(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】LILRBポリペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 14/705 20060101AFI20241226BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241226BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241226BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241226BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241226BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241226BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241226BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241226BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241226BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20241226BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20241226BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20241226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241226BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
C07K1/14
C12Q1/02
A61K38/16
A61P35/00
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538112
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-08-20
(86)【国際出願番号】 IL2022051378
(87)【国際公開番号】W WO2023119295
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517307924
【氏名又は名称】カール メディカル リミテッド
【住所又は居所原語表記】28 Dam HaMacbim Street, PO Box 9, ModiIn Makabim-ReUt, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タミール アミ
(72)【発明者】
【氏名】ブロッチ イタイ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA19
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4B063QR35
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4H045AA10
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4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
4H045GA00
(57)【要約】
LILRBポリペプチドを提供する。よって、配列番号3に示すHLA-Gポリペプチドに結合可能であり、且つLILRBのDIドメインの40~60位のアミノ酸の中に局在する少なくとも1つの突然変異を有するLILRBポリペプチドであって、同じ長さであり、且つ少なくとも1つの突然変異を含まない配列のLILRBポリペプチドと比較して、増加した安定性及び/又は増加したHLA-Gに対する親和性を有するLILRBポリペプチドを提供する。LILRBポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、LILRBポリペプチドを発現する宿主細胞、並びにそれを産生する方法及びその使用方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3に示すHLA-Gポリペプチドに結合可能であり、且つLILRBのD1ドメインの40~60位のアミノ酸の中に局在する少なくとも1つの突然変異を有するLILRBポリペプチドであって、同じ長さであり、且つ前記少なくとも1つの突然変異を含まない配列のLILRBポリペプチドと比較して、増加した安定性及び/又は増加した前記HLA-Gに対する親和性を有する、LILRBポリペプチド。
【請求項2】
前記LILRBは、LILRB1及びLILRB2からなる群より選択される、請求項1に記載のLILRBポリペプチド。
【請求項3】
前記LILRBは、LILRB2であり、前記少なくとも1つの突然変異は、配列番号1のS45、I49、T50及びV57からなる群より選択されるアミノ酸に対応する位置におけるものである、請求項1又は2に記載のLILRBポリペプチド。
【請求項4】
配列番号3に示すHLA-Gポリペプチドに結合可能であり、且つ配列番号1のS45、I49、T50及びV57からなる群より選択されるアミノ酸に対応する位置に少なくとも1つに突然変異を有するLILRB2ポリペプチドであって、同じ長さであり、且つ前記少なくとも1つの突然変異を含まない配列のLILRB2ポリペプチドと比較して、増加した安定性及び/又は増加した前記HLA-Gに対する親和性を有するLILRB2ポリペプチド。
【請求項5】
S45における前記突然変異は、S45R、S45N、S45Q、S45H、S45L、S45K、S45M、S45F、S45W若しくはS45Y突然変異を含み、I49における前記突然変異は、I49R、I49K、I49F若しくはI49Y突然変異を含み、T50における前記突然変異は、T50R、T50N、T50L、T50K、T50F、T50W若しくはT50Y突然変異を含み、及び/又はV57における前記突然変異は、V57R、V57K、V57F若しくはV57W突然変異を含む、請求項3又は4に記載のLILRB2ポリペプチド。
【請求項6】
S45における前記突然変異は、S45Q突然変異を含み、I49における前記突然変異は、I49K突然変異を含み、T50における前記突然変異は、T50F突然変異を含み、及び/又はV57における前記突然変異は、V57R突然変異を含む、請求項3又は4に記載のLILRB2ポリペプチド。
【請求項7】
前記少なくとも1つの突然変異は、少なくとも2つの突然変異を含む、請求項3~6のいずれか一項に記載のLILRB2ポリペプチド。
【請求項8】
前記少なくとも1つの突然変異は、前記S45における突然変異と、前記I49、T50及び/又はV57における追加の突然変異とを含む、請求項3~5のいずれか一項に記載のLILRB2ポリペプチド。
【請求項9】
S45N及びT50R突然変異、S45Y及びT50K突然変異、S45R及びI49F突然変異、S45Q及びV57R突然変異、S45Q及びI49K突然変異、又はS45Y及びT50N突然変異を含む、請求項8に記載のLILRB2ポリペプチド。
【請求項10】
配列番号1に示すLILRB2ポリペプチドと比較して、増加した前記HLA-Gに対する親和性を有する、請求項3~9のいずれか一項に記載のLILRB2ポリペプチド。
【請求項11】
配列番号1に示すLILRB2ポリペプチドと比較して、増加した安定性を有する、請求項3~10のいずれか一項に記載のLILRB2ポリペプチド。
【請求項12】
前記LILRB2ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23に示すものである、請求項3~4及び10~11のいずれか一項に記載のLILRB2ポリペプチド。
【請求項13】
前記LILRBは、LILRB1であり、前記少なくとも1つの突然変異は、配列番号102のT43、I47、T48及びV55からなる群より選択されるアミノ酸に対応する位置におけるものである、請求項1に記載のLILRBポリペプチド。
【請求項14】
T43における前記突然変異は、T43R、T43N、T43Q、T43H、T43L、T43K、T43M、T43F、T43W若しくはT43Y突然変異を含み、I47における前記突然変異は、I47R、I47K、I47F若しくはI47Y突然変異を含み、T48における前記突然変異は、T48R、T48N、T48L、T48K、T48F、T48W若しくはT48Y突然変異を含み、及び/又はV55における前記突然変異は、V55R、V55K、V55F若しくはV55W突然変異を含む、請求項13に記載のLILRB1ポリペプチド。
【請求項15】
V55における前記突然変異は、V55R突然変異を含む、請求項13に記載のLILRB1ポリペプチド。
【請求項16】
配列番号102に示すLILRB1ポリペプチドと比較して、増加した前記HLA-Gに対する親和性を有する、請求項13~15のいずれか一項に記載のLILRB1ポリペプチド。
【請求項17】
配列番号102に示すLILRB1ポリペプチドと比較して、増加した安定性を有する、請求項13~16のいずれか一項に記載のLILRB1ポリペプチド。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のLILRBポリペプチドと、前記LILRBポリペプチドに結合している非タンパク質性部分とを含む、組成物。
【請求項19】
前記非タンパク質性部分は、薬物、化学物質、小分子、ポリヌクレオチド、検出可能部分、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(スチレンcoマレイン酸無水物)(SMA)、並びにジビニルエーテル及びマレイン酸無水物コポリマー(DIVEMA)からなる群より選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記非タンパク質性部分は、二量体化部分である、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
異種タンパク質性部分に結合している請求項1~17のいずれか一項に記載のLILRBポリペプチドを含む、融合ポリペプチド。
【請求項22】
前記異種タンパク質性部分は、二量体化部分である、請求項21に記載の融合ポリペプチド。
【請求項23】
前記異種タンパク質性部分は、抗体又はその断片のFcドメインを含む、請求項21又は22に記載の融合ポリペプチド。
【請求項24】
前記Fcドメインは、IgG1又はIgG4のものである、請求項23に記載の融合ポリペプチド。
【請求項25】
前記Fcドメインは、Fc受容体へのその結合を変更する、その免疫活性化機能を低減させる、及び/又は前記融合物の半減期を改善するように修飾されている、請求項23又は24に記載の融合ポリペプチド。
【請求項26】
請求項1~17のいずれか一項に記載のLILRBポリペプチド、請求項18~20のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項21~25のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドを含む二量体。
【請求項27】
ヘテロ二量体である、請求項26に記載の二量体。
【請求項28】
前記ヘテロ二量体の第1の単量体は、前記LILRBポリペプチドを含み、第2の単量体は、SIRPα、PD1、TIGIT及びSIGLEC10からなる群より選択されるタンパク質のアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列は、その天然の結合ペアに結合し得る、請求項26に記載の二量体。
【請求項29】
前記ヘテロ二量体の第1の単量体は前記LILRBポリペプチドを含み、第2の単量体はSIRPαのアミノ酸配列を含み、前記アミノ酸配列はCD47に結合し得る、請求項26に記載の二量体。
【請求項30】
請求項23~25のいずれか一項に記載の融合ポリペプチドを含む第1の単量体と、抗体又はその断片のFcドメインに結合しているSIRPαのアミノ酸配列を含む第2の単量体とを含み、SIRPαの前記アミノ酸配列はCD47に結合し得る、ヘテロ二量体。
【請求項31】
前記SIRPαアミノ酸配列は、配列番号27又は88に示すものである、請求項29又は30に記載の二量体。
【請求項32】
請求項1~31のいずれか一項に記載の二量体を含む組成物であって、前記二量体は、前記組成物中の前記LILRBの優勢形態である、組成物。
【請求項33】
請求項1~17及び21~31のいずれか一項に記載のLILRBポリペプチド、融合ポリペプチド又は二量体をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項34】
請求項1~17及び21~31のいずれか一項に記載のLILRBポリペプチド、融合ポリペプチド又は二量体をコードするポリヌクレオチドと、宿主細胞中の前記ポリヌクレオチドの発現を指向するための調節エレメントとを含む、核酸構築物。
【請求項35】
請求項1~17及び21~31のいずれか一項に記載のLILRBポリペプチド、融合ポリペプチド若しくは二量体、請求項33に記載のポリヌクレオチド又は請求項34に記載の核酸構築物を含む、宿主細胞。
【請求項36】
ポリペプチドを産生する方法であって、請求項33に記載のポリヌクレオチド若しくは請求項34に記載の核酸構築物を宿主細胞に導入すること、又は請求項35に記載の細胞を培養することを含む、方法。
【請求項37】
前記LILRBポリペプチド、前記融合ポリペプチド又は前記二量体を単離することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
HLA-Gを発現する病的細胞と関連する疾患の治療を必要とする対象における前記疾患を治療する方法であって、前記対象に治療有効量の請求項1~32のいずれか一項に記載のLILRBポリペプチド、組成物、融合ポリペプチド若しくは二量体、請求項33に記載のポリヌクレオチド、請求項34に記載の核酸構築物又は請求項35に記載の宿主細胞を投与し、それにより前記対象における前記疾患を治療することを含む方法。
【請求項39】
HLA-Gを発現する病的細胞と関連する疾患の治療を必要とする対象における前記疾患の治療における使用のための、請求項1~32のいずれか一項に記載のLILRBポリペプチド、組成物、融合ポリペプチド若しくは二量体、請求項33に記載のポリヌクレオチド、請求項34に記載の核酸構築物又は請求項35に記載の宿主細胞。
【請求項40】
前記疾患は、癌である、請求項38に記載の方法又は請求項39に記載の使用のためのLILRBポリペプチド、組成物、融合ポリペプチド、二量体、ポリヌクレオチド、核酸構築物若しくは宿主細胞。
【請求項41】
前記癌は、膵臓癌、乳癌、皮膚癌、結腸直腸癌、胃癌及び卵巣癌からなる群より選択される、請求項40に記載の方法又は使用のためのLILRBポリペプチド、組成物、融合ポリペプチド、二量体、ポリヌクレオチド、核酸構築物若しくは宿主細胞。
【請求項42】
免疫細胞を活性化させる方法であって、免疫細胞を請求項1~32のいずれか一項に記載のLILRBポリペプチド、組成物、融合ポリペプチド若しくは二量体、請求項33に記載のポリヌクレオチド、請求項34に記載の核酸構築物又は請求項35に記載の宿主細胞の存在下、インビトロで活性化させることを含む、方法。
【請求項43】
前記活性化は、HLA-Gを発現する細胞の存在下で行う、請求項42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年12月23日に出願された米国仮特許出願第63/293,264号及び2022年9月19日に出願された米国仮特許出願第63/407,763号の優先権の利益を主張し、それらの内容は参照により全体として本明細書に援用される。
【0002】
配列表の記述
標題94087.xmlのXMLファイルは、2022年12月21日に作成され、206,301バイトを含み、本出願の出願と同時に提出され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本発明は、その一部の実施形態において、LILRBポリペプチド及びその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
癌における主な免疫脱出機序の1つは、免疫活性化シグナリングを損なう癌性細胞の表面への阻害分子の発現である。これらの阻害分子の多くは、自己免疫寛容を維持すること、並びに末梢組織内の生理学的免疫応答の持続時間及び作動域をモジュレートして付随的な組織損傷を回避することが最初に実証された多数の阻害経路に属する、免疫チェックポイント(ICP)とみなされる。
【0005】
HLA-Gは、非古典的MHCクラスI分子であり、最初は、その母親の免疫系による破壊に対する保護を胎児へ付与する、したがって母子間免疫寛容に大いに寄与することが公知であった分子である[Carosella et al. Adv Immunol (2015) 127:33-144]。HLA-Gは、膜結合又は可溶性であり、免疫細胞上のその阻害受容体に強力に結合し、それらのエフェクターの機能を阻害し、したがってICP分子として機能して免疫阻害を誘導する。報告されたHLA-Gについての受容体としては、白血球免疫グロブリン様受容体B1(LILRB1、ILT2又はCD85jとしても公知)、LILRB2(ILT4又はCD85dとしても公知)、並びにナチュラルキラー細胞及び一部のT細胞上で発現されるKIR2DL4(キラー細胞Ig様受容体2DL4、CD158dとしても公知)[例えば、Shiroishi M et al., Proc Natl Acad Sci USA. (2006) 103(44): 16412-16417、Attia JVD, et al. Int J Mol Sci. (2020) 21(22): 8678]が挙げられる。LILRB1は、ヒトマクロファージ、一部のT細胞、NK細胞、B細胞、単球、骨髄、形質細胞様及び寛容原性DCを含む種々の樹状細胞サブセット上で発現され、一方、LILRB2は、ヒト単球、B細胞上で、並びにより低レベルで骨髄及び形質細胞様樹状細胞の細胞表面上で発現される(Katz HR. Adv Immunol. (2006) 91:251-272、Kang X, et al. Cell Cycle. (2016) 15(1):25-40)。LILRB1及びLILRB2の両方は、タンパク質チロシンホスファターゼSHP-1をリクルートするための免疫受容体チロシンベース阻害モチーフをそれらの細胞質テール内に有すし、その結果、阻害シグナリングをもたらす。LILRBは広範な白血球上で発現され、阻害シグナルを媒介するため、HLA-Gは、胎盤中の広範な免疫抑制機能における中心的な役割を有することが考えられる。
【0006】
HLA-Gは主に胎盤トロホブラスト及び胸腺上皮細胞上で発現される一方(例えば、Shiroishi M et al., 2006)、多くの腫瘍(例えば、膵臓、乳房、皮膚、結腸直腸、胃、卵巣を含む)がHLA-Gの発現を上方調節することが示されている(例えば、Lin,A. et al, Mol Med.21 (2015) 782-791、Amiot, L., et al, Cell Mol Life Sci. 68(2011) 417-431)。さらに、腫瘍細胞は、HLA-G発現を介して免疫寛容/抑制を誘導することにより宿主免疫監視を逃れること、及びHLA-Gの発現は予後不良と関連することが示されている。さらに、HLA-Gは、他の病理学的病態、例えば、ウイルス感染、自己免疫及び炎症性疾患においても、又は同種移植後にも新たに発現され、及び/又は上方調節され得る。例えば、ウイルス、例えば、HCMV、HSV-1、RABV、HCV、IAV及びHIV-1は、HLA-Gの発現を上方調節して感染細胞が免疫細胞により認識及び攻撃されるのを妨害すると考えられている。
【0007】
病的細胞により用いられる脱出機序としてのHLA-G-LILRB1/2シグナリングの関連性が広く実証されているため、この経路を標的化するいくつかのアプローチが開発されている[例えば、Carosella ED et al., Trends Immunol (2008) 29:125-32、Carosella ED et al., Blood (2008) 111:4862-70、Yan WH, Endocr Metab Immune Disord Drug Targets (2011) 11:76-89、Blaschitz A et al., Hum Immunol 2000;61:1074-85、Menier C, et al., Hum Immunol 2003; 64:315-26、Francois et al., J Immunother Cancer (2021) 9(3):e001998、米国特許出願公開第20210301020号明細書、並びに国際公開第2014/072534号パンフレット、国際公開第2017207775号パンフレット及び国際公開第2018091580号パンフレット。
【0008】
追加の背景技術としては、
Shiroishi M et al., Proc Natl Acad Sci USA. (2003) 100(15):8856-61、
Shiroishi M et al., J Biol Chem. (2006) 281(15):10439-47、
Clements CS et al., Proc Natl Acad Sci USA. (2005) 102(9):3360-5
が挙げられる。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、配列番号3に示すHLA-Gポリペプチドに結合可能であり、LILRBのD1ドメインの40~60位のアミノ酸の中に局在する少なくとも1つの突然変異を有するLILRBポリペプチドであって、同じ長さであり、且つ少なくとも1つの突然変異を含まない配列のLILRBポリペプチドと比較して、増加した安定性及び/又は増加したHLA-Gに対する親和性を有するLILRBポリペプチドが提供される。
【0010】
本発明の一部の実施形態によれば、LILRBは、LILRB1及びLILRB2からなる群より選択される。
【0011】
本発明の一部の実施形態によれば、LILRBは、LILRB2であり、少なくとも1つの突然変異は、配列番号1のS45、I49、T50及びV57からなる群より選択されるアミノ酸に対応する位置におけるものである。
【0012】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、配列番号3に示すHLA-Gポリペプチドに結合可能であり、配列番号1のS45、I49、T50及びV57からなる群より選択されるアミノ酸に対応する位置に少なくとも1つの突然変異を有するLIL2B2ポリペプチドであって、同じ長さであり、且つ少なくとも1つの突然変異を含まない配列のLILRB2ポリペプチドと比較して、増加した安定性及び/又は増加したHLA-Gに対する親和性を有するLILRB2ポリペプチドが提供される。
【0013】
本発明の一部の実施形態によれば、S45における突然変異は、S45R、S45N、S45Q、S45H、S45L、S45K、S45M、S45F、S45W若しくはS45Y突然変異を含み、I49における突然変異は、I49R、I49K、I49F若しくはI49Y突然変異を含み、T50における突然変異は、T50R、T50N、T50L、T50K、T50F、T50W若しくはT50Y突然変異を含み、及び/又はV57における突然変異は、V57R、V57K、V57F若しくはV57W突然変異を含む。
【0014】
本発明の一部の実施形態によれば、S45における突然変異は、S45Q突然変異を含み、I49における突然変異は、I49K突然変異を含み、T50における突然変異は、T50F突然変異を含み、及び/又はV57における突然変異は、V57R突然変異を含む。
【0015】
本発明の一部の実施形態によれば、少なくとも1つの突然変異は、少なくとも2つの突然変異を含む。
【0016】
本発明の一部の実施形態によれば、少なくとも1つの突然変異は、S45における突然変異と、I49、T50及び/又はV57における追加の突然変異とを含む。
【0017】
本発明の一部の実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、S45N及びT50R突然変異、S45Y及びT50K突然変異、S45R及びI49F突然変異、S45Q及びV57R突然変異、S45Q及びI49K突然変異、又はS45Y及びT50N突然変異を含む。
【0018】
本発明の一部の実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、配列番号1に示すLILRB2ポリペプチドと比較して、増加したHLA-Gに対する親和性を有する。
【0019】
本発明の一部の実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、配列番号1に示すLILRB2ポリペプチドと比較して、増加した安定性を有する。
【0020】
本発明の一部の実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21及び23からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一である。
【0021】
本発明の一部の実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21及び23からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0022】
本発明の一部の実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23に示すものである。
【0023】
本発明の一部の実施形態によれば、LILRBは、LILRB1であり、少なくとも1つの突然変異は、配列番号102のT43、I47、T48及びV55からなる群より選択されるアミノ酸に対応する位置におけるものである。
【0024】
本発明の一部の実施形態によれば、T43における突然変異は、T43R、T43N、T43Q、T43H、T43L、T43K、T43M、T43F、T43W若しくはT43Y突然変異を含み、I47における突然変異は、I47R、I47K、I47F若しくはI47Y突然変異を含み、T48における突然変異は、T48R、T48N、T48L、T48K、T48F、T48W若しくはT48Y突然変異を含み、及び/又はV55における突然変異は、V55R、V55K、V55F若しくはV55W突然変異を含む。
【0025】
本発明の一部の実施形態によれば、V55における突然変異は、V55R突然変異を含む。
【0026】
本発明の一部の実施形態によれば、LILRB1ポリペプチドは、配列番号102に示すLILRB1ポリペプチドと比較して、増加したHLA-Gに対する親和性を有する。
【0027】
本発明の一部の実施形態によれば、LILRB1ポリペプチドは、配列番号102に示すLILRB1ポリペプチドと比較して、増加した安定性を有する。
【0028】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、LILRBポリペプチド及びLILRBポリペプチドに結合している非タンパク質性部分を含む組成物が提供される。
【0029】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、LILRB2ポリペプチド及びLILRB2ポリペプチドに結合している非タンパク質性部分を含む組成物が提供される。
【0030】
本発明の一部の実施形態によれば、非タンパク質性部分は、薬物、化学物質、小分子、ポリヌクレオチド、検出可能部分、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(スチレンcoマレイン酸無水物)(SMA)、並びにジビニルエーテル及びマレイン酸無水物コポリマー(DIVEMA)からなる群より選択される。
【0031】
本発明の一部の実施形態によれば、非タンパク質性部分は、二量体化部分である。
【0032】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、異種タンパク質性部分に結合しているLILRBポリペプチドを含む融合ポリペプチドが提供される。
【0033】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、異種タンパク質性部分に結合しているLILRB2ポリペプチドを含む融合ポリペプチドが提供される。
【0034】
本発明の一部の実施形態によれば、異種タンパク質性部分は、二量体化部分である。
【0035】
本発明の一部の実施形態によれば、異種タンパク質性部分は、抗体又はその断片のFcドメインを含む。
【0036】
本発明の一部の実施形態によれば、Fcドメインは、IgG1又はIgG4のものである。
【0037】
本発明の一部の実施形態によれば、Fcドメインは、Fc受容体へのその結合を変更し、その免疫活性化機能を低減させ、及び/又は融合物の半減期を改善するように修飾されている。
【0038】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、LILRBポリペプチド、組成物又は融合ポリペプチドを含む二量体が提供される。
【0039】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、LILRB2ポリペプチド、組成物又は融合ポリペプチドを含む二量体が提供される。
【0040】
本発明の一部の実施形態によれば、二量体は、ヘテロ二量体である。
【0041】
本発明の一部の実施形態によれば、ヘテロ二量体の第1の単量体は、LILRBポリペプチドを含み、第2の単量体は、SIRPα、PD1、TIGIT及びSIGLEC10からなる群より選択されるタンパク質のアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、その天然結合ペアに結合し得る。
【0042】
本発明の一部の実施形態によれば、ヘテロ二量体の第1の単量体は、LILRB2ポリペプチドを含み、第2の単量体は、SIRPα、PD1、TIGIT及びSIGLEC10からなる群より選択されるタンパク質のアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、その天然結合ペアに結合し得る。
【0043】
本発明の一部の実施形態によれば、ヘテロ二量体の第1の単量体は、LILRBポリペプチドを含み、第2の単量体は、SIRPαのアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、CD47に結合し得る。
【0044】
本発明の一部の実施形態によれば、ヘテロ二量体の第1の単量体は、LILRB2ポリペプチドを含み、第2の単量体は、SIRPαのアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、CD47に結合し得る。
【0045】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、融合ポリペプチドを含む第1の単量体と、抗体又はその断片のFcドメインに結合しているSIRPαのアミノ酸配列を含む第2の単量体とを含み、SIRPαのアミノ酸配列は、CD47に結合し得るヘテロ二量体が提供される。
【0046】
本発明の一部の実施形態によれば、SIRPαアミノ酸配列は、配列番号27又は88と少なくとも90%同一である。
【0047】
本発明の一部の実施形態によれば、SIRPαアミノ酸配列は、配列番号27又は88を含む。
【0048】
本発明の一部の実施形態によれば、SIRPαアミノ酸配列は、配列番号27又は88に示すものである。
【0049】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、二量体を含む組成物であって、二量体は、組成物中のLILRBの優勢形態である、組成物が提供される。
【0050】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、二量体を含む組成物であって、二量体は、組成物中のLILRB2の優勢形態である、組成物が提供される。
【0051】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、LILRBポリペプチド、融合ポリペプチド又は二量体をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0052】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、LILRB2ポリペプチド、融合ポリペプチド又は二量体をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0053】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、LILRBポリペプチド、融合ポリペプチド又は二量体をコードするポリヌクレオチドと、宿主細胞中のポリヌクレオチドの発現を指向するための調節エレメントとを含む核酸構築物が提供される。
【0054】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、LILRB2ポリペプチド、融合ポリペプチド又は二量体をコードするポリヌクレオチドと、宿主細胞中のポリヌクレオチドの発現を指向するための調節エレメントとを含む核酸構築物が提供される。
【0055】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、LILRBポリペプチド、融合ポリペプチド若しくは二量体、ポリヌクレオチド又は核酸構築物を含む宿主細胞が提供される。
【0056】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、LILRB2ポリペプチド、融合ポリペプチド若しくは二量体、ポリヌクレオチド又は核酸構築物を含む宿主細胞が提供される。
【0057】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、ポリペプチドを産生する方法であって、ポリヌクレオチド若しくは核酸構築物を宿主細胞に導入すること又は細胞を培養することを含む方法が提供される。
【0058】
本発明の一部の実施形態によれば、方法は、LILRBポリペプチド、融合ポリペプチド又は二量体を単離することを含む。
【0059】
本発明の一部の実施形態によれば、方法は、LILRB2ポリペプチド、融合ポリペプチド又は二量体を単離することを含む。
【0060】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、HLA-Gを発現する病的細胞と関連する疾患の治療を必要とする対象におけるその疾患を治療する方法であって、対象に治療有効量のLILRBポリペプチド、組成物、融合ポリペプチド若しくは二量体、ポリヌクレオチド、核酸構築物又は宿主細胞を投与し、それにより対象における疾患を治療することを含む方法が提供される。
【0061】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、HLA-Gを発現する病的細胞と関連する疾患の治療を必要とする対象におけるその疾患を治療する方法であって、対象に治療有効量のLILRB2ポリペプチド、組成物、融合ポリペプチド若しくは二量体、ポリヌクレオチド、核酸構築物又は宿主細胞を投与し、それにより対象における疾患を治療することを含む方法が提供される。
【0062】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、HLA-Gを発現する病的細胞と関連する疾患の治療を必要とする対象におけるその疾患の治療における使用のための、LILRBポリペプチド、組成物、融合ポリペプチド若しくは二量体、ポリヌクレオチド、核酸構築物又は宿主細胞が提供される。
【0063】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、HLA-Gを発現する病的細胞と関連する疾患の治療を必要とする対象におけるその疾患の治療における使用のための、LILRB2ポリペプチド、組成物、融合ポリペプチド若しくは二量体、ポリヌクレオチド、核酸構築物又は宿主細胞が提供される。
【0064】
本発明の一部の実施形態によれば、疾患は、癌である。
【0065】
本発明の一部の実施形態によれば、癌は、膵臓癌、乳癌、皮膚癌、結腸直腸癌、胃癌及び卵巣癌からなる群より選択される。
【0066】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、免疫細胞を活性化させる方法であって、免疫細胞をLILRBポリペプチド、組成物、融合ポリペプチド若しくは二量体、ポリヌクレオチド、核酸構築物又は宿主細胞の存在下、インビトロで活性化させることを含む方法が提供される。
【0067】
