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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】抗原の安定なエマルジョン
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/107 20060101AFI20241226BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241226BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61K9/107
A61P37/04
A61K39/00 J
A61K39/02
A61K39/12
A61K47/34
A61K47/22
A61K47/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537406
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2022087692
(87)【国際公開番号】W WO2023118553
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21217746.3
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(74)【代理人】
【識別番号】100228980
【弁理士】
【氏名又は名称】副島 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ピースト,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シーレン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】マンダース,フランシスカス・ジェラルドゥス・アントニオス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィトリート,マールテン・ヘンドリック
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076CC06
4C076DD34
4C076DD59
4C076EE23
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA07
4C085BA51
4C085CC07
4C085CC08
4C085EE01
(57)【要約】
本発明は、ワクチン学の分野、より具体的には獣医ワクチン学の分野に関する。特に、本発明は、水と、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルと、乳化剤としてのポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルとのエマルジョンを含む、アジュバント組成物に関する。このアジュバント組成物は、細菌抗原、寄生生物抗原またはウイルス抗原を含むワクチン、特にエマルジョンワクチンを製剤化するために使用することができる。得られたワクチン組成物は、病原体によって引き起こされる、特に細菌、寄生生物またはウイルスによって引き起こされる感染および/または疾患から、ヒトまたは動物対象を保護する方法に使用することができる。本発明はさらに、そのようなアジュバント組成物の製造方法およびそのようなワクチン組成物の製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルと、ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルとのエマルジョンを含むアジュバント組成物。
【請求項2】
前記ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルが、ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテル、ポリエトキシエチレン20セトステアリルエーテル、およびポリエトキシエチレン30セトステアリルエーテルから選択される、請求項1に記載のアジュバント組成物。
【請求項3】
前記ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルが、ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルである、請求項1または2に記載のアジュバント組成物。
【請求項4】
前記トコフェロールの薬学的に許容され得るエステルがα-トコフェリルアセテートである、請求項1~3のいずれか一項に記載のアジュバント組成物。
【請求項5】
スクアランをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のアジュバント組成物。
【請求項6】
脂肪酸のエステルを含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載のアジュバント組成物。
【請求項7】
非鉱油、好ましくは合成油をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のアジュバント組成物。
【請求項8】
前記アジュバント組成物が水中油型エマルジョンである、請求項1~7のいずれか一項に記載のアジュバント組成物。
【請求項9】
前記ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルが、前記アジュバント組成物の体積に基づいて約1~約9%(重量基準)の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載のアジュバント組成物。
【請求項10】
トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルが、前記アジュバント組成物の体積に基づいて約1~約20%(重量基準)の量で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載のアジュバント組成物。
【請求項11】
スクアランが、前記アジュバント組成物の体積に基づいて約5~約20%(重量基準)の量で存在する、請求項5~10のいずれか一項に記載のアジュバント組成物。
【請求項12】
前記鉱油が、前記アジュバント組成物の体積に基づいて約5~約40%(重量基準)の量で存在する、請求項6~11のいずれか一項に記載のアジュバント組成物。
【請求項13】
前記非鉱油が、前記アジュバント組成物の体積に基づいて約5~約40%(重量基準)の量で存在する、請求項6~12のいずれか一項に記載のアジュバント組成物。
【請求項14】
シリカをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のアジュバント組成物。
【請求項15】
約80~約200nm、好ましくは約40~約100nmの粒径D50を有するエマルジョン粒子をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のアジュバント組成物。
【請求項16】
エマルジョンワクチン、好ましくは水中油型エマルジョンワクチンを製剤化するための、請求項1~15のいずれか一項に記載のアジュバント組成物の使用。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項に記載のアジュバント組成物と、抗原とを含むワクチン組成物。
【請求項18】
前記抗原が粗抗原を含む、請求項17に記載のワクチン組成物。
【請求項19】
前記抗原が、エステラーゼ、好ましくはリパーゼを含む、請求項17または18に記載のワクチン組成物。
【請求項20】
前記ワクチン組成物が、細菌、寄生生物およびウイルスの非生抗原から選択される1以上の抗原を含む、請求項17~19のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項21】
前記非生抗原が、豚サーコウイルス2型、マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよび/または口蹄疫ウイルスに由来する、請求項20に記載のワクチン組成物。
【請求項22】
前記ワクチン組成物がエマルジョンワクチンである、請求項17~21のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項23】
前記エマルジョンワクチンが水中油型エマルジョンワクチンである、請求項22に記載のワクチン組成物。
【請求項24】
請求項17~23のいずれか一項に記載のワクチン組成物を製造するための方法であって、前記方法が、
-抗原を含む水相を調製することと、
-前記水相を請求項1~15のいずれか一項に記載のアジュバント組成物と混合することと
を含む、方法。
【請求項25】
病原体によって引き起こされる感染および/または疾患からヒトまたは動物対象を保護する方法に使用するための、請求項17~23のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項26】
前記動物対象がブタまたは反芻動物である、請求項25に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項27】
前記病原体が、細菌、寄生生物およびウイルスから選択される、請求項25または26に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項28】
前記病原体が、豚サーコウイルス2型、マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよび口蹄疫ウイルスの1つ以上から選択される、請求項25~27のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項29】
前記ワクチン組成物が、皮内または筋肉内経路によって投与される、請求項25~28のいずれか一項に記載の使用のためのワクチン組成物。
【請求項30】
病原体によって引き起こされる感染および/または疾患に対するヒトまたは動物対象のワクチン接種に使用するための、請求項17~23のいずれか一項に記載のワクチン組成物。
【請求項31】
病原体によって引き起こされる感染および/または疾患からヒトまたは動物対象を保護するためのワクチン組成物の製造のための、請求項1~15のいずれか一項に記載のアジュバント組成物の使用。
【請求項32】
病原体によって引き起こされる感染および/または疾患に対するヒトまたは動物対象のワクチン接種のための方法であって、前記方法が請求項17~23のいずれか一項に記載のワクチン組成物の前記対象への投与を含む、方法。
【請求項33】
少なくとも2つの容器を含むパーツキットであって、1つの容器が請求項1~15のいずれか一項に記載のアジュバント組成物を含み、そして、1つの容器が抗原を含む、パーツキット。
【請求項34】
前記抗原が、凍結乾燥生PRRSVであるか、または非生ローソニア イントラセルラリスの凍結乾燥調製物である、請求項33に記載のパーツキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチン学の分野、より具体的には獣医ワクチン学の分野に関する。特に、本発明は、水と、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルと、乳化剤としてのポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルとのエマルジョンを含む、アジュバント組成物に関する。このアジュバント組成物は、細菌抗原、寄生生物抗原および/またはウイルス抗原を含むワクチン、特にエマルジョンワクチンを製剤化するために使用することができる。得られたワクチン組成物は、病原体によって引き起こされる、特に細菌、寄生生物またはウイルスによって引き起こされる感染および/または疾患から、ヒトまたは動物対象を保護する方法に使用することができる。本発明はさらに、そのようなアジュバント組成物の製造方法およびそのようなワクチン組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
病原性細菌、寄生生物またはウイルスによる感染およびそれらの結果として生じる疾患は、人類の始まり以来知られており、健康および幸福にしばしば深刻な影響を及ぼしながらヒトと動物の両方に影響を及ぼす。
【0003】
20世紀半ば以降、細菌感染は抗生物質薬で効果的に治療することができるが、耐性の蓄積は一定の脅威である。農業部門における畜産での抗生物質の使用は特別な状況である。一方では、動物がしばしば置かれている様式および条件に起因する高い感染圧のために、処置が緊急に必要とされている。他方では、動物飼料などにおける抗生物質の一般化された非治療的使用が、現在、ヒトの健康にも関連する細菌の耐性増加の原因の1つとして認識されている。結果として、抗生物質のこのような一般化された使用は、ますます多くの国で段階的に廃止されている。
【0004】
同様の状況が、抗寄生生物薬の予防的使用にも当てはまる。
【0005】
ウイルス感染の場合、抗ウイルス薬の使用は獣医学目的にはしばしば費用がかかりすぎるため、状況はさらに困難である。
【0006】
農場管理の改善に次いで、持続可能な方法で病原性感染および疾患と戦うための最良の代替法は、ワクチン接種である。ヒト用および動物用の両方の細菌性、寄生生物性およびウイルス性ワクチンは、1世紀以上周知であり、多くの形態で利用可能である。そのようなワクチンは、生であってもよく、すなわち、複製(弱毒化)細菌、寄生生物もしくはウイルスを含んでいてもよく、または非生であってもよく、すなわち、不活化細菌、寄生生物もしくはウイルス、またはそれらの成分の1つ以上を含んでいてもよい。
【0007】
非生(すなわち、非複製)抗原を含むワクチンは、非生抗原に対する免疫刺激を提供するためにアジュバントを必要とすることが多い。獣医学ワクチンでは、多種多様な化合物をアジュバントとして使用することができ、例えば、鉱油、例えばBayol(商標)またはMarkol(商標)、Montanide(商標)またはパラフィン油;非鉱油、例えばスクアレン、スクアラン、または植物油、例えばオレイン酸エチル;アルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウム;ペプチド、例えばジメチルグリシンまたはタフトシン;細菌細胞壁成分、例えば脂質Aおよびムラミルジペプチド;(合成)ポリマー、例えばプルロニクス、デキストラン、カルボマー、ピランまたはサポニン;サイトカイン;およびtoll様受容体の刺激物質、例えば非メチル化CpG基を含有する免疫賦活性オリゴデオキシヌクレオチドなどが挙げられる。
【0008】
投与を容易にするため、およびアジュバント効果を高めるために、オイルアジュバントを水相中の抗原と共に乳化してエマルジョンを形成し、これをワクチンの調製に使用することができる。このようなエマルジョンでは、1つの液相が別の液相に、典型的には油中水型(W/O)または水中油型(O/W)エマルジョンとして分散される。一方または他方の型のエマルジョンの選択は、例えば、所望の免疫応答のタイプに基づくことができる。
【0009】
そのようなエマルジョンを生成および維持するには、機械的エネルギーと化学エネルギーの両方を入力する必要があり、特定のレベルの剪断力、圧力、および温度を使用して別々の液体を適切な装置で混合し、ある相を別の相に分散させる。化学エネルギーの入力は、水と油の界面の位置をとることによって分散相を安定化する乳化剤(界面活性剤とも)の使用によって提供される。ワクチンエマルジョンは、1つ以上の乳化剤を含む1つ以上のアジュバントで構成することができる。
【0010】
エマルジョンワクチンに使用するための多数の乳化剤が利用可能であり、さらに多くが絶えず開発されている。
【0011】
市販の獣医学ワクチンで使用されるアジュバントと乳化剤との組合せの例は、乳化剤としてレシチンを含む軽質鉱油を含有するAmphigen(登録商標)(Zoetis);アジュバント軽質鉱油およびビタミンE-アセテートと乳化剤Tween(登録商標)80(ポリソルベート80またはポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)との組合せを含有するXsolve(登録商標)(以前はMicrosol-Diluvac Forte(登録商標)、MSD Animal healthと呼ばれていた);スクアラン、Pluronic(登録商標)(ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのブロックの非イオン性トリブロックコポリマー)およびTween 80を含むMetaStim(登録商標)(Zoetis);ビタミンEアセテートおよびTween 80を含むFortasol(登録商標)(別名Diluvac Forte(登録商標));SP-oil(商標)(Pluronic(商標)、スクアランおよびTween);AS03(商標)(GSK)(2.1%w/vのスクアレンおよび2.4%w/vのビタミンEを含み、乳化剤として1.0%w/vのTween 80を含む)である。
【0012】
ワクチンとして使用するためのエマルジョンは、「破壊(break)」ではなく安定であるべきであり、これは分散相の液滴の種類、サイズおよび数が経時的に変化しすぎてはならないことを意味し、それは最終的に分散の減少、最終的に完全な相分離をもたらし得る。
【0013】
エマルジョンの安定性を維持することは、その登録された貯蔵寿命の間のエマルジョンワクチンの使用および有効性を保証するために重要である。沈降またはクリーミングなどの経時的な重力の影響は無害であり、手で振盪することによって容易に逆転させることができる。しかしながら、エマルジョンの実際の破壊は不可逆的であり、その結果生じる相の準最適な分布は、誤った投与、安全性の問題につながる可能性があり、(1または複数の)ワクチン抗原の免疫学的効力に影響を及ぼす可能性がある。
【0014】
ワクチンが安全かつ有効であるための最重要要件に加えて、畜産で使用されるワクチンにはいくつかの特別な要件がある。これらは、使いやすさの側面、特にコストに関する。これは、動物性タンパク質の生産が典型的には大量-薄利の事業であるためである。これらの理由から、獣医学ワクチンは、多くの場合、単一のワクチン製剤中にいくつかの異なる抗原を含有することによって、一度にいくつかの疾患または病原体に向けられる。これは、反復処置の必要性の防止により対象動物のストレスを軽減するだけでなく、投与のための労働コストも削減するため、有利である。
