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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】活電極物質
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/485 20100101AFI20241226BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20241226BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241226BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241226BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241226BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241226BHJP
   C01G 33/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01M4/485
H01M4/131
H01M4/36 E
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/36 B
H01M10/052
C01G33/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024537883
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-25
(86)【国際出願番号】 GB2022053230
(87)【国際公開番号】W WO2023118812
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】2118598.8
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2201717.2
(32)【優先日】2022-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522145144
【氏名又は名称】エチオン テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】スレイター,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】グルームブリッジ,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4G048
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H029AJ03
5H029AJ05
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ13
5H029HJ17
5H029HJ19
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB29
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA13
5H050HA17
5H050HA19
(57)【要約】
本発明は、活電極物質としてニオブ混合酸化物を含む電極に関する。この電極はリチウムイオン電池などの金属イオン電池に使用することができる。ニオブ混合酸化物は、式M x-u (x/(5-y)) Nb100-(x/(5-y))-z250-u/2を有し得、式中、Mは、酸化状態が1の陽イオンであり、Mは、平均酸化状態がyの陽イオンであり、Mは、平均酸化状態が5の陽イオンであり、1≦y≦4であり、0.5≦x≦6であり、0≦z≦10であり、0≦u≦5であり、x>uである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活電極物質としてニオブ混合酸化物を含む電極であって、前記ニオブ混合酸化物は、式M x-u (x/(5-y)) Nb100-(x/(5-y))-z250-u/2を有し、式中
は酸化状態が1の陽イオンであり、
は平均酸化状態がyの陽イオンであり、
は平均酸化状態が5の陽イオンであり、
1≦y≦4、
0.5≦x≦6、
0≦z≦10、
0≦u≦5、
x>uである、前記電極。
【請求項2】
(i)Mは、Li、Na、K、Cu、Zn、Mg、Ca、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、V、Al、B、Ga、Sc、Y、In、La、Yb、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、Si、P、Ta、W、Mo及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)Mは、Li、Na、K、Cu、Zn、Mg、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、V、Al、B、Ga、Zr、Ti、Si、P、Ta、及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)Mは、Li、Na、Cu、Zn、Mg、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、Al、B、Ga、Zr、Ti、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
(i)yは1、2、3、または4である、または
(ii)yは2≦y≦4である、または
(iii)yは2、3、または4である、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項4】
を形成するすべての陽イオンが同じ酸化状態を有する、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項5】
(i)Mは、Li、Na、K、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)Mは、Li、Na、及びそれらの混合物から選択される、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項6】
前記ニオブ混合酸化物が式M x-u x/4 Nb100-x/4-z250-u/2を有し、式中
は酸化状態が1の陽イオンである、請求項1~5のいずれかに記載の電極。
【請求項7】
(i)Nは、Li、Na、K、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)Nは、Li、Na、及びそれらの混合物から選択される、請求項6に記載の電極。
【請求項8】
前記ニオブ混合酸化物が式M x-uII x/3 Nb100-x/3-z250-u/2を有し、式中
IIは平均酸化状態が2の陽イオンである、請求項1~5のいずれかに記載の電極。
【請求項9】
IIを形成するすべての陽イオンの酸化状態が2である、請求項8に記載の電極。
【請求項10】
(i)MIIはCu、Zn、Mg、Ni、Fe、Mn、Co、Ca、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)MIIはCu、Zn、Mg、Ni、及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)MIIはZn、Mg、Ni、及びそれらの混合物から選択される、請求項8または9に記載の電極。
【請求項11】
前記ニオブ混合酸化物が式M x-uIII x/2 Nb100-x/2-z250-u/2を有し、式中
IIIは平均酸化状態が3の陽イオンである、請求項1~5のいずれかに記載の電極。
【請求項12】
IIIを形成するすべての陽イオンの酸化状態が3である、請求項11に記載の電極。
【請求項13】
(i)MIIIは、Mn、Cr、V、Fe、Al、B、Ga、Y、In、La、Yb、Ce、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)MIIIは、Mn、Cr、Fe、Al、B、Ga、Y、及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)MIIIは、Cr、Al、Fe、及びそれらの混合物から選択される、請求項11または12に記載の電極。
【請求項14】
前記ニオブ混合酸化物が式M x-uIV Nb100-x-z250-u/2を有し、式中
IVは平均酸化状態が4の陽イオンである、請求項1~5のいずれかに記載の電極。
【請求項15】
IVを形成するすべての陽イオンの酸化状態が4である、請求項14に記載の電極。
【請求項16】
(i)MIVは、Zr、Ti、Mn、Ce、Sn、Ge、V、Si、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)MIVは、Zr、Ti、Sn、Ge、V、及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)MIVはTi、V、及びそれらの混合物である、請求項14または15に記載の電極。
【請求項17】
(i)xは1、2、3、4、5、または6である、または
(ii)xは2≦x≦5である、または
(iii)x=4である、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項18】
(i)0≦u≦3、または
(ii)0.01≦u≦2、または
(ii)u=0である、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項19】
x≧u+1である、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項20】
前記ニオブ混合酸化物は、Li及びNb以外のさらなる陽イオンが存在する場合に、Liのみを含む、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項21】
がLiを含まず、または前記ニオブ混合酸化物がLiを含まない、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項22】
活電極物質としてニオブ混合酸化物を含む電極であって、前記ニオブ混合酸化物は式B Nb100-a-z250-aを有し、式中
は平均酸化状態が5の陽イオンであり、
0≦z≦10、
0<a≦8である、前記電極。
【請求項23】
(i)1≦a≦5、または
(ii)1.5≦a≦3、
(iii)a=2である、請求項22に記載の電極。
【請求項24】
(i)Mは、Mn、Fe、Al、Ga、Y、In、La、Yb、Cu、Zn、Mg、Ni、Co、Ca、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、Si、V、P、Ta、W、Mo、Cr及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)Mは、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、Si、V、P、Ta、W、Mo、Cr及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)Mは、V、P、Ta、及びそれらの混合物から選択される、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項25】
を形成するすべての陽イオンの酸化状態が5である、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項26】
(i)0≦z≦5、及び/または
(ii)z>0、または
(iii)z=0である、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項27】
活電極物質としてニオブ混合酸化物を含む電極であって、前記ニオブ混合酸化物は式MNb100-b250-2.5b+bcを有し、式中
Mは、P、B、W、Mo、V、Ti、Si、及びそれらの混合物から選択される陽イオンであり、
cはMの平均酸化状態の半分であり、
1.5≦c≦3、及び
0.5<b≦6である、前記電極。
【請求項28】
18.15~18.65°2θの間の最も強いピークの半値全幅は、CuKα線源を用いた前記物質のX線回折パターンにおいて0.2超であり、任意選択で、前記半値全幅は0.4超、0.6超、及び/または0.9未満である、請求項27に記載の電極。
【請求項29】
Mは、P、W、Ti、B及びそれらの混合物、またはP、W及びそれらの混合物から選択される、請求項27または28に記載の電極。
【請求項30】
前記陽イオンは、異なる酸化状態の陽イオンによって部分的に置換され、任意選択で、前記陽イオンの最大20at.%が、異なる酸化状態の陽イオンによって置換される、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項31】
前記酸素陰イオンは、F、Cl、Br、S、Se、N、及びそれらの混合物などの代替の電気陰性陰イオンによって部分的に置換され、任意選択で、前記酸素陰イオンの最大10at.%が代替の電気陰性陰イオンによって部分的に置換されている、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項32】
前記ニオブ混合酸化物が0.1~100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD50の粒径を有する、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項33】
前記ニオブ混合酸化物は、0.1~100m/g、または0.2~50m/g、または0.5~20m/gの範囲のBET表面積である、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項34】
