(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】誘導コイルによる電力取得
(51)【国際特許分類】
B60L 1/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
B60L1/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537434
(86)(22)【出願日】2022-12-19
(85)【翻訳文提出日】2024-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2022086680
(87)【国際公開番号】W WO2023117923
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021134346.1
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521205102
【氏名又は名称】シュンク トランジット ジステムズ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】514217808
【氏名又は名称】シュンク トランジット ジステムズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パハラー アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ヌッシュ トム
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド ドミニク パスカル
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA05
5H125AC02
5H125AC07
5H125AC08
5H125BB09
5H125EE12
5H125EE13
5H125EE16
5H125EE52
5H125EE55
5H125FF03
(57)【要約】
本発明は、鉄道車両(24)に配置された消費機器(2)に電力を供給するための電力供給装置(1)に関し、消費機器は、好ましくは、鉄道車両(24)をモニタリングするための、特に動作ユニット(3)をモニタリングするための取得ユニット(23)であり、鉄道車両(24)は、少なくとも1つの導体(4)を有し、電力供給装置(1)は、導体(4)に印加される電圧から消費機器(2)の供給電圧を生成するように構成される。送信用電子部品(5)と、送信用電子部品(5)を介して消費機器(2)に電気伝導するように接続可能であり、n個の巻線を有する少なくとも1つのループ状導体(6)を有し、送信用電子部品(5)は、ループ状導体(6)と消費機器(2)との間に配置され、ループ状導体(6)は、ループ状導体(6)が出口電圧を生成するように導体(4)の周りに配置され、送信用電子部品(5)は、ループ状導体(6)の出口電圧から消費機器(2)の供給電圧を生成するように構成される。本発明は、さらに、電力供給装置(1)を有するモニタリングシステム(15)と、鉄道車両(24)をモニタリングするために消費機器(2)に電力を供給する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両(24)に配置された消費機器(2)に電力を供給するための電力供給装置(1)であって、前記消費機器は、好ましくは鉄道車両(24)をモニタリングするための、特に動作ユニット(3)をモニタリングするための取得ユニット(23)であり、前記鉄道車両(24)は少なくとも1つの導体(4)を有し、前記電力供給装置(1)は前記導体(4)に印加される電圧から前記消費機器(2)の供給電圧を生成するように構成され、
特徴は
送信用電子部品(5)と、前記送信用電子部品(5)を介して消費機器(2)に電気伝導するように接続可能であり且つn個の巻線を有する少なくとも1つの少なくとも1つのループ状導体(6)とを備え、前記送信用電子部品(5)が、前記ループ状導体(6)と前記消費機器(2)との間に配置され、前記ループ状導体(6)は、前記ループ状導体(6)が出口電圧を生成するように前記導体(4)の周りに配置され、前記送信用電子部品(5)が、前記ループ状導体(6)の出口電圧から前記消費機器(2)の供給電圧を生成するように構成されている
ことである電力供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力供給装置において、
前記送信用電子部品(5)が電圧変換用部品(9)を有すること
を特徴とする電力供給装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力供給装置において、
前記送信用電子部品(5)が整流用部品(10)を有すること
を特徴とする電力供給装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電力供給装置において、
前記送信用電子部品(5)が、少なくとも1つの蓄電用部品、好ましくは少なくとも1つのコンデンサ(13)を含む充電用電子部品(12)を有すること
を特徴とする電力供給装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電力供給装置において、
電圧変換用部品(9)をモニタリングするためのモニタリング用電子部品(14)を有すること
を特徴とする電力供給装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電力供給装置において、
少なくとも1つのループ状導体(6)が、集電装置(7)に配置された導体(4)、特にケーブル要素(19)の周りに配置されていること
を特徴とする電力供給装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電力供給装置において、
少なくとも1つのループ状導体が、集電装置(7)のベースフレーム(20)、上部アーム(22)及び/または下部アーム(21)に配置されていること
を特徴とする電力供給装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の電力供給装置において、
発電ユニット、特に燃料電池、光電発電機、圧電発電機、動力発電機及び/または熱電発電機を有すること
を特徴とする電力供給装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の電力供給装置(1)と、取得ユニット(23)として構成されるとともに鉄道車両のモニタリングを、特に集電装置(7)、接地接点、潤滑装置、接触ストリップ、接点装置、接点ブラシ、接地ブラシなどの動作ユニット(3)のモニタリングを行う消費機器とを有するモニタリングシステム(15)であって、
