(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2025-01-09
(54)【発明の名称】閉端DNAベクターの拡張可能かつ高純度の無細胞合成
(51)【国際特許分類】
C12N 15/64 20060101AFI20241226BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20241226BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241226BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241226BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241226BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241226BHJP
A01K 67/0278 20240101ALI20241226BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241226BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241226BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20241226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241226BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241226BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20241226BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241226BHJP
C12N 15/52 20060101ALN20241226BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20241226BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
C12N15/64 Z
C12N15/88 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A01K67/0278
C12N15/63 Z
A61K31/7088
A61K9/51
A61P43/00
A61K35/76
A61K48/00
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C12N15/52 Z
C12N15/09 100
C12N15/864 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024538120
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(85)【翻訳文提出日】2024-06-21
(86)【国際出願番号】 US2022053868
(87)【国際公開番号】W WO2023122303
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520068043
【氏名又は名称】ジェネレーション バイオ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】モンズ, ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】シピ, ジョリス
(72)【発明者】
【氏名】ブラックストック, ダニエル ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】デュラント, ジョン チェスター
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95Y
4B065AB01
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4C076AA65
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4C084AA13
4C084MA38
4C084NA13
4C084ZB21
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA38
4C086NA13
4C086ZB21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA38
4C087NA13
4C087ZB21
(57)【要約】
本開示は、DNAベクター、特に導入遺伝子の送達及び発現のための直鎖状で連続的な構造を有する閉端DNAベクター(例えば、ceDNAベクター)の拡張可能かつ高純度の無細胞合成のための方法を提供する。無細胞合成は、二本鎖DNA構築物を、認識部位とは異なる切断部位で構築物を切断することができる少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼで消化して、その後のライゲーション反応の高い特異性を調節する固有のオーバーハングを有するインサートを放出することを含む。次いで、インサートは、逆位末端反復(ITR)オリゴヌクレオチドとライゲーションされて、閉端DNAベクターを形成する。これらの方法によって調製された対応するDNAベクター及び関連産物とともに、方法と関連付けられた他の塩基並びに中間ベクター及び構築物もまた、本開示で提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉端DNA(ceDNA)ベクターを産生する方法であって、前記方法は、
(a)センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖DNA構築物を、少なくとも第1の制限エンドヌクレアーゼ及び少なくとも第2の制限エンドヌクレアーゼと接触させることであって、
前記構築物が、
導入遺伝子発現カセットと、
前記導入遺伝子発現カセットの上流の第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位と、
前記導入遺伝子発現カセットの下流の第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位と、を含み、
前記第1の制限エンドヌクレアーゼが、前記第1の切断部位で前記二本鎖DNA構築物を切断することができ、前記第2の制限エンドヌクレアーゼが、前記第2の切断部位で前記二本鎖DNA構築物を切断することができ、
前記二本鎖DNA構築物を前記第1の制限エンドヌクレアーゼ及び前記第2の制限エンドヌクレアーゼと接触させることが、第1の一本鎖オーバーハングを含む第1の末端及び第2の一本鎖オーバーハングを含む第2の末端を有するインサートを放出させる、接触させることと、
(b)前記第1の末端を、1つ以上のヘアピン構造を含む第1のオリゴヌクレオチドにライゲーションすることと、
(c)前記第2の末端を、1つ以上のヘアピン構造を含む第2のオリゴヌクレオチドにライゲーションすることと、を含み、
それによって、ceDNAベクターを産生する、方法。
【請求項2】
前記第1のオリゴヌクレオチドが、逆位末端反復(ITR)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のオリゴヌクレオチドが、ITRを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドが異なる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドが同じである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の制限エンドヌクレアーゼ及び前記第2の制限エンドヌクレアーゼが、異なる制限エンドヌクレアーゼである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の制限エンドヌクレアーゼ及び前記第2の制限エンドヌクレアーゼが、同じ制限エンドヌクレアーゼである、請求項1~3又は5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドの各々が、独立して、1、2、3、4、又はそれ以上のステムループ領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記オリゴヌクレオチドの各々が、独立して、2又は3のステムループ領域を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び前記対応する第1の切断部位が、互いに別個の、かつ異なる部位であり、両方の部位が、前記導入遺伝子発現カセットの上流に位置する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の切断部位が、前記構築物の前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖のうちの少なくとも1つにおける前記第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位から約1~約22ヌクレオチド離れている、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の切断部位が、前記構築物の前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖のうちの少なくとも1つにおける前記第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位から約1~約8ヌクレオチド離れている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び前記対応する第2の切断部位が、互いに別個の、かつ異なる部位であり、両方の部位が、前記発現カセットの下流に位置する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の切断部位が、前記構築物の前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖のうちの少なくとも1つにおける前記第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位から約1~約22ヌクレオチド離れている、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の切断部位が、前記構築物の前記センス及び前記アンチセンス鎖のうちの少なくとも1つにおける前記第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位から約1~約8ヌクレオチド離れている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び前記第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位が、各々、前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖の各々において異なる5’から3’方向のヌクレオチド配列を有する二本鎖ポリヌクレオチドである、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記インサートの前記末端における前記一本鎖オーバーハングのうちの一方又は両方が、5’オーバーハングである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記インサートの前記末端における前記一本鎖オーバーハングのうちの一方又は両方が、3’オーバーハングである、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
1つ以上のヘアピン構造を含む前記第1のオリゴヌクレオチド及び1つ以上のヘアピン構造を含む前記第2のオリゴヌクレオチドが、各々、自己アニールして三次元構成を形成する一本鎖オリゴヌクレオチドである、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記三次元構成が、T字形又はY字形ステムループ構造である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1つ以上のヘアピン構造を含む前記第1のオリゴヌクレオチド及び1つ以上のヘアピン構造を含む前記第2のオリゴヌクレオチドが、各々、自己アニールして、各オリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれかに一本鎖オーバーハングを更に形成する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドが、各々、自己アニールして、各オリゴヌクレオチドの前記5’末端における一本鎖オーバーハングを更に形成する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドが、各々、自己アニールして、各オリゴヌクレオチドの前記3’末端における一本鎖オーバーハングを更に形成する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
各オリゴヌクレオチドの前記5’末端が、リン酸化されている、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハング及び前記第2のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハングが、各々、約1~約12ヌクレオチド長である、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第1のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハング及び前記第2のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハングが、各々、約1~約8ヌクレオチド長である、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記第1のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハング及び前記第2のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハングが、各々、約2~約6ヌクレオチド長である、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハング及び前記第2のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハングが、各々、約3、約4、約5、又は約6ヌクレオチド長である、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記第1のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハング及び前記第2のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハングが、各々、3又は4ヌクレオチド長である、請求項21~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハング及び前記第2のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハングの前記5’から3’方向のヌクレオチド配列が、互いに対して非相補的である、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハング及び前記第2のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハングの前記5’から3’方向のヌクレオチド配列が、同じである、請求項25~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドが、同じヌクレオチド配列を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記インサートの各末端における前記一本鎖オーバーハングが、同じ5’から3’方向のヌクレオチド配列を含む、請求項25~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第1のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハング及び前記第2のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハングが、各々、前記インサートの前記末端における前記一本鎖オーバーハングのうちの両方に対して相補的である、請求項25~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第1のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハング及び前記第2のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハングの前記5’から3’方向のヌクレオチド配列が異なる、請求項25~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドが、異なるヌクレオチド配列を含む、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記インサートの各末端における前記一本鎖オーバーハングの前記5’から3’方向のヌクレオチド配列が異なる、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第1のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハング及び前記第2のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハングが、各々、前記インサートの前記末端における前記一本鎖オーバーハングのうちの1つのみに対して相補的である、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第1のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハング及び/又は前記第2のオリゴヌクレオチドの前記一本鎖オーバーハングが、CTCT、CTCA、CACT、CTC、及びGCTからなる群から選択される5’から3’方向のヌクレオチド配列を含む、請求項21~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドのうちの一方又は両方が、合成である、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドが、各々、約40ヌクレオチド~約75ヌクレオチド長である、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドが、各々、約45ヌクレオチド~約65ヌクレオチド長である、請求項1~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第2のオリゴヌクレオチドが、各々独立して、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記第1のオリゴヌクレオチドの各ヘアピン構造及び/又は各T字形若しくはY字形ステムループ構造と、前記第2のオリゴヌクレオチドの各ヘアピン構造及び/又は各T字形若しくはY字形ステムループ構造とが、少なくとも約4塩基対長であるステム領域を含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記第1のオリゴヌクレオチドの各ヘアピン構造及び/又は各T字形若しくはY字形ステムループ構造と、前記第2のオリゴヌクレオチドの各ヘアピン構造及び/又は各T字形若しくはY字形ステムループ構造とが、約4塩基対~約20塩基対長であるステム領域を含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記第1のオリゴヌクレオチドの各ヘアピン構造及び/又は各T字形若しくはY字形ステムループ構造と、前記第2のオリゴヌクレオチドの各ヘアピン構造及び/又は各T字形若しくはY字形ステムループ構造とが、約4塩基対~約15塩基対長であるステム領域を含む、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記第1のオリゴヌクレオチドの各ヘアピン構造及び/又は各T字形若しくはY字形ステムループ構造と、前記第2のオリゴヌクレオチドの各ヘアピン構造及び/又は各T字形若しくはY字形ステムループ構造とが、約4塩基対~約6塩基対長であるステム領域を含む、請求項1~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記第1のオリゴヌクレオチドの各ヘアピン構造及び/又は各T字形若しくはY字形ステムループ構造と、前記第2のオリゴヌクレオチドの各ヘアピン構造及び/又は各T字形若しくはY字形ステムループ構造とが、約6塩基対~約8塩基対長であるステム領域を含む、請求項1~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
ステム領域長が、いかなる一本鎖オーバーハングも含まない、請求項44~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記制限エンドヌクレアーゼのうちの少なくとも1つが、IIS型制限エンドヌクレアーゼである、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記第1の制限エンドヌクレアーゼ及び前記第2の制限エンドヌクレアーゼが、前記同じ制限エンドヌクレアーゼである、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記第1の制限エンドヌクレアーゼ及び前記第2の制限エンドヌクレアーゼが、異なる制限エンドヌクレアーゼである、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記第1の制限エンドヌクレアーゼ及び前記第2の制限エンドヌクレアーゼの各々が、IIS型制限エンドヌクレアーゼである、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記IIS型制限エンドヌクレアーゼが、AcuI、AlwI、Alw26I、BasI、BbsI、BbvI、BceAI、BcgI、BCiVI、BcoDI、BruAI、BmrI、BpiI、BpuEI、BsaI、BsaXI、BseGI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BsmI、BspCNI、BspMI、BspQI、BsrDI、BsrI、BtgZI、BtsCI、BtsI、MutI、CspCI、EarI、EciI、Eco31I、Esp3I、FauI、FokI、HgaI、HphI、HpyAV、LguI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、Mva1269I、NmeAIII、PaqCI、PleI、SapI、SfaNI、及びそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される、請求項50~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記第1の制限エンドヌクレアーゼ及び前記第2の制限エンドヌクレアーゼの前記各々が、独立して、AcuI、AlwI、Alw26I、BasI、BbsI、BbvI、BceAI、BcgI、BCiVI、BcoDI、BruAI、BmrI、BpiI、BpuEI、BsaI、BsaXI、BseGI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BsmI、BspCNI、BspMI、BspQI、BsrDI、BsrI、BtgZI、BtsCI、BtsI、MutI、CspCI、EarI、EciI、Eco31I、Esp3I、FauI、FokI、HgaI、HphI、HpyAV、LguI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、Mva1269I、NmeAIII、PaqCI、PleI、SapI、SfaNI、及びそれらのアイソシゾマーからなる群から選択されるIIS型制限エンドヌクレアーゼである、請求項1~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記少なくとも1つのIIS型制限エンドヌクレアーゼが、BbsI、BsaI、Esp3I、及びSapI、並びにそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される、請求項50~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記少なくとも1つのIIS型制限エンドヌクレアーゼが、BsaI又はそのアイソシゾマーである、請求項50~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記少なくとも1つのIIS型制限エンドヌクレアーゼが、Esp3I又はそのアイソシゾマーである、請求項50~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記ライゲーションすることの後に、前記第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び前記第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位が、得られるceDNAベクターにおいて再生されない、請求項1~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記二本鎖DNA構築物が、前記導入遺伝子発現カセットに各々隣接する少なくとも第1の部分ITR及び第2の部分ITRを更に含む、請求項1~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記第1の部分ITRが、前記導入遺伝子発現カセットの上流、かつ前記第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び前記対応する第1の切断部位の下流にある、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記第2の部分ITRが、前記導入遺伝子発現カセットの下流、かつ前記第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び前記対応する第2の切断部位の上流にある、請求項60又は61に記載の方法。
【請求項63】
前記第1の切断部位が、前記第1の部分ITRに隣接し、前記第2の切断部位が、前記第2の部分ITRに隣接する、請求項60~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記二本鎖DNA構築物が、前記第1の部分ITRと前記導入遺伝子発現カセットとの間に第1のスペーサを更に含む、請求項60~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
前記二本鎖DNA構築物が、前記第2の部分ITRと前記導入遺伝子発現カセットとの間に第2のスペーサを更に含む、請求項60~64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記二本鎖DNA構築物が、バクミド、プラスミド、小環、又は直鎖状二本鎖DNA分子からなる群から選択される、請求項1~65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
前記得られるceDNAベクターが、前記導入遺伝子発現カセットと、前記導入遺伝子発現カセットに各々隣接する少なくとも第1のITR及び第2のITRと、を含む、請求項1~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記第1のITRが、前記導入遺伝子発現カセットの上流にある、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記第2のITRが、前記導入遺伝子発現カセットの下流にある、請求項67又は68に記載の方法。
【請求項70】
前記第1のITRが、前記第1のオリゴヌクレオチド及び前記第1の部分ITRからのヌクレオチド配列を含む、請求項67~69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記第2のITRが、前記第2のオリゴヌクレオチド及び前記第2の部分ITRからのヌクレオチド配列を含む、請求項67~70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
前記第1のITRが、前記第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位を欠いている、請求項67~71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
前記第2のITRが、前記第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位を欠いている、請求項67~72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記第1のITR及び前記第2のITRが、各々、ヘアピン構造及び/又はT字形若しくはY字形ステムループ構造を含む、請求項67~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記第1のITR及び前記第2のITRが、各々、T字形又はY字形ステムループ構造を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記T字形又はY字形ステムループ構造が、A-A’及びD-D’ステム領域並びに2つのB-B’及びC-C’ループを含むステムを含む、請求項20~75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
前記第1のITR及び前記第2のITRのうちの一方又は両方が、アデノ随伴ウイルス(AAV)ITR又はAAV由来のITRである、請求項67~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記第1のITR及び前記第2のITRのうちの一方又は両方が、野生型ITRである、請求項67~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記第1のITR及び前記第2のITRの両方が、野生型ITRである、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記第1のITR及び前記第2のITRのうちの一方又は両方が、修飾型ITRである、請求項67~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記第1のITR及び前記第2のITRが、互いに対称又は実質的に対称である、請求項67~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記第1のITR及び前記第2のITRが、非対称のITRである、請求項67~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記第1のITR及び前記第2のITRのうちの一方又は両方が、付加、欠失、切断、及び点変異からなる群から選択される1つ以上の修飾を含む、請求項67~82のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記1つ以上の修飾が、前記第1のITR及び前記第2のITRのうちの一方又は両方の前記A-A’ステム領域、前記B-B’ループ、前記C-C’ループ、及び/又はD-D’ステム領域に位置する、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記1つ以上の修飾が、前記第1のITR及び前記第2のITRのうちの一方又は両方の前記B-B’ループ及び/又は前記C-C’ループに位置する、請求項83又は84に記載の方法。
【請求項86】
前記第1のITR及び前記第2のITRのうちの一方の前記B-B’ループ及び前記C-C’ループが、切断されている、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記導入遺伝子発現カセットが、前記第1のITRと前記導入遺伝子発現カセットとの間に第1のスペーサを更に含む、請求項67~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
前記導入遺伝子発現カセットが、前記第2のITRと前記導入遺伝子発現カセットとの間に第1のスペーサを更に含む、請求項67~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記導入遺伝子発現カセットが、前記第1のITRと前記導入遺伝子発現カセットとの間の第1のスペーサと、前記第2のITRと前記導入遺伝子発現カセットとの間の第2のスペーサと、を更に含む、請求項67~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記導入遺伝子発現カセットが、導入遺伝子を含む、請求項1~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
前記導入遺伝子が、治療用タンパク質をコードする、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記治療用タンパク質が、酵素、凝固因子又は補因子、抗体又はその抗原結合断片、抗原、遺伝子編集タンパク質、及び細胞傷害性タンパク質からなる群から選択される、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記導入遺伝子発現カセットが、プロモータ、エンハンサ、イントロン、転写後調節エレメント、及びポリアデニル化シグナルからなる群から選択される遺伝子エレメントを更に含む、請求項1~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記転写後調節エレメントが、WHP転写後調節エレメント(WPRE)を含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記ライゲーションすることが、リガーゼ又はAAV Repタンパク質によって行われる、請求項1~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記リガーゼが、T4リガーゼである、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記方法が、前記得られるceDNAベクターを単離又は精製することを更に含む、請求項1~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記方法が、前記ライゲーションすることの前に前記インサートを単離又は精製することを更に含む、請求項1~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記方法が、前記ライゲーションすることの前に前記インサートを単離又は精製することを含まない、請求項1~97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
ステップ(a)、(b)、及び(c)が、単一の反応容器内で実施される、請求項1~99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記得られるceDNAベクターが、前記ceDNAベクターのモノマー種の少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%を含む、請求項1~100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
請求項1~101のいずれか一項に記載の方法によって産生された、閉端DNA(ceDNA)ベクター。
【請求項103】
請求項1~101のいずれか一項に記載の方法によって産生された閉端DNA(ceDNA)ベクターと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項104】
請求項1~101のいずれか一項に記載の方法によって産生された閉端DNA(ceDNA)ベクターを含む、脂質ナノ粒子組成物。
【請求項105】
請求項1~101のいずれか一項に記載の方法によって産生された閉端DNA(ceDNA)ベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項106】
請求項1~101のいずれか一項に記載の方法によって産生された閉端DNA(ceDNA)ベクターを含む、トランスジェニック動物。
【請求項107】
対象における障害、疾患、又は病態を治療する方法であって、前記方法が、前記対象に、治療有効量の、請求項1~101のいずれか一項に記載の方法によって産生された閉端DNA(ceDNA)ベクター、又は請求項103に記載の医薬組成物、又は請求項104に記載の脂質ナノ粒子組成物を投与することを含む、方法。
【請求項108】
前記障害、疾患、又は病態が、遺伝性障害、疾患、又は病態である、請求項107に記載の方法。
【請求項109】
対象に治療用タンパク質を送達する方法であって、前記方法が、前記対象に、治療有効量の、請求項1~101のいずれか一項に記載の方法によって産生された閉端DNA(ceDNA)ベクター、又は請求項103に記載の医薬組成物、又は請求項104に記載の脂質ナノ粒子組成物を投与することを含む、方法。
【請求項110】
前記治療用タンパク質が、酵素、凝固因子又は補因子、抗体又はその抗原結合断片、抗原、遺伝子編集タンパク質、及び細胞傷害性タンパク質からなる群から選択される、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
以下からなる群から選択される、逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列。
【表21】
【請求項112】
前記ヌクレオチド配列が、以下からなる群から選択されるスペーサを更に含む、請求項111に記載のITRヌクレオチド配列。
【表22】
【請求項113】
導入遺伝子発現カセットと、前記導入遺伝子発現カセットに隣接する少なくとも第1の逆位末端反復(ITR)及び第2のITRと、を含む、閉端DNA(ceDNA)ベクターであって、前記第1のITR及び前記第2のITRが、各々、請求項111又は112に記載のITRヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、ceDNAベクター。
【請求項114】
前記ベクターが、二本鎖DNAを含む、請求項113に記載のceDNAベクター。
【請求項115】
請求項113又は114に記載のceDNAベクターと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項116】
請求項113又は114に記載のceDNAベクターを含む、脂質ナノ粒子組成物。
【請求項117】
請求項113又は114に記載のceDNAベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項118】
請求項113又は114に記載のceDNAベクターを含む、トランスジェニック動物。
【請求項119】
対象における障害、疾患、又は病態を治療する方法であって、前記方法が、前記対象に、治療有効量の、請求項113又は114に記載のceDNAベクター、又は請求項115に記載の医薬組成物、又は請求項116に記載の脂質ナノ粒子組成物を投与することを含む、方法。
【請求項120】
前記障害、疾患、又は病態が、遺伝性障害、疾患、又は病態である、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
対象に治療用タンパク質を送達する方法であって、前記方法が、前記対象に、治療有効量の、請求項113又は114に記載のceDNAベクター、又は請求項115に記載の医薬組成物、又は請求項116に記載の脂質ナノ粒子組成物を投与することを含む、方法。
【請求項122】
前記治療用タンパク質が、酵素、抗体又はその抗原結合断片、抗原、遺伝子編集タンパク質、及び細胞傷害性タンパク質からなる群から選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
閉端DNAベクター(ceDNA)の合成産生で使用するためのDNAベクターであって、
導入遺伝子を受容することができるマルチクローニング部位と、
前記マルチクローニング部位の上流の第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位と、
前記マルチクローニング部位の下流の第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位と、
前記マルチクローニング部位に各々隣接する第1の部分ITR及び第2の部分ITRと、を含む、DNAベクター。
【請求項124】
前記第1の部分ITRが、前記マルチクローニング部位の上流、かつ前記第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び前記対応する第1の切断部位の下流にある、請求項123に記載のDNAベクター。
【請求項125】
前記第2の部分ITRが、前記マルチクローニング部位の下流、かつ前記第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び前記対応する第2の切断部位の上流にある、請求項123又は124に記載のDNAベクター。
【請求項126】
1つ以上のスペーサを更に含む、請求項123~125のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項127】
複製起源及び選択可能なマーカー遺伝子を更に含む、請求項123~126のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項128】
前記マルチクローニング部位が、導入遺伝子と、プロモータ、エンハンサ、イントロン、転写後調節エレメント、及びポリアデニル化シグナルからなる群から選択される1つ以上の追加の遺伝子エレメントと、を受容することができる、請求項123~127のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項129】
前記第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位が、第1の制限エンドヌクレアーゼに特異的であり、前記第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位が、少なくとも第2の制限エンドヌクレアーゼに特異的である、請求項123~128のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項130】
前記第1の制限エンドヌクレアーゼ及び前記第2の制限エンドヌクレアーゼが、同じ制限エンドヌクレアーゼである、請求項129に記載のDNAベクター。
【請求項131】
前記第1の制限エンドヌクレアーゼ及び前記第2の制限エンドヌクレアーゼが、異なる制限エンドヌクレアーゼである、請求項129に記載のDNAベクター。
【請求項132】
前記制限エンドヌクレアーゼのうちの少なくとも1つが、IIS型制限エンドヌクレアーゼである、請求項129~131のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項133】
前記第1の制限エンドヌクレアーゼ及び前記第2の制限エンドヌクレアーゼの各々が、IIS型制限エンドヌクレアーゼである、請求項129~132のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項134】
前記IIS型制限エンドヌクレアーゼが、AcuI、AlwI、Alw26I、BasI、BbsI、BbvI、BceAI、BcgI、BCiVI、BcoDI、BruAI、BmrI、BpiI、BpuEI、BsaI、BsaXI、BseGI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BsmI、BspCNI、BspMI、BspQI、BsrDI、BsrI、BtgZI、BtsCI、BtsI、MutI、CspCI、EarI、EciI、Eco31I、Esp3I、FauI、FokI、HgaI、HphI、HpyAV、LguI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、Mva1269I、NmeAIII、PaqCI、PleI、SapI、SfaNI、及びそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される、請求項132又は133に記載のDNAベクター。
【請求項135】
各IIS型制限エンドヌクレアーゼが、独立して、AcuI、AlwI、Alw26I、BasI、BbsI、BbvI、BceAI、BcgI、BCiVI、BcoDI、BruAI、BmrI、BpiI、BpuEI、BsaI、BsaXI、BseGI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BsmI、BspCNI、BspMI、BspQI、BsrDI、BsrI、BtgZI、BtsCI、BtsI、MutI、CspCI、EarI、EciI、Eco31I、Esp3I、FauI、FokI、HgaI、HphI、HpyAV、LguI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、Mva1269I、NmeAIII、PaqCI、PleI、SapI、SfaNI、及びそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される、請求項133又は134に記載のDNAベクター。
【請求項136】
前記IIS型制限エンドヌクレアーゼが、BbsI、BsaI、Esp3I、及びSapI、並びにそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される、請求項131~135のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項137】
前記DNAベクターが、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項123~136のいずれか一項に記載のDNAベクター。
【請求項138】
導入遺伝子を含む閉端DNA(ceDNA)ベクターを調製するためのキットであって、前記キットが、
請求項123~137のいずれか一項に記載のDNAベクターと、
前記DNAベクターを前記マルチクローニング部位で切断して、前記マルチクローニング部位が導入遺伝子を受容することを可能にすることができる少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼと、
前記第1の切断部位及び前記第2の切断部位で切断することができる少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼと、
リガーゼと、
使用説明書と、を含む、キット。
【請求項139】
1つ以上のヘアピン構造を含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを更に含む、請求項138に記載のキット。
【請求項140】
導入遺伝子発現カセットを含む閉端DNA(ceDNA)ベクターの調製を容易にするように操作された二本鎖環状DNA構築物であって、前記二本鎖環状DNA構築物が、
導入遺伝子発現カセットと、
前記導入遺伝子発現カセットの上流の第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位と、
前記導入遺伝子発現カセットの下流の第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位と、
前記導入遺伝子発現カセットに各々隣接する第1の部分ITR及び第2の部分ITRと、を含む、二本鎖環状DNA構築物。
【請求項141】
前記第1の部分ITRが、前記導入遺伝子発現カセットの上流、かつ前記第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び前記対応する第1の切断部位の下流にある、請求項140に記載の二本鎖環状DNA構築物。
【請求項142】
前記第2の部分ITRが、前記導入遺伝子発現カセットの下流、かつ前記第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び前記対応する第2の切断部位の上流にある、請求項140又は141に記載の二本鎖環状DNA構築物。
【請求項143】
前記第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位が、第1の制限エンドヌクレアーゼに特異的であり、前記第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位が、少なくとも第2の制限エンドヌクレアーゼに特異的である、請求項140~142のいずれか一項に記載の二本鎖環状DNA構築物。
【請求項144】
前記第1の制限エンドヌクレアーゼ及び前記第2の制限エンドヌクレアーゼが、同じ制限エンドヌクレアーゼである、請求項143に記載の二本鎖環状DNA構築物。
【請求項145】
前記第1の制限エンドヌクレアーゼ及び前記第2の制限エンドヌクレアーゼが、異なる制限エンドヌクレアーゼである、請求項143に記載の二本鎖環状DNA構築物。
【請求項146】
前記制限エンドヌクレアーゼのうちの少なくとも1つが、IIS型制限エンドヌクレアーゼである、請求項140~145のいずれか一項に記載の二本鎖環状DNA構築物。
【請求項147】
前記第1の制限エンドヌクレアーゼ及び前記第2の制限エンドヌクレアーゼの各々が、IIS型制限エンドヌクレアーゼである、請求項143~146のいずれか一項に記載の二本鎖環状DNA構築物。
【請求項148】
前記IIS型制限エンドヌクレアーゼが、AcuI、AlwI、Alw26I、BasI、BbsI、BbvI、BceAI、BcgI、BCiVI、BcoDI、BruAI、BmrI、BpiI、BpuEI、BsaI、BsaXI、BseGI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BsmI、BspCNI、BspMI、BspQI、BsrDI、BsrI、BtgZI、BtsCI、BtsI、MutI、CspCI、EarI、EciI、Eco31I、Esp3I、FauI、FokI、HgaI、HphI、HpyAV、LguI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、Mva1269I、NmeAIII、PaqCI、PleI、SapI、SfaNI、及びそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される、請求項146又は147に記載の二本鎖環状DNA構築物。
【請求項149】
各IIS型制限エンドヌクレアーゼが、独立して、AcuI、AlwI、Alw26I、BasI、BbsI、BbvI、BceAI、BcgI、BCiVI、BcoDI、BruAI、BmrI、BpiI、BpuEI、BsaI、BsaXI、BseGI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BsmI、BspCNI、BspMI、BspQI、BsrDI、BsrI、BtgZI、BtsCI、BtsI、MutI、CspCI、EarI、EciI、Eco31I、Esp3I、FauI、FokI、HgaI、HphI、HpyAV、LguI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、Mva1269I、NmeAIII、PaqCI、PleI、SapI、SfaNI、及びそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される、請求項146~148のいずれか一項に記載の二本鎖環状DNA構築物。
【請求項150】
前記少なくとも1つのIIS型制限エンドヌクレアーゼが、BbsI、BsaI、Esp3I、及びSapI、並びにそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される、請求項146~148のいずれか一項に記載の二本鎖環状DNA構築物。
【請求項151】
導入遺伝子発現カセットを含む閉端DNA(ceDNA)ベクターを調製するためのキットであって、前記キットが、
請求項140~150のいずれか一項に記載の二本鎖DNA構築物と、
前記二本鎖DNA構築物を前記第1の切断部位及び前記第2の切断部位で切断することができる少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼと、
リガーゼと、
使用説明書と、を含む、キット。
【請求項152】
1つ以上のヘアピン構造を含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを更に含む、請求項151に記載のキット。
【請求項153】
ローリングサークル増幅を介してプラスミド鋳型から二本鎖DNA構築物を産生する方法であって、
(a)前記プラスミド鋳型を、鎖置換活性を有する熱安定性ポリメラーゼと接触させるステップであって、ポリメラーゼ濃度(U/μl単位)に対するプラスミド鋳型濃度(ng/μl単位)の比が、約1を超える、ステップと、
(b)前記プラスミド鋳型をオリゴヌクレオチドプライマ及びdNTPと接触させるステップと、
(c)前記プラスミド鋳型、前記ポリメラーゼ、前記オリゴヌクレオチドプライマ、及び前記dNTPを、約40℃以下の温度で、少なくとも約5時間の期間にわたってインキュベートするステップと、を含み、
それによって、二本鎖DNA構築物を産生する、方法。
【請求項154】
前記ポリメラーゼ濃度(U/μl単位)に対するプラスミド鋳型濃度(ng/μl単位)の比が、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、又は約20を超える、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
前記プラスミド鋳型濃度が、約0.01ng/μl、約0.05ng/μl、約0.1ng/μl、約0.15ng/μl、約0.2ng/μl、約0.21ng/μl、約0.22ng/μl、約0.23ng/μl、約0.24ng/μl、約0.2ng/μl、約0.26ng/μl、約0.27ng/μl、約0.28ng/μl、約0.29ng/μl、約0.3ng/μl、約0.35ng/μl、約0.4ng/μl、約0.45ng/μl、約0.5ng/μl、約0.6ng/μl、約0.7ng/μl、約0.8ng/μl、約0.9ng/μl、又は約1.0ng/μlである、請求項153又は154に記載の方法。
【請求項156】
前記ポリメラーゼ濃度が、約0.01U/μl、約0.02U/μl、約0.03U/μl、約0.04U/μl、約0.05U/μl、約0.06U/μl、約0.07U/μl、約0.08U/μl、約0.09U/μl、約0.1U/μl、約0.15U/μl、約0.2U/μl、約0.25U/μl、約0.3U/μl、約0.35U/μl、約0.4U/μl、又は約0.45U/μlである、請求項153~155のいずれか一項に記載の方法。
【請求項157】
ステップ(c)における前記温度が、約40℃、約39℃、約38℃、約37℃、約36℃、約35℃、約34℃、約33℃、約32℃、約31℃、約30℃、約29℃、約28℃、約27℃、約26℃、約25℃、約24℃、約23℃、約22℃、又は約21℃未満である、請求項153~156のいずれか一項に記載の方法。
【請求項158】
前記期間が、少なくとも約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約21時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約37時間、約38時間、約39時間、又は約40時間である、請求項153~157のいずれか一項に記載の方法。
【請求項159】
前記期間が、約6時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約21時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約37時間、約38時間、約39時間、又は約40時間未満である、請求項153~158のいずれか一項に記載の方法。
【請求項160】
前記プラスミド鋳型濃度が、約0.25ng/μlであり、前記温度が、約30℃であり、前記ポリメラーゼ濃度が、約0.05U/μlであり、前記期間が、約18~26時間である、請求項153~159のいずれか一項に記載の方法。
【請求項161】
前記オリゴヌクレオチドプライマ濃度が、約50μM未満である、請求項153~160のいずれか一項に記載の方法。
【請求項162】
前記オリゴヌクレオチドプライマ濃度が、少なくとも約10μMである、請求項153~161のいずれか一項に記載の方法。
【請求項163】
前記オリゴヌクレオチドプライマ濃度が、少なくとも約10μMかつ約50μM未満である、請求項153~162のいずれか一項に記載の方法。
【請求項164】
前記熱安定性ポリメラーゼが、Phi29 DNAポリメラーゼ又はその誘導体若しくはバリアントである、請求項153~163のいずれか一項に記載の方法。
【請求項165】
前記熱安定性ポリメラーゼが、EQUIPHI29(商標)である、請求項164に記載の方法。
【請求項166】
前記方法が、少なくとも約100μlの総反応体積で実施される、請求項153~165のいずれか一項に記載の方法。
【請求項167】
前記方法が、少なくとも約100μl、約200μl、約300μl、約400μl、約500μl、約600μl、約700μl、約800μl、約900μl、約1ml、約2ml、約3ml、約4ml、約5ml、約6ml、約7ml、約8ml、約9ml、約10ml、約15ml、約20ml、約25ml、約30ml、約35ml、約40ml、約45ml、約50ml、約55ml、約60ml、約65ml、約70ml、約75ml、約80ml、約85ml、約90ml、約95ml、約100ml、約200ml、約300ml、約400ml、約500ml、約600ml、約700ml、約800ml、約900ml、約1L、約2L、約3L、4L、約5L、約6L、約7L、約8L、約9L、約10L、約20L、約30L、約40L、約50L、約60L、約70L、約80L、約90L、約100L、約200L、約300L、約400L、約500L、約600L、約700L、約800L、約900L、又は約1000Lの総反応体積で実施される、請求項153~166のいずれか一項に記載の方法。
【請求項168】
前記方法が、前記総反応体積の少なくとも2倍の容量を有する反応容器内で実施される、請求項153~167のいずれか一項に記載の方法。
【請求項169】
前記オリゴヌクレオチドプライマが、前記プラスミド鋳型中の骨格配列にハイブリダイズする、請求項153~168のいずれか一項に記載の方法。
【請求項170】
前記オリゴヌクレオチドプライマが、ユニバーサルプライマである、請求項153~169のいずれか一項に記載の方法。
【請求項171】
dNTP濃度が、約4mMである、請求項153~170のいずれか一項に記載の方法。
【請求項172】
請求項153~171のいずれか一項に記載の方法によって産生された、二本鎖DNA構築物。
【請求項173】
閉端DNA(ceDNA)ベクターを産生する方法であって、前記方法は、
(a)請求項153~171のいずれか一項に記載の方法を使用して二本鎖DNA構築物を産生すること、
(b)請求項1~101のいずれか一項に記載の方法を実施して、前記二本鎖DNA構築物からceDNAベクターを産生すること、を含む、方法。
【請求項174】
請求項173に記載の方法によって産生された、ceDNAベクター。
【請求項175】
請求項173に記載の方法によって産生されたceDNAベクターと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項176】
173の方法によって産生されたceDNAベクターを含む、脂質ナノ粒子組成物。
【請求項177】
閉端DNA(ceDNA)ベクターを調製する方法であって、前記方法が、
(a)二本鎖DNA構築物を少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼと接触させることであって、
前記構築物が、
導入遺伝子発現カセットと、
前記導入遺伝子発現カセットの上流の第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位と、
前記導入遺伝子発現カセットの下流の第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位と、を含み、
前記少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼが、前記第1の切断部位及び前記第2の切断部位で前記構築物を切断して、インサートの5’及び3’末端における一本鎖オーバーハングを有する前記インサートを放出させることができる、接触させることと、
(b)前記インサートの前記5’及び3’末端を、第1の逆位末端反復(ITR)オリゴヌクレオチド及び第2のITRオリゴヌクレオチドにライゲーションして、前記ceDNAベクターを形成することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年12月23日に出願された米国仮特許出願第63/293,337号の優先権を主張する。前述の出願の全内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、対象又は細胞において導入遺伝子を発現させる目的のための非ウイルス性ベクターの高スループットかつ高純度の産生を含む、遺伝子療法の分野に関する。例えば、本開示は、非ウイルス性DNAベクターを合成する無細胞法を提供する。本開示はまた、それによって産生された核酸構築物及びそれらの使用方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
遺伝子療法は、遺伝子発現プロファイルにおける異常によって引き起こされる遺伝子変異又は後天性疾患のいずれかを罹患している患者についての臨床転帰を向上することを目的とする。遺伝子療法は、障害、疾患、悪性腫瘍などをもたらし得る欠陥遺伝子又は異常な調節若しくは発現、例えば、過小発現若しくは過剰発現に起因する医学的状態の治療又は予防を含む。例えば、欠陥遺伝子によって引き起こされる疾患又は障害は、修復遺伝材料の患者への送達によって治療、予防、若しくは改善され得るか、又は患者の中で遺伝材料の治療的発現をもたらす、例えば、患者に対する修復遺伝材料を用いて欠陥遺伝子を変更若しくはサイレンシングすることによって治療、予防、若しくは改善され得る。
【0004】
遺伝子療法の基礎は、転写カセットに活性遺伝子産物(導入遺伝子と称される場合がある)を供給することであり、例えば、正の機能獲得効果、負の機能喪失効果、又は別の結果をもたらし得る。遺伝子療法を使用して、他の因子によって引き起こされる疾患又は悪性腫瘍を治療することもできる。ヒト単一遺伝子障害は、標的細胞への正常遺伝子の送達及び発現によって治療することができる。患者の標的細胞中の修復遺伝子の送達及び発現は、操作されたウイルス及びウイルス遺伝子送達ベクターの使用を含む、多くの方法を介して実行することができる。利用可能な多くのウイルス由来ベクター(例えば、組換えレトロウイルス、組換えレンチウイルス、組換えアデノウイルスなど)の中で、組換えアデノ随伴ウイルス(recombinant adeno-associated virus、rAAV)は、遺伝子療法において多用途ベクターとして人気を集めている。
【0005】
アデノ随伴ウイルス(adeno-associated viruses、AAV)は、Parvoviridae科に属し、より具体的にはディペンドパルボウイルス属を構成する。AAVに由来するベクター(すなわち、組換えAAV(rAVV)又はAAVベクター)は、(i)筋細胞及びニューロンを含む多種多様な非分裂及び分裂細胞型に感染する(形質導入する)ことができ、(ii)それらはウイルス構造遺伝子を欠き、それによって、ウイルス感染に対する宿主細胞応答、例えば、インターフェロン媒介応答を減少させ、(iii)野生型ウイルスは、ヒトにおいて非病的であると考えられ、(iv)宿主細胞ゲノムに組み込むことができる野生型AAVとは対照的に、複製欠損AAVベクターはrep遺伝子を欠き、一般にエピソームとして存続するし、したがって、挿入変異誘発又は遺伝毒性のリスクを制限し、かつ(v)他のベクター系と比較して、AAVベクターは一般に免疫原が比較的弱いと考えられ、したがって、大幅な免疫応答を誘発せず(iiを参照)、したがって、ベクターDNAの持続性及び潜在的に治療用導入遺伝子の長期発現を得るため、遺伝材料の送達のための魅力がある。
【0006】
しかしながら、AAV粒子を遺伝子送達ベクターとして使用することには、いくつかの重大な欠陥が存在する。rAAVに関連する1つの重大な欠点は、約4.5kbの異種DNAの制限されたウイルスパッケージング能力であり(Dong et al.,1996、Athanasopoulos et al.,2004、Lai et al.,2010)、結果として、AAVベクターの使用は、150,000Da未満のタンパク質コード能力に制限されている。第2の欠点は、集団における野生型AAV感染の流行の結果として、rAAV遺伝子療法を受ける対象の候補が、患者からベクターを排除する中和抗体の存在についてスクリーニングされる必要があることである。第3の欠点は、初回治療から除外されなかった患者への再投与を妨げるカプシド免疫原性に関する。患者における免疫系は、「ブースタ」ショットとして有効に作用するベクターに応答して、将来の治療を妨げる高力価抗AAV抗体を生成する免疫系を刺激し得る。いくつかの最近の報告は、高用量状況における免疫原性との関係を示している。一本鎖AAV DNAが異種遺伝子発現前に二本鎖DNAに変換されなければならないことを考えると、別の顕著な欠点は、AAV媒介性遺伝子発現の始まりが比較的遅いことである。
【0007】
追加的に、カプシドを有する従来のAAVビリオンは、AAVゲノム、rep遺伝子、及びcap遺伝子を含有するプラスミドを導入することによって産生される(Grimm et al.,1998)。しかしながら、そのようなカプシド化AAVウイルスベクターは、ある特定の細胞及び組織型を非効率的に形質導入し、カプシドはまた、免疫応答を誘導することも分かった。
【0008】
したがって、遺伝子療法のためのアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの使用は、(患者免疫応答に起因する)患者への単回投与、最小ウイルスパッケージング能力(約4.5kb)に起因するAAVベクター中の送達に好適な導入遺伝子遺伝材料の制限された範囲、及び遅いAAV媒介性遺伝子発現に起因して制限される。
【0009】
治療又は他の目的のためにインビボで1つ以上の所望の導入遺伝子を送達することができ、AAV及び他のウイルスベクター系の上記の欠点を回避する閉端DNAベクターが開発されている。しかしながら、そのようなceDNAベクターを産生する方法は、伝統的な細菌又は昆虫細胞の産生方法に依存してきた。そのような方法は、ベクター(例えば、Sf9細胞)を産生するために使用される細胞からの汚染物質(例えば、核酸汚染物質)をもたらす可能性があり、除去するのに不便であるか又は費用がかかり、ceDNA治療製剤に含まれる場合、望ましくない副作用を有する可能性がある。したがって、そのような汚染物質又は精製方法の他のアーチファクトによって導入されるものなどの、最小のオフターゲット効果で遺伝子発現を制御する方法で使用される組換えベクターの生成を可能にする技術の分野が必要である。この技術が組換えベクターの大規模製造に好適であり、それを支持することも有利であろう。本明細書に提供される方法は、これらの満たされていない必要性に対処する。
【発明の概要】
【0010】
ウイルス及びウイルス由来のDNAを産生するための従来の方法は、典型的には、真核細胞、例えば、哺乳動物又は昆虫細胞を使用する。一般に使用される1つの昆虫細胞株は、Sf9である。しかしながら、これらの細胞には、酵素、及び複製されるDNAに有害な影響を与える可能性のある他のタンパク質の両方が含有されているだけでなく、細胞溶解物から所望のDNAを精製するプロセスにより、その存在が所望のDNA産物の精製をより困難にし得る細胞性核酸が導入される。更に、そのような不純物又は汚染物質は、所望のDNAが投与される対象において、一連の有害な及び/又は望ましくない影響を有する可能性がある。追加的に、そのような伝統的な細胞ベースの産生方法は、産生されるDNAベクター産物の量に関して問題が生じる可能性があり、望ましい収量を生み出すために細胞株自体又は産生技術の大幅な操作が必要になることは珍しくない。
