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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】電磁干渉フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/01 20060101AFI20241226BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20241226BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H03H7/01 A
H03H7/09 Z
H01F27/00 S
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537954
(86)(22)【出願日】2022-12-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 IB2022061882
(87)【国際公開番号】W WO2023119036
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】21216782.9
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504103641
【氏名又は名称】シャフナー・エーエムファウ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【弁理士】
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】タッカー・アンドリュー・セシル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ティエンイー
(72)【発明者】
【氏名】ゲンチュ・ローラント
(72)【発明者】
【氏名】テヘダ・アビエセル
(72)【発明者】
【氏名】パスコ・シモン
【テーマコード(参考)】
5E070
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AA19
5E070DB08
5J024AA01
5J024BA04
5J024CA20
5J024CA21
5J024DA01
5J024DA26
5J024EA01
5J024EA08
(57)【要約】
本発明は、電源装置Sに接続するための給電線側端子L1-L3と負荷装置Lに接続するための負荷側端子L′1-L′3とを有する電磁干渉(EMI)フィルタ100に関する。前記EMIフィルタ100は、前記負荷側端子L′1-L′3に接続され、コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとを抑制するように構成された負荷側の受動EMIフィルタ段1を含む。さらに、前記EMIフィルタ100は、前記給電線側端子L1-L3に接続され、ディファレンシャルモードノイズを抑制するように構成された給電線側の能動EMIフィルタ段3と、前記負荷側の受動EMIフィルタ段1と前記給電線側の能動EMIフィルタ段3との間の、コモンモードノイズを抑制するように構成された中間能動EMIフィルタ段2とを含む。また、本発明は、EMIフィルタ100を製造するための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置(S)に接続するための給電線側端子(L1-L3)と負荷装置(L)に接続するための負荷側端子(L′1-L′3)とを有する電磁干渉(EMI)フィルタ(100)であって、
前記EMIフィルタ(100)は、前記負荷側端子(L′1-L′3)に接続され、コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとを抑制するように構成された負荷側の受動EMIフィルタ段(1)と、前記給電線側端子(L1-L3)に接続され、ディファレンシャルモードノイズを抑制するように構成された給電線側の能動EMIフィルタ段(3)とを含む、当該EMIフィルタ(100)。
【請求項2】
前記負荷側のEMIフィルタ段(1)と前記給電線側のEMIフィルタ段(3)との間に、コモンモードノイズを抑制するように構成された能動中間EMIフィルタ段(2)を含む請求項1に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項3】
基本周波数を有するノイズを給電線(150)に入力する負荷装置(L)に関連して、前記負荷側の受動EMIフィルタ段(1)は前記ノイズの基本周波数よりも低いか又は高い共振周波数を呈する請求項1又は2に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項4】
前記負荷側の受動EMIフィルタ段(1)の共振周波数は、前記ノイズの基本周波数よりも少なくとも2倍、好ましくは5倍低いか又は高い請求項3に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項5】
前記負荷装置(L)は、スイッチング電力コンバータを含み、前記ノイズの基本周波数は、このスイッチング電力コンバータのキャリア周波数である請求項3又は4に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項6】
負荷側の受動EMIフィルタ段(1)は、発振を減衰又は抑制するための非線形関数を有するように構成された手段を含む請求項2~5のいずれか1項に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項7】
前記手段は、前記負荷側の受動EMIフィルタ段(1)の容量性フィルタ素子(6)内に構成された容量性放電減衰手段(61)である請求項6に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項8】
前記負荷側の受動EMIフィルタ段(1)は、第1の誘導性フィルタ素子(4)と第2の誘導性フィルタ素子(5)とを含み、複数の誘導性フィルタ素子(4,5)のそれぞれが給電線(150)に誘導結合されていて、それぞれがコモンモードノイズを抑制するように構成されており、前記給電線(150)に電気接続され、コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとを抑制するために構成された容量性フィルタ素子(6)をさらに含む請求項1~7のいずれか1項に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項9】
能動中間EMIフィルタ段(2)は、前記給電線(150)を循環するコモンモードノイズに関連するコモンモード信号を生成するためのコモンモード電流センサ(8)と、前記コモンモード信号を受信する電流増幅器(9)とを含み、この電流増幅器(9)は、ノイズキャンセル電流を前記給電線(150)に入力するように構成されている請求項2に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項10】
前記給電線側の能動EMIフィルタ段(3)は、給電線(150)に接続され、この給電線(150)に誘導結合された作動変圧器(10)を介してノイズ電圧を受信し、ノイズキャンセル電圧を前記給電線(150)に供給するように構成された電圧増幅器回路(11)を含む請求項1~9のいずれか1項に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項11】
前記ノイズキャンセル電圧は、ディファレンシャルモード成分及び/又はコモンモード成分を含む請求項10に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項12】
前記作動変圧器(10)は、
-1つの第1の磁性コア素子(19a)及び1つの第2の磁性コア素子(19b)と、
