(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】排ガスセンサを加熱するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/409 20060101AFI20241226BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G01N27/409 100
G01N27/416 321
G01N27/416 331
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538060
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2022082561
(87)【国際公開番号】W WO2023117237
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】102021214880.8
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュヴェアツレ
【テーマコード(参考)】
2G004
【Fターム(参考)】
2G004BB04
2G004BJ03
2G004BL08
2G004ZA04
(57)【要約】
少なくとも1つの加熱素子を含む排ガスセンサを加熱するための方法が提案される。本方法は、以下のステップ、すなわち、a)排ガスセンサのエネルギモデルを提供するステップであって、エネルギモデルは、加熱素子の実効ヒータ電圧と加熱素子のヒータ抵抗とを介してエネルギ入力を記述する、ステップと、b)エネルギ閾値を決定するステップと、c)エネルギモデルを用いてエネルギ入力を連続的に計算するステップであって、これによって、計算されたエネルギ入力が得られる、ステップと、d)計算されたエネルギ入力がエネルギ閾値に到達するまで、加熱素子を用いて排ガスセンサを加熱するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの加熱素子を含む排ガスセンサを加熱するための方法であって、
前記方法は、以下のステップ、すなわち、
a)前記排ガスセンサのエネルギモデルを提供するステップであって、前記エネルギモデルは、前記加熱素子の実効ヒータ電圧と前記加熱素子のヒータ抵抗とを介してエネルギ入力を記述する、ステップと、
b)エネルギ閾値を決定するステップと、
c)前記エネルギモデルを用いて前記エネルギ入力を連続的に計算するステップであって、これによって、計算されたエネルギ入力が得られる、ステップと、
d)前記計算されたエネルギ入力が前記エネルギ閾値に到達するまで、前記加熱素子を用いて前記排ガスセンサを加熱するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、コンピュータ実装された方法である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法ステップa)乃至d)は、コンピュータプログラムがコンピュータ上又はコンピュータネットワーク上で実行された場合に当該コンピュータプログラムによって実施され、
前記コンピュータプログラムが動作すると直ちに、ステップc)が開始される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギモデルは、
排ガスと、前記排ガスセンサのセラミック素子及び/又は前記排ガスセンサのハウジングとの間の対流的なエネルギ交換、
前記排ガスセンサの前記セラミック素子と前記排ガスセンサの前記ハウジングとの間の伝導的なエネルギ交換、
前記排ガスセンサの前記ハウジングと前記排ガスセンサの外部環境との間の伝導的なエネルギ交換、
前記排ガスセンサの前記セラミック素子と前記排ガスセンサの前記ハウジングとの間の熱放射、
前記排ガスセンサの前記セラミック素子と前記排ガスセンサの保護管との間の熱放射
からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを考慮する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップd)において、前記排ガスセンサは、前記加熱素子の最大限に許容される実効ヒータ電圧によって加熱される、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップd)の後に、前記加熱素子が、閉ループ制御されて動作させられる、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの排ガスセンサ及び少なくとも1つの制御装置を含むシステムであって、
前記制御装置は、少なくとも1つのプロセッサを含み、
前記制御装置は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法による方法ステップを実施するために構成されている、
システム。
【請求項8】
