(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ヒト化マウスモデル
(51)【国際特許分類】
A01K 67/0271 20240101AFI20241226BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20241226BHJP
A01K 67/0275 20240101ALN20241226BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20241226BHJP
C12N 15/27 20060101ALN20241226BHJP
C12N 15/19 20060101ALN20241226BHJP
A61P 37/02 20060101ALN20241226BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20241226BHJP
A61K 35/17 20250101ALN20241226BHJP
A61K 39/00 20060101ALN20241226BHJP
A61K 48/00 20060101ALN20241226BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
A01K67/0271
G01N33/68
A01K67/0275
C12N15/24
C12N15/27
C12N15/19
A61P37/02
A61K39/395 U
A61K35/17
A61K39/00 Z
A61K39/00 H
A61K48/00
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538006
(86)(22)【出願日】2022-12-21
(85)【翻訳文提出日】2024-08-20
(86)【国際出願番号】 US2022053588
(87)【国際公開番号】W WO2023122138
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398066918
【氏名又は名称】ザ ジャクソン ラボラトリー
【氏名又は名称原語表記】THE JACKSON LABORATORY
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ケック, ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
2G045AA29
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB17
2G045DA36
2G045DA37
4C084AA13
4C084AA17
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB021
4C084ZB051
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB091
4C084ZB261
4C084ZB311
4C085AA03
4C085AA14
4C085BA01
4C085BB01
4C085EE01
4C087AA10
4C087BB37
4C087CA04
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB02
4C087ZB05
4C087ZB07
(57)【要約】
ヒト免疫系は複雑であり、かつその関連疾患も同様に複雑である。従って、ヒト疾患(例えば、がん)は、しばしば特徴付けを行い、効果的に処置することが困難である。ヒト化マウスモデルとしての使用のための免疫不全トランスジェニックマウスが提供される。上記ヒト化マウスモデルは、病的な組織または細胞(例えば、ヒトがん細胞)をさらに移植され得る。上記ヒト化マウスモデルを使用して疾患進行、免疫応答、および提唱される治療剤の有効性を評価する方法がまた、本明細書で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト液性免疫およびヒト細胞性免疫のマウスモデルを生成する方法であって、前記方法は、
(a)ヒトインターロイキン-3(IL-3)をコードする導入遺伝子、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子2(GM-CSF)をコードする導入遺伝子、ヒト幹細胞因子(SCF)をコードする導入遺伝子、およびヒトIL-15をコードする導入遺伝子を含む免疫不全マウスを提供する工程;
(b)骨髄破壊的処置を前記免疫不全マウスに投与する工程;ならびに
(c)ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を前記免疫不全マウスに投与する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記骨髄破壊的処置は、照射である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記照射は、γ線照射(cGy)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記骨髄破壊的処置は、≦150cGyである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記骨髄破壊的処置は、≦100cGyである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記骨髄破壊的処置は、約50~約100cGyである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記骨髄破壊的処置は、40~60cGyである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記骨髄破壊的処置は、約50cGyである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
1×10
7個よりも少ない前記hPBMCが前記免疫不全マウスに投与される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
0.5×10
6個~5×10
6個の前記hPBMCが前記免疫不全マウスに投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
約4×10
6個の前記hPBMCが前記免疫不全マウスに投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記hPBMCの投与は、前記骨髄破壊的処置の投与の3日以内である、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記hPBMCの投与は、前記骨髄破壊的処置の投与と同日である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記hPBMCの投与は、前記骨髄破壊的処置の投与の6時間以内である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記hPBMCの投与は、前記骨髄破壊的処置の投与と同時である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記免疫不全マウスにヒトの病的な細胞を投与する工程をさらに包含する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫不全マウスにヒト治療剤またはヒト予防剤を投与する工程をさらに包含する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒト治療剤は、ヒト免疫調節剤から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒト免疫調節剤は、モノクローナル抗体から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ヒト免疫調節剤は、細胞治療、必要に応じて、T細胞治療から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫不全マウスに、ワクチンであるヒト治療剤またはヒト予防剤を投与する工程をさらに包含する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記ワクチンは、タンパク質抗原またはタンパク質抗原をコードする核酸、必要に応じて、がん抗原または病原性抗原である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
候補ヒト治療剤の投与は、前記骨髄破壊的処置の投与の30日以内である、請求項17~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記ヒト治療剤の投与は、前記骨髄破壊的処置の投与の28日以内である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ヒト治療剤の投与は、前記骨髄破壊的処置の投与の21日以内である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記ヒト治療剤の投与は、前記骨髄破壊的処置の投与の14日以内である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記マウスに由来するサンプル、必要に応じて血液サンプルを、1またはこれより多くのヒトサイトカインに関してアッセイする工程をさらに包含する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記1またはこれより多くのヒトサイトカインは、インターフェロンγ(IFN-γ)、インターロイキン(IL)-2、IL-4、IL-6、IL-10、および腫瘍壊死因子α(TNFα)から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記マウスに由来するサンプル、必要に応じて血液サンプルを、1またはこれより多くのヒト免疫グロブリンに関してアッセイする工程をさらに包含する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記1またはこれより多くのヒト免疫グロブリンは、IgM、IgA、IgG、必要に応じてIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記マウスに由来するサンプル、必要に応じて血液を、1またはこれより多くの抗薬物抗体に関してアッセイする工程をさらに包含する、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前述の請求項のいずれか1項に記載の方法によって生成されるヒト液性免疫およびヒト細胞性免疫のマウスモデル。
【請求項33】
ヒトインターロイキン-3(IL-3)をコードする導入遺伝子、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子2(GM-CSF)をコードする導入遺伝子、ヒト幹細胞因子(SCF)をコードする導入遺伝子、ヒトIL-15をコードする導入遺伝子を含む、免疫不全マウス。
【請求項34】
前記免疫不全マウスは、非肥満性糖尿病の遺伝的バックグラウンドを有する、請求項33に記載の免疫不全マウス。
【請求項35】
前記免疫不全マウスは、重症複合免疫不全変異(Prkdc
scid)を有する、請求項33または34に記載の免疫不全マウス。
【請求項36】
前記免疫不全マウスは、IL2レセプター共通γ鎖のヌルアレル(IL2rg
null)を有する、請求項33~35のいずれか1項に記載の免疫不全マウス。
【請求項37】
前記免疫不全マウスは、NOD-scid IL2Rgamma
null遺伝的バックグラウンドを有する、請求項33~36のいずれか1項に記載の免疫不全マウス。
【請求項38】
前記免疫不全マウスは、骨髄破壊的処置に曝される、請求項33~37のいずれか1項に記載の免疫不全マウス。
【請求項39】
前記骨髄破壊的処置は、照射である、請求項38に記載の免疫不全マウス。
【請求項40】
前記免疫不全マウスの細胞は、ヒトIgM、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、およびヒトIgG4を生成する、請求項33~39のいずれか1項に記載の免疫不全マウス。
【請求項41】
前記免疫不全マウスの細胞は、6000~16000μg/mLのヒトIgGを生成する、請求項40に記載の免疫不全マウス。
【請求項42】
前記免疫不全マウスの細胞は、1000-2000μl/mLのヒトIgMを生成する、請求項40または41に記載の免疫不全マウス。
【請求項43】
前記免疫不全マウスの細胞は、1500~2500μl/mLのヒトIgG1を生成する、請求項39~42のいずれか1項に記載の免疫不全マウス。
【請求項44】
前記免疫不全マウスの細胞は、500~1500μl/mLのヒトIgG2を生成する、請求項39~43のいずれか1項に記載の免疫不全マウス。
【請求項45】
前記免疫不全マウスの細胞は、150~205μl/mLのヒトIgG3を生成する、請求項39~44のいずれか1項に記載の免疫不全マウス。
【請求項46】
前記免疫不全マウスの細胞は、50~1000μl/mLのヒトIgG4を生成する、請求項39~45のいずれか1項に記載の免疫不全マウス。
【請求項47】
前記免疫不全マウスは、ヒトCD3
+、CD4
+、CD8
+およびCD19
+ 細胞を生成する、請求項32~46のいずれか1項に記載の免疫不全マウス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
ヒト免疫系は複雑であり、かつその関連疾患も同様に複雑である。従って、ヒト疾患(例えば、がん)は、しばしば特徴付けを行い、効果的に処置することが困難である。免疫応答の局面の分離を可能にし、例えば、効果的な医学的および薬学的治療を特定するために有用な方法および組成物を提供する動物モデルの必要性が継続している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
概要
本開示は、いくつかの局面において、ヒトインターロイキン-3(IL-3)をコードする導入遺伝子、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子2(GM-CSF)をコードする導入遺伝子、ヒト幹細胞因子(SCF)をコードする導入遺伝子、およびヒトIL-15をコードする導入遺伝子を含む免疫不全トランスジェニックマウスを提供する。本明細書で記載される場合、上記免疫不全トランスジェニックマウスは、少なくとも部分的にその生理学的特性に起因して、改善されたヒト化マウスモデルを表し、これは、以前のヒト化マウスモデルに対して、ヒトの生理学的特性をより緊密に模倣する。本明細書で提供される免疫不全トランスジェニックマウスのヒト化は、疾患モデリングおよび治療剤(例えば、候補治療剤)の評価を可能にする。予測外なことには、本明細書で提供されるデータは、骨髄破壊的治療(例えば、照射)への免疫不全マウスの曝露は、ヒト化とは別個に、免疫グロブリン生成を増強することを示す。興味深いことに、照射の線量が異なれば、導かれる転帰も異なる。50cGyの照射に曝されたマウスは、例えば、試験したあらゆる線量の中で最高のヒト免疫グロブリンレベルを生成した。
【0003】
いくつかの局面は、ヒト液性免疫およびヒト細胞性免疫のマウスモデルを生成する方法であって、上記方法は、(a)ヒトインターロイキン-3(IL-3)をコードする導入遺伝子、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子2(GM-CSF)をコードする導入遺伝子、ヒト幹細胞因子(SCF)をコードする導入遺伝子、およびヒトIL-15をコードする導入遺伝子を含む免疫不全マウスを提供する工程;(b)骨髄破壊的処置を上記免疫不全マウスに投与する工程;ならびに(c)ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を上記免疫不全マウスに投与する工程を包含する方法を提供する。
【0004】
いくつかの実施形態において、上記骨髄破壊的処置は、照射である。
【0005】
いくつかの実施形態において、前記照射は、γ線照射(cGy)である。いくつかの実施形態において、上記骨髄破壊的処置は、≦150cGyである。いくつかの実施形態において、上記骨髄破壊的処置は、≦100cGyである。いくつかの実施形態において、上記骨髄破壊的処置は、約50~約100cGyである。いくつかの実施形態において、上記骨髄破壊的処置は、40~60cGyである。いくつかの実施形態において、上記骨髄破壊的処置は、約50cGyである。
【0006】
いくつかの実施形態において、1×107個より少ない上記hPBMCが、上記免疫不全マウスに投与される。いくつかの実施形態において、0.5×106個~5×106個の上記hPBMCが、上記免疫不全マウスに投与される。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記hPBMCの投与は、上記骨髄破壊的処置の投与の3日以内である。いくつかの実施形態において、上記hPBMCの投与は、上記骨髄破壊的処置の投与と同日である。いくつかの実施形態において、上記hPBMCの投与は、上記骨髄破壊的処置の投与の6時間以内である。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記免疫不全マウスにヒトの病的な細胞を投与する工程をさらに包含する。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記免疫不全マウスにヒト治療剤またはヒト予防剤(または候補ヒト治療剤)を投与する工程をさらに包含する。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記ヒト治療剤(または候補ヒト治療剤)は、ヒト免疫調節剤から選択される。いくつかの実施形態において、上記ヒト治療剤(または候補ヒト治療剤)は、モノクローナル抗体から選択される。いくつかの実施形態において、上記ヒト免疫調節剤は、細胞治療、必要に応じて、T細胞治療から選択される。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記免疫不全マウスに、ワクチンであるヒト治療剤またはヒト予防剤を投与する工程をさらに包含する。
【0012】
いくつかの実施形態において、上記ワクチンは、タンパク質抗原またはタンパク質抗原をコードする核酸、必要に応じて、がん抗原または病原性抗原である。
【0013】
いくつかの実施形態において、上記ヒト治療剤(または候補ヒト治療剤)の投与は、上記骨髄破壊的処置の投与の30日以内である。いくつかの実施形態において、上記ヒト治療剤(または候補ヒト治療剤)の投与は、上記骨髄破壊的処置の投与の28日以内である。いくつかの実施形態において、上記ヒト治療剤(または候補ヒト治療剤)の投与は、上記骨髄破壊的処置の投与の21日以内である。いくつかの実施形態において、上記ヒト治療剤(または候補ヒト治療剤)の投与は、上記骨髄破壊的処置の投与の14日以内である。
【0014】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記マウスに由来するサンプルを、1またはこれより多くのヒトサイトカインに関してアッセイする工程をさらに包含する。上記サンプルは、例えば、血液サンプルであり得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、上記1またはこれより多くのヒトサイトカインは、インターフェロンγ(IFN-γ)、インターロイキン(IL)-2、IL-4、IL-6、IL-10、および腫瘍壊死因子α(TNFα)から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記マウスに由来するサンプルを、1またはこれより多くのヒト免疫グロブリンに関してアッセイする工程をさらに包含する。上記サンプルは、例えば、血液サンプルであり得る。
【0017】
いくつかの実施形態において、上記1またはこれより多くのヒト免疫グロブリンは、IgM、IgA、IgG、必要に応じてIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、上記方法は、上記マウスに由来するサンプル、必要に応じて、血液サンプルを、1またはこれより多くの抗薬物抗体に関してアッセイする工程をさらに包含する。
【0019】
いくつかの局面は、前述の局面および/または実施形態のうちのいずれか1つの方法によって生成されるヒト液性免疫およびヒト細胞性免疫のマウスモデルを提供する。
【0020】
他の局面は、ヒトインターロイキン-3(IL-3)をコードする導入遺伝子、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子2(GM-CSF)をコードする導入遺伝子、ヒト幹細胞因子(SCF)をコードする導入遺伝子、およびヒトIL-15をコードする導入遺伝子を含む免疫不全マウスを提供する。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスは、非肥満性糖尿病の遺伝的バックグラウンドを有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスは、重症複合免疫不全変異(Prkdcscid)を有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスは、IL2レセプター共通γ鎖のヌルアレル(IL2rgnull)を有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスは、NOD-scid IL2Rgammanull遺伝的バックグラウンドを有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスは、骨髄破壊的処置に曝されている。いくつかの実施形態において、上記骨髄破壊的処置は、照射である。