取得装置(23)によって、対応する動作ユニット(3)の異なる特性についてデータが取得されること
を特徴とするモニタリングシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のモニタリングシステムにおいて、
前記取得ユニット(2)が、前記対応する動作ユニット(3)または前記鉄道車両(24)に固定配置されたセンサ装置(16)を有すること
を特徴とするモニタリングシステム。
【請求項11】
請求項9または10に記載のモニタリングシステムにおいて、
前記取得ユニット(23)が、前記対応する動作ユニット(3)または前記鉄道車両(24)に固定配置された送信装置(17)を有すること
を特徴とするモニタリングシステム。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項に記載のモニタリングシステムにおいて、
前記取得ユニット(2)が、時間センサと位置センサを有し、前記対応する動作ユニット(3)の取得時間と位置を測定可能であること
を特徴とするモニタリングシステム。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1項に記載のモニタリングシステムにおいて、
電力計を有すること、特に前記取得ユニット(23)が電力計を有すること
を特徴とするモニタリングシステム。
【請求項14】
請求項9から13のいずれか1項に記載のモニタリングシステムにおいて、
少なくとも1つの動作ユニット(3)を有すること
を特徴とするモニタリングシステム。
【請求項15】
鉄道車両(24)に配置された消費機器(2)に電力を供給するための方法であって、 前記消費機器(2)は特に前記鉄道車両(24)をモニタリングするための取得ユニット(23)であり、前記鉄道車両(24)の導体(4)に、特に集電装置(7)に第1の電圧が印加され、少なくとも1つのループ状導体(6)によって前記ループ状導体(6)の出力電圧として導体(4)で第2の電圧が取り出され、前記ループ状導体(6)の出力電圧が前記消費機器(2)に電力を供給するために用いられる
電力供給方法。
【請求項16】
請求項15に記載の電力供給方法において、
前記消費機器(2)が必要とする供給電圧は、前記ループ状導体(6)の出口電圧の電圧変換によって生成される
電力供給方法。
【請求項17】
請求項15または16に記載の電力供給方法において
少なくとも1つのループ状導体(6)の出力電圧が整流される
電力供給方法。
【請求項18】
請求項15から17のいずれか1項に記載の電力供給方法において、
前記消費機器(2)の供給電圧が、少なくとも1つの蓄電用部品(12)、好ましくはコンデンサ(13)によってもたらされる
電力供給方法。
【請求項19】
請求項15から18のいずれか1項に記載の電力供給方法において、
走行電流が検出され、及び/または電気アークが検出され、及び/または走行プロファイルが記録される
電力供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費機器(エネルギ消費機器、コンシューマ)、好ましくは鉄道車両をモニタリングするための取得ユニット、特に動作ユニットをモニタリングするための取得ユニットに電力を供給するための電力供給装置に関する。鉄道車両は、少なくとも1つの導体と、導体に印加される電圧から消費機器の供給電圧を生成するように構成された電力供給装置と、送信用電子部品及びその送信用電子部品を介して消費機器に電気伝導するように接続可能でn個の巻線を有する少なくとも1つのループ状導体とを有し、送信用電子部品はループ状導体とループ状導体の間で切り替えられ、ループ状導体は、ループ状導体が出力電圧を生成するように導体の周囲に配置され、送信用電子部品は、ループ状導体の出力電圧から消費機器の供給電圧を生成するように構成される。さらに、本発明は、鉄道車両をモニタリングするために、特に鉄道車両の動作ユニットをモニタリングするために、消費機器に電力を供給するための電力供給装置と方法とを含むモニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
基本的に、鉄道車両の消費機器に電力を供給するための装置及び方法と、鉄道車両及び/またはその動作ユニットをモニタリングするための装置と方法は知られている。公知の装置及び方法では、例えば鉄道車両及び/または動作ユニットに直接取り付けられるセンサによって動作ユニットの状態がモニタリングされ、且つ/または測定値及び/またはデータが測定される。例えば、圧縮空気で加圧されたラインをルーフ集電装置の接触ストリップの中に配置でき、圧縮空気は、接触ストリップが破断または完全に摩耗し、接触ストリップが接点ワイヤによって下降した場合にそのラインから抜け出す。あるいは、接点ワイヤに対する接触ストリップの押圧力、風速、またはその他の環境と、動作パラメータとを、適切に設置されたセンサによって測定し、鉄道車両の他のルーフ集電装置または動作ユニットを作動制御するために使用することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多数のセンサを使用して動作ユニットをモニタリングすることができ、センサは有線または無線で電力供給することができる。電力ネットワークから直接に電力を取り出す有線の電力供給は、一般に、高い材料コストと高い配線コストを伴うか、または電力供給要件のために除外される。例えば、列車、自動車、航空機などの移動手段内または移動手段上にセンサを備えた取得ユニットを使用するような移動用途では、その要件のために、有線の電力供給よりも、自己完結型、無線型またはオフグリッド給電が好まれることが多い。ワイヤレス電源を有する、すなわち電源に直接接続されていないセンサシステムを備えた公知の取得ユニットは、一般に、バッテリまたはアキュムレータでのみ電力が供給される。しかし、この場合、定期的にバッテリを交換するか、あるいはアキュムレータを再充電する必要があるため、取得ユニットをより多くメンテナンスする必要があるという欠点がある。さらに、外部からの影響はバッテリやアキュムレータの寿命に大きな影響を与える。例えば、温度変動により放電が速くなることがあり、または、時節や気候条件によっては特に寒冷地でメンテナンス間隔を短くする必要が生じる。特に、消費機器、取得ユニットまたは電源ユニットへのアクセスが困難な場合、これは労力の増大につながるため望ましくない。
【0004】
したがって、本発明の目的は、鉄道車両に配置された消費機器にローカルで電圧を生成して電力を供給するための電力供給装置と方法を提案することであり、電力供給装置を、バッテリ、アキュムレータ、または電力を供給する複雑なケーブル接続を必要としないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の特徴を備えた電力供給装置によって達成される。
【0006】