前記排ガスセンサは、窒素酸化物センサ、粒子センサ、ラムダプローブ、特に広帯域ラムダプローブ、二値型のジャンププローブからなる群から選択されている、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
コンピュータ上又はコンピュータネットワーク上で実行された場合に、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法を実施するために構成されているコンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータ又はコンピュータネットワークの作業メモリ及び/又はメインメモリにロードされた後に、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法を実施するために構成されたデータ構造が保存されているデータ担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
現行の排ガス規制を遵守するためには、最新の内燃機関に対する排ガス後処理のための種々異なる排ガスセンサを使用することが基本的に不可欠である。通常、窒素酸化物(NOx)センサ、粒子センサ、広帯域ラムダプローブ、及び、二値型のジャンププローブが使用され、最後に挙げたものは、基本的には、ガソリンエンジン又はガスエンジンにおいてのみ使用される。広帯域ラムダプローブのラムダ信号は、例えば、燃料量の調量、排ガス後処理の改善、及び、三元触媒効率の監視のために使用される。窒素酸化物センサに基づいて、基本的には、排ガス中の窒素酸化物濃度及び/又は酸素濃度を特定することができる。SCR触媒を使用する場合、追加的にアンモニア濃度を特定することができる。窒素酸化物吸蔵触媒の場合、これによって、基本的には、溜め込みが検出され又は吸蔵可能性の終了が検出され、その一方で、SCR触媒の場合、基本的には、尿素-水溶液の正確な調量が実施される。
【背景技術】
【0002】
上述した排ガスセンサには、基本的には、それぞれの機能を保証するために加熱素子が設けられている。粒子センサの加熱素子は、基本的には、粒子センサのセンサ素子を再生するために使用され、この場合、加熱によって煤の焼却が実施される。加熱素子は、ここでは、基本的に非定常的にのみ動作させられる。さらなるセンサは、基本的には、センサセラミックの動作温度が十分に高い場合にしか機能せず、したがって、指定された目標温度まで基本的に連続的に加熱される。
【0003】
センサの加熱フェーズは、技術的な顧客文書において定義された、電圧推移の形態の加熱プロファイルに基づいて基本的に規定される。通常、搭載電源に相当する電圧給電部そのものを閉ループ制御することは、典型的には不可能であるので、所望の実効電圧は、基本的には、デューティ比を用いてヒータ出力段によって保証される。
【0004】
センサの過熱保護を保証するために、基本的には、最大加熱時間が定義される。有効な温度信号が利用可能でない場合には、この時間が経過した後にプローブヒータを基本的にスイッチオフしなければならず、又は、有効なヒータ電圧が大幅に低減された安全な動作モードへと移行させなければならない。上述した最大時間は、基本的には、指定された加熱勾配におけるヒータ抵抗の製造のばらつき及び危機的な周囲条件を考慮し、典型的には12Vを超えるバッテリ電圧のために設計されている。しかしながら、実際に必要とされるセンサの加熱時間は、例えば、低い周囲温度、長い推進フェーズ、及び、低下したバッテリ電圧に起因して、この最大時間から大幅に逸脱する可能性がある。例えば、センサの設置位置、残留水分、及び、排ガス管内の水は、さらなる影響因子になる可能性がある。
【0005】
バッテリ電圧が低下した場合にどのようにして加熱方法を適合させるべきであるかは、基本的に公知である。この場合、バッテリ電圧に依存して加熱時間が設定され、この加熱時間t~U2は、電圧の二乗にほぼ比例して推移する。実際のセンサ温度に対するさらなる影響量は、加熱フェーズにおいては、基本的に無視される。
【0006】
加熱された排ガスセンサのいくつかの診断は、基本的には、プローブが非常に高温又は高熱である場合にのみロバストに実施可能である。これを可能にするために、エネルギモデルに基づいて診断を起動することが、基本的には、間欠的に実施される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の開示
したがって、上述した公知の装置及び方法の欠点を少なくとも十分に回避するような、排ガスセンサを加熱するための方法と、少なくとも1つの排ガスセンサ及び少なくとも1つの制御装置を含むシステムと、コンピュータプログラムと、データ担体とが提案される。特に、可変的な境界条件下及び環境条件下において、かつ、コンポーネント保護を考慮して、排ガスセンサのより迅速な加熱を可能にすることが求められている。
【0008】