【0015】
現在、細菌抗原、寄生生物抗原および/またはウイルス抗原を用いたオイルアジュバント添加エマルジョンワクチンは、多数の病原体、ならびに主要な動物対象群:ブタ、ウシ、ヒツジ、家禽、コンパニオンアニマル(例えば、ネコ、イヌ、ウマ)および魚のすべてに対して市販されている。
【0016】
しかし、抗原のすべての所望の選択を安定なエマルジョンワクチンに製剤化できるわけではない。これは、農業で使用するためのワクチンを手頃な価格にする必要性のさらなる結果、すなわち、そのようなワクチンは通常、高価で純粋な成分(例えば組換え発現サブユニット)を含まず、精巧な精製技術(例えばカラムクロマトグラフィー)を使用して製造することができないためである。実際には、これは、そのようなワクチンに含まれる非生抗原が、典型的には比較的不純であり、いくらか定義されていない組成物であることを意味する。これは、特に、コンパニオンアニマル(ネコ、イヌ、およびウマ)での使用、またはヒトでの使用など、市場価値がより高いワクチン製品におけるより精製されたワクチン抗原と比較した場合に当てはまる。あるいは、特異的保護抗原が知られていない場合があるため、粗抗原調製物が必要な抗原を含む唯一の方法である。
【0017】
したがって、農業に使用するための非生細菌性、寄生生物性またはウイルス性ワクチンは、典型的には、例えば不活化細菌、寄生生物またはウイルス培養物、またはそのような培養物の抽出物もしくは画分に由来する精製抗原をほとんど含まない。そのようなかなり粗製の抗原は、おそらく1回洗浄または濃縮された、不活化細菌もしくは寄生生物もしくは不活化ウイルスに基づくことができ、または溶解もしくは破壊された細菌、寄生生物もしくはウイルスなどの細菌、寄生生物もしくはウイルス画分に基づく抗原であり得る。結果として、これらの粗抗原調製物は、(組合せ)ワクチンの安全性、有効性または安定性に影響を及ぼし得る未定義または意図しない不純物を含有し得る。このため、ワクチンは、その開発プロセスの一部として、安全性、有効性および安定性について厳しい試験を受けなければならず、その後、政府当局または規制当局から販売承認を受けて、そのようなワクチンを市販品として市場に出すことができる。
【0018】
非生抗原調製物の特定されていない成分は、さらなるアジュバントとして作用し得、このようにして免疫応答に対する特異的ブーストをもたらし得るので、必ずしも望ましくない。生物学的性質の潜在的な妨害因子は、非生細菌抗原、寄生生物抗原またはウイルス抗原の調製中に不活性化されるとも予想される。それにもかかわらず、ワクチンの安全性、有効性または安定性に対する望ましくない効果を、粗抗原調製物を含むエマルジョン系ワクチンの開発中に観察することができる。
【0019】
アジュバント添加ワクチンの作製において克服すべき別の障害は、免疫応答またはワクチンの安全性もしくは安定性に悪影響を及ぼし得る様々なワクチン成分間の相互作用を防止することである。そのような相互作用は、例えば、いくつかが非常に粗な生成物であるために、例えば抗原自体の間で起こり得る。また、アジュバントは、ワクチン抗原に干渉し得るか、またはワクチン抗原を損傷し得る。したがって、特に複数種の病原体由来の抗原に関連する複雑な組合せに対して、1以上の抗原に対して有効な免疫応答を誘導するアジュバント添加ワクチンを開発することは困難である。
【0020】
さらに、アジュバント添加ワクチンは、動物での使用時に安全であるべきであり、すなわち、発熱、局所腫脹、食欲不振などの重大な副反応を引き起こすべきではない。また、より実用的な特性も関連しており、エマルジョンワクチンは、理想的には経済的な生産が可能であり、製剤化および保存中に十分に安定であり、他の抗原の存在下で各抗原の効力試験方法を可能にすべきである。
【0021】
若齢以降のブタに影響を及ぼす最も顕著な疾患のいくつかは、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)およびローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)などの細菌、ならびに豚サーコウイルス2型(PCV2)および豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)などのウイルスによって引き起こされる。
【0022】
マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mhyo)は、世界中で発生しているブタの慢性呼吸器疾患である(豚)流行性肺炎を引き起こす主な作因である。特に若い子豚は、この非常に伝染性の高い疾患にかかりやすい。この細菌は比較的小さく、細胞壁を欠き、モリキュート(Mollicutes)属に属する。これらの細菌は、宿主細胞上または宿主細胞内で寄生生物性のライフスタイルをとる。
【0023】
Mhyo由来の肺疾患は、主に、統合型肺炎につながる免疫介在性の病態である。細菌は、肺の線毛上皮に定着して損傷を与え、線毛活性の喪失をもたらす。住居条件および環境ストレスに応じて、この疾患の最も問題となる結果は、例えば他の細菌性およびウイルス性病原体による、ブタ呼吸器系の異なる二次感染の素因となることである。これは、いわゆる豚呼吸器病症候群(PRDC)を引き起こし、重度の肺病変を呈する。動物の不快感に次いで、流行性肺炎およびPRDCは、成長速度および飼料転換率における成績の低下に起因して、ならびに獣医学的ケアおよび抗生物質使用のための費用を通じて、養豚業に重大な経済的損失を引き起こす。
【0024】
ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)は、世界中で離乳後のブタの一般的な腸疾患である回腸炎としても知られる増殖性腸炎を引き起こす。特徴的な病変は、回腸腸陰窩における未成熟腸細胞の増殖であり、この細胞は原因細菌を含有する。腸細胞からの細菌の排除は、関連する増殖性病変の消散をもたらす。組織学的病変は、腸細胞内だけでなく腸マクロファージ内の1.5~2.5μm長のビブリオ様形状の細菌の可視化によって、ローソニア陽性として確認することができる。細菌は、臨床症例または不顕性症例においてPCRによって検出することができる。臨床症例は通常、育成~仕上げ期に存在する。
【0025】
L.イントラセルラリス細菌は、デスルホビブリオ(Desulfovibrionaceae)科由来の偏性細胞内非運動性グラム陰性桿菌である。
【0026】
豚サーコウイルス2型(PCV2)は、若齢ブタで観察される離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)に関連している。臨床徴候および病理学は1996年に発表され、進行性の衰弱、呼吸困難、頻呼吸、ならびに時折、黄疸(icterus)および黄疸(jaundice)を含む。この新規作因は、PK-15細胞の天然汚染物質である既知のPCVとは異なるものとしてPCV2と呼ばれた。
【0027】
PCV2は、サーコウイルス属の非常に小さな無エンベロープウイルスである。これは、2つの主要な遺伝子を有する環状一本鎖DNAゲノムを含む。ORF2遺伝子は、約233のアミノ酸のウイルスキャプシドタンパク質をコードする。組換え発現されたPCV2 ORF2タンパク質は、サブユニットワクチンとして非常に有効なウイルス様粒子を形成する。
【0028】
豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)は1987年に初めて報告され、1990年初期にパンデミックとなった。これは、一本鎖ポジティブセンスRNAゲノムを含有するアルテリウイルス属の小型エンベロープRNAウイルスである。ウイルスは、繁殖障害および成長遅延のために養豚業において著しい損失を引き起こす。Mhyoと同様に、PRRSVは多因子PRDCにおいて重要な役割を果たす。臨床症状は、流産および死産またはミイラ胎児、ならびに耳および外陰部のチアノーゼである。新生児ブタでは、ウイルスは呼吸困難を引き起こし、(ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)によって引き起こされる)グレーサー病などの二次性呼吸器感染症に対する感受性が増加する。しかしながら、不顕性感染も一般的である。このウイルスは非常に多様であり、ヨーロッパ型(1型)および北米型(2型)に次いで、現在は3番目の遺伝子型があり、これは2000年に中国で出現し、現在ではアジアにおいて豚に深刻な疾患を引き起こしている病原性の高い変異型である。
【0029】
これらの病原体のそれぞれに対する市販のワクチンが存在する。
【0030】
動物へのストレスならびに飼育者の費用および労力を制限するために、一部の豚ワクチンが混合ワクチンとして調製されている。
【0031】
国際公開第2018/115435号には、PCV2由来の非生抗原および生PRRSVを含む豚用の混合ワクチンが記載されている。ワクチンは、スクアランおよびビタミンE-アセテートを含む水中油型エマルジョンである。
【0032】
国際公開第2021/048338号は、PCV2の非生免疫原およびMhyoの非生免疫原を含む、PCV2およびMhyoによる病原性感染から保護するための豚用の混合ワクチンを記載している。ワクチンは、スクアラン、ビタミンE-アセテートおよびシリカを含む水中油型エマルジョンである。
【0033】
効果的なワクチン、特に種全体に安全かつ効果的である効果的なワクチンに対する獣医ワクチン学の分野には依然として関心がある。
【0034】
FMDは、世界中で非常に伝染性が高く破壊的な、偶蹄動物の疾患であり、大きな経済的影響を及ぼしてきた。この疾患は、発熱、跛行、リンパ球減少症ならびに口、舌、鼻、足および乳首上の小胞病変の出現を特徴とし、感受性動物の動きの阻害、感染動物の屠殺およびワクチン接種によって制御される。ほとんどの国では、口蹄疫ウイルス(FMDV)の拡散を制御するために動物を不活化全ウイルスワクチンで免疫する。しかしながら、使用されるワクチン技術は、特に細胞媒介性免疫に関して有効性の懸念を伴う。これらの懸念に対処するために、組換えタンパク質およびペプチドワクチン、空カプシドワクチンおよび遺伝子操作不活化ワクチンなどの代替ワクチンが現在開発されている。いくつかの種類のワクチンアジュバントが、FMDVワクチンに対する免疫応答を促進するそれらの効力について研究されている。これらのアジュバントとしては、鉱油、サポニン(Quil-A)、Toll様受容体(TLR)リガンド、サイトカイン、リポソームなどが挙げられる(Y.Cao,2014,Expert Rev.Vaccines,vol.13,p.1377-1385)。
【0035】
この問題に対処するために、現在、保護抗原の適用と、所望の免疫応答に対する免疫原性を最大化する有効なアジュバントの探索とを組み合わせることによって、有効なワクチンの開発に多くの努力が注がれている。
【0036】
Cao(上掲)は、FMDワクチンのための従来のアジュバントおよび現在開発中のアジュバントの両方の作用機序および免疫刺激効果に関する総説を提供する。以下では、最も有望なアプローチのいくつかを簡単に説明する。
【0037】
従来のFMD不活化全ウイルスワクチンは、多くの場合、水性Al(OH)およびサポニン、または油性アジュバントに配合される。これらのうち、Al(OH)/サポニン系ワクチンは、ブタでは保護効力が低いため、この種での使用には理想的ではない。
【0038】
これとは対照的に、不活化抗原を含むMontanide ISA-206オイルアジュバント(油性溶液中にオクタデセン酸とアンヒドロマンニトールのエステルを含有する鉱油ベースのアジュバント)に基づくW/O/Wエマルジョンワクチンは、すべての感受性種を保護するために使用することができ、緊急ワクチン接種に理想的であるため、FMD予防に好ましい。また、オイルアジュバント添加ワクチンは、Al(OH)アジュバント添加ワクチンよりも高い持続性の免疫応答を生じる。新規に開発された鉱油ベースのアジュバントMontanide ISA-201は、ISA-206と比較して、ウシにおいてより早期かつより高い中和抗体応答、より高い細胞性免疫および防御効力を誘導すると思われるので、代替として示唆されている。
【0039】
FMDワクチンの真の課題は、種を越えて作用するアジュバントを見出すことである。反芻動物の場合、ほとんどのアジュバント添加ワクチンはW/Oエマルジョンを使用し、ブタの場合、典型的にはO/Wエマルジョンを使用する。FMDVワクチンにおける現在のゴールドスタンダードは、Montanide ISA-206に基づくW/O/Wエマルジョンワクチンである。しかしながら、それは、異種間のFMDVワクチン組成物の問題に対する部分的かつ複雑な解決策を提供するにすぎず、「二重エマルジョン」として、またはより正確には可逆的エマルジョンとして、これらはいくつかの欠点を有する。重要なことは、エマルジョンが32℃超で逆転するという事実であり、これはワクチンを可能な限り冷蔵しておくべきであり、32℃以上の温度は避けるべきであることを意味する。これは、「コールドチェーン」物流を常に維持することができない国では課題となり得る。使用のための別の欠点は、このエマルジョンが、その組成のために注射が難しい(注射可能性が低い)ことである。さらなる懸念点は、複数のFMDV抗原を含有するワクチンで起こり得る高い抗原負荷量に対する製剤の感受性である。それは、現場を循環するすべての株をカバーするために必要であり得るが、Montanide ISA-206エマルジョンに基づく多価FMDVワクチン組成物を破壊することが観察されている。
【0040】
さらなる代替として、サポニン(Quil-Aなど)、コレステロール、リン脂質および抗原から構成される免疫刺激複合体(ISCOM)が記載されている。ISCOMは、高力価長期持続抗体ならびに強力なヘルパーおよび細胞傷害性Tリンパ球応答を誘発することが示されている。ISCOMは、FMD組換えタンパク質(VP1タンパク質のC末端半分)ワクチンのためのアジュバントとして記載されている。ISCOM中の組換えタンパク質とMontanide ISA-206との組合せが、モルモットにおいて初期防御力価およびより長期持続性の免疫を達成し得ることが見出されたが、ISCOMに製剤化されたFMDワクチンが対象種において同程度に成功するかどうかは未だ不明である。また、この技術はかなり高価である。
【0041】
FMDワクチンに対する合成シチジン-リン酸-グアノシン(CpG)オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)のアジュバント効果も評価された。この研究は、CpG ODNとISA-206との組合せが、組換えFMDVワクチンA7(複数のBおよびT細胞エピトープを含有する)がマウスおよびウシにおいて活発で長期持続性の特異的抗体応答を誘導することを促進し得ることを実証した。しかし、FMD不活化ワクチンと組み合わせたCpGは防御を促進しなかった(Cao、上掲)。(Alves et al.,2009,Pigs.Clin.Vaccine Immunol.,vol.16,p.1151-1157)。
【0042】
上記を考慮して、FMDVエマルジョンワクチン中の現在利用可能なアジュバントの欠点を克服するために、安全性、安定性および使用の容易さに関する一般的な要件を遵守しながら、強い持続性の体液性および細胞性免疫などの所望の免疫学的増強を誘導するのに適したFMDワクチンアジュバントが継続的に必要とされている。
【0043】
しかしながら、ワクチン開発は高度に経験的なプロセスであり、FMDVから保護するために異なるタイプの応答が必要とされるので、1つの特定のアジュバントが他の利用可能な代替物よりも有意に有用であると結論付ける根拠はほとんどない(Cao、上掲、p.1381右欄)。
【0044】
上記を考慮して、細菌抗原、寄生生物抗原および/またはウイルス抗原を含む安全で安定した有効なアジュバント添加ワクチンの製剤化を可能にする手頃な方法および材料を提供するという獣医ワクチン学の分野における継続的な必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】国際公開第2018/115435号
【特許文献2】国際公開第2021/048338号
【非特許文献】
【0046】
【非特許文献1】Y.Cao,2014,Expert Rev.Vaccines,vol.13,p.1377-1385
【非特許文献2】Alves et al.,2009,Pigs.Clin.Vaccine Immunol.,vol.16,p.1151-1157
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0047】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点を克服し、有効なワクチンとして使用することができる細菌抗原、寄生生物抗原および/またはウイルス抗原の安定なアジュバント添加エマルジョンを提供することによって、この必要性に現場で対応することである。
【課題を解決するための手段】
【0048】
本発明は、水と、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルと、乳化剤としてのポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルとのエマルジョンを含む、アジュバント組成物を提供する。アジュバント組成物は、エマルジョンワクチンの製剤化に有利に使用することができる。
【0049】
本発明はさらに、このアジュバント組成物と抗原とを含むワクチン組成物を提供する。
【0050】
本発明はまた、特許請求されたアジュバント組成物と抗原とを含むワクチン組成物を製造するための方法であって、
a)抗原を含む水相を調製することと、
b)水相を特許請求の範囲に記載のアジュバント組成物と混合することと
を含む方法を提供する。
【0051】
さらに、本発明は、病原体によって引き起こされる感染および/または疾患からヒトまたは動物対象を保護する方法に使用するための、特許請求されるワクチン組成物を提供する。
【0052】