-それぞれが複数の前記磁性コア素子のうちの少なくとも1つの磁性コア素子に巻き付けられている複数の個別コイル素子(17a-17c)と、を含み、
-これらの磁性コア素子(19a,19b)は、閉磁路を形成するために前記給電線(150)の複数の導線(15a-15c)を囲むように配置されている請求項10又は11に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項13】
前記給電線(150)は、単相又は三相又は多相のACラインであり、前記作動変圧器(10)は、前記第1の磁性コア素子(19a)及び前記第2の磁性コア素子(19b)によって形成された1つの磁性コア(19)を有する単相又は三相又は多相の変圧器として構成されている請求項12に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項14】
-前記能動中間EMIフィルタ段(2)及び/又は前記給電線側の能動EMIフィルタ段(3)は、第1制御ループ(LC)と第2制御ループ(LC)とを有する増幅器回路(9,11)を含み、
-前記第1制御ループ(LC)は、伝達関数(T)と増幅器モジュールの利得を調整するための利得関数(K)とを有する前記増幅器モジュールを含み、
-前記第2制御ループ(LC)は、前記増幅器回路(9,11)における飽和を回避するために、入力信号(I)に応じて前記第1制御ループ(LC)の前記利得関数(K)を調整するように構成された利得制御関数(K)を含む請求項2~13のいずれか1項に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項15】
前記第2制御ループ(LC)の前記利得制御関数(K)は、上限を有する線形関数にしたがって前記第1制御ループ(LC)の利得関数(K)を調整する請求項14に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項16】
前記線形関数の上限は、前記利得制御関数(K)におけるピーク閾値目標値(P)に相当する請求項15に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項17】
前記第1制御ループ(LC)及び前記第2制御ループ(LC)はそれぞれ、1つの時定数を有し、前記第2制御ループ(LC)の時定数は、前記第1制御ループ(LC)の時定数よりも大きい請求項14~16のいずれか1項に記載のEMIフィルタ(100)。
【請求項18】
請求項10又は11に記載のEMIフィルタ(100)を製造するための方法であって、
-複数の導線(15a-15c)を提供するステップと、
-第1磁性コア素子(19a)及び第2磁性コア素子(19b)を提供するステップと、
-これらの導線(15a-15c)を前記第1磁性コア素子(19a)と前記第2磁性コア素子(19b)との間に設置するステップと、
-前記第1磁性コア素子(19a)と前記第2磁性コア素子(19b)とを、閉磁路を提供するために一体化させるステップと、
-前記コア素子(19a,19b)を固定するステップと、
-前記導線(15a-15c)を、作動変圧器(10)の一次側の負荷側端子(L1′-L3′)と、前記作動変圧器(10)の前記一次側の反対の二次側の給電線側端子(L1-L3)とに接続するステップと、を含む当該方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモンモードノイズ及びディファレンシャルモードノイズをフィルタリングするための電磁干渉(EMI)フィルタに関する。また、本発明は、EMIフィルタを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用途における電気システムは、継続して複雑になっていて、電磁干渉を生成するか又は電磁干渉によって妨害されやすい多数の構成要素を含む。多くの場合、電気モータは、例えば、可変の周波数及び振幅を有する波形を生成することによってモータ速度及びトルクを制御する電子インバータによって駆動される。これらのシステムは、高い効率を提供するが、強力な電磁干渉を引き起こす。
【0003】
スイッチング電力コンバータは、電気自動車及びハイブリッド自動車で使用され、同様に固定式の駆動モータ、充電器、光電池システム、照明制御、コンピュータ等のような非接触式の他の機器で使用される。全てのこれらの場合において、当該コンバータのスイッチング動作は、電磁干渉が管理又は減衰されない場合に、他の電気システムの機能に影響し得るか又は基準限界を超え得る電磁干渉の原因である。多くの場合、電磁干渉は、当該分野及び本明細書において頭文字のEMIによって示される。また、用語「ノイズ」が、電磁干渉を示すために頻繁に使用されるが、当該電磁干渉は、確率論的性質ではない(although these are not of stochastic nature)。本明細書も、表現「ノイズ」をこのように使用する。
【0004】
電磁干渉フィルタ又は略してEMIフィルタと呼ばれるこれらの望まない電磁干渉に使用される電気フィルタ又は電子フィルタは、信頼性を向上させ、既存の基準を守るために電気エンジニアリングの全ての分野で使用される。良好に設計されたフィルタリングシステムが、多くの複雑な電気システムの性能に重要である。
【0005】
受動低域通過LCフィルタを使用することが公知であり、このようなフィルタは、多くの機器で有効であることが実証されている。受動的な解決手段が、十分な減衰を提供しないと同時に、当該解決手段には制約がある。受動EMIフィルタの1つの制約は、希望した減衰レベルが、高い値のコンデンサ及びインダクタンスを必要とする点である。その結果として製造されたフィルタのサイズ及びコストは、これらの大きい構成要素によって主に決定される。多くの機器において、高い値のコンデンサは、高いレベルの電流(漏れ電流)及び無効電流を接地システムに通電させる。両者は、システム動作に対して望ましくなく、有害である。
【0006】
高い値のコンデンサ及びインダクタンスのサイズの大幅な減少は、EMIフィルタを能動フィルタ段と組み合わせることによって達成され得る。これらの2つの異なるフィルタ技術の組み合わせは、サイズ及びコストを大幅に減少させ得る。
【0007】
全てではないが、文献から公知である受動フィルタと能動フィルタとを組み合わせている多くのEMIフィルタは、コモンモードノイズ又はディファレンシャルモードノイズを減衰させるために最適化される。
【0008】
米国特許第10476464号明細書は、直列に接続された2つのLCフィルタ、2つの変圧器及び能動電流制御回路を有するEMIコモンモードフィルタ装置を開示する。変圧器は、コモンモード電流を感知し、当該電流制御回路によって生成された相殺電流を入力するためだけに設けられている。当該コモンモードフィルタは、特にコモンモードノイズを減少させるように設計されている。
【0009】
当該コモンモードフィルタの構成は複雑である。能動電流制御回路は、特定の作動状態下だけで減衰を提供する。この場合、これらのLCフィルタは、電流制御回路が故障してもコモンモードフィルタの機能の一部を提供するように構成されている。
【0010】
国際特許出願第2015177746号は、高い周波数のコモンモードノイズをフィルタリングすることを可能にする少なくとも1つの受動フィルタ段と、ノイズが検出されることを可能にする少なくとも1つの電流検出回路と、当該電流検出回路から得られた電圧をノイズと同じ波形にすることを可能にする少なくとも1つの波形生成回路とを有するEMI能動ディファレンシャルモードラインフィルタを開示する。
【0011】
さらに、この刊行物は、能動フィルタのために必要とされる電力を生成する少なくとも1つの電源装置と、能動フィルタによって生成され、導線へのノイズと同じ波形を有する信号を電流検出回路の入力部に送信する少なくとも1つの電流増幅器回路とを開示する。このフィルタ、特に受動フィルタ段は、大きく、コモンモードノイズ信号に対して不十分な減衰を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第10476464号明細書
