(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】治療用I型コラーゲンペプチド
(51)【国際特許分類】
A61K 38/39 20060101AFI20241226BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241226BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20241226BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20241226BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241226BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20241226BHJP
A23L 33/17 20160101ALN20241226BHJP
【FI】
A61K38/39
A61P1/00
A61P29/00
A61P37/02
A61P17/00
A61P17/06
A61P17/10
A61P1/04
C07K14/78 ZNA
A23L33/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537885
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2022087199
(87)【国際公開番号】W WO2023118274
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021214899.9
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521189075
【氏名又は名称】ジェリータ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハウズマンズ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】フレッヒ,ハンス-ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】エッザー,シュテフェン
(72)【発明者】
【氏名】ハーン,マルティン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B018MD20
4B018MD69
4B018ME14
4C084AA02
4C084AA03
4C084DA40
4C084MA27
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4C084MA43
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZA68
4C084ZA89
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA40
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ヒト又は動物患者の皮膚及び粘膜の炎症性疾患の経口治療のための治療法に用いる、組換え型の、特に非変性型のI型コラーゲンに関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物患者の皮膚及び粘膜の炎症性疾患、特に腸管粘膜疾患の経口治療のための治療法に使用するためのI型コラーゲンであって、分子量が少なくとも16kDaである、I型コラーゲン。
【請求項2】
皮膚及び粘膜の炎症性疾患が、皮膚及び粘膜の免疫調節性炎症性疾患、特に自己免疫疾患、特に皮膚全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、硬化性苔癬、神経皮膚炎、乾癬、酒さ、紅色苔癬、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、及びにきび等の皮膚の自己免疫疾患、又は特に粘膜の自己免疫疾患、特にクローン病、セリアック病、又は潰瘍性大腸炎等の腸粘膜の自己免疫疾患である、請求項1に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項3】
分子量が少なくとも16kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドが、分子量16kDa未満のコラーゲン、特にコラーゲンペプチドも含まない、請求項1又は2に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項4】
I型コラーゲンが三重らせん形態で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項5】
I型コラーゲンが、天然若しくは組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチド、好ましくは配列番号2、4、6又は8で示されるアミノ酸配列を含むウシI型コラーゲンペプチドの形態で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項6】
組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にコラーゲンペプチドの分子量の範囲が35~95、特に40~92kDaである、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項7】
組換え若しくは天然のI型コラーゲンが、変性型のもの又は非変性型のものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項8】
I型コラーゲンが、完全に若しくは部分的にヒドロキシル化されて、完全に若しくは部分的にグリコシル化されて、又は完全に若しくは部分的にヒドロキシル化され且つグリコシル化されて存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項9】
組換えI型コラーゲンが、真核宿主細胞、特に酵母細胞、又は原核宿主細胞、特に大腸菌において、特にヒドロキシル化された形態及び/又は融合ペプチドの形態で発現させることにより調製された、請求項1~8のいずれか一項に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項10】
組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドが、少なくとも16kDaの均一な分子量を有する均質な単離形態で、又は全てのI型コラーゲンの分子量が少なくとも16kDaである単離されたI型コラーゲン混合物、特にI型コラーゲンペプチド混合物として存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項11】
I型コラーゲンが、特にブタ、ヒツジ、ウシ、げっ歯類、カンガルー、ウマ、鳥、爬虫類、両生類若しくは魚類等の脊椎動物、又は特にクラゲ等の無脊椎動物のI型コラーゲンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項12】
皮膚及び粘膜の炎症性疾患、特に腸粘膜疾患の経口治療のための治療法に使用するための、請求項1から11のいずれか一項に記載された分子量が少なくとも16kDaである少なくとも1種のI型コラーゲンと、少なくとも1種の薬学的に許容される又は食品として安全な担体と、任意選択で少なくとも1種の添加剤又は賦形剤とを含む、組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の賦形剤がコルチコステロイドである、請求項12に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の添加剤が、組換えにより産生されたコラーゲン加水分解物、天然源由来のコラーゲン加水分解物、組換えにより産生されたI型コラーゲン、天然源から回収されたI型コラーゲン、又はこれらの組み合わせである、請求項12又は13に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
組成物が、錠剤、トローチ剤、チュアブル錠剤、粉末剤、顆粒剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、カプセル剤、一口カプセル剤、ドラジェ剤、パスティーユ剤、押出成形剤、ジュース剤、懸濁剤又はゲル剤の形態で存在する、請求項12から14のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
1~60mg/日の用量でI型コラーゲンを経口投与するのに適した、上記請求項12から15のいずれか一項に記載の使用ための組成物。
【請求項17】
特に皮膚及び粘膜の免疫調節性炎症性疾患、特に腸粘膜疾患において、I型コラーゲンに対する免疫不寛容の治療的処置又は治療的予防に用いるための、分子量が少なくとも16kDaであるI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチド。
【請求項18】
特に皮膚及び粘膜の免疫調節性炎症性疾患、特に腸粘膜疾患においてI型コラーゲンに対する免疫寛容を誘導する方法で使用するための、分子量が少なくとも16kDaであるI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチド。
【請求項19】
ヒト又は動物の皮膚及び粘膜の健康、特に腸粘膜の健康を維持するための経口投与に適した剤形の、分子量が少なくとも16kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト又は動物の身体の皮膚及び粘膜の炎症性疾患、特に腸管粘膜疾患の経口治療のための治療法に用いるI型コラーゲン、特にコラーゲンペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
残念ながら、ヒトや動物の皮膚及び粘膜は炎症性疾患に頻繁に曝され、その傾向はますます強まっている。これらの疾患の病因を集中的に研究する過程で、このような炎症性疾患は誤った免疫反応、特に自己免疫疾患によって引き起こされることがしばしば判明している。このような皮膚及び粘膜の炎症性疾患の例として、皮膚の場合はアトピー性皮膚炎、神経皮膚炎、乾癬、酒さ、にきび、粘膜の場合は特にクローン病や潰瘍性大腸炎等の腸粘膜の炎症が挙げられる。
【0003】
多用される治療法は、コルチゾン等の免疫抑制剤や抗炎症薬(これらは身体の生体防御を抑制する)の服用である。しかし、免疫系の防御機構を抑制することは、アトピー性皮膚炎に対するコルチゾン外用療法のように、皮膚の萎縮や色素沈着障害など多くの副作用を引き起こす可能性もある。その他の治療選択肢としては、免疫系に直接作用する薬剤の使用、幹細胞療法、心理療法、作業療法、理学療法、栄養カウンセリングなどがある。治療により誘導された免疫抑制は罹患臓器の保護につながるが、感染症にかかりやすくなる可能性がある。幹細胞療法は、自己免疫疾患の治療法として倫理的にも法的にも議論のある選択肢であり、健康上のリスクもはらんでいる。
【0004】
米国特許第5,750,144号、米国特許第5,645,851号、米国特許第5,529,786号及び米国特許第5,637,321号から、自己免疫疾患、具体的には関節リウマチを治療するための経口投与用のII型コラーゲンを含有する動物組織含有組成物を提供することが知られている。特に、これらの文献は、天然の動物源から回収した軟骨組織含有材料を使用し、様々な化学的-物理的方法工程によって、そこからII型コラーゲン含有組成物を得ることを開示している。このようにして得られたII型コラーゲン含有組成物は、非変性型II型コラーゲンの存在により特徴付けられる一方で、出発材料及び単離方法に由来する多数の二次成分、特にタンパク質、抗原及び塩が存在するという特徴もある。皮膚や粘膜、特に腸粘膜の炎症性疾患の治療法は開示されていない。
【発明の概要】
【0005】
皮膚及び粘膜の炎症性疾患、特に腸管粘膜疾患の治療のための治療選択肢、医薬組成物及び活性物質(特に前述の問題を克服するもの)に対する大きな必要性が依然として存在する。特に、罹患した患者の苦痛や症状を緩和するだけでなく、原因を見極め、そして疾患及び/又はその症状の原因を取り除く治療選択肢、医薬組成物及び活性物質が大いに必要とされている。
【0006】
従って、本発明の根底にある技術的課題は、前述の欠点を克服する手段、特に治療効果を有する活性物質及びこれらを含有する組成物、並びに皮膚及び粘膜の炎症、特に自己免疫疾患によって引き起こされる皮膚及び粘膜の炎症を治療するための方法を提供することであり、特に、標準化され、信頼性が高く、厳密に定められた形態で、より大きな産業的規模且つ高い費用効率で調製することができ、ヒト又は動物の身体の皮膚及び粘膜の炎症性疾患を経口治療するための方法、並びに/或いはその生物学的有効性により皮膚及び粘膜の健康を維持するための方法に用いるのに適したものである。
【0007】
本発明は、独立請求項の教示、そしてまた特に本明細書の好ましい実施形態及び従属請求項の教示を提供することにより、その基礎となる技術的問題を解決するものである。
【0008】
本発明は、ヒト又は動物患者の皮膚及び粘膜の炎症性疾患、特に皮膚及び粘膜の免疫調節性炎症性疾患(特に腸管粘膜疾患)を経口治療するための治療法に用いる、分子量が少なくとも16kDaであるI型コラーゲンに関する。
【0009】
本発明は特に、ヒト又は動物患者の皮膚及び粘膜の炎症性疾患(特に腸粘膜疾患)を経口治療するための治療法で用いるためのI型コラーゲンに関し、I型コラーゲンの分子量は少なくとも16kDaであり、I型コラーゲンは天然若しくは組換えI型コラーゲンの形態で存在する。
【0010】
本発明の基礎となる驚くべき教示は、組換え若しくは天然の(特に単離された形態の)I型コラーゲンが、このI型コラーゲンの分子量が少なくとも16kDaである場合、経口適用後に皮膚及び粘膜の炎症性疾患を治療することができることである。特に好ましい実施形態では、本発明に従って提供される分子量が少なくとも16kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲンは、皮膚及び粘膜の炎症性疾患、特に腸粘膜疾患、特に免疫調節性の疾患を治療することができる。
【0011】
特に好ましい実施形態では、組換えにより調製されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドが、本発明によるこの用途のために提供される。
【0012】
驚くべきことに、本発明の好ましい実施形態で提供される組換えI型コラーゲン、特に組換えI型コラーゲンペプチドは、本発明に従って天然源から回収されるI型コラーゲン、即ち天然のI型コラーゲンが示すものと少なくとも同等の生物学的有効性を示すことができ、特に、それより更に優れた生物学的有効性さえも提供される。好ましい実施態様では、本発明は、非常に低い用量の組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチド、即ち低濃度の組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドが高い生物学的有効性を発揮することから、ヒト又は動物患者の皮膚及び粘膜の炎症性疾患の治療を可能にする。従って、本発明の教示は、標準化された方法で調製することができ、その調製は産業的規模で実施することができ、天然の出発物質に制限されることなく、高純度且つ高収率、コンタミネーションフリーで調製することができ、特に、その高い生物学的有効性ゆえに低用量での使用が可能であるということを特徴とする、皮膚及び粘膜の炎症性疾患を経口治療するための、再現性のある、バイオテクノロジーにより調製可能な、分子量が少なくとも16kDaである組換えI型コラーゲンを提供するという利点がある。
【0013】
本発明はまた、経口免疫寛容を誘導するため、特に皮膚及び粘膜の免疫調節性炎症性疾患、特に腸粘膜疾患において経口免疫寛容を誘導するための、分子量が少なくとも16kDaであるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチド、特に内因性コラーゲン、特に内因性I型コラーゲン、特に皮膚及び粘膜組織に存在する内因性I型コラーゲンに関する。
【0014】