AC(交流)鉄道ネットワークで動作する集電装置では、n個の巻線を有するとともに例えば集電装置に配置される導体のような通電要素に配置されたループ状導体を介して電圧を発生させるために誘導原理を使用し、電力供給のモニタリングシステムの使用を可能にしている。
【0007】
同様に、DC(直流)電流ネットワークにおいても、負荷を受けるときのリップル電圧または電圧降下を測定するために本発明に係る装置を使用することができる。直流には一般に交流電圧部分があり、必要であれば高電圧レベルで誘導ごとの直流電圧を使用することもできる。
【0008】
鉄道車両に配置された消費機器に電力を供給するための本発明に係る装置は、消費機器が好ましくは鉄道車両をモニタリングするための取得ユニット、特に動作ユニットをモニタリングするための取得ユニットであり、鉄道車両が少なくとも1つの導体を有し、導体に印加される電圧から消費機器の供給電圧を生成するように構成される。特に、電流の流れによって磁場が発生するため、導体を通る十分な電流の流れが不可欠であることが分かっている。言い換えれば、導体に印加される電圧から生じる電流が電磁場を発生させ、この電磁場がループ状導体を介して消費機器の供給電圧を発生させるために使用される。
【0009】
消費機器に電力を供給するために、電力供給装置は、送信用電子部品と、送信用電子部品を介して消費機器に電気伝導するように接続可能な少なくとも1つのループ状導体とを備え、送信用電子部品はループ状導体と消費機器との間で切り替えられる。n個の巻線を有し且つ好ましくは誘導コイルとして構成されたループ状導体は、導体の周りに配置され、少なくとも1つの固定機構によって鉄道車両、特に鉄道車両の集電装置に接続される。ループ状導体は、環状体と、環状体の周りに巻かれた巻線を有してもよく、環状体は導体上をスライドさせることができる。複数のループ状導体、特に導体に対して係合する複数の異なるループ状導体を直列または並列に切り替えることができる。さらに、複数のループ状導体を一つのみの導体上でスライドさせて、これらを並列または直列に切り替えることも可能である。ループ状導体は、好ましくは、環状体の飽和(磁気飽和)によってシステムの過負荷が防止されるように構成される。ループ状導体の巻数、サイズ及び材質は、最大出力が得られるように選択することができる。
【0010】
好ましくは、ループ状導体は誘導コイルとして構成され、環状体とその環状体の周りに配置された巻線とを有する。ループ状導体は300から750の巻線を有することができる。650の巻線を有するループ状導体が特に有利であることが分かっている。環状体は、幾何学的に、環状コア、円形ブランク、チューブ状断面、または中心に穴を有する円形ボディとして構成することができる。ループ状導体、特にループ状導体の巻線を作るために、環状体はワイヤ状の導体で巻くことができる。環状体は、好ましくは、高さが6mmから18mmの間で、内径が15mmから30mmの間、外径が25mmから40mmの間である。環状体が、16mmから17mmの間の高さで、24mmから25mmの間の内径と29mmから30mmの間の外径を有すると特に有利であることが分かっている。さらに好ましくは、環状体は30,000と60,000の間の比透磁率を有する。特に好ましくは、環状体は比透磁率が45,000と48,000の間の材料で形成される。環状体は、すでに鉄道車両に固定されている導体に簡単に固定できるように、複数の部品、好ましくは2つの部品で作ることが考えられる。複数部品構造により、導体を取り外さずに、導体に対して環状体及び/またはループ状導体を簡単に配置することが可能になる。ループ状導体は、1.5オームと6オームの間のオーム抵抗を有することができる。特に好ましくは、ループ状導体のオーム抵抗は、4.2オームと4.7オームの間、最も好ましくは4.5オームである。
【0011】
ループ状導体を介して生成された電圧から、送信用電子部品によって消費機器の供給電圧が生成される。このことにより、消費機器への電圧の生成と供給がローカルで、つまり消費機器のすぐ近くで可能になる。
【0012】
集電装置は、パンタグラフの態様で構成できる。
【0013】
本発明では、消費機器(電力消費機器)を取得ユニットとして構成することができ、取得ユニットは、対応する動作ユニットまたは鉄道車両に固定配置されたセンサ装置を有することができる。そしてセンサ装置は、例えば、対応する動作ユニットの機能及び動作時間を検出できるセンサを有することができる。取得ユニットが送信装置も有する場合、動作ユニットの名称またはセンサによって検出された値などのデータセットを上位ユニットに送信することができる。
【0014】
本発明では、動作ユニットは、集電装置、接地接点、潤滑装置、接触ストリップ、研磨装置、接点ブラシ、接地ブラシ等にすることができる。
【0015】
本発明では、集電装置は、ルーフ集電装置、ルーフ充電集電装置、反転型ルーフ充電集電装置、床下集電装置、またはサードレール集電装置として構成することができる。
【0016】
本発明では、導体は、鉄道車両に電流を供給する導体である。好ましくは、導体は、上位の電力ネットワークから鉄道車両に供給する主導体である。好ましくは、主導体は、鉄道車両のモータを、例えば集電装置と高電圧が供給されるカテナリとの間に形成される電流伝達ポイントに接続する。したがって、集電装置は、主電流導体の一部及び/または鉄道車両の少なくとも1つの導体を有することができる。主電流導体はまた、好ましくは、鉄道車両の駆動モータなどの鉄道車両の構成部品に高電圧を供給する。ドイツで一般的に使用されているカテナリは、接地電位に対して15kVの高圧電位である。しかしながら、本発明に係る装置を他の知られた走行電流ネットワークで作動させることも考えられる。電源の種類、すなわち直流か交流か、及び印加される電圧に応じて、数MWの程度の電気出力を有する鉄道車両は、この種のカテナリから数1000Aに至る電流を引き出す。この鉄道車両への給電は、主導体と、それに接続された配電系統(多数の導体を含むことがある)によって、中継ポイントから行われる。高電位差による損傷を防止するために、特に鉄道車両のルーフの上に配置される場合、電力供給装置及び/または消費機器は、鉄道車両の車体に電気的に接続されることなく、導体、特に主導体上で絶縁された状態で動作させることができる。
【0017】
本発明に係る電力供給装置は、複数の消費機器に電力を供給するために使用することもできる。したがって、本発明に係る電力供給装置は、鉄道車両の異なるポイントでデータを取得する複数の取得ユニットに給電するために使用することもできるので、バッテリまたはアキュムレータなしで動作させることができる。
【0018】
送信用電子部品は、ループ状導体の出口電圧から消費機器の供給電圧を生成するように構成されている。したがって、本発明に係る送信用電子部品によれば、消費機器自身を損傷したり、消費機器の動作を損なったりせずに、消費機器に電圧を供給できるように、ループ状導体の出口電圧を調整することが可能になる。その理由は、ループ状導体の出口電圧が、例えば電圧変動する可能性があるから、且つ/または、消費機器に供給する過程で消費機器に伝わるべきでないピーク電圧を有する可能性があるからである。
