(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】位相シフタ
(51)【国際特許分類】
H01P 1/185 20060101AFI20241226BHJP
H01Q 3/34 20060101ALI20241226BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20241226BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20241226BHJP
H04B 7/024 20170101ALI20241226BHJP
【FI】
H01P1/185
H01Q3/34
H04B7/06 950
H04B7/08 800
H04B7/024
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537314
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 GB2022053282
(87)【国際公開番号】W WO2023118824
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523277334
【氏名又は名称】株式会社Visban
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン, アロキア
(72)【発明者】
【氏名】チャ, ソクベ
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼田 良輔
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA06
5J021DB00
5J021DB03
5J021FA01
5J021FA03
5J021FA06
5J021FA13
5J021FA30
5J021GA02
5J021HA10
5J021JA07
(57)【要約】
位相シフタ(1)が、アクティブマトリックストランジスタアレイ(2)を含み、各トランジスタ(T
n,m)が、対応する蓄積キャパシタ(C
s)にわたる電圧(V
1、...、V
K)を制御するように構成される。位相シフタ(1)は、各蓄積キャパシタ(C
s)と並列に接続された電圧制御キャパシタ(3、C(V))をも含み、したがって、その蓄積キャパシタ(C
s)上の電圧(V
1、...、V
K)が、その電圧制御キャパシタ(C(V))のキャパシタンスを制御するために、その電圧制御キャパシタ(C(V))にバイアスを適用する。位相シフタ(1)は、いくつかの信号チャネル(Ch
1、...、Ch
K)をも含む。各信号チャネル(Ch
1、...、Ch
K)が、第1の端部(4
1、...、4
K)と第2の端部(5
1、...、5
K)とを有し、第1の端部(4
1、...、4
K)と第2の端部(5
1、...、5
K)との間のポイントにおいて電圧制御キャパシタ(C(V))のうちの1つまたは複数にAC結合される。位相シフタ(1)は、各信号チャネル(Ch
1、...、Ch
K)に適用される位相シフトを、その信号チャネル(Ch
1、...、Ch
K)に結合された1つまたは複数の電圧制御キャパシタ(C(V))に対応する各それぞれの蓄積キャパシタ(C
s)にわたる電圧(V
1、...、V
K)を設定することによって制御するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブマトリックストランジスタアレイであって、各トランジスタが、対応する電圧制御キャパシタのキャパシタンスを制御するために、前記電圧制御キャパシタにわたる電圧バイアスを制御するように構成された、アクティブマトリックストランジスタアレイと、
複数の信号チャネルであって、各信号チャネルが、第1の端部と第2の端部とを有し、前記第1の端部と前記第2の端部との間のポイントにおいて前記電圧制御キャパシタのうちの1つまたは複数にAC結合される、複数の信号チャネルと
を備える、位相シフタであって、
前記位相シフタが、各信号チャネルに適用される位相シフトを、前記信号チャネルに結合された前記1つまたは複数の電圧制御キャパシタの各々にわたる前記電圧を設定することによって制御するように構成された、位相シフタ。
【請求項2】
蓄積キャパシタが、各電圧制御キャパシタと並列に接続される、請求項1に記載の位相シフタ。
【請求項3】
前記アクティブマトリックストランジスタアレイが薄膜トランジスタを備える、請求項1または2に記載の位相シフタ。
【請求項4】
位相画像を受信または生成することであって、前記位相画像の各ピクセルが、前記アクティブマトリックストランジスタアレイのトランジスタに対応し、関連する電圧制御キャパシタへの適用のための電圧を記憶する、位相画像を受信または生成することと、
前記位相画像に従って各電圧制御キャパシタの前記電圧を設定することと
を行うようにさらに構成された、請求項1から3のいずれか一項に記載の位相シフタ。
【請求項5】
各信号チャネルが、それぞれの前記第1の端部と前記第2の端部との間に1つまたは複数の増幅器を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の位相シフタ。
【請求項6】
各信号チャネルが、それぞれの前記第1の端部と前記第2の端部との間に1つまたは複数のフィルタを備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の位相シフタ。
【請求項7】
前記アクティブマトリックストランジスタアレイと前記電圧制御キャパシタとが、共通基板によって支持される、請求項1から6のいずれか一項に記載の位相シフタ。
【請求項8】
前記蓄積キャパシタも、前記共通基板によって支持される、請求項2から従属するときの請求項7に記載の位相シフタ。
【請求項9】
前記アクティブマトリックストランジスタアレイと前記電圧制御キャパシタとが、単一の構成要素として一体化される、請求項1から8のいずれか一項に記載の位相シフタ。
【請求項10】
前記蓄積キャパシタも、前記単一の構成要素と一体化される、請求項2から従属するときの請求項9に記載の位相シフタ。
【請求項11】
各信号チャネルの少なくとも一部分が、前記単一の構成要素と一体化される、請求項9または10に記載の位相シフタ。
【請求項12】
無線周波数信号に位相シフトを適用するように構成された、請求項1から11のいずれか一項に記載の位相シフタ。
【請求項13】
請求項12に記載の位相シフタである第1の位相シフタと、
複数の第1のアンテナであって、各第1のアンテナが、前記第1の位相シフタのそれぞれの信号チャネルを介して無線周波数トランシーバ回路に接続される、複数の第1のアンテナと
を備え、
前記無線周波数トランシーバ回路が、前記第1の位相シフタを使用して、前記複数の第1のアンテナによって受信されるおよび/または前記複数の第1のアンテナから送信される無線信号のビームフォーミングを実施することによって、第1のフェーズドアレイとして前記複数の第1のアンテナを制御するように構成された、
無線機。
【請求項14】
各第1のアンテナが、1つまたは複数の増幅器を介して前記第1の位相シフタの前記それぞれの信号チャネルに接続される、請求項13に記載の無線機。
【請求項15】
各第1のアンテナが、1つまたは複数のフィルタを介して前記第1の位相シフタの前記それぞれの信号チャネルに接続される、請求項13または14に記載の無線機。
【請求項16】
前記複数の第1のアンテナが、アレイで配設される、請求項13から15のいずれか一項に記載の無線機。
【請求項17】
前記複数の第1のアンテナが、同じ基板上でまたは同じ積層体内で、前記第1の位相シフタと一体化される、請求項13から16のいずれか一項に記載の無線機。
【請求項18】
前記複数の第1のアンテナが、透明基板上で支持される、請求項13から17のいずれか一項に記載の無線機。
【請求項19】
受信された無線信号を中継または再ブロードキャストするように構成された、請求項13から18のいずれか一項に記載の無線機。
【請求項20】
請求項12に記載の第2の位相シフタと、
複数の第2のアンテナであって、各第2のアンテナが、前記第2の位相シフタのそれぞれの信号チャネルを介して前記無線周波数トランシーバ回路に接続される、複数の第2のアンテナと
をさらに備え、
前記無線周波数トランシーバ回路は、
前記第1の位相シフタを使用して、無線信号を受信するために第1のフェーズドアレイとして前記複数の第1のアンテナを制御することであって、前記第1のフェーズドアレイが、指向性であり、受信方向に制御可能に配向可能である、前記複数の第1のアンテナを制御することと、
前記第2の位相シフタを使用して、前記第1のフェーズドアレイを使用して受信された前記無線信号を再送信するために、第2のフェーズドアレイとして前記複数の第2のアンテナを制御することであって、前記第2のフェーズドアレイが、指向性であり、送信方向に制御可能に配向可能である、前記複数の第2のアンテナを制御することと
を行うように構成された、請求項13から19のいずれか一項に記載の無線機。
【請求項21】
請求項13から20のいずれか一項に記載の複数の無線機を備えるシステムであって、前記2つまたはそれ以上の無線機の各無線機が、前記2つまたはそれ以上の無線機の各他の無線機とビームフォーミングを協調させるように構成された、システム。
【請求項22】
前記複数の無線機が、2つまたはそれ以上の無線機の受信および/または送信を第1の外部ソースに向けるためにビームフォーミングを協調させるように構成された、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記複数の無線機が、少なくとも2つの空間的に分離された外部ソースに向けたビームフォーミングを協調させるように構成された、請求項21または22に記載のシステム。
【請求項24】
前記複数の無線機が、構造物によって支持される、請求項21から23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
請求項1から12のいずれか一項に記載の位相シフタを制御する方法であって、アクティブマトリックストランジスタアレイの各トランジスタをアドレス指定することと、接続された電圧制御キャパシタのキャパシタンスを、結合された信号チャネルを介して伝搬する信号の所与の位相シフトに対応させるように、前記電圧制御キャパシタにわたる電圧を設定することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のチャネルにスケーリングされ得る位相シフタに関する。本発明はまた、ビームフォーミング、特に、無線、オーディオおよび超音波適用例への、位相シフタの適用に関する。
【背景技術】
【0002】
技法としてのビームフォーミングは、オーディオ、超音波および無線を含む、様々な異なるタイプの波について知られている。フェーズドアレイのスケーリングは、個々のトランスデューサから受信されるおよび/または個々のトランスデューサによって送信される信号に適用される位相シフトを制御する能力によって制限される。
【0003】
ビームフォーミングは、ワイヤレス通信ネットワークにおいて関連があり得る。ワイヤレス通信ネットワークが、データレートを改善するためにより高い周波数のほうへ移るとき、波長の対応する減少は、送信機への見通し線がないエリアにおいて、たとえば、市街地、樹木で覆われたエリア、構造物の内側などにおいて、均一なカバレージを提供することに関する問題点につながることがある。
【0004】
ワイヤレス通信ネットワークが、(「第5世代」または「5G」と呼ばれることがある)5GHzにおけるおよび5GHzを上回る周波数に移り始めるとき、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)および水蒸気(H2O)など、大気ガスによる減衰の影響は、いくつかの周波数帯域において顕著になり得る。大気気象影響が、そのような問題点を悪化させることがあり、たとえば、減衰が60dBm-1の領域に達し得る。
【0005】
建築物および競技場などの構造物の内部にワイヤレスネットワークカバレージを提供することは、5GHzを下回る周波数に関してすでに問題点である。より高い周波数に移ることは、構造物中に貫通する信号強度のさらなる劣化を引き起こすことになる。温度調節に関係する建築物ガラスの改善、たとえば、建築物をより涼しく保つのを助けるために薄い金属被覆された層を含めることは、外部からの無線信号をさらに減衰させ得る。
【0006】
信号中継システムが提案されており、たとえば、CN106992807A、米国特許出願第2018/139521(A1)号および米国特許出願第2015/380816(A1)号を参照されたい。
【0007】
たとえば5Gモバイルネットワークを展開するために、見通し線中継トランシーバのネットワークを展開することは、かなりの数のステアリング可能フェーズドアレイアンテナを必要とする。各トランシーバのコストおよび複雑さが、重要なファクタである。多数の個々にアドレス指定可能なアンテナを含むアレイを作り出すことが可能であるが、どのように各々を、ビームフォーミングのために、独立して可変の位相を有する信号により、駆動すべきかという疑問もある。
【0008】
