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特表2025-500413バース症候群を治療するための方法及び組成物
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  • 特表-バース症候群を治療するための方法及び組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】バース症候群を治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20241226BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20241226BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241226BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241226BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241226BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20241226BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20241226BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K48/00
A61K39/395 N
A61K31/436
A61K38/16
A61P37/02
A61P43/00 105
A61P43/00 121
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/864 100Z
C12N5/10
C12N9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537897
(86)(22)【出願日】2022-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 US2022082367
(87)【国際公開番号】W WO2023122798
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】63/293,514
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521155829
【氏名又は名称】プロヴェンション・バイオ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PROVENTION BIO, INC.
(71)【出願人】
【識別番号】500360769
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ フロリダ リサーチ ファウンデーション,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ・レオン
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ダンフォード
(72)【発明者】
【氏名】ダイアナ・ミラー
(72)【発明者】
【氏名】バリー・ジョン・バーン
(72)【発明者】
【氏名】マヌエラ・コルティ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA29
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084AA17
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA41
4C084BA44
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB072
4C084ZB21
4C084ZC51
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZC51
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、一態様において、BTHS遺伝子治療を受けている又は受けたことがある患者に、非枯渇性である有効量のB細胞阻害剤を投与することを含む、免疫原性を低下させる方法が開示される。関連する組成物も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バース症候群(BTHS)の遺伝子治療に関連する免疫原性を低下させる方法であって、BTHS遺伝子治療を受けている又は受けたことがある患者に、非枯渇性である有効量のB細胞阻害剤を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記BTHS遺伝子治療が、TAFAZZIN導入遺伝子をコードする組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを有する遺伝子組換え細胞を前記患者に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記B細胞阻害剤が、CD32Bのエピトープ及びCD79Bのエピトープを免疫特異的に結合することができるCD32B×CD79B二重特異性抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記CD32B×CD79B二重特異性抗体が、
(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むVLCD32Bドメイン;
(B)配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCD32Bドメイン;
(C)配列番号3のアミノ酸配列を含むVLCD79Bドメイン;及び
(D)配列番号4のアミノ酸配列を含むVHCD79Bドメイン
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記CD32B×CD79B二重特異性抗体が、
(A)配列番号5のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖;
(B)配列番号6のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;及び
(C)配列番号7のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖
を含むFcダイアボディである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記Fcダイアボディを、約5mg/kg~約100mg/kg、又は約5mg/kg~約50mg/kg、又は約5mg/kg~約40mg/kgの用量で、週に1回の用量~6週間に1回の用量の投与レジメンで投与することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記Fcダイアボディを約10mg/kgの用量で、及び1~4週間に1回の用量の投与レジメンで投与することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
約10mg/kgの用量で、第1のBTHS遺伝子治療送達の1週間前、第1のBTHS遺伝子治療送達の2週間後、及び第2のBTHS遺伝子治療送達の3~4週間後に、3用量のFcダイアボディを投与することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記BTHS遺伝子治療の投与の約2日~約6週間前に第1の用量を投与し、前記BTHS遺伝子治療の投与とほぼ同時に第2の用量を投与し、前記BTHS遺伝子治療の投与の約2日~約6週間後に第3の用量を投与することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記Fcダイアボディが、投与時にそれ自体の免疫原性の阻害をもたらし、増加した用量での抗薬物抗体(ADA)のより低い有病率及び/又は力価を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記ADAが前記Fcダイアボディを中和しない、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記Fcダイアボディが、用量依存的な様式で、投与時に少なくとも80%のB細胞に結合し、最後の投与後少なくとも4週間、前記B細胞の少なくとも50%に結合したままである、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記Fcダイアボディが、循環B細胞を枯渇させることなく、免疫グロブリン産生の持続的阻害をもたらす、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫グロブリンが、IgM、IgA、IgG及びIgEの1つ以上を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
BTHS遺伝子治療に対する特異的抗体の存在を検査することによって前記患者をモニタリングすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
免疫原性をさらに調節するために、前記B細胞阻害剤の1つ以上の用量を投与することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1つ以上の免疫調節剤を共投与することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項18】
前記1つ以上の免疫調節剤が、シロリムス、ラパマイシン、アバタセプト、テプリズマブ及び化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)の免疫グロブリンG分解酵素から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
シロリムスを共投与することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項20】
バース症候群(BTHS)遺伝子治療に関連する免疫原性を低下させるための医薬品の製造における非枯渇性B細胞阻害剤の使用であって、任意で、前記BTHS遺伝子治療が、TAFAZZIN導入遺伝子をコードする組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを有する遺伝子組換え細胞を含む、使用。