本発明の一部の実施形態の一態様によれば、免疫細胞を活性させる方法であって、免疫細胞をLILRB2ポリペプチド、組成物、融合ポリペプチド若しくは二量体、ポリヌクレオチド、核酸構築物又は宿主細胞の存在下、インビトロで活性化させることを含む方法が提供される。
【0068】
本発明の一部の実施形態によれば、活性化は、HLA-Gを発現する細胞の存在下で行う。
【0069】
特に定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術及び/又は科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は均等の方法及び材料を本発明の実施形態の実践又は試験において使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料が以下に記載される。矛盾する場合、定義を含む本特許明細書が優先される。加えて、材料、方法、及び実施例は説明的なものにすぎず、必ずしも限定的であることは意図されない。
【0070】
本発明の一部の実施形態が、例としてのみ、添付の図面を参照して本明細書に記載される。図面を詳細に目下具体的に参照して、示される特定のものは一例であり、本発明の実施形態の説明的な考察を目的とすることが強調される。これに関して、図面とともに用いられる説明により、当業者には本発明の実施形態をいかに実践することができるかは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【
図1-1】
図1のA~Dは、LILRB2-HLA-G結合界面の構造分析を実証する。
図1のAは、LILRB2(配列番号1、本明細書において「WT LILRB2」とも称される)及びHLA-G(配列番号3)のPDB ID-2DYP複合体構造を示す。HLA-Gは暗灰色の表面表示で示され、ベータ-2-ミクログロブリン(配列番号4)は灰色リボンディスプレイで示され、LILRB2は白色表面表示で示される。
図1のBは、HLA-G及びLILRB2間の界面残基のマッピングを示す。HLA-G及びベータ-2-ミクログロブリンの両方が暗灰色リボンで示され、LILRB2は灰色リボンで示される。相互作用残基は球及び棒で表される。
図1のCは、
図1のBに示すHLA-G及びLILRB2間の相互作用界面の拡大図を示す。相互作用界面において、PHE195におけるHLA-G及びそのホモログ間で単一の優勢な差のみが存在する。
図1のDは、LILRB2中の4つのアミノ酸、すなわち、Ser45、Ile49、Thr50及びVal57を示し、それらは結合エネルギーに対する有意な影響を有することが見出された。
【
図2A】
図2Aと
図2Bは、還元及び/又は非還元条件下で分離された、WT LILRB2(配列番号1)又は突然変異LILRB2(本明細書において「LILRB2バリアント」と称される)-Fc融合物及びSIRPα-Fc融合物のいずれかを含むいくつかのヘテロ二量体タンパク質(各ヘテロ二量体の完全な説明については以下の表3を参照のこと)のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)分析の写真を示す。図中に提示されるサンプルは、粗製(非精製、
図2A)又はプロテインA精製(
図2B)されたもの(5日目上清)である。上清は、示される組換えタンパク質をコードするプラスミドで形質移入されたエクスピ293F細胞からのものである。
【
図3A】
図3A~
図3Fは、WT LILRB2と比較した、細胞表面上で発現されたHLA-Gへの、LILRB2バリアントを含むいくつかのヘテロ二量体タンパク質の結合を実証する。
図3A~
図3Bは、HT1080及びHT1080-HLA-G細胞(
図3A)並びにTHP1-EV及びTHP1-HLA-G細胞(
図3B)上のCD47及びHLA-Gの発現レベルを実証する。CD47及びHLA-Gの細胞表面発現レベルは、抗ヒトCD47抗体及びアイソタイプ対照としてのIgG1又は抗ヒトHLA-G抗体及びアイソタイプ対照としてのIgG4を用いる細胞系の免疫染色とそれに続くフローサイトメトリー分析により決定した。
【
図3C】
図3Cは、HLA-G過剰発現細胞HT1080-HLA-Gへの、示されるヘテロ二量体の結合を実証する。結合は、インキュベーション後に、抗ヒトIgG1抗体を使用するIgG骨格の免疫染色とそれに続くフローサイトメトリー分析により決定した。GMFI値を使用してグラフパッドプリズムソフトウェアを用いて結合曲線グラフを作出した。
【
図3D】
図3Dは、抗HLA-G遮断抗体による、HT1080-HLA-G細胞への、示されるヘテロ二量体の結合の遮断割合を実証する。
【
図3E】
図3E~
図3Fは、HT1080細胞への、若しくはHLA-G過剰発現細胞HT1080-HLA-G(
図3E)への、又はTHP-1-EV細胞若しくはHLA-G過剰発現細胞THP-1-HLA-G(
図3F)への、示されるヘテロ二量体の結合を示されるとおり遮断抗体を用いて又は用いずに実証する。結合は、インキュベーション後に、抗ヒトIgG1抗体を使用するIgG骨格の免疫染色とそれに続くフローサイトメトリー分析により決定した。GMFI値を使用してグラフパッドプリズムソフトウェアを用いて結合曲線グラフを作出した。
【
図4】
図4は、WT LILRB2を含むホモ二量体タンパク質(LILRB2-V5)と比較した、細胞表面上で発現されたHLA-Gへの、LILRB2バリアントLILRB-V12を含むホモ二量体タンパク質の結合を実証する。HT1080細胞への又はHLA-G過剰発現細胞HT1080-HLA-G細胞へのホモ二量体の結合は、遮断抗体を用いて又は用いずに、インキュベーション後に、抗ヒトIgG1抗体を使用するIgG骨格の免疫染色とそれに続くフローサイトメトリー分析により決定した。GMFI値を提示し、それを使用してグラフパッドプリズムソフトウェアを用いて結合曲線グラフを作出した。
【
図5】
図5のA~Cは、HT1080-HLA-G細胞と同時培養され、示される濃度の本明細書において「DSP216-V12」(図には「DSP」と表記)と称される、LILRB2バリアント-Fc融合物及びSIRPα-Fc融合物のヘテロ二量体(各ヘテロ二量体の完全な説明については以下の表3を参照のこと)又は陽性対照としての1.5μg/mlの抗HLA-G抗体で処理されたM-CSF処理マクロファージ中のM2マーカー、CD163(
図5のA)及びCD206(
図5のB)、並びにM1マーカーHLA-DR(
図5のC)の発現レベルを実証する。細胞表面発現レベルは、抗ヒト-CD163、抗ヒト-CD206又は抗ヒトHLA-DR抗体を用いる細胞の免疫染色とそれに続くフローサイトメトリー分析により決定した。MFI値を使用してグラフパッドプリズムソフトウェアを用いて結合曲線グラフを作出した。
【
図6】
図6のA~Bは、同時培養及び示される濃度のDSP216-V12(図には「DSP2016」と表記)又は陽性対照としての1.5μg/mlの抗HLA-G抗体での処理の開始24時間後の、MCS-F処理マクロファージ及びT1080HLA-G細胞の同時培養物の上清中のTNF-α(
図6のA)又はIL-6(
図6のB)のレベルを実証する。サイトカインレベル(ng/mL)は、サイトメトリックビーズアレイ(CBA)を用いる上清の免疫染色とそれに続くフローサイトメトリー分析により決定した。MFI値を使用してグラフパッドプリズムソフトウェアを用いて結合曲線グラフを作出した。
【
図7】
図7は、RBC、PBMC上又はHT1080-HLA-G細胞上のCD47の発現レベルを実証する。細胞表面発現レベルは、抗ヒト-CD47抗体又はアイソタイプ対照としてのIgG1を用いる細胞の免疫染色とそれに続くフローサイトメトリー分析により決定した。MFI値を使用してグラフパッドプリズムソフトウェアを用いて結合曲線グラフを作出した。
【
図8】
図8のA~Bは、フローサイトメトリーにより決定された、RBC、PBMC又はHT1080-HLA-G細胞へのDSP216-V12の結合を実証する。グラフは、4つの独立ドナーサンプルからのMFIの平均(±SEM)を表す。
図8のAは、RBC、PBMC又はHT1080-HLA-G細胞への、0.4~12.5μg/mLの濃度におけるDS216-V12の結合の平均(±SEM)を示すグラフである。
図8のBは、全ての濃度(1.56、3.125、6.25μg/mL)の、PBMC及びRBCと比較した、HT1080-HLA-G細胞へのDSP216-V12(図には「DSP2016」と表記)の有意に高い結合を示す棒グラフである。
*P≦0.05、
**P≦0.01。3.125μg/mL濃度についてのP値は、PBMCに対して0.0044であり、RBCに対して0.0027(T検定)であった。
【
図9】
図9は、還元及び非還元条件下で分離された、SIRPα-Fc融合サブユニット及びWT LILRB2-又はLILRB2バリアント-Fc融合サブユニットを含むいくつかのヘテロ二量体タンパク質(図中に示す各ヘテロ二量体の完全な説明については以下の表3を参照のこと)のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動分析(SDS-PAGE)の写真を示す。図中に提示されるサンプルは、粗製のもの(非精製-5日目上清)である。上清は、示される組換えタンパク質をコードするプラスミドで形質移入されたエクスピ293F細胞からのものである。
【
図10】
図10は、SIRPα-Fc融合サブユニット及びLILRB2バリアント-Fc融合サブユニットを含むいくつかのヘテロ二量体タンパク質(図中に示す各ヘテロ二量体の完全な説明については以下の表3を参照のこと)のウエスタンブロット分析の写真である。図中に提示されるサンプルは、プロテインA精製されたもの(5日目上清)である。上清は、示されるヘテロ二量体をコードするプラスミドで形質移入されたエクスピ293F細胞からのものである。タンパク質をSDS-PAGE上で還元及び非還元条件下で分離し、続いて抗LILRB2又は抗SIRPα抗体を用いて免疫ブロットした。
【
図11】
図11は、HT1080の細胞表面上で発現されたCD47への、又はHLA-Gを過剰発現するHT1080-HLA-G細胞の細胞表面上で発現されたCD47及びHLA-Gへの、SIRPα-Fc融合サブユニット及びWT LILRB2-又はLILRB2バリアント-Fc融合サブユニットを含むいくつかのヘテロ二量体タンパク質(図中に示す各ヘテロ二量体の完全な説明については以下の表3を参照のこと)の結合を実証する。抗HLA-G(HLA-G/LILRB2相互作用遮断抗体)を用いる又は用いない結合は、HLA-G及びCD47の両方への結合と比較した、CD47のみへの結合を実証する。結合は、抗ヒトIgG1抗体を使用するIgG骨格の免疫染色とそれに続くフローサイトメトリー分析後に決定した。GMFI値を提示し、それを使用してグラフパッドプリズムソフトウェアを用いて結合曲線グラフを作出した。
【
図12】
図12のA~Cは、HT1080-HLA-G細胞と同時培養され、示される濃度の本明細書において「DSP216-V12短鎖」と称されるLILRB2バリアント-Fc融合物及び短鎖SIRPα-Fc融合物のヘテロ二量体(ヘテロ二量体の完全な説明については以下の表3を参照のこと)又は対照としての1.5μg/mlの抗HLA-G抗体で処理されたM-CSF処理マクロファージ中のM2マーカー、CD163(
図12のA)及びCD206(
図12のB)、並びにM1マーカーHLA-DR(
図12のC)の細胞表面発現レベルを実証する。細胞表面発現レベルは、抗ヒト-CD163、抗ヒト-CD206又は抗ヒトHLA-DR抗体を用いる細胞の免疫染色とそれに続くフローサイトメトリー分析により決定した。MFI値を使用してグラフパッドプリズムソフトウェアを用いて結合曲線グラフを作出した。
【
図13】
図13のA~Bは、フローサイトメトリーにより決定された、M2cマクロファージによる、DSP216-V12又は抗CD47抗体で処理された癌細胞の食作用を実証する。グラフは、セルトレースバイオレットについて染色癌細胞の取り込み後に陽性であるM2c細胞の平均%(±SD)を示す。グラフは、空のベクターで形質導入されたCD47
+HLA-G
-721.221細胞(721.221EV)(
図13のA)又はHLA-G発現ベクターで形質導入されたCD47
+HLA-G
+721.221細胞(721.221-HLA-G)(
図13のB)でのM2cマクロファージによる平均取り込みを示す。両方の721.221細胞系を、M2cマクロファージとの混合前に、異なる濃度のDSP216-V12又は6μg/mLのCD47遮断抗体を含有する培地中でインキュベートした。
*P≦0.05、
**P≦0.01。
図13のAに提示される、6μg/mLのCD47抗体処理に対する培地中の%食作用についてのP値=0,0028であり、
図13のBに提示される、10μg/mLのDSP216-V12処理に対する培地中の%食作用についてのP値=0,0465(対応のあるT検定)である。
【
図14】
図14は、LILRB2及びLILRB1間のブラスト相同性分析を示す。
【
図15-1】
図15のA~Dは、LILRB1-HLA-G結合界面の構造分析を実証する。
図15のAは、LILRB1(配列番号102、本明細書において「WT LILRB1」とも称される)及びHLA-G(配列番号3)のPDB ID-2DYP複合体構造を示す。HLA-Gは灰色の表面表示で示され、ベータ-2-ミクログロブリン(配列番号4)は暗灰色リボンディスプレイで示され、LILRB1は白色表面表示で示される。
図15のBは、HLA-G及びLILRB1間の界面残基のマッピングを示す。HLA-G及びベータ-2-ミクログロブリンの両方が暗灰色リボンで示され、LILRB1は灰色リボンで示される。相互作用残基は球及び棒で表される。
図15のCは、
図15Bに示すHLA-G及びLILRB1間の相互作用界面の拡大を示し、特にLILRB1のVal55及びHLA-GのPhe195を実証する。
図15のDは、WTバリンのアルギニンへの置換後にLILRB1のアミノ酸残基55へのHLA-GのPhe195の近接を実証する(バリアントLILRB1配列は配列番号103に示す)。
【発明を実施するための形態】
【0072】
本発明は、その一部の実施形態において、LILRBポリペプチド及びその使用に関する。
【0073】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の詳細な説明に示され、又は実施例により例示される詳細へのその適用に必ずしも限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態であり得、又は種々の様式で実践若しくは実施することができる。
【0074】
HLA-Gは、非古典的MHCクラスI分子であり、最初は、胎児へのその母親の免疫系による破壊からの保護を付与し、したがって母子間免疫寛容に大いに寄与することが公知であった分子である。報告されたHLA-Gについての受容体としては、LILRB1、LILRB2及びKIR2DL4が挙げられる。HLA-Gは主に胎盤トロホブラスト及び胸腺上皮細胞上で発現され、一方、例えば、癌、ウイルス感染、自己免疫及び炎症性疾患を含む種々の病理学的病態と関連する細胞又は同種移植後の細胞は、HLA-Gを過剰発現することが示されており、実際、HLA-G-LILRB1/2シグナリングは、病的細胞により用いられる免疫脱出機序として示唆されている。
【0075】
本発明の具体的な実施形態の実践を実現させる過程で、本発明者らは、構造-機能ツールを用いて安定性及びHLA-Gに対する結合親和性の増加を目的とするLILRB2及びLILRB1中の突然変異を導入した(以下の実施例の項の実施例1及び11)。この方法を使用して、本発明者らは、野生型LILRB2と比較して改善された安定性及びHLA-Gに対する結合親和性を有する、タンパク質のD1ドメイン中の特異的領域内の突然変異を有する新規ポリペプチドを生成することができた(以下の実施例の項の実施例1~9)。
【0076】
結果的に、本教示の具体的な実施形態は、これらの新規突然変異を有するLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、及び治療法におけるそれらの使用を示唆する。
【0077】
したがって、本発明の一態様によれば、配列番号3に示すHLA-Gポリペプチドに結合可能であり、LILRBのD1ドメインの40~60位のアミノ酸の中に局在する少なくとも1つの突然変異を有するLILRBポリペプチドであって、同じ長さであり、且つ少なくとも1つの突然変異を含まない配列のLILRBポリペプチドと比較して増加した安定性及び/又は増加したHLA-Gに対する親和性を有するLILRBポリペプチドが提供される。
【0078】
本発明の追加の又は代替的な態様によれば、配列番号3に示すHLA-Gポリペプチドに結合可能であり、配列番号1のS45、I49、T50及びV57からなる群より選択されるアミノ酸に対応する位置に少なくとも1つの突然変異を有するLIL2B2ポリペプチドであって、同じ長さであり、且つ少なくとも1つの突然変異を含まない配列のLILRB2ポリペプチドと比較して増加した安定性及び/又は増加したHLA-Gに対する親和性を有するLILRB2ポリペプチドが提供される。
【0079】
「LILRB(白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーB)」は、LILRB1、LILRB2、LILRB3、LILRB4及びLILRB5を含む、2~4つの細胞外免疫グロブリン様ドメイン(具体的には、C型Ig様ドメイン、InterProデータベースエントリーIPR008424又はPfamデータベースエントリーPF05790)と、ITIMドメインを含有する細胞質テールとを含む受容体のファミリーを指す。
【0080】
具体的な実施形態によれば、LILRBは、ヒトLILRBである。
【0081】
具体的な実施形態によれば、LILRBは、LILRB2である。
【0082】
「LILRB2(白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー2)」は、LILRB2遺伝子(ヒト遺伝子ID10288に対応)によりコードされるポリペプチドを指す。具体的な実施形態によれば、LILRB2は、ヒトLILRB2である。具体的な実施形態によれば、LILRB2は、例えば、以下のGenBank番号NP_001074447、NP_001265332、NP_001265333、NP_001265334、NP_001265335又はユニプロット番号Q8N423に提供されるヒトLILRB2を指す。
【0083】
具体的な実施形態によれば、LILRBは、LILRB1である。
【0084】
「LILRB1(白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーBメンバー1)」は、LILRB1遺伝子(ヒト遺伝子ID10859対応する)によりコードされるポリペプチドを指す。具体的な実施形態によれば、LILRB1は、ヒトLILRB1である。具体的な実施形態によれば、LILRB1は、例えば、以下のGenBank番号NP_001075106、NP_001075107、NP_001075108、NP_001265327、NP_001265328又はユニプロット番号Q8NHL6に提供されるヒトLILRB1を指す。
【0085】
LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)の公知の結合ペアの1つは、主要組織適合性分子(MHC、例えば、HLA-G)である。
【0086】
「HLA-G(ヒト白血球抗原G)」は、HLA-G遺伝子(遺伝子ID3135)によりコードされるポリペプチドを指す。具体的な実施形態によれば、HLA-Gアミノ酸配列は、配列番号3に提供されるものである。
【0087】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)は、ベータ2-ミクログロブリンの状況下にあるHLA-Gに結合する。ベータ2-ミクログロブリン配列の非限定的な例は、配列番号4に提供される。
【0088】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)は、非ベータ2-ミクログロブリンの状況下にない遊離HLA-G又はHLA-Gに結合する。
【0089】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)は、遊離HLA-G(すなわち、ペプチドに結合していない)に結合する。
【0090】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)は、ペプチドを提示するHLA-Gに結合する。
【0091】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)は、ペプチド配列から独立したHLA-Gに結合する。
【0092】
結合を試験するためのアッセイは当技術分野において周知であり、それとしては、限定されるものではないが、フローサイトメトリー、Biacore、バイオレイヤー干渉Blitz(登録商標)アッセイ、HPLCが挙げられる。
【0093】
本明細書において使用される場合、用語「LILRBポリペプチド」、「LILRB2ポリペプチド」及び「LILRB1ポリペプチド」は、全長LILRB、LILRB2及びLILRB1、少なくともHLA-Gに結合する能力を維持するその機能的断片又はそのホモログを指す。例えば、具体的な実施形態によれば、ポリペプチドのアミノ酸配列は、本明細書にさらに記載されるとおり、野生型タンパク質の配列と比較して置換、付加及び/又は欠失突然変異を含む。
【0094】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドのアミノ酸配列は、上記及び下記にさらに記載されるとおり、置換、付加及び欠失突然変異(例えば、配列番号1に示すLILRB2ポリペプチドと比較して)を含む。
【0095】
具体的な実施形態によれば、LILRB1ポリペプチドのアミノ酸配列は、上記及び下記にさらに記載されるとおり、置換、付加及び欠失突然変異(例えば、配列番号102に示すLILRB1ポリペプチドと比較して)を含む。
【0096】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)の細胞外ドメイン又は少なくともHLA-Gに結合し得るその機能的断片を含む。
【0097】
上記のとおり、LILRBの細胞外ドメインは、当技術分野においてDドメインとして公知の免疫グロブリン様ドメインを2~4個含み、これらは膜に対して遠位から近位へ(さらにタンパク質のアミノ酸配列のN末からC末までのそれらの順序に対応)のそれらの位置により1~4と番号付されている。
【0098】
LILRB2又はLILRB1の細胞外ドメインは、D1~D4として公知の4つのIg様ドメインを含む。LILRB2及びLILRB1細胞外ドメインの非限定的な例は、配列番号1、100及び102によって提供される。
【0099】
したがって、具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも1つのIg様ドメイン又はその機能的断片を含む。
【0100】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドのアミノ酸配列は、少なくとも1つのIg様ドメインを含む。
【0101】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、少なくとも2つのIg様ドメイン、少なくとも3つのIg様ドメイン若しくは4つのIg様ドメイン又はそれらの機能的断片を含む。
【0102】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、少なくとも2つのIg様ドメイン、少なくとも3つのIg様ドメイン又は4つのIg様ドメインを含む。
【0103】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、少なくともD1ドメインを含む。
【0104】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、LILRB2のドメインD1及びD2、LILRB2のドメインD1、D2及びD3、LILRB2のドメインD1、D2及びD4、又はLILRB2のドメインD1、D2、D3及びD4を含む。
【0105】
具体的な実施形態によれば、LILRB1ポリペプチドは、LILRB1のドメインD1及びD2、LILRB1のドメインD1、D2及びD3、LILRB1のドメインD1、D2及びD4、又はLILRB1のドメインD1、D2、D3及びD4を含む。
【0106】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100アミノ酸を含み、各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0107】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、100~597アミノ酸、100~500アミノ酸、100~400アミノ酸、150~400アミノ酸、300~400アミノ酸、350~400アミノ酸、150~250アミノ酸を含み、各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0108】
用語「LILRBポリペプチド」、「LILRB2ポリペプチド」及び「LILRB1ポリペプチド」は、所望の活性(すなわち、MHC、例えば、HLA-Gへの結合)を示す機能的ホモログも包含する。このようなホモログは、例えば、本明細書に記載のLILRB、LILRB2及びLILRB1のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一若しくは相同であり得、又はそれをコードするポリヌクレオチド配列(以下にさらに記載される)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一であり得る。
【0109】
本明細書において使用される場合、「同一性」又は「配列同一性」は、全体的な同一性、すなわち、本明細書に開示されるアミノ酸又は核酸配列全体にわたる同一性を指し、その一部にわたる同一性を指すものではない。
【0110】
配列同一性又は相同性は、任意のタンパク質又は核酸配列アラインメントアルゴリズム、例えば、ブラスト、クラスタルW、及びMUSCLEを使用して決定することができる。
【0111】
ホモログは、以下にさらに記載されるとおり、オルソログ、欠失、挿入、又はアミノ酸置換を含む置換バリアントも指し得る。
【0112】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、以下にさらに詳述されるとおり、保存的及び/又は非保存的アミノ酸置換(本明細書において「突然変異」とも称される)を含み得る。
【0113】
本明細書に記載のLILRBポリペプチドは、LILRBのD1ドメイン中の少なくとも1つの突然変異を含む。LILRB2及びLILRB1のD1ドメインの非限定的な例は、それぞれ配列番号104及び105に提供される。
【0114】
突然変異は、例えば、点突然変異、置換(あるアミノ酸を別のものに置き換える)、付加及び/又は欠失突然変異であり得る。
【0115】
具体的な実施形態によれば、少なくとも1つの突然変異は、置換突然変異である。
【0116】
具体的な実施形態によれば、少なくとも1つの突然変異は、単一突然変異である。
【0117】
他の具体的な実施形態によれば、少なくとも1つの突然変異は、少なくとも2つの突然変異を含む。
【0118】
他の具体的な実施形態によれば、少なくとも1つの突然変異は、少なくとも3つ又は少なくとも4つの突然変異を含む。
【0119】
具体的な実施形態によれば、少なくとも1つの突然変異は、LILRBのD1ドメインの40~60位のアミノ酸の中に局在する。
【0120】
具体的な実施形態によれば、少なくとも1つの突然変異は、LILRBの43~45位、47~50位及び/又は55~77位のアミノ酸の中に内に局在する。
【0121】
具体的な実施形態によれば、少なくとも1つの突然変異は、S、I、T及びVからなる群より選択されるアミノ酸におけるものである。
【0122】
具体的な実施形態によれば、少なくとも1つの突然変異は、LILRB及びHLA-GのPhe195間の界面のアミノ酸におけるものであり、ナンバリングは配列番号3に対応する。
【0123】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、配列番号1のS45、I49、T50及びV57からなる群より選択されるアミノ酸に対応する位置に少なくとも1つの突然変異を含む。
【0124】
本明細書において使用される場合、語句「配列番号1の~に対応する」は、任意の他のLILRB2アミノ酸配列における、対応するアミノ酸残基を含むことを意図する。
【0125】
具体的な実施形態によれば、突然変異は、保存的置換を含む。
【0126】
他の具体的な実施形態によれば、突然変異は、非保存的置換を含む。
【0127】
具体的な実施形態によれば、突然変異は、非天然存在の突然変異である。
【0128】
具体的な実施形態によれば、配列番号1のS45に対応するアミノ酸は、S45R、S45N、S45Q、S45H、S45L、S45K、S45M、S45F、S45W又はS45Y突然変異を含む。
【0129】
具体的な実施形態によれば、配列番号1のS45に対応するアミノ酸は、S45Q突然変異を含む。
【0130】
具体的な実施形態によれば、配列番号1のI49に対応する突然変異は、I49R、I49K、I49F又はI49Y突然変異を含む。
【0131】
具体的な実施形態によれば、配列番号1のI49に対応する突然変異は、I49K突然変異を含む。
【0132】
具体的な実施形態によれば、配列番号1のT50に対応する突然変異は、T50R、T50N、T50L、T50K、T50F、T50W又はT50Y突然変異を含む。
【0133】
具体的な実施形態によれば、配列番号1のT50に対応する突然変異は、T50F突然変異を含む。
【0134】
具体的な実施形態によれば、配列番号1のV57に対応する突然変異は、V57R、V57K、V57F又はV57W突然変異を含む。
【0135】
具体的な実施形態によれば、配列番号1のV57に対応する突然変異は、V57R突然変異を含む。
【0136】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、開示される突然変異の1つを含む。
【0137】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、開示される突然変異の少なくとも2つを含む。
【0138】
したがって、具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、配列番号1のS45及びI49に対応するアミノ酸おける突然変異、配列番号1のS45及びT50に対応するアミノ酸における突然変異、配列番号1のS45及びV57に対応するアミノ酸における突然変異、配列番号1のI49及びT50に対応するアミノ酸における突然変異、配列番号1のI49及びV57に対応するアミノ酸における突然変異、又は配列番号1のT50及びV57に対応するアミノ酸の突然変異を含む。
【0139】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、配列番号1のS45に対応するアミノ酸における突然変異と、配列番号1のI49、T50及び/又はV57に対応するアミノ酸における追加の突然変異とを含む。
【0140】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、配列番号1に対応するS45N及びT50R突然変異を含む。
【0141】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、配列番号1に対応するS45Y及びT50K突然変異を含む。
【0142】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、配列番号1に対応するS45R及びI49F突然変異を含む。
【0143】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、配列番号1に対応するS45Q及びV57R突然変異を含む。
【0144】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、配列番号1に対応するS45Q及びI49K突然変異を含む。
【0145】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、配列番号1に対応するS45Y及びT50N突然変異を含む。
【0146】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21及び23からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一若しくは相同であり、又はそれをコードするポリヌクレオチド配列(以下にさらに記載される)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一である。
【0147】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21及び23からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であり、各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0148】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21及び23からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0149】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21又は23に示すものであり、各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0150】
具体的な実施形態によれば、LILRB1ポリペプチドは、配列番号102のT43、I47、T48及びV55からなる群より選択されるアミノ酸に対応する位置に少なくとも1つの突然変異を含む。
【0151】
本明細書において使用される場合、語句「配列番号102の~に対応する」は、任意の他のLILRB1アミノ酸配列における対応するアミノ酸残基を含むことを意図する。
【0152】
具体的な実施形態によれば、突然変異は、保存的置換を含む。
【0153】
他の具体的な実施形態によれば、突然変異は、非保存的置換を含む。
【0154】
具体的な実施形態によれば、突然変異は、非天然存在の突然変異である。
【0155】
具体的な実施形態によれば、配列番号102のT43に対応するアミノ酸は、T43R、T43N、T43Q、T43H、T43L、T43K、T43M、T43F、T43W又はT43Y突然変異を含む。
【0156】
具体的な実施形態によれば、配列番号102のI47に対応する突然変異は、I47R、I47K、I47F又はI47Y突然変異を含む。
【0157】
具体的な実施形態によれば、配列番号102のT48に対応する突然変異は、T48R、T48N、T48L、T48K、T48F、T48W又はT48Y突然変異を含む。
【0158】
具体的な実施形態によれば、配列番号102のV55に対応する突然変異は、V55R、V55K、V55F又はV55W突然変異を含む。
【0159】
具体的な実施形態によれば、配列番号102のV55に対応する突然変異は、V55R突然変異を含む。
【0160】
具体的な実施形態によれば、LILRB1ポリペプチドは、開示される突然変異の1つを含む。
【0161】
具体的な実施形態によれば、LILRB1ポリペプチドは、開示される突然変異の少なくとも2つを含む。
【0162】
具体的な実施形態によれば、LILRB1ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号103と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一若しくは相同であり、又はそれをコードするポリヌクレオチド配列(以下にさらに記載される)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一である。
【0163】
具体的な実施形態によれば、LILRB1ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号103と少なくとも90%同一である。
【0164】
具体的な実施形態によれば、LILRB1ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号103を含む。
【0165】
具体的な実施形態によれば、LILRB1ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号103に示すものである。
【0166】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、同じ長さであり、且つ少なくとも1つの突然変異を含まない配列のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドと比較して増加した安定性を有する。