本発明は、特にI型コラーゲンに対する免疫寛容を誘導することによって、特に皮膚及び粘膜の免疫調節性炎症性疾患、特に腸粘膜疾患において、I型コラーゲンに対する免疫不寛容の治療的処置又は治療的予防のための治療方法に用いるための、特に分子量が少なくとも16kDaであるI型コラーゲン(特に組換えI型コラーゲンペプチド)及びI型コラーゲンペプチド(特に組換えI型コラーゲンペプチド)を含む組成物に関する。
【0015】
本発明はまた、I型コラーゲンに対する免疫寛容を誘導する方法で使用するための、分子量が少なくとも16kDaであるI型コラーゲン、特に組換えI型コラーゲンペプチド、特に皮膚及び粘膜の免疫調節性炎症性疾患、特に腸粘膜疾患において、その投与がI型コラーゲンに対する経口寛容の誘導につながる組成物に関する。
【0016】
本発明に従って使用される、分子量が少なくとも16kDaである天然及び組換えI型コラーゲン、特に組換えI型コラーゲンペプチドは、ヒト又は動物の体内で経口投与後に発揮する生物学的有効性、特に免疫調節性及び/又は炎症調節性の生物学的有効性を特徴とする。特に好ましい実施態様では、この生物学的有効性は、特に非変性型の、即ちネイティブな形態(native form)の天然及び組換え(好ましくは組換え)I型コラーゲンにも、そして好ましい実施態様では組換えI型コラーゲンペプチドにも存在する。
【0017】
好ましくは、本発明に従って提供される、分子量が少なくとも16kDaであるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、免疫調節及び/又は経口免疫寛容の誘導が可能であり、特に、処置されたヒト又は動物の身体において免疫応答及び/又は経口免疫寛容を誘導する。
【0018】
本発明に従って提供される分子量が少なくとも16kDaである天然若しくは組換えI型コラーゲンは、好ましくは、免疫グロブリンの合成を抑制する生物学的有効性及び/又は抗炎症性の生物学的有効性を展開する。本発明に従って、炎症誘発性サイトカインの減少及び抗炎症性サイトカインの刺激を決定することができる。理論に束縛されるものではないが、本発明に従って提供される、分子量が少なくとも16kDaである経口により適用された天然若しくは組換えI型コラーゲン、特に組換えI型コラーゲンペプチドは、完全に若しくは殆ど損傷されることなく消化管を生きたまま通過し、免疫調節性(特に免疫抑制)細胞、特にパイエル板の細胞内で認識され、皮膚及び粘膜、特に腸粘膜の範囲において望ましくない免疫反応及び炎症過程(inflammatory method)を軽減するか又は完全に防止する免疫調節及び/又はサイトカイン調節反応及び/又はシグナル伝達カスケードを誘発すると思われる。
【0019】
本発明に従って提供される分子量が少なくとも16kDaである天然若しくは組換えI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)の経口適用により、理論に拘束されるものではないが、そのような望ましくない反応を誘発する内因性I型コラーゲンに対する経口免疫寛容を誘導し、皮膚及び粘膜の炎症性疾患(特に腸粘膜疾患)の治療が可能になると思われる。
【0020】
本発明に従って提供される、分子量が少なくとも16kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲン(特に組換えI型コラーゲンペプチド)は、好ましくは、処置されたヒト又は動物患者の細胞(特にパイエル板の細胞)と相互作用する能力と、特に抗炎症性サイトカインの刺激及び炎症誘発性サイトカインの阻害、並びに免疫抑制性M2マクロファージ及びTサプレッサー細胞の再生をもたらす能力とを備える。
【0021】
本発明に従って特に好ましくは治療可能である皮膚及び粘膜の炎症性及び免疫調節性疾患は、特に皮膚の疾患(例えば、皮膚全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、硬化性苔癬、神経皮膚炎、乾癬、酒さ、紅色苔癬、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、及びにきび)、又は粘膜(特に腸粘膜)の疾患(例えば、クローン病、セリアック病若しくは潰瘍性大腸炎)である。
【0022】
特に好ましい実施形態では、本発明はI型コラーゲンに関し、ここで、組換え若しくは天然のコラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドは、少なくとも16kDa(特に少なくとも20kDa)の均一な分子量を持つ均質且つ単離された形態で存在するか、或いは、各コラーゲン(特にコラーゲンペプチド)の分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである単離されたコラーゲンの混合物(特にコラーゲンペプチド混合物)として存在する。
【0023】
従って、本発明に従って使用されるI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)は、本発明の一実施形態では、全く同じサイズ且つ同じ分子量のI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)との混合物の形態で、即ち少なくとも16kDa(特に少なくとも20kDa)の均一な分子量を持つ均質な形態で存在することができる。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、本発明に従って使用されるI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)は、互いに分子量が異なる他のI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)との混合物の形態で存在することができ、ここで、混合物の全てのI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)の分子量は、少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである。
【0025】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明に従って使用される、分子量が少なくとも16kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)は、分子量16kDa未満のコラーゲン、特にコラーゲンペプチドも含まない。
【0026】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明に従って使用される、分子量が少なくとも16kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)は、分子量16kDa未満のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドも含まない。
【0027】
さらに特に好ましい実施形態では、組換え若しくは天然のI型コラーゲンは、I型プロコラーゲン又は成熟したI型コラーゲンの形態で存在し得る。
【0028】
さらに特に好ましい実施形態では、組換え若しくは天然のI型コラーゲンは、三重らせん形態、特に2本のI-α1鎖と1本のI-α2鎖とからなるヘテロ三量体の形態で存在し得る。
【0029】
特に好ましい実施形態では、組換え若しくは天然のI型コラーゲンは、本明細書ではネイティブ形態とも呼ばれる非変性型の形態で存在する、即ち天然に存在する3次及び4次タンパク質構造を有する。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明はI型コラーゲン(I型コラーゲンペプチドの形態、即ち一本鎖の形態で存在するものであってもよいし、又は複数鎖、例えば二本鎖や三本鎖の形態、本明細書において三重らせん形態とも呼ばれる形態、特にI型プロコラーゲン又は成熟したI型コラーゲンの形態、特にI型-α1鎖とI型-α2鎖とからなるヘテロ三量体の形態で存在するものであってもよい)を提供する。
【0031】
本発明による天然若しくは組換えI型コラーゲンが一本鎖I型コラーゲンペプチドとして存在するのではなく、例えば三重らせん形態で存在する場合、I型コラーゲンの三重らせん形態を構成する個々のコラーゲンペプチドの1つ又は全てを本発明に従って実現することができる。特に、組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドに関して本教示に開示された実施形態は、このような一本鎖のI型コラーゲンペプチドを1本、2本又は3本有するI型コラーゲン、特にこれらのみからなるI型コラーゲン、特に本発明による天然の(好ましくは組換え)I型コラーゲンペプチドからなるI型コラーゲンにも適用される。
【0032】
特に好ましい実施形態では、組換え若しくは天然のI型コラーゲンはウシI型コラーゲンとすることができる。
【0033】
特に好ましい実施形態では、組換え若しくは天然のI型コラーゲンは、I型-α1又はI型-α2コラーゲン、特にI型-α1とすることができる。
【0034】
特に好ましい実施形態では、組換え若しくは組換えI型コラーゲンは、架橋されたフィブリル又は架橋されていないフィブリルの形態で存在し得る。
【0035】
特に好ましい実施形態では、組換え若しくは天然のI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)は、全長コラーゲンペプチドである、即ち天然に存在するI型コラーゲンペプチドの完全なアミノ酸配列を有することができる。
【0036】
さらに特に好ましい実施形態では、組換えI型コラーゲンは、組換えI型コラーゲンペプチド、特にI型-α1の形態で存在する。
【0037】
特に好ましい実施形態では、組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、分子量が16~400Da、特に16~390kDa、特に16~350kDa、特に16~300kDa、特に16~110kDa、特に20~400kDa、特に20~390kDa、特に20~350kDa、特に20~300kDa、特に20~110kDa、特に40~110kDa、特に40~100kDa、特に21~105kDa、特に25~100kDa、特に20~99kDa、特に25~95kDa、特に30~95kDa、特に35~95kDaであるI型コラーゲンペプチドとすることができる。
【0038】
好ましくは、組換えI型コラーゲン、特にコラーゲンペプチドの分子量は、16~25kDa、特に16kDaである。
【0039】
好ましくは、組換えI型コラーゲン、特にコラーゲンペプチドの分子量は、20~50kDa、特に20kDaである。
【0040】
好ましくは、組換えI型コラーゲン、特にコラーゲンペプチドの分子量は、40~50kDa、特に45kDaである。
【0041】
好ましくは、組換えI型コラーゲン、特にコラーゲンペプチドの分子量は、80~100kDa、特に92kDaである。
【0042】
特に好ましい実施形態では、天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、分子量が16~400Da、特に16~390kDa、特に16~350kDa、特に16~300kDa、特に16~110kDa、特に20~400kDa、特に20~390kDa、特に20~350kDa、特に20~300kDa、特に20~110kDa、特に40~110kDa、特に40~100kDa、特に21~105kDa、特に25~100kDa、特に20~99kDa、特に25~95kDa、特に30~95kDa、特に35~95kDaであるI型コラーゲンペプチドとすることができる。
【0043】
好ましくは、天然のI型コラーゲン、特にコラーゲンペプチドの分子量は、16~25kDa、特に16kDaである。
【0044】
好ましくは、天然のI型コラーゲン、特にコラーゲンペプチドの分子量は、20~50kDa、特に20kDaである。
【0045】
好ましくは、天然のI型コラーゲン、特にコラーゲンペプチドの分子量は、40~50kDa、特に45kDaである。
【0046】
好ましくは、天然のI型コラーゲン、特にコラーゲンペプチドの分子量は、80~100kDa、特に92kDaである。
【0047】
特に好ましい実施形態では、本発明の組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドは、完全に若しくは部分的にヒドロキシル化されているか、完全に若しくは部分的にグリコリシル化されているか、又は完全に若しくは部分的にヒドロキシル化され且つグリコリシル化されている。
【0048】
特に好ましい実施形態では、本発明による組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドは、ヒドロキシル化されていないI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドである。
【0049】
さらに好ましい実施形態では、本発明による組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドは、ヒドロキシル化されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドである。
【0050】
好ましくは、組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換えにより調製された若しくは天然のI型コラーゲンペプチドは、ヒドロキシル化されたプロリン及び/又はヒドロキシル化されたリシンを有する。
【0051】
好ましくは、組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドは、ヒドロキシル化されていない、部分的にヒドロキシル化された又は完全にヒドロキシル化されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドである。
【0052】
本発明の好ましい実施態様によれば、組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドはグリコシル化されている。より好ましくは、組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドは、少なくとも1つのヒドロキシル化リシンがグリコシル化されている。好ましくは、組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドの各ヒドロキシル化リシンはグリコシル化されている。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、組換えI型コラーゲン、特に組換えI型コラーゲンペプチドは、アミノ酸修飾(特にヒドロキシル化)されていない。特に好ましくは、組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、ヒドロキシル化されたアミノ酸及び/又はグリコシル化されたアミノ酸を持たない。
【0054】
好ましくは、本発明によるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、脊椎動物(特に魚類、両生類、爬虫類、鳥類及び哺乳類(特にブタ、ヒツジ、ウシ、げっ歯類、カンガルー、ウマ))に由来するI型コラーゲン、又は無脊椎動物(特にクラゲ)に由来するI型コラーゲンに存在するアミノ酸配列、特にウシ由来のI型コラーゲンに存在するアミノ酸配列を有する。
【0055】
特に好ましくは、I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、配列番号2、4、6又は8で示されるアミノ酸配列を含む。より好ましくは、I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、配列番号2、4、6又は8で示されるアミノ酸配列からなる。
【0056】
本発明のさらに好ましい実施形態では、I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、配列番号2、4、6又は8で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、好ましくは少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0057】