【0026】
いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスの細胞は、ヒトIgM、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、およびヒトIgG4を生成する。
【0027】
いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスの細胞は、6000~16000μl/mLのヒトIgGを生成する。いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスの細胞は、1000~2000μl/mLのヒトIgMを生成する。いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスの細胞は、1500~2500μl/mLのヒトIgG1を生成する。いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスの細胞は、500~1500μl/mLのヒトIgG2を生成する。いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスの細胞は、150~205μl/mLのヒトIgG3を生成する。いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスの細胞は、50~1000μl/mLのヒトIgG4を生成する。
【0028】
いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスは、ヒトCD3+、CD4+、CD8+およびCD19+細胞を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図面の簡単な説明
【
図1A-B】
図1A~1Fは、3名の異なるドナーに由来するCD34+ 造血幹細胞(HSC)を移植したNSG-SGM3マウスおよびNSG-SGM3xIL15マウスにおけるヒトCD45+ 生着の比較を示す。
図1A~1Cは、3名の異なるドナーに由来するCD45+ 細胞の頻度を示す一方で、
図1D~1Fは、その3名のドナーからの対応するCD45+ 細胞/マイクロリットルを示す。
【
図2A】
図2A~2Fは、3名の異なるドナーに由来するCD34+ HSCを移植したNSG-SGM3マウスおよびNSG-SGM3xIL15マウスにおけるヒトナチュラルキラー(NK)細胞、T細胞、B細胞、および骨髄系細胞の比較を経時的に示す。
図2A~2Cは、NSG-SGM3マウスにおける種々のヒト免疫細胞のパーセンテージを明らかに示し、
図2D~2Fは、NSG-SGM3xIL15マウスにおける種々のヒト免疫細胞のパーセンテージを明らかに示す。矢印は、NK細胞データに向けられている。
【
図3A-B】
図3A~3Fは、3名の異なるドナーに由来するCD34+ HSCを移植したNSG-SGM3マウスおよびNSG-SGM3xIL15マウスにおけるヒトNK細胞の比較を経時的に示す。
図3A~3Cは、CD45
+細胞のパーセンテージ(細胞頻度)としてNK細胞を示し、
図3D~3Fは、NK細胞/マイクロリットルを示す。
【
図4A-B】
図4A~4Fは、CD34+ HSCを移植し、ヒト細胞株由来異種移植片(CDX; MDA-MB-231、
図4Aおよび4D)を同所性に植え込んだか、または患者由来異種移植片(PDX)を皮下に植え込んだNSG(登録商標)マウス、NSG-SGM3マウスおよびNSG-SGM3xIL15マウスにおける腫瘍増殖動態の比較を経時的に示す。使用した2種の患者由来異種移植片(PDX)は、以下であった:PS4050(
図4Bおよび4E)またはLG1306(
図4Cおよび4F)。
図4A~4Cは、3種の異種移植片モデルの平均腫瘍容積を示し、
図4D~4Fは、個々の腫瘍サイズを経時的に示す。
【
図5】
図5A~5Bは、CD34+ HSCを移植したNSG-SGM3マウスおよびNSG-SGM3xIL15マウスの血液中のヒト調節性T(Treg)細胞の頻度(
図5A)ならびに脾臓におけるCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞でのPD-1発現(
図5B)を示す。
【
図6A-B】
図6A~6Cは、マウス1匹あたり5×10
6個のヒト末梢血単核細胞(PBMC)を移植したNSG-SGM3マウスおよびNSG-SGM3xIL15マウスにおける白血球(
図6A)、ヒト骨髄系細胞(
図6B)、およびヒトNK細胞(
図6C)の比較を示す。
【
図7A】
図7A~7Cは、マウス1匹あたり5×10
6個のヒトPBMCを移植したNSG-SGM3マウスおよびNSG-SGM3xIL15マウスの脾臓における活性化T細胞の比較を示す。
【
図8A】
図8A~8Cは、2つの異なる照射線量(150および175cGy)を用いて、マウス1匹あたり1×10
6個または5×10
6個のヒトPBMCを移植したNSG-SGM3マウスおよびNSG-SGM3xIL15マウスにおけるヒトCD45+ 細胞(
図8A)、ヒト骨髄系細胞(
図8B)、およびヒトNK細胞(
図8C)の比較を示す。
【
図9A-B】
図9A~9Cは、マウス1匹あたり5×10
6個のヒトPBMCを移植したNSG-SGM3マウスおよびNSG-SGM3xIL15マウスにおけるTNF(
図9A)、IL-6(
図9B)、およびIL-2(
図9C)のレベルの比較を示す。
【
図10A】
図10A~10Cは、2つの異なる照射線量(150および175cGy)を用いて、マウス1匹あたり1×10
6個または2×10
6個のヒトPBMCを移植したNSG-SGM3マウスおよびNSG-SGM3xIL15マウスにおけるIFN-γ(
図10A)、TNF(
図10B)、およびIL-6(
図10C)のレベルの比較を示す。
【
図11】
図11A~11Bは、照射ありまたはなしで、単一のドナーに由来するPBMCを移植したNSG-SGM3xIL15マウスにおけるヒト化の比較を示す。
図11Aは、移植後7日、14日および21日において細胞/μLとしてヒトCD45+ 細胞を明らかに示す。
図11Bは、移植後7日、14日および21日において全生細胞のパーセンテージとしてヒトCD45+ 細胞を明らかに示す。
【
図12】
図12A~12Bは、照射ありまたはなしで、2名の異なるドナーに由来するPBMCを移植したNSG-SGM3xIL15マウスにおけるヒト化の比較を示す。
図12Aは、移植後14日および21日において全生細胞のパーセンテージとしてヒトCD45+ 細胞を明らかに示す。
図12Bは、移植後14日および21日において細胞/μLとしてヒトCD45+ 細胞を明らかに示す。
【
図13】
図13は、照射ありまたはなしで、3名の異なるドナーに由来するPBMCの移植後14日および21日においてNSG-SGM3xIL15マウスにおける循環ヒトIgGレベルの比較を示す。
【
図14】
図14A~14Bは、照射ありまたはなしで、単一のドナーに由来するPBMCの移植後14日(
図14A)および21日(
図14B)において、NSG-SGM3xIL15マウスの血清中のヒトIgアイソタイプの比較を示す。
【
図15】
図15A~15Bは、照射ありまたはなしで、単一のドナーに由来するPBMCの移植後14日(
図15A)および21日(
図15B)において、NSG-SGM3xIL15マウスにおけるヒト免疫細胞集団の比較を明らかに示す。
【
図16】
図16A~16Bは、種々の照射線量でのPBMC移植NSG-SGM3xIL15マウスにおけるヒト化(
図16A)および循環ヒト免疫グロブリンG(hIgG)レベル(
図16B)の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
本開示は、いくつかの実施形態において、ヒトIL-3、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子2 GM-CSF、ヒトSCF、およびヒトIL-15を発現する免疫不全マウスモデルを提供する。いくつかの実施形態において、上記マウスは、NSG-SGM3マウスとNSG-IL-15マウスとを交配することによって生成される。上記マウスは、いくつかの実施形態において、CD34+ 造血幹細胞(HSC)または末梢血単核細胞(PBMC)でヒト化され、予測外なことには、上記2つの親系統のいずれかに対して、より生理学的かつ拡大されたヒト化免疫プロフィールを有する。例えば、本明細書で記載される場合、上記マウスモデルがPBMCでヒト化される場合、親系統のいずれよりも高レベルのヒト免疫細胞(例えば、CD45+ 細胞)が生成される。このようにして、驚くべきことに、少数の患者PBMC(例えば、1×106程度の少なさの患者PBMC)は、上記マウスをヒト化するために使用され得る。これは、患者PBMCがしばしば、特に、疾患の早期では、非常に少数で存在することから、重要である。上記ヒト免疫細胞集団は、本明細書で提供されるマウスモデルにおいて、親系統に対して、血中でより高レベルの活性化T細胞およびより高レベルのナチュラルキラー(NK)細胞を有する。同様に、T調節性細胞およびPD-1+ T細胞のヒト生理学的レベルがマウスにおいて生成され、それによって、免疫調節剤(例えば、チェックポイントインヒビター薬剤)をスクリーニングするための感度を増大させる。いくつかの実施形態において、上記マウスモデルは、ヒト化NSG-SGM3マウスに対して、末梢血中に有意により多くのヒトT細胞、ヒトB細胞、および/またはヒトNK細胞を含む。
【0031】
上記マウスモデルを生成し、上記マウスモデルをヒト化し、上記マウスモデルを使用して、例えば、疾患進行(例えば、がんおよび/またはヒト免疫系の他の疾患)および治療剤(例えば、候補治療剤)を評価する方法がまた、本明細書で提供される。本明細書で提供されるモデルは、いくつかの実施形態において、細胞(例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞)、例えば、ヒトの病的な細胞(例えば、ヒトがん細胞)をさらに移植される。いくつかの実施形態において、上記ヒト細胞は、患者由来異種移植片(PDX)またはヒト細胞株(例えば、ヒトがん細胞株)に由来する。病的な細胞および組織は、例えば、ある特定の疾患(例えば、がん、自己免疫疾患、および他の炎症性疾患)の根底にあり得る遺伝的構成要素を探索するために利用され得るマウスモデルを生成するために、本明細書で使用される特有の遺伝的プロフィールと関連する。ヒト免疫系を複製することによって、これらのモデルはまた、いくつかの実施形態において、毒性(例えば、サイトカイン放出症候群)および疾患を防止または処置することを目的にしたある特定の治療剤の他の副作用を評価するために使用され得る。
【0032】
動物モデルは、非ヒト哺乳動物、齧歯類(例えば、マウス、ラット、またはハムスター)、または家畜動物(例えば、ブタ、ウシ、ニワトリ、またはヤギ)モデルであり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記動物は、齧歯類である。いくつかの実施形態において、上記動物は、マウスである。
【0033】
本明細書において、単純さのために、「マウス」および「マウスモデル」に言及がなされる(例えば、ヒトの条件の代理)。これらの用語が、別段述べられなければ、マウス、ラットおよび他の齧歯類の種を含め、「齧歯類」および「齧歯類モデル」を包含するために、本明細書全体を通じて交換可能に使用され得ることは、理解されるべきである。
【0034】
本明細書で使用される標準的な遺伝的命名法は、異なる齧歯類系統に関する特有の識別を提供し、系統記号は、使用される系統またはストックのタイプおよびその系統の遺伝的内容についての基本的情報を伝えることがまた、理解され得る。系統およびストックを記号化するための規則は、International Committee on Standardized Genetic Nomenclature for Miceによって公表されている、その規則は、Mouse Genome Database(MGD; informatics.jax.org)からオンラインで入手可能であり、印刷版も出版された(Lyonら. 1996)。系統記号は、代表的には、Laboratory Registration Code(ラボコード(Lab Code))を含む。その登録は、National Academy of Sciences(Washington, D.C.)のInstitute for Laboratory Animal Research (ILAR)で維持される。ラボコードは、ILARのウェブサイト(nas.edu/cls/ilarhome.nsf)で電子的に得られ得る。Davisson MT, Genetic and Phenotypic Definition of Laboratory Mice and Rats / What Constitutes an Acceptable Genetic-Phenotypic Definition, National Research Council (US) International Committee of the Institute for Laboratory Animal Research. Washington (DC): National Academies Press (US); 1999もまた、参照のこと。
【0035】
疾患のマウスモデルは、疾患の評価を可能にするために改変され得る。任意のシステム(例えば、免疫、呼吸器、神経、または循環)、器官(例えば、血液、心臓、血管、脾臓、胸腺、リンパ節、または肺)、組織(例えば、上皮組織、結合組織、筋肉組織、および神経組織)、または細胞タイプ(例えば、リンパ球もしくはマクロファージ)は、独立して、または組み合わせにおいてのいずれかで、本明細書で提供されるモデルにおいて疾患の研究を可能にするために改変され得る。
【0036】
トランスジェニックマウスの生成のために使用される3つの従来の方法は、DNAマイクロインジェクション(Gordon and Ruddle, Science 1981: 214: 1244-124(本明細書に参考として援用される))、胚性幹細胞媒介性遺伝子移入(Gosslerら, Proc. Natl. Acad. Sci. 1986, 83: 9065-9069(本明細書に参考として援用される))およびレトロウイルス媒介性遺伝子移入(Jaenisch, Proc. Natl. Acad. Sci. 1976, 73: 1260-1264(本明細書に参考として援用される))を含み、これらのうちのいずれも、本明細書で提供されるように使用され得る。例えば、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(clustered regularly interspace palindromic repeats)(CRISPR/Cas)ヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、またはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を使用するゲノム編集法は、本明細書中の他の箇所で記載される。
【0037】
受精した胚(例えば、単一細胞胚(例えば、接合子)または多細胞胚(例えば、接合子後の発生ステージ(例えば、胚盤胞)))への核酸の送達後に、上記受精した胚は、偽妊娠雌へと移され、それは、引き続いて、子孫を出産する。ヒトFcRnおよび/またはキメラIgG抗体をコードする核酸の存在または非存在は、例えば、任意の数の遺伝子型決定法(例えば、配列決定および/またはゲノムPCR)を使用して確認され得る。
【0038】
新たなマウスモデルはまた、本明細書中の実施例に記載されるように、親系統を育種することによって作り出され得る。利用可能な変異体、ノックアウト、ノックイン、トランスジェニック、Cre-lox、Tet誘導系、および他のマウス系統という変種を用いて、複数の変異および導入遺伝子を合わせて、新たなマウスモデルを生成し得る。複数のマウス系統を一緒に育種して二重、三重、またはさらには四重のおよびより高度な多重変異体/トランスジェニックマウスを生成し得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、親マウスは、F1マウスを生成するために育種される。親マウスは、特定のアレルにおいて、例えば、ホモ接合性、ヘテロ接合性、ヘミ接合性、またはホモ接合性ヌルであり得る。ホモ接合性は、所定の遺伝子座における2つの同一のアレルの遺伝子型を説明し、ヘテロ接合性は、遺伝子座における2つの異なるアレルの遺伝子型を説明し、ヘミ接合性は、他の点では二倍体の生物において特定の遺伝子の単一のコピーのみからなる遺伝子型を説明し、ホモ接合性ヌルとは、遺伝子の両コピーが失われている他の点では二倍体の生物に言及する。
【0040】
免疫不全マウスモデル
いくつかの実施形態において、ヒトインターロイキン-3(IL-3)をコードする導入遺伝子、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子2(GM-CSF)をコードする導入遺伝子、ヒト幹細胞因子(SCF)をコードする導入遺伝子、およびヒトIL-15をコードする導入遺伝子を含む免疫不全マウスモデルが、本明細書で提供される。
【0041】
当該分野で公知であるように、免疫不全マウスは、MHCクラスI、IIもしくは両方における特定の欠損、B細胞もしくはT細胞欠損、または両方における欠損、ナチュラルキラー細胞欠損、骨髄系欠損(例えば、顆粒球および/もしくは単球の欠損)、ならびにサイトカイン、サイトカインレセプター、TLRレセプター、ならびにシグナル伝達経路の種々のトランスデューサーおよび転写因子の遺伝子のノックダウンに起因する免疫不全のような障害または破壊された免疫系を有する。免疫不全マウスモデルとしては、単一遺伝子変異モデル(例えば、ヌードマウス(nu)系統および重症複合免疫不全(scid)系統、非肥満性糖尿病(NOD)系統、標的化された遺伝子欠失を有するRAG(組換え活性化遺伝子)系統、ならびに二重および三重変異マウス系統を自然免疫および適応免疫におけるさらなる欠損と交配することによって発生した種々のハイブリッドが挙げられる。
【0042】
自然発生的およびトランスジェニック免疫不全マウスモデルの非限定的例としては、以下のマウス系統が挙げられる:
・ヌード(nu)[Flanagan SP. Genet Res 1966; 8: 295-309;およびNehls Mら Nature 1994; 372: 103-7];
・Scid(scid)[Bosma GCら Nature 1983; 301:527-30; Mosier DEら Nature 1988; 335: 256-9;およびGreiner DLら Stem Cells 1998; 16: 166-77];
・NOD[Kikutani Hら Adv Immunol 1992; 51: 285-322;およびAnderson MSら Ann Rev Immunol 2005; 23: 447-85];
・RAG1およびRAG2(rag)[Mombaerts Pら Cell 1992; 68: 869-77; Shinkai Uら Cell 1992; 68: 855-67];
・NOD-scid[Greiner DLら 1998; Shultz LDら J Immunol 1995; 154: 180-91; Melkus MWら Nature Med 2006; 12: 1316-22;およびDenton PWら PLoS Med 2008; 4(12): e357];
・IL2rgヌル[DiSanto JPら Proc Natl Acad Sci USA 1995; 92: 377-81];
・B2mヌル[Christianson SWら J Immunol 1997; 158: 3578-86];
・NOD-scid IL2rγヌル[Shultz LDら Nat Rev Immunol 2007; 7: 118-30; Ito Mら Blood 2002; 100: 3175-82; Ishikawa Iら Blood 2005; 106: 1565-73;およびMacchiarini Fら J Exp Med 2005; 202: 1307-11];
・NOD-scid B2mヌル[Shultzら 2007; Shultz LDら Transplantation 2003; 76: 1036-42; Islas-Ohlmayer MAら J Virol 2004; 78:13891-900;およびMacchiariniら 2005];
・HLAトランスジェニックマウス[Grusby MJら Proc Natl Acad Sci USA 1993; 90(9): 3913-7; and Roy CJら Infect Immun 2005; 73(4): 2452-60]。例えば、Belizario JE The Open Immunology Journal, 2009; 2:79-85もまた参照のこと;
・NOGマウス(NOD.cg-PrkdcscidIl2rgtm1Sug) [Shultz LDら Nat Rev Immunol 2007; 7: 118-30];ならびに
・BRGマウス(BALB/c;129S4- Rag2tm1.1Flv ) [Song Jら Cell Host Microbe 2010; 8(4): 369-76; Goldman JPら Br J Haematol. 1998; 103: 335-342]。
【0043】