【0019】
したがって、本発明に係る電力供給装置では、メンテナンスの影響を受けやすいバッテリまたはアキュムレータを使用せずに、簡単且つ高信頼度で、消費機器、特に取得ユニットに給電することが可能になる。本発明では、バッテリは、電力を電気化学的形態でバッテリ内に完全に貯蔵する貯蔵装置である。本発明では、アキュムレータは充電可能なバッテリのことである。
【0020】
導体の周りに配置される簡単なループ状導体を取り付けることにより、複雑な構造及び複雑なケーブル配線も回避される。
【0021】
ループ状導体の出口電圧は、送信用電子部品により、消費機器に供給するための供給電圧として変更されずに用いることが考えられる。しかしながら、好ましい実施形態によれば、送信用電子部品は、電流変換または電圧変換のための部品を有してもよく、この部品によって、ループ状導体の出口電圧と消費機器の供給電圧とが異なるようにループ状導体の出口電圧が変換される。本発明では、電流変換用部品または電圧変換用部品は、電流制限用部品または電圧制限用部品として、または電流低下用部品または電圧低下用部品として、または電流増大用部品または電圧増大用部品として構成することができる。電圧変換用部品は、例えば、AC(交流)電圧コンバータまたはDC(直流)電圧コンバータにすることができる。DC/DCコンバータは、入力に供給される直流電圧を、より高い電圧、より低い電圧、または電圧レベルが反転した直流電圧に変換する電気回路である。本発明では、交流電圧コンバータは、交流電圧コンバータの入力に存在する交流の入力電圧を、交流電圧コンバータの出力で取り出し可能な交流出力電圧に変換する電気部品である。交流電圧コンバータの出口電圧は、交流電圧コンバータの入口電圧に対して、小さくても、大きくても、等しくてもよい。好ましくは、出口電圧が入口電圧より常に大きい昇圧コンバータを用いて電圧が上げられる。ループ状導体の出口電圧は、好ましくは、出口電圧値がその入口電圧値よりも常に小さい降圧コンバータを用いて下げられる。例えば、0.35Vと16Vの間の電圧変換用部品の入口電圧は、電圧変換用部品によって3.8Vの出口電圧に変換できる。このようにして、消費機器の供給電圧を確実かつ効果的に供給できる。好ましくは、電圧変換用部品は直流電圧を供給する。さらに好ましくは、電圧変換用部品は3.8Vの低電圧を供給する。最も好ましくは、電圧変換用部品は、3.8Vの直流電圧を供給する。電圧変換は、整流の前または後に、整流とは別に行うことができる。
【0022】
送信用電子部品は整流用部品を有していてもよい。整流用部品は、ループ状導体から取り出された交流電圧を整流し、その後に直流電圧を供給電圧として消費機器に供給することができる。整流用部品として公知の整流器を使用することができる。半導体整流器が好ましい。
【0023】
整流用部品の代わりに、あるいは整流用部品に加えて、送信用電子部品は電流制限用部品または電圧制限用部品を有するようにしてもよい。このような電流制限用部品または電圧制限用部品により、簡単に過電圧または過大な電流に対する保護が可能になる。これにより、過電圧や過電流によって送信用電子部品または消費機器の下流の部品が損傷したり、その機能が損なわれたりしなくなる。別々の過電圧保護をもたらす抑制ダイオードまたはバリスタのような電子工学部品を電圧制限用部品として使用することができる。しかしながら、好ましくは、電流制限用部品または電圧制限用部品としてアクティブリミッタが使用される。このようなアクティブリミッタは、アクティブリミッタの供給ライン上で電圧または電流を連続的に測定し、過電圧及び/または過電流が流れた場合に下流の要素を絶縁する。アクティブ電圧リミッタが特に好ましい。ループ状導体が交流電圧を供給する場合、交流電圧を消費機器に供給される前に整流しなければならず、その整流は、アクティブリミッタを整流器と組み合わせて用いることで行うことが望ましい。
【0024】
電力供給装置の送信用電子部品は、少なくとも1つの蓄電用部品、好ましくは少なくとも1つのコンデンサを有する充電用電子部品を有するように構成できる。蓄電は、ループ状導体における電圧降下が低すぎるか存在しないためにループ状導体が消費機器用の供給電圧を生成するための十分な出口電圧をもたらさない場合の埋め合わせに使用できる。これにより、ループ状導体からの給電が不十分なときでも、例えば、車両基地での休止時間中や、運転中の短い制動状態の間でも、消費機器の確実な動作が保証される。蓄電用部品として好ましいのは、充電用電子部品を介して給電されるコンデンサである。さらには、充電用電子部品から給電される、いわゆるスーパーキャパシタを蓄電用部品として使用することが好ましい。電圧変換用部品及び/または整流用部品及び/または電流もしくは電圧制限用部品も、蓄電装置から電力供給することが考えられる。また、蓄電システムが完全に放電したときに、必要に応じて交換可能な追加の非常用バッテリによってシステムに給電することも考えられる。しかしながら、この非常用バッテリは例外的な場合にのみ使用されるため、メンテナンスと交換の間隔は比較的長い。
【0025】
電力供給装置は、電圧変換用部品、特に電圧変換器をモニタリングするためのモニタリング用電子部品を有するようにしてもよい。電圧変換用部品は、好ましくは蓄電用部品によって生成されるパルスにより初めに起動(イグニッション)することができる。電圧変換用部品をモニタリングするためのモニタリング用電子部品は、電圧変換用部品、好ましくは電圧変換器の特に初期動作をモニタリングし、例えばループ状導体の出口電圧が不安定な場合に、不要な起動プロセスを防止する。このように、モニタリング用電子部品は、消費機器の安全な動作に寄与し、不要な起動プロセスを防止することにより蓄電用部品の不要な放電を防止する。
【0026】
消費機器、特にループ状導体の下流に接続された送信用電子部品によって給電できる取得ユニットの供給電圧は、好ましくは3.3Vである。充電用電子部品が設けられている場合、その入口電圧は好ましくは3.8Vであり、電圧変換用部品の入口電圧は好ましくは0.35Vから16Vである。供給電圧を消費機器の要求に合わせる必要があるため、ループ状導体で取り出せる電圧が比較的低く、消費機器に供給するのに必要な供給電圧よりも低い場合、ループ状導体で取り出せる電圧を上げる必要があることも考えられる。
【0027】
電力供給装置は、集電装置に配置された導体の周りに配置される少なくとも1つのループ状導体を有するようにしてもよい。好ましくは、ループ状導体は、集電装置に配置された導体を同心状に取り囲む。さらに好ましくは、導体はケーブル要素として構成され、ループ状導体はケーブル要素の周囲に配置される。電力供給装置、特にループ状導体は、固定機構を介して集電装置に直接配置することができるため、有利なことに、鉄道車両の車内ネットワークに干渉する必要がなく、異なる鉄道車両で汎用的に使用することが鉄道車両の運転者に関わらず可能になる。