前記ニオブ混合酸化物が炭素でコーティングされている、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項35】
前記ニオブ混合酸化物は保護コーティングを有し、任意選択で前記保護コーティングは、ニオブ酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、有機及び無機フッ化物、有機及び無機リン酸塩、チタン酸化物、これらのリチウム化バージョン、及びこれらの混合物を含む、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項36】
前記ニオブ混合酸化物は、4×4の八面体ブロックを含むWadsley-Rothブロック構造を有する、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項37】
前記ニオブ混合酸化物は単斜晶系結晶構造を有し、任意選択で、前記ニオブ混合酸化物は単位格子パラメータa=25.7~31.4Å、b=3.4~4.2Å、c=15.8~19.3Å、α=90°、β=112.6~137.6°、γ=90°を有する、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項38】
前記ニオブ混合酸化物の前記結晶構造がN-Nbの結晶構造に対応する、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項39】
前記ニオブ混合酸化物が、前記電極の全活電極物質の少なくとも5重量%、10重量%、または50重量%を形成するか、または前記ニオブ混合酸化物が前記電極の唯一の活電極物質である、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項40】
結合剤、導電性添加剤、異なる活電極物質、及びそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの他の成分をさらに含む、いずれかの先行請求項に記載の電極。
【請求項41】
前記異なる活電極物質が、リチウムチタン酸化物、チタンニオブ酸化物、異なるニオブ混合酸化物、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、それらのドープ及び/またはカーボンコーティングバージョン、及びそれらの混合物から選択される、請求項40に記載の電極。
【請求項42】
請求項1~41のいずれか1項に記載の電極を含む金属イオン電池であって、任意選択で、金属イオン電池がリチウムイオン電池であり、前記電極がアノードを形成する、前記金属イオン電池。
【請求項43】
20mA/gで180mAh/gより大きい可逆的アノード活物質比容量を有するリチウムイオン電池であり、20mA/gで初期のセル容量の70%超を保持しながら、前記電池は、200mA/g以上、または1000mA/g以上、または2000mA/g以上、または4000mA/g以上の前記アノード活物質に対する電流密度で充電及び放電することができる、請求項42に記載の金属イオン電池。
【請求項44】
アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間に配置された電解質を含む電気化学デバイスであって、前記アノードが、活性アノード物質として、請求項1~38のいずれか1項に記載されているニオブ混合酸化物を含み、前記デバイスは、N/P比>1を有し、N/P比は、
【数1】
式中、
面積負荷(mgcm-2)は、集電体を考慮しない電極組成物の乾燥負荷であり、
活性分率(重量%)は、活物質である乾燥電極組成物の割合であり、
第1のリチウム化/脱リチウム化容量(mAhg-1)は、Li金属対電極を備えた同等の半電池で測定された、前記アノードの第1のリチウム化サイクルまたは前記カソードの第1の脱リチウム化サイクルにおける、25℃でのC/10での比容量である、と定義されている、前記電気化学デバイス。
【請求項45】
ニオブ混合酸化物の使用であって、前記ニオブ混合酸化物は、金属イオン電池の活電極物質として請求項1~38のいずれか1項に記載の通りであり、任意選択でリチウムイオン電池のアノードにおけるものである、前記使用。
【請求項46】
電極の製造方法であって、
請求項1~38のいずれか1項に定義されているニオブ混合酸化物を得ることと、
前記ニオブ混合酸化物を集電体上に堆積させて前記電極を形成することと、を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活電極物質、活電極物質の製造方法、及び活電極物質を含む電極に関する。このような物質は、例えば、アノードの物質として、金属イオン電池、例えばリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池の活電極物質としての関心物質である。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン(Liイオン)電池は、一般的に使われている充電式電池の一種であり、世界市場は2030年には2000億ドルに成長すると予測されている。Liイオン電池は、技術的能力から環境への影響まで複数の要求がある電気自動車に最適な技術であり、環境に優しい自動車産業への実現可能な道程を授ける。
【0003】
典型的なリチウムイオン電池は、直列または並列に接続された複数のセルで構成されている。個々のセルは、通常、アノード(負極性電極)とカソード(正極性電極)とで構成されており、多孔質の電気絶縁膜(セパレータと呼ばれる)で分離され、リチウムイオンの輸送を可能にする液体(電解液と呼ばれる)に浸されている。
【0004】
ほとんどのシステムでは、電極は、活電極物質で構成されており、このことはリチウムイオンと化学的に反応して、それらを制御された状態で可逆的に吸蔵及び放出できることを意味し、これは必要に応じて導電性添加剤(炭素など)及び高分子結合剤と混合される。これらの成分のスラリーが集電体(一般的には銅またはアルミニウムの薄箔)に薄膜としてコーティングされ、そのため乾燥時に電極を形成する。
【0005】
既知のLiイオン電池技術においては、黒鉛アノードは電池充電時の安全性の限界があり、高出力の電子機器、自動車及び産業への応用の大きな障害となっている。最近提案された様々な有望な代替物の中で、チタン酸リチウム(LTO)及びニオブ混合酸化物が、黒鉛に代わる、高出力で早い充電の用途に最適な活物質として有力な候補である。
【0006】
黒鉛アノードに依存する電池は、根本的に充電レートの点で制限される。公称条件下では、充電時にリチウムイオンがアノード活物質に挿入される。充電レートが高くなると、一般的な黒鉛の電圧プロファイルは、過電圧によりアノードの部位の電位がLi/Li+に対して0Vよりも低くなる危険性が高いものになり、リチウムイオンが代わりにリチウム金属として黒鉛電極の表面に析出するリチウムデンドライト電気メッキと呼ばれる現象を引き起こす。この結果、活性リチウムが不可逆的に失われ、したがってセルの容量が急速に低下する。場合によって、これらの樹枝状の析出物は非常に大きなサイズに成長するので、電池のセパレータを貫通してしまい、セルの短絡につながる可能性がある。これが引金となり、セルが突発的に故障し、出火または破裂が生じることもある。そのため、黒鉛アノードを有する最も速く充電が可能な電池では、充電レートが5~7Cに制限されているが、たいていはそれよりも大幅に低くされている。
【0007】
チタン酸リチウム(LTO)アノードは、高電位(Li/Li+に対して1.6V)のために高充電レートでのデンドライト電気メッキの影響を受けず、3D結晶構造に対応しているためリチウムイオンのインターカレーション時に活物質の大幅な体積膨張の影響を受けないので優れたサイクル寿命を有する。これら2つの理由から、LTOセルは一般に安全性の高いセルと見なされている。しかし、LTOは比較的劣った電子伝導体及びイオン伝導体であるため、物質をナノ化して比表面積を大きくし、炭素被覆して電子的伝導率を高めない限り、高レートでの容量維持率及び得られる電力の能力に限界がある。この粒子レベルの材料工学により、活物質の多孔性と比表面積が増加し、電極で達成可能な充填密度が大幅に低下する。このことは、電極の密度が低くなり、電気化学的に不活性な物質(例えば結合剤、炭素添加剤)の割合が高くなり、重量エネルギー密度と体積エネルギー密度の大幅な低下に至るためである。
【0008】
アノードの能力の重要な指標は、電極の体積比容量(mAh/cm)、つまり、アノードの単位体積あたりに蓄積できる電荷(つまりリチウムイオン)の量である。この量は、カソード及び適切なセル設計パラメータと組み合わせたとき、体積ベースでの電池全体のエネルギー密度(Wh/L)を決定する重要な要素である。電極の体積比容量は、電極密度(g/cm)、活物質の比容量(mAh/g)、及び電極内の活物質の割合の積として概算できる。LTOアノードは通常、比容量が比較的小さく(約165mAh/gであり、黒鉛の約330mAh/gと比較)、これが上記の小さい電極密度(通常2.0g/cm未満)及び活物質の小さい割合(90%未満)と相まって、体積比容量が非常に小さくなり(300mAh/cm未満)、したがって電池エネルギー密度も小さくなり、様々な用途においてkWhあたりの$金額コストが高くなる。結果的として、LTO電池/セルは、長いサイクル寿命、急速充電性能、及び高い安全性にもかかわらず、ニッチな特定の用途に一般に限定されている。
【0009】
ニオブ混合酸化物は学術文献ではいくらかの期間知られてきた。昨今、一部のニオブ混合酸化物構造は、Liイオンセルでの使用に関心が持たれている。例えば、Zhu et al., J. Mater. Chem. A,2019, 7,25537及びZhu et al., Chem. Commun., 2020,56, 7321-7324は、考えられる活電極物質としてZnNb3487及びCuNb3487を開示している。これらの論文は、複雑な粒子レベルの工学に依存しており、その称するところでは、例えば粒子の空隙率及び形態を制御しようとしながら、優れた特性を達成するという。WO2021/074593及びWO2021/074594には、活電極物質として使用するのに優れた特性を有することが判明した、様々な置換及び/または酸素欠乏ニオブ混合酸化物が開示されている。しかし、活電極物質として使用するための優れた特性、特に高出力/急速充電用途向けのLiイオンセルでの使用に際して良好な特性を備えた、さらなるニオブ混合酸化物を特定する必要性が依然としてある。例えば、大規模な粒子レベルの工学を必要とせず、及び/またはコーティングも必要としない、これらの物質を特定することは、マスマーケットでの採用に向けた低コストの電池物質への重要なステップである。
【発明の概要】
【0010】
第1の態様において、本発明は、特許請求の範囲に定義されているような、活電極物質としてニオブ混合酸化物を含む電極であって、ニオブ混合酸化物は、式M x-u (x/(5-y)) Nb100-(x/(5-y))-z250-u/2を有する電極を提供する。
【0011】
ニオブ混合酸化物は、特許請求の範囲に定義されているように、式B Nb100-a-z250-aを有することもできる。
【0012】
ニオブ混合酸化物は、特許請求の範囲に定義されているように、式MNb100-b250-2.5b+bcを有することもできる。
【0013】
本発明者らは、本実施例で示されるように、第1の態様による電極は、例えば5C及び10Cの高いレートで脱リチウム化された場合でも、驚くほど高い容量を保持することを発見した。これらは、高速充電/放電用に設計された高出力電池で使用する際の本発明のニオブ混合酸化物の利点を実証する上で重要な結果である。
【0014】
第2の態様において、本発明は、活電極物質としてニオブ混合酸化物を含む金属イオン電池を提供し、ニオブ混合酸化物は、第1の態様において定義されたものである。任意選択で、金属イオン電池はリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池であり、好ましくはリチウムイオン電池である。
【0015】
第3の態様において、本発明は、第1の態様で定義したニオブ混合酸化物の金属イオン電池の活電極物質としての使用を提供する。任意選択で、金属イオン電池はリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池であり、好ましくはリチウムイオン電池である。
【0016】
第4の態様において、本発明は、第1の態様において定義されたニオブ混合酸化物を得ること、及びニオブ混合酸化物を集電体上に堆積させて、それによって電極を形成することを含む、電極の製造方法を提供する。
【0017】
これより、添付の図面を参照しながら、本発明の原則について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】選択された、合成のWadsley-Rothの4×4の八面体ブロック構造のXRDパターン。
図2】サンプル11のThermo Scientific (FEI) Talos F200X G2 TEMを使用して取得したTEM顕微鏡写真と選択された領域の電子回折。左:高度な結晶構造を示す高倍率画像。右:XRDによって決定された(110)面間距離マッチングを伴う選択された領域の電子回折。
図3】CuKα X線源を使用して収集されたサンプル18のXRDパターン。
図4】3.0Vから1.1VまでのC/10のCレートを使用した半電池内のサンプル3及び18の2回目のサイクル形成の電圧対充電/放電状態曲線。
【発明を実施するための形態】
【0019】
「ニオブ混合酸化物」という用語は、ニオブと少なくとも1つの他の陽イオンとを含む酸化物を示す。ニオブ混合酸化物は、0.8V超のリチウムに対して高い酸化還元電圧を有し、電池セルの高速充電に不可欠な、安全で長寿命の動作を可能にする。さらに、ニオブ陽イオンは原子あたり2つの酸化還元反応を起こすことができ、LTOなどよりも高い理論容量になる。
【0020】