バラクタダイオードが、ビームフォーミングのために使用されるアンテナアレイに適用されており、たとえば、特開2009-038453、特開2006-101439および特開2004-080626を参照されたい。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、アクティブマトリックストランジスタアレイであって、各トランジスタが、対応する電圧制御キャパシタのキャパシタンスを制御するために、その電圧制御キャパシタにわたる電圧を制御するように構成された、アクティブマトリックストランジスタアレイを含む、位相シフタが提供される。位相シフタは、いくつかの信号チャネルをも含む。各信号チャネルが、第1の端部と第2の端部とを有し、第1の端部と第2の端部との間のポイントにおいて電圧制御キャパシタのうちの1つまたは複数にAC結合される。位相シフタは、各信号チャネルに適用される位相シフトを、その信号チャネルに結合された1つまたは複数の電圧制御キャパシタの各々にわたる電圧を設定することによって制御するように構成される。
【0010】
蓄積キャパシタが、各電圧制御キャパシタと並列に接続され得る。
【0011】
各信号チャネルが、伝送線路の形態をとり得る。伝送線路は、マイクロストリップ伝送線路の形態をとり得る。
【0012】
電圧制御キャパシタは、電圧制御キャパシタにわたる電圧入力および/または適用されるバイアスの関数として変動され得るキャパシタンスを有する任意のデバイスである。電圧制御キャパシタは、半導体接合の空乏層の幅の変調など、幾何学的影響に少なくとも部分的に基づく、電圧依存するキャパシタンスを呈し得る。追加または代替として、電圧制御キャパシタは、キャパシタ中に含まれる材料の誘電率の変調に少なくとも部分的に基づく、電圧依存するキャパシタンスを呈し得る。電圧制御キャパシタは、(「バリキャップ」と呼ばれることもある)バラクタダイオードを含むか、またはバラクタダイオードの形態をとり得る。電圧制御キャパシタがバラクタダイオードである場合、適用されるバイアスは逆バイアスであるべきである。電圧制御キャパシタは、強誘電体材料を含み得る。
【0013】
各信号チャネルは、単一の電圧制御キャパシタに結合され得る。各信号チャネルは、2つまたはそれ以上の電圧制御キャパシタに結合され得る。
【0014】
アクティブマトリックストランジスタアレイは、薄膜トランジスタを含み得る。アクティブマトリックストランジスタアレイの各(すなわち、あらゆる)トランジスタが、薄膜トランジスタの形態をとり得る。アクティブマトリックストランジスタアレイは、対応するトランジスタの駆動線路を所望の電圧に設定することと、そのトランジスタの信号線路を使用してそのトランジスタのゲートを開くこととによって、各電圧制御キャパシタにわたる電圧が独立して設定され得るように、構成され得る。
【0015】
位相シフタは、位相画像を受信または生成するように構成され得る。位相画像の各ピクセルが、アクティブマトリックストランジスタアレイのトランジスタに対応し得、関連する電圧制御キャパシタへの適用のための電圧を記憶し得る。位相シフタは、位相画像に従って各電圧制御キャパシタの電圧を設定するように構成され得る。
【0016】
位相画像は、代替的にホログラムとして説明され得る。本明細書では、「ホログラム」という用語はまた、位相シフタによって異なる量だけ位相シフトされた信号間の干渉によって形成される3D波パターンについて説明するために使用され得る。言い換えれば、「ホログラム」という用語は、位相画像に適用され、位相シフタを通した送信の後の得られた位相シフトされた電気的信号に、および/またはその位相シフトされた電気的信号に基づいて放出される波パターンに適用され得る。
【0017】
各信号チャネルは、それぞれの第1の端部と第2の端部との間に1つまたは複数の増幅器を含み得る。
【0018】
各信号チャネルは、それぞれの第1の端部と第2の端部との間に1つまたは複数のフィルタを含み得る。
【0019】
アクティブマトリックストランジスタアレイと電圧制御キャパシタとは、共通基板によって支持され得る。蓄積キャパシタも、共通基板によって支持され得る。共通基板は、可とう性の膜またはシートであり得る。位相シフタの電気的構成要素が、共通基板の一方または両方の側上で支持、堆積、パターニングおよび/または一体化され得る。位相シフタの電気的構成要素は、限定はしないが、アクティブマトリックストランジスタアレイと、電圧制御キャパシタと、含まれるときに蓄積キャパシタとを含み得る。共通基板の両面上で支持された位相シフタの電気的構成要素間の相互接続が、スルービアを使用して提供され得る。
【0020】
共通基板は、積層体を含むか、または積層体の形態をとり得る。共通基板が積層体である場合、位相シフタの1つまたは複数の電気的構成要素が、積層体の1つまたは複数の内部層上でおよび/またはその内部層内で支持、堆積、パターニングおよび/または一体化され得る。共通基板が積層体である場合、積層体は、ガラスおよび/またはプラスチックおよび/または接着剤の1つまたは複数の層を含み得る。積層体は、1つまたは複数の導体層を含み得る。積層体の導体層は、内部にあり(すなわち、第1の面と第2の面との間にあり)、および/または外部にあり(すなわち、第1の面および/または第2の面上で支持され)得る。積層体の1つまたは複数の層が、位相シフタの1つまたは複数の構成要素を支持し得る。共通基板は、多層プリント回路板の形態をとり得る。
【0021】
アクティブマトリックストランジスタアレイは、共通基板上でおよび/または共通基板中で一体化され得る。アクティブマトリックストランジスタアレイは、共通基板にフリップチップボンディング(flip-chip bond)され得る。蓄積キャパシタは、共通基板上でおよび/または共通基板中で一体化され得る。蓄積キャパシタは、共通基板にフリップチップボンディングされ得る。電圧制御キャパシタは、共通基板上でおよび/または共通基板中で一体化され得る。電圧制御キャパシタは、共通基板にフリップチップボンディングされ得る。位相シフタの電気的構成要素は、共通基板の一方または両方の側にフリップチップボンディングされ得る。
【0022】
共通基板は透明であり得る。透明は、共通基板が可視波長について50%の最小透過率を有することに対応し得る。可視波長は、380nmから750nmの間の範囲に対応し得る。
【0023】
透明共通基板は、ガラスを含むか、またはガラスから形成され得る。透明共通基板は、限定はしないが、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレートPEN、シクロオレフィンポリマー(COP)、または回路を支持するのに十分な機械的強度と透けて見えるのに十分な透過性とを有する任意の他のポリマーを含む、1つまたは複数のプラスチックを含むか、あるいはそのプラスチックの形態をとり得る。
【0024】
信号チャネルは、共通基板によって(または積層体のとき、内部層上で)支持されるマイクロストリップ伝送線路の形態をとり得る。位相シフタは、共通基板の第1の面上で支持される第1のマイクロストリップ線路と、共通基板の第2の反対の面上で支持される第2のマイクロストリップ線路とを含み得る。第1のマイクロストリップ線路と第2のマイクロストリップ線路とは、対応するビアによって接続され得る。第1の面上で支持されるマイクロストリップ線路と第2の面上で支持されるマイクロストリップ線路との間を接続するビアは、マイクロストリップ線路にインピーダンス整合され得る。位相シフタは、第1の面上で支持されるいくつかの第1のマイクロストリップ線路を含み得る。位相シフタは、第2の面上で支持されるいくつかの第2のマイクロストリップ線路を含み得る。任意のマイクロストリップ線路が、共通基板の反対側上で支持される、1つまたは複数のマイクロストリップ線路および/または回路の他の構成要素に、共通基板を通って延びるビアによって接続され得る。たとえば、第1の面と第2の面との間の放射性伝達または容量性結合と比較して、そのような物理的接続は、共通基板が、低い誘電損特性を有する1つまたは複数の材料から形成されることを必要としない。必要とはされないが、低い誘電損特性を有する材料が、なお使用され得る。
【0025】
位相シフタの1つまたは複数の電気的構成要素が共通基板にフリップチップボンディングされるとき、そのような構成要素は、ヘテロジニアスインテグレーションロードマップ(HIR:Heterogeneous Integration Roadmap)に従って共通基板にフリップチップボンディングされ得る。ヘテロジニアスインテグレーションロードマップ(HIR)は、シリコンシステムインパッケージ(SiP)技術のために開発されたガイドラインのセットである。HIRは、たとえば、HIR2019版の刊行物において提示されたガイドラインを指し得る。
【0026】
位相シフタがフィルタを含む場合、フィルタは、さらに、共通基板によって支持されるか、または共通基板と一体化され得る。位相シフタは、膜バルク音響共振器(FBAR:film bulk acoustic resonator)の形態の1つまたは複数のフィルタを含み得る。フィルタは、薄膜バルク音響共振器(TFBAR:thin-film bulk acoustic resonator)を含むか、またはTFBARの形態をとり得る。フィルタは、メタマテリアルを含むか、またはメタマテリアルから形成され得る。位相シフタにおいて使用するのに好適なメタマテリアルフィルタは、限定されることなしに、「Metamaterial Structure Inspired Miniature RF/Microwave Filters」、Abdullah Alburaikan、PhD Thesis(2016)、The University of Manchester、https://www.escholar.manchester.ac.uk/uk-ac-man-scw:305308(特に56ページ以降を参照)で説明されるメタマテリアルフィルタを含む。1つまたは複数のフィルタは、直接共通基板上に形成されるか、または共通基板と一体化され得る。追加または代替として、1つまたは複数のフィルタは、共通基板にフリップチップボンディングされ得る。
【0027】
フィルタは、信号チャネルの一部または全部中に一体化され得、たとえば、信号チャネルが伝送線路によって提供されるとき、フィルタは、1つまたは複数の分散要素フィルタ(distributed-element filter)の形態で一体化され得る。言い換えれば、フィルタは、伝送線路の一部分に沿ったインピーダンスの変動の形態で提供され得る。
【0028】
より多くの信号チャネルのうちの1つが、各々別個の帯域幅を有する、2つまたはそれ以上のフィルタ間で切替え可能であり得る。各信号チャネルが、各々別個の帯域幅を有する、2つまたはそれ以上のフィルタ間で切替え可能であり得る。信号チャネルは、アクティブマトリックストランジスタアレイとともに共通基板上で支持されたトランジスタ、またはアクティブマトリックストランジスタアレイと一体に形成されたユーザトランジスタを使用して、2つまたはそれ以上のフィルタ間で切替え可能であり得る。
【0029】
共通基板は、ヒートスプレッダ層(図示せず)を組み込み得る。ヒートスプレッダ層は、ヘテロジニアスインテグレーション作製プロセスの間に組み込まれ得る。ヒートスプレッダ層は、ファンまたは他の冷却方法を必要とすることなしに、より高い電力における動作、ならびに/またはより高い密度の電気的構成要素および相互接続を使用することを、可能にし得る。たとえば、位相シフタのための接地平面層が、銅から形成され得、さらに、ヒートスプレッダ層として働き得る。
【0030】
位相シフタが増幅器を含む場合、増幅器は、さらに、共通基板によって支持されるか、または共通基板と一体化され得る。位相シフタは、共通基板によって支持されたCMOS増幅器の形態の1つまたは複数の増幅器を含み得る。
【0031】
アクティブマトリックストランジスタアレイと電圧制御キャパシタとは、単一の構成要素として一体化され得る。アクティブマトリックストランジスタアレイと電圧制御キャパシタとを含む単一の構成要素は、共通基板によって支持され得る。アクティブマトリックストランジスタアレイと電圧制御キャパシタとは、単一のガラス基板上に形成され得る。
【0032】
アクティブマトリックストランジスタアレイと電圧制御キャパシタとは、単一の半導体ダイ上に形成され得る。半導体ダイは、位相シフタの電気的構成要素に関して上記で説明された任意の様式で、パッケージングされ、共通基板に搭載され得る。蓄積キャパシタは、さらに、単一の構成要素と一体化され得る。各信号チャネルの少なくとも一部分が、単一の構成要素と一体化され得る。
【0033】
位相シフタは、オーディオ周波数信号に位相シフトを適用するように構成され得る。オーディオ周波数信号は、20Hzから20kHzの間の、および20Hzと20kHzとを含む、範囲に対応し得る。
【0034】
位相シフタは、超音波周波数(ultrasound frequency)信号に位相シフトを適用するように構成され得る。超音波周波数は、20kHzから18MHzの間の、および20kHzと18MHzとを含む、範囲に対応し得る。超音波周波数は、非破壊試験のために使用される範囲に対応し得る。超音波周波数は、範囲/距離探知のために使用される範囲に対応し得る。超音波周波数は、医療走査のために使用される範囲に対応し得る。超音波周波数は、材料を操作および/または修正するために、たとえば腎結石の破壊のために使用される、範囲に対応し得る。
【0035】
位相シフタは、無線周波数信号に位相シフトを適用するように構成され得る。
【0036】