【特許文献2】国際公開第2015177746号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の1つの課題は、好ましくは給電線側と負荷側との双方で、コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとを、両ノイズモードに対して高い減衰によってフィルタリングするために設計されているEMIフィルタを提供することにある。
【0014】
本発明の別の課題は、コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとをフィルタリングするために配置されていて、受動部品に対するインダクタンス及びキャパシタンスがより低い値であると同時に、サイズが減少されているEMIフィルタを提供することにある。これは、使用される鉄、銅等のような材料を著しく減少させる。その結果、当該設計は、より持続可能でもある。さらに、当該EMIフィルタは、刊行物から公知である関連する従来のEMIフィルタに比べて製造しやすい。本発明のさらなる課題は、コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとをフィルタリングするために構成されていて、150kHz未満の周波数でもノイズを十分に減衰させるEMIフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、これらの課題は、添付された特許請求の範囲の対象によって解決され、特に、電源装置に接続するための給電線側端子と、負荷装置に接続するための負荷側端子と、当該負荷側端子に接続され、コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとを抑制するように構成された負荷側の受動EMIフィルタ段と、当該給電線側端子に接続され、ディファレンシャルモードノイズを抑制するように構成された給電線側の能動EMIフィルタ段と、を有するEMIフィルタによって解決される。
【0016】
従属請求項は、当該負荷側の受動EMIフィルタ段と当該給電線側の能動MIフィルタ段との間の、コモンモードノイズを抑制するように構成された能動中間EMIフィルタ段、負荷側の受動フィルタ内の第1誘導性素子及び第2誘導性素子並びに容量性素子、当該中間段内の、コモンモードノイズ電流をキャンセルする相殺電流を給電線に入力する電流増幅器を作動させるコモンモード回路センサ、例えば電流変換器、給電線ユニット内の、給電線上で測定されたEMIをキャンセルする起電力を当該給電線に生成するために電圧増幅器によって作動される作動変圧器のような、重要で有益であるが、必須でない特徴を規定する。作動変圧器は、ディファレンシャルモードノイズと、希望であるならばコモンモードノイズとをキャンセルするように作動され得る。
【0017】
上記の作動変圧器は、給電線に存在する相の数に整合する構成を有する。三相及び単相の給電線の重要な場合では、作動変圧器は、三相又は単相を有する。好ましくは、作動変圧器は、1つの磁性コアを有する。組み立てを簡略化するため、作動変圧器のコアを、(堅いバスバーであり得る)電力導体を切断又は移動することなしに、この作動変圧器を給電線に接続するために分離され得る並列された2つの磁性素子によって形成することが有益であることが分かっている。これらのコア素子間の空隙が、材料の飽和を回避するために有益であることが分かっている。
【0018】
好ましくは、中間側の能動フィルタ及び給電線側の能動フィルタは、フィードバックフィルタである。このフィードバックフィルタでは、エラー信号(例えば、コモンモードノイズ電流又はディファレンシャルモード電圧)が、給電線上で感知され、適切な増幅器によって増幅され、キャンセル信号として測定点の前方の給電線上に入力される。好ましくは、当該増幅器の利得は、可変であり、遅いサーボ回路を過励振することなしに出力を望ましい範囲内に維持するため、当該遅いサーボ回路によって自動的に制御される。
【0019】
フィルタの負荷端子に接続された干渉源に関連して、好ましくは、当該フィルタの複数の段は、負荷側の受動型EMI段の共振周波数が干渉の基本周波数よりも小さいか又は大きいように、例えば2倍又は3倍高いように設計されている。さらに又は代わりに、好ましくは、当該フィルタの複数の段は、EMIフィルタが自己共振を有しないように設計されている。さらに又は代わりに、当該フィルタの複数の段は、負荷側の受動型EMI段の共振周波数が負荷のスイッチング周波数に影響しないように設計されている。共振周波数は、幾つかの要因によって決定される。これらの要因のうちの重要な要因は、インダクタンス及びキャパシタンスの選択及び/又は負荷側の受動EMI段の非線形素子である。他方では、インダクタンス値及びキャパシタンス値が比較的小さいので、負荷側の受動EMI段の共振周波数は、ハイブリッドフィルタの減衰に匹敵する減衰を特徴とする受動EMIフィルタの共振周波数よりも小さいか又は大きい。干渉源がスイッチング電力コンバータである重要な使用の場合では、基本周波数は、当該コンバータのキャリア周波数とみなされ得る。
【0020】
EMIフィルタ、特に負荷側の受動EMIフィルタ段は、共振を減衰又は抑制するように構成され得る。
【0021】
本発明のさらなる利点が、下記から読み取られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】好適な実施の形態によるEMIフィルタを概略的に示す。
図2a】1つの実施の形態による発振を減衰又は抑制するための手段を有する容量性フィルタ素子の可能な構成を示す。
図2b】1つの実施の形態による発振を減衰又は抑制するための手段を有する容量性フィルタ素子の可能な構成を示す。
図3】1つの実施の形態による作動変圧器を示す。
図4】1つの実施の形態による作動変圧器を示す。
図5】他の実施の形態による電流増幅器及び/又は電圧増幅器の制御図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照すると、本発明によるEMIフィルタ100が、給電線150(この場合では、三相線)上で負荷300と電源装置200との間に挿入されている。このフィルタは、適切な導電端子によって、又は当該給電線側の導体L1,L2,L3と当該負荷側のL1′,L2′,L3′とによってこの給電線上で挿入されている。ケーブルと電気モータとを有するモータ駆動装置でもよい負荷300は、コモンモードノイズ及びディファレンシャルモードノイズを発生する。
【0024】
電源装置5は、給電線側端子L1,L2,L3に電力を供給するために配置された任意の種類の電源装置でもよい。この明細書における「給電線側」又は「負荷側」は、給電線150上の1つの位置に対する装置の物理的な位置及び/又は電気接続ノードに関連する。給電線側は、給電線150上の位置又は電気接続ノードが負荷Lよりも電源装置Sに近いことを意味する一方で、負荷側は、位置又は電気接続ノードが電源装置Sよりも負荷Lに近いことを意味する。
【0025】
電源装置5は、直流電力若しくは交流電力又は単相電力若しくは多相電力を供給してもよい。他方では、負荷装置Lは、負荷側端子L1′,L2′,L3′に接続されているときに、電力を受け取り、ノイズを給電線150に伝導するように配置されている任意の装置でもよい。伝導されるEMIを生成する装置は公知であり、例えば、発電機、電源装置、電圧レギュレータ、発振器及び充電器である。
【0026】
EMIは、給電線に沿って伝導され、電源装置側200に向かって伝導する間に異なるフィルタ段1,2,3によって徐々に軽減又は減衰される。
【0027】
負荷側から給電線に向かって、フィルタ100は、最初に負荷側受動段1を有する。受動フィルタ1は、最大の帯域幅を有するノイズの最高レベルを処理する。受動フィルタ1は、後続する段に到達しようとするノイズの振幅を減衰させ、そのノイズの帯域幅を減少させる。好ましくは、負荷側の受動EMIフィルタ段1は、コモンモードノイズ及びディファレンシャルモードノイズを同時に抑制するように構成されている。