【請求項21】
バース症候群(BTHS)の遺伝子治療に関連する免疫原性を低下させるための医薬組成物であって、BTHS遺伝子治療の前、同治療と同時、及び/又は同治療の後に、CD32Bのエピトープ及びCD79Bのエピトープに免疫特異的に結合することができる有効量のCD32B×CD79B二重特異性抗体を含み、任意で、前記BTHS遺伝子治療が、TAFAZZIN導入遺伝子をコードする組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを有する遺伝子組換え細胞を含む、医薬組成物。
【請求項22】
前記CD32B×CD79B二重特異性抗体が、
(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むVLCD32Bドメイン;
(B)配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCD32Bドメイン;
(C)配列番号3のアミノ酸配列を含むVLCD79Bドメイン;及び
(D)配列番号4のアミノ酸配列を含むVHCD79Bドメイン
を含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記CD32B×CD79B二重特異性抗体が、
(A)配列番号5のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖;
(B)配列番号6のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;及び
(C)配列番号7のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖
を含むFcダイアボディである、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記Fcダイアボディを、約5mg/kg~約100mg/kg、又は約5mg/kg~約50mg/kg、又は約5mg/kg~約40mg/kgの用量で、週に1回の用量~6週間に1回の用量の投与レジメンで含む、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記Fcダイアボディを約10mg/kgの用量で、1~4週間に1回の用量で、好ましくは第1のBTHS遺伝子治療送達の1週間前、前記第1のBTHS遺伝子治療送達の2週間後、及び第2のBTHS遺伝子治療送達の3~4週間後のレジメンで含む、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記BTHS遺伝子治療の投与の約2日~約6週間前の第1の用量、前記BTHS遺伝子治療の投与とほぼ同時の第2の用量、及び前記BTHS遺伝子治療の投与の約2日~約6週間後の第3の用量を含む、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
シロリムス、ラパマイシン、アバタセプト、テプリズマブ及び化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)の免疫グロブリンG分解酵素から選択される1つ以上の免疫調節剤をさらに含む、請求項21に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月23日に出願された米国仮特許出願第63/293,514号の優先権及び利益を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本明細書は、以下のサイズ:19,720バイトを有する、2022年12月23日に作成された178833-01101.xmlという名称のファイルを含む、本明細書と共に提出された配列表を含み、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
技術分野
本開示は、一般に、生物学的治療剤の免疫原性を低下させるための組成物及び方法に関し、より具体的には、バース症候群を治療するための遺伝子治療に関連する。
【背景技術】
【0004】
Dr.Peter Barthによって1983年に最初に発見されたバース症候群(OMIM#302060;BTHS)は、カルジオリピンのリモデリングに必要なアシルトランスフェラーゼをコードするTAFAZZIN遺伝子の病理学的変異によって引き起こされるまれなX連鎖遺伝性障害である。したがって、Xq28に位置するTAFAZZIN遺伝子の変異は、カルジオリピン代謝及びミトコンドリア機能障害の中間体の蓄積をもたらすことによって病理学的特徴を引き起こす。効果は、組織特異的遺伝子発現の違いに部分的に起因して、提示及び重症度が異なる。臨床病態には、典型的には、心血管機能障害、ミオパシー、及び感染症の素因となる免疫不全が含まれる。BTHSをもたらす変異は典型的には家族性であるが、13%がde novoであると推定されている(Gonzalez 2012)。現在生存しているBTHSの既知の個体は約150~200人であると推定される。しかしながら、この診断されていない状態で生活している個体の数がより多くなる可能性があり、140,000人に1人の出生が罹患していることがますます認識されつつある。
【0005】
心筋症(CM)は、BTHSを有する個体の最大70%に発生すると推定され、生後1年以内に発症する。心血管病態には、拡張型CM、左室緻密化不全、肥大型CM、及びまれにQTc延長、不整脈、及び心臓突然死が含まれる。BTHSにおけるCMの診断の遅れは一般的なものであり、個人は心不全について心臓専門医による慎重なモニタリングを必要とする。幸いなことに、CMを有するほとんどの患者は、標準的な医学治療に良好に応答する。しかしながら、BTHS患者の一部は、生後5年以内に心臓移植を必要とするように進行する。さらに、より大規模なコホート試験では、心室性不整脈が一般的であり、患者の10%超が致死性不整脈のリスクのために植込み型除細動器の留置を必要とすることが注目されている。不整脈は、そうでなければ健康そうに見える期間中にBTHSを有する個体において起こり得る。
【0006】
重篤な感染症又は敗血症の素因となる免疫不全は、BTHSにおいて一般的である。最も一般的なものは好中球減少症であり、これは患者の最大90%で起こる。好中球減少症は、軽度及び偶発性から重度及び慢性までの範囲であり得る。さらに、汎血球減少症が、BTHSを有する個体において認められており、ウイルス誘発性骨髄抑制としばしば間違えられている(Rigaud 2013)。Barthの元の論文に早期死亡と記載されている患者の半数が感染合併症に屈したことは留意すべきである(Barth 1983)。好中球減少症の原因に対する主要な仮説は、骨髄中に機能不全の好中球前駆体が存在するということである。顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の使用は、低好中球数を改善するためにしばしば使用されるが、これにもかかわらず感染は依然として一般的である。
【0007】
神経筋作用が一般的である。骨格筋症には、近位の非進行性の筋力低下が含まれる。小児期の低緊張症は、全体的な運動発達遅延をもたらし、成人期の低緊張症は、易疲労性及び生活の質の低下をもたらす。有酸素訓練を支援することを目的とした臨床試験は、生活の質を改善すると考えられたが、測定可能な生理学的利益はほとんどなかった。
【0008】
測定可能な代謝異常は、尿中3-メチルグルタコン酸の5~20倍の増加を伴うBTHSの診断を行うのに有用である。真の代謝続発症はまれであるが、乳酸アシドーシス及び低血糖は乳児期にはより一般的であり、致死的であり得る。現在の治療は、急性疾患中の支持治療を目的としている。
【0009】
標準的な医療の進歩により、BTHSは成人期まで生存可能な状態になっている。現在推奨されているBTHSの治療法は支持的であるが治癒的ではない。補酵素Q、カルニチン、パントテン酸及び他のミトコンドリア病を治療するために典型的に使用される他のビタミンBなどのサプリメントは、BTHSにおいて有効であることは証明されていない(Rugolotto 2003)。
【0010】
しかしながら、提示には著しい変動性があり、個体が重篤な範囲の疾患にかかると、合併症は生命を脅かす可能性があり、生存するために心臓移植又は体外膜酸素化(ECMO)を必要とする。BTHSのより軽度又は中等度の症例でさえ、ほとんど又は全く警告なしに現れる急性代謝クリーゼ又は重度の感染症のリスクがある(barthsyndrome.org)。これは、成人期まで生存する多くの患者にとって大きな不安の原因である。
【0011】
BTHS患者は、筋力低下及び慢性疲労の両方から、生涯にわたる制限及び生活の質の低下に耐える。強度及び持久力を構築するために正式な運動プログラムを利用する臨床試験は、無数のサプリメントと同様に効果がないことが証明されている。したがって、BTHS患者のケアにおける満たされていない必要性がある。患者のパネルは、彼らの懸念を説明し、単なる症状管理を超える治療を提唱するのを助けるために、2018年に初めてFDAと面会した。
【0012】
急速に進歩している遺伝子治療の治療分野によってもたらされる進歩は、バース症候群の治療にとって非常に魅力的である。遺伝子治療は、アシルトランスフェラーゼの正常な産生の回復を可能にし、それによって臨床症状を減少させる。
【0013】
遺伝子治療では、遺伝子の欠損コピーを組み込む目的で遺伝子組換え細胞が生成される。しかしながら、細胞の遺伝子改変に利用される「機械」の一部が、改変された細胞によって「提示」され、宿主によって「異物」剤として認識され得るリスクがある。そのような認識は拒絶反応を誘発し、それは潜在的にそのような治療を無効にするか、又は重篤な場合には潜在的に自己免疫反応を引き起こす可能性がある。
【0014】
より最近では、遺伝子療法の出現により、導入遺伝子を投与するために利用されるウイルスベクターの免疫原性、並びにレシピエントの細胞による発現後の導入遺伝子タンパク質自体の免疫原性の実質的な障害が見られている。ベクター及び導入遺伝子の免疫原性は以下をもたらす:1)ベクター及び導入遺伝子がレシピエントによって産生された抗体によって結合及び排除されると、効力が低下する;2)安全性のリスク及びコストを増加させる用量の増加の必要性;3)対象が以前の投与後にベクター又は導入遺伝子に対する抗体を発現する場合、再投与が困難又は不可能である。レシピエントは、天然に存在するウイルスとの交差反応のために、最初の投与前であってもベクターに対する既存の抗体を有する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、バース症候群遺伝子治療によって誘発される免疫原性を低下させるための方法及び組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書では、一態様において、バース症候群(BTHS)の遺伝子治療に関連する免疫原性を低下させる方法であって、BTHS遺伝子治療を受けている又は受けたことがある患者に、非枯渇性である有効量のB細胞阻害剤を投与することを含む方法が開示される。