位相シフタは、5GHzから1THzの間の、および5GHzと1THzとを含む、キャリア周波数を有する無線周波数信号のために構成され得る。位相シフタは、5GHzから300GHzの間の、および5GHzと300GHzとを含む、キャリア周波数を有する無線周波数信号のために構成され得る。位相シフタは、30GHzから300GHzの間の、および30GHzと300GHzとを含む、キャリア周波数を有する無線周波数信号のために構成され得る。位相シフタは、NATOによって定義されたK(20GHz~40GHz)、L(40GHz~60GHz)、およびM(60GHz~100GHz)の帯域のうちの1つまたは複数内のキャリア周波数を有する無線周波数信号のために構成され得る。位相シフタは、米国電気電子技術者協会(IEEE)によって定義されたKa(27GHz~40GHz)、V(40GHz~75GHz)、およびW(75GHz~110GHz)の帯域のうちの1つまたは複数内のキャリア周波数を有する無線周波数信号のために構成され得る。位相シフタは、300GHzを超えるキャリア周波数を有する無線周波数信号のために構成され得る。位相シフタは、1THzに等しいかまたはそれを超えるキャリア周波数を有する無線周波数信号のために構成され得る。位相シフタは、5G信号である無線周波数信号のために構成され得る。位相シフタは、6G信号である無線周波数信号のために構成され得る。位相シフタは、7G信号である無線周波数信号のために構成され得る。
【0037】
無線機が、上記で説明された位相シフタの形態の第1の位相シフタを含み得る。無線機は、いくつかの第1のアンテナをも含み得る。各第1のアンテナが、第1の位相シフタのそれぞれの信号チャネルを介して無線周波数トランシーバ回路に接続され得る。無線周波数トランシーバ回路は、第1の位相シフタを使用して、複数の第1のアンテナによって受信されるおよび/または複数の第1のアンテナから送信される無線信号のビームフォーミングを実施することによって、第1のフェーズドアレイとして複数の第1のアンテナを制御するように構成され得る。
【0038】
無線周波数トランシーバ回路は、無線受信機として構成され得る。無線周波数トランシーバ回路は、無線送信機として構成され得る。無線周波数トランシーバ回路は、無線送信機および受信機として構成され得る(すなわち、無線機全体がトランシーバである)。無線機は、ワイヤレス通信ネットワークの基地局として構成され得る。
【0039】
第1のアンテナの数は、第1の位相シフタの信号チャネルの数よりも少ないかまたはそれに等しいことがある。
【0040】
各第1のアンテナが、1つまたは複数の増幅器を介して第1の位相シフタのそれぞれの信号チャネルに接続され得る。
【0041】
増幅器の一部または全部が、低雑音増幅器の形態をとり得る。増幅器の一部または全部は、電力増幅器の形態をとり得る。無線周波数トランシーバ回路が送信機および受信機として構成されたとき、各第1のアンテナは、受信モードにおける低雑音増幅器と送信モードにおける電力増幅器との間で切替え可能である経路を介して、第1の位相シフタのそれぞれの信号チャネルに接続され得る。無線周波数トランシーバ回路が送信機および受信機として構成されたとき、第1のアンテナのサブセットが、1つまたは複数の低雑音増幅器を介して第1の位相シフタのそれぞれの信号チャネルに接続される受信アンテナであり得、残りの第1のアンテナ(すなわち、サブセットの補集合)が、1つまたは複数の電力増幅器を介して第1の位相シフタのそれぞれの信号チャネルに接続される送信アンテナであり得る。
【0042】
各第1のアンテナが、1つまたは複数のフィルタを介して第1の位相シフタのそれぞれの信号チャネルに接続され得る。
【0043】
複数の第1のアンテナは、アレイで配設され得る。第1のアンテナのアレイのジオメトリが、アクティブマトリックストランジスタアレイのジオメトリに対応し得る。第1のアンテナのアレイのジオメトリは、アクティブマトリックストランジスタアレイのジオメトリとは異なり得る。
【0044】
第1のアンテナは、同じ基板上でまたは同じ積層体内で、第1の位相シフタと一体化され得る。第1のアンテナは、位相シフタの共通基板上で一体化され得る。
【0045】
無線周波数トランシーバ回路の1つの、一部または全部の構成要素が、第1の位相シフタ(および随意に第1のアンテナ)と同じ基板上、または同じ積層体内、たとえば共通基板上で、一体化され得る。無線周波数トランシーバ回路の1つの、一部または全部の構成要素が、第1の位相シフタ(および随意に第1のアンテナ)を支持するかまたは含む基板または積層体、たとえば共通基板に、フリップチップボンディングされ得る。
【0046】
第1のアンテナは、透明基板上で支持され得る。透明基板は、位相シフタの共通基板に対応し得る。透明基板は、位相シフタの共通基板とは別個であり得る。
【0047】
無線機は、受信された無線信号を中継または再ブロードキャストするように構成され得る。
【0048】
無線機は、上記で説明された位相シフタである第2の位相シフタをも含み得る。無線機は、いくつかの第2のアンテナをも含み得る。各第2のアンテナが、第2の位相シフタのそれぞれの信号チャネルを介して無線周波数トランシーバ回路に接続され得る。無線周波数トランシーバ回路は、第1の位相シフタを使用して、無線信号を受信するために第1のフェーズドアレイとして複数の第1のアンテナを制御することであって、第1のフェーズドアレイが、指向性であり、受信方向に制御可能に配向可能である、複数の第1のアンテナを制御することを行うように構成され得る。無線周波数トランシーバ回路は、第2の位相シフタを使用して、第1のフェーズドアレイを使用して受信された無線信号を再送信するために、第2のフェーズドアレイとして複数の第2のアンテナを制御することであって、第2のフェーズドアレイが、指向性であり、送信方向に制御可能に配向可能である、複数の第2のアンテナを制御することを行うように構成され得る。
【0049】
第1の位相シフタと第2の位相シフタとは、別個のデバイスによって提供され得るか、または別個のデバイスの形態をとり得る。第1の位相シフタと第2の位相シフタとは、共有基板によって支持されるおよび/または共有基板と一体化され得る。第1の位相シフタと第2の位相シフタとは、単一の位相シフタによって提供され得るか、または単一の位相シフタの形態をとり得、第1の位相シフタと第2の位相シフタとが、アクティブマトリックストランジスタアレイの異なる領域に対応する。
【0050】
システムが、上記で説明されたいくつかのものを含み得る。2つまたはそれ以上の無線機の各無線機が、2つまたはそれ以上の無線機の各他の無線機とビームフォーミングを協調させるように構成され得る。
【0051】
無線機は、概ね同じ近傍に、たとえば200m圏内に位置し得る。無線機の各々が、システムに属する少なくとも1つの他の無線機の200m内に、100m内に、50m内に、20m内にまたは10m内に位置し得る。
【0052】
無線機は、ワイヤードネットワークを介して接続され得る。無線機は、ワイヤレスネットワークを介して接続され得る。無線機は、ワイヤードリンクとワイヤレスリンクとを含むネットワークを介して接続され得る。
【0053】
システムは、複数の無線機のビームフォーミングを協調させるように構成された中央制御ユニットをも含み得る。中央制御ユニットは、システムに属する無線機のうちの1つの無線機の形態をとり得る。各無線機が処理ユニットを含み得、システムは、システムに属する2つまたはそれ以上の無線機の処理ユニットを使用して、ビームフォーミングの協調が分散的な様式で実行されるように、構成され得る。
【0054】
システムに属する無線機は、2つまたはそれ以上の無線機の受信および/または送信を第1の外部ソースに向けるためにビームフォーミングを協調させるように構成され得る。システムに属する無線機は、少なくとも2つの空間的に分離された外部ソースに向けたビームフォーミングを協調させるように構成され得る。
【0055】
システムに属する無線機は、構造物によって支持され得る。構造物は建築物であり得る。各無線機が、建築物の窓によって支持され得る。各無線機は、異なる窓によって支持され得る。2つまたはそれ以上の無線機が、同じ窓によって支持され得る。構造物は、バス待合所、ランプポスト、または街路備品の任意の他のアイテムであり得る。構造物によって支持されることは、構造物に取り付けること、構造物に搭載することなどを含み得る。構造物によって支持されることは、追加または代替として、無線機が、構造物中に組み込まれること、または構造物と一体に形成されることを含み得る。システムに属する無線機は、2つまたはそれ以上の別個の構造物(すでに説明されたものと同じ意味を有する構造物)によって支持され得る。
【0056】
システムに属する無線機の全部または一部が、第1のアンテナの第1のフェーズドアレイが第1のマクロフェーズドアレイを形成するように、アレイで配置され得る。第2のアンテナの第2のフェーズドアレイが含まれるとき、これらは、追加または代替として、第2のマクロ位相アレイを形成するように配置され得る。
【0057】
オーディオデバイスが、オーディオ周波数信号に位相シフトを適用するように構成されるとき、位相シフタを含み得る。オーディオデバイスは、いくつかのオーディオトランスデューサをも含み得る。各オーディオトランスデューサが、位相シフタのそれぞれの信号チャネルを介してオーディオ周波数送信機および/または受信機回路に接続され得る。位相シフタは、フェーズドオーディオアレイとして複数のオーディオトランスデューサを制御するためにビームフォーミングを提供し得る。
【0058】
オーディオトランスデューサは、マイクロフォンの形態をとり得、オーディオデバイスは、指向性マイクロフォンの形態をとり得る。オーディオトランスデューサは、スピーカーの形態をとり得、オーディオデバイスは、指向性スピーカーの形態をとり得る。オーディオトランスデューサは、いくつかのマイクロフォンといくつかのスピーカーとを含み得、オーディオデバイスは、指向性オーディオトランシーバの形態をとり得る。オーディオトランスデューサは、1つまたは複数の圧電オーディオトランスデューサを含み得る。
【0059】
オーディオトランスデューサの数は、位相シフタの信号チャネルの数よりも少ないかまたはそれに等しいことがある。
【0060】
オーディオデバイスは、無線機の任意の特徴または機能に対応する特徴を含み得る。いくつかのオーディオデバイスを含むシステムが、いくつかの無線機を含むシステムの任意の特徴または機能に対応する特徴を含み得る。無線機、またはいくつかの無線機を含むシステムに適用可能な定義が、オーディオデバイス、および/またはいくつかのオーディオデバイスを含むシステムに等しく適用可能であり得る。
【0061】
超音波デバイス(ultrasonic device)が、超音波周波数信号に位相シフトを適用するように構成されるとき、位相シフタを含み得る。超音波デバイスは、いくつかの超音波トランスデューサをも含み得る。各超音波トランスデューサが、位相シフタのそれぞれの信号チャネルを介して超音波周波数(ultrasonic frequency)送信機および/または受信機回路に接続され得る。位相シフタは、フェーズド超音波アレイとして複数の超音波トランスデューサを制御するためにビームフォーミングを提供し得る。
【0062】
超音波デバイスは、指向性超音波受信機の形態をとり得る。超音波デバイス(ultrasound device)は、指向性超音波送信機の形態をとり得る。超音波デバイスは、指向性オーディオトランシーバの形態をとり得る。超音波トランスデューサは、圧電トランスデューサを含み得る。
【0063】
超音波トランスデューサの数は、位相シフタの信号チャネルの数よりも少ないかまたはそれに等しいことがある。
【0064】
超音波デバイスは、無線機の任意の特徴または機能に対応する特徴を含み得る。いくつかの超音波デバイスを含むシステムが、いくつかの無線機を含むシステムの任意の特徴または機能に対応する特徴を含み得る。無線機、またはいくつかの無線機を含むシステムに適用可能な定義が、超音波デバイス、および/またはいくつかの超音波デバイスを含むシステムに等しく適用可能であり得る。
【0065】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様による位相シフタを制御する方法が提供される。本方法は、アクティブマトリックストランジスタアレイの各トランジスタをアドレス指定することと、接続された電圧制御キャパシタのキャパシタンスを、結合された信号チャネルを介して伝搬する信号の所与の位相シフトに対応させるように、その電圧制御キャパシタにわたる電圧を設定することとを含む。
【0066】
本方法は、位相シフタ、無線機、いくつかの無線機デバイスを含むシステム、オーディオデバイスおよび/または超音波デバイスの任意の特徴または機能に対応する特徴を含み得る。無線機、またはいくつかの無線機を含むシステムに適用可能な定義が、本方法に等しく適用可能であり得る。
【0067】
次に、本発明のいくつかの実施形態が、例として、添付の図面を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図2】位相シフタの一部分についての回路図である。
【
図3】信号チャネルを2つまたはそれ以上の電圧制御キャパシタンスに結合することの一例についての回路図である。
【
図4】増幅および/またはフィルタ処理を位相シフタの信号チャネルに一体化することを示す図である。
【
図5】ビームフォーミングのための位相シフタを組み込む無線機を示す図である。
【
図6】無線機のためのアンテナの例示的なアレイを示す図である。
【