ニオブ混合酸化物は、式M x-u (x/(5-y)) Nb100-(x/(5-y))-z250-u/2を有することができ、式中、
は酸化状態が1の陽イオンであり、
は平均酸化状態がyの陽イオンであり、
は平均酸化状態が5の陽イオンであり、
1≦y≦4、
0.5≦x≦6、
0≦z≦10、
0≦u≦5、
x>uである。
【0021】
ニオブ混合酸化物は、式B Nb100-a-z250-aを有することができ、式中、
は平均酸化状態が5の陽イオンであり、
0≦z≦10、
0<a≦8である。
【0022】
ニオブ混合酸化物は、式MNb100-b250-2.5b+bcを有することもでき、式中、
Mは、P、B、W、Mo、V、Ti、Si、及びそれらの混合物から選択される陽イオンであり、
cはMの平均酸化状態の半分であり、
1.5≦c≦3、及び
0.5<b≦6である。
【0023】
本明細書で定義される式を有するニオブ混合酸化物は、これらが活電極物質として使用するための有利な特性へと寄与すると考えられる結晶構造を採用することができるため、統一されている。特に、ニオブ混合酸化物は、4×4の八面体ブロックを含むWadsley-Roth結晶構造を有する結晶構造を採用することができる。Wadsley-Roth結晶構造は、結晶学的せん断を含むMO(ReO)結晶構造の結晶学的オフストイキオメトリであると考えられており、MO3-xの簡略化された式がある。結果として、これらの構造には通常、結晶構造に[MO]の八面体サブユニットが含まれる。4×4の八面体ブロック構造では、各ブロックは辺を共有する八面体のみで接続されている。この構造は、単斜晶系の単位格子(a=28.51Å、b=3.830Å、c=17.48Å、β=120.80゜、空間群=C2/m)を有すると1967年に報告された。この構造及び関連する構造は歴史的な学術文献で報告されているが、電気化学的リチウム化または脱リチウム化のデータは提供されていない(Andersson, Zeitschrift fur anorganische und allgemeine Chemie, Volume351, Issue 1-2, April 1967, Pages 106-112;Pekhtereva, Yu.A., & Shukaev, I.L. (1999), Zhurnal Neorganicheskoj Khimii, 44(2), 290-294;Cava et al 1983 J. Electrochem. Soc. 130 2345;Villafuerte-Castrejon, Journal of Solid State Chemistry, Volume 71, Issue 1, November 1987, Pages 103-108;Norin and Bertil, Acta Chemica Scandinavica, volume 25 (1971), Pages: 741-743;Reisman and Holtzberg, J. Am. Chem. Soc. 1958, 80, 24, 6503-6507)。ブロックサイズが大きいことは、八面体ブロックサイズがより小さい他のWadsley-Roth構造に比べて、速いリチウムの挿入及び除去について有利であり、八面体ブロックサイズが大きいものよりも安定性が高くなる可能性があると考えられている。
【0024】
ニオブ酸化物N-Nbの多形は、4×4の八面体ブロックを含むWadsley-Roth結晶構造を採用している。したがって、ニオブ混合酸化物の結晶構造はX線回折によって決定され、N-Nbの結晶構造に、好ましくは対応する。N-Nbの結晶構造については、Andersson 1967,Zeitschrift fur anorganische und allgemeine Chemie, Volume351, Issue 1-2, April 1967に記載されている。
【0025】
実験的な式N-Nbと比較して、本発明によるニオブ混合酸化物は、陽イオンと陰イオンの比が変更されている。式M x-u (x/(5-y)) Nb100-(x/(5-y))-z250-u/2では、一部のNbがMとMの両方で置換されており、陰イオンに対する陽イオンの比率が増加している。式B Nb100-a-z250-aでは、一部のNbがBに置換されており、結晶構造から酸素が失われて中性の電荷が維持され、また、陰イオンに対する陽イオンの比率が増加しており、この式を有する物質の結晶構造には、4×4の八面体ブロックの間に四面体ホウ素陽イオンがいくつか含まれ得る。この変更は、活電極物質として使用するためのニオブ混合酸化物の有利な特性に寄与すると考えられる。例えば、陰イオンに対する陽イオンの比率を変更すると、結晶構造が安定すると考えられている。
【0026】
物質の結晶構造は、広く知られているように、通常はCu Kα線源から得られる、X線回折(XRD)のパターンの分析によって決定することができる。例えば、特定の物質から得られたXRDのパターンを既知のXRDのパターンと比較して、例えばICDD結晶学データベースなどの公開データベースを介して結晶構造を確認できる。Rietveld解析及びPawley解析は、物質の結晶構造、特に単位格子パラメータを決定するためにも使用できる。したがって、ニオブ混合酸化物は、X線回折によって決定されるように、4×4の八面体ブロックを含むWadsley-Roth結晶構造を有することができる。
【0027】
ここで、「対応する」という用語は、X線回折のパターンにおけるピークが、上記に挙げられている物質のX線回折のパターンにおける対応するピークから、0.5度以下だけシフトしてよい(好ましくは0.25度以下、より好ましくは0.1度以下だけシフトしてよい)ということを反映させることを意図している。
【0028】
ニオブ混合酸化物は、例えば単位格子パラメータa=25.7~31.4Å、b=3.4~4.2Å、c=15.8~19.3Å、α=90°、β=112.6~137.6°、γ=90°を有する単斜晶系結晶構造を採用することができる。単位格子パラメータは、X線回折によって決定することができる。
【0029】
は酸化状態が1の陽イオンである。MはLi、Na、K、及びそれらの混合物から選択できる。好ましくは、Mは、Li、Na、及びそれらの混合物から選択される。
【0030】
xはMの原子量であり、範囲は0.5≦x≦6である。xは整数、例えばx=1、2、3、4、5、または6であり得る。任意選択で、2≦x≦5、例えばx=2、3、4、または5である。好ましくは、x=4である。
【0031】
例えば、1+陽イオンの一部が揮発性によって失われると、通常は原子量が低いため、式にMが欠いていることがある。したがって、原子量xは変数0≦u≦5によって変更され得て、式中x>u、例えばx≧u+1である。任意選択で、0≦u≦3または0.01≦u≦2である。あるいは、u=0である。
【0032】
は平均酸化状態がyの陽イオンである。「平均酸化状態」という用語は、複数の陽イオンが存在する場合、酸化状態はM全体を指すことを意味する。例えば、Mの1/3がW6+で、Mの2/3がFe3+の場合、yは4(1/3×6(Wからの寄与)+2/3×3(Feからの寄与))になる。ただし、M、MII、MIII、MIV、及びMは単一の陽イオンからなり得、その場合、酸化状態はその陽イオンの酸化状態になる。
【0033】
は、Li、Na、K、Cu、Zn、Mg、Ca、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、V、Al、B、Ga、Sc、Y、In、La、Yb、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、Si、P、Ta、W、Mo、及びそれらの混合物、またはLi、Na、K、Cu、Zn、Mg、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、V、Al、B、Ga、Zr、Ti、Si、P、Ta、およびそれらの混合物、またはLi、Na、Cu、Zn、Mg、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、Al、B、Ga、Zr、Ti、およびそれらの混合物から選択することができる。任意選択で、MにはLiが含まれない。
【0034】
yの範囲は1≦y≦4であるが、任意選択で2≦y≦4である。yは整数、例えばy=1、2、3、または4であるが、好ましくは2、3、及び4である。yが整数の場合、任意選択でMを形成するすべての陽イオンは、同じ酸化状態を有する。
【0035】
yが1、2、3、または4の場合、MはLi、Na、Cu、Zn、Mg、Ca、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、Al、B、Ga、Sc、Y、In、La、Yb、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0036】
yが2、3、または4の場合、MはCu、Zn、Mg、Ca、Ni、Fe、Mn、Co、Mn、Cr、Al、B、Ga、Sc、Y、In、La、Yb、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、及びそれらの混合物から選択することができる。
【0037】
の原子量は、Mの量とMの酸化状態に依存し、x/(5-y)の関係がある。
【0038】
は、平均酸化状態が5の任意選択の陽イオンである。任意選択で、Mは、酸化状態が5の陽イオンであり、Mを形成するすべての陽イオンは同じ酸化状態5である。
【0039】
の原子量はzであり、範囲は0≦z≦10である。任意選択で、0≦z≦5である。zは、0より大きい値、例えば、0.01より大きい値になり得る。あるいは、z=0であり、この場合、Mは存在しない。
【0040】
は、Mn、Fe、Al、Ga、Y、In、La、Yb、Cu、Zn、Mg、Ni、Co、Ca、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、Si、V、P、Ta、W、Mo、Cr及びそれらの混合物、またはCe、Zr、Ti、Sn、Ge、Si、V、P、Ta、W、Mo、CrV、P、Ta、及びそれらの混合物、またはV、P、Ta、及びそれらの混合物から選択することができる。任意選択で、Mを形成するすべての陽イオンの酸化状態は5である。
【0041】
y=1の場合、ニオブ混合酸化物は、式M x-u x/4 Nb100-x/4-z250-u/2を有することができ、式中Nは酸化状態が1の陽イオンである。Nは、Li、Na、K及びそれらの混合物から選択することができ、好ましくはLi、Na及びそれらの混合物である。
【0042】
y=2の場合、ニオブ混合酸化物は、式M x-uII x/3 Nb100-x/3-z250-u/2を有することができ、式中MIIは平均酸化状態が2の陽イオンである。MIIは、Cu、Zn、Mg、Ni、Fe、Mn、Co、Ca、及びそれらの混合物、またはCu、Zn、Mg、Ni、及びそれらの混合物、またはZn、Mg、Ni、及びそれらの混合物から選択することができる。任意選択で、MIIを形成する陽イオンはすべて酸化状態が2である。
【0043】
y=3の場合、ニオブ混合酸化物は、式M x-uIII x/2 Nb100-x/2-z250-u/2を有することができ、式中MIIIは、平均酸化状態が3の陽イオンである。MIIIは、Mn、Cr、V、Fe、Al、B、Ga、Y、In、La、Yb、Ce、及びそれらの混合物、またはMn、Cr、Fe、Al、B、Ga、Y、及びそれらの混合物、またはCr、Al、Fe、及びそれらの混合物から選択することができる。任意選択で、MIIIを形成するすべての陽イオンの酸化状態は3である。
【0044】
y=4の場合、ニオブ混合酸化物は、式M x-uIV Nb100-x-z250-u/2を有することができ、式中MIVは、平均酸化状態が4の陽イオンである。MIVは、Zr、Ti、Mn、Ce、Sn、Ge、V、Si、及びそれらの混合物、またはZr、Ti、Sn、Ge、V、及びそれらの混合物、またはTi、V、及びそれらの混合物から選択することができる。任意選択で、MIVを形成するすべての陽イオンの酸化状態は4である。
【0045】
Nb100-a-z250-aのBの原子量はaであり、範囲は0<a≦8で、例えば0.01<a≦8である。任意選択で、1≦a≦5または1.5≦a≦3である。aは、整数であることもある。好ましくは、a=2である。陽イオンの最大10at.%は、P、K、Fe、Ti、Zr、Sn、Ge、Zn、Mg、Al、Ga、Y、W、Mo、Cr、V、Si、Ni、Mn、Ta、Li、Na、及びそれらの混合物、またはTi、W、Mo、Cr、Zn、Al、Fe、P、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの陽イオンによって部分的に置換され得る。
【0046】
上記のMNb100-b250-2.5b+bcにおいて、MはP、B、W、Mo、V、Ti、Si、及びそれらの混合物から選択される陽イオンである。Mは、P、W、B、Ti、及びそれらの混合物、またはP、W、及びそれらの混合物から選択することができる。好ましくは、MはP及び/またはWを含む。陽イオンの最大10at.%は、K、Fe、Zr、Sn、Ge、Zn、Mg、Al、Ga、Y、Cr、Ni、Mn、Ta、Li、Na及びそれらの混合物、またはCr、Zn、Al、Fe及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの陽イオンによって部分的に置換され得る。bは0.5<b≦6、または1≦b≦5.75、または1.5≦b≦5.5である。cはMの平均酸化状態の半分であり、1.5≦c≦3、または2≦c≦2.75、または2.5である。
【0047】
CuKα線源からのMNb100-b250-2.5b+bcのX線回折パターンでは、18.15~18.65°2θ間の最も強いピークの半値全幅は0.2より大きくなり得て、任意選択で0.4超、0.6超、及び/または0.9未満(例えば、0.2超から0.9未満)になることがある。図3はこのピークを有するサンプルのXRDパターンを示している。このピークを有するサンプルは、Wadsley-Roth結晶構造内の4×4の八面体ブロック間を接続するいくつかの四面体陽イオンの存在を包含していると考えられている。この結晶構造を有する物質は特に高い容量を有することが見出された。