いくつかの実施形態において、非肥満性糖尿病(NOD)マウス遺伝子型を有する免疫不全マウスモデルが、本明細書で提供される。上記NODマウス(例えば、Jackson Labs Stock #001976, NOD-ShiLtJ)は、高血糖症および膵島炎、膵島細胞の白血球浸潤によって特徴づけられる自己免疫(例えば、1型)糖尿病の多遺伝子性マウスモデルである。上記NODマウスは、低インスリン血症および高グルカゴン血症であり、膵島β細胞の選択的破壊を示す。NODマウスにおける糖尿病感受性の主要な構成要素は、特有のMHCハプロタイプである。NODマウスはまた、欠陥性の抗原提示細胞免疫調節機能、Tリンパ球レパートリーの調節における欠陥、欠陥性のNK細胞機能、マクロファージからの欠陥性のサイトカイン生成(Fanら, 2004)および創傷治癒の障害を含む複数の異常な免疫表現型を示す。それらはまた、溶血性補体、C5を欠いている。NODマウスはまた、重篤な聴力低下である。免疫不全を引き起こす種々の変異、サイトカイン遺伝子における標的化された変異、ならびに免疫機能に影響を及ぼす導入遺伝子は、NOD近交系バックグラウンドへと戻し交配されている。
【0044】
本開示のいくつかの局面において、NODバックグラウンドに基づく本明細書で提供される免疫不全マウスは、NOD-Cg.-PrkdcscidIL2rgtm1wJl/SzJ(NSG(登録商標))、NOD.Cg-Rag1tm1MomIl2rgtm1Wjl/SzJ(NRG)、およびNOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Sug/ShiJic(NOG)から選択される遺伝子型を有し得る。他の免疫不全マウス系統が、本明細書で企図される。
【0045】
いくつかの実施形態において、NODバックグラウンドに基づく免疫不全マウスモデルは、NOD-Cg.-PrkdcscidIL2rgtm1wJl/SzJ(NSGTM)遺伝的バックグラウンドを有する。上記NSGTMマウス(例えば、Jackson Labs Stock No.: #005557)は、成熟T細胞、B細胞、およびNK細胞を欠く免疫不全マウスであり、複数のサイトカインシグナル伝達経路を欠いており、自然免疫において多くの欠陥を有する(例えば、Shultz, Ishikawa, & Greiner, 2007; Shultzら, 2005;およびShultzら, 1995(これらの各々は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。上記NSGTMマウスは、NODマウス系統 NOD/ShiLtJに由来し(例えば、Makinoら, 1980(これは、本明細書に参考として援用される)を参照のこと)、Prkdcscid変異(「重症複合免疫不全」変異または「scid」変異ともいわれる)およびIl2rgtm1Wjl標的化変異を含む。Prkdcscid変異は、ヒトPRKDC遺伝子のマウスホモログにおける機能喪失型(ヌル)変異である-この変異は、適応免疫を本質的に排除する(例えば、(Bluntら, 1995; Greiner, Hesselton, & Shultz, 1998)(これらの各々は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと)。Il2rgtm1Wjl変異は、インターロイキン2レセプターγ鎖(IL2Rγ、ヒトにおけるIL2RGに相同)をコードする遺伝子におけるヌル変異であり、これは、NK細胞分化を遮断し、それによって、初代ヒト細胞の効率的生着を妨げる障害物を除去する(Caoら, 1995; Greinerら, 1998;およびShultzら, 2005(これらの各々は、本明細書に参考として援用される))。いくつかの実施形態において、上記マウスモデルは、NSG-IL-15マウスと交配したNSG-SGM3マウスを含む。
【0046】
いくつかの実施形態において、免疫不全マウスモデルは、NRG遺伝子型を有する。上記NRGマウス(例えば、Jackson Labs Stock #007799)は、極めて免疫不全である。このマウスは、NOD/ShiLtJ遺伝的バックグラウンド上に2つの変異; 組換え活性化遺伝子1(Rag1)における標的化されたノックアウト変異およびIL2レセプター共通γ鎖の完全なヌルアレル(IL2rgnull)を含む。上記Rag1null変異は、マウスからB細胞およびT細胞を欠損させ、上記IL2rgnull変異は、複数のレセプターを介するサイトカインシグナル伝達を妨げ、機能的NK細胞における欠損をもたらす。NRGの極度の免疫不全は、上記マウスがヒトCD34+ 造血幹細胞(HSC)および患者由来異種移植片(PDX)の移植によって高効率でヒト化されることを可能にする。上記免疫不全NRGマウスは、DNA修復酵素Prkdcにおいてscid変異を有するマウスより、照射および遺伝子毒性薬物に対して耐性である。
【0047】
いくつかの実施形態において、免疫不全マウスモデルは、NOGマウスである。上記NOGマウス(Ito Mら, Blood 2002)は、NOD/scidマウスおよびIL-2レセプター-γ鎖ノックアウト(IL2rγKO)マウス(Ohbo K.ら, Blood 1996)を合わせることによって樹立された極度の重症複合免疫不全(scid)マウスである。上記NOGマウスは、T細胞およびB細胞を欠いており、ナチュラルキラー(NK)細胞を欠いており、低減した樹状細胞機能および低減したマクロファージ機能を示し、補体活性を欠いている。
【0048】
いくつかの実施形態において、免疫不全マウスモデルは、NCG遺伝子型を有する。上記NCGマウス(例えば、Charles River Stock #572)は、NOD/NjuマウスにおけるPrkdcおよびIl2rg遺伝子座の逐次的なCRISPR/Cas9編集、NOD/Njuに類似遺伝子型の(coisogenic)マウスの生成によって作り出した。上記NOD/Njuは、外来造血幹細胞の移植を可能にするSirpa(SIRPα)遺伝子において変異を有する。上記Prkdcノックアウトは、適切なT細胞およびB細胞形成を欠いているSCID様表現型を生成する。Il2rg遺伝子のノックアウトは、NK細胞生成の減少をさらに生じると同時に、SCID様表現型をさらに増悪する。
【0049】
いくつかの実施形態において、MHCクラスI、MHCクラスII、またはMHCクラスIおよびMHCクラスIIが欠損している(例えば、欠いている)免疫不全マウスモデルが、本明細書で提供される。MHCクラスIおよび/またはMHCクラスIIが欠損しているマウスは、非免疫不全(例えば、MHCクラスI/II野生型)マウスと同じレベルのMHCクラスIタンパク質(例えば、α-ミクログロブリンおよびβ2-ミクログロブリン(B2M))および/もしくはMHCクラスIIタンパク質(例えば、α鎖およびβ鎖)を発現しないか、または同じレベルのMHCクラスIおよび/もしくはMHCクラスIIタンパク質活性を有しない。いくつかの実施形態において、MHCクラスIおよび/またはMHCクラスIIタンパク質の発現または活性は、非免疫不全マウスに対して(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはこれより大きく)低減される。MHCクラスI、MHCクラスII、ならびにMHCクラスIおよびMHCクラスIIが欠損している免疫不全マウスは、国際公開番号WO 2018/209344(その内容は、本明細書に参考として援用される)に記載される。いくつかの実施形態において、免疫不全マウスは、H2-K1tmlBpe、H2-Ab1emlMvw、およびH2-D1tmlBpeから選択される1またはこれより多くのアレルを含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、免疫不全マウスモデルは、不活性化マウスFlt3アレルをさらに含む。いくつかの実施形態において、免疫不全マウスモデルは、ヒトFLT3L導入遺伝子を発現する。いくつかの実施形態において、免疫不全マウスモデルは、例えば、WO 2020/168029(その内容は、本明細書に参考として援用される)に記載されるように、不活性化マウスFlt3アレルをさらに含み、ヒトFLT3L導入遺伝子を発現する。
【0051】
NSG-SGM3マウスは、NSG派生物マウスNOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl Tg(CMV-IL3,CSF2,KITLG)1Eav/MloySzJ(Jackson Laboratory Stock No: 013062)である。トランスジェニックNSG-SGM3マウスは、3種のヒトサイトカイン: ヒトインターロイキン-3(IL-3)、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子2(GM-CSF)、およびヒト幹細胞因子(SCF)を発現する。NSG-SGM3マウスは、高度に免疫不全のNSGマウスと骨髄系系統および調節性T細胞集団の安定な生着を支持するヒトサイトカイン、IL-3、GM-CSF、およびSCFの発現という特徴を併せ持つ。
【0052】
NSG-IL-15マウス、NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1WjlTg(IL15)1Sz/SzJ(Jackson Laboratory Stock No: 030890)は、ヒトIL15を発現し、高度に免疫不全のNOD scidγ(NSG)マウスと組み合わされる。ヒトIL15の発現は、いくつかの実施形態において、ヒト幹細胞を移植した免疫不全マウスにおいてヒトNK細胞の発生を増強する。
【0053】
従って、本明細書で記載されるトランスジェニックマウスは、ヒトインターロイキン-3(IL-3)をコードする導入遺伝子、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子2(GM-CSF)をコードする導入遺伝子、ヒト幹細胞因子(SCF)をコードする導入遺伝子を含む免疫不全トランスジェニックマウス、およびヒトIL-15をコードする導入遺伝子を含むトランスジェニックマウスを育種することによって生成され得る。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるトランスジェニックマウスは、NSG-SGM3マウスとNSG-IL-15マウスとを育種することによって生成される。
【0054】
ヒト化マウスモデル
いくつかの実施形態において、ヒト化免疫不全マウスモデルおよび上記モデルを生成する方法が、本明細書で提供される。機能的ヒト細胞および/または組織を移植した免疫不全マウスは、「ヒト化マウス」といわれる。本明細書で使用される場合、用語「ヒト化マウス」、「ヒト化免疫不全マウス」、「ヒト化免疫不全マウス」およびこれらの複数形バージョンは、機能的ヒト細胞および/または組織の移植によってヒト化した免疫不全マウスをいうために、交換可能に使用される。例えば、マウスモデルは、ヒト造血幹細胞(HSC)(例えば、CD34+ HSC)および/またはヒト末梢血単核細胞(PMBC)を移植され得る。いくつかの実施形態において、マウスモデルは、ヒト組織(例えば、膵島、肝臓、皮膚、および/または固形もしくは血液のがん)を移植される。他の実施形態において、マウスモデルは、内因性マウス遺伝子がヒトホモログに変換されるように遺伝的に改変され得る(例えば、Pearson,ら, Curr Protoc Immunol., 2008, Chapter: Unit-15.21を参照のこと)。
【0055】
ヒト化マウスは、免疫不全マウス(例えば、2週齢、3週齢、4週齢、5週齢、6週齢、7週齢、8週齢、9週齢、10週齢、またはより年長の週齢の免疫不全マウス)で出発し、必要であれば、任意の残りのマウス免疫細胞を(例えば、化学的にまたは照射で)枯渇させるおよび/または抑制することによって生成される。すなわち、上記免疫不全マウスにおけるヒト免疫系の成功裡の生存は、GVHD(移植片対宿主病)拒絶を防止するために、上記マウスの免疫系の抑制を必要とし得る。上記免疫不全マウスの免疫系が十分に抑制された後、上記マウスは、ヒト細胞(例えば、HSCおよび/またはPBMC)を移植される。本明細書で使用される場合、「移植する(engraft)」とは、ヒト細胞を、インビボで目的の既存の組織へと移動させ、その中に組み込むというプロセスに言及する。上記ヒト化免疫不全マウスに関しては、上記移植したヒト細胞は、機能的成熟ヒト細胞(例えば、免疫細胞)を提供する。上記モデルは、GVHDが始まる前に移植後、約4~5週間という特定の時間ウインドウを有する。上記モデルの寿命を増大させるために、上記のように、機能的MHC IおよびMHC IIを欠いている二重ノックアウトマウスが使用され得る。
【0056】
ヒト化のために移植されたヒト細胞(例えば、HSCまたはPMBC)は、いくつかの実施形態において、上記マウスモデルのヒト細胞(例えば、ヒトがん細胞)に対してヒト白血球抗原(HLA)適合される。HLA適合されるとは、同じ主要組織適合遺伝子複合体(MHC)遺伝子を発現する細胞に言及する。HLA適合したヒト異種移植片およびヒト免疫細胞をマウスに移植すると、例えば、ヒト免疫細胞の免疫原性が低減または防止される。いくつかの実施形態において、本開示において提供されるヒト化マウスは、PDXまたはヒトがん細胞株に対してHLA適合されたヒトPMBCまたはヒトHSCを移植される。
【0057】
ヒト化のために移植したヒト細胞(例えば、HSCまたはPMBC)は、いくつかの実施形態において、上記マウスモデルのヒト細胞(例えば、ヒトがん細胞)に対してHLA適合されていない。すなわち、いくつかの実施形態において、本開示において提供されるヒト化マウスはPDXまたはヒトがん細胞株に対してHLA適合されていないヒトPMBCまたはヒトHSCを移植される。
【0058】
骨髄破壊
上記で記載されるように、いくつかの実施形態において、免疫不全マウスは、任意の残りのマウス免疫細胞を(例えば、化学的にまたは照射で)枯渇させるおよび/または抑制するために処置される。いくつかの実施形態において、免疫不全マウスは、化学的にのみ、または照射でのみ処置される。他の実施形態において、免疫不全マウスは、化学的におよび照射で、両方で処置される。
【0059】
いくつかの実施形態において、免疫不全マウスは、骨髄破壊的薬剤、すなわち、マウス免疫細胞を抑制するまたは枯渇させる化学的薬剤を投与される。骨髄破壊的薬剤の例としては、ブスルファン、ジメチルミレラン(dimethyl mileran)、メルファラン、およびチオテパが挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態において、免疫不全マウスは、ヒト細胞(例えば、ヒトHSCおよび/またはPMBC)の移植の前に照射される。免疫不全マウスの照射は、末梢血、脾臓、および骨髄中のマウス免疫細胞を破壊し、これは、ヒト細胞(例えば、ヒトHSCおよび/またはPMBC)の生着を(例えば、ヒト細胞生存因子を増大させることによって)、ならびに他の免疫細胞の拡大を促進すると考えられる。照射はまた、上記マウスモデルを「ヒト化」するために必要とされるヒト免疫細胞数を蓄積するためにかかる時間を短縮する。
【0061】
免疫不全マウス(例えば、NSGTMマウス)に関しては、この準備は、全身γ線照射を介して一般に達成される。照射器は、それらの意図した使用に依存してサイズが変動し得る。動物は、一般に、短期間(15分未満)照射される。照射器の内部で費やされる時間量は、放射性同位体崩壊チャート、必要とされる照射量、および電離エネルギー源(すなわち、X線 対 γ線(これに関しては、セシウムまたはコバルト源が必要とされる))に依存して変動する。
【0062】
骨髄破壊的照射線量は、通常、700~1300cGyであるが、本明細書で提供されるデータは、いくつかの実施形態において、低線量(例えば、50~200cGy(例えば、約50cGy、約100cGy、約150cGy、または約200cGy)が使用され得ることを明らかに示す。一例として、上記マウスは、50cGy、75cGy、100cGy、125cGy、150cGy、175cGy、または200cGyで照射され得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、上記線量は、約1cGy、約2cGy、約3cGy、約4cGy、約5cGy、約10cGy、約20cGy、約100cGy、約125cGy、約150cGy、約175cGy、約200cGy、約300cGy、約400cGy、約500cGy、約600cGy、約700cGy、約800cGy、約900cGy、約1000cGy、約1100cGy、約1200cGy、もしくは約1300cGy、または本明細書に記載される2つの記載される線量のいずれかの間(例えば、50~200cGy、100~300cGy、200~500cGy、600~1000cGy、または700~1300cGy)である。
【0064】
いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスは、ヒトHSCおよび/またはPMBCの移植の約15分前、約30分前、約45分前、約1時間前、またはそれより前に、照射されるか、または他の方法で骨髄破壊的処置に曝される。いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスは、照射または他の骨髄破壊的処置と同日にヒトHSCおよび/またはPMBCを移植される。いくつかの実施形態において、上記免疫不全マウスは、照射または他の骨髄破壊的処置の1日後、2日後、3日後、4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後、14日後、15日後、16日後、17日後、または18日後に、ヒトHSCおよび/またはPMBCを移植される。
【0065】
移植(ヒト化)
上記で記載されるように、いくつかの実施形態において、上記照射された免疫不全マウスは、上記マウスをヒト化するHSCおよび/またはPBMCを移植される。移植とは、ヒト細胞をインビボで既存の目的の組織に移動し、そこに組み込むというプロセスに言及する。上記PBMCは、照射後かつヒトの病的な細胞(例えば、ヒトがん細胞)の移植前、照射後かつヒトの病的な細胞の移植と同時、または照射後かつヒトの病的な細胞の移植後に、移植される。
【0066】
末梢血単核細胞(PBMC)は、丸い核を有する末梢血球である。これらの単核血球は、組織と血液との間で再循環し、感染と戦い、侵入者に適応する免疫系の中の重要な構成要素である。単核細胞には2つの主要なタイプ、リンパ球および単球が存在する。PBMCのリンパ球集団は、代表的には、T細胞、B細胞およびNK細胞を含む。
【0067】
PBMCは、例えば、全血サンプルから単離され得る(例えば、Ficoll勾配)。いくつかの実施形態において、がんまたは自己免疫疾患が現在または以前に診断されている被験体(例えば、ヒト被験体)に由来するPBMCが使用され得る。
【0068】
造血幹細胞(HSC)は、造血といわれるプロセス中に他の血球を生じる幹細胞である。造血幹細胞は、骨髄系およびリンパ系といわれる系統において、種々のタイプの血球を生じる。骨髄系およびリンパ系系統はともに、樹状細胞形成に関与する。骨髄系細胞は、単球、マクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、および巨核球から血小板までを含む。リンパ系細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、および自然リンパ球を含む。
【0069】
免疫不全マウスにHSCおよび/またはhPBMCを移植して、ヒト化マウスモデルを得る方法としては、腹腔内注射または静脈内注射が挙げられるが、これらに限定されない(Shultzら, J Immunol, 2015, 174:6477-6489; Pearsonら, Curr Protoc Immunol. 2008; 15-21; Kimら, AIDS Res Hum Retrovirus, 2016, 32(2): 194-2020; Yaguchiら, Cell & Mol Immunol, 2018, 15:953-962)。いくつかの実施形態において、上記マウスは、1.0×106個~3.0×107個のHSCおよび/またはhPBMCを移植される。いくつかの実施形態において、上記マウスは、1×107個未満のHSCおよび/またはhPBMCを移植される。いくつかの実施形態において、上記マウスは、1×106個未満~約5×106個のHSCおよび/またはhPBMCを移植される。いくつかの実施形態において、上記マウスは、約2×106個または1×106個のHSCおよび/またはhPBMCを移植される。いくつかの実施形態において、上記マウスは、25,000個~100,000個のHSCおよび/またはhPBMC(例えば、25,000個、30,000個、35,000個、40,000個、45,000個、50,000個、55,000個、60,000個、65,000個、70,000個、75,000個、80,000個、85,000個、90,000個、95,000個、100,000個またはより多くのHSCおよび/またはhPBMC)を移植される。
【0070】
例えば、上記マウスは、1×105個~1×106個、1×105個~1×107個、1×105個~1×108個、1×106個~1×107個、1×106個~1×108個のhPBMCを移植され得る。いくつかの実施形態において個、上記マウスは、1×106個~2×106個、1×106個~3×106個、1×106個~4×106個、1×106個~5×106個、1×106個~6×106個、1×106個~7×106個、1×106個~8×106個、1×106個~9×106個、2×106個~3×106個、2×106個~4×106個、2×106個~5×106個、2×106個~6×106個、2×106個~7×106個、2×106個~8×106個、2×106個~9×106個、3×106個~4×106個、3×106個~5×106個、3×106個~6×106個、3×106個~7×106個、3×106個~8×106個、または3×106個~9×106個のhPBMCを移植される。
【0071】