図7】アンテナと無線周波数トランシーバ回路との間に結合された位相シフタの一部分についての回路図である。
【
図8】無線機構成要素の第1の一体化された構成を示す図である。
【
図9】無線機構成要素の第2の一体化された構成を示す図である。
【
図11】第1の例示的なアンテナアレイを示す図である。
【
図12】第2の例示的なアンテナアレイを示す図である。
【
図13】第3の例示的なアンテナアレイを示す図である。
【
図14】第4の例示的なアンテナアレイを示す図である。
【
図15】いくつかの無線機を含むシステムを示す図である。
【
図16】ビームフォーミングのための位相シフタを組み込むオーディオデバイスを示す図である。
【
図17】ビームフォーミングのための位相シフタを組み込む超音波デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下の説明では、同様の部分は、同様の参照番号によって示される。
【0070】
信号に位相シフトを適用するためのバラクタダイオードの使用が知られているが、未解決の疑問は、チャネルの数が多数にスケーリングするとき、信号に適用される個々の位相シフトをどのように制御すべきかである。本明細書は、アクティブマトリックスアドレス指定方式を使用して位相アレイ中の要素の数をスケーリングすることを可能にする位相シフタについて説明する。本明細書の手法を使用して、数千、数万、数百または数千、さらには100万個超という数の電圧制御キャパシタが、対応する信号チャネルに位相シフトを適用するように制御され得る。さらに、バラクタダイオード、およびさらにはアンテナが、TFTアクティブマトリックス制御方式により一体化され得、これは、既存の生産ラインの修正により製造され得るコンパクトな無線フェーズドアレイを提供する。
【0071】
特にワイヤレス通信ネットワークの分野では、基地局への見通し線と無線信号の大気および/または気象減衰との問題は、ワイヤレスネットワークにさらなるワイヤレストランシーバを追加することによって対処され得る。しかしながら、実際にはこれを行うために、小さい、高利得の、ステアリング可能な、および費用がかからない、ならびに大きい量の電力を必要としない、ワイヤレストランシーバが必要とされる。特に非見通し線環境のための、無線信号のポインティングベクトルの方向は、サービス品質性能を最大化することにとって重要である。また、使用されるワイヤレストランシーバが、審美的に目立たず、すなわち、小さく、好ましくは、環境中に偽装および/または一体化するのが容易であるべきであることが望ましい。本明細書は、適用例の中でも、これらの問題点に対処するのを助け得る無線トランシーバのための位相シフタおよびアンテナアセンブリについて説明する。
【0072】
ワイヤレス通信のための現在のインフラストラクチャは、より高い周波数のほうへ、たとえばmm波のほうへ(またはそれを越えて)スケーリングすることを困難にすることになる、限界および根底にある問題点に直面することが予想される。モバイルデータ、コンテンツストリーミングなど、新しいサービスのために、より高い帯域幅についての需要がますます上方に促進されるにつれて、単一の送信機タワーによってカバーされるエリア(または「セル」)のサイズがますます小さくなった。この傾向は、しばしば「5G」と呼ばれる、5GHzを上回る周波数について続くことが予想される。セルタワーの現在の従来のインフラストラクチャは、その限界にすでに近づいており、ワイヤレス通信ネットワークが、高い周波数および高いデータレートにおいて動作する、見通し線、ポイントツーマルチポイントシステムのほうへますます多く移るにつれて、新しい手法が必要とされる。そのような高周波通信、たとえばmm波はまた、ビームフォーミングおよびビームステアリングを可能にするための大規模の多入力多出力アンテナアーキテクチャの使用からかなり恩恵を受け得る。高指向性動作が、マルチパス干渉に関する問題点を回避するのを助け得る。
【0073】
ますます多様で没入型のモバイルデータサービス、たとえば、高精細度ビデオストリーミング、クラウドベースサービス、拡張現実などについての消費者需要によって促進されて、次世代ワイヤレス通信ネットワークおよびシステムは、競争力を維持するために、高スループット、低レイテンシおよび信頼性を与える必要があることになる。たとえば、6GHzまで移ることが現在計画されているインフラストラクチャ以外に、十分に利用されておらず、10~50Gb毎秒の領域におけるデータレートを潜在的にサポートすることができる、mm波周波数において利用可能な追加の200GHzのスペクトルがある。
【0074】
広いスペクトルはそれが無制限であることを意味せず、他のサービスも、同じ、または隣接する、帯域を利用することになる。スペクトルのかなりの部分が単一の独立したモバイルネットワーク事業者にもっぱら許可される場合、スペクトル利用の非効率性があることになる。平均的な消費者は、3から30GHzまでの範囲のスペクトルをもつcm波と、mm波スペクトルとしての30から40GHzの間(300GHzまで)とを利用し得る。
【0075】
スマート都市インフラストラクチャ、ヘルスケア、自動運転車、および多くの他の適用例を含む、ミッションクリティカルなサービスのための60~70GHzにおけるスペクトル共有もある。そのようなサービスは、好ましくは、常時高速、低レイテンシ接続へのアクセスを有するべきであり、共有スペクトルが、デバイスが常に接続されることを保証するのを助ける潜在性を有する。
【0076】
本明細書は、隣接するトランスデューサ(たとえば、アンテナ)から放出される信号間の必要とされる位相シフトを生成することの複雑さおよびコストを低減しながら、フェーズドアレイのためのビームステアリングを実施し得る、位相シフタに関係する。特に、本明細書は、ビームフォーミングのための可変キャパシタンスのアクティブマトリックス制御を採用する。本明細書による位相シフタは、波を放出/受信する任意のトランスデューサとともに使用され得るが、無線トランシーバのために特に有用であり得る。
【0077】
本明細書はまた、位相シフタを組み込む、および無線信号、特に、ワイヤレス通信ネットワーク(たとえばモバイル/セルサービス)におけるデータ送信のために使用される5GHzを超える無線信号を中継するために構成され得る、無線トランシーバ(または単に「無線機」)について説明する。特徴の中でも、本明細書で説明される無線トランシーバは、コンパクトおよびロープロファイルであり得、これは、構築された環境における構造物への簡単な取付け、またはその構造物中への一体化を可能にする。本明細書による無線トランシーバは、窓ガラスへの取付け、または窓ガラス中への一体化に特に好適であり得る。
【0078】
これらの特徴は、範囲を改善すること、ブラインドスポットを低減すること、構造物の内部または地下(たとえばメトロトランジットシステム)に信号を中継することなどを行うために、無線トランシーバが構造物に追加されることを可能にする。
【0079】
無線適用例のほかに、同じ技術が、オーディオおよび/または超音波周波数およびデバイスにも適用され得る。
【0080】
また、
図1を参照すると、位相シフタ1が示されている。
【0081】
位相シフタ1は、アクティブマトリックストランジスタアレイ2と、アクティブマトリックストランジスタアレイ2によって制御される電圧制御キャパシタC(V)のアレイ3と、それぞれのキャパシタンスCblkによって電圧制御キャパシタC(V)のバンク3にAC結合されたK個の信号チャネルCh1、Ch2、...、Chk、...、ChKとを含む。
【0082】
また、
図2を参照すると、アクティブマトリックストランジスタアレイ2と、電圧制御キャパシタC(V)のアレイ3と、チャネルCh
1、...、CH
Kとの間の接続を示す回路図が示されている。
【0083】
アクティブマトリックストランジスタアレイ2は、トランジスタTのM×Nアレイを含み、n番目の列およびm番目の行におけるトランジスタがTn,mと示される。各トランジスタTn,mが、対応する蓄積キャパシタCsにわたる電圧バイアスを制御するように構成される。アレイ3の電圧制御キャパシタC(V)が、各蓄積キャパシタCsと並列に接続される。このようにして、各蓄積キャパシタCsにわたって適用される電圧Vn,mが、対応するトランジスタTn,mを使用して制御され、その電圧Vn,mは、次いで、それぞれの電圧制御キャパシタC(Vn,m)にわたるバイアスをも提供して、そのキャパシタンスを制御する。
【0084】
各信号チャネルCh
kが、第1の端部4
kと第2の端部5
kとを有し、たとえば図示のようにデカップリングキャパシタンスC
blkを使用して、第1の端部4
kと第2の端部5
kとの間のポイントにおいて1つまたは複数の電圧制御キャパシタC(V)にAC結合される。図の間の相関の容易さのために、A
1、...、A
k、...、A
Kと標示されたポイントが、
図1および
図2においてマークされる。ポイントA
1、...、A
Kは、電圧制御キャパシタンスC(V)のアレイ3とチャネルCh
1、...、Ch
kとの間の電気的接続を行うことのための物理的電気的端子に対応し得る。トランジスタT
n,mと、電圧制御キャパシタC(V
n,m)と、信号チャネルCh
kとの間の1:1の対応を示し、したがって、K=N.Mである、
図2が描かれているが、概して、トランジスタT
n,mの数N.Mは、電圧制御キャパシタC(V)の数よりも多いことがあり、同様に、アレイ3を形成する電圧制御キャパシタC(V
n,m)の数は、信号チャネルの数Kを超え、すなわち、N.M≧Kであり得る。ポイントA
kは、対応するトランジスタT
n,mについて説明するとき、時々、等価的にポイントA
n,mと呼ばれることがある。
【0085】
位相シフタ1は、所与の信号チャネルCh
kに適用される位相シフトφ
kを、その信号チャネルCh
kに結合された、蓄積キャパシタC
sと、対応する電圧制御キャパシタC(V
n,m)とにわたる電圧V
n,mを設定することによって制御するように構成される。特に
図2を参照すると、トランジスタT
n,mの駆動線路D
nが、所望の電圧V
n,mに設定され、トランジスタT
n,mのゲートが、信号線路S
mを使用して開に切り替えられる。
図1に示されている例示的な位相シフタ1では、アクティブマトリックストランジスタアレイ2は、1つまたは複数のデジタル電子プロセッサ7と、プログラムコードを記憶するメモリ8および不揮発性ストレージ(図示せず)とを含む、コントローラ6によって制御される。コントローラ6、またはコントローラの機能は、位相シフタ1を組み込むデバイスの、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、特定用途向け集積回路(ASIC)、中央処理ユニット(CPU)などによって提供され得る。
【0086】
電圧制御キャパシタC(Vn,m)は、デバイスにわたる電圧入力および/または適用されるバイアスの関数として変動され得るキャパシタンスを有する任意のデバイスによって提供され得る。電圧制御キャパシタC(Vn,m)の例は、(「バリキャップ」と呼ばれることがある)バラクタダイオード、強誘電体キャパシタ、または、空乏層の幅の変調、誘電率の変調など、幾何学的影響に少なくとも部分的に基づく任意の他のデバイスを含む。電圧制御キャパシタC(Vn,m)のタイプに応じて、蓄積キャパシタにわたる電圧Vn,mは、バラクタなどのダイオードベース電圧制御キャパシタC(Vn,m)への逆バイアスとして適用され得る。
【0087】
各信号チャネルCh
1、...、Ch
Kが、単一の導体であり得るが、より一般的には、伝送線路、たとえば、マイクロストリップ伝送線路、ワイヤのツイストペア、同軸ケーブルなどであることになる。多数のK個のチャネルでは、マイクロストリップ伝送線路が、最も実際的であり得る。各信号チャネルCh
kは、
図2に示されているように、単一の電圧制御キャパシタC(V
n,m)に結合され得る。この場合、信号チャネルCh
kに結合された総実効キャパシタンスC
effは、
である。
【0088】
蓄積キャパシタンスCsの、電圧制御キャパシタンスC(Vn,m)との並列の加算、およびそれらの和の、デカップリングキャパシタンスCblkとの直列の(相互の)組合せによる。所与の電圧制御キャパシタンスC(Vn,m)を使用して達成可能なキャパシタンスΔCの所与の範囲について、位相シフトφkの最も広い可能な範囲を達成するために、実効キャパシタンスCeffへの可変キャパシタンスの寄与が最大化されるべきであることが観測され得る。これは、蓄積キャパシタンスCsをできるだけ小さくなるように選択することと、デカップリングキャパシタンスCblkを、蓄積キャパシタンスCsと電圧制御キャパシタンスC(Vn,m)との和よりも著しく大きく(たとえば10倍またはそれよりも大きく)なるように選択することとによって行われる。実際には、蓄積キャパシタンスCsにわたる電圧Vn,mと、電圧制御キャパシタンスC(Vn,m)とは、漏れ電流により時間とともに減衰することになり、周期的リフレッシュを必要とすることになる。蓄積キャパシタンスCsの最小サイズに関する制限は、蓄積キャパシタンスCsが、電圧制御キャパシタンスC(Vn,m)にわたるバイアス電圧Vn,mを、トランジスタTn,mをアドレス指定する間の期間の間、許容範囲内に維持するのに十分に大きいべきであることである。漏れ電流に応じて、いくつかの場合には、蓄積キャパシタンスCsは、(高い漏れの場合)電圧制御キャパシタンスC(Vn,m)よりも大きいことがあるが、蓄積キャパシタンスは、電圧制御キャパシタンスC(Vn,m)を通る漏れ電流が十分に低い場合、完全に省略され得る。このコンテキストでは、漏れ電流は、トランジスタTn,mのアドレス指定中に設定された電圧Vn,mが、次にトランジスタTn,mがアドレス指定されるときまで所望の範囲内に維持され得る場合、十分に低い。