【0048】
式の変数(例えば、M、M、x、u、M、y、M、z、a、b、c)の考察は、組み合わせて読むことを意図していることを理解されたい。例えば、ニオブ混合酸化物は、式M x-u (x/(5-y)) Nb100-(x/(5-y))-z250-u/2を有することができ、式中、
はLi、Na、及びそれらの混合物である。
は、Li、Na、Cu、Zn、Mg、Ca、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、Al、B、Ga、Sc、Y、In、La、Yb、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、及びそれらの混合物から選択される平均酸化状態がyの陽イオンであり、
は、V、P、Ta、及びそれらの混合物から選択される平均酸化状態5を有する陽イオンであり、
1≦y≦4、
2≦x≦6、
0≦z≦10、
0≦u≦3、
x≧u+1である。
【0049】
例えば、ニオブ混合酸化物は、式M (x/(5-y))Nb100-(x/(5-y))250を有することができ、式中、
はLi、Na、及びそれらの混合物であり、
は、Li、Na、Cu、Zn、Mg、Ca、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、Al、B、Ga、Sc、Y、In、La、Yb、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、及びそれらの混合物から選択される酸化状態がyの陽イオンであり、Mを形成する陽イオンはすべて同じ酸化状態を有し、
yは、1、2、3、または4であり、
x=3、4、または5である。
【0050】
、M、N、MII、MIII、MIV、及びMはまた、実施例においてそれ自体として使用される特定の元素のそれぞれから選択され得る。
【0051】
任意選択で、Li及びNb以外のさらなる陽イオンが存在する場合、ニオブ混合酸化物はLiのみを含有する。そのような物質の例はLiCrNb98250であり、式中CrはLiとNb以外の陽イオンである。さらに、ニオブ混合酸化物は、Liを含まなくてもよい。Liを含まないニオブ混合酸化物を含め、ニオブ混合酸化物は、リチウムイオン電池の活電極物質として作用する場合、その場でLiを可逆的にインターカレートし得ることが理解されるであろう。
【0052】
ニオブ混合酸化物の陽イオンは、異なる酸化状態のさらなる陽イオンによって部分的に置換されてもよく、例えば、最大20at.%、10at.%、または5at.%の陽イオンが置換され得る。異なる酸化状態の陽イオンによる置換で、電荷の不均衡な物質が形成される。電荷の不均衡は、酸素の不足(より低い酸化状態の陽イオンによる置換の場合)または過剰(より高い酸化状態の陽イオンによる置換の場合)によって補われ得る。代わりに、または加えて、電荷の不均衡は陽イオンの酸化または還元によって補われる場合がある。
【0053】
酸素の陰イオンは、F、Cl、Br、S、Se、N、及びそれらの混合物といった別の電気陰性の陰イオンによって部分的に置換され得る。任意選択で、酸素の陰イオンの最大10at.%または5at%を別の電気陰性の陰イオンで部分的に置換することもできる。
【0054】
ニオブ混合酸化物は粒状であることが好ましい。ニオブ混合酸化物は、0.1~100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD50の粒径を有し得る。これらの粒度は、電極への加工及び製造が容易であるため有利である。さらに、これらの粒度により、ナノサイズの粒子をもたらすための複雑な方法、及び/または高額な方法を使用する必要性がなくなる。ナノサイズの粒子(例えば、100nm以下のD50の粒径を有する粒子)は、通常、合成がより複雑であり、さらに安全性を考慮する必要がある。
【0055】
ニオブ混合酸化物は、少なくとも0.05μm、または少なくとも0.1μm、または少なくとも0.5μm、または少なくとも1μmのD10の粒径を有し得る。D10の粒径をこれらの範囲に維持することにより、表面積の減少によるLiイオンセルの寄生反応の可能性が低減され、より少ない電極スラリーの結合剤で、加工がより容易になる。
【0056】
ニオブ混合酸化物は、200μm以下、100μm以下、50μm以下、または20μm以下のD90の粒径を有し得る。D90の粒径をこれらの範囲に維持することによって、大きな粒度での粒度分布の割合が最小化され、物質を均質な電極に製造することがより容易になる。
【0057】
「粒径」という用語は、等しい球の直径(esd)、すなわち所与の粒子と同じ体積を有する球の直径を指し、粒子の体積は、いずれかの粒子内細孔の体積を含むと理解される。「D」及び「Dの粒径」という用語は、それ未満で粒子集団のn体積%が見出される直径を指す。すなわち、「D50」及び「D50の粒径」という用語は、それ未満で粒子集団の50体積%が見出される、体積ベースの中央値の粒径を指す。物質が二次粒子に凝集した一次微結晶を含む場合、粒径は二次粒子の直径を指すことが理解されるであろう。粒径は、レーザー回折によって決定できる。粒径はISO 13320:2009に準拠して測定可能であり、例えば、ミー理論を使用する。
【0058】
ニオブ混合酸化物は、0.1~100m/g、または0.2~50m/g、または0.5~20m/gの範囲のBET表面積を有することができる。一般に、ニオブ混合酸化物と電解質との反応を最小限に抑えるために、例えば、物質を含む電極の最初の充放電サイクル中の固体電解質相間(SEI)層の形成を最小限に抑えるために、低いBET表面積が好ましい。しかし、BET表面積が小さすぎると、ニオブ混合酸化物の大部分が周囲の電解質中の金属イオンに接近できないため、許容できないほど低い充電レート及び容量が生じる。
【0059】
「BET表面積」という用語は、Brunauer-Emmett-Tellerの理論を使用して、固体表面でのガス分子の物理的吸着の測定から計算された、単位質量あたりの表面積を指す。例えば、BET表面積は、ISO 9277:2010に準拠して求めることができる。
【0060】
ニオブ混合酸化物を炭素でコーティングして、例えば表面の電気伝導性を向上させる、及び/または電解質との反応を防止することができる。
【0061】
ニオブ混合酸化物は保護コーティングを有していてもよく、任意選択で、保護コーティングは、ニオブ酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、有機または無機フッ化物、有機または無機リン酸塩、チタン酸化物、それらのリチウム化バージョン、及びそれらの混合物を含む。
【0062】
第1の態様において、ニオブ混合酸化物は、好ましくはリチウムイオン電池のアノードである電極の活電極物質を形成する。しかしながら、本明細書で定義されるニオブ混合酸化物はいずれも、電極に組み込むのに適した活電極物質として提供することができる。例えば、本明細書に開示されるニオブ混合酸化物は、電極の一部としてではなく、例えば電極製造業者に販売するための原材料として提供される場合がある。
【0063】
電極は、典型的には、集電体と電気的に接触する電極組成物の形態であり、それにおいて電極組成物はニオブ混合酸化物を含む。集電体は、通常、銅箔またはアルミ箔などの金属箔である。
【0064】
任意選択的に、ニオブ混合酸化物は、電極の全活電極物質の少なくとも5重量%、10重量%、または50重量%を形成する。ニオブ混合酸化物は、電極の唯一の活電極物質を形成し得る。
【0065】
電極組成物は、結合剤、導電性添加剤、異なる活電極物質(例えば、本明細書で定義されるさらなるニオブ混合酸化物)及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの他の成分をさらに含み得る。例えば、1つの電極組成物は、電極組成物の全乾燥重量に基づいて、約92重量%のニオブ混合酸化物、約5重量%の導電性添加剤(例えば、カーボンブラック)、及び約3重量%の結合剤(例えば、ポリ(二フッ化ビニル))を含む。
【0066】
適切な結合剤の例としては、ポリフッ化ビニリデン及びその共重合体(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びその共重合体、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(メチル)メタクリレートまたはポリ(ブチル)メタクリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルホルマール、ポリエーテルアミド、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリイタコン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸(PAA)及びそのアルカリ金属塩、変性ポリアクリル酸(mPAA)及びそのアルカリ金属塩、セルロース系ポリマー、カルボキシメチルセルロース(CMC)、変性カルボキシメチルセルロース(mCMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩及びそのアルカリ金属塩、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)、NBRの水素化形態(HNBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、及びポリイミドが挙げられる。結合剤は、電極組成物の全乾燥重量に基づいて、電極組成物に0~30重量%、または0.1~10重量%、または0.1~5重量%存在することができる。
【0067】
導電性添加剤は、好ましくは、活電極物質間、及び活電極物質と集電体との間の電気伝導性を改善するために含まれる非活物質である。導電性添加剤は、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、金属繊維、金属粉末、及び導電性金属酸化物から適宜選択することができる。好ましい導電性添加剤としては、カーボンブラック及びカーボンナノチューブが挙げられる。導電性添加剤は、電極組成物の全乾燥重量に基づいて、電極組成物に0~20重量%、0.1~10重量%、または0.1~5重量%存在することができる。
【0068】
活電極物質は、電極組成物の全乾燥重量に基づいて、電極組成物に100~50重量%、99.8~80重量%、または99.8~90重量%で存在することができる。活電極物質が電極組成物の100重量%存在する場合、それは固体の電極となり得る。
【0069】
ニオブ混合酸化物に加えて異なる活電極物質が存在する場合、それはリチウムチタン酸化物、チタンニオブ酸化物、異なるニオブ混合酸化物、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、それらのドープバージョン、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0070】
ニオブ混合酸化物は、リチウムチタン酸化物と組み合わせて活電極物質を形成することができる。
【0071】
リチウムチタン酸化物は、好ましくは、例えばX線回折によって決定されるように、スピネルまたはラムスデライト結晶構造を有する。スピネル結晶構造を有するリチウムチタン酸化物の例は、LiTi12である。ラムスデライト結晶構造を有するリチウムチタン酸化物の例は、LiTiである。これらの物質は、活電極物質として使用するための優れた特性を有することが示されている。したがって、リチウムチタン酸化物は、LiTi12及び/またはLiTiに対応するX線回折によって決定される結晶構造を有し得る。リチウムチタン酸化物は、LiTi12、LiTi、及びそれらの混合物から選択することができる。リチウムチタン酸化物には追加の陽イオンまたは陰イオンがドープされていてもよい。リチウムチタン酸化物は、酸素欠乏であり得る。リチウムチタン酸化物はコーティングを含むことができ、任意選択に、コーティングは、炭素、ポリマー、金属、金属酸化物、半金属、リン酸塩、及びフッ化物から選択される。リチウムチタン酸化物は、従来のセラミック技術、例えば固相合成またはゾルゲル合成によって合成することができる。あるいは、リチウムチタン酸化物は商業的供給業者から得ることができる。
【0072】
リチウムチタン酸化物は粒状であることが好ましい。リチウムチタン酸化物は、0.1~50μm、または0.25~20μm、または0.5~15μmの範囲のD50の粒径を有し得る。リチウムチタン酸化物は、少なくとも0.01μm、または少なくとも0.1μm、または少なくとも0.5μmのD10の粒径を有し得る。リチウムチタン酸化物は、100μm以下、50μm以下、または25μm以下のD90の粒径を有し得る。D90の粒径をこの範囲に維持することにより、ニオブ混合酸化物粒子との混合物におけるリチウムチタン酸化物粒子の充填が改善される。
【0073】
リチウムチタン酸化物は、通常、物質の電子伝導率が低いため、小さな粒度で電池のアノードに使用される。対照的に、本明細書で定義されているニオブ混合酸化物は、典型的にはリチウムチタン酸化物よりも高いリチウムイオン拡散係数を有するので、より大きい粒度で使用することができる。有利なことに、組成物において、リチウムチタン酸化物は、ニオブ混合酸化物よりも小さい粒度を有し得、例えばニオブ混合酸化物のD50の粒径に対するリチウムチタン酸化物のD50の粒径の比率が、0.01:1~0.9:1、または0.1:1~0.7:1の範囲であるようにする。このようにして、より小さいリチウムチタン酸化物粒子は、より大きいニオブ混合酸化物粒子間の空隙に収容され得、組成物の充填効率を増加させる。
【0074】
リチウムチタン酸化物は、0.1~100m/g、または1~50m/g、または3~30m/gの範囲のBET表面積を有することができる。
【0075】