【0011】
本明細書に提供される、これらのベクター産生課題に対する技術的解決策は、限定されるものではないが、閉端DNAベクター(ceDNAベクター)などの閉環ヘアピンループ含有DNAベクターを、真核細胞を使用する従来の手段によるよりもより高純度で容易に産生することができる無細胞合成産生方法に関する(例えば、
図13を参照されたい)。
【0012】
したがって、閉端DNA(closed-ended DNA、ceDNA)ベクターを産生する方法であって、方法は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖DNA構築物を、少なくとも第1の制限エンドヌクレアーゼ及び少なくとも第2の制限エンドヌクレアーゼと接触させることであって、構築物が、導入遺伝子発現カセットと、導入遺伝子発現カセットの上流の第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位と、導入遺伝子発現カセットの下流の第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位と、を含み、第1の制限エンドヌクレアーゼが、第1の切断部位で二本鎖DNA構築物を切断することができ、第2の制限エンドヌクレアーゼが、第2の切断部位で二本鎖DNA構築物を切断することができ、二本鎖DNA構築物を第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼと接触させることが、第1の一本鎖オーバーハングを含む第1の末端及び第2の一本鎖オーバーハングを含む第2の末端を有するインサートを放出させる、接触させることと、第1の末端を、1つ以上のヘアピン構造を含む第1のオリゴヌクレオチドにライゲーションすることと、第2の末端を、1つ以上のヘアピン構造を含む第2のオリゴヌクレオチドにライゲーションすることと、を含み、それによって、ceDNAベクターを産生する、方法が、本明細書に提供される。
【0013】
一実施形態では、第1及び/又は第2のオリゴヌクレオチドが、逆位末端反復(inverted terminal repeat、ITR)を含む。一実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが異なる。別の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが同じである。一実施形態では、オリゴヌクレオチドの各々が、独立して、1、2、3、4、又はそれ以上のステムループ領域を含む。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドの各々が、独立して、2又は3のステムループ領域を含む。
【0014】
一実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼが、異なる制限エンドヌクレアーゼである。別の実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼが、同じ制限エンドヌクレアーゼである。
【0015】
一実施形態では、第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位が、互いに別個の、かつ異なる部位であり、両方の部位が、導入遺伝子発現カセットの上流に位置する。別の実施形態では、第1の切断部位が、構築物のセンス鎖及びアンチセンス鎖のうちの少なくとも1つにおける第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位から約1~約22ヌクレオチド離れている。別の実施形態では、第1の切断部位が、構築物のセンス鎖及びアンチセンス鎖のうちの少なくとも1つにおける第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位から約1~約8ヌクレオチド離れている。
【0016】
一実施形態では、第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位が、互いに別個の、かつ異なる部位であり、両方の部位が、導入遺伝子発現カセットの上流に位置する。別の実施形態では、第2の切断部位が、構築物のセンス鎖及びアンチセンス鎖のうちの少なくとも1つにおける第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位から約1~約22ヌクレオチド離れている(例えば、約2~約22、約2~約20、約5~約22、約5~約20、約10~約22、約10~約20、約15~約22、約15~約20、約2~約15、約5~約15、約10~約15、約2~約10、約5~約10、約2~約10、約2~約10ヌクレオチド離れている)。別の実施形態では、第2の切断部位が、構築物のセンス及びアンチセンス鎖のうちの少なくとも1つにおける第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位から約1~約8ヌクレオチド離れている。
【0017】
一実施形態では、第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位が、各々、センス鎖及びアンチセンス鎖の各々において異なる5’から3’方向のヌクレオチド配列を有する二本鎖ポリヌクレオチドである。
【0018】
一実施形態では、インサートの末端における一本鎖オーバーハングのうちの一方又は両方が、5’オーバーハングである。別の実施形態では、インサートの末端における一本鎖オーバーハングのうちの一方又は両方が、3’オーバーハングである。
【0019】
一実施形態では、1つ以上のヘアピン構造を含む第1のオリゴヌクレオチド及び1つ以上のヘアピン構造を含む第2のオリゴヌクレオチドが、各々、自己アニールして三次元構成を形成する一本鎖オリゴヌクレオチドである。一実施形態では、三次元構成が、T字形又はY字形ステムループ構造である。別の実施形態では、1つ以上のヘアピン構造を含む第1のオリゴヌクレオチド及び1つ以上のヘアピン構造を含む第2のオリゴヌクレオチドが、各々、自己アニールして、各オリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれかに一本鎖オーバーハングを更に形成する。
【0020】
一実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが、各々、自己アニールして、各オリゴヌクレオチドの5’末端における一本鎖オーバーハングを更に形成する。別の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが、各々、自己アニールして、各オリゴヌクレオチドの3’末端における一本鎖オーバーハングを更に形成する。一実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハング及び第2のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハングが、各々、約1~約12ヌクレオチド長、約1~約8ヌクレオチド長、約2~約6ヌクレオチド長、又は約3、約4、約5、若しくは約6ヌクレオチド長である。
【0021】
一実施形態では、各オリゴヌクレオチドの5’末端は、リン酸化されている。
【0022】
一実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハング及び第2のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハングの5’から3’方向のヌクレオチド配列が、互いに対して非相補的である。別の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハング及び第2のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハングの5’から3’方向のヌクレオチド配列が、同じである。別の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが同じヌクレオチド配列を有する。別の実施形態では、インサートの各末端における一本鎖オーバーハングが、同じ5’から3’方向のヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハング及び第2のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハングが、各々、インサートの末端における一本鎖オーバーハングのうちの両方に対して相補的である。別の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハング及び第2のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハングの5’から3’方向のヌクレオチド配列が異なる。別の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが、異なるヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、インサートの各末端における一本鎖オーバーハングの5’から3’方向のヌクレオチド配列が異なる。
【0023】
一実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハング及び第2のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハングが、各々、インサートの末端における一本鎖オーバーハングのうちの1つのみに対して相補的である。
【0024】
一実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハング及び/又は第2のオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハングが、CTCT、CTCA、CACT、CTC、及びGCTからなる群から選択される5’から3’方向のヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドのうちの一方又は両方が、合成である。
【0025】
一実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが、各々、約40ヌクレオチド~約75ヌクレオチド長、又は約45~約65ヌクレオチド長である。別の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが、各々独立して、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが、各々独立して、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対する配列に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが、各々独立して、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8からなる群から選択されるヌクレオチド配列から構成される。
【0026】
一実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドの各ヘアピン構造及び/又は各T字形若しくはY字形ステムループ構造と、第2のオリゴヌクレオチドの各ヘアピン構造及び/又は各T字形若しくはY字形ステムループ構造とが、少なくとも約4塩基対長、約4塩基対~約20塩基対長、約4塩基対~約15塩基対長、約4塩基対~約6塩基対長、又は約6塩基対~約8塩基対長であるステム領域を含む。別の実施形態では、ステム領域長は、いかなる一本鎖オーバーハングも含まない。
【0027】
一実施形態では、制限エンドヌクレアーゼのうちの少なくとも一方又は両方は、IIS型制限エンドヌクレアーゼである。別の実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼが、同じ制限エンドヌクレアーゼである。別の実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼが、異なる制限エンドヌクレアーゼである。別の実施形態では、IIS型制限エンドヌクレアーゼが、AcuI、AlwI、Alw26I、BasI、BbsI、BbvI、BceAI、BcgI、BCiVI、BcoDI、BruAI、BmrI、BpiI、BpuEI、BsaI、BsaXI、BseGI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BsmI、BspCNI、BspMI、BspQI、BsrDI、BsrI、BtgZI、BtsCI、BtsI、MutI、CspCI、EarI、EciI、Eco31I、Esp3I、FauI、FokI、HgaI、HphI、HpyAV、LguI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、Mva1269I、NmeAIII、PaqCI、PleI、SapI、SfaNI、及びそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される。別の実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼの各々が、独立して、AcuI、AlwI、Alw26I、BasI、BbsI、BbvI、BceAI、BcgI、BCiVI、BcoDI、BruAI、BmrI、BpiI、BpuEI、BsaI、BsaXI、BseGI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BsmI、BspCNI、BspMI、BspQI、BsrDI、BsrI、BtgZI、BtsCI、BtsI、MutI、CspCI、EarI、EciI、Eco31I、Esp3I、FauI、FokI、HgaI、HphI、HpyAV、LguI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、Mva1269I、NmeAIII、PaqCI、PleI、SapI、SfaNI、及びそれらのアイソシゾマーからなる群から選択されるIIS型制限エンドヌクレアーゼである。更なる実施形態では、少なくとも1つのIIS型制限エンドヌクレアーゼが、BbsI、BsaI、Esp3I、及びSapI、並びにそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される。更なる実施形態では、少なくとも1つのIIS型制限エンドヌクレアーゼが、BsaI又はそのアイソシゾマーである。
【0028】
一実施形態では、ライゲーションすることの後に、第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位が、得られるceDNAベクターにおいて再生されない。
【0029】
一実施形態では、二本鎖DNA構築物が、導入遺伝子発現カセットに各々隣接する少なくとも第1の部分ITR及び第2の部分ITRを更に含む。別の実施形態では、第1の部分ITRが、導入遺伝子発現カセットの上流、かつ第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位の下流にある。別の実施形態では、第2の部分ITRが、導入遺伝子発現カセットの下流、かつ第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位の上流にある。別の実施形態では、第1の切断部位が、第1の部分ITRに隣接し、第2の切断部位が、第2の部分ITRに隣接する。別の実施形態では、二本鎖DNA構築物が、第1の部分ITRと導入遺伝子発現カセットとの間に第1のスペーサを更に含む。別の実施形態では、二本鎖DNA構築物が、第2の部分ITRと導入遺伝子発現カセットとの間に第2のスペーサを更に含む。別の実施形態では、二本鎖DNA構築物が、バクミド、プラスミド、小環、又は直鎖状二本鎖DNA分子からなる群から選択される。
【0030】
一実施形態では、得られるceDNAベクターが、導入遺伝子発現カセットと、導入遺伝子発現カセットに各々隣接する少なくとも第1のITR及び第2のITRと、を含む。別の実施形態では、第1のITRが、導入遺伝子発現カセットの上流にある。別の実施形態では、第2のITRが、導入遺伝子発現カセットの下流にある。別の実施形態では、第1のITRが、第1のオリゴヌクレオチド及び第1の部分ITRからのヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、第2のITRが、第2のオリゴヌクレオチド及び第2の部分ITRからのヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、第1のITRが、第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位を欠いている。別の実施形態では、第2のITRが、第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位を欠いている。
【0031】
一実施形態では、第1のITR及び第2のITRが、各々、ヘアピン構造及び/又はT字形若しくはY字形ステムループ構造を含む。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRが、各々、T字形又はY字形ステムループ構造を含む。別の実施形態では、T字形又はY字形ステムループ構造が、A-A’及びD-D’ステム領域並びに2つのB-B’及びC-C’ループを含むステムを含む。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRのうちの一方又は両方が、アデノ随伴ウイルス(AAV)ITR又はAAV由来のITRである。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRのうちの一方又は両方が、野生型ITRである。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRの両方が、野生型ITRである。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRのうちの一方又は両方が、修飾ITRである。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRが、互いに対称又は実質的に対称である。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRが、非対称のITRである。
【0032】
一実施形態では、第1のITR及び第2のITRのうちの一方又は両方が、付加、欠失、切断、及び点変異からなる群から選択される1つ以上の修飾を含む。別の実施形態では、1つ以上の修飾が、第1のITR及び第2のITRのうちの一方又は両方のA-A’ステム領域、B-B’ループ、C-C’ループ、及び/又はD-D’ステム領域に位置する。別の実施形態では、1つ以上の修飾が、第1のITR及び第2のITRのうちの一方又は両方のB-B’ループ及び/又はC-C’ループに位置する。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRのうちの一方のB-B’ループ及びC-C’ループが、切断されている。
【0033】
一実施形態では、導入遺伝子発現カセットが、第1のITRと導入遺伝子発現カセットとの間に第1のスペーサを更に含む。別の実施形態では、導入遺伝子発現カセットが、第2のITRと導入遺伝子発現カセットとの間に第1のスペーサを更に含む。別の実施形態では、導入遺伝子発現カセットが、第1のITRと導入遺伝子発現カセットとの間の第1のスペーサと、第2のITRと導入遺伝子発現カセットとの間の第2のスペーサと、を更に含む。
【0034】
一実施形態では、導入遺伝子発現カセットが、導入遺伝子を含む。別の実施形態では、導入遺伝子が、治療用タンパク質をコードする。別の実施形態では、治療用タンパク質が、酵素、凝固因子又は補因子、抗体又はその抗原結合断片、抗原、遺伝子編集タンパク質、及び細胞傷害性タンパク質からなる群から選択される。
【0035】
一実施形態では、導入遺伝子発現カセットが、プロモータ、エンハンサ、イントロン、転写後調節エレメント、及びポリアデニル化シグナルからなる群から選択される遺伝子エレメントを更に含む。別の実施形態では、転写後調節エレメントが、WHP転写後調節エレメント(WHP posttranscriptional regulatory element、WPRE)を含む。
【0036】
一実施形態では、ライゲーションすることが、リガーゼ又はAAV Repタンパク質によって行われる。別の実施形態では、リガーゼが、T4リガーゼである。
【0037】
一実施形態では、方法が、得られるceDNAベクターを単離又は精製することを更に含む。別の実施形態では、方法が、ライゲーションすることの前にインサートを単離又は精製することを更に含む。別の実施形態では、方法が、ライゲーションすることの前にインサートを単離又は精製することを含まない。別の実施形態では、接触及びライゲーションするステップが、単一の反応容器内で実施される。
【0038】
一実施形態では、得られるceDNAベクターが、ceDNAベクターのモノマー種の少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%を含む。
【0039】
一実施形態では、本明細書に開示される方法のうちのいずれかによって産生された閉端DNA(ceDNA)ベクターが本明細書に提供される。別の実施形態では、本明細書に開示される方法のうちのいずれかによって産生された閉端DNA(ceDNA)ベクターを含む医薬組成物が本明細書に提供される。別の実施形態では、本明細書に開示される方法のうちのいずれかによって産生された閉端DNA(ceDNA)ベクターを含む脂質ナノ粒子組成物が本明細書に提供される。別の実施形態では、本明細書に開示される方法のうちのいずれかによって産生された閉端DNA(ceDNA)ベクターを含む単離された宿主細胞が本明細書に提供される。別の実施形態では、本明細書に開示される方法のうちのいずれかによって産生された閉端DNA(ceDNA)ベクターを含むトランスジェニック動物が本明細書に提供される。
【0040】
一実施形態では、対象における障害、疾患、又は病態(例えば、遺伝性障害、疾患、又は病態)を治療する方法であって、方法が、対象に、治療有効量の、本明細書に開示される方法のうちのいずれかによって産生された閉端DNA(ceDNA)ベクター、又は本明細書に開示される方法のうちのいずれかによって産生されたceDNAベクターを含む医薬組成物、又は本明細書に開示される方法のうちのいずれかによって産生されたceDNAベクターを含む脂質ナノ粒子組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に提供される。
【0041】
一実施形態では、対象に治療用タンパク質を送達する方法であって、方法が、対象に、治療有効量の、本明細書に開示される方法のうちのいずれかによって産生された閉端DNA(ceDNA)ベクター、又は本明細書に開示される方法のうちのいずれかによって産生されたceDNAベクターを含む医薬組成物、又は本明細書に開示される方法のうちのいずれかによって産生されたceDNAベクターを含む脂質ナノ粒子組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に提供される。
【0042】
別の実施形態では、治療用タンパク質が、酵素、凝固因子又は補因子、抗体又はその抗原結合断片、抗原、遺伝子編集タンパク質、及び細胞傷害性タンパク質からなる群から選択される。
【0043】
別の実施形態では、以下に示される、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、及び配列番号31からなる群から選択される逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が、本明細書に提供される。
【0044】
【0045】
別の実施形態では、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、及び配列番号31からなる群から選択される配列を含む逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が、本明細書に提供される。別の実施形態では、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、及び配列番号31からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも975、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である配列を含む逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が、本明細書に提供される。別の実施形態では、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、及び配列番号31からなる群から選択される配列からなる逆位末端反復(ITR)ヌクレオチド配列が、本明細書に提供される。
【0046】
別の実施形態では、ITRヌクレオチド配列が、以下に示されるように、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、及び配列番号40からなる群から選択されるスペーサを更に含む。
【0047】
【0048】
別の実施形態では、ITRヌクレオチド配列が、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、及び配列番号40からなる群から選択される配列を含むスペーサ配列を更に含む。別の実施形態では、ITRヌクレオチド配列が、以下に示されるように、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、及び配列番号40からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも975、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一である配列を含むスペーサ配列を更に含む。別の実施形態では、ITRヌクレオチド配列が、以下に示されるように、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、及び配列番号40からなる群から選択される配列からなるスペーサ配列を更に含む。
【0049】
別の実施形態では、導入遺伝子発現カセットと、導入遺伝子発現カセットに隣接する少なくとも第1の逆位末端反復(ITR)及び第2のITRと、を含む、閉端DNA(ceDNA)ベクターであって、第1のITR及び第2のITRが、各々、本明細書に開示されるITRヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、ceDNAベクターが、本明細書に提供される。別の実施形態では、ベクターが、二本鎖DNAを含む。
【0050】
別の実施形態では、本明細書に開示されるITR配列のうちのいずれかを含むceDNAベクターと、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物が、本明細書に提供される。別の実施形態では、本明細書で開示されるITR配列のうちのいずれかを含むceDNAベクターを含む脂質ナノ粒子組成物が、本明細書に提供される。別の実施形態では、本明細書に開示されるITR配列のうちのいずれかのceDNAベクターを含む単離された宿主細胞が、本明細書に提供される。別の実施形態では、本明細書で開示されるITR配列のうちのいずれかを含むceDNAベクターを含むトランスジェニック動物が、本明細書に提供される。
【0051】
実施形態では、対象における障害、疾患、又は病態(例えば、遺伝性障害、疾患、又は病態)を治療する方法であって、方法が、対象に、治療有効量の、本明細書に開示されるITR配列のうちのいずれかを含むceDNAベクター、又は本明細書に開示されるITR配列のうちのいずれかを含むceDNAベクターを含む医薬組成物、又は本明細書に開示されるITR配列のうちのいずれかを含むceDNAベクターを含む脂質ナノ粒子組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に提供される。
【0052】
別の実施形態では、対象に治療用タンパク質を送達する方法であって、方法が、対象に、治療有効量の、本明細書に開示されるITR配列のうちのいずれかを含むceDNAベクター、又は本明細書に開示されるITR配列のうちのいずれかを含むceDNAベクターを含む医薬組成物、又は本明細書に開示されるITR配列のうちのいずれかを含むceDNAベクターを含む脂質ナノ粒子組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に提供される。別の実施形態では、治療用タンパク質が、酵素、抗体又はその抗原結合断片、抗原、遺伝子編集タンパク質、及び細胞傷害性タンパク質からなる群から選択される。
【0053】
一実施形態では、閉端DNAベクター(ceDNA)の合成産生で使用するためのDNAベクターであって、導入遺伝子を受容することができるマルチクローニング部位(multiple cloning site)と、マルチクローニング部位の上流の第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位と、マルチクローニング部位の下流の第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位と、マルチクローニング部位に各々隣接する第1の部分ITR及び第2の部分ITRと、を含む、DNAベクターが、本明細書に提供される。別の実施形態では、第1の部分ITRが、マルチクローニング部位の上流、かつ第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位の下流にある。別の実施形態では、第2の部分ITRが、マルチクローニング部位の下流、かつ第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位の上流にある。
【0054】
別の実施形態では、DNAベクターが、1つ以上のスペーサを含む。別の実施形態では、DNAベクターが、複製起源及び選択可能なマーカー遺伝子を含む。別の実施形態では、マルチクローニング部位が、導入遺伝子と、プロモータ、エンハンサ、イントロン、転写後調節エレメント、及びポリアデニル化シグナルからなる群から選択される1つ以上の追加の遺伝子エレメントと、を受容することができる。
【0055】
一実施形態では、第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位が、第1の制限エンドヌクレアーゼに特異的であり、第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位が、少なくとも第2の制限エンドヌクレアーゼに特異的である。別の実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼが、同じ制限エンドヌクレアーゼである。別の実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼが、異なる制限エンドヌクレアーゼである。
【0056】
一実施形態では、制限エンドヌクレアーゼのうちの少なくとも一方が、IIS型制限エンドヌクレアーゼである。別の実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼの各々が、IIS型制限エンドヌクレアーゼである。別の実施形態では、IIS型制限エンドヌクレアーゼが、AcuI、AlwI、Alw26I、BasI、BbsI、BbvI、BceAI、BcgI、BCiVI、BcoDI、BruAI、BmrI、BpiI、BpuEI、BsaI、BsaXI、BseGI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BsmI、BspCNI、BspMI、BspQI、BsrDI、BsrI、BtgZI、BtsCI、BtsI、MutI、CspCI、EarI、EciI、Eco31I、Esp3I、FauI、FokI、HgaI、HphI、HpyAV、LguI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、Mva1269I、NmeAIII、PaqCI、PleI、SapI、SfaNI、及びそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される。別の実施形態では、各IIS型制限エンドヌクレアーゼが、独立して、AcuI、AlwI、Alw26I、BasI、BbsI、BbvI、BceAI、BcgI、BCiVI、BcoDI、BruAI、BmrI、BpiI、BpuEI、BsaI、BsaXI、BseGI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BsmI、BspCNI、BspMI、BspQI、BsrDI、BsrI、BtgZI、BtsCI、BtsI、MutI、CspCI、EarI、EciI、Eco31I、Esp3I、FauI、FokI、HgaI、HphI、HpyAV、LguI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、Mva1269I、NmeAIII、PaqCI、PleI、SapI、SfaNI、及びそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される。別の実施形態では、IIS型制限エンドヌクレアーゼが、BbsI、BsaI、Esp3I、及びSapI、並びにそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される。
【0057】
一実施形態では、DNAベクターが、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、DNAベクターが、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択される配列に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、DNAベクターが、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなる。
【0058】
一実施形態では、導入遺伝子を含む閉端DNA(ceDNA)ベクターを調製するためのキットであって、キットが、本明細書に開示される任意のDNAベクターと、マルチクローニング部位でDNAベクターを切断して、マルチクローニング部位が導入遺伝子を受容することを可能にすることができる、少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼと、第1の切断部位及び第2の切断部位で切断することができる少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼと、リガーゼと、を含む、キットが、本明細書に提供される。別の実施形態では、キットは、1つ以上のヘアピン構造を含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを更に含む。
【0059】
一実施形態では、導入遺伝子発現カセットを含む閉端DNA(ceDNA)ベクターの調製を容易にするように操作された二本鎖環状DNA構築物であって、二本鎖環状DNA構築物が、導入遺伝子発現カセットと、導入遺伝子発現カセットの上流の第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位と、導入遺伝子発現カセットの下流の第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位と、導入遺伝子発現カセットに各々隣接する第1の部分ITR及び第2の部分ITRと、を含む、二本鎖環状DNA構築物が、本明細書に提供される。
【0060】
一実施形態では、第1の部分ITRが、導入遺伝子発現カセットの上流、かつ第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位の下流にある。別の実施形態では、第2の部分ITRが、導入遺伝子発現カセットの下流、かつ第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位の上流にある。別の実施形態では、第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位が、第1の制限エンドヌクレアーゼに特異的であり、第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位が、少なくとも第2の制限エンドヌクレアーゼに特異的である。
【0061】
一実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼが、同じ制限エンドヌクレアーゼである。別の実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼが、異なる制限エンドヌクレアーゼである。
【0062】
一実施形態では、制限エンドヌクレアーゼのうちの少なくとも一方が、IIS型制限エンドヌクレアーゼである。別の実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼの各々が、IIS型制限エンドヌクレアーゼである。別の実施形態では、IIS型制限エンドヌクレアーゼが、AcuI、AlwI、Alw26I、BasI、BbsI、BbvI、BceAI、BcgI、BCiVI、BcoDI、BruAI、BmrI、BpiI、BpuEI、BsaI、BsaXI、BseGI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BsmI、BspCNI、BspMI、BspQI、BsrDI、BsrI、BtgZI、BtsCI、BtsI、MutI、CspCI、EarI、EciI、Eco31I、Esp3I、FauI、FokI、HgaI、HphI、HpyAV、LguI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、Mva1269I、NmeAIII、PaqCI、PleI、SapI、SfaNI、及びそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される。別の実施形態では、各IIS型制限エンドヌクレアーゼが、独立して、AcuI、AlwI、Alw26I、BasI、BbsI、BbvI、BceAI、BcgI、BCiVI、BcoDI、BruAI、BmrI、BpiI、BpuEI、BsaI、BsaXI、BseGI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BsmI、BspCNI、BspMI、BspQI、BsrDI、BsrI、BtgZI、BtsCI、BtsI、MutI、CspCI、EarI、EciI、Eco31I、Esp3I、FauI、FokI、HgaI、HphI、HpyAV、LguI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、Mva1269I、NmeAIII、PaqCI、PleI、SapI、SfaNI、及びそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される。別の実施形態では、少なくとも1つのIIS型制限エンドヌクレアーゼが、BbsI、BsaI、Esp3I、及びSapI、並びにそれらのアイソシゾマーからなる群から選択される。
【0063】
一実施形態では、導入遺伝子発現カセットを含む閉端DNA(ceDNA)ベクターを調製するためのキットであって、キットが、本明細書に開示される二本鎖DNA構築物のうちのいずれかと、二本鎖DNA構築物を第1の切断部位及び第2の切断部位で切断することができる少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼと、リガーゼと、使用説明書と、を含む、キットが、本明細書に提供される。別の実施形態では、キットは、1つ以上のヘアピン構造を含む少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを更に含む。
【0064】
一実施形態では、ローリングサークル増幅を介してプラスミド鋳型から二本鎖DNA構築物を産生する方法であって、プラスミド鋳型を、鎖置換活性を有する熱安定性ポリメラーゼと接触させるステップであって、ポリメラーゼ濃度(U/μl単位)に対するプラスミド鋳型濃度(ng/μl単位)の比が、約1を超える、ステップと、プラスミド鋳型をオリゴヌクレオチドプライマ及びdNTPと接触させるステップと、プラスミド鋳型、ポリメラーゼ、オリゴヌクレオチドプライマ、及びdNTPを、約40℃以下の温度で、少なくとも約5時間の期間にわたってインキュベートするステップと、を含み、それによって、二本鎖DNA構築物を産生する、方法が、本明細書に提供される。
【0065】
一実施形態では、ポリメラーゼ濃度(U/μl単位)に対するプラスミド鋳型濃度(ng/μl単位)の比が、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、又は約20を超える。
【0066】
一実施形態では、プラスミド鋳型濃度が、約0.01ng/μl、約0.05ng/μl、約0.1ng/μl、約0.15ng/μl、約0.2ng/μl、約0.21ng/μl、約0.22ng/μl、約0.23ng/μl、約0.24ng/μl、約0.2ng/μl、約0.26ng/μl、約0.27ng/μl、約0.28ng/μl、約0.29ng/μl、約0.3ng/μl、約0.35ng/μl、約0.4ng/μl、約0.45ng/μl、約0.5ng/μl、約0.6ng/μl、約0.7ng/μl、約0.8ng/μl、約0.9ng/μl、又は約1.0ng/μlである。
【0067】
一実施形態では、ポリメラーゼ濃度が、約0.01U/μl、約0.02U/μl、約0.03U/μl、約0.04U/μl、約0.05U/μl、約0.06U/μl、約0.07U/μl、約0.08U/μl、約0.09U/μl、約0.1U/μl、約0.15U/μl、約0.2U/μl、約0.25U/μl、約0.3U/μl、約0.35U/μl、約0.4U/μl、又は約0.45U/μlである。
【0068】
一実施形態では、ステップ(c)における温度が、約40℃、約39℃、約38℃、約37℃、約36℃、約35℃、約34℃、約33℃、約32℃、約31℃、約30℃、約29℃、約28℃、約27℃、約26℃、約25℃、約24℃、約23℃、約22℃、又は約21℃未満である。
【0069】
一実施形態では、期間が、少なくとも約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約21時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約37時間、約38時間、約39時間、又は約40時間である。
【0070】
一実施形態では、期間が、約6時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約21時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約37時間、約38時間、約39時間、又は約40時間未満である。
【0071】
別の実施形態では、プラスミド鋳型濃度が、約0.25ng/μlであり、温度が、約30℃であり、ポリメラーゼ濃度が、約0.05U/μlであり、期間が、約18~26時間である。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマ濃度が、約50μM未満、少なくとも約10μM、又は少なくとも約10μM、かつ約50μM未満である。171.別の実施形態では、dNTP濃度が、約4mMである。
【0072】
一実施形態では、熱安定性ポリメラーゼが、Phi29 DNAポリメラーゼ又はその誘導体若しくはバリアントである。別の実施形態では、熱安定性ポリメラーゼが、EquiPhi29(商標)である。
【0073】
一実施形態では、方法が、少なくとも約100μlの総反応体積で実施される。別の実施形態では、方法が、少なくとも約100μl、約200μl、約300μl、約400μl、約500μl、約600μl、約700μl、約800μl、約900μl、約1ml、約2ml、約3ml、約4ml、約5ml、約6ml、約7ml、約8ml、約9ml、約10ml、約15ml、約20ml、約25ml、約30ml、約35ml、約40ml、約45ml、約50ml、約55ml、約60ml、約65ml、約70ml、約75ml、約80ml、約85ml、約90ml、約95ml、約100ml、約200ml、約300ml、約400ml、約500ml、約600ml、約700ml、約800ml、約900ml、約1L、約2L、約3L、4L、約5L、約6L、約7L、約8L、約9L、約10L、約20L、約30L、約40L、約50L、約60L、約70L、約80L、約90L、約100L、約200L、約300L、約400L、約500L、約600L、約700L、約800L、約900L、又は約1000Lの総反応体積で実施される。別の実施形態では、方法が、総反応体積の少なくとも2倍の容量を有する反応容器内で実施される。
【0074】
一実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマが、プラスミド鋳型中の骨格配列にハイブリダイズする。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマが、ユニバーサルプライマである。
【0075】
一実施形態では、本明細書に開示される方法のうちのいずれかによって産生された二本鎖DNA構築物が、本明細書に提供される。
【0076】
一実施形態では、閉端DNA(ceDNA)ベクターを産生する方法であって、本明細書に開示される方法のうちのいずれかを使用して二本鎖DNA構築物を産生することと、本明細書に開示される方法のうちのいずれかを実施して、二本鎖DNA構築物からceDNAベクターを産生することと、を含む、方法が、本明細書に提供される。別の実施形態では、上記の方法のうちのいずれかによって産生されたceDNAベクター、上記の方法のうちのいずれかによって産生されたceDNAベクター及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物、並びに上記の方法のうちのいずれかによって産生されたベクターを含む脂質ナノ粒子組成物が、本明細書に提供される。
【0077】
別の実施形態では、閉端DNA(ceDNA)ベクターを調製する方法であって、方法が、二本鎖DNA構築物を少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼと接触させることであって、構築物が、導入遺伝子発現カセットと、導入遺伝子発現カセットの上流の第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位と、導入遺伝子発現カセットの下流の第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位と、を含み、少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼが、第1の切断部位及び第2の切断部位で構築物を切断して、インサートの5’及び3’末端における一本鎖オーバーハングを有するインサートを放出させることができる、接触させることと、インサートの5’及び3’末端を、第1の逆位末端反復(ITR)オリゴヌクレオチド及び第2のITRオリゴヌクレオチドにライゲーションして、ceDNAベクターを形成することと、を含む、方法が、本明細書に提供される。
【0078】
本開示のこれらの及び他の態様は、下記で更に詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つ図面を含む。カラー図面を含むこの特許又は特許出願公開のコピーは、請求及び必要な手数料の支払いに応じて特許庁から提供されるであろう。
【0080】
上記に簡単に要約され、以下により詳細に論じられる本開示の実施形態は、添付の図面に描かれた本開示の例示的な実施形態を参照することによって理解することができる。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示し、したがって、本開示は他の等しく有効な実施形態を認めることができるため、範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【
図1A】導入遺伝子と、導入遺伝子の発現を可能にし、及び/又は制御する1つ以上の調節配列と、を含む、導入遺伝子発現カセットに隣接するベクターの両端において、それぞれ、対称若しくは実質的に対称の逆位末端反復(ITR)、又は非対称ITRを有する非限定的な例示的なceDNAベクターの概略図を示す。
【
図1B】導入遺伝子と、導入遺伝子の発現を可能にし、及び/又は制御する1つ以上の調節配列と、を含む、導入遺伝子発現カセットに隣接するベクターの両端において、それぞれ、対称若しくは実質的に対称の逆位末端反復(ITR)、又は非対称ITRを有する非限定的な例示的なceDNAベクターの概略図を示す。
【
図2】例示的な基本ベクタープラスミド11のマップである。
【
図3】第VIII因子(VIII)発現導入遺伝子をプラスミド11にサブクローニングすることによって生成された、例示的な構築物、すなわち、構築物1のマップである。
【
図4】単一のITRオリゴヌクレオチド及び制限エンドヌクレアーゼBsaIを使用するceDNAの例示的な無細胞合成の概略図である。
【
図5】EcoRI及びIIS型制限エンドヌクレアーゼなどの従来の制限エンドヌクレアーゼの活性、特に、酵素が基質DNA上のヌクレオチド配列をどのように認識及び切断するか、並びに切断から生成されたオーバーハングの性質を比較する概略図である。
【
図6】二本鎖DNA構築物を認識及び切断し、それによって、導入遺伝子発現カセットを担持し、適切なオーバーハングを有する断片のみが、相補的オーバーハングを有するITRオリゴ1とライゲーションすることになる、BsaIの機序を例示する概略図である。
【
図7A】自己アニールして三次元ステムループ構造を形成する例示的なITRオリゴヌクレオチドの概略図であり、ステム長が7bp又は3bpである。
【
図7B】プラスミド20インサートと、異なるステム長:14bp、7bp、5bp、及び3bpを有するITRオリゴヌクレオチドとを使用してライゲーション反応を分析するアガロースゲル画像である。
【
図7C】例示的な基本ベクタープラスミド20のマップである。
【
図8】非対称ITRを有するceDNAベクターを生成する機序を例示する概略図である。
【
図9A-9C】
図9Aは、基本ベクター、ITRオリゴヌクレオチド、及びIIS型制限エンドヌクレアーゼの異なる組み合わせを使用して複数のライゲーション反応を分析するアガロースゲル画像である。
図9Bおよび
図9Cは、標識付きITRオリゴヌクレオチドを使用するインサートの5’及び3’末端の両方におけるライゲーション特異性を確認するアガロースゲル画像である。
【
図10】A-A’及びD-D’ステム領域並びにB-B’及びC-C’ループの特定とともに、AAV血清型2の野生型ITR(AAV2)のステムループ構造を示す概略図である(国際特許出願公開第WO2019/143885号の配列番号52、その内容全体は参照により本明細書に明示的に組み込まれる)。
【
図11】未切断構築物1(レーン1)、構築物1の消化/ライゲーション反応(レーン2)、及びエキソヌクレアーゼ消化後の反応混合物(レーン3)を分析するアガロースゲル画像である。
【
図12】(i)未切断又はBglIIで切断された、閉端ベクターとして、開端鎖DNAとして、又は1つ以上のニック若しくはギャップを含有する閉端ベクターとして構築物1から産生されたFVIII-ceDNAの予測サイズと、(ii)未切断又はBglIIで切断された、FVIII-ceDNAの変性ゲル分析と、を例示する。
【
図13】イオン交換クロマトグラフィカラムから単一の鋭いピークとして溶出するFVIII-ceDNA原薬のクロマトグラムである。
【
図14】5’及び3’ライゲーションジャンクションにおけるFVIII-ceDNAのDNA配列を、ITRオリゴ1及び構築物1のDNA配列と比較し、それによって、FVIII-ceDNAライゲーション産物のみに存在するが、ITRオリゴ1及び構築物1には存在しない、固有のジャンクション配列を明らかにする、DNA配列分析を例示する概略図である。
【
図15】本明細書に記載される無細胞合成方法を使用して生成されたceDNAを小スケール及び中スケールで示すアガロースゲル画像である。
【
図16A】マウスを用いた流体力学的尾静脈注射研究における漸増用量レベルの合成及びSf9で産生されたFVIII-ceDNAのインビボFVIII発現レベルを示すグラフである。
【
図16B】マウスを用いた42日間の静脈内注射研究における、脂質ナノ粒子組成物として製剤化された合成及びSf9で産生されたFVIII-ceDNAのインビボFVIII発現レベルを示すグラフである。
【
図17】任意選択の中間消化ステップを伴う場合(下)及び伴わない場合(上)の両方の、プライマ駆動多重鎖置換を使用するローリングサークルプラスミド増幅、それに続くceDNAへの増幅産物の酵素的変換の概略図である。
【
図18】E.coliプラスミド鋳型及び増幅されたプラスミドのDNAバンディングプロファイルのアガロースゲル分析を使用する、増幅されたプラスミド産物品質及びDNA収量に対するプライマ濃度の効果の評価を図示する。レーン、左から右に順に、(1)サイズマーカー、(2)プラスミド、BsaI消化なし、(3)プラスミド、BsaI消化、(4)増幅されたプラスミド、BsaI消化、500μMプライマ、(5)増幅されたプラスミド、BsaI消化、100μMプライマ、(6)増幅されたプラスミド、BsaI消化、50μMプライマ、(7)増幅されたプラスミド、BsaI消化、10μMプライマ、(8)増幅されたプラスミド、BsaI消化、5μMプライマ、(9)増幅されたプラスミド、BsaI消化、1μMプライマ、(10)増幅されたプラスミド、BsaI消化、0μMプライマ。
【
図19A】増幅された産物品質に対する温度及びポリメラーゼ量の影響を図示する。異なる増幅温度、ポリメラーゼ酵素の量、及び増幅時間の長さにおける、BsaI処理された増幅されたプラスミドについてのDNAバンディング及び産物品質のアガロースゲル分析を示す。各増幅反応温度(左から右に、40℃、37℃、33℃、30℃、及び20℃)について、50単位のEquiPhi29(商標)(上)及び5単位のEquiPhi39(商標)(下)の結果が示されている。追加的に、各反応温度について、4つのレーンは、左から右に、3時間、12時間、24時間、及び36時間の増幅反応時間についての結果を示す。最も左のレーンは、サイズマーカーを含む。
【
図19B】増幅された産物品質に対する温度及びポリメラーゼ量の影響を図示する。異なる量の野生型Phi29ポリメラーゼ酵素(左)及び操作されたEquiPhi29(商標)ポリメラーゼ酵素(右)による30℃における増幅の結果を比較するアガロースゲルを示す。レーン、各ゲルについて、左から右に、(1)サイズマーカー、(2)2単位の酵素、(3)5単位の酵素。
【
図20A】BsaIで消化されたE.coliプラスミド、30℃で増幅されたプラスミド、及び45℃で増幅されたプラスミド(左)、並びにE.coliプラスミド及び各増幅されたプラスミドの両方から産生された対応するceDNAベクター(右)のアガロースゲル比較を図示する。レーン、左から右に、(1)サイズマーカー、(2)BsaIで消化されたプラスミド、(3)BsaIで消化された30℃で増幅されたプラスミド、(4)BsaIで消化された45℃で増幅されたプラスミド、(5)サイズマーカー、(6)プラスミドから産生された精製されたceDNA、(7)30℃で増幅されたプラスミドから産生された精製されたceDNA、(8)45℃で増幅されたプラスミドから産生された精製されたceDNA、(9)サイズマーカー。
【
図20B】5つの異なる増幅されたプラスミド構築物から産生されたceDNAのアガロースゲル比較を図示する。予想されるceDNA産物サイズは、左から右に、次のとおりである:2.9kb(構築物1)、3.8kb(構築物2)、5.9kb(構築物3)、4.7kb(構築物4)、及び6.2kb(構築物5)。最も左のレーンは、サイズマーカーを含む。
【
図21A】漸増反応体積によるスケーリングされたプラスミド増幅を図示する。BsaIで消化された増幅されたプラスミド産物のアガロースゲル分析を、定量化された増幅されたDNA収量とともに示す。レーン、左から右に、(1)100μl体積、1.5mLチューブ:25ngのプラスミド投入、80μgの増幅されたDNA収量、(2)1mL体積、1.5mLチューブ:250ngのプラスミド投入、800μgの増幅されたDNA収量、(3)25mL体積、50mLチューブ:6.3ngのプラスミド投入、20mgの増幅されたDNA収量、(4)サイズマーカー。
【
図21B】漸増反応体積によるスケーリングされたプラスミド増幅を図示する。25mLの反応体積からの20mgのceDNA産物の断片クロマトグラム及びアガロースゲル分析を図示する(
図21Aのレーン3に対応する)。
【
図22】異なる量のポリメラーゼ酵素、反応温度、及び反応時間の長さを使用してプラスミド増幅を比較するアガロースゲル分析を図示する。粗反応物(左)及びZymo精製されたceDNA(右)のBsaI消化の結果が示されている。初期プロセス:0.25ng/μlプラスミド鋳型、10μMアニーリングプライマ、45℃、0.5U/μl EquiPhi29(商標)、5mM dNTP、3時間。更新されたプロセス:0.25ng/μlプラスミド鋳型、25μMアニーリングプライマ、30℃、0.05U/μl EquiPhi29(商標)、4mM dNTP、18~26時間。レーン、左から右に、(1)サイズマーカー、(2)BsaIで消化されたプラスミド、(3)BsaIで消化された粗い増幅されたプラスミド、更新されたプロセス、(4)BsaIで消化された粗い増幅されたプラスミド、初期プロセス、(5)サイズマーカー、(6)プラスミドから産生された精製されたceDNA、(7)増幅されたプラスミドから産生された精製されたceDNA、更新されたプロセス、(8)増幅されたプラスミドから産生された精製されたプラスミド、初期プロセス、(9)サイズマーカー。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本開示は、無細胞DNA増幅方法を使用する、より迅速かつ費用効率の高いプラスミド又はDNA産生のための新しいアプローチの開発を説明する。本明細書に提供される方法及び組成物は、少なくとも一部には、限定されるものではないが、Sf9細胞株などの昆虫細胞株で産生されたDNAベクターと比較して高い純度及び収量を有する閉端DNA(ceDNA)ベクターを含む、DNAベクターを生成するのに有用な無細胞合成産生方法の発見に基づき、かつ/あるいは産生プロセスは、従来の細胞ベースの産生方法と比較して、簡素化されるか、又はより効率若しくは費用効率が高くなる。例えば、一実施形態では、制限エンドヌクレアーゼ消化及びライゲーション反応における高い特異性は、両方の反応が単一の反応容器内で同時に行われることを可能にする。いくつかの実施形態では、消化及びライゲーション反応における高い特異性は、2つの反応の間の精製手順の必要性を更に排除する。制限エンドヌクレアーゼ消化及びライゲーション反応におけるこの高い特異性は、閉端ベクター、すなわち、逆位末端反復(ITR)オリゴヌクレオチド及び二本鎖DNA構築物を作製するベース材料における設計によって容易にされる。具体的には、ITRオリゴヌクレオチド及び二本鎖DNA構築物は、DNAの認識、結合、及び切断においてこれらの無細胞合成方法で使用される制限エンドヌクレアーゼの固有の活性を活用するヌクレオチド配列を含有する。
【0082】
本明細書の実施形態に記載される研究の結果は、大量の完全合成閉端DNA分子を生成した、拡張可能で堅牢な無細胞の酵素的方法であり、細胞ベースの産生方法を上回る大幅な利点を表す。
【0083】
更に、これらの無細胞合成方法で使用される制限エンドヌクレアーゼの固有の活性を活用することは、制御されるべき1つよりも多くのITRオリゴヌクレオチドを利用するライゲーション反応の指向性を可能にし、それによって、非対称ITRを有するceDNAの調製を可能にする。
【0084】
本明細書に提供される無細胞合成方法によって提供される、細胞ベースの産生方法を上回る、別の大幅な利点は、より高い収量に加えて、本明細書に記載される方法が、容易に拡張可能な小規模の反応(約1mL)かつ少なくとも中程度(>40mL)までであり、更に純度を損なうことがないことである。
【0085】
本明細書に記載されるように合成されたベクターは、任意の所望の導入遺伝子、例えば、所与の疾患を治療又は治癒するための導入遺伝子を発現することができる。当業者は、従来の組換えベクターを用いた従来の遺伝子療法方法で使用される任意の導入遺伝子が、例えば、本明細書に記載される合成方法によって作製されたceDNAベクターによる発現に適合できることを容易に認識するであろう。
【0086】
I.定義
本明細書で別途定義されない限り、本出願に関連して使用される科学的及び技術的用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。本開示は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬などに限定されず、そのようなものとして変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、単に特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定することを意図されない。免疫学及び分子生物学における一般用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,19th Edition,Merck Sharp & Dohme Corp.により発行,2011(ISBN 978-0-911910-19-3)、Robert S.Porter et al.(編),Fields Virology,6th Edition,Lippincott Williams & Wilkinsにより発行,Philadelphia,PA,USA(2013)、Knipe,D.M.and Howley,P.M.(編),The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine,Blackwell Science Ltd.により発行,1999-2012(ISBN 9783527600908)、及びRobert A.Meyers(編),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers,Inc.により発行,1995(ISBN 1-56081-569-8)、Immunology by Werner Luttmann,Elsevierにより発行,2006、Janeway’s Immunobiology,Kenneth Murphy,Allan Mowat,Casey Weaver(編),Taylor & Francis Limited,2014(ISBN 0815345305,9780815345305)、Lewin’s Genes XI,Jones & Bartlett Publishersにより発行,2014(ISBN-1449659055)、Michael Richard Green and Joseph Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,USA(2012)(ISBN 1936113414)、Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier Science Publishing,Inc.,New York,USA(2012)(ISBN 044460149X)、Laboratory Methods in Enzymology:DNA,Jon Lorsch(編)Elsevier,2013(ISBN 0124199542)、Current Protocols in Molecular Biology(CPMB),Frederick M.Ausubel(編),John Wiley and Sons,2014(ISBN047150338X,9780471503385)、Current Protocols in Protein Science(CPPS),John E.Coligan(編),John Wiley and Sons,Inc.,2005、及びCurrent Protocols in Immunology(CPI)(John E.Coligan,ADA M Kruisbeek,David H Margulies,Ethan M Shevach,Warren Strobe,(編)John Wiley and Sons,Inc.,2003(ISBN 0471142735,9780471142737)に見出され得る。
【0087】
本明細書で使用される場合、「無細胞」、「無細胞合成」、「無細胞産生」、「合成閉端DNAベクター産生」、及び「合成産生」という用語、並びに全ての他の関連する対応物は、交換可能に使用され、細胞による、又は細胞内での、あるいは細胞抽出物の使用による、分子の複製又は他の増殖を伴わない様式における1つ以上の分子の産生を指す。合成産生は、産生された分子の細胞汚染物質(例えば、細胞タンパク質又は細胞核酸)による汚染を回避し、更に産生プロセス中の分子の望ましくない細胞特異的修飾(例えば、メチル化又はグリコシル化又は他の翻訳後修飾)を回避する。
【0088】
本明細書で使用される場合、「異種ヌクレオチド配列」及び「導入遺伝子」という用語は、交換可能に使用され、本明細書で開示されるceDNAベクターに組み込まれ、それによって送達及び発現され得る、関心対象の(カプシドポリペプチドをコードする核酸以外の)核酸を指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子発現カセット」、「発現カセット」、「転写カセット」、及び「遺伝子発現ユニット」という用語は、交換可能に使用され、導入遺伝子の転写を配向するのに十分な1つ以上のプロモータ又は他の調節配列に操作可能に連結された導入遺伝子を含むが、カプシドをコードする配列、他のベクター配列、又は逆位末端反復領域を含まない核酸の直鎖状ストレッチを指す。発現カセットは、シス作用配列(例えば、プロモータ、エンハンサ、又はリプレッサ)、1つ以上のイントロン、1つ以上のポリアデニル化シグナル、及びWHP転写後調節エレメント(WHP post-transcriptional regulatory element、WPRE)などの1つ以上の転写後調節エレメントを含む、1つ以上の調節遺伝子エレメントを追加的に含み得る。
【0090】
本明細書で交換可能に使用される「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。したがって、この用語には、一本鎖、二本鎖、又は多重鎖のDNA若しくはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA-RNAハイブリッド、又はプリン及びピリミジン塩基若しくは他の天然、化学的修飾若しくは生化学的修飾、非天然、若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含むポリマーが含まれる。「オリゴヌクレオチド」は、一般に、一本鎖又は二本鎖DNAの約5~約100ヌクレオチドのポリヌクレオチドを指す。しかしながら、この開示の目的のために、オリゴヌクレオチドの長さに上限はない。オリゴヌクレオチドは、「オリゴマー」又は「オリゴ」としても知られており、遺伝子から単離されるか、又は当該技術分野において既知の方法によって化学的に合成され得る。本明細書で使用される「逆位末端反復オリゴヌクレオチド」又は「ITRオリゴヌクレオチド」は、本明細書で定義される完全ITRの少なくとも部分配列を含有する一本鎖オリゴヌクレオチドを指し、自己アニールして、ヘアピン構造又はT字形若しくはY字形ステムループ構造を有するITRの三次元構成を形成することができる。「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、記載されている実施形態に適用可能であるように、一本鎖(センス又はアンチセンスなど)及び二本鎖ポリヌクレオチドを含むと理解されるべきである。
【0091】
本明細書で使用される「核酸構築物」という用語は、天然に存在する遺伝子から単離されるか、又はそうでなければ天然に存在しないであろう様式で核酸のセグメントを含有するように修飾されるか、又は合成である、一本鎖又は二本鎖の核酸分子(例えば、DNA構築物)を指す。
【0092】
「ハイブリダイズ可能」又は「相補的」若しくは「実質的に相補的」とは、核酸(例えば、一本鎖DNA)が、非共有結合的に結合する、すなわち、ワトソン・クリック塩基対及び/又はG/U塩基対を形成する、温度及び溶液イオン強度の適切なインビトロ及び/又はインビボ条件下で配列特異的、逆平行様式で別の核酸(例えば、別の一本鎖DNA)に「アニール」又は「ハイブリダイズ」する(すなわち、核酸は、相補的核酸に特異的に結合する)のを可能にするヌクレオチドの配列を含むことを意味する。当該技術分野において既知であるように、標準的なワトソン・クリック塩基対合には、チミジン(T)とのアデニン(A)対合、ウラシル(U)とのアデニン(A)対合、及びシトシン(C)とのグアニン(G)対合が含まれる。