【0167】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、配列番号1に示すLILRB2ポリペプチドと比較して増加した安定性を有する。
【0168】
具体的な実施形態によれば、LILRB1ポリペプチドは、配列番号102に示すLILRB2ポリペプチドと比較して増加した安定性を有する。
【0169】
本明細書において使用される場合、語句「増加した安定性」は、同じ長さであり、且つ少なくとも1つの突然変異を含まない配列のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドと比較した、本明細書に開示される少なくとも1つの突然変異を含むLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドの安定性の統計的に有意な増加を指す。具体的な実施形態によれば、増加した安定性は、LILRB-HLAG複合体の増加した安定性により顕在化される。具体的な実施形態によれば、増加は、少なくとも2%、5%、10%、30%、40%又はさらに高く、例えば、50%、60%、70%、80%、90%又は100%におけるものである。具体的な実施形態によれば、増加は、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、又は少なくとも20倍のものである。
【0170】
ポリペプチドの安定性を決定する方法は当技術分野において周知であり、それとしては、例えば、凝集物形成の物理的状態及び時間依存性を定義するためのサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)、タンパク質の物理的状態及び時間依存性(統合性)を定義するためのSDS-PAGE、例えば、示差走査熱量測定(DSC)を用いる融解温度(Tm)の分析が挙げられる。
【0171】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、同じ長さであり、且つ少なくとも1つの突然変異を含まない配列のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドと比較して増加したHLA-Gに対する親和性を有する。
【0172】
具体的な実施形態によれば、LILRB2ポリペプチドは、配列番号1に示すLILRB2ポリペプチドと比較して増加したHLA-Gに対する親和性を有する。
【0173】
具体的な実施形態によれば、LILRB1ポリペプチドは、配列番号102に示すLILRB2ポリペプチドと比較して増加したHLA-Gに対する親和性を有する。
【0174】
本明細書において使用される場合、語句「増加したHLA-Gに対する親和性」は、同じ長さであり、且つ少なくとも1つの突然変異を含まない配列のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドと比較した、本明細書に開示される少なくとも1つの突然変異を含むLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドの、HLA-Gポリペプチド(例えば、配列番号3に示す)に対する結合親和性の統計的に有意な増加を指し、それは、直接的に又は天然リガンドの結合の阻害を介して決定することができる。結合親和性の増加は、他のHLA(例えば、HLA-A、HLA-B、HLA-C)と比較して高いHLA-Gに対する親和性(例えば、Kd、Ka)及び/又は高いHLA-Gへの選択的結合により顕在化され得る。具体的な実施形態によれば、増加は、少なくとも2%、5%、10%、30%、40%又はさらに高く、例えば、50%、60%、70%、80%、90%又は100%におけるものである。具体的な実施形態によれば、増加は、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、又は少なくとも20倍のものである。具体的な実施形態によれば、増加は、少なくとも5、10、100、1000又は10000倍のものである。
【0175】
親和性を決定する方法は当技術分野において周知であり、前述及び後述もされ、それとしては、例えば、ビアコア、HPLC、表面プラズモン共鳴アッセイ(SPR)及びフローサイトメトリー(FACS)が挙げられる。
【0176】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、例えば、癌細胞の食作用を誘導し、又は向上させ得る。
【0177】
食作用を決定する方法は当技術分野において公知であり、以下の実施例の項にさらに記載される。
【0178】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、腫瘍促進M2マクロファージの誘導を妨害し、又は低減させ得、腫瘍抑制M1マクロファージの誘導をもたらし得る。
【0179】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、M0(M2様)マクロファージをM1マクロファージに変換させ得る。
【0180】
マクロファージ表現型を決定する方法は当技術分野において公知であり、以下の実施例の項にさらに記載される。
【0181】
本発明の一部の実施形態のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、非タンパク質性又はタンパク質性部分に結合させることができる。
【0182】
したがって、本発明の一態様によれば、本明細書に開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド及びLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドに結合している非タンパク質性部分を含む組成物が提供される。
【0183】
本明細書において使用される語句「非タンパク質性部分」は、ペプチドに結合しているペプチド結合アミノ酸を含まない分子を指す。具体的な実施形態によれば、非タンパク質性は、非毒性部分である。本教示に従って使用することができる例示的な非タンパク質性部分としては、限定されるものではないが、薬物、化学物質、小分子、ポリヌクレオチド、検出可能部分、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ(スチレン-co-マレイン酸無水物)(SMA)、並びにジビニルエーテル及びマレイン酸無水物コポリマー(DIVEMA)が挙げられる。本発明の具体的な実施形態によれば、非タンパク質性部分は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0184】
このような分子は、高度に安定的(おそらく非タンパク質性部分により付与される立体障害に起因してインビボタンパク質分解活性に耐性)であり、以下にさらに記載される安価で高度に効率的な一般的な固相合成法を使用して産生することができる。しかしながら、依然として組換え技術を使用することができ、それにより組換えペプチド産物をインビトロ修飾(例えば、以下にさらに記載されるPEG化)に供することが認識される。
【0185】
ポリペプチドのアミノ酸配列とPEGとのバイオコンジュゲーション(すなわち、PEG化)は、PEG誘導体、例えば、PEGカルボン酸のN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、モノメトキシPEG2-NHS、カルボキシメチル化PEGのスクシンイミジルエステル(SCM-PEG)、PEGのベンゾトリアゾールカルボネート誘導体、PEGのグリシジルエーテル、PEGp-ニトロフェニルカルボネート(PEG-NPC、例えば、メトキシPEG-NPC)、PEGアルデヒド、PEG-オルトピリジル-ジスルフィド、カルボニルジミダゾール(carbonyldimidazol)-活性化PEG、PEG-チオール、PEG-マレイミドを使用して行うことができる。このようなPEG誘導体は、種々の分子量で市販されている[例えば、カタログ、Polyethylene Glycol and Derivatives, 2000(アラバマ州、ハンツビル、Shearwater Polymers,Inc.)を参照のこと]。所望により、上記誘導体の多くは、単官能性モノメトキシPEG(mPEG)形態で利用可能である。一般に、本発明のポリペプチドに付加されるPEGは、数百ダルトンから約100kDa(例えば、3~30kDa)の分子量(MW)の範囲であるべきである。より大きいMWのPEGを使用することができるが、PEG化ポリペプチドの収率のいくらかの損失をもたらし得る。より低いMWのPEGで得られるのと同じほど高い純度のより大きいMWのPEGを得ることが困難であり得るため、より大きいPEG分子の純度も監視するべきである。少なくとも85%の純度、より好ましくは、少なくとも90%の純度、95%の純度、又はそれよりも高い純度のPEGを使用することが好ましい。分子のPEG化は、例えば、Chapter 15のHermanson, Bioconjugate Techniques, Academic Press San Diego, Calif.(1996)、及びDunn and Ottenbrite編, Polymeric Drugs and Drug Delivery Systems, American Chemical Society, Washington, D.C. (1991)内のZalipsky et al., “Succinimidyl Carbonates of Polyethylene Glycol”にさらに考察されている。
【0186】
簡便には、PEGは、コンジュゲートの活性が保持される限り、部位特異的突然変異誘発によりポリペプチド中の選択位置に結合させることができる。PEG化のための標的は、ペプチド配列のN末端又はC末端における任意のシステイン残基であり得る。付加的に又は代替的に、他のシステイン残基をポリペプチドのアミノ酸配列に(例えば、N末端又はC末端において)付加させ、それによりPEG化のための標的として機能させることができる。コンピュータ分析を行って活性を減弱させない突然変異誘発に好ましい位置を選択することができる。
【0187】
活性化PEG、例えば、PEG-マレイミド、PEG-ビニルスルホン(VS)、PEG-アクリレート(AC)、PEG-オルトピリジルジスルフィドの種々のコンジュゲーション化学を用いることができる。活性化PEG分子を調製する方法は、当技術分野において公知である。例えば、PEG-VSは、アルゴン下でPEG-OHのジクロロメタン(DCM)溶液をNaHと反応させ、次いでジ-ビニルスルホン(モル比:OH1:NaH5:ジビニルスルホン50、0.2グラムのPEG/mLのDCM)と反応させることにより調製することができる。PEG-ACは、アルゴン下でPEG-OHのDCM溶液を塩化アクリロイル及びトリエチルアミンと反応させることにより作製される(モル比:OH1:塩化アクリロイル1.5:トリエチルアミン2、0.2グラムのPEG/mLのDCM)。このような化学基は、線形化、2-アーム、4-アーム、又は8-アームPEG分子に結合させることができる。
【0188】
得られたコンジュゲート分子(例えば、PEG化又はPVP-コンジュゲートポリペプチド)は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び生物学的アッセイを使用して分離、精製及び定量される。
【0189】
具体的な実施形態によれば、非タンパク質性部分は、二量体化部分である。このような二量体化分子は当業者に周知であり、以下にさらに記載される。
【0190】
本発明の追加の又は代替的な態様によれば、異種タンパク質性部分に結合している、本明細書において開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドを含む融合ポリペプチドが提供される。
【0191】
本明細書において使用される場合、用語「融合ポリペプチド」は、天然で単一アミノ酸配列中に一緒に見出されない2つ以上の部分を有するアミノ酸配列を指す。
【0192】
本明細書において使用される場合、用語「異種」は、引用されるアミノ酸配列(例えば、LILRBポリペプチド、例えば、LILRB2ポリペプチド、LILRB1ポリペプチド)に対して少なくとも局在化が天然でなく、又は引用されるアミノ酸配列の天然配列に完全に不存在であるアミノ酸配列を指す。
【0193】
本発明の一部の実施形態のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドに融合させることができる異種タンパク質性部分の非限定的な例としては、以下にさらに記載されるとおり、二量体化部分、検出可能部分、治療部分、開裂可能部分などが挙げられる。
【0194】
具体的な実施形態によれば、異種タンパク質性部分は、二量体化部分である。このような二量体化部分は当業者に周知であり、以下にさらに記載される。
【0195】
本明細書において使用される場合、用語「二量体化部分」は、2つの異なる単量体に結合して二量体を形成し得る部分を指す。このような二量体化部分は当技術分野において公知であり、それとしては、化学及びタンパク質性部分が挙げられる。
【0196】
具体的な実施形態によれば、二量体化部分は、ポリペプチドに直接結合している。
【0197】
具体的な実施形態によれば、二量体化部分は、ポリペプチドに非直接的に結合している。
【0198】
具体的な実施形態によれば、二量体化部分は、ポリペプチドに共有結合的に結合している。
【0199】
具体的な実施形態によれば、二量体化部分は、ポリペプチドに非共有結合的に結合している。
【0200】
具体的な実施形態によれば、二量体化部分は、少なくとも2つの異なる分子の組成物である。
【0201】
具体的な実施形態によれば、二量体化部分は、非タンパク質性部分、例えば、架橋剤、有機ポリマー、合成ポリマー、小分子などである。
【0202】
多数のこのような非タンパク質性部分が当技術分野において公知であり、例えば、Santa Cruz社、Sigma-Aldrich社、Proteochem社などから商業的に入手することができる。具体的な実施形態によれば、非タンパク質性部分は、ヘテロ二官能性架橋剤である。ヘテロ二官能性架橋剤は、2つの異なる反応性末端を有する。典型的には、第1のステップにおいて、単量体をヘテロ二官能性試薬の1つの反応性基で修飾し、残りの遊離試薬を除去する。第2のステップにおいて、修飾された単量体を第2の単量体と混合し、次いでそれを試薬の他方の末端における修飾基と反応させる。最も広く使用されるものは、アミン及びスルフヒドリル基を介してタンパク質をカップリングさせる(少なくとも安定的なアミン反応性NHS-エステルが最初にカップリングし、カップリングしなかった試薬の除去後、スルフヒドリル基へのカップリングが進行する)。スルフヒドリル反応性基は、一般に、マレイミド、ピリジルジスルフィド及びアルファ-ハロセチルである。他の架橋剤としては、カルボキシル基(-COOH)及び第1級アミン(-NH2)間で結合するカルボジイミドが挙げられる。別のアプローチは、1つの単量体のリジン残基をチオールに修飾することであり、第2の単量体はマレイミド基の付加とそれに続く単量体間の安定的なチオエステル結合の形成により修飾する。単量体の1つが天然チオールを有する場合、それらの基は、他の単量体に結合しているマレイミドと直接反応させることができる。1つの光反応性末端を有するヘテロ二官能性架橋剤、例えば、ビス[2-(4-アジドサリチルアミド)エチル)]ジスルフィド、BASEDも存在する。反応する特異的な基が利用可能でない場合、光反応性基が使用される。それというのも、光反応性基はUV光への曝露時に非特異的に反応するためである。このようなヘテロ二官能性架橋剤の非限定的な例としては、限定されるものではないが、アルキン-PEG4-マレイミド、アルキン-PEG5-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、マレイミド-PEG-スクシンイミジルエステル、アジド-PEG4-フェニルオキサジアゾールメチルスルホン、LC-SMCC(スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロエート))、MPBH(4-(4-N-マレイミドフェニル)酪酸ヒドラジド塩酸塩+1/2ジオキサン)、PDPH(3-(2-ピリジルジチオ)プロピオニルヒドラジド)、SIAB(N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート)、SMPH(スクシンイミジル-6-((b-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート)、スルホ-KMUS(N-(κ-マレイミドウンデカノイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル)、スルホ-SIAB(スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート)、3-(マレイミド)プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、塩化メトキシカルボニルスルフェニル、プロパルギル-PEG-酸、アミノ-PEG-t-ブチルエステル、BocNH-PEG5-酸、BMPH(N-(β-マレイミドプロピオン酸)ヒドラジド、トリフルオロ酢酸塩)、ANB-NOS、BMPS、EMCS、GMBS、LC-SPDP、MBS、SBA、SIA、スルホ-SIA、SMCC、SMPB、SMPH、SPDP、スルホ-LC-SPDP、スルホ-MBS、スルホ-SANPAH、スルホ-SMCCが挙げられる。
【0203】
他の具体的な実施形態によれば、二量体化部分は、タンパク質性部分である。
【0204】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、二量体化タンパク質性部分のN末端に結合している。
【0205】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは、二量体化タンパク質性部分のC末端に結合している。
【0206】
具体的な実施形態によれば、二量体化部分は、2つの異なる親和性相補性タグについての2つの別個の親和性部分を有する親和性ペアポリペプチドのメンバーを含む。このような親和性ペアは当技術分野において周知であり、それとしては、限定されるものではないが、ヘマグルチニン(HA)、抗HA、アビタグ(商標)、V5、Myc、T7、FLAG、HSV、VSV-G、His、ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン、リザベジン(rhizavedin)、金属親和性タグ、レシチン親和性タグが挙げられる。当業者は、どのタグを選択するかを把握する。
【0207】
具体的な実施形態によれば、二量体化部分は、ロイシンジッパー又はヘリックス-ループ-ヘリックスを含む。
【0208】
具体的な実施形態によれば、二量体化部分は、抗体又はその断片のFcドメインである。
【0209】
具体的な実施形態によれば、Fcは、IgG、IgA、IgD又はIgEのものである。
【0210】
具体的な実施形態によれば、Fcドメインは、IgGのものである。
【0211】
具体的な実施形態によれば、Fcドメインは、IgG1又はIgG4のものである。
【0212】
具体的な実施形態によれば、Fcドメインは、ヒトIgG4のものである。
【0213】
本発明の具体的な実施形態で使用することができるヒトIgG4Fcドメインの非限定的な例は、配列番号63に提供される。
【0214】
具体的な実施形態によれば、Fcドメインは、ヒトIgG1のものである。
【0215】
本発明の具体的な実施形態で使用することができるヒトIgG1Fcドメインの非限定的な例は、配列番号64に提供される。
【0216】
具体的な実施形態によれば、Fcドメインは、保存的及び非保存的アミノ酸置換(保存的及び非保存的置換に関する詳細な説明は以下に提供される)を含み得る。Fcドメイン中のこのような置換は当技術分野において公知であり、以下にさらに記載される。
【0217】
例えば、抗体のFcドメインを使用してヘテロ二量体を生成するために使用することができる多数の機序、例えば、限定されるものではないが、ノブ・イントゥ・ホール又は電荷ペア(例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれるGunasekaran et al., J. Biol. Chem. (2010) 285 (25):19637を参照のこと)が存在する。
【0218】
本発明の具体的な実施形態で使用することができる代表例は、「ノブ・イントゥ・ホール」(「KIH」)形態である。このようなノブ及びホール突然変異は当技術分野において周知であり、例えば、内容が完全に参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8216805号明細書、Shane Atwell et Al. J. Mol. Biol. (1997) 270, 26-35、Cater et al. (Protein Engineering vol.9 no.7 pp.617-621, 1996、及びA. Margaret Merchant et.al. Nature Biotechnology (1998) 16 Julyに開示されている。加えて、Merchant et al., Nature Biotech. 16:677 (1998)に記載のとおり、それらの「ノブ及びホール」突然変異は、ジスルフィド結合と組み合わせてヘテロ二量体化への形成の偏りを生じさせることができる。
【0219】
したがって、具体的な実施形態によれば、単量体の一方は、ノブ突然変異を含むFcドメインを含み、他方の単量体は、ホール突然変異を含むFcドメインを含む。
【0220】
特定の免疫グロブリンクラス及びサブクラスから具体的な免疫グロブリンFcドメインを選択すること、並びにノブ突然変異のための第1のFcバリアント及びホール突然変異のための他のものを選択することは当業者の範囲内である。具体的な実施形態で使用することができる置換の非限定的な例としては、S228P、L235E、T366W、Y349C、T366S、L368A、Y407V及び/若しくはE356C[全長抗体の一部としてのヒトIgG4に対応するEUナンバリング(Kabat,E.A., T. T. Wu, M. Reid-Miller, H. M. Perry and K.S. Gottesman.1987. Sequences of proteins of Immunological Interest. US. Dept. of Health and Human Services, Bethesda)に従う]、又はL235A、Y349C、T366W、T354C、D356C、T366S、L368A及び/若しくはY407V[全長抗体の一部としてのヒトIgG1に対応するEUナンバリング(Kabat, E.A., T.T. Wu, M. Reid-Miller, H.M. Perry and K.S. Gottesman. 1987. Sequences of proteins of Immunological Interest. US. Dept. of Health and Human Services, Bethesda)に従う]が挙げられる。
【0221】
本発明の具体的な実施形態で使用することができるノブ突然変異を含むIgG4Fcドメインの非限定的な例は、配列番号65、59及び60に提供される。
【0222】
本発明の具体的な実施形態で使用することができるホール突然変異を含むIgG4Fcドメインの非限定的な例は、配列番号66、61及び62に提供される。
【0223】
本発明の具体的な実施形態で使用することができるノブ突然変異を含むIgG1Fcドメインの非限定的な例は、配列番号31、67及び86に提供される。
【0224】
本発明の具体的な実施形態で使用することができるホール突然変異を含むIgG1Fcドメインの非限定的な例は、配列番号29、68及び85に提供される。
【0225】
具体的な実施形態によれば、Fcドメインは、配列番号63、64、65、59、60、66、61、62、31、67、86、29、68及び85からなる群より選択されるアミノ酸配列若しくは本明細書に開示される所望の活性を示すそれらの機能的断片と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%の同一性若しくは相同性を有するアミノ酸配列を含み、又はそれをコードするポリヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0226】
具体的な実施形態によれば、Fcドメインは、Fc受容体へのその結合を変更し、その免疫活性化機能を低減させ、及び/又は融合物の半減期を改善するように修飾されている。
【0227】
他の具体的な実施形態によれば、Fcドメインは、Fc受容体へのその結合を変更し、その免疫活性化機能を低減させ、及び/又は融合物の半減期を改善するように修飾されていない。
【0228】
具体的な実施形態によれば、Fcドメインは、インビボでFc受容体(例えば、Fc.ガンマ.RI、Fc.ガンマ.RII及びFc.ガンマ.RIII)への結合を低減させ、又は妨害するように修飾されている。このような修飾は、例えば、一連の突然変異体IgG1、IgG2及びIgG4Fcドメイン並びにそれらのFc.ガンマ.R結合特性を設計及び記載したClarkら(内容が参照により全体として本明細書に組み込まれるArmour et al., 1999、Armour et al., 2002)により記載されている。ヒトIgG1のFcにおけるFc受容体へのその結合を低減させるための追加的又は代替的な修飾は、アミノ酸L234及びL235[全長抗体に対応するEUナンバリング(Kabat et al.)に従う]をFc受容体結合に必須であると同定したCHAPPEL et al.(内容が参照により全体として本明細書に組み込まれるProc. Natl. Acad. Sci (1991) 88:9036-9040)により記載されている。P329のGへの追加の置換は結合をいっそう弱め、このLALA-PGの置換の組み合わせは、例えば、内容が参照により全体として本明細書に組み込まれるSchlothauer, T., et al. (2016) Protein Eng. Des. Sel. 29, 457-466、及び国際公開第2012/130831号パンフレット)により記載されている。ヒトIgG4のFcにおける、Fabアーム交換を妨害するため及びFc受容体へのその結合を低減させるための追加的又は代替的修飾は、S228P及びL235E[全長抗体に対応するEUナンバリング(Kabat et al.)に従う]をそれぞれ同定したJohn-Paul Silva et al.(内容が参照により全体として本明細書に組み込まれるTHE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY (2015), 290:9, 5462-5469)及びNewman et al.(内容が参照により全体として本明細書に組み込まれるClinical Immunology (2001) 98:2)により記載されている。
【0229】
具体的な実施形態によれば、Fcドメインは、FcγRIIIa結合を最大化するために修飾されている。このような修飾は、例えば、内容が参照により全体として本明細書に組み込まれるShields RL J Biol Chem. (2001) 276:6591、Smith P, Proc Natl Acad Sci USA. (2012) 109:6181、Stavenhagen et al., Cancer Res (2007) 67:8882, Lazar et al., Proc Natl Acad Sci USA (2006) 103:4005、Richards et al., 2008 Cancer Ther 7:2517及びMimoto et al.,(2013) MAbs 5:229により記載されている。具体的な実施形態で使用することができるこのような修飾の非限定的な例としては、S298、E333及びK334から選択される1つ以上のアミノ酸残基の置換[全長抗体に対応するEUナンバリング(Kabat et al.)に従う](例えば、S298A、E333A、K334A)、G236A、S239A、A330L及びI332E、F243L、R292P、Y300L、V305I及びP396L、S239D、I332E及びA330L、236A、S239D及びI332E、並びに重鎖中の非対称置換-L234Y/L235Q/G236W/S239M/H268D/D270E/S298A及び反対側の重鎖中のD270E/K326D/A330M/K334Eが挙げられる。
【0230】
具体的な実施形態によれば、Fcドメインは、エフェクター機能を変更するため、例えば、補体結合を低減させるため、及び/又は補体依存性細胞傷害を低減若しくは停止させるために修飾されている。このような修飾は、例えば、内容が参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,624,821号明細書及び同第5,648,260号明細書、米国特許第6,194,551号明細書、国際公開第99/51642号パンフレット、Wines et al., 2000, Idusogie et al. (2000) J. Immunol. 164:4178、Tao et al. (1993) J. Exp. Med. 178:661及びCanfield & Morrison (1991) J. Exp. Med. 173:1483に記載されている。具体的な実施形態で使用することができるこのような修飾の非限定的な例としては、234、235、236、237、297、318、320及び322、329、331及び322、L234及び/又はL235から選択される位置[全長抗体に対応するEUナンバリング(Kabat et al.)に従う]における1つ以上のアミノ酸の置換(例えば、L234A及び/又はL235A)、D270、K322、P329及びP331(例えば、D270A、K322A、P329A及びP331A)が挙げられる。
【0231】
具体的な実施形態によれば、Fcドメインは、融合タンパク質の半減期を改善するように修飾されている。このような変更は、例えば、内容が参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第5,869,046号明細書及び米国特許第6,121,022号明細書に記載されている。例えば、252(例えば、Thrを導入するため)、254(例えば、Serを導入するため)及び256(例えば、Pheを導入するため)から選択される位置[全長抗体に対応するEUナンバリング(Kabat et al.)に従う]における1つ以上のアミノ酸の置換である。半減期を改善するための別の修飾は、サルベージ受容体モチーフ、例えば、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループ中に見出されるものを導入するためのCH1又はCL領域の変更によるものであり得る。
【0232】
FcRn結合の最大化及び半減期の延長は、例えば、内容が参照により全体として本明細書に組み込まれるStapleton NM, Nat Commun. (2011) 2:599、Shields RL. J Biol Chem. (2001) 276:6591、Dall’acqua WF J Immunol. (2002) 169:5171、Zalevsky J,Nat Biotechnol. (2010) 28:157、Ghetie V,. Nat. Biotechnol. (1997) 15:637及びMonnet C, MAbs. (2014) 6:422にも記載されている。具体的な実施形態で使用することができるこのような修飾の非限定的な例としては、Arg435His、Asn434Ala、Met252Tyr、Ser254Thr、及びThr256Glu、Met428Leu及びAsn434Ser、Thr252Leu、Thr253Ser及びThr254Phe、Glu294デルタ、Thr307Pro及びAsn434Tyr、Thr256Asn、Ala378Val、Ser383Asn及びAsn434Tyrから選択される1つ以上のアミノ酸残基[全長抗体に対応するEUナンバリング(Kabat et al.)に従う]の置換が挙げられる。
【0233】
本発明の具体的な実施形態で使用することができるLILRB2-Fc融合物配列の非限定的な例は、以下の表3に記載される。
【0234】
本発明の具体的な実施形態で使用することができるLILRB2-Fc融合物配列の非限定的な例は、配列番号37、39、41、43、45、47、49、51、53、55、57、96、98、及び101に提供される。
【0235】
具体的な実施形態によれば、LILRB2-Fc融合物は、配列番号39、41、43、45、47、49、51、53、55及び57からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%の同一性若しくは相同性を有するアミノ酸配列、又はそれをコードするポリヌクレオチド配列(以下にさらに記載される)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0236】
具体的な実施形態によれば、LILRB2-Fc融合物アミノ酸配列は、配列番号39、41、43、45、47、49、51、53、55及び57からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一であり、各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0237】
具体的な実施形態によれば、LILRB2-Fc融合物アミノ酸配列は、配列番号39、41、43、45、47、49、51、53、55及び57からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0238】
具体的な実施形態によれば、LILRB2-Fc融合物アミノ酸配列は、配列番号39、41、43、45、47、49、51、53、55及び57に示すものであり、各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0239】
一部の実施形態のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドは二量体化部分を含むため、本発明の追加的又は代替的態様によれば、本明細書に開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物又はそれを含む融合ポリペプチドを含む二量体が提供される。
【0240】
本発明の追加的又は代替的態様によれば、本明細書に開示される二量体を含む組成物であって、二量体は、組成物中のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)の優勢形態である組成物が提供される。
【0241】
具体的な実施形態によれば、組成物中のLILRB2ポリペプチドの少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%は、本明細書に開示される二量体である。
【0242】
具体的な実施形態によれば、組成物中のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドの少なくとも90%は、本明細書に開示される二量体である。
【0243】
二量体化を決定する方法は当技術分野において周知であり、それとしては、限定されるものではないが、ネイティブ-PAGE、SEC-HPLC2Dゲル、ゲル濾過、SEC-MALS、分析的超遠心(AUC)質量分析(MS)、キャピラリーゲル電気泳動(CGE)が挙げられる。
【0244】
具体的な実施形態によれば、二量体の単量体は、共有結合的に結合していない。
【0245】
他の具体的な実施形態によれば、二量体の単量体は、共有結合的に結合している。
【0246】
他の具体的な実施形態によれば、二量体の単量体は、ジスルフィド結合により結合している。
【0247】
二量体は、ホモ二量体又はヘテロ二量体であり得る。
【0248】
具体的な実施形態によれば、二量体は、ヘテロ二量体である。
【0249】
本明細書に記載のとおり、用語「ヘテロ二量体」は、2つの異なるタンパク質(本明細書において単量体と称される)の人工的結合により形成される、非天然存在の二量体タンパク質を指す。
【0250】
したがって、本発明の追加的又は代替的態様によれば、本明細書に開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドを含む第1の単量体、それを含む組成物又はそれを含む融合ポリペプチドと、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)とは区別されるポリペプチドを含む第2の単量体とを含むヘテロ二量体が提供される。
【0251】