本発明によるアジュバント組成物およびそれを配合したワクチン組成物の詳細および選択を本明細書で以下に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1Aは、試料IP.1(水相中のEumulgin)のt=0の顕微鏡図であり、図1Bは、試料IP.1(水相中のEumulgin)の37℃で10日後の顕微鏡図であり、そして、図1Cは、試料IP.1(水相中のEumulgin)の37℃で3週間後の顕微鏡図である。図1Dは、試料IP.2(油相中のEumulgin)のt=0の顕微鏡図であり、図1Eは、試料IP.2(油相中のEumulgin)の37℃で10日後の顕微鏡図であり、そして、図1Fは、試料IP.2(油相中のEumulgin)の37℃で3週間後の顕微鏡図である。図1Gは、試料IP.3(水相中のポリソルベート80)のt=0の顕微鏡図であり、図1Hは、試料IP.3(水相中のポリソルベート80)の37℃で10日後の顕微鏡図であり、そして、図1Iは、試料IP.3(水相中のポリソルベート80)の37℃で3週間後の顕微鏡図である。
図2】Asia1/Shamir SVEA-E/FMDVワクチン組成物によるウシのワクチン接種では、高いウイルス中和力価が見られ(パネル2A)、FMDV攻撃感染に対する完全な防御も提供した(パネル2B)。詳細は実施例8にある。
図3】プライムおよびブーストとして与えられたO/TUR/5/2009抗原を含むSVEA-Eアジュバント添加FMDワクチン組成物を使用し、対応するMontanide ISA206アジュバント添加ワクチン組成物と比較した、ウシにおける免疫研究の期間を示す図である。
図4】単回免疫化として与えられたO/TUR/5/2009抗原を含むSVEA-Eアジュバント添加FMDワクチン組成物を使用し、対応するMontanide ISA206アジュバント添加ワクチン組成物と比較した、ブタにおける免疫研究の期間を示す図である。
図5】単回免疫化として与えられたO/TUR/5/2009抗原を有するSVEA-Eアジュバント添加FMDワクチン組成物を使用し、対応するMontanide ISA206アジュバント添加ワクチン組成物と比較した、ヤギにおける免疫研究の期間を示す図である。
図6】SVEA-Eアジュバントと共に配合されたワクチン組成物に含まれる場合の、4℃での経時的なFMDVカプシドの安定性の試験を示す図である。詳細は実施例8にある。
図7】37℃で10日後に測定された、実施例4の試料IP.1、IP.2、およびIP.3(上から下)の各々のMastersizer結果のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
複数の細菌抗原を用いたオイルアジュバント添加エマルジョンワクチンの研究中、本発明者らは、エマルジョン安定性における時折の失敗を観察した。エマルジョンは、安定性試験において数週間後に既に破壊され(すなわち、分散の喪失および相分離の増加を示した)、ワクチンを無効にすることが分かった。明らかな可能性のある原因、例えば、使用された鉱油または使用された乳化剤(ポリソルベート80[Tween]およびソルビタンモノオレエート[Span])のバッチ品質が低いことは、すぐに除外され、問題は未解決のままであった。どこから開始するかの指標がないまま、影響を受けた因子およびその影響を引き起こす因子の両方について、観察されたエマルジョン破壊の長い調査を開始した。
【0055】
驚くべきことに、水と、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルと、ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルとのエマルジョンを含むアジュバント組成物によって、この目的を満たすことができ、その結果、先行技術の1つ以上の欠点を克服することができることが見出された。これにより、複雑な混合物であっても、抗原の比較的粗な調製物を使用する場合であっても、エマルジョン不安定性の発生が解決されることが分かった。
【0056】
この知見は、水および油のエマルジョンに基づくワクチンの開発に非常に有益である。特に、このようなエマルジョンワクチンに使用される非生菌抗原、寄生生物抗原および/またはウイルス抗原の品質または組成を修正する必要性が克服されるので、比較的不純な非生菌性、寄生生物性および/またはウイルス性抗原調製物をエマルジョンワクチンに使用することが可能になる。実際、抗原は現在、以前よりも低い純度および/またはワクチン中のより高い濃度でさえ使用することができるが、不純物のレベルを確立する必要はなく、すべての純度レベルの抗原を、日常的な技能を使用して、本発明の安定なエマルジョンワクチンに製剤化することができる。
【0057】
特に、水と、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルと、乳化剤としてのポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルとのエマルジョンを含むアジュバント組成物が、非生抗原を含有する油および水のエマルジョンにどのように安定性を与えるかは正確には知られていない。本発明者らは、これらの知見を説明し得るいかなる理論またはモデルにも束縛されることを望まないが、先行技術で使用されるソルビタンベースの乳化剤、特にポリソルベートが経時的に分解され、乳化能力の喪失およびその後のエマルジョン破壊をもたらしたと推測する。本発明者らはまた、先行技術の乳化剤を分解する因子が非生抗原の粗調製物中に存在した酵素であったと推測している。存在する様々な酵素、すなわちプロテアーゼ、エステラーゼ、カルボヒドラーゼおよびヌクレアーゼのうち、エステラーゼは、破壊を示したエマルジョンにおいて遊離脂肪酸レベルの増加が先行技術の乳化剤の濃度の低下と相関することが観察され得ることを考慮すると、乳化剤を分解する原因であった可能性がある。
【0058】
そのようなエステラーゼ酵素は、既知の細菌属および寄生生物属の多くによって産生され、インビボで病原性因子として、および/または栄養成分を動員するために作用し得る。グラム陽性およびグラム陰性の両方の細菌のすべての主要なファミリーが関与し、バチルス属(Bacillus)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、シュードモナス属(Pseudomonas)、サルモネラ属(Salmonella)などの良性または病原性株の両方が関与する。その結果、そのような酵素は、原則として、非生細菌抗原の任意の調製物中に存在し得る。非生寄生生物抗原の粗調製物にも同様の考察が適用される。
【0059】
上記を考慮すると、ポリソルベートなどの先行技術で使用されるソルビタンベースの乳化剤を置き換えることができる非常に多様な可能な乳化剤の中から、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルと、ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルとを含む本発明による特定のアジュバント組成物を、エステラーゼの効果に感受性でないことが分かった有効な乳化剤として使用することができることは特に驚くべきことである。
【0060】
エマルジョンワクチンは多数の生物学的および化学的化合物を含む複雑な製剤であり、エマルジョンの不安定性を観察すると、どの因子が影響を受けるか、および組成物のどの成分が原因であるかを決定することは非常に困難であるため、これは先行技術のいかなる開示からも全く自明ではなかった。
【0061】
例えば以下のように、非生細菌抗原、寄生生物抗原および/またはウイルス抗原を有する典型的なエマルジョンワクチンには多数の潜在的な成分があり、そのうちのいずれか1つ以上が他の成分の1つに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0062】
-細菌培養物を増殖させるために使用される培養培地の成分:例えば、動物血清、動物組織のブロスまたは抽出物、動物または植物起源のペプトンまたは加水分解物、脂質、糖、アミノ酸、ビタミンおよびミネラル、消泡剤、抗真菌剤など。
【0063】
-不活性化剤(の痕跡):例えば、チオメルサール、塩化ベンザルコニウム、ホルムアルデヒド、ベータピロピオラクトン、または洗剤など。
【0064】
-安定剤:デキストラン、グリセロール、ゼラチン、アミノ酸、緩衝剤など。
【0065】
-防腐剤:チオメルサール、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、抗生物質(例えばゲンタマイシン)、
-微生物の成分:細胞壁、内部細胞小器官、核酸の断片;ピリ、フィムブリエ、または鞭毛などの外部細菌オルガネラ;細菌タンパク質、脂質、および炭水化物、例えば毒素、リポ多糖、様々な酵素など。
【0066】
-1または複数のアジュバント、(1または複数の)乳化剤、およびそれらの微量元素または不純物。
【0067】
さらに、エマルジョンの安定性は、ワクチンの調製、精製、製剤化、乳化、充填、輸送および貯蔵における物理的要因からの1つ以上の効果によって影響され得る。
【0068】
最後に、本発明者らは、特に乳化剤を置き換えることが、油性アジュバントおよび使用される抗原などのエマルジョンワクチンの様々な他の成分との関連で必要な安定性を有するエマルジョンを提供しなければならないという点で、ポリソルベート乳化剤の適切な代替物の選択についての手がかりを持っていなかった。
【0069】
したがって、本発明は、第1の態様では、水と、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルと、ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルとのエマルジョンを含む、アジュバント組成物に関する。
【0070】
この組成物において、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルは油性アジュバントとして作用し、ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルは乳化剤として作用する。
【0071】
本発明によるアジュバント組成物に使用される水は、好ましくは高純度の水であり、医薬品品質グレードであり、非経口注射に適している。そのような良質の水は、典型的には無菌であり、発熱物質を本質的に含まず、例えば、(多重)蒸留水、逆浸透水、または注射用水(WFI)である。
【0072】
「アジュバント」は、例えばワクチンに対する免疫応答を増加または調節する物質である。特に、アジュバントは、さもなければ十分に免疫原性ではない抗原、特に非生抗原に対する免疫刺激を提供する。これは免疫系の異なる経路を引き起こすが、このプロセスの基本的な機構は十分に理解されていない。
【0073】
「エマルジョン」は、少なくとも2つの不混和性液体の混合物であり、それによって一方が他方に分散される。典型的には、分散相の液滴は非常に小さく、直径は数マイクロメートル以下である。
【0074】
本発明の乳化剤は、両親媒性を有し、疎水性側と親水性側の両方を有する分子である。多くの乳化剤は、それらの様々な特性で当技術分野において公知である。ほとんどは、商業的に容易に入手可能であり、純度が異なる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテル」という用語は、様々なO/Wエマルジョンの製造に使用される親水性非イオン性乳化剤のクラスを指す。この用語は、本出願では「ポリオキシエチレンセトステアリルエーテル」という用語と互換的に使用される。ポリオキシエチレンセトステアリルエーテルは、セトステアリルアルコールのエーテルである。セトステアリルアルコール、セテアリルアルコールまたはセチルステアリルアルコールは、主としてセチル(16C)およびステアリルアルコール(18C)からなる脂肪アルコールの混合物であり、脂肪アルコールとして分類される。本願において、「ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテル」は、「ポリエトキシエチレンセチルエーテルとポリエトキシエチレンステアリルエーテルとを含む混合物」と同義である。
【0076】
特定の例には、ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテル(INCI:セテアレス-12、CAS番号:68439-49-6、Ph.Eur.マクロゴールセトステアリルエーテル12)、ポリエトキシエチレン20セトステアリルエーテル(セテアレス-20、CAS番号:68439-49-6、マクロゴールセトステアリルエーテル20)およびポリエトキシエチレン30セトステアリルエーテル(セテアレス-30、CAS番号:68439-49-6)が含まれる。
【0077】
ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルは、14のHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)値を有し、以下の成分の混合物である。
【0078】
・ポリエトキシエチレン12セチルエーテル(セチル=C16):
【化1】
n=12
【0079】
・ポリエトキシエチレン12ステアリルエーテル(ステアリル=C18):
【化2】
n=12
【0080】
ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルは、様々な商品名で市販されており、例えば、Eumulgin(登録商標)B1、Kolliphor(登録商標)CS12、Volpo(登録商標)CS12、Cremophor(登録商標)A25、Simulsol(商標)またはBrij CS12(登録商標)が挙げられる。
【0081】
ポリエトキシエチレン12-セトステアリルエーテルは、制汗剤および消臭剤、日焼け止め(アフターサン、セルフタンニング、日焼け防止)、ボディ、カラーおよびフェイスケア製品に応用されている。ベビーケアおよびクレンジング、顔クレンジング、毛髪着色およびコンディショニング配合物にも使用されている。さらに、医薬品の水中油型エマルジョン用のマイルドな非イオン性乳化剤として使用されており、製品適用中に良好な感覚特性を提供する。
【0082】
ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルは、AF03として知られるアジュバントの成分であり、スクアレン(注記:スクアランではない)、Eumulgin(登録商標)B1(ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテル)、Montane(商標)80(ソルビタンオレエート)、マンニトール、およびリン酸緩衝生理食塩水を含む。
【0083】
「トコフェロール」は、本明細書で使用される場合、ビタミンE活性を有する有機化学化合物のクラスを指す。トコフェロールとしては、α-トコフェロール(CAS番号:10191-41-0)、β-トコフェロール(CAS番号:148-03-8)、γ-トコフェロール(CAS番号:54-28-4)およびδ-トコフェロール(CAS番号:119-13-1)が挙げられる。
【0084】
トコフェロール(ビタミンE)の薬学的に許容され得るエステルには、特に、CAS番号58-95-7を有するトコフェリルアセテートまたはビタミンE-アセテートとも呼ばれるα-トコフェリル-アセテートが含まれる。α-トコフェリル-アセテートは、種子、ナッツ、果実または葉などの植物材料から、または脂肪肉から誘導することができるが、合成的に製造することもできる。したがって、ビタミンE-アセテートの定義に含まれるのは、天然、合成もしくは半合成形態、またはそれらの混合物である。ビタミンE-アセテートは、様々な純度で市販されている。
【0085】
本発明によるアジュバント組成物のためのα-トコフェリル-アセテートは、好ましくは、CAS番号:7695-91-2の化学物質のラセミ体であるDL-α-トコフェロールアセテートである。
【0086】
本明細書で使用される「含む(comprising)」という用語(ならびに「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含まれる(comprised)」などの変形)は、この用語が使用されるテキストセクション、段落、請求項などによって網羅されるかまたは含まれる、本発明について考えられるすべての要素、および任意の可能な組合せを指し、そのような要素または組合せが明示的に列挙されていない場合であっても、そのような(1または複数の)要素または組合せのいずれかを除外することを指すものではない。したがって、任意のそのようなテキストセクション、段落、請求項などは、用語「含む(comprises)」(またはその変形)が「からなる(consist of)」、「からなる(consisting of)」、または「から本質的になる(consist essentially of)」などの用語で置き換えられる1または複数の実施形態にも関連することができる。
【0087】
アジュバント組成物は、薬学的に許容され得る担体をさらに含み得る。
【0088】
アジュバント組成物は、本明細書に記載のワクチン組成物と同一であり得るが、抗原を欠いている。
【0089】
本発明の「薬学的に許容され得る担体」は、高純度の、好ましくは無菌の水性液体、例えば、水、生理食塩水、またはリン酸緩衝生理食塩水である。担体は、安定剤または防腐剤などのさらなる添加剤を含むことができる。
【0090】
本発明によるアジュバント組成物の好ましい実施形態では、ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルは、ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテル、ポリエトキシエチレン20セトステアリルエーテル、およびポリエトキシエチレン30セトステアリルエーテルから選択される。さらにより好ましくは、ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルは、ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルである。
【0091】
本発明によるアジュバント組成物の別の実施形態では、トコフェロールの薬学的に許容され得るエステルはα-トコフェリルアセテートである。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルおよびα-トコフェリルアセテートを含む。
【0093】
