(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20241226BHJP
A61K 8/04 20060101ALI20241226BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20241226BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/04
A61Q1/02
A61K8/89
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538049
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2024-08-21
(86)【国際出願番号】 IB2021000962
(87)【国際公開番号】W WO2023118924
(87)【国際公開日】2023-06-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 健太
(72)【発明者】
【氏名】郷原 英志
(72)【発明者】
【氏名】端 晃一
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB222
4C083AB231
4C083AB232
4C083AB241
4C083AB242
4C083AB441
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC332
4C083AC422
4C083AC662
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD16
4C083AD242
4C083BB11
4C083CC11
4C083DD32
4C083EE01
4C083EE05
(57)【要約】
本発明は、炭素数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された(A1)無機顔料を含む、(A)疎水化処理顔料、(B)シリコンフィルム形成ポリマー、(C)シリコーン系界面活性剤、(D)有機変性粘土鉱物、任意に(E1)不揮発性油を含む、(E)油、及び(F)水性媒体を含有する、油中水型乳化化粧料組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油中水型乳化化粧料組成物であって、
炭素数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された(A1)無機顔料を含む、(A)疎水化処理顔料、
(B)シリコンフィルム形成ポリマー、
(C)シリコーン系界面活性剤、
(D)有機変性粘土鉱物、
任意に(E1)不揮発性油を含む、(E)油、及び
(F)水性媒体を含有する、
油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項2】
(A1)成分が、いずれもが、炭素数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された、二酸化チタン及び酸化鉄を含む、請求項1に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項3】
(B)成分が、MQ樹脂、MQ-T樹脂、及びこれらの混合物などのシリコーン樹脂、並びに(アクリレート/ポリジメチルシロキサン)共重合体及び(アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレート)共重合体などのシリコーン(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる、請求項1又は2に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項4】
(C)成分が、メチル基の一部が親水性基、任意に非親水性基で置換されたポリジメチルシロキサンであり、前記親水性基はポリエーテル含有基を含み、前記非親水性基はポリジメチルシロキサン含有基及びC
12~C
22アルキル基の少なくとも一つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項5】
(C)成分の含有量は、前記油中水型乳化化粧料組成物の全質量基準で、1質量%を超える、請求項1~4のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項6】
(A1)成分の含有量は、前記油中水型乳化化粧料組成物の全質量基準で、3質量%を超える、請求項1~5のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項7】
(E1)成分の含有量は、前記油中水型乳化化粧料組成物の全質量基準で、10質量%未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項8】
(C)成分及び(E1)成分の合計質量に対する(B)成分の質量の比率は、0.1~9.0である、請求項1~7のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項9】
(B)成分が、MQ樹脂、MQ-T樹脂、及びこれらの混合物からなる群から選ばれ、(C)成分が、PEG/PPG-18/18ジメチコン及びPEG/PPG-19/19ジメチコンからなる群から選ばれ、(A1)成分、(C)成分、及び(E1)成分の含有量は、それぞれ、前記油中水型乳化化粧料組成物の全質量基準で、3質量%超、1質量%超、及び4質量%未満であり、
(C)成分及び(E1)成分の合計質量に対する(B)成分の質量の比率は、0.4~9.0である、請求項1~8のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項10】
(B)成分が、MQ樹脂、(アクリレート/ジメチコン)共重合体、及び(アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレート)共重合体からなる群から選ばれ、(C)成分が、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、及びラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンからなる群から選ばれ、(A1)成分、(C)成分、及び(E1)成分の含有量は、それぞれ、前記油中水型乳化化粧料組成物の全質量基準で、3質量%超、2質量%超、及び10質量%未満であり
(C)成分及び(E1)成分の合計質量に対する(B)成分の質量の比率は、0.1~2.0である、請求項1~8のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項11】