【0028】
集電装置は、鉄道車両の台車本体から電気的に絶縁することができる。この場合、鉄道車両をモニタリングするための集電装置の取得ユニットなどの電気システムを作動させるために、台車本体の外側の集電装置に電源が必要であり、その電源は、本発明に係る電力供給装置を集電装置に配置することによって得ることができる。
【0029】
電力供給装置が集電装置に配置されている場合、鉄道車両及び/または台車本体の内部へのアクセス、または鉄道車両の車内ネットワークの内部へのアクセスを必要とせずに、電力供給装置に容易にアクセスできる。そのため、有利なことに、列車システム、鉄道車両のハードウェアもしくはソフトウェア、または電流経路へのアクセスが必要でないため、電源供給システムを特に安全且つ容易に実施でき、鉄道車両の入場の要件を満たすことができる。集電装置における電力供給装置の構成と位置により、内部への進入が不要になることすら考えられる。
【0030】
特に、電力供給装置が集電装置をモニタリングするための取得ユニットに電力を供給するようになっている場合、送電経路を最小化するために、電力供給装置を集電装置に、ひいては動作ユニットに取得ユニットの近傍に配置することが有利であることが分かっている。
【0031】
集電装置に少なくとも1つのループ状導体を特に簡単かつ確実に設けることを可能にするために、電力供給システムのループ状導体は、有利には、集電装置のベースフレーム、上部アーム及び/または下部アームに配置することができる。好ましくは、ループ状導体は、可撓性ケーブル要素として構成された導体の一部の周りに配置され、ケーブル要素は、ベースフレームと下部アームとの間のジョイントの支持、または下部アームと上部アームとの間のジョイントの支持を補う。
【0032】
ループ状導体が集電装置のベースフレームに設けられた導体の一部の周りに配置することも考えられ、導体の一部は固定機構によってベースフレームに設けられる。
【0033】
それに代えて、またはそれに加えて、ループ状導体は、固定機構の固定要素を介して集電装置に固定されるアダプタ要素の周りに配置することができる。好ましくは、アダプタ要素は通電される。さらに好ましくは、集電装置に設けられる導体の部分は、ケーブル要素、特にフレキシブルケーブル要素として構成される。
【0034】
さらに、集電装置、特に集電装置のベースフレームに複数のループ状導体を配置することが考えられる。好ましくは、4つのループ状導体が集電装置に配置される。さらに好ましくは、集電装置は4つの導体を有し、1つのループ状導体がそれぞれ1つの導体に配置される。最も好ましくは、1つのループ状導体は、ベースフレームと下部アームとの間のジョイントを補う導体の一部に配置される。
【0035】
導体への電力の不十分な供給、ひいては消費機器への不十分な給電を補うために、電力供給装置が発電ユニットを有するようにしてもよい。発電ユニットは、燃料電池、光電発電機、圧電発電機、動力発電機及び/または熱電発電機として構成することが考えられる。例えば、風力発電、光起電力、動圧、例えば動作ユニットまたは動作ユニット部品の動作による運動エネルギ、温度勾配または圧力変化などの種々のエネルギ源からのエネルギを、発電ユニットで消費機器に電力を供給するために使用できる。電力供給装置は、ループ状導体に加えて発電ユニットを有するようにしてもよい。しかしながら、電力供給装置にループ状導体を含まずに、電力供給装置を発電ユニットと送信用電子部品のみで構成して、外部の電力ネットワークに依存せずに完全に自己完結型の動作を可能にすることも考えられる。
【0036】
本発明に係るモニタリングシステムは、本発明に係る少なくとも1つの電力供給装置と、取得ユニットとして構成されるとともに鉄道車両のモニタリング、特に動作ユニットのモニタリングを行う消費機器とを備え、取得ユニットによって、対応する動作ユニットの様々な特性についてデータを記録できる。取得ユニットによってモニタリングされる鉄道車両の動作ユニットは、例えば、集電装置、接地接点、潤滑装置、接触ストリップ(接片)、摺動装置、接点ブラシ、接地ブラシ、シャフト接地システムなどにすることができる。本発明では、特性は、動作ユニットの対象固有の特性であると理解されるものである。特性は、動作ユニットの対象固有の性質である。特性は、識別子、製造年、車両、使用、走行時間、材料、摩耗、故障、損傷、位置、画像、音、記録時間などの特性の種類から選択できる。本発明では、データは、動作ユニットの摩耗を記録するための実測値などの特性の値を意味すると理解されるものである。データは、例えば、呼称、シリアル番号、年、日付、車両型式、測定値、故障説明、損傷説明、位置詳細、画像ファイル、音声ファイル、時間、期間等にすることができる。
【0037】
動作ユニットがルーフ集電装置及び/又はパンタグラフである場合、好ましくは以下の特性、すなわち集電ストリップの形式、集電ストリップの材料、初期高さ及び摩耗高さ、車両のキロメートル単位での走行時間、集電装置のキロメートル単位での走行時間、第1の集電ストリップのミリメートル単位での摩耗の詳細、第2の集電ストリップのミリメートル単位での摩耗の詳細を使用できる。
【0038】
動作ユニットがサードレール集電装置である場合、好ましくは次の特性、すなわちヒューズの形式、集電ストリップの形式、集電ストリップの材質、初期高さ及び摩耗高さ、キロメートル単位での車両の走行時間、キロメートル単位での集電装置の走行時間、ミリメートル単位での集電ストリップの摩耗の詳細を使用できる。
【0039】
動作ユニットが接地ブラシである場合、好ましくは以下の特性、すなわち集電リングの材質、ブラシの材質、ブラシの断面積、初期高さ及び摩耗高さ、車両のキロメートル単位での走行時間、接地接点のキロメートル単位での走行時間、複数のカーボンブラシのミリメートル単位での摩耗の詳細を使用できる。
【0040】
動作ユニットがシャフト接地システムである場合、好ましくは以下の特性、すなわち平行送り材料、ファイバの材質、ファイバの断面積、初期断面積と摩耗高さ、車両のキロメートル単位での走行時間、接地システムのキロメートル単位での走行時間、第1ファイバと第2ファイバのミリメートル単位での摩耗の詳細を使用できる。
【0041】
動作ユニットが車輪フランジ潤滑システムである場合、好ましくは以下の特性、すなわち潤滑ピンの材質、初期長さ及び摩耗長さ、車両のキロメートル単位での走行時間、潤滑ピンのキロメートル単位での走行時間、ミリメートル単位での摩耗の詳細を使用できる。
【0042】
本発明に係るモニタリングシステムは、同一及び/または異なる形式の複数の動作ユニットを有する鉄道車両のモニタリングに使用することもできる。モニタリングシステムが、動作ユニットからのデータを記録するための複数の取得ユニットを有することも考えられる。複数の取得ユニットのそれぞれを個別の電力供給装置に接続してもよいし、1つの独立した電力供給装置が複数の取得ユニットに電力を供給するようにしてもよい。