【0017】
いくつかの実施形態では、BTHS遺伝子治療は、TAFAZZIN導入遺伝子をコードする組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター(AAV9ベクターなど)を含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態において、B細胞阻害剤は、CD32Bのエピトープ及びCD79Bのエピトープに免疫特異的に結合することができるCD32B×CD79B二重特異性抗体である。いくつかの実施形態において、CD32B×CD79B二重特異性抗体は:
(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むVLCD32Bドメイン;
(B)配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCD32Bドメイン;
(C)配列番号3のアミノ酸配列を含むVLCD79Bドメイン;及び
(D)配列番号4のアミノ酸配列を含むVHCD79Bドメインを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、CD32B×CD79B二重特異性抗体は、
(A)配列番号5のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖;
(B)配列番号6のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;及び
(C)配列番号7のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖
を含むFcダイアボディである。
【0020】
いくつかの実施形態において、本方法は、Fcダイアボディを約5mg/kg~約100mg/kg、又は約5mg/kg~約50mg/kg、又は約5mg/kg~約40mg/kgの用量で、週に1回の用量と6週間に1回の用量との間の投与レジメンで投与することをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、本方法は、Fcダイアボディを約10mg/kgの用量で、及び1~4週間に1回の用量の投与レジメンで投与することを含み得る。いくつかの実施形態において、本方法は、約10mg/kgの用量のFcダイアボディを2~6週間間隔で3用量投与することを含み得る。
【0021】
1つの例示的な投薬レジメンは、第1のBTHS遺伝子治療送達の1週間前の第1の用量、第1のBTHS遺伝子治療送達の2週間後の第2の用量、及び第2のBTHS遺伝子治療送達の3~4週間後の第3の用量を含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、本方法は、BTHS遺伝子治療の投与の約2日~約6週間前(例えば、2日間、6日間、1週間、2週間、4週間)に第1の用量を投与し、BTHS遺伝子治療の投与とほぼ同時に第2の用量を投与し、BTHS遺伝子治療の投与の約2日~約6週間後(例えば、2日間、6日間、1週間、2週間、4週間)に第3の用量を投与することを含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、Fcダイアボディは、投与時にそれ自体の免疫原性の阻害をもたらし、増加した用量では抗薬物抗体(ADA)のより低い有病率及び/又は力価をもたらす。いくつかの実施形態では、ADAはFcダイアボディを中和しない。
【0024】
いくつかの実施形態では、Fcダイアボディは、用量依存的な様式で、投与時にB細胞の少なくとも80%に結合し、最後の投与後少なくとも4週間、B細胞の少なくとも50%に結合したままである。
【0025】
いくつかの実施形態では、Fcダイアボディは、循環B細胞を枯渇させることなく免疫グロブリン産生の持続的阻害をもたらす。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンは、IgM、IgA、IgG及びIgEの1つ以上を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、本方法は、BTHS遺伝子治療に対する特異的抗体の存在を調べることによって患者をモニタリングすることをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、本方法は、免疫原性をさらに調節するために1つ以上の用量のB細胞阻害剤を投与することをさらに含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、本方法は、シロリムス、ラパマイシン、アバタセプト、テプリズマブ及び化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)の免疫グロブリンG分解酵素などの1つ以上の免疫調節剤を同時投与することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、シロリムスを同時投与することをさらに含むことができる。
【0028】
治療有効単位用量で提供される(例えば、パッケージ化される)、本明細書に開示される非枯渇性B細胞阻害剤を含む医薬組成物も本明細書で提供される。本明細書中に開示されるような投与レジメンのための説明書も提供され得る。
【0029】
さらなる態様は、任意でバース症候群(BTHS)遺伝子治療が、TAFAZZIN導入遺伝子をコードする組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを有する遺伝子組換え細胞を含む、BTHS遺伝子治療に関連する免疫原性を低下させるための医薬品の製造における、本明細書に開示される非枯渇性B細胞阻害剤の使用に関する。
【0030】
バース症候群(BTHS)の遺伝子治療に関連する免疫原性を低下させるための医薬組成物であって、BTHS遺伝子治療の前、同治療と同時、及び/又は同治療の後に、CD32Bのエピトープ及びCD79Bのエピトープに免疫特異的に結合することができる有効量のCD32B×CD79B二重特異性抗体を含み、任意で、BTHS遺伝子治療が、TAFAZZIN導入遺伝子をコードする組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを有する遺伝子組換え細胞を含む、医薬組成物も本明細書で提供される。
【0031】
CD32B×CD79B二重特異性抗体は、いくつかの実施形態において、
(A)配列番号1のアミノ酸配列を含むVLCD32Bドメイン;
(B)配列番号2のアミノ酸配列を含むVHCD32Bドメイン;
(C)配列番号3のアミノ酸配列を含むVLCD79Bドメイン;及び
(D)配列番号4のアミノ酸配列を含むVHCD79Bドメインを含み得る。
【0032】
CD32B×CD79B二重特異性抗体は:
(A)配列番号5のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖;
(B)配列番号6のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖;及び
(C)配列番号7のアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖
を含むFcダイアボディであり得る。
【0033】
医薬組成物は、いくつかの実施形態において、Fcダイアボディを、約5mg/kg~約100mg/kg、又は約5mg/kg~約50mg/kg、又は約5mg/kg~約40mg/kgの用量で、及び週に1回用量~6週間に1回用量の投与レジメンで含むことができる。
【0034】
医薬組成物は、いくつかの実施形態では、約10mg/kgの用量で、2~6週間間隔で、又は1~4週間に1回の用量でFcダイアボディを含み得る。特定の実施形態では、投与レジメンは、第1のBTHS遺伝子治療送達の1週間前の第1の用量、第1のBTHS遺伝子治療送達の2週間後の第2の用量、及び第2のBTHS遺伝子治療送達の3~4週間後の第3の用量を含み得る。
【0035】
医薬組成物は、いくつかの実施形態において、BTHS遺伝子治療の投与の約2日~約6週間前の第1の用量、BTHS遺伝子治療の投与とほぼ同時の第2の用量、及びBTHS遺伝子治療の投与の約2日~約6週間後の第3の用量を含むことができる。
【0036】
医薬組成物は、いくつかの実施形態において、シロリムス、ラパマイシン、アバタセプト、テプリズマブ及び化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)の免疫グロブリンG分解酵素から選択される1つ以上の免疫調節剤をさらに含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】例示的なベクトルの概略図である。
図2】例示的なコンストラクトB951(pds2TR-Des-coTAZ_Dual4)である。
図3】例示的なコンストラクトC064(pds2TR-Des-coTAZiso2_Dual4)である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本明細書では、一態様において、バース症候群(BTHS)の遺伝子治療に関連する免疫原性を低下させる方法であって、BTHS遺伝子治療を受けている又は受けたことがある患者に、非枯渇性である有効量のB細胞阻害剤を投与することを含む方法が開示される。いくつかの実施形態では、B細胞阻害剤は、それぞれその全体が参照により組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0194396号明細書、国際公開第2015/021089号パンフレット及び国際公開第2017/214096号パンフレットに開示されているものなどのCD32B×CD79B二重特異性抗体である。
【0039】
定義
便宜上、本明細書、実施例、及び添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語をここに収集する。別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語及び科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同様の意味を有する。