【0093】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、コード及び非コードアミノ酸、化学的又は生化学的に修飾又は誘導体化されたアミノ酸、及び修飾されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含み得る、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指す。いくつかの実施形態では、定義される導入遺伝子発現カセット中の導入遺伝子は、治療用タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、治療用タンパク質が、酵素、凝固因子又は補因子、抗体又はその抗原結合断片、抗原、遺伝子編集タンパク質、及び細胞傷害性タンパク質から選択される。
【0094】
特定のRNA又はタンパク質遺伝子産物を「コードする」、導入遺伝子などのDNA配列は、特定のRNA及び/又はタンパク質に転写されるDNA核酸配列である。DNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されるRNA(mRNA)をコードし得るか、又はDNAポリヌクレオチドは、タンパク質に翻訳されないRNA(例えば、tRNA、rRNA、又はDNA標的化RNA、「非コード」RNA又は「ncRNA」とも呼ばれる)をコードし得る。
【0095】
本明細書で使用される場合、「遺伝子送達」という用語は、外来DNAが遺伝子療法の用途のために宿主細胞に導入されるプロセスを意味する。
【0096】
本明細書で使用される場合、「末端反復」又は「TR」という用語は、少なくとも1つの最小限必要な複製起源、及びパリンドロームヘアピン構造を含む領域を含む、任意のウイルス末端反復又は合成配列を含み得る。Rep結合配列(「Rep-binding sequence、RBS」)(RBE(Rep結合エレメント)とも称される)及び末端分離部位(terminal resolution site、「TRS」)は、一緒に「最小限必要な複製起源」を構成し、したがって、TRは、少なくとも1つのRBS及び少なくとも1つのTRSを含む。ポリヌクレオチド配列の所与のストレッチ内で互いの逆の相補体であるTRは、典型的に、各々「逆位末端反復」又は「ITR」と称される。ウイルスの文脈において、ITRは、複製、ウイルスパッケージング、組み込み、及びプロウイルスレスキューを媒介する。本明細書の本開示において予想外に見出されたように、全長にわたって逆の相補体でないTRは、依然としてITRの従来の機能を遂行することができ、したがって、ITRという用語は、本明細書において、ceDNAベクターの複製を媒介することができるceDNAゲノム又はceDNAベクター中のTRを指すように使用される。複合ceDNAベクター構成中、3つ以上のITR又は非対称ITR対が存在し得ることは、当業者によって理解されるであろう。ITRは、AAV ITR若しくは非AAV ITRであり得るか、又はAAV ITR若しくは非AAV ITRに由来し得る。例えば、ITRは、パルボウイルス及びディペンドウイルス(例えば、イヌパルボウイルス、ウシパルボウイルス、マウスパルボウイルス、ブタパルボウイルス、ヒトパルボウイルスB-19)を包含するParvoviridae科に由来し得るか、又はSV40複製の起源として役立つSV40ヘアピンは、切断、置換、欠失、挿入、及び/若しくは付加によって更に修飾され得る、ITRとして使用され得る。Parvoviridae科ウイルスは、脊椎動物に感染するParvovirinae及び無脊椎動物に感染するDensovirinaeの2つの亜科で構成されている。ディペンドパルボウイルスは、ヒト、霊長類、ウシ、イヌ、ウマ、及びヒツジ種を含むが、これらに限定されない脊椎動物宿主における複製が可能である、アデノ随伴ウイルス(AAV)のウイルス科を含む。本明細書では便宜上、ceDNAベクター中の発現カセットに対して5’(その上流)に位置するITRは、「5’ITR」又は「左ITR」と称され、ceDNAベクター中の発現カセットに対して3’(その下流)に位置するITRは、「3’ITR」又は「右ITR」と称される。
【0097】
「野生型ITR」又は「WT-ITR」は、例えば、Rep結合活性及びRepニッキング能力を保持する、AAV又は他のディペンドウイルスにおける天然に存在するITR配列の配列を指す。任意のAAV血清型からのWT-ITRのヌクレオチド配列は、遺伝コード又はドリフトの縮退に起因して天然に存在する正準配列とわずかに異なる場合があり、したがって本明細書における使用のために包含されるWT-ITR配列は、産生プロセス中に発生する天然に存在する変化(例えば、複製エラー)の結果としてWT-ITR配列を含む。
【0098】
本明細書で使用される場合、「実質的に対称なWT-ITR」又は「実質的に対称なWT-ITR」という用語は、両方がそれらの全長にわたって逆の相補体配列を有する野生型ITRである単一のceDNAゲノム又はceDNAベクター内のWT-ITRの対を指す。例えば、変化が配列の特性及び全体的な三次元構造に影響を及ぼさない限り、天然に存在する正準配列から逸脱する1つ以上のヌクレオチドを有する場合でも、ITRが野生型の配列であるとみなすことができる。いくつかの態様では、逸脱するヌクレオチドは、保存的配列変化を表す。非限定的な一例として、配列は、正準配列に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性(例えば、デフォルト設定でBLASTを使用して測定される場合)を有し、またそれらの三次元構造が幾何学的空間で同じ形状になるように、他のWT-ITRに対して対称な三次元空間構成を有する。実質的に対称なWT-ITRは、三次元空間で同じA、C-C’、及びB-B’ループを有する。実質的に対称なWT-ITRは、適切なRepタンパク質と対合する操作可能なRep結合部位(RBE又はRBE’)及び末端分離部位(trs)を有することを決定することによって、WTとして機能的に確認することができる。任意選択的に、許容条件下での導入遺伝子発現を含む他の機能を試験することができる。
【0099】
本明細書で使用される場合、「修飾型ITR」又は「mod-ITR」又は「変異体ITR」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、同じ血清型からのWT-ITRと比較して、少なくとも1つ以上のヌクレオチドに変異を有するITRを指す。変異は、同じ血清型のWT-ITRの三次元空間構成と比較して、ITRにおけるA-A’及びD-D’ステム領域並びにB-B’及びC-C’ループのうちの1つ以上の変化をもたらし得(
図10を参照されたい)、三次元空間構成(すなわち、幾何学的空間におけるその三次元構造)の変化をもたらし得る。
【0100】
本明細書で使用される場合、「非対称ITR対」とも称される「非対称ITR」という用語は、全長にわたって逆の相補体ではない単一のceDNAゲノム又はceDNAベクター内のITRの対を指す。非限定的な一例として、非対称ITR対は、それらの三次元構造が、幾何学的空間において異なる形状であるように、それらの同族ITRに対して対称の三次元空間構成を有しない。言い換えると、非対称のITR対は、全体的な幾何学的構造が異なり、すなわち、三次元空間におけるそれらのA-A’及びD-D’ステム領域並びにB-B’及びC-C’ループの構成が異なる(例えば、同族ITRと比較して、1つのITRは、短いC-C’ループ及び/又は短いB-B’ループを有し得る)。2つのITR間の配列の相違は、1つ以上のヌクレオチド付加、欠失、切断、又は点変異に起因し得る。一実施形態では、非対称ITR対の一方のITRは、野生型AAV ITRであり得、他方のITRは、本明細書で定義される修飾型ITR(例えば、非野生型又は合成ITR)であり得る。別の実施形態では、非対称ITR対のどちらのITRも野生型AAV ITRではなく、2つのITRは、幾何学的空間において異なる形状(すなわち、異なる全体的な幾何学的構造)を有する修飾型ITRである。いくつかの実施形態では、非対称ITR対の一方のmod-ITRは、短いC-C’ループを有することができ、他方のITRは、それらが同族の非対称mod-ITRと比較して、異なる三次元空間構成を有するように異なる修飾(例えば、単一ループ、又は短いB-B’ループなど)を有し得る。
【0101】
本明細書で使用される場合、「対称ITR」という用語は、野生型ディペンドウイルスITR配列に対して変異又は修飾され、それらの全長にわたって逆の相補体である単一のceDNAゲノム又はceDNAベクター内の一対のITRを指す。いずれのITRも野生型ITRではなく(すなわち、それらは修飾型ITRであり、変異体ITRとも称される)、ヌクレオチドの付加、欠失、置換、切断、又は点変異により、野生型ITRとは配列が異なり得る。本明細書では便宜上、ceDNAベクター中の発現カセットに対して5’(その上流)に位置するITRは、「5’ITR」又は「左ITR」と称され、ceDNAベクター中の発現カセットに対して3’(その下流)に位置するITRは、「3’ITR」又は「右ITR」と称される。
【0102】
本明細書で使用される場合、「実質的に対称の修飾型ITR」又は「実質的に対称のmod-ITR対」という用語は、両方がそれらの全長にわたって逆の相補体配列を有する単一のceDNAゲノム又はceDNAベクター内の修飾型ITRの対を指す。例えば、修飾型ITRは、変化が特性及び全体的な形状に影響を及ぼさない限り、逆の相補体配列から逸脱するいくつかのヌクレオチド配列がある場合でも、実質的に対称とみなすことができる。非限定的な一例として、配列は、正準配列に対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性(デフォルト設定でBLASTを使用して測定される)を有し、またそれらの三次元構造が幾何学的空間で同じ形状になるように、それらの同族の修飾型ITRに対して対称な三次元空間構成を有する。言い換えると、実質的に対称な修飾型ITR対は、三次元空間に構成された同じA-A’及びD-D’ステム領域並びにB-B’及びC-C’ループを有する。いくつかの実施形態では、mod-ITR対からのITRは、異なる逆相補体ヌクレオチド配列を有し得るが、依然として同じ対称な三次元空間構成を有し得る。すなわち、両方のITRは、同じ全体的な三次元形状をもたらす変異を有する。例えば、mod-ITR対の1つのITR(例えば、5’ITR)は、1つの血清型に由来してもよく、他方のITR(例えば、3’ITR)は、異なる血清型に由来していてもよいが、両方が同じ対応する変異を有していてもよく(例えば、5’ITRがC領域に欠失を有する場合、異なる血清型の同族の修飾型3’ITRは、C’領域の対応する位置に欠失を有する)、それにより修飾型ITR対が同じ対称な三次元空間構成を有する。そのような実施形態では、修飾型ITR対の各ITRは、AAV2及びAAV6の組み合わせなどの異なる血清型(例えば、AAV1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12)に由来し得、1つのITRの修飾は、異なる血清型の同族のITRの対応する位置に反映される。一実施形態では、実質的に対称な修飾型ITR対は、ITR間のヌクレオチド配列の相違が特性又は全体的な形状に影響を及ぼさず、それらが三次元空間で実質的に同じ形状を有する限り、一対の修飾型ITR(modified ITR、mod-ITR)を指す。非限定的な例として、mod-ITRは、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)又はデフォルト設定のBLASTNなどの当該技術分野において周知の標準的な手段によって決定される、正準mod-ITRに対して少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有し、またそれらの三次元構造が幾何学的空間で同じ形状になるように、対称な三次元空間構成を有する。実質的に対称なmod-ITR対は、三次元空間で同じA-A’及びD-D’ステム領域並びにB-B’及びC-C’ループを有する。例えば、実質的に対称なmod-ITR対の修飾型ITRがC-C’アームの欠失を有する場合、同族のmod-ITRは、C-C’ループの対応する欠失を有し、またその同族のmod-ITRの幾何学的空間に同じ形状の残りのA-Aステム領域及びB-B’ループの同様の三次元構造を有する。
【0103】
「隣接する」という用語は、別の核酸配列に関する1つの核酸配列の相対位置を指す。一般に、配列ABCにおいて、BはA及びCに隣接している。配列A×B×Cについても同様である。したがって、隣接する配列は、隣接される配列の前又は後に続くが、隣接される配列と連続しているか、又はすぐ隣である必要はない。一実施形態では、隣接するという用語は、直鎖状二重鎖ceDNAベクターの各末端における末端反復を指す。
【0104】
本明細書で使用される場合、「ceDNAゲノム」という用語は、少なくとも1つの逆位末端反復領域を更に組み込む発現カセットを指す。ceDNAゲノムは、1つ以上のスペーサ領域を更に含み得る。いくつかの実施形態では、ceDNAゲノムは、DNAの分子間二重鎖ポリヌクレオチドとして、プラスミド又はウイルスゲノムに組み込まれる。
【0105】
本明細書で使用される場合、「ceDNAスペーサ領域」という用語は、ceDNAベクター又はceDNAゲノム中の機能的エレメントを分離する介在配列を指す。いくつかの実施形態では、ceDNAスペーサ領域は、最適機能性のため所望の距離で2つの機能的エレメントを保持する。いくつかの実施形態では、ceDNAスペーサ領域は、例えば、プラスミド又はバキュロウイルス内のceDNAゲノムの遺伝的安定性を提供するか又は増大させる。いくつかの実施形態では、ceDNAスペーサ領域は、クローニング部位などに便利な位置を提供することによって、ceDNAゲノムの容易な遺伝子操作を促進する。例えば、ある特定の態様では、いくつかの制限エンドヌクレアーゼ部位を含有するオリゴヌクレオチド「ポリリンカー」、又は既知のタンパク質(例えば、転写因子)結合部位を有しないように設計された非オープンリーディングフレーム配列をceDNAゲノム中に位置付けて、シス作用性因子を分離することができ、例えば、末端分離部位と、上流転写調節エレメントとの間に6mer、12mer、18mer、24mer、48mer、86mer、176merなどを挿入する。同様に、スペーサを、ポリアデニル化シグナル配列と3’末端分離部位との間に組み込むことができる。
【0106】
本明細書で使用される場合、「Rep結合部位」、「Rep結合エレメント」、「RBE」、及び「RBS」は、交換可能に使用され、Repタンパク質(例えば、AAV Rep 78又はAAV Rep 68)の結合部位を指し、Repタンパク質による結合時に、Repタンパク質が、RBSを組み込む配列上でその部位特異的エンドヌクレアーゼ活性を実施することを可能にする。RBS配列及びその逆の相補体は、一緒に単一RBSを形成する。RBS配列は、当該技術分野において既知であり、例えば、国際特許出願公開第WO2019/143885号)の配列番号60、AAV2において特定されたRBS配列が挙げられる。任意の既知のRBS配列は、他の既知のAAV RBS配列及び他の天然に既知の又は合成RBS配列を含む、本開示の実施形態において使用され得る。理論に束縛されるものではないが、Repタンパク質のヌクレアーゼドメインは、二重鎖ヌクレオチド配列GCTC(WO2019/143885の配列番号60を参照されたい)に結合し、したがって2つの既知のAAV Repタンパク質は、二重鎖オリゴヌクレオチドに直接結合し、安定してアセンブリすると考えられる。加えて、可溶性凝集配座異性体(すなわち、不定数の相互関連Repタンパク質)は解離し、Rep結合部位を含有するオリゴヌクレオチドに結合する。各Repタンパク質は、各鎖上の窒素塩基及びホスホジエステル骨格の両方と相互作用する。窒素塩基との相互作用は、配列特異性を提供するが、ホスホジエステル骨格との相互作用は、非配列特異性又は低配列特異性であり、タンパク質-DNA複合体を安定させる。
【0107】
本明細書で使用される場合、「末端分離部位」及び「TRS」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、Repが、細胞DNAポリメラーゼ、例えば、DNA polデルタ又はDNA polイプシロンを介してDNA伸長の基質として役立つ3’OHを生成する5’チミジンとのチロシン-ホスホジエステル結合を形成する領域を指す。代替的に、Rep-チミジン複合体は、配位ライゲーション反応に関与し得る。いくつかの実施形態では、TRSは、最小限で非塩基対チミジンを包含する。いくつかの実施形態では、TRSのニッキング効率は、RBSからの同じ分子内のその距離によって少なくとも部分的に制御され得る。受容体基質が相補的ITRである場合、得られる産物は、分子間二重鎖である。TRS配列は、当該技術分野において既知であり、例えば、AAV2において特定されたヘキサヌクレオチド配列である5’-GGTTGA-3’(WO2019/143885の配列番号61)を含む。他の既知のAAV TRS配列、AGTT、GGTTGG(WO2019/143885の配列番号63)、AGTTGG(WO2019/143885の配列番号64)、AGTTGA(WO2019/143885の配列番号65)などの他の天然に既知の又は合成TRS配列、及びRRTTRR(WO2019/143885の配列番号66)などの他のモチーフを含む、任意の既知のTRS配列を、本開示の実施形態において使用することができる。
【0108】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-プラスミド」という用語は、分子間二重鎖としてceDNAゲノムを含むプラスミドを指す。
【0109】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バクミド」という用語は、E.coliにおいてプラスミドとして伝播することができる分子間二重鎖としてceDNAゲノムを含み、それによりバキュロウイルスのシャトルベクターとして作動し得る、感染性バキュロウイルスゲノムを指す。
【0110】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バキュロウイルス」という用語は、バキュロウイルスゲノム内の分子間二重鎖としてceDNAゲノムを含むバキュロウイルスを指す。
【0111】
本明細書で使用される場合、「ceDNA-バキュロウイルス感染昆虫細胞」及び「ceDNA-BIIC」という用語は、交換可能に使用され、ceDNA-バキュロウイルスに感染した無脊椎動物宿主細胞(限定されないが、昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)を含む)を指す。
【0112】
本明細書で使用される場合、「閉端DNAベクター」という用語は、少なくとも1つの共有結合性閉端を有し、ベクターの少なくとも一部が分子内二重鎖構造を有する、カプシド不含DNAベクターを指す。
【0113】
本明細書で使用される場合、「ceDNAベクター」及び「ceDNA」という用語は、交換可能に使用され、少なくとも1つの末端共有結合閉端を含む閉端DNAベクターを指す。いくつかの実施形態では、ceDNAは、2つの共有結合性閉端を含む。
【0114】
本明細書で定義されるように、「レポーター」は、検出可能な読み出しを提供するために使用することができるタンパク質を指す。レポーターは、一般に、蛍光、色、又は発光などの測定可能なシグナルを産生する。レポータータンパク質コード配列は、細胞又は生物中の存在が容易に観察されるタンパク質をコードする。例えば、蛍光タンパク質は、特定波長の光で励起された場合に細胞を蛍光させ、ルシフェラーゼは、細胞に光を生じる反応を触媒させ、β-ガラクトシダーゼなどの酵素は、基質を着色産物に変換する。実験又は診断目的のために有用な例示的なレポーターポリペプチドとしては、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase、AP)、チミジンキナーゼ(thymidine kinase、TK)、緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein、GFP)、及び他の蛍光タンパク質、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(chloramphenicol acetyltransferase、CAT)、ルシフェラーゼ、並びに当該技術分野において周知の他のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
本明細書で使用される場合、「エフェクタータンパク質」という用語は、例えば、レポーターポリペプチドとして、あるいはより適切には、細胞を殺傷するポリペプチド、例えば、毒素、又は選択された薬剤若しくはその欠失で細胞を殺傷しやすくする薬剤として、検出可能な読み出しを提供するポリペプチドを指す。エフェクタータンパク質は、宿主細胞のDNA及び/又はRNAを直接標的又は損傷する任意のタンパク質又はペプチドを含む。例えば、エフェクタータンパク質としては、宿主細胞DNA配列を標的とする制限エンドヌクレアーゼ(ゲノム因子であるか染色体外因子であるかにかかわらず)、細胞生存に必要なポリペプチドを標的とするプロテアーゼ、DNAギラーゼ阻害剤、及びリボヌクレアーゼ型毒素が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成生物的回路によって制御されるエフェクタータンパク質の発現は、別の合成生物的回路における因子として関与し得、それによって生物的回路系の応答性の範囲及び複雑性を拡張する。
【0116】
転写調節因子は、目的の遺伝子の転写を活性化又は抑制する、誘導及びリプレッサータンパク質を含む、転写アクチベータ及びリプレッサを指す。プロモータは、特定の遺伝子の転写を開始する核酸の領域である。転写アクチベータは、典型的に、転写プロモータの近くに結合し、RNAポリメラーゼを動員して転写を直接開始する。リプレッサは、転写プロモータに結合し、RNAポリメラーゼによる転写開始を立体的に妨害する。他の転写調節因子は、それらが結合する場所、並びに細胞条件及び環境条件に応じて、アクチベータ又はリプレッサのいずれかとして役立ち得る。転写調節因子クラスの非限定例としては、ホメオドメインタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質、翼状らせん(フォークヘッド)タンパク質、及びロイシン-ジッパータンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
本明細書で使用される場合、「担体」又は「賦形剤」としては、任意かつ全ての溶媒、分散媒質、ビヒクル、コーティング、希釈剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイドなどが挙げられる。薬学的に活性な物質に対するそのような媒質及び薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。補充的活性成分を組成物に組み込むこともできる。「薬学的に許容される」という語句は、宿主に投与された場合に、毒性反応、アレルギー性反応、又は同様の不都合な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。
【0118】
「インビボ」という用語は、多細胞動物などの生物中又は生物内で起こるアッセイ又はプロセスを指す。本明細書に記載される態様のうちのいくつかでは、方法又は使用は、細菌などの単細胞生物が使用されるときに「インビボで」起こると言われ得る。「エクスビボ」という用語は、多細胞動物又は植物、例えば、とりわけ外植片、培養細胞(一次細胞及び細胞株を含む)、形質転換細胞株、及び抽出組織又は細胞(血液細胞を含む)の体外に無傷膜を有する生細胞を使用して実施される方法及び使用を指す。「インビトロ」という用語は、細胞抽出物などの無傷膜を有する細胞の存在を必要としないアッセイ及び方法を指し、非細胞系、例えば細胞抽出物などの細胞又は細胞系を含まない媒質にプログラム可能な合成生物的回路を導入することを指し得る。
【0119】
本明細書で使用される場合、「プロモータ」という用語は、タンパク質又はRNAをコードする異種標的遺伝子であり得る、核酸配列の転写を駆動することによって、別の核酸配列の発現を調節する任意の核酸配列を指す。プロモータは、構成的、誘導性、抑制性、組織特異性、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。プロモータは、核酸配列の残りの転写の開始及び速度が制御される、核酸配列の制御領域である。プロモータはまた、RNAポリメラーゼ及び他の転写因子などの調節タンパク質及び分子が結合し得る、遺伝子エレメントを含有し得る。本明細書に記載される態様のいくつかの実施形態では、プロモータは、プロモータ自体の発現を調節する転写因子の発現を駆動することができる。プロモータ配列内では、転写開始部位、同様に、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメインが見出されるであろう。真核生物プロモータは、必ずしもそうではないが、多くの場合、「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含有する。誘導性プロモータを含む様々なプロモータを使用して、本明細書に開示されるceDNAベクター中の導入遺伝子の発現を駆動することができる。プロモータ配列は、その3’末端で転写開始部位によって結合され得、バックグラウンドより上で検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基又はエレメントを含むように上流(5’方向)に伸びる。
【0120】
本明細書で使用される場合、「エンハンサ」という用語は、1つ以上のタンパク質(例えば、活性因子タンパク質又は転写因子)に結合して、核酸配列の転写活性化を増加させるシス作用性調節配列(例えば、50~1,500塩基対)を指す。エンハンサは、それらが調節する遺伝子開始部位の上流又は遺伝子開始部位の下流で最大1,000,000塩基対に位置付けられ得る。エンハンサは、非関連遺伝子のイントロン領域内又はエキソン領域内に位置付けられ得る。
【0121】
プロモータは、それが調節する核酸配列の発現を駆動する、又は転写を駆動すると言うことができる。「操作可能に連結された」、「作動可能に位置付けられた」、「作動可能に連結された」、「制御下」、及び「転写制御下」という語句は、プロモータが、核酸配列に関して正しい機能的位置及び/又は配向にあり、その配列の転写開始及び/又は発現を制御するように調節することを示す。本明細書で使用される場合、「逆位プロモータ」は、核酸配列が逆配向にあるプロモータを指し、それによりコード鎖であったものは、今は非コード鎖であり、逆も同様である。逆位プロモータ配列を様々な実施形態で使用して、スイッチの状態を調節することができる。加えて、様々な実施形態では、プロモータをエンハンサと併せて使用することができる。
【0122】
プロモータは、所与の遺伝子又は配列のコードセグメント及び/又はエキソンの上流に位置する5’非コード配列を単離することによって取得され得る、遺伝子又は配列と天然に関連するものであり得る。そのようなプロモータは、「内因性」と呼ばれ得る。同様に、いくつかの実施形態では、エンハンサは、その配列の下流又は上流のいずれかに位置する、核酸配列と天然に関連するものであり得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、コード核酸セグメントは、「組換えプロモータ」又は「異種プロモータ」の制御下で位置付けられ、これらの両方は、その自然環境において作動可能に連結されたコードされた核酸配列と通常は関連しないプロモータを指す。組換え又は異種エンハンサは、その自然環境において所与の核酸配列と通常は関連しないエンハンサを指す。そのようなプロモータ又はエンハンサは、他の遺伝子のプロモータ又はエンハンサ、任意の他の原核、ウイルス、又は真核細胞から単離されたプロモータ又は、及び「天然に存在」しない合成プロモータ又はエンハンサを含み得、すなわち、異なる転写調節領域の異なるエレメント、及び/又は当該技術分野において既知エンハンサの遺伝子操作の方法を通じて発現を変更する変異を含み得る。プロモータ及びエンハンサの核酸配列を合成的に産生することに加えて、プロモータ配列は、本明細書に開示される合成生物的回路及びモジュールに関して、PCRを含む組換えクローニング及び/又は核酸増幅技術を使用して産生され得る(例えば、米国特許第4,683,202号、米国特許第5,928,906号を参照されたい)。更に、ミトコンドリア、クロロプラストなどの非核性細胞小器官内の配列の転写及び/又は発現を配向する制御配列が同様に用いられ得ることが企図される。
【0124】
本明細書に記載される場合、「誘導性プロモータ」は、誘導因子若しくは誘導剤の存在下、それによって影響される場合、又はそれによって接触される場合に、転写活性を開始又は強化することによって特徴付けられるものである。本明細書に定義される場合、「誘導因子」又は「誘導剤」は、内因性であり得るか、又は誘導性プロモータからの転写活性を誘導することにおいて活性であるような方式で投与される、通常は外因性の化合物又はタンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、誘導因子又は誘導剤、すなわち、化学物質、化合物、又はタンパク質は、それ自体が核酸配列の転写又は発現の結果であり得(すなわち、誘導因子は、別の構成成分又はモジュールによって発現される誘導因子タンパク質であり得る)、それ自体が誘導性プロモータの制御下であり得る。いくつかの実施形態では、誘導性プロモータは、リプレッサなどのある特定の薬剤の不在下で誘導される。誘導性プロモータの例としては、テトラサイクリン、メタロチオニン、エクジソン、哺乳動物ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモータ、及びマウス乳腺腫瘍ウイルスの長い末端反復(mouse mammary tumor virus long terminal repeat、MMTV-LTR))、並びに他のステロイド応答性プロモータ、ラパマイシン応答性プロモータなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
本明細書で企図される「プロモータ」という用語は、本明細書で定義される1つ以上のプロモータ(又はプロモータ配列)及び本明細書で定義される1つ以上のエンハンサ(又はエンハンサ配列)を含む系を指す、プロモータセットを包含する。本明細書で使用される「プロモータセット」という用語は、プロモータ及びエンハンサエレメント又は配列が、約1~50ヌクレオチド長(例えば約2、5、7、8、10、11、12、13、15、17、18、20、22、23、25、27、28、30、32、33、35、37、38、40、42、43、45、47、48、又は50ヌクレオチド長)であるスペーサ領域又は配列によって分離されている配列を包含する。
【0126】
本明細書で交換可能に使用される「DNA調節配列」、「制御エレメント」、及び「調節エレメント」という用語は、プロモータ、エンハンサ、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナルなどの転写及び翻訳制御配列を指し、これらは非コード配列(例えば、DNA標的化RNA)又はコード配列(例えば、部位特異的修飾ポリペプチド若しくはCas9/Csn1ポリペプチド)の転写を提供及び/若しくは調節し、かつ/又はコードされたポリペプチドの翻訳を調節する。
【0127】
「作動可能に連結された」とは、そのように記載された構成成分が、それらが意図された方法で機能することを許可する関係にある並列を指す。例えば、プロモータがその転写又は発現に影響を与える場合、プロモータは、コード配列に操作可能に連結されている。「発現カセット」は、ceDNAベクターにおける導入遺伝子の転写を指示するのに十分なプロモータ又は他の調節配列に作動可能に連結されている異種DNA配列を含む。好適なプロモータには、例えば、組織特異的プロモータが含まれる。プロモータは、AAV起源でもあり得る。
【0128】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、本開示によるceDNAベクターでの予防的治療を含む治療が提供される、ヒト又は動物を指す。通常、動物は、限定されないが、霊長類、げっ歯類、飼育動物、又は狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク、例えば、アカゲザルが挙げられるが、これらに限定されない。げっ歯類としては、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、及びハムスターが挙げられる。飼育動物及び狩猟動物としては、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ種、例えば、飼いネコ、イヌ種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、トリ種、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、並びに魚、例えば、マス、ナマズ、及びサケが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載される態様のある特定の実施形態では、対象は、哺乳動物、例えば、霊長類又はヒトである。対象は、男性又は女性であり得る。追加的に、対象は、幼児又は子供であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、新生児又は胎児対象であり得、例えば、対象は、子宮内に存在する。好ましくは、対象は、哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、又はウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、疾患及び障害の動物モデルを代表する対象として有利に使用され得る。加えて、本明細書に記載される方法及び組成物は、飼育動物及び/又はペットに使用され得る。ヒト対象は、任意の年齢、性別、人種、又は民族グループ、例えば、コーカサス人(白人)、アジア人、アフリカ人、黒人、アフリカ系アメリカ人、アフリカ系ヨーロッパ人、ラテンアメリカ系、中東系などであり得る。いくつかの実施形態では、対象は、臨床設定において患者又は他の対象であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、既に治療を受けている。いくつかの実施形態では、対象は、胚、胎児、新生児、幼児、子供、青年、又は成人である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒト胎児、ヒト新生児、ヒト幼児、ヒト子供、ヒト青年、又はヒト成人である。いくつかの実施形態では、対象は、動物胚、又は非ヒト胚若しくは非ヒト霊長類胚である。いくつかの実施形態では、対象は、ヒト胚である。
【0129】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、本開示の核酸構築物又はceDNA発現ベクターによる形質転換、トランスフェクション、形質導入などを受けやすい任意の細胞型を含む。非限定的な例として、宿主細胞は、単離された初代細胞、多能性幹細胞、CD34+細胞)、人工多能性幹細胞、又はいくつかの不死化細胞株(例えば、HepG2細胞)のうちのいずれかであり得る。代替的に、宿主細胞は、組織、器官、又は生物におけるインサイチュ又はインビボの細胞であり得る。
【0130】
「外因性」という用語は、その天然源以外の細胞に存在する物質を指す。本明細書で使用される「外因性」という用語は、通常見られず、核酸又はポリペプチドをそのような細胞又は生物に導入することが望まれる、人間の手が関与するプロセスによって細胞又は生物などの生物系に導入された核酸(例えば、ポリペプチドをコードする核酸)又はポリペプチドを指し得る。代替的に、「外因性」とは、それが比較的少量で見られ、細胞又は生物における核酸又はポリペプチドの量を増加させること、例えば、異所性発現又はレベルをもたらすことが望まれる、人間の手が関与するプロセスによって細胞又は生物などの生物系に導入された核酸又はポリペプチドを指し得る。これとは対照的に、「内因性」という用語は、生物系又は細胞に対して天然である物質を指す。
【0131】
「配列同一性」という用語は、2つのヌクレオチド配列間の関連性を指す。本開示の目的のために、2つのデオキシリボヌクレオチド配列間の配列同一性の程度は、EMBOSSパッケージのNeedleプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000、上記)、好ましくはバージョン3.0.0以降において実装されるように、Needleman-Wunschアルゴリズム(Needleman and Wunsch,1970、上記)を使用して決定される。使用される任意選択のパラメータは、ギャップオープンペナルティ10、ギャップ拡張ペナルティ0.5、及びEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。「最長同一性」と標識されたNeedleの出力(-nobriefオプションを使用して取得される)は、同一性パーセントとして使用され、次のように計算される:(同一のデオキシリボヌクレオチド×100)/アラインメントの長さ-アラインメントにおけるギャップの総数)。アラインメントの長さは、好ましくは少なくとも10ヌクレオチド、好ましくは少なくとも25ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも50ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも100ヌクレオチドである。
【0132】
本明細書で使用される「相同性」又は「相同」という用語は、必要に応じて配列を整列させ、ギャップを導入して最大の配列同一性パーセントを達成した後、標的染色体上の対応する配列のヌクレオチド残基と同一である相同性アームのヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義される。ヌクレオチド配列相同性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ClustalW2、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して、当該技術分野の範囲内である様々な方式で達成され得る。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。いくつかの実施形態では、例えば、相同性アームの核酸配列(例えば、DNA配列)は、配列が、宿主細胞の対応する未変性又は未編集の核酸配列(例えば、ゲノム配列)と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%以上同一である場合、「相同」とみなされる。
【0133】
本明細書で使用される「異種」という用語は、それぞれ天然の核酸又はタンパク質には見られないヌクレオチド又はポリペプチド配列を意味する。異種核酸配列は、天然に存在する核酸配列(又はそのバリアント)に(例えば、遺伝子操作によって)連結されて、キメラポリペプチドをコードするキメラヌクレオチド配列を生成し得る。異種核酸配列は、バリアントポリペプチドに(例えば、遺伝子操作によって)連結されて、融合バリアントポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を生成し得る。
【0134】
「ベクター」又は「発現ベクター」は、細胞において結合されたセグメントの複製をもたらすために別のDNAセグメント、すなわち「挿入物」が結合され得る、プラスミド、バクミド、ファージ、ウイルス、ビリオン、又はコスミドなどのレプリコンである。ベクターは、宿主細胞への送達のために、又は異なる宿主細胞間の移動のために設計された核酸構築物であり得る。本明細書で使用される場合、ベクターは、起源及び/又は最終形態でウイルス性又は非ウイルス性であり得るが、本開示の目的のために、「ベクター」は、その用語が本明細書で使用される場合、一般にceDNAベクターを指す。「ベクター」という用語は、適切な制御エレメントと関連する場合に複製することができ、遺伝子配列を細胞に移すことができる任意の遺伝子エレメントを包含する。いくつかの実施形態では、ベクターは、発現ベクター又は組換えベクターであり得る。
【0135】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、ベクター上の転写調節配列に連結された配列からのRNA又はポリペプチドの発現を指示するベクターを指す。発現される配列は、多くの場合、しかし必ずしもそうではないが、細胞にとって異種である。発現ベクターは、追加のエレメントを含むことができ、例えば、発現ベクターは、2つの複製系を有することができるため、それを2つの生物、例えば発現の場合はヒト細胞、並びにクローニング及び増幅の場合は原核生物宿主で維持することができる。「発現」という用語は、RNA及びタンパク質、また必要に応じて、例えば、転写、転写処理、翻訳及びタンパク質の折りたたみ、修飾及び処理を含むがこれらに限定されない分泌タンパク質の産生に関与する細胞プロセスを指す。「発現産物」には、遺伝子から転写されたRNA、及び遺伝子から転写されたmRNAの翻訳によって得られたポリペプチドが含まれる。「遺伝子」という用語は、適切な調節配列に作動可能に連結された場合に、インビトロ又はインビボでRNAに転写される核酸配列(DNA)を意味する。遺伝子には、コード領域の前後の領域、例えば、5’未翻訳(5’UTR)又は「リーダー」配列及び3’UTR又は「トレーラー」配列、同様に、個々のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イントロン)が含まれる場合及び含まれない場合がある。
【0136】
「組換えベクター」とは、異種核酸配列を含むベクター、又はインビボで発現することができる「導入遺伝子」を意味する。本明細書に記載されるベクターは、いくつかの実施形態では、他の好適な組成物及び療法と組み合わせることができることを理解されたい。いくつかの実施形態では、ベクターは、エピソームである。好適なエピソームベクターの使用は、対象における目的のヌクレオチドを高コピー数の染色体外DNAに維持し、それによって染色体組み込みの潜在的な影響を排除する手段を提供する。
【0137】
本明細書で使用される「遺伝性疾患」という語句は、ゲノムの1つ以上の異常、特に出生時から存在する病態によって部分的又は完全に、直接的又は間接的に引き起こされる疾患を指す。異常は、変異、挿入、又は欠失であり得る。異常は、遺伝子のコード配列又はその調節配列に影響を与える可能性がある。遺伝性疾患は、DMD、血友病、嚢胞性線維症、ハンチントン舞踏病、家族性高コレステロール血症(LDL受容体欠損)、肝芽腫、ウィルソン病、先天性肝ポルフィリン症、肝代謝の遺伝性疾患、レッシュ・ナイハン症候群、鎌状赤血球貧血、サラセミア、色素性乾皮症、ファンコーニ貧血、網膜色素変性症、毛細血管拡張性運動失調症、ブルーム症候群、網膜芽細胞腫、及びテイ・サックス病であり得るが、これらに限定されない。
【0138】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」又は「含む(comprises)」という用語は、方法又は組成物に必須であるが、必須であるか否かにかかわらず、不特定要素の包含に対して開かれている、その組成物、方法、及びそれぞれの構成成分に関して使用される。
【0139】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所与の実施形態に必要な要素を指す。この用語は、その実施形態の基本的かつ新規又は機能的な特徴に物質的に影響を及ぼさないエレメントの存在を許容する。「含む」の使用は、限定ではなく包含を示す。
【0140】
「からなる」という用語は、実施形態の説明において列挙されていないいずれの要素も除いた、本明細書に記載される組成物、方法、及びそれらそれぞれの構成成分を指す。
【0141】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所与の実施形態に必要な要素を指す。この用語は、本開示のその実施形態の基本的及び新規又は機能的な特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素の存在を許容する。
【0142】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明らかに示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「方法」に対する言及は、本明細書に記載される、及び/又は本開示などを読むことにより当業者に明らかとなるであろうタイプの1つ以上の方法、及び/又はステップを含む。同様に、「又は」という語は、文脈が別途明らかに示されない限り、「及び」を含むことが意図される。本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を、本開示の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料は、下記で説明される。省略形「例えば(e.g.)」は、ラテン語のexempli gratiaに由来し、本明細書では非限定例を示すように使用される。したがって、略語「例えば(e.g.)」は、「例えば(for example)」と同義である。
【0143】
作動例又は別途示される場合を除いて、本明細書で使用される成分又は反応条件の量を表す全ての数は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されたい。「約」という用語は、パーセンテージに関連して使用される場合、±1%を意味し得る。本開示は、以下の実施例によって更に詳細に説明されるが、本開示の範囲は、それに限定されるべきではない。
【0144】
本明細書に開示される本開示の代替要素又は実施形態のグループ化は、限定として解釈されるべきではない。各群のメンバーは、個別に、又は群の他のメンバー又は本明細書で見られる他のエレメントとの任意の組み合わせで参照及び主張することができる。群の1つ以上のメンバーは、利便性及び/又は特許性の理由から、群に含まれるか、又は群から削除することができる。そのような任意の包含又は削除が発生した場合、本明細書では、明細書が修正されたグループを含むとみなされ、したがって添付の特許請求の範囲で使用されている全てのマーカッシュグループの記述を満たす。
【0145】
態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、本明細書に記載される開示は、人間のクローン化プロセス、人間の生殖細胞系列の遺伝的同一性を修正するプロセス、産業若しくは商業目的でのヒト胚の使用、又は人間若しくは動物にいかなる実質的な医学的利益ももたらすことなく苦しみを引き起こす可能性が高い動物、及びそのようなプロセスから生じる動物の遺伝的同一性を修正するためのプロセスに関係しない。
【0146】
本明細書では、本開示の様々な態様の説明内で他の用語が定義されている。
【0147】
本出願全体を通して引用される;参考文献、発行された特許、公開された特許出願、未公開の特許出願、及び同時係属中の特許出願を含む全ての特許及び他の刊行物は、例えば、本明細書に記載される技術に関連して使用され得る、そのような刊行物に記載される方法論を説明及び開示する目的で、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これらの出版物は、本出願の出願日より前のそれらの開示のためにのみ提供されている。この点に関するいかなるものも、発明者が先行する開示のおかげで、又はいかなる他の理由のためにもそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。日付に関する全ての記述又はこれらの文書の内容に関する表現は、出願人が入手できる情報に基づいており、これらの文書の日付又は内容の正確さに関するいかなる承認も構成するものではない。
【0148】
本開示の実施形態の説明は、網羅的であること、又は本開示を開示された正確な形態に限定することを意図したものではない。本開示のある特定の実施形態及び実施例が、例示の目的で本明細書で説明されているが、当業者が認識するように、本開示の範囲内で様々な同等の修正が可能である。例えば、方法のステップ又は機能は、所与の順序で提示されるが、代替的な実施形態は、異なる順序で機能を実施してもよく、又は機能は実質的に同時に実施されてもよい。本明細書に提供される開示の教示は、必要に応じて他の手順又は方法に適用することができる。本明細書に記載される様々な実施形態は、更なる実施形態を提供するために組み合わせることができる。本開示の態様は、必要に応じて、上記の参照文献及び出願の組成物、機能、及び概念を用いて本開示の更なる実施形態を提供するように修正することができる。更に、生物学的機能の同等性の考慮により、種類又は量の生物学的又は化学的作用に影響を与えることなく、タンパク質構造にいくつかの変更を加えることができる。詳細な説明に照らして、これらの変更及び他の変更を本開示に加えることができる。そのような修正は全て、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。
【0149】
前述の実施形態のうちのいずれかの特定のエレメントは、他の実施形態のエレメントと組み合わせるか、又は置き換えることができる。更に、本開示の特定の実施形態に関連する利点が、これらの実施形態の文脈で説明されたが、他の実施形態もそのような利点を示し得、全ての実施形態が本開示の範囲内にあるために必ずしもそのような利点を示す必要はない。
【0150】
本明細書に記載される技術は、以下の実施例によって更に説明されており、決してこれらを更に限定するものと解釈されるべきではない。本開示は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、及び試薬などに限定されず、そのようなものとして変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、単に特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を限定することを意図されない。
【0151】
II.DNAベクターの無細胞合成
本明細書に記載される技術は、一般に、細胞又は細胞株の非存在下でDNAベクターを生成するための方法を対象とする。したがって、得られるベクターは、従来の細胞ベースの産生方法論を使用して作製された同等のベクターよりも少ない不純物を有し、これは、投与後により長い持続時間で持続されるより良好なインビボ発現に変換され得る(例えば、
図16B参照)。本明細書で例示されるように、この無細胞合成はまた、小規模の反応(~1mL)から大規模(>40、100、200、500、1,000mL)まで、更に純度を損なうことなく(例えば、
図15参照)拡張可能であり、したがって、ベクターが治療用途のために大量に調製されることを可能にする。更に、細胞ベースの方法は、ベクターが産生されるのに数週間かかる可能性があるが、本明細書に記載される無細胞方法は、規模に応じて、2~4日などの1週間未満でベクターを産生する。
【0152】
いくつかの実施形態によると、本明細書に記載される無細胞方法は、DNAプラスミド鋳型の>1000倍のローリングサークル及び多重鎖置換(MSD)増幅と、その後の、II型エンドヌクレアーゼ、リガーゼ、ITRオリゴ、及びエキソヌクレアーゼ酵素を使用する、ceDNA分子への得られる産物の変換と、を含む。
【0153】
一態様によると、本開示は、閉端DNA(ceDNA)ベクターを産生する方法であって、方法は、(a)センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖DNA構築物を、少なくとも第1の制限エンドヌクレアーゼ及び少なくとも第2の制限エンドヌクレアーゼと接触させることであって、構築物が、導入遺伝子発現カセットと、導入遺伝子発現カセットの上流の第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位と、導入遺伝子発現カセットの下流の第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位と、を含み、第1の制限エンドヌクレアーゼが、第1の切断部位で二本鎖DNA構築物を切断することができ、第2の制限エンドヌクレアーゼが、第2の切断部位で二本鎖DNA構築物を切断することができ、二本鎖DNA構築物を第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼと接触させることが、第1の一本鎖オーバーハングを含む第1の末端及び第2の一本鎖オーバーハングを含む第2の末端を有するインサートを放出させる、接触させることと、(b)第1の末端を、1つ以上のヘアピン構造を含む第1のオリゴヌクレオチドにライゲーションすることと、(c)第2の末端を、1つ以上のヘアピン構造を含む第2のオリゴヌクレオチドにライゲーションすることと、を含み、それによって、ceDNAベクターを産生する、方法を提供する。
【0154】
いくつかの実施形態によると、第1のオリゴヌクレオチドが、逆位末端反復(ITR)を含む。更なる実施形態によると、第2のオリゴヌクレオチドが、ITRを含む。他の実施形態によると、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが異なる。いくつかの他の実施形態によると、第1のオリゴヌクレオチド及び第2のオリゴヌクレオチドが同じである。
【0155】
ceDNAベクターを調製する無細胞合成方法の例示的な実施形態の概要が
図4に例示される。簡単に説明すると、導入遺伝子発現カセット(斜線)が、少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼを使用して二本鎖DNA構築物から切除され、続いて、インサートを逆位末端反復(ITR)オリゴヌクレオチドとライゲーションしてceDNAを形成する。ITRオリゴヌクレオチドは、自己アニールして、ITR様三次元構成を形成する一本鎖オリゴヌクレオチドである。必ずしも限定されるものではないが、IIS型制限エンドヌクレアーゼなどの、本明細書で記載される方法で使用される制限エンドヌクレアーゼは、認識部位内ではなく異なる部位でDNAを切断する。本明細書に開示される無細胞合成方法で使用されるこれらの制限エンドヌクレアーゼはまた、非パリンドロームヌクレオチド配列を認識し、その結果、酵素に対する認識配列(これはまた、結合部位である)は、1つの鎖上にのみコードされる(例えば、
図5参照)。したがって、このクラスの制限エンドヌクレアーゼによる切断は、指向性であり、認識部位の上流又は下流のいずれかで起こるが、EcoRIなどの、分子生物学において最も頻繁に使用される他の制限エンドヌクレアーゼとは異なり、認識部位自体の中では起こらない(
図5参照)。認識配列をコードする鎖は、配列のどちらの側(すなわち、下流又は上流)が切断されるかを決定する。まとめると、本明細書に記載される方法で使用される制限エンドヌクレアーゼの固有の活性は、特定の認識部位から所定の距離内の任意の配列が制限エンドヌクレアーゼによって切断されることを可能にし、その結果、任意のオーバーハング配列が生成されることを可能にする。特別な制限エンドヌクレアーゼによる消化は、ITRオリゴヌクレオチドのオーバーハングと適合性である、切除されたインサートの5’及び3’末端の両方における粘着性オーバーハングを生じさせる。言い換えると、ITRオリゴヌクレオチド及びインサートオーバーハングの設計は、ITRオリゴヌクレオチドオーバーハング及びインサートオーバーハングが互いに適合するように、ライゲーションプロセスの高い特異性を駆動する。一旦ライゲーションされると、所望のceDNA産物は、認識部位が再生されないため、制限エンドヌクレアーゼによる消化に感受性ではない。しかしながら、切除されたインサート及びプラスミド断片が元の構築物に再ライゲーションする状況では、認識部位が再生され、したがって、構築物が切断されることを可能にする。
【0156】
本明細書で記載される無細胞合成方法で使用される制限エンドヌクレアーゼの固有の活性、インサート末端上の固有のオーバーハングの生成、及びサブクローニングプロセスの高い特異性を駆動するITRオリゴヌクレオチド上の固有のオーバーハングの設計に起因して、消化及びライゲーションは、ライゲーションの前に消化産物を精製する必要なく、単一の反応容器内で起こり得る。
図4に示されるように、消化/ライゲーションの後にエキソヌクレアーゼによる処理が続き、開端DNA断片及び中間体を分解する、いくつかの実施形態では、制限エンドヌクレアーゼ消化、ライゲーション、及びエキソヌクレアーゼ分解が、単一の反応容器内で行われ、全ての反応が同時に起こり得る。
【0157】
加えて、本明細書に記載される無細胞合成方法で使用される制限エンドヌクレアーゼの固有の活性は、1つよりも多くのITRオリゴヌクレオチドを利用するライゲーション反応の指向性を可能にし、それによって、非対称ITRを有するceDNAの調製を可能にする。
【0158】
一般的な無細胞合成産生方法
いかなる微生物学的ステップの使用も必要としない、閉端DNAベクターの合成のためのプロセスが、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、プロセスは、制限エンドヌクレアーゼを使用する酵素切断ステップ及びライゲーションステップを使用する系での閉端DNAベクターの合成を可能にし、閉端DNAベクターを生成する。ほぼ全ての実施形態では、DNAベクター産生のための合成系は、無細胞系である。
【0159】
合成産生方法で使用される1つ以上の酵素又はオリゴヌクレオチド成分のうちの1つ以上が細胞から産生され、精製された形態で本開示の方法において使用され得ることは、当業者によって理解されるであろう。したがって、いくつかの実施形態では、合成産生方法における手順自体は無細胞である。しかしながら、二本鎖DNA構築物及びITRオリゴヌクレオチドなどのベース材料、並びに制限エンドヌクレアーゼ及びリガーゼなどの酵素は、細胞を利用する方法及び技術を使用して産生され得る。
【0160】
一実施形態では、制限エンドヌクレアーゼ及び/又はライゲーションコンピテントタンパク質は、細胞、例えば、細菌細胞において発現ベクターから発現又は提供することができる。一実施形態では、制限エンドヌクレアーゼ又はリガーゼ酵素のうちの1つ以上を発現する発現ベクターを含む、細菌細胞などの細胞が存在し得る。したがって、本明細書に開示される方法は、本明細書に開示されるDNAベクターを生成するための無細胞合成方法を主に対象とするが、一実施形態では、細胞、例えば、昆虫細胞ではなく細菌細胞が存在し、方法で必要な酵素のうちの1つ以上を発現するように使用され得る、合成産生方法も包含される。そのような実施形態では、制限エンドヌクレアーゼ及び/又はライゲーションコンピテントタンパク質を発現する細胞は、昆虫細胞ではない。細胞が存在し、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼ又はライゲーションコンピテントタンパク質を発現する全ての実施形態では、細胞は、閉端DNAベクターを複製しない。言い換えると、細胞の細胞内機構は複製されないか、又はDNAベクターの複製に関与しない。
【0161】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるDNAベクター(例えば、ceDNAベクター)の合成は、二本鎖DNA構築物又は1つ以上のオリゴヌクレオチドのいずれかから始まるインビトロ無細胞プロセスで実行される。二本鎖DNA構築物又は1つ以上のオリゴヌクレオチドは、制限エンドヌクレアーゼで切断され、ライゲーションされてDNA分子を形成する。いくつかの実施形態では、化学的に合成することができるオリゴヌクレオチドであるため、典型的に細菌内で繁殖する必要のある所望の配列全体をコードする大きな出発鋳型の使用を回避する。所望のDNA配列が合成されると、それは、本明細書に開示されるように、切断され、他のオリゴヌクレオチドとライゲーションされ得る。本明細書に開示される方法を使用する閉端DNAベクターの生成における複数のオリゴヌクレオチドの使用は、DNAベクター生成へのモジュラーアプローチを可能にし、末端反復、例えば、ITRの調整及び/又は特定の選択、並びに末端反復のスペーシング、また合成的に産生された閉端DNAベクター内の異種核酸配列の選択を可能にする。
【0162】
DNAベクターの無細胞合成産生
細胞ベースの方法を使用して様々なITR構成を含むceDNAベクターの産生のためのある特定の方法は、国際特許出願公開第WO2019/051255号及び同第WO2019/113310号の実施例1に記載されており、これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0163】
対照的に、本明細書に提供される方法は、合成産生方法、例えば、いくつかの実施形態では、無細胞産生方法に関し、本明細書では「合成閉端DNAベクター産生」又は「合成産生」とも呼ばれる。
【0164】
一態様では、閉端DNAベクターは、二本鎖DNA構築物から導入遺伝子発現カセットを切除し、続いて、インサートの末端を、1つ以上のヘアピン構造を含む第1のオリゴヌクレオチド及び1つ以上のヘアピン構造を含む第2のオリゴヌクレオチドにライゲーションして、ceDNAを形成することによって生成される。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの各々が、独立して、1、2、3、4、又はそれ以上のステムループ領域を含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドの各々が、独立して、2又は3のステムループ領域を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のヘアピン構造を含む第1のオリゴヌクレオチド及び1つ以上のヘアピン構造を含む第2のオリゴヌクレオチドが、各々、自己アニールして三次元構成を形成する一本鎖オリゴヌクレオチドである。更なる実施形態では、三次元構成が、T字形又はY字形ステムループ構造である。
【0165】
別の態様では、閉端DNAベクターは、二本鎖DNA構築物から導入遺伝子発現カセットを切除し、続いて、インサートの末端を、ITRオリゴヌクレオチドにライゲーションして、ceDNAを形成することによって生成される。ライゲーションは、リガーゼ(例えば、T4リガーゼ)又はAAV Repタンパク質によって達成され得る。一実施形態では、反応混合物は、ライゲーション前に精製されない。そのような実施形態では、導入遺伝子発現カセットの切除(例えば、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼによる)及びライゲーションは、単一の反応容器内で同時に行われる。代替的な実施形態では、ライゲーションの前に反応混合物が精製される。
【0166】
本明細書に記載される無細胞合成方法によって調製される得られる閉鎖DNAベクターが、ベクターのモノマー種の少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%を含む。本明細書に記載される無細胞合成方法によって調製される得られる閉鎖DNAベクターが、ベクターのサブモノマー種の約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、又は約1%未満を含む。
【0167】
本明細書で使用される場合、「サブモノマー種」という用語は、例えば、イオン交換クロマトグラフィ(ion exchange chromatography、IEX)によって決定されるような、ceDNAゲノム、ceDNAベクター、AAVゲノム、又はAAVベクターなどの、本明細書で定義される治療用核酸のモノマー形態よりも一般に小さい核酸の複合体を指すことを意味する。「サブモノマー種」及び「サブモノマーDNA」という用語はまた、2つのサブモノマー単位によって形成される二量体、及び3つ以上のサブモノマー単位によって形成される多量体を包含する。二量体及び多量体の形成は不安定であり、したがって、一過性であり得、二量体及び多量体は、最終的にそれらのサブモノマー形態に分解し得る。サブモノマーDNAの量及び濃度は、例えば、ピーク定量化のためのイオン交換高速液体クロマトグラフィ(ion exchange high-performance liquid chromatography、IEX-HPLC)、及び/又はBioanalyzerなどのチップベースのキャピラリー電気泳動機械を使用するなどの、キャピラリー電気泳動を使用して、定量化され、質量単位(例えば、μg、ng、pg)又は質量/体積単位で表され得る。
【0168】
一実施形態では、二本鎖DNA構築物が、バクミド、プラスミド、小環、又は直鎖状二本鎖DNA分子から選択される。そのような実施形態では、二本鎖DNA構築物は、少なくとも、5’から3’方向の順に、導入遺伝子発現カセットの上流の第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位と、導入遺伝子発現カセットと、導入遺伝子発現カセットの下流の第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位と、を含む。一実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼは、第1の切断部位で二本鎖DNA構築物を切断することができ、第2の制限エンドヌクレアーゼは、第2の切断部位で二本鎖DNA構築物を切断することができ、二本鎖DNA構築物を第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼと接触させることは、第1の一本鎖オーバーハングを含む第1の末端及び第2の一本鎖オーバーハングを含む第2の末端を有するインサートを放出させる。更なる実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼが、異なる制限エンドヌクレアーゼである。他の実施形態では、第1の制限エンドヌクレアーゼ及び第2の制限エンドヌクレアーゼが、同じ制限エンドヌクレアーゼである。別の実施形態では、二本鎖DNA構築物は、少なくとも、5’から3’方向の順に、導入遺伝子発現カセットの上流の第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位と、第1の部分ITRと、導入遺伝子発現カセットと、第2の部分ITRと、導入遺伝子発現カセットの下流の第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位と、を含む。二本鎖DNA構築物が、第1の切断部位及び第2の切断部位で構築物を切断して、インサートの5’及び3’末端(すなわち、粘着末端)における一本鎖オーバーハングを有するインサートを放出させることができる少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼと接触させられる。次いで、これらのインサートの端が、第1の逆位末端反復(ITR)オリゴヌクレオチド及び第2のITRオリゴヌクレオチドにライゲーションされて、ceDNAベクターを形成する。一実施形態では、インサートの5’及び3’末端における一本鎖オーバーハングのうちの一方又は両方が、5’オーバーハングである。一実施形態では、インサートの5’及び3’末端における一本鎖オーバーハングのうちの一方又は両方が、3’オーバーハングである。一実施形態では、これらのオーバーハングは、約1~約30ヌクレオチド長、例えば、約1~約25ヌクレオチド、又は約1~約20ヌクレオチド、又は約1~約18ヌクレオチド、又は約1~約15ヌクレオチド、又は約1~約12ヌクレオチド、又は約1~約10ヌクレオチド、又は約1~約8ヌクレオチド、又は約2~約8ヌクレオチド、又は約2~約7ヌクレオチド、又は約2~約6ヌクレオチド、又は約1ヌクレオチド、又は約2ヌクレオチド、又は約3ヌクレオチド、又は約4ヌクレオチド、又は約5ヌクレオチド、又は約6ヌクレオチド、又は約7ヌクレオチド、又は約8ヌクレオチド、又は約9ヌクレオチド、又は約10ヌクレオチド長である。
【0169】
非パリンドロームヌクレオチド配列を認識し、その認識部位及び結合部位とは異なる切断部位を有する制限エンドヌクレアーゼの使用
注目すべきことに、本明細書に提供される合成方法で使用される制限エンドヌクレアーゼは、非パリンドロームヌクレオチド配列を認識する。本明細書で使用される場合、「非パリンドローム」という用語は、二本鎖ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに言及する場合、センス鎖とアンチセンス鎖との間に異なる5’→3’ヌクレオチド配列を有することを意味し、一方、「パリンドローム」という用語は、二本鎖ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに言及する場合、センス鎖とアンチセンス鎖との間に同一の5’→3’ヌクレオチド配列を有することを意味する。
【0170】
したがって、
図5に例示されるように、そのような制限エンドヌクレアーゼは、センス鎖とアンチセンス鎖との間に異なる5’→3’ヌクレオチド配列を有する二本鎖ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドを認識する。これは、