【0028】
本明細書の記載における「受動」は、受動EMIフィルタ段1を構成するコンデンサとインダクタと選択的な抵抗とから成る構成を意味する。受動フィルタは、外部の電源に依存せず、受動フィルタは、増幅器回路のような能動素子を含まない。
【0029】
負荷側の受動EMIフィルタ段1に後続する能動フィルタ段2,3は、ノイズの動特性及び帯域幅の全体に対処する必要がない。何故なら、受動フィルタ段1は、周波数範囲の特により高い部分を著しく減衰させるからである。能動EMIフィルタ段2,3は、当該振幅及び帯域幅を減少させるように設計され得て、結果として、能動EMIフィルタ段2,3は、より小さくてもよく、コストをより低くできる。
【0030】
他方では、能動フィルタ段2,3によってもたらされた減衰は、受動フィルタ段1の減衰に付加される。有利には、当該受動フィルタは、非常に高い減衰をもたらすことを要求されないが、能動フィルタ段2及び3が許容できるレベルに、ノイズが、受動フィルタ1を通過することによって減少されることで十分である。これは、相互に有益である。何故なら、受動フィルタ段1は、特に低い周波数でより小さい減衰のために、したがって大きいインダクタ及びコンデンサなしに設計され得るからである。
【0031】
受動フィルタ段1に戻ると、この実施の形態では、受動フィルタ段1は、給電線150に誘導結合された第1誘導性フィルタ素子4と第2誘導性フィルタ素子5とから構成される。
【0032】
第1誘導性フィルタ素子4は、給電線150に電気接続されているコモンモードインダクタでもよい。さらに好ましくは、フェライトコア素子が、コモンモードインピーダンスを提供することによって給電線150上のノイズに対してコモンモード減衰を提供するように、第1フィルタ素子4は、給電線150上に設置されているシングルフェライトコア素子によって設けられている。
【0033】
第2誘導性フィルタ素子5は、場合によってはより高い又は異なるインダクタンス値を有する第1誘導性フィルタ素子4と同じ構成を有し得る。これらの素子のインダクタンスに対する一般的な値は、10μH~50μHであるが、これらの形態は、本出願にしたがって変更されてもよい。
【0034】
受動フィルタ段1は、第1誘導性フィルタ素子4と第2誘導性フィルタ素子5との間の給電線150に電気接続された容量性フィルタ素子6をさらに有する。容量性フィルタ素子6は、給電線150とグランドGとに電気接続するためのコネクタを有し得る。
【0035】
容量性フィルタ素子6は、給電線150上のコモンモードノイズ及びディファレンシャルモードノイズを抑制するように構成されている。従来の技術において公知であるように、容量性フィルタ素子6は、ディファレンシャルEMIを減衰するようにX接続されたコンデンサのネットワークと、コモン電位ノードGに向かうコモンモードEMIをバイパスするYコンデンサとを提供するために相互接続されている複数のコンデンサによって配置され得る。
【0036】
Yコンデンサは、良く知られていて、一般にグランドGに接続されている。Xコンデンサのネットワークは、デルタ結線コンデンサネットワークと呼ばれる一方で、Yコンデンサのネットワークは、スター結線コンデンサネットワークとして知られている。デルタ結線コンデンサネットワークは、ディファレンシャルモードノイズをバイパスするために使用され得る一方で、スター結線コンデンサネットワークは、コモンモードノイズをバイパスするために使用され得る。コンデンサネットワークの適切な構成が、刊行物から公知である。
【0037】
図1は、容量性フィルタ素子6に接続された低電圧電源装置12も示す。この構成要素は、能動フィルタ段2及び3によって必要とされる低レベル電源装置のV+を、特に電流増幅器回路9と電圧増幅器回路11とに供給するために使用される。電源装置12は、コンデンサバンク6に有益に接続されてもよいが、これは必須ではなくて、これは、実際には低電圧、例えば±10Vの任意の適切な直流源によって具体化され得る。電源装置12は、受動フィルタ段1の機能部分ではなく、ノイズを直接に減衰させることに寄与しない。
【0038】
受動フィルタ段1は、低域通過「T」のLCフィルタとして示されているが、他の構成を有してもよく、低域通過フィルタ、帯域通過フィルタ又は帯域阻止フィルタの伝達関数を提供してもよい。大抵の受動LCフィルタは、特定の1つの周波数で又は2つ以上の周波数で共振する。当該共振は、抵抗又はバリスタのような適切な減衰素子(dissipative elements)によって減衰されてもよい。
【0039】
給電線側の能動EMIフィルタ段3は、給電線側端子L1,L2,L3に接続されている。給電線側の能動EMIフィルタ段3は、給電線150上のディファレンシャルモードノイズを抑制するために配置されている。示された実施の形態では、EMIフィルタ100は、受動段1と給電線側の能動段3との間の給電線150上の、この給電線150上のコモンモードノイズを抑制するために構成されている能動中間EMIフィルタ段2を特徴とする。
【0040】
能動中間EMIフィルタ段2を負荷側の受動EMIフィルタ段1と給電線側のEMIフィルタ段3との間に設置することには、給電線側のEMIフィルタ段3が、高いインピーダンスを電源装置Sに提供するという利点がある。この手法では、当該EMIフィルタが、この電源装置を共有する他の装置を妨害しない。
【0041】
本発明の1つの特徴では、上記の1つの共振周波数又は複数の共振周波数は、負荷側端子L1′,L2′,L3′に接続可能な又は接続された負荷装置によって生成される電磁干渉の基本周波数を考慮して設計される。この明細書の内容においては、頻繁に起こるように、ノイズが、厳密に周期的でない場合でも、表現「基本周波数」は、最も低い周波数及び/又は最も高い振幅を有するノイズとして読み取られるべきである。負荷が、スイッチングコンバータである重要な用途の場合では、基本周波数は、当該コンバータのキャリア周波数とも呼ばれるスイッチング周波数でもよい。
【0042】
基本周波数は、1kHz~200kHzの範囲内の周波数でもよい。ほとんどの用途では、当該キャリア周波数は、2kHz~20kHzの範囲内又は50kHz~200kHzの範囲内でもよい。
【0043】
負荷側の受動EMIフィルタ段1は、この受動EMIフィルタ段1が負荷Lから来るノイズの基本周波数よりも小さいか又は大きい共振周波数を呈するように構成されている。好ましくは、当該共振周波数は、ノイズの基本周波数と少なくとも2倍異なるか又は好ましくは5倍異なる。このため、EMIフィルタ100におけるリンギング及び発振が最小にされ、当該フィルタ100の性能を著しく向上させつつ、当該発振を減衰させるために多くの場合に設置されている抵抗が省略され得るか又は小さく設計され得る。高いインピーダンスが、受動素子4,5,6におけるL及びCの小さい値を選択することによって達成され得て、減衰が、低い周波数で減少する。これは、低い周波数での当該減衰が能動段2及び3によって増大されるので欠点ではない。他方では、能動段2及び3は、好ましくは高い周波数によっても設計される。
【0044】
さらなる実施の形態では、EMIフィルタ1は、上記のような共振周波数によって構成され得るが、代わりに又はさらに、負荷Lのノイズ放射によって刺激された共振が、好ましくは負荷側の受動EMIフィルタ段1において構成された関連手段を使用して減衰又は抑制されてもよい。以上により、任意の刺激の結果として、共振が十分に減衰又は抑制されるので、EMIフィルタ1は、共振現象を呈することなしに構成され得る。当該共振周波数のための特別な設計と組み合わせた手段が、高いノイズレベルを呈する環境においてもEMIフィルタ1をロバストに且つ安定に作動させる。
【0045】