【0040】
特許請求の範囲及び/又は明細書において「を含む(comprising)」という用語と組み合わせて使用される場合の「a」又は「an」という用語の使用は、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」及び「1つ、又は2つ以上」の意味とも一致する。
【0041】
本出願を通して、「約」という用語は、値が、値を決定するために使用されている方法/装置の誤差の固有の変動、又は試験対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。典型的には、この用語は、状況に応じて、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%又は20%未満の変動を包含することを意味する。
【0042】
「実質的に」という用語は、50%超、好ましくは80%超、最も好ましくは90%超又は95%超を意味する。
【0043】
特許請求の範囲における「又は」という用語の使用は、代替物のみを指すことが明示的に示されていない限り、又は代替物が相互に排他的でない限り、「及び/又は」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物及び「及び/又は」のみを指す定義を支持する。
【0044】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「を含む(comprising)」(及び「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」などの任意の形態を含む)、「有する(having)」(及び「有する(have)」及び「有(has)」などの任意の形態を有することができる)、「含む(including)」(及び「含む(includes)」及び「含む(include)」などの任意の形態を含む)又は「含有する(containing)」(及び「含有する(contains)」及び「含有する(contain)」などの含有の任意の形態)という用語は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法ステップを排除しない。本明細書で論じられる任意の実施形態は、本発明の任意の方法、システム、宿主細胞、発現ベクター、及び/又は組成物に関して実施することができると考えられる。さらに、本発明の組成物、系、宿主細胞及び/又はベクターを使用して、本発明の方法及びタンパク質を達成することができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所与の実施形態に必要な要素を指す。この用語は、本開示のその実施形態の基本的及び新規又は機能的特性に実質的に影響を及ぼさない追加の要素の存在を可能にする。
【0046】
「からなる(consisting of)」という用語は、実施形態のその説明に記載されていない要素を除外する、本明細書に記載の組成物、方法、及びそれらのそれぞれの成分を指す。
【0047】
「例えば(for example)」という用語及びその対応する略語「例えば(e.g.)」の使用は、(イタリック体であるか否かにかかわらず)列挙された特定の用語が、特に明記しない限り、参照又は引用された特定の例に限定されることを意図しない本発明の代表的な例及び実施形態であることを意味する。
【0048】
「遺伝子」は、ポリペプチドをコードするヌクレオチドの集合体を指し、cDNA及びゲノムDNA核酸分子を含む。「遺伝子」はまた、コード配列の前(5’非コード配列)及び後(3’非コード配列)の調節配列として作用することができる核酸断片を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「TAFAZZIN」は、カルジオリピン(膜リン脂質)のそのテトラリノレオイル形態への改変を担うことができるリン脂質-リゾリン脂質トランスアシラーゼを指す。いくつかの実施形態では、TAFAZZINは、完全長ヒトTAFAZZIN又はエクソン5を欠くヒトTAFAZZINを指し得、これらは両方ともトランスアシラーゼ活性を示し得る。特定の実施形態では、tafaccinは、エクソン5を欠くヒトTAFAZZINと相同である完全長マウスTAFAZZINを指す場合がある。
【0050】
本明細書で使用される「抗体」又は「抗体分子」は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むタンパク質、例えば免疫グロブリン鎖又はその断片を指す。抗体分子は、抗体(例えば、全長抗体)及び抗体断片を包含する。いくつかの実施形態では、抗体分子は、完全長抗体の抗原結合断片若しくは機能性断片、又は完全長免疫グロブリン鎖を含む。例えば、全長抗体は、天然に存在するか、又は正常な免疫グロブリン遺伝子断片の組換えプロセスによって形成される免疫グロブリン(Ig)分子(例えば、IgG)である。いくつかの実施形態では、抗体分子は、抗体断片などの免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な抗原結合部分を指す。抗体断片、例えば機能的断片は、抗体の一部、例えばFab、Fab’、F(ab’)、F(ab)、可変断片(Fv)、ドメイン抗体(dAb)、又は一本鎖可変断片(scFv)である。機能的抗体断片は、インタクトな(例えば、全長)抗体によって認識されるものと同じ抗原に結合する。「抗体断片」又は「機能的断片」という用語はまた、重鎖及び軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、又は軽鎖及び重鎖可変領域がペプチドリンカー(「scFvタンパク質」)によって連結されている組換え単鎖ポリペプチド分子などの可変領域からなる単離された断片も含む。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fc断片又は単一アミノ酸残基などの抗原結合活性のない抗体の部分を含まない。例示的な抗体分子には、完全長抗体及び抗体断片、例えば、dAb(ドメイン抗体)、一本鎖、Fab、Fab’及びF(ab’)断片、並びに一本鎖可変断片(scFv)が含まれる。「Fab」及び「Fab断片」という用語は互換的に使用され、抗体の各重鎖及び軽鎖由来の1つの定常ドメイン及び1つの可変ドメイン、すなわちV、C、V及びC1を含む領域を指す。
【0051】
本明細書を通して、IgG重鎖の定常領域中の残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,NH1,MD(1991)(「Kabat」)のようなEUインデックスのナンバリングであり、これは参照により本明細書に明示的に組み込まれる。「KabatにおけるようなEUインデックス」という用語は、ヒトIgG1 EU抗体のナンバリングを指す。免疫グロブリンの成熟重鎖及び軽鎖の可変ドメイン由来のアミノ酸は、鎖中のアミノ酸の位置によって示される。Kabatは、抗体のための多数のアミノ酸配列を記載し、各サブグループのためのアミノ酸コンセンサス配列を同定し、各アミノ酸に残基番号を割り当て、CDRは、Kabatによって定義されるように同定される(CDR1が、Chothia,C.&Lesk,A.M.による((1987)“Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins”.J.Mol.Biol.196:901-917)の定義によると5残基早く開始することは理解されよう)。Kabatのナンバリングスキームは、問題の抗体を、保存されたアミノ酸を参照してKabatのコンセンサス配列の1つと整列させることによって、彼の発明の概要に含まれていない抗体に対して拡張可能である。残基番号を割り当てるためのこの方法は、当該分野で標準的なものとなっており、キメラ変異体又はヒト化変異体を含む様々な抗体の同等の位置のアミノ酸を容易に同定する。例えば、ヒト抗体軽鎖の位置50のアミノ酸は、マウス抗体軽鎖の位置50のアミノ酸と同等の位置を占める。
【0052】
いくつかの実施形態では、抗体分子は単一特異性であり、例えば、単一エピトープに対する結合特異性を含む。いくつかの実施形態では、抗体分子は多重特異性であり、例えば、複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列は第1のエピトープに対する結合特異性を有し、第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列は第2のエピトープに対する結合特異性を有する。いくつかの実施形態において、抗体分子は二重特異性抗体分子である。
【0053】
「二重特異性抗体分子」、「ダイアボディ」及び「二重親和性再標的化(DART(登録商標))」抗体という用語は、本明細書では互換的に使用され、2つ以上の(例えば、2、3、4、又はそれ以上)エピトープ及び/又は抗原に対して特異性を有する抗体分子を指す。いくつかの実施形態では、抗体は、それぞれその全体が参照により組み込まれる、米国特許出願公開第2016/0194396号明細書、国際公開第2015/021089号パンフレット及び国際公開第2017/214096号パンフレットに開示されているものなどの、抗原結合が可能なダイアボディ又は足場であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、CD32B×CD79B二重特異性ダイアボディ(すなわち、「CD32B×CD79Bダイアボディ」及びFcドメインをさらに含むそのようなダイアボディ(すなわち、「CD32B×CD79B Fcダイアボディ」)であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、111.5kDaの分子量を有するチャイニーズハムスター卵巣細胞で産生されるヒト化CD32B×CD79B DART(登録商標)抗体であり得る。
【0054】