【0043】
有利には、動作ユニットの異なる特性について取得ユニットによって記録されるデータを、それらの特性に割り当てることができる。データは、値、文字、またはファイルで表すことができる。特性は、割り当てられたデータとともに、それぞれの取得ユニットからモニタリングユニットに送信できるデータセットを形成する。モニタリングユニットは、モニタリングシステムの一部にしてもよく、上位ユニット及び/または下位ユニットとして別のシステムに属するようにしてもよい。モニタリングシステムが複数の取得ユニットを有し、そのデータセットを少なくとも1つの個別のモニタリングユニットに送信してそのユニットで統合することも考えられ、複数のモニタリングユニットを例えば異なる用途のために存在させることもできる。データセットはモニタリングユニットのデータベースに保存され、モニタリングユニットの評価装置によって連続的または必要に応じて処理される。モニタリングユニット及び/または評価装置は、ソフトウェアアプリケーションがインストールされたコンピュータで形成できる。データセットを相互に関連させるために、評価装置によってデータセットのパターン分析を行い、出力装置、例えばスクリーンを用いて出力することができる。このパターン分析により、データセット間に相互関係が存在する場合は、その相互関係を求めることができる。そして、相関関係から因果関係を一定間隔で導き出して、その因果関係を用いてモニタリング対象の鉄道車両の運転を最適化できる。例えば、ある特定種類の動作ユニットの故障の発生を、ある特定種類の鉄道車両と相互に関連付けることができる。このことにより、故障の原因及び/または鉄道車両と故障との因果関係を特定し、的を絞って故障を排除することが可能になる。
【0044】
モニタリングシステムは、対応する動作ユニットまたは鉄道車両に固定配置されたセンサ装置を備えた取得ユニットを有するようにしてもよい。そして、センサ装置は、例えば、対応する動作ユニットの機能及び運転時間を測定可能なセンサを有するようにしてもよい。例えば、センサ装置は、動作ユニットの部品の摩耗に関するデータを記録するために使用できる。センサ装置は、好ましくは集電装置の摩耗を検出するために使用され、より好ましくは集電装置の接触ストリップの摩耗を検出するために使用される。
【0045】
モニタリングシステムの取得ユニットは、対応する動作ユニットまたは鉄道車両に固定配置された送信装置を有するようにしてもよい。そして、この送信装置は、データセット、特にセンサ装置によって記録されたデータを、好ましくはモニタリングユニットに送信することができる。例えば、送信装置は、動作ユニットの形式指定と、センサによって測定された値と、さらに運転時間とからなるデータセットを送信できる。そして、送信装置は、センサについて記録されたデータを、対応する特性に割り当てる。動作ユニットまたは鉄道車両の製造番号や製造年などの送信されるデータセットを送信装置がすでに記憶している場合もある。データは、データ接続部を介して送信することができる。原則として、データ接続部はケーブル接続部で形成することができる。さらに、データ接続部は無線接続部や他の適切な種類のデータ接続部にすることもできる。データ接続は、連続して、一定間隔で、または事象ベースで成立させることができる。全体としては、データ接続の種類に関係なく、例えば評価のために動作ユニットのデータセットを送信するための送信装置を使用することが可能になる。データ接続は、外部ネットワークを介して成立させることが考えられる。データ接続は、モバイルネットワーク、WLAN、衛星接続、インターネット、その他の無線規格を、単独で、または組み合わせて成立させることができる。送信装置によって送信されるデータの送信先、例えばモニタリングユニットまたは評価装置は、動作ユニット、鉄道車両、及び/または送信装置から空間的に離れていてもよい。特に、このことにより、鉄道車両のデータセットを集中的に評価することが可能になる。
【0046】
本発明に係るモニタリングシステムの取得ユニットは、時間センサ及び位置センサを備えるようにして、対応する動作ユニットの取得時間とその位置(ローカル位置)を検出できるようにしてもよい。取得時間とローカル位置は、それぞれデータセットとしてデータベースに格納することもできる。ローカル位置により、例えば、衛星ナビゲーションにより鉄道車両及び/または関係する動作ユニットの位置を特定することができる。これにより、とりわけ、特定のデータセットがルート上のどの地点で記録されたかを判断することが可能になる。このことにより、ある事象及び/またはこの時点で記録されたデータセットに、関係するローカル位置を割り当てることが可能になる。パターン分析が実施されると、例えば、取得時間において記録されたローカル位置と、動作ユニットで検出されたエラーとの間で相関関係を成立させることができる。そして、例えば、相対的に増えた動作ユニットの摩耗または特定の故障を、季節や経路に割り当てることができる。
【0047】
本発明に係るモニタリングシステム、特に取得ユニットは、電力計を有するようにしてもよい。この電力計は、電流測定装置及び/または電圧測定装置として構成することが好ましい。ループ状導体は、導体での電圧降下を測定するために使用することが好ましく、電圧降下は導体の抵抗により電流に比例し、この電流により、主電源の電圧、特にカテナリ(カテナリ式電線)の主電源の電圧を介して、電力を決定することができる。電力計は、例えば主導体に印加される走行電流、及び/またはループ状導体によって取り出される電圧、及び/または鉄道車両によってネットワークにフィードバックされる電力量、及び/またはループ状導体によって送信用電子部品に伝達される電力、及び/またはループ状導体によって取得ユニットに伝達される電力を検出するために使用することができる。好ましくは、主導体に印加される走行電流、及び/またはループ状導体によって取り出される電圧、及び/または鉄道車両によってネットワークへ逆に供給される電力量、及び/またはループ状導体によって送信用電子部品に送信される電力、及び/またはループ状導体によって取得ユニットに伝達される電力は、電力分布または鉄道車両の総消費電流の測定を考慮しながら検出される。さらに、このような電力計は、電圧変化に起因する、特に大きな電圧降下に起因するアーク放電、すなわち、例えばカテナリと集電装置の接触ストリップとの間の電気アークを検出するために使用することができる。さらに、鉄道車両の走行プロファイルを、エネルギ取得量を評価することによって記録し、モデル化することができる。走行電流、すなわち主導体を流れる電流の測定は、交流電流ネットワークにおける負の半波または正の半波の記録、及び/または高インピーダンスの電圧測定回路によって実施することが好ましい。
【0048】