好ましくは、組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドのアミノ酸配列は、天然に存在するI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドのアミノ酸配列である。好ましくは、組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドのアミノ酸配列は、天然に存在しないI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドのアミノ酸配列である。好ましくは、組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドのアミノ酸配列は、遺伝子組換えされたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドのアミノ酸配列である。
【0058】
特に好ましくは、本発明によるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、非ヒトコラーゲン、特に非ヒトI型コラーゲンペプチド、好ましくは非ヒトI型コラーゲンのα1鎖に存在するアミノ酸配列、特にウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、魚又は鳥コラーゲンに存在するアミノ酸配列、特にウシコラーゲンに存在するアミノ酸配列を有する。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、組換えI型コラーゲン、特に組換えI型コラーゲンペプチドは、コラゲナーゼ耐性であり、特にヒトコラゲナーゼによる消化に対する耐性がある。
【0060】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、分子量が少なくとも16kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、特に内因性コラーゲン、特に内因性I型コラーゲン、特に皮膚及び粘膜に存在する内因性I型コラーゲンに対して、経口免疫寛容を誘導することができる。
【0061】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、分子量が少なくとも16kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、免疫グロブリンの合成を抑制することができる。
【0062】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、分子量が少なくとも16kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、炎症誘発性サイトカインの合成を抑制することができる。
【0063】
本発明のさらに好ましい実施態様によれば、分子量が少なくとも16kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、抗炎症性サイトカインの合成を刺激することができる。
【0064】
好ましくは、本発明に従って提供される天然若しくは組換えI型コラーゲン、特に組換えI型コラーゲンペプチドは、末梢血単球が免疫抑制性M2マクロファージへと分化するのを誘導する作用を示す。
【0065】
さらなる好ましい実施形態では、本発明に従って提供される組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換えI型コラーゲンペプチドは、炎症誘発性サイトカイン(特にTNFα及びIFNγ)の合成を低下させ、及び/又は抗炎症性サイトカイン(特にIL-10、IL-4及びTGF-β、特にIL-10)の合成を誘導する。
【0066】
本発明の好ましい実施形態によれば、本発明に従って提供される組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換えI型コラーゲンペプチドは、ナイーブCD4+T前駆細胞がTサプレッサー細胞へと分化するのを刺激/誘導する。特に好ましくは、ナイーブCD4+T前駆細胞のTサプレッサー細胞への分化が刺激/誘導されると、抗炎症性サイトカイン(好ましくはIL-10、IL-4及び/又はTGF-β)の放出が増大する。
【0067】
本発明の好ましい実施形態では、本発明に従って提供される組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換えI型コラーゲンペプチドは、特に皮膚線維芽細胞による炎症誘発性サイトカイン(好ましくはIL-1β、IFNγ、TNFα及び/又はIL-6)の発現を減少させる。
【0068】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、分子量が少なくとも16kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、免疫グロブリンの合成を抑制すること、炎症誘発性サイトカインの合成を抑制すること、及び抗炎症性サイトカインの合成を刺激することができる。
【0069】
本発明の好ましい実施形態によれば、ヒト又は動物患者の皮膚及び粘膜の炎症性疾患の経口治療のための治療法に用いるための組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの分子量は、16~400Da、特に16~390kDa、特に16~350kDa、特に16~300kDa、特に16~110kDa、特に20~400kDa、特に20~390kDa、特に20~350kDa、特に20~300kDa、特に20~110kDa、特に40~110kDa、特に40~100kDa、特に21~105kDa、特に25~100kDa、特に20~99kDa、特に25~95kDa、特に30~95kDa、特に35~95kDaである。
【0070】
本発明の好ましい実施形態によれば、ヒト又は動物患者の皮膚及び粘膜の炎症性疾患の経口治療のための治療法に用いるための組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの分子量は、35~95、特に40~92kDaである。
【0071】
好ましくは、組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にコラーゲンペプチドの分子量は、16~25kDa、特に16kDaである。
【0072】
好ましくは、組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にコラーゲンペプチドの分子量は、20~50kDa、特に20kDaである。
【0073】
好ましくは、組換え若しくは天然のI型コラーゲンの分子量は、40~50kDa、特に45kDaである。
【0074】
好ましくは、組換え若しくは天然のI型コラーゲンの分子量は、80~100kDa、特に92kDaである。
【0075】
本発明の好ましい実施形態では、本発明による組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、単独で(即ち単離された形態で)、即ち他の物質を含まず、特に他のコラーゲンを含まずに、本発明の用途で使用される。
【0076】
本発明の好ましい実施形態では、本発明による組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、均質な調製物として、具体的には他のコラーゲンを含まない、分子量が少なくとも16kDa(特に少なくとも20kDa)である単一の組換え若しくは天然のI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)の均質な調製物として、存在する。
【0077】
本発明の好ましい実施形態では、本発明による組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、その全ての分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaであるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの混合物として、特にそれ以外のコラーゲンを含まない状態で存在する。
【0078】
本発明のさらなる実施形態では、本発明による組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、本発明の用途において唯一の生物学的有効成分(biologically efficacy substance)として使用される。
【0079】
特に好ましい実施形態では、本発明は、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである少なくとも1種のI型コラーゲンペプチド、特に少なくとも1種のI型コラーゲンペプチドペプチドを含む組成物に関し、この組成物は、少なくとも1種の組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に少なくとも1種の組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチド、並びに任意の薬学的に許容される及び/又は食品として安全な担体以外に、他の物質、特に他のコラーゲンを含まない。
【0080】
特に好ましい実施形態では、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである少なくとも1種のI型コラーゲンペプチド、特に少なくとも1種のI型コラーゲンペプチドを有する組成物は、ヒト又は動物の体内への経口投与に適した剤形で存在する。
【0081】
本発明はまた、少なくとも1種のI型コラーゲンペプチド、特に分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである本発明によるI型コラーゲンペプチドを少なくとも1種と、皮膚及び粘膜の炎症性疾患の経口治療のための治療法に用いるための薬学的に許容される及び/又は食品として安全な担体を少なくとも1種と、任意選択で添加剤又は賦形剤を少なくとも1種と、含む組成物に関する。
【0082】
したがって、本発明はまた、I型コラーゲン、特に内因性I型コラーゲンに対する経口免疫寛容を誘導することによって、I型コラーゲン、特に内因性I型コラーゲンに対する免疫不寛容反応の治療的予防又は治療的処置のための治療方法に用いるための組成物に関する。
【0083】
本発明はまた、I型コラーゲン、特に内因性I型コラーゲンに対する経口免疫寛容を誘導する方法に使用するための組成物に関し、この組成物はヒト又は動物の体内で経口免疫寛容を誘導する。
【0084】
本発明はまた、I型コラーゲン、特に内因性I型コラーゲンに対する経口免疫寛容を誘導するために使用するための、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaであるI型コラーゲンペプチド、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドを含む組成物であって、特に医薬組成物や食品サプリメント、又は食品や嗜好食品に含まれる組成物に関する。
【0085】
経口投与のための本発明による組成物は、特に、医薬組成物、食品サプリメント、又は食品や嗜好食品とすることができる。特に、本発明による組成物は医薬組成物である。特に、本発明による組成物は食品サプリメントである。
【0086】
本発明は、特に、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである、本発明によるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドと、少なくとも1種の薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物であって、ヒト又は動物の身体の皮膚及び粘膜の炎症性疾患を治療するための治療方法に用いるための医薬組成物に関する。従って、本発明によるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、医薬組成物の形態で投与することができる。本発明による医薬組成物は、特に有利には、例えば、錠剤、トローチ剤、チュアブル錠剤、粉末剤、顆粒剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、カプセル剤、一口カプセル剤、ドラジェ剤、パスティーユ剤、押出成形剤、ジュース剤、懸濁剤、ゲル剤又は軟膏剤の形態で投与される。
【0087】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明に従って使用されるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、持続的な腸内放出を可能にする剤形、特に持続放出性カプセルとして存在する。
【0088】
特に好ましい実施形態では、本発明の組成物は、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaであるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドを、特に1~60mg/日、特に5~50mg/日の用量で経口投与するのに適した形態で存在する。
【0089】
本発明はさらに、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである、本発明のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドと、少なくとも1種の食品として安全な担体とを含む食品サプリメントであって、ヒト又は動物の身体の皮膚及び粘膜の炎症性疾患の治療のための治療法に用いるための食品サプリメントに関する。従って、本発明によるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドを、食品サプリメントの形態で投与することができる。特に有利には、本発明による食品サプリメントは、硬カプセル剤、軟カプセル剤、カプセル剤、一口カプセル剤、錠剤、ドラジェ剤、パスティーユ剤、サシェ、押出成形剤、溶液、懸濁剤やゲル剤(例えばアンプルに入れたもの)、顆粒剤又は粉末剤として存在する。
【0090】
本発明はまた、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである、本発明のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドを含む食品又は嗜好食品であって、ヒト又は動物の身体の皮膚及び粘膜の炎症性疾患を治療するための治療方法に用いるための食品又は嗜好食品に関する。好ましい実施形態によれば、食品又は嗜好食品は、チョコレートバー、プロテインバー、シリアルバー、飲料調製用インスタントパウダー、牛乳、乳製品(例えばヨーグルト、ホエイ又は凝乳)及び牛乳の代替品(例えば豆乳、ライスミルク、アーモンドミルク及びココナッツミルク)、機能性食品又は飲料(例えば清涼飲料水又はフィットネス用飲料)である。
【0091】
本発明の好ましい実施形態による組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドが、組成物、特に医薬組成物、食品サプリメント、又は食品若しくは嗜好食品の唯一の生物学的効能成分として使用されない場合は、1種以上のさらなる添加剤又は賦形剤であって、特に一般的な健康、特に皮膚及び粘膜の健康に良い影響を及ぼすものと組み合わせることができる。本発明による好ましい賦形剤は、ビタミンC、B、D、E及びK系列のビタミン、オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸、共役リノレン酸、カフェイン及びその誘導体、ガラナ抽出物、ローズヒップ抽出物、緑茶抽出物、ポリフェノール、エピガロカテキンガレート、クレアチン、L-カルニチン、α-リポ酸、N-アセチルシステイン、NADH、D-リボース、アスパラギン酸マグネシウム、抗酸化物質(アントシアニン、カロテノイド、フラボノイド、レスベラトロール、グルタチオン、スーパーオキシドジスムターゼ等)、ミネラル類(鉄、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、セレン、リン等)、並びに他のタンパク質、加水分解物、ペプチド(大豆、小麦、乳清タンパク質等)からなる群より選択される。
【0092】
特に好ましい実施形態では、本発明による組成物、特に医薬組成物、食品サプリメント又は食品若しくは嗜好食品は、コルチコステロイド、特にグルココルチコイド、特にコルチゾンを有するものであってもよい。
【0093】
さらなる好ましい実施形態では、本発明による組成物、特に医薬組成物、食品サプリメント、又は食品若しくは嗜好食品は、添加物を有し、この添加物は、組換えにより製造されたコラーゲン加水分解物、天然源由来のコラーゲン加水分解物、組換えにより製造されたI型コラーゲン、天然源から回収されたI型コラーゲン、又はそれらの組合せであり、特にそれぞれの分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaであるものであってもよい。