本明細書で使用される「抗原」(Ag)は、すべてのタンパク質又はペプチドを含む高分子を指す。いくつかの実施形態では、抗原は、例えば特定の免疫細胞の活性化及び/又は抗体生成を含む免疫応答を引き起こすことができる分子である。抗原は抗体生成に関与するだけではない。T細胞受容体は(ペプチド又はペプチド断片がMHC分子と複合体を形成する抗原ではあるが)抗原も認識した。ほとんどすべてのタンパク質又はペプチドを含む任意の高分子が抗原であり得る。抗原はまた、ゲノム組換え体又はDNAに由来し得る。例えば、免疫応答を誘発することができるタンパク質をコードするヌクレオチド配列又は部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAは、「抗原」をコードする。いくつかの実施形態では、抗原は、遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はなく、抗原は、遺伝子によってコードされる必要も全くない。いくつかの実施形態では、抗原は、生物学的試料、例えば組織試料、腫瘍試料、細胞、又は他の生物学的成分を含む流体から合成され得るか、又は誘導され得る。本明細書で使用される場合、「腫瘍抗原」又は互換的に、「癌抗原」は、免疫応答を引き起こすことができる癌、例えば癌細胞又は腫瘍微小環境上に存在するか、又はそれに関連する任意の分子を含む。本明細書で使用される場合、「免疫細胞抗原」は、免疫応答を引き起こすことができる免疫細胞上に存在するか、又はそれに関連する任意の分子を含む。
【0055】
抗体分子の「抗原結合部位」又は「抗原結合断片」又は「抗原結合部分」(本明細書では互換的に使用される)は、抗原結合に関与する抗体分子、例えばIgGなどの免疫グロブリン(Ig)分子の一部を指す。いくつかの実施形態では、抗原結合部位は、重鎖(H)及び軽鎖(L)の可変(V)領域のアミノ酸残基によって形成される。超可変領域と呼ばれる重鎖及び軽鎖の可変領域内の3つの高度に分岐したストレッチは、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存された隣接ストレッチの間に配置される。FRは、免疫グロブリン中の超可変領域間及び超可変領域に隣接して天然に見られるアミノ酸配列である。いくつかの実施形態では、抗体分子において、軽鎖の3つの超可変領域及び重鎖の3つの超可変領域は、三次元空間において互いに対して配置されて、結合した抗原の三次元表面に相補的な抗原結合表面を形成する。重鎖及び軽鎖のそれぞれの3つの超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」と呼ばれる。フレームワーク領域及びCDRは、例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242及びChothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917に定義され、記載されている。各可変鎖(例えば、可変重鎖及び可変軽鎖)は、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端に以下のアミノ酸順序で配置された3つのCDR及び4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4。可変軽鎖(VL)CDRは、一般に、27~32位(CDR1)、50~56位(CDR2)及び91~97位(CDR3)の残基を含むと定義される。可変重鎖(VH)CDRは、一般に、27~33位(CDR1)、52~56位(CDR2)及び95~102位(CDR3)の残基を含むと定義される。当業者は、フレームワークが抗体全体にわたって一貫したナンバリングを有するように、ループが抗体及びナンバリングシステム、例えばKabat又はChothia対照などにわたって異なる長さであり得ることを理解するであろう。
【0056】
いくつかの実施形態では、抗体の抗原結合断片(例えば、融合分子の一部として含まれる場合)は、完全なFcドメインを欠いていても、又は完全なFcドメインを含まなくてもよい。いくつかの実施形態において、抗体結合断片は、完全なIgG又は完全なFcを含まず、軽鎖及び/又は重鎖からの1つ以上の定常領域(又はその断片)を含み得る。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、任意のFcドメインを完全に含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、完全なFcドメインを実質的に含まなくてもよい。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、完全Fcドメイン(例えば、CH2若しくはCH3ドメイン又はその一部)の一部を含み得る。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は完全Fcドメインを含み得る。いくつかの実施形態では、FcドメインはIgGドメイン、例えばIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 Fcドメインである。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。
【0057】
本明細書で使用される場合、「投与する」及び同様の用語は、治療される個体に組成物を送達することを意味する。好ましくは、本開示の組成物は、例えば、皮下、筋肉内、又は好ましくは静脈内経路を含む非経口経路によって投与される。
【0058】
本明細書で使用される場合、「有効量」は、任意の医学的治療又は診断試験に対応するような合理的なリスク/利益比で所望の局所的又は全身的効果を提供するのに十分な生物活性剤又は診断剤の量を意味する。これは、患者、疾患、行われる処置、及び薬剤の性質に応じて変化する。治療有効量は、治療される患者及び疾患状態、患者の体重及び年齢、疾患状態の重症度、投与様式などに応じて異なり、当業者によって容易に決定することができる。投与量は、例えば、約1ng~約10,000mg、約5ng~約9,500mg、約10ng~約9,000mg、約20ng~約8,500mg、約30ng~約7,500mg、約40ng~約7,000mg、約50ng~約6,500mg、約100ng~約6,000mg、約200ng~約5,500mg、約300ng~約5,000mg、約400ng~約4,500mg、約500ng~約4,000mg、約1μg~約3,500mg、約5μg~約3,000mg、約10μg~約2,600mg、約20μg~約2,575mg、約30μg~約2,550mg、約40μg~約2,500mg、約50μg~約2,475mg、約100μg~約2,450mg、約200μg~約2,425mg、約300μg~約2,000、約400μg~約1,175mg、約500μg~約1,150mg、約0.5mg~約1,125mg、約1mg~約1,100mg、約1.25mg~約1,075mg、約1.5mg~約1,050mg、約2.0mg~約1,025mg、約2.5mg~約1,000mg、約3.0mg~約975mg、約3.5mg~約950mg、約4.0mg~約925mg、約4.5mg~約900mg、約5mg~約875mg、約10mg~約850mg、約20mg~約825mg、約30mg~約800mg、約40mg~約775mg、約50mg~約750mg、約100mg~約725mg、約200mg~約700mg、約300mg~約675mg、約400mg~約650mg、約500mg、又は約525mg~約625mgの、本明細書で提供する抗体又はその抗原結合部分であり得る。投与は、例えば、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと又は6週間ごとであり得る。投与レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整され得る。有効量はまた、薬剤の任意の毒性又は有害効果(副作用)が最小化され、及び/又は有益な効果に勝る量である。投与は、正確に又は約6mg/kg若しくは12mg/kgで毎週、又は12mg/kg若しくは24mg/kgで隔週で静脈内投与され得る。さらなる投与レジメンを以下に記載する。
【0059】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」とは、一般に安全で、非毒性であり、生物学的にも他の点でも望ましくないものではない医薬組成物を調製するのに有用なものを指すものとし、獣医学的使用及びヒトの薬学的使用に許容されるものを含む。「薬学的に許容される液体担体」の例には、水及び有機溶媒が含まれる。好ましい薬学的に許容され得る水性液体としては、PBS、生理食塩水及びデキストロース溶液などが挙げられる。
【0060】
「免疫原性」という用語は、抗原又はエピトープなどの特定の物質が、ヒト及び他の動物の体内で、体液性及び/又は細胞媒介性であり得る免疫応答を引き起こす能力を指す。いくつかの実施形態では、本開示の組成物の投与は、治療剤などの生物学的物質の免疫原性を低下させる、及び/又は生物学的物質に対する免疫寛容を増加させる。本明細書で使用される「公差」又は「免疫寛容」は、他の点では実質的に正常な免疫系の状況では特定の抗原(例えば、治療用生物製剤)に対する免疫応答が存在しないことを指す。
【0061】
本明細書で使用される「主要組織適合遺伝子複合体」又は「MHC」タンパク質は、脊椎動物の免疫系において重要な役割を果たす大きな遺伝子ファミリーによってコードされる一組の細胞表面分子を指す。これらのタンパク質の重要な機能は、内因性又は外因性(外来性)タンパク質に由来するペプチド断片を結合し、宿主生物の適切なT細胞による認識のためにそれらを細胞表面に提示することである。MHC遺伝子ファミリーは3つのサブグループに分けられる:クラスI、クラスII、及びクラスIII。ヒトMHCクラスI及びクラスII遺伝子は、それぞれヒト白血球抗原(HLA)-HLAクラスI及びHLAクラスIIとも呼ばれる。ヒトにおいて最も研究されているHLA遺伝子のいくつかは、9つのMHC遺伝子:HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DPA1、HLA-DPB1、HLA-DQA1、HLA-DQB1、HLA-DRA、HLA-DRB1及びHLA-DRB345である。
【0062】
本開示の様々な態様は、以下でさらに詳細に説明される。さらなる定義は、本明細書全体を通して示されている。
【0063】
非枯渇性B細胞阻害剤及び医薬組成物
いくつかの実施形態では、B細胞阻害剤を使用して免疫原性を低減又は調節することができる。いくつかの実施形態では、そのようなB細胞阻害剤は非枯渇性免疫調節剤である。本明細書で使用される場合、「非枯渇性」又は「非枯渇」は、阻害剤又は免疫調節剤がB細胞活性を完全に枯渇させないことを意味する。一方、B細胞の「枯渇」は、作用物質がB細胞、例えば抗CD20抗体、例えばリツキシマブを排除又は破壊するように作用することを意味する。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される非枯渇性B細胞阻害剤又は免疫調節剤はリツキシマブではない。いくつかの実施形態では、非枯渇性B細胞阻害剤又は免疫調節剤は、抗CD20抗体又は他のCD20阻害剤ではない。