減衰のための手段を追加することは、負荷側の受動EMIフィルタ段1を設計するための柔軟性を劇的に向上させる。負荷側の受動EMIフィルタ段1は、意図された全ての用途のための「万能の対策」を提供するように設計され得る。負荷側の受動EMIフィルタ段1が、この負荷側の受動EMIフィルタ段1の共振周波数に近い基本周波数を有するノイズを放射するノイズ放射負荷Lと結合される場合でも、当該減衰手段は、EMIフィルタ1における任意の共振現象を防止する。その結果、負荷側の受動EMIフィルタ段1は、特定の1つの共振周波数を用いるにもかかわらず、多数の用途向けに設計され得る。
【0046】
当該示された想定される例では、エネルギーが、電源装置Sから負荷Lに向かって流れるが、これは、本発明の必須要件ではない。本発明は、発電システム又は回生制動を伴うモータにも適用され得る。本発明では、負荷Lに供給される電力が、負、瞬間的又は持続的でもよい。換言すれば、スイッチング電力コンバータは、単方向又は双方向のスイッチング電力コンバータとして構成されてもよい。
【0047】
好ましくは、能動中間EMIフィルタ段2は、給電線150を循環するコモンモードノイズ電流に比例するコモンモードノイズ信号を提供するために配置されているコモンモード電流センサ8、例えば変流器又はシャント抵抗を含む。
【0048】
電流増幅器9が、コモンモードノイズ信号を受信するために配置されていて、ノイズ電流とは反対の符号を有するノイズキャンセル電流を生成する。ノイズキャンセル電流は、給電線150を循環するコモンモードノイズ電流を減衰するためにこの給電線150に入力される。示されたバリエーションは、フィードバック構成である。当該キャンセル電流は、(センサに対して負荷側で)このセンサ8の前方に入力される。フィードフォワードフィルタも可能であり、本発明の範囲内に含まれる。
【0049】
この実施の形態では、給電線側の能動EMIフィルタ段3が、電圧増幅器回路11を含む。この電圧増幅器回路11の入力部が、給電線150に接続されていて、当該電線上の電圧ノイズを感知する。図1に示されていないものの、当該電線で発生する電圧が、適切な分圧器によって又は保護回路によって当該増幅器の入力に対して許容可能なレベルに降圧されることが分かる。
【0050】
コモンモードノイズを抑制するように構成された中間段とは対照的に、給電線側の段3は、ディファレンシャルモードノイズを抑制するように構成されていて、給電線150が多相の給電線であるならば多相信号に作用する。コモンモードノイズは、中間段によって処理されるので、給電線側の段は、ディファレンシャルモードノイズだけを処理する。しかしながら、これは、本発明の必須の特徴ではなく、フィルタ段1が、コモンモードノイズ成分を同様に減衰するように構成されてもよい。
【0051】
電圧増幅器回路11の出力部が、給電線の電圧に重畳されるキャンセル電圧を生成し、これによりノイズを減衰させる。本発明のフィルタは、フィードバック構成でも示されるが、中間段に対しては、当該フィードバック構成は必須ではない。
【0052】
図示されているように、好ましくは、増幅器の出力部は、作動変圧器10を介して給電線に接続されている。増幅器回路11は、作動変圧器10の一組の一次巻線に電流を入力し、この変圧器10は、磁気誘導によって起電力を給電線150の、二次巻線として配置されている導体に誘導させる。
【0053】
給電線150上に存在する電圧ノイズを減衰させるため、この給電線150に流れるノイズ成分に対して反対の相を有する電圧又は電圧信号が誘導される。
【0054】
図2aは、発振を減衰又は抑制するための手段、すなわち共振を減衰又は抑制するための容量性放電減衰手段61を有するさらなる実施の形態に関する容量性フィルタ素子6の可能な構成を示す。3つのコンデンサCX1..CX3の1つの端部が、給電線150のそれぞれの相に接続されている。3つのコンデンサCX1..CX3の第2端部が、始点63を形成するために相互に接続されている。容量性放電減衰手段61が、始点63とグランドGとの間にノード62を介して接続されている。
【0055】
図2bは、ノード62とグランドGとの間にそれぞれ接続された第1枝部64及び第2枝部66を含む容量性放電減衰手段61の可能な構成を示す。
【0056】
第1枝部64は、直列に接続された第1一方向導体D及び第1YコンデンサCY1を含む。第1回路点65が、第1一方向導体Dと第1YコンデンサCY1との間に配置されている。第1一方向導体Dは、ノード62と第1YコンデンサCY1との間に配置されている。第1一方向導体Dの順方向が、ノード62から第1コンデンサCY1まで又はグランドに向かって存在する。
【0057】
第2枝部66は、直列に接続された第2一方向導体D及び第2コンデンサCY2を含む。第2回路点67が、第2一方向導体Dと第2コンデンサCY2との間に配置されている。第2一方向導体Dは、ノード62と第2コンデンサCとの間に配置されている。第2一方向導体Dの順方向が、第2コンデンサCY2まで又はグランドから離れるように存在する。
【0058】
第1コンデンサCY1及び第2コンデンサCY2は、Yコンデンサとして作動する。
【0059】
一方向導体は、非対称な導電率を有する、すなわち逆方向よりも良好に電流を順方向に通電させる任意の構成要素又は一群の構成要素として規定される。好ましくは、一方向導体は、順方向にほぼ完全に電流を通電させ、逆方向に全ての電流をほぼ遮断することを可能にする。好ましくは、一方向導体D及びDは、ダイオードである。
【0060】
抵抗Rが、第1枝部64と第2枝部66との間に接続されている。好ましくは、抵抗Rは、第1回路点65と第2回路点67との間に接続されている。
【0061】
2つの一方向導体D及びDは、第1コンデンサCY1が第1極性(ここでは、正)の電荷だけを受け取り、第2コンデンサCY2が第2極性(ここでは、負)の電荷だけを受け取るように2つの枝部64及び66内に構成されている。一方向導体D及びDに起因して、コンデンサCY1及びCY2からの電荷が、ノード62に逆流できない。コンデンサCY1及びCY2が、抵抗Rにわたって放電し、当該電圧の時間積分とコモンモードノイズとを減少させる。コンデンサCY1及びCY2は、EMIフィルタ100における、特に負荷側の受動EMIフィルタ段1における、負荷装置Lの基本周波数を有するこの負荷装置Lのノイズ放射によって刺激され得る発振を最終的に減少させるか又は阻止する。容量性放電減衰手段61は、非線形の挙動を呈する。さらに、容量性放電減衰手段61の構成に起因して、この容量性放電減衰手段61は、従来の技術における他の解決手段に比べて省エネルギーである。
【0062】
図3は、本発明に適する作動変圧器10の可能な実施の形態を示す。好ましくは、作動変圧器は、2つのコア素子19a及び19bに分割された磁性コアを有する。好ましくは、磁性コア素子19a,19bは、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト等のような、ノイズが予測される周波数で低い保磁力及び低いヒステリシス損失を有する軟磁性材料から成る。
【0063】
導線15a,15b,15cと絶縁材料20とを収容可能である複数の凹部が、磁性コア素子19a,19bのそれぞれの磁性コア素子に設けられている。この例では、給電線150の3つの相に対応する3つの凹部が、磁性コア素子19a,19bのそれぞれの磁性コア素子に設けられている。
【0064】
第1コイル素子17a、第2コイル素子17b及び第3コイル素子17cが、第1磁性コア素子19aに設けられている。コイル素子17a,17b,17cのそれぞれのコイル素子が、第1磁性コア素子19aに複数回巻き付けられていて、第1磁性コア素子19aの複数の凹部のうちの1つの凹部に配置されているワイヤによって製造されている。
【0065】
ワイヤは、複数の巻線を互いに電気絶縁するためにワニスによって被覆されてもよい。コイル素子17a,17b,17cは、(図示されていない)絶縁材料を使用して第1磁性コア素子19aから電気絶縁され得る。絶縁材料は、コイル素子17a,17b,17cと磁性コア素子19aの表面との間に設置されてもよい。
【0066】