本発明の意味における「排ガスセンサ」とは、基本的に、排ガスの少なくとも1つの測定量、例えば、物理的な測定量及び/又は化学的な測定量、特に光学的な測定量及び/又は電気的な測定量を検出するように構成された任意の装置であると理解されるべきである。例えば、排ガスは、特に自動車分野における内燃機関の排ガスであるものとしてよい。排ガスセンサは、特に少なくとも1つのセンサ信号、特に少なくとも1つの電気的なセンサ信号、例えば、アナログ及び/又はデジタルのセンサ信号を生成するために構成可能である。
【0009】
排ガスセンサは、特に窒素酸化物センサ、粒子センサ、ラムダプローブ、特に広帯域ラムダプローブ、二値型のジャンププローブからなる群から選択可能である。基本的に、他の実施形態も考えられる。
【0010】
排ガスセンサは、特に少なくとも1つの加熱素子を含み得る。加熱素子は、特に排ガスセンサの少なくとも1つのコンポーネントを加熱するために構成可能である。
【0011】
特に、排ガスセンサは、粒子センサであるものとしてよく、加熱素子は、排ガスセンサを再生するために構成可能であり、この場合、加熱プロセスによって粒子、特に煤の焼却が実施される。この場合、加熱素子は、特に非定常的に動作可能である。粒子センサは、特に再生の正確な制御を可能にするために、特に-40℃乃至950℃の測定範囲を備えた、組み込まれた温度測定素子を有し得る。
【0012】
さらなる排ガスセンサは、基本的には、排ガスセンサのセラミック素子の動作温度が十分に高い場合にしか機能せず、したがって、指定された目標温度まで基本的に連続的に加熱される。
【0013】
これに対して、窒素酸化物センサ及びラムダプローブの場合には、セラミック素子の温度が、基本的にセラミック素子の内部抵抗を介して特定される。内部抵抗は、基本的には、それぞれのセラミック素子及び使用されている評価ロジック、特にアナログ回路又はASICに依存して、所定の高温を超えてからようやく測定可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様においては、排ガスセンサを加熱するための方法が提案される。
【0015】
本方法は、以下に挙げるステップを含む。本方法は、記載されていないさらなるステップを含み得る。これらのステップを、特に相前後して、少なくとも部分的に繰り返して実施することができる。
【0016】
本方法は、以下のステップ、すなわち、
a)排ガスセンサのエネルギモデルを提供するステップであって、エネルギモデルは、加熱素子の実効ヒータ電圧と加熱素子のヒータ抵抗とを介してエネルギ入力を記述する、ステップと、
b)エネルギ閾値を決定するステップと、
c)エネルギモデルを用いてエネルギ入力を連続的に計算するステップであって、これによって、計算されたエネルギ入力が得られる、ステップと、
d)計算されたエネルギ入力がエネルギ閾値に到達するまで、加熱素子を用いて排ガスセンサを加熱するステップと、
を含む。
【0017】
本方法は、特にコンピュータ実装された方法であるものとしてよい。「コンピュータ実装」という用語は、特に完全に又は部分的にデータ処理手段を使用して、特に少なくとも1つのプロセッサを使用して実装されているプロセスを指し示し得る。
【0018】
上述したように、ステップa)において、エネルギモデルが提供される。エネルギモデルは、排ガスセンサの加熱状態を記述し得る。エネルギモデルは、排ガスセンサのエネルギ収支に基づき得る。
【0019】
エネルギモデルを用いて、加熱素子の実効ヒータ電圧と加熱素子のヒータ抵抗とを介してエネルギ入力を特定することができる。実効ヒータ電圧は、特に加熱素子のバッテリのバッテリ電圧であるものとしてよく、又は、バッテリ電圧を含むものとしてよい。デューティ比を用いて、実効ヒータ電圧を変化させることができる。デューティ比とは、本発明の枠内においては、パルス周期に対するパルス持続時間の比であると理解されるべきである。デューティ比は、0乃至1の値又は0%乃至100%の値を有する無次元の比率として表される。デューティ比を変化させることにより、例えば、実効ヒータ電圧の算術平均値を変化させることができる。実効ヒータ電圧は、特に、ヒータ電圧とデューティ比との積から計算可能である。
【0020】
エネルギモデルは、さらに、排ガスと、排ガスセンサのセラミック素子及び/又は排ガスセンサのハウジングとの間の対流的なエネルギ交換、排ガスセンサのセラミック素子と、排ガスセンサのハウジングとの間の伝導的なエネルギ交換、排ガスセンサのハウジングと、排ガスセンサの外部環境との間の伝導的なエネルギ交換、排ガスセンサのセラミック素子と、排ガスセンサのハウジングとの間の熱放射、排ガスセンサのセラミック素子と、排ガスセンサの保護管との間の熱放射からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを考慮することができる。基本的には、他のパラメータも考えられる。加熱フェーズの間、対流的なエネルギ交換と、伝導的なエネルギ交換と、熱放射とが、典型的にはプローブセラミックにおける熱損失の形態で作用を及ぼし、これらを、場合によっては総計の損失電力として考慮することも可能である。エネルギ収支のために使用されるエネルギ損失を、モデル化されたエネルギの関数として設定するものとしてもよく、又は、一定の値として設定するものとしてもよい。