【0064】
例示的な非枯渇性B細胞阻害剤としては、CD32B×CD79B二重特異的阻害剤;CD32Bモジュレーター;B細胞受容体(BCR)遮断薬、例えば抗CD22分子;B細胞生存及び活性化阻害剤、例えばB細胞活性化因子(BAFF)又はA増殖誘導リガンド(APRIL)阻害剤、例えばベリムマンブ;抗CD40及び抗CD40L分子;並びにイブルチニブ(PCI-32765)及びアカラブルチニブなどのブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
いくつかの実施形態では、B細胞阻害剤は、米国特許出願公開第2016/0194396号明細書、国際公開第2015/021089号パンフレット、及び国際公開第2017/214096号パンフレットに開示されているものなどのCD32B×CD79B二重特異性抗体(すべてその全体が参照により組み込まれる)、又はその抗原結合断片であり得る。
【0066】
例示的なCD32B×CD79B二重特異性ダイアボディは、2つ以上のポリペプチド鎖を含むことができ、
(1)CD32B(VLCD32B)に結合する抗体のVLドメイン、例えば、配列(配列番号1)を有するVLCD32Bドメイン:
【化1】

(2)CD32B(VHCD32B)に結合する抗体のVHドメイン、例えば、配列(配列番号2)を有するVHCD32B
【化2】

(3)CD79B(VLCD79B)に結合する抗体のVLドメイン、例えば、配列(配列番号3)を有するVLCD79Bドメイン:
【化3】

(4)CD79B(VHCD79B)に結合する抗体のVHドメイン、例えば、配列(配列番号4)を有するVHCD79B
【化4】

を含み得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、B細胞阻害剤は、111.5kDaの分子量を有するチャイニーズハムスター卵巣細胞で産生されるPRV-3279、ヒト化CD32B×CD79B Dual Affinity Re-Targeting(DART(登録商標))タンパク質であり得る。DART(登録商標)タンパク質は、2つの異なる抗原に同時に結合することができる二重特異性の抗体ベースの分子である。PRV-3279は、Bリンパ球上のCD32B(Fcガンマ受容体IIb)及びCD79B(B細胞受容体(BCR)複合体の免疫グロブリン関連βサブユニット)を標的とするように設計されている。Bリンパ球上の優先的シス結合モードでのCD32B及びCD79Bの同時ライゲーションは、CD32B結合免疫受容体チロシンに基づく阻害性モチーフのシグナル伝達を誘因し、広範な枯渇なしに抗原媒介性ナイーブ及びメモリーB細胞活性化を減少させる。in vivo半減期を延長するために、PRV-3279はまた、FcγR及び補体への望ましくない結合を大幅に低減又は排除するように変異されたヒト免疫グロブリンG(IgG)1 Fc領域を含むが、新生児FcR結合に対する親和性を保持して、この受容体によって媒介されるIgGサルベージ経路を利用する。
【0068】
CD32B分子は、B細胞並びにマクロファージ、好中球及び肥満細胞などの他の免疫エフェクター細胞上に広く発現される膜貫通阻害受容体である。PRV-3279の抗CD32B成分は、MacroGenicsのマウスモノクローナル抗体(mAb)8B5のヒト化バージョンに基づく。CD79Bは、B細胞上にのみ発現されるBCRの必須のシグナル伝達成分である。PRV-3279の抗CD79B成分は、マウスmAb CB3のヒト化バージョンに基づく。
【0069】
いくつかの実施形態では、PRV-3279は、以下の配列を含む(CDRには下線が引かれ、コイルドメインは太字である):
鎖1(Fc-CD32BVL-CD79bVH-Eコイル):(配列番号5)
【化5】

鎖2(CD79bVL-CD32BVH-Kコイル):(配列番号6)
【化6】

鎖3(Fc):(配列番号7)
【化7】
【0070】
PRV-3279は、投与時にナイーブ表現型及びメモリー表現型の両方を含む用量依存的様式で大部分のB細胞(例えば、>80~90%)に結合し、4週間を超えてB細胞の少なくとも50%に結合したままであり得る。これは、PRV-3279の潜在的な薬力学(PD)効果の持続的な耐久性を示し、1ヶ月に1回(又はそれより長期)の投与頻度を支持する。
【0071】
PRV-3279は、健康な対象においてウイルスワクチン(A型肝炎ワクチン)に対する免疫性を低下させることが以前に示されており、ウイルスベクターに対する免疫原性を阻害することができることを示唆している。さらに、huCD32bトランスジェニックマウス(PCT/US2020/044312及び米国特許出願公開第2021/0130464号明細書(両方ともに、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)参照)における有効性及び免疫原性を評価するために、アデノ随伴ウイルス(AAV)を使用する遺伝子治療に対するPRV-3279代用物の効果を評価する目的でパイロット研究を行った。これは、陰性(AAV9なし)対照、次いでプラセボと組み合わせたAAV9、3つの用量レベルでのPRV-3279単独、3つの用量レベルのPRV-3279とのシロリムスの同時投与、及びシロリムス単独を含む9つのアームを用いた用量応答研究であった(表1)。縦断的サンプリングには、研究終了時のIgM、IgG、AAV9ベクターコピー及び組織導入遺伝子活性のレベルが含まれた。
【0072】
具体的な試験目的:
1.血液中で検出可能なAAV9ベクターの量(ベクターのクリアランス速度)
2.組織中で検出可能なGAA導入遺伝子の量(遺伝子治療トランスフェクションの効率)
3.血中の抗AAV9抗体のレベル(AAVベクターの免疫原性)
4.総IgM(PRV-3279活性のPDマーカー)
【0073】
【表1】
【0074】
PRV-3279による用量依存性及び持続的なB細胞結合は、B細胞を含む循環免疫細胞サブセットを枯渇させることなく、免疫グロブリン産生の永続的阻害をもたらす。末梢血で減少した免疫グロブリンには、IgM、IgA、IgG及びIgEが含まれる。阻害は、抗原刺激(例えば、ワクチン接種)の非存在下又は存在下で観察することができる。これは、患者が機能する免疫系の一部としてB細胞などの循環免疫細胞を保持することができるように、非枯渇剤としてのPRV-3279の有利な安全上の特徴である。対照的に、細胞枯渇剤(例えば、リツキシマブ、オクレリズマブ、インビリズマブ)を受けている患者は、枯渇した細胞タイプを回復するのにかなりの時間(例えば、最大1年)を要する。これは、免疫不全が存在し、重篤な感染症のリスクが生涯を通じて残るBTHSの治療を考慮すると特に重要である。免疫能はまた、BTHSが出生時から存在するので、小児における一次ワクチン接種シリーズにとって臨床的に重要である。
【0075】
別の態様では、本明細書に開示される方法で使用することができる医薬組成物、すなわち、例えば、有意な免疫原性を引き起こすBTHS遺伝子治療を受けている間若しくは受けた後に、又は対象が生物治療剤(例えば、以前の野生型アデノウイルス感染に起因する、又はrAAV治療への以前の曝露に起因する既存の抗AAV抗体の場合)に対して既存の免疫原性を有していたために、免疫原性の低減又は抑制を必要とする対象において免疫原性を低減又は抑制するための医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、免疫原性を予防し、及び/又は既存の抗体を減少させるために、BTHS遺伝子治療を受ける前に患者に投与することができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、本明細書に開示されるB細胞阻害剤及び薬学的に許容される担体を含む。B細胞阻害剤は、薬学的に許容され得る担体と共に医薬組成物に製剤化され得る。さらに、医薬組成物は、例えば、有意な免疫原性を引き起こす生物学的薬剤の投与中又は投与後に、それを必要とする対象において免疫原性を低減又は抑制するために患者を治療するための組成物の使用説明書を含むことができる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝剤、並びに生理学的に適合性である他の賦形剤を含む。好ましくは、担体は、非経口、経口、又は局所投与に適している。投与経路に応じて、活性化合物、例えば、小分子又は生物学的薬剤は、化合物を不活性化し得る酸及び他の自然条件の作用から化合物を保護するために材料でコーティングされ得る。
【0078】
薬学的に許容される担体としては、滅菌水溶液又は分散液及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための滅菌粉末、並びに錠剤、丸剤、カプセル剤などの調製のための従来の賦形剤が挙げられる。薬学的に活性な物質の製剤化のためのそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で公知である。任意の従来の媒体又は薬剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、本明細書で提供される医薬組成物におけるその使用が企図される。補助活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0079】
薬学的に許容される担体は、薬学的に許容される抗酸化剤を含むことができる。薬学的に許容される酸化防止剤の例としては、以下が挙げられる。(1)アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤;(2)油溶性酸化防止剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など。
【0080】
本明細書で提供される医薬組成物に使用され得る適切な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物、並びにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。必要な場合、適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング材料の使用、分散液の場合には必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール又は塩化ナトリウムを組成物に含めることが有用であり得る。注射用組成物の吸収時間の延長は、吸収を遅延させる作用剤、例えば、モノステアレート塩及びゼラチンをその組成物に含めることによって実現できる。
【0081】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などの機能的賦形剤を含有し得る。