ニオブ混合酸化物に対するリチウムチタン酸化物の質量比は、0.5:99.5~99.5:0.5の範囲であってよく、好ましくは2:98~98:2の範囲である。1つの実施態様では、活電極物質は、ニオブ混合酸化物よりも高い比率のリチウムチタン酸化物を含み、例えば、少なくとも2:1、少なくとも5:1、または少なくとも8:1の質量比である。有利なことに、これにより、製造技術を大幅に変更する必要なく、ニオブ混合酸化物をリチウムチタン酸化物に基づく既存の電極に徐々に導入することができ、既存の電極の特性を改善する効率的な方法が得られる。別の実施態様では、活電極物質は、リチウムチタン酸化物よりもニオブ混合酸化物の割合が高く、例えばニオブ混合酸化物に対するリチウムチタン酸化物の質量比が、1:2未満、または1:5未満、または1:8未満である。有利なことに、このことは、ニオブ混合酸化物の一部をリチウムチタン酸化物で置き換えることにより、活電極物質のコストを削減することを可能にする。
【0076】
ニオブ混合酸化物はニオブ酸化物と組み合わせて活電極物質を形成することができる。ニオブ酸化物は、Nb1229、NbO、NbO及びNbから選択することができる。好ましくは、ニオブ酸化物はNbである。
【0077】
ニオブ酸化物は、例えば、ニオブ酸化物の結晶構造がNb及びOからなる酸化物の結晶構造、例えば、Nb1229、NbO、NbO、及びNbに対応するという条件で、追加の陽イオンまたは陰イオンでドープされてもよい。ニオブ酸化物は、酸素欠乏であり得る。ニオブ酸化物はコーティングを含んでもよく、任意選択に、コーティングは、炭素、ポリマー、金属、金属酸化物、半金属、リン酸塩、及びフッ化物から選択される。
【0078】
ニオブ酸化物は、X線回折によって決定されるように、Nb1229、NbO、NbO、またはNbの結晶構造を有することができる。例えば、ニオブ酸化物は、斜方晶Nbの結晶構造または単斜晶Nbの結晶構造を有することができる。好ましくは、ニオブ酸化物は単斜晶Nbの結晶構造を有し、最も好ましくはH-Nbの結晶構造を有する。Nbの結晶構造に関するさらなる情報は、Griffith et al., J. Am. Chem. Soc.2016, 138, 28, 8888-8899で見出すことができる。ニオブ酸化物は、従来のセラミック技術、例えば固相合成またはゾルゲル合成によって合成することができる。あるいは、ニオブ酸化物は商業的供給業者から入手することができる。
【0079】
ニオブ酸化物は粒状であることが好ましい。ニオブ酸化物は、0.1~100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD50の粒径を有し得る。ニオブ酸化物は、少なくとも0.05μm、または少なくとも0.5μm、または少なくとも1μmのD10の粒径を有し得る。ニオブ酸化物は、100μm以下、50μm以下、または25μm以下のD90の粒径を有し得る。D90の粒径をこの範囲に維持することにより、ニオブ混合酸化物粒子との混合物におけるニオブ酸化物粒子の充填が改善される。
【0080】
ニオブ酸化物は、0.1~100m/g、または1~50m/g、または1~20m/gの範囲のBET表面積を有することができる。
【0081】
ニオブ混合酸化物に対するニオブ酸化物の質量比は、0.5:99.5~99.5:0.5の範囲、または2:98~98:2の範囲、または好ましくは15:85~35:55の範囲であってもよい。
【0082】
本発明はまた、本明細書で定義されるニオブ混合酸化物の金属イオン電池のアノードでの使用を提供し、任意選択で、金属イオン電池はリチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池、好ましくはリチウムイオン電池である。リチウムイオン電池には、液体ベースの電池、ポリマーベースの電池、半固体ベースの電池、及び全固体ベースの電池が含まれる。
【0083】
本発明のさらなる実施態様は、アノード、カソード、及びアノードとカソードとの間に配置された電解質を含む電気化学デバイスであり、アノードは、本発明の第1の態様による活電極物質を含み、任意選択で、電気化学デバイスは、リチウムイオン電池またはナトリウムイオン電池などの金属イオン電池である。例えば、アノードは、本発明の第1の態様に従った電極であってもよい。好ましくは、電気化学デバイスは、20mA/gで180mAh/gより大きい可逆的アノード活物質比容量を有するリチウムイオン電池であり、20mA/gで初期のセル容量の70%超を保持しながら、電池は、200mA/g以上、または1000mA/g以上、または2000mA/g以上、または4000mA/g以上のアノード活物質に対する電流密度で充電及び放電することができる。本発明の第1の態様の活電極物質を使用することにより、この特性の組み合わせを有するリチウムイオン電池の製造が可能になり得、高い充電電流密度と放電電流密度が所望されている用途での使用に特に適したリチウムイオン電池を表すことが見出された。特に、実施例は、本発明の第1の態様による活電極物質が、高いCレートで優れた容量維持率を有することを示した。
【0084】
電気化学デバイスは、好ましくはN/P比が1を超えており、N/Pは以下のように定義される。
【数1】
式中、
面積負荷(mgcm-2)は、集電体を考慮しない電極組成物の乾燥負荷であり、
活性分率(重量%)は、活物質である乾燥電極組成物の割合であり、
第1のリチウム化/脱リチウム化容量(mAhg-1)は、Li金属対電極を備えた同等の半電池で測定された、アノードの第1のリチウム化サイクルまたはカソードの第1の脱リチウム化サイクルにおける、25℃でのC/10での比容量である。
【0085】
第1のリチウム化/脱リチウム化容量は、同等の半電池で測定される。同等の半電池は、完全な電池と同じ面積負荷及び活性分率で堆積された同じ電極組成を利用するものと理解できる。アノードについては、25℃での第1の定電流C/10リチウム化(放電、負電流)容量(対Li/Li+)を測定する。カソードについては、25℃での第1の定電流C/10脱リチウム化(充電、正電流)容量(対Li/Li+)を測定する。
【0086】
N/Pは1より大きい、例えば、≧1.01であることが好ましい。N/Pは、>1~2、または1.01~1.5という範囲、または最も好ましくは1.05~1.3の範囲であってもよい。
【0087】
カソードは、LiNi1-xクラスのニッケルベースの層状酸化物から選択できる活性カソード物質を含み、式中M=Co、Mn、Alであり、例えば、NMC(リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物)、NCA(リチウムコバルトアルミニウム酸化物)、及びLCO(リチウムコバルト酸化物)、及びLNMO(リチウムニッケルマンガン酸化物)(例えば、LiNi0.5Mn1.5)がある。例えば、活性カソード物質はリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物であってもよい。活性カソード物質は商業的供給業者から広く入手可能である。活性カソード物質には、追加の陽イオン及び/または陰イオンがドープされる場合がある。
【0088】
活電極物質の選択は、第1のリチウム化/脱リチウム化容量の決定などの適切な電圧の範囲に影響を与える可能性がある。例えば、適切な電圧の範囲は、LNMO:5.2~3V、上限カットオフ5.2V、NCA、NMC、及びLCO:4.5~2.7V、上限カットオフ4.5V、ニオブ混合酸化物:3~0V、下限カットオフ0Vであり得る。さらに狭い範囲としては、LNMO:5~3V、上限カットオフ5V、NCA、NMC、及びLCO:4.3~2.7V、上限カットオフ4.3V、ニオブ混合酸化物:3V~1.0V、下限カットオフ1.0Vがあり得る。
【0089】
適切な電圧の範囲は実験的に決定できる。例えば、電圧プロファイルは、電子及びイオンの除去または挿入に関連するアノード及びカソード物質のエネルギー状態の変化と相関する。セルのカットオフ電圧は、一方または両方の電極のエネルギー状態が臨界レベルを超えて上昇し、結晶構造がセルの能力に著しく有害なレートでより低いエネルギー構造に崩壊させることに対応する、電圧プロファイルの特定の変曲点の前に収まるように選択することができる。これが起こる絶対電圧は、両方の電極の電極電位の関数であるが、共通の参照電極を使用して計算することができ、信頼性の高い標準的な電気化学的挙動を有するよく確立された物質のファミリーについては、実験的に決定する必要がない。
【0090】
カソード活物質は、好ましくは粒子状であり、例えば0.1~100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD50の粒径を有する。
【0091】
電解質には、金属イオン電池の動作、好ましくはリチウムイオン電池の動作に適した任意の物質を含めることができる。例えば、電解質は非水溶液(例えば、有機電解液)であってもよい。電解質には、1つ以上の非水溶媒と、溶媒に少なくとも部分的に溶解した塩とが含まれる場合がある。例えば、溶媒には、例えばエチレンカーボネート(EC)及び/または他のカーボネート系溶媒、またはブチレート、またはアセテート、またはそれらの混合物などの有機溶媒が含まれ得る。溶媒には、エチレンカーボネートと他のカーボネート系溶媒またはブチレートまたはアセテートとの重量比1:1の混合物などの非プロトン性溶媒混合物に溶解した1MのLiPFが含まれ得る。
【0092】
本発明での使用に適した塩としては、LiPF、LiSbF、LiBF、LiTFSI、LiFSI、LiAlCl、LiAsF、LiClO、LiGaCl、LiC(SOCF、LiN(CFSO、Li(CFSO)、LiB(C、LiBOB(リチウムビス(オキサレート)ホウ酸塩)、及びLiDFOB(ジフルオロ(オキサレート)ホウ酸リチウム)が挙げられる。電解液に使用するのに適した低粘度溶媒(例えば、有機溶媒)は、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジオキソラン(DOL)、エチルアセテート(EA)、プロピレンアセテート(PA)、ブチルアセテート(BA)、メチルブチレート(MB)、エチルブチレート(EB)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、メチルアセテート(MA)、ジグライム(DGL)、トリグライム、テトラグライム、環状カーボネート、環状エステル、環状アミド、プロピレンカーボネート(PC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMS)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ガンマブチロラクトン(GBL)、及びN-メチルピロリジノン(NMP)、ならびにそれらの様々な混合物または組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。
【0093】
ニオブ混合酸化物は、従来のセラミック技術によって合成することができる。例えば、それは、固体合成またはゾルゲル合成のうちの1つ以上によって作製され得る。ニオブ混合酸化物は、水熱合成またはマイクロ波水熱合成、ソルボサーマル合成またはマイクロ波ソルボサーマル合成、共沈合成、スパークまたはマイクロ波プラズマ合成、燃焼合成、エレクトロスピニング、スプレー熱分解、化学蒸着、原子層堆積、及びメカニカルアロイングなど、一般的に使用される代替技術の1つまたは複数によってさらに合成され得る。
【0094】
ニオブ混合酸化物は、1つ以上の前駆体物質を得るステップ、前駆体物質を混合して、前駆体物質混合物を形成するステップ、及び前駆体物質混合物を400℃~1350℃または800℃~1250℃の温度範囲で熱処理して、それによりニオブ混合酸化物を得るステップを含む方法によって得ることができる。
【0095】
酸素以外の追加の電気陰性陰イオンを含むニオブ混合酸化物を得るために、方法は、ニオブ混合酸化物を、追加の電気陰性陰イオンを含む前駆体と混合して、さらなる前駆体物質混合物を得るステップと、任意選択に還元条件下で、300~1200℃または800~1100℃の温度範囲でさらなる前駆体物質混合物を熱処理し、それによって追加の電気陰性陰イオンを含むニオブ混合酸化物を得るステップとをさらに含み得る。
【0096】
例えば、Nを含むニオブ混合酸化物を得るために、方法は、ニオブ混合酸化物を、Nを含む前駆体(例えば、メラミンまたは尿素)と混合して、さらなる前駆体物質混合物を得るステップと、さらなる前駆体物質混合物を、還元条件下(例えば、Nの下で)で300~1200℃の温度範囲で熱処理し、それにより、Nを含むニオブ混合酸化物を得るステップをさらに含み得る。
【0097】
例えば、Fを含むニオブ混合酸化物を得るために、方法は、ニオブ混合酸化物を、Fを含む前駆体(例えば、ポリフッ化ビニリデン、またはNHF)と混合して、さらなる前駆体物質混合物を得るステップと、さらなる前駆体物質混合物を、酸化条件下(例えば、空気中)で300~1200℃の温度範囲で熱処理し、それにより、Fを含むニオブ混合酸化物を得るステップとをさらに含み得る。
【0098】
方法は、ニオブ混合酸化物を還元条件下で400~1350℃または800~1250℃の温度範囲で熱処理し、それによってニオブ混合酸化物に酸素空孔を誘発するさらなるステップを含んでもよい。
【0099】
ニオブ混合酸化物を作るための前駆体物質は、1つ以上の金属酸化物、金属水酸化物、金属塩またはアンモニウム塩を含むことができる。例えば、前駆体物質は、異なる酸化状態及び/または異なる結晶構造の1つ以上の金属酸化物または金属塩を含むことができる。適切な前駆体物質の例は、Nb、Nb(OH)、ニオブ酸、NbO、シュウ酸ニオブ酸アンモニウム、NHPO、(NHPO、(NHPO、P、HPO、Ta、WO、ZrO、TiO、MoO、V、ZrO、CuO、ZnO、Al、KO、KOH、CaO、GeO、Ga、SnO、CoO、Co、Fe、Fe、MnO、MnO、NiO、Ni、HBO、ZnO、LiCO、NaCO、HBO、NiO、Mg(CO(OH).5HO、及び及びMgOを含むが、これらに限定されない。前駆体物質は、金属酸化物を含まなくてもよく、または酸化物以外のイオン源を含んでもよい。例えば、前駆体物質は、金属塩(例えばNO 、SO )または他の化合物(例えばシュウ酸塩、炭酸塩)を含み得る。酸素の陰イオンを他の電気陰性陰イオンで置換する場合、前駆体には、1つ以上の有機化合物、ポリマー、無機塩、有機塩、ガス、またはアンモニウム塩が含まれ得、例としては、メラミン、NHHCO、NH、NHPVDF、PTFE、NHCl、NHBr、NHI、Br、Cl、I、アンモニウムオキシクロリドアミド、及びヘキサメチレンテトラミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