【0089】
結合された実効キャパシタンスにおける総シフトが、単一の電圧制御キャパシタンスC(Vn,m)によって提供され得るものよりも必要とされる場合、2つまたはそれ以上が、並列に信号チャネルChkに結合され得る。
【0090】
また、
図3を参照すると、単一の信号チャネルCh
kを2つまたはそれ以上の電圧制御キャパシタンスC(V
n,m)に結合することの一例が示されている。
【0091】
3つの異なるトランジスタT
n1,m1、T
n2,m2、T
n3,m3に対応する電圧制御キャパシタンスC(V
n,m)が、信号チャネルCh
kに並列に結合される。トランジスタT
n1,m1、T
n2,m2、T
n3,m3は、原則として、アクティブマトリックストランジスタアレイ中の任意のロケーションにあり得るが、実際には、接続のルーティングを簡略化するために、トランジスタT
n1,m1、T
n2,m2、T
n3,m3は、好ましくは、アレイ2中で隣接する。デカップリングキャパシタンスC
blkは、DCレベルが、電圧制御キャパシタンスC(V
n,m)の間で、および電圧制御キャパシタンスC(V
n,m)と信号チャネルCh
kとの間で干渉するのを防ぐ。各分岐が、式(1)としての実効キャパシタンスを有し、したがって、
図3の並列結合された構成では、全体的な結合されたキャパシタンスC
effは、
になる。
【0092】
デカップリングキャパシタンスが、各分母がCblkとして近似され得るように、上記で説明されたように著しくより大きく(たとえば10倍またはそれよりも大きく)なるように選択された場合、全体的な結合されたキャパシタンスCeffは、
Ceff≒3Cs+C(Vn1,m1)+C(Vn2,m2)+C(Vn3,m3) (3)
として近似され得る。
【0093】
可能なキャパシタンスシフトの相対サイズは影響を受けないことになるが、キャパシタンス変動の絶対範囲は3倍に増加され得る。この場合も、蓄積キャパシタCsは、漏れ電流が十分に低い場合、省略され得る。
【0094】
概して、結合された電圧制御キャパシタンスC(V
n,m)は、互いから独立して設定され得るが、ペアまたは3つすべてが、同じ電圧V
n,mに設定され得る。3つすべてが、同じ電圧に設定されることになる、すなわち、V
n1,m1=V
n2,m2=V
n3,m3である、特殊な場合には、
図3の構成は、複数の電圧制御キャパシタンスC(V
n,m)を単一の蓄積キャパシタンスC
sと並列に接続することによって簡略化され得る。
【0095】
図3における例は、並列の3つの電圧制御キャパシタンスC(V
n,m)への結合を示すが、より少ない(すなわち2つの)、またはより多くの(すなわち4つまたはそれよりも多くの)電圧制御キャパシタンスC(V
n,m)を並列に接続するために適応され得る。
【0096】
アクティブマトリックストランジスタアレイ2を提供する各トランジスタT
n,mが任意のタイプのものであり得るが、実際的には、好ましくは、アクティブマトリックストランジスタアレイ2を提供するすべてのトランジスタT
n,mが、実質的に同等であり、共通基板上に形成される。アクティブマトリックストランジスタアレイ2を提供するトランジスタT
n,mが薄膜トランジスタの形態をとる、たとえばアモルファスシリコン層において画定されるとき、これは、コンピュータディスプレイなどのために使用される既存のガラス上TFT(TFT-on-glass)生産ラインを使用することが可能であることに関して有利であり得る。
図8~
図14に関して以下で説明されるように、これはまた、位相シフタ1(および位相シフタ1を含む無線機14)の他の構成要素の一部または全部が、アクティブマトリックストランジスタアレイ2と同時におよび/または同じ基板上に形成されることを可能にし得、これは、高度の一体化を提供する。
【0097】
位相画像
再び
図1を参照すると、位相シフタ1は、位相画像9を受信または生成するように構成され得る。
【0098】
位相画像9の各ピクセルが、アクティブマトリックストランジスタアレイ2のトランジスタTn,mに対応し、そのピクセルの値/強度は、関連する蓄積キャパシタCsへの適用のための電圧Vn,mに対応する。たとえば、トランジスタTn,mに対応する位相画像9のピクセルをPn,mとして示すと、そのピクセルは、値、たとえば0≦Pn,m≦255を記憶し得、この値は、電圧制御キャパシタC(Vn,m)(および、含まれる場合、並列に接続された蓄積キャパシタCs)に適用され得る最大バイアス電圧Vmaxの分数Pn,m/255に変換され得る。
【0099】
このようにして、位相シフタ1(たとえばコントローラ6)は、単に位相画像9をとり、位相画像9のそれぞれのピクセルPn,mに従って各蓄積キャパシタCsについて電圧Vn,mを設定し得る。0≦Pn,m≦255である例では、電圧は、Vn,m=Vmax(Pn,m/255)として設定され得る。位相画像9は、コントローラ6の内部不揮発性ストレージ(図示せず)に記憶されるか、同じく位相シフタ1の構成要素である、コントローラ6とは別個の不揮発性ストレージデバイス10に記憶され得るか、または、たとえば、位相シフタ2を組み込むデバイスのCPU(図示せず)から、位相シフタ1によって受信され得る。いくつかの実装形態では、コントローラ6は、所望のビームフォーミング角度/方向を示すコマンド11を受信したことに応答して、要求に応じて位相画像9を生成し得る。後者の実装形態では、位相シフタ1(またはコントローラ6)はまた、位相シフタ1を介してフェーズドアレイとして駆動されているトランスデューサのアレイのジオメトリ(相対位置)および随意に放出パターンを詳述する、情報を記憶または受信するべきである。
【0100】
位相画像9の使用は、アクティブマトリックスディスプレイにおいて使用するためにすでに開発された制御回路の使用または適応を可能にし得る。そのような制御回路は、すでに、ディスプレイの何百万個ものピクセルのための電圧を制御することが可能である。
【0101】
位相画像9は、代替的に、「ホログラム」として説明され得、本明細書では、「ホログラム」という用語はまた、位相シフタ1によって異なる量だけ位相シフトされた信号間の干渉によって形成される3D波パターンについて説明するために使用され得る。言い換えれば、「ホログラム」という用語は、位相画像9に適用され、位相シフタ1を通した送信の後の得られた位相シフトされた電気的信号に、および/またはその位相シフトされた電気的信号に基づいて放出される波パターンに適用され得る。
【0102】
チャネル中処理(In-channel processing)
1つまたは複数の可変および制御キャパシタンスC(Vn,m)を各信号チャネルChkに結合する主な機能に加えて、位相シフタ1は、追加の信号処理機能をもサポートし得る。
【0103】
また、
図4を参照すると、信号チャネルCh
kが、結合された電圧制御キャパシタンスC(V
n,m)、およびアクティブマトリックストランジスタアレイ2の関連部分とともに示されている。
【0104】
図4に示されている例では、単一の電圧制御キャパシタンスC(V
n,m)が、(代替的にA
n,mによって示され得る)接続ポイントA
kを介してk番目の信号チャネルCh
kに結合される。しかしながら、他の例では、複数の電圧制御キャパシタンスC(V
n,m)が、
図3に示されているようにk番目の信号チャネルCh
kに結合され得る。上記で説明されたように、接続ポイントA
kは、物理的端子であり得るが、デカップリングキャパシタンスC
blkは、代わりに、信号チャネルCh
kに直接接続され得る。
【0105】
信号チャネルChk、または各信号チャネルChkは、随意に、それぞれの第1の端部4kと第2の端部5kとの間に1つまたは複数の増幅器12を含み得る。増幅器12は、(1つまたは複数の)電圧制御キャパシタC(Vn,m)に結合するポイントの前におよび/または後に置かれ得る。増幅器12は、位相シフタが展開される適用例のための信号調整を提供するための任意の好適なタイプのものであり得る。たとえば、送信アレイのビームフォーミングのために使用される場合、一部または全部の信号チャネルChkが、対応するトランスデューサを駆動するための電力増幅器の形態の増幅器12を含み得る。代替的に、受信/検出アレイに対するビームフォーミングのために使用される場合、一部または全部の信号チャネルChkが、受信された信号を増幅するための低雑音増幅器の形態の増幅器12を含み得る。
【0106】
同様に、信号チャネルChk、または各信号チャネルChkは、随意に、それぞれの第1の端部4kと第2の端部5kとの間に1つまたは複数のフィルタ13を含み得る。フィルタ13は、(1つまたは複数の)電圧制御キャパシタC(Vn,m)に結合するポイントの前におよび/または後に置かれ得る。フィルタ13は、アクティブタイプまたはパッシブタイプであり得る。信号チャネルChkが伝送線路の形態をとるとき、1つまたは複数のフィルタ13は、伝送線路と一体に、たとえば、分散要素フィルタ、膜バルク音響共振器(FBAR)、メタマテリアルフィルタなどとして、形成され得る。
【0107】
信号チャネルCHkの一部または全部が、各フィルタ13が別個の帯域幅を有する、2つまたはそれ以上のフィルタ13間で切替え可能であり得る。信号チャネルChkは、トランジスタ(図示せず)を使用して2つまたはそれ以上のフィルタ13間で切替え可能であり得、トランジスタは、アクティブマトリックストランジスタアレイ2とは別個であり得るが、好ましくは、複雑さを低減し、長距離相互接続を回避するために、アクティブマトリックストランジスタアレイ2と一体に形成されることになる。
【0108】
無線トランシーバ
位相シフタ1が、無線周波数信号に位相シフトφkを適用するように構成され得る。
【0109】
また、
図5を参照すると、位相シフタ1を含む無線機14。
【0110】
無線機14は、位相シフタ1を介してK個のアンテナ17(第1のアンテナ)を含むアレイ16に接続された無線トランシーバ回路15を含む。各アンテナ17kが、位相シフタ1のそれぞれの信号チャネルChkを介して無線トランシーバ回路15に接続される。
【0111】
位相シフタ1は、5GHzから300GHzの間の、および5GHzと300GHzとを含む、キャリア周波数を有する無線周波数信号のために構成される。この構成は、主に、可変キャパシタンスC(V)のサイズおよび範囲によって提供され、そのサイズおよび範囲は、所望の動作周波数範囲、アンテナ17k、17k+1の間隔dなどが与えられれば、範囲0~πの可能な限り広がる位相変化φを提供するように選択される必要がある。
【0112】
無線周波数トランシーバ回路15は、位相シフタ1を使用して、アンテナ171、...、17Kによって受信されるおよび/またはアンテナ171、...、アンテナ17Kから送信される無線信号18のビームフォーミングを実施することによって、(第1の)フェーズドアレイとしてアンテナ171、...、17Kのアレイ16を制御するように構成される。たとえば、無線トランシーバ15回路は、制御信号19を位相シフタ1に送る。制御信号19は、位相画像9および/または命令11を送ることを含む、位相シフタ1の構成に応じた任意の好適な形態をとり得る。一例として、命令11は、所望のビームフォーミング角度θを識別し得、位相シフタ1は、対応する位相画像9(または任意の機械可読フォーマットにおいて記憶された対応する電圧Vn,m)を取り出すためにルックアップテーブルを使用し得る。
【0113】
アレイ16を形成するアンテナ171、...、17Kは、実質的に同一平面上にあるように配設され得る。現在説明されている位相シフタ1は、位相シフタ1の構成要素トランジスタTn,mおよび電圧制御キャパシタC(Vn,m)に対応するように位置合わせされた平面アンテナと組み合わせられる(さらには、以下で説明されるように一体化される)とき、特に有用であり得る。これは、そのようなアレイ中のアンテナの数が極めて多いことがあり、本明細書で説明される位相シフタ1は、多数のK個のアンテナ17kに比較的容易にスケーリングされ得るからである。たとえば、Kは、数十万、さらには数百万であり得、そのような数のアンテナ17kを画定することは、(たとえば、それぞれのトランジスタTn,mおよび電圧制御キャパシタC(V)とコロケートされた)平面アンテナとしてそれらのアンテナをパターニングすることによって以外に、実際的でないことがある。
【0114】
平面20に沿って間隔dにおいて離間されたアンテナ171、...、17Kでは、隣接するアンテナ17k、17k±1が、d.sin(θ)の経路長差で、その平面に対する法線21に対して角度θから入射する信号18を受信することになる。角度θにおいて受信/送信するためにビームフォーミングするために、無線トランシーバ回路15は、各信号チャネルCh1、...、ChKに導入される位相φ1、...、φKを制御して、経路長差d.sin(θ)を補償する。もちろん、補償を必要とする正確な経路長差は、もちろんアレイ16のジオメトリに依存することになる。説明される例が、平面上に配置されたアンテナ17kを有するが、これは必要でなく、概して、アンテナ17kは3次元配置を採用し得る(および、位相シフタ1は、適切な経路長差について較正され得る)。
【0115】