図5に例示される例では5’-GGTCTC-3’などの、制限エンドヌクレアーゼに対する認識配列が鎖の1つのみにコードされていることを意味する。本明細書に記載される合成方法で使用される制限エンドヌクレアーゼについての別の顕著な特徴は、酵素が、認識配列の上流又は下流のいずれかであるが、認識部位自体の中ではない切断部位でDNAを切断することである。認識部位をコードする鎖は、認識配列のどちらの側(すなわち、下流又は上流)が切断されるかを決定する。
【0171】
ある特定の実施形態では、第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位が、導入遺伝子発現カセットの上流に位置する互いに別個の、かつ異なる部位である。第1の切断部位は、構築物のセンス及びアンチセンス鎖のうちの少なくとも一方における第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位から約1~35ヌクレオチド離れており、例えば、構築物のセンス及びアンチセンス鎖のうちの少なくとも一方における第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位から約1~約22ヌクレオチド離れて、又は約1~約20ヌクレオチド離れて、又は約1~約15ヌクレオチド離れて、又は約1~約12ヌクレオチド離れて、又は約1~約10ヌクレオチド離れて、又は約1~約8ヌクレオチド離れて、又は約1、又は約2、又は約3、又は約4、又は約5、又は約6、又は約7、又は約8、又は約9、又は約10ヌクレオチド離れている。
【0172】
ある特定の実施形態では、第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位は、発現カセットの下流に位置する互いに別個の、かつ異なる部位である。第2の切断部位は、構築物のセンス及びアンチセンス鎖のうちの少なくとも一方における第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位から約1~35ヌクレオチド離れており、例えば、構築物のセンス及びアンチセンス鎖のうちの少なくとも一方における第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位から約1~約22ヌクレオチド離れて、又は約1~約20ヌクレオチド離れて、又は約1~約15ヌクレオチド離れて、又は約1~約12ヌクレオチド離れて、又は約1~約10ヌクレオチド離れて、又は約1~約8ヌクレオチド離れて、又は約1、又は約2、又は約3、又は約4、又は約5、又は約6、又は約7、又は約8、又は約9、又は約10ヌクレオチド離れている。
【0173】
単一の制限エンドヌクレアーゼは、第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位並びにそれらの対応する切断部位の両方を標的とすることができる。代替的に、2つの異なる制限エンドヌクレアーゼは、第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位並びにそれらの対応する切断部位の両方を標的とする。
【0174】
IIS型制限エンドヌクレアーゼ
一実施形態では、非パリンドロームヌクレオチド配列を認識し、認識部位の外側のDNAを切断する、本明細書に提供される合成方法で使用される制限エンドヌクレアーゼは、IIS型制限エンドヌクレアーゼである。IIS型制限エンドヌクレアーゼの非限定例としては、AcuI、AlwI、Alw26I、BasI、BbsI、BbvI、BceAI、BcgI、BCiVI、BcoDI、BruAI、BmrI、BpiI、BpuEI、BsaI、BsaXI、BseGI、BseRI、BsgI、BsmAI、BsmBI、BsmFI、BsmI、BspCNI、BspMI、BspQI、BsrDI、BsrI、BtgZI、BtsCI、BtsI、MutI、CspCI、EarI、EciI、Eco31I、Esp3I、FauI、FokI、HgaI、HphI、HpyAV、LguI、MboII、MlyI、MmeI、MnlI、Mva1269I、NmeAIII、PaqCI、PleI、SapI、SfaNI、及び上述のうちのいずれかのアイソシゾマーが挙げられる。アイソシゾマーは、同じ認識配列に特異的である制限エンドヌクレアーゼの対である。例えば、BcoDI及びBsmAIは、互いのアイソシゾマーであり、両方とも5’-GTCTC-3’の認識配列に特異的である。一実施形態では、IIS型エンドヌクレアーゼは、BbsI、BsaI、Esp3I、及びSapI、並びにそれらのアイソシゾマーから選択される。一実施形態では、IIS型エンドヌクレアーゼは、BbsI又はそのアイソシゾマーである。一実施形態では、IIS型エンドヌクレアーゼは、BsaI又はそのアイソシゾマーである。一実施形態では、IIS型エンドヌクレアーゼは、BbsI又はそのアイソシゾマーである。一実施形態では、IIS型エンドヌクレアーゼは、Esp3I又はそのアイソシゾマーである。一実施形態では、IIS型エンドヌクレアーゼは、SapI又はそのアイソシゾマーである。
【0175】
ITRオリゴヌクレオチド
本明細書に開示される無細胞合成方法においてインサートの5’及び3’末端がライゲーションされる第1のITRオリゴヌクレオチド及び第2のITRオリゴヌクレオチドは、各々、自己アニールして三次元構成を形成する一本鎖オリゴヌクレオチドであり、そのようなものは、ヘアピン構造又はT字形若しくはY字形ステムループ構造のようなITR三次元構造を有する。一実施形態では、ITRオリゴヌクレオチドのうちの一方又は両方は、合成であるか、又は合成される。
【0176】
いくつかの実施形態では、三次元ITR構造に加えて、ITRオリゴヌクレオチドは、各々、自己アニールして、オリゴヌクレオチドの5’又は3’末端のいずれかにおいて一本鎖オーバーハングを更に形成する。そのような実施形態では、インサートの一本鎖オーバーハングは、ITRオリゴヌクレオチドの一本鎖オーバーハングにライゲーションされる。ITRオリゴヌクレオチドオーバーハングは、約1~約30ヌクレオチド長、例えば、約1~約25ヌクレオチド、又は約1~約20ヌクレオチド、又は約1~約18ヌクレオチド、又は約1~約15ヌクレオチド、又は約1~約12ヌクレオチド、又は約1~約10ヌクレオチド、又は約1~約8ヌクレオチド、又は約2~約8ヌクレオチド、又は約2~約7ヌクレオチド、又は約2~約6ヌクレオチド、又は約1ヌクレオチド、又は約2ヌクレオチド、又は約3ヌクレオチド、又は約4ヌクレオチド、又は約5ヌクレオチド、又は約6ヌクレオチド、又は約7ヌクレオチド、又は約8ヌクレオチド、又は約9ヌクレオチド、又は約10ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、ITRオリゴヌクレオチドオーバーハングは、CTCT、CTCA、CACT、CTC、又はGCTの5’→3’ヌクレオチド配列を含む。
【0177】
第1のITRオリゴヌクレオチド及び第2のITRオリゴヌクレオチドのオーバーハングは、互いに対して非相補的な5’→3’ヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、第1のITRオリゴヌクレオチド及び第2のITRオリゴヌクレオチドのオーバーハングは、同一の配列、すなわち、同じ5’→3’ヌクレオチド配列を含むか、又は有し、更なる実施形態では、第1のITRオリゴヌクレオチド及び第2のITRオリゴヌクレオチドは、同じオリゴヌクレオチドである。そのような実施形態では、インサートの5’及び3’末端におけるオーバーハングは、同じ5’→3’ヌクレオチド配列を含むか、又は有する。ITRオリゴヌクレオチドのオーバーハングは、インサートのオーバーハングのいずれか及び両方に対して相補的である。ceDNAの無細胞合成で単一のITRオリゴヌクレオチドが使用されるそのような実施形態は、本明細書で定義される対称ITRを有するceDNAを調製するのに有用である。
【0178】
代替的な実施形態では、第1のITRオリゴヌクレオチド及び第2のITRオリゴヌクレオチドのオーバーハングは、異なる配列、すなわち、異なる5’→3’ヌクレオチド配列を含むか、又は有し、したがって、第1のITRオリゴヌクレオチド及び第2のITRオリゴヌクレオチドは、異なるオリゴヌクレオチドである。そのような実施形態では、インサートの5’及び3’末端におけるオーバーハングは、異なる5’→3’ヌクレオチド配列を含むか、又は有する。ITRオリゴヌクレオチドのオーバーハングは、各々、インサートのオーバーハングのうちの1つのみに対して相補的である。
【0179】
ITRオリゴヌクレオチドの長さに関して、いくつかの実施形態では、ITRオリゴヌクレオチドは、各々、約40ヌクレオチド~約75ヌクレオチド長、例えば、約40ヌクレオチド~約72ヌクレオチド、又は約40ヌクレオチド~約70ヌクレオチド、又は約40ヌクレオチド~約68ヌクレオチド、又は約40ヌクレオチド~約65ヌクレオチド、又は約40ヌクレオチド~約75ヌクレオチド、又は約45ヌクレオチド~約72ヌクレオチド、又は約45ヌクレオチド~約70ヌクレオチド、又は約45ヌクレオチド~約68ヌクレオチド、又は約45ヌクレオチド~約65ヌクレオチドである。一実施形態では、第1のITRオリゴヌクレオチド及び第2のITRオリゴヌクレオチドが、各々かつ独立して、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8(表1参照)からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0180】
一実施形態では、第1のITRオリゴヌクレオチド及び第2のITRオリゴヌクレオチドが、各々かつ独立して、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8(表1参照)からなる群から選択されるものに対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一のヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、第1のITRオリゴヌクレオチド及び第2のITRオリゴヌクレオチドが、各々かつ独立して、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8(表1参照)からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなる。
【0181】
【0182】
ライゲーション効率を増強するために、限定されるものではないが、表1のITRオリゴヌクレオチドを含む、ITRオリゴヌクレオチドの5’末端がリン酸化され得る。
【0183】
一実施形態では、第1のITR及び第2のITRが、各々、ヘアピン構造及び/又はT字形若しくはY字形ステムループ構造を含む。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRが、各々、T字形又はY字形ステムループ構造を含む。別の実施形態では、T字形又はY字形ステムループ構造が、A-A’及びD-D’ステム領域並びに2つのB-B’及びC-C’ループを含むステムを含む。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRのうちの一方又は両方が、アデノ随伴ウイルス(AAV)ITR又はAAV由来のITRである。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRのうちの一方又は両方が、野生型ITRである。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRの両方が、野生型ITRである。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRのうちの一方又は両方が、修飾ITRである。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRが、互いに対称又は実質的に対称である。別の実施形態では、第1のITR及び第2のITRが、非対称のITRである。
【0184】
いくつかの実施形態では、第1のITRオリゴヌクレオチド及び第2のITRオリゴヌクレオチドのT字形又はY字形ステムループ構造(例えば、単一ステム+2ループ又は単一ステム+2ループ)は、少なくとも約4塩基対(ヌクレオチド)長、例えば、約4塩基対~約30塩基対、又は4塩基対~約25塩基対、又は4塩基対~約22塩基対、又は4塩基対~約20塩基対、又は4塩基対~約18塩基対、又は4塩基対~約15塩基対、又は4塩基対~約12塩基対、又は4塩基対~約10塩基対、又は4塩基対~約8塩基対、又は4塩基対~約7塩基対、又は4塩基対~約6塩基対、又は6塩基対~約8塩基対、又は約4塩基対、又は約5塩基対、又は約6塩基対、又は約7塩基対、又は約8塩基対、又は約9塩基対、又は約10塩基対、又は約11塩基対、又は約12塩基対、又は約13塩基対、又は約14塩基対、又は約15塩基対であるステム領域(すなわち、
図10に示されるA-A’ステム領域、D-D’ステム領域、又はA-A’及びD-D’ステム領域の両方)を含む。一実施形態では、このステム領域長は、オーバーハング長を含まない。
【0185】
部分ITR及びスペーサ
いくつかの実施形態では、ITRオリゴヌクレオチドは、両端にceDNA産物の完全なITRを形成する。他の実施形態では、ITRオリゴヌクレオチドは、ceDNAのITRを部分的に形成するが、ITRの残りの連続配列は、インサート上の部分ITRに見出される。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される無細胞合成方法で導入遺伝子発現カセットが切除される二本鎖DNA構築物は、少なくとも第1の部分ITR及び第2の部分ITRを更に含み、各々、導入遺伝子発現カセットに隣接する。一実施形態では、第1の部分ITRが、導入遺伝子発現カセットの上流、かつ第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位の下流にある。第2の部分ITRが、導入遺伝子発現カセットの下流、かつ第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位の上流にある。一実施形態では、第1の切断部位が、第1の部分ITRに隣接し、第2の切断部位が、第2の部分ITRに隣接する(すなわち、切断部位と部分ITRとの間にスペーサがない)。
【0186】
ある特定の実施形態では、二本鎖DNA構築物又は切除されたインサートは、1つ以上のスペーサ領域を更に含む。一実施形態では、二本鎖DNA構築物又はインサートが、第1の部分ITRと導入遺伝子発現カセットとの間に第1のスペーサを更に含む。別の実施形態では、二本鎖DNA構築物が、第2の部分ITRと導入遺伝子発現カセットとの間に第2のスペーサを更に含む。各スペーサ領域又は配列が、約1~50ヌクレオチド長、例えば、約2、5、7、8、10、11、12、13、15、17、18、20、22、23、25、27、28、30、32、33、35、37、38、40、42、43、45、47、48、又は50ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、第1の(若しくは左の)部分ITR又は第2の(若しくは右の部分ITR)と導入遺伝子発現カセットとの間のスペーサは、表2に示される配列を含むスペーサから選択される。いくつかの実施形態によると、スペーサは、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、及び配列番号40からなる群から選択される核酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である核酸配列を含む。いくつかの実施形態によると、スペーサは、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、及び配列番号40からなる群から選択される核酸配列からなる。
【0187】
【0188】
いくつかの態様では、本開示は、ローリングサークル増幅を介してプラスミド鋳型から二本鎖DNA構築物を産生する方法であって、(a)プラスミド鋳型を、鎖置換活性を有する熱安定性ポリメラーゼと接触させるステップであって、ポリメラーゼ濃度(U/μl単位)に対するプラスミド鋳型濃度(ng/μl単位)の比が、約1を超える、ステップと、(b)プラスミド鋳型をオリゴヌクレオチドプライマ及びdNTPと接触させるステップと、(c)プラスミド鋳型、ポリメラーゼ、オリゴヌクレオチドプライマ、及びdNTPを、約40℃以下の温度で、少なくとも約5時間の期間にわたってインキュベートするステップと、を含み、それによって、二本鎖DNA構築物を産生する、方法を提供する。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ濃度(U/μl単位)に対するプラスミド鋳型濃度(ng/μl単位)の比が、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、又は約20を超える。いくつかの実施形態では、プラスミド鋳型濃度が、約0.01ng/μl、約0.05ng/μl、約0.1ng/μl、約0.15ng/μl、約0.2ng/μl、約0.21ng/μl、約0.22ng/μl、約0.23ng/μl、約0.24ng/μl、約0.2ng/μl、約0.26ng/μl、約0.27ng/μl、約0.28ng/μl、約0.29ng/μl、約0.3ng/μl、約0.35ng/μl、約0.4ng/μl、約0.45ng/μl、約0.5ng/μl、約0.6ng/μl、約0.7ng/μl、約0.8ng/μl、約0.9ng/μl、又は約1.0ng/μlである。他の実施形態では、ポリメラーゼ濃度が、約0.01U/μl、約0.02U/μl、約0.03U/μl、約0.04U/μl、約0.05U/μl、約0.06U/μl、約0.07U/μl、約0.08U/μl、約0.09U/μl、約0.1U/μl、約0.15U/μl、約0.2U/μl、約0.25U/μl、約0.3U/μl、約0.35U/μl、約0.4U/μl、又は約0.45U/μlである。更なる実施形態では、ステップ(c)における温度が、約40℃、約39℃、約38℃、約37℃、約36℃、約35℃、約34℃、約33℃、約32℃、約31℃、約30℃、約29℃、約28℃、約27℃、約26℃、約25℃、約24℃、約23℃、約22℃、又は約21℃未満である。いくつかの実施形態では、期間が、少なくとも約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約21時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約37時間、約38時間、約39時間、又は約40時間である。いくつかの実施形態では、期間が、約6時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約21時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約37時間、約38時間、約39時間、又は約40時間未満である。いくつかの実施形態では、プラスミド鋳型濃度が、約0.25ng/μlであり、温度が、約30℃であり、ポリメラーゼ濃度が、約0.05U/μlであり、期間が、約18~26時間である。更なる実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマ濃度は、約50μM未満である。他の実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマ濃度は、少なくとも約10μMである。更なる実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマ濃度は、少なくとも約10μMかつ約50μM未満である。更なる実施形態では、熱安定性ポリメラーゼが、Phi29 DNAポリメラーゼ又はその誘導体若しくはバリアントである。他の更なる実施形態では、熱安定性ポリメラーゼが、EQUIPHI29(商標)である。他の実施形態では、方法が、少なくとも約100μlの総反応体積で実施される。他の更なる実施形態では、方法が、少なくとも約100μl、約200μl、約300μl、約400μl、約500μl、約600μl、約700μl、約800μl、約900μl、約1ml、約2ml、約3ml、約4ml、約5ml、約6ml、約7ml、約8ml、約9ml、約10ml、約15ml、約20ml、約25ml、約30ml、約35ml、約40ml、約45ml、約50ml、約55ml、約60ml、約65ml、約70ml、約75ml、約80ml、約85ml、約90ml、約95ml、約100ml、約200ml、約300ml、約400ml、約500ml、約600ml、約700ml、約800ml、約900ml、約1L、約2L、約3L、4L、約5L、約6L、約7L、約8L、約9L、約10L、約20L、約30L、約40L、約50L、約60L、約70L、約80L、約90L、約100L、約200L、約300L、約400L、約500L、約600L、約700L、約800L、約900L、又は約1000Lの総反応体積で実施される。
【0189】
いくつかの実施形態では、方法が、総反応体積の少なくとも2倍の容量を有する反応容器内で実施される。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマは、プラスミド鋳型中の骨格配列にハイブリダイズする。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドプライマは、ユニバーサルプライマである。
【0190】
いくつかの実施形態では、dNTP濃度は、約4mMである。
【0191】
単離及び精製
例示的な閉端DNAベクターである、ceDNAベクターを生成及び単離する方法が、本明細書に記載されている。例えば、本明細書に記載される合成方法によって産生された閉端DNAベクター、例えば、ceDNAベクターは、最後のライゲーション反応後の適切な時点で採取又は収集することができ、ceDNAベクターの高収量産生を達成するために最適化することができる。閉端DNAベクター、例えば、ceDNAベクターは、DNAの精製のための当業者に既知の任意の手段によって精製され得る。一実施形態では、ceDNAベクターは、DNA分子として精製される。一般に、任意の当該技術分野において既知の核酸精製方法、並びに市販のDNA抽出キットが採用され得る。
【0192】
代替的に、反応混合物をクロマトグラフィ分離に供することによって、精製を実施することができる。1つの非限定例として、このプロセスは、核酸を保持するイオン交換カラム(例えば、SARTOBIND Q(登録商標))上に反応混合物を装填し、次いで溶出し(例えば、1.2M NaCl溶液で)、ゲル濾過カラム(例えば、6高速流GE)上で更なるクロマトグラフィ精製を実施することによって実施され得る。次いで、DNAベクター、例えば、ceDNAベクターは、例えば、沈殿によって回収される。
【0193】
ceDNAベクターの存在は、細胞から単離されたベクターDNAをDNAベクター上に単一認識部位を有する制限酵素で消化すること、並びにゲル電気泳動を使用し、消化されたDNA材料及び未消化のDNA材料の両方を分析して、直鎖状かつ非連続的なDNAと比較して特徴的な直鎖状かつ連続的なDNAの存在を確認することによって確認され得る。
【0194】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される合成産生方法によって産生された閉端DNAベクターは、本明細書で論じられるような様々な好適な方法によってインビトロ又はインビボで標的細胞に送達され得る。ベクターのみを適用又は注射することができる。ベクターは、トランスフェクション試薬又は他の物理的手段の助けなしに細胞に送達され得る。代替的に、ベクターは、細胞へのDNAの進入を促進するトランスフェクション試薬又は他の物理的手段、例えば、リポソーム、アルコール、高ポリリジン化合物、高アルギニン化合物、リン酸カルシウム、微小胞、マイクロインジェクションなどを使用して送達され得る。
【0195】
合成産生方法を使用して産生された環状DNAベクター
本明細書では、DNA分子及び閉端DNAベクターのインビトロ産生の様々な方法が提供される。いくつかの実施形態では、閉端DNAベクターは、本明細書に記載されるceDNAベクターである。代替的な実施形態では、閉端DNAベクターは、例えば、ダンベルDNAベクター又はドッグボーンDNAベクターである(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、WO2010/0086626を参照されたい)。
【0196】
III.一般的なceDNAベクター
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生される閉端DNAベクターは、導入遺伝子を発現し得るceDNAベクターを含む、ceDNAベクターである。本明細書に記載されるceDNAベクターは、サイズによって制限されず、それにより、例えば、単一ベクターからの導入遺伝子の発現に必要な全ての構成成分の発現を可能にする。ceDNAベクターは、好ましくは、発現カセットなどの分子の少なくとも一部分にわたって二重鎖、例えば、自己相補的である(例えば、ceDNAは、二本鎖環状分子ではない)。ceDNAベクターは、共有結合性閉端を有し、したがって、例えば、1時間以上37℃でエキソヌクレアーゼ消化(例えば、エキソヌクレアーゼI又はエキソヌクレアーゼIII)に対して耐性である。
【0197】
一般に、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されるceDNAベクターは、導入遺伝子発現カセットと、導入遺伝子発現カセットの上流の第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位と、導入遺伝子発現カセットの下流の第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位と、を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターは、5’から3’方向に、第1のアデノ関連ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、関心対象のヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載される導入遺伝子発現カセット)、及び第2のAAV ITRを含む。ITRは、(i)少なくとも1つのWT ITR及び少なくとも1つの修飾型AAV逆位末端反復(mod-ITR)(例えば、非対称の修飾型ITR)、(ii)mod-ITR対が互いに対して異なる三次元空間構成を有する、2つの修飾型ITR(例えば、非対称の修飾型ITR)、又は(iii)各WT-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称のWT-WT ITR対、又は(iv)各mod-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称の修飾型ITR対のうちのいずれかから選択される。
【0198】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む方法及び組成物が本明細書に包含され、限定されないが、リポソームナノ粒子送達系などの送達系を更に含み得る。使用のために包含される非限定的な例示的リポソームナノ粒子系が、本明細書に開示されている。いくつかの態様では、本開示は、ceDNA及びイオン化脂質を含む脂質ナノ粒子を提供する。例えば、プロセスによって取得されたceDNAを用いて作製及び負荷される脂質ナノ粒子製剤は、国際特許出願公開第WO2019/051289号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0199】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターには、ウイルスカプシド内の制限された空間によって課されるパッケージングの制約はない。これは、制御エレメント、例えば、本明細書に開示される調節スイッチ、大きな導入遺伝子、複数の導入遺伝子などの挿入を可能にする。
【0200】
国際特許出願公開第WO2019/143885号の
図1A~
図1Gは、非限定的な例示的ceDNAベクターの概略図、又は対応するceDNAプラスミドの配列を示す。ceDNAベクターはカプシドを含まず、第1のITR、導入遺伝子を含む発現カセット、及び第2のITRをこの順序でコードするプラスミドから得ることができる。発現カセットは、導入遺伝子の発現を可能にする及び/又は制御する1つ以上の調節配列を含み得、例えば、発現カセットは、エンハンサ/プロモータ、ルシフェラーゼ又は導入遺伝子などのORFレポーター、転写後調節エレメント(例えば、WPRE)、並びにポリアデニル化及び終結シグナル(例えば、BGHポリA)のうちの1つ以上をこの順番で含み得る。
【0201】
発現カセットはまた、内部リボソーム進入部位(internal ribosome entry site、IRES)及び/又は2Aエレメントを含み得る。シス調節エレメントとしては、プロモータ、リボスイッチ、インスレータ、mir調節エレメント、転写後調節エレメント、組織及び細胞型特異的プロモータ、並びにエンハンサが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ITRは、導入遺伝子のプロモータとして作用し得る。いくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、導入遺伝子の発現を調節するための追加の構成成分、例えば、本明細書において「調節スイッチ」と題するセクションに記載されている、導入遺伝子の発現を制御及び調節するための調節スイッチを含み、所望される場合、ceDNAベクターを含む細胞の制御された細胞死を可能にするキルスイッチである調節スイッチを含み得る。
【0202】
発現カセットは、4000ヌクレオチド超、5000ヌクレオチド、10,000ヌクレオチド、若しくは20,000ヌクレオチド、若しくは30,000ヌクレオチド、若しくは40,000ヌクレオチド、又は50,000ヌクレオチド、又は約4000~10,000ヌクレオチド、若しくは10,000~50,000ヌクレオチドの任意の範囲、又は50,000ヌクレオチド超を含み得る。いくつかの実施形態では、発現カセットは、500~50,000ヌクレオチド長の範囲の導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態では、発現カセットは、500~75,000ヌクレオチド長の範囲の導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態では、発現カセットは、500~10,000ヌクレオチド長の範囲である導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態では、発現カセットは、1000~10,000ヌクレオチド長の範囲である導入遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態では、発現カセットは、500~5,000ヌクレオチド長の範囲である導入遺伝子を含み得る。ceDNAベクターは、カプシド化AAVベクターのサイズ制限を有せず、したがって、大サイズの発現カセットの送達が効率的な導入遺伝子をもたらすようにすることができる。いくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、原核細胞特異的メチル化を欠いている。
【0203】
ceDNA発現カセットは、例えば、レシピエント対象において存在しない、不活性、若しくは不十分な活性であるタンパク質をコードする発現可能な外因性配列(例えば、オープンリーディングフレーム)若しくは導入遺伝子、又は所望の生物学的若しくは治療効果を有するタンパク質をコードする遺伝子を含み得る。導入遺伝子は、欠陥遺伝子又は転写産物の発現を訂正するように機能することができる遺伝子産物をコードすることができる。原則として、発現カセットは、変異のために低減若しくは欠如しているタンパク質、ポリペプチド、若しくはRNAをコードする、又は過剰発現が本開示の範囲内であるとみなされる場合に治療効果をもたらす任意の遺伝子を含み得る。
【0204】
発現カセットは、対象の疾患又は障害を治療するために有用な任意の導入遺伝子を含み得る。本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを使用して、ポリペプチドをコードする核酸、又は非コード核酸(例えば、RNAi、miRなど)、並びに対象のゲノム中のウイルス配列、例えば、HIVウイルス配列などを含む外因性遺伝子及びヌクレオチド配列を含むがこれらに限定されない、任意の関心対象の遺伝子を対象に送達し、発現させることができる。好ましくは、本明細書に開示されるceDNAベクターは、治療目的(例えば、医療、診断、若しくは獣医学的使用)又は免疫原性ポリペプチドに使用される。ある特定の実施形態では、ceDNAベクターは、1つ以上のポリペプチド、ペプチド、リボザイム、ペプチド核酸、siRNA、RNAi’s、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、又はRNA(コード若しくは非コード、例えば、siRNA、shRNA、マイクロRNA、及びそれらのアンチセンス対応物(例えば、antagoMiR))、抗体、融合タンパク質、又はそれらの任意の組み合わせを含む、対象における任意の目的の遺伝子を発現させるのに有用である。
【0205】
発現カセットはまた、ポリペプチド、センス若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド、又はRNA(コード若しくは非コード;例えば、siRNA、shRNA、マイクロRNA、及びそれらのアンチセンス対応物(例えば、antagoMiR))をコードし得る。発現カセットは、実験又は診断の目的で使用されるレポータータンパク質をコードする外因性配列、例えばβ-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、及び当該技術分野において周知の他のものを含み得る。
【0206】
発現カセット、本明細書に記載されるceDNAベクターの発現構築物で提供される配列は、標的宿主細胞に最適化されたコドンであり得る。本明細書で使用される場合、「最適化されたコドン」又は「コドン最適化」という用語は、目的の脊椎動物、例えばマウス又はヒトの細胞中の発現強化のために、少なくとも1つ、2つ以上、又は相当数の未変性配列(例えば、原核細胞配列)のコドンを、その脊椎動物の遺伝子中でより頻繁に又は最も頻繁に使用されるコドンと置き換えることによって、核酸配列を修飾するプロセスを指す。様々な種は、特定のアミノ酸のある特定のコドンに対して特定の偏向を呈する。典型的に、コドン最適化は、元の翻訳されたタンパク質のアミノ酸配列を変更しない。最適化されたコドンは、例えば、AptagenのGENE FORGE(登録商標)コドン最適化及びカスタム遺伝子合成プラットフォーム(Aptagen,Inc.,2190 Fox Mill Rd.Suite 300,Herndon,Va.20171)又は別の公開データベースを使用して決定することができる。
【0207】
いくつかの実施形態では、ceDNAベクターによって発現される導入遺伝子は、治療遺伝子である。いくつかの実施形態では、治療遺伝子は、抗体、又は抗体断片、又はその抗原結合断片、例えば、中和抗体又は抗体断片などである。
【0208】
特に、治療遺伝子は、例えば、疾患、機能不全、傷害、及び/又は障害のうちの1つ以上の症状の治療、予防、及び/又は改善における使用のための、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、酵素、抗体、抗原結合断片、並びにそのバリアント及び/又は活性断片を含むが、これらに限定されない1種以上の治療剤である。例示的な治療遺伝子は、本明細書において「治療の方法」と題されたセクションに記載されている。
【0209】
プラスミド系発現ベクターとは異なるceDNAベクターの多くの構造特徴が存在する。本明細書における合成方法によって産生されたceDNAベクターは、以下の特徴:元の(すなわち、挿入されていない)細菌DNAの欠失、原核細胞複製起源の欠失、自蔵である(すなわち、Rep結合及び末端分離部位(RBS及びTRS)を含む2つのITR以外のいかなる配列も、ITR間の外因性配列も必要としない)、真核起源(すなわち、それらは真核細胞中で産生される)のヘアピンを形成するITR配列の存在、並びに細菌型DNAメチル化、又は実際に所与の細胞型における産生と関連し、哺乳動物宿主によって異常であるとみなされる任意の他のメチル化の非存在のうちの1つ以上を有し得る。一般に、本ベクターは、いかなる原核細胞DNAも含有しないことが好ましいが、いくつかの原核細胞DNAが、外因性配列として、非限定的な例としてプロモータ又はエンハンサ領域に挿入されてもよいことが企図される。ceDNAベクターをプラスミド発現ベクターと区別する別の重要な特徴は、ceDNAベクターが、閉端を有する一本鎖直鎖状DNAであるが、プラスミドは、常に二本鎖DNAである。
【0210】
本明細書に提供される合成方法によって産生されたceDNAベクターは、好ましくは、制限酵素消化アッセイによって判定して、非連続的な構造ではなく直鎖状で連続的な構造を有する(例えば、
図11及び
図12参照)。直鎖状で連続的な構造は、細胞エンドヌクレアーゼによる攻撃に対してより安定であると同時に、組換えられて変異誘発を引き起こす可能性が低いと考えられる。したがって、直鎖状で連続的な構造のceDNAベクターは、好ましい実施形態である。連続的な直鎖状の一本鎖分子内二重鎖ceDNAベクターは、AAVカプシドタンパク質をコードする配列なしに、終端に共有結合している可能性がある。これらのceDNAベクターは、細菌起源の環状二重鎖核酸分子であるプラスミド(本明細書に記載されるceDNAプラスミドを含む)とは構造的に異なる。プラスミドの相補鎖は、変性に続いて分離されて2つの核酸分子を産生することができるが、反対に、ceDNAベクターは、相補鎖を有するが、単一DNA分子であり、したがって変性された場合でも単一分子のままである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるceDNAベクターは、プラスミドとは異なり、原核細胞タイプのDNA塩基メチル化なしに産生され得る。したがって、ceDNAベクター及びceDNA-プラスミドは、構造(具体的には、直鎖状対環状)及びこれらの異なる対象物(下記を参照されたい)を産生及び精製するために使用される方法の両方に関して、またceDNA-プラスミドの場合は原核細胞タイプ及びceDNAベクターの場合は真核細胞タイプのものである、それらのDNAメチル化に関して異なる。
【0211】
本明細書に記載されるceDNAベクターを使用することには、プラスミドベースの発現ベクターよりもいくつかの利点があり、そのような利点としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:1)プラスミドは、細菌DNA配列を含有し、原核生物特異的メチル化(例えば、6-メチルアデノシン及び5-メチルシトシンのメチル化)を受けるが、カプシドを含まないAAVベクター配列は、真核生物起源であり、原核生物特異的メチル化を受けない、結果として、カプシドを含まないAAVベクターは、プラスミドと比較して炎症応答及び免疫応答を誘導する可能性が低い、2)プラスミドは産生プロセス中に耐性遺伝子の存在を必要とするが、ceDNAベクターは必要としない、3)環状プラスミドは、細胞への導入時に核に送達されず、細胞ヌクレアーゼによる分解を回避するために過負荷を必要とするが、ceDNAベクターは、ウイルスシスエレメント(すなわち、ITR)を含有し、これは、ヌクレアーゼに対して耐性を付与し、核に標的化及び送達するように設計され得る。ITR機能に不可欠な最小定義エレメントは、Rep結合部位(AAV2の場合、国際特許出願公開第WO2019/143885号の配列番号60)、及び末端分離部位(TRS、AAV2の場合5’-AGTTGG-3’(WO2019/143885の配列番号64))+ヘアピン形成を可能にする可変パリンドローム配列;及び4)である。ceDNAベクターは、Toll様ファミリーの受容体のメンバーに結合し、T細胞媒介性免疫応答を誘発すると報告されている原核生物由来プラスミドにおいてしばしば見られるCpGジヌクレオチドの過剰提示を有しない。対照的に、本明細書に開示されるカプシド不含AAVベクターでの形質導入は、様々な送達試薬を使用し、従来のAAVビリオンで形質導入することが困難である細胞及び組織型を効率的に標的とし得る。
【0212】
固有のジャンクション配列
本明細書に記載される無細胞合成方法を使用して調製されたceDNAベクターは、ceDNAに固有の両端上のインサートとITRオリゴヌクレオチドとの間のライゲーションジャンクションにヌクレオチド配列を含む。そのようなジャンクション配列は、ITRオリゴヌクレオチドにおいても、導入遺伝子発現カセットが切除される二本鎖DNA構築物においても見出されない。DNA配列決定分析(例えば、
図14参照)において明らかにされるように、そのようなジャンクション配列の存在は、ライゲーション反応の成功を確認するために有用である。
【0213】
したがって、本開示の別の態様は、ceDNAベクター中に見出されるITRヌクレオチド配列、これらのITRヌクレオチド配列を含むceDNAベクター、並びにそのようなceDNAベクターを含む組成物、宿主細胞、及びトランスジェニック動物を対象とする。そのようなITRヌクレオチド配列の例の非網羅的リストが、以下の表3に提供される。
【0214】
【0215】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるITRヌクレオチド配列は、スペーサ配列を更に含む。一実施形態では、スペーサは、表2に提供されるスペーサ配列のうちのいずれか1つから選択される。一実施形態では、表3のITRヌクレオチド配列のいずれか1つは、表2に提供されるスペーサ配列のいずれか1つを更に含み得る。
【0216】
IV.ITR
本明細書に開示されているように、ceDNAベクターは、少なくとも2つの逆位末端反復(ITR)の間に位置付けられた導入遺伝子又は異種核酸配列を含有し、これらの用語が本明細書に定義されるように、ITRは、非対称のITR対又は対称若しくは実質的に対称のITR対であり得る。本明細書に開示されるceDNAベクターは、(i)少なくとも1つのWT ITR及び少なくとも1つの修飾型AAV逆位末端反復(mod-ITR)(例えば、非対称の修飾型ITR)、(ii)mod-ITR対が互いに対して異なる三次元空間構成を有する、2つの修飾型ITR(例えば、非対称の修飾型ITR)、又は(iii)各WT-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称のWT-WT ITR対、又は(iv)各mod-ITRが同じ三次元空間構成を有する、対称若しくは実質的に対称の修飾型ITR対のうちのいずれかから選択されるITR配列を含み得、本開示の方法は、限定されないが、リポソームナノ粒子送達系などの送達系を更に含み得る。
【0217】
いくつかの実施形態では、ITR配列は、脊椎動物に感染するParvovirinae及び昆虫に感染するDensovirinaeの2つの亜科を含む、Parvoviridae科のウイルスに由来し得る。Parvovirinae亜科(パルボウイルスと称される)は、Dependovirus属を含み、そのメンバーは、ほとんどの条件下で、増殖性感染のためにアデノウイルス又はヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスとの共感染を必要とする。Dependovirus属は、通常はヒト(例えば、血清型2、3A、3B、5、及び6)又は霊長類(例えば、血清型1及び4)に感染するアデノ随伴ウイルス(AAV)、並びに他の温血動物に感染する関連ウイルス(例えば、ウシ、イヌ、ウマ、及びヒツジアデノ随伴ウイルス)を含む。パルボウイルス及びParvoviridae科の他のメンバーは、Kenneth I.Berns,「Parvoviridae:The Viruses and Their Replication,」Chapter 69 in FIELDS VIROLOGY(3d Ed.1996)に一般に記載されている。
【0218】
WT-ITRは、明細書において例証されており、本明細書における例は、AAV2 WT-ITRであるが、当業者であれば、上述のように、任意の既知のパルボウイルス、例えば、ディペンドウイルス、例えばAAV(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV5、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh8、AAVrh10、AAV-DJ、及びAAV-DJ8ゲノムからのITRを使用できることを認識する。例えば、NCBI:NC002077;NC001401、NC001729、NC001829、NC006152、NC006260、NC006261)、キメラITR、又は任意の合成AAV由来のITR。いくつかの実施形態では、AAVは、温血動物、例えば、鳥類(AAAV)、ウシ(BAAV)、イヌ、ウマ、及びヒツジアデノ随伴ウイルスに感染し得る。いくつかの実施形態では、ITRは、B19パルボウイルス(GenBank受託番号NC000883)、マウス由来微小ウイルス(Minute Virus from Mouse、MVM)(GenBank受託番号NC001510)、ガチョウパルボウイルス(GenBank受託番号NC001701)、ヘビパルボウイルス1(GenBank受託番号NC006148)由来である。いくつかの実施形態では、本明細書で論じられるように、5’WT-ITRは、1つの血清型に由来し、3’WT-ITRは、異なる血清型に由来し得る。
【0219】
当業者であれば、ITR配列が、二本鎖ホリデージャンクションの一般構造を有し、典型的には、T字形又はY字形ヘアピン構造であり(例えば、
図10を参照されたい)、各WT-ITRが、2つのループ(B-B’及びC-C’、その両方がパリンドローム二本鎖DNA配列を含む)及びステム(A-A’、これもまたパリンドローム二本鎖DNA配列を含む)、並びに一本鎖D配列によって形成される(これらのパリンドローム配列の順序は、ITRのフリップ又はフロップ配向を定義する)ことを知っている。例えば、異なるAAV血清型(AAV1~AAV6)由来の、かつGrimm et al.,J.Virology,2006、80(1);426-439、)Yan et al.,J.Virology,2005;364-379、Duan et al.,Virology 1999;261;8-14に記載のITRの構造分析及び配列比較を参照されたい。当業者は、本明細書に提供される例示的なAAV2 ITR配列に基づいて、ceDNAベクター又はceDNA-プラスミドで使用するための任意のAAV血清型からWT-ITR配列を容易に決定することができる。例えば、Grimm et al.,J.Virology,2006;80(1);426-439に記載の、異なるAAV血清型(AAV1~AAV6、並びにトリAAV(AAAV)及びウシAAV(BAAV))由来のITRの配列比較を参照されたい。これは、他の血清型由来の左ITRに対するAAV2の左ITRの%同一性:AAV-1(84%)、AAV-3(86%)、AAV-4(79%)、AAV-5(58%)、AAV-6(左ITR)(100%)、及びAAV-6(右ITR)(82%)を示す。
【0220】
対称又は実質的に対称のITR対
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるceDNAベクターは、5’から3’方向に、第1のアデノ関連ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、関心対象のヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載される発現カセット)、及び第2のAAV ITRを含み、第1のITR(5’ITR)及び第2のITR(3’ITR)は、互いに対して対称又は実質的に対称であり、すなわち、ceDNAベクターは、対称の3次元空間構成を有するITRを含み得、それによりそれらの構造は、幾何学的空間で同じ形状であるか、又は3次元空間で同じA-A’ステム、C-C’及びB-B’ループを有する。そのような実施形態では、対称のITR対、又は実質的に対称のITR対は、野生型ITRではない修飾型ITR(例えば、mod-ITR)であり得る。mod-ITR対は、野生型ITRからの1つ以上の修飾を有し、互いに逆相補体(逆位)である同じ配列を有し得る。代替的な実施形態では、修飾型ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、修飾型ITR対は、異なる配列を有し得るが、対応する又は同じ対称の三次元形状を有し得る。
【0221】
野生型ITR(WT-ITR)
いくつかの実施形態では、対称のITR、又は実質的に対称のITRは、本明細書に記載されるように野生型(WT-ITR)である。すなわち、両方のITRが野生型配列を有するが、必ずしも同じAAV血清型のWT-ITRである必要はない。すなわち、いくつかの実施形態では、一方のWT-ITRは、1つのAAV血清型に由来し得、他方のWT-ITRは、異なるAAV血清型に由来し得る。そのような実施形態では、WT-ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、それらは、対称的な三次元空間構成を維持しながら、1つ以上の保存的ヌクレオチド修飾を有することができる。
【0222】
したがって、本明細書で開示されるように、ceDNAベクターは、少なくとも2つの隣接する野生型逆位末端反復(WT-ITR)の間に位置付けられた導入遺伝子又は異種核酸配列を含有し、互いに逆相補(逆位)であるか、又は代替的に互いに実質的に対称である。すなわち、WT-ITR対は、対称の三次元空間構成を有する。いくつかの実施形態では、野生型ITR配列(例えば、AAV WT-ITR)は、機能的Rep結合部位(RBS、例えば、AAV2の場合、国際特許出願公開第WO2019/143885号の配列番号60、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、及び機能的末端分離部位(TRS、例えば、5’-AGTT-3’、WO2019/143885号の配列番号62、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を含む。
【0223】
一態様では、ceDNAベクターは、少なくとも2つのWT-ITR(例えば、AAV WT-ITR)の間に作動可能に位置付けられた導入遺伝子をコードする二本鎖DNA構築物から取得可能である。すなわち、両方のITRが野生型配列を有するが、必ずしも同じAAV血清型のWT-ITRである必要はない。すなわち、いくつかの実施形態では、一方のWT-ITRは、1つのAAV血清型に由来し得、他方のWT-ITRは、異なるAAV血清型に由来し得る。そのような実施形態では、WT-ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、それらは、対称の三次元空間構成を維持しながら、1つ以上の保存的ヌクレオチド修飾を有することができる。いくつかの実施形態では、5’WT-ITRは、1つのAAV血清型に由来し、3’WT-ITRは、同じ又は異なるAAV血清型に由来する。いくつかの実施形態では、5’WT-ITR及び3’WT-ITRは、互いの鏡像であり、すなわち、それらは対称である。いくつかの実施形態では、5’WT-ITR及び3’WT-ITRは、同じAAV血清型に由来する。
【0224】
WT-ITRは周知である。一実施形態では、2つのITRは、同じAAV2血清型に由来する。ある特定の実施形態では、他の血清型からのWTを使用することができる。相同であるいくつかの血清型、例えば、AAV2、AAV4、AAV6、AAV8がある。一実施形態では、密接に相同なITR(例えば、類似のループ構造を有するITR)を使用することができる。別の実施形態では、より多様なAAV WT ITR、例えば、AAV2及びAAV5を使用することができ、更に別の一実施形態では、実質的にWTであるITRを使用することができる、すなわち、それはWTの基本ループ構造を有するが、特性を変更しないか又は影響しないいくつかの保存的ヌクレオチド変化を有する。同じウイルス血清型に由来するWT-ITRを使用する場合、1つ以上の調節配列を更に使用することができる。ある特定の実施形態では、調節配列は、ceDNAの活性の調整を可能にする調節スイッチである。
【0225】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される技術の一態様は、合成的に産生されたceDNAベクターに関し、ceDNAベクターは、2つの野生型逆位末端反復配列(WT-ITR)の間に操作可能に位置付けられた少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列を含み、WT-ITRは、同じ血清型、異なる血清型に由来し得るか、又は互いに対して実質的に対称であり得る(すなわち、それらの構造が幾何学的空間で同じ形状であるように対称の3次元空間構成を有するか、又は3次元空間で同じA、C-C’、及びB-B’ループを有する)。いくつかの実施形態では、対称WT-ITRは、機能的末端分離部位及びRep結合部位を含む。いくつかの実施形態では、異種核酸配列は、導入遺伝子をコードし、ベクターは、ウイルスカプシドにはない。
【0226】
いくつかの実施形態では、WT-ITRは同じであるが、互いの逆相補体である。例えば、5’ITRの配列AACGは、対応する部位の3’ITRのCGTT(すなわち、逆相補体)であり得る。一実施例では、5’WT-ITRセンス鎖は、ATCGATCGの配列を含み、対応する3’WT-ITRセンス鎖は、CGATCGAT(すなわち、ATCGATCGの逆相補体)を含む。いくつかの実施形態では、WT-ITR ceDNAは、末端分離部位及び複製タンパク質結合部位(複製タンパク質結合部位と呼ばれることもある)、例えば、Rep結合部位(Rep binding site、RBS)を更に含む。
【0227】
WT-ITRを含むceDNAベクターで使用するための例示的なWT-ITR配列は、WT-ITRの対(5’WT-ITR及び3’WT-ITR)を示す、国際特許出願公開第WO2019/143885号の表2に示されている。
【0228】
例示的な実施例として、本開示は、調節スイッチの有無にかかわらず、導入遺伝子(例えば、遺伝子編集配列)に操作可能に連結されたプロモータを含む合成的に産生されたceDNAベクターを提供し、ceDNAはカプシドタンパク質を欠き、(a)WT-ITRをコードするceDNA-プラスミド(例えば、WO2019/143885の
図1F~
図1Gを参照)から産生され、各WT-ITRは、そのヘアピン二次構成で同じ数の分子内二重化塩基対を有し(好ましくはこれらの参照配列と比較して、この構成のいかなるAAA又はTTT末端ループの欠失も除外する)、及び(b)未変性ゲル及び変性条件下でのアガロースゲル電気泳動によるceDNAの同定のためのアッセイを使用してceDNAとして特定される。
【0229】
いくつかの実施形態では、隣接するWT-ITRは、互いに実質的に対称である。この実施形態では、WT-ITRが同一の逆相補体ではないように、5’WT-ITRは、AAVの1つの血清型に由来し、3’WT-ITRは、AAVの異なる血清型に由来し得る。例えば、5’WT-ITRは、AAV2に由来し得、3’WT-ITRは、異なる血清型(例えば、AAV1、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12)に由来し得る。いくつかの実施形態では、WT-ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、ヘビパルボウイルス(例えば、ロイヤルパイソンパルボウイルス)、ウシパルボウイルス、ヤギパルボウイルス、トリパルボウイルス、イヌパルボウイルス、ウマパルボウイルス、エビパルボウイルス、ブタパルボウイルス、又は昆虫AAVのうちのいずれかから選択される2つの異なるパルボウイルスから選択され得る。いくつかの実施形態では、WT ITRのそのような組み合わせは、AAV2及びAAV6からのWT-ITRの組み合わせである。一実施形態では、実質的に対称のWT-ITRは、一方が他方のITRに対して反転されたときに、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%...97%...98%...99%...99.5%、及びその間の全ての点のパーセンテージだけ同一であり、同じ対称の三次元空間構成を有する。いくつかの実施形態では、WT-ITR対は、それらが対称の三次元空間構成を有する、例えば、A-A’及びD-D’ステム領域、並びにB-B’及びC-C’ルームの同じ三次元構成を有するため、実質的に対称である。一実施形態では、実質的に対称のWT-ITR対は、他方に対して反転され、少なくとも95%同一、少なくとも96%...97%...98%...99%....99.5%、及びその間の全ての点で同一あり、一方のWT-ITRは、Rep結合部位(RBS)(国際特許出願公開第WO2019/143885号の配列番号60及び末端分離部位(trs)を保持する。いくつかの実施形態では、実質的に対称のWT-ITR対は、互いに対して反転され、少なくとも95%同一、少なくとも96%...97%...98%...99%....99.5%、及びその間の全ての点で同一であり、一方のWT-ITRは、ヘアピン二次構造形成を可能にする可変パリンドローム配列に加えて、Rep結合部位(RBS)(WO2019/143885の配列番号60)及び末端分離部位(trs)を保持する。相同性は、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)、デフォルト設定のBLASTNなど、当該技術分野において周知の標準的な手段によって決定することができる。
【0230】
いくつかの実施形態では、ITRの構造エレメントは、ITRと大きなRepタンパク質(例えば、Rep 78又はRep 68)との機能的相互作用に関与する任意の構造エレメントであり得る。ある特定の実施形態では、構造エレメントは、ITRと大きなRepタンパク質との相互作用に対する選択性を提供する。すなわち、少なくとも部分的に、どのRepタンパク質がITRと機能的に相互作用するかを判定する。他の実施形態では、構造エレメントは、Repタンパク質がITRに結合されたとき、大きなRepタンパク質と物理的に相互作用する。各構造エレメントは、例えば、ITRの二次構造、ITRのヌクレオチド配列、2つ以上のエレメント間の空間、又は上記のうちのいずれかの組み合わせであり得る。一実施形態では、構造エレメントは、A及びA’アーム、B及びB’アーム、C及びC’アーム、Dアーム、Rep結合部位(RBE)及びRBE’(すなわち、相補的RBE配列)、並びに末端分離部位(trs)からなる群から選択される。
【0231】
国際特許出願公開第WO2019/143885号の表1は、WT-ITRの例示的な組み合わせの非網羅的なリストを提供する。WO2019/143385の表2は、異なるAAV血清型由来の例示的なWT-ITRの非網羅的なリストの配列を提供する。
【0232】
いくつかの実施形態では、WT-ITR配列のヌクレオチド配列は、(例えば、1、2、3、4若しくは5個以上のヌクレオチド又はその中の任意の範囲を修飾することにより)修飾され得、それにより修飾は、相補的ヌクレオチドの置換、例えば、Cの場合はG、及びその逆、Aの場合はT、及びその逆である。
【0233】
本開示のある特定の実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターは、WO2019/143885の配列番号1、2、5~14のうちのいずれかから選択されるヌクレオチド配列からなるWT-ITRを有しない。本開示の代替的な実施形態では、ceDNAベクターが、WO2019/143885の配列番号1、2、5~14のうちのいずれかから選択されるヌクレオチド配列を含むWT-ITRを有する場合、隣接するITRもWTであり、ceDNAは、例えば、本明細書及び国際特許出願公開第WO2019/051255号に開示されているように、調節スイッチを含む(例えば、WO2019/051255号の表11を参照されたく、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、本明細書に開示されるような調節スイッチ、及びWO2019/143885の配列番号1、2、5~14からなる群のうちのいずれかから選択されるヌクレオチド配列を有する選択されたWT-ITRを含む。
【0234】
本明細書に記載されるceDNAベクターは、操作可能なRBE、trs、及びRBE’部分を保持するWT-ITR構造を含み得る。例示的な目的で野生型ITRを使用する、WO2019/143885の
図2A及び
図2Bは、ceDNAベクターの野生型ITR構造部分内のtrs部位の作動のための1つの可能な機序を示す。いくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、Rep-結合部位(AAV2の場合(WO2019/143885の配列番号60))及び末端分離部位(TRS、5’-AGTT(WO2019/143885の配列番号62))を含む1つ以上の機能性WT-ITRポリヌクレオチド配列を含有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのWT-ITRは、機能的である。ceDNAベクターが互いに実質的に対称である2つのWT-ITRを含む代替的な実施形態では、少なくとも1つのWT-ITRが機能的であり、少なくとも1つのWT-ITRが非機能的である。
【0235】
非対称ITR対又は対称ITR対を含むceDNAベクターの一般的な修飾型ITR(mod-ITR)
本明細書で論じられるように、合成的に産生されたceDNAベクターは、対称のITR対又は非対称のITR対を含み得る。どちらの場合も、一方又は両方のITRは修飾型ITRであり得、その違いは、第1の場合(すなわち、対称mod-ITR)では、mod-ITRは、同じ三次元空間構成を有する(すなわち、同じA-A’及びD-D’ステム領域、並びにB-B’及びC-C’ループ構成を有する)が、第2の場合(すなわち、非対称mod-ITR)では、mod-ITRは、異なる三次元空間構成を有する(すなわち、A-A’及びD-D’ステム領域、並びにB-B’及びC-C’ルームの異なる構成を有する)ことである。
【0236】
いくつかの実施形態では、修飾型ITRは、野生型ITR配列(例えば、AAV ITR)と比較して、欠失、挿入、及び/又は置換によって修飾されるITRである。いくつかの実施形態では、ceDNAベクター中のITRのうちの少なくとも1つは、機能的Rep結合部位(RBS;例えば、WO2019/143885の配列番号60)及び機能的末端分離部位(TRS;例えば、5’-AGTT-3’、WO2019/143885の配列番号62)一実施形態では、ITRのうちの少なくとも1つが非機能的ITRである。一実施形態では、異なる又は修飾型ITRは各々、異なる血清型からの野生型ITRではない。
【0237】
ITRの特定の変更及び変異が本明細書において詳細に説明されているが、ITRの文脈では、「変更型」又は「変異型」又は「修飾型」とは、ヌクレオチドが野生型、参照、又は元のITR配列に対して挿入、欠失、及び/又は置換されたことを示す。変更型又は変異型ITRは、操作されたITRであり得る。本明細書で使用される場合、「操作された」とは、人間の手によって操作された態様を指す。例えば、ポリペプチドは、ポリペプチドの少なくとも1つの態様、例えば、その配列が、人間の手によって操作され、それが天然に存在するときの態様とは異なるとき、「操作された」とみなされる。
【0238】
いくつかの実施形態では、mod-ITRは、合成であり得る。一実施形態では、合成ITRは、2つ以上のAAV血清型からのITR配列に基づいている。別の実施形態では、合成ITRは、AAVベース配列を含まない。更に別の実施形態では、合成ITRは、上記のITR構造を保存するが、わずかなAAV源配列を有するか、又は全く有しない。いくつかの態様では、合成ITRは、野生型Rep又は特定血清型のRepと選好的に相互作用し得るか、又は場合によっては、野生型Repによって認識されず、変異型Repによってのみ認識される。
【0239】
当業者であれば、既知の手段によって他の血清型における対応する配列を判定することができる。例えば、A、A’、B、B’、C、C’、又はD-D’領域中に変化が存在するかどうかを判定し、別の血清型における対応する領域を判定する。BLAST(登録商標)(Basic Local Alignment Search Tool)又は他の相同性アラインメントプログラムをデフォルト状態で使用して、対応する配列を判定することができる。本開示は、異なるAAV血清型の組み合わせからmod-ITRを含む集団及び複数のceDNAベクターを更に提供する。すなわち、1つのmod-ITRは、1つのAAV血清型に由来し得、他のmod-ITRは、異なる血清型に由来し得る。理論に束縛されるものではないが、一実施形態では、1つのITRは、AAV2 ITR配列に由来し得るか、又はそれに基づき得、ceDNAベクターの他のITRは、AAV血清型1(AAV1)、AAV血清型4(AAV4)、AAV血清型5(AAV5)、AAV血清型6(AAV6)、AAV血清型7(AAV7)、AAV血清型8(AAV8)、AAV血清型9(AAV9)、AAV血清型10(AAV10)、AAV血清型11(AAV11)、又はAAV血清型12(AAV12)の任意の1つ以上のITR配列に由来し得るか、又はそれに基づき得る。
【0240】
任意のパルボウイルスITRを、ITRとして、又は塩基ITRとして修飾に使用することができる。好ましくは、パルボウイルスは、ディペンドウイルスである。より好ましくは、AAVである。選択される血清型は、その血清型の組織向性に基づき得る。AAV2は、広い組織向性を有し、AAV1は、ニューロン及び骨格筋を選好的に標的とし、AAV5は、ニューロン、網膜色素上皮、及び光受容体を選好的に標的とする。AAV6は、骨格筋及び肺を選好的に標的とする。AAV8は、肝臓、骨格筋、心臓、及び膵臓組織を選好的に標的とする。AAV9は、肝臓、骨格、及び肺組織を選好的に標的とする。一実施形態では、修飾型ITRは、AAV2 ITRに基づいている。
【0241】
より具体的には、構造エレメントが特定の大きなRepタンパク質と機能的に相互作用する能力は、構造エレメントを修飾することによって変更され得る。例えば、構造エレメントのヌクレオチド配列は、ITRの野生型配列と比較して修飾され得る。一実施形態では、ITRの構造エレメント(例えば、Aアーム、A’アーム、Bアーム、B’アーム、Cアーム、C’アーム、Dアーム、RBE、RBE’、及びtrs)を除去し、異なるパルボウイルスからの野生型構造エレメントと置き換えることができる。例えば、置換構造は、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、ヘビパルボウイルス(例えば、ロイヤルパイソンパルボウイルス)、ウシパルボウイルス、ヤギパルボウイルス、トリパルボウイルス、イヌパルボウイルス、ウマパルボウイルス、エビパルボウイルス、ブタパルボウイルス、又は昆虫AAVからのものであり得る。例えば、ITRは、AAV2 ITRであり得、A若しくはA’アーム又はRBEは、AAV5からの構造エレメントと置き換えることができる。別の実施例では、ITRは、AAV5 ITRであり得、C又はC’アーム、RBE、及びtrsは、AAV2からの構造エレメントと置き換えることができる。別の実施例では、AAV ITRは、AAV5 ITRであり得、B及びB’アームは、AAV2 ITR B及びB’アームで置き換えられる。
【0242】
国際特許出願公開第WO2019/143885の表3は、修飾型ITRの領域中の少なくとも1つのヌクレオチドの例示的な修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を示し、Xは、対応する野生型ITRに対する、そのセクションにおける少なくとも1つの核酸の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)の非網羅的な例を提供する。いくつかの実施形態では、C及び/又はC’及び/又はB及び/又はB’の領域のうちのいずれかにおける少なくとも1つのヌクレオチドの任意の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)は、少なくとも1つの末端ループに3つの連続Tヌクレオチド(すなわち、TTT)を保持する。例えば、修飾が、単一アームITR(例えば、単一C-C’ルーム、若しくは単一B-B’ルーム)、又は修飾型C-B’アーム若しくはC’-Bアーム、又は少なくとも1つの切断されたアーム(例えば、切断されたC-C’ループ及び/若しくは切断されたB-B’ループ)を有する2つのアームITRのうちのいずれかをもたらす場合、少なくとも単一ループ、又は2つのループITRのループ(1つのアームは切断され得る)のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの末端ループに3つの連続Tヌクレオチド(すなわち、TTT)を保持する。いくつかの実施形態では、切断されたC-C’アーム及び/又は切断されたB-B’アームは、末端ループに3つの連続Tヌクレオチド(すなわち、TTT)を有する。