特定の酸化状態の陽イオンを含むニオブ混合酸化物を製造することが望まれる場合、その酸化状態の陽イオンを含む前駆体が選択され得る。例えば、Mn2+を含むニオブ混合酸化物を製造する場合、MnOを前駆体として使用することができる。Mn4+を含むニオブ混合酸化物を製造する場合、MnOを前駆体として使用することができる。
【0101】
前駆体物質の一部または全部は、粒状物質であってもよい。それらが粒状物質である場合、好ましくは、それらは直径20μm未満、例えば10nm~20μmのD50の粒径を有する。このような粒径を有する粒状物質を得ることは、前駆体物質のより密接な混合を促進するのに役立ち、それによって、熱処理ステップの間のより効率的な固相反応をもたらすことができる。しかし、前駆体物質混合物を形成するために当該前駆体物質を混合するステップの間に、1つ以上の前駆体物質の粒度を機械的に減少させることができるので、前駆体物質が20μm未満の初期の粒度を有することは必須でない。
【0102】
前駆体物質を混合して前駆体物質混合物及び/またはさらなる前駆体物質混合物を形成するステップは、乾式または湿式/遊星溶媒和ボールミリング、ローリングボールミリング、高エネルギーボールミリング、ビーズミリング、ピンミリング、分級ステップ、高せん断ミリング、エアジェットミリング、スチームジェットミリング、遊星型ミキシング、粉の投入、及び/または衝撃ミリングから選択されるプロセスによって実行され得る。混合/ミリングに用いる力は、前駆体物質の形態に依存し得る。例えば、前駆体物質の一部またはすべてが、より大きな粒度(例えば、20μmを超えるD50の粒径)を有する場合、ミリング力は、前駆体物質混合物の粒径が直径20μm以下に減少するように、前駆体物質の粒径を減少させるように選択され得る。前駆体混合物の粒子の粒径が20μm以下であると、熱処理ステップの間、前駆体物質混合物の前駆体物質の固相反応を、より効率的に促進することができる。固相合成は、前駆体粉末から高圧(10MPa超)で形成されたペレットで行うこともできる。
【0103】
前駆体物質混合物及び/またはさらなる前駆体物質混合物を熱処理するステップは、1時間~24時間、より好ましくは3時間~18時間の時間で行うことができる。例えば、熱処理ステップを、1時間以上、2時間以上、3時間以上、6時間以上、または12時間以上行ってもよい。熱処理ステップは、24時間以下、18時間以下、16時間以下、または12時間以下行われ得る。
【0104】
前駆体物質混合物を熱処理するステップは、気体雰囲気、好ましくは空気中で行うことができる。好適な気体雰囲気は、空気、N、Ar、He、CO、CO、O、H、NH及びそれらの混合物を含む。気体雰囲気は、還元性雰囲気であってもよい。酸素欠損物質を作製することが望まれる場合、好ましくは、前駆体物質混合物を熱処理するステップは、不活性雰囲気または還元性雰囲気で行われる。
【0105】
さらなる前駆体物質混合物を熱処理するステップは、還元条件下で実施され得る。還元条件には、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスの下、または不活性ガスと水素の混合気の下、または真空下が含まれる。好ましくは、さらなる前駆体物質混合物を熱処理するステップは、不活性ガスの下で加熱することを含む。
【0106】
ニオブ混合酸化物及び/または追加の電気陰性陰イオンを含むニオブ混合酸化物を任意選択で還元条件下で熱処理するさらなるステップは、0.5時間~24時間、より好ましくは2時間~18時間の時間にわたって行うことができる。例えば、熱処理ステップを、0.5時間以上、1時間以上、3時間以上、6時間以上、または12時間以上行ってもよい。さらなるステップの熱処理は、24時間以下、18時間以下、16時間以下、または12時間以下行われ得る。還元条件には、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスの下、または不活性ガスと水素の混合気の下、または真空下が含まれる。好ましくは、還元条件下での加熱は、不活性ガス下での加熱を含む。
【0107】
いくつかの方法では、2ステップの熱処理を行うことが有益であり得る。例えば、前駆体物質混合物及び/またはさらなる前駆体物質混合物を第1の温度で第1の時間加熱し、続いて第2の温度で第2の時間加熱することができる。好ましくは、第2の温度は第1の温度よりも高い。このような2ステップの熱処理を行うことにより、固相反応を補助して所望の結晶構造を形成することができる。これは、連続して実施することができ、または中間の再粉砕ステップで実施することができる。
【0108】
この方法は、ニオブ混合酸化物の形成後に1つ以上の後処理のステップを含むことができる。場合によっては、この方法は、「アニーリング」と呼ばれることもあるニオブ混合酸化物を熱処理する後処理ステップを含むことができる。この後処理の熱処理ステップは、ニオブ混合酸化物を形成するために前駆体物質混合物を熱処理するステップとは異なるガス雰囲気で実行され得る。後処理の熱処理ステップは、不活性ガス雰囲気または還元ガス雰囲気で実施することができる。このような後処理の熱処理ステップは、500℃を超える温度、例えば約900℃で行うことができる。後処理の熱処理ステップを含むことは、例えば、酸素欠乏を誘発するなど、ニオブ混合酸化物に欠乏または欠陥を形成するのに、または形成されたニオブ混合酸化物で陰イオン交換、例えばO陰イオンのN交換を実行するのに、有益であり得る。
【0109】
この方法は、ニオブ混合酸化物をミリング及び/または分級して(例えば、衝撃ミリング、ジェットミリング、スチームジェットミリング、高エネルギーミリング、高せん断ミリング、ピンミリング、空気分級、ホイール分級、ふるい分け、サイクロン分離、ビーズミリング)、上記の粒度パラメータのいずれかを有する物質を得るステップを含むことができる。
【0110】
本発明は、本明細書において定義されたニオブ混合酸化物を得ることと、ニオブ混合酸化物を集電体上に堆積させて電極を形成することとを含む、電極の製造方法を提供する。ニオブ混合酸化物を得ることは、本明細書で提供される方法によってニオブ混合酸化物を合成することを含み得る。堆積ステップは、混合ニオブ酸化物と溶媒のスラリーを形成することを含み得る。スラリーは、結合剤、導電性添加剤、異なる活電極物質、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの他の成分を含むことができる。スラリーを集電体上に堆積させ、溶媒を除去することにより、集電体に電極層を形成することができる。必要に応じて、いずれかの結合剤を硬化させるための熱処理、及び/または電極層のカレンダー処理などのさらなるステップを実行することもできる。例えば、溶媒は、例えば、30~100℃の温度で乾燥することによって除去することができる。電極は、密度2~3.5または2.6~2.9gcm-3にカレンダー加工され得る。電極層の厚さは、5μm~2mm、好ましくは5μm~1mm、好ましくは5μm~500μm、好ましくは5μm~200μm、好ましくは5μm~100μm、好ましくは5μm~50μmの範囲を有し得る。
【0111】
あるいは、スラリーは、例えば、適切な鋳造テンプレートの上にスラリーを鋳造し、溶媒を除去し、次いで鋳造テンプレートを除去することによって、ニオブ混合酸化物を含む自立型フィルムまたはマットに形成され得る。得られたフィルムまたはマットは凝集性があり自立した塊の形をしており、その後、公知の方法によって集電体に結合できる。
【実施例
【0112】
ニオブ混合酸化物は、固相の経路によって合成された。適切な量のNbと前駆体物質を、例えば乳棒と乳鉢または衝撃式ミルを使用して混合及び粉砕し、均質な前駆体混合物を形成した。得られた混合物をアルミナるつぼで5~10°/分という加熱レートにより6~12時間、高温(>800℃)で熱処理した。このプロセスは、X線回折パターン内で目的の単一相(4×4のWadsley-Rothブロック構造)が認められるまで繰り返された。具体的には、化学量論量の前駆体物質(Nb、LiCO、NaCO、HBO、TiO、Al、Fe、Cr、NiO、及びMg(CO(OH).5HO)を、乳棒と乳鉢で15分間手作業で(約5g)、または衝撃式ミルを使用して20,000rpmで4分間(約50g)混合及び粉砕した。得られた粉末をアルミナるつぼに入れ、マッフル炉内で空気の中、T=875~1150℃、任意選択で900~1150℃で6~12時間熱処理した。すべての加熱ステップで5℃/分の加熱レートが使用された。相の純度を向上させるために、追加のミリング及び熱処理ステップTが任意選択で実行された。これに続いて、脱凝集のために乳棒と乳鉢または衝撃式ミルを使用して最終的なミリングステップが利用された。組成と合成パラメータは表1にまとめられている。
【表1-1】
【表1-2】
【0113】
物質の特性評価
サンプルの相の純度は、Rigaku Miniflex粉末X線回折計を使用して2θの範囲(10~70°)で1°/分というスキャンのレートで、または、Bruker D8粉末回折計を使用して2θの範囲、10~50または10~60°(ステップサイズ0.0189°、ステップあたりの時間0.42秒)で分析された。
【0114】
図1及び図3は、選択されたサンプルの測定されたXRD回折パターンを示す。図2は、達成された高度な結晶構造を示すTEM顕微鏡写真を示す。表2はN-Nbの構造に基づくPawley改良版から導出された単位格子パラメータを提示している。
【表2】
【0115】
電気化学的特性評価
Liイオン電池の充電レートは、通常「Cレート」で表される。1C充電レートとは、セルが1時間で完全に充電されるような充電電流を意味し、10C充電とは、電池が1時間の1/10(6分)で完全に充電されることを意味する。ここでのCレートは、2回目の脱リチウム化サイクルで適用される電圧制限内でアノードに見られる可逆容量から定義される、つまり、1.1~3.0Vの電圧制限内で1.0mAh cm-2の容量を示すアノードの場合、1Cレートは、1.0mA cm-2の印加された電流密度に相当する。本明細書に記載の典型的な物質では、これは約185mA/g活物質に相当する。
【0116】
分析のため、ハーフコインセル(CR2032サイズ)で電気化学試験を行った。ハーフコイン試験では、活物質を電極でLi金属電極に対して試験して、活物質の基本的能力を評価する。以下の例では、試験しようとしている活物質組成物をN-メチルピロリドン(NMP)、導電性添加剤として作用するカーボンブラック(Super P)、及びポリ(ビニルジフルオライド)(PVDF)結合剤と組み合わせ、実験室規模の遠心式遊星型ミキサでスラリー状に混合した。スラリーの非NMP組成は、92重量%の活物質、5重量%の導電性添加剤、3重量%の結合剤であった。このスラリーをドクターブレードコーティングによりAl箔集電体に所望の塗布量50~100g mまでコーティングし、加熱により乾燥させた。次に、電極を80℃で2.6~2.9g cm-3の密度にカレンダー加工して、35~47%という目標の空隙率を達成した。電極を所望の大きさに打ち抜き、スチール製コインセルケース内でセパレータ(Celgard社製多孔質PP/PE)、Li金属、及び電解質(EC/DEC中に1.3MのLiPF)と組み合わせ、圧力下で密封した。その後、25℃の低電流レートにて(C/10)、サイクルを1.1~3.0Vの間でリチウム化と脱リチウム化の2回のフルサイクルで実行した。その後、電流密度を上げてセルの能力を試験した。これらの試験の間、セルは25℃で遅いリチウム化(C/5)と、その後、脱リチウム化のレートを上げる(例えば、1C、5C、10C)非対称サイクルにかけられ、容量を維持した。
【0117】
データは、同じ電極コーティングから調製された3~5のセルから平均化されており、誤差は標準偏差から示されている。したがって、データは、従来の物質と比較して、本発明による物質によって改善が達成されたことを示す揺るぎない研究であることを表す。これらのデータは表3及び表4に示されている。サンプル1と18の電圧対充電/放電状態曲線は図4に示されている。
【0118】
また、CuとAl両方の集電体箔に均質で平滑なコーティングを行い、目に見える欠陥または凝集体のないコーティングを、遠心式遊星型ミキサを用いて、活物質最大94重量%、導電性添加剤4重量%、結合剤2重量%の組成で、それらのサンプルに対して上記のように調製し得る。これらはPVDF(つまりNMPベース)及びCMC:SBRベース(すなわち水性)の結合剤系両方で調製され得る。コーティングは、35~40%の空隙率に、1.0から5.0mAh cm-2の負荷でPVDFの場合は80℃、CMC:SBRの場合は50℃で、カレンダー加工できる。これは、活物質含有量が高く、高エネルギーと高出力の両方の用途でこれらの物質の実行可能性を実証するために重要である。
【表3】
【表4】
【0119】
考察
本発明によるニオブ混合酸化物は、例えば5C及び10Cの高い脱リチウム化のレートで顕著な特性を示すことがわかった。特に、場合によっては、低レートでの比容量が高レートでも大部分維持され、例えば10Cでの容量が0.5Cでの容量の97.7%以上となり、非常に高い容量維持率となっている。これらは、高速充電/放電用に設計された高出力電池で使用する際の本発明のニオブ混合酸化物の利点を実証する上で重要な結果である。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-06-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活電極物質としてニオブ混合酸化物を含む電極であって、前記電極は、集電体と電気的に接触する電極組成物の形態であり、前記電極組成物は前記ニオブ混合酸化物を含み、前記ニオブ混合酸化物は、式M x-u (x/(5-y)) Nb100-(x/(5-y))-z250-u/2を有し、式中