第2の単量体中に含まれる好適な区別されるポリペプチドを選択することは当業者の範囲内である。このようなポリペプチドの非限定的な例としては、I型膜タンパク質、II型膜タンパク質及び免疫チェックポイントタンパク質又は少なくともそれらの天然結合ペアに結合し得るそれらの機能的断片若しくはホモログが挙げられる。
【0252】
本明細書において使用される場合、語句「I型膜タンパク質」は、N末端細胞外ドメインを有する膜貫通タンパク質を指す。
【0253】
本発明の具体的な実施形態で使用することができるこのようなI型膜タンパク質の非限定的な例としては、PD1、SIRPα、LAG3、BTN3A1、CD27、CD80、CD86、ENG、NLGN4X、CD84、TIGIT、CD40、IL-8、IL-10、CD164、LY6G6F、CD28、CTLA4、BTLA、LILRB1、LILRB4、TYROBP、ICOS、VEGFA、CSF1、CSF1R、VEGFB、BMP2、BMP3、GDNF、PDGFC、PDGFD、RAET1E、CD155、CD166、MICA、NRG1、HVEM、DR3、TEK、TGFBR(例えば、TGFBR1)、LY96、CD96、KIT、CD244 GFER及びSIGLEC(例えば、SIGLEC10)が挙げられる。
【0254】
具体的な実施形態によれば、I型膜タンパク質は、PD1、SIRPα、LAG3、TIGIT、LILRB1、CSF1、CSF1R及びTGFBRからなる群より選択される。
【0255】
具体的な実施形態によれば、I型膜タンパク質は、PD1、SIRPα、TIGIT及びSIGLECからなる群より選択される。
【0256】
具体的な実施形態によれば、I型膜タンパク質は、免疫モジュレーターである。
【0257】
本明細書において使用される場合、用語「免疫モジュレーター」は、免疫細胞応答(すなわち、活性化又は機能)を調節するタンパク質を指す。免疫モジュレーターは、免疫細胞活性化若しくは機能を正に調節し得、又は免疫細胞活性化若しくは機能を負に調節し得る。このような免疫モジュレーターは当技術分野において公知であり、それとしては、免疫チェックポイントタンパク質、サイトカインなどが挙げられる。
【0258】
具体的な実施形態によれば、免疫モジュレーターは、免疫アクチベーターである。
【0259】
他の具体的な実施形態によれば、免疫モジュレーターは、免疫サプレッサー又はインヒビターである。
【0260】
I型膜タンパク質免疫モジュレーターの非限定的な例としては、限定されるものではないが、PD1、SIRPα、CD28、CSF1R、IL-8、IL-10、CTLA4、ICOS、CD27、CD80、CD86、SIGLEC10及びTIGITが挙げられる。
【0261】
本明細書において使用される場合、語句「II型膜タンパク質」は、C末端細胞外ドメインを有する膜貫通タンパク質を指す。
【0262】
本発明の具体的な実施形態で使用することができるこのようなII型膜タンパク質の非限定的な例としては、4-1BBL、FasL、TRAIL、TNF-アルファ、TNF-ベータ、OX40L、CD40L、CD27L、CD30L、RANKL、TWEAK、APRIL、BAFF、LIGHT、VEGI、GITRL、EDAl/2、リンホトキシンアルファ及びリンホトキシンベータが挙げられる。
【0263】
具体的な実施形態によれば、II型膜タンパク質は、4-1BBL、OX40L、CD40L、LIGHT及びGITRLからなる群より選択される。
【0264】
具体的な実施形態によれば、II型膜タンパク質は、免疫モジュレーターである。
【0265】
このような免疫モジュレーターとしては、限定されるものではないが、4-1BBL、TNF-アルファ、TNF-ベータ、OX40L、CD40L、CD27L及びCD30Lが挙げられる。
【0266】
本明細書において使用される場合、用語「免疫チェックポイントタンパク質」は、免疫細胞活性化又は機能を調節するタンパク質を指す。免疫チェックポイントタンパク質は、共刺激タンパク質(すなわち、免疫細胞の活性化をもたらす刺激シグナルを伝達する)又は阻害タンパク質(すなわち、免疫細胞の活性抑制をもたらす阻害シグナルを伝達する)のいずれかであり得る。一部の実施形態によれば、免疫チェックポイントタンパク質は、T細胞の活性化又は機能を調節する。多数のチェックポイントタンパク質は当技術分野において公知であり、それとしては、限定されるものではないが、PD1、PDL-1、B7H2、B7H4、CTLA-4、CD80、CD86、LAG-3、TIM-3、KIR、IDO、CD19、OX40、4-1BB(CD137)、CD27、CD70、CD40、GITR、CD28及びICOS(CD278)が挙げられる。
【0267】
具体的な実施形態によれば、ヘテロ二量体の第1の単量体は、本明細書に開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドを含み、第2の単量体は、SIRPα、PD1、TIGIT及びSIGLEC10からなる群より選択されるタンパク質のアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、その天然結合ペアに結合し得る。
【0268】
具体的な実施形態によれば、ヘテロ二量体の第1の単量体は、本明細書に開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドを含み、第2の単量体は、SIRPαのアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、CD47に結合し得る。
【0269】
本発明の具体的な実施形態で使用することができるLILRB2及びSIRPαのヘテロ二量体の配列の非限定的な例は、以下の表3に記載される。
【0270】
「SIRPα(シグナル調節タンパク質アルファ、CD172aとしても公知)」は、SIRPA遺伝子(遺伝子ID140885)によりコードされるポリペプチドを指す。具体的な実施形態によれば、SIRPαは、ヒトSIRPαである。具体的な実施形態によれば、SIRPαは、例えば、以下のGenBank番号NP_001035111、NP_001035112、NP_001317657又はNP_542970で提供されるヒトSIRPαを指す。
【0271】
SIRPαの公知の結合ペアは、CD47である。具体的な実施形態によれば、CD47タンパク質は、例えば、以下のGenBank番号NP_001768又はNP_942088で提供されるヒトタンパク質を指す。
【0272】
本明細書において使用される場合、用語「SIRPαポリペプチド」は、全長SIRPα、少なくともCD47に結合する能力を維持するその機能的断片又はそのホモログを指す。例えば、具体的な実施形態によれば、SIRPαのアミノ酸配列は、さらに前述及び後述される置換、付加及び欠失突然変異を含む。
【0273】
具体的な実施形態によれば、SIRPαポリペプチドは、SIRPαの細胞外ドメイン又はCD47に結合し得るその機能的断片を含む。
【0274】
具体的な実施形態によれば、SIRPαポリペプチドは、配列番号27又はCD47に結合し得るその機能的断片を含む。
【0275】
具体的な実施形態によれば、SIRPαポリペプチドは、配列番号27を含む。
【0276】
具体的な実施形態によれば、SIRPαポリペプチドは、配列番号27からなる。
【0277】
具体的な実施形態によれば、SIRPαポリペプチドは、配列番号88又はCD47に結合し得るその機能的断片を含む。
【0278】
具体的な実施形態によれば、SIRPαポリペプチドは、配列番号88を含む。
【0279】
具体的な実施形態によれば、SIRPαポリペプチドは、配列番号88からなる。
【0280】
用語「SIRPαポリペプチド」は、所望の活性(すなわち、CD47への結合)を示す機能的ホモログも包含する。このようなホモログは、例えば、本明細書に記載されるSIRPα配列(例えば、配列番号27、88)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一若しくは相同であり得、又はそれをコードするポリヌクレオチド配列(以下にさらに記載される)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%若しくは100%同一であり得る。
【0281】
具体的な実施形態によれば、SIRPαアミノ酸配列は、配列番号27又は88と少なくとも90%同一である。
【0282】
具体的な実施形態によれば、SIRPαポリペプチドは、保存的及び非保存的アミノ酸置換(保存的及び非保存的置換に関する詳細な説明は以下に提供される)を含み得る。このような置換の非限定的な例は当技術分野において公知であり、例えば、内容が完全に参照により本明細書に組み込まれるWeiskopf K et al. Science. (2013), 341 (6141):88-91に開示されている。
【0283】
具体的な実施形態によれば、SIRPαポリペプチドは、100~504、100~500アミノ酸、150~450アミノ酸、200~400アミノ酸、250~400アミノ酸、300~400アミノ酸、320~420アミノ酸、340~350アミノ酸、300~400アミノ酸、340~450アミノ酸、100~200アミノ酸、100~150アミノ酸、100~125アミノ酸、100~120アミノ酸、100~119アミノ酸、105~119アミノ酸、110~119アミノ酸、115~119アミノ酸、105~118アミノ酸、110~118アミノ酸、115~118アミノ酸、105~117アミノ酸、110~117アミノ酸、115~117アミノ酸を含み、各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0284】
具体的な実施形態によれば、ヘテロ二量体の第1の単量体は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21及び23からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むLILRB2ポリペプチドを含み、第2の単量体は、SIRPαのアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、配列番号27又は88と少なくとも少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0285】
具体的な実施形態によれば、ヘテロ二量体の第1の単量体は、配列番号5、7、9、11、13、15、17、19、21及び23からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むLILRB2ポリペプチドを含み、第2の単量体は、SIRPαのアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列は、配列番号27又は88を含む。
【0286】
具体的な実施形態によれば、ヘテロ二量体の第1の単量体は、配列番号39、41、43、45、47、49、51、53、55及び57からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ヘテロ二量体の第2の単量体は、配列番号35、90、94、及び98と少なくとも少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0287】
具体的な実施形態によれば、ヘテロ二量体の第1の単量体は、配列番号39、41、43、45、47、49、51、53、55及び57からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、ヘテロ二量体の第2の単量体は、配列番号35を含む。
【0288】
具体的な実施形態によれば、ヘテロ二量体の第1の単量体は、配列番号39、41、43、45、47、49、51、53、55又は57に示すものであり、ヘテロ二量体の第2の単量体は、配列番号35、90、94又は98に示すものである。
【0289】
具体的な実施形態によれば、本明細書に開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドと、SIRPαのアミノ酸配列とを含むヘテロ二量体は、例えば、癌細胞の食作用を誘導し、又は向上させ得る。
【0290】
具体的な実施形態によれば、本明細書に開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドと、SIRPαのアミノ酸配列とを含むヘテロ二量体は、腫瘍促進M2マクロファージの誘導を妨害し、又は低減させ、腫瘍抑制M1マクロファージの誘導をもたらし得る。
【0291】
具体的な実施形態によれば、本明細書に開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドと、SIRPαのアミノ酸配列とを含むヘテロ二量体は、M0(M2様)マクロファージをM1マクロファージに変換し得る。
【0292】
具体的な実施形態によれば、本明細書に開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドと、SIRPαのアミノ酸配列とを含むヘテロ二量体は、例えば、フローサイトメトリー分析により決定されるとおり、CD47及びHLA-Gの両方を発現する細胞に結合し、CD47及びHLA-Gの一方のみを発現する細胞に有意に結合しない。
【0293】
具体的な実施形態によれば、本明細書に開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドと、SIRPαのアミノ酸配列とを含むヘテロ二量体は、フローサイトメトリー分析により決定されるとおり、赤血球(RBC)に有意に結合しない。
【0294】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド又はそれを含む組成物、融合物若しくは二量体は、異種治療部分に結合している、又はそれを含む。治療部分は、小分子化合物及びポリペプチドを含む任意の分子であり得る。
【0295】
本発明の具体的な実施形態で使用することができる治療部分の非限定的な例としては、細胞傷害性部分、毒性部分、サイトカイン部分、免疫調節部分(例えば、上記にさらに記載される免疫チェックポイント部分、サイトカイン)、ポリペプチド、抗体、薬物、化学物質及び/又は放射性同位体が挙げられる。
【0296】
本発明の一部の実施形態によれば、治療部分は、本発明の一部の実施形態のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、治療部分をコードする核酸配列と翻訳により融合させることによりコンジュゲートされる。
【0297】
追加的に又は代替的に、治療部分は、当業者に公知の任意のコンジュゲーション法を使用して本発明の一部の実施形態のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド又はそれを含む組成物、融合物若しくは二量体に化学的にコンジュゲート(カップリング)させることができる。例えば、ペプチドは、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸Nヒドロキシスクシンイミドエステル(N-スクシンイミジル3-(2ピリジルジチオ)プロピオネートとも呼ばれる)(「SDPD」)(Sigma社製、カタログ番号P-3415、例えば、Cumber et al. 1985, Methods of Enzymology 112:207-224を参照のこと)、グルタルアルデヒドコンジュゲーション手順(例えば、Bioconjugate Techniques,Academic Press, San Diego内のG.T. Hermanson 1996, “Antibody Modification and Conjugationを参照のこと)又はカルボジイミドコンジュゲーション手順[例えば、J. March, Advanced Organic Chemistry: Reaction’s, Mechanism, and Structure, pp.349-50 & 372-74 (3d ed.), 1985、B. Neises et al. 1978, Angew Chem., Int. Ed. Engl. 17:522、A. Hassner et al. 1978, Tetrahedron Lett. 4475、E.P.Boden et al. 1986, J. Org. Chem. 50:2394及びL.J. Mathias 1979, Synthesis 561を参照のこと]を使用して目的の薬剤にコンジュゲートさせることができる。
【0298】
治療部分は、当技術分野において広く実践される標準的な化学合成技術[例えば、hypertexttransferprotocol://worldwideweb(dot)chemistry(dot)org/portal/Chemistry)を参照のこと]を使用して、例えば、ペプチド結合(機能的部分がポリペプチドである場合)を介する、又は介在リンカーエレメント、例えば、リンカーペプチド又は他の化学部分、例えば、有機ポリマーへの共有結合を介する直接的又は間接的な任意の好適な化学結合を使用して、例えば、本発明の一部の実施形態のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド又はそれを含む組成物、融合物若しくは二量体に結合させることができる。キメラペプチドは、ペプチドのカルボキシ(C)若しくはアミノ(N)末端における結合を介して、又は内部化学基、例えば、直鎖、分枝鎖若しくは環状側鎖、内部炭素若しくは窒素原子への結合などを介して結合させることができる。
【0299】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド又はそれを含む組成物、融合物若しくは二量体は、検出可能タグを含む。本明細書において使用される場合、一実施形態において、用語「検出可能タグ」は、実務者により当技術分野において公知の技術を使用して検出することができる任意の部分を指す。検出可能タグは、ペプチド配列であり得る。任意選択で、検出可能タグは、化学物質により、又は酵素的手段、例えば、タンパク質分解により除去可能であり得る。本発明の一部の実施形態の検出可能タグは、ポリペプチド、組成物、融合物又は二量体の精製に使用することができる。例えば、用語「検出可能タグ」には、キチン結合タンパク質(CBP)-タグ、マルトース結合タンパク質(MBP)-タグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)-タグ、ポリ(His)-タグ、FLAGタグ、エピトープタグ、例えば、V5-タグ、c-myc-タグ、及びHA-タグ、及び蛍光タグ、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、及びシアン蛍光タンパク質(CFP)、並びにそれらのタグの誘導体、又は当技術分野において公知の任意のタグが含まれる。用語「検出可能タグ」には、用語「検出可能マーカー」も含まれる。
【0300】
具体的な実施形態によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド又はそれを含む組成物、融合物若しくは二量体は、開裂可能部分を含む。したがって、例えば、回収を容易にするため、発現されるコード配列は、本発明の一部の実施形態のポリペプチド及び融合される開裂可能部分をコードするように工学操作することができる。一実施形態において、ポリペプチドは、それが親和性クロマトグラフィーにより、例えば、開裂可能部分に特異的なカラム上の固定化により容易に単離されるように設計される。一実施形態において、開裂部位はポリペプチド及び開裂可能部分間で工学操作され、ペプチドはクロマトグラフィーカラムから、融合タンパク質をこの部位で特異的に開裂させる適切な酵素又は薬剤での処理により放出させることができる[例えば、Booth et al., Immunol. Lett. 19:65-70 (1988)、及びGardella et al., J. Biol. Chem. 265:15854-15859 (1990)を参照のこと]。
【0301】
具体的な実施形態によれば、本明細書に開示される組成物、融合物又は二量体中の部分の各々は、部分間を、例えば、ポリペプチド(例えば、LILRB、LILRB2、LILRB1、SIRPα)と二量体化部分とを分離するリンカーを含み得る。
【0302】
他の具体的な実施形態によれば、本明細書に開示される組成物、融合物又は二量体は、ポリペプチド(例えば、LILRB、LILRB2、LILRB1、SIRPα)及び二量体化部分間のリンカーを含まない。
【0303】
当技術分野において公知の任意のリンカーを、本発明の具体的な実施形態で使用することができる。
【0304】
具体的な実施形態によれば、リンカーは、天然存在のマルチドメインタンパク質に由来し得、又は例えば、内容全体が参照により本明細書に組み込まれるChichili et al., (2013), Protein Sci. 22(2):153-167、Chen et al, (2013), Adv Drug Deliv Rev. 65 (10):1357-1369に記載の実験的リンカーである。一部の実施形態において、リンカーは、リンカー設計データベース及びコンピュータプログラム、例えば、内容全体が参照により本明細書に組み込まれるChen et al., (2013), Adv Drug Deliv Rev. 65 (10):1357-1369及びCrasto et al., (2000), Protein Eng. 13 (5):309-312に記載のものを使用して設計することができる。
【0305】
具体的な実施形態によれば、リンカーは、合成リンカー、例えば、PEGである。
【0306】
具体的な実施形態によれば、リンカーは、機能的であり得る。例えば、限定されるものではないが、リンカーは、組成物のフォールディング及び/若しくは安定性を改善し、発現を改善し、薬物動態を改善し、並びに/又は生物活性を改善するように機能し得る。別の例において、リンカーは、組成物を特定の細胞タイプ又は局在に標的化させるように機能し得る。
【0307】
具体的な実施形態によれば、リンカーは、ポリペプチドである。
【0308】
ポリペプチドリンカーの非限定的な例としては、配列LE、GGGGS(配列番号69)、(GGGGS)n(n=1~4)(配列番号70)、GGGGSGGGG(配列番号71)、(GGGGS)×2(配列番号33)、(GGGGS)×2+GGGG(配列番号72)、(GGGGS)×3(配列番号73)、(GGGGS)×4(配列番号74)、(Gly)8(配列番号75)、(Gly)6(配列番号76)、(EAAAK)n(n=1~3)(配列番号77)、A(EAAAK)nA(n=2~5)(配列番号78)、AEAAAKEAAAKA(配列番号79)、A(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4A(配列番号80)、PAPAP(配列番号81)、KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号82)、EGKSSGSGSESKST(配列番号83)、GSAGSAAGSGEF(配列番号84)、及び(XP)n(Xは任意のアミノ酸、例えば、Ala、Lys、又はGluを指定する)を有するリンカーが挙げられる。
【0309】
具体的な実施形態によれば、リンカーは、(GGGGS)×2(配列番号33)である。
【0310】
具体的な実施形態によれば、リンカーは、1~6アミノ酸の長さのものである。
【0311】
具体的な実施形態によれば、リンカーは、(GGGGS)×3(配列番号73)である。
【0312】
具体的な実施形態によれば、リンカーは、1~6アミノ酸の長さのものである。
【0313】
具体的な実施形態によれば、リンカーは、実質的に、グリシン及び/又はセリン残基(例えば、約30%、又は約40%、又は約50%、又は約60%、又は約70%、又は約80%、又は約90%、又は約95%、又は約97%又は100%のグリシン及びセリン)から構成される。
【0314】
具体的な実施形態によれば、リンカーは、単一アミノ酸リンカーである。
【0315】
本発明の一部の実施形態において、1つのアミノ酸は、グリシンである。
【0316】
具体的な実施形態によれば、本明細書に開示される組成物[例えば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合物及び二量体]は、可溶性である(すなわち、合成又は天然存在の表面に固定化されない)。
【0317】
具体的な実施形態によれば、本明細書に開示される組成物[例えば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合物及び二量体]は、合成又は天然存在の表面に固定化される。
【0318】
本明細書に開示される組成物[例えば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合物及び二量体、それをコードするポリヌクレオチド又はそれを発現する宿主細胞]はLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチドを含むため、それらはインビトロ、エクスビボ及び/又はインビボで免疫細胞を活性化させる方法において使用することができる。
【0319】
したがって、本発明の一態様によれば、免疫細胞を活性化させる方法であって、免疫細胞をLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合ポリペプチド若しくは二量体、それをコードするポリヌクレオチド、又はそれを発現する宿主細胞の存在下、インビトロで活性化させることを含む方法が提供される。
【0320】
本明細書において使用される場合、用語「末梢血単核細胞(PBMC)」は、単一の核を有する血球を指し、それには、リンパ球、単球及び樹状細胞(DC)が含まれる。
【0321】
具体的な実施形態によれば、PBMCは、樹状細胞(DC)、マクロファージ、多形核細胞、T細胞、B細胞、NK細胞及びNKT細胞からなる群より選択される。
【0322】
PBMCを得る方法は当技術分野において周知であり、例えば、対象からの全血採血及び抗凝固剤(例えば、ヘパリン又はクエン酸塩)を含有する容器中での収集、及びアフェレーシスである。続いて、具体的な実施形態によれば、少なくとも1つのタイプのPBMCを末梢血から精製する。全血からPBMCを精製するための当業者に公知のいくつかの方法及び試薬、例えば、白血球アフェレーシス、沈降、密度勾配遠心(例えば、フィコール)、遠心エルトリエーション、分画、例えば、赤血球の化学的溶解(例えば、ACKによる)、細胞表面マーカーを使用する(例えば、FACSソーター若しくは磁気細胞分離技術、例えば、Invitrogen社、Stemcell Technologies社、Cellpro社、Advanced Magnetics社、若しくはMiltenyi Biotec社などから市販されているものを使用する)特異的細胞タイプの選択、並びに特異的抗体での根絶(例えば、殺傷)などの方法による、又は陰性選択に基づく親和性ベース精製(例えば、磁気細胞分離技術、FACSソーター及び/又は捕捉ELISA標識を使用する)による特異的細胞タイプの枯渇が存在する。このような方法は、例えば、THE HANDBOOK OF EXPERIMENTAL IMMUNOLOGY、第1巻~第4巻(D.N. Weir編)及びFLOW CYTOMETRY AND CELL SORTING(A. Radbruch編、Springer Verlag, 200)に記載されている。
【0323】
具体的な実施形態によれば、免疫細胞は、腫瘍浸潤リンパ球を含む。
【0324】
本明細書において使用される場合、用語「腫瘍浸潤リンパ球(TIL)は、血流を出て腫瘍中に遊走した単核白血球細胞を指す。
【0325】
具体的な実施形態によれば、TILは、T細胞、B細胞、NK細胞及び単球からなる群より選択される。
【0326】
TILを得る方法は当技術分野において周知であり、例えば、対象から例えば、生検又は剖検により腫瘍サンプルを得ること及びその単一細胞懸濁液を調製することである。単一細胞懸濁液は、任意の好適な様式で、例えば、機械的に(例えば、GentleMACS(商標)ディソシエーター、カリフォルニア、オーバーン、Miltenyi Biotec社製を使用して腫瘍を脱凝集させる)又は酵素的に(例えば、コラゲナーゼ若しくはDNアーゼ)得ることができる。続いて、少なくとも1つのタイプのTILを細胞懸濁液から精製することができる。所望のタイプのTILを精製するための当業者に公知のいくつかの方法及び試薬、例えば、細胞表面マーカーを使用する(例えば、FACSソーター若しくは磁気細胞分離技術、例えば、Invitrogen社、Stemcell Technologies社、Cellpro社、Advanced Magnetics社、若しくはMiltenyi Biotec社などから市販されているものを使用する)特異的細胞タイプの選択、並びに特異的抗体での根絶(例えば、殺傷)などの方法による、又は陰性選択に基づく親和性ベース精製(例えば、磁気細胞分離技術、FACSソーター及び/又は捕捉ELISA標識を使用する)による特異的細胞タイプの枯渇が存在する。このような方法は、例えば、THE HANDBOOK OF EXPERIMENTAL IMMUNOLOGY、第1巻~第4巻(D.N. Weir編)及びFLOW CYTOMETRY AND CELL SORTING(A. Radbruch編、Springer Verlag, 200)に記載されている。
【0327】
具体的な実施形態によれば、免疫細胞は、食作用細胞を含む。
【0328】
本明細書において使用される場合、用語「食作用細胞」は、食作用し得る細胞を指し、それには、プロフェッショナル及び非プロフェッショナル食作用細胞の両方が含まれる。食作用を分析する方法は当技術分野において周知であり、それとしては、例えば、キリングアッセイ、フローサイトメトリー及び/又は顕微鏡的評価(生細胞イメージング、蛍光顕微鏡法、共焦点顕微鏡法、電子顕微鏡法)が挙げられる。具体的な実施形態によれば、食作用細胞は、単球、樹状細胞(DC)及び顆粒球からなる群より選択される。
【0329】
具体的な実施形態によれば、食細胞は、顆粒球を含む。
【0330】
具体的な実施形態によれば、食細胞は、単球を含む。
【0331】
具体的な実施形態によれば、免疫細胞は、単球を含む。
【0332】
具体的な実施形態によれば、用語「単球」は、循環単球及び組織中に存在するマクロファージ(単核食細胞とも称される)の両方を指す。
【0333】
具体的な実施形態によれば、単球は、マクロファージを含む。典型的には、マクロファージの細胞表面表現型としては、CD14、CD40、CD11b、CD64、F4/80(マウス)/EMR1(ヒト)、リゾチームM、MAC-1/MAC-3及びCD68が挙げられる。
【0334】
具体的な実施形態によれば、単球は、循環単球を含む。典型的には、循環単球の細胞表面表現型としては、CD14及びCD16(例えば、CD14++CD16-、CD14+CD16++、CD14++CD16+)が挙げられる。
【0335】
具体的な実施形態によれば、免疫細胞は、DCを含む。
【0336】
本明細書において使用される場合、用語「樹状細胞(DC)」は、リンパ又は非リンパ組織中に見出される形態学的に類似の細胞タイプの多様な集団の任意のメンバーを指す。DCは、プロフェッショナル抗原提示細胞のクラスであり、HLA拘束性T細胞を感作する能力が高い。DCとしては、例えば、形質細胞様樹状細胞、骨髄樹状細胞(未成熟及び成熟樹状細胞を含む)、ランゲルハンス細胞、指状嵌入細胞、濾胞樹状細胞が挙げられる。樹状細胞は、機能により、又は表現型により、特に細胞表面表現型により認識することができる。これらの細胞は、細胞表面上のベール様突起を有するそれらの区別される形態、中程度から高レベルの表面HLAクラスII発現及び抗原をT細胞に、特にナイーブT細胞に提示する能力により特徴付けられる(Steinman R,et al., Ann. Rev. Immunol. 1991, 9:271-196を参照のこと)。典型的には、DCの細胞表面表現型としては、CDla+、CD4+、CD86+、又はHLA-DRが挙げられる。DCという用語は、未成熟及び成熟DCの両方を包含する。
【0337】
具体的な実施形態によれば、免疫細胞は、顆粒球を含む。
【0338】
本明細書において使用される場合、用語「顆粒球」は、細胞質中の顆粒の存在により特徴付けられる多形核白血球を指す。
【0339】
具体的な実施形態によれば、顆粒球は、好中球を含む。
【0340】
具体的な実施形態によれば、顆粒球は、肥満細胞を含む。
【0341】
具体的な実施形態によれば、免疫細胞は、T細胞を含む。
【0342】
本明細書において使用される場合、用語「T細胞」は、CD3+、CD4+又はCD8+表現型のいずれかを有するT細胞受容体(TCR)+を有する分化リンパ球を指す。T細胞は、エフェクター又は制御性T細胞のいずれかであり得る。
【0343】
本明細書において使用される場合、用語「エフェクターT細胞」は、他の免疫細胞を例えば、サイトカインの産生により活性化させ、若しくは指向し、又は細胞傷害活性を有するT細胞、例えば、CD4+、Th1/Th2、CD8+細胞傷害性Tリンパ球を指す。
【0344】
本明細書において使用される場合、用語「制御性T細胞」は「Treg」は、エフェクターT細胞を含む他のT細胞、及び自然免疫系細胞の活性化を負に調節するT細胞を指す。Treg細胞は、エフェクターT細胞応答の持続的抑制により特徴付けられる。具体的な実施形態によれば、Tregは、CD4+CD25+Foxp3+T細胞である。
【0345】
具体的な実施形態によれば、T細胞は、CD4+T細胞である。
【0346】
他の具体的な実施形態によれば、T細胞は、CD8+T細胞である。
【0347】
具体的な実施形態によれば、T細胞は、メモリーT細胞である。メモリーT細胞の非限定的な例としては、CD3+/CD4+/CD45RA-/CCR7-表現型を有するエフェクターメモリーCD4+T細胞、CD3+/CD4+/CD45RA-/CCR7+表現型を有するセントラルメモリーCD4+T細胞、CD3+/CD8+CD45RA-/CCR7-表現型を有するエフェクターメモリーCD8+T細胞及びCD3+/CD8+CD45RA-/CCR7+表現型を有するセントラルメモリーCD8+T細胞が挙げられる。
【0348】
具体的な実施形態によれば、T細胞は、目的の発現産物をコードする核酸配列で形質導入された工学操作T細胞を含む。
【0349】
具体的な実施形態によれば、目的の発現産物は、T細胞受容体(TCR)又はキメラ抗原受容体(CAR)である。
【0350】
本明細書において使用される場合、語句「TCRをコードする核酸配列で形質導入された」又は「TCRをコードする核酸配列で形質導入すること」は、MHCの状況下で提示される所望の抗原に対する特異性を有するT細胞からの可変α及びβ鎖のクローニングを指す。TCRで形質導入する方法は当技術分野において公知であり、例えば、Nicholson et al. Adv Hematol.2012, 2012:404081、Wang and Riviere Cancer Gene Ther. 2015 Mar, 22(2):85-94)、及びLamers et al, Cancer Gene Therapy (2002) 9,613-623に開示されている。
【0351】
本明細書において使用される場合、語句「CARをコードする核酸配列で形質導入された」又は「CARをコードする核酸配列で形質導入すること」は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列のクローニングを指し、CARは、抗原認識部分及びT細胞活性化部分を含む。キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞シグナリング又はT細胞活性化ドメインに結合している抗体の抗原結合ドメイン(例えば、単鎖可変断片(scFv))を含有する人工的に構築されたハイブリッドタンパク質又はポリペプチドである。CARで形質導入する方法は当技術分野において公知であり、例えば、Davila et al. Oncoimmunology. 2012 Dec 1, 1(9): 1577-1583、Wang and Riviere Cancer Gene Ther. 2015 Mar, 22 (2): 85-94)、Maus et al. Blood. 2014 Apr 24, 123 (17): 2625-35、Porter DL The New England journal of medicine. 2011, 365 (8):725-733、Jackson HJ, Nat Rev Clin Oncol. 2016, 13 (6):370-383、及びGloberson-Levin et al. Mol Ther. 2014, 22 (5):1029-1038に開示されている。
【0352】
具体的な実施形態によれば、免疫細胞は、B細胞を含む。
【0353】
本明細書において使用される場合、用語「B細胞」は、B細胞受容体(BCR)+、CD19+及び又はB220+表現型を有するリンパ球を指す。B細胞は、特異的抗原に結合し、体液性応答を誘発するそれらの能力により特徴付けられる。
【0354】
具体的な実施形態によれば、免疫細胞は、NK細胞を含む。
【0355】