シリカ、セルロース及びデンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種の粉体成分から構成される(G)球状粉体をさらに含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項12】
(B)成分が、MQ樹脂、MQ-T樹脂、及びそれらの混合物からなる群から選ばれ、(C)成分、がPEG/PPG-18/18ジメチコン及びPEG/PPG-19/19ジメチコンからなる群から選ばれ、(E)成分が、(E1)不揮発性油及び(E2)揮発性油を含み、(F)成分が、水及び炭素原子数2~8のポリオールを含む、請求項1に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項13】
(B)成分が、MQ樹脂、(アクリレート/ジメチコン)共重合体、及び(アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレート)共重合体からなる群から選ばれ、(C)成分が、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、及びラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンからなる群から選ばれ、(E)成分が、(E1)不揮発性油及び(E2)揮発性油を含み、(F)成分が、水及び炭素原子数2~3のモノアルコールを含み、シリカ、セルロース及びデンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種の粉体成分から構成される(G)球状粉体を含む、請求項1に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項14】
ケラチン物質の手入れ及び/又はメイキャップのための美容方法であって、請求項1~13のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物をケラチン物質、特に皮膚に塗布することを含む、美容方法。
【請求項15】
前記油中水型乳化化粧料組成物が、前記塗布されたケラチン物質に対して、初期的な色合いの持続性及び非転写性を付与する、請求項14に記載の美容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションは、肌の凹凸や毛穴を目立たないようにして、肌を美しく見せるために用いられ、パウダー、リキッド、クリームなど種々の形態で提供される。近年、リキッドファンデーションに関し、化粧の持続性が重要視されている。より具体的には、メイキャップ層が長持ちするだけでなく、初期的な色合いが一日中変化しないことが求められている。すなわち、初期的な色合いの持続性は、化粧の持続性や高い被覆効果などと同様に重要であると考えられる。
【0003】
現在、COVID-19のパンデミックの流行の最中、マスクを着用する習慣が一般的かつ不可欠なものとなっている。このような状況を踏まえ、ファンデーションについては、上記の特性に加え、マスクに転写しない特性(非転写性)を有することが重要となってきた。しかしながら、従来、化粧をした状態でマスクを着用することは稀であり、また着用したとしても短時間に限られていたことから、ファンデーションの非転写性が問題となることは殆どなく、そのための組成の設計も行われてこなかった。
【0004】
ファンデーションは、通常、着色及び/又は紫外線からの保護の目的で、無機粉末が添加されている。しかしながら、無機粉末単独では油分に対する分散性が不十分であり、製品の安定性(特に乳化状態での安定性)に問題が生じることが多いため、表面疎水化剤を表面に使用する公知の技術が適用される。疎水化剤としては、各種のものが用いられるが、例えば、特開2011-213662号公報に開示された、デキストリンと脂肪酸とのエステル化物であって、デキストリンのグルコースの平均重合度が3~150であり、脂肪酸が炭素数12~22の分岐飽和脂肪酸を所定量含有し、グルコース単位当たりの脂肪酸の置換度が1.0~3.0のデキストリン脂肪酸エステルで粉体の表面を被覆処理された表面処理粉体が挙げられる。特開2012-116822号公報には、デキストリンと脂肪酸とのエステル化物が開示されている。このデキストリンと脂肪酸とのエステル化物において、デキストリンのグルコースの平均重合度が3~150であり、脂肪酸が炭素数4~26の分岐飽和脂肪酸の1種又は2種以上を全脂肪酸に対して50mol%より多く100mol%以下、及び、炭素数2~22の直鎖飽和脂肪酸、炭素数6~30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸及び炭素数6~30の環状の飽和又は不飽和脂肪酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を全脂肪酸に対して0mol%以上50mol%未満を含有し、グルコース単位当たりの脂肪酸の置換度が1.0~3.0である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、初期的な色合いが継続するのみならず、肌に触れる素材(特にマスク)に対する非転写性が優れた、化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、炭素数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された(A1)無機顔料を含む、(A)疎水化処理顔料、(B)シリコンフィルム形成ポリマー、(C)シリコーン系界面活性剤、(D)有機変性粘土鉱物、任意に(E1)不揮発性油を含む(E)油、及び(F)水性媒体を含有する、油中水型乳化化粧料組成物を提供する。
【0007】
本発明の化粧料組成物は、初期的な色合いが継続するのみならず、肌に触れる素材に対する非転写性が優れている。本発明の化粧料組成物は、メイキャップの持続性及び被覆効果に優れており、化粧料組成物を皮膚に塗布した場合、薄い仕上がりが可能となる。化粧料組成物自体の安定性にも優れる。
【0008】
特定の理論に拘束されるものではないが、従来の油中水型乳化ファンデーションにおいて、初期的な色合いが継続しないのは、肌の上に形成されたメイキャップ層に含まれる揮発性油が経時的に揮発し、このために、初期的には分散していた無機顔料が徐々に凝集することによると考えられる。本発明によれば、(A1)成分を含む(A)成分を使用し、(B)~(F)成分と併用したことにより、無機顔料の凝集が防止されるものと考えられる。
【0009】