無線周波数トランシーバ回路15は、無線受信機、送信機、またはその両方(時間多重化またはコンカレントに)として構成され得る。無線機14は、ワイヤレス通信ネットワークの基地局として、またはワイヤレス通信ネットワークの一部において信号18を中継するために使用され得る。
【0116】
図5では、アンテナ17の数が信号チャネルCh
kの数に等しい状態で示されているが、これは必須でなく、第1のアンテナ17の数は、位相シフタ1の信号チャネルCh
kの数Kよりも少ないことがある(とはいえ、これは最適効率のために選好されない)。
【0117】
各信号チャネルChkは、無線トランシーバ回路15の対応するポートによって駆動/受信され得るが、これは、信号チャネルChkの数Kが増加されるにつれて、実際的でなくなり得る。それはまた、(1つまたは複数の)接続された電圧制御キャパシタC(V)に結合することによる、各信号チャネルChkへの異なる位相φkの導入が、すべての信号チャネルChkが同相で駆動/受信されることを可能にし、ビームフォーミングが、導入された位相φkによって完全に提供されるので、不必要である。信号チャネルChkごとのポートとは反対に、信号チャネルCh1、...、ChKのすべてが、無線トランシーバ回路15の単一のポートによって駆動/受信され得る。
【0118】
いくつかの実装形態では、ビームフォーミングが、従来の方法と位相シフタ1とのハイブリッドを使用して遂行され得る。説明の目的で、K=100個のアンテナ171、...、17100のアレイ、および対応する信号チャネルCh1、...、Ch100について考える。無線周波数トランシーバ回路15は、信号を駆動/受信するための10個のポートを有し得、それぞれの第1の位相差Ψ1、...、Ψj、...、Ψ10で、各々から駆動/受信するように構成され得る。10個の信号チャネルCh1、...、Ch10の第1のグループにおいて信号に適用される総位相差は、その場合、(1≦k≦10について)和Ψ1+φkであることになり、10個の各グループについて以下同様である。このようにして、無線トランシーバ回路15は、粗いビームフォーミングを提供し得、位相シフタ1は、細かいビームフォーミングの第2の層を提供する。これは、無線トランシーバ回路15のみを使用して可能であることになるものよりも、多数のアンテナ17をビームフォーミングすることを可能にしながら、位相シフタ1のみを使用して可能であることになるものよりも、広い範囲の角度θへビームフォーミングすることをも可能にし得る。
【0119】
必要ではないが、アンテナ17が、アクティブマトリックスアレイ2と電圧制御キャパシタC(V)のアレイとに適合するアレイ16で配置されれば、有利であり得る。
【0120】
また、
図6を参照すると、アンテナ17の例示的なアレイ16が示されている。
【0121】
アンテナ17のアレイ16のジオメトリは、アクティブマトリックストランジスタアレイ2のジオメトリに対応する。アレイ16は、各トランジスタTn,mに対応するアンテナ17n,mを含み、アンテナ17n,mは、第1の方向xに沿って間隔dxで、および第2の、垂直方向yに沿って間隔dyで、矩形アレイを形成する。
【0122】
また、
図7を参照すると、n番目の列およびm番目の行のアンテナ17
n,mをそれぞれの信号チャネルCh
n,mを介して無線周波数トランシーバ回路15に接続する、位相シフタ1の一部分が示されている。
【0123】
図3に関して説明された、電圧制御キャパシタC(V
n,m)と信号チャネルCh
n,mとの1:1のマッピングが
図7に示されているが、各信号チャネルCh
n,mが、代わりに、2つまたはそれ以上の電圧制御キャパシタC(V)に結合され得る。そのような構成では、トランジスタTの数とアンテナ17の数とは一致しないことになり、代わりに、各アンテナ17が、対応する電圧制御キャパシタC(V)を制御するトランジスタTのグループに対応するように位置決めされることになる。
【0124】
各アンテナ17
n,mは、1つまたは複数の増幅器12
n,mを介して位相シフタ1のそれぞれの信号チャネルCh
n,mに接続される。
図7では信号チャネルCh
n,mおよび位相シフタ1の外部のものとして示されているが、他の例では、増幅器12
n,mは、信号チャネルCh
n,mおよび/または位相シフタ1の一部として一体化され得る(
図4参照)。
【0125】
無線信号18の受信のために使用されるとき、増幅器12n,mは、好ましくは、検出された信号を増幅するための低雑音増幅器、または等価物の形態をとる。無線信号18の送信のために使用されるとき、増幅器12n,mは、好ましくは、それぞれのアンテナ17n,mによる送信より前に信号をブーストするための電力増幅器、または等価物の形態をとる。無線機14が受信することと送信することとの両方(たとえば信号を中継するための、トランシーバ機能)のために使用されるとき、いくつかのオプションがある。1つのオプションは、各アンテナ17n,mが、受信モードにおける低雑音増幅器と送信モードにおける電力増幅器との間で切替え可能である経路(図示せず)を介して、位相シフタ1のそれぞれの信号チャネルChn,mに接続され得ることである。その切換えは、アクティブマトリックストランジスタアレイ2を組成するトランジスタTn,mと一体に形成される追加のトランジスタを使用して実装され得る。無線機14は、次いで、信号チャネルCh1、...、ChN,Mの1つのセットを使用して、受信および送信機能を時間多重化し得る。
【0126】
代替実装形態では、アンテナ17n,mのサブセットは、受信のための1つまたは複数の低雑音増幅器12n,mを介して位相シフタ1のそれぞれの信号チャネルChn,mに接続され得、アンテナ17n,mのサブセットの補集合は、送信のための1つまたは複数の電力増幅器12n,mを介して位相シフタ1のそれぞれの信号チャネルChn,mに接続される。たとえば、偶数行mおよび列nが受信アンテナ17n,mに対応し得、奇数行mおよび列nが送信アンテナ17n,mに対応し得る。
【0127】
同様に、各アンテナ17n,mが、位相シフタ1の外部および/または内部にあり(たとえば、それぞれの信号チャネルChn,mと一体化され)得る、1つまたは複数のフィルタ13n,mを介して、位相シフタ1のそれぞれの信号チャネルChn,mに接続され得る。
【0128】
無線機構成要素の一体化
また、
図8を参照すると、無線機14構成要素の第1の一体化された構成(以下「第1の構成」)22が示されている。
【0129】
第1の構成22では、アクティブマトリックストランジスタアレイ2、T
n,mと、蓄積キャパシタC
sおよびデカップリングキャパシタC
blkのバンク23と、電圧制御キャパシタC(V)のアレイ3とが、すべて共通基板24によって支持される。信号チャネルCh
1、...、Ch
Kも、共通基板24によって支持される。たとえば、
図8は、電圧制御キャパシタC(V)に対して共通基板24の反対の面上で支持される信号チャネルCh
1、...、Ch
Kを示し、これは、共通基板24の厚さを通って形成されるビア(図示せず)を使用して最小長さ接続を可能にする。
【0130】
共通基板24は、可とう性の膜またはシート、たとえば、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレートPEN、シクロオレフィンポリマー(COP)、または回路を支持するのに十分な機械的強度を有する任意の他のポリマーなど、ポリマーの形態をとり得る。他の例では、共通基板24は、多層プリント回路板の形態をとり得る。共通基板24のための別のオプションはガラスであり、これは、それが、ディスプレイ製造において使用される技法および/または生産施設が、(随意に、アンテナ17など、無線機14のさらなる構成要素を含む)位相シフタ1の生産のために適応/再利用されることを可能にし得るので、有利であり得る。
【0131】
共通基板24は透明であり、たとえば、可視波長(たとえば380nmから750nmの間の範囲)について50%の最小透過率を有し得る。
【0132】
図8には示されていないが、平面アンテナ17
n,mのアレイ16が、共通基板24の上に重なって位置合わせされた第2の基板(図示せず)上に形成され得る。代替的に、平面アンテナ17
n,mのアレイ16が、位相シフタ1の構成要素が散在している、同じ共通基板24上で支持され得る。
【0133】
位相シフタ1の電気的構成要素が、共通基板24の一方または両方の側上で支持、堆積、パターニングおよび/または一体化され得る。位相シフタ1の電気的構成要素は、たとえば、アクティブマトリックストランジスタアレイ2のトランジスタTn,m、蓄積キャパシタCs、デカップリングキャパシタCblk、アレイ3の電圧制御キャパシタC(Vn,m)、信号チャネルChk(たとえば伝送線路)などを含み得る。位相シフタ1の電気的構成要素は、1つまたは複数の増幅器12、フィルタ13などをも含み得る。無線機14の追加の構成要素、たとえば、アンテナ17のアレイ16、無線周波数トランシーバ回路15などが、さらに、共通基板24の一方または両方の側上で支持、堆積、パターニングおよび/または一体化され得る。共通基板24の両面上で支持された位相シフタ1および/または無線機14の電気的構成要素間の相互接続が、スルービアを使用して提供され得る。
【0134】
共通基板24は、複数の層の積層体の形態をとり得、この積層体の各層が、非積層共通基板について本明細書で述べられる材料のいずれか、たとえば、ガラス、プラスチックおよび/または接着剤の1つまたは複数の層から形成され得る。共通基板24が積層体であるとき、位相シフタ1(および/または無線機14)の1つまたは複数の電気的構成要素が、積層共通基板24の1つまたは複数の内部層上でおよび/またはその内部層内で支持、堆積、パターニングおよび/または場合によっては一体化され得る。積層体の形態の共通基板24が、内部にあり(すなわち、第1の面と第2の面との間にあり)、および/または外部にあり(すなわち、第1の面および/または第2の面上で支持され)得る、1つまたは複数の導体層を含み得る。
【0135】
アクティブマトリックストランジスタアレイ2は、共通基板24上でおよび/または共通基板24中で一体化され得、たとえば、共通基板24は、ガラス基板、または薄膜トランジスタ(TFT)作製方法に適合する他の基板であり得、アクティブマトリックストランジスタアレイ2は、TFTによって提供され得る。代替的に、アクティブマトリックストランジスタアレイは、共通基板24に(より詳細には、その上に支持された導電性トラックおよび/または他の構成要素に)フリップチップボンディングされたスタンドアロン構成要素(たとえば半導体ダイ)であり得る。同様に、蓄積キャパシタCsと、デカップリングキャパシタCblkと、電圧制御キャパシタンスC(V)と、位相シフタ1または無線機14の他の構成要素とのいずれかまたはすべてが、共通基板24上でおよび/または共通基板24中で一体化され得、あるいは、代わりに、共通基板24にボンディング(たとえばフリップチップボンディング)された別個の構成要素であり得る。
【0136】
信号チャネルChkは、導電性層を堆積させ、パターニングすることによって、共通基板24上に(または積層体の内部層上に)形成され得る。好ましくは、信号チャネルChkは、マイクロストリップ伝送線路として形成される。共通基板24の一方の側上で支持されるように示されているが、信号チャネルChkは、両方の側上に形成され、ビア(図示せず)によって接続され得る。共通基板24の両面上で支持されたマイクロストリップ線路、および他のマイクロストリップ線路および/または他の構成要素間で接続するために使用されるとき、ビアは、好ましくは、マイクロストリップ線路にインピーダンス整合されるべきである。たとえば、共通基板24の両面間の放射性伝達または容量性結合と比較して、そのような物理的接続は、共通基板24が、低い誘電損特性を有する1つまたは複数の材料から形成されることを必要としない。必要とはされないが、低い誘電損特性を有する材料が、なお使用され得る。
【0137】
位相シフタ1(または無線機14)の1つまたは複数の電気的構成要素が共通基板24にフリップチップボンディングされるとき、そのような構成要素は、ヘテロジニアスインテグレーションロードマップ(HIR)に従って共通基板24にフリップチップボンディングされ得る。ヘテロジニアスインテグレーションロードマップ(HIR)は、シリコンシステムインパッケージ(SiP)技術のために開発されたガイドラインのセットである。HIRは、たとえば、HIR2019版の刊行物において提示されたガイドラインを指し得る。
【0138】
位相シフタ2がフィルタ13を含む場合、フィルタ13は、さらに、共通基板24によって支持され得る。たとえば、フィルタ13は、分散要素フィルタ、膜バルク音響共振器(FBAR)、薄膜バルク音響共振器(TFBAR)、メタマテリアルフィルタなどのうちの1つまたは複数の形態で信号チャネルChk中に一体化され得る。無線機14のための位相シフタ1において使用するのに好適なメタマテリアルフィルタは、限定されることなしに、「Metamaterial Structure Inspired Miniature RF/Microwave Filters」、Abdullah Alburaikan、PhD Thesis(2016)、The University of Manchester、https://www.escholar.manchester.ac.uk/uk-ac-man-scw:305308(特に56ページ以降を参照)で説明されるメタマテリアルフィルタを含む。フィルタは、共通基板24(または積層体の内部層)上に直接形成され得るか、または代替的に、1つまたは複数のスタンドアロンフィルタ/フィルタバンクが、共通基板24に取り付けられ(たとえばフリップチップボンディングされ)得る。