いくつかの実施形態において、上記マウスは、1×105個~1×106個、1×105個~1×107個、1×105個~1×108個、1×106個~1×107個、1×106個~1×108個のHSCを移植される。いくつかの実施形態において、上記マウスは、1×106個~2×106個、1×106個~3×106個、1×106個~4×106個、1×106個~5×106個、1×106個~6×106個、1×106個~7×106個、1×106個~8×106個、1×106個~9×106個、2×106個~3×106個、2×106個~4×106個、2×106個~5×106個、2×106個~6×106個、2×106個~7×106個、2×106個~8×106個、2×106個~9×106個、3×106個~4×106個、3×106個~5×106個、3×106個~6×106個、3×106個~7×106個、3×106個~8×106個、または3×106個~9×106個のHSCを移植される。
【0072】
いくつかの実施形態において、上記マウスは、1×107個未満のhPBMCの用量(例えば、1×106個~約5×106個のhPBMC、1×106個~約4×106個のhPBMC、1×106個~約3×106個のhPBMC、約5×106個のhPBMC、約4×106個のhPBMC、約3×106個のhPBMC、約2×106個のhPBMC、または約1×106個のhPBMC)を移植される。
【0073】
いくつかの実施形態において、上記マウスは、1×107個未満のHSCの用量(例えば、1×106個~約5×106個のHSC、1×106個~約4×106個のHSC、1×106個~約3×106個のHSC、約5×106個のHSC、約4×106個のHSC、約3×106個のHSC、約2×106個のHSC、または約1×106個のHSC)を移植される。
【0074】
本明細書で記載される場合、いくつかの実施形態において、HSCおよび/またはPBMCの移植は、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスに対して末梢血中により多くのヒトCD45+ 細胞(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%またはより多くの増大)を含むトランスジェニックマウスを生じる。実施形態において、上記トランスジェニックマウスは、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスに対して末梢血中に有意により多くのヒトNK細胞(例えば、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、またはより多くの増大(CD45+ 細胞のパーセンテージとして測定される))を含む。
【0075】
いくつかの実施形態において、PBMCの移植は、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスに対して末梢血中により多くのヒト骨髄系細胞(例えば、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%またはより多くの増大(CD45+ 細胞のパーセンテージとして測定される))を含むトランスジェニックマウスを生じる。
【0076】
いくつかの実施形態において、上記トランスジェニックマウスは、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスに対してより多くの活性化ヒトT細胞を含む。いくつかの実施形態において、上記活性化T細胞は、上記トランスジェニックマウスの脾臓に存在する。用語「T細胞活性化」とは、T細胞の異なるタイプ間でわずかに変動し得るT細胞の活性化の機序に言及する。しかし、CD4+ T細胞における「2シグナルモデル(two-signal model)」は、T細胞の大部分のタイプに関して適用可能である。より詳細には、CD4+ T細胞の活性化は、代表的には、主要組織適合性でコードされる抗原提示分子によるT細胞表面上のT細胞レセプターおよびCD28の両方、ならびに抗原提示細胞(APC)の表面上のその結合した抗原性ペプチドおよびB7ファミリーメンバーとのそれぞれの係合を介して起こる。両方の細胞間接触は、一般に、効果的な免疫応答の生成のために必要とされる。例えば、CD28共刺激の非存在下では、T細胞レセプターシグナル伝達単独で、T細胞アネルギーを生じ得る。CD28およびT細胞レセプターの両方から下流にあるさらなるシグナル伝達経路は、当業者に公知の多くのさらなるタンパク質が関わる。T細胞の活性化は、サイトカイン放出および/または細胞増殖、特に、T細胞の増殖によって決定され得る。
【0077】
ヒト免疫細胞
本明細書で提供されるマウスモデルは、自然免疫系の細胞および適応免疫系の細胞を含め、ヒト免疫細胞の完全なレパートリーの拡大、発生、および成熟を支持する。ヒト免疫細胞には2つの主要な系統: リンパ系系統および骨髄系系統が存在する。リンパ系系統の前駆細胞は、B細胞前駆体、ナチュラルキラー細胞、およびT細胞前駆体へと発生する。B細胞前駆体は、記憶B細胞または形質細胞のいずれかへと発生し続ける一方で、T細胞前駆体は、記憶T細胞、細胞傷害性T細胞、またはヘルパーT細胞へと発生し続ける。骨髄系系統の前駆細胞は、白血球(例えば、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、および単球)へと発生する。単球は、樹状細胞(例えば、cDC1またはcDC2)およびマクロファージへとさらに発生する。
【0078】
ヒト免疫系は、自然免疫系および適応免疫系を含む。自然免疫系は、マクロファージ、樹状細胞、および単球という単核食細胞系、ナチュラルキラー細胞、マスト細胞、γδT細胞、ナチュラルキラーT細胞、および顆粒球(好塩基球、好酸球、および好中球)を含む。適応免疫系は、抗体を生成するB細胞を含む液性免疫(B細胞免疫ともいわれる)、ならびにCD4+ およびCD8+ T細胞、ナチュラルキラー細胞、ならびにγδT細胞を含む細胞性免疫(T細胞免疫ともいわれる)を含む。
【0079】
T細胞は、適応免疫系の重要な役割を担っており、CD3発現によって一般に特定され、T細胞レセプター(TCR)を介して抗原を検出し、上記T細胞レセプターは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によって提示されるペプチドを認識する。循環腫瘍細胞抗原は、これらがCD4+およびCD8+ T細胞(それぞれ、Tヘルパー細胞および細胞傷害性T細胞としても公知)へとディスプレイされる場所であるリンパ節に送達される。活性化後に、Tヘルパー細胞は、種々のサイトカイン(IFNγを含む)を放出する。細胞傷害性T細胞は、腫瘍特異的抗原を発現する細胞を認識し、パーフォリンまたはグランザイム誘導性のアポトーシスを介してそれらを殺滅する。
【0080】
マクロファージはまた、自然免疫系の細胞であり、CD68およびMHCIIの発現ならびにCD11cの欠如によって特定される。それらは食作用が専門であり、免疫応答に影響を及ぼすサイトカインを分泌する。マクロファージは一般に、炎症促進性(M1様)または抗炎症性(M2様)として分類される。M1様マクロファージは、CD80、CD86、またはiNOSの発現によって特定され、悪性細胞の食作用およびT細胞活性化リガンドの生成によって抗腫瘍免疫応答を促進する。逆に、M2様マクロファージは、CD163またはCD206の発現によって特定され、免疫抑制性サイトカイン(例えば、IL-10)の分泌を介して、およびTh2応答を促進することによって腫瘍増殖を促進し得る。M2マクロファージはまた、免疫抑制性酵素アルギナーゼを発現し得、これは、腫瘍微小環境からアルギニンを枯渇させ、低減されたT細胞増殖および機能をもたらす。
【0081】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、主要な自然免疫細胞タイプを代表する。それらは、腫瘍細胞上のMHCクラスIのダウンレギュレーションを検出することによって、および/またはNK細胞上の活性化レセプターに結合する腫瘍細胞上のリガンドのアップレギュレーションを検出することによって、がんを認識および殺滅する。NK細胞は一般に、CD56およびCD16の組み合わせ、ならびにCD3発現の欠如によって特定される。
【0082】
本開示のいくつかの局面は、適応免疫系の細胞および自然免疫系の細胞の拡大、発生、および/または成熟を支持するマウスモデルを提供する。いくつかの実施形態において、マウスモデルは、ヒトCD33+ 骨髄系細胞の拡大、発生、および/または成熟を支持する。いくつかの実施形態において、マウスモデルは、ヒトCD45+ 免疫細胞の拡大、発生、および/または成熟を支持する。いくつかの実施形態において、マウスモデルは、ヒトCD19+ B細胞(例えば、循環免疫グロブリン(Ig)を生成するヒトB細胞)の拡大、発生、および/または成熟を支持する。いくつかの実施形態において、マウスモデルは、ヒトCD3+ T細胞の拡大、発生、および/または成熟を支持する。いくつかの実施形態において、マウスモデルは、ヒトNK細胞の拡大、発生、および/または成熟を支持する。
【0083】
B細胞抗体クラススイッチング
本明細書で提供されるマウスモデルは、いくつかの実施形態において、免疫グロブリン(Ig)クラススイッチング(これは、B細胞のIg生成を、1つのタイプから別のタイプ(例えば、アイソタイプIgMからアイソタイプIgG)へと変更する生物学的機序である)の能力がある成熟ヒトB細胞の拡大を支持する。クラススイッチングは、種々のクラスの抗体(全て、V(D)J組換えのプロセス中に未成熟B細胞において生成された元の抗体と同じ可変ドメインを有するが、それらの重鎖において別個の定常ドメインを有する)を生成するために、成熟B細胞がその膜結合抗体分子(またはB細胞レセプター)を介して活性化された後に起こる。
【0084】
用語「Ig」とは、本明細書で使用される場合、タンパク質構造の当業者によって確認されるとおりの別個の構造実体として存在する免疫グロブリンの領域に言及する。Igドメインは、代表的には、特徴的なβ-サンドイッチ折りたたみトポロジーを有する。ヒトにおける抗体には、IgA(これは、サブクラスIgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG(これは、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む)、およびIgMを含む5つの異なる抗体クラスが存在する。旧来の抗体構造単位は、代表的には、テトラマーを含む。各テトラマーは、代表的には、ポリペプチド鎖の2つの同一対から構成され、各対は、1本の「軽」鎖(代表的には、分子量約25kDaを有する)および1本の「重」鎖(代表的には、分子量約50~70kDaを有する)を有する。ヒト軽鎖は、κ軽鎖およびλ軽鎖として分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、またはεとして分類され、抗体のアイソタイプを、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして定義する。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4が挙げられるが、これらに限定されない、いくつかのサブクラスを有する。IgMは、IgM1およびIgM2が挙げられるが、これらに限定されないサブクラスを有する。これらの抗体クラス間を区別する特徴は、それらの定常領域であるが、V領域にはより微妙な差異が存在し得る。
【0085】
用語「IgG」は、本明細書で使用される場合、認識される免疫グロブリンγ遺伝子によって実質的にコードされる抗体クラスに属するポリペプチドに言及する。ヒトでは、このクラスは、サブクラスまたはアイソタイプ IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。IgG抗体は、2本の重鎖および2本の軽鎖から構成されるテトラマータンパク質である。IgG重鎖は、N末端からC末端へと、VH-CH1-CH2-CH3の順で連結された4個の免疫グロブリンドメイン(それぞれ、重鎖可変ドメイン、重鎖定常ドメイン1、重鎖定常ドメイン2、および重鎖定常ドメイン3という)(VH-C.gamma.1-C.gamma.2-C.gamma.3ともいわれ、それぞれ、重鎖可変ドメイン、定常γ1ドメイン、定常γ2ドメイン、および定常γ3ドメインを言及する)を含む。IgG軽鎖は、N末端からC末端へとVL-CLの順で連結された2つの免疫グロブリンドメイン(それぞれ、軽鎖可変ドメインおよび軽鎖定常ドメインを言及する)から構成される。
【0086】
ナイーブ成熟B細胞は、IgMおよびIgDの両方を生成し、これらは、免疫グロブリン遺伝子座における最初の2つの重鎖セグメントである。抗原による活性化後に、これらのB細胞は増殖する。これらの活性化B細胞は、それらのCD40およびサイトカインレセプター(ともに、Tヘルパー細胞によって調節される)を介して特定のシグナル伝達分子と遭遇する場合、それらは、抗体クラススイッチングを受けて、IgG、IgAまたはIgE抗体を生成する。クラススイッチング中に、免疫グロブリン重鎖の定常領域は変化するが、可変領域は変化せず、従って、抗原的特異性は同じままである。これは、同じ活性化B細胞に由来する異なる娘細胞が異なるサブクラスまたはアイソタイプの抗体を生成することを可能にする。
【0087】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスモデルにおいて生成されるIgGの量は、ヒトにおいて見出される生理学的範囲内であり、ここで成人におけるIgGの正常な生理学的範囲は、6000~16000μg/mLである。
【0088】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスモデルは、IgGのサブクラス(すなわち、IgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4)を生成する。いくつかの実施形態において、生成されるIgG1、IgG2、IgG3、および/またはIgG4の量は、ヒトにおいて見出される生理学的範囲内であり、ここで成人におけるIgGサブクラスの正常な生理学的範囲は、以下のとおりである: 2.0~8.00mg/mL IgG1; 1.15~5.70mg/mL IgG2; 0.24~1.25mg/mL IgG3;および0.052~1.25mg/mL IgG4。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスモデルにおいて生成されるIgMおよび/またはIgAの量は、ヒトにおいて見出される生理学的範囲内であり、ここで成人における正常な生理学的範囲は、0.4~2.5mg/mL IgMおよび0.8~3.0mg/mL IgAである。
【0090】
哺乳動物細胞株および患者由来異種移植片
本明細書で提供される疾患のマウスモデルは、いくつかの実施形態において、組織または細胞(生細胞)、例えば、哺乳動物細胞(例えば、細胞株または親に由来するもの(例えば、ヒトまたはイヌの患者由来異種移植片)を移植される。本明細書で使用される場合、「哺乳動物」とは、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、霊長類(例えば、サル、チンパンジーおよびサル)、および特に、ヒトが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、マウスモデルは、ヒト組織(細胞)を移植される。他の実施形態において、マウスモデルは、イヌ細胞を移植される。
【0091】
上記細胞は、病的な細胞、いくつかの実施形態において、例えば、がん細胞、自己免疫に関与する細胞、または他の炎症性疾患に関与する細胞であり得る。他の病的な細胞は、本明細書で企図される(例えば、心血管疾患、代謝疾患などを有する患者から得られる細胞)。
【0092】
いくつかの実施形態において、上記マウスモデルは、ヒトがん細胞を移植される。上記ヒトがん細胞は、単一供給源に由来し得るか、または複数の供給源(例えば、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10の供給源)に由来し得る。上記ヒトがん細胞は、腫瘍細胞(例えば、悪性腫瘍に由来する細胞)、患者由来異種移植片(PDX)(例えば、マウスモデルに植え込まれるヒト由来の腫瘍組織)、またはヒトがん細胞株(例えば、単一細胞から発生したヒトがん細胞培養物)であり得る。腫瘍は、細胞(例えば、がん細胞)の異常な増殖によって形成される組織の塊である。一般的なヒトのがんの非限定的な例としては、膀胱がん、脳のがん、乳がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、白血病、肝臓がん、肺がん、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、肉腫、皮膚がん、精巣がん、および甲状腺がんが挙げられる。他のがん細胞タイプは、本明細書で企図される(例えば、cancer.gov/typesを参照のこと)。
【0093】
いくつかの実施形態において、ヒトがん細胞は、例えば、原発性腫瘍または二次腫瘍からの循環腫瘍細胞であり得る。原発性腫瘍は、腫瘍が発生した解剖学的部位で増殖する腫瘍(例えば、肺がんの腫瘍または乳がんの腫瘍)である。二次腫瘍は、原発性腫瘍と同じタイプ(例えば、肺がんまたは乳がん)であるが、原発性腫瘍から離れた二次的な解剖学的部位において形成されている腫瘍である。
【0094】
いくつかの実施形態において、上記マウスモデルは、患者由来異種移植片(PDX)を移植される。PDXは、例えば、本開示のマウスモデルにおいて植え込まれるヒトまたは他の哺乳動物由来の腫瘍組織である。本明細書で使用されるPDXは、被験体から直接得られ得るか、またはPDXレポジトリーから得られ得る。PDXレポジトリーの非限定的な例としては、Jackson Laboratories Mouse Models of Human Cancer Database(Krupke, DM,ら, 「Mouse Models of Human Cancer Database」, Nat Rev Cancer, 2008 8(6): 459-65)、Dana Farber Cancer Institute Patient-Derived Tumor Xenograft Database、およびCharles River Patient-Derived Xenograft Model Databaseが挙げられる。疾患モデルは、少なくとも2種(例えば、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、または少なくとも10種)のPDXを含み得る。
【0095】
PDXは、任意のヒト腫瘍起源を有し得る。例えば、PDXは、以下に由来し得る: 膀胱腫瘍、脳腫瘍、乳房腫瘍、結腸直腸腫瘍、子宮内膜腫瘍、腎臓腫瘍、白血病、肝臓腫瘍、肺腫瘍、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん、膵臓腫瘍、前立腺腫瘍、肉腫、皮膚がん、精巣がん、または甲状腺腫瘍。他の腫瘍タイプは、本明細書で企図される(例えば、cancer.gov/typesを参照のこと)。
【0096】
いくつかの実施形態において、上記マウスモデルは、ヒトがん細胞株由来のヒトがん細胞を移植される。ヒトがん細胞株は、単一細胞から発生したヒトがん細胞培養物である。いくつかの実施形態において、ヒトがん細胞株は、不死化されている。不死化された細胞は、無期限に分裂および増殖する。ヒトがん細胞株は、任意のヒトがんに由来し得る。例えば、ヒトがん細胞株は、以下に由来し得る: 膀胱腫瘍(HTB-9、HTB-3、CRL-2169)、乳房腫瘍(例えば、Hs.281.T、Hs 5788st、UACC-812、MCF 10A、またはMDA-MB-157)、脳腫瘍(SW 1088、U138、Daoy、LN-228)、結腸直腸腫瘍(HT29、SW480、SW1116、Caco-2)、子宮内膜腫瘍(Ishikawa)、腎臓腫瘍(Caki-1、769-P)、白血病(MOLT-3、TALL-104、AML-193、Jurkat、Mo-B)、肝臓腫瘍(例えば、SNU-182、Hs.817.T、NCI-H735またはTHLE-3)、肺腫瘍(例えば、NCI-H838、HCC827、NCI-H1666、SW 1573、ChaGo-K-1、A549、またはNCI-H1555)、黒色腫(SK-MEL-3、A375-P、MNT-1)、非ホジキンリンパ腫(例えば、GA-10、NCI-BL2171、HH、またはToledo)、卵巣腫瘍(SK-OV-3、PA-1、Caov-3、SW 636)、膵臓腫瘍(Capan-2、Panc 10.05、CFPAC-1、SQ 1990)、前立腺腫瘍(VCaP、C4-2B、LNCaP、PC-3)、肉腫(HS 822.T、SK-LMS-1、A-204)、皮膚(TE 354.T、Hs 456.Bt)、精巣(Cates-1B、Hs 1.Tes)、または甲状腺(MDA-T120、MDA-T41、SW-579)。本明細書中のマウスモデルは、単一の細胞株に由来するかまたは複数の細胞株(例えば、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、または少なくとも10種の細胞株)に由来するヒトがん細胞株を移植され得る。
【0097】
さらに、本明細書で提供されるマウスモデルのいずれも、ヒトがん細胞タイプの組み合わせ、必要に応じて供給源の組み合わせ(例えば、PDX供給源および/または細胞株)を含み得る。
【0098】
いくつかの実施形態において、ヒトがん細胞は、例えば、上記細胞がインビボでモニターされ得るかまたはエキソビボで分析され得るように、検出可能な生体分子を発現するように遺伝子操作される。検出可能な生体分子とは、本明細書で提供される場合、従来のまたは非従来のアッセイを使用して検出され得るヒトがん細胞中の生体分子に言及する。検出可能な生体分子の非限定的な例としては、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、または赤色蛍光タンパク質)、抗原(例えば、ヘマグルチニンまたはヒト白血球抗原)、および酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼ)が挙げられる。他の検出可能な生体分子は、本明細書で企図される