また、従来の油中水型(W/O型)の組成では、メイキャップ層の粘着性と膜厚の大きさから、マスクなどに対する非転写性を向上させることができなかったが、(A)~(F)成分を含む組成により、メイキャップ層の粘着性が低減し、(A1)成分等の働きにより、メイキャップ層を均一且つ薄膜にすることが可能となり、これらの要因が総合的に作用し、マスクなどに対する非転写性が大幅に改善される。
【0010】
(A1)成分は、いずれもが、炭素数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された二酸化チタン及び酸化鉄を含むことが好ましい。炭素数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された無機顔料として、二酸化チタンと酸化鉄を用いることにより、特には、酸化鉄として黄色、赤色、黒色の3種を用い、これと二酸化チタンとを組み合わせることにより、様々な色のメイキャップ層が可能になる。
【0011】
(B)成分は、MQ樹脂、MQ-T樹脂、及びこれらの混合物等のシリコーン樹脂、並びに(アクリレート/ポリジメチルシロキサン)共重合体、及び(アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレート)共重合体等のシリコーン(メタ)アクリレートからなる群から選ばれることが好ましい。このような(B)成分を使用することにより、初期的な色合いの継続性と非転写性をさらに向上させることができる。また、メイキャップの持続性及び被覆効果を著しく向上させることができる。
【0012】
上記特性を向上させることが可能なことから、(C)成分としては、メチル基の一部が親水性基、任意に非親水性基で置換されたポリジメチルシロキサンであり、親水性基はポリエーテル含有基を含み、非親水性基はポリジメチルシロキサン含有基及びC12~C22アルキル基の少なくとも一つを含むことが好ましい。メチル基の一部がポリエーテル含有基で置換されたポリジメチルシロキサン、メチル基の一部がポリエーテル含有基及びポリジメチルシロキサン含有基で置換されたポリジメチルシロキサン、メチル基の一部がポリエーテル含有基及びC12~C22アルキル基で置換されたポリジメチルシロキサン、又はメチル基の一部がポリエーテル含有基、ポリジメチルシロキサン含有基及びC12~C22アルキル基で置換されたポリジメチルシロキサンが油中水型乳化化粧料組成物の初期的な色合いの継続性、非転写性、及び安定性の改善効果が特に高い。
【0013】
上記特性を更に向上させることが可能なことから、(C)成分、(A1)成分、(E1)成分の含有量は、それぞれ、油中水型乳化化粧料組成物の全質量基準で、1質量%超、3質量%超、10質量%未満であってもよい。
【0014】
(C)成分の含有量は、1~6質量%、1~5.5質量%、又は1~5質量%であってもよい。(A1)成分の含有量は、3~35質量%、5~30質量%、又は10~25質量%であってもよい。(E1)成分の含有量は、0.1~10.0質量%、0.5~9.5質量%、又は1.0~9.0質量%であってもよい。これらは全て、油中水型乳化化粧料組成物の全質量に基づく。
【0015】
(C)成分及び(E1)成分の合計質量に対する(B)成分の質量の比率は、0.1~9.0であることが好ましい。この比率が上記範囲内であることにより、非転写性がさらに向上し、薄い仕上がりが可能となる。(C)成分及び(E1)成分の合計質量に対する(B)成分の質量の比率は、0.15~9.0、又は0.2~9.0であってもよい。
【0016】
(B)成分がMQ樹脂、MQ-T樹脂、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる場合、(C)成分は、PEG/PPG-18/18ジメチコン及びPEG/PPG-19/19ジメチコンからなる群から選ばれることが好ましく、この場合、(A1)成分、(C)成分、及び(E1)成分の含有量は、それぞれ、油中水型乳化化粧料組成物の全質量基準で、3質量%超、1質量%超、及び4質量%未満であり、また、(C)成分及び(E1)成分の合計質量に対する(B)成分の質量の比率は0.4~9.0であることが好ましい。このような組成にすることで、初期的な色合いの継続性及び非転写性を高く保持しながら、メイキャップの持続性、被覆効果及び薄い仕上がりを高めることができ、化粧料組成物自体の安定性も良好となる。
【0017】
上記において、(A1)成分の含有量は、3~35質量%、5~30質量%、又は10~25質量%であってもよい。(C)成分の含有量は、1~4質量%、1.2~3.0質量%、又は1.5~2.5質量%であってもよい。(E1)成分の含有量は、0.1~4.0質量%、0.5~3.0質量%、又は1.0~2.0質量%であってもよい。これらは全て、油中水型乳化化粧料組成物の全質量に基づく。
【0018】
上記において、(C)成分及び(E1)成分の合計質量に対する(B)成分の質量の比率は、0.4~9.0、0.8~9.0、又は1.2~9.0であってもよい。
【0019】
(B)成分がMQ樹脂、(アクリレート/ジメチコン)共重合体、及び(アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレート)共重合体からなる群から選ばれる場合、(C)成分は、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、及び、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンからなる群から選ばれることが好ましく、この場合、(A1)成分、(C)成分、及び(E1)成分の含有量は、それぞれ、油中水型乳化化粧料組成物の全質量基準で、3質量%超、2質量%超、及び10質量%未満であり、また、(C)成分及び(E1)成分の合計質量に対する(B)成分の質量の比率は0.1~2であることが好ましい。このような組成にすることで、初期的な色合いの継続性及び非転写性を高く保持しながら、メイキャップの持続性、被覆効果及び薄い仕上がりを高めることができ、化粧料組成物自体の安定性も良好となる。
【0020】
上記において、(A1)成分の含有量は、3~35質量%、5~30質量%、又は10~25質量%であってもよい。(C)成分の含有量は、2.0~6.0質量%、3.0~5.0質量%、又は3.5~4.5質量%であってもよい。(E1)成分の含有量は、5~10質量%、6.0~9.5質量%、又は7.0~9.0質量%であってもよい。これらは全て、油中水型乳化化粧料組成物の全質量に基づく。
【0021】
上記において、(C)成分及び(E1)成分の合計質量に対する(B)成分の質量の比率は、0.15~2.0、又は0.2~2.0であってもよい。
【0022】