第1導線15a、第2導線15b及び第3導線15cは、複数の凹部のそれぞれの凹部に配置されている。導線15a,15b,15cは、給電線150の一部でもよく、電源装置Sと負荷装置Lとの間で、又は負荷装置Lと電源装置Sとの間で主電流とコモンモード及び/又は電流モードのノイズとを搬送するように構成されてもよい。電気絶縁が、導線15a,15b,15cのそれぞれの導線に施されてもよい。
【0067】
さらに又は代わりに、図3に示されているように、導線15a,15b,15cは、 絶縁材料20を使用して磁性コア素子19a,19bから電気絶縁されている。
【0068】
磁性コア素子19a,19bは、これらの磁性コア素子19a,19bが給電線150の導線15a,15b,15cを囲むように配置されている。さらに、磁性コア素子19a,19bは、これらの磁性コア素子19a,19bが閉磁路を提供するように配置されている。すなわち、給電線150の導線15a,15b,15cは、二次巻線を形成する。
【0069】
コイル素子17a,17b,17cは、一次巻線を形成し、磁性コア素子19a,19bは、磁性コア19を形成する。これらの素子は、変圧器の一部であり、すなわち作動変圧器10の一部である。エアギャップ21が、関連するB/Hループの傾斜を減少させるので、磁性コア素子19は、作動変圧器10のインダクタンスを線形化するために、及び飽和を回避するためにエアギャップ21を有してもよい。
【0070】
この明細書に記載の一次及び二次は、磁性コア素子19中で変化する磁束が生成される作動変圧器10の側面に関係する。
【0071】
図4は、EMIフィルタ100の1つの実施の形態による、磁性コア素子19によって囲まれている3つの導線15a、15b,15cと電圧増幅器回路11に接続され得る3つのコイル素子17a,17b,17cとを有する作動変圧器10を示す。これらの3つの導線15a,15b,15cは、給電線150の一部である。
【0072】
図4は、作動変圧器10、給電線150及び三相交流システムのためのEMIフィルタを示す。代わりに、給電線150は、単相又は多相の交流線路でもよい。代わりに、作動変圧器10は、第1磁性コア素子19aと第2磁性コア素子19bとによって形成された単一の磁性コア素子19を有する単相又は多相の変圧器でもよい。
【0073】
作動変圧器10の2つの磁性コア素子19a,19bを有する磁性コア19を配置することには、作動変圧器10が、複数の導線15a,15b,15cを有する既存の給電線150上に容易に設置され得るという利点がある。作動変圧器10は、給電線150に組み付けられ得るか又は圧着され得るので、この給電線150を切断又は分解する必要がない。したがって、トップハットレールを取り付けることが、作動変圧器10に対して一般的に適用され得る。
【0074】
図5は、本発明の中間段2又は給電線側の段3で使用されるような能動フィルタ段の概念図である。負荷Lと電源装置Sとは、単線として示されている給電線150によって接続されている。当然に、給電線150は、多相の電力線でもよい。
【0075】
増幅器回路9,11は、給電線150上の感知点Aで感知されたノイズに比例する(電圧信号、電流信号、コモンモード信号又はディファレンシャルモード信号であり得る)ノイズ信号を受信する。感知点Aは、電源装置側200に位置する。当該能動フィルタ段は、キャンセル信号を加算点Bに入力するように構成されている。加算点Bは、負荷側の段300に位置する。
【0076】
能動中間EMIフィルタ段2又は給電線側の能動EMIフィルタ段3は、理想的な利得段Kのカスケードによって概念的に示された出力を生成する増幅器回路9,11を含む。当該出力は、可変であってもよく、伝達関数Tでもよい。AとBとの間の増幅器11,9は、公知の方法でノイズを減衰させる第1フィードバック制御ループLCを構成する。
【0077】
第2制御ループLCは、利得Kを適応的に制御するために使用される。第2制御ループLCは、ノイズレベルに対して敏感であり、増幅器回路9,11が飽和する程度に、ノイズが所定の範囲を超えると、利得Kを減少させる。正常な状態では、ノイズレベルが、既定の閾値未満であるときは、第2制御ループLCは起動せず、利得Kは、その正常値を有する。
【0078】
ノイズが、所定の閾値を超えると、利得Kが、既定の利得制御関数Kに追従して徐々に減少される。当該実施の形態では、この利得制御関数は、最大値をクリップされた線形関数でもよい。この最大値は、増幅器回路9,11の最大出力に関連されてもよく、又は、この最大値は、入力変数Pによって設定されてもよい。
【0079】
負荷装置Lが、例えば過負荷作動モード中に定められた電力よりも大きい電力を必要とするときに、利得Kが減少される必要があり得る。この場合、本発明に関するフィルタは、飽和及び発振を回避しつつ一貫して作動し、減衰手段を全ての状況で提供する。
【0080】
第1制御ループLC及び第2制御ループLCは、異なるタイムスケール上で作動する。第1制御ループLCの伝達関数Tは、当該段の減衰帯域幅を決定し、ノイズは、可能な限り広い減衰帯域幅を必要としなければならない。第2制御ループLCは、より遅い速度で作動し、数ミリ秒の時定数を有し得る。
【0081】
第1制御ループLCは、感知点Aでノイズ信号に対して非常に速く応答するように構成されている一方で、ネガティブフィードバックループを有する第2制御ループLCは、ループ利得のための適切な動作点を見つけ出すので、当該より遅い速度の作動は有益である。
【0082】
ノイズを減衰させるための速い制御ループLCと、当該ノイズのレベルに基づいてフィードバック利得Kを変更するためのより遅いサーボループとを有するこの配置は、特に能動中間EMIフィルタ段2と給電線側の能動EMIフィルタ段3とがそれぞれ上記のような増幅器回路9,11を有して配置されているときに、能動EMIフィルタ段2,3の安定性を向上させる点において有益である。
【0083】
また、上記の方法は、EMIフィルタ100、特に作動変圧器10を製造するための方法に関する。
【0084】
製造するための当該方法は、以下の:
-複数の導線15a,15b,15cを提供するステップと、
-第1磁性コア素子19a及び第2磁性コア素子19bを提供するステップと、
-これらの導線15a,15b,15cを第1磁性コア素子19aと第2磁性コア素子19bとの間に設置するステップと、
-第1磁性コア素子19aと第2磁性コア素子19bとを一体化させるステップとを含む。
【0085】
一体化させるは、第1磁性コア素子19aと第2磁性コア素子19bとを必要な程度に相互に近接させることを意味する。これは、エアギャップ21が第1磁性コア素子19aと第2磁性コア素子19bとの間に残ることを排除しない。これらの磁性コア素子19a,19bは、これらの磁性コア素子19a,19bが閉磁路を提供するように配置されている。
【0086】
当該方法は、コア素子19a,19bを固定するステップをさらに含む。コア素子19a,19bは、接着剤又はワニスのような固定材料を使用して固定されてもよい。さらに又は代わりに、取付具のような他の手段が、コア素子19a,19bを固定し、これらのコア素子19a,19bを適切に保持するために使用され得る。コア素子19a,19bは、これらのコア素子19a,19bの相互の位置を確保した後にハウジング内に配置されてもよい。
【0087】
当該方法は、導線15a,15b,15cを、作動変圧器10の一次側の負荷側端子L1′,L2′,L3′と、作動変圧器10の当該一次側の反対の二次側の給電線側端子L1,L2,L3とに接続するステップも含む。
【0088】
好ましくは、当該複数のステップは、上記の順序で処理されるが、代わりに任意の異なる順序で実行されてもよい。最初に導線15a,15b,15cを負荷側端子L′1,L′2,L′3と給電線側端子L1,L2,L3とに接続し、次いで残りの構成要素を供給し、その次のステップで磁気回路を閉じることが可能であり得る。
【0089】
これは、上記の実施の形態に対して可能である。何故なら、作動変圧器10は、2つのシングルコア素子19a,19bを備える一方で、当該2つのコア素子19a,19bのうちの1つのコア素子だけが、コイル素子17a,17b,17cを備えるからである。
