマーは降伏を停止し、空隙は圧縮し始める。さらに荷重が続くと(図14D)、空隙は完全に圧縮され、空隙の周囲のポリマーが再び変形し始める。そして最後に、図14Eに示すように、荷重が除去されると、空隙がある程度潰れているため、空隙の周りにあるポリマーの永久変形と共に、空隙の永久変形が残りながら、拡張多層一体型ジオグリッドのリブは減圧される。
【0118】
図15A~15Cは、拡張内層内の空隙に関連する、三層拡張多層一体型ジオグリッドの拡張内層の柔軟なリブ機構の仮説を示し、荷重がかかった状態での一体型ジオグリッドの垂直方向および水平方向の両方の柔軟性を実証している。図15Aに示すように、荷重が加えられる前は、空隙および空隙の周囲のポリマーは乱れていない。荷重が加えられると(図15B)、空隙が潰れ始めるにつれて、系が弾性圧縮を受け始める。最後に、図15Cに示すように、空隙が圧縮され、緻密化し始めると、系は降伏を停止する。したがって、拡張多層一体型ジオグリッドの拡張内層に存在する空隙によって、荷重下におけるジオグリッドの垂直方向および水平方向の両方の柔軟性が達成される。
【0119】
図16は、従来の一体型ジオグリッドの出発シートにおける非弾性リブの挙動と、拡張内層を有する本発明の拡張多層一体ジオグリッドの出発シートの弾性リブの挙動との比較を示すグラフである。明らかなように、垂直方向および水平方向に柔軟な拡張多層一体型ジオグリッドのリブは、より最適な骨材の位置決めおよび緻密化を容易にする。拡張多層一体型ジオグリッドのこの機能により、リブが骨材系の「破壊者」になることなく、「大きな」リブを用いることができるようになる。
【0120】
図17は、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドと、拡張層を持たない単層ジオグリッドの利点を比較した表である。サンプル1は、単層ポリプロピレン出発シートから作製された三角形の形状を有する一体型ジオグリッドであり、出発シートの総厚みは4.15mmである。サンプル1の一体型ジオグリッド最終製品の重量は200g/mである。サンプル2は、本発明による拡張多層出発シートから作られた三角形の形状を有する一体型ジオグリッドであり、出発シートの総厚みは4.2mmである。サンプル2の多層構造は、0.5mmの厚さを有する第1のポリプロピレン外層(すなわち上部層)、3.2mmの厚さを有するポリプロピレン拡張内層、および0.5mmの厚さを有する第2のポリプロピレン外層(すなわち下部層)を含む。サンプル2の一体型ジオグリッド最終製品の重量は171g/mである。サンプル1および2を模擬交通試験に供し、最後の500パスにおける一体型ジオグリッドの平均表面変形を測定した。サンプル1の平均表面変形は61.8mmで、サンプル2の平均表面変形もほぼ同じ61.6mmであった。
【0121】
図17から明らかなように、本発明による拡張多層一体型ジオグリッドであるサンプル2は、非拡張単層一体型ジオグリッドであるサンプル1よりも14.5%軽い。しかし、トラフィッキング試験に基づくと、サンプル2は、より重いサンプル1と同等の表面変形性能を達成している。従って、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドの技術を用いることにより、製品重量を低減しつつ、より重い非拡張単層製品と同等の表面変形性能を達成することができる。
【0122】
また図17によると、サンプル3は単層ポリプロピレン出発シートから作製された三角形の形状を持つ一体型ジオグリッドで、出発シートの総厚みは4.55mmである。サンプル3の一体型ジオグリッド最終製品の重量は217g/mである。サンプル4は、本発明による拡張多層出発シートから作られた三角形の形状を有する一体型ジオグリッドであり、出発シートの総厚みは6.2mmである。サンプル4の多層構造は、1mmの厚さを有する第1のポリプロピレン外層(すなわち上部層)、4.2mmの厚さを有するポリプロピレン拡張内層、および1mmの厚さを有する第2のポリプロピレン外層(すなわち下部層)を含む。サンプル4の一体型ジオグリッド最終製品の重量は215g/mで、サンプル3と実質的に同じである。サンプル3および4も模擬交通試験に供し、500パス分の一体型ジオグリッドの平均表面変形を測定した。サンプル3の平均表面変形は46.4mmであったが、サンプル4の平均表面変形は37.2mmと大幅に少なかった。
【0123】
図17から明らかなように、本発明による拡張多層一体型ジオグリッドであるサンプル4は、非拡張単層一体型ジオグリッドであるサンプル3と本質的に同じ重量を有する。しかし、トラフィッキング試験に基づくと、サンプル4はサンプル3よりも19.8%優れた(すなわち表面変形が少ない)表面変形性能を達成している。したがって、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドの技術を用いることにより、製品重量を維持しつつ、非拡張単層製品よりも優れた表面変形性能、すなわち表面変形が少ないという性能を達成することができる。
【0124】