油中水型乳化化粧料組成物は、シリカ、セルロース及びデンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種の粉体成分から構成される(G)球状粉体を含有していてもよい。このような球状粉体を添加することで、初期的な色合いの継続性が高まる。
【0023】
本発明は、上記の油中水型乳化化粧料組成物において、(B)成分がMQ樹脂、MQ-T樹脂、及びそれらの混合物からなる群から選ばれ、(C)成分がPEG/PPG-18/18ジメチコン及びPEG/PPG-19/19ジメチコンからなる群から選ばれ、(E)成分が(E1)不揮発性油及び(E2)揮発性油を含み、(F)成分が水及び炭素数2~8のポリオールを含むことを提供する。この油中水型乳化化粧料組成物は、非転写性が特に優れる。
【0024】
本発明は、上記の油中水型乳化化粧料組成物において、(B)成分がMQ樹脂、(アクリレート/ジメチコン)共重合体、及び(アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレート)共重合体からなる群から選ばれ、(C)成分がPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、及びラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンからなる群から選ばれ、(E)成分が(E1)不揮発性油及び(E2)揮発性油を含み、(F)成分が水及び炭素数2~3のモノアルコールを含み、さらにシリカ、セルロース及びデンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種の粉体成分から構成される(G)球状粉体を含むことを提供する。この油中水型乳化化粧料組成物は、初期的な色合いの継続性が特に優れる。
【0025】
本発明は、ケラチン物質、特に皮膚に上記油中水型乳化化粧料組成物を塗布することを含む、ケラチン物質の手入れ及び/又はメイキャップのための美容方法を提供する。
【0026】
本発明は、上記油中水型乳化化粧料組成物が、塗布されたケラチン物質に対して初期的な色合いの持続性及び非転写性を付与する、美容方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、初期的な色合いが継続するのみならず、肌に触れる素材(特にマスク)に対する非転写性が優れた、化粧料組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施形態に係る化粧料組成物は、(A)疎水化処理顔料を含み、(A)成分は、炭素原子数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された(A1)無機顔料を含む。炭素数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンは(A1)成分用の疎水化剤である。
【0029】
(A)成分用の無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、ベンガラ、紺青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物、マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体、カーボンブラックが挙げられる。二酸化チタンは白色顔料として知られ、酸化鉄は赤色、黄色又は黒色の有色顔料として知られている。これらを適宜組合せることにより、所望の色調に調整することができる。上述した金属酸化物は紫外線散乱剤として知られている。金属酸化物の粒子径が100~500nmであると紫外線散乱効果が高まる。金属酸化物の微粒子粉体(粒子径が100nm以下)を用いることもでき、この微粒子粉体は凝集体又は凝縮体を形成していてよい。
【0030】
炭素数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンとしては、イソパルミチン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリン、イソアラキン酸デキストリン、18-メチルエイコサン酸デキストリン等が例示される。このうち、イソステアリン酸デキストリンが好ましい。炭素数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンとしては、炭素数16、18、20、又は22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンが好ましく、(A)成分は、イソステアリン酸デキストリンによって表面処理された二酸化チタン又は酸化鉄を含むことが特に好ましい。
【0031】
炭素数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンは、例えば、下記一般式(Ia)又は(Ib)で表すことができる。下記一般式中の「A」は、炭素数16~22の脂肪酸からOH基を除いた残基であり、この残基の少なくとも一部又は全部は、炭素数16~22の分岐脂肪酸からOH基を除いた残基である。「A」の部分は、水素原子、又は炭素数16~22の脂肪酸以外の脂肪酸からOH基を除いた残基であってもよい。なお、*は結合手を示す。
【化1】
【0032】
一般式(Ia)又は(Ib)において、炭素数16~22の分岐脂肪酸以外の脂肪酸は、例えば、酢酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸等の炭素数2~22の直鎖飽和脂肪酸;イソ酪酸、イソ吉草酸、2-エチル酪酸、エチルメチル酢酸、イソヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸等の炭素数4~14の分岐飽和脂肪酸等であってもよい。炭素数16~22の分岐脂肪酸以外の脂肪酸は、シス-4-デセン(オブツシル)酸、9-デセン(カプロレイン)酸、シス-4-ドデセン(リンデル)酸、シス-4-テトラデセン(ツズ)酸、シス-5-テトラデセン(フィセテリン)酸、シス-9-テトラデセン(ミリストレイン)酸、シス-6-ヘキサデセン酸、シス-9-ヘキサデセン(パルミトレイン)酸、シス-9-オクタデセン(オレイン)酸、トランス-9-オクタデセン酸(エライジン酸)、シス-11-オクタデセン(アスクレピン)酸、シス-11-エイコセン(ゴンドレイン)酸、シス-17-ヘキサコセン(キシメン)酸、シス-21-トリアコンテン(ルメクエン)酸等のモノエン不飽和脂肪酸;ソルビン酸、リノール酸、ヒラゴ酸、プニカ酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、モロクチ酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、EPA、イワシ酸、DHA、ニシン酸、ステアロール酸、クレペニン酸、キシメニン酸等のポリエン不飽和脂肪酸等の炭素数6~30の直鎖又は分岐の不飽和脂肪酸とすることもできる。炭素数16~22の分岐脂肪酸以外の脂肪酸は、9,10-メチレン-9-オクタデセン酸、アレプリル酸、アレプリン酸、ゴルリン酸、α-シクロペンチル酸、α-シクロヘキシル酸、α-シクロペンチルエチル酸、α-シクロヘキシルメチル酸、ω-シクロヘキシル酸、5(6)-カルボキシ-4-ヘキシル-2-シクロヘキセン-1-オクタン酸、マルバリン酸、ステルクリン酸、ヒドノカルピン酸、ショールムーグリン酸等の、環状構造を基本骨格の少なくとも一部に有する炭素数6~30の飽和又は不飽和脂肪酸とすることもできる。