【0094】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本発明による製品、特に医薬組成物、食品サプリメント、又は食品若しくは嗜好食品は、本発明によるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチド以外に、さらなるタンパク質又はペプチド、特にさらなるコラーゲンペプチドを含まない。
【0095】
本発明はまた、治療のための方法、特に皮膚及び粘膜の炎症性疾患の予防及び/又は治療のための方法に関し、それによれば、治療目的に十分な量の、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである本発明による組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの少なくとも1種を、任意で担体及び任意で賦形剤又は添加剤とともに、ヒト又は動物の身体に経口投与する。
【0096】
本発明はまた、ヒト又は動物の身体において、I型コラーゲン、特に内因性I型コラーゲンに対する経口免疫寛容を誘導するための方法であって、治療目的に十分な量の、本発明による組換え若しくは天然I型コラーゲン(具体的には、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチド)の少なくとも1種を、任意で担体及び任意で賦形剤又は添加剤とともに投与することを含み、投与が経口により行われる方法に関する。
【0097】
本発明はまた、I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドに対する免疫不寛容の治療的処置又は治療的予防のための方法であって、治療目的に十分な量の、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである、本発明による組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドの少なくとも1種を、任意で担体及び任意で賦形剤又は添加剤とともに経口投与することを含む方法に関する。
【0098】
本発明はまた、ヒト又は動物の皮膚及び粘膜の健康保持のための非治療的方法で使用するための、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドの使用に関し、これによれば、十分な量の、本発明による組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの少なくとも1種を、任意で担体及び任意で補助剤又は添加剤とともに、皮膚及び粘膜の健康維持のためにヒト又は動物の身体に経口投与する。本発明のこの特に好ましい実施形態では、ヒト又は動物は、皮膚又は粘膜の疾患を持っていない。従って、特に好ましい実施形態では、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである、組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換えI型コラーゲンペプチドを、ヒト又は動物に経口投与するが、このヒト又は動物は、皮膚又は粘膜疾患を持たず、天然若しくは組換えI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然I型コラーゲンペプチドを投与することにより、その皮膚及び粘膜の健康、特に腸粘膜の健康を維持するものである。
【0099】
さらに、本発明は、本発明に従って使用可能な、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドを調製する方法であって、
a)分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaであるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を有する少なくとも1つの発現カセットを有する発現系を提供する工程、
b)I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの発現を可能にする条件下で発現系を培養する工程、及び
c)分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである、本発明によるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドを回収する工程、
を含む方法に関する。
【0100】
分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである、本発明に従って使用可能な組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドを調製するために本発明に従って提供される方法は、特に、厳密に定められ且つ組換えにより調製されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドが回収されるという事実によって特徴付けられ、このコラーゲンは、特にその生物学的有効性により、ヒト又は動物の身体の皮膚及び粘膜の炎症性疾患の治療方法、又は皮膚及び粘膜の健康維持のための治療方法で使用するのに適している。
【0101】
本発明に従って提供される、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、例えば天然供給源から加水分解により回収されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドと比較して、その組換えによる製造方法により特に高い純度を有する。また、好ましくない汚染もなく、多種多様な発現系において産業的規模で提供することができると同時に、組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、生物学的有効性を有するという利点がある。
【0102】
I型コラーゲンペプチドとその調製は、例えば国際特許出願公開第2005/012356号、国際特許出願公開第01/34646号、国際特許出願公開第01/34647号、及び国際特許出願公開第01/34801号に記載されている。これらの文献は、組換えI型コラーゲンペプチドの取得、並びに組換え細胞培養でプロコラーゲンを得るためのヒドロキシル化及びフィブリル化について開示しており、組換えI型コラーゲン並びに組換えI型コラーゲンペプチド(特にヒドロキシル化された三重らせん形態のもの)の調製に関して、本開示に完全に組み込まれる。
【0103】
本発明に従って見出される、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの生物学的有効性、及びこれに関連して、ヒト又は動物の身体の皮膚及び粘膜の炎症性疾患の治療的処置のための方法で使用する場合のその(それらの)適合性は、好ましい実施形態では、さらなる加工工程を必要とすることなく、本発明による方法から直接回収されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドにすでに備わっているという利点がある。従って、好ましい実施形態では、本発明によるヒドロキシル化されている及びヒドロキシル化されていない組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドはいずれも、生物学的有効性、特に天然源から回収されたI型コラーゲンと少なくとも同等の生物学的有効性を有し、特に好ましくは天然源から回収されたI型コラーゲンよりも優れた生物学的有効性を有する。
【0104】
ここで特に有利なことは、本発明による組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドが、驚くべきことに、ヒドロキシル化されていない形態であっても生物学的有効性を有し、好ましくは天然源から回収されたI型コラーゲンと同じ生物学的有効性を有し、特に好ましくは天然源から回収されたI型コラーゲンよりも優れた生物学的有効性を有することである。
【0105】
好ましくは、本発明によるヒドロキシル化された及びヒドロキシル化されていない組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドはいずれも、生物学的有効性、好ましくは天然源から回収されたI型コラーゲンと少なくとも同等の生物学的有効性を示し、より好ましくは天然源から回収されたI型コラーゲンよりも優れた生物学的有効性を示す。
【0106】
好ましくは、工程a)で提供される発現系は宿主細胞、特に原核細胞又は真核細胞である。
【0107】
好ましくは、発現系は、細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞及び植物細胞からなる群より選択される宿主細胞である。
【0108】
好ましくは、発現系、特に宿主細胞は、細菌細胞、特に大腸菌(Escherichia coli)又は枯草菌(Bacillus subtilis)の種の細菌細胞である。
【0109】
さらに好ましい実施形態では、発現系、特に宿主細胞は、酵母細胞、特にサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、コマガタエラ酵母(Komagataella phaffi)又はオガタエア・アングスタ酵母(Ogataea angusta)、ハンセヌラ酵母(Hansenula polymorpha)、特にコマガタエラ酵母である。
【0110】
好ましくは、発現系、特に宿主細胞は、真菌細胞、特にクロコウジカビ(Aspergillus niger)の種の真菌細胞である。
【0111】
本発明のさらに好ましい実施形態では、発現系、特に宿主細胞は、哺乳動物細胞、特にCHO細胞、HeLa細胞又はHEK293細胞である。
【0112】
好ましくは、発現系、特に宿主細胞は、昆虫細胞、特にSf-9、Sf-21又はTn-5細胞である。
【0113】
好ましくは、発現系、特に宿主細胞は、植物細胞、特にトウモロコシ細胞又はタバコ細胞である。
【0114】
本発明のさらに好ましい実施形態では、工程a)で提供される発現系は、発現されたコラーゲンペプチドのプロリン、リシン又はプロリン及びリシン残基をヒドロキシル化することができる宿主細胞である。好ましくは、工程a)で提供される発現系は、発現されたコラーゲンペプチドのプロリン、リシン又はプロリン及びリシン残基をヒドロキシル化することができる宿主細胞である。
【0115】
好ましくは、工程a)で提供される発現系は、プロリルヒドロキシラーゼ及び/又はリシルヒドロキシラーゼ活性を有する発現系である。好ましくは、工程a)で提供される発現系は、プロリルヒドロキシラーゼ及び/又はリシルヒドロキシラーゼ活性を有する宿主細胞である。
【0116】
好ましい実施形態では、工程a)で提供される発現系は、プロリル-4-ヒドロキシラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの発現カセットを有する宿主細胞である。特に好ましくは、工程a)で提供される発現系は、プロリル-4-ヒドロキシラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの発現カセットを有する宿主細胞であり、これにより、方法工程c)において、イン・ビボでヒドロキシル化されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドが回収される。
【0117】
好ましい実施形態では、工程a)で提供される発現系は、リシルヒドロキシラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの発現カセットを有する宿主細胞である。特に好ましくは、工程a)で提供される発現系は、リシルヒドロキシラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの発現カセットを有する宿主細胞であり、これにより、方法工程c)において、イン・ビボでヒドロキシル化されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドが回収される。
【0118】
本発明のさらに好ましい実施形態では、工程a)で提供される発現系は、プロリル-4-ヒドロキシラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの発現カセット及びリシルヒドロキシラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの発現カセットを有する宿主細胞である。特に好ましくは、工程a)で提供される発現系は、プロリル-4-ヒドロキシラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの発現カセット及びリシルヒドロキシラーゼをコードするポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの発現カセットを有する宿主細胞であり、これにより、方法工程c)においてイン・ビボでヒドロキシル化されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドが回収される。
【0119】
したがって、本発明はまた、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである本発明に従って使用可能な組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチド、特に、イン・ビボでヒドロキシル化されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドを調製するための方法であって、
a)少なくとも1つの発現カセットを有する発現系を提供する工程であって、発現カセットは、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaであるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を有し、発現系は、発現されたコラーゲンペプチドのプロリン、リシン、又はプロリン及びリシン残基をヒドロキシル化することができるものである工程、
b)I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの発現及びヒドロキシル化を可能にする条件下で発現系を培養する工程、
c)分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである本発明によるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチド、特にイン・ビボでヒドロキシル化されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドを回収する工程、
を含む方法に関する。
【0120】
このように上記方法のおかげで、使用する細胞ベースの発現系に応じて、翻訳後修飾、特にヒドロキシル化及びグリコシル化の特定のパターンによって特徴付けられる、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである、イン・ビボでヒドロキシル化され組換えにより調製されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドを得ることが可能であるという利点がある。このようにして、特に、ヒト又は動物の身体の皮膚及び粘膜の炎症性疾患の治療方法に用いるのに望ましい生物学的有効性を有するI型コラーゲン、特に組換えにより調製されたI型コラーゲンペプチドを直接(即ちその後の修飾を必要とせずに)得ることが可能であるという利点がある。
【0121】
好ましい実施形態では、本発明に従って調製された、イン・ビボでヒドロキシル化された組換えコラーゲンペプチドは、生物学的有効性を有する。本発明のさらなる実施形態によれば、工程a)で提供される発現系は、発現されたコラーゲンペプチドのプロリン、リシン、又はプロリン及びリシン残基のヒドロキシル化を引き起こすことができない発現系であり、特に、工程a)で提供される発現系は、プロリルヒドロキシラーゼ及びリシルヒドロキシラーゼ活性を持たない。
【0122】
従って、本発明は、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである、本発明に従って使用可能な組換えコラーゲンペプチド、特にヒドロキシル化されていないコラーゲンペプチドを調製するための方法であって、