【0021】
上述したように、ステップb)において、エネルギモデルに基づいてエネルギ閾値が決定される。「エネルギ閾値」という用語は、基本的には、特定の反応を起動するために物理的なシステムに供給しなければならないエネルギを指す。エネルギ閾値は、特に排ガスセンサの現実の動作においてWPAモデルを用いて、特に不利な周囲条件下において特定可能である。特に、エネルギ閾値は、冷間始動時においてWPAモデルを用いて特定可能である。さらに、エネルギ閾値は、冷間の周囲条件においてWPAモデルを用いて特定可能である。さらに、エネルギ閾値は、BPモデルを用いて決定可能である。BPモデル(Best Performance Model)は、基本的にエラーのないシステムである。エラーのないシステムは、特に製造誤差に応じて、指定された最小のヒータ抵抗を有し得る。
【0022】
エネルギ閾値は、特にエネルギ閾値によって温度-目標コリドーが達成されるように選択可能である。温度-目標コリドーは、境界位置のプローブによって決定可能である。WPAモデルを用いて下方温度を決定することができ、BPモデルを用いて上方温度を決定することができる。
【0023】
冷間始動という用語は、基本的には、予熱されていない自動車の始動を意味する。特に、始動時には自動車の全部のコンポーネント、特に全てのコンポーネントが、同一の温度レベルを有し得る。特に、自動車の全部の温度センサ、特に全ての温度センサが、同一の温度レベルを有し得る。特に、ラムダプローブは、冷間始動時には50℃未満の温度を有する可能性がある。
【0024】
WPAモデル(Worst Case Acceptable Model)とは、特に経年劣化したエラーのないシステムであるものとしてよく、すなわち、このシステムは、排ガス限界値を維持することがまだ辛うじて可能である。このシステムは、特に寿命の終わりにある自動車であるものとしてよい。当局での承認を得るためにエラーシステムにおいて必要とされる全ての検証測定も、基本的には、経年劣化したシステムに基づいて行われる。WPAモデルは、特に加熱素子の限界値的に高いヒータ抵抗を考慮することができる。
【0025】
上述したように、ステップc)において、加熱素子の実効ヒータ電圧と加熱素子のヒータ抵抗とを介して、エネルギ入力が連続的に計算される。「連続的に計算される」という用語は、本発明の枠内においては、制御装置(英語:electronic control unit,ECU)が動作準備完了し、かつ、ソフトウェアが実行されると直ちに、エネルギ入力が計算されることであると理解されるべきである。追加的に考慮される特別なスイッチオン条件及び/又は境界条件は、省略可能である。したがって、特別なスイッチオン条件及び/又は境界条件は存在しない。
【0026】
方法ステップa)乃至d)は、コンピュータ上又はコンピュータネットワーク上で実行された場合にコンピュータプログラムによって実施可能であり、コンピュータプログラムが動作すると直ちに、すなわち、コンピュータプログラムが実行されると直ちに、ステップc)が開始される。さらに、ステップc)は、加熱素子の動作が可能であろう時間期間内に実施可能である。しかしながら、加熱素子は、動作していなくてもよい。
【0027】
上述したように、ステップd)において、エネルギ入力がエネルギ閾値に到達するまで、加熱素子を用いて排ガスセンサが加熱される。このことから、可変的な加熱時間が得られる。加熱時間という用語は、基本的には、素子を目標温度まで加熱するために必要とされる時間期間を意味する。以下に、例示的な計算を示す:
【0028】
実効ヒータ電圧Uh,eff(単位:ボルト)は、ヒータ電圧Uh(単位:ボルト)と、デューティ比DCとの積から計算される。
Uh,eff=DC・Uh (1)
【0029】
ヒータ電流Ih(単位:アンペア)は、ヒータ電圧Uh(単位:ボルト)と、ヒータ抵抗Rh(単位:オーム)とから計算される。
Ih=Uh/Rh (2)
【0030】
加熱電力Pは、
実効ヒータ電圧U
h,eff(単位:ボルト)と、
ヒータ電流I
h(単位:アンペア)との積から計算される。
【数1】
【0031】
排ガスセンサのエネルギE(単位:ジュール)は、以下の時間積分から計算され、ここで、P
hは、加熱電力(単位:ワット)に相当し、P
hlossは、総計された損失電力(単位:ワット)に相当する。
【数2】
【0032】
目標温度における典型的な値は、
Uh=12V
Rh=5オーム
DC=0.2
Phloss=Ph=5.76W
であり得る。
【0033】
PhlossとPhとの等式化は、エネルギ収支を仮定して実施される。
【0034】
本発明のさらなる態様においては、少なくとも1つの排ガスセンサ及び少なくとも1つの制御装置を含むシステムが提案される。制御装置は、少なくとも1つのプロセッサを含む。制御装置は、上述したような方法又は以下においてさらに説明するような方法による方法ステップを実施するために構成されている。
【0035】
本発明のさらなる態様においては、コンピュータ上又はコンピュータネットワーク上で実行された場合に、上述したような方法又は以下においてさらに説明するような方法を実施するために構成されている、コンピュータプログラムが提案される。