好ましい実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、エステル界面活性剤、例えば脂肪酸のエステル、特に糖アルコールまたはその誘導体から形成されたエステルおよび脂肪酸、例えばソルビタンまたはマンニドエステルを含まない。このようなエステルは、油性アジュバント組成物中の界面活性剤として一般に使用される。ソルビタンエステルは、ポリソルベート、TweenまたはSpanとしても知られている。エステルの特定の例としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80またはTween(登録商標)80)、ソルビタンモノステアレート(Span 60)、ソルビタントリステアレート(Span 65)、ソルビタンモノラウレート(Span 20)が挙げられる。他の例としては、オクタデカン酸とアンヒドロマンニトールのエステル(Montanide ISA-206に含まれる)が挙げられる。
【0094】
好ましくはまた、本発明によるワクチン組成物は、脂肪酸のエステルを含まない。
【0095】
別の実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、スクアランをさらに含む。
【0096】
「スクアラン」は周知の化合物であり、好ましくはCAS番号111-01-3の化合物を指す。いくつかの代替名は、水素化サメ肝油、ヘキサメチルテトラコサンまたはペルヒドロスクアレンである。これはスクアレン(CAS番号111-02-4)と混同されてはならず、スクアレンはポリ不飽和C30油であり、コレステロール経路の化合物として代謝可能である。しかしながら、スクアランはスクアレンの完全水素化形態であり、したがって酸化を受けにくい。したがって、スクアランは非鉱油であり、注射部位から輸送されるが非代謝性である。
【0097】
もともとスクアランの前駆体はサメ肝臓から得られたが、環境上の懸念から、オリーブ油などの他の天然源または化学合成に移行している。したがって、スクアランの定義には、天然、合成もしくは半合成形態、またはそれらの混合物が含まれる。スクアランは、様々な純度で市販されており、例えば、野菜供給源、Worlee(スクアラン、野菜)、もしくはCroda(Pripure Squalane)、または合成、例えばKuraray(スクアラン-PE)から入手可能である。本発明では、高純度のスクアランが好ましく、好ましい順に、好ましくは75%を超える純度、より好ましくは80%、90%を超える純度、またはさらに95%を超える純度である。
【0098】
一実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、鉱油をさらに含む。
【0099】
アジュバント組成物での使用に適した鉱油の例としては、例えば、Bayol(商標)もしくはMarkol(商標)、Montanide(商標)、または軽質(または白色)流動パラフィン油、例えば、Marcol(登録商標)52(Exxon Mobile)もしくはDrakeol(登録商標)6VR(Penreco)もしくはKlearol(登録商標)(Sonneborn)などが挙げられる。
【0100】
一実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、非鉱油をさらに含む。
【0101】
非鉱油は、合成、動物または植物起源のものであり得る。本発明のアジュバント組成物に使用するために、非鉱油は、好ましくは生分解性(代謝可能)および生体適合性である。アジュバント組成物での使用に適した合成油の例としては、例えば、Shell Ondina(登録商標)油、例えば、Shell Ondina X420が挙げられる。アジュバント組成物に使用するのに適した動物油の例としては、例えば魚油が挙げられる。アジュバント組成物に使用するのに適した植物油の例としては、ナッツ、種子および穀物由来の油、例えば落花生油、大豆油、ヤシ油およびオリーブ油;ホホバ油;ベニバナ油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ油;トウモロコシ油、または他の穀粒の油、例えば小麦、オート麦、ライ麦、米、テフ、およびライコムギの油などが挙げられる。
【0102】
特に好ましい実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテル、α-トコフェリルアセテートおよびスクアランを含む。
【0103】
別の特に好ましい実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテル、α-トコフェリルアセテートおよび非鉱油を含む。好ましくは、非鉱油は合成油、例えばShell Ondina X GTLベースの薬用白色油などである。
【0104】
別の特に好ましい実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテル、α-トコフェリルアセテートおよび鉱油を含む。好ましくは、鉱油は、軽質流動パラフィン油である。
【0105】
一実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は水中油型エマルジョンである。
【0106】
「水中油型エマルジョン」は、内部分散油性相を含有する外側水相を含む周知の組成物であり、本発明では、分散相は、油性アジュバント(トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステル)の液滴によって形成される。
【0107】
適切な種類および濃度の(1または複数の)乳化剤を選択することによって、そのようなエマルジョンを形成することができる。ワクチンとして使用するための水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンの調製のための手順および機器は当技術分野で周知であり、当業者に公知のハンドブックに記載されている。
【0108】
「油相」(または「油性相」)は、油をベースとする液体である。「油」は、本明細書ではその一般的な意味で使用され、疎水性および親油性であり、高い炭化水素含有量を有する非極性化学物質を指す。油は、鉱物起源のもの、または非鉱物、例えば合成、動物もしくは植物起源のものであり得る。いくつかの非鉱油は代謝可能である。
【0109】
油相は、乳化剤などの賦形剤を含有し得る。本発明の場合、油相は、O/Wエマルジョンに典型的な分散相である。ワクチンに製剤化される場合、油相はアジュバントとして働く。獣医学ワクチンにおいて多く使用されている鉱油アジュバントは、Marcol(登録商標)(Exxon Mobile)またはDrakeol(登録商標)(Penreco)などの軽質流動パラフィン油である。一般的な非鉱油アジュバントは、スクアレンおよびスクアラン(サメ肝油)およびトコフェロール(ビタミンE)である。
【0110】
「水相」は、水に基づく液体である。水相は、例えば、緩衝液または生理食塩水、および乳化剤または安定剤などの1以上の賦形剤を含み得る。
【0111】
本発明のアジュバント組成物の分散相の粒子サイズは、好ましくは非常に小さい。分散相の粒子の平均直径が約1マイクロメートル未満である場合、そのようなエマルジョンは一般に「サブミクロンエマルジョン」と呼ばれる。
【0112】
本発明によるアジュバント組成物のO/Wエマルジョンの一実施形態では、エマルジョンはサブミクロンエマルジョンである。
【0113】
1マイクロメートル以下の粒径を測定するための装置は、例えばレーザー回折測定によって一般に入手可能である。典型的には、粒径はナノメートル(nm)で表され、メジアン径としても知られる平均粒径として表され、累積粒径分布のD50として表される。
【0114】
本発明の場合、粒径は、Mastersizer(商標)(Malvern Instruments)を使用して決定されるD50のnmで表される。粒径測定は、アジュバント組成物またはワクチン組成物を構成する(濃縮)油性エマルジョン中で行うことができる。本発明の油相の粒子屈折率は1.48である。Malvern Mastersizerサイズ分析レポートは、D50をD(0.50)として提示する。
【0115】
そのようなサブミクロンエマルジョンを製造するために利用可能な多くの方法があり、典型的には、例えば高圧ホモジナイザー、ローターステーターデバイス、ブレンダー、超音波、マイクロポーラス膜、またはマイクロチャネリングデバイスを使用する高エネルギー乳化プロセスの使用による。
【0116】
本発明によるアジュバント組成物を調製するための高エネルギー乳化のための好ましい方法は、高圧ホモジナイザー、好ましくはMicrofluidiser(商標)(Microfluidics)の使用である。典型的には、500~1500バール(すなわち、7000~22000psi)の圧力で1~3回通せば十分である。
【0117】
このようにして調製されたエマルジョンは、典型的には、500nm以下のD50を有する分散相粒子を有し、狭いサイズ分布を有する。このようなエマルジョンはナノエマルジョンと呼ばれる。
【0118】
典型的には、分散相のこのような非常に微細なサイズの粒子を有するエマルジョンは、いくつかの連続工程で調製される。このようにして、初期の比較的粗い油性エマルジョンを低エネルギー混合によって調製し、続いて1以上の後続の高エネルギー処理を行って粒径のさらなる減少を達成する。
【0119】
次に、水中の(1または複数の)アジュバントおよび乳化剤を含む「マイクロ流動化」油性エマルジョンを、抗原の有無にかかわらず水相と組み合わせて、本発明によるアジュバント組成物、ワクチン組成物をそれぞれ調製する。
【0120】
したがって、本発明によるアジュバント組成物またはワクチン組成物のサブミクロン水中油型エマルジョンの一実施形態では、油滴、すなわち(エマルジョン)粒子は、500nm以下のD50を有し、好ましくは、D50は250nm以下である。より好ましくは、D50は150nm以下である。特に好ましくは、エマルジョン粒子は、約80~約200nm、より好ましくは約40~約100nmの粒径D50を有する。
【0121】
製品の一貫性および品質の理由から、メジアン粒径だけでなく、粒径分布としても知られる粒径の広がりも有利に監視および制御することができる。本発明によるアジュバント組成物またはワクチン組成物のサブミクロン水中油型エマルジョン中の油滴のサイズ分布は、好ましくは比較的狭い。粒径分布の指標は、累積粒径分布のD90である。
【0122】
したがって、本発明によるアジュバント組成物またはワクチン組成物のサブミクロン水中油型エマルジョンの一実施形態では、油滴は900nm未満のD90を有し、より好ましいD90は、好ましい順に、500nm未満、400nm未満、またはさらには300nm未満である。最も好ましいD90は約250nm以下である。
【0123】
このような小さな粒径および分布を有するエマルジョンの利点の1つは、材料を著しく失うことなく、これを濾過によって滅菌できることである。これは、典型的な滅菌フィルターが約0.2マイクロメートルの孔径を有するためである。そのようなフィルター滅菌は、加熱、化学物質、または照射などによって油性エマルジョンの成分の品質を損なう可能性がある他の滅菌方法の必要性を克服する。
【0124】
したがって、一実施形態では、本発明によるアジュバント組成物またはワクチン組成物は、約80~約200nm、好ましくは約40~約100nmの粒径D50を有するエマルジョン粒子を含む。
【0125】
本発明によるアジュバント組成物において、ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテル乳化剤は、アジュバント組成物の重量(w/w)に基づいて約1~約9%重量の量で存在する。好ましくは、ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルは、アジュバント組成物の約2~約7%w/wの量で存在する。
【0126】
特に好ましい実施形態では、ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルは、アジュバント組成物の約6~約7%w/wの量で存在する。
【0127】
別の特に好ましい実施形態では、ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルは、アジュバント組成物の約2~約4%w/wの量で存在する。
【0128】
本発明について、「約」は、数がその示された値を中心に±25%の間で変動し得ることを示す。好ましくは、「約」は、その値の前後±20%を意味し、より好ましくは、「約」は、好ましい順に、その値の前後±15、12、10、8、6、5、4、3、2%を意味し、またはさらに「約」は、その値の前後±1%を意味する。
【0129】
本発明によるアジュバント組成物において、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルは、アジュバント組成物の重量に基づいて約1~約20%(重量基準)の量で存在する。好ましくは、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルは、アジュバント組成物の約6~約16%w/wの量で存在する。
【0130】
特に好ましい実施形態では、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルは、アジュバント組成物の約14~約16%w/wの量で存在する。
【0131】
別の特に好ましい実施形態では、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルは、アジュバント組成物の約2~約8%w/wの量で存在する。最も好ましくは、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステル、特にα-トコフェリルアセテートは、アジュバント組成物の約15%w/wの量で存在する。
【0132】
本発明によるアジュバント組成物において、スクアランは、アジュバント組成物の重量に基づいて約5~約20%(重量基準)の量で存在する。好ましくは、スクアランは、アジュバント組成物の約6~約15%w/wの量で存在する。特に好ましい実施形態では、スクアランは、アジュバント組成物の約13~約14%w/wの量で存在する。
【0133】
本発明によるアジュバント組成物において、鉱油は、アジュバント組成物の重量に基づいて約5~約40%(重量基準)の量で存在する。特に好ましい実施形態では、鉱油は、アジュバント組成物の約6~約7%w/wの量で存在する。
【0134】
別の特に好ましい実施形態では、鉱油は、アジュバント組成物の約30~約40%w/v、好ましくはアジュバント組成物の約35%w/vの量で存在する。
【0135】
本発明によるアジュバント組成物において、非鉱油は、アジュバント組成物の重量に基づいて約5~約40%(重量基準)の量で存在する。特に好ましい実施形態では、非鉱油は、アジュバント組成物の約6~約7%w/wの量で存在する。
【0136】
別の特に好ましい実施形態では、非鉱油は、アジュバント組成物の約30~約40%w/v、好ましくはアジュバント組成物の約35%w/vの量で存在する。
【0137】
本発明によるアジュバント組成物は、濃縮物として調製することができる。この濃縮物は、例えば、2x w/v濃縮物であり得、これは、濃縮物がワクチンの最終体積の50%に相当することを意味する。同様に、濃縮物が例えば4x w/wの濃縮物である場合、これは濃縮物が最終ワクチンの重量の25%に相当することを意味し、以下同様である。
【0138】
特に好ましい実施形態では、アジュバント組成物は、約5~約7%w/w、好ましくは約6%w/wのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルと、約14~約16%w/w、好ましくは約15%w/wのα-トコフェリルアセテートとを含む。本明細書では、このアジュバント組成物をFortasol-Eと呼ぶ。Fortasol-Eは、最終ワクチンの2x w/v濃縮物であり、これは濃縮物が最終ワクチンの体積の50%に相当することを意味する。Fortasol-E製剤はナノエマルジョンである。
【0139】
特に好ましい実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、約6~約7%w/wのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルと、約15~約16%w/wのα-トコフェリルアセテートと、約13~約14%w/wのスクアランとを含む。本明細書では、このアジュバント組成物をSVEA-Eと呼ぶ。SVEA-Eは4x w/v濃縮物であり、最終ワクチンの体積の25%として含まれる。SVEA-Eアジュバント組成物はナノエマルジョンである。
【0140】
別の好ましい実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、約3~約4%w/wのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルと、約7~約8%w/wのα-トコフェリルアセテートと、約6~約7%w/wの非鉱油とを含む。本明細書では、このアジュバント組成物をEVO420と呼ぶ。EVO420は2x w/v濃縮物であり、最終ワクチンの体積の50%として含まれる。EVO420アジュバント組成物はナノエマルジョンである。
【0141】
驚くべきことに、SVEA-Eアジュバント組成物を含み、PCV2のOrf2抗原およびMhyoの粗バクテリン抗原をさらに含む本発明によるワクチン組成物は、4℃で27ヶ月後でも安定であることが分かった。抗原としてFMDV空キャプシドを含む、SVEA-Eを含む同様のワクチン組成物は、4℃で8ヶ月まで安定であることが分かった。
【0142】
一実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、シリカをさらに含む。
【0143】
好ましくは、シリカは「ヒュームドシリカ」である。より好ましくは、ヒュームドシリカは、アジュバント組成物の約0.3%w/w~約0.5%w/wの量、より好ましくは約0.4%w/wの量で存在する。
【0144】
本明細書で使用される「ヒュームドシリカ」は、約6~約13nmの平均粒径を有する二酸化ケイ素を指す。ヒュームドシリカは、Aerosil 380(平均粒径7nm)の商品名で市販されている。医薬品品質グレードのヒュームドシリカは、Aerosil 300(Aerosil 380と比較して表面積が小さい平均粒径7nm)またはAerosil 200(平均粒径12nm)として市販されている。