【0099】
ヒトがん細胞およびPDXを得るための方法としては、生検(例えば、中空ニードル、切除、切開、またはブラシ)、切除(例えば、腫瘍の)、およびサンプル(例えば、血液サンプル)収集、続いて、ヒトがん細胞を他の細胞(例えば、ヒト非がん細胞、非ヒト細胞、または細胞フラグメント)から単離するためのソーティング工程が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
いくつかの実施形態において、上記マウスモデルは、自己免疫疾患を有する被験体由来のヒト細胞を移植される。自己免疫疾患は、被験体自身の組織から生じかつそれに対して指向される。自己免疫疾患の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、および強直性脊椎炎)、乾癬、皮膚炎(アトピー性皮膚炎を含む); 慢性特発性蕁麻疹(慢性自己免疫蕁麻疹を含む)、多発性筋炎/皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、全身性強皮症および硬化症、炎症性腸疾患(IBD)と関連する応答(クローン病、潰瘍性大腸炎)、ならびに壊疽性膿皮症と共分離されているIBD、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、および/または上強膜炎)、呼吸窮迫症候群(成人呼吸窮迫症候群(ARDS)を含む)、髄膜炎、IgE媒介性疾患(例えば、アナフィラキシーおよびアレルギー性鼻炎)、脳炎(例えば、ラスムッセン脳炎)、ぶどう膜炎、大腸炎(例えば、顕微鏡的大腸炎およびコラーゲン蓄積大腸炎)、糸球体腎炎(GN)(例えば、膜性GN、特発性膜性GN、膜性増殖性GN(MPGN)(I型およびII型を含む)、および急速進行性GN)、アレルギー状態、湿疹、喘息、T細胞の浸潤および慢性的炎症応答が関わる状態、アテローム性動脈硬化、自己免疫心筋炎、白血球接着不全、全身性エリテマトーデス(SLE)(例えば、皮膚SLE、狼瘡(腎炎、脳炎、小児、非腎臓、円板状、脱毛症を含む))、若年発症性糖尿病、多発性硬化症(MS)(例えば、脊髄-眼(spino-optical)MS)、アレルギー性脳脊髄炎、サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性過敏症および遅延型過敏症と関連する免疫応答、結核、サルコイドーシス、肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症を含む)、顆粒球減少、血管炎(大型血管炎(リウマチ性多発筋痛および巨細胞性(高安)動脈炎を含む)、中型血管炎(川崎病および結節性多発動脈炎を含む)、CNS血管炎、およびANCA関連血管炎(例えば、チャーグ-ストラウス血管炎または症候群(CSS))、再生不良性貧血、クームス陽性貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、免疫溶血性貧血(自己免疫性溶血性貧血(AIHA)を含む)、悪性貧血、赤芽球ろう(PRCA)、第8因子欠乏症、血友病A、自己免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球血管外遊出が関わる疾患、CNS炎症性疾患、多臓器障害症候群(multiple organ injury syndrome)、重症筋無力症、抗原-抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜抗体病(anti-glomerular basement membrane disease)、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、ランバート-イートン筋無力症候群、レイノー症候群、シェーグレン症候群、スティーブンス-ジョンソン症候群、固形臓器移植拒絶(高パネル反応性抗体力価の前処置、組織中のIgA沈着、ならびに腎移植、肝移植、腸移植、心臓移植などから生じる拒絶を含む)、移植片対宿主病(GVHD)、類天疱瘡(pemphigoid bullous)、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、および粘膜天疱瘡(pemphigus mucus-membrane pemphigoid)を含む)、自己免疫性多発性内分泌腺症、ライター病、スティフ-マン症候群、免疫複合体腎炎、IgM多発ニューロパチーもしくはIgM媒介性ニューロパチー、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、血小板減少症(例えば、心筋梗塞患者によって発生される)(自己免疫性血小板減少症を含む)、精巣および卵巣の自己免疫疾患(自己免疫性精巣炎および自己免疫卵巣炎を含む)、原発性甲状腺機能低下症; 自己免疫性内分泌疾患(自己免疫性甲状腺炎、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、亜急性甲状腺炎、特発性甲状腺機能低下症、アジソン病、グレーブス病、多腺性自己免疫症候群(autoimmune polyglandular syndrome)(または多腺性内分泌障害症候群(polyglandular endocrinopathy syndrome))、インスリン依存性糖尿病(IDDM)ともいわれるI型糖尿病(小児IDDMを含む)、およびシーハン症候群を含む);自己免疫性肝炎、リンパ球性間質性肺炎(lymphoid interstitial pneumonitis)(HIV)、NSIPに対する閉塞性細気管支炎(非移植)、ギラン-バレー症候群、バージャー病(IgAネフロパシー)、原発性胆汁性肝硬変、セリアックスプルー(グルテン性腸症)、疱疹状皮膚炎と共分離されている難治性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリック病)、冠動脈疾患、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性難聴、オプソクローヌスミオクローヌス症候群(OMS)、多発性軟骨炎(例えば、難治性多発性軟骨炎)、肺胞蛋白症、アミロイドーシス、巨細胞性肝炎、強膜炎、意味未確定/意味不明の単クローン性高ガンマグロブリン血症(MGUS)、末梢神経障害、新生物随伴症候群、イオンチャネル疾患(例えば、てんかん、片頭痛、不整脈、筋障害、難聴、盲目、周期性四肢麻痺、およびCNSのイオンチャネル疾患;自閉症、炎症性ミオパチー、および巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)。
【0101】
本明細書で提供される疾患のヒト化免疫不全マウスモデルは、上記で考察されるように、ヒト細胞、例えば、ヒトPBMC、ヒトHSC、および/またはヒトがん細胞株もしくはヒトPDX由来のヒトがん細胞を移植される。移植とは、ヒト細胞をインビボで既存の目的の組織に移動し、そこに組み込むというプロセスに言及する。
【0102】
マウスにおける任意の組織が、ヒト細胞(例えば、ヒトPBMC、HSC、またはがん細胞)の移植のための標的組織であり得る。移植のための標的組織は、ヒト細胞(例えば、ヒトPBMC、HSC、またはがん細胞)が移動および組み込まれる組織である。上記移植のための標的組織は、試験されるべき疾患に依存し得る。ヒト細胞(例えば、ヒトPBMC、HSC、またはがん細胞)の移植のための標的組織の非限定的な例としては、肺、気管、肝臓、骨髄、脳、血液、消化器組織、皮膚、胃、小腸、大腸、および膵臓が挙げられる。他の標的組織が、本明細書で企図される。いくつかの実施形態において、ヒト細胞は、1つの標的組織に生着する一方で、いくつかの実施形態において、ヒト細胞は、1またはこれより多くの(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10またはより多くの)標的組織に生着する。
【0103】
いくつかの実施形態において、上記ヒト細胞(例えば、ヒトPBMC、HSC、またはがん細胞)は、単一細胞懸濁物を使用してマウスへと送達される。単一細胞懸濁物は、検出可能なレベルの細胞デブリおよび細胞凝集物を欠いている細胞の懸濁物である。単一細胞懸濁物は、組織(例えば、結合組織)からの細胞の分離を可能にし、ヒト細胞を使用することについての効率(モデル動物(例えば、マウスモデル)への移植、フローサイトメトリー、ヒト細胞培養(例えば、不死化)、およびヒト細胞標識が挙げられるが、これらに限定されない)を最大化する。ヒト細胞単一細胞懸濁物を調製するための方法は、細胞の起源(例えば、ヒトから新たに単離される、PDX、細胞株に由来する)に依存する。単一細胞懸濁物を調製するための方法としては、解離(例えば、酵素による、機械的)、精製(例えば、磁気活性化セルソーティングまたは活性化セルソーティング)、市販のキット(例えば、Miltenyi BiotecまたはStemCell)、遠心分離(例えば、>300×gにおいて)、および濾過(例えば、細胞ストレーナー)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
例えば、上記マウスは、1.0×105個~2.0×107個のヒト細胞(例えば、ヒトPBMC、HSC、またはがん細胞)を移植され得る。いくつかの実施形態において、上記マウスは、1.0×105個、2.0×105個、3.0×105個、4.0×105個、5.0×105個、6.0×105個、7.0×105個、8.0×105個、9.0×105個、1.0×106個、2.0×106個、3.0×106個、4.0×106個、5.0×106個、6.0×106個、7.0×106個、8.0×106個、9.0×106個、1.0×107個、または2.0×107個のヒト細胞(例えば、ヒトPBMC、HSC、またはがん細胞)を移植される。
【0105】
上記ヒト細胞(例えば、ヒトPBMC、HSC、またはがん細胞)は、注射(例えば、尾静脈、眼窩後、静脈内、心内、または動脈内)または植え込み(例えば、皮下、腹腔内、大腿骨内(intrafemoral)、脛骨内、または筋肉内)を介してマウスに送達され得る。いくつかの実施形態において、上記送達は、皮下植え込みを介するものである。他の送達方法は、本明細書で企図される。
【0106】
本明細書で記載される場合、いくつかの実施形態において、HSCまたはPBMCおよび異種移植片(例えば、ヒト異種移植片組織または細胞)の移植は、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスに対して、末梢血中のより少ないヒト調節性T(Treg)細胞(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、またはより多くの減少(CD45+ 細胞のパーセンテージとして測定される))を含むトランスジェニックマウスを生じる。いくつかの実施形態において、上記トランスジェニックマウスは、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスに対して、末梢血中のより少ないPD-1+ T(CD4および/またはCD8)細胞(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30% 35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、またはより多くの減少(CD4および/またはCD8 T細胞のパーセンテージとして測定される))を含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、上記腫瘍の指数関数的増殖相は、遅らされる;すなわち、それは、腫瘍の植え込みの30日後、35日後、36日後、37日後、38日後、39日後、40日後、41日後、42日後、43日後、44日後、45日後、50日後、またはより多くの日数後に始まる。
【0108】
使用方法
本明細書で提供される疾患のヒト化トランスジェニック免疫不全マウスモデルは、任意の多くの適用のために使用され得る。例えば、ヒト化免疫不全モデル(例えば、免疫不全マウスモデル)は、疾患発生を評価する、疾患進行を評価する、および/または候補予防剤もしくは治療剤(例えば、候補治療剤)がヒト免疫系にどの程度影響を及ぼすか(例えば、それがサイトカイン放出症候群を誘発するかどうか)を試験するために、使用され得る。
【0109】
疾患挙動の評価
本明細書で提供される免疫不全モデル(例えば、マウスモデル)は、疾患挙動を評価するために使用され得る。疾患挙動とは、疾患(例えば、がん、自己免疫、および/または炎症)に起因して宿主(例えば、免疫不全マウスモデル)に起こる変化に言及する。疾患挙動の非限定的な例としては、複数の組織への疾患の拡がり(例えば、転移)、疾患の症状の生成、ならびに疾患進行にとって重要な遺伝子および/またはタンパク質の生成が挙げられる。
【0110】
いくつかの実施形態において、宿主(例えば、免疫不全マウスモデル)において複数の組織への疾患の拡がりを評価する方法が、本明細書で提供される。複数の組織は、同じタイプの組織(例えば、肺組織)または複数の異なる組織タイプ(例えば、肺組織、血液、肝臓、または脳)の複数の例であり得る。任意の方法が、疾患の拡がりを評価するために使用され得る(複数の組織サンプルを得、病的な細胞および/もしくは組織の(例えば、免疫組織化学的)存在を検証すること;ならびにインビボ画像化システム(IVIS)を(例えば、蛍光マーカーで)行うことが挙げられるが、これらに限定されない)。
【0111】
いくつかの実施形態において、疾患の症状の生成および疾患進行を評価する方法が、本明細書で提供される。疾患の症状および疾患進行は、その疾患および宿主(例えば、ヒト化免疫不全マウスモデル)に依存し得る。本開示で提供されるモデルにおける疾患の症状および疾患進行はヒトにおける疾患の症状および疾患進行を模倣することが望ましい。疾患の症状および疾患進行の非限定的な例としては、発熱、嗜眠、体重減少、下痢、筋肉痛、咳、呼吸困難、嘔吐、発作、運動失調、血圧の変化、蛋白尿、血尿、脱毛(loss of fur)、浮腫、紅斑、皮膚炎、および脱水が挙げられる。任意の方法が、疾患の症状の生成および疾患進行を評価するために使用され得る。疾患の症状の生成および疾患進行を評価するために使用される方法の非限定的な例としては、体温の測定、睡眠/覚醒サイクルのモニタリング、活動のモニタリング、体重の測定、固形および液体排泄物の評価、呼吸のモニタリングおよび肺機能の評価、血圧および心機能のモニタリング、尿中のタンパク質および血液の存在の測定、血中サイトカインレベルの測定、皮膚もしくは粘膜の厚みの変化の評価、血中イオン濃度の測定、ならびに任意の疾患活動指数(disease activity index)(DAI)評価が挙げられる。
【0112】
ヒト免疫系に対する疾患の影響の評価
本明細書で提供されるヒト化免疫不全マウスモデルは、ヒト免疫系に対する疾患の影響を評価するために使用され得る。ヒト免疫系に対する疾患の影響の非限定的な例としては、調節されたヒト免疫細胞生成およびサイトカイン放出が挙げられる。
【0113】
いくつかの実施形態において、調節されたヒト免疫細胞生成を評価する方法が、本明細書で提供される。調節されたヒト免疫細胞生成は、増大したヒト免疫細胞生成(例えば、コントロールと比較して)または減少したヒト免疫細胞生成(例えば、コントロールと比較して)であり得る。コントロールは、疾患のないヒト化免疫不全モデル(例えば、マウスモデル)であり得る。ヒト化免疫不全モデル(例えば、マウスモデル)における任意のヒト免疫細胞の生成は、疾患によって調節され得る。疾患によって生成が調節され得るヒト免疫細胞の非限定的な例としては、造血幹細胞(例えば、表面マーカーCD34+)、T細胞(例えば、表面マーカーCD3+、CD4+、CD8+)、B細胞(例えば、表面マーカーCD19+、CD20+)、ナチュラルキラー細胞、形質細胞、免疫グロブリン、好中球、単球、樹状細胞、およびサイトカイン(例えば、IL-2、IL-4、またはIL-6)が挙げられる。
【0114】
いくつかの実施形態において、上記マウスモデルは、サイトカイン放出症候群(CRS)(とりわけ、高血圧症、発熱および/または硬直によって特徴づけられ、潜在的には死亡をもたらす被験体における全身性の炎症応答)を評価するために使用され得る。サイトカインストーム(CRS)は、おそらくは、サイトカインと免疫細胞との間の制御されない正のフィードバックループによって引き起こされ、高度に上昇したレベルの種々のサイトカインが生じる。これらの用語は程度においていくらか異なり得るが、それらは全て、被験体へのある特定の免疫調節薬(例えば、抗体)の投与の結果として、被験体によるサイトカインの許容できないほどの高度な放出の結果である。被験体は、許容できないほどの高レベルのサイトカインを放出することによって、処置に反応する。本明細書で記載されるヒト化マウスモデルは、非常に多くの臨床的に関連する薬物候補から、サイトカイン放出を誘発する潜在的薬物候補を特定するために、薬物試験プラットフォームとして使用され得る、本発明の方法は、従って、薬物免疫毒性試験の頑健な予測アッセイを表し、前臨床試験と臨床試験との間の繋がりを提供する。従って、一局面において、本開示は、免疫調節薬がヒトにおいて免疫毒性を引き起こすか否かを決定する方法に関する。いくつかの実施形態において、特定のサイトカイン(例えば、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、および/またはTNF)のレベルは、薬物候補の潜在的免疫毒性の評価の一部として測定される。
【0115】
ヒト免疫細胞生成を測定する任意の方法が、調節されたヒト免疫細胞生成を評価するために使用され得る。ヒト免疫細胞生成を測定する方法の非限定的な例としては、フローサイトメトリー、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、ヒト免疫細胞表面マーカーおよびサイトカインのRT-PCR、ならびにELISAが挙げられる。
【0116】
いくつかの局面は、本明細書で記載されるマウスモデルを使用して、ヒト治療剤に伴う抗薬物抗体(ADA)を評価する方法を提供する。ADAは、不要な副作用を、特に、生物工学由来の薬剤(例えば、治療用抗体および増殖因子)において誘導し得る。従って、ADAは、免疫原性安全性試験を使用して、ますます規制当局による精査の対象になっている。毒性、薬物動態、および有効性において有意な変化を生じるADAは、前臨床試験および臨床試験において観察されている。これらの効果は、例えば、エリスロポエチン(EPO)、第VIII因子(FVIII)、またはインスリンに対する薬物誘導性(中和)自己抗体の生成から生じ、アレルギー反応、またはさらにはアナフィラキシーショックの原因であり得る。結論として、ADAについての試験は、バイオシミラーを含む生物工学で作られた薬剤に関しては不可避になっている。有害な免疫学的反応は、活性成分がどのように組織化される、生成される、および適用されるかに依存して、広く変動し得る。例えば、抗Fc抗体、抗イディオタイプ抗体またはグリコシル化抗原に対する抗体の発現が出現し得る。ADAに関する検出および特徴づけアッセイは、従って、各薬物に関して開発、カスタマイズおよび最適化されなければならない。
【0117】
本明細書で提供されるヒト化免疫不全マウスモデルは、いくつかの局面において、ADAを、例えば、ADAの長期発生を評価するためにインビボモデルとして使用される。
【0118】
いくつかの実施形態において、ADAを評価するために使用されるマウスモデルは、骨髄破壊的手順(例えば、照射またはケミカルアブレーション)を受ける。
【0119】
いくつかの実施形態において、ADAを評価するために使用されるマウスモデルは、本明細書中の他の箇所で考察されるように、huPBMC(例えば、標的薬物ナイーブhuPBMC)を移植される。
【0120】
次いで、移植後に、標的薬物が投与され得る。用語「標的薬物(target drug)」は、液性応答を誘発するヒト治療モダリティー(例えば、薬剤)を包含する。非限定的な例としては、治療用抗体、組換えタンパク質治療剤(例えば、増殖因子)、細胞ベースの治療(例えば、キメラ抗原レセプター(CAR)-T細胞、TCRを操作したT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、および調節性T細胞(Treg)治療)、DNAベースの(例えば、遺伝子、アンチセンスオリゴヌクレオチド)治療、およびRNAベースの(例えば、RNAiおよびmRNA)治療が挙げられる。
【0121】
いくつかの実施形態において、標的薬物は、hPBMCの投与の約4~10日後に上記マウスに投与される。例えば、標的薬物は、hPBMCの投与の4日後、5日後、6日後、7日後、8日後、9日後、または10日後に投与され得る。いくつかの実施形態において、標的薬物は、hPBMCの投与の少なくとも4日後、少なくとも5日後、少なくとも6日後、少なくとも7日後、少なくとも8日後、少なくとも9日後、または少なくとも10日後に、上記マウスに投与される。いくつかの実施形態において、上記標的薬物の単回用量が投与される。他の実施形態において、上記標的薬物の複数回用量(例えば、2~10、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10用量)が、(例えば、毎週、2週間ごと、3週間ごと、または毎月)投与される。いくつかの実施形態において、標的薬物は、標準化された投与スケジュールに従って投与される。
【0122】