【0036】
本発明のさらなる態様においては、プログラムコード手段を備えたコンピュータプログラムが提案される。コンピュータプログラムは、コンピュータ上又はコンピュータネットワーク上で実行された場合に、上述したような方法又は以下においてさらに説明するような方法を実施するために構成されている。
【0037】
本発明のさらなる態様においては、データ構造が保存されているデータ担体が提案される。データ構造は、コンピュータ又はコンピュータネットワークの作業メモリ及び/又はメインメモリにロードされた後に、上述したような方法又は以下においてさらに説明するような方法を実施するために構成されている。
【0038】
本発明のさらなる態様においては、コンピュータ上又はコンピュータネットワーク上で実行された場合に、上述したような方法又は以下においてさらに説明するような方法を実施するために、機械可読担体上に保存されたプログラムコード手段を備えたコンピュータプログラム製品が提案される。
【0039】
この場合、コンピュータプログラム製品とは、市販の製品としてのプログラムであると理解される。コンピュータプログラム製品は、基本的には任意の形態で、例えば、紙上又はコンピュータ可読データ担体上に存在するものとしてもよく、特にデータ伝送ネットワークを介して配布されるものとしてもよい。特に、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データ担体上及び/又はコンピュータ可読メモリ媒体上に保存可能である。本明細書において使用されるような「コンピュータ可読データ担体」及び「コンピュータ可読メモリ媒体」という用語は、特に非一時的なデータメモリに関するものであってよく、例えば、コンピュータ実行可能な命令が保存されているハードウェアデータメモリ媒体に関するものであってよい。コンピュータ可読データ担体又はコンピュータ可読メモリ媒体は、特にランダムアクセスメモリ(RAM)及び/又はリードオンリーメモリ(ROM)のようなメモリ媒体であるものとしてもよく、又は、これらを含むものとしてもよい。
【0040】
本発明のさらなる態様においては、上述したような方法又は以下においてさらに説明するような方法を実施するための、コンピュータシステム又はコンピュータネットワークによって実行可能な命令を含む、変調されたデータ信号が提案される。
【0041】
本発明に係る方法及び本発明に係る装置は、公知の方法及び装置に対して多数の利点を有する。特に、可変的な境界条件下及び環境条件下において、かつ、コンポーネント保護を考慮して、プローブのより迅速な加熱を可能にすることができる。
【0042】
基礎となるのは、基本的に、加熱状態を記述し、かつ、診断を起動するために使用することができる、排ガスセンサのエネルギモデルである。公知の加熱方法においては、基本的には、せいぜいバッテリ電圧が考慮される程度であるが、その一方で、エネルギモデリングは、特にセンサ素子のエネルギ収支に基づいている。エネルギモデルにおいてエネルギ閾値又は温度閾値を適当に規定することにより、許容される加熱時間を、環境条件に合わせて柔軟に適合させることが可能となり、閉ループ制御された動作への確実な移行を可能にすることができる。
【0043】
本発明によれば、上述した利点の他に、適用コストが基本的には大幅に削減される。さらに、必要とされるパラメータが基本的にはより少なくなり、このことにより、基本的にはソフトウェアのメモリ需要が減少する。モデルに基づいたアプローチによれば、加熱持続時間が、基本的には複数の影響パラメータの関数として記述されるが、今日の従来技術によれば、こうした複数の影響パラメータは、用途ごとに直接的に考慮されたとしても、解空間が多次元であるが故に基本的には再現され得ないであろう。
【0044】
加熱される排ガスセンサの加熱状態は、エネルギ収支を介して特定可能である。選択された状態量(エネルギ又は温度)に応じて、特に(排他的ではない)以下の影響量、すなわち、ヒータ抵抗の関数としてのエネルギ入力;排ガスと、排ガスセンサのセラミック素子、特にプローブセラミックとの間、及び、排ガスと、排ガスセンサのハウジング、特にプローブハウジングとの間の対流的なエネルギ交換;排ガスセンサのセラミック素子、特にプローブセラミックと、排ガスセンサのハウジング、特にプローブハウジングとの間、及び、排ガスセンサのハウジング、特にプローブハウジングと、環境との間の伝導的なエネルギ交換;排ガスセンサのセラミック素子、特にプローブセラミックと、排ガスセンサのハウジング、特にプローブハウジングとの間、又は、排ガスセンサのセラミック素子、特にプローブセラミックと、保護管との間の熱放射を考慮することができる。
【0045】