【0145】
さらに好ましい実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、約6~約7%w/wのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルと、約15~約17%w/wのα-トコフェリルアセテートと、約13~約14%w/wのスクアランと、さらに約0.3~0.5%w/wのヒュームドシリカとを含む。本明細書では、このアジュバント組成物をSVEA-E double plusと呼ぶ。SVEA-E double plusは2x w/wの濃縮物であり、最終ワクチンの重量の50%として含まれる。SVEA-E double plusトアジュバント組成物はナノエマルジョンである。
【0146】
さらに好ましい実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、SVEA-E組成物の乳化剤の量の1/3のみ、すなわち約2~約2.3%w/wのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルを含む。本明細書では、このアジュバント組成物をmicroSVEA-Eと呼ぶ。microSVEA-Eアジュバント組成物は、マイクロメートル範囲のエマルジョン粒子を有するので、マイクロエマルジョンを表す。
【0147】
同様に、microSVEA-E double plusは、SVEA-E double plus組成物の乳化剤の量の1/3のみ、すなわち約2~約2.3%w/wのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルを含む。本明細書では、このアジュバント組成物をmicroSVEA-E double plusと呼ぶ。microSVEA-E double plusアジュバント組成物は、マイクロメートル範囲のエマルジョン粒子を有するので、マイクロエマルジョンを表す。
【0148】
特に好ましい実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、約2~約3%w/wのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルと、約2~約3%w/wのα-トコフェリルアセテートと、約30~約40%w/v、好ましくは約35%の非鉱油とを含む。本明細書では、このアジュバント組成物をXsolve2.0と呼ぶ。Xsolve2.0アジュバント組成物は、ナノエマルジョンである。
【0149】
本発明によるアジュバント組成物は、エマルジョンワクチン、例えば本発明によるワクチン組成物を製剤化するために使用することができる。
【0150】
本発明について、「製剤」は、本明細書に記載の1つ以上の抗原を含む水相と本発明によるアジュバント組成物との混合による、本発明によるワクチン組成物の調製物に関する。
【0151】
本発明によるアジュバント組成物は、非生ワクチン、例えば本明細書に記載の非生抗原を含む本発明によるワクチン組成物を製剤化するために使用することができる。
【0152】
一実施形態では、本発明によるアジュバント組成物は、本発明について定義される粗細菌抗原または寄生生物抗原から生じる分解を受けやすい、好ましくは、本明細書で定義されるエステラーゼまたはリパーゼによる分解を受けやすい、乳化剤を含有しない(すなわち、無)。より好ましくは、エマルジョンは、ソルベート系乳化剤を含有しないか、またはポリソルベートを含有しない。さらにより好ましくは、ポリソルベートおよびソルビタンモノオレエートを含有しない。
【0153】
さらなる態様では、本発明は、本発明によるアジュバント組成物と抗原とを含むワクチン組成物に関する。
【0154】
「抗原」は、おそらくアジュバントなどの免疫刺激化合物の助けを借りて、対象のヒトまたは動物において免疫学的反応を誘導することができる物質である。抗原は、合成的に調製することができ、または生物源に由来することができ、例えば、微生物(複製可能であってもなくても)であってもよく、またはその一部、例えばタンパク質、脂質、炭水化物、もしくは核酸、またはそれらの組合せ、例えばペプチドグリカン、リポグリカン、リポペプチド、もしくはリポ多糖などであってもよい。
【0155】
本発明の場合、非生(非複製)抗原は、タンパク質、炭水化物、脂質もしくは核酸などの分子に関するか、または多かれ少なかれ純粋なそれらの複雑な組合せである。微生物から調製される場合、非生抗原は、死滅した(すなわち、非複製)微生物を指すことができ、または抽出物、画分、ホモジネートもしくは超音波処理物などのその一部であり得る。また、非生抗原は、発現ベクターもしくは発現タンパク質などの核酸ベースの産物もしくは組換え産物、またはインビトロ発現系の産物であり得る。これらはすべて当技術分野で周知である。
【0156】
「生」抗原は、ワクチン成分としての使用に適した、すなわち弱毒化または改変生菌としても知られる病原性レベルの低下した生(すなわち、複製)細菌、寄生生物、またはウイルスを指す。
【0157】
本明細書で使用される場合、「弱毒化された」は、より低いレベルの病変を引き起こすこと、および/または感染率もしくは複製率が低下していることとして定義される。すべて、未改変または「野生型」の細菌、寄生生物またはウイルスと比較した場合である。
【0158】
微生物の弱毒化は、インビトロで、例えば、実験動物を通した継代、または細胞培養および選択によって、または組換えDNA技術を介して得ることができ、これらはすべて当技術分野で周知である。
【0159】
ウイルスを「生」と呼ぶことは生物学的に正しくないが、これは、複製可能であり不活化されていないウイルスを指す一般的な方法である。したがって、本発明について、ウイルスに関する「生」という用語は、適切な条件下で、例えば適切な宿主細胞または動物において複製することができるウイルスを指す。
【0160】
本発明によるワクチン組成物は、細菌、寄生生物および/またはウイルスの抗原を含む。抗原は、好ましくは非生抗原である。ワクチン組成物は、例えば細菌、寄生生物、ウイルス、真菌、外部寄生生物などからの1つ以上のさらなる抗原を含んでもよい。さらなる抗原は、生または非生であり得る。
【0161】
したがって、本発明によるワクチン組成物の好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、細菌、寄生生物およびウイルスの非生抗原から選択される1以上の抗原を含む。好ましくは、ワクチン組成物は、複数(2以上)の抗原、より好ましくは2以上の細菌抗原を含有する。
【0162】
「細菌抗原」は、細菌に由来する、細菌に基づく、または細菌から得られる抗原である。本発明に関して、細菌は、分類学的な超界細菌に現在分類されている原核微生物である。
【0163】
「寄生生物抗原」は、寄生生物に由来するか、寄生生物に基づいているか、寄生生物から得られる。本発明の場合、寄生生物は真核微生物であり、例えば、現在アピコンプレクサ(Apicomplexa)クレードまたは線虫門(Nematoda)に分類されている。
【0164】
外部寄生生物は、例えば、ハエ、ノミ、ダニ(mite)またはダニ(tick)である。
【0165】
真菌は、例えばアスペルギルスである。
【0166】
「ウイルス抗原」は、ウイルスに由来する、ウイルスに基づく、またはウイルスから得られる抗原である。本発明によるワクチン組成物に含まれる抗原は、ワクチンによって感染および/または疾患から保護されるべき対象種に対して病原性である微生物に由来する。
【0167】
ブタ動物に対して病原性の微生物の例は以下である。
【0168】
ウイルス:豚サーコウイルス2型、豚パルボウイルス、アフリカ豚コレラウイルス、豚インフルエンザウイルス、豚呼吸器コロナウイルス、豚サイトメガロウイルス、豚ロタウイルス、豚ポックスウイルス、豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルス(PRRSV)、仮性狂犬病ウイルス、豚コレラウイルス、豚インフルエンザウイルス、口蹄疫ウイルス、豚流行性下痢ウイルス、伝染性胃腸炎ウイルスおよび水疱性口内炎ウイルス。
【0169】
細菌:マイコプラズマ(Mycoplasma)、ローソニア(Lawsonia)、エシェリヒア(Escherichia)、ブラキスピラ(Brachyspira)、連鎖球菌(Streptococcus)、サルモネラ(Salmonella)、クロストリジウム(Clostridium)、アクチノバチルス(Actinobacillus)、パスツレラ(Pasteurella)、ヘモフィルス(Haemophilus)、エリシペロスリックス(Erysipelothrix)、レプトスピラ(Leptospira)、ブルクホルデリア(Burkholderia)、エンテロコッカス(Enterococcus)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、およびボルデテラ(Bordetella)。
【0170】
寄生生物:トキソプラズマ(Toxoplasma)、イソスポラ(Isospora)およびトリチネラ(Trichinella)。
【0171】
反芻動物に対して病原性である微生物の例は以下の通りである。
【0172】
ウシの場合:ネオスポラ(Neospora)、ディクチオカウルス(Dictyocaulus)、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、オステルタギア(Ostertagia)、ウシロタウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、ウシコロナウイルス、感染性ウシ鼻気管炎ウイルス(ウシヘルペスウイルス1)、ウシパラミクソウイルス、ウシパラインフルエンザウイルス、ウシ呼吸器合胞体ウイルス、狂犬病ウイルス、ブルータングウイルス、エシェリヒア、サルモネラ、ブドウ球菌(Staphylococcus)、連鎖球菌マイコバクテリウム、ブルセラ(Brucella)、クロストリジウム、パスツレラ、エルシニア・マンヘミア(Yersinia Mannheimia)、ヘモフィルス、レプトスピラ、バチルス(Bacillus)、モラクセラ(Moraxella)、フランシセラ(Francisella)、ヒストフィルス(Histophilus)、トゥルエペレラ(Trueperella)、フソバクテリウム(Fusobacterium)。アクチノミセス(Actinomyces)、コキシエラ(Coxiella)、カンピロバクター(Campylobacter)、エリシペロスリックス、リステリア、ブルクホルデリア、ノカルジア(Nocardia)、マイコプラズマ、バクテロイデス(Bacteroides)、およびクラミジア(Chlamydia)。
【0173】
ヒツジおよびヤギの場合:トキソプラズマゴンディ(Toxoplasma gondii)、小反芻獣疫(peste des petit ruminant)ウイルス、ブルータングウイルス、シュマレンベルク(Schmallenberg)ウイルス、マイコバクテリウム、ブルセラ、クロストリジウム(Clostridia)、コキシエラ、エシェリヒア、クラミジア、クロストリジウム、パスツレラおよびマンヘミア。
【0174】
シカの場合:類動物間出血性疾患ウイルス、ブルータングウイルス、パピローマウイルス、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorferi)、ウシ型結核菌(Mycobacterium bovis)およびトゥルエペレラ・ピオゲネス(Trueperella pyogenes)。
【0175】
特に有利には、本発明によるワクチン組成物は、細菌抗原または寄生生物抗原の粗調製物を含むことができる。本発明によるアジュバント組成物の成分によってもたらされるエマルジョン安定化効果のために、細菌抗原および/または寄生生物抗原の精巧で高価な精製は必要とされない。
【0176】
「粗」という表現は、本明細書で使用される細菌、寄生生物またはウイルスからの抗原であって、それらがインビトロ培養物から採取され、不活性化および/または溶解または破壊された後、さらなる精製をあまり(または全く)行わずに調製された抗原を指す。そのような粗抗原調製物は、油および水のエマルジョンに基づくワクチンの安定性に影響を及ぼし得る未定義または意図しない不純物を依然として含有する。
【0177】
本発明によるワクチン組成物に含まれる抗原は、典型的には、水性緩衝液などの液体に含まれる。
【0178】
記載されているように、本発明の有利な効果は、特に農業部門のためのそのようなワクチン組成物の使用に適用される。
【0179】
本発明によるワクチン組成物の一実施形態では、抗原は非生細菌抗原であり、好ましくは、非生細菌抗原は、不活化全菌体培養物(すなわち、バクテリン)であるか、またはそのような培養物の一部である。
【0180】
好ましくは、不活化全細菌培養物の一部は、ペレット、上清、濃縮物、透析液、抽出物、超音波処理物、溶解液、およびそのような培養物の画分から選択される。
【0181】
「細菌培養物」または「その一部」を構成するものは当業者に周知であり、「獣医ワクチン学」(前出)などのハンドブックやマニュアルに記載されている。本発明では、不活化細菌培養物は、全体として、すなわち特定の培養容器の完全な内容物として、またはその一部として使用される。
【0182】
そのような不活化培養物を調製するための、またはそのような一部を調製するための方法および材料は、一般に公知であり、任意の規模で利用可能である。例えば、細菌の不活性化は、化学的または物理的手段を用いて行うことができる。物理的手段は、例えば、加熱、照射、または非常に高い圧力である。化学的手段は、例えば、メルチオラート、ホルマリン、ジエチルアミン、バイナリーエチレンアミン、βプロピオラクトン、塩化ベンザルコニウムまたはグルタルアルデヒドとのインキュベーションである。
【0183】
上清またはペレットは、遠心分離によって調製することができる。
【0184】
濃縮物または透析液は、例えばクロスフロー濾過の方法によって調製することができる。
【0185】
抽出物は、例えば、溶媒または界面活性剤溶液で洗浄またはインキュベーションすることによって作製することができる。溶媒は、液体または気体であり得、液体は例えば水または緩衝液などの水性であり得、アルコール、アセトン、エーテルなどの有機溶媒であり得る。抽出物は、溶媒で除去される部分であり、多くの場合、後続のプロセスでその溶媒から回収される。
【0186】
超音波処理物は、超音波処理装置、例えばフロースルー超音波処理セルを使用して調製することができる。
【0187】
溶解物は、物理的または(生物)化学的手段によって、例えばフレンチプレスを使用して、または酵素処理を使用して調製することができる。
【0188】
画分は、残りの部分、例えば濾液または沈殿物から精製された全体の一部であり、それにより画分は保持液である。
【0189】
農業用途のための細菌ワクチンにおいて最も使用されているのは、不活化細菌細胞を含む非生細菌抗原である。一般に、死滅した細菌細胞のこのような抗原調製物は、バクテリンと呼ばれる。
【0190】
不活化細菌細胞は、任意の形態であり得、無傷であってもよいし、損傷されていてもよい。不活化細菌細胞は、任意のレベルの純度であってもよく、例えば、それらが発酵された細菌培養培地とともにあってもよく、または培養培地なしであってもよく、例えば、沈降、遠心分離または濃縮から生じる。
【0191】
したがって、本発明によるワクチン組成物の一実施形態では、非生細菌抗原は不活化細菌細胞を含む。
【0192】
非生抗原が調製される細菌は、ヒトの医学的および/または獣医学的に関連する任意の細菌、例えば、一次または二次(日和見)病原体のいずれかとして(潜在的)病原体である任意の細菌であり得る。
【0193】
例として、適切な細菌抗原としては、アクチノバチルス・プルロニューモニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、マイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mhyo)、ローソニア・イントラセルラリス、エリシペロスリックス・ルシオパシアエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、およびレプトスピラ、またはこれらのいずれかの一部が、単独でまたは任意の組合せで挙げられる。
【0194】
明らかに、2以上の細菌由来の非生細菌抗原の組合せも調製して使用することができる。また、ウイルス性または寄生生物性の病原体由来の抗原との組合せが望ましい。
【0195】
細菌抗原は、好ましくは本明細書に記載の粗抗原である。より好ましくは、粗細菌抗原は、Mhyo由来またはLイントラセルラリス由来のバクテリンである。
【0196】
本発明の場合、ウイルス抗原は、好ましくはウイルスおよび宿主細胞のインビトロ培養物に由来する。ウイルスは、培養上清から、ペレットから得られ得るか、または宿主細胞に含まれ得る。多種多様な病原性ウイルスが獣医学に関連することが知られている。
【0197】
例示的なウイルス抗原としては、PCV2、PRRSVおよびFMDV、またはそれらのいずれかの一部が単独でまたは任意の組合せで挙げられる。
【0198】
本発明の抗原はまた、組換えベクターによって本発明によるワクチン組成物に含まれ得る。そのようなベクターは、核酸またはレプリコン粒子(RP)であり得、核酸は、好ましくは真核生物発現プラスミドまたはRNA分子であり、RPは好ましくはアルファウイルスRPである。
【0199】
本発明によるワクチン組成物の一実施形態では、抗原はウイルス抗原を含む。ウイルス抗原は、FMDV、好ましくはFMDVの非生抗原、例えば組換え発現されたFMDVのウイルス様粒子を含むことが好ましい。FMDV抗原は、特に好ましくは、組換え発現されたFMDVの空カプシドである。
【0200】
本発明によるワクチン組成物の一実施形態では、非生抗原は、豚サーコウイルス2型、マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよび口蹄疫ウイルスのうち1以上から選択される。好ましくは、PRRSVまたはL.イントラセルラリスから選択される1以上のさらなる非生抗原が含まれ得る。
【0201】