抗薬物抗体は、一定期間、例えば、約7~約270日にわたって評価され得る。いくつかの実施形態において、ADAは、血液サンプルを上記マウスから集め、血漿および/またはB細胞機能を特徴づけることによって評価される。いくつかの実施形態において、フローサイトメトリーまたはELISAアッセイは、抗体認識および/または上記標的薬物の中和に関して血液サンプル(または他の生物学的サンプル)を評価するために使用される。標的薬物投与前の最初の採血は、例えば、コントロールとして役立ち得る。いくつかの実施形態において、抗薬物Igレベルは、経時的に増大する。
【0123】
ADAの分析は、ADA力価の特徴づけ、中和能力、結合親和性、アイソタイプ決定、および他の特性を含み得る。ADAにはいくつかのアイソタイプが存在する。例えば、IgM ADAは、ADA形成の早期のマーカーであり得る。そしてIgE抗体の存在は、上記標的薬物に対するアレルギー反応を示し得る。さらに、IgGサブクラスの測定は、ADAの生物学的活性に関して支持的であり得る。なぜならヒトでは、IgG1およびIgG3は補体活性化に主に関与し、よりNK細胞認識になりやすいからである。ADAの結合親和性の測定はまた、ADA応答解釈に有益である。
【0124】
予防剤および治療剤の評価
本開示で提供される免疫不全モデル(例えば、マウスモデル)は、疾患または疾患進行を防止または処置するための予防剤および治療剤を評価するために使用される。予防剤は、疾患のリスクを防止するもしくは低減するか、または疾患の発生(疾患進行)のリスクを防止するもしくは低減する物質(例えば、薬物またはタンパク質)である。治療剤は、疾患を処置する(例えば、疾患と関連する症状を処置する)物質(例えば、薬物またはタンパク質)である。治療剤としては、緩和剤(これは、疾患の1またはこれより多くの症状を改善する物質(例えば、薬物またはタンパク質)である)が挙げられる。
【0125】
いくつかの実施形態において、上記ヒト化トランスジェニックマウスは、ヒトT細胞を活性化する薬剤を投与される。いくつかの実施形態において、次いで、上記トランスジェニックマウスは、治療剤(例えば、抗がん剤または抗自己免疫疾患薬剤(例えば、抗炎症剤、コルチコステロイド、または免疫抑制剤)を投与される。さらなる実施形態において、上記治療剤の有効性が測定される。
【0126】
疾患の防止に関しては、予防上有効な量の薬剤が上記疾患を完全に根絶する必要はないが、上記疾患の進行(例えば、転移)を低減または防止するべきであることは、理解されるべきである。いくつかの実施形態において、予防上有効な量の薬剤は、上記被験体において少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%だけ、疾患進行を低減する。治療剤(例えば、緩和剤)が病的な組織または細胞に影響を与える必要はないが、上記疾患の少なくとも1つの症状を緩和するべきであり、従って、上記疾患の短期間または長期間の全身的な影響を潜在的に軽減するべきであることは、理解されるべきである。
【0127】
予防剤および/または治療剤は、任意の方法によって送達され得る。予防剤および/または治療剤を送達する方法の非限定的な例としては、吸入(例えば、鼻または気管)、注射(例えば、静脈内、動脈内、筋肉内、または頭蓋内)、および摂取(例えば、錠剤または液体)が挙げられる。
【0128】
いくつかの実施形態において、上記薬剤は、ワクチン(例えば、ヒトワクチン)である。上記ワクチンは、例えば、がんワクチンまたは感染性疾患ワクチンであり得る。いくつかの実施形態において、上記薬剤は、例えば、病原体(例えば、ウイルスまたは細菌)に由来するタンパク質抗原である。他の実施形態において、上記薬剤は、核酸である。核酸ワクチンの非限定的な例としては、タンパク質抗原をコードするRNA(例えば、mRNA)またはDNAが挙げられる。
【0129】
いくつかの実施形態において、候補薬剤は、鎮痛薬、解熱薬、抗炎症薬、または免疫抑制薬であり、NSAID、ステロイド、利尿剤、スタチン、およびβ遮断薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
本明細書で提供される予防剤および/または治療剤のうちのいずれかの組み合わせがまた、病的な細胞および/または組織を接種した免疫不全モデル(例えば、マウス)に投与され得る。いくつかの実施形態において、病的な細胞および/または組織を有する免疫不全モデルは、1種もしくはこれより多くの、2種もしくはこれより多くの、3種もしくはこれより多くの、4種もしくはこれより多くの、5種もしくはこれより多くの、6種もしくはこれより多くの、7種もしくはこれより多くの、8種もしくはこれより多くの、9種もしくはこれより多くの、または10種もしくはこれより多くの予防剤を投与される。いくつかの実施形態において、病的な細胞および/または組織を有する免疫不全モデル(例えば、マウス)は、1種もしくはこれより多くの、2種もしくはこれより多くの、3種もしくはこれより多くの、4種もしくはこれより多くの、5種もしくはこれより多くの、6種もしくはこれより多くの、7種もしくはこれより多くの、8種もしくはこれより多くの、9種もしくはこれより多くの、または10種もしくはこれより多くの治療(例えば、緩和)剤を投与される。いくつかの実施形態において、病的な細胞および/または組織を有する免疫不全モデル(例えば、マウス)は、1種もしくはこれより多くの、2種もしくはこれより多くの、3種もしくはこれより多くの、4種もしくはこれより多くの、5種もしくはこれより多くの、6種もしくはこれより多くの、7種もしくはこれより多くの、8種もしくはこれより多くの、9種もしくはこれより多くの、または10種もしくはこれより多くの、予防剤および治療剤を投与される。
【0131】
予防剤および/または治療剤の任意の有効量が、被験体(例えば、免疫不全モデルまたはヒト患者)に投与され得る。有効量は、疾患のリスクもしくは疾患進行を防止もしくは低減する、および/または疾患を処置する用量(例えば、mg、mg/mL、またはmg/kg)である。任意の投与レジメンが、予防剤および/または治療剤を被験体に投与するために使用され得る。投与レジメンの非限定的な例としては、1日に1用量~1日に24用量、1週間に1用量~1週間に7用量、1ヶ月に1用量~1ヶ月に30用量、2ヶ月ごとに1用量~1年ごとに1用量、1年ごとに1用量~10年またはより長い年数ごとに1用量が挙げられる。
【0132】
予防剤および/または治療剤の有効性は、任意の方法によって評価され得る。予防剤および/または治療剤の有効性を評価することの非限定的な例としては、疾患と関連する症状の低減、腫瘍容積の低減、転移の低減などのモニタリングが挙げられる。
【0133】
いくつかの実施形態において、免疫不全モデルにおいて疾患または疾患進行の防止もしくは処置をモニタリングする方法が、本明細書でさらに提供される。疾患および疾患進行の防止もしくは処置は、任意の方法によってモニタリングされ得る。疾患または疾患進行の防止もしくは処置をモニタリングすることの非限定的な例としては、体温の測定、体重の測定、運動のモニタリング、および/または睡眠/覚醒サイクルの評価が挙げられる。
【0134】
いくつかの実施形態において、疾患を有する免疫不全モデルの全身機能をモニタリングする方法が、本明細書で提供される。全身機能とは、病的な細胞および/または組織を有する免疫不全モデルにおける器官系の生産性に言及する。モデルにおける任意の器官系(例えば、呼吸器系、心臓系、消化器系、腎臓系、内分泌系、または神経系)は、本明細書で提供される方法においてモニタリングされ得る。全身機能をモニタリングすることの非限定的な例としては、以下が挙げられる: 呼吸機能の測定(例えば、肺活量測定、肺容量および気道抵抗、拡散能力、血液ガス分析、または心肺運動試験)、心機能(例えば、心臓カテーテル検査、血圧のパルスドプラ測定、ドプラ血流試験、末梢血管の硬さおよび流速)、腎臓(kidney)/腎(renal)機能(蛋白尿、クレアチニンレベル、BUN)、肝機能(アルブミン、ALT、AST、ビリルビン)、および神経機能(例えば、パッチクランプ、機能的MRI、歩行分析、または平衡試験)。
【0135】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるマウスモデルは、薬剤の細胞傷害を評価するために使用される。このような方法の例は、公知であり、例えば、国際出願番号WO2018195027A1に記載される。1つの非限定的な例として、本開示の免疫不全マウスモデルは、ヒトHSCまたはPBMCを移植され得、次いで、例えば、治療剤を投与され得る。種々のサイトカイン(例えば、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、および/またはTNF)の血中濃度が評価され得る。このようなサイトカインのレベルを決定することは、上記治療剤がヒト被験体において重篤なサイトカイン放出症候群を誘発する可能性を示し得る。細胞傷害を評価する他の方法はまた、本明細書で企図される。
【0136】
核酸: 操作および送達
本明細書で記載されるマウスモデルは、ヒトインターロイキン-3(IL-3)をコードする核酸、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子2(GM-CSF)をコードする核酸、ヒト幹細胞因子(SCF)をコードする核酸、およびヒトIL-15をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態において、上記マウスモデルは、マウスゲノムへと組み込まれた、ヒトIL-3をコードする導入遺伝子、ヒトGM-CSFをコードする導入遺伝子、ヒトSCFをコードする導入遺伝子、およびヒトIL-15をコードする導入遺伝子を含む。
【0137】
本明細書で提供される核酸は、いくつかの実施形態において、操作される。操作された核酸は、天然には存在しない核酸(例えば、一緒に共有結合された、および場合によっては、ホスホジエステル骨格ともいわれるホスホジエステル結合を含む少なくとも2つのヌクレオチド)である。操作された核酸としては、組換え核酸および合成核酸が挙げられる。組換え核酸は、2種の異なる生物(例えば、ヒトおよびマウス)に由来する核酸(例えば、単離された核酸、合成核酸またはこれらの組み合わせ)を繋ぐことによって構築される分子である。合成核酸は、増幅されるか、または化学的に、もしくは他の手段によって合成される分子である。合成核酸としては、化学的に改変されているか、または別の方法で改変されているが、天然に存在する核酸分子と塩基対形成(結合)し得るものが挙げられる。組換えおよび合成核酸はまた、前述のうちのいずれかの複製から生じるそれら分子を含む。
【0138】
操作された核酸は、DNA(例えば、ゲノムDNA、cDNAまたはゲノムDNAおよびcDNAの組み合わせ)、RNAまたはハイブリッド分子を含み得、例えば、ここで上記核酸は、デオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチド(例えば、人工もしくは天然)の任意の組み合わせ、および2もしくはこれより多くの塩基(ウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシンおよびイソグアニンが挙げられる)の任意の組み合わせを含む。
【0139】
いくつかの実施形態において、核酸は、相補的DNA(cDNA)である。cDNAは、逆転写酵素によって触媒される反応において1本鎖RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)またはmicroRNA(miRNA))テンプレートから合成される。
【0140】
本開示の操作された核酸は、標準的な分子生物学方法(例えば、Green and Sambrook, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2012, Cold Spring Harbor Pressを参照のこと)を使用して生成され得る。いくつかの実施形態において、核酸は、GIBSON ASSEMBLY(登録商標) Cloning(例えば、Gibson, D.G.ら Nature Methods, 343-345, 2009;およびGibson, D.G.ら Nature Methods, 901-903, 2010(これらの各々は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと)を使用して生成される。GIBSON ASSEMBLY(登録商標)は、代表的には、単一試験管反応において3種の酵素活性を使用する: 5’エキソヌクレアーゼ、DNAポリメラーゼの3’伸長活性およびDNAリガーゼ活性。上記5’エキソヌクレアーゼ活性は、5’末端配列を部分的に消化し(chew back)、アニーリングのために相補的配列を露出する。次いで、ポリメラーゼ活性は、アニーリングしたドメインのギャップを埋める。次いで、DNAリガーゼは、ニックをシールし、DNAフラグメントを一緒に共有結合的に連結する。隣接するフラグメントの重複する配列は、Golden Gate Assemblyにおいて使用されるものより遙かに長いので、より高いパーセンテージの正確なアセンブリを生じる。操作された核酸を生成する他の方法は、本開示に従って使用され得る。
【0141】
遺伝子は、ヌクレオチドの明確な配列であり、その順序は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドにおけるモノマーの順序を決定する。遺伝子は、代表的には、タンパク質をコードする。遺伝子は、内因性(宿主生物において天然に存在する)または外因性(宿主生物へと、天然にもしくは遺伝子操作を介して、移入される)であり得る。アレルは、変異によって生じ、染色体上の同じ遺伝子座で見出される遺伝子の2またはこれより多くの代替形態のうちの1つである。遺伝子は、いくつかの実施形態において、プロモーター配列、コード領域(例えば、エキソン)、非コード領域(例えば、イントロン)、および調節領域(調節配列ともいわれる)を含む。
【0142】
ヒト遺伝子を含むマウスは、ヒト導入遺伝子を含むとみなされる。導入遺伝子は、宿主生物に対して外因性の遺伝子である。すなわち、導入遺伝子は、宿主生物へと、天然にもしくは遺伝子操作を介して移入された遺伝子である。導入遺伝子は、宿主生物(導入遺伝子を含む生物、例えば、マウス)には天然に存在しない。
【0143】
プロモーターは、RNAポリメラーゼが最初の転写物(例えば、ATG)に結合するヌクレオチド配列である。プロモーターは、代表的には、転写開始部位から直ぐ上流に(その5’末端に)位置する。いくつかの実施形態において、プロモーターは、内因性プロモーターである。内因性プロモーターは、その宿主動物において天然に存在するプロモーターである。
【0144】
オープンリーディングフレームは、開始コドン(例えば、ATG)で始まりかつ終止コドン(例えば、TAA、TAG、またはTGA)で終了し、ポリペプチド、例えば、タンパク質をコードするコドンの連続するストレッチである。オープンリーディングフレームは、プロモーターがそのオープンリーディングフレームの転写を調節する場合に、そのプロモーターに作動可能に連結される。
【0145】
エキソンは、アミノ酸をコードする遺伝子の領域である。イントロン(および他の非コードDNA)は、アミノ酸をコードしない遺伝子の領域である。
【0146】
生成物(例えば、タンパク質)をコードするヌクレオチド配列は、いくつかの実施形態において、200塩基対(bp)~100キロベース(kb)の長さを有する。ヌクレオチド配列は、いくつかの実施形態において、少なくとも10kbの長さを有する。例えば、上記ヌクレオチド配列は、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも25kb、少なくとも30kb、または少なくとも35kbの長さを有し得る。いくつかの実施形態において、上記ヌクレオチド配列は、10~100kb、10~75kb、10~50kb、10~30kb、20~100kb、20~75kb、20~50kb、20~30kb、30~100kb、30~75kb、または30~50kbの長さを有する。
【0147】
本明細書で提供される核酸のうちのいずれか1つは、200bp~500kb、200bp~250kb、または200bp~100kbの長さを有し得る。核酸は、いくつかの実施形態において、少なくとも10kbの長さを有する。例えば、核酸は、少なくとも15kb、少なくとも20kb、少なくとも25kb、少なくとも30kb、少なくとも35kb、少なくとも50kb、少なくとも100kb、少なくとも200kb、少なくとも300kb、少なくとも400kb、または少なくとも500kbの長さを有し得る。いくつかの実施形態において、核酸は、10~500kb、20~400kb、10~300kb、10~200kb、または10~100kbの長さを有する。いくつかの実施形態において、核酸は、10~100kb、10~75kb、10~50kb、10~30kb、20~100kb、20~75kb、20~50kb、20~30kb、30~100kb、30~75kb、または30~50kbの長さを有する。核酸は、環状または直線状であり得る。
【0148】
本明細書で記載される核酸は、いくつかの実施形態において、改変を含む。改変は、核酸に関しては、その対応する野生型核酸(例えば、天然に存在する核酸)に対して、上記核酸の任意の操作である。ゲノム改変は、従って、 ゲノム中の対応する野生型核酸(例えば、天然に存在する(改変されていない)核酸)に対して、ゲノム中の(例えば、コード領域、非コード領域、および/または調節領域中の)核酸の任意の操作である。核酸(例えば、ゲノム)改変の非限定的な例としては、欠失、挿入、「インデル」(欠失および挿入)、および置換(例えば、点変異)が挙げられる。いくつかの実施形態において、遺伝子における欠失、挿入、インデル、または他の改変は、その遺伝子がもはや機能的生成物(例えば、タンパク質)をコードしないように、フレームシフト変異を生じる。改変はまた、化学的改変、例えば、少なくとも1個の核酸塩基の化学的改変を含む。核酸改変の方法、例えば、遺伝子不活性化を生じるものは公知であり、RNA干渉、化学的改変、および遺伝子編集(例えば、リコンビナーゼまたは他のプログラム可能なヌクレアーゼシステム、例えば、CRISPR/Cas、TALEN、および/またはZFNを使用する)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
機能喪失型変異は、当該分野で公知であるように、ほとんどまたは全く機能を有しない遺伝子生成物を生じる。ヌル変異は、機能喪失型変異の1タイプであり、機能を有しない遺伝子生成物を生じる。いくつかの実施形態において、不活性化されたアレルは、ヌルアレルである。機能喪失型変異の他の例としては、ミスセンス変異およびフレームシフト変異が挙げられる。
【0150】
核酸(例えば、遺伝子の1つのアレルまたは複数のアレル)は、検出可能なレベルの機能的遺伝子生成物(例えば、機能的タンパク質)を生成しないように改変され得る。従って、不活性化されたアレルは、検出可能なレベルの機能的遺伝子生成物(例えば、機能的タンパク質)を生成しないアレルである。タンパク質の検出可能なレベルは、標準的なタンパク質検出アッセイ(例えば、フローサイトメトリーおよび/またはELISA)を使用して検出されるタンパク質の任意のレベルである。いくつかの実施形態において、不活性化されたアレルは、転写されない。いくつかの実施形態において、不活性化されたアレルは、機能的タンパク質をコードしない。
【0151】
核酸の送達のために使用されるベクターは、ミニサークル、プラスミド、細菌人工染色体(BAC)、および酵母人工染色体を含む。しかし、ベクターが必要とされない場合もあることは、理解されるべきである。例えば、環化または直線状にされた核酸は、そのベクター骨格なしに胚へと送達され得る。ベクター骨格は小さい(約4kb)が、環化されるべきドナーDNAは、例えば、>100bp~50kbの範囲に及び得る。
【0152】
トランスジェニックマウスの生成のために核酸をマウス胚に送達するための方法としては、エレクトロポレーション(例えば、Wang Wら J Genet Genomics 2016;43(5):319-27; WO 2016/054032;およびWO 2017/124086(これらの各々は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと)、DNAマイクロインジェクション(例えば、Gordon and Ruddle, Science 1981: 214: 1244-124(本明細書に参考として援用される)を参照のこと)、胚性幹細胞媒介性遺伝子移入(例えば、Gosslerら, Proc. Natl. Acad. Sci. 1986; 83: 9065-9069(本明細書に参考として援用される)を参照のこと)、およびレトロウイルス媒介性遺伝子移入(例えば、Jaenisch, Proc. Natl. Acad. Sci. 1976; 73: 1260-1264(本明細書に参考として援用される)を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されず、これらのうちのいずれも、本明細書で提供されるように使用され得る。
【0153】
ゲノム編集法
操作された核酸(例えば、ガイドRNA、ドナーポリヌクレオチド、および他の核酸コード配列)は、例えば、任意の適切な方法を使用して胚または細胞(例えば、幹細胞)のゲノムへと導入され得る。本出願は、例えば、トランスジェニック齧歯類を生成するために細胞または胚のゲノムへと核酸を導入するために、種々の遺伝子編集技術の使用を企図する。非限定的な例としては、プログラム可能なヌクレアーゼベースのシステム、例えば、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)システム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、および転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)が挙げられる。例えば、Carroll D Genetics. 2011; 188(4): 773-782; Joung JKら Nat Rev Mol Cell Biol. 2013; 14(1): 49-55;およびGaj Tら Trends Biotechnol. 2013 Jul; 31(7): 397-405(これらの各々は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0154】