要約すると、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドは、多層構造を有するだけでなく、その中の空隙の分布の結果としてその少なくとも1つの内層が多層のうちの少なくとも1つの他の層に対して拡張された構造を有することによって、ジオグリッドにより、荷重下での層の圧縮性が向上する。
【0125】
さらに、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドの多層の性質により、従来の単層一体型ジオグリッドと比較して、一体型ジオグリッドに全体的により大きな剛性がもたらされる。さらに、拡張内層のおかげで、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドは、コンプライアント、すなわち初期の弾力性または柔軟性によって特徴付けられ、より良好な圧縮および高密度をもたらし、なおかつ初期の弾力性の結果として、最終的な水平方向の骨材ジオグリッド複合体の大きな剛性を有する。
【0126】
さらに、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドは、従来の一体型ジオグリッドと比較して、すべてのストランドにおいてより高いアスペクト比を提供する。本発明の一体型ジオグリッドの高いアスペクト比により骨材との連結性を増大するため、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドは、骨材の様々なアスペクト比によりよく適応することができる。
【0127】
そして最後に、本発明の拡張多層一体型ジオグリッドは、本明細書に記載した構造および性能の向上をもたらすことに加えて、大きな経済的利益を有する。より高いアスペクト比を有するストランドを有する一体型ジオグリッドが所望される場合、本発明による拡張層は、拡張層を有さずに同様に構成された一体型ジオグリッドと同じ全体的なポリマー含有量(すなわち、ポリマーの「量」)を使用しながら、その高いアスペクト比を提供することができる。または、同様に構成された一体型ジオグリッドと同じアスペクト比のストランドを有する一体型ジオグリッドが所望される場合、本発明による拡張層は、全体的なポリマー含有量(すなわち、ポリマーの「量」)を少なくしながら、それと同じアスペクト比を提供することができる。したがって、本発明による拡張多層一体型ジオグリッドは、それに伴う構造および性能の向上に加えて、大きな経済的利益、すなわち、同じコストでより高いアスペクト比を達成すること、またはより低いコストで同じアスペクト比を達成することを提供することができる。
【0128】
本発明の第1の態様は、骨材と連結し、かつ補強するための拡張多層一体型ジオグリッドであって、部分的に配向した接合部によって相互に接続され、それらの間に一連の開口部を有する複数の配向性ストランドを備え、前記一体型ジオグリッドが、各層がポリマー材料の複数の層を有し、前記複数の層のうちの少なくとも1つの内層が、その中に空隙の分布を含む拡張構造を有し、骨材と一体型ジオグリッドとの間の初期適合性を改善して、骨材およびジオグリッド圧縮後の骨材密度を最大化する。
【0129】
拡張構造を有する少なくとも1つの内層は、5%~60%の空隙容積を有し得る。拡張構造を有する少なくとも1つの内層は、5%~75%の圧縮率を有し得る。拡張構造を有する少なくとも1つの内層は、ポリプロピレンおよび発泡添加剤を含む発泡体、発泡体を含み得る。拡張構造を有する少なくとも1つの内層は、粒子状充填剤を含んでもよい。粒子状充填剤は、炭酸カルシウム、含水マグネシウムケイ酸塩、硫酸カルシウム、珪藻土、二酸化チタン、ナノフィラー、多層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ、天然繊維、合成繊維、ドロマイト、シリカ、マイカ、およびアルミニウム水和物からなる群から選択され得る。拡張多層一体型ジオグリッドは、共押出された多層ポリマーシートから製造され得る。拡張多層一体型ジオグリッドは、積層された多層ポリマーシートから製造され得る。配向性ストランドは一軸または二軸延伸されていてもよい。請求項8に記載の拡張多層一体型ジオグリッドは、多層ポリマーシートが第1の層、拡張内層および第3の層を含み、第1の層と第3の層とが、拡張内層の対向する平面上に配置される。多層ポリマーシートは、約2mm~約12mmの厚さを有することができる。多層ポリマーシート第1の層は約0.5mm~約4.5mmの厚さを有し、拡張内層は約1mm~約9mmの厚さを有し、第3の層は約0.5mm~約4.5mmの厚さを有することができる。拡張多層一体型ジオグリッドは、三軸一体型ジオグリッドまたは長方形の一体型ジオグリッドであり得る。
【0130】
本発明の第2の態様は、各層がポリマー材料の複数の層を有する拡張多層一体型ジオグリッドを製造するための出発材料に関し、前記複数の層のうちの少なくとも1つの内層が、その中に空隙の分布を含む拡張構造を形成することができ、前記出発材料は、該シートが二軸延伸されたときに開口部を提供する穴または窪みを有する多層ポリマーシートを含む。
【0131】