a)少なくとも1つの発現カセットを有する発現系を提供する工程であって、発現カセットは、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaであるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドをコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列を有し、発現系は、発現されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドのプロリン、リシン、又はプロリン及びリシン残基をヒドロキシル化することができないものである工程、
b)I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの発現を可能にする条件下で発現系を培養する工程、
c)本発明によるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチド、特に分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaであるヒドロキシル化されていないI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドを回収する工程、
を含む方法を包含する。
【0123】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの発現カセットの少なくとも1つのヌクレオチド配列はコドン最適化されており、これは、提供される発現系(特に提供される細胞ベースの発現系、特に提供される宿主細胞)の翻訳系によって使用されない又は好ましくは使用されないヌクレオチド配列中のコドンが、提供される発現系(特に提供される細胞ベースの発現系、特に提供される宿主細胞)の翻訳系によって好ましくは使用されるコドンに置き換えられるが、それによりコードされるペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列は変わらないことを意味する。
【0124】
本発明の好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列によりコードされるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、特に哺乳動物(例えばヒト、又はウマ、カンガルー、げっ歯類、ブタ、ヒツジ若しくはウシ等の非ヒト哺乳動物)、鳥類(例えばニワトリ)、魚類、両生類、爬虫類等の脊椎動物のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチド、又はクラゲ等の無脊椎動物のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドである。
【0125】
本発明の好ましい実施形態では、工程a)で提供される発現カセットは、配列番号1、3、5又は7で示される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。
【0126】
特に好ましくは、工程a)で提供される発現カセットは、配列番号1、3、5又は7で示されるヌクレオチド配列に対して、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、好ましくは少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。
【0127】
特に好ましくは、ヌクレオチド配列によりコードされるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、配列番号2、4、6又は8で示されるアミノ酸配列を含むI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドである。好ましくは、ヌクレオチド配列によりコードされるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、配列番号2、4、6又は8で示されるアミノ酸配列を含む。
【0128】
本発明のさらに好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列によりコードされるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、配列番号2、4、6又は8で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは少なくとも96%、好ましくは少なくとも97%、好ましくは少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0129】
好ましくは、ヌクレオチド配列によりコードされるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、天然に存在するI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドである。本発明のさらに好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列によりコードされるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、天然に存在するI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドではない。好ましくは、ヌクレオチド配列によりコードされるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、遺伝子操作されたコラーゲンペプチドである。
【0130】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのヌクレオチド配列は、分子量の範囲が16~400Da、特に16~390kDa、特に16~350kDa、特に16~300kDa、特に16~110kDa、特に20~400kDa、特に20~390kDa、特に20~350kDa、特に20~300kDa、特に20~110kDa、特に40~110kDa、特に40~100kDa、特に21~105kDa、特に80~100kDa、特に25~100kDa、特に20~99kDa、特に20kDa、特に25~95kDa、特に30~95kDa、特に35~95kDa、特に92kDa、特に40~50kDa、特に45kDaであるI型コラーゲンペプチドをコードする。
【0131】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明による方法は、方法工程b)において、非変性型の(即ちネイティブな)I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの形成を可能にする条件が選択されることを特徴とする。
【0132】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明による方法は、方法工程b)において、I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの三重らせん形態の形成を可能にする条件が選択されることを特徴とする。
【0133】
特に好ましい実施形態では、本発明による方法は、分子量が均一である特定のI型コラーゲンペプチドの均質且つ単離された調製物を調製することができる。
【0134】
特に好ましい実施形態では、本発明は、このように調製された各々が均一な分子量を有するI型コラーゲンペプチドの均質且つ単離された調製物の混合物も提供する。
【0135】
本発明はまた、本発明による方法により調製された分子量が均一である均質且つ単離されたI型コラーゲンペプチドの溶解(特に加水分解)により、組換えコラーゲンペプチド加水分解物を提供するものである。特に、本発明は、本発明によるヒト又は動物の身体の皮膚及び粘膜の炎症性疾患の経口治療のために、分子量が均一である均質且つ単離されたI型コラーゲンペプチド、それらの混合物又はそれらの加水分解物の両方を提供する。
【0136】
本発明によれば、本発明による方法は、方法工程b)又はc)に続いて方法工程d)において、発現されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの溶解(特に加水分解)により、I型コラーゲンペプチド加水分解物を得ることを特徴とする。
【0137】
方法工程d)により本発明に従って得られるI型コラーゲンペプチド加水分解物は、このI型コラーゲンペプチド加水分解物の形態で、又は1種以上のI型コラーゲンペプチドを単離した後に、好ましくはその場合は均質で且つ単離された状態で、本発明によるI型コラーゲンペプチドとして使用することができる。
【0138】
本発明の特に好ましい実施形態では、存在する均質且つ単離されたI型コラーゲンペプチドを互いに混合してI型コラーゲンペプチドの混合物とする(ここで全てのI型コラーゲンペプチドの分子量は少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである)こともできる。
【0139】
したがって、特に好ましい実施形態では、本発明はまた、分子量が均一である均質且つ単離された形態で存在するI型コラーゲンペプチド、或いは組換え若しくは天然の(特に組換え)I型コラーゲンペプチドとの混合物として存在する、又は組換えI型コラーゲン、特に組換えI型コラーゲンペプチドの加水分解物として存在するI型コラーゲンペプチドに関する。
【0140】
本発明に従って使用可能な組換えI型コラーゲンペプチドをコードするヌクレオチド配列は、例えば国際特許出願公開第2005/012356号、国際特許出願公開第01/34646号、国際特許出願公開第O1/34647号及び国際特許出願公開第01/34801号に記載されているように、従来方法で得ることができる。
【0141】
本発明の好ましい実施形態では、好ましくは本発明に従って前述の方法の1つによって調製された、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaである、ヒト又は動物の身体の皮膚及び粘膜の炎症性疾患の治療のための治療法に用いるための、本発明に従って使用可能なI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、ヒドロキシル化されていない、部分的にヒドロキシル化されている又は完全にヒドロキシル化されているI型コラーゲンペプチドであり、好ましくはヒドロキシル化されていないI型コラーゲンペプチド、好ましくは部分的にヒドロキシル化されているI型コラーゲンペプチド、好ましくは完全にヒドロキシル化されているI型コラーゲンペプチドである。
【0142】
本発明の好ましい実施形態では、ヒト又は動物の身体の皮膚及び粘膜の炎症性疾患を治療するための治療方法に用いるための、本発明に従って使用可能な、好ましくは上記の方法のいずれかによって調製された、分子量が少なくとも16kDa、特に少なくとも20kDaであるI型コラーゲン、特に天然若しくは組換えI型コラーゲンペプチドは、グリコシル化されたコラーゲンペプチドである。好ましくは、I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、イン・ビボでグリコシル化され、より好ましくはエクス・ビボでグリコシル化される。
【0143】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本発明に従って使用可能な、好ましくは本発明による方法の1つによって調製されるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、グリコシル化されていないI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドである。
【0144】
本発明によれば、「生物学的有効性」という用語は、好ましくは、本発明に従って使用可能なI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの免疫調節能力、特に末梢単球から免疫抑制性M2マクロファージを再生する能力、及び/又は(特にT前駆細胞から)免疫抑制性Tサプレッサー細胞を再生する能力を意味すると理解される。
【0145】
本発明によれば、「生物学的有効性」という用語は、好ましくは、本発明に従って使用可能なI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの、炎症誘発性サイトカイン(特にTNFα、IL-6、IL-1β及びIFNγ)の形成及び活性を抑制する能力、又は抗炎症性サイトカイン(特にIL-4、IL-10及びTGF-β)の合成及び活性を刺激する能力、特にその両方を意味するものと理解される。
【0146】
本発明によれば、「生物学的有効性」という用語は、好ましくは、本発明に従って使用可能なI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドが、免疫調節のため、特に免疫抑制性M2マクロファージの(特に末梢単球からの)再生のために、及び/又は、炎症誘発性サイトカイン(特にTNFα、IL-6、IL-1β及びIFNγ)の形成を抑制するための免疫抑制性Tサプレッサー細胞の(特にT前駆細胞からの)再生のために、そして抗炎症性サイトカイン(特にIL-4、IL-10及びTGF-β)の合成を刺激するために、使用されることを意味すると理解される。
【0147】
特に好ましい実施形態では、生物学的有効性は、特に、物質の活性の免疫調節(特に刺激及び抑制)、及び抗炎症性サイトカインや炎症誘発性サイトカインについての当業者に公知である検出方法によって決定される。特に、本発明の意味における生物学的有効性は、実施例2~4に記載の方法によって決定される。本発明によれば、「生物学的有効性」という用語は、好ましくは、本発明に従って使用可能なI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの経口免疫寛容を誘導する能力を意味するとも理解される。特に好ましい実施形態では、経口免疫寛容の存在は、経口免疫寛容を誘導する物質の能力を決定するための当業者に知られている検出方法、特に実施例2~4に記載の方法によって決定される。
【0148】
本発明の文脈において、炎症誘発性サイトカインとは、特にTNFα、IL-6、IL-1β及びIFN-ガンマ(IFNγ)である。
【0149】
本発明の文脈では、抗炎症性サイトカインとは、特にIL-4、IL-10、TGF-βである。
【0150】
本発明の文脈では、「抑制」という用語は、タンパク質の合成の部分的又は完全な抑制を意味すると理解され、これは特に、タンパク質合成の減少若しくは阻害として、又はタンパク質に関連するmRNA合成の減少若しくは阻害として現れ得る。
【0151】
本発明の文脈において、「コラーゲン」という用語は、当分野において一般的な意味で、特に、例えば国際特許出願公開第01/34646号に定義されているように理解される。さらに好ましい実施形態では、「コラーゲン」という用語は、配列グリシン-プロリン、グリシン-4-ヒドロキシプロリン又はグリシン-X-4-ヒドロキシプロリン、好ましくは反復モチーフ(Gly-X-Y)n(X及びYは任意のアミノ酸であってもよく、好ましくはプロリン及び4-ヒドロキシプロリンである)を有するコラーゲンタンパク質又はペプチドを意味すると理解される。特に好ましくは、「コラーゲン」という用語は、反復モチーフ(Gly-Pro-Y)n及び/又は(Gly-X-Hyp)m(X及びYは任意のアミノ酸であってもよい)を有するペプチドを意味すると理解される。
【0152】
本発明による「I型コラーゲン」は、前述に従って理解される当分野において一般的な意味でのコラーゲンであり、I型コラーゲンは、天然に存在するI型コラーゲンのアミノ酸配列、特に脊椎動物(特にブタ、ヒツジ、ウシ、げっ歯類、ウマ、鳥、魚、爬虫類若しくは両生類)又は無脊椎動物(特にクラゲ)のI型コラーゲンのアミノ酸配列を有する。
【0153】
I型コラーゲンは、本明細書では一本鎖コラーゲンペプチドとも呼ばれる単量体コラーゲンペプチドとして存在してもよいし、少なくとも2つ、特に3つのコラーゲンペプチド(特に異なる若しくは同じ一本鎖コラーゲンペプチド)を有する二量体若しくは三量体、特に三量体として存在してもよい。特に、I型コラーゲンは、三重らせんのI型コラーゲンペプチド、特にネイティブなI型コラーゲンとして存在し得る。