【0139】
上記で説明されるように、信号チャネルCh1、...、ChKの一部(または全部)が、各フィルタ13が別個の周波数帯域幅を有する、2つまたはそれ以上のフィルタ13間で切替え可能であり得る。切換えのために使用されるトランジスタ(図示せず)が、共通基板24上で支持され得るが、好ましくは、アクティブマトリックストランジスタアレイ2と一体に形成される。このようにしてフィルタ13間で切り替えることは、無線機14が、異なる周波数帯域間で切替え可能であることを可能にし得る。位相画像9の異なるセットが、(所与の物理的経路差が、異なる位相に対応するので)異なる周波数帯域のために使用(または生成)され得ることに留意されたい。
【0140】
共通基板は、ヒートスプレッダ層(図示せず)を組み込むかまたは支持し得る。ヒートスプレッダ層(図示せず)は、共通基板24と一体に形成される、ヘテロジニアスインテグレーション作製プロセスの間に組み込まれる、共通基板24の上に堆積される、などであり得る。含まれるとき、ヒートスプレッダ層(図示せず)は、ファンまたは他の冷却方法を必要とすることなしに、より高い電力における動作、ならびに/またはより高い密度の電気的構成要素および相互接続を使用することを、可能にし得る。たとえば、位相シフタ2のための接地平面層(図示せず)が、銅(または高い電気および熱コンダクタンスをもつ他の材料)から形成され、さらに、ヒートスプレッダ層として働き得る。
【0141】
位相シフタ2が増幅器12を含む場合、それらの増幅器12は、さらに、共通基板24によって支持され得る。たとえば、位相シフタ1は、共通基板24によって支持されたCMOS増幅器の形態の1つまたは複数の増幅器を含み得る。
【0142】
また、
図9を参照すると、無線機14構成要素の第2の一体化された構成(以下「第2の構成」)25が示されている。
【0143】
第2の構成25は、キャパシタC
s、C
blkのバンク23が、さらに、単一の構成要素として、アクティブマトリックストランジスタアレイ2と一体化されることを除いて、第1の構成22と実質的に同じである。
図10に関してさらに説明されるように、追加の導体が、トランジスタT
n,mを画定する構造内にキャパシタを形成するように配置およびパターニングされ得る。
【0144】
一体化されたデバイス構造
また、
図10を参照すると、アクティブマトリックストランジスタアレイ2と、電圧制御キャパシタンスC(V)のアレイ3と、信号チャネルCh
kとが、一体型デバイス構造26中に形成され得る。
【0145】
図10は、単一のトランジスタT
n,mおよび関連する信号チャネルCh
kに対応する、一体型デバイス構造26の一部分のみを示す。一体型デバイス構造26は、単一の半導体ダイ上に、または共通基板24上に直接、形成され得る。たとえば、TFT作製プロセスが、ガラス基板の形態の共通基板24上に一体型デバイス構造26を作り出すように適応され得る。
【0146】
いくつかの例では共通基板24であり得る、基板27が、第1の面28と第2の面29とを有する。アドレス指定(走査)線路Smが、第2の面29上で支持され、スルービア31によって、対応するトランジスタTn,mのゲート電極30に接続される。ゲート電極30は、第1の誘電体領域32によって全体的に覆われ、第1の誘電体領域32は、半導体層33によって覆われる。半導体層33は、n形またはp形であり得る。半導体層33の領域34と領域35とが、反対に、バルクにドープされて、トランジスタTn,mのためのソースおよびドレインを形成する。半導体層33とソースおよびドレイン34、35のうちの1つまたは複数とは、第2の誘電体層36によって覆われ得る。トランジスタTn,mチャネルの一方の端部34は、駆動(データ)線路Dnによって接触され、他方の端部35は、第1の導電性相互接続37に接続され、第1の導電性相互接続37は、第1の面28に沿って延びて、1つの電極に蓄積キャパシタCsと電圧制御キャパシタンスC(V)との各々を提供する。
【0147】
第1の導電性相互接続37は、順番通り、nドープ半導体層38と、真性半導体層39と、pドープ半導体層40とを支持する。第3の誘電体層41が、蓄積キャパシタンスCsに対応する第1の導電性相互接続37の領域と、半導体層38、39、40とを覆う。半導体層38、39、40の上に重なって、ギャップ42が、第3の誘電体層41中に形成され、第2の導電性相互接続43が、第3の誘電体層の上に形成されて、蓄積キャパシタンスCsおよび電圧制御キャパシタC(V)を完成させ、また、基板に沿って延びて、デカップリングキャパシタンスCblkの電極を提供する。
【0148】
蓄積キャパシタンスCsまたは電圧制御キャパシタンスC(V)に対応しない第2の導電性相互接続43の領域が、第4の誘電体層44によって覆われる。信号チャネルChk(たとえばマイクロストリップ伝送線路の1つの導体)は、第4の誘電体層44の上に形成されて、デカップリングキャパシタンスCblkを完成させる。
【0149】
キャパシタンスCs、C(V)、Cblkのいずれかまたはすべては、トランジスタTn,mと一体に形成される必要がなく、代わりに、たとえば、第2の面29に搭載され、追加のスルーホールビア(図示せず)を使用して接続された、(1つまたは複数の)別個の構成要素であり得る。特に、デカップリングキャパシタンスCblkは、好ましくは、蓄積キャパシタンスと可変キャパシタンスとの和Cs+C(V)よりも大きく、これは、一般に、デカップリングキャパシタンスCblkがより大きいエリアにわたって形成されることを必要とすることになる。これは、別個のデカップリングキャパシタンスCblkを使用して回避され得る。
【0150】
好ましくは、一体型デバイス構造26は、薄膜トランジスタ(TFT)アクティブマトリックスディスプレイの分野において知られている通常の方法および材料を使用して作られ得る。たとえば、(共通基板24であり得る)基板27はガラスであり得るが、アモルファスシリコン/酸化ケイ素が、それぞれ、半導体層および誘電体層のために使用される。導電性層が、金属、たとえばアルミニウムを使用して、堆積され得る。
【0151】
いくつかの例では、アンテナ17は、別個の基板(図示せず)上で支持され、任意の好適なタイプの電気的相互接続を使用して信号チャネルChkに接続され得る。
【0152】
寄生キャパシタンスおよびインダクタンスが、概して、相互接続の長さとともにスケーリングし、したがって、信号チャネルChkと、対応するアンテナ17kとの物理的分離を最小限に抑えることが有益であり得る。最小相互接続距離は、アンテナ17kが、信号チャネルChkと同じ基板(たとえば共通基板24または基板27)上で支持される場合、獲得され得る。たとえば、各アンテナ17kが、それぞれの信号チャネルChkを終端する平面アンテナの形態をとり得る。一体型デバイス構造の場合、平面アンテナ17kが、基板27の第1の面28または第2の面29のいずれか上に形成され、対応するトランジスタTn,mおよび電圧制御キャパシタンスC(Vn,m)に近接して位置決めされ得る。これは、高周波無線(たとえばmm波)のためのアンテナ17のサイズおよび間隔が、ディスプレイ目的のために日常的に作製されるピクセルサイズよりも大きい桁数であるので、レイアウトについて問題にならない。実際、これは、たとえば、フィルタ13間で切り替えること、増幅器12を提供することなどを行うための、追加のトランジスタ(図示せず)のために十分な空間を残す。
【0153】
位相シフタ1とともにアンテナ17kを共通基板24、27上に形成することおよび/または共通基板24、27上で支持することは、無線機14を製造することのコストおよび複雑さを低減し、ならびに無線機の物理的サイズを低減し得る。
【0154】
随意に、無線周波数トランシーバ回路15の1つの、一部または全部の構成要素が、位相シフタ1(および随意にアンテナ17)と同じ基板上、または同じ積層体内、たとえば共通基板24上で、一体化され得る。そのような構成要素は、位相シフタ1(および随意に第1のアンテナ17)を支持するかまたは含む基板または積層体、たとえば共通基板24に、フリップチップボンディングされ得る。
【0155】
平面アンテナの例
また、
図11を参照すると、第1の例示的なアンテナアレイ(以下「第1のアンテナアレイ」)45が示されている。
【0156】
第1のアンテナアレイ45は、矩形平面アンテナ46の矩形アレイであり、その各々が、無線機14のためのアンテナ17のアレイ16を提供し得る。矩形平面アンテナ46は、基板47上で支持される。基板47は、車両、建築物などの窓上に第1のアンテナアレイ45を搭載することを容易にするために透明であり得る。基板47は、共通基板24、および/または一体型デバイス構造26の基板37であり得る。
【0157】
矩形として示されているが、矩形平面アンテナ46は正方形であり得る。矩形アレイ45において示されているが、矩形平面アンテナ46は、アレイの任意の(格子)タイプまたは形状に従って編成され得る。3×9アレイ45が
図11に示されているが、矩形平面アンテナ46のアレイ45は、任意の数M、Nの行および/または列を含み得る。
【0158】
また、
図12を参照すると、第2の例示的なアンテナアレイ(以下「第2のアンテナアレイ」)48が示されている。
【0159】
第2のアンテナアレイ48は、リング(または「ループ」)平面アンテナ49の正方形アレイであり、その各々が、無線機14のためのアンテナ17のアレイ16を提供し得る。リング平面アンテナ49は、矩形アンテナ46と同じやり方で基板47上で支持される。
【0160】
円形として示されているが、リング平面アンテナ49は、任意の形状、たとえば、楕円形、正方形などをとり得る。正方形アレイ48において示されているが、リング平面アンテナ49は、アレイの任意の(格子)タイプまたは形状に従って編成され得る。4×4アレイ48が
図12に示されているが、リング平面アンテナ49のアレイ48は、任意の数M、Nの行および/または列を含み得る。
【0161】
また、
図13を参照すると、第3の例示的なアンテナアレイ(以下「第3のアンテナアレイ」)50が示されている。
【0162】
第3のアンテナアレイ50は、ビバルディ平面アンテナ51の矩形アレイであり、その各々が、無線機14のためのアンテナ17のアレイ16を提供し得る。ビバルディアンテナは指向性であり、各ビバルディ平面アンテナ51が、放出方向(図示された軸を使用して正のx方向)に平行な方向において中心を合わせられたメインローブをもつ放射パターンを放出する。ビバルディ平面アンテナ51は、矩形アンテナ46および/またはリングアンテナ49と同じやり方で基板47上で支持される。
【0163】
矩形アレイ50において示されているが、ビバルディ平面アンテナ51は、アレイの任意の(格子)タイプまたは形状に従って編成され得る。4×3アレイ50が
図13に示されているが、ビバルディ平面アンテナ51のアレイ50は、任意の数M、Nの行および/または列を含み得る。
【0164】
また、
図14を参照すると、第4の例示的なアンテナアレイ(以下「第4のアンテナアレイ」)52が示されている。
【0165】
ビバルディ平面アンテナ51などの平面内指向性平面アンテナを使用するとき、それらのアンテナは、すべて同じ方向に配向される必要があるとは限らない。第4のアンテナアレイ52は、ビバルディアンテナの半分51aが、一方の方向(図示の軸に関して正のx)において放出するように配向され、その残り51bが、反対方向(図示の軸に関して負のx)において放出するように配置されるという点で、第3のアンテナアレイ50とは異なる。2つの配向は、相互貫入(interpenetrating)格子で配置される(矩形であり、2つのアンテナモチーフと中心を合わせられる。本明細書でのモチーフは、結晶学および他のタイプの繰返し/モザイク式パターンから知られる意味を有するが、ここでは、格子点に対するアンテナの配置を指す)。ビバルディ平面アンテナ51は、平行/逆平行であることに限定されず、所与のアレイが、任意の方向において配向され、任意の数のアンテナを含むモチーフをもつ格子に従って配置される、ビバルディ平面アンテナ51を含み得る。
【0166】
第1~第4のアレイ45、48、50、52およびそれぞれのタイプのアンテナ46、49、51の例は、網羅的でなく、概して、アンテナ17のアレイ16は、任意の好適なタイプの平面アンテナを含み得るか、または2つまたはそれ以上のタイプの平面アンテナの組合せを含み得る。
【0167】
無線信号を中継または再ブロードキャストするように構成された無線機
再び
図5を参照すると、無線機14は、受信された無線信号18を中継または再ブロードキャストするように構成され得る。
【0168】
たとえば、無線機14は、入射方向θ1からの無線信号18を受信するためにビームフォーミングのために位相シフタ1を使用し得るか、または位相シフタ1をアクティブに使用せず、単に、ビームフォーミングなしで受信し得る。後者のオプションは、ソースへの入射方向θ1へのビームフォーミングと比較して、より低い相対的信号強度を有し得るが、いくつかの場合には、入射方向θ1は、事前に知られていないことがある。無線信号18を受信したことに応答して、無線機14は、ビームフォーミングのために位相シフタ1を使用して送信方向θ2において再送信/再ブロードキャストし得る。送信方向θ2が、設置の間に事前設定または事前較正され得るか、あるいは動的構成のために無線信号18自体中に含まれ得る。このようにして、無線機14は、アンテナ17の単一のアレイ16を使用して受信と再送信とを時間多重化し得る。