【0033】
(A)成分は、(A1)成分以外の(A2)疎水化処理顔料を含んでいてもよい。(A2)成分としては、無機顔料が、(A1)成分用に用いられたもの以外の疎水化剤によって表面処理された疎水化処理顔料であり得る。他の疎水化剤は、シリコーン化合物、フッ素化合物、油剤、油脂、リン脂質、アミノ酸、高級アルコール、ワックス、高分子及び樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であり得る。
【0034】
(A)成分のうち(A1)成分の含有量は、(A)成分の全質量基準で、80~100質量%、90~100質量%、又は95~100質量%にすることができ、100質量%であってもよい。(A)成分は、化粧料組成物の全質量基準で、1~40質量%が好ましく、3~35質量%がより好ましく、5~30質量%が更に好ましい。(A)成分及び(A1)成分の含有量が上記範囲内であると、初期的な色合いの継続性、メイキャップの持続性及び被覆効果のみならず、化粧料組成物を皮膚に塗布した場合、薄い仕上がりが可能となり、化粧料組成物自体の安定性が優れるようになる。(A1)成分は、化粧料組成物の全質量基準で、3質量%以上にすることができ、3~35質量%、5~30質量%、又は10~25質量%であってもよい。
【0035】
実施形態に係る化粧料組成物は、(B)シリコンフィルム形成ポリマーを含む。(B)成分は、シロキサン構造等のケイ素を有するポリマーであり、皮膚に塗った後、フィルムを形成する。(B)成分が、皮膚上に薄膜を形成することにより、(A)成分や(G)成分等の粉体成分が皮膚上に留まりやすくなる。(B)成分がしっかりとした被膜を形成することにより、被覆効果及び持続性がより高まり、化粧崩れしにくくなる。粉体がフィルム内に留まりやすいため、マスクや衣服への化粧移りしにくい。(B)成分としては、例えば、シリコーン樹脂、アクリレート/シリコン共重合体等が挙げられる。
【0036】
シリコーン樹脂としては、例えば、フッ素変性シリコーン樹脂(例えば、トリフルオロアルキルジメチルトリメチルシロキシシリケート)、MQ樹脂(例えば、トリメチルシロキシシリケート)、MT樹脂(例えば、ポリメチルシルセスキオキサン)、MQ-T樹脂(例えば、トリメチルシロキシシリケートとポリメチルシルセスキオキサンの混合又は反応物、又はトリメチルシロキシシリケートとジメチコノールとの混合又は反応物)、シリコーン(メタ)アクリレート(例えば、アクリレート/ジメチコン共重合体、アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレート共重合体等のカルボシロキサンデンドリマー構造を有するビニル重合体)が挙げられる。
【0037】
シリコーン樹脂は、揮発性油に溶解した状態で取り扱われることがあり、この場合には揮発性油とともに利用してもよい。このような揮発性油としては、メチルトリメチコン、ジメチコン、イソドデカン、酢酸ブチルが使用される。シリコーン樹脂に伴って導入され得る揮発性油の量は、後述する(E2)揮発性油の量として加算される。このようなシリコーン樹脂としては、例えば、KF-7312T(商品名、信越化学工業(株)製)、KF-549(商品名、信越化学工業(株)製)、DOWSIL FA4004 ID Silicone Acrylate(ダウケミカル社製)が挙げられる。また、溶媒希釈されておらず、固形純分上のシリコーン樹脂を使用することもできる。例えば、BELSIL PMS MK(商品名、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)が販売されており、これらを適宜溶媒に溶解してもよい。
【0038】
(B)成分の含有量は、化粧料組成物の全質量基準で、1~12質量%、1.5~10質量%、又は2~8質量%であってよい。
【0039】
実施形態に係る化粧料組成物は、(C)シリコーン系界面活性剤含む。(C)成分は、ポリシロキサン骨格に親水性基を導入した化学構造を有する。
【0040】
(C)成分としては、メチル基の一部が親水性基、任意に非親水性基で置換されたポリジメチルシロキサンであり、親水性基はポリエーテル含有基を含み、非親水性基はポリジメチルシロキサン含有基及びC12~C22アルキル基の少なくとも一つを含むことが好ましい。ポリエーテル含有基としては、ポリオキシエチレン骨格、ポリオキシプロピレン骨格、又はポリオキシエチレン骨格及びポリオキシプロピレン骨格を有するものが好ましい。C12~C22アルキル基としては、C12~C18アルキル基及びC12~C16アルキル基が含まれる。
【0041】
(C)成分としては、メチル基の一部がポリエーテル含有基(例えば、PEG/PPG-18/18ジメチコン)で置換されたポリジメチルシロキサンが挙げられる。この化合物は、非転写性の向上のために特に有効である。(C)成分としては、また、メチル基の一部がポリエーテル含有基及びポリジメチルシロキサン含有基(例えば、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)で置換されたポリジメチルシロキサン、メチル基の一部がポリエーテル含有基及びC12~C22アルキル基(例えば、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン)で置換されたポリジメチルシロキサン、及びメチル基の一部がポリエーテル含有基、ポリジメチルシロキサン含有基及びC12~C22アルキル基(例えば、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)で置換されたポリジメチルシロキサンが挙げられる。この化合物は、初期的な色合いの継続性の向上のために特に有効である。
【0042】
(C)成分の含有量は、化粧料組成物の全質量基準で、1~6質量%、1~5.5質量%、又は1~5質量%であってよい。
【0043】
実施形態に係る化粧料組成物は、(D)有機変性粘土鉱物を含有している。(D)成分は、有機分子で疎水性に変性された粘土であり、増粘作用を有する。
【0044】