【0243】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される非対称ITR対又は対称mod-ITR対を含む合成的に産生されたceDNAベクターで使用するためのmod-ITRは、WO2019/143885の表3に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA’とCとの間、CとC’との間、C’とBとの間、BとB’との間、及びB’とAとの間から選択される領域のうちのいずれか1つ以上における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、C若しくはC’又はB若しくはB’領域中の少なくとも1つのヌクレオチドの任意の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)は、依然としてステムループの末端ループを保存する。いくつかの実施形態では、CとC’との間及び/又はBとB’との間の少なくとも1つのヌクレオチドの任意の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)は、少なくとも1つの末端ループに3つの連続Tヌクレオチド(すなわち、TTT)を保持する。代替的な実施形態では、CとC’との間及び/又はBとB’との間の少なくとも1つのヌクレオチドの任意の修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)は、少なくとも1つの末端ループに3つの連続Aヌクレオチド(すなわち、AAA)を保持する。いくつかの実施形態では、本明細書における使用のための修飾型ITRは、表3に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA’、A、及び/又はDから選択される領域のうちのいずれか1つ以上における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書における使用のための修飾型ITRは、WO2019/143885の表3に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA領域における少なくとも1つの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)も含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書における使用のための修飾型ITRは、WO2019/143885の表3に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA’領域における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書における使用のための修飾型ITRは、WO2019/143885の表3に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またA及び/又はA’領域における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書における使用のための修飾型ITRは、WO2019/143885の表3に示される修飾の組み合わせのうちのいずれか1つ、またD領域における少なくとも1つのヌクレオチドの修飾(例えば、欠失、挿入、及び/又は置換)を含み得る。
【0244】
一実施形態では、構造エレメントのヌクレオチド配列を修飾して(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20以上のヌクレオチド、又はその中の任意の範囲)、修飾型構造エレメントを産生することができる。一実施形態では、ITRに対する特定の修飾が、WO2019/143885の配列番号3、4、15~47、101~116、若しくは165~187、又は国際特許出願公開第WO2019/113310号の
図7A~
図7Bに示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる(例えば、WO2019/113310の配列番号97~98、101~103、105~108、111~112、117~134、545~54)。いくつかの実施形態では、ITRは、(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20以上のヌクレオチド、又はその中の任意の範囲を修飾することによって)修飾され得る。他の実施形態では、ITRは、配列番号3、4、15~47、101~116、又は165~187の修飾型ITRのうちの1つ、あるいはWO2019/143885の配列番号3、4、15~47、101~116、若しくは165~187、又は国際特許出願公開第WO2019/051255号の表2~9(すなわち、配列番号110~112、115~190、200~468)に示されている、A-A’ステム領域及びC-C’及びB-B’ループのRBE含有セクションと少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又はそれ以上の配列同一性を有し得る。
【0245】
いくつかの実施形態では、修飾型ITRは、例えば、特定アームの全部、例えば、A-A’ステム領域の全部若しくは一部、又はB-B’ループの全部若しくは一部、又はC-C’ループの全部若しくは一部の除去若しくは欠失、あるいは代替的に、ステム(例えば、単一アーム)をキャップする最終ループが依然として存在する限り、ループを形成する1、2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上の塩基対の除去(例えば、WO2019/113310号の
図7AのITR-21を参照されたい)を含み得る。いくつかの実施形態では、修飾型ITRは、B-B’アームからの1、2、3、4、5、6、7、8、9以上の塩基対の除去を含み得る。いくつかの実施形態では、修飾型ITRは、C-C’アームからの1、2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上の塩基対の除去を含み得る(例えば、WO2019/113310の
図3BのITR-1又は
図7AのITR-45を参照されたい)。いくつかの実施形態では、修飾型ITRは、C-C’アームからの1、2、3、4、5、6、7、8、9以上の塩基対の除去、及びB-B’ループからの1、2、3、4、5、6、7、8、9以上の塩基対の除去を含み得る。塩基対の除去の任意の組み合わせが想起され、例えば、C-C’ループにおける6つの塩基対、及びB-B’ループにおける2つの塩基対が除去され得る。
【0246】
いくつかの実施形態では、修飾型ITRは、全長野生型ITR配列に対して1~50(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50)ヌクレオチド欠失を有し得る。いくつかの実施形態では、修飾型ITRは、全長WT ITR配列に対して1~30ヌクレオチド欠失を有し得る。いくつかの実施形態では、修飾型ITRは、全長野生型ITR配列に対して2~20ヌクレオチド欠失を有する。
【0247】
いくつかの実施形態では、修飾型ITRは、DNA複製(例えば、Repタンパク質によるRBEへの結合、若しくは末端分離部位でのニッキング)に干渉しないように、A又はA’ステム領域のRBE含有部分にいかなるヌクレオチド欠失も含有しない。いくつかの実施形態では、本明細書における使用のために包含される修飾型ITRは、本明細書に記載されるB、B’、C、及び/又はC領域に1つ以上の欠失を有する。
【0248】
いくつかの実施形態では、対称ITR対又は非対称ITR対を含む合成的に産生されたceDNAベクターは、本明細書に開示されるような調節スイッチ、及び国際特許出願公開第WO2019/143885号の配列番号3、4、15~47、101~116、又は165~187からなる群のうちのいずれかから選択されるヌクレオチド配列を有する選択された少なくとも1つの修飾型ITRを含む。
【0249】
別の実施形態では、構造エレメントの構造は、修飾され得る。例えば、構造エレメントは、ステムの高さ及び/又はループ内のヌクレオチドの数の変化。例えば、ステムの高さは、約2、3、4、5、6、7、8、若しくは9ヌクレオチド以上、又はその中の任意の範囲であり得る。一実施形態では、ステムの高さは、約5ヌクレオチド~約9ヌクレオチドであり得、Repと機能的に相互作用する。別の実施形態では、ステム高さは、約7ヌクレオチドであり得、Repと機能的に相互作用する。別の実施例では、ステムの高さは、約3、4、5、6、7、8、9、若しくは10ヌクレオチド、又はそれ以上、又はその中の任意の範囲を有し得る。
【0250】
別の実施形態では、RBE又は伸長RBE内のGAGY結合部位又はGAGY関連結合部位の数は、増加又は減少され得る。一実施例では、RBE又は伸長RBEは、1、2、3、4、5、若しくは6以上のGAGY結合部位、又はその中の任意の範囲を含み得る。各GAGY結合部位は、独立して、配列がRepタンパク質に結合するのに十分である限り、正確なGAGY配列又はGAGYと同様の配列であり得る。
【0251】
別の実施形態では、2つのエレメント(限定されないが、RBE及びヘアピンなど)の間の空間を変更して(例えば、増加又は減少)、大きなRepタンパク質との機能的相互作用を変更することができる。例えば、空間は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、若しくは21ヌクレオチド以上、又はその中の任意の範囲であり得る。
【0252】
本明細書に記載される合成的に産生されたceDNAベクターは、本明細書に開示される野生型AAV2 ITR構造に関して修飾されるITR構造を含み得るが、依然として操作可能なRBE、trs、及びRBE’部分を保持する。いくつかの実施形態では、そのようなITR(野生型又は修飾型ITR)は、機能的である。ceDNAベクターが、互いに異なるか、又は非対称である2つの修飾型ITRを含む代替的な実施形態では、少なくとも1つの修飾型ITRは、機能的であり、少なくとも1つの修飾型ITRは、非機能的である。
【0253】
いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターは、国際特許出願公開第WO2019/143885号に開示されているように、配列番号500~529からなる、又は本質的にそれからなる任意の配列から選択される修飾型ITRを有しない。いくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、WO2019/143885の配列番号500~529から選択される任意の配列から選択されるITRを有しない。
【0254】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成的に産生されたceDNAベクターの修飾型ITR(例えば、左又は右ITR)は、ループ、切断されたループ、又はスペーサ内に修飾を有する。ループ、切断されたループ、又はスペーサ内に修飾を有するITRの例示的な配列は、国際特許出願公開第WO2019/051255号の表2(すなわち、WO2019/143885の配列番号135~190、200~233)、WO2019/051255の表3(例えば、WO2019/143885の配列番号234~263)、WO2019/051255の表4(例えば、WO2019/143885の配列番号264~293)、WO2019/051255の表5(例えば、WO2019/143885の配列番号294~318)、WO2019/051255の表6(例えば、WO2019/143885の配列番号319~468)、及びWO2019/051255の表7~9(例えば、WO2019/143885の配列番号101~110、111~112、115~134)、又はWO2019/051255の表10A若しくは10B(例えば、WO2019/143885の配列番号9、100、469~483、484~499)に列挙されている。
【0255】
いくつかの実施形態では、非対称ITR対又は対称mod-ITR対を含む合成的に産生されたceDNAベクターにおける使用のための修飾型ITRは、WO2019/051255の表2、3、4、5、6、7、8、9、及び10A~10Bに示されるもののうちのいずれか、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0256】
上記のクラスの各々に非対称ITR対又は対称mod-ITR対を含む合成的に産生されたceDNAベクターで使用するための追加の例示的な修飾型ITRをWO2019/143885の表4A及び4Bに示す。
【0257】
一実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターは、5’から3’方向に、第1のアデノ関連ウイルス(AAV)逆位末端反復(ITR)、関心対象のヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載される発現カセット)、及び第2のAAV ITRを含み、第1のITR(5’ITR)及び第2のITR(3’ITR)は、互いに非対称である。すなわち、それらは互いに異なる3次元空間構成を有する。例示的な実施形態として、第1のITRは、野生型ITRであり得、第2のITRは、変異型又は修飾型ITRであり得るか、又はその逆であり、第1のITRは、変異型又は修飾型ITRであり得、第2のITRは、野生型ITRであり得る。いくつかの実施形態では、第1のITR及び第2のITRは、両方ともmod-ITRであるが、異なる配列を有するか、又は異なる修飾を有し、したがって同じ修飾型ITRではなく、異なる三次元空間構成を有する。言い換えると、非対称ITRを有するceDNAベクターは、WT-ITRに対する1つのITRにおける任意の変化が他のITRに反映されないITRを含むか、又は代替的に、非対称ITRが修飾された非対称ITR対を有する場合、互いに対して異なる配列及び異なる三次元形状を有し得る。ceDNAベクター中の、ceDNA-プラスミドを生成するために使用するための例示的な非対称ITRは、WO2019/143885の表4A及び4Bに示されている。
【0258】
代替的な実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターは、2つの対称的なmod-ITRを含む。すなわち、両方のITRは、同じ配列を有するが、互いの逆相補鎖(逆位)である。いくつかの実施形態では、対称mod-ITR対は、同じAAV血清型からの野生型ITR配列と比較して、欠失、挿入、又は置換の少なくとも1つ又は任意の組み合わせを含む。対称のITRの付加、欠失、又は置換は同じであるが、互いの逆相補体である。例えば、5’ITRのC領域への3ヌクレオチドの挿入は、3’ITRのC’領域の対応するセクションへの3つの逆相補体ヌクレオチドの挿入に反映される。
【0259】
代替的な実施形態では、修飾型ITR対は、本明細書で定義されるように実質的に対称であり、すなわち、修飾型ITR対は、異なる配列を有し得るが、対応する又は同じ対称の三次元形状を有し得る。例えば、1つの修飾型ITRは、1つの血清型に由来し得、他の修飾型ITRは、異なる血清型に由来し得るが、それらは同じ領域において同じ変異(例えば、ヌクレオチド挿入、欠失、又は置換)を有する。言い換えると、単なる説明の目的で、5’mod-ITRは、AAV2に由来し得、C領域に欠失を有し、3’mod-ITRは、AAV5に由来し得、C’領域に対応する欠失を有する。5’mod-ITR及び3’mod-ITRが同じ又は対称な三次元空間構成を有することを条件として、それらは本明細書における修飾型ITR対としての使用に包含される。
【0260】
いくつかの実施形態では、実質的に対称のmod-ITR対は、三次元空間で同じA-A’ステム領域、C-C’及びB-B’ループを有する。例えば、実質的に対称のmod-ITR対の修飾型ITRがC-C’アームの欠失を有する場合、同族のmod-ITRは、C-C’ループの対応する欠失を有し、またその同族のmod-ITRの幾何学的空間に同じ形状の残りのA及びB-B’ループの同様の三次元構造を有する。単なる例として、実質的に対称のITRは、それらの構造が幾何学的空間において同じ形状であるように、対称空間構成を有し得る。これは、例えば、G-C対が、例えばC-G対に、若しくはその逆に修飾されたとき、又はA-T対がT-A対に、若しくはその逆に修飾されたときに起こり得る。いくつかの実施形態では、修飾型ITR対が対称立体化学を有するため、そのような修飾型ITRは、実質的に対称である。
【0261】
国際特許出願公開第WO2019/143885号の表5は、例示的な対称修飾型ITR対(すなわち、左修飾型ITR及び対称右修飾型ITR)を提供する。
【0262】
いくつかの実施形態では、非対称ITR対を含むceDNAベクターは、WO2019/143885の表4A~4Bのいずれか1つ以上に示されるITR配列若しくはITR部分配列、あるいは国際特許出願公開第WO2019/113310号の
図7A及び
図7Bに示されているか、又は国際出願公開第WO2019/051255号の表2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10A~10Bに開示されている配列における修飾のうちのいずれかに対応する修飾を有するITRを含み得る。
【0263】
V.例示的なceDNAベクター
上記のように、本開示は、合成的に産生された組換えceDNA発現ベクター、及び上記の非対称のITR対、対称のITR対、又は実質的に対称のITR対のうちのいずれか1つを含む導入遺伝子をコードするceDNAベクターに関する。ある特定の実施形態では、本開示は、隣接するITR及び導入遺伝子を有する合成的に産生された組換えceDNAベクターに関し、ITRは、本明細書で定義されるように、互いに対して非対称、対称、又は実質的に対称であり、ceDNAは、隣接するITRの間に位置する関心対象のヌクレオチド配列(例えば、導入遺伝子の核酸を含む発現カセット)を更に含み、当該核酸分子は、ウイルスカプシドタンパク質コード配列を欠いている。
【0264】
合成的に産生されたceDNA発現ベクターは、少なくとも1つのITRが変更されている場合、本明細書に記載されるヌクレオチド配列を含む組換えDNA手順に都合よく供することができる任意のceDNAベクターであってよい。本開示の合成的に産生されたceDNAベクターは、ceDNAベクターが導入される宿主細胞と適合性がある。ある特定の実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターは、直鎖状であってもよい。ある特定の実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターは、染色体外実体として存在し得る。ある特定の実施形態では、本開示の合成的に産生されたceDNAベクターは、宿主細胞のゲノムへのドナー配列の組み込みを可能にするエレメントを含有し得る。
【0265】
ここで本明細書に提供される
図1A~
図1B、更に国際特許出願公開第WO2019/143885号の
図1A~
図1Gを参照すると、非対称ITR又は対称若しくは実質的に対称なITRを有するceDNAの2つの非限定的な例の機能的構成要素の概略図が示されている。いくつかの実施形態では、発現可能な導入遺伝子カセットは、必要に応じて、エンハンサ/プロモータ、1つ以上の相同性アーム、ドナー配列、転写後調節エレメント(例えば、WPRE、例えば、WO2019/143885の配列番号67))、並びにポリアデニル化及び終結シグナル(例えば、BGHポリA、例えば、WO2019/143885の配列番号68)を含む。
【0266】
調節エレメント
本明細書に記載され、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターは、本明細書で定義される非対称のITR対又は対称のITR対を含み得、シス調節エレメントの特定の組み合わせを更に含み得る。シス調節エレメントとしては、プロモータ、リボスイッチ、インスレータ、mir調節エレメント、転写後調節エレメント、組織及び細胞型特異的プロモータ、並びにエンハンサが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ITRは、導入遺伝子のプロモータとして作用し得る。いくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、導入遺伝子の発現を調節するための追加の構成成分、例えば、本明細書に記載される調節スイッチを含み、導入遺伝子、又はceDNAベクターを含む細胞を殺傷し得るキルスイッチの発現を調節する。本開示で使用され得る調節スイッチを含む調節エレメントは、国際特許出願公開第WO2019/051255号においてより完全に論じられている。
【0267】
いくつかの実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、調節配列、及びヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、遺伝子調節配列は、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。ある特定の実施形態では、調節配列は、宿主細胞におけるヌクレアーゼの発現を制御するのに好適である。ある特定の実施形態では、調節配列は、本開示のヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列などのプロモータ配列に作動可能に連結された遺伝子の転写を指示することができる、好適なプロモータ配列を含む。ある特定の実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列の5’末端に連結されたイントロン配列を含む。ある特定の実施形態では、エンハンサ配列がプロモータの上流に提供されて、プロモータの効力を増大させる。ある特定の実施形態では、調節配列は、エンハンサ及びプロモータを含み、第2のヌクレオチド配列は、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列の上流のイントロン配列を含み、イントロンは、1つ以上のヌクレアーゼ切断部位を含み、プロモータは、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
【0268】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターは、WHP転写後調節エレメント(WPRE)(例えば、WO2019/143885の配列番号67)及びBGHポリA(WO2019/143885の配列番号68)などのシス調節エレメントの特定の組み合わせを更に含み得る。発現構築物における使用のための好適な発現カセットは、ウイルスカプシドによって課されるパッケージング制約によって制限されない。
【0269】
プロモータ
当業者は、本開示の合成的に産生されたceDNAベクターで使用されるプロモータが、それらが促進する特定の配列に対して適切に調整されるべきであることを理解するであろう。例えば、ガイドRNAは、その機能が、未変性DNA上の特定の標的配列と二重鎖を形成して組換え事象を発生させるため、プロモータを全く必要としない場合がある。対照的に、ceDNAベクターによってコードされたヌクレアーゼは、プロモータから恩恵を受けるため、ベクターから効率的に、かつ任意選択的に調節可能な方法で発現させることができる。
【0270】
本開示の発現カセットは、全体発現レベル並びに細胞特異性に影響を及ぼし得る、プロモータを含む。導入遺伝子発現の場合、それらは、非常に活発なウイルス由来の最初期プロモータを含み得る。発現カセットは、導入遺伝子発現を特定の細胞型に制限し、無秩序な異所性発現から生じる毒性効果及び免疫応答を低減するために組織特異的真核生物プロモータを含有し得る。好ましい実施形態では、発現カセットは、CAGプロモータ(WO2019/143885の配列番号72)などの合成調節エレメントを含有し得る。CAGプロモータは、(i)サイトメガロウイルス(cytomegalovirus、CMV)初期エンハンサエレメント、(ii)プロモータ、ニワトリベータ-アクチン遺伝子の第1のエキソン及び第1のイントロン、並びに(iii)ウサギベータ-グロビン遺伝子のスプライスアクセプターを含む。代替的に、発現カセットは、アルファ-1-抗トリプシン(AAT)プロモータ(WO2019/143885の配列番号73若しくは配列番号74)、肝臓特異的(LP1)プロモータ(WO2019/143885の配列番号75若しくは配列番号76)、又はヒト伸長因子-1アルファ(EF1a)プロモータ(例えば、WO2019/143885の配列番号77若しくは配列番号78)を含有し得る。いくつかの実施形態では、発現カセットは、1つ以上の構成的プロモータ、例えば、レトロウイルスラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモータ(任意選択的にRSVエンハンサを有する)、又はサイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモータ(任意選択的にCMVエンハンサを有する、例えば、WO2019/143885の配列番号79)を含む。代替的に、誘導性プロモータ、導入遺伝子の未変性プロモータ、組織特異的プロモータ、又は当該技術分野において既知の様々なプロモータを使用することができる。
【0271】
上記のものを含む好適なプロモータは、ウイルスに由来し得るため、ウイルスプロモータと称され得るか、又はそれらは、原核生物又は真核生物を含む任意の生物に由来し得る。好適なプロモータを使用して、任意のRNAポリメラーゼ(例えば、pol I、pol II、pol III)によって発現を駆動することができる。例示的なプロモータとしては、SV40初期プロモータ、マウス乳房腫瘍ウイルスの長い末端反復配列(long terminal repeat、LTR)プロモータ;アデノウイルス主要後期プロモータ(adenovirus major late promoter、Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus、HSV)プロモータ、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ、例えば、CMV最初期プロモータ領域(CMVIE)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモータ、ヒトU6小核プロモータ(U6、例えば、WO2019/143885の配列番号80)(Miyagishi et al.,Nature Biotechnology 20,497-500(2002))、増強されたU6プロモータ(例えば、Xia et al.,Nucleic Acids Res.2003 Sep.1;31(17))、ヒトH1プロモータ(H1)(例えば、WO2019/143885の配列番号81又は配列番号155)、CAGプロモータ、ヒトアルファ1-アンチトリプシン(HAAT)プロモータ(例えば、WO2019/143885の配列番号82)などが挙げられる。ある特定の実施形態では、これらのプロモータは、それらの下流イントロン含有端で変更され、1つ以上のヌクレアーゼ切断部位を含む。ある特定の実施形態では、ヌクレアーゼ切断部位を含有するDNAは、プロモータDNAに対して外来である。
【0272】
一実施形態では、使用されるプロモータは、治療用タンパク質をコードする遺伝子のネイティブプロモータである。治療用タンパク質をコードするそれぞれの遺伝子のプロモータ及び他の調節配列は既知であり、特徴付けられている。使用されるプロモータ領域は、1つ以上の追加の調節配列(例えば、未変性)、例えば、エンハンサ(例えば、WO2019/143885の配列番号79及び配列番号83)を更に含み得る。
【0273】
本開示による使用のための好適なプロモータ又はプロモータセットの非限定的な例としては、例えば、CAGプロモータ(WO2019/143885の配列番号72)、HAATプロモータ(WO2019/143885の配列番号82)、ヒトEF1-αプロモータ(WO2019/143885の配列番号77)、又はEF1aプロモータ(WO2019/143885の配列番号78)、IE2プロモータ(例えば、WO2019/143885の配列番号84)、及びラットEF1-αプロモータ(WO2019/143885の配列番号85)、又は1E1プロモータ断片(WO2019/143885の配列番号125)が挙げられる。
【0274】
ポリアデニル化配列
ポリアデニル化配列をコードする配列は、合成的に産生されたceDNAベクターから発現されたmRNAを安定化するため、及び核輸送及び翻訳を助けるために、ceDNAベクター中に含まれ得る。一実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターは、ポリアデニル化配列を含まない。他の実施形態では、ベクターは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50以上のアデニンジヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリアデニル化配列は、約43ヌクレオチド、約40~50ヌクレオチド、約40~55ヌクレオチド、約45~50ヌクレオチド、約35~50ヌクレオチド、又はその間の任意の範囲を含む。
【0275】
発現カセットは、当該技術分野において既知のポリアデニル化配列又はその変形、例えば、ウシBGHpA(例えば、WO2019/143885の配列番号68)若しくはウイルスSV40pA(例えば、WO2019/143885の配列番号86)から単離された天然に存在する配列、又は合成配列(例えば、WO2019/143885の配列番号87)を含み得る。いくつかの発現カセットはまた、SV40後期ポリAシグナル上流エンハンサ(upstream enhancer、USE)配列を含み得る。いくつかの実施形態では、USEは、SV40pA又は異種ポリAシグナルと組み合わせて使用され得る。
【0276】
発現カセットはまた、導入遺伝子の発現を増加させるために、転写後エレメントを含み得る。いくつかの実施形態では、ウッドチャック肝炎ウイルス(Woodchuck Hepatitis Virus、WHP)転写後調節エレメント(WPRE)(例えば、WO2019/143885の配列番号67)を使用して、導入遺伝子の発現を増加させる。他の転写後処理エレメント、例えば、単純ヘルペスウイルス又はB型肝炎ウイルス(HBV)のチミジンキナーゼ遺伝子からの転写後エレメントを使用することができる。分泌配列は、導入遺伝子、例えば、VH-02及びVK-A26配列、例えば、WO2019/143885の配列番号88及び配列番号89に連結され得る。
【0277】
核局在化配列
いくつかの実施形態では、RNA誘導型エンドヌクレアーゼをコードするベクターは、1つ以上の核局在化配列(nuclear localization sequence、NLS)、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のNLSを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上のNLSは、アミノ末端又はその近く、カルボキシ末端又はその近く、又はこれらの組み合わせ(例えば、アミノ末端における1つ以上のNLS及び/又はカルボキシ末端における1つ以上のNLS)に位置する。複数のNLSが存在する場合、各々を他のNLSから独立して選択することができ、それにより、単一のNLSが複数のコピーに、及び/又は1つ以上のコピーに存在する1つ以上の他のNLSと組み合わせて存在する。NLSの非限定的な例は、国際特許出願公開第WO2019/143885号の表6に示されている。
【0278】
ceDNAベクターの追加の構成要素
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターは、遺伝子発現のための他の構成成分をコードするヌクレオチドを含有し得る。例えば、特定の遺伝子標的事象を選択するには、保護shRNAをマイクロRNAに埋め込み、アルブミン遺伝子座などの高活性遺伝子座に部位特異的に統合するように設計された組換えceDNAベクターに挿入することができる。そのような実施形態は、Nygaard et al.,A universal system to select gene-modified hepatocytes in vivo,Gene Therapy,June 8,2016に記載されているような任意の遺伝的背景における遺伝子修飾肝細胞のインビボ選択及び拡大のための系を提供し得る。本開示のceDNAベクターは、形質転換、トランスフェクト、形質導入などされた細胞の選択を可能にする1つ以上の選択可能なマーカーを含有し得る。選択可能なマーカーは、その産物が殺生物剤又はウイルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求性に対する原栄養性、NeoRなどを提供する遺伝子である。ある特定の実施形態では、正の選択マーカーが、NeoRなどのドナー配列に組み込まれる。負の選択マーカーは、ドナー配列の下流に組み込むことができ、例えば、負の選択マーカーをコードする核酸配列HSV-tkを、ドナー配列の下流の核酸構築物に組み込むことができる。
【0279】
実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターは、例えば、国際特許出願公開第WO2019/113310号に開示されているように遺伝子編集に使用することができ、5’相同性アーム、3’相同性アーム、ポリアデニル化部位上流、及び5’相同性アームに近接のうちの1つ以上を含み得る。例示的な相同性アームは、5’及び3’アルブミン相同性アーム(WO2019/143885の配列番号151及び152)又はCCR5 5’及び3’相同性アーム(例えば、WO2019/143885の配列番号153、154)である。
【0280】
調節スイッチ
分子調節スイッチは、シグナルに応答して、状態の測定可能な変化を生成するものである。そのような調節スイッチは、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターと有用に組み合わせて、ceDNAベクターからの導入遺伝子の発現の出力を制御することができる。いくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、導入遺伝子の発現を微調整するのに役立つ調節スイッチを含む。例えば、ceDNAベクターの生物学的封じ込め機能として役立ち得る。いくつかの実施形態では、スイッチは、ceDNAベクターにおける関心対象の遺伝子の、制御可能かつ調節可能な発現を開始又は停止(すなわち、シャットダウン)するように設計された「オン/オフ」スイッチである。いくつかの実施形態では、スイッチは、一旦スイッチが起動されると、ceDNAベクターを含む細胞がプログラム細胞死を受けるよう指示することができる「キルスイッチ」を含み得る。ceDNAベクターにおける使用に包含される例示的な調節スイッチは、導入遺伝子の発現を調節するために使用することができ、国際特許出願公開第WO2019/113310号においてより完全に論じられている。
【0281】
(i)バイナリ調節スイッチ
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターは、導入遺伝子の発現を制御可能に調整するのに役立ち得る調節スイッチを含む。例えば、ceDNAベクターのITRの間に位置する発現カセットは、関心対象の遺伝子に操作可能に連結された調節領域、例えば、プロモータ、シスエレメント、リプレッサ、エンハンサなどを追加的に含み得、この調節領域は、1つ以上の共因子又は外因性薬剤によって調節される。単なる例として、調節領域は、小分子スイッチ又は誘導性若しくは抑制性プロモータによって調節され得る。誘導性プロモータの非限定的な例は、ホルモン誘導性又は金属誘導性プロモータである。他の例示的な誘導性プロモータ/エンハンサエレメントとしては、RU486誘導性プロモータ、エクジソン誘導性プロモータ、ラパマイシン誘導性プロモータ、及びメタロチオネインプロモータが挙げられるが、これらに限定されない。
【0282】
(ii)小分子調節スイッチ
様々な当該技術分野において既知の小分子系調節スイッチは、当該技術分野において既知であり、本明細書に開示される合成的に産生されたceDNAベクターと組み合わせて、調節スイッチによって制御されるceDNAベクターを形成することができる。いくつかの実施形態では、調節スイッチは、Taylor,et al.,BMC Biotechnology 10(2010):15に開示されている作動可能に連結された導入遺伝子の発現を制御する人工プロモータとともに直交性リガンド/核受容体対、例えば、レチノイド受容体バリアント/LG335及びGRQCIMFI、操作されたステロイド受容体(例えば、プロゲステロンに結合できないが、RU486(ミフェプリストン)に結合するC末端切断を有する修飾プロゲステロン受容体(米国特許第5,364,791号)、Drosophilaからのエクジソン受容体及びそれらのエクジステロイドリガンド(Saez,et al.,PNAS,97(26)(2000),14512-14517、又はSando R 3rd;Nat Methods.2013,10(11):1085-8に開示される抗生物質トリメトプリム(TMP)によって制御されるスイッチのうちのいずれか1つ又は組み合わせから選択され得る。いくつかの実施形態では、ceDNAベクターによって発現される導入遺伝子を制御するための調節スイッチは、米国特許第8,771,679号及び同第6,339,070号に開示されるものなどのプロドラッグ活性化スイッチである。
【0283】
(iii)「パスコード」調節スイッチ
いくつかの実施形態では、調節スイッチは、「パスコードスイッチ」又は「パスコード回路」であり得る。パスコードスイッチは、特定の条件が起こったときに、合成的に産生されたceDNAベクターからの導入遺伝子の発現の制御の微調整を可能し、すなわち、導入遺伝子の発現及び/又は抑制が起こるためには、条件の組み合わせが存在する必要がある。例えば、導入遺伝子の発現が起こるためには、少なくとも条件A及びBが起こらなければならない。パスコード調節スイッチは、任意の数の条件であり得、例えば、導入遺伝子の発現が起こるためには、少なくとも2、又は少なくとも3、又は少なくとも4、又は少なくとも5、又は少なくとも6、又は少なくとも7つ以上の条件が存在する。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの条件(例えば、A、B条件)が起こる必要があり、いくつかの実施形態では、少なくとも3つの条件が起こる必要がある(例えば、A、B、及びC又はA、B、及びD)。単なる例として、パスコード「ABC」調節スイッチを有するceDNAからの遺伝子発現が起こるためには、条件A、B、及びCが存在しなければならない。条件A、B、及びCは、以下のとおりであり得る:条件Aは、病態又は疾患の存在であり、条件Bは、ホルモン応答であり、条件Cは、導入遺伝子の発現に対する応答である。例えば、導入遺伝子が欠陥EPO遺伝子を編集する場合、条件Aは、慢性腎疾患(Chronic Kidney Disease、CKD)の存在であり、条件Bは、対象が腎臓中に低酸素状態を有する場合に起こり、条件Cは、腎臓中のエリスロポエチン産生細胞(Erythropoietin-producing cell、EPC)動員が不全であるか、又は代替的に、HIF-2活性化が不全である。一旦酸素レベルが増加するか、又は所望のEPOレベルに達すると、導入遺伝子は、3つの条件が起こるまで再度オフになり、オンに戻る。
【0284】
いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターにおける使用のために包含されるパスコード調節スイッチ又は「パスコード回路」は、生物学的封じ込め条件を定義するために使用される環境シグナルの範囲及び複雑性を拡張するために、ハイブリッド転写因子(TF)を含む。既定条件の存在下で細胞死を誘起するデッドマンスイッチとは対照的に、「パスコード回路」は、特定の「パスコード」の存在下での細胞生存又は導入遺伝子発現を可能にし、所定の環境条件又はパスコードが存在する場合にのみ導入遺伝子発現及び/又は細胞生存を可能にするように容易に再プログラムされ得る。
【0285】
本明細書に開示される調節スイッチ、例えば、小分子スイッチ、核酸ベーススイッチ、小分子-核酸ハイブリッドスイッチ、転写後導入遺伝子調節スイッチ、翻訳後調節放射線制御スイッチ、低酸素媒介性スイッチ、及び本明細書に開示される当業者に既知の他の調節スイッチのうちのいずれか及び全ての組み合わせを、本明細書に開示されるパスコード調節スイッチにおいて使用することができる。使用のために包含される調節スイッチはまた、レビュー論文Kis et al.,J R Soc Interface.12:20141000(2015)に記載されており、Kisの表1にまとめられている。
【0286】
(iv)導入遺伝子発現を制御するための核酸ベース調節スイッチ
いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターによって発現された導入遺伝子を制御するための調節スイッチは、核酸系制御機序に基づく。例示的な核酸制御機序は、当該技術分野において既知であり、使用が想定される。例えば、そのような機序としては、リボスイッチ、例えば、米国特許出願公開第2009/0305253号、同第2008/0269258号、同第2017/0204477号、国際特許出願公開第WO2018026762(A1)号、米国特許第9,222,093号、及びVilla JK et al.,Microbiol Spectr.2018 May;6(3)によるレビューに開示されているものなどが挙げられる。国際特許出願公開第WO2018/075486号及び同第WO2017/147585号に開示されるものなどの、代謝物応答性転写バイオセンサーもまた含まれる。使用が想定される他の当該技術分野において既知の機序としては、siRNA又はRNAi分子(例えば、miR、shRNA)による導入遺伝子のサイレンシングが挙げられる。例えば、ceDNAベクターは、ceDNAベクターによって発現される導入遺伝子に対して相補的であるRNAi分子をコードする調節スイッチを含み得る。導入遺伝子は、ceDNAベクターによって発現されたとしてもそのようなRNAiが発現される場合、相補的RNAi分子によってサイレンシングされ、導入遺伝子がceDNAベクターによって発現されたときにRNAiが発現されない場合、導入遺伝子は、RNAiによってサイレンシングされない。
【0287】
いくつかの実施形態では、調節スイッチは、例えば、米国特許出願公開第2002/0022018号に開示される組織特異的自己不活化調節スイッチであり、これにより調節スイッチは、そうでなければ導入遺伝子発現が不利益となり得る部位において、導入遺伝子発現を意図的にスイッチオフする。いくつかの実施形態では、調節スイッチは、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0127162号及び米国特許第8,324,436号に開示されているようなリコンビナーゼ可逆的遺伝子発現系である。
【0288】
(v)転写後及び翻訳後調節スイッチ。
いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターによって発現された関心対象の導入遺伝子又は遺伝子を制御するための調節スイッチは、転写後修飾系である。例えば、そのような調節スイッチは、米国特許出願公開第2018/0119156号、英国特許出願公開第GB2011/07768号、国際特許出願公開第WO2001/064956(A3)号、欧州特許第2707487号、及びBeilstein et al.,ACS Synth.Biol.,2015,4(5),pp 526-534;Zhong et al.,Elife.2016 Nov 2;5.Pii:e18858に開示されているように、テトラサイクリン又はテオフィリンに感受性のあるアプタザイムリボスイッチであり得る。いくつかの実施形態では、当業者であれば、導入遺伝子、及びリガンド感受性(オフスイッチ)アプタマーを含有し、その最終結果がリガンド感受性オンスイッチである、阻害性siRNAの両方をコードすることができると想定される。
【0289】
(vi)他の例示的な調節スイッチ
任意の既知の調節スイッチを合成的に産生されたceDNAベクター中で使用して、環境変化によってトリガーされるものを含む、ceDNAベクターによって発現された導入遺伝子の遺伝子発現を制御することができる。更なる例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:Suzuki et al.,Scientific Reports 8;10051(2018)のBOC法、遺伝暗号の拡大及び非生理的アミノ酸、放射線制御又は超音波制御オン/オフスイッチ(例えば、Scott S et al.,Gene Ther.2000 Jul;7(13):1121-5、米国特許第5,612,318号、同第5,571,797号、同第5,770,581号、同第5,817,636号、及び国際特許出願公開第WO1999/025385(A1)号を参照されたい。いくつかの実施形態では、調節スイッチは、例えば、米国特許第7,840,263号、米国特許出願公開第2007/0190028(A1)号に開示されている埋め込み型システムによって制御され、遺伝子発現が、ceDNAベクター中の導入遺伝子に作動可能に連結されたプロモータを活性化する電磁エネルギーを含む1つ以上の形態のエネルギーによって制御される。
【0290】
いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターにおける使用が想定される調節スイッチは、低酸素媒介性又はストレス活性化スイッチ、例えば、国際特許出願公開第WO1999060142(A2)号、米国特許第5,834,306号、同第6,218,179号、同第6,709,858号、米国特許出願公開第2015/0322410号、Greco et al.,(2004)Targeted Cancer Therapies 9,S368、並びにFROG、TOAD、及びNRSEエレメント、並びに条件的誘導性サイレンシングエレメント(低酸素応答エレメント(hypoxia response element、HRE)、炎症反応エレメント(inflammatory response element、IRE)、及び米国特許第9,394,526号に開示されている剪断応力活性化エレメント(shear-stress activated element、SSAE)が含まれる)に開示されているものである。そのような実施形態は、虚血後、又は虚血性組織及び/若しくは腫瘍において、ceDNAベクターからの導入遺伝子の発現をオンにするために有用である。
【0291】
(vii)キルスイッチ
本開示の他の実施形態は、キルスイッチを含む合成的に産生されたceDNAベクターに関する。本明細書に開示されるキルスイッチは、ceDNAベクターを含む細胞が殺滅されるか、又は導入されたceDNAベクターを対象の系から永久に除去する手段としてプログラム細胞死を受けるようにすることができる。本開示の合成的に産生されたceDNAベクターにおけるキルスイッチの使用が、通常は、対象が許容可能に喪失し得る限定数の細胞、又はアポトーシスが望ましい細胞型(例えば、がん細胞)へのceDNAベクターの標的と結びつけられることは、当業者によって理解されるであろう。全ての態様では、本明細書に開示される「キルスイッチ」は、入力生存シグナル又は他の指定条件の不在下でceDNAベクターを含む細胞の急速かつ堅牢な細胞殺滅をもたらすように設計される。言い換えれば、本明細書においてceDNAベクターによりコードされるキルスイッチは、ceDNAベクターを含む細胞の細胞生存を、特定の入力シグナルによって定義される環境に制限し得る。そのようなキルスイッチは、対象から合成的に産生されたceDNAベクターを除去すること、又はコードされた導入遺伝子を発現しないことを保証することが望ましいときに、生物学的封じ込め機能として役立つ。
【0292】
VI.関連する基本ベクター、構築物、及びキット
本開示の更なる態様は、閉端DNA(ceDNA)ベクターなどのDNAベクターの無細胞合成を容易にするように操作された基本ベクター及び二本鎖DNA構築物を対象とする。
【0293】
基本ベクター
本明細書に提供される基本ベクターは、いかなる導入遺伝子も異種核酸も保有しないベクターである。代わりに、これらの基本ベクターは、導入遺伝子を受容することができるマルチクローニング部位を含有する。追加的に、基本ベクターは、非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び複数のクローニング部位に隣接するそれらの対応する切断部位を含む。基本ベクターはまた、マルチクローニング部位に隣接する部分的ITRを更に含む。したがって、一実施形態、及び認識部位が特異的である制限エンドヌクレアーゼの実施形態を含む、本明細書に開示される上述のうちのいずれかの全ての実施形態では、基本ベクターは、5’→3’の順序で:第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位、第1の部分ITR、マルチクローニング部位、第2の部分ITR、並びに第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位を含有する。いくつかの実施形態では、基本ベクターは、複製起源及び選択可能なマーカー遺伝子を更に含む。いくつかの実施形態では、基本ベクターは、第1の部分ITRと導入遺伝子発現カセットとの間のスペーサ、第2の部分ITRと導入遺伝子発現カセットとの間のスペーサ、及び/又はマルチクローニング部位内のスペーサなどの、1つ以上のスペーサ領域を更に含む(例えば、例示的な基本ベクタープラスミド11を示す
図2を参照されたい)。
【0294】
例示的な基本ベクターとしては、以下に示される、プラスミド17(配列番号9)、プラスミド20(配列番号10)、プラスミド18(配列番号11)、プラスミド15(配列番号12)、プラスミド1(配列番号13)、プラスミド11(配列番号14)、プラスミド8(配列番号15)、プラスミド7(配列番号16)、及びプラスミド6(配列番号17)が挙げられる。
【0295】
プラスミド17(配列番号9)
TTCGTCAGATCACCGGGTTGTTCCATATCATCGTGTCCACAAGGGCTTGCCGGTCAAGTGCCTAAGCTCACTCGAGGGTCTCGAGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGGCCAACTCCATCACTAGGGGTTCCTTGTAGTTAATGATTAACCCGCCATGCTACTTATCGCGGCCGCAGTTGCATCTTTGTTATACCAGCGCACGAGTCTGTCGTCATGGCTACAAGACCACGAGAACATGAGCCGGTGTCTCCAGAGAACTCCATTGTGACTAGGTAGTCTAGAGCATGGCTACGTAGATAAGTAGCATGGCGGGTTAATCATTAACTACACCTGCAGGAGGAACCCCTAGTGATGGAGTTGGCCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCTCGAGACCACCGGTTTACAGGATAGTCTACTCCCAGTGTCCACATGGTTAGGACCGAGGGGCTTTGGGTTTAGACACTGGCGACTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGAACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAAAGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTCATCCATAGTTGCCTGACTCCCCGTCGTGTAGATAACTACGATACGGGAGGGCTTACCATCTGGCCCCAGTGCTGCAATGATACCGCGAGACCCACGCTCACCGGCTCCAGATTTATCAGCAATAAACCAGCCAGCCGGAAGGGCCGAGCGCAGAAGTGGTCCTGCAACTTTATCCGCCTCCATCCAGTCTATTAATTGTTGCCGGGAAGCTAGAGTAAGTAGTTCGCCAGTTAATAGTTTGCGCAACGTTGTTGCCATTGCTACAGGCATCGTGGTGTCACGCTCGTCGTTTGGTATGGCTTCATTCAGCTCCGGTTCCCAACGATCAAGGCGAGTTACATGATCCCCCATGTTGTGCAAAAAAGCGGTTAGCTCCTTCGGTCCTCCGATCGTTGTCAGAAGTAAGTTGGCCGCAGTGTTATCACTCATGGTTATGGCAGCACTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATCCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGGTGAGTACTCAACCAAGTCATTCTGAGAATAGTGTATGCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCCCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACATAGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTCT
【0296】
いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号9に対して85%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号9に対して90%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号9に対して95%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号9に対して96%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号9に対して97%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号9に対して98%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号9に対して99%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号9からなる。
【0297】
プラスミド20(配列番号10)
TTCGTCAGATCACCGGGTTGTTCCATATCATCGTGTCCACAAGGGCTTGCCGGTCAAGTGCCTAAGCTCACTCGAGGGTCTCGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGGCCAACTCCATCACTAGGGGTTCCTTGTAGTTAATGATTAACCCGCCATGCTACTTATCGCGGCCGCAGTTGCATCTTTGTTATACCAGCGCACGAGTCTGTCGTCATGGCTACAAGACCACGAGAACATGAGCCGGTGTCTCCAGAGAACTCCATTGTGACTAGGTAGTCTAGAGCATGGCTACGTAGATAAGTAGCATGGCGGGTTAATCATTAACTACACCTGCAGGAGGAACCCCTAGTGATGGAGTTGGCCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACGAGACCACCGGTTTACAGGATAGTCTACTCCCAGTGTCCACATGGTTAGGACCGAGGGGCTTTGGGTTTAGACACTGGCGACTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGAACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAAAGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTCATCCATAGTTGCCTGACTCCCCGTCGTGTAGATAACTACGATACGGGAGGGCTTACCATCTGGCCCCAGTGCTGCAATGATACCGCGAGACCCACGCTCACCGGCTCCAGATTTATCAGCAATAAACCAGCCAGCCGGAAGGGCCGAGCGCAGAAGTGGTCCTGCAACTTTATCCGCCTCCATCCAGTCTATTAATTGTTGCCGGGAAGCTAGAGTAAGTAGTTCGCCAGTTAATAGTTTGCGCAACGTTGTTGCCATTGCTACAGGCATCGTGGTGTCACGCTCGTCGTTTGGTATGGCTTCATTCAGCTCCGGTTCCCAACGATCAAGGCGAGTTACATGATCCCCCATGTTGTGCAAAAAAGCGGTTAGCTCCTTCGGTCCTCCGATCGTTGTCAGAAGTAAGTTGGCCGCAGTGTTATCACTCATGGTTATGGCAGCACTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATCCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGGTGAGTACTCAACCAAGTCATTCTGAGAATAGTGTATGCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCCCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACATAGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTCT
【0298】
いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号10に対して85%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号10に対して90%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号10に対して95%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号10に対して96%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号10に対して97%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号10に対して98%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号10に対して99%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号10からなる。
【0299】
プラスミド18(配列番号11)
TTCGTCAGATCACCGGGTTGTTCCATATCATCGTGTCCACAAGGGCTTGCCGGTCAAGTGCCTAAGCTCACTCGAGGGTCTCCAGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGGCCAACTCCATCACTAGGGGTTCCTTGTAGTTAATGATTAACCCGCCATGCTACTTATCGCGGCCGCAGTTGCATCTTTGTTATACCAGCGCACGAGTCTGTCGTCATGGCTACAAGACCACGAGAACATGAGCCGGTGTCTCCAGAGAACTCCATTGTGACTAGGTAGTCTAGAGCATGGCTACGTAGATAAGTAGCATGGCGGGTTAATCATTAACTACACCTGCAGGAGGAACCCCTAGTGATGGAGTTGGCCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGGAGACCACCGGTTTACAGGATAGTCTACTCCCAGTGTCCACATGGTTAGGACCGAGGGGCTTTGGGTTTAGACACTGGCGACTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGAACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAAAGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTCATCCATAGTTGCCTGACTCCCCGTCGTGTAGATAACTACGATACGGGAGGGCTTACCATCTGGCCCCAGTGCTGCAATGATACCGCGAGACCCACGCTCACCGGCTCCAGATTTATCAGCAATAAACCAGCCAGCCGGAAGGGCCGAGCGCAGAAGTGGTCCTGCAACTTTATCCGCCTCCATCCAGTCTATTAATTGTTGCCGGGAAGCTAGAGTAAGTAGTTCGCCAGTTAATAGTTTGCGCAACGTTGTTGCCATTGCTACAGGCATCGTGGTGTCACGCTCGTCGTTTGGTATGGCTTCATTCAGCTCCGGTTCCCAACGATCAAGGCGAGTTACATGATCCCCCATGTTGTGCAAAAAAGCGGTTAGCTCCTTCGGTCCTCCGATCGTTGTCAGAAGTAAGTTGGCCGCAGTGTTATCACTCATGGTTATGGCAGCACTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATCCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGGTGAGTACTCAACCAAGTCATTCTGAGAATAGTGTATGCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCCCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACATAGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTCT
【0300】
いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号11に対して85%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号11に対して90%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号11に対して95%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号11に対して96%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号11に対して97%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号11に対して98%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号11に対して99%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号11からなる。
【0301】
プラスミド15(配列番号12)
GCGCACATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTCTTTCGTCAGATCACCGGGTTGTTCCATATCATCGTGTCCACAAGGGCTTGCCGGTCAAGTGCCTAAGCTCACTCGAGGGTCTCGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGGCCAACTCCATCACTAGGGGTTCCTTGTAGTTAATGATTAACCCGCCATGCTACTTATCGCGGCCGCAGTTGCATCTTTGTTATACCAGCGCACGAGTCTGTCGTCATGGCTACAAGACCACGAGAACATGAGCCGGTGTCTCCAGAGAACTCCATTGTGACTAGGTAGTCTAGAGCATGGCTACGTAGATAAGTAGCATGGCGGGTTAATCATTAACTACACCTGCAGGAGGAACCCCTAGTGATGGAGTTGGCCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACTGGAGACCACCGGTTTACAGGATAGTCTACTCCCAGTGTCCACATGGTTAGGACCGAGGGGCTTTGGGTTTAGACACTGGCGACTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGAACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAAAGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTCATCCATAGTTGCCTGACTCCCCGTCGTGTAGATAACTACGATACGGGAGGGCTTACCATCTGGCCCCAGTGCTGCAATGATACCGCGAGACCCACGCTCACCGGCTCCAGATTTATCAGCAATAAACCAGCCAGCCGGAAGGGCCGAGCGCAGAAGTGGTCCTGCAACTTTATCCGCCTCCATCCAGTCTATTAATTGTTGCCGGGAAGCTAGAGTAAGTAGTTCGCCAGTTAATAGTTTGCGCAACGTTGTTGCCATTGCTACAGGCATCGTGGTGTCACGCTCGTCGTTTGGTATGGCTTCATTCAGCTCCGGTTCCCAACGATCAAGGCGAGTTACATGATCCCCCATGTTGTGCAAAAAAGCGGTTAGCTCCTTCGGTCCTCCGATCGTTGTCAGAAGTAAGTTGGCCGCAGTGTTATCACTCATGGTTATGGCAGCACTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATCCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGGTGAGTACTCAACCAAGTCATTCTGAGAATAGTGTATGCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCCCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACATAGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCC
【0302】
いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号12に対して85%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号12に対して90%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号12に対して95%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号12に対して96%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号12に対して97%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号12に対して98%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号12に対して99%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号12からなる。
【0303】
プラスミド1(配列番号13)
TTCGTCAGATCACCGGGTTGTTCCATATCATCGTGTCCACAAGGGCTTGCCGGTCAAGTGCCTAAGCTCACTCGAGCGTCTCGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGGCCAACTCCATCACTAGGGGTTCCTTGTAGTTAATGATTAACCCGCCATGCTACTTATCGCGGCCGCAGTTGCATCTTTGTTATACCAGCGCACGAGTCTGTCGTCATGGCTACAAGACCACGAGAACATGAGCCGGTGTCTCCAGAGAACTCCATTGTGACTAGGTAGTCTAGAGCATGGCTACGTAGATAAGTAGCATGGCGGGTTAATCATTAACTACACCTGCAGGAGGAACCCCTAGTGATGGAGTTGGCCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACGAGACGACCGGTTTACAGGATAGTCTACTCCCAGTGTCCACATGGTTAGGACCGAGGGGCTTTGGGTTTAGACACTGGCGACTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGAACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAAAGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTCATCCATAGTTGCCTGACTCCCCGTCGTGTAGATAACTACGATACGGGAGGGCTTACCATCTGGCCCCAGTGCTGCAATGATACCGCGAGACCCACGCTCACCGGCTCCAGATTTATCAGCAATAAACCAGCCAGCCGGAAGGGCCGAGCGCAGAAGTGGTCCTGCAACTTTATCCGCCTCCATCCAGTCTATTAATTGTTGCCGGGAAGCTAGAGTAAGTAGTTCGCCAGTTAATAGTTTGCGCAACGTTGTTGCCATTGCTACAGGCATCGTGGTGTCACGCTCGTCGTTTGGTATGGCTTCATTCAGCTCCGGTTCCCAACGATCAAGGCGAGTTACATGATCCCCCATGTTGTGCAAAAAAGCGGTTAGCTCCTTCGGTCCTCCGATCGTTGTCAGAAGTAAGTTGGCCGCAGTGTTATCACTCATGGTTATGGCAGCACTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATCCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGGTGAGTACTCAACCAAGTCATTCTGAGAATAGTGTATGCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCCCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACATAGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTCT
【0304】
いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号13に対して85%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号13に対して90%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号13に対して95%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号13に対して96%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号13に対して97%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号13に対して98%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号13に対して99%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号13からなる。
【0305】
プラスミド11(配列番号14)
TTCGTCAGATCACCGGGTTGTTCCATATCATCGTGTCCACAAGGGCTTGCCGGTCAAGTGCCTAAGCTCACTCGAGCGTCTCGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGGCCAACTCCATCACTAGGGGTTCCTTGTAGTTAATGATTAACCCGCCATGCTACTTATCGCGGCCGCAGTTGCATCTTTGTTATACCAGCGCACGAGTCTGTCGTCATGGCTACAAGACCACGAGAACATGAGCCGGTGTCTCCAGAGAACTCCATTGTGACTAGGTAGTCTAGAGCATGGCTACGTAGATAAGTAGCATGGCGGGTTAATCATTAACTACACCTGCAGGAGGAACCCCTAGTGATGGAGTTGGCCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACGAGACGACCGGTTTACAGGATAGTCTACTCCCAGTGTCCACATGGTTAGGACCGAGGGGCTTTGGGTTTAGACACTGGCGACTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGAACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAAAGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTCATCCATAGTTGCCTGACTCCCCGTCGTGTAGATAACTACGATACGGGAGGGCTTACCATCTGGCCCCAGTGCTGCAATGATACCGCGAGACCCACGCTCACCGGCTCCAGATTTATCAGCAATAAACCAGCCAGCCGGAAGGGCCGAGCGCAGAAGTGGTCCTGCAACTTTATCCGCCTCCATCCAGTCTATTAATTGTTGCCGGGAAGCTAGAGTAAGTAGTTCGCCAGTTAATAGTTTGCGCAACGTTGTTGCCATTGCTACAGGCATCGTGGTGTCACGCTCGTCGTTTGGTATGGCTTCATTCAGCTCCGGTTCCCAACGATCAAGGCGAGTTACATGATCCCCCATGTTGTGCAAAAAAGCGGTTAGCTCCTTCGGTCCTCCGATCGTTGTCAGAAGTAAGTTGGCCGCAGTGTTATCACTCATGGTTATGGCAGCACTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATCCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGGTGAGTACTCAACCAAGTCATTCTGAGAATAGTGTATGCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCCCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACATAGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTCT
【0306】
いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号14に対して85%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号14に対して90%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号14に対して95%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号14に対して96%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号14に対して97%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号14に対して98%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号14に対して99%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号14からなる。
【0307】
プラスミド8(配列番号15)
TTCGTCAGATCACCGGGTTGTTCCATATCATCGTGTCCACAAGGGCTTGCCGGTCAAGTGCCTAAGCTCACTCGAGCGTCTCGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGGCCAACTCCATCACTAGGGGTTCCTTGTAGTTAATGATTAACCCGCCATGCTACTTATCGCGGCCGCAGTTGCATCTTTGTTATACCAGCGCACGAGTCTGTCGTCATGGCTACAAGACCACGAGAACATGAGCCGGTGTCTCCAGAGAACTCCATTGTGACTAGGTAGTCTAGAGCATGGCTACGTAGATAAGTAGCATGGCGGGTTAATCATTAACTACACCTGCAGGAGGAACCCCTAGTGATGGAGTTGGCCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACGAGACGACCGGTTTACAGGATAGTCTACTCCCAGTGTCCACATGGTTAGGACCGAGGGGCTTTGGGTTTAGACACTGGCGACTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGAACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAAAGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTCATCCATAGTTGCCTGACTCCCCGTCGTGTAGATAACTACGATACGGGAGGGCTTACCATCTGGCCCCAGTGCTGCAATGATACCGCGAGACCCACGCTCACCGGCTCCAGATTTATCAGCAATAAACCAGCCAGCCGGAAGGGCCGAGCGCAGAAGTGGTCCTGCAACTTTATCCGCCTCCATCCAGTCTATTAATTGTTGCCGGGAAGCTAGAGTAAGTAGTTCGCCAGTTAATAGTTTGCGCAACGTTGTTGCCATTGCTACAGGCATCGTGGTGTCACGCTCGTCGTTTGGTATGGCTTCATTCAGCTCCGGTTCCCAACGATCAAGGCGAGTTACATGATCCCCCATGTTGTGCAAAAAAGCGGTTAGCTCCTTCGGTCCTCCGATCGTTGTCAGAAGTAAGTTGGCCGCAGTGTTATCACTCATGGTTATGGCAGCACTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATCCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGGTGAGTACTCAACCAAGTCATTCTGAGAATAGTGTATGCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCCCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACATAGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTCT
【0308】
いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号15に対して85%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号15に対して90%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号15に対して95%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号15に対して96%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号15に対して97%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号15に対して98%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号15に対して99%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号15からなる。
【0309】
プラスミド7(配列番号16)
TTCGTCAGATCACCGGGTTGTTCCATATCATCGTGTCCACAAGGGCTTGCCGGTCAAGTGCCTAAGCTCACTCGAGCGTCTCGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGGCCAACTCCATCACTAGGGGTTCCTTGTAGTTAATGATTAACCCGCCATGCTACTTATCGCGGCCGCAGTTGCATCTTTGTTATACCAGCGCACGAGTCTGTCGTCATGGCTACAAGACCACGAGAACATGAGCCGGTGTCTCCAGAGAACTCCATTGTGACTAGGTAGTCTAGAGCATGGCTACGTAGATAAGTAGCATGGCGGGTTAATCATTAACTACACCTGCAGGAGGAACCCCTAGTGATGGAGTTGGCCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACGAGACGACCGGTTTACAGGATAGTCTACTCCCAGTGTCCACATGGTTAGGACCGAGGGGCTTTGGGTTTAGACACTGGCGACTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGAACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAAAGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTCATCCATAGTTGCCTGACTCCCCGTCGTGTAGATAACTACGATACGGGAGGGCTTACCATCTGGCCCCAGTGCTGCAATGATACCGCGAGACCCACGCTCACCGGCTCCAGATTTATCAGCAATAAACCAGCCAGCCGGAAGGGCCGAGCGCAGAAGTGGTCCTGCAACTTTATCCGCCTCCATCCAGTCTATTAATTGTTGCCGGGAAGCTAGAGTAAGTAGTTCGCCAGTTAATAGTTTGCGCAACGTTGTTGCCATTGCTACAGGCATCGTGGTGTCACGCTCGTCGTTTGGTATGGCTTCATTCAGCTCCGGTTCCCAACGATCAAGGCGAGTTACATGATCCCCCATGTTGTGCAAAAAAGCGGTTAGCTCCTTCGGTCCTCCGATCGTTGTCAGAAGTAAGTTGGCCGCAGTGTTATCACTCATGGTTATGGCAGCACTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATCCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGGTGAGTACTCAACCAAGTCATTCTGAGAATAGTGTATGCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCCCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACATAGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTCT
【0310】
いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号16に対して85%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号16に対して90%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号16に対して95%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号16に対して96%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号16に対して97%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号16に対して98%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号16に対して99%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号16からなる。
【0311】
プラスミド6(配列番号17)
TTCGTCAGATCACCGGGTTGTTCCATATCATCGTGTCCACAAGGGCTTGCCGGTCAAGTGCCTAAGCTCACTCGAGCGTCTCGTGAGCGAGCGAGCGCGCAGAGAGGGAGTGGCCAACTCCATCACTAGGGGTTCCTTGTAGTTAATGATTAACCCGCCATGCTACTTATCGCGGCCGCAGTTGCATCTTTGTTATACCAGCGCACGAGTCTGTCGTCATGGCTACAAGACCACGAGAACATGAGCCGGTGTCTCCAGAGAACTCCATTGTGACTAGGTAGTCTAGAGCATGGCTACGTAGATAAGTAGCATGGCGGGTTAATCATTAACTACACCTGCAGGAGGAACCCCTAGTGATGGAGTTGGCCACTCCCTCTCTGCGCGCTCGCTCGCTCACGAGACGACCGGTTTACAGGATAGTCTACTCCCAGTGTCCACATGGTTAGGACCGAGGGGCTTTGGGTTTAGACACTGGCGACTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGAACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAAAGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTCATCCATAGTTGCCTGACTCCCCGTCGTGTAGATAACTACGATACGGGAGGGCTTACCATCTGGCCCCAGTGCTGCAATGATACCGCGAGACCCACGCTCACCGGCTCCAGATTTATCAGCAATAAACCAGCCAGCCGGAAGGGCCGAGCGCAGAAGTGGTCCTGCAACTTTATCCGCCTCCATCCAGTCTATTAATTGTTGCCGGGAAGCTAGAGTAAGTAGTTCGCCAGTTAATAGTTTGCGCAACGTTGTTGCCATTGCTACAGGCATCGTGGTGTCACGCTCGTCGTTTGGTATGGCTTCATTCAGCTCCGGTTCCCAACGATCAAGGCGAGTTACATGATCCCCCATGTTGTGCAAAAAAGCGGTTAGCTCCTTCGGTCCTCCGATCGTTGTCAGAAGTAAGTTGGCCGCAGTGTTATCACTCATGGTTATGGCAGCACTGCATAATTCTCTTACTGTCATGCCATCCGTAAGATGCTTTTCTGTGACTGGTGAGTACTCAACCAAGTCATTCTGAGAATAGTGTATGCGGCGACCGAGTTGCTCTTGCCCGGCGTCAATACGGGATAATACCGCGCCACATAGCAGAACTTTAAAAGTGCTCATCATTGGAAAACGTTCTTCGGGGCGAAAACTCTCAAGGATCTTACCGCTGTTGAGATCCAGTTCGATGTAACCCACTCGTGCACCCAACTGATCTTCAGCATCTTTTACTTTCACCAGCGTTTCTGGGTGAGCAAAAACAGGAAGGCAAAATGCCGCAAAAAAGGGAATAAGGGCGACACGGAAATGTTGAATACTCATACTCTTCCTTTTTCAATATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTCT
【0312】
いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号17に対して85%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号17に対して90%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号17に対して95%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号17に対して96%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号17に対して97%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号17に対して98%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号17に対して99%同一である。いくつかの実施形態によると、基本ベクターは、配列番号17からなる。
【0313】
二本鎖DNA構築物
本明細書に開示されるように、DNAベクターの無細胞合成は、二本鎖DNA構築物から導入遺伝子発現カセットを切除することを伴う。二本鎖DNA構築物は、例えば、導入遺伝子発現カセットを基本ベクターにサブクローニングすることによって調製され得る。したがって、一実施形態、及び認識部位が特異的である制限エンドヌクレアーゼの実施形態を含む、本明細書に開示される上述のうちのいずれかの全ての実施形態では、二本鎖DNA構築物は、5’→3’の順序で:第1の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第1の切断部位、第1の部分ITR、導入遺伝子発現カセット、第2の部分ITR、並びに第2の非パリンドローム制限エンドヌクレアーゼ認識部位及び対応する第2の切断部位を含有する。いくつかの実施形態では、二本鎖DNA構築物は、複製起源及び選択可能なマーカー遺伝子を更に含む。いくつかの実施形態では、基本ベクターは、第1の部分ITRと導入遺伝子発現カセットとの間のスペーサ及び第2の部分ITRと導入遺伝子発現カセットとの間のスペーサなどの1つ以上のスペーサ領域を更に含む(例えば、FVIII発現導入遺伝子発現カセットを担持する例示的な二本鎖DNA構築物、構築物1を示す
図3を参照されたい)。
【0314】
キット
一実施形態では、閉端DNA(ceDNA)ベクターなどのDNAベクターを調製するためのキットは、上記の基本ベクターと、マルチクローニング部位でDNAベクターを切断して、マルチクローニング部位が導入遺伝子を受容することを可能にすることができる少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼ(例えば、プラスミド11に対するBsaI、
図2を参照されたい)と、第1の切断部位及び第2の切断部位で切断することができる少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼ(例えば、プラスミド11に対するNotI及びXbaI、
図2を参照されたい)と、リガーゼと、を含む。
【0315】
別の実施形態では、閉端DNA(ceDNA)ベクターなどのDNAベクターを調製するためのキットは、上記のような二本鎖DNA構築物と、第1の切断部位及び第2の切断部位で二本鎖DNA構築物を切断することができる少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼ(例えば、構築物1に対するBsaI、
図3を参照されたい)と、リガーゼと、を含む。
【0316】
上記のキットの更なる実施形態は、本明細書で定義される1つ以上のITRオリゴヌクレオチドを含み得る。
【0317】
VII.医薬組成物
別の一態様では、医薬組成物が提供される。医薬組成物は、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生された閉端DNAベクター、例えば、ceDNAベクター、及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む。
【0318】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、対象の細胞、組織、又は器官へのインビボ送達のために対象に投与するのに好適な医薬組成物に組み込まれ得る。典型的に、医薬組成物は、本明細書に開示されるceDNAベクター及び薬学的に許容される担体を含む。例えば、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、治療的投与(例えば、非経口投与)の所望の経路に好適な医薬組成物に組み込まれ得る。高圧静脈内又は動脈内注入を介した受動組織形質導入、同様に、核内微量注射若しくは細胞質内注射などの細胞内注射もまた、企図される。治療目的のための医薬組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、又は高濃度の合成的に産生された閉端DNAベクター、例えば、ceDNAベクター濃度に好適な他の秩序構造として製剤化され得る。無菌注射液は、必要に応じて、上記に列挙した成分の1つ又は組み合わせとともに、適切な緩衝液に必要量の合成的に産生された閉端DNAベクター、例えば、ceDNAベクター化合物を組み込んだ後、ceDNAベクターを含む濾過滅菌によって調製することができ、核酸中の導入遺伝子をレシピエントの細胞に送達するように製剤化して、その中の導入遺伝子又はドナー配列の治療的発現をもたらし得る。この組成物はまた、薬学的に許容される担体を含み得る。
【0319】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターを含む薬学的に活性な組成物は、細胞、例えば、対象の細胞に様々な目的のための導入遺伝子を送達するように製剤化することができる。
【0320】
治療目的のための医薬組成物は、典型的に、無菌であり、製造及び貯蔵の条件下で安定していなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、又は高濃度の合成的に産生された閉端DNAベクター、例えば、ceDNAベクターに好適な他の秩序構造として製剤化され得る。無菌の注射可能な溶液は、適切な緩衝液中の必要量の合成的に産生された閉端DNAベクター、例えば、ceDNAベクター化合物を、上記で列挙した成分のうちの1つ又は組み合わせに組み込んだ後、濾過滅菌することによって調製され得る。
【0321】
本明細書に開示されるように、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、局所、全身、羊膜内、くも膜下腔内、頭蓋内、動脈内、静脈内、リンパ内、腹腔内、皮下、気管、組織内(例えば、筋肉内、心臓内、肝内、腎臓内、脳内)、くも膜下腔内、膀胱内、結膜(例えば、眼窩外、眼窩内、眼窩後、網膜内、網膜下、脈絡膜、脈絡膜下、間質内、前房内、及び硝子体内)、蝸牛内、並びに粘膜(例えば、経口、直腸、鼻)投与に好適な医薬組成物に組み込まれ得る。高圧静脈内又は動脈内注入を介した受動組織形質導入、同様に、核内微量注射若しくは細胞質内注射などの細胞内注射もまた、企図される。
【0322】
いくつかの態様では、本明細書に提供される方法は、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む1つ以上の閉端DNAベクターを宿主細胞に送達することを含む。本明細書ではまた、そのような方法によって産生された細胞、及びそのような細胞を含むか又はそのような細胞から産生された生物(動物、植物、又は真菌など)も提供される。核酸の送達方法としては、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン、又は脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、及び薬剤によって増強されたDNAの取り込みが挙げられ得る。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、及び同第4,897,355号に記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。送達は、細胞(例えば、インビトロ若しくはエクスビボ投与)又は標的組織(例えば、インビボ投与)に対するものであり得る。
【0323】
核酸を細胞に送達するための様々な技法及び方法が、当該技術分野において既知である。例えば、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、脂質ナノ粒子(LNP)、リピドイド、リポソーム、脂質ナノ粒子、リポプレックス、又はコアシェルナノ粒子に製剤化され得る。典型的に、LNPは、核酸(例えば、ceDNA)分子、1つ以上のイオン化又はカチオン性脂質(若しくはそれらの塩)、1つ以上の非イオン性又は中性脂質(例えば、リン脂質)、凝集を防ぐ分子(例えば、PEG若しくはPEG-脂質コンジュゲート)、及び任意選択的にステロール(例えば、コレステロール)で構成される。
【0324】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターを細胞に送達するための別の方法は、細胞により内在化されるリガンドと核酸を結合させることによる。例えば、リガンドは、細胞表面上の受容体に結合し、形質膜陥入を介して内在化され得る。リガンドは、核酸中のヌクレオチドに共有結合的に連結され得る。核酸を細胞中に送達するための例示的なコンジュゲートは、例えば、国際特許出願公開第WO2015/006740号、同第WO2014/025805号、同第WO2012/037254号、同第WO2009/082606号、同第WO2009/073809号、同第WO2009/018332号、同第WO2006/112872号、同第WO2004/090108号、同第WO2004/091515号、及び同第WO2017/177326号に記載されている。
【0325】
核酸、及び本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、トランスフェクションによって細胞に送達することもできる。有用なトランスフェクション方法としては、脂質媒介性トランスフェクション、カチオン性ポリマー媒介性トランスフェクション、又はリン酸カルシウム沈殿が挙げられるが、これらに限定されない。トランスフェクション試薬は、当該技術分野において周知であり、TurboFectトランスフェクション試薬(Thermo Fisher Scientific)、Pro-Ject試薬(Thermo Fisher Scientific)、TRANSPASS(商標)Pタンパク質トランスフェクション試薬(New England Biolabs)、CHARIOT(商標)タンパク質送達試薬(Active Motif)、PROTEOJUICE(商標)タンパク質トランスフェクション試薬(EMD Millipore)、293フェクチン、LIPOFECTAMINE(商標)2000、LIPOFECTAMINE(商標)3000(Thermo Fisher Scientific)、LIPOFECTAMINE(商標)(Thermo Fisher Scientific)、LIPOFECTIN(商標)(Thermo Fisher Scientific)、DMRIE-C、CELLFECTIN(商標)(Thermo Fisher Scientific)、OLIGOFECTAMINE(商標)(Thermo Fisher Scientific)、LIPOFECTACE(商標)、FUGENE(商標)(Roche,Basel,Switzerland)、FUGENE(商標)HD(Roche)、TRANSFECTAM(商標)(Transfectam,Promega,Madison,Wis.)、TFX-10(商標)(Promega)、TFX-20(商標)(Promega)、TFX-50(商標)(Promega)、TRANSFECTIN(商標)(BioRad,Hercules,Calif.)、SILENTFECT(商標)(Bio-Rad)、Effectene(商標)(Qiagen,Valencia,Calif.)、DC-chol(Avanti Polar Lipids)、GENEPORTER(商標)(Gene Therapy Systems,San Diego,Calif.)、DHARMAFECT 1(商標)(Dharmacon,Lafayette,Colo.)、DHARMAFECT 2(商標)(Dharmacon)、DHARMAFECT 3(商標)(Dharmacon)、DHARMAFECT 4(商標)(Dharmacon)、ESCORT(商標)III(Sigma,St.Louis,Mo.)、及びESCORT(商標)IV(Sigma Chemical Co.)が含まれるが、これらに限定されない。ceDNAなどの核酸もまた、当業者に既知のマイクロフルイディクス法を介して細胞に送達され得る。
【0326】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、インビボでの細胞の形質導入のために生物に直接投与することもできる。投与は、分子を血液又は組織細胞と最終的に接触させるために通常使用される経路のうちのいずれかによるものであり、注射、注入、局所用途、及びエレクトロポレーションが挙げられるが、これらに限定されない。そのような核酸を投与する好適な方法は、当業者によって利用可能かつ周知であり、特定の組成物を投与するために2つ以上の経路が使用され得るが、特定の経路は、多くの場合、別の経路よりもより即時的であり、より効果的な反応を提供し得る。
【0327】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターの導入のための方法は、例えば、米国特許第5,928,638号に記載されている方法により、造血幹細胞に送達することができる。
【0328】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、対象の細胞又は標的臓器への送達のためにリポソームに付加することができる。リポソームは、少なくとも1つの脂質二層を有する小胞である。リポソームは、典型的に、製剤開発の文脈において薬物/治療薬送達のための担体として使用される。それらは、細胞膜と融合し、その脂質構造を再配置することによって作用して、薬物又は活性製剤成分(active pharmaceutical ingredient、API)を送達する。そのような送達のためのリポソーム組成物は、リン脂質、特にホスファチジルコリンを有する化合物で構成されるが、これらの組成物はまた、他の脂質を含んでもよい。例示的なリポソーム及びリポソーム製剤は、国際特許出願公開第WO2019/051289号及び同第WO2019/113310号に開示されており、例えば、「Pharmaceutical Formulations」と題されたセクションを参照されたい。
【0329】
当該技術分野において既知の様々な送達方法又はその修正を使用して、本明細書に記載される合成プロセスを使用してインビトロ又はインビボで産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターを送達することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、機械的、電気的、超音波、流体力学的、又はレーザー系エネルギーによって細胞膜に一時的な貫通を作製することによって送達され、それにより標的化された細胞へのDNA進入が促進される。例えば、ceDNAベクターは、サイズ制限されたチャネルを通して細胞を圧搾することによるか、又は当該技術分野において既知の他の手段によって細胞膜を一時的に崩壊させることにより送達され得る。場合によっては、ceDNAベクターは単独で、裸のDNAとして皮膚、甲状腺、心筋、骨格筋、又は肝臓細胞中に直接注射される。場合によっては、ceDNAベクターは、遺伝子銃によって送達される。カプシド不含AAVベクターでコーティングされた金又はタングステン球状粒子(1~3μm直径)は、加圧ガスによって高速に加速され、標的組織細胞中に貫通することができる。
【0330】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクター及び薬学的に許容される担体を含む組成物は、本明細書で具体的に企図される。いくつかの実施形態では、ceDNAベクターは、脂質送達系、例えば、本明細書に記載されるリポソームで製剤化される。いくつかの実施形態では、そのような組成物は、熟練した開業医によって所望される任意の経路によって投与される。組成物は、経口、非経口、舌下、経皮、直腸、経粘膜、局所、吸入を介した、口腔内投与を介した、胸膜内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻腔内、髄腔内、及び関節内、又はそれらの組み合わせを含む異なる経路によって対象に投与され得る。獣医学的使用のために、組成物は、通常の獣医学的慣習に従って好適に許容される製剤として投与され得る。獣医師は、特定の動物に最も適切な投与レジメン及び投与経路を容易に決定することができる。組成物は、従来のシリンジ、無針注射デバイス、「マイクロプロジェクタイルボンバードメント遺伝子銃」、又は電気穿孔(「EP」)、「流体力学的方法」、若しくは超音波などの他の物理的方法によって投与され得る。
【0331】
場合によっては、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、内臓及び肢全体の骨格筋への、任意の水溶性化合物及び粒子の直接細胞内送達のための単純かつ非常に効率的な方法である流体力学的注射によって送達される。
【0332】
場合によっては、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、膜中にナノスコピック孔を作製することにより、超音波によって送達され、内臓又は腫瘍の細胞へのDNA粒子の細胞内送達を促進するため、閉端DNAのサイズ及び濃度は、この系の効率性において大きな役割を果たす。場合によっては、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、磁場を使用してマグネトフェクションによって送達され、核酸を含有する粒子を標的細胞に濃縮する。
【0333】
場合によっては、化学送達系は、例えば、カチオン性リポソーム/ミセル又はカチオン性ポリマーに属するポリカチオン性ナノマー粒子による負電荷核酸の圧縮を含むナノマー複合体を使用することによって使用され得る。送達方法に使用されるカチオン性脂質としては、一価カチオン性脂質、多価カチオン性脂質、グアニジン含有化合物、コレステロール誘導体化合物、カチオン性ポリマー(例えば、ポリ(エチレンイミン)、ポリ-L-リジン、プロタミン、他のカチオン性ポリマー)、及び脂質-ポリマーハイブリッドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0334】
エキソソーム
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、エキソソームに被包されることによって送達される。エキソソームは、多胞体と形質膜との融合に続いて、細胞外環境中に放出される形質膜陥入起源の小膜小胞である。それらの表面は、ドナー細胞の細胞膜からの脂質二層からなり、それらは、エキソソームを産生した細胞からのサイトゾルを含有し、表面上の親細胞からの膜タンパク質を呈する。エキソソームは、上皮細胞、B及びTリンパ球、マスト細胞(mast cell、MC)、及び樹状細胞(dendritic cell、DC)を含む様々な細胞型によって産生される。いくつかの実施形態では、10nm~1μm、20nm~500nm、30nm~250nm、50nm~100nmの直径を有するエキソソームが使用のために想定される。エキソソームは、それらのドナー細胞を使用するか、又は特定の核酸をそれらに導入するかのいずれかによって、標的細胞への送達のために単離され得る。当該技術分野において既知の様々なアプローチを使用して、本開示のカプシド不含AAVベクターを含有するエキソソームを産生することができる。
【0335】
微粒子/ナノ粒子
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、脂質ナノ粒子によって送達される。一般に、脂質ナノ粒子は、例えば、Tam et al.,(2013).Advances in Lipid Nanoparticles for siRNA delivery.Pharmaceuticals 5(3):498-507によって開示されるように、イオン化アミノ脂質(例えば、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル4-(ジメチルアミノ)ブタノエート、DLin-MC3-DMA、ホスファチジルコリン(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、DSPC)、コレステロール、及びコート脂質(ポリエチレングリコール-ジミリストールグリセロール、PEG-DMG)を含む。
【0336】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約10~約1000nmの平均直径を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、300nm未満である直径を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約10~約300nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、200nm未満である直径を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、約25~約200nmの直径を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子調製物(例えば、複数の脂質ナノ粒子を含む組成物)は、サイズ分布を有し、平均サイズ(例えば、直径)は、約70nm~約200nmであり、より典型的に、平均サイズは、約100nm以下である。
【0337】
当該技術分野において既知の様々な脂質ナノ粒子を使用して、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターを送達することができる。例えば、脂質ナノ粒子を使用する様々な送達方法は、米国特許第9,404,127号、同第9,006,417号、及び同第9,518,272号に記載されている。
【0338】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、金ナノ粒子によって送達される。一般に、核酸は、金ナノ粒子に共有結合的に結合され得るか、又は金ナノ粒子に非共有結合的に結合され得(例えば、電荷-電荷相互作用によって結合され)、例えば、Ding et al.,(2014).Gold Nanoparticles for Nucleic Acid Delivery.Mol.Ther.22(6);1075-1083によって説明される。いくつかの実施形態では、金ナノ粒子-核酸コンジュゲートは、例えば、米国特許第6,812,334号に記載される方法を使用して産生される。
【0339】
コンジュゲート
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、複合される(例えば、細胞取り込みを増加させる薬剤に共有結合される)。「細胞取り込みを増加させる薬剤」は、脂質膜を通した核酸の輸送を促進する分子である。例えば、核酸は、親油性化合物(例えば、コレステロール、トコフェロールなど)、細胞貫通ペプチド(cell penetrating peptide、CPP)(例えば、ペネトラチン、TAT、Syn1Bなど)、及びポリアミン(例えば、スペルミン)にコンジュゲートし得る。細胞取り込みを増加させる薬剤の更なる例は、例えば、Winkler(2013).Oligonucleotide conjugates for therapeutic applications.Ther.Deliv.4(7);791-809に開示されている。
【0340】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、ポリマー(例えば、ポリマー分子)又は葉酸塩分子(例えば、葉酸分子)に複合される。一般に、ポリマーに複合された核酸の送達は、例えば、国際特許出願公開第WO2000/34343号及び同第2008/022309号に記載されるように、当該技術分野において既知である。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるceDNAベクターは、例えば、米国特許第8,987,377号によって記載されるように、ポリ(アミド)ポリマーにコンジュゲートされる。いくつかの実施形態では、本開示によって記載される核酸は、米国特許第8,507,455号に記載されるように、葉酸分子に複合される。
【0341】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるように、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、例えば、米国特許第8,450,467号に記載されるように、炭水化物にコンジュゲートされる。
【0342】
ナノカプセル
代替的に、本明細書に開示されるように、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターのナノカプセル製剤を使用することができる。ナノカプセルは、一般に、安定かつ再生可能な方式で物質を捕捉することができる。細胞内ポリマー過負荷に起因する副作用を避けるために、そのような微細粒子(およそ0.1μmのサイズ)は、ポリマーを使用して、インビボで分解され得るように設計されるべきである。これらの要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子が、使用のために企図される。
【0343】
リポソーム
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、対象の細胞又は標的臓器への送達のためにリポソームに付加することができる。リポソームは、少なくとも1つの脂質二層を有する小胞である。リポソームは、典型的に、製剤開発の文脈において薬物/治療薬送達のための担体として使用される。それらは、細胞膜と融合し、その脂質構造を再配置することによって作用して、薬物又は活性製剤成分(API)を送達する。そのような送達のためのリポソーム組成物は、リン脂質、特にホスファチジルコリンを有する化合物で構成されるが、これらの組成物はまた、他の脂質を含んでもよい。
【0344】
リポソームの形成及び使用は、一般に、当業者に既知である。向上された血清安定性及び循環半減期を有するリポソームが開発されている(米国特許第5,741,516号)。更に、潜在的な薬物担体としてのリポソーム及びリポソーム様調製物の様々な方法が記載されている(米国特許第5,567,434号、同第5,552,157号、同第5,565,213号、同第5,738,868号、及び同第5,795,587号)。
【0345】
例示的なリポソーム及び脂質ナノ粒子(LNP)組成物
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、細胞、例えば、導入遺伝子の発現を必要とする細胞への送達のためにリポソームに付加することができる。リポソームは、少なくとも1つの脂質二層を有する小胞である。リポソームは、典型的に、製剤開発の文脈において薬物/治療薬送達のための担体として使用される。それらは、細胞膜と融合し、その脂質構造を再配置することによって作用して、薬物又は活性製剤成分(API)を送達する。そのような送達のためのリポソーム組成物は、リン脂質、特にホスファチジルコリンを有する化合物で構成されるが、これらの組成物はまた、他の脂質を含んでもよい。
【0346】
ceDNAを含む脂質ナノ粒子(LNP)は、国際特許出願公開第WO2019/051289号及び同第WO2019/113310号、並びに2021年7月16日出願の国際特許出願第PCT/US2021/04043号に開示されており、本明細書に開示される方法及び組成物における使用が想定されている。
【0347】
いくつかの態様では、本開示は、免疫原性/抗原性を低減し、化合物に対する親水性及び疎水性を提供し、投与頻度を低減することができる、ポリエチレングリコール(PEG)官能基を有する1つ以上の化合物(いわゆる「PEG化化合物」)を含む、リポソーム製剤を提供する。又は、リポソーム製剤は、単にポリエチレングリコール(PEG)ポリマーを追加の構成成分として含む。そのような態様では、PEG又はPEG官能基の分子量は、62Da~約5,000Daであり得る。
【0348】
いくつかの態様では、本開示は、延長放出又は制御放出プロファイルを有するAPIを、数時間~数週間の期間にわたって送達するであろうリポソーム製剤を提供する。いくつかの関連態様では、リポソーム製剤は、脂質二層によって結合される水性チャンバを含み得る。他の関連態様では、リポソーム製剤は、数時間~数週間の期間にわたってAPIを放出する、高温で物理的移行を経る構成成分を有するAPIを封入する。
【0349】
いくつかの態様では、リポソーム製剤は、スフィンゴミエリン及び本明細書に開示される1つ以上の脂質を含む。いくつかの態様では、リポソーム製剤は、オプティソーム(optisome)を含む。
【0350】
いくつかの態様では、本開示は、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩、(ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン)、MPEG(メトキシポリエチレングリコールコンジュゲート脂質、HSPC(水素化ダイズホスファチジルコリン)、PEG(ポリエチレングリコール)、DSPE(ジステアロイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン)、DSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン)、DOPC(ジオレオイルホスファチジルコリン)、DPPG(ジパルミトイルホスファチジルグリセロール)、EPC(卵ホスファチジルコリン)、DOPS(ジオレオイルホスファチジルセリン)、POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン)、SM(スフィンゴミエリン)、MPEG(メトキシポリエチレングリコール)、DMPC(ジミリストイルホスファチジルコリン)、DMPG(ジミリストイルホスファチジルグリセロール)、DSPG(ジステアロイルホスファチジルグリセロール)、DEPC(ジエルコイルホスファチジルコリン)、DOPE(ジオレオイル-sn-グリセロ-ホスホエタノールアミン)、硫酸コレステロール(CS)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、DOPC(ジオレオイル-sn-グリセロ-ホスファチジルコリン)、又はそれらの任意の組み合わせから選択される1つ以上の脂質を含むリポソーム製剤を提供する。
【0351】
いくつかの態様では、本開示は、リン脂質、コレステロール、及びPEG化脂質を56:38:5のモル比で含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様では、リポソーム製剤の全体脂質含有量は、2~16mg/mLである。いくつかの態様では、本開示は、ホスファチジルコリン官能基を含有する脂質、エタノールアミン官能基を含有する脂質、及びPEG化脂質を含有するリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様では、本開示は、ホスファチジルコリン官能基を含有する脂質、エタノールアミン官能基を含有する脂質、及びPEG化脂質を、それぞれ3:0.015:2のモル比で含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様では、本開示は、ホスファチジルコリン官能基、コレステロール、及びPEG化脂質を含有する脂質を含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様では、本開示は、ホスファチジルコリン官能基及びコレステロールを含有する脂質を含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様では、PEG化脂質は、PEG-2000-DSPEである。いくつかの態様では、本開示は、DPPG、ダイズPC、MPEG-DSPE脂質コンジュゲート、及びコレステロールを含むリポソーム製剤を提供する。
【0352】
いくつかの態様では、本開示は、ホスファチジルコリン官能基を含有する1つ以上の脂質、及びエタノールアミン官能基を含有する1つ以上の脂質を含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様では、本開示は、1つ以上のホスファチジルコリン官能基を含有する脂質、エタノールアミン官能基を含有する脂質、及びステロール、例えば、コレステロールを含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様では、リポソーム製剤は、DOPC/DEPC、及びDOPEを含む。
【0353】
いくつかの態様では、本開示は、1つ以上の薬学的賦形剤、例えば、スクロース及び/又はグリシンを更に含むリポソーム製剤を提供する。
【0354】
いくつかの態様では、本開示は、本開示は、単一ラメラ構造又は多ラメラ構造のいずれかであるリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様では、本開示は、多胞体粒子及び/又は発泡ベース粒子を含むリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様では、本開示は、一般的なナノ粒子に対する相対サイズでより大きく、約150~250nmのサイズであるリポソーム製剤を提供する。いくつかの態様では、リポソーム製剤は、凍結乾燥粉末である。
【0355】
いくつかの態様では、本開示は、リポソームの外側に単離されたceDNAを有する混合物に弱塩基を添加することにより、本明細書に開示又は記載されるceDNAベクターで作製及び負荷されるリポソーム製剤を提供する。この付加は、リポソームの外側のpHをおよそ7.3まで増加させ、APIをリポソーム中に送る。いくつかの態様では、本開示は、リポソームの内側で酸性であるpHを有するリポソーム製剤を提供する。そのような場合、リポソームの内側は、pH4~6.9、より好ましくはpH6.5であり得る。他の態様では、本開示は、リポソーム内薬物安定化技術を使用することにより作製されたリポソーム製剤を提供する。そのような場合、ポリマー又は非ポリマー高電荷アニオン及びリポソーム内捕捉剤、例えば、ポリリン酸塩又はオクタ硫酸スクロースが利用される。
【0356】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含むDNAベクター、及びイオン化脂質を含む、脂質ナノ粒子を提供する。例えば、国際特許出願公開第WO2019/051289号に開示されるプロセスによって取得されたceDNAを用いて作製及び負荷される脂質ナノ粒子製剤。これは、イオン化脂質をプロトン化し、粒子のceDNA/脂質会合及び核形成に好ましいエネルギー論を提供する、低pHでのエタノール脂質と水性ceDNAとの高エネルギー混合によって達成され得る。粒子は、水性希釈及び有機溶媒の除去によって更に安定化され得る。粒子は、所望のレベルに濃縮され得る。
【0357】
一般に、脂質粒子は、約10:1~30:1の全脂質対ceDNA(質量又は重量)比で調製される。いくつかの実施形態では、脂質対ceDNA比(質量/質量比、w/w比)は、約1:1~約25:1、約10:1~約14:1、約3:1~約15:1、約4:1~約10:1、約5:1~約9:1、又は約6:1~約9:1の範囲内であり得る。脂質及びceDNAの量を調整して、所望のN/P比、例えば3、4、5、6、7、8、9、10以上のN/P比を提供し得る。一般に、脂質粒子製剤の全体脂質含有量は、約5mg/ml~約30mg/mLの範囲であり得る。
【0358】
イオン化脂質は、典型的に、核酸カーゴ、例えば、ceDNAを低pHで凝縮させるため、及び膜会合及び膜融合性を駆動するために用いられる。一般に、イオン化脂質は、正に電荷される、又は例えばpH6.5以下の酸性条件下でプロトン化される少なくとも1つのアミノ基を含む脂質である。イオン化脂質はまた、本明細書ではカチオン性脂質と称される。
【0359】
例示的なイオン化脂質は、国際特許出願公開第2015/095340号、同第2015/199952号、同第2018/011633号、同第2017/049245号、同第2015/061467号、同第2012/040184号、同第2012/000104号、同第2015/074085号、同第2016/081029号、同第2017/004143号、同第2017/075531号、同第2017/117528号、同第2011/022460号、同第2013/148541号、同第2013/116126号、同第2011/153120号、同第2012/044638号、同第2012/054365号、同第2011/090965号、同第2013/016058号、同第2012/162210号、同第2008/042973号、同第2010/129709号、同第2010/144740号、同第2012/099755号、同第2013/049328号、同第2013/086322号、同第2013/086373号、同第2011/071860号、同第2009/132131号、同第2010/048536号、同第2010/088537号、同第2010/054401号、同第2010/054406号、同第2010/054405号、同第2010/054384号、同第2012/016184号、同第2009/086558号、同第2010/042877号、同第2011/000106号、同第2011/000107号、同第2005/120152号、同第2011/141705号、同第2013/126803号、同第2006/007712号、同第2011/038160号、同第2005/121348号、同第2011/066651号、同第2009/127060号、同第2011/141704号、同第2006/069782号、同第2012/031043号、同第2013/006825号、同第2013/033563号、同第2013/089151号、同第2017/099823号、同第2015/095346、及び同第2013/086354号、並びに米国特許出願公開第2016/0311759号、同第2015/0376115号、同第2016/0151284号、同第2017/0210697号、同第2015/0140070号、同第2013/0178541号、同第2013/0303587号、同第2015/0141678号、同第2015/0239926号、同第2016/0376224号、同第2017/0119904号、同第2012/0149894号、同第2015/0057373号、同第2013/0090372号、同第2013/0274523号、同第2013/0274504号、同第2013/0274504号、同第2009/0023673号、同第2012/0128760号、同第2010/0324120号、同第2014/0200257号、同第2015/0203446号、同第2018/0005363号、同第2014/0308304号、同第2013/0338210号、同第2012/0101148号、同第2012/0027796号、同第2012/0058144号、同第2013/0323269号、同第2011/0117125号、同第2011/0256175号、同第2012/0202871号、同第2011/0076335号、同第2006/0083780号、同第2013/0123338号、同第2015/0064242号、同第2006/0051405号、同第2013/0065939号、同第2006/0008910号、同第2003/0022649号、同第2010/0130588号、同第2013/0116307号、同第2010/0062967号、同第2013/0202684号、同第2014/0141070号、同第2014/0255472号、同第2014/0039032号、同第2018/0028664号、同第2016/0317458、及び同第2013/0195920号に記載されている。
【0360】
いくつかの実施形態では、イオン化可能な脂質は、以下の構造を有するMC3(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA又はMC3)である:
【0361】
【0362】
脂質DLin-MC3-DMAは、Jayaraman et al.,Angew.Chem.Int.Ed Engl.(2012),51(34):8529-8533に説明されている。
【0363】
いくつかの実施形態では、イオン化脂質は、国際特許出願公開第WO2015/074085号に記載されている脂質ATX-002である。
【0364】
いくつかの実施形態では、イオン化脂質は、国際特許出願公開第WO2012/040184号に記載されている(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン(化合物32)である。
【0365】
いくつかの実施形態では、イオン化脂質は、WO2015/199952に記載される化合物6又は化合物22である。
【0366】
限定なく、イオン化脂質は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の20~90%(mol)を含み得る。例えば、イオン化脂質モル含有量は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の20~70%(mol)、30~60%(mol)、又は40~50%(mol)であり得る。いくつかの実施形態では、イオン化脂質は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の約50mol%~約90mol%を含む。
【0367】
いくつかの態様では、脂質ナノ粒子は、非カチオン性脂質を更に含み得る。非イオン性脂質としては、両親媒性脂質、中性脂質、及びアニオン性脂質が挙げられる。したがって、非カチオン性脂質は、中性の非電荷、双性イオン性、又はアニオン性脂質であり得る。非カチオン性脂質は、典型的に、膜融合性を増強するために用いられる。
【0368】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されるceDNAベクターを含むDNAベクターを含む方法及び組成物における使用が想定される例示的な非カチオン性脂質は、国際特許出願公開第WO2019/051289号及び同第WO2019/113310号に記載されている。
【0369】
例示的な非カチオン性脂質は、国際特許出願公開第WO2017/099823号及び米国特許出願公開第US2018/0028664号に記載されている。
【0370】
非カチオン性脂質は、脂質ナノ粒子中に存在する全脂質の0~30%(mol)を構成し得る。例えば、非カチオン性脂質含有量は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の5~20%(mol)又は10~15%(mol)である。様々な実施形態では、イオン化脂質対中性脂質のモル比は、約2:1~約8:1の範囲である。
【0371】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、リン脂質を全く含まない。いくつかの態様では、脂質ナノ粒子は、膜統合性を提供するために、ステロールなどの構成成分を更に含み得る。
【0372】
脂質ナノ粒子中で使用され得る1つの例示的なステロールは、コレステロール及びその誘導体である。例示的なコレステロール誘導体は、国際特許出願公開第2009/127060号及び米国特許出願公開第2010/0130588号に記載されている。
【0373】
ステロールなどの膜統合性を提供する構成成分は、脂質ナノ粒子に存在する全脂質の0~50%(mol)を構成し得る。いくつかの実施形態では、そのような構成成分は、脂質ナノ粒子の全脂質含有量の20~50%(mol)、30~40%(mol)である。
【0374】
いくつかの態様では、脂質ナノ粒子は、ポリエチレングリコール(PEG)又はコンジュゲートした脂質分子を更に含み得る。一般に、これらを使用して、脂質ナノ粒子の凝集を阻害し、かつ/又は立体安定化を提供する。例示的な複合脂質としては、PEG-脂質コンジュゲート、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート、ポリアミド-脂質コンジュゲート(ATTA-脂質コンジュゲートなど)、カチオン性-ポリマー脂質(CPL)コンジュゲート、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、複合脂質分子は、PEG-脂質コンジュゲート、例えば、(メトキシポリエチレングリコール)-複合脂質である。例示的なPEG-脂質複合体としては、PEG-ジアシルグリセロール(DAG)(1-(モノメトキシ-ポリエチレングリコール)-2,3-ジミリストイルグリセロール(PEG-DMG))、PEG-ジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PEG-セラミド(Cer)、PEG化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)、PEGコハク酸ジアシルグリセロール(PEGS-DAG)(4-O-(2’,3’-ジ(テトラデカノイルオキシ)プロピル-1-O-(w-メトキシ(ポリエトキシ)エチル)ブタンジオエート(PEG-S-DMG))、PEGジアルコキシプロピルカルバム、N-(カルボニル-メトキシポリエチレングリコール2000)-1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンナトリウム塩、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。追加の例示的なPEG-脂質コンジュゲートは、例えば、米国特許第5,885,613号、同第6,287,591号、並びに米国特許出願公開第2003/0077829号、同第2003/0077829号、同第2005/0175682号、同第2008/0020058号、同第2011/0117125号、同第2010/0130588号、同第2016/0376224号、及び同第2017/0119904号に記載されている。
【0375】
いくつかの実施形態では、PEG-脂質は、米国特許出願公開第2018/0028664号に開示された化合物である。
【0376】
いくつかの実施形態では、PEG-脂質は、米国特許出願公開第2015/0376115号又は同第2016/0376224号に開示されている。
【0377】
PEG-DAAコンジュゲートは、例えば、PEG-ジラウリルオキシプロピル、PEG-ジミリスチルオキシプロピル、PEG-ジパルミチルオキシプロピル、又はPEG-ジステアリルオキシプロピルであり得る。PEG-脂質は、PEG-DMG、PEG-ジラウリルグリセロール、PEG-ジパルミトイルグリセロール、PEG-ジステリルグリセロール、PEG-ジラウリルグリカミド、PEG-ジミリスチルグリカミド、PEG-ジパルミトイルグリカミド、PEG-ジステリルグリカミド、PEG-コレステロール(1-[8’-(コレスト-5-エン-3[ベータ]-オキシ)カルボキシアミド-3’,6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)、PEG-DMB(3,4-ジテトラデコキシルベンジル-[オメガ]-メチル-ポリ(エチレングリコール)エーテル)、及び1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]のうちの1つ以上であり得る。いくつかの実施例では、PEG-脂質は、PEG-DMG、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]からなる群から選択され得る。
【0378】
PEG以外の分子と複合した脂質は、PEG-脂質の代わりに使用することもできる。例えば、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート、ポリアミド-脂質コンジュゲート(ATTA-脂質コンジュゲートなど)、及びカチオン性-ポリマー脂質(CPL)コンジュゲートを、PEG-脂質の代わりに、又はそれに加えて使用することができる。例示的な複合脂質、すなわち、PEG-脂質、(POZ)-脂質コンジュゲート、ATTA-脂質コンジュゲート、及びカチオン性ポリマー-脂質は、国際特許出願公開第1996/010392号、同第1998/051278号、同第2002/087541号、同第2005/026372号、同第2008/147438号、同第2009/086558号、同第2012/000104号、同第2017/117528号、同第2017/099823号、同第2015/199952号、同第2017/004143号、同第2015/095346号、同第2012/000104号、同第2012/000104号、及び第2010/006282号、米国特許出願公開第2003/0077829号、同第2005/0175682号、同第2008/0020058号、同第2011/0117125号、同第2013/0303587号、同第2018/0028664号、同第2015/0376115号、同第2016/0376224号、同第2016/0317458号、同第2013/0303587号、同第2013/0303587号、及び同第2011/0123453号、並びに米国特許第5,885,613号、同第6,287,591号、同第6,320,017号、及び同第6,586,559号に記載されている。
【0379】
いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の化合物は、治療剤であり得る。治療剤は、治療目的に好適な任意のクラスから選択され得る。言い換えれば、治療剤は、治療目的に好適な任意のクラスから選択され得る。言い換えれば、治療剤は、所望の治療目的及び生物作用に従って選択され得る。例えば、LNP内のceDNAが、がんを治療するために有用である場合、追加の化合物は、抗がん剤(例えば、化学療法剤、標的がん療法(小分子、抗体、又は抗体-薬物コンジュゲートを含むが、これらに限定されない)であり得る。別の実施例では、ceDNAを含有するLNPが、感染症を治療するために有用である場合、追加の化合物は、抗微生物剤(例えば、抗生物質又は抗ウイルス化合物)であり得る。更に別の実施例では、ceDNAを含有するLNPが、免疫疾患又は障害を治療するために有用である場合、追加の化合物は、免疫応答を調節する化合物(例えば、免疫抑制剤、免疫刺激性化合物、又は1つ以上の特定の免疫経路を調節する化合物)であり得る。いくつかの実施形態では、異なるタンパク質又は異なる化合物(治療薬など)をコードするceDNAなどの、異なる化合物を含有する異なる脂質ナノ粒子の異なるカクテルを、本開示の組成物及び方法で使用することができる。
【0380】
いくつかの実施形態では、追加の化合物は、免疫調節剤である。例えば、追加の化合物は、免疫抑制剤である。いくつかの実施形態では、追加の化合物は、免疫刺激剤である。
【0381】
本明細書では、脂質ナノ粒子に封入された合成的に産生されたceDNAベクター、及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物もまた提供される。
【0382】
いくつかの態様では、本開示は、1つ以上の薬学的賦形剤を更に含む脂質ナノ粒子製剤を提供する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子製剤は、スクロース、トリス、トレハロース、及び/又はグリシンを更に含む。
【0383】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、粒子の脂質部分と複合体化するか、脂質ナノ粒子の脂質位置に封入することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAを含むDNAベクターは、脂質ナノ粒子の脂質位置に完全に封入され得、それによって、例えば、水溶液中のヌクレアーゼによる分解からそれを保護する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子において本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含むDNAベクターは、37℃で少なくとも約20、30、45、又は60分間のヌクレアーゼへの脂質ナノ粒子の曝露後に実質的に分解されない。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子中のceDNAは、37℃で少なくとも約30、45、若しくは60分、又は少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、若しくは36時間の血清中の粒子のインキュベーション後に実質的に分解されない。
【0384】
ある特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、対象、例えば、ヒトなどの哺乳動物に対して実質的に非毒性である。いくつかの態様では、脂質ナノ粒子製剤は、凍結乾燥粉末である。
【0385】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、少なくとも1つの脂質二層を有する固体コア粒子である。他の実施形態では、脂質ナノ粒子は、非二層構造、すなわち、非ラメラ(すなわち、非二層)形態を有する。限定なく、非二層の形態には、例えば、三次元の管、ロッド、立方対称などが含まれ得る。例えば、脂質ナノ粒子の形態(ラメラ対非ラメラ)は、例えば、米国特許出願公開第2010/0130588号に記載されるCryo-TEM分析を使用して容易に評価され、特徴付けられ得る。
【0386】
いくつかの更なる実施形態では、非ラメラ形態を有する脂質ナノ粒子は、高電子密度である。いくつかの態様では、本開示は、単一ラメラ構造又は多ラメラ構造のいずれかである脂質ナノ粒子を提供する。いくつかの態様では、本開示は、多胞体粒子及び/又は発泡ベース粒子を含む脂質ナノ粒子を提供する。
【0387】
脂質構成成分の組成物及び濃度を制御することによって、脂質コンジュゲートが脂質粒子外で交換する速度、順に脂質ナノ粒子が膜融合性になる速度を制御することができる。加えて、例えば、pH、温度、又はイオン強度を含む他の変数を使用して、脂質ナノ粒子が膜融合性になる速度を変化及び/又は制御することができる。脂質ナノ粒子が膜融合性になる速度を制御するために使用され得る他の方法は、本開示に基づいて当業者に明らかとなるであろう。脂質コンジュゲートの組成物及び濃度を制御することによって、脂質粒径を制御することができることも明らかとなるであろう。
【0388】
製剤化されたカチオン性脂質のpKaは、核酸の送達のためのLNPの有効性と相関させることができる(Jayaraman et al.,Angewandte Chemie,International Edition(2012),51(34),8529-8533、Sempleet al.,Nature Biotechnology 28,172-176(2010)を参照されたい。pKaの好ましい範囲は、約5~約7である。カチオン性脂質のpKaは、2-(p-トルイジノ)-6-ナフタレンスルホン酸(TNS)の蛍光に基づくアッセイを使用し、脂質ナノ粒子中で決定され得る。
【0389】
VIII.閉端DNAベクターを送達する方法
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、様々な好適な方法によってインビトロ又はインビボで標的細胞に送達することができる。本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターのみを適用又は注射することができる。本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、トランスフェクション試薬又は他の物理的手段の助けなしに細胞に送達することができる。代替的に、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAは、細胞へのDNAの進入を促進する任意の当該技術分野において既知のトランスフェクション試薬又は他の当該技術分野において既知の物理的手段、例えば、リポソーム、アルコール、高ポリリジン化合物、高アルギニン化合物、リン酸カルシウム、微小胞、マイクロインジェクション、電気穿孔などを使用して送達され得る。
【0390】
別の実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、CNS(例えば、脳又は眼)に投与される。例えば、ceDNAベクターは、脊髄、脳幹(延髄、脳橋)、中脳(視床下部、視床、視床上部、脳下垂体、黒質、松果体)、小脳、終脳(線条体、後頭葉、側頭葉、頭頂葉、及び前頭葉、皮質、基底核、海馬、及び偏桃体を含む大脳)、辺縁系、新皮質、線条体、大脳、並びに下丘中に導入されてもよい。ceDNAベクターはまた、網膜、角膜、及び/又は視神経などの眼の異なる領域に投与されてもよい。ceDNAベクターは、脳脊髄液中に(例えば、腰椎穿刺によって)送達されてもよい。ceDNAベクターは、更に、血液脳関門が撹乱された状況(例えば、脳腫瘍又は脳梗塞)において、CNSに血管内投与されてもよい。
【0391】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、当該技術分野において既知の任意の経路によってCNSの所望の領域に投与され得、髄腔内、眼内、脳内、脳室内、静脈内(例えば、マンニトールなどの糖の存在下)、鼻腔内、耳内、眼内(例えば、硝子体内、網膜下、前房)、及び眼周囲(例えば、テノン下領域)送達、並びに運動ニューロンへの逆行性送達を伴う筋肉内送達を含むが、これらに限定されない。
【0392】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、CNSの所望の領域又は区画への直接注射(例えば、定位注射)によって液体製剤で投与される。他の実施形態では、例えば、合成的に産生されたceDNAベクターは、所望の領域への局所適用によって、又はエアロゾル製剤の鼻腔内投与によって提供され得る。眼への投与は、液滴の局所適用によって行われてもよい。更なる代替として、例えば、ceDNAベクターは、固体の徐放性製剤として投与され得る(例えば、米国特許第7,201,898号を参照されたい)。更に追加の実施形態では、例えば、合成的に産生されたceDNAベクターを、逆行性輸送に使用して、運動ニューロンが関与する疾患及び障害(例えば、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis、ALS)、脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy、SMA)など)を治療、改善、及び/又は予防することができる。例として、例えば、合成的に産生されたceDNAベクターは、筋組織に送達され、そこからニューロン中に移動し得る。
【0393】
IX.ceDNAベクターの追加の使用
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生された組成物、及びceDNAベクターを含む閉端DNAベクターを使用して、様々な目的で標的遺伝子又は導入遺伝子を発現させることができる。いくつかの実施形態では、得られる導入遺伝子は、研究目的のため、例えば、導入遺伝子を内包する体細胞トランスジェニック動物モデルを作成するため、例えば、導入遺伝子産物の機能を研究するために使用されることが意図されるタンパク質又は機能的RNAをコードする。別の実施例では、導入遺伝子は、疾患の動物モデルを作成するために使用されることが意図されるタンパク質又は機能的RNAをコードする。いくつかの実施形態では、得られる導入遺伝子は、哺乳類対象における疾患状態又は障害の治療、予防、又は改善に有用である、1つ以上のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質をコードする。得られる導入遺伝子は、遺伝子の発現の低減、発現の欠失、又は機能不全に関連した疾患を治療するのに十分な量で対象に導入され得る(例えば、発現され得る)。いくつかの実施形態では、得られる導入遺伝子は、発現の増加、遺伝子産物の活性、又は遺伝子の不適切な上方調節(得られる導入遺伝子が、その発現を抑制する、又は他の方法でその発現を低減させる)に関連した疾患を治療するのに十分な量で対象において発現され得る。更に他の実施形態では、得られる導入遺伝子は、未変性遺伝子の欠陥コピーを置換又は補足する。導入遺伝子は、それ自体が転写される遺伝子のオープンリーディングフレームでなくてもよく、代わりに、それが標的遺伝子のプロモータ領域又はリプレッサ領域であってもよく、ceDNAベクターがそのような領域を修飾して、関心対象の遺伝子の発現をそのように調節してもよいことが、当業者によって理解されるであろう。
【0394】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、疾患の動物モデルを作成するために使用されることが意図されるタンパク質又は機能的RNAをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、哺乳動物対象における疾患状態の治療又は予防に有用である、1つ以上のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質をコードする。導入遺伝子は、遺伝子の発現の低減、発現の欠失、又は機能不全に関連した疾患を治療するのに十分な量で患者に導入され得る(例えば、発現され得る)。
【0395】
X.使用の方法
合成的に産生された閉端DNAベクター、例えば、本明細書に開示されるようなceDNAベクターはまた、関心対象のヌクレオチド配列(例えば、導入遺伝子)を標的細胞(例えば、宿主細胞)に送達するための方法において使用され得る。この方法は、特に導入遺伝子を、それを必要とする対象の細胞に送達するため、及び関心対象の疾患を治療するための方法であり得る。本開示は、導入遺伝子の発現の治療効果が生じるように、対象の細胞内のceDNAベクターにコードされる導入遺伝子、例えば、タンパク質、抗体、miRNAなどの核酸などのインビボ発現を可能にする。これらの結果は、閉端DNAベクター(例えば、ceDNAベクター)送達のインビボ及びインビトロ両方の形態で見られる。
【0396】
加えて、本開示は、関心対象の核酸又は導入遺伝子を含む本開示の合成的に産生された閉端DNAベクター(例えば、ceDNAベクター)の多回投与を含む、それを必要とする対象の細胞中の遺伝子編集分子の送達のための方法を提供する。本開示のceDNAベクターは、カプシド化ウイルスベクターに対して典型的に観察されるような免疫応答を誘導しないため、そのような複数回投与戦略は、ceDNAベースの系においてより大きな成功を収めるであろう。
【0397】
合成的に産生された閉端DNAベクター(例えば、ceDNAベクター)核酸は、所望の組織の細胞をトランスフェクトし、過度の有害作用なしに、十分なレベルの遺伝子導入及び発現をもたらすのに十分な量で投与される。従来の薬学的に許容される投与経路としては、静脈内(例えば、リポソーム製剤)、選択された器官への直接送達(例えば、肝臓への門脈内送達)、筋肉内、及び他の投与経路が挙げられるが、これらに限定されない。所望される場合、投与経路を組み合わせることができる。
【0398】
閉端DNAベクター(例えば、ceDNAベクター)の送達は、送達遺伝子置換に限定されない。例えば、本明細書に記載される合成的に産生された閉端DNAベクター(例えば、ceDNAベクター)は、遺伝子療法の一部を提供するために提供される他の送達系とともに使用されてもよい。本開示に従って合成的に産生されたceDNAベクターと組み合わせることができる系の1つの非限定的な例は、導入遺伝子の効果的な遺伝子発現のために1つ以上の補因子又は免疫抑制因子を別々に送達する系を含む。
【0399】
本開示はまた、治療有効量の合成的に産生された閉端DNAベクター(例えば、ceDNAベクター)を、任意選択的に薬学的に許容される担体とともに、それを必要とする対象の標的細胞(特に筋細胞又は組織)に導入することを含む、対象における疾患を治療する方法を提供する。例えば、合成的に産生されたceDNAベクターは、担体の存在下で導入され得るが、そのような担体は必要とされない。例えば、選択される合成的に産生されたceDNAベクターは、疾患を治療するために有用な関心対象のヌクレオチド配列を含む。特に、例えば、合成的に産生されたceDNAベクターは、対象に導入されたときに、外因性DNA配列によってコードされる所望のポリペプチド、タンパク質、又はオリゴヌクレオチドの転写を指示することができる制御エレメントに操作可能に連結された所望の外因性DNA配列を含み得る。例えば、合成的に産生されたceDNAベクターは、上記及び本明細書の別の場所に提供される任意の好適な経路を介して投与され得る。
【0400】
本明細書に提供される合成的に産生された組成物及びベクターを使用して、様々な目的のために導入遺伝子を送達することができる。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、研究目的のため、例えば、導入遺伝子を内包する体細胞トランスジェニック動物モデルを作成するため、例えば、導入遺伝子産物の機能を研究するために使用されることが意図されるタンパク質又は機能的RNAをコードする。別の実施例では、導入遺伝子は、疾患の動物モデルを作成するために使用されることが意図されるタンパク質又は機能的RNAをコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、哺乳動物対象における疾患状態の治療又は予防に有用である、1つ以上のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質をコードする。導入遺伝子は、遺伝子の発現の低減、発現の欠失、又は機能不全に関連した疾患を治療するのに十分な量で患者に導入され得る(例えば、発現され得る)。
【0401】
原則として、発現カセットは、変異によって低減若しくは欠如しているタンパク質又はポリペプチドをコードする、又は過剰発現が本開示の範囲内であると考えられるときに、治療効果をもたらす核酸又は任意の導入遺伝子を含み得る。
【0402】
合成的に産生されたceDNAベクターは、1種のceDNAベクターに限定されない。そのようなものとして、別の態様では、異なる導入遺伝子、又は異なるプロモータ若しくはシス調節エレメントに操作可能に連結されるが同じ導入遺伝子を含む複数のceDNAベクターは、標的細胞、組織、器官、又は対象に同時に又は順次に送達され得る。したがって、この戦略では、複数の遺伝子の遺伝子療法又は遺伝子送達を同時に行うことができる。導入遺伝子の異なる部分を別々のceDNAベクターに分離することも可能であり(例えば、導入遺伝子の機能に必要な異なるドメイン及び/又は補因子)、同時に又は異なる時間に投与することができ、別々に調節可能であり得、それによって追加レベルの導入遺伝子の発現の制御を付加する。送達はまた、複数回、及び重要なことに、ウイルスカプシドの不在に起因する抗カプシド宿主免疫応答の欠失を仮定して、後に増加又は減少する用量で臨床状況において遺伝子療法のために実施され得る。カプシドが存在しないため、抗カプシド応答は起こらないと予想される。
【0403】
本開示はまた、治療有効量の本明細書に開示される合成的に産生されたceDNAベクターを、任意選択的に薬学的に許容される担体とともに、治療を必要とする対象の標的細胞(特に筋細胞又は組織)に導入することを含む、対象における疾患を治療する方法を提供する。ceDNAベクターは、担体の存在下で導入され得るが、そのような担体は必要とされない。実装されるceDNAベクターは、疾患を治療するために有用な関心対象のヌクレオチド配列を含む。具体的には、ceDNAベクターは、対象に導入されたときに、外因性DNA配列によってコードされる所望のポリペプチド、タンパク質、又はオリゴヌクレオチドの転写を指示することができる制御エレメントに作動可能に連結された所望の外因性DNA配列を含み得る。合成的に産生されたceDNAベクターは、上記及び本明細書の別の場所に提供される任意の好適な経路を介して投与され得る。
【0404】
XI.治療方法
本明細書に記載される技術はまた、開示される合成的に産生されたceDNAベクターを作製するための方法、並びにそれを様々な方法(例えば、原位置外、インビトロ及びインビボ適用、方法論、診断手順、並びに/又は遺伝子療法レジメン)で使用する方法を実証する。
【0405】
治療有効量の合成的に産生されたceDNAベクターを、任意選択的に薬学的に許容される担体とともに、治療を必要とする対象の標的細胞(例えば、筋細胞若しくは組織、又は他の罹患した細胞型)に導入することを含む、対象における疾患又は障害を治療する方法が、本明細書に提供される。ceDNAベクターは、担体の存在下で導入され得るが、そのような担体は必要とされない。実装される合成的に産生されたceDNAベクターは、疾患を治療するために有用な関心対象のヌクレオチド配列を含む。特に、合成的に産生されたceDNAベクターは、対象に導入されたときに、外因性DNA配列によってコードされる所望のポリペプチド、タンパク質、又はオリゴヌクレオチドの転写を指示することができる制御エレメントに操作可能に連結された所望の外因性DNA配列を含み得る。合成的に産生されたceDNAベクターは、上記及び本明細書の別の場所に提供される任意の好適な経路を介して投与され得る。
【0406】
1種以上の薬学的に許容される緩衝剤、希釈剤、又は賦形剤とともに本開示の合成的に産生されたceDNAベクターの1つ以上を含む、ceDNAベクター組成物及び製剤が、本明細書で開示される。そのような組成物は、疾患、傷害、障害、外傷、又は機能不全の1つ以上の症状を診断、予防、治療、又は改善するための、1つ以上の診断的又は治療的キットに含まれ得る。一態様では、疾患、傷害、障害、外傷、又は機能不全は、ヒト疾患、傷害、障害、外傷、又は機能不全である。
【0407】
本明細書に記載される技術の別の態様は、診断的又は治療的に有効な量の合成的に産生されたceDNAベクターを、それを必要とする対象に提供するための方法を提供し、この方法は、本明細書に開示されるある量の合成的に産生されたceDNAベクターを、それを必要とする対象の細胞、組織、又は器官に、ceDNAベクターからの導入遺伝子の発現を可能にするのに有効な時間にわたって提供し、それによって診断的又は治療的に有効な量のceDNAベクターによって発現されるタンパク質、ペプチド、核酸を対象に提供することを含む。更なる態様では、対象は、ヒトである。
【0408】
本明細書に記載される技術の別の態様は、対象における疾患、障害、機能不全、傷害、異常状態、又は外傷のうちの少なくとも1つ以上の症状を診断、予防、治療、又は改善するための方法を提供する。全体的かつ一般的な意味において、この方法は、少なくとも開示される合成的に産生されたceDNAベクターのうちの1つ以上を、それを必要とする対象に、対象の疾患、障害、機能不全、傷害、異常状態、又は外傷の1つ以上の症状を診断、予防、治療、又は改善するための量及び時間にわたって投与するステップを含む。更なる態様では、対象は、ヒトである。
【0409】
別の態様は、疾患又は疾患状態の1つ以上の症状を治療又は低減するためのツールとしての、合成的に産生されたceDNAベクターの使用である。欠陥遺伝子が知られているいくつかの遺伝性疾患が存在し、典型的に、通常は一般に劣性的に遺伝される酵素の欠乏状態と、調節又は構造タンパク質に関与し得るが、典型的に常に優性的に遺伝されるとは限らない不均衡状態との2つのクラスに分類される。欠乏状態の疾患の場合、合成的に産生されたceDNAベクターを使用し、導入遺伝子を送達して、置換療法のために正常な遺伝子を罹患した組織に運び入れるとともに、いくつかの実施形態では、アンチセンス変異を使用して、疾患の動物モデルを創り出すことができる。不均衡疾患状態の場合、合成的に産生されたceDNAベクターを使用して、モデル系において病態を創り出すことができ、次いでこれを使用して、その病態に対処する試みに使用することができる。したがって、本明細書に開示される合成的に産生されたceDNAベクター及び方法は、遺伝性疾患の治療を可能にする。本明細書で使用される場合、疾患状態は、疾患を引き起こす、又はそれをより重篤にする欠乏又は不均衡を部分的又は全体的に修繕することによって治療される。
【0410】
宿主細胞
いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターは、対象の宿主細胞に導入遺伝子を送達する。いくつかの実施形態では、対象の宿主細胞は、ヒト宿主細胞であり、例えば、血液細胞、幹細胞、造血細胞、CD34+細胞、肝細胞、がん細胞、血管細胞、筋細胞、膵臓細胞、神経細胞、眼若しくは網膜細胞、上皮若しくは内皮細胞、樹状細胞、線維芽細胞、又は哺乳動物起源の任意の他の細胞(無制限に、肝(すなわち、肝臓)細胞、肺細胞、心臓細胞、膵臓細胞、腸細胞、横隔膜細胞、腎(すなわち、腎臓)細胞、ニューロン細胞、血液細胞、骨髄細胞、若しくは遺伝子療法が企図される対象のいずれか1つ以上の選択された組織を含む)が挙げられる。一態様では、対象宿主細胞は、ヒト宿主細胞である。
【0411】
本開示はまた、本明細書に記載される合成的に産生されたceDNAベクターを含む、上記のような組換え宿主細胞に関する。したがって、当業者には明らかであるように、目的に応じて複数の宿主細胞を使用することができる。ドナー配列を含む構築物又は合成的に産生されたceDNAベクターを宿主細胞に導入して、ドナー配列が、前述のように染色体組み込み体として維持されるようにする。宿主細胞という用語は、複製中に生じる変異のために親細胞と同一ではない親細胞の任意の子孫を包含する。宿主細胞の選択は、ドナー配列及びその供給源に大きく依存する。宿主細胞はまた、哺乳動物、昆虫、植物、又は真菌細胞などの真核生物であってもよい。一実施形態では、宿主細胞は、ヒト細胞(例えば、初代細胞、幹細胞、又は不死化細胞株)である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、合成的に産生されたceDNAベクターをエクスビボで投与され、次いで遺伝子療法事象の後に対象に送達され得る。宿主細胞は、任意の細胞型、例えば、体細胞又は幹細胞、人工多能性幹細胞、又は血液細胞、例えば、T細胞若しくはB細胞、又は骨髄細胞であり得る。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、同種細胞である。例えば、T細胞ゲノム操作は、がん免疫療法、HIV療法(例えば、CXCR4及びCCR5などの受容体ノックアウト)などの疾患調整、及び免疫不全療法に有用である。B細胞上のMHC受容体は、免疫療法の標的となり得る。いくつかの実施形態では、遺伝子修飾型宿主細胞、例えば、骨髄幹細胞、例えば、CD34+細胞、又は人工多能性幹細胞を、治療用タンパク質の発現のために患者に移植して戻すことができる。
【0412】
ceDNAベクターで治療される例示的な導入遺伝子及び疾患
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターはまた、欠陥遺伝子を訂正するために有用である。非限定的な例として、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのDMD遺伝子は、本明細書に開示されるように合成的に産生されたceDNAベクターを使用して送達することができる。
【0413】
合成的に産生されたceDNAベクター又はその組成物は、任意の遺伝性疾患の治療に使用され得る。非限定的な例として、合成的に産生されたceDNAベクター又はその組成物は、例えば、トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTR)、変異体タンパク質が神経、心臓、胃腸系などでミスフォールドして凝集する奇病の治療に使用することができる。本明細書に記載される合成的に産生されたceDNAベクターを使用して、変異体疾患遺伝子(mutTTR)の欠失によって疾患を治療できることが本明細書で企図される。遺伝性疾患のそのような治療は、疾患の進行を止めることができ、確立された疾患の後退又は疾患の少なくとも1つの症状の少なくとも10%の低減を可能にし得る。
【0414】
別の実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクター又はその組成物は、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTC欠損症)、高アンモニア血症、又は新生児若しくは幼児のアンモニアを解毒する能力を損なう他の尿素サイクル障害の治療に使用することができる。先天性代謝の全ての疾患と同様に、野生型対照と比較した酵素活性の部分的回復でさえ(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%)、OTC欠乏症を有する対象の少なくとも1つの症状OTCの低減及び/又は生活の質の改善に十分であり得る。一実施形態では、OTCをコードする核酸は、インビボタンパク質置換のためにアルブミン内因性プロモータの後ろに挿入され得る。
【0415】
別の実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクター又はその組成物を、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ酵素をコードする核酸配列を送達することによるフェニルケトン尿症(PKU)の治療において使用して、PKU患者に毒性であり得る食事性フェニルアラニンの蓄積を低減することができる。先天性代謝の全ての疾患と同様に、野生型対照と比較した酵素活性の部分的回復でさえ(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%)、PKUを有する対象のPKUの少なくとも1つの症状の低減及び/又は生活の質の改善に十分であり得る。一実施形態では、フェニルアラニンヒドロキシラーゼをコードする核酸を、インビボタンパク質置換のためにアルブミン内因性プロモータの後ろに挿入することができる。
【0416】
別の実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクター又はその組成物は、酵素をコードする核酸配列を送達して、GSDを有する対象における異常なグリコーゲン合成又は分解を訂正することによる、グリコーゲン蓄積症(GSD)の治療に使用され得る。本明細書に記載される合成的に産生されたceDNAベクター及び方法を使用して送達及び発現され得る酵素の非限定的な例には、グリコーゲンシンターゼ、グルコース-6-ホスファターゼ、酸-アルファグルコシダーゼ、グリコーゲン分岐酵素、グリコーゲン分岐酵素、筋肉グリコーゲンホスホリラーゼ、肝臓グリコーゲンホスホリラーゼ、筋肉ホスホフルクトキナーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グルコース輸送体-2(GLUT-2)、アルドラーゼA、ベータ-エノラーゼ、ホスホグルコムターゼ-1(PGM-1)、及びグリコゲニン-1が含まれる。先天性代謝の全ての疾患と同様に、野生型対照と比較した酵素活性の部分的回復でさえ(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%)、GSDを有する対象のGSDの少なくとも1つの症状の低減及び/又は生活の質の改善に十分であり得る。一実施形態では、異常なグリコーゲン貯蔵を訂正するために酵素をコードする核酸を、インビボタンパク質置換のためにアルブミン内因性プロモータの後ろに挿入することができる。
【0417】
本明細書に記載される合成的に産生されたceDNAベクターはまた、レーバー先天性黒内障(Leber Congenital Amaurosis、LCA)、ポリQリピートを含むポリグルタミン病、及びアルファ-1アンチトリプシン欠乏症(A1AT)のうちのいずれかの治療における使用に企図されている。LCAは、失明を引き起こす稀な先天性眼疾患であり、以下の遺伝子:GUCY2D、RPE65、SPATA7、AIPL1、LCA5、RPGRIP1、CRX、CRB1、NMNAT1、CEP290、IMPDH1、RD3、RDH12、LRAT、TULP1、KCNJ13、GDF6、及び/又はPRPH2のうちのいずれか1つにおける変異によって引き起こされ得る。本明細書では、本明細書に記載されるceDNAベクター及び組成物及び方法が、LCAの症状の原因である遺伝子のエラーを訂正するために、LCAに関連する1つ以上の遺伝子の送達に適合され得ることが企図される。ポリグルタミン病には、歯列核淡蒼球ルイ体萎縮症、ハンチントン病、脊髄及び球根筋萎縮症、並びに脊髄小脳失調1型、2型、3型(マシャド・ジョセフ病としても知られている)、6型、7型、及び17型が含まれるが、これらに限定されない。A1AT欠乏症は、アルファ-1アンチトリプシンの産生不良を引き起こす遺伝性障害であり、血液及び肺での酵素活性の低下を招き、次にそれが罹患した対象の肺気腫又は慢性閉塞性肺疾患につながり得る。本明細書に概説されるようなceDNAベクター又はその組成物を使用するA1AT欠損症を有する対象の治療が、本明細書で具体的に企図される。本明細書では、LCA、ポリグルタミン病又はA1AT欠損症の治療のための所望のタンパク質をコードする核酸を含むceDNAベクターを、治療を必要とする対象に投与できることが企図される。
【0418】
更なる実施形態では、本明細書に記載される合成的に産生されたceDNAベクターを含む組成物を使用して、とりわけウイルス配列、病原体配列、染色体配列、転座接合部(例えば、がんに関連する転座)、非コードRNA遺伝子又はRNA配列、疾患関連遺伝子を送達することができる。
【0419】
関心対象の任意の核酸又は標的遺伝子は、本明細書に開示される合成的に産生されたceDNAベクターによって送達又は発現され得る。標的核酸及び標的遺伝子には、ポリペプチドをコードする核酸、又は非コード核酸(例えば、RNAi、miRsなど)、好ましくは治療剤(例えば、医療、診断、若しくは獣医用途用)、又は免疫原性ポリペプチド(例えば、ワクチン用)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される合成的に産生されたceDNAベクターによって標的とされる標的核酸又は標的遺伝子は、1つ以上のポリペプチド、ペプチド、リボザイム、ペプチド核酸、siRNA、RNAis、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスポリヌクレオチド、抗体、抗原結合断片、又はそれらの任意の組み合わせをコードする。
【0420】
特に、本明細書に開示される合成的に産生されたceDNAベクターによる発現のための遺伝子標的又は導入遺伝子は、例えば、限定されないが、疾患、機能不全、傷害、及び/又は障害のうちの1つ以上の症状の治療、予防、及び/又は改善における使用のための、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、酵素、抗体、抗原結合断片、並びにそのバリアント、及び/又は活性断片をコードし得る。一態様では、疾患、機能不全、外傷、傷害、及び/又は障害は、ヒト疾患、機能不全、外傷、傷害、及び/又は障害である。
【0421】
発現カセットはまた、ポリペプチド、センス若しくはアンチセンスオリゴヌクレオチド、又はRNA(コード若しくは非コード;例えば、siRNA、shRNA、マイクロRNA、及びそれらのアンチセンス対応物(例えば、antagoMiR))をコードし得る。発現カセットは、実験又は診断の目的で使用されるレポータータンパク質をコードする外因性配列、例えばβ-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、及び当該技術分野において周知の他のものを含み得る。
【0422】
発現カセット、本明細書に記載されるceDNAベクターの発現構築物で提供される配列は、宿主細胞に最適化されたコドンであり得る。本明細書で使用される場合、「最適化されたコドン」又は「コドン最適化」という用語は、目的の脊椎動物、例えばマウス又はヒトの細胞中の発現強化のために、少なくとも1つ、2つ以上、又は相当数の未変性配列(例えば、原核細胞配列)のコドンを、その脊椎動物の遺伝子中でより頻繁に又は最も頻繁に使用されるコドンと置き換えることによって、核酸配列を修飾するプロセスを指す。様々な種は、特定のアミノ酸のある特定のコドンに対して特定の偏向を呈する。典型的に、コドン最適化は、元の翻訳されたタンパク質のアミノ酸配列を変更しない。最適化されたコドンは、例えば、AptagenのGene Forge(登録商標)コドン最適化及びカスタム遺伝子合成プラットフォーム(Aptagen,Inc.,2190 Fox Mill Rd.Suite 300,Herndon,Va.20171)又は別の公開データベースを使用して決定することができる。
【0423】
多くの生物は、特定のコドンを使用して、成長するペプチド鎖における特定のアミノ酸の挿入をコードする偏向を示す。生物間のコドン使用頻度の違いであるコドン優先又はコドン偏向は、遺伝暗号の縮退によってもたらされ、多くの生物の間で十分に文書化されている。コドン偏向は、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳効率と相関関係があることが多く、特に翻訳されるコドンの特性及び特定のトランスファーRNA(tRNA)分子の可用性に依存すると考えられている。細胞内の選択されたtRNAの優勢は、一般にペプチド合成で最も頻繁に使用されるコドンの反映である。したがって、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現のために遺伝子を調整することができる。
【0424】
多種多様な動物、植物、及び微生物種で利用可能な多数の遺伝子配列を考えると、コドン使用頻度の相対頻度を計算することが可能である(Nakamura,Y.,et al.,「Codon usage tabulated from the international DNA sequence databases:status for the year 2000」Nucl.Acids Res.28:292(2000))。
【0425】
本明細書に記載されるように、本明細書に開示される合成的に産生されたceDNAベクターは、タンパク質若しくはペプチド、又は治療核酸配列をコードすることができ、又は治療剤としては、1種以上のアゴニスト、アンタゴニスト、抗アポトーシス因子、阻害剤、受容体、サイトカイン、細胞毒、エリスロポエチン剤、糖タンパク質、増殖因子、増殖因子受容体、ホルモン、ホルモン受容体、インターフェロン、インターロイキン、インターロイキン受容体、神経増殖因子、向神経活性ペプチド、向神経活性ペプチド受容体、プロテアーゼ、プロテアーゼ阻害剤、タンパク質デカルボキシラーゼ、タンパク質キナーゼ、タンパク質キナーゼ阻害剤、酵素、受容体結合タンパク質、輸送タンパク質若しくはその1種以上の阻害剤、セロトニン受容体、又はその1種以上の取り込み阻害剤、セルピン、セルピン受容体、腫瘍抑制剤、診断的分子、化学療法剤、細胞毒、あるいはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0426】
合成的に産生されたceDNA遺伝子ベクターはまた、遺伝子発現の除去にも有用である。例えば、一実施形態では、ceDNAベクターを使用して、アンチセンス核酸又は機能的RNAを発現させ、標的遺伝子のノックダウンを誘導することができる。非限定的な例として、HIV受容体であるCXCR4及びCCR5の発現は、初代ヒトT細胞において首尾よく切除されており、Schumann et al.,(2015),PNAS 112(33):10437-10442を参照されたい。標的化阻害の別の遺伝子はPD-1であり、合成的に産生されたceDNAベクターは、阻害核酸又はRNAi又は機能的RNAを発現させてPD-1の発現を阻害することができる。PD-1は、悪性腫瘍で起こる慢性的に活性なT細胞に免疫チェックポイント細胞表面受容体を発現する。Schumann et al.、上記を参照されたい。
【0427】
いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターは、罹患した遺伝子を標的とする導入遺伝子を発現させることによって、欠陥遺伝子を訂正するために有用である。本明細書に開示される合成的に産生されたceDNAベクターによる治療の影響を受けやすい疾患又は障害の非限定的な例は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2014/0170753号のそれらの遺伝子及びそれらの関連遺伝子とともに表A~Cに列挙されている。
【0428】
代替的な実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターは、セーフハーバー遺伝子、例えば、不活性イントロンにおける治療用タンパク質又はレポータータンパク質の発現のための発現カセットの挿入に使用される。ある特定の実施形態では、プロモータレスカセットが、セーフハーバー遺伝子に挿入される。そのような実施形態では、プロモータレスカセットは、セーフハーバー遺伝子調節エレメント(プロモータ、エンハンサ、及びシグナル伝達ペプチド)を利用することができ、セーフハーバー遺伝子座での挿入の非限定的な例は、Blood(2015)126(15):1777-1784に記載されているアルブミン遺伝子座への挿入である。アルブミンへの挿入は、血液への導入遺伝子の分泌を可能にするという利点を有する(例えば、実施例22を参照)。加えて、ゲノムセーフハーバー部位は、当該技術分野において既知であり、例えば、Papapetrou,ER&Schambach,A.Molecular Therapy24(4):678-684(2016)又はSadelain et al.,Nature Reviews Cancer 12:51-58(2012)に説明されている技術を使用して決定され得る。アデノ関連ウイルス(AAV)ゲノムのセーフハーバー部位(例えば、AAVS1セーフハーバー部位)は、本明細書に記載される方法及び組成物とともに使用され得る(例えば、Oceguera-Yanez et al.,Methods 101:43-55(2016)又はTiyaboonchai,A et al.,Stem Cell Res 12(3):630-7(2014)を参照されたい)。例えば、AAVS1ゲノムセーフハーバー部位は、胚性幹細胞(例えば、ヒト胚性幹細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)における造血特異的導入遺伝子発現及び遺伝子サイレンシングの目的のために、本明細書に記載されるceDNAベクター及び組成物とともに使用することができる。加えて、染色体19上のAASV1セーフハーバー部位に挿入するための、合成又は市販の相同性指向修復ドナー鋳型を、本明細書に記載されるようなceDNAベクター又は組成物とともに使用できることが本明細書において企図される。例えば、相同性指向修復鋳型、及びガイドRNAは、例えば、System Biosciences(Palo Alto,CA)から商業的に購入し、ceDNAベクターにクローニングすることができる。
【0429】
いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターは、導入遺伝子を発現させるか、又はT細胞中の標的遺伝子をノックアウトする若しくはその発現を減少させるために、例えば、養子細胞移入及び/又はCAR-T治療の改善のためにT細胞を操作するために使用される(例えば、実施例24を参照)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるceDNAベクターは、遺伝子をノックアウトする導入遺伝子を発現させることができる。T細胞の治療的に関連するノックアウトの非限定的な例は、PNAS(2015)112(33):10437-10442に記載されている。
【0430】
遺伝子療法のための追加の疾患
一般に、上記の説明に従って本明細書に開示される合成方法によって産生されたceDNAベクターを使用して任意の導入遺伝子を送達して、遺伝子発現に関する任意の障害に関連する症状を治療、予防、又は改善することができる。例示的な疾患状態としては、嚢胞性線維症(及び他の肺の疾患)、血友病A、血友病B、サラセミア、貧血症及び他の血液障害、AIDS、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、てんかん及び他の神経障害、がん、糖尿病、筋ジストロフィー(例えば、デュシェンヌ型、ベッカー型)、ハーラー病、アデノシンデアミナーゼ欠損症、代謝障害、網膜変性疾患(及び他の眼の疾患)、ミトコンドリオパチー(例えば、レーバー遺伝性視神経萎縮症(Leber's hereditary optic neuropathy、LHON)、リー症候群、及び亜急性硬化性脳炎)、ミオパチー(例えば、顔面肩甲上腕型ミオパチー(FSHD)及び心筋症)、固形臓器(例えば、脳、肝臓、腎臓、心臓)の疾患などが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターは、代謝障害(例えば、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症)を有する個体の治療において有利に使用され得る。
【0431】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを使用して、遺伝子又は遺伝子産物中の変異によって引き起こされる疾患又は障害を治療、改善、及び/又は予防することができる。ceDNAベクターで治療することができる例示的な疾患又は障害としては、代謝性疾患又は障害(例えば、ファブリー病、ゴーシェ病、フェニルケトン尿症(phenylketonuria、PKU)、糖原病);尿素サイクル疾患又は障害(例えば、オルニチントランスカルバミラーゼ(ornithine transcarbamylase、OTC)欠損症);リソソーム蓄積症又は障害(例えば、異染性白質ジストロフィー(metachromatic leukodystrophy、MLD)、II型ムコ多糖症(MPSII;ハンター症候群));肝臓の疾患又は障害(例えば、進行性家族性肝内胆汁うっ滞(progressive familial intrahepatic cholestasis、PFIC);血液疾患又は障害(例えば、血友病A及びB、サラセミア、並びに貧血);がん及び腫瘍、並びに遺伝性疾患又は障害(例えば、嚢胞性線維症)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0432】
なおも更なる態様として、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを用いて、導入遺伝子(例えば、本明細書に記載される、ホルモン又は増殖因子をコードする導入遺伝子)の発現レベルを調節することが望ましい状況において、異種ヌクレオチド配列を送達することができる。
【0433】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを使用して、疾患又は障害をもたらす遺伝子産物の異常なレベル及び/又は機能(例えば、タンパク質中の非存在又は欠損)を訂正することができる。ceDNAベクターは、機能的タンパク質を産生し、かつ/又はタンパク質のレベルを修正して、タンパク質中の不在若しくは欠損によって引き起こされる特定の疾患若しくは障害から生じる症状を緩和若しくは低減するか、又は利益を付与することができる。例えば、OTC欠損症の治療は、機能的OTC酵素を産生することによって達成することができ;血友病A及びBの治療は、第VIII因子、第IX因子、及び第X因子のレベルを改変することによって達成することができ;PKUの治療は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ酵素のレベルを改変することによって達成することができ;ファブリー病又はゴーシェ病の治療は、機能的なアルファガラクトシダーゼ又はベータグルコセレブロシダーゼをそれぞれ産生することによって達成することができ;MLD又はMPSIIの治療は、それぞれ、機能的アリールスルファターゼA又はイズロン酸-2-スルファターゼを産生することによって達成することができ;嚢胞性線維症の治療は、機能的嚢胞性線維症膜貫通調節因子を産生することによって達成することができ;糖原病の治療は、機能的なG6Pase機能を回復させることによって達成することができ;PFICの治療は、機能的なATP8B1、ABCB11、ABCB4、又はTJP2遺伝子を産生することによって達成することができる。
【0434】
代替的な実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを使用して、アンチセンス核酸をインビトロ又はインビボで細胞に提供することができる。例えば、導入遺伝子が、RNAi分子である場合、標的細胞中のアンチセンス核酸又はRNAiの発現は、細胞による特定のタンパク質の発現を減少させる。したがって、RNAi分子又はアンチセンス核酸である導入遺伝子を投与して、それを必要とする対象における特定のタンパク質の発現を減少させることができる。アンチセンス核酸をインビトロで細胞に投与して、細胞生理学を調節する、例えば、細胞又は組織培養系を最適化することもできる。
【0435】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターによってコードされる例示的な導入遺伝子としては、X、リソソーム酵素(例えば、タイ・サックス病に関連するヘキソサミニダーゼA、又はハンター症候群/MPS IIに関連するイズロネートスルファターゼ)、エリスロポエチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、スーパーオキシドジスムターゼ、グロビン、レプチン、カタラーゼ、チロシンヒドロキシラーゼ、並びにサイトカイン(例えば、インターフェロン、β-インターフェロン、インターフェロン-γ、インターロイキン-2、インターロイキン-4、インターロイキン12、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子、リンホトキシンなど)、ペプチド増殖因子及びホルモン(例えば、ソマトトロピン、インスリン、インスリン様増殖因子1及び2、血小板由来増殖因子(PDGF)、上皮増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、神経増殖因子(NGF)、神経栄養因子-3及び4、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア由来増殖因子(GDNF)、形質転換増殖因子-α及び-βなど)、受容体(例えば、腫瘍壊死因子受容体)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例示的な実施形態では、導入遺伝子は、1つ以上の所望の標的に特異的なモノクローナル抗体をコードする。いくつかの例示的な実施形態では、2つ以上の導入遺伝子が、ceDNAベクターによってコードされる。いくつかの例示的な実施形態では、導入遺伝子は、目的の2つの異なるポリペプチドを含む融合タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、本明細書で定義されるように、全長抗体又は抗体断片を含む、抗体をコードする。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に定義されるように、抗原結合ドメイン又は免疫グロブリン可変ドメイン配列である。他の例示的な導入遺伝子配列は、自殺遺伝子産物(チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ジフテリア毒素、チトクロームP450、デオキシシチジンキナーゼ、及び腫瘍壊死因子)、がん療法において使用される薬物に対する耐性を付与するタンパク質、及び腫瘍抑制因子遺伝子産物をコードする。
【0436】
代表的な実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターによって発現される導入遺伝子は、筋ジストロフィーの治療を必要とする対象における治療のために使用され得る。この方法は、治療、改善、又は予防に有効な量の、本明細書に記載されるceDNAベクターを投与することを含み、ceDNAベクターは、異種核酸をコードするジストロフィン、ミニジストロフィン、マイクロジストロフィン、ミオスタチンプロペプチド、フォリスタチン、アクチビンII型可溶性受容体、IGF-1、抗炎症性ポリペプチド、例えば、IカッパB優性変異体、サルコスパン、ウトロフィン、マイクロジストロフィン、ラミニン-α2、α-サルコグリカン、β-サルコグリカン、γ-サルコグリカン、δ-サルコグリカン、IGF-1、ミオスタチン若しくはミオスタチンポリペプチドに対する抗体若しくは抗体断片、及び/又はミオスタチンに対するRNAiを含む。特定の実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターは、本明細書の別の場所に記載されるように、骨格筋、横隔膜筋、及び/又は心筋に投与され得る。
【0437】
いくつかの実施形態では、通常は血液中で循環するポリペプチド(例えば、酵素)若しくは機能的RNA(例えば、RNAi、microRNA、アンチセンスRNA)の産生のため、あるいは障害(例えば、代謝障害、例えば糖尿病(例えば、インスリン)、血友病(例えば、VIII)、ムコ多糖障害(例えば、スライ症候群、ハーラー症候群、シャイエ症候群、ハーラー・シャイエ症候群、ハンター症候群、サンフィリポ症候群A、B、C、D、モルキオ症候群、マロトー・ラミー症候群など)又はリソソーム蓄積症(ゴーシェ病[グルコセレブロシダーゼ]、ポンペ病[リソソーム酸アルファ-グルコシダーゼ]若しくはファブリー病[アルファ-ガラクトシダーゼA])又はグリコーゲン蓄積疾患(ポンペ病[リソソーム酸アルファグルコシダーゼ)を治療、改善、及び/又は予防するための他の組織への全身送達のため、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを使用して、導入遺伝子を骨格筋、心筋、又は横隔膜筋に送達することができる。代謝障害を治療、改善、及び/又は予防するための他の好適なタンパク質は、上に記載される。
【0438】
他の実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを使用して、代謝障害の治療、改善、及び/又は予防を必要とする対象においてそれを行う方法において、導入遺伝子を送達することができる。例示的な代謝障害及びポリペプチドをコードする導入遺伝子が、本明細書に記載される。任意選択的に、ポリペプチドが分泌される(例えば、その未変性状態の分泌ポリペプチドであるポリペプチド、又は例えば、当該技術分野において既知のような分泌シグナル配列との操作可能な会合によって分泌されるように操作されたポリペプチド)。
【0439】
本開示の別の態様は、それを必要とする対象において先天性心不全又はPADを治療、改善、及び/又は予防する方法であって、本明細書に記載の合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを哺乳動物対象に投与することを含み、ceDNAベクターが、例えば、筋小胞体Ca2+-ATPase(SERCA2a)、血管新生因子、ホスファターゼ阻害剤I(I-1)、ホスホランバンに対するRNAi、ホスホランバンS16Eなどのホスホランバン阻害剤又はドミナントネガティブ分子、ホスホランバン遺伝子を調節するジンクフィンガープロテイン、β2-アドレナリン作動性受容体、ベータ2-アドレナリン作動性受容体キナーゼ(.beta.2-adrenergic receptor kinase、BARK)、PI3キナーゼ、calsarcan、ベータ-アドレナリン作動性受容体キナーゼ阻害剤(.beta.-adrenergic receptor kinase inhibitor、βARKct)、プロテインホスファターゼ1の阻害剤1、S100A1、パルブアルブミン、アデニリルシクラーゼ6型、切断された構成的に活性なβARKct、Pim-1、PGC-1α、SOD-1、SOD-2、EC-SOD、カリクレイン、HIF、サイモシン-β4、mir-1、mir-133、mir-206及び/又はmir-208などの、G-タンパク質結合受容体キナーゼ2型のノックダウンをもたらす分子をコードする導入遺伝子を含む。
【0440】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを、任意の好適な手段によって、任意選択的に、ceDNAベクターを含む呼吸域粒子のエアロゾル懸濁液を投与することによって、対象の肺に投与することができ、これを対象が吸入する。呼吸域粒子は、液体又は固体であり得る。ceDNAベクターを含む液体粒子のエアロゾルは、当業者に既知であるように、圧力駆動型エアロゾル噴霧器又は超音波噴霧器を用いるなど、任意の好適な手段によって産生され得る。例えば、米国特許第4,501,729号を参照されたい。本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを含む固体粒子のエアロゾルは、薬学分野において既知の技法によって、任意の固体粒子薬剤エアロゾル生成器を用いて同様に産生され得る。
【0441】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターは、CNS(例えば、脳、眼)の組織に投与することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターは、遺伝性障害、神経変性障害、精神障害、及び腫瘍を含むCNSの疾患を治療、改善、又は予防するために投与され得る。CNSの例示的な疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、カナバン病、リー病、レフサム病、トゥーレット症候群、原発性側索硬化症、筋萎縮性側索硬化症、進行性筋萎縮、ピック病、筋ジストロフィー、多発性硬化症、重症筋無力症、ビンスワンガー病、脊椎又は頭部傷害に起因する外傷、タイ・サック病、リーシュ・ナイアン病、癲癇、脳梗塞、気分障害(例えば、抑うつ、双極性感情障害、持続性感情障害、二次気分障害)を含む精神障害、統合失調症、薬物依存(例えば、アルコール依存及び他の薬物依存)、ノイローゼ(例えば、不安症、強迫性障害、身体表現性障害、解離性障害、悲痛、産後うつ病)、精神病(例えば、幻覚及び妄想)、認知症、偏執病、注意欠陥障害、精神性的障害、睡眠障害、疼痛障害、摂食又は体重障害(例えば、肥満、悪液質、拒食症、及び過食症)、並びにCNSのがん及び腫瘍(例えば、下垂体腫瘍)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0442】
本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターで治療、改善、又は予防され得る眼障害としては、網膜、後視床路、及び視神経に関与する眼科障害(例えば、網膜色素変性、糖尿病性網膜症、及び他の網膜変性疾患、ブドウ膜炎、加齢性黄斑変性、緑内障)が挙げられる。多くの眼科疾患及び障害は、(1)血管新生、(2)炎症、及び(3)変性の3タイプの適応症の1つ以上に関連している。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターは、抗血管新生因子、抗炎症因子、細胞の変性を遅らせるか、細胞温存を促進するか、又は細胞増殖を促進する因子、及び前述のものの組み合わせを送達するために用いることができる。糖尿病性網膜症は、例えば、血管新生によって特徴付けられる。糖尿病性網膜症は、眼内(例えば、硝子体内)又は眼周囲(例えば、テノン嚢下領域内)のいずれかで1つ以上の抗血管新生因子を送達することによって治療され得る。1つ以上の神経栄養因子を、眼内(例えば、硝子体内)又は眼周囲のいずれかに共送達することもできる。本開示のceDNAベクターを治療、改善、又は予防され得る追加の眼疾患としては、地図状萎縮、血管性又は「滲出型」黄斑変性、スタルガルト病、レーバー先天黒内障(LCA)、アッシャー症候群、弾性線維性偽性黄色腫(pseudoxanthoma elasticum、PXE)、X連鎖性網膜色素変性(x-linked retinitis pigmentosa、XLRP)、X連鎖性網膜分離症(x-linked retinoschisis、XLRS)、全脈絡膜萎縮、レーバー遺伝性視神経萎縮症(Leber hereditary optic neuropathy、LHON)、色盲、錐体杆体変性、フックス角膜内皮変性症、糖尿病黄斑浮腫、並びに眼のがん及び腫瘍が挙げられる。
【0443】
いくつかの実施形態では、炎症性眼疾患又は障害(例えば、ブドウ膜炎)は、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターによって治療、改善、又は予防され得る。1つ以上の抗炎症因子は、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターの眼内(例えば、硝子体又は前眼房)投与によって発現され得る。他の実施形態では、網膜変性(例えば、網膜色素変性症)を特徴とする眼の疾患又は障害は、本開示のceDNAベクターによって治療、改善、又は予防され得る。1つ以上の神経栄養因子をコードする、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターの眼内(例えば、硝子体投与)を使用して、そのような網膜変性に基づく疾患を治療することができる。いくつかの実施形態では、血管新生及び網膜変性(例えば、加齢性黄斑変性)の両方に関与する疾患又は障害は、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターで治療され得る。加齢性黄斑変性は、眼(例えば、硝子体)内に1つ以上の神経栄養因子及び/又は眼内若しくは眼周囲(例えば、テノン嚢下領域内)に1つ以上の抗血管新生因子をコードする、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを投与することによって治療され得る。緑内障は、増加した眼圧及び網膜神経節細胞の喪失を特徴とする。緑内障の治療は、本明細書に開示されるceDNAベクターを使用して興奮毒性損傷から細胞を保護する1つ以上の神経保護剤の投与を含む。したがって、そのような薬剤としては、N-メチル-D-アスパラギン酸塩(NMDA)アンタゴニスト、サイトカイン、及び神経栄養因子は、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを使用して、眼内、任意選択的に硝子体内に送達され得る。
【0444】
他の実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを使用して、発作を治療する、例えば、発作の徴候、発生率、又は重症度を低減することができる。発作の治療的処置の有効性は動作的(例えば、揺動、眼若しくは口のチック)及び/又は電子記録的手段(ほとんどの発作は、顕著な電子記録的異常を有する)によって評価され得る。したがって、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを使用して、経時的に複数の発作によってマークされる癲癇を治療することもできる。代表的な一実施形態では、脳下垂体腫瘍を治療するために、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターを使用して、ソマトスタチン(又はその活性断片)が脳に投与される。この実施形態に従い、ソマトスタチン(又はその活性断片)をコードする本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターは、脳下垂体への微小注入によって投与される。同様に、そのような治療を使用して、末端肥大症(脳下垂体からの異常な成長ホルモン分泌)を治療することができる。当該技術分野において既知である、ソマトスタチンの核酸(例えば、GenBank受託番号J00306)及びアミノ酸(例えば、GenBank受託番号P01166;処理された活性ペプチドソマトスタチン-28及びソマトスタチン-14を含有する)配列。特定の実施形態では、ceDNAベクターは、米国特許第7,071,172号に記載される分泌シグナルを含む導入遺伝子をコードすることができる。
【0445】
本開示の別の態様は、インビボでの対象への全身送達のためのアンチセンスRNA、RNAi、又は他の機能的RNA(例えば、リボザイム)を産生するための、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターの使用に関する。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の合成産生方法によって産生されたceDNAベクターは、アンチセンス核酸、リボザイム(例えば、米国特許第5,877,022号に記載されている)、スプライソソーム媒介トランススプライシングに影響を及ぼすRNA(Puttaraju et al.,(1999)Nature Biotech.17:246、米国特許第6,013,487号、及び同第6,083,702号を参照されたい)、遺伝子サイレンシングを媒介する干渉RNA(RNAi)(Sharp et al.,(2000)Science 287:2431参照)、又は「ガイド」RNAなどの他の非翻訳RNA(Gorman et al.,(1998)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 95:4929、Yuanらの米国特許第5,869,248号)などをコードする導入遺伝子を含み得る。
【0446】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターはまた、レポーターポリペプチド(例えば、緑色蛍光タンパク質又はアルカリホスファターゼなどの酵素)をコードする導入遺伝子を更に含み得る。いくつかの実施形態では、実験又は診断の目的で有用なレポータータンパク質をコードする導入遺伝子は、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、及び当該技術分野において周知の他のもののうちのいずれかから選択される。いくつかの態様では、レポーターポリペプチドをコードする導入遺伝子を含む合成的に産生されたceDNAベクターを、診断目的のために、又はそれらが投与される対象におけるceDNAベクターの活性のマーカーとして使用することができる。
【0447】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターは、宿主染色体と相同性を共有し、宿主染色体上の遺伝子座と組み替える、導入遺伝子又は異種ヌクレオチド配列を含み得る。このアプローチを利用して、宿主細胞中の遺伝子欠陥を訂正することができる。
【0448】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成産生方法によって産生されたceDNAベクターは、対象における免疫原性ポリペプチドを発現するため、例えば、ワクチン接種のために使用され得る導入遺伝子を含み得る。導入遺伝子は、当該技術分野において既知の関心対象の任意の免疫原をコードし得、ヒト免疫不全ウイルス、インフルエンザウイルス、gagタンパク質、腫瘍抗原、癌抗原、細菌抗原、ウイルス抗原などからの免疫原が挙げられるが、これらに限定されない。
【0449】
ceDNAベクターを使用する良好な遺伝子発現の試験
当該技術分野において周知のアッセイを使用して、合成的に産生されたceDNAベクターによる遺伝子送達の効率を試験することができ、インビトロ及びインビボの両方のモデルで実施され得る。合成的に産生されたceDNAによる所望の導入遺伝子のノックイン又はノックアウトは、所望の導入遺伝子のmRNA及びタンパク質レベルを測定することによって(例えば、逆転写PCR、ウエスタンブロット分析、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))当業者により評価され得る。合成的に産生されたceDNAによる核酸変更(例えば、点変異、DNA領域の欠失)は、ゲノム標的DNAのディープシーケンシングによって評価することができる。一実施形態では、合成的に産生されたceDNAは、例えば、蛍光顕微鏡法又は発光プレートリーダーによりレポータータンパク質の発現を調べることによって、所望の導入遺伝子の発現を評価するために使用できるレポータータンパク質を含む。インビボ適用の場合、タンパク質機能アッセイを使用して、所与の遺伝子及び/又は遺伝子産物の機能を試験して、遺伝子発現が成功したかどうかを判断することができる。例えば、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子遺伝子(CFTR)の点変異は、アニオン(例えば、Cl-)をアニオンチャネルを介して移動させるCFTRの能力を阻害し、機能的(すなわち、非変異型)CFTR遺伝子をceDNAベクターとともに対象に送達することによって訂正され得ることが想定される。ceDNAベクターの投与後、当業者は、アニオンがアニオンチャネルを通って移動する能力を評価して、CFTR遺伝子が送達及び発現されたかどうかを決定することができる。当業者は、インビトロ又はインビボでタンパク質の機能性を測定するための最良の試験を決定することができるであろう。
【0450】
本明細書では、細胞又は対象におけるceDNAベクターからの導入遺伝子の遺伝子発現の効果は、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも2年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも20年にわたって継続し得るか、又は永続的であり得ることが企図される。
【0451】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される発現カセット、発現構築物、又はceDNAベクター中の導入遺伝子は、宿主細胞に対して最適化されたコドンであり得る。本明細書で使用される場合、「最適化されたコドン」又は「コドン最適化」という用語は、関心対象の脊椎動物、例えば、マウス又はヒト(例えば、ヒト化された)の細胞中の発現強化のために、少なくとも1つ、2つ以上、又は相当数の未変性配列(例えば、原核細胞配列)のコドンを、その脊椎動物の遺伝子中でより頻繁に又は最も頻繁に使用されるコドンと置き換えることによって、核酸配列を修飾するプロセスを指す。様々な種は、特定のアミノ酸のある特定のコドンに対して特定の偏向を呈する。典型的に、コドン最適化は、元の翻訳されたタンパク質のアミノ酸配列を変更しない。最適化されたコドンは、例えば、AptagenのGene Forge(登録商標)コドン最適化及びカスタム遺伝子合成プラットフォーム(Aptagen,Inc.)又は別の公的に入手可能なデータベースを使用して判定され得る。
【0452】
XII.投与
特定の実施形態では、2回以上の投与(例えば、2、3、4回以上の投与)を用いて、様々な間隔の期間、例えば、毎日、毎週、毎月、毎年など、所望のレベルの遺伝子発現を達成することができる。
【0453】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターの例示的な投与形態としては、経口、直腸、経粘膜、鼻腔内、吸入(例えば、エアロゾルを介した)、頬側(例えば、舌下)、膣、髄腔内、眼内、経皮、内皮内、子宮内(又は卵内)、非経口(例えば、静脈内、皮下、皮内、頭蓋内、筋肉内[骨格、横隔膜、及び/又は心筋への投与を含む]、胸膜内、脳内、及び動脈内)、局所(例えば、気道表面を含む皮膚及び粘膜表面への、並びに経皮投与)、リンパ内など、並びに直接組織又は器官注入(例えば、肝臓、眼、骨格筋、心筋、横隔膜、筋肉、若しくは脳への)が挙げられる。