いくつかの実施形態において、CRISPRシステムは、本明細書で提供されるマウス胚のゲノムを編集するために使用される。例えば、Harms DWら, Curr Protoc Hum Genet. 2014; 83: 15.7.1-15.7.27;およびInui Mら, Sci Rep. 2014; 4: 5396(これらの各々は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。例えば、Cas9 mRNAまたはタンパク質、1もしくは複数のガイドRNA(gRNA)および/またはドナー核酸が、相同性指向性修復(homology directed repair)(HDR)を促進するために、例えば、操作された核酸(例えば、ドナー核酸)をゲノムへと導入するために、1細胞(接合子)ステージまたはより後期のステージにおいてマウス胚へと直接、送達され得る(例えば、注入またはエレクトロポレーションされ得る)。
【0155】
CRISPR/Casシステムは、遺伝子編集のためのRNAガイドDNA標的化プラットフォームとして再利用されている原核生物における天然に存在する防御機序である。操作されたCRISPRシステムは、2つの主要な構成要素: ガイドRNA(gRNA)およびCRISPR関連エンドヌクレアーゼ(例えば、Casタンパク質)を含む。gRNAは、ヌクレアーゼ結合のための足場配列および改変されるべきゲノム標的(例えば、遺伝子)を定義するユーザー定義のヌクレオチドスペーサー(例えば、約15~25ヌクレオチド、または約20ヌクレオチド)から構成される短い合成RNAである。従って、gRNAに存在する標的配列を単に変更することによって、Casタンパク質のゲノム標的を変更し得る。いくつかの実施形態において、Cas9エンドヌクレアーゼは、Streptococcus pyogenes(NGG PAM)またはStaphylococcus aureus(NNGRRTまたはNNGRR(N) PAM)に由来するが、本明細書で提供されるように、他のCas9ホモログ、オルソログ、および/またはバリアント(例えば、Cas9の進化版)が使用されてもよい。本明細書で提供されるように使用され得るRNAガイドヌクレアーゼのさらなる非限定的な例としては、Cpf1 (TTN PAM); SpCas9 D1135Eバリアント(NGG (低減されたNAG結合) PAM); SpCas9 VRERバリアント(NGCG PAM); SpCas9 EQRバリアント(NGAG PAM); SpCas9 VQRバリアント(NGANまたはNGNG PAM); Neisseria meningitidis (NM) Cas9 (NNNNGATT PAM); Streptococcus thermophilus (ST) Cas9 (NNAGAAW PAM);およびTreponema denticola (TD) Cas9 (NAAAAC)が挙げられる。いくつかの実施形態において、CRISPR関連エンドヌクレアーゼは、Cas9、Cpf1、C2c1、およびC2c3から選択される。いくつかの実施形態において、上記Casヌクレアーゼは、Cas9である。
【0156】
ガイドRNAは、少なくとも、標的核酸配列にハイブリダイズする(結合する)スペーサー配列およびエンドヌクレアーゼを結合しかつそのエンドヌクレアーゼを標的核酸配列へとガイドするCRISPR反復配列を含む。当業者によって理解されるように、各gRNAは、そのゲノム標的配列に相補的なスペーサー配列を含むように設計される。例えば、Jinekら, Science, 2012; 337: 816-821およびDeltchevaら, Nature, 2011; 471: 602-607(これらの各々は、本明細書に参考として援用される)を参照のこと。
【0157】
いくつかの実施形態において、RNAガイドヌクレアーゼおよびgRNAは、胚への送達の前に、リボ核タンパク質(RNP)を形成するために複合体化される。
【0158】
RNAガイドヌクレアーゼまたはRNAガイドヌクレアーゼをコードする核酸の濃度は、変動し得る。いくつかの実施形態において、その濃度は、100ng/μl~1000ng/μlである。例えば、その濃度は、100ng/μl、150ng/μl、200ng/μl、250ng/μl、300ng/μl、350ng/μl、400ng/μl、450ng/μl、500ng/μl、550ng/μl、600ng/μl、650ng/μl、700ng/μl、750ng/μl、800ng/μl、850ng/μl、900ng/μl、950ng/μl、または1000ng/μlであり得る。いくつかの実施形態において、その濃度は、100ng/μl~500ng/μl、または200ng/μl~500ng/μlである。
【0159】
gRNAの濃度も変動し得る。いくつかの実施形態において、その濃度は、200ng/μl~2000ng/μlである。例えば、その濃度は、200ng/μl、300ng/μl、400ng/μl、500ng/μl、600ng/μl、700ng/μl、800ng/μl、900ng/μl、1000ng/μl、1100ng/μl、1200ng/μl、1300ng/μl、1400ng/μl、1500ng/μl、1600ng/μl、1700ng/μl、1700ng/μl、1900ng/μl、または2000ng/μlであり得る。いくつかの実施形態において、その濃度は、500ng/μl~1000ng/μlである。いくつかの実施形態において、その濃度は、100ng/μl~1000ng/μlである。例えば、その濃度は、100ng/μl、150ng/μl、200ng/μl、250ng/μl、300ng/μl、350ng/μl、400ng/μl、450ng/μl、500ng/μl、550ng/μl、600ng/μl、650ng/μl、700ng/μl、750ng/μl、800ng/μl、850ng/μl、900ng/μl、950ng/μl、または1000ng/μlであり得る。
【0160】
いくつかの実施形態において、RNAガイドヌクレアーゼまたはRNAガイドヌクレアーゼをコードする核酸の濃度 対 gRNAの濃度の比は、2:1である。他の実施形態において、RNAガイドヌクレアーゼまたはRNAガイドヌクレアーゼをコードする核酸の濃度 対 gRNAの濃度の比は、1:1である。
【0161】
ドナー核酸は、代表的には、相同性アームによって隣接された目的の配列を含む。相同性アームは、ゲノム遺伝子座に位置したゲノムDNAの領域に相同なssDNAの領域である。一方の相同性アームは、目的のゲノム領域(その中へと目的の配列が導入される)の左側(5’側)に位置し(左側の相同性アーム)、もう一方の相同性アームは、目的のゲノム領域の右側(3’側)に位置する(右側の相同性アーム)。これらの相同性アームは、ssDNAドナーとゲノム遺伝子座との間の相同組換えを可能にし、目的のゲノム遺伝子座への目的の配列の挿入を(例えば、CRISPR/Cas9媒介性相同性指向性修復(HDR)を介して)生じる。
【0162】
相同性アームは、長さにおいて変動し得る。例えば、各相同性アーム(左側の相同性アームおよび右側の相同性アーム)は、20ヌクレオチド塩基~1000ヌクレオチド塩基の長さを有し得る。いくつかの実施形態において、各相同性アームは、20~200ヌクレオチド塩基、20~300ヌクレオチド塩基、20~400ヌクレオチド塩基、20~500ヌクレオチド塩基、20~600ヌクレオチド塩基、20~700ヌクレオチド塩基、20~800ヌクレオチド塩基、または20~900ヌクレオチド塩基の長さを有する。いくつかの実施形態において、各相同性アームは、20ヌクレオチド塩基、30ヌクレオチド塩基、40ヌクレオチド塩基、50ヌクレオチド塩基、60ヌクレオチド塩基、70ヌクレオチド塩基、80ヌクレオチド塩基、90ヌクレオチド塩基、100ヌクレオチド塩基、150ヌクレオチド塩基、200ヌクレオチド塩基、250ヌクレオチド塩基、300ヌクレオチド塩基、350ヌクレオチド塩基、400ヌクレオチド塩基、450ヌクレオチド塩基、500ヌクレオチド塩基、550ヌクレオチド塩基、600ヌクレオチド塩基、650ヌクレオチド塩基、700ヌクレオチド塩基、750ヌクレオチド塩基、800ヌクレオチド塩基、850ヌクレオチド塩基、900ヌクレオチド塩基、950ヌクレオチド塩基、または1000ヌクレオチド塩基の長さを有する。いくつかの実施形態において、一方の相同性アームの長さは、他方の相同性アームの長さとは異なる。例えば、一方の相同性アームは、20ヌクレオチド塩基の長さを有し得、他方の相同性アームは、50ヌクレオチド塩基の長さを有し得る。いくつかの実施形態において、ドナーDNAは、1本鎖である。いくつかの実施形態において、ドナーDNAは、2本鎖である。いくつかの実施形態において、ドナーDNAは、例えば、ホスホロチオエート化を介して改変される。他の改変が行われてもよい。
【0163】
さらなる実施形態
本開示は、いくつかの局面において、ヒトインターロイキン-3(IL-3)をコードする導入遺伝子、ヒトGM-CSF、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子2(GM-CSF)をコードする導入遺伝子、ヒト幹細胞因子(SCF)をコードする導入遺伝子、およびヒトIL-15をコードする導入遺伝子を含む免疫不全トランスジェニックマウスを提供する。
【0164】
いくつかの実施形態において、上記トランスジェニックマウスは、非肥満性遺伝的バックグラウンドを有する。いくつかの実施形態において、上記トランスジェニックマウスは、重症複合免疫不全変異(Prkdcscid)を有する。いくつかの実施形態において、上記トランスジェニックマウスは、IL2レセプター共通γ鎖のヌルアレル(IL2rgnull)を有する。いくつかの実施形態において、上記トランスジェニックマウスは、NOD-scid IL2Rgammanull遺伝的バックグラウンドを有する。
【0165】
いくつかの実施形態において、上記トランスジェニックマウスは、ヒトCD34+ 造血幹細胞(HSC)を移植される。いくつかの実施形態において、上記トランスジェニックマウスは、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を移植される。
【0166】
いくつかの実施形態において、上記トランスジェニックマウスの末梢血は、ヒトCD45+ 細胞を含む。いくつかの実施形態において、上記トランスジェニックマウスは、循環ヒトCD3+ T細胞、ヒトCD19+ B細胞、およびヒトCD33+ 骨髄系細胞を含む。
【0167】
いくつかの実施形態において、上記トランスジェニックマウスは、必要に応じて、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスにおけるものより有意に高いレベルにおいて、ヒトNK細胞を含む。
【0168】
いくつかの実施形態において、上記トランスジェニックマウスの末梢血は、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスにおけるものより有意に低いレベルにおいて、ヒト調節性T(Treg)細胞を含む。
【0169】
いくつかの実施形態において、上記トランスジェニックマウスの脾臓は、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスにおけるものより有意に低いレベルにおいて、ヒトPD-1+ T細胞を含む。
【0170】
いくつかの実施形態において、上記CD34+ ヒトHSCは、尾静脈注射を介して移植される。いくつかの実施形態において、上記CD34+ ヒトHSCは、約4週齢において上記マウスへと移植される。いくつかの実施形態において、約5×104個のCD34+ ヒトHSCは、上記マウスへと移植される。いくつかの実施形態において、上記CD34+ ヒトHSCは、上記マウスの全身照射後に移植される。いくつかの実施形態において、上記マウスの全身照射は、約50~150cGyの線量を含む。いくつかの実施形態において、上記マウスの全身照射は、約100cGyの線量を含む。
【0171】
いくつかの実施形態において、上記マウスの末梢血中のヒトCD45+ ナチュラルキラー(NK)細胞のパーセンテージは、HSC移植後約28週間で約2~10%に達する。いくつかの実施形態において、上記マウスの末梢血中のヒトT調節性細胞のパーセンテージは、HSC移植後約16週間で約2~8%に達する。いくつかの実施形態において、上記マウスの末梢血中のT調節性細胞のパーセンテージは、HSC移植後約16週間で約5%に達する。いくつかの実施形態において、上記マウスの脾臓T細胞のPD-1発現は、HSC移植後約16週間で約15~25%に達する。いくつかの実施形態において、上記マウスの脾臓T細胞のPD-1発現は、HSC移植後約16週間で約20%に達する。
【0172】
いくつかの実施形態において、上記マウスは、ヒト患者由来異種移植片(PDX)を接種され、ここで上記HSCおよび上記PDXは、HLAマッチしていない。いくつかの実施形態において、上記接種は、皮下植え込みまたは正所性の植え込みを含む。いくつかの実施形態において、上記ヒトPDXは、上記マウスに上記CD34+ ヒトHSCを移植して約2週間後に、上記マウスに接種される。いくつかの実施形態において、上記ヒトPDXは、上記マウスに上記CD34+ ヒトHSCを移植して約12週間後に、上記マウスに接種される。いくつかの実施形態において、上記ヒトPDXは、初代患者サンプルに由来する。いくつかの実施形態において、上記ヒトPDXは、少なくとも1世代にわたって異種移植片として継代されている、保管された腫瘍サンプルに由来する。いくつかの実施形態において、上記ヒトPDXは、卵巣がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん(NSCLC))、膀胱がん、リンパ腫(例えば、AML、CML、ALL、CLL、DLBCL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫))、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん(TNBC))、脳のがん、膵臓がん、前立腺がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、胃/GISTがん、肝細胞がん、腎臓がん(kidney cancer)/腎がん(renal cancer)、皮膚がん(例えば、黒色腫)、軟組織癌、肉腫、またはがん細胞株に由来する異種移植片である。いくつかの実施形態において、約5×106細胞の上記ヒトPDXが接種される。
【0173】
いくつかの実施形態において、上記腫瘍の指数関数的増殖期は、上記腫瘍の植え込みの少なくとも40日後に起こる。いくつかの実施形態において、腫瘍容積は、上記腫瘍の植え込みの50日後まで600mm3未満である。
【0174】
いくつかの実施形態において、上記マウスは、抗がん化合物を投与される。いくつかの実施形態において、上記抗がん化合物は、5-FU、アバスチン、シスプラチン、カルボプラチン、ペムブロリズマブ、ドセタキセル、またはこれらの組み合わせである。
【0175】
いくつかの実施形態において、上記マウスは、移植されたヒト末梢単核血液細胞(PMBC)をさらに含む。いくつかの実施形態において、上記ヒトPMBCは、尾静脈注射を介して移植される。いくつかの実施形態において、約1×106~5×106細胞のヒトPBMCが移植される。いくつかの実施形態において、約5×106細胞の上記ヒトPBMCが移植される。いくつかの実施形態において、約2×106細胞の上記ヒトPBMCが移植される。いくつかの実施形態において、約1×106細胞の上記ヒトPBMCが移植される。いくつかの実施形態において、上記ヒトPBMCは、患者に由来する。
【0176】
いくつかの実施形態において、上記ヒトPBMCは、約4週齢で上記マウスに移植される。いくつかの実施形態において、上記ヒトPBMCは、上記マウスの全身照射後に移植される。いくつかの実施形態において、上記マウスの全身照射は、約50~200cGyの線量を含む。いくつかの実施形態において、上記マウスの全身照射は、約100cGyの線量を含む。いくつかの実施形態において、上記マウスの全身照射は、約150~175cGyの線量を含む。
【0177】
いくつかの実施形態において、上記マウスの末梢血中のヒトCD45+ 細胞のパーセンテージは、PBMC移植後約8日で約15~35%に達する。いくつかの実施形態において、上記マウスの末梢血中のヒトCD45+ 骨髄系細胞のパーセンテージは、PBMC移植後約8日で約0.1~0.2%に達する。いくつかの実施形態において、上記マウスの末梢血中のヒトCD45+ NK細胞のパーセンテージは、PBMC移植後約8日で約5~10%に達する。いくつかの実施形態において、上記マウスの活性化脾臓CD4+ T細胞のパーセンテージは、PBMC移植後約8日で約55~70%に達する。いくつかの実施形態において、上記マウスの活性化脾臓CD8+ T細胞のパーセンテージは、PBMC移植後約8日で約80~90%に達する。
【0178】
いくつかの実施形態において、上記マウスは、病的なヒト細胞を移植される。いくつかの実施形態において、上記病的なヒト細胞は、血球、筋細胞、およびニューロン細胞から選択される。いくつかの実施形態において、上記病的なヒト細胞は、腫瘍細胞である。いくつかの実施形態において、上記腫瘍細胞は、初代腫瘍細胞である。いくつかの実施形態において、上記病的なヒト細胞は、がん性の細胞である。いくつかの実施形態において、上記病的なヒト細胞は、非がん性の細胞である。いくつかの実施形態において、上記病的なヒト細胞および上記PBMCは、自家である。いくつかの実施形態において、上記PBMCおよび上記ヒト免疫細胞は、同種異系である。
【0179】
いくつかの実施形態において、上記マウスは、サイトカイン放出症候群(CRS)を処置するための候補薬剤をさらに投与される。いくつかの実施形態において、インターロイキン(IL)-6、腫瘍壊死因子(TNF)、およびIL-2からなる群より選択されるサイトカインの循環レベルが測定される。
【0180】
本開示のさらなる実施形態は、以下の番号付けした段落によって包含される:
1. ヒトインターロイキン-3(IL-3)をコードする導入遺伝子、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子2(GM-CSF)をコードする導入遺伝子、ヒト幹細胞因子(SCF)をコードする導入遺伝子、およびヒトIL-15をコードする導入遺伝子を含む、免疫不全トランスジェニックマウス。
2. 前記トランスジェニックマウスは、非肥満性の糖尿病遺伝的バックグラウンドを有する、段落1に記載のトランスジェニックマウス。
3. 前記トランスジェニックマウスは、重症複合免疫不全変異(Prkdcscid)を有する、段落1または2に記載の上記トランスジェニックマウス。
4. 前記トランスジェニックマウスは、IL2レセプター共通γ鎖のヌルアレル(IL2rgnull)を有する、前述の段落のいずれか1つに記載のトランスジェニックマウス。
5. 前記トランスジェニックマウスは、NOD-scid IL2Rgammanull遺伝的バックグラウンドを有する、前述の段落のいずれか1つに記載のトランスジェニックマウス。
6. 前記トランスジェニックマウスは、ヒトCD34+ 造血幹細胞(HSC)を移植される、前述の段落のいずれか1つに記載のトランスジェニックマウス。
7. 前記トランスジェニックマウスの末梢血は、ヒトCD45+ 細胞を含む、段落6に記載のトランスジェニックマウス。
8. 前記トランスジェニックマウスは、循環ヒトT細胞、ヒトB細胞、およびヒト骨髄系細胞を含む、段落6または7に記載のトランスジェニックマウス。
9. 前記トランスジェニックマウスは、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスに対して有意により多くのヒトNK細胞を含む、段落6~8のいずれか1つに記載のトランスジェニックマウス。
10. 前記トランスジェニックマウスは、ヒト異種移植片組織を移植される、段落6~9のいずれか1つに記載のトランスジェニックマウス。
11. 前記トランスジェニックマウスは、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスに対して末梢血中に有意により少ないヒト調節性T(Treg)細胞を含む、段落10に記載のトランスジェニックマウス。
12. 前記トランスジェニックマウスは、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスに対して有意により少ないヒトPD-1+ T細胞を含む、段落10または11に記載のトランスジェニックマウス。
13. 前記トランスジェニックマウスは、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を移植される、段落1~5のいずれか1つに記載のトランスジェニックマウス。
14. 前記トランスジェニックマウスは、循環ヒトT細胞、ヒトB細胞、およびヒトNK細胞を含む、段落13に記載のトランスジェニックマウス。
15. 前記トランスジェニックマウスは、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスに対して末梢血中に有意により多くのヒトCD45+ 細胞を含む、段落13または14に記載のトランスジェニックマウス。
16. 前記トランスジェニックマウスは、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスに対して末梢血中に有意により多くのヒト骨髄系細胞を含む、段落13~15のいずれか1つに記載のトランスジェニックマウス。