(D)成分に用いられる粘土としては、例えば、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ドンバッサイト、アンチゴライト、ベルチェリン、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、バーミキュライト、タルク、スチブンサイト、ヘクトライト、サポナイト、クロライト、セピオライトが挙げられ、有機分子で疎水性に変性されている。有機分子としては、例えば、第4級アンモニウム塩が挙げられ、より具体的には、塩化ジステアルジモニウム、塩化ステアラルコニウムが挙げられる。(D)成分としては、例えば、ジステアルジモニウムヘクトライト、ステアラルコニウムヘクトライトが挙げられる。
【0045】
(D)成分は、揮発性油及び/又は不揮発性油に分散した状態で取り扱われることがあり、この場合には揮発性油及び/又は不揮発性油とともに利用してもよい。(D)成分と共存する揮発性油又は不揮発性油の量はそれぞれ、後述する揮発性油又は不揮発性油の量として加算されてもよい。(D)成分と共存する揮発性油又は不揮発性油としては、以下の(E)成分で述べるものが挙げられる。(D)成分としては、BENTONE GEL ISD V等のBENTONE GELシリーズ(商品名、エレメンティス社製)が挙げられる。
【0046】
(D)成分を含有することにより、乳化状態の安定性が向上し、皮膚に塗った後の耐水性及び耐皮脂性にも優れ、皮脂等によるにじみも抑制し得る。(D)成分の含有量は、化粧料組成物の全質量基準で、0.05~2.5質量%、0.1~2.0質量%、又は0.4~1.5質量%であってよい。
【0047】
実施形態に係る化粧料組成物は、(E)油を含有しており、任意に(E1)不揮発性油を含む。(E)成分は、(E2)揮発性油のみからなってもよいが、(E1)不揮発性油及び(E2)揮発性油を含むことが好ましい。
【0048】
(E1)成分としては、環状アルキレンカーボネート(例えば、プロピレンカーボネート)、炭素数8~22の脂肪アルコール(例えば、オクチルドデカノール)、一価又は多価アルコールの脂肪酸エステル(例えば、イソプロピルミリステート、イソノニルイソノナノエート、ペンタエリスリチルテトライソステアレート、ヒマシ油)、安息香酸アルキル、脂肪族炭化水素(例えば、水素化ポリイソブテン)、液体ラノリン、オリーブ油、鉱油、スクアラン、芳香族ポリシロキサン(例えば、フェニルトリメチコン)、ポリシロキサン(例えば、粘度が2cs超、好ましくは5cs以上のジメチコン)、UV吸収剤(例えば、エチルヘキシルサリシレート)、(C)シリコーン系界面活性剤以外の界面活性剤(例えば、ポリグリセリル-3ジイソステアレート)が挙げられる。不揮発性油とは、常温(すなわち、15~25℃の範囲)及び常圧(すなわち、1気圧)環境で液体の不揮発性油成分をいう。
【0049】
(E1)成分の含有量は、化粧料組成物の全質量基準で、0.1~10.0質量%、0.5~9.5質量%、又は1.0~9.0質量%であってよい。
【0050】
(E2)成分は、常温及び常圧環境下において液状であり、徐々にガス化する気化油成分である。(E2)成分としては、例えば、シクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、オクタメチルトリシロキサン、粘度が2cs以下のジメチコン、酢酸ブチル、イソドデカン、イソヘキサデカン、石油揮発物が挙げられる。
【0051】
ジメチコンは、分子量(又は粘度)によっては沸点が高く(例えば、250℃以上)、不揮発性油として扱われる場合がある。
【0052】
(E2)成分の含有量は、化粧料組成物の全質量基準で、5~60質量%、10~50質量%、又は15~40質量%であってよい。
【0053】
(E)成分の含有量は、化粧料組成物の全質量基準で、5~70質量%、10~60質量%、又は15~50質量%であってよい。
【0054】
また、実施形態に係る化粧料組成物は、(F)水性媒体を含む。(F)成分は、(F1)水を含んでおり、(F2)ポリオール及び(F3)モノアルコールのいずれか一方又は両方を含んでいてもよい。(F)成分の含有量は、化粧料組成物の全質量基準で、20~70質量%が好ましく、30~60質量%、又は40~50質量%であってもよい。(F)成分の含有量がこの範囲にあると、よりみずみずしさが増し、より優れた心地よい感触が得られる。さらに、(F)成分の含有量がこの範囲にあることで、被覆効果及び安定性がより向上する。
【0055】
(F2)としては、例えば、炭素原子数1~8のポリオールが挙げられる。
炭素原子数1~8のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオールが挙げられる。(F1)成分の含有量は、化粧料組成物の全質量基準で、0.1~20.0質量%、0.5~10.0質量%、又は1.0~5.0質量%であってもよい。
【0056】
(F3)成分としては、例えば、炭素原子数2~3のモノアルコールが挙げられる。炭素原子数2~3のモノアルコールとしては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロパノール)が挙げられる。(F2)成分の含有量は、化粧料組成物の全質量基準で、1~25質量%、2~20質量%、又は5~15質量%であってもよい。
【0057】
実施形態に係る化粧料組成物は、(G)球状粉体を含有してもよい。(G)成分としては、シリカ、セルロース及びデンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種の粉体成分から構成される球状粉体であり、シリカは疎水性シリカが好ましい。(G)成分の含有量は、化粧料組成物の全質量基準で、1~20質量%、2~15質量%、又は5~10質量%であってよい。
【0058】
実施形態に係る化粧料組成物は、さらに、塩類などの安定剤、抗菌剤、酸化防止剤、香料、有効成分などを含んでいてもよい。
【0059】
実施形態に係る化粧料組成物は、25℃における粘度が100mPa・s以上であることが好ましく、300mPa・s以上であることがより好ましい。実施形態に係る化粧料組成物は、25℃における粘度が5000mPa・s以下であることが好ましく、3000mPa・s以下であることがより好ましい。化粧料組成物の25℃における粘度は、100~5000mPa・s、100~3000mPa・s、300~5000mPa・s、又は、300~3000mPa・sであってもよい。粘度は、内径4.5cmの容器に収容され、25℃に保持された化粧品中にST22-4V-40スピンドルを挿入し、回転数100rpmで3分間測定することにより、回転粘度計(例えば、アントンパールGmbH社製のレオラボ(登録商標))を用いて測定する。
【0060】