【0454】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターの投与は、脳、骨格筋、平滑筋、心臓、横隔膜、気道上皮、肝臓、腎臓、脾臓、膵臓、皮膚、及び眼からなる群から選択される部位を含むが、これらに限定されない、対象の任意の部位に対して行われ得る。合成的に産生されたceDNAベクターの投与はまた、腫瘍(例えば、腫瘍又はリンパ節内又はその付近)に対するものであり得る。任意の所与の症例における最も好適な経路は、治療、改善、及び/又は予防される病態の性質及び重症度、並びに使用されている特定のceDNAベクターの性質に依存するであろう。追加的に、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAは、単一のベクター又は複数のceDNAベクター(例えば、ceDNAカクテル)中に複数の導入遺伝子を投与できるようにする。
【0455】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターの、本開示に従う骨格筋への投与としては、肢(例えば、上腕、下腕、上肢、及び/又は下肢)、腰、首、頭(例えば、舌)、咽頭、腹部、骨盤/会陰、及び/又は指の骨格筋への投与が挙げられるが、これらに限定されない。合成的に産生されたceDNAベクターは、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内、四肢灌流(任意選択的に、脚及び/若しくは腕の単離された四肢灌流、例えば、Arruda et al.,(2005)Blood 105:3458-3464を参照)並びに/又は直接筋肉内注射によって骨格筋に送達され得る。特定の実施形態では、本明細書に開示されるceDNAベクターは、対象(例えば、DMDなどの筋ジストロフィーを有する対象)に、四肢灌流、任意選択的に単離された四肢灌流(例えば、静脈内又は動脈内投与による)によって投与される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含むDNAベクターは、「流体力学的」技法を用いることなく投与され得る。
【0456】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターの、心筋への投与としては、左心房、右心房、左心室、右心室、及び/又は中隔への投与が挙げられる。本明細書に記載される合成的に産生されたceDNAベクターは、静脈内投与、大動脈内投与などの動脈内投与、直接心臓注射(例えば、左心房、右心房、左心室、右心室への)、及び/又は冠動脈灌流によって心筋に送達され得る。横隔膜筋への投与は、静脈内投与、動脈内投与、及び/又は腹腔内投与を含む任意の好適な方法によって行われ得る。平滑筋への投与は、静脈内投与、動脈内投与、及び/又は腹腔内投与を含む任意の好適な方法によって行われ得る。一実施形態では、投与は、平滑筋内、その付近、及び/又はその上に存在する内皮細胞に対して行われ得る。
【0457】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含むDNAベクターは、骨格筋、横隔膜筋、及び/又は心筋に投与される(例えば、筋ジストロフィー又は心疾患(例えば、PAD若しくはうっ血性心不全)を治療、改善、及び/又は予防するため)。
【0458】
エクスビボ治療
いくつかの実施形態では、細胞を対象から除去し、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターをその中に導入した後、細胞を対象に戻す。エクスビボの治療のために対象から細胞を取り出し、続いて対象に戻す方法は、当該技術分野において既知である(例えば、米国特許第5,399,346号参照)。代替的に、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、別の対象からの細胞中に、培養細胞中に、又は任意の他の好適な源からの細胞中に導入され、これらの細胞は、それを必要とする対象に投与される。
【0459】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターで形質導入された細胞は、好ましくは、薬学的担体と組み合わせて「治療有効量」で対象に投与される。当業者であれば、いくらかの利益が対象にもたらされる限り、治療効果が完全又は治癒的である必要はないことを理解するであろう。
【0460】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、望ましくはインビトロ、エクスビボ、又はインビボで細胞中で産生される任意のポリペプチドである、導入遺伝子(時には異種ヌクレオチド配列と呼ばれる)をコードすることができる。例えば、本明細書で前述される治療の方法におけるceDNAベクターの使用とは対照的に、いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、例えば、抗原又はワクチンの産生のために、培養した細胞、及びそれから単離された発現遺伝子産物中に導入されてもよい。
【0461】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、獣医学及び医療の両方の用途で使用することができる。上記のエクスビボ遺伝子送達方法に好適な対象としては、鳥類(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、七面鳥、及びキジ)及び哺乳動物(例えば、ヒト、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、及びウサギ類)が挙げられ、哺乳動物が好ましい。ヒト対象が最も好ましい。ヒト対象は、新生児、幼児、年少者、及び成人を含む。
【0462】
本明細書に記載される技術の一態様は、導入遺伝子を細胞に送達する方法に関する。典型的には、インビトロ方法では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターを、本明細書に開示される方法及び当該技術分野において既知の他の方法を使用して細胞に導入することができる。本明細書に開示されている、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、好ましくは、生物学的に有効な量で細胞に投与される。本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターがインビボで細胞に(例えば、対象に)投与される場合、ceDNAベクターの生物学的に有効な量は、標的細胞における導入遺伝子の形質導入及び発現をもたらすのに十分な量である。
【0463】
用量範囲
インビボ及び/又はインビトロアッセイを任意選択的に用いて、合成的に産生されたceDNAベクターの使用のための最適投与量範囲を特定するのを助けることができる。製剤に用いられる正確な用量はまた、投与経路及び病態の重症度に依存し、当業者の判断及び各対象の状況に従って決定されるべきである。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導かれた用量反応曲線から推定され得る。
【0464】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターは、所望の組織の細胞をトランスフェクトし、過度の有害作用なしに、十分なレベルの遺伝子導入及び発現をもたらすのに十分な量で投与される。従来の薬学的に許容される投与経路としては、「投与」セクションで上述されたもの、例えば選択された器官への直接送達(例えば、肝臓への門脈内送達)、経口、吸入(鼻腔内及び気管内送達を含む)、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、及び他の非経口投与経路が挙げられるが、これらに限定されない。投与経路は、所望の場合、組み合わせることができる。
【0465】
特定の「治療効果」を達成するために必要な合成的に産生されたceDNAベクターの量の用量は、核酸投与の経路、治療効果を達成するために必要な遺伝子又はRNA発現のレベル、治療される特定の疾患又は障害、及び遺伝子、RNA産物、又は得られる発現タンパク質の安定性を含むが、これらに限定されないいくつかの因子に基づいて変化する。当業者は、前述の因子並びに当該技術分野において周知の他の因子に基づいて、特定疾患又は障害を有する患者を治療するための合成的に産生されたceDNAベクター用量範囲を容易に判定することができる。
【0466】
最適な治療応答を提供するように、投与量レジームを調整することができる。例えば、オリゴヌクレオチドは、繰り返し投与することができ、例えば、数回用量が毎日投与され得るか、又は治療状況の急迫によって示されるように、用量を比例的に低減することができる。当業者は、オリゴヌクレオチドが細胞に投与されるか、又は対象に投与されるかにかかわらず、対象オリゴヌクレオチドの投与の適切な用量及びスケジュールを容易に判定することができるであろう。
【0467】
「治療有効量」又は「治療有効用量」は、臨床治験を通じて判定され得る比較的広い範囲内に含まれ、特定の用途に依存する(神経細胞は、極少量を必要とするが、全身注射は、多量を必要とする)であろう。例えば、ヒト対象の骨格筋又は心筋への直接インビボ注射の場合、治療有効量は、およそ約1μg~100gのceDNAベクターとなるであろう。本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含むDNAベクターを送達するためにエキソソーム又は微粒子が使用される場合、治療有効量は、経験的に判定され得るが、1μg~約100gのベクターを送達することが予想される。更に、治療有効量とは、疾患の1つ以上の症状の低減をもたらすが、著しいオフターゲット又は著しい有害副作用には至らない、対象に影響を与えるのに十分な量の導入遺伝子を発現するceDNAベクターの量である。
【0468】
薬学的に許容される賦形剤及び担体溶液の配合は、様々な治療レジメンにおいて本明細書に記載される特定の組成物を使用するための好適な投与及び治療計画の開発と同様に、当業者に周知である。
【0469】
インビトロトランスフェクションの場合、細胞(1×106細胞)に送達される、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターの有効量は、およそ0.1~100μgのceDNAベクター、好ましくは1~20μg、より好ましくは1~15μg又は8~10μgとなる。より大きなceDNAベクターは、より多い用量を必要とするであろう。エキソソーム又は微粒子が使用される場合、有効なインビトロ用量は、経験的に判定され得るが、一般に同量のceDNAベクターを送達することが意図される。
【0470】
治療は、単一用量又は複数回用量の投与を必要とし得る。いくつかの実施形態では、2回以上の用量が対象に投与され得る。合成的に産生されたceDNAベクターは、ウイルスカプシドの非存在に起因して、抗カプシド宿主免疫反応を誘起する誘起せず、その製剤は、その合成産生に起因して望ましくない細胞汚染物質を含有しないため、実際に、必要に応じて複数の用量を投与することができる。そのようなものとして、当業者は、適切な用量数を判定することができる。投与される用量数は、例えば、およそ1~100、好ましくは2~20用量であり得る。
【0471】
任意の特定の理論に束縛されるものではないが、本開示によって記載される合成的に産生されたceDNAベクターの投与によって誘起される典型的な抗ウイルス免疫反応の欠失(すなわち、カプシド構成成分の非存在)は、複数の場合に合成的に産生されたceDNAベクターを宿主に投与できるようになる。いくつかの実施形態では、異種核酸が対象に送達される場合の数は、2~10回の範囲内(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10回)である。いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターは、10回より多く対象に送達される。
【0472】
いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターの用量は、1暦日(例えば、24時間)当たり1回だけ対象に投与される。いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターの用量は、2、3、4、5、6、又は7暦日当たり1回だけ対象に投与される。いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターの用量は、暦週(例えば、7暦日)当たり1回だけ対象に投与される。いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターの用量は、2週間に1回(例えば、2暦週期間に1回)だけ対象に投与される。いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターの用量は、1暦月当たり1回(例えば、30暦日に1回)だけ対象に投与される。いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターの用量は、6暦月当たり1回だけ対象に投与される。いくつかの実施形態では、合成的に産生されたceDNAベクターの用量は、暦年(例えば、365日又は閏年では366日)当たり1回だけ対象に投与される。
【0473】
単位剤形
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、単位剤形で便宜的に提示され得る。単位剤形は、典型的に、医薬組成物の1つ以上の投与経路に適合されるであろう。いくつかの実施形態では、単位剤形は、吸入による投与のために適合される。いくつかの実施形態では、単位剤形は、吸入器による投与のために適合される。いくつかの実施形態では、単位剤形は、噴霧器による投与のために適合される。いくつかの実施形態では、単位剤形は、エアロゾル化器による投与のために適合される。いくつかの実施形態では、単位剤形は、経口投与のため、頬側投与のため、又は舌下投与のために適合される。いくつかの実施形態では、単位剤形は、静脈内、筋肉内、又は皮下投与のために適合される。いくつかの実施形態では、単位剤形は、髄腔内又は脳室内投与のために適合される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、局所投与のために製剤化される。単一剤形を産生するために担体材料と組み合わされ得る活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす化合物の量となるであろう。
【0474】
XIII.様々な適用
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生された組成物及び閉端DNAベクター(ceDNAベクターを含む)を使用して、上記のような様々な目的で導入遺伝子を送達することができる。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、タンパク質をコードするか、又は機能的RNAであり得、いくつかの実施形態では、研究目的、例えば、1つ以上の変異を有する体細胞トランスジェニック動物モデルを創り出すため、例えば、標的遺伝子の機能を研究するために修飾されたタンパク質又は機能的RNAであり得る。別の実施例では、導入遺伝子は、疾患の動物モデルを創り出すためにタンパク質又は機能的RNAをコードする。
【0475】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、哺乳動物対象における病態の治療、改善、又は予防に有用である、1つ以上のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質をコードする。合成的に産生されたceDNAベクターによって発現された導入遺伝子は、異常な遺伝子配列に関連する疾患を治療するのに十分な量で患者に投与され得、これは標的遺伝子の発現の低減、発現の欠如、又は機能不全のうちのいずれか1つ以上をもたらし得る。
【0476】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含むDNAベクターは、診断及びスクリーニング方法における使用のために想定され、これにより導入遺伝子は、細胞培養系又は代替的にトランスジェニック動物モデルにおいて一時的に又は安定して発現される。
【0477】
本明細書に記載される技術の別の態様は、哺乳動物細胞の集団を形質導入する方法を提供する。全体的かつ一般的な意味において、この方法は、少なくとも有効量の本明細書に開示される合成的に産生されたceDNAのうちの1つ以上を含む組成物を、その集団の1つ以上の細胞に導入するステップを含む。
【0478】
追加的に、本開示は、1つ以上の追加の成分で配合されるか、又はそれらの使用のために1つ以上の指示で調製された、本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクター組成物を含む開示された閉端DNAのうちの1つ以上を含む、組成物、並びに治療及び/又は診断キットを提供する。
【0479】
本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含む閉端DNAベクターが投与される細胞は、任意のタイプのものであり得、神経細胞(末梢及び中枢神経系の細胞、特に脳細胞を含む)、肺細胞、腎細胞、上皮細胞(例えば、胃及び呼吸器上皮細胞)、筋細胞、樹状細胞、膵臓細胞(島細胞を含む)、肝細胞、心筋細胞、骨細胞(例えば、骨髄幹細胞)、造血幹細胞、脾臓細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、内皮細胞、前立腺細胞、生殖細胞などが挙げられるが、これらに限定されない。代替的に、細胞は、任意の前駆細胞であり得る。更なる代替として、細胞は、幹細胞(例えば、神経幹細胞、肝幹細胞)であり得る。なおも更なる代替として、細胞は、がん又は腫瘍細胞であり得る。更に、細胞は、上に示されるように、任意の種の起源に由来し得る。
【実施例】
【0480】
以下の実施例は、限定ではない例証によって提供される。本明細書に記載される合成プロセスを使用して産生されたceDNAベクターを含むDNAベクターは、本明細書に記載される野生型又は修飾型ITRのうちのいずれかを含む、対称又は非対称ITR構成のうちのいずれかから構築され得ること、及び以下の例示的な方法を使用して、そのようなceDNAベクターを構築し、その活性を評価できることを当業者は理解するであろう。これらの方法は、ある特定のceDNAベクターを用いて例示されているが、それらは、説明に沿って任意のceDNAベクターを含む任意のDNAベクターに適用可能である。
【0481】
実施例1:ceDNAの昆虫細胞ベースの産生
比較目的のため、実施例1は、昆虫細胞ベースの方法及びポリヌクレオチド構築物鋳型を使用するceDNAベクターの産生を記載し、また国際特許出願公開第WO2019/051255号の実施例1にも記載される。例えば、実施例1に従って本開示のceDNAベクターを生成するために使用されるポリヌクレオチド構築物鋳型は、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、及び/又はceDNA-バキュロウイルスであり得る。理論に限定されるものではないが、許容宿主細胞中、例えば、Repの存在下、2つの対称ITR(ITRのうちの少なくとも1つが、野生型ITR配列に対して修飾されている)及び発現構築物を有するポリヌクレオチド構築物鋳型は、ceDNAベクターを産生するように複合する。ceDNAベクター産生は、第1の、鋳型骨格(例えば、ceDNA-プラスミド、ceDNA-バクミド、ceDNA-バキュロウイルスゲノムなど)からの鋳型の切除(「レスキュー」)、及び第2の、切除したceDNAベクターのRep媒介型複製の2つのステップを経る。
【0482】
昆虫細胞を使用する方法でceDNAベクターを産生するための例示的な方法は、本明細書に記載されるceDNA-プラスミドに由来する。
図1A及び
図1Bを参照すると、ceDNA-プラスミドの各々のポリヌクレオチド構築物鋳型は、左ITR及び右ITRの両方を含む(両方とも、
図1Aの野生型であり、対称の実質的に対称なITR、
図1Bの非対称ITRを産生する)ITR配列間に以下のものを含む:(i)エンハンサ/プロモータ;(ii)導入遺伝子のクローニング部位;(iii)転写後応答エレメント(例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE));及び(iv)ポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモン遺伝子(BGHpA)由来)。固有の制限エンドヌクレアーゼ認識部位(R1~R6)(
図1A及び
図1Bに示される)もまた、各構成成分の間に導入され、構築物中の特定部位への新たな遺伝子構成成分の導入を促進した。R3(PmeI)GTTTAAAC(配列番号123)及びR4(PacI)TTAATTAA(配列番号124)酵素部位は、導入遺伝子のオープンリーディングフレームを導入するために、クローニング部位の中で操作される。これらの配列を、ThermoFisher Scientificから取得したpFastBac HT Bプラスミドにクローニングした。
【0483】
ceDNA-バクミドの産生:
DH10Bacコンピテント細胞(MAX EFFICIENCY(登録商標)DH10Bac(商標)コンピテント細胞、Thermo Fisher)を、製造元の指示によるプロトコルに従って、試験プラスミド又は制御プラスミドのいずれかで形質転換した。DH10Bac細胞中のプラスミドとバキュロウイルスシャトルベクターとの間の組換えを誘導して、組換えceDNA-バクミドを生成した。バクミド及びトランスポサーゼプラスミドの形質転換体及び維持のために選択する抗生物質とともに、X-gal及びIPTGを含有する細菌寒天平板上のE.coli中の青白スクリーニングに基づいて(Φ80dlacZΔM15マーカーは、バクミドベクターからのβ-ガラクトシダーゼ遺伝子のα-相補性を提供する)正の選択をスクリーニングすることによって、組換えバクミドを選択した。β-ガラクトシダーゼ指標遺伝子を妨害する転位によって引き起こされる白色コロニーを採取し、10mlの培地中で培養した。
【0484】
組換えceDNA-バクミドを、E.coliから単離し、FugeneHDを使用してSf9又はSf21昆虫細胞中にトランスフェクションして、感染性バキュロウイルスを産生した。付着したSf9又はSf21昆虫細胞を、25℃のT25フラスコ中の50mlの培地で培養した。4日後、培養培地(P0ウイルスを含有する)を細胞から取り除き、0.45μmフィルターで濾過し、感染性バキュロウイルス粒子を細胞又は細胞残屑から分離した。
【0485】
任意選択的に、第1世代のバキュロウイルス(P0)を、ナイーブSf9又はSf21昆虫細胞を感染させることによって50~500mlの培地中で増幅させた。オービタルシェーカ培養器内の懸濁液培養物中の細胞を、130rpm、25℃で維持し、細胞が(14~15nmのナイーブ直径から)18~19nmの直径及び約4.0E+6細胞/mLの密度に到達するまで、細胞直径及び生存率をモニタリングした。感染3日後~8日後に、培地中のP1バキュロウイルス粒子を、遠心分離後に採取し、細胞及び残屑を除去した後、0.45μmフィルターで濾過した。
【0486】
試験構築物を含むceDNA-バキュロウイルスを収集し、バキュロウイルスの感染活性又は力価を決定した。具体的には、2.5E+6細胞/mlの4×20ml Sf9細胞培養物を、次の希釈1/1000、1/10,000、1/50,000、1/100,000のP1バキュロウイルスで処理し、25~27℃でインキュベートした。感染性は、細胞直径増加の速度及び細胞周期停止、並びに細胞生存率の変化によって4~5日間にわたって毎日決定した。
【0487】
「Rep-プラスミド」は、Rep78(国際特許出願公開第WO2019/143385号の配列番号131若しくは133)又はRep68(WO2019/143385の配列番号130)及びRep52(WO2019/143385の配列番号132)又はRep40(WO2019/143385の配列番号129)の両方を含むpFASTBAC(商標)二重発現ベクター(ThermoFisher)において産生された。Rep-プラスミドを、製造元によって提供されるプロトコルに従って、DH10Bacコンピテント細胞(MAX EFFICIENCY(登録商標)DH10Bac(商標)コンピテント細胞(Thermo Fisher)中に形質転換した。DH10Bac細胞中のRep-プラスミドとバキュロウイルスシャトルベクターとの間の組換えを誘導して、組換えバクミド(「Rep-バクミド」)を生成した。X-gal及びIPTGを含有する細菌寒天平板上のE.coli中の青白スクリーニング(Φ80dlacZΔM15マーカーは、バクミドベクターからのβ-ガラクトシダーゼ遺伝子のα-相補性を提供する)を含む正の選択によって、組換えバクミドを選択した。単離された白色コロニーを採取し、10mlの選択培地(LBブロス中のカナマイシン、ゲンタマイシン、テトラサイクリン)中に播種した。組換えバクミド(Rep-バクミド)をE.coliから単離し、Rep-バクミドをSf9又はSf21昆虫細胞中にトランスフェクションして、感染性バキュロウイルスを産生した。
【0488】
Sf9又はSf21昆虫細胞を、50mlの培地中で4日間培養し、感染性組換えバキュロウイルス(「Rep-バキュロウイルス」)を、培養物から単離した。任意選択的に、第1世代のRep-バキュロウイルス(P0)を、ナイーブSf9又はSf21昆虫細胞を感染させることによって増幅させ、50~500mlの培地中で培養した。感染3日後~8日後に、培地中のP1バキュロウイルス粒子を、遠心分離によって細胞を分離するか、又は濾過若しくは別の分画プロセスのいずれかによって収集した。Rep-バキュロウイルスを収集し、バキュロウイルスの感染活性を決定した。具体的には、2.5×106細胞/mLの4×20mL Sf9細胞培養物を、次の希釈1/1000、1/10,000、1/50,000、1/100,000のP1バキュロウイルスで処理し、インキュベーションした。感染性は、細胞直径増加の速度及び細胞周期停止、並びに細胞生存率の変化によって4~5日間にわたって毎日決定した。
【0489】
ceDNAベクター生成及び特徴付け
次いで、(1)ceDNA-バクミド又はceDNA-バキュロウイルスを含有する試料、及び(2)上記のRep-バキュロウイルスのいずれかを含有するSf9昆虫細胞培養培地を、Sf9細胞(2.5E+6細胞/ml、20ml)の新鮮な培養物に、それぞれ1:1000及び1:10,000の比で添加した。次いで、細胞を25℃、130rpmで培養した。同時感染の4~5日後に、細胞の直径及び生存率が検出される。生存率が約70~80%で細胞直径が18~20nmに到達した場合、細胞培養物を遠心分離し、培地を取り除き、細胞ペレットを回収した。最初に、細胞ペレットを、適量の水性培地(水又は緩衝液のいずれか)に再懸濁する。ceDNAベクターを単離し、Qiagen MIDI PLUS(商標)精製プロトコル(Qiagen、カラム当たり0.2mgの処理された細胞ペレット質量)を使用して、細胞から精製した。
【0490】
Sf9昆虫細胞から産生及び精製されるceDNAベクターの収量は、最初に、260nmでのUV吸光度に基づいて判定された。精製されたceDNAベクターは、実施例7に記載される電気泳動方法論を使用して、適切な閉端構成について評価され得る。
【0491】
実施例2:二本鎖DNA構築物のための鋳型としての基本ベクターの調製
5’-TTCCGCTTCCTCGCTCACTG-3’(配列番号42)の配列を有するフォワードプライマ及び5’-AGACGTCAGGTGGCACTTTTC-3’(配列番号43)の配列を有するリバースプライマを使用して、アンピシリン耐性遺伝子及び複製起源構成要素を含有するpUC19プラスミド(New England Biolabs)の骨格が増幅される。PCR増幅産物は、Fast DigestDpnIで処理されて、鋳型を排除し、次いで、Zymo Research DNA Clean and Concentration Kitを使用して精製される。
【0492】
別に、2つの合成されたgBlock(商標)DNA断片が提供される(Integrated DNA Technologies)。これらのgBlock(商標)断片は、pUC19骨格を有する相同領域(配列番号44及び配列番号45)、部分ITR配列(A-A’及びD-D’ステム領域、例えば、表5参照)、2つのIIS型制限エンドヌクレアーゼ認識部位、左及び右スペーサ領域(例えば、表2参照)、並びに導入遺伝子発現カセットがクローニングされる制限エンドヌクレアーゼ認識部位を分離する役割を果たすランダムヌクレオチド配列を有するプレースホルダー領域などのいくつかの重要な構成要素を含有した。例えば、
図2に示される例示的な基本ベクタープラスミド11は、NotI及びXbaI認識部位を分離する役割を果たすランダムヌクレオチド配列を有する200bpのスペーサであるプレースホルダーSp200_CG500を有する。プレースホルダーSp200_CG500は、第VIII因子発現導入遺伝子発現カセットで置換されて、実施例3に記載されるように構築物1を産生する。
【0493】
【0494】
【0495】
相同性クローニングを介して、増幅されたpUC19骨格及び2つのgBlock(商標)断片がライゲーションされ、ライゲーション混合物は、E.coli中で形質転換するために使用され、選択培地上でプレーティングされる。いくつかのコロニーがプレートから選択され、コロニーから精製されたプラスミドDNAが検証のために配列決定される。基本ベクターは、実施例3に記載される二本鎖構築物の調製のための鋳型としての役割を果たす。
【0496】
実施例3:ceDNAの無細胞合成のための鋳型としての二本鎖DNA構築物の調製
概要
導入遺伝子発現カセットを含有するインサートが、複製を可能にするrep起源、少なくとも1つのIIS型制限エンドヌクレアーゼの認識部位を含有するマルチクローニング部位、及び抗生物質耐性遺伝子などの、選択を可能にする少なくとも1つの遺伝子を有する基本ベクターから切除される、二本鎖DNA構築物。
図2は、NotI及びXbaI認識部位を分離する役割を果たすランダムヌクレオチド配列を有する200bpスペーサであるプレースホルダー領域Sp200_CG500と、左及び右スペーサと、ceDNAの無細胞合成を容易にする左及び右部分ITRと、rep起源と、ベクターにアンピシリン耐性を付与するblaコード配列と、を有する、例示的な基本ベクター、プラスミド11のマップを示す。プラスミド11は、スペーサSp200_CG500が切除され、関心対象の導入遺伝子発現カセットがNotI及びXbaI部位にサブクローニングされて、構築物1を産生する、基本ベクターとしての役割を果たし、そのマップは、
図3に示されており、これは、プレースホルダーSp200_CG500が、DNA合成を介して、PCR鎖アセンブリによって、又はプラスミド若しくは他のベクターからそのような分子を切除することによって提供され得る第VIII因子発現導入遺伝子で置換されていることを除いて、その基本ベクタープラスミド11と同じ遺伝子エレメントを有する。例えば、国際特許出願公開第WO2019/143885号の
図11Bを参照されたい。
【0497】
二本鎖DNA構築物を調製するために、基本ベクターを、XbaI及びNotIで消化し、スペーサ(フィラー又はプレースホルダー)領域を放出させる。次いで、消化物を、アガロースゲル上で泳動させ、アガロースゲル上には、2つの断片を表す2つのバンド:プレースホルダー領域及び基本ベクター骨格が存在するはずである。基本ベクター骨格をゲル抽出する。
【0498】
関心対象の導入遺伝子発現カセットを、例えば、配列5’-TGATTAACCCGCCATGCTACTTAT-3’(配列番号48)を有する単一プライマをQ5 High Fidelityポリメラーゼとともに使用して、カセットを担持する鋳型ベクターからPCR増幅する。次いで、PCR反応物を高速消化DpnIで処理して、プラスミド鋳型を排除する。その後、Zymo Research DNA Clean and Concentration Kitを使用してPCR反応物を精製する。
【0499】
相同性クローニングを介して、基本ベクター骨格及びPCR増幅された導入遺伝子発現カセットをライゲーションし、ライゲーション混合物を使用して、E.coliを形質転換し、選択培地上にプレーティングする。いくつかのコロニーがプレートから選択され、コロニーから精製されたプラスミドDNAが検証のために配列決定される。二本鎖構築物は、実施例4に記載されるceDNAの無細胞合成のための鋳型としての役割を果たす。
【0500】
実施例4:ceDNAの無細胞合成
概要
1つのタイプのITRオリゴヌクレオチドを有する対称のITRを有するceDNAベクターを産生する1つの例示的な無細胞合成方法が
図4に例示されている。簡単に説明すると、導入遺伝子発現カセット(斜線)が、少なくとも1つのIIS型制限エンドヌクレアーゼ、例えば、BsaIを使用して、二本鎖DNA構築物から切除される。次いで、これに続いて、切除されたインサート(導入遺伝子発現カセットを含有する)を、ITRオリゴヌクレオチド(
図4でITRオリゴとして示される)にライゲーション(例えば、T4リガーゼ又はAAV Repタンパク質などのリガーゼと)し、ITRオリゴヌクレオチドは、自己アニールしてITR様三次元構成を形成する一本鎖オリゴヌクレオチドである。BsaIなどのIIS型制限エンドヌクレアーゼによる消化は、ITRオリゴヌクレオチドのオーバーハングと適合性である、切除されたインサートの5’及び3’末端の両方における粘着性オーバーハングを生じさせる。IIS型制限エンドヌクレアーゼがヌクレオチド配列を認識し、かつDNAを切断するやり方の独自性が、
図5及び
図6に例示されており、本明細書の詳細な説明で説明されている。ITRオリゴヌクレオチド及びインサートオーバーハング配列の設計は、ITRオリゴヌクレオチドオーバーハング及びインサートオーバーハングが互いに適合するように、ライゲーションプロセスの高い特異性を駆動する。このようにして、ITRオリゴヌクレオチドは、自己ライゲーションしてITRオリゴヌクレオチド二量体を形成することができない。BsaI消化後のプラスミド骨格からの断片は、ITRオリゴヌクレオチドにライゲーションすることができない。BsaI消化が不完全である導入遺伝子発現カセットのコピーは、ITRオリゴヌクレオチドにライゲーションすることができず、BsaIによって再切断されることになる。切除されたインサート及びプラスミド断片が元の構築物に再ライゲーションする状況では、BsaI認識部位が再生され、したがって、構築物がBsaIによって再び切断されることを可能にする。逆に、インサートの両末端におけるITRオリゴヌクレオチドにライゲーションされたインサートを有する所望のceDNA産物は、BsaI認識部位がceDNA中に存在しないため、BsaIによる切断に感受性ではない。代わりに、所望のceDNA産物は、ceDNA産物中のみに存在し、DNA構築物出発材料中にもITRオリゴヌクレオチド中にも存在しない、ライゲーションが起こる固有のジャンクション配列を含有する(
図4で白丸によって表される)。IIS型制限エンドヌクレアーゼの固有の活性、インサート末端上の固有のオーバーハングの生成、及びサブクローニングプロセスの高い特異性を駆動するITRオリゴヌクレオチド上の固有のオーバーハングの設計に起因して、消化及びライゲーションは、ライゲーションの前に消化産物を精製する必要なく、単一の反応容器内で起こり得る。ライゲーションが完了した後、試料は、DNAエキソヌクレアーゼ処理、例えば、T5エキソヌクレアーゼ処理を介して選択的に濃縮され、これは、開端DNA断片及び中間体を選択的に標的とし、分解するが、閉端であるceDNAを標的としない。
【0501】
ceDNAの無細胞合成のための詳細な手順
凍結乾燥されたITRオリゴヌクレオチドを1×TE緩衝液に100μM濃度で再懸濁してストックを作成し、これをDuplex Buffer(30mM HEPES、pH7.5、100mM酢酸カリウム)で1:10に希釈し、最終濃度10μMとして使用した。自己アニーリングを誘導するために、希釈されたITRオリゴヌクレオチドを95℃で10分間インキュベートし、これを除去し、直ちに氷水浴に入れて急速に冷却する。
【0502】
次に、二本鎖構築物(例えば、FVIII発現導入遺伝子を担持する構築物1)、1つ以上のIIS型制限エンドヌクレアーゼ(例えば、BsaI)、及びT4リガーゼを用いて、酵素による消化及びライゲーション反応の混合物を準備する。以下の表6は、単一のITRオリゴヌクレオチドが使用される、800μL反応及び32mL反応を設定するためのレシピを提供する。
【0503】
【0504】
消化/ライゲーション反応混合物を37℃で2.5時間インキュベートし、続いて、65~75℃で30分間T4リガーゼを熱失活させる。その後、構築物骨格及びライゲーションされていないITRオリゴヌクレオチド及びインサートから残存する開端DNA断片を37℃で1~1.5時間除去するT5エキソヌクレアーゼ反応を以下のように準備する。
【0505】
【0506】
T5エキソヌクレアーゼ消化後、反応混合物をZymoPURE Gigaprep Kitを使用して、製造業者の指示に従って精製する。代替的に又は追加的に、反応混合物を希釈緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、50mM EDTA、pH7.0)と混合し、精製のために充填DMAE樹脂カラムに装填する。
【0507】
実施例5:自己アニーリングITRオリゴヌクレオチドの設計及び調製
実施例3に説明され、
図4~
図6に例示されるように、ceDNAベクターを産生する例示的な無細胞合成方法は、導入遺伝子発現カセットを含有する切除された二本鎖インサートを5’及び3’ITRオリゴヌクレオチドにライゲーションすることを伴う。ITRオリゴヌクレオチドは、DNA合成の任意の方法(例えば、インビトロDNA合成方法論)によって提供され得、遊離5’末端及び遊離3’末端を有する直鎖状分子として提供される。次いで、ITRオリゴヌクレオチドは、自己アニールして、二次塩基対合構造(例えば、ステムループ又はヘアピン)を形成するが、一次構造は、直鎖状一本鎖分子である。更に、ITRオリゴヌクレオチドが自己アニールして二次三次元構造を形成する場合、オリゴヌクレオチドの5’又は3’末端のいずれかに粘着性オーバーハングが形成される。表8は、
図4に例示されるように、二本鎖DNA構築物の5’及び3’末端にライゲーションされ得る例示的なITRオリゴヌクレオチドを示す。
【0508】
【0509】
本明細書に開示されるように、本明細書に開示される無細胞合成方法を使用して調製されたceDNAベクターは、野生型ITR(WT-ITR、例えば、国際特許出願公開第WO2019/143885号の
図6A及び
図6B参照)又は修飾型ITR(対称及び非対称の両方、例えば、WO2019/143385の
図7A及び
図7B参照)を含み得る。修飾型ITRは、B及びB’アーム並びに/又はC及びC’アームを形成する配列における野生型ITRからの1つ以上のヌクレオチドの欠失、挿入、又は置換を含み得る(例えば、WO2019/143885の表3参照)。上記の表8に列挙されるITRオリゴヌクレオチドに加えて、適切なオーバーハング配列と組み合わせて、WO2019/143885の表2、4A、4B、及び5に列挙される野生型又は修飾型ITRヌクレオチド配列のうちのいずれかを完全に又は部分的に組み込むITRオリゴヌクレオチドを設計及び合成することができる。ITRヌクレオチド配列を部分的に組み込むITRオリゴヌクレオチドについて、ITRオリゴヌクレオチド上の部分ITR配列が、インサートの5’及び3’末端に見出される対応する部分ITR配列と結合する場合、完全なITR配列が、インサートへのITRオリゴヌクレオチドのライゲーション後にceDNA産物中で生成される。
【0510】
合成プロセスの一部として、1つ以上の制限エンドヌクレアーゼ部位をITRのステム部分に導入することができる。国際特許出願公開第WO2019/143885の
図6A~
図7Eは、制限エンドヌクレアーゼ部位が組み込まれている実施形態を含む、例示的なITRオリゴヌクレオチド配列及び構造を提供する。
【0511】
ITR様三次元構成を形成するためのITRオリゴヌクレオチドの自己アニーリングを誘導するために、実施例2に記載の手順を使用する。代替的に、オリゴヌクレオチドを、好適な緩衝液:例えば、100mM酢酸カリウム、30mM HEPES、pH7.5)中で等モル量で混合し、94℃まで2分間加熱し、徐々に冷却した。重要な二次構造のないオリゴの場合、冷却ステップは、ヒートブロック又は水浴から室温に試料を移動させるのと同じくらい簡単であり得る。多くの二次構造を有すると予測されるオリゴの場合、より緩やかな冷却/アニーリングステップが有益である。これは、オリゴ溶液を水浴又はヒートブロックに入れ、機械のプラグを抜く/電源を切ることによって行われる。アニールされたオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼを含まない緩衝液中で希釈され、二本鎖のアニールされた形態で4℃で保存され得る。
【0512】
ITRオリゴヌクレオチドのステム長
本明細書に記載の無細胞ceDNA産生方法におけるライゲーション反応の特異性を駆動する粘着性オーバーハングの設計及び形成に加えて、本発明者らは、折り畳まれたITRオリゴヌクレオチド(すなわち、三次元ステムループ構造を有するITRオリゴヌクレオチド)のステム領域の長さが、オリゴヌクレオチドの折りたたみ及びceDNA産生に対して重要な役割を果たすことを見出した。
図7Aは、7bpステムを有する折りたたまれたITRオリゴヌクレオチド及び3bpステムを有する別の折りたたまれたITRオリゴヌクレオチドを示す概略図である。
図7Bは、BsaI消化を介してプラスミド20から切除された約320bpのインサートを、それぞれ、14bp、7bp、5bp、及び3bpのステムを有するITRオリゴヌクレオチドとライゲーションした、4つの異なる反応のライゲーション産物を示すアガロースゲル電気泳動画像である。プラスミド20から切除された約320bpのインサートは、
図7Cのプラスミドマップに示されるように、2つのBsaI認識部位に隣接する左部分ITR、左スペーサ、右スペーサ、及び右部分ITRを含む。4つの異なる反応からのライゲーション産物のサイズは、480bp(14bpステム)、380bp(7bpステム)、380bp(5bpステム)、及び375bp(3bpステム)であると予想された。
図7Bに示されるように、14bp、7bp、及び5bpステムを有するITRオリゴヌクレオチドを使用する反応は、上記の予想されるサイズを有するライゲーション産物を生じさせたが、3bpステムを有するITRオリゴヌクレオチドを使用する反応は、いかなるライゲーション産物も生じなかった。
【0513】
実施例6:非対称ITRを有するceDNAを含むceDNAの無細胞合成の概念の証明
本明細書に記載されるceDNAの無細胞合成方法は、異なるIIS型制限エンドヌクレアーゼ及び異なるITRオリゴヌクレオチドオーバーハングに適合する。具体的には、基本ベクター及びITRオリゴヌクレオチドは、異なるIIS型制限エンドヌクレアーゼを用いて(すなわち、適切な認識部位を組み込むことによって)、異なるインサートオーバーハングを用いて、異なるITRオリゴヌクレオチドオーバーハングを用いて、及び異なるITRオリゴヌクレオチドを用いて、ceDNA合成を支持するような様式で設計及び修飾され得る。以下の表9は、例示的な基本ベクター、それらの対応するIIS型制限エンドヌクレアーゼ、ITRオリゴヌクレオチド、及びITRオリゴヌクレオチドオーバーハングのリストを提供する。
【0514】
【0515】
概念実証実験を行い、それによって、表9に列挙される基本ベクターをそれらのそれぞれのIIS型制限エンドヌクレアーゼで切除して、表9に示されるそれらのそれぞれのITRオリゴヌクレオチドのオーバーハングに適合する5’及び3’末端におけるオーバーハングを有するインサート(導入遺伝子発現カセットを担持しない)を得て、続いて、これらのITRオリゴヌクレオチドとライゲーションする。
図9Aのアガロースゲル画像は、ゲル中に示されるDNAバンドが約400bpの予想されるサイズを有していたため、IIS型制限エンドヌクレアーゼ消化及びその後のITRオリゴヌクレオチドとのライゲーションが、表9に概説されるように準備された反応の全てについて両方とも成功したことを示す。
【0516】
注目すべきことに、これらの概念実証研究はまた、非対称ITRを有するceDNAの無細胞合成の実行可能性を証明した。例えば、基本ベクタープラスミド15を、BsaIで消化してインサートの5’及び3’末端における直交オーバーハングを生成するように設計し、それらのうちの一方は、ITRオリゴ1によって提示される5’-CTCA-3’オーバーハングに適合し、他方は、ITRオリゴ3によって提示される5’-CACT-3’オーバーハングに適合する。言い換えると、プラスミド15、ITRオリゴ1、及びITRオリゴ3の設計は、ライゲーション反応の指向性及び特異性を制御する。これは、非対称ITRを有するceDNAが調製されることを可能にする。実際、表9に示されるように、ITRオリゴ3は、9bp欠失を有する変異体ITR配列を含有する。ITRオリゴ1をCy3で標識し、ITRオリゴ3をCy5で標識することは、インサートの5’及び3’末端の両方におけるライゲーション特異性の確認を可能にした(
図9B及び
図9C参照)。非対称ITR、及び非対称ITRを有するceDNAは、本明細書並びに国際特許出願公開第WO2019/143885号及び同第WO2017/152149号においても明確に定義されている。基本ベクター及びITRオリゴヌクレオチドの適切な設計及び修飾によると、非対称ITRを有し、それによって、ITRのうちの少なくとも1つがA-A’ステム領域、B-B’ループ、C-C’ループ、及び/又はD-D’ステム領域に位置する修飾を有するceDNAは、本明細書に提供される無細胞合成方法を用いて調製され得る。単に例としてAAV血清型2 ITRを使用して、
図10は、ステム-ループ構造を有するITRにおけるA-A’及びD-D’ステム領域並びにB-B’及びC-C’ループの場所を示す。
【0517】
実施例7:電気泳動によるceDNA産生、閉端性、及び純度の精製及び確認
本明細書に説明される無細胞合成方法を使用して調製されたceDNAベクター産物のうちのいずれかは、例えば、熟練者に一般に既知の方法を使用して、不純物、未使用成分、又は副産物を除去するために精製され得、かつ/又は分析されて、産生されたDNAベクター(この例では、ceDNAベクター)が所望の分子であることを確認し得る。DNAベクター、例えば、ceDNAの精製のための例示的な方法は、Qiagen Midi Plus精製プロトコル(Qiagen)を使用することであり、かつ/又はゲル精製によるものである。
【0518】
非変性アガロースゲル電気泳動
ceDNAベクター産生は、例えば、天然又は変性条件下におけるアガロースゲル電気泳動によって評価され得る。非変性ゲル分析は、本明細書に説明される無細胞ceDNA産生の制限エンドヌクレアーゼ消化/ライゲーション反応及びエキソヌクレアーゼ消化反応の成功を確認する。
図11は、第VIII因子発現導入遺伝子発現カセットを供給する二本鎖DNA構築物として構築物1を使用するFVIII-ceDNAの無細胞合成を伴う、レーン1、2、及び3における3つの試料を示すアガロースゲル画像である。レーン1の試料は、8190bpの未消化プラスミド11を示したラダーの6kbのバンドの上に単一の太いバンドを示した(
図6に示されるマップ)。レーン2の試料は、BsaI消化及びライゲーション反応であり、予想される3つのバンドを示す。強いバンドは、ラダーの6kbバンドと整列し、導入遺伝子発現カセット及びITRを含有する6083bpインサートに対応し、2つの他のバンドは、プラスミド骨格由来の1161bp及び946bp断片に対応した。レーン3の試料は、エキソヌクレアーゼ消化後に、予想されるceDNAライゲーション産物(約6.3 kb)のみが残っていたことを示したが、これは、開端プラスミド骨格断片とは対照的に、閉端ライゲーション産物がエキソヌクレアーゼ消化に感受性ではなかったためである。
【0519】
変性アガロースゲル電気泳動
変性ゲル分析もまた、本明細書に説明される無細胞ceDNA産生の制限エンドヌクレアーゼ消化/ライゲーション反応及びエキソヌクレアーゼ消化反応の成功を確認し得る。例示的な例として構築物1からのFVIII-ceDNAの無細胞合成を使用して、変性ゲル(例えば、尿素を含有する)上における電気泳動後、直鎖状及び開端二本鎖DNAは、約6.3kbの予測されるサイズを有することになり、これは、未切断直鎖状PCR対照試料を含有するレーン2に示されるバンドCによって確認され、それに対応した(
図12参照)。
【0520】
アガロースゲル電気泳動の変性条件は、DNA分子中の2つの相補的DNA鎖を分離する。したがって、閉端二本鎖DNAである所望のFVIII-ceDNAライゲーション産物は、連結された2つのDNA鎖が折りたたまれておらず、一本鎖の長さの2倍(約6.3kb)であるため、約12.6kbで分解すると予測された。更に、FVIII-ceDNAライゲーション産物は、1つ以上のニック又はギャップを含有し得る。ceDNAにおけるニック及びギャップの存在の根拠は、国際特許出願公開第WO2021/011840号に詳細に記載されている。追加的に、本開示で企図されるceDNAの無細胞及び酵素ベースの合成(すなわち、消化のための制限エンドヌクレアーゼ及びライゲーションのためのリガーゼの使用)の文脈で、ceDNAにおけるニック及びギャップの存在は、以下の理由に起因し得る:(i)リガーゼが、ITRオリゴヌクレオチド及びインサートを完全にライゲーションすることができなかったこと、(ii)制限エンドヌクレアーゼスリップ、並びに(iii)ニック及びギャップが、導入遺伝子発現カセットを担持する二本鎖構築物などの出発材料中に含有されていたこと(構築物をボルテックスする複数回の凍結融解サイクルなどのプラスミド操作中の機械的応力に起因する)。
【0521】
したがって、超らせん状であった変性非ニック化FVIII-ceDNAは、ニック化された形態であるニック化されたFVIII-ceDNAと比較して、アガロースゲル上でより高い位置に移動すると予想された。確定的には、
図12のレーン1に示されるように、変性ゲル分析は、DNAの大部分が約15,000kbの閉端形態と一致したサイズで分解された(バンドA)が、一方、少量の単一のニック化された形態のFVIII-ceDNAは、バンドBとしてバンドAのすぐ下で分解したことを示した。
【0522】
更に、既知のBglII制限部位を含有するFVIII-ceDNAを酵素で消化し、変性ゲル上で分析した。直鎖状かつ開端の約6.3kbの二本鎖DNAは、約3.8kbのサイズの2つの一本鎖DNA分子と、約2.5kbのサイズの別の2つの一本鎖DNA分子とに分離すると予想された。対照的に、閉端の約12.6kbの二本鎖DNAである所望のFVIII-ceDNAライゲーション産物は、2つのバンド:約7.6kbバンド(すなわち、2つの連結された約3.8kbの一本鎖DNA)及び約5kbバンド(すなわち、2つの連結された約2.5kbの一本鎖DNA)として分解すると予測された。
図12のレーン3は、BglIIで消化されたFVIII-ceDNA試料を示す。具体的には、レーン3は、BglIIで消化された閉端二本鎖DNAから得られる約7.6kb及び約5kbのバンドにそれぞれ対応する強いバンドD及びEを示し、それによって、試料中に存在するDNAの大部分が閉端形態であったことを再び示した。弱いバンドもまた、レーン3に見ることができ、これは、開端形態からの約3.8kb及び約2.5kbのBglIIで消化された断片に対応し、それによって、微量の開端DNAが精製された原薬試料中に存在することを示している。
【0523】
実施例8:ceDNAのクロマトグラフィ精製
次に、イオン交換クロマトグラフィ(ion-exchange chromatography、IEX)実験を実施して、本明細書に記載の無細胞合成方法を使用して生成されたceDNAを更に精製し、その純度を評価した。簡単に説明すると、弱陰イオン交換クロマトグラフィ方法を利用して、FVIII-ceDNA原薬試料のサイズバリアント種を、それらのリン酸骨格の長さに正比例することになるそれらの正味負電荷に基づいて分離し、分析物正味電荷のサイズに基づく分離手段を可能にした。三級アミン官能基を有するモノリス樹脂を固定相として使用し、漸増塩化カリウム塩濃度の勾配を使用して、分析物を選択的に溶出させ、オンラインUV検出器によって260nmで検出した。FVIII-ceDNA原薬試料は、
図13のクロマトグラムに示されるように、単一ピークとして溶出し、それによって、原薬が単一分子種、すなわち、>99%モノマーとして存在したことを示した。これは、本明細書に記載される無細胞合成方法が、純度の観点で従来の細胞ベース(例えば、Sf9などの昆虫細胞)の産生方法よりも優れていることを示唆する。AAVベクターを含む遺伝子療法ベクターの細胞ベースの産生は、スナップバックゲノム又は中間領域に欠失を有するベクターゲノムのいずれかを有する複数のカテゴリーのサブモノマー又はサブゲノム粒子の混入を含む課題に直面することが知られている(Zhang et al.,(2020)bioRxiv 2020.08.01.230755参照)。
【0524】
実施例9:DNA配列決定分析によってceDNA産生を確認する
本明細書に記載の無細胞合成方法を使用して調製されたceDNAベクター産物のうちのいずれも、DNA配列決定分析によって確認され得る。具体的には、ceDNAベクター産物は、ベクターの両端のライゲーションジャンクションの各々において配列を含有すると予測された。これらのジャンクション配列は、二本鎖DNA構築物又はITRオリゴヌクレオチドのいずれにも存在しないが、ceDNA産物に固有である。
図14は、FVIII-ceDNAのDNA配列分析を示し、これは、構築物1から第VIII因子発現導入遺伝子発現カセットを担持するインサートを切除し、インサートの両末端でインサートをITRオリゴ1とライゲーションすることによって調製される。
【0525】
5’及び3’(又は左及び右)ライゲーションジャンクションを包含する配列領域、すなわち、(i)左領域:FVIII-ceDNAの5’末端にあるFVIII-ceDNAのヌクレオチド78~ヌクレオチド151、及び(ii)右領域:FVIII-ceDNAの3’末端にあるFVIII-ceDNAのヌクレオチド6107~ヌクレオチド619に注目した。左領域中のFVIII-ceDNAヌクレオチド配列を、構築物1 DNA配列決定データ(左)-試料1及びITRオリゴ1の既知の配列と比較して、5’-TGAGCGAGCGAGCGCG-3’(
図14の左ジャンクション1)の固有のジャンクション配列を得た。追加的に、左領域におけるFVIII-ceDNAヌクレオチド配列を、構築物1 DNA配列決定データ(左)-試料2(異なる配列決定試料に由来する)及びITRオリゴ1の既知の配列(配列番号1)と比較して、5’-TGAGCGAGCGAG-3’(
図14における左ジャンクション2、配列番号41)のより短い固有のジャンクション配列を得た。同様の様式で、右領域のFVIII-ceDNAヌクレオチド配列を、構築物1 DNA配列決定データ(右)及びITRオリゴ1の既知の配列(配列番号1)と比較して、5’-CGCTC-3’の固有のジャンクション配列を得た(
図14の右ジャンクション)。
【0526】
実施例10:ceDNAの無細胞合成の拡張性
有利には、本明細書に提供される無細胞合成方法は、実施例4で実証されるように、約1mLの反応(例えば、単一のエッペンドルフチューブ又は96ウェルプレート中)から約50mL反応まで容易に拡張可能である。本発明者らは、これらの無細胞合成方法が、ceDNAの大規模製造のための高スループット自動バイオリアクタシステムに更にかつ直接的に拡張可能であることを実証した。
図15のアガロースゲル画像は、各々、2mg/mL又は0.4mg/mLの構築物1を二本鎖構築物ベース材料として使用して、1mLエッペンドルフチューブ(エキソヌクレアーゼ消化反応体積=1mL)及びAmbr(登録商標)バイオリアクタシステム(エキソヌクレアーゼ消化反応体積=137.5mL)中で調製されたceDNA産物を示す。両スケールにおける反応で、匹敵する収量及び純度レベルが得られた。
【0527】
実施例11:マウスにおける合成的に調製されたceDNAからのタンパク質発現
上記の合成的に産生されたceDNAベクターからの第VIII因子(FVIII)発現導入遺伝子のインビボタンパク質発現を、従来のSf9細胞ベースのプロセスを使用して、流体力学的尾静脈注射を介して、またceDNAベクターを含有する脂質ナノ粒子製剤の静脈内投与を介して調製された対応するceDNAベクターと比較して、マウスにおいてインビボ評価した。
【0528】
FVIII-ceDNAベクターの流体力学的尾静脈注射
げっ歯類の肝臓に核酸を導入する周知の方法は、流体力学的尾静脈注射によるものである。この系では、封入されていない核酸を大量に加圧注射すると、細胞透過性が一過性に増加し、組織及び細胞に直接送達される。これは、マクロファージ送達など、宿主の免疫系の多くを迂回する実験的な機序を提供し、そのような活性の不在下で送達及び発現を観察する機会を提供する。
【0529】
ceDNA研究の流体力学的尾静脈注射を、表10において以下のように設計した。この研究の目的は、合成及び細胞ベースのプロセスによって産生されたceDNAの流体力学的送達後のFVIII発現を評価することであった。
【0530】
【表10】
IV=静脈内、ROA=投与経路
50匹のおよそ4週齢の雄CD-1マウスに、0.002μg/動物、又は0.01μg/動物、0.05μg/動物、0.25μg/動物の単回流体力学的尾静脈静脈内投与(tail vein intravenous administration)を、90~100mL/kgの以下のものの中で行った:(i)本明細書に記載の無細胞合成方法を使用して調製されたFVIII発現導入遺伝子カセットを担持するceDNAである合成FVIII-ceDNA、(ii)Sf9昆虫細胞を使用する従来の細胞ベースの方法を使用して調製された同じFVIII発現導入遺伝子カセットを有するFVIII-ceDNAの第1のロット(ロット1は、>49%のceDNAのモノマー種を含有する)、及び(iii)Sf9細胞を使用して調製された同じFVIII-ceDNAの第2のロット(ロット2は、?72%のceDNAのモノマー種を含有する)。注射後0日目の60~120分、0日目の終わり、及び剖検前の1日目にマウスを評価した。マウスの体重もまた、0日目及び1日目に記録した。次いで、マウスを注射の24時間後に安楽死させ(±5%)、全血を使用して、FVIIIの血漿濃度(IU/mL)を評価するための血漿を提供した。
【0531】
図16Aは、漸増用量レベルのFVIII-ceDNA(合成又は細胞ベース)をマウスに投与した場合のFVIIIの血漿濃度を示すグラフである。全てのceDNA試料は、合成的に調製されたものであっても、Sf9細胞培養物中で調製されたものであっても、投与される用量レベルが0.002μg/動物から0.25μg/動物に増加するにつれて、測定されるFVIII血漿濃度が着実に増加する、用量応答性を呈した。この流体力学的尾静脈注射研究では、合成的に調製されたceDNAのFVIII発現レベルは、Sf9で産生されたceDNAの発現レベルと同等であったことが分かる。ロット2のSf9で産生されたceDNAの発現レベルは、ロット1よりもわずかに高かったが、これは、ロット2がロット1よりも高い濃度のceDNAのモノマー種を含有し、したがって、より高い純度であったため、予想外ではなかった。
【0532】
FVIII-ceDNA LNP製剤の静脈内注射
この研究の目的は、LNP組成物として製剤化されたceDNAの静脈内送達後のFVIII発現及び活性を決定することであった。研究設計は、以下のとおりである。
【0533】
【0534】
17匹のおよそ5週齢の雄Rag2マウス(成熟T細胞又はB細胞を産生しないノックアウトマウスである)に、(i)本明細書に説明される無細胞合成方法を使用して調製されたFVIII発現導入遺伝子カセットを担持するceDNAである合成FVIII-ceDNAと、(ii)Sf9昆虫細胞を使用する従来の細胞ベースの方法を使用して調製された同じFVIII発現導入遺伝子カセットを有するFVIII-ceDNAとを担持する5mL/kgのLNP組成物中の2.0μg/動物の単回静脈内投与を与えた。LNP組成物は、2021年7月16日出願の国際特許出願第PCT/US2021/042033号に記載の方法を使用して調製された。イオン化脂質、コレステロール、ペグ化脂質などのLNP組成及びそれらの濃度は、合成FVIII-ceDNAを封入する製剤とSf9で産生されたFVIII-ceDNAを封入する製剤との間で同じに保った。
【0535】
図16Bは、LNP組成物(合成又は細胞ベース)として製剤化された2.0μg/動物のFVIII-ceDNAをマウスに投与した場合のFVIIIの血漿濃度を示すグラフである。合成FVIII-ceDNAで治療されたマウスにおけるFVIII発現レベルは、Sf9で産生されたFVIII ceDNAで治療されたマウスにおける発現レベルよりも約2倍高く、これらの高い発現レベルは、42日間継続した研究期間を通して維持された。
【0536】
実施例12:大規模におけるDNA鋳型増幅
プラスミド産生のためにE.coli発酵を使用するDNA鋳型スケーリングの代替として、無細胞DNA増幅方法を使用する、より迅速かつ費用効率の高いプラスミド又はDNA産生のための新しいアプローチを開発した。無細胞方法は、DNAプラスミド鋳型の>1000倍のローリングサークル及び多重鎖置換(MSD)増幅と、その後の、II型エンドヌクレアーゼ、リガーゼ、ITRオリゴ、及びエキソヌクレアーゼ酵素を使用する、ceDNA分子への得られる産物の変換と、を含む。
【0537】
Bacillus subtilisファージに由来するPhi29ポリメラーゼは、その天然鎖置換能力に起因して、等温的に作動する高度なプロセッシブ酵素である。Phi29ポリメラーゼは、その3’から5’方向のエキソヌクレアーゼプルーフリーディング活性に起因して、10-6~10-7という非常に低いエラー率を呈する。その高いプロセシビティ及び等温特性に起因して、Phi29は、特に高温熱サイクルを必要とするPCR方法と比較した場合に、DNAの拡張可能な産生に大きな利点を提供する。追加的に、Phi29の変異体バージョンはまた、耐熱性及び増強されたプロセシビティを提供し、これは、産生の強化及びプロセス耐久性を可能にする。これらの理由から、ceDNAインサート(例えば、発現カセット)を含有するDNA鋳型プラスミドのローリングサークル及び多置換増幅を伴う本発明の方法で、phi29ポリメラーゼを用いた。
【0538】
方法開発は、E.coliで産生されたプラスミドと少なくとも同等であるか、又はそれより優れた高品質の増幅されたプラスミドDNAの産生を駆動するために増幅反応を特徴付けることと、その後のceDNAへの変換反応における容易さを確実にすることと、を含んだ。反応の増幅部分を特徴付けるために、増幅されたプラスミドの中間BsaI消化物を適用して、DNAバンディングプロファイルに基づいてプラスミド品質を評価した。次いで、消化された材料は、リガーゼ、ITRオリゴ、及びエキソヌクレアーゼによる処理によってceDNAに変換されることができた。より単純な代替例として、増幅されたプラスミドをBsaI、リガーゼ、ITRオリゴ、及びエキソヌクレアーゼで直接処理してceDNAを生成した(
図17)。
【0539】
簡単に説明すると、増幅は、迅速な増幅速度に関して典型的には42~45℃の温度で機能する操作された熱安定性EquiPhi29(商標)を使用して実施した。フォワード及びリバースプライマは、アンピシリン耐性遺伝子のプロモータ部位付近のプラスミド骨格中の保存領域を標的とするように設計した。アニーリングステップ及び増幅反応中のある範囲の異なるプライマ濃度を使用することは、高い産物純度及びDNA増幅における複数桁の増加が得られた。
【0540】
増幅されたプラスミドの産物品質を評価するために、粗い多置換増幅産物をBsaIで処理し、アガロースゲルDNAバンディング分析を使用してE.coliで産生されたプラスミド鋳型と直接比較した。プライマ濃度が消化性に強い影響を及ぼすことが見出された(
図18)。例えば、50uMを超えるプライマ濃度では、残留高分子量産物がウェル中に一貫して観察され、これは、酵素消化にアクセス不可能なDNA又は大きい一本鎖副産物のいずれかであると推測された(
図18)。例えば、10~50uMの低いプライマアニーリング濃度が、高い増幅レベルをもたらすが、一方で、産物品質も確保することが見出された。
【0541】
プラスミド増幅反応を更に特徴付け、増強するために、EquiPhi29(商標)酵素の量及び増幅反応の温度も評価した。
図19A及び
図19Bに示されるように、増幅反応速度は、反応温度及びポリメラーゼ量によって大きく影響された。より高い反応温度は、より速い反応速度及び3時間以内の実質的な産物生成を駆動した。しかしながら、より低い温度では、反応時間がますます長くなるにつれて、大幅により高い産物収量が達成された(
図19A)。追加的に、低減された濃度のポリメラーゼでは、産物生成の反応速度が遅くなった。しかしながら、反応温度を低下させ、phi29の量を低減させることはまた、
図19Aに示されるように、特に副産物産生を示す低減されたバンドスメアリング、及び予想されるプラスミドDNAバンディングの高い強度を伴って、増強された産物品質をもたらしたことが注目された。増幅されたプラスミドDNAバンディングの分析は、野生型及び操作されたPhi29ポリメラーゼ酵素(EquiPhi29(商標))について非常に類似した産物品質のプロファイルを実証し、直接的な適用可能性を示したが、収量は、操作されたPhi29で達成された収量のおよそ10分の1であった(
図19B)。
【0542】
次いで、増幅されたプラスミドを、ceDNA産物への酵素的変換について更に分析した。評価は、30℃及び45℃の増幅反応に基づいて、E.coli由来プラスミド及び同じE.coli由来プラスミド鋳型を使用して生成されたMDAプラスミド産物を使用することを含んだ。
図20Aに示されるように、BsaIで消化されたプラスミドプロファイルは、全ての試料について明確なプラスミドバンディングを示したが、一方で、増幅された反応産物は、ウェル中に高分子量種を含有していた。45℃プロセスはまた、追加のバンドスメアリングをもたらした高レベルの副産物を含有した。プラスミド試料をBsaI、リガーゼ、ITRオリゴ、及びエキソヌクレアーゼで処理した場合、全てが同様の品質のceDNAを産生し、酵素的ceDNAアセンブリプロセスの堅牢性を実証した。更に、酵素的プラスミド増幅及びceDNAアセンブリ方法の適用可能性を評価するために、5つの異なるプラスミド構築物を増幅し、本明細書に説明されるceDNAに酵素的に変換した。ceDNA構築物サイズ(2.9kb~6.2kbの範囲)及びDNAバンディング品質プロファイルを、
図20Bに示されるようにアガロースゲルにおいて確認した。
【0543】
酵素増幅及び酵素アセンブリ方法の拡張性を評価するために、反応混合物を異なる体積(100μl、1mL、及び25mL反応体積)で調製し、増幅されたプラスミド品質の収量及び一貫性について評価した。
図21Aに示されるように、全ての増幅されたプラスミド材料は、全ての試験された反応体積スケールについて、高い産物品質及び増加した増幅レベル(例えば、全ての体積についておよそ0.8μg/μLの粗収量、又は入力鋳型DNAの約3000倍の増幅)を実証した。ceDNA生成方法全体の拡張性を更に実証するために、アンプリコン材料を、本明細書に記載の方法を使用してceDNAに酵素的に変換した。得られたceDNAを陰イオン交換カラムを使用して精製し、Agilent Fragment Analyzerを使用して純度を決定した。本増幅及びその後の変換方法は、著しく純粋な、合成的に作製された、閉端DNAの成功した産生をもたらすことが示された(
図21B、大きいceDNAピーク及び他のDNA副産物の欠如を示す)。
【0544】
最後に、酵素的増幅及び酵素的アセンブリ方法を従来の反応条件と比較した。
図22は、異なる量のポリメラーゼ酵素、反応温度、及び反応時間の長さを使用してプラスミド増幅を比較するアガロースゲル分析を図示する。示されるように、本明細書に記載されるプロセス(「更新されたプロセス」:0.25ng/μlプラスミド鋳型、25μMアニーリングプライマ、30℃、0.05U/μl EquiPhi29(商標)、4mM dNTP、18~26時間)は、従来の反応条件(「初期プロセス」:0.25ng/μlプラスミド鋳型、10μMアニーリングプライマ、45℃、0.5U/μl EquiPhi29(商標)、5mM dNTP、3時間)と比較して、10倍低い濃度の酵素の使用を可能にする(コスト及び潜在的な供給制約を低減する)が、一方で、実質的に増強された産物品質をもたらし、低減されたスメアリング及び低減された高分子量種(酵素操作できない)を示す。
【0545】
本明細書に開示される結果は、大量の完全な合成閉端DNA分子を生成するための、拡張可能で、堅牢な、無細胞の酵素的方法を実証した。
【0546】
参考文献
特許、公開及び未公開特許出願を含むがこれらに限定されない、本明細書及び本明細書の実施例で引用される全ての刊行物及び参考文献は、各々、あたかも個々の刊行物又は参考文献が、完全に記載されるように参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されるかのように、その全体が参照により組み込まれる。この出願が優先権を主張する任意の特許出願もまた、刊行物及び参考文献について上述した方法で、参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】