は酸化状態が1の陽イオンであり、 は、Li、Na、K、及びそれらの混合物から選択され、
は平均酸化状態がyの陽イオンであり、 は、Li、Na、K、Cu、Zn、Mg、Ca、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、V、Al、B、Ga、Sc、Y、In、La、Yb、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、Si、P、Ta、W、Mo及びそれらの混合物から選択され、
は平均酸化状態が5の陽イオンであり、 は、Mn、Fe、Al、Ga、Y、In、La、Yb、Cu、Zn、Mg、Ni、Co、Ca、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、Si、V、P、Ta、W、Mo、Cr及びそれらの混合物から選択され、
1≦y≦4、
0.5≦x≦6、
0≦z≦10、
0≦u≦5、
x>uである、前記電極。
【請求項2】
(i)Mは、Li、Na、K、Cu、Zn、Mg、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、V、Al、B、Ga、Zr、Ti、Si、P、Ta、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)Mは、Li、Na、Cu、Zn、Mg、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、Al、B、Ga、Zr、Ti、及びそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
(i)yは1、2、3、または4である、または
(ii)yは2≦y≦4である、または
(iii)yは2、3、または4である、請求項1または2に記載の電極。
【請求項4】
を形成するすべての陽イオンが同じ酸化状態を有する、請求項1または2に記載の電極。
【請求項5】
は、Li、Na、及びそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の電極。
【請求項6】
前記ニオブ混合酸化物が式M x-u x/4 Nb100-x/4-z250-u/2を有し、式中
は酸化状態が1の陽イオンである、請求項1または2に記載の電極。
【請求項7】
(i)Nは、Li、Na、K、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)Nは、Li、Na、及びそれらの混合物から選択される、請求項6に記載の電極。
【請求項8】
前記ニオブ混合酸化物が式M x-uII x/3 Nb100-x/3-z250-u/2を有し、式中
IIは平均酸化状態が2の陽イオンである、請求項1または2に記載の電極。
【請求項9】
IIを形成するすべての陽イオンの酸化状態が2である、請求項8に記載の電極。
【請求項10】
(i)MIIはCu、Zn、Mg、Ni、Fe、Mn、Co、Ca、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)MIIはCu、Zn、Mg、Ni、及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)MIIはZn、Mg、Ni、及びそれらの混合物から選択される、請求項8に記載の電極。
【請求項11】
前記ニオブ混合酸化物が式M x-uIII x/2 Nb100-x/2-z250-u/2を有し、式中
IIIは平均酸化状態が3の陽イオンである、請求項1または2に記載の電極。
【請求項12】
IIIを形成するすべての陽イオンの酸化状態が3である、請求項11に記載の電極。
【請求項13】
(i)MIIIは、Mn、Cr、V、Fe、Al、B、Ga、Y、In、La、Yb、Ce、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)MIIIは、Mn、Cr、Fe、Al、B、Ga、Y、及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)MIIIは、Cr、Al、Fe、及びそれらの混合物から選択される、請求項11に記載の電極。
【請求項14】
前記ニオブ混合酸化物が式M x-uIV Nb100-x-z250-u/2を有し、式中
IVは平均酸化状態が4の陽イオンである、請求項1または2に記載の電極。
【請求項15】
IVを形成するすべての陽イオンの酸化状態が4である、請求項14に記載の電極。
【請求項16】
(i)MIVは、Zr、Ti、Mn、Ce、Sn、Ge、V、Si、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)MIVは、Zr、Ti、Sn、Ge、V、及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)MIVはTi、V、及びそれらの混合物である、請求項14に記載の電極。
【請求項17】
(i)xは1、2、3、4、5、または6である、または
(ii)xは2≦x≦5である、または
(iii)x=4である、請求項1または2に記載の電極。
【請求項18】
(i)0≦u≦3、または
(ii)0.01≦u≦2、または
(ii)u=0である、請求項1または2に記載の電極。
【請求項19】
x≧u+1である、請求項1または2に記載の電極。
【請求項20】
前記ニオブ混合酸化物は、Li及びNb以外のさらなる陽イオンが存在する場合に、Liのみを含む、請求項1または2に記載の電極。
【請求項21】
がLiを含まず、または前記ニオブ混合酸化物がLiを含まない、請求項1または2に記載の電極。
【請求項22】
活電極物質としてニオブ混合酸化物を含む電極であって、前記ニオブ混合酸化物は式B Nb100-a-z250-aを有し、式中
は平均酸化状態が5の陽イオンであり、 は、Mn、Fe、Al、Ga、Y、In、La、Yb、Cu、Zn、Mg、Ni、Co、Ca、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、Si、V、P、Ta、W、Mo、Cr及びそれらの混合物から選択され、
0≦z≦10、
0<a≦8である、前記電極。
【請求項23】
(i)1≦a≦5、または
(ii)1.5≦a≦3、
(iii)a=2である、請求項22に記載の電極。
【請求項24】
(i)Mは、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、Si、V、P、Ta、W、Mo、Cr及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)Mは、V、P、Ta、及びそれらの混合物から選択される、請求項1、2、22、または23に記載の電極。
【請求項25】
を形成するすべての陽イオンの酸化状態が5である、請求項1、2、22、または23に記載の電極。
【請求項26】
(i)0≦z≦5、及び/または
(ii)z>0、または
(iii)z=0である、請求項1、2、22、または23に記載の電極。
【請求項27】
活電極物質としてニオブ混合酸化物を含む電極であって、前記ニオブ混合酸化物は式MNb100-b250-2.5b+bcを有し、式中
Mは、P、B、W、Mo、V、Ti、Si、及びそれらの混合物から選択される陽イオンであり、
cはMの平均酸化状態の半分であり、
1.5≦c≦3、及び
0.5<b≦6である、前記電極。
【請求項28】
18.15~18.65°2θの間の最も強いピークの半値全幅は、CuKα線源を用いた前記物質のX線回折パターンにおいて0.2超であり、任意選択で、前記半値全幅は0.4超、0.6超、及び/または0.9未満である、請求項27に記載の電極。
【請求項29】
Mは、P、W、Ti、B及びそれらの混合物、またはP、W及びそれらの混合物から選択される、請求項27または28に記載の電極。
【請求項30】
前記陽イオンは、異なる酸化状態の陽イオンによって部分的に置換され、任意選択で、前記陽イオンの最大20at.%が、異なる酸化状態の陽イオンによって置換される、請求項1、2、22、23、27、または28に記載の電極。
【請求項31】
前記酸素陰イオンは、F、Cl、Br、S、Se、N、及びそれらの混合物などの代替の電気陰性陰イオンによって部分的に置換され、任意選択で、前記酸素陰イオンの最大10at.%が代替の電気陰性陰イオンによって部分的に置換されている、請求項1、2、22、23、27、または28に記載の電極。
【請求項32】
前記ニオブ混合酸化物が0.1~100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD50の粒径を有する、請求項1、2、22、23、27、または28に記載の電極。
【請求項33】
前記ニオブ混合酸化物は、0.1~100m/g、または0.2~50m/g、または0.5~20m/gの範囲のBET表面積である、請求項1、2、22、23、27、または28に記載の電極。
【請求項34】
前記ニオブ混合酸化物が炭素でコーティングされている、請求項1、2、22、23、27、または28に記載の電極。
【請求項35】
前記ニオブ混合酸化物は保護コーティングを有し、任意選択で前記保護コーティングは、ニオブ酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、有機及び無機フッ化物、有機及び無機リン酸塩、チタン酸化物、これらのリチウム化バージョン、及びこれらの混合物を含む、請求項1、2、22、23、27、または28に記載の電極。
【請求項36】
前記ニオブ混合酸化物は、4×4の八面体ブロックを含むWadsley-Rothブロック構造を有する、請求項1、2、22、23、27、または28に記載の電極。
【請求項37】
前記ニオブ混合酸化物は単斜晶系結晶構造を有し、任意選択で、前記ニオブ混合酸化物は単位格子パラメータa=25.7~31.4Å、b=3.4~4.2Å、c=15.8~19.3Å、α=90°、β=112.6~137.6°、γ=90°を有する、請求項1、2、22、23、27、または28に記載の電極。
【請求項38】
前記ニオブ混合酸化物の前記結晶構造がN-Nbの結晶構造に対応する、請求項1、2、22、23、27、または28に記載の電極。
【請求項39】
前記ニオブ混合酸化物が、前記電極の全活電極物質の少なくとも5重量%、10重量%、または50重量%を形成するか、または前記ニオブ混合酸化物が前記電極の唯一の活電極物質である、請求項1、2、22、23、27、または28に記載の電極。
【請求項40】
結合剤、導電性添加剤、異なる活電極物質、及びそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの他の成分をさらに含む、請求項1、2、22、23、27、または28に記載の電極。
【請求項41】
前記異なる活電極物質が、リチウムチタン酸化物、チタンニオブ酸化物、異なるニオブ混合酸化物、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、それらのドープ及び/またはカーボンコーティングバージョン、及びそれらの混合物から選択される、請求項40に記載の電極。
【請求項42】
請求項1、2、22、23、27、または28に記載の電極を含む金属イオン電池であって、任意選択で、金属イオン電池がリチウムイオン電池であり、前記電極がアノードを形成する、前記金属イオン電池。
【請求項43】
20mA/gで180mAh/gより大きい可逆的アノード活物質比容量を有するリチウムイオン電池であり、20mA/gで初期のセル容量の70%超を保持しながら、前記電池は、200mA/g以上、または1000mA/g以上、または2000mA/g以上、または4000mA/g以上の前記アノード活物質に対する電流密度で充電及び放電することができる、請求項42に記載の金属イオン電池。
【請求項44】
アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間に配置された電解質を含む電気化学デバイスであって、前記アノードが、活性アノード物質として、請求項1、2、22、23、27、または28に記載されているニオブ混合酸化物を含み、前記デバイスは、N/P比>1を有し、N/P比は、
【数1】
式中、
面積負荷(mgcm-2)は、集電体を考慮しない電極組成物の乾燥負荷であり、
活性分率(重量%)は、活物質である乾燥電極組成物の割合であり、
第1のリチウム化/脱リチウム化容量(mAhg-1)は、Li金属対電極を備えた同等の半電池で測定された、前記アノードの第1のリチウム化サイクルまたは前記カソードの第1の脱リチウム化サイクルにおける、25℃でのC/10での比容量である、と定義されている、前記電気化学デバイス。
【請求項45】
ニオブ混合酸化物の使用であって、前記ニオブ混合酸化物は、金属イオン電池の活電極物質として請求項1、2、22、23、27、または28に記載の通りであり、任意選択でリチウムイオン電池のアノードにおけるものである、前記使用。
【請求項46】
電極の製造方法であって、
請求項1、2、22、23、27、または28に定義されているニオブ混合酸化物を得ることと、
前記ニオブ混合酸化物を集電体上に堆積させて前記電極を形成することと、を含む、前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0119
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0119】
考察
本発明によるニオブ混合酸化物は、例えば5C及び10Cの高い脱リチウム化のレートで顕著な特性を示すことがわかった。特に、場合によっては、低レートでの比容量が高レートでも大部分維持され、例えば10Cでの容量が0.5Cでの容量の97.7%以上となり、非常に高い容量維持率となっている。これらは、高速充電/放電用に設計された高出力電池で使用する際の本発明のニオブ混合酸化物の利点を実証する上で重要な結果である。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[態様1]