本明細書において使用される場合、用語「NK細胞」は、CD16+CD56+及び/又はCD57+TCR-表現型を有する分化リンパ球を指す。NKは、「自己」MHC/HLA抗原を発現し得ない細胞に結合し、それを特異的細胞溶解酵素の活性化により殺傷するそれらの能力、NK活性化受容体についてのリガンドを発現する腫瘍細胞又は他の疾患細胞を殺傷する能力、及び免疫応答を刺激又は阻害するサイトカインと呼ばれるタンパク質分子を放出させる能力により特徴付けられる。
【0356】
具体的な実施形態によれば、免疫細胞は、NKT細胞を含む。
【0357】
本明細書において使用される場合、用語「NKT細胞」は、セミインバリアントαβT細胞受容体を発現するが、典型的にはNK細胞、例えば、NK1.1と関連する種々の分子マーカーも発現するT細胞の特殊化集団を指す。NKT細胞としては、NK1.1+及びNK1.1-、並びにCD4+、CD4-、CD8+及びCD8-細胞が挙げられる。NKT細胞上のTCRは、それがMHCI様分子CD1dにより提示される糖脂質抗原を認識するという点でユニークである。NKT細胞は、炎症又は免疫寛容のいずれかを促進するサイトカインを産生するそれらの能力に起因して保護又は有害効果のいずれかを有し得る。
【0358】
具体的な実施形態によれば、免疫細胞は、健常対象から得られる。
【0359】
具体的な実施形態によれば、免疫細胞は、病変(例えば、癌)に罹患している対象から得られる。
【0360】
具体的な実施形態によれば、活性化は、HLA-Gを発現する細胞の存在下で行う。
【0361】
具体的な実施形態によれば、HLA-Gを発現する細胞は、病変(疾患)細胞、例えば、癌細胞を含む。
【0362】
具体的な実施形態によれば、活性化は、細胞増殖、成熟、サイトカイン産生、食作用及び/又は免疫細胞の調節若しくはエフェクター機能の誘導をもたらす少なくとも一次活性化シグナル[例えば、T細胞受容体(TCR)と、抗原提示細胞(APC)上の主要組織適合性複合体(MHC)/ペプチド複合体とのライゲーション]を伝達し得る刺激作用物質の存在下で行う。具体的な実施形態によれば、刺激作用物質は、二次共刺激シグナルも伝達し得る。
【0363】
刺激作用物質は、免疫細胞を抗原依存的又は非依存的(すなわち、ポリクローナル)様式で活性化させ得る。
【0364】
刺激作用物質の量及び刺激作用物質と免疫細胞との比を決定する方法は当業者の技能の十分範囲内であり、したがって本明細書に規定されない。
【0365】
具体的な実施形態によれば、免疫細胞は、活性化後に精製される。
【0366】
したがって、本発明はまた、本発明の方法に従って得られる単離免疫細胞を企図する。
【0367】
具体的な実施形態によれば、本発明に従って使用される、及び/又は得られた免疫細胞は、新鮮単離し、貯蔵し、例えば、任意の段階で、例えば、液体窒素温度で将来的な使用のために長期間(例えば、数か月間、数年間)凍結保存(すなわち、冷凍)することができ、細胞系であり得る。
【0368】
凍結保存の方法は一般に当業者により知られており、例えば、国際公開第2007054160号パンフレット及び国際公開第2001039594号パンフレット並びに米国特許出願公開第20120149108号明細書に開示されている。
【0369】
具体的な実施形態によれば、本発明に従って得られた細胞は、細胞バンク又は寄託機関又は貯蔵施設中で貯蔵することができる。
【0370】
結果的に、本教示は、限定されるものではないが、養子免疫細胞療法のための資源としての、本発明の単離免疫細胞の使用及び方法をさらに示唆する。
【0371】
したがって、具体的な実施形態によれば、本発明の方法は、免疫細胞を必要とする対象に免疫細胞を活性化後に養子移植することを含む。
【0372】
具体的な実施形態によれば、養子細胞療法における使用のための、本発明の方法に従って得られる免疫細胞が提供される。
【0373】
本発明の具体的な実施形態に従って使用される細胞は、自家性又は非自家性であり得、それは同系又は非同系であり得:対象に対して同種又は異種であり得、各可能性は本発明の別個の実施形態を表す。
【0374】
本教示はまた、HLA-Gを発現する病的細胞と関連する疾患を治療する方法における本発明の組成物[例えば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合物若しくは二量体、それをコードするポリヌクレオチド又はそれを発現する宿主細胞]の使用を企図する。
【0375】
したがって、本発明の一態様によれば、HLA-Gを発現する病的細胞と関連する疾患の治療を必要とする対象におけるその疾患を治療する方法であって、対象に治療有効量の本明細書に開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、組成物、融合ポリペプチド若しくは二量体、それをコードするポリヌクレオチド、又はそれを発現する宿主細胞を投与し、それにより対象における疾患を治療することを含む方法が提供される。
【0376】
本発明の追加的又は代替的態様によれば、HLA-Gを発現する病的細胞と関連する疾患の治療を必要とする対象におけるその疾患の治療における使用のための、本明細書に開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、組成物、融合ポリペプチド若しくは二量体、それをコードするポリヌクレオチド、又はそれを発現する宿主細胞が提供される。
【0377】
本明細書において使用される場合、用語「対象」は、MHC系、例えば、ヒトにおけるHLA系を有するヒト又は非ヒト個体を指す。対象は、任意の性別及び任意の年齢の対象であり得る。
【0378】
具体的な実施形態によれば、対象は、ヒト対象である。
【0379】
具体的な実施形態によれば、対象は、疾患(例えば、癌)を有すると診断されており、又は疾患(例えば、癌)を発症するリスクがある。
【0380】
具体的な実施形態によれば、対象の病的細胞は、以下にさらに記載されるとおり、所定の閾値を上回るレベルのHLA-Gを呈する。
【0381】
したがって、具体的な実施形態によれば、本明細書に開示される方法は、例えば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合物若しくは二量体、それをコードするポリヌクレオチド又はそれを発現する宿主細胞の投与前に、対象の生物学的サンプル中のHLA-Gのレベルを決定すること及びそれに応じて対象を治療することをさらに含む。
【0382】
本明細書において使用される場合、用語「治療」は、病変(疾患、障害、若しくは病態、例えば、癌)の発症を阻害し、予防し、若しくは停止させること、及び/又は病変の軽減、寛解、若しくは退縮を引き起こすことを指す。当業者は、種々の方法及びアッセイを使用して病変の発症を評価することができ、同様に種々の方法及びアッセイを使用して病変の軽減、寛解又は退縮を評価することができることを理解する。
【0383】
具体的な実施形態によれば、治療は、腫瘍容積の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、平均余命の増加、又は癌性病態と関連する種々の生理学的症状の好転により評価することができる。
【0384】
本明細書において使用される場合、語句「HLA-Gを発現する病的細胞と関連する疾患」は、HLA-Gを呈する病的細胞が疾患の発生及び/又は進行をドライブする疾患を指す。
【0385】
具体的な実施形態によれば、病的細胞は、所定の閾値を上回るレベルのHLA-Gを呈する。
【0386】
このような所定の閾値は、疾患(例えば、癌)を有すると診断された対象に由来する生物学的サンプル中の呈示レベルを、健常対象(例えば、疾患、例えば、癌を有さない)から得られた生物学的サンプルと比較することにより実験的に決定することができる。代替的に又は追加的に、このような所定の閾値は、病的細胞(例えば、癌細胞)中の呈示レベルを、同じ対象から得られた健常細胞中の呈示レベルと比較することにより実験的に決定することができる。或いは、このようなレベルは、科学文献から及びデータベースから得ることができる。
【0387】
具体的な実施形態によれば、所定の閾値を上回るレベルは、統計的に有意である。
【0388】
具体的な実施形態によれば、所定の閾値からの増加は、同じアッセイを使用して測定される対照サンプルと比較して少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%又はそれよりも多く、約2倍超、約3倍超、約4倍超、約5倍超、約6倍超、約7倍超、約8倍超、約9倍超、約20倍超、約50倍超、約100倍超、約200倍超、約350超、約500倍超、約1000倍超、又はそれよりも多い。
【0389】
HLA-G発現を決定する方法は当技術分野において公知であり、それとしては、例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学検査、ELISAなどが挙げられる。
【0390】
代替的に又は追加的に、このような所定の閾値は、ELISA、免疫組織化学検査又はフローサイトメトリーにより決定される、HLA-Gの検出可能レベルである。
【0391】
本発明の具体的な実施形態で治療することができる疾患の非限定的な例としては、癌、ウイルス感染(例えば、HCMV、HSV-1、RABV、HCV、IAV及びHIV-1)、自己免疫及び炎症性疾患、同種移植後、GVHDが挙げられる。
【0392】
具体的な実施形態によれば、疾患は、癌である。
【0393】
本発明の一部の実施形態により治療することができる癌は、任意の固形又は非固形腫瘍、癌転移及び/又は前癌であり得る。
【0394】
具体的な実施形態によれば、癌は、悪性癌である。
【0395】
癌の例としては、限定されるものではないが、癌腫、芽細胞腫、肉腫及びリンパ腫が挙げられる。このような癌のより特定の例としては、限定されるものではないが、胃腸管の腫瘍(結腸癌腫、直腸癌腫、結腸直腸癌腫、結腸直腸癌、結腸直腸腺腫、遺伝性非ポリポーシス1型、遺伝性非ポリポーシス2型、遺伝性非ポリポーシス3型、遺伝性非ポリポーシス6型、結腸直腸癌、遺伝性非ポリポーシス7型、小腸及び/若しくは大腸癌腫、食道癌、食道癌を伴う胼胝症、胃癌腫、膵臓癌腫、膵内分泌腫瘍)、子宮内膜癌腫、隆起性皮膚線維肉腫、胆嚢癌腫、胆道腫瘍、前立腺癌、前立腺腺癌、腎臓癌(例えば、ウィルムス腫瘍2型又は1型)、肝臓癌(例えば、肝芽腫、肝細胞癌腫、肝細胞癌)、膀胱癌、胎児性横紋筋肉腫、胚細胞腫瘍、絨毛性腫瘍、精巣胚細胞腫瘍、卵巣、子宮、上皮性卵巣の未熟型奇形腫、仙尾部腫瘍、絨毛腫、胎盤部トロホブラスト腫瘍、上皮性成人腫瘍(epithelial adult tumor)、卵巣癌腫、漿液性卵巣癌、卵巣性索腫瘍、子宮頸癌腫(cervical carcinoma)、子宮頸癌腫(uterine cervix carcinoma)、小細胞及び非小細胞肺癌腫、鼻咽頭癌腫、乳癌腫(例えば、乳管癌、浸潤性乳管内癌、散発性、乳癌、乳癌の感受性、4型乳癌、乳癌1期、乳癌3期、乳癌卵巣癌)、扁平上皮癌腫(例えば、頭頸部における)、神経原性腫瘍、星状細胞腫、神経節芽細胞腫、神経芽細胞腫、リンパ腫(例えば、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞、バーキット、皮膚T細胞性、組織球性、リンパ芽球性、T細胞、胸腺)、神経膠腫、腺癌、副腎腫瘍、遺伝性副腎皮質癌腫、脳悪性腫瘍(腫瘍)、種々の他の癌腫(例えば、気管支原性大細胞(bronchogenic large cell)、腺管、エールリッヒ・レットル腹水、類表皮、大細胞、ルイス肺、髄様、粘膜類表皮、燕麦細胞、小細胞、紡錘細胞、有棘細胞、移行細胞、未分化、癌肉腫、絨毛腫、嚢胞腺癌)、上衣芽細胞腫、上皮腫、赤白血病(例えば、フレンド、リンパ芽球)、線維肉腫、巨細胞腫、グリア系腫瘍、膠芽細胞腫(例えば、多形性、星状細胞腫)、神経膠腫 ヘパトーマ、ヘテロハイブリドーマ、ヘテロ骨髄腫、組織球腫、ハイブリドーマ(例えば、B細胞性)、副腎腫、インスリノーマ、膵島腫瘍、角化症、平滑筋芽細胞腫、平滑筋肉腫、白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病、T細胞急性リンパ芽球性白血病、急性巨核芽球性白血病、単球性白血病、急性骨髄性(acute myelogenous)白血病、急性骨髄性(acute myeloid)白血病、好酸球増多を伴う急性骨髄性白血病、B細胞白血病、好塩基球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性白血病、B細胞白血病、好酸球性白血病、フレンド白血病、顆粒球又は骨髄性白血病、有毛細胞白血病、リンパ球性白血病、巨核芽球性白血病、単球性白血病、単球性-マクロファージ白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄単球性白血病、形質細胞性白血病、前駆B細胞白血病、前骨髄球性白血病、亜急性白血病、T細胞白血病、リンパ球性新生物、骨髄性悪性腫瘍の素因、急性非リンパ球性白血病)、リンパ肉腫、黒色腫、乳腺腫瘍、肥満細胞腫、髄芽腫、中皮腫、転移性腫瘍、単球性腫瘍、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、腎芽細胞腫、神経組織グリア系腫瘍、神経組織神経細胞性腫瘍、神経線維腫症、神経芽細胞腫、乏突起膠腫、骨軟骨腫、骨髄腫、骨肉腫(例えば、ユーイング肉腫)、乳頭腫、移行細胞、褐色細胞腫、下垂体腫瘍(浸潤性)、形質細胞腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、肉腫(例えば、ユーイング肉腫、組織球性細胞肉腫、ジェンセン肉腫、骨肉腫、細網細胞肉腫)、神経鞘腫、皮下腫瘍、奇形癌腫(例えば、多分化能性)、奇形腫、精巣腫瘍、胸腺腫及び毛包上皮腫、胃癌、線維肉腫、多形性膠芽細胞腫、多発性グロムス腫瘍、リー・フラウメニ症候群、脂肪肉腫、リンチ家族性癌症候群II型、男子生殖細胞腫瘍、肥満細胞性白血病、甲状腺髄様、多発性髄膜腫、内分泌腺腫 粘液肉腫、傍神経節腫、家族性非クロム親和型、毛母腫、乳頭状、家族性及び散発性、ラブドイド素因症候群、家族性、ラブドイド腫瘍、軟部組織肉腫、並びに膠芽細胞腫を伴うターコット症候群が挙げられる。
【0396】
具体的な実施形態によれば、癌は、前悪性癌である。
【0397】
前癌は、十分に特徴付けされており、当技術分野において公知である(例えば、Berman JJ. and Henson DE., 2003. Classifying the pre-cancers: a metadata approach. BMC Med Inform Decis Mak. 3:8を参照のこと)。前癌の例としては、限定されるものではないが、後天性の小型前癌、核異型を伴う後天性の大型病変、癌に進行する遺伝性過形成症候群を併発する前駆病変、並びに後天性びまん性過形成及びびまん性化生が挙げられる。小型前癌の非限定的な例としては、HGSIL(子宮頸部の高度扁平上皮内病変)、AIN(肛門上皮内新生物)、声帯異形成、(結腸の)異常腺窩、PIN(前立腺上皮内新生物)が挙げられる。
【0398】
核異型を伴う後天性の大型病変の非限定的な例としては、管状腺腫、AILD(異常タンパク血症を伴う血管免疫芽球性リンパ節症)、異型性髄膜腫、胃ポリープ、大局面型類乾癬、脊髄異形成、乳頭移行細胞の上皮内癌腫、芽球増加を伴う不応性貧血、及びシュナイダー乳頭腫が挙げられる。癌に進行する遺伝性過形成症候群を併発する前駆病変の非限定的な例としては、非定型母斑症候群、C細胞腺腫症及びMEAが挙げられる。後天性びまん性過形成及びびまん性化生の非限定的な例としては、骨パジェット病及び潰瘍性大腸炎が挙げられる。
【0399】
具体的な実施形態によれば、癌は、膵臓癌、乳癌、皮膚癌、結腸直腸癌、胃癌及び卵巣癌からなる群より選択される。
【0400】
具体的な実施形態によれば、本明細書に開示される組成物[例えば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB2)ポリペプチド、それを含む組成物、融合物若しくは二量体、それをコードするポリヌクレオチド及び/又はそれを発現する宿主細胞]は、対象に、限定されるものではないが、麻酔薬、化学療法剤、放射線療法剤、細胞傷害療法(コンディショニング)、ホルモン療法、抗体及び当技術分野において周知の他の治療レジメン(例えば、手術)を含む、疾患を治療するための他の確立された又は実験的な治療レジメンとの組み合わせで投与することができる。
【0401】
具体的な実施形態によれば、本発明の一部の実施形態の組成物との組み合わせで投与される治療剤は、抗体を含む。
【0402】
具体的な実施形態によれば、本明細書に開示される組成物[例えば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合物若しくは二量体、それをコードするポリヌクレオチド及び/又はそれを発現する宿主細胞]は、対象に、養子細胞移植、例えば、限定されるものではないが、骨髄細胞、造血幹細胞、PBMC、臍帯血幹細胞及び/又は誘導多能性幹細胞の移植との組み合わせで投与することができる。
【0403】
具体的な実施形態によれば、本発明の一部の実施形態の組成物との組み合わせで投与される治療剤は、抗癌剤を含む。
【0404】
具体的な実施形態によれば、本発明の一部の実施形態の組成物との組み合わせで投与される治療剤は、抗感染剤(例えば、抗生物質及び抗ウイルス剤)を含む。
【0405】
具体的な実施形態によれば、組み合わせ療法は、相加効果を有する。
【0406】
具体的な実施形態によれば、組み合わせ療法は、相乗効果を有する。
【0407】
本発明の別の態様によれば、疾患を治療するための治療剤を包装する包装材料、並びにLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合物若しくは二量体、それをコードするポリヌクレオチド及び/又はそれを発現する宿主細胞を含む製造品が提供される。
【0408】
具体的な実施形態によれば、製造品は、HLA-Gを発現する病的細胞と関連する疾患、例えば、癌の治療のために識別される。
【0409】
具体的な実施形態によれば、疾患を治療するための治療剤、並びにLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合物若しくは二量体、それをコードするポリヌクレオチド及び/又はそれを発現する宿主細胞は、別個の容器中で包装される。
【0410】
具体的な実施形態によれば、疾患を治療するための治療剤、並びにLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合物若しくは二量体、それをコードするポリヌクレオチド及び/又はそれを発現する宿主細胞は、共製剤中で包装される。
【0411】
本明細書において使用される場合、用語「アミノ酸配列」、「タンパク質」、「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質性部分」は、本明細書において互換的に使用され、天然ペプチド(分解産物、合成により合成されたペプチド又は組換えペプチドのいずれか)及びペプチド模倣体(典型的には、合成により合成されたペプチド)、並びに例えば、ペプチドを体内に存在する間、より安定的にし、又は細胞中により浸透し得るようにする修飾を有し得るペプチドアナログであるペプトイド及びセミペプトイドを包含する。このような修飾としては、限定されるものではないが、N末端修飾、C末端修飾、ペプチド結合修飾、骨格修飾、及び残基修飾が挙げられる。ペプチド模倣化合物を調製する方法は当技術分野において周知であり、例えば、本明細書に完全に示すかのように参照により組み込まれるQuantitative Drug Design, C.A. Ramsden Gd., Chapter 17.2, F. Choplin Pergamon Press (1992)に規定されている。これに関するさらなる詳細は以下に提供される。
【0412】
ペプチド内のペプチド結合(-CO-NH-)は、例えば、N-メチル化アミド結合-N(CH3)-CO-)、エステル結合(-C(=O)-O-)、ケトメチレン結合(-CO-CH2-)、スルフィニルメチレン結合(-S(=O)-CH2-)、α-アザ結合(-NH-N(R)-CO-)(式中、Rは、任意のアルキル(例えば、メチル)である)、アミン結合(-CH2-NH-)、スルフィド結合(-CH2-S-)、エチレン結合(-CH2-CH2-)、ヒドロキシエチレン結合(-CH(OH)-CH2-)、チオアミド結合(-CS-NH-)、オレフィン性二重結合(-CH=CH-)、フッ素化オレフィン性二重結合(-CF=CH-)、レトロアミド結合(-NH-CO-)、ペプチド誘導体(-N(R)-CH2-CO-)(式中、Rは、炭素原子上に天然に存在する「通常の」側鎖である)により置換させることができる。
【0413】
これらの修飾は、ペプチド鎖に沿う結合のいずれかにおいて、さらにはいくつかの(2~3つの)結合において同時に生じ得る。
【0414】
天然芳香族アミノ酸、Trp、Tyr及びPheは、非天然芳香族アミノ酸、例えば、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸(Tic)、ナフチルアラニン、Pheの環メチル化誘導体、Pheのハロゲン化誘導体又はO-メチル-Tyrにより置換させることができる。
【0415】
本発明の一部の実施形態のペプチドは、1つ以上の修飾アミノ酸又は1つ以上の非アミノ酸単量体(例えば、脂肪酸、複合炭水化物など)も含み得る。
【0416】
用語「アミノ酸(amino acid)」又は「アミノ酸(amino acids)」は、20種の天然存在のアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、ホスホセリン及びホスホトレオニンを含むインビボで翻訳後修飾されることが多いそれらのアミノ酸、並びに限定されるものではないが、2-アミノアジピン酸、ヒドロキシリジン、イソデスモシン、ノルバリン、ノルロイシン及びオルニチンを含む他の異常アミノ酸を含むことが理解される。さらに、用語「アミノ酸」には、D-及びL-アミノ酸の両方が含まれる。
【0417】
以下の表4及び5は、本発明の一部の実施形態で使用することができる天然存在のアミノ酸(表4)、及び非慣用又は修飾アミノ酸(例えば、合成、表5)を列記する。
【0418】
【0419】
【0420】
本発明の一部の実施形態のポリペプチドは、好ましくは、直鎖形態で利用されるが、環化がペプチド特徴に著しく干渉しない場合には環状形態のペプチドを利用することもできることが認識される。
【0421】
本ポリペプチドは、好ましくは、ポリペプチドが可溶性形態であることを要求する治療薬において利用されるため、本発明の一部の実施形態のポリペプチドは、限定されるものではないが、ヒドロキシル含有側鎖に起因してペプチド溶解度を増加させ得るセリン及びトレオニンを含む1つ以上の非天然又は天然極性アミノ酸を含む。
【0422】
本発明のポリペプチドのアミノ酸は、保存的又は非保存的に置換させることができる。
【0423】
本明細書において使用される用語「保存的置換」は、ペプチドにおける天然配列中に存在するアミノ酸を、類似の立体特性を有する天然存在又は非天然存在のアミノ又はペプチド模倣体で置き換えることを指す。置き換えるべき天然アミノ酸の側鎖が極性又は疎水性のいずれかである場合、保存的置換は、天然存在のアミノ酸、非天然存在のアミノ酸を用い、又は同様に極性若しくは疎水性である(置き換えられるアミノ酸の側鎖と同じ立体特性を有することに加えて)ペプチド模倣体部分を用いるべきである。
【0424】
天然存在のアミノ酸は典型的にはそれらの特性に従って分類されるため、天然存在のアミノ酸による保存的置換は、本発明によれば、荷電アミノ酸の立体的に類似の非荷電アミノ酸による置き換えが保存的置換とみなされるという事実を考慮して容易に決定することができる。
【0425】
非天然存在のアミノ酸による保存的置換をもたらすため、当技術分野において周知のアミノ酸アナログ(合成アミノ酸)を使用することも可能である。天然存在アミノ酸のペプチド模倣体は、実務者に公知の文献に十分報告されている。
【0426】
保存的置換を行う場合、置換アミノ酸は、元のアミノ酸と同じ又は類似の側鎖中の官能基を有するべきである。
【0427】
機能的に類似のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野において周知である。どのアミノ酸電荷が表現型的にサイレントである可能性が高いかに関する指針は、Bowie et al., 1990, Science 247:1306 1310に見出すこともできる。このような保存的に修飾されたバリアントは、多型バリアント、種間ホモログ、及びアレルに追加され、それらを除外しない。典型的な保存的置換としては、限定されるものではないが、1)アラニン(A)、グリシン(G)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リジン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、7)セリン(S)、トレオニン(T)、及び8)システイン(C)、メチオニン(M)が挙げられる(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照のこと)。アミノ酸は、側鎖と関連する特性に基づき置換させることができ、例えば、極性側鎖を有するアミノ酸、例えば、セリン(S)及びトレオニン(T)、側鎖の電荷に基づくアミノ酸、例えば、アルギニン(R)及びヒスチジン(H)、並びに疎水性側鎖を有するアミノ酸、例えば、バリン(V)及びロイシン(L)を置換させることができる。示されるとおり、変化は典型的には軽度のものであり、例えば、タンパク質のフォールディングにも活性にも顕著に影響を与えない保存的アミノ酸置換である。
【0428】
本明細書において使用される語句「非保存的置換」は、親配列中に存在するアミノ酸を、異なる電気化学的及び/又は立体特性を有する別の天然又は非天然存在アミノ酸により置き換えることを指す。したがって、置換アミノ酸の側鎖は、置換されている天然アミノ酸の側鎖よりも顕著に大きく(若しくは小さく)てよく、及び/又は置換されているアミノ酸と顕著に異なる電子的特性を有する官能基を有し得る。このタイプの非保存的置換の例としては、フェニルアラニン又はシクロヘキシルメチルグリシンのアラニンについての置換、イソロイシンのグリシンについての置換、又は-NH-CH[(-CH2)5-COOH]-CO-のアスパラギン酸についての置換が挙げられる。本発明の範囲内に収まるそれらの非保存的置換は、抗菌特性を有するペプチドを依然として構成するものである。
【0429】
本発明のペプチド及び組成物のN及びC末端は、官能基により保護することができる。好適な官能基は、教示が参照により本明細書に組み込まれるGreen and Wuts, “Protecting Groups in Organic Synthesis”, John Wiley and Sons, 第5章及び第7章、1991に記載されている。好ましい保護基は、例えば、化合物の親水性を低減させ、親油性を増加させることにより、それに結合した化合物の細胞中への輸送を容易にするものである。
【0430】
具体的な実施形態によれば、アミノ酸の1つ以上を例えば官能基の付加により修飾することができる(概念的には「化学修飾する」とみなされる)。例えば、天然配列中に存在する側鎖アミノ酸残基は、任意選択で修飾することができるが、代替的に、下記のとおり、タンパク質の他の部分を側鎖アミノ酸残基に加えて又はそれに代えて任意選択で修飾することができる。修飾は、化学合成プロセスが続く場合、任意選択で、分子の合成中、例えば化学修飾されたアミノ酸を付加することによって実施することができる。しかしながら、アミノ酸が分子中に既に存在する場合、アミノ酸の化学修飾(「インサイチュー」修飾)も可能である。ペプチド又はタンパク質に対する修飾は、例えば、遺伝子合成、エキソヌクレアーゼ欠失による部位特異的(例えば、PCRベース)若しくはランダム突然変異誘発(例えば、EMS)により、化学修飾により、又は異種ドメイン若しくは結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列の融合により導入することができる。
【0431】
本明細書において使用される場合、用語「化学修飾」は、ペプチドを指す場合、そのアミノ酸残基の少なくとも1つが、天然プロセス、例えば、プロセシング若しくは他の翻訳後修飾、又は当技術分野において周知の化学修飾技術のいずれかにより修飾されているペプチドを指す。修飾の非限定的な例示的タイプとしては、カルボキシメチル化、アセチル化、アシル化、リン酸化、グリコシル化、アミド化、ADP-リボシル化、脂肪酸アシル化、ファルネシル基、イソファルネシル基、炭水化物基、脂肪酸基、コンジュゲーションのためのリンカーの付加、官能化、GPIアンカー形成、脂質若しくは脂質誘導体の共有結合結合、メチル化、ミリスチル化、ペグ化、プレニル化、リン酸化、ユビキチン化、又は任意の類似のプロセス及び公知の保護基/ブロッキング基が挙げられる。エーテル結合を任意選択で使用してセリン又はトレオニンのヒドロキシルを糖のヒドロキシルに結合させることができる。アミド結合を任意選択で使用してグルタメート又はアスパルテートのカルボキシル基を糖のアミノ基に結合させることができる(Garg and Jeanloz, Advances in Carbohydrate Chemistry and Biochemistry, Vol.43, Academic Pres s(1985), Kunz, Ang. Chem. Int. Ed. English 26:294-308 (1987))。アミノ酸と炭水化物との間にアセタール及びケタール結合を任意選択で形成することもできる。例えば、遊離アミノ基(例えば、リジン)のアシル化により、脂肪酸アシル誘導体を任意選択で作製することができる(Toth et al., Peptides: Chemistry, Structure and Biology, Rivier and Marshal, eds., ESCOM Publ., Leiden, 1078-1079 (1990))。
【0432】
具体的な実施形態によれば、修飾としては、本明細書に完全に示すかのように参照により本明細書に組み込まれるPCT出願である国際公開第2006/050262号パンフレットに記載のとおり、ペプチドへのシクロアルカン部分の付加が挙げられる。これらの部分は生体分子との使用のために設計され、任意選択で使用して種々の特性をタンパク質に付与することができる。
【0433】
さらに、任意選択で、ペプチド上の任意の点を修飾することができる。例えば、本明細書に完全に示すかのように参照により本明細書に組み込まれるPCT出願である国際公開第2006/050247号パンフレットに記載のとおり、及び上記にさらに記載されるとおり、タンパク質上のグリコシル化部分のペグ化を任意選択で実施することができる。1つ以上のポリエチレングリコール(PEG)基をO-結合型及び/又はN-結合型グリコシル化に任意選択で付加することができる。PEG基は、任意選択で、分枝鎖又は直鎖であり得る。任意選択で、任意のタイプの水溶性ポリマーを、グリコシルリンカーを介してタンパク質上のグリコシル化部位に結合させることができる。
【0434】
具体的な実施形態によれば、ペプチドは、変更された(すなわち、元の又は天然のグリコシル化パターンから変更された)グリコシル化パターンを有するように修飾される。本明細書において使用される場合、「変更された」は、1つ以上の炭水化物部分が欠失していること、及び/又は元のタンパク質に付加された少なくとも1つのグリコシル化部位を有することを意味する。
【0435】
タンパク質のグリコシル化は、典型的には、N-結合型又はO-結合型のいずれかである。N-結合型は、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。トリペプチド配列のアスパラギン-X-セリン及びアスパラギン-X-トレオニン(式中、Xは、プロリンを除く任意のアミノ酸である)は、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。したがって、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を作出する。O-結合型グリコシル化は、ヒドロキシアミノ酸(最も一般にはセリン又はトレオニンであるが、5-ヒドロキシプロリン又は5-ヒドロキシリジンを使用することもできる)へのN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、又はキシロースの糖の1つの結合を指す。
【0436】
ペプチドへのグリコシル化部位の付加は、ペプチドのアミノ酸配列が上記トリペプチド配列の1つ以上を含有するようにこれを変更することにより簡便に遂行される(N-結合型グリコシル化部位について)。変更は、元のペプチドの配列中の1つ以上のセリン又はスレオニン残基の付加、又はそれらによる置換により作製することもできる(O-結合型グリコシル化部位について)。ペプチドのアミノ酸配列は、DNAレベルの変化の導入により変更することもできる。
【0437】
ペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、ペプチドのアミノ酸残基へのグリコシドの化学的又は酵素的カップリングによるものである。使用されるカップリング方式に応じて、糖を(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)フリーカルボキシル基、(c)フリースルフヒドリル基、例えば、システインのもの、(d)フリーヒドロキシル基、例えば、セリン、トレオニン、若しくはヒドロキシプロリンのもの、(e)芳香族残基、例えば、フェニルアラニン、チロシン、若しくはトリプトファンのもの、又は(f)グルタミンのアミド基に結合させることができる。これらの方法は、例えば、国際公開第87/05330号パンフレット、及びAplin and Wriston, CRC Crit. Rev. Biochem., 22:259-306 (1981)に記載されている。
【0438】
ペプチド上に存在するあらゆる炭水化物部分の除去は、化学的に、酵素的に又はDNAレベルの変化の導入により遂行することができる。化学的脱グリコシル化は、トリフルオロメタンスルホン酸、又は同等の化合物へのペプチドの曝露を要求する。この処理は、アミノ酸配列をインタクトのままにして結合糖(N-アセチルグルコサミン又はN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんど又は全ての糖の開裂をもたらす。
【0439】
化学的脱グリコシル化は、Hakimuddin et al., Arch. Biochem. Biophys., 259:52 (1987)、及びEdge et al., Anal. Biochem., 118:131 (1981)により記載されている。ペプチド上の炭水化物部分の酵素的開裂は、Thotakura et al., Meth. Enzymol., 138:350 (1987)により記載されているとおり、種々のエンド及びエキソグリコシダーゼの使用により達成することができる。
【0440】
本発明の一部の実施形態の組成物[例えば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合物又は二量体]は、ペプチド合成の当業者に公知の任意の技術、例えば、限定されるものではないが、固相及び組換え技術により合成及び精製することができる。
【0441】
具体的な実施形態によれば、ポリペプチドの調製は、固相ペプチド合成を含む。
【0442】
固相ペプチド合成については、多くの技術の概要をJ. M. Stewart and J.D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, W.H. Freeman Co. (San Francisco), 1963及びJ. Meienhofer, Hormonal Proteins and Peptides, vol.2, p.46, Academic Press (New York), 1973に見出すことができる。古典的溶液合成については、G. Schroder and K. Lupke, The Peptides, vol.1, Academic Press (New York), 1965を参照のこと。
【0443】
一般に、これらの方法は、成長ペプチド鎖への1つ以上のアミノ酸又は好適に保護されたアミノ酸の逐次的付加を含む。通常、最初のアミノ酸のアミノ又はカルボキシル基のいずれかを好適な保護基により保護する。次いで、保護又は誘導化されたアミノ酸を、アミド結合の形成に好適な条件下で、好適に保護された相補的な(アミノ又はカルボキシル)基を有する配列中の次のアミノ酸に付加することにより不活性な固体支持体に結合させ、又は溶液中で利用することができる。次いで、この新たに付加されたアミノ酸残基から保護基を除去し、次いで次の(好適に保護された)アミノ酸を付加するなどである。全ての所望のアミノ酸を適切な順序で結合させた後、あらゆる残留保護基(及びあらゆる固体支持体)を逐次的又は同時に除去して最終ペプチド化合物を得る。この一般的手順の単純な修飾により、例えば、保護されたトリペプチドを適切に保護されたジペプチドと(キラル中心をラセミ化しない条件下で)カップリングさせて脱保護後にペンタペプチドなどを形成することにより、成長鎖に一度に2つ以上のアミノ酸を付加することが可能である。ペプチド合成のさらなる説明は、米国特許第6,472,505号明細書に開示されている。