【0154】
本発明の文脈において、「I型コラーゲンペプチド」という用語は、上記で定義したI型コラーゲンに存在するアミノ酸配列を有する一本鎖のI型コラーゲンペプチドを意味すると理解され、ここでペプチドはオリゴペプチド又はポリペプチドである。特に、I型コラーゲンペプチドは、化学的に修飾された形態、特にヒドロキシル化及び/又はグリコシル化された形態で存在していてもよいし、あるいは非修飾の状態であってもよい。
【0155】
好ましくは、本発明に従って使用される組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、天然に存在するI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの配列改変体、特に機能保存配列改変体を有することができる。
【0156】
従って、「I型コラーゲン」とは、天然に存在するI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの機能保存配列改変体であって、特にこれらが天然に存在するI型コラーゲンのアミノ酸配列に対してアミノ酸レベルで少なくとも80%、特に少なくとも85%、特に少なくとも90%、特に少なくとも95%、特に少なくとも96%、特に少なくとも97%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有する場合も意味すると理解される。本発明によれば、組換えI型コラーゲンが、天然に存在するI型コラーゲンに存在するアミノ酸配列と全く同じか、又は天然に存在するI型コラーゲンと比較して、特に脊椎動物(特にブタ、ヒツジ、ウシ、げっ歯類、カンガルー、ウマ、鳥類、爬虫類、両生類若しくは魚類)又は無脊椎動物(特にクラゲ)由来の天然に存在するI型コラーゲンと比較して、アミノ酸配列同一性が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%である機能保存配列改変体を有する場合、特にウシ由来の天然に存在するI型コラーゲンアミノ酸配列と比較してこのアミノ酸同一性が存在する場合に、I型コラーゲンは存在する。
【0157】
本発明の文脈において、アミノ酸配列同一性は、パラメーターBL50マトリックス(15:-5)、Open/ext:-12/-2で、Smith-Watermanアルゴリズム(SSE2, Michael Farrar, 2006, 7.2 November 2010)を使用して決定される。
【0158】
本発明によれば、「機能保存配列改変体」という用語は、所与の、特に天然に存在するアミノ酸配列の改変、特に単一又は複数のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失であって、これにより所与のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列が得られるが、改変されたアミノ酸配列は、所与のアミノ酸配列に特徴的な機能、特にその生物学的有効性を保持しているものを意味すると理解される。
【0159】
好ましくは、「機能保存配列改変体」とは、所与の、特に天然に存在するアミノ酸配列の改変であって、所与のアミノ酸配列に特徴的な機能、特に生物学的効能が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、好ましくは100%保持される改変を意味すると理解される。さらに好ましくは、本発明によれば、「機能保存配列改変体」とは、改変アミノ酸配列が所与のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%の配列相同性を有する、所与のアミノ酸配列の改変を意味すると理解される。
【0160】
特に好ましくは、配列改変体、特に本発明の文脈における「機能保存配列改変体」は、所与の(特に天然に存在する)アミノ酸配列の改変であって、特定の化学的-物理的特性を有する1つ以上のアミノ酸が、各々同一若しくは類似の化学的-物理的特性を有する1つ以上のアミノ酸に置き換えられている-特に、例えば非極性側鎖を有するアミノ酸(Ala、Val、Met、Leu、Ile、Pro、Trp、Phe等)が非極性側鎖を持つ別のアミノ酸(Ala、Val、Met、Leu、Ile、Pro、Trp、Phe等)に置き換えられている、極性中性側鎖を持つアミノ酸(Tyr、Thr、Gln、Gly、Ser、Cys、Asn等)が極性中性側鎖を持つ別のアミノ酸(Tyr、Thr、Gln、Gly、Ser、Cys、Asn等)に置き換えられている、酸性側鎖を持つアミノ酸(Glu、Asp等)が酸性側鎖を持つ別のアミノ酸(Glu、Asp等)に置き換えられている、及び/又は塩基性側鎖を持つアミノ酸(Lys、Arg、His等)が塩基性側鎖を持つ別のアミノ酸(Lys、Arg、His等)に置き換えられているものである。この実施形態によれば、所定のアミノ酸配列の化学的-物理的特性は、「機能保存配列改変体」において保持されるか、わずかにしか変化しない。
【0161】
さらなる実施形態では、配列改変体、特に「機能保存配列改変体」は、所与のアミノ酸配列、特に天然に存在するアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸、好ましくは、所与のアミノ酸配列、特に天然に存在するアミノ酸配列の少なくとも1つの非必須アミノ酸(特にAla、Asn、Asp、Glu、Ser)が、少なくとも1つの極めて特定のアミノ酸、特に少なくとも1つの必須アミノ酸(特にIle、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Val、His、Cys、Tyr、特に好ましくはTrp)に置き換えられており、所与のアミノ酸配列、特に天然に存在するアミノ酸配列に特徴的である機能、特に生物学的有効性、特に本発明による生物学的有効性(特に実施例2に示される実証)が保持されている、という事実をなす。
【0162】
本発明によれば、配列改変体、特に「機能保存配列改変体」とは、所与のアミノ酸配列、特に天然に存在するアミノ酸配列の改変であって、少なくとも1つのアミノ酸、好ましくは少なくとも1つの必須アミノ酸(特にIle、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Val、His、Cys、Tyr、特に好ましくはTrp)が、所与のアミノ酸配列、特に天然に存在するアミノ酸配列に付加されており、所与のアミノ酸配列、特に天然に存在するアミノ酸配列に特徴的な機能が保持されており、特に本発明の生物学的有効性、特に実施例2に示した実証による生物学的有効性が保持されている改変を意味するものと理解される。本発明に従って、少なくとも1つのアミノ酸、好ましくは少なくとも1つの必須アミノ酸(特にIle、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Val、His、Cys、Tyr、特に好ましくはTrp)を、アミノ酸配列のN末端、C末端及び/又は内部に付加することができる。
【0163】
本発明の文脈において、「アミノ酸修飾」という用語は、組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの合成前、合成後又は合成中に起こり得る、I型コラーゲンペプチドの元のアミノ酸骨格、特に1つ以上のタンパク質原性アミノ酸を保持したままの、1つ以上のアミノ酸の化学修飾を意味する。したがって、この用語は、本発明によるI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドを合成するための化学的に修飾されたアミノ酸の使用と、I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの合成後又は合成中のアミノ酸の化学修飾の両方を含む。コラーゲンペプチドの典型的なアミノ酸修飾は、特にプロリン残基及びリシン残基のヒドロキシル化、並びにヒドロキシル化されたリシン残基のグリコシル化である。しかしながら、本発明によれば、この用語は、リン酸化、N-グリコシル化、アセチル化、メチル化又はミリストイル化等のアミノ酸の他の化学修飾も含む。
【0164】
本発明の文脈において、組換えI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)、又は組換えにより調製されたI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)とは、発現系を用いたバイオテクノロジーによる組換え調製により回収されたI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドを意味すると理解される。本発明によれば、組換えI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)、又は組換えにより調製されたI型コラーゲン(特にI型コラーゲンペプチド)は、天然源から回収されたものではないという共通点を有する。
【0165】
本発明の特に好ましい実施形態では、組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、このI型コラーゲン又はI型コラーゲンペプチドからなる均質な調製物の形態で存在し、特にこのような調製物は、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%、好ましくは100重量%のI型コラーゲン又はI型コラーゲンペプチドを含む。好ましい実施形態では、均質な調製物中には、特定のサイズ、即ち特定の分子量、即ち単一の分子種、特に同一のアミノ酸配列を有するI型コラーゲン又はI型コラーゲンペプチドのみが存在する。本発明の好ましい実施形態では、組換えI型コラーゲン又はI型コラーゲンペプチドは、単離された形態で存在する。本発明の特に好ましい実施形態では、組換えI型コラーゲン又はI型コラーゲンペプチドは、他のタンパク質又はペプチドを含まず、特に他の物質(例えば不純物)を含まず、特に非タンパク質物質を含まず、塩を含まず、及び/又は他のタンパク質又はペプチドを含まない。
【0166】
本発明の特に好ましい実施形態では、分子量が少なくとも16kDaである組換えI型コラーゲン又はI型コラーゲンペプチドは、分子量が16kDa未満であるコラーゲン、特にコラーゲンペプチドも含まない。
【0167】
本発明の特に好ましい実施形態では、天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、このI型コラーゲン又はI型コラーゲンペプチドからなる均質な調製物の形態で存在し、特にこのような調製物は、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも98重量%、特に少なくとも99重量%、好ましくは100重量%のI型コラーゲン又はI型コラーゲンペプチドを含む。好ましい実施形態では、均質な調製物中には、特定のサイズ、即ち特定の分子量、即ち単一の分子種、特に同一のアミノ酸配列を有するI型コラーゲン又はI型コラーゲンペプチドのみが存在する。本発明の好ましい実施形態では、天然のI型コラーゲン又はI型コラーゲンペプチドは、単離された形態で存在する。本発明の特に好ましい実施形態では、天然のI型コラーゲン又はI型コラーゲンペプチドは、他のタンパク質又はペプチドを含まず、特に他の物質(例えば不純物)を含まず、特に非タンパク質物質を含まず、塩を含まず、及び/又は他のタンパク質又はペプチドを含まない。
【0168】
本発明の特に好ましい実施形態では、分子量が少なくとも16kDaである天然のI型コラーゲン又はI型コラーゲンペプチドは、分子量が16kDa未満であるコラーゲン、特にコラーゲンペプチドも含まない。
【0169】
本発明の文脈において、分子量は好ましくはゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。
【0170】
本発明の文脈において、「ゼラチン」という用語は、当分野において一般的な意味で、特に、例えば国際特許出願公開第01/34646号に定義されているように理解される。
【0171】
本発明の文脈において、「組換えDNA」という用語は、遺伝子工学的手法によりイン・ビロトロで調製された人工的に調製又は操作されたDNA分子を指す。好ましい実施形態では、組換えDNAは、起源の異なる生物の成分から構成される。
【0172】
本発明の文脈において、「発現カセット」という用語は、このセグメントにコードされた情報のRNA(特にmRNA)への転写を担うDNAセグメントであって、少なくとも1つのプロモーターとタンパク質をコードするヌクレオチド配列を有する(一般的には少なくとも1つのプロモーター、少なくとも1つのタンパク質をコードするヌクレオチド配列、及び任意でターミネーターを有する)DNAセグメントを意味すると理解される。
【0173】
本発明の文脈において、「ヌクレオチド配列」とは、核酸、特に核酸鎖(特にDNA又はRNA鎖)のヌクレオチドの配列(特に連続配列)を意味すると理解される。したがって、「ヌクレオチド配列」は、情報単位としても、この情報を物理的に発現するDNA又はRNA鎖としても理解される。
【0174】
本発明の文脈において、「発現系」とは、目的のタンパク質の制御された生合成が行われ得る系であると理解される。本発明によれば、「発現系」という用語は、タンパク質の生合成に必要な成分が細胞内に存在しない、即ちタンパク質の生合成が細胞外で行われる無細胞発現系と、タンパク質の生合成が生細胞内で行われる細胞ベースの発現系の両方を含む。本発明の文脈において、無細胞発現系とは、好ましくは、タンパク質の生合成に必要な成分、特に翻訳系と転写系を有する、大腸菌、昆虫細胞、小麦胚芽、タバコ細胞又は哺乳動物細胞(特にCHO細胞やウサギ由来の網状赤血球から得た溶解産物又は抽出物である。本発明による方法の一つで無細胞発現系を使用する場合、「培養する」という用語は「インキュベートする」と同義である。
【0175】
本発明の文脈において、「宿主細胞」とは、外来DNA、特に組換えDNAによりコードされたペプチド又はタンパク質を発現できる生細胞であると理解される。
【0176】
本発明によれば、方法工程c)に従って「I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドを回収する」という用語は、例えば遠心分離法(特に、分画遠心分離法及び/又は密度勾配遠心分離法)、クロマトグラフィー法(特に、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー及び/又は高速液体クロマトグラフィー)、電気泳動法、濾過法及び/又は抽出法等の公知の単離方法によって、複数の成分を含む組成物からI型コラーゲン又はI型コラーゲンペプチドを単離するための当業者に知られた方法を意味すると理解され、幾つかの成分を含む組成物からの当該成分の濃縮及び精製は、好ましくは幾つかの単離方法を連続的に適用することによって達成することができる。必要に応じて、抽出前、抽出後又は抽出中に、C末端及び/又はN末端のプロコラーゲン断片を切断してコラーゲンを得ることができる。
【0177】
発現されたI型コラーゲンペプチドのフィブリル化、化学修飾及び分泌も、好ましくは方法工程b)の条件の範囲内で行うことができる。
【0178】
本発明によれば、「I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの発現を可能にする条件」とは、特に温度、圧力、時間、光、並びに誘導剤及び/又は抑制剤の存在又は不在など、I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの発現を活性化又は増強する条件を意味すると理解される。好ましい実施形態では、I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの発現は、高細胞密度発酵の範囲内で、特に高圧下、好ましくは高気圧下で行われる。I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの発現を可能にする具体的な条件は、当業者に知られており、使用される発現系及び使用される発現カセット、特にその中に含まれるプロモーターに依存する。I型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの発現は、発現カセットの構造に応じて、構成的発現であっても誘導的発現であってもよい。
【0179】
本発明の文脈において、「皮膚及び粘膜の炎症性疾患」の経口治療のための治療法とは、皮膚及び粘膜の炎症性疾患の予防及び/治療、特に皮膚及び粘膜の免疫調節性炎症性疾患(特に腸管粘膜疾患)の治療のための方法であって、I型コラーゲンの投与が経口により行われる方法を意味すると理解される。