実施形態に係る化粧料組成物は、例えば、以下の工程で製造可能である。すなわち、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E1)成分、(E2)成分及び(G)成分を組み合わせて混合物を得る。これとは別に、(F1)成分、(F2)成分及び(F3)成分を組み合わせて混合物を得る。最終的に両混合物を組み合わせて化粧料組成物を得る。
【0061】
化粧料組成物は、乳化ファンデーション、メイキャップベース、日焼け止め化粧品、乳化コンシーラーとして使用することができ、乳化ファンデーション、メイキャップベース、日焼け止め化粧品として使用する場合はジャー容器、チューブ容器、又はボトル容器に収容することができ、乳化コンシーラーとして使用する場合はブラシペンタイプの容器、チューブ容器、又はジャー容器に収容することができる。しかしながら、本発明はこれらの容器の形態に限定されない。例えば、化粧品を体内に含浸させ、密閉されたコンパクト容器に収容してもよい。
【実施例】
【0062】
以下、実施例により本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではないことを理解されたい。
【0063】
(実施例1~16及び比較例1~8)
表1~4に記載の組成で、以下の工程1~3に従って、油中水型乳化化粧料組成物を調製した。
工程1:(A)顔料(疎水化顔料又は非疎水化顔料)、(B)シリコンフィルム形成ポリマー、(C)シリコーン系界面活性剤、(D)有機変性粘土鉱物、(E1)不揮発性油、(E2)揮発性油、(G)球状粉体を室温にて、ホモジナイザーを用いて混合した。
工程2:(F)水性媒体を室温にて、ホモジナイザーを用いて混合した。
工程3:工程2で得られた混合物を工程1で得られた混合物に加えて、ホモジナイザーを用いて乳化させた。
【0064】
また以下に記載の方法で評価を行い、結果を表5~8に示した。
【表1】
【0065】
【0066】
【0067】
[初期的な色合いの継続性、マスクへの非転写性、メイキャップの持続性、被覆効果及び薄い仕上がり]
化粧品専門評価パネル10人(25~55歳)の皮膚に、実施例及び比較例の油中水型乳化化粧料組成物を塗布した際の、シミと毛穴の高い被覆効果、及びフィルムの薄さについて、以下の基準にしたがって評価した。メイキャップの持続性については、塗布してから4時間及び8時間後の状態を、以下の基準にしたがって評価した。初期的な色合いの持続性については、前腕内側に3cm四方の面積で化粧料組成物を適量塗布し、塗布してから2時間及び4時間後に隣接する部位に同一面積で化粧料組成物を塗布し目視で色差を判別し、以下の基準にしたがって評価した。マスクへの非転写性については、塗布した状態でサージカルマスクを着用してから4時間及び8時間後の状態を、以下の基準にしたがって評価した。「シミ」とは、肌の表面又は皮膚の内部に存在するメラニン等の色素が沈着することにより、周囲と比べて暗色を呈する部分である。この試験では、朝、皮膚に塗布した化粧料組成物について、夕方の時点での状態を評価することを想定した。
【0068】
[初期的な色合いの持続性に関する評価基準]
A:非常に優れる(例:4時間経過しても塗布初期と比較して色が変化していない。)
B:優れる(例:2時間後には塗布初期と比較して色が変化していないが、4時間後には1~2人で色が変化している。)
C:やや優れる(例:2時間後には塗布初期と比較して色が変化していないが、4時間後には3~5人で色が変化している。)
D:やや劣る(例:2時間後には1~2人で色が変化している。)
E:劣る(例:2時間後には3~5人で色が変化している。)
F:非常に劣る(例:2時間後には6~10人で色が変化している。)
【0069】
[マスクへの非転写性に関する評価基準]
A:非常に優れる(例:8時間経過してもマスクへの化粧料組成物の転移がほとんどない。)
B:優れる(例:4時間後にはマスクへの化粧料組成物の転移がほとんどないが、8時間後には1~2人でマスクへの化粧料組成物の転移が見られる。)
C:やや優れる(例:4時間後にはマスクへの化粧料組成物の転移がほとんどないが、8時間後には3~5人でマスクへの化粧料組成物の転移が見られる。)
D:やや劣る(例:4時間後には1~2人でマスクへの化粧料組成物の転移が見られる。)
E:劣る(例:4時間後には3~5人でマスクへの化粧料組成物の転移が見られる。)
F:非常に劣る(例:4時間後には6~10人でマスクへの化粧料組成物の転移が見られる。)
【0070】
[メイキャップの持続性に関する評価基準]
A:非常に優れる(例:8時間経過しても化粧崩れしない。)
B:優れる(例:4時間後には化粧崩れしないが、8時間後には1~2人が化粧崩れする。)
C:やや優れる(例:4時間後には化粧崩れしないが、8時間後には3~5人が化粧崩れする。)
D:やや劣る(例:4時間後には1~2人が化粧崩れする。)
E:劣る(例:4時間後には3~5人が化粧崩れする。)
F:非常に劣る(例:4時間後には6~10人が化粧崩れする。)
【0071】
[被覆効果に関する評価基準]
A:非常に優れる(例:シミと毛穴が完全に隠蔽されている。)
B:優れる(例:シミは視認できないが、1~2人は毛穴が視認できる。)
C:やや優れる(例:シミは視認できないが、3~5人は毛穴が視認できる。)
D:やや劣る(例:1~2人はシミ及び毛穴が視認できる。)
E:劣る(例:3~5人はシミ及び毛穴が視認できる。)
F:非常に劣る(例:6~10人はシミ及び毛穴が視認できる。)
【0072】
[薄い仕上がりに関する評価基準]
A:非常に優れる(例:薄い化粧膜が形成され、全く違和感がない。)
B:優れる(例:評価パネル1~2人が化粧膜の厚みを感じるが、違和感はない。)
C:やや優れる(例:評価パネル1~2人が化粧膜の厚みにより不快感を感じる。)
D:やや劣る(例:評価パネル3~5人が化粧膜の厚みにより不快感がある。)
E:劣る(例:評価パネル6~8人が化粧膜の厚みにより不快感がある。)
F:非常に劣る(例:評価パネル9又は10人が化粧膜の厚みにより不快感がある。)
【0073】
[安定性の評価]
調製した実施例及び比較例の油中水型乳化化粧料組成物を透明容器に収容し、蓋をして密閉したうえで、50℃で1か月間保管した。また、対照には、同様に、室温で1か月間保管した油中水型乳化化粧料組成物を使用した。油中水型乳化化粧料組成物の外観を目視で観察し、以下に示すケーキング、粉体の凝集の程度を観察した。これらのいずれかが観察された場合は「F(不可)」と判定し、対照との差がない場合は「A(可)」と判定した。
ケーキング:手で10回振っても容器の中に固まった顔料が沈殿する。
粉体の凝集:手で10回振った後でも、顔料の分散が不均一であることにより色ムラが見られる。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【手続補正書】