「ワクチン」は、医学的効果を有する周知の組成物であり、免疫学的に活性な成分および薬学的に許容され得る担体を含む。本発明の「担体」として、水相または本発明によるアジュバント組成物自体を機能させる。本発明の「免疫学的に活性な成分」は、細菌、寄生生物もしくはウイルス由来の抗原であるか、またはそれらの微生物の1以上に由来する抗原の組合せである。
【0202】
本発明によるワクチン組成物は、対象のヒトまたは動物の免疫系を刺激し、防御免疫応答を誘導する。応答は、対象の生来および/または獲得免疫系に由来し得、細胞型および/または体液型であり得る。
【0203】
ワクチンは、ワクチン接種された対象において、例えば病原体の数を減少させることによって、または対象における病原体の複製の期間を短縮することによって、感染の重症度を減少させ、病原体による感染によって引き起こされる病変の数、強度または重症度を減少させることによって、「感染および/または疾患に対する」保護を提供する。さらに、または結果として、ワクチンは、そのような感染もしくは複製によって、またはその感染もしくは複製に対する対象の応答によって引き起こされ得る疾患の(臨床)症状を軽減または改善するのに有効である。そのような疾患および臨床徴候についての参考文献は、「メルク獣医マニュアル(The Merck veterinary manual)」(上掲)である。そのようなワクチンは、口語的に、特定の病原体に「対する」ワクチン、例えば「Mhyoワクチン」または「FMDVワクチン」と呼ばれる。
【0204】
免疫学的に有効であるためには、ワクチンは十分な量の抗原を含有する必要がある。どの程度であるかは、関連するワクチンから既に知られているか、または例えばワクチン接種後の免疫学的応答および(動物対象の場合)攻撃感染を監視することによって、例えば対象の疾患の徴候、臨床スコアを監視することによって、または病原体の再単離、およびこれらの結果を疑似ワクチン接種動物で見られるワクチン接種-攻撃反応と比較することによって、容易に決定することができる。
【0205】
本発明によるワクチン組成物のための細菌抗原、寄生生物抗原またはウイルス抗原の量は、使用される抗原の種類に応じて異なる方法で発現され得る。例えば、抗原用量は、不活性化される前に計数された細菌細胞、寄生生物またはビリオンの数として表すことができる。あるいは、抗原は、ELISAまたはAlphaLisa(商標)などの血清学的または生化学的試験によって定量化し、適切な参照標準と比較して相対単位で表すことができる。これらはすべて当技術分野で周知である。
【0206】
本発明によるワクチン組成物は、予防的処置、感染防御(metaphylactic)処置または治療的処置として使用することができる。
【0207】
本発明によるワクチン組成物は、有効なプライミングワクチン接種として役立ち得、これは後に、同じワクチンまたは異なるワクチンを用いたブースターワクチン接種によって追跡および増幅され得る。
【0208】
本発明によるワクチン組成物は、さらなる抗原もしくは微生物、サイトカイン、または非メチル化CpGを含む免疫賦活性核酸などの他の化合物をさらに含むことができる。あるいは、本発明によるワクチン組成物自体をワクチンに添加してもよい。
【0209】
記載したように、本発明によるワクチン組成物は、畜産の分野において特に関連性がある。
【0210】
その結果、動物対象の異なる群について、本発明の非生細菌抗原は、例えば以下のような細菌ファミリーの細菌から誘導される。
【0211】
-反芻動物のワクチン接種のために、細菌は、パスツレラ、エシェリヒア、サルモネラ、エルシニア、ブドウ球菌、連鎖球菌、マイコバクテリウム、モラクセラ、バチルス、ブルセラ、クロストリジウム、マンヘミア、ヘモフィルス、フランシセラ、フソバクテリウム、ヒストフィルス、フソバクテリウム、トゥルエペレラ(アルカノバクテリウム)、アクチノミセス、クロストリジウム、コキシエラ、カンピロバクター、エリシペロスリックス、レプトスピラ、リステリア、バークホルデリア、ノカルジア、マイコプラズマ、バクテロイデスおよびクラミジアのうちの1つから選択される。
【0212】
-ブタのワクチン接種のために、細菌は、マイコプラズマ、ローソニア、エシェリヒア、ブラキスピラ、連鎖球菌、サルモネラ、クロストリジウム、アクチノバチルス、パスツレラ、ヘモフィルス、エリシペロスリックス、レプトスピラ、ブルクホルデリア、エンテロコッカス、マイコバクテリウム、およびボルデテラのうちの1つから選択される。
【0213】
本発明によるワクチン組成物のさらにより好ましい実施形態では、非生抗原は、豚サーコウイルス2型、マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよび/または口蹄疫ウイルスに由来する。
【0214】
本発明によるワクチン組成物をさらに最適化することは、十分に当業者の手の届く範囲内である。一般に、これは、提供される免疫保護をさらに改善するためのワクチンの有効性の微調整を含む。これは、ワクチンの用量、体積、アジュバントもしくは抗原含有量を適合させることによって、または異なる経路、方法もしくはレジームを介した適用によって行うことができる。これらはすべて本発明の範囲内である。
【0215】
本発明によるワクチン組成物において、乳化剤は、ワクチン組成物の体積(w/v)に基づいて約1~約5%(重量基準)の量で存在する。好ましくは、乳化剤は、ワクチン組成物の約1~約4%w/vの量で存在する。特に好ましい実施形態では、乳化剤は、ワクチン組成物の約1~約2%w/vの量で存在する。別の特に好ましい実施形態では、乳化剤は、ワクチン組成物の約2~約3%w/vの量で存在する。別の特に好ましい実施形態では、乳化剤は、ワクチン組成物の約3~約4%w/vの量で存在する。別の特に好ましい実施形態では、乳化剤は、ワクチン組成物の約0.3~約1.2%w/vの量で存在する。
【0216】
本発明によるワクチン組成物において、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルは、ワクチン組成物の体積に基づいて約2~約9%(重量基準)の量で存在する。好ましくは、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルは、ワクチン組成物の約3~約8%w/vの量で存在する。特に好ましい実施形態では、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルは、ワクチン組成物の約2~約3%w/vの量で存在する。別の特に好ましい実施形態では、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルは、ワクチン組成物の約3~約4%w/vの量で存在する。別の特に好ましい実施形態では、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルは、ワクチン組成物の約7~約8%w/vの量で存在する。
【0217】
本発明によるワクチン組成物において、スクアランは、ワクチン組成物の体積に基づいて約3~約7%(重量基準)の量で存在する。好ましくは、スクアランは、ワクチン組成物の約3~約4%w/vの量で存在する。また好ましくは、スクアランは、ワクチン組成物の約6~約7%w/vの量で存在する。
【0218】
本発明によるワクチン組成物において、鉱油は、ワクチン組成物の体積に基づいて約3~約40%(重量基準)の量で存在する。好ましい実施形態では、鉱油は、ワクチン組成物の約3~約4%w/vの量で存在する。別の好ましい実施形態では、鉱油は、ワクチン組成物の約30~約40%w/v、好ましくはワクチン組成物の約35%w/vの量で存在する。
【0219】
本発明によるワクチン組成物において、非鉱油は、ワクチン組成物の体積に基づいて約3~約40%(重量基準)の量で存在する。好ましい実施形態では、非鉱油は、ワクチン組成物の約3~約4%w/vの量で存在する。別の好ましい実施形態では、非鉱油は、ワクチン組成物の約30~約40%w/v、好ましくはワクチン組成物の約35%w/vの量で存在する。
【0220】
特に好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、Fortasol-Eアジュバント組成物に基づいており、約5~約7%w/v、好ましくは約6%w/vのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルと、約14~約16%w/v、好ましくは約15%w/vのα-トコフェリルアセテートとを含む。Fortasol-Eアジュバント組成物に基づくワクチン組成物の密度は、約0.9~約1.1g/ml、好ましくは約0.9~約1.0g/mlである。
【0221】
特に好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、SVEA-Eアジュバント組成物に基づいており、約1~約2%w/vのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルと、約3~約4%w/vのα-トコフェリルアセテートと、約3~約4%w/vのスクアランとを含む。SVEA-Eアジュバント組成物に基づくワクチン組成物の密度は、約0.9~約1.1g/ml、好ましくは約0.9~約1.0g/mlである。
【0222】
SVEA-E double plusアジュバント組成物に基づくワクチンは、例えばIDAL(登録商標)装置による皮内投与、特にブタへの皮内投与に特に適している。
【0223】
特に好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、EVO420アジュバント組成物に基づいており、約1~約2%w/vのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルと、約3~約4%w/vのα-トコフェリルアセテートと、約3~約4%w/vのスクアランとを含む。EVO420アジュバント組成物に基づくワクチン組成物の密度は、約0.9~約1.1g/ml、好ましくは約0.9~約1.0g/mlである。
【0224】
特に好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、SVEA-E double plusトアジュバント組成物に基づいており、約3~約4%w/vのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルと、約7~約8%w/vのα-トコフェリルアセテートと、約6~約7%w/vのスクアランと、約0.1~0.3%w/vのヒュームドシリカとを含む。SVEA-E double plusアジュバント組成物に基づくワクチン組成物の密度は、約0.9~約1.1g/ml、好ましくは約0.9~約1.0g/mlである。
【0225】
特に好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、microSVEA-Eアジュバント組成物に基づいており、約0.3~約0.7%w/vのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルと、約3~約4%w/vのα-トコフェリルアセテートと、約3~約4%w/vのスクアランとを含む。microSVEA-Eアジュバント組成物に基づくワクチン組成物の密度は、約0.9~約1.1g/ml、好ましくは約0.9~約1.0g/mlである。
【0226】
特に好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、microSVEA-E double plusトアジュバント組成物に基づいており、約0.8~約1.2%w/vのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルと、約7~約8%w/vのα-トコフェリルアセテートと、約6~約7%w/vのスクアランと、約0.1~0.3%w/vのヒュームドシリカとを含む。microSVEA-E double plusアジュバント組成物に基づくワクチン組成物の密度は、約0.9~約1.1g/ml、好ましくは約0.9~約1.0g/mlである。
【0227】
本発明によるアジュバント組成物としてのmicroSVEA-EまたはmicroSVEA-E double plusに基づく本発明によるワクチン組成物は、筋肉内投与に特に適している。
【0228】
microSVEA-EまたはmicroSVEA-E double plusに基づくこのようなワクチン組成物は両方ともマイクロエマルジョンであるため、これらはマイクロメートル範囲のエマルジョン中に分散粒子を有する。しかし、驚くべきことに、これらのワクチン組成物は、エマルジョンの破壊などの安定性の問題を示さなかった。したがって、microSVEA-EまたはmicroSVEA-E doubleマイクロエマルジョンであるアジュバント組成物を使用することにより、マイクロメートル範囲のより大きなエマルジョン粒子を有するワクチン組成物を得ることが可能になるが、それにもかかわらず良好な安全性を有し、安定性に問題はない。より大きな分散粒径を有するワクチンは、ナノエマルジョンを有するワクチンとは異なる(すなわち、Th1指向性が低い)タイプの免疫応答を誘導すると予想され得るので、これは、特定の病原体および疾患に対する保護に関して有利に使用することができる。
【0229】
特に好ましい実施形態では、ワクチン組成物は、Xsolve2.0アジュバント組成物に基づいており、約2~約3%w/wのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルと、約2~約3%w/wのα-トコフェリルアセテートと、約30~約40%w/v、好ましくは約35%の非鉱油とを含む。Xsolve2.0アジュバント組成物に基づくワクチン組成物の密度は、約0.9~約1.1g/ml、好ましくは約0.9~約1.0g/mlである。
【0230】
一実施形態では、ワクチン組成物は、(1または複数の)抗原の高負荷量を有する。総抗原濃度は、好ましくはワクチン組成物の少なくとも20%v/v、好ましくは少なくとも25%v/v、より好ましくは少なくとも30%v/vである。
【0231】
本発明によるワクチン組成物は、好ましくはエマルジョンワクチンである。
【0232】
本発明によるワクチン組成物は、水中油型エマルジョンとして調製された場合、非常に有効であり、安全であり、安定であることが分かった。
【0233】
したがって、好ましい実施形態では、本発明によるワクチン組成物は水中油型エマルジョンワクチンである。
【0234】
本発明によるワクチン組成物が水中油型エマルジョンワクチンである場合、アジュバント組成物自体が既に乳化されており、潜在的に高剪断混合を伴うので、水性抗原を低剪断混合技術を用いてアジュバント組成物と組み合わせることができる。
【0235】
外側水相は、薬学的に許容され得る担体中に抗原を含むことが好ましい。油相は(1または複数の)油性アジュバントとしてα-トコフェリルアセテートを含み、スクアランを含んでもよい。
【0236】
本発明によるO/Wエマルジョンは、それ自体、W/O/WまたはO/W/Oエマルジョンなどのさらなるエマルジョンの製剤に使用することができる。これは、追加の乳化剤の使用を必要とし得る。そのような条件の選択および最適化は、当業者の能力の範囲内である。
【0237】
上に詳述したように、驚くべきことに、本発明のアジュバント組成物は、粗抗原、すなわち、例えば不活化細菌もしくは寄生生物培養物に由来する、またはそのような培養物の抽出物もしくは画分に由来する、ほとんど精製されていない抗原を含むワクチンを製剤化するのに適していることが見出された。
【0238】
したがって、本発明によるワクチン組成物の一実施形態では、抗原は粗抗原を含む。
【0239】
細菌抗原および/または寄生生物抗原の精巧で高価な精製は必要とされないので、本発明によるワクチン組成物は費用効果が高い。さらに、本発明の組成物の大規模生産への適合性と共に、バッチ間変動の減少が観察された。
【0240】
さらに、本発明によるアジュバント組成物の特性により、エステラーゼ活性を有する酵素を含有する抗原、特に非生細菌抗原または寄生生物抗原との組合せが特に有用である。そのような抗原は、先行技術の油相および水相のエマルジョンに使用される乳化剤を劣化させ、エマルジョンを破壊する可能性がある。
【0241】
したがって、本発明によるワクチン組成物の一実施形態では、抗原はエステラーゼ、好ましくはリパーゼを含む。
【0242】
本明細書で使用される場合、「エステラーゼ」という用語は、エステラーゼ活性を有する酵素、特にエステラーゼおよびリパーゼを指す。このような酵素は、IUBMB(国際生化学・分子生物学連合)酵素分類システムでそれぞれEC 3.1.1.1またはEC 3.1.1.3によって特徴付けられる。
【0243】
本発明の抗原が「エステラーゼを含む」かどうかを判定するための試験は、多種多様な形態および種類のアッセイで存在し、市販されている、エステラーゼ活性の試験を指す。
【0244】
エステラーゼ活性の直接的な検出は、活性エステラーゼによるp-ニトロフェニルエステルからのニトロフェノールの放出からの黄色着色を検出することによる分光光度アッセイによるものである。De Yanらによる論文(2013,Biotechn.&Appl.Biochem.,vol.60,p.343-347)は、その参考文献番号2~16にこのタイプのアッセイのいくつかの変形を列挙している。これらはすべて、De Caroら(1986,Eur.J.of Biochem.,vol.158,p.601-607)によって記載されているような基本アッセイの変形である。
【0245】
本発明では、抗原がエステラーゼを含むかどうかを確立するために、基質としてp-ニトロフェニル-ブチレートを使用して、De Caroら(前出)に従って検出試験を行う。当業者は、このような試験を設定し実行することが完全に可能である。
【0246】
抗原中の任意のレベルのエステラーゼ活性は、特に長期保存時に、従来技術のエマルジョンの安定性に有害であり得る。したがって、適切な陽性基準標準および陰性基準標準に基づいて、任意の検出可能なレベルのエステラーゼ活性の存在は、本発明による「エステラーゼを含有する」として抗原に適格である。
【0247】
本発明によるアジュバント組成物、特に抗原と組み合わせてこのアジュバント組成物を含むワクチン組成物は、驚くべきことに、いくつかのさらなる利点を示す。
【0248】