【0180】
本発明が意味する皮膚及び粘膜の炎症性疾患とは、特に、自己免疫反応、特に過剰な免疫反応によって引き起こされる皮膚及び粘膜の疾患であり、特に、皮膚全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、硬化性苔癬、神経皮膚炎、乾癬、酒さ、紅色苔癬、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、にきび等の皮膚疾患、及びクローン病、セリアック病、潰瘍性大腸炎等の粘膜疾患、特に腸管粘膜疾患などが挙げられる。
【0181】
本発明によれば、「皮膚及び粘膜の炎症性疾患」の経口治療のための治療法は、好ましくは、内因性コラーゲン、特に内因性I型コラーゲン、特に皮膚及び粘膜組織に存在する内因性I型コラーゲンに対する経口免疫寛容を誘導するための方法も意味すると理解される。
【0182】
本発明の文脈において、皮膚及び粘膜の「免疫調節性」炎症性疾患とは、皮膚及び粘膜の炎症性疾患の全部又は少なくとも一部が、自己免疫疾患及び/又は(特にI型コラーゲンに対する)免疫不寛容によって引き起こされることを意味すると理解される。
【0183】
本発明の文脈において、「含む」及び「有する」という用語は、これらの用語によって明示的に含まれる要素に加えて、明示的に言及されていないその他の要素を追加できることを意味すると理解される。また、本発明の文脈において、これらの用語は、明示的に言及された要素のみが含まれ、それ以外の要素が存在しないことも意味するものと理解される。この特定の実施形態では、「含む」及び「有する」という用語の意味は、「からなる」という用語と同義である。さらに、「含む」及び「有する」という用語は、明示的に言及された要素に加えて、言及されていないが機能的及び質的に従属的な性質を有するその他の要素も含む組成物も包含する。この実施形態では、「含む」及び「有する」という用語は、「から本質的になる」という用語と同義である。
【0184】
本発明の文脈において、小数点第1位及び第2位、又は小数点第2位が示されていない場合、これらの桁は0であるものとする。
【0185】
本発明の文脈では、「及び/又は」という用語は、「及び/又は」という用語によって接続されるグループのすべての構成要素が、互いに代替的に、及び互いに累積的に、任意の組み合わせで開示されていることを意味すると理解される。これは、「A、B及び/又はC」という表現については、以下の開示内容、すなわちa)(A若しくはB若しくはC)、又はb)(A及びB)、又はc)(A及びC)、又はd)(B及びC)、又はe)(A及びB及びC)と理解されるべきであることを意味する。
【0186】
さらなる好ましい実施形態を従属請求項に示す。
【0187】
以下、本発明の一般的な考え方を限定することなく、例示的な配列、それを用いた実施形態、及び関連する図を参照して本発明を説明する。
【0188】
配列番号1は、16kDaウシI型組換えコラーゲンペプチド(CP16)(COL1A1型;)をコードするヌクレオチド配列を表す。
配列番号2は、配列番号1で示されるコラーゲンペプチドのアミノ酸配列を表す。
配列番号3は、20kDaウシI型組換えコラーゲンペプチド(CP20)(COL1A1型)をコードするヌクレオチド配列を表す。
配列番号4は、配列番号3で示されるコラーゲンペプチドのアミノ酸配列を表す。
配列番号5は、45kDaウシI型組換えコラーゲンペプチド(CP45)(COL1A1型)をコードするヌクレオチド配列を表す。
配列番号6は、配列番号5で示されるコラーゲンペプチドのアミノ酸配列を表す。
配列番号7は、92kDaウシI型組換えコラーゲンペプチド(CP90)(COL1A1型)をコードするヌクレオチド配列を表す。
配列番号8は、配列番号7で示されるコラーゲンペプチドのアミノ酸配列を表す。
配列番号9は、8kDa(7912Da)のヒドロキシル化されたウシ対照コラーゲンペプチド(以下CP9と称する)のアミノ酸配列を表す。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【
図1】M2マクロファージ(
図1及び2)、分化したマクロファージ(
図3及び4)、Tサプレッサー細胞(
図5~8)、及び皮膚線維芽細胞(
図9~11)における抗炎症性サイトカイン、炎症誘発性サイトカイン、及び表面マーカーCD86の形成の刺激又は阻害を図表化したものを示す。
【
図2】M2マクロファージ(
図1及び2)、分化したマクロファージ(
図3及び4)、Tサプレッサー細胞(
図5~8)、及び皮膚線維芽細胞(
図9~11)における抗炎症性サイトカイン、炎症誘発性サイトカイン、及び表面マーカーCD86の形成の刺激又は阻害を図表化したものを示す。
【
図3】M2マクロファージ(
図1及び2)、分化したマクロファージ(
図3及び4)、Tサプレッサー細胞(
図5~8)、及び皮膚線維芽細胞(
図9~11)における抗炎症性サイトカイン、炎症誘発性サイトカイン、及び表面マーカーCD86の形成の刺激又は阻害を図表化したものを示す。
【
図4】M2マクロファージ(
図1及び2)、分化したマクロファージ(
図3及び4)、Tサプレッサー細胞(
図5~8)、及び皮膚線維芽細胞(
図9~11)における抗炎症性サイトカイン、炎症誘発性サイトカイン、及び表面マーカーCD86の形成の刺激又は阻害を図表化したものを示す。
【
図5】M2マクロファージ(
図1及び2)、分化したマクロファージ(
図3及び4)、Tサプレッサー細胞(
図5~8)、及び皮膚線維芽細胞(
図9~11)における抗炎症性サイトカイン、炎症誘発性サイトカイン、及び表面マーカーCD86の形成の刺激又は阻害を図表化したものを示す。
【
図6】M2マクロファージ(
図1及び2)、分化したマクロファージ(
図3及び4)、Tサプレッサー細胞(
図5~8)、及び皮膚線維芽細胞(
図9~11)における抗炎症性サイトカイン、炎症誘発性サイトカイン、及び表面マーカーCD86の形成の刺激又は阻害を図表化したものを示す。
【
図7】M2マクロファージ(
図1及び2)、分化したマクロファージ(
図3及び4)、Tサプレッサー細胞(
図5~8)、及び皮膚線維芽細胞(
図9~11)における抗炎症性サイトカイン、炎症誘発性サイトカイン、及び表面マーカーCD86の形成の刺激又は阻害を図表化したものを示す。
【
図8】M2マクロファージ(
図1及び2)、分化したマクロファージ(
図3及び4)、Tサプレッサー細胞(
図5~8)、及び皮膚線維芽細胞(
図9~11)における抗炎症性サイトカイン、炎症誘発性サイトカイン、及び表面マーカーCD86の形成の刺激又は阻害を図表化したものを示す。
【
図9】M2マクロファージ(
図1及び2)、分化したマクロファージ(
図3及び4)、Tサプレッサー細胞(
図5~8)、及び皮膚線維芽細胞(
図9~11)における抗炎症性サイトカイン、炎症誘発性サイトカイン、及び表面マーカーCD86の形成の刺激又は阻害を図表化したものを示す。
【
図10】M2マクロファージ(
図1及び2)、分化したマクロファージ(
図3及び4)、Tサプレッサー細胞(
図5~8)、及び皮膚線維芽細胞(
図9~11)における抗炎症性サイトカイン、炎症誘発性サイトカイン、及び表面マーカーCD86の形成の刺激又は阻害を図表化したものを示す。
【
図11】M2マクロファージ(
図1及び2)、分化したマクロファージ(
図3及び4)、Tサプレッサー細胞(
図5~8)、及び皮膚線維芽細胞(
図9~11)における抗炎症性サイトカイン、炎症誘発性サイトカイン、及び表面マーカーCD86の形成の刺激又は阻害を図表化したものを示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0190】
実施例1:組換えI型コラーゲンの調製
プロリン残基をヒドロキシル化することができるコマガタエラ酵母(Komagataella phaffi)株において、配列番号1、3、5又は7で示されるヌクレオチド配列を有する発現カセットのそれぞれを組換えにより発現させることにより、配列番号2、4、6及び8で示されるアミノ酸配列を有する組換えにより調製されたヒドロキシル化ウシI型コラーゲンペプチド(CP16、CP20、CP45及びCP90とした)を回収した。同様に、実験対照として、国際特許出願公開第WO2020/127929号から公知であるコラーゲンペプチドCP9(配列番号9)を使用した。
【0191】
各ケースにおいてコラーゲンペプチドの組換え発現に使用した菌株は、それぞれのウシI型コラーゲンペプチドをコードするヌクレオチド配列、又はミミウイルス(P4H)由来の単量体プロリル-4-ヒドロキシラーゼをコードするヌクレオチド配列をゲノムに組み込むことで得た。
【0192】
実施例2:概念の実証-実施例1のI型コラーゲンペプチドによる免疫及びサイトカインの調節
パイエル板の下流にある免疫系細胞について、以下の研究を行った。
【0193】
腸の内層は、粘液を分泌する腸細胞と、その下にある緩やかな結合組織の粘膜固有層とからなる。粘膜には腸関連リンパ組織(GALT)が浸潤しており、GALTは免疫系の一部であり、腸への病原体の侵入から身体を守ることに関与している。
【0194】
GALTはリンパ組織の腸間膜リンパ節、いわゆるパイエル板からなる。リンパ濾胞は上皮層及び特化したM細胞に囲まれており、これらはゆるい微絨毛境界(reduced microvilli border)とグリコカリックス(glycocalyx)によって特徴付けられ、腸の内側に露出している。
【0195】
M細胞は、可溶性タンパク質、ペプチド、常在微生物、病原性微生物、ウイルス等の高分子の取込みに特化している。パイエル板はトランスサイトーシスの後、これらの高分子を認識し、評価する。抗原性化合物に応じて、これらは身体の免疫反応のオン・オフを切り替える。病原体はM細胞の基底膜にある単核食細胞やリンパ球に運ばれる。
【0196】
ネイティブなI型コラーゲンは、その「活性」エピトープとコラーゲンに付いている糖ペプチド側鎖を介してパイエル板により認識される。
【0197】
ネイティブなI型コラーゲンはマクロファージと樹状細胞を活性化し、リンパ濾胞の中のT細胞前駆体を活性化してI型コラーゲンの制御性T細胞へと分化させる。
【0198】
その後、成熟したT細胞は胸管を経由して血流に入り、標的組織に到達した後、抗炎症性サイトカインであるIL-10、IL-4、TGF-βを放出することで、組織の免疫反応を減衰させるメディエーターを放出する。さらに、炎症誘発性サイトカインTNF-αは標的組織でダウンレギュレーションされる。
【0199】
パイエル板に対するコラーゲンペプチドの直接的効果に関する研究は、実験的に実現するのが非常に難しく、多くの方法論的問題をはらんでいる。このため、試験するペプチドが免疫系の下流の細胞系に及ぼす影響を調べ、特異的な免疫反応に及ぼす影響を実証した。
【0200】
実施例1に従って組換えにより調製したI型コラーゲンペプチドの免疫調節効果を、ヒト末梢血単球(PBMC)において測定した。この目的のために、3H-Biomedical AB社(スウェーデン)から購入した細胞(3H10-25)を使用した。
【0201】
PBMC細胞をまず、ヒトフィブロネクチン(C-43060、PromoCell、ドイツ)でコートした細胞培養フラスコ内のマクロファージ基礎培地DXF(C-28057、PromoCell、ドイツ)で培養した。培養液に、関連サプリメントミックス(C-28055のサプリメント、PromoCell、ドイツ)と、1%アムホテリシン及び1%ペニシリン-ストレプトマイシンを補充した。4~24時間の静置培養後、死滅した非付着性単球をデカントした。それぞれ4μg/mLの組換えI型コラーゲンを添加することで、付着した単球の2b型又は2c型の免疫抑制性マクロファージへの分極が誘導された。この細胞を、分析するサンプルとともにそれぞれ6日間インキュベートした。その後、大腸菌由来のリポ多糖(LPS、L6529、Merck、ドイツ)を1μg/mL添加して、活性化マクロファージを極性化した。
【0202】
極性化後、特異的細胞分化マーカー(CD)を用いて、生成したマクロファージの分化パターンを調べた。炎症誘発性M1マクロファージへの又は免疫抑制性M2マクロファージへの単球の分化は、特異的マーカーを用いて検出した。この目的のために、ELISA(酵素結合免疫吸着測定法)を用いてM2表面マーカーであるCD86、CD14、及びCD163を測定した。CD86(850590096 Diaclone、Holzel Diagnostics、ドイツ)、CD14(850780096 Diaclone、Hoelzel Diagnostics、ドイツ)、及びCD163(ELH-CD163 RayBiotech、Hoelzel Diagnostics)については、製造者の説明書に従ってそれぞれの実証を正確に行った。炎症誘発性M1マクロファージへの分化を除外するために、M1マクロファージマーカーであるCD86(850590096 Diaclone, Hoelzel Diagnostics、ドイツ)及びCD80(EK0707 Boster PicoKine, Hoelzel Diagnostics、ドイツ)も分析した。
【0203】
さらに、培養上清中の炎症誘発性サイトカイン(TNFα、IFNγ)及び抗炎症性サイトカイン(IL-10)の形成に対するI型コラーゲンペプチドの効果を調べた。TNF(EK0525 Boster PicoKine, Hoelzel Diagnostics、ドイツ)、IL-10(950060096, Diaclone, Hoelzel Diagnostics、ドイツ)及び IFNγ(EK0373, Boster PicoKine, Hoelzel Diagnostics、ドイツ)について、ELISA法を用いて製造者の説明書に従って測定した。
【0204】
M1又はM2マクロファージへの単球の分化は、特殊な分化培地(C-28055、PromoCell、ドイツ)と特定の培養添加物を用いて確認した。上記の代わりに、マクロファージ分化培地(C-28055、PromoCell、ドイツ)で単球を培養し、M1分化を示すGM-CSF補充ミックス(C60420A、PromoCell、ドイツ)又はM2分化を示すM-CSF GM-CSF補充ミックス(C60442A、PromoCell、ドイツ)を添加した。
【0205】
上記のI型コラーゲンペプチドCP90(分子量約92kDa)、CP45(分子量約45kDa)、CP20(分子量約20kDa)、CP16(分子量約16kDa)、及びCP9(分子量約8kDa)を試験に使用した。
【0206】
以下に示すデータは、試験した92、45、20及び16kDaのコラーゲンペプチドが、末梢血単球から免疫抑制性M2マクロファージを再生させる上で、統計学的に有意な有益効果を示したことを表している。
【0207】
M2マクロファージに対して研究を行った。
図1及び表1には、表面マーカーCD86に関して、未処理の対照細胞を基準とした平均値(n=6)が示されている。特に断りのない限り、各測定値は対照群と統計学的な有意差(p<0.05)があった。n.s.は、対照群と有意差がないことを示す。
【0208】
【0209】
図2と表2には、IL-10に関して、未処理の対照細胞を基準とした平均値(n=6)が示されている。特に断りのない限り、各測定値は対照群と統計学的な有意差(p<0.05)があった。n.s.は、対照群と有意差がないことを示す。
【0210】
【0211】
M2マクロファージ表面マーカーCD86が最大3.5倍増加し(
図1)、抗炎症性サイトカインIL-10の合成が1.8倍増加した(
図2)ことから、試験した92、45、20、及び16 kDaのコラーゲンペプチドは、末梢血単球からの免疫抑制性M2マクロファージの再生において、対照群と比較して統計学的に有意な有益効果を示した。対照的に、いずれの試験においても、短いコラーゲンペプチドCP9(8.0 kDa)を適用した場合では、未処理の対照群と比べて統計的に有意な効果は見られなかった。
【0212】
分化したマクロファージ細胞において、サイトカイン合成プロフィールは、調査したI型コラーゲンペプチドが抗炎症効果を持つことを示した。さらに、炎症誘発性サイトカインの合成は抑制され、抗炎症性IL-10の合成が誘導された。
【0213】
分化したマクロファージについて、以下に述べる研究を行った。
図3及び表3には、IL-10に関して、未処理の対照細胞を基準とした平均値(n=6)が示されている。特に断りのない限り、各測定値は対照群と統計学的な有意差(p<0.05)があった。n.s.は、対照群と有意差がないことを示す。
【0214】
【0215】
分化したマクロファージにおいて、IL-10サイトカインの合成が5.75倍まで増加したことで、調べたI型コラーゲンペプチドの統計的に有意な抗炎症効果が示された(
図3)。対照的に、CP9ペプチドは非常に弱い抗炎症効果しか示さなかった。