モニタリングシステムは、少なくとも1つの動作ユニットを有するようにしてもよい。モニタリングシステムを、複数の動作ユニットを有するようにして、そのデータをデータセットとしてデータベースに保存することもできる。動作ユニットは、取得ユニット及び/またはデータ接続部を有する送信装置を介して上位の評価装置に接続することができる。例えば、モニタリングシステムは、集電装置、接地接点、潤滑装置、接触ストリップ、摺動装置、接点ブラシまたは接地ブラシを、動作ユニットとして有するようにしてもよい。好ましくは、モニタリングシステムは、集電装置、摺動装置または接点ブラシのような通電動作ユニットを備える。特に好ましくは、モニタリングシステムは、電力供給装置のループ状導体が配置される動作ユニットとして集電装置を備える。モニタリングシステムは、複数の集電装置をモニタリングするための複数の取得ユニットを有するようにしてもよい。
【0049】
鉄道車両に配置された消費機器、特に鉄道車両をモニタリングするための取得ユニットに配置された消費機器、特に動作ユニットをモニタリングするための取得ユニットに配置された消費機器に電力を供給するための本発明に係る方法では、鉄道車両の導体、特に集電装置に第1の電圧が印加され、導体における2つの固定接合部間で少なくとも1つのループ状導体によって第2の電圧がループ状導体の出口電圧として取り出され、このループ状導体の出口電圧は消費機器に電力を供給するために用いられる。好ましくは、導体は、鉄道車両に電力を供給するための主導体である。好ましくは、取得ユニットは、鉄道車両の動作ユニットをモニタリングするために構成される。
【0050】
本発明に係る方法の特徴、特性、及び効果に関して不必要な繰り返しを避けるため、原則的に、本発明に係る電力供給装置及び本発明に係るモニタリングシステムについての前述の開示を参照されたい。これは、原則的に、方法に関して開示され説明される特徴は、装置に関して説明されていて且つ特許請求可能であるとみなすべきであり、その逆も同様であることを意味する。
【0051】
好ましくは、消費機器は取得ユニットとして構成され、本発明に係る電力供給方法によって給電できる取得ユニットは、集電装置、接地接点、潤滑装置、接点ブラシ、摺動装置、接点ブラシ、接地ブラシなどをモニタリングするために使用される。
【0052】
ループ状導体の出口電圧を用いて消費機器に電力を供給するために、ループ状導体の出口電圧を消費機器の供給電圧として直接使用することができ、またはループ状導体の出口電圧を変換し、安定化させ、且つ/またはループ状導体によって送信される電力を蓄積する送信用電子部品に供給することができる。
【0053】
有利には、消費機器が必要とする供給電圧は、ループ状導体の出口電圧の電圧変換によって生成される。これは送信用電子部品内で行われる。電圧変換には、電圧変換器または電圧変成器などの電圧変換用の部品を使用することが好ましい。電圧を変換するステップにより、消費機器に必要な供給電圧を確実にもたらすことが可能になる。本発明では、「ループ状導体の出口電圧の変圧」という用語は、ループ状導体の出口電圧を制限すること、または低下もしくは上昇させることを意味する。電圧を制限することまたは低下させることにより、電圧ピークなどによって消費機器が損傷しないようにすることができる。しかしながら、出口電圧を上昇させることも考えられる。ループ状導体の出口電圧は、出口電圧が入口電圧よりも常に大きい昇圧コンバータを用いて上昇させることが好ましい。ループ状導体の出口電圧は、出口電圧が入口電圧よりも常に小さい降圧コンバータを用いて低下させることが好ましい。電圧変換は整流前でも整流後でも、整流とは別に行うことができる。
【0054】
少なくとも1つのループ状導体の出口電圧は整流することができる。整流により、ループ状導体が交流電圧と直流電圧のどちらを生成しているかに関係なく、消費機器に直流電圧を供給することが可能になる。ループ状導体の出口電圧は整流された後に電圧変換されることが好ましい。さらに、ループ状導体の出口電圧は、制限され、整流された後に、電圧変換されることが好ましい。
【0055】
消費機器の供給電圧は、蓄電用の少なくとも1つの部品によって少なくとも一時的にもたらされる。これにより、導体への給電に関する故障や障害には関わらず、消費機器、特に取得ユニットに蓄電ユニットから給電できるという効果が得られる。好ましくは、ループ状導体で取り出された電圧が整流及び/または制限された後に電力が蓄電用部品に供給され、消費機器に給電するのに必要な供給電圧が蓄電用部品により得られる。
【0056】
本発明に係る方法の一部として、走行電流を決定し、及び/またはアークを検出し、及び/または走行プロファイルを記録することができる。走行電流と、導体上の電流及び/または電圧曲線は、バイパス導体の特性を介して決定することができる。さらに、この特性は走行電流の消費量と相関があり、特に走行電流の変動によって電力供給の品質に関する結論を導き出すことができるため、鉄道車両の電力供給の品質を決定することができる。走行電流の消費量を決定し、電源の品質を決定するためには、電力分布を考慮するか、または、たとえば複数のループ状導体を適用して総電流を測定することができる。
【0057】
アークの特性により、ループ状導体における電圧を決定することによって簡単な方法でアーク検出が可能になる。アークが発生すると、例えば集電装置の接触ストリップとカテナリの間で、特徴的な電圧変化及び/またはループ状導体を流れる電流の低下を検出することができる。このことにより、望ましくないアーク放電の発生を検出し、供給ネットワーク及び/または鉄道車両、特に集電装置を保守するための適切な措置を講じることができる。
【0058】
供給ネットワークから主導体を通る電力の消費がループ状導体の電力取得量と相関するため、ループ状導体の電力取得量から鉄道車両の走行プロファイルを導き出すことができる。特に、鉄道車両のアクセル操作及びブレーキ操作を走行プロファイル内の時間データ及び/または位置データとリンクさせることができ、例えば、ルートの拡張、ルートの保守、またはルートのシミュレーションを改善することができる。走行プロファイルに必要なデータ、特に制動プロセス及び/又は加速プロセスに関連するデータは、ループ状導体の電力取得量から簡単な方法で導き出すことができ、加速プロセスではループ状導体の電力取得量が増加して、主導体は増加した量の電力を伝達し、制動プロセスでは電力取得量が小さくなり、主導体は少量の電力しか伝達しない。
【0059】
以下、本発明の好適な実施形態を添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】
図1は、集電装置に配置された電力供給装置を有する本発明に係るモニタリングシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る電力供給システムの概略図である。
【
図3】