特に、種を越えて十分に作用するアジュバントを見出すことは容易ではないが、両方とも本発明によるアジュバント組成物およびワクチン組成物は、ブタおよび反芻動物に首尾よく使用され、好ましくは、ブタ、ウシ、ヒツジおよびヤギに使用される。
【0249】
さらに、アジュバント組成物およびそれに由来するワクチン組成物は、その密度が先行技術のアジュバント組成物と比較して低いため、投与が比較的容易である。好ましくは、アジュバントの密度は、約0.9~約1.1g/ml、好ましくは約0.9~約1.0g/mlである。
【0250】
さらに、アジュバント組成物およびそれに由来するワクチン組成物は、重篤な有害事象が観察されなかったので安全である。
【0251】
O/Wエマルジョンの好ましい特徴として、ELISAプレート中でワクチン組成物を直接破壊することなく、本発明によるワクチン組成物中の抗原含有量を決定することが可能である。
【0252】
多価または混合ワクチンなどの高抗原量を含むワクチン組成物は、先行技術の組成物と比較してかなり安定している。
【0253】
アジュバント組成物およびそれに由来するワクチン組成物は、先行技術の組成物、例えば32℃超で相反転するMontanide ISA206と比較して、より高い温度に耐えることができる。
【0254】
非常に驚くべきことに、本発明によるワクチン組成物は、迅速な免疫発生(OOI)を提供する。
【0255】
さらに驚くべきことに、本発明によるワクチン組成物は、より長い免疫期間(DOI)を提供する。
【0256】
本発明によるワクチン組成物は、周知の方法および材料を使用して調製することができる。これらの手順の詳細は、調製されるエマルジョンの種類に依存する。例えば、O/Wエマルジョンとして、油相および水相の乳化(抗原なし)を別々に(例えば、本発明によるアジュバント組成物を構成するために)行った後、抗原を混合して本発明によるエマルジョンワクチンを調製することができる。
【0257】
場合によっては、乳化剤を完全に溶解させるために、アジュバント組成物の調製中に、例えば70~90℃までいくらかの加熱を加えることが必要とされ得る。必要に応じて、さらなる乳化剤を油相および/または水相に含めることができる。一般に、水相および油相は、超音波またはローターステーター型混合などの適切な装置を使用して乳化することができる。
【0258】
本発明者らはさらに、本発明によるアジュバント組成物のポリエトキシエチレンセトステアリルエーテルが油相に驚くほどよく溶解することを発見した。これは、特にほぼ同じHLB数(15)を有するポリソルベート80が油相によく溶解しないため、高いHLB数(例えば、ポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテルは、14のHLBを有する)の乳化剤にとっては予想外であった。
【0259】
これにより、より低い剪断およびより少ないパワー入力を必要とする乳化方法を使用することが可能になり、様々な節約および動作上の利点がもたらされる。
【0260】
あるいは、抗原が典型的には油相、乳化剤および水の初期乳化中に存在しないO/W型エマルジョンを作製するために、水および油相の高強度乳化の使用は、例えばマイクロ流動化を使用することによるさらなる選択肢である。
【0261】
したがって、さらなる態様では、本発明は、本発明によるワクチン組成物を製造するための方法に関し、該方法は、
a)抗原を含む水相を調製することと、
b)水相を本発明によるアジュバント組成物と混合することと
を含む。
【0262】
本発明によるワクチンの製造方法について、水相、油相、アジュバント組成物および抗原のそれぞれは、本明細書で定義される通りである。
【0263】
代替の実施形態では、抗原および乳化剤(すなわち、ポリエトキシエチレンセトステアリルエーテル)を含む水相を調製することができる。別に、本発明のワクチン組成物を得るために、トコフェロールまたはその薬学的に許容され得るエステルを含む(ならびにスクアラン、鉱油および/または非鉱油を含んでもよい)油相を、両方の相を混合する前に調製する。
【0264】
好ましくは、本発明による製造方法は、ワクチン組成物の医学的使用を可能にする方法で実施される。一般に、これは、薬学的に許容され、優良医薬品製造基準などの品質規則に適合する機器および賦形剤の使用に関する。これらはすべて当業者に周知であり、薬局方などの政府規制、およびRemingtonおよびPastoretなどのハンドブック(両方とも上掲)に規定されている。典型的には、そのような製造は無菌的に行われる。
【0265】
記載したように、本発明によるワクチン組成物は、すべて本明細書に記載される細菌性、寄生生物性および/またはウイルス性疾患に対するワクチンとして適用される場合に特に有利である。
【0266】
したがって、さらなる態様では、本発明は、病原体によって引き起こされる感染および/または疾患からヒトまたは動物対象を保護する方法で使用するための本発明によるワクチン組成物に関する。
【0267】
本発明による保護方法のための対象の選択は、主に、ヒト、動物、またはその両方に対して、保護される病原体の宿主範囲によって決定される。あるいは、病原体は、ヒトに対して病原性であり得るが、病原体を保有する動物に対しては病原性ではない。その場合、例えば肉または乳などの感染動物製品を消費する可能性があるヒトの人畜共通感染症および食品媒介疾患を防ぐために、動物ワクチン接種を適用することは依然として理にかなっている。
【0268】
ワクチン接種される対象の年齢、体重、性別、免疫学的状態、および他のパラメータは重要ではないが、健康で感染していない対象にワクチン接種すること、およびできるだけ早くワクチン接種することは明らかに好ましい。
【0269】
本発明の「動物」は、獣医学的に関連する任意の動物、例えばウシ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、シカ、イヌ、ネコ、ウマ、鳥類、魚類、またはエビである。
【0270】
本発明による保護方法で使用するためのワクチン組成物の一実施形態では、動物対象はブタまたは反芻動物である。
【0271】
「ブタ(swine)」という用語は、イノシシ科の動物、好ましくはブタ(porcine)とも呼ばれるSus属の動物を指す。例は、野生または家畜のブタ(pig)、ブタ(hog)、イノシシ、バビルサ、またはイボイノシシである。これはまた、任意の名称によって示される豚を含み、例えば、雌豚(sow)、クイーン(queen)、未去勢豚(boar)、去勢豚(barrow)、食用豚(hog)、未経産豚(gilt)、離乳豚(weaner)または子豚(piglet)などのそれらの性別または年齢を指す。さらに、ブタという用語は、繁殖型または肥育型などの任意のタイプの豚動物、およびこれらのタイプのいずれかの親系統を指す。
【0272】
「反芻動物」という用語は、主に微生物の作用によって、消化の前に特殊化された胃内で植物系食品を発酵させることによって植物系食品から栄養素を取得することができる、大型の有蹄類の草食動物またはブラウジング哺乳動物を指す。反芻哺乳動物には、ウシ、すべての家畜および野生のウシ属、ヤギ、ヒツジ、キリン、シカ、ガゼル、およびアンテロープが含まれる。
【0273】
動物対象を保護する方法で使用するためのワクチン組成物の好ましい実施形態では、対象は反芻動物であり、反芻動物は、家畜、特にウシ、ウシ属、ヒツジおよびヤギから選択される。
【0274】
動物対象を保護する方法で使用するためのワクチン組成物の特に好ましい実施形態では、対象はブタであり、ブタは雌豚または幼若豚である。
【0275】
本発明の「幼若豚」は、6月齢未満、好ましくは好ましい順に5、4、3、2月齢未満、またはさらには1月齢未満の豚である。
【0276】
本発明による保護方法で使用するためのワクチン組成物の一実施形態では、病原体は、すべて本明細書に記載の細菌、寄生生物、およびウイルスから選択される。
【0277】
好ましくは、病原体は、豚サーコウイルス2型、マイコプラズマ・ハイオニューモニエおよび口蹄疫ウイルスの1つ以上から選択される。
【0278】
本発明による保護方法で使用するためのワクチン組成物の一実施形態では、ワクチン組成物は皮内または筋肉内経路によって投与される。
【0279】
さらなる態様では、本発明は、病原体によって引き起こされる感染および/または疾患に対するヒトまたは動物対象のワクチン接種に使用するための本発明によるワクチン組成物に関する。
【0280】
本発明によるワクチン接種に使用するためのワクチン組成物の一実施形態では、動物対象は反芻動物またはブタであり、および/または病原体は細菌、寄生生物またはウイルスであり、これらはすべて本明細書に記載の通りである。
【0281】
当業者がよく知っているように、本発明によるワクチン組成物は、様々な方法で「保護方法で使用するため」または「ワクチン接種で使用するため」に適用することができる。例えば、ワクチン組成物自体をワクチンとして適用することができる。あるいは、ワクチン組成物は、例えばW/O/WまたはO/W/Oエマルジョンへのさらなる加工における成分として使用することができ、次いでこれをワクチンとして適用することができる。また、ワクチンとしての使用は、特定のさらなる成分、例えば安定剤または防腐剤を混合または含めることを含み得る。防腐剤は、例えば、チオメルサール、フェノキシエタノール、ホルマリン、抗生物質(例えばゲンタマイシン)である。安定剤は、例えば、デキストラン、グリセロール、ゼラチン、アミノ酸または緩衝剤である。エマルジョンの種類に応じて、本発明によるワクチン組成物の製造中または製造後にさらなる成分を添加してもよい。
【0282】
さらなる態様では、本発明は、病原体によって引き起こされる感染および/または疾患からヒトまたは動物対象を保護するためのワクチン組成物を製造するための本発明によるアジュバント組成物の使用に関する。
【0283】
本発明による使用の一実施形態では、動物対象は反芻動物またはブタであり、および/または病原体は細菌、寄生生物またはウイルスであり、これらはすべて本明細書に記載の通りである。
【0284】
本発明によるワクチン組成物は、その有益な免疫原性効果を達成するために、ヒトまたは動物対象に投与される必要がある。
【0285】
したがって、さらなる態様では、本発明は、病原体によって引き起こされる感染および/または疾患に対するヒトまたは動物対象のワクチン接種のための方法に関し、方法は、本発明によるワクチン組成物の対象への投与を含む。
【0286】
本発明によるワクチン接種のための方法の一実施形態では、動物対象は反芻動物またはブタであり、および/または病原体は細菌、寄生生物またはウイルスであり、これらはすべて本明細書に記載の通りである。
【0287】
本発明によるワクチン組成物のヒトまたは動物対象への「投与」は、任意の実行可能な方法および経路を使用して実施することができる。典型的には、最適な投与経路および投与方法は、適用されるワクチンの種類、ならびに対象およびそれが防御することを意図する疾患の特徴によって決定される。様々な投与技術を適用することができる。例えば、O/Wエマルジョンとして、本発明によるワクチン組成物は、特徴的に水性であり、したがって、経腸または粘膜経路によって、すなわち点眼剤、点鼻剤、経口剤、腸溶性剤、経口点鼻剤、スプレーを介して投与することができる。他の可能性は、飲料水、粗噴霧、霧化、オンフィードなどによる集団投与の方法によるものである。当業者は、そのような投与経路および投与方法を完全に選択および最適化することができる。
【0288】
本発明によるワクチン接種の方法のための好ましい投与方法は、非経口経路によるものである。
【0289】
「非経口」は、例えば筋肉内、腹腔内、皮内、粘膜下または皮下経路による、皮膚を介した投与を指す。
【0290】
本発明によるワクチン接種のための方法の一実施形態では、ワクチン組成物は皮内または筋肉内経路によって投与される。
【0291】
本発明によるワクチン組成物の用量の体積は、例えば非経口経路によって投与される場合、対象のヒトまたは動物に許容される体積であり、例えば約0.1~約10mlであり得る。好ましくは、1回の用量は0.1~5mlの体積であり、より好ましくは1回の用量は0.2~3mlの体積である。
【0292】
筋肉内経路によって投与される場合、1回の用量の体積は、好ましくは約0.5~約3ml、より好ましくは1~2mlである。
【0293】
皮内経路によって投与される場合、1回の用量の体積は、好ましくは約0.1~約0.5ml、より好ましくは約0.2mlである。
【0294】
本発明によるワクチン組成物の投与の方法、タイミングおよび量は、対象へのストレスを軽減し、労働コストを削減するために、対象のヒトまたは動物が必要とし得る他のワクチンの既存のワクチン接種スケジュールに統合されることが好ましい。これらの他のワクチンは、それらの登録された使用に適合する様式で、同時、並行または逐次様式で投与することができる。
【0295】
本発明によるアジュバント組成物は、独立した製品として市販することができる。これにより、投与直前に好ましい抗原を含むO/Wエマルジョンワクチンを調製するために有資格者がそれを使用することが可能になる。そのような現場での調製は、フィールドサイド混合とも呼ばれ、混合される抗原の選択および組合せの柔軟性を可能にする。しかしながら、このようにして調製されたワクチン組成物は、登録製造業者の製薬工場で調製された即時混合ワクチン組成物が備える量、品質および無菌性の保証された特性を有さない。
【0296】
代替法は、本発明によるアジュバント組成物のパーツキットでの提供である。そのようなキットは、典型的には、2つ以上の容器を含むパッケージであり、その内容物を混合して、投与直前に本発明によるワクチン組成物を調製することができる。本発明の場合、パーツキットは、本発明によるアジュバント組成物を有する1つの容器と、1以上の抗原を含む1つ以上のさらなる容器とを含むことができる。1以上のさらなる抗原は、液体形態であり得る。
【0297】
あるいは、および有利には、1以上のさらなる抗原は、乾燥形態または凍結乾燥形態であり得る。これは、本発明のアジュバント組成物の有利な特性をO/Wエマルジョンとして利用し、すなわち水性組成物として挙動するので、乾燥抗原または凍結乾燥抗原を再構成するための希釈剤として使用することができる。凍結乾燥抗原は、生または死滅した微生物であり得、例えば、生PRRSVの凍結乾燥調製物であり得るか、または非生L.イントラセルラリスの凍結乾燥調製物であり得る。
【0298】
したがって、さらなる態様において、本発明はパーツキットに関し、キットは少なくとも2つの容器を含み、1つの容器は本発明によるアジュバント組成物を含み、1つの容器は抗原を含む。
【0299】
本発明によるパーツキットの一実施形態では、抗原は、凍結乾燥生PRRSVであるか、または非生L.イントラセルラリスの凍結乾燥調製物である。
【0300】
本発明によるパーツキットは、2つ以上の容器を有する箱を備えてもよく、使用説明書を備えてもよい。説明書は、例えば、キットの構成要素を含む箱に記載されてもよく、箱内、箱上もしくは箱に含まれるリーフレットに示されてもよく、または、キットの製造業者もしくは販売業者などのインターネットウェブサイト上で閲覧可能であり得るかもしくはそこからダウンロード可能であってもよい。
【0301】
ここで、本発明を、以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【0302】
[実施例]
[実施例1]Fortasol-E
Fortasol-Eは、2x w/vの濃縮物である。参考として、乳化剤としてEumulgin B1の代わりにポリソルベート80(PS80)を有する同様の組成物を調製した。
【0303】
100gあたりの組成:
油相
DL-α-トコフェロールアセテート 15.00g
Eumulgin B1 6.00g
【0304】
水相
WFI 79.00g
【0305】
調製:
-油および水相を75~85℃に加熱する
-可視渦で撹拌しながら水相に油相をゆっくり添加する
-添加後、1分間撹拌を続ける
-0.2μmフィルターで濾過する
-37℃で安定性のためにMhyo抗原と1:1で混合する
【0306】
使用したMhyo抗原は、培地中でブタ血液を用いた培養で増殖させたMhyoのバクテリンの粗抗原調製物であった。
【0307】
結果:
-Eumulgin B1を含む油相は透明であり、ポリソルベート80を含む油相は濁っていた
-両方のアジュバント組成物は0.2μmナイロンフィルターで容易に濾過することができる
-Eumulginを含むアジュバント組成物は、可視粒子のいくらかのわずかなクラスター化を示した
-巨視的には、両方のアジュバント組成物は、青色の輝きを有するナノエマルジョンとして現れる
【0308】
Mastersizerの結果はμmである。
【0309】
【表1】
【0310】
結論:
-乳化剤としてポリソルベート80の代わりにEumulgin B1を用いてFortasol 2x濃縮物を調製することは可能であった。
【0311】
-Fortasol-Eは、37℃で55日後でも、Mhyo抗原と1:1の比で安定しており、ポリソルベート80を用いた参照は破壊および粒径の増加を示した
【0312】
[実施例2]SVEA-E
SVEA-Eは4x w/v濃縮物である。濃縮物は最終ワクチンの25%w/vを形成した。
【0313】
最終ワクチンは、以下の成分および強度を含有した:
-Eumulgin B1(0.941gr/ml):1.62%w/v
-スクアラン(d=0.81gr/ml):3.375%w/v
-ビタミンEアセテート(0.953gr/ml):3.97%w/v
最終ワクチンの密度=0.9892gr/ml
【0314】
O/Wエマルジョンを4x w/v濃縮物として調製した。水相としてWFIを使用した。高圧均質化を使用した。
【0315】
組成4x w/v濃縮物:
100gあたり(104.36ml)
【0316】
油相
Eumulgin B1 6.48g
スクアラン-PE(Kuraray) 13.50g
DI-αトコフェロールアセテート 15.88g(純度補正)
【0317】
水相
WFI ad 100.00g
【0318】
調製:
油相
1.スクアランの量を秤量する。
2.ビタミンEアセテートの量を添加し、透明な混合物になるまで均質化する。
3.Eumulgin B1の量を添加し、70℃で均質化する。透明な混合物が現れた。
4.70℃の温度で二重ジャケットを備えたフィルターハウス内の0.2μmメンブレンフィルターを使用してこの混合物を濾過により滅菌して、濾過中の温度を70℃に保つ。
5.55~65℃まで冷却する
【0319】