【0169】
別の実装形態では、アンテナ17の単一のアレイ16が、(別個のブロック、相互貫入格子などにおいて)2つのグループに分割され得る。アンテナ17の第1のグループが、受信のために使用され得、第2のグループ(たとえば第1のグループの補集合)が、再送信のために使用される。位相シフタ1構成は、個々の位相を制御することが可能であり、したがって、異なるブロック/領域、さらには、相互貫入アレイを制御するために使用されて、アンテナのそのようなグループの独立した動作を提供し得る。そのような構成は、受信された無線信号18のほぼ即時の(信号伝搬遅延のみの)再送信を可能にし得る。
【0170】
代替的に、さらなる実装形態(図示せず)では、上記は、第2の位相シフタ(図示せず)を含み得、第2の位相シフタは、第2のアンテナ(図示せず)の第2のアレイ(図示せず)を無線周波数トランシーバ回路15に(または、示されていない、別個の、第2の無線周波数トランシーバ回路に)接続することを除いて、(第1の)位相シフタ1と同等である。第2のアンテナ(図示せず)の第2のアレイ(図示せず)は、(第1の)アンテナ17の(第1の)アレイ16について説明された何らかのやり方で構成され得る。このようにして、(第1の)位相シフタ1は、第1のフェーズドアレイとして(第1の)アレイ16を制御するために使用され得、第2の位相シフタ(図示せず)は、第2のフェーズドアレイとして第2のアレイ(図示せず)を制御するために使用される。そのような構成は、受信された無線信号18のほぼ即時の(信号伝搬遅延のみの)再送信を可能にし得る。
【0171】
無線機のシステム
また、
図15を参照すると、互いと協調するように構成されたいくつかの無線機14を含むシステム53が示されている。
【0172】
システム53は、本明細書で説明されるいくつかの、示されているように9個の、無線機14を含む。各無線機14が、システム53の一部を形成する各他の無線機14とビームフォーミングを協調させるように構成される。無線機は、概ね同じ近傍に、たとえば、すべてが200m圏内に、または各々がシステム53の別の無線機14の200m以内に位置する。互いとの無線機14の協調は、ワイヤードおよび/またはワイヤレスネットワーク(図示せず)を介した接続によって達成され得る。ワイヤレスネットワークが使用されるとき、それは、受信されることになる無線信号18および/または送信機と同じ周波数帯域、あるいはまったく異なる周波数帯域において動作し得る。
【0173】
システム53は、随意に、無線機14の間でビームフォーミングを協調させるように構成された中央制御ユニット(図示せず)を含み得る。中央制御ユニット(図示せず)は、別個の、専用デバイスとして実装され得るが、等しく、無線機14のうちの1つによって(たとえばコントローラ6によって)提供され得る。代替的に、各無線機14が、コントローラ6または相当するデータ処理デバイスを含み得、無線機の間のビームフォーミングの協調が、2つまたはそれ以上の無線機14のコントローラ6を使用して、分散的な様式で実行され得る。
【0174】
システム53は、無線機14のうちの2つまたはそれ以上の受信および/または送信を、携帯電話または同様のポータブルデバイスなど、第1の外部ソース54aに向けるために、それらの無線機のビームフォーミングを協調させるように構成される。たとえば、
図15に示されているように、無線機14
1、14
4、14
7および14
8が、第1の外部ソース54aに向けられたそれぞれの無線信号18
1、18
4、18
7、18
8を送信し得る。システム53は、信号18
1、18
4、18
7、18
8が、第1の外部ソース54aに向けられるだけでなく、第1の外部ソース54aにおいて同相で到着するように、それぞれの位相シフタ1を使用して位相φを制御するために無線機14
1、14
4、14
7および14
8を協調させ得る。後者のオプションは、システムの無線機14間のクロックの良好な同期と、また、各無線機14のロケーションの較正とを必要とする。異なる無線機14間の経路長差が、ビームフォーミング方向θと無線機14の較正された相対ロケーションとの暗示される交点から推論され得るので、第1の外部ソース54aのロケーションの正確な知識は必要でない。
【0175】
協調の代替の形態は、外部ソース54aと通信するための最も強い信号をどの無線機14が有するかを決定することと、次いで、その外部ソース54aに信号18を送信するためにその無線機14のみを使用することとである。これは、異なる無線機14間の信号クラッシュを回避するのを、2つまたはそれ以上が、同じ外部ソース54aと同時に通信することを試みるのを防ぐことによって、助け得る。
【0176】
システム53の無線機14のすべてが、同じ外部ソース54aと通信する必要があるとは限らない。システムは、無線機14が、少なくとも2つの空間的に分離された外部ソース54a、54bに向けたビームフォーミングを協調させ得るように、構成され得る。たとえば、
図15に示されているように、無線機14
1、14
4、14
7および14
8が、第1の外部ソース54aに向けられたそれぞれの無線信号18
1、18
4、18
7および18
8を送信し、残りの無線機14
2、14
3、14
5、14
6および14
9が、第2の外部ソース54bに向けられたそれぞれの無線信号18
2、18
3、18
5、18
6および18
9を送信する。
【0177】
システム53を形成する無線機14は、構造物55、たとえば、建築物、または建築物の壁、窓などによって支持され得る。いくつかの例では、構造物55は、バス待合所、ランプポスト、または街路備品の任意の他のアイテムであり得る。システム53に属する無線機14は、2つまたはそれ以上の別個の構造物55(上記で説明された何らかの意味を有する各構造物)によって支持され得る。
【0178】
図15では正方形/矩形アレイで配置されて示されているが、無線機14は、任意の他のタイプのアレイで配置され得るか、またはアレイで配置される必要がまったくない。無線機14間の位相を協調させるために、規則的な配置は必要とされず、それらの無線機14の相対ロケーションの知識のみが必要とされる。
【0179】
オーディオビームフォーミング
位相シフタ1が、オーディオ周波数信号に位相シフトφkを適用するように構成され得る。
【0180】
また、
図16を参照すると、オーディオデバイス56が位相シフタ1を含む。
【0181】
オーディオデバイス56は、位相シフタ1を介してK個のオーディオトランスデューサ581、...、58k、...、58K(たとえばスピーカーおよび/またはマイクロフォン)に接続されたオーディオ周波数トランシーバ回路57を含む。各オーディオトランスデューサ58kが、位相シフタ1のそれぞれの信号チャネルChkを介してオーディオトランシーバ回路57に接続される。
【0182】
位相シフタ1は、オーディオ周波数信号、たとえば、20Hzから20kHzの間の、および20Hzと20kHzとを含む、周波数を有する信号のために構成される。この構成は、主に、上記で説明されたように可変キャパシタンスC(V)のサイズおよび範囲によって提供される。オーディオトランスデューサ58の例は、コーンスピーカー/マイクロフォン、圧電スピーカー/マイクロフォンなどを含む。
【0183】
オーディオ周波数トランシーバ回路57は、音の受信および/または放出のためにビームフォーミングを実施することによって、フェーズドアレイとしてオーディオトランスデューサ581、...、58Kを制御するように構成される。このようにして、指向性オーディオデバイス56は、無線信号のビームフォーミングに類似する様式(単に、媒体および典型的な周波数/波長の差)で、指向性マイクロフォンおよび/または指向性音を提供し得る。たとえば、オーディオ周波数トランシーバ回路57回路は、制御信号59を位相シフタ1に送り得る。制御信号59は、位相画像9および/または命令11を送ることを含む、位相シフタ1の構成に応じた任意の好適な形態をとり得る。一例として、命令11は、所望のビームフォーミング角度θを識別し得、位相シフタ1は、対応する位相画像9(または任意の機械可読フォーマットにおいて記憶された対応する電圧Vn,m)を取り出すためにルックアップテーブルを使用し得る。
【0184】
オーディオデバイス56は、指向性オーディオ出力および指向性マイクロフォン入力をコンカレントにサポートするように構成され得る。たとえば、位相シフタ1のサブアレイによって制御された別個のビームフォーミングにより、オーディオトランスデューサ58の一部がスピーカーを提供し得、他のもの58がマイクロフォンを提供する。代替的に、オーディオデバイス56は、第2の位相シフタ1と、オーディオトランスデューサ58の対応する第2のグループ/セット/アレイとを含み得る。
【0185】
オーディオデバイス56は、上記で説明された無線機14の任意の特徴に類似する特徴を含み得る。
【0186】
超音波ビームフォーミング
位相シフタ1が、超音波信号に位相シフトφkを適用するように構成され得る。
【0187】
また、
図17を参照すると、超音波デバイス60が位相シフタ1を含む。
【0188】
超音波デバイス60は、位相シフタ1を介してK個の超音波トランスデューサ621、...、62k、...、62K(たとえばセラミックまたはポリマーベース圧電トランスデューサ)に接続された超音波周波数トランシーバ回路61を含む。各超音波トランスデューサ62kが、位相シフタ1のそれぞれの信号チャネルChkを介して超音波周波数トランシーバ回路61に接続される。
【0189】
位相シフタ1は、超音波周波数信号、たとえば、20kHzから18MHzの間の、および20kHzと18MHzとを含む、周波数を有する信号のために構成される。この構成は、主に、上記で説明されたように可変キャパシタンスC(V)のサイズおよび範囲によって提供される。超音波トランスデューサ62の例は、セラミックまたはポリマー圧電材料を使用して形成された圧電トランスデューサを含む。超音波トランスデューサ62は、指向性であるように構成され得、位相シフタ1によって提供されるビームフォーミングは、そのようなトランスデューサの本有的な指向性のさらなる改良を提供し得る。
【0190】
超音波周波数トランシーバ回路61は、超音波(ultrasonic sound wave)の受信および/または放出のためにビームフォーミングを実施することによって、フェーズドアレイとして超音波トランスデューサ621、...、62Kを制御するように構成される。このようにして、超音波デバイス60は、無線信号のビームフォーミングに類似する様式(単に、媒体および典型的な周波数/波長の差)で、指向性超音波プローブを提供し得る。たとえば、超音波周波数トランシーバ回路61回路は、制御信号63を位相シフタ1に送り得る。制御信号63は、位相画像9および/または命令11を送ることを含む、位相シフタ1の構成に応じた任意の好適な形態をとり得る。一例として、命令11は、所望のビームフォーミング角度θを識別し得、位相シフタ1は、対応する位相画像9(または任意の機械可読フォーマットにおいて記憶された対応する電圧Vn,m)を取り出すためにルックアップテーブルを使用し得る。
【0191】
超音波デバイス60は、限定はしないが、非破壊材料試験(クラックを検出/画像化することなど)、範囲および/または方向探知、医療走査/画像化、材料を操作および/または修正すること(たとえば腎結石の破壊)などを含む、超音波が適用できる広範囲の適用例のために使用され得る。
【0192】
超音波デバイス60は、超音波のパルスまたはバーストを放出することと、その後、受信モードに切り替わって、反射された超音波を聴取することとを行うように構成され得る。代替的に、超音波デバイス60は、指向性送信および受信をコンカレントにサポートするように構成され得る。たとえば、位相シフタ1のサブアレイによって制御された別個のビームフォーミングにより、超音波トランスデューサ62の一部が放出し得、他のものが受信する。代替的に、超音波デバイス60は、第2の位相シフタ1と、超音波トランスデューサ62の対応する第2のグループ/セット/アレイとを含み得る。
【0193】
超音波デバイス60は、上記で説明された無線機14の任意の特徴に類似する特徴を含み得る。
【0194】
修正
上記で説明された実施形態に対して多くの修正が行われ得ることが諒解されよう。そのような修正は、位相シフタ、無線機、オーディオデバイスおよび/または超音波デバイスの設計、製造および使用においてすでに知られており、本明細書ですでに説明された特徴の代わりにまたはそれらの特徴に加えて使用され得る、等価な特徴および他の特徴を伴い得る。一実施形態の特徴が、別の実施形態の特徴によって置き換えられるかまたは補足され得る。
【0195】
本出願では特許請求の範囲が特徴の特定の組合せに対して規定されたが、本発明の本開示の範囲は、いずれかの請求項において今回請求されるものと同じ発明に関するか否かにかかわらず、および本発明が軽減するものと同じ技術的問題のいずれかまたはすべてを軽減するか否かにかかわらず、明示的にまたは暗示的にのいずれかで、本明細書で開示される任意の新規の特徴または特徴の任意の新規の組合せ、あるいはそれらの任意の一般化をも含むことを理解されたい。本出願人は、本出願のまたは本出願から派生した任意のさらなる出願の審査過程中に、そのような特徴および/またはそのような特徴の組合せに対して新たな請求項が規定され得ることを本明細書によって通知する。
【国際調査報告】