図3は、パンタグラフへの固定機構の位置決めを示す図である。
【
図4】
図4は、パンタグラフへの固定機構の位置決めについての
図2のA部詳細図である。
【
図5】
図5は、固定機構によるパンタグラフへのループ状導体の位置決めを示す図である。
【
図10】
図10は、ケーシング内に配置されたループ状導体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
図1は、パンタグラフとして構成され、且つ鉄道車両24(
図1には示さず)の主導体の一部を形成する集電装置7とともに、電力供給装置1を備えたモニタリングシステム15の概略図を示している。送信用電子部品5は、電力をループ状導体6から取得ユニット23の形態の消費機器2へ送信するために使用される。電力を供給ネットワークから鉄道車両に供給するために集電装置7の接触ストリップを介して集電装置7が接続されるカテナリは図示されていない。また、集電装置7がルーフの上に配置され、システムの接地(アース、グランド)を構成するレール18上を移動可能な鉄道車両24も
図1には示されていない。また、
図1は、集電装置7に最大100Vの電位差があることも示している。これに対して、電流の伝達ポイント、つまり集電装置7の接触ストリップとカテナリ(図示せず)が接触するポイントと接地電位との間には15kVの電位差がある。図示の実施形態によれば、ループ状導体6は交流電圧を発生させる。この交流電圧は整流用部品10で整流され、電圧はアクティブリミッタ11の助けで制限される。整流用部品10の出口電圧から3.8Vの電圧が、電圧変換用部品9(この場合は電圧変換器)によって生成され、この電圧は0.35Vから16Vの間であってもよい。蓄電用部品13として用いられるコンデンサ13は、充電用電子部品12を介して給電されるため、鉄道車両24が停止しているとき、または運転中の制動時にバイパス導体6の電圧降下が低くなりすぎるときでも、取得ユニット23に必要な3.3Vの供給電圧を供給することができる。したがって、
図1は、電流がループ状導体6から整流用部品10及び電圧制限用部品11を通り、さらに電圧変換用部品9及び充電用電子部品12を通って取得ユニット23へ流れる実施形態を示している。
【0062】
電力供給装置1の図示の構成により、集電装置7で取り出された交流電圧により、取得ユニット23を動作させるのに必要な直流電圧を安全かつ確実に取得ユニット23に供給することができる。取得ユニット23に加えて、アクティブリミッタ11、整流器10、及び電圧コンバータ9にも、充電用電子部品12の蓄電用部品13を介して給電することができる。
【0063】
電圧コンバータ9の初期の起動は、蓄電用部品によって必要なエネルギを賄うことができるパルスによって行われる。蓄電用部品の不要な放電を避けるために、電圧コンバータ9の起動をモニタリング(監視)して、例えばループ状導体6の出口電圧が不安定な場合に不要な起動プロセスを防止するモニタリング用電子部品14が設けられている。取得ユニット23は、鉄道車両に固定配置されて、この例では集電装置7である動作ユニット3をモニタリングするセンサ装置16を備え、取得ユニット23は集電装置7の種々の特性のデータを記録するために使用される。データは、送信装置17を用いて評価装置(図示せず)に送信することができる。例えば、集電装置7の接触ストリップの状態を判定し、接触ストリップの保守及び/または交換を適時に実施することができる。
【0064】
図2に示す電力供給装置1の機能は、基本的に
図1に示す電力供給装置1に対応している。
図2は、パンタグラフとして構成され、且つ鉄道車両24の主導体の一部を形成する集電装置7とともに電力供給装置1を示している。送信用電子部品5は、ループ状導体6から複数の消費機器2へ電力を送信する機能を果たす。電力を鉄道車両24に供給するために集電装置7の接触ストリップを介して集電装置7が接続されるカテナリは図示されていない。図示の実施形態によれば、ループ状導体6は交流電圧を発生させる。この交流電圧は、整流用部品10(図示せず)を用いて整流することができ、電圧は、アクティブリミッタ11(図示せず)により制限することができる。この例では少なくとも1つの降圧コンバータと少なくとも1つの昇圧コンバータである電圧変換用部品9により、消費機器2の動作に必要な電源電圧を消費機器2に供給することができる。鉄道車両24が停止しているとき、または運行中の制動時にループ状導体24の電圧降下が低くなりすぎるときでも、コンデンサ13及び/またはバッテリ31により、消費機器2に必要な供給電圧を供給することができる。
【0065】
図3、及び
図3のA部詳細を示す
図4の概要は、パンタグラフとして構成された集電装置7に固定機構8を配置するというオプションを示す。集電装置7は、鉄道車両24のルーフに配置され、ベースフレーム20、下部アーム21及び上部アーム22を有し、これらはジョイント25、26によって関節接続されている。ジョイント26による上部アーム22と下部アーム21との関節接続、及びジョイント25による下部アーム21とベースフレーム20との関節接続により、接触ストリップ28がカテナリ(図示せず)に向かって持ち上げることができてカテナリと接触するようになり、または鉄道車両24のルーフに向かって下降する。固定機構8は、ジョイント25の近くでベースフレーム20に配置され、ループ状導体6を保持するための固定要素27、特に
図4から
図7に示すアダプタ要素29によって保持するための固定要素27を有する。
【0066】
図5は、パンタグラフとして構成された集電装置7にループ状導体6を配置するオプションを示す。パンタグラフ6は、通電ケーブル要素19として構成されたループ状導体4の一部分に配置される。好ましくは可撓性のケーブル要素19は、ジョイント25の支持を補う機能を果たす。具体的には、図示の実施形態に係る固定機構8は、誘導コイル要素として構成されたループ状導体6で延長されている。ループ状導体6は、この例でスペーサボルトとして構成されたアダプタ要素29に固定されている。
図5から
図8に示すアダプタ要素28は、固定機構8の固定要素27が通過する中空円筒部30を有し、アダプタ要素29はベースフレーム20に固定、特にねじ止めすることができる。アダプタ要素29は通電される。アダプタ要素29の外寸と高さは互いに補完し合い、ループ状導体6の内寸に対応する。あるいは、ループ状導体は集電装置7の他の通電部品に係合するようにしてもよい。
【0067】
図9は、環状体と、エナメル被覆された銅線で作られるとともに環状体の周囲に配置された巻線34とからなる、本発明に係るループ状導体6を示している。
図9は、環状体及び/またはループ状導体6の対称軸の高さHが測定されるように、環状体及び/またはループ状導体6の高さHが定められることを示している。
【0068】
図10は、ケーシング33内で成形され、接続配線32を介して送信用電子部品5(図示せず)に接続可能なループ状導体6を示す。
【国際調査報告】