【0444】
大規模ペプチド合成は、Andersson Biopolymers 2000, 55(3):227-50により記載されている。
【0445】
具体的な実施形態によれば、ポリペプチド[例えば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合物又は二量体]は、インビトロ発現系を使用して合成される。
【0446】
したがって、本明細書に記載のポリペプチドのいずれもポリヌクレオチドからコードさせることができる。これらのポリヌクレオチドは、それ自体で使用し、又は本明細書に開示されるポリペプチドの組換え産生において使用することができる。
【0447】
「組換え」ポリペプチドは、組換えDNA技術により産生されるポリペプチドを指し、すなわち、所望のポリペプチドをコードする外因性DNA構築物により形質転換された細胞から産生される。
【0448】
したがって、本発明の別の態様によれば、本明細書に開示されるLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、融合ポリペプチド又は二量体をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0449】
本発明の具体的な実施形態で使用することができるポリヌクレオチド配列の非限定的な例は、以下の表3に記載される。
【0450】
本発明の一部の実施形態のLILRB2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの非限定的な例は、配列番号6、8、10、12、14、16、18、20、22及び24に提供される。
【0451】
本発明の一部の実施形態のLILRB2-Fc融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの非限定的な例は、配列番号40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、97及び106に提供される。
【0452】
本発明の一部の実施形態のSIRPα-Fc融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの非限定的な例は、配列番号36、91、95及び99に提供される。
【0453】
本明細書において使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、RNA配列、相補的ポリヌクレオチド配列(cDNA)、ゲノムポリヌクレオチド配列及び/又は複合ポリヌクレオチド配列(例えば、上記の組み合わせ)の形態で単離及び提供される一本鎖又は二本鎖の核酸配列を指す。
【0454】
具体的な実施形態によれば、本明細書に開示されるポリヌクレオチド及び核酸配列のいずれも、保存的核酸置換を含み得る。保存的に修飾されたポリヌクレオチドは、同一の又は本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指し、又は核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の又は関連する(例えば、天然に連続する)配列を示す。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一の核酸がほとんどのタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは、全てアミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより規定される全ての位置において、このコドンは、コードされるポリペプチドを変更せず、記載される対応するコドンの別のものに変更することができる。このような核酸変異は、「サイレント変異」であり、それは保存的に修飾されたポリヌクレオチドの一種である。具体的な実施形態によれば、本明細書におけるポリペプチドをコードする本明細書に記載の任意のポリヌクレオチド及び核酸配列は、その核酸のサイレント変異も説明する。当業者は、ある状況において、機能的に同一の分子を得るように核酸中の各コドン(通常、メチオニンについての唯一のコドンであるAUG及び通常、トリプトファンについての唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾することができることを認識する。したがって、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのサイレント変異は、発現産物に関して記載される配列に黙示される。
【0455】
外因性ポリペプチドを哺乳類細胞中で発現させるため、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、好ましくは、哺乳類細胞発現に好適な核酸構築物中にライゲートされる。このような核酸構築物は、細胞中のポリヌクレオチド配列の転写を構成的又は誘導性の様式で指向するためのプロモーター配列を含む。
【0456】
したがって、本発明の一態様によれば、LILRB2ポリペプチド、融合ポリペプチド又は二量体をコードするポリヌクレオチドと、宿主細胞中のポリヌクレオチドの発現を指向するための調節エレメントとを含む核酸構築物が提供される。
【0457】
具体的な実施形態によれば、調節エレメント(プロモーター)は、異種調節エレメントである。
【0458】
本発明の一部の実施形態の核酸構築物(本明細書において「発現ベクター」とも称される)は、このベクターを、原核生物、真核生物、又は好ましくはその両方における複製及び組み込みに好適にする追加の配列を含む(例えば、シャトルベクター)。加えて、典型的なクローニングベクターは、転写及び翻訳開始配列、転写及び翻訳ターミネーター並びにポリアデニル化シグナルも含有し得る。例として、このような構築物は、典型的には、5’LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成起点、及び3’LTR又はその一部を含む。
【0459】
本発明の一部の実施形態の核酸構築物は、典型的には、構築物が装入される宿主細胞からペプチドの分泌のためのシグナル配列を含む。好ましくは、この目的のためのシグナル配列は、哺乳類シグナル配列又は本発明の一部の実施形態のポリペプチドバリアントのシグナル配列である。具体的な実施形態によれば、核酸構築物は、例えば、配列番号25~26に提供されるようなシグナルペプチドを含む。
【0460】
真核生物プロモーターは、典型的には、2つのタイプの認識配列、TATAボックス及び上流プロモーターエレメントを含有する。TATAボックスは、転写開始部位の25~30塩基対上流に局在し、RNAポリメラーゼのRNA合成開始の指向に関与すると考えられている。他方の上流プロモーターエレメントは、転写が開始される率を決定する。
【0461】
好ましくは、本発明の一部の実施形態の核酸構築物により利用されるプロモーターは、形質転換された特異的細胞集団において活性である。細胞タイプ特異的プロモーター及び/又は組織特異的プロモーターの例としては、肝臓特異的であるアルブミンなどのプロモーター[Pinkert et al., (1987) Genes Dev. 1:268-277]、リンパ系特異的プロモーター[Calame et al., (1988) Adv. Immunol. 43:235-275]、特にT細胞受容体のプロモーター[Winoto et al., (1989) EMBO J. 8:729-733]及び免疫グロブリンのプロモーター、[Banerji et al. (1983) Cell 33729-740]、ニューロン特異的プロモーター、例えば、ニューロフィラメントプロモーター[Byrne et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:5473-5477]、膵臓特異的プロモーター[Edlunch et al. (1985) Science 230:912-916]又は乳腺特異的プロモーター、例えば、乳清プロモーター(米国特許第4,873,316号明細書及び欧州特許出願公開第264,166号明細書)が挙げられる。
【0462】
エンハンサーエレメントは、転写を結合した同種又は異種プロモーターから最大1,000倍刺激し得る。エンハンサーは、転写開始部位から下流又は上流に配置された場合に活性である。ウイルスに由来する多くのエンハンサーエレメントは広い宿主範囲を有し、種々の組織中で活性である。例えば、SV40初期遺伝子エンハンサーは、多くの細胞タイプに好適である。本発明の一部の実施形態に好適な他のエンハンサー/プロモーターの組み合わせとしては、ポリオーマウイルス、ヒト又はマウスサイトメガロウイルス(CMV)に由来するもの、種々のレトロウイルス、例えば、マウス白血病ウイルス、マウス又はラウス肉腫ウイルス及びHIVからの長い末端反復配列が挙げられる。参照により本明細書に組み込まれるEnhancers and Eukaryotic Expression, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y. 1983を参照されたい。
【0463】
発現ベクターの構築において、プロモーターは、好ましくは、その自然環境における転写開始部位からの距離とほぼ同じ距離だけ異種の転写開始部位から離れて位置される。しかしながら、当技術分野において公知のとおり、この距離のいくらかの変動はプロモーター機能の損失がなければ受け入れることができる。
【0464】
ポリアデニル化配列を発現ベクターに付加してmRNA翻訳の効率を増加させることもできる。正確で効率的なポリアデニル化には、2つの区別される配列エレメント:ポリアデニル化部位から下流に局在するGU又はUリッチ配列及び11~30ヌクレオチド上流に局在する、高度に保存された6ヌクレオチドの配列AAUAAAが要求される。本発明の一部の実施形態に好適な終結及びポリアデニル化シグナルとしては、SV40に由来するものが挙げられる。
【0465】
本発明の一部の実施形態の発現ベクターは、既に記載されたエレメントに加えて、典型的にはクローニングされた核酸の発現のレベルを増加させること又は組換えDNAを担持する細胞の識別を容易にすることが意図される他の特殊化したエレメントを含有し得る。例えば、多数の動物ウイルスは、許容細胞タイプ中のウイルスゲノムの染色体外複製を促進するDNA配列を含有する。これらのウイルスレプリコンを担持するプラスミドは、プラスミド上又は宿主細胞のゲノムと担持される遺伝子により適切な因子が提供される限り、エピソームとして複製される。
【0466】
ベクターは、真核生物レプリコンを含んでも含まなくてもよい。真核生物レプリコンが存在する場合、ベクターは、適切な選択可能マーカーを使用して真核細胞中で増幅可能である。ベクターが真核生物レプリコンを含まない場合、エピソーム増幅は不可能である。代わりに、組換えDNAは、工学操作細胞のゲノム中に組み込まれ、そこでプロモーターが所望の核酸の発現を指向する。
【0467】
本発明の一部の実施形態の発現ベクターは、例えば、単一mRNAからのいくつかのタンパク質の翻訳を可能にする追加のポリヌクレオチド配列、例えば、内部リボソーム進入部位(IRES)及びプロモーター-キメラポリペプチドのゲノム組み込みのための配列をさらに含み得る。
【0468】
したがって、具体的な実施形態によれば、ヘテロ二量体中に含まれる両方の単量体は、単一構築物から発現される。
【0469】
他の具体的な実施形態によれば、ヘテロ二量体中に含まれる単量体の各々は、異なる構築物から発現される。
【0470】
発現ベクター中に含まれる個々のエレメントは、種々の構成で配置され得ることが認識される。例えば、エンハンサーエレメント、プロモーターなど、及びさらには「ヘッドトゥテール」構成で配置されるポリペプチドをコードする(1つ以上の)ポリヌクレオチド配列は、逆相補鎖として、又は逆平行鎖として相補鎖構成で存在し得る。このような構成の多様性は、発現ベクターの非コードエレメントとともに生じる可能性がより高い一方、発現ベクター内のコード配列の代替的な構成も想定される。
【0471】
哺乳類発現ベクターについての例としては、限定されるものではないが、Invitrogen社から入手可能なpcDNA3、pcDNA3.1(+/-)、pcDNA3.4、pGL3、pZeoSV2(+/-)、pSecTag2、pDisplay、pEF/myc/cyto、pCMV/myc/cyto、pCR3.1、pSinRep5、DH26S、DHBB、pNMT1、pNMT41、pNMT81、Promega社から入手可能なpCI、Strategene社から入手可能なpMbac、pPbac、pBK-RSV及びpBK-CMV、Clontech社から入手可能なpTRES、並びにそれらの誘導体が挙げられる。
【0472】
真核生物ウイルス、例えば、レトロウイルスからの調節エレメントを含有する発現ベクターを使用することもできる。SV40ベクターとしては、pSVT7及びpMT2が挙げられる。ウシパピローマウイルスに由来するベクターとしては、pBV-1MTHAが挙げられ、エプスタイン・バーウイルスに由来するベクターとしては、pHEBO、及びp2O5が挙げられる。他の例示的なベクターとしては、pMSG、pAV009/A+、pMTO10/A+、pMAMneo-5、バキュロウイルスpDSVE、及びSV-40初期プロモーター、SV-40後期プロモーター、メタロチオネインプロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ポリヘドリンプロモーター、又は真核細胞中の発現に有効であることが示されている他のプロモーターの指向下でタンパク質の発現を可能にする任意の他のベクターが挙げられる。
【0473】
上記のとおり、ウイルスは、多くの場合、宿主の防御機序を回避するように進化してきた、非常に特殊化した感染性因子である。典型的には、ウイルスは、特異的細胞タイプに感染し、それらにおいて伝播する。ウイルスベクターの標的化特異性は、所定の細胞タイプを特異的に標的化するその天然の特異性を利用し、それにより組換え遺伝子を感染細胞中に導入する。したがって、本発明の一部の実施形態により使用されるベクターのタイプは、形質転換される細胞タイプに依存する。形質転換される細胞タイプに従って好適なベクターを選択する能力は、十分に当業者の技能の範囲内であり、したがって選択の検討事項の一般的記載は本明細書に提供されない。例えば、骨髄細胞は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)を使用して標的化することができ、腎臓細胞は、Liang CY et al., 2004 (Arch Virol. 149:51-60)に記載の、バキュロウイルスのAutographa californica核多角体病ウイルス(AcMNPV)中に存在する異種プロモーターを使用して標的化することができる。
【0474】
組換えウイルスベクターは、それらが水平感染及び標的化特異性などの利点を提供するため、ポリペプチドのインビボ発現に有用である。水平感染は、例えば、レトロウイルスの生活環に固有であり、単一の感染細胞が、出芽し、隣接細胞に感染する多くの子孫ビリオンを産生するプロセスである。その結果、広い範囲が急速に感染し、そのほとんどは、最初は元のウイルス粒子により感染されていなかったものである。これは、感染性因子が娘子孫を介してのみ伝播する垂直型の感染と対照的である。水平に伝播し得ないウイルスベクターを産生することもできる。この特徴は、所望の目的が規定された遺伝子を限局的な数の標的化細胞のみに導入することである場合に有用であり得る。
【0475】
種々の方法を使用して本発明の一部の実施形態の発現ベクターを細胞中に導入することができる。このような方法は、一般にSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor Laboratory, New York (1989, 1992)、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Baltimore, Md. (1989)、Chang et al., Somatic Gene Therapy, CRC Press, Ann Arbor, Mich.(1995)、Vega et al., Gene Targeting, CRC Press, Ann Arbor Mich. (1995), Vectors: A Survey of Molecular Cloning Vectors and Their Uses, Butterworths, Boston Mass. (1988)及びGilboa et at. [Biotechniques 4(6): 504-512, 1986]に記載されており、それとしては、例えば、安定的又は一過性形質移入、ポリエチレンイミンリポフェクション、エレクトロポレーション及び組換えウイルスベクターの感染が挙げられる。加えて、陽性陰性選択法については米国特許第5,464,764号明細書及び同第5,487,992号明細書を参照のこと。
【0476】
ウイルス感染による核酸の導入は、他の方法、例えば、リポフェクション及びエレクトロポレーションと比べていくつかの利点を提供する。それというのも、ウイルスの感染性の性質に起因してより高い形質移入効率を得ることができるからである。
【0477】
現在好ましいインビボ核酸移入技術としては、ウイルス又は非ウイルス構築物、例えば、アデノウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)及び脂質ベースの系による形質移入が挙げられる。遺伝子の脂質媒介移入に有用な脂質は、例えば、DOTMA、DOPE及びDC-Cholである[Tonkinson et al., Cancer Investigation, 14 (1):54-65 (1996)]。遺伝子療法における使用に最も好ましい構築物はウイルスであり、最も好ましくはアデノウイルス、AAV、レンチウイルス、又はレトロウイルスである。ウイルス構築物、例えば、レトロウイルス構築物は、少なくとも1つの転写プロモーター/エンハンサー若しくは(1つ以上の)遺伝子座規定エレメント(locus-defining element)、又は他の手段、例えば、メッセンジャーの選択的スプライシング、核RNA輸送若しくは翻訳後修飾により遺伝子発現を制御する他のエレメントを含む。このようなベクター構築物は、ウイルス構築物中に既に存在しない限り、パッケージングシグナル、長い末端反復配列(LTR)又はその一部、並びに使用されるウイルスに適切なプラス及びマイナス鎖プライマー結合部位も含む。加えて、このような構築物は、典型的には、構築物が装入される宿主細胞からのペプチドの分泌のためのシグナル配列を含む。好ましくは、この目的のためのシグナル配列は、哺乳類シグナル配列又は本発明の一部の実施形態のポリペプチドバリアントのシグナル配列である。任意選択で、構築物は、ポリアデニル化を指向するシグナル、並びに1つ以上の制限部位及び翻訳終結配列も含み得る。例として、このような構築物は、典型的には、5’LTR、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第2鎖DNA合成起点、及び3’LTR又はその一部を含む。非ウイルス性の他のベクター、例えば、カチオン性脂質、ポリリジン、及びデンドリマーを使用することができる。
【0478】
上述のとおり、本発明の一部の実施形態の発現構築物は、挿入されるコード配列の転写及び翻訳に必要なエレメントの含有とは別に、発現されるポリペプチドの安定性、産生、精製、収率又は毒性を向上させるように工学操作された配列も含み得る。例えば、本発明の一部の実施形態のポリペプチド及び異種タンパク質を含む融合タンパク質又は開裂可能融合タンパク質の発現を工学操作することができる。このような融合タンパク質は、親和性クロマトグラフィーにより、例えば、異種タンパク質に特異的なカラム上の固定化により融合タンパク質が容易に単離され得るように設計することができる。本発明の一部の実施形態のポリペプチドと異種タンパク質との間に開裂部位を工学操作した場合、開裂部位を破壊する適切な酵素又は薬剤で処理することにより、ポリペプチドをクロマトグラフィーカラムから放出させることができる[例えば、Booth et al. (1988) Immunol. Lett. 19:65-70、及びGardella et al., (1990) J. Biol. Chem. 265:15854-15859を参照のこと]。
【0479】
本発明は、本明細書に記載の組成物を含む細胞並びにそれを生成及び使用する方法も企図する。
【0480】
したがって、本発明の一態様によれば、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む融合ポリペプチド若しくは二量体、又はそれをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞が提供される。
【0481】
上述のとおり、種々の原核又は真核細胞を本発明の一部の実施形態のポリペプチドを発現させるための宿主発現系として使用することができる。これらとしては、限定されるものではないが、微生物、例えば、コード配列を含有する組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌、コード配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母、コード配列を含有する、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV、タバコモザイクウイルス、TMV)に感染され、又は組換えプラスミド発現ベクター、例えば、Tiプラスミドで形質転換された植物細胞系が挙げられる。哺乳類発現系を使用して本発明の一部の実施形態のポリペプチドを発現させることもできる。
【0482】
細菌構築物の例としては、E. coli発現ベクターのpET系列が挙げられる[Studier et al. (1990) Methods in Enzymol. 185:60-89)。
【0483】
本発明の教示とともに使用することができる真核細胞の例としては、限定されるものではないが、哺乳類細胞、真菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、藻類細胞又は植物細胞が挙げられる。
【0484】
酵母において、米国特許出願第5,932,447号に開示されている構成的又は誘導性プロモーターを含有する多数のベクターを使用することができる。或いは、酵母染色体中への外来DNA配列の組み込みを促進するベクターを使用することができる。
【0485】
植物発現ベクターが使用される場合、多数のプロモーターによりコード配列の発現をドライブすることができる。例えば、ウイルスプロモーター、例えば、CaMVの35S RNA及び19S RNAプロモーター[Brisson et al. (1984) Nature 310:511-514]、又はTMVのコートタンパク質プロモーター[Takamatsu et al. (1987) EMBO J. 6:307-311]を使用することができる。或いは、植物プロモーター、例えば、RUBISCOの小サブユニット[Coruzzi et al. (1984) EMBO J. 3:1671-1680及びBrogli et al., (1984) Science 224:838-843]又は熱ショックプロモーター、例えば、ダイズhsp17.5-E又はhsp17.3-B[Gurley et al. (1986) Mol. Cell. Biol. 6:559-565]を使用することができる。これらの構築物は、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、ダイレクトDNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション及び当業者に周知の他の技術を使用して、植物細胞中に導入することができる。例えば、Weissbach & Weissbach, 1988, Methods for Plant Molecular Biology, Academic Press, NY, Section VIII, pp 421-463を参照のこと。
【0486】
他の発現系、例えば、当技術分野において周知の昆虫及び哺乳類宿主細胞系を本発明の一部の実施形態により使用することもできる。
【0487】
具体的な実施形態によれば、細胞は、哺乳類細胞である。
【0488】
具体的な実施形態によれば、細胞は、ヒト細胞である。
【0489】
具体的な実施形態によれば、細胞は、ヒト胚に由来しない。
【0490】
具体的な実施形態によれば、細胞は、単離細胞である。
【0491】
具体的な実施形態によれば、細胞は、細胞系である。
【0492】
別の具体的な実施形態によれば、細胞は、初代細胞である。
【0493】
細胞は、限定されるものではないが、血液、筋肉、神経、脳、心臓、肺、肝臓、膵臓、脾臓、胸腺、食道、胃、腸、腎臓、精巣、卵巣、毛髪、皮膚、骨、乳房、子宮、膀胱、脊髄、又は種々の種類の体液を含む好適な組織に由来し得る。細胞は、胚、胎児及び成体期を含む任意の発生段階、並びに任意の発生起源、すなわち、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉起源に由来し得る。
【0494】
哺乳類細胞の非限定的な例としては、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系(COS、例えば、COS-7、ATCC CRL1651)、ヒト胚腎臓系(HEK293又は懸濁液培養物中の成長のためにサブクローニングされたHEK293細胞、Graham et al., J. Gen Virol., 36:59 1977)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10)、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather, Biol. Reprod., 23:243-251 1980)、サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(ベロ-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸癌腫細胞(ヒーラ、ATCC CCL2)、NIH3T3、ジャーカット、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34)、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB8065)、マウス乳腺腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51)、TRI細胞(Mather et al., Annals N.Y. Acad. Sci., 383:44-68 1982)、MRC5細胞、FS4細胞、並びにヒトヘパトーマ系(Hep G2)、PER.C6、K562、及びチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)が挙げられる。
【0495】
本発明の一部の実施形態によれば、哺乳類細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HEK293、PER.C6、HT1080、NS0、Sp2/0、BHK、ナマルバ、COS、ヒーラ及びベロ細胞からなる群より選択される。
【0496】
本発明の一部の実施形態によれば、宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、PER.C6又は293(例えば、エクスピ293F)細胞を含む。
【0497】
本発明の別の態様によれば、ポリペプチドを産生する方法であって、本明細書に記載のポリヌクレオチド若しくは核酸構築物を宿主細胞に導入すること又は本明細書に記載のポリヌクレオチド若しくは核酸構築物を発現する細胞を培養することを含む方法が提供される。
【0498】
具体的な実施形態によれば、方法は、インビトロ又はエクスビボ法である。
【0499】
具体的な実施形態によれば、産生は、32~37℃、5~10%のCO2で5~13日間培養することを含む。
【0500】
本発明の具体的な実施形態で使用することができる産生条件の非限定的な例は、以下の実施例の項に開示される。
【0501】
したがって、例えば、ポリペプチドをコードする発現ベクターを哺乳類細胞、例えば、エクスピ293F、エクスピCHO細胞、CHO-K1、CHO-S、CHO-DUC又はCHO-DG44中に導入する。次いで、形質移入された細胞を細胞特異的培養培地中で32~37℃、5~10%のCO2で培養し、少なくとも5日間の培養後、タンパク質を上清から収集し、精製する。
【0502】
具体的な実施形態によれば、培養は、回分、分割回分(split-batch)、流加、又は灌流方式で操作される。
【0503】
具体的な実施形態によれば、培養は、流加条件で操作される。
【0504】
具体的な実施形態によれば、培養は、36.5℃で行われる。
【0505】
具体的な実施形態によれば、培養は、36.5℃で行われ、32℃への温度シフトを伴う。この温度シフトは、定常期に達する前に細胞代謝を減速させるために行うことができる。
【0506】
具体的な実施形態によれば、方法は、LILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、融合ポリペプチド又は二量体を単離することを含む。
【0507】
具体的な実施形態によれば、組換えポリペプチドの回収は、適切な時間の培養後に行われる。
【0508】
具体的な実施形態によれば、組換えポリペプチドの回収は、ヘテロ二量体を含有する全培養培地を収集することを指し、追加の分離又は精製のステップを意味することを必要としない。具体的な実施形態によれば、本発明の一部の実施形態のポリペプチドは、種々の標準的なタンパク質精製技術、例えば、限定されるものではないが、親和性クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、ミックスモードクロマトグラフィー、金属親和性クロマトグラフィー、レクチン親和性クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング及び示差的可溶化(differential solubilization)を使用して精製することができる。
【0509】
具体的な実施形態によれば、産生及び精製後、ポリペプチドの治療効力をインビボ又はインビトロのいずれかでアッセイすることができる。このような方法は当技術分野において公知であり、例えば、結合、細胞生存率、トランスジェニックマウスの生存、及び活性化マーカーの発現が挙げられる。
【0510】
本発明の一部の実施形態の組成物[例えば、本明細書に記載のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合タンパク質若しくは二量体、それをコードするポリヌクレオチド及び/又は細胞]は、それ自体で、又は組成物が好適な担体若しくは賦形剤と混合された医薬組成物で生物に投与することができる。
【0511】
したがって、本発明は、一部の実施形態において、治療有効量の本明細書に開示される組成物を含む医薬組成物を特徴とする。
【0512】
本明細書において、用語「活性成分」は、生物学的効果を担う組成物[例えば、本明細書に記載のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合タンパク質若しくは二量体、それをコードするポリヌクレオチド及び/又は細胞]を指す。
【0513】
本明細書において、用語「賦形剤」は、活性成分の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性物質を指す。賦形剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖及びデンプンのタイプ、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0514】
以下、互換的に使用することができる語句「生理学的に許容可能な担体」及び「薬学的に許容可能な担体」は、生物に対する顕著な刺激を引き起こさず、投与される化合物の生物学的活性及び特性を抑止しない担体又は希釈剤を指す。これらの語句にはアジュバントが含まれる。
【0515】
本明細書において使用される場合、「薬学的に許容可能な担体」には、生理学的に適合性であるあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが含まれる。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は上皮投与(例えば、注射又は注入による)に好適である。活性化合物は、投与経路に応じて1つ以上の薬学的に許容可能な塩を含み得る。「薬学的に許容可能な塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、いかなる不所望な毒性学的効果も付与しない塩を指す(例えば、Berge, S.M., et al. (1977) J. Pharm. Sci. 66:1-19を参照のこと)。このような塩の例としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、非毒性の無機酸、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸などに由来するもの、並びに非毒性の有機酸、例えば、脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸などに由来するものが挙げられる。塩基付加塩としては、アルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどに由来するもの、並びに非毒性の有機アミン、例えば、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどに由来するものが挙げられる。
【0516】
本発明の少なくとも一部の実施形態による医薬組成物は、薬学的に許容可能な酸化防止剤も含み得る。薬学的に許容可能な酸化防止剤の例としては、(1)水溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど、(2)油溶性酸化防止剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど、及び(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。本発明の少なくとも一部の実施形態による医薬組成物は、添加剤、例えば、洗浄剤及び可溶化剤(例えば、ツイーン20(ポリソルベート-20)、ツイーン80(ポリソルベート-80))及び保存剤(例えば、チメルゾール(Thimersol)、ベンジルアルコール)並びに増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)も含み得る。
【0517】
本発明の少なくとも一部の実施形態による医薬組成物に用いることができる好適な水性及び非水性の担体の例としては、水、種々の緩衝液含有物(例えば、トリス-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH及びイオン強度の緩衝生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、並びに注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが挙げられる。
【0518】
適切な流動性は、例えば、コーティング材料、例えば、レシチンの使用により、分散液の場合には要求される粒子サイズの維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。
【0519】
これらの組成物は、アジュバント、例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤も含有し得る。微生物の存在の予防は、前掲の滅菌手順、並びに種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの包含の両方により確保することができる。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを組成物中に含めることが望ましい場合もある。加えて、注射医薬形態の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの包含によりもたらすことができる。
【0520】
薬学的に許容可能な担体としては、無菌水溶液又は分散液及び無菌注射溶液又は分散液の即時調製のための無菌粉末が挙げられる。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野において公知である。任意の慣用の媒体又は薬剤が活性化合物と不適合性である場合を除き、本発明の少なくとも一部の実施形態による医薬組成物におけるその使用が企図される。補助的な活性化合物を組成物中に取り込むこともできる。