【0090】
これは、EMIフィルタ100を給電線150に追加装備することを可能にし、関連する製造工程を容易にする。
【0091】
上記の複数の実施の形態又は複数の特徴は、本発明の異なる特徴を説明しているが、技術的に可能であり且つ有益であるときは、これらの実施の形態又は特徴は、1つのEMIフィルタ100において個々に組み合わされてもよく、又は組み合わせたものとしてもよい。しかしながら、必要であるならば、これらの実施の形態又は特徴は個別に実施されてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 負荷側の受動EMIフィルタ段
2 能動中間EMIフィルタ段
3 給電線側の能動EMIフィルタ段
4 第1誘導性フィルタ素子
5 第2誘導性フィルタ素子
6 容量性フィルタ素子
8 コモンモード電流センサ
9 電流増幅器回路
10 作動変圧器
11 電圧増幅器回路
12 低電圧源
15a 第1導線
15b 第2導線
15c 第3導線
17a 第1コイル素子
17b 第2コイル素子
17c 第3コイル素子
19 磁性コア
19a 第1磁性コア素子
19b 第2磁性コア素子
20 絶縁材料
21 エアギャップ
61 容量性放電減衰手段
62 ノード
63 始点
64 第1枝部
65 第1回路点
66 第2枝部
67 第2回路点
100 EMIフィルタ
150 給電線
200 電源装置側
300 負荷装置側
A 感知点
B 加算点
X1...X3 Xコンデンサ
Y1,CY2 Yコンデンサ
G グランド
入力信号
K 利得関数
利得制御関数
L 負荷又は負荷装置
L1 第1給電線側端子
L2 第2給電線側端子
L3 第3給電線側端子
L1′ 第1負荷側端子
L2′ 第2負荷側端子
L3′ 第3負荷側端子
LC 第1制御ループ
LC 第2制御ループ
P ピーク閾値目標値
S 電源装置
T 伝達関数
V+ 低電圧
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-07-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁干渉フィルタが、電源装置に接続するための給電線側端子と負荷装置に接続するための負荷側端子とを有し、
前記電磁干渉フィルタは、前記負荷側端子に接続され、コモンモードノイズを抑制するように構成された負荷側の受動電磁干渉フィルタ段と、前記給電線側端子に接続され、ディファレンシャルモードノイズを抑制するように構成された給電線側の電磁干渉フィルタ段とを含む、当該電磁干渉フィルタにおいて、
前記負荷側の受動電磁干渉フィルタ段は、ディファレンシャルモードノイズを抑制するように構成されていて、前記給電線側の電磁干渉フィルタ段は、給電線側の能動電磁干渉フィルタ段である当該電磁干渉フィルタ
【請求項2】
前記負荷側の電磁干渉フィルタ段と前記給電線側の電磁干渉フィルタ段との間に、コモンモードノイズを抑制するように構成された能動中間電磁干渉フィルタ段を含む請求項1に記載の電磁干渉フィルタ
【請求項3】
基本周波数を有するノイズを給電線に入力する負荷装置に関連して、前記負荷側の受動電磁干渉フィルタ段は前記ノイズの基本周波数よりも低いか又は高い共振周波数を呈する請求項に記載の電磁干渉フィルタ
【請求項4】
前記負荷側の受動電磁干渉フィルタ段の共振周波数は、前記ノイズの基本周波数よりも少なくとも2倍、好ましくは5倍低いか又は高い請求項3に記載の電磁干渉フィルタ
【請求項5】
前記負荷側の受動電磁干渉フィルタ段は、第1の誘導性フィルタ素子と第2の誘導性フィルタ素子とを含み、複数の誘導性フィルタ素子のそれぞれが給電線に誘導結合されていて、それぞれがコモンモードノイズを抑制するように構成されており、前記給電線に電気接続され、コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとを抑制するために構成された容量性フィルタ素子をさらに含む請求項に記載の電磁干渉フィルタ
【請求項6】
能動中間電磁干渉フィルタ段は、前記給電線を循環するコモンモードノイズに関連するコモンモード信号を生成するためのコモンモード電流センサと、前記コモンモード信号を受信する電流増幅器とを含み、この電流増幅器は、ノイズキャンセル電流を前記給電線に入力するように構成されている請求項に記載の電磁干渉フィルタ
【請求項7】
前記給電線側の能動電磁干渉フィルタ段は、給電線に接続され、この給電線に誘導結合された作動変圧器を介してノイズ電圧を受信し、ノイズキャンセル電圧を前記給電線に供給するように構成された電圧増幅器回路を含む請求項に記載の電磁干渉フィルタ
【請求項8】
前記ノイズキャンセル電圧は、ディファレンシャルモード成分及び/又はコモンモード成分を含む請求項に記載の電磁干渉フィルタ
【請求項9】
前記作動変圧器は
-1つの第1の磁性コア素子及び1つの第2の磁性コア素子と
-それぞれが複数の前記磁性コア素子のうちの少なくとも1つの磁性コア素子に巻き付けられている複数の個別コイル素子と、を含み、
-これらの磁性コア素子は、閉磁路を形成するために前記給電線の複数の導線を囲むように配置されている請求項に記載の電磁干渉フィルタ
【請求項10】
前記給電線は、単相又は三相又は多相のACラインであり、前記作動変圧器は、前記第1の磁性コア素子及び前記第2の磁性コア素子によって形成された1つの磁性コアを有する単相又は三相又は多相の変圧器として構成されている請求項に記載の電磁干渉フィルタ
【請求項11】
-前記能動中間電磁干渉フィルタ段及び/又は前記給電線側の能動電磁干渉フィルタ段は、第1制御ループと第2制御ループとを有する増幅器回路を含み、
-前記第1制御ループは、伝達関数と増幅器モジュールの利得を調整するための利得関数とを有する前記増幅器モジュールを含み、
-前記第2制御ループは、前記増幅器回路における飽和を回避するために、入力信号に応じて前記第1制御ループの前記利得関数を調整するように構成された利得制御関数を含む請求項に記載の電磁干渉フィルタ
【請求項12】
前記第2制御ループの前記利得制御関数は、上限を有する線形関数にしたがって前記第1制御ループの利得関数を調整する請求項11に記載の電磁干渉フィルタ
【請求項13】
前記線形関数の上限は、前記利得制御関数におけるピーク閾値目標値に相当する請求項12に記載の電磁干渉フィルタ
【請求項14】
前記第1制御ループ及び前記第2制御ループはそれぞれ、1つの時定数を有し、前記第2制御ループの時定数は、前記第1制御ループの時定数よりも大きい請求項11に記載の電磁干渉フィルタ
【請求項15】
請求項に記載の電磁干渉フィルタを製造するための方法であって、
-複数の導線を提供するステップと、
-第1磁性コア素子及び第2磁性コア素子を提供するステップと、
-これらの導線を前記第1磁性コア素子と前記第2磁性コア素子との間に設置するステップと、
-前記第1磁性コア素子と前記第2磁性コア素子とを、閉磁路を提供するために一体化させるステップと、
-前記コア素子を固定するステップと、
-前記導線を、作動変圧器の一次側の負荷側端子と、前記作動変圧器の前記一次側の反対の二次側の給電線側端子とに接続するステップと、を含む当該方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0091
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0091】
上記の複数の実施の形態又は複数の特徴は、本発明の異なる特徴を説明しているが、技術的に可能であり且つ有益であるときは、これらの実施の形態又は特徴は、1つのEMIフィルタ100において個々に組み合わされてもよく、又は組み合わせたものとしてもよい。しかしながら、必要であるならば、これらの実施の形態又は特徴は個別に実施されてもよい。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下の構成も包含し得る。
1.