加熱フェーズの間、対流的なエネルギ交換と、伝導的なエネルギ交換と、熱放射とが、典型的にはプローブセラミックにおける熱損失の形態で作用を及ぼし、これらを、場合によっては総計の損失電力として考慮することも可能である。加熱フェーズにおける実効ヒータ電圧の推移は、製造者によって基本的には許容引張応力を考慮して規定される。特に用途ごとに可変的に構成されるべき加熱持続時間は、基本的には、適当なモデル化されたエネルギ閾値又は温度閾値を簡単に規定することによって実現可能である。基本的には、排ガスセンサを、最大限に許容される実効ヒータ電圧によって、規定された閾値まで動作させることができ、基本的には、閉ループ制御された動作への可能な限り迅速かつ確実な移行を実現することができる。
【0046】
本発明のさらなる任意選択肢の詳細及び特徴は、図面に概略的に図示されている好ましい実施例についての以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【発明を実施するための形態】
【0048】
発明の実施形態
図1には、広帯域ラムダプローブ110の分解図が示されている。広帯域ラムダプローブ110は、多孔質の保護層112を備えたポンプセル114を有し得る。さらに、広帯域ラムダプローブ110は、ネルンストセル116を有し得る。
図1には、中空空間118及び拡散バリア120が示されている。さらに、広帯域ラムダプローブ110は、加熱素子122を有し得る。広帯域ラムダプローブ110は、複数の基板電極124を有し得る。導電性の接続部は、
図1においては、線126によって概略的に示されている。
図1において、I
pは、ポンプ電流を表し、U
Rは、基準電圧を表し、U
Hは、ヒータ電圧を表し、Rは、電気抵抗を表す。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの加熱素子を含む排ガスセンサを加熱するための方法であって、
前記方法は、以下のステップ、すなわち、
a)前記排ガスセンサのエネルギモデルを提供するステップであって、前記エネルギモデルは、前記加熱素子の実効ヒータ電圧と前記加熱素子のヒータ抵抗とを介してエネルギ入力を記述する、ステップと、
b)エネルギ閾値を決定するステップと、
c)前記エネルギモデルを用いて前記エネルギ入力を連続的に計算するステップであって、これによって、計算されたエネルギ入力が得られる、ステップと、
d)前記計算されたエネルギ入力が前記エネルギ閾値に到達するまで、前記加熱素子を用いて前記排ガスセンサを加熱するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法は、コンピュータ実装された方法である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法ステップa)乃至d)は、コンピュータプログラムがコンピュータ上
で実行された場合に当該コンピュータプログラムによって実施され、
前記コンピュータプログラムが動作すると
、ステップc)が開始される、
請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギモデルは、
排ガスと、前記排ガスセンサのセラミック素子及び/又は前記排ガスセンサのハウジングとの間の対流的なエネルギ交換、
前記排ガスセンサの前記セラミック素子と前記排ガスセンサの前記ハウジングとの間の伝導的なエネルギ交換、
前記排ガスセンサの前記ハウジングと前記排ガスセンサの外部環境との間の伝導的なエネルギ交換、
前記排ガスセンサの前記セラミック素子と前記排ガスセンサの前記ハウジングとの間の熱放射、
前記排ガスセンサの前記セラミック素子と前記排ガスセンサの保護管との間の熱放射
からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータを考慮する、
請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
ステップd)において、前記排ガスセンサは、前記加熱素子の最大限に許容される実効ヒータ電圧によって加熱される、
請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
ステップd)の後に、前記加熱素子が、閉ループ制御されて動作させられる、
請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの排ガスセンサ及び少なくとも1つの制御装置を含むシステムであって、
前記制御装置は、少なくとも1つのプロセッサを含み、
前記制御装置は、請求項
1に記載の方法による方法ステップを実施するために構成されている、
システム。
【請求項8】
前記排ガスセンサは、窒素酸化物センサ、粒子センサ、ラムダプローブ、特に広帯域ラムダプローブ、二値型のジャンププローブからなる群から選択されている、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
コンピュータ上
で実行された場合に、
前記コンピュータに、請求項
1に記載の方法を実施
させるため
のプログラムコードを含むコンピュータプログラム。
【請求項10】
コンピュータ
の作業メモリ及び/又はメインメモリにロードされた後に、
前記コンピュータに、請求項
1に記載の方法を実施
させるため
のプログラムコードが保存されているデータ担体。
【国際調査報告】