【0082】
治療用組成物は、典型的には、製造及び貯蔵の条件下で滅菌され、非系統原性であり、安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高薬物濃度に適した他の秩序構造として製剤化することができる。
【0083】
滅菌注射用溶液は、必要量の活性化合物を、必要に応じて上に列挙した成分の1つ又は組み合わせと共に適切な溶媒に組み込み、続いて例えば精密濾過によって滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒体及び上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含有する無菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法としては、真空乾燥及び凍結乾燥(凍結乾燥)が挙げられ、これにより、活性成分及び任意のさらなる所望の成分の粉末が、予め滅菌濾過されたその溶液から得られる。活性薬剤は、滅菌条件下で、追加の薬学的に許容される担体、及び必要とされ得る任意の保存剤、緩衝剤又は噴射剤と混合され得る。
【0084】
微生物の存在の防止は、上記の滅菌手順によって、及び様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることによって確実にすることができる。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを組成物に含めることも望ましい場合がある。さらに、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収を遅延させる薬剤を含めることによって、注射用医薬形態の長期吸収がもたらされ得る。
【0085】
投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、又は治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減少又は増加させてもよい。
【0086】
抗体を投与するための例示的な投与量範囲には、以下が含まれる:10~1000mg(抗体)/kg(患者の体重)、10~800mg/kg、10~600mg/kg、10~400mg/kg、10~200mg/kg、30~1000mg/kg、30~800mg/kg、30~600mg/kg、30~400mg/kg、30~200mg/kg、50~1000mg/kg、50~800mg/kg、50~600mg/kg、50~400mg/kg、50~200mg/kg、100~1000mg/kg、100~900mg/kg、100~800mg/kg、100~700mg/kg、100~600mg/kg、100~500mg/kg、100~400mg/kg、100~300mg/kg、及び100~200mg/kg。例示的な投与スケジュールには、3日に1回、5日に1回、7日に1回(すなわち、週に1回)、10日に1回、14日に1回(すなわち、2週間に1回)、21日に1回(すなわち、3週間に1回)、28日に1回(すなわち、4週間に1回)、月に1回、5週間に1回、及び6週間に1回が含まれる。
【0087】
いくつかの実施形態では、PRV-3279の1用量当たり約5~40mg/kg、約5~20mg/kg又は約10mg/kgを、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、5週間に1回又は6週間に1回投与することができる。1用量、2用量又は3用量などの1つ以上の用量を投与することができる。投与はIV注入によるものであり得る。前述の(例えば、10mg/kg/用量の3回の用量、4週間に1回)の任意の組み合わせを、遺伝子治療製品を含む生物治療剤の免疫原性の低減のために使用することができる。いくつかの実施形態では、第1の用量は遺伝子治療の2~6週間前(例えば、4週間)に、第2の用量は遺伝子治療のほぼ同時期に、第3の用量は遺伝子治療の2~6週間後(例えば、4週間)に投与することができる。その後、遺伝子治療ベクター(例えば、rAAV)及び/又は導入遺伝子に対する特異的抗体の量を調べることによって、患者をモニタリングすることができる。抗体が検出されないか又はほとんど検出されない場合、追加のPRV-3279は必要ない。有意な量の抗体が存在する場合、免疫原性をさらに調節するために、PRV-3279の1つ以上の用量を投与することができる。
【0088】
投与の容易さ及び投与量の均一性のために、単位剤形で非経口組成物を製剤化することが有利であり得る。本明細書で使用される単位剤形は、治療される患者のための単位剤形として適した物理的に別個の単位を指す。各単位は、任意の必要な医薬担体と組み合わせて所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性薬剤を含む。単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の固有の特徴及び達成される特定の治療効果、並びに(b)個体における感受性の治療のための活性化合物などの配合技術に固有の制限によって決定され、それらに直接依存する。
【0089】
本明細書に開示される医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に有毒ではなく、特定の患者、組成物、及び投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変化し得る。投与の文脈において本明細書で使用される「非経口」は、通常は注射による経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射、並びに注入が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
本明細書で使用される「非経口投与」及び「非経口的に投与される」という語句は、通常は注射又は注入による経腸(すなわち、消化管を介する)及び局所投与以外の投与様式を指し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射、並びに注入が含まれるが、これらに限定されない。静脈内注射及び注入は、抗体投与に使用されることが(排他的ではないが)多い。
【0091】
本明細書で提供される薬剤を医薬品としてヒト又は動物に投与する場合、それらは単独で、又は例えば0.001~90%(例えば、0.005~70%、例えば、0.01~30%)の活性成分を薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する医薬組成物として投与することができる。
【0092】
治療的使用及び方法
本明細書に開示される組成物は、様々な手段(例えば、AAV及び他の野生型及び組換えベクター、レンチウイルス改変ヒト幹細胞)によって送達されるBHTS遺伝子治療によって引き起こされる免疫原性を低減又は抑制するために使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるB細胞免疫調節剤は、例えばBHTSに関連するTAFAZZIN欠損症などの遺伝性酵素欠損症のための導入遺伝子のrAAV(組換えアデノ随伴ウイルス)ベクターベースのウイルス送達を改善するために使用することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるB細胞免疫調節剤は、全身、筋肉内、眼(高局所用量を必要とすることにより局所免疫応答が生じる)、及び中枢神経系(CNS)(CNSからのウイルスカプシドの漏出がCNSにおけるAAV取り込みを減少させる全身応答を誘導する)などの複数の送達経路(認識された免疫特権の部位であっても)によって誘発される限定的免疫応答を調節するために使用することができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるB細胞免疫調節剤は、B細胞依存性である複数の限定的な免疫学的経路を調節するために使用することができ、それには以下が含まれる:
・中和抗体(nAb)の開発
・抗体依存性細胞媒介性細胞傷害
・抗体依存性補体媒介性細胞傷害
・例えばToll様受容体(TLR)を介した自律的B細胞活性化
・B細胞媒介性T細胞共刺激
・B細胞媒介性抗原提示
【0095】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるB細胞免疫調節剤は、反復投与及び/又はAAV用量の増加などのB細胞調節を介して複数のAAV臨床用途を改善するために使用することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、PRV-3279の投与後、二重特異性分子の注入終了時にピーク血漿中濃度が生じ、複数回投与時の蓄積は最小限であった。これは、PRV-3279が良好な薬物動態特性を有することを示す。
【0097】
いくつかの実施形態では、PRV-3279二重特異性剤の投与は、それ自体の免疫原性の阻害、すなわち薬物の用量の増加に伴う抗薬物抗体(ADA)のより低い有病率及び/又は力価をもたらし得る。これは、他の免疫調節剤とは対照的である。さらに、これは、20mg/kg、30mg/kg又は40mg/kgなどのPRV-3279の用量の増加が、免疫原性を追加することなく十分に忍容され得ることを示唆している。
【0098】
いくつかの実施形態では、PRV-3279 ADAは、薬物動態(PK)、薬力学(PD)、安全性又は有効性に影響を及ぼさないことが観察されている。ADAは通常、少なくともPK及びPDに影響を及ぼすため、これは驚くべきことである。理論に拘束されるものではないが、ADAはPRV-3279を中和しないと仮定されている。
【0099】
いくつかの実施形態では、PRV-3279二重特異性剤は、用量依存的な様式で、投与時にナイーブ表現型及びメモリー表現型の両方を含むほとんど(例えば、>80~90%)のB細胞に結合し、特定のより高用量の薬物の最後の投与後少なくとも4週間、B細胞の少なくとも50%に結合したままである。これは、PRV-3279のPD効果の持続的な耐久性を示し、1ヶ月に1回(又はそれ以上)の投与を支持する。
【0100】
いくつかの実施形態では、PRV-3279二重特異性薬物による用量依存性及び持続的なB細胞結合は、B細胞を含む任意の循環細胞サブセットの枯渇の非存在下で免疫グロブリン産生の持続的阻害をもたらす。末梢血で減少した免疫グロブリンには、IgM、IgA、IgG及びIgEが含まれる。阻害は、抗原刺激の非存在下又は存在下(例えば、ワクチン接種)で観察することができる。これは、患者がB細胞などの循環細胞を保持して免疫系の一部として機能することができるように、非枯渇剤としてのPRV-3279の有利な安全上の特徴である。対照的に、枯渇剤(例えば、リツキシマブ、オクレリズマブ、インビリズマブ)を受けている患者は、回復するのに長い時間(例えば、1年)を要する。