活電極物質としてニオブ混合酸化物を含む電極であって、前記ニオブ混合酸化物は、式M x-u (x/(5-y)) Nb 100-(x/(5-y))-z 250-u/2 を有し、式中
は酸化状態が1の陽イオンであり、
は平均酸化状態がyの陽イオンであり、
は平均酸化状態が5の陽イオンであり、
1≦y≦4、
0.5≦x≦6、
0≦z≦10、
0≦u≦5、
x>uである、前記電極。
[態様2]
(i)M は、Li、Na、K、Cu、Zn、Mg、Ca、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、V、Al、B、Ga、Sc、Y、In、La、Yb、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、Si、P、Ta、W、Mo及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)M は、Li、Na、K、Cu、Zn、Mg、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、V、Al、B、Ga、Zr、Ti、Si、P、Ta、及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)M は、Li、Na、Cu、Zn、Mg、Ni、Fe、Mn、Co、Cr、Al、B、Ga、Zr、Ti、及びそれらの混合物から選択される、態様1に記載の電極。
[態様3]
(i)yは1、2、3、または4である、または
(ii)yは2≦y≦4である、または
(iii)yは2、3、または4である、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様4]
を形成するすべての陽イオンが同じ酸化状態を有する、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様5]
(i)M は、Li、Na、K、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)M は、Li、Na、及びそれらの混合物から選択される、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様6]
前記ニオブ混合酸化物が式M x-u x/4 Nb 100-x/4-z 250-u/2 を有し、式中
は酸化状態が1の陽イオンである、態様1~5のいずれかに記載の電極。
[態様7]
(i)N は、Li、Na、K、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)N は、Li、Na、及びそれらの混合物から選択される、態様6に記載の電極。
[態様8]
前記ニオブ混合酸化物が式M x-u II x/3 Nb 100-x/3-z 250-u/2 を有し、式中
II は平均酸化状態が2の陽イオンである、態様1~5のいずれかに記載の電極。
[態様9]
II を形成するすべての陽イオンの酸化状態が2である、態様8に記載の電極。
[態様10]
(i)M II はCu、Zn、Mg、Ni、Fe、Mn、Co、Ca、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)M II はCu、Zn、Mg、Ni、及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)M II はZn、Mg、Ni、及びそれらの混合物から選択される、態様8または9に記載の電極。
[態様11]
前記ニオブ混合酸化物が式M x-u III x/2 Nb 100-x/2-z 250-u/2 を有し、式中
III は平均酸化状態が3の陽イオンである、態様1~5のいずれかに記載の電極。
[態様12]
III を形成するすべての陽イオンの酸化状態が3である、態様11に記載の電極。
[態様13]
(i)M III は、Mn、Cr、V、Fe、Al、B、Ga、Y、In、La、Yb、Ce、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)M III は、Mn、Cr、Fe、Al、B、Ga、Y、及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)M III は、Cr、Al、Fe、及びそれらの混合物から選択される、態様11または12に記載の電極。
[態様14]
前記ニオブ混合酸化物が式M x-u IV Nb 100-x-z 250-u/2 を有し、式中
IV は平均酸化状態が4の陽イオンである、態様1~5のいずれかに記載の電極。
[態様15]
IV を形成するすべての陽イオンの酸化状態が4である、態様14に記載の電極。
[態様16]
(i)M IV は、Zr、Ti、Mn、Ce、Sn、Ge、V、Si、及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)M IV は、Zr、Ti、Sn、Ge、V、及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)M IV はTi、V、及びそれらの混合物である、態様14または15に記載の電極。
[態様17]
(i)xは1、2、3、4、5、または6である、または
(ii)xは2≦x≦5である、または
(iii)x=4である、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様18]
(i)0≦u≦3、または
(ii)0.01≦u≦2、または
(ii)u=0である、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様19]
x≧u+1である、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様20]
前記ニオブ混合酸化物は、Li及びNb以外のさらなる陽イオンが存在する場合に、Liのみを含む、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様21]
がLiを含まず、または前記ニオブ混合酸化物がLiを含まない、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様22]
活電極物質としてニオブ混合酸化物を含む電極であって、前記ニオブ混合酸化物は式B Nb 100-a-z 250-a を有し、式中
は平均酸化状態が5の陽イオンであり、
0≦z≦10、
0<a≦8である、前記電極。
[態様23]
(i)1≦a≦5、または
(ii)1.5≦a≦3、
(iii)a=2である、態様22に記載の電極。
[態様24]
(i)M は、Mn、Fe、Al、Ga、Y、In、La、Yb、Cu、Zn、Mg、Ni、Co、Ca、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、Si、V、P、Ta、W、Mo、Cr及びそれらの混合物から選択される、または
(ii)M は、Ce、Zr、Ti、Sn、Ge、Si、V、P、Ta、W、Mo、Cr及びそれらの混合物から選択される、または
(iii)M は、V、P、Ta、及びそれらの混合物から選択される、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様25]
を形成するすべての陽イオンの酸化状態が5である、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様26]
(i)0≦z≦5、及び/または
(ii)z>0、または
(iii)z=0である、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様27]
活電極物質としてニオブ混合酸化物を含む電極であって、前記ニオブ混合酸化物は式M Nb 100-b 250-2.5b+bc を有し、式中
Mは、P、B、W、Mo、V、Ti、Si、及びそれらの混合物から選択される陽イオンであり、
cはMの平均酸化状態の半分であり、
1.5≦c≦3、及び
0.5<b≦6である、前記電極。
[態様28]
18.15~18.65°2θの間の最も強いピークの半値全幅は、CuKα線源を用いた前記物質のX線回折パターンにおいて0.2超であり、任意選択で、前記半値全幅は0.4超、0.6超、及び/または0.9未満である、態様27に記載の電極。
[態様29]
Mは、P、W、Ti、B及びそれらの混合物、またはP、W及びそれらの混合物から選択される、態様27または28に記載の電極。
[態様30]
前記陽イオンは、異なる酸化状態の陽イオンによって部分的に置換され、任意選択で、前記陽イオンの最大20at.%が、異なる酸化状態の陽イオンによって置換される、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様31]
前記酸素陰イオンは、F、Cl、Br、S、Se、N、及びそれらの混合物などの代替の電気陰性陰イオンによって部分的に置換され、任意選択で、前記酸素陰イオンの最大10at.%が代替の電気陰性陰イオンによって部分的に置換されている、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様32]
前記ニオブ混合酸化物が0.1~100μm、または0.5~50μm、または1~20μmの範囲のD 50 の粒径を有する、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様33]
前記ニオブ混合酸化物は、0.1~100m /g、または0.2~50m /g、または0.5~20m /gの範囲のBET表面積である、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様34]
前記ニオブ混合酸化物が炭素でコーティングされている、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様35]
前記ニオブ混合酸化物は保護コーティングを有し、任意選択で前記保護コーティングは、ニオブ酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、有機及び無機フッ化物、有機及び無機リン酸塩、チタン酸化物、これらのリチウム化バージョン、及びこれらの混合物を含む、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様36]
前記ニオブ混合酸化物は、4×4の八面体ブロックを含むWadsley-Rothブロック構造を有する、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様37]
前記ニオブ混合酸化物は単斜晶系結晶構造を有し、任意選択で、前記ニオブ混合酸化物は単位格子パラメータa=25.7~31.4Å、b=3.4~4.2Å、c=15.8~19.3Å、α=90°、β=112.6~137.6°、γ=90°を有する、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様38]
前記ニオブ混合酸化物の前記結晶構造がN-Nb の結晶構造に対応する、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様39]
前記ニオブ混合酸化物が、前記電極の全活電極物質の少なくとも5重量%、10重量%、または50重量%を形成するか、または前記ニオブ混合酸化物が前記電極の唯一の活電極物質である、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様40]
結合剤、導電性添加剤、異なる活電極物質、及びそれらの混合物から選択される、少なくとも1つの他の成分をさらに含む、いずれかの先行態様に記載の電極。
[態様41]
前記異なる活電極物質が、リチウムチタン酸化物、チタンニオブ酸化物、異なるニオブ混合酸化物、グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、それらのドープ及び/またはカーボンコーティングバージョン、及びそれらの混合物から選択される、態様40に記載の電極。
[態様42]
態様1~41のいずれか1項に記載の電極を含む金属イオン電池であって、任意選択で、金属イオン電池がリチウムイオン電池であり、前記電極がアノードを形成する、前記金属イオン電池。
[態様43]
20mA/gで180mAh/gより大きい可逆的アノード活物質比容量を有するリチウムイオン電池であり、20mA/gで初期のセル容量の70%超を保持しながら、前記電池は、200mA/g以上、または1000mA/g以上、または2000mA/g以上、または4000mA/g以上の前記アノード活物質に対する電流密度で充電及び放電することができる、態様42に記載の金属イオン電池。
[態様44]
アノード、カソード、及び前記アノードと前記カソードとの間に配置された電解質を含む電気化学デバイスであって、前記アノードが、活性アノード物質として、態様1~38のいずれか1項に記載されているニオブ混合酸化物を含み、前記デバイスは、N/P比>1を有し、N/P比は、
【数2】
式中、
面積負荷(mgcm -2 )は、集電体を考慮しない電極組成物の乾燥負荷であり、
活性分率(重量%)は、活物質である乾燥電極組成物の割合であり、
第1のリチウム化/脱リチウム化容量(mAhg -1 )は、Li金属対電極を備えた同等の半電池で測定された、前記アノードの第1のリチウム化サイクルまたは前記カソードの第1の脱リチウム化サイクルにおける、25℃でのC/10での比容量である、と定義されている、前記電気化学デバイス。
[態様45]
ニオブ混合酸化物の使用であって、前記ニオブ混合酸化物は、金属イオン電池の活電極物質として態様1~38のいずれか1項に記載の通りであり、任意選択でリチウムイオン電池のアノードにおけるものである、前記使用。
[態様46]
電極の製造方法であって、
態様1~38のいずれか1項に定義されているニオブ混合酸化物を得ることと、
前記ニオブ混合酸化物を集電体上に堆積させて前記電極を形成することと、を含む、前記方法。
【国際調査報告】