【0216】
上述のIL-10のデータにより証明されたように、試験ペプチドの実証された抗炎症効果を、さらなる実験で確認した。
【0217】
分化マクロファージについて、以下に述べる研究も行った。
図4と表4には、TNF-αに関して、未処理の対照細胞を基準とした平均値(n=6)が示されている。特に断りのない限り、各測定値は対照群と統計学的な有意差(p<0.05)があった。n.s.は、対照群と有意差がないことを示す。
【0218】
【0219】
試験したコラーゲンペプチドを適用すると、炎症誘発性サイトカインTNFαが統計的に有意に、最大0.35倍まで減少した(
図4)。CP9を除き、試験した全てのペプチドが、明らかなTNFα減少効果を示した。
【0220】
実施例3:概念の実証-実施例1に記載したI型コラーゲンペプチドによるナイーブCD4+T前駆細胞の刺激
CP90、CP45、CP20及びCP16により単球をM2マクロファージに誘導した後(実施例2)、マクロファージ基礎培地DXF(C-28057、PromoCell、ドイツ)をT細胞培養培地(3H800-50-50、3H Biomedical AB、スウェーデン)に交換した。分化したM2マクロファージに、ナイーブCD4+ T前駆細胞(3H31-k、3H Biomedical AB社、スウェーデン)を加えた。ナイーブT前駆細胞と分化したM2マクロファージとの直接的な細胞間接触及びそれらのサイトカインカクテルを介して、T前駆細胞はコラーゲン特異的(CP90、CP45、CP20又はCP16)制御性Tサプレッサー細胞へと分化する。
【0221】
特異的T細胞クローンは低頻度でしか形成されないため、成熟Tサプレッサー細胞をARTE(抗原反応性T細胞濃縮)法で濃縮した。T細胞の特定は、ビオチンやフィコエリトリン等の様々な染料と結合させた細胞表面マーカー(CD)抗体で細胞を標識した後、抗ビオチン及び抗PEマイクロビーズで標識することによって行われる。磁性マイクロビーズは、特定のT細胞クローンタイプの分離と収集に役立つ。その後、T細胞をフルオロクロム標識抗体で染色し、フローサイトメトリーで定量することができる。Tサプレッサー細胞は、フォークヘッドボックスp3(FoxP3)とCD25を用いて同定される。
【0222】
分化後、Tサプレッサー細胞はIL-10、IL-4、及びTGF-βからなる抗炎症性サイトカインカクテルを分泌する。
【0223】
決定されたデータは、試験したコラーゲンペプチドCP90、CP45、CP20、及びCP16が免疫抑制性Tサプレッサー細胞の再生において、統計学的に有意な有益効果を示すことを示した。
【0224】
Tサプレッサー細胞の分化は、フォークヘッドボックスp3(FoxP3)の発現により示された。M2マクロファージを介したCP90、CP45、CP20、及びCP16コラーゲンペプチドの効果は、Tサプレッサー細胞によって炎症誘発性サイトカインの産生が減少したことにより示された。
【0225】
図5~
図8に示した研究は、Tサプレッサー細胞で行った。
図5と表5には、TNF-αに関して未処理の対照細胞を基準とした平均値(n=6)が示されている。特に断りのない限り、各測定値は対照群と統計学的な有意差(p<0.05)があった。n.s.は、対照群と有意差がないことを示す。
【0226】
【0227】
図6と表6には、IL-1βに関して、未処理の対照細胞を基準とした平均値(n=6)が示されている。特に断りのない限り、各測定値は対照群と統計学的な有意差(p<0.05)があった。n.s.は、対照群と有意差がないことを示す。
【0228】
【0229】
図7と表7には、IL-6に関して、未処理の対照細胞を基準とした平均値(n=6)が示されている。特に断りのない限り、各測定値は対照群と統計学的な有意差(p<0.05)があった。n.s.は、対照群と有意差がないことを示す。
【0230】
【0231】
図8と表8には、IFNγに関して、未処理の対照細胞を基準とした平均値(n=6)が示されている。特に断りのない限り、各測定値は対照群と統計学的な有意差(p<0.05)があった。n.s.は、対照群と有意差がないことを示す。
【0232】
【0233】
免疫抑制性Tサプレッサー細胞で測定された、TNFαで0.56倍(
図5)、IL-1βで0.75倍(
図6)、IL-6で0.79倍(
図7)、IFNγで0.87倍(
図8)という合成率の低下は、未処理の対照と比較して、試験したコラーゲンペプチドが明らかに統計学的に有意な有益効果を示した。しかしながら、CP9を適用した後では、対照と比較べてそれに相当するプラスの効果は見られなかった。
【0234】
決定されたデータは、M2マクロファージによって末梢血単球からの分化が誘導された免疫抑制性Tサプレッサー細胞において、試験したI型コラーゲンペプチド(CP90、CP45、CP20、CP16)が、炎症誘発性サイトカインの形成に対して明らかに統計学的に有意な有益効果を持つことを示している。
【0235】
実施例4:概念の実証-真皮結合組織細胞における免疫抑制
ヒト皮膚線維芽細胞を、1%アムホテリシン、1%ペニシリン-ストレプトマイシン、及び10%仔ウシ血清を添加したHams-F12培地(HAM-12-A、Capricorn社、ドイツ)で培養した。100%の細胞コンフルエントに達した後、1μg/mlのリポ多糖(大腸菌、L6529、Merck社、ドイツ)を添加し、線維芽細胞に炎症状態を誘導した。T細胞分化実験(実施例3)の細胞上清25μl/mlを加えると、真皮線維芽細胞の炎症が軽減した。
【0236】
皮膚線維芽細胞について研究を行った。
図9と表9には、IL-1βに関して、未処理の対照細胞を基準とした平均値(n=6)が示されている。特に断りのない限り、各測定値は対照群と統計学的な有意差(p<0.05)があった。n.s.は、対照群と有意差がないことを示す。
【0237】
【0238】
図10と表10には、TNF-αに関して、未処理の対照細胞を基準とした平均値(n=6)が示されている。特に断りのない限り、各測定値は対照群と統計学的な有意差(p<0.05)があった。n.s.は、対照群と有意差がないことを示す。
【0239】
【0240】
図11と表11には、IFNγに関して、未処理の対照細胞に基づく平均値(n=6)が示されている。特に断りのない限り、各測定値は対照群と統計学的な有意差(p<0.05)があった。n.s.は、対照群と有意差がないことを示す。
【0241】
【0242】
試験したコラーゲンペプチドとネイティブI型コラーゲンの真皮線維芽細胞における抗炎症効果は、IL-1βの発現が最大0.2倍まで減少し(
図5)、TNFαの発現が0.85倍まで減少し(
図6)、IFNγの発現が最大0.35倍減少した(
図7)ことにより示された。対照的に、CP9ペプチドは統計的に有意な抗炎症効果を示さなかった。
【0243】
最後に、線維芽細胞における炎症誘発性サイトカイン(IL-1β、TNFα、IFNγ)の発現低下に基づいて、リアルタイムPCR法により、標的真皮組織の真皮線維芽細胞におけるCP90、CP45、CP20、CP16の抗炎症効果を検出した。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物患者の皮膚及び粘膜の炎症性疾患、特に腸管粘膜疾患の経口治療のための治療法に使用するためのI型コラーゲンであって、分子量が少なくとも16kDaである、I型コラーゲン。
【請求項2】
皮膚及び粘膜の炎症性疾患が、皮膚及び粘膜の免疫調節性炎症性疾患、特に自己免疫疾患、特に皮膚全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、硬化性苔癬、神経皮膚炎、乾癬、酒さ、紅色苔癬、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、及びにきび等の皮膚の自己免疫疾患、又は特に粘膜の自己免疫疾患、特にクローン病、セリアック病、又は潰瘍性大腸炎等の腸粘膜の自己免疫疾患である、請求項1に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項3】
分子量が少なくとも16kDaである組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドが、分子量16kDa未満のコラーゲン、特にコラーゲンペプチドも含まない、請求項
1に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項4】
I型コラーゲンが三重らせん形態で存在する、請求項
1に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項5】
I型コラーゲンが、天然若しくは組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチド、好ましくは配列番号2、4、6又は8で示されるアミノ酸配列を含むウシI型コラーゲンペプチドの形態で存在する、請求項
1に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項6】
組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にコラーゲンペプチドの分子量の範囲が35~95、特に40~92kDaである、請求項
1に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項7】
組換え若しくは天然のI型コラーゲンが、変性型のもの又は非変性型のものである、請求項
1に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項8】
I型コラーゲンが、完全に若しくは部分的にヒドロキシル化されて、完全に若しくは部分的にグリコシル化されて、又は完全に若しくは部分的にヒドロキシル化され且つグリコシル化されて存在する、請求項
1に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項9】
組換えI型コラーゲンが、真核宿主細胞、特に酵母細胞、又は原核宿主細胞、特に大腸菌において、特にヒドロキシル化された形態及び/又は融合ペプチドの形態で発現させることにより調製された、請求項
1に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項10】
組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチドが、少なくとも16kDaの均一な分子量を有する均質な単離形態で、又は全てのI型コラーゲンの分子量が少なくとも16kDaである単離されたI型コラーゲン混合物、特にI型コラーゲンペプチド混合物として存在する、請求項
1に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項11】
I型コラーゲンが、特にブタ、ヒツジ、ウシ、げっ歯類、カンガルー、ウマ、鳥、爬虫類、両生類若しくは魚類等の脊椎動物、又は特にクラゲ等の無脊椎動物のI型コラーゲンである、請求項
1に記載の使用のためのI型コラーゲン。
【請求項12】
皮膚及び粘膜の炎症性疾患、特に腸粘膜疾患の経口治療のための治療法に使用するための、請求項1から11のいずれか一項に記載された分子量が少なくとも16kDaである少なくとも1種のI型コラーゲンと、少なくとも1種の薬学的に許容される又は食品として安全な担体と、任意選択で少なくとも1種の添加剤又は賦形剤とを含む、組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の賦形剤がコルチコステロイドである、請求項12に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の添加剤が、組換えにより産生されたコラーゲン加水分解物、天然源由来のコラーゲン加水分解物、組換えにより産生されたI型コラーゲン、天然源から回収されたI型コラーゲン、又はこれらの組み合わせである、請求項
12に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
組成物が、錠剤、トローチ剤、チュアブル錠剤、粉末剤、顆粒剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、カプセル剤、一口カプセル剤、ドラジェ剤、パスティーユ剤、押出成形剤、ジュース剤、懸濁剤又はゲル剤の形態で存在する、請求項
12に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
1~60mg/日の用量でI型コラーゲンを経口投与するのに適した、上記請求項
12に記載の使用ための組成物。
【請求項17】
特に皮膚及び粘膜の免疫調節性炎症性疾患、特に腸粘膜疾患において、I型コラーゲンに対する免疫不寛容の治療的処置又は治療的予防に用いるための、分子量が少なくとも16kDaであるI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチド。
【請求項18】
特に皮膚及び粘膜の免疫調節性炎症性疾患、特に腸粘膜疾患においてI型コラーゲンに対する免疫寛容を誘導する方法で使用するための、分子量が少なくとも16kDaであるI型コラーゲン、特に組換え若しくは天然のI型コラーゲンペプチド。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
特に好ましい実施形態では、組換えI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、分子量が16~400kDa、特に16~390kDa、特に16~350kDa、特に16~300kDa、特に16~110kDa、特に20~400kDa、特に20~390kDa、特に20~350kDa、特に20~300kDa、特に20~110kDa、特に40~110kDa、特に40~100kDa、特に21~105kDa、特に25~100kDa、特に20~99kDa、特に25~95kDa、特に30~95kDa、特に35~95kDaであるI型コラーゲンペプチドとすることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
特に好ましい実施形態では、天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドは、分子量が16~400kDa、特に16~390kDa、特に16~350kDa、特に16~300kDa、特に16~110kDa、特に20~400kDa、特に20~390kDa、特に20~350kDa、特に20~300kDa、特に20~110kDa、特に40~110kDa、特に40~100kDa、特に21~105kDa、特に25~100kDa、特に20~99kDa、特に25~95kDa、特に30~95kDa、特に35~95kDaであるI型コラーゲンペプチドとすることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
本発明の好ましい実施形態によれば、ヒト又は動物患者の皮膚及び粘膜の炎症性疾患の経口治療のための治療法に用いるための組換え若しくは天然のI型コラーゲン、特にI型コラーゲンペプチドの分子量は、16~400kDa、特に16~390kDa、特に16~350kDa、特に16~300kDa、特に16~110kDa、特に20~400kDa、特に20~390kDa、特に20~350kDa、特に20~300kDa、特に20~110kDa、特に40~110kDa、特に40~100kDa、特に21~105kDa、特に25~100kDa、特に20~99kDa、特に25~95kDa、特に30~95kDa、特に35~95kDaである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0130
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0130】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つのヌクレオチド配列は、分子量の範囲が16~400kDa、特に16~390kDa、特に16~350kDa、特に16~300kDa、特に16~110kDa、特に20~400kDa、特に20~390kDa、特に20~350kDa、特に20~300kDa、特に20~110kDa、特に40~110kDa、特に40~100kDa、特に21~105kDa、特に80~100kDa、特に25~100kDa、特に20~99kDa、特に20kDa、特に25~95kDa、特に30~95kDa、特に35~95kDa、特に92kDa、特に40~50kDa、特に45kDaであるI型コラーゲンペプチドをコードする。
【国際調査報告】