水相
6.滅菌(オートクレーブ)注射用水を使用する。55~65℃まで加熱する
【0320】
最終生成物
7.900rpmでマグネチックスターラーまたはオーバーヘッドスターラーで混合しながら水相に油相を添加することによって、プレミックスを調製する
8.混合を5分間継続する
9.800バール(温度55~75℃)で(滅菌)マイクロフルイダイザーに3回通し、プレミックスを処理する
【0321】
SVEA-E 4x濃縮物は、顕微鏡的に、1~5μmのいくつかの液滴を有するO/W可溶化物として現れた。
【0322】
[実施例3]SVEA-E Double Plus
SVEA-E Double Plusは、2x w/w濃縮物である。
【0323】
濃縮物および最終ワクチンの密度を測定した:
濃縮物密度=0.965g/ml
最終ワクチン密度=0.986g/ml
【0324】
最終ワクチンは、以下の成分および強度を含有した:
-スクアラン(d=0.81g/ml):6.77%w/v
-ビタミンEアセテート(0.953g/ml):7.97%w/v
-マクロゴールセタステアリルエーテルNS(0.941g/ml):3.25%w/v
-Aerosil 300 pharma:0.20%w/v
【0325】
組成:
100gの濃縮物あたり(=最終ワクチンの50%w/w)
スクアラン 13.74g
ビタミンEアセテート(純度補正) 16.17g
マクロゴールセトステアリルエーテル12NS 6.59g
Aerosil 300 pharma 0.41g
注射用水 ad 100.00g
【0326】
調製:
1.WFI、Aerosil 300およびEumulgin B1(=水相)を秤量し、Eumulgin B1が溶解するまで40~50℃で均質化する。撹拌しながら121℃で20分間滅菌する
2.スクアランおよびVit Eアセテート(=油相)を秤量し、透明な組成物が現れるまで均質化する。70℃、0.2μm濾過によって滅菌する
3.マグネチックスターラーを用いて可視渦で55~65℃で撹拌しながら水相に油相を添加する
4.55~65℃で5分間撹拌を続ける
5.55~75℃でマイクロフルイダイザーを用いて800バールで3回通し、プレミックスを処理する
【0327】
[実施例4]SVEA-E Double Plus中のMhyo抗原
最終ワクチンに含まれるSVEA-E double plus組成物:3.25%w/vのポリエトキシエチレン12セトステアリルエーテル;7.97%w/vのα-トコフェリルアセテート;6.77%w/vのスクアラン;および0.20%w/vのヒュームドシリカ。
【0328】
最終ワクチンに含まれるSVEA double plus参照組成物:3.24%w/vのポリソルベート80;7.94%w/vのα-トコフェリルアセテート;6.75%w/vのスクアラン;および0.20%w/vのヒュームドシリカ。
【0329】
【表2】
【0330】
試料IP.1、IP.2、およびIP.3の顕微鏡図を図1に示す。t=0、37℃で10日後、37℃で3週間後。
【表3】
【0331】
37℃で10日後の3つの試料のMastersizer結果のグラフ表示を図7に示す。
【0332】
試験試料の結果は、37℃で10日後に参照アジュバント組成物IP.3の破壊を明らかにし、図7は、10μmを中心とする大きなピークが出現したことを示す。一方、両方ともSVEA-E double plusアジュバントを含むアジュバント組成物IP.1およびIP.2は、経時的に無傷のエマルジョンを維持する。
【0333】
結論:
粗Mhyo抗原調製物を含み、乳化剤としてEumulgin B1を有するアジュバント組成物を含むエマルジョンワクチンは、同じ抗原を有するが乳化剤としてポリソルベート80を有する参照エマルジョンワクチンよりも明らかに安定である。参照は37℃で10日以内に破壊されるが、Eumulginエマルジョンは37℃で3週間後でもエマルジョン品質の低下を示さない。
【0334】
[実施例5]EVO420
EVO420は、ビタミンE-アセテート、Shell Ondina X420およびEumulgin B1を含む2x w/v濃縮物である。密度はSVEAに等しい。
【0335】
最終ワクチンは、以下の成分および強度を含有した:
-Eumulgin B1:1.62%w/v
-Ondina X420(d=0.81gr/ml):3.375%w/v
-ビタミンEアセテート(0.953gr/ml):3.97%w/v
最終ワクチンの密度=0.9913g/ml
【0336】
O/Wエマルジョンを2x濃縮物として調製した。水相としてWFIを使用した。高圧均質化を使用した。
【0337】
2x濃縮物の組成物:
100gあたり(101.73ml):
【0338】
油相
Eumulgin B1 3.24gr
Ondina X420(Shell) 6.75gr
DL-αトコフェロールアセテート 7.94gr(純度補正)
【0339】
水相
WFI ad 100.00gr
【0340】
調製:
油相
1.Ondina X420の量を秤量する。
2.ビタミンEアセテートの量を添加し、透明な混合物になるまで均質化する。
3.Eumulgin B1の量を添加し、70℃で均質化すると、透明な溶液が現れた。
4.この混合物を70℃まで加熱する。
5.70℃の温度で二重ジャケットを備えたフィルターハウス内でナイロン66またはPVDF 0.2μmメンブレンフィルターを使用してこの混合物を濾過により滅菌して、濾過中の温度を70℃に保つ。
6.55~65℃まで冷却する
【0341】
水相
7.55~65℃まで加熱した滅菌(オートクレーブ)WFIを使用する。
【0342】
最終生成物
8.高剪断混合で水相に油相を添加することによってプレミックスを調製する。
9.混合を5分間継続する
【0343】
800バール(温度55~75℃)で(滅菌)マイクロフルイダイザーに3回通し、プレミックスを処理する
【0344】
顕微鏡的に、EVO420の2x w/v濃縮物は、1μm~5μmのいくつかの液滴を有するO/Wナノエマルジョンとして現れる。
【0345】
[実施例6]Xsolve2.0
濃縮物は、鉱油をShell Ondina X GTLベースの薬用白色油に体積で置き換え、ポリソルベート80をEumulgin B1に重量で置き換えた以外はXsolveアジュバントに基づく。
【0346】
Xsolve2.0におけるMicrosol-E濃縮物:Fortasol-E濃縮物の比=5:1 v/v
【0347】
1.Microsol-EおよびShell Ondina X GTLベースの薬用白色油濃縮物:
100mlあたりの製剤(計算密度=0.8925g/ml):
-Shell Ondina X GTLベースの薬用白色油 39.25g
-Eumulgin B1 2.00g
-WFI 48.00g
【0348】
調製:
水相
1.WFIの量を秤量する
2.Eumulgin B1の量を添加し、50℃で均質化すると、透明な溶液が現れた。
3.オートクレーブ中121℃で20分間滅菌する
4.55~65℃まで冷却する
【0349】
油相
5.滅菌した(0.2μm濾過した)Shell Ondina X GTLベースの薬用白色油を使用する。55~65℃まで加熱する
【0350】
最終生成物
6.高剪断混合で水相に油相を添加することによってプレミックスを調製する
7.混合を5分間継続する
8.800バール(温度45~55℃)で(滅菌)マイクロフルイダイザーに3回通し、プレミックスを処理する
【0351】
99%<1μmの油滴を有するマイクロエマルジョンが現れるはずである。
【0352】
顕微鏡的には、Microsol-E/Shell Ondina X GTLベースの薬用白色油アジュバント組成物は、1μm~5μmのいくらかの液滴を有する均質なO/Wエマルジョンとして現れる。
【0353】
2.Fortasol-E濃縮物2x:
100mlあたりの製剤(密度=1.00g/ml)
-DL-α-トコフェロールアセテート 15.00g(純度補正)
-Eumulgin B1 6.00g
-WFI ad 100.00g
【0354】
調製:
油相
1.DL-α-トコフェロールアセテートを秤量する
2.Eumulgin B1の量を添加し、50℃で均質化すると、透明な溶液が現れた。
3.混合物を50℃で0.2μm濾過によって滅菌する
4.75~85℃まで加熱する
水相
5.滅菌(オートクレーブ)注射用水を使用し、
6.75~85℃まで加熱する
【0355】
最終生成物:
1.可視渦で撹拌しながら75~85℃で水相に油相をゆっくり添加する
2.添加後、1分間撹拌を続ける
3.顕微鏡観察を確認すると、目に見える粒子がほとんどないナノエマルジョンが現れるはずである。
【0356】
顕微鏡的に、Fortasol-E濃縮物は、1μm~5μmのいくらかの液滴を有する均質なO/Wエマルジョンとして現れる。
【0357】
最終ワクチンの製剤化および計算密度:
100mlあたりのXsolve50 2.0(0.9552g/ml)
Microsol Eumulgin B1/Shell Ondina X GTLベースの薬用白色油濃縮物:37.19g
Fortasol-E濃縮物2x:8.33g
抗原+緩衝液 50.00g
【0358】
100mlあたりのXsolve30 2.0(0.9731g/ml)
Microsol Eumulgin B1/Shell Ondina X GTLベースの薬用白色油濃縮物:22.31g
Fortasol-E濃縮物2x:5.00g
抗原+緩衝液 70.00g
【0359】
100mlあたりのXsolve12 2.0(0.9893g/ml)
Microsol Eumulgin B1/Shell Ondina X GTLベースの薬用白色油濃縮物:8.93g
Fortasol-E濃縮物2x:2.00g
抗原+緩衝液 88.00g
【0360】
[実施例7]Xsolve2.0(Eumulgin B1/Marcol 52)を用いた安定性試験
市販のXsolve水中油型濃縮物において、ポリソルベート80を重量でEumulgin B1に置き換えて、以下を含むXsolve2.0を得た。
【表4】
【0361】
注記:これらの比較実験の目的のために、これらのワクチン組成物は、粗Mhyoバクテリン抗原を、同等の市販のMhyo O/Wワクチン中に存在する量をはるかに超えた量で含有した。これは、PS80乳化剤に対する、およびそれに対応してエマルジョンの安定性に対する、粗抗原の効果の出現を強制するためである。
【0362】
上記アジュバント組成物を安定性試験に供し、外観(光学顕微鏡視野による)および粒径(Mastersizer測定による)を決定した。
【0363】
37℃で1週間後のXsolve2.0(Eumulgin B1/Marcol 52)の外観は均一である。対照的に、参照アジュバント組成物(ポリソルベート80/鉱油)では、破壊が観察される。
【0364】
37℃で1週間後のμmでのMastersizer結果:
【表5】
【0365】
結論:
・ポリソルベート80は、Eumulgin B1に置き換えることができる。
【0366】
・Eumulgin B1を使用すると、破壊するポリソルベート80を使用するエマルジョンと比較して安定なエマルジョンが得られる。
【0367】
[実施例8]SVEA-E/FMDワクチン組成物の有効性、安全性および安定性
ワクチン接種-抗原刺激実験
ウシにおける動物試験を実施して、SVEA-Eアジュバントに基づき、また抗原としてFMDウイルス様粒子を含む、FMDワクチン組成物(SVEA-E/FMDワクチンと呼ぶ)を、Montanide ISA206を用いて処方された古典的FMDワクチンと比較した。群間の違いを見ることができるように、両方のワクチンは、最適以下であるが同一の用量(すなわち、5μg/用量)のFMDV Asia1/Shamir/ISR/89 VLP抗原を含んでいた。
【0368】
ウシの首の左側に2mlのワクチンを筋肉内(IM)ワクチン接種した。ワクチン接種の3週間後、すべての動物に、皮内舌(IDL)接種によってFMDV、Asia1/Shamir/ISR/89株を負荷した。ワクチン接種後および抗原刺激後のいくつかの時点で血液試料を採取して、試験中の血清学的応答を測定した。抗原刺激後、FMD特異的病変について麻酔下で動物を検査した。
【0369】
SVEA-E/FMDワクチン組成物を使用すると、古典的FMDワクチンによって誘導されたものと同じレベルでウイルス中和力価が見出された(図2A)。SVEA-E/FMDワクチンは抗原刺激に対する完全な防御を提供したが、古典的FMDワクチンについては80%の防御が観察された(図2B)。対照動物および古典的ISA206群とは対照的に、SVEA-E/FMD群では抗原刺激後のFMDV関連ウイルス血症が観察されなかった。
【0370】
ワクチン接種後、両方のワクチン接種群で局所反応は観察されなかった。
【0371】
ウシ、ブタおよびヤギにおける免疫持続時間(DOI)
二価FMDワクチンを使用して動物を免疫化し、このワクチンは2種類のFMD抗原:O/TUR/5/2009型およびAsia1/Shamir/ISR/89型のVLPを含有していた。O/TUR/5/2009成分に対するウイルス中和力価のみを決定した。
【0372】
SVEA-Eアジュバント添加FMDワクチン組成物を使用したウシ(図3)、ブタ(図4)およびヤギ(図5)における免疫持続時間は、対応する古典的Montanide ISA206アジュバント添加ワクチン組成物によるワクチン接種から観察されたDOIに匹敵した。
【0373】
Montanide ISA206に対する、高い抗原負荷量を有するSVEA-Eの安定性
【表6】
【0374】
これらのデータから、高い抗原負荷量を有するワクチン組成物は、SVEA-Eエマルジョンに基づく場合は安定であるが、Montanide ISA206エマルジョンに基づく場合は安定ではないと結論付けることができる。
【0375】
注記:この実験で使用したO/TUR/05/2009およびAsia1/Shamir/ISR/89Shm VLPカプシド抗原は、開発前の品質のものであり、したがって、完全に開発され最適化された市販製品品質の将来のFMD VLP抗原と比較して比較的粗かった。これは、安定性の結果をさらに印象的にするだけである。
【0376】
抗原質量ELISAを使用して、エマルジョンを破壊することなくワクチン組成物中のVLPを定量することができ、これはMontanide ISA206ベースの製剤では不可能である。ワクチン中のVLPは安定している。
・ワクチン組成は、VHH-ELISAによる不活化FMDV O/TUR/5/2009 VLPの定量化に基づく
・SVEA-Eアジュバント組成物と共に製剤化したワクチン
・プライム(0dpv)後および42日後のブースターワクチン接種後にウシにおいて強い免疫応答が誘発された(以下の表の結果を参照のこと)
・ワクチン製剤後:製剤前と同じ定量(VHH ELISA)
・SVEA-Eに基づくエマルジョンワクチンを破壊する必要はない
・モニターされたワクチン安定性:4℃で9ヶ月超安定(図6参照)
【0377】
【表7】
【0378】
抗原情報:
Asia1/Shamir/ISR/89
Asia1/Shamir/ISR/89 VLP(VP2タンパク質にキャプシド安定化変異を含有する:S093CおよびK190N)を、バキュロウイルス発現系によって作製した。2リットルのバイオリアクターで、Tnao38昆虫細胞をMOI 0.1で対応する組換えバキュロウイルスに感染させた。細胞培養上清を遠心分離によって5dpiで回収し、バイナリーエチレンイミン(BEI)で処理して組換えバキュロウイルスを不活性化し、続いて濾過によって濃縮した。ワクチンは、SVEA-Eアジュバント組成物と共に製剤化した。インタクトVLPの濃度を、M332F抗体を使用してELISAによって決定した(Harmsen et al.,2017,Front.Immunol.,vol.8,p.960)。段階希釈した試料を、M332F抗体で4℃で一晩コーティングしたマイクロタイタープレート上で、37℃で1時間インキュベートした。試料を除去し、PBS-Tweenで3回洗浄した後、一定量のビオチン化M332Fをプレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。ビオチン化抗体を除去し、プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンをプレートに添加し、発色団検出を行った。
【0379】
O/TUR/5/2009ウイルス様粒子
同様に、O/TUR/5/2009 VLP(VP2タンパク質にキャプシド安定化変異を含む:S093C)を、1のm.o.i.で感染させたTnao38昆虫細胞を含有する2リットルのバイオリアクターで作製した。細胞培養上清を200xgでの遠心分離によって5dpiで回収した。インタクトVLPの濃度を、VHH C1を使用してELISAによって決定した(Wang et al.,2015,BMC Veterinary Research 11:120,DOI 10.1186/s12917-015-0437-2)。このために、連続希釈した試料を、C1で4℃で一晩コーティングしたマイクロタイタープレート上で、37℃で1時間インキュベートした。試料を除去し、PBS-Tweenで3回洗浄した後、一定量のビオチン化C1をプレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。ビオチン化抗体を除去し、プレートをPBS-Tweenで3回洗浄した後、ペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンをプレートに添加し、発色団検出を行った。
【0380】
結論
これらの結果から特に驚くべきことは、以下の知見であった:
1.O/Wエマルジョン型ワクチン組成物は、FMDワクチンとして使用することができる、
2.FMDV攻撃感染に対するワクチンの有効性は、同様の用量の抗原を使用して得られたがFMDVゴールドスタンダードタイプのワクチンである古典的ISO206 W/O/Wエマルジョンワクチンの様式で製剤化されたものよりも、さらに優れていた、
3.これらのワクチンは有効な交差種である、そして、
4.現在のスタンダードタイプのFMDワクチンよりもさらに有効であることの他に、本発明によるワクチン組成物は、いくつかの重要なさらなる利点、特にエマルジョンの安定性だけでなく、取り扱いおよび加工においても、いくつかの重要なさらなる利点を有する。
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【国際調査報告】