【0521】
治療組成物は、典型的には、製造及び貯蔵の条件下で無菌で安定的でなければならない。組成物は、液剤、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度に好適な他の秩序構造として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンの使用により、分散液の場合には要求される粒子サイズの維持により、及び界面活性剤の使用により維持することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを組成物中に含めることが好ましい。注射組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを組成物中に含めることによりもたらすことができる。無菌注射溶液は、要求量の活性化合物を適切な溶媒中に、必要に応じて上記に列挙される成分の1つ又は組み合わせと取り込み、続いて滅菌精密濾過を行うことにより調製することができる。一般に、分散液は、基礎分散媒及び上記に列挙されるものからの要求される他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に活性化合物を取り込むことにより調製される。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末を、予め滅菌濾過されたその溶液から生じさせる真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0522】
無菌注射溶液は、要求される量の活性化合物を適切な溶媒中に、要求に応じて上記に列挙される成分の1つ又は組み合わせと取り込み、続いて滅菌精密濾過を行うことにより調製することができる。一般に、分散液は、基礎分散媒及び上記に列挙されるものからの要求される他の成分を含有する無菌ビヒクル中に活性化合物を取り込むことにより調製される。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末を、予め滅菌濾過されたその溶液から生じさせる真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0523】
単一剤形を産生するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、治療されている対象、及び特定の投与方式に応じて変動する。単一剤形を産生するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす組成物の量である。一般に、この量は、100パーセントのうち、約0.01パーセント~約99パーセントの活性成分、好ましくは、約0.1パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約1パーセント~約30パーセントの薬学的に許容可能な担体との組み合わせの活性成分の範囲である。
【0524】
投与量レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスを投与することができ、いくつかの分割用量を経時的に投与することができ、又は治療状況の緊急性により示されるとおり用量を比例的に低減若しくは増加させることができる。投与の容易性及び投与量の均一性のために単位剤形の非経口組成物を製剤化することが特に有利である。本明細書において使用される単位剤形は、治療すべき対象のための単位投与量として好適な物理的に区別される単位を指し、各単位は、要求される薬学的担体を伴って所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含有する。本発明の少なくとも一部の実施形態による単位剤形についての仕様は、(a)活性化合物のユニークな特徴及び達成すべき特定の治療効果、並びに(b)個体の感受性の治療のためにそのような活性化合物を配合する当技術分野における固有の制約により定められ、それらに直接依存的である。
【0525】
薬物の製剤化及び投与のための技術は、参照により本明細書に組み込まれる“Remington’s Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co., Easton, PAの最新版に見出すことができる。
【0526】
本発明の一部の実施形態の医薬組成物は、当技術分野において周知のプロセスにより、例えば、慣用の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、すり潰し、乳化、カプセル化、捕捉又は凍結乾燥プロセスにより製造することができる。
【0527】
本発明の組成物は、当技術分野において公知の種々の方法の1つ以上を使用して、1つ以上の投与経路を介して投与することができる。当業者により認識されるとおり、投与経路及び/又は方式は、所望の結果に応じて変動する。本発明の少なくとも一部の実施形態による治療剤の好ましい投与経路としては、血管内送達(例えば、注射又は注入)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄、経口、経腸、直腸、肺(例えば、吸入)、鼻腔、局所(経皮、頬側及び舌下を含む)、膀胱内、硝子体内、腹腔内、腟、脳送達(例えば、脳室内、脳内、及び対流強化拡散)、CNS送達(例えば、髄腔内、脊髄周囲(perispinal)、及び脊髄内)若しくは非経口(皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)及び皮内を含む)、経皮(受動的又はイオントフォレシス若しくはエレクトロポレーションの使用のいずれか)、経粘膜(例えば、舌下投与、鼻腔、腟、直腸、又は舌下)の投与、又はインプラントを介する投与、又は例えば、注射若しくは注入による他の非経口投与経路、又は当技術分野において公知の他の送達経路及び/若しくは投与の形態が挙げられる。本明細書において使用される語句「非経口投与」は、経腸及び局所投与以外の投与方式を意味し、通常、注射によるものであり、それとしては、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内の注射及び注入又は生体内分解性インサートの使用が挙げられ、各投与経路に適切な剤形で製剤化することができる。具体的な実施形態において、本発明の少なくとも一部の実施形態によるタンパク質、治療剤又は医薬組成物は、腹腔内又は静脈内投与することができる。
【0528】
具体的な実施形態によれば、本明細書において開示される組成物は、水溶液中で非経口注射により投与される。製剤は、懸濁液又はエマルジョンの形態でもよい。一般に、有効量の本明細書に記載の組成物を含む非経口注射のための医薬組成物が提供され、それは任意選択で薬学的に許容可能な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント及び/又は担体を含む。このような組成物は、任意選択で、以下の1つ以上:希釈剤、滅菌水、種々の緩衝液含有物(例えば、トリス-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH及びイオン強度の緩衝生理食塩水、並びに添加剤、例えば、洗浄剤及び可溶化剤(例えば、ツイーン20(ポリソルベート-20)、ツイーン80(ポリソルベート-80))、酸化防止剤(例えば、水溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、油溶性酸化防止剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール、及び金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸)、及び保存剤(例えば、チメルゾール、ベンジルアルコール)並びに増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)を含む。非水性溶媒又はビヒクルの例は、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えば、オリーブ油及びトウモロコシ油、ゼラチン、並びに注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルである。製剤は、フリーズドライ(凍結乾燥)又は真空乾燥し、使用直前に再溶解/再懸濁させることができる。製剤は、例えば、細菌保持フィルタに通す濾過により、滅菌剤を組成物中に組み込むことにより、組成物を放射線照射することにより、又は組成物を加熱することにより滅菌することができる。
【0529】
本明細書に開示される種々の組成物(例えば、ポリペプチド)は、局所適用することができる。局所投与は、ほとんどのペプチド製剤についてそれほど機能しないが、それは特に肺、鼻腔、口腔(舌下、頬側)、腟、又は直腸粘膜に適用される場合に有効であり得る。
【0530】
本発明の組成物は、約5ミクロン未満の空気力学的直径を有するエアロゾル又は噴霧乾燥粒子のいずれかとして送達する場合、吸入中に肺に送達することができ、肺上皮層を越えて血流に移動し得る。限定されるものではないが、ネブライザー、定量吸入器、及び粉末吸入器を含む、治療製品の肺送達用に設計された広範な機械デバイスを使用することができ、それらの全て当業者によく知られている。市販デバイスの一部の具体例は、ウルトラベントネブライザー(ミズーリ、セントルイス、Mallinckrodt Inc.製)、エイコーンIIネブライザー(コロラド、エングルウッド、Marquest Medical Products社製)、ベントリン定量吸入器(ノースカロライナ、リサーチトライアングルパーク、Glaxo Inc.製)、及びスピンヘイラー粉末吸入器(マサチューセッツ、ベドフォード、Fisons Corp.製)である。Nektar社、Alkermes社及びMannkind社は全て、承認された吸入可能インスリン粉末調製物を有し、又は技術が本明細書に記載の製剤に適用され得る臨床試験中である。
【0531】
粘膜への投与のための製剤は、典型的には、錠剤、ゲル剤、カプセル剤、懸濁液又はエマルジョン中に取り込むことができる噴霧乾燥薬物粒子である。標準的な医薬賦形剤は、任意の製剤業者から入手可能である。経口製剤は、チューインガム、ゲルストリップ、錠剤又はロゼンジの形態であり得る。
【0532】
経皮製剤を調製することもできる。これらは、典型的には、軟膏剤、ローション剤、噴霧剤、又は貼付剤であり、それらの全ては標準的な技術を使用して調製することができる。経皮製剤は、浸透向上剤の包含を要求する。本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者への毒性なしで、特定の患者、組成物、及び投与方式について所望の治療応答を達成するために有効な量の活性成分を得るように変えることができる。選択される投与量レベルは、用いられる特定の本発明の組成物の活性、投与経路、投与時間、用いられている特定の化合物の排泄速度、治療の継続期間、用いられる特定の組成物との組み合わせで使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、治療されている患者の年齢、性別、体重、病態、全身健康状態及び既往歴を含む種々の薬物動態学的要因、並びに医学分野において周知の同様の要因に依存する。
【0533】
具体的な実施形態によれば、本明細書に開示される組成物は、対象に治療有効量で投与される。本明細書において使用される場合、用語「有効量」又は「治療有効量」は、治療されている障害の1つ以上の症状を治療し、阻害し、若しくは緩和するために十分であり、又はそうでなければ所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を提供するために十分な投与量を意味する。治療有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らして十分に当業者の技能の範囲内である。
【0534】
本発明の方法において使用される任意の調製物について、治療有効量又は用量は、インビトロ及び細胞培養アッセイから最初に推定することができる。例えば、用量は、所望の濃度又は力価を達成するように動物モデルにおいて製剤化することができる。このような情報を使用してヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。本明細書に記載の活性成分の毒性及び治療効力は、インビトロで、細胞培養物又は実験動物において標準的な医薬手順により決定することができる。これらのインビトロ及び細胞培養アッセイ並びに動物試験から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量の範囲の製剤化において使用することができる。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて変動し得る。正確な製剤化、投与経路及び投与量は、個々の医師により患者の病態を考慮して選択され得る(例えば、“The Pharmacological Basis of Therapeutics”, Ch.1 p.1内のFingl,et al., 1975を参照のこと)。
【0535】
投与量の量及び間隔は、生物学的効果を誘導又は抑制するために十分である活性成分のレベル(最小有効濃度、MEC)を提供するように個々に調整することができる。MECは、各調製物について変動するが、インビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投与量は、個々の特徴及び投与経路に依存する。検出アッセイを使用して血漿濃度を決定することができる。
【0536】
治療すべき病態の重症度及び応答性に応じて、投薬は、単回又は複数回投与のものであり得、治療の過程は数日間から数週間まで、又は治癒がなされ、若しくは病状の縮小が達成されるまで持続する。
【0537】
投与すべき組成物の量は、無論、治療されている対象、苦痛の重症度、投与様式、処方医の判断などに依存的である。
【0538】
ある実施形態において、組成物[例えば、本明細書に記載のLILRB(例えば、LILRB2、LILRB1)ポリペプチド、それを含む組成物、融合タンパク質若しくは二量体、それをコードするポリヌクレオチド及び/又は細胞]は、例えば、治療すべき部位への直接注射により局所投与される。典型的には、注射は、全身投与により達成され得る濃度よりも高い、組成物の局所濃度の増加を引き起こす。組成物を上記のマトリックスと組み合わせ、治療すべき部位からのポリペプチドの受動拡散を低減させることにより、ポリペプチド組成物の局所濃度増加の作出を支援することができる。
【0539】
本発明の医薬組成物は、当技術分野において公知の医療デバイスを用いて投与することができる。例えば、任意選択の実施形態において、本発明の少なくとも一部の実施形態による医薬組成物は、有針皮下注射デバイス、例えば、米国特許第5,399,163号明細書、同第5,383,851号明細書、同第5,312,335号明細書、同第5,064,413号明細書、同第4,941,880号明細書、同第4,790,824号明細書、又は同第4,596,556号明細書に開示されているデバイスを用いて投与することができる。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例としては、医薬を制御速度で分注するための埋め込み型微量注入ポンプを開示する米国特許第4,487,603号明細書、皮膚を介して医薬を投与するための治療デバイスを開示する米国特許第4,486,194号明細書、医薬を正確な注入速度で送達するための医薬注入ポンプを開示する米国特許第4,447,233号明細書、連続的な薬物送達のための流量可変埋め込み型注入装置を開示する米国特許第4,447,224号明細書、マルチチャンバーコンパートメントを有する浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,439,196号明細書、及び浸透圧薬物送達系を開示する米国特許第4,475,196号明細書が挙げられる。これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる。多くの他のこのようなインプラント、送達系、及びモジュールが当業者に公知である。
【0540】
活性化合物は、化合物を急速な放出から保護する担体を用いて調製することができ、これは、例えば、インプラント、経皮貼付剤、及びマイクロカプセル化送達系を含む放出制御製剤である。生分解性の生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を使用することができる。このような製剤を調製するための多くの方法は特許されており、又は一般に当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R.Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照のこと。
【0541】
ポリマーデバイス(ロッド、シリンダ、フィルム、ディスク)の埋め込み又は注射(マイクロ粒子)後の長期全身放出のための放出制御ポリマーデバイスを作製することができる。マトリックスは、マイクロ粒子、例えば、ペプチドが固体ポリマーマトリックス内に分散されるマイクロスフェア又はコアがポリマーシェルと異なる材料のものであり、実質的に液体又は固体であり得るコア中でペプチドが分散若しくは懸濁されているマイクロカプセルの形態であり得る。本明細書において具体的に定義されない限り、マイクロ粒子、マイクロスフェア、及びマイクロカプセルは、互換的に使用される。或いは、ポリマーは、ナノメートル単位から4センチメートルまでの範囲の薄いスラブ若しくはフィルムとして成型することができ、粉砕若しくは他の標準的な技術により生成される粉末であり得、又はさらにはゲル、例えば、ヒドロゲルであり得る。
【0542】
非生分解性又は生分解性マトリックスのいずれも本明細書に開示される活性薬剤の送達に使用することができるが、生分解性マトリックスが好ましい。これらは、天然又は合成ポリマーであり得るが、分解及び放出プロファイルのより良好な特徴付けに起因して合成ポリマーが好ましい。ポリマーは、放出が所望される期間に基づき選択される。一部の場合、線形放出が最も有用であり得るが、他の場合、パルス放出又は「バルク放出」がより有効な結果を提供し得る。ポリマーは、ヒドロゲル(典型的には最大約90重量%の水を吸収する)の形態であり得、任意選択で多価イオン又はポリマーと架橋させることができる。
【0543】
マトリックスは、溶媒蒸発、噴霧乾燥、溶媒抽出及び当業者に公知の他の方法により形成することができる。生体内分解性マイクロスフェアは、例えば、Mathiowitz and Langer, J. Controlled Release, 5:13-22(1987)、 Mathiowitz ,et al., Reactive Polymers, 6:275-283 (1987)、及びMathiowitz, et al., J. Appl Polymer ScL, 35:755-774 (1988)に記載されている、薬物送達のためのマイクロスフェアの作製のために開発された方法のいずれかを使用して調製することができる。
【0544】
デバイスは、典型的には、身体全体の治療のための投与量よりもかなり少ない投与量を送達する埋め込み若しくは注射の領域を治療する局所放出のために製剤化することができ、又は全身送達のために製剤化することができる。これらは、皮下、筋肉、脂肪中に埋め込み、若しくは注射し、又は嚥下させることができる。
【0545】
ある実施形態において、本発明の少なくとも一部の実施形態による治療化合物がBBBを通過することを確保するため(所望される場合)、それらを、例えば、リポソーム中で製剤化することができる。リポソームの製造方法については、例えば、米国特許第4,522,811号明細書、同第5,374,548号明細書、及び同第5,399,331号明細書を参照のこと。リポソームは、特異的な細胞又は器官中に選択的に輸送され、したがって標的化薬物送達を向上させる1つ以上の部分を含み得る(例えば、V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照のこと)。例示的な標的化部分としては、葉酸塩又はビオチン(例えば、Low et al.の米国特許第5,416,016号明細書を参照のこと)、マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038)、抗体(P.G. Bloeman et al. (1995) FEBS Lett. 357:140、M.Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180)、サーファクタントプロテインA受容体(Briscoe et al. (1995) Am. J Physiol. 1233: 134)、p120(Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)が挙げられ、K. Keinanen, M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123, J.J. Killion, I.J. Fidler (1994) Immunomethods 4:273も参照のこと。
【0546】
本発明の一部の実施形態の組成物は、所望により、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を含有し得るパック又はディスペンサーデバイス、例えば、FDA承認キットとして提供することができる。パックは、例えば、金属又はプラスチック箔、例えば、ブリスターパックを含み得る。パック又はディスペンサーデバイスには、投与についての説明書が添付され得る。パック又はディスペンサーには、医薬品の製造、使用又は販売を規制する行政機関により規定される形態の容器に付随する通知も収められ得、その通知は、組成物の形態又はヒト若しくは動物投与のその機関による承認を反映するものである。このような通知は、例えば、処方薬についての米国食品医薬品局により承認されたラベリング又は承認された製品の添付文書のものであり得る。適合性の薬学的担体中で製剤化された本発明の調製物を含む組成物を調製し、適切な容器中に装入し、さらに上記で詳述された適応される病態の治療についてラベリングすることもできる。
【0547】
具体的な実施形態によれば、本明細書に記載の遺伝子、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド及び/又はタンパク質性部分のいずれも、ヒト遺伝子、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド及び/若しくはタンパク質性部分の配列又は本明細書に記載の所望の活性を示すそれらの機能的断片若しくはホモログを有し得る。
【0548】
具体的な実施形態によれば、遺伝子、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド及び/又はタンパク質性部分は、ヒト起源のものである。
【0549】
他の具体的な実施形態によれば、遺伝子、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド及び/又はタンパク質性部分は、ヒト遺伝子、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド及び/又はタンパク質性部分のホモログである。このようなホモログは、例えば、ヒト配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一又は相同であり得る。
【0550】
本明細書において使用される場合、用語「約」は、±10%を指す。
【0551】
用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(include)」、「含む(including)」、「有する」及びそれらの活用形は、「限定されるものではないが、~を含む」を意味する。
【0552】
用語「からなる」は、「~を含み、~に限定される」ことを意味する。
【0553】
用語「から本質的になる」は、組成物、方法又は構造が追加の成分、ステップ及び/又は部分を含み得ることを意味するが、追加の成分、ステップ及び/又は部分が、特許請求される組成物、方法又は構造の基本的で新規な特徴を実質的に変更しない場合のみである。
【0554】
本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」には、文脈が特に明示しない限り、複数の参照対象が含まれる。例えば、用語「化合物」又は「少なくとも1つの化合物」には複数の化合物も含まれ、それらの混合物も含まれ得る。
【0555】
本明細書全体にわたり、本発明の種々の実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に簡便性及び簡潔さのためであることが理解されるべきであり、本発明の範囲の変更不可能な限定と解釈されるべきではない。したがって、範囲の記載は、全ての可能な部分的範囲及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、範囲、例えば、1~6という記載は、部分範囲、例えば、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など、並びにその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5及び6を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0556】
数値範囲が本明細書に示す場合は常に、それは示される範囲内の任意の引用数(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の示される数と第2の示される数との「間の範囲である/間の範囲」という語句及び第1の示される数「から」第2の示される数「までの範囲である/までの範囲」という語句は本明細書において互換的に使用され、第1及び第2の示される数並びにそれらの間の全ての分数及び整数の数値を含むことを意味する。
【0557】
本明細書において使用される場合、用語「方法」は、限定されるものではないが、化学、薬理学、生物学、生化学及び医療分野の実務者に公知の、又はその実務者により公知の様式、手段、技術及び手順から容易に開発される様式、手段、技術及び手順を含む、所与の課題を遂行するための様式、手段、技術及び手順を指す。
【0558】
特定の配列表が参照される場合、そのような参照は、例えば、シーケンシングエラー、クローニングエラー、又は塩基置換、塩基欠失若しくは塩基付加をもたらす他の変更から生じる、わずかな配列変異を含む相補的配列に実質的に対応する配列も包含するものと理解されるべきであり、但しそのような変異の頻度は、50ヌクレオチド中1つ未満、或いは、100ヌクレオチド中1つ未満、或いは、200ヌクレオチド中1つ未満、或いは、500ヌクレオチド中1つ未満、或いは、1000ヌクレオチド中1つ未満、或いは、5,000ヌクレオチド中1つ未満、或いは、10,000ヌクレオチド中1つ未満であることを条件とする。
【0559】
明確性のために別個の実施形態に関連して記載される本発明のある特徴は、単一の実施形態における組み合わせで提供することもできることが認識される。逆に、簡潔性のために単一の実施形態に関連して記載される本発明の種々の特徴は、別個に、又は任意の好適な下位の組み合わせで、又は本発明の任意の他の記載される実施形態において好適であるとして提供することもできる。種々の実施形態に関連して記載されるある特徴は、その実施形態がそれらの要素なしでは作動不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴であるとみなされるべきではない。
【0560】
上記で詳述され、以下の特許請求の範囲のセクションで特許請求される本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的に裏付けられる。
【実施例】
【0561】
以下、上述した詳細な説明と共に本発明の一部の実施形態を非限定的に説明する、次の実施例に参照する。
【0562】
実施例1
LILRB2バリアントの設計
材料及び方法:
LILRB2(配列番号1、本明細書において「WT LILRB2」とも称される)の構造分析を行ってその安定性及びHLA-G(配列番号3)に対する結合親和性を最適化し、増加させ得るアミノ酸置換を同定した。それは以下のステップを含んでいた。
【0563】
1.バイオビアディスカバリースタジオの「タンパク質の調製」プロトコル1(dassault systems社製)を使用するLILRB2及びHLAGの両方の複合体構造の調製。調製は、電荷の固定及び側鎖の欠落、並びにエネルギー最小化を含んだ。
【0564】
2.LILRB2及びHLA-G間の潜在的な相互作用点を同定するための構造分析(
図1のA~B、PDB ID:2DYPは、この目的に使用される高分解能複合体構造である)。
【0565】
3.LILRB2-HLA-G相互作用(
図1のB)に特異的なLILRB2相互作用部位を同定するためのHLAホモログ:HLA-A、HLA-B、HLA-C及びHLA-G間の配列比較。
【0566】
4.上記のステップ3で同定されたHLA-Gの、すなわちHLA-AにもHLA-BにもHLA-Cにも存在しない、特異的な1つ又は複数のアミノ酸と相互作用するLILRB2界面中のアミノ酸の同定(
図1のD)。
【0567】
5.LILRB2上の上記のステップ3~4で定義された残基のサブセットにおける可能な各突然変異のインシリコサンプリング。このプロセスは以下を含んでいた。各位置における特異的突然変異をコンピュータにより別個に導入すること、突然変異を最良に収容するように構造を最適化すること並びにCHARMMベース力場エネルギー計算を使用して全体的なタンパク質安定性及び結合エネルギーの両方に関するLILRB2野生型配列(配列番号1)と任意の突然変異との間のエネルギー差(ΔG)(WTに対するΔG)を予測すること。計算された実際のエネルギー項は、ΔGのみではなく結合及び安定性のポテンシャルエネルギーに対する突然変異の効果であった。しかしながら、ΔGはドミナントであり、したがってヒント(hint)はΔGに対する効果に関する。
【0568】
6.結合/安定性エネルギー計算の結果をランク付けリストにコンパイルし、結合及び安定性の検討事項の両方に有益であると予測されたLILRB2配列(配列番号1)上の特異的点突然変異(置換)を選択した。
【0569】
7.選択された置換を2回目の突然変異分析のラウンドにおいて使用し、この回は毎回2つの置換の組み合わせを導入し、HLA-Gへの結合及び安定性の両方に関するエネルギー評価のプロセスを繰り返した。
【0570】
さらなる試験のための示唆される代用物の最終リストを、この分析の間に検討されるいくつかのパラメータに基づき選択した。
・アポタンパク質(特徴的な補欠分子族又は金属を欠くタンパク質)に関する安定性についての置換のエネルギー寄与(ΔG)、
・複合体構造及び相互作用エネルギーに関する安定性についての置換のエネルギー寄与(ΔG)、
・タンパク質に対する立体構造の最小化(例えば、WT LILRB2配列と比較してサイズ、形状及び化学的性質に関して隔たりがある置換を導入することによる)、
・タンパク質複合体界面の範囲内の形状相補性。
【0571】
結果:
HLA-G(配列番号3)-LILRB2(配列番号1)相互作用界面の構造分析及びHLAホモログ間の配列比較は、HLA-G及びそのホモログ、すなわち、HLA-G中のPhe195が他のホモログ中でSerにより置き換えられたものの間の単一のドミナントな差のみを明らかにした(
図1のC)。したがって、LILRB2上の密接に相互作用する残基を分析において主に検討した。
【0572】
LILRB2及びHLA-G Phe195相互作用残基、すなわち、LILRB2(配列番号1)残基Ser45、Ile49、Thr50及びVal57(
図1のD)間の界面を定義するアミノ酸残基のサブセットにおける考えられる各突然変異のインシリコサンプリングは、結合エネルギーに対する有意な正の影響、すなわち、より低いΔGを有することが見出された。加えて、4つのアミノ酸、Ser45、Ile49、Thr50及びVal57における考えられる各突然変異の計算された結合/安定性エネルギーの結果をランク付けリストにコンパイルした。無論、ランク付けは、個々のタンパク質安定性及び結合自由エネルギー(親和性)の両方に対する突然変異のインシリコ予測寄与により行った。
【0573】
以下の表1は、上位ランク付けされた単一置換を示し、以下の表2は、上位ランク付けされた二重置換を示す。
【0574】
続いて、以下の実施例にさらに記載されるとおり、特異的な単一置換及び2つのアミノ酸の置換の組み合わせをさらなる分析のために選択した。
【0575】
【0576】
【0577】
実施例2
LILRB2バリアントの産生及び特徴付け
材料及び方法:
試薬 - エクセルバンド(商標)3色ハイレンジタンパク質マーカー又はエクセルバンド(商標)3色エクストラレンジタンパク質マーカー(SMOBIO社製、それぞれカタログ#PM2600又はPM2800)、サンプル緩衝液(GenScript社製 カタログ#M00676)、ポリアクリルアミドゲル8%又は4-20%ジェンスクリプト それぞれカタログ#M00662又はM00656)、フージーン(登録商標)HD形質移入試薬(Promega社製、カタログ#TM328)、ECLプラスウエスタンブロッティング基質(Pierce社製、カタログ#32132)。
【0578】
抗体 - APC抗ヒトHLA-G(特許の米国特許出願公開第2020/0102390A1号明細書から)、APCヒトIgG4(Bioegend社製、カタログ#403706)、APC抗ヒトIgG1(Southern Biotech社製、カタログ#9052-31)、APCマウスIgG1k(Biolegend社製、カタログ#400120)、APC抗ヒトCD47抗体(Biolegend社製、カタログ#323124)、CD47ブロッカーAb(特許の国際公開第2011/143624A2号パンフレットから)、ウサギ抗ヒトLILRB2(Abclonal社製 カタログ#A10135)、ビオチン化ウサギ抗ヒトSIRPα LsBio社製 カタログ(#LS-C370337)、ヤギ抗ウサギIgG(H+L)-HRPコンジュゲート(R&D systems社製、カタログ#170-6515)、HRPコンジュゲート-ストレプトアビジン(Pierce社製 カタログ#TS21126)。
【0579】
細胞系 - エクスピ293F(Gibco社製、カタログ#A14257)、HT1080細胞系(ATCC製、CCL-121)、HT1080-HLA-G、THP1細胞系(ATCC製、TIB-202)、THP1-EV及びTHP1-HLA-G。細胞は、HLA-G発現プラスミド又は空のベクター(EV)でのウイルス感染により生成した。簡潔に述べると、293T細胞をレンチウイルスプラスミド(HLA-G構築物又は空のベクター及びレポーター試薬GFPを含有する)で形質移入した。37℃、5%のCO2で48時間後、上清を収集し、HT1080又はTHP1細胞の形質導入に使用した。細胞を24時間形質導入した。HLA-G細胞はGFP陽性である。
【0580】
培地及び組織培養試薬 - エクスピ269培地(Gibco社製、カタログ#A-14351-01)、RPMI1640(Biological Industries社製、カタログ#01-100-1A)、EMEM(Biological Industries社製、カタログ#01-040-1A)、DMEM(Biological Industries社製、カタログ#01-055-1A)、DMEM/F-12(カタログ#31330095、Gibco社製)、FCS(Gibco社製、カタログ#12657-029)、10%のBSA(Biological Industries社製、カタログ#03-010-1B)、EDTA(Sigma社製、カタログ#E7889)、トリプLEエクスプレス(Gibco社製、カタログ#12604-13)、グルタマックス(Gibco社製、カタログ#35050-038)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco社製、カタログ#151140-122)。
【0581】
設備 - FACSデバイス(Stratadigm社製、サイトメトリーS1000EXI)。
【0582】
組換えタンパク質の製造 - 比較機能分析及び産生評価のため、野生型(WT)LILRB2ドメイン(配列番号1)又は突然変異LILRB2ドメイン(本明細書において「LILRB2バリアント」と称される)を含むいくつかの組換えタンパク質を産生した(以下の表3を参照のこと)。産生は、所望のFc融合タンパク質についてのコード配列でクローニングされたpcDNA3.4発現ベクターにより形質移入されたエクスピ293F細胞中で行った。制限酵素、例えば、EcoRI及びHindIII又はXbaI及びEcoRVを使用し、コザック配列及び終止コドンと人工シグナルペプチド(MESPAQLLFLLLLWLPDGVHA、配列番号25)を付加して配列をベクター中にクローニングした。タンパク質を細胞培養物の上清から収集し、一部の場合、プロテインA(PA)ポロスマブキャプチャーA樹脂を使用する1ステップ精製によりタンパク質を精製した。