【提出日】2024-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油中水型乳化化粧料組成物であって、
炭素数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された(A1)無機顔料を含む、(A)疎水化処理顔料、
(B)シリコンフィルム形成ポリマー、
(C)シリコーン系界面活性剤、
(D)有機変性粘土鉱物、
(E1)不揮発性油を含
んでいてもよい、(E)油、及び
、
(F)水性媒体を含有する、
油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項2】
(A1)成分が
、炭素数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理され
た二酸化チタン
、及び
炭素数16~22の分岐脂肪酸でエステル化されたデキストリンで処理された酸化鉄を含む、請求項1に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項3】
(B)成分が、MQ樹脂、MQ-T樹脂、及びこれらの混合物
が含まれるシリコーン樹脂、並びに(アクリレート/ポリジメチルシロキサン)共重合体及び(アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレート)共重合体
が含まれるシリコーン(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる、請求項1又は2に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項4】
(C)成分が、メチル基の一部が
、親水性基
で置換され非親水性基で置換され
ていてもよいポリジメチルシロキサンであり、前記親水性基はポリエーテル含有基を含み、前記非親水性基はポリジメチルシロキサン含有基及びC
12~C
22アルキル基の少なくとも一つを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項5】
(C)成分の含有量は、前記油中水型乳化化粧料組成物の全質量基準で、1質量%を超える、請求項1~4のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項6】
(A1)成分の含有量は、前記油中水型乳化化粧料組成物の全質量基準で、3質量%を超える、請求項1~5のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項7】
(E1)成分の含有量は、前記油中水型乳化化粧料組成物の全質量基準で、10質量%未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項8】
(C)成分及び(E1)成分の合計質量に対する(B)成分の質量の比率は、0.1~9.0である、請求項1~7のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項9】
(B)成分が、MQ樹脂、MQ-T樹脂、及びこれらの混合物からなる群から選ばれ、(C)成分が、PEG/PPG-18/18ジメチコン及びPEG/PPG-19/19ジメチコンからなる群から選ばれ、(A1)成分、(C)成分、及び(E1)成分の含有量は、それぞれ、前記油中水型乳化化粧料組成物の全質量基準で、3質量%超、1質量%超、及び4質量%未満であり、
(C)成分及び(E1)成分の合計質量に対する(B)成分の質量の比率は、0.4~9.0である、請求項1~8のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項10】
(B)成分が、MQ樹脂、(アクリレート/ジメチコン)共重合体、及び(アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレート)共重合体からなる群から選ばれ、(C)成分が、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、及びラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンからなる群から選ばれ、(A1)成分、(C)成分、及び(E1)成分の含有量は、それぞれ、前記油中水型乳化化粧料組成物の全質量基準で、3質量%超、2質量%超、及び10質量%未満であり
、
(C)成分及び(E1)成分の合計質量に対する(B)成分の質量の比率は、0.1~2.0である、請求項1~8のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項11】
シリカ、セルロース及びデンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種の粉体成分から構成される(G)球状粉体をさらに含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項12】
(B)成分が、MQ樹脂、MQ-T樹脂、及びそれらの混合物からなる群から選ばれ、(C)成分、がPEG/PPG-18/18ジメチコン及びPEG/PPG-19/19ジメチコンからなる群から選ばれ、(E)成分が、(E1)不揮発性油及び(E2)揮発性油を含み、(F)成分が、水及び炭素原子数2~8のポリオールを含む、請求項1に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項13】
(B)成分が、MQ樹脂、(アクリレート/ジメチコン)共重合体、及び(アクリレート/ポリトリメチルシロキシメタクリレート)共重合体からなる群から選ばれ、(C)成分が、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、及びラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンからなる群から選ばれ、(E)成分が、(E1)不揮発性油及び(E2)揮発性油を含み、(F)成分が、水及び炭素原子数2~3のモノアルコールを含み、シリカ、セルロース及びデンプンからなる群から選ばれる少なくとも1種の粉体成分から構成される(G)球状粉体を含む、請求項1に記載の油中水型乳化化粧料組成物。
【請求項14】
ケラチン物質の手入れ及び/又はメイキャップのための美容方法であって、請求項1~13のいずれか1項に記載の油中水型乳化化粧料組成物を
、皮膚を含むケラチン物
質に塗布することを含む、美容方法。
【請求項15】
前記油中水型乳化化粧料組成物が、前記塗布されたケラチン物質に対して、初期的な色合いの持続性及び非転写性を付与する、請求項14に記載の美容方法。
【国際調査報告】