【0101】
いくつかの実施形態では、BHTS遺伝子治療は、全長コドン最適化ヒトTAFAZZIN遺伝子を含む組換えAAVベクター血清型9(AAV9)であるAAV-Des-TAZを介して提供することができる。選択された血清型は、ヒトウイルスにおいてあまり一般的ではなく、個体が以前のウイルス感染から循環する治療前抗体を有する可能性を低下させる。前臨床試験を実施して、BTHSのノックダウン(KD)マウスモデルにおける臨床的有効性を検証した(Suzuki-Hatano 2019a)。マウスでは、ベクターはレシピエントの組織に浸透し、骨格筋細胞及び心筋細胞における導入遺伝子発現及びTAFFAZIN遺伝子産物の産生をもたらし、症候学の逆転をもたらす。
【0102】
KD BTHSマウスモデルにおける遺伝子ベクターを用いた試験は、プロモーターの変化が転写、したがって注射を行った年齢に基づく組織発現の変動をもたらしたことを実証した。これは、ヒトにおける適用及び後の時点での再投与を可能にする投与又は治療の最適なタイミングについて考えるときに重要な概念である。
【0103】
図1は、AAV-Des-TAZベクター設計の概略図である。デスミンプロモーターは、 全長のヒトコドン最適化TAZ cDNA+ポリAテールの発現を駆動する。この配列はAAV逆方向末端反復(ITR)に隣接しており、dsAAVを得るために必要な変化を含む左の隣接ITRを有する。
【0104】
図2は、例示的なコンストラクトB951(pds2TR-Des-coTAZ_Dual4)である。B951は、デスミンプロモーターによって制御されるコドン最適化完全長タファジンの自己相補的構築物である。配列を表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
【表3】
【0107】
【表4】
【0108】
図3は、例示的なコンストラクトC064(pds2TR-Des-coTAZiso2_Dual4)である。C064は、デルタ5又はエクソン5欠失タファジンcDNAを置換する。配列を表3に示す。
【0109】
【表5】
【0110】
【表6】
【0111】
【表7】
【0112】
いくつかの実施形態では、PRV-3279とAAV-Des-TAZ遺伝子治療との併用治療が提供される。本明細書に開示されるように、B細胞機能に対するPRV-3279の効果は一過性であり得る。これにより、B細胞集団を枯渇させず、したがって長期的に感染のリスクを増加させずに、遺伝子治療を送達し、免疫原性を低く保つことが可能になる。PRV-3279は、免疫原性を低下させることによって遺伝子治療と組み合わせて使用するための理想的な候補であり、それによって遺伝子ベクターの即時有効性を高めると同時に、後の時点で遺伝子治療の再投与も可能にする可能性がある。抗ウイルスベクター抗体の形成の減少は、遺伝子治療の反復送達を必要とする予想される組織及び器官の成長を継続する小児患者にとって特に重要である。さらに、PRV-3279がナイーブB細胞を阻害し、それによって遺伝子ベクターへの初期曝露で免疫応答を低下させるのに役立ち得ることを支持するデータがある。
【0113】
PRV-3279の機序の知識及び遺伝子治療の免疫原性の理解に基づいて、1つの例示的な計画は、以下のようにAAV-Des-TAZの治療過程中に3回PRV-3279を投与することを含むことができる:ベクター送達の1週間前、送達の2週間後、及び2回目の投与の3~4週間後。
【実施例
【0114】
実施された実験及び達成された結果を含む以下の実施例は、例示のみを目的として提供されており、本開示を限定するものと解釈されるべきではない。
【0115】
実施例1:成人を対象とした臨床試験デザイン
2つの全身投与量-3×1013μg/kg及び1×1014μg/kg-の遺伝子治療(AAV-Des-TAZ)の安全性及び有効性を試験するための96週間、4×4回の二重交差第I/II相臨床試験が本明細書で提供され、BTHSを有する青年及び若年成人(15~40歳)の4つのコホート(n=合計8)において、標準予防を用い、シロリムス+PRV-3279を-1週間、+2週間、+4週間で投与した。
【0116】
標準的な予防法を有する対象は、投薬の-21日前から開始して毎週リツキシマブ(Genentech、用量375mg/m2)を受けることができる。前投薬は、リツキシマブの30~60分前に投与され、アセトアミノフェン(Tylenol)及びジフェンヒドラミン(Benadryl)を含み得る。さらに、対象は、投与の-7日前から開始して投与後12週目まで毎日シロリムス(3~7ng/mLのトラフ血清シロリムスレベルを維持するように調整された、用量0.6~1mg/m2/日のWyeth)を投与することができる。
【0117】
実験的予防法を有する対象は、投与の-7日前、+14日前、及び+28日前からPRV-3279を受けることができる。前投薬は、PRV-3279の30~60分前に投与することができ、アセトアミノフェン(Tylenol)及びジフェンヒドラミン(Benadryl)を含むことができる。さらに、対象は、投与の-7日前から開始して投与後12週目まで毎日シロリムス(3~7ng/mLのトラフ血清シロリムスレベルを維持するように調整された、用量0.6~1mg/m2/日のWyeth)を投与することができる。
【0118】
対象は、身体検査及び定期的な検査評価によって感染についてモニターすることができ、臨床的に必要と考えられる場合は適切に処置することができる。
【0119】
本試験の主な安全性目的は、BTHS中のPRV-3279を含むrAAV9-Des-TAZの全身IV送達の安全性及び忍容性を調査することである。安全性転帰は、免疫系応答、安静時の心機能、心不整脈及び主要有害心イベントを含み得る。
【0120】
AAV-Des-TAZに特異的な臨床目的には以下が含まれる:(1)AAV-Des-TAZの全身送達の安全性及び忍容性を試験すること、及び(2)AAV-Des-TAZの全身送達の有効性(VO2peak)を試験すること。
【0121】
PRV-3279に特異的な臨床目的には、以下が含まれる:(1)血液中の抗AAV9抗体のレベル(AAVベクターの免疫原性)、及び(2)総IgM(PRV-3279活性のPDマーカー)。
【0122】
コホートA(n=4)では、3人の対象に、3×1013μg/kgのAAV-Des-TAZの1回の低用量を投与するように無作為化し、1人の対象に1×1014μg/kgの1回の高用量を受けるように無作為化することができる。これは、(リツキシマブ及びシロリムスの再投与を予測するための標準的な予防法を用いて行うことができる。
【0123】
16週間後、1日目に低用量を受けた3人の対象はクロスオーバーし、16週目に逆用量又は高用量を受けることができる。
【0124】
1日目に高用量を受けた1人の対象は、16週目にプラセボを受けることができる。
【0125】
コホートB(n=4)では、3人の対象に、1×1014μg/kg AAV9-Des-TAZの高用量を1回投与し、1人の対象に3×1013μg/kg rAAV9-Des-TAZの低用量を1回投与するように無作為化することができる。16週間後、16週目に低用量を受けた1人の対象は、クロスオーバーし、32週目に高用量を受けることができる。16週目に高用量を受けた3名の対象は、32週目にプラセボを受けることができる。これは、リツキシマブ及びシロリムスの再投与を予測するための標準的な予防法を用いて行うことができる。
【0126】
コホートC(n=4)では、3人の対象に、3×1013μg/kgのAAV-Des-TAZの1回の低用量を投与するように無作為化し、1人の対象を、1×1014μg/kgの1回の高用量を投与するように無作為化することができる。これは、PRV-3279及びシロリムスの再投与を予測するために実験的予防を用いて行うことができる。
【0127】
コホートD(n=4)では、3人の対象に、1×1014μg/kg AAV9-Des-TAZの高用量を1回投与し、1人の対象に3×1013μg/kg rAAV9-Des-TAZの低用量を1回投与するように無作為化することができる。16週間後、16週目に低用量を受けた1人の対象は、クロスオーバーし、32週目に高用量を受けることができる。16週目に高用量を受けた3名の対象は、32週目にプラセボを受けることができる。これは、PRV-3279及びシロリムスの再投与を予測するために実験的予防を用いて行うことができる。
【0128】
実施例2:PRV-3279とAAV-Des-TAZ遺伝子治療との併用治療のための毒性試験設計
120匹の同齢huCD32Bマウスを本試験で使用することができる。
【0129】
PRV-3279サロゲート要件:
6群×28日間×10匹のマウス×25gのマウス×50mg/kg=2100mg
6群×84日間×10匹のマウス×25gのマウス×50mg/kg=6300mg
+30%の過量=約11gのPRV-3279サロゲート。
【0130】
毒性試験は、以下のスケジュールに従って、低用量(例えば、3×1013μg/kg)又は高用量(例えば、1×1014μg/kg)の遺伝子治療(AAV-Des-TAZ)50mg/kg/日PRV-3279を28日間又は84日間受けたマウスで行うことができる。
【0131】
【表8】
【0132】
改変
本開示の記載された方法及び組成物の改変及び変形は、本開示の範囲及び精神から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本開示を特定の実施形態に関連して説明してきたが、特許請求される本開示はそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、本開示を実施するための記載された態様の様々な修正は、本開示が存在する関連分野の当業者によって意図され理解され、以下の特許請求の範囲によって表される本開示の範囲内にある。
【0133】
参照による組み込み
本明細書で言及されるすべての特許及び刊行物は、あたかも各独立した特許及び刊行物が参照により組み込まれることが具体的且つ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0134】
参考文献:
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図2
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