【0583】
【0584】
SDS-PAGE分析 - 35μlの細胞培養物上清又は各組換えタンパク質サンプルからの3μgの精製タンパク質を、β-メルカプトエタノールを有する又は有さない(それぞれ還元及び非還元条件)ローディング緩衝液と混合し、95℃で5分間加熱し、8%のゲル電気泳動SDS-PAGE上で分離した。ゲル上のタンパク質移動をe-ステイン機器(GenScript社製)により製造業者の説明書に従って可視化した。
【0585】
ウエスタンブロット分析 - 産生されたヘテロ二量体を含有するサンプル(レーン当たり50~500ng)を還元又は非還元条件(それぞれβ-メルカプトエタノールを有する又は有さないローディング緩衝液中)で処理し、95℃で5分間加熱し、8%又は4~20%勾配のSDS-PAGEゲル上で分離した。続いて、タンパク質をPVDF膜上に転写し、一次抗体と1時間又は一晩インキュベートし、続いてHRP-コンジュゲート二次抗体と1時間インキュベートした。シグナルをECL発生後に検出した。
【0586】
フローサイトメトリー - 細胞の表面上で発現されたHLA-Gへの組換えタンパク質の結合を評価するため、HT1080-WT細胞若しくはTHP-1-EV細胞、又はヒトHLA-Gを過剰発現するHT1080若しくはTHP-1細胞を、産生された組換えタンパク質の段階希釈物と4℃で30分間インキュベートし、続いてIgG1骨格に特異的な蛍光標識抗体で免疫染色し、フローサイトメトリー分析した。結合特異性を試験するため、細胞を、組換えタンパク質とのインキュベーション前に5μg/mlの濃度のヒトHLA-Gに対するブロッカー抗体とのプレインキュベーションに37℃で1時間供した。MFI値を使用してグラフパッドプリズムソフトウェア)を用いて結合曲線グラフを作出した。
【0587】
結果:
WT LILRB2(配列番号1)又は突然変異LILRB2(本明細書において「LILRB2バリアント」と称される)のいずれか-Fc融合物及びSIRPα-Fc融合物を含むいくつかのヘテロ二量体タンパク質を産生及び分析した。WT LILRB2を含むヘテロ二量体は本明細書において「DSP216-V5」と称される一方、LILRB2バリアントを含むヘテロ二量体は本明細書において「DSP216-V11」、「DSP216-V12」、「DSP216-V13」、「DSP216-V14」、「DSP216-V15」、「DSP216-V16」、「DSP216-V17」、「DSP216-V18」、「DSP216-V19」、「DSP216-V20」と称される。加えて、2つのLILRB2ホモ二量体タンパク質を産生及び分析した:本明細書において「LILRB-V5-Fc」と称されるWT LILRB2を含むホモ二量体及び本明細書において「LILRB2-V12-Fc」と称されるLILRB2バリアントを含むホモ二量体。各ヘテロ二量体/ホモ二量体の完全な説明は、上記の表3に提供される)。
【0588】
図2Aに実証されるとおり、予測ヘテロ二量体分子量形態のタンパク質の高い比率が非還元条件下で観察され、2つのサブユニットの発現が還元条件下で確認された。
【0589】
続いて、HT1080-WT及びHLA-Gを過剰発現するHT1080(HT1080-HLA-G)及び空のベクターで形質導入されたTHP1モック(THP1-EV)又はHLA-Gを過剰発現するTHP1(THP1-HLA-G)の細胞系並びに検出抗体としての抗hIgG1を使用するフローサイトメトリー分析により、産生されたヘテロ二量体のHLA-Gへの結合を決定した(
図3A~F)。hCD47のみを発現するWT又はEV細胞と比較してHLA-G過剰発現細胞への有意に高い結合が観察された(
図3A~B)。さらに、LILRB2バリアントドメインを含むヘテロ二量体のHLA-G発現細胞への結合は、WT LILRB2ドメインを含むヘテロ二量体(DSP216-V5)の結合よりも有意に高かった(
図3C)。
【0590】
CD47のみを発現するHT1080細胞と比較してHT1080-HLA-G細胞はHLA-G及びCD47の両方を発現するため(
図3A)、HLA-Gへの産生されたヘテロ二量体の特異的結合を、抗HLA-G遮断抗体を使用してさらに試験した。LILRB2バリアントを含むヘテロ二量体に関する抗HLA-G結合阻害レベルは、WT LILRB2を含むヘテロ二量体に対する阻害と比較して高く、HLA-Gへの特異的結合のそれらの優位性を示した(
図3D~F)。
【0591】
HT1080-WT及びHLA-Gを過剰発現するHT1080(HT1080-HLA-G)、並びに検出抗体としての抗hIgG1を使用するフローサイトメトリー分析によりHLA-GへのLILRB2-V5又はLILRB2-V12ホモ二量体の結合を決定した(
図4)。hCD47のみを発現するWT細胞と比較してHLA-G過剰発現細胞へのLILRB2-V12ホモ二量体の有意に高い結合が観察された(
図4)。さらに、HLA-G発現細胞への、LILRB2-V12バリアントドメインを含むホモ二量体の結合は、WT LILRB2ドメインを含むホモ二量体(LILRB2-V5、
図4)の結合よりも有意に高かった。さらに、LILRB2-V12バリアントを含むホモ二量体に関する抗HLA-G結合阻害レベルは、WT LILRB2を含むホモ二量体に対する阻害と比較して高く、HLA-Gへの特異的結合のそれらの優位性を示した(
図4)。
【0592】
LALA突然変異を有する又は有さないFcドメイン(それぞれ配列番号29及び85)に融合しているLILRB2バリアントの融合物並びにLALA突然変異を有する又は有さないFc(それぞれ配列番号31及び86)に融合しているSIRPα(配列番号27又は88の融合物を含む追加のヘテロ二量体タンパク質を産生及び分析した。各ヘテロ二量体の完全な説明は、上記の表3に提供される。
【0593】
図9に実証されるとおり、予測ヘテロ二量体分子量形態のタンパク質の高い比率が非還元条件下で観察され、2つのサブユニットの発現が還元条件下で確認された。さらに、
図10に実証されるとおり、ウエスタンブロット分析は、産生されたDSP216-V12、DSP216-V12短鎖、DSP216-V21及びDSP216-V21短鎖がSIRPα及びLILRB2のドメインを含有することを裏付けた。
【0594】
DSP216-WT、DSP216-V3、DSP216-V6、DSP216-V12短鎖、DSP216-V21及びDSP216-V21短鎖ヘテロ二量体のHLA-Gへの結合は、HT1080-WT及びHLA-Gを過剰発現するHT1080(HT1080-HLA-G)、並びに検出抗体としての抗hIgG1を使用するフローサイトメトリー分析により決定した。
図11に示すとおり、hCD47のみを発現するWT細胞と比較してHLA-G過剰発現細胞への、全ての試験DSP216ヘテロ二量体の有意に高い結合が観察された。さらに、LILRB2配列中のV57R置換を含有するDSP216バリアント(DSP216-V21、DSP216-V21短鎖及びDSP216-V12短鎖)のHLA-G発現細胞への結合は、WT LILRB2ドメインを含むヘテロ二量体(DSP216-WT、DSP216-V3及びDSP216-V6)の結合と比較して有意に高かった。さらに、有意な結合阻害が抗HLA-Gブロッカー抗体により実証され、HLA-Gへの特異的結合を示した。
【0595】
実施例3
ヒトHLA-GへのLILRB2バリアントの結合
LILRB2バリアントの優位性をさらに確認するため、ヒトHLA-Gに対するLILRB2バリアントの結合親和性及びWT LILRB2との競合を、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイにより決定する。
【0596】
実施例4
LILRB2バリアントは天然LILRB2-HLA-G結合を遮断する
内因性LILRB2は、ヒト単球、B細胞上で、並びにより低レベルで骨髄及び形質細胞様樹状細胞の細胞表面上で発現される(Katz HR. Adv Immunol. (2006) 91:251-272、Kang X, et al. Cell Cycle. (2016) 15(1): 25-40)。
【0597】
内因性LILRB1は、ヒトマクロファージ、一部のT細胞、NK細胞、B細胞、単球、骨髄、形質細胞様及び寛容原性DCを含む種々の樹状細胞サブセット(Katz HR.Adv Immunol. (2006) 91:251-272、Kang X, et al. Cell Cycle. (2016) 15(1):25-40)上で発現される。
【0598】
内因性HLA-Gは主に胎盤中の細胞性トロホブラスト上で発現され、しかしながら、いくつかの病的状態(例えば、癌、ウイルス感染、自己免疫及び炎症性疾患、GvHD)と関連する細胞がHLA-Gを発現することが示されている(Contini P, et al., Front Immunol. (2020) 11:1613, PMID:32983083、Morandi F, et al., J Immunol Res. (2016) 2016:4326495, PMID:27652273)。
【0599】
免疫細胞上で発現されるLILRB2、及びLILRB1と、それらの天然リガンドのHLA-Gとの相互作用は、免疫細胞の活性を阻害するシグナル伝達経路を開始させる。免疫細胞上で発現される内因性LILRB2、及びLILRB1と、例えば、腫瘍細胞上で発現されるHLA-Gとの相互作用を遮断するように、LILRB2を含むタンパク質を設計する。
【0600】
LILRB2バリアントを含む産生されたタンパク質の、それらの相互作用のブロッカーとしての有効性をELISAアッセイにより評価し、WT LILRB2と比較する。この目的のため、ELISAプレートを組換えヒトHLA-Gでコーティングする。続いて、プレートを洗浄し、異なる濃度の産生されたLILRB2を含むタンパク質又は陽性対照抗HLA-Gブロッカー抗体と1時間インキュベートする。LILRB2-Fc(mIgG)、又はLILRB1-Fc(mIgG)を添加し、続いて追加のインキュベーションを行い、次いでプレートを洗浄し、標準的なELISAプロトコルに従って抗マウスIgG-HRP及びTMB基質を用いてブロットする。プレートリーダー(Thermo Scientific社製、マルチスキャンFC)を使用して620nmをリファレンスとして450nmでプレートを分析する。
【0601】
実施例5
リガンド結合ELISA
LILRB2のその対応物HLA-Gへの結合を、結合ELISAアッセイにより試験する。
【0602】
hHLA-Gをプラスチックプレートの表面上に結合させ、LILRB2を添加し、固定化hHLA-Gに結合させる。洗浄後、HRP抗hIgG1を添加し、分子のFc骨格に結合させる。検出は、TMB基質を用いて標準的なELISAプロトコルに従ってプレートリーダー(Thermo Scientific社製、マルチスキャンFC)を使用して540nmをリファレンスとして450nmで行う。
【0603】
実施例6
LILRB2バリアントのインビボ抗腫瘍効果
3つの異なるインビボマウスモデルを、癌の治療におけるLILRB2バリアントを含む産生されたヘテロ二量体の効力の試験に使用する:
1.ヒト幹細胞又はヒトPBMC若しくは固定化ヒトPBMCと、CD47及びHLA-Gを発現するヒト腫瘍細胞とが接種されたNSGマウス。
2.CD47及びHLA-Gを発現するヒト腫瘍細胞が接種されたヌードSCIDマウス。
3.CD47及びHLA-Gを発現するマウス癌細胞系が接種されたマウスと、試験ヘテロ二量体のサロゲートマウスタンパク質とを使用した同系マウス腫瘍モデル。
【0604】
全てのモデルにおいて、マウスに腫瘍細胞を静脈内(IV)、腹腔内(IP)、皮下(SC)又は同所的に接種する。腫瘍が触診可能(約80mm3)になったら、マウスを異なる用量及び異なるレジメンの産生されたヘテロ二量体でIV、IP、SC又は同所的に処理する。
【0605】
マウスを体重及び臨床的徴候について追跡する。腫瘍を測径器により週に数回測定し、腫瘍容積を以下の式:V=長さ×幅2/2に従って計算する。マウス体重を定型的に測定する。腫瘍成長及び生存率を、実験全体を通してモニタリングする。
【0606】
腫瘍中の免疫細胞の浸潤及びサブタイピングは、腫瘍又は流入領域リンパ節の切除、消化並びに特異的抗体染色及びフローサイトメトリー分析を使用する免疫フェノタイピングにより試験する。追加的に、又は代替的に、免疫細胞の浸潤又は腫瘍の壊死グレードは、腫瘍の切除、特異的抗体での免疫組織化学染色のためのパラフィン包埋及び切片化により決定する。
【0607】
屠殺時、マウス器官をハーベストし、H&E及びIHC染色のためのパラフィンブロック中に包埋する。
【0608】
以下の試験:PK分析、血漿中のサイトカイン測定、循環中の血液細胞亜集団のFACSプロファイリング、血液学的試験、血清化学物質試験、抗薬物抗体(ADA)分析及び中和抗体分析(NAB)のために一般的な手順に従って異なる時点でマウスから血液サンプルを採取する。
【0609】
実施例7
M-CSF依存性マクロファージ成熟に対するLILRB2バリアントの効果
抗原提示細胞(APC)、例えば、マクロファージ及び樹状細胞上で発現される内因性LILRB1及びLILRB2に向かう腫瘍又は免疫細胞上で発現されるHLA-Gにより誘導される免疫抑制シグナルを、それらの相互作用の競合及び遮断により遮断するように、産生されるタンパク質のLILRB2ドメインを設計する。M1マクロファージは抗腫瘍活性を示す一方、M2マクロファージは、腫瘍進行を促進することが報告されている。M-CSFは、異なる活性化刺激により続いて炎症促進性(M1マクロファージ)又は抗炎症性(M2マクロファージ)表現型に分極化され得るナイーブM0(M2様)マクロファージへの単球の分化をドライブすることが公知である(Chistiakov DA, et al., J. Cell. Mol. Med. (2015) 19(6):1163-1173 PMID:25973901)。M-CSF依存性マクロファージ成熟の間のアンタゴニスト抗体でのLILRB2の遮断は、CD14及びCD163のより低い発現を有するより丸く、よりタイトに接着性のM1(抗腫瘍)表現型をもたらすことが示された(Chen HM, et al., J Clin Invest. (2018)128(12):5647-5662. PMID:30352428)。生成されたマクロファージのLPSでの刺激後、炎症促進性サイトカインTNFαの分泌の向上及び抗炎症性IL-10の分泌の低減が検出された(Chen HM et al.)。
【0610】
M-CSF依存性マクロファージ成熟に対する、LILRB2バリアントを含む産生された組換えタンパク質の効果を、M1/M2マーカーのフローサイトメトリーベース検出を使用して、並びにLPS前処理マクロファージの刺激後のTNFα及びIL-6(公知のM1関連サイトカイン)放出の測定により評価した。
【0611】
材料:
試薬 - DSP216-V12、DSP216-V12短鎖、健常ドナーからの新鮮軟膜サンプル(Hadassah社血液バンク)、フィコール-パック(商標)プラス1.077(Cytiva社製、カタログ#GE-17-1440-03)、ヒトトラステインFcX(Biolegend社製、カタログ#422302)、PBS(Sartorius社製、カタログ#20-023-1A)、EDTA(Sigma社製、カタログ#E7889)、アジ化ナトリウム(Sigma社製、カタログ#S2002)、10%のBSA(Sartorius社製、カタログ#03-010-1B又はBiological Industries社製、カタログ#03-010-1B)、BDサイトメトリックビーズアレイ(CBA)(BD社製、カタログ#551809)、RPMI1640(Biological Industries社製、カタログ#01-100-1A)、DMEM(Biological Industries社製、カタログ#01-055-1A)、FBS(Gibco社製、カタログ#12657-029)、トリプLEエクスプレス(Gibco社製、カタログ#12604-13)、グルタマックス(Gibco社製、カタログ#35050-038)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco社製、カタログ#151140-122)、ヒト組換えM-CSF(R&D社製、カタログ#216-MC-100)。
【0612】
抗体 - 抗HLA-G Tizona様(米国特許出願公開第20200102390号明細書に記載)、BV785抗ヒトCD11b(Biolegend社製、カタログ#301346)、APC抗ヒトCD163(Biolegend社製、カタログ#333610)、APC抗ヒトCD206(Biolegend社製、カタログ#321110)、APC抗ヒトHLA-DR(Biolegend社製、カタログ#307610)、CD163及びCD206についてのAPCマウスIgG1(Biolegend社製、カタログ#40120)アイソタイプ対照、HLA-DRについてのAPCマウスIgG2a(Biolegend社製、カタログ#400220)アイソタイプ対照。
【0613】
ヒト単球 - PBMCを、2つの新鮮軟膜サンプルからフィコール勾配により製造業者の説明書に従って精製した。細胞を、RPMI培地を有するT75フラスコ中で播種し(フラスコ当たり1×108個の細胞)、37℃、5%のCO2でインキュベートした。2時間のインキュベーション後、培地を、50ng/mLのM-CSFが補給された新鮮RPMIと交換した。6日間のインキュベーション後、細胞をM0マクロファージとして定義する(Tarique AA, et al., American J of Respiratory Cell and Molecular Biology (2015) 53(5): 676-688, PMID:25870903)。
【0614】
細胞系 - 上記の実施例2に記載のHLA-Gを過剰発現するHT1080細胞(HT1080-HLA-G)。無論、HLA-Gを過剰発現するHT1080の細胞はGFP陽性である。
【0615】
方法:
マクロファージをHT1080HLA-G細胞と同時培養することにより、M0マクロファージ分極化に対するDSP216-V12の効果を評価した。M-CSFとの6日間のインキュベーション後、M0マクロファージを、一晩のインキュベーションのためにRPMI及び50ng/mlのM-CSFを有する6ウェルプレート中で播種した(ウェル当たり250,000個の細胞)。翌日、HT1080-HLA-G細胞を、2、4若しくは10μg/mlのDSP216-V12又は陽性対照としての1.5μg/mLの抗ヒトHLA-G(2μg/mlのDSP216-V12と等モル濃度)と37℃で1時間インキュベートし、次いで、M0マクロファージの上部に2:1のE:Tの比(250,000個のM0マクロファージ:125,000個のHT1080-HLA-G細胞)で播種した。24時間のインキュベーション後、細胞を収集し、確立された分極化マーカーの発現をフローサイトメトリー(サイトフレックスB53000 サイトフレックスB5-R3-V5)により決定した。具体的には、マクロファージをCD11b陽性細胞としてゲーティングし、M2マーカーCD163及びCD206、並びにM1マーカーHLA-DRの表面発現を評価した。加えて、サイトカイン分泌の決定のために上清を収集した。MFI値を使用してFACSデータを分析し(フロージョーv10.8.1ソフトウェア)、FCAPアレイv3.0ソフトウェアを使用して上清中のサイトカインレベルのCBAデータを分析した。
【0616】
結果:
DSP216-V12又はDSP216-V12短鎖(LILRB2バリアント-Fc融合物及びSIRPα-Fc融合物を含むヘテロ二量体タンパク質、完全な説明については表3の参照のこと)での処理後、HT1080HLA-G細胞と同時培養されたM-CSF分極化単球中のCD163及びCD206のM2関連マーカーの発現は、非処理又は抗HLA-G対照群と比較して用量依存的様式で下方調節された(
図5のA~B及び
図12のA~B)一方、M1関連マーカーHLA-DRの発現は上方調節された(
図5のC及び
図12のC)。さらに、DSP216-V12での処理は、M1関連サイトカイン、TNFα及びIL-6の分泌を誘導した(
図6のA~B)。
【0617】
まとめると、結果は、DSP216-V12及びDSP216-V12短鎖がM0(M2様)マクロファージをM1マクロファージに変換し得ることを示した。
【0618】
実施例8
マクロファージ及び多形核細胞に対するLILRB2バリアントの効果
APC、例えば、マクロファージ及び樹状細胞上で発現される内因性LILRB1及びLILRB2に向かう腫瘍又は免疫細胞上で発現されるHLA-Gにより誘導される免疫抑制シグナルを、それらの相互作用の競合及び遮断により遮断するように、タンパク質のLILRB2ドメインを設計する。HLA-Gの「ドントイートミーシグナル」のこの遮断は、腫瘍細胞食作用を誘導し、癌及び免疫細胞間の阻害HLA-G-LILRB1/2シグナリングを妨害し、次いで食作用を向上させる。
【0619】
腫瘍細胞食作用に対する、LILRB2バリアントを含む産生された組換えタンパク質の効果は、マクロファージを、異なる濃度の産生された組換えタンパク質の存在下でプレインキュベートされたCFSE細胞又はセルトレースバイオレット(CTV)標識癌細胞と混合することにより評価することができる。種々のインキュベーション時間(例えば、3時間)後、マクロファージを抗CD11b抗体で染色し、染色癌細胞の食作用取り込みを顕微鏡法又はフローサイトメトリー分析により評価する。
【0620】
材料:
試薬 - DSP216-V12、健常ドナーからの新鮮軟膜サンプル(Sanquin社血液バンク)、フィコールリンホプレップ(ノルウェー国、オスロ、Alere Technologies ASのSerumwerk Bernburg AG、04-03-9391/02)、トリプLEエクスプレス(gibco社製、カタログ#12604021)、FC受容体ブロッキング溶液(Nanogen社製)、PBS(社内、umcg薬局)、EDTA(sigma Aldrich社製、カタログ#E9884-1KG)、アジ化ナトリウム(BDH Chemical LTD製)、BSA(BSAフラクションV、Roche社製、カタログ#10735094001)、RPMI1640(gibco社製、52400-025)、FBS(gibco社製)、ヒト組換えM-CSF(immunotools社製カタログ#11343115)、ヒト組換えIL-10(immunotools社製、カタログ#1134107)、セルトレース(商標)バイオレット細胞増殖キット(Thermo Fisher Scientific社製、カタログ#C34557)。
【0621】
抗体 - 抗HLA-G Tizona様(米国特許出願公開第20200102390号明細書に記載)、APC抗ヒトCD47(Biolegend社製、カタログ#323124)APC抗ヒトCD11b(Biolegend社製、カタログ#301310)、APC抗ヒトCD163(e-Bioscience社製、カタログ#17-1639-41)、APC抗ヒトLILRB2(Biolegend社製、カタログ#338708)、HLA-GについてのAPCマウスIgG4(Biolegend社製、カタログ#403706)アイソタイプ対照、CD47、CD11b及びCD163についてのAPCマウスIgG1(Biolegend社製、カタログ#40120)アイソタイプ対照、LILRB2についてのAPCラットIgG2a(Biolegend社製、カタログ#400512)アイソタイプ対照、CD47遮断Ab Inhibrix様(米国特許出願公開第2015/0183874A1号明細書に記載)。
【0622】
ヒト単球 - サンプルを新鮮軟膜サンプルからフィコール勾配上の精製により製造業者の説明書に従って得た。細胞を、10%のFCS及び50ng/mLのM-CSFが補給されたRPMI培地を有する6ウェルプレート中で播種し(2mL中ウェル当たり5×106個の細胞)、37℃、5%のCO2でインキュベートした。一晩のインキュベーション後、培地を、10%のFCS及び50ng/mLのM-CSFが補給された新鮮RPMIと交換した。6日間のインキュベーション後、培地を、10%のFCS及び50ng/mLのIL-10が補給されたRPMIと交換した。48時間のインキュベーション後、細胞をM2cマクロファージとして定義した。
【0623】
細胞系 - HLA-Gを過剰発現する721.221細胞(Shimizu, Y., and R. DeMars, J. Immunol. (1989) 142:3320、Markel G. et al., J Immunol (2002) 168(6): 2803-2810)(721.221-HLA-G)。細胞は、HLA-G及びGFP又はGFP単独(空のベクター-EV)発現プラスミドでのウイルス感染により生成した。
【0624】
方法:
M2cマクロファージ食作用に対するDSP216-V12の効果を、マクロファージと721.221-HLA-G又は721.221-EV細胞との同時培養により評価した。721.221-HLA-G細胞及び721.221-EV細胞をCTVで染色し、250,000個の細胞をFACSチューブ中で播種し、2.5、5若しくは10μg/mLのDSP216-V12又は6μg/mLのCD47遮断抗体を含有する培地と4℃で20分間インキュベートした。50000個のM2cマクロファージを、癌細胞を含有する各チューブに添加した。3時間のインキュベーション後、マクロファージをAPC-CD11b抗体で染色し、食作用の割合をCTVについて陽性のCD11b+細胞の率として決定した。並行して、CD47及びHLA-G発現を、FACSを使用する721.221-HLA-G及び-EV細胞の表面上のそれらの発現の試験により確認し、CD11b、CD163及びLILRB2発現レベルをM2cマクロファージに関して試験した。FACSデータをフロージョーv10.8.1ソフトウェアにより分析し、統計的分析をグラフパッドソフトウェア(マックOS用プリズム9、バージョン9.4.1)を用いて行った。
【0625】
結果:
DSP216-V12(LILRB2バリアント-Fc融合物及びSIRPα-Fc融合物を含むヘテロ二量体タンパク質)での処理後、M2cマクロファージによる721.221EV及び721.221-HLA-G細胞の食作用は用量依存的様式で増加した。CD47
+HLA-G
-721.221-EV細胞については、食作用の増加はあらゆるDSP216-V12濃度で有意でなかった一方、CD47遮断抗体は食作用を有意に増加させた(
**p=0.0028)(
図13のA)。CD47
+HLA-G
+721.221-HLA-G細胞については、食作用の増加は10μg/mLのDSP216-V12で有意であった(
*p=0,0465)一方、CD47遮断抗体は食作用を有意に増加させなかった(p=0,1654)(
図13のB)。
【0626】
まとめると、結果は、DSP216-V12がM2cマクロファージによるCD47+/HLA-G+細胞の食作用を有意に増加させ得ることを示した。
【0627】
この効果は、CD47/SIRPα軸をHLA-G/LILRB1/2軸と一緒に遮断することから生じる。それというのも、CD47遮断抗体でのCD47/SIRPα軸のみの遮断は、CD47+/HLA-G+721.221-HLA-Gの食作用に対するより低い効果を有するためである。
【0628】
実施例9
LILRB2バリアントによるNK細胞の細胞傷害活性化
ナチュラルキラー(NK)細胞は、B及びT細胞としての特異的抗原の認識なしで直接的な細胞傷害又はサイトカイン/ケモカインの分泌を誘導する。NK細胞傷害は、感染細胞、悪性腫瘍及びストレスを受けた細胞に対する免疫応答における重要な役割を担い、種々の疾患の病理学的プロセスに関与する。
【0629】
NK活性化に対する、LILRB2バリアントを含む産生された組換えタンパク質の効果を決定するために当技術分野において公知の多数のアッセイが使用され、それとしては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
【0630】
細胞傷害アッセイ - 同時培養アッセイにおけるNK細胞(エフェクター細胞)による標的細胞の殺傷。殺傷の%をフローサイトメトリー分析(FACS)により分析する。標的細胞を96ウェルプレート中に装入し、事前標識された一次NK細胞と種々のエフェクター-標的(E:T)比で、異なる濃度の産生された組換えタンパク質の存在下でインキュベートする。NK細胞を1000U/mLのIL-2と48時間培養してからアッセイする。細胞を4及び24時間後にハーベストし、フローサイトメトリーによりアッセイする。NK細胞を有さない培養物から回収された標的細胞の数を参照として使用する。
【0631】
細胞傷害性アッセイ - 異なる濃度の産生された組換えタンパク質の存在下での同時培養アッセイにおけるNK細胞(エフェクター細胞)による標的細胞の殺傷。殺傷の%は、インキュサイト装置により標識標的細胞及びカスパーゼ感受性蛍光基質を使用して決定する。
【0632】
炎症性サイトカインの分泌 - 一次NK細胞を種々の標的細胞で、種々の比で異なる濃度の産生された組換えタンパク質の存在下で24時間刺激する。無細胞培養物上清中のインターフェロンγ(IFN-γ)及び顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)のレベルを、ELISA又はサイトメトリックビーズアレイ(CBA)を用いて決定する。
【0633】
実施例10
HLA-G及びCD47の両方を発現する細胞への、LILRB2バリアント及びSIRPαを含むヘテロ二量体の特異的結合
【0634】
材料及び方法:
試薬 - アレクサフルオル647標識DSP216-V12、4人の健常ドナーからの新鮮軟膜サンプル(Hadassah社血液バンク)、健常ドナーからの新鮮全血(Hadassah社血液バンク)、フィコール-パック(商標)プラス1.077(Cytiva社製、カタログ#GE-17-1440-03)、ヒトトラステインFcX(Biolegend社製、カタログ#422302)、RBC溶解緩衝液(Invitrogen社製、カタログ#00-4333-57)、PBS(Sartorius社製、カタログ#20-023-1A)、EDTA(Sigma社製、カタログ#E7889)、アジ化ナトリウム(Sigma社製、カタログ#S2002)、10%のBSA(Sartorius社製、カタログ#03-010-1B又はBiological Industries社製、カタログ#03-010-1B)、アレクサフルオル647マイクロスケールタンパク質ラベリングキット(Invitrogen社製、カタログ#A30009)、RPMI1640(Biological Industries社製、カタログ#01-100-1A)、DMEM(Biological Industries社製、カタログ#01-055-1A)、FCS(Gibco社製、カタログ#12657-029)、トリプLEエクスプレス(Gibco社製、カタログ#12604-13)、グルタマックス(Gibco社製、カタログ#35050-038)、ペニシリン-ストレプトマイシン(Gibco社製、カタログ#151140-122)。
【0635】
抗体 - BV421抗ヒトCD45(Biolegend社製、カタログ#304032)、APCマウスIgG1k(Biolegend社製、カタログ#400120)、APC抗ヒトCD47抗体(Biolegend社製、カタログ#323124)。
【0636】
ヒトPBMC及びRBC - PBMCを、4つの新鮮軟膜サンプルからフィコール勾配により製造業者の説明書に従って精製した。4人の健常ドナーからの全血をPBS中で1:500希釈し、RBCとみなした。
【0637】
細胞系 - 上記の実施例2に記載のとおり。HLA-Gを過剰発現するHT1080細胞はGFP陽性であることに留意されたい。
【0638】
CD47発現 - RBC、PBMC又はHT1080HLA-G細胞を、抗ヒトCD47抗体とインキュベートし、フローサイトメトリー(サイトフレックスB53000 サイトフレックスB5-R3-V5)により分析した。MFI値を使用し、代表的なグラフをグラフパッドプリズムソフトウェアを用いて作出した。
【0639】
結合分析 -_PBS中で1:500希釈された100μL/ウェルの全血サンプル(約1×106個のRBCを含有するRBCサンプルとみなされる)を、25,000~50,000個/ウェルの精製PBMC及びヒトHLA-Gを過剰発現する25,0000~50,000個のHT1080細胞の細胞(HT1080-HLA-G)と混合した。混合された細胞を、アレクサフルオル647標識DSP216-V12の段階希釈物と4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、BV421抗ヒトCD45抗体で免疫染色し、フローサイトメトリー(サイトフレックスB53000 サイトフレックスB5-R3-V5)により分析した。MFI値を使用してグラフパッドプリズムソフトウェア)を用いて結合曲線グラフを作出した。
【0640】
結果:
CD47は、HT1080-HLA-G細胞の表面上で高度に発現された(
図7)。健常ドナーからのPBMC及びRBCの表面上ではCD47の低い発現レベルも検出された(
図7)。アレクサフルオル647標識DSP216-V12の結合は、RBC、PBMC及びHT1080-HLA-G細胞のミックスを使用するフローサイトメトリーにより決定した。抗hCD45抗体を使用してRBC(CD45陰性細胞)及びPBMC(CD45陽性細胞)をゲーティングし、GFPを使用してHT1080-HLA-G細胞をゲーティングした。DSP216-V12はHT1080-HLA-G細胞に用量依存的様式で結合した一方、PBMCへの結合はわずかであることが実証され、RBCへの結合は観察されなかった(
図8のA~B)。
【0641】
実施例11
LILRB1バリアントの設計
材料及び方法:
アラインメントアルゴリズムのブラストを使用してヒトLILRB2(ユニプロット番号Q8N423)及びLILRB1(ユニプロット番号Q8NHL6)を比較する相同性分析を行った。
【0642】
続いて、WT LILRB1(配列番号102)の構造分析を行ってその安定性及びHLA-G(配列番号3)に対する結合親和性を最適化し、増加させ得るアミノ酸置換を同定し、それは以下のステップを含んでいた。
1.PDB ID:2DYP、3D2U複合体構造を使用するLILRB1及びHLAGの両方の複合体構造の調製。
2.LILRB1及びHLA-G(
図14)PDB ID:2DYP(HLA-G)及び3D2U(LILRB1)複合体構造間の潜在的な相互作用点を同定するための構造分析。
3.HLA-GのPhe195[HLA-Gに特異的として同定された、すなわち、HLA-AにもHLA-BにもHLA-Cにも存在しない(
図1のD)]と相互作用するLILRB1界面中のアミノ酸の同定。
4.配列番号102に示すLILRB1配列のV55の突然変異の効果のインシリコ評価。
【0643】
結果:
ヒトLILRB2(ユニプロット番号Q8N423)及びLILRB1(ユニプロット番号Q8NHL6)間、特にD1(Ig様C2タイプ1)ドメイン(それぞれ配列番号104及び105)において高い配列相同性を同定した(
図14)。興味深いことに、LILRB2及びHLA-G Phe195相互作用残基間の界面を定義するとして上記の実施例1において同定されたアミノ酸残基(配列番号1の残基S45、I49、T50及びV57)を含有する領域において極めて高い相同性が検出された。これは、本発明者らがLILRB1の対応するアミノ酸(すなわち、配列番号102のT43、I47、T50及びV55)の突然変異も有意な正の影響、すなわち、結合エネルギーに対するより低いΔGを有するか否かを評価することを促した。
【0644】
この目的のため、HLA-G(配列番号3)-LILRB1(配列番号102)相互作用界面、特にHLA-G中のPhe195との相互作用界面の構造分析を実施した(
図15のA~B)。続いて、インシリコ分析は、LILRB1(配列番号102)の残基V55の例えばアルギニン(R)への置換は、LILRB1/HLA-G相互作用を安定化させる可能性が高いことを示した(
図15のC~D)。
【0645】
本発明をその具体的な実施形態に関して記載してきたが、多くの代替、改変及び変形が当業者に明らかであることが明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の主旨及び広い範囲内に収まる全てのそのような代替、改変及び変形を包含することが意図される。
【0646】
本明細書において参照される全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の各刊行物、特許又は特許出願が参照される場合、それが参照により本明細書に組み込まれるべきであると具体的及び個別的に注記されるかのように、参照により全体として本明細書に組み込まれるべきであることが本出願人らの意図である。加えて、本出願における任意の参考文献の引用又は特定のいずれも、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを許容すると解釈されるものではない。セクションの見出しが使用される限りでは、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきでない。加えて、本出願のあらゆる優先権文献が参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】