17. 前記トランスジェニックマウスは、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスに対して末梢血中に有意により多くのヒトNK細胞を含む、段落13~15のいずれか1つに記載のトランスジェニックマウス。
18. 前記トランスジェニックマウスは、ヒト化NSG-SGM3コントロールマウスに対して脾臓中に有意により多くの活性化ヒトT細胞を含む、段落13~15のいずれか1つに記載のトランスジェニックマウス。
19. トランスジェニックマウスを生成する方法であって、前記方法は、
(a)ヒトインターロイキン-3(IL-3)をコードする導入遺伝子、ヒト顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子2(GM-CSF)をコードする導入遺伝子、ヒト幹細胞因子(SCF)をコードする導入遺伝子を含む免疫不全トランスジェニックマウス、および
(b)ヒトIL-15をコードする導入遺伝子を含むトランスジェニックマウス、
を育種する工程を包含する、方法。
20. 前記(a)の免疫不全トランスジェニックマウスは、NSG-SGM3遺伝的バックグラウンドを有する、段落19に記載の方法。
21. ヒト異種移植片組織または細胞、必要に応じて病的なヒト異種移植片組織または細胞を、段落1~5のいずれか1つに記載のトランスジェニックマウスに投与する工程を包含する、方法。
22. ある用量のヒト末梢血単核細胞(PBMC)を段落1~5のいずれか1つに記載のトランスジェニックマウスに投与する工程であって、ここで前記用量は、1×107個未満のPBMCである工程を包含する、方法。
23. 前記用量は、約1×106~約5×106個のPBMCである、段落22に記載の方法。
24. 前記用量は、約2×106個のPBMCである、段落23に記載の方法。
25. 前記用量は、約1×106個のPBMCである、段落23に記載の方法。
26. 前記PBMCは、静脈内投与される、段落22~25のいずれか1つに記載の方法。
27. 前記トランスジェニックマウスに、ヒトT細胞を活性化する薬剤を投与する工程をさらに包含する、段落22~26のいずれか1つに記載の方法。
28. 前記トランスジェニックマウスに候補治療剤を投与する工程をさらに包含する、段落22~27のいずれか1つに記載の方法。
29. 前記候補治療剤は、抗がん剤または免疫調節剤である、段落28に記載の方法。
30. 前記免疫調節剤は、抗炎症剤、コルチコステロイド、または免疫抑制剤である、段落29に記載の方法。
31. 前記免疫不全トランスジェニックマウスにおけるサイトカインレベルをアッセイする工程および/または前記治療剤の有効性をアッセイする工程をさらに包含する、段落28~30のいずれか1つに記載の方法。
32. アッセイされる前記サイトカインは、IFN-γ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-10、およびTNFからなる群より選択される少なくとも1つのサイトカインである、段落31に記載の方法。
【0181】
本開示の例示的な実施形態のさらなる局面、利点および/または他の特徴は、添付の図面とともに理解すれば、以下の詳細な説明に鑑みて明らかになる。本明細書で提供される詳細な実施形態が例示に過ぎず、例証であって限定でないことは、当業者に明らかであるはずである。その改変の多くの実施形態は、本開示およびその均等物の範囲内に入ると指摘とされる。
【0182】
以下の実施例は、本発明の方法を開発するにあたって行われた実験を含め、本発明の方法の種々の非限定的実施形態および技術をさらに例証するために提供される。しかし、これらの実施例が、例証であることを意味し、特許請求の範囲を限定しないことは、理解されるべきである。当業者に明らかであるように、多くのバリエーションおよび改変は、本開示の趣旨および範囲内に包含されることが意図される。
【実施例】
【0183】
実施例
実施例1-CD34造血幹細胞(HSC)でヒト化したNSG-SGM3xIL15マウス
NSG-SGM3マウスおよびNSG-SGM3xIL15マウス(4週齢; N=5/群)に、100cGyで照射し、臍帯血に由来する50,000個のCD34+ HSCを静脈内注射した。3名のドナーを使用した。ヒトCD45+ 細胞のレベルを、32週間までにわたってフローサイトメトリーによって末梢血においてモニタリングした。計数ビーズを追加して、絶対的細胞計数を計算した。上記ヒトCD45+ 生着時間動態および生着レベルを、
図1A~1C(頻度)および
図1D~1F(血液1マイクロリットルあたりの細胞)に示す。全体的には、その動態およびレベルは、その2つのマウス系統間で類似であった。
【0184】
次に、ヒト免疫細胞のレベルを、CD34+ HSCの移植後、4週間、6週間、12週間、16週間、20週間、24週間、および28週間で、NSG-SGM3マウスおよびNSG-SGM3xIL15マウスの末梢血において測定した。上記マウスは、上記で記載される同じヒト化手順を受けた。その結果を、
図2A~2C(NSG-SGM3マウス)および
図2D~2F(NSG-SGM3xIL15マウス)に示す。全NK細胞レベル(矢印)は、NSG-SGM3マウスにおけるよりNSG-SGM3xIL15マウスにおいてより高く、生着レベルは、全3名のドナーに関して28週間の時間経過全体にわたって十分に維持された。循環CD3+T、CD19+B、およびCD33+骨髄系細胞のレベルは、2つの系統間で類似であった。
【0185】
ヒトNK細胞生着を、上記と同じプロトコールおよびドナーを使用してさらに調査した。上記3名のドナーからの全NK細胞頻度を、
図3A~3Cに示し、その3名のドナーからの血液1マイクロリットルあたりの全NK細胞を、
図3D~3Fに示す。28週間の時間経過中に、有意により高いレベルのヒトNK細胞を、NSG-SGM3マウスと比較してNSG-SGM3xIL15マウスにおいて見出した。具体的には、上記ヒトNK細胞頻度は、NSG-SGM3マウスにおいて0.1~1%であり、SGM3xIL15マウスにおいて約2~10%であった。
【0186】
上記のようにHSCを移植したNSG-SGM3マウスおよびNSG-SGM3xIL15マウスの末梢血中の調節性T(Treg)細胞の頻度、ならびに脾臓中のCD4+TおよびCD8+T細胞上でのPD-1発現をまた、試験した。
図5Aに示されるように、生理学的レベルのTregが、NSG-SGM3xIL15マウスの血中で観察されたが、より高いレベルが、NSG-SGM3マウスにおいて観察された(CD45について20% 対 5%)。T細胞上でのPD-1発現に関しては、
図5Bは、CD4TおよびCD8T細胞上でのPD-1発現がNSG-SGM3xIL15マウスにおけるよりNSG-SGM3マウスの脾臓においてより高かったことを示す(60% 対 20%)。
【0187】
従って、全体的に、HSCでヒト化した上記NSG-SGM3xIL15マウスは、上記NSG-SGM3マウスと比較して、ヒト免疫系により近い特性を明らかに示した。
【0188】
実施例2-CD34 造血幹細胞(HSC)でヒト化し、患者由来異種移植片(PDX)を植え込んだNSG-SGM3xIL15マウス
NSG-SGM3xIL15マウス、NSG-SGM3マウス、およびNSGマウスを、実施例1に記載されるようにHSCでヒト化した。次いで、そのマウスに、細胞株由来の異種移植片(MDA-MB-231)または2つの患者由来異種移植片(PS4050もしくはLG1306)のうちの一方を皮下に植え込んだ。マウスの各系統に、
図4A~4Fに示されるように、1~3名のドナー由来の異種移植片を移植した。腫瘍容積を、時間経過実験中に測定した。
図4A~4Cは、3種の異種移植片モデルの平均腫瘍容積を示し、
図4E~4Fは、3種のモデルの個々の腫瘍サイズを示す。全3種の異種移植片モデルの増殖動態は、NSG-SGM3xIL15マウスにおいて有意に遅延した。これは、増強されたヒト免疫系に起因する、腫瘍に対するより強い同種異系応答と一致する。さらに、その結果は、
図5A(Treg頻度)および
図5B(T細胞におけるPD-1発現)のデータと一致する。なぜならNSG-SGM3xIL15マウスは、より多くの活性化T細胞およびより存在量が豊富なNK細胞を有するようであるからである。
【0189】
実施例3-末梢血単核細胞(PBMC)でヒト化したNSG-SGM3xIL15マウス
NSG-SGM3xIL15およびNSG-SGM3マウスを、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)でヒト化し、ヒト化を確認した。簡潔には、上記マウスに照射し(100cGy)、0日目に、ヒトPBMCを静脈内に投与した(5×10
6/マウス)。8日目に、血液サンプルおよび脾臓サンプルを、フローサイトメトリーを介する分析のために集めた。その結果を、
図6A~6C(血液)および
図7A~7C(脾臓)に示す。5×10
6個のPBMCを移植したNSG-SGM3xIL15マウスは、NSG-SGM3マウスと比較して、より良好なヒト化(より高いhCD45+によって示されるとおり;
図6A)およびより高い骨髄系細胞レベル(
図6B)を示す。さらに、上記NSG-SGM3xIL15マウスは、NSG-SGM3マウスと比較して有意により高いナチュラルキラー(NK)細胞レベルを示した(
図6C)。まとめると、データは、PBMCを移植したNSG-SGM3xIL15マウスが、骨髄系細胞および/またはNK細胞を調査するための有用なモデルであり得ることを明らかに示す。脾臓サンプルでは、NSG-SGM3xIL15マウスは、NSG-SGM3マウスと比較してより高い活性化T細胞レベルを示し(
図7A~7C)、これは、NSG-SGM3xIL15がサイトカイン放出症候群のモデルとして使用され得ることを示唆する。なぜならT細胞活性化は、T細胞関連のサイトカイン放出症候群をもたらすからである。
【0190】
ヒト化のための低レベルのPBMCの使用を調査した。簡潔には、NSG-SGM3xIL15およびNSG-SGM3マウスに照射し(150cGyまたは175cGy)、0日目に、ヒトPBMCを静脈内に投与した(1×10
6/マウスまたは2×10
6/マウス)。12日目に、血液サンプルを、フローサイトメトリーを介する分析のために集めた。その結果を
図8A~8Cに示し、NSG-SGM3xIL15マウスが1×10
6個程度のPBMC/マウスでヒト化され得ることを明らかに示す。これは、代表的に使用されるPBMCの量(例えば、10~20×10
6個のPBMC)より有意に低い。また、1×10
6個または2×10
6個のPBMCヒト化では、NSG-SGM3xIL15マウスは、より高いPBMC用量で認められるパターンに類似して、血液中で、より良好なヒト化(
図8A; ヒトCD45+ 細胞)、より高い骨髄系細胞レベル(
図8B)、および増大したNK細胞集団(
図8C)を示した(
図7A~7Cと比較のこと)。
【0191】
実施例4-末梢血単核細胞(PBMC)でヒト化したNSG-SGM3xIL15マウス-毒性誘導
NSG-SGM3xIL15およびNSG-SGM3マウスを、ヒトPBMCでヒト化し、次いで、種々の薬物を投与して、サイトカイン放出症候群(CRS)を誘導した。簡潔には、マウスに照射し(100cGy)、PBS、OKT3、抗CD28、またはCD19xCD3 BiTEを投与した。血清サイトカインレベルを、この時点で測定し、選択したサイトカインの得られたレベルを、
図9A~9Cに示す。全体的に、NSG-SGM3xIL15マウスは、循環中で、NSG-SGM3マウスと比較して、OKT3および抗CD28(これらは、サイトカイン放出を誘導することが公知である)を投与した場合により高いサイトカインレベルを示した。
【0192】
ヒト化のためにより低いレベルのPBMCの使用をまた、試験した。簡潔には、NSG-SGM3xIL15およびNSG-SGM3マウスに照射し(150cGyまたは175cGy)、0日目に、ヒトPBMCを静脈内に投与した(1×10
6/マウスまたは2×10
6/マウス)。12日目に、マウスに、PBSまたはOKT3を投与し、血清サイトカインレベルを分析した。その結果を、
図10A~10Cに示し、上記モデルがなお、薬物(OKT3)とコントロール(PBS)との間でより大きな差異で、ヒトサイトカイン放出を捕捉することを明らかに示す。より低いPBMCヒト化であっても、NSG-SGM3xIL15マウスは、NSG-SGM3マウスより高いサイトカイン放出の傾向を示す。これは、NSG-SGM3xIL15マウスが、有意により少ない数のPBMCでサイトカイン放出症候群を捕捉し得ることを示唆する。
【0193】
実施例5-PBMCでヒト化した、照射したおよび照射されていないSGM3xIL15マウス
NSG-SGM3xIL15マウスは、100cGyを照射するか、または照射しないかのいずれかであった。およそ4時間後に、マウスに、ドナー3769由来の400万個のPBMCを移植した。マウスを1週間に1回採血し、抗ヒトCD45抗体アッセイを使用して染色した。フローサイトメトリー分析の直前に計数ビーズを追加して、絶対的細胞計数を決定した。照射は、増大したヒト化および循環中のhCD45+ 細胞の加速をもたらした(
図11A~11B);しかし、照射は、上記マウスの寿命を縮めた。照射しなかったマウスにおけるhCD45+ 細胞は、49日目まで拡大し、21日目での照射したマウスにおいて観察された類似のレベルに達した(データは示さず)。これらの結果は、照射が非照射と比較して、hCD45細胞の短期間のヒト化を増強したことを示す。
【0194】
実施例6-2名のドナー由来のPBMCでヒト化した、照射したおよび照射されていないSGM3xIL15マウス
NSG-SGM3xIL15マウスは、100cGyを照射するか、または照射しないかのいずれかであり、ドナー0595および3769由来の400万個のPBMCを移植した。マウスを1週間に1回採血し、抗ヒトCD45抗体アッセイを使用して染色した。フローサイトメトリー分析の直前に計数ビーズを追加して、絶対的細胞計数を決定した。
図12A~12Bに示されるように、照射したマウスは、照射されていないマウスと比較して、14日目および21日目に増強されたヒト化を明らかに示した。ヒト化は、ある程度のドナーの変動性があったが、両方のドナーにおいて類似のパターンをたどった。照射したマウスでは、ドナー0595よりドナー3769に関して、わずかにより高い生着レベルが観察された。ドナー3769はまた、照射されていないマウスにおいて、ドナー0595より高い生着数を示した。
【0195】
実施例7-3名のドナー由来のPBMCでヒト化した、照射したおよび照射されていないNSG-SGM3xIL15マウスにおける循環ヒトIgGレベル
NSG-SGM3xIL15マウスは、100cGyを照射するか、または照射しないかのいずれかであり、ドナー0364、0595、および3769由来の400万個のPBMCを移植した。マウスを1週間に1回採血し、循環hIgGレベルに関して分析した。ドナーPBMCを有するマウスの全3群は、経時的に増大したIgGレベルを明らかに示し、照射したマウスは、14日目に、有意により高いIgGレベルを生成した。
図13に示されるように、照射されていないマウスと比較した場合に、より高いIgGレベルを、照射したマウスにおいて測定された両方の時点(14日目、21日目)で観察した。照射したドナー0595マウスは、14日目程度の早さでヒトIgGの生理学的なものに近いレベルに達した(正常成人IgGレベル: 600~1600mg/dL(6000~16000μg/mL))。ドナー0364および3769に関する照射したマウスはまた、それらの照射されていない対応物と比較した場合に、14日目に増強されたIgG生成を示した。照射の必要性においてドナーの変動性は存在したが、全ての場合において、照射は、IgG生成を改善した。
【0196】
実施例8-PBMCでヒト化した、照射されたかまたは照射されていないNSG-SGM3xIL15マウスの血清におけるヒトIgアイソタイプ
NSG-SGM3xIL15マウスは、100cGyを照射するか、または照射しないかのいずれかであり、ドナー0595由来の400万個のPBMCを移植し、1週間に1回採血した。血清を、ヒトIgM、IgAおよび4つのIgGサブクラス: IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に関して分析した。
図14A~14Bに示されるように、照射は、血清中のIgレベルを、IgM、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4に関する生理学的なものに近いレベルへと増強した(正常成人範囲は、IgG1に関しては2.80~8.00mg/ml; IgG2に関しては1.15~5.70mg/mL; IgG3に関しては0.24~1.25mg/mL; IgG4に関しては0.052~1.25mg/mL; IgMに関しては0.4~2.5mg/mL)。測定したアイソタイプのうち、ただ1つ(IgA)は、末梢血中で明らかなIgレベルの増強を生じなかった(正常成人範囲は、IgAに関しては0.8~3.0mg/mL)。
【0197】
実施例9-PBMCでヒト化した、照射したおよび照射されていないNSG-SGM3xIL15マウスにおけるヒト免疫細胞集団
NSG-SGM3xIL15マウスは、100cGyを照射するか、または照射しないかのいずれかであり、およそ4時間後に、ドナー0595由来の400万個のPBMCを移植した。マウスを1週間に1回採血し、抗ヒトCD45、CD3、CD4、CD8、CD19、CD56、CD14およびCD16抗体アッセイを使用して染色した。フローサイトメトリー分析の直前に計数ビーズを追加して、絶対的細胞計数を決定した。
図15A~15Bに示されるように、照射は、循環中の増大したhCD45+ 細胞、ならびにB細胞およびT細胞の拡大をもたらしたが、CD56+ およびCD14+の数は、同じままであった。末梢血中の照射されていない細胞で拡大が観察されたCD3+ T細胞とは異なり、CD19+ B細胞の拡大は、ほとんどまたは全く観察されなかった。
【0198】
実施例10-照射線量は、PBMC移植NSG-SGM3xIL15マウスにおけるヒト化および循環hIgGレベルに影響を与える
NSG-SGM3xIL15マウスは、0~200cGyの間の照射線量(0cGy、50cGy、100cGy、150cGy、または200cGy)を受容し、ドナー3769由来の400万個のPBMCを移植した。マウスを1週間に1回採血し、hCD45+ 細胞および循環hIgGレベルに関して分析した。
【0199】
全ての照射線量は、hCD45+ 細胞およびIgGレベルが経時的に増大したことを明らかに示した。
図16A~16Bに示されるように、照射線量が異なれば、もたらされる転帰は異なる。150および200cGyの照射線量は、他の条件と比較して、14日目にヒト化を大きく増強したが、50および100cGyと比較して、免疫グロブリン生成は不十分であった。100cGyは、14日目および28日目に50cGyを超えてヒト化を増強したが、免疫グロブリン生成の改善はなかったのに対して、50cGyは、試験したいかなる線量のうちでも最高の免疫グロブリンレベルを生じた。より高い照射線量は、増大したhCD45細胞を最初に生じたが、それはまた、ピークhIgGレベルが得られ得る前に、動物が人道的な安楽死エンドポイント基準を満たすことになった。逆に、照射されていないマウスがより長い寿命を有し、hCD45の拡大を遅らせたが、照射されていないhIgGレベルは、匹敵するヒト化レベルが観察されるとしても、50~100cGy群のものに達しなかった。
図16A~16Bに示されるように、照射ありでは、免疫グロブリンレベルは、時間を経て同じhCD45+ 細胞レベルに達した非ヒト化マウス(SD 48で2000μg/ml)を超えて増強された(50cGyに関しては28日目で3500μg/ml; 100cGyに関しては21日目で2500μg/ml)(100cGyに関してはSD21、50cGyに関してはSD28および0cGyに関してはSD 48)。これらの結果は、照射がヒト化とは別個に、免疫グロブリン生成を増強することを明らかに示す。
【0200】
本明細書で開示される全ての参考文献、特許および特許出願は、各々が引用される主題に関して参考として援用され、これらは、いくらかの場合には、文書の全体を包含し得る。
【0201】
不定冠詞「a(1つの、ある)」および「an(1つの、ある)」とは、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、逆に明らかに示されなければ、「少なくとも1」を意味することが理解されるべきである。
【0202】
逆に明らかに示されなければ、1より多くの工程または行為を含む本明細書で特許請求される任意の方法において、上記方法の工程または行為の順序は、上記方法の工程または行為が記載される順序に必ずしも限定されないことがまた、理解されるべきである。
【0203】
特許請求の範囲、および上記の明細書において、全ての移行句(例えば、「含む(comprising)」、「含む、蛾挙げられる(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含む、含有する(containing)」、「伴う、関わる(involving)」、「保持する(holding)」、「から構成される(composed of)」など)は、制限がない、すなわち、が挙げられるが、これらに限定されない、を意味すると理解されるべきである。移行句「からなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)のみが、それぞれ、米国特許庁特許審査手続きマニュアル2111.03節に示されるように、閉鎖的または半閉鎖的な移行句であるものとする。
【0204】
数値の前にある用語「約(about)」および「実質的に(substantially)」は、その記載される数値の±10%を意味する。
【0205】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上端と下端との間の各値は、本明細書で具体的に企図されかつ記載される。
【国際調査報告】