多層ポリマーシートは共押出され得る。多層ポリマーシートは積層され得る。多層ポリマーシートは、第1の層、拡張内層、および第3の層を含み、第1の層と第3の層とは、拡張内層の対向する平面上に配置され得る。多層ポリマーシートは少なくとも2mmの初期厚さを有し得る。
【0132】
本発明の第3の態様は、部分的に配向した接合部によって相互に接続され、それらの間に一連の開口部を有する複数の配向性ストランドを備え、骨材と連結し、かつ補強するための拡張多層一体型ジオグリッドを埋め込むことによって強化された粒子状材料の塊を含む土壌構造物に関し、前記一体型ジオグリッドは、各層がポリマー材料の複数の層を有し、前記複数の層のうちの少なくとも1つの内層が、その中に空隙の分布を含む拡張構造を有し、骨材と一体型ジオグリッドとの間の初期適合性を改善して、骨材およびジオグリッド圧縮後の骨材密度を最大化する土壌構造物に関する。
【0133】
本発明の第4の態様は、部分的に配向した接合部によって相互に接続され、それらの間に一連の開口部を有する複数の配向性ストランドを備え、骨材と連結し、かつ補強するための拡張多層一体型ジオグリッドを粒子状材料の塊に埋め込むことを含む、粒子状材料の塊を強化する方法に関し、前記一体型ジオグリッドは、各層がポリマー材料の複数の層を有し、前記複数の層のうちの少なくとも1つの内層が、その中に空隙の分布を含む拡張構造を有し、骨材と一体型ジオグリッドとの間の初期適合性を改善して、骨材およびジオグリッド圧縮後の骨材密度を最大化する方法に関する。
【0134】
本発明の第5の態様は、拡張多層一体型ジオグリッドを作製する方法であって、それぞれポリマー材料の複数の層を有する多層ポリマーシートを提供する工程であって、前記複数の層のうちの少なくとも1つの内層が、その中に空隙の分布を含む拡張構造を形成することができる前記工程;前記多層ポリマーシートにパターン化された複数の穴または窪みを設ける工程;および前記パターン化された複数の穴または窪みを有する多層ポリマーシートを配向して、部分的に配向した接合部によって相互に接続された複数の配向性ストランドを提供し、前記穴または窪みをグリッド開口部として構成する工程
を含み、前記少なくとも1つの内層が多層一体型ジオグリッド内に空隙の分布を含む拡張構造を有する方法に関する。
【0135】
本発明の方法実施形態によれば、拡張構造を有する少なくとも1つの内層は、発泡体を含み得る。拡張構造を有する少なくとも1つの内層は、粒子状充填剤を含み得る。多層ポリマーシートを提供する工程は共押出であり得る。多層ポリマーシートを提供する工程は積層であり得る。パターン化された複数の穴または窪みをその中に有する多層ポリマーシートは、一軸または二軸延伸によって配向され得る。多層ポリマーシートは、第1の層、拡張内層、および第3の層を含んでもよく、第1の層および第3の層は、拡張内層の対向する平面上に配置される。多層ポリマーシートは、少なくとも2mmの初期厚さを有し得る。多層ポリマーシート第1の層は約0.5mm~約4.5mmの厚さを有してもよく、拡張内層は約1mm~約9mmの厚さを有してもよく、第3の層は約0.5mm~約4.5mmの厚さを有してもよい。第1の層は高分子量ポリオレフィンの構成材料を有してもよく、拡張内層は広範な仕様のポリマーの構成材料を有してもよく、第3の層は高分子量ポリオレフィンの構成材料を有してもよい。拡張多層一体ジオグリッドは、三軸一体ジオグリッドまたは長方形一体ジオグリッドであってもよい。
【0136】
本発明の第6の態様は、拡張多層一体型ジオグリッド構造物を製造する方法であって、その中にパターン化された複数の穴または窪みを有する多層ポリマーシートである出発材料を一軸または二軸延伸して、部分的に配向した接合部によって相互に接続された複数の配向性ストランドおよび複数のグリッド開口部を有する拡張多層一体型ジオグリッドを提供する工程;および前記一体型ジオグリッドを粒子状材料の塊に埋め込む工程
を含む方法に関する。
【0137】
そして、本発明の第7の態様は、内部に一連の開口部を有する外部の六角形の繰り返しパターンを形成する、相互に接続された複数の配向性ストランドおよび部分的に配向した複数の接合部を含む拡張多層一体型ジオグリッドであって、前記外部の六角形のそれぞれが、配向性ストランドを有する小さな内部の六角形を支持し取り囲み、前記外部の六角形の前記配向性ストランドおよび前記部分的に配向した複数の接合部が、前記拡張多層一体型ジオグリッドの全体にわたり連続的に延びる複数の線形ストランドを形成し、前記一体型ジオグリッドが、それぞれ該ジオグリッドの全体にわたって延びるポリマー材料の複数の層を有し、かつ前記複数の層の少なくとも1つの内層がその中に空隙の分布を含む拡張構造を有する拡張多層一体型ジオグリッドに関する。
【0138】
上述した内容は、本発明の原理を説明するためだけのものであると考えられる。さらに、当業者であれば多くの修正および変更に容易に想到し得るため、本発明を説明および図示した正確な構成および動作に限定することは望ましくない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図15A
図15B
図15C
図16
図17
【国際調査報告】