電源装置(S)に接続するための給電線側端子(L1-L3)と負荷装置(L)に接続するための負荷側端子(L′1-L′3)とを有する電磁干渉(EMI)フィルタ(100)であって、
前記EMIフィルタ(100)は、前記負荷側端子(L′1-L′3)に接続され、コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとを抑制するように構成された負荷側の受動EMIフィルタ段(1)と、前記給電線側端子(L1-L3)に接続され、ディファレンシャルモードノイズを抑制するように構成された給電線側の能動EMIフィルタ段(3)とを含む、当該EMIフィルタ(100)。
2.
前記負荷側のEMIフィルタ段(1)と前記給電線側のEMIフィルタ段(3)との間に、コモンモードノイズを抑制するように構成された能動中間EMIフィルタ段(2)を含む上記1に記載のEMIフィルタ(100)。
3.
基本周波数を有するノイズを給電線(150)に入力する負荷装置(L)に関連して、前記負荷側の受動EMIフィルタ段(1)は前記ノイズの基本周波数よりも低いか又は高い共振周波数を呈する上記1又は2に記載のEMIフィルタ(100)。
4.
前記負荷側の受動EMIフィルタ段(1)の共振周波数は、前記ノイズの基本周波数よりも少なくとも2倍、好ましくは5倍低いか又は高い上記3に記載のEMIフィルタ(100)。
5.
前記負荷装置(L)は、スイッチング電力コンバータを含み、前記ノイズの基本周波数は、このスイッチング電力コンバータのキャリア周波数である上記3又は4に記載のEMIフィルタ(100)。
6.
負荷側の受動EMIフィルタ段(1)は、発振を減衰又は抑制するための非線形関数を有するように構成された手段を含む上記2~5のいずれか1つに記載のEMIフィルタ(100)。
7.
前記手段は、前記負荷側の受動EMIフィルタ段(1)の容量性フィルタ素子(6)内に構成された容量性放電減衰手段(61)である上記6に記載のEMIフィルタ(100)。
8.
前記負荷側の受動EMIフィルタ段(1)は、第1の誘導性フィルタ素子(4)と第2の誘導性フィルタ素子(5)とを含み、複数の誘導性フィルタ素子(4,5)のそれぞれが給電線(150)に誘導結合されていて、それぞれがコモンモードノイズを抑制するように構成されており、前記給電線(150)に電気接続され、コモンモードノイズとディファレンシャルモードノイズとを抑制するために構成された容量性フィルタ素子(6)をさらに含む上記1~7のいずれか1つに記載のEMIフィルタ(100)。
9.
能動中間EMIフィルタ段(2)は、前記給電線(150)を循環するコモンモードノイズに関連するコモンモード信号を生成するためのコモンモード電流センサ(8)と、前記コモンモード信号を受信する電流増幅器(9)とを含み、この電流増幅器(9)は、ノイズキャンセル電流を前記給電線(150)に入力するように構成されている上記2に記載のEMIフィルタ(100)。
10.
前記給電線側の能動EMIフィルタ段(3)は、給電線(150)に接続され、この給電線(150)に誘導結合された作動変圧器(10)を介してノイズ電圧を受信し、ノイズキャンセル電圧を前記給電線(150)に供給するように構成された電圧増幅器回路(11)を含む上記1~9のいずれか1つに記載のEMIフィルタ(100)。
11.
前記ノイズキャンセル電圧は、ディファレンシャルモード成分及び/又はコモンモード成分を含む上記10に記載のEMIフィルタ(100)。
12.
前記作動変圧器(10)は、
-1つの第1の磁性コア素子(19a)及び1つの第2の磁性コア素子(19b)と、
-それぞれが複数の前記磁性コア素子のうちの少なくとも1つの磁性コア素子に巻き付けられている複数の個別コイル素子(17a-17c)と、を含み、
-これらの磁性コア素子(19a,19b)は、閉磁路を形成するために前記給電線(150)の複数の導線(15a-15c)を囲むように配置されている上記10又は11に記載のEMIフィルタ(100)。
13.
前記給電線(150)は、単相又は三相又は多相のACラインであり、前記作動変圧器(10)は、前記第1の磁性コア素子(19a)及び前記第2の磁性コア素子(19b)によって形成された1つの磁性コア(19)を有する単相又は三相又は多相の変圧器として構成されている上記12に記載のEMIフィルタ(100)。
14.
-前記能動中間EMIフィルタ段(2)及び/又は前記給電線側の能動EMIフィルタ段(3)は、第1制御ループ(LC )と第2制御ループ(LC )とを有する増幅器回路(9,11)を含み、
-前記第1制御ループ(LC )は、伝達関数(T)と増幅器モジュールの利得を調整するための利得関数(K)とを有する前記増幅器モジュールを含み、
-前記第2制御ループ(LC )は、前記増幅器回路(9,11)における飽和を回避するために、入力信号(I )に応じて前記第1制御ループ(LC )の前記利得関数(K)を調整するように構成された利得制御関数(K )を含む上記2~13のいずれか1つに記載のEMIフィルタ(100)。
15.
前記第2制御ループ(LC )の前記利得制御関数(K )は、上限を有する線形関数にしたがって前記第1制御ループ(LC )の利得関数(K)を調整する上記14に記載のEMIフィルタ(100)。
16.
前記線形関数の上限は、前記利得制御関数(K )におけるピーク閾値目標値(P)に相当する上記15に記載のEMIフィルタ(100)。
17.
前記第1制御ループ(LC )及び前記第2制御ループ(LC )はそれぞれ、1つの時定数を有し、前記第2制御ループ(LC )の時定数は、前記第1制御ループ(LC )の時定数よりも大きい上記14~16のいずれか1つに記載のEMIフィルタ(100)。
18.
上記10又は11に記載のEMIフィルタ(100)を製造するための方法であって、
-複数の導線(15a-15c)を提供するステップと、
-第1磁性コア素子(19a)及び第2磁性コア素子(19b)を提供するステップと、
-これらの導線(15a-15c)を前記第1磁性コア素子(19a)と前記第2磁性コア素子(19b)との間に設置するステップと、
-前記第1磁性コア素子(19a)と前記第2磁性コア素子(19b)とを、閉磁路を提供するために一体化させるステップと、
-前記コア素子(19a,19b)を固定するステップと、
-前記導線(15a-15c)を、作動変圧器(10)の一次側の負荷側端子(L1′-L3′)と、前記作動変圧器(10)の前記一次側の反対の二次側の給電線側端子(L1-L3)とに接続するステップと、を含む当該方法。
【国際調査報告】